教育課程部会 教育課程企画特別部会(第8回) 議事録

1.日時

令和7年5月22日(木曜日)9時30分~12時00分

2.場所

WEB会議と対面による会議を組み合わせた方式

3.議題

  1. 質の高い探究的な学びの実現について(情報活用能力との一体的な充実)
  2. その他

4.議事録

【貞広主査】  皆様、おはようございます。それでは、第8回教育課程企画特別部会を開催いたします。
 本日は、情報活用能力との一体的な充実を含む、質の高い探究的な学びの実現について御審議いただきます。進行資料を御参照いただきますと、事務局の説明の後、田村学主任視学官、関西大学の黒上晴夫教授より、それぞれ御発表いただきます。その後、新潟市立新潟小学校様と山梨県立笛吹高等学校様より、御実践について御発表いただきます。その後、5分休憩を挟んで、意見交換の時間といたします。
 それでは、事務局より、まず論点資料について御説明をお願いいたします。
【栗山教育課程企画室長】  失礼いたします。今回は、質の高い探究的な学びの実現ということで、情報活用能力の抜本的向上について御議論いただきました、前回、5月12日の議論を踏まえまして、資料を作成させていただいております。
 まず、前提について御説明させていただきます。探究的な学びを取り巻く現状についてでございます。
 これは諮問文の関係の部分でございますので、御参照いただければと思います。
 こちらも諮問文の関係の部分でございますけれども、「質の高い探究的な学び」は、これからの社会と教育課題、両方の全体につながるテーマということで、諮問文の概要資料を踏まえて抜粋させていただいております。
 また、こちらは探究的な学びと総合的な学習の時間の現行の位置づけでございます。探究的な学びは、学習指導要領において、総合的な学習/探究の時間を中心として、様々な教科等に位置づけられております。左下、探究的な見方・考え方は、各教科等における見方・考え方を総合的に活用して、広範な事象を多様な角度から俯瞰して捉え、実社会・実生活の課題を探究し、自己の生き方を問い続けること。
 その下、探究的な学びにおける児童・生徒の姿でありますけれども、探究的な学習の過程として、課題の設定、情報の収集、整理・分析、まとめ・表現について示しております。
 右側、総合的な学習の時間の小学校の目標でありますけれども、探究的な見方・考え方を働かせ、横断的・総合的な学習を行うことを通して、よりよく課題を解決し、自己の生き方を考えていくための資質・能力を育成するということを目標としております。本日、これについて、田村先生や黒上先生から、変遷やその価値について御発表いただくこととなっております。
 探究について、全国学調のデータでは、探究の過程を意識した指導について、「よくしている」という教師は増加傾向。26年度からだんだんと増加してきている。また、「どちらかといえば、よくしている」を含めれば、9割超の先生に御尽力いただいてきたという結果でございます。
 また、児童生徒についても同様の経過がありまして、小学校、中学校ともにだんだん増えてきている中で、現在、「当てはまる」が、「どちらかといえば、当てはまる」というものも含めると8割超になっているという状況がございます。
 ここから、国際的潮流と社会状況の変化についてであります。OECDの報告書によれば、カリキュラムデザインをガイドする原則というものでありますけれども、教科横断性、真正性、生徒エージェンシーといった原則も掲げられているところ、こうした考え方が探究的な学びと親和的なものになっているということが見て取れるものでございます。
 また、生成AIの発展が著しい状況でありますけれども、こちらは、人間が得意なこと、生成AIが得意なことを整理したものであります。左側が人間の能力ということで整理しておりますけれども、情熱・人としての意思、五感を通した経験や判断、また課題定義といったものが例示されておりますけれども、探究的な学びが、こうした生成AIが苦手な部分と親和性があるということも、また見て取れると考えております。
 また、変化の激しい時代であります。そして、人生100年時代とも言われている中で、働く期間が長くなる。また、マルチステージの時代になる。そうした中で、課題設定することを含めて、よりよく課題を解決し、自己の生き方を考えていくという資質・能力を育む探究的な学びというものの価値が見て取れるかと思います。
 労働の需給の観点からも、2040年には1,100万人もの人が足りなくなるのではないかと予測もされているところでございます。そういった中で、個人の主体的選択により働き方・生き方を決める割合が増えるという指摘もある中で、また探究的な学びというものが重要になるということが見て取れると思います。
 次に、前提の2つ目でありますけれども、諮問で掲げられた教育課題と探究的な学びの可能性についてであります。
 まず、教育課程をめぐる探究的な学びの可能性ですけれども、全般的な傾向と、探究的な学びに熱心に取り組んでいる子とを比べていきますけれども、左側、全般的な傾向としては、国際的にも我が国の子供は、うまくいくか分からないことにも意欲的に取り組む児童生徒が少ないのではないかということに対して、探究的な学びに取り組む児童生徒は、授業では、課題の解決に向けて、自分で考え、自分から取り組んでいるという割合が高い傾向というものがございます。
 非常に傾向としては顕著である一方で、右下にございますが、傾向というのは事実関係を記述したものであり、因果関係を直接示すものではございませんので、この点、このデータについても注記させていただいております。
 また、探究的な学びは不登校の子供が「学びたいと思える場所」、これが右側のデータにございますけれども、右下、「自分の好きなこと、追求したいこと、知りたいことを突き詰めることができる」というのが約7割ございますけれども、親和的なものとなっているということを見て取れます。
 全国学調のデータに戻りまして、探究的な学びに取り組む児童生徒は、授業で学んだことを「次の学習や実生活に結び付けて考えたり、生かしたりできる」という割合が高い傾向にございます。
 また、探究的な学びに取り組む児童生徒の能力は、全般的な傾向では自分の考えを書くことが苦手というデータもある中で、自分の考えをまとめる活動を行っていた割合が高い傾向にあり、このデータとしても非常に顕著な数字になっているということでございます。
 また、探究的な学びに取り組む児童生徒について、全般的な傾向としては自律的に学ぶ自信がないということは国際的なPISA2022の調査結果でも指摘されているところ、自分で学び方を考え、工夫できる割合が高いという傾向が見て取れるものであります。
 全般的な傾向としては、社会参画意識、「自分の行動で国や社会を変えられると思う」という児童生徒の割合は、改善傾向ではあるものの、依然、課題があるという中で、探究的な学びに取り組む児童生徒は、地域をよくするために何かしてみたいと思う割合が高い傾向にございます。
 また、探究的な学びに取り組む児童生徒は、教科の勉強、ここでは国語と算数・数学でありますけれども、好きな割合が高い傾向にもございます。
 前回、子供への意見聴取結果について公表させていただきましたけれども、その中で、「ワクワクした授業は何ですか」、「自分の力をつけるためにどんな授業がよいと思いますか」という項目において、総合や探究について声を上げている子供たちが多かったということもございます。
 一番下、自分自身が見つけた課題を周囲の人と協力して解決していけるような環境となるとよいといった声も上がっているところです。
 また、高大の学びとの関係でありますけれども、こちらは、幸せな活躍をしている社会人の学び特性と、高校・大学での学びを分析した結果でありますけれども、箱の中でいうと丸2、図でいうと「高校時代の学び」の真ん中の部分でありますけれども、高校の「探究的な学び」というものが、大学の「学びの意味づけ」でありますとか、「社会人での学び特性」の「人を巻き込んで学ぶ」というところに影響しており、社会人での幸せな活躍につながっている傾向があるということも見て取れる状況であります。
 ここまでが探究的な学びに関するデータでありましたけれども、ここから情報活用能力との関係について、前提の丸3として御説明させていただきます。
 冒頭、探究的な学びのプロセス、過程について御説明させていただきました。その学びの過程と、ICTの活用で期待できる質の高まりについて、イメージを図示したものがこちらであります。特に、例えば丸2の「情報の収集」の部分であれば、多種多様な大量の情報を、高速に、時間や空間を超えて収集・蓄積できる。丸3の「整理・分析」の部分であれば、多様で大量で複雑な情報の整理や、整理した情報の加工・分析が容易になるといったことがイメージとして書かれております。本日は、ここの部分を具体的に実施していただいている事例として、新潟小学校さんに御発表いただくというふうになっております。
 こちらは、情報技術の活用により探究的な学びの質を向上する取組について、渋谷区さんの事例を挙げさせていただいております。
 こちらから、生徒・教師を対象とする調査の結果でありますけれども、PISA2022では、探究的な学びにおけるICT活用について、諸外国と比較して低位であると。逆に申し上げれば、伸び代があるということが言えるかと考えております。
 また、こちらは、堀田主査代理をはじめ、研究者の方々に1人1台端末の活用の探究的な学習への質的・効率的な影響について調査いただいたものの速報値でございます。調査対象は全国の公・私立の小・中学校の先生方、回答数は約300人でいらっしゃいます。
 この調査では、探究的な活動での端末活用というものが、活用なしと比べて、探究の質の高まり・効率化というものが実感できるかということについて、7点満点で、左側、質の高まりについて申し上げれば、「活用しないほうが質が向上する」と「活用するほうが質が向上する」ということで、1から7までで調査いただいたものであります。結果として、やはり特に「情報の収集」や「整理・分析」の学習過程でスコアが高い。全体としてスコアも大変高くなっておりますけれども、「情報の収集」、「整理・分析」については、6点以上の得点となっている。この点は、時間の効率化、右側についても、時間の関係でありますけれども、同様の傾向が見られることになります。本日、堀田主査代理から補足を頂けると存じますけれども、下にありますように、質を低下させず、時間短縮も可能とし、探究のプロセスで時間をかけるべきところに時間を確保し、質を高めることが可能になるのではないかということを示唆するデータと受け止めております。
 また、端末の活用頻度が高いほうが、探究的な学びの質の高まり・効率化の実感が高い傾向もあるということも、また整理させていただいています。これは、灰色の部分が週1回以下の場合、オレンジの部分がほぼ毎日、毎時間である場合ということで、整理を頂いているものでございます。
 ここまでが前提でございます。ここから、探究的な学びに係る具体的論点について御説明をさせていただきます。
 まず、左側、1、総合のこれまでの成果についてであります。既に見てきたように、総合的な学習の時間の創設から約30年が経過し、積極的に取り組む先生方・児童生徒が増加傾向でございます。地域課題の解決や地方創生に寄与する例も生まれてきています。
 丸2、探究的な学びに積極的に取り組んだ児童生徒は、全国学調において様々なアンケート項目にも肯定的に回答しております。
 丸3、児童生徒が探究の成果を発表するステージも、官民双方で広範に展開されてきており、高校・大学入試で積極的に評価するなど、社会全体で探究を応援する機運が醸成されてきています。
 2、主な課題であります。小中学校では、総合に積極的に取り組む教師・児童生徒は増加傾向であり、高校では「探究の時間」と、現行指導要領から名称変更し、改善に一定程度寄与しております。
 丸2、一方で、小中高全体として、カリキュラムの設計に困難を感じ、授業がともすると調べ学習で終わってしまうといった声も聞かれ、育成を目指す学びの姿が十分な共通認識に至っていないのではないかという指摘も頂いています。探究と相性のよいICTの活用の伸び代を示唆するデータもございます。
 丸3、総合を探究的な学びの中核と位置づけた趣旨は、教育目標の具現化とともに、各教科等でも探究の要素を持つ学習が一定程度行われ、双方が有機的に連動するということであり、各教科等の連携にはさらなる改善の余地があるのではないかと考えています。
 丸4、探究のテーマとして、職業や福祉、国際理解は多いものの、ものづくりや科学技術が少ないといった偏りもございます。また、学校で設定した総括的なテーマといったものが重視される傾向にあり、個人の興味関心が十分に考慮されていない例も見受けられます。
 こうしたことも踏まえて、右側、3の「検討の方向性」であります。
 丸1、生成AIがさらに発展し、人間の意思が一層重要になる時代に向け、思考や行動・好奇心の芽を一層大切にするとともに、他者との対話や協働、自己調整を通じて、ここは4月25日に御議論いただいた部分でございますけれども、こうしたことを通じて好きや得意を伸ばし、夢や希望を育み、自らの人生を舵取りする力につなげていく。そうした取組を一層重視すべきではないかと考えております。
 丸2、総合を中核とした探究的な学びは、自ら課題を設定し、解決に向けて取り組む中で、自己の生き方や在り方を考えていくものです。その充実は、知識や技能、思考力・判断力・表現力等の伸長のみならず、学びに向かう力・人間性等の涵養に大きな役割を果たす潜在性も有しているのではないか。
 こうした丸1、丸2を踏まえて、方向性でありますが、引き続き、総合を中心としつつも、各教科等との連携も明示的に含めた形で、探究的な学びの一層の充実・改善を検討してはどうか。
 その際、前回も御議論いただきました、いわゆる「デジタル技術の民主化」によって、様々な課題解決に情報技術の活用が不可欠となってきていることも踏まえて、デジタル学習基盤を、探究を支える基盤としても十分に機能させて、リアルな身体性を大切にしながら探究プロセスを自ら駆動できるようにする方向で、教育課程の枠組の改善を検討してはどうか。
 加えて、このような改善に当たって、デジタル技術が認知や行動に与えるリスクに十分な対処をする観点も含めて、生成AI等を含めた先端技術の特性理解を基に、情報モラルやメディアリテラシー等を併せて育む方向で検討してはどうか。
 以上の改善も踏まえつつ、探究が、申し上げた丸1、丸2に示した役割を十全に果たせるよう、総合が目指す学びについて、発達段階に応じた示し方を検討してはどうかと考えております。
 これを踏まえた具体的な論点についてであります。
 まず、一番上、総合を中核としつつ、各教科等も含めた形で探究的な学びを一層重視するとともに、質の高い探究に不可欠な情報活用能力の諸要素を教育内容として明記し、一体的に向上させる方向で検討してはどうか。詳しくは専門のワーキングで議論を深めることが前提でございます。
 まず、1、小学校段階についてであります。教育課程上の位置づけとしては、情報技術の活用の可能性が最も大きく、体験的な活動が充実している総合において、情報技術の適切な取扱いや特性の理解の基礎も含めて、探究的な学びと一体的・重点的に指導できるよう、情報活用能力を育む領域を総合に付加してはどうか。その際、情報技術の学習自体が総合の目的であるとの誤解を受けないよう、「自ら課題を設定し、解決に取り組むことを通じて自己の生き方を考えていく」という探究的な学びの特質が十分に発揮されるよう配慮してはどうか。
 その上で、2、中学校・高校段階についてです。小学校段階での一定レベルの情報活用能力の育成を前提とすれば、総合の中ではなく、現行の技術・家庭科の技術分野を主たる受皿と想定し、生成AI等の先端技術を含めた適切な取扱いや特性の理解を学び、総合をはじめ各教科等での探究的な学びのプロセスに生かしてはどうか。
 こうした観点から、中学校では、技術・家庭科を2つの教科に分離した上で、現行の技術分野において情報技術をより深く、広く学ぶこととしつつ、情報領域のみならず、他のAからCの領域でも情報技術との関連を強化し、全体として「ものづくり」と実生活・実社会をつなげる探究的な学びを充実させてはどうか。この点も前回、御議論いただいた部分でございます。
 高校では、小・中学校の系統性を踏まえて情報科の内容を充実しつつ、総合や各教科等での情報技術を基盤とした探究的な学びとの関連を図ってはどうか。また、学校設定教科・科目の活用等、総合と他の科目との組合せなどによって、一層柔軟に探究の充実を図れるようにしてはどうか。この点は、関連するお取組を、本日、笛吹高校さんから御発表いただく予定となっております。
 3、「小中高を通じて」でありますが、約30年にわたって、総合の実践の蓄積が掲げられております。これを踏まえ、「問い」や「課題」の設定の質といった非常に重要な部分をはじめとする探究のプロセスの改善を含めて、学校種ごとの総合の「目標」等について、発達段階を踏まえた示し方を検討すべきではないか。その際、新たな枠組みの全体像も踏まえて小・中学校での総合の名称についてどう考えるか。グループでの探究と個人探究とのバランスやテーマ設定の偏りについて、発達段階や情報活用能力の向上も勘案して、どのように考えたらよいかということであります。
 次は、その他の条件整備についてであります。
 探究的な学びに必要な時間の確保に資するという意味でも、情報技術の活用、教育課程の柔軟化による余白を生み出すこと、指導要領の構造化や教科書の分量の精選を進めていくべきではないか。
 そして、個々の児童の思いや願い・好奇心に基づく探究の質の向上及び学校のカリキュラム設計の負担軽減も必要であります。また、探究のフィールドが外部にも広がる中で、社会の理解を促進する観点から、大学の研究者の皆様や企業の方々など外部に協力を求める場合の基本的な留意事項等も必要ではないか。このため、これまでの実践の蓄積を可視化する形で、教員や児童生徒が自由に参照できる参考資料をデジタル技術も活用して作成すべきではないか。
 探究的な学びへの支援や成果の発表の場となる外部のイベントも大分増えてきております。国としてもさらなる振興を図ってはどうか。
 加えて、以下の部分は括弧で書いてあります。前回の部分の再掲でございますが、中学校技術の免許状保有等の体制、あるいは全面実施を待たず、指導主事を含めた研修機会の拡充、また動画教材などを国が提供していくことなど、小中高を通じて、しっかりと条件整備も図っていくということでございます。
 こちらは関連する論点でありますけれども、「学習の基盤となる資質・能力」というものが現行指導要領で位置づけられております。これは、下の灰色の部分にあるように、各教科等の日々の学習や生涯にわたる学びを基盤として支える資質・能力でありますが、少し、課題と整理の視点について言及申し上げます。
 現在は、言語能力、情報活用能力、問題発見・解決能力の3つが位置づけられていますけれども、丸1、2のような課題があると考えております。情報活用能力についてでありますけれども、情報及び情報技術を適切に活用する力とされていますが、社会でのデジタル技術の普及やGIGAスクール構想の進展等を踏まえますと、情報技術を介さない情報活用、例えば情報機器を用いない情報の整理などですが、これについては具体的なイメージが持ちにくい、あるいは言語能力との重複があると指摘されております。
 また、問題発見・解決能力でありますけれども、情報活用・言語能力との重複が見られるほか、考え方としては非常に重要でありますけれども、資質・能力の具体や育成のための実践が必ずしも明らかではなく、具体的な実践に結びつきにくいとの指摘もございます。
 これを踏まえ、今後、「分かりやすく、使いやすい」学習指導要領を目指すために、各教科等の学習の基盤として、発揮可能な資質・能力を明確にでき、教育実践に落とし込める具体性を有したものに整理してはどうかと考えています。イメージを下に示しておりますので、御参照ください。
 具体的な整理でありますけれども、まず情報活用能力についてでありますけれども、下の灰色の部分の真ん中、情報活用能力の部分を御覧ください。現在は、申し上げたように、「情報及び情報技術を活用」するというふうになっていますけれども、丸2にあるように、情報技術を介さないものについてはイメージが持ちにくいと。今般の情報教育の充実を契機に、学習の基盤となる資質・能力としては「情報技術の活用」に絞って示し、「情報技術の活用」については各教科等の特性に応じて指導してはどうかと考えているところでございます。
 また、問題発見・解決能力については、左にございますように、丸1、取り組む課題に伴って能力の具体が変わるものでございます。全ての学習の「基盤」として発揮可能な資質・能力をあらかじめ明確化することが難しいのではないか。また、丸2、本人にとっても意義のある文脈で質の高い問題発見・解決を繰り返す中で発揮できるようなものでございますので、そうした文脈から切り離して育成することは難しいのではないかという指摘も頂いています。一方、各教科等で培った資質・能力を総動員して、個々の関心に応じて問題を発見・解決していく力は非常に重要であります。今般検討している探究的な学びとの関係も不可分一体であります。ですので、具体がないままに、「学習の基盤となる資質・能力」として示すのではなく、今後、具体的な実践につながるように、総合の目標・発達段階に応じた示し方を検討する中で、問題発見・解決の要素を重視するとともに、各教科等の学習の過程で問題発見・解決が重視されることを示してはどうかと考えております。
 このことを前提として、今後、ワーキング等で詳細に整理してはどうかと考えておりますけれども、申し上げたこと、図示したことが、上のほうにございます。
 なお、左側について、各教科等について一部の教科を示しておりますが、これはあくまで例示でございますので、念のため申し上げます。
 本論に戻りまして、それでは探究的な学びの基盤となる情報活用能力の整理というもの、前回の議論も踏まえたイメージでございます。
 「活用」、「適切な取扱い」、「特性の理解」という3つの要素がございますけれども、まず上の部分、「活用」について考えますと、情報技術を自由自在に活用して、自らの人生や社会のために課題解決や探究ができる力が不可欠でございますので、「活用」を中核的な構成要素と整理できないか。その上で、それを発揮するためには、併せて認知や行動に与えるリスクに対応する「適切な取扱い」が当然必要です。そして、仕組みや背景も含めた「特性の理解」によって、より効果的に、そして適切に取扱いができるようになる。これを踏まえると、2「適切な取扱」、3「特性の理解」を、1「活用」を発揮するための構成要素と整理できないか。
 これを踏まえて、下の部分。以下のようなイメージで、発達段階に即した学習活動を検討してはどうかと考えています。この部分、小学校段階については、体験的な活動を重視し、「活用」を中核としながら、「適切な取扱い」、「特性の理解」と相まって培うということ。そして、中学校段階以降については、各要素の内容を深めつつ、より抽象的・科学的な理解を必要としていきますので、「特性の理解」も一層重視していく。
 それをイメージで示したのが以下の部分でございまして、小学校については逆台形のような形で活用の部分が大きくなっており、中・高学年で、情報収集、整理・分析、工夫して表現するなどを例示しておりますし、中学校については平行四辺形で、緑、青の部分も出てくる。また、高校の部分は台形で示している。このようなイメージでお示ししております。あくまでイメージであります。
 下のコメ(※)にあるように、あくまでこれは網羅的なものではなく、今後さらに専門的な整理・検討が必要でありますし、ほかの教科等との関係でも、タイピングの国語との役割分担を含めて、全体として整理していく必要があるところでございます。
 これを踏まえまして、質の高い探究的な学びの実現に向けた新たな枠組み、総合との関係でありますけれども、既に具体的論点でも申し上げましたが、探究的な学びの充実を図るために、情報活用能力を、探究的な学びを支え、駆動させる基盤と位置づけ、探究と情報の一層の連携を以下の考えに基づいて整理してはどうかと考えています。
 小学校です。小学校段階は、探究的な学び・情報技術の活用、いずれでも中心的な「課題の設定」、「情報の収集」、「整理・分析」、「まとめ・表現」について初めて取り組む段階でもあることから、一体的に取り組むことで効果的に実施できるのではないか。発達段階を踏まえても、体験的な活動が充実している総合において、効果的な活用を可能とする適切な取扱いや特性の理解の基礎も含めて、探究的な学びと一体的・重点的に指導できるように、情報活用能力を育む領域を付加して学んではどうか。
 中学校・高校については、小学校段階で一定レベルの情報活用能力が育成されるという前提として、中学校は技術分野を中心に、高校は系統性を踏まえて情報科の内容を充実して、適切な取扱いや特性の理解を専門的により高めて、身に付けた資質・能力を総合や各教科等での探究的な学びのプロセスで活用・発揮してはどうかと考えております。
 ここまでの議論を俯瞰したものが全体イメージでございます。主体的に学んで、自らの人生を舵取りする力の育成、可能性を開花させる教育の実現のために、初発の思考や行動を起こしたり、好奇心を深掘りする中で、学びを主体的に調整し、豊かな人生やより良い社会につなげていく。そのために、「質の高い探究的な学び」の実現は不可欠であります。実現に向けて、情報活用能力を、各教科等のみならず、探究的な学びを支え、駆動させる基盤として位置づけ、探究・情報の双方の観点から大幅な改善を図るということであります。
 このような考え方に基づき、御説明してきたように、具体的なイメージを図示したものがこちらでございます。ピンクは探究、ブルーは情報に関連するものでございまして、オレンジの部分が各教科等で育成した情報活用能力を生かしていくということで、つなげているものでございます。
 本論の御説明が以上でございまして、こちらについては論点資料補足資料であります。探究的な学びの分類をはじめとして、様々な関連資料が掲載されていますので、ぜひ御参照いただければと考えています。
 事務局からは以上でございます。
【貞広主査】  ありがとうございました。
 では続きまして、田村主任視学官と、関西大学の黒上教授より御発表いただきます。お1人目に御発表いただく田村主任視学官は、日本生活科・総合的学習教育学会の会長を務められるなど、総合的な学習の時間の在り方について御研究を重ねられています。2番目に御発表いただきます黒上教授におかれましても、情報技術との関わりも含めて、探究的な学習過程等について研究を重ねていらっしゃいます。
 では、まず田村主任視学官よりお願いいたします。
【田村主任視学官】  主任視学官の田村です。総合的な学習の時間の担当調査官の経験や、学会あるいは大学での研究の成果などを踏まえながら、探究の中心を担う総合的な学習の時間の変遷とその質的な転換について、時間の経過に沿って発表させていただきます。
 学習指導要領は、御覧いただいたとおり、およそ10年に1回の改訂が行われ、総合的な学習の時間は、平成10年の学習指導要領において位置づけられたものです。平成10年の改訂、15年の一部改正、20年、29年に改訂がありました。その時々の時間数が右の表になります。
 平成10年に、総合的な学習の時間が創設されます。中学校の時間数が波線になっているのは、選択教科との組合せによるものです。15年に一部が改正され、20年には時間数が縮減されます。このときには、総合的な学習の時間から外国語活動が外れ、総合的な学習の時間が、ある意味、探究として純度を高めていった時期と考えることもできます。高等学校は単位数で示されるようになります。29年が現在の学習指導要領ということになります。
 それでは、平成10年の学習指導要領の改訂から順番に見ていきましょう。当時の中央教育審議会において、一定のまとまった時間を設けて、横断的・総合的な指導を行うこと。そこでは、特色ある教育活動を行うこととして、総合的な学習の時間が、小学校の3年生から高等学校の3年生までにおいて創設されました。問題解決をする資質・能力を育成するとともに、自己の生き方・在り方を考える時間として創設され、国際理解、情報、環境、福祉、健康などの課題も提示されたところです。
 この時期の総合的な学習の時間では、「地域のことを学ぶ。自分で考えて、自分で決めて、自分で行動する時間」、「考える時間。意見を出し合うので互いに分かり合えて、みんなのよさに気づく」など、小学校の子供たちにはとても好評でした。
 中学校においても、生き生きとした実践が始まる中で、「答えのない問題について考える時間。だから面白い」、「自分で取り組む学習。みんなで話し合ったり、調べたりする学習は楽しい」などと受け止める子供が出てきました。導入当時、子供たちには、好き、楽しいと、好意的に受け止められていたようです。
 その後、平成15年に一部改正が行われます。これは、教育的な効果が十分に上がっていない取組が見られるなど、学校間あるいは学校種間の格差が問題として浮き彫りになってきたからです。そこで、学習指導要領の記述を見直し、趣旨の一層の明確化を目指そうと、一部改正したわけです。当時、総合が好きと子供たちは答え、保護者も評価する一方で、指導する教員の中には、学力低下など、総合的な学習の時間に対する否定的な声もあり、一定数の教員が、総合的な学習の時間の存在やその指導に不安を抱えていたようにも思います。
 そんな中、20年の改訂を迎えます。このとき時間数は縮減されますけれども、総合的な学習の時間が、探究的な学習をすることとして、はっきりしていきます。また、学習指導要領では、初めて、総合的な学習の時間の目標や内容は各学校で定めると明示され、学校独自の編成の方向性も明らかになっていきます。中教審の答申でも、各教科における習得や活用と総合的な学習の時間を中心とした探究と記述されるなど、探究的な学習を行うことが示され、現在の学習指導要領を先取りする形で、資質・能力の育成を担う時間であることが明確になります。探究についても、探究のプロセスを示し、実際の社会で活用できる汎用的能力を育成する時間であること、各学校の自律的なカリキュラム編成に向かうものであることが明示されます。
 これが、探究のイメージを明確にした探究のプロセスです。課題の設定、情報の収集、整理・分析、まとめ・表現とすることで、単なる、調べて書き写すコピペのような実践から、思考を伴う情報の整理と分析が行われる実践へと変容し始めます。また、このプロセスを二重、三重と繰り返す中で、課題の質が高まり、子供の対象に対する認識も深まりが出る。そんな実践が各地で生まれ始めています。
 ちなみに、探究のプロセスは、PISAの読解のプロセスを参考にしています。国際標準の学力の育成に直結するものであることも大切なポイントと言えると思います。日常の暮らしや生活など、身の回りの問題状況から、解決すべき課題を設定し、実体験も含めた様々な手法で情報を収集し、その情報を整理したり分析したりして思考を巡らせ、自らの考えとしてまとめたり発表したりする活動が着実に広がり始めてきました。
 探究という総合的な学習の時間が目指す方向性を明確にし、優れた実践が生まれてくる中で、保護者の意識を朝日新聞とベネッセ教育研究開発センターが調査した結果です。データによると、実際の社会で活用できる能力の育成など、総合的な学習の時間に期待する保護者が増えていることが分かります。
 子供たちについても、学力・学習状況調査において、平成25年から、総合的な学習の時間では探究のプロセスに取り組んでいるかを質問項目に入れました。その結果、国語・算数の結果ときれいに相関が出ることが分かりました。この当時は、A問題という習得問題とB問題という活用問題がありましたが、活用問題に大きな傾向が見られ、日本全国の多くの都道府県で同様の結果が出たわけです。このことは現在まで同様の結果であることは、先ほどの事務局提案の資料のとおりです。
 こうした状況について、OECDのシュライヒャー局長は、「日本の学力向上は総合的な学習の時間の成果だと考えると説明がつく。シンガポールや上海では、総合のような探究的学習を日本以上に優先してやっている」とコメントしています。
 そうした中、現在の学習指導要領への改訂が行われたわけです。課題を踏まえながら、総則においても、総合的な学習の時間について示すことが行われ、高等学校においては「総合的な探究の時間」と名称が変更されました。このときの学習指導要領では、コンピューター等を活用して情報を収集・整理・発信する学習活動についても記されています。
 総則は1、2、3と進んでいきますが、その本丸、総則第2の1では、学校の教育目標と教育課程の編成について記されています。そこには、その際、総合的な学習の時間と関連を図るといったことが明確に示されているわけです。
 これは高等学校のグランドデザインですけれども、御覧いただいて分かるとおり、真ん中に総合的な探究の時間を位置づけ、各学校が編成する教育課程の中核を担っていることが分かります。今ほど紹介したとおり、高等学校の総合については、「総合的な探究の時間」と、このとき名称が変更されました。これは、小学校や中学校以上により高度で自律的な探究が実現されることを願ったものです。この名称変更によって、高等学校の実践が大きく変わり始めたことを実感しました。そうした中、高等学校の総合的な探究の時間の全体計画も整備され始め、実践の質的な向上に寄与してきたと考えています。
 結果的には、探究的で協働的な学びの姿が各地の学校に見られるようになってきているかと思います。それは、総合的な学習の時間や総合的な探究の時間のみならず、各教科にも広がってきているように思います。加えて、各教科の資質・能力が活用・発揮される横断的で学際的な学びの姿も、徐々にではありますが広がり始めていると考えています。
 この総合的な学習の時間の学習活動は、現代社会の諸課題を扱うことになりますので、教科横断的な学びが生まれることから、SDGsあるいはSTEAM教育とも深く関わる実践が生まれています。また、地域活性化・地方創生につながる取組も全国各地で行われてきています。そうした中、一人一人の子供が地域や社会の課題解決に自ら取り組んだり、様々な人との関わりを通して豊かな学びを実現したりし始めています。その結果、自らの将来に夢を描く子供、未来社会を創造する主体としての自覚が生まれ始めています。この探究の質を高め、よりパワフルなものにすることは、極めて重要であると考えます。
 その1つのアイデアとして、デジタル学習基盤の積極的な利活用が考えられます。ここに示したのは私の私案ではありますが、その価値や強み、探究のプロセスにおける学習活動イメージを記してみました。
 最後になります。探究を担ってきた総合的な学習の時間に期待することとして、4つ記しました。これまでの経緯と質的転換を踏まえるならば、教育課程の中核として、そして各学校固有の総合を生み出していくことが重要ではないかと考えます。その上で、各学校種で目指す姿などの系統性を整えること、あるいは各教科等との関連を確かに実現することなどを考えてはどうかと思います。
 以上で終わります。ありがとうございました。
【貞広主査】  ありがとうございました。
 では、続きまして黒上先生、お願いいたします。
【関西大学(黒上)】  おはようございます。関西大学の黒上です。
 先にちょっと現状認識を。今までいろいろ伺ってきたことは、僕自身の現状認識とも重なるところがたくさんあるなと思います。現行指導要領に変わって以来、高等学校でも総合的な学習というのは随分活発に行われるようになったなと感じています。それから、小学校は教師主導の学級総合というのが基本ですが、部分的に1人1課題の総合的な学習というのが動き始めたなという感じもあります。そのよしあしはいろいろあると思います。けれども、総合の目標の中に、小・中では「生き方」で、高校では「生き方・在り方」という文言があって、そこまでつなげる自分ごとになった深い実践というのがどこまでできているかは問題があるなと思っていて、そういう意味で、総合だけ充実できるかという話とか、そのときにどんな道具立てを使ったらよいかという話が議論になってくるのかなと思っています。
 方向性としては、今日2つの話をしたいと思いますけれども、1つは教科と総合のつながりをどうやって強くするかということです。それから、情報活用能力との一体的な充実をどう図るかということです。
 総合的な学習/探究におけるとても重要なポイントは、学習の主体が子供に、学習者になるということです。これは昔から教育のユートピアとしてあったわけですけれども、実際にそういうことが起こるように、それを文化にしていくべきだというイメージを持っています。これは、単なる「主体性という態度」ではなくて、「活動」としてそれが起こるという形にしたいわけです。つまり主体的な学びというのは、一人一人が自分なりの見方を持って、自分の考えをつくって説明し、その状況をメタ認知して自己調整することです。そのためにエージェンシーがとても大事になってきます。エージェンシーというのは、自己実現のイメージを持って、いろいろなことを自分で決めて、自分自身を方向づけるというような意味を持っているかと思います。その中で、対話的な学びとも関係がありますけれども、1人で学習するのではなくて、いろいろな人との関係を意識して、一緒に考えをつくったり、一緒に考えを変えていったりするというようなことが求められるのだろうと思います。それは、教師主導の学習では無理で、やはり子供が主語になる場面が絶対必要です。そのためには、総合的な学習の時間が大事な場面であるし、あるいは前回、随分議論されました教科におけるアクティブラーニングもとても大事かと思います。この辺が、4月25日に示された、学びに向かう力のイメージのど真ん中にある「学びの主体的な調整」と非常に関係が深くあるのかなと思っています。
 日本の総合的な学習の状況というのをいろいろな国と比較してみました。国を比較するといっても、国の中でも学校によって違ったりもするし、日本の中でももちろん違いますが、日本では、全校種で総合的な学習/探究がしっかり位置づけられていて、しかも評価が高校も含めて行われているということはとても大事で、その中で、先ほど田村先生の話にあった高度化というようなイメージで、系統性も、建て付けとしては意識されていています。それから指導要領がしっかりつくられているということもありますよね。その辺が、OECDのカリキュラムの(リ)デザイン原則、先ほども提示がありましたけど、それと関連してきていて、教科横断性とか真正なカリキュラムあるいは生徒エージェンシー、協働エージェンシーを認めるカリキュラムになっているという点で、かなりいい線を行っているのだろうと思います。だから、これをいかに「実質的に」充実させるかが重要だということです。
 そのときに、これも先ほど提示がありましたけれども、探究にはレベルがあると言われていることを認識したいと思います。もともとすべて決まっていて、先生の手中で探究を進めていくものから、徐々に児童生徒が探究を進めていくものにレベルが変わっていくという4段階があるということですよね。イメージとしては、小学校のうちは、いろいろなことがあらかじめ決まっていて、子供たちはその中で、探究とはどういうものかとか、探究のよさとはどんな感じかとか、具体的にどうやったら探究できるのかということを学んでいき、それを徐々に自分たちで回すようになって、高等学校に行くと、全てを自分のコントロール下で自己調整しながら探究していくというイメージということです。問題は、それが実際にはどういうふうにできるのかということです。
 その話は指導要領にも、総合の解説の中に書いてあります。よく使われる探究のプロセスですけれども、この主体は学習者となってるのですけれども、意外にそうなっていない。そうなっていない理由の一つは、特に高等学校の探究に関しては、先生方がどうやっていいか分からないけど、やらないといけないという中で、いろいろなマニュアル本が出てきて、そこに書いてあるとおりに調べて、中間発表をして、最終発表に至ったら、探究したことになるし、そこそこの成果も上がるというような形で進めている。探究をやっているのだけど、何となくレールが引いてある。あるいは、探究の全国コンテストが随分できましたけど、それが年内入試を目的にしていて、かなり指導が入りパターン化されているということもあって、実は、本当に自分たちで探究を回しているかという疑問があります。一見、探究を回しながら、回し方についてしっかり学んでいるかということについて、若干疑問があるといったことです。
 これをどういうふうに打開していくかということなのですけど、1つは教科との連携です。探究のトピックと教科を結びつけるときに、既にある教科の内容と連携しようとするのですけど、むしろ見方・考え方レベルでリンケージを考えると、いろいろな先生が多様な形で参加できて、それが探究の質保証、学習の質保証になっていくのではないかなということで、こんな図をいろいろな学校で書いてもらったりしています。
 探究と教科に関しては、当然、互恵関係があるわけで、それは探究の複雑な学習事項を理解するためには教科の学習内容が必要で、逆に教科の学習内容の意味づけになる形で探究学習が絡んでくる。探究が単なる経験から深い理解にレベルアップしていき、教科の学習も、記憶からオーセンティックな学習になっていくということです。これがうまく回っていくという想定をしなければいけないということかと思っています。
 一方で、探究と教科は連携するばかりかというと、探究独自の学習事項というものがあって、それは探究のプロセス知識とかスキルだと思っています。そのためにこういう資料を出してみたんですけど(探究マップ)、これは、探究をどういうふうに進めるかには、いろいろある。例えばアンケートをしてきたら、その文字情報をカテゴライズして集計すると量の情報に変わって、量になったら表ができたりグラフができたりして、傾向が読めるようになる。そういうことを小学校3年生から高校まで、中学校までかな、具体的な形で学んでそれを、高等学校の探究で発揮するという流れをつくっていくことが大事かと思っています。もちろん、全てのルートの詳細を学ぶ必要はないと思いますが、自分のトピックに関連することを学ぶことは重要だと思います。
 それから、探究と情報の関連ですけれども、探究のプロセスには4つのプロセスがありますが、振り返ってさらに課題を発展させるということを5つ目として置いてあります。この5つのどのプロセスにおいても、情報が非常に重要な役割を持っています。田村先生の「私見」よりは若干簡単に項目化したものを一応スライドに載せてあります。いずれにせよ、探究の全てのプロセスで情報機器があることによってレベルが上がるということです。
 これに関する文献を載せていますけれども、これは374編から(ちょっと数が少ないですけど)25編を絞り込んで、いわゆるメタ分析したもので、結論部分だけ翻訳してみました。ここでも同じことが言われています。つまり、探究の各プロセスにおいて、情報技術、テクノロジーが役に立つとまとめています。
 皆さんお感じのように、総合的な学習/探究と、情報活用能力には親和性があって、総合的な学習の中で子供たちが考えていくための技法を自覚的に運用する場面がある。それと、情報活用能力に関しては、練習して覚えるというのではなくて、実社会の文脈の中で自然に発揮する場面があって、それがうまく回っていくことで探究のレベルが上がるし、それから情報活用能力の習得の実現可能性も上がってくるということです。そして、子供を主語にした総合的な学習/探究の時間にあっては、自律的で主体的な学習場面が生まれますし、いろいろな情報活用場面も当然あるわけです。そして協働的に情報をやり取りする学習場面もあって、それからオーセンティックな評価をもらう場面というのもあるというようなことですね。これらが全部、情報機器あるいは情報活用能力を介してレベルが上がっていくというイメージを持つことが大事かなと思っています。
 One-to-one端末について言えば、1年生の生活科から、いろいろな体験をベースにして、写真を撮ったり、共有したり、学習の記録写真を見て振り返ったりするというような場面が、ふんだんにあるわけですけれども、それらを通して基礎的なデジタル学習スキルを身につけていくことによって、中学年以降の学習における情報活用がうまくいくと考えられます。今日は総合と情報の話ですけれども、実は生活科から情報機器に慣れ親しんでいくということが始まるのだろうと思っています。
 最後、次の指導要領改訂に向けての期待ですけど、若干、総合の話を超えて話をすると、もちろん教科も含めて探究の確実な実施を期待するのですが、そこに関しては、自己調整をより意識する必要はあるかなと思っています。それから、探究のスキルの育成も同時に意識していただくこと、つまり探究をただ活動ベースで一生懸命やればいいということではなくて、一生懸命やりながら、自分たちは何をやっているかということを俯瞰的に見ていくということも重要です。それから、各教科の見方・考え方との統合も意識しつつ、それによって、全教員が専門性を生かした探究の窓口になり、学年が上がるにつれてレベルも上がるようにしたい。高等学校に上がっていくに従って、個人的関心から現代社会の問題を扱いつつ、それが自分ごとになって、生き方・在り方につながっていくという建て付けにしたい。それで、そのことに関して、情報活用能力の発揮が、探究のプロセスをよりよく遂行していくために不可欠だということを認識したいです。情報活用のスキルトレーニングは当然必要なのですけど、徐々にそれを概念に変えていくということですね。例えばコピーペーストは具体的なやり方として覚える必要がありますが、それがどういうことをやっていることかが腹に落ちることが大事です。この概念化が、様々な情報活用のスキルに関して起こってほしいし、それらが習得から発揮につながっていく場面をうまくデザインしていくということも大事だということです。
 それから、探究の扱いは、大学では徐々に入試と関係してきていますけれども、高等学校でもそういうこと、(これは教育課程審議会と関係ないかも分からないですけど)に向けた方向性も考えてもいいかなと思っています。
 それから、もう一つ、探究を教科とリンケージしてレベルを上げると言いましたけれども、教科のほうも探究的な見方・考え方を大事にしつつ、教科学習の重心も少し探究系に移動していくということも考える必要があるかなと思っています。
 以上でございます。
【貞広主査】  ありがとうございました。
 続きまして、2つの学校より、質の高い探究に向けた授業づくりの実践について御発表いただきます。
 まず、新潟市立新潟小学校より御発表をお願いいたします。
【新潟市立新潟小学校(小川)】  新潟市立新潟小学校の小川でございます。私からは、「小学校における探究的な学びの更なる充実に向けて」、副題「デジタル活用の観点から」という題でお話をさせていただきます。
 本日お話しする内容は、現在、私が勤務する新潟小学校での取組となります。発表内容はこのような流れとなっております。
 早速、まずは総合の授業の様子について紹介させていただきたいと思います。本校の4年生がお菓子屋さんの力を借りて、地域のよさを伝える商品の開発をしました。購入者のアンケートを分析すると肯定的な感想が多く、地域の魅力も伝わって大成功という手応えを得ていました。では、みんなの活動は大成功だねと、話合いがまとまりかけたそのとき、ある子が、「少し気になるアンケートがあるんです」と語り始めました。そのアンケートには、「欲を言えば、これからもこういうまちを元気づける活動が続くといい」と書かれていました。この子は、もしかすると私たちの活動はイベント的で一時的な効果しかなかったのではないかという問題提起をしました。
 続けて別の子が、こう話します。「僕も店主さんから頂いたメールで気になることがあるんです。そのメールには、『正直に申しますと、「古町スイーツ」のイベントが終わると日常に戻ってしまう。「古町スイーツ」だけではなく、地域が結びつき、協力し合うことが活動につながる』とつづられています。」その子は続けて、「僕たちの総合はその場限りのイベントで終わってしまったのかもしれない。本当にまちを活気づけることができたのか、不安になってきてしまいました」と話しました。
 こうした発言を引き受け、この女の子が、イベントには限界があるから、1時間でいいからまずは活気について話してみたいと、議論を方向づけ、焦点化していきます。ここで少し時間を取って、考えを一人一人がiPadに打ち込み、頭を整理した上で、活気があるとはどういうことなのか、少人数で話し合うことにしました。外から人が来るだけでは活気につながらない。住んでいる人たちがこのまちを大切に思うことや、来た人たちがつながり合うことが大切なのではないかと、議論を深めていきました。
 子供の本音から、まちの活気という概念そのものを問い直す契機とすることは、総合の学びにおいて極めて重要な意義を持つと感じています。外部からの人の流入を意味する交流人口の枠を超え、まちに住む人や訪れる人がつながり合う関係人口へと概念が拡張された時間であったと考えています。この後、子供たちは、人と人とのつながりをつくり合う活動へと、かじを切っていきました。
 こちらは子供の振り返りの一部です。「すぐには結果は出ないから、今回のような『古町スイーツ』などの活動を続けて、これからも古町のことを大切に思って、このような活動をしていきたい」。「やっぱり、すぐには結果は出ないけれど、古町を活気づけることができたから、この活動は大大大成功したと思いました」。このように、お示ししたような深い学びの瞬間を授業で子供たちとともにつくり出せることは、彼らのこれからの生き方にさえ影響を与える可能性を秘めていると感じています。
 ここまで総合における子供の育ちについてお話しいたしましたが、改めて確認すると、この探究のプロセスを質的に高め、資質・能力を育成する。総合で言えば、概念の形成、そして自己の生き方を考えていくことを目指しているわけですが、今日の議論の中心であるデジタルを活用することによって、探究的な学習の過程をより一層、質的に高めることができると実感しています。
 ここからは、先ほど御紹介した地域のお菓子作りの実践において、具体的にどのようにデジタルを活用していたのか、探究の4つのプロセスに分けて御説明させていただきます。
 まず「課題の設定」においては、直接体験で感じていた、何だか人通りが少ないなという違和感を基に、ウェブ検索を行い、デジタルデータを収集する。感覚がデータによって裏づけされ、確かな実感となっていきました。また、アプリやウェブページで同時点の過去と現在を比較することで、より鮮明に問題状況を捉えることができるようになりました。
 次の「情報の収集」においては、お世話になるお菓子屋さんのおいしさの秘密を探るために、お菓子そのものの画像データ、製造工程や店主へのインタビュー動画、店主のこだわりを記録したテキストをデジタルで記録しました。これらの情報を一人一人が必要に応じて引き出し、組み合わせ、おいしさの秘密を根拠を持って明らかにしていきました。また、QRコードを用いることで、より広く、より多くの方々へのアンケート調査が可能となります。データを図表に変換したり、テキストマイニングを行ったりすることで、分析の手助けとすることができました。
 また、「整理・分析」においては、デジタルで考えるための技法を活用することで、効果的な思考ツールを自由に選択したり、何度も修正・見直ししたりすることが可能になりました。また、共同編集の機能によって、複数人で操作したり、瞬時に友達の考えを参照し、取り入れたりすることができるようになりました。さらに、授業ではクラス全体で拡散的に意見を出し合った後、板書データに一人一人が、「お」、「す」、「し」ということで、「お」は「多い」、「す」は「すごい」、「し」は「質問したい」ということを書き込み、話合いをメタ認知する。そして、加工した画像データを共有し、質問したいことを中心に相互交流を行い、論点を焦点化していきます。この活用法については、主に協働の場面で認知のずれを子供たち自身の手で明らかにし、議論を焦点化し、概念化を図る手だてとして、確かな手応えを感じています。
 「まとめ・表現」においては、デジタルによって一人一人の思いや願いを形にできるようになり、その子らしい表現が可能になりました。また、共同編集や見直しも簡単に行うことができ、より実社会に通用する成果物を作ることができるようになりました。
 私が冒頭で紹介した話合いの場面をインプットとアウトプットという視点で整理してみたものですが、丸1、アンケート分析、丸2、成果と課題についての対話、丸3、振り返りの入力、丸4、他者参照しながらの対話、丸5、自己課題の書き出しというように、デジタルを授業の中で活用することによって、何度もインプットとアウトプットを繰り返しながら、学習対象への認識を確かに深めることができるという可能性を感じています。
 ここまで一気にお話ししてきましたが、探究におけるデジタルの活用について1枚にまとめたものがこの図となります。
 ここからは、これからの探究活動におけるデジタル活用の可能性についてお話をさせていただきたいと思います。今年度、私は6年生とともに個人探究に取り組んでいます。この個人探究では、一人一人が自律的に学べる環境を整えることが大きな課題の一つとなっています。そこで、新潟小学校では、子供たちの学びを支えるためにデジタル学習シートを作成し、試行錯誤を重ねながら改善を加え、活用しています。活用の仕方としては、子供たちは必要に応じて個々の端末からこの学習シートにアクセスし、入力・閲覧しながら学習を進めています。このシートの特徴としては、赤色のセルで探究における学びのプロセスを自覚し、青色のセルでは、授業の見通し・自己選択ができるようにしています。また、黄色のセルでは、成果物をリアルタイムに共有することで、友達の学び方のプロセスを参考にしたり、成果物を見たりしながら学び進めていくことができます。紫色の振り返りのセルでは、知識と手続を自覚できるように項目をつくっています。さらに下のタブでは、子供たちが必要に応じて立ち戻り、学びの手引きを参照できるようにしています。また、このデジタル学習シートはいつでもどこでもアクセスが可能なため、子供たちは、教室に限らず家庭でも学びを継続することが期待されます。
 最後に、今後の学習指導要領に期待することとして、2点お話をさせていただきたいと思います。
 1点目は、総合における課題と支援についてですが、課題は総合の指導計画の立案を含め、相応の準備と労力が必要となることや、「発表のための学習」や「調べることが目的となる学習」になりやすいことが挙げられます。このような課題を踏まえ、課題の設定や指導計画づくりにおける足場となる支援の整備が必要ではないかと考えています。
 2点目は、情報に関する課題と支援についてです。こちらについては、現状、具体的にどのように指導するかが明確でないことが課題として挙げられます。情報活用能力は探究的な学びと一体性を持って育めるとよいと考えていますが、どの学年でどのように指導していくとよいかを学校によって分かりやすく示す必要があると考えています。誰でも指導可能となるように、具体的な支援の充実が求められると考えます。
 以上で私の発表を終わります。ありがとうございました。
【貞広主査】  ありがとうございました。
 続きまして、山梨県立笛吹高等学校より御発表をお願いいたします。
【山梨県立笛吹高等学校(廣瀬)】  よろしくお願いいたします。笛吹高等学校の廣瀬志保です。よろしくお願いいたします。
(動画上映)
【山梨県立笛吹高等学校(廣瀬)】  探究をしての生徒の感想です。
 本校は、石和温泉で知られる笛吹市にある、普通科2クラス、食品化学科、果樹園芸科、各1クラス、総合学科3クラスの、生徒数約650名の総合制高校です。多様な生徒が集まって、多様な進路選択をする高校でもあります。カリキュラムの特徴としては、「探究を軸に各教科が横断的につながり課題発見・解決型で、生徒の主体性を伸ばし、各学科の特徴を生かした進路実現をする」です。
 現在、研究開発学校として、学校設定科目、教科横断STEAM型の笛吹グローカルで、総合的な探究の時間・情報・理科、7単位を代替しており、地域課題を題材に探究のサイクルを繰り返す中で自律的に探究ができる生徒を育てることを目標としております。
 初めのうちは、「何でこんな授業をするの? 意味分かんない」などと言う生徒もおります。ですから、流れとしましては、まずは探究サイクルを1回経験して、地域の皆さんからも個別にいろいろ聞いて、やっと、自分の興味は何だろう、どこに関心が向くのだろうというところが見えてきます。個人の興味・関心を、対話を通して揺さぶりながら探し出すようなプロセスを仕掛けつつ、最初はグループで、最後に個人で探究させてみるという流れです。自分で考え、行動し、主体的に探究を進め、だんだん自分がやりたいことも明らかになってきますし、地域と関わっている間に、地域の方からの声かけなどによって自己肯定感も高まり、さらに頑張れるようになってくるので、自分ができることとか、したいことが見えてくるわけです。
 スタート時に求める資質・能力のルーブリックを示します。
 初めはミニ探究です。本県は全県1区のため、中学校によっても、探究学習の進め方、情報教育に差があります。生徒個人の差はかなり大きくなっています。まずは基本的な探究サイクルの体験や情報機器の利用、情報リテラシー、発表やレポートの書き方などを身に付けるミニ探究を行って、3年間の土台づくりをいたします。1年生後半は、地域課題をテーマに課題解決を行います。探究ワークショップに地域の方を招聘して、17の分野から3つを選び、興味ある分野の実際を知り、自身の興味・関心を明確にしていきます。それぞれ、現状、課題などを話していただき、実験、質疑応答などを行います。その後、自分の体験した分野の内容について、地域の方の思い、自身の感想や考えたことを発表し、気づきや学びを、ほかの講座を受けた生徒同士でシェアします。シェアすることは、新たな分野についても視野を広げるという意味があります。その後、各自でテーマを決め、似ている分野の生徒がグループとなり、2回目の探究サイクルを経験します。
 情報活用能力については、探究プロセスごとに学んでおります。ICT機器での情報収集や発表資料の作成、メディアの特徴を生かしたプレゼンなどを何度も行います。自己の課題に沿っているからか、生徒の集中力や習得する意識が高く、効果的な学びができていると考えております。
 学年の最後には、探究発表会、他県や海外との交流の場でもある高校生世界農業遺産サミットを行い、生徒全員が発表し合います。学校運営協議会での熟議やその仲立もあり、地域の方には生徒の活動に継続的に関わっていただき、教員も探究に関する校内研修をして実践を進めております。
 2年生は3回目の探究サイクルとなります。1年生の課題を深める生徒、新たな興味関心で課題を設定する生徒もおります。生成AI利用の授業も組み込み、生きて働く技能を身に付けます。また、生徒同士、教員、地域の方との対話を重視し、「なぜ」、「どうして」と問うことを繰り返し、毎回の振り返りの蓄積をしていきます。
 毎回の授業は週1回、探究カリキュラムを作成する研究開発係と管理職が打合せをし、指導案をつくり、各学年の授業担当者に周知していきます。
 3年生は、これまでその都度振り返りをしてきたことと、自分のテーマが世界課題とどのように関連しているのかを考えつつ、3年間の自分の実践をまとめ、考えや意識の変化について文章化して、個人探究となります。
 具体的な取組は以下のとおりです。例えば歴史が好きで集まったグループは、鎌倉街道による笛吹市への影響から始め、歴史と自然を結んで観光の活性化にたどり着きました。
 地域の果樹が食害に遭っているという、こちらは困り事から、トレイルカメラを設置して現状調査をし、撮影された生物と個体数を分析しました。撮影できているカメラの設置場所から、どこに柵を設置すればよいかを明らかにしております。野生生物の生活を知り、共存が可能かどうかを考えているところです。
 こちらは、姉が支援学校でパラスポーツを体験して、世代や障害を超えてできるスポーツを広めたいという動機から、現状調査、分析後、児童館での体験会を行い、県内で3回の発表、県外でも静岡・新潟に出向いて活動を伝え、県外のボッチャ普及員さんにも話を聞き、今年度はお年寄りとの体験会を開き、県外の学校とも共同でイベントを開く計画をしているグループです。
 こちらは、少子高齢化ということで、人口400人の地域の買物難民を救おうと買物カーを出して野菜の販売をしました。しかし、地域の住民は買物には困っておらず、直売所に若者が来てくれることを望んでいました。若者への販売促進に取り組むということにつながったグループです。
 どれも社会に出て実践してみると、自分たちが思っていたことと大きく違っていることもあり、それらの経験を積むことによって、社会参画の大切さや、やりがいが生まれるところに価値があると感じております。例えば、初めに登場した女子生徒は、1年目に子供の遊び場の減少を知り、遊び場づくりをしました。その過程で、公園の遊具減少は高齢化とも関係があることを知り、高齢者と子育て世代の絆を強め、一緒に活動できる場所を模索しました。高校生のできることとしては限られているので、もっと多くの人に考えてほしいと、市議会で議員に提案し、社会参画の方向に進んでいきました。興味・関心の方向が変化した生徒の例です。
 授業の延長線として、探究プロジェクトや中学校との連携授業で高校生がメンターとなる取組、県外の高校との探究発表会での交流や共同探究もできるようになりました。自分のしている学びが社会に接続していると実感し、学ぶって面白いと思い、それが日頃の教科の学び方を変え、何事にも身が入り、さらに学びを通じて自分の生き方を考えることにつながりました。生徒の気づきの記述の中には、接した方々の考え方や思いに心を打たれ、また信念や情熱の大きさに心が奪われたとか、時には注意も受けたり叱咤激励され反省したこと、自分たちの探究に期待し感謝してもらった、その言葉が印象に残り、次のステージへのモチベーションになっている生徒が多くおりました。生徒の育ちとともに、校長としては、探究の伴走をする教員の変容も非常にうれしく思っているところであります。
 今後の議論に向けて、期待することを2点申し上げます。
 1点目は中学校との円滑な接続についてです。小中高と連続して児童生徒がより豊かな学びを実現するためには、中学校と高等学校の円滑な接続が求められます。義務教育において情報を基盤とした探究活動が充実し、場面に応じて情報を活用する力が身に付くことで、高校段階より高度で自律的な探究活動が可能になるのではないかと考えます。
 2点目は、本校は現在、研究開発学校として、総合的な探究の時間・情報・理科を組み合わせ、学校設定科目として探究を充実していますが、このような取組が学校の判断でより柔軟に実施できるようにすることも検討できないでしょうか。多様な生徒に合わせたカリキュラムの実施や学校づくりの特色づくりができるのではないかと考えております。
 私からの発表は以上になります。
【貞広主査】  どうもありがとうございました。
 それでは、質疑応答、意見交換の時間に先立ちまして、5分ほど休憩を取ります。細かく刻んで恐縮ですけれども、47分まで休憩とさせていただきます。よろしくお願いいたします。
( 休憩 )
【貞広主査】  それでは、議事を再開いたし、質疑応答、意見交換の時間といたします。御質問や御意見のある方は、会場の方も含めてZoomの挙手ボタンを押していただければと思います。私のほうから指名させていただきます。また、毎回大変恐縮ですけれども、皆様に御発言いただきたいということで、お一方の御発言はマックスで3分以内ということでお願いしたいと思います。
 では、順次御指名申し上げますが、まず今回、参考資料、資料の提出を頂いた方から御指名させていただきたいと思います。
 まず、参考資料1-4、こちらはお名前がないのですけれども、神野委員が出してくださっているということですので神野委員、そして続けて、参考資料1-3を出してくださっている奈須委員の順番で御発言をお願いいたします。
【神野委員】  では、よろしくお願いします。
今回も非常にたくさんの論点をありがとうございました。最初に、資料1-1でお話しいただきました点について、まず8ページ目です。人間の能力とジェネレーティブAIの能力というところで分けていただいたところがあると思うのですけれども、この部分をより具体に話し合っていく必要があるのではないかというところで、今日の資料を1つ、お持ちしております。
 まず1ページ目、「AI Competency」と書いてありますけれども、こちらはユネスコが、生徒向け、また教師向けに、AIというものに対してどのような考え方をしていかなければいけないのか、またAIというものと我々人間が共存していく中において、どのようなコンピテンシーが必要なのかということがまとめられている資料になります。
 AI時代に生徒が安全かつ有意義にAIと関われるよう、人間中心のマインドセットでありつつ、AIの倫理、AIの技術と応用、AIのシステム設計の4分野で、12のコンピテンシーというのは右下にあるものですけれども、そのような表を提起しながら、その理解、応用、創造というような形で、ルーブリック形式にまとめられているものになります。
 さらにもう一枚、次の資料に行っていただきますと、今度はOECDです。OECDはAIリテラシーという名前で言っているのですが、フレームワークを提示しておりまして、その中において、1つすごく重大なこととしては、2029年のPISAにおいてAIリテラシーの評価ということをしていくような示唆も、この中に盛り込まれています。そして、また各教科の中においてもAIリテラシーということを伝えていくために、例えば数学において言えば、統計と確率の学習について、どのようにデータモデルが動いているのかということに関して理解するために、統計や確率の学習とひもづけながらやっていくですとか、あとは歴史や社会科学も、情報源の妥当性について、AI技術の社会的・倫理的影響について議論しつつ、授業を充実させながらやっていくというような形で、このAIリテラシーを育むために、教科がどのようにつながっていくのかなどというところを提言しています。
 最後のページになりますが、その中で私自身が思っていることとして、皆さんに対して問題提起させていただきたく思います。まず前提として、AIには責任を取る力がないということを、ちゃんと子供たちも人間も理解した上で、意思決定の最終的な責任は人間にあるということの自覚を育てつつ、他方でAIをどう活用するかについては、従来のICTツールとは異なる向き合い方をすべきであると思っています。従来のICTツールに関しては、指示すれば実行してくれるというようなものでありましたけれども、AIというものを考えると、先ほど探究のところにもありましたが、様々な思考のフレームワーク、例えばPDCAもそうですし、デザイン思考もそうです。プロジェクトや、何か創造するという過程そのもの、思考そのものを、対話的に一緒に考えながら、何を指示するのか。その指示されたことすら実行するのがAIになってくるわけですけれども、そのようなことができてきます。
 2点目に、そのような協働者としてのAIということが必要ですので、1人1台のAIをどのように配備していくのかという議論も必要になってくると思います。
 最後に大前提として、学習指導要領自体の改訂もそうですが、AIに関する考え方を今後どのように機動的に改定していくのかということも議論すべきなのではないかなと思っております。
【貞広主査】  ありがとうございます。かなりかいつまんで御説明いただきました。感謝申し上げます。では奈須委員、お願いいたします。
【奈須委員】  よろしくお願いいたします。
 私からは、探究、情報活用能力、総合的な学習をめぐって、5点ほど申し上げたいと思います。
 1点目は、情報活用能力等の教科等横断的な汎用的な資質・能力の育成ですが、過去には、問題解決力とか学び方、批判的思考について、一般的な形式的手続として訓練するというアプローチが取られましたが、うまくいきませんでした。むしろ、自在に活用の利く汎用的な能力とするには、子供にとって身近で切実な問題の解決、つまり探究として多様な対象や文脈の中で学ぶとともに、教師の適切な明示的指導の下、得られた豊かな経験を整理・統合し、概念化するということが大事だろうと思います。
 2点目として、探究をめぐる発達的な問いと学校教育の任務です。私たちは探究を、新たなものとして教えると思いがちですけれども、幼児教育における子供の事実は、既に幼児において素朴ではあるものの探究の萌芽と言えるものを持っており、それを活用して暮らしているということが示されているかと思います。小学校以上の学校の任務は、この萌芽を各教科との出会いを通して洗練することであり、より多様な対象や文脈に活用できるよう、汎用性を高めることだと思います。
 3番目として、教育課程における総合的な学習の時間の独自な貢献です。我が国の教育課程には、幼稚園から高校まで全ての段階に総合的な学びが位置づけられています。これらは扱う対象・内容・領域において「横断的・総合的」であること、学びの在り方として「探究的」であることを特質としてきましたけれども、今や探究については各教科でも重視されています。では、総合的な学習は何を独自に貢献するのかということなのですけれども、「実社会・実生活」の中で「横断的・総合的」な対象に対して探究が展開されているということだろうと思います。各教科の探究では、その教科ならではの方法(見方・考え方)を用いることははなから分かっていますけれども、実社会・実生活の探究では、どの方法が妥当かは全く不明瞭で、その場面に適切な方法を選択できる、必要に応じて組み合わせられる、新たに開発するということが望まれます。総合的な見方・考え方における、「各教科等における見方・考え方を総合的に活用して、広範な事象を多様な角度から俯瞰して捉え」という表現は、まさにこのことを述べているのだろうと思います。
 4点目は、総合的な学びの「総合」を支える原理です。学びが総合的になる理由としては、それが「生活」だからなのか、「学際科学」だからなのかという2つに大別できるかと思います。幼稚園から小学校にかけては「生活」でしょうし、中学でも「生活」が基調だと思いますが、次第に「学際科学」的になってくると思います。高校では一層、「学際科学」的でしょう。このような発達的な変化・様相を踏まえて総合的な学びの縦の系統を再検討するとともに、情報活用能力等の汎用的な資質・能力の育成を構想するということが大切だろうと思います。
 最後に、情報活用能力を育成する場です。私としては、事務局提案にあったとおりに、小学校では総合的な学習を中心に、中学校では技術・家庭科の技術分野を中心に、そして高校では情報ということがいいと思いますけれども、1つ、これまで述べられていないことを言いたいと思います。義務教育の在り方ワーキングなどでも指摘のあるとおり、今後の学校には「民主的で公正な社会を実現する場としての学校」という役割が期待されています。このことを考えたときに、「民主的」で「公正」な判断のためには、情報の収集や的確な整理・分析が重要で、情報活用能力こそがこれを大きく左右すると思います。つまり、情報活用能力の感得というのが、民主的であるとか公正であるということの基盤になるということです。これは、中学で言えば技術分野での集中的で体系的な指導とも関わっていて、もちろん、ものづくり教育や技術教育を情報活用能力の高度化と結びついた形で深化することは、職業的にそれらの技術を用いて新たな価値を創造する人にも貢献しますが、市民生活の中で技術の成果を享受し、技術との付き合い方を問われる全ての人をして、自身と社会のよりよい在り方を思考し、判断する確かな足場をもたらすと思います。つまり、その意味でも、これが民主的で公正な社会の実現へとつながるのだろうと思います。
 以上です。
【貞広主査】  ありがとうございます。それでは、オンラインから今井委員、お願いいたします。
【今井委員】  ありがとうございます。
 今日もすばらしいプレゼンテーションをありがとうございました。非常に感銘を受けました。
 1つ、事務局の資料で、発達段階に応じてどういうふうに総合を位置づけていくかというような資料があったかと思うのですが、その中で、幼児期には遊びを通じた学びというのがありました。それが小学校期には無くなって、探究を通じた学びに変わっていくんです。でも、結局、幼児期の遊びを通じた学び、これを私はプレイフル・ラーニングとも言っていますが、これは幼児期で終わるべきものではありません。高校までずっと、プレイフル・ラーニングが続くべきだと思っています。もちろん「プレイフル」の定義というのは、学び手が主体的に楽しいと思う、わくわくする、それがすごく大事だと思うんです。この図だと、幼児期は遊んでいていいけど、小学校からは勉強しなければダメだよというようなメッセージを送ってしまう気がしてしまうのですが、そうではなくて、本来学ぶことは楽しいことであり、それは遊びと同じくらい夢中になれて楽しいものであるべきだと思うのです。幼児期に子どもたちは遊びながらたくさん学びます。でも、それは、小学校に入ったら終わりというわけではなくて、ずっと続くものです。大事なのは、主体的であるためには、学び手がわくわくしながら楽しく学べることです。それで、その場を提供できるポテンシャルがすごく高いのが総合なので、そういうメッセージをお伝えできればなと思います。田村先生が、以前には、探究という概念を取り入れようとしたときに、学力低下のいろんな懸念の声が上がったとおっしゃっていましたが、やっぱり探究の質向上には、各教科との連携がすごく大事だと思います。それは、小学校でも中学校でも高校でもそうで、今日の御発表でもありましたけれども、それによって楽しい探究を真ん中にしながらも、各教科の、これまで何か独立していて、何なのか、すごく抽象的でよく分からないというような算数・数学や理科、そういう教科の理解を深めることにもつながるので、それを社会にもっと理解していただきたいです。探究は問題設定がすごく大事なんですけど、問題設定をするときに、社会的な問題に結構偏りがちな印象です。あるいは生物的な問題とか、そういう1つの狭い問題設定ではなくて、各教科の学びというのを意識しながら連携させて、本当の意味での総合になるようにというようなことを考えていただきたいなと思っています。
 すみません。もう一点だけ言わせてください。情報教育、ICTなのですけれども、今、デジタルが大事ではないと言う方は、まずいらっしゃらないと思うんです。ただ、やっぱりデジタルとアナログというのは、アナログの全てが悪いわけではなくて、デジタルはたくさん情報を収集できるけれども、その分、人間の情報処理がついていけない。だから浅くなってしまうという、スピーディーだけど浅いという認知の側面があります。そこを意識した上で、どういうときにICTを使うべきかという議論だけではなくて、どういうときにはやっぱりアナログでじっくり取り組むべきなのかというようなことも考えていただきたい。そういうのを、現場でいろいろ試行錯誤をしながら使い分けるというようことが大事なのではないかなと思います。
 事務局の資料で、日本はICTの使い方が、欧米各国、OECDの各国に比べて、先生があまり積極的ではなくて、使う度合いが低いというような資料もあったかと思うのですが、逆に言うと私は、日本の先生は、やっぱりここはアナログでいかないといけないよねみたいなことをよく意識されていて、使うべきところとアナログでいったほうがいいところを意識されているから、もしかしたらこういう結果になっているのかなと思うので、ぜひその辺も考えていただきたいなと思います。
 ありがとうございました。
 
【貞広主査】  ありがとうございました。
 では、続きまして堀田委員、お願いいたします。
【堀田主査代理】  堀田でございます。
 今日の回は、デジタルの力でリアルな学びを支えるという、諮問にある文章をまさに具現化する回かなと思います。加えて、デジタルの力をうまく使いこなす情報活用能力が伴うと、リアルな学びを支えるのみならず、深める、あるいは広がるということにつながるのかなと思います。
 少し補足から入りますが、資料1-1の25ページから27ページの私どものデータでございますが、これは探究的な学びに日頃から熱心に取り組んでいる先生方が、子供たちに端末の活用をさせたときに、探究的な学びでよく見られる学習活動が、どの辺りによく効果が出ていますかというものです。次のページにあるように、情報の収集や整理・分析にとりわけ効果があると彼らは思っていると。逆に言えば、課題の設定や、それをどのようにまとめ・表現するかには内的思考が深く関わるので、そっちにうまく時間が振り向けられるということでもあるかと私は思っております。効率化という言葉がちょっと強い言葉になってしまっていますけれども、これは、作業の時間効率がよくなることによって、本来考えるべきところに時間が割けるという意味で使っております。
 これを踏まえて33ページですけれども、学習の基盤となる資質・能力をこのように整理されるということについては、私は賛成でございます。情報活用能力、そこにありますが、情報をうまくどのように扱うかというICTを用いるスキルと、内的思考である言語を使ってどのように考えるかという言語能力とが対になっていて、一方で問題発見・解決というのは、常に学びをそのように見るのだとすることで、あらゆる学びを探究的にするということにつながるのかなと思っております。
 34ページですけれども、これを情報活用能力の整理としてこのように表してございますが、私が前回発表したように、小学校では活用・体験を中心に、そこから気をつけるべきことに気づいていくという、これで言うとピンクから緑に向かっていくような形ですね。一方で中・高はそれに加えて、情報端末、情報技術の特性の理解、青いところですけれども、この知識が適切な取扱いにつながっていくというような、下から上に向かっていくようなことですね。これを総合的な学習の時間との関係で示したのが、35ページや36ページだと理解しました。大変すばらしい、分かりやすいポンチ絵になっておりまして、私は賛成でございます。
 その上で意見を2つ述べます。
 1つは、探究重視の大きな流れの中で、「総合的な学習の時間」という名称を、高校のみならず、小学校も中学校も「総合的な探究の時間」にするということも考え得るのではないかというのが1つの御提案です。
 2つ目は、神野委員のさっきのAIの話ですけれども、私もAIを毎日のように使いますが、共に考えてもらっている相手としてのAIという考え方の理解は大変共感するところです。ただ、このレジュメにありますように、協働者としてのAIという言い回しについては、私どもはこれまで「協働」という言葉を人間との対話を中心に使ってきたということがありますし、またAIを安易に擬人化しないようにするという生成AIのガイドラインのことも考えると、この趣旨、神野先生がおっしゃりたい趣旨をどうやってうまく表現するかということについて、もう少し時間をかけて検討する必要があるかなと思いました。
 以上でございます。
【貞広主査】  ありがとうございます。
 では、この後、しばらくオンラインの委員の方々に御発言いただきます。少し順番を申し上げます。この後、戸ヶ﨑委員、今村委員、前川委員、小見委員、田村委員、石井委員、古賀委員の順番で御指名申し上げます。
 では、まず戸ヶ﨑委員、お願いいたします。
【戸ヶ﨑委員】  言うまでもなく、探究という行為には、情報の収集・選別・活用というプロセスが常に存在しており、これがまさに基盤であると考えます。ここを意識していくことで、探究的な学びと情報活用能力の一体的な育成が可能になると思います。特に小学校では、情報活用能力というこの基盤そのものが、探究の生きた学びをよりよく駆動させていくことにつながっていきます。そういう意味で、事務局の資料の最後のページにおける新たな枠組みは、腹落ちして私も賛同できます。
 また、情報技術の学習が目的化するのではなくて、探究の特質が十二分に発揮されるようにすることが大切です。このことについては、資料7ページに示されたOECDの3原則があります。このページの概念の獲得と応用、これは言うなれば本質であり、次の真正性は本物、そしてエージェンシーは本気であります。これらの3つの「本」を踏まえたものが、探究の本懐だと思っています。
 それぞれについて申し上げると、本質は、補足資料の1ページのように探究を教科等全体の中で捉えて、「教科の学びが活用できる」実感を持って、探究と総合が有機的につながっていくことが望ましいと思っています。つまり探究の中で教科の学びの粒感が見えることであり、こしあんではなく粒あんの学びとすべきだろうと思っています。
 次に本物では、実社会のテーマを扱っていればよいということではなくて、活動という手段が目的化された、きついですけれども、令和の時代の「這い回る経験主義」にならないように注意が必要だと思っています。探究の型の目的化を避けるためにも、探究的な学びの成否は課題設定で決まるのだということを改めて肝に銘じるべきだろうと思っています。
 3点目の本気では、教師が決められたフォーマットの中で強引に進めていってしまうのではなくて、理解したい、解決したい、行動したいという子供たちの「したい」を大切にすることこそが、探究を自分ごととする原動力になるということも銘肝すべきだろうと思います。
 最後に、探究的な学びは、教師の指導力が一層問われる学びであります。国として、小・中の探究的な学びにおいて何が目指されるのか、より解像度の高い姿を、体系性を持った形で示していただきたいと思っています。その上で、時間割編成に柔軟性を持たせることや、働き方改革の推進、そして質の高い教師が質の高い探究に向けて研さんできるための支援策についても、ぜひお示しいただきたいと思います。
 以上です。
【貞広主査】  ありがとうございます。では今村委員、お願いいたします。
【今村委員】  発言させていただきます。端的に発言できるように頑張ります。
 日本の高校の現場において、とにかく課題は、学ぶ意欲自体がなくなってしまいがちであるというところが、10年前も今も同じ現在地かと思います。その中で、前回の改訂において、探究というものをきちっと教育課程に位置づけて、総合探究が始まったということには、とても価値があったと改めて思っていまして、先ほど今井むつみ先生もおっしゃっていた、楽しい探究を真ん中にした高校の学びを実践している事例もたくさん出てきているということを感じています。
 ただ一方で、それは進路多様校とか、例えば先ほどもあった不登校の子供たちの、通信制に通いながら探究を軸にした高校生活を送るような子たちの生活においては、とても意義がある現場もできているかと思うのですけれども、問題はやっぱり進学校のほうで、なかなか進んでいないということ。ここについて、きちっと現在地を共有していく。特に今回、総合探究については、前回の改訂から次の改訂に向けた初めての見直しのタイミングであると思いますので、この総合探究の政策レビューをきちっとすべきなのではないかと思います。各現場でどんなふうに今捉えられて、先生方はそこに対してどのような意識を持って取り組まれているのか。これについて、学校種ごとでもいいですし、何らかきちっとした前提を共有しないと、前向きに取り組めていない先生方がどれぐらいいるのか、生徒もそこに意義をどれぐらい感じられていない現実があるのか。そこのところがアジェンダになりづらい状況があるのかなと思うと、せっかく検討してもなかなかうまくいかないので、そこをきちっと政策レビューの上で共有していくべきなのかなと思っています。いまだに、総合型選抜を選ばない受験には総合探究は要らないというような声すら聞くのが現在地なので、そこの現在地もきちんと前提にすべきかなと思います。
 もう一点です。情報活用能力は、それ自体が小学校の総合学習の目的になるということになってはいけないのではないかなと思っています。もちろん取り組まれることはすばらしいことなのですけれども、今の総合学習の準備。先ほども新潟小学校の小川先生がおっしゃっていましたけれども、準備にとてもコストがかかるというのが現在地で、それをしないと、やっぱり調べること自体が目的になるということはまさに全国の現場で起きていることなので、きちっと現場が意義を持って取り組めるようなサポートをどのように行うか。カタリバに問合せが来る小学校からの訪問の依頼でも、取りあえずAIで「社会課題解決」で検索したら、カタリバが出てきたので来ましたという訪問も増えてきていて、そこに先生方がきちっと振り返りをするようなこともできていないということも見えていますので、目的は何なのかというところをサポーティブに下ろしていく必要があると思いました。
 私からは以上です。
【貞広主査】  ありがとうございます。では前川委員、お願いいたします。
【前川委員】  本日、2点について発言したいと思います。
 1点目は学習指導要領の系統性についてです。各教科においては、小学校から高等学校までの系統性を意識して編成していただいておりますが、総合的な学習の時間や探究の時間、また情報については、系統性とその重要性が現場に浸透しているかというと、必ずしもそうではないと思っています。
 そういった現状を踏まえますと、本日の事務局の論点資料30ページ、具体的論点1の3、「小中高を通じて」の1つ目に書かれています、「『問い』や『課題』の設定の質をはじめとする探究のプロセスの改善を含め、学校種ごとの総合の『目標』等について、発達段階を踏まえた示し方を検討すべきではないか」という視点を支持したいと思います。前回の議論で溝上委員から指摘のありました、初等・中等教育段階での探究の中で最も重要なのは、課題認識・発見・設定であるという御指摘は、まさにそのとおりであると考えておりまして、だからこそ、発達段階に応じて系統的に探究の力をつけていくことが重要だと思います。探究的な活動に積極的な学校や教員であっても、現在は、まとめる力と発表する力に大きな比重を置いた取組が多いと思います。したがって、探究的な学びと親和性の高い情報活用能力についてもスキルを身に付けさせることに重点が置かれているのが現状ではないでしょうか。初等・中等教育修了時に求められる探究する力を身に付けさせるためにも、小学校から段階的に、総合的な学習/探究の時間と、探究の基盤となる情報活用能力の関係性も踏まえた系統性を、次期学習指導要領で示すことが必要だと考えます。この点については、長らく総合的な学習の時間の研究もされている田村主任視学官のお考えを、大変僭越ですが、お伺いしたいと思います。
 2点目は本日の本論とは少し離れるかもしれませんが、情報活用能力を系統的に身に付けさせていく上で、生成AI等が今後も我々の想像を超えるスピードで発達していくであろうということを考えたときに、そういったものと正しく向き合う知識と心の育成が、今、一般に認識されている以上に重要になると思います。何のために学び、探究するのかと考えると、個人と社会の幸福を実現するためということは、皆さん同意していただけると思います。ですが、生成AI等の活用の仕方いかんでは、幸福の基盤となる民主主義を脅かし、人間が生成AIに従うような社会になってしまう可能性もあります。そのことを大変危惧いたします。情報活用能力の育成と併せて、生成AI時代において子供たちに、個人と社会の幸福の基盤である民主主義社会の担い手としての教育、言わばこれからの時代の主権者教育の在り方をどのように扱うのかの検討が、次期学習指導要領においては必要だと思います。
 以上です。
【貞広主査】  ありがとうございます。田村主任視学官への御質問については、後ほどお答えいただければと思います。ありがとうございます。
 では、続きまして小見委員、どうぞ。
【小見委員】  ありがとうございます。本日は貴重な御発表を頂きまして、ありがとうございます。私は地域との協働の視点から発言させていただきます。
 課題設定においては、初期段階から地域の方々や同年代の人との対話を通じて多様な視点に触れることが、質の高いテーマ設定の土台になると考えています。生徒の関心は、自分の好きなことや身近なことから出発したりしますが、それが社会や地域と接続していなければ課題が矮小化してしまうおそれがあります。また、課題のブラッシュアップや計画の整理にAIを活用する事例も多数出てきています。確かにテーマの精緻化にはつながっていきますが、AIやデジタル技術で探究がある程度成立してしまうということで、実感や生き方と結びつかない探究が、今村委員からの御指摘にもありましたが、主に高校の進学校で生じているという懸念も現場からは聞こえてきます。
 こうした状況において、地域との協働はやはり不可欠ではないかと感じています。面白い大人との出会いを通じて、地域や社会、世界とつながり、児童生徒は自分と社会との関係を捉え直し、情報活用能力や批判的思考力を併せて育むことにつながっていきます。
 ただし、総合学習や総合探究において、情報活用や多様な学びを過度に盛り込んでしまうと、教員の負担感が高まり、本来の目的が曖昧になってしまうおそれもあると私も感じています。情報活用に関するコンテンツや評価は、目的を明確にした上で精選し、その育成自体が目的化しないよう、留意が必要ではないかと考えています。
 さらに、グループ探究から個人探究へという話もありましたが、個人探究に進んでいくと、教員の伴走負担も増加していきます。小川先生の御発表にもあったデジタルシートなどのICTもうまく併せながら、地域の大人や外部人材が探究の伴走を担うことが大切だと考えています。その際には、目的やスケジュールの共有など、関係者間での方向性の一致が重要だと考えています。
 その意味で、探究テーマと、地域の人や情報をつなぐコーディネーターの配置や、伴走力のある大人の育成・確保が今後さらに求められてくると思います。運営協議会や地域コンソーシアムの活用、ICTによる支援体制の整備を通じて、探究学習を持続可能なものにしていくための整備を今後考えていく必要があると思いました。
 以上です。ありがとうございます。
【貞広主査】  ありがとうございます。では田村委員、どうぞ。
【田村委員】  ありがとうございます。2点ございます。
 1点目は総合的な学習/探究の時間についてです。今日、御発表等から、データ、それから質の高い事例をお伺いし、四半世紀にわたる積み重ねの成果が現れてきているというように思い、感謝しました。一方、現在においても、補習であるとか単なる行事準備など不適切な事例があったり、あるいは学校の先生方が、どのようにこの時間に取り組めばいいのか分からないといった悩みを今でも耳にいたします。
 改善案として3つ。1つが学校経営方針に位置づくということ。2つ目、教員がオーナーシップを持って探究的にカリキュラムを開発できるようにすることを促すこと。3つ目、参照資料や学び合いのコミュニティーの充実をするということです。
 1つ目、学校経営方針に位置づくということについては、1998、99年の改訂時より、理論的には学校教育目標を直接的に反映できる時間であり、さらに特色ある学校づくりの中核と論じられてきました。2017、18年の改訂の際には、教育課程を軸とした学校経営とするというような言葉も論じられました。加えて今回、総合的な学習/探究の時間を教育課程の軸とするということを明記してはいかがでしょうか。それから、3番、参照資料等の充実は大変重要だと思いますが、それらがあることによって、かえって教員のオーナーシップを縮小しないように、あくまで参照資料であるということを明記しながら充実させていくということを提案します。
 申し上げたいことの2点目は、情報機器を用いた情報活用能力の育成についてです。時として、情報機器の過剰、不適切な活用も散見されるということがございます。これは今井委員も表明されたことであります。この点、本日の事務局資料にも、身体性を重視する学習についての留意が記載されておりますし、さらに今回、小学校で情報活用能力を体系的に取り扱う時間が、教育課程上、総合的な学習の時間に位置づけられる方向であることを評価いたします。加えて、総合的な学習の時間や各教科において、身体性、直接的体験、直感や感覚を鍛えるべき事項というものを、学習指導要領あるいは各教科等の解説において敢えて明記するということを検討する段階に来ているのではないかと考えています。
 以上です。【貞広主査】  ありがとうございます。では石井委員、お願いいたします。
【石井委員】  前回からの続きということで言いますと、それこそICTといえば個別最適というところが、ICTといえば探究的な学びというふうに、掛け算する相手が変わってくると。そこで、前回も言いましたけれども、探究的な学びとICT、もう少し厳密に言いますと、真正で探究的な学びと教育DXといったものの掛け算をどういうふうに両者がウィン・ウィンの形でやっていけるのかということがポイントかと思います。
 それで言えば、ICT活用ということでいうと、学習ツールとしてということに対して、神野委員のAIリテラシーとかAIコンピテンシーの話もそうですけれども、やはりAI等が民主主義を脅かすリスクもあるという中において、改めてICT活用といったものを、AIリテラシーとかAIコンピテンシーの育成というところにちゃんとつないでいくということが、1つポイントだと思いますし、逆に総合にとっての意味については、小学校・中学校・高校で課題感が随分違うかなと思っています。
 小学校は行事的にこなす。これに対しては、新たに情報あるいはDXに関わる世の中の動きといったものとつないでいくということで、新たなテーマ設定などのわくわく感を生み出すということも、1つあろうかと思います。
 あとは、中学校に関しては、これまでもやってきたとは思うけれども、今こそというか、これからというところがかなり大きいかなと思います。特に、部活も地域移行されていくといった中において、先生方が成長実感を感じる領域といった形で、恐らく総合的な学習の時間のウエートは上がっていくと思います。だから、中学校は今こそなんです。しかも、中学校の改革はかなり重要だと思っています。その1つの呼び水になってくると。その際、実践の手がかりが必要になる。そういう観点からすると、情報活用能力などもそうですけれども、小学校のうちに基盤を育てていくといった中で、中学校における探究的な学びであるとか総合的な学習の時間の充実につなげる。
 もう一つ、高校に関しては踊り場感と青天井というふうに思っています。踊り場感というのは、ある程度やっているところとやっていないところ。あとは、都市部の大学が近かったら研究型探究。それで、いわゆる地方といいますか、そういったところでいうと、地域創生型探究という形で、ある程度、類型化されてきているというところがあるわけです。ですから、そこを少しミックスしていくというか、改めて再活性化していく。青天井と申しましたのは、先ほども出てきていますように、ある種、探究のオリンピック化、甲子園化のような状況が生まれている。これは非常に危惧するところです。それが実は、英語教育、情報教育の青天井も生み出しかねないというところなんです。ハイスペックな人材は生み出すかもしれませんが、結局、見識・深み・成熟を伴った人物を生み出していますかという話が1つ。もう一つは、これによって格差が拡大するのではないですかという話です。だから、そこの部分はかなり慎重に考えておく必要があるかなと思います。
 その観点からしますと、改めて総合的な学習(探究)の時間の教育的価値を再確認する。それは、今回御発表のあった新潟小学校、笛吹高校ともに、やはり探究に迫力があると思います。探究的な学びの核心は、迫力のある探究であるかどうか。それは、本物、自分ごとというところです。「I」を主語にして考えるかどうかというところかと思います。先ほど今井委員、あるいは奈須委員からもあった、これはある種、生活教育の思想みたいなものなんです。きれいな「お研究」ではなくて、丸ごと性、それから遊び性といったものを改めて大事にする。それによって、生き方・在り方に響く学習になるということが大事かと思います。
 教科における探究に関しては、課題発見・解決学習といったものが、教科においても自ら課題を設定するプロセスを埋め込めばいいんですねというふうになってしまうと形骸化します。そうではなくて、先ほど探究においてもレベルの違いがあるということを意識しながら、教科における探究といったものは、総合的な学習(探究)の時間における探究といったものと、役割分担というか、それぞれの違いや在り方を明確にしておく必要があるのかなと思いました。
 あとは、学習の基盤となる資質・能力に関して、情報活用能力に一本化することは、私は心配していたところです。しかし、今回、言語能力とあわせて2つにということに関しては、私は賛成です。これは何かというと、情報活用能力で学習の基盤となる資質・能力を一本化するということは、1つ間違うと、知識の情報化、思考のスキル化、人間の機械化になりかねない。だから、人間が思考するといったことが、情報活用・情報処理という形で、情報処理モデルの言葉で表現されることによって、人間らしい認識といったものが矮小化されないかと。だから、言葉の力というのは身体を伴った力ですから、そういった人間の機械化といったものに対する歯止めになるのではないかなと思っています。
 すみません。以上です。
【貞広主査】  すみません。もう幾つもキラーワードがあって、もっと聞いていたかったのですけれども、ほかの先生との公平性ということもございまして、申し訳ございません。では古賀委員、お願いいたします。
【古賀委員】  ありがとうございます。
 先ほどプレイフル・ラーニングというワードが出てきて、ちょっと私は引っかかっているところではあるのですけれども、幼児教育としては、自発的な活動としての遊びで、そこに学びがあるというふうに捉えてきたところです。そこはまた後日というふうに思います。
 2点ございます。学びが生まれている、今回、子供たちが社会で生き生きと活躍していくことへ向かう、質の高い探究的な学びの実現に向けてというところで、資料1-1の最後のページに、幼児教育が遊びを通した学びとして位置づけられていますけれども、34ページでは、情報活用能力に焦点が当たっていることからか、幼児教育は位置づいていません。このページの図の小学校の低学年の内容を見ますと、この辺りのことは既に幼児教育でも実現されているのが実態です。実践の幅はもちろんありますけれども、文部科学省幼児教育の学び強化事業、委託研究においても、直接体験を豊かにするICT活用に関する事例集等が既に出されており、例えばファッションショーに興味を持った子供たちが、ライティングをプログラミングアプリで調整するというような先鋭的な事例も出てきております。幼児教育のほうでは、この数年先を見据えて、全幼児教育施設でどの程度のレベルを実現できるようにし、さらに目指すところとしてはどの辺りなのかという、2つのレベルを検討しつつ、34ページの最初の段階の在り方というのを考える必要があると思った次第です。
 2点目です。探究的な学びとICTのツールとしての活用が豊かになり、便利になり、様々な情報にアクセスできるようになったときに、一方で学びとして本質的に重要になるのは、創造的なクリエーティブな思考を働かせるプロセスが生じるというところだろうと思います。今回の御発表の中でも、調べ学習に終わらない、今、地域社会にないものに気づいて、自分たちでつくろうとしていくというようなところが出てきておりました。情報を使えるというところにとどまらず、そこから先、クリエーティブな思考を育むことにどうつなげていくのか、何を生み出すのか、今あるものから、さらに飛び出していく創造的な発想力、発想したことを実現しようと粘り強く知恵を生かし合っていく協働的なクリエーティビティーについて、情報活用能力のその先をしっかり位置づけていくというところが重要ではないかと思いました。
 以上です。
【貞広主査】  ありがとうございます。では秋田委員、お願いいたします。
【秋田主査代理】  ありがとうございます。学習院大学の秋田です。
 今回、総合的な学習の時間と情報活用能力の関係を構造化して明確にされ、また総合的な探究の時間が、小中高と系列的に構造化を持って示すことの必要性を明らかにされたというところが大きな点だと思っています。ただし、先ほどから今井委員や小見委員も言っておられましたが、情報活用能力ということで、探究を行うときに、先ほどの堀田委員の調査にも出ておりましたが、課題設定のところは、逆に言うとデジタルは効率的ではないとか、あまり教員からの評定が高くない。逆に言えば、そこはデジタルではなくアナログで、やっぱり生の現象と出会う、人と出会う、地域と具体的に身体を通して出会っていくからこそ、自分のこだわりが生まれていく。そうしたところが課題設定の段階で重要である。また、その感知するというところでは、新潟小学校の小川先生のご発表実践でも、自分たちで成功したとか、感知してからデータで見てみようとか、立ち止まってみるという部分が非常に重要であります。先ほども御指摘がありましたが、情報と同時に、生で体験すべきことは一体何なのかというところも今後押さえていく必要があろうと思います。
 また一方で、総合的な探究の時間は、ぐるぐるの螺旋状でいつも描かれるのですけれども、この螺旋が回るということはどういうことかということの説明がないと、結局、線形的なものとして順番があるように思われがちでございます。けれども、先ほどの、例えば新潟小学校の小川先生の御発表で大事なところは、成功したと思ったけれども、本当は違うのではないかと立ち止まって、そこから探究が深くなるとか、私は、問い返し、立ち戻り、そして、もう一回、ジグザグとやり直すところが探究を深めるのだと説明しています。線形的にぐるぐる回っていると、線形のパターンになっていくのではないかと、学校等ではお話をさせていただいています。特に、探究が個人のアイデンティティーに深く関わっていくためには、ジグザグし、時間をかけることが大事でありまして、この辺りの指導のポイントというのも、もし時間があれば新潟小学校の小川先生や笛吹高校の廣瀬校長先生にお聞きしたいのですが、やっぱりそこの立ち止まりが、どう指導するのかということが書き込まれないと、これがまた形骸化していくのではないかというところが、まず第1点目です。
 2点目に、総合的な探究の時間が、大学の進学の、特に入試の選抜に使われることによって、目的と手段の転倒がこの頃起こってきている。産官の連携で探究が進むことは大変いいことではありますが、一方でコンテスト等が盛んになることによって、より個人主義的な格差が生まれてきていまして、探究が入試の単純な手段になってきていないのかというところを、もう一度考えたいと思います。そして個人探究だけではなくてグループで地域に貢献していくような、中学ぐらいで方向付けされたり、先ほど笛吹高校の廣瀬校長先生が言われたような探究を価値づけていくことが重要であろうと思いますし、先ほど黒上先生からもありました、高校入試が参考資料に出ていましたけれども、高校入試等で逆に新たな探究の過程をどう入試の中に入れていくのかというような議論をしていかないと、幾ら小学校で行っても、中学校の教科と総合の関係の中で変わらないのではないかと思っております。
 そして、最後に3点目でございます。先ほど神野委員等からもお話が出ましたけれども、今、デジタルリテラシーと言語力というときに、それら内実は言語力について、これまで検討してきた、例えば読み書きができる的な言語力から、むしろ自分の考えを述べるということがうまくできないとか、自分の言葉で、生成AIとは違う感覚・感性で言葉を使うことができるとか、意味をより深く考えられるような言語力が必要になってまいります。そういう意味で、言語力と情報活用能力の関係をもう一度問い直していかないと、言語力というのが、ずっと学習指導要領で議論されてきたものからアップデートされていないので、そこを議論する必要があろうと思います。先ほど黒上先生が言われまして、生活科でも探究がある。実は幼児教育でもデジタルを使用して、子供たちが図鑑などを使ったり、写真を撮って自己表現をするなどというような活動をしています。そこでは、言語力と要するに情報活用能力が一体になって、言葉で補いにくい部分は、逆にデジタル等で表現できる部分もあるわけです。このようなつながりを考えて、幼児期から言語力とデジタルリテラシーがどういう関係にあるのかということも議論する必要があるのではないかと思います。
 ちょっと長くなりました。以上です。
【貞広主査】  ありがとうございます。では、オンラインから青海委員、お願いいたします。
【青海委員】  各学校のすばらしい実践の発表、ありがとうございました。すばらしい実践を聞くと、何か気持ちよくなりますね。
 私からは2点あります。
 1点目は探究的な学びについてですけれども、総合的な学習の時間における探究的な学びには、問いの設定や整理・分析、カリキュラムの設計、教職員の認識等において課題が見られると思います。改めて、探究的な学びの重要性を焦点化し、質の高い探究的な学びを実現するために、学習指導要領改訂のタイミングで、新たな枠組みの全体像とともに、小・中学校での「総合」の名称を、高校のように「総合的な探究の時間」とするなど、「探究」を用いることも一案だと思います。総合的な学習の時間における探究的な学びを、全ての学校で確実に実施する契機、これを目指せればと思います。
 2点目は、中学校の技術・家庭ですが、技術科と家庭科を2つの科目に分けた上で、技術科については、情報技術の大幅な充実に加え、他のA・B・C領域についても、従前の内容にも留意しつつ、情報技術との関連を強化すべきだと思います。このことにより、情報活用能力を抜本的に向上させ、質の高い探究的な学びを実現させる必要があると思います。
 その上で、技術科は正教員が不在で、講師による対応をしている学校、臨時免許状保有者や免許外教科担任により対応している学校が多い教科です。指導体制の確保及び担当教師の指導力向上に関する施策の加速化をお願いしたいと思います。
 以上です。
【貞広主査】  ありがとうございます。では、オンラインから同じく野口委員、お願いいたします。
【野口委員】  野口です。ありがとうございます。基本的な方針には賛成したいと思います。
 学校で、特に小・中学校で総合の授業を見る機会がありますが、大人にとっての正解を探りに行くという様子がかなり見られるなと思います。その点においては、総合の時間のみでなく日常的に、先ほど奈須委員からもあったように、既に子供の中にある探究心を奪わないという関わりがかなり重要になってくると思いました。
 また、質の高い探究のためには、それを可能とする条件整備が重要だと思います。私の分野で言うと、例えば総合的な学習の時間に、よく障害理解教育というものが扱われます。いわゆる活躍している障害のある人を招いて話を聞いて、障害があっても頑張っていてすごいとか、優しくしてあげようと思ったとか、結構、上から目線、チャリティーモデルを再生産してしまっていたりするんです。その一方で、同じクラスにいる合理的配慮が必要な子供については、ずるいという声が上がったり、日常の中で特別支援学級や特別支援学校の子供と接する機会がほぼなかったりする。非常に表面的な探究の時間になってしまっているなと思います。障害をテーマにするにもかかわらず、基礎的な知識である社会モデルの考え方を知らなかったり、本来とても身近な話なのに、すごく人ごと、遠いところの課題として扱ってしまうというところがかなり多く見られるなと思います。イベントやテンプレートで終わってしまって、日常を変えるというところにはやはりどうしてもつながりづらいなということを感じています。たまたま私の専門の障害の話をしたのですが、恐らくほかのテーマでも同じようなことが起こっているのではないのかなと思います。
 このような、いわゆるテンプレート的な探究を避けるためには、先ほど前川委員からもあったように、そもそも何のための探究か、民主主義の担い手を育てるという視点だったり、奈須委員がおっしゃっていた、民主的で公正な社会を実現する場としての学校、そういった視点というのがかなり重要になってくるのかなと思います。何のための探究か、何のための情報活用能力か、そこで差別を再生産してもしようがないと思いますので、そういった部分が重要であると。
 そのためには、やっぱり先生の負担がすごく高いと思います。知らないことをたくさん扱わなければならないので、様々な分野について知識を得られる教材ですとか、日常を変えていくことにつながる実践事例というものを、より充実させるための支援が重要だと思います。先生たち自身が探究的にカリキュラムを考えるための余白を生むなどの条件整備というものが必須なのかなと思いました。
 以上です。
【貞広主査】  ありがとうございます。では、会場から植阪委員、お願いいたします。
【植阪委員】  東京大学の植阪です。よろしくお願いします。
 33ページを出していただいてよろしいでしょうか。学習の基盤としての資質・能力のところです。言語と情報活動能力だけに特化するというのは、ちょっと物足りないかなという印象を持っています。黒上先生もおっしゃっているように、探究を回すためには、自分で学びを調整していく必要があります。しかし、こうした力が全く入っていないのが気になります。ですので、資質・能力の中に、学びを主体的に調整するという話が少し入ってきてもいいのではないかと思うので、御検討いただければと思っています。
 2点目です。中央教育審議会の元委員の市川伸一先生が、探究と各教科のバランスとリンクというようなお話をされています。それを踏まえて考えますと、問いが立たないという問題の背景として、せっかくやっている教科の学びから問いが生まれていないという現状もある気がしています。もちろん、SDGsや地域課題にという問いはとてもいいと思うのですが、それに加えて、教科の中をさらに深めていくというようなことがあってもすごくいいのではないかと思っています。そのためには、やはり単元の後半で、探究につながるような課題を先生が示す必要があるのではないかと思います。すなわち先生が基本的なことを教え、児童生徒もそれが理解できていることを確認した後で、そこから先に、理解を深めるような課題を出す必要があると思います。これが探究のモデルとなり、自分で問いを作り、探究的な学びを回していく際のモデルになっていくと思います。教科の授業の後半で教師が示す、理解を深める課題が、子供にとっての探究の種になると思っています。
 一方で、現在の学校現場の状況を見てみると、教科書の内容で探究の真似事をさせたいという思いも強いようです。それをやってしまうと、理解を深める学習に時間が回りません。学力保障をすべき部分については、ある程度、きちんと保障した上で、その先の深い課題については、教科の中で確実に保障し、それを最終的には総合的な学習の時間での探究につなげていくというようなことが重要であり、そのことが習得と探究のバランスとリンクにつながっていくと思っています。 最後、3点目です。デジタルで発表ということがこのところ、かなり多くなってきて、子供たちの論理立てて筋道立てて書く力がちょっと落ちている感じがしています。このことは、私は20年ぐらいかかわっている個別学習相談、カウンセリング等でも感じることです。実際、15ページにも示していただいていますが、全国学調で書くことが苦手な子の存在というのも指摘されています。24ページのPISA2022では日本が最下位というデータがでていますが、文章を書いたり編集したりするということもあまりしないデータもでています。プレゼンでは大量に使うのだけれども、デジタルを論理的に書くためのツールとして使っていないのだと思います。一方で、デジタルというのは、しっかり論理立てて書く、修正が利くということができるので、いいツールです。その辺にはあまり活用されていないところがあるので、デジタルを使ってプレゼン資料で何かを発信するということだけではなくて、様々な要素を論理立ててつないでいくという力が落ちないようにしていっていただければと思います。
 以上です。ありがとうございます。
【貞広主査】  ありがとうございます。では山本委員、お願いいたします。
【山本委員】  今日のこういった議論を現場の先生たちにどうやって伝えていくかということが非常に大事だと思いますので、私からは、教師を主語にして、お話しさせていただければと思うのですが、まず学校を見ていて、探究的な学びが活発なところと、そうではないところの違いは、教科の力を、探究をやることでしっかり伸ばせているとか、子供が成長していることを実感しているかどうかといった辺りが鍵になってくると思っています。今日の新潟小学校さんのように、一人一人の学びというものを個の中でしっかりと捉えたり、または学びの状況を分析したり、なぜそういった状況なのかという要因分析までしているというところが、一般にはなかなか事例としては見られないわけですけれども、こういったことが非常に大事であったり、また、笛吹高校さんからも提案がありましたけれども、これから探究を考えていく上で、12年間を見通して、子供一人一人の学びの履歴をしっかりと可視化していく際に、ICTの力を借りていくということもあると思っています。先生方がICTを活用して、そのよさというのを実感することが、実は先生たちがつくる授業の中で、活用が進むことにもつながるのではないかと思っています。
 具体的には、例えば国の学力・学習状況調査などは、抽出して子供たちの学力の定着状況を見る上では、小学校6年生と中学校3年生の抽出という形でよいのだと思うのですけれども、これから探究の学びの中で一人一人の子供の様子を把握することを目的にするのであれば、それとは別に、例えば今、IRT型の学力・学習状況調査など、いろいろなツールで一人一人の学力等の様子を把握することも進んでいますけれども、そういったデータやICTの活用を進め、子供一人一人の学びの履歴や状況を把握できるような事例を増やしていって、先生方一人一人がそこで時間をかけなくてもいいような環境整備やサポートも併せてしっかりやっていくということが非常に大事ではないかと思っています。これによって、教員の子供観とか授業観とか評価観の転換が図られると思っていて、探究的な学びを進めていくと同時に、教師の「観」の転換を図っていくということが、実は探究的な学びと情報活用能力等の一体的な充実にもつながるのではないかと思います。
 そういった意味では、今回の提案の36ページで、生活科というか低学年のところが系統的な情報教育から少し外れているように見えてしまいます。今日もいろいろ指摘がありましたけれども、実は低学年とか生活科とか、幼児教育の段階から既に端末は活用されていて、そういった意味では、どのような情報教育の可能性があるか試行錯誤したり、低学年の中で学びのチャレンジをする余地を残しておくことが大事だと思うので、情報教育を教科(生活科)の中に入れるということではないのですが、背面にうっすらブルーの部分(情報教育)が見えるとか、何か考える余地、またはチャレンジしていく余地を残していただければと思います。
 以上です。
【貞広主査】  ありがとうございます。では澤田委員、お願いいたします。
【澤田委員】  澤田です。方向性については賛同いたします。その上で幾つかお伝えします。
 まず、論点の、全体的に「自己の」とか「個人」という言葉が多くて、以前の部会でも個人の好奇心というのもあったので、これから子供一人一人の違いをよく見るということがより大切にされるようになるのだなと、大きな希望を感じました。過度な同調圧力というのが日本型学校教育の弱みの一つだと、過去の中教審でまとめられてきたわけですが、そこから脱却した教育が全国の各学校で始まっていくのだなと思ったところです。
 次に、学校と地域社会との関係についてです。論点資料にも、地域人材や企業等との連携とか実社会とのつながりとか外部との協力といったことがあり、これらは非常に重要で、もちろんうまくいっている学校もあるのですが、全国を回っていると、まだそのずっと手前にいる学校も多くて、二の足を踏んでいたり、協力・連携していても形式的なために、協力してもらっているはずなのに、どういうわけか、より負担を感じているというようなこともあります。もっと完璧でない部分や困り感も見せて頼るということから必要なのではないかなとよく感じます。頼り合う大人の姿を見せるということは、子供たちが安心して大人になれることだとも思います。学校に完璧を求め過ぎない社会への呼びかけということと同時に、学校側から頼りやすくなるようなことを何か後押しできればと思いました。
 次に、探究の「まとめ・表現」についてです。まとめや表現は必ずしも人前での発表ということではないのですが、発表が行われることがよくあります。子供たちが一段成長する機会になるので大切だとは思いますが、ただ、これまでの部会で話題になっていた、初発の行動のしにくさに課題のある日本というのは、なぜそうなのかと考えたときに、そうした発表の場で、立派なよそ行きの発表のために過度な背伸びをしなければいけないという暗黙の了解を持つようになるからではと思うような場面を、特に小学校段階で非常によく見ます。「学びに向かう力、人間性」のときの回であった、好奇心を大切にするということにとても賛同していますが、その入り口部分とともに、まとめや表現という出口部分においても、過度な背伸びへの不安感を減らすといったことも必要だと考えます。
 ただ、これはこれまでの部会であった、包摂によって一人一人の発達段階に応じた表現を大切にするということが、制度だけではなく、子供観とともに真になされれば解消することなのではないかとも考えています。奈須先生の今日おっしゃっていた、子供の持つ萌芽をまずは潰さないということとも言えるかなと思いました。
 次に、探究的な学びに必要な時間の確保についてです。31ページの一番上のところに、丸1、丸2、丸3とありますが、これらに加えて内容の精選についても検討してはと思いました。総合や探究の時間だけではなくて、教科学習においても探究的な学習を充実させたり、中核的な概念を軸とした学びにシフトしたりという観点からも、教えるべきことを絞り込んで、考えるべきことに時間を充てられるようにすることは、決して単なる引き算ではなくて本質的な足し算であり、量を絞るからこそ深まる質があると考えます。
 最後に、情報活用においては、神野委員の先ほどの資料・発言にもありました、従来のICTツールとは異なる向き合い方をAIとはするべきというのには、大変共感しました。
 以上です。
【貞広主査】  ありがとうございます。では、オンラインから内田委員、お願いいたします。
【内田委員】 ありがとうございます。
 前回の発表、それから今回の発表で、小学校、中学校、高校を通じて実践を教えていただいて、非常に参考にさせていただきました。現行の学習指導要領でも「総合的な探究の時間」という名称に変わりまして、高等学校でもかなり探究については進んでいるところかと思います。進学校においてはというお話がありましたけれども、実は進学校も結構頑張っていますので、より次の学習指導要領に向けて、この取組が全国的なものになっていけばいいなと思っている次第です。
 本校においても、教科における、「求める探求」と「究める探究」、方向性のある教科としての手順を考えていく学びと、自ら課題を設定し、それに対して研究する探究、究める探究のバランスを意図的に考えていくことが改めて必要だなと考えている次第です。総合的で教科横断的な学び、それから探究的な学びというのは、児童生徒の考えを深め、可能性を広げるという意味で大変有用であると考えています。今回、事務局の論点資料におきまして、32ページ、33ページも含めてお示しいただいておりますけれども、小中高の学校の段階ごとに情報活用能力の抜本的な向上の方向性が示されたということ、探究的な学びの基盤としての位置づけも含めて、この枠組みについて生徒たちが直面する社会と向き合い、学びを自らのものにしていく、そして社会課題を自分ごととして捉える、民主主義社会の、自分自身が当事者として取り組むというところで、非常に有用であると考えております。さらに、それを自分の人生の可能性、自分自身の将来の可能性を広げていく、切り開いていくという上で、この学びのスタイルというのは不可欠なものだと考えられます。
 高等学校の情報科の指導が、単に情報処理の技術だけでなく、情報活用能力を伸長するという共有改善の支援の上でも、義務教育段階が、小学校・中学校の段階も含めて、こうした情報を中心とした教育の充実を行っていくことが、改めて、極めて重要であると考えております。
 そうしたことを前提として申し上げるのですけれども、既に前回、5月12日の事務局の資料、そして本日の事務局資料でもしっかりと記載されておりますし、文部科学省でも十分認識されているところかと思いますけれども、教育内容の充実を支える条件整備については、教員の定数改善も含めて、改めて重要であると思っております。高等学校では、情報科の免許保有状況についても随分改善してきたところですけれども、実態として時間講師などの非常勤も多い状況、そうした講師の方の一部の指導力・専門性については、地方等も含めまして心配があるというところも実態であると思います。中学校技術の免許保有状況についても、先ほど小見委員からお話がありましたけれども、また前回議論にもありましたとおりですが、既に文部科学省においても取り組んでいる臨時免許や免許外担当の解消に向けた取組も重要ですし、免許を保有していても、情報領域以外の領域を専門としてきた技術の教員については、やはり研修も重要になってくると考えます。引き続き、大学も含めた技術科の教員養成課程の開設の促進も必要であると考えています。
 こうした中、前回提案のありました、文部科学省によるコンテンツや動画教材の作成・充実などが重要であると思っておりますし、教員の指導力向上、それから指導主事の様々な力の向上、教員の研修の充実についても、次期学習指導要領の全面実施前から実施していく必要があると思います。このように、情報教育を支える教材と人材と、Wi-Fiや周辺機器の環境の整備と並行して進んで、今回の新しい枠組みがしっかりと実装できるよう、文部科学省、都道府県教育委員会とともに、全校長としましても当事者として関わっていきたいと思います。
 すみません。以上です。よろしくお願いします。
【貞広主査】  ありがとうございました。本日も皆様のあふれる思いを拾い上げることができず、相変わらずの時短ハラスメントで大変申し訳ありませんでした。少し12時を過ぎるかと思いますけれども、申し訳ありませんが、お時間を頂ければと思います。一部、御指名も頂いて御質問いただいているところもありますけれども、それに限らず、本日の議論につきまして、御発表いただいた方々から、御質問への応答だけではなく、短くコメントをそれぞれ頂戴できればと思っております。
 まず初めに、田村主任視学官よりお願いいたします。田村主任視学官には、前川委員からも御質問いただいております。
【田村主任視学官】  ありがとうございました。総合・探究に多くの方が期待していて、重要なものと位置づけながら議論されていることを、前回・前々回の学習指導要領の改訂の議論に関わった立場からすると、大変感慨深いものがある場面でありました。
 その意味では、総合・探究については、文部科学省のみならず、教育委員会もそうだし、あるいは研究者の皆さん、学会もそうですが、とりわけ学校現場の先生方の御努力によってここまで大きく成果を上げ、形をつくってきたという部分が大きいのではないかと思いました。ややよちよち歩きの部分があったのだけれども、この10年、20年の進化で、かなり整理されてきたと考えます。また、前川委員の御発言のとおり、その意味では、ようやく体系化や系統性を意識できるような段階になってきたのではないかと思います。その際に、今回新たな枠組みとして示された、情報活用能力との関係における整理については、よりパワーアップした探究を生んでいく重要な視点ではないかなと考えています。
 一方で、配慮すべきこととしては、各学校の固有性や独自性を確保してきたことこそが、この総合・探究を豊かにしてきたという認識の上に立つならば、このこととのバランスには常に目配せをしておかなければいけないと思います。学校種ごとにどのような探究の姿を目指すのかについて今後検討していくということは、十分やっていかなければいけないし、そのようなタイミングに来ていると思います。そのことが、全国的な実践の一定程度の水準を維持し、質の高いものに向けていくことにつながるのではないかと、御意見を伺いながら感じました。
 以上です。
【貞広主査】  ありがとうございます。感慨深いというコメントを頂きました。
 では黒上先生、お願いいたします。
【関西大学(黒上)】  私の資料の中にも一言あるのですけれども、情報活用能力を身に付けることによって、総合的な学習/探究における活動なり学習が、昔の用語で言うと「這い回らない」となるのだというようなことを、どこかで書いてもらえるといいなと思いました。
 それと、先ほど植阪先生がおっしゃったことについて、僕もそう思っていまして、3つあったものが2つに減ると、少し不安な感じがするので、そこに自己調整力的なものが代わりに入ってくると、最近の議論の流れとしてもいいかなと思います。もう一つ、情報技術を残して、「情報」を活用する方が抜けるということは、ちょっと危ないメッセージを与えそうなので、それをどこに移行するのがよいかと思います。具体的には、言語能力のほうに移行するのだと考えると非常に分かりやすくて、33ページの言語能力の定義ですけれども、「言語を用いてテクストを理解し、表現する」になっているのですけれども、その間に思考・判断というのが本来入りますよね。だから、そこを入れるのがいいのではないかと思います。つまり、言語能力の解説のところに、入手した情報を基にしっかり考え、推論したものを表現するまでの中間部分を加えることによって、情報の部分を吸収できるような気がします。それで、それに該当するものとしては、長く文科省が使ってきた、例えば「考えるための技法」という言葉があるので、「考えるための技法を駆使して自分の考えをしっかり持って」というような感じの文言をここに入れることで、言語能力の捉え方も随分しっかりしてくると思うし、情報活用のところを、情報機器を用いたものにシフトするということとのバランスが取れていくのではないかと思いました。
【貞広主査】  ありがとうございます。では、新潟市立新潟小学校の小川先生には御質問も頂いています。お願いいたします。
【新潟市立新潟小学校(小川)】  もしよろしければ、私の資料の15ページを見ていただけるとありがたいのですが、よろしいでしょうか。
先ほど秋田先生から御質問いただいた、そのまま放っておいては探究は動き出さない。または形骸化していくということで、個人的にはやっぱり、何のためにという自覚と、認知的なずれや葛藤というのがキーワードになってくると思います。一番左の写真が、どうしても明らかにしたい課題。これから関わるお菓子屋さんのことをまずはよく知りたいと。どうしてあのお店のどら焼きはあんなにおいしいのかということで、切実感、自覚を持って情報の収集をしました。それで、試食をしたり、作っているところを見たり、インタビューしたりメールをもらったりして、多面的な情報を自覚的に収集していきました。
 この写真の真ん中なのですが、どうしておいしいのかというところを、どんどん子供たちは意見として上げていくのですが、それが拡散し切ったところで、それを一度みんなに戻して、メタ的に分析すると。そして、写真3枚目の一番右になるのですが、互いに疑問点とか、お互いに本音を伝え合うというところで、この授業では、ある子供が、僕はどら焼きがとてもスペシャルな味がするんだよとか、特別なんだよという話をしてくれたのですが、でもある一方の子供からすると、セブン-イレブンのどら焼きのほうがおいしい、僕はそう思わないというふうな認知的なずれが出てきて、どうしてスペシャルと感じるのだろうというところで議論を深めていく。それが、次の課題で、何であのお店のどら焼きはあんなにおいしいのだろう、もっともっと知りたいというふうに、新たな課題が浮かび上がって探究が回り出していくというところで、お互いの認知のずれみたいなところを先生が見極めてあえて取り出していくということが、探究のプロセスで非常に重要なところかなと感じております。
 以上です。
【貞広主査】  ありがとうございます。では続きまして、笛吹高等学校の廣瀬先生、お願いいたします。
【山梨県立笛吹高等学校(廣瀬)】  先ほど秋田委員からもうお話を頂いたのですが、立ち止まりがどんなふうかということなのですけれども、やはりそこは教員が見通しを持って行っている。その中で、生徒が壁にぶつかったり失敗する。そこのところも見守っていけるようなマインドを持っていけることも必要なのかななどと思っています。そして、その中で、乗り越えたところを教員が生徒に価値づけをしていく、その学びが大事なのかなと思いました。
 また、高校段階では、高等学校のミッションまたは学校の特質を生かしたカリキュラムデザインができるような教員の育成ということも考えていかなくてはいけないかなと感じたところです。
 ありがとうございました。
【貞広主査】  ありがとうございます。それぞれ大変貴重なコメントを頂きまして、ありがとうございました。
 改めまして、本来は、それぞれの御発表者の方に応答いただいたように、意見の往還があってこそ議論の深まりがあるのだとは思いますけれども、なかなか私の力量不足でそういう形になっていないことを改めておわび申し上げたいと思います。申し訳ありません。ありがとうございました。
 それでは、時間が参りましたので、本日の議事は以上となります。最後に、次回の予定につきまして、事務局よりお願いいたします。
【栗山教育課程企画室長】  次回は6月16日月曜日の15時半から18時を予定しておりますが、正式にはまた後日、御連絡を差し上げます。
【貞広主査】  ありがとうございます。
 それでは、以上をもちまして閉会といたします。ありがとうございました。

―― 了 ――

お問合せ先

初等中等教育局教育課程課教育課程企画室

電話番号:03-5253-4111(代表)

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