令和7年5月12日(月曜日)15時30分~18時00分
WEB会議と対面による会議を組み合わせた方式
【貞広主査】 それでは、第7回教育課程企画特別部会を開催いたします。
本日は、情報活用能力について、委員の皆様に御審議いただきます。進行資料にお示しいただいていますとおり、事務局からの御説明の後、春日井市、沖縄市、うるま市より、情報活用能力の育成に関する授業実践について御発表いただきます。その後、堀田主査代理より、今後の情報活用能力の育成の在り方について御発表いただきます。その後、5分休憩を挟みまして、意見交換の時間といたします。
それでは、まず、事務局より、参考資料につきまして補足の説明をお願いいたします。
【栗山教育課程企画室長】 失礼いたします。
まずは、本日の配付資料について補足をいたします。第1回の特別部会におきまして、これからの社会を担う子供たちの思いや願いを中央教育審議会の審議に生かしていただくために、今後の学校での学びの在り方について子供たちから意見を聴取する取組についてお知らせをしておりました。今年1月から2月にかけて小学校1年生から高校3年生の年代を対象に意見聴取を実施しましたので、参考資料3-1と3-2で関係資料をお配りしております。結果の概要について、参考資料3-1に基づき御報告いたします。
今回の意見聴取では、「将来の自分、未来の社会について」、「学校の授業や教科書について」、そして「先生からの評価・成績について」の大きく3つの項目について、子供たちの意見を聴取いたしました。資料では、項目ごとに子供たちの意見を主なカテゴリーに分類したものをお示ししています。
例えば、1番「将来の自分、未来の社会について」の項目では、左下の部分になりますけれども、1-4「思い描く未来の社会をつくるために、どんな力をつけたいですか?」という質問に対して、「判断力、課題解決力」、「思いやり・やさしさ」、「意見を伝える力」といった内容に分類される意見が多く寄せられたところです。
同様に、真ん中の列、2番「学校の授業や教科書について」の項目では、中央部にございます2-3ですが、「自分の力をつけていくために、どんな授業がよいと思いますか?」という質問に対して、「学んだことと社会がつながる授業」、「自分のペースに合った授業」といった内容に分類される意見が多く寄せられました。
時間の都合上、全ての項目についての御説明は控えますが、その他、子供たちから多様で率直な御意見を多数頂戴しています。お示しした意見の分類はあくまで子供たちの回答を類型化したものであり、子供たちの実際の意見については、大部となりますが、こちらの参考資料3-2の報告資料にまとめていますので、後ほど御覧いただきますとともに、今後の御議論の参考にしていただきたいと思っております。
なお、報告資料の基となる子供たちの全ての意見を列挙した資料については、こども家庭庁ホームページより御覧いただけますので、本資料の右下にございますQRコードから御覧いただければと思っております。
また、第9回の参考資料4におきまして、今後のスケジュールについて、第9回の6月16日、第10回の6月25日までの開催日程とこれまでの審議の状況についてまとめておりますので、御参照ください。
補足は以上でございます。
【貞広主査】 ありがとうございました。
それでは、続きまして、論点資料につきまして御説明をお願いいたします。
【寺島学校情報基盤・教材課長】 失礼いたします。それでは、資料1-1、論点資料6について、前半部分は私、学校情報基盤・教材課長から御説明をさせていただきます。
本資料は、いつものように後半部分に具体的な論点が出てまいりますけれども、前半は、その具体的な論点に至るまでの前提について少しお話を申し上げたいと思います。
前提について2つお話を申し上げたいと思いますけれども、前提の丸1として、情報技術を取り巻く現代社会の状況についてお話をし、そして前提の2として、情報活用能力育成の状況と課題と、この2つの前提をお話し申し上げたいと思います。
まず、前提の前提ということでありますけれども、諮問文では、この情報活用能力、どんなふうに書かれているかということを改めて確認しておきますが、1つ目の丸にありますように、生成AIなどデジタル技術の発展は、多様な個人の思いや願い、意志を具現化し得るチャンスを生み出している側面もある一方で、2つ目の丸でありますけれども、デジタル化の負の側面等が顕在化する中、社会の分断の芽を指摘する声もあると、こういったことが書かれております。
そのような中で顕在化している課題として挙げられているのは、1つ目の丸にありますが、デジタル学習基盤、今、整いつつありますけれども、その効果的な活用は緒についたたばかりであるということ。そして2つ目の丸、我が国のデジタル競争力は他国の後塵を拝していて、デジタル人材育成の強化は喫緊の課題であるということ。そして最後の丸でありますけれども、「デジタルの力でリアルな学びを支える」という基本的な考え方に立って、バランス感覚を持って、積極的に取り組む必要があると、こういった指摘がされているところでございます。
その中で具体的な審議事項として挙げられております3つでございますけれども、1つ目の丸、小中高等学校を通じた情報活用能力の抜本的な向上を図る方策をどう考えるか。そして2つ目、現状と課題、海外との比較を踏まえながら、具体的な充実の在り方をどう考えるか。そして3つ目、生成AI等の先端技術等に関わる教育内容の充実のほか、情報モラルやメディアリテラシーの育成強化についてどう考えるか。これが具体的な審議事項として諮問文に述べられているところでございます。
なお、今申し上げたような課題意識は、国際的な潮流にも合致していると考えておりまして、ここにOECDのラーニング・コンパスを載せておりますけれども、ここでもデジタル・リテラシーの重要性がうたわれているところでございます。
そして2つ目、社会課題と情報技術についてお話を申し上げますが、ここに載せておりますSociety5.0、これは令和3年の科学技術・イノベーション白書から取っておりますけれども、今、社会は急速にSociety5.0の実現に向かって進んでいるというところでございます。既にこの絵に載っている技術も、かなりの部分、実現されているところが多くあると思います。
そして次、左の絵でありますけれども、今、我々が気づかないくらいに日常生活には情報技術が浸透してきておりますし、また、右の絵にありますように、実社会における課題解決においても情報技術の利活用は不可欠な状況になっております。例えばということで、これ、デジタル田園都市国家構想交付金の例を少し載せておりますけども、例えば例1、地方における移動手段や物流の課題の解決には、無人運転やドローン技術が使われる。あるいは例2、農業者の人口減少の課題の解決には、センサや気象データのAI解析による農作物の生育や病虫害の予測等が可能になるということ。そして3つ目、地方における医療の偏在の問題に対しては、オンライン診療などが課題解決として挙げられております。
一方で、現在の社会においては、情報技術が認知や行動に与えるリスクも指摘をされているところでございます。丸1にございますように、子供たちは既に常時ネット接続の環境にあるということが言われております。丸2にありますように、例えば、下にフィルターバブル現象とありますけれども、自分の好む情報だけに囲まれて、多様な意見から隔離されやすくなるような現象、あるいは右側、同じような意見が閉ざされた空間の中で反響して大きくなっていくエコーチェンバー現象、こういったものの理解が不足していると、情報を正しく評価できずに、社会生活で誤った判断を下す危険性があるということも指摘をされております。
また、丸3にありますように、我が国では偽情報・誤情報の認識率が他国より低いというデータもございますし、また、丸4番のところでありますけれども、例えば、情報の発信源を確認するであるとか公的な情報を確認するといったネット情報の信頼性確認の割合、これらについても他国よりも大幅に低いというデータもございます。また、丸5にございますように、SNS等に起因する児童の被害、これも近年増加傾向にあるという状況でございます。
その一番下のところにまとめましたけれども、このような負の側面が生じる仕組みを理解し、適切に対応できる力が今求められるというふうに言えると思います。このことは、情報技術をより適切に活用する力にもつながるのではないかと考えております。
次の点でありますけれども、国際的に見ると日本のデジタル競争力は31位ということで、特に人材のスコア、デジタルスキルのスコアが低いという状況になっております。
そのような状況の中で、これは小中高大、そして社会人も含めて、デジタル人材育成関連の施策を政府全体として進めてきておりますけれども、本日の議論の中心になるリテラシーレベルの小中高のこの辺りが十分かどうかというところが議論されるべきではないかなと思っております。
前提の2つ目でありますけれども、情報活用能力の育成の現状と課題について申し上げたいと思います。
まず1つ目、これは文部科学省で実施している情報活用能力の調査の結果を示したものでありますけれども、情報活用能力調査では、例えば、基本的な操作、問題解決・探究における情報活用、プログラミング、情報モラル・セキュリティなど様々な観点から問題を出題し、その結果をレベル1からレベル9まで分類しておりますけれども、ここに示しておりますように、政府の目標では、小学校ではレベル3以下の割合を20%以下にする、中学校ではレベル5以下の割合を20%以下にするという目標を掲げておりますが、現状ではまだまだそこに至っていないという状況でございます。
また、1つだけ、この情報活用能力の具体的な例を御紹介しますけれども、この情報活用能力調査ではタイピングの能力もはかっておりますが、右にありますように、小学校では1分間に40文字、中学校では1分間に60文字を目標にしておりますけれども、その上にありますように、現状ではまだここに至っていないということであります。一番左のところを見ていただきますと、1分間で10文字も打てない小学生・中学生も一定割合いるという現状がございます。
また、同じく情報活用能力調査の学校質問紙調査の結果を取ってきておりますけれども、3~4割ぐらいの学校では情報活用能力の系統性を意識していないという結果が出ております。
次に、PISA2022の結果をお示ししておりますけれども、ICTを用いた探究型の学習の頻度、これがOECD加盟国と比べると非常に低い状況であるという課題も明らかになっております。
他方で、こちらは全国学力・学習状況調査の知見でありますけれども、課題解決に向けて話し合い、まとめ、表現する学習活動を行うこと、そして、そのような場面でICTを活用すること、この両方に取り組んだ学校は各教科の正答率が高いという知見も得られております。その一番下のところでありますが、探究的な学習の過程において情報技術を活用することは一定の効果があるものの、各種調査結果から見れば、その活用頻度は国際的に見てかなり少ないという状況にあるのではないかと思っております。
もう一つ、PISA2022の結果からでありますけれども、コンピュータやプログラミングへの興味・関心はOECD平均並みではありますけれども、それに対して、実際にできるかどうかという自己効力感についてはOECD平均よりも非常に低いという状況も出ております。
最後に、情報教育の国際比較でありますけれども、これは日本産業技術教育学会の資料等を基に文部科学省でまとめたものでありますが、一番下のところに書いてありますように、二重丸については、必修科目として明確に位置づけられて、体系的・重点的に扱われている。丸は、必修科目または関連科目の中で、一定程度の学習が行われている。三角、バツはそこに書いてあるとおりですが、こういった観点でまとめてみると、これは小学校でありますけれども、ほかの国に比べて十分とは言えないのではないかということでございます。
同じように中学校についてまとめた資料はこちらでありますけれども、中学校についても同じような課題があるのではないかと考えております。
前半最後のページでありますけれども、今申し上げたことをまとめますと、今議題になっている2040年代以降の社会を考えると、情報技術のさらなる進展が想定され、情報技術を活用した社会の課題解決は加速度的に進むと予想されています。2つ目の丸、情報活用能力は学習の基盤となる資質・能力でありますけれども、特に探究的な学習の過程でも発揮が期待されるところでありますが、その育成は不十分であると。そして3つ目、ノーコード、生成AIなど「デジタル技術の民主化」と言われることが起こっておりますけれども、こういったことが進んでいけば、専門家だけではなくて、誰もが思いや願い、意志を具現化するチャンスを広げることができる、こういった社会がやってくるだろうと。一方、現状としては、デジタル競争力は国際比較では日本は低位でありますし、デジタル人材の不足も指摘されております。また、デジタル化で生じている負の側面にも十分な目配りが必要であります。情報技術の仕組みとそれらが認知や行動に与えるリスクを理解し、適切に対応できる力を育成していく必要があると考えております。
これをまとめますと、一番下の矢印でありますが、学校教育において情報活用能力が系統的に指導されておらず、その育成が十分とは言い難いというのが現状の認識であります。
前半パートは以上でございます。
【栗山教育課程企画室長】 今のここまでの寺島課長の御説明を踏まえまして、情報活用能力に係る具体的な論点について御説明をいたします。
まず、こちらは、情報活用能力について現行の学習指導要領の解説において定義をしているものなのですけれども、情報活用能力は、情報及び情報技術を適切かつ効果的に活用して、問題を発見・解決したり自分の考えを形成したりしていくために必要な資質・能力であるということなどが整理されているものでございます。
そして、ここからが情報活用能力に関わる現状と課題であります。
左側が、まず学習指導要領上の位置づけでありますけれども、小学校については、総則において、各教科等の特質に応じて、ア、情報手段の基本的な操作などの学習活動、あるいはイ、プログラミングの体験などについて、一定の規定がなされております。その上で、各教科等については、特に総合的な学習の時間において、探究的な学習の過程におけるコンピュータの適切な活用等についても配慮を求めているといったような記載ぶりになっております。また、中学校については、総則のほか、技術・家庭科の技術分野の内容の一つである「情報の技術」の領域において指導項目を定めております。また、高等学校については、総則のほか、「情報科」、具体な科目としては「情報」のⅠ、Ⅱで指導内容を定めています。このうち、情報Iは必履修科目となっているという状況でございます。
その上で、先ほどの寺島課長の説明も踏まえて、顕在化している課題について整理をしております。
丸1、まず、指導内容が不十分ではないか。小学校ではコンピュータやネットワークの仕組の理解が扱われておらず、情報技術の活用と適切な取扱いが現行では中心となっている現状がございます。また、中学校でもコンピュータやネットワークの仕組の理解やデータ活用が十分に扱われていないという現状があるかと考えております。全体として、生成AI等の先端技術に関わる内容が明確に位置づけられておらず、情報モラルやメディアリテラシーの育成については、学校による取組の差が大きいのではないかといったことを整理しております。
続いて丸2、小中高通じた育成体系が不明確ではないかという点であります。小学校では、教科等に明確な位置づけがなく、授業時数や指導内容の具体が示されていないため、地域や学校による差が大きいのではないかということ。そして、小学校での指導内容と中学校の技術・家庭科の技術分野、具体には「情報の技術」の領域でありますが、そこの部分や、あるいは高等学校の「情報科」との体系が明確になっていないのではないかといったこと。そして、探究的な学習の質の向上のために情報活用能力が重要であるものの、十分な連携が図られていないのではないか。こうした課題があるのではないかと考えています。
そして丸3、必要となる条件整備についてです。中学校技術の免許保有状況などについて、指導体制の改善を一層加速させる必要があるのではないかと考えています。また、技術の進展に伴いまして、教育内容が妥当性を失うことを防ぎ、教師の負担を可能な限り減らす仕組みを構築する必要があるのではないかと考えております。
ここまでが課題であります。
こうした課題を踏まえまして、改善の方向性と具体的な論点(案)についてお示ししております。
まず左側、丸1、小中高通じた体系的・抜本的な教育内容の充実についてであります。
小中高それぞれにまとめていますが、まず、小学校段階について、体験的な活動の中で情報活用能力を育む重要性を踏まえまして、一定の時間を確保した上で、発達段階を踏まえつつ、総合的な学習の時間における探究的な学習との具体的連携の在り方を検討してはどうか。その際、自己の生き方を考えていくための資質・能力を育成するという、探究の特質が十分に発揮されるよう留意するとともに、情報活用能力が各教科等の探究的な学びの深まりに資することにも留意すべきではないか。そして3つ目、情報技術の活用、適切な取扱い、特性の理解について、中学校との系統性を意識して検討してはどうか。とりわけ、情報技術が認知や行動に与えるリスクに留意すべきではないかといった点についてお示ししております。
続いて、中学校段階です。より発展的に情報技術を理解・活用して問題発見・解決する力を育成する観点から、中学校技術・家庭科の技術分野の領域「情報の技術」を引き続き受皿と位置づけ、大幅な充実を図ってはどうか。具体例としては、コンピュータやネットワークの仕組の理解、データ活用などの充実についてです。また、技術・家庭科の技術分野の他の領域、「材料と加工」や「生物育成」、「エネルギー変換」といった他領域との関わりも強化してはどうかと考えております。そして、小学校同様、その際、情報技術が認知や行動に与えるリスクについても留意すべきではないかと考えております。また、こうした充実を図る際、現在の技術・家庭科の在り方について、現状、教員免許も別になっておりますし、具体に指導する担当の教員も別になっている。また、成績評価の際は1つの教科として記載をすることになっており、例えば、評定について技術で5、家庭で3といったような状況だと評定としては4になると。そういった実態がある中で、今後、技術・家庭科の在り方をどのように考えるかといったことも論点ではないかと考えております。
そして、高等学校段階についてです。小・中学校で新たに整理した内容の系統性を踏まえ、情報科の内容をさらに充実する方向で検討してはどうか。その際、高等教育段階での数理・データサイエンス・AI教育の動向や社会人のデジタルスキル標準などの個人の学習や企業の人材確保・育成の動向も踏まえた検討を行ってはどうかと考えております。
続いて右上でありますが、こうした教育内容の充実のためには、改訂を支えていく十分な条件整備が必要ではないかと考えております。中学校技術の免許保有状況などについて、策定済みの指導体制に係る改善計画を着実に履行していくことに加えて、全面実施を待たずに、指導主事を含めた研修機会の拡充や環境の整備の推進などについて総合的な支援を行ってはどうかと考えております。加えて、技術の進展に伴って、教育の内容が妥当性を失うことを防ぎ、教師の過度な負担を避ける観点から、現場が手軽に使える動画教材など国が提供することを検討してはどうか。これらに加えて、地域人材や企業等との連携の可能性も検討すべきであると考えております。
そして丸3、改訂後についても教育課程の改善等、更なる変化への対応が必要ではないかと考えております。情報技術の加速度的な進化に対応した指導内容の刷新を図る観点から、教科書検定のサイクルを念頭に置きつつ、学習指導要領解説の一部改訂をタイムリーに行うことを検討すべきではないか。そして、教科書でも対応し切れない変化も見込まれますので、そうしたことのために、国が必要に応じて指導の手引きやデジタル教材といったものも提供して教育内容の充実を支えていく、こうしたことが必要ではないかと考えております。
ここまで御説明をした内容について整理したものが、こちらの補足イメージのページであります。情報活用能力の抜本的向上に係る主な課題として整理しております。
既に御説明したように、小中高を通じた育成体系が不明確であることや、他国と比べ指導内容が不十分であることなど、課題や具体的論点を踏まえて、情報活用能力の抜本的向上に向けた内容面の充実の方向性については、(1)どのように情報技術の活用の実態を高めていくか、そして、(2)内容として不足している部分の充実という方向で整理していくことが重要ではないかと考えています。
活用の実態についてはこの丸1の部分、また、内容として不足している部分の充実については2、3の部分でありますけれども、情報技術の丸1、活用となっている部分でありますが、具体的には、情報技術の基本的な操作や情報技術を活用した情報の収集、整理・比較、発信・伝達等に関することについてでありますが、具体的な課題として既に申し上げたように、小学校において教科等に明確に位置づけがなく、地域や学校による差が大きいといった現状があると考えています。また、探究の学習の過程において情報技術の活用が十分ではないといった課題も既に御説明を申し上げました。
そして、適切な取扱い、情報モラルや権利と責任等についてですが、右側、具体的な課題において、ファクトチェックなどのメディアリテラシーについて学校の取組差が大きいのではないか。そして、急速なスピードで広がる負の側面への対応、具体的にはフィルターバブルやデジタルとアナログの適切な使い分け、そしてデジタルとの適切な距離の置き方、こうしたことについて課題となっているのではないかと考えております。
そして丸3、特性の理解でありますけれども、コンピュータの仕組みやデータ活用、こうしたことに関する理解。具体的な課題についてでありますが、小学校では、現状、扱われていないのではないかということ。そして、中学校では技術分野の一部での取扱いにとどまっているのではないか、産業や職業との関連も弱いのではないかということであります。そして、学校種を通じ、生成AI等の先端技術に関わる内容が明確に位置づいていないのではないかということであります。
御説明した課題を整理するとこのようになるのではないかと考えているところです。
また、中学校の技術・家庭科の技術分野について、先ほど申し上げたように、「情報の技術」のDとされている領域以外の3つの領域でありますが、全体について少し整理したものがこちらの補足イメージ丸2であります。
技術分野の現状と課題については、現代のものづくりについて考えますと、デジタル技術の恩恵で大きく変化しています。産業現場ではデジタル技術の活用が急速に浸透している状況がありますし、加えて、ノーコードあるいは生成AI、こういった技術が進化していく中で、「デジタル技術の民主化」とも言われるような状況があります。一人一人の思いや願い、意志を具現化し得るチャンスというものが広がっていると考えておりますし、多くの子供たちは地域で経済を担っていくことになりますが、エッセンシャルワーカーとして働く上でも、デジタル技術の活用を進めることで生産性の維持・向上を図っていける余地も非常に大きいのではないかと考えております。
こうした視点で現行の学習指導要領を見てみますと、課題があるのではないかと考えておりまして、具体的には、(1)デジタル技術の学習がD「情報の技術」の領域に閉じており、内容についても諸外国と比べて十分ではない部分があるのではないか。また、(2)他の3領域、Aが「材料と加工」、Bが「生物育成」、Cが「エネルギー変換」、こういった領域が現状ございますけれども、こうした領域についてデジタル技術との関連が図られていないのではないかといったこと。そして(3)全体として、技術を生かして一人一人が実生活・実社会の課題解決を行う取組が不十分ではないかといったことであります。
こうした課題を踏まえまして、以下の方向で改善を図ることとしてはどうか。詳しくは、今後、ワーキンググループ等での検討になるかと考えておりますけれども、まず、右下、(1)の部分でありますけれども、既に申し上げたように、情報技術の活用、適切な取扱い、特性の理解の観点から、大幅な充実を小学校段階での改善を踏まえて図るということ。そして、他の3領域の基盤と位置づけていくことも必要ではないかと考えております。
その上で、上の部分に行きまして(2)でありますけれども、A、B、Cの3つの領域について、3Dプリンタやセンシングデータ、シミュレータの活用等、情報技術との関わりを強化する観点から、取り扱う内容を充実する必要もあるのではないかと考えております。
そして(3)、左側でありますけども、4つの領域を横断する内容を含めて、技術を活用して実生活・実社会の課題を探究的に解決する内容の充実を図ってはどうかと考えております。
こうした方向性に基づいて、本日御発表いただく沖縄市立美東中学校さん、また、うるま市立具志川中学校さんは、先進的にお取組をいただいている学校となっているところでございます。
そして、ここまで御説明した内容を総括的にまとめたものがこのページ、最後のページでございます。小中高それぞれについて補足イメージとしてまとめておりますので、簡単に御説明申し上げます。
まず、小学校についてでありますけれども、現状は、各教科等、学習活動全体を通じて学ぶことになっている、逆に申し上げれば、どこで何を学ぶかということについては明記されていないというのが現状であります。これについて改善の方向性として、その下の部分でありますけれども、今後、一定の時間を確保して内容を教えていく。これについては、春日井市さんから本日、具体的な事例として御発表いただきますけれども、総合的な学習の時間における探究的な学びとの具体的な連携の在り方にも配慮しながら検討を進めていければということを考えております。これが小学校段階。
そして真ん中、中学校段階でありますけれども、中学校段階では、技術・家庭科の技術分野の情報の領域、4分の1の領域において今学んでいるという状況がございます。これについて先ほど既に御説明を申し上げたように、この下の部分でありますけれども、改善の方向性については、学ぶ内容を深め、広げていく。「情報の技術」以外の領域でも、産業の現状も踏まえて、情報技術活用の観点を重視していくべきではないかと考えているところであります。
そして高等学校段階が一番右の段階でありますけれども、情報科で現在、情報Iが必要履修、そして情報Ⅱの選択科目として学んでいる状況がありますが、改善の方向性として、一番濃い色となっておりますが、丸1、丸2、つまり義務教育段階の検討を踏まえて、情報科の内容を深めるという方向で改善をしていくべきではないかということを考えております。
これらについてでありますけれども、本日、堀田主査代理の御発表や、既に少し言及した学校のお取組などの御発表、これを踏まえた御議論をいただいて議論を深めていただいた上で、具体の改善の方向性については、一番下の部分にございますように、探究との具体的な連携の在り方とともに検討する必要があると考えておりますので、質の高い探究の在り方を議題とする5月22日の特別部会も併せてさらに議論を深めることができればと考えているところでございます。
最後に、論点資料補足資料について簡単に御説明を申し上げますが、関係の資料を様々掲載しておりますけれども、1点だけ補足をいたしますと、宮城教育大学附属小学校は、研究開発学校として、「小学校情報科」を情報活用能力を育成する教育課程の要として位置づけられておりまして、情報技術などを用いて問題の発見・解決などを行う実践的・体験的な学習を展開されています。とりわけ、情報の科学的な理解に裏づけられた情報活用能力の育成を核に据えられまして、児童が情報をよりよく活用したり、情報社会に参画したりするための資質・能力の基礎を育成されるお取組をしていますので、御参照いただければと思っております。
事務局からは以上でございます。
【貞広主査】 ありがとうございます。
部会の後半では、今御説明いただきました諸資料を土台として委員の皆様からの意見を頂戴したいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
続きまして、授業実践の御発表に移ります。
まずは、研究開発学校として情報活用能力の育成に向けた取組を進めていらっしゃる春日井市より御発表をお願いいたします。
【春日井市教育委員会(水谷)】 春日井市教育委員会教育研究所の水谷でございます。本市での情報活用能力育成の実践につきまして、研究開発学校である出川小学校の校長とともに実践報告をさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
愛知県春日井市は、名古屋市の北東部に位置しているこのような自治体でございます。
本市では、GIGAスクール構想以前から、生涯にわたって自ら学び続けるための探究的な学習過程を重視してきました。1人1台端末とクラウド環境の整備が完了し、基本的な操作の指導を行った上で、課題の設定、情報の収集、整理・分析、まとめ・表現で、必要なことを各学年各教科で指導してきたことにより、子供たちの学びの姿が変わってきました。
しかし、情報活用能力が様々な学習場面で身に付く一方で、系統性が分かりにくいという課題がありました。また、各教科で教え直したり、それぞれの先生の得意・不得意に左右されたりするなど、無駄も多かったため、研究開発学校の指定を受け、「情報の時間」としてカリキュラムを編成することにしました。
研究開発学校では、このような研究構想で情報活用能力を育成し、各教科等の学習や学校生活のあらゆる問題解決的な場面で発揮できるように進めてきました。
先ほどお話ししたように、子供たちの学びは変化して、様々な事例が出てきましたが、先ほどお伝えしたように、一時的な取組ではなく、持続可能な取組にしていくことに課題がありました。そのため、これまで取り組んできたことを系統立てて整理し、まとまった時間を設けて指導することが必要と考え、研究開発学校の指定を受け、「情報の時間」のカリキュラムの作成を行いました。
まずは、これまでどのようなことを指導してきたのか、その取組を調査し、その内容を整理しました。
そして、重複をなくしたり、無駄なく学ぶために、学ぶ順序や時期、回数などに気をつけたりして整理し、さらに、学年が上がるにつれて順に深まっていくように系統性を意識して作成しました。
なお、個別の情報技術を活用するスキルを一つ一つ教えて終わりではなく、活用・実践することまで含めた授業が行われるように、単元を通して解決する課題を設定し、児童生徒が問題解決的な学習を経験することを意図して編成をしてきました。
「情報の時間」で育成する情報活用能力は、もちろん各教科の学びを深めます。これは一例ですが、3年生の算数「グラフや表に表そう」という単元では、グラフ自動生成ツールを活用し、データの整理・可視化を学び、それが算数の「表とグラフ」の学習に生かされました。情報の見せ方や伝え方を工夫する姿が見られ、教科横断的な学びの深まりにつながりました。さらに、この学びが「情報の時間」の「学校で安全に生活しよう」での説明スライドでのグラフ作成に生かされていきました。
編成したカリキュラムを基に系統立てて指導することで情報活用能力が育成され、それが探究的な学習の過程においても効果的に働き、各教科の学習はもちろんのこと、授業以外の様々な場面でも、主体的に学んだり活動したりするための基盤になります。
この後、出川小学校の校長のほうから、出川小学校での事例をその効果などにも触れながら紹介していきます。
【春日井市立出川小学校(仲渡)】 春日井市立出川小学校校長の仲渡です。
出川小学校は、スライドの下にあるような小学校です。この5点について、本校での研究開発学校の取組を御紹介いたします。
御紹介する5点は、先ほど見せた研究構造図のこの部分になります。
初めに丸1、「基本的な操作」について2つの事例を御紹介します。「情報の時間」では、カメラ機能の使い方や伝わる写真の撮影方法を体験的に学び、写真の保存場所、クラウドの使い方も指導しました。生活科「いきものとなかよし」では、観察対象を大きく、特徴が分かるように撮影し、スライドに貼りつけて、クラウドで提出するまでできるようになりました。
従来のホワイトボードでは意見共有に限界があり、特定の児童だけが作業を進めることもありました。情報技術を活用することで、一人一人が自分の意見をリアルタイムで共有・編集・コメントできるようになり、思考を深める学びが実現しました。意見の共有人数やスピードも向上し、課題を自分ごととして捉える姿が増しています。
次に、丸2の「問題解決の基礎」の事例を4つ御紹介いたします。
6年生のプログラミングでは、「生活をよりよくする仕組みをつくろう」というテーマの下、プログラミングで学校課題の解決に取り組みました。児童は困りごとの動画を集めてスライドに整理し、取り組む課題を検討、自ら課題を設定する姿が見られました。
4年生、「学級のみんなで楽しめるレク」の実現に向け、必要な視点を学び、児童がアンケートを設計・作成・集計して活動を進めました。この経験を生かして、学級目標づくりでも児童が自らアンケートを設計し、課題を基に話し合って目標を決定する姿が見られました。
4年生国語「ごんぎつね」の授業では、6月は集める項目や情報量が少なかった児童も、10月には項目が細分化され、読み取る情報量も増え、学びに変化が見られました。「情報の時間」で繰り返し取り組んできた「問題解決の基礎」や「操作スキル」、「比較・分類・関係づけ」の向上が支えとなり、単元全体の時間短縮にもつながりつつあります。
5年生理科「メダカの誕生」では、卵の成長をまとめる活動で、児童が自分のまとめを動画で撮影し、チャットに投稿、客観的に振り返りながら、動画を何度も見直して、修正・改善を繰り返しました。その中で、どうまとめれば分かりやすいか、どう伝えれば伝わるかを考え、自ら課題を見つけ、試行錯誤する姿が見られました。
次に丸3、「情報の技術」の事例を1つ紹介します。児童が「曲がり角でぶつかる」という課題を自ら設定し、近づくとセンサで感知し、警告音やライトが作動する仕組みを考えてプログラムを作成、運用の様子を動画で撮影し、振り返りを通して成果と改善点をスライドにまとめ、発表しました。この活動を通して、身の回りのものがプログラムで動いていることや、コンピュータを動かすには手順が必要であることを理解し、情報技術を活用して課題解決に役立てる力を学びました。
次に丸4、「情報モラル」について、2つ事例を紹介します。
1年生では、ホワイトボードツールでの共同編集を通じ、勝手に消さない・動かさないなどのマナーを確認。3年生では、ポップ作りを題材に、目を引く表現が詐欺広告にもつながることを学び、情報の受け手としての判断力を身に付けました。体験を通じて情報社会での適切な関わり方を学んでいます。
4年生では、チャットで起こる誤解やトラブルを招いた動画を視聴し、どんな表現が誤解を生むのか、相手に配慮した伝え方とは何かを考える授業を行いました。ホワイトボードツールで意見を整理し、自分たちで注意点をまとめて文を投稿することで、ツールの使い方だけではなく、伝え方への意識も高まりました。
最後に丸5、「生涯にわたる学び」について、3つ事例を御紹介いたします。
6年生の総合では、修学旅行で得た学びを、香港日本人学校の児童に向けてオンラインで発表。児童は自ら課題を設定し、体験を基に内容を整理、工夫して伝えました。情報技術を活用しながら主体的に学び、学びを社会につなぐ力も育っています。
児童会活動では、文化祭をやりたいという思いから、自分たちで課題を整理し、解決方法を実行。アンケート調査で得た結果を基に企画をブラッシュアップし、提案スライドを作成し、校長に発表しました。取組を通して主体的に活動する姿が見られました。
6年生社会科、「縄文のむらから古墳のくにへ」では、情報技術の活用により、児童の興味や進度に応じた学びが可能に。6年生は、タブレットで古代国家の情報を収集・整理し、スライドにまとめて発表。意見交換ツールを使って協働的に考察を深め、主体的・対話的に学ぶ姿が見られました。教師は、行き詰まった児童へ個別支援も行いました。
ここからは、児童、教師へのアンケートの結果についてお伝えします。
こちらは、3年生から6年生までの児童を対象に行ったアンケート結果です。「情報の時間」でどんな力が身に付いたか、他教科でどう活用しているかという設問に対し、中学年ではタイピングや情報収集、高学年になると整理・分析、まとめなど、より高度な活用力についての記述が増えていました。
こちらは、同じ児童116名に対し2年間継続して行ったチェックリスト評価の結果です。45項目を7段階で自己評価したところ、全ての観点でスコアが向上し、特に情報の科学的な理解、つまりプログラミングやセンサに関する力の伸びが顕著でした。
全国学力・学習状況調査では、自分のペースを理解しながら学べたか、ICTで自分の考えを分かりやすく伝えられたか、ともに出川小の児童は全国・県平均を上回る結果でした。
その他、PC・タブレットを活用し、友達と考えを共有・比較したり、協力して学習を進めたりするという質問でも、全国や県の平均を上回る結果となっています。
さらに、自分の考えがうまく伝わるよう、資料や文書、話の組立てなどを工夫して発表、学んだことを生かし、自分の考えをまとめる活動についても、全国平均を上回る肯定的な回答が得られました。
さらに、令和4年から6年にかけて数値も上昇していることを確認できました。
教員からは、情報収集、整理・分析・表現のサイクルを意識した学び方が身に付き、児童が自信を持って課題に取り組めるようになった、PC操作スキルの向上で各教科の指導が円滑になったとの意見がありました。
教師アンケートでは、全教員が、「情報の時間」が教科の学びによい影響を与えていると回答し、約9割が授業時間の短縮にもつながると答えています。
例えば単元短縮の事例をお伝えすると、6年生国語「海の命」の単元では、登場人物の心情や場面・因果関係の読み取りに加え、「情報の時間」で培った要点抽出、情報整理、伝える力を生かし、情報機器を活用して内容を整理・分析できるようになったことで、6時間かかる単元「海の命」が5時間で完了。授業がスムーズに進み、第6時には「命」、「生き方」について探究的に深める課題に取り組むことができました。
平成30年度から令和6年度にかけて、出川小学校では教員の時間外在校等時間が月平均で約1時間短縮されています。児童の主体的な学びが進んだことで教師の授業スタイルも変化し、クラウドを活用した校務の効率化にもつながっています。
まとめとして成果と課題についてお伝えします。
成果として、「情報の時間」は、操作スキルの向上にとどまらず、情報活用能力が探究のプロセスに生かされ、学びの質の向上につながっています。この力は各教科や総合的な学習にも発揮され、自ら学びを進める力として定着しつつあります。また、各教科の指導が円滑になり、授業時間の短縮にもつながっていると教員は実感しています。
一方で、教員が安心して実践できる環境づくりや、児童生徒の状況を把握し、適切に支援する研修の充実が課題です。今後は、実践をさらに広げ、再現性のある教育課程の編成に生かしていきたいと考えています。
最後に、次期学習指導要領に向けてです。情報活用能力の育成に当たっては、小学校段階において系統性のあるまとまった時間の中で、操作スキルだけではなく、課題設定、情報収集、整理、表現、モラルといった力を一体的に育んでいくことが効果的であると考えます。また、情報活用能力は探究のプロセス全体で生かされ、「情報の時間」にとどまらず、教科や総合学習にもよい影響を与えています。次期学習指導要領において情報活用能力の育成を充実する際に、こうした視点を踏まえ、教育課程上、適切に位置づけられることを期待します。
以上です。
【貞広主査】 ありがとうございました。貴重な御報告に感謝申し上げます。
続きまして、情報技術の進展を踏まえて技術等の指導の充実に取り組まれている沖縄市、うるま市より御発表をお願いいたします。
【沖縄市立美東中学校(赤嶺)】 先生方、こんにちは。沖縄県から参りました沖縄県沖縄市立美東中学校の赤嶺と申します。
【うるま市立具志川中学校(神谷)】 具志川中学校の神谷といいます。よろしくお願いします。
【沖縄市立美東中学校(赤嶺)】 発表は赤嶺のほうで進めさせていただきたいと思います。質問に関しては神谷と赤嶺で進めていきたいと思います。
それでは、これから、沖縄県中頭地区で研究してきた「情報の技術」の授業実践について発表を行いたいと思います。よろしくお願いします。
私たちは、「よりよい社会を目指し、未来を創造する力を育む技術・家庭科教育」をテーマに、学習指導要領で目指されている情報の技術の見方・考え方を働かせて社会課題の解決に挑戦する授業を実践しました。
まず、中学校技術・家庭科、技術分野の役割について確認します。技術分野の授業では、新たなものや価値をつくり出すといった技術革新を牽引する力と、つくり出したものや価値が社会や環境に与える影響について考えることができる技術の発達を主体的に支える力、この2つの力の素地となる資質・能力を、世の中の製造などの技術に関わる「材料と加工」、私たちが消費する食料の生産などの技術に関わる「生物育成」、私たちが日々利用するエネルギーの生産や伝達、利用の技術に関わる「エネルギー変換」、そして、サイバー空間やデジタル基盤を成り立たせている技術に関わる「情報」、この4つの技術の学習をすることを通して育てることをねらいとしています。
今後のSociety5.0の時代では、IoT、ビッグデータ、人工知能、AIなどの技術革新が一層進展するとされています。そこで、未来に生きていく子供たちがこのような社会で自らを舵取りするために、技術分野には、テクノロジーで課題を解決する力を育成する大切な役割があると考えています。
技術分野のそのような役割を実現する授業をつくろうと考えたとき、近年普及しつつあるInternet of Things、いわゆるIoT技術に注目しました。IoTの技術は、現実世界の様々なものをデジタルの力で支えています。例えば、スマートウオッチは、IoT技術のおかげで、いつでもどこでも最新の情報を受け取り、別のところとやり取りをすることができます。スマート農業や畜産では、どこにいても作物や家畜の管理ができたり、インターネットで取得した最新の情報を反映することができます。このように、これまでの無線の技術とは違い、仕組みの理論上、遠隔でやり取りができる範囲に制限がなく、たとえ地球の裏側であっても、常に最新の有用な情報を利活用して物を動かし、課題解決を行うことができます。このことから、Society5.0を実現する技術の仕組みを学ぶことに最適であるとともに、そのような既存の技術の制限を超える技術に生徒が出会ったとき、私たちも想像しないような新しい価値を考え出したり、社会課題の解決方法を生み出したりすることが起きるのではないか、そんな生徒を育てることができるのではないかと、わくわくすることを思いついたのです。しかし、IoT技術は、現在の指導要領の内容では単純に扱うことが難しかったため、地区の研究会の先生たちと協力し、その「情報の技術」の授業内容を研究・検討し、そして実践しました。今日はその内容を詳しくお話しします。
まず、IoT授業を実施した令和4年度入学生の3年間の指導計画を示します。本校では、3年間を通して段階的に課題解決する力を育成することをねらい、1学年で「材料と加工」の技術と「情報」の技術の基礎的な学習、2学年で「エネルギー変換」の技術と「生物育成」の技術、そして「情報の技術」のコンテンツのプログラミング、そして3学年で地域防災のためのIoTシステムを開発する計測制御のプログラミングといったように、6つの題材を計画・実施いたしました。
また、冒頭で述べたSociety5.0の社会において課題解決できるよう、全ての題材の中で、デジタル技術を活用する活動を意識した指導内容を計画する工夫を行いました。そして、3学年の最後の学習では、2年間、それぞれの題材で学習した技術の内容や課題解決の力を統合し、その力を発揮・活用して社会課題の解決に取り組む、統合的に問題を解決するものづくりにチャレンジできるよう、題材の配列を工夫しました。
そして、3学年の題材では、「情報の技術」の計測・制御のプログラミングの学習を中心に、地域防災という社会課題の解決のため、IoTシステムの開発を行うという学習課題を設定しました。なお、そのための教材としてWi-FiにつながるIoT開発マイコンを学校で準備し、グループごとにこのマイコンを使ってモデルを製作することをしました。
3学年までに取り組んだ題材の内容を簡単に紹介します。
1学年のA「材料と加工」の技術では、自分の生活における問題をものづくりで解決する課題に取り組みました。構想・設計の際に3DCADを使うことで、誰でもその形や構造を試行錯誤しながら考えることができました。さらに、生徒たちがコンピュータなどの仕組みを踏まえてGIGA端末や社会で利用する情報技術を適切に活用できるようにするため、コンピュータやネットワークの仕組み、デジタルとアナログ、情報モラルやセキュリティについて学習しました。
2学年のC「エネルギー変換」の技術では、コンテスト形式で機械機構、つまりロボット技術での課題解決に取り組みました。また、3学年で使うIoT開発マイコンの組合せを体験的に理解するため、ロボットをIoT開発マイコンと組み合わせて改良する課題解決にも取り組みました。また、B「生物育成」の技術では、デジタルでの記録を行い、作業や環境調整に活用して、栽培目標の実現といった課題解決に取り組みました。さらに、ネットワークを利用した双方向性のあるコンテンツのプログラミングによる問題解決の授業では、文部科学省提供の「オンライン対戦ゲームをつくろう!」を利用し、通信を利用したコンテンツのプログラミングによる課題解決に取り組みました。
それでは、3学年で取り組んだ授業を紹介します。3学年のD「情報」の技術、(3)計測・制御に関するプログラミングによる問題の解決の授業では、地域防災・安全に役立つ計測制御システムの製作をテーマにいたしました。テーマ設定の理由としては、生徒たちにとって地震・津波等の災害が身近な問題となっており、授業を行った年には津波警報が発令され、避難指示が出される事態が発生し、防災教育の必要性を感じていたからです。授業では、IoT開発マイコンを活用し、グループごとに解決に取り組む問題を見いだし、課題の設定を行い、解決策となるIoTシステムの類似モデルの開発を行い、情報技術による課題解決の力の育成を図りました。
画像の写真は、あるグループが、被災地に救助者が行くと2次災害に遭う危険があるという問題を見いだし、安全な場所からロボットを遠隔操作し、被害者を発見し、救助を要請する課題を設定したシステムのモデルです。このモデルを製作する際には、写真のように、「材料と加工の技術」や「エネルギー変換の技術」、「情報の技術」などの知識・技能、そして課題解決への意欲や実行する力が発揮されており、指導計画でのねらいどおり、1、2学年で学習した資質・能力が生かされていました。
これは、課題解決の最中、先ほどの人命救助ロボットの動作を確認している様子です。左のタブレットに表示されているアプリでロボットの移動を遠隔操作しています。ロボットは、人感センサで人を発見すると、右側のタブレットに救助者を発見したことを通知し、音声が流れます。右側のタブレットからは、ロボットに対して救助者へ救助が必要かどうかの音声を流すことを選択しました。現場の救助者が黄色いボタンを押すと、避難者への指示をロボットが出しています。もちろん、このことはロボットが地球の裏側にいても可能です。
これは、別のグループのモデルです。地震発生時に建物のドアや窓枠が変形し、避難できなくなるという問題を見いだし、地震が起こった際、センサで揺れを感知し、自動でドアを開けたり、遠隔でドアを閉めるという課題を解決しています。
これも、別のグループがモデルを製作している最中の様子です。津波が押し寄せるという状況下において、スマホを持っていない高齢者が災害に気づかないという問題を見いだし、水位が上昇すると危険を知らせるという課題を解決します。
成果として3点あります。
1点目は、身の回りの製品や社会で働く技術を、デジタルとリアル、つまりコンピュータ制御と機械的制御に分類し、それぞれの仕組みを意識して考察する姿が見られるようになったことです。最先端の自動で動作する技術やシステムなどもブラックボックス化せずに、仕組みを見極めて、安全に効果的に利用したりすることが期待されます。
2点目は、モデルのアイデアを形にするに当たり、タブレットPCなどの情報技術を活用して、課題解決に必要な知識を主体的・探究的に学んだり、各内容の技術に関する知識を横断的に発揮したりする様子が見られたことです。これらは、1学年から「情報の技術」の内容と他の内容を結びつけて課題解決を行う授業を展開した成果だと思います。ただ、3学年のモデルづくりではプログラミングで困る場面もあったので、今後は生成AIと相談しながらコードを書くといった授業展開にも挑戦していきたいです。
3点目として、課題解決の過程を生徒が振り返った際、「情報の技術」の見方・考え方を働かせて、その改善・修正について考えている様子がワークシートの記述から見られたことです。例えば、ある生徒は、「IoTシステムを活用し、モーター等を制御して遠隔操作ができるので、安全な場所から被災者へ物資を届けることができる」と回答しています。ここからは、IoTの仕組みを理解しているとともに、情報技術をこれまでの技術と組み合わせることで、今までできなかった社会課題の解決が可能になる価値を生み出せることへの気づきが読み取れます。また、解決できなかったこととして、「被災者の安全確保ができているかということや位置情報が分からない」と回答しており、より時間をかけ、よい技術を探究することで、確実な技術を考え、確立したいという思いもうかがえます。
私たちは、生徒たちが授業を通して技術による課題解決ができるようになった先には、今後もデジタル技術をはじめとした技術の発展が続く中において、技術の仕組みを理解した上で適宜適切に使ったり、価値を生み出したりすることで、他者の思いを大切にしたり、自分の思いを実現できる世界、そのような誰一人取り残されない世界になるのではという期待を持っています。また、そのような世界をつくるための情報技術などを正しく使おうとする心や考え方、人としての成長が可能なのではという願いを持っています。今回の授業実践でそのような生徒を育てられたのではないかという期待を持つことができました。
次に、課題が3点あります。
1点目は、入学当初、生徒の情報技術に関する習熟度がそれぞれで、情報の技術の活用や製作活動に差があり、最初の頃の授業づくりに苦労したことです。
2点目は、今回の授業を組み立てていくに当たり、現行の学習指導要領と合致しにくいところがあったことです。例えば、生徒たちにとってIoTシステムは既に身近になりつつありますが、授業を組み立てていくに当たり、それに対応する学習指導要領の内容項目が十分でなかったこと。また、現行の学習指導要領では、Dの(2)の双方向性コンテンツと、Dの(3)の計測制御の内容に分けて取り組む必要があり、教材の時間の確保も含めて困難がありました。そのため、今回は、Dの(3)の内容をIoTに適するように読み替えて題材を計画しています。
3点目は、生徒が発想したアイデアを十分に探究したり、具現化したりする学習が難しかったことです。先ほど、より時間をかけ、よい技術を探究し、確実な技術を考えて確立したいという生徒の思いを紹介しましたが、そのことに応えるものづくりや価値創造の方法を指導したり、十分な機会と時間を確保したりすることができなかったと感じています。
最後に、今後の教育課程に期待することをお話しします。5点あります。
1点目は、小学校において情報技術を学ぶ時間をまとめて設定することです。そうすれば、それに向けて、中学校では、より深く、技術革新を牽引する力を育む課題解決に取り組むことができると考えます。
2点目は、進展の速い情報技術や先端技術に対応できるような教育課程への改善です。全国のどこでも、生成AIなどの先端技術に対応した実践的なスキルなどを学べる内容にすることが必要と考えます。
3点目は、情報通信技術を基盤として、ものづくりの技術との融合を図る内容の充実です。例えば、IoT技術のような、リアルとデジタルをシステム化したものをつくり出す指導内容があったらわくわくしてきます。
4点目は、ものづくり、生物育成、エネルギー利用、デジタルに関わる価値創造の方法を学習指導要領に定め、そこに重きを置き、十分に時間をかけることができるような教育課程への改善を期待します。そうすることで、生徒たちへ、未来へ生きる力、先ほど述べた誰一人取り残されない世界を実現する力や思いを育むことにつながると考えています。
5点目は、これまで述べたような教育課程になった際には、教員ごとの差をなくせるよう、教師の研修を充実させたり、各地域の学習環境を整えることが必要不可欠だと考えます。そのため、教員が授業や研修で利用し、スキルアップすることに資する動画等のコンテンツが準備されることを期待します。
これで、研究及び教育課程に期待することの発表を終わります。御清聴ありがとうございました。
【貞広主査】 ありがとうございました。我々も伺いながらわくわくいたしました。ありがとうございます。
では、続きまして、堀田主査代理より、今後の情報活用能力の育成の在り方につきまして御発表をお願いいたします。
【堀田主査代理】 よろしくお願いいたします。堀田でございます。資料1-4に従いまして話を進めてまいりたいと思います。
まず、中教審の諮問の確認でございますけども、諮問理由のところに、生成AIなどのデジタル技術の発展が、多様な個人の思いや願い、意志を具現化するチャンスであると書かれております。これは、生成AIの台頭によりまして、学習というのはこれからどうあればいいのかという議論が重ねられておりますけども、人間がより人間らしく、自分の知りたいことを探究的に学んでいくことの重要性というのはさらに高まっているのではないかと考えます。
2つ目のポチにありますが、デジタル化の負の側面、これは非常に顕在化しておりまして、このことが指摘されています。
3つ目にはデジタル人材育成の強化、これは特にデジタルでビジネスをやっていくような人たちですね、その不足が喫緊の課題であるということが書かれております。
また、審議事項として期待されることに「情報活用能力の抜本的向上」があります。情報活用能力は、現在では学習の基盤となる資質・能力の一つとして学習指導要領の総則に書かれてございますけども、これを小中高を通じて抜本的向上を図る、そういう方策を検討してほしいと書かれております。
2つ目のポチは、それを具体的に言うと、小中高、現状ではこのようになっているという事務局からの説明もありましたが、これについて具体的な充実の在り方を検討してほしいと書かれています。
3つ目には、情報モラルやメディアリテラシーですね、こういう辺りについて、メディアとの付き合い方と私はよく言いますけども、こういう部分について育成強化をしてはどうかということが書かれてございます。
ちょっと色がケバくてすみませんが、学習指導要領解説に情報活用能力はこのように書いてあるというのは先ほど事務局からも説明がありましたが、ちょっと色分けをしてみました。具体的には、学習活動において必要に応じて情報を集めたり、整理したり、比較したり、保存したり、共有したりみたいな、こういうような能力と、プログラミング的思考とか情報モラルとか情報セキュリティ、やや技術理解が伴うようなものがありまして、私、今、色分けしましたが、この後検討していくときには、この丸1の部分、紫色の部分と、丸2の部分は一旦分けて考えたほうが分かりやすいのではないかと考えております。今日はこの後、そういう形でお話を進めてまいりたいと思います。
まず、紫色の部分、学習の基盤となる資質・能力として情報活用能力を捉えたときの育成強化をどう考えるかということです。先般、文部科学省から出されました『みるみる』によりますと、こういう図がありまして、これは非常によくできた図だと私は考えておりますが、教室の中で子供たちが学んでいくときに、時に個別に、時に協働、時に全体でいろんなことを議論していくわけですけども、とりわけ個別の部分は、学習者が自己調整をしながら学ぶことになりますので、個々の学習者が学習リソースにそれぞれのタイミングでアクセスすることになります。この段階で学習の基盤となる資質・能力としての情報活用能力が十分でない場合は、情報を集め損なったり、整理し切れなかったりするということになって、探究が深まらないというふうになるかと思います。
また、先ほども申し上げましたように、学習指導要領の総則にはこのように書かれておりますが、現状の課題として、小学校では、教育課程上明記されていないこともあって、情報活用能力の育成が十分ではなく、学習の基盤として機能してない場合がある。それが情報端末の利用格差から生まれているとしたら、それが子供たちの能力格差につながっていないだろうかというようなこと。加えて、最後にありますが、問題発見・解決能力や言語能力、これも学習の基盤となる資質・能力として掲げられておりますけども、これらとの関係の整理が今後必要であろうと考えております。
また、小学校だけは総則にこういうことが書いてあります。アとイと、先ほど事務局の説明にもありましたが、コンピュータで文字を入力するなどの学習の基盤として必要となる情報手段の基本的な操作というものと、プログラミングの体験みたいなことがここに書かれています。アについては、先ほど事務局説明にもありましたが、まだキーボードで十分に入力できない小学生というのは結構な割合でいるということがあります。加えて、GIGA環境によって、キーボードさえ打てればいいわけでもない、様々な形で自律的な学習を行うために必要な基本的な操作というのは膨らんでいる状況がございます。また、プログラミングの体験は、することはいいことなんですけども、それが中学校以降にどのように資質・能力として接続・発展するかということについては、現状では明記されていないという現実があります。
また、これは第4回の配付資料に載っている、これは私が関わった調査ですけども、子供たちが端末を十分に活用しているような教室の先生たちは、様々な学習活動が一種の時短ができていると言っていまして、この時短は、端末を使ったから時短という単純な話ではなくて、この端末を使って子供たちが自在に学べるような情報活用能力が育っているからこそ、こういうことが効率的に進み、ゆえに本質的な部分にもっと時間を割けるようになるということであるかと思います。
このAとして私が掲げた部分につきましては、先ほど出川小学校、もう一つ中学校があるんですけど、春日井市がこういうことについて検討されてきました。「情報の時間」を創設すること、そして、そこで体系的・系統的な育成をすることが、各教科あるいは探究的な学びに極めて効いているという報告が先ほどあったところでございます。
続いてBのお話、Bというのは情報技術に関する理解を伴う情報活用能力、デジタル人材に少し近い話になります。
確認ですが、この水色の部分を今からお話しします。
文部科学省では、令和5年の12月にこういう意見交流会の成果がまとめられていまして、これはデジタル学習基盤の特別委員会で報告されたところでございますけども、これは何かというと、情報活用能力の育成に向けていろいろな有識者に意見を聞いたというものでございまして、その中にこういうことが書かれています。
1つ、赤いところですね。デジタル人材育成の中核を担う教科というのがやっぱり必要ではないか、それは中学校の技術・家庭科の技術分野が適切ではないかというようなこと。そして、技術分野全体としてデジタルの要素を盛り込んでいくことが必要ではないかと。これは先ほどの沖縄の中学校の御説明がありましたけども、こういうことがこの段階でも指摘されておりました。
また、情報モラル教育という観点で、子供たちがメディアに触れていくというようなことを考えたときに、デジタル技術の活用を前提として情報モラル教育が行われるべきだろうと。ややもすると、学校現場はデジタルの活用をむしろ阻む形で過度に禁止するみたいなことが起こっていて、そうすると子供たちは家庭で勝手にいろいろやりますから、適切な利用の仕方は学習しないままであると。結果として、生徒指導案件になりがちになると。つまり、学習指導としての情報モラル教育はどうあればいいかということが一つの議論になるかということでございます。
ただ、この情報モラルのモラルという言葉が、何となく相手の気持ちを考えるみたいなところがクローズアップされがちで、実際は情報モラル教育の守備範囲としては、健康との関わりとか、情報社会における権利のこととか、特性や仕組みを踏まえて適切に使うにはどうするか、社会の在り方をどうするかということが含まれているんですけども、そこに誤解が生じがちであるかもしれないというようなことを挙げております。
また、こういうことについては発達段階を踏まえた指導が必要ですが、とりわけ今日、フィルターバブルやエコーチェンバーなどの現象がありますので、これらについてしっかりと教えることが必要になっていますが、これらを教えるためにはある程度の技術の理解が進まないと、なぜそれがやってはいけないことなのか、気をつけなければいけないことなのかということが分からないだろうというようなことですね。加えて、一番下に書きましたが、子供たち一人一人がメディアとの距離感みたいな、このバランスを自己調整していくということが必要とされるのではないかというようなことでございます。
宮城教育大学附属小学校、これも研究開発学校の一つですけども、こちらもBについて研究しております。先ほどの春日井市の研究に比べますと、もう少しコンピュータサイエンスに寄ったところで研究されております。テーマの一つはSTEAM教育ですね。これを踏まえて、情報技術や情報社会の仕組みなどを踏まえた発展的な情報活用能力の研究をされているところです。これは参考資料のほうに掲載されてございます。
まとめと提言をお話しいたします。ちょっと見にくい資料になって恐縮なんですけども、先ほど事務局からありました補足イメージですね、情報技術の丸1「活用」、丸2「適切な取扱」、丸3「特性の理解」というふうに図式化されておりましたが、このことと先ほど私が提案した色分けしたものとの関係はこのようになります。
まず、Aの部分、つまり学習の基盤となる資質・能力として機能する部分は、それは当然活用しながら身につけ、そして活用で発揮されるものであり、活用体験をいろいろやっているうちに、こういうことは適切な取扱いじゃないから気をつけようとか、そういうことはやってはいけないなということ、丸1から始まって丸2の学びにつながっていくようなこと、これがAかと思います。一方で、Bの部分、情報技術の理解が前提になるものについては、丸3をしっかりと学ぶことによって、こういう技術の特徴があるから社会にこういう影響を与えているのだという知識が駆動して適切な取扱いになるというような、丸3から始まる丸2の学習につながるのではないかと考えておりまして、上から来るものと下から来るものというふうに整理できるのではないかと。小学校段階では、どちらかというと上から来るものをより重点化していき、中学校ぐらいからは、高校はもちろんですけども、丸3が踏まえられて丸1や丸2をやっていくようになるべきではないかと考えております。
提言として、書きました。
1つ目は、先ほどのAに関係することでございまして、学びを自律的かつ探究的にするための情報活用能力の育成についてでございます。これは、まず1つ目、情報活用能力は、探究的な学びの学習過程において出てくる情報の収集や整理や表現などの学習場面で機能するものとして、しっかりと明確に位置づけるということをしてはどうかと。つまり、探究的な学びを支える情報活用能力であると位置づけてはどうかということです。
2つ目の黒ポチですが、総合的な学習の時間が探究的な学習と一番深い関係だと考えれば、探究のプロセスを自律的に駆動するために必要なものとしての情報活用能力、これを総合的な学習の時間と関係させる形で学習内容を明示し、小学校段階で教育課程上の確保をするということをしてはどうかということでございます。
なお書きで下に書きましたが、これ、先ほどの情報活用能力が育っていれば時短が起こるということの話ですが、これは単に時間が効率的になるというだけではなく、本来的なことに時間を振り向けることによって、より個別最適な学びが実現しやすくなる、主体的・対話的で深い学びが実現しやすくなる、あるいは柔軟な教育課程の具現化によって子供たち一人一人を包摂するような教育が行いやすくなるということを主張しているものでございます。
続いて、先ほどのBに当たるところでございますが、情報技術の理解を伴う情報活用能力の育成強化としてですが、現在、高校ではもう既に教科「情報」はありまして、先般より大学入学共通テストにも「情報」の出題がされております。大学では数理・データサイエンス・AI教育がすでに行われておりますので、高大接続のところは充実してきたところでございます。一方で、中高の接続はまだ十分ではないように考えられ、それはやっぱり、義務教育の最終段階である中学校において情報技術の理解を伴う情報活用能力の育成が十分とは言えないからではないかと考えております。先ほども申し上げたように、STEAM教育の充実が社会的要請だと考えれば、現在の技術・家庭科の技術分野を大幅に改善して、情報技術の理解を伴う情報活用能力の育成の中核として位置づけるのが望ましいのではないかと。また、事務局からのお話にもありましたが、現在は家庭分野と一緒になっておりますけど、これ、評定だけの問題ではなく、様々な意味で合理性があるのかというようなところが気になるところでございます。もちろん、両分野が一緒になることによるよさを工夫した実践は幾つもありますけども、むしろ分けて考えたほうが、家庭科は家庭科で体系的な教育ができるだろうし、技術は情報の部分とつなげていろいろできるのではないかと考えております。
私からの提案は以上でございます。
【貞広主査】 ありがとうございました。
それでは、後半の質疑に先立ちまして、16時55分まで休憩を取りたいと思います。再開の後に質疑応答、意見交換の時間とさせていただきます。よろしくお願いいたします。
( 休憩 )
【貞広主査】 それでは、議事を再開いたします。
実際の意見交換に先立ちまして、基礎自治体の教育長として第1期GIGAスクール構想に先んじて1人1台端末を活用し情報活用能力の育成に力を入れて取り組んでこられた戸ヶ﨑委員より、まず御発言をいただきたいと思います。お時間、恐縮ですが、6分程度でお願いできればと思います。よろしくお願いいたします。
【戸ヶ﨑委員】 お時間いただいて申し訳ございません。ありがとうございます。
今、御紹介いただきましたけれども、本市は、春日井市には遠く及ばない部分があるんですが、GIGAスクール構想以前からPC端末を活用しつつ、教科等の学びを深さ思考でやっていくという取組とともに、社会との繋がりの中で、自ら設定した課題を探究していく「戸田型PBL」にこれまで取り組んできました。その学びの中で特に基盤になっているのが、まさに今日のテーマである「情報活用能力」であり、情報活用能力を育成していくために獣道を進んでいくような感じで様々トライアル等してきました。課題ばかりで具体的な提案までなかなかいかないですが、お手元の参考資料1-2の中に現場の視点からまとめましたので、それに基づいて御説明をしていきたいと思います。
まず、小学校の情報活用能力の育成の課題は、先ほど来出ていますが、教科等に明確な位置づけがなく指導しにくいことが挙げられるのではないかなと思います。情報活用能力は特定の教科で育成するのではなくて、全教科等で指導されるべきとありますけれども、この指導の焦点化・重点化が弱くなりがちであったという課題があります。
また、教科等横断的な学びなどでは、どの教科の見方・考え方などが有効になるのか、子供たちが見えていないという実態もあります。だからこそ、言葉が適切かどうか分かりませんが、情報活用能力の武器であるところの「道具」の存在を自覚して、様々な問題解決の場面で探究のプロセスとしてその有効性や留意点を実感することが大切になると思っています。
その「道具」とは、情報の収集や整理、分析、解釈、表現などでありますけれども、それこそまさに探究のプロセスの基盤となります。その道具を使い倒せるように、時にブレーキとなる情報モラルやメディアリテラシー等を、逆にアクセルとなる生成AIや最新テクノロジー等を、一体的かつ重点的に育成することが必要になると思っています。
また、DIKWやDIKIWというモデルがあります。今後は、生成AIの普及によって、「情報活用能力」から、AIを活用して学びを進化させる「知識活用能力」へ進化させるべきという指摘もございます。
そういった背景から、今後は、小学校では、情報活用能力をいわゆる「鋭角的に」学び、深めるための新たな枠組みを創設して、そこでの学びを基盤として各教科等でも生かす、循環型のカリキュラム・マネジメントが必要ではないかなと考えています。
次のページです。中学校においては、情報活用等の学びをより発展させていく必要があって、高等学校では、情報科の内容をさらに充実して、数理・データサイエンス・生成AIの活用などの学習も求められると思います。
そこで具体策として、先ほど事務局と堀田先生の御発表の中にもありましたけれども、中学校では、情報技術の受皿ともなる技術・家庭科における技術分野のD領域「情報技術」の充実に加えて、他の3領域においてもデジタル技術との関連を図る中で、トータルで実生活・実社会などを意識した探究に繋がるものにすることが特に重要だろうと思っています。
また、事務局案にある情報活用能力の課題を踏まえれば、「学習の基盤となる資質・能力」の考え方も何らかの方向性で整理が必要ではないかなと思っております。
その他条件整備については、事務局資料の25ページにある、言うなれば「珠玉の一斉授業」とも言える動画教材などがありますが、それに加えて、教師が自前主義に陥らないように、デジタル技術に関する専門性を有する地域人材、企業等との積極的な連携を推進すべきではないかなと考えています。特にこうした分野では、「社会に開かれた教育課程」にとどまることなく「社会と共にある教育課程」に深化充実していくことを期待しております。
【貞広主査】 ありがとうございます。もうあふれんばかりの御知見を本当にコンパクトにエッセンスとしておまとめいただきました。ありがとうございます。
それでは、この後は自由な質疑応答、意見交換の時間といたします。御質問や御意見のある方は、会場の方も含めまして挙手ボタンを押していただければと思います。今、戸ヶ﨑委員にもお話しいたしましたとおり、委員の皆様、もうあふれんばかりの知見を本当にゆっくりお伺いしたいところなんですけれども、ぜひそのエッセンスを抽出していただき、足りない部分は後ほど議事録に残すように事務局に御連絡いただき、御発言はマックス3分以内でおまとめいただければと思っております。申し訳ありませんが、御協力をお願いいたします。
それでは、御発言を御希望された方、まず御指名申し上げます。荒瀬委員、今村委員、山本委員の順番でまずお願いします。
荒瀬委員、どうぞ。
【荒瀬委員】 ありがとうございます。質問をさせていただきたいと思います。
堀田先生のお話への質問はございません。今後の議論の中で大変重要な点を御指摘いただいたことと思って伺っておりました。
2つの事例発表につきまして御質問いたします。
まず1つ目であります。出川小学校での御発表の中で33ページのところに成果をいろいろとお書きいただいています。これ以外にもあったんじゃないかなと思ったんですけれども、その後に、課題として、「教員がより実践に取り組んでいける環境を各学校で整えていく必要がある」とお書きなんですが、現状でも相当実践に取り組んでいらっしゃると思うんですが、さらに環境を整えていくというのは、具体的にはどういったことがまだ足りないとお考えなのかということを教えていただければと思います。
それから、沖縄の2つの中学校の取組の中で、こちらは20ページでありますけれども、中学生の取組が出ています。無人走行で被災した場所に行くときに、あのタイヤでいいのかとかいったようなことは、多分生徒は気がついて、つまり、これは平らなら走れるけれども、実際の現場では走れないなみたいなことも気がついていると思うんですが、そういったことを含めて、この20ページの丸3のところに書いてある「生徒が発想したアイデアを十分に探究したり、具現化したりする学習が難しかった」という、この具現化することの難しさというのは、具体的にはどういうことをおっしゃっているのかというのを伺いたいと思います。
ちょっと長くなって申し訳ないんですけども、私、高等学校に長くおりました関係で、総合的な探究の時間とかで生徒がいろんなアイデアを出してつくった結果、さっき申しましたように、このタイヤの大きさでは実際に被災現場には行けないということに気づくことがあります。そういうことに気がつくことによって、発想したアイデアを十分に探究することにつながると思うので、ここでおっしゃっている「つながることが難しかった」というのは、どういうことなのかというのを教えていただければと思った次第です。
以上です。ありがとうございました。
【貞広主査】 ありがとうございます。御発表いただきました方々への御質問については、後ほどまとめてお答えいただくようにさせていただきます。
では、今村委員、どうぞ。
【今村委員】 3分間、頑張ります。今村です。よろしくお願いします。
今、特に中高生の世代と関わることが多い法人を運営しているんですけれども、子供たちの情報端末の活用でいうと圧倒的に動画サイトとSNSになっているわけで、そこに流れてくる動画を浴び続けているうちに朝が来たみたいな、そういう子供たちの声を聞くことがよくあります。
そんな中で、高校も倍率が低い、あるいは定員割れという時点で学ぶ意欲がなくなってしまっているという中で、この情報端末の活用をもっときちっとしていくことが、子供たちの意欲を引き出していくことに、もう一度学ぶ意欲を引き出すことにつながっていくと考えます。そのような活用が、情報端末の活用自体に慣れることよりも重要だというところにきちっと目標を位置づけるということを、今日、事務局説明でもお話しになったし、堀田先生のお話でもあったと思いますし、事例の中でもそういったお話だったと思います。とにかく子供たちが何ができるようになるかではなくて、何を知りたいと思えるようになるか、そのために情報端末をきちっと活用していくんだということを目標にしていくということを重視することをきちっと発信していく必要があると思いました。
その中で、今回の事務局提案の中の指導要領とか教科書を柔軟に変更できるということで、非常に重要な提案をいただいたと思って聞いていました。大体4年間で教科書検定があると聞いているんですけれども、それでも遅いかもしれないというところで、文科省からデジタル教材を下ろしていくという、これもいい提案だと思ったんですが、民間では既に様々なツールが開発されていて、AIを使ってAIエージェントなどのまた新しい技術も出てきているので、できれば文科省が認証していくような副教材をきちっと機動的に認証する仕組みみたいなもの、機動的に教科書検定をしていくということも大事なんですけど、民間の技術で開発されたものを文科省が認証していけば、今日御発表になったような意識が高い自治体でなくても、このAIの発展についていけない自治体でも、安心してツールを使っていいんだ、導入していいんだということを理解して導入していけるようになるのではないかと思いました。柔軟に変えますということは、変えられる自治体はどんどん変えていけばいいんですけど、やっぱりほとんど多くはついていけないという現象になると思うので、そこをどう支えていくのかというところで、民間が開発したものをどう認証していくのか、ここが重要になるなと思っています。
重ねて、「情報の時間」を拡充することは重要なんですけれども、どの時間でも情報端末を積極活用していくという状態にしていくということをどのように実現していくのか、ここについてももっともっと深めていく必要があると思いました。
以上です。
【貞広主査】 ありがとうございます。事務局の資料にも学校や地域による取組の差異というものの御指摘がありました。一つのヒントを頂戴したかと思います。ありがとうございます。
では、山本委員、どうぞ。
【山本委員】 よろしくお願いします。今日いただいた御提案が分かりやすかったのは、「学びのプロセス」の中でICTの効果や意義を話していただいたからだと思っています。また、堀田委員の提言にもありましたけども、「学びのプロセス」をしっかり重視していくんだということ発信していただく前提で、私からは、探究的な学びの基盤ということをもう少し、一言加えさせていただければと思っています。
今までの小学校での課題として、入試とか評定の影響で教育というのはある時点での成果で捉える傾向があって、そのために、同じ時間、同じ空間、同じ方法で学ぶことが教育の公平性と捉えられてきたような傾向もあります。また、「個別最適な学びと協働的な学び」が並列的に体言止めで並んだために、個別学習や一斉学習と一緒になって別々の学びと捉えた教員もいました。また、ICTと個別最適な学びは親和性があって、協働的な学びとは対極的にあるかのような捉えをしている教員も見受けられました。しかし、学びというのは、どんな学びであっても個の中で成立するものであって、一斉学習であっても、一人一人の中に学びが成立しているのかをしっかりとアセスメントして、一人一人に適した効果的な学びの手法やアプローチを考えることが個別最適な学びであって、紙でもICTでも、それぞれの長所や短所を理解した上で子供自身が選べるようになることが重要だと考えています。一人一人の関心や過去のデータに基づいたエビデンスを分析するといった上でも、ICTは効果的じゃないかと考えています。
さらに、その学びの営みをあるときには協働的に行うことで、新たな気づきや発見、思考のジャンプがあって、学びの質が高まっていくと考えます。しかし、それはゴールではなくて、また個別にリフレクションするなど個の学びに戻って、個の学びと協働的な学びが往還的に行ったり来たりしながら質が高まっていくと思います。こういった「学びのプロセス」を可視化する上でも、ICTは効果を発揮するんじゃないかと考えます。ICTの活用によって紙だけのノートで「学びのプロセス」を積み重ねていくだけではなくて、写真とか動画も含めて保存でき、他者と比較もできると考えています。
そういった観点から、私は、ICTの使い方とか資質・能力の議論にとどまらず、探究的な学びのプロセスの基盤といったときに、こういったエビデンス的な活用の仕方というのも非常に大事で、これからは探究的な学びの基盤として、小・中・高一貫した「学びのプロセス」の中で系統的に情報教育の在り方を模索していくということが大事じゃないかと思います。
【貞広主査】 ありがとうございます。学びのプロセス、探究のプロセスの基盤、幾つか重要なキーワードをいただいたかと思います。
では、引き続きまして、オンラインで前川委員、お願いいたします。
【前川委員】 次期学習指導要領の検討において最も大きな見直しをする必要がある一つが情報活用能力だと思っています。本日の資料1-1の19ページから21ページのところで寺島課長から説明のあった課題というのは、非常に深刻に受け止める必要があると思っています。これは、小学校から高校までの系統的な学習が行われていないことが大きな要因の一つだと思っていまして、例えば高校で見ますと、現状は高校に必履修科目「情報I」2単位というのがございます。ところが、この高校の「情報I」2単位で主に扱う内容は、セキュリティ、モラル、ワード・エクセル・パワーポイントなどのソフトの活用、プログラミング、ネットワーク、データベースの基礎というふうに主になっています。実際に2単位でこれだけの内容を扱うことはかなり難しく、高校段階で本来行うべきプログラミングに十分な時間が割けているわけではありません。プログラミングの中のアルゴリズム、物事を論理的に考えていく手順と考えたらいいかと思うんですけども、あるいはエラーを想定する、想定していなかったエラーが発生した場合にどう対応するか、こういったことは課題解決能力に直結していきますし、教科等横断的な能力の基盤となるものだと思っています。そういった意味で、情報活用能力を小学校段階から系統的に学んでいく、そのプログラム、カリキュラム、これをしっかりと教育課程に位置づけていただきたいと思います。
もう1点は、指導する者、教員の資質の向上です。例えば、中学校は多くの教員が技術の免許を持っているわけではありません。多くと言うと語弊があるかもしれません。講師の先生であったり、場合によっては他教科の先生が教えている場合もあります。教育委員会レベルで見ますと、中学校の技術の指導主事というのは都道府県教育委員会においても十分に配置できているわけではありません。そういったことを考えますと、指導主事を含めた研修機会の充実あるいはさらなる技術進化への対応ということで、タイムリーな改訂、手引き・教材の提供ということは不可欠だと思います。
最後に、情報活用能力の差というのは、主体的な生き方をするか、受動的な生き方をするかにまでつながってくると思っておりまして、そういった意味では、最終的に生き方の差にまでつながってしまう能力の一つと、これからの時代は言えると思います。そういった意味で、堀田先生の本日の提言について賛同させていただきたいと思います。
以上です。
【貞広主査】 ありがとうございます。
では、田村委員、どうぞ。
【田村委員】 ありがとうございます。小学校の情報活用能力の育成について、カリキュラム・マネジメントの観点から意見を述べさせていただきたいと思います。
小学校の情報活用能力については、学習の基盤となる資質・能力としてカリキュラム・マネジメントという言葉が使われ、教科等横断的に育成することが期待されてきたかと思います。それにつきまして、これだけに頼ることの難しさというものを指摘させてください。2つの面がありまして、1つは、情報活用能力の体系性、質の深まり、その点からの難しさが1点目です。それからもう一面が、各教科の固有性についても危うくなる可能性があるということです。こちらは、私も研究をしている学校に伺ったのですけれども、そこは言語能力の育成に力を入れている、教科等横断的に取り組んでいる学校だったんですけれども、とても熱心に教科等横断的に言語能力を育成しようとするあまりに、全ての教科がまるで国語の授業のようになってしまったと。そして、この教科は本当にこういうことをする教科だったのだろうかというように、教科の本質というところから離れかけて、難しさというものを訴えておられた事例に出会ったことがございます。そういったことも起こる可能性がありますので、今回御提案のあったように、ある程度まとまりのある時間あるいは教科を新設するということも将来的にあるのかもしれませんけれども、教育課程上の位置づけをして、そこのところで教えるべきことは教えていく、そして各教科において、各教科の目的を達成するためにこういったデジタルメディアを使うのが適切であれば使うというような、主と客ですね、目的と手段でしょうか、そこのところをある程度明確にしていったほうが各教科の学習においてもよい結果になるのではないかというように思っております。
そして最後に、これは蛇足かもしれませんが、この分野、大変発展が速いです、進展が速いですので、10年に一度の学習指導要領の改訂で間に合うのだろうか、この分野については5年に一度なども検討されていくことも可能性としてはあるのではないかと思います。
以上です。
【貞広主査】 ありがとうございます。
では、宮原委員、お願いいたします。
【宮原委員】 全体として情報活用能力ということを体系的に教育課程で位置づけるということにつきましては、産業界の人間としても大きく賛同するところでございます。ただ、一方で、どのように教育課程の中で位置づけるかということについては、堀田委員がおっしゃったようなAとBの切り分けというのは大変分かりやすいなと感じました。その上で2点申し上げたいと思います。
結局のところ、こういったデジタル技術、情報活用能力というのは文房具のような手段でございまして、それをどういうふうにそれぞれの学びに活用するかということについて、あまり絞り込み過ぎると多様性が失われるなということを伺いながら感じました。例えば、どうしてもデジタル技術ということになりますと、社会課題の解決あるいはプログラミングのようなところに寄りがちでありますが、例えば創作、音楽や物語あるいは美術といったようなアートの分野など、デジタル技術というのは今やいろんなところで使われておりまして、そういう分野でも使われていることを認識することで、例えば、それがフェイクとリアルということに対する理解ということにもつながっていくと思いますので、どんな題材でこういった活用能力を育んでいくのかということについてはもう少し幅広く議論をしたほうがいいかなと思いました。
もう一つは、デジタル技術の使い方を学ぶということに対して、情報や技術の時間を使ってということについては最低限は必要であろうと思いますが、先ほど申し上げましたように、私どものような民間の企業にとってみますとこれは手段ですので、手段を学ぶことで満足し、手段が目的にならないようにしっかりと教育課程の中で位置づけなくてはいけないと思います。これをやれば全て解決するということではなくて、あくまでツールであるので、何をやるかということについてはやはり別のスキルが必要、コンピテンシーが必要だと思いますので、これが目的化しないようにということについては、しっかりと位置づけないといけないと思います。
最後に追加で、情報のこういったデジタル技術については変化のスピードが速いですので、私どもとしては5年も長くて、1、2年の話だと思いますので、そこについての対応も必要だなと思いました。
以上です。
【貞広主査】 ありがとうございます。
では、会場から溝上委員、お願いいたします。
【溝上委員】 ありがとうございます。情報活用能力をしっかり教育課程、指導要領の改訂につなげていこうという辺りは、私は全面的に賛成でございます。しっかりやっていただきたいと期待します。
他方で、今、宮原委員もおっしゃいましたけれども、手段が目的化していくという辺が1つやはり懸念事項でございまして、特に総合・探究とのつなぎ方ですね、ここについてだけコメントさせていただきます。
栗山室長、大臣諮問でもありましたし、情報活用能力をしっかり総合・探究につなげたいと直接的におっしゃいますし、堀田先生も、情報活用能力、探究的な学びに明確に位置づけると。ここが扱いをしっかりお願いしたいというところです。私は、情報活用能力は基本的には各教科等にわたる教育課程全般の力だと思いますので、そういうところをかなり前提とした上で、探究につなげることは誰も異論がありませんので、そのつなぎ方ですね。特に私はこの問題、もう10年以上ずっと、高校のほうが主にはなりますけれども、SSHとかグローバルを始めとした探究を指導する中で非常に危惧してきたところでございまして、特に統計とか、あるいはデータサイエンス、そして最近では生成AIとかSTEAMとか、もう探究のプロセスを手段化していく学習ばかりが前に出てきて、探究というのは私は課題の設定に80%ぐらいのエネルギーを注いでいくものだと思うんですけれども、それよりも間のプロセスを充実させるテクニックみたいな、まさに手段が目的化していくような話ばかりが学校現場では好まれまして、場合によってはデータサイエンスに関連付けて統計の基礎を計算させる数学の授業がどんどん増えて、数学教員が非常に意欲を燃やしていくと。しかし、それだけの時間をかけて最後仕上げられた生徒の探究発表は非常につまらない。私は京大の教員のときに京大の先生たちとよく議論してきたのは、探究の統計やデータ処理は大学に入って結構短い時間で指導できるけれども、課題の設定とか、与えられない中で自分は何を問題としていくのか、問いにしていくかというのは、やっぱり小中高と系統的に育てていかないと、大学生になってから「さあ、いろいろ考えてみようね」と言ってもなかなか考えてくれない、そこを高校までの間にしっかり育ててほしいということでした。ここが1つポイントになると思います。
でも、もちろん、探究とか総合的な学習を進めていく上で情報活用能力が基盤になっていくことはよく分かっておりますので、コインの表裏だと思うんですね。ですから、今日御提案あったように、情報活用能力を「情報」、高校で言えば「教科情報」ですね、それから小学校、中学校もいろいろ捻出していくということですから、そういういわゆる「情報」という大きな時間の中でそういったものをしっかり取り出してそこで教えていただいて、そして総合とか探究の時間では、本来の目的である課題の設定に注力して、自己の在り方、自己の生き方の意義をもっともっと確認して、そしてカップリングで取り組んでいけるようにしていただければ、十分これは前に進むのではないかと期待しております。そういう方向性の御検討をぜひお願いしたいと思います。
以上です。
【貞広主査】 ありがとうございます。今強調いただいたところは、ほかの委員も、目的と手段を逆転させない、主客を逆転させない、そもそも何を知りたくて何を明らかにしたいと思うのかというところが一番大事なんだと、ほかの委員の方とも別の言葉でも非常に重なる大変重要な御指摘をいただきまして、ありがとうございます。
では、続きまして、オンラインから内田委員、お願いいたします。
【内田委員】 ありがとうございます。ちょっと古い話をしますけれども、教員なりたての頃、生徒が公衆電話の周りに並んでいて、ポケットベルを打つために数字を連打するというところが見られました。今、スマートフォンがかなり普及していて、高校生に限らず、中学生、小学生もフリック入力がかなり得意ということで、PCですとキーボード、日本の場合にはかなり数が少ないということですけれども、文字入力というのも必要に応じてスキルはどんどん上がっていくんだろうなと思います。必要性からの合理的な学習指導要領の構成というのは必要だと思うんですけれども、それが目的になってしまいますと、先ほど貞広主査からお話がありましたように主客転倒になってしまいますので、そこについては十分御配慮いただきたいなと思います。PC等の端末の活用がゴールということではなくて、活用することでできることが増えて面白いということで、例えば理科ですと、実験とかを介してインターフェースとかセンサを活用してPC等をデータロガーとして使うとか、面白さが増すような構成にうまく持っていくのが小学校・中学校・高校を通して必要なのではないかなと思います。
1点ちょっと懸念材料を言いますと、今日、中学校の技術の先生方の取組を伺うことができて非常に参考になったところなんですが、高校における情報免許が、免許取得者についても知識が古いと、プログラミングも含めて教えること、あるいは生徒と取り組む内容が古くてなかなか時代についていけないというところがあったり、場合によっては時間講師、非常勤教員等が担当しているために、なかなか授業についても安定しなかったりという課題がありました。教科科目あるいは小学校からの指導に当たって、専門性、それから研修の充実というのが改めて必要なのではないかな、あるいは人材育成が必要なのではないかなと感じたところです。
そこで、今日、春日井市の出川小学校の先生方に御発表いただきましたけれども、小学校で当然PCスキルについても先生方によってかなり差があると思いますので、こちらをどのように克服されているかというところを伺えればと思います。よろしくお願いいたします。
【貞広主査】 ありがとうございます。では、後ほど伺いたいと思います。
では、野口委員、お願いいたします。
【野口委員】 野口です。障害のある子供をはじめとした多様なニーズのある子供たちについて、ICTを活用することで様々な障壁を解消することができます。障害者差別解消法における合理的配慮の基盤となるアクセシビリティを保障して学校の包摂性を高めるためには、今回の議題は非常に重要だなと思っています。
3点あります。
1点目ですが、まず、子供たちが自分自身に合っているツールは何かということを自分自身で知って、活用する方法というのを知ることが重要だと思います。例えば、自分の意見や考えの表現の仕方も、口頭がいい子もいれば、紙に書いたほうがいい子もいれば、パソコンで文章にしたほうがいい子もいれば、スライドやイラストがいい子、動画がいい子など、様々な表現の仕方があるということを知って、自分に合っている表現方法を1階部分で活用していくという、そうすることによって包摂性を高めることができるかと思います。
2点目です。障害のある子供の教育については、ずっと専門性が足りていないということが言われてきています。一方で、デジタル技術を用いて解決できることもたくさんあるかと思います。特別支援教育におけるアセスメントというものは、情報活用能力そのものではないのかなと思います。例えば、重度の身体障害のある子供たちについて、今の技術だと子供の僅かな動きとかをキャッチするということも可能だと思います。ただ、そういったことが学校現場では全然十分には活用されていない状況があります。研修動画等を作成いただけるということ、教材も作成いただけるということでしたので、ぜひ多様な障害者の子供たちも想定したものを作成いただきたいなと思いました。
最後です。情報モラル教育についてもお話がありました。一方で、技術が新たに差別を生んだりとか差別を再生産しているという状況も十分あります。例えば、先日もニュースになっていましたが、タッチパネルだったりとかトイレのセンサ式というのは、視覚障害のない人にとっては便利なものとして開発されていますが、視覚障害のある人にとっては新たな障壁になってしまっているという状況があります。なので、多様な他者と出会う機会がなければこのようなものが開発され続けてしまって、結果、分断がむしろ生じてしまうということが社会の中で起きてしまうので、多様な他者とどういうふうに共に生きるかということを前提とした上での情報活用能力というのが重要なのではないのかなと思います。
以上です。
【貞広主査】 ありがとうございます。
では、青海委員、お願いいたします。
【青海委員】 ありがとうございます。春日井市、それから沖縄市、うるま市の皆様、どうもありがとうございました。堀田先生の御提言に賛同します。
私から3点です。
事務局の説明の資料1-1にありましたけども、改善の方向性と具体的論点(案)の中学校段階、1つ目の黒丸の記載です。情報技術の大幅な充実については、生成AIをはじめデジタル技術が大幅に発展する中、情報活用能力の抜本的向上を図る観点から重要だと思います。
また、2ページ後の中学校・技術分野の論点の(2)に記載のある他の3領域について、情報技術との関わりを強化する観点から、取り扱う内容を充実させることも必要なことだと思います。しかし、ここで、技術分野のA、B、C領域につきまして、現在のものづくり等の産業が、将来、全て情報技術に置き換わるということは考えにくいことですので、これまで技術・家庭科の技術分野が重視していた、ものづくり技術やその文化についても留意して考えなければいけないと思います。例えば、ものづくりでも、3Dプリンタの活用などは、今後の日本における産業構造を考えた場合に必要になってくると思いますが、その一方で、3Dプリンタを活用する際は、材料や加工の特性などの原理・法則の知識も必要になります。また、スマート農業を行う上では、センシングデータの活用も重要になってきますが、その一方で、それには作物栽培での作業や知識も引き続き必要になります。つまり、従前の内容にも留意しつつ、現在のデジタル化社会に必要な情報技術の内容をA、B、Cの3領域にも充実させていくという方向で検討すべきだと思います。
次に、戻りまして、改善の方向性と具体的論点(案)の中学校段階の2つ目の黒丸に記載のある現在の技術・家庭科の在り方についてですけれども、これまで技術と家庭科それぞれ担当教員が指導・評価していますが、学習評価や指導要録では1つの教科として評価・評定をする必要があり、合算しています。学習評価は1つの教科として記載されているというのも学校現場では違和感となっていますので、在り方を検討することは大変賛成でございます。その際、技術分野における情報技術の充実の観点だけではなく、家庭分野がこれまで担ってきた家族、家庭生活、衣食住、それから消費生活、環境、いわゆる消費者教育などの重要性も十分に踏まえて在り方を考える必要があると思います。
最後に、文科省には、教員の負担軽減の視点から、伴走支援に加え、授業力向上、それから技術科教員の確保策など、中学校技術・家庭科の技術分野の指導体制の一層の充実を併せて進めてくださいますようお願いしたいと思います。
以上です。
【貞広主査】 ありがとうございます。
では、会場から神野委員、お願いいたします。
【神野委員】 よろしくお願いいたします。私も、皆さんがおっしゃっていること全てに賛同いたしつつ、情報活用能力というところの捉え方について、今までの情報活用能力の先に生成AI時代の情報活用能力として捉えづらい部分もあるかなと思いましたので、その部分についてシェアさせていただこうと思います。
まず、オードリー・タンさんという台湾の方がいらっしゃいますけれども、あの方が出版された本で『PLURALITY』という本があります。この概念、非常に難しいんですけれども、プルラリティというのは何かというと、生成AIを用いた未来社会においてで言えば、例えば人種・言語を超えたり、あとは人数ということを超えたり、あとはそれぞれの方々が考えているバックボーンみたいなものを超えて合意形成が取れる、そんなような時代になるぞということに端を発しながら、例えば今日のこの会議体で言えば、私たち30人ぐらいでやっていますけれども、これが100人、200人、300人いたとしても、裏側で生成AIを回しながら、実際の今のサマリーみたいなものを目の前にすぐ出すことによって、300人が同時に会議に参加しても合意形成が取れる。そういうような在り方が実現できるのではないかという話があったりだとか、さらに言えば、それはもっともっと大きな単位で言えば、1億人という単位であったとしても何かの合意形成というのができるような社会が来るのではないか、そのような概念というものが出てきています。
このような社会が、ある意味、生成AIがもたらす新たな社会だとしたときに、我々が考えてきた協働的な学びを通じて子供たちへリーダーシップやコラボレーション能力というものを伝えてきたわけですけれども、その在り方もまた変化といいますか、より大規模に、もしくはより多様性を包括したような在り方ができるということを明記していく必要もあるのかなと思っています。
その点から考えまして、前回申し上げたほうがよかったとは思ったんですけれども、4月25日の資料にあります資料1「学習指導要領の構造化を進めるに当たっての諸論点」の中の14ページにあります今後の整理イメージの中で、「他者との対話や協働」と書いてあるところに、「教師の指導を含む他者からのフィードバック、書籍等との対話」等々書かれていますが、ここは確実にAIとの対話もしくはAI自体をそのコラボレーションの中にどのように入れていくのか、このような観点も非常に重要なのじゃないかなと思います。
そしてまた、そこに情報リテラシーですね、今後、フェイクニュースもかなり大量に、もう無限と言えるぐらいのフェイクニュースが出てくるでしょうけれども、そういう中でしっかり情報の本質みたいなものを見極める力を育てることが、恐らく今後の民主主義を支える人材の担い手として、持続可能な社会の担い手として子供たちを育てていくためには、絶対に必要な観点になるのではないかなと思います。
もう一つ、このような生成AIということと、デジタル人材というところをつなげて話をしていけば、従来の情報活用能力を育てていく先にデジタル人材が育っていくというような観点はもちろんあるんですけれども、逆みたいな教育の在り方も実現できるのかなと思います。というのは、なぜこのプログラムが動いているのか分からない、なぜこの音楽ができたのか分からない、なぜこの動画がすばらしくできたのかも分からないけれども、なぜか生成AIが作ってしまった。それをリバースエンジニアリング的に、なぜこれがすばらしいのか、なぜこれは動いているのかというような学び方ができるというふうになります。従来の音楽や技術や様々実技科目という中で言えば実技科目をやっていかなければいけなかったところから、なぜかできてしまい、それがリバースエンジニアリング的に勉強できるという世界もあるんだろうと思います。最後にすみません、国語、数学、理科、社会、英語の個別最適な学びも、生成AIとともにどうなるのかということを議論すべきかなと思います。
以上です。
【貞広主査】 この後、秋田委員、石井委員、松原委員の順番でお話をいただきます。残り時間を考えまして、今、7名の方が手を挙げてくださっています。最後に事例の御報告をくださった2団体にお返ししたいと思いますので、3分を守っていただいても、もうぎりぎり、もしくは時間延長というような状況ですので、皆様のあふれる思いをエッセンスにしてお伝えいただければと思います。
では、秋田委員、お願いいたします。
【秋田主査代理】 ありがとうございます。学習院大学の秋田です。
今までの御提案に関連して、情報技術を体系的に伝え、育てていくということが重要であり、小学校から入れていくということには賛成であります。ただし、そのときに考えなければならないのは、前回のときも議論すべきだったと思うんですけれども、この情報活用能力の育成をどう評価するのかというときに、やはり総合的な学習の時間の探究とセットで考えていくことが必要であって、自分の探究に必要な情報の活用能力が育っていくことをしていかないとならないと思います。本当に手段のところだけの狭い評価をするのではなく、探究の中において情報活用を育成していくという目的と、先ほどから手段の話がありましたが、やはりそこを評価の議論として、ここのところを構造の議論でも、それは構造をどう評価するのかという議論が今まではまだされていないんですけれども、必要です。これまでの学習指導要領、先にカリキュラムありきで評価は後というのではなく一体で考えていくためには、この情報活用能力をどう評価し、考えていくのかというところを議論すべきですし、私はそれは探究と一体的に評価をし、これまでのような記述の全体としての評価をしていくべきだと考えています。この辺り、堀田委員やほかの方々はどう考えておられるのかというのをお聞きしたいというのが1点です。
それから2点目としては、中学校の教員が教員養成数からいっても情報技術は足りません。ここに積極的に力点を入れ、また、研修と、先ほどありましたようにその担当の指導主事をきちっと置いていくことが必要であります。中学校の情報技術について、先ほどもありましたが、Dだけではなくて、A、B、Cのものづくりはものすごく重要です。なので、そことの関連づけ、全体を強化していくのであって、トレードオフでDだけが強くなるというような在り方があってはならないし、独立したときに家庭科というのも極めて重要でございますので、そこのバランスを考えないと、情報だけが肥大化するということがあってはならないのではないかと思っています。
また、教員と同時に、戸ヶ﨑委員が言われた地域の企業との連携であったり、そうした外的資源をうまく活用しながら情報技術について考えていくスタンスが今後必要になっていくのではないかと私も思いました。
以上3点について発言させていただきました。
以上です。
【貞広主査】 ありがとうございます。そうです、評価、とても重要な御指摘です。後ほどお返ししますので、よろしくお願いいたします。
では、石井委員、どうぞ。
【石井委員】 それでは、3分ということですけども、今回の提案を伺って思ったのは、今、ICTといえば個別最適というふうに、「ICT活用×個別最適な学び」という図式があるわけですが、これが今回、掛け算するのが探究的な学びにシフトチェンジするということが1つポイントなのかなと思いましたし、私はそれは穏当な方向性と思っています。
もっと言えば、ICT活用じゃなくてDX、「DX×真正で探究的な学び」という辺りかなと思っています。これは結局、情報活用能力と総合的な学習(探究)の時間とのウィン・ウィンの関係がどう築けるかということが非常に重要だと思うんですね。
それで言いますと、ICT活用に関しては自己目的化の話もあるんですが、一番の問題は、結局、DXの世界観が実装されていないことじゃないかと。先ほどの神野委員のお話もそうですが、世界観の話だと思うんですね。だから日常的にDXの世界観といったものを感じられているかどうかということでいうと、これほどICTを活用していても、「身近にDXを感じたことはありますか」って僕は講演で聞くんですけど、ほぼ出てこないんですね。オリンピックの男子バレーが強くなったのもDXの恩恵にあずかるところがかなり大きかったということにもあまり気づいていないというところです。ですから、そういう面からも真正で探究的、つまり世の中とちゃんとつないでいくという、この世界観の実装ということが重要です。そうすると、デジタル人材といった場合も、単に便利に使うということではなくて、つくる側になる、あるいは賢くそれと向き合うというか、飼いならすというところにつながってくるかなと。
さらに言うと、世界観とつないでいくと、ビジネスとかイノベーションの話にしても大事なのに、今回完全に抜けているのはELSI問題ですね。これを考えなければ実装もできないということになります。これは民主主義の問題とも関連するところでありまして、改めて世の中ベースで情報活用能力であるとかそういったものを考えていく。
それで言いますと、技術科に関しては、ものづくりの精神をどういうふうにあか抜けさせていくのかということがポイントなのかなと思います。まさにコンピテンシー・ベースはコンテンツフリーではなくて、今の世の中に必要な知とは何ぞやということを考え直していく。それの一番の切り口になってくるのが、この技術科もそうですし、情報活用能力というところで、それを切り口にしながらカリキュラム全体において展開していく。今の世の中はすごく変化しているということはわくわくしているわけですから、そのわくわくを教育課程にどう実装していくのかということの教科横断的な展開の入り口に持っていくというような、そういった戦略が必要ではないかなと思います。
【貞広主査】 ありがとうございます。
では、続きまして、松原委員、お願いいたします。
【松原委員】 今日は、具体的な実践と提言、ありがとうございました。せっかくなので、春日井市さんにお時間があれば伺いたいと思ったのは、年間35時間、1年生は34時間設定されたということで、実際に計画した内容に照らして、その時間設定が十分と感じたのか、少し足りないと感じたのか、少し余裕があると感じたのか、その辺を教えていただきたいのと、資料の中で教員の実感や教師のアンケートがあって、効果が出ているということがうかがえますが、それは、他の教科でもICTを使うことでの効果なのか、必ずしもICTを使わなくても、論理的な思考力とかそういう部分が育まれて効果があるのか、そこを伺いたいと思いました。
小学校の課題は、もう戸ヶ﨑委員や、様々資料の中にあったとおりだと思いますが、一方で、学習内容だけを示されると、単なるスキルトレーニングになってしまうような危惧は小学校の場合あって、例えばタイピングの文字数も、それだけ練習させればクリアできると思いますけれども、それでよしとはなりません。情報活用能力の説明の中で「必要に応じて」というキーワードがあるように、子供たちが学びの中でICTを使うことの必要感が持てるような学習場面を工夫する必要があって、そうすることでICTのよさも実感できると思います。そういう意味で、探究的な学習の過程の中で学んでいくというのが非常によいと考えます。
技術の進展の速さということで、これも指導していく上では課題ですけれども、指導の手引きやデジタル教材、動画等の改訂で学習内容の更新をしていただけるというのは、現場としてはありがたいですし、使いやすいと思います。現行の学習指導要領でもそういうものがどんどん充実していくと、学習指導要領の改訂を待たずに、地域や学校の差というのも埋めていけると感じました。
以上です。
【貞広主査】 ありがとうございます。すぐやってくださいというリクエストでした。ありがとうございます。
では、澤田委員、お願いいたします。
【澤田委員】 先生の幸せ研究所の澤田です。学びでのデジタル端末の活用が日常的になるためにという観点で幾つかお伝えします。
端末活用の理想と実際のギャップが大きいことがあります。例えば、家庭への端末の持ち帰り制限だったり、授業で児童生徒が端末を自由に触ることを制限したりといったことです。堀田委員の御発言にも過度な禁止とあったと思います。学校と実際に話すと、目の届かないオンライン空間でトラブルになるんじゃないかとか、端末を自由に触ると学びから脱線し始めるんじゃないかという、あらかじめトラブルを避けようとしていることが根っこにあるということが分かります。
堀田委員の御発表にもあったように、情報モラルは日常的な活動の中で育むということだと思いますが、その際に、学校が抱える心配にどう向き合い、支えていくのかというのも考えていく必要があるのではと思っています。ある先進校の先生方から聞いたのは、デジタル活用についてトラブルが起きたときは、むしろチャンスと捉えて、子供たちが考える生きた題材にしていくと。なので、自由な活用を基本とすることが必要だということもありましたので、そうした考え方も今後紹介いただけるといいのではと思いました。もし時間があれば、今日御発表いただいた学校では、教員のそうした心配はあったのか、あったとしたらどのように乗り越えたのかを伺えたらありがたいなと思います。
次に、首長部局の理解の必要性です。各地域で学びのDXのための予算がうまく取れないとか、前年よりもカットされてアプリを使う学年が限られるというようなことも複数の教育委員会から聞いていますので、首長部局の後押しの必要性についても示していただけたらありがたいですし、国として予算的な後押しもぜひお願いできたらと思います。
最後に、ややそれてしまうかもしれないんですが、国へのお願いです。これについては、この部会や文科省ではなくてもっと大きな話なんだと思うんですが、国を挙げて予算をかけてしっかり電子国家やデジタル行政サービスにもっとスピーディーに真の意味でシフトするということをお願いしたいなと思いまして、公的書類の申請が非常に操作性が悪いというようなことが多くあります。学校で情報活用能力を育成するのと同時に、社会においてデジタルを使いこなす大人の姿や、デジタル化で確実に便利になった社会というのを子供たちに見せていくということが欠かせないのではないかなと思いましたので、発言させていただきました。
以上です。
【貞広主査】 ありがとうございます。
では、小見委員、お願いいたします。
【小見委員】 よろしくお願いいたします。先ほど文科省の資料ですとか戸ヶ﨑委員の発言からも地域・企業との連携といった視点がありましたので、その視点から発言させていただきます。
神野委員からもありましたけれども、生成AI時代においては、新たなDXの世界観における情報活用能力の育成を先生だけが担っていくというのは非常に難しい、リソース的にも技術的にも難しいのではないかと思っております。今ほど澤田委員からもありましたけれども、実際にこんなことが実現できるんだというわくわく感を子供たちに見せていくという意味でも、地域や企業の皆さんと連携・協働しながら進めていくということが求められると感じています。
実際、地域には情報活用が求められるリアルな課題が非常にたくさんありますし、企業には日々それに向き合う専門家というのが多く存在しておられます。連携・協働の形は様々あると思うんですけれども、例えば、現在制度化されているコミュニティスクールなどの既存の枠組みを生かすならば、運営協議会の委員に情報分野の専門家に参画してもらい、総合学習と関連づけながら、情報活用能力を育成することも念頭に置いた教育課程の構想を一緒にやることですとか、企業の専門家を巻き込みながら、参画して授業をつくっていくということも考えられるのではないかと思っています。
しかし、地方ではそういった専門家がそもそも身近にいないという問題もあります。そのため、情報分野に関する既存の専門人材がいらっしゃるかと思うんですけれども、そういう方々を継続的・計画的に派遣する制度ですとか、そのための予算措置、また、教育委員会に専門性のある方、春日井市さんも設置されておられましたけれども、そういった方々がさらに現場を支援しやすい体制をつくるなどの制度設計の一部として御検討いただけると、現場での教育実践がより確かなものになるのではないかなと考えております。
以上です。
【貞広主査】 ありがとうございます。
では、オンラインから古賀委員、お願いいたします。
【古賀委員】 ありがとうございます。本日の御提案の内容には基本的に賛同いたします。このたびの改正の方向性は発達の段階を踏まえてということですので、恐らく留意されていることと思いますけれども、小学校低学年の授業を拝見させていただく中で気になっていることを申し上げたいと思います。
国語の授業でロイロノートなどを使って課題の感想を30人クラスで共有し、その中から自分の好きな内容を3つ選んで、その理由を説明しようというような1年生の活動を見たときに、処理すべき情報量の多さと時間制限との関係で、子供たちが多くの文字情報をざっと読み、指先操作でさっとある感想を消して次に移っていくというような姿がありました。時間短縮になって効率的に進めていくというのが強く感じられて、学びの質がどうなのかというようなことが気になりますとともに、危惧するのは情報モラルの基盤となるものです。情報モラルを身に付けるというのは、その向こうにやっぱり自分と同じように血の通った生きている人がいるという感覚を持つことが大切で、まず、一人一人の体温が感じられる言葉を聞き合う関係が学校生活の中にしっかりとあるということが基盤になるだろうと思います。もちろん、多様な子供や多様な状況があって、学校に通うことが難しいといった様々な子供や多様な形態での学習があるというのは理解しておりますけれども、学校に通うことの一つの価値は、対面のコミュニケーションもしくは身近と感じられる人とのコミュニケーションを基盤とするというところにあると思います。体温のある人の言葉が文字情報となって処理されていくというときに、その導入の時期の発達的なふさわしさと情報量の発達的なふさわしさということについて留意すべきではないかと思います。
学習指導要領の改訂といった影響力の大きい内容が世に出ていくときに、とにかく早期からやるのがよいという風潮になることを懸念します。低学年から、また乳幼児期からデジタルデバイスを使うこと自体を否定するものではありません。学びのツールとしての活用があると思っておりますけれども、それぞれの発達の時期にふさわしい学びの在り方や、内容にとってふさわしい活用や導入の仕方ということに留意した示し方というのをぜひともお願いしたいと思います。
以上です。
【貞広主査】 ありがとうございます。
では、植阪委員、お願いいたします。
【植阪委員】 よろしくお願いします。野口委員が先ほどお話ししてくださったことにも共通しますが、デジタルとの付き合い方というのは、試行錯誤を踏んで、自分に合った形を模索するということが必要だろうと思います。例えばデジタルでノートを取るという活動を一つ挙げても、メモ機能に文字で打つのか、写真に撮ってそこにタイピングで文字を足すのか、写真を撮ってそこにデジタルペンで書き込むのかなど、無限の可能性があります。ところが、日本は文化的に同じことをやらせたいという感情が強い特徴があります。つまり、学校現場では「こういうふうに使ってね」と、均一な行動を期待しがちだという特徴があります。頭の中の活動はいろいろあっても見えないし、残らないので何も言われません。一方で、ノートの取り方やツールの使い方は統一したいというプレッシャーがあります。試行錯誤の必要性や、個に合った使い方をしてほしいというメッセージを文科省が出すことは重要なのではないかと思っています。
GIGA端末は国が保証するという点で驚くとともに、すばらしいことだと思っています。一方で、あくまであれはミニマムであるとも思っています。つまり、GIGA端末に加えて、プラスアルファのデジタルツールを加えることだって問題ないと感じています。足りないものをiPadで補うという子がいても問題ないと思います。しかし、「いや、これをもらったので、これをやらなければいけません」という形になってきている現実もあります。子供も大人である教員も自由に試行錯誤できる基盤があって、使いやすい使い方を共有するおおらかさを認めていくようなことが必要であり、そのことを文部科学省からメッセージとして出していただけると大変ありがたいと思っています。
委員の皆様の議論の中でも、機動的に教科書検定をするというだけでは、足りないのではないかという議論がありました。自由度を認めていくというか、自分たちでいろんな工夫をする分にはいいんだよというようなことを発信していく記述みたいなものもあったと思う次第です。
また、GIGA端末については、期待していない方法で端末を使っている事例もあります。お部屋で長時間、使っている事例などの話を地域の保護者などから聞きます。どの程度利用を管理するかということについては、自治体によってかなり違いがあるように思います。小中学生はまだ子供です。このため、気を配って、変な使い方をしている場合にやっぱり適切な使い方を指導していく必要があると持っています。ゲームも親が管理するアプリなどがあります。期待しない使い方をしている場合には制御する必要もあって、過度に依存した使い方をしていないのかというのは親から情報を集めたり、家庭との連携というのも必要なのかなと感じたりしています。
今、海外の先生と話すと、デジタルの話をすると、「あら、そう、日本はそんなにデジタル推しなのね!今、みんなデジタルに飽きちゃってね、もう要らないわという雰囲気が多いのよ」という話を多く聞きます。日本は研究授業があるので、そこまで過度な利用はないんですけど、先ほどの委員の先生のお話にあったように、過度に授業で使われたりすることもあったりするので、その辺のバランスをどう取っていくか、今後、そういう議論が起こってこないようにできたらいいなと思いました。
以上です。ありがとうございます。
【貞広主査】 ありがとうございます。
皆様に御協力をいただきまして、少しだけ時間を延ばさせていただければ、何とかそれぞれの方にコメントもいただけるかなと思います。私もちょっと調子に乗ってコメントをつけちゃったので長くなりまして、申し訳ありませんでした。
それぞれの委員の方から、春日井市、そして沖縄市、うるま市のほうに、取組そのものや課題の克服などについての御質問をいただいています。また、堀田委員も含めまして、評価をどのように考えたらいいのかという御意見を伺いたいという意見をいただいておりますので、それぞれお答えになれる項目だけで結構ですので、まず、春日市さんからお願いいたします。
【春日井市立出川小学校(仲渡)】 それでは、春日井市立出川小学校校長、仲渡です。自分からは3つお伝えしたいと思っています。環境面のお話と、それから時短のお話が少し出ていましたので、その辺り、それから35時間のことについて触れさせていただきたいと思います。
まず、環境面を各学校は整えていく必要があるというところですけども、こちらは、まず、情報活用能力というのがどのように生かされて、どのように活用されていくのかと、そういうイメージがなかなか教員はつかめないというところの環境面のところです。そして、そういったイメージがつかめたところで、実際に授業を指導する上でどういった授業づくりをしていけばいいのか。そういった方向性が、特に若い先生方にそういうものが欠けていて、なかなかイメージがしづらいと。そういうものを具現化したり、ガイドしたりするような資料等を作成していく必要があるのかなということを考えています。また、これは若手教員だけではなく、職員全体がそうしたものが腑に落ちて授業実践できるようなもの、そうしたものを作成していく必要があるのかなと思っています。
あと、これは春日井市では違いますけれども、基本的に春日井市が行っている「情報の時間」については、クラウドを前提とした授業設計というものをイメージしています。ですので、GIGA環境の安定した整備というのがやっぱり大事になってくるのかなと思っています。この辺りは環境面についてです。
それから、35時間の時数のことですけども、こちらのほうは十分だったなというのは印象としてあります。これは、短くてもひょっとしたらできるかもしれないというのが今の受け止めでございます。実際に出川小学校の児童で言えば、毎年できるようなことが学年を追って下がっていくようなイメージがあります。令和4年で始めたところに比べれば、子供たちに委ねるとか、「情報の時間」で取り組んでいたことが1学年ずつ下がっているようなイメージがありますので、ひょっとすると、やっていく中で、35時間も要らずに、もう少し短い時間でこうした情報活用能力については子供たちに身に付いていくのかなというイメージを持っています。
それから最後、時短のお話もいただきましたので、そちらのほうも触れさせていただきたいと思います。授業の時短についてはクラウドでも紙でもいけるのかなというのは、実際のところ感じています。これは、多様な学び方というのが先ほどから出ていたように、それぞれの子供でデジタルが得意な子、紙が得意な子がいますので、そうした学び方に応じていけば可能かなと思いますけども、クラウドを使うよさというのは、子供が1人当たり触れられる情報量が紙で学ぶよりも圧倒的に多いということを実感として持っています。それから、先ほど自分の発表でもお伝えしたように、多様な意見に触れられることも、やっぱりクラウド上で量、それから人数というのは増えるのかなと思いますので、クラウドでやっていくことのよさというのはこういうところにあるのかなということを自分は感じています。
以上です。
【春日井市教育委員会(水谷)】 それでは、残りのことは水谷のほうからお伝えしたいと思いますが、今の時短のことですが、結局、探究がちゃんとできるようになるということで、いろいろなものを使った場合でもそれは有効であるということを感じていますので、補足をしておきたいと思います。
次に、最初のほうでいただいた教員のスキルアップのことですが、これについての考え方は教員の情報活用能力育成と同じですので、ただ操作スキルをやっていただけでは何もアップしません。校務で使うとか、教員の研修を子供たちと同じ環境でやっていくと、これは当然アップしていくわけです。春日井では、校務活用から始まって、研修はICTの研修だけではなく、全ての研修を子供たちのGIGA環境と同じような環境で、さらに探究のサイクルにしていくということで、先生たちのスキルも上がっていきますし、こういう学びをすることが結局子供たちに有効なんだなということが伝わっていくので、やりながら授業観もだんだん変わっていくというところがあります。
それからもう1点、トラブルのことの御質問を受けましたが、確かに最初の頃は教員の情報活用能力もないので、トラブル対応は結構大変でした。ただ、学びが変わってくる段階で自分たちの学びのために必要なものだということの意識が高まってくると、正しい使い方をしていくことになりますし、そして何よりも、与えられるものではなくて自分たちで獲得して学びを進めるということが始まると、自分の状況に合わせて学びが進み始めますので、これをほかのことに使うのはもったいないなという、自分の資質・能力が高まるという意識がだんだんついてくるので、余分なことじゃなくて自分のために使おうということがすごく働いてくると感じています。これは感じで、何かデータがあるわけじゃないですけど、とにかく情報活用能力を身に付けて自分で学びが進むようになる、自己選択・自己決定ができるようになると、そういうトラブル的なこともやはり減ってきて、ゼロにはなりませんけど、それほど心配ない状況ということで春日井では取り組んでいるところになります。
以上です。
【貞広主査】 ありがとうございます。どこでそういった御指摘いただいたような正の駆動が起きるのかというところですよね。どこの学校でもそういう駆動が起きればということでございますが、ありがとうございます。
では、続きまして、沖縄市とうるま市の先生方、いかがでしょうか。
【沖縄市立美東中学校(赤嶺)】 御質問ありがとうございました。荒瀬先生からの質問で、資料の20ページ、課題として、「生徒が発想したアイデアを十分に探究したり、具現化したりする学習が難しかった」ということなんですが、現行の学習指導要領には限界があるため、制度改定時には価値創造の時間や指導体制の整備が必要だと感じております。そして具体的には、実習する中で生徒からのアイデアを受けるんですが、市販されていない部品が欲しいだとか、あとはカムだったりリンク機構、そういった専門的なものの部品ですね、そういった案はあるんですが、販売されていない、だったら作ったほうがいいんじゃないかということで、3Dプリンタだったりこういった機器があると、自分たちのアイデアを具体化できるんじゃないかということで、設備の充実をお願いしたいと思います。
以上です。
【貞広主査】 どうもありがとうございます。
では、最後に、堀田委員、お願いいたします。
【堀田主査代理】 御質問と御意見ありがとうございました。2つに絞ってお話しします。
まず、今村委員からは、「情報の時間」のみならず各教科等での端末活用の拡充も大事だとか、田村委員からは、小学校の情報活用能力はカリキュラム・マネジメントに頼ってきたけども、それは難しさがやっぱりあるよとか、前川委員からは、高校「情報」2単位ですけども、そこでやらなきゃいけないことが今いっぱいになっているのは、もう少し本当は小中学校でやれることがあるからではないかみたいなこと。溝上委員からは、情報活用能力の育成をしっかりとやるけども、その分、探究はむしろ課題の設定のところを大事にしたいんだと。これ、目的と手段みたいな話でずっと言われてきて、私はそれは全くそのとおりだと思います。
一方で、情報活用能力の育成を取り出して実施しよう、しっかり教えるべきではないかと提案している理由の一つは、手段をこなすスキルがある程度身に付いていないと、結局、目的を達成できないわけで、これ、どっちが先かというのはいろいろですけど、教育課程として考えたときには、道徳の時間のように、週に1回かはまだ分かりませんけども、あるときにしっかり取り立てて何か1つを話題にして、そのことについてみんなで考えるみたいなことが時々行われることで、それが全教育課程で生かされる資質・能力になるという考え方に近いかなと思います。特別の教科にしたいとかそういう意図で言っているわけではありません。取り立てて指導することが教育課程全体に機能するようにできるのではないかという主張でございます。
2つ目は、秋田先生からいただいた情報活用能力の評価をどうすべきかという話ですけども、私も秋田先生と同じ考えです。情報活用能力が学習場面で機能するスキルだと考えれば、形成的評価としては1分で何文字入れられたとかいうことはもちろんチェックは可能です。形成的にはそういうチェック段階を踏まえた後に、そもそもどんな課題を解決したいから自分はこういうふうに情報活用するのだという、本人の意図とか、その成果みたいなことがしっかりと総括的に評価されていくということこそが大事かなと思います。
以上でございます。
【貞広主査】 どうもありがとうございます。最後は評価に関わる大変重要な応答をいただきました。ありがとうございます。
それでは、時間も参りましたので、本日の議事は以上といたします。
御発表いただきました春日井市、沖縄市、うるま市の先生方、そして堀田先生、どうもありがとうございました。
最後に、次回は質の高い探究の在り方が議題になる予定でございますけれども、日程等の予定につきまして事務局よりお願いいたします。
【栗山教育課程企画室長】 次回は5月22日木曜日9時半から12時を予定しておりますが、また改めて御連絡させていただきます。
【貞広主査】 ありがとうございます。
では、以上をもちまして閉会といたします。委員の皆様、ありがとうございました。
―― 了 ――
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