教育課程部会 教育課程企画特別部会(第5回) 議事録

1.日時

令和7年4月10日(木曜日)9時30分~12時00分

2.場所

WEB会議と対面による会議を組み合わせた方式

3. 議題

  1. 多様な子供たちを包摂する柔軟な教育課程の在り方について(2)
    • 有識者、学校、教育委員会からの事例発表(3事例)
  2. その他

4. 議事録

 【貞広主査】  定刻となりましたので、ただいまから第5回教育課程企画特別部会を開催いたします。
 本日は引き続き、多様な子供たちを包摂する柔軟な教育課程の在り方について御審議をいただきます。進行資料にもありますとおり、事務局の説明の後、東京都教育委員会、多摩市教育委員会と広島県教育委員会、尾道市教育委員会より、不登校児童生徒支援に関し、御発表をいただきます。その後、愛媛大学の隅田学教授より、特定分野に特異な才能のある児童生徒への支援に関し、御発表をいただきます。その後、5分間の休憩を挟みまして意見交換の時間といたします。
 それでは、早速でございますが、事務局より論点資料と不登校児童生徒への支援についてのこれまでの政策の経緯等につきまして御説明をお願いいたします。
【栗山教育課程企画室長】  失礼いたします。まず、本日の内容に先立ちまして前回の補足でございますけれども、画面を御覧いただいていますように前回、1単位時間を短縮して生み出された時間を用いて児童生徒一人一人に応じた柔軟な学び、あるいは教師の研修等のために時間を充当する取組、研究開発学校で大幅に今年度から増加させるということを申し上げました。その具体の学校名等について公表をいたしておりますので、まとめたものでございます。北海道から九州まで、9の地域において45の学校で実施をしております。小学校37校、中学校8校で実施をしております。
 それでは、本日の内容に入らせていただきます。本日は各学校が編成する一つの教育課程では対応が難しい子供の包摂ということで御説明をさせていただきます。こちらについては、まず、多様性を包摂する必要性についてまとめた資料であります。前回と同様の資料であります。
 また、本日の議論の前提でありますけれども、こちらにまとめております。前回3月28日の特別部会では左下、1のブルーの部分、学校として編成する教育課程の特例の在り方について御議論をいただきました。本日は上の緑の2の部分、個々の児童生徒に着目した教育課程の特例の在り方について御議論をいただきます。現行制度におきましては、左から日本語指導が必要な児童生徒、真ん中、特別支援の障害のある児童生徒に対する通級指導における特別の教育課程、そして夜間中学校、学齢を超過した者に対する特別の教育課程の3つがございます。今回、これとは別途で上にございますが不登校、特異な才能を持つ児童生徒、日本語指導が必要な児童生徒について御議論をいただくものです。
 まず、不登校の児童生徒について、教育課程の特例の提案について御説明をさせていただきます。まず、現状と課題であります。近年の取組状況について校内外の教育支援センターの設置数は増加傾向にあり、教育委員会設置が1,743か所、校内の教育支援センターは1.3万校、約5割に上っております。一方、原則学校単位で特別の教育課程を編成・実施できる学びの多様化学校の設置も進んでおります。ですが、これは個々の児童生徒に着目した特例ではないものであります。
 こうした現状の中で生じている課題であります。校内外の教育支援センターは居場所機能のみならず学習意欲を高め、資質・能力の向上につながる指導の充実が課題であります。遅れを取り戻したり、進学や原籍級の復帰につなげるためにも重要であると考えています。そんな中、現状、個別の指導計画がないといったこともあり、組織的、計画的な指導の確保という意味では課題と御認識されているセンターも大変多くある状況があります。特別の教育課程の制度が現状はありませんので、主たる学年、例えば小6の在籍の児童が実質的には小学校3年生の内容を学んでいるような場合においても、現在は原籍級、小6の教育課程に基づく評価を行わざるを得ない場面があり、そういった中で評定において1であるとか、あるいはバーがつくようなことも現状はあると、実態を踏まえた柔軟な評価という点において一定の限界がある状況があるのではないかと考えております。
 こうした課題を踏まえて、方向性と具体的な論点、右側であります。個々の不登校児童生徒の実態に配慮した特別の教育課程を必要に応じて編成・実施可能とする仕組みを新設してはどうかと考えております。これは個々の児童生徒に着目するものですので、学校単位の学びの多様化学校とは別途、新設する提案になります。
 1、対象となる児童生徒です。年間30日以上の欠席を一つの参考としつつ、具体の判断は学校や教育委員会が児童生徒の実態等を踏まえて総合的に行うこととすべきか。例えば継続的な欠席や早退、保健室登校などが見られる等、不登校となる蓋然性が高いと考えられる場合等も対象になり得るとすべきかということになります。なお、これは学びの多様化学校と基本的に考え方が同様であります。
 丸2、特別の教育課程の内容・授業時数です。実態に即した望ましい教育環境を保障するために必要な範囲で柔軟に設定することとすべきか。これも学びの多様化学校と同様でありまして、例えば標準授業時数を下回って教育課程を編成しているような学校もあり、そういったことを可能とすべきかということであります。
 次に校内外の教育支援センター等と連携し、過度な負担を生じさせないようにしつつ、個別の指導計画を作成することとすべきかという点であります。
 丸3、特別の教育課程が実施される場所です。こうした特別の教育課程に基づく指導や支援が適切な場所で実施される必要性がありますので、それを担保するため校内の教育支援センターを含む学校外、学校内はもちろんですが一定の要件、例えば地方自治体が設置しているとか、あるいは免許保有者の方がいらっしゃるとか、そうした要件を満たした学校外の教育支援センターも対象として位置づけるべきかどうか。
 そして丸4、学習評価でありますけれども、こうした特別の教育課程に基づいた学びに対する学習評価については、その旨が指導要録上も明確に位置づくようにすべきか。そうして明確にされた学習評価について、高校入試でも特別の教育課程に基づく取扱いをすべきかといったことが論点であると考えています。
 以上が、丸1の不登校児童生徒に係る特別の教育課程の御提案です。
 次に、特定分野に特異な才能のある児童生徒に係る特別の教育課程の御提案です。まず、現状と課題であります。令和6年度までの取組状況、主に文部科学省の取組状況についてでありますけれども、まず、前提として特異な才能のある児童生徒は認知や発達の特性等から学習上、生活上の困難を抱えていることが大変多いと考えております。こうした児童生徒への指導・支援が未発達であったため、令和5年度以降、文部科学省の事業におきましてアセスメントツールや教育課程外を中心としたプログラム開発、教員研修パッケージの作成等に取り組んでまいりました。
 その上で今年度からでありますけれども、地域レベルや全国レベルで保護者や児童生徒を対象とした相談体制の構築を推進予定であります。これも文部科学省の事業で行っていく予定です。また、質の高い持続可能な支援を可能とする観点から、学校外の団体と学校が連携をしまして、教育課程内での位置づけが可能な学習支援プログラムの開発も推進予定であります。こういった環境整備も併せて進めていくということです。
 その上で生じている課題でありますが、こうしたプログラムでは通常の教育課程とは大幅に異なる高度な内容が想定され、例えば小学生であるものの、例えば算数数学についてはもう大学レベルの内容に到達しているような子供、こうした子供の学習上、生活上の困難にどのように寄り添うかという点において、特別の教育課程の制度というものは現状、存在していない状況がございます。
 こうした状況を踏まえまして、右側、方向性と具体的な論点であります。学校外の機関とも連携し、特性等に応じた高度な内容を取り扱う場合等において、特別の教育課程を必要に応じて編成・実施可能とする仕組みを新設してはどうかと考えております。
 1、対象となる児童生徒です。各教科の内容の一部または全部について特に優れた資質・能力を有し、かつ当該分野の強い興味・関心を有し、通常の教育課程では十分な支援が難しい、困難と学校や教育委員会が認める者とすべきかどうか。
 丸2、特別の教育課程の内容や授業時数についてです。外部機関、具体的には主に大学や研究機関が想定されますが、とも連携し、過度な負担を生じさせないようにしつつ、個別の指導計画を作成することとすべきかどうか。そして学習評価は先ほどと同様に、指導要録上、特別の教育課程に基づく評価ということを明確に位置づけるべきかどうか。そして、入試対策など単なる早修を助長しないような運用にすべきではないかということ。また、特性等に応じた高度な内容に係る部分以外、これは日常の学校生活もそうですし、先ほどの例であれば数学以外の理科や、あるいは社会、国語といった違う教科について、そういった部分は基本的に通常の教育課程と同様であり、標準総授業時数を確保することとすべきかどうか。
 丸3、特別の教育課程が実施される場所です。特性等に応じた高度な内容は研究的・探究的なものが想定されますので、例えば研究者の方が学校に来てくださるといった在籍校での指導ももちろんですが、一定の要件を満たした大学や研究機関、例えば発達段階に応じた学習環境や体制の整備、これは学習面のみならず安全管理等も含めてということを念頭に置いてありますが、そうしたところで実施される指導や学びを在籍校での学習とみなすこととすべきかどうかということであります。
 こうした丸1から丸3について留意事項として最後でありますが、この特異な才能のある児童生徒の対応については、実態の把握や支援のニーズについて我が国においては、可視化は途上の段階にあるのではないかと認識しておりますので、そうした状況を踏まえて、新たな仕組みは対象を今申し上げたように一定の範囲に限定をした上で、今後運用状況を踏まえて、さらなる拡充の適否について検討していくような姿勢も大事ではないかということを考えております。
 以上が、特定分野に特異な才能のある児童生徒についての新たな特別の教育課程のことであります。
 次が、日本語指導が必要な児童生徒についての特別な教育課程でありますけれども、これにつきましては新しく創設するのではなく既に特別の教育課程がありますので、その教育課程の現状を踏まえて、さらなる拡充についての御提案であります。
 現行制度の状況です。これまでの取組ですが、日本語の取り出し指導等を行うために平成26年に既に特別の教育課程の仕組みが制度化されており、現在、小中で約6,000校、約4.4万人に編成・実施されているという現状です。
 生じている課題ですが、現在の日本語指導は漢字や文法等の初期指導にとどまっていることが多く、子供が日本語を学ぶことに対しては御尽力いただいていますけれども、日本語で教科の資質・能力を効果的に育成する取組までについては道半ばの状況があると考えています。特に児童生徒の実態によっては意味理解や概念の獲得、例えば理科であれば光合成とはどういうことか、あるいは算数、数学であれば関数とはどういうことかといったようなこと、こういった意味理解や概念の獲得においては、日本語だけではなく母語の力も効果的に活用して御指導することも重要であると考えていますが、その在り方がなかなか明確にされていない状況があると考えています。
 現行の特別の教育課程の規定も点線の中にありますように、日本語に通じない児童のうち、児童の日本語を理解し、使用する能力に応じた特別の指導を学校教育法施行規則という法令で規定していまして、日本語指導に重点が置かれており、資質・能力の育成が目的であることや、母語の力も活用した指導が念頭にあることが必ずしも明確にできていないのではないかという問題意識があります。母語の力を引き出す上での生成AI等のデジタル技術活用、とりわけ希少言語である場合には母語支援員の方の配置といったことも難しい場合が多いと思います。また、教科学習で鍵となる学習語彙は教科の内容理解には不可欠ですが、日常的には必ずしも多く使用されない、例えば比較とか分析といったような言葉が例として挙げられますが、こういった学習語彙の習得を含めた指導方法の知見が不足しているのではないかと考えております。
 こうしたことを踏まえて方向性と具体的な論点であります。表面的な日本語指導を脱却する資質・能力の育成のための新たな日本語指導というものを再定義し、特別の教育課程に位置づけて質の向上を図ってはどうかと考えております。
 丸1、日本語と母語の力を活用した知識及び技能と思考力、判断力、表現力等の一体的な育成が特別の教育課程の目的であることを明確化する方向で、学校教育法施行規則等の規定を改正すべきかどうかということ。その上で法令の改正だけではなく、ある意味、資質・能力の育成のための新たな日本語指導というものを体系的、専門的に実施できるように、考え方や指導内容・方法等を含めて国が全体像を示すことについても検討すべきかどうか。
 丸3、加えて、学校では対応困難な母語の力を引き出すことを含めて、会話・翻訳・読み上げ・ルビ振り等での生成AI等のデジタル技術の活用ということも考えてはどうか。ここに日本語指導が必要のない児童生徒への応用も念頭に置いて、射程に入れて教科学習での学習語彙の活用というものについて、具体的な推進方策を検討すべきではないかということを御提案させていただきたいと考えております。
 以上が特別の教育課程についての御提案でございますが、以下、参考資料でございます。
 まず、6ページでありますけれども、主な教育課程上の特例について、現行制度の具体について内容を整理したものでありますので御参照いただければと思っております。
 こちら、後ほど児童生徒課長から、また別途御説明もありますが、7ページは現在の小中学校の校内教育支援センターの設置率、全国平均46.1%とありますが、状況をお示ししているものであります。
 8ページは校外の教育支援センターにおける指導状況であります。箇所数は都道府県、市町村、合わせて1,743か所に及び、そこで指導を受けた児童生徒数は約3万人と、増加してきている状況がございます。
 また、本日御発表もいただきますけれども、不登校の教育課程の特例の新設に当たりまして、今年度から研究開発学校の取組で東京都さんや東京都内の市区町村、また、広島県さんと尾道市さんに、特例の編成・実施に先んじて、研究開発学校の中でお取組をいただいていますので概要をまとめております。本日発表もいただける予定です。
 また、特異な才能のある児童生徒への支援について、今年度も文部科学省で事業を実施しておりますと申し上げました。その概要を10ページにまとめておりますので御紹介であります。
 また今年度から、さらに教育課程内で編成・実施できるプログラムの開発、あるいは相談体制の構築をすることを申し上げました。本日御発表いただきます愛媛大学の隅田先生がおられる愛媛大学や東京学芸大学、長野県教育委員会でプログラム開発について今年度からお取組をいただく予定でございます。
 また、相談体制の構築ということでありますが、地域単位の相談体制の構築については前川委員のいらっしゃる京都府教育委員会や、古賀先生もいらっしゃる京都教育大学等でお取組をいただきます。
 また右側でありますけれども、全国単位の相談体制についても今日御発表いただく隅田先生の愛媛大学で、今年度からお取組をいただく予定であります。具体的には下にありますけれども、コメ(※)でございますが、相談支援における児童生徒の特性の把握の在り方や情報提供後の継続的な児童生徒への伴走支援の在り方等々について構築をいただく予定です。
13ページについては現在の日本語指導の特例の状況についてまとめたものですので、また御参照いただければと思います。
 また、14ページは先ほど申し上げた資質・能力の育成のための新たな日本語指導の考えをまとめたものであります。
 また、15ページについてはビフォー・アフターのような形で、表面的な日本語指導というものと資質・能力を育成する指導というものをまとめたものであります。こちらも参考資料でございます。
 最後でございますけれども、前回の内容と併せての御紹介でありますけれども、前回の学校として編成する教育課程の柔軟化を1階部分、今回の個々の児童生徒に着目した特例の御提案についてを2階部分と、全体のイメージをまとめております。多様な個性や特性、背景を有する子供に対応するために、1階の学校と2階の個々の児童生徒単位の柔軟化を組み合わせて、言わば2階建てで複層的に包摂できる柔軟な教育課程の仕組みの構築に向かうことが重要であると考えておりますので、このようにまとめております。
 最後に参考資料、論点資料補足資料でございますが、特異な才能のある児童生徒についての基本的な考え方や諸外国の状況等についてまとめておりますので、また適宜御参照いただければと思います。
 事務局からは以上でございます。
【貞広主査】  ありがとうございました。前回の審議との接続も含めて御説明をいただきました。
 続きまして、児童生徒課よりもお願いします。
【千々岩児童生徒課長】  失礼いたします。児童生徒課長でございます。資料1-2に沿いまして、児童生徒課からは先ほど教育課程課の御説明ありました、この観点につきまして、背景的な補足の観点も含めまして不登校児童生徒への支援についての現状を、特に今日は教育課程に関連する観点を中心に置きながら御説明を申し上げたいと思います。
 まず、1ページ目を御覧ください。こちらは不登校の児童生徒を取り巻く現状でございます。令和5年度の小中学校におきます不登校児童生徒数は、こちらございますように34万6,482人となっておりまして過去最多となってございます。
 その中で不登校の児童生徒のうち、学校内外の機関等で専門的な相談・指導等を受けた児童生徒の状況、こちらは資料の左下に棒グラフでつけさせていただいております。棒グラフの黄色部分、こちら、学校内で専門的な相談・指導等を受けた人数、15万1,654人、棒グラフの青色部分、これは学校外で専門的な相談・指導等受けた人数は11万7,389人となってございまして、双方着実に増加している状況でございます。
 その上で、次の2ページ目を御覧いただければと思います。現在、不登校に係る状況の下、文部科学省としましては令和5年3月に不登校対策COCOLOプランを策定いたしまして、これを踏まえた不登校対策に取り組んでいる状況でございます。
 こちらございますように大きな柱は3つございまして、1点目は、不登校の児童生徒全ての学びの場を確保して、学びたいと思ったときに学べる環境を整える点、2点目は心の小さなSOSを見逃さず、チーム学校で支援する点、3点目は学校の風土の見える化を通して学校をみんなが安心して学べる場所にすると、この3点でございます。今日のこれからの御説明では、この1点目の学びの場の確保に係る点を中心にお話しさせていただきたいと思ってございます。
 次のページ、3ページ目を御覧いただければと思います。こちら、子供たちの置かれた状況に応じました、不登校児童生徒の多様な学びの場の状況を整理させていただいておるものでございます。本日の論点に関して申し上げさせていただきますと、この4つ並べさせていただいているもののうち一番上、学校には行くことはできるけれども、自分のクラスには入りづらい、こういった児童生徒が学ぶことができる場として学校内にある校内教育支援センターといったものの整備が進んでいる状況です。
 その次の段、こちらは家から出ることができるけれども、在籍する学校には行くことができない、こういった児童生徒が学ぶことができる学びの多様化学校。
 それから3番目、家から出ることはできる、だけれども学校といったところに行くことができない児童生徒が学ぶ場所としての学校外の教育支援センター、これらの取組が行われているところでございます。
 規模感について申し上げますと、先ほど教育課程課から御説明ございましたが、一番上の校内教育支援センターにつきましては昨年7月段階で全公立小中学校の46.1%と、学びの多様化学校は、この4月から全校で58校となっております。それから学校外の教育支援センターについては令和5年の段階で1,743といった状況でございますので、学びの場の拡大といったものは進みつつある状況でございます。
 次の4ページ目を御覧いただければと思います。このうち学びの多様化学校につきまして、こちらの資料の趣旨に教育課程の状況を書かせていただいております。こちら学びの多様化学校につきましては、不登校児童生徒の実態に配慮した特別の教育課程を編成して教育を実施する必要があると認められる場合は、文科大臣が学校を指定して特別の教育課程を編成する形となっております。学校を指定する形となっておるものでございます。
 その上で5ページ目でございますが、特別の教育課程に基づく学びの多様化学校における教育課程のパターンの例をここに書かせていただいております。資料の中ほどにございますように、例えば学習指導要領にない教科の新設だったり授業時数の組替えであったり、あるいは右ですが、全体として学校教育法や学習指導要領に示す趣旨や狙い、目的を達成することを前提としつつ、総授業時数の削減であったり、あるいは授業時間の短縮といった特別の教育課程の編成がなされ、これに応じて不登校児童生徒の社会性の育成に向けた指導が行われている状況でございます。
 1枚飛ばしていただいて、最後に7ページ目を御覧いただければと思います。こちら不登校児童生徒の教育課程について整理させていただきました表となります。ポイントを申し上げさせていただきますと一番上の列、学びの多様化学校につきましては先ほど御説明申し上げましたとおり、特別の教育課程が学校として位置づけられている形となっております。
 一方で、その下でございますが校内教育支援センターであったり、あるいは学校外の教育支援センターであったり、それら多様な学習が行われていると。その中で例えば、こちら書かせていただいていますような通常教室の授業の配信であったり、あるいは教材の学習であったりなどもございます。そして、これらの学習は要件を満たせば学習の一部を出席扱いとする、あるいは成績評価を行うこともできる形でございますが、個々の学習の成果を通常の教育課程に照らして評価するものでございます。そして、これらの学びが全体として教育課程として位置づいている形になっておるものではございません。また、多様な学びが行われている一方で、質の確保が重要ではないかといった御指摘もございます。
 まとめさせていただいたところが矢印の下でございますが、校内教育支援センターや学校外の学びで多様な学びが行われていると。ただ、全体としては教育課程に位置づけられた計画的、組織的な学びにはなっていない。ゆえに、学びの質の確保や適切な評価の実施がなされていない場合があるという課題があると考えております。こういった点も踏まえまして、先ほどの教育課程課から御説明させていただきました内容と併せまして本日、御議論を頂戴できればと思っております。
 駆け足で恐縮でございます。以上でございます。
【貞広主査】  ありがとうございました。
 では、続きまして校内分教室としてチャレンジクラスを設置し、不登校児童生徒への体系的な学習支援を実施されている東京都教育委員会、多摩市教育委員会より御発表をお願いいたします。
【東京都教育庁(藤田)】  東京都教育庁指導部指導企画課長の藤田でございます。本日はよろしくお願いいたします。
 東京都独自の取組であるチャレンジクラス、不登校対応校内分教室について御説明申し上げます。令和5年度の問題行動等調査結果では、都の不登校の子供は約3万2,000人、11年連続で増加しております。まさに不登校対応は急務であることから、都の教育委員会は不登校の子供の状況に応じた支援の強化に取り組んでまいりました。
 不登校の子供が通う学校である学びの多様化学校については、都としても重要な取組の一つとして設置促進のため各区市町村の取組を支援してまいりました。学びの多様化学校は年間の授業時数を削減できるとともに、正規の教員による指導ができることにより不登校の子供が通いやすくなります。また、都の公立学校は現在9校の設置がございます。学びの多様化学校のよさは、自分に合った学びを通して意欲を高める子供が増加することです。
 一方で課題は、経費、土地、施設の確保が難しく新規設置が進んでいないこと、自宅近くの学校で学びたい生徒のニーズへの対応、本校などの生徒と関わる機会が限定的であることです。
  そこで昨年度、都教育委員会は学びの多様化学校と同様の取組が校内でできるよう、校内の空き教室を活用し、不登校の子供が通う都独自のチャレンジクラスの設置を開始いたしました。具体的には公立中学校10校への設置支援を行い、4人から6人の複数の教員を配置する環境整備等が必要な場合は東京都が経費を補助しております。このことにより校内教育支援センターでの居場所づくりの機能に加え、その後の進路や社会的自立も考えた組織的、計画的な支援の充実を図っております。
 チャレンジクラスでは、設置校の教育課程をそのまま実施するのでは不登校生徒の実態に合わないことがあるため、設置校の教育課程に基づき不登校生徒の実態に応じたゆとりある生活時程を実現しております。また、校内に設置するメリットを生かしまして、体育館や家庭科室などの施設を使用して通常の学級等の生徒との交流ができるようにしております。
 これらのことにより、経費、土地、施設の負担を減らすことができ、生徒の状況に応じて遅めの登校、早めの下校となる時程を組むとともに、通常の学級の生徒と会わないように玄関等の動線を分けることでチャレンジクラスの生徒の心理的、身体的な負担を軽減するようにするなど、不登校の子供一人一人の状況に応じた支援を実施しております。
 2枚目に入ります。チャレンジクラスの設置校からは、次の成果が報告されています。まず、出席率の向上でございます。ある生徒は校舎内に入ることへの不安が強く、登校しても校門前で帰ってしまう様子が見られました。そこで、まず校門前での生徒の出迎えを行っております。
 また、登校できない生徒には、学習支援用アプリを活用してメッセージのやり取りを行いました。オンラインでの対応が難しい生徒には電話や手紙、家庭訪問を行うなど一人一人に応じた支援を行い、また、こうした取組の結果、対面やオンライン等において教員や他の生徒とつながり、安心して登校できるようにもなるなど出席率が上昇いたしました。
 3枚目です。次に、学習意欲や学力の向上です。こちらの学校では全教科チームティーチングで授業を実施し、一人一人の状況に応じた支援を行っております。不登校を経験した子供であるため、同じ学年でも学習の理解や到達度が一人一人異なります。一人一人の学習進度に合わせた支援を実施するためには、同じ時間割でもチームティーチングで授業を実施し、個別での対応を十分に行うようにしております。その結果、これまで在籍学級の教室で授業を受けられなかった生徒が進んで学習に取り組むようになりました。
 4枚目になります。最後に全校行事への参加でございます。こちらの学校では運動会の実施に際し、チャレンジクラスの生徒に運動会当日の流れや種目を事前に説明し、参加形態を選択できるようにいたしました。当日のクラス対抗の大縄跳びにはチャレンジクラスの生徒も出場し、通常の学級の生徒よりも多くの回数を飛び、ほかの生徒や参観した保護者から大きな拍手を受けることがございました。競技の参加が難しい生徒は校庭で友達への応援を行う、自分の教室から友達を応援するなど、チャレンジクラスの生徒全員が自分なりの参加方法で運動会に参加することができました。以上の成果につきましては、文部科学省に定期的に報告し、認識を共有しているところでございます。
 次のページでございます。中段右側のボックス、令和7年度のチャレンジクラスの設置についてでございますが、今年度は新規4地区4校の中学校を追加し、昨年度の10校と合わせて14校となりました。昨年度のチャレンジクラスの取組を踏まえて、今年度は設置校の教育課程ではチャレンジクラスに在籍する生徒の実態に合わず、指導と評価が難しいケースがあるため、一人一人に応じた教育課程の編成の必要性を感じて取り組むことといたしております。
 また、今年度、チャレンジクラス14校は国の研究開発学校の指定を受け、研究を進めることとなります。今年度の研究の方向性は、在籍する一人一人の生徒の学習進度や実態に応じた特別の教育課程編成の在り方に取り組み、個々の得意、不得意を生かせるようにするなどの研究を実施し、チャレンジクラスにおける多様な個性や特性、背景を有する子供たちを包摂する柔軟な教育課程の編成の制度化を実現するために知見を深めていく所存でございます。
 次のページでございます。最後に、次期学習指導要領に向けての期待についてお伝えさせていただきます。学校は全ての不登校の子供が学びを継続できるように支援を行っております。その一方で、不登校の子供の学びのニーズは多様であり、単一の教育課程の下で個に応じた支援を実施することには限界がございます。したがって不登校支援の充実を図るために、次期学習指導要領では一人一人に着目した教育課程の編成が実現できるようにしていただきたいと考えております。
 東京都では、チャレンジクラスへの複数の教員の配置や経費の補助など、人的、物的な環境整備を行っているところですが、こうした条件整備につなげていけるよう不登校の子供への個に応じた教育課程の実施について、制度的位置付けを明確にしていくことが重要と考えております。
 以上が東京都の取組になります。
【多摩市教育委員会(山本)】  では続けて、多摩市教育委員会教育部参事、山本から、チャレンジクラス「あたごSpace」の支援と取組について御説明いたします。
 本市において不登校児童生徒数は増加傾向にあり、特に中学校では出現率が8%を超え、早急な対策が必要とされています。このような中、令和6年4月より東京都教育委員会の指定を受け、チャレンジクラス「あたごSpace」を開設し、不登校支援の充実を図っております。不登校の要因は様々であり、その支援は児童生徒一人一人の状況によって異なりますが、「あたごSpace」に在籍する生徒の多くは友達と勉強がしたい、学び直しがしたいなど、学びたいとの願いを持っています。
 このような生徒の実態や状況を踏まえ、「あたごSpace」では3点の支援をキーワードとして挙げております。第1に、「整える」では登校日数の増加を、第2に、「分かる」では学習内容の定着を、そして第3に、「つながる」では学校・相談機関とのつながりを構築することを目指しています。それでは、これら3点の支援のキーワードに関する取組や、その成果と課題について説明をいたします。
 第1に、「整える」です。生徒の実態として起立性調節障害で朝起きることが苦手であることや、集団が苦手でコミュニケーションが難しいなどの実態があります。「あたごSpace」では、このような生徒の実態を踏まえ、朝の開始時刻を他の学級よりも1時間遅くし、週当たりの授業コマ数を通常の29コマから19コマに減らした、ゆとりある生活時程の中で学校生活を行っています。
 1時間目の授業開始時刻前までに、多目的教室で自分のペースでのんびりとリフレッシュできるリフレッシュタイムを確保しています。また、授業中に心身の不調が見られたときは各教室に設置をした休息スペースへ移動し、活動への参加に向けて気持ちを整えられるようにしています。このような手だてを講じることで生徒の学校での生活リズムが安定し、出席率は、「あたごSpace」の在籍前の令和5年度が28.7%でしたが、令和6年度は65%以上を維持することができています。また、前年度よりも登校日数が増えた割合を示す出席改善率は約80%であり、安心して自主的に登校できる生徒が増え、仲間との交流の輪を広げながら充実した学校生活を送ることができるようになっています。
 第2は、「分かる」です。生徒の実態として、これまでの不登校による授業の欠席が要因で学び直しが必要な生徒が大半を占めています。このような中で3点の支援を行ってきました。
 1点目は、教科や学習内容、個の習熟に応じた学習展開です。例えば、画面にもある道徳科では全学年合同で授業を実施し、比較的大人数で対話的、協働的に学習に取り組んでいます。また、国語科や英語科などでは学年別に授業を実施し、学年に応じた学習内容の定着を図っています。さらに数学科では学習の定着状況に差があるため、一部の単元において習熟度別に授業を展開し、個別の学習状況に対応した授業を実施しています。
 2点目は、各教科において振り返りを含めた学習時間の設定についてです。不登校の期間が長かった生徒が大半を占めているので、どの教科においても既習事項に関する振り返りや必要に応じて学び直しをするなどして学習内容の定着を図っています。
 3点目は、体験的な授業の実施と充実です。多くの生徒が不登校のため、体験活動を含む体験的な学びの経験が不足している場合があります。できるだけ生徒に学ぶ楽しさを感じてもらうために体験的な学習を授業に多く取り入れるとともに、実感を伴った学びを通じて学習内容のさらなる定着を図っています。
 これらの取組により、生徒からは道徳で自分の意見が言えたり書けるようになったりしたという声もあり、自分が苦手な意見の表明ができるようになった様子や、調理実習での料理に家庭でも取り組むなど、学習に対する意欲の向上が見られ、前向きに学習に取り組むことができています。
 また生徒からは、自分のペースに合わせて学習に取り組むことができてよかったという声も多く聞かれます。画面は生徒Aの学習状況や保護者との面談等を踏まえ、各教科の指導の目標や重点内容を設定し作成した個別の支援計画の一部になります。ここでは、国語の学習指導と評価の実際を示しています。
 本計画に基づく個に応じた指導を行うことにより、「あたごSpace」での学習内容や、その評価を通知表に反映して生徒を認め、励ますようにしていても、学校の評価規準に照らすと指導要録における学習評価は通知表の評価よりも低くなってしまい、指導と評価の実態と指導要録のずれが生じることもあります。今後、生徒一人一人の習熟や学習経験に応じた指導と評価の一体化を図るためには、「あたごSpace」以外の通常の学級の教育課程ではない特別の教育課程の編成・実施が必要であると強く感じており、それに伴った個に応じた学習評価の在り方についても改めて検討していくことが課題であると考えています。
 第3に、「つながる」です。生徒の実態として体調不良、不規則な生活リズムにより朝の登校状況が安定しない生徒が多く、家庭との連携が不可欠となっています。こうした実態を踏まえ、学校と生徒、家庭がつながる手だてとして、次の4点に取り組んでいます。
 1点目は、時間割ノートを活用し、生徒が翌日以降も見通しを持って生活できるようにしています。2点目は、直通電話回線を構築し、生徒も保護者も安心して電話連絡ができるようにしています。3点目は、無連絡家庭ゼロを目標に、遅刻しても登校できる方法を生徒及び保護者と教員とが一緒に考えるようにしています。4点目は、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーとの連携を通して生徒・家庭のサポート体制を構築しています。これら4点の取組により、生徒、保護者、教員が気軽に話せる関係を構築することができています。また、教員とスクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーの定期の情報連携を通して、生徒や家庭が学校や関係機関等とつながることができるようになりました。
 以上、御説明したとおり、「あたごSpace」では、この1年間、学びたいという生徒の学習意欲に応えるため、「整える」、「分かる」、「つながる」を支援のキーワードとした取組を推進してきました。そして本年3月、画面のように3年生10名が自分の進路を選択、実現し、全員がそろって東愛宕中学校を巣立っていきました。その姿は当初の学びたい生徒から卒業後も学び続ける生徒へと変容を遂げており、この変容こそがチャレンジクラスの成果の一つと考えています。今後も「あたごSpace」では生徒にとって居心地がよく、学びたい、学び続けたいと感じる場となることを目指し、不登校支援の充実を図ってまいります。
【貞広主査】  ありがとうございました。
 続きまして、県立の教育支援センターであるSCHOOL“S”や校内の教育支援センターであるスペシャルサポートルームを設置して、不登校児童生徒への支援を実施されている広島県教育委員会と尾道市教育委員会より御発表をお願いいたします。
【広島県教育委員会(蓮浦)】  失礼いたします。広島県教育委員会教育センター所長兼、個別最適な学び担当課長の蓮浦でございます。どうぞよろしくお願いいたします。広島県における不登校等児童生徒への支援の充実に向けた、これまでの取組、そして成果と課題等についてお話をいたします。よろしくお願いします。
 2ページ目を御覧ください。まず、広島県内の不登校の状況等でございますが、全国の状況と同様、増加傾向が続いており、令和5年度の調査においては小中高合計1万人を超え、過去最多となっております。コロナ前の平成30年度と比較しますと、約2.3倍という状況でございます。
 不登校の児童生徒は御承知のとおり、30日以上の欠席とはいいましても一くくりにはできず、個々の状況は異なりますので、スライドの一番下に示しております支援者の不登校等児童生徒への支援の在り方・考え方の理解の促進をベースといたしまして、欠席日数等を踏まえて、これもあくまで目安にすぎませんが表の右に示しております様々な取組を進めております。本日は、中段に示しております県の教育支援センター、SCHOOL“S”の取組についてお話をさせていただきます。
 4ページを御覧ください。このSCHOOL“S”でございますが、県が設置しております校外の教育支援センターであり、30年以上前から来室する児童生徒を支援する取組を進めてまいりました。令和4年度には学習・生活環境を一新するとともに、オンラインで利用できる機器を整備し、機能を強化しております。また、名称もコンセプトである5つのSの頭文字からSCHOOL“S”とし、社会的自立に向けて特に必要だと考えております「相談できる力」、「自分の強みを知り、生かす力」を育成したい力として設定し、支援に当たっております。
 5ページを御覧ください。加えて昨年度からは、このSCHOOL“S”と県内の市町が設置しております市町の教育支援センターとのネットワークを構築することを通して、知見を共有し、県全体で共同で児童生徒のより身近にある安全・安心な居場所、学びとつながる場所を一層充実させていけるよう取り組んでいるところでございます。
 6ページを御覧ください。もう少しSCHOOL“S”における取組内容等を詳しく紹介させていただきます。SCHOOL“S”では利用方法について、来室なのか、オンラインなのか、あるいは併用するのかなどを児童生徒が選択するとともに、取組内容も様々なコンテンツの中から選択して作成したMY時間割に基づいて支援を進めております。ですので、基本的には一斉一律に全員が同じことに取り組んでいることはございません。
 利用する児童生徒の中には、まずはSCHOOL“S”に来る、オンラインに参加するなど、つながることを大切にすべき児童生徒もおりますし、友達とのコミュニケーションを築けるようになることを大切にすべき児童生徒、また、より学校に近い学びにつながることを大切にすべき児童生徒などもおり、個々の状況は様々であることから、児童生徒が選択する、どういった内容のコンテンツを支援者が提供し、個々に応じて支援していくのかというところが重要だと考えておりますし、SCHOOL“S”のスタッフは日々の振り返りや週1回の支援会議などを通じて、個々の状況や支援の方向性を共有しながら取り組んでおります。実際の活動の様子については参考資料として付しておりますので、また、御覧になっていただけたらと思います。
 7ページを御覧ください。これまでの取組の成果と課題でございます。参考資料にもつけておりますけれども、これまでの3年間、毎年度200名超の利用登録があるとともに1日平均約50名が利用しており、児童生徒にとって安全・安心な場であり、社会とつながることができる場所としての役割を果たし、その充実は図れていると捉えております。児童生徒の姿を見ましても、これも参考資料内の事例にございますようにSCHOOL“S”への参加が学びへの意欲につながり、さらに県内全体を対象とする別のプログラムへの参加につながった生徒が見られるなど、教育支援センターでの活動が児童生徒の学びを深め、社会へのつながりを広げている様子も見受けられます。
 一方、課題でございます。これも参考資料に付しておりますけれども、コンテンツとしてSCHOOL“S”において、探究タイムの設定やSCHOOL“S”プロジェクトと銘打ったセンター外に出ての学習、また広島大学・東広島市が実施されている広域交流型オンライン学習への参加、さらにはオンライン学びプログラム、クラブ活動の配信など様々な学びにつながる工夫をしてきたところではございます。
 とりわけ、オンライン学びプログラムにつきましては、オンラインという利点を生かして全国各地、北海道から沖縄まで様々な美術館、博物館などの施設や、あるいは熊本市、さいたま市、三重県、福島県といった地方自治体などにも御協力をいただき配信をしてきております。しかしながら、まだまだ社会とつながる場所としての利用のみで、学ぶ意欲の向上や必要な資質・能力の向上にまで十分につながっていない状況の児童生徒もおります。
 また、利用申込み時、そして利用するようになった後も利用状況等については学校と定期的に連携はしているものの、在籍校における学習内容との連続性の確保や、SCHOOL“S”における学習の在籍校における評価がなかなか難しい状況がございます。
 また、教育支援センターにおける学びの支援について、それぞれ限られた人的物的資源の中で最大限の努力はしているところでございますが、連続性や系統性のところまでは至っていない、また個々の児童生徒に応じた個別のサポート計画が作成できていないなど、指導・支援の質にばらつきが見られる状況でございます。
 こういった課題を踏まえて制度上、個別の柔軟な教育課程の編成を可能とし、教育課程を実施する場所として教育支援センターを明確に位置付けていくことで、学習支援の体系的な実施が促進され、子供たちの学びの質をさらに向上させていくことにつながるのではないかと考えております。
 校内の教育支援センター、SSRの取組については、この後、その具体を尾道市教育委員会からお話をしていただきますが、今後は校内外の教育支援センターにおける学びの質のさらなる向上に向けて、今年度から研究開発学校の指定を受け、取り組まれる尾道市教育委員会とともに引き続き研究を積み重ねていきたいと考えております。
 以上でございます。
【尾道市教育委員会(金子)】  それでは続けて、尾道市教育委員会の金子と坂本でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 尾道市は、広島県の南東部に位置する自然豊かなまちであり、児童生徒数は約8,000人強となっております。グラフでお示ししておりますように、本市の不登校児童生徒の割合は年々増加しており、令和5年度は小学校では2.6%、中学校では7.3%の児童生徒が不登校という状況であり、全国、広島県と比較いたしましても近年高い割合となっております。
【尾道市教育委員会(坂本)】  そこで尾道市では広島県のSSR、スペシャルサポートルームの推進校として昨年度はこちらの5校で取組を進めてまいりました。加配教員である支援コーディネーターを中心に校内全体で組織的な支援を進めてきているところです。
 SSR推進校では、通室生一人一人に個別のサポート計画を作成しています。まず、本人と保護者の意向を受け、1年間を見通した長期目標を設定します。次に、学年会や児童生徒支援会議を経て個々の行動内容を短期目標として設定します。この短期目標は、生徒の変容や取り組んだ成果と課題により目標を修正・追加していくようにしています。そして日々の見取りをミニ支援会議のような場で共有し、個々の通室生の手の届く目標、少しだけ頑張ればできる目標として支援者で共通認識をもち、支援に生かせるようにしています。通室生は1日の目標を立て、振り返ることを繰り返す中で、また短期目標の修正を図っていきます。
 こちらが個別のサポート計画の1例です。長期目標の下、2週間から1か月のスパンで短期目標の再設定を行い、改善を図りながら支援を進めていきます。
 こちらはSSR推進校での日々の様子です。通室生は登校、通室した際に、その日1日の行動目標や学習予定等を自己選択・自己決定していきます。個々に決定した内容に沿ってできることに取り組んでいきます。オンラインで教室とつながったり、YouTubeを見ながらダンスの練習をしたりするなど、少しずつできることや人と関わることを増やしていきながら行きつ戻りつ目標を更新していっています。
 また、市の取組として令和5年度には、県のSSR推進校に市費の会計年度任用職員である不登校児童生徒支援アシスタントを配置し、共に支援に当たっていましたが、昨年度は「不登校支援を広げる」という意味で、市費の不登校児童生徒支援アシスタントを県のSSR推進校以外のこちらの4校に配置し、市独自に校内SSRの設置促進を図ってきました。今後さらに拡充をしていく予定です。
 SSRにおける主な成果としては、通室生にとって安全・安心な居場所となり、通室生の笑顔が増えたことや通室日数や滞在時間が増えたこと、コミュニケーション能力が向上し、相談できたり、自己選択・自己決定できたりするようになってきたことなどが挙げられます。
 また、課題としては、不登校児童生徒の在籍時間や状況に応じ、在籍学級の教育課程とは異なる教育内容が必要であるものの、原籍級の教育課程に基づく学習評価を行う上では適切に評価に反映することが難しいこと、特に不登校等が長期化している場合、学び直しが必要な場合があるが、限られた登校日数や通常の教育課程の中では学習の遅れを取り戻しにくいこと、個々の不登校児童生徒のニーズに応じた個別の指導計画がないと担当職員の力量等により対応が左右されてしまい、体系的な学習が困難であることなどがあります。
 そこで通常の教育課程では個々の不登校児童生徒のニーズに対応し切れず、組織的・計画的な指導、支援に当たっての課題があるため、不登校児童生徒等のニーズに応じた柔軟な教育課程を編成・実施するための研究が必要であると感じているところです。
 研究開発学校として、小・中学校における「不登校等児童生徒に必要となる資質・能力」を明確にした上で、教科の新設や統合等を含め、個々の児童生徒に応じた特別の教育課程の編成を検討していきたいと考えております。具体的な取組としては、不登校の「様態」と起因している児童生徒の一人一人の背景や状況を考慮し、「様態」の種別に応じた教育課程の編成を検討すること。表現活動を柔軟に行い、ソーシャルスキルトレーニングや多様な体験活動等を合科的教育領域として学ぶことができるよう、教科「はっさくタイム(表現)」を新設し、教育課程の編成を検討すること。「はっさくタイム(表現)」の時間では、PBL型の時間を設定し、児童生徒自身の興味・関心に基づき自分なりの問いを立てて、自分なりに答えにたどり着くことのできる力を育むための活動を検討していくこと。そして自分のつまずきの原点まで遡って学び直すことができるよう、教科「はっさくタイム(チャレンジ)」を新設し、教育課程の編成を検討すること、特別な教育課程の実施方法や評価の方法を検討していくことです。
 以降に参考資料として尾道市の教育相談についてや、尾道市の教育支援センター「千光寺さくら」、「因島はっさく」の状況について、また、尾道市の教育支援センターでの体験活動、「自然体験活動」と「得意なこと一緒にやりましょう体験」、企業とのコラボ体験活動の様子等を載せております。これらの体験活動における成果と課題も、新設教科である「はっさくタイム(表現)」等に生かしていきたいと考えております。
 学び直しが必要なのか、体験し、表現することが必要なのかも含め、不登校の「様態」に応じて教育課程の重点化を図ることで、「様態」の種別に応じて児童生徒自身が状況に適した学びの場や学習方法等を選択して履修し、その内容についての学習評価の在り方を検討していきたいと考えております。
 以上で尾道市からの発表を終わります。
【貞広主査】  ありがとうございました。
 続きまして、特定分野に特異な才能のある児童生徒への支援を御専門とされています隅田教授より、愛媛大学における取組等について御発表をお願いいたします。
【愛媛大学(隅田)】  今日、私が紹介させていただきますのは多様な子供、その中でも特異な才能のある児童生徒に関わる内容です。子供たちの学びが、その多様化が進む中、学校の教室内外において既に起きている変化と、それに制度がどう答えるべきかを考える機会になれば幸いです。よろしくお願いいたします。
 申し上げたいのは、特異な才能を持つ子供たちは私たちのすぐそばにいるということです。今から15年前、2010年に私は愛媛大学において強い興味関心や高い能力を持つ子供たちを対象とした特別教育プログラム、Kids Academiaをスタートいたしました。2013年には野依科学奨励賞をいただきました。コロナ禍の2020年よりオンラインに切り替えましてメンバーを全国から募ることができるようになり、現在225名の子供たちがメンバー登録しています。1名は海外在住です。特異な才能を持つ子供は、どの地域にも存在いたします。
 実に多様な才能が見えてきました。例えば、小学1年生でも高校生物の内容である免疫細胞について興味を持ち、独学し、理解を深めている子供がいます。少しビデオで御紹介します。
(動画上映)
【愛媛大学(隅田)】  この子は免疫細胞を自分の好きなアニメと組み合わせて、自分の言葉でしっかりと論理立てて説明をしていきます。もちろん、この一方で、この子がこのまま高校へ行けばいいというものではないはずです。こうした事例は、これまでの学校教育における子供という前提を大きく揺るがす、一つのことにすごくこだわる子、説明しなくてもすっと理解する子、周りを見渡せば、こういう子供はいるはずです。高度な語彙力、独創的な問題解決、批判的な読解、鋭い観察力や仮説構築など、国語、算数、数学、理科、社会など教科学習の中でも多様に確認することができます。
 通常の学年水準を超える能力のある児童生徒は、全国の教室にいます。また、強いこだわり、感情の鋭敏さなどがあり、こうした特性も才能の兆候であることもあります。これらは、しばしば扱いにくさとして捉えられがちですが、見方を変えれば才能の芽であって適切な理解と支援が必要です。
 才能のある児童生徒の定義は世界中で様々です。才能には知能、創造性、リーダーシップなど多様な観点があり、細かくレベルを設定する論者もいます。重要なことは、才能教育研究を牽引してきたレンズーリさんとか、スタインバーグさんも主張するように、才能は素質と環境の相互作用で発現、変容するものであるという点です。ですから、支援の基本は選抜することよりも多様性の中で互いを高め合う環境をつくること、その機会を提供することであり、学校や社会全体で子供たちの多様性を受容、尊重する文化が必要です。
 また、才能のある子は何でもできる、放っておいても大成するといった神話が根強いですが、これらは誤解です。むしろ、自分の中のアンバランスさに戸惑っている子も少なくありません。支援がなければ才能はむしろ縮んでしまうことさえあります。
 では、どう支援するのか。既に制度的な整備がなされている国では、才能に応じた学びを実現するために教育課程を柔軟化して対応しています。例えば先取り学習を行う早修や、より深く幅広い学びに取り組む拡充がよく知られています。これは単に先に進ませることではなく、子供のレディネスや学習歴に応じた個別最適な学びの取組でもあります。我が国においても、今後はこうした柔軟な学びの選択肢を制度的に考えることが重要です。
 才能のある児童生徒を包摂する授業の調整を通常の学級内で実現するにはdifferentiation、柔軟化の考えが有効です。トムリンソンさんが示すように、扱う概念、教材、課題、学習の計画、学ぶペースなどを子供のレディネスや関心に応じて調整することができます。板書の内容を整理して自分で次の課題を設定する子、教材を少し変えて発展的な課題に取り組む子、同じ教室の中でも一人一人に合った学びをつくり出す工夫は、どの学校でも、どの先生でもできるものです。
 とはいえ、子供たちの多様化、才能のある児童生徒を対象とした教育支援を教室の中で1人の教員が行うには限界があるでしょう。そこで私は教育支援について類型化を行い、通常の教育課程からの連続的な支援の拡張可能性を考えます。支援の場面は、教室内のType1、学校内のType2、学校外のType3に大別します。そしてaからcの支援者の違いにより整理しました。このマトリックス型の類型化によって、それぞれの支援に対するニーズの大きさや適切な支援方策について検証していくことができます。
 今年度より、この検証に関わる事業が開始されるところではありますが、令和5年度、6年度の関連事業から少し具体を考えてみたいと思います。担当教員が単独で教室内で行うことが可能なType1の支援の例です。小学校低学年でも複雑な計算ができる子供の場合、通常の確認練習問題では時間を持て余すでしょう。その場合、スペシャル問題などを用意することが考えられます。才能のある児童だけでなく、クラスの全ての子供に用意しているという感覚を持つこともできます。
 本日の発表の最初に紹介した免疫細胞について発表した子供は、学校へ行きづらくなっていた時期があったのですが、学校の先生がスペシャル問題を用意してくれることにより学校へ足が向くようになりました。
 これは複数の教員が連携し、教室内で行うことが可能なType1-bの教育支援の例です。教科横断的なパフォーマンス課題に対して、才能のある児童は協働作業を行う中で各要素の関係性を整理し、問題を効率的に構造化したり解決策をより深く分析したりすることで広い視野から洞察をしていました。
 メリットとデメリットが同時に存在する問いにおいて何を優先すべきか、その判断がもたらす影響をどのように評価すべきか、その根拠は何か、多面的にリスクを考えながらどのような行動をとるべきか。これらは現代社会を生きていく市民に求められる資質・能力です。そして自らの意見を分かりやすく伝え、対峙する立場を調整し、合意形成を図る力はリーダーシップ能力の育成につながります。
 これは外部の専門家と連携し、教室内で行うことが可能なType1-cの教育支援の例でしょう。クラスに、そのトピックについて大変知識が豊富な子供や興味関心が高い子供がいることがあります。そうした場合に教材を多様化することにより才能のある子供はもちろん、ほかの子供たちの好奇心も刺激し、多様な学びを展開することができます。その際に動物園や博物館のような社会教育施設との連携は大変有効です。
 Type3-cは、学校外において当該分野の専門家による高度な学びの場を活用するものです。高校生の課題研究を大学教員が指導するケース、科学技術振興機構JSTの次世代科学技術チャレンジプログラムにおいて、小中高校生が長期的に大学等において特別教育プログラムを受けるようなケースは、その例と言えるでしょう。また、ICTを活用して愛媛県のスーパーサイエンスハイスクール、宇和島東高校の生徒による課題研究をサイバーメンタリングシステムを使って、大学教員や県外に住む卒業生が時間や距離の制約を超えて指導するような取組もスタートしています。
 昨年8月に日本初開催となった第18回アジア太平洋ギフテッド教育研究大会で、世界7か国地域から93名の中学生と18名の引率教員が参加するユースサミットを開催いたしました。日本からは東京、千葉、沖縄、島根、神奈川、愛媛、徳島、広島から11名の中学生が参加しました。こちらもType3-cの例と言えるでしょう。ユースサミットのプログラムの中心は、異なる国、地域の生徒が5、6名でグループとなって行う探究活動です。お茶の水女子大学サイエンス&エデュケーション研究所のメンバーが開発した2つの探究プログラムに分かれ、4日間の探究活動を行い、中間発表会や最終発表会も行いました。
 このグラフは、日本人参加生徒への事後調査の結果です。全ての参加生徒が信頼できる仲間ができたと強く思ったと回答しました。そして挫折や問題から諦めずに気持ちを立て直し、仲間とともに困難を乗り越え、自分に対する自信がつき、自己理解や将来像が明確になった様子がうかがえます。
 この図は、特異な才能のある児童生徒への支援について、制度的な歴史のあるアメリカの資料から抜粋して作成したものです。アメリカにおいて全州を対象として定期的に調査が行われ、報告書が公開されています。これは、その中で小学1年から高校段階におきまして、それぞれの州で提供されている教育支援の方法を尋ねたものです。選択率が上位の3つのみを抜粋して掲載していますが、小学校段階は通常クラスにおける柔軟化での対応が一般的であり、学年が上がるにつれて教室を超えた学校としての取組、そして大学と学校外との連携による取組の割合が増えていることが分かります。
 一方で日本においては、才能のある児童生徒及びその支援に対する基礎的な情報が圧倒的に不足しているのが現状です。愛媛大学では、この令和4年4月1日に教育学部附属の教育研究施設として才能教育センターを設置いたしました。教育学、医学、心理学、特別支援、スポーツ、教育実践などを専門とする大学教員に加えまして附属幼稚園、小学校、中学校、高等学校、特別支援学校の教員も兼任し、新しい分野融合のチームとして学校と社会をシームレスにつなぐ研究と実践のハブを目指します。新しいこのセンターが国際通用性のある信頼性の高い情報発信プラットフォームとなり、カリキュラムや教材の開発、教員研修や理解増進、全国規模での才能発掘や支援、相談支援体制の構築を行ってまいります。
 関連実績といたしまして、愛媛大学で2019年より教育学部の授業科目として才能教育論を開講しています。昨年令和5年度の文部科学省、特定分野に特異な才能のある児童生徒への支援の推進事業において、本学が開発した研修パッケージをその授業で使わせていただき、その受講生であった教員志望学生が令和6年度の研修パッケージの作成に協力してくれました。その学生の感想を少し紹介させていただきます。
(動画上映)
【愛媛大学(隅田)】  子供たちの多様性に応じて、教育課程もまた多様であるべきです。
 最後に、次の学習指導要領への期待を申し上げます。1つ目に、特異な才能のある児童生徒は全国に確実に存在いたします。実態が見えにくいから支援を後回しにするのではなく、政策的・制度的対応を先行させ、その可視化と包摂を同時に進めるべきです。
 2つ目に、次期学習指導要領では特別の教育課程の枠組みを柔軟に拡張し、教室、学校、地域、社会が連動できる体制をつくる必要があります。
 そして3つ目に、学級集団における学びの個別化と、学校外の多様な専門性の高いリソースを融合させた支援の在り方を制度的に後押ししていくことが望まれます。まだ見えない才能を見える化し、育む教育へ、子供一人一人の強みが社会の未来に接続されるために子供の才能を信じて制度と現場の橋渡しを今こそ進めるべきときです。次期学習指導要領に、その一歩を期待いたします。
 以上です。どうもありがとうございました。
【貞広主査】  隅田先生、ありがとうございました。
 それでは、質疑については5分間の休憩を挟んだ後にお願いしたいと思います。今、47分ですので、52分からの再開をお願いいたします。
( 休憩 )
【貞広主査】  それでは議事を再開し、質疑応答、意見交換の時間とさせていただきたいと思います。冒頭、事務局より御提出がありました方向性と具体的な論点を中心に、御質問や御意見のある方は挙手ボタンを押していただければと思います。私から指名をさせていただきます。恐縮ですが、会場にいらっしゃる委員の方々も手を挙げるボタンを押していただき、発言時はミュートを解除してお話ください。発言した委員全員に御発言の機会がありますように、御発言は3分以内でおまとめいただければと存じます。よろしくお願いいたします。
 それでは、いかがでしょうか。それでは、まず御指名させていただきます。オンラインから山本委員、どうぞ。
【山本委員】  ありがとうございます。私も4月から横浜国立大学の附属の小学校の校長という立場になりましたので、教育委員会と学校の両方の立場から2点お話しさせていただければと思います。
 まず、不登校児童生徒の対応についてなんですが、私も今日の提案のように単一のカリキュラムの限界というものを感じていまして、不登校児童生徒の増加に対してカリキュラムの内容や学習評価が追いついてないような状況の中、今回の制度設計については基本的に賛成の立場です。
 ただ、不登校の子たちは本当にいろいろな状況の子たちがいるような実態ですので、この制度をつくるときに、ぜひリアル空間だけではなくてオンラインやメタバースなどの3層空間などを活用した、場所を選ばなくても学べる内容を増やしていくような方法を具体的に示していただいたり、あと、取り出すことでかえって復帰が難しくなる場合もあると思いますので、アレンジできる部分と共通の部分のカリキュラムとしてコミュニケーションプログラムのような、その内容の具体例なども示していただけるとありがたいと思っています。
 2点目に日本語指導についてですが、横浜市は外国籍または外国につながる児童生徒が約1万2,000人近くおりまして、国際理解教室も500校のうち242校が設置しているような状況です。その中で課題として感じているのは、日本語を教えることが目的になって日本語ができるか、できないかで評価しがちだという点です。今回御提案いただいたように子供たちの母語の力というものを活用しながら、今までそれぞれが培ってきたものや身に付けてきたものがきちんと発揮できるような集団づくりをしていくことが非常に大事だと思っています。特別なカリキュラムをつくることだけではなくて、ぜひ学びを支える人材の育成ということも組織的に進めていかれることを期待しております。
 以上です。
【貞広主査】  ありがとうございます。
 では、続きまして、こちらもオンラインから戸ヶ﨑委員、お願いいたします。
【戸ヶ﨑委員】  御発表ありがとうございました。いずれも大変参考になりました。
 3類型に着目した特別の教育課程の新設や拡充の具体的な提案がありましたが、これらは、ぜひ私も制度化を進めてほしいと思っています。こうした枠組みの中で個別の指導計画の作成、活用などがどんどん進み、負荷の少ない優れたノウハウ等が3つの類型以外の全ての子供たちを包摂する指導・支援に活きていくことを期待してやまないところでございます。
 そこで、まず不登校に係る特別の教育課程が実施される場所として、教育支援センターの制度的な位置付けは極めて大事だと思っています。教育支援センターは多くの市町村で設置されていて大変長い歴史を持ち、説明にもあったように約3万人の子供を支えています。そこでの課題は学びの質だと思いますので、これを喫緊の課題として進めていくためには、地域等の配慮も必要ですが、仕組みとして政策的に支える時機に来ていると強く思っています。
 これまで、教育支援センターを学校教育法体系に位置付けることには様々なハードルがあったものと思います。しかし今回の教育課程の特例を創設する切り口から制度的に位置付けるというのは、筋の通った話で腹落ちできます。
 包摂性というのは十人十色というよりも、一人十色である子供たちを受け入れ、認め、育むことにありますが、課題となるのが限界点です。そこに対応できる人、場所、多くの理解など様々な限界がありますが、この教育支援センターの制度的位置付けは、その限界点を低くしていくトリガーになると思っています。
 一方で、今回のこの特別の教育課程はこうした子供への対応を学校から外出ししていくという議論ではなくて、包摂のための仕組みであるという認識を共有したいと思っています。
 加えて、個々の子供の困り感は、いつも申し上げていますが、今回の特別の教育課程の対象の子供たちだけではありません。普段、学校で特段問題のないように見えている子供たちが本当は困っていること、そういう子供たちのために多くの教師が懸命に頑張っていることにも常に意識を向けていく必要があります。それゆえ事務局の資料にありますように、「2階だけ」ではなく1階とともに「2階建て」で多層的な包摂を実現する必要があると思っています。
 最後に僭越ながら申し上げますが、この場に教育課程課長だけでなくて児童生徒課長や国際教育課長など多くの課長が御出席されていて、この改訂という土俵でタッグを組んで教育課程という切り口から総合的政策をシャープに提案されていることに大変重みを感じています。今後は学校や教育委員会と同じように複雑な諸課題に向けて、多くのこうした課がチームとなり政策立案する光景を広げてほしいなと思っています。以上でございます。
【貞広主査】  ありがとうございます。私も同じ気持ちでございます。ありがとうございます。
 では荒瀬委員、お願いいたします。
【荒瀬委員】  言わずもがなのことを申し上げるかもしれないんですけれども、冒頭、栗山室長から御説明のあった論点資料の丸3でありますけれども、僭越ながら、とてもよくできていると思いました。
 幾つもの問を用意していただいているわけなんですけれども、そのほとんどはイエスと答えて、中身を考えるという感じのことかと思うんですが、その具体を考えていくときに、これ、当然のことながら矛盾するようなといいますか、あるいは優先順位をつけないといけないようなことも出てくるわけであります。その際に、どういったことについて考えながらやっていくかというときに、今日の御発表を含めて非常に参考になるお話がたくさんあったと思っています。
 判断のよりどころとして私は2つあると思っていまして、次の学習指導要領の議論でありますけれども、現行学習指導要領の前文に示された教育課程に込められた期待が本当にちゃんと生きているかどうかということが一つ。もう一つは、学習指導要領を実際に展開していく上で必要なことをいろいろと考えてまとめた令和3年答申、この中に一人一人の子供を主語にする学校教育を実現していくんだということと、その子供たち一人一人が自立した学習者として育っていくことを支えていくんだということを述べたわけでありますけれども、こういった点に合致しているかどうかということを考える中で、具体的な優先順位であるとか、あるいは矛盾の解消といったことをしていけばどうかと思っています。
 その際、以前、前期12期の中教審でよく申し上げたことではありますけれども、今日、児童生徒課の千々岩課長から具体的に不登校児童生徒数が述べられました。これは丸い数字でなくて1人の数字まで、きちんと全ての人数をおっしゃいました。そういった一人一人の児童生徒がいるんだということの認識を常に我々の議論の中で頭から離さないようにして考えていくことがとっても大事だなと思いました。
 今、一方で秋田先生が部会長を務めていらっしゃる教員養成部会で、教職課程の議論をしています。教壇にまず立つ上で教師にとって何が必要なのかということを考えた上での教職課程でなければならないだろうという話が展開しているわけなんですけれども、その際にもこの一人一人が違っていて、その一人一人についてどのような教育課程を展開していくことが大事なのか。教育課程自体は、学習指導要領と言ったほうがいいかもしれませんが、一本のものしかつくらないので全体を覆ってしまうわけですけれども、その具体的な運用がどのように一人一人にとって意味のあるものになるかということを考える必要があると思います。
 戸ヶ﨑委員も先ほど不登校児童生徒のみではないと、いろんな児童生徒が困っているというお話をなさいました。そういったことにちゃんとした気配りと目配りをしながら進めていくことが大事だなと思いました。
 すいません。質問が2つありまして、一つは蓮浦課長に以前、中教審でもSCHOOL“S”にお邪魔しまして大変お世話になりました。ありがとうございました。高等学校に多くの生徒が進学するわけですけれども、高等学校の状況がどうなっているのかというのを教えていただけるとありがたいと思います。
 もう一つ、隅田先生にSSHで大変お世話になりましてありがとうございました。隅田先生には、現行学習指導要領から次期学習指導要領に向けての期待というお話をしていただいたんですけれども、もう少しその期待の具体的な話を聞かせていただけるとありがたいと思いました。
以上でございます。
【貞広主査】  ありがとうございました。広島県さんと隅田先生への御質問は後ほどまとめてお願いできればと思っております。よろしくお願いいたします。
 では続きまして、秋田委員お願いいたします。
【秋田主査代理】  ありがとうございます。学習院大学の秋田でございます。今の戸ヶ﨑委員、荒瀬委員ともつながる話でございます。本日の話は2階建て部分の話ではございますが、1階と2階の2階建てをいかに接続し、理解して、それを柔軟に運用していくのかということが重要であり、それを学校や教師が理解していくような、わかりやすい学習指導要領の方向が重要だと思います。
 今日の話は2階建て部分の話ではありますが、そこに出てきましたのは先ほどのお話にもありましたが、1階建てでもそうですが、学びの質や学びの継続、学び続けられるような子供、学ぶ学習者中心、先ほどの荒瀬先生が言われる子供が主人公になる、そうした学びであります。そして、それはコミュニティー中心、ほかの生徒とのつながりを断ち切った個別、孤立ではなくて、どの子供たちも多様な形でほかの生徒とつながり合いながら、学びのコミュニティーに自分自身の在り方で参加できるような教育課程をどうつくっていくのかという議論なのではないかと考えます。
 個に応じた教育課程の編成としての特別な指導計画ということは重要でありますが、まさにそこで先ほど広島県からもお話がありましたが、特別な課程をつくるだけではなく保護者や子供もそれを了解する、英語で言えばネゴシエーテッドカリキュラム(negotiated curriculum)だと思いますが、、特別な教育課程に応じた学習と同時に、その評価の在り方を指導要録に生かしていくような方向性が大事だろうと思います。1階、2階共に学ぶ喜び、それから学ぶ楽しさ、そして、それぞれの強みを生かしていくような教育課程を目指すという方向性が重要であろうかと考えております。
 一方で私自身は、そして隅田先生も言われましたが、それは特に2階建て部分については学校内だけでは負担が重過ぎますので、むしろそれを教育支援センターであったり、それから地域のリソースとどうつなげていくのか、特に大学や公的施設とのつながりが重要になっていくのではないかと思います。
 私が一つ、全発表者の方に伺いたいのは先ほど荒瀬先生からも言われましたが、教育課程の企画特別部会と教員養成部会が両輪で同時に走っております。これからの教育課程をマネジメントしたり、デザインできる教師の資質・能力ということを考えたときに、今日のような特別な教育課程をやっていくためには、どういう資質・能力が教師側に必要と考えられるかということを、それぞれのお立場から伺いたいと思います。
 また、お話を伺っていて私が考えたことは、例えば支援アシスタントであったりチャレンジクラスだったりは、それぞれが自治体の独自予算で現在、行われています。しかしながら今後国全体として、自治体間の格差なく行っていくためにはどうしたらいいのかということを考えていくことが重要ではないかと考えます。それが、まず第1点でございます。
 それから、続いては第2点でございますけれども、先ほどのお話に不登校のお話がございました。実は不登校は今、小学校の低学年でも増えてございます。そして小学校に行く前に実は、公教育で2018年から幼児教育は無償化されているんですけれども、既に3歳から5歳の約10万人が園に通っていない事実が分かっております。それはまさに不登校の予備軍ともなっているわけであります。
 そうしたところで、今日は前田幼児教育課長も御出席と思いますが、架け橋プログラムというのを私も副座長でつくりましたが、そこでは主にポピュレーションアプローチとして全体としてどうするかという話であり、2階建て部分については考えてきておりません。十分には議論されていません。今後、そこをつないで考えていくということが必要だと思います。
 私の知っている自治体では、例えば相模原市などでは小学校1年生全体に多層指導モデルのMIMなどの早期アセスメントを1年生の最初に入れてみることで、普通のコミュニケーションができているので、つまずきがないように思えている子供が、実は低学年当初から大変多く書き言葉でつまずいているようなことが分かることによって、通常のカリキュラムの中でも、そうした不登校やつまずきの予備軍を予防するような、そういう未然予防が大事です。今日はどちらかというと特定のある種の子供に応じるというだけではなくて、課題が生じた後、どうするかという話がありますが、それだけではなくて事前に何ができるかということを教育課程で考えることが必要だと思います。
 隅田委員が言われましたが、例えば小学校の低学年であれば複数学年のカリキュラムを少し柔軟化していくようなことが必要でございます。前回お話がございました、例えば日本の現行の学習指導要領では、教科によって学年別で示している教科と複数学年で示している教科があるわけですけれども、こうした教科に関しましては今後、学年段階に応じて、どういう形で学年区分で教育課程を、1階建ての部分も示していくのかというような議論と関連付けて考えていくことが必要だろうと思います。
 そして3点目としては、先ほどもお話がありました日本語教育や、それから不登校、全てにおいて生成AIやオンラインをうまく活用していく。それによってコミュニケーションだけではなくて今後、学習語彙を深く考えていくような学習を全ての子供に保障していくためのオンラインの活用という議論ができるといいのではないかと思います。
 ちょっと長くなりましたが、以上でございます。
【貞広主査】  ありがとうございます。
 それでは青海委員、お願いいたします。
【青海委員】  全日中の青海でございます。各教育委員会の皆様、それから隅田先生、取組事例の発表ありがとうございました。大変参考、また勉強になりました。お話を伺っていて東京都のチャレンジクラス、とても可能性を含む取組だと、その成果と強みをお聞きして感じました。
 藤田指導企画課長に伺いたいのですが、このチャレンジクラスの位置付けですけれども、学びの多様化学校の分教室型の分教室を校内に設置したのか、それとも居場所としての校内教育支援センターに正規教員を張ったのか、どちらなのか。というのは学びの多様化学校の分教室型の特例校を設置する場合、最終的に本校、学校を1校つくることが前提で分教室を設置する申請でないと、文科省の許可が通らなかった記憶があります。学びの多様化学校はつくりたいが、例えば経費、土地、施設の面から本校1校をつくることに、多くの自治体が足踏みをする現状だったからです。チャレンジクラスが特例校だとすると、その辺りはどうなっているのか、教えてください。
 ところで、今日のテーマの特別の教育課程、必要に応じ、編成や実施を可能とする仕組みの新設、それから拡充についてですけれども、方向性とか趣旨、制度化について賛同いたします。そのことが不登校、特異な才能、そして日本語指導と3つに共通していることとして、該当する生徒の学習に対するモチベーション、学ぶ意欲を高める契機になることは間違いないだろうということです。
 ただし、いずれにしても個々の生徒の実態が多岐にわたることから、個別の学習・指導計画を作成することが必須になると思います。時間の関係で不登校だけにしますけれども、データからも多くの不登校生徒が校内外の教育支援センターを利用しています。このことを考えると、当該生徒のための柔軟な教育課程を編成し、教育支援センターという場所が学校外の施設という位置付けから、学校の内部にあるという、包摂するという考え方への変換につながるとよいなと思いました。教育支援センターにおける教育のさらなる質の向上につながる仕組みにもなると思います。
 教育課程については、学びの多様化学校同様に、学習の内容、授業時数は柔軟にする。それから評価については、数値によるものではなく個別の到達度に応じて記述式でよいのではないかと考えました。
 以上です。
【貞広主査】  ありがとうございます。
 恐縮ですが今、15名以上の方が手を挙げていらっしゃいまして、3分を厳守していただいても12時を過ぎてしまうような状況でございます。本当に貴重な御意見があることを重々理解しているのですけれども、今日御発表いただいた方々にもぜひお返しをしたいと思っていますので、焦点を絞ってお話しいただき、足りない部分は後日事務局に文書等でお知らせいただければ議事録に御反映いただけると思いますので、ぜひ焦点を絞って、できれば3分を欠けるぐらいのお話をいただければと思っております。申し訳ございません。
 では、溝上委員、お願いいたします。
【溝上委員】  ありがとうございます。コメントがあったんですけど質問だけします。1階部分と2階部分の接続を図っていくことが今回のテーマの、難しいですけれども、作業になってくると思います。
 質問だけを申し上げますけれども、柔軟な教育課程として例えば不登校であったり障害のある子供、例えばここをイメージして、これまでの特例措置なんかも参考にしながら取り組んでいくということですけれども、逆に柔軟であっても教育課程を制度化していくことは一方で意義がある。私はここはとてもやるべき作業だと思っていますけれども、他方でしっかり線を引いてしまうわけで、そこの線に例えば履修等々、学習に到達してこない子供たちはどういう扱いになるのか。ここは他方で、難しい課題が新しく出てくるかもしれないと思います。
 もう一つは同じ話の逆なんですけれども、例えば特異な才能の教育における子供たちですね。今度は基盤となる教育課程はたぶんそこそこクリアしてくると思いますけれども、教育課程をどんと離れた学習をしますよね。高大接続とか、高度な学習とか。そこの部分の評価ということは考えないのか。そういう特異な才能を有する子供たちに対する課程でありながら、評価するのは標準の部分だけなのか。この辺り、今、御回答は要りませんけど今後の検討課題として述べておきたいと思います。ありがとうございます。
【貞広主査】  ぜひ溝上先生の御意見を伺いたいところなんですけど、すみません、時間がなくて伺えず。大変申し訳ありません。
【溝上委員】  十分結構です。ありがとうございます。
【貞広主査】  では続きまして今村委員、お願いいたします。
【今村委員】  今村です。今回本当に文部科学省の内部でチームを超えて、本当に今、この瞬間も学校に行けていない子供たちを主語にして取り組んでいただいて、このような御提案をなさったことに心から敬意と感謝の気持ちを持ちました。私自身は島根県の雲南市で2015年から行政から受託する形で、教育支援センターの運営をしてきた立場です。
 その立場からずっと難しいなと思ってきたことが2点あるんですけれども、まず、この一旦不登校になった子供たちをもう一度、こういった居場所にまた学びの場に引きつけていくことにはとても人手がかかることを大前提にしなければいけないという点です。雲南市は、とても財源措置含めて単費で頑張っていただいている自治体なんですけれども、それでもどこまでやっても人が足りない。大人も休職をしたら丁寧に復帰プログラムを職場が準備することでやっともう一度復帰できるのと同じで、もしくはもっと大変なんですけれども、場合によっては御家庭のケアも含めてソーシャルワーカーのようなことをしなければ、回り込んだアウトリーチをしなければもう一度、子供たちがつながってくることができない。
 なので、そういった意味でも行政の基礎自治体の努力だけで、こういったことを全部の自治体がやることは大変なことだなと思っておりましたので、今回このような、これは教育課程として個別の学習計画を位置付けるのであるという制度変更をなさったことは、きっと財源措置含めて大きな後押しになる、質の保障に向けて様々な努力を要することになると思いますので、本当に全国各地で今、苦しんでいる子供たちにとって、とても希望になる、きっかけになる提案だと思います。
 もう一つ難しいと思ってきたことなんですけれども、これは先ほど秋田先生の御質問にあったことなので私がお答えすることではないかもしれないんですが、福祉の目線を学校教員の方々がなかなか持ちづらいということ、教育という立場で子供たちを指導してきた立場の方々が退職されて今、教育支援センターのスタッフをやられているケースがとても全国的にも多いんですけれども、福祉の観点で子供たちをサポートすることをそんなに御経験なさってないので、どうしても子供たちがもう一度つながってきても、いきなり指導みたいな形になってしまうと、せっかく来たんだけど難しくて離れていってしまうこともあちらこちらで起きています。
 そういった意味でも、子供たちが本当に身体症状が出るぐらい不定愁訴を訴えている子もいる状態から、まずは居場所を確保して福祉の視点で見て、その上で学びにつなげていくという大変手がかかる取組だということを前提に、それでも教育課程をきちんと子供たちに届けていくのだという心意気を持って、みんなで取り組んでいくことが必要だと思うんですけれども、その福祉の目線をどうか教員養成の課程の中で取り組んでいただくこと、または特別教員という形で免許を出すのかもしれないんですけど、そういったことも必要になるかなと思いました。
 私からは以上です。
【貞広主査】  ありがとうございます。
 では松原委員、お願いいたします。
【松原委員】  ありがとうございます。具体的な事例の御報告参考になりました。ありがとうございました。
 それぞれ困難があり、困っている子供たちに対して有効な手だてを考えていくことは非常に大切だと思いますし、今、現場でも努力をしているところです。また、校内、校外の教育支援センターが数の上で充実してきていることも御報告をいただきましたので、そこをしっかり活用していく必要がある、活用できるようにしていく必要があると感じました。
 具体的論点については、さらに議論が必要だと思いますけれども、その中で特に対象となる児童生徒をどう決めていくのかということはポイントになると思います。過度な負担を生じさせないように、かつ有効な手だてとしていくためには、実際の運用に向けて特に特異な才能や不登校は対象となる児童生徒を見極めやすいように検討を進めていただき、制度運用開始後には都道府県教育委員会であるとか、文部科学省は、そうした知見を蓄積していただいて展開してほしいと考えました。
 私からは以上です。
【貞広主査】  ありがとうございます。御協力感謝申し上げます。
 この後、発言順を少し先まで申し上げます。野口委員、古賀委員、植阪委員、石井委員、堀田委員、前川委員の順番で御発言をお願いしたいと思います。
 では野口委員、どうぞ。
【野口委員】  ありがとうございます。野口です。学校全体で編成する教育課程を学ぶ上で、障壁がある子供について特別の教育課程を編成することについて賛成いたします。前回に引き続き踏み込んだ御提案ありがとうございます。
 今回の事例をお伺いしても、ここでの障壁の要因というのは子供個人にあるのではなくて、どんな子供も環境次第で学べることを皆さん、示してくださったかなと思います。特別支援教育においては小中学校については、1990年代に通級を制度化してもう30年がたちます。その視点から3点お伝えしたいと思います。
 現在、特別支援教育で起きている問題としては、通常の学級で困難さがある子供がいたら、通常の学級でできる工夫をする前に通級の対象として検討をしていることです。その結果、年々通級対象の子供が増加しており、令和4年時点で16万人、この10年で倍に膨れ上がっている状況があります。
 今回提案されている特例は、うちのクラスに合わないから別の場に行ったらいいよということを、排除を促すためのものではなくて、むしろ教室内の包摂を促すためのものでなければならないと思っています。そのためにも、これまでも戸ヶ﨑委員、秋田委員からもありましたが、あくまでも1階があった上での2階であるということですね。1階でどこまで柔軟にできるかというところが論点になってくると思います。1階が、その集団に合わせて柔軟にできればできるほど、2階を必要とする子は減るはずであることを前提としていきたいです。
 2つ目は、通級で実際に何を学ぶかです。今の特別支援の通級においても、どうしても通常の学級に合わせるための通級になっていると思っています。そうではなくて子供自身が自分のことを知ったり、自分に合っている学び方って何だろう、などと自己理解を深め、そこで分かったことを通常の学級にむしろ持ち帰っていくという視点が必要だと思います。
 先ほど外国ルーツの子の話もありました。日本語を指導して日本人と全く同じようになることが目的ではないですよね。母語を生かしていくこともとても重要ということも重なってくるかなと思います。
 関連して、現在の課題として通級と通常の学級の連携がとれていない。1階と2階の連携がとれていないところが課題としてあります。先ほどお伝えしたように2階の通級で得られた知見を通常の学級における障壁をなくすために、包摂性を高めるために活用していくことが必要です。そのためには、例えば、個別の教育支援計画も通級だけでつくるのではなく、通常の学級の担任の先生と一緒に、通常の学級の中にいる間の手立ても含めてつくる必要があると思います。
 時間がありましたら事例を提供してくださった皆さんに御質問として、個別の場と通常の学級が連携して通常の学級の在り方自体がアップデートされた事例があるかということはぜひお聞きしたいです。
 最後の点です。当たり前ですが、不登校、外国人児童生徒、障害、特異な才能、それぞれの子供たちの中にも当然多様性があります。不登校で発達障害がある子とか、外国ルーツで発達障害のある子とか、いろんな交差性が当然ありますよね。そのようなニーズに応えていくためには1階か2階か、そしてどのカテゴリーの通級か、ではなくて、1階・2階、そしてカテゴリーごとの通級の連続性をシームレスしていく必要があります。例えば特別な教育課程の対象にはならないけれども、個別の指導計画があったほうが良い子も通常の学校の中にたくさんいると思います。
 先ほど隅田先生からあった類型化、非常に分かりやすいと思いました。あのような形で、どっちかではなくって、よりシームレスに柔軟に学校で対象となる子供を判断できたり、行き来ができるような、そういう仕組みが必要だなと思いました。ゆくゆくは多層型支援システムのように、必要な子に必要なタイミングで必要に応じて支援が柔軟に届けられる、そういう仕組みにしていく必要があるかなと思います。
 以上です。
【貞広主査】  ありがとうございます。
 では、古賀委員、お願いいたします。
【古賀委員】  本日、大学でも授業が始まりまして遅参いたしまして失礼いたしました。大事な発表が聞けておらず、申し訳ありません。記録などで、また後日、確認させていただき、学ばせていただこうと思っておりますが、本日は資料から考えましたこと2点申し上げたいと思います。
 1点目、不登校児童に関することです。私自身は不登校をどうするかよりも、まず学校が好きになるというプロセスを考えている立場です。資料1-2の3ページ目に学校の風土の見える化ということが出てきます。幼児教育の立場から小学校と関わっていると、いつも教師の見方が幼小間で逆転すると感じるんですけれども。どういうことかと申しますと、幼児教育というのは子供がどこに関心を持っているか、伸びてきているところはどこかというところに第1の関心があり、そこを認め、次に課題となっているところを一緒に考えます。小学校の先生方は、どこができていないか、難しいことがどこかということに第1の関心があるように感じます。
 できていないこと、難しいことができるようになる、分かるようになることを目指すとき、課題を見いだすことが重要であることは理解できるのですが、子供からすると、まず駄目出しをされるという、自信を失い、いつも注意されることにおびえ、自己発揮ではなく教師の評価の目を感じて、それに応じる能力を身に付けようとすることになり、それが学級風土の形成にもつながっていきます。
 小学校一、二年生の不登校が増えているデータを見るとき、いつも考えてほしいと思うところです。まず、子供のよさ、関心のありかた、伸びているところを集団の中で意味付け、位置付けていくことを教師がリードしていくことで、子供たちの中でも肯定的に受け止め合う学級風土、学校風土が形成されなければならないだろうと思います。見える化ももちろん重要ですが、教師がどう子供を見るのか、課題だけでなく子供のよさ、関心、伸びているところを言語化し、学級集団の中で位置付ける、意味付けることの重要性が伝わっていくようにというお願いをしたいと思いました。
 2点目、日本語指導に関することです。幼児教育でもかなり難しい局面があります。母語と日本語、そして生活言語と学習言語、学習語彙を認知面の発達とともに社会情緒面での発達、子供同士の関係性の発達、集団の中での育ちの中で、いずれをも、どう保障していくのかということについてしっかり整理する必要があると思っております。
 中国語でけんかしている子供にポケトークを持って保育者が介入していくようなこともあるんですけれども、そういったところでポケトークを保育者のみが使うところでは言語だけではなくツールの壁も子供の間にできてしまって、また、あの2人、何かしている、けど分からないし、まあ、いいかみたいな、子供の中でつながっていかないようなことも生じてきています。
 小学校に入った時点で既に集団から疎外されて自己肯定感が低い子供が生み出されていくような可能性もありますので、全ての子供の権利保障として乳幼児期からの生活言語、学習語彙の発達とその支援を整理していく必要があるのではないかと思いました。
 以上です。
【貞広主査】  ありがとうございます。
 では植阪委員、お願いいたします。
【植阪委員】  よろしくお願いいたします。いただきました御提案については、基本的にはとても賛同いたします。これまでの教育課程とか評価に加えて、新しいカテゴリーに認定された場合には、受けた指導に基づいて評価していただけるということで、とても意義があるなと思っています。
 一方で、受けるということの壁が日本にはあるように感じます。他の委員の先生方もおっしゃっていました、1階でどこまで柔軟に対応できるかが重要になると感じますのでその点についてこれから少しお話ししたいと思います。
 まずは、特異な才能のある子の側から。特異な才能がある子は、海外ではギフテッドなどと言われています。今回のご提案において、ギフテッドの子たちとは、すごく少数の子たちを想定して今回御提案されているんだと理解しています。その一方で、特に小学校を中心に、ギフテッドと認定される層ではないものの、苦しさを抱えている子もかなりいます。
 私自身は帰国子女で、日本に88年に小学校4年生で帰国してまいりました。日本人学校からの帰国生でしたが、使用していた教科書の違いから、学習に相違があり、その学年の内容を予習して補いました。そうしたら、もう本当に授業があまりに簡単になり、苦しくて大変な思いをしました。途中、地獄はどこまで続くのかと感じていたことを覚えています。不登校にはなりませんでしたが、帰国子女に対するいじめなどにも遭い、いつ不登校になってもおかしくない、危ない状況であったと思います。最終的に私は中学校から私立に入学し、この状況からは抜けました。そういう経験もあり、だからこそ学校教育を何とかしたいと思って研究者として東京大学で仕事をしております。すなわち、現場ではギフテッドといわれない層の子どもでも、少し早く予習をしてしまうと物すごく苦しいことが起こっているということをご認識いただきたいと思います。
 この点と関連して、隅田先生の発表にも、チャレンジ問題をやることによって授業から何とか抜け出さなくて済んだという話がございましたけれども、制度として認めていくという話のみならず、隅田先生の話のように授業内で、担当の先生であってもできることは何なのかということは考えていることは意義があると思っています。特別な認定を受けてない子供たちであっても楽しめるような、ある程度レベルの高いものを通常授業の中に入れていくということです。
 一方で、もう一方の子供たちについても考える必要があります。具体的には、家庭で特に何も予習をしていない、特別なことをしていない子たちです。こうした子たちの中には、授業にもついていけない子もいます。そういう子たちには、きっちり基礎を身に付けるような授業をする必要があります。そして、こうした子たちにも高いレベルの学習も経験させる必要もあるでしょう。すなわち、教えるところと子供たちが考えるところとのバランスもきちんととるんだということを国が発信していかないといけないと思います。そうしないと、今回の話は、しんどい子は特別なルートでどうぞという話になりかねません。それに認定されていない子は、苦しくても堪えてねということになりかねないので気を付けていかなきゃいけないかなと思っています。
 あと、日本の認定主義については、気になることが多々あります。例えばですが、書くことにものすごく困難がある子、読めるし、分かるんだけれども書くことに困難がある子が、iPadを使って授業をとりたいと申し上げた時に、LDなど特別な認定を受けていない場合には学校でなかなか使えない実態があります。これを実現するために、保護者や関係各所が学校と本当に戦わなきゃいけないという事態などが発生しています。
 ですので、いろんなニーズがある中に柔軟に対応していくという発想自体が現在の日本の学校現場にはありません。そこをきちんと学校に理解してもらうことが、今回の指導要領には必要です。柔軟に対応するということが今回の提案の根底にはあると思うので、それを学校の中に染み込ませる、それはすごく必要なことだと思いますし、特別なものを認定していくことを超えて全ての子供のニーズに合う教育を実現していくために重要ではないかと思っています。
 以上です。とても重要な御提案をありがとうございます。
【貞広主査】  ありがとうございます。複数の委員の方の意見とも通底する御意見だったと思います。
 では、石井委員お願いいたします。
【石井委員】  今回の御提案は公教育の包摂性を高めるものですが、公教育の「公」というのはパブリック、それで公共性というのはオフィシャル、コモン、オープン、この3つで性格づけられるということで言えば、今回の御提案は公教育のオープンさを拡大していくということかと思うんですね。それが一つポイントであるということと、その上で、学習権保障の観点から公教育の包摂性を考えている、ここが重要なポイントかと思います。
 公教育の包摂性を高めるといったときに2階建てという、この発想が非常に私も重要だと思います。個別対応であるとか、オプションの際限なき拡大ということでは子供たちは救い切れないであろうと。だから本体部分を変える。多様な学びの場っていったものを外づけにしない、この発想が重要であると。それはベースにおいて、特別支援教育においてもそうですが、医学モデル的発想の徹底というよりも社会モデル的発想を基盤に置くということかと思います。それこそがインクルーシブであるということのポイントだと思うんですね。
 そういう発想で考えていくことと、先ほど野口委員がおっしゃったことも非常に共感的に聞かせていただいたんですけれども、1階と2階の関係なんですよね。一言で言いますと、学習権保障という観点とも関係するんですけれども、2階から1階が学ぶという発想が非常に重要かと思います。
 それでいいますと、居場所保障がなされ、学校内外における場で包摂しても、そこに学びがあるのかい、ということで、学びの保障をどう考えるかということがポイントになってくるかと思います。そして、それは勉強保障ではないということです。
 私、社会教育で大和ハウスさんといろいろやっていたりしてるんですけれども、その中でも居場所感があるからこそ、真の学びではないですが、一般的な学校での学びとは違う、学校らしくない学びというのを展開する可能性が生まれるわけなんですね。別様さといいますか。学校っぽいものの型落ち版みたいな形ではなくて、その場だからこそできること、この子たちとともに、どういう学びが必要なのかということを、そこを考えていくことが重要かなと思います。
 だから、そこでの学びの在り方、それから空気感ですね、文化。これが1階部分に浸透していく、こういったポイントが大事かと思いますし、そのときに何をもって履修、修得したと言えるのか。この点に関してはまさに、学習指導要領に基づく教育課程に沿って学習したということの定義をどのようにするのかという点で、この部会の中でも最初に議論された分かりやすくて使いやすい学習指導要領、内容の重点化・構造化、この問題に最終的に帰着すると。
 つまり、それは公教育のオープンさを拡大していく中においてコモンをどうするかということですね。それは一律の内容とか水準ということではなくて、例えば関数を学ぶとはどういうことなのかという、その本質論を見極めていくということかと思います。この子たちに必要な歴史の学びとは何か、この子たちに必要な数の学びとは何かということを、できる、できないとか、そういったことではない形で追求する、実際そうした学びの模索は良質の支援学級であるとか、あるいはフリースクールであるとか、そういったところで展開されていると思うんですね。本質でなければ、特にしんどい子たちというのは振り向いてくれないというところです。ですから、そういった別様な学びの様式、そこから改めてコモンの在り方を考えるということが重要かなと思いました。以上です。
【貞広主査】  ありがとうございます。石井委員、おまとめいただきまして感謝申し上げます。
 では堀田委員、お願いいたします。
【堀田主査代理】  児童生徒の多様性への対応についての前回と今回の提案について、私はほぼ賛同しております。今日は不登校、特異な才能、日本語に通じないと3つ挙げていただいたわけですけれども、不登校一つとっても、個々の状況は多様であると理解していますし、また、それらの特別な支援が必要なお子さん以外の子はみんな同じというわけでもないことを考えると、多様性への対応、包摂性というのは非常に重要なことだと考えます。
 ポイントになるかなと思うのはこの居場所、居場所感といいましょうか、そういう話における学びの機会をどう保障するかということと、学びそのものの質をどう保障するかということかと思っています。学びの機会としては学校内外の教育支援センター等のほかに、オンラインが結構使われているケースが多いかなと思います。実際にメタバースやVRでどこまでできるかという、今のところ、テクノロジープッシュの研究が進んで次第に実用化されていますし、それでも、それはシステムがあれば勝手にできるわけなく、結局、人と人をつなぐわけですから人手が必要、環境が必要、予算が必要ということになります。
 また、学びのそのものの質保証で言えば、例えば質保証された教材でいえば教科書があるわけですけれども、教科書等は当該学年のものが提供されるのが今までの方法だったと思います。これは1階の部分でも2階の部分でも、もう少しここを柔軟にする必要があろうかと。ましてや、デジタルでも今の段階では当該学年のアカウントしかもらえず、来年になると、それが見れなくなるみたいな現実があることを考えると、この辺り、制度変更と共に条件整備と、あと人手、予算、ここをしっかりとつけないと空論になる可能性があるところを指摘しておきたいと思います。
 私からは以上です。
【貞広主査】  ありがとうございます。
 ではこの後、前川委員、田村委員、神野委員、今井委員、内田委員、澤田委員、そして髙島委員の順番で御発言をお願いしたいと思います。
 ではまず、前川委員お願いいたします。
【前川委員】  御発表ありがとうございました。大変参考になりました。今回、対応の必要性は高いけれども現状では難しい3つの類型に着目して、具体的に特別の教育課程の創設とかアップデートの提案があったことは前向きに受け止めたいと思います。
 前回と今回の議論を合わせて全体として教育制度の包摂性を高めること、また、全ての子供の学びも質も両方を進めることと同時に、児童生徒の学校での対応を不要とするものではない、また、教員の努力を否定するものでもないという前提で、多様な子供たちのために頑張ってきた教員から見て特別な環境が整えられていて、支援を受けている特別な学校でのみできる、特別な議論とならないということは非常に重要だと思います。そのためにも国において条件整備も含めて、ぜひ制度化を進めていただきたいと思います。
 不登校児童生徒の学びについて申し上げますと、これ、今日も御報告がありましたけれども、これだけ不登校の子供が増えてきた現状で考えますと、もはや一部の児童生徒への配慮といった段階ではなく、不登校になった児童生徒あるいは不登校になる可能性のある子供に対して、いかに学びの質を確保するかということが極めて重要かと思います。
 一方で、戸ヶ﨑委員からもありましたけれども、教育支援センターは現状ではまだまだ居場所にとどまっている面もあり、学びにつながることが非常に重要だと思います。その意味で今回の制度創設は極めて重要であり、教育課程という切り口から対応を進めることによって教育支援センターの位置付けを重視すること、また、条件整備にもつながっていく契機になるのではないかと思います。
 次に、日本語指導が必要な児童生徒ですけれども、京都府もそうですけれども特定の地域に固まっているよりは分散して居住している県が多いと思います。その中で希少言語も含めて、母語支援員を確保するのは現実的ではありません。特別の教育課程のアップデートが図られる中で、AIあるいはデジタル技術による対応を進められることが非常に重要だと思います。
 まだ言いたいことありますけれども時間が来ましたので、これで終わらせていただきます。ありがとうございました。
【貞広主査】  ありがとうございました。追加の御意見については事務局にお寄せいただければと思います。ありがとうございます。
 では、続きまして田村委員、お願いいたします。
【田村委員】  ありがとうございます。本日の御発表をお伺いしまして、既に全国各地の先生方が取り組んでおられ、その取組が進んでいる、それを前提に制度的な保障が必要だというように理解いたしました。
 1点申し上げたいことがあるんですが、今回柔軟な教育課程ということなんですけれども、例えば不登校の児童生徒さんのことを考えた場合、計画が柔軟であるだけではなく、その計画というのが児童生徒さんの状況によって例えば1か月に1回とか、そういった短いスパンでどんどん変化していって、結果として4月当初に例えば計画を立てたとしても3月の時点では大きく異なる計画となっている、そういう教育課程観を持つことが大事ではないかなと思います。
 入試との関わりについて、計画したカリキュラムだけではなく、実際に実施したカリキュラムと、実施版カリキュラムに応じた評価、これらを説明していくようなことが上の学校段階との関係性という中で合意形成が必要になってくる課題ではないかなと思いました。
 あと1点だけ、秋田委員もおっしゃいましたけれども、本日御提案のどの課題をとってみても教師の、あるいは学校の力の要る、資源の要ることだと思いますので、広島県様の事例のようなネットワーク化ということが市町村、広域、さらに国レベルといったようなことで、ひな形をつくるであるとか、配信であるとか、教材であるとか、様々な時点で必要になってくるかと思います。
 以上です。
【貞広主査】  ありがとうございます。
 では神野委員、お願いいたします。
【神野委員】  よろしくお願いします。事務局からの御提案及び皆さんの御意見も全て賛同です。ですので、手短に重箱の隅をつつくような発言になってしまって申し訳ないなと思っておるんですが、論点資料3の4ページ目にある、右側にあります丸1、対象となる児童生徒の中で、「各教科の内容の一部または全部について特に優れた資質・能力を有し、かつ当該分野に強い興味・関心を有し」と書いてあるんですけれども、「特に優れた資質・能力を有し」という言葉が要るのかというところに関して少しお話ししたいなと思います。
 というのは例えば、事務局が御説明されていた数学みたいなものであれば、何か一つの分野に関心があったとしても体系的に全ての数学というものを学ぶ必要も出てくるし、また、それが点数にもあらわれてくると思いますから、学校現場においてそれが優れた資質・能力と判断しやすいと思うんですけれども、例えばアサガオとか、カブトムシみたいなものにものすごい興味・関心を抱いた子供を、それが優れた資質・能力を有していると判断するのって結構難しいと思うんですよ。なかなかテストにあらわれるものでもない。
 でも一方で、この丸3以降、書いてある研究的、探究的なものが想定されるという話の中で言えば、まさにそういうような資質というものを、興味・関心というのはどのように拾っていくのかというのは大切であったりもすると思うんですね。そういった意味において、この優れた資質・能力というよりかは強い興味・関心を有しているという生徒に関して、どうするのかという話にしていくのが適切なのじゃないかなと思いました。
 そしてまた、この研究的、探究的な内容が想定されるから、いろいろな場所で勉強したいよねという話はある一方で、これは完全に、地域特性みたいなものに依存していくとは思いますから、まさにカブトムシにものすごい興味・関心を抱いた子が本当に自身が、わくわくするような環境というものを必ずしも用意できるかというと難しいと思うんですよ。
 そういった意味では一義的に書いていくべきなのは、まず、そもそもそれだけ強い興味・関心を抱いている子供は自ら多分どこに行きたいとか、こうやって学びたい、この本を読みたいってあるはずだから、その子の学びたい意欲を絶対止めないという、その自立的な学習者というところ、荒瀬先生もおっしゃっていましたが、そこが最終目標だよねと。例えば、その子がまずやりたいものをちゃんと相談しながら提供していくような在り方をどうするのかということを一番に書いたほうがいいんじゃないかなとは思いました。
 そうしていきますと、まさにインターネットとか生成AIみたいなものとどのようにその子が向き合っていくのかというところを誘導していくのも大事ですし、その上で環境をどう用意していくのかという話の順番になるのかなとも思います。
 最後に、それくらい学習計画みたいなものがある意味で多様になっていくと考えますと、正直、この標準授業時数は確保することとすべきかというところに関しても、私は柔軟にそこも検討すべきだと思っていますけれども、それだけ多様になってくる学習計画を現場が作っていくと考えれば、これは結構テクノロジーの力を使わないと個別の学習計画、作れないだろうと思います。そのような実証事業自体も今後検討すべきなのじゃないかなとは思いました。
 以上です。
【貞広主査】  ありがとうございます。
 それでは続きまして、今井委員お願いいたします。
【今井委員】  ありがとうございます。前回に続きまして今回の事務局の御提案も異なる多様な資質・能力、性質を持った特徴を持った子供たちを包摂するための学習指導要領の改訂ということで、本当にすばらしい御提案だと思います。前回、私は事務局に対してエールを送り、偉いと申し上げました。今日は、その提案には本当には賛成するのですけれども、今回、この会の運営の仕方について少々文句を申し上げたいと思います。
 というのは今回テーマにトピックに挙がっている3つ、日本語支援、不登校、ギフテッド、どれもものすごく大事です。それぞれすごく大事ですが、多様性ということで一くくりにして一つの会議の中に詰め込んでしまい、皆さんね、委員の皆さんはそれぞれものすごく発言なさりたいことあると思うんですよ。御発表は確かにすばらしかったです。でも、それに対して私は、それぞれのトピックで1時間を話したいです。個人でですよ。でも、皆様も同じ思いだと思うんですね。それなのに、この3つを全部一緒くたにして1人3分で何か言えというのは、これは若い人が言う無理ゲーというやつですよね。これね、すごく大事なことを扱っているので運営の仕方はもっと考えてください。大事なことは、時間をとってじっくり話す必要があります。それを今日はあえて申し上げたいと思います。
 本当に私、座長の先生は本当によくやってくださっていると思うんですね。貞広先生。貞広先生にはリスペクトしかないです。もう私だったら怒って座を立ってしまうかなと思います。こういうやり方をされたら。というか、すいません、何か強い言い方をしてしまいましたが、でも大事なことはきちんと時間をとってやりましょうというのが、議論しましょうというのが私の提案でございます。
 その中で、ごめんなさい、本当に時間超過して申し訳ないのですが、1点だけ言わせてください。不登校に関してですけれども、秋田先生ほか、すごく重要な御提案があったんですけれど、現在不登校になってしまった児童生徒をどうするかという、そのこともすごく大事ですけれど、どうしたらこの子たちを不登校にそもそもしないかというところも大事で、そこの議論なしで対症療法だけを話しても仕方ないと思うんですね。
 なので、不登校にしないためにどうしたらよいかというと、学びが楽しくないといけないのです。そして、楽しい学びを実現するためにどうしたらいいかというのは、本当に根本に立ち返って、この委員会で議論をする必要があると思います。
 そのために私、多摩市のSpace、すばらしいと思いましたし、多摩市、尾道市の取組、すばらしいと思いましたけれど、特に多摩市のSpaceは、実は普通の小学校の普通の学級一、二年生には、ああいうスペースでやるべきなんじゃないかなと思いました。不登校になってしまった子供たちのスペースではなくて、全員に対して、ああいう場をつくったら子供たちがそもそも不登校にならないんじゃないかと、そういうことも文科省は本気で取り組むんだったら、お考えをいただきたいかなと思った次第です。
 また、低学年のつまずきをなくすためにというのは、今日、広島県教育委員会の方いらっしゃっていて、すばらしい取組についてお話しくださいましたけれど、広島県教育委員会ではまた別の取組も何年前かからやっています。低学年のつまずき、子供たちの学びのつまずきを発見して、それに個別に対応するような、名前は違うかもしれないので広島県の方が修正していただきたいんですけれども、低学年の学びのつまずきに対しての取組なんですね。すいません、自分が関わったのに名称を忘れてしまって。そういう取組をぜひ全国でやっていただきたいですし、この会でも広島県のその取組に関しても御発表の機会をいただければと思います。
 すいません、勝手なことを申し上げました。
【貞広主査】  ありがとうございます。今井先生の御意見とは私の気持ちも重なる部分もありますので、無理ゲーをちょっとは戦えるゲームにするように運営の仕方、事務局と御相談させていただきたいと思います。ありがとうございます。
 では内田委員、お願いいたします。
【内田委員】  本日はありがとうございます。不登校にしろ、特異な才能の生徒の育成にしても、特別が特別でない児童生徒の個性、あるいは事情として捉える教育というのが改めて必要だなと感じたところであります。現場の立場、高等学校においても個別の指導計画であるとか、特別な教育課程の編成というのはなかなか1校でつくり上げるのが難しい、生徒が一様でないからこそ、対応が多様になってしまうところがあるかと思います。
 それぞれ今日の御発表の中でも次期学習指導要領の編成に当たって、そこの部分について工夫をしてほしいという話がありましたけれども、個別の指導計画や特別な教育課程を編成するためのセレクト型であるとか、プログラム組立て型など柔軟性のある、例えばそれぞれの生徒の意欲を喚起する、あるいは学習に対して、それぞれの生徒の特性に合わせた負荷のかけ方というところに意識を当てたパーツであるとか単元で、レベル感のある学びの段階みたいなものをうまくブロックとして組み入れればいいのではないかなと感じた次第です。今日の取組をされた学校、あるいは教育委員会におかれましても、そういった観点でまたどこかで御意見をいただければと思っております。
 また、日本語教育なんですけれども、教材がどうしても現場で教える際に不足をしている、特に高校分野で学習差が生じているところについては非常に苦労しているところです。日本語教材について、例えば日本語学校と連携したような教材開発という面で何かしらの手だて、カリキュラムがつくられればと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
 以上です。
【貞広主査】  ありがとうございます。
 では澤田委員、お願いいたします。
【澤田委員】  先生の幸せ研究所の澤田です。まず、今回の事務局の提案内容についてどれも賛成です。その上で不登校児童生徒のことについて2点お伝えします。
 1つ目は、1.5階というんですかね。先ほどから複数の委員が言われていることだと思うんですが、どちらにも入りにくくて困ることがないようにという点です。学校を休んだことがない場合には、2階部分の個別の教育課程には認定されない可能性が高いのかなと理解しています。となると、1階部分の学校の教育課程で学ぶんだけれど、そこに合わずに困る子が出てくるのではという懸念です。1階部分で確かに学校ごとの創意工夫が拡充されたり、学年区分が取り払われたりしても、柔軟な教育課程が画一的に進められるようなことにならないようにする必要があると考えます。
 複数の委員が本当に先ほどからおっしゃっていたことと重なるんですが、通常学級の同年齢でも子供の発達って前後数年は違いますし、そもそも一人一人が全員違う子供です。2階部分の対象にならないけど困っている子が必ずいる観点で、その子たちを1階部分でしっかり包摂していく柔軟性が重要だと思います。
 1階部分で柔軟化した学校の教育課程であらかじめ計画した、例えば3年生相当の学習はオーケーだけど、もっと遡って2年生の内容を学ぶ必要がある子の個別のニーズは認めないようなことになっては、今回の趣旨に合いませんので、そういう誤解やそういう事態が起こらないように、同じ学級内でも子供によってはそれぞれに最適なことを学んでいる可能性もあるということ、1階部分の柔軟性を持って包摂するんだということが必要ですし、それが現場に分かりやすく伝わる必要があると思いました。
 次に個別の指導計画についてですが、子供たちにとって真に効果的な運用を具体的に検討していくべきだと考えます。個別の教育課程においては、校内のチームや校外の専門家や教育支援センター職員という学校内外に関係者が多くなるはずです。そんな中で子供や保護者が混乱することがなく、関係者が方向性をしっかり共有して本当にその子にとって最適で一貫性のある学びづくりのために、つぼを押さえられるようにすることが指導計画の意義、目的の一つなのではと思います。
 ただ、子供の状況は何かのきっかけで思いがけず変化することもありますので、子供の変化にタイミングよく応じられるような柔軟さとスピーディーさも併せ持つことが重要になると思います。ですので、詳細な計画をあらかじめ立てるよりも簡易で暫定的なものを年度当初に作成の上、随時デジタルも活用しながらアップデートしていくといった、これまでだと必ずしも好ましいとされていなかったような、ある意味でカジュアルさを強調した運用というのも、あえて推奨していく必要があると思います。
 最後に、前回言えばよかったんですが、減ずる時数の上限については1割以上でもいいのではと考えます。
 以上です。
【貞広主査】  ありがとうございます。
 では髙島委員、お願いいたします。
【髙島委員】  髙島です。大きな方向性は賛成します。「課程内になる」ということなので、不登校というのがなくなると考えることもできるのかなと思いました。言葉上の話ですけれども。社会のためにどんな学校をつくるかということよりも、一人ひとりを大事にするということを改めて打ち出す点ですごくいいなと考えています。
 一方、最大の受け皿が学校というのは変わらない。だから大事なのは、もうみんな言っていますが、1階があって2階だということ。改めて、何度でも強調したいと思います。現場は忙しいので言うは易く行うは難しだと、実際思うんですね。だから、1階があって2階だということは言い過ぎるぐらいがいいと思います。
 今回、才能のある子供のことを考えたときに、飛び級じゃないというのが大きなメッセージだと思います。基本は元の学年にあって特例をつくると。これはつまり同い年で基本的には学ぶ、学び合うことを大事にしたい、というメッセージなのではないかなと考えます。だからこそ、安易に学校外に出せばいいよねではなくって、これは隅田先生の「学校内×専門家がほかの子供の好奇心を高める」って話にもつながると思うんですが、学び合いを大事にするという点は改めてしっかりと確認すべきではないかなと思います。
 また、これを一部の子供の話と思わないことがとても大事だと思います。見えていないけれども困難を抱えている子供もいます。実際に困難を抱えている子供にしても、例えばインターセクショナリティの話もそうですが、類型があるからといって目に見えやすい困難だけに着目すると、見失うこともあると思います。芦屋市も海外の子たちがすごく増えていて、海外の子で、かつ発達障害の子とかもいるわけですね。そうなると海外という特徴だけを見ないのもすごく大事なんじゃないかなと思うので、その子に合ったちょうどの学びを提供するような発想をぜひ生んでほしいと思います。
 あと1個だけ、内申の話だけして終わりにしたいと思います。前提として、特例の際の学習評価は指導要録上、明確に位置付けるべきだと思います。現在、市内の校外教育支援センターに通っている子たちは先生がテストを持ってきて、それで評価を行っている面もあると聞きます。テストだけじゃない3観点の評価ができるようになればいいなと思います。
 一方、学習評価をしようとした際に、仮に自治体が設置している環境下でも免許を持たない人が評価してよいのか、最低限、特別免許等を与えた人に限定すべきなのかなど、考える必要があると思います。というのも芦屋市は今、校内サポートルームを全ての小中学校に設置し、全学校に職員を配置しているんですが、その多くは教員免許を持たない職員です。これは教育色を出し過ぎないほうがいいケース、あくまで子供たちの心のケアを大事にすべきケースがあると考えているからです。これは、今村委員がおっしゃっていた福祉と教育の話にもつながると思います。ですので、誰が評価できるのかという点はきちんと整理する必要があるのではないかと思います。
 そこがうまくいったとしても、最も重要なのが結局、高校入試の内申点をどうするのかという話だと思います。兵庫県では内申点の点数配分が半分なんですが、この結果、不登校の子たちは公立高校に進学しにくいと。これ、今でも学びの多様化学校はあるわけなので、今回の議論をどう受け止めて、高校入試をどう変えていくのかというのは、都道府県の教育委員会が問われていると思います。改訂を待っていたらいいよねって話ではありません。今、既に困っている子供たちがいるので、大至急、都道府県の教育委員会の皆様には、高校入試で内申点をどう考えていくのかという点は、ぜひ議論していただければと思います。
 いずれにせよ、地方自治体の教育委員会の役割は本当に大きくなります。特異な才能をどう認定するのかとか、柔軟にというとポジティブですが丸投げにならないように、ぜひ意図の説明とか先行事例の還元とか、財源等の環境整備も含めてお願いしたいと思います。
 以上です。
【貞広主査】  具体的な実装に向けての御提案もいただいたところです。ありがとうございます。
 皆様の御協力のおかげで、多少時間超過しますけれども、今日御発表いただいた方々に御質問等を戻せる時間を確保できました。心よりお礼を申し上げます。幾つか質問が出ていますので、それぞれ御質問にお答えいただくとともに委員の皆様からの意見を踏まえてコメント等がありましたら、ぜひお寄せいただければと思います。
 荒瀬委員からは広島県の教育委員会さんに、高等学校の状況についてSCHOOL“S”等との接続も含めて教えていただきたいということや、隅田先生に向けて次期学習指導要領への期待をお示しいただいているんですけれども、もう少し具体的にお示しいただきたいということ。
 そして秋田委員からは、特別な教育課程を実施するための教師の資質・能力というものには、どのようなものが必要かという御質問を全ての御発表者の方に向けていただいています。
 また、青海委員からは、東京都の教育委員会さんに、チャレンジスクールのもともとの制度的なルーツについての御質問をいただいています。
 また、溝上委員からは、これはそれぞれの御発表というよりも、もしかしたら今後の検討課題か事務局の現時点でのお考えということで、通常の教育課程を想定したときに到達していない子の扱いや、特異な才能を有する子の卓越した到達度をどう評価していくのかということ。
 そして野口委員からは、前回も同じ御質問を頂戴したかと思いますけれども、こうした特別な教育課程、特別な教育活動において行われることによって通常の場の教育にどのような変化があったのかというような御質問をいただいています。
 では、順番にお答えいただければと思いますけれども、まずは東京都教育委員会と多摩市教育委員会さんからお答えいただければと思います。よろしくお願いいたします。
【東京都教育庁(藤田)】  東京都でございます。青海委員からチャレンジクラスの位置付けということで御質問いただいたところですけれども、こちら東京都においては校内教育支援センター、こちらに教員を配置し、チャレンジクラスを運営しているような状況でございます。ただ、教員を配置することによって学習の質をしっかりと保障する、そういうような意味合いで設置をしているところでございます。
 あと、教師の資質・能力というところなのですけれども、これは生徒の実態にしっかり寄り添うということが一番重要かと思いますので生徒指導力、併せて生徒の実態に応じた学習指導力、これが両輪に、通常級と同様かと思うのですが重要なところなのかなと考えております。
 以上です。
【貞広主査】  ありがとうございます。今の後段の御指摘は、教員養成部会での白水委員の御発表にも通底する御指摘だったかと思います。ありがとうございます。
 今、青海委員の御質問にお答えいただいたんですけれども、この点につきまして児童生徒課から補足があるということですのでよろしくお願いいたします。
【千々岩児童生徒課長】  児童生徒課でございます。青海委員から学びの多様化学校、今、分教室型であるもの、これ、将来的には本校になることを前提というようなお話あったんですが、そのような形はとっておりません。分教室型は分教室型でやる形も、これはありますので、その点だけ念のため補足でございます。
 以上です。
【貞広主査】  制度的な御確認をいただきましてありがとうございます。
 では続きまして、広島県教育委員会、尾道市教育委員会さん、いかがでしょうか。
【広島県教育委員会(蓮浦)】  広島県です。荒瀬委員から、高等学校の取組はどうなのかというような御質問をいただいたかと思います。高等学校の不登校生徒への支援の在り方につきましても令和5年度から指定校2校を指定しまして、義務教育段階とは違った高等学校段階での支援の在り方の研究というところを進めてきているところでございます。令和5年度、令和6年度、この2年間は、どちらかといえば不登校生徒への支援の在り方、考え方、この理解を促進するような側面が強かったと思っています。県の教育委員会の指導主事が月2回程度、指定校へ訪問をして、実際に困っている生徒、悩んでいる生徒へのサポートを学校の先生とともに行ってきたところでございます。
 今年度、令和7年度からは義務教育段階のSSR、スペシャルサポートルームとはちょっとニュアンスが違った高等学校独自の部屋ということ、これはSCRと名付けたんですけど、サポートアンドコンサルテーションルーム、コンサルというところ、高校生段階では先生方と対話をしながら生徒自身が今後の社会へ出たときの生き方であるとか、自分自身どう生きていくのかということをしっかり考えていくような部屋を実際に設置をして、取組を進めていくというところで、一歩踏み込んだ形で進めていけたらなと思っています。
 先ほど不登校生徒の支援の在り方、考え方の理解の促進というところを申し上げましたけれども、先生方が児童生徒をどう、東京都からの話もありましたが、見立てる力というところが必要になってくるかなと考えております。
 また、野口委員からアップデートした事例というような、通常の教室がこうアップデートしましたよというところが申し上げにくいんですけれども、そもそもSCHOOL“S”の取組にしてもスペシャルサポートルームの取組にしても、広島県としては新たな不登校を生じさせない、不登校の未然防止と社会的自立に向けた支援、これをセットで取り組んでいく必要があるというところで、指定校におきましてはSSRの取組だけではなくて、通常の教室における授業をどう改善していくのかというところも併せて研究をしているところでございます。
 さらに今年度からは初心に戻ってではないですけど、安全・安心な学校風土、学級風土づくりをベースにして、学んでみたいとか分かった、できたというようなことが実感できる授業づくりというところも一体となって、全ての児童生徒の主体的な学びの実現に向けて取組を進めていこうと考えております。
 最後1点、今井先生からございました低学年のつまずきに関する研究ですけれども、調査問題等をつくりまして、実際にどんなところでつまずいているのかというところを今井先生に御協力いただきながら研究してきたところで、今現在、小学校低学年段階からの学びの基盤づくり事業というような名前で継続した取組を進めているところです。
 以上です。
【貞広主査】  ありがとうございます。
 では隅田委員、本当に時間、もう遅くになってしまって申し訳ないのですけれども、次期学習指導要領への期待についてお聞かせいただければと思います。
【愛媛大学(隅田)】  たくさんいただきましたので、3点ぐらいでまとめます。
 荒瀬委員の御質問に関しましては、資料を見ますと論点資料の1-1の4ページに私の資料以上に非常に詳しく掲載がありまして、これはかなり具体化されています。さらに具体化するのであれば今日資料に出てきたような、カリキュラムをコンパクトにして、そして自由部分をつくるとか、あるいは教科別、これは秋田委員が言われた教科別の少し先取りをするとか、あるいは荒瀬委員が高校でよく御存知かと思うのですが、大学との二重在籍に関わるような事例がもうあるとか、そういうのはより具体的なるかもしれません。
 あと、秋田委員がおっしゃられた教員養成に関しまして、今日私が紹介した研修パッケージの学部生、あれは台本をつくったわけじゃなくて本人が自分の言葉で載せたものでして、大学で昨年のパッケージを使って、今年度のパッケージをつくる中で教育実習に行ったときの指導案を持って来てもらい、才能がある子の特性を踏まえてどこを少し調整できるか検討するというような、そういう取組をした例をパッケージの中で載せています。
 大学の中では、もちろん海外の動向とか子供の特性、カリキュラム、あるいは指導方法、それとかクロスする才能と困難を併せ持つ子の話とか保護者対応とか、格差に関わるような現代課題とか、そういうのを私の授業の中では入れております。少し参考になればということです。
 それに関していきますと、植阪委員からも出ましたマトリックスの中で学校の先生、特に小学校であれば1-aの教室内で先生が少しの工夫でできる部分はかなりあって、だからこそ通常の教育課程から連続的に支援が柔軟化できるようなモデルを、これは考えたいのが今日の私の提案の一つでございました。
 あと、溝上委員からあった評価に関して、今日紹介した小学校の動物園の方、来ていただいたようなのは、発表のときは国語とか総合的な学習もカリキュラム・マネジメントを入れながら、そういうところの評価も使ったようです。中学校のパフォーマンス課題を出したものは社会科と理科とそれぞれで評価をしたということで、もちろん個別の指導計画をつくるときに観点別評価の読替えを含めて計画を立てておくことはできると思いますし、こういう計画とか、子供の凸凹部分をどういうグループで見取ることができるのかということで、私たちが4月につくったセンターはそういう意味で幼稚園から高校の先生も入っていただいていて学校種も教科もバラエティーをそろえていまして、どの教科で今どれぐらいのレベルにあるのかとかを総合的に見て、その子供の適切な教育、支援を判断する必要があると考えております。これも実証研究で進めていければと思います。
 以上です。
【貞広主査】  どうもありがとうございます。それぞれの委員の方から御質問に応答とコメントをいただきまして、ありがとうございます。
 段取りが悪くて、皆さんに十分に御発言いただけなかったことをおわび申し上げます。ただ、事務局からお示しいただきました論点資料につきましては、おおむね委員の皆様から、この方向性でという御意見をいただいたように思います。
 その中では、特に「1.5階」というキーワードも出てきましたけれども、1階部分と2階部分の教育課程の接続の問題、そして、それだからこそ1階部分こそが変容して、より包摂的にならなければいけない問題や、また、そこでの学びの成立と質保証のためには何よりもリソースが必要であるということ、または、特に髙島委員の御意見の中にもありましたけれども、これを本当に国を挙げてやるには先行して地方の公共団体、地方の自治体、また、教育委員会にも先行して検討していただかなければいけない課題がある。ぜひ、そこにしっかり手をつけてほしいというような御意見もいただいたと思いますので、これを聞いていらっしゃる方々にも、ぜひ引き取っていただければと思っているところでございます。ありがとうございました。
 それでは、大変時間を超過しまして申し訳ありません。本日の議事は以上といたします。
 1個、申しそびれました。溝上委員の御質問については、事務局からこの場でお答えいただくことはないとおっしゃっていましたので、この場では取り上げませんでしたことを付け加えさせていただきます。
 本日の議事は以上といたします。
 最後に次回の予定について事務局よりお願いいたします。
【栗山教育課程企画室長】  次回は4月25日金曜日15時半から18時を予定しております。
 また後日、連絡させていただきます。
【貞広主査】  それでは、以上をもちまして閉会といたします。ありがとうございました。
 
―― 了 ――

お問合せ先

初等中等教育局教育課程課教育課程企画室

電話番号:03-5253-4111(代表)

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