令和7年2月28日(金曜日)15時30分~18時00分
WEB会議と対面による会議を組み合わせた方式
【貞広主査】 定刻となりましたので、ただいまから第3回教育課程企画特別部会を開催いたします。
本日は、前回に引き続き、「質の高い、深い学びを実現し、分かりやすく使いやすい学習指導要領の在り方について」を議題として審議を行っていただきます。
お配りいただいております進行資料にもありますとおり、事務局より御説明をいただいた後、堀田委員より、デジタル技術を活用した分かりやすい学習指導要領の在り方の観点から御発表をいただきます。その後、戸田市立戸田南小学校、加賀市立山代中学校、宮城県仙台第三高等学校より、それぞれ教科の本質を捉えつつ、育成したい資質・能力を明確化し、単元といったまとまりを意識しながら授業を構想している事例等について御発表をいただきます。その後、5分間休憩を挟みまして、意見交換の時間とさせていただきます。
なお、前回同様のテーマで御発表いただきました戸ヶ﨑委員、石井委員の資料も本日再度お配りしておりますので、併せて御参照いただければと思います。意見交換につきましても、前回のこれらの御発表の内容も踏まえて実施させていただきたいと思います。
それでは、事務局より、本日の配付資料の説明と論点資料につきまして、前回から変更点があれば御説明をお願いいたします。
【栗山教育課程企画室長】 失礼いたします。本日は、前回と同様のテーマで御議論をいただきますので、資料1-1の論点資料は前回と同じ資料を配付しております。この後、堀田委員の御発表の後、3つの学校から育成したい資質・能力を明確化した上での授業づくりについて御発表いただきますが、その中で、学習評価の効果的な実施についても言及がございますので、参考資料1-1の補足資料のほうでは、前回の資料から14ページ以降に学習評価に関する参考資料を追加しておりますので、適宜に御参考いただければと思っております。
また、参考資料3-1、3-2は、今月の14日に取りまとめられましたデジタル教科書推進ワーキンググループの中間まとめ及びその概要でございます。参考資料3-1の概要資料に基づき補足をいたします。
1枚目に現状を、2枚目以降に今後の方向性をまとめています。まず、1枚目ですが、現状として、デジタル教科書は、紙の教科書を全てそのままデジタル化した代替教材であり、小中学校の英語と算数・数学の一部で国から提供しています。実際に使ってみた教師や子供からは、主体的・対話的で深い学びの実現につながったとの声があり、データでも現れてきていることを示しています。
2枚目です。そうした中、教科書の形態として、紙だけでなくデジタルも認められることを制度上明確化し、デジタルでも検定、採択、無償給与等の対象にすることが示されています。あわせて、紙、デジタル、どちらのよさも考慮し、ハイブリッドな形態の教科書も認めるとしています。これは全国一律の対応ではなく、現場の実態を踏まえた多様な対応を可能にするための選択肢を設けようとする方向のものであります。
中段より下でありますけれども、教科書の内容、分量についてですが、教科書の内容、分量が大幅に増加し、教科書を網羅的に教えなくてはならないという根強い考えもあり、現場に負担感もあることから、意識の改革に向けた取組と併せて、次期学習指導要領の検討を踏まえつつ、教科書の内容や分量を精選することが望ましいという方向性も示されております。
最後に3枚目です。そうした新しい教科書は、次期学習指導要領の実施に合わせて導入することとされ、今後さらに具体的な検討が進められることになります。
事務局からは以上でございます。
【貞広主査】 ありがとうございました。
では、続きまして、堀田委員より御発表をお願いいたします。
【堀田主査代理】 東京学芸大学の堀田でございます。
本日は、「わかりやすい学習指導要領をデジタルで実現するために」という内容についてお話を差し上げたいと思います。
私は、大きく2つお話をします。1つ目は、教師が学習指導要領を便利に利用できるためにと書きました。教科書は質保証されており、これを用いて先生方は授業をなさっています。しかし、子供たちの理解状況を見取ろうとしても、教科書を使って学んでいる子供の様子だけから把握するというのはそう簡単ではない状況にあります。
そこで、いろいろな教材を使うわけですけれども、学校では、教科書に明確に対応づいた準拠教材と言われるようなものもたくさん使われておりまして、そこでは幾つかの確認問題に取り組んでもらって、その習熟度のようなものをはかるということを、とりわけ知識や技能のところではチェックするということになります。子供たちから見れば、ノルマをこなすみたいになりがちなのと、その採点が教師の負担になりがちだというのが現状かと思います。
肝腎の学習指導要領の参照については、研究授業のときは読むのかなと思いますし、どちらかといえば解説のほうをよく読むかなとも思います。また、教師は日頃は教科書会社作成の教師用指導書を最も参照しているのではないかと思います。
こういう現状の中で、既に事務局から出されている論点について、赤丸の辺りを中心に検討してまいりました。まず1つ目は、ウェブで学習指導要領を表示することで分かりやすく見せる。このことは、例えばカナダのブリティッシュコロンビア州等で行われているということが報告されています。この見やすいウェブというのは、ウェブサイトのユーザビリティとかアクセシビリティの研究がたくさんなされていますので、そういうノウハウが使えるものかと思います。
このことはデジタルによって人間による可読性を高めるということですけれども、学習指導要領の中の学習内容の上位項目と下位項目の対応や、対応するものの表あるいは図式化、マークの付与、こういうようなことができるのではないかというのは、前回の会議でも同様のことが意見として出ております。また、4つ目のポチに書きましたが、生成AIが出てきていますので、うまくプロンプトをつくれば、子供たちにも理解できるような説明というのが可能ではないかと思います。
一方、Computer Readableと書きましたけれども、コンピューターによる可読性が高まれば、現状はPDFで検索等まではできますけれども、それに加えて、タグをうまくつけておけば、当該のタグのものだけ手繰り寄せるようなことができるし、また、見える粒度、粒度はgranularityといいますけれども、デジタルでうまく粒度の表示を変化させるということができるのではないかということです。
例えば粒度というのはこういうもので、山を見るか、岩を見るか、小石を見るか、成分を見るかというのを自在に上に行ったり下に行ったりできないかということです。実際、オーストラリアのカリキュラムでは、ウェブサイトによってビジュアルに表示されていまして、三次元で表現されているということが書かれていて、三次元というのはこういうふうになっています。一番左が教科、真ん中が資質・能力、一番右がクロスカリキュラムのことが出ています。教科の並びでいえば、マウスオーバーしたときに大きくなって内容が探れるようになっているようなエフェクト表示のようなものができていて、これはなかなか紙ではできないですけれども、デジタルでこういうふうにやると、皆さん多くの人が見ていただけるんじゃないかと思いますし、下位項目が必要なときだけ出せて、必要なときに下位項目に細かくアクセスすることができるということです。
今もう既にコンピューター、デジタルを使うような話をお見せしましたが、学習指導要領がうまく構造化されて、ウェブサイトの表示のいろいろな機能を使えば今ぐらいのことはできる。さらに、今からするお話は、内部情報として学習指導要領コードをはじめとしたメタデータをつけることによって、さらにいろいろなことができないかということでございます。論点でいえば、一番下のところに当たるところです。
実際、学習指導要領コードというのはもう既に出ていまして、文部科学省によって作られています。左のように学習指導要領の構造がこういうふうになっていることに対して、テキストで書かれている学習指導要領にコードが一対一対応でついているということです。具体的には、桁ごとにこういうふうに割り振りがありまして、例えば6桁目に6と書いてありますけれども、これは学年が6年生という意味です。この6桁目が6のところだけ集めると、6年の全ての学習内容になると、こういうふうに使えるようになっています。付番はこういうふうにされているということです。
ただ、いろいろな課題があります。まず、学習指導要領の構造は、内容知ベースのものと方法知ベースのものによって構造が少し違うよということが1回目の会議でも出ていたところです。
また、縦と横の関係、これは教育課程企画特別部会の非常に重要な論点だと思いますけれども、何が中核的な概念で、何が個別的な知識等なのかということ。内容的に構造化がうまくされて、そしてそれが学習指導要領コードで表現できれば、縦に行ったり横に行ったりすることは、先ほどのようなエフェクト等を使えばできるということでございます。
また、学習指導要領コードの初期の段階でこういう図が描かれており、世の中にはよく知られていますけれども、なかなかまだ社会実装されていない現実があります。例えばデジタル教科書のあるページに対応する教材や問題集、あるいは博物館等のアーカイブを、学習指導要領コードを経由して取り寄せることができるようにしようということですけれども、なかなか難しいのは、学習指導要領コードがちょっとまだ粗いということが一つの大きな原因です。
学習指導要領コードについていろいろ取り組んでいる例を今から4つ御紹介します。1つ目は、左側にあるようなよく使われているドリルと、当該の教科書のページを同時に見せるということをやろうとした例です。これは教材会社と教科書会社の協力によって、プラットフォームの下でやっているわけですけれども、これをやろうとしたときに、学習指導要領コードでいえばこういう感じになります。当該のところにコードが一対一でついているわけですけれども、また、赤丸がついているところを見ていただいても、基本的な計算を基にしてできていることを理解すること、これは1問2問できたぐらいでは自動判定なんていうことはとても難しいという現実があります。ただ、計算の仕方、筆算の仕方とか、あるいは確実にできたかとかいうのは閾値次第で自動判定は可能かもしれません。しかし、適切に用いることができるかというようなことは自動判定できないと。つまり、結局、人の目が必要だという現実はあるということになります。教師自身による見取りがとても大事だということになります。
この見取りをするためには、例えば採点の行為なんかでいえば、中高生は自分で採点するというのも普通だと思いますけれども、小学生でいうと、先生が採点してあげるということによる先生の大変さ、多忙化と、一方で、子供が自分で採点して自分で状況を把握するということの大事さ、自己調整において大事だと言われるわけですけれども、このトレードオフが現実はあります。これを子供が解いた後に撮影してAIに送信すると、AIが自動判定してくれるみたいなことをやった例があります。これも実用化を既にされていますけれども、これで評価した情報を学習指導要領コードにひもづけようとしても、学習指導要領コードがちょっと粗いので、課題がまだ残るというか、正確な把握にはつながりにくいという現実があるということです。
また、次、事例3として、学習指導要領コードは数字の羅列ですから、人間が分かるように、いつの学習指導要領のどの教科のどの学年のどの内容というふうに指定すると、コードを特定し、その特定したコードに対応するユーチューブの学習動画をひもづけようという取組でございます。これは有名な教育ユーチューバーの葉一さんに御協力いただいて、チエルという会社がやったものです。これもとても面白いですけれども、これをやるためには、許諾の問題とか、あるいは本当にうまくいっている対応なのかということを教育関係者がチェックするとか、こういうようなことがあるので、バックヤードのコストが結構かかります。こういうことに取り組めば今のようなことはできるということですが、何らかの予算づけとかが必要になるかと思います。
4番目ですけれども、デジタル教科書のあるページの上にNHK for Schoolのボタンを置き、関係するNHK for Schoolの動画を自動的にリンクするという試みです。これもメタデータが後ろで動いているわけですけれども、こういう感じです。APIとかをいろいろ使います。技術的な話は今日はしませんけれども、学習指導要領コードだけだと、桁が粗い関係で、100も200もリンク動画が出てくるという実用的ではないことになりますので、例えば教科書の小単元レベルのキーワードのようなものが公的に流通していると、こういうのはうまくいくようになるということかと思います。
以上、いろいろお話ししましたが、課題としてまとめておきたいと思います。まず、現状では精密な対応づけに課題があるということです。これをクリアするためには、学習指導要領コードを作り直すという考え方もあるし、これは今のままにしておいて、ほかに別のメタデータを上手につけるということも検討されるべきだということです。
一番最初に申し上げたように、先生は教科書や教師用の指導書をよく見ているという現実から考えると、教科書の小単元レベルのキーワードというのがもっと公開されてメタデータになると、大変望ましいと思います。例えば、デジタルになった場合はですけれども、教科書にはそういうメタデータの付与を義務づけることができないか。これによって、教科書検定もある程度コンピューターで一覧表を作るみたいなことが簡単にできるようになりますから、検定も楽になる部分もあろうかと思います。これはいろいろな業界との対応もありますので、そう簡単ではないですけれども、こういうことができれば、今のようなことは進むと思います。
また、教材会社については、メタデータの付与を義務づけるのは難しいかもしれませんけれども、あらゆる教材にメタデータを付与することが推奨されれば、デジタルの表示というのは自動的にリンクすることができるようになります。
一番下に書きましたけれども、先生たちから見れば、学習指導要領から始まって、対応した教科書、できればほかの教科書会社の教科書も見られるといいなと思いますけれども、教師用指導書、あるいは各教材、問題集のようなものまで下りていってみたり、逆に、教科書のあるページや問題集のあるページから、逆向きに上位の学習指導要領まで遡って見るようなことができるようになれば、恐らく先生たちは日常的に学習指導要領を参照して使いやすくなるのではないかと考えております。
これらのことは、リンク集のところに書いてありますけれども、全ては教師が学習指導要領を理解する、すなわちそれは何をこそ教えるべきかということを明確に理解して指導するということに寄与することになろうかと思います。
私からの発表は以上です。
【貞広主査】 ありがとうございました。御質問、御意見につきましては、全ての発表終了後にまとめてお伺いしたいと思います。
では、続きまして、各学校より事例の御発表をいただきます。前回は、資質・能力の深まりとしての縦の関係のイメージと、資質・能力の複数の柱を一体的に育成する横の関係のイメージをつかみやすくするための方策等について御議論をいただいたところでございますけれども、具体的な実践事例の御発表を足がかりに、本日は実際の学校現場における授業づくりをよりよいものとしていくための構造化の在り方を検討する機会とさせていただきたいと思います。
それでは、まず、戸田市立戸田南小学校より御発表をお願いいたします。
【戸田市立戸田南小学校(佐藤)】 戸田市立戸田南小学校教諭、佐藤淳美と申します。よろしくお願いいたします。
本校は、全校児童771名、28学級の市内では中規模校の学校です。市内にはすばらしい実践をされている先生方が多くいる中で、本日、私にこのような機会を与えていただき、感謝申し上げます。
今回、私がお話しさせていただくことは特別なことではなく、戸田市内では日常的に行われている普通の教師の実践としてお聞きいただければと思います。
こちらが本日の発表の流れになります。
戸田市内の多くの学校では、高学年で教科担任制を取り入れており、私は国語科を担当しております。教室の中には、「得意だから授業が楽しみ」「読む単元が大好き」という児童がいる一方で、漢字や発表等に苦手意識を持っている児童もいます。
毎年、市内の小中学校では、6月と12月に「授業がわかる調査」を行っています。今年度の6月に行った調査では、国語が楽しいと答えた本校の5年生の児童は64.2%でした。私は、国語が好きな子や得意な子はさらに好きで得意になってほしい、苦手な子でも楽しく学んで好きになってもらいたいと考え、「どのような授業をしたら子供たちが楽しく、深く学ぶことができるのか」をテーマに、1年間、授業をつくってきました。
初めに、授業づくりについてです。新しい単元に入る際には、まず、学校で作成している年間指導計画で、次はどのような学びを行うのか、単元の確認をします。次に、単元の終わりに、どんな力を付ければよいのかという単元で身に付けさせたい資質・能力、目指すべき児童の姿を明確にします。また、関係する領域でどのような学びをしてきたのか、何を理解していて、何が課題かなど、一人一人の学びの現在地を確認します。さらに、クラスによって実態が異なるため、その実態も把握するようにしています。
ここで参考にするのは、教師用指導書や教科書です。それらを参考に、「言語活動」や「単元を貫く課題」を設定します。ここまでの過程を授業づくりの土台とし、単元デザインを考えていきます。授業づくりの際に私が特に大事にしているのは、先ほどのステップ2でお話しした児童の学びの現在地の確認です。これは、授業づくりの中でも児童観につながる大事な部分になります。特に、今年4クラスの国語の授業を担当していて感じるのは、それぞれの子供の実態やクラスカラーが異なるため、全て同じ授業展開をすることが難しいということです。子供やクラスの実態を見ながら授業展開を工夫することが授業づくりのポイントだと思っています。
そのために、ダッシュボードを活用し、様々な調査結果に横串を刺し、児童を多面的に見て授業づくりをしていくように心がけています。特に県学調では、IRTにより一人一人の学力の伸びが分かるため、有効活用しています。
「単元を貫く課題」を解決するために、本時ではどのような目標設定や課題を設定し、授業展開を行えばよいのかを考えます。その際、児童とともに学習計画を考えていくことで、自ら学びに向かうことができるように授業デザインを行います。学習計画は指導書や教科書に記載があるので、基本的にはそのとおりに進めるようにはしていますが、既存のものをそのままこなすのではなく、児童の感想や疑問点などから授業展開を進めることができるように考慮しています。
また、評価については、単元全体の中で、どの場面でどのように学びを見取り、どのように評価するのかを考えています。どこに学びが向かうのかを児童と共有することで、児童の自律した学びにもつながると考えています。
単元をデザインする中で私が大切にしているのは、毎時間の学びが「単元を貫く課題」に向かって取り組まれているかということです。
さらに、私が目指す児童とともに学ぶ授業を展開するためには、自分の授業を客観的に見直すことが大切だと思っております。その際、毎年、戸田市教育委員会が作成している指導の重点・主な施策の中にあるアクティブ・ラーニング指導用ルーブリック等を活用しています。
ここで、5年生の教科書に掲載されている『大造じいさんとガン』を教材にした実際の授業についてお話しします。この単元では、文章を読んでまとめた意見や感想を共有し、自分の考えを広げることが中心目標となっているため、単元名を「登場人物の心情の変化に着目して読み、物語のみりょくをレビューカードにまとめて伝え合おう!」とし、レビューカードというネーミングも児童と一緒に考えることで、学びを自分事とするための一歩としました。さらに、単元を貫く課題を「この物語には、どのようなみりょくがあるのだろうか」と設定しました。
ここでは、お互いの「みりょく」を交流しながら物語に対する自分の考えを深め、感想を伝え合うことができる児童の姿を目指すこととし、このような学びの姿をイメージしながら単元をデザインしました。
導入では、「みりょく」をテーマに物語を読んでみようと児童に提示し、児童とともに各時間の授業計画を作成しました。また、毎時間の指導計画を立てる際には、課題に迫るための授業の山場についても吟味しました。
単元の中で、個人、グループ、一斉と様々な学習形態で学びを深めていくようにデザインしています。今回は、個別の学習の途中でもICTを活用し、友達の考えを参照、共有することができる、協働的な学びができる環境を整えるように工夫しました。また、単元を貫く課題に向かって、一人一人の学びを拡散させたり収束させたりする場面を意図的に設定し、学びを深めることができるようにしています。
評価については、このような学習形態にあっても、児童の様子を評価規準に基づいて観察し、活動や考えを価値付けたり、意味付けけたりしながら評価しています。また、グループや一斉の学習形態であっても、一人一人の評価ができるよう、ICTの活用等の工夫をしています。
実際の授業では、物語を読んだ後、簡単な場面整理を行い、「みりょく」をテーマに初発の感想を書きました。国語では、この初発の感想を大切にしています。
次に、児童が書いた初発の感想をICTツールである共有ノートに投稿し、互いに読み合い、「みりょくポイント」を見つけました。その後、児童が考えた教材の「みりょく」を整理しながら学習計画を作成することで、自分事の学びとしました。
本単元では、自分の考えや感想を共有することを通して自分の考えを広げることに重点を置いているため、対話を重視しました。対話重視の学びを行う中で、児童一人一人の課題や、苦手意識に寄り添った手立てや支援が必要であることは経験から理解しております。今回は、文章を読み取ることに課題がある児童、考えをまとめることに課題がある児童、伝えることに苦手意識がある児童、それぞれの実態を想定した学びをイメージし、支援方法を考えました。
また、指導の重点・主な施策を参考に、教育的ニーズを多層的に考えられるように意識しました。文章を読み取ることに課題がある児童へは、第1時に学級全体で場面整理を行い、イメージをつかめるようにしました。例えば、「5俵がどれぐらいなのか」を知ることで、大造じいさんの残雪に対する心情を考える手立てとしたり、ワークシートに場面絵を用いることで、各場面のイメージをする手立てとしたりしました。
考えをまとめることに課題がある児童へは、個人活動のときに教師による支援、また、思考ツールの活用や音声入力で考えをまとめることも可能にしました。
さらに、グループ活動の際に、友達の考えを基に自分の考えをまとめたり、考えがまとまらなくても交流会に参加したりすることで、対話の中からヒントを得られるようにしました。伝えることに苦手意識がある児童に対しては、自分の意見が整理できるまでの時間を確保することや、発表しやすいようにグループ編成を考えることなどの支援をしました。
ここでは、自分のイメージで考えている児童と教科書を基に発言する児童のやり取りが行われました。このような話合いの中で、「そんなこと、どこにも書いてない」という発言が聞かれたと思いますが、まさに叙述から考えようとする子供の姿と言えます。また、教師から小さな揺さぶりをすることで再度叙述に着目し、考えることができるように支援しました。
また、別のグループでは教科書を持ち寄り、それぞれの考えを伝え合いました。全員で2つの叙述を何度も読み、それぞれが自分の納得解、最適解を見つけようとしていました。このような学びを続けることで「国語の見方・考え方」である言葉にこだわる学びの様子が少しずつ見られるようになりました。「単元を貫く課題」を設定し、児童とともに学習計画を考える活動を意識しながら授業デザインを考えてきた結果、このような児童の姿が見られるようになりました。今では単元名を提示すると、「次はこんなことをするのですか」「このように進めますか」と、既習を生かしながら自分で学びを考える児童もいます。また、他教科と関連づけて考えるなどの発展学習にもつなげる児童が見られるようになりました。
12月に実施した「授業がわかる調査」では、分かると答えた児童が6月の83%から91.3%へと伸びが見られました。また、「授業が楽しい」と答えた児童は64.2%から81%と大きな伸びが見られたことからも、国語の授業を「分かる、楽しい」と感じる児童が増えたことがデータでも見ることができました。
国語の授業については、このような成果が見られましたが、授業づくりをする際の悩みもあります。現在、私は国語の授業づくりに専念することができていますが、それでも各単元を貫く課題を位置づけた授業構成を考えるのには時間がかかります。そのため「教材の特性、既習事項を簡単に確認するためのツール」として教師用指導書などを使っています。
今回、授業づくりをする際、どのようなときに学習指導要領を活用するのかを改めて考えてみました。振り返ってみると、校内で研究授業を行ったり、指導主事に御指導いただく際に身に付けさせたい資質・能力、既習事項などを改めて確認するために活用したりしています。
学習指導要領は、授業づくりの原点に戻るための大事なもの、指導がぶれないための必要な柱であることは理解しているつもりですが、つい、より具体的で分かりやすい指導書などに頼ってしまうことが多くあります。一方で、頼りになる指導書や教科書から離れることも必要ではないかと感じています。指導書どおりにすれば、授業はスムーズに流れていきます。しかし、児童の実態に応じた柔軟な授業を展開することは難しいです。
例えば、5年生の国語と総合的な学習の時間には重なる学習があります。また、算数や社会でも教科等横断的に学ぶことができます。このように指導を行えば実生活にも結び付けることができるし、効果的な授業となるのは分かっているのですが、どうしても教科書という枠にとらわれてしまっている自分もいます。そのため、時には頼りになる指導書や教科書から離れることも必要だと感じています。
また、「教科等横断的に単元デザインを考える」際には、教科担任ならではの課題もあります。例えば学年会等で話し合う際の時間の確保、授業時間を合わせるための調整などが挙げられます。それぞれの教科でどのような学びを行っているのかを互いに理解しながら、日常的な学びを活用する教科横断的な視点で単元デザインを考えることで、より実践的な学びにつながると思います。
さらに、現在の授業では、タブレットを子供たちが鉛筆やノートと同じように使用し、授業が展開されています。しかし、タブレットの中に書いた言葉だけで児童の会話が進んでしまったり、教科書に戻らなかったりしている場面を見ることがあります。そんなとき、ICTを活用し、教科の本質に迫るためにどのようにしたらよいのか迷ってしまいます。
このような悩みを抱える中で、今後の学習指導要領に期待することについてお話しさせていただきます。今年度、国語専科として4クラスの国語の授業を担当しています。4クラスが同じ「単元を貫く課題」に向かって授業をしておりますが、学級ごとの実態や学級内でも児童一人一人の実態が違うため、ダッシュボードを活用し、全国学調や埼玉県学調、さらには、「授業がわかる調査」の結果等に横串を刺して一人一人の児童を多面的に見つめ、学習形態や学習方法を変えるなど創意工夫しながら授業を行っています。
「単元を貫く課題」という山頂に向かい、目の前の子供たちと一緒に登る道を選びながら、様々なルートを自力で登ることができるよう伴走支援しています。しかし、それは教科担任制のため、一つの教科に時間をかけられるからと、毎日の授業が充実してきたことだと思います。
本音を申し上げれば、今までは多くの教科を担当していましたので、単元という考えで授業を進めるのではなく、「その時間の授業がこなせれば」という考えもありました。多くの教科の学習指導要領を読む時間もないため、一つ一つの教科にかける時間も少なくなり、指導内容も浅いものになってしまっていました。国語は日常生活との関わりが大きく、他教科等でも国語の学びを意識することで、より一層の学力向上を図ることができると考えています。
先ほどカリキュラム・マネジメントの話題でもお話ししましたが、他教科でどのような学びを行っているのかを確認し、自分の担当教科にどのように生かしていけるのかを知るためには、学習の全体像を見渡せる「学びの地図」である学習指導要領に目を通す必要があります。学習指導要領を見れば、教科の本質とともに各教科等のつながりや全体像が理解できる、そのようになると、学びの充実につながっていくと思います。
そのため、これからの学習指導要領について私が望んでいることを3点申し上げます。1つ目は、「柔軟な教育課程が編成されやすく授業づくりの自由度も広がるもの」に、2つ目は、「単元を貫く課題を構想するために分かりやすい構造や記述があるもの、教科内の系統性や他教科との関連性が一目で理解できるもの」に、3つ目は、「子供と教師が一緒になって課題やゴールに向かうために日常的に活用しやすいもの」に、となれば、私たちの授業づくりもさらに充実すると思います。
以上で発表を終わらせていただきます。御清聴ありがとうございました。
【貞広主査】 ありがとうございます。
では、続きまして加賀市立山代中学校より御発表をお願いいたします。
【加賀市教育委員会(島谷)】 それでは、加賀市山代中学校の授業づくり等について発表いたします。私は加賀市教育長の島谷と申します。
本日は冒頭2分程度で私から、今回の山代中の実践につながる加賀市全体の動きについて御説明をして、残りの時間、授業づくりについて、たっぷり山代中の職員より御説明申し上げます。
まず、加賀市では、学びの転換を市内全域で進めていくために4つのこだわりを持って進めています。まず、1つ目のこだわり、明確なビジョンを出すということです。BE THE PLAYER、プレイヤーであれ、自分で考え、動くんだ、そして社会を変える、そういう人を目指していこうという大きな方向感のイメージを共有し、ビジョンはスタート時に全家庭に配布をしております。
そして、こだわり2つ目は、モデル校はつくらず、全小中学校、全教職員、子供に委ねる学び、学びの転換を目指しております。ただし、各学校、各教員、個々人の進度はそろえないことを大事にしています。
そして、こだわり3つ目はマニュアル化をしない。これは、手法の目的化を回避したいという狙いでやっております。細かな手法は縛らず、学校や教員の実践の余白と自由度を最大限に上げる、そして何より、マニュアルより目の前の子供にフォーカスした授業づくりの意識の徹底をしております。そして大事なところになりますが、実践として自由進度学習というのは市内いろいろな学校で実施されておりますが、目指したのは自由進度学習ではないところがポイントになります。
そして、こだわり4つ目ですが、自由度を上げて各学校で実践を積み重ねておりますが、それを支えるために研修をフックにして使ったところです。子供の学びと相似形を目指すという観点で研修観を転換しました。まず、子供の学びが主体的、個別最適であるのであれば伴走型支援ということで、個人の先生たち個々人のオーダーに応じて授業づくり等を伴走支援、そして対話的、協働的にするためには先生個人が対話、協働の強みですとか弱み、特徴等を知るために、実際に対話型研修に全て切り替えていることをしています。全体
を通して、指導主事が教育指導要領の何を言わんとするのかを読み解くという役割も含めた指導・助言から脱却をして、伴走型支援への転換が不可欠だと考えております。
それでは、この後は組織全員で、もう誰1人欠けることなく本気で授業づくりに向き合っている山代中、そして加賀市の教員を代表して、教務主任、中村、それから研究主任、出藤より発表します。
【加賀市立山代中学校(出藤)】 それでは、加賀市立山代中学校の取組について発表いたします。
まずは、学校全体概要です。本校は生徒数371名、各学年4クラスの構成です。教職員数は48名、石川県加賀市の山代温泉に位置している学校です。
次に、本校の授業づくりの概要について御説明いたします。今年度は研究主題を「『主体的・対話的で深い学び』を追究する生徒の育成」としました。意欲的に学べるようになってきた生徒が増えてきた一方、学習への困難さを抱える生徒も多く、学習の深まりや定着、自律的に学ぶことに課題が見られました。そこで今年は、一人一人の確実な資質・能力の育成に向けた主体性の質の向上と、対話等を通して深まりのある授業設計を重点として授業改善に取り組んできました。
また、本校は授業改善に向けて研究部だけではなく授業を軸として教務部、生徒指導部とも連携を図ってきました。本日は研究部と教務部の取組について説明させていただきます。
それでは、まず授業づくりに関する具体的な取組について御説明します。今日御説明する取組は全部で4つです。
1つは、単元を意識した授業づくりです。授業を1時間単位のみで捉えるのではなく、全ての授業が結び付き、単元を通して学習が深まるような授業構想を目指しています。単元構想の際は言語活動を単元に位置付けたり、単元を貫く課題などを設定したりして、その課題を解決していくために知識・技能を習得したり、それらを活用、発揮させながら思考・判断・表現するような学習過程になるようにしています。
また、単元の中で特に主体性を発揮してほしい場面はどこかを考え、何をどのように子供たちに委ねるのかを吟味するようにしています。さらに、個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実の実現に向け、一人一人で学ぶこと、みんなで学ぶことのそれぞれのメリット、デメリットを踏まえ、教材の特性や生徒の実態を把握した上で子供に委ねる場面、教師が主導する場面、協働的に学ぶ場面などを意図的に単元に配置しています。
しかしながら、授業者だけが授業構想を知っている環境では生徒の主体性を引き出すことはできないと考え、見通しを持ち、学習の目的などを理解して生徒が学びに向かうことができるよう、今年度は単元マップを作成しています。様式等は統一していませんが、単元名、目標、単元の流れ、時数、手立て、評価を共通の要素として全教科で作成してきています。
次に、生徒の実態に応じた手立ての構築についてです。個別最適な学びの実現には、指導方法や教材などの柔軟な提供や設定が求められます。そのため、生徒個々の思考の流れ、つまずきなどの生徒理解を基に、生徒自身が学習に必要なタイミングで必要な情報にアクセスできる環境づくりを行ってきました。今年度はICTの活用、図版、実物等を利用した環境づくりに取り組みました。
ICTを活用した手立ての一例です。学習に必要な動画や写真、スライド資料をグーグルドライブに保存し、リンクを単元マップに貼りつけました。単元マップを介して、生徒のタイミングで好きなだけ閲覧することができる環境を整えています。そのほかにもグーグルミートを活用し、外部の専門家とつながることができる場を設定し、生徒が疑問に感じていることや知りたい事柄を自ら質問できる環境をつくる実践も行われています。
実物等を利用した手立ての例として、理科では、これまでは教師が主導して実験をコントロールしていましたが、今年度、実験器具をいつでも生徒が触れられる環境を整え、個々の生徒の興味や関心に合わせて実験を選べたり、疑問に感じたことをいつでも実験に立ち返って調べたりできるようにしています。
次に、振り返りの充実についてです。生徒が自身の学び方や学習した内容、手応えを自覚し、次の学習につなげていこうとする態度の育成を目指し、今年度は全教科で振り返りシートの活用を進めました。実践を進める中で、振り返りシートは単元マップと一体化しました。そうすることで単元の課題や見通しとともに、生徒が自身の学びの足跡を確認できるようになりました。
【加賀市立山代中学校(中村)】 4つ目は、学びをつなぐカリキュラム・マネジメントです。主体的・対話的で深い学びの実現と、生徒の実態に合わせて育成したい資質・能力を全教科で身に付けさせるためにカリキュラム・マネジメントは必要不可欠だと思っています。
本校で今年度、来年度取り組んでいきたいと思っている手順について説明します。学校教育目標と学習指導要領を踏まえて育てたい生徒の姿を具体化し、全体計画を描いていきます。育成を目指す生徒の姿を職員で出し合い、出た項目を知識・技能、思考・判断・表現といった資質・能力で整理します。その整理したものから学校としてどのような生徒を育てたいのかを設定し、全職員で共有することで学校全体の目指す方向性を定めていきます。
手順2としまして、育成したい生徒の姿を目指して学年ごとに教科等の年間指導計画を統合し、一つのシートで年間の学習活動を俯瞰できる単元配列表を描きます。
次に、それぞれの教科で単元の内容を具体的にしていきます。本校では、グーグルスプレッドシートで作成しています。資料という文字をクリックするとそれぞれの単元マップに移動できるようになっており、全職員がどの教科で、いつ、どのような学習を行うかをいつでも見られるようになっています。
また、育成したい生徒の力を身に付けさせるために、複数の教科で関連付けて力を定着させることを目指しています。例えば、ある教科の資質・能力が別の教科の資質・能力とつながり、学習したことを活用、発揮できる場面を意図的に設定することにより、育成したい生徒の力が概念化され、安定的で持続可能な資質・能力となるようにしていきたいと考えています。
【加賀市立山代中学校(出藤)】 それでは、これまでお話しした取組を踏まえた授業構想の具体例として、国語科の授業づくりについて御説明します。
国語科では、準備段階としてまず教材研究を行い、教材の持っている特性や価値の理解を図ります。次に、それらと学習指導要領解説に示されている資質・能力を照らし合わせ、育成を図る資質・能力を明確にしていきます。そして学習指導要領などを利用して既習事項を確認し、該当学年で押さえるべき内容の把握を行います。抽象的な言葉だけでは具体的な姿をイメージすることができないため、その後は学習指導要領解説、各学年の内容の該当するページを読み込み、指導事項や学年で押さえるべき内容の具体をつかんでいきます。準備段階の最後として、生徒の既習事項の定着具合などを確認し、単元の中で既習の内容を再度確認するべきかどうかなどを吟味します。
次に、単元の流れをつくる段階です。単元の流れを形づくっていくために、学習指導要領解説に示されている言語活動例を参考にし、目の前の生徒の実態と照らし合わせながら、より学習する意味や社会での有用性を感じられるような言語活動を構想していきます。構想した言語活動は、試しに教師が自分自身で一度取り組んでみます。その中で、どのように読めたり書けたり話せたりすることができていればよいのかを学習指導要領の文言や教材、生徒の実態を踏まえながら確認し、ゴールの姿をより具体化していきます。
ここまでの流れを踏まえて、最終的な単元の目標や評価規準を定めたり、言語活動を具体化していく中で、生徒の思考の流れや、つまずく可能性のある事柄などを明らかにしていきます。
単元のゴールの姿を具体化した後は、逆算しながら、いつ、どこで、何を、どのように学習していくのかを考え、単元の流れをつくっていきます。どのような流れであっても言語活動を単元の学習の柱とし、資質・能力が身に付くような形にしています。単元の流れの決定後、各時間の授業についても考えていきます。それらも同じように教師が実際に自分で取り組んでみながら、何がどこまでどのようにできていればよいのかを明確にし、ゴールの姿や学習課題を作成していきます。その中で生徒の思考の流れやつまずきを予想し、学習モデルやワークシート、どこを全体で授業し、何を生徒に委ねるのかなどの授業形態も含めて、生徒が学べる手立て、環境をつくっていきます。最後に、より生徒が学習する意味を感じられるような導入を考えていきます。
単元や各時間の授業が構想できた後は、生徒と学習の目的や流れなどを確認するために単元マップを作成していきます。国語科の単元マップでは学習のプロセス、学習の目標、手引一覧など、御覧のような要素で構成しています。
こちらが、国語科で作成している単元の学習の全体像を描いた学習のプロセスです。単元のゴールや学習の形態等を示しています。
こちらは、国語科で作成している課題、評価、振り返り、手立てなどを含めたシートになります。生徒はこのシートを利用して手立てとなる資料や動画、他者の考えを閲覧したり、学習の振り返りを記入したりしています。
【加賀市立山代中学校(中村)】 それでは、これらの取組による成果について御説明します。
3つあります。1つ目は、単元で授業を構想していくことにより、教師の授業の構想力が上がったことです。具体的には、生徒と共有する単元マップをつくることを通して、学習指導要領の言葉の意味をより深く考えるようになりました。生徒と共有するものになりますから、より分かりやすい言葉で生徒に伝えようとすると、その言葉の意味や本質をより具体的に考えるようになりました。
また、単元で考えるようになり、1時間ごとのつながりが意識できるようになり、身に付けさせたい力につながる内容を外さない授業をつくることができるようになってきていると感じています。そのような中で、何となくの1時間や、取りあえずこれといった投げ込みの1時間というものがなくなってきているように感じます。
また、誰1人取り残さないための足場かけの工夫の力も向上してきていると感じています。何よりも生徒理解が手立ての工夫において大変重要だと感じています。例えば身に付けさせたい資質・能力を付けさせるために、どのような活動が効果的かと工夫するようになりました。また、生徒一人一人の姿を見て個の学びに焦点を当てるようになりました。例えば、この子は、こんな手だてがあるといいだろうな、ここでつまずくかもしれないからと効果的な足場かけを考えるようになりました。
3つ目は、適切な評価場面の設定ができるようになったことです。主体的に学習に取り組む態度の評価については、従来は手を挙げる回数などで評価してしまっていた部分がありました。しかし、主体的に学習に取り組む環境、例えば生徒の文章を書かせたときの試行錯誤の跡が分かるようにし、粘り強く取り組んだ足跡が分かるようにしたり、振り返りにおいて自分の学び方を記述させることにより、学習をどのように調整したかが分かるようにしています。
このような環境やパフォーマンス課題を意図的に設定することにより、主体的な生徒の姿がより見取りやすくなり、自然と指導と評価の一体化が図られるようになったと思います。
2つ目は、多様な子供たちにとって学びやすい環境づくりにつながっていることです。例えば、単元マップを生徒と共有することにより学習の見通しが持て、その学習の目的が分かり、意欲の向上につながっています。また、振り返りを通して学び方を自覚できるようになり、さらには自分に合った学び方を選べるようになってきています。
3つ目は、単元で構想することによる教師の負担軽減に資する可能性です。単元で授業構想することで、評価材料、評価場面を精選することができるようになりました。また、ICT活用が不可欠となり、業務効率化にもつながっています。しかし、今まだ過渡期でもあり、負担感を感じる部分もあります。単元の準備にはまとまった時間が必要となります。具体的には、指導要領の難解な文章を読み解くこと、羅列的な内容を構造化することなどが挙げられます。しかし、負担はありますが、慣れ、習熟によって自分なりの方法を見付けつつあります。ICT活用による効率化も図られるようになってきています。そこで学習指導要領の改善により、このような負担をさらに軽減できるのではないかと考えています。
【加賀市立山代中学校(出藤)】 最後に、次期学習指導要領に求めることです。全部で5つあります。
1つ目は、視覚的にも捉えやすい学習指導要領です。現在は文字で羅列的にまとめられていることが多く、全体を俯瞰して理解することが難しく感じます。表形式などを用いて全体が一覧できたり、どの知識・技能と思考・判断・表現に関連性があるのかが一目で分かるようになっていると、単元構想がしやすくなるように感じています。また、各学年の系統性などについても同時に一覧することができれば、既習の確認や学習のつながりの把握を行いやすいと思います。
2つ目は、デジタル化された学習指導要領です。授業構想で学習指導要領を利用する際は、まず、資質・能力ごとの指導事項を大まかに捉えた後、より具体的な理解を図るため各学年の内容などのページを読み込むような使い方をします。そこでデジタル化を図ることで、リンク等で全体から部分、部分から全体へと行き来しやすいような学習指導要領であると、授業構想の負担軽減につながるのではないかと感じています。紙媒体であればインデックスがついていると行き来がしやすいと感じます。
3つ目は、より具体的に理解ができる学習指導要領です。一つは、現行の学習指導要領は一文一文が長く、文章のつながりが読み取りにくいと感じている教員が多いようです。一文一文を簡潔に、かつ明瞭にしていくことで、全ての教員が内容を誤解やずれなく理解できる可能性があると思います。
さらに、若手教員にとっては指導目標が達成された姿がイメージしづらく、単元構想の際に何をどこまで指導するのかに悩み、ゴールの姿を設定することに難しさを感じている傾向があります。動画での解説や、より生徒の姿で具体化された文章などがあるとイメージが鮮明になり、授業づくりがしやすくなっていくと考えられます。
4つ目は、見方・考え方がより具体的にイメージできる学習指導要領です。現在の見方・考え方は抽象度が高く、資質・能力のときと同様に具体的なイメージが持てていない傾向があります。先ほどの話とも関連しますが、こういうことが分かる、こういうことができるようになってほしいといった教科の資質・能力がより具体的に理解できるようになると、見方・考え方を発揮している生徒の姿がよりイメージできるようになり、授業構想に取り入れて行きやすくなるのではないかと思います。
【加賀市立山代中学校(中村)】 最後に、カリキュラム・マネジメントをしていくに当たって活用しやすい学習指導要領です。カリキュラム・マネジメントを学校で進めていく際に、何か新しいことをしなければならないイメージが見られます。また、総則に手順などが書かれておりますが言葉が少々難しく、具体的な方法が分かりにくい部分もあります。
また、育成したい資質・能力に向かっていくことがカリキュラム・マネジメントにおいて大切なことであるにもかかわらず、その部分が分かりづらく、単元を配列することに終始してしまう可能性があります。
また、今後デジタル化していくのであれば、ここに例を示したように、例えば本校の育成したい生徒の資質・能力を入力すると各教科のキーワードが入った単元や指導事項が出てくるようなものがあれば、各教科の関連が図りやすくなり、より教科の壁を越えやすくなるのではないかと考えます。
最後に、付録についても簡単にだけ説明します。私は技術・家庭科の家庭分野を担当しておりますが、家庭分野の学習指導要領はかなり分かりやすくなっていると感じます。題材ごとに目指す生徒の姿や、見方・考え方も簡潔で生徒にそのまま伝えることができる言葉になっています。それを私は付箋に書き出して並び替え、構造化して自分なりに整理しています。
このような形です。足場かけや学習活動のヒントになるようなものも書かれているので、それを参考にゴールの姿を目指して構造化させていっています。それを生徒に単元マップとして共有しています。このようなものです。
以上で、山代中学校の取組と加賀市教育委員会の取組について発表を終わります。ありがとうございました。
【貞広主査】 ありがとうございました。ここまでの御発表の中でも、かなり具体的なサジェスチョンをいただいているところでございますが、最後の御発表になります。宮城県仙台第三高等学校より御発表をお願いいたします。
【宮城県仙台第三高等学校(石川)】 仙台第三高等学校校長の石川と申します。どうぞよろしくお願いいたします。では、画面共有させていただきます。
それでは、本日は貴重なお時間を頂戴しまして、本校の取組について御紹介する機会をいただき、誠にありがとうございます。拙い説明になるかと思いますが、どうぞよろしくお願いいたします。
まず、仙台第三高等学校ですけれども、地元では仙台三高と呼ばれていますが、仙台駅から北東に約4キロ、郊外の丘陵地帯にある学校で、鉄道地下鉄の駅からは離れていますが周囲は閑静な住宅地となっています。今年度、開校62年目という比較的新しい学校ですが、宮城県内で最初に設置された理数科があり、文部科学省のスーパーサイエンスハイスクール、SSH指定第3期、3年目となりました。SSHとしては、最初に指定された平成22年度から数えて途中の移行期間を含め15年になります。また、令和4年度にはユネスコスクールとして正式認定され、令和5年度からはリーディングDXスクールにも指定されています。
そうした本校における組織的な授業改善とカリキュラム開発について、初めにお話しします。まず、本校でよく見かける授業風景を御覧ください。こうした授業が数多く行われていますのは、本校の経営方針として「学習する組織、学習する学校」を目指してきたところが大きいと考えます。学ぶのは生徒ばかりでなく、教職員自身もともに学び続けることで学校全体をよりよく進化させていこうという学校文化が培われています。
本校では、SSH指定以前からアクティブ・ラーニングを目指すなど、授業改善の取組が行われておりましたが、SSH第2期に合わせて校内組織として授業づくりセンター(JDセンター)が創設され、全校体制で授業改善の取組が進められてきました。また、さらにコロナ禍の中で令和2年には図書ICT部が創設され、ICTを積極的に活用したインタラクティブ型授業、双方向型の授業にも取り組んでまいりました。
本校における授業改善は、このJDセンターを中心として組織的に進められています。全教員が言わば第2の校務分掌としてセンター内の各班に所属することとなります。その中で、学校設定科目の教育プログラム開発をSTEAM教育研究班が担い、共通教科、科目における先進的なプログラム開発は授業研究・開発班が担います。また、連携企画・国際班が国際交流プログラムを担当したり、校内研修担当班が職員研修を担当したりしています。
その職員研修に関してですが、本校では毎月職員会議後に職員研修が実施されます。職員会議は働き方改革を意識して資料が電子化、一元化され、協議事項の審議に絞ることで30分程度で終了します。その後の空いた時間に定期的に職員研修を実施します。
こちらは昨年度の職員研修の内容です。教員の授業力向上に資する内容が中心となっています。さらに図書ICT部主管で教職員のニーズに合わせ随時開催される短時間の「ちょこっと研修」(ちょこ研)も効果を発揮しています。コロナ禍を経て日々進化する情報化の中、教育活動上のICT活用に関する疑問も次々に生まれるため、例えばAI対応や自動採点システム、ICTを使った生徒の課題提出方法まで、内容は多岐にわたっています。先生方は、それぞれの専門教科や担当業務を超えて教わったり教えたりしながら、ともに学び合い、自然に職員室などでも声がけしやすい雰囲気が醸成されています。
また、本校では生徒たちの探究活動も盛んで、その学習を支える重要な役割をホームページが担っています。ホームページの「知の博物館」には、先輩たちの課題研究、探究活動の成果がデータベース化されています。先行事例を自分で学ぶことができるので、研究を引き継いだ、より高いレベルの探究活動が実践できますし、先生方の授業改善にもつながります。なお、ホームページには課題研究実施上のノウハウや学校設定科目の授業実践事例なども公開されております。
こうした校内体制を土台として、本校においてはSSHとして新たな価値を創造し、持続可能な社会を協創する科学人材を育成するため、3つのステップを意識しながら三高型STEAM教育の開発、実践を行っています。
そのステップの1つ目は、多角的に情報を収集し、議論することで、現状を把握すること、2つ目は、情報を分析し仮説を立てることで目標を設定すること、そして最後の3つ目が、仮説を検証し、発信することで課題解決に向かうというものです。そのプロセスを意識しながら、探究活動と関連付けた共同学習やインタラクティブ型学習などで具体的に様々な授業を展開しています。
こちらは三高型STEAM教育の概略図です。S、科学、T、技術、E、工学、A、リベラルアーツ、M、数学のところにそれぞれ示した教科融合科目の開発は、本校の科学的な探究活動全般に生かすことを大きな目的としており、そのほかの科目の授業においても全教員が探究活動を意識して授業構成を考えております。
さて、こちらは今回の中央教育審議会諮問「初等中等教育における教育課程の基準等の在り方について」の資料からの抜粋ですが、この資料で指摘されている顕在化している課題を基に、今後必要とされる生徒の資質・能力や教育の在り方を下の1から7にまとめてみました。この1から7との関連性も示しながら、本校の授業実践例を御紹介します。
最初に、国語の遠隔合同型授業の実践例を御紹介いたします。本校は京都立命館宇治高校と遠隔合同型授業を行っており、文化の異なる地域の高校生と意見交換をして自分の考えを深めながら和歌を創作する授業などを行っています。昨年度は本校普通科の1年生と2年生で、それぞれ2クラスが遠隔合同授業を行いました。この授業は、交流活動を含め7時間で実施されます。歌枕の概要の解説後、事前に調べたお互いの地域の文化、食、歴史などに関する紹介をしたり、震災について話したりします。
次に、両校の生徒はグループで自分の地域の歌枕を選定していきます。歌枕の選定の際には、インターネットや図書館などを利用して調べながら多様な和歌が創作できるよう、技巧なども考慮して地域の特徴となる歴史、文化、季節感のある行事などを選択していきます。
続いて、和歌作成になります。例えば三高生のある班は、京都から送られてきた歌枕の「西陣織」について歴史を調べ、添付された画像に込められた感情がどのようなものかを考えて、作品を構想しました。班のメンバーや京都の生徒の意見を参考にしたり、教員の支援を受けたりしながら自分なりに解釈した歌のテーマを決めます。そこから使いたい言葉や技法を用いながら個別に和歌を創作します。
ある生徒は、このような和歌を読みました。「鳴り響く西陣の声応仁に六百の時経てつむぎゆく今」。こちらは、この授業を受けた生徒の感想です。主体的に授業に取り組んだことが読み取れます。
こちらは、5件法アンケートによる単元後の調査結果となります。授業の重点項目とした地域文化に関心を持つこと、古典文化への興味関心を高めることができています。また、交流クラスと非交流クラスとでは有意差を認めることができました。
次に、社会科、正式には公民科ですが、その科目、公共の実践例を御紹介いたします。まず、本校では科目、公共をSTEAM ELSIと称してカリキュラムの開発実践をしています。将来、本校の卒業生が科学技術人材として知的フロンティアを開拓し、研究成果を社会実装したりイノベーションに結び付けたりするために、様々な科学的課題に関して倫理的、法的、社会的問題へも多角的にアプローチしながら深く考察する力を育てたいと考えています。
そこで、公共の内容である倫理、法律、政治分野を学習した後、後期の10月頃になりますが、こちらの単元により男性の子宮移植出産を多角的に考察する授業を実践しています。この授業では男性の出産といった生命倫理に関する課題に関して、まず染色体に関する生物とのコラボ授業を行います。そこで生物学的な基礎知識を身に付けたり、既習事項の確認をしたりします。
次に、出生前診断に関して、倫理的分野を中心とするEthical班、法的分野のLegal班、社会的問題を扱うSocial班に生徒たちは主体的に分かれ、個別学習と協働学習を組み合わせながら自分の考えをまとめたり、また、外部人材を活用したりしながら各分野のエキスパート役を目指します。
その後、ジグソー法やグーグルスプレッドシートを活用しながら各班の意見を参考にして知識を再構築し、再度自分の考えをまとめ、発表します。授業全体の生徒の積極的な取組状況や最終的な生徒のリフレクションシートにおいて、大きな学習の変容が見られることから、主体的な学びが実現したと考えています。
この授業を受けた生徒の感想です。多角的に物事を捉えることで深い学びを得るとともに、主体的に課題に取り組んだことが分かります。
次に、本校の学校設定科目、データサイエンスの実践例を御紹介します。このデータサイエンス、地域連携授業の単元はこのような時数配分になっています。まず1時間目、本校の卒業生を外部人材として活用し、地元の民間データ分析会社、地元百貨店の協力の下、大学の支援を受けながら実施しております。民間データ分析会社からデータサイエンスに関する講義と今回の授業のねらいを把握し、地元百貨店と連携し、入店客数を増やす方策をデータやグラフから仮説、検討し、グループで提案していきます。
具体的には、入店客数のデータと気象データの相関関係などを見える化することにより、傾向を分析して方策を検討します。ICTを活用しながら仮説、検討、分析を行い、入店客数を増やす方策を考案し、プレゼンテーションを行います。こうした体験を重ねることにより、情報活用能力や論理的思考能力が飛躍的に向上します。
また、生徒は既習のデータ分析に関する知識・技能を実社会での課題を解決するために用いることで社会参画意識を高め、社会貢献のために主体的に学習に取り組んでいきます。さらに情報活用能力を向上させながら、データ分析を下に根拠づけて説明する力を養うこともできています。
こうしたデータを利用した授業実践は、根拠づけや論理的思考の礎となり、本校で年2回、内外の高校生や教職員、研究者などを交えて開催される課題研究発表会に向けて劇的に課題研究の質を高めることとなります。そのほかの本校における授業事例も参考資料として添付しましたので、後ほど御覧いただければと思います。
続いて、本校のSTEAM教育の成果について説明します。本校では、授業だけでなく学校行事でもICTを活用することにより、1年生から2年生で情報活用能力を伸長させています。特に入学当初、自己評価の厳しかった理数科の生徒が2年間で多くのデータを活用した学習活動を経ることにより、全ての項目において大きく情報活用能力を伸ばしていることが分かります。
こちらは生徒の主体性の変容を表すグラフとなります。青い線は、校外で開催される探究学習発表会に参加した本校生の実人数の推移です。ここ数年、コロナの影響でオンライン発表機会が増えたことの影響はあるものの、生徒自ら申込みをしている実態を鑑みると主体性が向上していることが分かります。
次に、本校教員への学習指導に関する調査結果を御覧ください。ほとんどの教員が主体的に学ぶ力、協働力、根拠づけて説明する力を身に付けさせるような授業づくりをしているのが分かります。また、自由記述においては、教科等横断的な視点を大切にしている先生方もたくさんいます。
まとめとして、生徒の側ではICTを活用したインタラクティブな授業や協働学習に積極的に参加し、最終的に成績も上昇しています。また、教員側についてですが授業計画を立て、事前の打合せなどで指示事項、発問などをしっかり吟味しますので、授業改善につながります。また、教科ごとのチーム力が発揮されたことで教材研究の分担志向が生まれ、業務改善にもつながっています。
最後に、次期学習指導要領に期待することとしてお話しさせていただきます。本校の先生方に聞いたところ、現学習指導要領に対して「構成が非常に整っており、高く評価している」という声が多い状況でした。その上で「今後さらに活用される学習指導要領にするには」という観点から、先生方から出てきた点をマップに示しました。その主なところを説明します。
まず、学習項目と育成したい3観点の関連性を表で示されると、単元目標を作成するのに役立つということです。また、評価基準のAの例などが示されていると、例えばルーブリック等に転用できるとの声もありました。さらに、解説や実例が示されると手助けになりますし、二次元コードやリンクなどをつけてNITSの研修動画などと結び付くと活用が広がるというお話もありました。
次に、教科等横断的な教育課程編成についてです。本校におきましても、教科等横断の実例として単元配列表を使い、効果的に結び付けられる単元を把握し、授業を構成することが行われています。しかし単元配列表の縦串が多いと、再構成するときに複雑なカリキュラム調整が必要になり、その作業だけでも先生方は疲弊してしまいます。総合的な課題解決能力が注目される中、本校のように探究活動を軸とした教科等横断型の学校設定科目を開発、実践したり、評価を一体化させたりすることが有効と考えますので、そうした柔軟なカリキュラムの編成が可能になれば高校ならではの特色ある学校づくりがさらに充実できると考えます。
特に高等学校は義務教育の小中学校と異なり、学校ごとに生徒の実態ですとか、教育内容ですとか学校規模、スクールミッションなどが大きく違っています。加えて、公立と私立の違い、普通科と専門学科の違いのみならず、そもそも通学を前提とした全日制や定時制と通信制の違い、学年制や単位制の違いなど、一口に高校とまとめ切れないほど極めて多種多様です。
私自身、現在の高校に赴任する前は、まるで違うタイプの昼夜開講型定時制高校で校長を務め、教諭としても開校したばかりの多部制単位制高校や伝統的な職業学科を持つ高校など、様々な高校で働いてまいりました。その経験からも各高校の違い、在籍する生徒の違いに応じて、もっとフレキシブルにカリキュラム編成や授業づくりをできるようになることが望ましいと考えております。
そのためにも、目指すべき基本方針や押さえるべきポイントを大胆に絞り込んだ、新しい学習指導要領が生み出され、先生方が自分たちの自由裁量で主体的に授業づくりを楽しめる、そのような意欲的な取組がどんどん増えていくことを期待しております。
以上で私からの事例発表を終わります。ありがとうございました。
【貞広主査】 ありがとうございました。それぞれ大変貴重な御発表いただきまして、改めてお礼を申し上げます。
現在16時54分ですので、17時ちょうどまで休憩をとらせていただきたいと思います。休憩時間中、適宜、御発言内容など御検討いただければと思います。よろしくお願いいたします。
( 休憩 )
【貞広主査】 では、議事を再開いたしまして、質疑応答、意見交換の時間とさせていただきます。御質問や御意見のある方は、挙手ボタンを押していただければと思います。私から指名をさせていただきます。会場にいらっしゃる委員の方も、発言時はミュートを解除してお話しください。発言したい委員全員に御発言の機会があるように伏してお願い申し上げますが、御発言はお一方3分以内でおまとめいただければと思います。
それでは、前回御発言いただけなかった委員の方を優先的に指名させていただきたいと思います。植阪委員、どうぞ。
【植阪委員】 すみません、多くの方、飛ばして先に発言することになりました。申し訳ありません。大変興味深い御発表ありがとうございます。
前回とも絡めての発言なんですけれども、深い理解を実現するためには、授業中に深い理解ということに着目しながら頭を働かせることですとか、自分のつまずきに気づくメタ認知、それから自分のつまずきに気づいたならば、それを自ら補うように働く自己調整力といったものが必要になると思います。加賀の御実践でも見通しと振り返りということがかなり強調されていて、いいなと拝見して思った次第です。
海外では、自己調整であるとかメタ認知という言葉は学校の先生が当たり前のように使っている実態があり、前回の学習指導要領でかなり入ってきたんだと私自身は理解しております。今回、今日の資料の1-1の最後に、事務局がつけていただいているので、増えているってうれしくなったんですが、主体的に学ぶ評価ハンドブックを見ていただくと、主体的に学習に取り組む態度の評価のイメージの軸のところに、自らの学びを調整しようとする側面という言葉が入っています。かなり領域、横断的な力でもありますけれども、具体的な授業や家庭学習指導の中でも指導できるものとして個々に入っていると理解しています。
今、学習指導要領の中のそれぞれの教科でどういうふうに育んでいくのかは、実は必ずしも明示されていないことがあるような気がしていて、この辺りは実は課題なのかなと思っています。自己調整学習という言葉に対するイメージが共有されていないために、自己調整学習って自由進度ですよね、みたいな誤解が出たりとか、自己調整は自分自身が学習のPDCAを回していく力のことですから、確かに自由進度をやるときにももちろん大切なんですけれども、子供のつけるべき力としてイメージされていないのかなみたいなところもあったりして。どういう力を身に付けさせたいと国が考えているのかというのは、少し明示的に発信されたほうがいいんじゃないかなと思っています。
実は総則だけではなくて教科の事項としても、こういうことを落としていきながら具体化していくと身に付いていくんだよということを議論できたらいいんじゃないか。実は教科によって、どれくらい事項として入っていくかにはかなり温度差があることを学校現場の先生からも聞いています。ですので、この辺りを御検討いただければと思います。
多くの方に迷惑かけないように3分で終わりにしたいと思います。ありがとうございます。失礼しました。
【貞広主査】 御協力いただきましてありがとうございます。私の仕切りが悪くて、前回、溝上委員にも御意見を頂く時間を設けられませんでした。後ほど手を挙げていただければ優先的に御指名をさせていただきますので、お考えいただければと思います。よろしくお願いいたします。
では、順番に御指名申し上げます。戸ヶ﨑委員、どうぞ。
【戸ヶ﨑委員】 戸ヶ﨑です。御発表、本当にありがとうございました。それぞれの御発表に対して意見や質問もありますが、時間がなくなると思いますので、前回、意見できなかったことについて述べさせていただきます。
まず、学習指導要領の一層の構造化についてということで、前回事務局で示された資料1-1の8ページです。「中核的な概念や方略」を中心に一層の構造化を図る、表形式などを積極的に活用する、デジタル技術の活用を図る、の3つの方向性には大いに賛成いたします。その上で、広く関係者との議論の共有を図る観点から、ぜひ今後留意していただきたい点を3つ述べます。
一つは、教科研究と他領域との対話を重ねる工夫を、是非していただきたいということであります。前回、今井委員から御指摘のあった分数の意味理解をめぐる指導法は、それだけで厚みのある1冊の本になるほど、従来から算数・数学教育では昔から向き合ってきた課題でもあります。現行の学習指導要領はこうした教科教育で脈々と行ってきた指導内容や指導方法をめぐる研究の積み重ねの上にあります。したがって、心理学や特別支援教育の視点を交えて議論する中で、互いの研究の良さを生かして、力を結集させる必要があるのではないかなと思います。この辺は今後、教科のワーキングの構成や、議論の進め方を考える上で留意していただきたいと思っています。
2つ目ですけれども、現行の学習指導要領とのつながりを確認しながら、丁寧に議論を進めていくということであります。前回の方向性として御提案のあった「中核的な概念や方略」や、「表形式」というのは、現行の学習指導要領や解説の中でも一定の工夫がなされています。例えば中学校数学科の目標には、「数量や図形などについての基礎的な概念や原理・法則などを理解する」と書いてありますし、解説には数学科の内容構成が領域別に表形式で示されています。そのことが理解されていれば、前回の会議で石井委員から中学校数学科における「数と式」について、学習指導要領を表形式にする提案は間違いなく、腹落ちしたはずです。
一方で、数学が専門でない管理職や指導主事の率直な感想は、いま一つよく分からなかったという声もございました。また、外国の事例に違和感や不安を感じた教師もいたかもしれません。中核的な概念等による構造化は、日本の学習指導要領の文脈に沿ったものであって、難解なことを教師に要求するものでもなくて、現行の学習指導要領が目指すところをよりよく可視化して、具現化する色合いが強いことを改めてしっかりと整理していくべきと思っています。現行の学習指導要領を常に手元に置いて、それがこんな形でバージョンアップしていくということを丁寧に議論する必要があると思っています。
3点目に、これは前回も指摘させていただきましたが、主要な概念を絞り込んで学習指導要領を構造化することでどんな効果があるのかという風景画を示していくことが大事だと思います。すなわち学習指導要領が変わることで、どんな教材が教科書に掲載されて、どのような授業展開が可能となって、子供たちにどんな力がつくのかという、おおよそのイメージを共有していくことが大切です。
とかく資質・能力の議論は、大事なことですが空中戦になりがちで、先にある授業のイメージがつかみにくくなります。教師というのはセルモーターの動きは良くないかもしれませんが、動き出すと大変強いエンジン力を発揮していくと思っています。教師は子供たちの成長につながる見通しが持てると俄然やる気が出てくるのではないでしょうか。
そういう意味では、この事務局案の資料1-1の7ページにある「資質・能力から出発する授業づくりのイメージ図」は大変良い発想だと思っています。
また、今の教科書でも教科の主要な概念に着目したグッドプラクティスたる教材というのは、あまたあります。ぜひこれらを具体的にイメージしながら、「現場の教師の目に見える議論」をお願いしたいと思っています。
実は、現行の指導要領の改訂を提言した平成28年の答申では、学習指導要領が資質・能力や学校教育における学校の全体像を分かりやすく見渡せる「学びの地図」という役割を果たすことへの期待が示さましたが、その後、あまり言及されることはなかったのが残念です。この3つの改訂の方向性である構造化、表形式化、デジタル化を一体的に捉えれば、まさに今回、新たな学びの地図の作成に挑んでいると言えるのかなと思っています。
その役割は、教師を迷わせずに次期学習指導要領の世界を歩き回れるようにすることはもちろん、そこにとどまらずに教師が学びへの思いや願いを持って学びの地図を見て、自立的に独り歩きして学びを形にできるようにすることでもあるのではないかと思っています。次期学習指導要領にはそういうような役割も期待いたします。
【貞広主査】 ありがとうございます。
では続きまして、神野委員、お願いいたします。
【神野委員】 よろしくお願いします。まず、堀田先生のおっしゃられていた、学習指導要領、デジタルで実現するために最終ページにもありました学習指導要領コードをより細かくするというお話なんですけれども、非常に重要な観点だなと思いながら、なかなか、この学習指導要領を細かくしてコード化していくことが非常に難しいんじゃないかなと。さらに、それを教科書会社同士に相互乗換えできるようなシステムにしていくものに対するハードルがすごくあるなと感じました。
もちろんこれ、実現できたら最高なので、実現の方法をみんなで検討していくべきだとは思いますが、教科書会社ごとに仮にコードをつくってしまうとすると、あまたある教科書会社ごとに作ったコードをどう相関させるのかということを全部考えていかなければいけませんから、それができるのかという話。もしくは逆に国が全て主導して、そのコードの細かい学習指導要領をつくることができるのか、その両面ともすごく難しいなと思ったので、ここをどのように乗り越えていくのかというのは非常に大きな課題になるだろうと思いました。
一方、それが逆に実現できて、いろんな一つ一つの細かな学習指導要領コードでのフリックガイドが図れたときに、恐らく我々が直面する世界というものは、多くの子供たちが、いろんな概念を理解できていないことを可視化される世界だと思うんですよ。その際に、私たちは理解できていない子供たちを放置しながら、そのまま学習を進めていく学習進度について問われると思うんですね。それについてもこの学習指導要領コードと、それが実現できた世界の中で我々は考えなければいけないんじゃないかなと思いました。
2点目に、皆さんがこの学習指導要領、非常に難解で、ずれてしまうとか、読み込むのが難しいというお話されていました。本当にそのとおりだなと思いながら、私も今日いろいろな発表を伺う中で、資料1-5の21ページや資料1-4の34ページのところに、主体的に学習に取り組む姿があった、主体的に学ぶ力があったという中での、それぞれの学生、生徒たちの声なんていうのが掲げられておりますけれども。私にとってのこの主体性というものは、主体性、スペース、自主性、スペース、違いとかってグーグルで調べてみると、主体性というものは自らがやる、やらないを自己決定する、そういう主体となる素質。そして自主性というものは他人が決めたことを自ら率先してやる力。こういうものが違いとして出てくると思いますが、この現状、書いてある生徒の姿から、これは自主的に行ったのか、主体的に行ったのか、私は分からなかったんですね。
そういった意味では、これほど学習指導要領を読み込まれた方にとっても、その点からのずれが出てしまう可能性があるんじゃないかとは感じたところであります。そういった意味で、実は学習指導要領コードの話もこちらの話もそうですが、具体に入っていくと非常に難しくなることが挙げられると思いますので、前回私が申し上げたような一方的な宿題の禁止くらいなものでもって、そこまで言うんだとしたら主体性というのは、こういう意味なんじゃないかというところを考えられるような学習指導要領も必要なのかもしれないと思いました。
【貞広主査】 ありがとうございます。今、堀田委員の御発表に対する問いかけのようなものも御意見の中にありましたけれども、恐らくまた別の御意見も出てくるかと思いますので、一問一答というよりも、まとめてお返しするような形をとりたいと思います。ありがとうございます。
では、続きまして田村委員、お願いいたします。
【田村委員】 ありがとうございます。本日3つの実践発表は、授業づくりの本質に迫られている、そういう実践だったと、すごく感謝しながら聞きました。どちらの学校様も先生方が一番大切にされているのは、子供たちの具体的な姿で語っていらっしゃることだと思います。
その具体的な姿というのはいろいろなところであるわけなんですが、まずは子供たちの今の実態をちゃんと把握する、そして、この単元で何を目指すのかという、そこの子供たちの具体の姿をしっかりイメージされている、そして学びの過程でつまずく子供もいるし、いろいろな特性のある子供もいる、その子供たちに合わせて手だてを選んでいったり、変えていったりすることをデザインしていらっしゃるわけです。
つまり何が言いたいかといいますと、子供たちがどんな姿になっていれば、この授業、単元は成功なのか、ということを先生方が具体的にイメージし、しっかりと構想できることがとても大事なことだと考えています。
今日は単元レベルのお話が多かったんですけど、それと同時にカリキュラムレベルにも通じています。カリキュラムというのは単元レベル、あるいは個々の授業を支えるための、もっと長いスパン、そして広い範囲を見渡した、そういうものなんですけれども、そこでも同じですよね。子供たちの実態をしっかり踏まえて、そして学校を卒業させるときにどういう姿を目指すのかと、そういったことを先生方がしっかり語るところが大切だと考えています。私は学校などを支援させていただくときには、そこを徹底的にこだわります。そして単元の終わり、あるいは学年の終わりにはどういう姿になったんだ、そして、その途中でどういう姿が見られたのかということを先生方にしっかりと言語化していただくことをしています。
そういうことを踏まえた上で、2点まず申し上げます。一つは、目標や内容の記述なんですが、形式としては前回石井議員が発表されたような形でいいかと思うんですけれども、そこから先生方が単元の終わったときに子供たちがどういう姿になっていたらいいんだろう、あるいは教科を学んでいく中で、どういう姿になっていったらいいんだろうということをしっかり考えられるような学習指導要領の記述になること。
それからもう一つは、カリキュラム・マネジメントの現在の指導要領の記述について、そこのところは一応書いてあるんです。実態を踏まえてとか、目的、目標の実現を目指してと一応書いてあるんですが、ここが直接的にいきなり教科横断につながってしまっているんです。ですので、今の記述だと、教科等を横断することだけがカリキュラム・マネジメントかというように見えてしまう、そこのところの書きぶりは、カリキュラム・マネジメントについては考えられるんじゃないかなと思います。
それからカリキュラム・マネジメント、本当に大変だと思います。縦横、見渡さないといけませんので。そこで、例えば学習指導要領に別表として系統が見られるとか、あるいは横のつながりが見えるようなものがどこかの層で別表として、一つに何もかも書き込むと読みにくくなると思うので、付録的な形であるのはどうかなというのが提案でございます。
以上です。ありがとうございました。
【貞広主査】 まさにカリキュラム・マネジメントは田村委員の御専門でいらっしゃいますので、御専門の立場から具体的な御提案もいただきましてありがとうございます。
では、小見委員、どうぞ。
【小見委員】 貴重な御発表ありがとうございます。NPO法人みらいずworksの小見まいこです。
今回の論点である学習指導要領を構造化したり、デジタル化したりして分かりやすくすることは、今回御発表いただいた学校の先生だけでなく地域住民や保護者の理解も促すと考えています。学びは学校内で完結するものではなく、日常生活での実践を通して定着していきます。子供たちは学校で学んだ内容を家庭や地域、社会で体験し、身に付けた資質・能力や概念を生活に生かすことで学びの意義をより深く理解することができます。
例えば文科省によるコミュニティスクールと地域学校協働活動の一体的推進により、地域の住民が学習支援に参加する取組が増加しています。例えば丸つけの支援、放課後の学習支援等、地域住民が学習支援をすることで児童生徒の学習内容の理解が深まるとともに、地域住民の声がけにより学習意欲が高まるといった姿もあらわれています。
また、コミュニティスクールの学校運営協議会委員とともに教育課程の検討や振り返りをしている学校においては、地域住民ならではの発想やアイデアにより学びの実践に必要な地域での情報が加わるとともに、地域住民も単元や授業のねらい、他教科との関連が分かることで地域住民自体の働き掛けや問い掛けの質が高まり、より効果的な教育活動に結び付いています。
こういった取組をより広げるとともに、より質を高めていくためには次期学習指導要領では教師はもちろん、保護者や地域住民が読んで理解しやすくすることが必要です。また、企業等の方々にも見ていただき、理解してもらうことで、子供たちの社会のトランジションも促進されると考えます。そのためには、先生以外の人が見ても分かりやすく平易な表現が求められていると考えます。
加えて堀田委員が示されたようにデジタル化することで、先生も先生以外の方もキーワードや学年検索などがしやすくなり、必要な情報にアクセスしやすくなりますので、ぜひ前回と今回示された方向性で検討を進めていただきたいと思いました。
以上です。
【貞広主査】 ありがとうございます。
では、溝上委員が手を挙げていらっしゃいますので、溝上委員、お願いできますでしょうか。
【溝上委員】 貞広先生、まだ時間がありますから今、挙げていらっしゃる方が終わった後ぐらいで私は結構です。大変すみません。ありがとうございます。
【貞広主査】 御配慮、心から感謝申し上げます。申し訳ありません。では、しっかり溝上委員まで届くように皆様、御協力をいただければと思います。
では石井委員、お願いいたします。
【石井委員】 発表ありがとうございました。それぞれ非常に聞き応えのあるもので。実は資料を読んでいますとちょっと心配なところがありまして。何だったかというと、何か学習指導要領とかのキーワードをちりばめたような感じの発表になるのかなと思って、その辺心配していたんですけれども、実践の本質をどう見るかということで言えば、もうそれぞれ聞いていただいた方は分かると思いますが、実践の具体が思い浮かび、そこに迫力が感じられるというものであったかと思います。
つまり主体的・対話的で深い学びとか、個別最適な学びという言葉よりも、その根っこの部分がちゃんと実現されていることが非常に重要だと感じました。つまりそれは何かというと、全ての子供たちに質の高い学びが保障される、そのために先生方が、単元でということでゴールを立てると。つまり、この物語の魅力ってどこみたいな形で大きめのゴールがあるからこそ、ゴールテープの切り方がたくさんいろいろになるわけですよね。逆に、そこの部分に向けてちゃんと足場かけをしていくと。
山代中学校さんも足場かけという言葉を使われたと思うんですけれども、何とか、この子らを底上げしていくんだという辺り、それを個別とか協働とか、この子らに合うやり方でということで、これは戸田市の取組の中でも、多層的な対応というところとも関係すると思うんですけれども、その辺、まさにこれは質と公正、あるいは包摂性、この辺をともに追求し質の追求で踏みとどまった実践が、仙台三高も含めて、それぞれ見られたかなと思っています。
包摂性を高める上では大きめのゴール、だから単元ということが、負担軽減も含めてですけれども必須になってくる。特にそこの辺は中高の実践において出されたと思います。そうすると、がちっと階段ではなくてプロジェクトじゃないですが、山の登り方、いろいろって形で緩くて深いという形になってくると。
そのときにポイントになるのは、どこら辺りに見当をつけるかという、そこの本質が見えやすい学習指導要領であることの必要性が共通に提起されたのではないかなと思います。特に高校においては多様性が前提ですから、なので、ざっくりとこの概念、関数だったら関数的見方ということでやっておけば、それこそもう高校で九九もしんどいとかという子もいる場合に、それでも関数的見方は獲得することができると、柔軟性を持たせることができるわけですよね。
ここが概念ベースということのポイントであるし、それは戸ヶ﨑先生も先ほどおっしゃったように新しいものではなくて、割と理科、数学においてはかなり実装されている。それに家庭科も分かりやすいって話もありましたね。体育、この前、言いましたけれども、改めて本質が捉えやすい、そういった学習指導要領にしていくと。
そうするのでいうと、先ほど例えば作品の魅力っていった場合に、作品の魅力を心情という観点から見ていくと、個別の風景描写から心情を捉える段階から、5年生とかであれば、個別の心情理解をつないで心情の変化っていったものを捉える。魅力の捉え方が玄人目線になっていくこと、同じように魅力を捉える活動をまとめる活動をしたときに、教師の見る目が違ってくるんですね。同じく魅力を捉えるというんだけども、単に個々の場面の心情だけを取り出してというんじゃなくて、心情の変化に注目するから見えてくる山場というのが見えやすいから、だから『大造じいさんとガン』という作品は、ここの段階で扱うんだということが分かった上で授業できるかどうかというのが大事になってくる。
前回この概念とかというとね、メタとかいうと割と難しいように思われるんですが、もともとこれは若い先生方が育っていく、そのための基盤をどうつくっていくのかという話だと捉えたほうがいい。それで言うと先ほど堀田委員からありましたように、学習指導要領を使いやすいものにして、ふだん使いすることで結局、内容理解を積み上げていくようにすると、やり方では一過性になってしまいますから、5年後、10年後で若い先生が育っていくためには、3つの実践に共通したポイントですが、子供をしっかり見ると、それとともに内容の本質を捉えるからこそ、大きなゴールが立てられると。そのためのわかりやすくて使いやすい学習指導要領ですね。
ですので、見方・考え方っていったもので提起されたものを、もっとこの学習指導要領の中に実装する。例えば、見方・考え方ということでいえば、国語の見方・考え方、言葉にこだわるとは何かというと、ほかの言葉じゃ駄目なのかという、その問いを考えさえすれば全て言葉の学習になってくるわけです。だから歴史で言えば、なぜこのことが、このときに。そういうその学問を成り立たせる大きな問いってあるんですね。そういったものが例示されたりすると、どんなネタを使っていたとしても社会科の学習になるし、国語の学習になる。
そういうものが例示されるとともに、縦で系統性を見られると。先ほども批判的、ありましたね。国語でいうと批判的というのが3年生だったら付け加わると。そのときに解説まで見なきゃ学習指導要領の文言の意味が分からないというのが問題なんですね。ですから私、試案をつくったのも、あれは何かというと、要は解説の中にある構造を取り出して表にしようとしたというところなんです。ですから、解説と併せて見ていただきますと、実はもともとあるものだと見ていただけるかなと思います。
以上で終わらせていただきます。
【貞広主査】 ありがとうございます。
では続きまして、野口委員、お願いいたします。
【野口委員】 私も3分計って頑張ります。御発表ありがとうございました。
まず、堀田委員からご発表のあったデジタル化で分かりやすい学習指導要領について、特別支援教育の領域から御提案したいと思います。
皆さん御存じかと思いますが、特別支援教育の教育課程においては、特別の指導領域である自立活動という領域がございます。障害のある子供が自分に必要な合理的配慮を知ったりですとか、自己理解を深めたり、また、障害ごとの特性に応じた内容、例えば視覚障害だったら点字や歩行訓練ですね。通常の教育課程では学べない個々のニーズに応じた領域。また、そのほかにも知的障害のある子供に関しては、知的障害のある子供用の教科の内容というのがあります。
障害のある子供についてはこれらの内容を含む特別の教育課程を通常の学校の特別支援学級や通級においても、編成することができます。一方で、今は特別支援学校の学習指導要領を見ないとその編成が難しいという、そのために使う先生にとっては両方の学習指導要領を見なければならずに非常にアクセスしづらい状況があります。
デジタル化をすることによって通常の学習指導要領と特別支援学校の学習指導要領の連続性がより分かりやすくなるのではないのかなと思いますし、その連続性をより分かりやすい形でデジタル化をしていけると、非常にありがたいなと思った次第です。
次は、皆さんの実践発表、すばらしい御発表ありがとうございました。前回少し御紹介しましたがインクルーシブ教育を実現する上では、多層型支援システムにおける第1層支援、つまり初めから支援が必要な子、不要な子と分けるのではなくて、そもそも最初から多様な子供がいることを前提とした授業づくりをしていくことが非常に重要になってきます。今回、戸田南小学校さんも加賀市さんも、本当にこの全体に対する第1層支援というのが充実されているなと思いました。
例えば音声入力の使用など表現方法の多様な選択肢ですとか、イラストを使用するなど提示の仕方、情報の提示方法というのが多様だったりとか、学びのユニバーサルデザインに基づく授業づくりがなされているかと思います。今もう既にされている先生もいらっしゃると思うんですが、最初からどの先生も、どの学校でも、どの学級でもこういう授業づくり、多様な子供がいることを前提として選択肢がある授業づくりをしていただく、そういう環境を整えていく必要があるなと思いました。
かつ、その結果、子供たちが本当に学んでほしい内容にアクセスできたかどうかということを確認していくことが改めて大切かなと思います。加賀市の中村先生の発表の中に「個の学びに焦点を当てる」、「多様な子供にとって分かりやすい授業になった」と御発言がありましたが、これは特別支援教育の中で培われてきた専門性でもあります。要は個々を見て、その個々にあった指導の目標を設定して方法を設定していくという、そういったことを既に特別支援教育の中ではずっとされてきたことですので、改めて特別支援教育の専門性ということを通常の学級にも広げていくことが重要だと感じました。
まさに、柔軟な教育課程を編成する上での課題というのも特別支援教育はたくさん経験しているので、そういったことも含めて先ほど戸ヶ﨑委員からもありましたが、特別支援教育と教科教育とを別物として考えるのではなくて、今回一緒にこの知恵を結集して教育課程を考えていく必要があると思います。
以上です。
【貞広主査】 ありがとうございます。御協力をいただきましてありがとうございます。
では、次に松原委員、どうぞ。
【松原委員】 ありがとうございます。今日、学習指導要領の趣旨を日々の授業づくりに生かそうとする真摯な姿勢を伺いまして、授業づくりは本来、教員にとって創造的で非常にやりがいのある活動ということを再認識いたしました。ありがとうございました。
その中で、私も単元というのをキーワードで捉えたんですが、ともすると単元というのは教科書でもう与えられてしまっていると意識してしまうところがあるんですけれども、本来であれば教員がデザインをする、また、それを子供たちと共有する、それが単元なのかなと思います。それが実現すれば子供たちの学びも変わっていくと思いますし、そのためには分かりやすい学習指導要領であったり、教員にとってまとまった時間が必要なのかなと思いました。
前回と今回の発表を伺って、学習指導要領を一層重点化、構造化していくとか、デジタルを活用していく方向性は基本的にはいいのだろうと捉えておりますけれども、3点だけ少しお話をさせていただきます。
1点目は学習指導要領コードについてなんですけれども、私は大変興味深く聞いておりました。ただ、一気にこれを完成させようとするとかなりハードルは高いのかなと思います。教科書や教材へと対応を広げていったときに、恐らく一対一対応だけではなくて、一対複数とか、複数対一とか、複数対複数みたいな、そういうのもかなり出てくると思います。いい取組だと思いますので、何段階かに分けて実現していくようなことも必要なのかなと思いました。
2点目は今回、学習指導要領の海外のサイトであるとか、前回、海外の構造化の議論というものをお伺いして大変興味深く聞いたんですが、もう既に先行して取り組んでいるということですので、何か課題のようなものは出てきていないのか、今日でなくてもいいんですけれども、もしそういった小さなことでも課題があるようでしたらお聞きしておきたいと思いました。
最後に3点目ですけれども、学習指導要領が使いやすくなったとしても小学校の場合、特に複数の教科を日々やっておりますので、日々の授業の中では当然、教科書や指導書も現場では活用されていくと思います。学習指導要領から教科書、教師用指導書、教材群と往還が自在にできるようになることは大切だと思いますし、全国学力・学習状況調査、ああいったようなものも、その中に今後組み込まれていくのかなと感じました。
以上です。
【貞広主査】 ありがとうございます。今、委員から御意見のありました海外の先行事例の課題につきましては、次回以降、もし情報がありましたら皆様にお伝えいただければと思います。よろしくお願いいたします。
では次、今村委員、どうぞ。
【今村委員】 質疑応答ということなので、せっかくなので、おいでいただいているプレゼンテーションしていただいた皆さんに御質問させていただきたいなと思います。
山代中の先生にお聞きしたいんですけれども、山代中学校、私の認識では非常に一時期は教育困難校と言われた時代も、こういう言い方していいのか分からないんですけれども、大変指導が難しい方もたくさんいらっしゃったと認識しているんですけれども、一方、そうであったとしても中学校は高校受験があるから、なかなか授業を変えることが難しいこともあって、長らくそこを変えてくることができなかった中で、今回このような授業の実践をすることで子供たちが変わってきたという、そういう手応えがあるか。その資質・能力との関連した手応えがあるかというところを、ここをお聞きしたいのが1点目で。
2つ目は、これはほかの皆さんにも聞きたいんですけれども、先ほどの堀田委員のプレゼンテーションや事務局からのプレゼンテーションどおり、どんどん学習指導要領コードがきちっとした整備がされて、それがデジタル教科書と教材を紐づけることができたという未来に立ったら、きっとそのときには10年に1回の学習指導要領の検討というやり方ではなくて、むしろ、時代を捉えて数年に1回、この議論をして、教科書だってデジタルなので変更可能なものになっていく意味合いにしなければ、このAIの開発が激しい時代に対応できないんじゃないかということを想定しています。
特に自立型AIが登場してきている時代に差しかかっていて、もうAIが物事を検索して、AIがコードを書いて、AIがAIを動かす時代になることを見据えたときに、5年後はそうなっているかもしれないといったときに、教科書はどうなっているんだろうということが不安な中、私たちには想像が今、及ばないということは、公正性のある学習指導要領ではないと、もう時代の変化に応えられる学校じゃないということになるんじゃないかと。
ただ、そのときに先生方にお聞きしたいんですけれども、そんな更新性のある検討をされたら、現場ではそんな毎年行われる変更みたいなものに対応できないものなのか、変更し得るのか、その辺り、何が実現すれば指導要領の工夫なのか分かりませんけど、そういう更新性のある指導要領や教科書の配備みたいなことが現場に落ちるのか、ここについて御意見頂きたいなと思いました。
以上です。
【貞広主査】 ありがとうございます。先ほど神野委員のところでも申し上げましたけれども、今、御質問も含めて委員の皆様に御意見を頂いた後に、まとめてそれぞれの御発表者にお返ししたいと思いますので、今しばらくお待ちいただければと思います。ありがとうございます。
では続きまして、前川委員お願いいたします。
【前川委員】 今日はすばらしい発表を聞かせていただいてありがとうございます。デジタル技術の活用も含めて、この委員会の議論のテーマである3つの方向性というのは、資質・能力ベースの授業づくりの実現を図る上で良い意味で非常に大きな改革だと思います。前回も申し上げたんですが、その必要性や意義を様々な角度からさらに浮き彫りにして学校現場の理解につなげていく必要があることを申し上げましたが、そういった意味で、今日の3校の発表というのは非常に具体的なイメージを持つことができました。
特に、授業づくりのために学習指導要領がどう活用されるべきかというところの理解が進んだと思いますし、傍聴されている現場の先生方にとっても非常に分かりやすかったのではないかなと思います。
学習指導要領の構造化ですけども、新たな難解な手法とか考え方を取り込むのではなく、むしろ現行の学習指導要領が目指すものを教師が実現しやすくなるように可視化、明確化するものであるべきと思います。そういった意味で、戸田南小学校の佐藤先生もおっしゃいましたし、戸ヶ﨑委員もおっしゃいましたけども、平成28年度答申の学習指導要領は学びの地図であるという役割を果たす、こういう捉え方は非常に重要だと感じました。
地図ってどんなものかと考えますと、目的地に対して最短の一つのルートだけを示しているわけではなくて、山や谷や川や海がある中から、地図を利用する人が現在地から最適なルートを考える基となるものだと思います。教師は目の前の児童生徒に対して、最適と思える工夫や仕掛けで授業を行うわけですが、そのためには教科や単元の目標をしっかりと捉えた上で、各時間において児童生徒の理解や反応といった授業の展開に的確に対応できるように準備をします。そのための地図になるように、次期学習指導要領が新しい学びの地図となることを期待申し上げます。
以上です。
【貞広主査】 ありがとうございます。それぞれの御発表に共通して、教師にとっては、学習指導は授業づくりの羅針盤なんだけれども、子供にとっては学びの地図だという、その言葉自体を使わなくても同じことを共通しておっしゃっていたように私も伺いました。だからこそ、なおのこと、分かりやすく使いやすいことが必要なんだということだと思います。ありがとうございます。
では続きまして、山本委員、その後、澤田委員に御指名申し上げます。山本委員、どうぞ。
【山本委員】 ありがとうございます。今日いろいろ御提案いただいて、特に堀田先生が御提案されたコードで、学習指導要領、教科書、教材を往還していける世界観で授業をつくると。すごくわくわくする取組だなと思っているんですけれども、さらにそれに加えて実際、授業を学校でやるとなったときには子供たちのデータ的な特徴、学年や学級のみならず個々の児童生徒の状況を踏まえて深めていくことが、質の高い、深い学びを実現することにつながると考えております。
そういった意味で2点ほどお話、今日できればと思うんですが、1つ目は、一層の構造化ということを考えていく上で、教科の本質が明らかになる構造化というものが必要かなと考えております。参考資料1-4の1ページは、横浜市で令和4年から取り組んでいるIRT型の学力状況調査のものなんですけれども、仕組みについては、たくさんの問題に困難度をつけていくので経年で子供たちの伸びが分かるようなものを出しています。
2ページでは2021年と2022年を比較し、約7割程度の児童生徒が学力の伸びを示していまして、逆に約3割程度の児童生徒が同等、または学力の伸びが見られずに伸び悩んでいることが分かります。また、学年が上がるにつれて学力レベルも上がっていることも分かるかと思います。
そして3ページですけれども、こちらは国語と数学の比較をしたものですけれども、学力レベルで比較すると、実は数学のほうが、分布の範囲が広くなっていることが分かります。私たち、今まで経験や勘で算数は積み重ねの強化と言ってきたところですけれども、実際に概念をしっかり積み上げていく、それぞれの段階で育む概念を意識して指導していくことが実は大事で、そうした見方・考え方が系統的に分かるような構造にしていくことが求められているなということが分かるんじゃないかと思っています。
そうした上で構造化をしていく際には、このようなエビデンスに基づいた分析の基で分かりやすい構造化といったものが求められるかと考えています。それが1つ目です。
2点目ですが、2点目は授業づくりのプロセスを意識した構造化ということで、本日いろいろ御提案があったんですけれども、実際の身に付けたい資質・能力や単元のねらい、教材の特性に加えて、教師は児童生徒の実態を掛け合わせて単元構成や展開を柔軟に工夫していく必要があると思うんですが、なかなかこの辺りのところが、学校の先生方にメッセージとして伝わってないんじゃないかと思われるところが感じられます。学習指導要領の中でも、学調の結果や子供たちの実態を加味した表現といったものができないかということを提案できればと思っています。
具体的には、今までは紙での印刷でしたので白黒だったわけですけども、デジタル化ということであれば、色分けをすることで習熟が難しい単元や内容を赤字で示すなど、この学習指導要領のねらいと学習の結果を一体化して表現することも可能かなと考えております。つまずきやすい内容や概念については、先生方がまさに話し合って取り組んでいるところなので、こうした好事例をしっかりと学習指導要領の中でも示していくことが、指導と評価の一体化の加速にもつながるんじゃないかと考えております。
以上です。
【貞広主査】 ありがとうございます。学習指導要領の改訂だけではなくて、実務でも精度の高いデータとの連動の重要性を御指摘いただきましてありがとうございます。
では続きまして澤田委員、どうぞ。
【澤田委員】 今日は遅れて到着、そして早く出ていくということで大変申し訳ありません。先生の幸せ研究所の澤田です。御発表が聞けていないので、資料を拝見した限りではあるのですがお伝えさせていただきます。
まず、堀田先生、充実の資料を本当にありがとうございます。忙しい学校現場にとっては、学習指導要領へのアクセスのしやすさがあるといいなと思っています。分厚い中から探すのも一苦労だという声もよく聞きますので、特に小学校は教科担任制の場合だとしても複数教科、担任、指導していることも多くてなおさらです。ですので、先生方がふだん使っている教師用指導書などからワンクリックで指導要領とか、解説の内容が参照できるような仕掛けづくりというのは大変有効だと思いました。
忙しい中でも学習指導要領に目を通した先生たちからよく聞くのは、何が大切か分かったとか、案外、押さえどころはシンプルだと気付いたとかということがありますので、学習指導要領が身近になることは先生の準備から実践までが本質を捉えて効率的、効果的なものになる助けとなり得ると思います。
もし一つ視点を付け加えるとすれば、最近は越境の効果がよく知られるようになって、自治体を越えて学校間で交流するような学びを深める地域も出てきています。今後は先生たちが学校や自治体を飛び越えて交流して実践を共有して、高め合っていくような取組が増えることが見込まれますし、それを期待したいところです。
その際に教科書ですと、各自治体で採択されているものが違います。同じ目線で話すためには、学習指導要領の、ここのことなんだけどというコミュニケーションが自然になっていくのがいいのかなと思っています。
ただ、そのために現状ですと、例えば国語の2の(1)の(イ)なんだけど、みたいなことで分かりにくくて、学習指導要領コードを使おうにも16桁の数字というのはなかなか利用されにくいかなと思います。先生たちがふだんから実践の共有に使いやすいレベルのコードにするのであれば、短く、例えば長くても7、8桁とか、あるいは、また数字だけでは、いけないこともないかなと思います。
御紹介のあったオーストラリアのコードだと9桁で、そのうち3桁は年度を示しているので実質6桁で表現されていました。学習指導要領のコードの利用が低調ということであれば、あえて、それを逆手にとって、より使いやすいコードへ振り直していくことも考えてはどうかなと思います。
次に、学校の発表資料、拝見してお伝えしたいことです。先生方、すばらしい御発表を本当にありがとうございました。どんな学校でもこんな深化を図っていければと思う一方で、ここに至るまでの大変さを想像すると本当に果てしない思いがあります。先生たち自身の十分な準備だとか学びの時間ができるように、第1回でもお伝えしましたが、子供と離れた時間というのを勤務時間内に捻出していくことは不可欠だなと思います。
これについては、私のこれまでの全国の学校への働き方改革支援の中で効果が高かったものとして、日課の見直しが、本当に効果が高いです。現行制度の下でも、小学校であれば6コマの授業がある日であっても15時に下校は可能ですし、中学校は部活を含めても4時半に完全下校を実現しているような学校もあります。
今後は教育実践の深化のための余白づくりに向けて、どのような教育課程の編成上の工夫があるのか、現行でもできること、現行ではできないことというのを整理して議論していくことが必要だと考えています。
以上です。ありがとうございます。
【貞広主査】 ありがとうございます。
では、お待たせいたしました。溝上委員、お願いいたします。
【溝上委員】 貞広先生、どうも御配慮ありがとうございます。いろいろなポイントが出されておりますけれども、私が特に今日、発言で関心を持っているのは先生たちが使える学習指導要領にしていくこと、それから中核的概念等を統合して構造化していく指導要領と、こういうことで現行の学習指導要領をしっかり定着させて充実させていくと、このラインで考えられていることは、私はとてもいいと思っています。そして学術的にも実践をより高度に発展させていくにも、現行の指導要領を踏まえた上での考え方ということで、私はそこはとても理解して納得しています。
その上で、言っておかないと、委員として発言しておかないとよりよいものにならないので、考えを述べますけれども、結局のところ、教科書を多分減らしていく、あるいは分厚さを縮小していくことを考えていくんだと思うんですけれども、それをless is moreと、前回の席で石井委員、おっしゃったと思います。
ただ、本当にless is moreが実現されるためには、教師の概念的な指導力というのがしっかり研修等で育てられないとなかなかできないと思います。今日、堀田委員の教育のデジタル化ですね。学習指導要領コードもそうですし、デジタル教科書も今、併用と言っていますけれども併用にしても使っていくわけで、そしてデジタル学習基盤でICTの検索や、関連付けの機能を駆使していくわけですから、扱われる情報量はすさまじく増えますね。
だから教科書の分量は減るかもしれないけれども、そしてless is moreとして概念ベースにしていくかもしれないけれども、実際の子供の学びが扱う情報量はかなり増えるわけですね。増えると思います。デジタルってそういうものなんですね。私は、ここはむしろポジティブに捉えていますので、そういうことであれば考え方としてless is moreどころではなくて、more is moreでもちょっと甘くて、much more is moreではないかと。これが一つです。
もう一つは今の教師の授業力ということですけれども。本当に教師の概念的な指導力というのが備わっているのなら、今、教科書が仮に分厚くても何の問題もないはずなんですよ、本当は。それができないという前提で、この特別部会の議論、進んでいますよね。できるんですかね、本当に。
そのためには、今、澤田委員が違う観点でおっしゃいましたけれども、教材研究とか研修の客観的な時間を捻出して、それが指導要領のどこで、どう関連付けて示されるのか、いろいろ工夫がありますけれども、示す必要がある。これまでと同様、教師たるものみたいな、教材研究して研修することは当然みたいな前提でこの指導要領改訂による中核的な概念に基づく指導が進むということであっては、私は何か絵に描いた餅で終わるという危惧をいたします。
今日は戸田市が報告されて戸ヶ﨑先生もいらっしゃいますので、例えば、こういう戸田市の取組が全国普通にできるんだったら、私は多分この危惧はないと思うんですね。何かいろいろ、そういう工夫が委員会で、委員会というか市区町村でされているはずなので、そういったところもいろいろ御意見、実践的取組を伺いながら教師が実践力を上げていくところを指導要領にどう関連付けるかを、ぜひ今後の議題に絡めて審議をお願いしたいと思います。
以上です。ありがとうございます。
【貞広主査】 ありがとうございます。では、可能であれば佐藤先生か、戸ヶ﨑委員かにお答えいただきますけれども、後日ということもあろうかと思います。ありがとうございます。
では髙島委員、どうぞ。
【髙島委員】 芦屋市長の髙島です。よろしくお願いします。3回目で改めて思うのですが、今回の学習指導要領の改訂って史上初めて生成AIが普通にある時代における学校の在り方を考えるという改訂なのかなと思います。これって本当に難しいなと思っていて、みんな多分、不安だと思うのです。これは学校の先生もそうだし、保護者の方々もそうだし、子供たちも多分そうだし、地域も、多分ここにいるみんなも不安なのだと思います。「2030年の姿を想像してください」。いや、明日すら想像できないのに2030年って、もうどうなるんだろうって、この1月から始まって1か月の間も技術革新がある中で改めて感じています。
そのためにも、そこを考えているよというメッセージを出すことがとても大事なんじゃないかと思うんですね。という意味では、変わったことがちゃんと分かるかどうかというのは意外と大事なんじゃないかと思います。
何が言いたいかというと、デジタル化という話が出ていますが、見た目のインパクトって結構大事なんじゃないかと思うのです。本質的じゃないように聞こえるかもしれないのですが、きちんと読みたくなるものになるかどうか。もっと言うと、専門家が見たくなるじゃなくて、専門家じゃなくても一般人も見たいなと思えるものになるかどうかがとても大事だと思います。
例えば子供たちが読めるとか、保護者が見られるとか、あとは首長部局が理解できるかって結構大事だと思います。予算つけるのは首長部局なので、そこに伝わらなきゃ、なかなか予算もつかないと。あと、海外に住んでいる子たちも理解できるかって結構、大事かなと思うんですね。日本人学校に通っている子供たち、帰国が決まっている子たちって結構教科書を見て、いろいろ考えていると思うんですが、そういう子たちにも伝わるか。改めて言うと、一般の人が読みたくなるかどうか。これはデザイナー含めて専門家の力を借りてもいいと思うので、ぜひこだわっていただければなと思います。
不安というところでいうと、先ほど今村委員からもありましたが改訂が10年に1回で良いのかという点は真剣に議論しなきゃいけないと思います。本当にここまで時代の流れが速い時期はなかなかないと思うので、そこはぜひ考えるべきだと思っています。
そういう意味では、答えがない時代だからこそ、それぞれの自治体とか学校の先進的な取組を応援できるような学習指導要領にすべきだと思いますし、加賀市の発表にもあった「子供と教師の学びが相似形」という点は芦屋市でも本当に大事にしていることです。主体的・対話的で深い学びを子供たちがやる以前に先生がやっているか、学校がやっているか、教育委員会ができているか、もっと言うと、それを我々が応援できているかというところを改めて考えるべきなんじゃないかなと思います。
最後にもし時間があれば3校の方に聞きたいなと思うんですが、不安というものは、各々の自治体でも感じていると思うんですね。その不安に対して、自分たちが進んでいる方向がうまく応えられているという実感があるかどうか、その感触がもしあれば、ぜひ聞かせていただければ嬉しいです。ありがとうございます。
【貞広主査】 ありがとうございます。
では続きまして、青海委員、そしてその後、今井委員に御発言いただいて本日委員の方の御発言は終了させていただきたいと思います。大変申し訳ありません。
では青海委員、どうぞ。
【青海委員】 ありがとうございます。全日中の青海でございます。髙島委員の不安というお話ありましたけれども、不安ですけど、だからこそ、とても醍醐味を感じますね。堀田委員、それから御発表いただきました先生、事前の御準備、分かりやすい御発表ありがとうございました。先生方の工夫された実践、聞いていて子供たちの姿が目に浮かびました。とても良い取組ですね。
(1)の御発表をお聞きしまして、内容のまとまりごとに何を学ぶか、それから、つけたい力は何なのかと、幹になる部分は明確にベクトルの方向は同じだけど、手段や授業をデザインする方法というのは多様な筋道があるとすることは、授業をする側にとってとてもやりがいがありますし、子供たちにとっても面白い授業になるのではないかと思いました。また、教員の指導力向上にも間違いなくつながっていくと改めて感じました。
次に、堀田委員の御発表を伺いまして、前回の審議会でお話ししていただいた石井委員の、たしか資料の9ページと10ページだと思うのですけれども、構造化案ですね。あの表形式化は、これが大変有効な手段であるなと改めて感じました。また、コンピューターによる可読性を高める工夫というところで、検索でヒットした内容を抽出するとか、たぐり寄せ、それから木を見たり森を見たりなど、全体と一部を自由に容易に俯瞰できるなど利便性が驚異的に増すと思いました。デジタルの活用には課題も多々ありますけれども、お話しされた内容の様々な可能性が実現できれば、教員にとって分かりやすく、そして使いやすく、日常的に活用できる、どきどきするというか、わくわくするような学習指導要領が現実になるなと思いました。
以上です。
【貞広主査】 ありがとうございます。
では今井委員、お願いいたします。
【今井委員】 すいません、ありがとうございます。今日、非常にすばらしいプレゼンテーションを3校からいただきましてありがとうございます。私ね、このすばらしいプレゼンテーション聞きながら、先日、自分のところに来てほしいと連絡をくれた学校のことを想いました。実は私の住んでいるところのすぐ近くの学校だったのですが、学校はそのことを知らなくて、私の著書を読んでくださって、どうしても来てほしいようなリクエストがありました。だから本当に偶然なんですけれど、とっても近かったので訪問させていただきました。
そこの学校、ごくごく普通の公立の小学校で、何でその学校で先生や校長先生が熱心に私に来てくださいと言ったかというと、うち、こんなにすごいことやっているから見てくださいというのではないんです。私はとても心を打たれたんですけど、学習指導要領を読みながら学校中で一生懸命にどういうふうにしたらいいか考えています、でも、ずっと迷走していてどうしたらよいかわからないんです、と言われたんですね。
迷走を続けていて、そんなに悲壮な感じではないんですけれども、すごく学習指導要領が難しいから迷走するということではなく、それを実現するのが、これ、やってみたけどなかなかうまくいかない、だから別の方法をやってみてだけどうまくいかない、その繰り返しなんだ、とおっしゃっていて。
今日のプレゼンテーションをしてくださった学校も、今日すばらしい成果をお話しくださったんですけれど、多分そこに至るまでにはきっと様々な御苦労があったんだと思うんです。失敗もなさったんだと思います。そういう、こうやったらうまくいきました、だけではなくて、こういう迷走しています、ここ、どうしたらいいか分かりません、そういう声をもう少し拾い上げたらいいのかなと思いました。
私、その気持ち、学校の先生方のそういう気持ちはとっても大事だと思ったんですね。とにかく子供たちの学びに向けて何とかしたい。でも、すぐに目に見える成果、効果が見えない。あれもやる、これもやるって頑張ってみたけど。学校全体で学習指導要領を読み込んで、検討会、いつもやっているのに、なかなかうまくいかない。そういう学校の声をぜひ、こういうところでもヒアリングしてくださって、どうしたらいいのかということを話し合うことは一つ、とても大事なことなのではないかなと思いました。
時間も押しているので、今日のところはここで終わらせていただきます。
【貞広主査】 ありがとうございます。様々な試行錯誤をそれぞれの学校さん、されているということですので、今日御発表いただきました3校の方々も、その辺りを時間的な関係でつぶさにお話しいただくことはできないかと思いますけれども、少し教えていただければと思います。
時間過ぎているんですが、せっかく御報告もいただきましたし、それぞれ委員の方から御意見や御質問も頂いていますので、堀田委員と3校の御発表いただいた方々に少しコメントを頂きたいと思います。
堀田委員には、構造化というのが本当に実現できるのかどうかって、そのフィージビリティ、実装の可能性の見通しについて神野委員から御質問を頂いています。また、どなたということではありませんけれども、例えば山代中学校さんには子供たちが変わってきたというような手応えをお持ちなのかということや、戸田市に関しては市の独自の工夫にどんなことがあるのかというようなこと、また、それぞれの学校には10年に一度じゃなくて、もっと頻繁に微調整していくような学習指導要領というのが想定されたときに、現場での対応というのは可能なのかどうかということや、今、本当に試行錯誤されて教育活動される中で、きっとこの方向性でいいんだというような手応えがあるのかどうかという御質問を頂いています。全てにお答えいただくということではなく、お答えできるところについてコメント頂ければと思います。
ではまず、堀田委員からお願いいたします。
【堀田主査代理】 ありがとうございました。まず、髙島委員がおっしゃった見た目が変わることも大切だと、私は大変重要だと思います。ここは国がお金をかけるべきところだと私も感じております。
また、幾つかの先生方から、学習指導要領の連続性みたいなものが見やすくなるとか、自治体を超えた議論がしやすくなるんじゃないかとかいう御理解いただきまして、ありがとうございます。
松原委員がおっしゃった、一気に対応するのはハードルが高いというのはそのとおりで、どこからやるかというのは、これはかなり戦略的に考えていかないといけない。国民の理解を得ながらという部分もありますし、業界の準備もありますから、それはそのとおりだと思いますが、いずれにしてもどうせ一気にはできないと僕は思っています。そういう意味で、どこからやるかというのは非常に重要だと思います。
今村委員のおっしゃった、スピード感を持った提供を行うためにデジタルはかなり役に立つのではないかと思いますし、山本委員のおっしゃった実態の可視化も大事だというのはそのとおりだと思います。
メインは神野委員の、これ、本当にできるんですかということだと思うんですけど、極めて難しいと。学習指導要領コードが発表されて、そして文部科学省としては随分議論を進めてきて業界の協力も得ながら進めてきていますが、現実、今のところ、この程度ということですから、そういう意味では難しいと思います。
なので、もう少し制度的に踏み込まないとできないのではないかと思っています。それをもう少し各教科書会社のノウハウや教材会社のノウハウを公共的なところに持ってくるようなことをお願いする形が大事なのかなと思いますし、これは、ややもすると民業圧迫みたいなことになりかねないので慎重に議論する必要があると思います。
ただ、もう一つおっしゃった、学びきれていないことが可視化される世界についてですが、全ての子供の理解状況が全部いろんな人に見られちゃうのは、それは適切ではないわけですけど、自分の理解状況を本人が把握できるのは大事なことだし、教師には指導範囲の子供たちの状況を見るのは必要なことだと思いますし。例えば教科書会社、教材会社では自分のところの、どこの理解が十分でないかを把握することは教材の改善につながると思います。
私が言いたかったのは、要するに見やすく使いやすく、授業する先生が理解しやすいような学習指導要領をデジタルで提供しやすくできないかということであって、これはデジタルでさまざまな情報を管理しようとか、そういう話では全然ありません。子供から見て学びやすい環境を整えるためには教科書といろんなものが紐づいている必要があるし、先生にとって教えやすくするためには、学習指導要領と個々の教材の関係が木を見て森を見るようなと青海先生、おっしゃいましたけど、そういうような形がデジタルなら実現できるところがあるかと思いますし、ゆえに、ここにお金をかけるべきだという意見でございます。
以上です。
【貞広主査】 すみません、委員の皆様もそれぞれ、もっと応答したく、意見交換したいような場が温まっているようなところでございますけれども、今日は時間的な関係で大変申し訳ありませんがその点は御勘弁いただきまして、御発表いただいた学校にそれぞれ順番でコメント頂きたいと思います。
まず、戸田市立戸田南小学校の佐藤先生、お願いいたします。
【戸田市立戸田南小学校(佐藤)】 本日はありがとうございました。皆様のお答えになっているかは分からないのですが、3点について回答させていただきます。
まず、戸田市の取組ということで、特別なことは私もぱっと思いつかなかったのですが、当たり前のことの一歩先として、戸田市ではまず、市から「指導の重点・主な施策」という冊子が出ております。私たち教員が自分たちで授業の見直しができたり、アップデートができたりするようなものが毎年発行されているので、そちらで授業づくりをしているところだと思います。
また、市からデザインシートの活用ということで、授業づくりのフレームワークのようなものを出していただいているので、そちらを使うことで一から教師がつくり上げるのではなく、授業づくりを行っていく中で教員みんなが同じような授業をつくれるような手立てとしております。こちらは各学校で柔軟に対応できるような形になっているのかなと感じております。
2つ目の教科書のアップデートのお話についてなんですけれども、時代のニーズに合わせて身に付けたい資質・能力が変わることは必須です。私たち自身もアップデートすることはとても必要と感じております。実際に今でも学習指導要領は約10年に1度の改訂ですけれども、教科書は4年に1回改訂もあって、日々学び続けているところです。
ただ今回、期間のスパンが短くなるとなった場合に、一つ心配に思ったことがあります。特に小学校1年生の学びは6年生になったときのゴールを目指しての計画を立てていくと思うのですが、段階的指導がうまく行えるかという不安が思い浮かびました。ただ、時代のニーズに合わせてのアップデートは必須かなと思いますので、小学校生活最後を見通した変化であってほしいと感じております。
最後の進んでいる方向に不安があるかということですが、確かに私たちは、児童の実態を把握して見取りができているか、正しい見取りができているかという不安は常日頃、持ちながら授業しているところです。私の発表でもお伝えしたとおり、戸田市の「わかる調査」であったり、データベース、ダッシュボードなどだったりに成果が現れることで一つの安心材料となるかなと感じております。
以上です。ありがとうございました。
【貞広主査】 ありがとうございます。丁寧にお答えいただきまして、感謝申し上げます。
では、加賀市立山代中学校様、どなたがお答えくださいますでしょうか。
中村先生、ではお願いいたします。
【加賀市立山代中学校(中村)】 ありがとうございます。私からは、生徒の変容の質問に対してお答えさせていただきたいと思います。
生徒の変容についてなんですが、学習指導要領を読み込み、まとめ、単元マップであったりとか見通しを生徒と共有することによって、確実に生徒が自分で学ぶ目的であったりとか、意義をしっかり生徒が把握して主体的に学ぼうとする、学びに向かおうとする姿が確実に見えてきているなということを感じています。
島谷教育長から先ほどお話あったように、加賀市内の小学校、中学校でもそのような姿がたくさん見られてきているんではないかなと思います。そのように主体的になることによって、ほかの人の考えが気になって対話が生まれたり、より深い学びに入っていっているのを、本当にねらいとしている資質・能力に迫っていっているなというのをとても感じています。
そのような中で、学びに対して苦しい状況の生徒にとっても先生方が手立てを工夫したりとか、生徒の姿をしっかり見取って学び方を考えていく中で、本当に生徒たちにとっては自分なりの一歩を確実に踏み出そうとする生徒が明らかに増えてきています。それは今年度、研究主任が生徒の姿を見取るというのを校内研修会でもたくさん取り入れていって、校内の先生たちも、どういう手立てが効果的なのかというのを考えていく中で、本当に生徒たちの学びの姿というか、どの子にとっても一歩踏み出そうとする姿につながっていったのではないのかなと思います。それは本当に先生たちも授業において手応えを感じているので、生徒の変容がたくさん見られてきているのかなと感じています。
以上です。
【貞広主査】 ありがとうございます。もっと頻繁に改訂されちゃって大丈夫ですか問題はいかがでしょうか。
【加賀市立山代中学校(出藤)】 もっと頻繁に改訂ということなんですけど、僕はこれで10年ほど教員になってから経つんですけれども、10年前の指導要領が何となく分かってきて、やっとできるようになってきたかなというときに、また改訂があってという感覚が実はあって。更新性のある頻繁に改訂するってなると、何となく自分でつかんできた、これでいいのかなって感じてきたことが、また変わるとなると負担感はかなり大きいんじゃないかなというのが率直な感想です。
今現在の学習指導要領でいっても、頼っている先生方とか、これでいいんだろうかと感じている先生方もまだまだ多いかなというのは現状としてはあるんじゃないかなと感じています。
以上です。
【貞広主査】 ありがとうございます。どの程度の連続性が担保されるかということとも連動するかもしれませんけど、すみません、急に振ってしまって申し訳ありませんでした。
では続きまして、仙台第三高等学校の石川校長先生、お願いいたします。
【宮城県仙台第三高等学校(石川)】 高校でいいますと、私自身のこれまでの経験から考えて今の学習指導要領の改訂の話ですが、10年スパンというのは本当にいいのかどうかは分かりませんけれども、あまり頻繁に変わられると非常に混乱することは考えられるなと思っております。
特に10年スパンだからこそかもしれませんが、学習指導要領の改訂で大きく、教科、科目の構成まで変わることもあります。すると、そもそも入学段階で卒業までどういった科目を3年間だったら3年間に配置するかということから、一から考えていかなければならない。高校の場合、今の学習指導要領でようやく3年終わって、今度の卒業生が今の学習指導要領で進めてきた授業を受けてきた最初の卒業生なんです。昨年までの卒業生は、前の指導要領に応じた科目構成で授業を受けてきた生徒たちということになります。ですから、これが例えば3年ごとに変わるとなりますと、その改訂の中身のレベルにもよりますけれども、そもそも、それの指導に当たる教員の側で相当消化不良を起こしてしまいかねないところがあります。
ただ、様々な時代の要請等に応じた、言わば付属資料のようなものがバージョンアップされていくようなことは、これはとてもありがたいことかなと思います。さらに高校では、義務教育段階の「学び直し」というようなことも大事になってまいります。そういったものをどうやって取り込んでいくか、その時間をいかに確保していくか。そういった部分も生徒たちの実態に応じた形で必要になってくるところもありますので、先ほどの私の発表の最後にも言いましたが、できる限りフレキシブルに自由裁量である程度、学校側で主体的に授業づくりができるような余裕をもたらしていただけると大変ありがたいなと思っているところでございました。
以上でございます。よろしくどうぞ。
【貞広主査】 ありがとうございます。
本日は堀田委員、そして3つの学校の方々に貴重な御報告をいただきましてありがとうございます。また、もっと聞きたいという私の気持ちが出てしまったのか、大幅に時間が超過してしまいまして大変申し訳ありませんでした。ありがとうございました。
それでは、本日の議事は以上といたします。一部、事務局にも小さな宿題が幾つか出たかと思いますので、その点についても御検討いただければと思います。
最後に次回の予定につきまして、事務局よりお願いいたします。
【栗山教育課程企画室長】 次回は3月28日金曜日、13時から16時の3時間を予定しております。また後日、ご連絡差し上げます。失礼します。
【貞広主査】 ありがとうございます。
それでは、以上をもちまして閉会といたします。本日ありがとうございました。
―― 了 ――
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