教育課程部会 教育課程企画特別部会(第1回) 議事録

1.日時

令和7年1月30日(木曜日)10時00分~12時00分

2.場所

WEB会議と対面による会議を組み合わせた方式

3.議題

  1. 「初等中等教育における教育課程の基準等の在り方について(諮問)」を踏まえた主な検討事項と今後のスケジュールについて(案)
  2. その他

4.議事録

【栗山教育課程企画室長】  定刻となりましたので、ただいまから第1回中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会教育課程企画特別部会を開催いたします。本日は大変御多忙の中御参加をいただきまして、誠にありがとうございます。
 開会に当たりまして、本来であれば、文部科学省幹部より御挨拶をさせていただくところでございますけれども、遅参でございますので、後ほど御挨拶をさせていただきます。
 議事に先立ちまして、本特別部会の主査及び主査代理について御報告申し上げます。参考資料2-1の初等中等教育分科会教育課程部会運営規則に基づきまして、本特別部会は、教育課程部会の決定により設置をされております。主査及び主査代理につきましては、奈須教育課程部会長より、貞広斎子委員を主査に、秋田喜代美委員、堀田龍也委員を主査代理に、それぞれ指名をいただいておりますので、御報告を申し上げます。
 次に、教育課程企画特別部会の委員の皆様を御紹介いたします。参考資料2-3として、教育課程企画特別部会の委員名簿を配付させていただいておりますので、名簿の順に御紹介をさせていただきます。
 青海正委員でいらっしゃいます。
【青海委員】  皆さん、おはようございます。私は大田区立志茂田中学校、全日中の校長会の青海でございます。このような機会をいただき感謝を申し上げます。よろしくお願いいたします。
【栗山教育課程企画室長】  ありがとうございます。御挨拶は後ほどいただきますので、まずは御紹介をさせていただきます。
 続いて、荒瀬克己委員でいらっしゃいます。
【荒瀬委員】  すみません、教職員支援機構の荒瀬でございます。よろしくお願いいたします。
【栗山教育課程企画室長】  石井英真委員でいらっしゃいます。
【石井委員】  京都大学の石井です。よろしくお願いします。
【栗山教育課程企画室長】  今井むつみ委員でいらっしゃいます。
【今井委員】  慶應大学の今井でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
【栗山教育課程企画室長】  今村久美委員でいらっしゃいます。
【今村委員】  NPO法人カタリバの今村です。よろしくお願いいたします。
【栗山教育課程企画室長】  植阪友理委員でいらっしゃいます。
【植阪委員】  植阪と申します。よろしくお願いいたします。
【栗山教育課程企画室長】  内田隆志委員でいらっしゃいます。
【内田委員】  全高長、都立三田高校の内田でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
【栗山教育課程企画室長】  小見まいこ委員でいらっしゃいます。
【小見委員】  NPO法人みらいずworksの小見まいこです。よろしくお願いします。
【栗山教育課程企画室長】  貞広斎子主査でいらっしゃいます。
【貞広主査】  千葉大学の貞広と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
【栗山教育課程企画室長】  澤田真由美委員でいらっしゃいます。
【澤田委員】  先生の幸せ研究所の澤田と申します。よろしくお願いします。
【栗山教育課程企画室長】  神野元基委員でいらっしゃいます。
【神野委員】  学校法人東明館、神野です。よろしくお願いします。
【栗山教育課程企画室長】  髙島崚輔委員でいらっしゃいます。
【髙島委員】  兵庫県芦屋市長の髙島です。よろしくお願いします。
【栗山教育課程企画室長】  野口晃菜委員でいらっしゃいます。
【野口委員】  一般社団法人UNIVA理事の野口です。よろしくお願いします。
【栗山教育課程企画室長】  堀田龍也主査代理でいらっしゃいます。
【堀田主査代理】  東京学芸大学の堀田でございます。よろしくお願いいたします。
【栗山教育課程企画室長】  前川明範委員でいらっしゃいます。
【前川委員】  京都府の前川でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
【栗山教育課程企画室長】  松原修委員でいらっしゃいます。
【松原委員】  全国連合小学校長会の松原です。どうぞよろしくお願いいたします。
【栗山教育課程企画室長】  溝上慎一委員でいらっしゃいます。
【溝上委員】  桐蔭学園の溝上でございます。よろしくお願いいたします。
【栗山教育課程企画室長】  宮原京子委員でいらっしゃいます。
【宮原委員】  ファイザー株式会社、宮原でございます。よろしくお願いいたします。
【栗山教育課程企画室長】  山本朝彦委員でいらっしゃいます。
【山本委員】  横浜市教育委員会事務局学校教育企画部長の山本です。よろしくお願いします。
【栗山教育課程企画室長】  そして、教育課程部会長でいらっしゃる、奈須正裕委員です。
【奈須委員】  上智大学の奈須でございます。よろしくお願いいたします。
【栗山教育課程企画室長】  また、本日は遅れての御参加と伺っておりますが、秋田喜代美主査代理、戸ヶ﨑勤委員が本特別部会の委員に就任されています。
 また、本日は御欠席ですが、古賀松香委員、田村知子委員が就任されております。
 それでは、議事に入ります前に、貞広主査から一言御挨拶をお願いいたします。
【貞広主査】  皆様改めまして、こんにちは。主査に御指名いただきました千葉大学の貞広と申します。以下、着座にて失礼いたします。
 こちら、教育課程の基準に関わる重要な議論をしていただく会議でございます。この後、事務局から御説明があろうかと思いますけれども、今回いただいた諮問、また、参考資料1-6にあります論点整理の中に、今回議論していただきたい論点、かなり抽出をされております。この議論の中で、皆様にそれぞれの論点をいかにつなぎ合わせ、構造化し、子供たちの豊かな学びを保障できる教育課程の基準をつくれるかということが我々に課せられている使命でございます。
 主査としては、大変力不足でございますけれども、ぜひ皆様のお力添えをいただきながら豊かな議論をさせていただければと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
【栗山教育課程企画室長】  ありがとうございました。
 それでは、本特別部会の進行は、これより貞広主査にお願いをいたします。
【貞広主査】  では、早速でございますが、これより議事に入ります。本日は進行資料としてお配りしております流れに基づきまして、議事を進めます。委員の皆様におかれましては、適宜御参照いただければと存じます。
 なお、本特別委員会の審議等につきましては、参考資料2-1の教育課程部会運営規則第3条に基づきまして、原則公開により議事を進めさせていただきます。また、第6条に基づきまして、議事録を作成し、こちらも原則公開するものとして取扱います。
 それでは、事務局より会議の留意事項を御説明いただきます。お願いいたします。
【栗山教育課程企画室長】  ありがとうございます。本特別部会は、対面とウェブ会議を組み合わせた方式で開催をしております。対面参加の委員の皆様におかれましても、ヘッドセットから音声を配信しますので、御発言の際は挙手ボタンを押していただき、ミュートを解除してから御発言をお願いいたします。また、御発言が終わりましたら、再度ミュートにしていただきますようにお願いいたします。
 事務局からは以上でございます。
【貞広主査】  ありがとうございました。
 それでは、議題1に移ります。令和6年12月25日に諮問されました「初等中等教育における教育課程の基準等の在り方について」の概要や、本特別部会の設置趣旨等について事務局より御説明をお願いいたします。
【武藤教育課程課長】  失礼いたします。教育課程課長の武藤でございます。
 資料1-1の諮問文の本体に基づいて御説明を申し上げたいと思います。昨年の12月25日に大臣の名前で御検討をお願いした文書でございます。
 この諮問文、大きく二部構成になっています。1つ目が理由、なぜこのような諮問に至ったのかという現状認識を述べています。後半が具体的な審議事項と、この二部構成でございます。
 次のページお願いします。まず、理由のところです。少しスピードアップしてまいりますけれども、深刻さを増す少子高齢化、それからグローバル情勢、気候変動に伴う自然災害の激甚化、AI等々の大きな変化が相まって、不確実性がこれまでになく高まっていると。我が国を担う子供たちはこういった激しい変化がとどまることのない時代を生きていくと。また、人生100年時代、労働市場の流動性、マルチステージの人生モデル、生涯にわたって主体的に学び続けて、自らの人生を舵取りするような力が大事になってくるだろうと。また、国外に出ていく機会も増える一方で、いわゆる内なるグローバル化も進展しております。また、デジタル化の負の側面が顕在化しているという中で、社会の分断の芽の指摘もございます。こうした中、異なる価値観を持つ多様な他者と当事者意識を持って対話を行い、問題を発見・解決できる社会のつくり手を育てていく必要が高まっているということでございます。
 次のパラグラフで、生成AI等のデジタル技術の発展は、変化に伴う困難を強いるだけではなくて、多様な個人の思いや願いを具現化するチャンスも生み出している側面もございます。人口も減少しておりますので、テクノロジー含むあらゆる資源を総動員して、全ての子供に多様な豊かな可能性を開花できるようにしていく必要があるだろうと。また、芸術、スポーツも含めてですけれども、多様な個人が幸せや生きがいを感じるという個人のウェルビーイングと、それから地域や社会全体でも幸せや豊かさを享受できる、この地域なり社会のウェルビーイング、この2つの観点に立って考えていく必要があるだろうと。
 こうしたことを総合的に勘案いたしますと、これから子供たちが活躍する2040年代、前回2030年代と言っていましたけども、40年代を展望するとき、初等中等教育の役割はこれまで以上に大きい。いい部分は継承し、課題は乗り越え、新たな時代にふさわしい在り方を構築する必要があると考えてございます。一方で、学校現場の状況に目を転じればということで、現行の学習指導要領を一つのパラグラフでサマリーをしております。こうした学習指導要領が告示をされた中、コロナがやってきたということで、学校現場は本当に様々な制約に苦しみながらお取組をいただき、そんな中、GIGAスクールも始まる中で、苦しみながらも改善をしてきていただいたと思っております。こうした中、全国学調、あるいはPISA調査等々でも様々な成果も出ているということでございます。
 その一方、様々な課題も顕在化してございます。大きく3点から4点書いてございますが、1点目として、主体的に学びに向かえていない子供たちが増えていると。幸福度が低いというデータもございます。不登校、特別支援、外国人、あるいは特定の分野に強い興味や関心を有する子供たちの存在、こうした多様性を包摂して、一人一人の意欲を高めて可能性を開花させる教育の実現が喫緊の課題であろうと考えております。この多様性の包摂という難しいチャレンジに正面から向き合うことは、我が国の社会及び教育の、これはあえて社会及び教育と書いておりますけれども、積年の課題でもある正解主義や同調圧力への偏り、ここもあえて偏りと書いておりますけども、こういったものから脱却するとともに、民主的かつ公正な社会の基盤として学校を機能させる、共生社会を実現させるという観点からも重要だと認識しています。
 2つ目です。習得した知識を現実と関連づけて理解するですとか、AIに扱えない概念習得、深い意味理解、あるいは自分の考えを持って、根拠に基づいて、他者に明確に説明すること、あるいは自律的に学ぶ自信がある子供が少ないことは依然として課題でございます。また、子供の社会参画の意識ですとか、将来の夢を持つ子供の割合、これ学校現場の頑張りのおかげで一部、改善傾向も見られておりますけれども、国際的に見れば、とりわけ社会参画のところ、まだ低い状況があります。夢を持つ子供の割合についても横ばいという状況でございます。こうしたことを踏まえますと、全体としては、現行の指導要領の理念と趣旨の浸透が道半ばであるという認識に立ってございます。
 3点目、GIGAスクール構想、これは大きな可能性を秘めておりますが、効果的な活用が緒に就いたばかりであるということ。我が国のデジタル競争力が他国の後塵を拝している、デジタル人材育成の強化が喫緊の課題であるということ。その一方で、実体験の格差、あるいはデジタル化の負の側面を指摘する声もございます。デジタルかリアルかとか、デジタルか紙かといった二項対立に陥らずに、デジタルの力でリアルな学びを支えると。こうした基本的な考え方に立って、バランス感覚を持って取り組む必要があるという認識でございます。
 今、3点課題を申し上げましたが、こうした課題に取り組む上で、先生方の努力と熱意に対して過度な依存はできないと、昨年8月にお取りまとめいただきました教師の勤務環境整備の政策と整合性を持たせると、令和の日本型学校教育を持続可能な形で継承、あるいは発展させることを前提として、これからの時代にふさわしい指導要領の在り方をぜひ御検討いただきたいと、ここまでが理由、あるいは現状認識のパートでございます。
 次のページ、3ページに参りまして、ここからが具体の審議事項になります。1点目、より質の高い、深い学びを実現し、かつ分かりやすく使いやすい学習指導要領の在り方。1つ目の丸ですけども、AIがこれだけ飛躍的に発展し、そして、さらに加速的に発展するということが見込まれております。個別の知識の集積にとどまらない概念の習得とか深い意味理解、それから、学ぶ意味や、社会やキャリアとの学習内容とのつながり、こうしたものを意識した指導が一層重要となると考えておりまして、そうした授業改善に直結する指導要領にするための方策、とりわけ、各教科等の中核的な概念を中心にした目標・内容の一層分かりやすい構造化、これをどのように考えるか。大分、内容も膨らんできている中で、このようなソリューションを出していくことによって、一定程度、教育課程のスリム化ということも可能性としてあり得るのではないかと考えているところでございます。
 それから、ややテクニカルですが、教科の目標・内容の記載に表形式を活用するですとか、学校種間・教科等間の関係の俯瞰性を高めること、あるいはこういうデジタルの時代ですからデジタル技術を最大限使えば、ユーザビリティ、アクセシビリティ、大変高めることができるんではないかと思っております。
 また、次の3つ目の丸です。指導要領における重要な理念の関係性の整理。主体的・対話的で深い学びというのが指導要領上の文言でございますけれども、これに加え、GIGAスクール、あるいはコロナの中で個別最適な学びと協働的な学びの充実というコンセプトも出しております。個別最適な学びと協働的な学びの上位概念として、主体的・対話的で深い学びということを言ってきたつもりでおりますが、学校現場等々では混乱も見られるところでございまして、しっかりと改めて整理するということが大事だろうと考えております。
 また、学習の基盤となる資質・能力につきましては、情報活用能力と、それから言語能力、また、問題発見・解決能力等ということになっておりますけれども、情報活用能力の育成の重要性が高まっていることも踏まえつつ、この3つの整理ということもやっていき、そして、それが学校現場が腹落ちする形でお示しすることによって、実装化を図っていくということも大事だろうと思っております。
 また、デジタル学習基盤、GIGAスクール構想が、1期がそろそろ終わろうとしておりまして、第2期の端末等々の更新の費用も措置できたという中にありまして、そのことを前提とした学習指導要領にしていく。そのことを前提とした、それぞれの教科の示し方をどう考えるのか。また、学習評価につきましては、評価の観点、頻度、それから形成的評価、総括的評価の在り方も含めてどのような改善が必要なのか。とりわけ主体的な学習に取り組む態度をはじめとして、より豊かな評価につなげるための改善方策ということでございます。
 2つ目、多様な背景を有する子供の包摂とそのための柔軟な教育課程の在り方でございます。1つ目の丸で、子供たちの興味や関心、能力・特性に応じて、自らの学びを自己調整していく、あるいは教材や方法を選択できるような指導計画であったり、あるいは学習環境デザインの重要性、また、デジタル基盤を前提とした新たな時代にふさわしい学び、あるいは教師の指導性をどう考えるか。また、子供たち一人一人の可能性が輝く柔軟な教育課程編成を促進するという観点で、各種の特例校制度、今は特例校でしかできないようなことがたくさんあるわけですけれども、これをもっと活用しやすくするということですとか、標準授業時数の柔軟性、学年区分の弾力性、あるいは、単位授業時間とか最低授業週数の示し方、これを一体どのようにして、もう少し柔軟なものにしていくのかという論点でございます。そうした御検討の先に、その柔軟性や創意工夫の余地、それが実際に実装されたときに、そのことが先生方に余白を生んで、結果的に教育の質の向上に資する可能性ということも含めて考えていただければありがたいと思っております。
 次のページ、4ページに参りまして、今度は高等学校でございます。高等学校の生徒の多様性がどんどん増してきている中で、柔軟な教育課程の実現のために共通性は一定程度確保しつつも、全・定・通含めて、制度の改善をどのように考えるか。
 また、次の丸で不登校、あるいは特異な才能のある子供たちにつきましては、現行教育課程上の特例が存在しません。このことをどのようにデザインしていくべきなのかという論点でございます。
 3つ目の審議事項です。各教科の目標・内容の在り方ということでございます。たくさんございますけれども、1点目が、生成AIをはじめ、デジタル技術が飛躍的に発展している中にありまして、小中高を通じた情報活用能力の抜本的な向上方策ということでございます。現行では、小学校は各教科でやると。中学校は技術・家庭科、高等学校では情報科ということでやっておりますが、現状と課題をどう分析するか、あるいは海外との比較を踏まえると、どのような点に遅れが見られるのか。この辺りを踏まえて、今後の充実方策を御検討いただきたいと考えております。その際、生成AI等々の先端技術の扱い方ですとか、あるいは、情報モラル、メディアリテラシーの育成の強化、ここは特出しで書いておりますけども、そのことも含めて、御検討を頂戴したいと思っております。
 2つ目の丸です。質の高い探究的な学びを実現する観点で、総合学習の時間とか総合的な探究の時間の改善・充実の在り方、その際、一つ前に出てきた情報活用能力の育成の一体的な充実、あるいは教科横断的な学びの充実との関係も含めて、一体どのように考えればいいのかという点でございます。
 また、次の丸です。高等教育段階で、デジタル、あるいは理数分野に学部転換をするということを3,000億円もの基金を設けて今、取組を進めているところでございまして、大変、たくさんの大学がこのプログラムに申し込んでいただいているところでございます。端的に言えば、定員が増えていくということでございますけれども、せっかく定員が増えても初等中等教育の子供たちが理科や、あるいは算数・数学や、あるいはデジタルに関心を持って、もっと勉強したいと思っていただかないことには定員割れになるだけでございます。この辺りをどのように指導要領の観点からも考えていくかという論点でございます。
 また、次ですが、外国語教育、これ大分、大幅な充実をしたわけでありますが、その後の大きな状況変化として、生成AIの活用の可能性というのがかなり広がってきているわけです。そのことも含めて、今後の在り方をどのように考えるのか。また、AIも含めてですが、手軽に何かを入れれば簡単に翻訳もしてくれる、あるいは通訳をしてくれるみたいな、一見そういう状況にもなってきている中にあって、改めて外国語を学ぶ意義というのを一体どのように整理したらいいのかと。そして、それが先生方の腹に落ち、そして子供たちに学習意欲を高めることにつながるのかと、こういう論点でございます。
 次です。教育基本法と学校教育法に加えまして、こども基本法も成立をいたしました。このこともしっかりと踏まえつつ、国家、社会の形成者、単なる構成員ではなく、形成者として、主体的に社会参画するための教育の改善も重要な論点だと考えております。また、高等学校教育も一度出てきましたけれども、多くの教科・科目の構成の改善を行いました。当然、その一層の定着が大事になってくるわけですけれども、それにとどまらず、現状と課題を改めて整理し、とりわけ地域、地方では、就業構造が大きく変化しているということも踏まえながら、今後の改善をお考えいただきたいということでございます。
 また、インクルーシブ教育システムの充実に向けましては、合理的な配慮の提供も含めて、一人一人のニーズに応じた質の高い特別支援教育の在り方をどのように考えるかということを、当然これは通常学級の子供たちも含めてトータルで検討していくということだと考えております。
 また、幼保小の架け橋プログラムをやっていただいております。成果と課題を踏まえつつ、特に幼児教育では、環境を通して行う教育が基本であるということにも留意しながら、幼児、それから小学校教育との円滑な接続の改善についてどのように考えるか。とりわけデジタル学習基盤でクラウド環境が整ったということに伴って、環境を通して行う教育というのをデザインしていくことも可能になってきていると考えていまして、そのことも含めてどのように考えるか。また、設置者、施設類型様々でございますけれども、幼児教育ということでは共通でございますので、質の向上を図る共通的な方策についてどのように考えるかということでございます。
 最後、4点目、教育課程の実施に伴う負担への指摘に真摯に向き合うことを含む学習指導要領の趣旨の着実な実現のための方策についてでございます。
 1点目、教師の負担、負担感がどのような構造によって生じているのか。指導要領と解説が増えてきたのは、これは事実ですが、そのことに加えて、教科書が非常に分厚くなっているということ、50年前と比べますと、小学校で約3倍、それから中学校で約1.5倍ということで、ページ数が大幅に増えているということでございます。発展的な内容、補充的な内容、様々なものが入って、図表も増えて、充実してきたところでございますけれども、そうした教科書がかなり分厚くなっているということと、その教科書を教えていくための教師用の指導書というのがつくられ、売られ、実際に購入され、実際に現場の先生方に活用されているという中で、教科書に出てきているものが入学者選抜の出題の範囲になっているというような一部現実と一部誤認識がある中で、結果的に、トータルで見ると負担と負担感は相当大きくなっているという実態があると考えていまして、この辺り、解像度高く、全体をトータルで分析した結果、一体どのような方策が考えられるのか、負担と負担感が生じにくい在り方、ソリューションを見いだしてまいりたいということでございます。
 その際、年間の標準授業時数、これ現在以上に増加させないというキャップをはめております。併せて、現代的な諸課題を踏まえた様々な教育の充実について、これも負担への指摘にも留意しつつどう考えるのか。例えば関係の各省庁から、これも大事、あれも大事と様々な御提案、御要望もあるわけであります。また、省庁以外にも様々な団体から、これをぜひ子供たちに教えていくべきなんだというお声もあるところで、そこには傾聴に値するものもたくさん含まれていると思いますけれども、学校現場の今の状況を考えると、一定のキャップをはめた上で、考えていくと、こういう難しい課題について、この丸では書いているところでございます。
 それから、先ほど出てきた教科書の分量が増加した一方で、網羅的に指導すべきという考えが根強く存在するという中で、内容と分量、それから今、デジタル学習基盤特別委員会で、堀田座長の下でやっていただいていますけども、デジタル教科書の在り方、この辺りも一体的に考えていく必要があると思っております。
 また、情報技術などの変化の激しい分野において、教師の負担を可能な限り軽減しつつ、最新の教育内容を扱うことを可能とする方策。10年に一度の指導要領の改訂というのが、非常に歩みが遅いのではないかという御指摘があるところでございます。指導要領をつくり、そして、それに基づいて教科書をつくっていただき、そして検定をし、そして採択をしという一連のプロセス、また、学校現場にとっては新しいことがいっぱい出てくるわけでございまして、現場の準備やキャパシティーのことを考えれば、10年に一度大きく変えるというスケジュールは一定程度やむを得ないことであると思う一方で、とりわけ生成AI等に象徴されるような、非常に変化が激しい分野を学校教育で取り扱うということなのであれば、そこは最新の内容を扱うことを可能にする方策というのを、正面から向き合って考えていく必要があるんではないか、こういう論点でございます。
 また、その次の丸、学校における創意工夫ある柔軟な教育課程の編成の促進。先ほど、各種特例校等々でしかできないようなことを、もう少しそれぞれの判断でできるようにしていくという論点をお示しいたしましたけども、仮に、先生方の御議論の結果、可能性としては、そういうことがそれぞれで取り組めるようになるとしても、実際にそれが学校現場で取り組まれるかどうかはまた別問題でございます。実際につくられた柔軟な仕組みというのが実際に柔軟に編成され、先生方がもっと働きやすくなり、そして子供たちがもっとよりよく学べるようになるということで、実装まで持っていくためには、当然、これは教育委員会に対する支援の強化、この中に教育DXも入りますし、その助言に入る指導主事の資質や能力、あるいは配置みたいなものも含めて必要になってくるんだろうということでございます。
 また、社会に開かれた教育課程、今回の改訂の目玉の一つでございました。それを持続可能な形で実現できるようにコミュニティー・スクール等の推進も必要でしょうし、また、過度な負担を生じさせずに、カリキュラム・マネジメントを実質化することの方策というのも大事になってくるだろうと思っています。
 最後の丸、指導要領の趣旨、内容につきまして、保護者をはじめ、社会全体と共有するとともに、学校種を超えて、一人一人の先生方に浸透を促す方法というのをどのように考えていくのかということでございます。
 以上が中心的に御審議をお願いしたい事項でございますけれども、当然、これらに関連する事項も多岐にわたると思います。それらも含めまして、幅広く御検討をいただくということと、別途既に諮問をしておりますが、多様な専門性を有する質の高い教職員集団の形成を加速するための方策に関する、主に教員養成のほうの部会でございますけども、そこの御検討、それから関係会議、これも様々ございます。例えば、デジタル学習基盤の特別委員会も中教審の中にあれば、あるいは部活動の関係の検討組織もあったりするわけでございまして、様々な関係機関、関係会議における御議論とも連携をしながら、かつ教育課程の実施に必要となる条件整備にも意を用いていただきながら、御審議をいただきたいという諮問でございます。
 私からの説明、以上でございます。ありがとうございます。
【栗山教育課程企画室長】  続きまして、私から諮問の参考資料と本特別部会の設置趣旨について、補足の御説明をさせていただきます。
 まず、参考資料1-2にお配りしている諮問の参考資料を御覧いただければと思います。
 目次でございますように、今、武藤課長のほうから御説明がありました諮問文に沿って編成をされておりまして、1、子供たちを取り巻く社会の状況、2、現行指導要領の実施状況等、3、顕在化している課題等について、4、審議事項第一、次のページ、審議事項第二、審議事項第三、審議事項第四というようにつくっております。また、8、関連する最近の動向などでございます。
 4ページ以降、パラパラとおめくりいただきながら御覧いただければと思います。子供たちを取り巻くこれからの社会の状況は、指摘されている様々な社会変化等についての関係資料です。さらなる少子化、高齢化やグローバル化が進み、不確実性の高まりが指摘されています。また、労働市場の流動化やSociety5.0、人生100年時代といった社会変化も指摘されていますので、こうした関係する資料を整理させていただいています。
 22ページ以降に、現行学習指導要領の実施状況等についてまとめております。現行指導要領の考え方や現在の学校の状況等についての関係資料になっています。現行学習指導要領は、社会に開かれた教育課程を理念に掲げ、何を学ぶかだけではなく、何ができるようになるか、どのように学ぶかの観点を明確化し、主体的・対話的で深い学びの視点からの授業改善を提示しています。この現行指導要領の下で、学校現場ではGIGAスクール構想による端末環境も活用しながら精力的な授業改善が行われており、全国学力・学習状況調査や、OECDのPISA調査でも成果が見られていますので、関係のデータについてまとめています。
 続いて、39ページ以降になります。顕在化している課題等については、現在、学校現場が抱えている課題等についての関係資料になっています。不登校児童生徒など、主体的に学びに向かうことが現状はできていない子供や、特別支援教育の対象となる児童生徒、外国人児童生徒、特定分野に特異な才能のある児童生徒などが増加している状況があります。また、概念としての知識の習得や深い意味理解をすること、あるいは自分の考えを持ち、根拠を持って明確に説明をすること、自律的に学ぶ自信がある生徒が少ないこと等にも依然として課題があるとともに、デジタル競争力が諸外国に比べて低いといった課題も指摘されている状況がありますので、関係するデータを掲載しております。
 続いて、57ページ以降に審議事項の関係をまとめております。まず、審議事項第一の関係は、質の高い、深い学びを実現し、分かりやすく使いやすい学習指導要領の在り方の検討に当たって、参考にしていただきたい資料をまとめています。現行指導要領における目標及び内容の構成、重要な理念の考え方などについて、資料を整理しています。
 続いて、66ページ以降になりますが、審議事項第二の関係ですが、多様な子供たちを包摂する柔軟な教育課程の在り方の検討に当たって、参考にしていただきたい資料をまとめています。特別の教育課程を編成する制度や具体の活用事例、現在の校内教育支援センターの事例などについて、資料を整理しているところですので、御参照いただければと思います。
 続いて、83ページ以降が審議事項第三の関係ですが、各教科等やその目標・内容の在り方の検討に当たって、参考にしていただきたい資料をまとめております。学校におけるICT活用の状況、探究的な学びの学習に取り組んだことによる成果などについてデータをお示ししています。また、現行の高等学校学習指導要領の概要、そのほか特別支援教育、幼児教育の概要などについて、資料を整理しているものです。
 119ページ以降が審議事項第四の関係になります。教育課程の実施に伴う負担への指摘に真摯に向き合うことを含む学習指導要領の趣旨の着実な実現のための方策の検討に当たって、参考にしていただきたい資料をまとめています。学校における子供たちの学習量に対する考え方、あるいは教科書のページ数に関するデータをお示ししているとともに、カリキュラム・マネジメントの実現状況や文部科学省の施策の認知度などに関するデータをお示ししています。
 136ページ以降は関連する最近の動向についてでありますが、これまでの中央教育審議会や有識者検討会における議論の概要などについて整理をさせていただいております。
 続いて、164ページを御覧ください。また、参考資料と同時に公表をさせていただきました資料として、令和6年度の公立小中学校における教育課程と編制実施条件に関する調査の結果の概要をまとめさせていただいています。調査結果におきましては、標準授業時数を大幅に上回って教育課程を編成、実施する学校の状況について調査などをしておりますけれども、1,086コマ以上で編成している学校は、ここで御覧いただけますように、小学校の5年については、令和4年度が37.1%だったものが、令和6年度の計画段階では17.7%になり、19.4ポイントの減少をしております。これは中学校2年生でもおおむね同様の結果でありまして、前回調査、令和4年度と比べ、2年間で大きく減少してお取組を進めていただいていますので、紹介をいたします。
 続きまして、本特別部会の設置の趣旨について、補足をさせていただきます。参考資料2-2に、昨日開催をされました教育課程部会で了承いただきました資料をお配りしておりますので、御覧ください。
 本特別部会は、各学校種、または各教科・科目の改訂の方向性に関する検討に先立ちまして、諮問された事項に関する基本的な方向性などについて検討をいただく場として、中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会の下に設置をさせていただいております。基本的な方向性などについて、この特別部会で論点をおまとめいただき、教育課程部会などにも適宜御報告をいただきたいと考えています。本特別部会における論点整理を踏まえて、その後、各教科などの個別の専門部会を設置いたしまして、具体的な内容を御審議いただく流れを想定しております。各教科などの十分な審議時間の確保のため、御審議の状況を踏まえつつ、遅くとも今年の秋頃までには論点をまとめいただきたいと考えています。その後、中央教育審議会として、令和8年度中に答申をおまとめいただくということを予定しております。
 事務局から以上でございます。
【貞広主査】  ありがとうございます。それぞれ諮問内容と諮問の参考資料について御説明をいただきました。
 諮問の内容につきましては、かなり単独でも大変挑戦的な論点も含まれていますし、論点同士の両立が非常に困難で、そこに知恵が必要なものも含まれております。まさにその点について、委員の皆様からの積極的な御議論をいただきたいところです。ありがとうございました。
 それでは、ここまでで、諮問内容等につきまして御質問のある方はいらっしゃいますでしょうか。なお、御意見をいただく時間は後ほど別途設けておりますので、今の時間は御質問のある方のみ御発言をいただければと思います。Zoom上で手を挙げるボタンを押していただければ、こちらから順次指名いたしますが、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 では、続きまして、今御説明をいただきました諮問を受けての主な検討事項や今後のスケジュールについて、事務局より御説明をお願いいたします。
【栗山教育課程企画室長】  それでは、資料1-2によりまして、諮問を踏まえた主な検討事項と今後のスケジュールについて御説明します。
 まず、資料の左側、特別部会の主な検討事項の欄を御覧ください。特別部会におきましては、諮問事項のうち、次期学習指導要領を構想する上での基本的な考え方や、各教科・科目にまたがる横断的な事項に関する基本的な方向性に係る事項を御審議いただきます。主に以下のような事項について、1から5の記載の順序で検討することを基本としながらも、御審議の状況により、柔軟に変更することとしてはどうかと考えております。
 1、質の高い、深い学びを実現し、分かりやすく使いやすい学習指導要領の在り方、2、多様な子供たちを包摂する集団な教育課程の在り方、3、デジタル学習基盤を前提とした学びの考え方や情報活用能力育成の充実の在り方、4、教育課程の実施に伴う負担への対応の在り方、5、その他の教科横断的な論点等です。5については、現時点での想定としては、こども基本法の趣旨も踏まえた主体的に社会参画するための教育の在り方や学習評価の在り方、特別支援教育、幼児教育の充実、高等学校段階における教育課程の柔軟性の確保を含めた制度等の在り方についてを想定しているところであります。
 また、右の欄にいっていただければと思います。現時点での候補日程等であります。各教育委員会、学校、メディア関係者などが審議の状況や方向性を把握しやすくするために、特別部会の候補の日程は、可能な限り先々まで事前にお示ししたいと考えています。また、各回におきまして、事務局から議論がいただきやすいように、現状と課題、そして、論点などについて分かりやすく整理した資料を提示させていただきたいと考えております。
 以下の日程については、左の審議事項と、必ず会議開催の回数は対応するものではございません。また、審議項目ごとに複数回の会議開催となることもあり得ると考えております。その前提でありますが、本日以降の日程が下記に記載をさせていただいています。第2回が2月17日、第3回が2月28日、第4回、3月28日、第5回、4月10日、第6回、4月25日を予定しており、その後も月2回程度開催を予定しておりますが、日程については、順次お知らせをいたしたいと考えております。
 また、※の部分にございますが、議論の状況を教育課程部会などに適宜報告をいただきながら、また、教員養成部会、別途の質問が議論される場でございますが、議論の状況を共有、連携していければと考えております。
 以上が主な検討事項と今後のスケジュールについてであります。
 続きまして、資料1-3に基づきまして、今後の学校での学びの在り方等に関する子供への意見聴取について、簡単に御説明させていただきます。学習指導要領の検討に当たりまして、こども基本法の趣旨を踏まえ、これからの社会を担う子供たちの思いや願いを中央教育審議会の御審議に生かしていただくことは重要であると考えています。
 こうした観点から、こども家庭庁と連携して、「こども若者いけんぷらす」という枠組みがありますので、そちらを活用して、今後の学校での学びの在り方について、子供たちから意見を聴取する「いけんひろば」というものを開催しております。子供たちからの意見を聴取した後に、年度内をめどに子供たちから聴取した意見を資料としてまとめまして、教育課程企画特別部会に御報告できればと考えております。
 実施の概要、下の欄であります。対象は、小学校1年生から高校3年生の年代の子供たちを対象にしています。また、実施方法、実施時期は3種類ありまして、丸1として、オンライン会議システムを活用したリアルタイムの意見交換であります。既に1月27日より順次実施しています。また、アンケートフォームを活用した意見募集も実施します。既に1月14日から実施をしています。また、これらのオンライン会議やアンケートでは参加が難しい子供のために、直接学校に出向いての意見聴取も順次実施したいと考えております。これについては、特別支援学校や学びの多様化学校を対象に実施をしたいと考えています。
 また、テーマや質問内容について、その下に記載をしております。テーマは、「みなさんが願う人生や社会にするために、学校でどんな学びが大切ですか」というものです。具体の質問内容について、下に書いています。将来の自分、未来の社会についてとして、「将来、どんな自分になりたいですか。」、「将来、どんなことができるようになりたいですか。」、「どんな社会をつくりたいですか、そのためにどんな力をつけたいですか。」というものです。また、次に学校の授業や教科書について、「今までの授業で、ワクワクした授業、がっかりした授業はどんな授業ですか。」、「自分の力をつけていくために、どんな授業がよいと思いますか。」、「教科書のどんなページが好きですか。分かりにくい、学びにくいと思うところはありますか。」、「どんな教科書になるといいと思いますか。」というものです。最後に、先生からの評価や成績について、「先生からどんなときにどんなことを言われるとやる気が出ますか。」、「やる気が出るにはどんな成績のつけ方がいいと思いますか。」といった質問内容で順次実施をしております。
 事務局から、以上でございます。
【貞広主査】  ありがとうございます。諮問を踏まえた主な検討事項と今後のスケジュール、または子供への意見聴取について御説明をいただきました。私のごく限られた経験に照らしても、こうした審議会のスケジュールがここまで先まで提示をされるということは、ほとんどあまり私自身は経験がありません。事務局が、恐らくはですけど、事務局の多くの方に議論のプロセスに見ていただきたい、主張していただきたい、または、そういう形で参加をしていただきたいというお気持ちの表れであろうかと思いますので、ぜひ全国の、今これを御覧になっている方々もこのスケジュールに照らして、議論のプロセスに御参加いただければと強く願うところです。
 また、権利主体である子供の意見もしっかり聴いていただくということで、聴くだけではなく何らかの形でしっかりとフィードバックできるようにということもお願いしたいと思います。ありがとうございました。
 それでは、本日は第1回目で初めての顔合わせの会でもありますので、委員の皆様お一人ずつから、今後、特に検討を進めるべきと考えている事項や審議の進め方に対する御意見等について御発言をいただきたいと思います。順に僭越でございますけれども、私からお一人ずつ指名をさせていただきますので、2分程度で御発言をお願いいたします。基本的にはお配りしています名簿の順でと思いますけれども、まず、御予定の関係で、この後、御退席されると伺っております、堀田委員より御発言をお願いできればと思います。よろしくお願いいたします。
【堀田主査代理】  東京学芸大学の堀田でございます。この部会では主査代理を拝命しております。本日はこの後、学校現場の支援の先約がありまして、先に発言の機会をいただきました。貞広主査、御配慮ありがとうございます。
 私は教育の情報化について、学校現場とともに実践研究を進めてまいりました。中教審においては、初等中等教育分科会の下に置かれているデジタル学習基盤特別委員会というものの委員長を拝命しております。GIGAスクール構想で、我が国のデジタル学習基盤は諸外国に比べても大幅に進んだわけですけども、しかしながら、課題はまだたくさんありまして、例えばネットワークの整備が十分かどうかとか、あるいは、デジタル教科書や教材を取り巻く制度はこれからどうあればいいかとか、学校現場で端末利活用を十全に進めていただく、そして、令和の学校教育をしっかりと推進していただくにはどうやって支援すればいいかというようなことをもろもろ検討してまいりました。
 次期学習指導要領でどのような学校教育を実現していくのかという新しい方向性につきましては、この諮問文にもろもろ検討事項が書かれているわけですけども、その中で私の専門分野に引きつけて申し上げれば、厳しい時代に生きていくことになる子供たちが身につけておくべき資質・能力、これを一人一人を大切にしながら個別に対応しつつも、対話や協働を大事にして、周りの人たちとともに支え合っていくという、そういうような授業づくりをどうするかということだと思いますし、そのために、デジタルをどううまく活用していくのかという視点で検討が進んでいけばと思っているところです。
 諮問文の中には、デジタルの力でリアルな学びを支えるという基本的な考え方が示されており、大変共感しております。デジタルには様々なメリットがございますけども、一方で従来の方法にはそれぞれによさがあります。これらのベストミックスを考えたときに、紙かデジタルかといった論調に代表されるような二項対立の議論というのはかなり表面的になりがちだと感じておりますし、これからは両方、うまく使っていくのだということだと思います。
 今後は、これからの時代を力強く生きていくための子供たちへの教育を、従来の方法もデジタルもしっかり用いて支援していくんだと。その中心となる先生方、教師をデジタルでより働きやすく、より本務に集中していただけるようにするにはどうすればいいかということだと思っております。この具体をしっかりと議論してまいりたいと思います。
 今後ともよろしくお願いいたします。
【貞広主査】  ありがとうございました。では、続きまして、名簿に戻っていただきまして、青海委員より御発言をお願いいたします。青海委員、どうぞ。
【青海委員】  全日本中学校長会、東京都大田区立志茂田中学校の青海でございます。このような機会をいただきまして、感謝申し上げます。委員の皆様のお考えを伺うとともに、中学校現場の状況を踏まえながら、私に課せられた役割を精一杯務めていきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。
 先ほどの御説明、それから貴重な参考資料、大変ありがとうございました。諮問を伺っていて感じたことを2点、大きく言うと、一つは審議の前提としまして、内容や課題が広く、大変多岐にわたっていますので、逐次、取りまとめて、見通しですとか審議のプロセスですとか進捗状況が分かるように見えるようにしていくということがとてもいいことだなと思っています。
 それから、先ほど御紹介いただいた子供たちの意見を収集して、それを踏まえるということ、例えば学校生活とか授業とか評価とか、とてもいいことだと私は思いますけれども、これをどのように周知されているのか、こんないいものが果たしてどのぐらいの子供たちが分かっていて、意見がお聞きできるのかなと思っています。なかなかこういうものがあることが分かっているのかなと思いました。
 それから、昨年度取りまとめていただいた有識者検討会での論点整理、これは本当に大変有意義な資料ですので、大いに今後活用していくことが大切であると思っています。
 2点目で主な審議事項、お聞きしていて、前段になるかと思うのですけど、2つ、一つは、分かりやすく使いやすい学習指導要領という側面で、学校現場でいいますと、各教科等の目標とか内容、それから育成したい資質・能力の方向性など、根幹をなす部分を明確に把握しやすく、分かりやすくするということはとてもよいことで、その実現の方策については、例えば日々の授業づくりの自由なアイデア、授業のデザインなどは、学びの専門職と言われる教師に任せる部分を増やすと教師の専門性、授業力が発揮できるのかな、このような学習指導要領になるといいなと思ったというのが一つです。
 それから、2点目は、多様な子供たちを包摂する柔軟な教育課程という視点ですけども、以前私、東京都教育委員会事務局の教育庁指導部で主任指導主事として不登校特例校、現在の学びの多様化学校の設置促進と教育支援センターの機能強化を担当していたことがありまして、当時、62区市町村に設置しやすくするため、分教室型という形態を考えて推進したんですけれども、そのときに設置に当たり、特別な教育課程を編成して文科省の審査を受けると、このような流れでした。特別な教育課程を考える上で、不登校の生徒にはどのような力をつけさせるべきなのかとか、目標を達成させるためにはどのような手当てを行うとよいのかなとか、どのような配慮が必要かとか、授業等をもし内容を削減した場合、それをどう補っていくのかという観点から、指導内容の異学年への移行とか授業時数の組替えとか、1単位当たり時間の短縮、それから、年間総授業時数の削減など、このようなことに取り組んだりしたことを思い出しました。審議を進める上で、こういうようなことも活用できるかなと思いました。
 今日は2点ですけれども、本日は第1回目ということで文科省に行かれなくて申し訳ありませんでした。次回は委員の皆様の熱量の感じられる文科省へ伺いたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
【貞広主査】  ありがとうございます。御質問のようなものもあったように思ったんですけれども、一問一答ではなく、まとめて事務局のほうにお返ししたいと思います。では、続きまして、秋田委員、お願いいたします。
【秋田主査代理】  ありがとうございます。学習院大学の秋田でございます。この部会の主査代理を務めさせていただくと同時に、教員養成部会長をいたしておりますので、そちらとのつながりを意識しながら、審議のほうにも参加させていただきたいと考えているところでございます。
 その中で、この前の学習指導要領と今度の検討との大きな違いとしては、少子化というものがあり、それによって地域間での大きな様々な違いが出てくるであろうということが予想されるところでございます。今も人口が増加しているごく一部の地域と、それからどんどん小規模になっていく地域があります。そうした中で、また、教科担任制も今後、小学校4年生から6年生というような形で、従来の指導法や内容の在り方と学校での指導体制も変わってまいります。また、多様な教師、専門性を有する教師が授業を行う。特に30代が3割になっている中で、学習指導要領を検討していくときに特に考えたいところは、基準として、全国標準でどこまでを基準として考え、どこを地域および学校の裁量として考えていくのかというところの議論が重要なところになるのではないかと考えているところであります。また、指導法に関しましても、これまでは授業というものを意識して、前回の検討から「単元」を非常に強調してきたわけですけれども、そうした学びの内容のまとまりというものをより意識した形で、そして、地域や学校の裁量を大きくし、柔軟性を高めていく中で学習指導要領がどうあったらいいのかを考えていくという方向性が必要なのではないかと考えているところであります。
 教科書が約3倍に膨れ上がっているのと同時に、熱い議論の中で、学習指導要領がこれ以上に分量が増えない、分かりやすくというところで、スリム化したり何を置き換えていくのかという発想がないと、あれもこれも意見を入れると学習指導要領は総則がより膨らんでいく可能性があります。この辺りについても、精選で何が骨になるのかという議論が必要だと思っております。
 その中で、第2に、先ほどの青海委員のお話等にもありましたが、標準授業時数ということにつきましても、教員の働き方の改革とともにキャップも今回かかっております。その中で、学校の裁量と同時に、1授業の時間の長さを、例えば45分や50分ということの考え方をどのように考えていくのか、学びの時間の在り方、それから学びの場としての環境や空間の在り方が、いわゆるリアルな教室空間だけではなく、GIGA端末が広がることによってデジタル空間も含む学びの空間の在り方へと変わってきました。そうした中で、今後、どのような形で授業の学びを考えていくのかということについての議論を大きくしていくということが必要ではないかと考えるところであります。
 特に私は教育心理学者ですので、例えば、学び手として自己調整学習ということが前回から強く出されています。ただし、自己調整学習は、1人で学んでそれが身につくのではなく、公教育の場で協働で学び合っていくことによって自己調整の学び方が身についていくわけであります。その辺りで個別最適な学びと協働的な学びの関係というものを考え、そして、学習指導と同時に評価の在り方を一体的に議論していく場として、この検討会議があってほしいと考えるところでございます。
 そして、最後の3点目でございますけれども、幼児教育のほうにも関わっておりまして、架け橋プログラム、幼小連携接続が2年間という形で出されています。私が全国を見てきてうまく連携接続がいっているところは、架け橋プログラムと授業改善が一体的に行われ、幼小中高と連続性が保障されていくということが極めて重要なところになっているかと思います。そうした中で、こども基本法を踏まえ、子供の声も取り入れながら、どのようにして連続性を保障していくのかということも、議論の中で、ぜひ大事な論点として考えていきたいところだと思っております。
 以上3点を、まず冒頭で申し上げさせていただきました。ありがとうございます。
【貞広主査】  ありがとうございます。では、続きまして、荒瀬委員、お願いいたします。
【荒瀬委員】  ありがとうございます。教職員支援機構の荒瀬でございます。私は長らく高等学校で教師をしておりました関係で、教育課程の話になったときに、初等中等教育最後の段階である高等学校教育を終えた後、これからの社会で生きていく上で、どういう力が必要なのかということがとても気になるところです。
 その意味で、現行学習指導要領では、探究という言葉を科目名につけた科目がたくさん登場する大きな改訂とか、また、総合的な学習の時間が総合的な探究の時間に改められて一層深化していくことによって、自分の在り方、生き方に関する問いかけを重視していこうということで、私は非常によい改訂が進んだと思っております。こういったことを今後の改訂に向けた議論の中でも大事にしていけるとよいかなと思っています。
 諮問文や、あるいは先ほどからの事務局の御説明を聞いていましても、今後、いかにキャリア教育の充実をしていくかということが大変重要であるということを改めて思う次第です。社会の中で自分の役割を果たしながら、自分らしく生きていくことをキャリア発達とするんだというのは、改訂に向けた2016年の中教審答申の中で言われたことでありますけれども、そこのところを大事にする意味でも、現行学習指導要領の前文に示された教育課程が自分のよさや可能性を認識することができるものになっているかどうかという、この問いかけが大変重要であると思っています。
 多岐にわたる内容を今後議論していくということで、事務局のほうでは先ほど御紹介があったように、子供たちの声もしっかりと受け止めて検討していこうという本当にすばらしいアイデアだと思うんですけれども、場合によっては我々の議論もみんなが集まってやるというだけではなくて、少しテーマ別に分かれてやるといったようなことも含めて、いろいろ御工夫いただければと思っております。
 以上でございます。ありがとうございました。
【貞広主査】  ありがとうございました。議論の進め方の御提案もいただいたところでございます。では、続きまして、石井委員、お願いいたします。
【石井委員】  それでは、よろしくお願いします。私は教育方法学ということで、カリキュラムとか授業とか評価とか教師教育といった、そういった教育の中身について研究しています。今回、こういう形で、特別部会に関わらせていただくということなんですけども、まず、諮問の内容に関しては、私も参画いたしました有識者検討会、その論点整理も踏まえながら、この間、学習指導要領改訂の議論というのが教育課程改革というよりも学習方法改革みたいな、そっちに寄った形の受け止め方がされがちなところであったところ、まさに教育課程の本丸である目標・内容の話、あるいは時間の問題とかもそうですけども、そこにかなりフォーカスしているなと思います。さらにデジタル学習基盤という言葉も非常に象徴的で、ICT活用という方法面の話というよりも、まさにデジタル学習基盤という条件整備面の話として展開している、この辺が非常に重要かなと思っています。
 その上で、企画特別部会の中では、次の学習指導要領に向けてという議論になってくるわけですけども、そのときに、いろいろな雑誌であるとかの特集とかを見ると、注目点としては、何が変わるのかなとか、新しいキーワードは何かなとか、そういった変化とか新しさのほうに目が行きがちなところもありますけども、しかし、次はどうなりますかという前に、現行の学習指導要領の趣旨がどうなっているのかと、そこを再確認した上で、その熟成という観点がまずは必要なのかなと思っています。
 前の有識者検討会でも議論されたことでもありますけども、現行の学習指導要領はかなり大きな手術であったと。大きな改革の枠組みとしては、結構骨組みはしっかりつくっているところがありまして、もちろん検討の余地はあるにしても、そこをまずよりどころにしていくと。先ほど武藤課長の話の中にも、主体的で対話的で深い学びというのは上位概念であるという言葉もあったと思うんですが、主と従を取り違えてはいけないというところがまず、あるかなと思います。特に、新しいキーワードは何ですかというところで、それは何か出てくるとは思いますけども、しかし、基本的に「○○な学び」みたいなものをあまり増やさないほうがいいだろうと。先ほどの青海先生のお話ともつながるところですが、○○な学びというのが、ある種、内容化することによって負担感が生み出されているところもあると思います。
 一方で、現場の授業づくりの実態ということで言いますと、実は、各教科の目標・内容に当たるところ、これをちゃんと踏まえずにというか、スルーして、そこをちゃんと見てないんじゃないかなという、そういう授業づくりの実態があるように思います。むしろ今や、逆に教科書だけ見てたら何がポイントか実は分からなくて、それで、目標・内容、特に思考・判断・表現の項目あたりを見ると、例えば社会科では、こういう観点から社会事象を捉えてこういうことを考えますということが結構すっきり書いていて、それを踏まえて授業をしたら結構すっきりと授業できるのに、その学習指導要領の本体、ちょっとした一文なんですけども、そこを見ずにやっていることが結構あるんじゃないかなと思います。ですから、総則とかの趣旨もすごく大事なんですけども、それ以上に学習指導要領というのは、目標・内容の大綱的な基準というところですから、そこをまず見て、何がポイントなのかということを踏まえながら授業をすることによって、逆に授業の自由度を上げていくという、そういう発想が改めて大事なのかなと思います。
 その上で、「熟成」と申し上げたんですけども、しかし、コロナ禍を経て、今の学校のいろいろな限界が見えてきているというところです。一つは教職の負担感とかブラック化云々というところ、あるいは人口減少社会がもたらす構造的な人手不足の問題、こういったところで学校丸抱えは難しい、余裕を生み出さなきゃいけないということで持続可能性の問題が一つある。もう一つは、不登校の問題もそうですけども、これは結局、学校の生きづらさです。学校がどんどん生きづらくなっていないかという問題です。それに向き合うということでいうと、多様性に寛容で、応答的なそういった包摂的な学校をどうつくっていくのか、そういった包摂性の問題等がある。
 これらに向き合いながら、そのためには学校とかカリキュラムといったものを柔軟化するということは大事なんですけども、それが学びとかの貧弱化につながっちゃいけないというところですよね。いろいろなものは外でやっていくからということで、逆に学校というのはもう最低限ここだけみたいなことになってしまうと、逆に学校ってむちゃくちゃ魅力のない場所になってしまうと。それはそれでいいんだろうかと。まさに公教育とか学校って何のためにあるのかというところです。そこでどう踏ん張れるかというところが一つ肝になってくるかなと思います。学びがいも働きがいもない場所になってしまった学校って、それは必要なのかなということにならないように、改めて学校教育って何だろうと、公教育の役割って何だろうということをちゃんと見据えながら議論していくと。
 そうしたとき、ある種、柔軟化していきつつも、しかし、その中で質をどう担保するのか。だから質という言葉が出てきていると思うんですけども、学びがい、働きがい、そういったものを、成長実感とか、そこを学校に集う人たちがちゃんと何らかの形で実感できるような、そういう場として学校をどう立ち上げ直していくのか。そのときに、まさに条件整備としてのデジタル学習基盤といったものが大きな武器になるというところです。そういった武器を使いながら、学びの質を貧弱化させないというところでいうと、ゆるくて深い学びではないですけども、ゆるふかな学びをどのように実装していくのかというあたりがポイントになってくるかなと思います。
 その際にポイントになってくるのは、現行の学習指導要領の積み残しの課題でもあります「何を学ぶか」、ここの部分にメスを入れていくということかと思います。
 そこで、1つ目の審議事項の柱にもありますように、結局これは内容の重点化・構造化、この辺が肝になってくるというところですよね。それで、分かりやすくて使いやすい学習指導要領と、これって一体どういうことなのか。ふだん使いで、先生方が目標・内容とか教科の本質はここなんだとか、ということを日常使いしながらつかんでいって、その中で自分なりの授業をつくっていける、そういう流れができてくる、そういったふだん使いに耐えるような学習指導要領、それはひょっとしたら子供たちもまた見て、ふだん使いになるようなものになったらいいのかなと思います。
 そういう学習指導要領の在り方をどう構想するか、それは単に内容をスリム化するということじゃなくて、スリムにすることで学びが豊かにならなきゃいけない。ということで言いますと、まさにLess is Moreという考え方がありますが、それは少ないことはいいことなんじゃなくて、少なく厳選された重要概念を深く学ぶことによって、結果としてたくさん学べますよと、そういう発想なんです。moreですから。ただ、そういったLess is Moreの視点といったものをどう実装できるか。これは現行の学習指導要領からの延長線上にある、単元でどう授業をつくるのか、さらにいうと、主体的で対話的で深い学びということで、ただ、最近は主体と深いはあって、対話が結構抜けているんじゃないかということもあるわけですけども、その辺り、改めて協働性をどう再構築していけばいいのかということも含めて、豊かな学びを全ての子供たちにどう保障していくのかという観点で、目標・内容の重点化・構造化、この辺に切り込んでいくということが重要かなと思います。
 何より、そのように学習指導要領の議論をしていくときに、現場のオーナーシップを高めていくような、現場の心の温度を上げていくような、そういう議論の仕方をしていくことが大事だと思います。そういう面でいうと、今回、既に見通しを持って示されているように、いろいろな現場の先生方の声であるとか、子供たちの声もそうです。一つのムーブメントとして、こういった学習指導要領改訂の動きといったものを展開していく、議論過程で、議論の途中でこそムーブメントを起こす、結果でムーブメントを起こすんじゃなくって、ブームを起こすんじゃなくて、改訂の議論自体をブームにしていくぐらいの、そういう巻き込みといったものが大事なってくるんじゃないかなと思います。
 以上です。
【貞広主査】  ありがとうございます。では、今井むつみ委員、お願いいたします。
【今井委員】  皆様、おはようございます。慶應大学の今井むつみでございます。私は認知科学という学問をしておりまして、認知科学の中でも発達心理学、言語心理学、そういうようなものを自分のコアにしております。
 認知科学ってどういう学問かというと、基本そもそも論なんですよね。何でも言葉で言われる、言葉で書かれる概念について、その概念が本当に何なのかということを、人間の具体的にどういう知識なのか、あるいはどういう認知のプロセスなのか、そういうところを情報処理とか記憶とか、そういうところまで下ろしていって、そもそも何なのかということを考えていく学問です。その観点から、現行の学習指導要領も読ませていただくと、とてもよいことが書いてあると思うんですが、ただ、そこで、例えば、キーになる、鍵になる概念として、育成すべき資質・能力というのがありますよね。これももちろんすごく大事なことで、子供たちが自分で自らの力で将来を切り開いていけるようになる、そういう力を学校教育で身につけさせたい、もう反対の余地は1ミリもありません。
 ただ一つ、これと、この能力と、例えば一般的に使われる学力という言葉、学力あるいは、今で言うと情報活用能力というのがどういう関係になるのかというのは、認知科学の観点から考えると非常に曖昧になっているなあと思います。学力というのは往々に評価の問題と結びついて、いろいろな方と、特に学校現場の方なんかとお話ししていると、皆さん全国学力テストの点数のことを言われて、全国学力テストの点数イコール学力というように捉えられている。そこを上げるために学びが大事なんだというようなことを直接、あるいは間接的におっしゃる学校の関係者の方が多いんですが、そもそも本当にそうなのかということ。学力ということを考えるときに、全国学力テストの得点が本当に学力なのかというようなことまで下って、掘り起こして考えていくべきなのではないかなと。
 そのときに、育成すべき資質・能力ですよね。子供たちが未来を切り開いていく能力が全国学力テストの得点でいいのかどうか、それが、全国学力テストの得点が指標として使われていいのかどうかというような問題とか、あと情報活用能力にしても、今の子供たちはものすごく情報検索においては非常に優れていると思うんですが、それが情報活用能力として捉えられていいのか。私はそうではなくて、そこから先、検索した情報をどのように統合して自分の中で知識をつくっていくのか、そこが大事だと思うんですけれども、言葉がすごくこれ抽象的な、学習指導要領って先ほども御指摘ありましたように、スリムにしていくべきだとは思うんですけれど、ただ、スリムにすればするほど言葉が抽象的になって言葉が独り歩きするという、そういうこともあるわけです。言葉を出すだけだと、読んだ側が、全然記号接地ができないと。自分で勝手に解釈をして、自分で思い浮かべて、それぞれ、ばらばらに実践をするということになりかねないので、スリムにしつつもどのように共通の理解というのを含めて広めていくか、その辺り、この委員会でぜひ議論をしていただきたいなと思っております。
 これは海外との比較で、先ほども武藤課長のお話に、海外と比べて頑張っていますよ、日本はよくやっていますよというお話がありましたけれども、これも海外の比較として、一つの例えばPISAテストとか幾つか比較するために使われる指標がありますが、その指標が本当に学力なのか、本当に育成すべき資質・能力を測ることができているのかということは、そこをぜひ、まずコアで議論をして、その上で、どのように子供たちの資質・能力を育んで、学校という場の中で育んでいけるのかということを考えていきたいなあと、考えていただきたいなと思っています。基本、学力というかいろいろな能力はリニアではないんです。直線的に増えていく、累加的に増えていくということではなく、非常にあるところですごく、いわゆる私が記号接地と言っているものですが、自分の中で自分の経験と結びついて府落ちができていれば、そこから自分の推論で急激に伸びるという、それが発達というものなので、そういうことを鑑みた上で、ただただ必要なものを、ただ付け足していくとかそういう考えではなくて、ある非常に大事な難しい抽象的な概念に至るために、発達過程の中でどのように子供たちを導いていくかというような、そういう視点はすごく大事なのではないかなあと思っております。
 以上でございます。
【貞広主査】  ありがとうございます。委員の皆様の熱いお気持ちはもう重々分かっているんですけれども、今回、初回で全ての皆様に御意見をいただきたいので、ぜひ2分を厳守して、私、ほかの部会でもほぼ時短ハラスメントのようなことも座長として、していたんですが、2分程度を守っていただいて御発言いただければと思います。申し訳ありません。
 では、オンラインから今村委員、お願いいたします。
【今村委員】  今村です。2分間の発言、頑張ります。私、ここのところ、NPOを立ち上げて24年目なんですけれども、すごくこの期間の中で変わったなと感じているのが、今の20代、30代の方々が、面接とか採用面接の時に自分たちの仕事を社会にとって良いことを選んで選択したいということを話される方が非常に増えたなと感じているんです。中には総合的な学習の時間でこんな社会課題と出会って、こんなことに気づいたことが今の自分の原体験になっているとか、あと自分のおうちはすごくつらい環境だったけど、授業の一環で出会った地域の方に救われて、今、自分がいるとか、そんなお話をされる方もいらっしゃいます。なので、学校の授業が本当に社会とつながっていることの可能性を非常に感じていて、総合的な学習の時間が設置されたことの意義を感じることがすごく多いなと思っています。
 ただ、すごく人との関係性にミクロに突っ込んでいくとか、人間関係の苦労をしなさ過ぎているというか、傷つきやすい人も増えているなということを感じている中で、学校がたくさん失敗をして、人とぶつかって、意見の違う人と折り合っていくような、そういった共生の作法を身につけていく場所であるということが学校の最大の価値なんじゃないかなと感じています。その中で、部活が学校から手放されていくという現在においては、特別活動とか総合的な学習の時間、探究の時間、こういったことに、きちっと重要度を持って取り組める状況をつくってあげるということが学校の質、授業の質と言えるのではないかと思っていまして、そのために、今現状、それらの特活とか総合学習みたいなものの優先度が下がってしまっているということの原因のところに、今、学校に課しているやらなきゃいけないこと、学習内容のリストが多過ぎるということは、きちんと振り返らなきゃいけないと思っています。
 前回の2015年から始まった特別部会においては、事務局の方から毎回の会議の冒頭で、今回は学習内容の削減は行いませんということを前提に議論してくださいという呼びかけの下で、みんなで議論してきたと思っているんですけれども、今回は削減をするということを目標にするほうがいいと思います。いろいろなことが、もちろんAIによって構成し直されたり、重点化していくということは、そのときが来ると思うんですけれども、ただ、全ての学校に技術的なものが配備されるのも時間がかかる中で、きちんと学習内容を一旦減らしてあげるというところをこの部会でやって、それを指導要領の中でうたわないと学校は仕事を減らすことができないし、特別活動に時間を割くことはできないんだと思います。なので、そこをまず目指した場であるということは前提にすべきかなというのが今回発言したいことの一番のところです。
 以上となります。
【貞広主査】  ありがとうございます。御協力ありがとうございます。では、会場から植阪委員、お願いいたします。
【植阪委員】  東京大学の植阪です。どうぞよろしくお願いいたします。私は学校の先生と一緒に授業をつくってまいりまして今年でちょうど20年目になります。ですので、今回の改訂に関われることは非常にありがたいと感じております。
 まず、前回の改訂で、世界の教育の動向がかなり日本の学習指導要領の中に取り込まれたという実感がございます。学習内容という意味ではなく、こういう子供を育てたいという子供像についての議論がなされ、かなり良い指導要領ができたという認識でおります。その一方で、学習指導要領で用いられている言葉が理解されにくかった側面もあったと思っており、そのために学校の先生に戸惑いが残った部分もあると感じています。ですので、どういう子供を育てていきたいのかという、そのイメージが学校の先生とも共有できていったらますます良いと思っております。
 あと、このところ、教育界では新しい言葉が出てきてアップデートされていくわけですけども、今までの指導要領で大事にしてきたことと、アップデートされつつあることがどのように関連しているのかということも分かりやすくお示しする必要もあると思っています。そうしないと、従来の指導要領の言葉もしくは新しい言葉のどちらかに飛びつく、もしくは、
どちらかが無視されるという形になりますので、その辺りが難しいのだろうと思っております。
 あと1点だけ。どういう子供を育てたいのかということに関して、学校現場でキーとなってくるのが、「評価」です。深い理解が重視されるようになり、プロセスを大事にするとか、意味理解を大事にするということが強調されているにもかかわらず、テストでは式と答えだけしか求められないということも生じています。評価も含めて考えていく必要があると思います。例えば、「なぜそうなるのか」に着目した授業を行った後には、子供自身にも説明を求め、教師は生徒自身が説明できることを評価してあげるとか、そういったことが少しずつうまく取り込まれていき、評価を通じて深い理解のイメージがはっきりしていくことが必要だと思います。そうなると、子供にもどういう姿になってほしいかということが伝わる形になります。今回、参加させていただく中で、そうしたことが議論できていくとありがたいなと思っております。以上です。
【貞広主査】  ありがとうございます。では、オンラインから内田委員、お願いいたします。
【内田委員】  よろしくお願いします。冒頭の説明のところで武藤課長から腹に落ちるというお言葉が何回か出てきましたし、昨日の教育課程部会でも、貞広主査のほうから、様々な中教審での議論を教材として使って、現場の先生方にも参加をして理解を深めていくということが必要じゃないかというお話もあったかと思います。
 教育現場が元気を出して主体的に取り組むというのはすごく大切なことだと思いますし、教育課程、学習指導要領を考える上では、いかに噛み砕いて取り組んでいくのかということが一番大切ではないかなと思います。生徒とか児童も学校の先生に教わったこと、あるいは教材を学んでいく上で分からないことが出てくると、分かった生徒が分からない生徒に対して教える、教え合うというところがあって、先生から教わるよりも、かえってそういった教えてもらったり教えたりというところで理解を深めたり、分からなかったことが分かるようになったりという経験は誰しもあることだと思います。腑に落ちる中身にするためにも、そういった取組をより我々の議論が広く世の中に、特に教育現場を中心として社会にも広まることを期待しておりますし、そのために私も役割を果たしていきたいと思います。
 先ほどの教え合うということも話の中に含まれるかもしれませんけれども、AIであるとかオンラインであるとかデジタル教材であるとか、これからの時代、そういったものを活用して様々取り組まれていることが多くなるというところですけれども、オンライン教材等については、様々民間で今までも取り組みましたけれども、そういった学習がなかなか生徒の定着であるとか継続性というところにつながらないという課題はあったかと思います。実際、教育現場で取り扱うに当たっては、咀嚼する時間、生徒を実際に見て取り組んでいる状況をしっかりケアをするようなシステムも、学習指導要領のツールの、あるいは構造の一環として考えながら議論を進めていく必要があるのではないかなと思います。
 様々、学習指導要領の内容については、オーバーフローの状態にあって、場合によっては教科横断によって、よりオーバーフローが難しい状況になるかと思いますけど、最初、冒頭のところの説明の中で、表組みをして分かりやすく示していくというところもあったかと思いますので、学習項目を整理したり、あるいは単元を単元として扱うのではなく、単元ごとのつながりであるとか、その一部を選択するような方策も取りながら、組んでいくとよいのではないかなと考えている次第です。義務教育と高等学校、それぞれ状況は違いますので、それぞれの状況を踏まえて検討していただけるとありがたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
【貞広主査】  ありがとうございます。では続きまして、小見委員、お願いいたします。
【小見委員】  新潟県を拠点に地域社会と学校をつなぐ学校支援、そして地域づくり支援を主に行っております。学校支援としましては、対話力を高める授業や風土づくり、それらをベースとした探究学習のカリキュラムや授業づくり、コーディネートの支援などをしております。最近では、子供たちの意見表明の機会づくりや、意見表明を支援するファシリテーターの養成にも取り組んでいます。また、文科省の総合教育政策局のコミュニティー・スクールを推進するCSマイスターも拝命しておりまして、各地の地域と学校の協働促進にも関わっております。また、中教審の生涯学習部会の臨時委員も現在、関わらせていただいております。
 教育課程部会においては、地域の立場から、また、学校を支援する立場、そして、PTAにも関わっておりますので、家庭の立場から主に社会に開かれた教育課程の実現に向けた議論に携わっていきたいと思っております。特に学習指導要領において今回、社会に開かれた教育課程というのがビジョンとして示されましたが、それをどのように地域や社会に開いていけばよいのか、具体的な方法が分からず、地域の人材や資源を活用した授業をしていればよいと誤解している学校現場の実態も見受けられます。
 教育課程の編成、実行、評価のどの部分を地域や学校と共有していくのかなど、そういったことを明らかにしていく必要性というのを感じています。また、それらを指導していく教育委員会の理解や、支援力、指導力を高めていくことも併せて必要ではないかと感じています。これからどうぞよろしくお願いいたします。
【貞広主査】  ありがとうございました。委員の皆様から御意見をいただいているところでございますけれども、藤原文部科学事務次官がいらっしゃいましたので、こちらで御挨拶をいただければと思います。よろしくお願いいたします。
【藤原事務次官】  それでは、失礼いたします。事務次官の藤原でございます。本日は大変お忙しいところ、この会に参加をいただきまして、誠にありがとうございます。座って失礼いたします。
 このたびの諮問でございますけども、内外の情勢が大変大きく変化する中で、ますます先行きの不透明な時代になっていると思います。こういった中にあって、次代を担う子供たちに対しまして、どんな力を養っていくことが必要なのか、それをしっかり議論するのが本部会の役割だと思っている次第でございます。また、その際には、中身だけではなくて、これまで個別最適な学び、協働的な学び、あるいは主体的・対話的で深い学びといったような理念が示されてきたわけでございますけども、そうしたものを実質化していくための教育の方法、そうしたものも含めてその在り方を考えていく必要があるんだろうと思います。また、それと同時に、これを現場の先生方が可能とするような、フィージブルな形で、どういう条件の中で、また、どういう教育の中身、教科書の中身、そうした中でこれを実現していくのかといったことも併せて検討が必要だろうと思う次第でございます。
 いずれにいたしましても、本部会での議論がこれからの教育の土台をつくっていく、大変重要な議論であろうと思っております。長丁場になっていく議論だと思いますけども、どうぞ先生方の積極的な御参加をどうぞよろしくお願いを申し上げます。
【貞広主査】  ありがとうございます。御挨拶をいただきました内容についてしっかりと受け止めさせていただきたいと思います。ありがとうございました。
 それでは、委員の皆様から引き続き御意見をいただきたいと存じます。続きまして、澤田委員、お願いいたします。
【澤田委員】  先生の幸せ研究所の澤田と申します。2分で頑張りたいと思います。小学校の教員を経て、今は学校専門で働き方や授業や風土の改革支援をしていますので、その経験も踏まえて、お伝えできればと思います。5点用意してきたので早口になります。
 まずは、教育課程の柔軟性の必要性ということです。人は当たり前ですけど、全員が違います。でも学校や行政で多様性というときに、外国籍や障害のあるお子さんや特異な才能のある子や不登校といった特別な事情のある子に限ったように語られがちだったり、そうじゃないけど、そういう誤解を生みがちだったりということもあるかなと思っています。多様な子とそれ以外の子ということではなくて、いわゆる一見普通に見える教室の中にも人の数だけ多様性があるという前提を改めて認識できるようなことが必要だと考えています。一人一人の子供の違いが分かるのは日々接している先生たちですので、全員が違うという多様性を踏まえるならば、学校現場が一つの教育課程ではなくて柔軟にできるということをいかに明確に保障していくことだと考えています。例えば学びの多様化学校や特例校のような柔軟性が普通学校でもできるということも一つの方向性かなと思っています。
 2つ目です。とはいえ既に学習指導要領の中には大綱的とありますので、実はかなり既に柔軟だとも言えるかなと思っています。これが現場でしっかり理解される学習指導要領になっていくということが重要だと考えています。ほかの委員の皆さんもおっしゃっていますけれども、外してはいけないことは何なのかということがちゃんと示されていくこと、例えばそれが中核の概念であったり教科の本質なのかなと思います。現場を見る限りでは柔軟性を阻害している具体的なものとして、教科書と指導書と学習指導要領の解説がよりどころになり過ぎていることもあるように思っています。
 3つ目ですが、ますます変化の加速する時代に合う学習指導要領にするにはどうすべきかということで、次期の次の改訂にも関わることかもしれませんが、例えば改訂のサイクルを検討し直すとか、あるいは各学校現場で時代を捉えて取捨選択や創意工夫ができるような学習指導要領に、学習指導要領には普遍的な学びの中核だけを載せることにしていくとか、それが中核的な概念のことなのかもしれませんが、そうしたことも考える必要があるのではと思っています。
 4つ目です。学校という職場においては、カリキュラムだけじゃなくて先生も大切な資本だということです。働き方改革を長年支援してきて分かったのは、先生たちのゆとりは子供の学びの充実に直結するということです。これは早く帰れるから先生の私生活が増えて先生が元気に教壇に立てるということだけではなくて、勤務時間の中にも余白が必要で、勤務時間内の余白のできた学校というのは、多くの場合、先生たちが授業改善に向かう姿が見られるようになります。なので、先生のゆとりなのか子供の学びなのかという二項対立ではなくて、少なさがむしろ学びの質の向上につながる面もあると考えるべきだと思っています。
 5つ目です。子供たちの豊かな学びと、その先の個々人の幸せな人生と社会づくりのためにということで考えたときに、現在の学校では価値観の不均衡という課題があるように思います。学校で特に今まで大切にされてきた価値観、例えば勤勉さや真面目さや積み上げや継続という、これらは大切なんですが、行き過ぎが生じて、むしろ豊かさを失っているのではと感じる場面によく出会います。これだけ不登校が増えている中で、一見特段の問題がなさそうな子も違和感を抱えながら学校に来ている可能性も高いと思います。豊かな学びや豊かな人生や社会のためということで、緩めること、楽しむこと、少ないことなんかも同じぐらい価値観として大切にできるような学習指導要領にできればなと思います。これまで良いとされていた価値観も含みつつも良いあんばいを各学校で見つけていく、こんなことを学習指導要領でも思い切って後押しできればと思っています。
 以上です。
【貞広主査】  ありがとうございます。では、神野委員、お願いいたします。
【神野委員】  よろしくお願いします。神野です。一昨日の初中分科会のときにも、お知らせさせていただいたんですが、生成AIに関して、うちの学校では先んじてといいますか、学校の中で様々な取組をしています。そのうちの一つのエピソードを皆さんにも共有させていただければと思っているんですけれども、作文を生成AIを使って書くみたいなことをやっているんです。戦争がテーマだったと思うんですが、そういう形で子供たちに生成AIを渡したときに物すごく戸惑う顔みたいなものが表れてくるんです。どういう意味かというと、例えば戦争をテーマにして300字程度で作文を書いてくださいと言ったら30秒でぱっと出てくるじゃないですか。これでいいのかって子供たち思っちゃうんです。それはどういう意味かというと、これでいいのかというのは、結局この作文自体を判断してくれるのは大人であって、その大人がそれを丸と言うのか、丸と言わないのかという形が30秒で出てきちゃうからこれでいいのかなという気持ちになっちゃうわけです。
 こういうような価値観ということの下、生成AIを使うと、それって全く本質的な生成AIの使いではなくなってしまいます。私たち、ずっと子供たちにあなたの思いやアイデアというのは最も大切なんだよと。だから、君がどう思うのかということを、生成AIを補助装置として使いながら使うことが大切なんだという形をずっと言い続けました。そうしていくごとに、だんだんと自分の本当に表現したいものをこいつと向き合いながらつくっていけばいいのねという形になって、どんどん子供たちの表情が晴れやかになっていったりしました。
 資料1-1にもありますとおり、生成AIというのは多様な個人の思いや願い、意思を具現化し得るチャンスを生み出しているんですが、実は多様な個人の思いや願い、意思を具現化していいんだということを学校がしっかり環境として整えないと、生成AIを使ったときに非常にまずいことが起こるというのが私が感想として思っていることです。つまり、今の評価軸、先生がマル・バツをする存在であるからこそ、先生が望むものをつくらなきゃいけないんだよねという価値観の下、生成AIを使ったら、子供たちは自分があまり理解しないままでも、先生、これってマルと思うの、バツと思うの、とぽんぽん出してきます。そうではなく、もし評価軸を考え直すとすれば、判断軸自体が自分にあるんだ、自分の判断軸というもので生成AIを使っているかどうかをどう評価するのかというようなことを今後、考えていかなければいけないんじゃないかなと思いますし、そのようなことを私も審議として、自分の実体験を含めて、今回の中で共有させていただければなと思っております。
 そういった意味では、Googleみたいなものが生み出した中で、インターネット社会の中で情報活用能力という言葉が生まれましたけれども、恐らく生成AI時代、Society5.0時代に求められる能力は能力で、何かの名詞付けが必要なんじゃないかなとも思っています。
 そしてまた、もう一つ、多様な個人の思いや願い、意思を具現化していいんだよという思いは、恐らく学校の生きづらさみたいなものも払拭するチャンスになり得ると思いますから、ここは共通の処方箋として考えられるんじゃないかなと思っています。
 最後に、そういうような形で子供たちの意見を聴くことはすごく大切だと思っていますが、もう一つ、佐賀市の教育委員会に携わらせていただいている中で感じるのが、若手教員にどういう研修をしてほしいですかという話をしてみたら、アンケート結果で出てくるのは授業改善なんです。一方で、ベテランとか管理職の方々にアンケートを取ると、危機対応と言うんです、みんなそろって。そういった意味では、まさに働き方改革みたいな文脈の中で、確かに学習指導要領の中で授業という話はすごく大きいんですが、もう少し包括的に先生たちの意見というのを取り巻いた中で働き方改革ということを考えていくのも大切かなと思っていますし、私も一管理職として全国ニュース的にもなりましたので、そんなエピソードも皆さんに共有させていただきながら頑張らせていただこうと思っております。
 以上です。
【貞広主査】  ありがとうございます。では、髙島委員、お願いいたします。
【髙島委員】  こんにちは。兵庫県芦屋市長の髙島です。私はちょうど2回前の学習指導要領改訂を中高生として経験しました。先行実施の2009年に中学校に入学して、センター試験を化学基礎とか物理基礎が始まったときに受験をしました。改めて、学習指導要領というのは子供たちの学び、そして人生を大いに変えうるんだなということを感じます。そこを肝に銘じて、あとは子供に最も近い立場として、学習者たる子供たちの声を聴きながら精一杯務努めたいと思いますので、よろしくお願いします。
 長くなりそうですので、2点にパッと分けて説明します。1点目、学習指導要領は何のためにあるのかと、もう1回考えたほうがいいなと思っています。芦屋市は教育を一丁目一番地として取り組んでいます。それは、教育こそがまちの未来を切り拓くと信じているからです。ただ、市民の方と話すとこんな声を聴きます。「市長、学習指導要領のせいでやりたいことができないんじゃないの」とか、「学習指導要領のせいでやることが増えて困るよ」とか。とかくスケープゴートにされがちなのが学習指導要領なんじゃないかなと思うんです。ただ一方、アメリカの友人と話すと、「日本って学習指導要領があるおかげで良い取組がすぐ横展開できていいよね」という声も聴きます。日本全国、どの子供も取り残すことなく新たな学びが実現できるというのも存在意義なんじゃないかなと思います。
 だからこそ、在り方について検討事項に入っていることは本当にすばらしいなと思います。学校現場に携わる方、携わられない市民の方々もそうですし、何より子供に検討の過程が伝わるような、そんな議論の発信を期待したいと思いますし、私もできる限り発信に努めていきたいなと思います。
 2点目が、そろそろ真剣に学校は本当に要るのか考えたほうがいいと思っています。基礎学力をつけるだけなら本当に家でAIをやったほうが早いというような時代に差しかかるんじゃないかと思いますし、弟が昨年、高校を卒業したんですけれど、学び方が全然違います。私はでも学校ってやっぱり要ると思っています。なぜかというと学び合いの場だからです。子供たちにとって最も身近な社会である学校という場を、まさに民主主義を学ぶ場にするということが大事なんじゃないかなと思います。
 芦屋市は「ちょうどの学び」というものを掲げた教育大綱に基づいて、教育の質を上げようと取り組んでいます。主体性の回復というものを大事なテーマにしていまして、学力が高くてもウェルビーイングと学びへの意欲が低い子供たち、どうやってそれを解決するかというと主体性を回復することしかないなと。そのためには先生が子供を信じて委ねると。そのためにも、まずは教育委員会が先生を信じて委ねる。
今、研究指定校を廃止して、探究したいという先生を支援しようとしているんですが、この形は同じなんじゃないかなと思います。文科省がそれぞれの地域を信じて委ねるということはとても大事なんじゃないかと感じます。
 ただ、1点目で述べたように、まさに全国どこでも共有できるというところの意義もありますので、全体の質の担保と、そして主体性を応援するということ、このバランスがとても大事なんじゃないかなと思いますので、ぜひ教育に携わる者の全ての主体性を応援できるような、生かせるような環境づくり、私も尽力したいと思います。よろしくお願いします。
【貞広主査】  ありがとうございます。では、続きまして、戸ヶ﨑委員、よろしくお願いいたします。
【戸ヶ﨑委員】  長くなると思いますので、時間短縮に全面協力させていただくこととして、野口委員にバトンタッチしたいと思います。以上です。
【貞広主査】  承知いたしました。ありがとうございます。では、野口委員、お願いいたします。
【野口委員】  戸ヶ﨑委員、ありがとうございます。障害分野におけるインクルーシブ教育が専門の野口晃菜と申します。現在、自治体や学校と連携してインクルーシブな学校づくりを推進しています。
 本当に今回の諮問内容、とても心強いです。「共生社会」や「包摂」という言葉があり、委員の皆様からも「協働」や「共生」という言葉がありました。皆さん御存じのとおり、日本は2014年に障害者権利条約に批准をして、障害者差別解消法ができて、この4月に私立の学校も含めて全面的に合理的配慮の提供が義務づけられました。つまり、これからの子供たちは障害のある人と障害のない人がともに生きるための合理的配慮が当たり前の時代を生きるわけです。日本は共生社会を目指してインクルーシブ教育システムの構築を目指してきましたが、特別支援学級や特別支援学校に通う子供たちというのは年々増加しています。つまり、これまでは通常の学級や学校に在籍していた子たちがどんどん別の場に在籍しているということです。特に特別支援学校に通う子たちと地域の学校に通う子供たちが共に学ぶ機会というのは、年に2回ほどです一方で、社会では共に生きていかなければなりません。先ほどもお話にあったように、労働人口の減少もあり、障害のある人も障害のない人も共に働いていかなければならない。
 現在は、障害によって今、学びの場を分けるシステムですが、このようなシステムは、障害のある子供と障害のない子供が共に出会って協働する経験、先ほど今村委員からもありましたが、共生の作法を学ぶ機会を奪っているとも言えるのではないでしょうか。実際に私たちの中にも障害のある人と出会い共に過ごす機会がなかった人が多いのではないのかなと思います。多くの企業が今困っています。いろいろなところに研修に呼ばれて、障害のある人をどうやって雇用したらいいのと言われています。本来は学校というのは誰もが異なる他者と出会って協働する経験を保障すべき場ではないのかなと思っています。同じ地域にいる特に重度の障害のある人と出会う機会がないというのは、子供たちにとって本当にいいことなのでしょうか。
 現状は特別支援学校に行かないと必要な支援が得られないので、特別支援学校に行く子が増えていますが、多様な他者と出会って共に生きる方法を学ぶということと、個々のニーズに応じた教育目標や内容を学ぶ、かつ必要な支援を得るということがトレードオフになってしまっていることが一番の問題だと思います。一方で、皆様からもありましたとおり、個別最適な学びと協働的な学びが推進され、GIGAスクールで一人一台が確立されている中で、通常の学級においても多様な子供がいることを前提とした教育実践というのは進んでいます。つまり、別の場に在籍しないと自分に合った学びができないという前提は変わりつつあるのではないのでしょうか。今回、論点の中に多様な子供たちを包摂する柔軟な教育課程の在り方とありますが、これまでのように個々のニーズによって場を分けること、先ほど澤田委員からありましたが、例外の子供たちを分けて、多様なニーズに対応していこうとするのではなくて、通常の学級や通常の学校そのものを多様な子供たちがいることを前提とした場にしていく、そういったインクルーシブな教育課程をこの部会では考えたいと思います。
 最後になりますが、こういった多様な子供たちのニーズに応えるインクルーシブ教育のためには、関わる大人の多様性が大切だと思います。だからこそ教職員一人一人ができることを一人一人が増やしていくというよりも、一人一人の強みとか得意が生きるような、そういうチームづくりをしていくということが重要だと思います。この部会も本当に多様な人が集まっていて、多様な傍聴者もいるという中で、この部会自体が多様な人の声を聴くということと、そして異質な他者と協働するということはどういうことなのかというのをここで体現していきたいなと思っています。
 以上です。
【貞広主査】  ありがとうございます。では、前川委員、お願いいたします。
【前川委員】  京都府教育委員会教育長の前川でございます。私、現場の教員を20年、それから、現場の管理職3年、教育委員会18年、勤務しております。そういった現場とそれを支える教育委員会の立場、言い方を変えますと、任命権者であったり、給与負担者としての立場も踏まえて、この部会に参加させていただきたいと思います。
 3点ほど申し上げたいことがあるんですが、まず、1点目は、次期学習指導要領は、恐らく2030年代に全面実施に入っていくだろうと思います。そして、それまでの準備期間が、この議論の公開も含めて、現場でできる取組からしていただきたいというような願いの下に進められるのだろうという期待を思っております。そのために、事務局も意図的に日程の公開ですとか見通しをお示しいただいているわけですが、そういったことの現段階での浸透を図るということも大事なんですが、当然のことながら今、学校の現場の実態といたしまして、20代、30代の先生が半数、あるいは半数以上を占めております。ちなみに、京都府では、全体では小中高等、特別支援学校全体で48.5%なんですが、これは高校がパーセンテージを下げているだけで、小中、特別支援学校においては、いずれも50%を超えております。
 これは2つのことを意味しておりまして、一つは、ベテラン層に比べると、経験値がまだ十分でない先生方が現場にはたくさんいる、その先生方に学習指導要領、あるいは、この場の議論を届けていくということの意味、もう一つは、現在、20代、30代の先生は、次期学習指導要領が全面実施されていく2030年代には中核教員になっているということです。この層がいかに学習指導要領の趣旨の理解だけにとどまらず、授業改善ですとか授業づくりに結びつけていけるのかということを考えられる、実感できる、そういう議論であったり学習指導要領の中身にしていきたいと思いますし、そのために参加させていただきたいと思います。
 2点目は、貞広主査に随分御尽力いただきました質の高い教師の確保特別部会から出されました方向性で、今、政府予算案や給特法の改正が審議をされておりますけども、これが通りましたら、教育界としては何十年ぶりの画期的な改善になろうかと思います。一方で、働き方改革を当然進めながらということですので、学習指導要領の働き方改革をしっかりと意識したものにする必要がある。ただし、一方で、学習指導要領は誰のためにあるのか、誰の学びのためなのかということを考えると、これ当然児童生徒のためなんです。そうすると児童生徒の学びの深さとか質とか、こういうことをしっかり担保できる学習指導要領にしていく必要がある、非常に多様性が今は求められて、働き方改革との両立ということを考えたときに、選択とか、精選とか、あるいは弾力的ということが恐らくキーワードになってくると思うんです。
 しかし、義務教育はどういうことを意味するかというと、当然皆さんお分かりのとおり、地域や家庭環境、家庭の経済力に関わらず、皆が少なくとも、このレベルまで学びの力をつけましょうというためにあるわけです。ここを忘れて、極端な弾力化、極端な精選ということになると、義務教育においては、地域差、家庭差、家庭の環境差ということが、現在以上に如実に出てくる危険性があると私は思っております。ですから、量、中身、内容の削減、ここについても慎重に検討をしていただきたいなあという思いを持っております。
 3点目ですが、高校の教員を長らく勤めておりましたので、その観点で一つ申し上げますと、当然のことながら学習指導要領も義務教育と教育課程の仕組みが異なります。一方で、高校は現在、非常に多様な生徒、多様な進路目標、荒瀬委員からはキャリアという言葉が出てきましたけども、こういった方向性と社会から多様なニーズを求められています。ですから、小中学校と高校では議論する方向性の中身というのが少し異なるのではないかなと思っておりまして、小中学校の議論が一定進んだ段階で、高等学校の教育課程の在り方については集中的に扱っていただくなど、議論の進め方、在り方にぜひ工夫をしていただければと思いますので、よろしくお願いいたします。
 以上です。
【貞広主査】  ありがとうございます。では続きまして、松原委員、お願いいたします。
【松原委員】  全国連合小学校長会の松原と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
 諮問の概要にある現在の学校現場の状況のところですけれども、コロナの制約の中でGIGAスクールに対応したことや、各種調査の結果の改善に触れていただいて、質の高い教師の努力と熱意に支えられ、大きな成果と位置づけていただいたことは大変ありがたいと感じました。そして、顕在化している課題のところでは、丸2、学習指導要領の理念や趣旨の浸透は道半ばとありますけれども、特に小学校の場合は学習指導要領とコロナ、そしてGIGAスクールの対応が同時進行だったため、道半ばという思いは我々も強いところがございます。その上で、主な審議事項の中から注目しているところをあえて3点に絞って申し上げます。
 第1は、内容の精選です。子供たちに身につけさせたい力をより一層明確化することで、学校は大切な内容を豊かに学ぶことができる場であると、子供たちに学ぶ意義、あるいは学びがいをしっかりと届けていきたいと思います。
 第2は、評価の問題です。資質・能力をどう評価するのか、現場では大変苦労しておりますので、改善に期待をしております。
 第3は、裁量の拡大、柔軟な教育課程編成です。制度としてはできますということではなく、現場で使いやすい形で実現したいと考えています。
 最後に、分かりやすく使いやすい学習指導要領というのはとても重要だと思います。内容面についてはたくさん出されましたので、簡単なところで少し申し上げますと、表形式等の活用というのは、人間が読むことを前提としておりますけれども、例えばこれからはAIに資料として読み込ませて、教師が質問することで知りたい内容を得ると、そんなような使い方も増えてくるのかなと思います。そうしたことへの対応も進んでいくことを期待しております。
 私からは以上となります。
【貞広主査】  ありがとうございます。では、溝上委員、お願いいたします。
【溝上委員】  桐蔭学園の溝上でございます。昨日の教育課程部会で申し上げた全体というものを、少し違う角度から話をしますけれども、例えば野球のピッチャーがストレートとカーブで、いいピッチャーだといって活躍しているときに、変化球一つ覚えると結構崩れるんですよね。それまで投げていたストレートで、球のスピードも変わらないのに打たれまくると。私は現行の学習指導要領は結構よくできていると思っていまして、もちろん各論での問題というのはありますし、一つ一つどんどん解決していきたいと思っていますけれども、ガラガラポンしないで、これまでの取組を基礎として基本が崩れないように全体を発展させてほしいということを強くお願いします。
 石井先生が、主と従という言い方をされて、私はその考え方が大事かなと思います。例えば大臣諮問で、学ぶ意義を十分に見いだせなくて主体的に学ぶことができない子供が多いと言われていますけども、楽しく学んでいる子供もたくさんいます。生きづらさ、生きづらさと言いますけれども、学校で楽しく学んでいる子供たちもたくさんいます。新たな課題を入れることで、全体のこれまで作ってきた良さをぜひ失わないように、全体の再構造化を慎重に検討してほしいと強くお願いします。
 個別最適な学びも、主体的・対話的で深い学びとの関係の中で位置づけていくという話がありまして、本当にそのとおりお願いしたいんですけれども、もう一つ手前に、一斉授業で学んできた日本の伝統的な学校教育とありますので、一斉授業が否定される形で2つの学びが整理されるというのではかなり問題です。いろいろな学び方があっていいので、これまでの一斉授業や発問式の練り上げ型、集団でのペアワーク、グループワーク、発表等の「主」がしっかり基礎となって、その上で様々な配慮を行う学びや取組、現場の裁量が「従」としてあればいいと思います。この辺り、間違えないようにお願いします。
 ほかの部会でもこの話よく出るんですけれども、事務方、なかなか文科省は優秀で、いろいろな問題が出てきたのを並列にパッとまとめて、どれが大事なのかがよく分からなくなる、そういう取組をよく見てきました。ぜひウエートを、何が「主」で何が「従」なのかを明確にして、それでもこういう課題があると、こういう進め方で検討をぜひお願いしたいと思います。
 以上です。
【貞広主査】  ありがとうございます。では、オンラインから宮原委員、お願いいたします。
【宮原委員】  ファイザーの宮原でございます。私は、企業の立場から、東京都の教育委員もさせていただいておりまして、また別途、経済団体、経済同友会のほうで学校と経営者の交流委員会というところで、御依頼に応じて、全国の学校の中高生のキャリア教育ということで経営者を派遣しておりますが、その一環で毎年、数校キャリア教育をさせていただいております。教育の専門家ではないという立場で、企業の立場でキャリア教育の授業を行っています。よろしくお願いいたします。
 企業の観点から手短に2点申し上げます。前提として、今回の諮問におきまして、求める人材、子供たちにどうなってほしいかということを考えていくということが、まず、一丁目一番地ということをほかの委員の皆様からもお話がありましたが、私も大変重要なことだなと思っております。そのうえで企業におきましては、これから特に、ますます若い人材というのは貴重になっていきまして、社会人になってからの選択肢も若い世代は今までとは違い多様な選択肢があるという社会になっております。そういった中で、子供たちには自分の将来、自分の属する社会に対して希望が持てる、将来を信じられる、あるいは何度でもやり直すことができるという意欲がもてる子供たちが社会に出てきてくれるということを企業としても望んでおりますので、そういったことに即するような議論ができればなと思っております。
 一方で、2点目として審議方法について、2つほど御提案がありまして、一つが様々なステークホルダーからしっかり意見を聞いていくということが重要だと思っていまして、今回、お子さん、子供の意見を聴くというのは大変重要な取組だなと思いました。今後の議論の方向性によっては、今回だけではなくて複数回行ってもいいのではないかなと思いましたのと、それ以外のステークホルダーでも、現場の教師ももちろんそうですけれども、社会の理解が必要ですので、特に保護者のお考えということもしっかりと議論の中に取り込みながら、議論を進めていくのはどうかなと思いました。そういった意味では、先ほど荒瀬先生もおっしゃいましたけれども、2つ目の提案として少人数でテーマ別に分かれて議論するということもあってもいいのかなとは思いました。
 以上でございます。
【貞広主査】  ありがとうございます。会議終了予定時刻を過ぎておりまして、大変申し訳ありません。今しばらくお時間を頂戴できればと思います。
 では、山本委員、お願いいたします。
【山本委員】  横浜市教育委員会事務局学校教育部長の山本です。もう時間を過ぎているようなので、私からは2点、簡潔にお話しさせていただければと思っています。
 私が30年近く教職に携わってきて、今思うことは、感動が人を成長させるのではないかということです。人の成長の瞬間に立ち会える、これはとても感動的なことだと思います。そんな感動の連続が教師の仕事だと感じています。このような人を育てる上での哲学とか思想は、実は学習指導要領の中にも記述が見られるわけですけども、多くの教職員の皆さんは、先ほど石井先生からも話がありましたけども、授業時数とか教科内容の変化とか、その変化するものにばかりを注視する傾向があるようです。さらに経験年数の浅い先生方は、指導書に頼るような実態もあります。私は経験年数の浅い先生たちにこそ、こうした人を育てる上での思想であるとか、評価の本来の価値や目標を伝えて議論していくことが大事じゃないかと思っていますので、先ほどユーザビリティという話もありましたけども、今後は、構造を整理、可視化して、世代やニーズに合わせて読み進めることができるような工夫を進めながら、これからの学校教育では、リアル、オンライン、AIとかメタバースなどのバーチャルの3層空間をしっかりと考えて、その中で学びを進めていくということが大事だと思います。
 2点目は、データの活用ということです。少子化が進む我が国の中では、特に必須だと考えているのですが、教員自身が教室ですぐに活用できるような教育データというのが、まだ手元にはないように思っています。横浜でもIRT型の学力・学習状況調査を独自で実施して教員に結果を伝えていますが、すぐに活用というところには結びついていません。今年度、学習ダッシュボードや教育データサイエンス・ラボを整備して、教育データの収集や分析、活用しやすいデータの加工、どこでも使えるような提供ということを一体化して進めたところで、ようやく活用率が上がってきているような実態があります。
 教員にとってデータが日常的に使うことができるようになるまでは、国や教育委員会が教員に伴走して活用を支援していく仕組みを構築していくことも必要ではないかと考えています。今後はこのような事例も出しながらぜひ議論に参加させていただきたいと思っていますので、どうぞよろしくお願いいたします。
【貞広主査】  ありがとうございます。では最後に、奈須教育課程部会長に御意見をお願いいたします。
【奈須委員】  部会長としては、今回の検討事項は多岐にわたるんですけども、非常に具体的で明確なものが出ているかと思います。全ての検討事項についてしっかりとした、また、事項間の相互関係、相互作用というのがあると思うので、これを見据えた構造的な、局所的ではない構造的な審議というのができるといいなと思っています。
 1点だけですが、現行指導要領で変化はいっぱいありましたけど、学力論とか学力の質ということ、その重心の移動ということが一番大きかったと思います。いわゆる内容中心、領域固有知識の量が学力だという考え方から、資質・能力を基盤とした、自在に転移可能な中核的な概念に基づく統合的意味理解とか見方、考え方を大切にしていこうということだったと思うんですけども、それが石井委員からもありましたけど、現行指導要領では、内容について具体的に検討はあまりしないということでしたので、そこが積み残しになっているということが非常に大きいかなと思います。
 それと合わせて、表ということもありましたが、現行の学習指導要領の様式というのは昭和33年に整備されたものです。昭和33年指導要領というのは、典型的な内容中心学力ですよね。内容中心学力に対して最適化された様式や表現方法なんだろうと思います。そこの枠内で考えている限り、難しいことがあるんだろうなと思っています。その意味で、抜本的に、かなり原点から見直す必要がいろいろなところにあると思いますし、ある意味で、過去を断ち切って前進するという必要性が今回出てくるのかなと思います。現行指導要領もかなり英断があったと思いますけれども、今回もそれを熟成するために、また、別な面での英断というのが必要だろうと。
 ただ、それがいたずらに概念を増やしたり、言葉を増やしたりしないようにするということにどう留意するかというあたりがなかなか難しいなと思って考えております。よろしくお願いいたします。
【貞広主査】  ありがとうございました。
 戸ヶ﨑委員に御協力をいただいたにもかかわらず、既に時間が超過しておりまして、申し訳ありませんでした。
 先ほど青海委員から「こども若者いけんぷらす」のことについて御質問をいただいたんですけど、これは事務局から別途御回答いただければと思っております。
 それでは、時間が参りましたというか、もう超過しておりますので、本日の議事は以上とさせていただきます。皆様の熱い思い、御意見をいただきまして、もう少し時間があるとゆっくりお伺いできたのですけれども、時間の制限がありまして、申し訳ありませんでした。どうもありがとうございます。
 最後に、次回以降の予定につきまして、事務局よりお願いいたします。
【栗山教育課程企画室長】  次回は2月17日月曜日、15時半から18時を予定しております。また正式に御連絡差し上げます。
 以上でございます。
【貞広主査】  それでは、以上をもちまして、閉会といたします。どうもありがとうございました。
 
―― 了 ――

お問合せ先

初等中等教育局教育課程課教育課程企画室

電話番号:03-5253-4111(代表)

Get ADOBE READER

PDF形式のファイルを御覧いただく場合には、Adobe Acrobat Readerが必要な場合があります。
Adobe Acrobat Readerは開発元のWebページにて、無償でダウンロード可能です。