令和7年9月5日(金曜日)10時00分~12時00分
文部科学省
※対面・WEB会議の併用(傍聴はWEB上のみ)
【堀田主査】 おはようございます。定刻となりましたので、ただいまから中央教育審議会初等中等教育分科会デジタル学習基盤特別委員会、デジタル教科書推進ワーキンググループの第11回を開催いたします。
本日もまた御多忙の中、御出席いただきまして誠にありがとうございます。
本日は全員出席でございますが、坂本委員と中村委員、奈須委員、細田委員、松下委員がオンラインでの御出席となっております。お忙しいところ都合をつけていただきまして、ありがとうございます。
また、本日は冒頭の撮影の希望がありまして、それを許可しております。事務局の指示に従いまして、御協力をいただければと思います。
それでは、事務局から連絡事項等お願いいたします。
【西田教科書課課長補佐】 初めに、前回の会議から事務局に人事異動がございましたので、御紹介させていただければと思います。
7月15日付で、学習基盤審議官に堀野晶三が着任しております。
【堀野学習基盤審議官】 堀野です。よろしくお願いします。
【西田教科書課課長補佐】 続いて、同じく7月15日付で、教科書課長に後藤教至が着任しております。
【後藤教科書課長】 教科書課長に着任しました後藤でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
【西田教科書課課長補佐】 では、本日の会議開催形式及び資料につきまして、御説明させていただきます。
本会議は、前回と同様、対面とオンラインのハイブリッド形式での開催でございます。オンラインで参加されている委員もいらっしゃいますので、会議を円滑に行う観点から、御発言時以外はマイクをミュートにしていただきますようお願いいたします。カメラにつきましては、御発言時も含めて会議中はオンにしていただきますようお願いします。御理解のほどよろしくお願いします。
次に、資料の確認をさせていただきます。本日の資料でございますけれども、議事次第に記載のとおり、資料1と2、加えて参考資料が1、2、3、4となっております。対面で御参加の委員には紙でもお配りしてございますけれども、お手元の端末でも御覧いただけます。不明な点がございましたらお申しつけください。
では、冒頭の撮影はここまでとさせていただければと思います。御協力のほどよろしくお願いします。
(プレス退室)
【西田教科書課課長補佐】 失礼いたしました。では、事務局からの事務的な説明は以上とさせていただきます。
【堀田主査】 皆さん、私の声は聞こえていますでしょうか。御迷惑をおかけしました。こちらのトラブルでございました。
今、最初に開会の宣言みたいなことを私がしまして、それで事務局の異動についての御説明があり、冒頭にカメラが入りましたので、その方々の撮影と、それで御退室いただくというところまでやったところでございました。事務局からの御説明が終わったところから再開させていただきます。
それでは、議題に入りたいと思います。本日は、報道関係者及び一般の方々に本会議の模様をYouTubeにて配信しております。よろしくお願いいたします。
それでは、議題1です。審議まとめの素案でございます。今年の2月に、私どものこのワーキングでは中間まとめを取りまとめいたしました。その後、パブリックコメントをいただいたり、関係団体に御意見をいろいろ承りました。、その際、当面の間という言い方をしていましたが、新しい制度になるまでの当面の間の推進方策や制度面の検討事項、これについても議論を行ってきたところでございます。
これらの議論を基に、このワーキングで何度か会議があったわけですけども、共通認識が得られたと考えられるものにつきまして、具体的に整理をしていただきまして、今日、審議まとめの素案として事務局から御説明をいただくことになっております。資料の1と資料の2でございます。今日はこの二つの資料を審議していただくということになります。
私どもがずっと議論してきたことであり、中間まとめの延長でいろいろやってきたことではありますが、齟齬がないかとか、このタイミングですから、こういうふうに書いたほうがいいんじゃないかとか御意見があろうかと思います。御意見を忌憚なくいただければと思います。
それでは、後藤課長、御説明をお願いいたします。
【後藤教科書課長】 ありがとうございます。改めまして、教科書課長に着任しました後藤でございます。どうぞよろしくお願いします。
それでは、資料1と2を準備させていただいております。資料2のほうは概要でございます。今日はお時間をいただきまして、資料1の本文のほうを中心に、順次、御説明させていただきたいと思っております。
まず、資料1の冒頭の1ページ目から2ページ目にかけてのところでございます。「はじめに」というところでございますが、この「はじめに」では、この当デジタル教科書推進ワーキンググループの検討の背景を記載しております。ここは中間まとめのところから大きな変更はありませんけれども、この1ページ目の下から4行目あたりから、新たに、中間まとめ後の議論の経過でありますとか、教育課程企画特別部会との連動もしながら、教科書制度の改善については先んじて検討するという形で進めてきたこと、また、今後の国における必要な制度改正や、教科書づくり、授業づくりの現場での創意工夫への期待などを記載しているところでございます。
2ページ目からの「デジタル教科書を取り巻く状況」についても、ここも中間まとめから大きな変更はありません。この2ページ目の中ほどに、ICTが社会に急速に浸透し、知的活動や社会・経済活動を大きく変革していくこと、それから3ページ目にかけては、学びでは主体的、対話的で深い学びや、個別最適な学びと協働的な学びの重視、そのためのGIGAスクール構想の推進などを記載しておりまして、さらに4ページ目に行って、4ページ目の上から2行目から4行目あたりにかけてですけれども、教育DXの方向性として、学習内容が体系化されたシンプルで良質な教科書を羅針盤に、多様なデジタル教材・ツール等を効果的に組み合わせること。また、この4ページの下から5ページ目にかけては、次期学習指導要領の検討では、デジタル学習基盤を前提とした新たな学びにふさわしい教科書、デジタル教科書の在り方が論点として盛り込まれているという旨を記載し、整理をさせていただいているところでございます。
続けて、5ページ目の中段目以降のデジタル教科書の現状の部分ですが、ここについても、中間まとめから大きな変更はありません。紙の教科書の内容の全部をそのままデジタル化した教科書、代替教材であるため、使用義務や検定、採択、無償給与の対象外と今はなっているということ。また、次の6ページ目の中段ぐらいでは、諸外国の状況を整理いたしております。教科書として紙の図書のみを認める制度の国は主要国ではほとんど見られないということ。また、この6ページの下の注釈の部分では、韓国、エストニア、それからスウェーデンについて、最新の状況に合わせて修正、記載をさせていただいているところでございます。
また、6ページから7ページにかけては、活用状況ということで、国から、英語は100%、算数・数学は55%の小中学校へ提供して、6割以上は4回に1回以上の授業で使用していることや、使用歴に比例してデジタル教科書の使用頻度が増加をしていることなどを記載しているところでございます。
また、7ページ目の後半の部分から8ページ、9ページ、10ページにかけては、中間まとめから引き継いで、デジタル教科書の活用の実態につきまして、英語、算数・数学、国語、また、特別な配慮が必要な児童生徒への対応の場面について記載をしているところでございます。
11ページ目からは、活用効果ということで記載をしております。いつもこのデジタル教科書を使う児童生徒は、授業内容がよく分かっている、また主体的な学び、対話的で深い学びに取り組んでいる割合が高いといったような点、また、1年間にわたるデジタル教科書の使用で学力調査の得点が向上したというようなことなど、成績や学力が向上したというような研究や自治体の例に加えまして、このページの一番下の丸の部分でございますけれども、記憶定着や理解度に関して、デジタル教科書も、紙の教科書も同等程度の結果であったという研究結果や、学習方法や教師の役割も変化する中で、デジタルのメリットを生かす使い方が重要であるとの指摘を、ここの部分は新たに追記をさせていただいているところでございます。
次の12ページのところですけれども、12ページの下のほうからは、今後のデジタル教科書の在り方についての記載となっております。中間まとめからここも引き継ぎまして、基本的考え方といたしまして、新たな学びの実現には、関係者の納得と共感を得ながら、教育現場の創意工夫を最大限生かす環境が重要で、社会の急速な変化や様々な教育ニーズに対して、適時適切に対応できる柔軟な制度設計が適当だとした上で、次の13ページの中ほどになりますけれども、紙かデジタルかの二項対立ではなくて、どちらのよさも考慮し、生かしていくという考え方を記載しております。
その上で、この13ページの下半分のところから、「制度的位置付け」ということになっておりますが、この「制度的位置付け」の観点からは、これまでの効果・影響等の蓄積や、学校関係者からの意見などを踏まえて、次の14ページ目の下から二つ目の丸の部分になりますけれども、方向性として、教科書の形態として紙だけでなくデジタルも認め、現場が選択できるようにすることを制度上位置付けて、検定、採択、無償給与の対象にするということとともに、それから15ページの一番上の部分になりますけれども、一部が紙、一部がデジタルで作られたハイブリッドな形態の教科書も認めていくという方向性を改めてここに記載をしております。
また、15ページの中ほどからは、ガイドライン(指針)のことについても記載をしております。ここは中間まとめ後の新しい記載の部分になっております。デジタルのよさを取り入れて、技術革新や社会の変化を踏まえた柔軟な対応を可能にするということは重要である一方、教科書の作成、また採択に当たっては、教科特性や児童生徒の発達段階などに応じた検討が重要ということで、下からこのページの三つ目の丸のところでございますけども、紙とデジタル双方のよさや関係者の意見等を踏まえて、国が一定の指針、ガイドラインを示すことが必要であるということを記載させていただいております。
また、この15ページの一番下の導入時期のところですが、ここは中間まとめを引き継ぎまして、次期学習指導要領の実施に合わせて使用できることが望ましいという旨を記載しているところでございます。
続きまして、16ページ目に行っていただきまして、16ページの中ほど以降では、関係制度の方向性を記載しております。これ以降は中間まとめの後に御議論いただいた内容が中心で、ほぼ新しい記載ということになっております。
まず、教科書の範囲といたしましては、教科書の範囲のところの三つ目の丸にありますように、検定を経ることを前提に、学習指導要領に基づいて教育内容が文字や図画等により系統的、組織的に記載されたものとした上で、その下の二次元コード先のコンテンツのことに関しましては、現在は教科書ではなく教材という扱いですが、次の17ページの中ほどになりますけれども、「このため」で始まる段落の部分があり、そこに記載しておりますが、今後は、教科書の一部として位置付けられるものに限定をして認めていくと。これによるコンテンツの無制限な拡大の抑制により、教育現場や発行者の負担を軽減しつつ、検定対象となることで質の保証も実現すると考えられるということを記載させていただいております。
また、このページの下のほうですけれども、教科書の内容・分量の関係です。17ページの下の部分ですけれども、内容・分量が大幅に増加し、教科書を網羅的に教えなくてはならないという根強い考えもあって、現場に負担感があるという、こういった指摘を踏まえて、次の18ページにわたりますけども、18ページの上からの3行分のところに書いておりますが、教科書を網羅的に教える必要はなく、それは使用義務の観点からも許容されるということ。教科書「を」教えるから、教科書「で」教えるという、この観の転換が必要であること。
また、17行目にあるんですけれども、新たな学びに対応する観点から、教科書は教科等の中核的な概念をつかみやすいものにして内容・分量を精選しつつ、教科書に加えて適切な教材を場面に応じて選択して使用することで、学びの充実を図っていくことが望ましいということもここに記載させていただいております。
続きまして、検定についてでありますが、二つ目の丸の丸1、丸2とありますけども、形態が紙かデジタルかを問わず、文字や図画等による内容を審査する。また、その内容の効果的な理解に資すると認められるデジタル機能は、限定的な範囲で一定の確認を行うにとどめる。こうした考え方に基づいて、19ページの一番上の丸のところでございますけれども、デジタル部分の具体的な検定方法、またデジタル機能の範囲、各教科における音声あるいは動画の扱いなど、検定審議会において専門的に検討が必要であるということを記載させていただいております。
続けて、採択についてですが、この採択のところでは、この二つ目の丸のところで、採択権者に示される教科書見本は、紙、デジタルいずれも実際に供給される教科書と同等のもの、方式で示すことが適当だということ。それから三つ目の丸のところでは、採択に当たって、デジタル機能の一覧を示すなど、採択事務の負担軽減の工夫の必要性についても記載させていただいております。
続けてその下ですが、発行・供給に関してです。これはページをおめくりいただきまして、20ページ目の一つ目の丸のところでありますけれども、教科書のデジタル部分の供給については、ライセンス期間など定まった一定の期間、児童生徒が使用できるようにすることが必要であるということ。その上で、二つ目の丸のところになるんですけれども、使用可能期間は、多様な教育課程への対応の観点から、義務教育だと少なくとも3年間以上、高校段階だと4年間以上が望ましいということ。また、使用可能期間後も手元に残して学習できるように、ダウンロードや印刷を可能にすることが望ましいというようなことを記載しております。
また、20ページの一番下の丸のところ以降では、供給が一時的にできなくなる場合に備えた印刷機能の充実など、教科書の適正な発行・供給に必要な措置を検討することが必要であるということも記載させていただいております。
21ページ目の上から三つ目の丸のところでは、教科書価格についても記載しておりまして、教科書価格は、デジタルな形態の教科書も含めて必要なコストに見合った適正な価格設定となるように、国において検討が必要である旨を記載しております。
その下でありますが、高校や特別支援学校などで適当な教科書がない場合に、教科書として一般図書が使用することができるわけですが、この一般図書に関しましてですが、二つ目の丸のところで、ここもデジタル形態を認めるということ。さらに、障害のある児童生徒のための、その下ですが、教科用特定図書等の作成に関しても、この21ページの一番下の丸のところで、教科書のデジタル部分も紙と同様に教科書デジタルデータの提供義務に含まれるようにすることが適当であるということ。
また、次の22ページ目の二つ目の丸のところで、教科用特定図書等についてもデジタルな形態を認めて、無償給付の対象とすること、その標準規格を国において検討すべきことを記載しております。
また、この同じ22ページの中ほどでは、著作権についての記載もございます。デジタルな形態を含む教科書の著作権の権利制限の在り方が課題になるわけでありますけれども、この点につきましては、具体的な検討は、当ワーキンググループでありますとか、また中央教育審議会の所掌を超える関係の話になってまいりますので、この点については文化審議会において専門的な観点からの御審議が必要になるという旨を記載させていただいております。
続きまして、22ページの下のほうからは、当面の推進方策について6点記載させていただいております。まず、次の23ページでありますが、23ページの3行目からですけども、現在のデジタル教科書の配布につきましてですが、この二つ目の丸のところで、小5から中3を対象にした英語、算数・数学に加えて、その他教科、学年についても多角的な効果検証の観点も含めて、現場ニーズや導入による影響等の勘案をしながら配布を進めることが重要ということを記載しております。
次に、教師の指導力の向上についてでありますが、一つ目の丸のところで、効果的な活用方法の発信や、教員研修による教師の指導力向上が極めて重要であるということ。二つ目の丸では、その他の教科や高校の実践事例の充実、広域での教員研修のさらなる充実、教員養成課程でのデジタル教科書の利用環境の改善の検討などに取り組むことが必要であるということについて記載させていただいております。
次のページにわたりまして、三つ目として、アカウント管理等の負担軽減についてであります。ここの二つ目、それから三つ目の丸のところで、令和6年度、それから令和7年度から、官民でアカウント管理等の負担軽減の取組が進められてきておりますが、まだ十分に活用されていない面も見られるということから、取組のさらなる周知や、国と発行者が連携して取組を強化していくことが重要であるということを記載させていただいております。
その下では健康への影響について記載をしております。ここでは、専門家の主な意見は、授業では常に手元の教科書を見ているわけではなく、紙かデジタルかを問わず、長時間継続して近距離で注視するのは避けるべきだといったものであるということ。また、そうした状況にあるとすれば、それはまた新たな学びの視点からも憂慮される問題であるということを踏まえまして、最新の知見を取り入れつつ、ガイドライン等で周知を徹底していくことが重要であるということを整理して記載させていただいております。
次、最後25ページでございます。25ページでは、ICT環境の改善についても記載しています。二つ目の丸のところで、GIGAスクール構想の第2期においては、端末の着実な更新を進めるとともに、同時に全ての授業で多数の児童生徒が高頻度で端末を活用する場合にも、ネットワーク環境に支障がほぼ生じないように、「当面の推奨帯域」の早期達成に向けた取組が必要であるというようなことを記載させていただいております。
最後に、関係者の理解のところです。特にこの最後の段落のところですが、教育委員会や学校、教師、児童生徒、保護者などの関係者に対しまして、デジタルの活用を自己目的化するものではなくて、児童生徒の学びの充実が最も重要な目的であるということの十分な理解を図りながら、各推進方策を講じることが必要であるということを記載させていただいております。
本日御提出させていただきました審議まとめのまず素案ということで、御説明は以上でございます。御審議のほどよろしくお願いいたします。
【堀田主査】 ありがとうございました。ただいま審議まとめの素案につきまして、丁寧に御説明をいただいたところでございます。確認ですが、私どもは、先ほども申し上げたように、2月に中間まとめを出しており、パブリックコメント等を受け付けて、関係者・関係団体の御意見も伺って、そして、加えてその後、審議をずっと続けてきたわけです。その中間まとめを基礎にして、その後の審議について、特に今日の資料1で言うと後半のところに丁寧に項目別におまとめいただいて、事務局から御説明をいただいたということでございます。
言わずもがなではありますが、この中央教育審議会で、次期学習指導要領を踏まえた、見据えた学習の在り方、授業の在り方、そういう学校教育の在り方が検討されておりまして、そこには多様性と包摂性という考え方で、子供たちに学びやすさをしっかり提供し、子供たちの多様な状況に合わせて学んでいけるようにしようという、そういう文脈の中で、紙のよい部分とデジタルのよい部分を子供たちに合わせて提供できるように、できるとしたら、デジタルの部分も質保証が望まれる。そうなると、それは一定の範囲での検定等が必要になるだろう。その場合、どういう制度変更がどのように行われるべきかという議論を今のうちから始めておかないと間に合わないだろうということで、私どものワーキングでは先んじてこれを進めてきたというところでございます。
また、制度改正が行われるのは数年後だと思いますけど、そういう時期までの当面の間、この当面の間に、今のうちからやれることとして、いろいろあるだろうということがローマ数字でいうところの3、最後のところにずっとまとめてあると。ここも私たちが今審議してきたことでございます。
というわけで、こういった素案をまとめていただきましたので、今日はこれについて全ての委員の方に何か、それぞれの御専門のお立場から御意見をいただければと思うところです。事務局から先ほど実は説明があったんですけど、音声が届いていなかったかもしれません。挙手ボタンを押していただいて、私のほうで指名を差し上げるという形にしたいと思います。これは対面で御参加いただいている方にも挙手ボタンをお願いしたいと思います。
それでは、委員の皆さん、御発言ある方はいかがでしょうか。お願いいたします。
中村委員、ありがとうございます。お願いいたします。
【中村委員】 つくば市立みどりの学園義務教育学校教頭の中村でございます。本日はオンラインにて参加させていただいているため、先ほどの資料の詳細な部分との関連性といったところでお話しできるかどうか分からないんですが、今伺ったところで私が感じたことをお伝えさせていただきます。
まずは、このような形で取りまとめをしていただきまして、一番感じることは、このワーキンググループでやってきたことというのは、日本の教育が目指す、全ての子供たちを、誰一人取り残さず、主体的で対話的で深い学びに向かうことができるため、そのためにこの制度を変えたりとか、よりよいものを提供できるような仕組みを、というような議論だったかと思います。それがこのような形で、だんだん形が見えてきたこと、すごく学校教育に携わる教頭としては、期待感と、とても喜びを感じているところです。本当に文科省の皆様、ありがとうございます。
その中で、先ほど言いました、誰一人取り残さずといったところのキーワードに引っかけますと、デジタル教科書だからこそできることがあると思っております。そもそもデジタルというものは、アクセシビリティーという部分において、いろんな方法でテキストの内容を、より、その子に応じて理解しやすく提供することができると思っています。例えば、書字が苦手な子は音声で聞くことができたり、それからスピードがゆっくりでないと理解が難しい子はスピードの調節ができたり、またはルビ振りができたり、そういった部分で言うと、デジタル教科書が教科書として認めていただけることで、これまで少し学びに向かうことが、教室の中にいても向かうことができなかったお子さんも、自分から自立的に学びに行く機会が増えるとすごく感じているところです。
さらに、情報活用能力の向上というのが次期学習指導要領でも非常に重点として捉えられていると思うんですが、深く学ぶということは、私もこのワーキングに参加するに当たり、いろんな研修を、教科書に関わる学びを受けてきているんですけれども、以前受けた教科書センターの研修でも、深く学ぶというのは多様な情報を関連付けて理解していくということだということもおっしゃられていました。本当にそうだと思っています。
例えば、一つの情報から、横断的な、ほかの教科に飛んで関連付けて考えることができる。それが今度デジタル教科書だったら実現できるんじゃないか。一つの題材を多様な教科の視点で見ることができる。これは今、教科別になっている教科書を、デジタルであれば教科の枠を飛び越えることができるのではないかということで、深い学びというのが、デジタル教科書で、より促進されるんじゃないかなということも感じています。
さらには紙のよさというのは、一覧性というところはすごく私もいいなと思っておりますので、知を焦点化して理解したものを今度、再構成して、また知の構造化をして、一覧性を持って確認するといったときには紙に戻るのも、一つ方法としてはいいな、だからハイブリッドという形はすごく適切でないかなと思っております。
その中で教科書とは、安心安全で良質な情報といった部分において、動画というものが、そのテキストの内容をより補足したり、補完したり、深化させるものであるとしたら、この内容を検定するということは必要なのかなと思っています。動画であっても、多少言い回しが違ったり、背景に映り込む映像で、テキストで示したい、伝えたい内容とちょっと違って伝わってしまうというような部分も危惧されるということを考えれば、少し検定される方にとってはお手間だとは思うんですが、この部分を検定することというのは必要なのではと思っているところです。
次に、アカウント管理についてです。ここがすごく学校管理としては私も注目しているところで、前回、この部分に関しても、当面の方策ということで、いろんな方法を提案していただきました。アカウント管理は学びの振り返りであったり、今、教科書供給の制度が非常に秀逸にできているために、転出入があった場合でも、すぐに転出先のお子さんに教科書が渡るというような仕組みを考えると、こういった部分も今、紙の状態でできている部分ということが、アカウントというデジタルになったときにでも、よりよくそれが保持されるということは、これからも議論が必要なのかなと思っています。
ただそうなってくると、予算といったものも考えながら、公的なプラットフォームなのか、また違う形なのかといった部分は、これからもぜひ、いいものを検討していただければと思います。
最後に、この議論の先に、私も学校で今使っているAIですけれども、AIというものはこの先の議論に見えてくることなのかなと思っています。この先の議論にあるものだとしたら、例えばデジタルのものを検定するという、まず検定の部分で、人の手を使って検定することが難しいのであれば、こういった部分に生成AIなども取り入れて、デジタル教科書をよりよく検定していくというようなことも、少し私の中では、こんなことがあったらいいのかなと思ってみたところです。
本当に、今回の取りまとめにおいて、日本ならではの誰一人取り残さないという視点、主体的・対話的で深い学びの実現のための方策、そして取りまとめの内容については、今後とも注視して、期待していきたいなと思っているところです。
感想になりますが、以上です。
【堀田主査】 中村委員、ありがとうございました。現場の声としてしっかりと承ってまいります。
続きまして、阿部委員お願いいたします。
【阿部委員】 横浜の荏田南小学校の阿部でございます。まず、これまでの議論を大変分かりやすくまとめていただきまして、ありがとうございました。これからの時代を生きる子供を育てるための教科書です。これからの子供をデジタルから遠ざけることは不可能ですので、よさや利点を生かして最大限に活用できる、そういう子供たちを育てていくという観点で、本当にデジタルを教科書として認めていくというのは初めの一歩になるかなと思っています。
これまでも、教科書「を」教えるのではなく、教科書「で」教えるんだよというのを先生たちは分かってきているはずですけれども、なかなか、一斉に教科書の記述をなぞるような授業が行われているのも現実です。その変革にデジタル教科書が一翼を担うのではないかとすごく期待をしています。また、そのつくり方で、子供の主体的、対話的で深い学びが実現できるのではないかなと思っているところです。
例えば、紙の教科書ですと本ですので、ぱらぱらと先のほうまで見えてしまう。そして、見開きで問題があったらその解き方や答えがすぐ載っている。例えば理科の振り子の学習を思い浮かべていただくと、何か問題提起や導入をある画面でしてもらって、例えばこの曲にぴったり合うような振り子をつくるにはどうしたらいいだろうと問題提起された子供は「うーん」と考えると思うんですね。
でも、これまでの教科書だと、その答えになるようなものがもう、すぐに見えていて、もしくは1ページめくるともうすぐに分かってしまって。それを防ぐために私たちは、「教科書をしまって」と言ってきました。デジタルであれば、階層を分けることで、振り子の周期を変えるには、おもりの重さを変えるのか、糸の長さを変えるのか、振れ幅を変えるのかと子供は考えると思うんですね。その三つの実験をどれからやってもいいわけですけど、でも紙の教科書だと、紙面ですから、1番目には重さ、2番目には糸の長さみたいな、そういうつくりになってしまう。本当に主体的にやろうと思えば、子供が思った中で一番取りかかりたいものから取り組んでいくはずです。そのように階層分けをしていただいて、やっていくと、先生たちの授業改善みたいなことにすごく期することができるのではないかなと期待をしています。
それから、23ページあたりにあります、当面の間の扱いですが、英語や算数だけでなく、ほかの教科や学年の拡充をしていただけるというお話も、これも大変ありがたいです。効果検証ももちろん大切ですけれども、より多くの子供と教師がデジタル教科書に慣れる時期として位置付けていただけたらありがたいと思います。
先ほど中村委員からもありましたけれども、IDやアカウントの管理等については、本当に切実な問題です。今も民間を中心に努力をいただいているという御説明がありまして、負担の軽減が図られているところですけれども、依然として5種類や6種類のビューアーが存在して、それに対応する管理をしていかなければいけません。どうか国が主導していただいて、一つのプラットフォームで一斉に一元管理できるみたいなことを望んでいます。
それから、動画のお話です。中村委員からもありましたけれども、紙面では表せなかったけれども、動画なら表せるというものが本当にたくさんあって。教育の現場では、それを教えるのに大変苦労するんです。この前も玉止めや玉結びのお話はしたと思いますけれども、そういう小さなものを見せるのに、書画カメラなどを利用して、「よく見てね」みたいなことを言ってきたわけですけれども、これが動画の教材でしたら、繰り返し子供は自分で学ぶことができます。
家庭科に限らず、音楽などではリコーダーでサミングというのがありまして、高いミの音みたいなのは、裏の親指をちょっと半分にするとか、立てるとかします。親指を滑らせてもいいし、立ててもいいんですけど、それも、「見て見て見て、こうやるんだよ」というのはどうしても難しい。これは動画で表していただくのが一番いいかなと。
このように、技能の習得に関わるものについては動画が最適というものがどうしてもあります。ですので、この後、教科書検定審議会などで御審議いただけるということですが、ぜひデジタルですので、そういう余地を残していただきたいなと思います。
あと、虫眼鏡なんかも、虫眼鏡を見るときは物を動かすんです。ですが、物が動かせないときには、虫眼鏡を置いて自分が動いていくんですけど、そういうようなところも一生懸命、今は、紙で表してくれていますけど、限界があると思っています。
ということで、デジタルは、本当に階層分けが簡単にできるという点から、これまでカリキュラムオーバーロードが指摘されて問題となっていますけれども、本当にコアに教える部分はここで、そうじゃない補充や発展などは階層を分けたり色分けをしていただくことで、本当に教えなければいけないことはここですというのが分かりやすくなるかなと思っております。
デジタルの教科書には本当に期待をしておりますので、今後ともどうぞよろしくお願いしたいと思います。以上です。
【堀田主査】 阿部委員、ありがとうございました。具体的な指導場面を基に、子供たちへの学びやすさにデジタルが寄与しそうな部分について例示していただいたかと思います。ありがとうございます。
続きまして、奈須委員、その次、細田委員に参りたいと思います。奈須委員、お願いいたします。
【奈須委員】 よろしくお願いいたします。今回の取りまとめ、とても分かりやすくて、説得的で構造的なものになっているかと思います。この間の複雑で多岐にわたる議論をとても手際よくまとめていただいて、本当にありがたかったと思います。
私自身は、本当に今回の記述は、特にどこか不満があるとか、気になるということはないのですけど、逆に、改めてしっかり書いていただいたことによって難しさが出ていた部分もあるかと思います。デジタルの教科書になること、デジタルになることによって、幾つか特質が出てくると思うんです。まず一つ目は、先ほど中村先生から出たアクセシビリティーの問題です。これは本当に多様性の包摂ということに有効です。今、(音声途切れ)本当につらい思いをしている結果が出ているとおりだと思います。
これは直接その教科書の内容や方法に関わることではないので、多分ポジティブなことしかないと思うんですけど、二つ目として、デジタルを入れると、これは教科書に限りませんが、情報量を紙に比べて自在に増やすことができたり、あるいは今、阿部先生からありましたが、柔軟に動かすことができるということはあるだろうと。これは内容に関することです。
それからもう一つ、以前よくありました高校の数学の教科書でありましたけど、教科書にある特定の方法がビルトインされてくると、方法が実装されてくると。これも先生方のいい手助けになるということだろうと思うんです。これは紙の教科書とは圧倒的に中身が変わってくるし、授業やカリキュラムに対する影響度が変わってくると思うんです。
日本の教科書の強みというのは、本当に教科書会社がいい教科書をつくってくださっているので、それをベースの使い方、ベーシックな使い方どおりに先生方が使っても質の高い授業ができる。だから日本中の全ての学校において質が担保できる。今、若い先生も増えていますけど、ベテランだけじゃなくて、初任の先生でも結構いい授業ができると、これはとても大事なことで、日本の検定制度、教科書制度の強みだと思っています。
同時に出てくるのが、前から話題になっています。これは中教審、教育課程企画特別部会でも話題になっていますが、17ページですかね、教科書を網羅的に教えなければいけないという考え方、これが負担感になり、また現場の創造性や自立性を落としていると。あるいは、若い先生が力をつけるという機会をかえって奪うことになっているということも私はあるかと思いますけど、ここの記述で今回とてもありがたいし、はっきり書いてくださってよかったと思います。
まず、教科書使用義務はあるんだよということですよね。17ページの下のほうですが、教科書を学校において使用しなければならないと、これは教科書使用義務ですね。ただ、実は、何を教えるかということは指導要領に書いてあるので、学校現場が指導要領に基づいて創意工夫をしていいんだと、この筋はきちんと出していくんですね。指導の材料である教科書の取扱いも同様であると。このことを明記いただいたのは、以前からそうですけど、なかなか誤解があるので、よかったなと思っています。
その次のページもそうですけど、教科書を網羅的に教える必要がなく、それらは使用義務の観点からも許容されるべきだと。つまり、教科書使用義務というのは網羅的に使うということではないんだと。教科書「を」教えるから教科書「で」教えるということで、これはいいんです。記述はもうこれで全くいいんですけど、ただ現場としては、これでもまだまだお悩みになることが私は多いと思います。
特にデジタルになると内容が増える、方法についてもいろんな提案があると。それが使用義務の範囲内なのか、範囲外なのかということは、個々の現場はすごく悩むと思うんですよね。そこが結局、記述としてはこうしかないんですけど、どこかで、これは今回のことではないんですけど、教科書ないしはカリキュラムを現場がマネジメントしながらつくっていくという話、だから学習指導要領の総則か何かかもしれませんけど、その教科書使用義務というのは、もっと具体的にどういうことなのかということをしっかりと明記して、ぶれないようにしていかないと。
例えばある現場の先生が、これは使用義務の範囲外だと思ってやったことが、教育委員会によって、いえいえ、それは使用義務違反だという話はままある話で。そうなると現場は怖がってしまって、どうしても安全策を取っていく。すると結局、網羅的に教えるのが一番安全で、楽で、誰からもクレームが来ないという話に、その悪循環というか、動きをどうやっていい形で断ち切るというか、是正するかということに対して、何らかの戦略を取っていく必要があると思うんです。
紙の教科書の時代もそうですけど、デジタルになると情報量が増えるとか、方法がビルトインされてくるので、いよいよそのことが先鋭的な問題として出てくるんだろうと思うんです。これは教科書の作成が、いろいろ本当にお悩みだと思うんです、実を言うと。だから、そこについて、非常にこれなんかは文部省ですかね、中教審で議論すべきですかね、もっと具体的に、そのグレーゾーンが生まれないような情報発信なり何なりしていく必要があるというのはまず思っていますということです。
なぜそういうことが起こるかということですが、それは、6ページに諸外国の状況ということでこれも書いてくださってありがたいと思うんですが、そもそも法令で教科書の定義を定めていない国が多いと。これがつまり国際的な事実です。先ほど来申し上げたように、日本は教科書を明確に定義し、検定制度や無償配布制度というものを置き、それによって当然、税金がかかっていますから、使用義務というものもついてくるわけですけど、これが違いですよね。
だから、欧米の学校の教科書というのは、もう単なるリソースブックとして先生方は思っていないんですよね。アメリカなんかに行くと、高校あたりだと、生徒に3冊教科書を持たせて、それを先生がつくったカリキュラムに即して、今日はA教科書のこれを見なさい、B教科書のこれと見比べてみようなんていう授業を当たり前のようにしています。そういう教科書はリソースブックでしかなくて、そもそも買った教科書の何割ぐらい使っているんだろう。もちろん全部なんか使っていないし。もったいない使い方だなと僕は思いますけれども。でも、そういう発想、教科書はリソースブックだという発想、そこまではいけないんですよね、きっと日本は。
検定制度とか、教科書使用義務というのは、教科書はリソースブックだよというところまではいけないんだろうと思いますが、ではどこなのか。これがとても実は難しくて。グレーゾーンを現場には生んでいるのではないかとずっと思っていて。今日議論すべきことじゃないかもしれないけれど、教科書をめぐる問題というのがいろんな場面で出ている中で、デジタル教科書というのを、それをあらゆる意味で先鋭化させて進めるんですね。
だから、ここの記述でいいんですけど、ここの記述が何を意味するかということの説明は、またどこか別の機会かもしれませんが、しっかりと引き続きやっていかないと、ここにこう書いたからもうこの問題は解決したというわけにはいかないだろうと。厳しい言い方ですが、私自身も教育課程部会等で引き受けて議論していくということを今日表明したいと思いますけど、また、御専門の皆さんにもいろいろお考えいただいたり、御議論いただければなと思います。以上です。
【堀田主査】 ありがとうございました。中教審の教育課程部会の部会長である奈須先生が今のようなことを言っていただいたというのは大変心強いところでございまして、私どもは子供たちに、よい学習環境、学びやすさを提供したいので、こういうことを検討しているわけですけども、そういう大目標といいましょうか、それに向かって進めているということですね。これを進めていくときに、いろんな関係者の御理解がないといけないわけで、そうじゃないと形式的・網羅的にやればいい、みたいに結局なってしまいがちで。先生たちがよりよい教育を、教育方法を検討していくということを大事にしたいと思いますし、子供たちにとって、それが学びやすさや、あるいは学び方の獲得になるようにしたいと思っています。
そういうときの教科書の位置付け、存在の在り方みたいなことが中教審等で議論され、そしてこのワーキングが出しているいろんなこととどうつなげていくかというのが、もう一つ上流の会議での検討課題かなと思っております。
続きまして細田委員、お願いいたします。
【細田委員】 よろしくお願いいたします。まずもって御礼を申し上げたいと思います。審議まとめがこのように分かりやすく提示されたことに皆様の御苦労、そして事務局の皆様の御苦労に感謝申し上げます。
それから、このワーキングが始まったときからずっと思っていたんですけれども、まさにこのデジタル教科書が、学制発布のときから150年以上の日本の教育における、今回のこの議論がある意味エポックメイキングになっていくんだなということを実感しております。いよいよデジタルが教科書としても正式に存在するということをここまで押し上げてこられたことは本当にすばらしいことだと思います。
それは、当然議論の中ではいろいろな御意見が、このワーキング以外のところでもあるわけでございますが、今回この15ページのところで、中間まとめからさらに踏み込んで、二項対立ではなく、紙とデジタルのよさを最大限尊重した形であることを担保するために、このガイドラインを今後考えていくんだということも明記されておりますので、少し大丈夫かな、どんな授業展開になるんだろう、いつからどのように使っていったら子供たちにとってのデジタル教科書、デジタルが有効なのかと考えていらっしゃる方にとっても、非常に安心できる、そういった記述になっていると思います。
そして、その上で、さらにそのデジタルの優位性の中で最たるものは、主体的に深く学べると。これは一番最初に中村委員もおっしゃっていた内容でございますが、情報を関連付けて、そして教科を横断した形で子供たちに深く学びを提供できる、そういう力がデジタルにはあると思いますので、そのデジタルの優位性である、主体的に深く学べるという、そういう学びを子供たちに提供できる環境を整えていくという意味でも画期的だと思います。
具体的には、動画の話もあるんですけれども、例えば、本当に必要なものについては動画が非常に学習効果を上げるということは周知のことであります。とりわけ私は英語が専門ですので、英語とデジタルの親和性が高く、そして動画をもって、例えばノンバーバルの部分のコミュニケーションの在り方なども効果的に示せるという意味でも期待感があります。
本当に個別最適で誰一人取り残さない真のインクルーシブな学びを、デジタルを有効に使うことによって提供できるということ、今回そういったことがこの審議まとめの中にも、そこかしこに読み取れると思います。
最後に、さあ、ではこういうふうに教科書の環境を、皆さん、いろいろな方々の御協力で整えていくということになりまして、いよいよ教える側の教員の力が問われていくと思います。その教員の力が問われていくときに、教員研修の充実というのは、当然これからもさらに求めていかなくてはならないんですが、もう一つ、養成の段階、教員養成の段階でも、ぜひこのデジタル教科書を使った、そういった教え方とか、授業デザインについて、教員養成の段階でも効果的に取り扱っていただきたいということを、このたびここでもう一度申し上げまして、私の意見はこんなふうに思っているということでございます。どうぞよろしくお願いいたします。
【堀田主査】 ありがとうございました。続きまして松谷委員、お願いいたします。
【松谷委員】 私立の中高連から来ました松谷です。よろしくお願いします。
この審議のまとめを拝見しましたけれども、とてもよくまとまっていて、網羅されていって、きちっと細かい点までまとめていただいて本当にありがとうございます。このような形で進めていければと考えています。
私学もそうですが、私学は独自性とか多様性を重んじる、各学校のそういった教育がいろいろそういう考え方の基に指導しているというところ、そういった意味では、今まで教科書「を」教えるというのを、教科書「で」教えると変わってくるということが、これからの教育改革で一番大事だと私も思っています。そういった意味で、主体的、対話的な学びをするためにどうしたらいいかというところに主眼を置いて、教師がしっかりとこれからの教育方法を考えていかなくてはいけないのではないかと思っています。
そういった意味では、生徒が主体的になるわけですから、教員の指導の方法もファシリテーターとか、それからサポーターというような形から授業が進んでいく、そのためにデジタルのそういったものをうまく使ったり、生徒が調べ学習をしたり、そういったことができるものがこのデジタル教科書のよいところであるし、それを進めていってもらえればと思います。
ただ、15ページにも書いてあるんですが、ガイドラインのところで、極端に学校教育の自由度を狭めるような形の教科書ではいけないんじゃないかというのは少し心配するところです。以前、昔、総合的な学習の時間で、一例でどうやったらいいんだというので、ウサギ小屋をと言って、そうやってウサギを飼うような一例が出ると、それが全国に広がっていくような、そんな事例があったと思うんですけれども、そうならずに、教師がこういった指導方法をしっかりと研修して、そして生徒が主体的な物事をするために、あまり狭めるようなデジタルの教科書ではないほうがいいんじゃないかと。幅広く教員が考えて、それから生徒が、それから各地域でも違うと思うんですよね。生徒の質も、それから環境にも影響されると思うんで、そういう中で幅広い自由度を持ったデジタルの教科書をつくっていただきたいと思っています。
現在、英語でも、もう来年100%となっていますけれども、英語はそうやって耳で、そういう話でできることだったら、音楽とか他教科にも普及するだろうし、社会、理科、それに加えて美術という部分も、非常にデジタルを使った効果的な学習ができるのではないかと思っていますので、ぜひ、この形でのデジタルを教科書として法令化できればと考えています。以上です。
【堀田主査】 ありがとうございました。続いて、お待たせしました、岡本委員、お願いいたします。
【岡本委員】 教科書協会の岡本でございます。よろしくお願いします。
私から、まず事務局の方には審議まとめを作成いただいて、本当にありがとうございます。これまでの議論を的確にまとめていただいていると感じておりまして、このことにまずは感謝したいと思います。ありがとうございます。
この審議まとめに対して、教科書発行者の立場で意見を述べたいと思いますけれども、その前に、今日の御議論の中で、動画に関するお話が複数の委員の方から出てまいりましたので、その動画コンテンツの扱いにつきまして、教科書発行者として意見を述べたいと思います。
まず、本日のお話を聞いていて思いますのが、このワーキングは教科書というものが議論の中心になっているということだと思うんですけれども、それがマイナスになっている側面も出ているんじゃないかなという印象を持って聞いておりました。これまで議論の中で整理してきたことといいますのは、このワーキングでは、上がデジタル学習基盤ということの下に位置付けけられているところもありますけれども、デジタルな学習基盤の下で、デジタルの教科書とか教材とかソフトウエアというものを、それぞれが持っている性格を生かして組み合わせることで効果的な学びを実現するという、そうした全体像が前提として描かれているはずという認識です。
その中で、デジタルの教科書、それから教材という違いがあるという議論をしていると思いますし、教科書の性質としては、奈須先生がおっしゃったように、日本では使用義務があって、国費でまかなっている主教材という位置付けですので、それがゆえに中核的な概念の獲得をつかみやすいものにするという議論が今行われているところかと思いますし、そのために、精選ですとか、シンプルで軽いものにするという議論も行われてきて、それが審議まとめにも記述されていると考えております。
それに対しまして、審議まとめにも書かれていますけども、ドリル、それからワーク、資料集、動画、こういったものは副教材という位置付けで、主教材と一緒に使うことで学びを組み立てていくと、そういう整理をしてきたという認識にあります。したがいまして、皆さん、ほかの委員の先生方もおっしゃるように、動画が学習に効果的だという意見は全くそのとおりですけれども、それと教科書として何を位置付けるかという話は別の議論だと私は感じていて。
学習に効果的なものを全部教科書として位置付けるという話になってしまうと、教科書、教材、ソフトウエアという役割分担もなくなってしまいますし、これまでそうした議論を、振出しに戻るような感じにも受け止めて聞いておりましたので、発行者というか教科書を担う側としては強い違和感を覚えたところです。
それと、今回デジタル化によって教科書と教材の境目が分かりにくくなるという議論もあったと思います。教科書は、先ほど申しましたように国費によって無償供与がされているということですので、デジタル化した教科書も制度として教科書として位置付けるんであれば、どこまでが教科書として国の税金を使ってつくられ、供給されるのかということを明確にする必要があると思いますので、その区分けに関して、本日審議まとめに示していただいたように、教科書というものとドリル、ワーク、資料集、動画、こういった副教材等を線引きするというところで、発行者としてはこの整理が妥当ではないかと思っております。
あわせて、以前このワーキングの中でも、現在、教科書につけている二次元コード先のコンテンツ、これに関する問題を業界としてお伝えしたと思いますけれども、仮にこの動画のような教材的なコンテンツが教科書として位置付けられてしまった場合、二次元コードの場合と同様に、動画の物量合戦みたいになってしまって、こういうことは業界にいる者としては容易に想像できるわけで。本来あるべき教科書の中核的な概念を獲得しやすい、洗練された教材というような視点が、採択時にも継受されてしまうんじゃないかということで、これを大変危惧するところです。
動画のような本来、教材で扱うべきコンテンツが教科書として提供されてしまうと、授業準備などで現場の先生方の御負担も増えてしまうのではないかと。QRコードのコンテンツがそうした状況を招いているということからしても、その二の舞になってしまうんじゃないかという懸念も感じました。
ほかにも、発行者としては、現在の価格に動画コンテンツの制作費用なんていうのは含まれていませんので、こうした費用のかかるものを今回教科書として位置付ける際に、これが価格に含められるように改定がされるのかとか、今の教科書検定の制度ですと、意見がつくと35日以内に修正したものを提出しなければなりませんが、その期間で動画の修正が対応できるのかとか、そもそも、そうした動画の物量合戦になった場合に、大量な動画は、各社が用意したものを限られた期間で検定ができるのかとか、そうした様々考えると切りがないので、一旦、動画に関する私の意見としてはこれまでといたしますけれども、これまで整理してきたことからすると、少し話が元に戻るというか、議論前の状態になっているような気がしたので、あえて申し上げました。
それと、この審議まとめに対する意見というのも、観点としては一つだけお話しできればと思っております。審議まとめの19ページから21ページにかけて、19ページの最後のところから、発行・供給に関することが書かれているかと思います。このうちの20ページの上から二つ目の丸のところに、デジタルの場合はクラウドの利用料とか、維持管理費などの発行コストが変動するという、こういうところを触れていただいて、大変ありがたいと思っております。
これは、従来の紙の教科書であれば、子供たちの手元に教科書が届けば供給完了という形ですので、これまでは生じていないコストになります。これまで生じていないコストである上に、ここにありますように、使用状況によって大きく変動するコストということにもなりますので、あらかじめこちらのほうでそのコストを試算するというのはかなり難しい状況だと考えています。
こうした使用に伴う変動コストというものが、今回デジタル化によって発生するわけで、これを従来の教科書価格の考え方で扱うのはちょっと無理があるんじゃないかなと感じています。ですので、この教科書の使用が始まって、供給期間と位置付けられてしまうと思うんですけれども、この使用が始まってから生じる変動コストというものを、従来の教科書価格の考えでは扱い切れないと思いますので、例えば切り離して、別途利用した実績に応じて国が費用をまかなっていただくとか、もしくは、その教科書を含めてより広い範囲で教材をカバーするような、デジタル学習基盤として国がクラウド環境をしっかり整備するとか、ほかの委員の方もお話しされていましたけども、そうした、何らか新しい構造を国で考えて実行していただきたいなと考えております。
ほかにデジタルで供給するということを考えますと、著作権にかかる費用も供給機関が伸びていくと、コストがかかるというような仕組みも想定できますので、この著作権の費用というのも新たな変動コストになってくるんじゃないかとか、さらに、デジタルで配信する上にダウンロードしたり印刷したりみたいなことになりますと、これについても著作権者が何らかのコストを求めてくるということは十分考えられますので、こうした新しい、今までなかったことをするということは著作権費用も関係してくるので、そうしたサーバーの配信コストだけではなくて、そういったほかのところにも費用が発生するとお考えいただければいいのではないかと思っております。
そうしたデジタル化による新しいコストの考え方ということを含めて、21ページのまとめ、21ページの三つ目の丸には、教科書価格についてきちんと書いていただいているので、ぜひ必要なコストに見合った適正な価格となるようにというところをしっかり考えて実行していただきたいと思っております。
これで最後にいたしますが、これも言うまでもないんですけれども、教科書発行にかかるコストというのと、それから教科書の価格というのが、発行者としては、その教科書を発行するかしないか、できるかできないかというものを判断する重要な指標になりますので、我々は民間会社ですから、コストに見合った価格が設定されない教科書を発行してしまえば当然赤字になりますし、そもそも民間の商品として価格に見合わないコストをかけるということをしないのが普通ですので、その辺りのコストと価格というものも民間の会社としては非常に気にするところでございます。
通常であれば、もう次の教科書の企画が始まっているタイミングでして、ただ、今こういったコストと価格が不透明な状況なので、各発行者とも、何にどのようにコストをかければよいかというところがぼんやりして決まらないので、なかなか検討が進められない状況に今、入っているということで。先ほどお話しした価格の適正化ですとか、新たに生じる変動コストの扱いなどをうまく処理できないがために、教科書のデジタル化が結果として進まないというふうにならないように、今後国としてその辺りの御議論、スピーディーな取組をして、ある程度大胆な実行をしていく必要もあるんじゃないかということで最後にお話ししました。
長くなりましたけど、私からの意見は以上になります。
【堀田主査】 ありがとうございました。発行者の立場から、今後さらにいろいろ課題になりそうなことについて御指摘をいただいたと理解しております。先ほどの動画に対する期待というのは、あらゆる動画をという意味ではないと思いますし、委員の皆様は、今までの議論を御承知の上でお話しされていると思いますし、紙ではできなかった何らかの動きのあるものが子供たちの理解をより深める、確かにするのであれば、そこは教科書の範囲として認めていくべきではないかという議論の中で、それをどこまでするかという境目の議論を今後しっかりしていく必要があるねということまでが私どものワーキングで今、決められていることです。
それを超える話ではもちろんありませんし、そのことがコストに跳ね返るので、岡本委員のお立場としては非常に懸念する、業界としてはそういうことを心配されているということは私どもも承ったと思います。
それでは、坂本委員、あるいは松下委員、それぞれの立場で何か一言いただけるとありがたいですけども、いかがでしょうか。坂本委員、お願いいたします。
【坂本委員】 今回こういう形で素案の取りまとめ、体系的に、かつ非常にロジカルにまとまっていて、非常に読み応えもあるし、内容としても非常に説得性があると思っております。取りまとめいただいたこと御礼を申し上げたいと思うんですけども。
非常に、この話ですからコンテンツ論でどうですかということで整然と整理する、方法論としてはこれが一番いいんだと思うんですけど、私は全国の教育長のいろいろと連合会の会長の立場として言うと、中身はこういう形でいいんですけれども、現場レベルでこれを実際に運用する場合、しっかりとこれが運用できるか、これは二つあると思っていて。
まず一つは、デジタル環境、これは光ファイバーも含めて、デジタルの通信回線がきちっと山奥まで、山奥というか、あるかもしれないですけど、それにまでたどれているかどうかというのは、これが一つ条件となると思うんです。かなりデジタル教科書で、さっき言ったような動画であるとか、その辺にかなり精緻な画像を届けるとなると、相当な容量が必要となってくるので、これが学校の現場でそれがちゃんとダウンロードして、あまねく1人1台端末を通じて見られるかというところが一つあるので、そういう通信環境の整備を前提としてこれは成り立つと思うんです。
逆に言うと、通信環境に制約があるから、せっかく使いたいデジタル教科書をうまく導入できないという状況が出ると、これはあまりうまくはないだろうということなので。これはこの先の議論にはなると思うんですけれども、そういうインフラ的なデジタルの基幹づくりということにも十分意を用いていただきたいという、それを申し上げたいと思います。
これは実際、学校で使えればまだしもですけど、これは家庭で自習する場合があるんですね。デジタル教科書は。そうすると、家庭の中にそういうたまさかデジタル環境がうまく整っていないとなると、今度はお子さんのほうが、家でこのデジタル教科書を見ながら勉強することがうまく進まないというような形で、図らずも通信環境によってデジタル教科書を使いこなせる子と使いこなせない子の差が出てきてしまうような、そういう可能性も潜在的にあるとは思っています。
ですので、そういったところをできるだけ問題として生じることがないような、そういう手だてもいろいろと一緒に考えておいていただければありがたいなと思います。これが一つ目です。
それと、もう一つは、採択の部分ですけども、各教育委員会でいろいろと採択をしていく場合に、これを直感的に見ていくと、相当負荷が大きくなるんじゃないかなと思っています。それで、今までのようなやり方をそのまま、紙のベースを援用する形でデジタルの教科書の採択も機械的に当てはめるとなると、その場合の負荷、負担が相当だろうなというようなところは、若干留意することがあります。
ですので、採択の話はガイドラインでもいろいろと取り組める部分はあるとは思うんですけれども、そこら辺のところをどういうような形で採択実務が円滑で整然と、かつ、また過剰負担にならないような形で進むようになっているのか、これはこれからの議論にはなろうと思うんですけども、そういったことも含めて御検討いただけるとありがたいなと思っております。
内容としては、これぐらい形、今の到達点としては全く異論のないところですけれども、この先を見据えた様々な作り込みというところにも、十分御配慮いただけるとありがたいなと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。
【堀田主査】 坂本委員、ありがとうございました。前者のネットワーク環境については、このワーキンググループの一つ上にあるデジタル学習基盤の特別委員会でもしばしば議論になることでございまして、そこは目配りしてまいりたいと思います。
二つ目の採択事務の量については、この素案の中にも少し指摘されていますけども、これからの検討課題として大切に議論していきたいと思います。
それでは松下委員、一言お願いいたします。
【松下委員】 ありがとうございます。これまでの審議をよくまとめてくださって、その御苦労と御尽力に改めて御礼申し上げます。読ませていただいて、一文一文に大変深い意味、背景が込められているもので、大変よくまとまったものだと思います。私は中間まとめ以降の参加ですが、それの前に長い時間をかけて子供たちの学びの質をよくするために、多くの専門の方や文科省の方が検討を重ねてここまで来てくださっていることを改めてこの審議取りまとめから感じました。ありがとうございます。
私のほうからは感想と、あと希望と言いますか、要望と言いますかというのを少し申し上げたいと思います。
まず、冒頭にある全ての子供の学びの質の保証という点で、子供の個々の、個人個人の、そして各家庭の状況、保護者の状況の違いがあっても学びの環境が保証されることが大切だと思っていて。それをベースにこのデジタルの持つ可能性を最大限利用しようというこの方向性に改めて期待を持つところですが、今いろんな諸先生方がおっしゃってくださったように、現場で運用する際のいろんな課題があると思うんです。そこに格差が起こらないように、私たちも含めてですが、さらに細かい点で有効にこのデジタル教科書が活用されるようにしていくことが必要だなと思いました。
あと、保護者がネガティブに受け止めると予想される点が、健康面、身体への影響について、あと正しい使い方、理解、使い方を理解しないで進めてしまうというところだと思うんです。それは保護者も共有していく必要が大いにあるかと思います。なので、保護者にとっても、学びの環境の変化を自分事として捉えていくことと同時に、教科書制作側の方、あと使用する側の方、皆さんも、子供の健康面やデジタル、メディアリテラシー面で悪影響などの研究をさらにお願いして、それを保護者のほうにまた共有していただくことが要望としてというか、強い願いとしてあります。
あと3点ですが、まず、いろんな、これまでの専門の方が言及されているように、教科書「を」教えるではなく、教科書「で」教えるというところの認識を保護者も新たにしたいと思いました。デジタルと紙のハイブリッドになることで、教える側の先生方が子供と学ぶことがクリエーティブでとても楽しいことだと感じることにつながっていけばと思います。そのためには、ぜひデジタル、紙という中に、リアル、実体験を伴う、そしてそこにデジタルや紙を有効活用した授業を研修などに取り入れていただければ、先生たちが子供と学ぶことが楽しく、さらに楽しくなっていくのかなと思いました。
これは私の周りの狭い世界で起こっていることですが、知り合いの先生が、このデジタル教科書、学校現場にデジタルが導入されるという流れになってきて以降、知り合いの先生がもうそこまでやれない、負担としか思えないということで、何人か教職をお辞めになっているという例もあります。なので、学びの場をクリエーティブにつくっていくことが先生にとっても前向きに楽しくなることであるといいなと思います。
あと、冒頭に話題が出ていたと思いますが、AIの進化が目まぐるしい中、保護者としてもAIを正しく理解する前に、生活にどんどん入ってきている不安もありますので、学びの場へのデジタルの導入の際に、ぜひ先を見通して進められていくことをお願いしたいと思います。メディアのニュースで、この夏休みの宿題もAIを使って子供たちがやったというのはよく聞きました。そういう使い方なのかな、それがAIの有効利用なのかなと思うような内容もありましたので、ぜひこれからのこととして一緒に考えていければと思います。
最後に、これは私がここに参加させていただいての感想というか決意という新たにしたところでありますが、保護者の役割というのを再考した時間でした。今回の取りまとめの過去形で言うことでもいいんですけど、最後のほうに関係各機関への理解というところに、保護者というのが一言入っているんですけど、すっと読んでいけば、ただ保護者というだけですけども、そこには大きな役割を込められた一文だなと思いました。
PTAの在り方、保護者が子供の学習環境を自分事として考えていく、それは中身に何か軸になる部分に参画していくということではなくて、伴走者としてできる役割をずっと自分事として考えていかないといけないなということを改めて感じました。それは今回の感じたこととして、私が所属していたPTAの連合会、高等学校PTA連合会のほうに返していきたいと思います。早速、全国の高等学校PTA連合の会長が集まる場で何度か勉強会をしていくなどにつなげていきたいなと思っております。皆さんの御尽力に感謝申し上げます。ありがとうございます。
【堀田主査】 ありがとうございました。保護者のお立場から御発言いただきまして、大変助かります。ありがとうございました。
それでは、最後になりますが、中川主査代理、お願いいたします。
【中川主査代理】 中川です。事務局のおまとめ、本当にありがとうございました。とてもクリアにおまとめいただいたと今さらながら思っています。特に特段大きな修正意見は委員からはなかったのではないかなと感じています。一方、各委員からも、そのまとめ素案に基づいて、今後のことについて重要な御意見をいただいたところと理解しております。そういう意味では、本日の御提案の中で、現時点で何よりも私が申し上げたいのは、まとめ素案及び素案概要にも示されている、国がデジタル教科書に関する一定のガイドラインを示す必要性、重要性はとても高いということです。
奈須委員が指摘された、もう少し具体的にという役目は、私はガイドラインかなと思っていますし、政策の際に、採択の際に、それから学びの在り方や教育機関の変革を含めた活用の際に、それぞれの最もよりどころになるものであると期待するからです。そのためには単なる参考程度ではなくて、できるだけ具体的かつ強い指針のようなものである必要があると思います。内容はもちろんですけども、公表の仕方の工夫も必要になると思います。さらにできるだけ早く出すべきだなとも考えています。
そして、今後のガイドラインの作成に大いに関連すると思われる検討点を三つ申し上げます。一つ目は、デジタルならではの探究的な学びにふさわしい活用メリットについては、もっと強調してもよいかなと思います。審議のまとめ本文自体には詳しく載っているんですが、例えばもっと素案概要にも載せてもよいかと思います。なぜならば、こちらを引き合いに出されることが現実的には多くなると想定されるからです。特に、特別な配慮を必要とする児童生徒にとっては、カスタマイズできるデジタル教科書は、誰一人取り残さない学びの場を保証することにもつながると考えます。
二つ目ですが、今回も話題になった動画の扱いについてです。本文19ページにも書かれているところでありますし、検定審査では限定的な範囲で一定の確認を行うにとどめるということが素案概要の3ページ目にも書かれていますが、学びを深め広げるために効果的であるものは実際あると思います。
例えば、今日も委員からも出ていましたが、ほかにも理科の実験の手順動画とか、国語の書き順、英語の話し方やコミュニケーション場面、静止画やコマ送りでは理解が難しい可能性のある動画についての採用に踏み込むことは大いに検討の余地があると思っています。もちろん岡本委員からも懸念が示されたように、やみくもに何でも動画を入れるべきということでありません。これまでの議論を踏まえて、どうガイドラインに落とし込んでいくかということが重要に思います。
三つ目ですが、ハイブリッドの形態の制作に関する懸念です。現状では、ここまで三つも四つもつくらねばならないのかという懸念、あるいは結局どういうものなのという懸念が払拭されていないと想定します。本ワーキングでは、教科書のイメージとして、紙媒体のみからデジタル媒体のみまで4通りが示されていると思いますが、それと現在のデジタル教科書から、その印刷機能を充実させたようなデジタル中心のもの、それから紙媒体のみのものから、いろいろとQRコード等、今デジタルを少し含めたものがありますが、この紙媒体のものからデジタルに向かっているものと、デジタル教科書が少し印刷機能等を補充するようなもの、この2案から設置者等が学校等の実態に応じて選択できるようにすることが個人的には政策の負担の面からも、選択側が選択できるという面からも、落としどころとしてはベターではないかなと思ってはおります。もちろん、ちょうど真ん中のハイブリッド教科書を一つだけ出してくるところもあろうかと思いますが、いずれにしてもガイドラインでどこまで指針を出せるかが重要な箇所ではないかと思っています。
以上、ガイドラインを作成するとなると、ということで、今後御留意いただけると幸いです。以上になります。
【堀田主査】 ありがとうございました。委員の皆様全てから御意見をいただいたところでございますが、まだ言い残していることとかある方はいらっしゃいますでしょうか。よろしいですかね。私も主査として事務局と一緒にこの素案について検討を重ねてきたものです。昨日ぐらいから主要なマスコミ等でもこの素案についていろいろ報道いただいているところで大変感謝しております。
私どもこれは中教審の中のワーキングですし、デジタル学習基盤という大きないろんなものの中の一つにその主たる教材としてのデジタル教科書というものがあると。ただ、このデジタル教科書というのは、現在の定義で言えば、紙の教科書があって、それをデジタルにした、全部デジタルにした代替教材であるということですけども、必ずしもそのことを指して私たちは議論してきたわけではなくて、教科書の部分的なデジタル化も含めて、教科書の一部をデジタル化し、それが子供たちへの学びやすさに寄与するような、そういうことをしていくときの様々な法改正や、あるいは懸念等について洗い出していくということをやってきたわけで、それを含めて、ある程度正確な御理解をマスコミ等の皆さんにはお願いしたいところでございます。
中教審は大臣から諮問を受けて検討を進めてまいっておりますが、デジタルか紙かといった二項対立に陥らず、とその諮問に書いてありますし、デジタルの力でリアルな学びを支えるという基本的な考え方だというのも諮問に書いてあって、この考え方に基づいて、子供たちの学びの環境をどう整えていくかということの一つに、私どもの今までの審議があるということでございます。
また、教科書について、先生方が網羅的に教えてしまうんじゃないかという慣習の問題もあるし、教科書自体が重くて子供たちの通学の負担になっているとか、そういう話もあるし、コストの話もあるし、いろいろ課題があるわけで。こういうのは一度には解決がなかなか難しいんだけども、できるだけその最適解になるような組合せ方、これも一度に全部というのは難しいんだけども、できるところから、やれるところからしっかりとやっていく。その準備期間としての当面の間もやれることをやっていくという、こういう整理でこの素案をつくってきたということになります。
私どものこのワーキングが中間まとめまでの議論と、あと中間まとめ以後、人が変わっての議論もありました。それを事務局が大変御苦労されて整理していただいて、素案を今日、提出したわけですけれども、特に基本的な考え方、方向性については、おおむね意見が一致したのかなと思います。
個別の論点については、幾つか意見がありましたし、委員の私たちもこう言ってしまうということは、この書きぶりはもうちょっと説明的でないといけないんじゃないかとか、そういう部分は事務局としてまたいろいろあろうかと思いますし、また、委員の皆様においても、もっとここをこう書いたらいいよ、みたいなことの御意見がさらにありましたら、メール等で事務局にお寄せいただくということをお願いした上でですが、次回のワーキングのときに、より精緻化した審議まとめの案、素案ではなくて案としてお示しできればと考えているところでございます。
今日のところ、素案について皆さんに御意見をいただくということについては、ここまでとしたいと思います。御協力ありがとうございました。
それでは、次回の予定につきまして、事務局から一言お願いいたします。
【西田教科書課課長補佐】 次回のデジタル教科書推進ワーキンググループの日程につきましては、追って事務局から御連絡させていただきます。以上でございます。
【堀田主査】 本日の議題は、この議事はこの審議まとめの素案を整理することでございましたので、本日の会議はここまでといたします。
皆さん、お忙しい中、いつもながら御協力ありがとうございました。次回またよろしくお願いいたします。ありがとうございました。
ー了ー
初等中等教育局 教科書課