令和7年7月10日(木曜日)15時00分~17時00分
文部科学省
※対面・WEB会議の併用(傍聴はWEB上のみ)
【堀田主査】 皆さん、こんにちは。定刻となりましたので、ただいまから中央教育審議会初等中等教育分科会デジタル学習基盤特別委員会、デジタル教科書推進ワーキンググループの第10回を開催いたします。
本日は御多忙の中、御出席いただきまして誠にありがとうございます。
本日は、松下委員が御欠席、坂本委員が遅れてのオンライン出席となっております。
本日の会議開催方式及び資料につきまして、まず事務局より御説明をお願いいたします。
【西田教科書課課長補佐】 本会議は、前回と同様、対面とオンラインのハイブリッド形式での開催でございます。オンラインで参加されている委員もいらっしゃいますので、会議を円滑に行う観点から、御発言時以外はマイクをミュートにしていただきますようお願いいたします。カメラにつきましては、御発言時も含めて会議中はオンにしていただきますようお願いします。
続きまして、資料の確認でございます。本日の資料でございますけれども、議事次第に記載のとおり、資料1と2、加えて参考資料が1から3となっております。対面で御参加の委員には紙でもお配りしてございますけれども、お手元の端末でも御覧いただけます。御不明な点がございましたら事務局にお申しつけください。
以上でございます。
【堀田主査】 ありがとうございました。
それでは、議題に入りたいと思いますが、まずは、本日は報道関係者と一般の方向けに本会議の模様をYouTubeにて配信しておりますので、御承知おきください。
では、議題1、「デジタル教科書に係る制度面の検討について」でございます。今回は、前回に引き続き、制度面の2回目の検討になります。今回の議題は、発行や供給の在り方、また、教科用特定図書等の関係につきまして、議論を行いたいと思います。
事務局において論点を整理していただいておりますので、まずは事務局より資料の御説明をよろしくお願いいたします。
【黄地教科書課長】 資料1を御覧ください。こちらは本日御審議いただきたい検討事項をまとめたもので、毎回、最近配らせていただいているものでございます。
赤枠のところを御覧いただければと思いますが、本日御議論をお願いしたいのが4点ございます。1点目は、デジタルな形態の教科書の発行や供給義務の範囲をどのように考えるべきかと。2点目は、その丸1の前提として、そもそもデジタルな形態の教科書の使用可能な期間はいかほどが適当か。3点目として、少し論点変わりますが、高校や特別支援学校などで使用する適当な教科書がない場合に、一般に流通している図書を教科書の代わりに使うことが可能になっております。その場合であっても、デジタルな形態の一般の図書を認めるべきかどうかというのが3点目でございます。4点目として、障害のある子供に使用してもらう教科用特定図書、例えば拡大教科書や点字教科書、音声教材などございますが、これらとの関係についてどう整理するかと、以上4点でございます。
資料2を御覧いただければと思います。
各論点につきまして、現行制度や御審議いただきたいものをまとめた資料でございます。
2ページを御覧ください。
まず、デジタル教科書の発行や供給義務の範囲についてでございます。まず、現行制度を御確認いただきたいんですが、1つ目の白丸にございますように、教科書発行法という法律がございまして、この中で、教科書の発行というのは、一般的に用いられる発行の概要よりもう少し広い概念でございまして、教科書を製造して供給するところまでを発行として、この法律では位置づけられているところでございます。教科書の発行者は、製造してから供給するまで、一連の発行の責任を負うこととされております。
この場合、現行の教科書は紙でございますので、この発行責任を実現するためには、紙の教科書を製作して、計画どおり遅滞なく学校まで届けられれば、こうした発行の義務は履行されたこととなります。
一方で、紙の教科書と併用で配っております代替教材としてのデジタル教科書につきましては、クラウド配信方式によって提供し、ライセンス期間が終了するまで子供たちが使用することができるような状況になってございます。デジタル教科書それ自体は、制度上の教科用図書ではございませんので、発行責任はないものではございますが、実質的にはライセンス期間使用できるようにしていただいているというものでございます。
今後、詰めるべき論点として、特に赤字の部分でございますが、今後デジタルの形態によるものも教科書として認められた場合には、紙の教科書であれば、教科書を一旦子供の手元に届けるようにすれば、その時点でもうすぐ使えるということでいいんですが、デジタルの場合は有体物でございませんので、少なくともライセンス期間など決まった一定の期間は、児童生徒が使用できるような環境にしておくということをもって、発行の責任を果たしてもらうということでよいかという論点でございます。すなわち、その下の黒字にございますように、例えばIDやパスワードなど必要な情報を届ける、さらには、そうした一定の期間が終了するまで、児童生徒が使用できるように配信し続けることが必要ではないかということでございます。
また、さらにその下の白丸にございますように、何らかの原因で一時的に配信できなくなった場合、そのときに教科書のデジタル部分が使えなくなってしまうということでは困りますので、その場合に対応できるように、例えば印刷できる機能を実装するですとか、また、供給の途中で何らかの事情によって発行者が配信を継続できなかった、できなくなってしまうような状況になるといった場合に備えて、例えばデジタルデータの権利譲渡など、ほかの方が供給を承継できるような仕組みも併せて検討する必要がないかということでございます。
また、その他、発行・供給につきましては、様々な細かな手順やルールがございます。この辺りにつきましては、現在の実態も踏まえながら、関係者間で協議検討を行いながら、例えば転学対応の場合どうするかといったようなことも含めて、実務ルールを定めていくことが必要ではないかと、このように考えております。
続きまして、論点の2でございます。4ページを御覧ください。
先ほどの発行の義務をいつまで果たすべきかという論点にも絡んできますが、使用可能な期間をそもそもどれぐらいにすべきかということでございます。現行の代替教材としてのデジタル教科書のライセンス期間につきましては、国が提供しているものにつきましては1年間でございます。これは併用で紙の教科書を別途配っておりますので、デジタルのほうは1年で足りるであろうと。要すれば授業で使う期間の1年間で足りるであろうという考えでございます。一方、国が提供していない、民間販売されているデジタル教科書もございますが、こちらにつきましては、ここにも書いてございますように、1年のものもあれば、長いものでは4年といったように、かなり様々なものでございます。
今後、デジタルも教科書の形態として認めることとした場合に、その使用期間をどれぐらいにするかということがこの論点の2でございますが、これにつきましては、例えば先ほど申し上げましたような発行者の発行・供給義務の期間、あるいはクラウドの利用料維持管理といったようなコストの変動、こうしたものも踏まえながら、どれぐらいの時間デジタル部分の使用を確保する必要があるかどうかを検討する必要があるのではないかと考えてございます。
その際、御留意いただきたい点として、そもそも教科書の基本的な性質とはどういったものであるかを押さえていただく必要があるのではないかということでございます。三つ目の白丸に書いてございますように、教科書は学校で使う主たる教材ということで、特に学校の授業で使うことを基本として子供たちが使うということを踏まえて、検討する必要があるのではないかということでございます。
続いて5ページ、次のページを御覧いただければと思いますが、こうした基本的な性質を踏まえまして、例えば義務教育段階の場合、ここのページより先に6ページのほう御覧いただければと思うんですけれども、6ページでまとめている表は、各学校の各学年に対応して、各教科の教科書がどのように使われるかといったような対応関係を表したものでございます。基本的には、例えば一番上の欄の国語にございますように、各学年ごとに1冊ずつ教科書が提供されるということになってございますが、例えば上から四つ目の地図のように、小学校3年から小学校6年まで、4年間かけて1冊の教科書を使い続けるようなもの、さらには下から六つ目ぐらいにございます図画工作は、小学校の低学年、中学年、高学年ごとに1冊ずつといったような形で、各教科によって取扱いが異なっているものでございます。ただ、いずれの場合であっても、相当期間授業で使うということを前提に、配付されているということでございます。
また資料5ページにお戻りいただければと思いますが、当然その授業で使う期間中は必ず使えるように、デジタルの場合であっても使えるようにしていただくということは当然の前提でございますけれども、さらには、例えば入試の対応で、前の学年の内容の振り返りをしたりですとか、また、複式学級の編成や特別の教育課程の編成をしたりするといった場合には、使用学年を超えての使用ということも、当然十分想定されるところでございます。
こうしたもろもろのニーズに対応するという観点から、例えば義務教育段階では、少なくとも3年間以上の使用期間を確保することが望ましいのではないかと。例えば、少なくともということでございますので、場合によっては4年といったようなものも、可能性として考えられるかと思っております。
また、高校段階につきましては、全日制については修業年限が3年でございますが、一方定時制や通信制の場合は3年以上ということになっていまして、3年で卒業、修了する生徒もおりますけれども、例えば4年以上いる生徒も相当数いるところでございます。こういった状況ですとか、さらには高校卒業後に、例えば大学入試に向けた準備ですとか、様々な理由で使う、使用する可能性があるということも踏まえれば、高校については、例えば、少なくとも4年間以上の使用可能期間を確保するということが望ましいのではないかということで、1案御用意させていただいております。
さらに、その使用可能期間を超えて使いたいというニーズについては、その下にダウンロード機能等と書かせていただいておりますが、例えば使用可能期間後は、要はクラウド上の配信はされなくなる可能性がございますけれども、その場合であっても使用できるように、御自身の端末にダウンロードして引き続き使用できることを可能としたり、また、必要な部分については紙として打ち出せるような印刷機能を備えたりしておくということが、一つ望ましいのではないかと考えられます。その場合、目的外の利用や拡散が行われないような方策の検討も、併せて必要ではないかと考えております。
続きまして、論点3でございます。8ページを御覧ください。
基本的には、各学校段階では検定教科書を授業で使用していただくということが基本でございますが、例えば高校の専門科目によっては、検定教科書が発行されていない場合がございます。また、特別支援学校や特別支援学級で特別の教育課程を行う場合には、子供たちの実態を考えますと、検定教科書を使用することが適当でない場合もございます。こうした場合には、検定教科書以外の一般的な図書を、例外的に教科書の代わりに使用することが制度上可能になってございます。今般の検討が、教科書の形態としてデジタルによるものも認めることということであれば、こうした一般図書につきましても、デジタルの形態のものをそれぞれの現場で活用できるということを可能にしてはどうかということが、この論点でございます。
続きまして、論点の4でございます。9ページを御覧ください。次のページです。
こちらは教科用特定図書にまつわる論点でございます。一番上の白丸の冒頭に書いてございますように、障害のある子供たちのための教材として、例えば拡大教科書や点字の教科書、あるいは音声教材などが使用されております。これを使用するに当たっての制度的なスキームが別途ございまして、少しページ飛びますが、12ページのほうを御覧いただければと思います。
こうした特定図書をつくるに当たって、各教科書発行者から、全ての種目に係る教科書のデジタルデータを、文科省あるいは文科省が指定する団体にまず提供していただきます。提供して一旦集約した上で、実際に特定図書をつくっていただく大学や民間団体などに、文科省、あるいはその指定する者から提供するような形で、各団体でそれぞれの教科書をつくっていただくと、こうした流れになってございます。
これを前提に今後どうあるべきかということで、また9ページにお戻りいただければと思いますが、この9ページの赤字で書いてございますように、今後、仮にデジタルによる教科用図書が出てきた場合であっても、障害のある子供たちのニーズとして、例えば端末が見えない、見えなくて引き続き点字でやりたい、あるいは拡大でやりたいといったようなニーズもある場合には、それに対応できるように、デジタルの部分のデジタルデータも、紙のデジタルデータと同様に、先ほどのスキームの中で各発行者から文科省に提供できるようにすることが適当ではないかということが一つ目の論点でございます。
もう一つの論点としましては、その次の10ページ御覧いただければと思いますが、拡大教科書や点字教科書などにつきましては、無償給与の対象になってございます。法律の裏づけは、特別支援学校と通常学級に在籍する子供たちとでそれぞれ違いますが、いずれの場合であっても無償給与されるということになってございます。これに関する論点として、その下でございますが、例えば教科用特定図書は、先ほど申し上げましたように、拡大教科書、点字教科書でございますけれども、例えばデジタルの形態の教科書の中でも、特に障害のニーズに合うような特別の機能を備えたものが、もし今後出てくる場合に備えて、こうしたものも教科用特定図書として位置づけまして、無償給与の対象にしてはどうかということでございます。
その際、どういったものがそうした特定図書の対象になるかということでいえば、その下に標準規格の例を幾つか書いてございますが、今も、現行法令上も、教科書バリアフリー法の中でユニバーサルデザインですとか、国が定める標準規格に適合するといったようなことが定められておりますけれども、こうした今までの流れをさらに進める観点から、デジタルな形態の教科用特定図書の標準規格を定めることについて検討してはどうかと、このように考えております。
駆け足ではございますが、説明は以上でございます。
【堀田主査】 ありがとうございました。
【黄地教科書課長】 すみません、もう1点よろしいですか。
【堀田主査】 どうぞ、お願いします。
【黄地教科書課長】 あと参考としてつけさせていただいている資料がございまして、参考資料3というものを御用意してございます。こちらは6月に閣議決定されました骨太の方針でございまして、ちょっと大部にわたりますが、21ページをお開きいただきますと、この中に教育DXという項目が中ほどにございます。これの下から5行目のところに、デジタル教科書の利活用促進などということで書かれてございまして、要すれば、政府全体の方針としても教育DXが位置づけられ、さらにその中の主要な要素として、デジタル教科書の利活用促進ということが盛り込まれておりますので、御紹介させていただきます。よろしくお願いします。
【堀田主査】 ありがとうございました。今の骨太の方針でいえば、ここには毎年一貫して、国策として推進するGIGAスクール構想という言葉があるんですけれども、これを中心に、生成AIのことも書いてありますし、子供の情報活用能力のことも、伴走支援のこともいろいろ書いてあって、ここにデジタル教科書のことも書いてあると。基盤としてのハードウエアの整備から、だんだんこのコンテンツなどの整備に着々と進んでいるということかと思います。
今御説明いただきました資料1、今回は、ここの表紙のところにある4点について、議論を行いたいと思います。
それでは、委員の皆さんの御意見をいただきますが、いつものように挙手ボタンを押していただいて、対面の方も押していただいて、お願いしたいと思います。また、オンラインでの発言がございます場合は、挙手ボタンで表明していただければと思います。
ただ、今日御欠席の松下委員から、事前に、今日の議題につきましてコメントをいただいているということですので、事務局のほうからちょっと御紹介をお願いいたします。
【黄地教科書課長】 本日の議題に関しまして、松下委員からいただいているコメントを読ませていただきます。
関係する多くの方々の御尽力で教科書が出来上がっていることを改めて知り、感謝の気持ちを申し上げるとともに、デジタルに関しましては、インターネット環境、教科書会社の経営など様々な条件の影響で、学習中に閲覧できなくなる状況にならないよう、多方面からのバックアップをお願いいたします。そのことで現場の先生方の指導計画に支障が出たり、また、先生方の御負担が増えたりしないようお願いいたします。
以上でございます。
【堀田主査】 ありがとうございます。
それでは先生方、委員の皆さん、ぜひ御発言をお願いいたします。
中村委員、お願いします。
【中村委員】 みどりの学園義務教育学校教頭の中村でございます。御説明ありがとうございました。
いよいよデジタル教科書の使用を想定した供給だったり、発行の期間というようなところで御検討いただきまして、本当にありがたいなと思うところです。その中で、現場の実態の中から、幾つか気になるところを少しお話しさせていただきます。
まず、今回の議題の丸2のところ、使用可能期間というところにおきまして、本校は9年間の義務教育学校というところもありまして、やはり9年生という中学校3年生が受験期になりますと、遡って前期課程、4年生の頃のつまずきだったりとか、もしくはもっと下の下学年のところを参照したくなったりとかという場面が想定されます。それから、その復習という、よくあるだけではなくて、私たち、これからどういう仕様になっていくか分からないんですが、デジタル教科書に書き込んだ、要は紙の教科書でいうと紙の教科書に書き込んだものであったり、ポートフォリオのようなものが、デジタル教科書とともに、もしかして記録されていくというふうになった場合には、やはりその部分を遡りたいと思う場面も想定されると思います。さらには、本当にこれは特異な例だとは思うんですが、進路、大学の、今はAO入試みたいなところで自分の特技を披露する際に、小学校の頃、中学校の頃の教科書に載っていたものを自分が研究として高めたというようなプレゼンテーションをする際に、もしかすると使いたいと思うようなこともあるのかもしれません。そういった意味で、非常にこの使用可能期間というものが、今現在想定されている3年、4年といったところよりも、もしかすると、場合によってはもっとたくさんの期間を想定していただけるのかどうか、もしくは、それが難しければ、ネット状況がない中で、今ダウンロードというものも一部可能となっているというふうになっているんですけれども、ほかの手だてというものが何か想定されているのかというところが、気になるところです。
これが使用可能期間についてなんですけれども、もう一つはアカウントなんです。卒業後、中学校を卒業すると、今GIGAスクール構想で子供たちに配付しているアカウントというのは、一旦中学校ではリセットをされてしまいます。つくば市では、子供たちのアカウントを卒業後2か月から半年ぐらいは猶予を持って保持し、その期間にこれまでのクラウド情報だったり、成果物を自分の別のアカウントに載せ替えたり、またはほかのデバイスに落とし込んだりということをやる期間は設けてはいるんですが、そう考えた場合、卒業後のアカウントがなくなると、デジタル教科書はどのように連動していくのかな、今シングルサインオンで使っておりますので、そのアカウントがなくなってしまうと、どのように使ったらいいのかなということも1点気になるところです。そうしますと、卒業後、それを今在籍している学校のアカウントを使って、そのまま使えるようにするというのが想定されている場合は、そこのときに起こり得るトラブルは、そこに所属していた学校の先生が対応するのかどうかといったところも、どうしても現場としては、引き続き私たちが責任を持つのかなというふうに、ちょっと気になっているところではあります。
2点、使用可能期間と、それからアカウント、アカウントがなくなった後でもシングルサインオンのものはどのように考えたらいいのかなといったところで、方向性がもしありましたら教えていただければと思います。
【堀田主査】 ありがとうございました。中村委員、もう1回聞きたいんですけれども、今の、後者ですね。アカウントの件は、端末のアカウントの話ですか。
【中村委員】 そうですね。
【堀田主査】 それともデジタル教科書のアカウント、それはシングルサインオンでいけるようにはなっているわけですけれども。端末アカウントがなくなったときに……。
【中村委員】 デジタル教科書の……。
【堀田主査】 教科書のアカウントは残るのかどうかみたいな話ですか。
【中村委員】 今はシングルサインオンなのでそのまま入れているんですが、アカウントがなくなると、という疑問になります。
【堀田主査】 そうですね。分かりました。これはまた論点だと思います。どうしたほうがいいという意見はありますか。
【中村委員】 はい。ありがとうございます。今のアカウントの部分に関してなんですけれども、やはり卒業後のところまでは、なかなか学校としても、その先の使用について見守ることが難しいと考えることがあるので、子供たちに配付しているGIGAスクールのアカウントは切り離した考え方で何か措置ができるのであればありがたいと思っています。例えばそれが、クラウド上で何かリンクをたたけば見られるようになっているのか、それを卒業時に配付して、卒業後はここから入ると見られますよというようなものがあるのか、その辺り、学校のアカウントとは切り離した何か措置、あとはダウンロードというところが一番ありがたいのかなとは思います。
【堀田主査】 これは、事務局、いいですか。こういう意見が出たということで。今学校で、授業で主に教授の用にも供せられるという観点からいえば、学校にいるときのことを中心に、この原案はつくりましたけれども。
【西田教科書課課長補佐】 事務局の理解では、先生の御趣旨は卒業後まで学校が管理、ある種の責任を持って管理をするというのは、ちょっと負担面からもどうかという御指摘であったと思います。デジタル教科書は、一般的にウェブ上で見られる形になっておりますので、そのアカウント情報を自らのパソコンなどから入れていただければ、見られますので、その際に、例えばここにも書いてございますような、ダウンロードをしていただければ、自分の端末のほうにその情報が行きますので、その情報を基に、それよりさらに長い期間見ることができるというようなことも考えられると思っております。
【堀田主査】 これはライセンス期間の話と、その後でも使えるようにするための話という、今2段階になっていますけれども、原案でいえばそういうことですかね。でも現場としては、卒業生まで全部管理するというのはほぼ無理だと考えれば、そのとおりだと思いました。
続いて阿部委員、その後、奈須委員でお願いしたいと思います。阿部委員、お願いします。
【阿部委員】 横浜市立荏田南小学校、阿部でございます。
まず、1番の発行・供給義務の範囲のお話です。配信をして終わりではなくて、配信し続けていただく必要があるというのはとても思うところです。それと同時に、端末は充電切れの子供が出たりとか、ネットワークも急に使えなくなる可能性があったりします。また、どういうわけか原因は分かりませんけれども、ネットにつながらなくて、ずっとくるくるし続けるみたいなことが現場では起きます。そういったときにデジタルの教科書も、紙で印刷できるとか、私たちの学校ではよくスクショを撮って、それを印刷したりしますけれども、そういうようなことが可能なようにしていただきたいなと思います。
それから、ここにもありましたように、転入・転出の対応ですが、これも新たな対応が必要になってくるんだということを改めて感じたところです。他都市から来た子供たちが、すぐにでも皆と同じデジタル教科書が使えるように、そういう対応が必要になってくると思います。
それから、使用可能の期間です。現行は1年だというお話でしたけれども、子供たちは自分の学びの履歴を見たいんです。過去に自分がどんなふうに考えたか、どんなふうに発言したか、そういうのが、デジタル教科書の中に書き込みで残っているならば、それは恐らく残して見ていきたいだろうなと思います。また、新しい学習に入るときに、過去にはどんな勉強をしてきたんだろうというのは、それが遡れると理解の促進につながります。また、補充の学習に使いたいという場面はあらゆるところで起きてくると思いますので、これは1年、2年と言わずに、下学年のものを見られるようにしていただきたいと思います。実際、多くの子供は二、三年遡れれば、足りるんですけれども、まれに1年生の漢字を6年生になっても見返したいとかいう子もいますので、そういった、まれなケースではありますが、そういう子供たちが困らないように、何か仕組みをつくっていただければありがたいです。
また、今、多くは子供の話をしていますけれども、先生たちは、学習の系統性を確認して、この学年の子供たちは過去にどんな学びをしてきたんだ、だからここまでは教えるけれども、ここはフォローが必要だみたいなことを考えながら指導していきます。となると、少なくとも先生たちは、全ての学年が見られるようにしていただきたいと思っています。
それから、ちょっと悩ましいなと思っているところが、採択された教科書会社が変わる場合です。その場合には、新しく採択された教科書会社のデジタルの部分を扱っていくわけですが、去年までの履歴を見たいときは、去年まで使っていた会社のものを見ていくことになるのかなと思いますので、そのあたりも、対応するビューアの関係などが、現時点では問題になるのではないかという危惧があります。
続きまして、3点目の一般用の図書にデジタルも認めるか否かということですけれども、特別な支援が必要な子供たちというのは、デジタルとの相性がいい場合がとても多いので、ぜひデジタルも認めていただきたいなと思っております。
最後です。アクセシビリティーについてです。以前のワーキンググループで東大の近藤先生がおいでになったときに、現在のデジタル教科書のアクセシビリティーでは十分ではないというお話をお聞きして、すごく目からうろこといいますか、そういうところは知りませんでしたので、ぜひその標準の規格をつくっていただいて、困る子供が出ないというようなことを進めていただきたいです。また、特別な支援が必要な、特別支援学級や特別支援学校だけでなく、一般の通常のクラスの中にも、自宅で必死にルビ振りをして読めるようにしている子供たちは多くいます。そういう子供たちが、デジタルになってルビ振りをしてくれたり、読み上げをしてくれたりすることがどれほど学習に役に立つかというのは心から思うところですので、ぜひこの標準の規格をつくっていただいて、それが十分なものをデジタル教科書のほうに登載していただけたらと思います。そういうことで救われる子供が本当に多く出ると思うからです。
以上です。
【堀田主査】 ありがとうございました。大変現場感覚のある、非常に貴重な意見をいただいたと思います。ライセンス何年かというのは、これは非常に難しいのは、教科書会社はその分ずっとその配信や管理を負担しなきゃいけないわけで、今の採択が変わった場合も、前の採択箇所にそれを続けてやるという、ある意味新たな御負担を教科書会社に強いることになるという意味で、業界の状況等も踏まえて、私たちはこうしたいだけじゃなくて、どうやったらそれがちゃんと実現できるかということの議論も、これから必要になるのかなと思っています。貴重な意見ありがとうございました。
では、この後、奈須委員、岡本委員、松谷委員の順番でまいります。お願いします。
【奈須委員】 奈須でございます。よろしくお願いいたします。
デジタル教科書のことを考える上で、今後の教育課程をめぐる状況が少しは変わってくるということもまた、加味する必要があるんだろうと思います。もちろんまだまだ未確定の部分が多いわけですけれども、現状までの教育課程企画特別部会での議論から、2点ほど論点として出したいと思います。
一つは多様性の公正な包摂という令和答申の流れを受けて、教育課程の学年等の扱い方についての柔軟化・弾力化の議論が進んでいるかと思います。学年配当というのが日本は割と厳密になっていて、これがいろいろな問題を起こしていると。学年相当というようなことでどうだろうという議論も出ていますけれども、これまでのように、配当学年でその教科書がぎちっと使われて、それが終わったら使われないということ、授業だけでもですよ。授業だけでも、それではなくなってくる可能性が出てくるんじゃないかということが一つです。
それからもう一つは、教育内容について、中核的な概念・方略をベースに、内容の構造化をしようという話になってきます。これは今の授業のイメージでいうと、教科の縦の系統というのをすごくしっかりやって、子供にもそれと分かるようにしていこうということだと思うんです。先ほど阿部先生がおっしゃったこととも絡むんですけれども、3年生、4年生の学習を踏まえて、1、2年の学びを整理することによって、すべてがよりよく統合されるということがあります。例えば整数の簡単な数の勉強とか、足し算、引き算というのを低学年からやってきて、それはそれで子供も分かるしできるわけですが、数全体としていうと、小数とか分数をやった後で、そこから遡って整数、小数、分数を比較整理しながら統合的に理解することで、数とは何か、計算とはどういうことかという、まさに概念的な理解に至る、そんな授業をイメージしているというか、僕らは今後求めていこうとしているわけです。すると4年生になったときに、1年生のときのブロックガッチャーンなんてやっていたものが、そのときやっていたこととは違う景色として見えてくる、そんなことが生じるわけです。だから、1回終わって、それができるようになれば終わりというふうな学習ではなくなってくる。そのときはそのときなりにできて、問題は解けているんだけれども、後に違う視点から改めて見てみると、ちょっと違った景色が見えてくるというふうな、そんな授業のイメージが、中核的な概念とかいう話になると出てくるんです。すると、どうしても上、下の教科書を参照しながら、授業が現に進められていくなんていうこともあるかと思います。もっとも、どうしても児童用のものが手元に全部なければいけないかというと、教師用のデジタル教科書をディスプレイに提示して、こんなのやったねということを思い出しながらでもできるかなと思うんですけれども、ただ、その学んだことを家で振り返って、本当にそうかなあと確認するとかいうときには、やはり手元にあったほうがいいです。そういった、これまでの授業とか、これまでの学年配当とかいうのとは、少し今議論していることはイメージが変わってきますので、そのときに、どんな供給とか、使用可能期間体制にするかということはあるかなと思います。
それとの関係で、だから、いつでも、割と長期的に自由に子供が使えるようにしたいと思うわけですけれども、先ほど主査からあったように、それは供給側にとっては大変な負担です。なので、ダウンロードという今日の御提案、あるいは関係団体の主な意見の中にオフライン機能という表現もあります。デジタル化を推進するということの基本はクラウドベースにしていくということだと思います。その方向は一番大事な方向ですけれども、併せて、この辺りの論点については、オフラインでもいいのかもしれない。全部じゃなくていいんです、ベーシックな機能が使える。あるいは、ダウンロードが可能になれば、手元に残るということですよね。それはすごくいいことなのかなと思っています。このことは、使用可能期間中であっても、いろいろな形でのネットワークの不調、もちろん学校でということもありますけれども、家で使うとか、夏休みに出先でも勉強したいとかいうことございますよね。そういうときに安定した利用を可能にするという意味では、多少機能を制限されても、オフラインやダウンロードでの使用ができるように配慮するということはいいことかなと思っています。
それから、もう一つは、使用可能期間後、これは当然先ほどからあるような、先々振り返って使うということもあるんだと思うんですが、1点お聞きしたいのは、このダウンロードの話は、ここの表現だと使用可能期間後のダウンロードのイメージなのか、使用可能期間中にダウンロードしてもいいのか、その辺りはどうなのかなと思うんです。もう使用期間が終わるからダウンロードして使えるようにしようという話なのか、いやいや、もう供給されてすぐにダウンロードして使うようにしていいのか、あるいはそれをそういうことにすることによって何か問題があるのか、何かその辺りのこともちょっと伺えればなと思いました。
以上です。
【堀田主査】 ありがとうございました。何か答えられますか。
【西田教科書課課長補佐】 決まっているものではございませんけれども、今でもデジタル教科書の中ではダウンロードができるような機能を備えているものがございます。すなわち、ここで一応想定しておりましたのは、そういったものに倣って、ここでいう使用可能期間の間に、いつでもダウンロードできることができれば、いわゆる保証期間としての使用可能期間以降も、一定程度、先生がおっしゃったように、ベーシックな機能の下で使えるという形を想定しながら、このダウンロードを書いておりました。
【堀田主査】 ありがとうございました。
では岡本委員、お願いいたします。
【岡本委員】 教科書協会の岡本でございます。本日の論点について、まずは整理いただきましてありがとうございます。
私からは、発行者の立場としての発言となりますけれども、まずは論点の1と2、こちらについて意見を述べたいと思います。初めに前提として、論点1にありますように、供給期間が定まれば、発行者としては供給義務という観点から、その期間は教科書のデジタル部分を使用できるようにするというのは当然だというふうに考えております。その上で、デジタル部分の供給期間、これを議論する際には、発行者側としては、配信コストというのと切り離して考えることができませんで、この観点で少し意見を続けたいと思います。
論点1では、書いてありますように、法的な義務として供給期間というものが示されておりまして、一方論点の2のほうでは、使用実態を基に使用可能期間というものが示されています。この使用実態をベースに考えてしまうと、ほかの先生方がおっしゃるように、究極的にはずっと見られるのが一番いいというふうになってしまうんですけれども、それを基に法的義務としての供給期間を設定されてしまうと、紙であればその期間に配信するコストのようなものは、紙の場合はなかったものが、デジタルだと発生するということになります。デジタルとして使用可能期間とを考える際には、その配信期間に新たに生じるコストというものを十分に検討していただいて、我々が価格を決められるという制度ではありませんので、教科書を発行者が持続的に発行・供給できる、そういうことが可能な価格設定とをしていただかないと、なかなか難しいんじゃないかと考えています。
それは資料2の4ページのほうにも記載いただいていますけれども、やはり教科書を配信する期間が長くなればなるほど、当然配信コストもかかってまいります。これは通常の民間会社の配信サービスとかであれば、月幾らとか年幾らとかいうように、皆様も御利用されていると思うんですけれども、そういうランニングコストを回収できる料金体系というのを設定して、持続可能なサービスを提供していると思うんです。ただ、教科書というのは制度上そうした料金体系になっていませんし、先ほど申したように発行者がそれを設定することもできないので、そこを考えていただかないと、この議論は難しいんじゃないかなと思っています。
関係団体からの御意見の中にも、紙が手元に残るからデジタルもというようなことを書かれているんですけれども、なかなかそうしたコスト面の検討なしに理想論だけで議論が進んでしまうと、発行者としては、それを実現するのにかなりの負担を強いられるということになりますので、供給期間に関しては特にコストが直接関係してくるところだと思っています。
先ほど事務局の方からも御説明いただきましたけれども、教科書の発行法でも、教科書の基本的性質というのは、学校の実際の授業で使われるということが主たる教材としての位置づけになっていますので、この基本的な性質というところに、法的な位置づけに立ち返って考えて、使用可能期間が長ければ長いほどよいというのは心情的には分かるんですが、現実的なところをやはり探っていくというところが求められるのではないかなと思っております。
最後にこの論点1に関しまして、御説明ありましたように、発行者には、教科書の発行、それから供給する義務というのが課されていて、その発行と供給に遅滞が生じた場合は、ある意味法律違反になってしまうという、かなり厳しい責任が課されていますので、供給の期間が長くなればなるほど、それだけ我々発行者の責任も重くなるという事情も、この議論の際には勘案していただけるとありがたいと思っております。
一旦私からは以上といたします。
【堀田主査】 ありがとうございました。
では松谷委員、お願いいたします。
【松谷委員】 なかなか言いづらくなるところもあると思うんですけれども、使用可能期間と、それから一般図書についてお話をしたいと思っています。
まず、高等学校の議論というのはあまり出てこなかったんですが、やはり全日制は3年、それから定時制は4年、それから通信制では3年か4年というところが、年度として出てくると。やはり高等学校から大学入試のことを考えると、あと1年間というのは、私学の中では話が出ていたところでございます。ただ、この中でもダウンロードという機能で、それによって対応できるのが、ある程度の一定期間があればそれをダウンロードしてというのが徹底してくれば、それでの見方ができるのではないかと思っています。
それからもう一つは、転入生とかありましたが、帰国生の場合にも、かなり国語力とかというと、やはり3年間の資料があって、そして大学入試に臨むとか、中学でも帰国生が結構来ておりますけれども、そういった基礎的なところはやっぱり3年間見たいなというのは感じているところです。
それから一般図書についてですが、やはり高等学校になると専門性が出てきて、例えば具体的には看護のそういった専門の授業をするとか、そういう一般図書を利用している学校がかなりある。そのところに、やはり一般図書をこのデジタルを認めていただきたいなというふうに考えています。そういうことが、この教科書の中で、一般図書についてもデジタルな形態を認めていただければというのが私の意見でございます。
以上でございます。
【堀田主査】 ありがとうございます。
では細田委員、お願いいたします。
【細田委員】 細田でございます。よろしくお願いします。
実は私も、この資料をあらかじめ拝見してから、先ほど岡本委員さんのおっしゃっていた、このデジタル教科書のコストといいますか、価格がとても心配だなと思っていたところです。と申しますのは、クラウド配信方式ですので、私も教育長のときに、クラウドで自治体として相当金額もかかりまして、工面するのが大変だったという経験もございますので、これが当然のことながら、先ほど来の様々な御意見の中で納得できますように、なるべく長い期間子供たちがこの教科書を活用できる、もちろんその学校種を卒業しても、学びを深めるためにとか、様々な観点から、その教科書、デジタル教科書が使用可能であるということはまさに理想ではあるんですけれども、その辺のところを、価格のシミュレーションをちゃんとしてこの議論を進めていかないと、なかなか難しいところだなというのを、この資料をあらかじめ見させていただいてきたところから考えているところです。
しかしながら、同時に、実は私、教育での地方創生の文脈で、今小さな自治体の教育にかなり関わっていまして、複数関わっている中で、例えば複式学級も、私も随分今関わっているんですけれども、その複式学級ですと、3年生、4年生、5年生、6年生とかが学んでいるときに、5年生でも6年生の授業に参画しながら議論を深めていったりするという、例えば反対ですと、6年生が5年生のときの教科書を見ながらということはあるんですが、逆も結構あるんです。年少の学年のほうが年長の学年の内容についても議論に加わったりとかするということもありますので、どうやらその学年配当からの脱却が、これからますます求められるところになるんだろうなと思いますし、それから奈須委員がおっしゃっていたように、やはり中核的な概念をどんどん深めていく学びのスタイルになりますと、やっぱり縦の系統だけではなくて、横とか、教科を超えたところとか、いろいろな学びの進化の仕方が求められていくところで、その部分での教科書の配当といいますか、デジタル教科書の活用についての議論も、ちょっと複雑になってくるだろうなと思っております。
2点、ちょっともやもやとはしているんですけれども、まず第一には、岡本委員さんのおっしゃっているように、コスト面の検討なしではこの議論はなかなか難しいんじゃないかと、こんなふうに思っているところでございます。
以上です。
【堀田主査】 ありがとうございました。
では中川委員、お願いいたします。
【中川主査代理】 ありがとうございます。事務局、おまとめありがとうございました。論点を考える上で非常に分かりやすい資料をつくっていただきました。
今回も一委員として、二つコメントさせていただきたいと思うんですけれども、まず、論点1と2というのは関連していると思うんですが、やはり今聞いていても、1年しか授業で使わないことが基本になっている教科書についても、やはり複数年の使用可能なライセンス期間というのは必須であるなということを改めて思いました。例えば国語の説明文で、情報と情報との関係に着目して、前の学年のものをうまく生かしながら理解していくとか、それから算数なんかはまさに積み重ねを大事にしている教科ですので、そういったようなことはたくさんあるわけで、それからさらに言うと、阿部委員とか、中村委員から御指摘あったように、デジタル教科書はやっぱりよく書き込むことを、私もこれまでも申し上げてきました。そのようなものの活用を保証するということがやっぱり考えられるわけで、書き込みデータだけ残せばいいのではなくて、教科書の本文とかとの連動で残していかないと、後々やっぱり使えないということがあるので、そういったようなことを検討していく必要があると。そういうことを考えていくと、やっぱり前の学年の内容を振り返りながら学習を進めていくということは多々考えられて、その年の教科書しか使えない状況というのはやっぱり解消すべきだと思います。
それから、さらにこれまで議論になっているハイブリッドの検討の視点からも、児童生徒が使用期間後も使用できるよう、ダウンロードを可能にした印刷機能を備えておくというようなことも望ましいと思いますし、それから先ほど奈須委員のお話聞いていて、本当にオフラインを想定するということも一つやっぱり重要だなと。我々いまだにオフラインで結構活用するということ、大人でも結構あるわけで、そう考えると、非常に重要な御指摘だなと思いました。ただし、誰が何を負担するのかということ、特にランニングコストをどうするのかということ、それから完全供給義務の期間の緩和をどうするのか、こういうことを検討すべきということは、残っているなと思いました。
次に、論点3と4ですけれども、事務局から御提示があったように、現行のデジタル教科書の制度化に合わせて附則9条本のデジタル代替教材も使えることを踏まえると、附則9条本についても、デジタルの形態のものも認められるというふうにすることがいいと思いますし、それから教科用特定図書等については、デジタルの形態によるものも制度上認めて、無償給与の対象とすることが適当と思いますし、検定教科書等のデジタルデータも提供義務に含まれるようにすることが適当だと考えます。
とにもかくにも、今日の議論で総じて言えることは、学校現場で使いたいのに使えない状況が発生することがないようにするということに尽きると思っています。
以上です。
【堀田主査】 ありがとうございました。
大体一通り御意見をいただいたところですが、もうちょっと言い足したいような方がいらっしゃいましたら挙手ボタンをお願いしたいと思います。その後、私ももちろん意見がありますので、私のほうでも御意見申し上げますが、また事務局から、現行の状況でこういうふうに論点を立てていただいて、そして、今委員がいろいろ意見を出したわけで、その段階で何か事務局からコメントがもしあるようでしたら、後でまたいただければと思います。
岡本委員、お願いします。
【岡本委員】 特定図書のほうについて意見を申せなかったので、追加でちょっと意見をさせてください。発行者といたしまして、論点の4ですね。こちらデジタル部分のデータ提供ですけれども、基本的にはこれ、現在紙のデータを提供する義務がありますので、デジタルのところも教科書というふうになれば、そこも含めて提供義務が生じるということでよいと思っています。ただし、このデジタル部分というのはいろいろなデータ形式が考えられますので、例えば前回のワーキングで検討したように、教科書の記述内容とデジタル機能のような区分に分けた際に、どこの範囲で提供義務が生じるのかということを考えたときに、例えば記述内容は紙でもデジタルでもいいというような整理だったと思うんですけれども、そこであれば、ある程度固まった内容としてお出しできる可能性が高いのかなと感じています。例えばそういったところをまずは対象にして、それについてどういう形式のデータを提供すればいいのかというふうに具体化を検討できればいいんじゃないかなということで、どこを対象にどんな形式のものを出せばいいのかというところを少し具体的にお話しさせていただけると、こちらもイメージがつきやすいと思っております。
それから、特定図書のデジタルな形態、これは認めることには賛成しておりまして、そうなってくると、特定図書というのは、やはり規格が、拡大教科書なども定められていますので、デジタルになった場合にも、デジタルの何らかの規格というものが必要になってきて、それに対応して発行されるということになるかと思っています。今、デジタル教科書と呼ばれているのは教科用図書の代替教材という位置づけですけれども、そこにも各発行者が創意工夫をして、拡大ができたりとか、音声読み上げができたりとか、白黒の反転とか、どなたかおっしゃっていました総ルビなどの機能があったり、あとリフローの表示があるとか、様々な特別支援に関する機能というものをつけていて、それをお出ししている状況にあって、障害のある方々とか、外国人の児童生徒の方々とか、そういうところに有効だというお声も聞きます。そういった特別支援の機能を大変喜ばれて使っているというお声もあります。デジタルの規格を今後検討される際には、そうした今あるような機能というのも参考にしながら、規格について検討していくという方法もあるんじゃないかなと考えています。
論点4については、私の意見は以上になります。
【堀田主査】 ありがとうございました。
それでは、ほかに御意見がある方、挙手をお願いしたいんですが、いかがでしょうか。よろしいですか。
では事務局、何かコメントあればと思いますが、どうでしょうか。
【黄地教科書課長】 まず、今岡本委員からありました特定図書のデジタルデータをどのようにすべきかにつきましては、その辺りも含めて、また別途実務的に意見交換させていただきたいと思います。先ほど資料の中で御説明しましたように、今は紙の教科書からを前提とした点字教科書や拡大教科書、音声教材をつくるためのデジタルデータでございますので、デジタルの形態の教科書の場合も基本は一緒でございます。したがって、点字教科書や拡大教科書をつくるに足りるデータというのはどこからどこまでなのかというのが、今後の具体の検討のポイントになっていくのかなと思います。
また、各委員から様々な御意見頂戴していく中で、特にライセンスの期間の在り方を、やはり現場からすれば、長ければ長いほうがいいということでございます一方で、一定程度コストもかかります。そのコスト、デジタルの教科書をつくるに当たってのコストやライセンスもあれば、いろいろな機能をどういうふうに付加するかというのもございます。また一方で、印刷の費用はかからないといったようなところ、様々な要素の中で決まってきますので、またその辺りはライセンスの期間も重ね合わせながら、総合的に検討してまいりたいなと、このように考えております。
【堀田主査】 ありがとうございました。
それで私、主査として一言申し上げておきたいんですが、今日は中間まとめ後の検討事項の、資料1でいえば、3の丸2というのをやったわけです。
【堀田主査】 第8回、2回前は当面の間というのをやったわけです。当面の間と言ってきましたけれども、これは現行の学習指導要領下で、現状の延長でもっと改善すべき点はないかということをやってきたわけです。そして、前回の第9回と今回は、当面の間の後、つまり、次期学習指導要領の実施時期に当たって、デジタルを含むこの教科書はどのようにあればいいかということを、制度変更をしなきゃいけないのはどの辺かみたいなことも含めて、いろいろな意見交換をしてきたということになります。
まだ、当然ここのワーキングで何か決まるわけではありませんけれども、一つやっぱり大事なことは、奈須委員もおっしゃった、次の学習指導要領に向けて、現在教育課程企画特別部会で議論が進んでいますが、この後各教科等のワーキンググループができて、それから1年以上かけてだと思いますけれども、内容も含めて練られていくことになります。大きな流れは、教育課程の弾力化がやっぱり大きいと思います。これは多様性、包摂性を考えたときに、一人一人にもっと応じるということ、あるいは学びやすくすると。学びのアクセシビリティーといったらいいんでしょうか、それを高めるという、こういうようなことが多様な子供たちに対して行うといったときに、これを考えるのがこの9回目と10回目だったと考えると、今の制度から見たらちょっと無理があるよねということも、やっぱり議論しなきゃいけなかったんだと思うし、今日出た意見も、今の制度ではちょっと難しいんだけれども、新しい時代ではこういうことも求められるんじゃないかということがいろいろ出てきたんだと思います。
例えば岡本委員がおっしゃった配信コストのことは当然、今日出たような意見を、例えばライセンス期間をある程度延ばすみたいなことを考えたら、当然配信コストのことは議論になるべきだし、そのコストは国が見るということになると思います。ではそのお金をどこから持ってくるのかとなったときに、先ほど課長がおっしゃったように、今まででいえば、かかっていた印刷費の問題とか、供給のためにかかっていたコストとか、どこまでを国家予算としてちゃんとやるのかということを新しい時代の教育課程の在り方に向けて、併せてやっていくんだと。そうすると、法改正が必要な部分というのもいろいろ出てくるんだと思うし、この部分についてはかなり専門的な議論が、このワーキングを超えていっぱいあるんだと思うし、事務方できちっとやっていただかなきゃいけない御苦労もたくさんあるかと思うし、また業界のほうも、明日からそうしてくれと言って分かりましたというわけにはいかない現実があると考えると、現状をキープしながらも、新しい時代に着々と変わっていくようなトランジションの期間みたいなことも考えなきゃならないのかなと私は思っております。
例えば現行でいえば、専らその授業に供するものと言っていますが、果たして授業、一人一人がそれぞれ学ぶみたいなときに、場所にすらこだわらず学ぶみたいなことがある程度現実的になった、なっていくとすれば、授業なるものは何なのかというようなことから考えたときの教科書、教える材料としての教科書から、学ぶ材料としての教科書にだんだんシフトしていったときの在り方というのはどうなのか。例えば家庭でも使うことを中心に置いて考えることはできないのかどうかも含めて、そうなったときの教科書なるものを考える時に、現行の制度に引っ張られ過ぎると、大胆な改革が見据えられない可能性があると思うんです。
また、昨日の教育課程部会で、今後各教科等のワーキングができて各教科等でいろいろ議論が進むということになりましたけれども、この教科での議論も、新しい時代に合わせた教科教育の在り方を検討するときに、現行の制度に引っ張られてしまって、何かこう矮小化されてしまうと、理想と現実の違いは当然あるわけですが、そこは難しくなる部分があるかなと思いますので、私たちは現行の制度にのっとって今はやらなきゃいけないけれども、これからの新しい制度の在り方みたいなことにも、容易ではないんですけれども、それを見据えながら、ある意味理想的なことも、ちゃんと意見として、このワーキングとしてこういう意見もあったということをきちっと残していくべきかなと思いますし、その結果出てきた論点が、ここで結論は出せないとしても、今後の課題として、検討課題として残っていくんだというふうに考えております。
そういう意味では今日は、前回と今回は、新しいデジタルも含む教科書の在り方について、たくさんの御意見を皆さんからいただき、このことがオンラインでも配信されていますし、マスコミ等でも取り上げていただいておりますので、国民の議論にしっかりと乗っていけばいいなと思います。また、このワーキングの上にはデジタル学習基盤特別委員会があって、ここでデジタル学習基盤、デジタル教科書に限らない、いろいろなデジタルの学習基盤をどうすればいいかという議論にうまく吸収されていく必要もありますし、そのことと、さっきのこれからの時代の学習指導要領をどうするかみたいなこととタイアップしながら検討していくということになりますので、まだ結論を出すには早過ぎる。だけれども、新しい時代に合わせていこうとすると、この教科書にまつわるいろいろなことは、こういうことが課題になりそうだねということはいろいろ私どもの意見交換の中で出てきたんだと思いますし、事務局がこうやってきちんと論点を整理していただいたおかげかと思っております。
今日のところである程度の検討は、大体論点は議論できたかなと思っておりますので、この後、残る部分は何か、あるいはこれから今までの議論を整理するとどうなるかみたいな、整理のフェーズに入っていくのかなと考えております。皆さんの御協力に感謝申し上げたいと思います。
それでは、これで大体議論、今日の議題は終わるわけですけれども、今日も少し早めなんですが、終了することになるかなと思います。
事務局のほうでまだ言い残していることや、あるいは次回の予定等、何かありましたらお願いいたします。
【西田教科書課課長補佐】 今主査からございましたように、一通り論点、御議論いただきましたので、これまでの議論、事務局のほうで次回整理させていただいて、お示しさせていただきたいと思っております。
日程につきましては、また追って事務局のほうから御連絡差し上げます。
以上でございます。
【堀田主査】 ありがとうございました。
私どもが何か結論が出したわけではなくて、その論点を整理しただけですが、でも、この論点が今後いろいろと議論され、制度化されていくということを期待するところでございますので、この後、個別の論点をうまく整理していただくということを事務局にお願いして、今日はここまででお開きとしたいと思います。
どうも皆さん、御協力ありがとうございました。
―― 了 ――
初等中等教育局 教科書課