デジタル教科書推進ワーキンググループ(第9回)議事録

1.日時

令和7年6月12日(木曜日)15時00分~17時00分

2.場所

文部科学省
※対面・WEB会議の併用(傍聴はWEB上のみ)

3.議題

  1. デジタル教科書に係る制度面の検討について
  2. その他

4.議事録

【堀田主査】  皆さん、こんにちは。定刻となりましたので、ただいまから中央教育審議会初等中等教育分科会デジタル学習基盤特別委員会のデジタル教科書推進ワーキンググループ、今日で第9回になります。開催いたします。
 本日は御多忙の中、御出席いただきまして誠にありがとうございます。
 本日は、委員の皆様全員御出席で、坂本委員、松下委員がオンライン出席となっております。
 それでは、本日の会議開催方式及び資料につきまして、事務局より御説明をお願いいたします。
【西田教科書課課長補佐】  本会議は、前回と同様、対面とオンラインのハイブリッド形式での開催でございます。オンラインで参加されている委員もいらっしゃいますので、会議を円滑に行う観点から、御発言時以外はマイクをミュートにしていただきますようお願いいたします。カメラにつきましては、御発言時も含めて会議中はオンにしていただきますようお願いいたします。
 次に、資料の確認でございます。本日の資料でございますけれども、議事次第に記載のとおり、資料1と2、加えて参考資料が1と2となっております。対面で参加の委員の方々には紙でもお配りしておりますけれども、お手元の端末でも御覧いただけます。御不明な点がございましたらお申しつけください。
 以上でございます。
【堀田主査】  ありがとうございました。
 それでは、議題に入りたいと思います。 なお、本日は、報道関係者と一般の方向けに本会議の模様をYouTubeにて配信しておりますので、御承知おきください。
 それでは、議題1、「デジタル教科書に係る制度面の検討について」でございます。今回は、制度面の検討の第1回目として、教科書の使用、あるいは検定、採択の在り方について議論を行っていくということになっております。
 事務局において論点を整理していただきましたので、事務局より、まずは資料の説明をお願いいたします。
【黄地教科書課長】  まず、資料1を御覧ください。今後の検討事項についてまとめたものでございます。
 こちらにございますとおり、1ポツ、2ポツにつきましては、前回あるいは前々回のワーキングで御議論いただいた内容でございまして、本日は、こちらの3ポツの制度面の検討事項として、一つは、教科書の使用の在り方をどのように考えるか、2点目として、この使用の在り方を踏まえて、検定の在り方をどのように考えるべきか、また、丸3にございますように、どのようにデジタルな形態の教科書を採択するか、この3点について御議論いただきたく考えておるところでございます。
 続きまして、資料2のほうを御覧ください。今申し上げました各論点につきまして、御検討いただきたい事項を整理したものでございます。
 まず、2ページを御覧いただければと思いますが、論点1といたしまして、新たな学びに対応した教科書の使用をどのように考えるかということで、冒頭書いてございますように、中間まとめでも指摘されてございますが、実際教科書の内容・分量が大幅に増加している状況でございます。その背景として、教科書の内容を網羅的に教えなくてはならないのではないかといったような考え方が依然として強く、それが現場での負担感を生んでしまっているのではないかという実態が指摘されているところでございます。この辺りをどう改善していくかが課題でございます。論点丸1のAにございますとおり、まず網羅的に教える必要があるのか、ないのかについては、必ずしもそうではないということをまず御確認いただければということで整理してございます。
 こちらに書いてございますように、実際何を教えないといけないのかは、教育課程の基準でございます学習指導要領で定められておりますが、実際の指導の在り方につきましては、学校や教員の裁量に基づいて多様な創意工夫が行われるということが前提となっておりますので、実際、そうした中で、教科書の取扱いも同様であると考えられるところでございます。
 実際、教科書の内容を御覧いただきますと、その紙面には、指導要領に必ずしも明確に記載されていない内容、あるいは発展的な学習内容ですとか、児童生徒の関心などに応じて適宜参照してもらうような情報も含まれていることからすれば、やはり限られた授業の中で、そうした記述も含めて、網羅的に一律に指導する必要があるものではないのではないか。逆に、そうした教科書に書いている中身を網羅的に指導することで、授業が完結したんだと評価することは必ずしも適当ではないのではないかという問題意識でございます。
 こうしたことを前提に、具体の使用の在り方について整理したのが、丸1のBでございます。先ほど申し上げたとおり、必ずしも網羅的に指導することがないとした場合に、逆に、子供たちの関心に応じた発展的な学習内容ですとか、さらに、関心をより広げたり深めたりする場合には、この赤印で書いてございますけれども、教科書に加えて学習場面に応じて適切な学習材を選択して使用し、個別最適で協働的な学びを充実させていくということが考えられるところでございますが、その際にどのような取組が考えられるかということでございます。
 具体的なイメージを少し図示したものを御用意してございまして、少しページは飛びますが、8ページのほうを御覧いただければと思います。これは令和5年の中教審のワーキンググループの際にも配付させていただいた資料を少し改変したものでございますが、こちらの中ほどにありますように、デジタル教科書は、紙の教科書も一緒でございますが、授業で必ず使用していただくメインの教材でございます。
 一方で、ここの教科書の分量については、指導要領の議論の中でも御意見いただいてございますが、もう少し中核的な内容を踏まえて精選していくべきではないかという御議論が進んでございます。そういたしますと、教科書はシンプルで軽いものになっていくところでございますが、一方で、左にございます多様な教材、また、右にございますような学習支援ソフトウェアも一体的に組み合わせて授業で活用することによって、その下にございますような個別最適な学びまたは協働的な学びを一体的に充実するということが、今後の教科書の活用イメージとして考えられるのではないかと整理しているところでございます。
 こうした今後の在り方を踏まえて、論点2の教科書の検定をどのように進めていくかということでまとめたのが4ページでございます。まず、具体の方向性を御議論いただく前に、教科書の基本的な性質ですとか、検定の趣旨について御確認いただければと思います。
 4ページの冒頭に書いてございますように、教科書の基本的な性質としては、まず、授業で先生や子供たちが必ず使う主たる教材である。そのため、使用義務が課せられていること。また、学習指導要領に基づき教育内容が文字や図画等によって系統的・組織的に示されているもの。また、その中身が検定によって質が担保されていること。この辺りが基本的な性質であろうと考えられるところでございます。
 この性質を踏まえまして、検定の在り方としては、丸1から丸4にございますように、全国的な教育水準の維持向上、機会の均等の保障、適正な教育内容の維持、教育の中立性の確保、こうした要請に応えながら、民間の創意工夫による多様な教科書の発行を期待するための手続であろうという位置付けでございます。
 一方で、実際、教科書に何をどのように記述するかは、教科書自体が民間の著作物であるという性質を捉まえれば、まず各発行者が判断いただく。そのことを前提にしつつ、赤字で書いてございますように、教科書の記述が指導要領に準拠しているか、公正な取扱いとなっているか、書いている内容が正確なものであるかといったような、記述の欠陥を審査するということがその根幹となってございます。この辺りは、教科書の形態が紙であろうと、今後デジタルのものが仮に認められたものが出たとした場合であったとしても、方向性としては共通であろうと考えられます。
 一方で、現行の代替教材のデジタル教材の取扱いにつきましては、現行のデジタル教科書は、紙の教科書と「内容が同一」でございますので、検定は不要となっております。その上で、文字の拡大機能・色の変更機能など様々な機能が実装されているところでございます。したがって、今後の検定の在り方についても、中身をどう取り扱うか、また、機能をどう取り扱うかについては、論点として整理させていただいておりますので、また後ほど御説明いたします。
 次に、5ページを御覧ください。教科書検定の前提として、そもそも教科書はどういうものなのか、教材はどうなのかについての役割分担も、今後の新たな学びを踏まえて、改めて整理する必要があろうかと考えております。
 先ほどポンチ絵を御覧いただいたところにも書いてございますが、教科書は全ての児童生徒が共通に学ぶべき中核的な概念をつかみやすいものがまとめられたものであろうと。そうした観点からすると、これまで御議論もあったように、内容や分量は精選する方向になっている。他方で、教材については、そうした教科書で得られた理解をさらに広げたり深めたりしていくための多様な情報を得る手段として活用していくといったような役割分担が考えられるのではないか。
 その上で、デジタル学習基盤におきましては、先ほどのポンチ絵にございましたように、まず民間の創意工夫において急速に進展するデジタル技術を教育に取り入れることを前提としながらも、教科書自体はシンプルで軽いものとしつつ、多種多様なデジタル教材との連携を高めることによって効果的に組み合わせて、学習活動全体として個別最適で協働的な学びの充実を図る仕組みに変えていくことが求められるのではないかということでございますので、こうした環境の実現に向けて、今後の検定の方向性はどうあるべきかということを示したのが、その下の丸2のBでございます。
 まず、2のBの(1)にございますように、先ほど申し上げたような考え方からすれば、デジタルな形態も含む教科書の検定に当たっては、1)でございますが、その形態は紙かデジタルかであるかは問わず、やはり教科書の内容面、文字や図画等で示されたような内容面の審査は、現行同様に審査をする。
 一方で、2)にございますとおり、デジタル化によって教科書の中身をより効果的に理解できるようにするために必要であると認められる機能、例えば、括弧書きでいろいろ書いてございますが、中身を動的に表示するような機能ですとか、図形や関数の操作機能、音声の読み上げ機能、様々なものがございますが、こうしたものは教科書のデジタル機能として整理した上で、その検定審査においては、本文との関連性など限定的な範囲で一定の確認を行うにとどめることとしてはどうかという整理ではどうかと考えてございます。
 したがって、完全に中身の話の審査と、それを効果的に理解させるための機能面は、ある程度分けて考えるべきではないかというのがここでの整理でございます。それを図示した資料を別途用意してございまして、9ページを御覧いただければと思います。
 上の青の枠囲いにございますとおり、教科書といっても、中身そのものもあれば、それをより効果的に理解させるための様々な機能もございますので、中身そのものにつきましては、やはり先ほど申し上げましたとおり、指導要領に示す内容が不足していないかですとか、あとは、不適切な部分がないのかといったような従来どおりの検討を、紙であろうとデジタルであろうとを問わず、進めてはどうかと。一方で、機能面につきましては、例えば記述内容との関連性など、一定の確認にとどめてはどうかといったようなイメージをお示ししたものでございます。
 その上で、さらなる論点として、今度は6ページを御覧いただければと思います。そうした機能について、例えば音声の場合はどう取り扱うかということでございます。
 (2)にございますように、教科書の記述に対応した音声については、基本的にはデジタルの読み上げに関する機能として捉えることができるのではないか。ということであれば、他のデジタル機能と同様に、限定的な範囲で一定の確認を行うこととするということが基本であると考えられる一方で、例えば、4技能が重要視される英語の音声などについては、それとはまた別の取扱いが必要なのかどうかも含めて、教科用図書検定調査審議会でさらに御議論いただいてはどうかということが1点。
 また、(3)にございますとおり、デジタルの良さを生かした多様な教科書作りを推進するという観点からすれば、例えば、赤で書いていますように、教科書にあります文字や図画、例えば絵とか、グラフとか、写真とか様々なものがございますが、こうした内容が動いて表示されたり、あるいは、子供が操作することによって動かせたりする機能も考えられるところでございますが、こうした機能を検定の中でどのように取り扱うかについても、別途検討が必要ではないかということでございます。
 また、(4)にございますのが、(2)、(3)にありますような音声ですとか動的に表示させる機能のほかにも様々な機能があることも想定されますが、どういったものが教科書としてのデジタル機能に該当するか、また、それをどういうふうに検定するかにつきましては、教科用図書検定調査審議会で専門的な見地から審議を行うことが必要ではないかということで整理してございます。
 また、補足的にその下の明朝体で書かれている内容でございますが、例えば、教科書の記述として表示されていないような独立した動画それ自体は、これまでも教材として現場で活用されてきたところでございますが、教科書の基本的な性質としては、先ほど申し上げましたように、授業で教師が用いることが前提となってございますし、また、今後は教科書自体の内容や分量が精選されて、シンプルで軽いものになっていくという状況の中で、これまで教材として活用されたものが、今後これが教科書それ自体になるというのは必ずしもないのではないか。
 また、さらには、先日の団体からの意見募集の中で意見として頂戴してございますが、デジタル技術の進展に伴い新しいコンテンツが次から次へと生み出されて、更新される性質があるといったような動画、あるいは膨大な情報量がある、また、直す場合にそれ相応の困難性が伴うということからすれば、教科書と独立した動画それ自体は、それ自体をもって指導要領で定められる指導事項を全て担保するものではございませんので、必ずしもこれが教科書として位置付けられて検定の対象となるものではないものと考えられますが、一方で、教科書の理解を広げたり深めたりする教材として位置付けた上で、教科書との円滑な接続に配慮するということは、今後の課題としてあるのではないかという点については、補足的に記載させていただいております。
 またさらに、Bの(5)で整理させていただいておりますのが、デジタルの教科書、あるいは紙の教科書も含めてですが、デジタル教材も一体的に組み合わせて授業で使うとした場合に、中間まとめでも触れられてございますが、検定や採択時点では教科書とは切り離して運用した上で、それを前提に、使用段階では一体的に使用できるような連携性の確保を図ることによって、授業全体として学びの充実を図っていくことが期待されるのではないかということを整理してございます。
 続いて、7ページを御覧いただければと思います。また少し違った論点でございますが、仮に同じ内容で、あるものはデジタル、あるものは紙であるといったような教科書がそれぞれ別個に編集・申請される場合に、負担軽減方策は考えられるかどうかということでございます。
 以上が、検定にまつわる論点でございます。
 続きまして、採択に関する論点でございます。13ページを御覧いただければと思います。
 まず、論点丸3のAで御確認いただきたいのが、現行の取扱いでございます。現在、紙の教科書は、採択の前に、実際に供給される教科書と同等の、我々、「見本本」と呼んでいますが、これは採択権者でございます教育委員会や学校に送付される仕組みになってございます。代替教材であるデジタル教科書につきましても、一部のページではございますが、実際提供されるものと同じ見本がクラウドによって提供されているという実態にございます。
 こうした実態を前提に、今後のデジタルな形態の教科書を採択するといった場合に考えられますのが、赤字で書いてございますように、やはり現場で実際に供給・配信される教科書と同じものが同じような方法で供給・配信されるようにした上で、それに基づいて採択が行われることが適当ではないかということでございます。
 もう一つの論点として、(2)でございますが、実際どこに配るのかといった場合に、先ほど申し上げましたように、「採択権者である各教育委員会に見本本のURLを提供する」と、現行はなってございますが、実際には、採択に直接関与する者として、教育委員の方々、選定委員の方々、調査員の方々、様々いらっしゃいますので、こうした方々が閲覧可能になるように現行もなってございますので、今後もデジタルの教科書の採択に当たっても、同じような方法にすることも含めて検討することが考えられるのではないかということでございます。
 また、論点丸3のBとして整理させていただいてございますのが、前回の意見募集でも御意見として頂戴いたしましたが、やはり新しい形態の教科書が出てきた場合に、採択の事務の負担が生じるのではないか、その軽減方策を検討してほしいという御意見を頂戴したところでございます。
 例えば、デジタル機能を一覧表で整理して分かりやすくする、または、同じ内容で形態の異なる教科書があった場合、先ほど検定の場合でも一定の負担軽減が図られないかということを紹介しましたが、採択でも同じように負担軽減を図るという観点から、内容が同じ部分や異なる部分が分かるように示したものを配付してはどうか。また、混乱が生じないように実務ルールを作成した上で、あらかじめ担当者へ説明の機会を設けるべきではないか。
 実際、採択の事務それ自体は地方公共団体の自治事務でございますので、やり方もそれぞれの採択権者によって異なる場合もありますが、デジタルの形態の教科書の採択については、新しい取組でもございますので、一定程度足並みをそろえることができる部分はするということも含めて、実務ルールを作成して説明するということも一つ考えられるのではないかと考えてございます。
 この辺りの論点を基に、また御議論いただければ幸いでございます。
 以上でございます。
【堀田主査】  ありがとうございました。
 事務局のほうでしっかりと整理をしていただいております。整理していただいたのは論点でございますから、これから私どもは、このことについて議論をし、このままでよいのか、賛成なのか、あるいはここをもっとこうすべきではないかみたいな改善、あるいは新しいやり方、もっとこういうのがあるのではないかという考え方、などのようなことを委員の皆さんに御意見をいただきたいと思います。
 これは「当面の間」と呼ばれている、前回の議題だった次の学習指導要領が始まるまでの当面の間の話ではなく、その後の話です。次の学習指導要領の検討は現在教育課程企画特別部会で鋭意進められているところですが、そこで描かれているような新しい学習の在り方、その学習指導要領の下で用いられる教科書はどのようにあればいいかということでございますので、そういう意味では、少し未来の話になります。
 一方で、たったあと5年しかありませんし、現行の制度から急に変わることは、またそれは難しいことでございますから、どこまでできるか、理想はこうだけど当面はこうではないかみたいなこともあり得るかと思います。皆様から、こういう御意見についていろいろと忌憚のない御意見をいただきたいと思います。
 御発言の際には、オンラインの方はもちろんですが、会場にいらっしゃる先生方も、挙手ボタンを押していただきまして、その上で、私のほうで御指名差し上げたいと思います。
 それでは、御意見のある委員の方々、挙手をお願いいたします。
 中村委員から参りましょう。お願いいたします。
【中村委員】  つくば市立みどりの学園義務教育学校教頭の中村でございます。本日も御説明のほうありがとうございます。
 教科書というのは、本校みどりの学園でも本当に日常的に使う学びの地図として位置づいているものなのですが、先ほど論点1のAで、教科書を網羅的に教えなくてはならないのかという部分に関して、そうではないということを文言として書いていただいたことは、学校としては大変ありがたいと感じているところです。
 なぜなら、現在、先生方の授業の仕方を見ておりますと、教科書の単元または教材を一個一個なぞるようにやっていかなくてはならないのではないか、または、書いてある内容を全て伝えなくてはならないのではないかというような意識に駆られてしまっている先生方は少なくありません。そうすると、時間の中で創意工夫をしたり、また、もちろん教材の工夫をしたりということもすると、時間がなくなっていく。そうすると、部分的にただただその教材をなぞって伝えてというような、いわゆる一斉授業がどうしても発生してしまうというような、負のサイクルと言ったらいいのでしょうか、目指すべき授業の在り方ではないところにまた意識がいってしまう、終わらせなくてはいけないというような状況が散見されます。
 そういった中で、この一文のところで、「網羅的に一律に指導する必要があるものではなく」というふうに明示していただいたことについては、学校として、教育観、授業観を変えていく大きな一文字だなと感じているところなので、大変ここはありがたいなと思っております。
 これが使用についてなんですけれども、次に、検定についてというところです。ここについては、一つ質問がありまして、資料2の6ページ、論点2のBの(2)のところに、動画的な教材について、デジタル教材については、限定的な一定の確認というような言葉があります。この限定的な一定の確認ということの中身について、どのようなイメージを持たれているのかというのを具体的に伺いたいなと思うものと、先ほども出てきたように、動画による教材というのは、アニメーションのように本当に無数に情報が連なってできているものですから、そこを検定するのは非常に難しいということはよく分かるのですけれども、例えば、英語科の中にある動画教材の中でも、フラッシュカードだったり、そういったものもあると思います。それはコマ送り的に一枚一枚示されて、それが動的に動いていく教材だと思うのですが、そういったものであれば同様の検定の仕方も可能ではないかと思うところなのですけれども、この部分について、検定の方法の方向性ということがもしありましたら、教えていただければありがたいなと思うところです。
 私からは以上です。
【堀田主査】  最後にまた事務局には回そうと思いますが、いいですか。個別に答えますか。
【黄地教科書課長】  回答することで、ほかの委員の御意見にも参考になればと思いますので。
【堀田主査】  お願いします。
【黄地教科書課長】  実際、今委員から御指摘ございましたフラッシュカードのようなものというのは、仮にあった場合に、そこのフラッシュカードに書かれている中身と、それを動かす機能に分けて整理するということがまず必要ではないかなと思います。
 例えば、フラッシュカードでもいいですし、あるいは少しアニメーション的なものもあったりすることもあり得ると思いますし、そうした場合に、基となる情報としての文字情報ですとか、そういったものにつきましては、このBの(1)でいうところの1)に該当する記述内容そのものではないかなと。ただ、ここの記述内容として、例えば絵になるものとか、今のフラッシュカードで言えば多分単語になりますので、その単語それ自体がここでいうところの文字に該当しますので、その辺りにつきましては、現行の審査と同様かと思われますが、一方で、そのフラッシュカードならフラッシュカードの動かし方とか機能の面については、どちらかというと、1)ではなくて、2)に該当するものではないかなと考えられます。
 その上で、どこの部分をどの程度まで見るかについては、恐らく様々な機能がある中で、その機能に応じてどういうふうに取り扱うかといったような、また別個検討が必要になるのではないかと。その場合には、検定審査を実際に行う教科用図書検定審議会におきまして、また検定基準の在り方も含めて御議論いただくことになろうかということで整理してございます。
 ただ、ここで書かせていただいている「限定的な範囲で一定の確認」と整理させていただいた趣旨としましては、この機能それ自体が、やはり技術の発展が日進月歩であるデジタル技術を活用したものでもございますし、または、民間の教科書会社の創意工夫によるところも多いということを捉まえた場合に、例えば、技術的な仕様の面までも含めて、どこまで見るのか、見ないのかなども含めて、やはり別途専門的な検討が必要なのではないかということで、そういった意味においては、(1)にありますコンテンツそのものの中身の議論とは分けて、別途検討するべきではないかということで書かせていただいているところでございます。
【堀田主査】  よろしいですかね。
【中村委員】  はい。
【堀田主査】  私のほうでも少し確認的に申し上げておきますが、まず、教科書の内容を全部教えなければいけないということは、現行においても別にそれは決まっていることではありません。昔は教科書は薄かったので、それがやりやすかったのだと思うけれども、子供たちの多様性とか、地域による特性とか、いろんなことを考えて、教科書会社のほうでいろいろ工夫されて、教科書のページ数というのはどんどん増えてきたわけです。これは教材を豊かにするという観点で、そういう努力をされてきたということだと思います。
 このことが、そのまま教科書を全部教えるというふうにつながってしまっているのではないかという指摘があって、もう今の学習指導要領からそうだったのだけど、一応確認をちゃんとするということをやっているということですね。
 また、今、中村委員がまさに御指摘された、検定ではないけれども確認というのはどうするのかというのは、これは恐らく今日だけでは全然議論が足りない、非常に重要なところだと思います。
 ただ、検定範囲ではないところにその機能のところを置くというのが一つのポイントで、なぜならば、機能というのは、今まさに課長おっしゃったように、技術の発展とか、それによって子供たちに効果的な学習支援ができるかもしれないことを考えると、これをある意味縛ってしまうような形で検定を行うというのは適切ではないだろうということですね。だからといって何でもいいわけでもないという、この辺りの基準をどうするかということを、検定審とも相談しながら決めていくということなのかなと思っております。
 この辺り、非常に重要なので、御意見をいただければと思います。
 課長、もう一回。
【黄地教科書課長】  ちょっと補足。私の説明が不十分であれば申し訳ございませんが、ここでの整理としましては、コンテンツそのものも機能も教科書でございますので、広い意味での検定の対象になろうかと思いますが、その審査に当たっての取扱いは分けて考えるべきではないかということでございます。
【堀田主査】  ごめんなさい。僕の言い方が悪かったです。
 9ページに書いてあるように、従来どおりの検定ではなくて、広い意味での検定としての確認という言い方です。どうもすみませんでした。
【中村委員】  ありがとうございます。
【堀田主査】  それでは、続きまして、奈須委員、お願いいたします。
【奈須委員】  よろしくお願いします。
 とてもよい整理をいただいて、デジタル教科書に限らず、教科書全般と現場がどう付き合っていくかということだと思うのですね。学校現場、先生方がいい学習経験を子供に提供するために、教科書をどう生かしてどう付き合っていくかということ、それがデジタルになることによって、いろいろ先鋭化するので、今回のことを考えることで、そもそも教科書がどういうものかがもっとクリアになってくる、とてもいいことだなと思っています。
 まず論点1についてですけど、主たる教材なので、もともとそのまま使えないということはたくさんあったのだと思うのですね。例えば、3・4年の社会科は地域を扱いますけど、教科書にはどこの地域でもないものを上手に描いて、あんなまちはどこにもないわけで。教科書の記述を一つ手がかりにして、うちのまちを扱うときに、こんな目のつけどころ、こんな筋道でやるといいのだなということを先生方はお考えになって、教材を開発したり、単元を開発したりするという、それが教科書とのよい付き合い方だと思うのですね。教科書にアイデアを得つつ、確かな足場として生かして、そして私らしい授業をつくるという、それがほかの教科でも本当はそうだったということなのだろうと思うのです。
 ちょっと特殊な例ですが、東京オリンピックがあった年に出された国語科の教科書で、東京オリンピックにみんな関心があるだろうから、それをベースに文章を書こうという単元がありました。でも、1年遅れたので、すると、最初の年はどうするのだという話になって、問合せがあったやに聞いていますが、それでもやらなければいけないのですよねというふうに思われた方がいて、東京オリンピックがあったていにして作文を書かせたという先生がいらっしゃったそうです。つまり、そのぐらい勘違いしている人はいると。特殊な例ですが。でも、そんなことはないので、よく考えないといけないなと思いました。大事なことだと思います。
 ここで、ただ、言葉にまつわる難しい問題があって、今日の資料でもそうですが、学習指導要領に書いてあるのは目標と内容ですよね。内容。これが何を教えなくてはならないかという教育課程の基準であり、学力の質を保証するお約束事ですが、教科書は、整理してくださっているように、教材です。つまり、内容である学習指導要領には「ごんぎつね」とか「もんしろちょう」とかは書いていないので、「ごんぎつね」を読んでやりましょうとか、モンシロチョウを飼うことでやりましょうというのは、教材である教科書が例示してくれているわけですね。だから、内容と教材という関係だと思うのです。
 一方で、教科書のことを議論するときにも、内容という言葉を時々使います。例えば、教科書の内容を網羅的に教えなくてはならないという議論。これは内容と言っているけれども、教科書の記述の中身という意味ですよね。つまり、中身という意味で内容という言葉を僕らはよく使うので、ここが分かりにくいです。
 よく現場では活動内容という言い方をします。学習活動の中身という意味ですが、それは内容ではないのですけど、活動なのですけど、この活動と内容がごっちゃになる。教科書は教材ですから、活動側なのですけど、その活動を通して内容を実現するのですけど、ここがよくごっちゃになるのだなと。
 だから、教科書に例示された活動を上手に生かして、それを通して学習指導要領の内容を実現してくれればいいのですけど。この辺の筋道が、今日だけの議論ではないのですけれど、整理されていくことが大事かなと思います。
 一方で、今日もありますが、発展的な学習内容というのはあるのですね。これは学習指導要領では必須のものとしていないけれども、その教科の理解とか、今回でいう中核概念を深める上で、各教科書会社が、とても重要であり、指導要領の趣旨にもちろん反しない、むしろ促進するようなものを独自にお考えくださってページを入れてくださっています。これは発展的な内容だと思うのですね。この辺りがとても言葉としても今後も難しいなというふうに今日も思っていました。
 この発展的な学習内容には、時数が充てられていないページも当然あったりするわけです。すると、網羅的にやれば時数をオーバーしてしまうので、教科書ははなから全部はできない構造になっているのだけれども、その辺をしっかりお伝えしていく。教科書会社さんにも、その辺を分かりやすく明瞭にお伝えいただく。ここは、時数は充てられていませんよなどということは示してくださっているのですけど、なかなか現場に伝わっていないなんていうことも、一つ目の話としてはあったかなと思います。
 二つ目の検定の話ですが、検定の方針、御提案のとおりで、私はいいと思います。従来の検定を足場にして、デジタルの多くの部分は機能として扱うというのでよろしいかと思います。
 それとの関係で、今日、欠陥を審査するという表現が出ていて、つまり、ネガティブチェックってよく言われますよね。ネガティブチェックであると。つまり、検定に際して、あまりこうしなさい、ああしなさいと言うのではなくて、民間の創意工夫を大切にするという意味で、欠陥があれば指摘して、修正いただくというのが趣旨であるということですよね。これがしっかり共有されていくことは大事だなと思って、今日もよかったなと思っています。
 その上で、これも現場でよく誤解があるのですけど、今日は話題になっていませんが、指導書というのがあって、朱書編というのがありますね。通常「赤刷り」と言いますけど、現場の先生方は、あれを頼りにして授業をなさる。先生方が教科書に頼るというのは、教科書に頼るだけではなくて、赤刷りに頼るということが多くて、赤刷りをやらないといけないという誤解もよくあります。赤刷りは検定対象ではないですよね。児童用・生徒用教科書だけが検定対象で、赤刷りは文科省は一切関知していないというのは割と大事なこと。
 もう一つは、時数です。教科書会社がよくお考えになって推奨時数というのを出しています。よくできていて、確かにあれでやればうまくいくことも多いのですが、子供の実態や先生のお考えによっては、あの時数でなくてもいいのですけれども、推奨時数を守らないといけないと思っている人がいて、あれも検定対象ではないので、その辺り、どこまでが検定対象かということも、別にデジタル教科書の議論ではないのですけど、改めて確認する必要はあるのだろうなと思っていました。
 今日の議論で1点確認なのですが、9ページの図とか、あるいは8ページの図にもあるものですけれども、記述内容、デジタル機能ときていて、もう一つの要素として、デジタル教材というのがありますよね。このデジタル教材というのは、確認ですけど、デジタル教科書を発行される会社の関係で、つまりデジタル教科書とひもづいているデジタル教材という意味ですよね。
 というのは、一般に幾らでもデジタル教材ってあるわけじゃないですか。つまり、これまでも教科書以外に先生方はいろんな教材を開発したり、導入したりして使っているわけで。つまり、ここのデジタル教材というのは、デジタル教科書との関連で、その教科書会社が提供しているという意味ですよね。ではないのですか。
【黄地教科書課長】  必ずしも、それ以外のものもあり得るかなと思っています。
 8ページを御覧いただければと思いますが、こちらに、例えば、学習eポータルを1つのプラットフォームとしまして、デジタル教科書をメインとして使いながらも、いろんな教材ともうまく連携した上で使うといったような姿が想定されておりますが、こうした左側にある教材の中には、教科書会社が作ったものもあれば、そうではないものも様々あり得るものかなと考えております。
 ただ、少なくともここでのイメージとしては、デジタル学習基盤の上では一体的に活用できるような環境整備は大事ではないかということで理解しております。
【奈須委員】  分かりました。
【黄地教科書課長】  一方で、その前のページ、9ページにお戻りいただきますと、青枠で書いているデジタル教材には、今申し上げたとおり、様々な会社のものがあるといえど、例えば、今あるQRコードの御議論についても、御指摘いただいていますとおり、採択の段階で同じ会社のものが教科書についているような形で提供されてしまうことがあるとすれば、教科書以外の部分によって教科書の採択結果が左右されてしまうといったような、必ずしも適切でない状態も生じますし、また、編集側あるいは採択する側からもより負担がかかるという意味においては、採択や検定の段階では、こうした教科書でない教材は切り離して運用できるようにすべきではないかという御議論もありましたので、まさに委員おっしゃるとおり、ほかの教科書会社以外のものも概念としては入りますが、特に同じ会社がやっている場合には、より切り離す必要性が存在するであろうということは、まさにおっしゃるとおりではないかなと考えてございます。
【奈須委員】  分かりました。とてもよく分かります。ありがとうございます。それで結構です。
 それで、3点目の採択の話なのですけれども、これも今ある形でいいと思うのですが、最後の採択事務の負担軽減のところでちょっとどうなのかなと思ったのですが、紙のものもあって、デジタルのものもあって、両方出す会社もあったり、片方出す会社もあったり、新たにデジタルで参入してくるとかいうこともあり得るかと思うのですけど、そういうときに、採択業務は、今出ている全部のものは選択肢に入れてやっているのですかね。というのは、つまり、デジタル教科書が入ることによって、採択業務の対象となる選択肢はかなり増えるというイメージなのですかね。
 何を言いたいかというと、例えば、うちはもう紙の教科書でやっていきますよねというふうな方針の自治体さんは、はなからデジタル教科書があっても選択肢の対象としてしないのであれば、負担も何も増えないのではないかと思うのですが。
【黄地教科書課長】  実際は、まさに採択は、地方公共団体であれば自治事務でございますし、私立学校であれば、まさに建学の独自性というところが大事にされますので、実際どういう形でやるかにつきましては、制約はございません。ただ、現時点におきましては、紙の教科書の場合においては、基本的には全ての教科書をそれなりの体制で審査していただくところでございますが、さらにその上で、例えば、ほかの形態のものが加わったときに、どのような観点でやるかどうかについては、まさにそれぞれの自治体のほうのお考え、あるいはやり方もあろうかと思います。したがって、義務ではないのですが、一方で、保護者に対しての説明責任もございますので、その辺りをどう踏まえて対応できるかということが重要ではないかなと考えております。
 また、先日の各団体からの意見募集ですが、一般からの御意見の中では、そもそも全ての教科で全ての形態のものが存在するのかどうかという点については、もう少し国としても考え方を示してはどうかということも御意見として頂戴いたしていますので、それを実際仮にまとめて出した場合には、教科によっては、ある程度限定された選択肢になり得る可能性もございますので、そういった中で、どの辺りまで採択を負担軽減できるのかについては、まさに丸3のBに書いてあったことと併せて検討していくことも重要ではないかなと考えております。
【奈須委員】  ここの実務ルールというのが、まさにそういうことになりますかね。
【黄地教科書課長】  その辺りも含めてでございますが、実際どういうものが課題として出てくるのかは、今後もいろいろ実務の方々の御意見を聞きながら、また検討してまいりたいと思っています。
【奈須委員】  分かりました。
 以上です。
【堀田主査】  ありがとうございました。
 続きまして、阿部委員、お願いいたします。
【阿部委員】  横浜の阿部でございます。
 先ほど中村委員がおっしゃったことと重なるところもとてもあるのですけれど、やはり学校では網羅的に教科書を教えなければいけないという意識が本当に根強くて、奈須委員のほうからは本当に大きな勘違いというお話ありましたけれども、勘違いしている方は多いのです。教科書を見ると、コラムとか発展とか参考とか書いてあるから、当然そもそも網羅しなくていいと分かるはずなのですけれど、もうそこに印刷して本になっていれば、それを全部やらないのは何かいけないような気がするようです。
 そして、教科書を教えるのではなくて、教科書で教えるんだよということを私たちもよく言うのですけれども、それもなかなか通じない。例えば、私は理科を専門にやってきましたので、理科で子供がわくわくするような授業をしたいと思えば、教科書をしまいなさいと言ってやってきました。ただ、内容は教科書に載っていることをやっているわけですから、教科書を使わないということではないのですけれど、「本当にいいのでしょうか。教科書をしまわせていいのでしょうか」みたいなことをやはり言われてしまう。
 そういうことが根強くありましたので、今回、文科省のほうから一歩踏み込んで、網羅的に指導する必要があるものではないと言っていただくことが、こういうことを解消していく一歩になるのではないかと思います。そのこと自体がすごく大事で、大変ありがたいと思うところです。
 続いて、論点2になりますけれども、検定の範囲ということで、検定ではネガティブチェックをしていただいていたのだというのは本当に今回初めて知ったところですけれども、動画については難しいというのは一定の理解をしました。
 ただ、例えば、前回も言いましたけれども、技能教科のような、家庭科で玉結びや玉止めをやる技能を身につけるのもやはり内容の一つなのですけれども、そうしたときに、それを示してもらうのって、やはり動画が一番最適だと思います。これを教材としてリンク先に示していくみたいな方法もあるかもしれませんけれど、まずはコマ送りのように写真を並べるみたいなことを可能にしていただきながら、中長期的に今後の課題としていただければありがたいと思います。
 続きまして、3番の採択についてです。私も採択の準備の業務をやっていたことがありまして、そこでは各教科書会社さんの記述ですとか内容について、基準に照らして、どこが違うかという、その違いを明らかにしてきました。そういう点から考えると、デジタルの機能やデジタルで示している箇所、紙で示している箇所みたいなのを一覧で示していただきたいし、続けて、単元の配列ですとか、それのボリューム感ですとか、想定の時間数とか、そういったものも一覧で示していただくことが、今回の採択では各教科書会社さんの違いになろうかなと思います。採択はそこら辺を勘案して決めていきやすいと思いますので、それらをやっていただくことを望みます。
 最後ですが、この採択の範囲といいますか、自治体ごとだったり、もっと小さな範囲だったり、エリアで採択していると思いますが、私としては、なるべく小さなエリアで採択していくことが、多分いろいろ教科書会社さんによって個性が分かれるだろう今回の採択において、今デジタルの格差はとてもありますので、無難にデジタルがないほうを選ぼうみたいなことにならないで済むかなと思っています。これは本当に希望ですけれども、なるべく小さなエリアで採択していくと、それぞれの教科書の良さが生きて、やがて全体のデジタルの使用率が上がっていくと、そういうことにつながるのではないかなと思っております。
 以上です。
【堀田主査】  ありがとうございました。
 大変貴重な御指摘を幾つか、しかも、長期的にはこういうことが希望だけれども、当面はという言い方もしていただいたところでございます。ありがとうございます。
 お願いします。
【黄地教科書課長】  また先ほどの資料の御説明が若干不十分なところがあれば大変恐縮でございますが、もしかしたら、先ほどの説明の中で、動画が全く認められないのではないかといったような御理解をいただいているかなと思って今お聞きしていました。例えば、こちらの6ページに書いていますとおり、Bの3)にございますように、教科書に書いてある文字とか絵とかグラフとか図が動いて表示されるとか、子供の操作で動かせたりするということは、今後として仮にあった場合に、それをどう取り扱うかは、まさに今後さらに検討が必要ではないかということを申し上げていますので、先ほど御紹介ございましたフラッシュカードみたいなものですとか、コマ送りとか、さらに、そのコマ送りが少し細かくなればかなりアニメーションみたいになるわけでございますが、その辺りをどう検定でどの部分まで見るのかというところについては、今後の検討課題ではないかなと捉えています。
 一方で、補足的に申し上げましたのが、そうした教科書としての記述とはまた別途、それ自体で独立した、要は指導要領の指導事項がこの動画だけで取り扱うということになると、そこは授業で使うという教科書としての性質に照らせば、それはむしろ補足的に使うような教材としての位置付けではないかということで、少し切り分けて整理させていただいたところでございます。
【阿部委員】  分かりました。
【堀田主査】  ということです。ありがとうございました。
 それでは、続きまして、岡本委員、お願いいたします。
【岡本委員】  教科書協会の岡本でございます。本日の論点について整理していただきまして、ありがとうございます。
 論点1について、皆さんの御意見を伺っておりますと、教科書にまつわる様々な誤解を与えてしまっておりまして、大変申し訳なく思っております。論点1についてはともかく、私からは、主に論点2、3、こちらに関して意見を述べさせていただきます。
 まず、論点2のA、こちらのほうには、教科書は中核的な概念をつかむものという観点が示されており、そこから内容・分量を精選すると書かれております。またあわせて、教科書自体はシンプルで軽いものという記述も見られます。
 ここで、内容については、今ありましたように、学習指導要領を基に検定が行われていて、分量については、今のところ明確な基準というものが設けられていないという認識です。
 一方で、今、教科書の重さですとか、カリキュラムオーバーロードということが問題視されている状況において、分量に関してどういうふうに扱っていくのか、何か検定で基準を設けるのかというところが非常に気になっておりまして、分量の基準を設けるということになりますと、教科書の企画ですとか制作に大きく影響しますので、この設けるかどうかというようなところについては、早めに基準設定なり、するのか、しないのかというようなところはお願いしたいと思っております。
 それから、論点2のBのほうで、検定の方向性として、先ほどありましたように、文字や図画等で表現された記述内容、これは従来どおり検定の審査対象として、従来どおりのやり方ですね。それから、それを効果的に理解するものとして機能を位置付けて、機能は限定的な範囲で一定の確認ということが示されておりますけれども、基本的には、私もこの方向性でよろしいのではないかなと考えております。9ページのほうでイメージ図として示していただいていますけれども、こうしたイメージでよろしいのではないかと考えています。
 ただし、発行者としましては、実際にどのような基準で検定が行われるのかという点が非常に気になるところでして、例えば、先ほどありましたように、デジタル機能というものが記述内容を効果的に理解するものというふうに位置付けたときに、それが効果的か否かというのは、そもそもまず審査することになるのかとか、なる場合は、どんな基準でそれが効果的かどうかというのが判断されるのかというところも、制作する側としては非常に気になるところです。
 例えばですけれども、9ページのイメージ図で示されているデジタル機能という範囲の中に、具体例として、本文と図画等の動的表示機能、先ほど補足の御説明がありましたけれども、これと動画との区分けですとか、その内容によるといったときに、どこまでが中核的な概念、もしくはそれを効果的に理解する範囲として認められるのかというところが、作る側としては非常に気になるところですので、そうしたことを今後より具体的な例で基準を検討していただく必要があると思っています。
 その検討につきましては、今日お示しいただいた資料では、教科用図書検定調査審議会において行われると書いてありますし、私もそう思うのですけれども、発行者としましては、そうなった場合に、スケジュールがかなり気がかりでございまして、以前も今後のスケジュールの仮の案というのを出していただいていたと思うのですけれども、仮に新版の教科書を2030年から使用開始するとなった場合には、2028年に検定が行われる年になると思います。そうすると、2027年が制作の年と書かれておりましたけれども、制作をするには当然その企画が必要でして、何を作るかということを考えるのを、多くの発行者は恐らくその前年度、2026年に行っているところが多いと思うのですね。そうしますと、今がもう2025年の前半が終わろうとしていますので、2026年度からやろうとすると、もう半年ぐらいしか時間的猶予がないということで、この間に具体的な検討をして、その結果が制作者側に伝わらないと、なかなか企画を固められないですし、制作に移れないという。そういった、かなり発行者側としては焦っているといいますか、時間的に余裕がないというような状況でございますので、そういったことも勘案していただいて、議論のスピードアップというのをぜひお願いできればと思っております。
 それと、その検討を進める際に、9ページの同じくデジタル機能の具体例に図形・関数等の操作機能というのが書かれておりまして、これは今のデジタル教科書の算数・数学の機能として位置付けられているというふうな認識です。教科の記述内容を効果的に理解するデジタル機能ということが、この算数・数学の図形回転のように、各教科の具体例を何かガイドラインのようなもので示すという方法もあると思いますので、そうしたことも併せて御検討いただきたいと思っています。
 長くなりますが、論点3、こちらは続けて意見を述べたいと思っています。
 論点3のA、こちらのほうには、実際に配信されるものと同じ方法で見本をクラウド配信するのがいいのではないかというふうに、見本時のデジタル部分の扱いを書かれていると思います。
 実際、今どのような配信をしているかと言いますと、デジタルの場合、アカウント管理を行う必要がありますので、まずは発行者がライセンスを出して、それで学校の管理者様のほうがユーザー情報を登録して、そこにコンテンツをひもづけて、そうすることで本棚にコンテンツが表示されるようになって、その表示されたコンテンツに子供がアクセスするというような大まかな順番なのですけれども、これのどこまでを実際の配信と同じようにするのかというところは、あらかじめはっきりさせていただくのがよいかなと思っています。
 その案としましては、現在、一部のデジタル教科書のページを、見本版のURLをおつけしてお出ししているということを参考にして検討とありますが、この方法ですと、先ほど申しましたライセンスの発行とかアカウントのひもづけというところは実際の配信とは異なっていて、コンテンツへのアクセスというところだけが実際の配信と同じということになりますので、どのレベルまでを実際と同じにするのかというのを、もう少し細かく今後詰めていく必要があるなと思っております。
 それと、これで最後にいたしますけれども、論点3のB、こちらについて、異なる教科書で内容が同一の部分が分かるように示すということが、負担軽減策として書かれています。これは、例えば、教科によっては共通教材などがあって、A社が出してもB社が出しても同じ内容というのがあったりするのですね。そうしたものも示すのかどうかというところはよく分からなくなっていて、異なる会社で同じ内容の部分も一覧で示すのか、それとも、同じ会社についてだけ、2種類出したときに、それは同じというふうに示すのか。どういった基準で複数ある教科書の同じ部分というものを示すのかというのが、しっかり決めておかないと、かえって採択事務が混乱してしまうのかなとも思いましたので、そうした何を負担軽減のものとして示すのかというのも、もう少し細かい検討が必要かなと思いました。
 ちょっと長くなりましたが、私からの意見は以上になります。ありがとうございます。
【堀田主査】  ありがとうございました。
 細かい御指摘をいただきましたが、今日の段階ではまだ方向感の議論ですので、今後こういうことを詰めていかなければいけないという御指摘をいただいたと思っています。
 一方で、これ全部、国が決めるということで、業界としてはいいということですかね。この辺り、僕は非常に難しいところだなと思います。そうはいっても、検定があって、それ次第でというところがあると思うので、早く国のほうで方向感を出さなければいけないのはそのとおりだと思うのですけど。一方で、教科書を子供たちの理解のために真剣に作ってみえた業界の方々の知恵みたいなことをふんだんに生かしていくような方向で、うまく折り合いをつけられればなと思うところでございまして。必ずしも今のデジタルの配信の形が恒久的に続くとも限らない。技術は発展しますからね。そういう状況の中での議論に、中長期的にはなるのかなと思います。ありがとうございました。
 それでは、細田委員、お願いいたします。
【細田委員】  ありがとうございます。細田でございます。
 論点1につきましては、いろいろな皆様が様々な御議論で、今回このように網羅的に教えなくてはならないわけではないということが、もう一度基本的なところに立ち返っていくことができるという点では、非常に意義深いと思っております。
 加えて、網羅的に教える必要はないということに加えて、やはり教師がもう一度、子供が何を学びたいと思っているかとか、子供主体の、子供が主語になった授業への、もう一度そこに立ち返るという意味でも、非常に意義深いと思っているところでございます。
 あと2点は少し質問に近いものになってしまうのですけれども、一つは、これもほかの委員さんたちも御議論の中で発言していらっしゃるのですが、検定の方向性の論点2のBなのですが、ここでいわゆる機能、9ページのところにありますように、デジタル機能は、デジタルの特性を生かして「記述内容」の効果的な理解に資するものということですので、デジタル技術の日進月歩であるということ以上に、機能ですので、これは、例えば採択事務の際は重要なポイントになると思うのですね。この機能は子供の理解を促進させるために効果的であるとか、いや否とかというふうにポイントにはなると思うのですが、機能自体が検定の対象になるというのは、よく理解ができないというところが1点です。
 似たようなところですが、もう1点が、例えば音声なのですが、私は英語なので英語のことに偏ってしまうかもしれませんが、英語の音声は、テキストに付随するものの読み上げというような基本的なところを考えたとすると、その英語が、例えばアメリカンイングリッシュなのかとか、クイーンズイングリッシュなのかとか、そういうことになるのか、その辺のところもいまいちうまく理解できないのですけれども。かつて私どもが教科書で英語を勉強していたときは、いわゆるアメリカンイングリッシュが主なるものだったわけですけれども、その辺のところが、具体例にどんな英語であるということも検定の対象になるのかということで、もし何か方向性があるならばですが、よろしくお願いします。
【堀田主査】  事務局のほうでお願いします。
【黄地教科書課長】  まず、機能をどう取り上げるかどうかということで、まさに委員おっしゃるとおり、採択の場では大変重要な視点ではないかなと思います。その意味では、実際、まずどういう機能をつけるのかつけないのかという御判断も、そういう採択現場の、あるいは学校現場のニーズを捉まえて、それぞれの教科書会社のほうで御検討いただくということが基本ではないかなと。そういった意味において、民間の創意工夫が促されるということで、なおかつ、その際にデジタル技術もうまく活用していくということでございますので。
 ただ、一方で、検定を全くしなくていいかといったときに、広い意味では教科書になりますので、万が一何か問題が起きたときは、それを是正するという意味でも、制度上の仕掛けが必要になります。ただ、実際にどこまでそれを審査するのかと。
 実際、今の教科書の記述については、それぞれの教科ごとに各分野の先生方に検定審議会に入っていただいて審査いただいておりますが、そういった粒度でやることが果たして適当かどうかという意味におきましては、先ほど申し上げたような趣旨を捉まえれば、もう少し限定的にしたほうがいいのではないかという問題意識でございます。
 そういった中で、どこからどこまでを見るのか。先ほどネガチェックというお話ございましたが、実際の記述についてもそういう前提であれば、さらに機能については、ただでさえネガチェック的なものをさらに限定的に見るということで言えば、どの辺りまでやればいいのかというところについては、先ほど申し上げた趣旨も踏まえて、また検定審のほうで御議論いただければと思います。
 そういった中で、2点目の御質問でいうところの、英語の音声についてどこまで見るかと。先ほどアメリカ英語、イギリス英語というお話ございましたが、実際、音声の読み上げ機能も最近かなり進化していまして、ほとんどネイティブの音声と同じようなものを聞けるという声もいただいている中で、さらにそういった、地域によっての違いの音声が出てきた場合にどう取り扱うかについては、まさに4技能をどう指導していくかという中で、改めて別途御検討いただくべき課題ではないかなと考えております。
【細田委員】  ありがとうございます。
【堀田主査】  ありがとうございました。
 それでは、松谷委員、お願いいたします。
【松谷委員】  松谷です。細田先生のお話もちょっと似ていて、別にここでお話ししていたわけではないのですけれども、本当に、この論点整理ありがとうございます。非常にまとまっていると感じました。
 前回も私もお話しした中で、主体的・対話的な学びという部分での、まず論点1の新たな学びに関しては、やはり今までの教科書ではいけないのではないかと思っています。やはり主体的にするには、どういった授業かというと、我々、授業者の中では一番気をつけていることは、興味・関心を生徒にどうもっていくかというのが授業では大事で、そういう最初の教師からの発問から、生徒がその発問に興味を持って、関心を持って、そして自分たちで調べたり意見交換をしたり、そういう形での授業がこれからの教育の中心になっていくと思うのですよね。ですから、そういった部分のところを、網羅するという言葉を、細田先生と御意見一緒なのは、こういう言葉をぜひ入れていただかないと、教師のほうでついつい指導書を見てやるような先生が出てくるのではないかと思いますので、ここを押さえていただければと思っています。
 それから、もう2点も、やはりデジタル教科書になったときに大きく違うところは、今までは目で、視覚でできるものは教科書で反応できるわけですけれども、音声ということがデジタルで大きな違いになってくるわけですよね。今、英語の問題が出てきました。まさしくそういった部分での音声についての検定調査審議会のというふうにお書きになってありますので、ここできちっとしていかないと、大きな差が出たり、問題が起きては教科書会社さんも作るのが大変ではないかと思っていますので、そこら辺をもう少し強く、音声に関するデジタル教科書の中をやはり精査していただきたいというのが私の感想でございます。
 また、今、教科書のデジタルというところで、教科書会社さんがかなりいろいろ創意工夫を会社でやっているというお話をお伺いしました。本当にありがとうございます。やはりそういった案がいろいろ出て、AIとか、パソコンの使い方とか、そういうものがいろいろ出てくると思うのですね。URLとか、クラウドの配信というのも必要だと思っています。極端に言うと、私学では、もう先進校などはAIを使って、英語はもちろんですけれども、英語ではなくて、自分の特徴なりプロフィールをAIに作らせて、それを逆に批判的に自分で作り直すような、そういった授業もやっているような話を聞いております。
 そういった意味で、日進月歩、どんどん変化していくので、そういったこれからのデジタルの教科書の、何年に一度かとか、そういうことも考えなくてはいけないし、変化があって、許容の幅を広げていただいたほうが、教科書会社さんも非常にやりやすいのではないかなと感じます。そんなことをこの中で感じました。
 以上でございます。
【堀田主査】  ありがとうございました。
 それでは、松下委員、お願いします。
【松下委員】  冒頭少し遅れてしまいまして申し訳ありませんでした。
 今皆さんの御議論を拝聴していまして、保護者の立場でいろいろ感じることもございました。
 まず、前回のワーキンググループでも申し上げたように、採択に関しましては、やはり子供たちの学びの地域格差につながらないようになるといいなと思いまして、皆様の御意見の中にも、デジタルのほうを選ぶといろいろ大変なので、大変だから今回は選ばないでおこうみたいな後ろ向きな採択にならないというのが、保護者として願うところです。
 そのためにどういうふうにするかというところで、私ども保護者も、前回も申し上げましたように、PTAの全国組織の中でできることを、皆様とともに教科書を作って、内容を精査して当面やっていくという、そこのステップを進めていく中心的なところに、保護者も外枠できちっと同じように主体的に考えていけるような方策を、文科省の方や皆さんに任せるだけではなく、考えていくことが大事かなと思います。
 それと、何度も話題に出ていますが、網羅的に教えなくてもいいんだということを、先生方がなかなかそこの意識改革が進まないというところは、保護者もまさにそうで、今年の担任の先生は教科書が全然進まないんだよねとか、全部教えないでもう次の学年に行っちゃっているんだけど大丈夫なのかなみたいな話は、保護者の中で結構聞かれるというか。でも、大事なのは、網羅的であることって、ひっくり返すと、逆の面から見ると、全部やったからすごく学びが深くなったと思ってしまうマジックがあるというか、保護者の側にもある。全部やってくれているから大丈夫ということではないというところもあるので、そこの正しく教科書の在り方というのを認識していくことが大事かなと思いました。
 そう思うと、先生方が指導に当たられるときに、網羅的にしなくてもいい、自分が主体的に授業を構築していくときに、例えば、子供たちとこんな学びを進めていくんだということをわくわくして指導計画が立てられる、そういうためには、教員養成段階で、授業計画を立てる、指導計画を立てるという段階で、柔軟に、教科書の使い方というのは自分たちが教えてもらってきた時代とはちょっと変わっているので、うまく言えないのですけど、あくまでも一つの指針的なもので使って、あとはデジタルにしても紙にしても、教科書からどんどん広げて、教える側がわくわくする授業をやっていけばいいんだよということを、養成大学の時点で一緒に、今現在進んでいっている現場のことと同時に、これから先生になる方たちもそういうふうにしていくと、学校現場にその方たちが来たときに、教職という職業がとてもしんどいものではなくなるのではないかというのは感じるので、ぜひ、教科書の使い方というところは、今現在学校で教鞭を執ってくださっている先生とともに、これから先生を目指す方にもそういうのが伝わっていくといいのかなと思ってお聞きしていました。
 保護者ができることというのは、中身の深いところというよりは、外枠で、皆さんがやってくださっていることをどうバックアップできるかというところを考えていくことだと思うので、その辺を実際、教科書課の皆さんとか、岡本先生、教科書会社の方とかのことを考えると、本当にチェックマンにならないように、いい教科書にするために、保護者はそこに伴走者として何ができるかを考えていくことが必要で、そのためにどういうことができるかというのを本当はもうちょっと皆さんと考えたいところですが、保護者のところまではなかなか、短い期間でいいものを作るためには、そこに意識も、皆さんに甘えてお願いしますというわけにいかないところもあるので、ぜひPTAのほうで私もできることは発信していきたいなと思っています。
 どういうふうにしていくかというところの御提案まではいけないのですけれども、そんなところを感じました。
 ありがとうございます。
【堀田主査】  ありがとうございました。保護者からの非常に分かりやすい御指摘をいただいたように思います。検討してまいりたいと思います。
 それでは、最後になりますかね。中川代理、お願いいたします。
【中川主査代理】  事務局のまとめ、ありがとうございました。
 今回は一委員として、三つの論点に関してコメントさせていただきたいと思いますけれども、論点1の新たな学びに対応した教科書の使用の在り方をどのように考えるかということですけれども、これは事務局からも御指摘があったように、教科書を網羅的に一律に指導する必要があるものではないということと併せて、この「併せて」というのがすごくポイントだと思うのですけれども、教科書に加えて、学習場面に応じて適切な学習材を選択して使用し、個別最適で協働的な学びを充実させていくという教科書の使用の在り方につなげていくという指摘はとても重要に思います。言うまでもなく、教科書推進の検討は、教科書の今後の在り方と強く関連しています。デジタル学習基盤が整備されつつある昨今、子供一人一人が自己調整する力を発揮しながら、どうしたら学びを深めて広げられるのか、その観点で教科書、ひいてはデジタル教科書の在り方を考えていくべきだと思います。
 それから、論点2の検定の対象範囲やデジタルの機能の扱いということですが、デジタル教科書と教材の関係に関しては、確かに無尽蔵に音声や動画をデジタル教科書の範疇に入れると、検定の面からも、関係者の負担感の面からも、様々な面で現実的ではないことは分かっています。
 一方、学習内容が直結するような音声や動的表示機能に関しては、その他のデジタル教材と明確に区別して考えるべきだと思います。デジタル教科書はシンプルで軽いものという基本方針に異論はありませんが、デジタルであるメリットをしっかり見極めて、教科書のデジタル機能として音声や動的表示機能の一部に関して整理していくべきであると考えます。例えば、先ほど阿部委員が家庭科について御指摘されていましたが、ほかにも英語や国語において、紙の教科書媒体で子供が理解するための表現に苦心してきた内容は多々あると思います。ここがより子供が理解しやすく、しかも中核的な概念をつかみやすいのであれば、検討の余地は大いにあると考えます。
 また、これも論点2に関してですが、教科書のデジタル部分の具体的な検定方法や検定上の取扱いについては、教科用図書検定調査審議会において専門的な見地から審議を行うことが必要としていますが、記述内容との関連性など、限定的な範囲での一定の確認という箇所では、確認ということが今後とても重要になってきますので、「限定的な範囲」とはどこまでを示すのか、「確認」というのはどの程度の強制力を持つのか等々、今後明確にしていくことが重要に思います。
 最後に、論点3のデジタルな形態の教科書をどのように採択するかに関してですが、事務局が御提案されているように、デジタルな形態の教科書の採択事務の負担を軽減することに配慮することは必須だと思いますし、加えて言えば、発行者に向けては、できるだけ早く何をどこまで用意すべきかをお示しすることが重要に思います。
 以上、よろしくお願いいたします。
【堀田主査】  一通り委員の方一巡はしたところでございますが、まだ言い残していることがある、あるいは、ほかの人の意見を聞いてもう少しというところもあるかと思います。まだお時間少しありますので、そういう方につきましては、また再度挙手をいただければと思うところです。
 奈須委員、お願いいたします。
【奈須委員】  お願いします。
 先ほど岡本委員から出たデジタル機能の検定に関わって、効果的かどうかというのをどう扱うかというのは、作る側にしても、あるいは検定側にしても、あるいは採択側にしても、とても大事なことだと思います。私自身は、さっきネガティブチェックという申し上げ方をしましたが、闊達に多様な教科書が出るということが望ましいと思っています。
 学習指導要領、先ほども申し上げましたが、基本的には目標と内容を示していて、教育方法についてはできるだけ言及しない。このところ学びの質について議論していますので、結果的に教育方法についていろいろと言及せざるを得なくなっていますけれども、慎重であるべきだと思っています。特定の教育方法を強く推奨したり、あるものを排斥するようなやり方は、現場の自律性とか創造性を損ないますので、これは指導要領全般の議論にわたって、教育方法については現場に原則委ねるということ。その中で、新たな学びとしての学びの質をどう保証するかということが大事だと思うんですね。
 すると、このデジタル機能というのは、典型的に教育方法の刷新というか、質の向上に資するものですよね。特に、現状ではしんどい思いをしているお子さんにとって救いとなる教育方法上のグレードアップというか、質の向上だと思うのですよね。
 すると、効果的かどうかという方向、これは多くの場合ポジティブの方向ですよね。私は、それは検定にはあまりなじまなくて、逆に言えば、ほとんどあり得ないと思うのですが、デジタル機能を足したがために、ある重要な部分が損なわれるというようなことがあれば、それは検定対象になり得ると思うのですよね。
 というのは、検定の基本は欠陥を審査するということが、最初にありましたけれども、デジタル機能を追加したがゆえに教科書の記述の準拠性・公正性・正確性を損なうということはちょっと考えにくくて。なので、私は、原則として、あまり効果的かどうかという面は検定の対象にはしなくていいと。ただ、機能が当然内容にも関わってきますので、その部分は限定的にということで、検定対象にする。そういう方向で御検討いただいて、業界からもいろいろ御意見を出していただければ、効果的であるということが何か検定を大きく左右することに私はならないのではないかと。ただ、採択の際には、それは皆さん御覧になると思うのですけど。つまり、マーケットの動きによって、それは淘汰されたり、エンカレッジされたりすればいいことではないのかなと、そんなことを思っておりました。
【堀田主査】  ありがとうございました。
 ほかに御意見ある方いらっしゃいますでしょうか。よろしいですかね。今日は、これは大変重要な議題だと思っておりますので、もし何かあるようでしたら言っていただきたいのですが、よろしいですか。
 私も意見をと思いますが、事務局、何かありますか。よろしいですか。
 じゃ、私、座長としてというか、二つほど押さえておきたいと思いますが、まず一つ目は、5ページの下のほうに検定の方向性と書いてあって、論点丸2のBの(1)というところです。以上のような考え方からすれば、デジタルな形態も含む教科書の検定に当たっては云々と書いてあると。この辺りの記述の仕方は、事務局は随分工夫されているところだと思っています。デジタル教科書の検定とは書いていないということです。
 つまり、これから教科書なるものは、紙の部分やデジタルの部分、そして、それらが中核的な概念を中心に、子供たちの理解に資するような形で、子供たちの学びの支援をする教材のうちの主たる教材として存在するということになるわけで、そういうときに、ある部分はデジタルが教科書の大事なところとして入ってくる部分があるだろうと。こういうようなときの検定ですね。だから、これは紙を排除しているわけでももちろんありません。
 ところが、一般論としては、現在は教科書は紙のものを教科書と呼ぶことになっていて、そして、今のデジタル教科書は教科書の代替教材として存在していて、この二つは内容が一致するようになっているので、デジタル教科書のほうは検定はしなくてよいということになっており、代替としては使えるので、そちらを使って学んでも教科書の使用義務を果たしたことにはなるという解釈になっています。
 だから、「紙の教科書なるものとデジタル教科書なるものがあって、さらにまた何か新しいものができるのですか」みたいに多くの場合言われちゃうのだけど、このページの上のほうに書いてあるように、そもそも教科書というものは何なのかということを考え直し、そしてそれを子供たちに理解してもらうためには、紙であったほうがいいことは当然あるし、デジタルで何か動きがついたほうがいいこともあるでしょう。そういう合わさったものをハイブリッドと呼んでいるわけですけど、そういうものを検定するというときに、どこからどこまでを従来のような検定できちっと確認するか、どこからどこまでは技術の進展を尊重しながら緩やかに確認にとどめるかという議論なのだと思います。
 なので、私は、この書き方というのは、事務局、非常に工夫して書かれておりますし、今後もまた紙なのか、デジタルなのかみたいな議論は僕は避けたいと思います。むしろ両方の形態を併せ持つものを教科書と呼び、そしてデジタルな形態の部分をどのように検定していくかということが、今、一つ議論の大きな対象になっているのだということをちょっと確認しておきたいと思います。それは従来のようにはいかない部分があるので、みんなで審議しているのだということだと思います。
 二つ目は、採択の範囲の話が先ほど阿部委員から出ました。教育課程の検討、つまり、次の学習指導要領の検討においては、結構教育課程を弾力的に運用できるように、各学校で授業時数を工夫することができるような弾力的な運用ができるように、方向としては今向かっているところです。そうなった場合に、その地区全部が広域採択のままで同じ教科書でいいのかどうかということについては、やはり議論が必要かと思います。
 加えて、個々の児童生徒の特性等に応じて、認められる場合には個別の教育課程を提供するということが、これまた検討されています。もしそういうふうになった場合に、では、それはそういう特別な対応のお子さんに同じ教科書でいいのかということについても、また議論の余地はあると思います。
 ですから、採択の単位の話と言っていいのかもまた議論なのだけれども。つまり、一人一人の子供たちに適した、あるいはそこの学校の特徴にうまく合わせた教科書の供給の在り方というのは、ここでちゃんと一度議論しなければいけない内容の一つなのではないかなと。かといって、やたらと細かくすると、これは現実性を失うので、この辺りのあんばいみたいなところ、これをどのように考えるか。これは権利の問題もありますから、次の回の議題のところとも関係するのかなと思っておりますが、私たちは、そういうことも考えなければならないなと。
 ただ、これは教科書制度自体の課題になりますので、私どものデジタル教科書に係る関係のワーキングの所掌範囲を超えている部分はもちろんありますけど、デジタルで子供たちにより一層フィットしたものを提供しようという大きな流れの中で、このことを一つ話題にしておく必要があるなと思って指摘したところでございます。
 私の意見は以上でございます。
 皆さんにたくさん御意見をいただきましたので、今日のところは、また少し早いですけれども、ここまでとしたいと思います。次回以降は、資料1にありますように、制度面の後半の議論に移るということになると思いますので、またよろしくお願いします。
 次回以降のことにつきまして、一度、事務局に御連絡をお願いいたします。
【西田教科書課課長補佐】  次回のデジタル教科書推進ワーキンググループの日程につきましては、また追って事務局から御連絡させていただきます。
【堀田主査】  ということでございます。
 本日予定した議事はここまでとしたいと思います。これで閉会いたします。皆さん、どうも御協力ありがとうございました。

 
―― 了 ――

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