デジタル教科書推進ワーキンググループ(第8回)議事録

1.日時

令和7年5月22日(木曜日)13時00分~15時00分

2.場所

文部科学省
※対面・WEB会議の併用(傍聴はWEB上のみ)

3.議題

  1. デジタル教科書に係る当面の間の推進方策について
  2. その他

4.議事録

【堀田主査】  皆さん、こんにちは。定刻となりましたので、ただいまから中央教育審議会初等中等教育分科会デジタル学習基盤特別委員会のデジタル教科書推進ワーキンググループ(第8回)を始めます。
 本日もまた御多忙の中で御出席いただきまして誠にありがとうございます。
 本日は、坂本委員が御欠席、松下委員がオンラインで出席ということとなっております。よろしくお願いいたします。
 本日の会議開催方式及び資料につきまして、事務局より御説明をお願いいたします。
【西田教科書課課長補佐】  本会議は、前回と同様、対面とオンラインのハイブリッド形式での開催でございます。オンラインで参加されている委員もいらっしゃいますので、会議を円滑に行う観点から、御発言時以外はマイクをミュートにしていただきますようお願いいたします。カメラにつきましては、御発言時も含めて会議中はオンにしていただくようお願いいたします。
 次に、資料の確認をさせていただきます。本日の資料でございますけれども、議事次第に記載のとおり、資料1と2、加えて参考資料が1から3となっております。対面で御参加の委員には紙でもお配りしておりますけれども、お手元の端末でも御覧いただけます。御不明な点がございましたらお申しつけください。
 以上でございます。
【堀田主査】  ありがとうございます。
 それでは、早速議題に入りたいと思います。
 なお、本日もまた報道関係者と一般の方向けに本会議の模様をYouTubeにて配信しておりますので、御承知おきください。
 それでは、今日は議題1、「デジタル教科書に係る当面の間の推進方策について」について検討してまいります。前回は、その前の中間まとめに対する意見募集がありましたので、それの結果を踏まえて、今後の検討に関する議論、今後どのようなことをどのように検討していくかという議論をいたしました。今回は、今後の検討のうちの、当面の間の推進方策について議論を行うという回でございます。
 事務局において論点を整理していただきましたので、これから事務局から説明をいただきますが、その前に、今回配付している参考資料3、こども家庭庁のもの、これについて補足があるかと思います。お願いいたします。
【黄地教科書課長】  ありがとうございます。
 参考資料3としまして、今御覧いただいていますとおり、先日、教育課程企画特別部会で公表されました、今後の学校での学びの在り方等に関する子供への意見聴取の結果を配付させていただいております。前回、中間まとめに対する意見募集の結果として、多くの関係団体から方向性について賛同していただいたことを報告させていただきましたが、子供たちの声としてもまた御覧いただければと思いますけれども、31ページあたりにありますとおり、「どんな教科書になるといいと思いますか」という中で、デジタル技術を活用した教科書の意見などもございます。
 ちょっとお時間いただいてざっくり御説明させていただきますと、学習指導要領や教科書全体について様々な御意見をいただいた中でも、教科書について、特に御意見を子供たちからもらった箇所がございます。
 その中で、具体的には25ページあたりから、小学校1年生から4年生からもらった意見が25ページ、26ページとございまして、逆に、小学校5年生以上、中学生、高校生も含めてですが、もらった意見が27、28、29ページにございます。これらをまとめて、全学年共通の御意見としてまとめた箇所が30ページにございます。この中で、「どんな教科書になればいいと思いますか」といったような質問については、デジタルに限らず、教科書全体の話として、「ポイントがまとめられている教科書」、「考えを深められる教科書」、あるいは、「誰にとっても分かりやすい工夫がある教科書」、「興味がわくようなコンテンツがある教科書」などのほか、次の31ページを御覧いただきますと、これまでもワーキングでも意見をいただいていましたが、やはり分量・重さ・材質などに関する意見があるほか、同じページの右側に、デジタル教科書もいろいろあっていいのではないかといったような意見もいただいています。
 さらに、32ページに、「図表や詳しい解説がある」とか、「学習進度にあわせて使える」といったような意見ももらっているところでございますので、また今後の議論の参考にしていただければと思います。
 以上でございます。
【堀田主査】  ありがとうございました。
 子供たちの声を聞くというのが、最近の政策立案の非常に重要な考え方でございまして、教科書以外のこともいろいろ聞いているわけですが、教科書について子供たちがどう思っているかという部分を補足説明していただいたということでございます。
 それでは、本日の論点の説明につきまして、事務局からよろしくお願いいたします。
【黄地教科書課長】  資料1と2に基づきまして御説明いたします。
 まず、資料1のほうを御覧いただければと思います。こちらの資料、前回のワーキングでもお配りさせていただいたものを少し修正したものでございます。前回、1ポツにございますように、パブコメや各団体からの意見を受けて御議論いただいたところでございますが、本日は、2ポツにございます「当面の間」の推進方策について、主に御議論いただければと考えてございます。
 この「当面の間」ということでございますが、1枚おめくりいただきまして、今後のスケジュール感を参考で付けさせていただいてございますが、これは第5回のワーキングの資料にお配りしたものでございますけれども、仮に2030年度に指導要領がスタートするということになりますと、これに間に合うような形で様々な準備をしていかないといけないということでございます。
 ここに書いているように、制度改正、著作・編集、検定、採択もろもろございますが、これと並行して、しっかり教科書を使っていただけるような方向での環境整備も、当面の間の措置として何ができるかということが本日の中心議題でございます。
 中間まとめにもございますように、まさにここで言うと、2025年から2029年度までが当面の間ということで併用は続くわけでございますが、この間にも様々なことができるのではなかろうかということで、また1枚目をおめくりいただきまして、例えば、丸1にありますように、現在、英語、算数・数学を中心に配っている代替教材としてのデジタル教材の段階的な導入をどうするか。あるいは、効果的な活用方法をどう発信していくか。そういった中で、先生方の指導力をどう上げていくか。3点目としてアカウント管理などの負担軽減、4点目として健康影響、5点目として情報通信環境の整備、様々な課題がございますので、別途、資料2のほうで、それぞれの項目について論点を整理させていただきました。
 1枚おめくりいただきまして、資料2の2ページを御覧ください。各論点ごとに論点をまとめたところでございますが、参考となりますように、それぞれの項目ごとに、現行の方針ですとか、中間まとめでの記載、あるいは、関係団体から出てきた主な意見、また、その他のデータなどをそろえてございます。
 まずは論点1につきまして御説明させていただきます。
 2ページでございますが、枠囲いにございますとおり、先ほど説明いたしましたが、現行の代替教材としてのデジタル教科書は、小学校5年生から中学校3年生を対象に「英語」を導入して、その次に「算数・数学」と段階的に導入する方針ということで、これまで取組が行われてきたところでございますが、これについて、今後どうしていくかということが主な論点かと考えてございます。
 3点目の白丸にございますように、例えば、英語、算数・数学以外の教科についてどうするか。例えば、国が特定の教科を決めて行うのか、それとも、現場の希望に応じて行えるようにするのかといったような課題がございます。
 また、そういった検討に当たっては、現場のニーズや活用状況、導入による影響なども勘案しながら取り組んでいくことが必要ではないかということでございます。
 続いて、論点2でございます。少しページは飛びます。4ページを御覧ください。
 効果的な活用方法の発信ですとか、先生方の指導力向上が大事だという点については、これまでの会議ですとか、各団体からの意見などいただいているところでございます。これにつきましては、別途、資料の例えば7ページや8ページにございますように、英語、算数・数学を中心にではございますけれども、実践事例集ですとか、8ページにございますように、研修動画、あるいは、研修モデルづくりなど、様々な取組を進めてきたところでございますが、いずれも小・中学校の英語、算数・数学がメインでございましたので、例えば、ほかの教科ですとか、また、高校の事例を充実することが一つ考えられるのではないかということが1点でございます。
 もう一つは、今度、教員の研修に関する取組については、国も予算措置をしまして、令和6年度から、これまで市町村単位でやっていた実証研究事業を県レベルに広域的に広げたところでございますが、こうしたものをさらに充実していくことが考えられるのではないかということでございます。
 一つ御紹介申し上げますと、例えば、13ページをまず御覧いただければと思いますが、各研修に資するように、こちらにありますように、様々な事例を横展開できるように、我々も紹介させていただいたりですとか、あと、右下にありますが、講義型動画を作らせていただいたりなどもしてまいりましたが、先ほど少し御紹介したように、県レベルでもう少し広域的な研修をしたらどうかということで、昨年度から進めてございます。
 例えば、14ページのほうを御覧いただければと思いますけれども、これは群馬県教育委員会の例でございますが、まずは研修丸1ということで、教育事務所単位で、まず全体的な講義ですとか意見交換をして、活用の意義理解を図った上で、今度は研修丸2ということで、中核となるような先生方を対象にして、指導案を検討するためのグループワークをやったそうでございます。その際に、当然、各市町村、設置者で教科書が異なりますので、採択地区ごとにグループ編成をして、そうしたグループの中で議論をして、そこに指導主事が適宜入って指導・助言をするような工夫をされているやに伺っておりまして、大変有効であるといったような御感想も頂戴しているところでございます。
 また先ほどの4ページに戻っていただければと思いますが、また、こうした取組も今後図る中で、例えば、大学との連携も図りながら、団体からも意見が出てきておりましたが、オンライン型とか、集合型とか、様々なニーズに対応した形での取組が考えられるのではないかということでございます。
 また、3点目、今度は教員養成課程についてでございますが、こちらも、今回この前の意見募集でいただいてございましたけれども、学生がデジタル教科書をより利用しやすいような環境整備を望む声がございます。例えば、特定の場所でしかデジタル教科書が使えないとかいったこともやはりあるようでございますので、こうした点については、国と教科書発行者が連携しながら、課題の改善に向けて何ができるかを考えていくことが必要ではないかなと考えているところでございます。
 なお、教員養成に関する制度的な位置付けについて、少し御紹介させていただければと思います。
 資料の15ページを御覧いただければと思いますが、まず制度上は、教育職員免許法の施行規則の中で、情報通信技術の活用も含めて、各教科の指導法の中で教えるということになってございます。
 そうしたことを踏まえた上で、コアカリキュラムの中でも書かれてございまして、教科の特性に応じた情報通信技術の効果的な活用法を理解して、授業設計に活用することができるということが、教職課程での到達目標の一つとして位置付けられているところでございます。
 さらに、次の16ページを御覧いただきますと、同じコアカリキュラムでございますが、情報通信技術を活用した教育の理論及び方法ということで、こちらの下線部にもございますとおり、全体目標として情報通信技術について触れた上で、例えば、(1)、(2)にあるように、具体的に教員養成課程の中でも指導するということで、制度上は位置付けられてございますので、今後の在り方としては、そういった中で、デジタル教科書の活用も含めて、より充実していこうということが今後の課題ではないかということで考えてございます。そのためにも、例えば、いい事例を国としてもしっかり横展開するような取組も重要ではないかと考えてございます。
 また4ページにお戻りいただきまして、いずれにしても、効果的な活用方法の発信には、研修あるいは教員養成課程の在り方、いずれの段階であったにせよ、これらの取組は、デジタル一辺倒ではなくて、デジタル・紙・リアルの良さを組み合わせた教育環境、この辺りは中間まとめでしっかり書かれているところでございますが、こうした環境の中で、個別最適で協働的な学びを充実するために行うのだということは、共通の理念として、いずれのものについても取り組んでいくことが重要ではないかと、このように考えているところでございます。
 続いて、論点3でございます。資料で言うと、17ページを御覧ください。現場から上がってきている課題感としては、やはりアカウント管理などが大変煩雑なので、負担軽減を図れないかといったような御意見を多く頂戴しているところでございます。
 こちらについては、これまで文科省や民間におきまして、ここに書かれていますとおり、令和6年度から登録用ファイルのフォーマット、これは教科書のビューアごとに一つ一つ異なっていたのですが、これを一つのファイルでどのビューアでもアカウント登録可能になるように、フォーマット自体を統一するような動きがございます。
 このほか、また同じ6年度からですけれども、校務支援システムや登録用ファイルを自動生成できるようにした上で、さらに本年度から、簡単な指定だけで複数ビューアのアカウント登録が自動化できるような取組も進めつつございます。
 また、学習eポータルを使っている場合には、そこに登録がなされていれば、デジタル教科書との連携を申込みするだけでeポータルから直接ビューアにアクセス可能になるような取組も少しずつ広がってきているところでございますので、今後の方向性としては、こうした取組をさらに周知して横展開を図るとともに、課題について、これはなかなか国だけで決められるものではございませんので、国と発行者などが連携してさらに検討を進めていくことが重要ではなかろうかと、このように考えているところでございます。
 なお、現状の取組については、3回目のワーキンググループで情報提供させていただいたところでございまして、19ページに、3回目のワーキングで配付した資料をつけさせていただいているところでございます。こうした取組をさらに広げていくことが今後大事ではなかろうかと考えてございます。
 続いて、次の論点でございます。21ページを御覧ください。健康影響への対応ということで、デジタル教科書に関する御懸念の一つとして、視力の低下といったような健康に影響が出るのではなかろうかといったような懸念があるところでございます。
 これについては、また後ほど少し御紹介しますが、これまでもガイドラインや通知、ガイドブック、リーフレット等で留意事項を周知しているところでございまして、今後、こうした取組がしっかり行われるようにしなければいけないということは当然重要でございますが、そうした中で、既存のガイドラインや通知等についてさらに見直すべき点があるかどうかというのが論点でございます。
 現状のガイドライン等の抜粋を申し上げますと、まず22ページを御覧いただければと思うのですが、これまでもデジタル教科書の会議の中で、健康影響への対応についてどうあるべきかということが議論になりまして、そのとき専門家の方を呼んでヒアリングさせていただきました。その抜粋でございますが、ここにもございますように、まず、紙であるかデジタルであるかを問わず、長時間継続してずっと近い距離で見るということは、視力の関係からすると避けるべきではなかろうかというのが大前提でございます。
 その上で、そうしたことを避けるような授業でなければいけないということでございますが、実際の授業では、常に手元の教科書を見ているわけではなくて、黒板を見たり、それ以外のものを見たり、様々なものを見ているということであれば、これはデジタル教科書を利用する場合も同様であろうと。したがって、授業者の側でも、そうしたことをしっかり留意しながら工夫しなければいけないといったような内容がまとめられてございます。まさにこの辺りは、個別最適な学び、あるいは協働的な学びを実現するに当たって大変重要な御指摘であろうかなということでございます。
 その上で、具体的に目と端末の画面との距離についても触れられてございまして、少なくとも30センチ程度以上は離さないといけないということも触れられてございます。
 また、23ページを御覧いただきますと、障害のある子供たちの場合は、30センチと機械的に適用するのではなくて、やはり端末の画面サイズや設定等が適切なものになっているかを考慮しながら、また、30センチ程度以上の距離を確保することが困難な場合には、お医者さんのアドバイスを受けるといったような適切な対応も必要ではないかということでございます。
 次が、良い姿勢で画面との視距離を保つことが、目の健康から大事だといったようなことも書かれてございます。
 その他、その下の太字にございますように、画面の反射を抑える、あるいは画面への映り込みを防止するといったようなことから、角度を調整したりするような取組も大事だといったようなことが専門家から指摘されまして、こういった趣旨が、24ページにございますようなガイドラインや文科省から出している通知、あるいは、25ページにございますガイドブック、リーフレット等に反映しているところでございます。
 これはデジタル教科書だけではなくて、端末の使用も含めて、全体についてまとめたものでございますが、さらに改訂すべきところは改訂した上で、さらに取組を進めていこうということが今後の課題ではなかろうかと考えているところでございます。
 続いて、最後の論点でございます。26ページを御覧ください。ICT環境の整備ということで、これまでGIGAスクール構想の中で、1人1台端末と高速大容量の通信ネットワークの一体的な整備が進められたところでございまして、まさに今後のデジタル教科書の在り方として、現場の希望によって選べるようにするといったときに、当然、前提条件として、こうしたICT環境の整備がなされていないといけないところでございますが、こうした中で、課題改善に向けてどう取組を進めていくことが必要かということが重要な論点ではなかろうかと考えております。
 なお、現状を申し上げますと、例えば、27ページにございますように、端末については、既に1人1台端末を整備させていただいているところで、さらに、その端末の更新についても、都道府県で基金をつくるということで、それに向けて、国からも予算面での支援をしているところでございます。
 高校段階について言えば、令和6年度にほぼ全ての都道府県で実現するということになってございますので、今後の課題としては、義務教育段階では、さらにそうした端末の更新について伴走支援を行う。高校段階では、それぞれ適切な整備方法を学校の設置者で選択して、1人1台端末環境を維持する必要があるということが課題となってございます。
 続いて、通信環境の面については、31ページを御覧いただければと思いますが、こちらについては、令和6年3月時点で98.3%の普通教室でインターネット接続が行われて、日常的な活用が可能となっているということでございまして、その際、その下の現状にございますように、学校規模ごとに必要な帯域の目安を提示させていただいているところでございますが、まだこれを満たす学校は2割程度にとどまっているということでございますので、これを早急に達成する必要があろうと。このため、この下に書いていますように、まずはアセスメントに対する支援を行うとともに、文科大臣、総務大臣、デジタル大臣の連名の中で、適切な広帯域の通信サービスが選択可能になるように、協力を要請するなどの取組をしているところでございますので、この取組をさらに進めていこうということが課題となっているところでございます。
 簡単ではございますが、説明は以上でございます。
【堀田主査】  ありがとうございました。
 確認をいたしますが、本日の議題は、資料1で言うところの「当面の間」、この部分です。その「当面の間」というのはいつまでかというと、次の学習指導要領が全面実施されるまでのあと5年ぐらいということになります。現在、もう既に当面の間なわけですけれども、現在は、紙の教科書に加えてデジタル教科書を、現場のニーズもアンケートを取って、優先順位をつけて提供してきた。それで、利用率はだんだん上がってきて、利用したことがある人ほどデジタル教科書の利便性は分かってきた。しかし、まだ課題もいろいろあるということで、その課題の多くは、授業の仕方の問題というよりも、アカウント設定の問題とか、その辺にあって、このことがいろいろ指摘されて、業界の努力等もあって、着々と改善しつつある段階であるということです。
 これを全面実施までの間にかなり進めておく必要があると私は感じています。それはなぜかというと、今日も午前中、教育課程企画特別部会がありましたけれども、次の学習指導要領では、デジタル学習基盤というのは、学習のインフラとして、基盤ですから、そもそも前提になると。そこで主たる教材としての教科書が使えたり使えなかったり、あるいは、使うのが6月からになったりとか、そういうことはやっぱりあってはならないことだと思います。だから、業界の方々にも御努力をお願いすることになるわけですが、これを国として、これから数年の間、「当面の間」の間にどこまでしっかりと進めるか、足回りをきちんとしておくかというのは大事なことかと考えております。
 今日は、このことについて、今の御提案資料を基に御意見を皆さんからいただくということになります。オンラインの方もいらっしゃいますが、このワーキングはたかだか10名ぐらいでやっておりますので、ぜひ皆さん全員にまた今回も御意見をいただきまして、意見が出し尽くされたところで今日はお開きにしたいと思っております。
 意見がある方は、大変恐縮ですが、対面の方々も挙手ボタンを使ってお示しいただきたいと思います。松下先生も、オンラインで挙手ボタンをいただければ、私のほうで御指名さしあげたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、御発言のある委員の方からお願いいたします。いかがでしょうか。
 阿部委員、お願いいたします。
【阿部委員】  横浜の阿部でございます。
 「当面の間」の推進方法ということで、まず段階的な導入で、小学校で言えば、今は5年生、6年生しか使えていないわけですけれども、その学年をまずは広げていくという必要があるかなと思います。全学年で使ってみたことがあるというところをもって、「当面の間」が終わることが必要なのではないかなと思います。
 続いて、教科についてですが、教科は、今は英語と算数・数学という2教科です。そうすると、当然、その2教科しか使ったことがない人がほとんどということになるので、この教科についても拡充をしていただきたいなと思います。
 そのときに、個人的には国語を早く使いたいと思うのではと。それは時間数が多い教科だからです。同様に、どの教科を使いたいですかといったときに、時間数が多い教科のほうが手が挙がる率が多いのではないかなと思います。ですが、個人的には、家庭科や音楽が特にデジタルと相性がいいのではないかなと思っていまして、例えば、実習の手順や手本を示すなんていうときには、とてもデジタルは優れていると思うのです。ただ、先ほども言ったように、音楽や家庭科は時間数が少ないために優先順位としてはどうしても下がってしまうのではないかなと思います。
 ですので、国としては、この後、全教科で教科書を発行していく必要が当然ありますので、どの教科でも使ってみたことがある人がいるということが、「当面の間」の終わり頃には必要かなと思います。
 そうしたときに、使ったならばそのフィードバックをもらうということをして、どの単元やどの学習で使ったら効果的、便利だったというようなことを、これはよかった、また使いたいみたいな、そういう簡単なアンケートでもいいので、それの一覧などが出ているといいのではないかなと思います。
 研修や活用事例を進めていくのも大切かもしれませんけれども、それよりも、恐らく、多くの先生が使ってみたときに、この単元はとってもよかったよ、使った人の多くがこの単元はいいと言っているみたいな、そういう情報は先生たちにとってはとても有効で、まずそこで使ってみようかなと思うはずだからです。
 ということで、発行者のためにも、現場の声を届けて「当面の間」が終わるということが大事だと思いますので、先生だけでなく、子供もデジタル教科書に慣れ親しむ時期と位置付け、多くの人が使えるというのが大切かと思います。
 以上です。
【堀田主査】  ありがとうございました。
 続いて、ほかの委員の方、御発言をお願いします。
 中村委員、お願いいたします。
【中村委員】  中村でございます。よろしくお願いいたします。
 今御説明いただきました「当面の間」におけるデジタル教科書の推進の在り方というところの期間なのですけれども、まず自治体が今後主体的に選択という場面を迎えるための過ごし方というふうに考えました。
 その中で、まず教科についてなのですが、今、阿部委員からもあったように、いろんな教科の中で、学校が使用感だったり、子供の使ったときの感想というものは、ぜひいろんな場面でデータとして取っていただいて、それを根拠にというのはすごくありがたいなと思うところです。
 一方で、今度、行政的な視点から言いますと、何でその教科のデジタル教科書を使うことがいいのですかというように、指導主事レベルでも説明が求められるという場合もあったりします。そういった場面においては、例えば、これから何か明確な理論的な根拠というものがあって、だからこの教科なのですということが伝えられることも、一方では、学校と、または自治体というような単位になってきますと、ありがたい側面もあります。なので、私も自分がここにいるのですけれども、こういったワーキンググループなどである程度の一定の根拠を持って、この教科がいいのではないかという方向性を示していけるといいのかなというのが思うところです。
 二つ目です。アカウント管理については、やはり主体的に選択するといったときに、使うことに対してハードルがあると、やはりそこは選択肢としては少しリスクが高くなってしまうので、選択しにくくなるということもあるかと思います。そういったところで、ハード面を紙と同じぐらいにすぐに使える、ワンタッチで使えるというくらいにまずしていくことが大事、この「当面の間」で同等に使いやすくなるということが大事なのかなと思います。
 そういったところでは、本校では学習eポータルがCBTの活用も含めて導入しているところですので、このeポータルとか、ここに出てくるようなEduHubみたいなところにアカウント管理も含めて、EduHubやeポータルを開くと、ここにもう既にアカウント連携、シングルサインオンになっていて、子供たちも先生たちもクリックすればいいようになっていれば、私たちも主体的に、こっちのほうが使いやすいねということも言う機会が多くなるのかなとは思っています。この辺り、ぜひeポータルのほうでも連携してきたいなというふうに考えています。
 三つ目です。目の健康というところについてです。実は、本校もこういったところ、デジタルの環境は推進している学校ではあるのですけれども、非常に気を付けております。つくば市では、ファーストGIGAのときに、やはり「ギガっこデジたん」だったりとか、こういった啓発リーフレットを一緒に配らせていただいたり、保健の先生が各校で動画を作ったりということで、推進してきました。
 ただ、一方では、よく最近考えられるのは、学校でのデジタル画面の注視よりも、家庭におけるスマートフォンの利用についても、学校保健委員会等でも問題が提起されております。そういったところの議論の切り分けといったところも必要なのかな。
 また、授業の中でデジタルをずっと注視しているような授業のデザインがされてしまっているとしたら、そこは先生方の授業デザイン、せっかく学校という協働的な学びができる場面において、いろんな紙を見たり、対話をしたり、黒板を見たり、動き回ったりということをしながら、端末に情報を整理したり収集したりということをやっていけるような授業をするというのも併せてやっていかなくてはいけないのかなといったときに、今度は、そこから連携されると、教職員大学から来る先生方は、使ったことがないと言うのですね。今、実習生がいるのですけれども。
 つまり、デジタル教科書を使って、子供たちが積極的に活動しながら、注視しながら20分座り込むような授業ではなくて、協働的な場面を本当にアクティブに学んでいくような授業のデザインをできる、今そういった経験がないのだなと。それから、学校の先生もそうなのだなというふうに感じていますので、授業づくりといった観点からも、少し研修が必要かなと思うところです。
 以上3点です。
【堀田主査】  ありがとうございました。
 細田委員、お願いいたします。
【細田委員】  細田でございます。よろしくお願いいたします。
 まず第1点、論点の1ですが、「当面の間」のデジタル教科書の段階的な導入について、阿部委員のほうからも、学年を広げていく必要があるということで、私も賛成でございます。そういった、その次の学年が広がっていくということに加えて、どの教科のデジタル教科書をということですが、子供の意見の中に、科目ごとに決めたらいいという意見がございまして、私も、子供の思いもやっぱりそうなんだなというふうになりまして、現場のニーズの高いもの、それぞれどの単位になるのかはこれから議論だと思いますけれども、やはりニーズの高いもの、科目ごとに決めていくということで、例えば、国が全体で、次はこれ、次の教科はこれというよりも、現場の声を聴きながら広げていくということに賛成でございます。
 それから、2点目ですが、論点の2で、デジタル教科書の効果的な活用方法の発信、教員の指導力向上ということについてお話をさせていただきたいと思います。
 これから教育実習のシーズンになっている、もう既に来ている学校もいっぱいあるわけですけれども、私も教育長のときに、教育実習に来る学生たちが、デジタル教科書もそうですが、ICTを活用した教員養成課程での経験が非常に少ないということにびっくりしてしまっておりました。
 それは教員養成課程のカリキュラムの問題もあるかもしれませんが、制度といいますか、システムとして、デジタル教科書を学生たちが自由に使える環境ではないという問題もありまして、聞くところによりますと、図書館の端末に入っている状況はあるのだけれども、それを自分がいつでも自由に使ったりとか、学生が大学の教育課程の授業の中で自由に使うという環境ではない様子でございまして、これをぜひこの後、パッケージで使いやすくしたものを安価でといいますか、学生たちも購入できるとか、もしくは大学の授業の単位で購入できるとか、そういうシステムが必要になってくるのではないか。これは教育課程のカリキュラムの問題以上に、システムの問題が大きいのかなと思っておりますので、これはまさに当面の間、システムを整えていくということが必要になるのだというふうに思います。
 その上で、先ほどの中村委員からもお話がありましたように、十分に授業デザインの中にICTを活用し、デジタル教科書を活用する、そういった授業デザインについて具体的に学生たちがしっかり教育課程の中で学んでくるということがこれから求められるのではないかと、こんなふうに思っております。
 以上です。
【堀田主査】  ありがとうございました。
 続きまして、松谷委員、岡本委員の順番で参ります。お願いいたします。
【松谷委員】  私立学校の代表で来ました松谷です。よろしくお願いします。
 まず、やはり学年を広げるというのは非常にいいのかなと。やはり小学校1・2年生で必要なものが出てくると思うので、ぜひ拡張していただきたいというのは、私も同じ考えでございます。
 そういった中で、デジタル教科書の効果的な活用方法というのは、やはり実技科目など、家庭科、音楽という話もあったのですが、本校も、文化学園というと、ファッションとか、それから芸術・美術関係とか、そういった授業を附属で実習をしていますけれども、そういうのをどんどん取り入れて、動画を見れば、もう一度元へ戻って、実習でこういうことをできないところがというのが繰り返されるわけで、非常にデジタル教科書の有効性というのはたくさんあるのですね。
 それから、美術もないような感じもするのですが、実は、美術の中でも新しいデザイン、考え方というのを取り入れることができると思っています。うちの場合、例えば、ゴッホの「ひまわり」とか、そこに自分の顔を導入するなんていうのは、デジタルでないとできないですよね。そして、自分の思いや考えとか、そういうことを伝えていくという方法がもっと広がるというふうに、私どもの実践で見ていたところでは感じたところです。ですから、実技のほうも進めていく。
 そういった中で、ただデジタル教科書を作るだけではなくて、教員の指導力では、やはり探究学習とか協働学習の指導力というのはまだできていないのではないかというふうに考えています。私学協会では、そういった面で、探究学習の研修はたくさんやっています。そういう中で、指導法の中でデジタルを有効に生徒に使って、あるいは、協働学習で、ですから、授業の中で本当に10分、15分を使うことで、あとの違うような活動がやはり主体的な学びにつながっていくのではないかというふうに感じていますので、こういった研修とか指導力向上のためのところは、ぜひ併せて実施していただければと思っています。
 もう1点は、5番のICT環境の整備についてですが、実は私学のほうは、令和5年度の末で、1人1台の端末を持っていない学校というのがまだ23%いたわけなのですね。学校でも高度な容量ができていないところもあるというところです。そういったものも、やはり今後、各学校、公立と私学も一緒に準備していただければ、こういったデジタル教科書の活用もどんどん進むのではないかと思っています。
 以上でございます。
【堀田主査】  ありがとうございました。
 岡本委員、お願いいたします。
【岡本委員】  教科書協会の岡本でございます。よろしくお願いいたします。
 まず、本日の論点について整理していただきまして、ありがとうございます。整理していただいた中で、私からは、丸1から丸4までに関して意見を述べさせていただきます。
 まず、丸1の段階的な導入ですが、これに関しては、現在、算数・数学が小学校5年から中学校3年まで、対象学年の約半数の子供たちだけに国費負担で提供されている状態ですので、これを英語と同様に、やっぱり全ての子供たちに提供していくことにも取り組む必要があるというふうにまずは考えております。
 それから、「当面の間」の以降を見据えた際に、できるだけ多くの教科でデジタル教科書を使って学ぶことに慣れていただく必要、ほかの委員の先生方もおっしゃいましたけれども、私も同様だと感じておりまして、現場のニーズに基づいて教科を広げていくという、そういった取組、私も大変重要であるなと思っております。
 それから、丸2のほうになりますが、デジタル教科書の活用方法の発信、これに関しましては、御説明がありましたように、現在はメインで義務教育において取り組まれているという認識を私どもはしておりまして、デジタル教科書と言いますと、小学校も中学校も高校もありますけれども、高校の教科書の場合、義務教育と違いまして、国費負担になっていないですとか、義務教育に比べますと種目が多くて、一つ一つの種目の発行部数が少ないというような特質がありまして、いろいろな面で義務教育とは状況が異なっております。
 今日お出しいただいている参考資料2の中にもあったと思いますけれども、高校のデジタル教科書というのは、全体の6割程度しか今発行されていないという現状もありますので、ほぼ100%近く発行されている義務教育と同じように制度化するのはちょっと難しいのではないかなというふうに考えております。
 丸2の教員の指導力向上に関しましては、自治体で実施している教員研修ですとか全国の教員養成系の大学などにデジタル教科書を御提供したり、使い方について講師を派遣したり、まだまだ限られた範囲ではあるのですけれども、様々な要請がありますので、それに応じて各発行者は努力しているところでございます。
 今後、先ほどありましたように、国として指導力向上のために何か必要な方策を具体的に実施するということであれば、教科書協会としても積極的に関わって貢献したいと考えますので、こちらにつきましては、どうぞよろしくお願いいたします。
 丸3の負担軽減、こちらに関しましては、先ほど事務局から御説明いただいたように、我々としても、アカウント管理が少しでも先生方の御負担にならないような工夫をそれぞれの発行者で進めております。さらなる負担軽減に向けて、この業界として何ができるかというのは引き続き検討を続けてまいりたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 最後に、丸4の健康影響なのですけれども、これについては、実際の授業場面を考えますと、デジタル化された教科書だけで学ぶわけではなくて、例えば、インターネットによる資料検索ですとかデジタルノートを活用するなどという場面もあるかと思いますので、そうした様々な端末を利用するということを想定して、授業全体のデジタル活用を考えて、健康影響に関するガイドライン設定というのをするのがよいのではないかなと思って聞いておりました。
 私からは以上になります。
【堀田主査】  ありがとうございました。
 それでは、奈須委員に参りますが、できれば、その後、松下委員、何か発言いただければと思います。
 奈須委員、お願いいたします。
【奈須委員】  よろしくお願いします。
 今日、当面のというところでおまとめいただいて、ありがとうございます。
 3、4、5のところは、今後推進していく上での基礎的な条件整備に関わるところかなと思っています。いろいろ大変なことだったり、予算を伴ったりすると思うのですが、これは現場のほうの話ではないのでというか、だから、これは本当に行政的に、あるいは、業界のほうでお進めいただけると本当にありがたいなと。アカウント管理なども本当に今大変ですけれども、技術的にどんどん進んできているのでありがたいなと思っています。健康への影響なども、実証的な確認をするとともに、制度にきちんと訴求していくということだろうと思うのですが。
 現場のほうの側で言うと、やっぱり1番と2番なのだろうと思うのですね。1番は、先ほど皆さんからお話のあったことで、学年を広げていくとか、いろんな教科にトライしていく。どうしてもなかなかそちらに目が向かないような教科にもトライして、その教科ならではのデジタルの強みが明らかになってくることが、この先のことにつながってくるのだろうなと思って伺っていました。
 1番は、やっぱり2番に依存するのだろうと思うのですね。効果的な活用ということが明確になって、それがしっかりと伝わってくれば、この学年でとかこの教科で入れてこんなふうにしようという話になるわけで、実は2番が結構大事なのだろうなと思っています。
 発信もあるのですが、発信以前の問題として、そもそもどういうことなのかをきちんと再整理するというのがどこかで大事なのかなと。これは中川先生や堀田先生が御専門なので、いや、それは既に十分にあるよということなのだろうと思いますけれども。いや、それでいいのですが、改めてここでもそのことをみんなで確認して共有することは大事かなと思っています。
 これはどんな教材や方法やテクノロジーもそうなのですが、新しいテクノロジーというのが、従来型のテクノロジーとまず同じことができるという、当たり前のことですが。同じことができた上で何かいいことがあるという、まずその何かがあると思うのですね。すごく素朴に言えば、1教科では効きませんが、もし全教科がデジタル教科書になったらランドセルが軽くなるという話はあるわけで、ランドセル重い問題というのは小学校で結構深刻でね。今、教科書も学校に置いておくことが増えていて、生活科なんかは8割置いているのだそうですが、でも、持ち帰るということはまだまだあって、すごく素朴ですが、アナログと同じことができた上で、アナログよりもアドバンテージがあることは何だろうということ、素朴だけれど、こういうのをちゃんと伝えていくことはまず大事かなと思います。
 それから、実践の具体のレベル、学びの質のレベルになったときに、アナログでできないことができるという、これが一番分かりやすいですね。アナログでできないことがデジタルになるとできる、これはもう膨大にあると思います。
 このなかに、全員に関わる話と、特定の子供、特に従来の紙の教科書とかアナログのメディアではしんどい思いをしていた子供たちが救われるという話、これは中川先生の御研究の中にもたくさんありますが、大事なことだと思うのですね。デジタル機能によって、しんどい思いをした子が救われる。つまり、公正な教育の実現に資するというのは、デジタルの圧倒的な訴求力のあるところだと思います。これは多様性の公正な包摂ということを今言っていますし、個別最適というのもそこに関わってきますので、これはもうデジタルの圧倒的なアドバンテージで、訴求力があることかと思います。
 全員にとってデジタルが学習の質を上げるというのは、中川先生の研究なんかだと、書き込み機能とかがありますよね。ああいうのは代表的で、学びの質を上げるのにデジタルが道具としてとても優秀に機能するという話はほかにもたくさんあるのだろうと思うのですね。
 三つ目が、これはどんなテクノロジーでもそうですが、そのテクノロジーによってインスパイアされて、先生方の授業設計、先ほど細田委員もおっしゃいましたが、授業設計の在り方とか、授業設計の原理とか、そのレパートリーが豊かになるという話がありますよね。これもデジタルにはいろんな可能性があると思うのですよね。そして、インスパイアされて、学びの質、実践の質が変わっていく。そして、子供の学びの質が変わっていくというときに、今いろんな新しい質の学び、個別最適だとか、探究だとか、自立的ということを言っているわけですが、そっちに大きく資する部分と、いや、そうではないんだと、伝統的な教科の学びの質なのだけれども、そこに圧倒的に資するものも実はありまして、どうしても僕らは今、探究とか個別最適とか自立というところに意識が向かいがちですが、いや、そうではなくても、伝統的な教科学力とか、教科の見方・考え方のようなところ、そういうところをやっていくのに、デジタルの意外なこういう側面が資するなどということも、個別具体的に訴求していくということがそろそろ大事かなと思っています。
 グッドプラクティスの紹介というだけでは、「あ、そういうこともできるのね」と言って、「でも、それ、私、学年違うし」とか言われて終わってしまうのですが、少し原理化して構造的に整理をして、これも多分中川先生や堀田先生はお持ちだと思うのですが、そういうことを発信していきたい。事例は必要なのですけど、事例が整理された原理との対応関係で出るということが大事で。すると、この事例のようなこの原理の転換というのを、私だったら、この教科のここでやれるなと。また、多くは教育方法に関わることなので、教育方法というのは先生方一人一人のスタイルとかこだわりがありますので、こういういいプラクティスがあるよと言われても、それは私の流儀ではないで終わってしまうのですよね。これは私の流儀ではないけど、この事例の背後にあるこの考え方は、私の流儀では別のやり方でできるし、そのときにはデジタルがこんなふうに生かせると。
 結局のところ、教師というのは、私にしかできない授業をやりたいのですよ。だから、いい事例をお伝えするというときに、こういうのがありますよと言われて、押しつけられた感があると、やらないのですよね。だから、事例でイメージが豊かになるのだけれども、それを私の流儀、私のスタイルでやりたい。そこを支えるような情報提供というのは、これはデジタル教科書に限らず、新しいテクノロジーを出しているときは常にそうなのですけど、そういうことができるといいなと。多分、この領域の研究や実践には、それをできるような蓄積がもう既にあると思うのですが、少しそれを整理して打ち出すということを併せてやっていく。
 また、そうすることによって、供給側も、だったら、こんな教科書を作るとこんなことができるんだなという見通しが立って、教科書会社の皆さんもいろんな御工夫がやりやすくなるのかなと、そんなことを思っておりました。
 以上です。
【堀田主査】  ありがとうございました。
 松下委員、お願いできますでしょうか。
【松下委員】  全国高等学校PTA連合会の松下です。よろしくお願いします。
 皆様の御議論が、デジタル教科書、紙の教科書、どちらかということではなくて、子供たちの学習のためにどういうふうにしていけばいいかという内容で、大変保護者としてありがたく、ぜひ、保護者も蚊帳の外にならないで、一緒にこの「当面の間」、蚊帳の中に入って、いい方向に行けるといいなと思ってお聞きしていました。
 御専門の中で、様々な課題や、よくしていくための御提案などたくさんありまして、この「当面の間」でも、その先でも、皆様のほうの御尽力で、子供たちの学習の場が支えられるのだなということを改めて感謝申し上げます。
 私も、仕事は幼児教育なので、その現場を想像して皆様のお話を聞いているときに、子供たちは、やはりデジタルであっても、リアルであっても、紙であっても、そのときに必要な情報を上手に、今の子たちはいろんなところから情報ソースの中から取ってきて、器用に学んでいるなというのは実感するので、ぜひそういうふうに、学校現場のほうでも子供たちが生き生きと勉強できるといいなと思っています。
 PTAの立場として蚊帳の中に入るためにはどうしたらいいのか、2030年にいよいよとなったときに、そこから保護者が学んでいるとか、周辺の子供たちの中で何かが起こったときに、そこをつついて問題化していくだけの存在にならないためにはどうしたらいいのだろうというふうに、今お聞きしながら考えていたのですけれども、これ、今、段階的にという中で、県によって、推進している県、まだ様子を見ている県というふうに、地域によって格差がある。格差というか、意識か事情か分かりませんが、進捗に差があるということが、この「当面の間」に、皆様の御尽力で進んでいくところはとても実践が進み、実践例が蓄積され、先生方のノウハウやスキルも上がりというところと、結局、スタートが遅い分、子供たちの学びの差になっていくということがないといいなと思っています。私もちょっと勉強不足で全部把握していないかもしれないのですが、その格差が「当面の間」に埋まるといいなと思ってお聞きしていました。そして、保護者が、このデジタル教科書に関する情報や、それに対する意識、理解、そういうものに、結局、学校現場に差があると、保護者の意識にも差が出てくるということになるので、学校と保護者が共に子供の学びの場を支えるということを考えると、結果的に子供の学びに差が出てくるということになるのであれば、そこを少し何とかできないかなと思って考えていました。
 もちろん学びの場ということもそうなのですが、健康面でのいろんな専門の方の知恵だったり、アドバイスだったりというのがデジタル教科書の推進の中に反映されているのであれば、家庭での端末の利用とか、そういうものに対しての保護者の健康面での対応という意味でも、大変貴重な学びが保護者もできるのではないかなと思うので、何とか、ちょっと遅れてでも蚊帳の中に入りながら、保護者も意識を持っていきたい。そのためにはどういった形があるかなと考えたときに、今いろんなことがPTAの中でも起こっていますが、PTAは高校と、あと日Pという、単Pから全国レベルまで大きな何万人、何十万人の保護者が所属しているボランティア組織があるので、そこをぜひ活用して、国や県と連携して、この情報をある程度リアルタイムに正しく理解していくということを推進していけないかなと思ってお聞きしたのが一つ。
 あと、子供たちがデジタル教科書で学ぶということの向いている、向いていない、デジタルだからこそ伝わっていくものがあるということを考えたときに、保護者も、いろんなところからいろんな紙が来て、日々の生活の中で目を通せない方っていっぱいいらっしゃるので、だとすると、啓蒙ビデオというのか、今、先生向けに指導方法とか、いろんな実践例が映像になっているみたいなお話もありましたので、保護者向けにそういう、これ、そういうことが今後の予定に入っていたら大変差し出がましいことにはなるのですが、各単Pだったり、県Pだったり、全国でもいいのですが、そういうふうに活用できる保護者向けの、子供たちがデジタル教科書と紙を併用して生き生きと学んでいるような場を、こんなふうにして学びが深まっていますということが分かる、そして、家庭ではこういうふうに支えていけるといいですねというような内容の動画なりがあると、動く視覚的なものが保護者も入りやすいのかななんていうふうに思ってお聞きしました。
 提案を二つさせていただきました。ありがとうございます。
【堀田主査】  ありがとうございました。
 それでは、中川主査代理、お願いいたします。
【中川主査代理】  どうもありがとうございました。事務局のおまとめ、ありがとうございます。おかげで、論点がとてもクリアになったと思います。
 今回も一委員として3点コメントさせていただきたいと思うのですが、まず論点1のデジタル教科書の段階的な導入についてです。これは、先ほど意見がありましたように、ニーズにかかわらず、算数・数学を100%にすることと、学年を広げることと、小学校も中学校も国語を次に全員分無償配布すべきだと思います。
 理由は非常にシンプルで、学校全体として活用できる授業時間数が多くなるからです。文部科学省の委託事業の調査結果でも、デジタル教科書の使用頻度が高いほどデジタル教科書の使用感を肯定的に捉えていることが明らかになっています。つまり、まずは使える機会、物理的な時間を増やすことが重要で、現在の限られた学年での英語100%と算数・数学55%の配布率では、そもそもまだ十分に高くないと考えるからです。
 次に、論点2のデジタル教科書の効果的な活用方法の発信、教員の指導力向上についてです。文部科学省で毎年実施している学習者用デジタル教科書の効果・影響等に関する実証研究事業における研修事例では、先ほど事務局からも御説明ありましたが、既に十分参考になっていますので、ぜひ御覧いただきたいですし、目にしていない教育関係者が一方では少なくないので、さらに周知を工夫していただきたく思います。
 ここでは単なるデジタル教科書の操作研修にはなっておりませんし、そもそも紙がデジタルかの二項対立にもなっておりません。これからの教員研修では、新たな学びを実現するための授業づくりにおいての教員研修が重要に思いますので、その上でも、この研修事例を参考にしていただきたいですし、今は、ほかの団体とか研究プロジェクトからも好事例がたくさん出ております。また、先ほど事務局からありました英語、算数・数学以外の教科、それから、高等学校にも広げていただきたいと思いますし、今御指摘のあった保護者向けも、なるほど、もっとあったほうがいいなというふうに思いました。
 論点1、論点2を総じて言いますと、体験の場、あるいは目にする機会をさらに補集することが大事だということです。
 最後に、論点5のICT環境の整備についてです。釈迦に説法ですけれども、デジタル教科書は端末上で動き、情報通信ネットワーク環境に影響されます。先ほど事務局からこれも御説明があったように、全校の簡易測定結果と照らし合わせて、一定の仮定の下で推計すると、当面の推奨帯域を満たす学校は2割程度にとどまっています。実際、これ、全国を回っていますと、活用場面の情報通信ネットワーク環境の課題を感じることが多々あります。でも、数値は十分ですよと言われるのですよね。でも、にもかかわらずです。
 本日の資料2の35ページでも指摘されていますように、ネットワークの改善は、児童生徒や教職員の体感改善のために行われるべきであると思いますので、帯域測定と併せて、ユーザー体感調査を実施することが必要だと思いますので、これはもしかすると本ワーキングの範疇を超えているかもしれませんが、ぜひ実現できるように、さらなる周知や検討を関係省庁や部署にはお願いしたいと個人的には思います。
 いずれにしても、この「当面の間」にきっちりやるべきことは多々あろうかと思っています。
 以上です。
【堀田主査】  ありがとうございました。
 ほかに言い残したこととかある方はいらっしゃいますか。追加で申し上げたいとかはありますか。よろしいですか。
【黄地教科書課長】  座長、補足として。
【堀田主査】  どうぞお願いします、事務局。
【黄地教科書課長】  すみません。事務局でございます。
 先ほど松下委員から保護者向けの動画を作るべきではないかという御提案をいただきましたが、実は少しだけありまして、参考資料2の57ページ、今表示しますので御覧いただければと思います。
 これまでもデジタル教科書については、ガイドブックとか研修資料を作っていましたが、そのうちの一つに、中ほどに写真がございますが、保護者・教員向け動画というのもございます。ですので、今回の御提案もいただきまして、例えば、特に保護者の皆様に特化したようなもの、あるいは先生方のかゆいところに手が届くような動画、こういったものについてもさらに、英語、算数・数学以外も含めてできないかというのは、我々としても検討してまいりたいと思ってございます。
 あともう1点でございます。先ほど細田委員から、子供の意見として、教科ごとにデジタルを導入するか否か決めたらいいのではないかという声があったところにつきましては、参考資料3の31ページにこの記載がございます。右の欄のところ、デジタル技術を活用している教科書がいいといういろんな意見の中の三つ目の黒ポチで、科目ごとにデジタル教科書を使うか決めたらよいと思うということで、国語については、この子は紙がいいと思うが、数学、英語はデジタルを使ったほうが分かりやすくなるという意見でございました。
 これは小学校から高校生までの御意見でございますけれども、一方で、こうした趣旨の意見については、先日、御紹介申し上げました各団体からも意見をいただいているところでございます。
 この辺りは、国としても何かしら考え方を示したほうがいいのではないかという御意見もございましたので、仮にそういった方向でやる場合には、英語、算数・数学については、今、英語は100%、算数・数学は50%から少し割合を上げる中で進めている一方で、ほかの教科については、まだそういった状況ではございませんので、今日の御議論も踏まえながら、実証研究の幅を教科や学年を広げていく中で、こうした先日御紹介した団体からの意見、あるいは今回御紹介した子供たちの意見もうまく踏まえた形で、実証研究も踏まえながら、どういったことができるか、事務局としても考えていくことが必要ではないかなと思った次第でございます。
 以上でございます。
【堀田主査】  ありがとうございました。
 ほかに委員の方、よろしいですか。
 私、座長として二つだけ申し上げておきたいと思います。
 一つは、利用経験者を増やすということが今何より重要だという話です。これは皆さんの御意見にもたくさんありました。阿部先生からは、使った人が増えるということが大事だというお話、細田先生からは、教員養成でも利用経験のある人をもっと増やすべきだというお話、松谷先生からも、教員の経験を増やすべきだ、現職教育のことになると思うのですが。
 このことを考えると、今、英語、次は算数・数学で来ましたけれど、あとは、うちの学校ではここに力を入れている、そういう実情に合わせて教科を選ぶようなことが第3の教科としてはあり得るかなと。それで国語が多ければ、それはそれで僕はいいと思うのですけれども。そこにいる先生とか、いろんな考え方もあろうかと思いますし、採択されている教科書によって、そのデジタルをどうかという現実もありますので、この辺りを現場のニーズを柔軟に拾うという考え方もあり得るかなというのが一つでございます。
 二つ目は、そうやって経験者が増えると、中川先生もおっしゃいましたけれども、経験した人ほど有効性を感じるので、これはあらゆるICT活用みんなそうなのですが、使ったことがない人はやっぱり批判的になるのですね。使っていると、これはこれで、ここはいいからこういう場面で使おうみたいに具体的なアイデアが出てくる。
 そのときに、奈須先生もおっしゃったように、デジタルを使うと、こうでなければいけないみたいな絶対的な方法があるわけではないし、それぞれの教科の特質や発達段階や先生の個性もあるので、多様なのですね。だから、当事者として各先生が自分なりの工夫をしていただくしか方法はないのです。ないのですが、ただ、奈須先生もおっしゃったように、原理みたいなところはやはりあって、具体的に言うと、例えばですが、何か習熟しなければいけないようなことがその教科の中にあって、それを繰り返しできれば、どれはできて、どれはミスが多いみたいなことがコンピュータである程度分かりながら自分でちゃんと習熟していくみたいなことは、多分デジタルはかなり強みがあるところだと思うのですよね。例えばですが、今のようなところからできるだけデジタルにシフトしていくみたいなことが数年かけて着々と行われて、それでもなお残る部分というのが紙の強みが残るのだというふうに考えれば、これぞハイブリッドの教科書なんだと思うわけです。
 以前、中間まとめのときに、紙の教科書とデジタル教科書というのが今あって、そこにハイブリッドが提案されてきたので、三つになって大変だみたいな話が出ていましたが、僕はこれは大きな誤解だと思うのですが、僕はハイブリッドだけになるんだと思います。ただし、そのハイブリッドのデジタル率みたいなのがあるとすれば、ものすごくデジタルに傾斜している学年や教科や、あるいは会社があるのに対して、紙でやるということにすごく重点を置いている会社や教科や、そういうものがあるということなんだと思うのですよね。これをどれを選ぶかも含めて、採択の目が、自治体や、あるいは各学校に責任も含めて重要になると考えれば、この「当面の間」の間に、先生方が利用経験をしていただいて、自分の授業づくり、あるいは自分の学校、地域の課題に合わせた授業づくりと併せて、どうあるべきかということを議論しておいていただくことが大事なのかなと思っております。二つ目の話は、そういうことでございます。
 今日は、「当面の間」ということに絞って議論をいたしました。次回は、「当面の間」の次、つまり、少し先ですが、今後の制度面の在り方について議論していくということになります。資料1で言えば、3ポチのところについてです。ここには検定とか、採択とか、発行・供給とか、権利の問題とか、そういうことがいろいろあろうかと思います。こういうことについて議論してまいりますので、少し中長期的な話になるかと思いますが、そことつなげていくための今日の「当面の間」があったというふうに御理解いただきたいと思います。
 大分早いのですが、意見はいろいろ出尽くしたと思いますので、この辺りにしたいと思いますが、事務局から、次回の予定について御説明をお願いいたします。
【西田教科書課課長補佐】  次回のワーキンググループの日程につきましては、追って事務局から皆様に御連絡させていただきます。
 以上でございます。
【堀田主査】  ありがとうございました。
 先ほど私の発言の中でも申し上げましたが、今、教育課程企画特別部会というのが動いていて、これは次の学習指導要領に向けた教育課程の在り方を議論しています。そこの中で、ならば教科書のようなものはどうあるべきかみたいなことが、また議論の俎上に載ってきます。こちらのワーキングから情報提供できる部分もあるし、こちらのワーキングで受け止めなければいけないようなものも出てくるかと思いますので、今そういう状況ですので、そちらの部会もぜひ注目いただければと思うところでございます。
 本日予定していた議事は終了しましたので、これで閉会といたします。皆さん、どうもお疲れさまでございました。

 
―― 了 ――

お問合せ先

初等中等教育局 教科書課