デジタル教科書推進ワーキンググループ(第4回)議事録

1.日時

令和6年12月20日(金曜日)14時00分~16時00分

2.場所

文部科学省
※対面・WEB会議の併用(傍聴はWEB上のみ)

3.議題

  1. 有識者からのヒアリング
  2. 自由討議

4.議事録

【堀田主査】  では、皆さん、こんにちは。それでは、定刻となりますので、ただいまから中央教育審議会初等中等教育分科会デジタル学習基盤特別委員会デジタル教科書推進ワーキンググループの第4回を始めます。本日もまた御多忙な中、御出席いただきまして、誠にありがとうございます。
 本日は、坂本委員が御欠席、また、中川主査代理と中村委員がオンライン出席となっております。
 それでは、本日の会議開催方式及び資料につきまして、まず事務局より御説明をお願いいたします。
【西田教科書課課長補佐】  御説明させていただきます。本会議は、前回と同様、対面とオンラインのハイブリッド形式での開催でございます。オンラインで参加されている方もいらっしゃいますので、会議を円滑に行う観点から、御発言時以外はマイクをミュートにしていただきますようお願いいたします。カメラにつきましては、御発言時も含めて、会議中はオンにしていただきますようお願いいたします。御理解のほどよろしくお願いします。
 次に、資料の確認をさせていただきます。本日の資料でございますけれども、議事次第に記載のとおり、資料が1から4、参考資料が1から5となっております。対面で御参加の委員の方々には紙でもお配りしております。御不明な点がございましたら、お申しつけください。
 以上です。
【堀田主査】  ありがとうございました。
 それでは、早速議題に入りたいと思います。本日の議題は、議事次第にありますように、二つございます。一つ目は、議題1、有識者からのヒアリング、二つ目は、議題2として、自由討議となっております。
 また、本日も報道関係者及び一般の方々向けに本会議の模様をYouTubeにて配信しておりますので、御承知おきください。
 では、議題1の有識者からのヒアリングに入りたいと思います。
 確認ですけれども、これまで私どものワーキングでは、前半はデジタル教科書の効果あるいは当面の方策について主に議論してきました。後半、この数回はもう少し先の、今、「当面の間」は併用となっているわけですけど、それのもう少し先の新しい学習指導要領を見据えた「当面の間」以降の制度的な在り方に関する御意見をいろいろと頂戴しているところでございます。
 今回は、新たな学びや教科書の在り方、少し未来を見た形のことについて検討するために、4名の方々からお話を伺うということになります。そうした観点からさらに議論を深め、できましたら、年度内には一旦中間的に大まかな方向性についてまとめて提出できればと思うところでございます。
 まず、ヒアリングは、最初に1人目として、鳴門教育大学大学院教授の藤村先生に、資料1になりますが、デジタルオリエンティッドなデジタル教科書の可能性についてプレゼンいただくということになります。御都合の関係で、動画でプレゼンをされるということになりました。
 2人目ですが、中村委員から、前回のワーキングでも議論があったんですけれども、紙とデジタルのハイブリッドな教科書をもしイメージするとどういうふうになるだろうかということのたたき台を、学校現場の観点からまずは中村委員に出していただくと、アイデアを出していただくということになります。
 3人目ですが、東京大学先端科学技術研究センターの近藤教授にお越しいただいておりまして、近藤先生には、特別な配慮が必要な児童生徒に対するデジタル教科書の効果、あるいは音声教材との関連性等につきまして、これは若干、私どもの議論、少し足りない部分がありますので、専門家から御説明をいろいろいただきたいというのが3人目でございます。
 最後、4人目ですけれども、奈須委員にお話をいただきますが、奈須先生は教育課程部会長でもありますので、これから審議がどんどん進むわけですけれども、今後の学びの在り方を踏まえた教科書の姿につきましてプレゼンをしていただくということになっております。
 この4名の先生方のプレゼンの後にまとめて質疑応答、そして、意見交換をするという段取りになっておりますので、個別の質疑を取るわけではないということで御了承いただければと思います。
 それでは、まず、藤村先生のプレゼン動画からお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
【藤村氏】  鳴門教育大学教員養成DX推進機構長の藤村です。本日はこのような機会をつくっていただき、誠にありがとうございます。
 私のほうからは、紙の教科書の課題とデジタルオリエンティッドなデジタル教科書の可能性ということでお話をさせていただきたいと思います。
 こちらにあるのは、GIGAスクールの教育改革はこんな授業をなくすためということで、首相官邸の教育再生実行会議で私のほうが提示した10の項目になります。こちらの筆頭に、実は、最初から教科書を開いての学習というのは今後はあり得ないというお話をさせていただきました。これはどういうことかというと、現在の教科書は、紙の教科書ですと、学習課題も提示しているけど、見開きのページにその解き方も、答えまで出ているという、そういったことがあって、それでは主体的な学びですとか探究的な学びにならないということで、これでは駄目だということですね。
 また、提示している学習課題を「めあて」とか、「~しよう」とかというような表現のものが多くて、一方的に教師側が提示してしまって、子供たちがその気になって夢中になって探究しようとする、問題発見・解決するということにつながらないということもあります。
 そして、また、現在の教科書を使っていきますと、協働的な学びについては考えてあるんですけれども、個別最適な学びというものが基本設計の中に取り込まれていないという課題もあります。
 そして、また、それらのことを受けて、フィンランドやなんかの様子を見ていきたいと思いますけれども、こちら、フィンランドの子供たちの学習の様子です。日本と大きく違うのは、教科書が最初から出ていないということですね。教科書を出してしまうと、学習課題だけではなく、先ほど申し上げたように、解き方や答えまで見えてしまうため、それでは探究的な学びにならないということで、教員は決して教科書を最初から出したりしません。そして、子供たちが夢中になって取り組む中で、ノートですとかタブレット、スマホとかといったものを使いながら、また、学ぶ場所も自由に選択しながら探究していくというふうになっています。
 これは実は学力日本一の秋田県も同様でして、教科書を最初から開いて授業をやると、ここでは注意されるというふうになっています。これは先ほどと同じ理由です。しかしながら、教科書を全く使わないかということではなくて、先生も教科書を参考にして、この場合は道徳の授業だったんですけど、児童アンケートを取って、身近な問題から子供たちが切実な問題発見ができるような場面設定をし、子供主体で学びを進めるというようなことをしていました。
 この写真を見て分かるように、教科書は載っておらず、タブレットとか、そういったノートとかを使いながら、しかも先生が中心ではなく、子供たちが二重円になって学びを主体的に進め、先生のほうは構造的な板書をしつつ、揺さぶりとか、切り返しとか、教師じゃなきゃできない学びを深めるための関わりをしています。
 じゃ、教科書はいつ使うんだということですけれども、追究場面の重要な、非常に信憑性の高い資料として、資料集とか、図書館の本だとか、インターネット上の情報とか、そういったものも含めて追究資料として使ったり、そして、単元の終わりとか、要所要所で知識の確実な定着をしなきゃならないときに、しっかりとそこは使っていくということをしています。ここの特徴は、デジタル、アナログもちゃんとミックスして、メディア特性を理解して使い分けているということですね。
 この背景には、Society5.0になってということをよく言われますけれども、もっと本質的に考えなきゃいけないのは、VUCA Worldだというふうに思います。VUCAというのは、皆さん御存じのとおり、変動性、不確実性、複雑性、曖昧性の英語の頭文字を取っています。単純に言うと、変化が予測困難な時代、それをこれからの子供は生きていかなきゃなりませんので、教師主導の一斉型授業、いわゆる知識再生型授業でチョークとトークで教え込みでやってしまっては、こんな変化が激しい時代を生き抜ける子は育ちません。非常に重要なのは、新学習指導要領のポイントにもなっております問題発見・解決能力、これがなければ、変化が激しく予測困難な時代、前例がない時代に、指示待ち人間では生きていけませんから、この能力が大事だということになっています。
 前までは問題解決能力と言われていましたけれども、新学習指導要領から問題発見が加わっている。このことを強く意識した教科書設計になっているかというと、ちゃんと60年も前からそういう問題発見をやっている教科書もありますけれども、まだまだ少数派ではないでしょうか。
 そして、社会が求める資質・能力も、これは経団連の調査ですけれども、特に期待する能力として筆頭に掲げられているのが課題設定・解決能力、つまり、文部科学省の言葉で言うところの問題発見・解決能力ですね。上司からの指示があったら動くけれども、なければ何もできない、そういう人間では困りますしということだと思います。そして、また、特に期待する資質は、当然主体性となっていますし、特に期待する知識は、文系・理系の枠を超えた知識・教養となっています。
 したがって、先ほど申し上げたように、一方的に学習課題を提示する教科書は、問題発見、そこがちゃんとできないので、学習問題の発見場面を設定する教科書はまだまだ少数だということを改善する必要があります。
 そして、ここで総括的に整理してみたいと思うんですが、現在の紙の教科書の課題は、簡単に言えば、典型的な標準モデルアプローチ・教え込みのツールとして基本設計がつくられている。つまり、明治時代の教え込み、知識注入型の授業の基本設計から大きくは変わっていないという点に問題があります。
 一つ目は、めあてや課題を一方的に提示してしまう。だから、子供たちは追究したいというモチベーションもない。内発的動機がない。外発的動機づけしかできませんので、主体的な学びになりません。これでは、問題発見能力が育成できず、変化が激しく予測困難な時代には対応不能です。
 そして、二つ目の問題点は、解き方や実験方法、答えや実験経過も提示しちゃいますので、これでは答えを見せておいて考えろとか、やり方を見せておいて考えろということですから、探究的な学びにはなりません。
 そして、標準モデルアプローチの追究方法提示、多くても、せいぜい二通りぐらいしか解き方、考え方が出ていません。多くの場合は一通りということもよくありますので、そういう単線型の授業設計では、今の令和の日本型学校教育が示す学習の姿を実現するのは難しいということが言えるかと思います。
 それに対して、私のほうで新たに考えたい、もう研究し始めているのが、このデジタルオリエンティッドなデジタル教科書です。こちらのほうは、現在の紙の教科書と違って、個別最適アプローチとか、探究的な学びのツールにすることができるというメリットがあると考えています。まず、問題発見場面の設定というのは、多くの教師にとって深い教材研究が必要ですので、非常にハードルが高くなっていますが、それを、例えば、グラフの変化を見るんであれば、徐々にめくっていって、「さあ、この後どうなると思う?」とかと言って予測させておいて、例えば、幕末に一揆や打ちこわしがすごく増えてきた、じゃあ、新しい世の中になって、明治になったらどうなるかなというところに子供を予想させておいて、めくっていくと、明治になったら減ると思っていたのに、実は逆に増えているということから問題を発見して、追究せずにいられなくなるとか、そういったつくり込みが非常に簡単にできる。そうすることによって、多様な問題発見の経験を積むことで、問題発見・解決能力が育成され、変化が激しく予測困難な時代に対応可能になるんではないかと考えています。
 また、解き方や実験方法、答えや実験結果は最初からは提示しないので、探究的な学びにすることもできます。
 さらに、個別最適アプローチの追究支援、複線型の授業も組み込むことができますし、デジタルならではのマルチメディア学習材とか、インタラクティブ学習材の搭載も可能です。
 しかし、これらを紙の教科書とデジタルオリエンティッドなデジタル教科書を二項対立的に考えるのではなく、紙の教科書を改良し、それは現在のデジタル教科書を反映することもできますし、逆に、デジタルオリエンティッドなデジタル教科書を開発して、そちらを逆に正当な教科書としていくなど、そういう開発をしながら一緒に考えていくことが大事ではないかなと考えています。
 デジタル教科書を標準の教科書にするということは、Next GIGAはもう決まりましたので、全ての子供が一人一台端末を持っている日本が世界で初めて可能になるというふうにも考えています。
 そのときに、ここにあるように、デジタルもアナログも、そして、これは人の誕生のときの学習で使っている子供ですけど、桐の箱はへその緒ですね。つまり、デジタル、アナログ、実物も使いこなす。こんな子供に育てたい。こういうのをメディアミックスって古い概念で言いますが、やはり教科書もその点は配慮していいんじゃないかと考えています。
 ただし、全てが同等ではなくて、日本では既に皆さん御承知のとおり、体験や活動が教育にとって最も重要で、それが困難なところとかそれ以外の部分でデジタル・メディア、アナログ・メディアを、メディア特性を生かして組み合わせていくんだ、そういう本質的多元論が重要ではないかとも考えています。
 そして、学び方の組み込みという点では、これは湯沢西小学校というところですけれども、学ぶ方法・順番・場・相手・時間配分、それは全て自己決定していきますが、これについては学び方を鍛えなくてはならない。
 例えば、秋田県の男鹿市立船川第一小学校では、こういう学び方をちゃんとつくって、ノートの1ページ目に貼らせていくというのをやっていますが、こういう学び方がもし教科書に組み込まれて、全ての学校でトレーニングできるようになれば、学力が飛躍的に伸びるのではないかとも考えています。
 振り返りにしても、右側の中学校版を見れば分かるレベル1からレベル5まで、こういうことを書くといいんだよということを示されると、今まで1行しか書けなかった子供たちの学びの振り返りが充実すると考えられます。
 現在のデジタル教科書は、紙の教科書に準拠しているので、どちらかというと、何を学ぶかという知識・技能の内容が中心になっていますけれども、今後はそういう学び方を入れれば、学びに向かう力、人間性の涵養だとか、そして、どのように学ぶか、つまり、学び方についても組み込めると考えています。
 今日は時間がないので詳しく言いませんが、ここにあるような改良型問題解決学習、いわゆる問題発見・解決学習のロジックですとか、それから、学習には獲得する学力によって四タイプに分かれていて、目標・ルーブリック・学習過程の提示は鍛える授業ではいいけど、自ら学ぶ授業、いわゆる探究型の授業では、それらを提示したらやらせになっちゃうから駄目なんだとか、それから、それぞれ比率もありますし、そして、問題発見・解決学習で使う思考、今示している問題発見の四つの方法を含む三つの図表が子供も先生も理解できれば、主体的・対話的で深い学び、個別最適な学びと協働的な学びの一体的充実が図られるということが既に実証研究で証明されていますので、こんなことも教科書に盛り込むといいのではないか。そして、ここにある令和の日本型学校教育を教科書が支える、基礎学力を支えるということを考えていただければと思います。
 そのために、紙の教科書の改良をして、デジタル教科書へ反映する。問題発見を組み込む。一方的な課題「~しよう」では、ただやるだけですので、学びの深まりは期待できませんが、疑問形、「どうしたらこうなんだろうか」みたいにすれば、それで答えが本当にいいのかというチェックが働いて、深い学びになります。
 また、追究方法や答えが見えちゃうという問題がありますが、それはページ割を工夫すればできるのではないか。例えば、問題発見場面、今は見開きで構成されているのを、ページめくりが必要な形にして、答えが見えなくする。いわゆるクイズの答えが次のページに出ていますみたいな、それと同じ感じですね。そして、仮説設定もそこでやって、追究資料は次の見開きになると。そこは複線化に対応しているし、そして、さらに学び方の資料もある。そして、最終ページには紙メディアならではの視空間的記銘メモ、教科書のここにこんなふうに出ていたみたいに覚えることが可能な視空間的記銘メモというのの作用ですけれども、それを生かした構造的理解支援資料を位置付けるとか、そういう改良はできるかと思います。
 そして、最後に、デジタルオリエンティッドなデジタル教科書開発ということですけれども、まずは試行的開発を通して知見を蓄積し、評価・改良を続けていくことが大事だと考えています。短期的には、副読本作成支援アプリ等として商品化すれば、会社のほうでも、教科書会社で自走できるでしょうし、研究開発の継続もできるかと思います。
 そして、中長期的に、既にこちらのワーキングで御検討いただいているような制度改定が必要な内容、それを精緻化していく。そして、必要な標準仕様とかガイドラインの策定も行っていくことができるんではないかと考えています。
 ぜひよりよいデジタル教科書の在り方について御検討いただければ幸いです。
 私のほうからは以上でお話を終わります。御清聴ありがとうございました。
【堀田主査】  ありがとうございました。ただいま藤村先生からのプレゼン動画をみんなで見たということになります。
 続きまして、2人目です。中村委員より御説明をお願いいたします。オンラインです。よろしくお願いします。
【中村委員】  中村でございます。本日、オンラインで参加させていただいています。どうぞよろしくお願いいたします。では、資料のほうを共有いたします。
 では、私からは、子供たちがよりよりよく学べるデジタル教科書環境の一提案としまして、学校の現場の視点から、子供にも先生にもうれしい環境ということで発表させていただきます。
 本日の資料の構成です。このような形になっております。時間も短いですので、早速始めさせていただきます。
 まず、前回の会議のときにもお伝えしましたように、つくば市のデジタル教科書のまず最初の考え方というのは、デイジー教科書にあるということをお伝えしたんですが、このデイジー教科書の視点からいうと、デジタル教科書の機能は、合理的配慮の観点で非常に有用なのではないかというふうにつくば市は考えております。つまり、デジタルの機能は、全ての学習者、多様な学習者の学習機会の保障になっているというふうに思っております。
 また、この学習機会の保障という部分で言いますと、多様な学び方をする子供たちが今たくさんいるんですけれども、その子供たちにとって、その場面に応じたり、単元、教材に応じて、紙やデジタルを選びながら個別最適に学ぶことができるという今現状があります。
 特につくば市が東北大学、それからLentranceさんと実証研究を行わせていただいているんですけれども、特に英語科においては、デジタルの機能の活用場面が非常に多く見られまして、場面によっては、1時間、デジタル教科書だけで学びが進むこともあったりします。
 そのことは、前回も文部科学省様のほうの資料にも使っていただきました、この実証研究の結果にも表れております。まず、英語の授業の中における音読練習または発音練習といった場面においては、デジタル教科書の活用が非常に多いことが、このグラフ、左側半分のほうから分かります。デジタル教科書を導入しましたら、もともと紙でやっていた授業が、デジタル教科書の導入により、子供たちがたくさんデジタル教科書を使うことが増えてきたというふうに、こちらのグラフで示されています。逆に、教科書を見るとか、書く、写すという場面においては、紙の教科書の活用があるということがここで見て取れます。
 また、先ほど藤村委員の御説明にもありましたように、子供たちは習得した知識を今度は自分のデジタルノートで探究していくというフェーズに入ったときには、デジタルノートとの連携が必須になっています。つまり、教科書の単線型の解決方法だけでなく、子供たちが様々なアプリやブラウザで探してきた情報を、デジタルノートにしっかりと自分たちで再構成、再調整しながら、自分の思考に沿って、分かりやすい、いかに理解しやすいデジタルノートを構成していくということが今行われています。
 さらに、家庭学習の場面においては、このようにデジタル教科書の機能、またはReading Progressのようなものを使うと、先生も、家でやったものを学校で受け止めたり、また、それが履歴として残るため、データ利活用の観点からもメリットが大きい。これが今のつくば市の状況です。
 そこで、先生方と、じゃあ、子供にとってよりよい環境ってどういう環境だろうねというふうに話し合ってみました。そうすると、先生方は、紙のいいところとデジタルのいいところのいいとこ取りがいいんじゃないんでしょうかという声が多く聞かれました。今、一般的に、紙のいいところ、デジタルのいいところというのは、このように整理されているところです。この二つを合わせて、両方を補完し合いながら使うのを、前回、ハイブリッドという言葉で表現させていただきました。
 ただ、このハイブリッドの考え方で言う、紙のいいところ、デジタルのいいところは、少しお互いの役割が重複していたり、また、デジタルの機能も少し不足があったりという部分があります。例えば、ページをめくるというものに関しては、ページ移動ですね、現在は紙のほうが早いというのが先生たちの考え方です。それから、先ほどもありましたように、情報を一覧化して見るということは紙の得意分野なんだけれども、逆に、一覧化することで解法やヒントがすぐに見えてしまうということがデメリットになっています。じゃ、それは例えば、付箋機能とかでマスキングしてしまったらどうなんだろうという声も上がりました。
 というように、もう少しずつ紙は紙のいいところ、デジタルはデジタルのいいところの最もいいとこ取り、デジタルは強化しながら最もいいとこ取りにしていく必要はあると考えます。
 それでは、ハイブリッドとはどういったものかということで、私が考えたのは、いろいろなハイブリッドがあるかと思うんですが、このCパターンです。紙とデジタルがお互いのいいところを補完し合いながら連携することで、一体化して使う教科書のイメージを考えてみました。
 さて、まず、考えるといっても、実は皆さんと考えるときに、教科ごとに考えないとイメージがつかないねという話が出ました。そこで、まず、国語の場合ということで、先生方に紙で使いたい部分はどこですかと聞きますと、長文読解の部分、ここについてはしっかり紙で見せたいということでした。じゃ、その後、デジタルではどう使うの? と聞きますと、例えば、長文読解の文字認識をさせて、その文字認識を生成AIで要約したりとかということはできないですか――あ、いいですね。それから、デジタルノートに転記することで、それを読み上げてくれれば、読み上げ機能があればいいですよね――あ、いいですね。さらには、それを補完するような動画だったり、イラストだったりがあったらどうでしょうというように、先生たちから紙のいいところ、デジタルのいいところ、国語でいう紙とデジタルのいいところを出してもらいました。
 これを少し具体のイメージで伝えます。これはあくまでも先生方とつくり上げたイメージと思って聞いてください。例えば、「スイミー」という単元があるんですけれども、物語があるんですけれども、「スイミー」、まず、出会いは、本当にただただ紙の教科書で作品に出会い、じっくり考えます。特に「スイミー」は、デジタル化できないというもの、著作者の思いというものもありますので、本文が紙で書かれていることがとても大切という作品です。ですので、長文である「スイミー」をしっかり紙として子供たちが作品に出会います。そこで初めてスイミーって何だろう。海って何だろう。それぞれの子供の持っている知見やこれまでの経験ということで、思いをめぐらせます。
 ただ、なかなか子供たち、低学年ですと、その情景が思い浮かばないということで、補完的に映像が、例えば、動画ボタンで読み込むと、映像が反映されてきて見られたり、また音声ボタンを押せば、音声が聞き取れたりということで、文章だけだと理解しにくいお子さんが補完的に音声や動画を見ることができます。
 そして、本文は先に読むけれども、その後、見開きじゃない、めくったページの後ろに、本時はどんなことがポイントなのか。それに対する問いがあったり、学び方のヒントみたいなページが紙にあるとします。そして、そのページには、デジタルノートと連携するような何かマークをつけておきまして、それを読み取ると、デジタルノートが開いてきます。デジタルノートが開いてきましたら、ここに、例えば、文章を文字認証で読み込んだものを貼りつけたり、その貼りつけた文章に対して子供たちがアンダーラインを引いたりとか、それから、言葉を動かしたりとかというような自分の学びが始まります。
 さらに、このデジタルノート、つまり、デジタル教科書のほうにはOSとつながる機能を持たせておき、OSの持っている共有機能だったり共同機能を使って、さらに学びを広げていきます。学んだものもデジタルノートに反映したり、また、ブラウザやアプリで調べたものは、リンク作成ボタンによって、そんなことを調べたよというふうに貼りつけられるといいねということが出てきました。
 また、さらに拡張機能としてARのようなものがあったら面白いだろうねということも出てきました。これらは、デジタルノートに保存できるようになってほしいというのが一つの願いです。
 このように、実は国語だけではなく、英語のほうも考えてみました。英語についても同様に、文章があって、文章に対してQRコードや動画ボタンで補完するようなデジタルのツールが出てきます。そして、紙のほうには、学びの方向性を位置付けるような資料だったりがあって、さらにそこからはデジタルの辞書機能でというような世界観を先生方が考えています。
 こちらがそのイメージを少し膨らませたものになるんですけれども、最終的にはデジタルノートでリフローして、これが保存できるというところが、子供たちの学びを振り返るときに必要じゃないかというふうに考えています。
 そのほかにも、実は、算数・数学や理科、社会なども考えているんですが、だんだんちょっと時間がなくなってしまいましたので、こちらはどうぞ皆さんのほうで少し御覧いただければと思います。
 ただ、一つ私たちが考えたのは、紙のほうはしっかりと紙面でじっくり考える場面、デジタルのほうは考えることを補完するツールというようなイメージの意見が多く出てきました。最後には、データ利活用ができるようにする。これらがハイブリッドに必要なものではないかというふうに考えています。また、デジタルとの親和性の高い教科もあります。このように、教科によって紙とデジタルのよい割合というのは少し違うのではないかというのが、私たちが考えたところです。
 また、ハイブリッドを考える上で、幾つか気になる点が出てきました。デジタル教科書の部分が一体となったハイブリッド教科書、これは、デジタルの今までのツールや教材という部分は認めていただけるのか。また、検定はどうするのか。さらには、デジタルの機能をもっと向上させるためには費用がかかるのではないか。さらに、連携させるアプリの使用許可や使用期限、そして、紙で残らない部分をどのように保存していくのかといったことが、考えていく中で気になる点でした。
 また、未来的な方向性の視点からは、デジタルをベースとして、紙を、例えば政策的にというか、少し支援として補給する、補完する、貸し出すといった方法もあるのではないかという意見も出てきました。
 私たち、学校の先生たちですので、やはり多様な子供たちが多様な方法で学べる環境である、こんなハイブリッドなデジタル教科書を目指していきたいなと思っております。
 私の発表は以上です。ありがとうございました。
【堀田主査】  中村委員、ありがとうございました。大変具体的な御説明をいただいたかと思います。今後の検定の範囲とか、供給の方法とか、いろいろなことを考えなければならないということが予感されるといいましょうか、そういう御提案をいただいたかと思います。ありがとうございました。
 それでは、3人目、近藤先生、よろしくお願いいたします。
【近藤氏】  近藤です。それでは、私のほうから、学習者用のデジタル教科書とアクセシビリティの保障について、お話を15分ほどでさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
 本日私がお話しすることの、3点の話題についてお話しさせていただくのと、それと、簡単な結論を先に申し上げておきたいと思います。
 まず、1点目なんですけれども、1点目は、読みに困難のある当事者、ディスレクシア、学習障害の中でもディスレクシアのある当事者を想像していただければと思いますが、その本人が現状の各社の学習者用デジタル教科書を使用した際のよい点と問題点について、私のほうで最初にお話しさせていただきます。
 結論から申しますと、今そろっている機能、この機能の豊富さは大変すばらしい状況にあると言えます。しかしながら、実際にアクセシビリティ・チェックを行ったところ、現状では、読みに困難のある当事者が単独で学習者用のデジタル教科書を使用することは難しい状態にあるというふうに言い切ってよい状況が現在ございます。これは後ほど御説明いたします。
 次に、二つ目です。各国の教科書・教材等に関するアクセシビリティ保障の制度と最近の動きについてお話をさせていただきます。これも結論を先に申し上げますと、各国でアクセシビリティ保障のルール整備が進んでいるんですけれども、しかもかなり厳しいルール整備が進んでいるところです。一方で、日本では、このアクセシビリティ保障ということに関しては、根拠法が非常に貧弱な状態にありまして、極論かもしれませんが、アクセシビリティ保障されている状況が非常に貧弱というふうに言っていいかと思います。実践も、そのためにとても乏しい状態にあると。
 一方で、他国、特にアメリカ、イギリス、欧州を中心にしてなんですけれども、非常に強力な、罰則を伴うアクセシビリティ保障の法整備が進んでおりますので、この辺りももうそろそろ日本もアクセシビリティ保障を当たり前のものにしていく、特に教育場面においてはそれを前提条件にしていくという必要があるのではないかというお話をさせていただきます。
 それから、3番目、日本に今後必要となることについて、あらゆる教材のアクセシビリティ保障を私は期待しているところなんですけれども、特に学習者用デジタル教科書及び教科書と言える部分以外の教材のアクセシビリティ保障、こちらについてはやはり出版社の方の御協力が不可欠な状態にあります。
 ただ、やはり特に教育においてのアクセシビリティ保障は、かなり様々な工夫が必要ということもあって、ここはしっかりとした財源の措置であったりとか、もしくは、その他の方法で、先ほどのような罰則込みのアクセシビリティ保障みたいなものが各国では言われていますが、日本の状況はこれまでそういったことをやってきていないので、かなりハレーションになるような状況になると思います。
 そういった両方を組み合わせて、何かしら実現に踏み切るような取組を行わない限りは、今の本質的な状況が変わっていくということはないかなというお話をさせていただきます。
 1点目です。1点目について、実際にこちら、私たち東大先端研のほうのアクセシブルな教材の専門としてやっている、私を含めて専門家数名と、それとあと、限局性学習症、学習障害の中でも読字障害という障害のある当事者の大学生2名の協力を得まして、各社の学習者用デジタル教科書のアクセシビリティ・チェックを行ってみました。
 その結果、どういった結果が出てきたかということを御紹介させていただきます。実際、現在6種類の学習者用デジタル教科書、このビューアの部分と、コンテンツももちろん使わせていただいたんですけれども、それをWindows11とMicrosoft Edgeのほうで確認をしていくという作業を行いました。
 こちらの教科書の購入については、教科書研究センターの皆様、それから、教科書供給会社、発行者の皆様から御協力いただいたことをお礼を申し上げます。
 それでは、内容についてお話をしていきますが、こちら、教科書のコンテンツについては、著作権の関係からオンラインでお示しすることができませんので、お手元の机上配付資料がございます。机上のみ配付資料と書かれていて、発表終了後回収しますと書かれている資料がございます。こちらの5枚目からが、具体的なスクリーンショットも含めた教材の内容となっておりますので、こちら、ぱらぱらと御覧になっていただきながら、私の話をお聞きになっていただけたらありがたいです。
 では、実際にディスレクシア、学習障害、読字障害のある当事者が、各社の学習者用デジタル教科書を使ったところ、どのような課題があるかというお話をいたします。
 まず、よい点についてなんですけれども、学習者用デジタル教科書には、現在、様々なアクセシビリティ機能が備わっています。本文の音声読み上げ、それから、読み上げ箇所のハイライト、それから、本文のリフロー表示・縦書き横書きの変更、文字の拡大縮小、それから、背景や文字色の変更、書体の変更、ルビ、わかち書きという様々な機能を、これは本当に大きな出版社の皆様の御尽力で、これ、相当大変だと思うんですけれども、こういった取組をなさっていただいていることは大変すばらしい点かと思います。
 一方で、大変残念なことなんですけれども、このアクセシビリティ機能が、個々の機能として外見上は備わっているんですが、こちらは読みに困難のある学習者が単独でそれを使っていくことは非常に厳しい、難しい状態にあると言い切ってよいかなと思います。つまり、横に誰か人がついていないと、利用が難しい仕様になってしまっているということが問題点かと思います。
 こちら、どうしてこのような問題が起こるのかというのは、これ、結論を申し上げますと、令和5年の3月に公開されたデジタル教科書の標準仕様書というものがあるんですけれども、こちらの内容が、標準的なアクセシビリティ規格・ガイドラインを踏襲することができていないものになっていることが、ユーザー一人が単独で使うことができない状況を導いている原因かと思います。
スライドにWCAGと書いてありますけれども、これは国際的なウェブアクセシビリティの指針になっています。さらにJIS X8341というものも載せてありますが、これは国内のウェブアクセシビリティの標準仕様となっております。こちらのJIS X8341については、WCAG、通称「ウィーキャグ」というふうに呼ばれているので、この後「ウィーキャグ」と申しますが、このWCAGの2.0とほぼ同じ仕様となっている。つまり、日本国内外共に標準的な仕様が既にあるということです。
 かつ、各社の学習者用デジタル教科書は、ほぼ今ウェブベースで進んでおりますので、こちらのウェブアクセシビリティのガイドラインをしっかりと踏襲していけば、利用可能なものというのが生まれてくるわけなんですが、現在のこの標準仕様書においては、国内の標準的なアクセシビリティ規格・ガイドラインを残念ながら踏襲することができていないものになっている。これが各社様が本当に大きな御努力をされているにもかかわらず、ユーザー一人が単独で使うことができない状況を導いている原因かと思います。
 様々な、こちら、実際に各社のものをかなり細かいところまでディスレクシアのある当事者に使っていただいて、それらのヒアリング等からまとめた結果を、この後につらつらと示しております。こちら、一つ一つを詳しく御紹介することはかなり難しいんですけれども、幾つか御紹介していきたいと思います。
 まず、一つ目は、音声読み上げ等の機能は備わっているんですが、音声読み上げ機能等を有効にするための設定画面、こちらを音声読み上げができないんですね。つまり、単独では設定ができないということです。そうすると、スクリーンリーダーと呼ばれるものがありまして、スクリーンリーダーというのは何かというと、今ちょっとうまくできるか分からないんですが、例えば、私、ここを読んでみたいなと思ったところを今選択をいたしました。それをOSのスクリーンリーダーの機能で今読み上げてみようと思います。
(音声読み上げ)
こういうふうに、今、選択したところを読み上げました。
 こういう機能が備わっているんですが、これがスクリーンリーダーとなると、さらにもっと充実した読み上げの機能がある、いわゆるアシスティブテクノロジーと言われる、支援技術と呼ばれる機能で、これは非常に昔から使われている一般的な機能になっています。特に80年代以降からは、このウェブアクセシビリティ、音声読み上げ等のアシスティブテクノロジーの機能が備わっていないコンピューターは、特にアメリカにおいては、政府の予算で購入することができないという調達規制の法律などもございまして、日本においても、日本にはそういう機能、アクセシビリティを調達規制にしていくみたいな厳しい法律はないんですけれども、Windowsにおいても、iPadにおいても、それからChromeOS等においても、全てこういったアクセシビリティ機能が備わっています。スクリーンリーダーのアクセシビリティ機能も標準機能として備わっています。これはどうしてかというと、全て米国からやってきたOSですので、米国のものは、この調達規制、リハビリテーション法508条という法律なんですが、その法律に基づいていないと、連邦政府のお金を使ってコンピューターが買えないんですね。そうすると、学校には導入することができないということになりますので、全てのコンピューターはこうした機能が備わっています。
 こうした機能を使って読み上げをしようと思っても、今現在の学習者用デジタル教科書は、読み上げできる部分もあるんですが、多くのものが読み上げに対応していないため、設定画面の読み上げができないんですね。そうすると、やはり単独では使用することができないという結果になってしまう。ここはつまり、先ほどのWCAGと呼ばれる基準に適合していないために、こういった結果が起こってくるということになります。
 ここに挙げているものは、本当に様々な、それからあと、ビューアごとにメニューやアイコンが統一されていないとか、ビューアごとに全ての使い方を、相当違いますので、それらをディスレクシアの当事者側が、模様などから覚えて、文字は読めませんので、それで使い方を習熟していかないと、なかなか音声読み上げの機能を使うことができないという状況があります。
 さらに、これも一つなんですが、次のページなんですが、目次が読み上げに対応していない。例えば、読むことが難しい当事者が教科書をどうやって使うか。学校の先生が、じゃ、何ページを開いて読み上げましょう、教科書を開いて内容を読みましょうと言ったときには、その何ページを見つけていくのってなかなか大変ですので、当事者はどうやるかというと、目次からまずアクセスをしていったり、それからあと、検索機能を使って、何ページを開いてねと言われたら、その検索機能を呼び出して何ページかを開いて、そこにジャンプをして読んでいくんですね。そうすると、目次を読み上げる機能がないといけない。それから、二つ目は、検索機能の部分をしっかり読み上げることができて、そのページを指定して、そこに飛んでいく必要があるということですね。
 これら両方とも、今の現状だと、やはりそれが難しい状況にあるということです。なので、横についた人が、このページを開くねって言って誰かが開いてくれたりとか、そういったことをしないと、なかなか読みにくいという状況があるということです。
 それから、読み上げる箇所と読み上げない箇所の区別がまだ現在非常に難しい状況にありまして、基本仕様では、本文については読み上げることを推奨することになっているんですけれども、本文の中でも画像になっている表の部分は読まないとか、いろいろな、ユーザーとして見ていて、どこを読んでどこを読まないのかということがかなり判別が難しい状態にあったりもします。
 この辺りのこと、各社の皆様、いろいろな御努力をされていることは本当に存じ上げてるんですけど、この辺りをどうしていくかというのは、やはりしっかり考えていく必要があることかと思います。
 こちら、この部分は飛ばそうかなと思うんですけど、先ほどの中村委員からのプレゼンの中にありましたけれども、いわゆるノートを取った部分、書き込みをした部分、しおりを入れた部分、そういった部分のコピーペーストであったり読み上げというのはどうしていくかみたいなことも問題として残っているということですね。
 ちょっと時間の関係でこれぐらいで飛ばしたいと思いますが、最後の提言のところは非常に重要なものだと思うので、これ、少し説明させていただきたいんですが、現在のところは、やっぱり読み上げの速度がそもそも遅かったり、例えば、読み上げをちょっとやってみたいと思うんですけれども、これですね。
(音声読み上げ)
 これ、何て読んでいるか全然分からないと思うんですけど、ディスレクシアの当事者って、今ぐらいの速度で読むのは比較的普通なんですね。というのは、やはり飛ばし読みができませんし、斜め読みもできませんので、読むのが難しい方は、シーケンシャルに上から読んでいくしかないんですね。そうすると、単純に読み上げの速度を上げるほかないということになります。そうすると、現状の学習者用デジタル教科書は、読み上げの速度の上限がちょっと低めなんですよね。遅いんです。そうすると、それをどれだけ速く読ませていくかという機能なども考えていく必要があるということです。
 さらに、小学生までは、じゃ、ここ読み上げるよといって、横についた人が読み上げてくれたりして、それをぼーっと聞いている、じっくり聞いているということで学習になると思うんですが、中高生ぐらいになってくると、読んでいる箇所をハイライトさせながら読んでいくというニーズがあるんですね。それはなぜかというと、出てきた文字の中で、何か読み上げた言葉で、あれ、この言葉、自分は初めて聞いたぞと思ったら、例えば、こういうふうに自分でここを選択して、選択した部分を、
(音声読み上げ)
というふうに読み上げさせるんですね。今、ここだ、ここだった、この単語だった。じゃ、この単語をコピーして辞書ソフトにかけて、どういう意味だったかを見ていこうという学習をしていくわけですよね。
 そうすると、やっぱり中学生以降になると、読みたい箇所を適切に指定して読み上げるとか、あとは、ほかにもマウスを文字の上にオンにすると読み上げるという機能などもありますので、そういったものも使いながらさっと聞くという。必要なときに必要な箇所を聞いて読んでいくという必要が出てくるわけなんですけれども、こういったところも、今の現状だと、やっぱりそういった使い方はかなり難しい状況になっているので、こういったことを本当にディスレクシアのある当事者の学びを支えていく上では、なかなかスペックが足りないという状況になっていると思います。
 この点を、やはりWCAGの仕様等にのっとっていくことによって、解決可能なものばかりですので、この辺りのことはぜひ今後お考えいただけるとありがたいと思います。
 ですので、読み上げ等の機能はかなり豊富に存在しているんですけれども、現状、学習活動の達成に向けた流暢な利活用を実現していくという、そこにはビューア機能のユーザーインターフェースにおけるアクセシビリティが重要になってくるんですが、これは本当に残念、本当にもったいないことながら、現状ではやはり足りていない部分がある。これはやはりウェブアクセシビリティの保障というのはかなり以前から行われてきているので、それらの知見を使って、できるだけそれが反映されているような形をつくっていく必要があると思います。
 参考までに、私が座長となって、昨年、国立国会図書館での電子図書館のアクセシビリティガイドラインをつくりました。こちらは、電子図書館って、要はLMSとかCMSとか、それからあとは、学習者用デジタル教科書に近いものと言っていいと思うんですね。本棚を表示して、コンテンツを表示して読み上げていくということですので。さらにログイン画面からのアクセシビリティを保障していく。さらにその中でのアクセシビリティのどこまでをWCAGに沿わせる形でやっていくのか。さらに、図書館の人が読んで分かるだけではなく、それを実装する技術者がどのレベルで技術的実現をしていけばいいのかということも深く考えたガイドラインを公開させていただいています。こういったものを、学校教育場面、教科書においてもどこまでやっていくのかというガイドラインをつくっていく必要が今後あるのではないかと思っています。
 それから、ちょっと時間が迫ってまいりましたので、簡単に説明させていただきますが、各国の教科書・教材に関するアクセシビリティ保障の制度とこれまでの動きについて、ここに説明をさせていただいております。こちらは、時間の関係で本当に一言のみで済ませていただくんですけれども。結論から申しますと、各国においては、障害者差別禁止アプローチ、これは罰則ありですけれども、それらに基づいてアクセシビリティ保障の取組が近年どんどん進んできております。こちら、アクセシビリティ保障をするためには、学校や出版社の責任を法に基づいて明確に規定をして、標準規格やガイドラインにのっとって、ビューアやコンテンツ等の標準化を実現して、それから、学ぶ権利を保障するという観点からは、教科書のみということではなくて、その他副教材、ワークシートであったり、小テスト、単元テストであったり、その他副教材、書籍、副読本等、そういった様々な物へのアクセス確保を法に基づいて行っていくということが各国の基本になっております。こういった部分をどこまでやっていくのか、そろそろこの辺りのことが検討できる土壌が日本でも育ってきているのではないかと思います。
 参考資料5の中に諸外国のデータをまとめていただいておりましたが、やはり米国のものはかなり、本当に先進的な取組を以前からなさっておられるので本当にすごいなといつも思っているんですが、既に全米50州、3万8,000の学校と学区がBookshareというサービスを使い、音声読み上げができるような教材を入手して使っているという現状がある。しかも、それが教科書だけではなく、ワークブックや副教材、小テストなども含まれるような形でアクセシビリティ保障ができているという状態は、本当にうらやましい状況だなと思っています。日本もどこまでそこに迫れるかというのを、ぜひ今後御検討いただけたらありがたいなと思います。
 さらに、米国においては、とは言いつつも、デジタル教材は、WCAG2.0のAAに準拠していれば、NIMACというデータセンターにデータを提出する必要がないという非常に合理的な判断もなされておりまして、やはりこの点でも、日本の学習者用デジタル教科書でもWCAG対応を考えていく必要というのはそろそろあるのではないかと考えているところです。
 あとは参考資料ですので、ぜひ御覧になっていただければと思います。
 最後にまとめますけれども、学習者用デジタル教科書においての期待です。理想は、できるだけ広範囲に児童生徒の教材、教科書・教材両方、このアクセスを保障することです。ここは学習者用デジタル教科書の議論をする場というのはよく分かっております。けれども、ディスレクシアのある、学習障害等のある児童生徒本人にとってみれば、やはり教科書と教材で縦割られているとか、あと、教育段階で縦割られているとか、そういったことは、関係がありません。子供一人は縦割りも横割りもできません。児童生徒は、ただそこで生きて学んでいるという一人の人間ですので、やはりそこを包括的に保障していく、アクセシビリティを保障していくというのはぜひお考えいただきたいと思います。
 この点において、仕様に沿うということだけではなく、やはり設計・開発の段階から、限局性学習症、ディスレクシア等のある当事者と、それからアクセシビリティの専門家等を交えながら、最初、開発の段階からつくっていくと、結果として誰もが損をしないようなものができていく。やり直しが必要ない、よいものができていくと思いますので、ぜひお考えいただければと思います。
 その次のところですけど、ビューアについても、コンテンツについても、ぜひ学校教育場面での標準化とガイドラインをしていく必要があると考えています。例えば、先ほど例に挙げました国立国会図書館のガイドラインです。あちらでは、ルビやわかち書き、それから、あとはハイライト、それらのことは、現在では技術的にもなかなか難しいということで、あと、当事者等の調査を行った結果も、不可欠という回答が得られなかったということで、そこは必須の仕様から落としているんですね。
 これが教育場面においては、先ほどの例のように、単語ベースのハイライトがあることによって、先生が言われた新出単語ってどこだろうって自分で調べて、それを辞書で調べるという学習行動が出てくるわけですよね。そうなると、やはり図書館のガイドラインでは落とされたけれども、学習場面においては単語単位のハイライトは必要なんじゃないだろうかといったような、どこまでを学校教育上必要としていくのかという標準化とガイドラインがあれば、本当にありがたいなと思っています。
 最後に、副教材や単元テスト、入試等のアクセスです。副教材や単元テスト、参考書、試験や入試のアクセシビリティは、日本では手つかずの状態であると言っていいと思います。現在、入試の場面においても、タブレットやコンピューターを使うといったような入試の配慮は、当然ですが行われております。それから、共通テストにおいても、キーボードを使用したりとか、今まだ様々な制約で共通テストでは音声読み上げ、コンピューターではできていなくて、人間による代読という形になっているんですが、そうした配慮も受けられる状況になっています。
 そうすると、その状況を想定した上で、学校教育段階でもそうした方法が使えるようにする必要があります。あと、やはり中高になってくると、ワークブック中心の学習が進んでいきますので、教科書だけ読み上げられるがワークブック等は全く読めないということは、かなり学習空白を生じるような不利益のある状態だと思いますので、こちらについてもぜひお考えいただければと思います。
 特別支援教育と学校図書館とデジタルな教材との包括的な協力関係によって、副教材についても情報を保障していくといったようなことは本当に必要なことだと思っていますので、ぜひこちらのことも、今回の議論とは少しずれますが、お考えいただければありがたいなと思います。その他のことについては、参考資料に添えておりますので、御覧になっていただければ幸いです。
 私からの話題提供は以上とさせていただきます。ありがとうございました。
【堀田主査】  近藤先生ありがとうございました。大変詳しく、はっとさせられるような御指摘をたくさんしていただいたと思います。ありがとうございました。
 それでは、4人目に参ります。奈須委員よりお願いいたします。
【奈須委員】  よろしくお願いいたします。これからの学びとデジタル教科書ということで、幾つかお話を申し上げようと思います。
 まず、デジタル教科書だけじゃなくて、デジタル学習基盤が何をもたらすか、幾つかあると思うんですけど、まず、子供自身がその瞬間に必要とする経験や知識に自らアクセスして、それを引き寄せて学ぶということを可能にしたというのが大きいかと思います。従来、小学校で教える知識も、実は偏在してアクセスは容易ではなかった。だから、とても子供が自らの手で手に入れるということができなかった。だから、教師が準備して、教室に持ち込んできたんだと思うんですね。教科書もまたそれに適合してきた。
 その結果、教師から教わらないと学べないという時代がずっと長く続いたし、それ自体はいけないことではないんですが、そこから子供は教えないと学ぼうとしない、学べないという神話が生まれているんだと思います。デジタル学習基盤は、この神話を乗り越えるというまず可能性があるんだろうと思うんですね。
 二つ目、多様性の拡大ということがあるかと思います。近年、子供の多様性は量的・質的に拡大する傾向にあります。その多様性をめぐる状況が、既に従来型の学校教育では対応が困難になっているということがあるんじゃないかと。子供がうまく学べないのは、子供側の問題ではなくて、カリキュラムや学習環境の側に問題があり、改善の余地があると考えるというのが世界のトレンドだろうと思います。
 伝統的な一斉指導というのは、同じ目標、同じ内容、同じ方法、同じペースで展開されます。それは、平均から離れた特性を持つ子供がうまく学べない可能性をはなから含んでいて、成立していると。多様性の拡大により、この原理的な欠陥がすっかり露呈してしまったということかと思います。
 文科省の2022年の調査によりますと、小学校4年生で授業の内容が「難し過ぎる」という設問に、「そう思う」という子供は28.2%。逆に、「簡単過ぎる」という設問に「そう思う」という子供が27.3%。もし差引きすると、適合している子供は44.5%、半分いないということなんだろうと思うんですね。
 かつてはどうだったか分かりませんが、もう少しカバーレンジは広かったんだろうと。だから、授業が劣化したとか、学校が駄目になったんじゃなくて、子供の多様性がこれまでのやり方に応じられなくなっているということだろうと思います。
 多様性に応じるには、当然、教材、学習方法について豊かな選択肢を柔軟に提供することが大事です。個別最適な学びとはこういうことだと思うんですが、これは以前からも実はやられてはきているんですが、そこに膨大なイニシャルコストがかかっていたということがあります。そこがやっぱりネックだった。デジタル学習基盤は、このコストの軽減にとても大きく寄与することが期待されています。
 今のようなことを踏まえて、やはりデジタルを使うということは、単にアナログを置き換えるということではなくて、デジタルの特質に即したいわゆるパラダイムシフトが必要だろうと。もちろんこれはいろいろな考え方がありますけど、古典的なものとしてそこに示しましたが、30年以上前、Robert Bransonが提唱した「情報技術パラダイム」というものがあります。そこに三つありますが、一番左の口頭継承パラダイム、一方的に教師が教え込む。こんな授業はもう日本ではしていません。
 今の僕らの一斉指導というのは、この真ん中の枠組みだと思うんですね。生徒と生徒、生徒と教師の間に豊かな相互作用があると。いい授業だと思うんですけれども、ところが、上半分は何も変わっていない。生徒たちが学びの対象とする経験や知識にダイレクトにアクセスすることは基本的に許されておらず、教師がゲートキーパーになっているんですね。
 これを変えるべきだというのがBransonの当時の主張ですけれども、真ん中にある「知識データベース・エキスパートシステム」というのは、今日のGIGA端末に相当するわけですが、こういう環境があれば、子供たちはその瞬間に必要とする情報を自分のタイミングと判断で取りに行くことができる。これが個別的で自立的な学びということだと思うんですけど、そういう自立した学び手が子供同士で横につながる。教師もその輪の中に入っていくと。先ほど藤村先生のお話にあったような、探究的な問題解決的な学びというようなことを想定している枠組みですけど、そうなると、知識や経験へのダイレクトアクセスを可能にするような環境が必要だと。それにはデジタル学習基盤が不可欠だという話だと思うんですね。
 もう一つ、このことに関して概念的に重要なのが、有能な学び手としての子供という子供観だろうと思います。今の枠組みの「知識データベース・エキスパートシステム」というのをもっと一般的な学習環境全般と考えれば、これ、実は幼児教育が主要な方法としてきた、「環境を通して行う教育」と同一のモデルになるんですね。最新のICTテクノロジーを使った情報技術パラダイムと、非常に古典的な幼児教育の枠組みが、実は原理としては同じだと。この気づきはとても重要じゃないかと思っています。また、そう考えることで、デジタル学習基盤をめぐる議論を非常にユニバーサルなものにすることができるのではないかと思うんですね。
 小学校以降の教育では、教師が教えるという方法を使ってきました。それに対して幼児教育では、環境を整えるということを主要な方法にしてきました。幼児教育では、子供は生まれながらにして有能な学び手だという認識を持ち、だから、適切な環境と出会いさえすれば、子供は自ら学びを展開できると考えてきたわけですが、小学校以降は、先の神話があったので、子供は教えないと学べない、学ぼうとしないというふうに思ってきた。これが幼小の乖離だと思うんですね。
 先ほど申し上げた神話の一端は、実は知識へのアクセスの困難さにあると考えれば、デジタル学習基盤の成立に伴って、小学校でも子供を有能な学び手とみなして、子供が自らの意思で環境と関わり、自立的に学びを進められるような学習環境を整える。これが教育方法だということですね。そういうふうなある種のパラダイムシフトが可能になるんじゃないかと思うんですね。
 そこでは教師が教えるという在り方、これはもちろん今後も続けていくわけですが、それと並び立つもう一つの教育方法として、「環境を通して行う教育」ということを置きたい。そうなると、当然、主たる教材として、教育方法の在り方に大きな影響を持つ教科書も変わらざるを得ない、変わっていただきたいということかと思うんですね。
 三つ目として、では、子供の学びや教室の景色はどう変わるか。まず、アナログとの関係性ということを考えたいんですが、まず、デジタルの導入は、従来アナログで実現してきたものと同等の質の学習環境を大幅に効率化、省力化した形で達成できるということがあるだろうと思うんですね。
 さらに、デジタルの導入は、アナログでは全く不可能な、アナログによる学習基盤とは異次元のものを可能にするだろうと。例えば、僕らは社会科資料集というのを使ってきたわけですが、改めて考えると、とてもいびつな教材と言わざるを得ない。社会科資料集のような教材は、世の中に出たらどこにもない。全くオーセンティックではない教材で、社会科資料集を使いこなす情報活用能力というのは、先々、あまり転移可能性がない。宝探しの学習になってしまうんですね。
 資質・能力を基盤とした学力論からすれば、学校での学びが一生涯にわたって自在に活用ができる、転移が利くという要求があるわけで、すると、オーセンティックである、要するに、文脈が本物であるということが大事なんですね。デジタル学習基盤は、この要求に的確に応えてくれると思いますし、従来の学習基盤の弱さの多くがこの点にあったと思うわけです。
 一方で、デジタル学習基盤の危うさとして、遭難や横滑りが起きるということがあるかと思います。やはり適切なガードレール――と私は申し上げますが――を設定する必要がある。オーセンティックにしつつ、ガードレールを設けるということが大事になってくる。これは特に教科書では大事になってくるかなと思うんですね。
 それから、もう一つ、アナログとの関係で大事なのは、ハンズオンなどと言ってきましたけれども、豊かな身体感覚を伴うアナログでこそ可能となる学習経験ですね。デジタルというのは、感覚モダリティをちょっと限定しやすいわけです。これを少し配慮する必要があると思うんですね。
 その意味でも、アナログを紙・印刷物というふうに限定することなく、これまでも豊かにあった様々な学習環境との望ましいハイブリッドを考えていく必要があるかなと思うんですね。そう考えると、デジタル学習基盤は、部分的な置き換え、プラス、選択肢の拡充と考えられるかなと思います。
 また、デジタルは、圧倒的に新たな地平をもたらすと思うんですね。強みとしてまずあるのは、時間的な制約の解除です。いわゆる同期型のコミュニケーションに対して、非同期型のコミュニケーションを可能にします。
 また、空間的な制約に関して、集合や対面を前提とした従来型のものに比べて、分散や遠隔での学びを可能にしました。
 また、ファイルベースからクラウドベースという原理転換も大事だと思います。これは単なる方法や技術ではなくて、知的生産の在り方に対する原理転換と考えるべきだろうなと思います。
 加えて、そのような豊かな選択肢をデジタルは提供できるわけですけれども、いつもいつも先生の判断でやるんではなくて、子供の判断で選択・決定する機会を設けるということが大事かなと。そう考えると、全ての教材は子供たちにとって利用可能な、アベイラブルリソースと考えるのがいいかなと思うんですね。
 そう考えると、教材という概念自体の大幅な拡張が求められてくるかなと。デジタルによって、子供は無制限の膨大な情報と直接的に向かい合う。先ほどの情報技術パラダイム、あるいは「環境を通して行う教育」ですけれども、そこを出発点として、いろいろなことを、教科書も含めて考えることが大事かなと思うんですね。
 そうなると、いわゆる学習規律が学校では大切にされてきましたが、これも見直さざるを得ないんじゃないかと思います。豊かに整えた学習環境に子供が明確な意図や必然性を持って関わるときに、子供は立ち歩きますし、自発的に仲間と交流するし、教室を出ていくこともあるし、全員が同じ動きなどしないわけですけれども、これを制限する、統制するといったやり方だと、学びが生じなくなると。教室の景色が大きく変わってくるんじゃないかと思います。
 最後に、デジタル学習基盤における教科書、あるいは教材の在り方について、幾つかお話を申し上げたいと思います。
 まず、見てきたように、教師が教える材料としての教材という概念から、子供が学ぶ材料としての学習材なんていう言い方もしてきましたが、そういう意識転換が大事かなと思うんですね。現状では、教科書も含めて、多くの教材が一斉指導で用いることを暗黙の前提にしています。子供による独習はほぼ想定されていません。むしろ授業中に教師が行う指示や説明等をあえて掲載しないことで、子供が教師の声に集中せざるを得なくしているというふうな教材になっているような気がするんですね。
 独習するということを考えたときに欠落しているのは、文脈情報です。教科書に示された問題が解け、説明が理解できたとしても、何でここで今これをやるのか。これがいわゆる文脈情報ですけれども、それが把握できなければ、実は学びというのは深まらない。通常の授業では、これを先生がお話をしてくださっているんですね。それが独習、つまり、教師がいないと使えない教科書になっているということなんですけど、教科書における文脈情報の欠落ぶりは、独習を前提にしている、いわゆる学習参考書と比較をすれば分かる。分厚さが全然違う。情報量は桁違いに違いますよね。あの部分を先生が授業の中でお話をしてくださっているんだと思うんですね。
 教科書は教師がいなければ使えない教材として編集されているんだと思うんですが、つまり、教科書は一斉指導に最適化されていると。逆に言えば、ほかの学びの形態、デジタル学習基盤も含めてですけれども、あまりフィットしていない可能性があるということなんですね。
 デジタル学習基盤の強みを生かすべく、情報技術パラダイム、あるいは「環境を通して行う教育」ということで使おうとすると、多くの情報が欠落しています。だから、既にそういう実践的なアプローチがありますが、その場合は、欠けている情報をカードや掲示で提供するとか、最近は先生が説明動画を撮ってやるということをやって効果を上げていますけれども、とてもそこにコストがかかるということがあります。幾らかでも、教科書それ自体において、何らかの抜本的改善がなされるとありがたいなと思っています。もちろん独習を可能とするだけの文脈情報の全てを教科書紙面に盛ることは不可能だと思いますし、それをする必要はないと思いますが、何らかの配慮ができないかなと思うんですね。つまり、学習材的な使い方も可能なような配慮、むしろデジタル技術があれば、それはできるんじゃないのかなと思うんですね。
 二つ目として、いわゆるDXの思考法ということを考えてみたいんですが、いわゆるDXの思考法では、自前主義から脱して、既にあるものはつくらない。そして、既にあるものを上手にアセンブルして新たな価値を創造するということがよく言われますが、現状のデジタルコンテンツは必ずしもそうなっていない。もっと自在にアセンブルできるパーツで供給してほしいなと思うんですね。NHK for Schoolが典型で、まさにそうなっている。だから、とても使い勝手がいいと思うわけです。
 ただ、多くの民間のものはそうなっていなくて、ブラックボックス化、あるいはパッケージ化していて、丸ごとそのまま使うしかないというふうになっています。いわゆるベンダーロックイン的な在り方になっているんですが、これは教育学的に言えば、学校や教師による介入を拒絶するということになりかねない。逆に言えば、学校や教師が何らかの工夫や努力をせずとも、そのまま使えば一定の質の学習を保障する。これはティーチャープルーフ・カリキュラムと教育学で言いますけど、デジタルコンテンツの多くがティーチャープルーフになっているし、いよいよその傾向が高まっているという気がするんですね。
 これは学校や教師の省力化につながるわけですけれども、一方で、他人任せの教育につながりやすいというリスクがあります。教科書についても同様なことが言えるかなと。従来の教科書は高度に組織化されていて、そのまま使っても十分な効果が上がるようになっています。その意味で、ティーチャープルーフ的な特質を持っていますし、教師用指導書の提供がそれに拍車をかけていると思います。
 もっとも、そのことが実は我が国の授業の質、学力の下支えをして、全国どこの学校でも一定水準の教育が受けられるという、公教育が満たすべき条件の担保に貢献してきたと。これはとても大事なことですが、一方で、従来の教科書というのはよくできていて、教師が自立的・創造的に授業をすることの重要さを教科書会社の皆様は認識して、アレンジしても適切に使えるような配慮というのを本当によくしてくださっていると思うんですね。そのまま使っても一定の効果が得られるということと、様々にアレンジしても使えるということが、日本の紙の教科書では達成されている。この特質がデジタル化によってどうなるか。少なくともティーチャープルーフ性を高めるということは避けたいなと思うわけです。従来の在り方の基本的なところは維持しつつも、むしろ自在にアセンブルできるパーツとしての提供というのができるとありがたいなと思います。
 それから、三つ目として、カリキュラム・オーバーロードが、このところ問題になってきています。教科書についても、ページ数の増大、サイズの大判化、1ページ当たりの文字数の増加ということが顕著だと思います。教材の情報量が多いこと自体はいいことなんですが、日本の教師には、示された全ての内容を網羅的に指導しようという傾向が特に教科書には見られます。情報量の多い教科書を網羅的に扱おうとすると、どうしてもスピード授業になってしまって、あるいは、子供に寄り添って立ち止まることのできない授業になるということになりかねません。
 また、教師にとって教える内容の増大は、授業の質の劣化にもつながりますし、負担感や憂鬱な気分ということにもなりかねない。子供にとっても、こんなにもたくさんのことを学ばなければいけないということがやっぱり負担感になっているということがあると思うんですね。デジタル化は、これを乗り越える可能性があると思います。全ての情報を紙面に表すことなく、つまり、デジタルとして埋め込むことができるわけですから、情報を何段階かに階層化して、適切かつ柔軟に学習を展開できるよう、一部をデジタルで供給する。あるいは、GIGA端末を駆使した子供の情報収集に委ねるといったことが可能になるんだと思うんですね。
 例えばですが、紙面上には学習内容の本質、いわゆる主要な概念や方法、統合的意味理解に関わるものを中心に掲載していただくと。そして、それらを学ぶのに必要なものについては、最低限、あるいは代表的な一例を示して、それ以外はQRコード等を介してデジタルで供給するといったようなこと、あるいは、子供が検索できるようにキーワードを示すといったやり方もあり得るのかなと思います。
 このような工夫により、教科書紙面上の情報が減り、紙面が整理できるとともに、少し小さくするなんていうこともできるのかなと。それによって、やっぱり見た目が少なくなると、負担感も低減するでしょうし、そこに掲載されているものはより本質的なものなので、「見方・考え方」をより一層働かせるような授業にもつながるのかなと思います。
 最後に、いろいろなアドバンテージを少し列挙してみました。一つ目は、今ほど近藤先生からあった、特別支援を要する子供とか多様な困難に対する個別最適な対応を可能とするということです。
 二つ目として、単元や学年、教科を超えたランダム・アクセスの可能性というのがデジタルだと出てくるのかなと思うんですね。既習事項を確認するとか、この先の系統を見渡せるようにするということはアナログではちょっとできないことで、教師の内容研究や教材研究も含めて有効かなと思います。
 それから、三つ目として、デジタル教科書はいろいろな機能をビルトインできます。特に教育方法のビルトインということが、このところ数学なんかでは進んでいると思いますし、いいと思いますが、逆にこのことがティーチャープルーフ性を高めるという可能性があって、なかなか悩ましいところかと思います。
 最後に、技術の常として、よりつくりやすいものへの偏向ということが危惧される。これはデジタル技術一般にとってですが、学力とは何かということをやっぱり踏まえた上で、つくりやすい、つくりにくいということに振り回されないような作成が重要かなと思います。
 すみません。長くなりましたが、以上です。
【堀田主査】  ありがとうございました。大変重たいというか、本質的なところを御指摘いただきまして、ありがとうございます。
 この後、議題2に入ります。時間があと45分を切っておりますが、ヒアリングした内容に対して質問のある方は質問していただき、それを含めて自由討議をしていただくんですけれども、特に今回は、今のデジタル教科書をどうするかということよりも、むしろ「当面の間」以降の制度的な在り方、つまり、未来の制度的な在り方について、より重きを置いた議論をしたいと思います。
 そのために、まずは事務局から配付している参考資料について御説明いただいた上で自由討議に入りたいと思います。では、黄地課長、お願いいたします。
【黄地教科書課長】  自由討議の参考として、今表示しておりますとおり、参考資料をお配りしてございます。参考資料の3のデジタル教科書をめぐる状況についての資料でございますが、こちらは第3回、前回、参考資料として配付させていただきましたものから、新たに今年度文科省で実施したアンケート調査結果の速報値が出ましたので、これに基づきまして、特にデジタル教科書の使用頻度などの情報を中心に更新しております。
 具体的には、14ページ、今画面上表示されているものでございますが、こちらを御覧ください。速報値では、6割以上の先生方が4回に1回程度以上は授業で学習者用デジタル教科書を使用していると回答しておりまして、英語については、33%が毎授業使用していると答えております。
 15ページを御覧ください。次のページです。こちらは、経年で見ましても、使用頻度は年々増加しております。
 16ページ、次のページにございますけれども、こちらのページにもございますように、これまでの傾向と同様に、デジタル教科書の使用歴が長いほど使用頻度が高まっておりまして、やはりデジタル教科書の活用は慣れが重要だということが示唆されるところではないかなと考えております。
 また、22ページ、23ページ、24ページにあります、デジタル教科書の使用頻度と学びとの関連につきましては、引き続き使用頻度が高いほど肯定的な回答割合が高い結果となっております。
 また、別の資料でございます。参考資料4でございますが、こちら、前回配付した意見概要に、第3回目にいただいた意見を赤字で追記したものでございます。
 加えて、続きまして、参考資料5でございますが、こちらは諸外国におけるデジタル教科書・教材の使用状況についてまとめたものでございます。こちらは前回も配付いたしましたが、そこから韓国での新たな動きを加えましたほか、スウェーデンの直近の動きについての追加調査を実施しまして、TIMSSの結果公表もございましたので、こうした情報を加えております。
 具体的には、今画面上の31ページを御覧いただければと思いますが、こちらの赤で書かれてございますように、2023年の12月に教育法が改正されまして、新たに教科書や教材などが定義されたとのことでございます。
 また、32ページにございますように、法改正によって、教材が出版社による刊行物であると定義されたことによりまして、出版社による刊行物ではないインターネット上の情報などのデジタル教材については、教育への使用を認めるには不十分なものとして、間接的に位置付けられております。
 なお、デジタルの影響かどうかは必ずしも明らかになっておりませんが、33ページにございますとおり、先日12月4日に公表されたTIMSSの結果も追記しております。スウェーデンの場合は、2011年頃から、先日公表された直近のTIMSSまで順位を上げている状況であることも共有させていただければと思います。
 以上でございます。
【堀田主査】  ありがとうございました。
 それでは、有識者の御説明、4人の御説明を含めた御質問、御意見をいただきたいと思います。できれば、たくさんの御発言をいただきたいので、一人当たりのお時間にはちょっと御配慮いただければと思うところです。挙手ボタンを押していただいて、私のほうで指名さしあげたいと思います。御質問、御意見、いかがでしょうか。
 残り30分ちょっとですので、ぜひ御意見をお願いしたいと思いますが、じゃ、最初に私から。中村委員の御発表に対して少し確認的に質問したいと思うんですけど、先生の御発表の中に、デジタルノートと書かれていました。これはデジタル教科書にくっついているノート的な機能かなと思うんですけど、いわゆる今までの普段の授業では紙のノートをいろいろ取っているわけですよね。いわゆるノートテーキングとか、情報を整理するような、あのノートとどういうふうに違うのか、同じなのか。これ、一応デジタル教科書のワーキングなので、そういうところまで含めてデジタル教科書というべきかもしれないと思っていらっしゃるのかどうかとか、その辺の意図をもう少し教えていただければと思いました。中村委員、お願いします。
【中村委員】  ありがとうございます。デジタルノートの考え方については、実は迷うところも事実ありました。考えている中で、今、私たち、先生方と話し合ったイメージとしては、デジタル教科書の中に位置付いているノート機能というふうに考えました。
 なぜかといいますと、紙のノートという考え方ではなくて、デジタルノートのノート機能であることによって、その教材、その単元の中で自分が検索したブラウザの資料だったりとか、それから、自分が得てきたそのほかの資料といったものを、ノートのところに全て貼りつけることができるんではないか。それによって、自分の学びの足跡として、自分の思考の整理がされたものをデジタルノートとして保存をしたい。
 なぜそれをOSのノートと違うというふうに捉えたかというと、本来はOSのノートでもいいかなって最初は思ったんですね。ただ、今の子供たちの現状を見ると、OSのノート機能、本市ではOneNoteになるんですけれども、そのOneNoteの、現在、ファイル保存の整理の仕方があまりまだ身についていないんですね、デジタルリテラシーとして。ノートを例えば教科別にちゃんと整理するとかというような保存の仕方がまだ身についていないので、教科書の単元に沿って、単元の中に位置付くデジタルノートを自分の学びの足跡というふうに保存していけるほうが、後から振り返ったときに、記憶と、それから、そのときに使った情報とリンクページというものが一覧化して見られるのではないかというふうに考えたところです。
【堀田主査】  よく分かりました。ありがとうございました。学習内容と関係付けやすくなるということかと思いました。そして、それは紙のノートだと一から全部書かなきゃいけないのを、コンテンツの移動も含めて、何かコピーも含めてできるといいのかなと思う一方で、このことは著作権とか、いろいろなこととの関係、アクセシビリティは高まるかなと思いますが、この辺りは今後、議論していかなきゃいけないことかもしれないと思いました。ありがとうございました。
 では、阿部委員、お願いいたします。
【阿部委員】  今日はありがとうございました。本当に目からうろこのようなお話もいろいろお聞きできてよかったと思っています。
 私のほうでは、今現在使っている算数のデジタル教科書について、職員にちょっとヒアリングをしてきましたので、それを中心に、自分なりの紙とデジタルのハイブリッドのイメージをちょっとお話しできればと思っています。
 まず、算数で、グラフを書くとか作図をするみたいなものは紙でしかできないし、紙が有効。一方で、デジタルがとても有効な単元というのはありました。一つは、並べ方や確率みたいなものについて、例えば、A、B、Cの人が、グー、チョキ、パーを出すみたいな問題について、実際に人を動かしながら、それぞれが考えることができた。それから、図形の平行四辺形の面積を考えるみたいなときに、ここを切ってこの部分をこっちにつなげたら長方形になるんではないかみたいなことがシミュレーションが大変しやすい。それから、対称な図形みたいなところでも大変有効だった。
 やっぱり一方で、それを書くみたいなところは紙でなきゃ駄目だということでしたので、デジタルのほうが子供たちの主体で自走するような学習を促すのには有効だという単元が明らかにあったというところがありました。そういう場面はデジタルに譲るというのがいいんじゃないかなと思います。
 おまけに、紙でなければいけないものは紙とデジタルということになろうかと思いますけれども、そうやってハイブリッドって、紙と全く同じものがデジタルであるというわけではなくて、紙のほうが有効なものだけを紙で残す。そして、デジタルのほうが有効なものは思い切って紙をなくすということをしていくことで、教科書も軽くなると思います。
 文科省のほうで出していただいている参考資料3の41、42ページの辺りには、教科書が本当に重くなったみたいなことがありますけれど、何がこんなに重いんだろうなと思って、中身をよく見てきました。そうしましたら、発展とかコラムとか学び方の例、QRコードみたいな、そういう資料、過去の学習みたいなものが多くありました。そういうものはデジタルに譲っていいかなと。一方で、国語で言えば本文そのものみたいなのは紙でもデジタルでも両方でというふうに使い分けていくことで、スリムになっていくんではないかなと思います。
 学校のほうでは、どうしても紙派の子というのが何人かいます、今も。100人学年がいると、10人に満たないぐらいですが、紙派の子がいます。その紙派の子は何で紙派なんだろうというのもちょっとヒアリングしてきました。そうすると、技術的にタイピングの問題が一つ。あとは、書きにくさという。この紙面に書こうと思ったら、大きくして手書きで書く。もしくは、数字を選ぶんだったら、自分が数字を書くんではなくて、何か選んで数字を入れなければ入らないということが煩わしいために、紙派なんだそうです。
 ですので、データの記入の仕方とか、そういうものを考えていくことや、デジタルへの慣れみたいなものが進んでいくと、この紙派の子たちは一定数は減っていくかなというふうに思いました。
 最後ですけれども、特別支援が必要な子供たちについて、すごくデジタルは親和性が高いです。ですので、本当に誰一人取り残さないという点からも、デジタルでというのを進めていく必要が改めてあると思います。
 以上です。
【堀田主査】  ありがとうございました。現場の声をいろいろ聞かせていただきました。
 今のお話は、紙派、つまり、子供が選ぶといったときに、どちらが分かりやすいかとか、使いやすいかという観点では、まだ紙は当然十分あるけれども、それは慣れの部分、あるいはインターフェースの部分、今日近藤先生が言っていただいたこととも関係するのかなと思いましたし、あるいは、学習内容によっては、全ての子が必ずしもアクセスしなくてもいいようなものはデジタルに譲ったほうがいいんじゃないかとか、デジタルのほうが分かりやすいものもあるのではないか。しかし、紙のほうじゃないと困るものもあるという。学習内容による切り分け、これは奈須先生の提案にもあった部分かなと思いました。大変参考になりました。ありがとうございました。
 それでは、岡本委員、細田委員の順番で参ります。岡本委員、お願いします。
【岡本委員】  教科書協会の岡本でございます。よろしくお願いします。
 今日もいろいろな先生方からいろいろな御提案、情報共有いただきまして、大変ありがとうございました。
 私からは、中村先生の御発表の中で触れられていた部分と、近藤先生の御発表の中で御指摘のあった部分、意見を申し上げたいと思っております。
 まず、中村先生が幾つかのパターンを出されていて、先生の御発表の中では、パターンCのようなものがイメージされるというお話でした。部分的にデジタル、紙、それぞれのよいとこ取りをすると表現されておりまして、そのような形を想定した場合、教科書の発行者としても大変気になる部分がございまして、中村先生も書かれていましたけれども、例えば、検定はどうなるのかというのが、教科書の場合、非常に重要な要素になっています。教科書には検定基準がつくられていて、それに沿った審査というものが行われているんですけれども、例えば、今、紙だけの扱いですけれども、その扱いの適切さとか、必要な出典を明示しているかとか、系統的な学びになっているかとか、正確性とか、誤記・誤植とか、いろいろな観点で審査が行われて、合格したものが教科書ということで学校に届けられているというような状況です。これにデジタル部分みたいなものがあると、それも検定の対象になっていくんだろうなと思いつつ、同じような基準で審査されることになるのかどうかというのはちょっと気になるところです。
 それと、デジタルになった場合、どこまでが検定の対象になるのかということでは、デジタルって非常にいろいろなことができますので、例えば、あらかじめプログラムしておいて、隠しボタンみたいなものとか、あと、時限装置みたいなもの、こういうものをプログラム上仕込むことは可能なんですけれども、そうしたプログラム全体を検定の対象にして行うのかとかいうのが、ちょっと分からない。発行者として分からないところですね。それとも、紙と同じように、画面上に固定的に表示されたところだけが対象になるのかどうかですね。もし後者のような場合は、動画とかアニメとか、インタラクティブなコンテンツがありますけれども、それはどうなのかとか、そうしたデジタルならではの検定の在り方というのが発行者としては非常に気になっております。
 また、例えば、どういった範囲でということを決めたときに、そのほかのものを申請すると、これは検定意見がついちゃうのかとか。検定意見がたくさんつくと、発行者というのは不合格という判子を押されて教科書が出せなくなってしまいますので、こうしたことをある程度はっきり制度的に決めていただかないと、実際は大変困る状態になるということです。
 あと、ちなみに、中村先生のお話の中には、「デジタル制作とか提供にはコストがかかるけど、これ大丈夫?」というお話がありましたけれども、まさに御心配いただいて大変ありがたく思っておりまして、今、教科書の価格にはデジタル部分のコストって全く含まれていないんですね。ですので、今後、教科書は国が定価を定める性質のものですので、この定価、価格をどういうふうに考えていくのかというのも重要な観点になるなと思って、伺っておりました。ありがとうございました。
 それに関連して、検定の話に、スケジュールの話をちょっと重ねてお話しいたしますと、前回の学習指導要領の改訂のときには、指導要領の告示が平成29年3月に行われておりまして、教科書が審査される検定基準、これは同じ年の8月に告示されていますので、これを今回のスケジュールに当てはめて考えますと、令和10年春に検定の申請をしなくちゃいけないと我々は想像しているんですけれども、その半年ぐらい前に検定基準が告示されることになってしまいまして、実質、制作期間が半年ぐらいしかないという状態であり、なかなか難しいので、教科書の制作のよりどころになる検定基準については前倒しの議論をしていただかないと、デジタルを含めた教科書の申請もままならない状況になってしまいますので、そうした現実も踏まえて、少し制度面の策定を急いでいく必要があると考えております。
 併せて、実際に検定をしますと、検定意見が示されまして、そこから我々発行者は35日以内で修正をして、修正表を出さないといけないんですが、これもデジタルの検定のどこまでを対象にするかという範囲によっては、ちょっと35日間での修正というのが実務上難しいものも出てくるだろうなと想定しておりまして、今までの検定スケジュールでこのままデジタル化できるのかすごく不安なところでございます。
 それと、もう一つ、近藤先生の御発表の中で、我々の努力については一定の評価をいただけていて大変喜ばしいところですけれども、まだ十分でないところも多数御指摘いただきましたので、これは真摯に受け止めて改善したいと思っております。
 その中で、いろいろ出た読み上げの機能ですとか、そういうところも、現在、紙の教科書との同一性保持ということで、紙の教科書が丸々デジタル教科書に入っているから実現できている機能ではあるんですね。
 ですので、先ほど中村先生がおっしゃったような、紙の部分とデジタルの部分というふうに分かれてしまった教科書がもし存在したとすると、紙の部分のアクセシビリティをどう担保するのかというのがまた新たな問題になってきてしまいまして、ここはちょっと考えていかなくちゃいけないと思っています。
 それと、アクセシビリティの機能に関連しますと、現在、教科用の特定図書というのがありまして、拡大教科書とか点字教科書、音声教材等ですね。こういったところに例えばアクセシビリティ機能を持つ教科書、デジタル教科書のようなものを選択肢として加えていくようなことも制度上考えられるのではないかと思いますので、教科書を取り巻くその他の特定図書も含めた議論が求められているのかなと感じて聞いておりました。
 あと、最後に、今、デジタル教科書のアクセシビリティ機能というのは、これは一般の教材の位置付けなので、任意の機能ということで位置付けられているんですけれども、これを教科書にした際にどのように位置付けるかというのは、近藤先生のお話にもありましたように、各国の状況とかを見ながら、日本における法整備、制度化というものを考えていただくのが必要なのかなと思っております。一方で、先ほどのスケジュールとの兼ね合いもありますので、このタイミングでデジタル化もする、アクセシビリティもするとなっていくと、ますます対応が難しいと思うので、全体の中でどのようなステップで進めていくのかというのを、少し中期をにらんで検討できればいいなと思って聞いておりました。
 私からは以上です。ありがとうございます。
【堀田主査】  ありがとうございました。発行者側の悲鳴のようなお言葉でしたが、本当に現実そうなんだと思います。「当面の間」以降を、少し未来を私たちは今日議論しているわけで、そうなるとすると、こういう点が気になるということを御指摘いただいたというふうに思います。ありがとうございました。
 それでは、細田委員、お願いいたします。
【細田委員】  よろしくお願いします。大前提として、少し未来の話というか、かなり未来の話になってしまって、ですので、ちょっと短めに行きたいと思います。
 まず、私、今日、奈須委員のお話の中で、とりわけの4の3)あたりのところから、何とも言えないもやもやした未来のことも考えてしまったんですけれども、現実に、今、現行の教科書について言えば、ここに奈須先生が分析してあるとおり、とにかく情報量が多くなって、そのことは子供たちにも必要になってきているからそうなっているという側面もある一方で、どうも教師が教科書を全部やらなきゃいけないの呪縛に陥って、絡めとられているような感じがしてしまい、日々の授業の質的な劣化みたいなところも若干あるのかななんていうのを思ってしまっております。
 それで、じゃ、この後ちょっと未来のデジタル教科書のことを考えると、紙とデジタルのハイブリッドという側面も残しながらのお話なんですけれども、紙面上には学習内容の本質、本当に必要な概念とか、方法とか、そういったものをコンパクトに掲載をして、その代わり、これ、実は教師たちと未来のデジタル教科書ということでよもやま話をしたときに出てきた話でもあるんですけれども、教科書には本当に何をどのように学んでいったらいいかという本質、エッセンスだけにしてもらって、例えば、高校の国語の教師が言っていたんですけれども、ちょうどNHKの大河ドラマもあったせいか、源氏物語を全部デジタルでアプローチできるような、そういうことが可能だとすると、我々は学びたいコンテンツ、学ばせたいコンテンツを、児童生徒、学習者とともに決めて、それで、その中から児童生徒も教師も共に学びたいというものをピックアップして、そして、紙の教科書に提示されている学習内容の本質、そういったものを踏まえながら授業デザインをしていくことができて、もしかすると、これが究極のデジタル教科書のなせるわざではないのかななんていう話も教師たちとやりました。
 そして、そのことも踏まえますと、やはり奈須先生の4)のところにありますデジタル教科書のアドバンテージというのは、二つ目のポツのところにあります、単元や学年、教科を超えたランダム・アクセス、この可能性というのがやっぱりデジタル教科書のわくわく感を伝えてくれるところになるのかなというふうに思ったところでございます。
 すみません。本当に未来の話で恐縮でございます。
【堀田主査】  ありがとうございました。同様の話がいろいろなところから出てきているというのは、一つの形なのかもしれないなと思いました。ありがとうございます。
 この後ですけども、せっかくですので、松谷委員と太田委員、何か一言でも御発言いただければと思います。また、あと、中川主査代理が挙手されていますので、御指名した上で、今日御発表いただいた中村委員と奈須委員、あと、せっかくお越しですので、近藤先生に一言ずついただきたいと思います。ただ、残り時間が大変短くなっておりますので、皆さん、御配慮いただければと思います。
 松谷委員、一言お願いします。
【松谷委員】  藤村先生が今日いらっしゃらないんで、動画で見た中で、11ページにNext GIGA端末でデジタル教科書を標準とすることも世界で初めて可能にというのがあって、ちょっと知識不足なんで、私はNext GIGAの端末というのがどういう内容か分からないんですが、それぞれ一人一台の端末を持つわけですけれども、その中にこのデジタル教科書が十分に入る、許容ができるのかどうかというのは、ちょっとそういうことも精査していかなくちゃいけないのかなというふうに感じました。タッチペンもそうやって記入ができるようになれば、生徒は非常にいいんではないかということ。
 それと、もう1点は、奈須先生から今日お話をたくさんいただいて、ありがとうございます。やはり教育現場の中では、現在のパラダイムでは、2ページのところにある学校教育のパラダイムシフトというところで、教師が経験とか知識を生徒と、それから、生徒と話し合う、そういう探究学習がかなり実現していると思うんですが、個に応じた指導とか個別最適な学びというのは、具体的にこれを生徒がどういうふうに取り組んでいくか、どういうふうに教師と生徒が向き合いながら、データベースなども、そういった教育方法というのがこれからの課題ではないかなというふうに、こういったことが教師が不安になる点ではないかなというふうに思いました。
 以上でございます。
【堀田主査】  ありがとうございました。
 それでは、太田委員、お願いします。
【太田委員】  今日もありがとうございました。教育がこういうふうに変わっていくんだという、このような会議に出た後に鹿児島に戻りますと、うちの子供たちはいまだに紙の教科書にノートに、たくさんのプリントに向き合って日々宿題をしておりますけれども、今日はデジタルノートという言葉も出てきて、ノートまでデジタルになっていくんだという。
 私はどうしても全国の保護者を代表して来ておりますので、ただ、私も数々出てくる片仮名にどういう意味なんだろうと思いながら、一生懸命議論を聞いているんですけれども、このことを保護者がどうやって理解をしていくのかなということを考えたときに、やっぱりすごく難しいテーマだなと思いますし、ちょっと突飛なことを言うかもしれませんけれども、例えば、日本体育協会が、スポーツが変わっていくんだよというときに、体育という言葉をスポーツにした、日本スポーツ協会と名称を変えたということは、すごくあれは大きなインパクトがありまして、ただ、そうやって学びというのが教える側主体ではなく、学ぶ側主体になっていくというものを考えたときに、例えば、教育という言葉だとか、教科書という言葉に教えるという言葉が入っているというところをどう考えていくのかとか、そういうところからまた変えていくよというところは、日本全国に学びが変わっていくというところの大きなメッセージになっていくのかなということも、ちょっと突飛なことですけど、思ったりもいたしました。
 以上です。
【堀田主査】  ありがとうございました。
 それでは、お待たせしました。中川主査代理、お願いいたします。
【中川主査代理】  ありがとうございました。4人の方、本当にありがとうございました。非常に示唆に富むお話をいただきましたし、また、とても重い課題をいただいたなというふうに思っています。
 ちょっと時間の関係で、今日二つ申し上げようと思ったんですが、時間の関係で一つにしたいと思います。それは教科書のやっぱり位置付けの件なんですね。これ、前回もお話ししましたが、やはり今日いろいろと御発表いただいたのをお聞きしても、やはり一委員として、デジタル教科書を教科書としてまずきちんと位置付けていただくことを希望したいと思います。
 先ほど課長からありました調査研究でも、私がこれまで全国で関わってきた学校の経験からも、少なくとも紙の教科書と比較して、学習効果において何ら遜色がないことが示されていますし、それから、先ほど紙とデジタルのいいとこ取りという御意見もありました。まさにここを詰めていくことが、御提案のあったハイブリッドのポイントであると思います。
 ただ、阿部委員からの御指摘のように、未来永劫どちらもこのままではないということも今後視野に入れないといけないなというふうには思っています。
 また、端末の慣れについては懸案事項でありますけれども、参考資料の3で示されたように、活用状況については、先ほど課長から御説明があったように、この3年間、40%、50%、60%と順調に上がってきています。それに加えて、調査研究では、デジタル教科書の使用頻度が高いほど、デジタル教科書の使用感を肯定的に捉えていることが明らかになっています。これらのことも踏まえて、位置付けを進めるタイミングであるというふうに考えています。
 一方で、子供がデジタル教科書を使うと注意散漫になるとか、目が悪くなるといった指摘も一部にありますけれども、実際には45分、50分の授業の中でずっと使い続けているわけではないし、多くの教師が児童生徒の意欲が高まるように、あるいは健康に留意しながら授業の工夫を行っていることは、全国の学校を回っていて実感しています。あまりにも極端な批判は、議論の本質を分かりにくくさせてしまうんではないかということを私は危惧しています。
 最後に、これからの教科書は、教師が学習内容を理解させるものから、児童生徒が学び方や見方・考え方を身につけるものと、教科書観も変わっていくものだと考えます。この土俵が違うと、議論がかみ合わなくなるのでないかと思います。
 次回以降の会議で、本日御提案があったハイブリッドやアクセシビリティ等の検討を含めて、個別最適な学びを充実するような教科書の在り方をさらに方向性としてまとめていくことを希望しています。
 以上です。
【堀田主査】  ありがとうございました。
 それでは、一言ずつ、御発表いただいた方々にお願いしたいと思います。
 中村委員からお願いします。
【中村委員】  ありがとうございます。私は本当に学校現場という視点から、いろいろなことをあまり考えずに、本当につくってみたい教科書ということをお伝えしました。
 このお伝えした内容で出てくるいろいろな視点とか論点とかというものが、この会議でぜひ話し合われていたりとか、また、いろいろな御意見をいただけるとありがたいなと思っているところです。
 今日は本当に杞憂な発言をさせていただいてしまいました。ありがとうございました。
【堀田主査】  大変参考になりましたよ。ありがとうございました。
 それでは、奈須委員、お願いいたします。
【奈須委員】  図書館と学校図書館の会議というのが別で始まったんですけど、そこに行って私が驚いたのは、デジタルブックというのが非常に普通のものとして拡大をされていると。読むのはやっぱり紙の教材だと思いがちですけど、図書館業界では、既にそうではなくなりつつあるということをこの間痛感しました。それが一つ。
 岡本委員と細田委員がおっしゃったこと、とても大事なことだとまず思っています。細田委員がおっしゃった、やっぱり内容が増えているというのは、今回、学習指導要領を資質・能力ベースにした、コンピテンシーベースにしたので、教科書会社の皆さんが、従来のコンテンツもしっかり載せつつ、コンピテンシーも載せたと。2階建ての状態に今なっているんですね。
 これは、やっぱり学習指導要領に若干弱さがあるんだと思います。学習指導要領自体が、コンテンツも全部書いて、コンピテンシーもやれというふうになっていれば、指導要領は増えていますから、やはりそこを何とかしていかないと、それはやりようがないんだろうとまず一つ思いました。
 中川先生も今おっしゃったように、やっぱりリソースブックという形に教科書を変えていくということが大事だと思うんですけれども、それは今の指導要領自体がどうなるかということ、それから、岡本委員がおっしゃった、検定制度をどう考えるかというのも非常に大事だと思います。検定制度って、やはり日本に独特な制度ですよね。つまり、海外には検定制度って、日本のような形ではないわけで、すると、デジタル教科書をどんどんやっていくといったときに、検定制度というのを根本から見直さざるを得ないんだろうと私は思っています。
 指導要領もどんどん記載が増えてきて、すると、指導要領の記載が増えれば、それに合っているかどうかというのが検定に入ってきて、それでは教科書会社は大変だと私は思いますよね。だから、指導要領も何らかの形でもう少し構造的に変える必要が私はあると思っていますけれども、一方で、それを教科書にどう反映されているかという検定というのをどうするかということも、それは変えていかないと、全く駄目だろうと。そろそろその話はしっかりとする。
 ただ、それは教科書の検定制度だけの問題じゃなくて、指導要領とか、つまり、この国の教育課程の基準の在り方全体との関係で考えていく。それは先ほど中川先生がおっしゃった、教科書の教育課程実施上の、つまり、授業実施上の位置付けも変わっていくという話も全部あるので、かなり構造的にいろいろなことを同時に考えていかないといけないんだなというふうに伺いました。
 以上です。
【堀田主査】  ありがとうございました。
 それでは、せっかくですので、近藤先生、何か一言お願いいたします。
【近藤氏】  今日はこうした機会をいただきまして、本当にありがとうございました。
 今日、アクセシビリティのことだけお話しさせていただいたんですけど、私、普段はいろいろなことをやっていて。ただ何でアクセシビリティをやっているかというと、子供たちが主体的で自立した学習者になるためにやっているんですね。横についた人に内容を決められるとか、特別な資料を準備してくれた人に読める内容を決められてしまうとかいうことではなくて、子供たちが自分で選べるようにしていくという。そのためにアクセシビリティってすごく大事だと思ってやっています。
 今、大きな議論って二つあって、一つは、やっぱり伝統的には代替形式と呼ばれてきた、例えば、音声教材というのが今使えるんですけど、音声教材って、メインストリームのものが使えないから代替的な形式として用意しているというものなんですよね。これ、やっぱりどうしても必要だというのは変わらないと思うんですけれども、せっかく学習者用のデジタル教科書が出てきたので、もう一つの議論って、ボーンアクセシブルといって・・・横文字ばっかりなんですけど、よその国から来たので。ボーンアクセシブルって、最初につくる段階から、もうアクセスできるようになっているということなんですね。だから、ボーンアクセシブルなものをつくっちゃえば、代替形式は要らないじゃないかという議論になっていて、だったら、設計思想をボーンアクセシブルにしようよと。しかも、ボーンアクセシブルって、アクセシビリティを確保すると、人間にとっても自由に選べるようになるけれども、もう一つ、最近言われているのは、AIにとってもアクセスしやすくなるんですね。これ、機械可読性が上がるというふうに言われるんですけど、機械にとっても文書構造を把握しやすくなるし、内部の全ての情報にアクセスできるようになる。そうすると、人間とAIが協調しながら資料を自由に取り扱っていくには、そもそもアクセシビリティを確保していないとできないですよね。その意味で、今、急激にボーンアクセシブルへの動きが出てきているというのは、そういう背景もあるとは思います。
 なので、やっぱり将来に向けて、何か今後のコンテンツであったり、ビューアをデザインしていくときには、やっぱりアクセシビリティの考え方を横に置いては前に進めないかなというふうに思いますので、将来に向けてこれをやっていくんだというグランドデザインの中では、ぜひアクセシビリティの保障を入れていくということは考えていただけたらと思います。
 以上です。
【堀田主査】  大変貴重な御示唆、ありがとうございました。
 私も主査として一言申し上げておきたいんですけど、今日もたくさんの方、300人ぐらいって言っていましたけど、傍聴いただいておりまして、大変注目度が高いことを存じ上げております。
 私たちは、決して紙をなくす議論をしているわけではないんですけど、何かそういうふうに思って報道されるときが時々あります。私たちは、今、近藤先生がまさにおっしゃったように、子供たちが学びやすくなるようにしたい。選択肢をできるだけ多くしたい。そして、子供たちに自分で決められるようにしたい。これは、今、子供たちと私は言いましたけど、学校の特色を出しやすく、地域の特色、学ぶべきことを地域で判断して決めやすくするために、デジタルのいいところを今までのものに加えて取り入れていこうということをやっているわけです。
 ところが、今までの現行法の中では、今まで紙が中心だったこともあって、それこそボーンアクセシブルじゃない部分がやっぱりあったんだというふうに思いますので、そういう意味では、制度的な見直しも、これ、岡本委員もおっしゃいましたけど、早くから手をかけていかないといけないところかなと思います。すぐには変えられないし、変えられない中でも、今学んでいる子供たちを大切にしなければいけないという現実もある中で、今、どうやって便利に分かりやすくやるかという話と、数年後、いつか分かりませんけど、「当面の間」以降にどのようにしていけばいいかという。今日はそちらの話が多かったということになります。
 もしかしたら様々な制度ごと見直さなければならないという可能性ですね、那須委員もおっしゃいましたけど。これは文部科学省としては大変なことかと思いますけど、もしかしたら検定基準とか同一性保持とか、そういうところから考え方を変えていく。教科書と呼ばなくするという可能性も太田委員ありましたけど、メッセージとしてはあり得るのかもしれないと思いました。
 報道が先般ありましたように、ちょうど来週、中教審に対して大臣諮問が行われるということですので、次の学習指導要領、あるいは、それをめぐって先生たちがどのように働きやすくなっていくかということについて、大幅な検討が始まるところでございますので、これからの教育の在り方、学校教育の在り方が議論される中で、教科書や教材のようなものが、あるいはデジタルをどうやって紙とうまく融合させて使っていくかと。そして、子供たちの学びやすさ、先生たちの指導のしやすさ、支援のしやすさ、こういうようなところを向上させていくかというタイミングに今私たちはいるのかなと。すぐには変えられない分、でも、少し先には大幅に見え方が変わるような、そういう世界を提供していくのが大事なのかなと思っております。
 今日、皆さんからたくさんの御意見をいただいたおかげで、ちょっと未来がわくわくするような、文科省の人は大変になるような、そういうところがあったかもしれませんが、見通しのようなものが少し見えてきたかなと思います。
 最後に、今後の予定につきまして、事務局から説明をいただければと思います。
【西田教科書課課長補佐】  次回のワーキングの日程につきましては、年明けになるとは思いますけれども、追って事務局から御連絡させていただきます。
 以上です。
【堀田主査】  ありがとうございました。
 皆さんの御協力で、予定した議事は全て終了いたしましたので、これで閉会とさせていただきたいと思います。皆さん、御協力、今日もありがとうございました。
 
―― 了 ――

お問合せ先

初等中等教育局 教科書課