デジタル教科書推進ワーキンググループ(第3回)議事録

1.日時

令和6年11月21日(木曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省
※対面・WEB会議の併用(傍聴はWEB上のみ)

3.議題

  1. 有識者からのヒアリング
  2. 自由討議

4.議事録

【堀田主査】  おはようございます。定刻となりましたので、ただいまから、中央教育審議会初等中等教育分科会デジタル学習基盤特別委員会デジタル教科書推進ワーキンググループの第3回を開催いたします。本日もまた御多忙のところ、御出席いただきまして誠にありがとうございます。
 まず、委員の交代があったそうですので、事務局より御報告をお願いいたします。
【西田教科書課課長補佐】  浜佳葉子委員が辞任されまして、10月30日付で東京都教育委員会教育長、全国都道府県教育委員会連合会会長の坂本雅彦委員が就任されております。
【堀田主査】  ありがとうございます。
 本日は、その坂本委員は御欠席ということでございます。
 それでは、本日の会議の開催方式及び資料につきまして、事務局より御説明をお願いいたします。
【西田教科書課課長補佐】  本会議は、前回と同様、対面とオンラインのハイブリッド形式での開催でございます。オンラインで参加されている方もいらっしゃいますので、会議を円滑に行う観点から、御発言時以外はマイクをミュートにしていただきますようお願いいたします。カメラにつきましては、御発言時も含めて、会議中はオンにしていただくようお願いいたします。どうか御理解のほど、よろしくお願いします。
 次に、資料の確認でございますけれども、議事次第にございますとおり、資料1から4、加えて参考資料が1から6となっております。対面で御参加の委員には紙でもお配りしておりますけれども、お手元の端末でも御覧いただけます。御不明な点がございましたらお申しつけください。
【堀田主査】  ありがとうございました。
 それでは、議題に入ります。
 本日の議題は二つです。一つ目の議題1は、有識者からのヒアリング、議題2は自由討議となっております。
 また、本日は、報道関係者と一般の方々向けに、本会議の模様をYouTubeにて配信しておりますので、御承知おきください。
 それでは、早速、議題1からまいりたいと思います。
 デジタル教科書は、ビューアとか、ほかのデジタル教材とか、そういうものと密接に関係してございます。また、そういうデジタル時代の学習環境、あるいは、それによって子どもたちの力はどうなるのかというような観点で、今日は専門家を四名お招きしてございます。
 ます、ビューア会社の代表として、株式会社Libryの代表取締役CEOの後藤様にお越しいただいています。
 教材関係では、一般社団法人日本図書教材協会及び一般社団法人全国図書教材協議会専務理事・事務局長の渡部様にお越しいただいております。
 また、デジタル時代の学習環境の専門家として、東京大学大学院教授の山内様にお越しいただいております。
 また、デジタル時代の読解力のことにつきまして、ペンシルバニア大学教育大学院教授のバトラー先生にお越しいただいております。バトラー先生はオンラインになります。
 四名の先生方からのヒアリングの後に、まとめて質疑応答を行う流れとしております。
 それでは、まずは、後藤さんから御説明をよろしくお願いいたします。
【後藤氏】  株式会社Libry代表の後藤と申します。私は、10年前に、東京工業大学在学中に学生起業しまして、一人一人が自分の可能性を最大限発揮できる社会を、テクノロジーと教育データの力によってつくっていけるのではないかというところで、それを信じてこのサービスをやり続けてきております。これまでも学習eポータルだったり、教育データ標準といったところに関して有識者委員も務めさせていただいておりました。
 まず、Libryの紹介からさせていただければと思うんですけれども、中高生向けのデジタル教科書、教材プラットフォームです。義務教育というよりは、私立中学だったり、公立や私立の高校というところを主な対象としながら、理数科目を中心にして教科書や問題集をデジタル化しているというものになっております。全国の教科書会社様や出版社様と提携をして、今、全国700校超の高校で御利用いただいているという形になります。
 もう少し詳しいサービスの内容を見ていただきます。
 中高生向けのデジタル教材プラットフォームという形で、出版社さんと提携をして教科書や問題集をデジタル化し、そこの学習履歴に基づいて個別最適化学習を提供していくという形になっています。いわゆるアダプティブラーニングを提供していくという形です。
 そこで蓄積されてきた学習履歴のデータとかを使って、先生の業務負担の軽減みたいなところにも役立てていただいているという形になっております。全国いろいろな学校で使われていると。
 特徴としては、大きく三つありまして、子どもたちにとってなじみやすく、業務負担が軽減され、さらに日常的な学習支援が行われていくというものになっておりまして、それこそよくあるおなじみの教科書、教材というところをそのままデジタル化して、サクサク動くインターフェースで、子どもたちは、電子書籍みたいな感じで使っていただけるものになっています。そうすることで、子どもたちの重たいかばんみたいなものも軽くなっていきますよといったものです。
 そこで蓄積された学習履歴のデータに基づいて、一人一人に、この問題がお勧めだよとか、そろそろこれを復習しようよみたいな形でレコメンドしていくといった形で、より効果的な学習を支援していくというものになっております。
 先生の観点でいくと、子どもたちの学習履歴のデータがどんどん蓄積されてきますので、ノート回収の負担を軽減できるというところと、あとは子どもたちの普段の学習状況を見とることができるというところで、先生が個別的な指導をしたりだとかというところでお役立ていただいているというものになります。
 子どもたちがノートをパシャッと撮ってもらったりすると、このような形でノートなども簡単に回収することができるというところで、ノート回収の手間なども簡素化しているという形になっております。
 ここで蓄積された学習履歴のデータは、いろいろなアダプティブラーニングに活用するというだけではなくて、子どもたち自身にデータを可視化してあげることによって、子どもたちの日常的な学習を助けるということをやっています。
 例えば、こんなレポートを子どもたち自身に見せて、子どもたち自身が、何かもうちょっと生活習慣を改善しようかなとか、みんなと比べて、間違えた問題をちゃんと振り返っていないんだなみたいなところなどを自分で理解しながら、自分なりの学習課題を自分で感じることができるというところなどのサービスも提供させていただいているという形になっております。
 動画はこれぐらいにして次にいかせていただきます。
 こうやってLibryに蓄積されてきたデータは、学習者本人や教員に還元するだけでなく、出版社に匿名化されたデータという形で還元しまして、データに基づいた教科書や教材の改善というところにも役立てていただいているという形になります。
 ビジネスモデルとしては、電子書籍のような買い切りのモデルで、紙面に加えて電子版も購入されるといった場合には、本体の価格プラス数百円ぐらい追加でお支払いいただいていると。紙は要らないよと、デジタルだけでいいよというペーパーレス版も、問題集とかに関しては購入することができまして、その場合は書籍の本体価格と同じ金額で購入していただけるという形になっています。
 これ、どちらで買われているかといいますと、今、半数以上がペーパーレス版で購入いただいておりまして、また、子どもたちに「紙とデジタル、どっちがいい?」みたいなアンケートをとると、大体7割ぐらいが、現状はデジタル版のほうがいいよというふうに選んでいただけているという状況になっております。
 以上、自己紹介で、本題に入っていくんですけれども、これからのデジタル教科書の在り方というところで、僕自身の主張としては、教科書がその役割を果たしていく上で、テクノロジーが貢献できる範囲というものは非常に大きいと思っています。そのため、実際にそうなるかどうかは別にして、将来的にデジタル教科書が主流になっていくということ自体は想定はしておくべきかなというふうに考えています。
 一方で、現時点では、多様なニーズがある学校現場において、デジタル教科書を強要するというところが好ましい結果を生むとも思っていないというところです。そのため、学校現場が適切な学習環境を選ぶことができる世界というところを目指して、社会システムを整えていくべきなのではないかなというふうに主張させていただきます。
 まず、前半の部分からお話をしていきますが、デジタル教科書の在り方の議論というものは、これからの教科書はかくあるべきかという議論と同じような議論かなというふうに考えております。そのときに、ここは本当に釈迦に説法ではあるんですけれども、教科書というものに検定があり、国がお金を出して配って使用義務まで課しているというところが肯定される意義は何だったかといいますと、昭和58年の中教審で、国民として必要な「基礎的・基本的な教育内容の履修を保障するもの」として説明されていました。
 私はここの文章を見て、知識がちゃんと習得されるというか、履修されていればいいことなのかというふうに感じながら、当時の学習指導要領をちょっと読んでみたんですね。そうすると、当時は、教育内容が履修されているということが教育の主な目標であったという形でした。つまり、この答申の表現に込められた思いみたいなところとしては、教科書というものは、日本の教育の目標の達成というところに対して重要な役割を果たすものだからこそ、様々な保護だったり、規制というものが肯定されるんだというふうに私としては解釈をしています。
 では、ここから、このときの学習指導要領から40年経った今の学習指導要領においては、知識・技能の習得だけでなくて、思判表だったり、主体性などを養うことが重要だというふうにされているということです。
 実際、Libryと提携している教科書会社の皆さんの教科書を見ても、知識の習得だけでよいよというふうにはせず、やっぱり思考力だったり、主体性をいかに醸成できるかというような様々な工夫がされているという形になっておりますので、やっぱり教科書というものは、知識の習得というところにとどまらず、我が国の教育目標の達成というものを目指していっているのではないかなというふうに理解をしています。
 それでは、今の日本の状況はどうなっているかというと、PISAの調査においては、知識・技能についてはOECDトップと、これは現場の先生のたゆまぬ努力もあり、これはすごいことだなというふうに思っています。
 一方で、学んだ内容と実社会のつながりだったり、自律学習みたいなところに関しては、OECD平均以下というような状況になっています。つまり、知識・技能というものに関してはすばらしい成果が出ているんですけれども、思判表、主体性というところに関しては、まだまだ重要な課題が残されているというふうに感じています。
 ただ、これらの領域は、結構テクノロジーが得意な分野なのかなというふうに思っておりまして、教科書の本分が日本の教育の目標達成へ貢献するということなのであれば、やはり教科書がテクノロジーを活用していくということは、私は必然だというふうに考えています。
 では、一律でデジタル教科書にすればいいかといえば、そうではないというふうに考えておりまして、それが後半の話です。
 紙かデジタルかを国が判断し続けられるのかというところでいうと、まず、需要の観点で見ると、これまでの調査でも、学齢や科目特性に応じて適した環境が異なるという話が何度も出てきておりました。学校ごとに特色のある教育方針もあります。つまり、区分によって、ニーズだったり、向き・不向きというものは様々あるのかなというふうに考えています。
 次に、今度は技術の観点で見ますと、技術は日進月歩で進化しております。ちょうど2年前、ChatGPTが公開されて、僕もすぐ使ったんですけれども、正直、あのとき日本語がそんなにうまくなかった。ちゃんとしたプロンプトを書かないと、ちゃんとした答えを返してくれないみたいな状態だったんですけれども、でも、今、結構雑な指示を出しても、いい答えが返ってくるんですよね。ここ2年で急激な進化をしているという形で、このようにテクノロジーというものは日々進化し続けているというところです。
 では、そのときに小学校の低学年の数学はどうだ、高校の英語はどうだみたいな形で、各区分というものに対して、日々進化しているデジタル教科書の状況を鑑みながら、紙が適切か、デジタルが適切かというところを1個1個判断し続けるというのは、私は現実的だとは思えません。
 なので、やっぱり重要なのは、柔軟性なのかなというふうに考えています。様々なニーズに対応できるように、子どもたちのことを現場で一番よく見ている先生に判断をどんどん委ねていくべきなのではないかなというふうに思っておりまして、それが実現できるようにするための環境づくりこそが日本では重要なのではないかなというふうに考えています。
 実際に、学校の先生はどう思っているんだというところで、学校現場の先生にお話を伺ってきて、インタビューをまとめていますので、動画を流させていただきます。
(資料1p23の動画を再生)
 先生の主な意見をこちらにまとめております。
 すみません、話が超過してしまって、最後になるんですけれども、最後に、委員の皆様にお願いしたいことがございます。
 ぜひこの議論は、数年先の未来をつくる議論だと思っておりますので、これからのテクノロジーの進化というものを見据えた上で御判断いただきたいなというふうに考えております。
 また、子どもたちの学習環境や学校の進化というところをルールが止めてしまわないように、紙を購入しなければならないというルール、これは学習環境選択に関するある種の規制だと思っているんですけれども、これは見直す方向でぜひ検討を進めていただきたいなというふうに思っております。
 次に、現時点でも、選べる環境を望んでいる先生がいらっしゃるということを、ぜひ頭にとどめていただきたいなというふうに思っております。
 次に、変化の激しい今の社会において、結論を先延ばしにするということはリスクだと考えています。一方で、我が国の教育を支えてきた教科書制度というものの中で守らなければいけないものというのも当然あると思っております。そのため、どこに向かうのかという方向性と、それをいつまでに実現するのかという期限、これはしっかりと決めていただきたい。その上で、見切り発車の社会実装という形にならないように、論点の整理と期限からバックキャストした意思決定というところは、しっかりと進めていけるように、ぜひ御議論いただけないかなと思っております。
 最後に、教科書そのものの質が損なわれてしまっては本末転倒だというところで、事業者、特に教科書発行者の持続可能性というところも同時に重要だと考えております。なので、各意思決定というところにおきましては、社会的便益というところと、コストというところのバランスを見ながら、投資を増やして質を高めるという判断も含めて、ぜひ御検討いただきたいというふうに考えています。それこそデータをいつまで保持するのかというものによって、サーバーコストなども全然変わってきますので、どこまでの便益を求めて、どこまでの社会的コストが許容できるのかというところをぜひ踏まえながら御議論いただければいいなというふうに思っております。
 ちょっと超過してしまいまして恐縮ですけれども、以上となります。ありがとうございました。
【堀田主査】  ありがとうございました。
 それでは、続きまして、資料2に基づきまして、渡部様、よろしくお願いいたします。
【渡部氏】  ただいま御紹介いただきました日本図書教材協会、全国図書教材協議会専務理事・事務局長の渡部と申します。このたびは、貴重な発表の機会をいただきまして、誠にありがとうございます。主に小中学校で使用されています学校用教材を出版している教材会社、それを販売している教材販売店の団体の立場から、教科書及びデジタル教科書についてお話をさせていただきたいと思います。
 本日、こちらの四項目についてお話をさせていただきます。
 まず、私どもの学校用教材の概要について、簡単に御紹介させていただきます。
 私たちの学校用教材は、学校で使われるテスト、ドリル、ワーク等といった先生の指導のもとに子どもたちの学習に役立てるための教材であります。
 こちらはの資料3ページの写真では、紙の教材ばかりになっていますけれども、実際には、ほとんどの紙教材にデジタル教材がついておりまして、両方を組み合わせたり、また選択したりして使用できるようになっております。
 全国ほぼ全ての公立の小中学校で私たちの教材を採用、御活用いただいておりますので、どの学校においても、紙、デジタル、いずれの教材も使用できる環境にございます。
 教科書と教材の関係ということで、教科書に沿った教材がたくさんございます。私どもでは、それを「教科書準拠教材」というふうな呼び方をさせていただいております。主に、教科書の順序・配列・構成に従って、教科書に掲載された素材を利用、または参考にさせていただいてつくられたものを教科書準拠教材と呼んでおりまして、私ども日本図書教材協会では、教科書の著作権管理団体である一般社団法人教科書著作権協会さんと、教科書準拠教材への教科書利用に関する契約を団体間で結びまして、一定のルールのもとで教科書利用、それから、それに伴う使用料を定めております。日図協加盟社及び業務委託会社は、そのルールに基づいて教科書準拠教材を発行しているところです。
 学校では、そのほかにも、特定の教科書に準拠しておりませんが、学習指導要領に準拠しているというような教材、我々でいうと「標準版」という言い方をしております。例えば、資料集とか、仕上げ教材など、そういったものもございます。
 教科書と教材との関係性、学習指導要領に合わせて資料5ページの図に表させていただきました。以前、デジタル教科書の今後の在り方等に関する検討会議でも同じ資料で発表させていただいたことがあります。こちらのように、教科書とつながっていたり、さらに補完して発展的に学習につなげたり、さらに評価のほうにつなげたりという様々な形で、教科書とともに、主に基礎・基本の学力の定着のために学校教育を支えているのが教材の役割かなというところもあります。
 今後、学習指導要領の改訂を迎えますが、これからの学びに合った役割、連携をこれからも考えていきたいというところであります。
 教科書準拠教材の活用事例として、授業でというところで、一つの事例をお示しさせていただいております。段階に応じて、教科書、それから準拠教材、それ以外の教材、先生が自作するようなものも含めて様々な教材類が使用、活用されているということを御紹介させていただきました。
 授業だけでなく、宿題、また、授業の後の単元終了後の評価、そういったところでも教科書に沿った準拠教材が活用されているということで、宿題、評価にも欠かせない教材になっているかと思います。
 教科書準拠教材の発行状況として、今年度、複数の教科書準拠の教材を出しており、その準拠の数、それから学年で計算して2万2,466点となっております。これは日図協が把握している部分だけですので、それ以外にもたくさんあるとは思います。
 また、資料8ページのグラフにあるように、形態別割合として、準拠教材の中でも準拠性のあるデジタル教材も併せて発行している割合がどうなっているかということで、上のほうにある21.8%、それから真ん中の34.3%、これが準拠版のデジタル教材も発行している割合となります。ですので、年々その割合が増えていっているということが御覧いただけるかと思います。
 下の2024年の43.9%、図書教材と書いていますが、こちらは準拠版のデジタル教材がついていないというだけであって、実際には、先ほど申し上げたように、何かしらのデジタル教材とかデジタルコンテンツがついているものもたくさんございますので、そういう意味では、デジタルの教材の割合はさらに増えてくるかなというところです。
 続いて、資料9ページで、小学校、中学校別に、円グラフで準拠教材の教科別の発行割合を示させていただきました。教科によってばらつきはありますけれども、見ていただきたいのは、小中ともに様々な教科の準拠教材を発行しているということと、学習者用デジタル教科書の中には、導入割合が低い教科もあるというふうには聞いておりますけれども、こうやって御覧いただくように、準拠教材では多様な教科の教材も出しているということをお分かりいただけるかなと思います。
 デジタル教科書と教材の連携についての現状、特に教科書発行者さんと民間の教材会社との連携ということで、二つほど御紹介させていただきます。
 一つは、デジタル教科書ビューアを通じた連携、二つ目は、直接、デジタル教科書、デジタル教材のそれぞれの単元のところで、同じ単元のところをリンクによって連携させる、こういったものが主なものでありますが、いずれもまだ実証段階のものが多いところです。こちらを御覧いただくように、なかなかまだ思うように進んでいないのが実情かと思います。
 資料10ページの下に書いておりますように、デジタル教科書と教材の連携の課題として、教科書発行者、教材会社、ビューア会社と個々に連携するために、どうしてもコスト面のところ、作業面、費用面がかかってくるということ。この辺りは、今後やはり連携していくためには、当事者間、それから民間団体間の話合いでルール化をしていく必要があるかなと、私ども教材団体としては考えておりますが、先生、子どもたちのニーズを掘り起こしていくことも課題でありますので、その下に書いていますように、シームレスな連携の必要性の掘り起こしも、これからの課題だと考えております。
 続いて、資料11ページが、教科書と教材との関係性のところで、今の制度面の整理をさせていただいた表になります。特に真ん中辺り、教科書と一体的に使用されるデジタル教材というところがあります。こちらは教科書でもなく、また学校教育法で定められているデジタル教科書でもない、紙の教科書でいうと、二次元コードで連携しているところですとか、そういうような部分、いわゆる教材に当たるところなのですが、この辺りの位置づけが今の制度では曖昧になっているかなというふうに認識しております。
 そこで、幾つか私ども教材の立場から御提言させていただきたいと思っております。資料12ページの概略図を見ながら御説明をさせていただきたいと思います。
 まず一つに、マル1のところです。教科書と教材の明確な区分けというものを御提案させていただきたいと思います。
 やはりデジタル教科書、もちろん教科書も含めてですけれども、教科書発行者による制作。一方で、デジタル教材のところは、様々な発行者による制作というように、名実ともに明確な区分けによって、教科書発行者による教材開発の負担が軽減されるとともに、様々な制作主体によるデジタル教材を公平に選択、使用できる環境が整うことで、教材内容での競争によって、より質の高い教材が開発、供給されることが期待されるのではないかなというふうに考えております。
 また、それによって、文科省さん、教科書発行者、教材会社、それぞれが携わる範囲が明確になりますので、教科書制度の維持のためにも望ましいのではないかなと考えております。
 続いて、マル2のところです、教科書と一体的に使用されるデジタル教材の位置づけの明確化が、先ほどの教科書と教材の明確な区分けのためにも必要になってくると思います。そこの教科書と一体になっているデジタル教材を、「教材」として位置づけることが望ましいとは思いますが、やはり性質上それが難しい内容については、教科書検定に準ずる一定の基準を設けて内容面を担保すること。また、教材本来の多種多様な中から選択、使用ができる環境を維持するためにも、先ほどの教科書と一体的になるデジタル教材については、一定の規制を設けた上で「教科書」として扱うこと、これが適切ではないかなと考えております。
 続いて、マル3のところです。デジタル教科書と教材の技術的な連携の研究ということで、先ほど、実態として申し上げた、デジタル教科書と教材の連携、ビューアですとか、簡便な接続、リンクをするということもございます。それに加えて、学習指導要領コード等を使った連携というものもあるのですけれども、これからは、そういったことに加えて、今、AI技術等も進化しておりますので、そういったものの活用も含めて、その他様々な連携の方法を研究していくことも必要ではないかなと考えております。
 続いて、マル4のところですが、公共性を担保したプラットフォームの運用、そういったコードでの連携とともに、もう一つ考えられるのは、こういったプラットフォームを使ったデジタル教科書と教材の連携があるかなと思います。
 そのときに、このプラットフォーム、様々な制作主体による多種多様なデジタル教材がより質の高い教材を開発・供給していくところで競争していくために、公共性の高いプラットフォームが求められると考えております。
 主にマル3のところ、デジタル教科書と教材の連携を進めていくためには、今後、教科書発行者、教材会社、ビューア会社等の当事者を中心とした検討していく場を、ぜひ文科省さんにも設定していただくことも御検討いただきたいところです。
 続いて、資料13ページで教科書と教材の採択の在り方をお示しさせていただきました。
 教科書は、主に教育委員会を中心とした採択であって、教材は、学校を中心とした採択ということが主になっております。
 先ほど申し上げた教材と教科書の明確な区分けというところで考えても、教材については、学校による主体的な教材選択ということをぜひ尊重していただきたいなと思っております。
 現在、自治体によっては、自治体所管の学校でのデジタル教材を一括採択して各学校に提供して使用されているという方式がとられているのですけれども、その中にはデジタル教材を公費でなく保護者負担にしてしまうということで、結果として、学校で採択される教材がはじかれてしまうという現状もあります。そうすると、自治体採択デジタル教材が一択となるという現象も起こっておりまして、そうすると、各学校で子どもたちの学習の実態を踏まえた最適な教材はどれか、といった検討する機会が損なわれることが起こり得るので、これからの学びに逆行しているのではという懸念もございますので、この辺りも、ちょっと今回の話とは趣旨がそれるかもしれませんけれども、ぜひ教材選択の主体的な学校による選択を尊重していただきたいと思います。
 今申し上げたようなところが、資料14ページにまとめて書かせていただいております。
 最後に、ここには書いておりませんが、教材会社の制作の立場として、紙、デジタル、両方の教科書準拠教材の開発をこれからもしっかりやっていきたい。それで、子どもたち、先生が、いずれも選べるような環境が望ましいと考えております。
 さらに、デジタル教科書と教材の連携ということもしっかりやっていきたいと考えますと、教科書改訂のタイミングで新学期に合わせて教材を供給していくには、とてもタイトなスケジュール感になっているのが現状であります。教科書の検定、採択、供給のスケジュール設定自体の見直しも考えていただければありがたいと思うのですが、その際には、ぜひ教科書発行者、それから教材会社双方に過負担にならないような形でのスケジュール設定という御配慮もお願いできればなというふうに思っております。
 長くなりましたが、以上、私の発表とさせていただきます。ありがとうございました。
【堀田主査】  ありがとうございました。
 今、二つ御説明をいただきましたが、今日は、四人の方にそれぞれ御発表いただいた上で、質疑応答と交えて意見交換とさせていただきますので、このまま発表を続けさせていただきます。
 それでは、資料3、山内先生、お願いいたします。
【山内氏】  それでは、説明させていただきます。
 私は、先ほど御紹介がありましたが、情報化社会における学習環境の在り方に関して研究しておりますが、その一つの大きな柱として、デジタル教材に関して数十年研究をしてきておりますので、その観点から見たデジタル教科書の価値と可能性についてお話をさせていただければと思います。
 デジタル教材については、2010年に東京大学出版会から『デジタル教材の教育学』という本を出させていただきまして、その中で「教育目標の実現のためにデジタル化された学習素材と学習過程を管理する情報システムを統合したもの」という定義をさせていただいております。なので、いわゆるコンテンツだけではなくて、そのコンテンツを学習を支援するために使える情報システムが統合されているというところが大きな特徴かと思います。
 ちょっとこれだけだと分かりにくいので、私の研究からに二つほど御紹介をさせていただければと思います。
 一つ目は、構成的読解を支援するタブレット用ソフトウエアということで、こちらはマイクロソフト社さんとの共同研究になりますが、次のスライドを見てください。
 これはeJournal Plusというタブレット向けのソフトウエアでございます。タブレットなので、左側の画面を見ていただくと、いわゆるPDFファイルに線を引いて読むというのは普通のタブレットでもできるような機能なのですが、この引いた線を、ちょっと右側の画面が小さくて分かりにくいかもしれませんが、線をドラック・アンド・ドロップで右側のページに移すと、箱になります。その箱が、大事なところを線を引いた上で、その右側にどんどん持っていくと、つまり、大事なところの箱がいっぱいできるんです。その箱を並び替えて、この文章がどういう構造をしているかという構造図を書いてくださいと、そういうことができるソフトウエアでございます。
 実際に我々、大学生ですけれども、このソフトを使って図を作成した群と、そうでない群で、これ、読んだ後にレポートを書いてもらうんですけれども、レポートの評価がどのように違うかということを評価いたしました。
 結果として、この下にありますけれども、いわゆるナレッジマップを作成した群は、そうでない群に比べて論理的一貫性のある文書を書くと。それからもう一つ、対話的意見構築とありますけれども、著者をシミュレーションして、著者と対話をしながらレポートを書くことができるということが分かりました。
 私が申し上げたかったのは、ここで言うコンテンツというのは、それぞれのPDFファイルになります。そのコンテンツだけではなくて、こういう情報システムを統合することによって、積極的な教育的効果を持つことができると。
 私はよく薬を例えに出していますが、医療の現場で直接医者がもちろん手を下して手術するみたいなこともありますけれども、多くの場合は、投薬する、薬自体にある種の効果、医療的効果があると。デジタル教材も適切に情報システムを組み合わせることによって、教育的効果があるパッケージを学習者一人一人にもたらすことができるということが非常に大きなポイントかと思います。
 もう一つ事例を御紹介させていただければと思います。
 こちらは「探究学習の問いを深めるAIを用いた学術用語検索システム」ということで、科学研究費の助成をいただいて開発したシステムでございます。
 探究学習では、探究の問いをどう設定するかが重要なんですが、これはもう皆様、御承知のとおりなんですけれども、実はこの問いを設定して深めていくのはとても難しいことです。大学生や研究者でもなかなかそれは難しいことなので、そのプロセスをAIを用いて支援することができないかと。学習者は、大体、最初にいわゆる素朴な問いみたいなものを立てるわけですけれども、その立てた問いに対して、よくAIの誤った使い方として、それで答えを調べてしまうみたいなことがありますけれども、そうではなくて、答えを調べるかわりに、AIが問いを深めるための情報を提供すると、そういうシステムです。
 ちょっと具体的な画面を見ていただきながら御説明したほうがいいと思うので、次のページを。
 これが開発したAcademic Term Converterというソフトウエアですけれども、左側に、高校生が関心のある、いわゆる問いの種みたいなものを入れます。これは歴史探究の授業で実際にやってもらったんですが、これ、例えばですけれども、なぜ先進国と途上国で格差が発生するんだろうというのは、高校生がみんな持つ素朴な問いだと、ほかだと、例えば、なぜ織田信長は天下を統一できたんだろうとか、そういう問いはできるんですけれども、それだけで探究学習を深めるのはなかなか難しいので、これを入れると、右側に関連する学術用語が推薦されてきます。こちらは、例えば、この先進国と途上国で格差がなぜ発生するのかだと、世界システム論というものが推薦されてきて、これは歴史学辞典の内容とウィキペディアの内容が載っていますけれども、関連語として、プロト工業化、列強、商業革命というものが出てきて、それをさらに調べて問いをブラッシュアップしていく、そういうことになります。
 これ、実は、裏側でどういうことをやっているかというと、大量の高校生の素朴な疑問を集めます。これは大変だったんですが、片一方で歴史学辞典の内容を学習させます。そこのマッチングをシステムがやって教師が教える、人間が教える、エキスパートの先生がある程度教えると、AIがそれを学習して、適切な推薦をほかの問いに対してもできるようになるという、そういういわゆる機械学習のシステムになります。
 最近は、これを大体生成AIで同じようなことができるようになっているんですが、これを実際に高校でやってみました。
 都内の都立の高校生19名に御協力をいただいて、実際にワークシートと推敲中のPC画面データを収集して、どのようにこのシステムを使いながら問いが深まっていくかということを研究いたしました。
 結果として、ATCの用語を使ってこの問いの推敲を行った人は95%いて、最終的に推敲後の問いにATCの用語や概念の影響が見られて、直接的影響が見られたのが半分ほど、間接的な影響を見られたのが4分の1ほどというような形で、これはテーマ型探究学習なので全然違う生徒さんなんですけれども、異なるテーマの学習者に対して、推敲の支援を一定程度できていたということが言えるかと思います。
 ちょっとこれだけだとイメージが沸きにくいので、具体的な事例を一つ御紹介したいと思いますが、例えば、この生徒は、初期の問いは、「食事はどのように変化していったのか」、時代によって食事が違うわけで、NHKの大河ドラマとかを見ても、昔の食事は今と違うんだろうなと素朴な疑問は当然持つわけです。ただ、これだけだと、要するに、平安時代は何を食べていて、室町は何を食べていて、江戸時代は何を食べていて、明治時代は何を食べていて終わりという、探究として非常に浅いもので終わってしまいます。これを深めていくためには、やっぱり問いを深めていく必要があって、この人は推敲後の問いはどうなったかというと、「各国の食文化は、戦争や経済発展などを経て、お互いにどのような影響を与えてきたのか」、食文化というある種のパースペクティブが出ると同時に、変化のきっかけとしての戦争や経済発展、それからあと、相互作用というような、かなり観点がいろいろ深まっているということが分かるかと思います。
 これ、実際にどうやって深まっていったかというと、推薦された学術用語「グローバリゼーション」内の経済の用語に注目したり、関連語の「ヨーロッパ中心主義」のウィキペディアを読んで、戦後の日本がアメリカから受けた影響に関する文章を読む。それから、学術用語内の概念「文化圏の接触」に注目するというようなことがあって、このように深まっていったということです。
 ですので、要するに、先ほどの繰り返しになりますけれども、AIは答えを探してしまうと、これは全然教育的には意味がなくなるんですが、このような形で問いを深めるためにAIを使うというようなことができれば、教材としてもかなり有効な教育的支援、先ほど、薬という話がありましたが、そういうことにつなげていくことができるということです。
 ここでも教育システムだけではなくて、教育コンテンツと組み合わせることによって初めて機能が出てくるということで、デジタル教材を使うと、このように積極的な教育的支援ができるということになります。
 さて、本題に入りたいと思います。
 ということができるということを前提に、教科書がデジタル化されるということは、こういうことがより広く深く実現するために非常に重要な契機かと思います。特にデジタル教科書は教科書ですので、これはもうカリキュラムに沿った非常に良質な学習素材が提供されるということになります。一般的なコンテンツと全く制作の体制もコストも違いますので、いわゆる学習素材としては最もよい最良のものがデジタルとして提供される。しかも、それがインデックスになるという意味で、学習基盤としては非常に重要なものだと思います。
 ただ一方で、教科書会社が、例えば、私、先ほど、二つ例がありましたけれども、それぞれの単元にああいう形の教育システムを教科書会社だけで統合するというのは、多分無理ではないかと。実際、コストもかかりますし、これはいろいろなノウハウとかを持っているような多様なプレーヤーがその部分を担うほうが、より合理的かと思いますので、教科書は教科書として非常に良質な学習素材がインデックスとしてデジタルに載ってくるというところは重要なのですが、より積極的な支援のために教育情報システムと接続できることが非常に重要で、これはもう既にこのワーキンググループで議論されてきたところかと思いますけれども、教科書と、こういうデジタルの教育システムをつなぐようなことができる、発展教材とのリンクを、ある種のAPIのような形でしっかりつくっていただくことが、デジタル教材を研究してきた立場からすると非常に重要なことかと思います。
 最近は、AIを用いたデジタル教材との動的リンクみたいなこともできるようになってきました。これは先ほど実際に可能性をお示ししたとおりなんですけれども。実は、ちょうど今月の上旬に、シンガポールで開かれていた「EDUtech Asia」というイベントに行ってきたんですけれども、そこで韓国の教育システムの開発をされている方が、韓国のデジタル教科書の内容を抽出して、それを基に教員が問題をつくれるようなシステムみたいなものを実際に開発されています。
 ですので、今から多分このようなAIを用いてデジタル教科書とデジタル教材とをつないでいくということが、世界的にもこれからどんどん進んでいくと思いますので、そういう意味でも、デジタル教科書が総体としてデジタル教材として学習者に届くように、このインターフェースの整備と、デジタル教科書自体はシンプルなものでいいと思うんですけれども、それが開かれて、一種の学習環境として総体として機能するような仕組みを整備していただけると大変ありがたいなというふうに思います。
 私の発表は以上で終わらせていただきます。ありがとうございました。
【堀田主査】  ありがとうございました。
 それでは、四番目、最後でございますが、オンラインで参加されておりますバトラー先生、よろしくお願いいたします。
【バトラー氏】  よろしくお願いします。ペンシルバニア大学のバトラー後藤裕子と申します。今日はよろしくお願いいたします。
 今日は、「デジタル教科書・教材の有効性を考える」ということで、私はちょっと包括的な話をさせていただきたいと思っています。
 三つポイントがあります。一つは、デジタル時代における変化です。デジタル時代において、コミュニケーションの在り方、それから学習者自身、そして学習の仕方、さらには教師の役割が変化しています。それを押さえた上で、デジタル教科書・教材のメリットと注意点をしっかり押さえましょうと。そして最後に、デジタルのメリットを生かす使い方が重要なのではないかということです。
 今日の話の中で、「デジタル世代」という言葉を使わせていただきますが、基本的に、生まれたときからデジタルに親しんでいる世代で、大体西暦2000年以降に生まれた子どもたち、若者たちを指すということで御了承願いたいと思います。
 では最初に、デジタル時代の変化ですけれども、デジタル・テクノロジーという道具を持つことによって、我々の活動とか行為が非常に変化してきている、または広がりを見せているということで、皆さん御承知でありますけれども、テキストメッセージやSNSで即時の伝達性が加速している。そして、SNSで自らのフィジカルな社会ネットワークを超えた広い世界に発信するということが簡単になってきた。さらに、情報処理スピードも加速化し、マルチモダル化も促進しているということです。
 一方、コミュニケーションの関係性というところに焦点を当ててみると、「一対一」のコミュニケーションから「多対多」といったようなコミュニケーションが非常に増えてきているという現象があると思います。
 その一方で、デジタル・テクノロジーにより、空間上のハンデが軽減されると同時に、力関係の違いというものが拡大する可能性もあるといったようなことを懸念する人たちも少なくないということです。
 さらに、学習者も変化を遂げているということで、これは令和5年度の青少年のインターネットの利用環境実態を示したものです。6歳、小学校1年生に上がるまでに、もう80%の子どもたちがインターネットを使用して、小学校の中学年になると、もうほぼ100%の子どもたちがインターネットを使用しているということになります。小学生の大多数は既にインターネットを使用しているということを踏まえておきたいということです。
 学習の仕方も大きく変化してきています。マルチタスクをやる子どもたちが非常に増えているということで、同時並行型(並行処理)のプロセスを好むという世代になっています。
 さらに、テキストよりも映像にすぐに飛びつくといったような映像処理嗜好が強いというのがこのデジタル世代の特徴かと思います。
 それから、動画も高速視聴をよくするというようなことからも分かるように、タイパ重視の傾向があり、それから、タスクを行うに当たっても、自分一人でやるのではなく、ネットワーク嗜好が強くて、友達と一緒に協力しながらタスクを遂行するという嗜好が強いと言われています。
 そして、最後ですけれども、デジタル使用への能動性が強いということです。デジタルを使うということに非常に積極的な世代であるというふうに言えるかと思います。
 さらに、教師の役割も変化してきています。伝統的な指導方法は、指導内容自体が事前に定義されていて、先生は生徒に知識を提供する役割が伝統的なスタイルだったというふうに言われています。
 その一方で、デジタルが進むことによって、プロセス指向であるとか、さらにはオープン指向といったような教師の役割が見られるようになってきているというか、期待されるようになってきているというふうに言うべきかもしれません。
 プロセス指向も、指導内容自体は伝統的なやり方と同じように、指導内容は事前に定義されているけれども、教師の役割は、生徒が知識を身につけるための橋渡しの役割というふうになってきています。
 さらに、オープン指向だと、指導する内容、ないしは生徒が学びたい内容、それを自ら、自分たちで決めると。教師はその過程を促進する役割になります。先生と、それから子どもたちの間の相互学習が営まれるというのがオープン的指向の役割というふうに考えられます。
 デジタルは、このプロセス指向やオープン指向のインストラクションの在り方に非常にメリットをもたらす可能性があるというふうに考えられています。
 今まで、「教科書は単に「読む」だけのもの」、知識がいっぱい詰まっていて、読むことによってその知識を吸収するというようなものから、「学習を発展させるために「使う」もの」に変化してきているというふうに言えるかと思います。
 では、デジタル教材・教科書のメリットと注意点は何でしょうか。
 一つ、ポイントのまず1番目なんですけれども、何でもデジタル化すればいいというわけではないということが指摘されています。これはOECDの最近の統計ですけれども、このブルーの部分、特に青の線グラフのところに注目してください。これは学校というコンテクストの中で、学習にデジタル・テクノロジーを使う時間と、それから算数ないしは数学のパフォーマンスとの関係性を示したものです。このグラフからも分かるように、大体1時間から5時間ぐらいの間にデジタルを使っている場合は、かなりの数学ないしは算数のパフォーマンスは維持できますが、それよりも多くの時間になると、今度はパフォーマンスが逆に下がってきてしまうということです。これは時間だけを示していますけれども、もちろん、いかに使うかということも非常に大切です。
 ポイントの2番目としては、スクリーン上の読みのメリットとデメリットをきちんと理解しておきましょうということで、まず、ニーズという点から考えると、スクリーン上の読みというのは、現代のデジタル時代の読みを反映しているというふうに言えるかと思います。これは時代の趨勢であると言えるかと思います。
 そしてデジタル世代では、もちろん個人差はありますけれども、全体的で見ると、デジタルの読みを好む人が多い。そして、その割合はますます増えてきているという実態があります。
 さらに、理論上、マルチメディア学習の認知理論などという理論もあるんですけれども、基本的に、聴覚と視覚の情報を一緒に処理するほうが、別々に処理するよりも記憶などの認知活動が促進されるということを、理論上、予想しているということになります。
 ただし、認知負荷が大き過ぎると効果が期待できないということで、これは子どもにマルチメディアないしはデジタルを利用するときには非常に気をつけておかなくてはいけないポイントになります。子どもの認知リソースというのは、もちろん年齢によっても変わってきますけれども、大人と違って少ないので、その認知負荷がかかり過ぎてしまうと、効果が期待できないということになります。
 一方、実証研究を見てみると、解読(decoding)、それから読解において、全体的には差がないと言われています。これは英語圏での研究が中心なので、日本語の場合、どれぐらい当てはめられるかというのは、ちょっとまだ分からないところがたくさんあるかと思いますが、一応、英語圏を中心とした研究によると、全体的には差がないと、年代を問わず差がないということが示されています。
 ただし、細部に気をつけてみると、いろいろなことが出てきています。例えば、テキストが長い場合、それから読む目的、細部の情報を記憶したりとか、推測したりしながら分析的に読む必要がある場合、こういったような場合は、紙での読みのほうがパフォーマンスが高いと言われています。
 さらに、自己評価に関しては、デジタル読みのほうが過大評価をしやすい、逆に言うと、紙での読みのほうが、より正確に自分の読みの評価をしやすいということも言われています。
 一方、多読などといった授業の中では、スクリーン上の読みの効果が大きいということです。
 ただし、先ほども申しましたけれども、こういった先行研究の多くは英語圏、そして、大学生、大人を中心としたものなので、小さいときから学習という場面においてずっとデジタルを使い続けてきたような、その世代ではどうなっていくのかというのは、まだちょっと不明確な部分が多いと思います。
 もう一つのポイントとしては、読みのスピードなんですけれども、全体的には、先ほど申し上げたように差がないんですが、ただし、テキストのみの場合では、紙の読みのほうが時間がかかる。ただ、グラフやイラストなどの視覚情報が付随している場合は、デジタルでの読みのほうが時間がかかると言われています。つまり、紙で読む場合と、それからデジタル上で読む場合とは、読みのプロセス自体が異なっているということが言えるかと思います。つまり、デジタルの読みのほうがいいのか、紙の読みのほうがいいのかという、デジタル対紙といったようなシンプルな二元的な問題提起自体が、恐らく時代遅れになってきているのではないかというふうに考えます。
 小学校の低学年では、先ほども申し上げましたけれども、認知処理能力との兼ね合いが非常に重要になってきます。例えば、絵とかイラストといったものを使った場合は、そういった視覚情報が、読解の場合はテキストの内容と一致しているか、一致していない場合は、例えば、絵やイラストに注意が向けられ過ぎてしまうと、かえって読解にマイナスに働くということが言われています。
 同じようなことが、例えば音響効果とか、バックグランド・ミュージックも子どもの注意を惹き過ぎては逆効果になるということが知られています。
 それから、ホットスポットやゲームも、ストーリー理解にはマイナスな影響もあり得るということです。
 さらに、ハイパーリンクはアクティブな読みを促進する一方で、リンクの数が多かったり、階層化されていないと読みに時間がかかったり、理解度が低下してしまう可能性もあります。これはアメリカの研究ですけれども、小学生を対象に階層型のハイパーリンクを活用して、テキスト全体の構造を明確化することで理解度を上げたという例も報告されています。つまり、ハイパーリンク自体がいいとか悪いとかではなくて、ハイパーリンクの構造性、非常にストラテジックにハイパーリンクをつくっていくということを前提とした場合には、ハイパーリンクはアクティブな読みを促進し、読解力にもプラスの影響を与えているということになります。
 最後、デジタルの持つ一つのメリットとしては、個別最適化ということがよく言われています。学習障害を引き起こす要因は様々あると思うんですけれども、アメリカにおきましては、学習障害を持った子どもたちに対しては、デジタルの教材が非常に有効に働いているというリサーチが非常にたくさん出てきています。
 さらに、母語以外の言語で学校教育を受けている子どもたちへの有効性、これは彼らの英語力、それからニーズが非常に多岐にわたっているので、やはりデジタルが持つ個別対応のメリットがここで効いてきているのかなというふうに思います。
 最後に、デジタルのメリットを生かす使い方が重要だということです。デジタルは使い方次第ということになります。
 重要なのは、私は言語教育が専門なので、言語教育の立場から申し上げると、今までのスキルベースの言語力理解、つまり、リスニングとか、グラマーとか、そういう形で言語力というものを理解してきたわけですけれども、デジタル時代にあっては、そういうちょっと古い考え方から脱却して、新しいコミュニケーション能力というものを目標に据えるべきではないかというふうに私は考えています。
 デジタル時代に必要な言語コミュニケーション能力というのは、言語を主としたものではありますけれども、言語を主としたマルチモダルの媒体でのコミュニケーションに必要な能力というふうに考えています。従来の言語コミュニケーション能力の捉え方よりも、ずっと広義の概念になります。
 従来の考え方というのは、ちょっとここの図にも出てきていますけれど、基本的言語知識というものに非常に力を入れてきた。この基本的言語知識が重要であるという点は変わらないのですが、それだけではもう不十分になってきている。それプラス、もっと広義な考え方が必要です。例えば、何かタスクを行うときに、自分一人でやるのではなく、デジタル上で他人とコミュニケーションをとりながら、ネットワークを構築しながらそのタスクを遂行していく、このときに他人の中にはAIも含まれます。今までやってきたフィジカルな教室の中で友達と一緒に協力してやるというだけではない、また違う力がここの中には必要になってきます。
 また、音声を使ったりとか、いろいろなマルチメディアを総合的に使いながら、いかにプレゼンテーションをうまくやっていくか、いかに創造的にプレゼンテーションをやっていくかといったような創造的な言語使用能力といったようなものもこれからは不可欠になってくるだろうというふうに思います。そういったような最終目的を見据えた上での教材づくり、カリキュラムづくりが重要でしょう。
 そして、教師の役割の変化に適応した使い方というものも重要かと思います。ただ紙の内容をデジタルに置き換えただけの使い方をしていませんかということです。これだと、今までの伝統的な教師の役割とあまり変わらないということです。デジタルはプロセスを可視化しやすいというメリットがありますから、プロセス指向の指導にも適した使い方が可能である。そして、インターネットにつながることで、自主的・発見型の学びに結びつけやすいということで、ネットワーク型の学びにもより適しているというふうに言えるでしょう。
 ただ、私もアメリカの事例、それからアジアの事例をいろいろ見てきましたけれど、やはり先生がいかにデジタルをうまく使いこなしていくかということが、実は一番大きな要ではないかと思っています。つまり、デジタル教材なりデジタル教科書の導入は、教員研修と二人三脚でマッチングした形で導入していかないと、期待するような効果はできないのではないかというふうに思います。
 今日のまとめですけれども、デジタル時代において変化するニーズに合った対応が必要である。そして、デジタル教材、それから教科書のメリットとデメリット、注意点をしっかり把握した上で、非常に賢い形でデジタル教材等々を使っていきましょうということです。
 そして、デジタルのメリットを生かす使い方ということで、デジタル時代の要請に合った目標設定と指導アプローチ、そして、ここには教員研修が非常に重要である、不可欠であるということだと思います。
 以上です。ありがとうございました。
【堀田主査】  ありがとうございました。
 大変有益な有識者四名からのプレゼンテーションだったかと思います。聞いてみたいことがたくさんあろうかと思うんですが、この後、質疑も含めて自由討議とさせていただきます。
 ただ、その前に、事務局から、配付している参考資料等について、一応御説明をいただきまして、それを踏まえて、私たちは議論していきたいというふうに思います。これまでの議論との接続の観点もありますので、御協力をよろしくお願いいたします。
 それでは、事務局、よろしくお願いします。
【黄地教科書課長】  自由討議の参考といたしまして、毎回、参考資料をお配りさせていただいておりますが、今回も参考資料3、デジタル教科書をめぐる状況に関する資料を用意させていただいております。前回も配付しておりますが、新たに21ページに、これまで紹介させていただいたデータですとか、また、これまでのワーキング等で御報告いただいたデータを一覧化したスライドを設けてございます。また、この一覧に記載のマル4から、ちょっと字が小さくて恐縮ですが、マル4からマル9の情報を新たに追加しているところでございます。
 具体的には、29ページに、これはPISA2022の結果でございますが、この中で、学校での学習に1日1時間から5時間デジタル機器を使用する生徒は、全く使用しない生徒に比べて数学のスコアが20ポイント高い結果となっているといったようなデータもございました。
 また、30ページ目でございますけれども、記憶や理解度につきまして、紙のほうが優位という先行研究結果もございますが、いずれも被験者が大学生で、小中学生の頃に一人一台端末が整備されていない世代でもあり、学習スタイルに対する慣れの影響も少なからずあるという点がこちらの中で指摘されてございます。
 これを受けまして、次のページ、31ページ目でございますが、こちらにありますとおり、タブレットやデジタル教科書の活用に慣れている小学生で、記憶、理解度に関する紙とデジタルの比較調査を行い、記憶テスト、理解テスト、いずれの場合も、デジタルと紙とで同等の結果が得られているといったようなデータもございます。
 また、次のページでございますが、32ページですけれども、埼玉県の学力・学習状況調査のデータを用いまして、紙の教科書とデジタル教科書の学力の伸びを比較しましたところ、デジタル教科書につきましても紙と同等程度の教育上の効果が見られたというデータもございます。
 また、次の33ページには、学習者用デジタル教科書やICT機器を積極的に活用しております地域あるいは学校からヒアリングした結果をまとめたものでございまして、こちらの中では、デジタル教科書の積極的な活用によりまして、全国学力・学習状況調査の平均正答率の向上など、よい結果を感じているケースがある一方、学力が低下したというケースはございませんでした。
 34ページを御覧いただければと思いますが、こちらは、東北大学とつくば市の共同研究で、家庭学習でデジタル教科書を学習上意味のある形で操作していたと推測される生徒は、音読課題の得点や定期テストの成績が高いという結果が出てございます。
 35ページでございます。こちらは、小学校の国語科において、1年間にわたってデジタル教科書を使った場合、使わなかった場合と比べまして、使った場合は、学力調査の得点が大きく向上する結果が得られたという研究結果でございます。
 続いて、参考資料4を御覧いただければと思います。
 こちらの資料は、これまでのワーキンググループにおける意見概要をまとめたものでございまして、赤字部分は第2回にいただいた意見を追記したものでございますので、御確認いただければと思います。
 続きまして、参考資料5を新たに御用意してございます。
 こちらは、諸外国におけるデジタル教科書や教材の使用状況についてまとめたものでございます。
 こちらは、また御覧いただければと思いますが、そもそも法令で教科書の定義を定めていないような国も多くございまして、日本のように教科書として紙の図書のみ認めた制度となっている国がほとんど見られないという状況ではございます。幾つか簡単に紹介いたしますと、例えば、2ページにございますように、韓国では、教科書の定義として、「学校で児童生徒の教育のために使用される、児童生徒用の書籍、知識情報化技術を用いた学習支援ソフトウエア、その他録音・動画等の電子的著作物」ということで、かなり広い概念となってございます。
 その韓国では、2015年から、全ての学校でデジタル教科書の使用が解禁されて、25年からはAIによる学習支援機能が搭載されたものが導入される予定となっております。
 また、25ページを御覧いただければと思いますが、同じくデジタル教科書の活用が進んでいるエストニアにつきましては、法律による教科書の定義はないところでございますが、主たる教材として、教科書を中心に授業が展開されておりまして、この国では、紙媒体ではなくてオンライン教材が主流になっているというふうに承知してございます。
 また、26ページ、次のページにございますように、2018年から全ての小中学校を対象として、教科書・ワークブック・エクササイズブックの機能を兼ね備えたデジタル教科書の無償使用が可能となっているところでございます。
 次のページを御覧いただければと思いますが、この国では、2018年にPISAで世界トップクラス、特にヨーロッパでは1位となってございまして、2022年のPISAでも引き続き世界トップクラスということでございます。
 一方、スウェーデンの状況も御紹介いたします。
 スウェーデンでは、法律による教科書の定義はないところでございますが、2011年のナショナルカリキュラムにデジタル・コンピテンスが明記され、自治体レベルでも2010年から一人一台端末の整備に向けた取組が進んで、13年頃には、一人一台の端末が実現しまして、教科書や問題集のコンテンツが全てPDFで配布され、中には紙媒体が廃止となった市もあったということでございます。
 中央政府は学校のデジタル化を優先事項として投資を進めておったところでございますが、2022年の秋の政権交代によりまして、こうしたデジタル化の方針は見直されていると、こうした状況でございます。
 なお、その理由として学力面の影響が指摘されておりまして、PISAの順位を見ると、2011年のデジタル・コンピテンスの明記以降、翌年の12年までは順位を落としておりましたが、15年、18年と順位を上げておりまして、直近の22年に順位が下がったというのがPISAの順位の客観的状況でございます。こうした結果がデジタル化の影響なのかどうかも含めて、さらなる検証も必要ではないかなと思われます。
 参考資料6を御覧いただければと思います。
 前回のワーキンググループで、デジタル教科書のアカウント登録の負担につきまして、様々御指摘がありましたので、事務局のほうで、アカウント登録の負担軽減に向けたこれまでの取組と、民間のベースで進んでいる取組の状況についても御紹介させていただければと思います。
 具体的には、こちらにありますように、デジタル教科書のアカウント登録の登録用のファイルを自動生成して、ビューアでのユーザー登録、ライセンス登録までが自動的に可能となるサービスですとか、その下の別の取組でございますけれども、学習eポータルとデジタル教科書ビューアをLTI連携、LTI連携というのは、ちょっと字が小さくて恐縮ですが、この資料の一番下に米印で書いてございますように、いろいろなツールを簡便に接続することを目的とした技術標準でございます。この標準の下で連携することによりまして、アカウント情報の登録管理を、学習eポータルのほうで行いまして、他方、ビューア側では、アカウント登録をせずに、学習eポータルからのアクセスで利用可能とすると、こうした取組もあるところでございます。いずれも自治体や学校側での利用は無償のサービスと現在なっているというふうに承知してございます。
 2枚目は、こうしたビューアですとか、デジタル教科書ですとか、eポータル、相互の現時点での関係やアクセスのルートについて、御参考として整理したものでございます。
 説明は以上でございます。
【堀田主査】  ありがとうございました。
 それでは、これから御意見をいただきますが、ちょっと確認をしておきます。参考資料4に、このワーキンググループでずっと皆さんに御議論いただいたことを、事務局で常にまとめ、付け足していただいておりまして、今、大分量が多くなってきたところでございます。
 この議論の前提は、参考資料3の先ほど課長が御説明されたところのスライド2番、これがデジタル教科書に関する経緯でございますが、左側が古くて、右側が新しいわけですけれども、今、私たちは、7番のところのワーキングをやっていまして、その直前、これまでは、「当面の間」という言い方で、デジタルと紙を、今、併用するということになっています。この「当面の間」がいつまでかは、予算措置とか、業界の準備とか、技術の進展とか、そういうことで恐らく変わってくるだろうと。なので、当面は「当面の間」としか書けないわけですけれども、その先どうなる方向かと、一挙に変わることはないかもしれませんが、どうなる方向かということについては、先ほど御発表いただいた後藤さんからも、渡部さんからも、先の方向感はちゃんと見せてほしいという御意見はありました。
 なので、現状、学校現場、多少混乱があるとしても、今、一生懸命やられている、そういう学校現場で、今どうしているかという当面の話と、未来、こうあるべきではないかという話を区別しながら、私たちは今、検討しているということでございます。
 その上で、これは多少説明的ですみませんでしたが、御意見を挙手いただいてお話しいただければと思います。挙手ボタンを私のほうで確認しますので、挙手ボタンが挙がった方から御発言をいただきたいと思います。
 時間ですけれども、大体30分ぐらいと思いますので、御発言、よろしくお願いいたします。いかがでしょうか。
 岡本委員、最後のところ、何か付け足しがありますか。
【岡本委員】  ありがとうございます。教科書協会の岡本でございます。
 事務局からいただいている参考資料の中で、最後に、デジタル教科書のアカウント登録に関しまして、発行者ごとといいますか、ビューアごとに登録の仕方等が異なって、現場の皆様に大変御負担をおかけしているところは、まずお詫び申し上げたいと思います。
 その中で、幾つか負担軽減を解消する取組を民間会社なりに取り組んでいるところを例示していただいたというところかと思いますが、補足としまして、二つほど差し上げられればと思っております。
 まず1点目は、デジタル教科書を皆さんがお使いいただく際には、まず、ユーザーの情報を登録する、子どもたちの情報を登録する、それを教科書のライセンスに紐付けるという、この2ステップあるわけですけれども、今回、例示していただいたものにつきましては、その前段、学習者の情報、ユーザーの情報を登録する際の負担軽減を中心におまとめいただいたと認識しております。
 それと、二つ目、教科書のライセンスへの紐付け、こちらにつきましては、現状、一般的には、ライセンスの発行管理は出版社側が行っておりまして、そこに学校様がユーザー情報を紐付けていくという作業をお願いしておりますので、その辺りの段階ごとの作業が現在あるということを補足させていただきます。
 以上です。ありがとうございます。
【堀田主査】  ありがとうございました。
 ほかに挙手、いかがでしょうか。
 細田委員、お願いします。
【細田委員】  先ほど、堀田委員長さんから、現行の学校現場でどんなことが行われていて、どんな努力があるかという議論と、それから、その先どうしていくかという議論と、我々は並行してやってきたわけですけれども、私は、そろそろこの先どうしていくかという辺りの議論に、ちょっとウエートを大きくしていく時期なのかなというふうに思っているわけです。
 と申しますのは、次の学習指導要領がそろそろ本格的に議論が始まってくるというふうに思います。そうしますと、その実施に向けて、新しい教科書をどうするのかということが大変重要になってくる。これも最優先に考える必要があるのではというふうに思います。
 そういった意味から、このワーキンググループでは、まず、制度的にどうするかという議論に焦点を絞っていく時期なのかなというふうに思っております。
 現行の学習指導要領のデジタル教科書の位置づけに関する議論の際には、その当時は、教科書として制度的に使うことができないので、その時点では、そういったものを使っていった効果とか影響に関して十分な知見がなかったわけです。ですから、教科書そのものではなくて、教科書に代えて使用できる特別の教材としてスタートしたというふうに認識しているわけです。
 ところが、時間が経ちまして、もちろんGIGAスクール構想でデジタルのインフラも一気に、世界中こんな例はないくらい一気に整えていただいたわけで、その中で、主体的・対話的で深い学びという現行の学習指導要領を具現化するための武器を様々なところで使いながら、学校現場がどんどん進化しているという状況で、私自身も若い先生方とオンラインで学びを提供している場で一緒にいろいろ議論をしているんですけれども、そうしますと、デジタルの威力といいますか、デジタル教科書の効果は、そういった先生方の議論の中で明らかでありまして、そこを考えますと、前回の議論のとき、前回のデジタル教科書の位置づけに関する検討会議のときからずっと進化しているわけです。
 それで、先ほどの大変有意義な御研究でありますバトラー先生のお話の中にもありましたので、先生方がデジタルを使って、いわゆる生徒に学びを返すという主体的な学びにどんどん実現を、近づいていっている状況だとしますと、ぜひ私は、この実態をしっかり把握して、実態を鑑みて、デジタルを取り入れていけるように、制度としては、紙とデジタルのハイブリッドな形態の教科書を認めていく時期なのではないかなというふうに、最近強く考えているところでございます。ですから、そんな議論を私たちが深めていけるといいなというふうに思っております。
【堀田主査】  ありがとうございました。
 では、この後、中村委員、奈須委員の順番でまいります。
 中村委員。
【中村委員】  つくば市立みどりの学園義務教育学校教頭の中村でございます。本日は、本当に学びの多い御発表をいただきまして、ありがとうございます。
 今、堀田主査のほうからいただきました、今後、私たちとして、どちらがいいかというような方向性を打ち出すという部分において、学校として現状をお伝えしますと、学校は今、デジタル教科書を、子どもたちは、そうですね、大方6割ぐらいはデジタル教科書を好んで使っています。でも、まだやっぱり紙のほうがいい、紙を使っているお子さんたちもおります。その両方に「なんで、紙、使っているの?」と聞くと、「紙のほうが分かりやすいから」というお子さんもいます。逆に、デジタル教科書のお子さんに聞くと、「なんで、デジタル教科書、使っているの?」と言うと、「デジタルのほうが分かりやすいから」、両方「分かりやすいから」という言葉が返ってきます。つまり、その子どもの個性、特性に応じて、自分たちが一番分かりやすい、理解しやすいツールを選んでいるという状況が学校にあります。
 となると、先ほど、細田委員のほうからありましたように、紙かデジタルかということではなくて、自分たちの学びやすい方法を選べる環境になってほしいなというのが学校の思いではあります。
 その中で、一番私が、先ほどバトラー先生の発表の中で、つくば市の歴史にもつながるところがあるんですが、つくば市は、平成20年ぐらいから、デイジー教科書というものを採択しておりまして、それは学校の先生たちが欲しいというふうに、困り感から採択に至ったという経緯があります。
 デイジー教科書は何かというと、特別支援とか支援を要するお子さん、つまり、先ほどのバトラー先生のポイント4のところです、学習障害をお持ちのお子さんの補強をするような機能がついているんです。例えば、色覚の部分であれば、色を反転することができたり、または読み上げ機能があったりというような機能を備えたデイジー教科書を、先生方がやはり学習の支援の必要なお子さんたちに与えてあげたいということで、もう平成20年からつくば市は取り入れてやっています。
 それによって何が起こったかというと、そういうお子さん方が積極的に学びに加わって、主体的に学べるようになったということで、学ぶ喜びを感じているという状況がありました。
 つまり、何が言いたいかというと、先ほどの資料の中にも、つくば市は、データ利活用をしながら、東北大学さんとデジタル教科書の有効性というものを実証研究しているんですけれども、そこでも出てくるように、学習下位層のお子さん方というのは、このデジタルの機能によって、合理的配慮の視点だと思うんですが、学びの意欲、主体性というものを促進されていることは明らかになったということはつくば市で感じているところです。
 そういうことを考えると、デジタル教科書で救われるお子さんが確実にいるということ、それから逆に、紙で学びやすいと言っているお子さんもいるということが学校の現状ということであるとしたら、この先にある子どもたちの学びの未来としては、先ほども言ったハイブリッドであったり、自分の分かりやすい、または、本当にマルチモダルというふうになっている中で、どこの機能を自分としては取り入れていくと、一番効率的に、一番分かりやすく、そして納得感の得られる学びにつながるのかといったときに、選択肢が多いほうがいいかなというふうな現場の私の声になってしまいます、感想になってしまいますが、以上です。
【堀田主査】  ありがとうございました。
 奈須委員、お願いいたします。
【奈須委員】  よろしくお願いいたします。
 今日、伺う中で、バトラー先生の話の中で、例えば、読みということについて、いろいろな複雑な現象が起きているということもありますし、今、中村委員からあったデジタルがいい子もいれば、紙の教科書がいいという子もいるという話があって、私も個別最適とかということをずっとやってきたので、多様性が認められて、それに合わせて選択肢が増えることはいいと思うんですけれども、一方で、慣れということもあって、つまり、紙のものにずっと慣れてきただけかもしれないということは半分あるんですね。システムが変わるときとか、道具が変わるときは、どうしても最初は使い勝手がよくないように感じてしまうんですけれども、慣れると実はそう変わらないという話もあって、これがどうなんだろう。後藤さんの話の中にあったように、高校だと、本当に慣れてしまえばどうということはないのではないかと思いますが、低い学年だと、どうなんだろうとかという話もまた今後出てくると思います。
 一方で、バトラー先生のお話にあったように、今度は入学してくる子どもはデジタルネイティブになってきているので、むしろ平気かもしれない。
 僕らも個別最適な学びでいろいろな教材をつくってきて、紙のものと、デジタルで書き込めるようにしたものの両方をつくってみたんです。高学年の子はデジタルでもいいけれども、低学年は紙のほうがいいんだろうなと最初思っていたんですけれども、低学年の子は、書字がうまくできないとか、きれいに書けないので、デジタルの入力だと比較的簡単にできて、仕上がりもきれいなので、結構好きです。実は慣れの問題で、低い年齢は紙だろうとか、手書きだろうというのは、必ずしもそうではなくて、手書きの入力で認識されて、きちんと活字になってデジタルデータで残るとかというやり方は、結構1年生でも好きですね。その辺りはインターフェースの問題なので、また少しゆっくり考えなければいけないのかなと思っていました。
 それからもう一つ、インターフェースの問題として思ったのは、スクリーンで読むという場合に、コンピューターは原則全部横書きです。日本は、国語科は全部縦書きでやってきたので、これは大きな問題だろうと思っています。デジタル教科書もそうだろうし、デジタル教材もどうなんだろう。これは教科書協会さんとか、渡部さんに伺いたいんだけれども、デジタルにしても、多分、国語は縦書きですよね。教材も教科書も。でも、横書きではいけないのかな、なぜ国語は縦書きなんですかね。
 近年、小学校で説明文を読んだ後、説明文を書くという学習が今入ってきて、とてもいいことだと思っていますけれども、それをコンピューターを使ってやりましょうよと言ったら、コンピューターを縦書きで頑張ってやろうという先生がいたり、横書きではいけないという先生がいたりする。なぜ横書きではいけないのというと、国語は縦書きですからというのが結構現場の感覚であって、いや、さばけた先生は、別に横書きでつくって、どうしてもだったら、最後、縦書きで印刷するんだけれども、そこも別に、縦書きで印刷しなくてもいいのではないですかね。国語科の指導要領に何かそんな規定はなかったように思いますけれども、なぜそうなんだろうというのは大問題で、これ、デジタルが入ってくると、国語科の横書き問題というのがどこかでぶつかってくると私は本気で思っています。
 それから、大きな話で、デジタル教科書、デジタル学習基盤が進んでくると、そちら側から学習指導要領に対する要求というものも出てくるのかなと思っています。細田先生から、今度、指導要領がという話で、これはまだ先の話でしょうけれども、デジタル学習基盤、デジタル教科書を前提として考えた場合に、指導要領はどうしたほうが、より全体としてよくなるのか。ひょっとしたら、もっと細かく明確化したほうが質のいい教材がたくさん供給できるのか。逆に、もっと基準性を緩めて柔軟性を上げたほうがいいものができるのか、あるいは、いい学びが保障されるのか。
 先ほど、バトラー先生のおっしゃった、デジタルだとプロセス指向やオープン指向ということができやすい、あるいは、そちらに向かうような知識観になっている、というお話がありましたが、すると、どちらかというと、基準性は緩めるというほうが、あるいは柔軟性を高める、裁量権を拡大するということが指導要領で実現されたほうが、デジタルはできることが増えて、結果的に子どもの学力の豊かな保障ということにつながるのかなとも思いますけれども、その辺、どうなのでしょうかね。その辺、どうなのでしょうかということが、ここでも議論が進むと、あるいは、それぞれのお立場から、いろいろな御見識が得られると、指導要領の改訂作業にも、いい情報量になるのかなと思って伺っていました。
 以上です。
【堀田主査】  ありがとうございました。
 今の御意見は、私たちが今まで学習基盤として普通だと思っていたものはそれしかなかったから、それでずっとやってきたわけだけれども、今、ある意味、学習環境が豊かになって、山内先生も御発表いただきましたけれども、いろいろな支援がデジタルでもできるようになってきたときに、さて、私たちが今まで当たり前だと思っていたことが、本当にそれだけでいいのか、これまでのやり方を場合によっては子どもに強要するような形であってはならないのかもしれないということを前提に次の教育課程を検討していくことも考えなければいけないのかもしれないということかと思いました。ありがとうございました。
 では、阿部委員、お願いします。
【阿部委員】  私の学校では、前回もお話ししたように、国語のデジタル教科書を使って特に効果を実感してきています。子どもたちの学習の意欲はもちろん、考える力や書く力、こういうものが圧倒的についたなと思っていますので、これが今は「教材」と呼ばれて教科書ではないために、学校か保護者が費用を負担して買っていかなければならないというのはとても矛盾を感じています。
 また一方で、とっても便利なので、先生たちの負担軽減や、教え方の技術みたいなところでも一役買っていくと思いますので、デジタル教科書を「教科書」とまずは呼んでほしい、呼ぶべきと思っています。それで初めて全国で使われるようになっていくのではないかなと思います。
 私たちが育てているのは、まさにデジタルネイティブな子どもたちなんですね。はじめてつかまり立ちをしたときに、テレビの前で、手でスクロールしてしまうみたいな、そんな話をよく聞くんですけれども、そういう子どもたちを育てているわけで、その子どもたちからデジタルを遠ざけるというのはとてもナンセンス。この子たちには、デジタルや端末と上手に付き合ったり、上手に活用したりするということを身につけていってほしいなということを心から思うところです。
 また一方で、授業の在り方も変わってきていて、これまでは一斉に知識を教え授ける、いわゆる寺子屋方式、そういうふうな教育が一般的でした。だけれども、これからはそうではなくて、子どもたち一人一人に思考力とか表現力とか判断力をつけていこうよ、互いに学び合おうよという時代になっていて、授業のスタイルそもそもが変わっていくという変革を求められているところです。
 今回の改訂でデジタル教科書が教科書と認められないことになれば、また10年遅れてしまって、この10年間は、多分、取り返しのつかないことになるのではないかなと思います。世界から見ても、大きく遅れをとっていくことになるのではないかなというふうに思います。
 ただ、デジタル教科書を認めてほしいと言いましたけれども、これ、デジタルを100にしろと言っているわけではない、紙をゼロにしろと言っているわけでもない。それぞれ紙には紙のよさがあるし、紙にしかできないことはあるわけです。
 例えば、本校では、端末の持ち帰りを推進するときに、せっかく持ち帰るんだから、宿題は全て端末で、とやった一時期がありました。そうすると、やっぱり弊害はありました。1年生や2年生は、しっかり鉛筆を持って筆圧をかけて書く、こういう経験がどうしても必要なんですけれど、その経験する時間が少し減ってしまったという、そういうことがありました。今は、そういう反省を生かして、低学年も高学年もそうですけれども、必要なときに持ち帰るということに変えています。
 ですので、例えば、算数では、コンパスとか定規とかを使って作図するとか、それは紙でしかできないし、紙のほうが有効です。今でもそういう単元は、先生たちは大きな模造紙を持って教室に出かけていっていますので、それぞれの子どもの発達段階とか、学習する内容や単元によって、紙とデジタルを使い分けていくということが望ましいと思います。
 また、紙とデジタルで全く同じ内容のものを教科書として用意するというのは、これも自分としてはナンセンスかなと思っています。全く重複するのが無駄だと思うわけです。紙とデジタルのいいところ取りをして、先ほど細田先生はハイブリッドとおっしゃいましたけれども、そういうものが本当にいいのではないかなと思います。ゼロと100ではない、その間のちょうどいいところに着地できることで、今、教科書はどんどん重く大きくなっていますよね。ここには、コラムだとか、発展だとか、できればこれも載せたいというものがどんどん含まれているわけです。そういうものはデジタルに譲ればいい。そういうことで個別最適な学習、発展をどんどんやりたい人は、どんどんデジタルで学習できていきます。一方で、どうしても必要なものは紙で、そうすると、紙の教科書もどんどん薄くなっていって、私はやがてはリーフレットぐらいになればいいなと思っていますので、そんなふうに、紙のいいところ、デジタルのいいところが、ちょうどいい間で着地できると、ランドセルも軽くなっていいのではないかなと思います。
 以上です。
【堀田主査】  ありがとうございました。
 今、挙手がたくさん挙がっていまして、残り時間を考えると、皆さん、手短にお願いしたいと思います。この後、松谷委員、太田委員、岡本委員の順番でお願いし、最後に中川主査代理にお話しいただければと思います。
 では、松谷委員、お願いします。
【松谷委員】  私立中高連の松谷です。よろしくお願いします。
 私から2点。1点は、私立中高の実態調査を8月に実施しまして、生徒用のデジタル教科書の整備状況についてお知らせしたいと思っています。
 高等学校では、1,287校で導入が24.9%というところ、それから中学校が、730校の回答の中で54.4%が導入しているという状況でございます。
 導入校の課題としては、やはり、中高同じなのですが、コンテンツやアカウント管理等で教職員対応が煩雑化するということが問題点ということで学校から挙がっているということ。
 それから、未導入の学校はどういうことかというと、やはりデジタル教科書が価格が高いというのが圧倒的で55%ぐらい、中高は一緒だという、そういったことで御報告したいと思います。
 もう1点は、私の意見も含まれますけれども、学習指導要領で探究学習を本校でも推進しているし、私学でも多く、デジタルというか、パソコンを使っての授業を展開しています。そういう中で、やはりパソコンを学校で使っている効果というのは、非常に思考力とか判断力・表現力をつける効果があると思います。それから、私どもの公開授業も全て探究学習で行いました。その探究学習でやったときに、それぞれ生徒が課題を決めてやっていて非常に面白かった、生徒が生き生きしているということが挙げられたということ。
 本校の中でも、数名は、昔あった講義型の先生については、やはり生徒が眠くなったりして、理解度が十分な状況でなく、この探究型学習ということに、非常に思考とか表現というものが自分で学びができてきている状況ではないかなと思います。
 そういう中で、これからの創造力ということをつくっていくためにはどうしたらいいかということが課題だと思うので、そういった意味では、このデジタル教科書が非常に有効性があるのではないかというふうに、知識・技能だけではなくて、そういったことは役立つのではないかというふうに考えています。
 私は、極論ではないですけれども、紙資源がなくなっている状況の中で、やはり一つのパソコンを使っての中に、全部各教科が一緒に一つに集約されて、生徒が自由に使える、それから、それ以外の補助教材についても、そういったものも使えるような、そういったものが最終的に出来上がってくることが日本でも必要ではないかと思います。
 オーストラリア、幾つも文科省さんで調べていただきましたけれども、オーストラリアでは、それをデータとして進学にも使っているし、将来の、どういったところまでいっているかというところも一つのあれで教育省のほうで把握をしているんです。そういったことも含めて、日本でどうするかというのはこれからの議論だと思うんですが、そういった方向で新たにこのデジタルを進めていくべきだなというふうに考えております。
 以上です。
【堀田主査】  ありがとうございました。
 太田委員、お願いします。
【太田委員】  日本PTA、太田です。今日はありがとうございます。
 ここ何度か議論に参加させていただきまして、いろいろな意味での学びの効果というのはやっぱりすごく大きなものがあるんだなというふうに理解ができました。
 特に個別最適な学びという意味での障害を持つ子、学習障害を持つ子、また、外国語に母国語を持つ子、こういう子たちが切り離されることなく一緒に勉強ができるという意味では、大変すばらしいツールだなというふうに思いました。
 あと、いろいろな場面で教員の役割が変わるとか、教員の指導力を向上させないといけないとか、そういう言葉がいろいろ出てくるんですけれども、今こういう言葉一つ一つがまた先生方の精神的なプレッシャーというか、そういうところにつながらなければ……。業務改善も進んでいるところもありますし、こういうことを使うことが逆に先生方の業務の簡素化につながるとか、ちょっと教科書とは別かもしれませんけれども、例えば、テストの採点がすごく楽になるとか、そういうところももっと打ち出すことで、何より学校の理解が進まないと進んでいかないことだと思いますので、そういうところもどんどんPRしていけばいいのかなというふうに思います。
 私、一貫して申し上げておりますけれども、やはり保護者の理解という意味で、私自身もまだデジタル教科書を使った授業がどういうものかと、まだぴんと来ていないところがあります。私ですらこうなので、ほとんどの保護者がそうなのではないかなというふうに思います。「家庭学習」という言葉もありましたので、ぜひ保護者のほうにもこういうところをしっかりと理解していきながら、一緒になってこの制度がうまく進むようにしていければいいのかなというふうに思います。
 以上です。
【堀田主査】  ありがとうございました。
 岡本委員、お願いします。
【岡本委員】  今日は大変勉強になるお話をいろいろ聞かせていただき、ありがとうございました。
 山内先生のお話を伺っていて、コンテンツとシステムが融合されているというのは非常にすばらしい御研究をされているなというふうに感じまして、教科書、それから教材、それからその他のツールをうまく連携させて、それぞれが役割分担をしていくという必要を強く感じました。ありがとうございます。
 それと、バトラー先生からは、お話の中で、デジタルと紙の二元論はもう時代遅れというようなお話も伺えて、非常に刺激的でした。教科書の発行者といたしましては、デジタルの特性、それから紙の特性、両方効果を考えてつくっていく必要があると感じております。ありがとうございます。
 その場合、ほかの方々からありましたように、利用する側からすると、紙もデジタルもあって選べるのがよいというふうに私も理解しているところですけれども、実際につくる側からすると、教科書の場合、今、検定の制度ですとか、採択の制度という、いろいろな、ある意味規制がありまして、また、完全供給という責務も負わされている中で、紙もデジタルもそれぞれの特性を生かした制作を全て自前でやろうとすると、従来のスケジュールで間に合うのかというのは非常に不安なところもありまして、例えば、次の小学校で考えますと、教科書の使用が、今のところ2030年頃と見ているわけですけれども、その場合、採択はその前年の29年、検定がその前年の28年、そうすると、教科書づくりというのは普通1~2年かけますので、26年から27年に行うということで、24年が終わるこの段階で、もう時間がないというのが正直なところです。
 さらに紙もデジタルもそれぞれの特性を生かしてとなると、さらに時間が従来以上にかかってきますので、早めにこの議論を少し方向づけていただく必要があるのかなと思っております。
 それから、デジタル教科書を今度検定していくとなったときには、どこまでを検定の範囲にしていくのかということも非常に気になっておりまして、例えば、紙ベースですと表現できない動画とかアニメーションなどはどうなのかとか、先ほど山内先生からありましたシステムの部分はどうなのかとか、どこまでを教科書の検定の範囲とするのかというところも発行者としては非常に気になっているところです。
 また、先ほど、デイジーの御紹介がありましたけれども、学習者用のデジタル教科書にも、読み上げの機能ですとか、リフローの表示などが、今、標準でついているような実態になっておりまして、こちらについては検定の対象にするのかとか、その辺の線引きを早めにしていただいて、次の教科書づくりに取りかかれるように、この議論を進めていただければありがたいなと思っております。
 以上です。
【堀田主査】  それを議論しているつもりなんですけれども。
【岡本委員】  すみません。
【堀田主査】  では、最後に、中川主査代理、お願いいたします。
【中川主査代理】  四名の方々の御発表、大変参考になりました。特にデジタル教科書の存在意義は、単にデジタル化することではないというメッセージは、改めて重要であると感じました。
 先ほどの主査の整理でいうと、本ワーキングで今やるべきは、まさに当面と未来をつなぐ地固めというんですか、そこがすごく重要であると思います。現在のデジタル教科書の状況を確認しておきたいと思いますけれども、これ、参考資料3の6ページに、現行制度における教科書と学習者用デジタル教科書の概要という箇所で非常に明確に整理されていると思いますけれども、これによると、デジタル教科書は、教科書でなく教材、教科書の使用義務を代替するもの、検定や無償給与などの対象になっていないとなっています。今、岡本委員が言われたように。これが今のデジタル教科書の位置なわけですよね。しかし、いつまでもこの処遇のままでは議論がもう先に進まないと考えます。誤解を恐れずに言うと、そもそも同じ土俵に乗っていないというふうに私は思っています。
 そこで、デジタル教科書を教科書ときちんと位置づけるかどうかの議論を、もっと進めましょう、主査に言わせると、今やっていますと言われるかもしれませんけれども、という意見です。
 文部科学省の委託研究の調査結果では、これも資料3の33ページ目のところに、積極的に活用している地域・学校における状況などによると、少なくとも紙の教科書と比較しても、学習効果によって何ら遜色がないと示されている。この何ら遜色がないと示されているというのは、私はすごく重要だと思うんです。前回の本ワーキングの事例発表では、さらにデジタルで開く学びの姿の具体も示されていました。また、先ほど、細田委員、阿部委員、それからまさに岡本委員からも、積極的な検討についての御意見があったと理解しています。
 以上を踏まえて、デジタル教科書も教科書としての位置づけを明確にすることの検討について、次期学習指導要領が一つの私は節目になると思っていますので、それを逆算すると、さらに踏み込んだ制度的なデジタル教科書も教科書としての位置づけの検討を、本ワーキングで加速してこれを議論すべきであるというふうに改めて思います。
 以上です。
【堀田主査】  ありがとうございました。
 たくさん活発な御意見をいただきましたが、時間の関係もありますので、ここまでとします。
 有識者の方々にお越しいただきましたけれども、有識者の方々の御意見を交えた議論には十分なることができません。申し訳ございませんでした。
 私、主査ですけれども、今日お話しいただいた中で言えば、バトラー先生の子どもたちの学習方法が変化していて、例えば、同時並行型みたいなことがあるんだということをおっしゃっていただき、学習の場面でよく見かけるわけですけれども、それを見た私たちは、「この子は落ち着きがないな、目移りして」と思っているかもしれない。これは新しい時代の学び方の一つの現れなのに、従来の学びを前提として集中力がないと捉えてしまいがちかもしれない。私たちのデジタルネイティブの子どもたちを見る目も、決して昔の押しつけではならないというふうに思います。あと、使い方次第だというおっしゃり方をされておりまして、紙かデジタルかというコンテンツ自体の提供モードの話と、それを利用してどのように学びを進めるか、深めるか、あるいは学習指導するかという話が単純化されて議論されているように思うので、これはデジタル教科書はどうあるべきかという話を超えて、どのような教育課程のもとで、どのような教育方法が多様に認められ、子どもたちから見て学びやすい環境になるか。そこに紙やデジタルがどう機能するのかという、そこが第一義なのだろうなと思います。
 そのときに、山内先生がおっしゃった、コンテンツ部分だけではなくて学びを促進するようなシステムの支援というのは十分あり得るだろうと思うし、これはLibryの後藤さんたちがやられてきたことかなとも思いますので、この辺りをどういうふうに捉え強化していくかというのが次なるデジタル学習基盤の大事なところなんだと思います。
 それを検討していくには、このデジタル教科書のワーキングだけでは難しいのかなと思いますし、岡本委員がまさにおっしゃったけれども、現行の発行者にそれを全部委ねてしまうのは、それは非常に負荷が高いということであれば、別の方法も含めて、私たちは制度的な見直しをしていくということも必要であろうと。スケジュール感をいろいろおっしゃっていただいて、焦りがあるということも分かりましたので、積極的に「当面の間」以降のことを検討していくということも進めていくということかと思っております。
 今日は、たくさんの御意見をいただきまして、また、現在で言えば、参考資料4を付け足す形で、また皆さんに御提示差し上げたいと思いますので、だんだん集約に向かっていく方向で頑張ってまいりたいと思いますので、また今後とも御指導いただければと思います。
 それでは、今後のことにつきまして、事務局からお願いいたします。
【西田教科書課課長補佐】  次回のデジタル教科書推進ワーキンググループの日程につきまして、追って事務局から御連絡させていただきます。
 以上でございます。
【堀田主査】  ありがとうございました。
 今日は、四名の方々に御負担をおかけしましたが、よい議論をいただけたかと思っております。どうもありがとうございました。
 それでは、今日の会議はここまでといたします。皆さん、ありがとうございました。
 
―― 了 ――

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