令和6年9月4日(水曜日)10時00分~12時00分
文部科学省
※対面・WEB会議の併用(傍聴はWEB上のみ)
【西田教科書課課長補佐】 それでは、ただいまから、中央教育審議会初等中等教育分科会デジタル学習基盤特別委員会の第1回デジタル教科書推進ワーキンググループを開催いたします。
本日は御多忙の中、御出席いただきまして、誠にありがとうございます。本日はワーキンググループ第1回目の会合でございますので、冒頭の議事進行は、私、教科書課課長補佐の西田が務めさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
まず、本日の会議開催方式と資料について御説明申し上げます。本会議は、対面とオンラインのハイブリッド形式での開催でございます。オンラインで参加されている委員もいらっしゃいますので、会議を円滑に行う観点から御発言時以外はマイクをミュートにしていただきますようお願いいたします。カメラにつきましては、御発言時も含めて、会議中はオンにしていただくようお願いいたします。委員の皆様には御不便をおかけすることもあるかと思いますが、どうか御理解のほど、よろしくお願いいたします。
次に、資料の御確認をさせていただきます。本日の資料でございますけれども、議事次第にございますとおり、資料1から6、加えて、参考資料が1から3となっております。対面で御参加の委員には紙でもお配りしておりますが、お手元の端末でも御覧いただけます。御不明な点がございましたらお申しつけいただければと思います。
第1回の会議でございますので、開催に先立ちまして、本日出席している幹部の紹介をさせていただきます。
委員正面、望月初等中等教育局長。
【望月初等中等教育局長】 よろしくお願いします。
【西田教科書課課長補佐】 森学習基盤審議官。
【森学習基盤審議官】 よろしくお願いいたします。
【西田教科書課課長補佐】 日向審議官。
【日向審議官】 よろしくお願いします。
【西田教科書課課長補佐】 教科書課から黄地課長でございます。
【黄地教科書課長】 よろしくお願いします。
【西田教科書課課長補佐】 それでは、初等中等教育局長の望月より、委員の皆様に御挨拶申し上げます。
【望月初等中等教育局長】 改めまして、委員の皆様、どうもこんにちは。第1回目ですので、私から一言御挨拶とお礼を申し上げたいと思っております。
大変御多忙の中、この委員をお引き受けいただきまして、また、本日、こうした形で御参加いただきまして、ありがとうございます。リモートで御参加いただいている委員の先生方、どうもありがとうございます。
御承知のとおり、教科書は、子供たち、児童生徒にとって最も一番身近な存在である教材でございます。ずっと戦後、教科書に関するいろいろな話題は尽きないわけで、それだけ、子供たちのみならず、社会的にも、それから、保護者の国民の皆様、非常に教科書というものを大切に扱う、物自体というより中身自体ですけど、大切に考えて、そのありようというものについては非常に注目されるところでございます。今後もやはり教科書が日本の大きな意味での学力の水準の維持あるいは底上げ、それから、全国、どういう形でも先生方がいろいろ工夫した授業展開をするときの最も大きな教材としての役割を果たしていくということは、これは変わりはないというふうに思っています。それを前提として、これまでデジタル教科書というもの、時代の変化、あるいはGIGAスクール構想も国策として進めていますけども、そういう時代、社会の変化に応じた教育のありようというのも考えていかなきゃいけないと考えております。
教科書についても、学習の仕方にも大きく関わってくるのでございますけども、この進めているデジタル教科書というものについて、次の新しい学習指導要領の検討ももう遠からず始まるわけでございます。そうしたことも見据えて、また、1人1台端末がしっかり普及した新しい学校づくりという環境の中での生かし方と、つまり、学びを充実させていくためにどう教科書を活用していくか、デジタル教科書も入れていくかということ、また、進めていくかということについて、多角的に御支援、御検討いただければと考えております。
これまでも私も教科書行政に関わっていて、堀田先生のところにもそのときからお世話になっていて、委員の先生方にはそれぞれの場所で、いろいろな教育行政政策について御指導、また、御提言もいただいておりますけれども、ぜひデジタル教科書についても、学校教育全体の質を高めていくという大きなフレームの中で、最も主要な教材としての位置づけを堅持しつつ、御検討いただければと思っております。どうぞよろしくお願い申し上げます。
【西田教科書課課長補佐】 ありがとうございました。
それでは、引き続きまして、資料1と資料2を用いまして、まず、本ワーキンググループの趣旨等につきまして御説明させていただきます。その上で、資料3に基づいて、ワーキンググループの委員の皆様を御紹介させていただきます。
資料1を御覧ください。本年7月12日にデジタル学習基盤特別委員会で決定されたデジタル教科書推進ワーキンググループの設置紙でございます。
設置の目的でございますけれども、令和元年度からデジタル教科書が制度化されまして、活用が進んできておりますけれども、次期学習指導要領の検討やGIGAスクール構想第2期を見据えつつ、デジタル教科書の効果・影響を検証し、児童生徒の学びの充実の観点からその在り方と推進方策について検討を審議するというのが目的とされております。
2ポツ、主な検討事項につきましては、デジタル教科書の在り方と推進方策について、それを踏まえた制度的な位置づけについて、その他となってございます。
次に、資料2を御覧ください。本ワーキンググループは、初等中等教育分科会デジタル学習基盤特別委員会の運営規則にのっとって運営していくことになります。本規則第2条第2項に基づきまして、堀田委員長の御指名により、本ワーキンググループの委員は、資料3のとおりとなっております。
お名前の御紹介のみさせていただきます。
阿部千鶴委員。太田敬介委員。岡本章宏委員。中川一史委員。中村めぐみ委員。奈須正裕委員。浜佳葉子委員。細田眞由美委員。堀田龍也委員。松谷茂委員でございます。
また、本規則第2条第3項に基づきまして、本ワーキンググループに主査及び主査代理を置き、特別委員会の委員長がこれを指名することとなっておりますけれども、その御指名により、本ワーキンググループ主査には堀田委員に、それから、主査代理には中川委員に御就任いただくことになっております。
続きまして、ワーキンググループにおける会議の公開について御説明させていただきます。運営規則の第3条によりまして、ワーキンググループにつきましては公開を原則としております。また、会議の傍聴につきましては、運営規則第4条によりまして、会議を撮影、録画、録音する場合には、事務局が定める手続により申請するとともに、主査の許可を受ける必要がございます。傍聴の皆様におかれましては、あらかじめ御承知おきいただければと存じます。
それでは、ここからの議事進行につきましては、堀田主査にお願いしたいと思います。堀田主査、よろしくお願いします。
【堀田主査】 東京学芸大学の堀田でございます。皆さん、これからよろしくお願いいたします。私は、このワーキングの一つ上にありますデジタル学習基盤特別委員会の委員長も拝命しております。これは中教審の中の位置づけになりますが、これから新しい教育課程等の検討が始まるタイミングにおいて、デジタルの学習基盤、すなわち子供たちを取り巻く学びの環境、これをどのような在り方で進めていくのかという検討を一つ上の委員会では検討しているわけでございます。その中でやはりデジタル教科書はデジタル学習基盤の非常に重要なアイテムであるということで、このワーキンググループがこのたび設置されたということになります。ワーキンググループの名称は「推進ワーキンググループ」ですから、デジタル教科書を利活用していくのだ、それに合わせて在り方を考えていくのだ、制度的なことを見直していくのだという、そういうワーキングとなります。
そもそもデジタル教科書に関しましては、先ほど局長おっしゃったとおり、平成27年、2015年に、「デジタル教科書」の位置づけに関する専門家会議、有識者会議ができました。その頃、だから、約10年近く前です。その頃は、紙の教科書だけが教科書とみなされていたわけで、デジタルの教科書を使ったときに、それは教科書を使ったと言っていいのかどうかという、そこからの議論でした。結果として、紙の教科書でしっかりと検定されて、質保証されたものをデジタルにしたものについては、それを利用することもみなすことができると。あとは、どのぐらいの範囲でとかいう、そういう附帯条件はつきましたけども、そういうようなことが検討され、それで学校教育法の改正につながる形でスタートしたわけです。その後、デジタル教科書なるものが今後どうあるべきかという検討会議があり、そして、GIGAスクール構想がやってきて、いよいよ子供たちが端末をみんな持つことになり、利活用が促進され、そのほかにも学習のためのデジタルコンテンツがいろいろ出てきていて、その中には、例えばAIとかを使った学習に有効なデジタル教材等もあるわけですけど、何よりそれらの中心的な位置づけとして、質保証された教科書のデジタル版、デジタル教科書がやはり存在するべきであると。これがどのような役割をこれから果たしていくかというのを実証研究、調査研究ですね。これは中川先生中心に進めていただいてきましたけど、次第に成果などが明らかになってきたということでございます。
そういうタイミングで、今回、学びの充実と局長もおっしゃいましたけども、子供目線で考えたときの学び、これを私たちはどうやって個に応じながら、多様性に対応しながら提供していくのかといったときに、このデジタル教科書なるものがこれからどうあれば子供たちのためになるのか、有効な指導の一つのツールになるのかというようなことをしっかりと検討してまいりたいと思います。
今回の検討事項は、先ほど事務局から御説明ありましたように、在り方と推進の方策、それを踏まえた制度的な位置づけについてということですので、今までの制度を変えないでデジタルでもいいと言っていた時代から、もう一歩踏み込んで、新しい枠組みをどうやってつくり始めるかという検討になるのかなというふうに思っております。そういう意味では、それぞれの持ち場でいろいろお取り組みいただいております委員の皆さんのそれぞれの立場からの見解をしっかりとここで述べていただきまして、それを基に新しい方向性を打ち出していければと思うところでございます。
長くなりましたが、私の挨拶はここまでとさせていただきます。ありがとうございました。
それでは、ここから議題に移らせていただきます。本日は第1回目ですので、議題1として、議題1というのは「学習者用デジタル教科書をめぐる状況と本ワーキンググループにおける検討事項について」ということですけど、これについてまずは事務局から、これまでの私たちのデジタル教科書に関するいろいろな制度的な流れについて整理していただいておりますので、事務局にこの御説明をしっかりとしていただき、私たちはこれを頭に入れて、これを踏まえて、今後のことを検討していくということになります。もう一人、教科書協会のデジタル化専門委員会の委員長である岡本委員に、今日は教科書協会からの現状あるいは課題について御説明をいただくということになります。これが今日の議題1で、ここにつきましては、それぞれの説明に対しての質疑応答を取りたいと思います。その後、議題2として自由討議、今日は1回目ですので、それぞれの立場から、それぞれのお考えをしっかりと述べていただくということにしたいと思いますので、そちらでそれぞれの御意見はしっかりと拝聴したいと思います。ですので、議題1のところでは質疑にとどめたいというふうに思うところでございます。
では、議題1に参りましょう。事務局、まずよろしくお願いいたします。
【黄地教科書課長】 よろしくお願いします。教科書課長の黄地でございます。お手元の資料4を御覧いただければと思います。まずこれに基づきまして、デジタル教科書をめぐる状況につきまして、先ほど堀田主査のほうからも大きな流れを御説明いただきましたので、それを補強するような感じで、かいつまんで御説明させていただければと考えております。
まず1ページを御覧いただきますと、これまでの主な議論と制度改正ということで、先ほど御紹介いただきましたけども、まず法改正、この赤のところを御覧いただければと思うんですけれども、2018年に学校教育法を改正しまして、紙の教科書の全部をデジタル的に記録したデジタル教科書がある場合には、紙の教科書に代えて使用できると、こういった法改正が行われたところでございます。また、さらにその後、様々な推進方策を検討会議で御議論いただく中で、右の赤字のところを注目いただければと思いますが、デジタル教科書、それまでは各教科の授業時数の半分未満しか使えないという制限がございましたが、これを撤廃することになりましたということでございます。さらに議論を進めていただきまして、現状に至っているところでございます。
現状は、教科、学年を絞って、令和6年度から段階的に導入するということで、また後ほど御説明しますが、小5から中3を対象に英語、算数、数学を導入するということで、当面の間はデジタルと紙を併用するということになってございます。デジタル教科書の考え方といたしまして、こちらの資料、これまでの中教審の議論でも使用させていただいた資料でございますが、デジタル教科書の一つの強みといたしまして、多様なデジタル教材や多様な学習ソフトウェアとつながり合うということと、まさにその一つの結節点として質が担保された主たる教材としての強みがデジタル教科書にあるところでございます。こういった性格を踏まえますと、赤で書いてございますように、紙の教科書の内容をベースとしたシンプルで軽いものがいいのではないかということでこれまで御議論いただいていたところでございます。
こちらの4ページは、今の御説明をさらに詳しくまとめたものでございます。
次の5ページが、これまでの主な議論の、主な内容を紹介させていただいているところでございますが、中ほどの令和3年の検討会議の第一次報告の太字にもございますように、まさに今回のワーキングで御議論いただく内容かと存じますが、今後の教科書制度の在り方について、デジタル教科書と紙の教科書の関係ですとか、検定などの制度面も含めて十分な検討を行う必要があるということですとか、その下の箱にございますように、令和5年の会議でも、制度面を含めてさらなる検討が必要であるということが打ち出されてきたところでございます。実際、教科書と学習者用デジタル教科書はどのように異なるかということでございますが、一言で言えば、いわゆるデジタル教科書は、教科書の代替教材としての位置づけでございます。したがって、左の欄の教科書にありますような、使用義務、検定、無償給与、定価認可などの項目については、デジタル教科書のほうはそのまま適用されるものではないということでございます。すなわち教科書と全く同じ内容でございますので、ほぼ同じような使われ方が想定されているところでございますが、教科用図書そのものではないということで、こうした制度上の違いがございます。
次のページを御覧いただければと思いますが、では、実際、デジタル教科書はどういうものなのかということで紹介してございますが、今、左にありますような紙の教科書が電子化されて、端末でも見られるようになっているということでございますが、それにとどまらず、下に機能例と書いてございますように、様々な機能がございます。
具体的に申し上げますと、8ページでございます。詳細は全て御説明できませんが、例えば1ポツの拡大機能、2ポツの書き込み機能など、例えば1番から12番ぐらいまでにありますように、様々な機能がデジタル教科書についてございます。さらには、10ページにございますように、例えば13番から16番にありますように、ほかのデジタル教材ともリンクすることによって、一層効果的な活用が期待されるところでございます。
一方で、こうしたデジタル教科書がどのぐらい発行されているかということで、11ページでございますが、小学校、中学校については、ほぼ全ての教科で発行がなされてございます。高校についてもかなりの割合で発行されているという状況でございます。
一方で、これを進める観点から、国としても国費でもって提供してございまして、現状はこちらにございますように、英語は100%、算数、数学は、令和6年度は55%ということでございます。ここには書いてございませんが、それ以外の教科につきましても、実証事業を通じて全国約200校弱の学校に配付させていただいているところでございます。
一方、国が提供しているものとは別に、民間の販売分も共有されているところでございますが、こちらの数字にございますように、小学校、中学校ともまだ1%程度にとどまっているという状況でございます。その多くもデジタル教材とのセット販売の割合が高いという状況でございます。
続いては、実際活用されているかどうかということでございますが、こちらの円グラフあるいは教科ごとの棒グラフにございますように、この青が活用されているという割合でございますが、過半数の教師が4回に1回程度は使用していると。一方で、毎回使用しているという割合は、教科によってもばらつきございますが、10%弱あるいは10%を超えるぐらいかなという状況でございます。
ただ、一方、この活用状況については年々上がってございまして、15ページを御覧いただければと思いますが、令和4年度、令和5年度ということで、少しずつではございますが、推移していますが、今後の推移を考えますと、これからもGIGAスクールの進展に合わせて上がってくるのではないかなと見込んでございます。
といいますのも、16ページにございますように、この棒グラフは、以前からデジタル教科書を使ったことがあるという回答をされている方ほど実際の授業でも使用頻度が高くなっていますので、こうしたGIGAスクールが行き渡る中で、こうしたデジタル教科書の使用頻度も上がってくるのではないかなと思います。
17ページも同様に、学習者用端末の使用時間が長ければ、デジタル教科書の使用頻度も高いということでございます。
18ページの資料は、英語の授業についてどれぐらい使っていますかということで、小学校では約8割、中学校では9割、高校では4割以上の高校がデジタル教科書を活用しているということでございます。
一方、子供たちにもどれぐらい使っていますかということで聞いてみました。低学年で、学年が上がるに従って、少しずつその割合が、頻度が少ないという状況が見て取れます。
次の20ページが、デジタル教科書と紙の教科書の使用感ということでございます。左のグラフが全ての調査対象をまとめたもの、右のグラフが特にデジタル教科書をいつも使うと答えた子供たちに聞いたものでございまして、各項目について、紙とデジタル、どちらが使いやすいですかと聞いたところ、こちらの各項目の青字で書いている部分が、デジタルのほうが使いやすいという割合が多い項目でございます。
一方で、赤で書いてある書き込みやすい、自分の学んだことを残しやすいという項目については、紙の教科書のほうが使いやすいといったようなアンケート結果でございます。
続いて、実際、学びにどう役に立っているかというアンケートも取ってございまして、こちらにありますように、いつも使う子供たちは授業内容がよく分かると回答した割合が高いということでございます。
また、22ページは、同様に、いつも使う子供たちは、主体的な学びが行われているというふうに答えている傾向がございます。
23ページは、同様に、対話的で深い学びについても、デジタル教科書をいつも使う子供たちは当てはまると答えている傾向がございます。
一方で、現場レベルでは、このデジタル教科書導入に当たっての様々な課題が指摘されてございます。これは先生方のアンケートで聞いたところ、特に多かったのが、こちらの青印にありますような設定作業ですとか、効果的な活用方法についての情報不足、あるいはログインの手間、さらには授業と関係ない操作に子供たちが目が向いてしまっているのではないかといったような項目が挙げられてございます。ただ、これも令和4年度、令和5年度で比較してみると、年を追うごとにそうした課題感が減少しているという結果が出てございます。
25ページが、学習上の困難を抱える子供たちの教育を担当している先生に聞いた調査結果でございますが、こちらにもいろいろ書かれてございますように、様々な困難のある子供たちに対しても、デジタル教科書のいろいろな機能を活用して、効果的な教育が行われるといった結果が寄せられているところでございます。詳しくはまた後ほど御覧ください。
次の26ページが、学習上の困難を抱える子供に対しては、紙の教科書とは別に、例えばデイジー教科書のような音声教材、あるいは拡大教科書、こういった様々な教材を提供させていただいているところでございますが、特に音声教材は、学習者用デジタル教科書とかなり機能面も近かったりとかしますので、この辺りの違いが分かるようにまとめさせていただきました。
一方、27ページにあるとおり、健康面の影響もこれまで指摘されてきたところでございます。これまで文科省としてガイドラインですとか通知、ガイドブック、リーフレット、様々提供させていただいてございました。また、必要に応じてこうしたものも考えていくことが課題であろうと考えてございます。
これまで、以上がデジタル教科書の状況についての御説明でございますが、一方で、紙の教科書についてもこうした議論をしていく中で、関連して浮かび上がってくる課題があろうかと思ってございます。その一つがQRコードの大幅な増大でございます。各学年を通じて、これまでのQRコードの量が非常に増えているという状況が見て取れます。また、QRコードのみならず、紙の部分についても、こちらにございますように、大判化が進んでございますし、さらに30ページにございますように、ページ数も大変増えているという状況です。この辺りをデジタル教科書の関連でどう考えていくかということも一つの課題ではなかろうかと思われます。
以上を踏まえまして、続きまして、資料5を御覧いただければと思いますが、こうした状況を踏まえて、どのようにデジタル教科書を推進していくかということでございます。
まず1ポツにございますように、デジタル教科書の活用状況をどう捉えるか。さらに、そういった中で学びについてどういう効果がもたらされているか、あるいは今後どういったことが期待できるのか。そうした中で、デジタルと紙のよさ、それぞれあろうかと思いますが、どのように評価するか。また、先ほど障害のある児童生徒などの学習困難の度合いをどのように低減していくか。そうした中で音声教材との関係をどう整理していくのか。また、健康面の配慮をどうするのか。さらには、提供はしているけど、まだ活用が進んでいないという状況をどのように捉えていくのか。また、先ほど、最後紹介しましたように、紙の教科書のQRコードやページ数が増えている状況、こちらをどう評価するのか。こうしたものを総合的に踏まえて、どのようにして推進を図っていくのかというのが1つ目の大きな論点でございます。
2つ目が、1ポツに書いているような御検討も踏まえまして、「当面の間」以降のデジタル教科書の在り方はどうあるべきかということでございます。先ほど御紹介しましたように、紙の教科書とデジタル教科書は当面の間は併用ということになってございます。また、デジタル教科書の法的な性格も、教科用図書そのものではなくて、教科書の代替教材としての位置づけが現状でございます。こうした位置づけについて今後どうあるべきかということでございます。
なお、こちらの枠囲いに書いているのは参考でございますが、令和3年6月の検討会議でおまとめいただいた資料の抜粋でございます。こちらに、今後、紙とデジタル、どのように整理していくかという幾つかのオプションが整理されているところでございます。こうした例示を踏まえて、令和5年2月の中教審のまとめの中では、まずは当面の間は併用していこうということで、英語、算数、数学について順次拡大してきたところでございますが、こうした経緯を踏まえて、今後の具体的な制度設計、さらには、それを踏まえた検定・採択の在り方をどうしていくのかということも2つ目の大きな論点であろうかと考えておりますので、御審議のほどよろしくお願いいたします。
以上でございます。
【堀田主査】 ありがとうございました。ただいま事務局に御説明いただきましたが、先ほども申し上げたとおり、議題2のところで、皆様のそれぞれの御見解を伺いたいと思っております。今御説明いただきました、これまでの系譜みたいなことと、私たちがこれから検討しなければならない事項、2つに分かれていますが、これについて何か質問とかそういうようなことがございましたら、ここで承りたいと思います。
今後、全部のことですが、挙手ボタンを押していただいて、その挙手ボタンをもって私のほうで指名してまいりたいと思いますので、よろしくお願いいたします。御発言ある方いらっしゃいますか。
特になければ、御意見はまた後でいただくとして、時間の関係もありますので、先に進みたいと思いますが、よろしいでしょうか。では、そうさせていただきます。
それでは、続きまして、教科書協会です。教科書協会さん、いろいろ御苦労されて、教科書及びデジタル教科書をつくっていただき、いろいろと現場に提供していただいております。そこのデジタル化専門委員会という委員会がありまして、その委員長をやっていただいている本ワーキングの委員でもある岡本委員から、現状について御報告いただくということとなっております。
では、岡本委員、よろしくお願いいたします。
【岡本委員】 皆さん、こんにちは。よろしくお願いいたします。教科書協会から参りました岡本と申します。
今日は第1回目ということで、教科書課さんからの説明に続きまして、教科書を発行している立場からのデジタル教科書の現状という御説明を差し上げたいと思います。よろしくお願いいたします。
まず初めに、教科書協会というところは、昭和28年に発足した、教科書を発行している会社が集まっている団体でございまして、これまで長らく教科書を学校現場に提供するという形で、日本の学校教育には一定の貢献をしてきたというふうには考えております。教科書というのは今、様々な法律の中で定められている図書になりますので、いろいろな状況について、協会の中でも議論しておりまして、例えば教科書の価格ですとか、それから、先ほどあった検定とか採択のような制度、そういったものにも制約がされておりますし、あと、全ての学校にあまねく教科書を届けるという供給のシステムなども教科書会社に課せられているというところで、そうしたシステムの検討、それから、そのほか著作権に対する対応ですとか、あと、先ほど説明ありました特別支援に関しての対応ということも協会のほうで取り組んでおるところでございます。そうした時代の変化の中で、このデジタル化についても、教科書協会としても議論してまいっておりますので、そうしたところから今日は御紹介できればと思います。
次、お願いします。今日お話しする内容としましては、ここに掲げている8項目、先ほど教科書課さんからの説明と重複する部分はありますけれども、発行者側からの目線ということで御覧いただければと思います。
まず1つ目としまして、教科書の変遷というところに移ります。こちらのグラフを御覧いただきたいと思います。これはデジタル教科書の整備率の経年変化ですが、10年前は、まだ学習者用のデジタル教科書というのが世の中になくて、先生方は、御承知のように、デジタル教科書といえば、電子黒板で先生が提示して使うものでした。それが先ほどお話ありました2019年の法制化があって、デジタル教科書が教科書の代替になるというところを受けまして、教科書の発行者も各社が発行してきたということで、この右側の丸の部分、この5年ほど前の話でございます。そこに続けまして、2021年から学習者デジタル教科書の普及促進、これが文科省さんの事業として始まったことで、学校への提供が急速に進んでいったということになります。これを文書にまとめたのが次のページになりますので、後ほど御覧いただければと思います。
次、お願いします。デジタル教科書の特長も、先ほどお話ありましたが、大きく分けますと、教科書だけで使う機能と、それと、教科書と教材をセットで使う、そうした使い方、大きく2つに分けられます。
1つ目は、教科書だけで使うというものについては、やはり全てのお子さんたちが使うということで、誰にでも使いやすくて、直感的でシンプルという、そういったところを各社で志して、つくり込んでいるというところでして、例えばここにありますように、見たいところを簡単に大きくできたり、紙の教科書でもできるように、好きなところに線を引いたり、文字を書いたりというのもできるような仕様になっていたりします。
それから、ページを一つずつめくっていくというめくり方もありますし、好きなページに飛ぶというようなやり方もできるようにしています。
それから、後で説明しますが、学習が困難な子供たちにも合わせた機能を様々御用意しております。
さらに、各社、教科書づくりは独自性を出しますけれども、その中でも標準化を目指した取組というのも行っています。これも後ほど説明したいと思います。
次、お願いします。それから、教材と一体的に使うということで、学びをさらに質を向上させていくというところですが、例えば、国語ですと朗読ですとか、英語のネイティブ音声ですとか、それから、社会科ですと資料映像が教科書に伴って出てくるとか、理科ですと、例えば実験の器具の操作などが教科書の展開に沿って見られるというところが使いやすさにつながっていると思っております。さらに、算数などですと、こういった立体の図形とか、おはじきを動かす、そういったものも画面上でできますし、アニメーションとか、文書を切り出して構成するといったような様々な機能、これを教材として提供しておりますので、教科書にない部分もしくは教科書を少し改変する部分というところで、これは教科書としては認められませんので、この部分は教材として提供して、一体的にお使いいただくというような形を取っております。
以上、こうした特長があるということでございます。
それから、学習が困難なお子さんたちに関しましては、これまでの御研究を基に、例えば文字の色とか背景の色、これを自由な組合せにすることで見やすいお子さんがいるとか、それから、なかなか文字を読み上げられないお子さんに対しては、音声で読み上げてあげるとか、さらにそれを速度を調節して、慣れているお子さんでしたら速くできるとかそういったふうにいろいろな調整機能がついております。
その次に行きますと、振り仮名をつける。これは漢字、平仮名が混じっておりますので、全ての漢字に振り仮名をつけられる機能ですとか、リフローと言って、画面の中で文字を折り返して表示するような機能、そういったものもつけておりますし、あとは文字の書体を少し太い読みやすい書体に変えるとか、文字そのものを大きくするというようなこともできるようになっていますので、様々な学習の困難を抱えているお子さんたちへの対応ということができるような工夫をしております。
さらに、標準化の取組ということで、これは令和3年度の補正予算で行われた配信基盤の整備ということがありまして、この中で取り組んだことですが、一つは、会社によって、教科書のビューアは、様々な機能、配置、レイアウトがあるんですが、これを各社共通で、基本的な機能については統一して、表示しようということを取り組みまして、今はどの教科書会社のビューアを使っても、同じ基本機能が出てくるような仕様になっております。そのほか、先ほどログインに対する手間というようなお話がありましたけれども、これについても、GIGA端末で使われている、グーグル、マイクロソフト、アップルのOSのシングルサインオンに全て対応しておりますので、そうしたログインに対するお手間も軽減化していると思います。
次、行きますと、ほかにもシングルサインオンが導入できない学校さんにおいても、例えば学習者の情報を登録する際に、CSVに学習者情報を入れるわけですけども、これも各社ばらばらだったフォーマットを一つにまとめて、例えば英語はA社、算数はB社となっていても、同じフォーマットで登録できる。こういった工夫もしております。さらには表示される時間をやはり短くするほうが利便性は向上いたしますので、こうしたデータの軽量化ですね。通常、軽量化すると粗くなってしまうんですけども、それを粗くならずに軽くするという、各社が創意工夫して、そういった取組にも対応しているということでございます。
次に、デジタル教科書の供給業務、こちらについて説明させていただきたいと思っております。大きくは、お子さんたちの数を把握してライセンスをお届けするというイニシャルの部分と、それから、最終的にどれだけの数が使われたのかという集約する部分、2つありまして、まず前半の説明が今のシートになります。まず年度の前に教育委員会さんから需要数の調査票というのを文科省さんに出していただくということがあって、それで、文科省さんがその需要数データを今度、教科書の発行者に送るというのが2番になります。このデータを基に、年度が変わりましたら、すぐに発行者から教育委員会と学校にライセンスが送られて、委員会さんなり、学校さんなりがアカウントを作成して、ライセンスを紐づけるということで、お子さんが使えるというようなプロセスになっております。
それから、後半は、夏に一度、教科書を実際、学校にお届けする特約供給所さんから、学校の数を集約していただくんですけれども、最終的には転出入などの年度内の増減がありますので、それを年度末までに教育委員会さん等に最終確認した上で、再度、特約さんがやり取りをして、それを発行者さんに伝えていただくというのが6番、7番のプロセスになります。その年度内にそうした最終的な数を集約して、文科省さんのほうに提出するということで、最終的な数が決まるという。かなりこれを、小学校2万校、それから、中学校1万校やっているので、かなり大変な作業でありますが、これを毎年行っているということでございます。
ここで、供給に関してこのような複雑なプロセスがあるんですけれども、幾つか課題を感じておりまして、一つは、デジタル教科書が提供されるということを確実に周知されていないケースがあるので、それをしっかり周知するということが必要ではないかなというふうに感じております。それから、初めにいただく需要数、子供たちの数が結構間違っていたりして、それで、ライセンスを出した後に、何度も出し直しというようなことが行われているというのも現状まだありますので、そうしたところを解決する必要があるだろうと。それと、先ほど図にありましたように、ライセンスを教育委員会さんと学校さんとに今、出していますので、どちらが主たる管理者なのかというところが自治体さんによってちょっとまちまちで、それでお見合いしてしまうようなケースもあって、そうしたところもしっかりルールを決めていく必要があるのではないかなというふうに思っております。
そのほか、これは使用に当たってですが、セキュリティーとか自治体のポリシーなどで、クラウド利用ができないというところがありますと、デジタル教科書の導入に支障があるということも御報告しておきます。
続きまして、これはデジタル教科書の制作に関しましてお伝えしておきます。これは紙の教科書にはない様々な作業が実は発生していまして、例えば、先ほど言いましたように、デジタルデータを加工して軽量化していく作業。これは紙の印刷データというのは非常に重いものですので、そのままデジタルでは使えません。それから、特別支援のためにいろいろな機能を付加しているというお話をいたしました。それから、データが出来上がりましたら、その検証作業ということがありますし、配信するプラットフォームですとかサーバ、これを維持、管理していくということもあります。それから、多くのお子さんたちが使うのでアクセスが集中してしまったときの分散管理。それから、OSとかブラウザのバージョンなどが上がってしまうと見られなくなってしまうというケースがあるので、そうしたことに都度対応しなくてはいけないとか、そうしたランニングコストも非常にかかっているということで、作業と費用が発生しているということも御承知おきください。
次に、採択において、デジタル教科書はどういう現状なのかということですが、教科書の採択時、これは昨年と今年の採択、小学校、中学校で行われましたが、ここでは英語が100%提供されているということがあって、英語についてのみ、紙の教科書の調査が基本ですが、そこにデジタルの教科書の見本を限られた範囲、それから、決められた方法、期間というところの範囲でお届けしているという状況がございます。
最後になりますが、教科書協会発行者側からもQRコンテンツに関しては課題があるなと思っておりまして、ここについて現状と課題ということでまとめましたので、最後にこちらをお伝えしたいと思います。
まず、デジタル教科書そのものとは言えないんですけれども、今回の小学校、中学校の新版でもマスコミでかなり注目された部分でございますし、このデジタルコード、QRコードのコンテンツは、紙の紙面にあるコードを読み取って、発行者のウェブサイトにアクセスして、デジタル教材を使うという仕組みのものですが、これはまずここに書かせていただいたように、教科書の検定の対象外なので、教科書ではないという位置づけです。なので、教科書ではないんですけれども、教科書に遷移元が載っている関係で、原則としては、教科書を検定に申請するときには完成させておく必要があって、修正するときにも申請とか報告が必要になってくるというものでございます。
先ほどお話ありましたように、前回の版と比べまして、今回、小学校、中学校とも数が3.5倍ほどに激増しております。それで、この数が増えているということも踏まえまして、幾つか課題を整理したのが次でございまして、まず、数が増えるとそれだけコンテンツが増えるということですけれども、これは検定の対象外、つまり、教科書じゃないというところから、教科書の価格を決めるときにも参考にされない部分なので、発行者が、ある意味、費用を持ち出すというか、発行者が費用を負担して無償で提供しているものになるということになって、これは発行者側にまずコストの大きな負担がかかってきているということと、それから、スケジュールも、先ほど言いましたように、検定に申請するとき、これは使われる2年ぐらい前なんですね。使用される2年前にコンテンツも含めてつくって提出しないといけませんので、通常ですと、使用時までに間に合えばいいものを2年前に出さなくちゃいけないし、例えば検定意見がついて中身が変わると、それにつれてデジタルのコンテンツも変えなくちゃいけませんので、その検定処理につれて、このQRコンテンツも変わっていくという非常にタイトな工程で制作、修正を求められているという状況でございます。
最後に、本来、こうしたコンテンツというのは、学びの質を向上させるというところが目的としてはいるんですけれども、これが今、採択のときに数などが参考にされてしまうという状況があって、各社とも数を増やしてしまう傾向にあって、それで3.5倍というような数字にもなっているんですけども、こうした物量合戦みたいな様相を呈していますので、そうしますと、本来、適切な数があるべきものが過剰に供給される傾向が生まれているのではないかと。そうしますと、これはもう学校現場側の負担にもなってくるのではないかというところも懸念されておりまして、様々な観点から、これについてはちょっと検討が必要だなというふうに業界団体としても感じているところでございます。
以上、様々な角度からですが、デジタル教科書の現状について御報告いたしました。少し長くなりましたが、御清聴ありがとうございました。
【堀田主査】 ありがとうございました。
それでは、ただいまの岡本委員からの説明に対して御質問等ありましたら、承りたいと思います。御質問等ある方は挙手ボタンを押していただいてと思いますが、いかがでしょうか。
では、私から一つ。QRコードの件ですけど、これは各社がどんどん増やしてしまうという、これは一種の競争なので仕方ない部分はあると思うんですけど、これに対して国が何か制約するというのもこれまたどうなのかなと思うところもありまして、今の状況を聞きたいんですけど、協会としては、これについてはどのようにお取り組みなのでしょうか。
【岡本委員】 正直、有効な検討ができていないというところでして、というのは業界の中で、例えば自主規制のようなものをつくってしまうと、今度、公正取引委員会に引っかかってしまうということがあって、やはり自由競争である以上は、そこに業界ルールを適用しづらいという側面もございまして、各社とも、そういう意味では悩んでいる状況かと思います。
【堀田主査】 分かりました。ありがとうございました。
ほかに何か御質問。阿部委員、お願いいたします。
【阿部委員】 今は数パーセントの子供たちしか使っていないけれども、このように手間暇がかかっていて、これがもっと多く使われるとどうなるんですか。手間暇は一緒で、報われる感じになるんでしょうか。
【岡本委員】 多く使われるということが売上げに反映されれば、収益は改善されると思うんですけれども、もう一つ気にしていますのが、多く使われると、それだけサーバの管理ですとか、集中するというような現象も同時に発生しますので、そうしたランニングコストもかかってくると。なので、売上げが上がるのはうれしいんですが、そうしたランニングコストもかかってきますので、そこの収支がどうなるかというのを計算していかなければいけないとは思います。
【堀田主査】 よろしいですか。ほかにいかがでしょうか。太田委員、お願いいたします。
【太田委員】 日本PTA、太田でございます。ちょっと分からないところがありまして、ライセンスとかが交付されたときに、それぞれの端末にそういうデジタル教科書がダウンロードされるような形になるのか。それとも、大きなサーバにボンと置いてあって、それを読み込むことができるようになるのか。どちらのイメージなんですか。
【岡本委員】 後者でございます。クラウドでの配信を基本としていますので、各端末からクラウドにデジタル教科書を読みに行くと。その際のゲートを通過するライセンスが必要になってくるということですね。
【太田委員】 そうしたときに、マーカーで書き込めるとか、メモが書けるというところは、大本のデータは変わらないけれども、それぞれが書き換えることができるという機能なんですか。
【岡本委員】 はい。これは各社さん、仕様が若干異なるかもしれませんけれども、現在、多くは恐らくクラウドサーバ上に書き込んだデータが保存されてます。
【太田委員】 大本があって、クラウドにそれぞれが保存されるという。
【岡本委員】 はい。一人一人のログとして保存されますので、次、また見たときにはクラウド上のデータとクラウド上のログが合わさって、続きが見られるという状況です。
【太田委員】 最悪のケースというか、災害とかで、皆さんが見られるクラウドが何か攻撃に遭ったりとかしたときに、日本全国の子供たちがもうその教科書が見られなくなるという状況もある。
【岡本委員】 そうですね。ですから、学習者の情報を置くクラウドサーバがどこにあるのかというのは、そうした災害時には非常に重要になってくると思います。
【太田委員】 分かりました。
【堀田主査】 よろしいですか。
【太田委員】 はい。以上です。
【堀田主査】 今の災害時の話は非常に大事な話だと思います。以前、東日本大震災のときに紙の教科書の倉庫が流されたということもありまして、むしろデジタルにしておいて、サーバが安定的なところにあることのほうがセキュアであるという、そういう考え方が今、ほかの業界では一般的になってきているということでしょうかね。あるいはサーバが一つとは限らなくて、ミラーリングといいますか、いろいろな形があって、それは教科書会社さんが自前で全部やるというのは、これは大変なことですから、そこの整備も含めて、どういうふうにしていくかというのは私たちの一つの大きな課題だと思います。
と同時に、サーバ、クラウドにあるものをたびたび読みに行くわけで、それによってダウンロードする手間が要らなくなることと、最新のものに何か修正が起こったときに、それをダウンロードし直す手間もなくなるという意味では、最新の情報を提供しやすくなるんですけど、このことと検定の問題、あるいはネットワークの速度の問題、これは地域によって、学校によってネットワーク速度が随分、十分でないところもかなりあって、このことが別のところでまた議論になっております。
【太田委員】 はい。ありがとうございます。
【堀田主査】 今御質問いただいたことをもって、御質問の時間を終わりにしようと思いますが、デジタル教科書の話なんだけど、デジタル教科書だけでない話もこうやって関係してくるわけで、これがデジタル学習基盤というトータルな学びの基盤をどうしていくかという話の基に、このワーキングがあるということの意味でございます。
それでは、議題3に参りたいと思います。議題3は自由討議でございまして、先ほど申し上げましたように、1回目ですので、議題1で今、御説明いただいたことを踏まえて、皆様のほうでそれぞれのお立場から活発な御意見をいただければと思います。順番は特に私のほうでは決めておりませんので、御発言の用意ができた方から挙手ボタンで挙手していただきまして、そして、それを御発言いただくと。少なくとも全ての方に一周お話はいただきたいと思いますし、時間次第では2回目の発言もあり得るかなと思っておりますので、御協力方よろしくお願いいたします。オンラインで参加の方々も、挙手ボタンで意思を御表明いただければと思うところでございます。それでは、委員の皆さん、よろしくお願いいたします。
私のほうで少しお話ししますが、まず、このワーキンググループのミッションは、資料5でしたかね。検討事項ということで上がっておりました。この資料5のところには1ポツと2ポツがありまして、1ポツというのは、要は、今、流通が始まり、利活用が促進されているデジタル教科書を、さっき、使ったことがある人ほど使うんだとか、使っているところほど効果は出ている。でも、これは逆に言えば、まだ使ったことがない人がいたり、使う環境にない場所があったりで、使う環境にないところには、そういういろいろな設定の手間とか、そういうところで頓挫してしまっているところが場合によってはあるかもしれない。こういうような課題について、私たちはこれからどう考えていけばいいのか。そもそもデジタルにはよさがあるに決まっているし、一方で、紙にもよさがあるに決まっているわけで、当面は両方併用になっているわけですから、この環境を利用して、どうやって新しい学びに対応していくか。多様性あるいは学びやすさの提供にしていくかという話ですね。これが1番。
一方で、2番は、「当面の間」と書いてありますけど、「当面の間」というのは今ですが、これは今後、何らかの制度改革とかそういうことが起こった後には、デジタル教科書の新しい在り方というのが出てくる可能性があります。これがいつかはまだ分かりません。分かりませんが、今までのような教科書の在り方でよいのか、デジタルの場合は何か変えるべきなのか。例えば教科によってはもうデジタルしか出さないみたいなことがあってもいいのかどうか。校種によるのかどうかですね。こういうようなことについて、これはまだ審議の議題の一つにすぎませんけれども、少し遠い、中期的には今後どうあればいいのかというようなことを皆さんの御意見をいただいておいて、これは政策ですから、そう簡単には変わらないわけですけど、でも、先ほど教科書協会からの御説明もあったように、様々な供給上の困難がいろいろ出ていて、これは流通、物流の業界ではどんどんDXが進んでいて、間に挟まっているいろいろなやり方をどんどん新しく変えていくことでダイレクトに流通するみたいなことは、もはやいろいろなところでは常識化しているわけで、私たちのこの教科書制度も紙で供給することを前提に、いろいろなものがつくられていますけど、この辺りをこれから今後、中期的にはどうしていくかということを検討していくというのが2番です。検定とか、検定サイクルとか、こういうようなことです。
ですから、1番についてこう言いたいとか、2番のことになるのかもしれないけど、こういう意見があるとかいう言い方をしていただくと大変助かるということになります。
御意見のある方はぜひお願いしたいと思います。いかがでしょうか。
では、奈須委員からお願いいたします。
【奈須委員】 よろしくお願いします。まず全体のことで、また、この会議の進行の中でというか、例えば事務局あるいは教科書協会の方に情報提供をお願いしたいのですが、海外の動向といいますか、デジタルとかICTの活用というのは世界中で進行しているし、今、堀田先生おっしゃったように、それはDXという、もっと大きなありよう、社会全体のありようの中で動いていると思うんですけど、もともと教科書というものが子供の学びの環境においてどんな位置づけかというのが国によってもとても様々で、日本の在り方がスタンダードではないと思います。検定制度にしても、教科書の使用義務にしても、義務教育ワーキングの中でいろいろな国や地域の様子を聞きたいということで、ニュージーランドとかカナダの例をお伺いしましたけど、教科書を使ってない国も幾らも先進国にはあって、それはいい悪いの話ではなくて、可能性がいろいろあると思うんです。デジタルになってくることによって、その選択肢とか可能性はぐっと広がってくるんだろうと思っているんです。そうなったときに、海外の取組の中でデジタル学習基盤ということが入ってきたときに、教科書も含めた学習環境あるいは教材全体の構造がどんなふうに推移、展開しているかということをやはり知りたいなと思うんです。その中で翻って、日本の教科書を中心にした教材供給や授業開発の在り方ということのいろいろな可能性をやはり見ておくということが議論の中で大事かなということで、それをどこかでお願いできればとまず思いました。
それから、2番目の話として、教科書が分厚くなっている、QRコードが増えているという話ですが、いろいろな理由があると思いますけど、やはり一つは当然、学習指導要領が増えているというか、細かく書き込みがなっていると。ページ数が増えていますので。ただ、今回の学習指導要領の改訂で指導事項は増えていないんですね。基本的に変えないという、増やしも減らしもしないという方向で今回、指導要領改訂をしたと理解していますけど、にもかかわらず、学習指導要領のページ数は増えていて、書き込みはさらに細かくなっていて、当然、教科書をつくる皆さんは、検定ということもありますし、採択ということを考えれば、その趣旨や書かれていることは全部上手に紙面に盛り込んで構成するということをなさる。すると、当然、教科書のページ数が増える、あるいは1ページ当たりの文字数が増えるということにならざるを得ないんだろうと思っています。
ですから、これは実は教科書だけの問題ではなくて、指導要領の、特に基準性とか書き方の問題ということも翻ってあるんだろうな。何より今回は、内容中心の学力論から資質・能力を基盤とした学力論ということに、学力論を大きく拡張しました。でも、やはり教科書としては、指導事項を一つ一つ丁寧に書き込まなきゃいけない。さらにその指導事項を指導することを通して、どんな資質・能力を育成するかということも盛り込まなきゃいけないということで、教科によっては2階建てになっているんですね。指導事項も全部網羅的に教えて、さらに、網羅的に教えた指導事項でどんなふうに資質・能力を育成するような授業をするかというヒントを盛ってくださっていて、それがゆえに資質・能力基盤の授業が随分増えてきて、授業もよくなっているし、先般のPISAのいい成果にもつながっていると私は思いますけれども、現場からすれば、やはりやることが以前に対してプラスになっていて、その辺りについて教科書をどう考えるか。今回起こっていることは、次の指導要領に向けてどうしなければいけないかということが教科書の具体を通して見えてくるような気が私はしております。
それから、3つ目ですけど、デジタル化ということは、より豊かな可能性とか、より多様性への対応が可能になってきている。QRコードの話もそうです。これまでだと、どうしても二次元で示さなきゃいけなかったものが三次元で示せるとか、動かすことができるとか、操作可能になるいうことがとても子供たちの学びの質とか授業の在り方について、いいことだと思っています。また、特別支援への対応を中心にして、これまでしんどい思いをしていた子供、教科書の中身が分からないわけではないんですけど、教科書とのインターフェースのところでつまずいていた子供を多く救うことになっていて、これもとても大事なことだと思います。
その一方で、これは教科書と現場、あるいは先生方の付き合い方に関することだと思うんですけども、日本の教科書というのはとても質が高くて、それを粛々と進めていけば、かなりの質の授業ができて、そして、学力も担保できるので、現場では教科書はやらなきゃいけないものという理解になっています。私も教科書作成に関わってきましたが、教科書をつくる側はそうとは考えていなくて、この教科書を足場に、先生方が自由闊達、創意工夫をして、目の前の子供のためにいい授業をつくってほしいとしているわけですけども、そのために盛った全ての情報を全部やらなきゃいけないという理解に教科書を使う側はなっていて、するとページ数が増える、さらにQRコードがたくさん載ると、それを全部やらなきゃいけないもの、あるいは自分が、こんな教材もいいなと思っても、それは二の次で、やはりまず教科書に載っているものや、そこにQRコードが載っているものをやったほうがいいんだろうと。あるいは、個々の担任はそれでやるんだけども、管理職とか保護者がやっていないじゃないか、2組はやっているぞという話にままなっていますよね。実を言うとね。この辺りをどう考えるか。
これは教科書会社の問題ではないんですよ。実を言うと、教科書を使う側の現場や教師にどう伝えていくかという問題だと思います。これは検定制度というのが何かということや、教科書使用義務が何かということや、もっと言うと、学習指導要領の基準性が何かということについて、現場が過剰に反応している、あるいは固く捉え過ぎている。だと私は理解しますけれども、何かそこのメッセージはきちんと伝えていかないと、紙の教科書のときは、あれを使って、自由闊達、目の前の子供に合った授業づくりというのはもう戦後70年以上やっていますので、随分ノウハウもあるんですけども、デジタルになって追加された部分とどう付き合うかということ。そのことが翻って、教科書とどう付き合うかということについて、従来以上に先生方を結果的に拘束しているというか、先生方が自分で自分を縛っているような現状があって、この辺りにどう切り込んでいくか。これは教科書会社さんや教科書協会さんとうまくみんなで話をして、どういうふうにやっていけばいいかということを考えていかなきゃいけないんだろうなと思っています。
ティーチャー・プルーフ・カリキュラムという言葉が教育学にはあります。ウオーター・プルーフで防水ですので、ティーチャー・プルーフというのは、質の低い教師の影響を受けないカリキュラムということで、つまり、このカリキュラムを、もうあまり工夫とか考えないで、そのままやってくれれば結構行けますというやつなんですね。教科書はある程度ティーチャー・プルーフなんですよ。全然いけないことではなくて、それによって初任の先生も、なかなか厳しい地域も、一定の質が担保できるということですけど、逆に、先生方の自由濶達な創意工夫とか、授業は自分で工夫してつくるものだという観念を後退させている面があって、それでも私や堀田先生が教員免許をもらったときは、教師は存分にやるんだと。教師というのは自分にしかできない授業をするために教師になるんだと僕らはしつけられたのでそう思っていますけれども、やはりこのところ、よくも悪くも真面目になっているので、先生方はやるべきことをまずやらなきゃいけない。逆に言えば、それをやりさえすればいいというふうになっていて、これがデジタル教科書の振興や普及に伴って強化されるということを懸念しています。
ティーチャー・プルーフがあまり進むと、結局、私自身がカリキュラムをつくる、いわゆるカリキュラムマネジメントがどんどんできなくなっていく。時代的にはむしろ、自由濶達、目の前の子供に向けて個別最適な授業をつくり、あるいはカリキュラムマネジメントをして、学校教育目標の下に自分の授業をつくるというふうにしているわけですけども、そことちょっと逆行する動きが今出ていて、デジタル化が期せずして、それに少し何か関わってきているような懸念も持っています。このことはここだけの議論じゃなくて、デジタル学習基盤特別委員会とか、義務教育ワーキングとかいろいろなところで議論して、次の指導要領の改訂につなげていくことだと思いますけど、難しいことかなと。
ごめんなさい。4つ目ですが、QRコードの問題というのはとてもこのデジタルのことを象徴しているように思っていて、つまり、デジタルの強みというのは、今この瞬間に、この学びに必要な情報を自由闊達に取りに行けるというところにあって、それが1人1台端末と高速大容量のネットワークということだと思うんですけども、それを2年前にコンテンツをつくって、このとおりやらなきゃいけないというのは全くある意味でナンセンスで、協会もお悩みだと思います。だって、私は、免許教科は社会科ですけど、2年前にあった資料ではいけないわけだし。いや、それでも、例えば社会科資料集の時代は紙だったので、2年前だったんですよ。でも、今はデジタルなので、今この瞬間の最新のデータを取って、社会科の授業はできるようにしなければいけない。そうしないと、社会科の資料活用能力にならないんですけれども、とても質の高い資料をQRコードで教科書に貼って供給しようとすると2年前のものにならざるを得ない。また、それを更新しようとすると大変な手続を伴うというのは、どう考えても論理矛盾で、何か構造的に手を打っていかなければいけない。これは少し大げさに言えば、検定制度の在り方とか、教科書制度全体の在り方に関わってくるもので、デジタルという情報や知の在り方との関係で、少ししんどいところが出てきているのかなと思っています。
それから、QRコードで、例えばさっきあったコンパスの動画などはとてもいいんですね。とてもいいんですけど、僕らもああいうのをよく使いますけれども、実を言うと、コンパスの動画であろうと、理科のてこ実験器であろうと、学校のてこ実験器が教科書の動画と違ったりする。子供の持っているコンパスのある部分が違ったりする。すると使えない子供も出るんですね。これをどうしているかというと、教科書のQRの動画のようなものをもう一度学校の教材や子供の教材で自作して、先生動画として提供したり、僕らはしています。いや、それでも、こういう動画を作ればいいということが目に見えるのでありがたいんですね。
だから、その辺りにとっても、何というかな、最終的にはかゆいところに手が届かないというようなことがどうしても教科書会社の供給されるものにはあって。いや、それはそういうものなんです。教科書会社が供給されるものというのは、もともとそういうものとしてできていて、それをただ現場が分かってやっているかという辺り。また、それを僕らがどう伝えるかという辺りのことをデジタルの進行とともに、こういった問題がいろいろ先鋭化してきたなと思っております。
すみません、長くなりました。以上です。
【堀田主査】 ありがとうございました。奈須先生には義務教育の在り方ワーキングの座長として、いろいろと大きな観点から、今日、御説明というか、御意見をいただいたところでございます。ありがとうございました。
それでは、この後、中村委員、細田委員の順番で参りたいと思います。
中村委員、お願いいたします。
【中村委員】 みどりの学園義務教育学校教頭の中村でございます。よろしくお願いいたします。私は、みどりの学園という学校教育現場の中において、デジタル教科書をどのように使っているかということの役割として、ここでいろいろ発言させていただければと思うんですが、現在、1番の活用状況と、それから、学びにおける効果、それから、紙とのよさといった視点で、少し織り交ぜてお話しさせていただきます。
みどりの学園義務教育学校の活用状況ですが、活用状況は進んでおります。令和3年度から文科省様の実証事業を私たちもやらせていただきながら、先生方、大変デジタル教科書を使っている印象です。数値として完全に出してはいないんですが、ただ、それでも、毎日、毎時間使っているかということではないです。やはり4回に3回とか、2回ぐらいの頻度という状況ではあります。
では、例えば、毎日使わないとき、あとは、使わなくなる時期というのが実はあるんですが、先生方が忙しくなってくると、実は活用頻度が落ちるというのが、つくば市は、実はデータから分かっております。そのデータというのは、デジタル教科書を使うに当たって、本校は東北大学さん、それから、Lentranceさんと共同研究しながら、デジタル教科書を使うことをデータとしてエビデンスを取らせていただいておりまして、どうやったら推進していくのかというのも自主的にやらせていただいています。その中で、忙しくなると使わなくなるというふうに言われました。
なぜだろうと思いまして、先生方に聞いてみますと、実は、先ほどの奈須先生のお話にもあったように、忙しくなってくると、「中村先生、これを全部やっていると終わらないんですよ」というふうに言われます。つまり、コンテンツ一つ一つに、デジタル教科書はすごく子供たちが探究心を持って取り組むので、やろうとする時間が非常に、想定しているよりも長くかかります。だから、早く進めたいときには、子供が興味関心を持って、取りつく島をなくしたいという思いもあったり、淡々と進めたいということもあるのかなと思ったりもしたところです。そういったことがデータから見られておりますので、でも、そのときにやはり単元全体を通して1個1個をただ認知させるだけではなく、何をこの単元でつかませたいのかといったところに立ち返るような話はしているところです。
そういった話で、活用状況というのは進んでいるというふうに思う、もう1点は、デジタル教科書を使うことによって、課題の出し方が非常に変わってまいりました。1人1台端末がありますので、デジタル教科書の音読練習、特に英語や国語というものに関しては、テキストをコピーペーストして、それをTeamsにあるリーディングプログレスという音読練習用のAI判定がついているアプリケーションがあるんですけども、それに載せて子供たちに、夏休み中も課題として提出します。そうすると、子供たちはデジタルの活用をしながら、実際、教科書のテキストを音読するときに、AIの判定を受けながら、よりよく読む、発声するにはどうしたらいいのかというような、自分の課題解決というものをしながら、課題というものを、今まで宿題と言っていたんだけど、今、つくば市は宿題と言わないんですが、家庭学習を進めているという状況にもあります。
そういったことで、実はそういう取組をすると、実際にきちっとエビデンスが出ました。これは本校での取組の中だけですが、例えば発声練習をする機会というのが、デジタルを使っていなかったときよりも変化があって、非常に発声、音読練習をする機会が増えました。つまり、英語については発語が大事だという部分に関して非常に発語数が増えたということがエビデンスとして出ております。また、そのほかにも、数値的データは、これも一部の母集団でしかないんですけれども、英検IBAにおける数値データにも反映されてきている。
このことを伝えると、実は、学校の先生方は、ああ、やはり使わなくてはというような思いになったというのが本校の状況になっているところです。こういった形で、本校は活用状況を推進しておりまして、その推進の一つのきっかけとしては、子供が変わっていくよさというものがデータとして分かる。または実感が湧く。ああ、デジタル教科書を使うと子供の学びがこんなふうに変わるんだなということを実感すると、先生方は非常に活用が進むんだなということを本校としては感じておりますので、この辺りで、みどりの学園のやっていることが皆様の役に立てればいいなと思っているところです。
まとまりませんが、以上です。
【堀田主査】 ありがとうございました。今の中村委員の話では、デジタル教科書のコンテンツの部分のみならず、それをどのように子供が使っているか、いつ使っているかとか、そういう学習ログのようなものが教育データの利活用としてちゃんとエビデンスとか学び方の分類とかにつながっているというお話だったと思います。ありがとうございました。
では、細田委員、よろしくお願いいたします。
【細田委員】 よろしくお願いいたします。私、昨年度まで、さいたま市の教育長を務めておりまして、ただいまはいろいろな大学だったり、様々な自治体に教育のアドバイザーのような形でジョインしたりとかしておるわけですけれども、その前教育長の経験と、それから今、様々な自治体に参画している状況の中から少しお話をさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
まず、論点に沿いながら、少し感想に近いところもあるんですけれども、お話をさせていただきます。論点の1ですけれども、デジタル教科書の活用状況について申しますと、自治体間格差の大きさ――音、聞こえていますか。大丈夫でしょうか。すみません。自治体間格差、そして、学校間格差が、これは何でもそうですけど、デジタル教科書について言えば、こんなに大きいのかというのを私自身がさいたま市でやっていたときには気づかなかったぐらい、自治体間格差の大きさを実感いたしました。
今も高知県のある市に来て、少し教育改革のところについてアドバイスなどをしている最中ですけれども、この市では、学校によっては英語のデジタル教科書、教師がまずログインもまだできていなかったというような状況も理解いたしまして、ちょっと愕然としているところですけれども、いろいろなもので自治体間格差、学校間格差は起こっているんですけれども、こと、デジタルに関して言えば、やはり大きく格差というか、取組の差が広がってしまっているんだなというのを実感しております。
一方、児童生徒の学びにおける効果につきましては、資料4が、なるほど、よく使っている子供たちが、授業がよく分かったり、主体的に取り組んだり、対話的に取り組んだりということが明確に資料の中で見て取れるわけですので、これこそが子供の声であるということを実感しております。そして、デジタルと紙のよさにつきましては、先ほど堀田主査が、両方に確実によさがあるということですが、まさにそのとおりで、そして、AIが社会インフラ化してくると、今後、デジタルのよさがどんどん勝ってくるというのは自明のことなんだろうなというふうに思います。
それから、健康面への配慮ですけれども、これは視力のことをピックアップされているんですけれども、これはデジタル教科書の問題だけではなくて、生活全体の問題なのではないかなというふうに思っているところでございます。そして、紙の教科書のQRコードやページ数が増えている状況ですけれども、実は私、さいたま市の教育長時代に、議会で毎回と言っていいほどいろいろな形で質問されるのが、教科書が重くなり、ランドセルが重いとか、中学生の通学のときの持ち物があまりにも多くて、子供がふびんだみたいな質問がいっぱい出てきまして、こういう状況からも、今後、デジタルがここを解決していく役割を果たしていくのではないかというようなことが、いつも答弁のところでお話をしていたところでございます。
それから2点目ですが、デジタル教科書の現状を教科書協会から、お知らせをいただきまして、知らなかったことをいっぱい知ることができました。大変勉強になりました。その中で、教科書を発行している出版社のほうが持ち出している状況というのも知りまして、そして、QRコードの数もどんどん増えていく中で、サーバの管理でランニングコストが負担増しているとか、それから、クラウドサーバ上に保存されることのよさみたいなものも、これは明確にみんなが理解できることであるので、そうなりますと、堀田主査も言っておいでのように、デジタル学習基盤づくりというのがこれから大きな課題になってくるというか、大切なことになってくると思います。そういったことも全体的に見ていく必要もあるというふうに思いますし、そして、当面の間、紙とデジタルの併用ということですが、これがいつになるのかという辺りのところは、我々も現状を把握できるかというところが難しいところだと思います。
最後1点だけ。私は、一昨日ですけれども、AIの利活用の検討の会議にも参加しているんですけれども、そこで、実践として納得できる御発表があったんですが、AIの学びの経験が豊富な子供のほうが、AIに対して冷静な態度で対処できると。逆に、AIの学習の経験が少ない子のほうが、例えばハルシネーションが起こっているような状況でも、AIの出してきた答えについてうのみにしてしまう傾向が大きいという御発表がありました。ここで見えてくるのは、教師のデジタルを活用した授業の力、授業力。これは先ほど奈須委員もおっしゃっていたティーチャー・プルーフのことにも通ずるところだと思いますが、とにかく教師のデジタルを活用した授業研究が進んで、力量がある教師がこの後、そういう教師をどんどん増やしていくというか、みんなそうなっていただけるような形で、並行して、この部分についてもしっかり力を入れていくことこそ、デジタル教科書のよさを最大発揮できる、先ほどの子供の意見である、デジタル教科書を使ったほうがよく分かるし、主体的に学べるし、対話的に学べるというところにつながっていくということを実感しました。
以上でございます。よろしくお願いします。
【堀田主査】 ありがとうございました。
それでは、この後、阿部委員、松谷委員にお願いしたいと思います。よろしくお願いします。阿部委員。
【阿部委員】 私は、横浜市立の荏田南小学校校長をしております。学校を挙げてICTの活用は進めています。荏田南小学校は5年目ですけども、学校を挙げて活用するようになるまでには幾つかのハードルがありました。もちろんデジタル教科書も活用しているわけですけれども、そこら辺の話も絡めながらお話しさせていただきます。
まずは、デジタル教科書を使うととても便利、そして、学力の向上も図れるというのは思います。特に、国語のデジタル教科書を使っていたときには、子供の書く力が格段に上がりました。書くのが苦手な子供というのは一定数いるんですけど、そういう子は、一から書くのはとても難しい。だけれども、教科書の本文をちょっと抜き出して、そこに自分の言葉を付け加えることで、文章ができれば、楽しくどんどん取り組みます。そして、例えば要約するような単元では、以前は全く白紙のような子供が何人かいたんですけど、そういう子がゼロになりました。子供にも先生にとってもものすごく良くて、ああ、よかったなという実感を得られる。
ただ、国語を使えたのは一昨年で、昨年からは算数へという、転換がありましたので、急に使えなくなりました。そうすると、すごく困りました。本当は保護者負担をお願いしてでも導入したいぐらいだったですけれども、教科書で、一昨年は自治体に入れてもらっていたのに、今年は保護者負担というのはちょっと難しくて、使えなくなりました。そういう学力向上にも有効ですし、あとは、個に応じるという点はものすごく有効です。やはり一目瞭然というのがあります。そして、今見ているところは大きくするとか、そうすると、子供たちの目を引くことができますので、そういうところは本当に有効です。
それから、先生たちの負担軽減、ここにも大きく役立ちます。それがなければ、子供たち一人一人にプリントを用意して、配って、集めて、丸つけるみたいなことを、毎回必要ですけど、そういうことも必要なくなります。負担軽減と共に、本当に紙の削減にも役立っています。
というところで、使ってみると、なくてはならないものになっていくんですね。ですが、ある一定の先生は初めは使えないんです。とにかく何でもいいから使ってごらんと言っていくと、使ってみるとそのよさが分かり、なくてはならないものになる。ということは、いろいろな先生がデジタル教科書を使う、使わざるを得ないというところに何か少し道筋をつけてあげると、ものすごく活用が進むのではないかなと思います。紙より便利だし、紙よりいいという面がすごくあるわけですよね。例えば抜き出すとか、デジタルですから、数字を入れ替えるといろいろな問題ができるとか、そういうよさがあります。
また先生たちは、個に応じるのが一番大変で、算数などでは、分からない子にはヒントカードを用意するとか、分かる子はもう、すぐできちゃうので、そうすると、補充の問題をどんどん印刷しなきゃいけなかったりします。そういうようなところがデジタルによって負担軽減できるのではないかなと。また、集めて、丸つけるみたいなことも、デジタルですから、すぐに丸をつけてくれれば、そういう負担も圧倒的に減るのではないかなと思っています。
そういうときに、やはりデジタル教科書が子供の端末にだけあるというのではなかなか進んでいかないと思うんですね。先生の方でも同じように、必要なところ、大きくしたり、小さくしたり、焦点化できたりする必要がありますし、子供たちが考えたものを集約したり、共有したりする必要があります。となると、アプリやソフトで集約すると有効です。横浜ではロイロノートを使っていますけど、そういうアプリがあるから、より進んでいく。あとは電子黒板などの大型の提示装置がなければ活用が進まないと思います。小さなテレビなどでは、それらが共有できないから使われないということにつながります。GIGA端末が配布されましたけれども、それも先ほど細田先生がおっしゃったみたいに、自治体によっても、学校によっても格差、使用する先生と使用できない学校と、そういうのがあると思います。その格差も、デジタル教科書が教科書と言われて、大型提示装置やアプリがちゃんと配備されて、で、便利ということが、先生たち一人一人が分かることで、一気に進んでいくと思います。
先ほどから、シンプルで軽いものという大前提がありました。多分、全員が使ったときに動きが重たくなってしまってはいけないという配慮だと思うんですけれども、やはり先生たちがそれが便利だと思えるような機能というのは登載していただくことが、デジタル教科書が使われるポイントになると思います。使われなければお金をかける意味がありませんので、使われることになるとよいと思います。先ほどの、例えば抜き出す機能ですとか、数字を変える機能ですとか、そういうものはやはり必要で、読み上げてくれる機能ですとか、丸をつけてくれる機能ですとか、そういうものが必要で、それがあれば先生たちの負担の軽減にもなるし、便利だということにつながるので、どんどん使われていくと思います。
先生たちは、デジタルがなくても、デジタル教科書がなくても授業はやってきたんです。チョークとトークと、あと、ワークシートでやってきたし、やれるんです。だけど、それより便利というものがあれば、よりいい教育や、より充実した授業をしたいから、それより便利と実感ができれば、すぐに使うようになります。
ですから、うちの学校では、72歳の非常勤の先生でも授業で毎回使っていますので、そういうふうになくてはならないものにしていく必要があると思います。そうすると、デジタル教科書は教科書だという必要があるのと、今は紙との併用ですけれども、やはり子供のランドセルはものすごく重いので、紙の教科書は、ゆくゆくはリーフレット程度になっていくといいかなと私自身は思っています。
以上です。
【堀田主査】 それでは、松谷委員、お願いいたします。
【松谷委員】 私は、日本私立中高連連合会の常任理事の松谷と申します。よろしくお願いいたします。私のほうで、今、理事長を担っておりますけれども、文化学園大学杉並中高の校長を3月で辞めたところですが、教員歴が四十数年という人間でございます。
そんな中で一番最初に感じたことは、教科書はもちろん、副教材の多さ、各教科でもいろいろ副教材が多くて、生徒1人が持って帰るものが非常に多いなと感じました。このデジタルの教科書でコンパクトになれば、生徒の登校から使い勝手がいいのではないかというのが最初の感想でございます。
さて、私も5年前に実はアメリカのサンフランシスコのほうに、IT関係の見学をしました。アメリカの小学校で、オバマ大統領の後、ここら辺が、改革があって、パソコンを生徒一人一人、1台、そこに全て教科書が入っているというものが普及されていて、それを持ち帰って見ることもできるし、それを基に学校の授業が進められているということを、海外ではもう進められていて、日本とは違うんだなと感じました。そんな意味では、日本の教科書の検定というか、法改正も含めて、このデジタル教科書をもっと普及していければ良いと考えています。
また、デジタルの教科書も含めてですが、探究学習を推進している考えだと思っております。そういう中では、ロイロノートの利用とか、生徒の相互の対話型の学習もできるし、それから、主体的な学びがデジタル教科書でできてくるのではないかと思います。教科書の在り方がデジタルに普及すればというのが私の考えですし、私学の各学校も端末、各1台持って、そして、そういった方向で進んでおりますので、ぜひ、デジタル教科書の改善と推進をしていただければと思っています。
感想が多いところですが、ひとつよろしくお願いいたします。以上です。
【堀田主査】 ありがとうございました。
それでは、今、挙手いただいているのは、中川主査代理ですけども、その前に、まだ御発言のない太田委員と岡本委員、ぜひそれぞれのお立場で何か感想なり、コメントなりいただいて、その後、中川先生にお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
【太田委員】 ありがとうございます。今日はいろいろな私の知らないことをたくさん知ることができまして、大変勉強になりました。単純にデジタルなのか、紙なのかという、そういう表面的な議論なのかなと思っていたんですけども、そういうところではない、本当にこれから未来の教育というのはどうあって、子供たちがこれからどういう形で学びをしていくのかという、本当に本質的なところをやはり理解していかないといけないことなんだなというところも含めて、私たち保護者もそういうところを知らないといけないし、また、経験として、こういう授業になっていくんだ、こういう学びになっていくんだということを保護者としても経験できる機会があればいいのかなというのを感じました。ぜひそういう情報というところもPTAを通して、保護者にもお伝えいただいて、こういうことが進んでいくんだということを広く私たちも知らせていきたいですし、情報をいただければなというふうに思ったところです。
以上です。
【堀田主査】 ありがとうございました。
岡本委員、お願いします。
【岡本委員】 実際の学校で教えている先生方とはかなり立場が異なる発言になるかもしれませんけれども、教科書の発行者といたしましては、先ほど奈須先生がおっしゃったように、やはり学習指導要領の狙いをどのように現場の先生方にお伝えするかというのを各社が創意工夫して、制作しているというところがございますので、これからつくられる学習指導要領がどうなるかというところに教科書はどうしても引っ張られてしまうというものでございます。
ですので、そこに、今言われているような多様な子供たちへの対応ですとか、それから、個別最適な学びの実現というようなところを強く押し出すということになりましたら、それをやはり教科書発行者としてはどうやって教科書という形で現場の先生方にお伝えできるのかということを、各社がそれぞれ考えるということになりますので、そうした観点でもデジタルのよさが生かせるのであれば、そこを積極的に進めていきたいと思います。
一方で、現場の先生方はこれまで、先ほどお話にありましたように、トーク・アンド・チョークで長い間進めてきたという継続性がありますので、そこをどうやって、今までの教育のよさというものを次の新しいこの学びに継承していくかというところが非常に課題だなというふうに感じております。技術が先行して、現場にそうした非常にハイテクノロジーのものをお届けしても、現場の先生方が扱い切れないとかそういう状況が生まれてしまいますと、これはお互いにとって、提供する側も受け取る側も不幸になりますので、やはり教員養成も含めて、それから、現場の先生方の研修なども含めて、時代の変化に追いつくというか、足並みをそろえるような全体の制度設計というか、そういうものが必要になってくるのではないかなと。それを個人のスキルに任せるというようなところで、果たしてこれは全体の政策がうまくいくのかなというのはちょっと懸念しているところでございます。
ですので、コンテンツを提供する側としては、できるだけ最新のもの、最新の技術でお届けしたいという思いがある反面、やはり受け入れる側の現場の先生方の体制がしっかり時代の要請に合ったものになっているのかというところをセットで考えていかないと、ボタンのかけ違いみたいなことになってしまうのは、避けていくのがよいかなと。かといって、教科書発行者がそれにどの程度寄与できるかというところは、やはり民間の企業の集まりですので、一定の限界がありますから、ここはぜひ、そうした制度設計の議論も含めて、こういった場で少し具体化が進むといいなと思っております。
以上です。
【堀田主査】 ありがとうございました。
では、中川先生、お願いします。
【中川主査代理】 放送大学の中川です。一委員としてコメントさせていただきたいと思うんですが、第1回でもありますので、デジタル教科書周りのことについて3つコメントしたいと思うんですが、まず1つ目は端末環境の話です。先ほど事務局から御説明がありました調査研究、委託の調査研究ですけども、主査をやって、もう6年目に入りますが、やはり感じることは、デジタル教科書活用の効果の実感というのは、端末活用自体の慣れが強く影響しているということなんですね。つまり、端末活用に慣れていると、デジタル教科書の使用頻度が高い。使用頻度が高いと、デジタル教科書の使用感を肯定的に捉えるということになりますので、つまり、使ったら使っただけのことがあるといいますか。つまり、どう使ってもらうかということをやはり検討する必要があるなというふうに感じている次第です。
一方で、先ほど事務局から御説明ありました課題の話です。課題も、多くの項目はデジタル教科書そのものの課題というよりも、これは端末環境の課題であるものが多いわけです。例えば、端末の設定作業とか、それから、関係ない操作に集中してしまう。これはデジタル教科書じゃなくても大いにあり得ることなので、そういう意味では、ここらを全てデジタル教科書に課題があると結論づけるのは早計であると思います。
本ワーキングは、デジタル教科書のワーキングではもちろんありますけども、要は、デジタル教科書の範囲だけの検討ではないということを押さえておく必要があるかなと思っているのが1点目です。
2点目は学び方の話で、これは学習者用デジタル教科書のよさを実感するには、やはりデジタル一斉授業を脱することが重要だというふうに思っています。全国の学校を回っていますと、教科書に準拠している提示型のデジタル教材、いわゆる指導者用デジタル教科書で十分じゃないかというようなことを言われることもあります。これは誤解のないように言っておきますが、指導者用デジタル教科書を決して悪いと言っているわけではないんですけども、授業そのものが一斉に同じように活用する場面の偏重から脱していないように感じることが多いんですね。ですので、個別最適な学びを促すにはやはり今後、学習者用デジタル教科書のグッドプラクティスをさらに示していく必要があるというふうに感じています。
例えば先ほど岡本委員がお話しになった、学習が困難な児童生徒への対応にデジタル教科書というのは非常に効果を発揮しているわけですね。これまでの一律の紙の教科書からカスタマイズできる教科書になっているということがどれだけの児童生徒を救っているかということを考えますと、とても大きなことになっているわけです。ですので、教師差配の学びから子供差配の学びへという、学び方そのものの変革がベースにあって、その上でのデジタル教科書の活用の議論ということだというふうに考えています。これが2点目です。
最後に3点目ですけども、これは教科書の位置づけの問題です。全国で、学習者用デジタル教科書を使っている授業を私はたくさん見てきましたが、多くの場合は非常に、今までの紙の読む教科書から書く教科書、共有する教科書へと変わってきている。特に書き込みがすごく多い。もちろん紙の教科書だって、色鉛筆で書いて、消しゴムで消すことはできますけども、書いて消すという頻度が圧倒的に高いんです。もはや、あれは教科書と呼ぶのか、ノートと呼ぶのか、メモと呼ぶのかと思ってしまう場面もやはり多々あります。ですから、そういう意味では、教科書を教えるのか、教科書で学ぶのか。発行法第2条の定義のままでいいのかということも含めて、今後、この軸足をどこに置くのかということを本ワーキングでも議論していく必要性を私は感じています。
以上、3点申し上げました。
【堀田主査】 ありがとうございました。
委員の皆様からは御発言いただきました。私も、第1回ですので、2つ、お話ししておきたいと思います。それはこの検討事項の1と2のそれぞれに一つずつになるかと思うんですが、まず1つ目の当面の間である今の時期にどうするかということですけども、この当面の間の今の時期というのは、GIGAが来て、そして、個別最適な学びとか、もちろんその前に学習指導要領で、主体的・対話的で深い学びが大事だということになり、世の中のいろいろな子供の学びが一人一人の多様性にどうやって対応するかという大きな課題があり、先生たちは物すごく忙しく、やや煩雑で、本当に機械的な仕事から、できるだけ先生たちを解放していくということが働き方改革としても非常に重要になっているという。こういう状況の中で私たちが考えなきゃいけないのは、デジタル教科書を使うべきかどうかみたいなレベルの話ではなくて、このことが子供の学びやすさの観点からどうか、あるいは先生の働きやすさの観点からどうか。個に対応するしやすさから言ってどうかみたいな観点でもっと語られるべきだし、それをやや、今までのやり方が、昔はそれしかなかったわけですけど、先生が一斉にいろいろ子供たちに教える。教えるけど、全員に入るわけではないのに、そのやり方がよかったとやはり思い続けてしまう、何かそういう変わることへの恐怖みたいなのはあらゆるところであると思うんですけど、そのこととどうやって対峙していくかというのがこのタイミングでは非常に大事なんだと思います。
このことは、デジタル教科書にかかわらず、様々な形で、個別最適な学びへの、やってみて分かる懐疑や念みたいなのもいろいろ出てきていると思うんですね。その一つに、例えば本当にこれで学力が担保できているのかみたいな議論があります。僕はそのことと、この教科書がちゃんと、教科書からちゃんと子供たちが情報を取り出せているかという、そのスキルと言ったらいいでしょうか、教科書をちゃんと自分の力で読めているかみたいなことは非常に大きく関係しているように思います。
これは一種、教科書をどれだけ見ているかとか、子供たちがどれだけそれを触って、自分の考えを書き込んで、ほかの人と比べてみたいなことをどれだけやっているかで変わると考えれば、むしろデジタルのほうがやりやすいことはたくさんあると思いますし、今までは先生が説明してくれていたから教科書の内容が分かっていたかもしれないけど、個別最適な学びで考えれば、一人一人が任意のタイミングで、自分の力で情報を取り出すということが場面としては非常に多くなるわけで、一人一人に求められるそういう基本的な力みたいなのがやはりあると思うんですね。
こういうことを含み込んで、この教育課程が次、しっかりとつくられていくということが僕は大事だと思います。そうでないと、学習内容の何かが、ちょっと増えたとか、ちょっと減ったとか、学年がちょっと変わったぐらいのそういう認識で現場に届いてしまうと、結局、授業なるものが変わらないままになってしまうのではないかという懸念があります。
そういう意味で、1つ目のところで、私のコメントの総括としては、このデジタル教科書の推進ということをめぐって、いろいろなことが同時に連携しながら変わっていく必要性があるということが1つ目、言いたいことです。
2つ目は、「当面の間」以降ですけど、これはまだいつになるか分からない話ですが、でも、急にあしたから変えますというわけにはいかないわけですから、何年後か分からないけど、しばらくしたらこういう方向に向かいますということは、国としての少し先行きを見せておく必要性というのは、業界に対しても、先生たちに対してもやはりあろうかと思いますし、それが責任だと思います。例えば、紙の教科書をデジタルにしたものを、デジタル教科書と呼ぶことになっていますけど、紙の教科書はもともとデジタルでつくっていますよね。それを紙に焼いてとじているわけです。そういう製作方法になっているわけで、この辺りの制作プロセスから考えたときに、どういうふうにしておくのが合理的なのかということは、いろいろな過程をどうやって、プロセスをどうやってDXするかという、これはいろいろな業界に同じような課題があり、見直しが行われ、合理化が進んでいるわけです。供給も非常に御苦労されて、いろいろなところで供給は工夫されているわけですけど、それも紙を全ての子に配るという前提でやってきたので、人口減少の今、非常に大変になっているんだと考えれば、その原理的なところからもう1回見直すみたいなこともないといけないのではないかと。これを少しずつ変えていくというのは結構難しくて、大胆にどこかで制度として大きく変えるみたいなことがいつか来る。そのいつかはいつか分からないんだけども、そういうときにこういう方向になりますよ、向かいますよと。その途中には何段階かあるかもしれないけど、遠くにはこういう方向になりますよというのを私たちはそろそろ見据えて、世の中に見せていくということもまた必要なのかなと思います。
そういう思いで、皆さんの意見を今日聞いておりました。今、まだ時間内ですので、もし発言したい方がいらっしゃれば、もう1つ、2つ拾うことはできますけども、いかがでしょうか。
阿部委員、お願いします。どうぞ。
【阿部委員】 今、算数は50%、英語は100%の学校で使えるわけですけど、50%とはどういうことが起きているかというと、横浜市の今、都筑区、22校ありますけど、今年は11校、来年は残りの11校、公平性の観点からそうなるんです。そうすると、今年使えていた学校はまた来年使えない。あんなに便利だったのに。また衰退していくということが起きますので、そこら辺をもう少し推進の方向に持っていっていただくと、これから先につながるかなと思います。
【堀田主査】 ありがとうございました。今の話は、国の問題だけではない、もしかしたら、運用の教育委員会とかそういうところの考え方の問題も含んでいるのかなと思います。
ほかに何か言い足りないことがある方はいらっしゃいますか。よろしいですかね。何かおっしゃいますか。いいですか。
それでは、ここまでとさせていただきます。第1回、たくさんの皆さんの御意見をいただきまして、ありがとうございました。まず事務局でこれを今後いろいろと整理していただき、次、いろいろな情報提供をまたしていただくという形で、ワーキング、進んでまいりたいと思います。
最後に、次回の予定につきまして、事務局から御説明をお願いいたします。
【西田教科書課課長補佐】 次回のワーキンググループの日程につきましては、追って、別途、事務局から御連絡させていただきます。
【堀田主査】 分かりました。
それでは、本日予定した議事はこれで全て終了となりますので、閉会いたしたいと思います。皆さん、御協力ありがとうございました。
―― 了 ――
初等中等教育局 教科書課