デジタル教科書推進ワーキンググループ(第2回)議事録

1.日時

令和6年10月15日(火曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省
※対面・WEB会議の併用(傍聴はWEB上のみ)

3.議題

  1. 学習者用デジタル教科書の活用現場からのヒアリング
  2. 自由討議

4.議事録

【堀田主査】  皆さん、おはようございます。定刻となりましたので、ただいまより、中央教育審議会初等中等教育分科会デジタル学習基盤特別委員会デジタル教科書推進ワーキンググループの第2回を開催いたします。本日もまた御多忙の中、御出席いただきまして誠にありがとうございます。
 本日は浜委員が御欠席となっております。
 まず、本日の会議開催方式及び資料につきまして、事務局より説明をお願いいたします。
【西田教科書課課長補佐】  教科書課の西田です。
 本会議は、前回と同様、対面とオンラインのハイブリッド形式での開催でございます。オンラインで参加されている方もいらっしゃいますので、会議を円滑に行う観点から、御発言時以外はマイクをミュートにしていただきますようお願いします。カメラにつきましては、御発言時も含めて、会議中はオンにしていただきますようお願いいたします。委員の皆様には御不便をおかけすることもあるかと存じますけれども、どうか御理解のほど、よろしくお願いいたします。
 次に、資料の確認をさせていただきます。本日の資料でございますけれども、議事次第にございますとおり、資料1から4、加えて参考資料が1から5となっております。対面で御参加の委員の方々には紙でもお配りしてございますけれども、お手元の端末でも御覧いただけます。御不明な点がございましたらお申しつけいただければと思います。
 以上でございます。
【堀田主査】  それでは、議題に入ります。今日は、議事次第にございますように、議題は二つでございます。一つ目は学習者用デジタル教科書の活用現場からのヒアリング、もう一つの議題は自由討議となっております。
 また、本日は報道関係者と一般の方向けに本会議の模様をユーチューブにて配信しておりますので、御承知おきください。
 それでは、議題1に参ります。本日は、実際に学習者用のデジタル教科書を活用されている先生方や専門家の先生にお越しいただきまして、学習者用デジタル教科書を活用してみて感じる効果や実際の課題などについてヒアリングしたいと思います。
 四名お越しいただいておりますが、まず、小学校英語の活用として山梨県山梨市加納岩小学校の藤木先生にお越しいただいております。続いて、中学校数学での活用として大阪府枚方市立東香里中学校の廣瀬先生、私立高校での活用として福岡県鎮西敬愛学園敬愛中学校・高等学校の足立先生、また、学習者用のデジタル教科書の活用全体につきまして、放送大学の佐藤先生にお越しいただいております。この順番でヒアリングをさせていただきます。四名の先生方からのヒアリングの後に、まとめて質疑応答も兼ねて、議題2に移って自由討議に入っていきたいと思っております。
 それでは、資料1に基づきまして、まず、藤木先生より御説明をお願いいたします。
【藤木先生】  よろしくお願いします。画面の共有をさせていただきます。それでは、発表させていただきたいと思います。
 山梨市立加納岩小学校の藤木と申します。よろしくお願いします。15分ほどということでお時間を頂戴していますので、早速始めていきたいと思いますが、私は一昨年度ぐらいから学習者用のデジタル教科書を使用するようになりました。主にその使い方としては、こちらに出している四つです。
 左のほうから説明させていただきたいと思いますけれども、まずは英語科におけるやり取りの練習で使用しています。特に本校で使用しているデジタル教科書はアニメーション機能がありますので、それを活用しながらアテレコ風に楽しんで、本物の会話に近い形式を練習しています。
 次に、語彙の習得についてです。単語やチャンツ等の再生機能を活用して、語彙や表現の習得に役立っています。授業時における語彙練習は、学習者用デジタル教科書が入る前まではALTの先生を中心に、時間をかけて何度も何度もリピート練習をしたりとか、ゲームのような形で語彙の取得をしていたのですが、学習者用デジタル教科書を使用するようになってから、授業における語彙習得は全体で特に弱い語彙、またキーとなりそうな語彙の習得のみとして、やり取りのほうに時間をかけるようになっています。
 それから、辞書的に学習者用デジタル教科書を使用するようになりました。例えば子供たちは学習者用デジタル教科書を使う前までは、ALTや私に「こんなことを伝えたいんだけど、何と言ったらいいのか」というようにダイレクトに聞いてくることが多かったんですが、最近では、教科書の内容からまねできそうな表現を自分で探すなどの辞書的な視点での活用です。
 それと併せて個別学習時にも使用しています。この場合の個別学習というのは家庭学習も含んでおります。自分の課題に沿って使用します。授業時間内に個別学習の時間を一度に2、3分程度設けることもありますし、家庭学習で語彙の習得を目指したりとか、辞書的に活用したりすることもあります。
 それから、リスニング教材にも注目しながら使用することが出てきました。例えばLet’s Listenのコンテンツに「こんなことがあったよ」などと子供たちが話をしたりとか、そこから、「あっ、なるほど、その表現を使っていけばいいのか」というように子供たちが話したときにも使用しています。
 このような形で学習者用のデジタル教科書を、一斉授業と個別学習、家庭学習も含みますが、私はそれを結びつけるものとして捉えています。基本的には授業で毎回使用します。それから、授業前日の家庭学習にも取り組ませるようにしています。
 ここからは実際の子供たちの使用の様子についてお話をしたいと思いますが、まずは先ほど申し上げたやり取りの練習について、その具体をお話しします。
 こちらを御覧ください。本校で使用している教科書は光村図書さんの教科書になるんですけれども、Let’s watchというアニメーション教材があります。3人の登場人物、学校の先生と、それから生徒役で二人ということなんですが、このような会話を繰り広げているコンテンツになります。これを基にしてアテレコチャレンジという学習、学習というかアクティビティというか、そういうものをやったことがあります。
 チャレンジを全部で3段階に分けました。まず初めはチャレンジ1です。これはとても簡単なもので、登場人物になり切ってアニメに声をつけるということです。先ほど提示しましたこちらです。これを子供たちなりにアニメーションに吹き込んでみるという形です。チャレンジ2になると、先ほどの会話に一つ推測して追加してみようと言ってみます。多少自由度が出てきます。チャレンジ3というのは完全にこちらのやり取りから離れて、自分の気持ちをのせて友達とやり取りをしてみるというような流れになっています。
 チャレンジ1については簡単なのでこちらで提示する必要はないかと思いますが、チャレンジ2についてお話をしたいと思います。先ほどのダイアログから少し会話が増えていることがお分かりいただけるかと思います。赤字のところです。一言追加してみようと言ったんですが、子供たちは実際にその後も会話を続けているような様子が見受けられます。なかなか日本で、しかも小学校の段階で英語の会話をたくさんしていくということが環境的に難しい中で、こういったアニメーションの教材を活用しながら発展的に学べるいいチャンスだなと思っています。
 こうやっていてアテレコチャレンジをやってみると、子供たちは役割分担や役割の交代を自ら進んでやったりとか、再生速度を変えて初めはゆっくりやってみたり、慣れてくると少し速度を上げて本物の会話のように挑戦したり、また主人公の声まねもしたりと、会話に自然となじんでいく様子が見られます。子供たちはこのアテレコチャレンジを大変楽しいと捉えて活動しています。
 こちらはアテレコチャレンジの効果なんですが、22名の限られた児童で取ったアンケートにはなるんですけれども、アテレコチャレンジをする前までの自分と比べて会話を続けられるようになったか、また、それはなぜかということについて聞いてみました。肯定的に捉えている児童が9割近くいることが分かります。また、「かわらない」と回答している児童もいるんですけれども、それについては、こちらを見ていただけると分かるかと思います。「かわらない」のところについて触れたので、先に一番下の「かわらない」と答えた理由についてお話ししたいと思いますが、そう答えた児童はこれまでの学習のときにも思うように話せていた、割と自信があった児童なんです。それから、アテレコチャレンジをしたほうが会話は続くように思うんだけれども、まだ途中でつかえてしまう、自信がついたというわけではないというような回答でした。
 上のほうには、自信を持って肯定的に答えてくれた児童の理由についてお示ししています。私がこの中でも特に気になったのは「まあまあ続けられるようになった」と回答した児童の三つ目のところになりますが、「どういうふうに受け応えをすればいいかわかるようになった」と回答している人がいました。これは、日本語環境の中で学習していると、なかなか自然な受け応えというのを学ぶチャンスがないように思うんですけれども、アニメーション機能によって、子供たちは自然な会話の受け応えを学んでいることがよく分かります。
 では、次は辞書的な使い方についてです。これらについては子供たちの振り返りシート、また家庭学習取組表の記述から一部抜粋してきました。子供たちは学習者用デジタル教科書を、これらの記述から辞書的に活用していることが分かります。内容が大変具体的になってしまうんですけれども、実は「阿部寛を紹介する」というのは、自分の推しについて紹介するというUNIT6に当たる単元でした。ですが、子供たちはUNIT6の単元だけを見るのではなくて、その前の単元に戻って、自分にとって使える表現はないかなと探しています。一番上に書いてある児童については、一つ前のUNIT5のストーリーの言い方に注目しています。
 二つ目については、この単元は山梨市を私の友人の外国人に紹介するという単元でした。この児童も別のUNIT2のところから、「ウェルカムトゥ山梨市」という表現を抜粋してきたと書いています。
 そこでできることは、UNIT6やUNIT2にあったけれど、どこら辺にあるかという言い方があるユニットは自分が見た限りなかったというように、自分自身で何とかほかのUNITから探してみようと、ほかの単元に当たっている児童がいることが分かります。
 学習者用デジタル教科書が入ってから、個人で必要なタイミングで必要なところを確認できるのがすごくいいことだなと私は捉えています。それ以前から英語科は教師用のデジタル教科書はあったわけなんですけれども、その時点ではまずできなかったことです。
 また、私の授業構成も多少変化してきました。学習者用デジタル教科書を導入する前は、上に示しているとおりにSmall Talkをやって言語活動に入って、時に中間指導して、また言語活動で最後に振り返るという流れでやっていたわけなんですけれども、学習者用デジタル教科書を活用するようになってから、途中途中で個別学習を入れるようになりました。この個別学習というのは、主に学習者用デジタル教科書を活用してちょっと調べたりとか、ちょっと習得を目指すような時間です。45分間の授業にすると、大体個別学習は一度に2、3分というようにやっています。
 また、個別学習を導入するに当たって、イヤホンを用意することをしました。こちらは英語の個別学習をするに当たって、子供に私が提示したものです。それから、「こんな取組方がいいよ」なんていうことも提示しています。
 これらの学習に慣れてくると、子供たちは個別学習のときに自分のニーズに合わせて少しスピードを上げてみようかなとか、ゆっくり練習してもう少し自信をつけようかなとか、フラッシュカードで練習しようかな、というように工夫しながら個別学習に取り組むようになりました。
 それから、こちらは家庭学習の取組表といって、スプレッドシートで私が作成して、子供と共有しているものです。家庭学習に取り組む際に課題を決めて、どの単元のコンテンツをどれぐらいのスピードで何回やったのかというのを記入できるようにしています。そして、個別学習の最後には必ず振り返りを記入させるようにしています。授業時には、必要に応じてこの家庭学習の取組表の振り返りの部分を引用しながら進めることにしています。例えば、「誰々さんのコメントにこんなことが書いてあるけれど、教科書のどのコンテンツから解決したのかな?」とか、「誰々さんはこんなことを解決したらしいんだけれど、誰かヒントをくれないかな?」というようなことです。
 こちらを御覧ください。家庭学習の中で「デジタル教科書をどんな目的で使いましたか。使った方法すべてを選んでください。」と尋ねたアンケートです。「自分の発表にとり入れられそうな表現を見つけるために使った」と回答している児童は100%でした。単元のゴールの活動に向けて学習を積み重ねていることが分かります。
 また、友達が取り組んでいる家庭学習の内容を見て、自分の家庭学習の参考にしている児童もたくさんいることが分かりました。詳細については、時間の関係で省きたいと思います。
 「デジタル教科書から発表の参考になるページを集めてスライドを作る活動をとおして、自分の発表をよりよい内容にすることができましたか。」という問いに対しても、全ての児童が肯定的に捉えています。
 そして、「自分の発表の参考になったものを教えてください。」という問いについてですけれども、「デジタル教科書のリッスンアンドリードが発表するときに参考になった」と回答していたりとか、「デジタル教科書の音声で発音がわかるようになった」というように、子供たちはデジタル教科書をよりどころとしながら学習を深めていることが分かりました。
 最後になりますが、私が英語の学習者用デジタル教科書に望むことについて、三つにまとめさせていただいております。現在、英語の学習者用デジタル教科書は教科書会社によっても機能に少し違いがあったりします。また、今年度から有料版が登場したことにより、無料版の質が令和2年度のものよりも少し下がっていたような印象を受けますけれども、様々な事情があると思うので、もしかしたらそこと重なってしまう部分もあるかもしれないんですが、御容赦いただきたいと思います。英語科の場合、とにかくアウトプット面の機能の向上が必要だなと思っています。具体的に言うと会話の機能、そしてwritingの機能もあるといいかなと思っています。
 二つ目です。今、私が使っているデジタル教科書は付箋の機能があったりとか、スクリーンショットの機能があったりするんですけれども、複雑な機能は正直そんなに必要ないかなと思っています。音声に集中できるような構成が私は欲しいなと考えています。
 最後の三つ目になりますが、デジタル版、それから紙の教科書版のよさを生かした構成はぜひ何か求めているところです。紙の教科書で言うと、英語の場合、writingというのは、私は四線の上に直接鉛筆で書かせたいなと思っています。これからの中学、高校へ向けての英語学習の導入期に当たるところですので、手書きで書くということが非常に大事だと私は考えています。
 それから、リスニングについても、子供たちはたまにデジタル教科書でそのまま書きたがるんですけれども、本校はなかなかペンの機能が充実していないもので、手書きで書くほうが早いという現状があります。そういったときには、メモスペースがしっかり確保されているといいなと思っています。
 デジタル版については、先ほども申し上げましたが、音声コンテンツ、映像コンテンツ、フラッシュカード、チャンツなど、またAIによる添削機能なんかがあってもいいのかなと考えております。
 時間が少しオーバーしてしまって申し訳ありませんでした。以上で実践の発表をおしまいにさせていただきたいと思います。ありがとうございました。
【堀田主査】  藤木先生、ありがとうございました。
 それでは、続きまして、廣瀬先生、よろしくお願いいたします。
【廣瀬先生】  大阪にあります枚方市立東香里中学校の廣瀬と申します。私からは、数学科におけるデジタル教科書の活用事例と使ってみたときの課題について、お話しさせていただければなと思います。よろしくお願いします。
 本日の流れですが、この四点でお話しさせていただければと思います。
 まず、デジタル教科書を活用した実践例についてお話しさせていただきます。本日は三つの実践例について発表させていただくんですけども、まず、一つ目は生徒のノートづくりについての実践になります。このとき、私の授業スタイルとして、事前に生徒が教科書や私が作った解説動画、若しくは教科書の解説動画を参考に、次の授業について少し予習をしてノートをまとめてくるということに取り組んでおりました。
 その中で生徒たちはデジタル教科書の必要な部分をスクリーンショット等で切り抜いて、それをノートアプリに貼り付けてノートの作成を行っていました。実際今、右手に出ているものが生徒の成果物になっています。こうすることによってノートの作成時間はかなり短縮できたなと考えています。我々が前に書いている時間、それを写す時間というのがかなり大幅に削減できるので、かなり時間の短縮はできたのかなと思っています。
 また、数学で言うと図であったりとかグラフが出てきた際に、それを印刷して子供に配ってというところが今までは多かったのかなと思うんですけども、そういった部分もデジタルですと簡単に挿入できるので、その辺りはすごく便利だなと感じました。
 三つ目は書くことが苦手な生徒へのアプローチということで、なかなか前に書いてあるものを写すということが苦手な生徒にとってノートを書くという作業自体がかなりハードルが高いものになっていますので、そういった部分の軽減になればなと思って活用させていただきました。
 二つ目は問題演習の場面になっています。生徒たちに、各難易度別に今日はこの順に問題を解いていこうという学習の手順だけを最初に説明して、その後は実際に教科書の問いなどを使いながら生徒たちが学習を進めていくという場面になるんですけども、今右上に出ているのが教科書の画面になっていて、そこのタブレットのマークを触ると一つずつ問いが現れて、その空いているスペースに答えを書きながら学習を進めていくことができるようになっています。
 まず、一つ目の小問に取り組んで自分なりに解いてみた結果、答えが出たよという子は、その右下にある解答のボタンから解答・解説を確認することができます。ここで解答・解説を確認して解けているよという生徒は次の課題に進み、ここでもし間違いがあるということに気づいた生徒は、もう一度、一つ目の問題に立ち返って問題を解き直してみるという形で問いを進めていくというものになっています。
 ここでの活用の意図としては、生徒が自分のペースで進めることが可能というのが一つ大きなところかなと思っています。早い生徒はどんどんどんどん次の問題に進んでいきますし、つまずいている生徒は一つ一つ解説を確認しながら自分のペースで学習を進めていけるかなと思います。
 また、間違いの早期発見というところで、よく間違って理解している生徒は、一つの問いが全て終わった後に答え合わせをしたときに全て間違っているということにもなります。そうすると、生徒は自分はできないんだというように思いがちなところがありますので、早めに自分の間違いに気づいて立ち返ることによって二つ目、三つ目と少しずつステップアップしながら学習を進めていけるのかなと思っています。また、一つ一つに解説が丁寧に載っていますので、こちらの解説を準備する時間というところにも一つ大きなメリットがあるのかなと思っています。
 三つ目は授業展開の工夫というところで、中学3年生の図形と相似という範囲にあります中点連結定理というところになるんですけども、ここが一番デジタルになったことで大きく変わったなという実践になりまして、「四角形ABCDをかき、4辺AB、BC、CD、DAの中点を、それぞれ、P、Q、R、Sとします。このとき、四角形PQRSは、どんな四角形になるでしょうか。」という教科書の問いがあるんですけども、まず、ここを生徒に投げかけたときに、生徒たちはいろいろな四角形、台形かなとかいろいろ意見を出してくれるんですけども、今度はその右側にあるグラフィックスツールというものを活用して、実際に図形を動かしながら考えるという活動を入れています。今右下に出ているところが実際にグラフィックスツールの画面なんですけれども、緑色の点を動かすことができるので、この点を動かしながら、中にできている四角形PQRSがどのような形になっているのかというのを子供たちは探っていきます。
 その中で、生徒たちは、長方形になるときもあるな、平行四辺形になっているな、正方形になったときもあったな、ひし形になったときもあったなというような様々な気づきが起こってきます。生徒たちはその気づきがあると、周りの生徒たちに、子供たちの中でこんなことが起きているよというような気づきを共有する機会が出てくることによって、どんどん対話が活性化していきます。この時間の最後は、この出てきた意見の中で全てが平行四辺形に当たるというところで、まず、平行四辺形になることの証明へとつなげていくという活動になりました。
 その後に2時間目として、前時で出た長方形、ひし形、正方形になるということをグラフィックスツールで検証するというところに取り組んでみました。長方形、ひし形、正方形になるには、対角線AC、BDがどのようになっているときかというのを生徒に投げかけ、生徒たちはグラフィックスツールを使いながら、こういう条件があれば長方形になるのではないか、若しくはひし形になるのではないか、正方形になるのではないかというのを考えながら、その気づいたことを証明していくという流れになっています。
 今までは教科書の問いで言うと「AC、BDが等しくなるとき、PQRSはどのような図形になるでしょうか。」という問いなんですけども、このグラフィックスツールを活用することによってそこの条件からまず見つけるというようなことが、今までとの大きな違いかなと思っています。班ごとに発見した図を他の学習支援アプリに貼り付けて、その条件で本当に長方形になっているのか、若しくはひし形、正方形になるのかというところの証明を考えていくという活動になっています。最終的には、発見したことを生徒たちがプレゼンテーションをしていくというような流れになりました。
 活用の意図としては、グラフィックスツールを使用することによって様々な試行錯誤が容易にできるというところがすごく大きかったなと感じています。また、生徒たちも自分たちで発見したことというのは発表したくなるところかなと思いますので、対話の活性化にも役立ったと思っています。また、デジタルであればプレゼンテーションソフト等への貼付け等が容易にできますので、生徒たちが発見したものを生徒たちが発表するというところで、生徒主体で授業の展開がしやすいのかなと思っています。
 次に、デジタル教科書の利点についてです。実際に私がデジタル教科書を使ってみて、授業者視点での利点としては、先ほどから出てきている図やグラフなどをノートに貼らせる時間や、こちらの準備時間の短縮というところが一つ挙げられるかなと思います。
 次に、ほかのアプリケーションとの連携の容易さ、これは授業を構成していくときにすごくありがたいところであるなと思っています。
 三つ目にグラフィックスツールによる視覚的理解の補助ということで、先ほども出てきていましたけども、ほかにも数学で言うと点が動いていくような動点の問題であったりとか、図に出ているような1次関数の範囲ではaが3のところ、3xの3のところがこの矢印によって値を変えることができるんですけども、このaの値によって傾きがどのように変化するのかというのを子供たちは実際に検証しながら学習していくことができました。
 最後に、例題の解説動画などのコンテンツもかなり充実しておりますので、反転学習や自由進度学習なども含めた幅広い学習活動への普及に役立つのではないかなと考えています。
 次に、2年前に私がデジタル教科書の実証事業に参加させていただいたときに取った生徒のアンケートからになるんですけども、生徒の視点として「紙の教科書からデジタル教科書に変えることは必要だと感じますか。」という問いに対して、約87.4%の生徒が肯定的な回答をしています。実際の生徒の意見としましては「紙の教科書は重い」というところ。あと、全員に必ず必要ではないんですけども、あると便利な機能として拡大であったりルビ打ち、音声読み上げ機能というところを挙げている生徒もいました。最近は総合的な学習の時間等でSDGsをテーマにする学校も多いと思うんですけども、そういったところで資源の削減を挙げた生徒もいました。あとは、私自身がそういう活用の仕方をしたことが大きいかなと思うんですけども、「図やグラフを動かすことができるのは便利だ」と答えている生徒も多かったです。また、板書の時間であったりとか、書き込んだことの修正が容易というところで、紙に例えばマーカー等を引いてしまうとなかなか消せないんですけども、デジタルだと間違って引いてしまったところの訂正というのがすごく容易なので引きやすいと書いている生徒がいました。ほかのアプリとの連携が容易と、ノートアプリであったりとかプレゼンテーションソフトへの連携が容易と書いている生徒も多くいました。
 次に、デジタル教科書を使ってみたことの、反対に課題の部分についてです。まず、授業者視点からいきますと、紙に比べて、ログインしてインターネットに接続する時間というところで少しもたつく場面というのも出てきたかなということを一つ感じました。私自身が学校ではICTの担当ということで様々なアカウントの管理をしているんですけども、このとき私の学校では2種類のデジタル教科書が入っていましたが、そのアカウント管理というところでそれぞれにアカウントを割り振ったりするので、その辺りの管理の煩わしさというところは感じました。
 次に、生徒のアンケートから逆に必要ではないと答えた生徒の意見としましては、ログインまでの手間というところで、基本的には一度ログインするとしばらくの間はログインが残るんですけども、時々ログアウトされて再度ログインというところでの手間を感じている生徒であったりとか、ネットワークの遅さによる、ログインはできているんだけどもなかなかページが開かない、若しくはグラフィックスツールが開かないという時間差を書いている生徒がいました。ページを開くだけなら紙のほうが手軽というのが、生徒の上の二つのところをすごくよく表しているなと思っています。
 四つ目の紙のほうが書き込みが容易というところは、先ほどの小学校さんのほうの実践でもありましたけども、スタイラスペンの辺りかなと思っています。文字を書くとなったときに、手書きではなかなか難しい部分もあると思いますので、その辺り、スタイラスペンを使っている生徒にはあまり感じなかった部分だと思うんですけども、手書きをしている生徒にとっては紙のほうが書きやすいという部分もあったのかなと思っています。
 家庭のネットワーク環境ということで、枚方市のほうではLTE回線が入ったiPadを使用していますので自宅に帰っても問題なく使用できるんですけども、ネットワーク環境がない生徒にとっては、今の現状では教科書が使えないという部分が出てきてしまうので、そういった部分での家庭のネットワーク環境の整備というのも一つのキーワードになってくるのかなと思います。
 では、最後にまとめです。私が実践してみて、紙をデジタルに置き換えるだけでも一定の効果はあったのかなと思っています。荷物の軽減、文字や図の拡大、その転載であったり、生徒が書いていた資源の削減という意味では、置き換えるだけでもすごく効果のある部分かなと思っています。
 ただ、ページを開くだけであれば今までの紙のほうが容易という生徒がいたように、デジタルならではの視点で機能的な強化があると、より効果的にデジタル教科書を活用することができるのかなと思います。ルビ打ち、音声読み上げであったりとか、私が使っていたグラフィックスツールや解説動画などのコンテンツが充実してくるといいのかなと思いました。
 また、他学年へのつながりは、現状でも「この部分は小学校でやっていますよ」というような振り返りをリンクで飛んでいったりできるんですけども、そこに加えて教科横断というところで、他教科へのつながりもあるとなおいいのかなと思っています。
 そこにページの区切りと入れさせていただいているんですけども、数学の教科書で言うと、見開きに問いと解説・解答が載ることがすごく多いです。となったときに、ページを開いたら、そこに既に右側を見たときに答えが載っているというところで、なかなか授業で扱うときに難しい面もあります。ただ、デジタルであればページ数が多少増えてもいけるのかなと思いますので、例えば見開きではなく片側ページで表示するというような機能があるといいのかなと感じました。グラフィックスツールを使うときも、コンテンツのこのボタンを触ってねという指示をするときに、教科書を開くともう答えが載っていて、ああ、平行四辺形になるんだとなってしまうので、その辺りの工夫があると面白いのかなと思いました。
 最後に、教職員、生徒ともに使いやすい環境の整備ということで、全ての教科書を扱えるシステムと書かせていただいているんですけども、現状は発行者さん、教科書会社さんによってビューアが異なります。本校も2種類入ったんですけども、数学は数学で、もう1個の英語は英語でログインの仕方が違ったりとか、それぞれにアカウントがあったりというような形になっているので、市販の電子書籍とかは一つのところにログインしたら本棚があって、そこで購入した本を全て見ることができるというような形になっていますので、そういうように一つのアカウントで全て必要な教科書にアクセスできるようなシステムがあると非常に便利だなと感じました。
 以上で私からの発表を終わりたいと思います。御清聴ありがとうございました。
【堀田主査】  ありがとうございました。
 続きまして、足立先生、よろしくお願いいたします。
【足立先生】  それでは、私のほうから、高等学校におけるデジタル教科書の使用の実際についてお話をしたいと思っております。
 では、次のページを御覧ください。私、福岡県北九州市にあります私立の敬愛中学校・高等学校で数学科の教諭をしております。中高一貫校でございます。
 まず、本校の状況から御説明しますと、2019年から生徒全員にiPadを持たせることを決定し、これは個人所有のもので、毎日持ち帰りをしております。この導入と同時に中学校数学のデジタル教科書、数研出版を購入させて使用することを決めました。2020年、全国一斉の臨時休校がコロナでありましたけども、同時に4月からオンライン授業を開催した経緯がございます。本年度はDXハイスクールにも認定いただいており、本校のデジタルICT活用については進めている状況であります。また、令和2年度より高等学校のほうで啓林館の教科書をデジタル教科書で使用しております。現在は、生徒は紙とデジタルを共用して学習を進めている状況であります。それ以外の使用アプリとしては、MetaMoji Classroom、これはノートアプリとして使っております。また、連絡事項等につきましてはGoogle for Educationを使ってGoogle Classroom等を使って行っております。また、英語学習ではELST等の学習アプリを使っているところが現状です。
 では、続きまして、デジタル教科書を使用してみての実感、これは教師側からの視点になりますけども、見ていて思うのは圧倒的に持ち運びが便利であるということ。そこにも書いておりますけども複数冊の教科書、問題集が全てiPadに入ると。これは何がいいかというと、数学2を学習しているときに、数学1ではどのように取り扱っていたかということを、紙では当然数学1の教科書を出さなければいけないんですが、ワンタップで数学1の教科書を取り出して、そしてその内容まで飛ぶことができるということに関しては非常に便利ですし、また、これは同学年においても数学1の内容を学習中に数学Aの内容を確認したりということが非常に容易であるということ。
 また、現在使っているLibryに関しましては、使用感がデジタルと紙の境がないぐらい紙のような使い心地であるということ、めくった感じとか、そういったことが非常に子供たちには好評でございますし、私たちもそれは非常にいいと思っております。
 また、先ほどからもおっしゃっていますけども、絵図や文字の拡大・縮小が非常に見やすいということです。
 また、これは数研出版の中学の教科書にもありますけども、最近は紙の教科書にもQRコードがついてコンテンツがたくさん入っているんですが、その読み取りをしなくてもワンタップでデジタルコンテンツにアクセスできる、動画であったりとか、若しくは点の移動の確認であったりといったものが容易であるというのは、非常にデジタル教科書の有用性であるなと感じております。
 また、これは教科書だけではないんですが、子供たちが学習する環境の中において、特に高等学校では教科書だけで完結するということはほぼありません。応用の問題集であったり、若しくはそれにつながる参考書であったりというものがセットになって子供たちは学習を進めていきます。これが紙だと非常にめくるのも大変ですし、持ち運ぶのも大変なんですが、教科書の例題からその類題を問題集で検索したり、問題集の問題をもう一度教科書の例題に戻って確認するという連携が非常に秀逸であるなと感じております。
 ヒントや解答・解説、これも紙の教科書であれば当然巻末をめくったり、若しくは別紙の解説を見なければいけないところなんですが、ワンタップで解答・解説を確認することができるということも非常に有用だなと感じておりますし、これができることによって子供たちが主体的に、また自主的に学習に取り組むことが推進できているなと感じております。ストレスなく子供たちが主体的な学びを進められる、また授業の中においても自由進度学習、個別学習といった形で個別に最適化された学習を進めることができているなというのが、デジタル教科書を使用した実感としての利点でございます。
 次の写真は、子供たちが実際にデジタル教科書をiPadで使っている画面なんですが、見ていただくと分かるとおり、非常に机の上がすっきりしていると、iPad、ノート、筆記用具の3点で学習が足りると、机に積むことがないということです。
 次のページは真上から撮ったものでございます。ですから、子供たちは非常にすっきりとしたスリムな感じを好んでいる生徒も非常に多いです。
 では、続いてデメリットです。一生懸命考えてみたんですが、実はあまりないんですが、端末の充電問題は非常に致命的で、本校はiPadを毎日生徒が持ち帰りをしています。家で充電してくるというのが原則ルールにはなっているんですが、当然子供たちですからそれを忘れる子もいます。「先生、今日は充電が2%しかありません」とか、こうなってくるともう致命的です。本校では、発火等の危険性も考えられるということで学内に充電器を持ち込むこと、またモバイルバッテリー等を使うことは今禁止しております。ですので、充電がなくなった場合は紙の教科書をということにしております。
 先ほど紙とデジタルを共用しているという話をしましたが、子供たちに推奨しているのは、紙の教科書は学校に置いておきなさいと言っています。だから、万が一そういう充電がなくなったときに紙の教科書を取り出せるように、家ではデジタルを持ち運びとして使いなさいということにしております。
 ただ、これは親御さんの考えもあろうかと思うんですけども、デジタル端末の目に対する負担感を非常に気にする生徒も必ずいまして、デジタルを使わずにあくまで紙を使うという生徒も一定数いるのが事実です。
 あと、先ほど廣瀬先生もおっしゃっていましたけども、私も生徒のアカウント管理を行っているんですが、年度当初に新入生のアカウント設定、また新学年のクラス設定、そして配布する教科書を間違いないように配布するのは非常に時間がかかります。一度設定してしまえば、本校は中高一貫ですので年度途中に先取り学習をすることも当然出てきますが、そういうときにもアカウント設定ができていれば、そこは非常にスムーズに子供たちに新しい教科書とか新学年の教科書を配信することもできるということです。
 ただ、高等学校においては、本校はiPadをフリーインターネット、フリーアプリケーション、フリーダウンロードという形で自由に使わせるようにしています。そのため、授業中の生徒の画面管理というのはなかなか困難を期するところもありまして、ただ、そこにも書いていますが、隠れて別の画面を開く生徒がいるんですけど、見たら分かりますので、手があり得ない動きをしていますので、これは昔で言いますと授業中にこっそりと隠れてお弁当を食べているのと同じような感覚でございましょうか。ですから、その辺は近くまで行って注意する、それでも言うことを聞かなければ取り上げるというようなことも日々行いながら進めていますけども、多くの生徒が非常に有効的に活用しているのが実際でございます。
 では、デジタル教科書を使用した生徒の声もアンケートを取ってみました。これは1年生、2年生を中心に、3年生はもう入試対策を行っている関係で1年生、2年生のデジタル教科書を使っているコースの149名に取りました。「日頃、教科書は紙のものとデジタルはどちらを使っていますか」という質問に対して25.6%がデジタルオンリー、どちらも使っているというのが34.9%、紙のみを使っているのが39.5%ということで、4分の1、約3分の1、3分の1強で、全体の60.5%が結果的にデジタル教科書を使用しているという結果にはなっております。
 「紙を使用しているのはなぜですか」という理由を聞いたところ、やはり先ほどおっしゃっていますけども、ログインは毎回聞かれますし、iPadを再起動したときには再度パスワードを聞かれたりということで非常に面倒であるということ。さらに紙のほうがぱっと開けるから使いやすい。次にバッテリーの問題。あと、書き込みです。本校はiPadなのでアップルペンシル等を使って書くことができるんですけども、最初に申し上げたMetaMoji Classroomというノートアプリが非常に書き心地がよく、子供たちはこのノートアプリに慣れておりまして、まだデジタル教科書はそこまでの書き心地には至っていません。なので、それをちょっと嫌がってというか、鉛筆で書き込みがしたいと言う生徒がいるのも事実でございます。
 また、デジタルはもう圧倒的に見やすい、机が幅広く使える、持ち運びが便利、またいつでもどこでも、これは本校は私立でございますので通学範囲が広うございます。電車であったりバスであったり、でもその中でぱっと開いて学習ができるというのは子供たちにとって非常に便利ということでございます。
 どちらも使用している生徒は状況に応じて使い分けている、また、どちらのよさもあるということがどちらも使用している理由となっております。
 以上、お話ししてきましたけども、私が思いますに、生徒にとってデジタルがいいのか、紙がいいのかということにつきましては、100%どちらかに偏るということはないと私は思っております。だからこそ、現在の紙はまず絶対に買わなければいけないということではなく、紙かデジタルか、この選択ができるというようになればいいなと考えております。これからの学習は個別最適化が確実にキーワードになると思っております。だからこそ各自が選択できることが大切だと考えます。
 また、デジタル教科書の有用性につきましては、紙ではQRコードをつけるところまでが限界であると思っていますが、もっと自由に、もっと先進的にこれから拡張される可能性を多分に秘めているのがデジタル教科書だと思っております。生成AIであったりとか、子供たちが主体的に能動的に学ぶ一つの学習アイテムになる可能性を感じております。ですので、このデジタル教科書と紙の教科書のどちらのいいところも今後共存しながら、子供たちが学習を進めていくことを心から願っております。
 私の発表は以上になります。ありがとうございました。
【堀田主査】  ありがとうございました。
 では、最後に佐藤先生、よろしくお願いいたします。
【佐藤教授】  失礼いたします。放送大学の佐藤幸江と申します。このような機会をいただきましてありがとうございます。本日は、表紙にありますようなタイトルについてお話をさせていただこうと思っております。
 表紙にあります右側の写真ですが、これは私が10年ほど前、まだ現場の教員をしておりました頃に学びのイノベーション事業の報告を含めた発表会で模擬授業をさせていただいたときのものです。
 次のページになりますと、様々な関わりをデジタル教科書の研究をすることで私がさせていただいているというものになります。本日は実践者の視点と、それから研究者の視点、併せてデジタル教科書の活用に関してお話しさせていただこうと思います。
 3枚目を御覧ください。主に国語科の事例を基にお話をしていくことになりますが、活用事例1につきましては、今までの紙の教科書に見られた「学びにくさ」というものに着目して授業をされている事例です。
 事例2につきましては、デジタル教科書のデジタル教材部分と連携した活用によって、令和の日本型学校教育と言われる個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実を実現できないかなというところを追求した事例になります。
 事例3は、より学習者主体の授業改善に取り組むために積極的に単元構成を開発したという事例を御紹介させていただこうと思っております。
 そして、時間が許すようでしたら、本年度より無償配布されている外国語、英語のデジタル教科書の活用が現場でどのように受け止められているかというようなお話もできればなと思います。
 では、四枚目より説明させていただきます。これは共有の端末、そして指導者用デジタル教科書の活用事例なんですけれども、低学年では挿絵と言葉をつなぎながら学習することで読みがより深まっていきます。1のついている写真、これは挿絵の順番を示して粗筋をつかむ様子なんですけれども、1人1台、大きな、私たちはこの頃電子黒板と言っていましたけれども、ここで一人しか関わることができません。ほかの子供たちは、いいなと思って見ている様子が分かると思いますが、2のほうは交代で家庭に持ち帰って、好きなところを大きくしたりして示しながら、おうちの人に好きな場面を発表している様子です。子供たちに1人1台端末、そしてデジタル教科書が行き渡っていたら、もっと違う授業設計ができるわけです。紙は挿絵だけ取り出すことも、動かすことも、ある箇所を拡大したり縮小したりすることもできません。また、紙ではたくさん書き込むことをためらう子供も見られます。そういう困り感にリーチしたのが次のページからの事例となります。
 『お手紙』は幾つかの教科書に掲載されていますが、がまくんとかえるくんの心温まるお話は、大人の私たちも忘れられないものになっているのではないでしょうか。お話の冒頭にある悲しい顔をした二人の挿絵と、それから最後にあります肩を寄せ合ってほほ笑む二人の挿絵を比較することで表情や二人の距離感に気づき、どうしてこんなふうに変化したのかな、早くお話を読みたくなったなというような様子が見られます。この実践は若手の先生から熟達の先生の授業まで同じような活用を参観させていただいておりますが、このように挿絵を取り出して比較することで本文を読む必然性を生み、次の学びへの意欲づけとなっている様子が観察されています。
 6枚目では、先ほどお話ししました紙の教科書ではあまり線を引きたがらない子供がいるというお話についてです。デジタル教科書のせっかくの部分が消えておりますが、著作権上のことですので御承知おきください。たくさん引かれた線を確認することができるんですが、デジタルになると書いたり消したりが容易にできる安心感があるんでしょうか、筆者の主張がどこに書かれているのか、その根拠となる具体例や事実を読み取ろうとたくさんのサイドラインを引いて考えている様子が観察されています。この教師は右側にありますようにサイドラインの色を指定していますが、7枚目を御覧ください。この学級は子供たちが使い慣れておりますので、自分と友達の引いている線の色の違いに気づいて、なぜこの色にしたのかという議論が自然に始まっていきます。また、これまでの国語では国語を専門的にすごく熱心に研究していらっしゃる先生ほど、わざわざ本文のみを取り出して印刷して配布して本文のみで考えるということがされている、そういう授業をよく見ました。
 でも、8枚目にありますように、これは鳥獣戯画、国宝の絵巻物です。絵巻物ですから、テキストだけから読み取るのではなくて、絵巻物そのものの部分と本文の表現とをつなぎながら考えることで、より筆者の主張に迫ることができるわけです。これまでの紙の教科書の授業では、なかなかこのように挿絵と文章をつなぎながら考えるというような様子は観察されませんでした。
 9枚目を御覧ください。学習者用デジタル教科書では振り仮名表示、文字を折り返しながら表示させるリフロー表示、文字の書体変更、拡大機能等が搭載されておりますので、学習が困難な児童生徒がスムーズに教科書へアクセスできるように対応されています。それによって、これまでC基準とみなされていた学習者が変容した事例になります。漢字が読めない子供たちにとっては、教材文の内容は「読んでいらっしゃい」とか言われましても、なかなかつかめないまま学習が開始されてしまいます。ところが、ルビが振られることによってストレスフリーで教科書が読めるようになるわけですから、それによって自分の考えを持つことができるようになった、さらには友達の対話にも入ることができるようになるということなんです。そうすると、右側にありますように授業が分かるようになった、楽しくなった、さらには、太宰だとか中原中也だとか、中学生も読むような文学作品も進んで関わるようになっていった、まさにどんどんどんどん自己学習が進んでいっている様子がこの事例から見られると思います。
 この学校に限らず、LDなどの学習障害や、日本語を母語としない児童生徒には読むことに関する支援が必要です。国語科こそデジタル教科書を使いたいという希望は高いです。特に中学生は、これらの特性に一人で苦しんでいることもあると聞きます。機能などの説明がなくても、中学生だったらどんどんデジタル教科書を活用することができますので、ぜひこの教科書があればというような声をよく聞いております。
 同じ学校の事例です。次のページになりますが、この学校は学校全体でデジタル教科書の活用を通して授業改善に取り組むことをやっておりました。このように個別の学びは家庭で、学校では主に協働的に学ぶ場を提供するというような反転学習も可能となっているということをお話しされていました。
 その結果、次のページにありますように、C基準の子供たちがいなくなったという成果を報告しています。細かい学力については個別の情報になりますので、このグラフを御覧いただければと思います。
 12枚目を御覧いただくと、学習者用デジタル教科書の活用による指導力向上ガイドブックが昨年度出されましたけれども、こちらにありますようにデジタル教科書は授業改善に向けた一つの視点であります。国語科ではそういう考え方で実践研究に取り組んでいる学校あるいは学級、先生が多く見られます。
 ただし、13枚目にありますのは低学年の様子なんですけれども、いきなりこのような事例、デジタル教科書を活用して授業改善はできません。この写真の1にありますように、まだまだ慣れない時期には互いに教え合う、学び合うということの価値づけが必要ですし、写真2にありますように自在に端末を活用できるように日常的に使い、子供たちのスキルをアップするように仕向けたり、個で学ぶ時間をたっぷりと十分に保障し、また教師はその学びの様子を見てとって、次の支援や指導を工夫するというような力が必要になってきているということが見えています。こちらの学校では、先ほどお話ししましたように学校全体で研究してきているので、その成果が教職員間で十分に共有されていますので、このような子供たちの資質能力が伸びてきている、ですから低学年の授業でも授業改善していくということが可能になっているわけですけれども、低学年からどのように導入していけばよいかは、今後の現場でこれまでのノートや板書をどのように連携させていくとどのような効果が見られるのか等々、活用事例の蓄積と共有に期待したいところがあります。
 では、長くなりましたが、次に、事例2のお話をさせていただきたいと思います。これはデジタル教科書の教材部分、これは本文抜き出し機能というものですけれども、この活用によって個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実を実現できないかと追求しているような授業です。こちらは中学校の事例になります。これまで中学校の授業では教師が説明して、少し学習者が意見を交流して、最後に「ここがテストに出るからな」なんていうことで黒板を視写させるという授業が多かったのではないでしょうか。そこに切り込んで成果を上げている事例です。
 中学生では、どんどん様々な機能を使って自分の考えを表現する様子が観察されています。教師のほうから「もう一度教科書を読んでごらん」などと言わなくても、何度でも教科書画面と本文抜き出し機能の画面を行き来する様子が見られております。
 次のページはグループで意見を交換するというところなんですけども、考えを整理した画面をグループの友達に示しながら考えを交流しています。右側の子は、友達の話を聞きながらどんどん自分の考えを修正しています。「今は話し合うときだよ」とか「ノートを書くときだよ」というように教師がコントロールするのではなく、自己調整的に学習を展開している様子が観察されております。
 次のページは、小学校でも同じような学習者の姿が観察されているという事例です。ここでは右上の、ここで考えを整理している画面が、協働的に学ぶ活動を経て内容が深く豊かになっている様子が見てとれます。ペアや学級全体での自分の考えを話すことによって、曖昧な自分の考えが明確になっていくということが示されているのではないでしょうか。
 次のページには単元計画が書かれていますが、単元計画の中で、全体の中で学習者の資質能力を育成していくという教師の授業観が見てとれるのではないでしょうか。
 18枚目のところには、様々な学会でも国語のデジタル教科書の活用に関しての実践研究を発表して、成果の蓄積、共有がなされているというような事例です。
 次に、事例3、積極的な単元開発というところでお話をさせていただきます。脱指導書なんです。社会とつながる課題を設定して単元開発をしている事例なんですが、指導書の単元計画は左側にあるとおりなんです。これまでの国語では、教科書にあるからということで授業が実施されることが多くて、国語が楽しくないとか国語が嫌いというような子供たちを生んでいる要因となっていたかなとも思っております。もっと子供たちが社会とつながる、そういう意識をして学ぶ、自分から学ぼうという意欲を引き出すために「地区センターに書評をおこう」という学習課題を投げかけています。この学校の隣は地区センターなんです。ですから、保護者も地域の人も学校のみんなも利用するわけですから、そこで手に取ってもらえる書評を書きたいという意欲が高まるわけです。高学年の自尊心をくすぐるような課題にもなっています。次のページにありますように、情報収集から始まるというような単元構成に変わっているというところです。
 さらに、次のページにありますが、1単位時間の流れも変化します。追求する学習課題が個々によって違ってくるわけですから、個で考える時間の保障が重要となります。ただし、個で学ぶことが難しい学習者もいますし、早く出来上がる子もいます。そのときには、協働的に学んでいいんだよというような支援をしておりました。最初から個、協働を選択するのではなくて、あくまでも個で考えるということを大事にして、そこから必要に応じて協働的に学ぶことを選択するように働きかけていることがこの事例の秀逸なところではないかなと思います。
 様々な思考のパターンで子供たちが考えている様子が見てとれると思います。左側の子供はマトリクス表に整理しています。右側の学習者は、お話の粗筋に応じて登場する者やその影響などを、矢印を使って整理しています。これまでは教師の作成したワークシートを与えて、枠の中にどの子も同じような情報を当てはめるということが重視されてきましたが、これからはこのように子供の思考に合った方法で整理したり、まとめたりして学ぶということが必要になってくるということが見えてくるかと思います。
 次の写真は学び方を選択しているような様子です。
 時間も大分たってまいりました。外国語・英語の活用状況に関しましても、少し意見を述べさせていただきたいと思います。
 本年度、せっかく全校に無償配布されたのですが、なかなか活用は広がらない様子が見えます。配布されたことを知らないという教員もおりますし、外国語の授業をしているのが講師という自治体も多く、なかなか情報が共有されにくい。また、使っていても一斉伝達型の授業にデジタル教科書を組み込むというような授業であったりというような状況が見えます。ここでお示しした事例のようには、なかなか授業改善に向かっていかないというところなんですが、どうしてなのかなと考えますと、指導者用デジタル教科書があれば英語は十分今までも指導できていたよとか、突然英語に全校配布ということが降ってきたわけですので、例えば英語教育を研究している方、それから指導主事、先ほど御提案があった藤木先生のようなエキスパートティーチャー等々が少ないのではないかなというような要因が考えられます。これらの課題を来年度に向けて解消していく必要があるのかなと考えております。
 以上、これまでお話をさせていただきましたが、最後に、今後デジタル教科書の導入に向けて期待することをちょっと述べさせていただこうと思います。新しいものに対する抵抗感はいつの時代にもあります。丁寧にデジタル教科書のメリットを検証して、その成果を公開していくという努力がこれからも必要ではないかなと考えております。
 そのメリットの一つとして、デジタル教科書とデジタル教材を連携して活用することで個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実に寄与するということが、多くの実践から明らかになっています。国語科は授業時数が最も多い教科でもありますので、無償配布の早期実現が期待されます。
 また、従来の紙の教科書に慣れてきた多くの教師にとっては、デジタル教科書の授業における活用イメージを持ちにくいというところが見えます。有効な研修の在り方を確立して、各地で実施していく必要があると考えています。
 以上、日本の先生方はやる必要があるということを理解すれば、そこに向かって努力を惜しまないというところがあります。先生方が本腰を入れて学習者主体の授業改善のための手段としてデジタル教科書の活用に向かうように、ぜひこちらの会で今後の道筋を示していただけたらと思っております。
 最後のページに出典を明記しております。どうもありがとうございました。時間が長引いて申し訳ありません。
【堀田主査】  ありがとうございました。
 それでは、これから質疑、そして自由討議に入っていきたいと思います。まず、ヒアリングの内容についていろいろ御質問もあろうかと思いますし、それぞれの御意見もあろうかと思いますので、それをまとめてこの後やりますが、その前に事務局のほうから今日配付している参考資料等につきまして少し御説明していただいて、その後、委員の皆さんから意見を取りたいと思います。時間が押していますので、皆さん、御協力をよろしくお願いいたします。
 それでは、事務局、お願いします。
【黄地教科書課長】  教科書課でございます。自由討議の参考として参考資料を3点ほどお配りしておりますが、そのうち参考資料3でデジタル教科書をめぐる状況の資料を御用意してございます。こちらは第1回にも説明させていただきましたが、9月30日にありましたこのワーキングの親会議でございます特別委員会でまとめられた整理の中にも、全国学テやPISA調査のICTに関係するデータがございましたので、こちらを、今画面に表示されていますように、14ページから27ページにかけまして追加しております。
 もう一つは参考資料4として、前回のワーキンググループの意見の概要を論点ごとに整理したものでございますので、今後もこちらを順次追加してまいりたいと考えてございます。
 3点目は参考資料5でございます。こちらの論点整理でございますが、こちらは今後の教育課程、学習指導及び学習評価等の在り方に関する有識者会議がおまとめになったものでございます。9月18日にまとめられたものでございますが、この中にも学習指導要領との関係で教科書に関する記述もございましたので、御参考までに配付させていただいております。
 具体的には、今表示されております16ページに教科書・教材の在り方といたしまして、教科書の内容を全て教えなくてはいけないという考え方が強くある中で、教科書にもそういった要因が一つあるのではないかですとか、あとは経験の浅い教師でも充実した指導ができるように教科書の内容が工夫されているけれども、反面、創意工夫や指導力向上を阻んでいるのではないかといった御意見。また、1人1台端末の整備によって、先ほども御紹介がございましたけれども、子供たちが多様な学習材に自らアクセスできるようになってきたと、こういった状況の変化も踏まえて新しい学びにふさわしい教科書の在り方、デジタル教科書も含めて検討すべきだといったことがこのまとめの中に記載されておりますので、御参考にしていただければと思います。
 以上でございます。
【堀田主査】  ありがとうございました。
 それでは、これから御質問、御意見のある委員の皆さんの発言を受け止めていきたいと思いますが、オンラインの方は委員としてはいらっしゃらないですね。もしかしたら発表者に質問が行くかもしれませんので、その御準備をお願いいたします。
 それでは、お手元の端末に挙手ボタンがございますので押していただきまして、それで発言順を私のほうで決めてまいりたいと思います。時間は多分30分ぐらいしかありませんので、委員の皆さん、コンパクトに御主張いただければと思うところです。
 まず最初に、奈須委員、お願いいたします。
【奈須委員】  よろしくお願いいたします。とてもすてきな御発表をいただいて、デジタル教科書の活用の幅がとても見えてきたなと思っております。
 まず1点目、デメリットとして指摘されたことの多くは技術的な解決が可能なもの、あるいは今後の条件整備で解消が可能なものが多いなと、つまり早晩解決していけることがほとんどかなと思いました。
 2点目です。いろいろなお取組があったのですが、私は3種類あるなと思っていました。第1は、これまでもやれてきたことがよりスムーズに、あるいは低コストで実現できると、これは働き方改革とか時数が厳しいということを考えると、とても大事なことかなと思います。
 それから、第2は、佐藤先生のお取組で特に感じたんですが、これまでやりたかったんだけどもできなかったこと、それができるようになったということです。これは以前から子供のために一生懸命頑張ってきた先生方の思いが、デジタル教科書によって実現されることがたくさんあるということ。そして、子供の側で言うと、困っていた子が救われる。これはとても大きいと思いますけれども、このことがあるかなと思います。
 それから、第3は、むしろこれまではあまり考えていなかったのだけれども、デジタル教科書によって新たな機能として提案されたことに触発されて新たな授業づくりや学習のインスピレーションが得られるということ。これは教師もそうですし、子供の側でも「こんなことができるぞ」といってどんどん進められる。これはテクノロジーがもたらす恩恵としては一般的なことで、かつてで言えばオープンスペースなんかもそうでしたし、コンピューターは常々そうでしたけれども、デジタル教科書にもこういった効果があるんだなと。これまでも日本の授業というのはとても質が高いんですが、新たなテクノロジーによって先生方も子供もインスピレーションを得て、新たな地平に踏み出すということがあるんだなと思いました。
 それから、3点目として、教科書というのは基本的には教材であって、教師がある意図や計画性を持って使うものでした。なので、それ自体は独習用ではないと、それはいい意味でそうだと思うんですけれども、廣瀬先生のお取組でありましたが、デジタル教科書になると、もう既にある種の教育方法がビルトインされているんですね。なので、先生の指示を待たなくても子供がどんどん使っていける、あるいは図形が動くということもありましたけれども、すごくオーセンティックになっていて、教材と関わることで子供がどんどん学びへの動きを生み出すことができると、これは従来の教科書と比べて、大分変わってきたなと思っています。もちろん完全な独習用の教材ではありませんし、そうする必要もありませんが、これまではどうしてもいろいろなところで教師が手を出さざるを得なかった。それが子供の受動性になったり、子供の学ぶペースとそごがあったりしたわけですけども、そこを乗り越えていくということが随分デジタル教科書の機能としてあるんだなということを強く感じました。
 一方で、このことは、教師は何をするんだということにもなってくる。もちろんビルトインされたいろいろな機能で、先生がしなくていい部分はしなくていいと思いますけれども、そうなってきたときに、教師の役割ということがいよいよ問われてくる。これは最後の佐藤先生のお話にもありましたが、だからこそ、より私がやりたい授業を存分につくるということに向けて創造性を発揮するということが可能になると。これはとても好ましいことだなと思いますけど、教師の仕事が減る、教師の仕事が変わるというときに、あまりそういうことを考えてこなかった先生にすれば本当にやることがなくなってしまう。教師の専門性が問われる、これは望ましいことだと思いますけれども、教員養成の在り方も含めて今後の大事な課題だなと思いました。
 以上です。
【堀田主査】  ありがとうございました。
 それでは、ほかに御意見のある委員の方、挙手をあらかじめしておいていただくと私のほうは助かります。
 中村委員、お願いいたします。
【中村委員】  中村です。よろしくお願いいたします。本日は本当にいろいろな効果的な活用が見える発表をいただき、私も学校に持ち帰りたいなと思う事例がすごくたくさんありました。ありがとうございました。その中で、私は質問ということで、藤木先生と廣瀬先生に質問をさせていただいてよろしいでしょうか。
 まず、藤木先生になんですが、授業形態が変わられた、まさにデジタル教科書を使うことで授業の展開というのは変わるもので、変わらないときは多分活用が進まないと私も思っているんですが、その中でSmall Talkの要素が、恐らく私がぱっと資料を見たところではなくなっていると思うんですけども、そのSmall Talkの要素はどこに含まれていったのか、またはSmall Talk自体が全くなくなったのか、それとも、ある一部のお子さんに対しては実は先生がSmall Talkをしているんだよという実態があるのか、そこを伺いたいのが一つです。
 また藤木先生なんですが、台本を作られて、その台本が正しいかどうかの確認というのはどのようにされているのかなというのがちょっと気になりました。
 廣瀬先生、一つ質問させてください。グラフィックスツールによって試行錯誤できるようになったということで、私もこの機能が算数科、数学科においては一番目玉になる機能かなと感じているところなんですが、明確にではなくていいんですけれども、特に子供たちの問題の達成率だったりとか理解度といったものに数値的な変化があったような感覚はあったのかというところを伺いたいなと思っております。
 お願いいたします。
【堀田主査】  藤木先生、お願いできますか。
【藤木先生】  御質問ありがとうございます。
 まず、1点目、Small Talkの要素がなくなっていたように思うが、どこに行ったかということについてですけれども、中間指導の中でSmall Talkに代わるようなことを必要に応じてやっています。それが教師対児童であったり、教師対教師であったり、相手は様々なんですけれども、それまでは「Small Talkをするよ」という形でわざわざその時間を設けていましたが、そうではなくて、中間指導の中で必要に応じてやっていくという流れです。
 二つ目、台本が正しいかどうかの確認はということですが、アテレコチャレンジのことでよろしいでしょうか。
【中村委員】  そうです。
【藤木先生】  ありがとうございます。アテレコチャレンジについては録音していますので、子供たちの実際のやり取りの正確性というものは録音、録画を聞いて、私のほうで評価に役立てています。
 以上です。
【堀田主査】  ありがとうございました。
 廣瀬先生、お願いします。
【廣瀬先生】  グラフィックスツールを用いることで数値的なところでのデータというのは、ごめんなさい、正直取っていないので明確な根拠はないんですけども、子供たちのアンケートの中で多かった意見としては、図が動くことによって理解しやすかったという意見はかなり多くの生徒が挙げていた部分かなと思いますので、そういった意味で子供たちの理解の補助にはなっているのではないかなと感じています。
 以上です。
【堀田主査】  ありがとうございました。
 よろしいですか。
【中村委員】  ありがとうございます。実は、Small Talkの部分も一斉指導ではなくて、必要なお子さんには必然として必要な場面でやっている、個別最適になっているということであったりとか、今のグラフィックスツールも必要なお子さんにとってはすごく分かりやすい機能だったということで、皆さんの発表を通しても個別最適であって、必要なお子さんにその機能が有効的に活用されているんだということがすごく分かる、しみてくる発表だったので大変参考になりました。ありがとうございました。
【堀田主査】  ありがとうございました。今までの指導法というのは必要な子が少しいるから全体にやっていたわけで、その辺が非常に合理的に組み立て直せるんだということかと思います。逆に言えば、今までの指導法に固執して、そこにデジタルを当てはめようとしても難しいのだというように思うところです。
 中川主査代理、お願いいたします。
【中川主査代理】  本日の四人の方の発表は大変参考になりました。ありがとうございました。
 藤木先生の英語に関する御発表で、次に何をしたいかという児童の学びの保障をされていたり、廣瀬先生の数学に関する御発表でデジタルノート的な活用の様子が示されていたり、それから足立先生の数学に関する御発表で、教科間とか教材間のシームレスな活用の様子の御報告がありました。これは本当に児童生徒の自己調整力を育成することと並行しながら、デジタル教科書の活用を進めていく必要性を感じることができました。そして、そのためには、デジタル一斉授業オンリーに陥らない授業観の転換が必要だということも改めて分かりました。今日の御発表も単にデジタル教科書を活用するということだけではなくて、新たな学びの在り方を見据えてのデジタル教科書の活用はどうあるべきかという視点で考えるきっかけをいただきました。
 さて、今日はデジタル教科書の配布の今後について意見を申し上げたいと思うんですが、佐藤先生は国語科においてのデジタル教科書を活用した学びの可能性を示してくださいました。私は前回の会議において、デジタル教科書は使ったら使っただけ効果を実感できると、デジタル教科書の調査結果を引き合いに出して申し上げました。となると、現在全校に外国語のデジタル教科書、約半数の学校に算数・数学のデジタル教科書が入っているわけですが、まず算数・数学を100%の学校に導入するとともに、次に国語のデジタル教科書をできるだけ早く導入すべきと思っています。
 理由は二つあります。一つは、先ほど佐藤先生もおっしゃいましたが、使ったら使っただけのことがあるとすると、授業時数の多い科目について優先的に導入することが学習効果をさらに実感することにつながるからです。もう一つは、本日の佐藤先生の御説明から、いわゆるデジタル教科書部分のみで教科書本文への書き込みを学習活動の中で充実することで学習効果が望めることが理解できたからです。その操作は、同様の頻度では紙の教科書ではそこまでしなかったわけですよね、デジタル教科書独自の活用と言ってもいいと思います。ぜひ早い段階で、少なくとも外国語、算数・数学、国語については全校整備を目指していただきたいと思います。このぐらいの時間数をデジタル教科書で使えることが本格的な検討の場を保障することになると思います。
 いずれにしても、個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実を促すには、今後、今回の御発表にあったような学習者用デジタル教科書のグッドプラクティスをさらに蓄積、共有していく必要があると考えています。
 以上になります。
【堀田主査】  ありがとうございました。
 では、この後、松谷委員、細田委員、阿部委員の順番で参ります。
 松谷委員、お願いします。
【松谷委員】  今日はいろいろ研究発表、四人の先生方、ありがとうございます。すばらしいデジタル教科書の事例の研究発表だったと思います。こういうのがどんどん出てきてデジタル教科書が使いやすく、教員ができればいいなと感じました。
 特に、今までの日本の教育の中では教科書中心になるとインプットの授業になっている、それがデジタルを使うとアウトプット、英語で言えば書いたり、話したり、アウトプットの力を養成できるということがこれからの日本の教育に絶対必要ではないかなと思っています。
 そういう中で、主体的な学びのところで問題点として、第1回目のワーキンググループでもいろいろ話がありました。一つは重いんじゃないかと、かばんでも、両方を併用するということに私はちょっと疑義があると感じております。小学生のところで、実は私、東京の統計グラフコンクールの審査をやっていたんですけれども、小学校3年生が都知事賞、小学校1年生が教育委員会賞を取ったのはかばんが重いというテーマなんです。そこにはパソコンが入っていて、ノートがあって、それから習字のああいう重いものがあって、そしてかばんの重さでもう大変だというんでデータを出して、それが賞をもらったんです。ほかの審査の先生も関心を持っていて、それが賞になったと思うんですが、子供たちにとって大事なことは、そういった部分で毎日の生活の中でどうデジタル教科書を使っていくか、併用するというのは我々の大人の考え方だと思うんですけれども、そんな意味で、私はできるような教科では両方ではなくてデジタル教科書、全部の教科ではなくて、そういうのを分けて、今のお話のような英語とか数学、それから国語とかをデジタルにしていけば、日本の教員というのはみんな積極的にそういった研究をして、どううまく活用するかというのは出てくるのではないかと思います。そんな意味で、両方を併用するのではなくて、デジタルあるいは紙の教科書のよいところを使い分けして次の段階に行けばいいのではないかなと思っております。
 以上でございます。
【堀田主査】  ありがとうございました。
 細田委員、お願いします。
【細田委員】  今日は四名の方、大変すばらしい御発表ありがとうございました。
 奈須委員さんもおっしゃっていたんですけれども、新たなテクノロジーによってインスピレーションがどんどん広がっていくというのをこの四人の皆さん方の御発表で実感しまして、どの実践もすばらしくて、私もいろいろなところで話す機会があるので、一つ一つを紹介したいくらいなんです。
 こういうグッドプラクティスをどのように共有して、どのように広げていくかということが大変重要で、佐藤先生も最後におっしゃっていたように日本の教師は腹落ちすればこんなにすばらしい授業が展開できるんだというようなイメージを持ち、そして自分でもやりたいと、そういう腹落ちがあれば結構みんな頑張ってやっていくんじゃないかなと思いますので、これも奈須先生がおっしゃっていたように、大学の教員養成においてのデジタル教科書を使った授業の展開についてももっともっと、私も一部の大学での教員養成しか存じ上げておりませんので全体を承知しているわけではございませんが、もっともっとデジタル教科書、デジタルを使った授業デザイン力を上げていくための教員養成がすごく必要になるなと思っております。
 一つ、足立先生とか廣瀬先生がおっしゃっておいでで、ほかの方もそういう場面があるんじゃないかなと思うんですけれども、年度当初のアカウントの設定など、私も長いこと現場にいましていつも思っていたんです。お一人かお二人のできる先生に全ておんぶにだっこ状態で、その先生方がお力もあるし、気持ちも前向きなので、つらいことを我慢しながら文句一つ言わずにやってくださっている現状をいつもいつも見ておりましたので、これって何かうまくパッケージで外注できないのかなと、教育長時代もずっと思っておりました。
 そのことが一つと、もう一つテクニカルなことについては、藤木先生がおっしゃっていた、とりわけ私も英語でございますので、AIによる添削機能がデジタル教科書の中にパッケージで入っていたらどんなに使い勝手がいいだろうと、授業の幅がまたぐっと広がるなと思っておりますので、そのようにふと感じながら聞いておりました。本日はどうもありがとうございました。
【堀田主査】  ありがとうございました。
 阿部委員、お願いします。
【阿部委員】  今日の発表ありがとうございました。皆さんの発表を聞いて、本当にデジタル教科書によって授業が変わるなと思います。これまでできなかった授業が可能になると思います。これまでの多くの授業は、子供にとって受け身の授業、そして先生たちにとっては教え授ける、一斉に詰め込むという授業が多いように思っていました。デジタル教科書を使うことによって子供たちが主体的で対話的で深く学べる、そういう可能性がものすごく広がるなと思いました。
 私の学校でも国語のデジタル教科書を以前は使っていて、今は使えていないという状況にあります。本当に佐藤先生のおっしゃるように教科書に子供は書き込みたがらないんです、なぜなら、失敗したら嫌だから。ですが、デジタルはトライアンドエラーがとても容易なので平気で書き込める。駄目なら消せばいいんですよね。そういうことが可能だというのは、子供たちの学びはエラーをしても大丈夫で、間違ってもいいって、そういうことを、授業を通して教えることができる、そういういいところがあるかなと思います。本当にいいですよね。今は使えていないので先生たちはどういうことをやっているかというと、教科書の本文をスクショに撮って、それを全員に送っています。そうすると、そこになら子供は遠慮なく書き込めるから、そういうことをしなきゃいけないならデジタル教科書を早期に導入してほしいなと思います。
 それから、先ほど廣瀬先生が、皆さんもおっしゃっていましたが、アカウントの設定管理はとても大変なんです。本当にノイローゼになるくらいです。私の学校はLoiLoを使っているんですけど、ロイローゼという言葉がはやりました。それぐらい大変なのです。でも、これって先生の仕事ではないと思います。となると、ここを担ってくれるICT支援員などに一手に引き受けてもらいたいです。あとはシングルサインオンがもっと進んで一つのアカウントで全てが紐づいていて、ピッといけるみたいなことが必要になるかなと思います。
 デジタル教科書によって授業が変わるわけですけど、子供は案外すぐにそれに対応できるんですが、先生たちは対応するまでに少々時間がかかるし、意識の改革みたいなことが必要になると思います。そこに必要となるのは、これを使うと本当に便利だなとか、負担が減るなとか、子供の学びのためにすごく有効だなとか、そういう有効性を実感すること。それと、先生たちは真面目なので、デジタル教科書は今は教材ですけど教科書であると、だからこれを使わなきゃいけないということで道筋をつけることが先生たちの意識改革に大きく一役買うのではないかなと思います。
 以上です。
【堀田主査】  ありがとうございました。
 岡本委員、お願いします。
【岡本委員】  教科書協会の岡本でございます。本日は貴重な実践事例の御報告ありがとうございました。いずれの発表においてもデジタル教科書を非常に有効に活用していただいて、子供の学びを支えるという観点で発行者側からしてもうれしいといいますか、そういった御報告だったのではないかと思います。
 御発表の中で幾つかちょっと気になる部分がありましたので、この際、少し発言させてください。
 まず、英語ですとか、算数・数学、国語、それぞれの教科の特性に応じたデジタル教科書の活用をされていたように感じまして、非常にありがたいなということを思う反面、デジタル教科書のメリットとして、例えば動画の解説資料があるという御報告がありましたけれども、そこは現在の制度ではデジタル教材として位置づけられているものが含まれていたように感じました。ですので、今後デジタル教科書のよさをどうやって生かすかということを制度的に考える際には、どういったところまでを教科書の範囲として位置づけるのかという議論が必要になるんじゃないかなと思って伺っておりました。
 それから、これは課題のところで先生方から御指摘を受けていましたけども、例えばビューアが会社によって違うとか、それからアカウントの登録が会社によって違うということで、大変申し訳なく思っている部分であるんですけれども、デジタル教科書ができた経緯としましては、もともとは指導者用のデジタル教科書を各社が販売しておりまして、それぞれの教科書発行者が考えるビューアの在り方というのをそれぞれで開発してきたので、今何種類かに分かれてしまっているということでございます。こうしたビューアの中に便利な機能がついていて、機能とビューアが一体化されている提供になっていますので、どのように操作性を一元化していくのか、シームレスにしていくのかというのは、業界として今後の大きな課題だということで受け止めさせていただきたいと思います。
 それから、アカウントについては、学習系の教材のアカウントもありますでしょうし、学校においては、校務系にはまた学習者情報が必要になりますし、学習eポータルに関してもMEXCBTとの関係で異なるシステムを導入されている現状があるので、デジタル教科書だけをそろえても学校全体はまだまだばらばらになっている状況かと思います。なので、校務系、学習系を通して一つのシステムをまとめ上げていくということを、これは行政主導でやっていただく必要があるんじゃないかなと思っておりますし、学習eポータルが本来そうしたハブ的な役割という位置づけで誕生したという経緯もあると思いますので、そうした全体の仕組みをどうやってそろえていくかというのが、このワーキングを越えた議題ではありますが、求められるんじゃないかなと思って聞いておりました。
 それから、これで最後にいたしますが、紙とデジタルをどのように使い分けるかとか、どっちかに振るかという話もそれぞれの御発表の中で出ていたかと思います。従来、紙100%の完全供給というのを教科書発行者は負わされていまして、どんな離島であっても、僻地であっても教科書を届けなくてはいけないという使命がある中で、今、そうした実際のラストワンマイルといいますか、紙を届けるという仕事を地域の書店さんなどにやっていただいているという状況があって、それが、例えば紙とデジタルを選択してしまって紙の量が減ってくるとそこにかかるコストも少なくなってしまって、今のシステムを維持するのが難しくなるんじゃないかなとちょっと懸念しています。紙かデジタルかを選ぶのは学習者とか教師にとってはすごくいいことなんですけれども、実際にそれを届ける側の仕組みが維持できるかどうかというのも非常に心配しているところですので、そうした供給の仕組みなんかも含めて慎重に議論して実現可能性を探っていくということをお願いできればと思っております。
 私からは以上です。
【堀田主査】  ありがとうございました。
 最後に、太田委員、お願いします。
【太田委員】  日本PTA、太田です。今日はありがとうございました。
 今日の御発表を聞いて、ますます保護者が取り残されていかないか心配がありまして、私も今日、いろいろな議論をお聞かせいただく中で分からない横文字がいっぱいありますし、そういう中で、保護者がこれからの新しい授業の形というのをどのように理解していくのか。これにAIが入ってきたりすると、どんどんどんどん学校の授業というのは進化していって、学校の先生たちと子供たちはそれについていくんでしょうけど、じゃあ、保護者がそれをどのように理解していけばいいのかなと。授業参観の在り方なんかも、今までは一斉授業を親が後ろから見て、ああ、こういう授業をしているんだなというのは理解できたんですけども、これからの授業参観の在り方というのも、どっちかというと、今日のお話を聞いて、私もそうした授業を1回でもいいから受けてみたいという、自分でやらなきゃ分からないなと思いましたので、だからそういう機会をどのように設けて保護者に経験してもらえばいいのかなというのは、PTAの大切な役割として学校教育への理解というのもありますので、また、PTA自体も今いろいろな印刷物をPDFに、PDFにという流れがあるんですけども、ただ紙をPDFにするだけではないこれからのデジタルの在り方というのもPTAとしてもいっぱい学んでいきたいなと思いましたので、前回と同じようなことですけれども、そういうことを今日も感じました。
 以上です。
【堀田主査】  ありがとうございました。
 せっかくですので、御発表いただいた四人の先生方、何かもしあれば、短い時間でなら可能なんですけど、いかがですか。
 では、代表して佐藤先生、何か一言。
【佐藤教授】  すみません。私、時間を食ったのにまた発言の機会をいただきまして。
 先ほどお話ししましたように、まだまだ様々な課題がこちらのお話でもありましたし、私が感じていることもありましたので、ぜひこちらで有意義な論議を重ねていただいて、道筋をぜひつけていただければと期待しております。よろしくお願いいたします。
【堀田主査】  ありがとうございました。
 私、主査ですが、今日のお話をせっかく聞きましたので、少しコメントしておきたいと思います。
 基本的にはデジタル教科書の有効性というのは、個別最適な学び、これは国として強く推進しているわけですけども、これを実現するときの学びやすさの保障といいましょうか、ちょっと大げさに言えば学習権を守りながら、心理的安全性を守りながら子供たちが学ぶということをどうやって実現するかという学習基盤の話なのかなと思いました。
 多くの優れた事例というのは、紙でもできなくはないんだけど、紙よりデジタルのほうがやりやすいことや、これは奈須委員もおっしゃっていましたけど、もうちょっと言えば今日の小学校英語のチャンツとか字幕とかを自分の判断でやる・やらないを必要に応じて決めることができるようなこと、中学校の例で言えばシミュレーションみたいなことを自分のペースでやれるようなこと、高校の例で言えば学び方を自分で、紙かどうかも含めて自分で決められるようなこと、佐藤委員のお話で言えば子供たちがテキスト、国語の場合はテキストをハンドリングして、それを自在に利用して自分の考えをつけさせるようなこと、これらは厳密に言えば今の定義ではデジタル教科書ではなくて、それについているデジタル教材、デジタル教科書のすぐ周辺にあるデジタル教材の機能ということになろうかと思います。このことから考えれば、デジタル教科書、デジタルにしたときの教科書というのはどこまでなのかということについてしっかりと私たちは議論しないといけないのかなと思います。これは言うほど簡単ではなくて、様々な法令との関係がありますので、文部科学省として決めていただかなきゃいけないことがたくさんあろうかと思うんですけども、デジタルになり、個別最適な学びや協働的な学びを一体的に推進していく時代において、次の教育課程を考えていくときの前提となる学習環境としてこれをどう私たちは考えるか、今までの制度の上でいいのかということは一つ大きな課題かなと思いました。
 もう一つだけ、アカウント管理のこととかいろいろ出てきました。これもシングルサインオンのための設定とかも含めると実は結構膨大で、各教科書会社側の御努力はいろいろあるけども、それだけでも煩雑なのに加えて、それにほかのツールとうまく連携させるための設定とかも煩雑です。教科書採択というのは基本的には自治体でやっていますから、簡便に設定できるものを選ぶみたいになると、これは教科書の質の話とは違うところに採択の価値みたいなところが出てきて、これで制度的にいいのかということになります。
 ですから、教科書は、採択されたことによって各教科等の教科書がみんな少しずつ違う会社になるというのは、それはある意味当然のことで、それを自治体が決めると現場が大変になるという今の仕組みは、かなり問題だろうと。今までの文脈で言えば、これは多分供給の仕組みのところに当たると僕は思うので、デジタル時代の供給の仕組み、現場が苦労しないでちゃんと使えるようになる仕組みは制度としてしっかりと担保しなければならないのではないかと、すぐに来年からというのは無理なんだけども、ここをちゃんと検討する必要があるなと感じました。
 今日は四人の方、皆様から非常に丁寧な、そして具体的なお話をいただいたおかげで、私たちの議論も問題点が焦点化されたように思いますし、逆に言えば、文部科学省におかれましては大変課題がいろいろ鮮明になって、ちょっと大変になったところもあるのかなと思いますけども、デジタル教科書を推進するワーキングとして、この辺が解決していかないとさらなる推進は難しくなる可能性があるということかと思いますので、しっかり受け止めて、私のほうも事務局と相談して今後の進め方を考えてまいりたいと思います。
 最後に、次回の予定につきまして、事務局から説明をお願いします。
【西田教科書課課長補佐】  次回のワーキンググループの日程につきましては、追って事務局から御連絡させていただきます。
【堀田主査】  ありがとうございました。
 それでは、今日予定した議事は全て終了しましたので、これで閉会といたしたいと思います。皆さん、御協力どうもありがとうございました。
 
―― 了 ――

お問合せ先

初等中等教育局 教科書課