令和6年9月12日(木曜日)15時00分~18時00分
文部科学省(WEB会議も併用)
【荒瀬主査】 では、ただいまから中央教育審議会初等中等教育分科会 個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実に向けた学校教育の在り方に関する特別部会 高等学校教育の在り方ワーキンググループ第14回を開催いたします。
本日も、御多忙の中、御出席いただきまして、ありがとうございます。本日は、3時間を予定しております。もちろん早く終わりましたら早く終わりますけれども、よろしくお願いいたします。
本日の会議も、ウェブ会議システムを併用しつつ、文部科学省内の会議室で開催しております。また、傍聴者の方につきましては、YouTubeにより御視聴いただいております。
なお、本日、報道関係者から録音及び写真撮影希望のお申出がありました。許可しておりますので、委員の皆様におかれましては、御了承いただければと思います。
それでは、事務局、度會参事官補佐から、本日の会議の配付資料について御説明いただくとともに、人事異動があったということでありますので、その御紹介もお願いいたします。
【度會参事官補佐】 事務局でございます。本日の配付資料は議事次第のとおりとなっておりますので、不足等ございましたら事務局にお申しつけいただければと思います。
次に、人事異動についてでございます。
8月9日付で、大臣官房文部科学戦略官として今井が、初等中等教育局参事官として橋田が着任しておりますので、よろしくお願いいたします。
一言ずつ御挨拶いただければと思います。
【今井戦略官】 では、失礼いたします。この度、8月9日付で文部科学戦略官に着任しました今井でございます。以前も高校教育を少し担当することもございまして、また久しぶりに戻ってまいりましたので、どうぞよろしくお願いいたします。
【橋田参事官】 失礼いたします。同じく8月9日付で高等学校担当参事官に就任いたしました橋田でございます。これまでの教育課程課、大学入試室長等での経験をうまく生かしていきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
【度會参事官補佐】 事務局からは以上でございます。
【荒瀬主査】 ありがとうございました。
それでは、議事に入りたいと思います。
本日は、「教育費負担軽減の在り方」、そして「人口減少時代において少子化が更に加速化する地域における高等学校教育の在り方」について、その方向性や必要な施策の在り方等につきまして、御意見をいただきたいと思います。
それに当たりまして、まずヒアリングを実施いたしたいと思います。「教育費負担軽減の在り方」につきましては、東京都立大学の阿部彩先生、セーブ・ザ・チルドレンの田代光恵様、お二人から、それぞれ10分程度で御発表をいただきたいと考えております。
なお、本日、阿部先生におかれましては、15時30分に御退席になりますため、阿部先生に御発表いただく際、続けて質疑応答の時間を設けたいと考えております。その後、田代様に御発表いただいて、続きまして、文部科学省の修学支援プロジェクトチーム、山口室長補佐からも5分程度、御発表いただいて、まとめて質疑応答の時間を取りたいと思っています。その後、休憩を挟みまして、再開後、事務局、度會参事官補佐から、令和7年度概算要求及び7月の視察の結果につきまして、御説明と御報告をいただきたいと思っています。
次に、「人口減少時代において少子化が更に加速化する地域における高等学校教育の在り方」に関しましては、認定NPO法人カタリバ代表理事である今村委員、一般財団法人地域・教育魅力化プラットフォーム代表理事である岩本委員、そして元高知県教育センター企画監である濱田委員から、それぞれ10分程度、御発表いただき、その後、まとめて質疑応答や意見交換の時間を取りたいと思っています。
加えて、全体を通して意見をいただく時間も、最後、これは可能な限りということでありますが、取りたいと思っております。
では、初めに、「高校生年齢の子どもの生活困難」につきまして、阿部彩東京都立大学教授から御発表いただきたいと思います。
本日は、大変お忙しい中、お越しいただきまして、ありがとうございます。御発表をよろしくお願いいたします。
【阿部教授】 私は、東京都立大学で社会福祉を教えております阿部彩と申します。今日は、このような機会をいただき、大変ありがたく思っております。私は、貧困について研究してまいりましたので、「高校生年齢の子どもの生活困難」についてお話しさせていただきたいと思います。
ポイントとして、3つあります。順に御説明いたします。
まず、子どもの貧困率ですが、子どもの貧困というと、未就学児などの小さな子どもを想定される方が多いのですが、実は、年齢の高い子どものほうが貧困率が高い傾向が近年見られております。
これは、3歳ごとに国民生活基礎調査から貧困立を算出したものになりますけれども、2021年の時点では12-14歳、それから、15-17歳といったような年齢層が比較的貧困率が高い層となることがお分かりになるかなと思います。
以前は、小さな子どものほうが高いといったような時期もあったのですが、現在では、より年齢が高い子どもが生活困難を抱えている率が高くなっております。
その背景には、ひとり親世帯は、子どもの年齢が高いほど多いことがあります。
また、親の年齢が近年上昇しており、子どもを産むときの年齢が高いということは、子どもが高学年になると親の年齢がかなり高くなってきてしまうということになります。ですので、お子さんが高校生、大学生ぐらいになってくると、親がもう定年近くなる世帯も多くなります。
次に父親の年齢構成の分布を見ると、御覧になりますように、かつてのように20代前半で子どもを持つというような方はほとんどなくなり、3割以上が、お子さんが生まれるときには45歳以上となっています。ということは、子どもが15歳になるときには、定年近くの年齢になっているということになります。
父親の年齢別に子どもの貧困率を算出すると、もちろん父親が20-24歳の場合が非常に高くなりますが、先ほども申したようにこの年齢層の父親の割合は少なくなってきており、より注目すべきなのは、父親が50歳以降になってくると貧困率がやはり上がってくるという事実です。これは一般的な男性の傾向として、これぐらいになるとリストラに遭ったりですとか、また、ブルーカラーの方々は収入が打ち止めになってしまうといったようなことがあるということがあります。
ですので、一番支援が薄くなってくるところで、例えば児童手当ですとか、子どもの医療費の補助ですとかがなくなってくる頃に親の所得のほうも低くなっていき、また、子どもにかかる支出も大きくなってくるといったようなことがあります。
ただ、申し上げたいことの1つとして、高校生年齢の子どもの抱える生活困難というのは、教育費だけが問題なのではないということです。まず、勉強にたどり着く前の「生活安定」が非常に大きな問題になってきます。
ここからお見せする資料、この部会ではそれほどテーマになっていないかもしれませんけれども、定時制・通信制高校の子どもについて、そのほかの子どもたちと対比してお見せしていきたいと思います。ただ、これは定時制・通信制だけでなく、一般の通常の高校の中でも、いわゆる底辺校と言われるような学校では同じような状況が見られるのではないかなと思います。
まず、生活困難度、これは生活の中で、例えば、家賃が払えないですとか、低所得であるですとか、子どもに対するいろいろな支出ができないといった変数の複合的な指標なのですが、これで見ますと、やはり通信制・定時制が全日制に比べて非常に高い数値になっています。
次に、家族が必要な食料が買えなかったことがありますかということを聞いたアンケート調査の結果ですが、これでもやはり定時制や通信制は、全日制と比べて全然違う様相を示しているということがお分かりになるかなと思います。
一日の食事回数、3食、食べるかについても、ほぼ毎日、2食しか食べないといったような子ども、中には、ほぼ毎日1食といったようなお子さんもいらっしゃることが分かります。
また、ふたり親とひとり親という観点からいうと、やはりひとり親の世帯が定時制・通信制では多いということになります。
家庭の中で電話や電気、ガス料金といったようなライフラインの支払いの滞納があったかを集計していますが、そこでもやはり定時制・通信制のお子さんの御家庭での生活困難が顕著になっています。
このような状況に置かれている子どもたちは、心の内面にも様々な問題を抱えていて、「頑張ればむくわれる」ですとか、「自分は価値のある人間だと思う」について、「そう思わない」と答える子どもの割合も、通信制・定時制では高いことが分かります。
今まで申し上げたのは、通信制・定時制という形でくくりをしましたけれども、高校の年代というのは、学校単位で困っている子どもを、かなり判別することができます。小中学校では交ざってしまっているので世帯単位で個別の支援が必要になりますけれども、高校の年代というのは、ある意味、政策が打ちやすくて、というのは、学校単位でやればいいということがあるからなんです。その中で、やはり教育費の負担ということだけではなく、生活支援、例えば給食ですとか、様々な福祉への支援をつなげるですとか、そういったサポートを手厚くしていかないと、本当の意味での教育達成といったところまでたどり着かない子どもたちが多く出てしまうといったことになります。なので、底辺の子どもたちにも焦点を当てるということがあるのであれば、学校単位で、学校ごと、生活丸ごとを抱えるといった視点が必要なのではないかなと思います。
次に、今お見せしているのが、コロナの前の2016年と、コロナの後の2022年の東京都内の2つの区における小学校、中学校、16-17歳の親の所得の分布です。この間、子どもの貧困率は非常に下がったのですが、その中で、特にここで強調したいのは、所得が多くなった世帯も多いということなんです。もちろんまだ下の状況のお子さんもたくさんいらっしゃって、その子たちは、生活困難を抱えているんですけれども、全体的に見ると、非常に所得の高い御家庭も多くなっている。
ですが、一番底辺の子どもを見てみると、所得で見た貧困率が大きく下がってはいるのですけれども、子どもの物質的剥奪、例えば、子どもが塾に行くことができるですとか、勉強机があるといったような指標ではかってみると、必ずしもそれほどの改善が見られないというのが現状です。
最後に、コロナ禍を経て、子どものある世帯の中では全体的には所得が非常に上がって貧困率も下がったということがあります。大きく変わったのは中間層であって、子育て世帯の所得の分布は山型から台形になってきています。ということは、全ての子どものある世帯の生活が悪化しているわけではないということです。なので、私は必ずしも普遍的な給付が必要とは思ってはおりません。
同時に、このように子どものある世帯全般の状況がよくなってくると、子育てにかける費用の「常識」が高騰化するということがあります。つまり、子どもに、もっとお金をかけなければいけないというふうな風潮が生まれて、それに対応できる世帯も増えてきているということなんです。
そうしたときに、体験格差というようなこともこの頃言われていますけれども、下の層の子どもと中間層以上の子どもの間に大きな格差が生まれてしまう。ですが、それを全部「給付」で埋めるのですかということを私は問題提起したいなと思います。
子育て世帯の間の格差が非常に大きいいま、これを政府の給付だけで埋めるというのは、難しいのではないかと思います。給付ではなくて、そもそも費用のかからない教育というものを、少なくとも公教育の中で考えていくべきではないのか。つまり、子どもが塾に行くのが当たり前になったら、そこで塾の費用を出すといったようなことではなくて、塾に行かなくても不利にならないような公教育を目指す。子どもが高いお金を使わなくては体験ができないのであれば、それが買えない子たちに対して、それを給付で賄うのではなくて、違う体験を提供するといったような視点も、公的に学校の中でお金のかからない教育や体験を提供するということが必要なのではないかと思います。
私の報告は以上とさせていただきたいと思います。御清聴どうもありがとうございました。
【荒瀬主査】 ありがとうございました。阿部先生、大変端的に御説明いただきました。ありがとうございました。
それでは、先ほど申しましたように、あまり時間がないんですけれども、3時30分頃まで、御質問、御意見を頂戴したいと思います。
どなたか御発言の方は、会場の方は、どうぞ札を立てていただいて、私に見えるようにしていただいて、オンラインの方は「手を挙げる」ボタンをお願いいたします。いかがでしょうか。
では、岡本委員、お願いいたします。
【岡本委員】 岡本と申します。とても重要な御指摘ありがとうございました。
ちょうど私は、おとといかな、それこそ定時制の学校に行って帰ってきたところなので、本当におっしゃっていることはよく分かるんですけれども、定時制に行くか決めるのは大体15歳ぐらいになってくると思うんですよね。生徒の皆さんは定時制に行くときからというよりか、その前の段階から選択肢の制約はずっと続いていると思います。いわゆる無園児と呼ばれる子どもたちと、その定時制に通う子たちというのは、そこは強い相関というか、そこは同じような層の子たちが選択しているのかということをお聞きしたいのがまず1点と、あともう1つが、定時制の学校は、例えば公的な教育費という意味でいうと、多分、生徒1人当たりでいうと、結構恵まれているほうだと思うんです。ですけれども、一方で定時制の学校というのは、今おっしゃっていただいたことでいうと、修学旅行がなかったり、それは積立てのお金ができないからということでなかったりして、そこで体験の格差が生まれてしまう。ここは、私費でほとんどの子が賄っているということなんですよね。となったときに、給付ではないという、一方で、そういう私的な支出が必要になってくるという、ここを埋めるのを、どこの予算からそれを持ってくるべきなのかというイメージがいまいちつかめなくて、それを高校の場合は、これ、一応、県からのお金が入ってくると思うんですけれども、給付ではなくて、お金のかからない教育、例えば、さっき申し上げたような修学旅行だとか、もしくはどこか研修に行きたいだとかというもの、これを給付ではない形でやるというのは、どういうイメージなのか、ここがちょっとつかめなかったので、この2点を詳しくお聞かせいただけたらうれしいです。よろしくお願いいたします。
【阿部教授】 ありがとうございます。まず、無園児とおっしゃるのが、恐らく保育所・幼稚園時点での無園児かと思いますけれども、人数的には圧倒的に少ないので、この2つの層が重なるというようなことは、今はないかなというふうに思います。もちろん無園児の方々が、その後、定時制・通信制に通う割合はすごく多いかなと思いますが、定時制・通信制に行っている子どもたちの中のほとんどは無園児ではなかったと思います。母数の大きさが全然違いますので、そういった意味では、重なっているわけではないかなというふうに思います。
もちろん、おっしゃるとおりに、もっと若い年齢のときから教育格差や学力格差が生まれないようにしていくということが一番正当な方向と思いますが、そこをやるのはもちろんのことですけれども、現実問題として、今、不利な子どもたちというのは、ある学校タイプに集中しているので、その子どもたちに対して、集中的に何らかの支援を行うことは必要と思います。
私が申し上げたお金のかからないというのは、例えば、同じ学校の中で、修学費を出せる子と出せない子のその差をどうするのかというのではなくて、学校で、そもそもお金のかかりすぎる修学旅行をしないで、もっとよい体験ができないかかを考えていくということです。
なので、小中学校からもそうだと思いますが、全てが、どんどん高騰化していって、親が求めるものも高騰化していると思うのです。より遠いところに修学旅行に行く、よりよいものを見せる、よりよい様々な支援を入れる、例えば部活であっても、プロのコーチを雇ってとか、そういったようにして、とにかくお金のかかることが推奨され、また、それを出せる親が増えてきているということもあると思うのです。でも、ただそれに乗ってしまっていいのでしょうか。所得が高い親が増えてきたので、そのスタンダードに合わせて、下の子たちも全部合わせなければいけないということを公教育としていつもその考えであると、絶対にもたないと私自身は考えていて、それよりも、いや、別に、私立に行かなくても立派に育ち、さまざまな機会や将来を描くことができ、全然問題ないよねと、別にプライベートなサッカーチームに入らなくても、学校のチームで十分楽しいよねというようなところをつくっていくという発想の転換をしないと、財政的にもたないのではないかなと思います。修学旅行だけではなく、例えば制服ですとかも、よりよいデザイナーの制服を買うのではなくて、別に普通のシャツでもいいとしてもよいのではないのかですとか、学校単位でいろいろなことができると思うんです。なので、そのような考え方も必要なのではないかなと思います。
【荒瀬主査】 ありがとうございました。
青木先生、冨塚先生、内田先生、今村先生、今、4人の方が手を挙げていらっしゃいます。よろしいでしょうか。時間の関係がありますので、御質問を可能な限り端的にお願いしたいと思います。
では、青木先生、どうぞ。
【青木委員】 青木と申します。本日は、ありがとうございました。先生のメッセージの3番についてお尋ねします。
生徒の人数からすると、私立の広域通信制の人数が多いと思いますが、その場合、どういうふうにその高校を通じて学校をベースとした生活支援を提供すればよいかという具体的なアイデアがありましたら、お教えください。
以上です。
【阿部教授】 すみません。私も学校財政というのが、あまり存じ上げていないので申し訳ないのですが、公立で一部導入されているような、例えば、スクールソーシャルワーカー、ユースワーカーみたいな制度を導入したり、あとは、やはり私としては、食はすごく重要というふうに思いますので、国のほうから補助金を出して給食を出せるようにするですとか、そのようなことが考えられるのではないかなと思います。教員を多く配置するということも非常に有効な政策というふうに思います。
【青木委員】 ありがとうございました。
【荒瀬主査】 ありがとうございます。
【阿部教授】 ありがとうございます。
【荒瀬主査】 ありがとうございます。
では、内田委員、お願いいたします。
【内田委員】 失礼します。ありがとうございました。
2点お伺いしたいと思います。
まず1点目なんですけれども、コロナ前とコロナ後の収入なんですけれども、調査されたエリアは再開発等が進んでいるエリアでもあるかなというふうに思いまして、これとの関係で、比較的改善したというデータは出ていますが、かつて、かなり困窮されている方については、転居をされてしまっているという可能性がないかというのが1つ。タワーマンションとかもできて、高所得者層が増えているということと関係しているかと思うんですけれども、それが1つ。
2点目が、お金のかからない教育に関して、東京都は、給食の部分で、定時制で完全無償化になりまして、喫食率がかなり上がっております。そんな形で支援をするのは困窮家庭にとってはかなり有効かなというふうに思いますけれども、その効果であるとか、あるいは、家庭での学習場所がないということで、学校内で学習場所を確保することがやはり生徒支援に今後つながるかと思うので、その効果について御意見をいただければと思います。
修学旅行等については、各学校で工夫ができるかと思いますので、またこの後の議論のところでお話を委員の皆さんとしたいと思います。
2点、よろしくお願いいたします。
【阿部教授】 調査地域自体が、恐らく所得分布が変わっている可能性というのは否めないかなというふうに思いますが、国の統計で見ても、この間、コロナ禍を経て、非常に子どもの貧困率は下がりました。また、その要因として、母親の就労率が上がっているということも分析されております。子育て世帯全体で見ると、所得は上がっているというのは間違いないところかなというふうには思います。
また、定時制高校での給食ですとか、または、スタディルームといった政策、そういったものは、私、非常に有効だと思います。まだ実証されてはいませんけれども、いかに子どもたちを学校につなぎ止めておくのかということです。今増えている通信制に行っている子どもたちにも、スクーリングという形で、学校を魅力的なものにしていくといったような支援が増えていくといいかなというふうに思っております。
【内田委員】 ありがとうございました。
【荒瀬主査】 ありがとうございました。
では、今村委員、お願いいたします。
【今村委員】 今村です。よろしくお願いします。
青木先生の質問とも少し重なるんですけれども、通信制に行っている子どもたちの多くは広域通信制だということを想定すると、就学給付金の対象になるようなスクーリングのあるところについては、完全に塾と同じ扱いということになるという中で、阿部先生の御提案として、どこまでを無料の教育という内容で救うべきか、そこに対して、例えば学校を特定して、こういう環境下のほうが多い学校の子どもたちに関しては、私立であってもこういう環境は最低限準備すべきなのではないかとか、何か具体的な、特に広域通信制に行っている子どもたち、私立の子どもたちについて御提案があれば、お願いいたします。
【阿部教授】 やはり実態として、貧困の子どもたちの多くがそういった定時制や通信制に行っているというのは、これが事実としてあるかなと思うんです。なので、もちろん塾に近いところもあり、塾のように使っているような方もいらっしゃると思います。しかし、困窮世帯の子どもたちの教育保障ということを考えたら、私はそこも全て無償化するべきではないかなと思いますし、そこからまた違うタイプの学校に戻るですとか、そこから普通に上の学校を目指すことができるといったような道を、少なくても高校生段階の間では保障すべきだと思っております。
【今村委員】 ありがとうございました。
【荒瀬主査】 いいですか。
ありがとうございました。
阿部先生、お時間のない中、今日は御参加いただきまして、本当にありがとうございました。
それでは、阿部先生とのやり取りをこれで終了させていただきます。ありがとうございました。
【阿部教授】 ここで失礼いたします。
【荒瀬主査】 失礼いたします。
それでは、続きまして、「高等学校等における私費負担の軽減に向けて」ということで、セーブ・ザ・チルドレンの田代光恵様に御発表いただきたいと思います。
今日は、お越しいただきまして、ありがとうございます。10分程度ということで、時間が短くて申し訳ありませんが、よろしくお願いいたします。
【田代様】 セーブ・ザ・チルドレンの国内事業部から参りました田代と申します。今日は、「高等学校等における私費負担の軽減に向けて」ということでお話をさせていただきます。
2ページ目に、私どもの団体について紹介をしております。世界各国で子どもの権利実現に向けて活動しておりますが、日本国内でも子どもの貧困に関する活動をしておりまして、今回は、そこでつながっている経済的に厳しい子どもですとか保護者の状況から、いろいろ皆様にお伝えできればと思っております。
3ページ目にございますけれども、今日、大きく3つお伝えできたらなと思っております。阿部先生のお話とも重なる部分もあるんですけれども、そもそも就学のためのお金が非常に高いというところと、それによって学びのスタートラインにすら立てていない子たちがいる、そういったところについて、どういう制度の拡充をしていったらいいのかということになります。
4ページ目、私たちがつながっている経済的に厳しい御家庭、こちらはゼロから18歳までを養育している方たちへのアンケートですけれども、「小中高校生活にかかる費用をすべて無料にすること」を選択している割合が非常に高くなっておりまして、例年この傾向が続いております。
5ページ目です。じゃあ、実際、教育費はどれぐらいかかるのかというところで、文科省がされている調査ですけれども、公立の高校であっても、授業料は含まれていますが、30万円以上かかるというのが現在の状況です。
6ページ目、私どもの就学に関わる給付金を利用された世帯の方たちに取ったアンケートですけれども、学習費の中でも、特に、卒業ですとか新入学の時期の費用負担が非常に高いというふうに言われております。制服代、高校生ですとパソコン・タブレット代、通学費というものも負担感として多く出ているところになります。
7ページ目、では、実際に高校入学時にどれぐらいかかるのかというところをお尋ねしましたけれども、公立の高等学校でも18万円、私立で24万円を超えるというふうな状況になっています。
8ページ目と9ページ目では、パソコン・タブレットの購入についてということで、母数が少なくはあるんですけれども、尋ねております。国公立、私立、双方、パソコン購入が必要か、必要な場合でも十分な補助金や助成金がないのではないか。
9ページ目ですけれども、本体以外、本体は結構注目されるんですけれども、本体以外にもそれなりの額がかかっていて、費用負担感があるということも皆様にお伝えしたいと思っております。
10ページ目になります。こうした高額な費用、特に、今日は卒業・新入学時のということで御紹介をしておりますけれども、どうやって捻出しているのかということをお尋ねしたのが10ページ目になっています。
圧倒的に多いのが、「他の生活費を削る」ということで、私たち、中1、高1の子に給付金を提供しており黄色と青とございますけれども、両方の学年ともに「他の生活費を削る」というものが高くなっています。その次には「借入」、「キャッシング」、「ローン」というものが続いておりまして、福祉資金のような制度は、高1はちょっと利用率が高いですけれども、十分活用されていない現状があるのかなというふうに見ております。
11ページ目からですけれども、こういった非常に就学の費用負担がある中で、子どもたちが学びのスタートにそもそも立てていないのではないかというところを少しお話ししたいなと思います。
先ほど御紹介した新入学時の費用で、「他の生活費を削る」と回答した方、何の生活費を削っているのかというところになります。
一番多いのは「親自身の食事量を減らしている」というところですけれども、そのほかも御覧いただいて分かるとおり、子どもたちが豊かに育って学んでいく、そういった権利を侵害しているような状況があるのではないかなという懸念を持っています。
12ページ目ですけれども、実際、いくらの費用を借りているのかということで、高校1年生で一番多かったのが11万円以上で5割を超えておりました。返済期間は1年以上ということで、もともと厳しい経済状況にある御家庭が、これだけの金額を長期間にわたって返済しなくてはならないということで、子どもたちへの負担感というものも大きいのかなと推察しているところです。
そういった状況もあってか、13ページになりますけれども、今年の春に高校に入学したお子さんを持つ保護者の方、私どもの給付金を利用した方々ですけれども、高校就学で心配なことということで、断トツで「経済的な理由により就学を続けられない可能性がある」、3年間、定時制であれば、もう少しかと思うんですけれども、それが続けられない。右側にあるようないろいろな費用の心配があるというふうに選択で寄せてくださっておりました。
あとは、高校生ですと、通学費も非常に話題になるかと思うんですが、14ページ目になります。
1か月当たりの通学交通費と、実際、進学する際の選択要素として、どの程度加味したかということをお尋ねしております。こちらから交通費の負担がかからないようにということでの進学先の制約、制限が、子どもたちの中にも、保護者の中にもあるのではないかと考えております。
15ページ目は、中高生自身がどういうふうに思っているかということで、今日は高校生のワーキンググループかとは思うんですけれども、中高生ということで、新中1の子と、高1の子と併せてお尋ねしているグラフを御用意しております。
家の暮らし向きについて、親御さん、私たちがお話ししている中ですと、家庭の経済状況を悟られないようにというふうにはされているんですけれども、子どもたち自身も「大変苦しい」、「やや苦しい」と感じているですとか、家族のことで困っていること、心配なこと、「家にお金が少ない」というものを6割の子たちが選んでいるというような状況もございました。
続いて、16ページですけれども、中高生の学習や学校生活に必要なお金の悩みということで、いくつか選択肢を設けてお尋ねしております。
例えば、上から2つ目です、「おなかいっぱい食べられないため、授業中、空腹で過ごすことがある」ですとか、様々、学校現場の先生方、教育の質を上げるということでお考えいただいているかとは思うんですけれども、そういった授業を受けるまでの体の環境、物理的な環境が整っていないというふうな子どもたちもおりますし、下から2番目ですけれども、「お金の不安などから、勉強に集中できない」という状況にあるような子たちの存在もぜひお伝えしたいなと考えているところです。
17ページ目は、子どもたちの実際の声をいくつか載せさせていただきました。
今年、高校1年生に入った子たちです。時間の制約がありますので、全ては読むことが難しいですけれども、御覧いただいて分かるとおり、学校に必要なもの、お金の不安がなくなると安心して学校生活を過ごせると思うですとか、勉強がしたいだけなのに、親にどんどんお金を出させなければならないことが辛い、お金がかからないようにしてほしいとか、要らない教科書とかがたまにあるのではないか、指定のものも自由でいいのではないかというような子どもたちの率直な悲しみだったり、憤りだったり、疑問が私たちには寄せられておりました。
18ページ目ですけれども、今日お伝えしたいことの3点目です。今、教育費が非常に高いのではないかというところと、それによって子どもたちが学びのスタートラインに立てていないような状況もあるのではないかということをお話ししたんですけれども、では、制度でどのような改善ができるかということで、いくつか書かせていただいております。
その中でも、ちょっと特定の制度にはなるんですが、高校段階においては、高校生等奨学給付金です。奨学のための給付金があって、授業料以外のこういった教育費を補填するということで制度を設けていただいています。
ただ、そちらにも課題があるのではないかということを19ページ目以降で御説明したいと思うんですけれども、例えば、19ページ目のところです。実際にかかる学校教育費の費用と支援額が足りていなくて大きな差があるのではないかという部分ですとか、20ページ目になりますけれども、奨学給付金の中で設定されている費目でカバーされていない通学費だったり、お弁当、昼食代だったり、そういったところも高校生にとっては非常に大きな負担感になっているのではないか。
21ページ目ですけれども、中学生と比べると対象となる基準が厳しくなっていて、中学生まで授業料以外の経済的負担、制度の利用ができていた人たちが受けられていないのではないかということもあろうかと思います。
課題の例の最後ですけれども、22ページ、必要なときに給付がなされないというようになっておりまして、今日は、新入学時期ということでお伝えしましたが、東京都の場合でも、早期支給で7月になっていますし、通常の給付の場合は12月ということで、春に出したお金が返ってくるのが、本当にすごく後になってしまうというところがあります。
今日は時間の制約もありましたのでポイントのみお伝えしましたけれども、23ページに示しておりますとおり、教育の私費負担、高校生段階においても軽減していくためには、様々な論点があろうかと思っております。先ほどの阿部先生の御報告の中でもありましたけれども、学校の中で買えるものは買うとか、援助額の枠が決まっているのであれば、その中で家庭への購入をお願いするとか、そういった意識を学校現場の中で持っていただく、実際に教材を使ったのかですとか、これが家庭の負担になっていないのかということも検証いただくといったことも非常に必要になってくると思っております。
最後になりますけれども、そういった中で、今回非常に心強く感じておりますのは、令和7年度の概算要求の中でも、奨学給付金の額を上げていただいたりですとか、対象の幅を広げるということを御検討いただいております。あとは、子どもの貧困対策法、解消へ向かうということで、教育の支援の中でも貧困の状況にある子どもに対する学校教育の充実ということを明記いただいておりました。
私ども、子どもの権利の実現を目指す団体としましては、子どもたちの学ぶ権利、どのような状況にあっても保障していくということで、教育の無償化を見据えながら、子どもたちの声を聞きつつ、いろいろな対策を今後取っていっていただきたいと思っております。
以上です。
【荒瀬主査】 ありがとうございました。たくさんの資料を短い時間でとても分かりやすく御説明いただきました。
それでは、続きまして、修学支援プロジェクトチーム、山口室長補佐のほうから、国として進めるべき負担軽減の取組について、こちらはさらに短く5分程度ということで、大変申し訳ありませんが、よろしくお願いいたします。
【山口補佐】 文部科学省より、「高校段階の教育負担軽減の取組の推進」ということで発表させていただきます。
まず、4月の負担軽減に関する議題のときにも御説明しておりましたけれども、1ページのように、文部科学省において、幼児期から高等教育段階まで、切れ目なく教育費の負担を軽減しようということで、それぞれの段階に応じて取組を行っておりますが、令和7年度の概算要求においても、同じように、引き続き支援ができるように要求をしているところでございます。
次に、2ページ目に、今、田代様からも少し触れていただきましたけれども、高校の授業料以外の支援についてが、ほかの段階の支援と比較しても、少し要件が厳しいところがございまして、ここの支援ができないかということで、今、概算要求をして対象者を拡大するというようなことを検討しているところでございます。
次、3ページ目にまいりまして、今申し上げた予算的な措置のほかにも、国として、今後、修学支援を充実させるための取組としていくつか考えていることがございます。
まず、こどもの貧困の解消に向けた対策の推進に関する法律が、今国会において改正されて新たに成立しているところでありまして、この法律も踏まえつつ、予算と予算以外の取組を進めていきたいと考えています。
ポイントとしては、下のオレンジの字で書いてあるとおり、個人給付をまず充実する。そのほかに、支援を速やかに、必要な人に確実に届ける、また、教育にかかる費用、価格自体を引き下げるということで、この3つの観点から負担軽減の実現を図っていきたいと思っております。
具体的には、次のページ以降で御説明をさせていただきます。
まず、4ページになりますけれども、先ほど触れさせていただきました授業料以外の支援である高校生等奨学給付金について、支援対象を拡大することのほかに、支援金額を充実しようと考えております。
これまで第一子のほうが第二子より支援額が低いというところであったんですけれども、この第一子の金額を第二子まで増額することによって支援額を増やそうというところでして、私立ですと年間15万2,000円までは支援させていただけるように要求をしているところでございます。
また、この予算以外の支援として、次の5ページにまいりますけれども、まず、この給付金の支給時期を早期化したいということで、先ほど田代様も触れていただきましたが、行政的な事務の関係で、学用品を購入してから支援がなされるまで期間が空いてしまうところがございまして、早期支給のニーズがあるというところでございました。こちらについて、給付金について、第一子と第二子の支援金額を同額にすることによって、都道府県の事務の手間を少し減らすことによって給付時期の早期化を目指すというようなことも考えております。
次、丸2のほうにいきますけれども、教育費の負担軽減に関して、国や地方公共団体においても支援を行っているところではございますが、どのような支援があるか分かりにくいでしたりとか、自分が対象になっているか分からない、対象にもかかわらず支援を受けられていないという生徒がいるというような御指摘をいただくことがございますので、これについても、周知方法の改善でしたりとか、周知内容を充実することによって、そのようなことがないように、必要な生徒さんが必要な支援を受けられるような形で進めていきたいと思っています。
続いて、6ページ目にまいりまして、学校の必需品の負担の軽減方法について周知をするということなんですけれども、この夏に教育委員会さんでしたりとか、学校さんからいくつかヒアリングをさせていただきまして、先進的な取組の事例を少し集めてみました。
学校必需品の金額そのものを下げることによって負担を減らそうという取組なんですけれども、例えば、取組の事例の1のところを御覧いただきますと、県の教育委員会が学校向けにガイドラインを策定していまして、この中で、制服等の業者を選定したりとか、入札や契約の手続の中で保護者の負担の軽減を図ったりとか、透明性を確保しながら、その選定ができるような取組方法をガイドラインにまとめているというような事例がございました。
また、事例の2つ目として、高校で個人で負担するBYOD端末をプロポーザルの方式で大量に調達することによって、県立の高校や、特別支援学校等で安価に購入ができるようにするというような取組がございました。
また、3つ目と4つ目は、いずれも制服の事例になるんですけれども、3つ目については、高校の制服を見直すことによって1割程度価格を安価化することと、業者と連携をすることによってレンタルを導入して、レンタルの場合ですと、購入よりも2割ほど安く制服を入手して、3年間着用することができるというような取組がございました。
また、事例の4つ目ですと、制服は基本的に特注のところが多いところ、既製服を制服にすることによって価格を大幅に下げるというような取組もございまして、制服の導入によって、上衣と、あとボトムス、スカートでしたりとかスラックスを合わせて1万円台で購入可能にするというような取組もあったところです。
これらの取組の具体のところは、次の7ページから10ページにかけてまとめさせていただいておりますので、お時間のあるときにお目通しいただければと思います。
このような取組を総合的に進めていくことで、金銭的な支援にはどうしても国としても限界があるところですので、総合的な取組で教育費負担の軽減を図っていきたいということで、今後進めてまいりたいと考えております。
国としての方策の説明は以上になります。ありがとうございます。
【荒瀬主査】 ありがとうございました。
それでは、教育費の負担軽減につきましては、これはいろいろなところで議論されていて大変重要なことかと思いますけれども、ワーキングの委員の皆様からも、ぜひ御意見をいただきたいというふうに思います。それらが今後の負担軽減に向けて、一層その議論を深めていく、具体的な形として生徒の学びの場の条件を整えていくということにつながっていけばいいなと思っています。
ただ、これ、誰がやるのかというのは非常に難しいところもあるように思いますので、その辺り、一方では、学校の働き方改革をどう進めるのかということも併せながら考える必要があると思います。
では、御意見を、御質問も含めて頂戴したいと思います。
今村委員、どうぞ、お願いします。
【今村委員】 まず、田代さんのプレゼンテーションを大変共感しながら聞かせていただきました。カタリバの現場でも、いろいろな公立学校と関わることが大変多いんですけれども、やっぱり中には家庭の負担になっている高校の端末を購入してもらえないという子もいるので、これは買ってもらえない子がかわいそうだから給付しなければという問題以上に、学習集団、学校の学級づくりとか授業改善、個別最適な学び、協働的な学びを進める上での最低限のインフラであるパソコン端末がない子が学級に数人でもいる、そういう授業改善がなされないということが起きているということを、現状としていろいろなところで見受けることがあります。
なので、パソコン端末、携帯とかで授業を受け、自分の端末は携帯だというふうにして、iPhoneとかを授業端末で使うからいいというふうに判断している子とかももちろんいるんですけれども、やっぱり教育改革において最低限のインフラだと思うので、そこを義務教育と同様に、GIGAスクールの拡張を高校にもしていくということは大変必須なところだと思います。
あともう1つ、制服についての言及などをいろいろといただいたんですけれども、どうなんでしょう、もはや制服は本当にいるんでしょうかということを感じることがあります。私が今、活動している能登の被災地においても、これは小中学校の話でしたけれども、石川県なんですけれども、小学生から制服がある地域があって、そうすると、二次避難先に行くと、そこでもまた買わなければいけない。どちらかというと、買わなくても、誰も買ってくれとは言っていないんだけれども、慣例的に、親がこの子だけ貧しい思いをさせるわけにいかないからみたいな感じで買うみたいなことを強いられるみたいで、1着5万円みたいな世界が親に強いられてしまうというシーンをたくさん見てきたんですが、要るものと要らないものというものも、やっぱり文科省がリーダーシップを取って、そこの仕分をするということも予算を積む以上に、もしかしたら必要な点もあるのかなというふうに思いました。
私からは以上です。
【荒瀬主査】 ありがとうございました。
では、岡本委員、どうぞ。
【岡本委員】 極めて重要な議論だと思っていて、教育と、ある種、こういう福祉的な、福祉と言っていいのかは分からないですけれども、車で言う両輪だと思っていて、福祉がなければ、そういう教育などというのは土台として成立が難しくて、今、鹿児島市とかでも、毎月のようにいろいろな事案が上がってくるんですけれども、ほとんどがやっぱりそういう家庭内の環境や経済的な問題だとかがやっぱり背景にあるわけなんです。
そうなったときに、今、なぜここの高校教育でこういう議論が出てくるかというと、必要性というものが時代とともに変化している。
例えば、高校進学は、60年ぐらい前からすると、ある種のぜいたくな選択だったかもしれない。今はそれが変わってきて、高校は全員入るようにほぼなっているという状況の中で、さっきの修学旅行一つ取ってみても、必要なのかと、それとも、これは「ぜいたく」という言葉が適切かどうかは分かりませんけれども、どこまでが必要で無償化すべき点なのかというところが、これは徐々に徐々に変わってきている現れだと僕は思っているんですね。
そうしたときに、もう1つ。すみません、これは質問ではなくて意見なんですけれども、地方ということもとても重要で、例えば、私、今日、鹿児島から来ましたけれども、オンラインも当然あるんですけれども、こういう人に会わせたいといったときに、東京都の高校とかは、交通費はあまり積んでいないんです。つまり、飛行機で人が来ることを想定していない。SSHとか、そういう学校を見てみても、地方の学校は人を呼ぶための交通費で結構予算が削られていっているという現状があるわけなんです。
だから、ここの議論のとても難しいのが、その必要性と言われる議論が、地域とか地理的な状況によってもすごくまだまだ違いがあるというふうに思うんです。だけれども、明らかに全体として見てみたら、こういう必要性に関する認識にギャップが生じてきていて、それがしかも、10年とか5年ぐらいのスパンで多分どんどん変わっていっている。だから、パソコンとか、今おっしゃっていたDXとかもそうですね。前まではそれは必要性というものは前の段階で、今はそれがもう必要だとなってこういう議論が生まれてきているわけなので、そこにもう1個、地理的な不利とか、そういうファクターも出てくるので、これはお金の予算の取り方、つけ方、あとはそこの誰が実行するのかというところまでが、指の先ぐらいまでの制度設計が非常に難しいなというふうに思っております。
例えば、鹿児島市とかは、こども未来局をつくったんですよね。それに相当するものがない都道府県や自治体もあるでしょうし、やっぱり誰が担うのかを含めて、これをどうやって進めていくのかなと日々考えているところですので、ぜひいろいろな事例を、国外も含めてですけれども、シェアしていただいて、またあとは、逐一状況をどうやったら確認できるのかというモニタリングも必要なのかなと思って聞いておりました。ありがとうございました。
【荒瀬主査】 ありがとうございました。
今村さんの御意見もそうですけれども、誰がやっていくのか、文科省がリーダーシップを取ってということもあれば、今、岡本さんがおっしゃったみたいに、本当に誰が担うのかということも、これ、併せて考えていかないと、必要だ必要だと言うだけでは、全然それがきちんと整えられるということにはつながらないので、その辺りも含めて、御意見を様々お聞かせいただければと思います。
では、今、手を挙げてくださっているのは岩本委員と内田委員ですので、その順でお願いします。
岩本委員、どうぞ。
【岩本委員】 よろしくお願いします。事務局のほうで説明いただいた修学支援充実に向けた取組の予算以外のところで、学校必需品等の負担の軽減方策の周知というのは、非常にこの方策自体も、そういうやり方があったかということを含めて、私自身、驚きましたし、ぜひこれ、やっぱり国のほうで全国のこういう様々な事例を吸い上げて、各都道府県の教育委員会だとか、あと、高校で言えば、管理職と事務職員のほうだと思いますので、そういうところにしっかりと周知をしていくだとか、こういった取組を進めていくためのインセンティブを何かつけていくだとか、そういったことが必要かと思いますし、また、市町村の中に高校が1つとか、そういうような市町村では、割と通学にかかる費用だとか、あとはお昼の給食的なものを出したりだとか、それの補助をしたりということを、県立高校であっても、市町村のほうが、その市町村の中の生徒たちが通うためにということで支援しているケースが結構ありますので、場合によっては、そういったところも情報を吸い上げて、場合によっては、市町村のほうにも、こういうやり方もあるんだというようなことなどを周知、共有していただくといいのかなと思いますので、ぜひ進めていただけたらと思います。
以上です。
【荒瀬主査】 ありがとうございました。
では、内田委員、お願いいたします。
【内田委員】 失礼します。事務局のほうにちょっとお伺いします。
ヤングケアラーの問題が、ここのところ課題にもなっているかと思いますけれども、介護であるとか、あるいは弱齢者の養育であるとか、そういったところを高校生が担う、あるいは働くべき保護者が働きに出られないことによる収入というところもあろうかと思います。
複合的な要素で、基準の収入は得ているんだけれども、支援を受けられない対象については、どういうふうにフォローをしていくかということも課題になろうかと思いますので、そちらについての御予定や今後の見通しがあれば、お伺いしたいというのが1点。
それから、事務手続の問題になりますけれども、やはり就学支援金であるとか奨学金に関する学校の事務負担がかなり大きくなっております。誰がどういう形でこれを担っていくかというところは、実はこういう制度が拡充すればするほど、一方では学校の負担になっているというところもありますので、この解消についても考えていかなければいけないということを申し上げておきたいと思います。よろしくお願いいたします。
【荒瀬主査】 ありがとうございました。
1つ目、御質問ですけれども、これは山口さんですか。
【山口補佐】 御質問いただいたヤングケアラーでしたりとか、収入は得られているけれども、支援が必要な方々に対する支援ということなんですけれども、手元に情報がないもので、今すぐにお答えすることはなかなか難しいところではあるんですけれども、今回、この事例のヒアリングをさせていただく中で学校の先生方ともお話を少ししたところ、例えば、授業料が支払えないとか、そういう事例であれば、学校においても生活が困っているということは認識できるけれども、基準ちょっと上の方々に対する支援ということが一番難しいんだというようなお話もお伺いしたところでございまして、すぐにどういう取組ができるかというところが今ないんですが、そういうような問題意識は、こちらとしても今回共有したところでございますので、今後どのようなことができるかということを考えていければなということで思っております。
【荒瀬主査】 内田委員、どうぞ。
【内田委員】 実際に、介護ですと、介護保険等はあろうかと思いますが、かなり負担を、急に体調が悪くなった高齢者を抱えている場合に、支出が急に出る場合もございます。そういったところの補完策がなかなかない、そういったちょうど段階に当たるのかもしれませんけれども、臨時的な支出があった場合に、そういったものをフォローするような制度も必要だろうなというふうに思います。
介護費用というのはかなり莫大になっておりますので、就学に関してのブレーキになりかねないケースが結構見られるということは、現場としてはあるのかなというふうに思いましたので、よろしくお願いいたします。
【荒瀬主査】 ありがとうございます。具体的な御指摘をいただきました。
では、あと、青木委員、鍛治田委員、長塚委員、篠原委員、塩瀬委員の順でお願いしたいと思います。
青木委員、どうぞ。
【青木委員】 高校は、事実上の義務教育というところの事実上というのがやっぱりつらいところなんだと思います。結局は、エアポケット、制度上のエアポケットが、高校、高校生を取り巻いているんだろうなと思いました。
その上で、今日、ヒアリングさせていただいたお二人からの情報も踏まえると、例えば、学校なるものの機能ということで、学校教育法12条では「健康の保持増進」という文言があるので、どんな形であれ、学校を名乗っているところであれば、例えば、スクールソーシャルワーカーだとか、トラウマに対応したメンタルヘルスを何とかしてあげるみたいな機能をちゃんと提供してくださいということは、設置者に限らず、文科省としてもメッセージを出し、必要だったら制度化していくということがまず必要かなと思います。
その上で費用の話ですけれども、阿部先生もおっしゃっていたように、現在それぞれの学校で、どのぐらいお金がかかっているのか、顧客である児童生徒がいくら払っているのかというのはあんまりよく分かってないんだと思います。
逆に言うと、高くついているサービス料金を半ば強制的に徴収している状態があるのかもしれないわけで、保育とか介護でいう公定価格みたいな考え方は取れないのかと。標準的なサービスというのはこのぐらいでできるはずですよ、それ以上取るんだったら、また話は変わってきますよというようなことを言っていいのかどうかという問題があるかなと思います。もちろん政府がそこまで規制していいのかという論点になるんですけれども、何かその辺が突破口になるかなと思いました。
もう1つは、制服等々なんですけれども、これ、教育産業でいうと、1層、2層、3層ぐらいあると思うんですよね。地元商店街に制服を納品するみたいな、そういう意味での教育産業、第1層のレイヤーがあって、その次に、テストとかを売っているレイヤーがあって、その次に、最近のデータを売り買いするような教育産業があるとすると、1層の地元に根づいた教育産業をどのぐらい無視していいのかというのは、やっぱり一方で地元経済と関わる論点かなと思って、いきなり制服ゼロにしますというのが、大丈夫かなという気は一方でします。ちょっとその辺の懸念だけ表明しました。
以上です。
【荒瀬主査】 ありがとうございました。
では、鍛治田委員、お願いいたします。
【鍛治田委員】 鍛治田です。すみません。今日、ちょっと入るのが遅れまして、失礼いたしました。
奨学給付金の枠が広がっていくというのは大きいなと思っています。今、270万円以下の方々が対象になっていますが、380万円以下でも、お子さん4人の家族で高校生を行かせている非常に苦しい世帯が多く、本校でも2万円の学費が払えなくて辞める人たちもいます。
確実に届けるということを先ほどもおっしゃったんですが、この就学支援の申請書を書くというところもなかなかままならない御家庭もあります。物理的に書けない御家庭には学校も協力をしていくんですが、精神的に書かないといいますか、学校からの通知はスルーするといった、支援は申請したらもらえるのに、もらわない御家庭もあって、苦慮しているところもあります。
先ほど青木委員がおっしゃったように、学校のそういった負担、呼びかけとか、働きかけの負担も実は増えているところもあります。
例えば、学校としてもいくつか取組ができるのではないかと思って、現場のほうからお伝えしたいと思います。
例えば、本校では、制服はなく標準服です。前籍校の制服を着ている子たちもいて、いろいろな子たちがいるんですが、だから、あんまり着なかったということで、卒業生から制服、標準服の寄附があります。それを新入生の中で、買いたいんだけれども買えないという御相談があった場合は、もちろん無償でお渡ししたりしています。在庫管理が厳しいので、そんなにオープンにはしていないんですが、御相談があったケースは、そのようにして、今年度もうまくマッチングしたところがあります。
奨学給付金のことですが、セーブ・ザ・チルドレンの資料にもあったように、やはり入学手続のときに欲しい費用がないんです。ですので、本校独自で短期の貸与型の奨学金などをつくっていて、それで一旦学校から貸与し、給付金が入ったら返してもらうようなこともしています。
BYODの件は、次年度からですけれども、リユースPCの利用を案内しています。4万7,000円で3年間補償済みで、ソフトは別なんですが、大阪の私学では、これを使っていらっしゃるところもあるので、そういった形で少しでも御家庭の負担が少なくなることは、学校でも考えていける部分があるかもしれないなと思っています。
以上です。
【荒瀬主査】 ありがとうございました。
では、長塚委員、お願いいたします。
【長塚委員】 1つ質問したいのは、このセーブ・ザ・チルドレンの御説明に関わることなんですが、日本を含む120か国で支援活動をなさっているということですが、今日の資料にはありませんが、国際的に見て、広く120か国と比較するような意味で、日本の中等教育に対するこういう支援というのが、どういう状況なのかというようなことを調査されたりまとめておられたりするのか。また、そういうことがあれば、御紹介いただければなと思った次第なんですが、それが1つ。
それから、山口補佐のほうから御説明いただいた資料の最後のほうに、タブレット端末の県別の整備状況があるんですけれども、県によって、保護者負担であったり、設置者が面倒を見ているという違いが、随分まちまちだということがわかりました。これはちょっと意外な感じがしたんですけれども、全て保護者が負担していることが基本になっている県も結構ありますが、そのほかの県では、結構エリアで分けられてしまうような感じなんですけれども、設置者が面倒を見ている県のエリアがあります。こういう状況は、国としては、こうあるべきだというようなことは、あまりリードしていないのかどうか、その辺のことをお尋ねしたいなと思ったんですが、いかがでしょうか。
【荒瀬主査】 ありがとうございました。
では、御質問、2点です。まず、セーブ・ザ・チルドレン、田代様、お願いします。
【田代様】 御質問いただいて、ありがとうございました。
私たちも、まさにその点は、ぜひ比較していきたいなと思っています。今、直接高校生というわけではないんですが、やはり北欧の取組が非常に大事かなと思っていまして、もう行くだけで学べるという、極端に言ったら、何も持っていかなくても、例えば、小学校などで使うような文房具だったり、図工の道具だったり、日本だったら絵の具セットとか、図工セットとかで買っているようなものが学校に用意されていて、行ったら学べて、そこで給食が出てくるみたいな。そういった取組をしていらっしゃる国もあるので、特に高校段階というところになると、すみませんが今、資料が手元にないんですけれども、そういった事例をぜひこういった場でも御共有いただいて議論を深めていっていただきたいと思います。
【荒瀬主査】 ありがとうございました。
これ、学習内容との関わりが非常に深いと思いますので、国によって相当違いが出てきていると思いますね。
【田代様】 そうですね。日本のGDP比の教育支出、公的なところへのというところで、高校卒業以上の高等教育というのも、どんどん予算を増やしていただいていると思うんですけれども、小中高校段階でも、ほかの国と比べてどうなのかというところも検証いただくのは、ひとつお考えいただいてもいいのかなと思います。
【荒瀬主査】 田代さん、今現在、そちらではそういったデータはお持ちになっていない。
【田代様】 そうですね。はい。OECDさんが例年出していたものとかは参照してはいるんですけれども、独自では持ち合わせてはおりませんでした。
【荒瀬主査】 なるほど。分かりました。ありがとうございます。
【長塚委員】 欧米の学校を視察しますと、高校も、例えば教科書などは、分厚い教科書が学校に備えられていて、それを使い回しするというのが普通ですよね。
【田代様】 そうですね。
【長塚委員】 そういうことを考えると、日本で毎年毎年新入生に新しく教科書を配布して、あとはもう捨ててしまうのか、何かもったいないような使い方をしているというのも非常に気になってはいたんですけれども、学校備え付けて、相当充実したものが使えるような形というのもあるのではないかと、そんな気もしたんですね。ぜひ今度、調べた範囲で教えていただければなと思っております。よろしくお願いします。
【田代様】 はい、ぜひよろしくお願いします。
【荒瀬主査】 ありがとうございました。
では、山口補佐、いかがでしょうか。
【山口補佐】 公立高校の端末の整備状況ということで、今あるデータについてですと、保護者の負担がなく設置者のほうで用意したというのが、コロナの時期の補助金を使って設置者によっては整備をしていた、それができていないところについては、保護者の負担が多いというような状況になっていると認識しています。
この夏にも、今後のICT環境整備方針の取りまとめが出ているんですけれども、この中でも、基本的には、地方財政措置を使いながら、設置者でしたりとか、保護者の負担も含めて、各設置者や学校の状況に応じた整備が求められるというような形になっていまして、国として一括でとか、そういうことを厳密に何かお願いをしているというわけではないということです。
【長塚委員】 ちなみに、東京都などでは、保護者の負担を軽減するために、1人6万円でしたか、私立も含めて補助されるんですよね。どういう機種を買うかは、各学校などで判断するということになっているようでございます。ありがとうございました。
【山口補佐】 東京都さんはかなり進んだ取組をされていると認識しておりまして、その他の道府県さんですと、今日御紹介したような大量調達によって価格を下げるというような取組もされていますし、あとは、低所得者の世帯向けの支援金を出していたり、低所得者の世帯で買えない方にだけ貸出しをしたりとか、そのような形で取り組んでいるということを伺っています。
【長塚委員】 なるほど。特に保護者負担となると、先ほどの定時制、貧困家庭の話とつながるわけですけれども、非常に難しいんだろうと思うんですよね。そういうことがきちんと、各自治体がカバーするようなことは大事ではないかなと思ったものですから、確認させていただきました。ありがとうございます。
【荒瀬主査】 ありがとうございました。
先ほど青木委員がおっしゃっていた、事実上の義務教育ではあるんだけれども義務教育ではないというところのことが、こういうところでも、色分けをすると明白に見えているということですよね。だから、どこに住んでいるかということで、一駅違いで全く違っている負担があるということですね。まさにいろいろな事情があるんでしょうけれども。
ありがとうございました。
では、篠原委員、お願いいたします。
【篠原委員】 今日は本当に御報告ありがとうございました。まず、田代さんに1つお伺いしたかったのは、10ページに、公的な福祉資金などのアクセスがまだ不十分だというお話がありましたけれども、この背景といいましょうか、理由について、もし何か把握されていたら教えていただけますか。
【田代様】 まず、福祉資金といった制度が全然知られていないというところがあるということと、先ほど申請のお話もありましたけれども、申請に、手続の時間だったりとか、非常に手間がかかってしまって、なかなか経済的に厳しくて時間が取れないですとか、そういった書類を書いたりするのが難しい方々には対応が難しい。本当に親の世代よりも必要になる費用が非常に高額化しているので、高校入学でまさかこんなにかかると思っていなくて、こういう制度のことを全然調べていなくて、こんなに必要なんだと合格通知をもらって気づいて、社協さん、いろいろなところに相談に行ったときには、もう手続の間に合う期間ではなかったなどというお話はよく聞くかと思います。
なので、早い段階からこういう制度があるということを周知したりですとか、こういった形で、手続きの時間がかかるかもしれないけれども、使えるものなんだよとお伝えしていっていただくということも必要なのかなというふうに思います。時間がかからずに、その場で相談に行ったらすぐに使えるとか。窓口に行って、どうしても疲れてしまうという方も、皆さんも御存じのところかと思うんですけれども、そういった窓口の中での対応を充実いただくとか。学校の先生方が、こうした制度が使えるのではないかということをアンテナを立てていただくようなこともあり得るのかなとは思います。
【篠原委員】 ありがとうございました。私がぜひ皆様にもお伝えしておきたいなと思ったのは、今まさに田代さんが言ってくださったこととすごく関係があって、先ほど鍛治田先生からもありましたけれども、手続ができない親がかなりいるのが実態です。それができないのは駄目じゃないかと簡単に言わないでほしいというか、書類をぜひ一度見ていただきたい。どんなに煩雑で複雑なものなのか。必要な公的な手続、例えばですけれども、私が申し上げているのは就学支援金のような基本的なものですけれども、それを申請するに際して、やはり公的なお金ですから、きちんと手続がなされなくてはいけないというのはよく分かるんですけれども、先ほど文科省のほうから、今後やっていくとことして、制度の周知ですとか、あるいは支援方法の簡素化というようなお話があったんですけれども、これ、ある意味、本気でやっていただきたいと思います。紙ベースであの複雑な書類を書かせるのではなく、例えばですけれども、スマホでできるような方向に持っていく。一般の保険金でさえ、今はスマホで手続ができる時代に、この部分だけがとても昔の手で書かなくてはいけないような書類になっているということが、やはり負担になっているところがとても大きいというふうに思いました。ですので、手続論については、ぜひとも大幅に改善をしていただきたいということが1点。
もう1つは、今、知られていないという話があったんですけれども、今日の阿部先生の話にしろ、田代さんのお話にしろ、こんなに苦しんでいる子どもたちが今、日本にいるということを、やっぱり本当に世間様にもっともっと知らせる必要があるというふうにまず第一に思います。ですので、例えば今日、高校ワーキングでこういう話があったということを、文科省がプレスリリースしてもいいくらい、つまり、いろいろな場面を使って、こういう話が出ているということをやっぱり社会に伝えていかないと、先ほど誰が負担するんだという話がありましたけれども、広く言えば、やっぱりこれ、社会全体で子どもの権利として負担しなくてはいけないお金なんだと思うんですよね。ですから、日本は、ある意味、国際的な批准をしていても条約違反をしているのかもしれないというくらい厳しい気持ちを持って、これは社会に本当は伝えるべきなのかなというふうにとても強く思いました。
そのことによって、例えばですけれども、高校でこういう負担が必要だということが、合格のときにすぐ分かるようになっているとか、あるいは、私どもの学校では、入学式のときに、学校に対する関心が一番高いので、そのときに速やかに就学支援金のことをお伝えし、必要な人は、今日、どうぞ手続していってくださいと。それを窓口で相当な人数を用意して事務方がカバーしているという、そういう状態なんですよね。そういうことも含めて、手続の簡素化と事前の周知をぜひお願いしたいなというふうに思いました。
第3に制服についてですけれども、今、国立の中学校の中で、生徒の発案で「カジュアルウィーク」といって私服で通ってみようという試みをやっていたりします。制服のいいところ、それから私服で過ごしたほうが、こんなに暑い夏を過ごすのに、必要な洋服とは何なんだということも含めて、子どもたちが考えていくということだと思うんです。ですので、今まで本当に当たり前だった教育のあれこれを、もう1回ちょっと立ち止まって、新しいところに本当にアップデートしていかなくてはいけないということを強く感じました。
もう1つ付け加えて言うならば、先ほど高校がある意味、エアポケットになっているというお話がありましたけれども、私は、BYODという方針が出たときに、やっぱりそうなのかと、ある意味、がっかりしました。「情報」という教科ができて、それで、デジタルについて強い若者を育成しようとしている中で、GIGAスクール端末が中学校でストップしてしまったということについては、やはりコロナの中で様々な対応が必要になっていた高校現場にとっては、1つショッキングな出来事でした。
ですので、本当にどこまでを標準化にしていくのかという議論を、いろいろな方向からしていっていただきたいなというふうに強く思います。
以上です。
【荒瀬主査】 ありがとうございました。
では、塩瀬委員、お願いいたします。
【塩瀬委員】 質問としては、事務局におうかがいすることになると思うのですけれども、話題に出ている「事実上の義務教育」という話について少し教えてください。現実が容易でないことは重々承知したうえであえておうかがいしますが、いっそ高校教育を本当の義務教育にできたとすると、これまで議論されてきたような諸般の問題は本当に解決するのかどうか、いやそれだけでは結局のところ解決しないのかというところが分からないので教えていただけたらと思います。もし高校教育まで義務教育にしたとすると、もちろんお金がたくさんかかるので簡単に実現できることではありませんし、いますぐにそれが必要だと主張するつもりもまったくありません。たとえばそういった予算面の問題を除いたときに、機能として高等学校の義務教育化ができたとしたら、皆が議論しているような問題が解決する可能性があるのかということをおたずねしたいと思った次第です。
さきほども、生徒や保護者に情報が届かない問題の改善について、一体だれが責任を持つべきかということが議論になっていましたが、仮に国が定める義務教育化が高校教育でも実現できれば、当然国がその情報が届かない点について責任を持つということだと思いますし、国ではなくて地域の自治体単位でその情報が届かない責任を持つとすれば、都道府県単位で高校教育の義務教育化を図るといった制度設計などは可能なのでしょうか。「うちの県は高校教育を義務教育化します」といった県単位での宣言が可能なのかという意味です。ただしこれは義務教育制度の骨子をまったく理解できていないままの妄言で申し訳ありませんが、一度でもそういった議論を整理しておけると、高校生やその家庭環境について、自治体なのか国なのか、誰が何をどこまで助ければいいのかという議論自体がもっとスッキリ整理できるのではないかと考えました。さきほど議論にあがっていた「制度はあるけれどそもそも当事者親子に知られていない」というのは、無責任で論外な気もしますし、学務関連費用の支給タイミングが必要な時期に間に合わないというのも論外な気がします。4月に入学してその費用が必要であることは毎年同じはずのことで、あらかじめ分かっているのですから、その4月に間に合わせる仕掛けを用意しないのは制度設計のミスであり、もっと4月に間に合う方法を全力で考えるべきです。例えば、オンライン販売大手のAmazonは、オンライン市場で取引のある企業に対して、1秒融資ともいうべきプロジェクトがあります。取引データがずっとあるので運用が健全かどうか常に把握できているため、いざその店舗が融資してほしいと思ったら、即いくらと1秒ていどで出てくる仕組みです。将来的にはマイナンバーが政府の想定しているとおり運用されれば、わざわざそういった申請書を書かないと支払われないというプル型の支援制度は不要になるはずです。そういう意味で、生徒の家庭に申請手続をしてもらってから学務に関する支援金などが出せないというプル型の支援ではなくて、そもそもプッシュ型で支援できればいい気がします。「どこどこの学校に行きます」と家庭が宣言したときに、さきほどご指摘があったような「手続ができないご家庭の問題」はプッシュ型支援で十分解決できるのではないでしょうか。DXハイスクールにしても、授業のDXだけでなく校務部分のDXももっとすすめていかなければいけないのではないか。しかし、学校単位だけで校務部門のDXはなかなかつくることができない。それこそ本当に自治体単位か、あるいはもっと大がかりに国から校務DXの標準化などを仕掛けていって、どの自治体でも共通に校務部分を効率化するということができればよいのではないでしょうか。そういう意味でいうと、学習内容の意味での義務教育というよりはむしろ、「学務整備の義務化」みたいな通達というか、制度的な枠組みができれば、さきほど「教科書と違ってPCについてはBYODのように個々人に任せている」といったご指摘の問題は軽減され、その整備まで含めて少なくとも自治体単位で面倒を見るという体制整備につながる気がします。学習指導要領を10年ごとに変えるから教科書もそれにあわせて変えないといけないので、そもそも学習指導要領が変わらなければ、20年、30年使える本当の名著としての教科書があってもいいはずです。その教科書をずっと高校に置いておけば、次の生徒にとっても無理なく手にとるころができて米国の学校のような丈夫な教科書が成立します。内容がころころ変わるけれども、それは本当に生徒のためになっているのかどうか、生徒に必要な知識や道具が届くような安定供給が大切なのであれば、その整備そのものは義務化といってもよいような充実した枠組みでうまく支援できたらいいのにと思いました。あくまでも高校教育の義務化を特にのぞんでいるわけではありませんで、高校生の学びに必要な環境が整備されていない現状、情報端末が不足していたり理科や社会の教科選択において個人の興味関心でまったく選択できない現状を放置している責任の場所がわかりません。もし義務教育という言葉でそれらの問題を解決する力があるのかを知りたかったために冒頭のように質問した次第です。
今村委員、岩本委員のご発表にもあったとおり、必要な科目選択が教員不足で制限されているとききます。理科4科目(物化生地)、社会6科目(日世地公倫政)(探究等の名称変更は除く)、実技4科目(美技音書)が、学年、理系文系の別に関わらず希望する生徒が希望する通りに選択できる学校は日本にいくつあるのか、例えば委員がご紹介くださった学校でどの程度選択が担保されていたり、制限されていたりするのか。高校を選択した時点で選択可能な科目が制限されてしまうのは、生徒の権利が阻害されていることにならないでしょうか。この科目選択の自由の制限が人口減少地域の小規模校特有の問題なのか、都市部の進学校でも同様に起きている問題なのか、それによって対策が変わるはずです。そもそも現状において、関わられている学校以外のこの問題に対する状況を文部科学省は把握できているのか。小規模校特有の問題なら、これまでの議論の経緯からもとくにこの委員会の議論で対策を検討すべきですし、都市部も含めたすべての学校で、生徒の自由な科目選択の権利が阻害されているのでしたら、もっと文科省をあげて全国で調査をいただいて、もっと大きな問題として取り上げられるべきです。
今村委員、岩本委員に加え、濱田委員もおっしゃられていた小規模校の問題は、授業充足の問題だけでなく、学校一校あたりの校務分掌など固定用務が相対的に教員負担にのしかかっていることで生じる問題も多く含まれるかと思います。学校統廃合の地域問題を先延ばししたとしても、この校務分掌の相対的な負担増大を解決しなければ、地域の学校がもたないと思います。例えば各委員が、関わっておられる学校や文科省が把握している学校のなかで、校務にDXを導入して、その改善をはかっている学校や地域はあるのか、についておうかがいさせてください。DXハイスクールの採択校をみても、生徒数でスケールするような授業や探究に関わるDXばかりで、ほとんど校務についてのDX施策が見当たらないのですが、実はそういった校務DXによる効率化が実現できなければ地域の小規模校を支援する手立てが何も機能しないのではないかと考えています。
【荒瀬主査】 ありがとうございます。
高校の義務教育化ということに関しては、また事務局のほうでいろいろと御検討はいただいたらと思うんですけれども、これ、ここで高校を義務教育にしようぜみたいな話になるものではないということと、ちょっと全体として考えるべきことと分けて考えなければいけないこと等がいろいろとあるようにも思いますので、毎度の話で大変申し訳ありませんけれども、少しまた事務局のほうで、いろいろ出た意見を論点整理していただく中で考えを進めていければというふうに思います。さっきから出ている、何人かの方がおっしゃっている制度が知られていないとか、それからタイミングの問題、これは、実はあっという間に解決しようと思えばできるような話だと思うんです。そういったことと今の義務教育とはまた全然話が違ってくるので、そういったすぐできること、やるべきことと、じっくり考えないといけないことと分けないといけないなと思いました。
ありがとうございます。
では、冨塚委員、田村委員の順番でお願いいたします。
冨塚委員。
【冨塚委員】 冨塚です。ありがとうございます。皆さんの意見をいろいろ伺っていて、感想めいたことと、少し千葉県の取組をお話ししたいと思います。
まず、内田委員がおっしゃったヤングケアラーのお話の中で、介護の資金が急に必要になった子とかはどうするんだというお話がありましたが、今まさにこのようなことをすごく悩んでおりまして、要は、教育がどこまでやるんだと、学校がどこまでやるんだと、福祉の領域と教育の領域の境界線、役割分担がすごく曖昧になっているというか、学校現場で福祉的なアプローチ、支援を行わなければならないという現実があり、学校の先生方はスクールソーシャルワーカー等も活用しながら、できる限りの努力はされていますが、じゃあ、一体どこまで福祉の分野に先生が手を出さなければいけないのかというところをすごく悩んでおりまして、高校を核として、例えば、地元の市の福祉部門であるとか、ソーシャルワーカーであるとか、様々な関連機関とのネットワーク、それから役割分担の在り方みたいなものを少し研究できないかなということを、今、教育委員会の中で話をしております。先生方の負担を軽減しつつ、適切に確実にしかるべき福祉の支援に結びつけていくという手だてを真剣に考えていくというか、具体的にモデルか何かができたらいいなということを今思っております。
それから、学校徴収金のお話の学校事務職員の負担というものが非常に大きくて、1つには、やはり学校DX化の遅れというのが要因だと思っています。今年度は、千葉県の中で学校の事務長さんや関係課とワーキングをつくりまして、いろいろと課題を出し合ったりしたところ、今あるシステムの改修であるとか、あるいは、今、紙で行われているような作業をデジタル化することによって、大分、負担軽減が図れるということが分かりましたので、そういったことを具現化するための予算の要求などを、今、中で検討しているところでございます。
そういったことを併せてやっていかないと、せっかくの給付みたいなものも、誰かが学校徴収金の負担であるとか、給付をするための事務であるとかで事務職員の人の負担が増えていってはいけないので、負担を軽減しつつ、そういった支援の充実を図るということを考えていくのが教育委員会の役目かなというふうに思っています。
それから、制服とか学用品のお話があったのですが、千葉県では、今、ネット上の掲示板を運営する株式会社ジモティーというところと連携して、「♯ちばリユースクール」というキャンペーンをやっています。リユースとスクールをくっつけて「ちばリユースクール」というんですけれども、使わなくなった制服であるとか、ランドセルであるとか、様々な学用品をその掲示板に出品していただいて必要な方に譲っていくというような、メルカリみたいなシステムです。その中で見ていますと、やっぱりランドセルの出品が多いのですが、それに次いで、男子用の制服が結構多く出品されていて、実際に、次の方に活用されているというような状況があります。制服をすぐ全部なくすというのは、なかなか時間がかかると思いますが、こういうふうに、1回しか使っていないもったいないものを次の方にという形で、保護者の方の費用負担軽減などにもつなげていくという取組で、今それをやっています。
それから、先ほどありました事実上の義務教育なのにという部分については、前にも申し上げていて、本当に発言するのが大変心苦しいのですが、学校施設設備整備の補助などが、義務に比べて、高校はほぼないに近い状況で、98%、99%の子どもが行く高校についても義務教育並みの国の施設整備の補助等を頂けるとありがたいなというふうに思います。
そういったところの投資も、今、事実上、県立高校については、県がほとんどを負担しているという状況でして、そんな中で、例えば、お隣の自治体が高校授業料実質無償化であるとか、先日の新聞では、小中学校の給食費もかなり支援を増やすということで、川を1本隔てて大きな格差があるので、ここの部分、全国一律に制度設計するようなところは、やはり国のほうで制度設計を考えていただくというのが、地域による差を拡大しない大事なところなのかなということで、本当に図々しく何回も申し上げて申し訳ないのですが、ぜひ高校での施設設備とか、そういったところの投資を少し助けていただけると、その分の予算をほかのところに回せますので、ぜひそういうことをお願いしたいなということ。
あと、本日は、テーマとして、教育費であるとか、経済的な支援のところがメインになっておりますが、学力の多様化といいますか、高校に入ってくる子どもたちも、日本語があまり得意でない子であるとか、あるいは、中学まで不登校等の理由で、あまり基礎的な勉強が定着できなかった、でも、高校で頑張りたいという子もたくさんいるので、学力の部分でも個別最適なというか、その子に合わせた学習支援が必要でございまして、そういったところに例えば学習支援員をつけるとか、そういうほうにお金をできるだけ回していきたいと思っているので、大規模にお金がかかる施設の部分を国が少し見ていただけると、そういった学習面のサポーターの配置であるとか、ソフト面に少し県のお金を回していけるのかなというふうに思いまして、少し県の取組を紹介しつつ、お願いという形になってしまいましたが、発言させていただきました。ありがとうございました。
【荒瀬主査】 ありがとうございました。いろいろな工夫を具体的にやっていらっしゃる中で、国への要望で、文部科学省の方に発言は求めませんけれども、ぜひともいろいろとお考えいただいて、よろしくお願いしたいと思います。
では、ちょっと時間が押しておりまして、大変申し訳ありませんが、次、田村委員に御発言いただいて、ここで一旦休憩に入りたいと思います。
では、田村委員、お待たせしました。お願いいたします。
【田村主査代理】 2点あるんですけれど、まず、具体的なことのほうからいきます。
先ほどから、制服や教科書について、リユースなどができないか、あるいは、みんなで共有できないかというお話が出ていましたが、実は私も学齢期の子どもを養っていたときがあったんですけれども、親同士のネットワークがあれば、例えば、制服をお互いに共有、息子が使ったものをお友達に譲るといったようなことをやってきたんですけれども、恐らく今日、話題になっている生徒さんたちの場合、保護者の方々同士の社会関係資本自体が多分薄くて、そういった親同士のやり取りとかも難しいケースが多いのだろうなということを無性に考えました。
そういった中で、先ほど冨塚委員からお話のあったリユースクールというネットを活用した、こういった仕組みについては、非常に希望を見いだしたところです。
青木委員が先ほど御指摘されましたように、例えば、制服をやめるとか、急に廉価なものにするといったことが、地元の企業に与える影響とか、そういった御懸念などもあったかと思うんですけれども、そういったことも含めて、今、社会に開かれた教育課程といったようなことも強く打ち出されているところですので、そういった地元の企業の方々からのアイデアであるとか、御提案であるとかをいただき協働できるといいと思います。そういったことを、企業や、それからコミュニティのいろいろな方々と一緒に提案することができないかなということを考えました。
そして、本日、多くの生徒さんたちが自分たちの制服について考えるといったような具体的な取組も御発表いただきまして心強く思いました。子どもたちがこれからの社会を自分たちで社会をよくしていく、あるいは、自分たちの生活そのものをよくしていくということを、身近な自分たちの今ある問題、自分たちの同世代の問題を解決していくという、そういう教育活動としての意義というものも、ここに見いだすことができました。本当に今、こういったことを具体的なところからみんなで話していく、そういったきっかけに本日の議論がなればいいなというふうに思いました。
それからもう1点なんですが、こちらのほうがやや大きめの話、枠組みの話になるんですけれども、今日出てきたような話で、本ワーキンググループで指摘するにとどめることと、例えば、こういった予算が必要ですよというようなことは指摘するのだけれども、具体化する議論はここでは難しいものもあるのかなと。一方で、私たちが本当に具体的に議論を深めていける部分とがあるかと思うんです。具体的に議論を深める中で、これまでなかなか議論しにくかったこととして、今日のご発表ではすごく出てきたことだと思うんですが、これまで私たち、やっぱり加算するといいますか、こういうことができたらいいよねという、そういう付け加える議論が多くなされてきたと思うんですが、今こそ本当に減らすとか、簡素化するとか、やめるとか、共有化することで軽減するとか、そういったことをより具体的に、こういうアイデアもありますよとか、こういう事例がありますよということを話していけたらいいのではないかなというふうに思います。
今日、非常に強く思ったのが、学校で購入等が必要とされている物があることによって、苦しんでいる生徒さんがいる、苦しんでいる親御さんがいる、そして、そういう大きな問題を抱えている生徒さんがお一人でもいれば、恐らくそれに関わっている先生は、そこに大きな力を注がれて、先生もやはり負担が増えているのではないかと。そこを解決することで、そういった方々の負担や苦しみを少しでも軽減して、より良いハッピーな状態になれるような議論ができたらいいなと思いました。
以上です。ありがとうございました。
【荒瀬主査】 ありがとうございました。最後、田村先生のほうで何か全体をまとめてくださったような感じがありまして、ありがとうございました。
生徒の取組としても、しっかりと考えていくということで、生徒のことについては生徒に返していくという、そういう発想もとても大事なことではないかなと思いました。
それと、一方で、教師の働き方とか、学校のさらなる働き方改革をやっていくということでやっていますけれども、なぜ学校が忙しくなっているのかという原因の1つに、こういったことも大きくあるという御指摘も今いただきました。
まさにさっきの話にまた戻ってしまいますけれども、このワーキングで、どんどんと議論を深めていくということを一方でやりながら、しかし、指摘をするだけで終わらざるを得ないものもありますので、その辺の整理を事務局のほうでしていただきながら、また次につなげていければと思います。
ありがとうございました。まだ御意見がおありかもしれませんが、一旦ここで休憩を取りたいと思います。今、16時40分頃かと思います。10分程度休憩を取りまして、16時50分から再開したいと思いますので、よろしくお願いいたします。今日は18時までです。よろしくお願いいたします。
( 休憩 )
【荒瀬主査】 大変お待たせいたしました。それでは、再開いたします。
まず、令和7年度の概算要求、そして、7月の京都視察に関しまして、度會参事官補佐から、御説明と御報告をお願いいたします。
【度會参事官補佐】 よろしくお願いいたします。私のほうから、資料4と5を連続で御説明、御報告申し上げます。
まず、令和7年度概算要求について、高校教育関係のものを抜粋しております。
こちらは全体像になりますけれども、継続事業が多いところ、増額要求しているものなど主立ったものについて簡潔に御説明申し上げます。
具体的には、上の青枠の一番下にDXハイスクール事業がございます。
それと、下の黄色囲みの右側に丸2番とあるんですけれども、定時制・通信制高校の学び充実支援事業、この2点について御説明いたします。
こちらは、DXハイスクール事業でございます。
昨年度の補正予算で100億円つけさせていただいて、今年度は概算要求で107億円要求させていただいております。
事業内容としては、情報、数学等の教育を重視するカリキュラムを実施するとともに、専門的な外部人材の活用や大学等との連携などを通じてICTを活用した探究的・文理横断的・実践的な学びを強化する学校などに対して、そのために必要な環境整備の経費を支援させていただきたいと考えております。
支援対象といたしまして、継続校として、今、約1,000校ございますけれども、そちらには750万円、新規採択校を250校ほど設けさせていただきたいと考えておりまして、そちらには1,000万円、加えて、都道府県による域内横断的な取組をしていただきたいと思っておりますので、47都道府県に1,000万円の予算を計上しております。
なお、学校に対しては、後ほど御説明いたしますけれども、重点類型というものを設けておりまして、その類型に該当する学校に対しては、プラスで200万円ほど措置させていただきたいと考えております。
採択校に求める具体の例といたしましては、例えば、上から3つ目、デジタルを活用した文理横断的・探究的な学びの実施であったり、その3つ下、地方の小規模校において開設されていない科目の遠隔授業による実施であったり、専門高校において、例えばスマート農業などといった高度な専門教科指導の実施といった取組などが考えられます。
重点類型につきましては、グローバル型、特色化・魅力化型、プロフェッショナル型を考えております。
2ページほど飛ばしていただけますでしょうか。
こちらですけれども、具体的な要件の詰めは、これからやらせていただきますけれども、まず、グローバル型については、例えば、海外の連携校等への短期・長期留学や海外研修等をカリキュラムの中に体系的に位置づけたり、外国人生徒を受け入れて、そこから発展的な交流を図ったりといった取組が考えられます。
続いて、特色化・魅力化型でございますけれども、新しい普通科の設置、コーディネーターを配置すること、コンソーシアムを設置するなど連携協力体制を整備することなどが考えられます。
その下に図を設けさせていただいておりますけれども、この特色化・魅力化型は、新しい普通科に関連するものでございますが、こちらに載せているものに関しては、あくまで例でございまして、一般的に学際領域や地域社会に関する学科のイメージがついてしまっているかもしれませんけれども、決してそれに限るものでは当然なくて、例えば、各校のスクールポリシーを踏まえた特色化・魅力化を図るための教育内容を扱う新たな学科を設置されるに当たっては、柔軟に考えていっていただきたいと考えておりますので、申し添えさせていただきます。
加えて、プロフェッショナル型として、専門高校と産業界の連携体制を構築することなどが考えられますし、その中に、昨今少し話題になっている半導体関連も重視していきたいということで重点枠を設けさせていただくことを考えております。
こちらは、先ほど申し上げた都道府県における域内横断的な取組例として、プログラミングコンテスト、情報Ⅱなどに関する教員向けの研修、高校生等を対象としたデジタル人材育成講座の開講や、DXハイスクールの取組の事例発表会、研究協議会などが考えられるところでございます。
次の次のページをお願いします。こちらの2番の事業でございます。
本日、阿部教授からも定時制・通信制高校に関して言及がありましたけれども、こちらの事業は、定時制・通信制高等学校の学び充実支援事業として、少し例年より拡充をさせていただいております。定時制・通信制に不登校など多様な背景を有する生徒も進学しているというところで、そういった側面に対するケアだとか、学びの支援というものはやってきたわけですけれども、さらに、今回、卒業後の進路を見据えた支援という点も加えて調査研究をさせていただきたいということで、少し拡充して要求しているところでございます。
資料4に関しては以上でございまして、資料5をお願いいたします。
資料5は、7月に委員の先生方と京都のほうに視察に行かせていただき、開建高校と清明高校にお邪魔させていただきました。
まず最初に、開建高校、普通科改革に取り組んでくださっている学校でございますけれども、学校の特色として、2つ目の黒丸です。
例えば、2つ目のポツ、「総合的な探究の時間」を中核とした学校に閉じない学びを実践しておりまして、1年生から3年生までで5単位設置、学校設定科目、ルミノベーションと称しておりますけれども、1年生で2単位履修して、探究活動の基礎となる「コアスキル」の習得を目指しております。
その次のポツも、これはとても特徴的ではあるんですけれども、ホームルーム教室として、普通教室4つ分の大きさで80人の生徒と複数の教員が共に学ぶ「ラーニングポッド(L-pod)」というものを設置しております。このラーニングポットは、可動式のホワイトボードを使用していて、授業の目的や手法に応じて教室の形を変えることが可能となっております。こういった教室も含めて、学校自体、校舎としても新しいものですし、空間をうまく利用したデザインとなっていて、そういったことが生徒の創造性を育む一要素になっているのではないかとも考えられます。
見学させていただいた授業については、教科のパースペクティブ、これは学習指導要領における各教科の見方・考え方も踏まえた探究活動を行っていらっしゃいました。
また、先ほど申し上げた教室も、次のポツですけれども、「調べる」だとか、「生みだす」、「改善する」といった目的に応じて教室を分けて、生徒もそれぞれやりたいことを選択して移動して、自身の研究テーマや計画を深めるといった活動をしていらっしゃいました。
学校の先生とも懇談させていただいて、その中で出た意見をいくつか御紹介させていただきますけれども、まず、上から3つ目のポツで、いわゆる探究サイクルを回すだけが探究の型ではないと。「自分の仮説を検証したが想定した成果が出なかった」、「検証する中で異なる仮説が生まれた」など、生徒や教員間で自分なりの探究活動を展開することを共有しながら進めているといった御意見もございました。
組織体制のところについても、コーディネーター、様々な活躍をされていて、本校の外部連携のコア的な役割を担っていて欠かせない存在となっているだとか、あと、先生方の学びの在り方の1つにもなっておりますけれども、経験のある先生と若手の先生がチームとなることで、若手の発想やベテランからの助言がお互いにお互いを刺激し合っているといった御意見がございました。
次、清明高等学校、こちら昼間の定時制の学校でございます。
学校の特色といたしまして、DE&Iの考え方の下、学ぶ楽しさを提供する、生徒に自信を返す、環境を調整するの3点を大事にしながら、心理的安全性の確保にも努めていらっしゃいます。
3つ目のポツですけれども、こちらはタブレットを活用した自由進度学習や、学習アプリを用いた自学自習による学び直しも実施しておりまして、先生方はコーチやトレーナー的なサポートを行っているというところです。
その下ですけれども、少し気持ちを落ち着かせるといったカームダウンスペースなどのチルスペースの設置であったり、教室のレイアウトの変更であったり、校舎の至るところで設備的な工夫も施されておりまして、多様な生徒が安心して学ぶことができる環境づくりを行っていました。
見学させていただいた授業も、自由進度学習の授業や、総合的な探究の時間の学習をされていたんですけれども、3つ目のポツで、様々な種類の椅子がある教室での授業がございました。ここでは、学校設定科目の1つである「発達と心理」の授業をやっていらっしゃったんですけれども、各々の生徒さんが、自由なスタイルで、発達の段階を踏まえた子どものおもちゃを作成する時間だったんですけれども、この自由なスタイルの教室について、先生から、「教員の立場からは、生徒が本当に集中できるか不安だったが、アンケートを取ると、生徒の8割が普通の教室より集中できたと回答しており、教員と生徒の捉えに違いがあることが興味深かった」といった御発言もございました。
最後、先生方と生徒さんと一堂に会して懇談も行わせていただきました。生徒会の生徒だったんですけれども、とても立派な生徒たちで、すごく感銘を受けました。全て御紹介させていただきたいんですけれども、おっしゃっていたのが、「タブレットを用いることで授業についていきやすく、理解もしやすくなった」だとか、「清明高校では、フレキシブルに来て学習ができる」、「中学校のときは一斉授業であり同じペースで学んでいたが、自由進度学習のように自分のペースもありつつ、個人が学び方を変えることができるとよい」、「先生が教えてくれることだけでなく、興味のあることをじっくり深掘りして学べるように自分で調べるなどといったことが、授業の中でできるようになったらより良い」、「1年生で習熟度別に授業をしているが、他学年でも習熟度別にできたらいい」、「創造力を鍛えられるような学びや、答えがいくつもあるような学びをしたい。一つの答えだけでなく、いくつもの答えを正解として受け入れてくれるような雰囲気づくりができたら嬉しい」といった、とても貴重な御意見をいただいたところでございます。
事務局から、御報告は以上となります。
【荒瀬主査】 ありがとうございました。
前半では、教育費負担軽減の在り方についてということで、「高校生年齢の子どもの生活困難」について、また、高等学校等における私費負担の軽減について、さらには、国として進めるべき負担軽減の取組についてということで御説明をいただいた後、質疑応答をしていただきました。
今、それも踏まえて、令和7年度の高等学校関係の概算要求について御説明いただき、また、具体の取組として、先だってお邪魔した京都の高等学校2校についてのまとめをしていただきました。
後半部分につきましては、「人口減少時代において少子化が更に加速する地域における高等学校教育の在り方」について御発表いただいた上で、具体的に質疑応答も含め議論をしていきたいというふうに思っております。
まず、今村委員、そしてNPO法人カタリバの菅野様から、人口減少時代に小規模校に通う生徒へのあるべき学習の体制づくりについてということで御発表をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
【今村委員】 よろしくお願いいたします。前半戦で家庭の経済力による格差というところに着目した議論がなされてきたと思うんですけれども、今お話があったとおり、都市と地方の格差、特に生まれ育った環境から外に出ることが難しい子たちが、親ガチャとか地域ガチャで、その地域の高校を選んだとか、そういうことで学校を選んでいる子もいるわけなんですけれども、その子たちが不登校になって広域通信制に行くという選択肢ももちろんあると思うんですけれども、私たちとしては、どう地域の学校が、それがたとえ小規模校であっても、その子にとって行きたいと思える学校になるか、その行きたいと思える学校にするためにどうしたらいいのかというところを、ずっと組織としても探究してきています。
その上で、先ほどの前半の話とつながるところでいうと、本当に地域においての顔の見える関係での学校の価値というところは、私としては、特に社会関係資本が乏しい家庭で育った子たちにとっては、本当に福祉とつながる重要なゲートウエーであるというふうに感じています。地域社会の中で生きていくために、1回、高校生活の中で学校とつながりが乏しくなってしまうと、また地域の中で誰かに助けてもらうためのリソースとつながるということが非常に難しかったり、また、家庭がもし子どもにとって最適な教育環境を提供できない、地域とのつながりが乏しい保護者の元で育っている場合に、その子たちが困難を背負ったときに助けてもらうすべを誰にナビゲートしてもらうのかというところが非常に難しくなってしまうという現状があると思うと、やっぱり地域の学校がよりよくなっていくということに日本はちゃんと向き合わなければいけないというふうに思っています。
そんな中で、岩手県の大槌町でずっとやってきた取組を、1つ事例発表させていただいて、この後の岩本さん、濱田さんのプレゼンテーションにつないでいきたいと思います。
では、担当している菅野のほうからお話をさせていただきます。
【菅野様】 改めまして、カタリバの菅野と申します。よろしくお願いします。
私は、ふだん、岩手県立大槌高校の職員室に籍を置いて仕事をしています。なので、今回、岩手県立大槌高校の視点から見えるものを皆さんにお伝えできればいいかなというふうに思っております。
私がいる岩手県なんですけれども、やはり人口減少が非常に進んでいるという状況です。これから15年で中3人口が40%減するというような状況になっておりまして、そのような中で、学校をどんどん統廃合していくことができるかというと、やはり地元市町村にとっても非常に重要な地域振興の核になっているというところにおいて、やはり学校の統廃合を簡単に進めることはできない状況です。そう考えると、やっぱり1学年1学級校とか2学級校と言われるような小規模校が、これからどんどん増えていくだろうなというふうには思っております。
そのような中で、小規模校がどういう現状かということの目線合わせもしておきたいんですけれども、今、今村からお話ししましたとおり、また、先ほど冨塚教育長もお話しされていましたけれども、学校に非常に大きなニーズがあるというのが小規模校の現状かと思います。学習という面においても非常に多様です。国公立大学に行きたいという子もいれば、本当に中学校の学力定着がままならなかったという子もいますし、ここには強くは書いていないですけれども、貧困の問題だったり、また、不登校、発達の特性みたいなことを抱えた子も多くいるというところです。
また、教育活動実証のところにおいても、授業が開講できていないという問題だったり、また、授業づくりのコストみたいなこともあるという問題だったり、人間関係が固定化していると、いわゆる小規模校に指摘されているような問題がやはりあるというような現状ではあります。
そのような中で、岩手県立大槌高校の事例でいうと、平成23年の前までは、これは震災です、東日本大震災の前までは1学年120名いた人口が、震災後に42名まで減少したというところがあります。
当時の大槌高校は、教育課程で言うと、進学をする子たちと就職をする子たちという大きく2つに分かれて一律の教育課程がされていたということだったり、生徒指導においても、厳しい指導をとにかくするというところが見受けられました。地域との連携においても、こういうところが見受けられたということです。これは大槌高校に限らず、ほかの学校にもこういうところは見られるというふうに思います。
そのような中で、文部科学省事業を活用させてもらいながら、令和元年から地域協働事業、令和4年から普通科改革支援事業を活用させてもらいながら、多くの改革を行ってきました。
今、私がここでお話しさせていただいているのは、私はあくまで職員数の端に席があるコーディネーターの立場です。この改革を行ってきたのは学校長だったり教員、または、市町村行政が一体となって行ってきたというところなので、私は、ある種、端のほうの席のコーディネーターとして見えた視点で、この改革についてお話ししたいと思います。
また、改革内容については、多くの学校でほかにも取り組んできたところでもあったり、先ほど度會補佐からも話があったようなところでもあるので、改革の内容、これ自体がいいかどうかということよりも、何がこの改革を支えるのに重要だったのかという視点でお話を聞いていただけたらなというふうに思います。
まず行ったのは、まさに対話によって目指すビジョンを共有するということでした。生徒から、どういう人になりたいかとか、教員としてどういう人を育てたいか、地域としても、どんな18歳を育てたいかということで、皆さんに議論いただいて、まさにスクールポリシーをつくっていくということを地道に行っていったというところです。こうしたビジョンを共有したからこそ、この後の改革が実行できたのではないかなというふうに思っております。
探究も、細かい話は申し上げませんけれども、先ほどビジョンを共有してつくった資質・能力をどう育てるかということを、この探究ということについても行っていきました。こういうものはルーブリックということを活用しながら、実際に探究ということをつくっていきました。
また、地域みらい学ということで、先ほど一律の教育課程という話もありましたけれども、そうではなくて、地域の資源を生かした各学校設定科目をつくりながら、例えば、「まちづくり探究」とかという言葉では、大槌では、やっぱり巨大防潮堤を造るのにどういう議論があったのかということは、まさにいい教育材料になりますので、こういうことを活用しながら、新しい学校設定科目をつくっていくというような取組を行っていきました。
また、特徴的な取組として、たまたま大槌には東大の研究所があります。附置研と呼ばれる研究所がありまして、そこで子どもたちが「はま研究会」という活動をつくっていまして、ほぼ平日毎日、この研究所に通っているという感じです。たまたま教授や准教授だったりも詰めていてくれるというところもあるので、ここと一緒に研究を行いながら、なかなかこの研究についていくということは難しいんですけれども、お手伝いをしていくというような形で、この研究会を行っております。
その後、普通科改革支援事業ということに移っても、やはり生徒と一緒にカリキュラムはどうしていくのかとか、地域の願いは何なのかということを確認していくという作業は変わらず行っていって、その後、カリキュラム改革に向けた6つの方針ということで取組を行っております。
カリキュラムを参考としてここに書かせていただいたんですけれども、先ほどの一律ということから何とか脱却しようということを目指しておりました。
例えば、1学年のところに書いてありますけれども、みんなが数学Aを受講しなくてもいいのではないか、やっぱり中学の既修内容に戻って勉強する子がいてもいいのではないかとかというようなことで、これまでの同じ教育課程を組むというところから何とか脱して、子どもたちそれぞれに合うような教育課程を組んでいこう、大槌の地域性を生かしたような教育課程を組んでいこうということで、普通科改革を行ってきました。
要は、個別最適化、先ほど度會補佐からも話があったところで、簡単にというところではありますけれども、それぞれのペースだったり学び方ということをしてもいいんだよというような授業をあえて設けています。やはり生徒たちからの満足度も非常に上がっています。「とても良かった」、「まあ良かった」ということが、数学、英語に関しては、これは全体の3分の1の子から取っているんですけれども、ほぼ100%がこう言ってくれたりとかということだったり、教員からの声としても、非常にこれは持続可能な形態だと思ったとかと、こういうものが上がっていたりして、教員からも非常にポジティブな評価をもらっているというところです。
これは、それだったらデュアルシステムということで、地域のインターンシップみたいなことを地域と連携しながらやっていくなどということも非常に推し進めているというところです。
こういうものは、いろいろな取組があるという、取組自体はあるんですけれども、どうしてこれが実現していったのかみたいなことを、私がコーディネーターとして見ていた視点から言うと、大きく3つあるかなというふうに思っています。
一番最初の大きなところは、もちろん共通の目指すビジョンを策定したというところがやはり大きいかと思うんですけれども、これを学校内に閉じず、みんなで考えたというところが非常に大きかったと思います。
なんですけれども、取組を見ていただいても、やっぱり学校外機関との連携ということがとにかく必要でした。この連携を生んでいかないと、自校だけでは何ともし難いというところが1つありました。
じゃあ、学校外連携をどう進めていくかというときに、やっぱりコンソーシアムが重要だったなと思います。それは、共通の目指すビジョンを掲げたときに、それを後ろ支えするということはもちろんですし、実質的に、じゃあ、僕たちはこういうことができるよということの資源を与えてくれるというところです。
またそれを、コンソーシアムを設置して実質的な資源を提供してもらうに当たって、コーディネーターというのが1つ大きな役割を果たしたなというふうに思っています。
この3つが大きく今回ポイントとなってきたところだったのではないかなというふうに思っています。
参考として、成果も上がっているんですけれども、そこは時間の調整で飛ばします。
今後の方向性のところに書いたんですけれども、やはり小規模校では、生徒の多様なニーズに自校のみのリソースでは対応できないというところが正直あります。なので、地域連携だったり、高大連携だったり、学校間連携です、通信制高校だったり、ほかの高校と連携していくということが非常に重要であるというのが、今の小規模高校における実態だと思います。
じゃあ、そういう連携を図っていくときにということでいうと、地域連携だったり、高大連携みたいなことを考えていく上では、やっぱりコンソーシアムの設置というのが非常に重要かと思います。そこではもちろんビジョンの共有もというところもあるんですけれども、やっぱり予算を含めたリソースを提供してもらうということの実態あるリソース提供というのが非常に重要かなというふうに思っています。
それで3番につながってくるんですけれども、やっぱりリソースが不足している、小規模ではいろいろなニーズがあるのにリソースが不足しているというところで、コーディネーターの配置をして実質的なリソースを集めたり、つないだりする、そういうような配置が必要だろうということと、また、関係機関からの予算の獲得というところで、これは地方創生とか、先ほど福祉の話も出てきましたけれども、それぞれの思いは違うけれども、でも、ここでは手をつないでやれるというところの連携を図っていく上では、やっぱり予算だったり、コーディネーターの配置ということは非常に重要だろうなというふうに思っております。
そうした中でということで、お願いします。
【今村委員】 というようなことを、様々制度も使わせていただきながら改革を進めてきて、今は地域の子たちが行きたいと主体的に選んでいただける学校になったと断言できるかなと思います。
その中で、やっぱり予算が大切だというところにおいて、文部科学省としてできることの1つ、もしくは、県に運営していただくようなものとして、ふるさと納税をよい事例で活用している長野県の事例、「ガチなが」というのですけれども、これは各高校の特徴的な取組に対して、ふるさと納税で直接応援ができるというサイトを長野県として運営されているそうです。これは本当に高校を選択できるので、学校が頑張ってファンドレイジングするということも含めて、とてもいい事例だなというふうに思うので、口を開けて待っているだけではなくて、学校も努力しましょうということができるということもすばらしいです。
そういったことを学校のリソース調達というところを、ちょっとここまでの話と外れるんですけれども、21ページなんですが、経済産業省の教育産業室がイノベーション創出のための学びと社会連携推進に関する研究所の報告書というものを上げています。ここでは本当に様々な視点で、学校にどのようにお金を集めるのかという創意工夫が結集した報告書が上がっているので、できれば、これもどういう制度に変えていって学校を改革していくのかということと同時に、どうお金を集めていくのかというところについても、中教審高校ワーキング、義務教育ワーキング、いろいろなところで話題にしていく勉強会が必要なのではないかということも最後に補足させていただきます。
私たちからは以上です。
【荒瀬主査】 ありがとうございました。
それでは、続きまして、岩本委員からお願いしたいと思います。地域・教育魅力化プラットフォームでの活動も踏まえて、社会とつながる魅力ある高等学校教育の在り方について、御発表いただきたいと思います。
【岩本委員】 それでは、よろしくお願いします。
では、少子化が加速する地域で、小さい学校をこれからどうしていくのかというところでお話しさせていただけたらと思います。
まず、ここで言う地域のイメージを最初に共有させていただけたらと思うんですけれども、全国の市区町村のうちの約6割は公立高校が1つ、ないしは、ないというようなところです。地域のイメージは、こういった全国の約6割の地域を対象にイメージをしております。こういったところで生まれ育った高校生たちのイメージです。
学校も小規模化というときには、1学年1学級だとか2学級、もしくは3学級、こういった程度の高校のイメージでおります。小規模化は全国的にもどんどん進行していきますし、そうした中で、小さくなっても、どう魅力ある高校教育を実現していくのかというところを考えていくというところです。
そこに向けて、まず前提として、高校における適正な規模という考え方に関して、これ、以前に一度お話しさせていただいたこともあるかと思いますけれども、この学校の規模というのが、どの規模が教育的に最適かという統一的な見解は、基本的には見当たらないという中で、特に地理的な条件だとか、スクール・ミッションに応じて、学校の規模の考え方は変わるはずである、多様であるはずである。それにもかかわらず、日本の公立高校においては、一律に、あたかも適正な学校規模があるかのような、「適正な」があれば「適正でない」規模もあるというような表現が使われてやってきたわけですけれども、今後、生徒を主語にした高校ということを考えていくと、生徒を主語にすると、生徒が望む、そして生徒自身にとって適正だと思われる規模というのは非常に多様であると。高知県のアンケートの結果なども載せさせていただいていますけれども、これはほかの県での状況も似たような状況です。いわゆる1学年1学級だとか、2、3学級を自分にとって適正だという高校生たちも半数近くいるというようなところですので、今後に向けては、まず高校の標準法において、この規模の適正という条文があるわけですけれども、ここも時代に合わせて、遠隔教育等も活用できますので、修正・一部削除というようなところも今後必要ではないかと思いますし、同様に、学校だけでなくて、学級の規模の考え方も、今後見直しというところは検討が必要ではないかという前提であります。
といった中で、では、小さい中でもコストをそこまで大きくかけ切れないというような中でも、誰一人取り残さない質の高い学びをどうやって実現していくのかというところですが、ポイントは、1つの学校の中だけで抱え込もうとする「自前主義」をもう越えていかなければいけないというところです。そして、社会に開くだけではなくて、社会としっかりつながる学校もしくは教育環境を実現していくというところで、全国を見させてもらうと、やっぱりポイントは3つあります。
1つは、地域社会とつながるというところ。2つ目は、ほかの高校だとか、ほかの学校、学校間連携とか、ほかの学校とつながるというところで、そこを越境していく、交流していくという部分。そして、つながる手段としてもそうですし、オンライン・ICT、デジタル、こういったところの活用。この3点が鍵になるというところです。
1つずつ、もう時間がないので早くいきますけれども、1点目が、地域とつながるという地域協働による社会資源の活用というところです。
なぜ地域とつながる必要があるのかというのは、教育、学校側の視点からもそうですし、地域側にも高校とつながっていきたいという潜在的なニーズが両面からあるというところです。
割愛をしながらいきたいと思いますが、要は、地域にとっても、高校というものが非常に重要な地域振興の核になるような、地域側から見ると、そういった場所にもなっている。
ここをどう協働しながら、本当に魅力ある教育環境をつくっていくというところですけれども、そのポイント、先ほど大槌の事例でもありますけれども、つなぐとか、つながるというのは、口で言うほど簡単ではないというところです。そこのポイントとしては、やっぱりコーディネーターの配置の実現というところがあります。コーディネーターの人材の状況とか、コーディネーターがいる、いないで、生徒の学習環境の改善が大きいとか、そういったエビデンスなども出ていますが、今、全国の都道府県からの要望というか、それを見てみると、43県がコーディネーターが必要だと。今後、国に求めるところということに関しては、「財政面での支援の充実」が一番、そして次が「制度面の条件整備」というところが求められるというふうになっているわけですけれども、具体的に今後のところでいけば、1つ目は、コーディネーターの法令上の位置づけを明確にする、そして、財政的支援をしていくというところがポイントになるというところで、どのように位置づけるのかという試案だとかを出させていただいています。
今後の財政的な裏づけというか、そこも含めてですけれども、令和4年6月に取りまとめられた教育人材育成に関する政策パッケージに関しても、次期指導要領改訂に向けた動きを踏まえつつ、高校標準法に基づく教職員定数の算定方法の見直しを含めた指導体制の充実を検討するというようなところで、ロードマップなども示されていますので、今後、このワーキングの後には、こういう指導体制の充実を本当に検討していくような動きが必要なのではないかというふうに考えています。
先ほどありました協働体制(コンソーシアム)の必要性ということがありましたけれども、これもいわゆる会議のときだけ集まって、口だけ、言うだけ、手足を動かさない、汗をかかない、当然お金も出さない、そういう協議会は、協議会も必要なんですけれども、協議会だけでは現場ではやっぱり足りない。やっぱりビジョンを共有して、そして協働で動く。活動だとか事業があるときには、必ずリソース、資源も必要だと、その資源も出し合いながら一緒にやっていく体制というところをどうつくっていくのかということがポイントになっていく。
この協働体制の中での活動のポイントを載せていますけれども、特に、1つは足し算の支援というか、協働というところにおいては、先ほどから出ています資金、資源を増やす。仕事を増やすのでなくて、資金や資源を増やすというところ。そして、学校が地域や社会から押しつけられてきたわけではないですけれども、担ってきた仕事、業務を、もう一度役割の再分担をしていくというところで、学校だけで担うのではなく、地域社会で役割を担っていくという形で、業務を引いていくという発想でやっていくというところがポイントになるというところです。
また、一部こういった協働体制を法人のような形で持っていくというような事例なども出てきていますが、こういったコンソーシアムだとか教育体制を持つことによって、学校内部だけにない教育資源をしっかり確保、活用していくとともに、ある種、次年度にも繰り越すことが可能な基金的な財源という形でしっかり持ちながら、毎年使わなければいけないということではなく、できるというような形にもコンソーシアムでやっているような事例などもありますので、こういった形も今後のリソース確保の1つの手段としてはあるだろうというところであります。
また、もう1つは、都道府県立高校と、地元市町村の連携協働をしっかりやりながら、ハイブリッドな学校経営だとか運営の形態というものが、より一層こういった小規模校においては求められていくというところです。
例えば、地元の市町村立の中学校だとかがあるわけですけれども、そういったところとのリソースの共有だとか連携協働もそうですし、例えば、高校の中で寮を持っている高校があるわけですけれども、私たちが見ているところだと、その県立の寮のすぐ目の前に市町村が寮のようなものをつくって、そちらで女子がいる、県立の高校のほうで男子がいるとか、そういった形になって別々で運営しているというようなケースが島根県内でも複数あるわけですけれども、こういったところを、例えば県立高校の寮であっても、それを市町村側が一体的に運営を効率的にしていくだとか、岩手県などでもありますけれども、町立の給食センターが小学校や中学校に給食を出すだけではなくて、県立高校に給食を出すというようなこともやっていたり、福祉施設がそういった食事を高校生のところに1食250円とかで提供しているとかという、こういう形なども市町村が協働しながらやっているというようなケースなどもありますので、こういった形で、県立高校だけで抱え込まない、市町村と一緒にやっていける、そのために必要な、例えば、先ほどの寮の話などもありましたけれども、一部事務の委託だとか、もしくは市町村への権限移譲ということも制度的にはできるんだということを明確にして周知していく。その中で、各現場でどういった形が最適な役割分担になるのかというようなことを考えられる下地をつくっていくということは必要になっていくだろうというところです。
地域との協働に関して、最後ですけれども、教育課程の柔軟性の確保というところも今後の指導要領の改訂に向けては検討の余地があるかと思っております。
例えばですけれども、小規模高校、条件不利地域の場合、芸術の科目も全て取りそろえるということが、なかなかそういった教員の確保というのは、実際、現地にいないとかあるわけですけれども、一方で、地域の独自の文化芸術団体だとか、そういった専門家なども地域にはいらっしゃると。例えば、「神楽」だとか、地域によっては「人形劇」だとか、地域によっては「演劇」だとかあるわけですけれども、こういうものに関する学校設定科目を履修した場合に、必履修教科「芸術」の履修の一部もしくは全部にちゃんと替えることができるというような形で設定をしていくだとか、こうした学校設定科目を指導する専門家には、特免なり、臨免を出せるというような形での制度の弾力化なども、今後検討していく必要があるのではないかというところです。
2点目は、学校間連携等を活用した越境・交流機会というところであります。
少子化が進む地域の小規模校の場合、ずっと同じ地域で育ってきた少人数の中で、生徒同士の人間関係がもう固定化しているとか、同世代の多様な見方、考え方だとか、価値観に触れる機会が非常に少ない。生まれたときから、小学校から高校を卒業するまで一度もクラス替えというものを経験せずに卒業していくというような生徒たちをたくさん見てきました。そうした中で、どう多様な価値観との触れ合いだとか切磋琢磨をつくっていくのかというようなところにおいて、今、地域みらい留学というような形で、地域留学というものを私たちの財団でも応援させてもらっていますけれども、例えば、都市部の中では、やっぱりリアルな地域体験、社会体験に触れにくい環境とか、家庭とか、生徒さんがいるわけですけれども、例えば、都市部の生徒が地域のこういったところで3年間を学ぶというような機会だとかを含めてつくっています。
この地域みらい留学を実際に実施する高校も年々増えてきていますし、そういった留学をしたいと言って地域の高校に地域留学をするというような生徒の数も年々増えてきているというところです。
実際、見てみると、地域留学を経験した生徒の主体性とか社会性は、非常に強い成長実感があるわけですけれども、また、そういった地域留学で来る生徒を受け入れる学校、高校、そういった地域留学生の割合が高い、いわゆる生徒の出身の多様性が大きい学校ほど、そこにいる地元の生徒の社会性とか協働性というところの高まりというものも見てとれるというようなところであります。
これに関しては、以前も一度お伝えしましたけれども、1年間のこの地域留学を実際にやろうとすると、教育課程の不一致というところで留学を断念というような生徒が非常に多くいますので、ここに関しては、やはり今後、地域留学に関しても、海外留学に係る単位認定に準ずることが可能であるということだとか、転学などの特別な事情に準ずる扱いができるということをちゃんと明確にして周知していくことで、こういったことを1年の地域留学も、よりしやすい環境をこの国でつくっていくというところが必要ではないかと思います。
一部地域留学の今後というところで、国際化ということも始まっております。海外の中等教育段階で日本語を学んでいる生徒さんは、190万人ほどという形で増えてきています。その中の2割の生徒は、日本で学びたい、日本に留学したいというような目的なども持っているというようなところですし、海外の中等教育機関で日本語を教える教員も年々増えているわけですけれども、こういった海外の日本語を教えている先生を、JETのプログラムだとかを活用しながら日本に来ていただいて、招致して、グローカル・コーディネーターのような形で活用したり、海外で学んでいる日本をルーツにした生徒さんたちや、日本語を学んでいて、日本でさらに学びたいという生徒さんを、日本のこういった地域の高校で留学を受け入れて、多様性ある環境をこういったところでもつくっていくというようなことは、今後考えられるだろうというところであります。
最後ですけれども、オンラインやICT、デジタルの活用というところに関しては、ここまでも議論してきたので、ちょっともう割愛していきますけれども、やはり遠隔教育、そして通信教育をどう活用していくのかというところが、こういった小規模校の1つポイントになっていくというところです。
今後は、そういったところにオンラインとかの活用であれば、企業のリソースなどをうまく活用しながら取り組んでいくというようなことも考えられますし、また、複数校の生徒が一緒に学び合うというような形での探究とかキャリア教育というようなことも必要かと思います。
また、高大連携というところで、私たちもさせてもらっていますけれども、やっぱり条件不利地域、過疎地域の場合、大学というのは非常に遠くにあるものという感覚がありますので、オンラインなども活用しながら、大学だとか、大学に通っている学生さんだとかとのつながりをつくりながら、進路を自ら探究していけるような機会をつくっていくというようなところだとか、また、学校間連携も、全日制同士だけではなくて、全日制と定時制・通信制、こういった連携の形というものも今後進めていくというところが必要かと思います。
すみません。最後ですけれども、こういった取組も、当然それは生徒たちのためであり、その中で教員のためにもなるわけですけれども、こういった動きをしていくことが、ひいては地域の持続可能性というところにおいても寄与していくということがありますので、こういった地域における小規模高校の在り方だとか、そこに必要な政策を考えていくに当たっては、必要に応じて、例えば、地域振興とかをやっている総務省とか、地方創生とかに関わる内閣府とか、そういったところとの省庁の連携だとか、政策間連携というようなことも視野に入れながら、一体的に高校環境の改善というところを考えていく必要があるのではないかというふうに思います。
すみません。長くなりましたが、以上です。
【荒瀬主査】 ありがとうございました。
それでは、最後に、濱田委員から、高知県における高校の学級規模や学校配置の考え方をはじめ、高知県のお取組について御発表いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
【濱田委員】 濱田です。どうぞよろしくお願いいたします。
高知県では、2000年から、県立高校と市町村立中学校とを緩やかに接続する連携型中高一貫教育校を全国に先駆けて整備してきました。この連携型が検討され始めた頃から、中山間地域の高校の小規模校化が課題として挙げられるようになり、地元との強固な関係構築が不可欠との認識が高まっていったように思います。
2004年の再編計画では、入学者数が減少してきた全日制を、昼夜開講型定時制単位制高校に再編するとともに、本校・分校の最低規模を初めて公表いたしました。そして、再編計画の下で、本校2校が続けて消えていきました。
2014年10月、再編振興計画が公表されました。この計画では、グローバル化や情報化の進展、産業構造の変化、全国に先行した人口減少、南海トラフ地震の発生等、厳しい社会環境の下で、高校教育の充実と教育環境の整備に取り組んでいくことが必要とし、県教委では、これまでのような学校規模や学校配置の適正化のための統廃合ありきの計画から、各校の振興策を重視した再編振興計画へとかじを切りました。
しかしながら、中学校卒業者数の減少は深刻で、平成25年(2013年)3月中学校卒業者数は、10年前に比べ約1,600人の減少となりました。一方で、高知市の高校では、県内全域から入学希望者が集まり、定員充足率は9割を超えていました。
そこで、県教委は、大幅な生徒減少という環境変化の中で、本県の高校教育を発展させていくためには、これまでの枠組みを維持したまま、単に縮小均衡を図っていくということではなく、新しい時代の高校の在り方を描き、実現させていくことが必要であるとして、高知市及びその周辺地域と、過疎化が進む地域とに分けて再編振興計画を考えていくことといたしました。
ここに示したように、本校の最低規模はこれまでどおりですが、過疎化が進む地域の高校には特例を認め、できるだけ学校を維持する方向で取り組むこととしました。
また、分校についても、最低規模はそのままですが、最低規模を下回った際の募集停止の猶予期間を緩和しています。
さらに、新たな喫緊の課題として、南海トラフ地震への対応が求められました。当時、13校が津波浸水域に立地し、そのうち8校は長期浸水地域に該当しており、適地への移転や近隣校との統合について検討する必要が出てまいりました。
これが平成26年(2014年)から昨年、2023年までの再編振興計画の取組状況と総括でございます。
南海トラフ地震津波対策として、3市の高校、計6校が統合し、3校減となりました。
また、中山間地域対策として遠隔授業を拡充しており、2024年、本年度は、14校、延べ267名の生徒を対象に、延べ39講座、109時間において遠隔授業を実施してございます。
2019年度から教育センターを配信拠点として本格的に開始した遠隔授業は、今や本県の中山間地域の小規模高校対策の重要施策として位置づけられるようになりました。
また、文部科学省のCORE事業により、県都高知市から100キロ以上の遠地となる幡多地域では、学校相互による遠隔授業が展開されるようになっています。
加えて、探究を中心とした地元小中高校の学校連携も進められています。
本県の西の端にあり、ジョン万次郎生誕地である土佐清水市では、目指す人材像を「21世紀のジョン万次郎」とし、育成する資質能力を定めて、小中高校での探究的な学習の時間のカリキュラム開発に取り組んでいます。
また、香美市においても、山田高校を中心に、探究する学校に取り組むとともに、「探究するまち香美市」を掲げ、小学生から大人、青年までの探究活動の発表会を、山田高校を会場に開催いたしました。
しかしながら、県全体では生徒減少がさらに加速化し、現在、最低規模の基準等を満たしていない本校が7校ございます。このうちの6校が中山間地域の特例校に指定されていますが、6校中2校は、この特例措置さえも満たしてございません。
昨年、高校ワーキングの中間まとめが公表されたその4日後の9月4日、高知県では、中山間地域再興ビジョンの骨格案が公表され、本年3月に策定されました。このビジョンでは、予想を超えるスピードで高齢化や過疎化が進む中山間地域の目指す10年後の姿として、若者の人口増加を掲げ、少子化対策と一体となった新たな中山間対策を推進していくとしております。
高知県では、全市町村が地域振興5法に該当しています。中山間地域の面積は県土の9割を超え、その人口は県全体の約4割です。
このように、本県にとって中山間地域は、中山間地域の再興なくして県勢の浮揚はなし得ないとの考え方です。そのためには、県と市町村が連携して人口減少を食い止め、人口の若返りを図り、持続可能な人口構造へと転換することが何より重要であるとし、ビジョンの目指す姿を中心に、若者の人口増加を掲げ、少子化対策と一体となった新たな中山間対策を推進するとうたっています。
中山間地域再興ビジョンにおける県教育委員会の取組としては、2点です。
1点目は、全国生徒募集の拡大による県外生徒数の増加、2点目が、中山間地域の高等学校における地元中学校からの進学割合の増加を10年後には平均50%にするというものでございます。
そこで、具体的な取組としては、こうち留学の促進、それから、高知県高校魅力化コーディネーターの活用等を、地元市町村とともに県立高校が連携して取り組んでいるところでございます。
8月27日、来年度から実施される高校再編振興計画について、高知県教育委員会協議会が開催されました。そこで議論されたことが、入学定員のあるべき姿でした。
本県の全日生高校は、現在、31校72科です。本年度入学者数は3,367人で、30校56科で定員割れとなり、充足率は7割にとどまっています。そして、県内の中学卒業者数は、10年前より1,200人以上減っています。その上、私立、国立中学校からの入学者も含め、私立高校等には約2,000人が進学しているといった状況です。さらに10年後の県立高校全日制入学者数は、約800人少ない2,553人になるとの試算がなされています。
このような状況を踏まえ、次期計画中に少なくとも1,200人以上の入学定員の削減が必要との考えが示され、さらに学校は小規模校化される予想です。
少子化が加速される中、次期再編振興計画では、新たな考え方を打ち出しています。それがここに示した高校のスクール・ミッションの方向性です。
県立高校の方向性を定めるために、各校のスクールミッションを明らかにするとともに、高校を5つのカテゴリーに分類した上で、さらに特色化を図ることを打ち出しています。
これは適正規模と適正配置による再編を超えて、高校の存在意義とは何なのかについて、地元市町村と高校が議論、検討を重ねた上で、新たな地元高校を再定義し、魅力、特色を図っていくことが求められているということだと思います。
終わりでございます。
本県では、令和に入り遠隔教育を推進し、文部科学省の事業を受託して、中山間地域の高等学校支援に取り組んでまいりました。
それらは、教育センターによる個々の学校支援から、ネットワーク化された地域の学校相互型の補完支援体制へと進んでいます。今後、デジタル化がさらに進み、遠隔教育、遠隔授業はさらにリアルになり拡充されていくでしょう。それらにより、遠隔による学校、市町村、県を超えた連携協働が進み、新たな学びも受容できるようになるでしょう。できるのではないかというふうに期待しております。学校規模や配置を超えて、デジタル時代の新たな可能性に私は希望を持っています。
以上、ありがとうございました。
【荒瀬主査】 ありがとうございました。
お三方といいますか、1つの団体、そして、お二方から御発表いただきました。
具体に、この以降、どのような形で魅力化を図っていくか、あるいは、どのような学校の在り方を目指して、どんな方法を展開していくのか、さらには、具体の県立高校をどうしていくのか、そういったことでの御発表をいただきました。
これについて、皆様の御意見をいただいて議論をしたいところなんですけれども、もう残りの時間が6分、7分となりました。次回に向けて、これを続けて、色々なお話をいただいて、いよいよ最終的にまとめに向けて議論を深めていくというのは次回以降とさせていただいて、今日、まず御質問とか何かありましたら、あまり長い時間はかけられないですけれども、ちょっとこれは確認しておきたいというふうなことがおありでしたら、どなたか。
【岡本委員】 短いやつで。
【荒瀬主査】 短いもの。はい、岡本委員、お願いします。
【岡本委員】 「コーディネーター」という言葉がお三方から出てきたんですけれども、このコーディネーターの役割は、皆さん、基本的に同じ定義で使われているという理解でいいのですか。
【今村委員】 違うと思います。
【岡本委員】 違うんですか。
【今村委員】 違うというか、多分、配置されている、さっき、高知県は各校1人という募集をなさっていたんですけれども、大槌でいうと、今は何人ですか。
【菅野様】 3人です。
【今村委員】 3人とか、あと、待遇もまちまちだから、できることも違います。
【岡本委員】 違いますよね。
【今村委員】 スキルセットもいろいろ違うと思います。
【岡本委員】 その辺の整理はちょっと必要なのかなというふうに思ったところです。
【荒瀬主査】 なるほど。コーディネーターですね。
【岡本委員】 何ぞやという。
【荒瀬主査】 なるほど、なるほど。
それから、内田委員、御質問をどうぞ。
【内田委員】 濱田委員の18ページ目の、令和8年度から1,200人以上定員を減じて定数充足率を高めるということですけれども、当然これは教員定数も下がるということですよね。
【濱田委員】 そうだと思います。
ですが、今まで、学級定員を減らすことによって、さらに小規模化が加速されるといったようなことが危惧されて、高等学校の学級定員を現状と合わない形でそのままにして据え置いてきたというようなことに、もうそろそろ何かしら決着をつける必要があるということだというふうに思います。
【内田委員】 お三方の発表の中で、定数が減っている、あるいは学級規模がどんどん少なくなっていることによって、開講科目が設定できないみたいな話がありました。今後の議論にも関わってくると思うんですけれども、例えば、時間講師、非正規公務員が多いという現状があって、なかなか講師を各学校が探すことも難しい状況が地方ではますます増えているかと思うんですけれども、これを定数外で教育委員会あるいは教育センター等で配置して、定数外定員ということで専任化をして各学校に派遣をするとか、あるいは、オンライン配信をするとか、そういった新しい制度についても、この会でちょっと議論ができればありがたいななどというふうに思った次第です。ありがとうございました。
【荒瀬主査】 ありがとうございます。
濱田委員、どうぞ。
【濱田委員】 高知県では、そういうところを遠隔授業を始めて、それを着実に進めております。この遠隔授業、遠隔教育によって、中山間地域の小規模校では、物理の授業が開講できず理系に進めなかった生徒が、遠隔授業によって物理を修得できるようになって大学進学を目指しているという現状です。このように遠隔教育、遠隔授業を進めれば、教員の定数とうまく相殺していける部分もあるのではないかと考えています。
【荒瀬主査】 ありがとうございます。これ、とても難しいお話だと思うんですけれども、実は、時間が今日はないので、次回でも、ぜひ事務局のほうから、COREハイスクール・ネットワークの話も含めて取組の一端を教えていただけるといいますか、共有できるようにしていただけると大変ありがたいなと思います。決して、安上がりとか、人の配置をもういいんだという話ではなくて、この状況の中で、どうしたら少しでも生徒の学びを豊かにできるのかということで、いろいろなところで、工夫、苦労がなされています。それについてはしっかり見ておきながら、一方で、さっき岩本委員のおっしゃった中でも、芸術の代替とかもできるのではないかということですが、しかし、じゃあ、少子化がどんどん進んでいる地域では、いわゆる芸術はもう学べないのかということも、これもまた大変大きな問題になってきますので、そういったことも含めて考えていく必要があると思います。
すみません。鍛治田委員も御質問があるようですので、鍛治田委員と長塚委員までということで、よろしくお願いします。
では、鍛治田委員、どうぞ。
【鍛治田委員】 恐れ入ります。岡本委員もおっしゃったように、コーディネーターというのが、今後、非常にキーワードになってくると思います。国として、このコーディネーターの資格のようなものを今後考えられていくのか、都道府県、市町村、学校側に託していくのか、その辺り、もし見通しなどをお持ちでしたら、お尋ねしたいと思いました。
以上です。
【荒瀬主査】 ありがとうございます。
何かありますか。
【度會参事官補佐】 事務局でございます。先生、ありがとうございます。
どういった形で制度化していくのかというところはまだちょっと考えていかなければならないですけれども、もちろん指導体制の充実といった側面から考えていく必要がある一要素だと考えておりますので、今後、先生方の御意見も賜りながら考えていきたいなと思っているというのが、すみません、現状でございます。
【荒瀬主査】 ありがとうございました。
【岩本委員】 すみません。1つだけ、今のに追加でいいですか。
【荒瀬主査】 はい。
【岩本委員】 まずは、多分、国としてはこれからだと思うんですけれども、現場で実際にさせていただいているのは、こういったコーディネーターの養成だとか育成のときに、今、大学と一緒になって、社会教育士の講習と併せて、やっぱり社会教育の分野での社会教育士に求められる資質能力と、このコーディネーターというものの資質能力の重なりが結構大きい部分もありますので、そういった形で社会教育との連携の中でやっていたりとか、それで履修証明も出すし、社会教育士も取れるというような形でやっているという事例もありますので。
【荒瀬主査】 なるほど。補足していただいて、ありがとうございました。
ただ、さっき、岡本委員の御質問からすると、これはやる中身によって、社会教育士の資格がふさわしいのか、はたまたまた別の形がふさわしいのかと、いろいろあるのでしょうから、これもちょっと考えないといけないですね。ありがとうございました。
では、長塚委員、どうぞ。
【長塚委員】 今後の議論のために、ちょっと実態の確認だけ、岩手県の御説明のところで確認したいだけなんですが、現状で中3生が約1万人いるということでした。実は私立高校生が2,700人ぐらいいるんです。それで、たしか14校あるんです。県立が7,000名ぐらいいて、約60校あるということで、これがやがて半減していき、5,000名、4,000名になるということは早晩のことになるわけなんですけれども、県立高校の学校数がクエスチョンで推移しているんですね。たしか、岩手県は四国4県と同じぐらいの面積があるということですが、大変広範囲に生徒が散らばっていて、通学できる範囲も、限られてくるということで、県立高校の数は減らしたくないというのは、ある意味、当然なのかもしれません。しかし、1学校1学年当たり50名以下、100名以下も間もなくというようなところにあると思うんです。そういうところで学校が成り立つのかどうかということが非常に気になるわけです。
先ほどの教育的な内容の御報告が、どの程度可能になるのかということも含めて、この学校数の様相はどうでしょうか。聞いているところでは、やはり維持していきたいという、そういう状況なんでしょうか。
【菅野様】 私の答えられる範囲でというか、分かっている範囲でということになりますが、今はまず既に59校のうち11校が1学年1学級校になっています。今後は、正直どうなるかというのは、まさに再編計画を今組んでいるというところで……。
【長塚委員】 今、検討中。
【菅野様】 はい。なんですけれども、やっぱり1学級校が増えていくだろうという見通しもあるので、そのときに自校だけではやっぱりできないですよねというのが、これからのところになってくるかなと思います。
【荒瀬主査】 恐らく、さっき高知県から濱田先生に御発表いただきましたけれども、どんどんとその状況に応じていろいろと変更していらっしゃいますよね。最初に決めたとおりでやっていらっしゃるわけではなくて、状況に応じて、多分その地域の方の声も聞きながら、生徒の声も聞きながらやっていらっしゃると思うので、ちょっと見えないところはありますよね。しかし、早晩そういったところに直面する地域がどんどん増えていく可能性があるということですよね。
ありがとうございました。
そうしたら、議論をする時間がもうなくなってしまって、今日はこれでおしまいにしたいと思いますけれども、これまでずっといろいろと議論も重ねてきたし、さらには様々な形で御発表をいただいて情報も得ていますので、こういったことに基づいて、次回以降、検討を進めていきたいと思います。
さっきも申しまして、事務局には申し訳ありませんけれども、今日の話も、また論点として整理をしていただいて、よろしくお願いしたいと思います。
次回の日程につきまして、度會さん、お願いします。
【度會参事官補佐】 本日は誠にありがとうございました。長時間にわたりまして恐縮でございます。
次回の日程につきましては、また調整して御連絡させていただければと思います。
以上でございます。
【荒瀬主査】 ありがとうございました。
いつものことですけれども、御質問とか御意見とかは、また事務局のほうにメール等でお送りいただければと思います。
では、本日、どうもありがとうございました。終了いたします。
―― 了 ――
初等中等教育局参事官(高等学校担当)付