高等学校教育の在り方ワーキンググループ(第1回)議事録

1.日時

令和4年11月14日(月曜日)15時00分~17時00分

2.場所

文部科学省内会議室 ※オンライン会議にて開催

3.議題

  1. 高等学校教育の在り方について
  2. その他

4.議事録

【松田参事官補佐】  それでは、定刻となりましたので、ただいまから中央教育審議会初等中等教育分科会、個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実に向けた学校教育の在り方に関する特別部会、第1回高等学校教育の在り方ワーキンググループを開催させていただきます。本日は御多忙の中、御出席いただきまして、誠にありがとうございます。

 本日は第1回目でございますので、しばらくの間、事務局のほうで進行させていただきます。私は高校担当参事官付の参事官補佐をしております松田と申します。どうぞよろしくお願い申し上げます。
 まず、初回ということで、開催に先立ちまして、初等中等教育局長の藤原より委員の皆様に御挨拶を申し上げたいと思います。
【藤原局長】  それでは、本日は高等学校教育の在り方ワーキンググループ初回ということで、事務局を代表して一言御挨拶を申し上げたいと存じます。
 まず、今回のワーキンググループでの審議に当たりまして、委員の皆様方におかれましては、大変お忙しい中、全国各地から、また様々なお立場から御参加をいただき、誠にありがとうございます。
 高校を取り巻く現状を見ますと、産業構造や社会システムの非連続的とも言えるほどの急激な変化、選挙権年齢や成年年齢の18歳への引下げ、義務教育段階における不登校経験を有する生徒の増大などの変化が生じており、また、今後さらなる少子化の進行によって、高校の維持が困難となる地域や学校が全国的にさらに発生していくことが見込まれているところでございます。また、高校生は、学校生活への満足度や学習意欲が中学校段階に比べ低下しているという課題があり、生徒の学習意欲を喚起し、可能性や能力を最大限に伸長するために、高校の改革をさらに進めていくことが必要だと考えております。こうした実態等を踏まえつつ、これからの高校の在り方を検討し、令和の日本型学校教育を構築していくことが求められております。
 本ワーキンググループでの議論は、今後の高校教育の在り方に関わる大変重要なものになります。委員の皆様方におかれましては、それぞれの御見識を踏まえ、また御経験を生かし、積極的に御議論に参画いただければと存じますので、どうぞよろしくお願いいたします。
【松田参事官補佐】  本日の会議でございますけれども、新型コロナウイルス感染症の感染状況を踏まえまして、ウェブ会議システム、Zoomによる開催とさせていただいております。委員の皆様方におかれましては、ウェブ会議システムを利用する観点からのお願いでございますけれども、1つ目には、まず、御発言に当たっては、インターネット上でも聞き取りやすいようはっきり御発言をいただくなどの御配慮をいただく、御発言の都度名前をおっしゃっていただく、御発言時以外はマイクをミュートにしていただく、御発言に当たっては「手を挙げる」ボタンを押していただき、御発言の後は「手を下ろす」ボタンを押していただく、こうした御配慮をいただけるとありがたく存じます。御協力のほどよろしくお願い申し上げます。
 続いて、本日の配付資料についてですけれども、議事次第のとおりとなっております。不足等ございましたら、事務局にお申しつけいただければと思います。
 それでは、最初に本ワーキングについて御説明をさせていただいた上で、委員の皆様方の御紹介に移りたいと思います。
 まず、資料1を御覧いただければと思います。本ワーキングは、令和3年1月の中教審答申を踏まえて特別部会が設けられておりまして、こちらの下に本年10月3日に設置されたものでございます。
 本ワーキングの主な検討事項、2として示しておりますけれども、(1)高等学校教育の在り方について(「共通性」と「多様性」の観点からの検討)、(2)高等学校制度の望ましい在り方について(全日制・定時制・通信制の在り方、少子化が加速する地域における高等学校教育の在り方等)、(3)「スクールミッション」「スクールポリシー」を体現し、「社会に開かれた教育課程」「探究的な学び」を実現するための校内外の体制について、(4)文理横断的な教育、産業界と一体となった実践的な教育の推進について、(5)その他となっております。
 次に、本ワーキングの運営について御説明をさせていただきます。本ワーキングの主査及び主査代理は、特別部会の運営規則第2条第3項の規定により特別部会の部会長が指名することとなっております。この点について、主査は荒瀬部会長に御就任いただくこととなっておりまして、主査代理には荒瀬部会長の御指名により田村委員に御就任いただくこととなっておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、ワーキンググループの委員の皆様を御紹介申し上げます。オンラインの会議でございますので、委員の先生方におかれましては会釈のみで御挨拶をいただければと思います。名簿順に沿って御紹介をさせていただきます。
 青木栄一委員でございます。
 荒瀬克己主査でございます。
 石崎規生委員でございます。
 今村久美委員でございます。
 岩本悠委員でございます。
 岡本尚也委員でございます。
 沖山栄一委員でございます。
 鍛治田千文委員でございます。
 塩瀬隆之委員でございます。
 篠原朋子委員でございます。
 清水雅己委員でございます。
 田村知子主査代理でございます。本日は別の用務により御欠席となってございます。
 冨塚昌子委員でございます。
 長塚篤夫委員でございます。
 濱田久美子委員でございます。
 委員の皆様、どうぞよろしくお願い申し上げます。
 さて、本ワーキングの公開についてですけれども、運営規則第3条に基づきまして、公開を原則としております。本日は報道関係者や一般の方向けにユーチューブにて配信しておりますので、御承知おきいただければと思います。
 また、会議の傍聴につきましては、同規則第4条によりまして、会議を撮影、録画、録音する場合は、主査の許可を受けるとともに事務局が定める手続により申請をする必要がございます。本日の会議についても報道関係者より録音及び写真撮影希望のお申出をいただいておりまして、事前に荒瀬主査にお諮りして許可をいただいておりますので、議員の皆様方におかれましても御了承いただければと思います。
 それでは、ここからの議事進行につきまして荒瀬主査にお願いしたいと思います。荒瀬主査、どうぞよろしくお願い申し上げます。
【荒瀬主査】  皆さん、改めまして、荒瀬でございます。よろしくお願いいたします。特別部会の部会長をしておりまして、このワーキングの主査は部会長が指名するということで、私が私を指名するという何か妙なことになっているわけでございますが、どうぞよろしくお願いいたします。
 委員の数という点で言いますと、15名でありまして、本当にみっちりしっかりとした議論をこの15名でやっていければと考えておりますのと、今、具体的に事務局のほうに様々な形でヒアリング等もお願いをしているところでございまして、様々な形から高等学校教育について考えていきたいと思っております。やり方とかどういう形でできるかということは、まだこれからの御相談になるわけですけれども、できれば高校生の声も聞きたいと強く思っております。
 これから議論をお願いするわけですけれども、高等学校が果たして高校生に対してどういう意味のある場所であるのかを、本当にしっかりと考えなければならないのではないかと思います。かつては中途退学率が大変高いということで、それに対する指摘や批判もあって、高等学校はいろいろ努力をして、今、中退率は以前に比べれば下がっているわけです。しかしながら、だからといって、高等学校教育が高校生にとって豊かな学びの場になっているかどうかが中退率の低さで表されるものではありません。冒頭藤原局長からお話があったように、学習意欲に関する課題は、学年・学校段階が上がるに従ってどんどん増えているといった残念な指摘もあるわけであります。
 かつては高等学校教育について議論をするときに、「共通性」と「多様性」という言葉をよく使ったように思います。私、御縁があって、2度の学習指導要領改訂に関わりを持たせていただきましたが、特に前回は、本当のところ高等学校はどうあるべきかということで、高校の多様性と共通性について非常に深く議論をした記憶を持っておりますけれども、しかしながら、今や共通性をどうやって担保するのかが非常に難しくなってきていると言えるように思います。これは学習指導要領との関連をどう考えていくのかということもあるかもしれません。
 また一方で、この4月から成年年齢が18歳に引き下げられるということで、これは既に御案内のとおりではありますけれども、これまで「大きな子供」であるというみなしがあったかもしれませんが、もう「小さな大人」を育てていくのだという意識の変革もしっかりとしていく必要がありますし、気持ちを変えるだけではなくて、ではどういった学びを高等学校教育で準備し生徒たちに用意していくのかということも、本当にしっかりと考えていかなければならないと思っています。
 先月、特別部会の下に義務教育のワーキンググループが発足いたしました。その義務教育のワーキンググループの取組と、この高等学校教育のワーキンググループの取組、いろいろと連携をとりながら、我が国の初等中等教育全体についても議論を進めることができればと思っております。今後の高等学校教育、どうしていったら最も高校生一人一人にとって、まさしく一人一人の生徒が主語になる高等学校教育が実現するのかということに向けて、委員の皆様の真摯な御議論をぜひともお願いする次第でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 では、議事に入りたいと思います。今日は議事といいましても1つだけでありまして、高等教育の在り方についてということで、まず事務局のほうから御説明をいただいて、その後、意見交換をさせていただきたいと思います。今日は第1回目でありますので、ぜひとも委員の皆様全員からお話をいただきたいと思っております。よろしくお願いいたします。
 では、松田参事官補佐、お願いいたします。
【松田参事官補佐】  それでは、資料に基づいて御説明をさせていただきます。
 まず、資料4、10月3日に行われました第2回の特別部会における主な意見でございます。先ほど荒瀬主査からもいただきましたように、義務教育と高校教育、こちらはつながっておりますので、それぞれのワーキングにおける議論の状況、これはお互いに見えるようにしておくべきといった御意見。不登校が増え通信制の学校が増えていることは新しい高校教育の在り方と捉えられるが、一方で実態がよく分からないところがある。高校は、子供が企業に入る前に人間関係や社会性を育む最後の機会になるかもしれない場所。通信制はもはや勤労青年のための学校ではないことを前提に、高校はどういう場所であるべきかもう一度考えていくべき、そうした御意見をいただいております。
 また、公立通信制の高校を変えていくべき。自立した学習者を前提にしているところでは、様々な課題を抱える子供にとっては厳しい場所になっている。公立通信制の在り方次第で、多額の学費を広域通信制のサポート校に払っている家庭を救っていけるところがあるのではないかといった御意見。
 また、夜間定時制の中には外国にルーツのある子供が多数を占める学校もあるということで、多様な言語を話す子供への対応、このためにGIGA端末を用いた方法も考えていかないといけないのではないかといった御意見。
 また、通信制・定時制を抜本的に見直していくことが大事。全日制・普通科において対応できていない部分、その部分の原因を明らかにしてサポートをしていくことが大事といった御意見。
 さらには、全日制・定時制・通信制の在り方を含めて、高校教育の共通性・多様性をどのように考えていくのか議論していくべきといった御意見。
 また、共通性をコンテンツで担保するのは義務教育で十分であって、高校は、生涯にわたって必要とされる学びを自力で遂げていくことができるようにするといった資質・能力、そうしたもので考えていくべきではないかといった御意見をいただいてございます。
 続きまして、資料5、検討を進めるための参考資料についてです。まず、高等学校の進学率ですけれども、令和3年度には99%、ほとんどの子供が高校に進学しているという状況でございます。
 また、全日制・定時制の高等学校の学校数と生徒数の推移は、学校数・生徒数は近年減少しておりまして、令和4年度の速報値では、生徒数が初めて300万人を下回るという状況になってございます。
 一方で、通信制の高等学校については、まず、通信制の課程を置く高等学校数は、全体として増加傾向。公私別で見たときには、特に私立の通信制、黄色いグラフでございますけれども、そちらが大幅に伸びているという状況でございます。
 また、生徒数も同様でございまして、通信制課程の生徒数は全体として増加傾向。特に公私別で見た際には、私立の通信制の生徒数が大きく増加。一方で、公立の通信制の生徒数は徐々に減少しているという状況でございます。
 また、小・中学校における不登校の状況についてですけれども、先日、令和3年度の結果が出まして、不登校児童生徒数は24万4,940人と、9年連続増加、過去最多という状況になってございます。
 一方で、高等学校の不登校の状況を見てみますと、不登校生徒数は5万985人で、昨年度よりは伸びておりますが、おおむね横ばいの推移となってございます。
 続きまして、中途退学の状況でございますけれども、こちらは令和3年度で3万8,928人で、推移としては、おおむね減少傾向か横ばい傾向になっているという状況でございます。
 また、いじめの状況については、小・中・高一体となったデータでございまして、いじめの認知件数でございますけれども、高校は小・中学校と比べると数値上は低くはなっているという状況でございます。
 態様別の状況につきまして、各学校段階で特徴に差がございまして、高等学校においては、冷やかし、からかい、悪口、脅し文句、嫌なことを言われる、そうしたことが最も多くなってございまして、続いて、パソコンや携帯電話等で誹謗中傷や嫌なことをされる、こうしたことが多くなっているという状況でございます。
 暴力行為の発生件数につきましてもデータをお示しさせていただいておりまして、これも高等学校においてはいじめ等と同様の動きとなってございます。
 また、自殺の状況につきましてもお示ししておりまして、小・中・高校合わせてですけれども、自殺した児童生徒数は368人という状況になってございます。
 続いて、通信制高校に在籍する生徒の就業状況と実態等でございまして、通信制高校に在籍する生徒に占める就業者の割合は近年減少しておりまして、小・中学校や前籍校における不登校経験がある生徒が大変多くなっているという状況でございます。
 続いて、通信制の年度途中入学者を見ますと、公立はおおむね横ばいで推移しているものの、私立は増加傾向にあるというデータでございます。
 また、通信制課程の履修者割合を見ますと、全体の生徒のうち履修者が占める割合、私立のほうが公立通信制よりも高い状況が続いており、令和3年5月1日現在で公立が67.7%、私立は97.2%という状況になってございます。
 また、単位修得者の割合も同じ状況でございまして、私立の通信制のほうが公立通信制よりも高い状況が続いてございます。
 また、通学型コースの設置状況は、設置者別に、株式会社立、学校法人立、公立という形でデータをお示ししておりますけれども、株式会社立や学校法人立では、通学型コースを設置しているところが公立よりも多くなっているという状況でございます。
 実際に利用している生徒の状況としても、半数以上の生徒は何かしら通学型コースを利用しており、公私別で見た場合には、公立は4分の1程度の生徒の利用の状況にとどまっているのに対し、学校法人立は7割近い生徒、株式会社立は半数強の生徒が利用しているという状況でございます。
 続きまして、高校の卒業後の進路状況でございます。令和3年度時点で、大学・短大への進学者は57.4%、就職者の割合は15.7%というデータになってございます。
 この卒業後の状況を課程別に見ますと、全日制課程では大学等の進学者が58.2%、定時制課程では就職者が45.1%という形で多くなっている一方で、通信制課程では進路未決定者等が32.8%と最多となっております。この進路未決定者等というのは、家事手伝いをしている者、外国の学校に入学した者、進路が未決定であるものが明らかな者を指しております。
 続いて、学科別の卒業後の状況でございますけれども、普通科の卒業後の進路は大学等への進学が66.9%と最多となっておりまして、専門学科は就職が42.9%と最多、総合学科は大学等、専修学校、就職が約3割ずつで、ほぼ同数という状況になってございます。
 続きまして、25ページでございますけれども、生徒数の学科別の構成割合について、専門教育を主とする学科は年々減少、普通科は最近30年間でほぼ一定、約7割で推移しているという状況でございます。
 少し飛ばさせていただきまして、28ページ、15歳人口の推移でございます。こちらは令和4年度時点で約107万人でございますけれども、7年後の令和11年に100万人を割り込み、さらに7年後の令和18年には約81万人になることがほぼ確実となっております。令和4年と比較すると令和18年時点で24%も減少するという見込みになっております。
 公立高校の全国的な配置状況でございますけれども、公立高校の立地が0または1であるものが1,088市区町村、約62.5%がそういう状況になっているところでございます。
 また、統廃合の推移でございますけれども、平成2年時点では、公立高校が1校のみである市町村は1,197ございましたけれども、そのうち245市町村は平成31年までに0校になっておりまして、約2割のところで公立高校が消滅しているという状況でございます。
 次に、在籍する学校を選択した理由の調査でございます。学校選択の理由で多いものは、自宅から近い、通いやすい、また、学校の雰囲気がよかった、合格できそうだった、こうしたものが上位となってございます。
 また、そうした選択した理由と進路選択の満足度を分析すると、積極的な動機づけによる学校選択を行った者は進路選択の満足度が高い傾向である一方で、他律的な動機づけによる学校選択を行った者は進路選択の満足度が低い傾向となってございます。
 また、学校外での学習時間に関しまして、高1相当学年において、家や塾で学習をしない及び1時間未満であると回答する割合が、中3から高1にかけて急増しているという状況でございます。また、高3の相当学年でも引き続き勉強しない割合は高いんですけれども、一方で、3時間以上勉強する者の割合は大幅に増加するということで、二極化している傾向が読み取れます。
 学校生活の満足度でございますけれども、学校の学び・授業の満足度・理解度は学年が上がるとともにどんどん低下してしまっているという課題を示すデータもございます。
 生徒の自己肯定感、社会参画に関する意識というところで、日本の生徒は、「自らの参加により社会現象が変えられるかもしれない」「自分で国や社会を変えられると思う」、そうした意識とか、「社会課題について、家族や友人など周りの人と積極的に議論している」、そうした割合が国際的に見て低くなってしまっている、そういうデータもございます。
 また、高校生の文理選択の状況、こちらは2013年度というちょっと古いデータでございますけれども、高校の3校に2校が文系・理系のコース分けを実施しておりまして、特にその中でも理系コースを選択する割合は32%、文系コースの割合は68%というデータになってございます。
 そして、企業側から見たときに大学卒業者に期待される資質・能力・知識に関するアンケート、経団連さんのほうで実施されているアンケートがございまして、特に期待する資質は「主体性」、特に期待する能力は「課題設定・解決能力」、そして、期待する知識は「文系・理系の枠を超えた知識・教養」と回答している企業が大変多くなってございまして、探究的な学び、文理横断的なリベラルアーツ教育、こうしたものが求められているという状況でございます。
 高校改革の動向の資料につきましては、時間の関係上、説明を割愛させていただきます。
 続きまして、資料6を御覧いただけたらと思います。高校教育の在り方についての論点メモでございます。
 まず、令和2年にまとめられました「新しい時代の高等学校教育の在り方ワーキンググループ」の審議まとめの抜粋でございまして、「全ての高校生が社会で生きていくために必要となる力を共通して身につけられるよう『共通性の確保』を図りつつ、生徒一人一人の特性等に応じた多様な可能性を伸ばすための『多様性への対応』を併せて進めることによって、高等学校教育の質の確保・向上を目指すことが求められる」という言及がございます。このうちの「共通性の確保」に関しまして、認識を共有させていただけたらと思いますけれども、まず学校教育法の第50条で、「高等学校は、中学校における教育の基礎の上に、心身の発達及び進路に応じて、高度な普通教育及び専門教育を施すことを目的とする」となってございます。また、第51条で、この目的を実施するための目標として、「義務教育として行われる普通教育の成果をさらに発展・拡充させて、豊かな人間性、創造性及び健やかな身体を養い、国家及び社会の形成者として必要な資質を養うこと」、また、「社会において果たさなければならない使命の自覚に基づき、個性に応じて将来の進路を決定させ、一般的な教養を高め、専門的な知識、技術及び技能を習得させること」、そして、「個性の確立に努めるとともに、社会について、広く深い理解と健全な批判力を養い、社会の発展に寄与する態度を養うこと」、こうしたことが掲げられております。また、高校の教育について、小学校の規定を高校に準用しているものでございますけれども、「生涯にわたり学習する基盤が培われるよう」、「基礎的な知識及び技能」、また「思考力、判断力、表現力」、「主体的に学習に取り組む態度」、こうしたことを養うことに特に意を用いなければならないとなってございます。
 次のページで、参考として、義務教育の目的・目標をお示しさせていただいております。
 この共通性を具現化するものとして、学習指導要領というものがございまして、生きて働く知識・技能の習得、未知の状況でも対応できる思考力・判断力・表現力等の育成、学びを人生や社会に生かそうとする学びに向かう力・人間性等の涵養というところ、何ができるようになるかという視点で構成しておりまして、また、何を学ぶか、どのように学ぶか、そうしたことも併せて学習指導要領においてお示ししているという状況でございます。
 そして、次のページは、平成26年6月にまとめられた中央教育審議会初等中等教育分科会高校教育部会の審議まとめの抜粋でございます。コアを構成する資質・能力のイメージという部分は、共通性に関する本日の議論の土台・発射台になるところがあるかと思いますので、御紹介させていただきます。
 確かな学力・豊かな心・健やかな体が、生徒が高校教育を通じて身につけるべきものであり、確かな学力の中で、知識・技能、思考力・判断力・表現力等、主体的に学習に取り組む意欲・態度というところが示されております。また、説明する力、議論する力や、社会・職業への円滑な移行に必要な力・市民性、主体的な行動力、人間関係構成力、そうしたところがコアを構成する資質・能力として示されているところでございます。
 1ページ目に戻りまして、これを踏まえた本日の論点として大きく3点挙げさせていただいてございます。まず1つ目が、高校の存在意義とは何なのか。高校教育において必要な「共通性の確保」とは何か。また、どのような「多様性への対応」が必要なのか。先ほど御説明申し上げました平成26年の高校教育部会の審議まとめにおける整理も参考にしていただきつつ、強調すべき点や付け加えるべき点について御意見いただけたらと思っております。
 また、「共通性の確保」「多様性への対応」に関しまして、どのような課題があると考えられるか。高校教育を取り巻く現状として、社会として非連続的とも言える急激な変化が起こっている、成年年齢の18歳への引下げが行われている、義務教育段階で不登校経験を有する生徒が増大している、少子化が進行しているなど、資料5で様々なデータをお示しさせていただきましたけれども、そうしたことも踏まえて、どのような課題があると考えられるか、また、どのように対応していくべきか、こうしたことも御意見をいただきたいと思っております。
 その他、高校教育のあるべき姿、現状の課題、講ずべき対応策等についても御意見をいただけたらと思っております。
 すみません、駆け足ではございますけれども、説明は以上でございます。
【荒瀬主査】  ありがとうございました。
 これから残りの時間を使って、皆様から御意見を頂戴したいと思っております。その際に、今御説明いただきました資料6の論点メモに基づくことでも結構ですし、その他新たな論点を付け加えるべきではないかといった御意見でももちろん結構でございます。どの角度からでもよいということですけれども、基本的にはこの論点メモを意識していただいた上で御意見を頂戴できればと思っております。
 さっき御説明いただいたことで、屋上屋を重ねる気はございませんが、資料6の5ページにある、ちょっと古い図でありますけれども、平成26年6月の高等学校教育部会、こちらのほうで「コア」という言葉が登場してくるわけです。このコアは、今御説明いただきましたように、全ての高校生に養うべき基本的な力ということで、共通性をこのところに求めたわけでありますけれども、そのコアというものは何かというと、当時の議論の中では、真ん中に円がありますけれども、そこのところで特に大きく太字で書いた「社会・職業への円滑な移行に必要な力」、もう1つが「市民性」、この2つがコアであるということで議論をしたという経験があります。それに関わって、この2つは大変幅のある話ですので、その中身としてはいろいろとあるだろうと。それらは当然のことながら学力にも、あるいは豊かな心にも健やかな体にも関係してくるということであります。
 しかしながら、このコアという言葉が必ずしもその後よく使われていくようになったかというと、そうでもありませんので、改めて今回の我々のワーキングの中で新しい概念を生み出すこともあるかもしれませんし、あるいはこれをさらに補強するといったこともあるかもしれませんし、そういったことも含めて御議論をいただければと思っております。
 では、残りの時間全てということですので、特に順番は決めませんが、先ほど申しましたように、今日は第1回目であるということもありまして、ぜひとも皆様お一人一人から御意見を賜りたいと思います。よろしくお願いいたします。
 では、岡本委員、どうぞお願いいたします。
【岡本委員】  岡本と申します。よろしくお願いいたします。
 今、コアというお話が出ましたので、それと関連して少しお話をしたいのですけれども、高等学校の運営とかそういうものは、基本的にこれまでは都道府県もしくは市町村が大きな割合を占めてきました。義務教育と比べて文部科学省の影響はあまり大きくなくて、都道府県の影響のほうが大きかったわけです。例えばスクールミッションとかポリシーに関しても、もう数年前から実行している県もあれば、僕の住んでいる県とか、2年後とかまで先延ばししているような県もあるぐらい、要はすごくそれは差があるわけです。それと同様に、関連しているものとして、例えば四大進学率とか見てみても、東京と僕の住んでいる鹿児島県とかだったら倍ぐらい差がついています。かつ、ジェンダーの影響も大きくて、四大進学率とかを見てみても、傾向的にですけれども、地方のほうが男女差が大きくなっています。
 そう考えたときに、コアというものを、資質・能力という面でも大事ですけれども、環境面、要は学校とか教育委員会が示すべき教育に関する環境面に関しても定めるべきではないかなと思っております。そこが出てくるのが、オンラインへの対応もそうです。今回のコロナの対応のときに、都道府県で全然違ったわけです。その際に、端末を持っていない都道府県、もしくは回線が整っていない県、プラス、そういう環境面と。もうこれはずっと昔から教育の格差のところではありますけれども、大人の認識の部分ですよね。今までこういうものを使っていなかったから要らないんじゃないかという親、上の世代の認識や価値観が効いてきてしまうのが地方に多く見られた傾向だったので、大変かもしれませんけれども、環境面と、プラス意識的なところをどうアプローチできるのかというのが議論の対象になると思います。これまで都道府県市町村によって全く違う状況だったので、こういう傾向の都道府県市町村に関してはこういうリスクがあるのではないかというところも、要は多様性があるわけなので、まずは状況を理解するためにも環境面に関する傾向を見るという意味では調査とかを行ってくるといいんじゃないかなと思っています。
 最初の議論なので散らばっておりますけれども、以上となります。
【荒瀬主査】  ありがとうございました。具体的にまた岡本委員には、宮崎でのいろいろな取組についての御紹介なども、いずれまたよろしくお願いしたいと思っております。ありがとうございました。
 長塚委員、お願いいたします。
【長塚委員】  長塚です。よろしくお願いします。
 先ほど資料6の5ページの御紹介がありましたが、この平成26年の高校部会については私もたまたま参画しておりました。2年以上にわたって随分時間をかけて議論した記憶があります。その際の冒頭、文科省の方が御挨拶されたことが非常に印象的に残っているんですが、具体的に言いますと、それまで高校教育については20年ほど文科省としてもあまり議論をしていなかったというような、御紹介があったんです。ついては、これから高校教育の議論をするに当たって、特に多様性の部分は私立学校がいろいろな特色を出して多様性を発揮してくれているけれども、これからは公立高校も含めて高校全体として共通性と多様性について議論をしたいんだという、そういうお話だったように覚えております。それで何とかこのコアという概念を最後にまとめとして出して審議を終えたなと記憶しております。
 一方、学校教育法が改正されて学力の定義がされたのは非常に大きかったと思うんですね。義務教育から高校教育まで、学力の3要素で学習指導要領が構築されているわけですが、何ができるようになるかという資質・能力ベースの方向性が明確になったのは本当によかったなと思います。これは国際的な教育の変化に符合するというんでしょうか、合致している方向で、これからの社会に生きる子供たちにとっては、小・中の義務教育と高校教育の全体に通じる、まさにこれこそ共通性のある部分ではないのかなと思っています。
 また、このイメージ図でも、確かな学力の中に、イというのがあるんですが、思考力・判断力・表現力などが学力の3要素の中に含まれてきたわけですけれども、この議論をした後に、社会はこれからAI時代になって大きく変わることが意識されるようになりましたが、この議論をしていた辺りではまだあまりなかったんです。しかし、これからのAI時代には、AIにはできない創造性とか社会性といった資質や能力が重要だということが世界的にも議論されているように私は思うわけです。そういう意味では、この創造性という言葉が少しここでは薄いことや、社会・職業云々の市民性が中心にあるということでしたけれども、社会性というもっと広い概念でここは捉え直すべきではないかなと思ったところです。このコアのイメージ図をその後を踏まえて見ると、そんなことを感じております。
 もう1点だけ。冒頭、御紹介の中で、特別部会の主な意見として7点ほど指摘がありましたけれども、そのうち4項目が通信制の高校に関してのことだったんですね。ということで、ちょっと触れたいんですけれども、高校教育において今申し上げた社会性が重要だとすれば、通信制課程においてもこれは同じことであって、特に広域通信制は私立の学校法人立が非常に増えてきているわけですけれども、私立学校の設置認可などを審議する私立学校審議会でも、広域の通信制の制度そのものに課題が大きいことは、20年ほど前から国のほうにも指摘というか、要望をしてきておりました。ですから、別に私立学校全体がこれをよしとしているわけではないということです。もはや勤労学生のためにあるわけではない通信制高校ですけれども、勤労学生であれば社会性は身につけているわけですが、逆に不登校という状況下にある生徒たちにとっては、それこそ社会性を身につけることが重要な課題であって、そういう意味では、通信制の在り方は今まで以上に基本的なところで考える必要があると思います。
 ウェブなどで最低限の学習をすればそれで高校資格が取れるということではなくて、社会性をしっかり身につけることも含めた高校教育につながっていくような通信制の在り方が必要だと思います。つまり、今、通学型の通信制が主流になってきておりますけれども、それは、学習は独りではできないこととか、他者と交わることが教育機関には必要だということを、強く意味していると感じています。公立高校の通信制はすべて狭域ですから、そういう意味では意義が大きいと思います。もとより、都道府県で管理がなかなかできない広域通信制は、環境が十分な学校に限定していくような、かなりきちっとした政策が今後必要ではないか、そのようにさえ思っているところです。
 長くなりました。以上です。
【荒瀬主査】  ありがとうございました。長塚先生がおっしゃる高校教育部会の冒頭の御挨拶は、私も大変印象に残るものでありました。あれからずっと高校についてはいろいろ取り沙汰されているわけですけれども、なかなか方向性が定められない状態で来ている面もあるのではないかと思っております。このワーキングでぜひまた議論を深めていければと思います。通信制についてもしっかりと考えていく必要があると思いますし、先日まで通信制について議論をしていたメンバーも何人かお入りいただいているわけで、そういう意味では、具体的に通信制のことも含めて、高等学校教育全般について議論を進めたいと思っております。
 では、岩本委員、お願いいたします。
【岩本委員】  岩本です。今回第1回目ということで、私のほうから、今後議論を進めていくに当たって、なるべくデータとかに基づいて議論できるようにしていったほうがいいだろうと思って、こういったデータが今後の論点を見た上であったほうがいいのではないかというところについて、大きく2つのまとまりに関して述べさせていただけたらと思います。
 1つのまとまりとしては、次の議論であると思いますが、全・定・通の在り方を今後議論するということで、その中でも共通性と多様性を見ていく必要があると思うんですけれども、共通性の一つは、74単位で高校を卒業していくという辺りなんかは共通しているのかなと。その中で、そうしたときに、単位の重さ、単位の格差というか、1単位当たりどうなっているのかという、そこをもう少しデータとかで見られるといいなと思いました。
 一つは、例えば全・定・通とか、もうちょっと細かい区切りでもいいと思うんですけれども、生徒を主語にしたときに、生徒は1単位当たりどのぐらい学習しているのか、学習時間、全日制であれば授業の時間プラスその前後もそうかもしれないですし、通信制は通信制であると思います。1単位取るのにどの程度高校生は学習をしていっているのかということの、例えばそういった学びに対する時間のところですね。また、時間だけではなくて、どの程度それによって力がついているのか、伸びているのか。例えば必履修の教科・科目でもいいと思いますけれども、今、学びの基礎診断など、いろいろなデータがあるかと思います。そうした中で、しっかりとその時間の中で、これも全・定・通それぞれなのか、もうちょっと細かい区切りでもいいと思うんですけれども、実際にどの程度生徒の力がついていっているのかみたいなデータでちゃんと教育の質とかを見ていって、それを基に検討し議論できる何かがあるといいなというところです。
 もう一つは、高校の卒業程度の資質・能力をどこで見ていくのかという共通ラインの一つの参考になるのは、高校卒業程度認定試験で見ているものは、一つ、何をもって高校を卒業する程度の資質・能力や学力と言っているのかという参考の基準になるものなのかなと。あくまで参考ですけれども。そうしたときに、ここのデータも、高校卒業程度認定試験の合否ラインは一つの高校を卒業するというコアな部分で、今の日本では、もしくはここまでの日本ではどう捉えてきたのかというところの一つの基準値になるかと思いますので、そういったところのデータも、今、一体どのぐらいの力で、全国で見たときにどの程度その力がついていると言えるのかとか、何かそこら辺も資料とか議論できるための基礎データみたいなものがあると今後いいかなと思ったのが、大きく1つ目です。
 2つ目に関しては、もう1つ論点として、少子化が加速する地域における高校の在り方に関してです。今示していただいた資料の中で、例えば公立の高校の配置に関してのデータなんかがスライドで出ていて、非常にあれなんかも分かりやすいなと思いますけれども、あれも例えば立地が0ないし1ですけれども、0と1って大分違う状況ですので、0はどこで1はどうとか、もうちょっとちゃんと分かるといいなと思いますし、それ以外に私、3つほど、こういうデータとか何か情報があると、今後このテーマは議論しやすいかなと思っているものがあります。
 1つ目は、学校の規模です。1学年1学級校とか1学年2学級校とかが、一体、今、どのぐらい小規模校とか、規模の分布になっているか、場合によっては学級数だけではなくて生徒数でもいいかもしれない。実際の生徒数で今どうなっているのかというところですね。そこら辺の、公立、私立、それぞれあるかと思いますけれども、そういった規模のデータですね。
 2つ目は、学校の規模による差です。小規模化していく学校は様々な教育的課題があるということで、統廃合とか再編をしていっているわけですけれども、実際具体的に小規模化することによってどういう差が生じているのかというところの、今、どんなエビデンスやデータがあるのかというところです。大規模と中規模と小規模で、小規模も様々、1学年1学級とかあるかと思いますけれども、そこら辺がイメージではなく、何かエビデンスとかデータに基づいて、こういう課題があるんだったらもっとこうしなければいけないということを言えるための、そこら辺の規模による差が見えるようなデータとかがあると、その後の議論がしやすいなと思っています。
 3点目は、今後の15歳人口のシミュレーションは出ていたと思うんですけれども、それによって、今後高校の先ほどの規模とかがどうなっていくことが考えられるのかのシミュレーションです。今生まれた子が15年後とかに高校に入学するような年になると思うんですけれども、そうしたときに、例えば、24%ですか、今より数が減るときに、一つのシミュレーションの極でいけば、減った子供の数を全て小さいところの統廃合とか再編していくことで吸収していくという選択肢をとった場合には、どれだけの例えば学校がなくなっていくのか、逆に、小さいところも潰さずに、子供が減っていくのはほぼ確実に起きますので、減っていくものを全て学級減で吸収した場合、どれほど小規模校がさらに増えるのかという、これがもう片方の極だと思うんですけれども、恐らく今後考えていくに当たって、この極と極の、どの程度の間でどういう政策を、国にしろ、都道府県にしろ、とっていくのかということを考えるときのデータに基づくシミュレーション、そうなり得る可能性があるという程度のものですけれども、そうすると、その規模感を見ながら、何となく学校数が減っていくというのではなく、どの程度減りうるのか、小規模化もどの程度進んでいくのか、しかもこの15年間の間とか20年とかというスパンの中でという、そういう数字に基づいた議論をできるようなデータなんかもまた議論のときにお示ししていただけると、皆さん議論しやすいなと思いました。
 以上です。
【荒瀬主査】  ありがとうございます。今おっしゃった、それぞれ3つずつ6つのデータについて、データが出せるものと出せないものがあるようなお話ではなかったかと思いますが、事務局のほうで検討していただきたいと思っています。
 ただ一方で、データに基づく議論はとても大事ですけれども、生の声も、これをデータと呼ぶか呼ばないかは分かれるところかもしれませんが、本当に高校生の、数では少ないかもしれないけれども、こういった思いを持っている子がいるという、そういうことも含めた議論になっていけばいいなと思っていますので、一方では、データについては事務局のほうで検討をしていただく、もう一方では、我々としてはデータに基づかない議論では駄目だということにはしないで、いろいろとまた自由に御議論いただきたいと思います。
 それでは、清水委員、沖山委員の順にお願いします。清水委員、どうぞ。
【清水委員】  埼玉県の大宮工業高校の校長の清水雅己と申します。よろしくお願いいたします。私のほうは、少し現状的なお話も含めてさせていただければなと思っています。
 まず、この新型コロナの影響もかなり大きくなっているのではないかと思いますが、専門高校への進学希望者が極端に低下をしている状況にあります。中学校の先生方や生徒とも話をすることがありますが、取りあえず普通高校へという考え方が非常に多くなってしまっていて、職業に関する学びへの意識がかなり欠落してしまっている状況になっているのではないかなと思います。
 当然、普通高校に行っても、その先の大学に進学をする場合には、どんな専門分野の大学に行こうかということを真剣に考えなければならないと思います。こういった考え方をできるだけ早いうちに考えさせるような取組が必要なのではないかなと思います。社会の状況や職業に関する興味・関心、これをいかに盛り立てていけるか、将来的にはこういった職業に就きたいから、この高校に行って、この大学に行ってというキャリアデザインがしっかりできるようなことをしていかなければならないかと思いますが、残念ながらそれには至っていない厳しい状態であると思います。
 さらに、専門高校である本校は、昨年、一昨年辺りまでは、先ほどのデータに示されているとおり、70%ぐらいが就職をする生徒、30%が大学・専門学校に進む生徒という状況にあったのですが、今年度は現段階では50:50の状態で、大学進学とか専門学校の進学が非常に多くなり始めているところです。これは多分、今後顕著に表れていくのではないかなと思いますし、当然、自分の子供が大学に行きたいという気持ちがあるのであれば、親とすれば何とか進学をさせてあげようという考えに至るのは当然のことと思います。専門高校卒業後の進路が、大きく変化し始めているところを押さえておいていただけるとありがたいと思います。
 主体性のことですけれども、もう50年も前に民俗学者の梅棹忠夫さんが、学校では何でもかんでも教え過ぎているという指摘をされています。教え過ぎることによって自ら学ぶことを知らなくなっているという、もう50年も前に指摘されていることが、今もなお、そのまま状況にある。なかなか主体的な学びにいざなう取組が、私たち教員が大きく変わっていかなければならないところ、これをどのように実現させていくのかということは重要かなと思います。
 別の話で、本校は定時制課程も持っておりますので、定時制課程の状況も少し情報提供させていただきたいと思います。まず、先ほどデータで示されていたように、やはり中学校のときに不登校であった生徒や、特別な支援が必要な生徒の割合が非常に多くなっている状況にあります。このまま進むと特別支援の専門の先生にも入っていただかないと対応もしきれなくなるかなという状況があります。
 また、退学率が低くなっているという話がありましたが、退学率が低くなっているのではなくて、退学ではなくて転学者が増えているという状況を忘れてはならないと思います。行きたい高校ではなく行ける高校を選択した結果、興味・関心のない学びを続けていくと嫌になってしまうなど、転学をする生徒がかなり多くなってしまっていって、結果とすると退学者が少なくなっているのが現状なのかなとも思います。その結果、転学先として通信制高校に多くの生徒が進んでおり、これも大きな課題であるのではないかなと考えております。
 現状報告的な話で申し訳ありませんけれども、以上とさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
【荒瀬主査】  大変ありがとうございました。具体的な情報をお話しいただきまして、とてもよく分かる話であったと思います。また、最後におっしゃった、退学率の低下というよりも、転学者の数がどんどん増えているという状況、しかもそれが通信制に進んでいるという状況ですけれども、見方によれば、通信制が最後の言わば行き場になっているということも言えなくはないわけでありまして、その辺りも含め、あらゆる生徒に対して学びの場を保障していくということで今後考える上で、大変重要なお話を頂戴したと思います。ありがとうございました。
 それでは、沖山委員、お願いいたします。その後、鍛治田委員、冨塚委員の順にお願いいたします。沖山委員、どうぞ。
【沖山委員】  東京都立世田谷泉高等学校の校長の沖山と申します。よろしくお願います。
 学校からのお話が続いて申し訳ないんですけれども、今、定時制課程についてのお話もありました。それを少し拡大したお話になってしまうと思いますけれども、本校は東京都立高校に6校だけあるチャレンジスクールという学校です。不登校を経験した生徒、それから、一旦高校に進学したけれども長期欠席等が理由になって転学をせざるを得なかった生徒が転入学してくる学校です。本当にざっくり言うと、小・中で不登校経験がある生徒が8割以上在籍している学校です。不登校経験といっても30日、90日なんていう数ではなくて、3年間で1日しか登校しなかったとか、卒業式しか行かなかったとか、そういった生徒も少なくない、そうした学校です。
 そういう学校の校長をしている観点から、日頃様々な相談とか高校進学に向けての不安などのお話を聞かせていただく機会、近隣のというか、都内の小・中学生、不登校の小・中学生とかその親御さんと様々お会いしてお話を聞く、また進学に向けての情報提供をする機会があるんですけれども、今、こうして今日始まりました高等学校の在り方の議論について、そうした親御さんたちも非常にたくさん情報を持っていて、いよいよ日本でも高等学校の在り方が議論されるんですねと。通信制の質保証みたいなことが盛んに言われていたことは報道もされていましたし、知っているけれども、ようやく高等学校、特に定時制課程、あるいはもっと言うと、こういう不登校の子供たちが多数学んで在籍している定時制課程や通信制課程の高校の在り方が本格的に問われるんですねと。そういう期待の声をたくさん聞いています。
 ただ、その期待の裏側は、当然のことながら、不登校のお子さんを持つ親御さんですから、これまで子供がなじめなかった学校がどのように変わっていくのか、その方向性がどのように見定められているのか、それから、もっと切実な話としては、小・中では不登校という現象に対する支援が、少ないけれどもまだまだあったと。例えば別室登校もあるし、保健室登校もあるし、それからフリースクール等もあるし、それから、かつて適応指導教室と言われた教育支援センターみたいなものもあるし。もちろんこれは高校生に対してもあるんだけれども、その数も、それから手の数も、人の数も、場所の数も、全然少ないんです。あるいは、あったとしても非常に多くの費用がかかるということがあって、誰にでも気軽にというか、必要なときに選択をして利用ができるということになっていないと。それが現状だということです。
 資料の4のところに、義務教育と高校教育はつながっているという記述がありました。本当にこれはそのとおりだと思っているんです。今御紹介した親御さんの話からすると、小・中ではまだまだ支援の手当てがあったけれども、高校に入学した途端に、いっぺんに社会に放り出されたような気持ちになってしまうと。どこに何を相談すればいいのか、どこにつながることができるのか、それが用意されているのかということが、小・中の義務教育段階に比べると本当に手がかりが少なくなっていって、急に自己責任、高校は義務教育ではないから、通学制の学校を選んだのであれば登校できなければ仕方がないですよね、そういう自己責任が求められるような気持ちになってしまって、非常に心もとないと。そういう気持ちを吐露される方が非常にたくさんおります。
 私はこうした学校の校長をしておりますので、このワーキンググループに参加させていただく上で議論に注目していきたいなと思っているのは、この間、国、文科省、中教審なんかもそうですけれども、令和の日本型学校教育ということが言われていて、そういう大きな改革の議論の中で、不登校の問題については登校のみを目標としないという、極めて私は正しい認識だと思いますけれども、不登校は問題行動ではないんだと。だから登校させることのみをもってそれを目標としないという認識は、本当に現場にちゃんとフィットした感覚だと、認識の仕方だと思っています。対面とオフライン、それから遠隔とオフラインを適切に組み合わせた指導をしていくんだということ。それから、全日制や定時制や通信制の課程の区別を超えた学校の在り方を追求していくんだということ。こういったことが本当に今後の改革の方向性としてあるのであれば、ちょっと乱暴かもしれませんけれども、いつでもどこでもどのようにでも学ぶことが等しく認められていく。乱暴過ぎるかもしれませんけれども、そのようになって初めて、不登校はどの子にもなり得ることがあるんだというのであれば、そうなったときに、いつでもどこでもどのようにでも、こういう選択肢がありますよということがしっかりと示されていることが大事だと思っています。
 多様性と共通性の確保ということがありますけれども、不登校の理由は本当に多様なので、不登校の問題については、理由そのものは多様性が非常に幅広いということがあって、こうすればいいという答えは一つではないんですね。手立てが一つではないから、一人一人の不登校の子供たちの現状に合わせて対応策を考えていくしかないんですけれども、その一方で、共通性の確保と。高等学校で学んだと言うにふさわしいだけの内容をしっかりと身につけさせなければいけないのは本当に難しい問題です。
 多くの全国の学校はそうですけれども、不登校の生徒を抱えている学校、在籍している学校は、本当に様々な手立てを尽くして生徒を支援しています。本校でも、入学してくる生徒の6割は、入学式の日から登校が安定して卒業までこぎ着けることができる生徒がいるんです。ところが2割の生徒は、1年生の早い段階からまた不登校になってしまうという状況があります。ですから、私が今一番関心持っているのは、不登校とか中途退学の問題の中でも、特に、学校に通いたいけれども通えないんだと。入学はしてみたけれども、いろいろな理由があって、今、登校ができないと。こういう子供たちの学びの保障をどうするのかということが一番切実な問題であるし、一番深刻な問題だと思っています。このことに全く何の答えも出さずに議論をしていくのは、この高等学校の在り方の議論に期待を持っている小・中学生、それからその保護者の期待に沿わない内容になるんだろうなと思ったりしています。学校からも様々発信していきたいと思っていますので、どうぞよろしくお願いします。
【荒瀬主査】  ありがとうございました。先生が最後におっしゃったことは、ぜひこのワーキングで議論をしていくべきことであると思います。いつでもどこでもどのようにでもというのは乱暴かもしれないけれどもとおっしゃいましたけれども、どっちが果たして乱暴であったのかということを私たちは真摯に振り返る必要があるように思います。これまでの価値観の中だけで決めてきたことで、子供たちをそこに合わせていくように仕向けてきた、ある意味それは必要な部分も全くなかったとは言えないわけであると思いますけれども、しかし、そこの中で本当に子供たち一人一人が見過ごされ、放っておかれて、どうしていいか分からないという状態になっているとしたら、そこに何とか我々が、具体に学校をつくるわけではありませんので、提言をすることになるわけですけれども、ぜひそこの部分に少しでも光が差すように議論をしていきたいと思っております。ぜひよろしくお願いいたします。
 では、鍛治田委員、お願いいたします。
【鍛治田委員】  大阪にありますYMCA学院高等学校の校長の鍛治田です。広域の通信制・単位制高校です。
 先ほど資料の5ページのところで、高等学校教育を通じて身につけるべきもの、このことを私たちも見ながらグランドデザインをつくっていたのですけれども、この「健やかな身体」にはどうしてもそぐわない。といいますのは、今年130人の新入生が入ってきましたけれども、33%が起立性調節障害で、3年間で「健やかな身体」というのはとても打ち出せない。ですので、私どもは、ここは「身体づくり」という形で、実際に生徒たちのオンラインの健康講座などを行っておりますが、それぞれの学校の在り方があるかと思いました。
 沖山委員の話を聞きながら、非常に同感しながら聞いておりました。不登校が本当に増えていて、私どもの学校にも相談が多いです。なので、通信制の生徒が増えてしまうと思います。通信制があるから不登校が増えるのではなくて、不登校で行き場を失った人たちが通信制に来る。だからその通信制にも合わない子たちが出たら本当につらいなと思っているのですが、学校が安全安心の場でないと感じている生徒たちがいる。
 沖山委員と同じように、私もたくさん相談を受け、昨日なども、希望の進学校に入ったけれども、先生の話しているのをすぐに書き写すことができない、黒板の写メを撮ってはいけないと厳しく言われて、本当に好きで入った学校だけれども、行けなくなったので、転学希望が出ました。すごく残念だなと思っています。これだけ合理的配慮が言われていて、甘えではなくて、その子に合った学び方をすると、この子は希望の学校を続けることができたことから、ここが変わると全日制を辞めなくて済むんじゃないかと思っています。もう少し教室の中で生徒たちに寄り添うことは、ほとんどの方はされていらっしゃると思うんですけれども、たった1人の教員にそう言われると辞めてしまう子たちがたくさんいるので、ここが変わると、学校が安心安全の場になると、辞める生徒が減るだろうと思っています。
 本校の例で言いますと、先ほどの資料で通信制の進路未決定率も多かったんですけれども、本校では76%が進学して、未定者は3%です。通信制ってどうしても一くくりされがちではありますが、それぞれ取組があることも知っていただきたいと思っています。
 あと1点、大阪府の通信制の認可校は11校あります。広域は本校を含む4校ございます。ここは協力し合って、質の担保を行っています。よい意味で切磋琢磨をしています。例えば校長会や実務者会議を定期的に行っています。そして中学教員の研修会や、中学生と保護者の合同説明会、これは昨日あったのですが、在校生の進路相談会なども11校で行っております。新カリに代わって教育課程をどうしているかとか、観点別評価のつけ方なども議論して情報交換して、よりよいものをつくろうとしています。非常に有機的に動いているこんな大阪府があることも、お知りおきいただきたいと思います。老舗の通信制から新規の通信制の高校が学ぶという、そんなこともしております。
 以上でございます。
【荒瀬主査】  ありがとうございました。鍛治田委員からも具体の話を聞きました。若干おっしゃった「体づくり」という、「健やかな身体」という点ではなかなか厳しいかもしれないけれども、体づくりということを考えているんだということは、全くそのとおりかと思います。全ての学校で「確かな学力」というときに、何が「確かな学力」なのか、あるいはまた、それをどれだけつけているのかというのは、これはまたまたいろいろと生徒によっても違いますし、学校によっても異なるのではないかと思います。いかにしてそういったことを目指すかということで、その意味でも、具体に「体づくり」とおっしゃっているのは、大変いい言葉の使い方をなさっているなと思いました。また、通信制ということだけで一くくりにはできないということも全くおっしゃるとおりでありまして、生徒という生徒はどこにもいないのと一緒で、高等学校と一口でくくれないことと同じではないかと思いながらお聞きしました。ありがとうございました。
 それでは、冨塚委員、お願いいたします。
【冨塚委員】  千葉県教育委員会教育長、冨塚でございます。私は現在教育長でございますが、ずっと千葉県の職員として行政のほうで勤めてまいりました。今回、文部科学省様のほうからは、行政の立場ということから冨塚教育長にというお話をいただきましたので、そういう視点で見ていきたいと思います。私から本日は、大きくは2つのことについてお話をさせていただきたいと思います。
 1つは、まず千葉県というところですけれども、千葉県は、農業、工業、商業、ともに全国10位以内に入るバランスのとれた産業県であることを売りにしてまいりました。高度成長期以降ずっと、首都東京の台所として食料品を供給し、そしてまた臨海工業地帯で工業として支え、首都圏の電力の4割は実は千葉県でつくられております。様々な意味で首都東京の成長を支えているのが千葉県でございます。今後、少子高齢化ということで地域の活力低下が懸念される中でも、そうした千葉県の産業を支える担い手、それをつくっていくことが我々教育委員会の使命であると考えております。
 そうした中で、先ほど埼玉県の清水校長先生からもございましたが、千葉県でも、産業学科、職業学科、職業高校、こういったところの入学志願者が非常に減っていて、非常に懸念している状況にございます。今後、地域産業の維持をしていく上での担い手を生み出していけるのかどうかということで、地域からも非常に心配の声が上がっています。千葉県は、多分埼玉県さんとかほかと比べても、普通科志向が非常に高く、中学生が全日制の普通科を非常に多く希望しております。それで、先ほどからもございましたが、途中で退学、今は主に転学をし、通信制のほうに御世話になる方も多い中で、受け皿となる通信制高校の充実とあわせて、中学の進路指導において、もう少し職業学科含めまして幅広い選択肢を指導していただけると、その後の生徒の進路、そして可能性が広がるのではないかなと。そういう意味で、中学と高校との連携、中学の進路指導において、もう少し幅広い選択肢を指導していただけるとうれしいなと。そういったところで、県教育委員会として、市町村教育委員会との連携、小・中・高の連携、系統的なキャリア教育、そういったものにもう少し力を入れていかなければならないかなと思っております。
 厚労省のデータで、たしか高卒でそのまま就職した方の3年以内の離職率が約4割、大卒でも3年以内の離職率が約3割というデータがございます。こういった中でも、早期の段階から、職業観、社会で働くこと、社会で活躍することに対する意識を養っていくことは、それは全日制でも定時制でも通信制でも同じかなと。いずれはみんな社会人として生きていき、そして自分を支え、地域や産業を支えるという、そこのところを高校の段階で急にというのではなく、幼稚園、小学校、中学校で系統的に教えていくというか、養っていくことを意識する必要があるかなと。その集大成が高校であるならば、高校において、ただ単に大学進学のための勉強をするというよりも、もう少し広い大きな視野に立った人生設計のようなものを教えていく、それが今、探究的な学習の時間とか、様々な活用できるカリキュラムがあると思うので、もう少し柔軟な学校の取組を進めていける教育課程の在り方のようなことが、この中で少し議論できると非常にありがたいなと思っております。
 もう一つは、先ほど沖山先生からもございましたが、千葉県でも、公立高校、多様な高校がございますが、生徒たちの家庭環境、経済的な状況とか様々な境遇の子がいます。どんな境遇の子にも、その子らしい輝く未来、輝く可能性を見つけ出していく、そういったことが公教育の役割であると強く思っておりまして、学校の中に今、スクールソーシャルワーカーとか、スクールカウンセラーとか、そういった人材が非常に活躍をしてくれており、学校の先生方からも非常に有意であることを聞いております。学校の中に福祉的なアプローチが必要になっているのを強く感じます。福祉分野との連携、それからスクールソーシャルワーカーやスクールカウンセラーの人材の配置について、もう少し高等学校においても国の後押しなどがあるとありがたいなと、そんなようなことを考えております。
 このワーキングで、ぜひ全ての子供たちの未来に向けての有意な議論がなされることを願っております。どうもありがとうございました。
【荒瀬主査】  ありがとうございました。時間がだんだん迫ってまいりましたので、私は余計なことは申し上げないようにして、どんどん進行に徹したいと思います。ありがとうございました。本当に御一緒に考えていきたいと思います。
 では、今村委員、石崎委員、青木委員、篠原委員の順でお願いいたします。今村委員、どうぞ。
【今村委員】  ありがとうございます。たくさんの方々が不登校のお子さんと高校の関係性についてコメントされていらっしゃったんですけれども、私も一つ、その点について、出ていない論点をお話ししたいと思っています。
 不登校を経験した方、そうではない方を含めて、通信制の学校を選んでいらっしゃるということは、ネガティブな側面だけではなくて、一つの主体的な選択肢としてすごく新しい形を日本に提示してくださっていることは、すごくすばらしいことだなと私も思っています。特に、それによってもう一度学校生活をチャレンジの場にすることができたとか、もともと中学校まで元気に行っていたけれども、より自分のやりたいことができるようになったという声もたくさん聞いているんですけれども、そういったポジティブな方々ではなくて、制度のはざまの中で通信制を選ばざるを得ない方も今現状いらっしゃることも、見て見ぬふりはできない現状かなと思っています。
 先ほどもどなたかがおっしゃっていましたけれども、中学校までは、様々な市町村の支援機関の中で、不登校でも在籍といいますか、支援が受けられるような教育支援センターや適応指導教室等、地域総ぐるみで学校とも連携して様々な機関で支援されていたお子さんでも、高校生になった瞬間に、一旦やり直そう、自分の生活を新しくチャレンジしようと思って全日制に行かれる、または定時制に行かれる方もたくさんいらっしゃるわけです。ですけれども、やっぱりそこでも駄目だったとなってしまって中退をされた場合、まず公立学校への転籍は時期が限られるため、かなりの空白期間が空いてしまうと。空白期間が空いてしまうと親御さんもすごく不安になられて、それであれば近くのサポート校も行きながら広域通信制に行くかということで、広域通信制に入られる方も結構たくさん聞く話だなと思っています。
 しかも問題は、広域制通信制が悪いと言っているわけではなくて、いい学校もたくさんあるのは存じているんですけれども、かなり調べたんですけれども、今はどこを探しても、非常に企業のマーケティングベースでの情報告知しか、一覧が見えないんですよね。なので、どのようにお金がかかるのか、例えばそのサポート校の機能は就学支援金が使える範囲の中でいけるのか、いけないのか、この点が非常に分かりづらいので、家庭によっては、もうわらをもすがる思いで通信制学校に行って、週2ぐらい通学しようと思って選んだ学校でも、結局そのサポート校が実は塾と同じ扱いで、全額個人負担だったみたいなことが後から分かったり、高校を卒業するためにはあと1日来たほうがいいですよなんていうことを通信制学校の方に言われて、どんどんお金がかさんでいってしまって、結局4年いたけれども卒業できない、また5年目なんていう声も聞くと。その方々が頼れる機関は地域の中にないことがあって、県立学校に在籍していると市町村の支援機関が使えないともなっているので、これも冷たいなと思うんですけれども、そういった、地域の中で公的なサポート校がないというか、無料で使える居場所みたいなものがないに近い。だから本当に自立していて、家庭の支援が相当あるという家庭の子じゃないと、通信制の中にいながらポジティブに学ぶことは現状難しい状況にあるなと思います。
 だからといって、広域通信制の勢いを止めるのは、これはちょっと違うかなとも思っているので、例えばサポート校に行くことを、一種のフリースクールのクーポン券じゃないですけれども、そういったことで資金面でサポートして、何とか居場所を絶やさないようにするとか、また市町村の支援機関を使えるようにするとか、市町村の中に例えば県の出張所の県立支援センターみたいなものがあっても、これが市町村の支援センターと全然つながっていなかったみたいなことも起きるので、そこもちゃんと協働するみたいなことをするとか、何かそういう形で、ちゃんと学びを届けられるリソースを、この学校に行くしかないとかそういうことではなくて子供たちにつくっていくことは、すごく重要だなと思っています。
 これが1点目ですけれども、2点目、これは出ていない、この論点はぜひ入れていただきたい点ですが、これから先の日本社会は、どんどんこれからも労働力不足になっていくと思います。その意味では、現状、外国ルーツのお子さんたちが、特に高校の、東京ですと、私が知っている限り定時制の3部に集まっている方がすごく多いなというところも、連携をとりながら様々行っているんですけれども、そこに配属された先生方が、全く準備がない状態で一旦配属されているという不幸な状況になっていらっしゃって、先生方がやる気だとしても、インフラとして言語のサポートがなかったり、どう扱っていいか分からないことがあったり、宗教の知識がないとか、いろいろなことがもう起きてしまっている、これが現状ですよね。これが、いつの段階で外国ルーツの子たちが日本に入ってきたかというデータもないので、そういう意味では、とにかく蓋を開けたら外国ルーツの子が9割だったという学校も都内では聞きます。
 そういう意味では、日本は労働力不足だから、そういったお子さんも含めてこれからどんどん増えると思うんですよ。子供の数が80万人になっていくというお話もありましたけれども、外国ルーツのお子さんは逆に増えていくかもしれないですよねということを踏まえたときに、どういうスタッフ体制で学校をつくっていくのか、この点も、外国ルーツのお子さんが今後増えることを前提にした体制も、この部会では議論すべきかなと思いました。
 私からは以上です。
【荒瀬主査】  ありがとうございました。一言だけ。今、最後におっしゃっていただいた、論点に加えるべきではないかという、これは論点ということになるのか、あるいはこういった部分も論議の中で十分配慮することになるのか、その辺、また相談をしたいと思っています。ただ、これはこのワーキングで議論するべきことの一つであることは全く同感であります。一方で、最初におっしゃった部分については、学校教育についてどうするかという部分でできないところもあるので、だから議論しても仕方がないではなくて、そういったことについても、関係機関とどう調整をとっていただくかということを事務局にもお願いをして進めてまいりたいと思います。ありがとうございました。
 では、石崎委員、お願いいたします。
【石崎委員】  都立桜修館中等教育学校の校長の石崎でございます。全国高等学校長協会の会長でございます。よろしくお願いいたします。
 多岐に話がわたっているので、今日は時間もないので一つだけお話しさせていただきます。高等学校は多様性に富んでおり、多様性への対応という意味では、先ほどからいろいろな学校からもお話があるように、それぞれ対応している部分が進んでいるんですけれども、難しいのは共通性の確保という部分だと思うんです。共通性の確保といったときに、共通性は何かということももちろんありますが、それをどのように確保するのかということについてもぜひ議論していただきたいと思います。
 共通性という部分で、例えば学習指導要領が学力面では一つの共通性であるのかもしれませんし、それは先ほどお話が出た高校卒業程度認定試験のようなものでも測れるのかもしれませんけれども、そういったものをどのように確保するのかという議論がないと、結局それを決めただけで手段がないことにもなってしまいかねないと思います。今、一番問題なのは、それをどのように確保するのかというのができていないところに課題があるんじゃないかと感じているところです。
 もっと言うならば、高等学校の前に義務教育があるわけですけれども、恐らく日本人として絶対身につけなければいけない共通性の部分が義務教育だと思うんですけれども、そこも確保できているのかというところも含めて議論をしないと、高等学校の部分の共通性は何かというところだけの議論をしても結局形にならないのではないかと思いますので、ぜひ共通性をどのように確保するのかという観点を入れていただければありがたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
 今日は以上でございます。
【荒瀬主査】  ありがとうございます。全く同感でございます。よろしくお願いいたします。
 では、青木委員、お願いいたします。
【青木委員】  青木です。東北大学大学院所属です。資料5を御提示いただきまして、ありがとうございます。とても勉強になりました。今日は論点案については何も意見がなくて、少し具体に沿って感想を述べさせていただきたいと思います。
 最初に、文部科学省が高校教育に本腰を入れて、政策の対象として高校教育をターゲットにしたのは非常に画期的なことだと認識しています。政策の手薄な場所なので、私の専門分野である教育行政学も政策あっての分野でもありますので、どうしても研究の蓄積が少ないということがあります。そういうような背景から、今回頂いた資料はとても参考になります。ありがとうございます。
 資料5の4枚目ですが、学校数の推移ですね。これを見ますと、昭和40年代の学校数に戻っていっているわけですが、恐らくこれから先は一つも高校がない自治体などが増えること、あるいは離島に1校残すしかないみたいな、そういうような状況ですので、これから統廃合は進むと思うんですけれども、かなりいろいろな意味で厳しい統廃合を進めざるを得ないんだと思います。文科省としては、少なくともまずは各県の統廃合の情勢を情報収集なさるといいのではないかなと思いました。
 それから9枚目ですが、退学者数は海外の標準からしても明らかに少ないんですよね。虚心坦懐にこの数字を見ると、高校教育の問題はないと言えなくもないんですよね。ただ、日本型高校教育ならではの問題があるんだとしたら、やっぱりそこを明確に命題化しなければいけないのではないかなと思います。この9枚目の数字に関しては、先ほども出ましたけれども、転学者数との関連とかそういったものは、次回以降、もう一度はっきりデータの説明をしていただいたほうがいいと思いますし、あと都道府県や学校間でどのぐらい違いがあるのかということこそ大事かなと思います。
 それから10枚目ですけれども、小・中で多いはずのいじめの加害者とか暴力行為が、高校に入った途端にほとんど消えてしまうことはかなり衝撃的で、生徒指導の研究者から、ぜひこの辺りのメカニズムについて教えていただきたいなと思います。もしも高校という教育の型が自然消滅を促しているんだとすれば、それは単純に小・中学校の教育にもそれを当てはめちゃえば、いろいろな問題が解決するんじゃないかなとも思います。
 あとは33枚目ですが、学校外学習が必要なのであれば、アフタースクールなどを公費助成も含めて充実させることがいいんじゃないかなと思います。
 次の34枚目ですが、これも、仮にこういう満足度など、あるいは勉強というものを問題にするのであれば、補習とか、何か手当てが必要ではないかなと思います。
 最後、76枚目ですが、確かに今後求められている高校教育を考えると、コーディネーターはすごく大事だと思うんです。あとカウンセラーとかも大事だと思うんですけれども、言いたいことは、教職員の配置基準、高校標準法を視野に入れて、その改正を視野に入れて、当面は補助事業の導入は検討いただきたいなと思います。負担金体制ではないがゆえに、高校のほうが教職員の配置基準は少し手を入れられる可能性があるんじゃないかなとにらんでいるところです。
 私から最後は、新しいデータを付け加えていただきたいことがあるんです。いくら高校の在り方を議論しても、それを支える人材がいないとどうにもならないわけですよね。高校教員の学歴のデータはあったほうがいいと思っています。ざっと学校教員統計調査を見ると、公立の高校の先生の多くが大学院修了者ではないんですね。やっぱり学部卒が多いんです。それは私立と比較しても非常に低い状態ですので、この辺り、高度な教科の知識等を身につける機会を高校の先生に提供できるような働き方改革、そういうようなことが必要ではないかなと思っております。ぜひよろしくお願いいたします。
 以上です。
【荒瀬主査】  具体的にたくさんありがとうございました。事務局のほうで確認をしてもらうようにいたします。
 では、篠原委員、お願いいたします。
【篠原委員】  NHK学園理事長の篠原と申します。昨年までは広域通信制の高校の校長を務めておりました。本当に先ほどからの広域通信制がいろいろと話題になっておりますし、それに対してまたいろいろなコメントが出ておりますけれども、今まで委員のいろいろな先生がおっしゃったこと、なるほどと思いながら聞いていることがたくさんございました。私も2点申し上げたいと思います。
 1つは、先ほどもどなたかおっしゃっているんですけれども、義務教育で卒業をされた方で、最終的にめぐりめぐって通信制を選択してきた生徒がたくさんいます。その中には例えば小学校五、六年生の頃から学校には行っていない子もいます。そういう人たちに高校1年生からの学習をしましょうと言っても土台無理な話で、私たちの高校では、例えば数学、英語について言うと、中学校段階あるいは小学校に戻ってですけれども、学び直しの時間を意識的に設けることが必要になっています。そういうことも含めて、高校卒業のときの確かな学力を、先ほどから出ておりますけれども、どのようなレベルを求め、そしてそれをどのように育んでいくのかということについて、現実的な議論をぜひしたいと思っています。
 それからもう1つは、今の青木先生のお話にも、例えばアフタースクールとか、先ほども今村先生のところで外国ルーツのためのスタッフさんとか、いろいろな話がありましたが、高校段階で、これから社会あるいは進学を目指さなければいけない人材を最終的に育成していく機関として、高校が高校だけでできることは限界があると思います。ですので、ぜひ、高校を開くという言い方がいいのかどうか分かりませんけれども、例えば資料の中で、熊本県は防災をテーマに、あるいは広島は平和をテーマに様々な取組がされているという紹介がありましたが、地域ぐるみ、あるいは社会ぐるみで高校生を育成していく、サポートしていくような仕組みがやはり必要ではないかと。高校という学校だけではもう絶対に限界があると思いますし、先ほどからあります、はざまでこぼれてしまうような人たちがいるのではないかというところにも、そういう形で手が差し伸べられるような仕組み、制度が、今、必要ではないかなと思っております。
 以上です。
【荒瀬主査】  ありがとうございました。恐らく非常に重要な点が1つ目の御発言の中に、2つ目もちろんそうですけれども、とりわけ1つ目のところで、これ、先ほど石崎委員もおっしゃいましたけれども、高卒時の確かな学力をどのレベルに設定するのか、あるいはそれをどう育むのかという、これは今後しっかりと議論していく必要があると感じております。ありがとうございました。
 では、濱田委員、お願いいたします。
【濱田委員】  高知県教育センターの濱田と申します。私、今回このワーキンググループに参加させていただいて、今まで皆さんの御意見をお伺いし、私自身が一番皆さん方から御意見をいただきたいこと、自分の中で解決したいと思っていることが、高校の存在意義とは何かということです。それは、本県は課題先進県と申しますか、少子高齢化が非常に進んでおりまして、今年の人口は67万人台となり大正時代なみで、そして出生数は約4,100人です。その中でどんどん高知市に一極集中化しておりまして、全体の47%ぐらいが高知市の人口でございます。そして、それ以外の地域は過疎化が進む中山間地域という状況です。
 こうしたことから、学校の存続が深刻な問題となっています。ただ一方で、高等教育機関が少ない本県にありましては、市町にとって高等学校が人材育成の場です。ですので、中山間地域の振興策という観点からも、18歳までは生まれた地域に残りながら学び、高等学校まで卒業できるという仕組みをできるだけ維持をしていきたいという方向の中で、遠隔授業に取り組んでいるところです。
 ですけれども、確かに岩本委員がおっしゃられたように、果たして高校生にとってどういった規模の学校が必要なのか。小中学校のように小規模校で1人になっても存続できるのか。それはいろいろなデジタル等の方法を活用しながらでも残していくのか等々、そういったところが非常に問われています。
それとともに、今の高校生は選挙権年齢と成年年齢が18歳に引き下げられましたので、荒瀬先生のおっしゃる「小さな大人」、いわゆる大人にしていくことが高等学校における命題だろうと思っています。
 けれども、大人にするというのはどういうことなのかという話になると、私が今まで高校生たちを見てきて痛感することは、大人になるのに非常に個人差があるというところです。そしてさらに言えることは、地域の非常に頑張っている本物の大人、その地域の課題を何とかしようと頑張っている大人、そういう大人たちと一緒に、叱られながらも協働して活動する、その中で高校生たちは子供から大人になっていくというか、地域の当事者、まちおこしとかまちづくりの当事者になっていくということを何度か経験いたしました。
 そういった観点から、高等学校の存在意義は何なのか、そして、高等学校は、どのぐらいの規模だったら、どういう環境だったら存続させられるのかといったところについて、ぜひ御議論いただきたいし、私もその中で答えを見つけていきたいと考えております。以上です。どうぞよろしくお願いいたします。
【荒瀬主査】  ありがとうございました。多分「小さな大人」というのは、自分で考えて、自分で判断して、自分で行動できる、あるいはしようとする、あるいは必要なときに助けを求められるという、そういうところの基礎的な部分が身についた人を「小さな大人」と呼びたいなと私は思っておりますが、そういったこともまたぜひ議論いただければと思います。
 では、塩瀬委員、お願いいたします。
【塩瀬委員】  ありがとうございます。京都大学の塩瀬と申します。これまでの議論で出ていないかなと思われるものを3点だけ、短く伝えたいと思います。
 まず1つ目は、先ほど最後の話題にもなりました「小さな大人」に相当するところだと思うんですけれども、18歳の成年年齢を考えたときに、まだ出てきていないかなと思うのが、高校生は大人になる学年が出てくることだと思います。これは以前にデンマークで子供や大人の教育事業に関わられている方にお伺いしたんですけれども、デンマークの高校では、高校生が18歳の誕生日になったときに先生から親御さんに電話があるそうで、今日から18歳で大人になったので、以後学校から親御さんには連絡しませんという電話があるそうで、あとはお子さんから聞いてくださいということだそうです。それは完全に大人扱いをするという意味なので、全ての意思決定は本人に委ねることの表れだと思うんですけれども、日本の一部の高校の対応は真逆で、これからも皆さんのことを保護者と呼びますと通達があったと聞きました。これはすごく大きな違いで、本当に大人を迎えるという観点で高校がどういった教育をしていくのかを考えないといけないような気がするので、成人を迎える学校になれかどうかというのが一つ大事かと思います。
 2つ目は、今度は数字の意味自体ですけれども、例えば就学率99%につきましても、小・中のときは、就学率が少なかったときに義務教育化あるいは授業料の無償化をすることによって、就学率9割とか95%を達成してきたかと思うんですけれども、高校に至っては、規制によって上げたわけではなくて、逆に人数を増やしたところから人口が減っていって、結果として就学率が99%になったという意味合いがあると思いますので、99の意味が大分変わるのではないかなと。そう考えますと、本当に望んでそこに目指して増やしていこうとしたわけではない99%に対して、今後どのように政策を打つのかという立場が変わってきそうな気がします。
 例えば先ほど今村委員もおっしゃっていたみたいに、多様な生徒がいるという事実を認識した上での99%という数字なのかどうかも重要ですし、さらに、大学進学率を考えたときに、日本は55%程度ですので、諸外国と比べますと、大学の進学率を順番に並べると、多分44位ぐらいですよね。100%とか90%とかというもっと高い高等教育進学率を有する国と比べますと、日本は少ないわけですよね。そう考えると、例えば先ほどおっしゃっていた濱田委員の存在意義という考え方や、冨塚委員がおっしゃっていた、働くことをどう考えるかという時点でいうと、現状日本の高校では、45%の生徒には、今後働くことも伝えないといけないにもかかわらず、もし受験のことしか話をしていないんだとすると、既にミスマッチが起きていることになると思うんです。そうなると、日本も諸外国レベルの高等教育への進学率を目指す上での過程として高校があるのか、いや、日本の場合は諸外国とは意味が違って、大学の授業料の問題もありますので、このまま55%や60%推移のまま、高校がどういった教育を施すのかという判断が必要だと思いますので、同じ数字をどう捉えるかというのは、今後の政策上の立場の表明でもあろうかと思いますので、その辺りを決めながら議論しないと、99%も大学進学率55%も宙に浮いてしまうのではないかなという懸念がありました。
 もう1つ、3番目に関してですけれども、これはいろいろなところで議論されていた、先ほどの例えば通信制とかに伴うことですけれども、これは以前の大人が持っている価値をどう刷新するかというところに関して、強く情報発信が必要ではないかなと感じます。昨年、岐阜市で不登校の特例校で草潤中学校というのが開校されたんですけれども、そのときの開校に関していろいろアドバイスの立場で入らせていただきまして、そのときにも、賛同いただける意見と同時に、甘やかすなという1割ぐらいの意見が来たんですよね。生徒さんに、通うが通うまいが構いませんと。教室で受けても、音楽室で受けても、家で受けても、どのような形態でも学ぶことが続けられるならば構いませんというのが草潤中学校のコンセプトだったんですけれども、いろいろいただいたツイッターとかSNS上の賛否の中での1割の非というのは、甘やかすなという言葉が結構多くて、それはやっぱり、通信よりも通級のほうが絶対的によいという大きな価値感が動かせない状態の中、オンラインや通信で学ぶことを下げた状態で見た場合だと思うんです。
 同じように、定時制とかも一緒ですし、大学進学と専門学校への進学、それから就職という、特に総合学科の高校に行ってワークショップなんかをしますと、生徒さんたちの中にも既に序列意識ができてしまっているんですよね。大学進学、専門学校進学、高卒のまま就職をするという。その序列化というのが、本当に生徒がもともと持っていたのかというと、基本的には周りの大人が持っているものを、生徒たちがそれを転写されただけだと思うんです。そういったものを払拭してから選択肢の一つであると伝えないと、どうしても専門学校に行くことは消極的な選択肢、通信制に通うことは消極的な選択肢、働くことは消極的な選択肢と、大人が持っている古い価値観をそのまま載せた状態で選択肢だと幾ら言っても、生徒たちは望んでは選ばないことになってしまうと思いますので、そこを大きく付け替える必要があると思います。
 そういう意味で、はなからそういう選択肢がある、しかもそれは同じように選んでよいはずというのを強くメッセージとして打ち出した上で、高校に入ってきてもらうときに、本当に生徒たちに選んでいただけるような新しい関係を築かないといけないと思いますので、今までの関係、価値観を引きずったまま、どんなに政策を推し進めたとしても、ずっとみんな後ろで口幅ったい状態になってしまっていると思うので、そこを大きく強く変える分岐点になりますというのが、今回の新しい高校教育というものを考える場になればいいかなと思っております。
 以上です。
【荒瀬主査】  ありがとうございました。大人たちがどんな思いで何を言っているか、生徒たちは気がついているわけですよね。そこのところをしっかりと我々自身が考えた上で生徒と話をしないと、結果的に生徒は大人の価値観の中で話をしているんだということを分かった上で聞いていて、どちらかというと白けているところもあるのかもしれないし、場合によってはどんどん傷ついていくこともあるのかもしれないなと思いました。ありがとうございました。
 これで全員の皆さんからお話をしていただきまして、ありがとうございました。具体の御提案あるいは基本的な考え方も頂戴して、今後の議論をしていく上で非常に大事な御指摘をいただいたと思います。今日いただきましたものを事務局のほうで整理してもらいまして、次回改めて確認するとともに、具体的に必要な資料についても、どういう時間で用意できるかはまだ分かりませんけれども、準備をしてもらうようにしたいと思います。ありがとうございました。
 それぞれの委員の方から御発言いただいて、今日は田村知子先生が御欠席ですけれども、田村先生は、先ほど御紹介のあった一昨年にまとめられた高等学校教育ワーキンググループの取りまとめに深く関わってくださった方で、今回のスクールミッション、スクールポリシーに関して大変重要な御指摘をいただいた方であります。そういったようなお立場、また、今、13人の先生方から御意見いただいたわけですけれども、それぞれのお立場をしっかりと踏まえていただきながら、我が国の高等学校教育について議論をしていくと。これから本当に日本の高校教育をどうしていくのかということについて、どこまで深められるかというのは、これは時間の問題もありまして、難しい点もひょっとしたらあるかもしれませんけれども、そこのところを何とか我々頑張って議論を深めていければと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
 残り5分ですけれども、最初のほうに御発言いただいた方、いろいろお聞きになっていて、これも言っておきたいなということをお持ちかもしれません。その場合はぜひ事務局のほうにメール等でお寄せいただきましたら、必要であれば議事録に載せることも含めて検討させていただくということでありますので、よろしくお願いいたします。
 では、今後のスケジュールにつきまして、松田参事官補佐から御説明をよろしくお願いいたします。
【松田参事官補佐】  本日は誠にありがとうございました。今後のスケジュール予定について御説明いたします。資料7でございます。
 まず、次回、第2回でございますけれども、12月1日木曜日の10時から12時で、テーマとしては、少子化が加速する地域における高校教育の在り方について、ヒアリングや意見交換をさせていただきたいと思っております。
 また、その次、第3回については、12月12日月曜日の10時から12時で、テーマとしては、全日制・定時制・通信制の望ましい在り方について、ヒアリング、意見交換を予定しております。
 また、年明け以降も引き続き議論を行いまして、2月中をめどに論点整理としております。こちらは中教審の委員の任期等のタイミングもございまして、このタイミングで一旦、これまでの議論を整理する形でまとめることを目指しておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 また、開催方法についてですが、基本的にはオンラインでの開催を考えておりますけれども、第3回に関しましては、対面とオンラインのハイブリッド開催ができないか、今検討しておりまして、改めて委員の皆様方に御連絡させていただきます。
 以上でございます。
【荒瀬主査】  という日程です。12月は2回、割合間隔を置かないで会議が予定されています。それと、来年に向けてももちろんこの会議はあるわけですけれども、2月、中教審の委員の交代の時期でもありますので、この議論自体はまだ続くわけですけれども、一旦そこでこれまでの議論をまとめるということで、論点整理という形で出す予定で進めていただくことになります。その点御理解いただきたいと思います。
 では、本当にありがとうございました。本日予定しておりました議事は、これで終了いたしました。閉会といたします。ありがとうございました。
 
―― 了 ――
 
※会議終了後の追加意見
【岡本委員】
1 管理職・教員についてのリスキリングについて
まず、義務教育と比べ都道府県・自治体によって状況がバラバラであり、カリキュラムマネジメントの重要性の高さも異なっている。多くの現場では教育目標の資質・能力への落とし込みができておらず、教育目標が宙に浮いた状況になっている。地域によっては、カリキュラムマネジメントの基盤となる教育目標(ミッション、ポリシー)も議論しつくされていない。残念ながら、教員採用試験や管理職への昇進の段階でもこれらに必要なスキルが問われていない。様々な業種におけるリスキリングが話題になっているが、この辺りを行わないと、文科省が方針を示しても空回りしてしまう。全国のカリキュラムマネジメントの状況の調査も必要だと思う。
また、教員に関しても同様でICT分野の他、個別最適が最も重要な総合的な探究の時間において特にリスキリングの重要性が見られる。小中高の接続は見られるが大学や社会で必要な研究倫理、アカデミックリテラシーやデータ分析が不十分で、浅い内容もしくは問題を含む内容となっている。まだ総合的な探究の時間は始まったばかりで、今後改善していく部分もあるが、その担い手である教員のリスキリングは必須だと思われる。
 
2 総合的な探究の時間の充実化
宮崎の定時制の学校に数年間関わらせて頂いているが、総合的な探究の時間を通して生徒が大きく変容している。ポイントは、教員が生徒に対し「期待と機会」を与えている点、そして総合的な探究の時間の学習指導要領を教員が理解している点が挙げられる。まず、初めの点に関して。生徒の可能性は15歳程度であれば全く分からない。どうしても高等学校の入学試験の段階で自分自身の限界点を決めてしまい、高等学校の入試難易度や属性に強い影響を受けてしまう。ジェンダーや地域性も関連して十分に自己への期待ができていない生徒が多くなってしまっている。どうせ○○だから。という表現になってしまう。これに対して学校の役割は、生徒に期待を与えること。それも再生産を生むような期待ではなく、たくさんの可能性があるという期待を与えるところである。前述の学校はそれにより、学校へより強い目的をもって登校するようになり、生徒同士の良い相互作用も生まれている。
また、総合的な探究の時間に関して、学校現場で見られるのが、総合的な学習の時間のように自分の生き方や在り方とあまり関連のない、大人の設定したテーマを行うというもの。社会に出たりや自分の専門的な学びを行う前の段階の高等学校において個別最適な学びを行うためには、総合的な学習の時間の正しい理解と実践が不可欠となっているが、探究と称したPBLや大人が喜ぶ、大人の理想を体現させようとする探究を大変よく目にする。例えば地域探究として、学校全体で地域課題をテーマに行ったり、SDGsの中からテーマを選ぶ等は総合的な学習の時間であり、本心では他人事となっている場合が多い。高等学校は、個別最適な学びを行うためには、総合的な探究の時間の理解をもっと進める必要がある。学校の特性に関係なく実践している学校はあり、どのような生徒もできる。教員の意識とスキルが重要。文理横断もそれが目的ではなく、生徒の個別の目的のための手段として自然と文理横断が見えてくる。
 
3 クラスサイズの見直し
このような個別最適な学びを行うためには、1クラス40名では教員の負担が大きい。少子化が進む中、25名程度に段階的にクラスサイズを小さくする方針を示して欲しい。先ほど述べた宮崎の定時制はクラスサイズが小さいため、個々の生徒との対話に時間を割くことができ、それが大きな成果を上げている。
One of themとなるとそこに合わない生徒が出やすくなる。すぐにできることではないが、そろそろクラスサイズの縮小は議論するべきではないか。当然、教員数の確保に関して、高等学校はまだ義務教育に比べて深刻な状況ではないが、今の段階から動いておく必要がある。
 
4 知を生み出すことへの意義
AIが浸透していく社会において、学生の社会性を高めることが必要だが、一方で知的な生産の担い手の育成も必要である。日本は他の先進国に比べ、修士号取得者や博士号取得者が少ない。博士号取得者に関しては、他国と逆行して減少傾向にある。この辺りもできれば議論したい。

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