高等学校教育の在り方ワーキンググループ(第5回)議事録

1.日時

令和5年1月27日(金曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省内会議室 ※オンライン会議にて開催

3.議題

  1. 「社会に開かれた教育課程」、「探究・文理横断・実践的な学び」の推進について
  2. 論点整理(素案)について
  3. その他

4.議事録

【荒瀬主査】  皆さん、おはようございます。定刻となりましたので、ただいまから中央教育審議会初等中等教育分科会、個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実に向けた学校教育の在り方に関する特別部会、高等学校教育の在り方ワーキンググループ第5回を開催いたします。本日も忙しい中、御出席いただきまして、誠にありがとうございます。
 今日の会議も、ずっと同じでありますけれども、新型コロナウイルス感染症の感染防止の観点からウェブ会議システムによる開催とさせていただいております。また、傍聴者の方につきましては、ユーチューブにより御視聴いただいております。
 なお、本日、報道関係者から録音及び写真撮影の御希望がありました。許可をしておりますので、委員の皆様におかれましては、御了承いただきたいと思います。
 では、本日の会議の開催方式、配付資料等につきまして、松田参事官補佐、よろしくお願いいたします。
【松田参事官補佐】  よろしくお願いいたします。
 本日の会議の開催方式でございますけれども、主査から冒頭、御紹介がありましたとおり、ウェブ会議システム(Zoom)による開催とさせていただいております。委員の皆様方におかれましては、毎度のお願いとなり恐縮でございますけれども、ウェブ会議システムを利用する観点から、御発言に当たっては、インターネット上でも聞き取りやすいようはっきり御発言をいただくなどの御配慮をいただく、御発言の都度、名前をおっしゃっていただく、御発言以外はマイクをミュートにしていただく、御発言に当たっては「手を挙げる」ボタンを押していただき、御発言の後は「手を下ろす」ボタンを押していただくなどの御配慮いただけるとありがたく存じます。御協力のほどよろしくお願い申し上げます。
 本日は、社会に開かれた教育課程、探究・文理横断・実践的な学びの推進と、論点整理(素案)を議題としまして、熊本県教育委員会と熊本県立八代工業高等学校からのヒアリング、その後、岩本委員からの御発表、残りの時間で論点整理に向けた意見交換をさせていただく予定でございます。その際の資料を、資料1-1から資料3で配付しております。資料について、不足等ございましたら事務局にお申しつけいただければと思います。よろしくお願いいたします。
【荒瀬主査】  ありがとうございました。
 それでは、議事に入ります。
 最初は、熊本県教育委員会と熊本県立八代工業高等学校からのヒアリングであります。本日は、熊本県教育委員会の高校教育課主管の増田様、そして熊本県立八代工業高等学校からはマイスター・ハイスクールCEOの富松様、教頭の新生先生、主幹教諭の池田先生、そして教諭の山下先生に、それぞれ御出席いただいております。大変御多忙の中、お越しいただきましてありがとうございます。
 では、御発表を全体で20分程度でお願いをいたします。よろしくお願いいたします。
【増田主幹】  皆様、こんにちは。熊本県教育委員会の増田でございます。
 資料のほうは八代工業高校のほうで共有していただくということで、よろしくお願いします。
 それでは、早速ですけれども、時間がありますので説明に入らせていただきたいと思います。ちょっとページ進んでいただきまして、マイスター・ハイスクール事業の概要について、まず初めに、目的についてでございます。御覧いただいておりますように、本県におけるマイスター・ハイスクール事業につきましては、管理機関でございます私ども熊本県教育委員会、それから熊本県情報サービス産業協会、そして熊本県商工労働部の3者が一体となって事業を進めております。それぞれの目標がございますけれども、これを融合いたしまして、そして御覧いただいておりますマイスター・ハイスクールビジョンを策定し、右下のほうに掲げております1番、2番、こういったところを目標にして、結果、産学官一体となった産業人材育成のエコシステムを構築するということを目指しているところでございます。
 次のスライドをお願いいたします。次に、管理機関の役割について御説明をいたします。私ども県教育委員会は、事務局的機能を担いますとともに、指定校へのデジタル化対応産業設備の導入、経済団体や大学等との連携、企業実習等の支援。次に、熊本県情報サービス産業協会におかれましては、マイスター・ハイスクールのCEOや産業実務家教員の派遣、企業実習等の受入先の提供。最後に、県商工労働部のほうは産業施策や県内企業への協力要請、運営面の支援等を担っているところでございます。
 次のスライドに移ります。御覧いただいておりますのは、本事業の組織図になりますけれども、大きく3つの委員会を設置しております。事業全体を俯瞰し意思決定を行います、左上に書いてございます運営委員会。それから右上にあります、これが具体的な事業の推進について協議・検討を行う事業推進委員会。そして右下になりますけれども、学校の先生方で構成される校内委員会になります。運営委員会における検証・評価、指導・助言を基に事業推進委員会、それから校内運営委員会を機能させて事業を推進しているということになります。
 私のほうから最後に、管理機関としての今後の取組といたしまして、御覧いただいているようなところで今後も頑張っていきたいと考えております。
 この後、CEOのほうにバトンタッチしまして、詳しく話をさせていただければと思います。よろしくお願いいたします。
 私のほうからは以上でございます。
【富松CEO】  CEOの富松です。どうも初めまして、よろしくお願いいたします。
 私のほうで具体的な取組内容等について御説明させていただきます。先ほどもちょっと絵が出ましたが、八代工業高等学校のマイスター・ハイスクール事業事業はどんな教育をしながらつくっていくかということにつきまして、産学官一体となって、これは大学も交えて一緒に考えて取り組んでいくというものであります。この事業は、令和3年度の文部科学省様の募集要項の中で、私が非常に大事だと思いましたのは、絶え間なく刷新していく、継続的な刷新というところが要項の中にありまして、これが一番大事な点だなと思いました。と言いますのは、生徒たちというのは、学校の教育は過去に基づいて教育をしますが、生徒たちに未来があるわけで、やっぱり学校現場が未来を見ながら、それを生徒たちに伝えていくために学校自身が学びながら教育をしていくということが大事だと考えまして、そういったことを考えて私なりの、このページに挙げています要件として、システム思考で考えようよと、いろいろなものを単独じゃなくて、つないで関連を考えようよと。そして学校、あるいは教育行政、そういったところで組織的に学んでいく組織学習というような考え方、あるいはこのモデルが、やっぱりモデル事業でありますので、広がっていくためにどういう形でどこに広げていくのが拡大しやすいかと、そういったことをあらかじめ考えながら取り組む。そして、モデルのコスト低減、これは全てのステークホルダーの労力をできるだけ小さくしながら効果を大きくしていく、そういったことを考えながら取り組みましょう。そして最初に申し上げましたように、産業界と教育が一体となってやりますが、しかし本業は教育界でありますので、そちらが今後も主導権を取って産業界に働きかけながら、この事業を進めていく、そういったことを念頭に置きながら進めてまいりました。
 そういったことから、事業の当初にゴールといいますか、こういったものを残せばつながっていくねというようなところをあらかじめ考えて取り組んでおります。私が最初から申し上げていますのは、CEOがどんどん存在しなくていいようになっていくのが一番だねというようなことを申し上げております。
 もう一つが資産の活用や取組の連続性というところで、先ほど教育委員会のほうからも御説明がありました中で、熊本県産業教育審議会、令和2年度に最終答申が上がったのですが、そこまでの間でいろいろな調査や検討をやっていただいています。この資産とか、こういったものを生かして次につないでいく。私たちの事業は、今度はその次につなぐということで、このマイスター・ハイスクール事業3か年の中では、基本的には単独モデルでありますが、県内の高校、そういったところへ拡張していくことを考えながら、単独モデルプラス拡張・連携モデルも今回の取組の中で少しずつ行っております。
 また、どんなカリキュラムを作るかということがテーマでありますので、各学科で、今回はデジタルという要素が1つ大きな要素でありますが、各学科で生徒たちにどんなデジタルの学びが必要なのかを追求しながら授業をつくっていくというのが1つありますし、あるいは主体性、課題発見やコミュニケーション、こういったものは過去よりも、私も産業界でずっと経営側におりましたが、非常に大事なことになっておりますので、指導する側の考え方も刷新しなきゃいけないねとか、あるいは産業界の実態を学科のカリキュラムに反映する、あるいは企業実習、課題研究を社会産業と効果的に連携する。こういったことをつくるのでありますが、先ほど申し上げましたような、やはり継続性、考え方で一番大事なのは、その下にありますカリキュラムマネジメント、この方法やそういうマインドセットをつくっていくことと、産業界、あるいは大学、地域との連携をつくっていくことで、この3つが、私は今回、学科の先生方と一緒に上のテーマに取り組みながら、カリキュラムマネジメントの方法やマインドセットを一緒につくっていくと。そして、そこからそれを積み込む枠としての教育課程を刷新していくというような進め方をしております。
 3か年の前に準備期間がありまして、ビジョンを作りまして、それから初年度は先生方の考え方を主にしながら、そこに企業が協力した思考を行い、そして2年目で改善しながら、そこから今度は令和6年度以降をにらみながらの展開への足がかりをつくっているというところであります。令和4年度の年間計画はこのような形で進めています。
 そして、年度年度で学科におきましても重点テーマですね、令和4年度は課題解決へ向けてということになっておりますが、それに基づいて各学科で取組の在り方を考えていただいております。
 また、先ほど申し上げましたように、学校教育全体を考えるというところで全校生徒に、1学期、2学期、3学期、それぞれの節目で産業講話という形で、第1回は、これ以降の産業実務家の授業、あるいは出前授業、あるいは学科の先生方の授業の前に生徒の視野や意欲を引き出すような講話をしていただき、第2回は、企業実習の前に県内企業、地域産業を知ってもらう授業を県の企業立地課のほうでやっていただく。最後は、年度を振り返って、翌年度に向けた生徒への助言・指導をしていただくというような産業講話をしております。
 次に、これは産業実務家に授業を教育課程のどこに入れたかということですけれども、既存の工業の専門科目の中に入れております。このことによって各教科で学ぶことと産業実務家の授業をリンクさせながら、その教科の意味というのを生徒が感じ取りながら学んでいくというふうにしております。
 これは産業実務家の先生方の各学科での各時期での授業時間数であります。令和4年度は427時間で、この中では授業の計画や打合せ、そういった時間も十分取っていただくことで時間を増やしております。
 そして、この授業のコアの部分、産業実務家の先生方と学科でどのような授業でやるべきかを追求しながら、どんどん改善していくということで、こういうふうにメインの担当企業というところを割り当てておりまして、学科の職員室の中に机も置いてあります。ちゃんとネームプレートがありまして、例えば構造計画研究所、タカハシ先生とか、そういうプレートが置いてあって、職員室で、これは産業実務家によっては、学科の会議等に参加していただいて一緒に考えていただいております。
 ちょっと具体的なところでありますが、例えばインテリア科であります。ここでは初年度TTで、工業情報数理、工業技術基礎という中でデジタルの基礎というのをやりましたが、これはTTでやった学科の先生方が2年目は引き取り、そして本年度はBIMという、これは建築・土木、あるいは工場の設備等の設置といったところでも使いますが、初めから3Dで設計していくツールでありまして、先ほど言いました土木・建築や、そういった装置といったところで大企業から中堅というところ、中小にもどんどん広がっていくツールであります。これを生徒たちが使いこなせるようにという授業を今やっております。
 BIMで設計しますと、インテリア科で学ぶいろいろなことがBIMの中で実現できますので、学科の様々な学びとデジタルツールを関連づけながら学んでいくというようなことをやっていただいており、本年度は2年生、3年生とも産業実務家に授業していただきましたが、来年は学科の先生たちが勉強されて、2年生は学科で教えると。そして、その翌年は両方とも学科で教えると。そして産業実務家の方にはアドバイスや助言、あるいは最新の事例の紹介という形で関与していただくようにしております。インテリアの授業風景であります。
 それから機械科はロボットプログラミングを中心に、そしてAR・VR等、これは実際に装置メーカーの社内で社員教育に使われているツールでありますが、こういったものを持ち込んでいただいて生徒に体験させて、今はどんな時代であるか、どんな仕事のやり方をしているかというところを体験させながら、その基調となる学びを授業でしていくというふうにしております。
 工業化学科では、工業化学の最新の状態というところで三井化学様等にDXの事例、どんな取組をしてるんだよというようなところを、これは卒業生の先輩も授業をやってくれまして、そういった視野をつくるところ、それから現代の工業化学でいろいろな実験をやったり、物質開発するというところはコンピューター上でかなり行われていますので、そういったところを熊大の先生に説明していただき、実際にPythonを使った体験をさせるというようなことをやっております。来年度以降はもうちょっとプログラミングの比重を道具として工業化学の中でも使っていくんだよというところを少し大きくしていこうかとか、先生たちと今相談をしているところであります。
 それから電気科ですが、電気科は一番特徴的なのは、ここで挙げていますLANの構築で、これを西部電設様という企業が現状調査から、それを基に工程表、工事の計画をつくり、そしてその中で分担しまして、生徒たちが一緒にチームで工事をしていく。その前には安全教育というところですね、危険予知の訓練等もするというような、小さなサイズでありますが、実際に教室にLAN工事をしております。
 これは学校の中を次々に工事していこうということで、事務長先生からはどんどんやってくださいという。実際に使ったLANが授業で使えますので、というような取組をしております。ただ、電気科の進路としては通信だけではなくて、電気や通信でも土木系とかいろいろありますので、あるいは強電、配電とか、そういったところで九州電力、SYSKENや、電設のところに挙がっていますような、それぞれの立場からいろいろ体験させてもらったり、仕事の実情や展望、そういったことを授業していただいております。
 それから情報技術科でありますが、ここでは実際に世の中に出たときに必要なものとしては、やはり設計をしていく。そうすると、そのために打合せが必要だね。文章なりきれいにまとめた資料が必要だね。そういったところから体験として、実際にRPAを設計して動かしてみる。あるいはデータベースを、要件をヒアリングして、そこから資料をまとめて使ってみる。こういったことや、あるいは海外からのオンライン授業ということでインドから、ボッシュに元いたエンジニアの方にオンラインで英語で授業をしていただきました。このときは輪を広げるということで、他の工業高校にも声をかけてZoomで授業して、他校からも質問してもらう。英語で質問して、英語で回答という、英語の重要性を分かってもらう。
 それから、その下のMinhさんですけれども、彼は熊本高専の卒業生です。その後、起業しまして、今700名規模の会社の副社長、それから日本法人の社長をやっておりますが、どんな気持ちで、どんなことを考えながら、そしてどんな仲間とやってきたかとか、そういうお話をしていただいています。
 それから情報技術科では県内の他校、それから企業と一緒にカリキュラムがどうあるべきかという検討会をしております。1年生につきましては、まず仕事の展望や、あるいは進路、大学の展望を持つための一日体験、授業を受けたりもあるんですけど、そういったことをしております。
 それから企業実習でありますが、私、少し深掘りいたしまして、企業実習でコミュニケーションとかいろいろなこと、産業の実情の大事さが分かるコンテンツ面だけではなくて、そこで生徒がどういうふうに学ぶか。これは帰ってきた後、あるいは企業、そういったところとの対話ですね。まさに対話による深い学びというのは自己理解、次に自己開示して、他者を理解して相互理解、こういったプロセスを感じさせるというような取組をしております。そういったことで事前とコアの協力企業ですね、22社と1学校。
 それから工業連合会に非常に協力いただきまして、会長には運営委員をやっていただいていますが、15社が協力していただいております。ちょっと飛びましたが、授業活動の様子です。成果報告をオンラインで企業にやっておりまして、その様子は1年生や行かなかった生徒たちにも見せております。活動報告はちょっと省略いたします。
 そしてもう1個重要な点として、主体性の追求というところで、今、主体的に学ぶ態度というところも、評価の基準にも調整という要素がありますが、その基になっています自己調整学習の考え方を基に主体性とは何かを考えながら現場での指導を追求するということに取り組んでおります。
 熊大の先生に講話していただき、全職員、それから産業実務も参加いただいていますが、ディスカッションしてアンケートし、それをまた次回に生かすということで本年度3回、また来年度も継続してまいります。
 そしてもう一つの要素として、評価・アンケート、生徒のアンケートをマネジメントサイクルに生かしていくというところで、こういった項目をいろいろ設けておりまして、またこの表現もいろいろ改善していっておりますが、分析例として、企業実習を受けた生徒のこれまで5回アンケートの中での推移、行かなかった生徒との差分の推移とか、あるいはデジタルに対する意欲が高まったという項目は、デジタルの活用の可能性がいろいろあるという項目と非常に相関が高まっていくというようなことや、県内企業を知ると県内の就職の比率が高まる。相関係数が高くなっていくというような、そういったところが見えており、八代工業高校では昨年度から今年度にかけて6%、7%ぐらい県内就職者が増えております。また、教師のアンケートの推移もこのようにどんどん改善をしていっています。
 また、委員会による定性的なPDCAということで、先ほど紹介ありました運営委員会、事業推進委員会、それから校内委員会、それからあともう一つ関係者のオンライン定例会を毎週月曜日にやっております。こういったことを取り組みながら、最終的に産学官のエコシステムというものを、最初はつくるというふうに考えていましたが、実はそうじゃなくて、もともとあるものをよい形に、私たちがいろいろ理解しながら気づきながらよい形のエコシステムにしていくと、そういうことに取り組んでいるところであります。
 すみません、ちょっといろいろ舌足らずだったと思いますが、以上で私のほうの報告を終わります。
【荒瀬主査】  ありがとうございました。大変多岐にわたる内容、お取組を御紹介いただきましてありがとうございました。
 先生方のほうは特にございませんでしょうか。御発言よろしいですか。
 では、ただいま御説明いただきました内容に関しまして、質疑応答をお願いしたいと思います。「手を挙げる」のボタンを押していただけますでしょうか。
 岡本委員、お願いいたします。
【岡本委員】  御説明ありがとうございました。本当に精力的な動きがあるんだなということですごく参考になったんですけれども、2つ質問がありまして、とても大規模な企画なんですけれども、どこが主導して企画や予算取りを行ったのかというのを少しお伺いしたいです。教育委員会発信なのか、もしくはもう少し上のところからなのか、もしくは工業会からの要請なのかなどお聞かせいただければと思います。
 もう1点目は、このような事業のときに、学校の主体性ってとても重要になってくるわけですね。生徒の主体性以上に学校側がその企画に対して主体性を持つってすごく重要なことだと思うんですけれども、学校側から上げられた企画みたいなものがあるのかどうか、もしくは学校側の主体性を促すためにどのようなことをされているのか。ちょっとお聞きしたいんですけれども、よろしくお願いいたします。
【荒瀬主査】  ありがとうございます。
 ほかの委員の方も手を挙げていらっしゃいますので、御質問を先にお願いしまして、後からまとめてお答えいただきたいと思います。
 では、清水委員、濱田委員、田村委員の順にお願いしますので、清水委員、どうぞよろしくお願いします。
【清水委員】  埼玉県大宮工業高校、清水でございます。どうぞよろしくお願いします。
 御説明、本当にありがとうございました。専門高校には中学校卒業段階の子供たちで、その分野に興味・関心があったりとか、将来この分野で働きたいという、そういった目的意識を持った生徒が多く学んでいると思います。しかし、現在、入学者の減少であるとか、教員不足、教員の技術力の不足という点、特に最先端の内容だとか、なかなか知識や技術を蓄積できない状況。あとは施設・設備が古くなっていってしまって時代に対応できないとか、専門を学ぶためにはどうしても教材・教具を買わなければなりませんので、保護者の負担の増加、卒業後の進路の多様化、特に最近では大学進学の希望者が非常に多くなっている。本校でも就職、進学が半々な状況になってきている。課題が山積しているところなんですけれども、このような状況の中で、八代工業高校さんに大きく2点ほどお伺いしたいなと思っています。
 1つ目は、マイスター・ハイスクール事業で取り組まれている中で、産業界とともに生徒を支援していく構造を今築かれているかなと思いますけれども、この取組は教員不足であるとか、教員の先端的な技術・知識の不足を補う対応もできるんじゃないかと思うんですけれども、また生徒の専門的な個別の高い要求にも対応しているのではないかと期待しているところなんですけれども、この取組を進める中でメリットであるとか、今後、心配に思われているようなことがあれば、ぜひ教えていただきたいということ。
 2点目が、全国的に大学進学を目指す専門高校の生徒が増えている状況にあります。八代工業高校さんではそのような状況はどうなのか。また希望者が多い場合には、こういった生徒たちの大学進学のための対応というのはどういう取組をされているのか。さらに大学入試に関して、国であるとか県であるとか様々な機関に要望したいことがあれば、ぜひ教えていただきたいと思います。
 以上になります。
【荒瀬主査】  ありがとうございます。清水先生、これは先生にお尋ねなさっているということでよろしいですか。
【清水委員】  そうですね。学校としてのことかと思いますので、よろしくお願いします。
【荒瀬主査】  分かりました。後ほどよろしくお願いいたします。
 それでは、濱田委員、お願いいたします。
【濱田委員】  高知県教育センターの濱田でございます。今日はどうもありがとうございます。
 私のほうからも2点ほど御質問させていただきたいと思います。1つは、管理機関として、熊本県教育委員会の中の取組、今後の取組の中で、「社会に開かれた教育課程」の実現に向けた教育課程の在り方の検討ということを挙げられておられます。実際、富松CEOのお話の中から、既に社会に開かれた教育課程の実現に向けた教育課程についても、他校と一緒になりながら御検討しているということでございました。今の現時点で、社会に開かれた教育課程をつくる上で、どのようなことがポイントになっているのか。どんな点を重視しながら考えていらっしゃるのか。それを1つずつ教えていただきたいです。
 もう一つは、産業実務家教員という新しい名前の教員を置いている、位置づけていらっしゃるようですけれども、それは熊本県教育委員会として、全ての実業高校にそういった方々を配置していらっしゃるのか、今回の研究の上でモデル的にやっていらっしゃるのか、そういったところを教えていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
【荒瀬主査】  ありがとうございました。濱田先生、こちらは県教委にお尋ねするということでよろしいですか。
【濱田委員】  それと、今、教育課程の話をなさっている学校のほうにもお聞きしたいですけれども。
【荒瀬主査】  分かりました。じゃあ学校のほうもよろしくお願いいたします。
 では、田村委員、お願いいたします。
【田村主査代理】  御発表どうもありがとうございました。大阪教育大学の田村知子と申します。
 カリキュラムマネジメントを研究しておりますので、その関心からもお尋ねしたいところなんですけれども、カリキュラムマネジメントの方法の習得、そしてそれ以上にマインドセットの変換、これが必要だという御発表の内容があったかと思います。そのマインドセットにつきまして、どのようなマインドセットから、どのようなマインドセットに変わっていくということがこの事業において重要であるのかということについて教えてください。
 以上です。
【荒瀬主査】  ありがとうございました。今のも学校及びCEOにお尋ねするという感じでいいですかね。ありがとうございました。
 では、一旦ここで切りたいと思います。4人の委員から質問がありました。
 では、順にお願いしたいと思います。まず、富松CEOにお答えをいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
【富松CEO】  最初のこの事業はどこからスタートしたかというところなんですけど、一番最初の発端は八代工業の先生方なんですね。教頭先生が始めて、皆さん方が教育を変えたいと、そういったことで県内の企業、私も産業団体の立場なんですけど、そういったところに相談に来られて、そしてそれを教育委員会が一緒になって後押しして、いろいろ相談を投げかけられました。その熱意に応えたというところで、産業界のほうはですね。私も、「じゃあもうしようがない、私がやるか」ということでCEOになったんですけど、やはり発端はその気持ちですね。
 熊本で、今日の委員に、先ほどの運営委員とか、いろいろなっていますような産学官の方々と一緒に、県内のいろいろな産業振興の取組を一緒にやってまいりましたので、そういったメンバーが今度は教育というテーマで一緒にやろうよということで皆さんが集まっていただきました。
 それから、学校の主体性というところでは、そういったスタートで始まっていますので、最初にどんな授業をやるかということも学科の先生方と話して、こういうことをやってみたいというような、そこからスタートしました。それをやりながら、でもやっぱりこっちのほうがいいんじゃないとかというのを一緒に考えながらということで、先生たち、学校の皆さん方の考え方を大事にしながら、それを伸ばしていくと、そういう形で取り組んでおります。
 次の清水先生の質問のほうは、新生教頭先生のほうからお願いします。
【荒瀬主査】  すみません、富松CEO、マインドセットのことをお話になったかと思うんですけれども。
【富松マイスター・ハイスクールCEO】  マインドセットのところですけれども、これは企業の人間と学校、置かれている環境の違いがつくっているものが大きいと思います。企業の中では、やはり成果を出していくために探求して改善していくということをやらないと、私は特に経営者でしたので、それというのは死活問題なんですね。そういったところでどうやってよくしていくか。そういったPDCAというのは、当然これは回していくものであります。
 しかし、学校の中では改善していく、その先生、個々に質をよくしていくというところはあると思いますが、大きな改革をしていく、それはなかなか難しいわけですね。原点に返って本質を考えて、あるいは産業界の情報も手に入れて、それで変えていけるんだと、そのために整理をしていく。こんなふうにやるとどんどんよくなっていくねということを、私も学校のほうは現場が分からないので、一緒に体験しながら、考えながら、そして学校現場でのマインドセットは一緒につくっているような感じですね。企業での考え方をベースに、私としてはそういった体験を持ちながら、先生方と一緒に学校ではどういうようなマインドセットで、どういったカリキュラムマネジメントの方法を取りながらやっていくのがいいかを一緒につくっていると、そういうところであります。
【荒瀬主査】  ありがとうございました。
 岡本委員、田村委員、今お答えいただきましたけれども、よろしいでしょうか。
【田村主査代理】  はい。ありがとうございます。
【荒瀬主査】  ありがとうございました。
 岡本委員もよろしいですか。
【岡本委員】  はい。ありがとうございました。
【荒瀬主査】  ありがとうございます。
 では、八代工業高校の先生方と県教委にお尋ねいたします。まず、八代工業高校、どなたがお答えいただけるんでしょうか。
【新生教頭】  こんにちは。八代工業高校の教頭の新生です。
【荒瀬主査】  よろしくお願いいたします。
【新生教頭】  よろしくお願いいたします。まず、清水校長先生からの質問に関しましては、事前にメールで頂いておりましたので、そちらに沿って答えさせていただきたいと思います。
 まず1点目は、このマイスターの取組の中でのメリット、それから心配事についてなんですが、小学校、中学校、高校と教育活動がある中で、特に高校での教育活動というのは、本当に学校の中で閉じたものではいけないと感じています。このマイスターを通しまして、実務家の先生方が生徒に授業をしに来てくださっていますが、この技術というものはもちろんなんですけれども、学校の先生ではない、異なる世界というか、産業界の方々に教えてもらうことを通して、生徒自身の物の考え方とか、これからの行動とか、それからコミュニケーションの力とか、そういったものが一番変わってきていると思います。
 そして、それが何よりも先生方にも同じことが言えまして、マイスターを通して、生徒もですが、やっぱり一番は先生方の教師としての資質の向上というものをとても感じております。産業界の方、企業の方々とこれからの授業をどうしていくのかとか、これからの工業教育をどうしていくのかということをディスカッションしながら授業を進めていくことによって先生方の視野も広がりますし、考え方も変わってきている。こういったことが学校にいる者としては一番大きなメリットだなと感じております。
 また、心配事というところがありましたけれども、心配事というよりは、これからの課題としまして、今、本当に熊本県のほうは産業界の方、行政、いろいろ御支援をいただきながら、とてもいい雰囲気の中、産学官一体となった授業を進めさせていただいております。これが、今、止まってはいけないというか、もう少ししっかり根づくために、そして、このモデル事業が県内の高校に横展開していくためには、もう少し時間と支援の体制が欲しいなというところが気にかかるところになります。
 次に、2点目の大学進学を目指す工業高校生が増加しているというところなんですけれども、本校につきましては、というよりも熊本県の工業高校は9校ありますが、就職が8割、そして進学が2割弱ぐらいになっております。本校につきましても進学者は本当に少なくて、大学進学者に関しましては、10人も満たないような状況です。
 今回、このマイスターを通しまして、大学の先生方とも連携をさせていただいています。また、実務家の先生方の授業を通して、もっと勉強したい、もっと専門性を高めたいというところで進学をしようと思っている生徒も少しずつ増えてきていますので、こういった高大連携、大学進学に向けては、本校としてはこれからだと考えております。
 私のほうからは以上になります。
【荒瀬主査】  ありがとうございます。
 清水先生、よろしいでしょうか。
【清水委員】  どうもありがとうございました。こういった取組が学校の中に外部の方が入ってきていただけるというのはすごいありがたいことですし、こういった取組がどんどん進んでいただけるとありがたいなと思います。
 大学進学の方が少ないというお話がありましたが、関東圏であるとか非常に多くなってきているというところで、私からは国のほうにぜひ工業高校をはじめとする専門高校から大学に進学できる仕組みづくりであるとか、そういったところをお願いできないかなということもございました。どうもありがとうございました。
【荒瀬主査】  ありがとうございました。
 では、濱田委員からの御質問、県教委の増田主幹、よろしくお願いいたします。
【増田主幹】  熊本県の増田でございます。濱田先生のほうからいただきましたところで、まず1つ目が社会に開かれた教育課程で、どのようなことがポイントかという御質問ですけれども、既に富松CEO、そして新生教頭先生のほうから今お話があったところと内容はほぼ同じだと思います。
 皆さん、御承知のことと思いますが、本県は、PSMCがやってまいりますけれども、そういった半導体関連の会議に出る中でも、これは高校に限らずですけれども、高等教育も含めまして、やはりもう学校だけで、結局学校だけで人材を育成して、それを企業側が受け取るというような従来の構図ではなくて、まさに産業界の皆様のお力も借りながら一緒にやっていくと。マイスターに限らず、今、既に総合的な探究の時間ですとか、課題研究といった授業の中で、八代工業に限らず、いろいろな学校さんでも地域の方と既に交流もどんどん増えてきていまして、それこそクロスと申しますか交わると、地域社会と一緒になって学校が教育活動を行っていくということに尽きるのではないかなと思っております。
 2番目に、産業実務家教員についてですけれども、全ての学校に配置できているのかという御質問でよろしかったでしょうか。現状につきましては、予算を頂きまして、八代工業高校だけに配置できているというのが現状だと思っております。これを結局、エコシステムの構築ということで、どこまで企業の皆様に御協力いただけて、行政としましてもどこまで財源といいますか、いろいろな面での、財政的な面での支援も含めてどこまで、バランスと申しますか、今後ここら辺をしっかり見極めながら、これを県全体に普及していくに当たって、今後しっかり検討しながら取り組んでいかないといけないかなと思っております。
 以上でございます。
【荒瀬主査】  ありがとうございました。
 濱田先生、今おっしゃいましたように、先ほどCEOからも、また教頭先生からも御説明があったかと思いますので、よろしいでしょうか。
【濱田委員】  分かりました。ありがとうございます。
 熊本の産業界が一体となった人材育成においては、産業実務家教員というのは非常に大事だなと思いましたし、その輪が全国に広まるといいなと思っております。ありがとうございました。
【荒瀬主査】  ありがとうございました。よろしいでしょうか、ほかの方は。
 それでは、熊本県教委、それから八代工業高校、それからまた富松CEO、皆さん、ありがとうございました。このまま残っていただいても結構ですし、御退室いただいても結構でございます。ありがとうございました。
【富松マイスター・ハイスクールCEO】  どうもありがとうございました。失礼いたします。
【増田高校教育課主幹】  ありがとうございました。
【荒瀬主査】  ありがとうございました。
 それでは、続きまして、岩本委員から意見発表の御希望をいただいておりますので、お願いをしたいと思います。岩本委員、すみません、あまり時間が取れなくて本当に申し訳ないですが、よろしくお願いいたします。
【岩本委員】  よろしくお願いいたします。
 私のほうからは、まさにこういった少子化が加速している中山間・過疎地域における高校のこれからの在り方というところについての提案をさせていただけたらと思います。
 まず、こうした地域の特徴というか状況としては、都市部のように家から通えるところに専門高校とか定時制・通信制があるわけではないと。家から通える高校は公立の全日制普通科の小規模校ただ一つというような、こういった場所があります。
 こうしたところの全日制普通科の小規模高校となると、本当に専門高校に行くような興味・関心を持っているような生徒から、本来都市部にいたら定時制や通信制とかに通うような子たちだとか、本当に様々な子たちが一つの小さい高校に集まってきている。それを少ない教職員でこうした多様なニーズに総合的・包摂的に対応できる仕組みというのが今後求められているという状況になっています。
 こうした場所でどうやって個別最適な協働的な学びを届けることができるのだろうかといったときには、学校の中の教職員の数とかも少ないという状況ですので、学校を本当に地域や社会、そして学校間をつなぎ、多様な教育資源を柔軟に組合せながら対応できるような仕組みや環境というのを構築する必要があります。
 具体的には、1つは地域資源の最大限の活用ですね。身の回りにある小中学校、社会教育、福祉、様々なものをふんだんに活用、身の回りのものを活用していく。
 2つ目は、オンラインだとかICTを最大限活用しながら、遠隔・通信を最大限に活用していくというのが2点目です。
 3点目は、ほかの地域やほかの高校との越境や留学といった動きの活用というところです。
 この中身に関してポイントだけ絞って言えたらと思います。まず、地域資源の最大限の活用といったところには、まず、そういった地域・社会とつなぐ人材、コーディネーターの配置の実現というところで、学教法や高校標準法のなかでコーディネーターを専門職としてしっかり位置づけながら、場合によっては高校教職員数の自然減、ここの財源の振替なんかも検討しながら、しっかりと財政措置をしていくという必要性があるというのが1点目です。
 また、都道府県の特徴として、都道府県立の高校の場合、都道府県というのは広域人事だとか、高校に関する専門性だとかを持ったところでありますけれども、地域資源の最大限の活用ということを考えると、市町村なんかが持っている、より地域や生徒に身近で現場の声なんかを拾いながら、地域資源をしっかりと把握しながら柔軟かつ機動的に取り組んだり対応しやすいという、この市町村の持っている強みもあります。
 今までは都道府県立なのか、市町村立なのかという二項対立的な発想はあったわけですけれども、こういった小規模校ではそれぞれの強みを最大限に協働しながら、ハイブリッドでやっていきながら運用していくということが重要になってくるというところですので、例えば、人事のところは基本的には都道府県がやりながら、場合によっては市町村は管理職、一部教職員の任用ができるとか、また、学校施設だとか寮だとか、こういったところも共同利用だとか複合化みたいなところができるように、都道府県が設置者でありながら、市町村が運営をしていくような形態だとか、こういったことを可能にできるような仕組みなんかも制度として必要だと考えております。
 2点目のオンラインだとか、遠隔・通信の最大限の活用というところに関してです。先ほど言いました全日制の高校であっても不登校の子だとか様々な子がいますので、こうした生徒の実態に応じて、全日制であっても定時や通信の方法を用いた教育を可能とするというところが必要であるとなっています。これも特例としてやっていくという考えもありますが、その先には、全・定・通の課程を総合的に生徒に合わせて個別最適に組み合わせていけるような、総合学科ではなく総合課程ですね、総合課程の創設だとか、もしくは全日制・定時制・通信制という区分自体を発展的に解消していくというようなことも併せて検討が必要ではないかと思います。
 2点目は、小規模高校が他の高校の通信制課程の科目を履修して学んでいくような、全通併修のような形を取っていこうという際には、こうした場所は交通条件が非常に恵まれていない離島や中山間地域だったりしますので、こうしたところにおいては、特例として面接指導、いわゆるスクーリングを同時双方向型の遠隔指導で代替可能というような形でやっていくというところが特例として必要だと感じているところです。
 また、ほかの地域の配信拠点だとか、拠点校からの遠隔授業によって科目履修を行うというときには、ここもまた交通条件が恵まれていない地域であったりとか、小規模校で教職員の数も少ないというようなところですので、これも特例として、受信側の人員の配置要件、あと対面による授業要件を緩和可能にというようなところを併せてやっていくような、こういった特例校制度の創設が必要だというところであります。
 また、こうした地域の生徒たちは、基本的にずっと同じような人間関係で、少人数の中で育ってきたというような環境です。こうした場所に、ほかの地域とかから越境してくるような留学生の存在というのは、多様な価値観と出会ったりとか、切磋琢磨する上でも効果的でありますし、また、ずっと同じ地域で18年間育ってくるというような中で、1年でもほかの地域だとか、ほかの高校に留学をしていくということも教育効果としては非常にあるということが見えてきています。
 ただ一方で、こういった地域留学なんかをやろうとしたときに、今、1年間の地域留学を希望する高校生の多くは、第1期生なんかは40%の高校生が、希望するけれども教育課程の不一致というところでこの留学を断念せざるを得ないというような状況があります。ですので、こういった地域留学なんかもより柔軟にできるようにというところで、地域留学に関わる単位認定なんかを、海外留学に関わる単位認定に準ずるような運用が可能であるということだとか、また特別の事情のある場合というところにこの地域留学も当たるというようなことを明確化して、より弾力的な取扱いができるようにというところと、あわせて必履修科目なんかに関しては、この教育課程が不一致で行けないというような生徒に関しては、公立の通信制高校等で履修できるようにするというところと、対面指導なんかに関しては同時双方向型の遠隔指導で代替、もしくは留学先ないしは原籍校の教員による対面の指導で代替可能というような措置も必要であると考えております。
 最後、「終わりにかえて」ですけれども、今回、私提案させていただいた内容は、僻地などの条件不利地域や小規模校への特例というような話でさせていただきましたけれども、これ本当にこういった地域の小規模校に特例的な話でとどめていいものなのだろうかというのは私自身投げかけたい問題意識であります。
 まず、こういう必要性が高いところからやっていくというのもありますけれども、今、目の前で困っている生徒がいる中で、全部が全部特例ではなく、今回提案させてもらった中でも、これに関しては全国でやるべきではないかというようなものも併せてあるように思いますので、こういったところを、どこまでを小規模校の特例にするのか、どこまでを全国でできるようなものにするのかというところは、今後、議論していけたらと思っております。
 一旦、以上になります。
【荒瀬主査】  ありがとうございました。
 最後の特例にしないという話になってくると制度面の話とか、もっと言うと学習指導要領をどうしていくのかといったようなことにも当然関わってくる話かと思います。そのことが全て入っているわけではありませんけれども、今日この後、論点整理について議論をお願いするわけですが、その中で、今、岩本委員がおっしゃったことも含めて考えていただければと思います。もちろん、途中で岩本委員に御質問とかがおありの方は質問をしていただいたらいいと思うんですけれども、論点整理の説明をまずお願いしたいと思います。では、よろしくお願いいたします。
【松田参事官補佐】  それでは、論点整理(素案)をかいつまんで御説明をさせていただきます。
 まず、「はじめに」の最後ですが、「これまでの議論を整理するとともに、今後本ワーキンググループにおいて議論をさらに深めていくべき論点を取りまとめるもの」ということでこの論点整理の性質を表してございます。それぞれの各論の御説明でございます。
 まず1つ目、高校教育の在り方、共通性・多様性の観点からの検討というところでございまして、高校教育は地域・学校により非常に多様な状況となっています。平成26年6月の中教審高校教育部会審議まとめでは、この「共通性の確保」」に関して、生徒が共通して身につけるべき資質・能力「コア」に関して、「社会・職業への円滑な移行に必要な力」「市民性」が重要な柱として重視していくべきであるとしてございます。
 こうした視点を引継ぎつつ、今般、成年年齢が18歳に引下げられたことを踏まえれば、生徒を大人として育んでいくことが重要である。このために、知識・技能、思考力、判断力、表現力、学びに向かう力、人間性等の育成を通じて、知・徳・体のバランスの取れた成長を図り、自立した学習者として生涯にわたり学習する基盤を培っていくことが全ての生徒の可能性を引き出すために必要であり、高校における共通命題であると言えるのではないか。
 そして、この観点に立てば、多様な状況となっている高校の共通性について、全ての生徒が獲得すべき資質・能力をもって担保していくことも考えられる。その上で、いずれの学校においても、全ての生徒の可能性を引き出して、次のステップに移行することが可能となる教育システムを構築していくことは、生徒が豊かに生きていくこと(Well-being)を実現することにつながり、結果として、少子化の歯止め策ともなり得るのではないか。今後の論点としては、生徒が成人として社会の一員となるために共通で必要となる資質・能力とは何か。また、それに向けてどのような高校教育が求められるか、こうしたことを挙げてございます。
 続いて、2、少子化が加速する地域における高校教育の在り方でございます。まず、少子化の影響によって多くの地域で統廃合が進んでおり、今後も、15歳人口の減少は一層加速している状況がございます。その中で、高校の適正規模・適正配置に関しては、多様な人間関係の中で得られる学びなどを考えれば、一定の規模を確保することの意義は大きいが、一方で、生徒の通学可能な範囲を踏まえて適正配置を考えていくことも必要である。一定の小規模校について地域に残していかざるを得ない状況である場合に、小規模校のメリットを最大化するとともに、課題を最大限解消し、教育条件の改善につながる方策を国としても考えていくことが必要である。
例えば、遠隔教育の活用、学校間連携の推進に取り組むことが考えられる。これらは、生徒の多様な学習ニーズに応えるのみならず、一つの高校における対面授業で実現できない特色ある教育方法を展開する上でも有効なものである。このために高校教育の質の確保・向上に留意しつつ、必要な制度の見直しや、体制・環境の整備などの支援策を考えていくべきである。
 また、少子化が加速する地域における高校の在り方を考える上で一番大切なことは、生徒の教育条件の改善という視点である。このためにスクール・ミッションやスクール・ポリシーなどを考えて、生徒が行きたいと思える学校づくり、特色化・魅力化を進めていくことが必要ではないか。特に、小規模校では配置できる教員数が限られているというところもあり、コミュニティ・スクールの導入、コーディネーター等の外部人材の配置、そうしたことを通じて体制・環境を整備していくべきではないか。今後の論点として、それぞれの具体化を書かせていただいてございます。
 続いて、全日制・定時制・通信制の望ましい在り方でございます。まず、状況として、義務教育段階で不登校児童生徒数が近年大幅に増加、高校段階においては、それが通信制課程に在籍する生徒数、特に私立において近年大幅に増加という形で現れてございます。
 通信制が多様な生徒の学びに対するセーフティーネットになっていると考えられますけれども、一部の学校においては、違法・不適切な学校運営、教育活動を展開しているところもありますので、これについては引き続き、質の確保・向上を図っていく必要がある。また、公立通信制については、生徒数が減少傾向になっている。一方で、これは経済的な面で課題を抱える生徒にとっても重要な教育機関であることから、魅力向上・機能強化を図っていくことが必要である。
 もとより、通信制・定時制は自立した学習者である勤労青年向けという制度の前提がありますけれども、それが大きく変化していることを踏まえれば、改めてその在り方を考えていくことが必要である。
 加えて、高校では1人1台端末の環境整備が進んでおり、また、同時双方向型のメディアの活用も普及している状況にあることを踏まえれば、全日制・定時制・通信制、いずれの課程にあっても多様な生徒に対してきめ細かく支援して、いつでも・どこでも・どのようにでも学ぶことが等しく認められるようにするなど、そうした学びの実現を目指していくことが重要ではないか。
 こうした点を踏まえて、全日制
 
・定時制課程においては、多様な生徒が原籍校での学びを継続しながら学びを実現できるように義務教育段階で受けられた支援を高校でも受けられるようにする、単位認定要件を柔軟化する、通信の方法を用いる不登校特例制度について活用しやすい仕組みに変える、学校間連携・同一校課程間併修を促進する、ICT活用の体制・環境を整備する、そうしたことが考えられるのではないかということでございます。
 加えて、特別支援が必要な生徒や外国人の生徒等の状況を踏まえて、校内体制の整備を併せて進めていくことが必要ではないか。また、これを全て学校だけで応えていくのは限界があるため、コミュニティ・スクールを導入するなど地域・学校が連携・協働して生徒の成長を育んでいくべきということを掲げてございます。
 また、通信制に関しましては、生徒を自立した社会人として送り出すために、具体的にどのような取組が必要であるか、公立通信制の魅力向上・機能強化に向けてどのような方策を講じるべきか、こうしたことを掲げてございます。さらに、学校間連携、課程間併修、こうしたことを進めていくことも重要であるので、これに向けて具体的にどのような方策を講じるべきかということも掲げてございます。
 最後に、単位制への移行を進めていくことも有効である。また、全日制・定時制・通信制課程の区分の在り方自体の見直しや、学校という場で対面でしか学べないことや得られない効果は何なのかということを議論していくことも必要であるといったこともそれぞれ論点としても掲げさせていただいてございます。
 最後、4、社会に開かれた教育課程の実現、探究・文理横断・実践的な学びの推進でございます。まず、現状として、3割の生徒が家や塾で学習をしないと回答し、学校での学び・授業の満足度・理解度も学年が上がるとともに低下傾向になっている。また、日本の生徒は、自らの参加により社会現象を変えられるかもしれないなどの割合が国際的に低くなっているところでございます。
 さらに、企業は探究的な学び、文理横断型のリベラルアーツ教育を学校に求めている一方で、3分の2の高校においては、大学入学者選抜を見据えて文系・理系コース分けを実施し、2年次以降、特定の教科について十分学習しない傾向があるという指摘もございます。
 また、生徒の資質・能力は可塑性に富むものであるにもかかわらず、高校の入試難易度、属性、大人の価値観、こうしたものに影響を受けて自身を評価してしまっているとの指摘もある。こうしたことを踏まえて、生徒の能力を最大限伸ばせるように社会に開かれた教育課程、探究、文理横断、実践的な学びを推進していくことが必要である。
 実際に、今ヒアリングをさせていただいているように、先進的に取り組んでいる事例もございますが、これをいかに全国的なものに広げていくかが課題となるというところで、これに向けて指導体制、環境整備というのは特に重要。教職員の負担の増加や小規模校では配置される教員が少ないといった課題がございますので、学校間の連携・協働、コミュニティ・スクール、コーディネーター配置、そうしたことに取り組みながら教育活動を展開してくことが重要である。
 また、そのようにして生徒の可能性を最大限伸ばしていく、それによって生徒の進路を過度に固定化することなく、生徒の希望に沿った進路を選択できるように支援していくことが必要ではないか。それに向けて、今後の論点として、それぞれ具体的にどのように取り組むべきかということを掲げさせていただいてございます。
 駆け足ではございますが、以上でございます。
【荒瀬主査】  ありがとうございました。
 この論点整理(素案)の中で、とりわけ枠囲みの中で「今後の論点」というのが次につなげていくものであるということであります。したがいまして、ここにないから次の舞台で議論できないということはないわけですけれども、可能な限り、ここに盛り込んでおければということを思っています。
 日程のことで申し上げますと、次回が義務教育ワーキングと合同で行うというようなことになっておりまして、今日は高校ワーキングだけで話をする非常に貴重な機会であります。ですので、ちょっと時間の関係で全部御発表いただけないということが当然出てくると思いますので、その節には、ぜひメール等でまた事務局に御意見を頂戴できればと思います。
 では、御意見をお願いしたいと思います。青木委員、お願いいたします。
【青木委員】  青木です。よろしくお願いします。
 岩本委員、御報告ありがとうございました。論点整理でも感じたんですけれども、高校に関わる問題を高校という枠で解決しようという、この会議体がそうなので仕方がないと思うのですが、他方で既存の制度を見ると、義務教育学校ですとか中等教育学校とか、小中高一貫とか、いろいろなアイデアとか枠がもう既にあるわけですが、岩本委員が解決されるべき課題として提示されているものの中で、高校の枠だけで解決されなければいけないものと、そうじゃなくて、例えば中高一貫で解決できるようなものと区別できるのであれば教えていただきたいなと思います。
 というのは、今回、岩本委員がお話になった中山間地等では高校の規模が小さいと、全日制の普通科しかないということなので、これは以前も申し上げたんですが、要はミドルスクールで、アメリカの田舎にあるようなミドルスクール的なもので運営してしまえばいいのではないかなというふうにも思うわけであります。そういうようなことが背景にありましてお尋ねいたしました。よろしくお願いいたします。
【荒瀬主査】  ありがとうございます。
 岩本委員、いかがですか。
【岩本委員】  青木先生、ありがとうございます。ストレートなお答えになっていないかもしれませんが、例えば小規模高校の場合の教職員の数の課題だとか、部活動も生徒が少ないとか、そういった課題なんかに関して、私、発表の中でも申し上げました、都道府県立高校だけで考えるからそうなるというところで、これをまさに市町村なんかが一体になりながら、もしくは市町村立の学校と一体的にやることによって教職員の数だとか、児童生徒数だとか、もしくは部活動なんかも地域と一緒になった形で人数を、一緒にスポーツとか文化ができるような活動を担保していくとか、そういったところで大分人数の問題だとか、ここに関しては市町村なり、市町村立学校、もしくは市町村の持っているリソースを活用するということで解決できる、解消していける部分が十分にあると考えているところです。
【荒瀬主査】  青木先生、いかがですか。
【青木委員】  お答えありがとうございました。私の言うミドルスクール的な発想が共有できている部分があるなと確認できましたのでよかったです。
 時間節約のために、論点整理についての意見としても、今の私のことを申し上げたいんですが、要は高校の課題を高校という枠だけではなくて、もう少し幅広に既存の制度と絡めながら、例えば中高一貫とか、中高連携的なスキームでも解決できるものは、そちらでも解決の道を探るというようなことは、ぜひ論点整理にも入れていただければと思います。
 以上です。ありがとうございました。
【荒瀬主査】  ありがとうございました。
 それでは、長塚委員、岡本委員、この順にお願いいたします。長塚委員、どうぞ。
【長塚委員】  ありがとうございます。岩本委員がまとめていただいて様々に御提言をいただきましたので、それに関して、皆さん、どう考えますかという、そういう問いかけもありましたから、その点について私も感想と意見を少しだけ述べさせていただきたいと思います。
 特に少子化が加速する地域に対する様々な御提案をいただきました。視点を広げると、解決策がいろいろと見えてくるような思いもいたしましたけれども、特に既に取り組まれていることとして地域間、あるいは学校間の連携で地域留学の促進というのが結構具体的に始まっていますよね。これは、例えば本校でもコロナ禍で海外留学ができない。だから内地留学だ。地域留学をしたいという生徒が実際におりまして、地域留学の制度を使って、高知県の山間地域にある公立高校に1年間留学した生徒がおります。もう帰ってきましたけれども、大変貴重な体験をしまして、同じ日本であっても地域によって様々に違う課題があるということを、この生徒は学んで帰ってまいりました。現地に行っている間もこちらの学校の担任とオンラインで時々将来の進路についてミーティングしたり、非常に広がりのある体験を、学びをさせていただきました。ということで、非常にこれはよい制度だなと思っておりますが、ただ、これが留学ではなくて、もし他県からの入学ですね、1年生からの入学となると、これはちょっと目的とか、あるいは影響も大きく異なってしまうんじゃないかと思っています。
 ちなみに、分かる範囲で10年前の平成27年度に公立高校が全国募集をしたというのは、全国の3割の16県で、学校数にして39高校だったんですけれども、令和5年度には8割の県で、つまり37県で326の公立高校がそれをしております。こうなってきたのは少子化とか過疎化対策の様相が出てきているというか、その影響ではないかと思っておりますが、ただ、まだ東京などの都市部は、全国募集はしていないんですけれども、もし今後、少子化によって都市部の高校でもこれを実施するようになったら、つまり、行き先の逆流というんでしょうか。日本の人口移動と同様に、僻地から都市部に生徒が向かうような可能性が出てくるのではないかと私は思っているんです。全国募集というのは各地域の高等学校の入試の秩序を毀損しかねないという側面も実はあるんですね。ですからそういう点にも留意して、これは取り組んでいただかないといけないと感じております。
 ちなみに、先ほど内地留学した本校の生徒の学級担任は、偶然なんですけど、高知県の出身なんです。その隣の担任も高知県出身なんですけど、この教師たちから聞きますと、高校生になると、すぐに県内にとどまるか、県外に出ていくかを考えるようになるんだそうです。ですから、ある意味、地方にある高校の生徒たちというのは、いろいろな将来に向けて、進路も絡んで地域との関係性は非常に難しいんだろうなということを感じております。
 念のため、最後繰り返しになりますけれども、全国募集による入学じゃなくて、地域留学を促進すること、そのために海外留学制度と同様に扱うという御提言には大いに合理性がありますし、その必要性があるということは申し上げておきたいと思います。高知の関係の方もたくさんいらっしゃる中で、大変失礼いたしました。
 以上でございます。
【荒瀬主査】  ありがとうございます。
 続きまして、岡本委員、お願いいたします。
【岡本委員】  ありがとうございます。まず、岩本委員とちょっと関連しているんですけれども、地域の中、例えば同じ都道府県においても教育の機会の格差というものがあるというのは、本当に私もそう思っていて、そういう取組はとても必要だと思うんですけれども、これをじゃあ、私の感覚というか、持っている問題意識からすると、地域を出たつながり、つまり、都道府県の枠を超えたようなつながりもつくらなきゃいけないんじゃないかなとすごく思っていて、一番最初の会で申し上げたように、例えば私の住んでいる鹿児島県と東京都であれば、これは1つの指標でしかないでしょうし、よい悪いというものの関係を排除した上で申し上げますと、四大進学率が倍以上違うんですね。それは恐らく子供たちの能力とかそういうものではなくて、恐らく意識の格差みたいなものが非常に大きく出ていて、しかもそれは私の感覚でいうと、都道府県をまたいだ交流みたいなものがない限りはかなり難しいかなと思っているところです。
 つまり、意識の格差みたいなものを埋めるためには、その地域の枠すらもどんどん出ていかなきゃいけない。でもそうなったときに、都道府県ごとの給与体系の違いとかが出てくるんですね。つまり、県をまたいだときに、制度として結びつきましょうとなったときにはそこの部分の、そこはあまり気にしなくてもいいかもしれませんけれども、差異が出てきて問題になるのであれば、そこも考えなきゃいけないなと思いました。
 あともう1点なんですけれども、これは今後の論点整理のところで、最近すごく気になるのが社会課題という言葉をすごく多用されているんですよね。文部科学省の中で、例えば探究一つ取ってみても社会課題にすごく寄っているんです。そこが僕はすごく違和感を覚えていて、例えばもっと基礎研究的な哲学だったりとか、文学だったり、もしくは数学だったり、例えばより理論に近いような物理だったりとか、当然社会とのつながりなどを理解するのはとても重要だと思うんですけれども、興味・関心がそこに強く向いている子たちに対してはちょっと風当たりが強くなってしまっているなと思っているのがとてもあります。
 以前もある発表会のときに、無理やりこじつけて社会課題と関連させて、とてもその子がかわいそうに思えて、先生から、学校からこういうものと関連させなきゃいけないと言われたと言われて、もっと自分のやりたい基礎的なところに没頭したいのにできなくなってしまっているところもあるので、社会課題という言葉が前面に出過ぎるのもいかがなものかと。学問的な問いだったり、そういうものに対しても価値を認めていかないと、長い目で見たときには、特に高校時代は好奇心がとても強いので、ぜひそちらのほうも考慮いただきたいと思いました。
 以上です。
【荒瀬主査】  ありがとうございます。今、岡本委員がおっしゃったことは、総合的な探究の時間で学校が持っていこうとする部分が、どうも地域を知るとか、地元を知るとか、そのこと自体はとても大事なんですけれども、生徒自身の興味・関心というよりも、まずは地域、地元があるというふうな感じで引っ張っていっているところが、令和答申に書かれていた同調圧力とか、そういったものともつながるような気が私もしておりまして、今おっしゃったことは非常に重要なことかと思います。
 石崎委員、お願いいたします。
【石崎委員】  よろしくお願いします。さっき御意見が出ていたところで、この論点の中で、やっぱり高校だけで考えられるものとそうでないものがあるというところは、私も1回目の会議のときにもお話しさせていただいたと思うんですけれども、特に論点1のところにつきましては、社会の一員となるために必要な能力はこれこれであると。高等学校教育ではこういう能力をつけるというのは当然あると思うんですけれども、その前段階として、義務教育段階ではこういう能力をつけて、それで高等学校教育段階でこういう能力をつけて社会の一員になるというような、そういう枠組みをつくるべきだと思うんです。だから高校教育だけじゃなくて、そういう段階的なところまで議論がないといけないのかなと思います。
 それについては、一番最後の論点のところでも、「大学入学者選抜を見据えて文系・理系のコース分けを実施する学校が」というようなところも出てきていますけれども、これも当然、大学入試という仕組みが問題になる部分もないわけじゃないので、そういうことも含めて、高校がもちろんこのワーキングの議論の中心になるのはもっともだと思いますけれども、その前後との関係というのをしっかり整理する必要があるんじゃないのかなと思います。
 以上です。
【荒瀬主査】  ありがとうございます。まさにその意味では、次回が義務教育ワーキングとの合同の会議でありますので、実は義務教育ワーキングは相当具体的に子供たちが何を学ぶかということについて深く議論が進んでいます。我々のほうのワーキングは、どちらかというと制度の問題であったりとか、あるいは実際に生徒たちにもっと選択を増やしたらどうなのかといったような、そっちの話になっていますので、ぴたっと今必ずしも合わないと思っています。これはこれでとてもいいと思っていまして、むしろ合同で会議をするときに、お互いの議論の違いを見る中で、お互いの議論からまた学び取って、我々も生徒が何を学ぶのかというのも当然考えなければならないですし、学習指導要領の在り方をどういうふうに考えていくのかということも当然議論していくことになっていくと思います。ありがとうございました。ちょっと大学と話をする機会というのはないので、そこのところはあれなんですけれども。ありがとうございます。
 冨塚委員、お願いいたします。
【冨塚委員】  千葉県教育委員会、冨塚です。ありがとうございます。先生方のお話を伺っていて、少し論点整理に関して申し上げたいことがございまして挙手をいたしました。
 まず初めに、先ほどから議論に出ています小中との連携の部分ですが、私もこの論点整理を見まして、高校生の抱える問題は高校になってから生じるものではないので、小中学校との連携の部分が、このワーキングの中では少し見当違いなのかもしれないけれど、そこを何か触れることはできないかなと思っておりましたら、青木先生ほか皆様からも同様の御意見が出ましたので、ぜひ検討していただければと思います。
 私、県の教育長として市町村教育長との意見交換をしておりますと、小中との県と市町村との連携、小中高の連携が非常に重要であり、まだまだ足りないなとしみじみ感じます。その辺のことも問題意識として入れていただけるとありがたいかなというのが1つございます。
 それから、先ほどから小規模校だけではなく、全般的にオンラインによる遠隔教育の環境整備のお話が出ていると思いますが、これについては、今後の論点ということで課題意識ということで書いていただいてはいました。受け手側のほうの教員の配置の緩和であるとか、単位で認めるというようなところを、小規模校とか山間部の学校に限らず見直していただけないかなという思いが強くございまして、ここを具体的に少し書き加えていただくことが可能であれば、具体的な問題点、すぐに取り組むべき課題として書いていただけるとありがたいかなと感じました。
 それから最後になりますが、一番最初の共通性・多様性のところでございますけれども、最初のところで、例えばですけれども、市民性の話であるとか、あるいは生涯学習者という視点というところが出てきますけれども、高校で身につけていただきたい能力というのは、ここにあるとおり社会で生き抜く力でございますけれども、その書き方として、例えば生徒自身が人生とは何か、なぜ働くか、なぜ学ぶか、自分は人間としてどう生きていくべきかというような問題意識を持って学業に取り組むというような、生徒が主語になった書き方みたいなものが可能であれば、そのようなことを加えていただけると、より生徒に寄り添った論点整理というか、議論の方向性が出せるのではないかと一つ感じました。
 私、社会に生きていくための力というのは、ここに書かれているとおりなんですけれども、以前に佐々木常夫さんという方の講演を伺ったときに、リーダーの要件というものは、幼稚園のときに先生に教わったことがきちんとできる人であるという言葉を伺いまして、これはリーダーだけに限らず、社会人として一番必要な大切なことなのではないかと思っております。幼稚園のときに先生に教わったこと、つまり、呼ばれたら「はい」と返事をする。挨拶ができる。「ありがとう」と言える。人に迷惑をかけない。かけてしまったら「ごめんなさい」が言える、そのようなことだと思います。そのようなことをきちんとできる大人が、まずは共通性とベースなのではないかなと感じておりまして、そのようなことを少し、そういうふうに書けということではないのですけれども、意識として、もし共有できたらと思います。長くなって失礼いたしました。
 以上でございます。
【荒瀬主査】  ありがとうございました。挨拶のことが論点整理にどう反映できるかというのはちょっと考えないといけないかと思いますが、ただ、今おっしゃった、どう生きていくのかとか、何で働くのかとかいったような、そういういわゆる価値観であったりとか、人生観であったりする「観」を養うというのは、現在も高等学校教育で非常に重要なことかと思います。それは多分キャリア教育ということに本来なるんでしょうが、キャリア教育という言葉が世間一般のキャリアと違う使い方を学校教育の中でしてしまっているので、そのためになかなかキャリア教育の本来の意味といいますか、学校教育におけるキャリア教育の本来の意味が生きてなくて、職業に就くための準備の教育をキャリア教育というふうに狭めて言ってしまっている面があるかと思うんですけれども、まさに今おっしゃいましたような社会で生き抜く力とは何なんだろうかという、こういうところを考えると、まさにどう物を見て受け取って、具体的に自分でどういう価値判断をして行動していくのかというようなことにつながるようなこと、これキャリア教育の重要な柱だと思いますので、ぜひそういった面は盛り込めればなということを思って伺いました。ありがとうございました。
 1つ質問をさせていただきたいんですけど、遠隔授業の際の受け手の教員の配置ということについて何か書き込めないかとおっしゃったのでしょうか。今、COREハイスクール・ネットワークでは、必ずしも教員でなくてよいということになっているんですけれども、ちょっとこれいろいろと議論のあるところかと思いますので、そのまますぐできることとして書けるかどうかというのは、ちょっと受け止めさせていただいて、事務局のほうで検討してもらいたいと思いますが、それでよろしいですか。
【冨塚委員】  はい。ありがとうございます。よろしくお願いいたします。
【荒瀬主査】  ありがとうございます。
 それでは、鍛治田委員、お願いいたします。
【鍛治田委員】  YMCAの鍛治田です。岩本委員の問いを昨日からずっと見ていて、答えがまとまらず、今からの意見も、皆さんの意見を聞きながら、迷いながらなんですが、現場の意見として幾つかお伝えできたらと思っています。
 1点目の論点整理のところで、進学率が99%とあるので、高校が義務教育にならないかと思っています。というのは、家庭や会社も日本国中が高校を出なければいけないという、高卒でなければいけないという価値観が植え付けられていますので、その価値観に多くの若者が縛られています。それがなくなることで多くの人たちが救われる。その価値感の打破が要るんじゃないかなと思っています。そうすると、学校の在り方がもっと自由になって、何度もここでも出ていますように、全日制・通信制・定時制の枠も超えやすいのではないかと思いました。
 2点目は、国家・社会のための必要な資質・能力についても語られていますが、国のための、経済発展のための人材育成をしてきていると感じておりまして、もう少し逆の発想で、子供たちから見た生徒の夢が実現できるような、それを社会が応援できるような、そんな発想もあったほうがいいのではないかと思っています。それには学校をつくっていくときに生徒の声を聞く、保護者の声を聞く、ここが要るかと思っていました。
 最後に、地域のところです。社会に開かれて、地域で生徒たち、子供たちを見守ることができればいいんですが、コロナ禍でますます、生徒の電車の態度が悪いとか、歩き方が悪いといったクレームがどの学校も増えているようです。地域が見守りじゃなくて監視になっているようなところがあって、やはり生徒と地域が、顔が見える関係が必要かと思います。
 私たちの学校では、学校がある場所だけではなくて、先ほど岡本委員が社会課題とおっしゃっていた視点と少し違いますけれども、学校として社会課題に、ソーシャルイシューに対応した学校になりたいと思っています。新入生の25%がOD(起立性調節障害)の生徒たちです。ですので、本校では公益財団法人や大学病院と連携して、週1回オンラインの健康講座をしたり、ウェアラブルデバイス、スマートウオッチで健康測定をして、半年ごとに筋力測定や自己効力感を調べて分析をしてもらったり、親子別のピアサポートグループやキャンプなどをして人間関係を構築したり、社会性を、仲間づくりを行っています。それが生徒たちの学習意欲につながる、そういった取組を、また学校経営推進費という大阪府の補助金をもらって行っています。これらのようにソーシャルイシューに取り組むことで学校の特色になるのではないかと思います。
 少子化の地域のところでも全寮制でされていらっしゃるところがあったように見受けられますので、そのようなソーシャルイシューの取組も1つあるのではないか。また論点整理の中で、通信制課程の中で社会性や人間関係構築をどうするかといった点がありましたので、こんなこともヒント、例になればなと思いました。
 以上です。
【荒瀬主査】  ありがとうございます。今、最後におっしゃいました社会課題というのは、岡本委員とはちょっと角度が違ったお立場からの御発言であったかと思います。ですから、まだまだもっと議論をして幅広く、どういったことを今後論点として置いていくのかということをワーキングとしてもしっかりと見つけていく必要があるなということを思いました。
 それから、国家・社会のお話ですけれども、先生おっしゃるように子供たちの側からの発想での文言というのは非常に大事だと思いますし、まだまだ十分ではないですけど、生徒の声も聞きたいということで来てもらって、1回だけですけど、実際やったのは。お聞きすることをしておりますが、一方で、教育基本法の第1条には、まずは人格の完成でありますけれども、その後には平和的な国家及び社会の形成者というのが明記されていますので、ここのところの兼ね合いですよね。ただ、人格の完成がまず書かれているということがありますので、やはり生徒を主語にするという発想はとても重要であると思います。
 それから、すみません、一々申し上げて大変申し訳ないですが、高校が義務教育になったら自由度ってなくなりませんかね、逆に。今は高等学校、それこそ令和答申でスクール・ミッションに基づいてスクール・ポリシーを各学校がつくっていくと。その中には相当幅広で、学習指導要領も大綱であるということで、中学校まで、義務教育までの学び直しということをしっかりやっていく学校があってもいいということになっているわけですので、逆にこれが義務教育となると、教育課程が全国統一されていくというような面も十分考えながら議論していく必要があるのではないかなというようなことを思いました。また、先生、よろしくお願いいたします。話合いを続けていきたいと思います。
 すみません、お待たせしました。沖山委員、お願いいたします。
【沖山委員】  時間の限られたところ、すみません、よろしくお願いします。
 今の高等学校の義務教育化云々というのは非常に興味深く拝聴しました。高等学校段階を義務教育にするかどうかということは、そういう発想がそもそも私になかったので、大変興味深いんですけれども、でも同じようなことだと思いますけれども、少なくとも高校に進学した生徒がきちんと卒業にこぎ着ける、全ての生徒が卒業していくということは必要なんだと思っています。
 定時制・通信制においては、特に中途退学率も非常に多いわけですけれども、本人の資質や努力の問題にされて卒業できない生徒が一定程度いてもやむを得ないんだと。セーフティーネットでありながら、そこからこぼれていく生徒がいるけれども、これは今の制度の中ではどうしようもないんだという感覚が学校の一部にはあるかもしれないんですけれども、事実上99%以上の生徒が進学しているという状況の中にあって、やっぱり高校に入学した生徒が卒業していく、卒業にちゃんと至るように支援をしていける学校の制度にしていくということは必要だということは間違いないと思っています。そんなことを感じながら、今お話を伺っていました。
 あとは、先ほどの岩本委員の御提言についてだけちょっとコメントも、感想を申し上げたいと思っているんですけれども、岩本委員がおっしゃった少子化が進む地域における、あるいは中山間地における小規模化された学校の課題について、具体的な提言として地域資源の活用とか、遠隔・通信活用とか、越境・留学活用ということを2ページでおっしゃいましたけれども、私も全面的に賛成です。これが具体的にどうするのかということについてはいろいろな意見があるかもしれませんけれども、限られた地域、それから限られた学校の中にあっても広がりを持った学習ができるような仕組みをつくっていくということが必要だと思っています。
 その点についていう、論点整理案の8ページには、「進学した高等学校の特性等によって生徒の進路が過度に固定化されることなく」というところですね、本当にそのとおりだと思うので、では具体的にどうするのかということなんだと思っています。1点だけ申し上げると、これも論点整理の1ページ目にありますけれども、「遠隔・オンラインと対面・オフラインの最適な組合せを検討することなどが提言された」。ここにありますけれども、そのとおりで、大事なことは、では遠隔・オンラインというのが対面・オフラインを補うようなものなのではなくて、遠隔・オンラインが対面・オフラインと全く同じような価値を持っている、意味を持っている、そういう学習の手段にならなければならないと感じています。そのためには、例えば高等学校における授業への出席とはどういうことなのか、履修するというのはどういうことなのか、こういったことをもっと大胆に見直していくということが必要かなと思っています。
 岩本委員の提言の一番最後のページに投げかけがありましたけれども、私は、あれこれの問題について具体的に議論していくことが大事だと思っているんですけれども、荒瀬主査も先ほどおっしゃっていましたけれども、やっぱり私たちのワーキンググループの価値というのは、大きい目標が何であるかというか、どこに向かっていくべきかということを見失ってはならないと思っています。その辺りを、もうちょっと論点整理の中でも強く打ち出していただければなと感じています。
 当然大きい目標というのは、子供たちの社会的・経済的な自立であるとか、個別最適な学びの実現であるとかということだと思っているんですけれども、そのためには具体的に幾つか報告の中でもさせていただきましたけれども、こういう仕組みがあればとか、今認められていない仕組みをどうやって打開していくのかということをもっともっと議論したいなと感じています。
 以上です。
【荒瀬主査】  ありがとうございました。履修の話が出てきますと、本当にこれ相当いろいろと御意見がまた出てくることかと思います。履修主義か修得主義かという話は、これもしかし、必ずしっかりとやらなければならない話かと思います。ありがとうございました。
 それでは続きまして、篠原委員、濱田委員。篠原委員、まずお願いいたします。
【篠原委員】  ありがとうございます。NHK学園、篠原でございます。
 多少感想めいたことになってしまうかもしれないんですけれども、お許しいただければと思います。一言で申し上げると、学校を開くという言葉が正しいかどうか分かりませんが、地域であれ、今日教えていただいた八代工業高校の産官との連携であれ、学校が今まで自分たちだけで閉じた空間、あるいは閉じた環境の中で行っていた教育というのを、高校段階は次の社会、あるいは進学というステップにつながるわけですから、一番強く求められているのが学校を開いていく、そして、その次のところにスムーズに生徒たちも教員たちもつながっていけるような意識を持っていくということがとても大事だと感じます。
 マインドセットという話もありましたけれども、先生方、指導要領で10年前に決まったことをコツコツと伝えているという、これまでの学校ではないことを急激に日本全国で変えていくというのは本当に大変なことだと思いますし、その意味でなんですけれども、多少今回のいろいろな提案、あるいは改革というのが、少しそれは行き過ぎなのじゃないかと言われても、ちょっと前へ進むべきなのではないかなということを個人的には思います。
 そうでないと、現場の隅々までそのことが伝わっていくのにまた時間がかかっていく。今の世の中、様々なことが言われているわけで、理系・文系だって恐らく産業界から言わせれば、もうナンセンス、理系でとどまっているような発明ですとか、そういう課題ではないんだということは言われているわけで、それがまだ大学入試にも残り、それが高校にも残っているという現状は、恐らく社会に出た人たちにとってはまどろっこしい現状なのではないかなと思います。
 その意味でも、岩本委員からの御提案というのは、ぜひ幅広にいろいろな形で実現できることが必要かなと思いました。その結果、学校を開くことによって、先ほどのキーワードにもありましたけれども、同調圧力という今の子供たちがとても重く感じている。そのことが例えば不登校のように、いろいろな形で社会にある意味訴えている状況というのも改善されていくのではないかなと感じていますので、どのようにまとめられるのか分かりませんが、論点整理の中に多少なりとも入れていただけたらありがたいなと思いました。
 以上でございます。
【荒瀬主査】  ありがとうございます。学校を開くというのは、とてもすてきな言葉を教えていただきました。ありがとうございました。少し行き過ぎだと思われても言うべきことは言っていく、考えたことを言っていくというのは大事だということも非常に重要かと思いました。
 それでは、濱田委員、お願いいたします。
【濱田委員】  ありがとうございます。私は篠原委員と全く同感でして、私の思いを全て篠原委員が今言ってくださったと思っています。それと同時に、私自身は高等学校の学校を開く、それから外の風を入れる。まさしく今日の話にあった外部人材の確保ですとか、外部人材をどれだけ入れられるのかという、入れて、外の力を借りながら変えないと、学校は今以上に開くということは難しいだろうと思いますし、子供は非常に多様になっているんですけれども、一方で教員というのは普通というか、多様じゃない人たちが教員になっている。言い方がおかしいかもしれませんが、そういう状態じゃないかと思うんです。
 多様な現状の中、多様な子供に多様に接するというのが非常に難しくて、それで先生方も詰まっていたり、しんどくなったり、ちょっと職場を投げ出しそうになったりというような状況が起こっているんじゃないかと思います。
 今回の議論の中に、ぜひ外の力を借りる、いわゆる開かれた教育課程を実現するためにも外の力をどのように取り入れて学校改革を行っていくのか。それから制度的にもどこまで柔軟にできるのかというようなところを今まで以上に議論をしていきたいと考えています。今村委員の、そして今回の岩本委員の提案にも私は大賛成で、小規模校対策が、ひいては全国の高等学校への課題解決策として還元できると信じています。
 以上です。
【荒瀬主査】  ありがとうございました。
 時間がだんだんなくなってまいりまして、今、塩瀬委員と田村委員が手を挙げてくださって、今村委員も手を挙げてくださっています。
 では、塩瀬委員、今村委員、田村委員の順でお願いしたいと思います。田村先生、最後に全体を見ていただいて、またまとめのほうもお願いできればと思います。
 では、塩瀬委員、お願いいたします。
【塩瀬委員】  ありがとうございます。京都大学の塩瀬です。いろいろな御提案ありがとうございます。全面的に前に進むといいなと思います。
 先ほどの岩本委員の御提案の中でも動かすことがすごい大事だなという中で、先ほど高校も99%なんだから義務教育化というのがちらつきながらも、そうすると、余計柔軟に動かせないのではないかというような懸念も同時にあると伺ったので、制度的な義務教育という形で、しっかりといろいろな選択肢があることを下支えするというところにみんなが協力するというのがあればいいかなと思ったので、そういう意味でいうと、岩本委員がおっしゃっていたみたいな都道府県立で各自治体が実際に運営するという点でいうと、今でいうとPFIに近いのかなと思ったんです。民間の予算とかということに対して、自治体自体が運営すると考えていったときに、予算的な部分と実際の運用を切り離していって、各自治体ごとの運用の自由度というのをしっかり残すということが重要だなと。
 そのときに、先ほど制度的な面でもし弊害があるとか、動きにくいというのがあると、さっきの地域留学とかというのを考えたときに、教育課程の途中で移動することが難しくなったりするというのは留学時期とかにも関わると思うので、そこら辺が、例えば授業の単位制ができていたり、授業期間がセメスターから、さらに言えば、大学でもクオーター制を導入することによって海外留学がしやすくなったりとかありますので、地域留学自体もしやすくなるように、全体として、例えば足並みをそろえるとか、極端な話、越境の日というのを毎週水曜日にしておいて、水曜日はどこへ行って学んでもいいぞぐらいのことをいっせーのーでやると、すごく動きやすくなるのではないかなと。出やすくもなるし、受入れやすくもなるというふうな構えが全ての学校にあれば、生徒は動くものである。むしろ自分たちで選べるということを常に担保することが大事かなと思います。
 先ほど論点の中にも、今回18歳成人で大人になるということを高校側が真剣に受け止めるというところも論点の中に掲げていただいていたかと思うんですけれども、やはり大人を前提とした場合に起こることは何かというと、選択肢を渡すのではなくて、選択肢がしっかりと並んでいて、選ぶことというのは本人に任せるということだと思うんです。
 現状、世間で言われている個別最適な学びってほとんど個別最適な学びに僕はなっていないのではないかなと思いまして、それは何かというと、最適というのを決めるのは大人や学校側が勝手に決めていて、本人に提供することの話ばっかりしていて、選ぶ本人自身は、本当にそれで学んでいるのかとか、本人自身はそれを最適だと自分で自覚してるのかとかという、本人の目線で個別最適な話がなされていないと思いますので、私たちはどちらかといえば選択肢を提供し、その中から選ぶのは本人に委ねるというところが大事だと思うので、足かせになっているような制度があるならば、それを消す、どけていくようなことが私たちにとって必要なのではないかなと思います。
 その中で言うと、先ほども出ていた、先生がもう少しそれに対応できるような柔軟な指導方法というのを身につけておいていただけるといいのではないかと。先ほど岩本委員もおっしゃっていたオンラインの双方向というのは、前回の委員会のときに今村委員が御提案されていた双方向の場をオンラインでつくるとかというのもそうなんですけど、現状、教員の採用試験の中にオンライン双方向授業がつくれることって入っていないと思うんです。そういう意味でいうと、教員養成課程の中でも既にオンライン双方向の場があれば、先ほど岩本委員や前回の今村委員がおっしゃっていたような場をつくるという先生が増えてくると思いますので、そういった制度自体の変更が私たちとして一番できる最善の手ではないかなと。現状、義務教育課程と高校の連携なんかは、大分の安心院高校みたいに小中高一貫の中での教育のチャレンジとかもありますので、多分そういったところがもっといろいろな全国に広がっていくとよいなと感じます。
 以上です。
【荒瀬主査】  ありがとうございます。今、塩瀬委員がおっしゃった個別最適な学びが本当に個別最適な学びになっているのかというお話なんですけど、個別最適な学びは令和答申の中に、実はここのところがなかなか伝わっていない面があるんですけれども、指導の個別化ということとともに学習の個性化というところを強調していまして、それは児童生徒自身が自分の学びを深めていけるようにするために、そこに至る過程は教師がちゃんと支援するということなんですけれども、そこのところがなかなか難しい面があるのかなということを思いました。ありがとうございました。
 では、今村委員、お願いいたします。
【今村委員】  ありがとうございます。今、塩瀬さんがお話しになったこと、岩本委員が提言されていることに重なる部分なんですけれども、個別最適な学びと協働的な学びを支えるために、どのような支援を国と設置者が行っていくのか、そこにどんな責任があるのかということについて、この論点整理の中でこうあるべきという理想を掲げるだけではなくて、設置者と国の役割についても明確にすべきなのではないかと思います。
 一番の問題は、自治体ごとに、または設置者ごとに、学びの伴走者をファシリテーター化していくということのためのリソース、支援者がとても調達できない。学びの在り方を一気に変えてファシリテーターにしていくのであれば、全然違う教授法といいますか、指導法を獲得していかなければいけない。それを獲得するための国と設置者の役割を明確にするということをこの論点整理の中でも明記するべきかなと思っています。
 そして、2つ目なんですけれども、全・定・通の望ましい在り方の点に触れられていることの中に、前の会議の中でもお伝えした点なんですけれども、通信制がここから段階的に制度的に変わっていく中で、どう位置づけていくのかという長期の議論ももちろん必要なんですけれども、現状どうなっているかの実態調査についても、もうちょっと見える化すべき。特に一体何歳の人たちが何年ぐらいいて、それは本当に学べているのか、学べていないのか。ただいるだけで卒業というていになってしまって、卒業できなかった人はどれぐらいいるのかなど、在籍している人たちの追跡調査やキャリアの実態が見えてきているデータが今のところないと認識しています。なので個々ですね、これはもしかしたら現通信制の方々に協力をしていただくのは難しい調査になるかもしれないので、通信制学校を卒業した方々に対する大規模調査という形でもいいと思うんですけれども、不登校が増えてから、実質的な不登校特例校状態になっている通信制高校を選んだ人たちが、この10年どんな未来を獲得しているのかということ、どんなふうに学んだのかということを文部科学省が旗を振って調査を行うということが必要なのではないか。そうじゃないと、何の手だてが本当に必要なのかということが見えてこないので、この議論がべき論だけであまり前に進まないんじゃないかということを大変危惧しています。
 あともう一つ、これもこの審議会なのか、義務教育のほうなのかがちょっと分からないんですけれども、ここに書いてある、これからの社会を生き抜く人材を育てていくには、高校生になってからでは、自分の頭で考える子供に戻そうとしても取り返しがつかないぐらい、やっぱり誰かの正解に合わせるということを十分獲得してしまっている子供たちに高校の先生方がすごく御苦労されているなということを見ている中で、高校受験のときに提出させる内申書の在り方、そして去年から変わった通知表、中学校の通知表の在り方の、特に学びに向かう態度のところの評価の仕方が、どうも学習指導要領の総則には何回手を挙げたとか、そういうことで決めるのではありませんみたいなことは、そのようなことがたしか書いてあったと思うんですけれども、どうも中学校の先生方がそこが分からなくて、どうしても態度の評価というところが、先生に好かれるような態度を生徒たちに強要してしまっているような学校もあるように、保護者は少なくとも思っている方が多いように感じられます。ですので、そうじゃないんだということを、高校からの学び、求めているのはそこじゃないんだということをどのようにか発信していかないと、高校入試までの間の中学3年間が内申書にどう書かれるのか、びくびくしながら暮らすということになってしまってるところを、高校ワーキングとしてもどう捉えるかというところは論点にしていくべきかなと思いました。
 私からは以上です。
【荒瀬主査】  ありがとうございました。次回の合同会議でもまた御意見をどうぞと思います。それとファシリテーターを育てるのは、国と設置者の責任というのも大きいと思うんですけど、教員養成の段階、また、研修をどのような形でやっていくか。研修については国とか設置者となってくるんでしょうけど、全体で本当に考えていかなければならないなということを思いました。ありがとうございます。
 では、田村委員、お願いいたします。
【田村主査代理】  ありがとうございます。田村でございます。まとめになるかどうかは分かりませんが、3点述べさせていただきます。
 1点目は、高等学校の探究の課題が社会課題に寄ってはいないかという、確かにそういうところがあるのではないかと思います。高校生たちが将来、自分の人生と社会のつくり手として未来を構想し切り開く、そういう力をつけていくためには、たとえ身近な社会課題から入ったとしても、学習が終わったときに一段上の問いへとたどり着いていて、その問いが学問的な追求であったり、あるいは社会で自分がどのように貢献していくのかと、そういう一段上の問いへと結びついていくような探究というのが求められると思います。それが1点目です。
 それから2点目ですけれども、2点目と3点目はほとんど一緒なんですけれども、先ほど今村委員がおっしゃったとおり、今、急激に少子化が進んでいる中で、様々な試みが地方で行われているという実態をこのワーキングでも様々に御発表いただいたところだと思います。
 そこで、国としては、そういう地方自治体が動きやすい、そういう自律性・裁量性を担保しながら、そして地方の力だけでは実現し得ないリソースであったり、あるいは地方の学校や教育委員会をつなぐネットワーク、そういったところで重要な役割を果たしていく必要があるのではないかと考えました。
 そして、最後に3点目ですけれども、大きな問題意識としまして、去年の出生率が、2022年77万人という出生数、これが15年後、2037年には高校生になってくると、そのときにどれだけのリソースを教育に割けるだけの国力があるのだろうかということを非常に憂慮いたします。
 岩本委員がどれぐらいのスピード感で、規模でこの改革を進めていったらいいのだろうかという問いを私たちに投げかけてくださったのですけれども、そういう15年後の社会を見据えながら、そのときに、そして今現在あるだろうというリソース、これを見据えながら、現実的にどのようなロードマップで前に進んでいけるのかという見通しも我々は立てながら考えていく必要があるというように考えました。
 以上です。どうもありがとうございました。
【荒瀬主査】  ありがとうございました。特に最後の点は非常に重要なことかと思って伺いました。あと今後、論点整理をしてまとめていく際に、さっき今村委員からも出ましたけれども、実は我々大学入試ということを意識するんですけれども、高校入試についてはあまり言っていないと思っています。それから令和答申に書かれているスクール・ポリシーという、これは前の高校ワーキングで田村先生がいろいろと具体的にお示しくださったわけですけれども、これについてももっとしっかりとしたものにしないと、一応つくりました、それをずっと続けています、見直しはしていません、何だったかもう忘れましたみたいな感じになっては何にもならないので、ここの部分もしっかり考えないといけないし、スクール・ポリシーと教育課程というのは、当然のことながら非常に深い関わりがありますので、そうなってきたときに学習指導要領についても今後は考えていく必要があるかなということを思いながらお聞きしておりました。ありがとうございました。ちょっとまだ言い足りないという方はたくさんいらっしゃると思いますので、繰り返しますが、ぜひ御意見を事務局のほうにお寄せいただければと思います。
 それでは、ちょっと延びてしまっていますが、今日はここまでとさせていただきたいと思います。
 次回につきまして、松田参事官補佐、よろしくお願いいたします。
【松田参事官補佐】  次回のスケジュールでございますが、先ほど荒瀬主査から御説明ありましたとおり、2月20日13時から15時で、論点整理に向けた議論を予定しておりまして、また、米印で記載させていただいておりますとおり、特別部会と義務教育ワーキング、高校教育ワーキングの合同開催となる予定でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 以上でございます。
【荒瀬主査】  ありがとうございました。ですからむしろ我々の中の話をするというよりも、義務教育について見ていただいて、いろいろと意見交流ができればいいなということを思っております。よろしくお願いします。
 では、本当に長引いてしまって申し訳ありませんでした。本日これで終了いたします。ありがとうございました。
 
―― 了 ――

※会議終了後の追加意見
【岩本委員】
【濱田委員】
【塩瀬委員】

お問合せ先

   初等中等教育局参事官(高等学校担当)付