高等学校教育の在り方ワーキンググループ(第4回)議事録

1.日時

令和5年1月12日(木曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省内会議室 ※オンライン会議にて開催

3.議題

  1. 「社会に開かれた教育課程」、「探究・文理横断・実践的な学び」の推進について
  2. その他

4.議事録

【荒瀬主査】  皆さん、おはようございます。新しい年になりまして、最初の会議ということで、ぜひ今年もまたよろしくお願いいたします。
 では、ただいまから中央教育審議会初等中等教育分科会、個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実に向けた学校教育の在り方に関する特別部会、高等学校教育の在り方ワーキンググループ(第4回)を開催いたします。御多忙の中、御出席いただきまして、ありがとうございます。
 本日の会議もこのような形で、新型コロナウイルス感染症の感染防止の観点からウェブ会議システムによる開催とさせていただきます。
 また、傍聴者の方につきましては、YouTubeで御視聴をいただいております。なお、本日、報道関係者から録音及び写真撮影の御希望がございました。これを許可しておりますので、委員の皆様におかれましては、御了承いただきたいと思います。
 では、本日の会議、配布資料等につきまして、事務局から御説明お願いいたします。
【松田参事官補佐】  皆様、よろしくお願い申し上げます。
 本日の会議の開催方式でございますけれども、主査から冒頭、御紹介ありましたとおり、ウェブ会議システム、Zoomによる開催とさせていただいております。委員の皆様方におかれましては、毎度のお願いとなり大変恐縮ではございますが、ウェブ会議システムを利用する観点から、御発言に当たっては、インターネット上でも聞き取りやすいよう、はっきり御発言いただくなどの御配慮をいただく。御発言の都度、名前をおっしゃっていただく。御発言以外はマイクをミュートにしていただく。御発言に当たっては、「手を挙げる」ボタンを押していただき、御発言の後は「手を下ろす」ボタンを押していただくなどの御配慮いただけるとありがたく存じます。御協力のほどよろしくお願い申し上げます。
 本日は、「社会に開かれた教育課程」、「探究・文理横断・実践的な学び」の推進を議題といたしまして、兵庫県教育委員会と兵庫県立加古川東高等学校からのヒアリング、その後、宮崎県立宮崎東高等学校からのヒアリング、その後、今村委員からの御発表をいただく予定でございます。その際の資料を、資料1-1から資料3で配布しております。また、参考資料2で、検討を進めるための参考資料というものをお配りしておりますけれども、今回、これまでの議論を踏まえまして、教員や特別支援教育関係のデータ等を追加しておりますので、適宜御参照いただけたらと思います。資料について、不足等ございましたら事務局にお申し付けいただければと思います。よろしくお願いいたします。
【荒瀬主査】  ありがとうございました。今、松田参事官補佐から御説明がありました、参考資料の追加についてなんですが、お手元御覧いただけますでしょうか。113枚目の資料を御覧いただきますと、本日御参加いただく兵庫県教育委員会が設置しておられます、阪神昆陽高等学校の取組が掲載されています。この学校は定時制高校と特別支援学校の高等部を同一敷地内に並置して、両方の学校の校長をお一人の校長先生が兼任していらっしゃるところでありまして、高等学校教育と特別支援学校高等部の教育との間の交流や共同学習を積極的に進めておられるという大変すばらしい取組をなさっていらっしゃいます。
 昨年末にありました、前回の会議でも、そういったお話も委員の皆さんから出ていたと思うんですけれども、本日の議題とは離れますけれども、全国的にも珍しい非常に優れた取組をなさっていらっしゃるということで、御紹介をさせていただきました。
 では、議事に入りたいと思います。先ほど松田さんのほうから御説明いただきましたように、本日は2校の御発表、そして、兵庫県教育委員会にも来ていただいておりますが、一方で、宮崎県立宮崎東高等学校のほうからは、生徒さんにも御参加いただくということで、非常にありがたいと思っております。そして、今村委員から御発表もいただくということで、盛りだくさんとなっております。
 それで、私のほうでタイムキーピングを、今回はいつも以上に厳密にやっていきたいと思っておりますので、御発言が十分していただけないケースというのも出てくるかと思います。委員の皆さん同士の御議論というのは少し難しい状態でありますし、御意見等をおっしゃっていただけないケースがたくさん出てくるかと思いますので、ぜひ事務局のほうにメールでお知らせいただくなどのことをお願いしたいと思います。あらかじめ、まず、この点、御了解を得たいと思います。よろしくお願いいたします。
 では、最初、兵庫県教育委員会と、加古川東高等学校からヒアリングをお願いしたいと思っています。兵庫県教育委員会からは、高校教育課長の新谷様、加古川東高等学校からは、校長の志摩先生に、それぞれ御出席をいただいています。お二人、大変お忙しいところ、御出席いただきまして本当にありがとうございます。
 では、御発表いただきます。お二人合わせて25分程度ということで、これは本当に申し訳ありませんが、25分程度でまとめていただければと思います。よろしくお願いいたします。
【新谷課長】  兵庫県教育委員会高校教育課の新谷でございます。
 私からは、本県におきまして、令和2年度以降、3年間続けてきました兵庫型STEAM教育の概要につきまして、御報告いたします。よろしくお願いします。
 今回はSTEAM教育実践モデル校事業、STEAM教育の普及についてお話をします。
 令和2年度以降3年間、STEAM教育実践モデル校事業を展開してきました。本事業の目的は、文理融合型のカリキュラムを開発し、独創的発想と、卓越した技術の知識を活かしまして、新たな価値や課題解決への道を切り拓く人材を育成することを目的に、モデル校3校、そして協力校1校を県下にバランスよく指定し、カリキュラム開発に取り組んでまいりました。事業目標は、文理融合型のカリキュラム開発、そして、STEAM学科の設置、分離型カリキュラムマネジメントの全県展開です。
 右側を御覧ください。事業開始当時、概念が定まっていなかったSTEAM教育をモデル校に説明した際の資料です。兵庫県では、S、T、E、A、Mに加えまして、EにEnglishを追加することで、英語を駆使しながら探究活動に取り組むこととしました。探究活動では、中段にあるとおり、先進市等で実践している仮説検証型の活動と、生徒個人の発想力に重点を置いた課題解決型の活動が容易になるように意識するとともに、探究活動をカリキュラムの中心に位置づけて進めるようモデル校に求めました。
 また、STEAMならではの探究活動を意識させるために、それぞれの活動をアートとリベラルアーツの軸、そして理解と応用・活用の軸からなる座標に位置づけることを意識して進めてまいりました。
 事業は3年間計画でしたが、計画策定直後の令和元年度末に、新型コロナウイルス感染症が広がりまして、事業スタートから大きな変更を余儀なくされました。特に、STEAMの先進国であり本県と姉妹提携しています西オーストラリア州への教員海外視察の中止は残念でしたが、中学生・保護者向けの体験会や、生徒による発表会、講演会や特別講義等につきましては、人数制限を設けたり、オンラインを活用するなどしまして、可能な限り、実施してまいりました。なお、当初の計画では、令和5年度にSTEAM学科等の設置を予定しておりましたが、計画の変更に伴いまして、現在は、令和6年度の新学科設置を目指しているところです。
 次に、モデル校の取組を充実させるための県の支援を御紹介いたします。ひし形の1、2にありますとおり、モデル校3校でパソコンや工作機器を効率よく活用しながら、グループワークができるSTEAM ROOMルームを整備しました。そして、その中には、3Dプリンター、ドローン、レーザー加工機、ヒューマノイドロボット等の機器を、取組内容に応じて設置しました。
 ひし形の3におきましては、兵庫県STEAM教育の特徴として、E、Englishを加えたわけですが、この探究活動を進めるために、英語を母国語とする外国人をネイティブ教員として正規採用し、全てのモデル校に配置しています。
 右側のスライドのひし形の4ですが、モデル校と協力校による情報交換会を年間3回開催しています。そして、各校の管理職や主担当者等が、各校の取組を直接見学したり、進捗状況や課題を報告することで、県全体での共通認識を図っているところです。
 ひし形の5にありますように、STEAM教育充実のためには、教員研修が非常に重要と考えています。この中で、実施できなかったオーストラリア研修の代替としまして、令和2年度には、当時、メルボルン大学に勤務されておられました、真田理史先生に講師なっていただきまして、オンラインでの研修会を開催し、オーストラリア型のSTEAM教育への理解を深めることとしました。
 さらに、実施の見通しが立たなかった海外研修の代替として、昨年11月にモデル校、協力校から各2名が参加し、東京での教員研修を実施しました。東京大学大学院情報学科主催の東京大学制作展2022を見学し、教員が、出展者である大学生や大学院生に直接、制作意図を聞くとともに、運営プロデューサーの大学院生等と意見交換を行いました。また、STEAM教育に精通しておられる東京大学の山内教授、杉山特任研究員との懇談や、さらには、自走ロボットを実用させている株式会社ZMP本社で見学・懇談をし、STEAM教育の可能性と課題等について、最新の情報を得ることができました。この東京研修を通じて、今後、目指すべき文理融合型の学びの必要性に関する理解が深まったかと考えています。
 ここからは、モデル校、協力校での主な取組を紹介します。ひし形6にありますとおり、STEAM教育を推進する上で、企業や自治体等との連携は必須と考えておりまして、企業の人材を指導者に招き探究活動等を進めています。昨年度、特に企業関係者とモデル校の担当者がSTEAM教育に期待することや学校と企業との連携の効果と課題について、パネルディスカッションを行いました。この様子を、県立高校に公開しました。
 右側のひし形7においては、中学生や小学生及び保護者に対しての広報を進めるために、リーフレットの配布や、紹介動画のホームページ掲載等の取組を挙げています。今年度は、モデル校の公開授業や体験会等を行いまして、モデル校以外の教員が実際にSTEAMを体験できる場を設けたり、オンラインによる生徒会発表会を開催しまして、その取組を教員等に広く公開しました。
 各モデル校にはコンセプトがあります。兵庫高校は、地元自治体等と連携しまして、データサイエンスに軸を置いた授業の展開や探究活動を充実させているところです。加古川東高校では、長期休業中に多様な特別講座を開講しまして、そこで習得した内容を探究活動に活用したり、平常授業に取り入れるなどしています。また、豊岡高校では、平田オリザ氏が学長を務めます、兵庫県立芸術文化観光専門職大学の協力を得ながら、演劇的手法を取り入れたカリキュラムを開発しています。協力校の神戸高校には、本県理数教育の先進校としまして、助言、情報提供に努めてもらっています。
 本事業につきましては、高校教育課のホームページで情報発信しています。今後もホームページを充実させていきたいと考えております。また、文部科学省が昨年度、開設されましたSTEAM教育のホームページにおきましても、本県の取組を紹介していただいています。ありがとうございます。
 ここからは、STEAM教育の普及と題しまして、今後の方向性について報告します。本県では、新学科の設置を含む県立高校の教育などに関する具体的な取組については、実施計画に基づいて進めています。一昨年3月に第三次実施計画を策定しましたが、その中で、前年度の本県における有識者会議での提言や、国の法令改正を踏まえ、普通科・新学科の本県独自の実施形態としまして、STEAMに関する学科を設置することを明記しました。現在、モデル校事業での成果や課題等を踏まえまして、令和6年度のSTEAM学科設置に向けた準備を進めているところです。
 これはSTEAMに関する学科のイメージを示したスライドです。新たな価値を創造する力を育成することを目標としまして、企業を含むコンソーシアムの構築ですとか、探究に特化した科目を、本県では7単位以上設定することとしています。さらに、ステップ1からステップ3にありますとおり、実社会での先端技術を学んだ上で、モデルやプランの形で具現化を試みる探究活動を学びの軸に置きたいと考えています。もちろん全ての県立高校がこのようなSTEAM学科を設置できるではありません。しかし、STEAM教育を牽引する複数の県立高校に、地域的なバランスを考慮しながら設置したいと考えています。また、学科設置校以外におきましても、引き続き、モデル校で開発したカリキュラムを取り入れながら、全県でSTEAM教育を普及していきたいと考えています。
 私からの報告は以上です。ありがとうございました。
【荒瀬主査】  ありがとうございました。続きまして、加古川東高等学校から志摩先生、よろしくお願いいたします。
【志摩校長】  それでは、兵庫県立加古川東高等学校校長の志摩と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
 本校では、STEAM教育導入の以前から長年、探究活動を推進してきました。本日は、まず、その取組を紹介した後に、STEAMの取組について説明させていただきます。
 まず、本校の紹介です。本校は、今年度創立98年目を迎え、各学年、普通科が7クラス、理数科が3クラスで、約950人の生徒が在籍をしています。生徒中心で企画運営する体育祭や文化部発表会、人権ホームルームなど、教育活動全般を通じて生徒の主体性を育むよう努めています。右側、海外との交流ですけれども、アメリカ研修を長く続けてまいりましたが、コロナ禍でこの3年は中止としております。一方、台中女子高級中学とはオンラインで交流を続け、国際共同研究も行っているところです。また、下、6年前から探究活動を全生徒で展開し、指導体制も全教員が関わる形にしておりまして、今では本校の特色の1つとなっています。卒業生対象の調査でも、本校教育の中でよかったことという問いに対して、8割以上の卒業生が探究を一番に挙げるまでになっています。
 本校はスーパーサイエンスハイスクールの指定を4期17年にわたっていただいておりまして、課題研究を含めた特色ある科目の研究開発については、このSSH事業が大きなきっかけとなっています。SSHでは、1期、2期と進むにつれて、徐々にその対象を全校生徒に広げながら研究開発を進めてまいりました。そして、3期目が始まった6年前から、全校生徒、各学年320名が3年間を通して探究活動に取り組むようになりました。今年度から4期目が始まっておりますが、学年、学科に関わらず、好奇心を持ち、挑戦することでイノベーションを起こすことができる人材育成を目指しています。その大きな柱の1つとして、STEAM特別講座を位置づけています。
 本校では、従来から通常の授業においても、探究的な活動を取り入れてきました。御覧いただいている上の2つ、家庭科とか保健体育科については、10年以上継続して取り組んできたものです。加えて、下、地歴公民科では、STEAM特別講座の取組の一部を授業に導入いたしました。内閣府が提供するRESASと呼ばれるビッグデータを可視化するツールを用いて、加古川市と人口規模等が似た市等を比較し、課題を見つける授業にしております。こういった通常授業での取組と、探究の時間との関連づけを今後さらに増やしていきたいと考えています。
 さて、本校では、令和3年に県の指定をいただきまして、STEAM事業を開始するに当たって、本来の組織を改編いたしました。それまでは理数科SSH推進部と教育企画部という部署がそれぞれ独立していましたが、それを教育企画部として統合し、合計11名という校内で最大の部署としました。SSH、普通科探究、STEAM教育、人権教育など、本校の特色を担う部署となっておりまして、お互い連携しながら取り組んでいます。また、理数教員に偏らず、国、英、地歴など、様々な教科の教員が携わることで、教科との連携も図りやすく教科会議等での検討もしやすくなりました。また、研修についても教育企画部が中心となって開催をしています。STEAM事業で導入した3Dプリンターやレーザー加工機などの新しい機器や技術に触れる研修会を実施するなどしています。
 さて、本校では、県からSTEAM教育実践モデル校の指定を受ける際に、どのような形で実施していくかについて随分議論をいたしました。そこで、原点に戻って考えようということで、いわゆるグラデュエーション・ポリシーと照らし合わせて、STEAM事業の目標設定をしようということになりました。本校は、校訓の「明朗親和」、そして「自治創造」をベースにしつつ、7年前に育てるべき生徒像を策定し、正解のない社会を切り拓く力として、9つの力を伸ばすよう教育活動を展開するとともに、その力の伸びを入学時、各年度末、卒業時、そして卒業後の調査を基にして分析してまいりました。そういった中で、他の力に比べて、新しいことに挑戦する勇気の伸びが小さいことが分かり、今回のSTEAM事業では、この力の中の好奇心、そして涵養力、さらには課題解決力の向上をターゲットとすることにしました。その方法として、特別講座を中心に実施することとしました。特別講座は、夏季休業中を中心に、課外で各講座20名程度で、理数科、普通科、文系、理系関係なく、また、一、二年生、ごちゃ混ぜで希望者を対象に実施してまいりました。また、通常の授業に特別講座のエッセンスを取り入れ、全生徒、全教員が実施できる形にすることで、裾野を広げようとしているところです。
 そして、これらの取組を課題研究の深化につなげていきたいと考えております。例えば自然科学系で、センサーを利用するなどしてデータ取得の増加を図ったり、3Dプリンターやレーザー加工機を利用して自作の実験器具を作成するなどを目指しています。昨年度は風車模型を作成したり、温度センサーを利用して室温の変化を追った班もありました。また、人文科学系や社会科学系の研究では、提案して終わりの班も多く、せっかくのアイデアが実際に生かされないこともありますけれども、特講では、アプリを開発して実際に活用してもらうなどの実証研究まで深めることを目指している班もあります。
 今年度は御覧いただいているような特別講座を夏季休業中、7月末に実施いたしました。延べ367名の生徒が受講し、現2年生では、2人に1人が何かしらの講座を受講しているといった状況です。指定初年度は、理工学系に偏った講座が多かったのですが、昨年からは、わくわくということをキーワードに、様々な分野の講座を実施しています。例えば、10番の「かがくえほんを創ろう」という講座では、ネタ集めからスタートして、お絵かきアプリで絵を描いて、最終的には製本をするというもので、近隣にあります大手書店の企画展ですとか、それから大阪や神戸にあります、こども本の森で展示していただくというところまで発展いたしました。
 この特別講座では、最終的に各個人、チームで考えたアイデアを形にするということを大目標に、初めは基本的なスキルをトライアルとして身につけさせます。例えば、トイドローンの講座では、コースを指示どおりに動くドローンのプログラムをつくりながら操作方法等を学び、その後は、生徒の自由な発想で取組をさせています。このとき、できるだけ生徒たちだけで課題解決していけるように、教員はファシリテーターの役に徹してもらっています。
 本校が長年続けてまいりました課題研究では、問いを立てる、リサーチクエスチョンを立てるということを重視しておりまして、毎年どのグループも、その課題設定に苦労をしています。その点、このSTEAM特別講座では、具体的な大目標があっての課題設定になるため、生徒たちにとっては比較的取り組みやすいようで、短期間の講座ではありますが、自分たちのアイデアを具体化して、成果物まで仕上げてくれる班も多く関心させられます。
 連携していただいた企業や自治体についても大変協力的でした。地元の加古川市さんでは、市役所で市長様、副市長様などを含む40名以上の市役所職員の方々に参加いただいた発表会を実施していただきました。加古川市と連携協定を結んでいるNEC様からは、ビデオ会議やオンラインチャットツール等で継続してサポートをいただいているところです。そういった御協力のおかげで、内閣府主催の地域創生政策アイデアコンテストの全国大会にも、3年連続で進出をさせていただきました。このような、どちらかというと文系寄りの大会の出場は、SSH校の本校では、これまではなかったことでございます。
 最後に、STEAM事業のこれまでの評価と今後の課題です。ここでお示しするのは、昨年度のアンケート結果です。まずは、生徒の評価ですけれども、参加してよかったかという質問に対して、当てはまると回答したのが94.3%、どちらかというと当てはまるを含めると、全生徒が参加してよかったと回答しています。また、下で挙げておりますように、実際につくってみる大切さや楽しさを感じた生徒がいたりとか、根拠を持って意見を言えたり、アイデアを出せるようになったと回答した生徒も多い。今回の活動が、ふだんの生活にまで影響を及ぼしたことは大変うれしいと感じています。
 アンケートでは、教員も同様に、この取組に意義を感じていることが分かりました。よい刺激にはなると思い、多くの生徒に参加してほしいと考え、クラス内で大きく宣伝したと言ってくれる教員や、実際に自分自身が講座を担当することで、自分も楽しく意義を強く感じたと答えた教員もいました。ただ、一番下にありますように、一部の教員の負担が増え過ぎているのではとか、忙し過ぎて協力できる余裕がないなどの意見もあり、今後、解決していくべき課題だと感じています。
 御覧いただいていますのは、毎年度、実施しております生徒のアンケートの分析結果です。特別講座の受講により、1の計画性、一番上の計画性ですとか根気、そして下のほうにあります分析力というところが、1年、2年の比較を見ていただきますと有意に伸びていることが分かると思います。また、そもそも受講生と未受講生を比べてみると、1年生の段階で既に有意な項目もあります。例えば好奇心ですとか科学的な思考、独創性、課題発見力、そして分析力や発信力です。これは、STEAM特別講座を希望者対象で実施しておりますので、比較的意欲が高い生徒が集まっているためだと思われますが、そういった生徒たちの、もともと備わっていた特性も伸ばすことができる内容であったとは、我々自身、分析しています。
 さて、今後の課題です。1つには、通常授業への取り込みが挙げられます。昨年度は裾野を広げるために、生徒全員が参加する通常の授業での導入を目指して、多くの教科で先進的な取組を行っていただきましたが、非常勤講師の先生方を含め、学年全体、8クラスで実施するということについては大きな負担があり、1人の教員がその週だけ、ある週だけ8クラス全てを担当するといったこともございました。今後、持続可能な方法を探っていく必要があると感じています。
 次に、普及です。一部の講座をオープンにして、近隣の高等学校や地域の住民の方も参加できるようにしたいと考えていますが、なかなか外部参加者が少ない状況です。中学生向けにSTEAM体験教室を開催、計画したところ、予定の枠がすぐに埋まるほどの盛況ですので、募集形態を見直せば何とか解決するんじゃないかと考えています。地域の方々と交流することで、本校の生徒も多くの刺激を受けることができると考えますので、地域でのネットワークを構築していこうと考えます。
 そして、外部人材の方々と打合せも課題の1つです。特別講座自体、複数日にわたって実施しますので、事前の打合せ回数も増えます。また、外部人材の方との教育方針のずれも生じやすくなっています。大変熱心によくしていただいているのでなかなか言い出しにくいこともあるんですけれども、教員の渉外力も高めていく必要があると考えます。
 今後、こういった課題の解決策を全教職員で考えながら、指定終了後もSTEAM教育の考え方を取り入れた教育活動を展開していきたいと考えています。
 それでは、最後に、生徒へのインタビューを短い動画にまとめておりますので、御覧いただきまして、私からの発表を終わらせていただきたいと思います。ありがとうございました。
(動画上映)
【志摩校長】  以上で発表を終わります。ありがとうございました。
【荒瀬主査】  ありがとうございました。最後、終わった後の高校生らしいといいますか、声も聴こえてとてもよかったと思いました。ありがとうございました。
 それでは、ただいまから、時間で言いますと、10時50分過ぎぐらいまでの間、御質問をいただければと思います。一問一答のような形で、御質問いただいたら、その場で答えていただくということで、お二人よろしくお願いいたします。では、どなたからでもどうぞ。手を挙げるボタンを押していただけますでしょうか。岡本委員、お願いいたします。
【岡本委員】  ありがとうございました。岡本です。3つあるのですけれども、兵庫県は全国を見ている中でもすごく進んだ県だなと思っているのですが、今出てきたワードのSTEAM教育というのは様々なところでスローガンみたいに使われるんです。僕は一応、大学・大学院のほうでも、文理両方やってきた人間なんですけど、実はよく理解できていない概念なんです。それで、例えば学校現場では文理を融合させよう、融合させようとして考えていらっしゃるのか、僕の感覚でいうと、目的がまず、一番重要であって、目的に対して、文系だろうが理系だろうが、そういう学問の領域を超えて、一番最適な手法で学んでいくというものだとは思うんですけど、何か学校のほうで、どういう意味合いで使っているのか、無理に文理を融合させよう、融合させることを目的として行っているのか、それをお聞きしたいというのが、まず、1点目。
 2つ目が、教員の動き方のところです。例えば、教科をまたいで一人の教員が指導するようなことが行われるのかどうかお聞きしたい。例えばSSHの学校で英語で発表しましょうとなったときに、最後の発表の前のところで英語の教員が見たりするのですけれども、これはすごく実は効率が悪いんです。なぜかというと、日本語で専門性の高い、当然英語の教員の方にもよると思うのですけれども、理科系の専門性の高い用語だったりだとか、概念を、英語の先生が見るよりか、理科の先生が英語を少し勉強して、読んでいたりしたほうが多分早かったりするんです。ですので、一人の教員がSTEAMとか掲げているときに、教科をまたぐことがあるのかというのと、あと、最後にファシリテーションに関してなんですけども、これは全国の探究の学校で起こってしまっているのですけども、主体性というものを重視し過ぎるあまりに、ファシリテーションが不足していて深まらないことが結構多いのです。深まらない。つまり、何となくSTEAMやっているのだけれども、だけども、そもそもの方法論のところが教員が持っていなかったりすると、質の高い声がけというものが不足してしまって特にアカデミックな視点からしてとても不十分なものになってしまうのですけど、そのための何か研修とか工夫とかはどういうことをされているのか、お聞きしたいと思いました。
 すみません、少し多いのですけれども、お願いいたします。
【荒瀬主査】  ありがとうございます。3つありました。これ、どうしましょう、岡本先生、教育委員会に答えていただくか、実際に学校にお答えいただくか。
【志摩校長】  学校から答えさせていただきます。
【荒瀬主査】  では、志摩先生お願いいたします。
【志摩校長】  加古川東高校、志摩でございます。
 まず、1つ目の文理のことですけれども、本校では、初年度にSTEAMって何をやったらSTEAMと言ってもらえるんやろうと考えたときに、はっきりいって、結論が分からなかったので、逆に何でもできるんじゃないかというようなことでスタートしました。特に2年目、3年目になるに連れて、理数系に偏らず、全教員に何かしていただけることはないですかという声かけをしますと、今年の例を資料にも出しましたけれども、例えば人権のフィールドワークみたいなものもやったらどうかと言ってくれる教員がおりまして、じゃあやろうということでやっていると。その感想としては、文系、理系の垣根が超えて、いろいろな友達と一緒に研究できて非常によかったというような感想は聞かれるところです。
 2つ目の、英語に関して教科をまたぐのかということですけども、県からの説明にもあったように、本校はネイティブの教員を1名配置いただいております。また、ALTも2名いまして、ネイティブの教員が合計3名いるんですけれども、県にお願いをして、全て理数科の専門性の高い方を配置いただいております。ですので、発表の際なんかは、その人たちが中心に生徒に関わってくれまして、内容についても十分見ていただけるということです。
【岡本委員】  すみません、ちょっと、1点目に関しては、要は学校が自分たちで今までつくってきた文系、理系といって基本的に学校がつくった概念じゃないですか。それをあまり考えずにやりましょうというのが多分1つ目の答えかなと。
 2つ目に関しては、英語は一つの例えでしかなくて、例えば社会に関する何かをやりましょうとなったときに、統計やデータを分析する必要があるときに、そのときに社会科の先生が一人でそのようなことも行うのか、もしくはそこは数学の先生と二人で行うのかという意味になります。要するには一人の教員が教科をまたいでいろいろなことをやろうとしているかどうか、お聞きしたいんです。
【志摩校長】  それは複数の教科の教員が……。
【岡本委員】  協力してやるということですか。
【志摩校長】  関わっているということです。
【岡本委員】  分かりました。
【志摩校長】  すみません、大変失礼しました。
【岡本委員】  いえいえ、すみません、分かりにくくて申し訳ないです。
【志摩校長】  3つ目については、確かに教員同士の間でも、理解度とか能力には差がありますので、どうしても特定の教員に頼らざるを得ないというところがありますけれども、そういったところを校内研修等を重ねて、全ての教員で関われるような体制をつくっていこうと努めているところです。以上です。
【岡本委員】  ありがとうございました。
【荒瀬主査】  ありがとうございました。では、岩本委員お願いいたします。
【岩本委員】  岩本です。素晴らしい発表ありがとうございました。私は1つ質問なんですけども、発表の最後に、課題のところで負担の話、特に外部との連携だとか調整に関するところというのが非常に大きいというようなことだったかと思います。
 そのときに県の教育委員会さんの発表の一番最後に、今後、学科にしていくときに連携調整に関する専門的な人材の指名というのが述べられていたかと思うんですけども、質問は教育委員会さんのほうに、連携調整の人材を、これ、どういう人を配置するということなのか、指名というと、今いる教員とかにやってという話なのか、ここの負担の軽減だとか外部との連携調整のところの人のところはどういうものをお考えで必要だと感じられているのかというところを伺えたらと思います。お願いします。
【荒瀬主査】  お願いいたします。
【新谷課長】  ファシリテーション等を行うとき、人材によるところがあるので、そういう力がある教員がおって、中心に入れたらいいと思っています。とはいえ、当然人事の関係もあり、各校に必ずしもそのような人材がいない場合もございます。県としては、当然加配を考えておりますけども、誰にその役割を担ってもらえるかは、各校の事情も踏まえながら考えていただきたいと思っています。以上です。
【岩本委員】  ありがとうございます。いずれにしても、プラスでちゃんとそれを配置するという意味ということですね。
【新谷課長】  そうですね。プラスで配置した人間がそういう役割をするのかは別としまして、プラスはしたいと思っております。
【岩本委員】  分かりました。ありがとうございます。
【荒瀬主査】  ありがとうございました。では、鍛治田委員お願いいたします。
【鍛治田委員】  鍛治田でございます。すばらしい御発表ありがとうございました。
 教育委員会さんのほうの目標として、文理融合型カリキュラムマネジメントを全県で展開したいということが書かれてあることや、加古川東さんのところで、生徒全員の御発表がありました。けれども、やはり課題といいますか、それが生徒にとって負担になり、不登校が増えるのではないかということと、先ほどから出ています教員への負担、その辺りを案じましたが、いかがでしょうか。
【荒瀬主査】  お願いいたします。
【新谷課長】  我が県での目標としましては、未来への道を切り拓く力をつけたいというのがあり、それをどのようにするかは各学校によるところがあります。STEAMを必要とするところにはSTEAMを届けたいと思っています。その上で、これは私、ずっと教育委員会におるんですけども、なぜ文系の探究が進まないのかが、大きな課題でした。
 もう一つ、本県はSSHの指定校が県立で12校ございます。そこに関わっていますと、英語の力が絶対欠かせないんです、発表の時点で。ですので、本県ではSTEAMの中のEにEnglishを加えまして、やってきました。
 そういった文理融合の力をつけたいところもあれば、先ほど紹介がありました、阪神昆陽高校といいますのは、不登校経験者を含む多様な生徒が自分のペースで柔軟に学べる多部制高校です。つまり各校によって役割が、スクールミッションが違いますので、そのミッションに基づきまして、必要なものを届けたいと、その環境整備をしたいというのが本県の目標であり、学校現場に多少負担がかかっているところもありますが、何とか子供たちの力を伸ばしたいという思いで、様々な対応をしているのが現状です。
 以上でございます。
【荒瀬主査】  ありがとうございました。鍛治田先生、よろしいでしょうか。ありがとうございます。では、田村委員お願いいたします。大変申し訳ありませんが、田村先生の御質問で、この件、最後にしたいと思います。よろしくお願いいたします。
【田村委員】  御発表どうもありがとうございました。田村です。簡潔に2点、お尋ねします。
 1点目は、探究と受験の間を2項対立に考えるような風潮もまだまだ残っているところがあるかと思います。それで、今回、進路に関して、生徒さんが最後に自分の進路が明確になったという発言をしていただきましたけれども、それだけではない効果、例えば、受験に関わるような学力も伸長するであるとか、そういう従来の教科との兼ね合いについて、どのようにうまく調整してカリキュラムマネジメントされているのかというのが1点。
 それから、2点目が、NEC様と学校様がすごく緊密に連携されているということですが、NEC様側にとってのモチベーションといいますか、どういう経緯でこうやって協力してくださる企業様が集まっているのかというところ、そこのポイントのようなところを教えていただければと思います。
【荒瀬主査】  では、志摩先生、お願いいたします。
【志摩校長】  それでは、志摩からお答えさせていただきます。
 まず、1つ目ですけれども、今、見ていただいた2人の生徒はSTEAM特講が大きなきっかけとなって進路選択につながったということですけども、全ての生徒がそうかというと、それはクエスチョンマークというようなところもあります。それから、学力にどうつながるかというところも、まだまだ分かっていない部分が多いです。
 ただし、1つの大きなモチベーションにつながっているということと、高校でのこういった取組が大学に入ってから非常に役立っているというのは、卒業生からもしょっちゅう聞く感想でございます。
 それから、2点目のところですけれども、企業様との連携ですけれども、私たちにとっては、本当に外部の方からたくさんの刺激をいただいております。企業の方にとってのメリットはといいますと、企業の方がいろいろと考えておられる取組を実際、高校生に対してやっていく、いろいろなデータも取られたり、それから、企業の方自身も、高校生たちを育てているんだという社会貢献のところにつながっているんじゃないかとは感じますが、個人的な意見ですけれども、そういうように感じています。
【田村委員】  明確な回答ありがとうございます。
【荒瀬主査】  新谷課長のほうからは特段よろしいですか。
【新谷課長】  よく本県では受験教育をしているのかと聞かれます。でも、受験教育じゃなくて人間として様々な力をつけることが将来につながっていくと考えておりますので、あまり18歳完成ということじゃなくて、様々な力を身につけて、将来に生かせるようにということをずっと考えておりますので、本校につきましては、本当によくしてもらっているなと思っております。
【荒瀬主査】  ありがとうございました。それでは、まだ御質問のおありの方もいらっしゃるかと思うんですが、冒頭申しましたように、今日は時間の関係でここまでとさせていただきます。新谷課長、志摩校長先生、本当に丁寧に御説明いただき、また、お答えもいただきまして、ありがとうございました。これで、御退室いただいても結構ですし、このまま傍聴を続けていただいても結構でございます。本当にありがとうございました。
 今後、また改めて委員から質問が出たりすることもあるかと思いますので、その際は、またお手数をおかけいたしますが、よろしくお願いをいたします。ありがとうございました。
【新谷課長】  ありがとうございました。
【志摩校長】  ありがとうございました。
【荒瀬主査】  では、続きまして、宮崎東高等学校からの御発表をいただきたいと思います。
 本日は、宮崎高等学校から西山先生、そして、生徒の皆さんにも御出席をいただいております。本当にお忙しい中、お越しくださいまして、ありがとうございます。では、西山先生から、時間を制限して申し訳ありませんが、15分程度で御発表を、まずいただきたいと思っております。よろしくお願いいたします。
【西山先生】  それでは、宮崎東高校の総合的な探究の時間の発表をさせていただきます。よろしくお願いいたします。
 私、西山正三と申します。本校4年目です。理科の教員をしておりますけれども、五ヶ瀬中等教育学校というところに、前任勤めておりまして、そこ、13年おりましたので、約20年間、探究学習に携わっております。今は探究とか、探究の教科書とか探究に関する書籍の編集とか、いろいろな講演とかもさせていただいております。よろしくお願いいたします。
 本校は、定時制でもできる、定時制だからできる探究学習という合い言葉をモットーに、探究学習を行っております。学習指導要領に載っている有名な図だと思うんですけども、こういう探究における生徒の学習の姿に基づきまして、スタンダードな探究学習を行いながら、いろいろなところに広めていけないかなという形で考えてやっております。生徒が生きがいを感じるための探究活動という題目の下、三菱みらい育成財団より3年間で例年100万円の助成をいただいております。毎週火曜日、1コマで行っている総合的な探究の時間です。
 本校の生徒の特徴なんですが、不登校であったり、昼夜逆転、自己肯定感が低いという生徒が多い特徴があります。ただ、我々は生徒に問題があるわけではないと思っています。既存の教科、例えば国語とか数学とか理科などに才能を持っているのではなくて、小説とか料理とか作詞作曲など、既存の教科以外のものに才能を持っている生徒たちの集まりだと思っています。よって、本校の総合的な探究の時間では、生徒の得意なものや好きなものを見つけて、探究活動を4つのサイクルでスパイラル的に行って進路につなげるような時間を目指しております。
 取組体制なんですけども、校長をトップとして、総合的な探究の時間のプロジェクトチームを組んで、会議などを行って情報共有を行っております。本校は、定時制の夜間部ですので、4年生で卒業したり、3年生で卒業したりする生徒が混在しておるんですけども、1年生を自己探究、2年生、4年生まである3年生を社会探究、卒業する三、四年生を進路探究という名前をつけて行っております。自己探究では、自分のことを知ったり好きになったりする時間、自分の可能性を見つける時間、それで課題設定まで行うようなことを1年間かけてやっていきます。
 具体的には、自分と徹底的に向き合うワークをまず、行います。ガイダンス、自分の強みを知ろう、月からの脱出という有名なワークがあるんですが、NASAの合意形成ゲームなんですが、本校では個人で考えるよりか、集団で考えたほうがよりよい結果ができるんだよと、対話の訓練みたいな形で使っております。
 あと、有名なワークなんですが、マインドマップやマンダラートも自分を中心にして書いていきます。そういった形で情報の収集をしていきます。あと、哲学対話、後で詳しく説明していきます。5W2Hで問いを立てるというようなところをして、課題の設定につなげていきます。
 マインドマップなんですが、これは私が本校に来て1年目に来たときに書かせたものなんですけれども、どんな学校かよく分からなかったんですが、こんな立派に書いてくる子もいて、生徒の可能性を非常に強く感じたマインドマップでしたので、ここに載せさせていただきました。
 哲学対話なんですが、東京大学の梶谷真司教授をファシリテーターとして、哲学対話を年に1年生は4コマ行っております。取り入れた理由といたしましては、哲学対話は基本的なルールがあるんですけれども、8つ、その中の丸2の否定的な態度を取らない。丸3のただ聞いているだけでもいいといった本校の生徒に非常に合っている、非常に取り組みやすいようなものとなっていること、もう一つは、哲学というと、何か難しい感じがするんですけども、哲学というものの基本は、私もこれを勉強するまで知らなかったんですが、問い、考え、語り、聞くことだと哲学対話の基本はなっておりますので、探究の1つのポイントである問うことがしっかりできるということ、これがあるために哲学対話を取り入れております。
 学習指導要領に載っているとおり、一番下に書いているんですが、または、実際に授業公開し、総合的な探究の時間で探究する生徒の様子をじかに見てもらうことで理解を広げることも大切にしたいとあるとおり、公開授業を本校は行っております。1年間に1回、予定しております。今年度は8月に行いました。哲学対話の1回目と中間発表です。来年の9月に行う予定です。
 こういった公開授業とか総合探究成果発表会、課程重視探究発表会というのも後で説明させていただくんですけども、そんなのを通じて、いろんな学校に定時制でもできるんだ、定時制だからこそできるんだというところもあるんですが、そういった探究学習を広めていければなと思っています。
 2年生、3年生の社会探究ですけども、ここで実際に探究活動を行って情報の収集をしながら整理分析をして、プレゼンテーションとか用紙にまとめる作業を行っていきます。三、四年生の卒業年次、卒業する学年ですけれども、今まで行ってきたワークとかノウハウなどを利用して、自分の時間を用いて自主的に探究活動を行うような活動をしています。
 本校、発表会を予定しています。学習指導要領にある探究における制度の学習の姿のまとめ表現の部分です。12月、もう今年度は終わったんですけれども、総合探究成果発表会の予選を行います。これは全学年、全生徒、発表を行ってもらいます。そこで、それぞれ新入1年生から4年生の間から、各学年3名ずつ、上位3名が勝ち上がってきまして、1月、今年度は、来週火曜日、1月17日に行われるんですけども、総合探究成果発表会の本選というものがあって、そこで発表をいたします。そこで、金賞、銀賞、銅賞を決める予定です。
 今年度からやってみようかなという試みなんですが、課程重視探究発表会と交流会です。内容としては、定時制の総合的な関係の時間の全国大会、交流会です。定時制の総合的な短期の時間の全国大会というのが、あまり見つけられなかったなということと、一番下にあるとおり、生徒がどのように探究の課程を通して学んだかを見とることが大事であると学習指導要領にもありますので、この発表会を通じて、過程重視の探究モデルも提起したいなと思っています。私の中では今、定時制の全体大会と課程重視の探究モデルというところが、自分のアンテナに引っかからなかったものですから、本校でやってみようかなという形で考えているところです。
 評価なんですが、今年度から新しく学習指導要領になりましたので、総合的な探究の時間の記録がこのようになっております。学習活動と3観点、評価と。今までは評価だけだったんですけども、この3つのように分けられておりますので、本校では、こういった右側にあるシラバスというのを事前につくっております。ここで、観点別の目標と評価基準というのもあらかじめつくっておりますので、そこと照らし合わせながら、この指導要録の観点とか評価、こういったところに結びつけて担任の先生に書いていただく予定です。
 これは、左下にありますように、先ほども提示いたしました、総合探究成果発表会本校の中での発表会に関する評価基準です。一応3観点で、知識・技能、思考力、判断力・表現力、学びに向かう力、人間性等で一応3観点で評価をしようかなと思ってつくっております。一応、それぞれ20点ずつ、20点満点の知識・技能は20点、執行力、判断力、表現力20点、学びに向かう力、人間性等で20点の合計60点で考えております。
 その中でも、知識技能の複数教科の知識が横断的に取り入れられていると。思考力、判断力、表現力のほかの文献等からの引用だけでなく、自らの実験や取材等に基づいたものになっているか。参考文献引用がしっかりとされているか、著作権にかからないようにしているか、先ほど過程重視だという話もしたと思うんですけれども、じっくりと粘り強く探究活動を行っているか、こういったところを評価しますと教員、そして生徒のほうには提示しておりますので、こういった観点でしっかりと見られるということは意識づけて、それに伴うような形でやっております。
 一応、先ほどの20点満点のうちの12点以上をA、8点以上をB、8点未満をCとしまして、こういうルールグリップ表もつくっておりますので、ここと対応して、指導要録の評価欄に掲載とかという形で考えて、今、つくっております。本校の特徴なんですけれども、横断的な学習を行っております。英語科では、5W2Hで問いを立てるという1年生のワークの前に、5W1Hの授業を入れてもらっています。様式を作成するときに、こういうEnglishタイプ、Abstract、Keyword、こういったところを英語で書いてもらうようにしているんですけども、これも英語の授業で今年度からやってもらうようにしてもらっています。
 あと情報科ではプレゼンテーションやアンケートフォームの作成、国語科では読者や新聞スクラップに関して、授業の中でやっております。分かりづらかったかもしれませんが、こういった年間計画を出しております。青とか、緑とか、色づけしているところが横断的なところです。ここで、こういったことをしてほしいと4月当初、先生方に提示をいたしまして、それぞれ先生方で、あとはお任せいたしまして、授業の中でやってもらうということをやっております。学習指導要領にも、右側に書いているとおり、他教科との関連を明らかにすること。そして、教科横断的な視点も含めた学校全体における探究の実現、状況を評価し、改善することに努める必要があると明記されております。
 特徴の2つ目としまして、アドバイザーの配置を行っております。新入年次、在校年次、2年生、3年生、それぞれアドバイザーを配置しております。いろいろ探究でつまずいたり、こういった有識者の方に触れることで、生徒も生き生きしております。
 成果なんですが、人前で話せるようになったり、不登校だった生徒、例えば小中学校ほとんど学校行なかった生徒でも、学校に来たり発表するようになったりしております。自分たちでアンケートを取りなさいと言ったことはありません。自分たちで取りたいと言ってきたりする。部活動をつくりたいとする自主的な、積極的な生徒が増えてきている感じがしております。また、本校の取組に興味を持っていただいている、台南応用科技大学の梶原先生とかともつながって、生徒と意見交換などをしたりしました。あと、講演なども依頼が来まして、いろいろ行っているところです。あと、取材、雑誌に掲載してもらったり、文部科学省の方にも来ていただいたことは非常に生徒共々うれしく思ったりしたところでした。
 「月間学校教育」のほうにも2年連続掲載させていただいております。また、自由すぎる研究グランプリで奨励賞を獲得したり、三菱みらい育成財団の成果発表会においても準グランプリなどをいただいております。
 本校の生徒の特徴として、不登校の生徒が多いもので、読み書き計算が少し苦手な生徒もいるんですけども、そういう基礎知識が乏しくても、総合探究をやることによって、思考力、考える力は高校からでも十分養うことができるんじゃないかなという手応えを感じているところです。
 また、これはベネッセコーポレーションの基礎力診断テストというのを本校、継続してやっておるんですが、高校2年生から3年生の間でぐっと成績が上がっております。これは国語なんですけども、実は本校のカリキュラムでは2年生で国語の授業は全くありません。なのに国語の授業が上がっているということは、総合的な探究の時間によって国語の成績などは上がったりするということが証明されているのかなとも思っているところです。
 今後、先ほど言いました、英語とか数学とかも横断的にやっていくと総合的な学力の底上げにもなるんじゃないかなと期待しております。また、探究をやっていくにつれて、教科書とか課題研究メソッドというのを、うちは岡本さんがつくっているものを採用しているんですけれども、そこと自然とつながる場面が増えて、総合的な学習時間は、本当にその名前のとおり、総合的に学力を上げる必要可能性があると期待をしているところです。
 以上、御清聴ありがとうございました。本日は本校生徒、2年生2名にも来てもらっています。よろしくお願いいたします。
【荒瀬主査】  ありがとうございました。西山先生、生徒さんの御紹介をいただけるんでしょうか。
【西山先生】  本校の生徒、2名来ております。まず、東高校、2年生の奥村さん。画面出るでしょうか。それと兒玉さん、この2名が来ております。その2名とも、今、画面つけれますか。大丈夫ですか。
【生徒(奥村)】  こんにちは。
【荒瀬主査】  こんにちは。
【生徒(兒玉)】  こんにちは。
【荒瀬主査】  ありがとうございます。奥村さんと兒玉さん、今日は本当にこういう場に来ていただいて、大変うれしいです。高校生の皆さんと直接お話ができる機会をいただきまして、感謝いたします。ありがとうございます。
 お一人ずつ、御自身が実際に今、西山先生から我々は説明いただきましたが、探究活動をやっていらっしゃって、どんなところが面白いかとか、あるいは、こういったところにやりがいを感じるといったようなことを、御自身のやっていらっしゃるテーマと合わせて、お話しいただけますでしょうか。では、まず、奥村さんからお願いしていいですか。
【生徒(奥村)】  私が探究活動ですごい楽しいことは、私は考えることが好きで、東校に来る前とかは、普通の授業ばっかりだったんですけど、すごい刺激的で、探究が深まっていくことが刺激的です。私は今、反戦の日本と外国のイメージの違いについて、私の探究のテーマにしたんですけど、ボランティアで実際の体験から問いが生まれて、それを学校で深めることができたのがすごくうれしくて、学校が楽しくなります。そして、一番楽しいことが、ほかのクラスメイトの発表を聞ける機会がとてもたのしいです。以上です。
【荒瀬主査】  なるほど。ありがとうございました。大変申し訳ありませんが、もう一度、探究のテーマについて、正確なテーマというか、何とかについてとか、何とかの探究とか、そういったような言い方をなさっているんですか。そうじゃなくて……。
【西山先生】  奥村さん、探究のテーマをもう一度ゆっくり。
【生徒(奥村)】  反戦の日本と外国のイメージの違いです。
【荒瀬主査】  ハンセン。
【西山先生】  ハンセンって戦争に反対です。
【荒瀬主査】  反戦ね。分かりました。反戦に関しての話ですね。分かりました。すみません、私、ハンセンって聞いて、そっちかなと思いながら、もう一方で、帆をかけた船の帆船というのもあるので、どっちなのかなと思って、それで聞きました。ありがとうございました。
【生徒(奥村)】  ありがとうございます。
【荒瀬主査】  では、兒玉さん、続けてお願いできますでしょうか。
【生徒(兒玉)】  私がやっているテーマとしては、普通とは何かということでやらせてもらっています。まず、何でそのテーマにしたかというのが、私が小中学校行けていなかったんですけど、それで、親とか先生とかに普通でいなさいとよく言われていたんです。別に高いレベルを目指す必要はない。ただ、普通でいなさいと言われて、それが何なのかというのが分からなくて、普通という言葉を嫌いになったんです。そういう気持ちを抱えながら東校に来たときに、そういう相談という時間があったので、せっかくだしということで調べてということにしたんですけれども、普通っていろいろな普通があって、お金の普通であったり、社会的な普通だったり、仕事においても普通というのがいろいろたくさんあって、一番、私が求めている普通とは何か、一番たどり着けるのはなのかと考えたときに、教育なのかなというのは思っていて、何でかというと、箸を持ったりとか、お茶を持つにしても何にしてもそうなんですけど、それを誰かが教えるから、それが当たり前になったり、普通になったりというのがあると思っていて、誰かが教えることによって、それがその人にとっての普通、当たり前になる。だから、教育者について調べることで、それで、私の求める普通にたどりつけるのかなというので、調べることにしました。
【荒瀬主査】  ありがとうございます。これが面白いなというようなこととかありますか。
【生徒(兒玉)】  そうですね。うちの授業、そういう総合的な探究の時間という授業は本当に自由なので、各々、本当にいろいろな探究をしているんです。本当、スポーツのことで探究している人もいるし、何かには楽曲制作をしている人もいて、いろいろな人がやっているので、それが自分にとってもいい刺激になるし、そうやって意欲的に参加していくと、こういった場面、機会を与えてくれたりするので、そういうところも本当に楽しいなと思います。
【荒瀬主査】  なるほど。ありがとうございます。今のお話がさっき、奥村さんがおっしゃった、ほかの人の話を聞いたりして、それがとても刺激になるということにもつながるようなお話ですかね。そんなふうに受け止めました。ありがとうございます。
 兒玉さん、今日、私は今、文部科学省というところにいますけれども、委員の皆さんはオンラインで参加しています。その中には、教育者、教育学者、基本的にはそういう関係の人だらけなので、逆に兒玉さんから何か質問があったら、していただいてもいいかもしれませんが、まずは、我々のほうからお二人にお尋ねをしたいと思います。また、西山先生にも最後、お尋ねをすることになりますが、まず、生徒さん、お二人、どちらでもいいですし、お二人ともでもいいですので、御質問をお願いしたいと思います。手をまた挙げていただけますでしょうか。委員の皆さん、どうぞ御遠慮なく。沖山先生、どうぞお願いいたします。
【沖山委員】  兒玉さん、それから、奥村さん、今日は経験をお話しくださってありがとうございます。東京都で3部制の定時制高校の校長をしています、沖山と申します。よろしくお願いします。
 お二人のお話、興味深く伺ったんですけども、総合的な探究の時間で調べていく、考えを深めていく、その具体的な方法、先ほど、お話を聞くという話が奥村さんからありましたけども、どういうツールを使ってどんなふうに調べていくかということを少し聞かせていただけますか。
【荒瀬主査】  では、奥村さん、どうぞ。
【生徒(奥村)】  インターネットで調べました。
【荒瀬主査】  兒玉さんはどうですか。
【生徒(兒玉)】  私もインターネットが主なんですけど、私の出身中学の民生委員の方とお話をさせていただく機会がありまして、そこの方に、実際、東校のイメージ、定時制のイメージ、今の中学生、行けていない中学生とか、どういった理由で行けていないのかとか、高校についてどう思っているかということをいろいろ聞いたりする機会がありました。
【荒瀬主査】  ありがとうございます。沖山先生、いかがでしょうか。
【沖山委員】  ありがとうございます。その際に、その総合的な探究の時間を担当している先生、学校の先生からは、どんなサポートや助言や働きかけがあったか、もし聞かせていただければ、お願いします。
【荒瀬主査】  では、また奥村さん、お願いします。
【生徒(奥村)】  私も家にはパソコンがなくて、印刷ができないんですけど、調べていて気になった資料とかは、たくさんコピーしてもらいました。あと、放課後に、西山先生に、探究のことや、その他のことなど、いろいろ相談とかをして、それが探究につながったりすることがたくさんありました。
【荒瀬主査】  ありがとうございます。兒玉さんはいかがですか。
【生徒(兒玉)】  そうですね。それこそ岡本さんから、国内の教育だけではなくて、国外、いろいろなところの教育を見てみるといいんじゃないかということで言われました。
【荒瀬主査】  どうぞ。奥村さん、どうぞ。
【生徒(奥村)】  私も岡本先生にたくさん、外部の方と自分の考えていることとかを質問すると、別の角度から教えてくれて、視野が広がることをすごく実感しました。
【荒瀬主査】  なるほど。沖山先生、よろしいでしょうか。
【沖山委員】  ありがとうございます。
【荒瀬主査】  ありがとうございました。今、岡本さんとか岡本先生と呼び方が違う、お一人のお名前が出てきましたが、この方は、このワーキングの岡本委員でいらっしゃいまして、岡本委員にも後ほどまた御発言をお願いしたいと思っております。岡本さんって呼ぶんですか。岡本先生って呼んでいるんですか。
【生徒(兒玉)】  それは個人差があるところですかね。
【荒瀬主査】  そうですか。私も高等学校の校長をやっていたんですけど、時々生徒から荒瀬さんって呼ばれたりしまして、高校生の皆さんっていろいろとそういった言い方をしたりしますよね。ありがとうございます。
 では、今村委員、お願いします。
【今村委員】  お話を聞かせていただいて、ありがとうございます。生徒の2人にお聞きして、今、お話なさったような探究の取組をとても楽しんでいらっしゃるということがよく伝わってきたんですけれども、お二人にとって、普通の一般的な教科の学びというのは、どのような意味を持っていらっしゃるか、やらないならやりたくないという感覚なのか、逆にそっちでやっていたことが探究を深めるために役に立ったなとつなげて考えられる機会があるか、実際のところ、どのような感覚を持っていらっしゃるかということをぜひ教えていただきたいです。
【荒瀬主査】  お願いします。奥村さん、どうぞ。
【生徒(奥村)】  私は、めっちゃ文系なんですけど、数理学がすごく苦手なんですけど、世界史はすごく好きで、でも、数学が必要だということは分かるし、だから、すごく学べるというのはありがたいと思っています。
【今村委員】  世界史の授業があるということがとてもよかったということでしょうか。
【生徒(奥村)】  まず、英語と世界史が好きで、数学は苦手なんですけど、数学も学べる。学ぶことで視野が広がるというのは、そうなのかなと思っているので、授業を受けること自体は好きです。
【今村委員】  よかったです。兒玉さん、お願いします。
【生徒(兒玉)】  私は、どちらかというと、そういった普通の授業というのはコミュニケーションの場だと思っていて、例えば、世界史とかでも、世界史の問題を先生から出されたときに、みんなで考えて答えるとか、先生と話合いをして答える、そういう本当に、みんな勉強をそっちのけで、その教科についての話をよく友達とします、私は。
【今村委員】  なるほど。じゃあ、探究のところだけじゃなくて、学校のほかの授業のところも、すごく何か問いを立てるためのいいきっかけになっているということですね。
【生徒(兒玉)】  そうですね。
【今村委員】  すばらしい学校だなと思いました。ありがとうございます。
【荒瀬主査】  兒玉さん、多分、今、勉強そっちのけで、そっちにどんどん盛り上がっているとおっしゃいましたが、多分それ……。
【生徒(兒玉)】  ちゃんと勉強もしています。
【荒瀬主査】  とても大事な勉強なんじゃないですか。実は、そういう勉強が本当に、これからもっと高等学校にも取り入れていくことが必要なんじゃないかと私たちも考えていまして、そういう意味では、本当にいい取組をしていらっしゃるということを教えていただいて、感謝いたします。
 では、清水委員、お願いいたします。
【清水委員】  よろしくお願いいたします。お話いただいてありがとうございました。
 私のほうからは簡潔に、こういった活動をする中で、仲間との交流というんでしょうか、仲間との関係というのは、どういう形で進められていったのか。あと、その関係で、仲間との関係が深まっていったかどうかなど、そういったところも少し教えていただけるとありがたいなと思います。よろしくお願いします。
【荒瀬主査】  では、お願いいたします。
【生徒(兒玉)】  そうですね、私は実際、探究の時間のことに関して、私のとおりでもいいし、その人がやっているとおりでもいいんですけど、そのことについて、本当にただひたすら話をするんですよね。特に、本当に終わりのない関係で、一生終わらない話をするんですけど、その中で、相手の探究をしたりとか、自分の探究の話をしている中で、また、新たな気づきを得たりとか、そうやって第三者の視点で見ることができるので、そこでまたお互い、それこそ仲良くなったりとか、それこそあまり話さない人と話して、実際に仲良くなったということも私はありましたし、本当、話の場とかコミュニケーションの場としては、本当にいい時間なのかなと思います。
【清水委員】  ありがとうございます。
【荒瀬主査】  どうぞ。奥村さん。
【生徒(奥村)】  私は、そうしたいけど、まだそれが活用できていないなと感じています。
【清水委員】  本当にありがとうございます。様々な活動をする中で、仲間との関係も良い方向に向かっていっていただけるといいのかなと思いました。本当にありがとうございました。以上です。
【荒瀬主査】  ありがとうございました。今、奥村さんがまだできていないとおっしゃいましたけど、まだできていないと御自身を見ていらっしゃる、そういう力というのは、すごいなと思いながらお聞きしました。それ、メタ認知っていうんです。自分を、外から自分を見るみたいな、そんな感じだと思います。ありがとうございました。
 では、岩本委員、お願いします。
【岩本委員】  今日は本当ありがとうございました。本当にすばらしい取組だし、2人の話なんかも、すごい心にしみることがたくさんありました。お二人からアイデアというか、考えを聞けたらいいなと思っているのが、実は、この会議というか、この場って、これからの日本の高校はどうなっていったらいいんだろうか、日本の高校教育ってどういう形になったら、さらによくなっていくんだろうかということを話し合ったり、考えているような会議なんだけど、お二人が考える、それぞれにとって、こんな高校になっていったらいいなとか、こんな高校の教育になっていったらすごくいいんじゃないかと、もう普通とかそういうのは関係なく、それぞれにとって思う理想だとか、魅力的なこれからの高校の姿とか教育の姿というので、何かイメージとか思うことがあったら、ぜひ聞きたいと思うんですけど、どうですか。
【荒瀬主査】  奥村さん、どうぞ。
【生徒(奥村)】  男女関係なく、自分の好きなこととか興味のあることに、話し合うことができたらいいなと思います。女子だからファッションとか、テレビとか、そういう話だけじゃなくて、何かもっとすごい深い話とかが入れたいと思っています。
【岩本委員】  いいですね。ありがとうございます。
【生徒(兒玉)】  私は奥村さんと似ているんですけども、本当に、みんな何かが理由で入れないというのがなくなればいいかなと思います。お金とか頭が悪いから入れないとか、学力が足りないから入れないではなくて、本当に入りたい、熱心な、思いだけで入れるような学校、高校になればいいかなとは思っています。
【荒瀬主査】  なるほど。ありがとうございます。もし可能であれば、皆さんそういう話をクラスの皆さんとも、またしていただいて、まとまらなくてもいいので、そういう声を届けていただけると非常にありがたいと思います。すみません。岩本さんが聞いていらっしゃるのに、私が横から入って申し訳ない。岩本委員、どうぞ。
【岩本委員】  いえ、2人ともありがとうございます。ぜひ僕たちもそういう学校が、さらにできるようにとか、増えていくようにやりたいと思いますし、ぜひ2人もそういう環境だとか、学校生活をぜひこれからもつくっていってもらえたらいいかなと思います。どうもありがとうございました。
【荒瀬主査】  ありがとうございました。では、田村委員、お願いいたします。
【田村委員】  ありがとうございます。実は、私も岩本委員と全く同じことをお聞きしたいなと思っていたので、少し質問を変えます。理想の学校を今、考えていただいたんですが、逆に、最低限、こういう高校であってほしいなという、少なくともこうあってほしいなという、そういう希望があれば、教えていただきたいと思います。
【荒瀬主査】  いかがでしょうか。奥村さん、どうぞ。
【生徒(奥村)】  今の東校がそうなんですが、私にとって、探究活動は自分を表現することができると思っています。ほかの場所が、嫌なことがあって楽しくなくても、火曜日の一こまがあるから、学校というものに行けると感じることがあって、そういう1コマとか、10分でも、最低限自分がやりたいことができるもので選べるという話があったらいいなと、最低限あったら学校が楽しいだろうなと思います。
【田村委員】  ありがとうございます。
【生徒(兒玉)】  最低限、そうですね、確かに行けるきっかけ、学校に行くきっかけ、奥村さんと一緒なんですけど、学校に行くきっかけがほしいかなと思います。それがあるかないかで、本当に全然違うと思うので。
【田村委員】  どうもありがとうございました。
【荒瀬主査】  ありがとうございました。兒玉さんにとっては、行くきっかけってどういうものなんでしょう。
【生徒(兒玉)】  そうですね、友達と話ができるであったりとか、それこそ総合的な探究の時間も私は好きですし、運動する体育の時間などもありますから、そういう時間が好きですかね。
【荒瀬主査】  ありがとうございました。また、田村先生のところに割り込んでしまって申し訳ありませんでした。では、篠原委員、お願いいたします。
【篠原委員】  今日はありがとうございました。東高校、実は、私はNHK学園というところにいるのですが、お世話になっておりまして、今日はとてもうれしかったです。ありがとうございました。
 私からの質問は、中学と今の高校と何が一番大きく違っていて、それで、もし中学生のときと、今の自分とが少し変わったなと思っていらっしゃるのかどうか。変わったなと思っていらっしゃるのであれば、どんなところが変わったかと今、感じているか、それを教えていただけますか。
【生徒(兒玉)】  私からいいですか。
【荒瀬主査】  兒玉さん、どうぞ。
【生徒(兒玉)】  そうですね、中学校と変わったことというのは、やはり自由になりますよね。何しても自己責任、誰も守ってくれないので、自分で自分のことをするということが一番大きく変化したことですね。それぐらいですかね。
【篠原委員】  ありがとうございます。奥村さん、お願いします。
【生徒(奥村)】  私が中学校と高校で変わったと一番、思う点が、自由になったことだと、兒玉君と同じく自由になったことだと思います。髪色とか、あと、体育の時間は、すごく好きなもの、バトミントンかバスケットボールを、好きなものを自由にやることができることや、授業の進み方も生徒に合わせてくれて、ゆっくり進んでくれるところもあって、中学はどうしてもかちかちっとしたところと全然違うと思います。
 中学校では、私はすごく周りの目を気にして、普通をすごい意識していましたし、物すごく生まれた自分が変わっているんじゃないかと思って、怖いと感じることがあったので、そこが一番変わったところだと思います。
 自分が変わったなと思うところは、自分を知ることができたので、無理に人と合わせようとしなくてもいいといったところや、自分の意見が、普通じゃない意見を言えるように、自分らしい意見を言えるようになったところだと思います。
【篠原委員】  ありがとうございます。とてもいい2人の御報告を聞けてうれしかったです。どうも今日はありがとうございました。
【荒瀬主査】  ありがとうございました。生徒さんに質問を続けているわけですけれども、西山先生への御質問も含めて、お願いできればと思います。いかがでしょうか。皆さん、時間を気にしてくださっていて、本当にありがとうございます。まだもう少しお話をしていただけると思いますので。長塚先生、お願いいたします。
【長塚委員】  ありがとうございます。西山先生にお聞きしたいところなんですが、最初のスローガンに定時制でもできる、そして定時制だからできるとあります。特に2つ目の定時制だからできるというところがとても気になったというか、お二人の生徒さんの話も聞いていて、ある意味、時間的な制約の面というか、いろいろなことができるという体制が、定時制の中にあるということが前提で、定時制だからできるという言葉につながっているのかなと思ったんですが、その辺りについて、もう少し教えていただければと思います。以上です。
【荒瀬主査】  では、西山先生、お願いいたします。
【西山先生】  ありがとうございます。私、前任校が全国初の公立中高一貫高校の五ヶ瀬中等教育学校というところにいました。そこで探究活動をずっとしておったんですけども、そこで、SGHとかスーパーグローバルハイスクールの事務局長もしておりまして、そこでも授業公開とかたくさんしておったんですが、五ヶ瀬だからできるんだろうとか、そこの生徒が優秀だからできるんだろうというようなことをたくさん言われて、なかなか広まっていかなかったというようなもどかしさもありまして、この学校に希望してきまして、この学校でもできるんだぞと。この学校だからできるということも見えてきましたので、そういった気持ちも含めて、スローガンを立てて、今、全職員でやっているところです。
 定時制だからというのは、特に外部講師、僕はいろいろな上質な物や人に触れさせることが、生徒を成長させるという、我々もだから一番身近にいるので上質な人間になりたいなと思って、今、接しているところなんですけれども、例えば東京大学の梶谷先生だとか、そちらにいらっしゃる岡本さんだとか、そういった方もお忙しい方なんですけども、夜の時間だからこそ空いている、空いておったりするようなところもありますので、普通の平日の火曜日の時間なんかは、なかなかほかの仕事とかあるとは思うんですけども、夜の時間だからできるようなところもあるなとも思ったり、いろいろな可能性は感じているところです。
 以上、よろしくお願いします。
【長塚委員】  ありがとうございました。
【荒瀬主査】  ありがとうございます。それでは、あと冨塚委員、塩瀬委員、鍛治田委員まで御発言をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。では、冨塚委員、どうぞ。
【冨塚委員】  ありがとうございます。千葉県教育委員会教育長、冨塚と申します。西山先生、そして兒玉さん、奥村さん、素敵な発表をありがとうございました。西山先生に1つだけお尋ねいたします。
 県の教育委員会から貴校の取り組みについて、どのようなサポートがあったのか。人的、あるいは、財政面での支援など、もしそのようなことがありましたら教えていただきたいと思います。お願いします。
【西山先生】  ありがとうございます。教育委員会からは、授業公開など来週行う成果発表会のときに視察に来ていただいたり、あとは、今、三菱みらい育成財団から資金を援助していただいているんですが、それ以前は教育委員会が出されているものに手を挙げさせていただいて、こういう企画をしたいと、こういうことをしたいという企画を挙げて、資金の援助をしていただいた過去があります。以上です。
【荒瀬主査】  冨塚委員、よろしいでしょうか。
【冨塚委員】  ありがとうございました。
【荒瀬主査】  それでは、塩瀬委員、お願いいたします。
【塩瀬委員】  ありがとうございます。京都大学の塩瀬と申します。西山先生、奥村さん、兒玉さん、御発表ありがとうございました。
 兒玉さんに1点だけお伺いしたいんですけど、先ほどいろいろな人に普通と言われて、普通という言葉が嫌いになったという話があったんですけど、その後、普通についていろいろ探究をされた結果として、普通という言葉に対する印象がもし変わっていたりしたらお伺いできないかなと思いまして、普通への印象がどうなったか、探究を通じてどうなったか教えていただけたらと思います。
【生徒(兒玉)】  そうですね。印象、まだ研究段階なので、私の正確な答えというのはあまり出せないんですけども、そうですね、バランスなのかなと思っています。すごくありきたりな答えかもしれないんですけども、難しいな。
【塩瀬委員】  探究途上だと思うので難しい。
【生徒(兒玉)】  そうですね。印象は、大分でも変わりました。普通ってお金かけなくても変えることができるんだみたいな、それこそ民生委員の方にお話を聞いたときに、定時制のイメージを聞いたときに、年齢層が多くて、いろいろなことしてきた方が東校に来るということを言われたんですけど、意外と今の定時制はそうじゃなくて、年齢がもう普通の、それこそ全日制の学校と同じぐらいの年齢層になってきていて、今年はもう20歳の人が、今年20歳になる人もいなかったんです、今年は。なくなっていますというのがあって、そういうことを言われたら、すごい驚かれたんです。
 イメージを変えるだけでも全然、こうやって発信していくことでできるんだ、普通って変えられていくんだなということが分かりました。
【塩瀬委員】  ありがとうございます。
【荒瀬主査】  ありがとうございました。では、鍛治田委員、お願いいたします。
【鍛治田委員】  通信制高校の鍛治田と申します。西山先生、奥村さん、兒玉さんありがとうございます。
 西山先生のお話を聞きながら、質の高い出会いを生徒に渡したいというのは、非常に共感しながら聞いていました。生徒さんたちから御返事があったんですが、合意形成や哲学対話などを取り組まれまして、先生方から御覧になって生徒たちがどう変わったかということと、それを何かエビデンスを取られているかどうか、その点について教えてください。
【西山先生】  御質問ありがとうございます。生徒の変容なんですけども、なかなか話すことができなかったり、もしくは、逆に自分だけ話したりするような子とかがいたりするんですが、例えば哲学会は4回やりますけども、第1回目のときはそうなんですけども、回を重ねるにつれていきまして、だんだん人の話が聞けたり、もしくは自分の話を言えたり、自分の意見を、そういった子たちは少しずつ増えてきているなという形はしています。
 合意形成、コンセンサスゲームに関しましても、こちらの意図をきちんと酌み取って、みんなと話して結論を出すということは、人の話を聞くということは非常に大事だということは分かってくれたようです。
 あと、エビデンスなんですけども、今の本校の中では特にやっていないんですけども、三菱みらい育成財団のほうから緻密なアンケートを取らせていただいておりますので、その中で、本校の強み、弱みというようなところを、全職員でそれを共有しまして、4月の職員研修で、今後、どこを伸ばしていったほうがいいか、どこは十分なのかというような検証はしているところです。
【鍛治田委員】  ありがとうございました。
【荒瀬主査】  ありがとうございました。まだまだ、いろいろとお聞きしたい方もいらっしゃるでしょうし、私もお尋ねしたいこともありますがが、今日はこれまでとさせていただきます。本当には西山先生、奥村さん、兒玉さん、ありがとうございました。
【西山先生】  ありがとうございました。
【荒瀬主査】  一言だけ余計なことを申し上げますと、兒玉さんがさっき普通というのはバランスが大事なんじゃないかということも思うようになったとおっしゃっていましたけど、多分バランスというのは大事なんでしょうけど、御自身の普通って何なんだろうというのを、ぜひ追求していただければ、私はその結果をまたお聞きしたいなと思っています。これは、奥村さんもぜひ、どうぞお考えいただければと思います。本日は本当にありがとうございました。
 あと、残り時間わずかなんですけども、このままいていただいても結構ですし、御退室いただいても結構でございます。本当にありがとうございました。
 では、岡本委員から御発言をいただくと言いながら、お聞きしていませんでした。、3人の方に、御退室いただいて結構ですと言った後で申し訳ないんですが、岡本委員、お願いできますでしょうか。
【岡本委員】  ありがとうございます。この2人と話し始めると長くなってしまうので行わないようにしようと思いますが、すごく重要な点を幾つか、お話ししたいと思います。私は学校を客観的に外から見ている人間でもありますので、ほかの学校にも共有できる部分を少し、せっかくの機会ですので、お話ししたいと思います。
 まず、明らかにお二人、もう1年ぐらいの付き合いになるのですけど成長していて、これらをはぐくむために学校にとって必要な要因は何なのかということをもう一度改めて考えると、学校や大人に対する信頼感、安心感ってすごく重要なんです。そのためには、教員の日常的な声かけというのは必須だと思っています。私も定期的に伺わせていただいているのですけれども、そこの土壌がないと、多分僕が行って話をするだけでは厳しい部分があると思っています。西山先生を中心として、いろいろな先生方が日常的に、生徒をしっかりと日々見ていて、声かけを行っているということによって、大人の人たち、学校というのは自分たちのことをしっかり見てくれているのだなという認識が生まれる。先ほどは結構プライベートな内容についても話してくれたじゃないですか。それというのは、社会とか大人に対する安心感がまず、土壌としてできているというところが一番大事な要因です。これは、全日制の学校でも一緒だと思います。これができていない学校というのは、総合的な探究の時間の中でも自分を出さない子がすごく多くなってしまいます。
 あとは、当然それを可能にするためには、これは今日の中では収まりきらない内容ですけれども、定時制の中での教員と生徒の人数というのはとても重要なポイントです。多くの学校で行われているように、1対40で、一人一人に声かけを行って毎日見ておくというのは、結構厳しいです。ですので、今回の会であるこの個別最適化ということを本当にやるのであればクラスサイズから見直すような議論も必要なのだと思っております。
 次に、1人の教員で行っているのではないというのがすごく重要で、主導できっかけをつくっていらっしゃるのは西山先生なのですけれども、校内のほとんどの先生が関わっているというのはすごく重要なポイントです。SSH、SGHの学校、もしくは探究を始めている学校を数多く見ているのですけれども、一部の教員だけがやっていて、ほかの先生たちは見ているだとか、敬遠している場合があります。それらの先生を巻きこんで、かつ表にはいろんな先生が出ているというのは、とても重要。要は、一人の主導している先生がおいしいところも持っていくのではなくて、おいしいところもほかの人に分けてあげるだとか広く分担して行っている学校は、学校全体で進められていきます。
 あとは、最後に一番重要な点なのですが、今、総合的な探究の時間が始まっていて、学習指導要領に沿う形で、宮崎東は実施しているのですけども、何が大事かというと、テーマの決定なんです。多くの学校が、学校が方針を決めて、それに沿うような形のテーマを生徒が実施するということをしていて、それって学習指導要領に実は全然沿っていなくて、中学校で行われている総合的な学習の時間でしかないわけです。自分の生き方や在り方と不可分でと言っているのに、ある学校では、例えば、工学部に行きたいんだけれども、地域のことをやらなきゃいけないみたいな感じで言われていて、それで、自分がやりたいことが潰れてしまっている場合が結構あったり、もしくは、大人の理想を子供に押しつけている場合も結構あったりするんです。こう言えば大人が喜ぶというものを探究と称してやってしまっている。その結果、今日、2人、兒玉君と奥村さん、2人にも話してもらいましたけども、本来自分を出す時間であるはずの探究において、ある種の同調圧力みたいなものが出てしまっていて、本来それをきっかけとして学びに対する意欲がどんどん出ていったりするはずなのですけども、逆に、これやらなきゃいけないという義務感になってしまっているのはすごく多いです。なので、本音の部分でテーマを決められる土壌、その前提には、当然最初に申し上げたような安心感だったりとか、クラスサイズとか、そういうものがある。この辺が宮崎東校はすごくよくできていて参考になる部分だとと、客観的に見て感じています。
 また、会いましょう。ありがとうございました。
【荒瀬主査】  岡本先生、ありがとうございました。最後おっしゃってくださった4点、これは大変重要な御指摘かと思います。そういう点では、宮崎東高校の探究は、学習指導要領、ないしは解説に沿った形で、まさに自分の在り方、生き方を展望する中で、探究に取り組んでいらっしゃるということで、非常に心強く思いましたし、ある意味、失礼な言い方ですが、成果がお二人の生徒さんから見えたと思いました。本当にありがとうございました。
 では、残り、本当に短くなってしまって大変申し訳ないんですけれども、今村委員、お願いいたします。時間を延長させていただくことになるかもしれませんが、その点、御容赦をお願いいたします。では、今村委員、どうぞお願いいたします。
【今村委員】  ありがとうございます。急遽時間を入れてくださいまして、どうもありがとうございました。
 私のほうからは、今の最後の結びの話ともつながるかと思うんですけれども、今の学習指導要領で目指されている総合的な探究の時間の自己の在り方と、一体的で付加的な課題を自ら発見し、というような探究の時間をどのようにつくっていくのか、しかもそれを地方のリソースが少ない地域でも、実践していくにはどうしたらいいかということを、1つ実証的な取組を行っていますので、それについて、お話をさせていただこうと思います。
 こちら見えていますでしょうか。ありがとうございます。こちらなんですけれども、前回のワーキンググループでも確認したとおり、この10年で、学校が200校減った一方で、小規模校の割合が物すごく増えているということが共有されました。全国の自治体の64.4%、1,129自治体で、公立高校がゼロ、または1の状態だということが前回の資料で明記されていました。その中で、ここから10年さらに減っていき、その先の10年では、もう80万人ぐらいになるんじゃないかというところの中で、どのような学校実践をしていけば、先ほどの学習指導要領が本来目指している形の、生徒たちの探究を支えていけるのかということについて、実証をしてきました。
 今、遠隔教育の形が様々実践されているんですけれども、このネットワークでもいろいろな実践が既になされてきていると思いますが、まだまだ出されていない形が、生徒一人一人が授業の時間に同じモニターを見ながら遠隔授業を見る形ではなくて、双方向で、さらに個別のテーマの探究を個別のグループで行うような、個別接続型の探究の取組というか、リモート、遠隔教育の実践というのが、あまりまだ実際として全国的に行われていないような形になっているんじゃないかと思っています。
 ここに対して、今、カタリバでは7校の小規模校と一緒に連携しながら授業の時間を合わせ実践してきました。まず、前提としては、先ほどの最後の荒瀬先生と岡本さんのお話のとおり、総合的な学習の時間は、先生が問いを立てて、先生がこういうふうに探究するんだということをナビゲートするということは、一定必要であるのは間違いないんですけれども、ただ、本来目指しているのは、生徒一人一人が問いを立てていくということの学びのプロセスを、それ自体を、問いを立てるということ自体も学んでいく重要な機会なんじゃないかと思います。
 ただ、全国の小規模校、これは大人社会も同じことが言えるんですけれども、私も地方のすごく小さな田舎で生まれ育ってきたので、よく原風景としても覚えているんですけれども、地方で起こりやすい、そして同級生の数が少ない地域で起こるのは、何よりも同調圧力がとても働きやすい。これは教育カリキュラムに関わらず、同調圧力が働きやすくて、価値観が固定化しやすい。どこの大人、子供社会でも起きていることと思います。
 その中で、なかなか自分がこういうことに関心があるということを発議するということはすごく難しいということがあります。また、同じテーマにみんなが関心を持つわけではないんだけれども、同じテーマでしかグループが組めなかったりするので、探究の取組も、そもそも同調圧力が高いグループの中で、少ない数のテーマの中からグループを組んで何らか探究的な取組を行わなきゃいけないということがあります。
 また、先生もいってファシリテーターになれば、先生自身の専門性はそんなに重要じゃないという考え方もあるんですけれども、それであっても、先生の専門性も、分野もそれぞれあるということもあると思いますが、そこにも種類が少なくなってしまうということもあります。そんな中で、今こんな取組を始めました。1分間だけ、動画を見ていただきます。
(動画上映)
【今村委員】  今、表示させていただいた学校参加は全国8校、ネットワークを組みまして、うちは事務局的な機能を果たさせていただいているんですけれども、全国いろいろな学校の方に参加していただいて、特別支援学校の病弱教室の方で、知的能力は高いんですけれども、同級生といいますか、3学年で3人しかいないという学校の方にも御参加いただいていたりします。
 こういった交流は、今、動画で見ていただいたとおりなんですけれども、様々な効果があったなと見えてきています。まずは、同調圧力の中で、なかなか学校の中で発言しづらいなと思うことも、良質な背伸びの中で、より意見が言いやすいというような声もありました。また、先生たちも、ほかの学校の先生方と自分の意思でつながって議論したくなる雰囲気の中で、放課後、先生同士でつながって、どうしたら次の会がもっとよくなるかなということを探究されている様子も見られました。
 こういった取組の中で、様々見えてきていることはいっぱいあるんですけれども、一番大切だなと思うのは、現状の仕組みだと、設置者を超えてつながるということはなかなか難しいので、県であれば、県の中でやるというのは1つあるかもしれないんですが、例えば特別支援学校みたいなところのお子さんとか、違う地域だからこそ、そっちは雪が降っているけど、こっちは天気だよみたいなこととか、地域を超えるから見えてくることというのもあったりとかするという意味でも、地域を超えるということは、すごくオンラインの前提があれば、できてしまうということをもっと前提にすべきかなということ。
 また、もう一つ、これは小規模校の連携だけじゃなく言えることだと思うんですけれども、どうしてもいろいろな教育改革が今、独自に進んでいることは、先生方の業務量の逼迫、多忙感を生んでいるかと思いますが、何らかの政策が載っていない学校でのクラス単位の先生、うちの学級はこれをやりたいとか、自分が担当している学年の探究はこれをやりたいということを、何らか制度、施策が載っていない学校でも、県に許可を取らなくても、別に手を挙げれば、全国のどこかの先生と一緒に、ある意味では動的につながって、その熱意を資源にしながらいい授業をつくっていくことは、事務局さえあれば、十分し得るんじゃないかということもあるので、そういうことも審議会の中では検討していくということ。先生の情熱を何よりも資源にしていきながら、新しいことを始めていくということも前提に考えていく必要があるなと思っています。
 すみません、時間が超えてしまいました。私からは以上です。
【荒瀬主査】  ありがとうございました。最後の最後に回っていただいて、十分に時間がなかったかと思います。今、今村委員のお話についても、御質問とか御意見とかおありでいらっしゃると思うんですけれども、大変申し訳ありませんが、それも含めて、事務局にメールを頂戴するということで、お願いをしたいと思います。
 では、冒頭申しましたように、今日は委員の皆さん同士の御意見のやり取りということも、これも全くできずに本当に申し訳ありませんでした。今日は、探究を中心に、お話を承って、質疑応答をしていただいたということであります。
 今日は、これでもう終わりにさせていただきますが、次回の会議に向けた説明をお願いいたします。
【松田参事官補佐】  本日はありがとうございました。次回のスケジュールでございますけれども、1月27日金曜日、10時から12時で、今日のテーマの続きとして、「社会に開かれた教育課程」、「探究・文理横断・実践的な学び」の推進に関するヒアリングと意見交換をさせていただきます。また、論点整理に向けた議論も予定しております。次回もどうぞよろしくお願いいたします。
【荒瀬主査】  ありがとうございました。いただいた御意見、御質問等は、また事務局でまとめていただいて、委員の皆様にお返しをするといいますか、共有をさせていただくということで、お願いをしたいと思います。それを見ていただいた上で、次回、今回の十分議論できなかった部分の議論をして、さらに次回は論点整理に向けても検討するということで、次回も大変タイトな日程になるかと思いますが、どうぞよろしくお願いいたします。
 では、本日はこれで終了いたします。ありがとうございました。
 
―― 了 ――
 
※会議終了後の追加意見
【青木委員】
〇Scale Up Effect(少数事例の成功をもとに制度化した場合の問題発生)を考慮した議論
探究学習は学習指導要領に盛り込まれたとはいえ、大規模な「治験」を経たものではない。全国化の段階となった現在、少数事例の時点では気づかなかった問題が生じることを十分考慮すべき。今回のヒアリングでも、教員の負担の大きさがうかがえ、持続可能性に懸念をもった。
〇「政策から制度」を見据えた議論
探究学習を「制度」として持続可能なものとするのであれば、コストについての議論が必要。第1に、コーディネーター機能については、普通科改革支援事業での補助事業など文部科学省の努力も見られる。より安定的にコーディネーターを雇用できるために、たとえば文部科学省のSSH等の事業について「間接経費」の考えを導入して、事業実施に伴う各種コストも加味した予算配分としてはどうか。第2に、都道府県立高校の予算配分や教職員配置においても、コーディネーターをはじめとする探究学習の実施に必要なコストや人員が十分積算されにくい算定基準が用いられているのではないかと思われる。そこで、文部科学省においては、常勤の教職員とは別枠で必要なスタッフの種類やコストを研究したうえで、さらに学校への予算配当のあり方のガイドラインを策定するための調査研究を行うべきである。
〇評価のコスト縮減を
学習指導要領に沿っているため、他教科と同様の評価方法が採用されており、探究学習の評価コストがあまりにも大きいのではないかと危惧される。たとえば、大学における伝統的な探究学習の卒業論文(卒業研究)の評価の仕方を参考にして、より評価コスト(評価の回数、評価の観点など)を縮減するための調査研究が必要である。
〇探究学習を担う教員の資質
探究学習を指導する教員自身が探究学習の経験を積む必要がある。教員養成の段階、採用後の段階に応じて必要なトレーニングの内容等について調査研究が必要である。
〇探究学習の担当教員のコマ数削減
探究学習の実施に伴う教員の負担は授業準備や評価といった事前事後にわたり一般的な座学の授業よりもはるかに大きいと思われる。持ちコマ数についての適切な水準について調査研究が必要である。

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