高等学校教育の在り方ワーキンググループ(第3回)議事録

1.日時

令和4年12月12日(月曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省内会議室 ※オンライン会議にて開催

3.議題

  1. 全日制・定時制・通信制の望ましい在り方について
  2. その他

4.議事録

【荒瀬主査】  皆さん、おはようございます。主査の荒瀬でございます。通信回線の不具合が生じまして定刻に少し遅れましたが、事務局の皆さんの御努力によりまして今つながっているということですので、ただいまから中央教育審議会初等中等教育分科会、個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実に向けた学校教育の在り方に関する特別部会、高等学校教育の在り方ワーキンググループ第3回を開会いたします。本日は御多忙の中、御出席いただきましてありがとうございます。
 本日の会議は、新型コロナウイルス感染症の感染防止の観点からウェブ会議システムを使いますと同時に、文部科学省にも何人かの委員にお集まりいただきまして、ハイブリッドで開催をさせていただきます。
 また、傍聴者の皆さんにつきましては、ユーチューブにより御視聴をいただいております。
 また本日、報道関係者の方から録音及び写真撮影の御希望をいただいております。許可しておりますので、委員の皆様方におかれましては御了承いただきたいと思います。
 では、会議の開催につきまして、また配付資料につきまして、事務局、松田参事官補佐から御説明をよろしくお願いいたします。
【松田参事官補佐】  事務局でございます。まず、本日はシステム不具合がございまして、開始時間が遅れてしまいましたことを改めておわび申し上げます。申し訳ございません。
 本日の会議開催方式でございますけれども、主査からただいま御紹介がありましたとおり、ウェブ会議システム、Zoomと対面でのハイブリッド開催とさせていただいております。
 委員の皆様方におかれましては、毎度のお願いとなり恐縮でございますけれども、ウェブ会議システムを利用する観点から、御発言に当たってはインターネット上でも聞き取りやすいよう、はっきり御発言いただくなどの御配慮いただく。御発言の都度、名前をおっしゃっていただく。御発言時以外はマイクをミュートにしていただく。御発言に当たっては「手を挙げる」ボタンを押していただき、御発言の後は「手を下ろす」ボタンを押していただくなどの御配慮をいただけるとありがたく存じます。御協力のほどよろしくお願い申し上げます。
 本日は、全日制・定時制・通信制の望ましい在り方について御議論いただきたいと考えております。資料1は、本日御議論いただく際の論点例をお示しした資料となります。内容については追って御説明させていただきます。
 そして、本日は太平洋学園高校からのヒアリング、その後、沖山委員からの御発表をいただく予定でございますけれども、その際の資料を資料2、資料3として配付しております。不足等ございましたら事務局にお申し付けいただければと存じます。
【荒瀬主査】  ありがとうございました。
 それでは、今御説明いただきましたヒアリングと沖山委員からの御発表ということで、具体的な議事に入りたいと思います。
 では、まず資料の1につきまして、事務局から御説明をお願いしたいと思います。
【松田参事官補佐】  資料1でございます。「全日制・定時制・通信制の望ましい在り方について(論点例)」というものでございます。
 今までの御意見やデータを簡単にまとめさせていただいたものが、「背景」部分でございます。
 不登校児童生徒数が、義務教育段階において近年大幅に増加し、高校段階においては不登校・中途退学率は数字としてはおおむね横ばいで推移しておりますけれども、私立の通信制課程に在籍する生徒数が近年大幅に増加している。一方で、私立の広域通信制高校の中には、違法・不適切な学校運営や教育活動が指摘されているところもあり、質確保・向上を引き続き図っていくことが必要である。また、公立の通信制高校については、特に経済的な面でも課題を抱える生徒にとって重要であって、一層の魅力向上・機能強化を図っていくことが必要であるということを、1つ目のポツで掲げております。
 そして、2つ目のポツで、高校は生徒が人間関係を構築し、社会性を育む上で重要な場所である。通信制課程だけでなく、定時制課程においても不登校経験や特別な支援を必要とする生徒が多く在籍しており、勤労青年向けという制度の前提が変化している定時制・通信制課程について、改めてその在り方を考えることが必要である。
 また、3つ目、ICT環境については、令和6年度までに、高校の全学年で1人1台環境整備が完了予定で、同時双方向型のメディア活用の普及も進んでおり、そのような状況を踏まえつつ、多様な生徒に対してきめ細かくサポートし、どの課程にあっても、それぞれの生徒の状況に応じた個別最適な学び・協働的な学びを実現できるようにしていくことが重要である、というところを、背景として挙げさせていただいております。
 こうした点を踏まえた論点例でございますけれども、全日制・定時制課程において、多様な課題を抱える生徒を受け入れ、多様な学びを提供していくための方策として、どのような取組がより一層必要と考えられるか。
 2つ目には、通信制課程が、多様な課題を抱える生徒の学びのセーフティーネットとしての機能を維持しつつ、生徒の社会性を育むために、どのような取組がより一層必要と考えられるか。また、私立の広域通信制高校については、先日の調査研究協力者会議の審議まとめを踏まえて、引き続き質確保・向上を図っていくことが必要であるが、公立の通信制高校の魅力向上・機能強化に向けては、今後どのような方策を講じるべきか。
 3点目、生徒の地理的状況や各学校・課程の枠にかかわらず、多様な学びを受けられるようにするための方策として、例えば学校間連携や課程間併修を推進することが考えられるが、そのためにどのような取組が必要と考えられるか。
4点目、その他、全日程制・定時制・通信制の望ましい在り方についてどのように考えるか。
そうしたことを論点例として挙げさせていただいております。よろしくお願いいたします。
【荒瀬主査】  ありがとうございました。
 今、論点例、全日制・定時制・通信制の望ましい在り方に関する論点例について御説明をいただきました。
 今日は、先ほどから申し上げているとおりでありますが、2つのお話を伺うわけであります。この論点例に沿いまして、お話を伺った後、委員の皆様から御意見をお願いしたいと思っています。
 では、ヒアリングに入りたいと思います。まず、太平洋学園高等学校からのヒアリングであります。本日は校長の光富先生に御出席いただいております。大変御多用の中、誠にありがとうございます。
 15分程度という短い時間で大変申し訳ありませんが、御発表いただきまして、その後、質疑応答にも御参加いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
【光富校長】  皆さん、こんにちは。高知県の太平洋学園高等学校の光富と申します。よろしくお願いいたします。
【光富校長】   それでは、早速始めたいと思います。
 本校は、定時制と通信制課程のある高等学校です。2年前でしたか、通信制としてヒアリングを受けさせていただいたときには、校舎の形が今お示ししているような形でした。高知駅のすぐ近くにありますけれども、現在はちょっと大きくなりました。前の部分がちょっと飛び出した形になりました。
 もともと、ここに移ってきたときは、この写真で行くと左のここにあります、これは音楽棟なんですけど、これもなくての形でしたけど、おかげさまで徐々にこういうふうに増築をして、学校が少しずつ変わってきております。
 学校のもともとは、女子の家庭科の専門学校でした。それが、よその通信制の高校のほうに子供たちが勉強に行くという形だったので、それを何とか自校で通信制高校の卒業資格も取れないだろうかということで、自校で通信制高校の認可をいただいて、専門学校と通信制高校の卒業ができるという、その当時は珍しかったそうですけれども、そういうふうな学校として長い期間やってきました。
 それが平成5年になって「太平洋学園専門学校」というふうに名前を変えて、男女共学の専門学校と通信制の高校ということになりましたけれども、表、グラフというか、見ていただいたらお分かりのように、平成15年に向けて、紫の線が総生徒数です。グラフの赤いところが、もともと通信ですから通信制の生徒で、専門学校は廃止になったんですけれども――というのは、専門学校は大変出席の厳しい状況があって、それを、原級留置がもとでやめていく生徒が物すごく多くなったので、原級留置のない単位制の高校にということで専門学校のほうは廃止をする方向になりまして、平成11年から通信制高校と、そして定時制のほうの募集を始めました。
 その時は、物すごく一気に生徒数が増えまして、高知のほうの新聞にも、男女共学の定時制の高校が、昼間定時の高校が増えたということで取り上げていただいて、男の子の高校の進学先が増えたということで、物すごい生徒数が増えたんですけど、退学生も物すごく多い状況で、グラフを見ていただいたらいいように、どんどん生徒数が減っていっている状況にありました。
 なので、原級留置が多いので、単位制にすればそれが止められるのではないだろうかということで単位制にしたんですけど、それでも止まらなくて、平成13年に本格的に定時と通信で何とか学校をやっていこうということで、いろんな取組を考えるように至ったんですが、もう本格的に学校を変えたというか、改善に取り組んだのが平成15年になります。
 平成16年に、実は校舎が高知駅周辺の開発に伴って、今の場所に移りました。それを機に学校の改善をしました。いろんな取組の。それについて今日お話をしますが、それ以降は、見ていただいたらお分かりのように、生徒数は増えていっています。
 そして退学者についても、定も通も、通はもともと少なかったですけど、定時制の退学者の数が急激に減っているというふうな状況にあります。
 生徒数が増えましたので、どうしても校舎を増築する必要があって増築をしたという形ですが、水色のグラフ、水色が定時制でピンクが通信ですが、通信が減っていたんですけど、通信のニーズも増えて、今、定・通、大体並んできています。
 今、単位制(総合学科)、定時制のほうが昼間ということですけど、2学期制(前期・後期制)になっていますが、定時のほうが変形の2部という形を取っております。
 生徒数としては、今年度5月1日の数が、定時が258、通信が220ということで、合わせて478でスタートして、10月1日には483と増えています。退学者もちょっと出たんですけど、増えているというのはよそからの転編入生がいるということです。
 転編入生を今までは結構受入れができたんですけど、学校内での退学者が減りましたので、空きがなくなったので、残念ながらほかからの転編入生はちょっと採りにくい状況にあります。
 資料としてはお示しをしていませんけれども、多様な生徒さんの受入れをするというふうなお話が先ほどありましたけれども、本校は特別支援教育に力を入れた学校改善ということで取組を進めて、今現在に至っておりますので、生徒の中の、大体、定時制の生徒さんで、今年度、発達障害等の診断のある新入生が4割です。通信のほうが3割ぐらい、そういう診断のある生徒さんを受け入れています。
 ですので、学校の支援体制というのも相当しっかりやっていないと難しい状況にあるんですけれども、まず、時間割です。単位制ですので、結構柔軟な時間割づくりをオーケーにしています。
 まず定時制で行きますと、変形ですので、1部・2部ということで1日6時間授業を組んでいて、その中で4時間、どこかから始まって4時間授業を取っていただいて卒業すると。で、通信がありますので、併修を使うと3年間で卒業ができると。
 なので、朝9時から午前中で終わるのが1部、そして、ちょっと遅めに始まって、お昼休みを取って、そして午後というので2部という形にしていますが、中には、やはり体育なんかが、とても体調の関係でできないという生徒さんがいます。
 定時制だと、例えば1年生で体育が週に4時間あるんですけど、それが難しい場合にはどうしているかというと、定時制の体育の授業をカットして、通信制課程、水曜日のお昼に通信があるんですけど、そこに来て体育を取ってもいいよとかというふうな形で、定時制であっても、自校の中に通信がありますので、それを柔軟に取っていいよというふうな形を取っています。
 そして、通信のほうは週1回、水曜日のお昼か、夜か、土曜日の午前中、どこかのコースを選んで授業を受けていただくんですけど、その曜日の中で時間割を組んで動くんですけど、どうしてもやむを得ない事情、よそから転校してきて、1週の時間だけでは卒業するのに、ちょっと早くしたいのに難しいとか、あるいは親御さんの関係で、送り迎えの関係で週に1回のスクーリングだけではちょっとなかなかとか、いろんな事情がある生徒さんがいますので、あるいは仕事をしていて、本当は自分は土曜日なんだけど、その時出張があってとかいうふうなときには、別の曜日で同じ内容をやっているところを取りに来てもいいとかいうふうなことも可能にはなっています。ただし、事前に届出が必要になります。
 そして、通信にはない系列があるんです。美容であるとか軽音みたいな専門教科ですね。そういうものは通信制の、これは例ですけど、水曜日のお昼の授業を受けながら、定時制の授業も受けられますよと。ですので、今、中学校で学校に毎日行くのが難しいという生徒さんで、だけど自分の興味・関心がある専門の教科は定時しかないという場合には、通信で高等学校卒業にどうしても必要な科目を取りながら、自分の興味・関心のある科目を定時制に受けに来たらいいですよというふうなことで、それも柔軟にオーケーというふうな形にしてあります。
 特に支援の必要な子供さんについては、入学相談の時点で、無理に定時制への入学を勧めないで、通信制への入学をお勧めしています。というのは、週に1回通信で、前期は週に1回来る練習をする。その中で、補習があるんです。内容的に普通の学校の補習みたいなのが金曜日にあるんですけど、そこに来て、基礎学力の部分をやる子もいれば、進学とか就職に向けてのことをする人もいますし、あるいは通信のレポートの指導、支援も金曜日にやっています。その金曜日に出てくることによって、週2回、学校に出てくるようになります。授業を1週間に1回、補習を1回。
 それとまた別に、例えば図書館で本を借りたことがないとか、保護者の送り迎えがないと登下校ができないとかということで、公共の乗り物に乗ったことがないとか、コンビニでお買物したことがないとかという生徒さんがいますので、その場合には、スタディルームというのを、今は週に3回になっていますね、月・火・木にそういうのを構えていて、大学生とかが手伝いに来てくれているんですけど、そこで、そういう勉強以外の練習もできるようになっていますので、そうやって学校に来る回数を増やしていって、そして慣れてから定時制に移るということも可能なシステムにしてあります。
 逆に、定時制の生徒さんで入学をして、だけどやっぱり体調の関係で毎日は登校が難しいという場合には、通信制への校内転籍も可能にしてあります。
 ですけど、今は、すぐ移るのではなくて、定時制に籍を置きながら通信で受けてみる、あるいは通信制に籍を置きながら定時制で受けてみるということをやった上で、自分が行けると思ったほうで最終卒業を目指してもらうというふうに、できるだけ準備期間というか、そういうのを大事に取りながら、生徒の進路というか、卒業を応援していくというふうな形を取っています。
 学校の中の校内の支援体制ですが、まず、教育相談係を中心とした教育相談体制というのがあります。これは定・通共に特別支援教育のコーディネーターがいて、何人かのチームになっているんですけれども、今、定・通合わせて教員が40名います。専任の教員が。
 その中で、うちの学校に勤めるようになって特別支援学校の教員免許を取ってくれた教員が5名おります。そして、公認心理師を取ってくれた者が3名、臨床心理士を取ってくれた者が1名、ガイダンスカウンセラー――私もガイダンスカウンセラーしか持ってないんですけど、取った者が2名というふうに、教員それぞれが学校の取組に対してそういうふうに勉強して、高等学校の教員免許以外に支援に必要な免許を所得して、みんなでチームを組んで生徒を支援するというふうな体制づくりに、力を入れて取り組んでくれています。
 スクールアドバイザーというのがありますが、これは定時制だけの制度でして、担任を決めても、馬が合う、合わないがありますので、生徒本人が自分の相談したい先生を選べるという形になっていて、教員が1人で抱え込まないということを大事にしています。
 ですので、月に1回は校内の支援会というのをします。ちっちゃい教育相談担当の支援会みたいなのは事あるたびに開くんですけど、月に1回、全体として支援会をやって、担任が気づかなくてもほかの教員が、「この子はちょっと最近どうですか」みたいな気づきがあったときには、そういうことも上げてみんなで話をして、やっぱり苦手な部分があったりしますので、私は優しく声をかけられないから、じゃあ先生、あの子とよく話すからお願いね、みたいな形で、みんなで教員でチームを組んで、生徒をサポートするということに取り組んでいます。
 就職支援コーディネーターというのは、20時間の配置にはなるんですけれども、普通の進路指導で就職・進学のできる生徒はいいんですけど、そうではなくて、場合によっては手帳を取ったほうがいいですよという生徒さんもいますので、できるだけ在学中にそういうふうなアドバイスもするようにして、1日程度のお仕事体験からオーケーですよ、みたいな形で、そういう子供の特性を理解した上で受け入れてくれる企業を探して、そこへ一緒に動いてくれたりとかいうような仕事をしてくれる担当者というのを配置しています。
 それから、今年からですけど、特別支援教育の支援員というのも配置しました。教員免許はありませんけれども、いろんな支援機関で長いこと子供たちに関わっていたという方をお願いしました。
 それから、医療的ケア看護職員というのは、これは通信だけになるんですけど、これも今年度からですけど、看護師と保健師、それと養護教諭の資格を持っていて、どうしても保健室でお薬を預かったりとかいう必要のある生徒さんとか、通信の場合、やっぱりそういうケアの必要な生徒さんがおりますので、通信のほうでお願いをするようにしています。
 夜間のコースもあったりしますので、教員だけではちょっとやっぱり不安がありますので、通信制にそういう医療関係の経験のある方で養護教諭の資格を持っている方というのを配置しました。
 それから、スクールカウンセラーとスクールソーシャルワーカーは、40時間、常駐の方を入れています。プラス、カウンセラーだと週1回とか月1回の方もお願いしていますので、3名置いています。スクールソーシャルワーカーについても、40時間プラス、通信のほうの強化ということで、通信制課程に水曜日の昼、夜、土曜日にプラスのスクールソーシャルワーカー、プラス支援みたいな形で動いてくださる方を今年度から配置しました。
 キャリアカウンセラーは週1回です。スーパーバイザーというのは本校がずっとお世話になっている、もう今、大学を退職されましたけれども、臨床心理士の先生にお願いして、私たちがその先生に、自分たちの子供への関わりについてアドバイスをもらうという体制です。
 どうしても心配なのが、スクールカウンセラーの先生とかスクールソーシャルワーカーの方とかに常駐で入っていただくと、そっちへお願いすると、自分たちが関わるんじゃなくて、もう専門家にバトンタッチしたらそれでいい、みたいなことになるのが一番すごい不安なんです。
 やっぱり、担任であるとか教員であるとか、私たちがやっぱり関わるということを基本にしたいので、専門の方に助けていただいて、教員が最後まで関わると。
 というのは、やはり目的が違うと思うんですよ。カウンセラーの先生であるとかソーシャルワーカーの先生は、卒業というか、医療的・精神的なケアであるとか、社会的な部分であるとかで、私たち教員はやっぱり高校を卒業させて次の進路へということになりますので、できるだけ、子供が卒業したいという思いがあって入ってきていますので、専門的な知識を持っている方に助けていただきながら卒業を目指すと。
 ですので、本校で今一番在籍期間の長い子は、通信だと12年、在籍をしています。後でまたお話ししますけど、そういうふうな、ちょっと支援の必要な生徒さんのクラスというのがあって、その中で一番長くなった子が12年次生になりました。
 ということで、とにかく大学とか、それから医療機関とか専門機関とか、そういうところとも連携しながら取組をしていますし、地域の方にも助けていただいて、やっぱり社会性というのが必要だと思いますので、地域の方と一緒になって、地域の運動会の運営をやったりとか、一緒にお掃除したりとかというようなことで、初めの頃はすごい迷惑学校みたいに言われたことがあったんです、ちょっといろいろ、やんちゃもしましたので。
 でも今は、学校がここにあってくれてありがたい、というふうに言っていただけるように、学校も変わりました。
 授業以外でも、いろんな実務代替とか、定・通ですので、そういうのを使って単位が取れるような仕組みもしています。
 そして、さっきちょっと話しましたけど、個別指導計画による支援というのもあるんですが、本校には個別支援ホームというのがあって、普通の入試での一般の受入れはありません。本校に入ってから後で、やっぱりいろんな支援をした上で、それでもなかなか難しいという場合には、個別支援ホームというのが定・通共にあります。
 イメージでいうとこういう感じです。個別支援対象の生徒さんと個別支援ホームの生徒さんというふうになっているわけですけど、例えば定時制だと、個別支援の必要な生徒さんが、入学生で大体いつも3割とかいるんですけど、入ってくると、それほど心配ないというふうな感じになって、その中でもやっぱり、どうしても取り出した支援が必要であるとか、いろんな生徒さんを見ると、今現在30名ほど、定時制でいます。252名中30名の生徒さんが、個別な支援が必要な生徒さんと。
 その30名の生徒さんの中の15名が、保護者と一緒じゃないと登下校ができなかったり、授業を受けることができないとか、家庭訪問が必要だったりとかいう個別支援ホームの生徒さんという形で、全ての生徒さんの中に個別支援対象の生徒さんがいて、その中でまた個別支援のホームというのがあって、そこで支援をすると。状態が変わってくれば、通常のコースに戻していくというふうに考えています。
 1年入学前には入学前の補習をして、生徒さんとの関係づくりというか、状況を把握するという取組をしています。
 入学後についても、できるだけ授業以外でも、いろんな学びの場所というのを提供するようにしています。
 今はコロナの関係でちょっとできていないんですけど、「太平洋キッチン」というのは、調理実習の授業じゃなくて、お買物も一緒に教員が行って、大体何人分の料理を作るにはこれぐらいの材料が、みたいな形でお買物の練習からするというのが太平洋キッチンで、年に1回。また、年末にはバイキングをしてくれて、私たちがそれを一緒に食べて、みたいなのをずっとやってきてたんですけど、今ちょっとコロナでそれができない状況があって、大変残念だなと思っています。
 学校としては、一人一人の子供たちが、「いつでも どこでも たくましく 生きる力を身に付けた人材の育成」というのが本校の教育目標ですので、そのためにはまず学力ですね。そのためには、分かる授業を目指すと。そして社会性、これは学校だけではなくて、いろんな方に助けていただいて取組を進めているという状況にあります。
 とても小さな学校ですけど、いろんなことに挑戦しながら取組を進めているところです。
 ちょっと早口でしたけど、以上です。ありがとうございました。
【荒瀬主査】  光富先生、ありがとうございました。大変、丁寧に詳しく御説明をいただきました。
 では、ここで皆様から御質問をいただきたいと思います。時間の関係でそんなにたくさんの時間は取れなくて、15分程度ということでお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。オンラインの御参加の委員の方は「手を挙げる」ボタンを押していただく、会場にいらっしゃる方は実際に手を挙げていただくということでお願いしたいと思います。どうぞ、どなたからでも。
 では岡本先生、どうぞ。
【岡本委員】  岡本です。すばらしい発表をありがとうございました。すごく手厚くされていて、制度面でも本当にいろんな学校に導入していただきたいなと思ったんですけれども、人材の確保だったり、あとは、ちょっと答えにくいかもしれませんけども財政面だったり、その辺で難しい点をちょっとお教えいただきたいんですけれども、いかがでしょうか。人材の確保や財政面での。
【光富校長】  人材の確保については、やっぱりなかなか難しいところがあって、今、新しくうちで若い先生はほとんど、大学生のときに本校に、さっきボランタリーブラザー・アンド・シスターというか、そういうのが前はありまして、今ちょっとその名前はあんまり使ってないんですけど、学習支援であるとか、集団の活動の練習であるとかというのに関わってくれていた学生さんで、教員免許を取ろうとしていた学生さんの中から、うちの学校にいいなと思う方にちょっと声かけをして、学校の事情も話してという方に、多く働いていただいています。
 財政面はとっても厳しいです。ですので、多分もう公立の高校の先生方とは比べ物にならないぐらいお給料も安いですので、お願いするときには「給料安いですけど」ということを言って、お願いしてもらっています。高知県の私学では、ずばり言いますけど一番給料も安いですし、管理職手当も最近ちょっと、ちょっとだけ、次の管理職の方のことを考えるとつけてくださいということでお願いしましたけど、だけど、その中でもうちに来ている先生方は、今、一生懸命、1人でも多くの子供たちのためにということをもってやってくれているので、頑張ってくれています。
 ただし、いろんな教育相談に関する研修は、全部研修扱いで、お給料は安いですけど、そういう勉強に対しては出すようにはしています。
 以上です。
【岡本委員】  ありがとうございます。
【荒瀬主査】  ありがとうございます。オンラインで御参加の今村委員、長塚委員、濱田委員が手を挙げていただいています。オンラインの方、まず3人お話しいただいて、その後、田村委員からお願いしたいと思います。鍛治田委員からもお願いいたします。
 では今村委員、お願いいたします。
【今村委員】  すばらしい御発表をありがとうございました。お話の中で、定時制や全日制に行けなくなってしまってから通信制を選ぶのではなくて、まずはステップとして通信制で慣らしていってから定時制のほうにチャレンジの幅を広げていくというステップの描き方が、まさに今の通信制の現状が、ほとんど――ほとんどというのはちょっと言い過ぎかもしれませんけれども、現状、広域通信制を含めて不登校を選んでいる子供たちが、やりたいことがあるから通信制を選ぶというよりは、不登校の子が通信制を選んでいるという現状にすごく一致している、すばらしい経営――経営というよりは学校運営をなさっているということに、本当に感銘を受けました。
 一点お伺いしたいのは、先ほど、前に質問された岡本さんも御質問になったこととも関連するんですけれども、学費の考え方についてです。
 というのは、私たちのところに相談を寄せられる現役不登校のお子さんや、広域通信制に入学された方からの質問というか相談の一定層が、思ったよりも広域通信制に入ったら、毎日通う居場所の獲得にお金がかかったとか、それが就学支援金の範囲の中で見てもらえないということが事前に分からなかったとか、そういった声がすごく多いんです。
 やっぱり不登校のお子さんたちにとって、毎日誰かと接点を持つということの練習が、実は学ぶということよりも大切だったりするという意味で、今の、毎日のように定時制の仕組みと通信制の仕組みをうまいことやり取りしながらステップを上げていくというやり方を、どこまで就学支援金の範囲の中で見ていらっしゃるのかということを、無理されているから経営的に厳しいということなのかもしれないんですけど、その辺りをお教えいただきたいです。
 これはちょっと時間がないので申し訳ないですけど、文部科学省の方に、このような太平洋学園さんのような狭域通信制――広域通信制ばかりが話題になりますけれども、制度をうまく活用しながら居場所の利用、毎日子供たちの学習支援があるような狭域通信制の私学が全国にどれぐらいあるのかということについても教えていただきたいです。これは文科省の方にお伺いしたいです。ありがとうございます。
【荒瀬主査】  分かりました。ありがとうございます。
 まず光富先生、いかがでしょうか。
【光富校長】  学費については、1単位が幾らという形になっています。それに対して支援金が、定時だと幾ら、通信が幾らというふうになっていまして、御家庭の状況によって県がそれにプラスアルファしてくれるので、経済的にしんどいおうち、当然非課税のおうちなんかはゼロです。今、590万ですか、くらいまではまた加算があるし、700万ぐらいは加算がありますし、ということで、学校の授業料を頂いて、あと、本校は定時制の場合は年間5万、通信制の場合は3万、教育活動協力費というのをいただいていて、これは教科書代であるとか、遠足のバス代であるとかというのをそれでやりくりしているんです。
 というのは、遠足のバス代が払えなくて遠足に行けなかったとかいう子が前にいましたので、卒業するまでにいろんな検定を受けたり、いろんな行事に出たら大体これぐらいかかるというのを計算して、それを均等割りしてお預かりして、それを超しても、もうもらわないと。ですので、保護者負担は私学ですけどとっても少ないと思います。
 もうはっきりと、「3年間で必要なお金はこれです」というのを出していますので、それ以上頂きませんし、家庭訪問に行っても、医療機関に一緒についていっても、授業以外で来ても、全然お金は必要ありません。ですので、通信の生徒さんのレポートの支援も全く、よそへ行くと高くなりますから、お金をかけずに自分のうちでしますということでやっております。
 以上です。
【荒瀬主査】  今村委員、よろしいですか。
【今村委員】  ありがとうございます。でも、何かこう、御無理なさらないでくださいと言うのもちょっと微妙なんですけど、すごく良心的というか、本当にお子さんたちにとったら、家庭にとってもありがたいなと思いました。
【荒瀬主査】  私、実際にお訪ねしたことがありまして、生徒さんの様子とかを拝見しましても、いろいろと課題抱えていらっしゃるんだと思うんですけれども、皆さん本当に明るくて、一生懸命前向きにやっていこうとしていらっしゃるという姿がありました。
 それは多分、今、今村委員が御質問になった、お金の問題とかでやっぱりしんどい思いを親がしていないというところも大事なことなんだろうなということを思っております。
 ありがとうございました。文科省のほう、今お答え……後から。
【松田参事官補佐】  今、手元にデータがございませんので、後ほどお答えさせていただきます。
【荒瀬主査】  ということです。よろしくお願いします。
 では、長塚委員、お願いいたします。
【長塚委員】  ありがとうございます。長塚です。一つだけお尋ねしたいんですが、非常にきめ細かな御指導をなさっているので、非常に感銘を受けたんですが、柔軟な定・通併修制度などを取り入れていらっしゃるということですので、生徒さんの通っている範囲については、定時制となればやはり地域的にかなり限定されるんじゃないか。通信制も狭域ということもありますから、併修するということになれば、これはもう、この高知の中でもかなり限定された範囲のお子さんが通っているんじゃないかなというふうに推測するんですが、その辺はいかがなんでしょうか。
【光富校長】  その年によって違いますけど、室戸のほう、高知の地図を見ていただいて、室戸のほうから来ていたときもありますし、今年は宿毛のほうから来ていたりもします。ですので、定時で2部にすると、割と早いJRで来れるんです。
 あと、通信も狭域ですので高知県内ということですけど、入学時に高知県で入学をされて、御家庭の都合で県外へ引っ越しをされた方がいます。それは、県に聞きましたら、もともと高知県で入学しているので、卒業まで支援金は助けてくださるということでしたので、それこそ、バスで通ってきてということで、県外から来たという生徒もいますので、お金の部分でどうしても、支援金ができて助かった部分もあるんですけど、高知県外から来た子にはそういうのが使えないというところはありますけど、入ったときに高知県内であればそういうことも可能ですので、端から端まで結構、朝の5時ぐらいに起きて来ているような子もいたりします。というような状況です。
【長塚委員】  ありがとうございました。
【荒瀬主査】  ありがとうございます。
 では濱田委員、お願いいたします。
【濱田委員】  高知県教育センターの濱田です。光富校長先生、本当に今日はどうもありがとうございました。先生の学校経営は非常に、ふだんから存じ上げていて、ですけれども、改めて今日、お話をお聞きして感銘したところでございます。
 2点、お伺いさせていただきたいと思います。校内の転籍、徐々にステップアップで無理のない登校計画、非常にすばらしいというふうに思いますけれども、この校内転籍を活用している生徒さんがどのくらいおいでで、その生徒さんたちの進路状況といいますか、そういったことを教えていただきたいことが1点。
 そしてもう1点は、先生方がそれぞれ様々な支援を、支援に必要な資格を取っていらっしゃるということですけれども、これはあくまでも主体的にといいますか、自己負担でやっていらっしゃるのか、それとも、やはり学校として何らか保障をしながらやっていらっしゃるのかをお聞きしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
【荒瀬主査】  2点お尋ねがありました。光富先生、よろしいでしょうか。
【光富校長】  校内転籍のほうは、ちょっと今、手元にあれですけども、1年生のときはあんまりないです。2年・3年、2年生のときに結構増える。定から通へということで、それでも1桁です、今は。
 というのは、だから定時制にいながら通信を取れるような形になっているので、転籍をせずに、お友達とか担任の先生は変わらない状態で行きたいなということでやっていて、場合によってはどうしても、仕事をするようになったからということで、4年次生以上になって通信へ、とかいうふうなこともあります。
 通から定のほうは、これもやっぱり、これはもう本当に数名ぐらいです。だけど、通信にいながら定時を受けるという生徒さんは何名かおります。
 ですので、そこをだから柔軟にすごく今やっているので、さっき言った定時制の支援ホーム生徒さんなんかは、15名はもう完全に、定時にいながら通信の授業も組み合わせていますので、あるいは逆に、通信制にいながら定時の行事に来たいとか、これは行事に入ってもそんなにならないんですけど、授業を受けたいとかというふうな、美容の授業なんかは通信にいながら受けに来たりとかいうふうなこともありますので、それを言っていると、みんながぼつぼつぼつぼつなので、ちょっと人数が、科目登録用紙を見ないとちょっと分からないんですけど、完全に転籍という形になると、最近は定から通へも少なくて、大体2年生のときに10人いないぐらいですね。という状況です。
 あと、先生方の公認心理師とか、あれは全部先生方、申し訳ないですけど自腹です。気がついたら「取ってきました」と言って持ってきてくれるということです。
 ただ、そのために、臨床心理士とかを取ったりするために必要ないろんな研修に出たりしますよね。そういうのも、できるだけ学校の中でも、学校を使って先生方が勉強する場に、よその会場を借りるとお金がかかりますので、例えば私が、自分が入っている学会の事例研とかそういうのは全部学校でやって、うちの先生も出ていいよ、みたいな形でやったりとか、みたいな形をやっています。
 以上です。
【濱田委員】  どうもありがとうございました。先生、どんどん頑張ってください。
【荒瀬主査】  ありがとうございました。
 では田村先生、お願いします。
【田村委員】  田村でございます。本日はすばらしい御発表をありがとうございます。
 手短に2点だけお尋ねいたします。1点目は、生徒さんが、全校生徒の数が478人ぐらいというふうに理解してよろしいですよね。その生徒さんたちを、教員は何人の体制で御指導なさっているのかということが1点。
 それから2点目は、最近は学び直しにICTの力を使う、つまりAIドリルのようなものを使われることも多いようですけれども、御校の場合はそういったことはお使いになっておられるのか、効果があるのかどうかということをお尋ねします。
 以上です。
【光富校長】  全校生徒でいいですかね。全校生徒でいうと今483名になっていますけど、専任の教員としてはさっき言ったように40です、私を入れると。それに、時間講師であるとかを入れると、ちょっと70人ぐらいになってきます。
 それ以外に、臨床心理士とかいろいろ入ってきますので、それでも80人いないです。すみません、今ちょっと名簿がすぐここにないんですけど。というふうな状態です。
 あと、それで大学生のボランティアも入れても、だから、80人おらんですね。大学生のボランティアとか大学生の支援員さんは、教員免許を持っている院生とかが最近は多く来てくれています。というスタッフになります。
ICTのほうは、通信のほうの学習の支援で、予約制でレポート、学校に来ない子に教員がそれで予約してレポートを教えたりとかいうふうなのを使っていて、授業ではほとんどの教員が使っています。スクリーンとか電子黒板とかいうのを使ったりはしています。
 Classiを使っていろんな配信をしたりとかいうのもやっていますけど、まだ十分ではないです。全教室に一応使えるような配置はして、みんなタブレットとかいうのは持っていないおうち、経済的にもすごく、7割の子が支援金の加算対象というような状況のおうちですので、なので授業中、学校で貸出しする分はあるんですけど。
 だから、携帯電話の持込み、うちはオーケーなんですよ。なので、書くのが苦手な子はパシッと撮っていいことにしていますので、そういうのを使ったりしてアンケートに答えたり、授業で自分の携帯でやったりしている子もいますし、学校のタブレットを貸したりという子も言いますけど、おうちへの貸出しは申出があったら貸し出すようにしていますけど、それは今のところないです。という状況です。
【田村委員】  ありがとうございます。では、AIドリルのようなことはされていないということですね。
【光富校長】  そうですね。Classiの中の動画とか学習のやつを使ったりとかいう子はいます。
【田村委員】  ありがとうございました。
【荒瀬主査】  ありがとうございました。
 では鍛治田委員、お願いいたします。
【鍛治田委員】  YMCAの鍛治田です。先生方の熱意が一つ一つ形になったという、すばらしいなと思って聞いておりました。
 2点質問です。個別の支援を非常に丁寧にされていらっしゃるところで、小集団ですね、生徒の人間関係を構築していく上で、何か工夫されていらっしゃること、SSTなどをされていらっしゃるかなど、どんなことをされていらっしゃるかを1点伺いたいです。
 2点目として、アルバイトやボランティアが単位になっていらっしゃいましたが、それはどのような仕組みか教えていただけますでしょうか。よろしくお願いします。
【光富校長】  社会性の部分は、さっきもちょっと出しましたけど、それこそ、一緒にバスに乗る練習をしたりとか、図書館へ一緒に、スクールソーシャルワーカーが一緒に行ったりとか、スクールカウンセラーも。だからスクールカウンセラーもスクールソーシャルワーカーも40時間配置をしていますので。
 あとは、地域の方に助けていただいて、地域の方と一緒に清掃活動をしたりとか、それこそ、ソーシャルスキルトレーニングが必要な場合にはそういうこともやったりとか。それから、さっきの調理もそうですよね。スーパーに一緒に買物に行って、今大体どんなものがどれぐらいで、お米も炊いたことがないとか、洗ったことがないとか、いろんな子がいますので、調理実習ではなくて、そういうふだんの、卵を焼いて御飯を炊いておみそ汁、みたいな、そういうのを一緒に練習したりみたいなところをやっています。
 ちょっとコロナの関係でいろんなことが今、止まっていて、徐々に再開をしていこうとしているところです。
 あとは、ソーシャルスキルの部分は、そこはもう望んでいるというか、希望している生徒になるんですけど、こちらからいろんな、何だろう、こちらから声をかけてというふうなことではなくて、何かにつけて行事の中で社会性みたいなところをつけていけるような仕組みというか、ちょっと仕掛け的なものはやって、取組をしているというところになります。
アルバイトやボランティアの単位の部分については、実務代替というのが、定・通だけに使える制度がありまして、これは週20時間以上働かなければいけないとか、結構厳しいんです。
 ですので、これを使っている子は本当に仕事にしっかり行っているような子でないと難しいので、なかなか難しいんですけど、あとは就業体験ですよね。だから、お金はそんなにもらわなくて、休みのときにそれこそちょっとお仕事の手伝いをさせてもらえるとかというふうなところでやって、ちゃんと証明をもらってくるとかというふうな形です。
 それと、地域の方に依頼をいただいて、ボランティア活動に参加をしたりして、それをためていくというふうな形で単位認定をしています。
【荒瀬主査】  ありがとうございました。
 ほかにもいらっしゃるかもしれませんが、時間の関係で、ここまでで質疑応答を終わりたいと思います。
 光富先生、丁寧に御回答をいただきましてありがとうございました。
 さっきもちょっと生徒さんの姿も申し上げましたけれども、実際伺って、先生ともお話をさせていただきましたが、先生方が本当にやりがいを持って、何か楽しんでいらっしゃるという印象をとても強く受けました。
 ただ、本当にそれに甘えていていいのかということも一方ではあるわけでして、本当のところ、もっとちゃんとした支援ができるようにしていただくというのは、ぜひ国としてもぜひお考えいただければということを思いました。
 光富先生、ありがとうございました。
【光富校長】  ありがとうございました。またよろしくお願いいたします。
【荒瀬主査】  通信制の会議でも非常にお世話になりましたが、今回また御発表をどうもありがとうございました。
 このまま残っていただいても結構ですし、御退出いただいても結構ですので、どちらでもお選びいただければ。
【光富校長】  はい。お話を聞かせてください。よろしくお願いします。
【荒瀬主査】  じゃあ、引き続きよろしくお願いいたします。本当にありがとうございました。
【光富校長】  ありがとうございました。
【荒瀬主査】  それでは、続きまして沖山委員から御発表いただきたいと思います。
 やっぱりまた15分程度ということで申し訳ありませんが、よろしくお願いをいたします。
【沖山委員】  それでは、よろしくお願いいたします。東京都立世田谷泉高等学校の校長をしております沖山と申します。
 貴重な時間ですので、挨拶もそこそこにと思いますけれども、先ほどの太平洋学園の御発表を伺っていて、私立高校でもここまで工夫されて、また先生方も意欲的に取り組んでいるということを伺って、少し恥ずかしい思いをしています。財政的なというか、予算的な不安のない公立学校において、もっともっとできることがあるんだなというところを勉強させていただきました。
 今日、私は4点お話をしたいと思っています。東京都の不登校・中途退学の現状と対策、ごく簡単に本校の取組について、今後の定時制・通信制の在り方についてどういう方向性を持っているかということ、最後に、不登校理解ということが画期的な転換を迎えていますので、それをどう捉えて学校づくりに生かしていくかということ、です。
 最後は、「不登校という概念のない社会へ」とタイトルをつけましたけれども、私はチャレンジスクールの校長をしている関係で、小中学生の不登校の児童生徒や保護者と会う機会が多いのですが、今回の国の大きな流れ、進んでいく方向に対しては、非常に大きな期待が寄せられていると感じています。
 そこで、現在は不登校に苦しんでいる現状があるけれども、今後はそれを心配することがない社会ができあがるのではないかという期待の声を、たくさん聞きますので、そういうことを踏まえて、少しだけお話をしたいと思っています。
 本校は、都立のチャレンジスクールという学校で、小中学校で不登校経験があったり、一旦高校に入学したけれども、その後、長期欠席などが原因になって中途退学をしてしまった生徒、そういった経験を持つ生徒にチャレンジをしてもらうという学校でございます。
 学習が十分にできていないということが前提になりますので、基礎・基本重視の学習をするということや、心のケアに配慮したきめ細かな指導をすると。豊かな人間性の育成ということを目指しているということであります。
 一番大きな特色は、中学校時代に、十分な学習を積むことができていないということが前提にありますので、入学者選抜において学力検査を課さず、調査書の提出も求めておりません。これは非常に大きなチャレンジスクールの特色でございます。
 生徒の学習に対する意欲であるとか、学校生活に向けての希望であるとか、そういったものを重視した入学選抜ということで、面接と作文で選抜を行うという学校でございます。
 三部制の学校ですので、定時制高校として4年間で卒業することが原則ですけども、他部履修といって自分が在籍する部以外の時間帯の選択科目等を履修することで、3年間の卒業を目指すことができます。
 このチャレンジスクールは、東京都では平成9年から10年間かけて行われた都立高校改革推進計画の中で誕生してきた学校です。全国的にもそうですけれども、東京都においても急激な生徒数の減少とか生徒の多様化に対する対応が必要になってきていて、全日制も定時制課程においても適正な規模と配置ということで、学校数を精選していくことが当時進みました。その中で、学校の特色化とか個性化を進めるということで、総合学科高校ができたりとか、本校のようなチャレンジスクールが設置されたりしました。
 その後、平成24年度以降、第2期の推進計画ということでまた取組が進みましたが、この中でチャレンジスクールに対してはさらに自立支援チーム、これはユースソーシャルワーカーを派遣する取組が始まったのが、この第2期の推進計画の中での出来事でございました。
 都立高校には現在6校のチャレンジスクールが置かれています。一番早く開設したのは平成12年の桐ヶ丘高校です。本校はその桐ヶ丘高校に続いて翌年出来上がった学校でございます。今年度の春には小台橋高校という6校目の学校が立ち上がりました。令和7年度にはもう1校、立川地区にチャレンジスクールが立ち上がる予定です。
 右端に定員のことを書きましたけれども、実はチャレンジスクール6校プラス昼夜間の三部制の定時制高校、八王子にある八王子拓真高校の中にはチャレンジクラスというクラスも置かれているんですけれども、いわゆる不登校の経験を持っている生徒を迎え入れる学校としてひっくるめて考えると、定員が1,260名、1,300人弱になります。ところが、都内の公立中学校の3年生の数が今7万6,000人おり、いろんな数字がありますけれども、中学校3年生の不登校率は東京都においては4%ぐらいと考えられていますので、ざっくり3,000人の不登校経験をしている中学生がいることになります。そこから考えると、特別な入学者選抜の仕組みを持っているチャレンジスクールの定員はまだまだ少ないということが考えられています。
 不登校出現率ですけれども、先ほど申し上げた東京都の改革の中でその成果も現れてきていて、在籍している生徒数の中の不登校の状態になる生徒が御覧のような数字になっていて、上下ありますけれども、令和2年度ではチャレンジスクールにおいて約3割の生徒が不登校の状態にあると。夜間定時制課程においては約10%ということで、全日制に比べてもまだまだ非常に多い状況はありますが、それが少しずつ減ってきている状況はございます。
 中途退学率も、御覧のようなグラフにあるように、チャレンジスクールにおいても夜間定時制課程の学校においても年々減っている状況にはございます。もちろん学校の取組の成果と言えることもあるかもしれませんけれども、生徒数の減少ということもあろうかと思っています。
 先ほど申し上げた自立支援チームの派遣ですけれども、第2期の取組の中で、平成28年度から東京都の不登校・中途退学対策のさらなる推進力として導入された仕組みだと私は受け止めていますけれども、学校の不登校生徒の支援を教育職員だけではなくて、専門のスタッフ、ソーシャルワーカーの資格を持っているスタッフを派遣して、生徒の学校生活を支えていくことや、それから就労支援とか福祉支援などにしっかりつなげていく取組が始まりました。
 この自立支援チームの派遣の効果は非常に大きくて、例えば相談機能・自立支援の効果というグラフを作りましたけれども、都立高校にスクールカウンセラーが配置され始めたのは平成25年のことですけれども、そこから全校配置が進み、さらに平成28年以降、今申し上げた自立支援チーム、つまりスクールソーシャルワーカー、ユースソーシャルワーカーの機能が学校に広がっていく過程で、定時制課程における中途退学率が大きく低下してまいりました。つまり、学校生活を支えていく上で自立支援チームが果たしている役割が決して小さくないことが、このグラフから御覧いただけると思っています。
 なお、平成28年度以降、スクールカウンセラーについても全課程の配置が行われるということで、学校に様々な専門職が手厚く配置されてくるようになったことが、この平成28年ということになると思います。
 本校は、先ほど申し上げたように2番目のチャレンジスクールとして開校した学校でした。2行目に「本校以降HR指導を重視」と書きましたけれども、実はチャレンジスクールとして1校目の桐ヶ丘高校では、いわゆるホームルームを置かない取組で学校をスタートしました。しかし、高等学校段階の生徒について、やはりホームルームを置いてホームルーム担任が日常の生活指導、学校生活の支援をしていくことがやっぱり必要だという発想から、2校目以降のチャレンジスクールはホームルーム指導を重視した学校運営、学校生活の支援が始まりました。
 これについてはよい面もあったし、私は悪い面もあったと考えています。それは多くの学校でそういうことが指摘されると思いますけれども、やっぱり担任の教員と生徒のミスマッチというか、担任の教員との関わりに苦しさを感じていて不登校になってしまう生徒もいますので、固定したホームルーム担任制はよかったのか悪かったのかは議論があるし、場合によっては複数担任制であるとか、担任を置かないであるとか、様々な取組が全国で見られますけれども、そういう工夫が改めて評価されるべき時期に来ているんじゃないかなと感じています。
 昼夜間三部制ということで、太平洋学園さんは夜間部がありませんけれども、夜間部も置いて昼夜間の三部制ということ。学年制ではなくて単位制をしいていること。それから総合学科ということで、普通教科だけではなくて専門科目も学ぶことができること。こういった特色を持っているのがチャレンジスクールということでございます。
 定員は720名ですけれども、3年で卒業していく生徒が半数ぐらいいますので、そういった意味で少し定員よりも生徒数が少なく、現在650人ぐらいが在籍しています。教員の定数は53名、非常勤教員が70名ぐらいという体制で生徒の支援を行っています。
 入学してくる生徒の7割から8割には不登校経験があります。要因はそこに書いたようなところでございます。一方で、2割から3割の生徒には不登校経験がなくて入学してくる生徒がいます。これは、先ほども御紹介したように学力検査がない、調査書の提出も必要ないということで、場合によっては中学校の段階であまり学習意欲がなかったり、学習が不得意であったり、そういった生徒も入学者選抜が通りやすい、チャレンジしていきやすいということで入学してくる実態があります。
 登校が安定する生徒は、中学校での生徒とか教員との人間関係のつらさから解放される生徒が非常に多いと思います。あとは、学校の特色として同調圧力が小さいこともあるし、ゆっくり丁寧に学べることもある。そこに書きましたようなことが背景にあろうかと思っています。ですから、環境が変わることと生徒の努力、あと学校の特色がうまくマッチして、登校が継続できるようになる生徒が大体6割ぐらいいるということです。
 一方で登校が安定しない生徒は、やはり人間関係上の不信とか不安とかトラブルを抱えていることや、心身の不調を持っている生徒も一定の割合います。それから、生徒も保護者も今は取りあえず休ませたいといった意識を持っているケースもあります。さらに、学習不安から授業についていけないという気持ちを持ち欠席がちになる生徒もいます。
 こうした現状がありますので、今後私たちは、仮に登校が安定せず不登校になってしまった生徒も学べる仕組みをしっかりつくっていかないと、こうした生徒の支援ができないと考えているところです。
 これはスライドとしてはちょっと見にくいものなので参考までですけれども、様々、登校できている生徒に対する支援、それから登校していない生徒に対する支援ということで、手を尽くして、今の現状の中でできること、考えられることはあらゆる支援をしていることをお示ししたくて、載せたスライドでございます。
 登校が安定する生徒が6割から7割、登校が不安定な生徒が15%ぐらい、不登校状態になってしまっている生徒が2割ぐらいいる状況、これが本校の開設以来の実態であります。3年で卒業していく生徒が入学生徒の半分ぐらいいるということでありますけれども、4年次までに卒業できる生徒がさらに20%、在籍年限としている6年次までに卒業できる生徒も含めると、大体入学した生徒の8割は卒業にこぎ着ける実態がございますが、ただ、卒業時に進路未決定で卒業している生徒が3割ぐらいいると。これはまだまだ社会に出ていくことが不安だという生徒が多いことの反映であります。
 したがって、先ほども申し上げましたけれども、入学したにもかかわらず不登校の状態になってしまっている生徒、こうした生徒を安易に通信制に転学させてしまったり、中途退学にしてしまったりするのではなくて、どのように学びに接続していくかということが大きな課題だというところです。
 様々な取組をしていると申し上げましたけれども、その取組のベクトルが一つの方向に向かって順調に進んでいかない状況もあります。それは不登校に対する理解がまだまだ学校の中にも様々あるためです。例えば義務教育じゃないんだから、通学制の学校を選択して入学しながら不登校になってしまうのは自己責任であるという考え方。登校できなければ通信制があるじゃないかという考え方。それから特別な対応をすることは不登校を助長する、さらには登校できている生徒に対して不公平ではないかという考え方が根強くあります。それから履修要件はどの生徒にも平等に適用すべきだと。だから生徒に応じて対応を変えていくことは不適切じゃないかという考え方です。それから、不登校理解が変わったことは分かるけれども、今でも目いっぱい取り組んでいる中で、その新しい取組が求められることに対する負担感といったものも学校には残念ながらあります。
 これはあえてここで丁寧に申し上げるまでもないことですが、不登校理解が転換し、これまでは登校を支援することが目標でしたけれども、今後は登校できない生徒の学習も支援していくことが必要だという認識に立って、学校づくりを今進めています。
 期待する生徒像も、これまで学校生活で十分能力が発揮できなかった生徒という表現をしてまいりましたけれども、これからはチャレンジスクールとして、不登校の経験を乗り越えて頑張ろう、自分のペースで努力していこうという生徒を積極的に受け入れていく方向を、新しいアドミッションポリシーでは明確にしました。
 これをもうちょっと具体的に申し上げると、入学者選抜において、不登校経験を持っている生徒を積極的に受け入れていくということです。先ほど不登校経験がなくて学校には元気に通っていたけれども勉強がちょっと苦手という生徒が二、三割入学してくると申し上げましたが、そういった生徒は学校で十分に作文の支援や面接の支援を受けていますので、彼らの得点が高くなってしまうことがあって、その結果として不登校経験を持つ生徒が不合格になるという実態があります。
 ですから、やはりチャレンジスクールということのミッションを踏まえて、不登校経験を持っているけれども、その経験を乗り越えて頑張ろうとしている生徒を受け入れていくべきだという認識にたって、採点基準等を見直していこうということに今取り組んでいます。
 新しい不登校理解の中には「登校のみをゴールにしない」という理念があります。私はこれは大変すばらしい理念だと思っていますけれども、これは気をつけないと、「あなたは登校できないので、卒業はできないかもしれないけれども、取りあえず自立が大事だからね」というふうな解釈になってしまわないように、やっぱり学びをしっかり保障することと、卒業支援がしっかりできる学校に変わっていかなければならないと思っています。そうすることで、生徒も保護者もそれから私たち教員も不登校の実態に苦しむ必要がないような学校はできないかと。それが目指しているところです。
 本校では最も困難な生徒、つまり今登校できていない生徒を強く支援する学校にシフトしていこうと、今考えています。それから、様々な教育相談機能等で生徒に寄り添うことはできている学校かとは思いますけれども、寄り添うだけではなく、力をちゃんとつけていくと。社会的な自立、経済的な自立を目指すことができるように力をつけていくことも大きな課題だと考えています。
 校内的には新しい分掌を設置して、生徒・保護者・教員をトータルに支援していくという発想で学校の取組を考えていくために、新分掌の設置をしたりしました。それから先ほど申し上げた入学者選抜の評価基準も再検討すると。それから学習保障の方策ですね。教室以外での学びをどう認めてそれを評価していくかということを今検討しています。それから学校外の学修認定の制度も様々拡大していこうということで、今年度からは生徒のアルバイト経験も単位認定していくことに踏み出しました。
 あとは、校内に多様な機能を持つ「居場所」を設置していくことも必要だと考えています。いわゆる保健室登校とか別室登校ということではなくて、そこに様々な、保護者であるとか、地域の方であるとか、大学生であるとか、地域でこういった生徒を支えるNPOの人たちであるとか、そういった人たちが集うような場所をつくって、そこを温かい機能を持っている居場所につくっていくことが課題になるかなと考えています。
 あとは、保護者を支える支援がまだまだ十分ではないので、保護者が孤立しないように保護者を支えていく支援ということで、様々な茶話会を開催したり、保護者会の機会を増やしたりということに進んでいっています。
 時間がちょっとありませんので少し早口で申し訳ないですけれども、不登校生徒・保護者からは、高校に入学すると、小中まで受けられていた支援が受けられなくなってしまって、放り出された気持ちになってしまうという気持ちを頻繁に聞きます。それから、高校には入学できたんだけれども、結局登校できなければ通信制を勧められることになるが、通信制に通ってしまうと、ますますひきこもり傾向というか、登校しない傾向が固定しそうだという不安の声もあります。それから全国に今、中学校の不登校特例校の設置が進んではいますけれども、そういった特例校を見ていた保護者からは、結局は登校できる生徒のみが支援を受けられる学校ということで、非常に不安になったと、そういった声も伺っているところです。
 最後になりますが、全国の小中学校における不登校は、改めて申し上げるまでもなく増え続けている状況があります。高校は今年度公表された報告では増加に転じ、決して減っていることはないと思っています。中途退学があることや、通信制に進学する生徒の増加が背景になっているわけで、高校の不登校の実態はその次の社会的・経済的自立に非常に重要だと思っていますので、高校の不登校の実態にある生徒の支援が急務であると考えているところです。
 不登校の生徒の20%が中途退学しておりその背景に不登校があるということなので、中途退学を減らす観点からも不登校の状態にある生徒の支援が急務だということを考えています。
 時間が参りました。ちょっとここを飛ばしますけれども、皆様御案内のように、新しい時代の高等学校の在り方はこのように示されています。これ、学校としては非常に励まされています。こういった方向性で議論が進んでいけば、いつ・どこで・どのように学ぶことも等しく扱われるようになるんじゃないかと。そうなれば、そもそも不登校という概念そのものがなくなっていくと私は想像しています。生徒が登校や学習方法を自由に選択できるような制度をつくることができれば、それは不登校の生徒だけではなくて全ての生徒にとって非常に価値のあることだろうと考えます。
 それから子供の特性を重視した学びの多様化ということで、四角の囲みの中に書きましたような方向性が示されていますけれども、生徒に多様な学びの機会を保障すること。これはやはり不登校だけの問題ではなくて、非常に重要な取組だと考えているところです。
 最後になります。「当事者」と書きましたけれども、これは現に不登校の実態にある子供と保護者、それからこういった学校で働く教員として、どういう在り方検討が進むことを期待しているかというところです。例えば小中に適用されている支援、小中の時代に受けられた支援が高校に入るとなかなか活用しにくくなっちゃうことがあると。時間がありませんので具体的には述べませんが、そういった方向性を何とか改善していかなければいけないということです。
 それから、学校における単位認定の要件の見直しが必要だろうと思っています。学校には、例えば授業数の3分の2以上の出席を求めるという、校内の規定があるんですけれども、それはあくまでも学校がそう定めているにすぎませんので、単に履修というだけではなくて、修得、何を身につけたかということを強く評価していくような取組の方向性がもっと示されていいんじゃないかなと考えています。
 あとは、国が持っている不登校特例校とか不登校特例制度などの制度。これは私が不勉強で十分に存じ上げていなかったんですけれども、こういった制度もありはするけれども、どこまで効果的に活用されているかというところを感じています。ですから、こういう方向性をもっと活用しやすい仕組みに変えていただくことができれば、力になるんじゃないかなと考えます。
 あとは、定通併修とか様々、今現状ありますけれども、いつ不登校になるか、いつ不登校から抜け出せるかは分からないですので、年度途中からでもそういった定通併修などの仕組みを利用できるような、あるいは場合によっては両課程在籍なんかも認めるような仕組みができはしないだろうかと考えています。
 あとは、そこに書きましたような様々なことを考えていますけれども、一つポイントになるのは、ICTとかオンラインを活用した支援をこれからどんどん進めていかなければなりませんが、これは教員が教室で授業をしながら同時に自宅にいる生徒に配信をしていくことはできるようでいてなかなかできない現状があります。具体的には、そういったものを担う専任スタッフの配置が学校にないと効果的な支援ができないのかなと感じているところです。
 すみません。15分を大分超過してしまいましたけれども、以上でチャレンジスクールの教員として、どういう在り方に向けて検討が進むといいなと考えているかというところをお話しさせていただきました。早口で申し訳ありませんでした。
【荒瀬主査】  ありがとうございました。本当に大事な御提案を頂いたし、最後は課題の提起をしていただいたと思いました。
 それではただいまの御発表につきまして御質問のおありの方、また挙手をよろしくお願いいたします。では岡本先生、どうぞ。
【岡本委員】  岡本です。ありがとうございました。
 ちょっとお聞きしたいのが、全日制・定時制・通信制の課程を超えた学びの促進というお話があったと思うんですけれども、先ほどと違ってこれは公立高校になるわけですね。そうした場合に教員の異動がどうしても付きまとってくるものだと思うんですけれども、都の中ではこの全日制・定時制・通信制の中での教員、多分お互いを知らないと恐らくこれって難しいと思うんですね。それに向けた何か取組とかはされているのか。例えば配置の時に全ての日程を、多分ほとんどの場合が定時制は定時制で回していたりだとかする場合が多いと思うんですけれども、その辺の異動の問題だとかは何か手を打ったりしていますか。
【沖山委員】  東京都では教員として3つのステージがあって、普通の全日制の普通科ですね、それから専門学科の学校、それから定通とか島嶼の学校であるとか。そういったステージを全ての教員が経験することになっているので、異動の時に必ずしも全定の交流がないとか、通信との交流がないということはないんですけれども。ただ、現状を申し上げると、定は定で回っていることが多いとは言えると思います。それは確かに。
【岡本委員】  何か今の点に関して、どのように変えていけばスムーズにこの垣根を越えることができると思いますか。内情はやっぱりそこで回しちゃうと思うんですけれども。
【沖山委員】  垣根を越えてというところの発想を申し上げると、私はこれは生徒の視点に立って、生徒の立場に立って、定時制課程に在籍している生徒が今は登校できるので登校して頑張りたいと。でも結局不登校になっちゃったと。で、原因もよく分からない、見通しが立たない。だけど今うちから出られないから、じゃあ通信制の課程で学びたい。先ほどの太平洋学園なんかはそれができているわけですけれども、それを公立学校でもできないかなということですね。
 定通併修という仕組みがありますけれども、これはなかなか活用しにくいというか、年度途中にしっかり科目登録をして、履修登録をして使うということになって、年度途中で不登校になっちゃうとそれの活用ができないことになるので、もっと柔軟な定通併修ができるようにしたいということがあるんです。
 一方で教員の視点からすると、御指摘のとおり、交流はあるけれども、実態はその中で回っていることが多いので、一つは6年で必異動となっているのが東京都のルールなので、そういった意味では、せっかく本校で6年経験してくれた教員が次に全日制の学校に行ってしまったりとか、希望して定時制を継続する教員もいますけれども、そういった意味では、蓄積してきた経験とかノウハウみたいなことがなかなか定着していかないとか、学校に蓄積していかない現状はあるんですね。それは大きな課題になっていると思います。
 ですから垣根を越えてその財産をちゃんと共有していく、通信制の学校と本校のような三部制、定時制の学校等の支援の経験であるとかノウハウであるとかを共有していくために、交流が進まなきゃいけないことはそのとおりだと思います。
【岡本委員】  なので、制度の部分とあとは人の流れのところ、両方やらなきゃいけないんでしょうね。
【沖山委員】  そうですね。
【岡本委員】  ありがとうございました。
【荒瀬主査】  ありがとうございました。では冨塚委員、お願いいたします。
【冨塚委員】  冨塚です。いろいろありがとうございました。沖山先生に2つだけお聞きしたいと思います。
 一つは資料の7ページにございます不登校出現率が減少していること。千葉県では逆に増えております。減ってきているこの原因といいますか、何が功を奏したかということで、一つには9ページにございます自立支援チームに大きく効果があったのかなと推測いたしますが、この自立支援チームについてもう少し、人数ですとか詳しく教えていただけたらなということと、これ以外に何か不登校の出現率が減ったことへ寄与したものがあるとしたら、それはどのようなことか教えていただければと思います。
 もう一点は、最後御提案を頂きました29ページにございます中の校内フリースクール、校内教育支援センター機能というものでございます。これにつきまして、千葉県でも今少しこのような提案をされているところがあり、ですがもともと不登校の子は学校に行きたくないのに、校内にフリースクールをつくって果たして来てもらえるものなのかというすごく基本的な疑問がありまして、どのような御趣旨でここの御提案に含まれているか教えていただけるとありがたいです。
 以上でございます。
【荒瀬主査】  お願いします。
【沖山委員】  答えやすいほうから、ちょっと前後しますけれども、校内フリースクール等のことをお話しさせていただくと、不登校の理由は様々だし、100人の不登校の生徒がいれば100人の理由があると思いますので、この校内フリースクールがマッチする生徒が全員とは全く思っていないんです。
 ただ、学校外で様々なフリースクールとか教育支援センターなどで、旧適応指導教室等で支援を受けている生徒は相当数いるんですけれども、そういったお子さんとか親御さんから聞く声として、学校の外でいろんな支援を受けていても結局は学校の外の取組なので、なかなかそれで学校に行けないという思い、何か満たされることがないと。学校に登校して必要な支援を受けるために学校に登校してみようという意欲が達成できたことにならないという意味で、そういう声があるので、そもそも学校の中にそういうフリースクールの機能であるとか支援センターの機能があれば、教室には入れないけれども学校には行けたと。学校に行って、そこで単に時間を過ごすだけではなくて、必要な支援が受けられたということになれば、校内で、自分が在籍している学校で支援に接続して、自分で努力することができた経験が積めるということで、多様な不登校生徒さんの一部ではあるけれども、そういった生徒さんの声に応えることになるんじゃないかなということでございます。
 それから不登校率の減少ということですけれども、これはもちろんチャレンジスクールの学校の教員としてはチャレンジスクールの果たしている役割だと申し上げたいんですけれども、ただ、そうとばかりは言えないと思っていて、先ほど御紹介した自立支援チームの派遣が非常に大きいと思っています。つまり、学校生活上の課題だけではなくて、家庭における様々な不安であるとか不安な要素であるとか、それから安心して家庭生活を送れない生徒もいますので、そういった状況を福祉であるとかに接続していって支えていくとか、そういった取組がやっぱり功を奏しているんだと思っています。
 学校の教員だけではどうしても福祉部門に対する理解は十分ではありませんので、ユースソーシャルワーカー、スクールソーシャルワーカーのような存在が非常に機能していて、家庭生活が安定することで学校生活にしっかり向き合うことができる生徒が、そういった視点から学校生活を支えているんだと私は思っています。
 ただ、残念ながら、継続派遣といって週に3人ぐらいのYSW、ユースソーシャルワーカーが派遣されている本校のような学校もありますけれども、多くの都立学校では要請派遣校といって、学校から要請があればその要請に応じてソーシャルワーカーが派遣されていく状況なので、まだ一般的な学校にとってはこの自立支援チームはなじみのあるものではない状況はあると思います。ただ、三部制の定時制高校であるとか本校のようなチャレンジスクールを支えているのは間違いないと考えています。
 それ以外の要素で不登校出現率が下がっていることについては、これは冒頭申し上げたように、学校の特色というか取組の成果だと思いたいんですけれども、本当のところを申し上げると、なぜ減ってきているかというところはうまくつかめていません。場合によっては、多くの生徒が今、私立の広域通信制のほうに流れていく傾向がずっと何年もありましたので、そもそもチャレンジスクールに、冒頭紹介したように、不登校経験のない生徒も相当数入ってきていますので、そういった生徒がそもそも不登校となるケースは少ないので、そういったことも在籍している生徒の不登校率を下げているかなということにつながっているとも言えると思います。いろんな理由があると思うんですが、明確にちょっとお答えすることはなかなかできません。
【荒瀬主査】  よろしいでしょうか。
【冨塚委員】  ありがとうございました。
【荒瀬主査】  では塩瀬委員、お願いいたします。
【塩瀬委員】  ありがとうございます。京都大学の塩瀬と申します。大変先進的で、生徒にも保護者にも優しい制度の御紹介をありがとうございます。質問としては沖山さんと光富さんと、もしよろしければ両方にお答えいただけたらと思います。
 まず1つ目は、先ほどの質問の中にもありました、先生を特に公立の場合はいろんなところからローテーションで回ってくるところなんですけれども、私自身、幾つか中学校の例ですけれども、不登校特例校のサポートをさせていただくに当たって、そこで回ってくる教員さんに対してどういう研修ができるかというところで、一部の通信制高校でそれこそ70時間という長い時間をかけてメンターとしてカウンセリングの資格を取得できるレベルまで研修して新人の先生を迎える学校があるのに対して、公立の先生の研修としてはそこまでの時間を確保するのはなかなか難しいということでした。
 そこで市長や教育長に提案しているのが、例えば不登校特例校を新人研修とか、そもそも先生のスタート地点にできないかという提案です。例えば先ほどお話をうかがったようなチャレンジスクールが高校の全ての先生のスタート地点になっておくと、多分そういう学校の存在をみんな知ることができて、生徒さんが通えなくなってから行く学校としてではなくて、いつでもサポートの方法を提案できることになるのではないかなと思いまして。そういう手順での研修が教育委員会として可能なのかどうかとか、そういうことをちょっと教えていただけたらなと思っております。
 もう一つは、先ほども光富さんの御発表の中にもあった定通の併修がすばらしいというお話をされていたと思うんですけれども、全日制・定時制・通信制、全部併修したらいいんじゃないかなというのが一番個人的に思っていることで、全定通併修学校をそもそもつくるか、あるいはそれを中学校時点で経験しておけると一番いいのではないかなと思っています。そもそもいろんな手段があることを中学校の時に知らないので、自分たちが不登校になってしまってから、何か仕方なく消極的に定時制を選び、そこから行けなくなったので仕方なく消極的に通信制を選ぶみたいな形で、結局消極的な選択になってしまっているのはもったいない。もちろん、積極的に進んでそういった学校種を選んでいる生徒さんや親御さんがいらっしゃることは事実としても、もしどこかにモヤモヤしたものを抱えているのだとしたら、それは二番手、三番手のように消極的な印象を周囲の大人が見せてしまっているのだと思います。フラットに選択肢として生徒たちの前に並ばないし、保護者の前にも並んでいない現状をなんとかしたい。
 一部の自治体の方と、中学校のうちにそのような体験をしてもらえないかと思って、幾つかの教育長とかと相談をしているのですが、どの学年、どの時期に経験しておくといいのかがはっきりとは分からない。例えば、中2のうちに一回見ておくとか、いやもっと前に中1のうちに一回見ておくとか、何かそのことについて沖山さんと光富さんから、もし今みたいなことを中学校時代に経験してもらうとしたら、何年生にやるといいと思うかをちょっとお伺いできたら幸いです。
 世田谷に中瀬幼稚園という幼稚園がありまして、ふだんはお弁当を持ってくるのですが、1週間だけお弁当を持ってきてはいけないはらぺこ週間というのがあるんですね。すると、庭に生えているものをみんなで食べるという狙いで、もちろん庭にはあらかじめ食べられるものが植えてあるんですけれど。この「お弁当のない日」があるのと同じような感じで、「学校という建物が使えないけれど学ぶ日」を仮に一週間でも一か月でも中学校の時に経験しておけると、そもそも図書館に通ってみるとか、定時制スタイルで通ってみるとか、通信でやってみるとかを自身の選択肢として全員が経験できるのではないかと思っています。何とか中学校に単なる自宅学習よりは踏み込んで、この「学校に行けないけれど学ぶ日」というのを導入したいともくろんでいます。
 通信制などを積極的に選ぶ生徒さん、親御さんもいらっしゃるなかで、どこか序列化された周囲の大人の目に悩まされている生徒や親御さんがいるならば、そんな感じで選択肢として全日制・定時制・通信制を本当にフラットに横に並べられる経験をしてもらえたら、今みたいにすごい後ろめたい気持ちで選ぶみたいな思いをさせなくて済むんではないかなと思っています
【荒瀬主査】  ありがとうございます。では、まず沖山先生からお尋ねいたします。いかがでしょうか。
【沖山委員】  大変画期的だと思います。完全に同意します。イメージとしては全日制に登校している、定時制に登校している、だけど登校できなくなっちゃった。だから通信のほうで学べばいいだけだと。また登校できるようになれば登校するというふうに、もう本当にフラットな状況に選択肢があって、どの制度を使うこともできる。そんなことは夢物語だと言われることもあるんですけれども、そういう制度ができないだろうかという希望は強く持っています。状況に応じて選べばいいと。とにかく学ぶ方法を選べばいいんだということですね。本当にそのとおりだと思っています。
 それから前半、何でしたっけね、ごめんなさいね。
【塩瀬委員】  先生の研修や人事異動の順序についてです。
【沖山委員】  研修は決して十分ではないと思っていますけれども、やはり校内研修であるとか、それから様々な専門家を招いての研修であるとかやってはいるんですけれども。ただ、先ほど太平洋学園の先生からありましたけれども、先生方が自分から進んで様々な研修を積んで資格を取るとか、そういったところも非常にすばらしいなと思って拝聴していましたけれども、そういったところに本校がそこまでいっているかというと、まだまだそこまではできていないと思っています。ただ、研修が重要であることは間違いないので、そういう研修を充実させていかなければいけないなというのはそのとおりだと思っています。
 あと一点、例えば愛知県に不登校の中高一貫校ができたという報道が最近あったりしましたけれども、私自身も実は中高の不登校の一貫校をつくれないだろうかと思っています。そうすると、中学校の段階から登校できなくなったら、じゃあ、高校が持っている様々な仕組みであるとか、登校時間の選択であるとか、場合によってはそこで定通併修ができていれば通信制の仕組みも使って勉強を継続することができたりするので、中高一貫なんておもしろいなと思ったりはしています。
【荒瀬主査】  不登校特例校を全ての先生のスタート校にするといったようなことについてはいかがでしょうか。
【沖山委員】  画期的だと思っています。ただ一方で、非常に難しい保護者対応であるとか、非常に難しい生徒対応なんかがやっぱりあるので、それを最初に経験しておくことが、勉強しなければいけないなという経験をさせる意味では非常に重要だと思っていますけれども、まあ、いろいろ厳しいことがあるだろうなとは思っています。ただ、それは画期的だと思っています。
【荒瀬主査】  ありがとうございました。光富先生、いらっしゃいますでしょうか。
【光富校長】  はい。
【荒瀬主査】  お聞きいただいていましたか。全定通併修ぐらいをしたらどうかという御提案で。もし中学校の間にそういった経験をするとしたら、これ、何年生ってなかなか人によっても違うような気がいたしますけれども、何か今の塩瀬先生のお考えに御意見がございましたら。
【光富校長】  中学生何年がいいかとかは答えるのが難しいですけれども。ただ、自分の経験でいろんなところでお話をさせていただける機会が実はありまして、それによって今は小学生の保護者の方からの入学相談なんかもあったりします。オープンスクールなんかにもちょっと参加したいとかということが中学校の割と低学年からだったりとかということで。子供というより、それは先生方、保育園とか幼稚園の先生方の研修に呼んでいただいたりとかでお話をしたりするように今はなっています。高校であったり中学校であったり、学校の取組も中学校の先生をお招きして取組をお話しする。
 だから、不登校になった子供さんが出たときに、中学校の先生がこういう制度の学校があるよということを説明していただくことがすごく大事ではないかなと。そこがちゃんとした説明ができていないので、通信制高校ではなくて、それこそ通信の会の時に言いましたけれども、サポート校を高校と思っているというか、みたいな感じで、高校じゃないのに高校と思って進路を勧めているような状況があるので、やっぱり小中の先生方が、特別支援学級とかなくなった後、高校へ行ってもこういう支援を受けられる学校があるんだよとか、こういう制度があるんだよということを知れるような何か方法があればいいなと思っております。
【荒瀬主査】  ありがとうございます。塩瀬先生、よろしいですか。
【塩瀬委員】  ありがとうございます。
【荒瀬主査】  学年はちょっと指定がなかなか難しいのではないかと。
【塩瀬委員】  はい、ちょっとまた探りたいと思います。
【荒瀬主査】  またそういった取組も御紹介いただければと思います。
 それでは今村委員、お願いいたします。
【今村委員】  ありがとうございます。本当にすばらしいお取組を、一番人口が多いところの東京都からこういった取組を始めることがやっぱりフラッグシップになっていくところがあると思うので、どんどんこれからも発信していただきたい。細部のお取組の部分がとてもすばらしいなと思っておりました。
 1点質問と、文部科学省さんに対する意見を1点申し上げさせていただきます。
 沖山先生に質問ですけれども、全て御提案なさっていることは本当にそうだなと聞いていたんですけれども、29ページに「学校における単位認定要件の見直し(修得の重視)」とお書きになっていました。履修主義よりも修得主義にすると、学ぶことに慣れていない子たちにとっては、より厳しくなってしまうんじゃないかというところがやはりちょっと気になっていて、どうしてあえてこのまとめのページにここをお書きになったのかの真意を私が理解し切れなかったので、この部分を補足いただきたいなと思いましたというのが1点です。
 文部科学省さんに対するこれはお願いですけれども、私はやっぱりこの不登校関連の調査は、もしくは追跡調査を追加する必要があると思います。実態が分からないということなんだと思います。やっぱり先生方は学校ごとの御努力の中で聞いていると、中退するまではこういう子だった、中退した後、多分通信制に行ったかもしれないとか、通信制に行った後、特に広域ですね、広域通信制に行った後、その子は何年かかかっても卒業したかもしれないししなかったかもしれない、というふうになってしまうと。これはやっぱり、今はもちろん通信制の中退率のデータはあるかと思うんですけれども、やっぱり子供データベースみたいな議論からも、高校生になるといきなり自治体の中から抜け落ちてしまう特性もありますし、社会に出る一歩前の自立直前の重要な時期です。
 18歳から成人になるということは、より自立がなかなかできていない子供たちにとっては物すごく厳しい大海原に突然出ることにもなってしまうという意味で、やっぱり高校はとっても大切な場所だと。学びの部分よりも育ちの獲得というか、社会人になっていくという意味でとっても大切な期間だと思うので。やっぱり現在の高校、特に通信制で学んだ子たちがどうなっていっているのかを深く理解したいなと思いました。これはお願いになります。
 私からは以上ですけれども、沖山先生、お願いいたします。
 
【沖山委員】  今のこの大きな流れの中で、履修主義と修得主義の適切な組合せみたいなことが言われているわけで、そういう中から感じていることをここに書いたんですけれども。すみません、ちょっと説明が不十分で申し訳ありませんでした。
 これは分かりやすく言ってしまうと、いわゆる学校には先ほど申し上げたように授業の3分の2以上を出席することをもって履修とするという条件があったりするんですけれども。つまり登校が安定しない子供、不登校になってしまう子供にとっては当然欠席が重なっていくわけで、機械的に3分の2以上もう休んでしまったからその授業は履修が認められず修得もできないことになってしまう現状があって、その結果が通信制のほうに転籍をしていく、転学をしていくことに機械的に流れてしまっている現状があるんです。
 したがって、登校できなくて授業に参加できなかったけれども、それ以外の方法でしっかりと学ぶ機会を与えて、生徒がそれに取り組んでいて、成果が認めることができるんだったら、つまり十分に修得したことを認めることができるような取組を本人がしたのであれば、形式的な3分の2以上出席なんていう履修条件にとらわれずに認めていくことがあっていいんじゃないかという発想で、ここに書いたものでございます。
 委員御指摘のように、確かに修得をさらに重視していく方向性は間違ったメッセージになってしまうと、救わなければいけない子供たちをより追い込んでしまうことになってしまうので、そこは丁寧に説明しなければいけないなと感じました。ここに書いた理由はそういうことでございます。
【荒瀬主査】  よろしいですかね。
【今村委員】  ありがとうございます。数1とか結構難しくて、今、自分も学習支援の現場で教科書を開いてみると、あれ、自分、修得できていたかなみたいに思うようなものも自分自身も出てくるので、これ、修得主義にするのは本当に全員に必要かなと思うところがありましたので質問しました。ありがとうございます。
【荒瀬主査】  大事な御質問だったと思います。ありがとうございます。
 では青木委員に御発言をお願いしたいと思うんですが、本日、時間の関係で大変申し訳ありませんが、青木委員までとさせていただきたいと思います。御意見のおありの方で御発言いただけなかった方につきましては、大変申し訳ありませんが、また事務局にメール等でお知らせいただくということでお願いしたいと思います。
 では青木委員、どうぞ。
【青木委員】  ありがとうございます。青木です。2つの御報告を頂きましてありがとうございました。
 それを踏まえて私から指摘したい論点が、教員のこうした定通を中心としたお取組をしておられる高校の教職員のヒューマンリソースの使い方についての検討です。恐らく部活動の負担などは全日制の一般的な高校と違うんだと思いますが、ヒューマンリソースとして配置されている教職員が、こういった学校では何にどんな業務に主として時間を使っているのかということを議論すると、私立や公立の設置形態を少し抽象化して議論ができるのではないかなと思いました。恐らく全日制との違いが浮かび上がってくると思いますので、その辺りを今後ぜひ議論していきたいなと思います。
 以上です。
【荒瀬主査】  ありがとうございました。これからの議論をしていく上での大事な視点を頂戴いたしました。確かにそうですね、あまりよく考えていなかった面があるかと思いますけれども、ありがとうございました。
 すみません、最後と申しましたが、青木先生に大変手短に御発言いただきましたので、もうお一人ぐらい、ではどうぞ、篠原先生、お願いします。
【篠原委員】  ありがとうございます。通信制の、しかも広域の学校なので、ちょっと一言申し上げたいと思いました。
 一つは、今、通信制の生徒数が増えているのは、先ほどから出ている消極的、後ろ向きな選択ではないことをまず強く申し上げておきたいと思います。普通の中学生たちが、今、自分たちの学校を選ぶときに、全日に行こうか通信制に行こうか、全くフラットに選んでいる実態がございます。ですので、数十年前のような常識とは今は違っていることは一点確認しておきたいと思います。
 それから、私は通信制という場に来てすごくこの学び方がいいなと思った一つの理由は、先ほどの修得主義ではないですけれども、自学自習はやはり自分で学ぶということなんですよね。まさに自立を学習の中でやっているということであって、その自学自習をどうやってできるようにするかに教員はすごく腐心しています。ですから、今の教員たちは、何かを教え、学び、導くという教員ではなくて、生徒が自分たちでまさに主体的に学んでいくことのサポーターになっています。自分たちで計画して、レポートに取り組んで、そして試験に何とかパスするようにしていく、その取組を自分で計画ができる生徒は、やはりその後、どのような道に進んでも自分で物事を選択して決定ができる大人になっていくのではないかなと思っています。
 ですので、決して今、通信制で学んでいる生徒たちは、その後もちろん大学に行く人もいるし、それから進路未決定等という中で通信制の割合が多くなっていますけれども、未決定等の中には既に自立して起業するですとか、あるいは自分でスポーツ・芸術の分野で頑張って世界に羽ばたいているような生徒たちもいます。もちろん休む、少し休憩をして次の自分の進路を考えるという生徒もいます。でもそれでいいんじゃないかと私は思います。どの時点で立ち止まって自分の歩いている道を考えるかは人それぞれで、例えば大企業に就職して、その後疲れて、自分を振り返る大人だっていっぱいいるわけですよね。ですから、高校を卒業したら次の場所を決めなくちゃいけない、そのプレッシャーからもやっぱり生徒たちを解放しなくちゃいけないんじゃないかなと私は思っています。
 その意味で、本当に多様な生徒であるからこそですけれども、とても乱暴な言い方をすると、先ほどから出ていますけれども、一度全定通という制度を全くフラットに、そういう制度をなくしたらどうなるんだろうということをぜひ考えたいと私は思いました。小学校からやはり不登校である生徒たちもたくさんいますし、そういう子供たちが例えばホームエデュケーションとかいろいろな選択肢を持って学習を続けることはできるわけで、そういうことも含めて、今までのものにとらわれずに本当に自由な発想でここを立て直していかないと、やはり不登校の生徒たちに、ここにあった全ての子供たちに学びの保障をすることの目標にとても遠いと思います。そのくらい覚悟を持ってきちんとした議論が必要ですし、ちょっと過激かもしれませんけれど、そのぐらい考えたいと自分自身にも課しています。
 すみません、以上でございます。
【荒瀬主査】  ありがとうございました。まとめのような御発言を頂いて。
【篠原委員】  決してそんなことは。
【荒瀬主査】  いえいえ、大変ありがたく伺っておりました。もちろんフラットにといいますか、むしろ積極的に選んで通信制や定時制に行く子がいるのは事実だという一方で、そういう選択しか残されていない中で行かざるを得ない生徒がいるのもまたこれは事実でありますので、その辺りをどのように考えて、どの子にとっても自分で選んで行く高等学校になっていくのは非常に大事なことかと思いながら伺っておりました。
 今日は具体的に論点例についての議論はその時間が取れなかったですけれども、しかし、光富先生の御発表それから沖山先生の御発表、そのお二人に対する質問、そしてお答えの中で、まさに論点例に関わるような話ができたのではないかと思います。
 時間を延長してしまって申し訳ないですけれども、沖山先生が、先ほど塩瀬先生から御指摘のあった全定通併修学校があってもいいんじゃないかということに対して、本当に夢物語かもしれないけれどもこういったことについて全面賛成だとおっしゃいました。
 そのお言葉を聞いて思ったんですけれども、昨年1月の令和答申は、2020年代を通じて実現したい学校の在り方ということで、幼児教育から始めて環境整備までつらつらと書いているわけですけれども、その文末は全て「こうなっている」とか「できている」という、極めて具体的にできた姿を描いたものとなっています。
 私は初めてその原案を拝見しましたときに、キング牧師の有名なあの演説の「I Have a Dream」という言葉を思いました。キング牧師の「I Have a Dream」は決して夢物語で終わらせるという話ではなくて、必ずこれを実現するぞと。例えば自分の4人の子供が肌の色ではなくて、その能力であるとか性格によって評価を受ける、そういう時代・社会が来ることを私は夢見るんだというのは、単なる夢物語では決してないと思うんですね。
 我々も、沖山先生がおっしゃったように、これを夢物語と思われるかもしれないけれども、しかしながら真剣に考えて、本当に子供一人一人が、まさに令和答申にもありましたしその前年の高校ワーキングの審議まとめにもありましたけれども、一人一人の生徒が主語になる学校をつくっていくことをぜひとも進めていきたいと思っているはずです。
 また、沖山先生がおっしゃった中で、資料にもありましたけれども、生徒が学校に合わせるのではなくて学校が生徒に合わせるんだと。これもまさに生徒が主語になるということかと思います。先週、障害のある方のキャリア教育に関する研究会に出ていて、そこでお聞きした話の受け売りでありますけれども、障害を障害であるということでみんなで共有しているのは社会の敗北ではないかというご発言がありました。社会に参加できない人がいることを認める、線を引いてここからこっちの人は社会に参加できないんだ、こっちの人は参加できるんだというその線引きは社会の敗北ではないかというお話で、本当にどきっとしましたし、全くそのとおりだなと思いました。
 中学生が高校を選択する際に自分が敗北したような意識の中で選択せざるを得ないとか、あるいは高校生が学校を替わらざるを得ない、また、その際、それは自分が負けたんだといったそんなものではなくて、むしろ本当にフラットに選択できる状況をどうつくっていったらいいのか。これはすぐにはできないかもしれませんけれども、まさにI Have a Dreamで、必ず実現するぞという、最後、篠原先生から覚悟を持ってというお話もありましたけれども、私たちも本当に覚悟を持ってやっていきたいし、社会としても覚悟を持っていかないと社会の敗北になってしまうんじゃないかなと思いながらお聞きした次第です。
 すみません、長々とお話をしてしまいました。
 今日はこういう形で終わりまして、論点例については十分な議論ができていない面もあるのだろうと思いますが、ほかにも論点はありますので、そういったことをこれから考えていく中でご意見を頂戴し、来年の論点整理に向けてさらに議論を進めていきたいと思います。よろしくお願いいたします。
 では、最後になりましたが、これ以降の予定につきまして事務局からお願いいたします。
【松田参事官補佐】  本日はありがとうございました。
 今後のスケジュールでございます。資料4でございますけれども、来年1月12日に第4回、1月27日に第5回を開催させていただきます。どちらもテーマは一緒で、「社会に開かれた教育課程」「探究・文理横断・実践的な学び」の推進について、ヒアリング・意見交換を予定しております。またその後も引き続き議論を行っていただき、2月中をめどに論点整理という予定になっております。よろしくお願いいたします。
【荒瀬主査】  そのような形で進めていきたいと思います。よろしくお願いいたします。
 では、本日はこれで終了いたします。ありがとうございました。
 
―― 了 ――
 
※会議終了後の追加意見
【濱田委員】
 全日制課程や定時制課程において、多様な学びを提供していくための方策について、意見を述べたい。本県のように少子化が加速している地方では、高校入試はあるものの、ほとんどの中学生が希望すれば、どこかの全日制高校に進学できる現状。したがって、定時制・通信制高校の生徒に限らず、全日制高校においても、小中学校での不登校、長期の引きこもり、発達障害、ネグレクト、貧困、ヤングケアラー等々、様々な課題を抱え、学校はそれらの対応に日々負われているというのが実情。
受け入れた生徒全員の学力を伸ばし、個性を深長させ、進路を保障していくことは、現在の全日制高校の教育システムでは難しくなってきているという認識が必要ではないか。
特に、学年制という同年齢の生徒集団を、学年ごとに教育課程の修了を判断し、3年間で卒業するというシステムは、現状のように、同年齢であっても等質ではない、多様な生徒集団においては、成り立たなくなってきていると考える。
多様な生徒たちにできるかぎり柔軟に対応できるよう、例えば学校間連携や課程間併修を推進できるようにするためにも、全ての高等学校を、学年制から単位制に移行することを検討できないか。また、全日制・定時制という枠ではなく、同一高校内を2部制あるいは3部制として、生徒の実態や現状に合った学校スタイルを提供できるようにしていく。そうすれば、卒業単位の取り方もできる限り柔軟にできるようになり、中学校の学び直しの時間を担保することも可能となる。あるいは、特異な才能を伸ばせられるよう、大学等への飛び級を容易にし、講義を卒業単位として積極的に認めていけるようにもなるのではないか。
誰一人取り残さない教育を展開していくためには、高等学校の現制度をどの程度まで柔軟にできるのか、また、生徒一人ひとりに合った教育課程の適用が必要不可欠。
 
【田村委員】
 岡本委員が全日制・定時制・通信制の併修を可能にしてはどうかという趣旨の発言をされたことに関わり、私も、思い切った発言をすると、一度、これらの課程の枠を外して検討することが有効であるように思われる。イリッチが、脱学校化社会について論じてすでに半世紀が経とうとしている。コロナ禍の学校一斉休業を経験し、学校とは何か、どうあるべきか、どうありうるのか、ということについて社会全体が議論したり考えたりした。しかしながら、今も「学ぶこと(価値)」と「学校に行くこと(制度)」が同一視されるような風潮は払拭できているとは言いかねる状況だと思われる。履修主義か修得主義かという二項対立の議論に陥ることは避けたいところではあるが、これだけ学校に行かないことを選ぶ生徒が増えたり、「学校に行けない」と悩みを抱えている生徒や保護者が存在する、という現状を踏まえれば、「学ぶこと=学校に行くこと」ではない、ということを確認しつつ、学校に行くことでしか学べないことは何なのかを議論した上で、今少し修得主義の導入を拡大する方向で検討してもよいのではないか。オンライン学習も実装段階にあり、例えば、「数学Ⅰ(対面)」「数学I(遠隔:於学校)」「数学Ⅰ(遠隔)」といったように、同じ科目を異なる形式で開講し、生徒が選択して履修することを、課程にかかわらず可能にすることも考えられるかと思う。もちろん、教科・科目により、履修することと習得することの価値のバランスは異なるかもしれない。つまりその学習過程に参加し経験すること自体が学習であり、学習者の変容につながる、しかもそれは、オンラインだけでは育みえない、対面での人と人との密接な関係の中でしか育まれない資質・能力もあるかもしれない。一方、一人で学習を進めることにより、知識・技能を身につけていくことに適合的な教科・科目もあるかもしれない。この辺りの検討は未だ十分とはいえいないと思われるが、「個別最適な学び」と「協働的な学び」を考える上で、教科・科目の特性が検討されるわけで、それとつなげて、高等学校での単位取得のあり方を議論していくことが論点としてありうるのではないか。夢物語のようかもしれないが、生徒はある高校に席を置きながら、他校(他地域や他学科を含め)で開講されている単位を、対面やオンラインを交えて履修したり、その結果、毎日通学する生徒もいれば、週に2、3日の通学とオンラインを組み合わせるといった生徒もいる、といったことも、少し遠い将来にはあり得るかもしれない。
高校魅力化に関わり、このような抜本的な改革の議論には、ぜひ、当事者である生徒にも参加してもらいたい、と前々から考えている。ユーグレナのCFO(Chief Future Officer:最高未来責任者)のような、あるいはGUCCIのShadow Boardのような、私たち教育する側の大人の会議と並行して、全国の有志の生徒たちが現在と未来の高校の在り方を考える会議体のようなものが存在し、高校生自身にとっての高校の魅力とは何か、そこで検討された意見に我々が傾聴するような仕組みがあってもいいと思う。特に高校生は、18歳で成人。自分たちが学ぶ機関について、彼ら自身の意見が反映される仕組みがあることは、彼らのエンパワメントにもつながるように考えている。
 
【冨塚委員】
〇全日制・定時制・通信制のいずれの課程にあっても確保されるべき高等学校の機能とは何か。全日制・定時制・通信制いずれの課程においても、生徒を自立した社会人として社会に送り出すために、生徒が自己の良さや可能性を認識し、多様な人々と協働しながら、人間関係を築くことができるよう支援することが求められる。大学進学者が多くを占める高校も含め、キャリア教育、職業意識や社会で求められる資質の育成に取り組むべきと考える。
〇全日制課程や定時制課程において、多様な課題を抱える生徒が多様な学びを選択できるようにしていくための方策として、どのような取組がより一層必要と考えられるか。不登校生徒や不登校を理由に中途退学する生徒にとっては、今村委員の指摘するように学校における単位認定要件を柔軟に取り扱うことにより、現籍校での学びを継続できる可能性がある。オンライン化が急速に進む中、遠隔による同時双方向型の授業を活用することで、学びの質を保障しながら、課題を抱える生徒が学びを継続できると考える。
〇通信制課程において、多様な課題を抱える生徒が人間関係を構築して社会で活躍できるようにするための方策として、どのような取組がより一層必要と考えられるか。
千葉県では、県内唯一の公立通信制高校である千葉大宮高校から遠距離に居住している生徒が、スクーリングや定期試験を近隣の高校で受けられるよう通信制協力校を指定し、生徒の通学時間や交通費の面での負担軽減を図っている。この取組は今年で6年目を迎え、既に卒業生を3期にわたって輩出している。
通信制協力校でのスクーリングには、本校舎からの職員を派遣しているほか、協力校に在籍する職員が兼務するなどの対応をしているが、対応できる教員の数に限りがあり、開講科目が限定されている現状がある。
遠隔による同時双方向型のスクーリングにおいて、生徒が本校舎で行われる授業にオンラインで出席し、教員ともリアルタイムでやりとりができる状況であれば、スクーリングの1コマとして認めていただきたいと考える。全日制・定時制に在籍する生徒に対しては、遠隔・通信教育に係る特例措置がある状況で、ぜひ、通信制においても同様の特例を認めていただくことができれば、通信制協力校制度を今後もますます拡充していくことができると考える。
〇生徒が地理的状況や各学校・課程の枠に関わらず、多様な学びを選択できるようにするための方策として、例えば学校間連携や課程間併修を推進することが考えられるが、そのためにどのような取組が必要と考えられるか。本県でも現在、定通併修制度の活用や学校間連携を推進しているところであるが、太平洋学園高校の取組を先進事例として、課程間の異動や単位の互換について研究が進められれば、生徒が地理的状況や各学校・課程の枠に関わらず、多様な学びを選択できるようになると思われる。
〇その他、全日制・定時制・通信制の望ましい在り方について、どのように考えるか。
各委員から御指摘のあった「全日制>定時制>通信制」という考え方を変えていくためには、①前述のとおり、全定通の枠を越えた課程もしくは制度の導入検討、②それぞれの課程における学びの特徴を、中学生とその保護者をはじめ、中学校の教員や塾関係者などに正しく周知すること、が必要と考える。
 
【長塚委員】
 はじめに通信制課程について触れたいが、通信制高校の実態と課題については、現状では狭域型と広域型で大きく違っているため、二つに分けて述べたい。
まず狭域通信制であるが、たとえば本日ヒアリングさせていただいた、太平洋学園さんは私立の定時制と狭域通信制の併設型であり、地域の生徒にきめ細かく対応した教育課程の工夫や学校運営が可能になっているのは、通信制としては狭域型であるからではないか。
その点では公立の通信制もすべてが狭域であり、地域の生徒にきめ細かな対応ができるのではないかと期待できる。学費的には株立や私立より負担が少ないことで意義があるが、それでも私立の通信制に進む生徒が多いのは、サポート体制の違いではないか。
今後少子化が進行する地域では、小中の義務教育段階とは違って高校の統廃合が進まざるを得ない面もあると考えられるが、とくに中山間地域にある全日制は分校的役割、あるいは通信制の学習センターとして、サポート体制の機能を期待できるのではないか。
一方の広域通信制であるが、調査研究協力者会議のとりまとめの通り、大規模な私立の広域通信制高校が全国各地にあるサテライト施設などで教育活動を展開しており、近年は大半が通学型のサポートを提供している。
それらの実態を把握することなどを求めるガイドラインが改訂されたが、広域通信制高校の設置認可をした所轄庁も、サテライト施設などが稼働している当該県の所轄庁も全く把握困難な状況のままである。とくに大都市圏には多くのサテライト施設や連携しているサポート施設などがあるが、その実態や全体はどこも把握していないのではないか。
なお、通信制高校にかかる今回の省令改正では、通信制高校の生徒数の下限規定をなくす方向であるが、本来は各地域の生徒数の需要やしっかりした施設環境に見合った上限規定がなければ、このような状況が拡大するのではないか懸念される。広域通信制高校の質確保・向上の上で欠かせないのが、生徒数の上限規定だと思う。
 次に、全日制・定時制・通信制のいずれの課程にあっても確保されるべき高等学校の機能であるが、高校の教育の目的は課程を問わず、学習指導や課外活動などを通して、学力観や人間性にかかる資質・能力の三本柱がバランスよく育まれていくことではないか。
その教育機能が展開される場面としてみると、現在の定時制は昼間型定時制といった仕組みもあり、全日制とかなり共通性がある。また通信制も通学型が主流になりつつあり、もちろん勤労学生でもなく不登校でもない生徒が、肯定的に昼間型定時制や一定の通学を伴う通信制高校を選択する場合も増えているように思われる。
とはいえ、通信制の仕組みは学習の基本を自学自習におくことになっているわけであるが、全日制においても自ら学ぶ意欲は低下、あるいは二極化しており、そもそも多くの生徒にとって一人で学ぶのは難しいのではないか。全日制でも補習塾などを利用する生徒がいることなどからして、課程を問わず学校教師が把握できる個別の学習サポートや協働的に学ぶ機会が様々に機能していることが、今日の高等学校に求められていると思われる。
それから通信制課程では多様なメディアを用いて必要な面接授業を短縮できることになっているが、オンラインでは困難な実験や実習、実技などに充分な対面授業を設けることは、教科目の特性のみならず社会性や人間性を育む上でもすべての課程に共通すべきことではないか。一方で不登校の生徒の中には、優れた個性的な資質を持つ生徒もいると思われるが、高度な個別学習や飛び級などには通信制課程で対応できる可能性が高いのではないかとも考えられる。

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   初等中等教育局参事官(高等学校担当)付