義務教育の在り方ワーキンググループ(第2回)議事録

1.日時

令和4年11月21日(月曜日)9時00分~11時00分

2.場所

文部科学省 (※WEB会議)
(東京都千代田区霞が関3-2-2)

3.議題

  1. 検討事項について(個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実を通じた主体的・対話 的で深い学びの具体化について/多様性と包摂性に基づく学校文化の醸成について)
  2. 委員からの御発表
  3. その他

4.議事録

【奈須主査】 それでは、定刻になりましたので、ただいまから、中央教育審議会初等中等教育分科会個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実に向けた学校教育の在り方に関する特別部会義務教育の在り方ワーキンググループの第2回を開催いたします。
 皆様、御多用の中御出席いただきまして、誠にありがとうございます。それでは、本日の会議開催方式及び資料につきまして、事務局より御説明をお願いいたします。

【前田教育制度改革室長】 よろしくお願いいたします。本会議は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を防止するため、ウェブ会議にて開催をさせていただいております。ウェブ会議を円滑に行います観点から、大変恐れ入りますが、御発言時以外はマイクをミュートにしていただきますようお願いいたします。また、カメラにつきましては、御発言時以外も含め会議中はオンにしていただきますようお願いいたします。
 それでは、資料の確認をさせていただきます。今、画面に出ておりますけれども、本日の資料は議事次第にございますとおり、資料1から資料2-2、加えまして参考資料1から5までとなっております。このうち、参考資料4の令和3年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果、こちらは先般公表されたものでございます。本調査結果につきましては次回の検討事項に密接に関係するものであるため、本日につきましては配付のみとさせていただいております。内容については、次回事務局から御説明できればと考えております。また、参考資料5につきましては、先般、高等学校教育の在り方ワーキンググループ、11月14日に第1回目が開催されたところでございまして、その設置紙と委員の先生方の名簿を参考資料として配付させていただいております。
 事務局からは以上でございます。

【奈須主査】 ありがとうございました。
 それでは、議題に入りたいと思います。本日は議題が三つございまして、まず、議題(1)は検討事項についてとして、個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実を通じた主体的・対話的で深い学びの具体化と、多様性と包摂性に基づく学校文化の醸成について。次に、議題(2)として、この2点の検討事項について委員より御発表いただき意見交換をしたいと思います。
 なお、本日は報道関係者と一般の方向けに本会議の模様をYouTubeにて配信しておりますので、御承知おきください。
 それでは、議題(1)について、事務局より関連資料の御説明をお願いいたします。

【前田教育制度改革室長】 資料1、関連資料でございます。資料1と表紙にある資料の、2枚目以降でございます。
 当面の検討事項を抜粋いたしまして、改めまして、本日の検討事項のテーマであるこちらの二つについて、委員の先生方からのヒアリング後、意見交換というふうに考えています。この検討事項に関連するものとして資料を少し用意させていただいておりますので、追って順次御説明させていただきます。
 次のスライドですけども、本日、中谷先生と水谷先生には、学校の取組の概要。当時の背景や課題意識、学校の状況、あるいは取組を可能とした要因ですとか、全国に広げる上での視点の中で、例えば必要と考えられる土壌や組織体制、リソースといったもの、それから、多様で柔軟な学びの在り方と、それを形にしていく上で土台となる多様性と包摂性に基づく学校文化の醸成といったものについての御説明を、事務局から先生方にお願いをしております。後ほど、先生方に御発表をお願いできればと思います。
 次のスライドは、令和答申の抜粋でございますけども、個に応じた指導と個別最適な学びということで子供がICTも活用しながら自ら学習を調整しながら学んでいくことができるよう、個に応じた指導を充実することが必要であると示されております。
 その下、個に応じた指導の在り方を、より具体的に示すと、一つ目が、教師が支援の必要な子供により重点的な指導を行うことで効果的な指導を実現すること、二つ目が、子供一人一人の特性や学習進度、学習到達度等に応じ、指導方法・教材や学習時間等の柔軟な提供・設定を行うことなどの指導の個別化が必要であるとされております。また、教師が子供一人一人に応じた学習活動や学習課題に取り組む機会を提供することで、子供自身が学習が最適となるよう調整する、学習の個性化も必要とされています。
 この二つ、指導の個別化と学習の個性化を教師視点から整理した学びが個に応じた指導であり、この個に応じた指導を学習者視点から整理した概念が個別最適な学びであるということで、改めまして御紹介させていただきました。
 次のスライドで、学習指導要領、これは小学校の場合をお示ししておりますけども、この黄色のマーカーを引いてあるような箇所が、個に応じた指導に関連する箇所でございます。
 次のスライドですけども、発展的な学習につきましても、第2章以下に示す各教科の目標、学年の目標、内容のうち、この黄色マーカーで書いてあるところについては、発展的な学習というものに関連した指導要領の抜粋です。
 次に参りまして、平成30年度の公立小・中学校の教育課程編成・実施状況調査です。ちょっと古いものですけれど、令和4年度につきましては実施予定でございますので、今お示ししているのが、最新のものでございます。個に応じた指導の実施状況につきましては、実施している小学校・中学校ともに割合高くなっております。内訳としましては、少人数指導、それから複数の教師が協力して行う指導、その他2割ぐらいあります。その他と申しますのは個人や学習集団によって異なる課題、例えば内容が異なるプリントなどを配付しているというような、そういった指導がその他の中に入ってございます。
 この内訳のところを、もう少し中身を見てみますと、次のスライドですけども、少人数指導の内容として、補充的な学習と発展的な学習、それから課題別、興味・関心別の指導と並んでおります。最後のこの課題別、興味・関心別の指導というところが、ほかと比較して割合としてはやや低位になっております。
 それから、複数の教師が協力して行う指導、TTの内容につきましても、課題別、興味・関心別の指導といったものが割合としては1割、15%ほどというふうになっているという状況です。
 それから、教育課程特例校制度、これは特別の教育課程を編成する制度でございまして、学校や地域の実態に照らして、特別の教育課程を編成することが認められているものです。指定された学校数は現在1,823校でございまして、例えば主な取組内容として、北海道の羅臼町で、理科、生活科、総合的な学習の時間等を削減して、新教科の知床学を設定しているといった特別な教育課程を編成することができる制度です。
 続きまして、授業時数特例校制度、これは令和4年4月、本年4月から実施されているものでございますけども、総枠としての授業時数は維持した上で、1割を上限として各教科の標準授業時数を下回った教育課程の編成を特例的に認める制度です。下回ったことによって生じた授業時数を別の教科の授業時数に上乗せするというものです。
 まだ令和年4月現在の指定の状況ですけども、28校でございます。戸ヶ﨑先生がいらっしゃる埼玉県戸田市で、例えば問題発見・解決能力、論理的思考力、コミュニケーション能力等の育成のため、総合的な学習の時間の授業時数を増加していると、こういった取組がございます。
 次のスライドですけども、これは学校施設の在り方としまして、令和答申をを踏まえまして2020年代を通じて目指す整備の方向性を整理したものです。学校全体を学びの場として、令和4年3月に文部科学省の有識者会議において提言されたものですけども、在り方のところですが、未来思考で実空間の価値を捉え直し、学校施設全体を学びの場として創造するということを掲げております。
 学びのところを御覧いただきますと、個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実に向け、柔軟で創造的な学習空間を実現と書いております。柔軟と申しますのは、単一的な機能や特定の教科にとらわれずに、横断的な学びですとか、多目的な活動に柔軟に対応していくという視点、それから創造的というところですけども、社会の変化、時代の変化の課題に対応していく視点ということで、図が二つございますけども、例えば可動する壁や机を活用した授業ですとか、多目的スペースの設置といったものが在り方として提言されております。
 次のスライド、GIGAスクール構想でございますけども、こちらも御案内のとおりでございますが、1人1台端末の整備ということで、児童生徒端末の整備、指導者用の端末など、授業環境の高度化、これ、高機能カメラや大型のテレビ装置でございますけども、こちらについても補正予算で実施をしております。
 それから、通信ネットワーク環境の整備で、取組としまして、ネットワークに関する全国一斉アセスメント及び応急対応というようなことを取り組んでいるということです。
 次のGIGAスクール構想の推進の二つ目でございますけれども、人の支援としましてICT支援員の配置の促進、それから取組のところで、GIGAスクール運営支援センター整備事業、これは各都道府県等に整備をして、民間事業者への業務委託をするための費用の一部を負担するというものです。委託の業務と申しますのはネットワークの点検でございますとか、ヘルプデスクの運営、休日トラブルなどの業務の委託するための費用、これを一部負担するというもの。
 それから、学習指導等支援でございますけども、地域や学校に取組の差があることから、地域全体の底上げが必要という現状で、取組としましては、GIGA StuDX推進チームというもの、これは次のスライドで御説明いたしますけども、優良事例の情報発信とかオンライン相談会・研修会、メールマガジンなどの配信などを行っております。
 次のスライドが、GIGA StuDX推進チームというものでございまして、文部科学省の中に令和2年12月からGIGA StuDX推進チームを設置しまして、全国の教育委員会・学校等に対して、ICTを活用した学習指導の支援活動を展開しているというものです。活動としては、この三角で四つございまして、こういったことを全国から先生方に来ていただきまして、地域別、教科別等で対応をしていただいております。
 次の特別ウェブサイトStuDX Styleでございますけども、優良事例の紹介ということで、「慣れる」、「つながる」活用事例、それから各教科での活用事例、STEAM教育等の教科横断的な学習の事例というものを紹介しているものです。
 次のスライド以降が、多様性と包摂性に基づく学校文化の醸成で、特に制度というものではないんですけれども、答申などの抜粋でございますが、この黄色のマーカーを引いているところ、自立と社会参加を見据えて、その時点で教育的ニーズに最も的確に応える指導を提供できる、多様で柔軟な仕組みを整備することが重要、また、二つ目の丸ですけども、多様化する子供たちに対応して個別最適な学びを実現しながら、学校の多様性と包摂性を高めることが必要、一人一人の内的なニーズや自発性に応じた多様化を軸にした学校文化となり、子供たちの個性が生きるよう、個別化と協働化を適切に組み合わせた学習を実施していくべきであるというふうに提言されております。
 また、特定分野に特異な才能のある児童生徒の指導・支援の在り方の有識者会議の審議のまとめ。子供たち同士が共に生き、共に学ぶ空間としての学校内の多様性と包摂性を高める中で、一人一人の社会性を涵養していくことが重要、それから、子供たち一人一人がその多様性が認められ、それぞれを包摂する授業や学級経営が展開されている、また、児童生徒の特性、必要な支援について教師の理解が進み、コミュニケーションの下で、1人1台端末も活用しつつ、学習内容の習熟の程度に応じた学習も取り入れて、子供たちがお互い高め合う教育活動、こういったことが提言されております。
 また、生徒指導提要の中で、これは平成22年に作成して以降10年以上が経過しておりまして、現在改訂案を作成しているところでございますけども、お互いの個性や多様性を認め合い、安心して授業や学校生活が送れるような風土を、教職員の支援の下で、児童生徒自らがつくり上げるようにすることが大切だということ。
 最後でございますけども、振興基本計画の基本的な考え方・概要の中でも、多様性、公平・公正、包摂性、ダイバーシティー、それからエクイティー、インクルージョンでございますけども、共生社会の実現に向けた教育を推進するということが示されております。
 このスライド以降は、以下の学校基本調査ですとか全国学力状況調査の量的調査のアンケートの結果ですので、ここは参考として掲載させていただいています。後ほど御覧いただければというふうに思っております。
 事務局から、資料1につきましては以上でございます。

【奈須主査】 ありがとうございました。
 それでは、議題(2)に移りたいと思います。本日の検討事項、個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実を通じた主体的・対話的で深い学びの具体化と、多様性と包摂性に基づく学校文化の醸成について、中谷委員と水谷委員より御発表をいただきます。事務局より御説明があったとおり、それぞれの学校における取組を可能とした要因や、全国に取組を広げる上での視点などについてお考えを伺いながら、論点整理に向けた意見交換をできればと思います。
 それではまず、自由進度学習に取り組まれている中谷委員より御発表をお願いいたします。

【中谷委員】 広島県廿日市市立宮園小学校長の中谷一志です。本日はこのような機会を与えていただき、ありがとうございます。では早速、本校の「自立した学び手」の育成を目指した自由進度学習の取組について報告をさせていただきます。
 本校は、広島市の西隣にある廿日市市にあり、日本三景安芸の宮島の対岸、高台の台地にございます。32年前の創立当時は、1学年5学級規模の大規模校でしたが、今では各学年1学級程度になっております。私は3年前に校長として赴任をいたしました。
 本校の学校教育目標は「自分を育て みんなで伸びる」で、これは私が赴任する以前から変わっておりません。この学校教育目標の下、この3年間は、自立、多様性の尊重、挑戦の三つのキーワードを大切にしながら教育活動に取り組んでまいりました。三つのキーワードのうち、自立につきましては、自分を理解し、自ら学び続ける子、これを目指す子供像として設定し、児童を自立した学び手に育てることを目指して取組を進めております。
 本校の自由進度の概要をお話しいたします。
 本校は昨年度までの2年間、広島県教育委員会の実証事業の指定校でした。その指定を受け、自立した学び手の育成に向けた自由進度学習に取り組み始め、今年度で3年目になります。
 自由進度学習とは、教師が作成した学習計画表に基づいて、児童が自分のペースで自分のやりたいところから学びを進めていく学習で、教師側からいえば、単元計画表を児童と共有するイメージを持っております。
 自由進度学習を進める上で、本校が大切にしている具体的な手だては、次の三つです。
 まず、学習計画表の工夫についてですが、画面に示しておりますのは「重さ」という内容のまとまりで、算数科と理科を合科的に扱った3学年の学習計画表です。4時間目以降は、学ぶ順序を自分で選択できるようにしております。また、学習計画表には、全員が必ずやらなくてはならない学習と自分で決めて自由に取り組む学習を設定し、学習内容も選択できるようにしています。さらに、楽しんで学びが進められるような工夫もしています。
 二つ目の個への支援についてです。これは、児童が使うワークシートです。これまで教師が口頭で説明していた部分も含めて、学習内容を明確にしたワークシートを作成することで、児童が自立的に学びを進められるようにしています。学習計画表の随所にチェックテストを設定しています。チェックテストは、児童が行った学びが一般化できているかを確認するための仕組みです。タブレットの自動採点機能などを活用し、個々の進捗や定着の状況を把握しています。自動採点のため、児童は自分が理解できたかどうかをすぐに確認できますし、結果は教師にも送られてきますので、何度も間違うなどした児童に対しては、個別に支援を行います。また、個への支援という点では、振り返りを重視していることも挙げられます。振り返りカードを活用して、児童自身が学びの進捗状況を確認し、自己調整できるようにしています。教師も、この振り返りカードを見て、児童の学びの状況を把握し、個別支援に役立てています。
 ここで、実際の授業の様子を御覧ください。まずは、単元が始まって、3時間目の様子です。

(動画再生)

【中谷委員】 もう一つ動画を御覧いただきます。今度は5時間目の様子です。この頃になりますと、学習コーナーというところで学ぶ児童が増えてきます。

(動画再生)

【中谷委員】 今、動画で御覧いただきましたが、具体的な手だての三つ目、学習環境の工夫については、この3年生の学習では、全員が体験する学習コーナーと、選択式で学べる体験コーナー、学びを深めるコーナーを設定しました。
 この写真は、このときの学習コーナーの様子です。御覧いただいているコーナーでは、形が変わっても物の重さは変わらないことを体験を通して学んでいます。
 学習環境の工夫では、児童のペースで何度でも体験できるコーナーを準備することを大切にしています。学習コーナーを別室に、しかも多くのコーナーを用意することで、児童は自分のタイミングで何度も体験することができます。ちなみにこの実践では、全部で12種類のコーナーを準備しました。
 ここで、自由進度学習をしているときの児童の声を聞いてください。

(動画再生)

【中谷委員】 御覧いただいておりますのは、自由進度学習に取り組んでいた期間中の児童の日記の一例です。担任は、今日はこんな記述がありましたとうれしそうに言いながら、毎日のように日記を見せてくれました。
 参観日で保護者にも見ていただき、感想を書いていただきました。ここでは4人の保護者の感想を御紹介します。
 最後に、担任の声を御紹介します。この教諭は、本校に来て1年目、自由進度学習に取り組み始めた頃はとても戸惑っていましたが、児童の姿を通して大きく学習観、授業観を変えた一人です。
 ここまで、3年生での実践を基にお話をしましたが、ほかの学年も含めた自由進度学習を通して見られた児童の姿を幾つか御紹介しますと、学力的に課題がある児童が単元を通して最後まで自分から取り組む姿、ふだんの授業ではずっと座っているのが苦手で集中できにくい児童が楽しそうに、そして集中して課題に取り組む姿、さらには、ふだんは教室に上がることができず校長室に登校している児童が、この学習コーナーをやってくると言って教室に行き、友達と一緒に学ぶ姿などが見られました。ちなみに、この校長室に登校している児童は、本校で別に取り組んでいる個人探求学習の時間でも自分から教室に行って学んでいました。
 次に、本校のこの3年間の取組の経緯を簡単に御説明いたします。本校が自由進度学習に取り組むこととなったきっかけや児童、教職員の実態は御覧のとおりです。きっかけは県教育委員会の指定校になったことでしたが、具体的に何をやるかは県教育委員会とともに歩きながら考えようというものでした。3点目の教職員の意識という点では、高い授業改善の意識が、一斉指導の中で手だてをより多くするなどの丁寧な指導へと向かっていったと考えています。当時、よく話していたこととして、転ぶ前に何本もつえを渡しているのではないか、転んでもいいからきちんと起き上がることを教えることのほうが子供たちには必要ではないかということでした。
 本校で3年間、自由進度学習の取組を推進できた要因を考察してみました。最も大切にしてきたのは、教職員の対話です。自立した学びを育てることを意識した対話を通して、教員の授業観や授業づくりに対する意識が、少しずつではありますが、変化してきたと捉えています。対話だけで終わらず、その対話を基に教職員が協働したことも要因と考えています。本校の教職員に、本校で自由進度が推進できた理由を尋ねたとき、必ず出てくる答えが、この教職員の協働、同僚性の高さです。一つの自由進度学習を作る際も、本校は教職員数が少ないので、教員を二つのチームに分け、チームで教材研究から学習環境づくりまで行っています。
 3点目は、伴走者の存在です。本校では県教育委員会の指導主事が一番の伴走者でした。実践の真っただ中にいる教員自身は、その価値に気づきにくいと思います。客観的な立場から、教員の実践を価値づけ、無意識に実践していたことを対話により意識化させてくれる存在で、教員のモチベーションの向上に大きな役割を果たしてくださいました。
 もう一つは、環境整備です。1人1台の端末は、自由進度学習を進める上で、教師にとっても児童にとっても大変有効な文房具で、大きな推進力となりました。環境整備という点では、本校に広い廊下や多くの空き教室があったこともプラスに働いたと考えています。
 今、幾つか要因を挙げましたが、これらのことによって、子供たちの学ぶ姿が変わりました。変わったというより、そうした姿が発揮できるような授業をしてこなかったとも言えるのですが、最終的には、その子供たちの姿に確かな手応えを感じることで、今日まで実践を進めることができたのだと思っております。
 次に、校長として働きかけたことについてお話しします。取組を進める上で、校長として意識して働きかけたことは大きく分けて5点あります。そのうち、最も大切にしてきたことは、1点目の、なぜやるかを繰り返し伝え、学校教育目標や目指す子供像を踏まえた対話を繰り返してきたことだと思っています。
 また、私自身が最初に授業をやってみました。実は私自身、自由進度学習に取り組むのは初めてで、しかも、授業をしたときはまだタブレットの導入前ということもあり、教科書と紙と鉛筆だけの非常に単純な実践でした。今思い出しますと恥ずかしい、決してベスト・プラクティスとは言えないものでしたが、結果的にはそれがよかったのかもしれません。その授業を基に、参観した教員とたくさんの対話をいたしました。校長の授業を見て少しイメージを持つことができた教員が、タブレットの導入を契機に初めの一歩を踏み出そうとしたので、そのチャレンジを全面的に後押ししました。また、互いに参観し合うよう促すことで、徐々に他の教員に広がっていきました。この時期になって、自由進度学習が本校の教育活動の柱として明確に位置づきました。1年目の秋のことでした。
 組織的な取組にするには、核となる教員、推進者が不可欠です。経験値の高いベテラン教員が動いてこそ組織的な取組になると考え、例えば、授業改善意欲が旺盛な研究主任と、授業力はあるが自由進度学習に戸惑いを感じていた現在の教務主任を先進校の視察に行かせ、その学びを全校に広げさせるなどしました。校長としましては、二人を指名して先進校の視察をさせることによって、自分の立場や役割を認識し行動してほしいという願いを持っておりました。
 伴走者との連携について申しますと、その存在はとても重要ですが、ただ来てもらうというのではなく、校長としての思いや願い、さらには悩みを事前にしっかり連携することや、どのタイミングで誰を助言者と招聘するかを見極めることはとても大事だったと振り返っています。
 最後にある実践レポートですが、本校では3年前から、校長、教頭、養護教諭、事務職員も含め全教職員が、原則毎月1回、学校教育目標の具現化を主なテーマとして、その月の自分がやってよかったと思う実践をレポートにまとめ、それを交流する取組を行っています。教職員自身が主体的・対話的で深い学びを実践する機会と位置づけています。それを交流する時間を確保していますが、その時間以外にも、レポートを基に教職員が授業づくりをテーマに対話している様子が随所に見られ、そのことも取組を進める推進力になったと考えております。
 この報告をするに当たり、事務局から、他校の校長となったときに同じような取組を進めると、どう進めるかという問いをいただいたので、それに応える形でまとめをさせていただきます。
 正直なところ、他校で同じ取組、自由進度学習をすぐにスタートできるとは思っていません。自由進度学習について特に懸念されることは御覧の2点です。これは、取組前の本校や、本校の実践を参観された他校の教職員から実際によくお聞きする言葉ではあります。
 そうした二つの懸念を踏まえまして、私が推進上必要であると考えることをお話いたします。まず、前提としましては、授業改善に意識が向き、組織的な授業研究に取り組む、または取り組もうとする学校であることが土台になると思います。その上で、先ほど申し上げた教職員の不安に対しては、御覧の3点が必要だと考えます。やはり最も大事にしたいのは、理念の共有・授業観の転換に向けた教職員との対話です。このこと抜きで自由進度学習に取り組むのは危険だとすら思うところもあります。3点目の伴走者の存在は、学校にとって大変有難いものです。私自身、行き詰まりを感じたときに親身に相談に乗っていただくことで、自信を持って次のステップに進むことができました。
 また、教員の負担感の軽減については、次の2点が大切だと考えています。とりわけ、5の授業準備の負担軽減については、本校でも進めているところですが、実践した授業をパッケージ化して次年度以降、改善しながら活用できるようにしているところです。さらには、実践する学校が広がることで、他校と単元計画等を共有することができれば良いと考えています。
 最後に、昨年度来、本校への視察や研修などをきっかけに、広島県内外の小学校を中心に自由進度学習に取り組み始める学校が少しずつ増えていると聞いております。その多くは、本校のような指定校からのスタートではありません。本日この報告をするに当たり、指定校ではない学校がどのように進めようとされているかについて幾つか伺ったところ、表現に多少の違いはありますが、おおむね、今、まとめて申し上げたような視点を大切にしながら進めておられる、または今後の推進上の課題と捉えられていると感じました。
 私からの報告は以上です。御清聴ありがとうございました。

【奈須主査】 ありがとうございました。
 それでは、ただいまの中谷委員からの御発表について、御意見、御質問ございましたら頂戴したく存じます。御発言がございます方は、必ず「手を挙げる」のボタンを押していただきますようお願いします。こちらから指名させていただきますので、ミュートを解除いただいて御発言をお願いします。また、発言が終わりましたら「手を下げる」のボタンを押し、挙手を取り下げていただくようお願いいたします。
 それでは、早速お願いします。まず、戸ヶ﨑議員、そして若江委員の順番でお願いいたします。

【戸ヶ﨑委員】 戸田市教育委員会の戸ヶ﨑でございます。御発表ありがとうございました。
 「自立した学び手」の育成ということで、中谷校長先生が学校だよりに書かれていた内容も読ませていただきました。とても大事だなと思ったのが、「皆で知恵を出し合う」というプロセスが学校の中で共有されている、このことは教師にも、また子供にとっても、とても大切なことなんだろうなと思いました。
 すばらしい実践で、私からも質問したいこと幾つもありますが、時間の関係もありますので、今日のテーマの一つである、「多様性と包摂性に基づく学校文化」という観点から、御発表を聞きながら、また、日頃感じていることを述べさせていただけたらと思っています。
 まず、持続可能な社会の創り手となる子供たちには、正に「自分とは異なる多様な人々と共存できる」ようになってほしいと思います。この既存の社会の仕組みは、考えてみると、障害がない、シスジェンダーなどのマジョリティーが中心につくられていると思います。
 学校教育も同様で、そもそも多様な子供が通うこと、多様な教職員が働くことが前提とはなっていません。例えば障害がある、もしくはそうであると思われる子供は、通常学級以外の学びの場を検討することなどが一般的に行われております。
 場を分けることで、個に合った指導が受けられるという面ではいいのかもしれませんが、「多様な人々と共にどう共存するか」ということを学べる場は、一般的に義務教育の学校しかないのではないかと思っています。ここに義務教育の意義があるとに思っています。
 御案内のとおり、2014年に締結した障害者権利条約をめぐって、今年の9月に国連が初めて改善勧告を出しました。日本の特別支援教育についての分離教育を中止して、インクルーシブ教育に関する国の行動計画を作るよう求めるなどの大変厳しいものでありました。
 日常的に子供を障害の有無で判断して、学ぶ場を分ける教育の在り方というのは、子供たちが将来障害の有無にかかわらず多様な人々と共存する社会、つまり国が目指す共生社会を実現するための力を育てていくことが難しくなってしまうのかもしれません。また、インクルーシブ教育は特別支援教育の枠組みのみで考える部分ではなくて、障害以外にも多様なマイノリティー性のある人々がいることを前提として、義務教育そのものをどう改革していくのか、特別でない特別支援教育の推進という観点からも、教育関係者は当事者意識を持って考えていかなければいけません。
 この多様性と包摂性に基づく学校文化の醸成については、障害の有無にかかわらず、誰もが個別最適な学びを得つつ、緩やかにつながって、対話して、納得解を得る場としての学校をつくっていくべきではないかと思っています。これまでの、同じことを同じペースで同じ方法で学んでいくという学校教育の構造は既に限界に来ていて、極端なことを言うと排除を生み出すような構造になってしまっているのかもしれません。
 不登校や特別支援教育対象者の急増については随所で言われていますが、私の経験から申し上げますと、子供自身が多様化しているとは思えません。昔から、様々なニーズのある子供たちがいたわけで、その子供たちに光が当たり出したということではないのでしょうか。
 多様性を特別なものとして配慮をするのではなくて、そもそも誰もが特別な存在であることを当たり前のこととして捉えて、より良い関わり方を全員で考えていくという雰囲気を校内に醸成していくことが重要なんだろうと思っています。
 本市のある学校では先日、「ふろしき忍者になろう」という校訓のキャッチフレーズをつくって、さりげなく、そっと風呂敷のように包み込める人が育つような、教職員はもちろん、地域、保護者にも機会あるごとに話をしているということでありました。
 多様性は、子供たちを集団として観るのではなくて、個で観るべきことの最たるものではないかと思っています。包摂性というのは、一人十色というんですか、そういう子供たちを受け入れて認め育むことにあると思います。
 ここで課題となるのが、「限界点」です。対応できる教師等の人数の限界とか、教室のような場の限界、また保護者や他の児童の理解の限界など、様々な限界があるわけですが、できないことを探すのではなくて、どうしたらできるのかということを考えていく文化が醸成されれば、おのずとその限界点は低くなって、多くを受け入れていけるのではないかと思っています。
 今後は、学ぶ場を子供の違いで大人が分けるというのではなくて、誰もが自分に合った学びを得る、これは個別最適な学びであって、異年齢、異なる学力、異なる属性が緩やかに交じり合えるような、協働的な学びを組み合わせることが大切と考えます。
 例えば協働的な学びの例として、本市でも行っていますけれども、スクールワイドPBS、ポジティブな行動支援のような、子供たち自身が、既存の社会や学校がマジョリティーの中心につくられているということを知って、どうしたらより良い多様な人々が過ごしやすい学校・社会になるのかということを、そのためにまた、自分がどんな行動ができるのかということを自ら考えて、実際に行動する機会というのを意図的に作るというのも大切なのかなというふうに思います。
 そのほかにも、多様なマイノリティー属性の子供がいるということを前提とした、一人一人の学びを保障するための仕組みとして、現在の指導要録等の抜本的な見直しということを図るとともに、教師の業務改善にも配慮しつつ、教師とともに子供自ら主体的に目標を設定した、今日の発表は自由進度ということですけれども、一歩進めて個別の指導計画、こういったものを全ての子供に作成するというようなことも考えられるのではないかと感じました。
 長くなりました。以上です。

【奈須主査】 ありがとうございました。では続いては、若江委員、その後、貞広委員、秋田委員という順番でお願いします。それでは、若江会員、お願いします。

【若江委員】 キャリアリンクの若江でございます。中谷先生、お久しぶりです。素敵な発表ありがとうございました。
 私からは1点、これを展開していくに当たってのところで、どんな状況かということはお聞きしたいんですが、今回県の指定校としてスタートをされたことや、それ以外に中谷先生がどこかの学校に行かれた場合、もしくは指定校でない場合の展開の難しさみたいなところをお聞かせいただいたんですけれども、やはり問題はそこだと思うんです。
 令和の日本型教育を実現していくに当たって、今日御発表いただいたような新しい学びが、やっぱり一部にとどまっていることが大きな問題で、中谷先生が教育委員会にいらっしゃるときに御一緒させていただいた広島県の場合には、例えば高校の専門学科、商業、農業、工業のところにコアカリキュラムをつくって、それで、その新しいカリキュラムによって生徒たちが変容していけば教師が変わっていくという広島県は実践事例としてお持ちですよね。
 そのときに、広島県と一緒に取り組ませていただいた一つの戦略は、商、農、工業高校、全校で、1校だけの各モデル校ではなく商業の4校、工業の4校という、全部の県にある学校全てで取り組むと異動先の学校でも ノウハウを積み上げていけるというスキームを考えたたはずですが、今回の県の事業でおやりになって、廿日市市さんの場合には、多分十七、八校の小学校がおありだと思うのですが、その県の事業を市がうまく生かして、市の取り組みとして面展開をしていく、そういう戦略的な取組ですとか、また、逆に県が、今の宮園小学校、廿日市市立小学校での取組を広島県下の他市に紹介をしてそれを面展開にしていくというような、そういった取組がどのように進んでいるのか、そこがとても重要だ と思いますので、是非その状況についていろいろお聞かせいただきたいと思います。
 以上でございます。

【奈須主査】 ありがとうございます。今の御質問、もし簡単にお答えいただけるようでしたら、校長先生、いかがでしょうか。

【中谷委員】
 本市におきましては、もう1校が自由進度、同じような取組を進めておりますが、そのほかの学校にはまだまだといったところです。それから、県の面的な広がりについては、本校の取組等を参観された学校等が十数校、取組を始められたというふうには聞いていますが、まだ数としては圧倒的に少ないかなとは思っております。
 以上です。

【奈須主査】 ありがとうございました。それでは、貞広先生、お願いします。

【貞広委員】 千葉大学の貞広と申します。
 大変優れた取組の御報告をいただきまして、ありがとうございます。先生の御報告の中に、トライアンドエラーというお言葉がありましたけれども、恐らく、エラーしてもいい、最後は校長が責任を持つからというような、優れたリーダーシップを発揮された好事例というふうに伺いました。
 GIGAスクール構想の展開においても、やっぱりやってみてください、私が責任を持ちますって言った校長先生の学校では、早く優れた取組が進んだように見えておりまして、中谷先生は控え目におっしゃっていますけれども、非常に校長先生が優れたリーダーシップを発揮された事例というふうに拝見をして感心いたしました。
 その上で、先ほど若江委員がおっしゃった横展開問題で、私も幾つか御質問があります。
 一つ目は学級規模の上限の問題です。今回は写真で拝見する限りでございますけれども、授業づくりやファシリテーションも通常の一斉授業よりもずっと手がかかって、35人学級でこれができるのかというような疑念を持ちました。先生の肌感として、どれぐらいの学級規模ぐらいだったらできるのか。または、TTが入ればできるのか、TTも学習サポーターのような方が入ってくれればできるのか、その辺りを伺いたいと思います。学級規模というよりもPT比というんですかね、先生と子供の比率の問題について伺いたいと思います。教科や単元にもよると思いますけれども、肌感で結構ですので、伺えればというふうに思います。
 二つ目も、これも条件整備の問題です。学習コーナー、体験コーナー、学びを深めるコーナーというお示しがあり、、先ほど前田室長から冒頭御説明がありました資料の中にも、今までと違う教室の姿のイラストがありました。空き教室がたくさんあるのでとおっしゃっていて、今、空き教室ある学校もたくさんあるんですけれども、二分されていて、もうほとんどスペースがないという、通常の教室すら確保できない学校というのもあるわけですよね。こういうスペースのない学校で、こうした学びを展開する代替案みたいなものをお持ちでしたら、それをお聞かせいただきたいと思います。
 三つ目です。これは各学校の学級数問題です。私がこの授業を作るのであれば、1学年1学級1人で作るというと相当しんどいと思うんですよね。2学級とか3学級あって、共につくり上げていくというような形であればできるというふうに考えます。これも前田室長からの資料の中に、非常に学級規模が小さくなっていて単学級の学校が増えているということがありました。やっぱりこれは地域内で、学校のネットワーキングをもっと強固にして、学校間で授業づくりをつくっていくというような仕掛けを作るという必要があるかと思うんですけれども、この辺りについても是非御意見を伺いたいと思います。
 以上でございます。

【奈須主査】 中谷先生、簡単にお願いできればと思いますが。

【中谷委員】
 まず、学級規模については、実際本校、1学級なんですが35人ぐらいの数でして、そこはちょっといろいろ、先生方頑張ってくださっていますが、もう少し少ないといいなと思うのは本音のところとしてございます。ただ、そういう意味では、緩やかな協働といいますか、子供たち自身が協働して学んだりします。これは自然に発生する協働なんですけれども、そういった意味でいうと、ある程度の数も欲しいなというところでございまして、肌感覚でいうと、25人とか30人以下がいいかなとは勝手に思っています。でもこれは今、御質問を受けたので、思いつきです。
 2点目、空き教室がないというのは本当に本校見られた多くの学校が言われるんです、羨ましいですねと。やはり、いろいろセットした学習コーナーを片づけなくてもいい、休憩時間にも使えるってすごくメリットなんです。そういった場合に、やはり廊下でありますとか、それから理科室とかそういったところを一定期間だけ、ちょっとその学年なりが占有するというか、そういったような代替ぐらいしか、現在のところは頭に浮かびません。ただ、もしこれから学校をつくられるのであれば、やはりそういった余剰スペースというものを意識し、先ほどの文化の説明にもございましたけど、そういった視点というのは私、すごく重要だろうなというふうに思っています。
 3点目の学級数の問題なのですけれども、本校、単学級で、正直なところ大規模校のほうが準備にかかる負担は少なくて連携できるかなというふうには正直思っています。なかなか、単学級でここまでというのは、最初の頃、特にしんどいところがございました。といいましても、私、大規模校の校長ではありませんので軽々なことは申し上げられませんけれども、実際に本校よりも早くから確かな実践を積み重ねてこられた学校、本校がモデルとした学校は、いずれも複数の学級規模だと聞いております。
 以上です。

【奈須主査】 ありがとうございました。それでは秋田先生、その後、続けて黒沢先生とお願いします。

【秋田主査代理】 ありがとうございます。中谷校長先生、本当に熱意を持って3年間取り組まれてきたことが大変よく伝わってくるようなお話をいただきました。
 個別最適イコール自由進度というのではなく、今日のお話の中で重要なところが、やっぱりその背景に教員の連携があることや、それからそこにおいてそれぞれの子供たちが生かされるような選択を子供自身ができるような形の、いわゆるスモールステップのプログラムというだけではない判断を先生たちが御準備されているというようなところが、私はとても成功していて重要なところなのではないかというふうに聞かせていただきました。
 そこで、まず学級規模の話はもう既に貞広先生からありましたので、改めてということはないのですが、先ほど少し、協働の質というお話がありました。どうしても個別最適と協働というと、協働はペアとか小グループをさせるという形態論に陥りやすいんですが、この、自由進度の中での協働によって、これまでの授業における協働と質がどのように変わっていったのかをお聞かせください。
 また、2点目としては、先ほど最初に御説明がございましたように、いわゆる補習的なものではなくて、個性的な発展の側面も重要だが意外に少ないという話がございました。自由進度の場合は、そういう意味で選択ができる。ただし、教師が設定をした範囲内を超えるということはなかなか難しいところもあるように思われます。
 その辺りについて、個性的な側面や、それがやりやすい教科と、やはり教科によって算数とか理科、あと、学校の出されている通信などを見ると、体育とかそういうものはあり得るのかもしれないんですけど、教科的なやりやすさはあるのかどうかも教えてください。
 三つ目として、小学校の低学年のところからそのチャレンジをしていくというようなことがあり得るのかという点です。むしろ、1年生の最初はやっぱり教員との信頼や学級の関係というものをつくりながら、むしろ自立した学び手を中高学年で形成していくというようなことだと、逆に中学校の方向に義務教育学校とか、むしろこうした形の環境というものをより推進していくべきではないかというようなことも考えられます。発達的に見たときにどのような視点が見えるのかというようなところを教えていただきたいと思います。
 あと最後に、教員研修の在り方が授業の、今までは一斉にみんなで見て授業を検討するというようなことがあったわけですが、これは、子供の関わりや見取りの仕方も随分、ICTなどを使いますが、違ってくるわけです。むしろ環境や教材の専門性というものが非常に問われるように思いますが、この辺りの研修を先生方は、教材開発されることがイコール研修なのか、この辺りの先生のお考えを伺いたいと思います。
 以上です。

【奈須主査】 では、中谷先生、お願いします。

【中谷委員】 たくさん御質問いただきました。もし漏らしておれば、また御質問ください。
 まず、協働の質の変化という、協働なんですけれども、自由進度学習においては、協働的な学びというのを中心的な課題とはしていません。子供たちが自然発生的に協働していきます。もちろん、そうとは逆に、ほかのカリキュラムの中では協働的な学びをしっかり中心とした学習は取り入れておりますけれども、その中で、何といったらよろしいのか、自由進度のときには本当に緩やかなというか、そういった協働の姿が見られます。強制もしていません。ただ、分からなかったら教えてって言おうねということは言っています。本校では、援助希求も大事な自立した学び手の姿だというふうに捉えていますので。
 その中では、子供たちの中でこの間いろいろ聞いてみたんですけども、自由進度のよさって自分のペースで進められるからいいという子が一番多いんですが、その次に多いのが、異口同音ですけども、独りでやりたいときにはじっくりできる、だけど、友達とやりたいときには友達と一緒にできるから、これがいいんだというような、その必要感に応じて子供たち自身が選びながら、人との対話、協働を選んでいるというのもよさではないかなというふうに思っています。
 それから、学習コーナー等は、子供たちが先生の設定した範囲を超えるというのは難しいという御指摘でしたけども、現状本校ではその辺はあるだろうなというふうには思っています。かなりの学習コーナーもあったりしますので、結構それを楽しみながら学んでいるというような状況でございます。
 やりやすい教科につきましては、本校は算数は必ず入れようというふうにしています。これは、これまでの研究の蓄積があるからということもありますけれども、それで、理科とか算数を取り入れる教員が多いのは事実です。それはなぜかというと、とりわけ操作とか実験を何度でもできるからなんです。普通の授業であれば、1回の実験をグループで1回やって終わりとなりかねませんけれども、それを本当に何度もできる。1回やったんだけどうまくいかなかったから今日もやってるんだというような子供たちもいます。そういった意味でいうと、算数とか理科が多いのですけれども、やはり国語でありますとか社会といったようなものにも今チャレンジをしています。実はあした参観日で、自由進度学習、全校でやるんですけれども、社会とか国語にチャレンジしている学年もございます。
 それから、低学年の話なんですが、今、全校でやっています。私どもは、1年目は実は3年生からだろうねという形でスタートさせたんですけれども、どうしても昨年度1年の担任が、いろんな刺激を受けて挑戦したいということで試してみましたら、試行しましたら、1年生もできるんだということが、手応えを感じまして、今年度からは、2学期後半以降、1年生にも少し取り入れて、1年生、2年生でもやるように、実施するようにしております。
 教員の研修について言えば、やっていることは基本的なことです。まず、学習指導要領を読むこと、そこで狙いをしっかり読んで、単元でどんな力をつけなくちゃいけないのかをとにかく先生方できちっと確認をすること。もう一つは、これは教科書、全ての発行社の教科書を算数で言えばそろえておりますので、全ての教科書を比較研究して、例えば学習コーナーはどういう学習を取り入れたらいいのか。いろんな教科書会社に共通していることは何かや、この教科書会社の特色は何かみたいなことを見ながら、じゃあこれを改良してこういう学習コーナーをつくっていったらいいんじゃないかといったような話が常にベースにあります。そこからスタートして、その先に学習コーナーを作るというようなことがありますので、もちろん、子供に学びを委ねるってどういうことだろうという研修は前提としてやっていますけれども、授業を作るということに関しては、もうそういうサイクルが確立できているのかなと。これは、この本校の教員がどこに行っても必ず生きて使える力になるというふうに私は思っております。
 すみません。全てお答えしたかどうか分かりませんが、以上でございます。

【秋田主査代理】 ありがとうございました。

【奈須主査】 ありがとうございました。それでは、次の黒沢委員の御発言で、中谷先生の御発表に関する議論は、一旦終了とさせていただきたいと思います。それでは、黒沢委員、お願いします。

【黒沢委員】 今日は御発表ありがとうございました。高尾山学園校長、黒沢です。
 本校も個別最適みたいなことはやっているんですけども、中谷先生のところで、実践するに当たって何か物的支援とか人的支援、ボランティア等も含めて、あと予算的なもの、こういう支援はあったのかどうかというのが一つと、もう一つ、もし何か支援をいただけるとしたら何が欲しいかなというのを、先生の意見を伺えたらなと思っています。
 以上です。

【奈須主査】 じゃあ中谷先生、お願いします。

【中谷委員】
 お金については、最初の頃に視察に行くお金をつけていただいたぐらいで、お金はもらっていません。こちらがいろんなところ、募集していらっしゃるのに応募して、お金を取ってきたというのが実情です。人の配置についても加配等はございませんでした。
 ただ、やっぱり、申し上げましたけど、伴走していただくというか相談に乗っていただけた方というのがすごく大きかったなと思っています。もちろん人がいてくださるとうれしいなとは思いますが、やはり我々の実践を少し離れたところから評価し、アドバイスいただける存在というのが私は一番大きかったなというふうに思っています。
 以上でございます。

【奈須主査】 ありがとうございました。先ほど秋田委員からの御質問で低学年という話ありましたけど、1年生で、いろんな学校でもできますね、きちんとつくればね。考えてみれば幼児教育では、結構自分で判断して動くということはあって、むしろそこの連続性を考えると低学年からやってもいいし、問題はないのかななんていう話もよく出たりするかなというふうに思います。ありがとうございました。
 それでは、続きまして水谷委員より、1人1台端末を活用した個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実について、御発表をお願いいたします。

【水谷委員】 それでは、よろしくお願いいたします。愛知県春日井市立高森台中学校の校長をしております水谷でございます。このような機会を、本当に今日はありがとうございます。今、お示ししているテーマで、本校、そして本市の状況をお伝えしたいと思います。
 愛知県春日井市は、名古屋市の北東に接している中核市要件を持った都市になります。学校の状況はこのようになっておりまして、その東のほうにある本校は、生徒数320人、12クラスで、開校45年、50年ほど前にできた団地の中、住宅街にある中学校で、本校も元は各学年10クラスありましたが、今は各3クラスになっております。
 これからこの五つのことをお伝えしたいと思いますが、最後にお伝えする、実践が進んできた理由等については、先ほどの中谷校長先生の学校とほとんど同じ部分があります。
 最初に、授業の様子についてお伝えしたいと思います。このようにどの授業でもどの教科でも日常的に端末とクラウドを活用するように変わってきました。

(動画再生)

【水谷委員】
 少し動画をお見せしますが、これは3年生の社会の授業です。今左側に映っていると思いますが、各自が収集したりしたものを見せ合いながら自由に話し合っています。見えると思いますが、独りでさらに考えている生徒もいます。もちろん誰と情報交換するかということも自由です。共有しているJamboardを見ながら、誰に話そうかということを探してこのような活動が日々行われています。そして、これで終わりではなくて、その後はこのようにきちんとまとめています。端末整備以前であれば学期に1回程度しかできなかった活動ですが、今は毎単元、このような授業が行われるように変わってきました。
 このようなことが可能になったのは、授業に必要な情報をこのようにクラスルームに載せて、言わば略案を子供に渡しているようなものですけど、毎時間や単元の見通しが非常によくなったことがあります。そして、今までであれば教師からの説明を聞くことが中心の情報の収集の場面でしたが、このように、各自で教科書などを見ながら情報を集めて、しかも、これ、時間がかかると思われがちなのですが、繰り返しやっていますので、すごく短時間でできるようになりました。集めた情報を各自で整理していきます。なかなか整理するのが難しかったので、いろんな場面でどのようにしていくかを指導してきました。そして、これを使って、さっきお見せしたように、対話をすることでさらに考えを深めていきます。最後は、考えを言語化します。クラウド上で最初から共有していますので、随時、ほかの人のものを参考にして、さらに考えを深めることができます。
 もちろん教師の側から見れば、これまでは提出後に初めて見るものでしたが、教室での途中の状況を見ながら、随時助言したり、激励をしたりして、生徒たちの様子をよく把握できることになったということが、先生たちの安心感と充実感につながっています。
 最近では、チャットも授業中によく活用していて、ちょっと考えたことをつぶやいています。、このスライドでは仮説をつぶやいているのですが、短時間にいろいろなつぶやき見ながら、さらにブラッシュアップをして、自分の仮説をより良いものにしていくというようなことも行われるようになりました。
 これは、このような授業の様子を撮影したものですが、自分だけで取り組んでいる生徒もいますし、何人か集まって協働している生徒もいます。もちろん、先生に聞きに行って指導を受けている生徒というように、1時間の授業中に同時に起こっていて生徒の活動が複線化をしてきたという点が、依然と変わってきたことだと思います。
 こちらは数学の様子ですが、同じように、それぞれが最適な方法を選んで進めています。それぞれの様子も把握しやすくなってきました。
 前半の授業はこれまでと同じですが、後半の問題演習は、このようにクラスルームに用意された3段階の問題を各自選択して取り組みます。図形の単元はなかなか難しく、これまでであれば白紙で終わってしまう生徒が多くはいましたが、Jamboardで共有していますので、分からなくなったら他の人のを参考にして、「あっ、何だ、こういうことか」ということで、白紙で終わる生徒が少なくなりました。
 そして、取り組んだ後、取り組みながらもですが、このようなフォームに入力させて学習状況を把握します。この把握は教師だけではなくて、最近は生徒同士でも把握に使っていて、全体の状況も個別の状況も把握できるので、どちらに支援をするのかということを確実に把握して可能になってきました。
 さらにこのように、自分の学習状況を把握するような取組もしています。一つ一つの付箋は学習内容で、それぞれを、できた・できなかった・得意・不得意というこの四つのところに分けて、自分の状況をこれで理解して、「あっ、この先、何を取り組めばいいのか」ということ、言わば自己調整的なことになると思いますが、このようなことへつなげることも可能になってきました。
 ほかの教科ですが、いろいろな技能が必要な教科では、それを確認できる動画を多く用意しています。自由に視聴できるようにして、自分が困ったときに、先生に聞きに行くのではなく、これを見て自分で解決できるように、このような学習モデルが多くある環境づくりを進めています。
 こちらは理科ですが、実験の計画を子供たちが作成します。作成には時間がかかりますが、結果的に実験から考察までスムーズに進んで、より理解は深まりますし、トータルの時間はそれほど変わりません。このように、子供たちにどんどん委ねる場面が増えてきました。
 最後に体育ですが、最初にお伝えしたようにクラスルームの活用で目標や見通しを持たせることが容易になりました。教師からの説明は最小限になって、部活みたいに自分たちで練習計画を立てていきます。説明の時間は短縮できまので、運動量をこれまで以上に確保できるようになって、より親しむことができるような授業に変わってきました。
 ここまでは授業のことでしたが、日常の活動での情報共有やコミュニケーションにも活用するようになってきました。これは学級委員の毎月の、よく取り組まれていると思いますが、生活改善の取組の振り返りですが、授業で身につけた問題解決の方法を日常でも使って、子供たちの活動がだんだん活発になってきました。
 その一つが、来年度から本市でも制服が見直されて新しいものが導入されます。各校で検討する部分について、ルールメーキングプロジェクトを参考にさせていただいて、生徒会を中心に進めることができました。
 授業と同じように問題解決を進めている生徒の姿に、驚きましたし、新しい制服を着用できない3年生が一番真剣に取り組んでいました。与えられるものではなく、自分たちでルールをつくっていくのだという実感ができたことは非常に良いことで、現在は制服以外のいろいろなルールの点検、検討を同じように進めています。
 ここまで、新しい環境を活用して、この2年間で結果的に可能になったことを紹介してきましたが、ここまで御紹介したキーワードを再度お示しするとこのようなことになります。このようなことができるようになって授業が変わってきたわけですが、本校職員がどう思っているか、自由記述で聞いてみました。GIGA以前とどのように変わったかですが、まとめると、ここまでお示しした変化を実感しています。特に、教員側からは、生徒全員のことをよく把握できるようになった、ここがキーだと答えている職員が多かったです。
 まとめると、このようになります。児童生徒の活動時間、扱うデータ量、コミュニケーションの増加、そして活動は複線化して、子供たちにどんどん委ねることができるようになり、結果的に、今までの教える授業、中学校ではあるあるでしたが、これが学ぶ授業へと変化してきました。ただその中で、いろいろな場面で情報活用能力を育ててきたことも非常に大きいと思います。
 先ほどの職員調査の際に、授業が変化した理由も聞きました。今映っているスライドのように1人1台とクラウド活用でいつでも共有、参照できること。そして、スキルの向上で時間内にいろいろな活動ができるようになったことが、その原因として多く出されました。
 まとめますと、このようなICT活用ができるようになったからこそ、またクラウドをできるだけ制限なく活用して、いつでも共有することで子供たちの様子をよく把握できるようになり、また、活動が複線化し、委ねることが可能になりました。教師にとっては見通しがよくなって、子供たちにとっては自己選択していくことが可能になったということが大きいと思います。
 三つ目ですが、このような授業を生徒たちはどのように捉えているのかということですが、本校だけではなく市内で実践の推進を中心になって進めている6校で、このような項目で5件法の調査を昨年度から毎学期に実施しております。こちらは本校だけの結果ですが、端末がなかった頃の授業との比較で、赤枠の部分が高評価になっています。ただ、昨年度よりも今年度で、下の部分が少し伸びているのが心配ですす。また、どのような活動が増えたかについては、私たちが狙っている活動が子供たちも増えたと実感しています。
 ここからお見せする2枚は、ちょうど1年前のこの時期に、3年生の学級委員6人だけで作ってもらった、授業のよさを紹介するスライドの一部です。その授業のよさを端的にまとめてくれて、正直驚きました。どのように変わったか、そのよさをきちんと生徒たちが認識できていると思います。
 最後に、このような取組を始めた背景や実践が進んだ理由についてお伝えしたいと思います。一番大きな理由は、2年前の春の休校時の状況からです。プリントと動画でも学びはある程度進むと思っていました。しかし、現実は違っていて、生徒自身では学びを進められないことに愕然としました。知識伝達中心で学び方をきちんと指導できてなかったということです。そこで、またいつ休校になるか分からないですし、とにかく自分で学ぶことができるようにしようと考えを共有しました。そのためには、まずはアウトプットをきちんとさせよう。そして、ここにあることをちょうど整備が進み始めたGIGA環境を活用してやってみようということでスタートしました。とにかく未知のことばかりで、できそうなことをスモールステップで取り組みました。結果的に、今お示ししている五つのことによって進んだのではないかと考えられます。
 一つ目は、活用したことのないクラウド環境ですので、いきなり授業活用ではなく、日常業務で活用してその便利さを体感したことです。日常の業務で活用して、情報共有や参照のしやすさを体験したことで、同じようなことを授業でやりたいということで授業活用イメージをつかむことになりました。これが一番大きかったと思います。
 二つ目は、事例の共有です。なかなか集まって情報交換する時間はありません。チャットを使って随時気軽に行ってきたことが大きいと思います。現在ももちろんこれは続いていますし、市内のいろいろな学校で行われています。学校内だけでなく学校間、学校を超えて教科の集まりなどでもこのような形での共有が行われています。
 三つ目と四つ目は、この二つです。学習過程を生徒も理解して自分たちで回せるようにということで、これはGIGA以前から取り組んでいましたが、正直難しく、うまくいっていませんでした。ただ、端末とクラウドを活用できるようになり、「あっ、こういうことか」ということで前進をしました。また、そのために情報活用能力を必要なときに指導してきました。ただ、この2年間は、がむしゃらに指導が必要と感じたときに、言わば無計画に取り組んできましたので、この辺りをきちんと体系化していくことが必要だと感じています。
 最後、五つ目ですが、これは市全体での、これまでのICT環境整備と研修体制の整備のおかげだと思います。本市はこの図のように20年前から少しずつ、環境整備、そして実践を行ってきました。そして、本校もその一つですが、推進校での日常の校内授業研を公開して、多くの方に見てもらって、各校に広げるということをずっと行ってきました。また、操作研修ではなく、研修は模擬授業中心で、模擬授業を受けてもらい、授業に必要なことを、気軽に使えることを体感してもらっています。特にベテラン勢は授業でやりたいことがはっきりしているので、「何だ、その程度のことね」と理解してもらうと、うまく活用が進んでいきます。
 まとめますと、このようなことになります。このようなことができれば、同様のことが可能と考えます。一つ目は、自分で学ぶことができるようにというような大きな目標を共有して、もう未知の部分ですから、失敗を恐れずにできることをまずやってみて、先ほども同じ話がありましたが、どんどん修正して次の段階へ進む。そして、教師だけでなくて、子供たちも学習過程を強く意識して、さらに情報活用能力をいろいろな場面で育成することで、結果的に教える授業から学ぶ授業へ授業観が変化していきます。
 ただ、ここまでは一切触れてきませんでしたが、どこの学校でも取り組んでみえることだと思いますが、人間関係づくりという基盤があってできることだと思います。
 さらにこちらのスライドは、端末クラウド活用のことをまとめました。教師自身が日常的に校務で活用して授業イメージをつかむこと。クラウドでつながっているので、結果を初めて共有するのでなく、最初から共有して、随時ほかの人を参照して、途中経過が把握できること。大きな制限なくクラウドのコミュニケーション機能を使うことで、結果的に複線化になります。校内的には、チャットの活用で気軽に実践情報を共有することも大きなポイントだと思います。
 こちらも本校職員の調査ですが、結果的に授業に対する考えがどのように変わったかについてのまとめです。生徒に任せることが増えた、生徒自ら学ぶスキルを身につけられるように授業を考えるようになった、途中経過がよく分かるようになり、生徒たちの成長や頑張りがよく分かるようになり、喜びを感じるようになったなど、目指していることが可能になってきました。
 なお、中学校では実践がなかなか進まないとよく言われます。確かに困難さを感じますが、中学校だから進んだということもあります。教科専門で、どうしても教えたい、伝えたいことがたくさんあります。しかし、こういう姿になってほしいということはきちんと持っている教師が多いです。また、学年による差が小さいので、全校体制で取り組むことが可能です。教科の壁がありますが、どの教科にも共通の学び方を認識すること、理解することで、教科の壁を低くしていけます。何よりも、これまでも情報共有の重要性を痛感していますので、クラウドの活用の便利さにはすぐ飛びつきます。
 最後になりますが、現在取り組んでいることを少しお伝えします。本校と出川小学校は、このような課題で、今年度から4年間の研究開発校としての役割をいただいております。先ほども紹介しましたが、この2年間、必要と思ったときに指導をしてきた情報活用能力ですが、やはり体系的な指導が必要で、きちんとカリキュラムを編成して育成する時間をつくり実践を進めていかないと、この先は持続可能ではないと感じています。現在は、この2年間で指導してきたことを振り返って整理をして、カリキュラム編成をして、来年度からの実践につなげようとしているところです。
 以上、本校で行ってきたこと、そしてその背景についての報告を終わらせていただきます。こちらは保護者や地域の世帯に配付した本校の実践紹介のリーフレットです。どうもありがとうございました。 以上で終わります。

【奈須主査】 ありがとうございました。それでは、ただいまの水谷委員からの発表について、御意見、御質問ございましたら頂戴したく思います。いかがでしょうか。
 それでは、まず戸ヶ﨑委員、それから黒沢委員、荒瀬委員、小柳委員の順でお願いいたします。
 まず、戸ヶ﨑委員、お願いします。

【戸ヶ﨑委員】 今回はちょっと短めにお話し申し上げます。いつもながらに大変すばらしい御発表ありがとうございました。
 私がかねてから危惧している義務教育の課題の一つに、一般的に総合的な学習の時間の授業の質ですとか、また、今回のこのPC端末の活用といったものは、小学校に比べて中学校に課題があるというふうによく言われています。一方で、中学校というのは、大才晩成というんですか、今そちらの学校で進められている非同期分散とか協働とかといったこういう新たな授業スタイルといったものは、中学校でこそ花開くんじゃないかと、そういうような考え方もできなくはないかなと。その辺、水谷先生のほうでどのようにお考えかどうか、御発表の中にもありましたけれども、もし補足等がありましたらお教えいただければというふうに思います。
 また、先ほどの委員の方々の御意見にもありましたけれども、中谷委員、水谷委員の御発表というのは全国の教育委員会や学校にとっても、アドバンストケースというんでしょうか、モデルケースになるということはもう論をまたないわけで、ただスリーシグマの中にある大半の学校に、お二人の学校のような優れた実践をどのように横展開、水平展開していくかということが、ある意味至上命題なんだろうというふうに思います。
 効果を上げていくためには、例えばお二人のようなモメンタムの高い校長先生を多く育成して、牽引力を発揮してもらうのが良いのかどうか、また、先生方はその戦略的な人事配置を行っていくべきなのか、または優れた指導者の招聘が効果的なのかなどなど、その仕掛けを明らかにしていくということもこの大事な役割なのかなというふうに思います。
 そのためにはいきなり、アーリーアダプターというのですか、それを目指しても無理なので、まずは大多数を占めているそのレイトマジョリティーの教育委員会だとか学校へ、うちでもできるという腹落ち策を探ったり、あえて失敗事例を紹介したりしながら、まずは先進的とまではいかなくても、着実に効果を上げている取組自体のアーキテクチャーといったものを見いだして、その本質だとか知見、そういうものを共有化していくことが何より大切なんだろうなというふうに思います。
 つまり、個別最適な学びの推進に向けた指導改善だとか、ICT活用の大切さなどを、教育委員会や学校関係者に広くPRしていく、言うならば空中戦というんですかね、それとともに、教師の実践上の納得解、そういえばそうだなというふうに有用感を広げていくような方策の地上戦、こういったものも組み合わせていくということも大切なのかなということを感じました。
 以上です。

【奈須主査】 ありがとうございました。ちょっと手を挙げていらっしゃる先生が多いので、御質問をまとめて後でお答えいただければと思います。
 それでは、黒沢委員、お願いします。

【黒沢委員】 御発表ありがとうございました。大変参考になる部分たくさんあって、早速本校でもちょっとやってみようかななんて思ったところですけども、教えてほしいこと2点だけ質問をさせてください。
 まず一つ目が、どうしてももたつく子というか、なかなかうまくなじめないといいますか、パソコンにうまく対応できないなんていう子がいた場合、どういう対応をされたのかなというのが一つ。
 もう一つは、うちの学校でもJamboard使っているんですけども、一つの画面に共有できる付箋紙の数というのはやっぱり限られてくるわけですけども、そのとき最適な人数といいますか、子供の数は何人ぐらいまでだったら効果が高いよというのが、私見でいいんですけども教えていただければなと思います。
 以上です。

【奈須主査】 ありがとうございます。それでは荒瀬委員、お願いします。

【荒瀬委員】 遅れて申し訳ありませんでした。御発表どうもありがとうございました。今、黒沢委員がおっしゃったことと重なる部分があるんですけれども、収集・整理した情報を見せ合いながら自由に議論とか、あるいはチャットも活用して考えた仮説をどんどんつぶやきながらという、こういうことを生徒がどんどんやっていくと、どうしてもそこに関われない子が出てくるんじゃないかなということを思いました。
 それで、黒沢委員と同じような質問なんですけど、取り残されてしまう子供が出たときにどうするのかということをお尋ねしたいというのが1点です。
 もう一点ありまして、最後のほうで触れられましたけれども、基礎は人間関係づくりなんだということをおっしゃいました。ICTがこういう形で進めば進むほど、人間関係づくりというのは非常に重要になってくると思います。この点についてもう少し御説明をいただけたらと思います。
 以上です。ありがとうございました。

【奈須主査】 ありがとうございました。それでは、小柳委員、お願いします。その後、堀田委員、鍵本委員、柏木委員、今村委員の順番となります。
 では小柳委員、お願いします。

【小柳委員】 水谷校長先生、御発表ありがとうございました。教員が教える授業から、児童生徒が自ら学ぶ授業への転換ということで、このことは本市の本当に課題でもあります。個に応じた指導というのは、これまでかなり充実させてきましたが、自ら学ぶというのが課題です。特に先ほどもお話にありましたが、小学校では結構取組が進んできているんですが、中学校ではなかなか、学習内容も多い中、進まないという現状がございます。そうした中で、コロナ禍で、市が指定しているモデル校の取組というのもこれまで交流し難い状況にあったんですけれども、この秋ぐらいから、研修会や研究会もオンラインではなくて、実際に子供の姿が見られる形で実施できるようになりました。そんな中で教員の意識も少しずつ高まっているように感じます。
 御発表をお伺いした中で感じたのは、新しい取組をどんどん進めていくには、やはり教職員の意識改革というのが一番かなと思うんですが、御発表の中で、校長先生が課題を共有して課題からスタートするんだという話をされました。教員が、うちの学校の子供たちの、また指導方法の課題は何かということを共有して、そしてみんなが同じベクトルの方向に向かっていく、このあたりが、やはり校長先生の手腕の見せどころであると思いますし、大切なことだと思います。
 そうした中で、本市では、モデル校以外の学校でも取組が進むように、全国学力・学習状況調査の結果を各学校で、学力面も質問紙調査もしっかりと分析してもらって、それを市全体の課題として市教委が何点か取り上げています。、もう一つは、学校ごとに分析をしっかりしてもらった上で、これからどうしていくかということを全ての教職員で話し合って、その計画を出してもらうような取組をしています。PDCAサイクルに乗せた上で、子供が中心となった学びの方向にシフトしていけたらと考えています。
 水谷校長先生に質問が2点ありまして、1点目は、ICTを効果的に活用した授業について、本市はまだまだこの取組が遅れております。教育委員会として、水谷校長先生の学校では、教育委員会からどういった支援、物的・人的支援を受けているかお教えいただければ有難いです。
 もう一つは、先ほど基盤は人間関係づくりとありましたけれども、生徒指導の観点からも、こうした授業改善の取組が功を奏していることがもしあれば、お聞かせ願いたいと思います。よろしくお願いします。

【奈須主査】 ありがとうございました。それでは、堀田委員、お願いします。

【堀田委員】 東北大学の堀田でございます。お二人の発表に対して、質問というより意見を2点申し上げたいと思います。私は、この特別部会の下に置かれています、教科書・教材・ソフトウェアの在り方のワーキングの主査も拝命しておりますので、そちらの議論も踏まえて発言したいと思います。
 二つ申し上げますが、一つ目は、まず、お二人の発表を伺って、やっぱり教師からの一方通行の授業からどうやって転換するかということが大事なんだということを思います。それ次第で一人一人の児童生徒が主体的に学ぶということが実現しているんじゃないかなと思うわけです。
 一方で、私が訪問して授業を参観している学校の中には、そういう新しいタイプの授業になかなか乗り切れない先生もそれなりにいるということです。中学校に多いというのもそういうことかと思います。こういう先生方は決して熱心じゃないわけではなくて、従来の指導法にやっぱり強い信念をお持ちで、一方で、これからこの子供たちに任せたら意外とできるようになるんですよ、できるようになるように鍛えていくんですよということが描けない傾向があるように思います。
 水谷先生の言い方で言えば結果として、今までの授業を続けてしまうことで、知識伝達中心で学び方が十分に育たないということになって、そうなると、学びに向かう力が十分でないということですから、生涯学び続けるということが難しくなるだろうと。これからの義務教育を考えると、学び方をこそしっかり身につけさせることが重要かと思います。
 そんな中で、このGIGAスクール構想で情報端末が整ったということは、学習環境の前提が変わったということだと思います。情報端末を前提とした学習環境で、これからの授業はどうあるべきかという骨太な議論や、あるいは具体的なイメージを明確に国が提示していかないといけない時期かなと思います。この義務教育ワーキングがそれをやるんだなというふうに私は理解しております。
 先ほど申し上げた教科書・教材・ソフトウェアの在り方ワーキングでも、デジタル教科書とかデジタル教材の在り方を議論するわけですけど、これが新しい授業の在り方そのものの議論が先にないと、結局教科書とか教材のデジタル化の話は従来の考え方の延長になりがちだと、そういう意見も出ています。
 実際、例えばデジタル教科書などは段階的に導入されている途上ですので、効果とか課題の検証をしながら進んでいくわけですけど、どうしても従来の教育観での評価が要求されがちになります。知識や技能だけでなくて、例えば思考力や表現力等は別にデジタル教科書だけで身につくわけではありませんし、学びに向かう力というのは新しい考え方での学習経験の重なり、継続、繰り返しで身につくことになりますので、そういう意味では、これからの授業の在り方に沿った効果検証であるべきです。この義務教育ワーキングで、これからの授業の在り方みたいなことが骨太に提示されることが必要かというふうに改めて感じました。これが一つ目です。
 二つ目は、管理職や教育委員会の役割等についてなんですけども、先ほどの中谷校長先生の学校の自由進度学習のすばらしいお取組を拝見すると、ある任意の瞬間にそれぞれの子供たちの活動が異なっていても、各自がしっかり力をつけているという様子が分かります。そして、情報端末がそれを後押ししているということも分かります。教師が怖いのは、みんなが今違う状況だというのが怖いところもあるのかなと思うわけです。
 水谷校長先生の学校では、個々の生徒の学習の状態がクラウドで可視化されていますので、自然と協働的な学びが生じたり、あるいは、なかなか学習が進まない子がそれで進むようになったりするということ、あと教師が子供たちの学習状況を把握しやすくなっているということ、これらが日常的にできるようになっているということが印象的でした。
 教師はつい、自分がしゃべって教えるということが必要じゃないかと思って、それが自分の存在価値みたいに思いがちなんですけれども、これからの授業はそうではないということを管理職が明確に理解し、リーダーシップを発揮していただくことが重要かなと思います。
 また、教育委員会も、中谷先生のところの教育委員会は歩きながら考えようという言い方で伴走されたということですけども、教育委員会が一緒に考える存在であり、そして各学校の実態に応じる、校長先生のリーダーシップに任せていくような、そういうことがすごい大事なんだなと思います。
 何でそういうことを言うかというと、GIGAスクール構想から2年たって、児童生徒も随分端末に慣れてきましたけど、それは十分に活用している学校のことであって、まだあまり使ってない学校はなかなかそこまで進展していません。これは管理職のリーダーシップ不足によるものです。また、教育委員会によってはいまだに、有効なツールの活用を禁止していたりするところもあります。これも新しい時代の学びについてのビジョンが持てていないのだと思います。
 水谷校長先生の学校でも学習チャットがかなり有効に機能していましたが、チャットは生徒指導上の心配で禁止みたいにしている例も多いなと思います。これは中谷先生の言葉を借りれば、転ぶ前につえを何本も持たせている段階だと思います。最初は仕方がないんだと思いますけど、端末の活用の仕方にすっかり慣れてきた段階では、だんだんそこを開放していって、転んだときの起き上がり方のほうをむしろ教えるべきだというのに私は賛成します。管理中心から、各学校の実態に合わせたダイナミックなICT活用を認めていく、そして令和の時代に合った教育実践が行われるように応援していく、それがこれからの教育委員会の役割だと私は思いますという二つの意見を申し上げました。
 以上でございます。

【奈須主査】 ありがとうございました。それでは、鍵本委員、お願いします。

【鍵本委員】 岡山県の鍵本でございます。お二人の委員の先生方、本当にすばらしい発表をありがとうございました。
 私たちも県教委としまして、市町村立の小中学校にも訪問しているわけでありますけども、その中では、こういった先進的な取組をどういうふうに全ての学校に進めていくのかということで課題を感じておりますことが2点ございまして、それは、一つはやはり、お話何回も出てきましたけども、そのイメージが持てていない先生方がまだ多いということ、それからその基になっています、その必要性が先生方に十分伝わっていないなと、これは我々の反省でもあるわけでありますけども、そういったことを感じます。
 今日の2校の御発表を聞いておりまして、特にこれは大事なポイントだなと思いましたのは、まず第1に、校長先生方が明確な方向性を持ってこの取組がなぜ必要なのかということを繰り返し先生方にお話しになっていること。第2に先生方にこのイメージ、こういうふうな授業を進めていくんだということを分かっていただくために、校長先生が先頭に立って、具体の御取組、例えば校長先生御自身が授業をされて、そのイメージを先生方に持っていただいているとか、あるいは、日常使いの中でクラウド活用を進めることで、できることのイメージを膨らませていって、その後に、さあ、やっていこうというお話をされているということ、大変印象に残ったわけでありますけども、先生方が取組をイメージできて、まずできることから実践してみて効果が実感できたら、するとそこから少しずつ先生方がそれを広げていくことが可能なんだろうというふうに思うんですけども、振り返って本県を考えた場合には、この具体のイメージがまだまだ持っていない学校、先生方が多いということが一番の課題だと思いますし、このハードルをやはり乗り越えていかなきゃいけないというふうに思っているところであります。
 実際、本県では何をやっているかといいますと、県教委として、全ての学校、これは政令市、岡山市を除くわけですけども、そこに県の幹部と指導主事がペアになって年2回以上お邪魔する機会を設けております。そこで校長先生の学校経営の方針を聞きながら、まず授業改善の必要性を先生方に理解させる、そして具体の方向性をしっかり示せるように支援をしているわけであります。
 そのときに重要になりますのが、今日御発表いただいた、具体にどういうふうに進めていったらいいのかということのイメージをしっかり提供していくということを、できる限りやっているというところであります。指導主事は先生方の授業を全て見ていくわけなんですけども、その中でどこをどういうふうに改善していけば、個別最適な学びや協働的な学びにつながっていくのかという糸口を、できるだけアドバイスをして、方法をこういうふうにしていったらいいんじゃないかということを、先生方と一緒に、当然市町村教委の方と一緒に議論して変えるということを今取り組んでいるわけでありますけども、こういった地道な取組がやはり必要なのかなというふうに感じているところであります。
 今日の御発表も大変参考になったわけですけども、こういった貴重な実践の事例を、できる限り文科省のほうからでも御提供いただきまして、実際、各学校にこのイメージを膨らませていただくために、そういったものが御提供いただけると、今後我々も、各学校に入っていって一緒に考えていくということがやりやすくなっていくのかなということを感じているところでございます。ありがとうございました。

【奈須主査】 ありがとうございました。それでは、柏木委員、お願いします。

【柏木委員】 貴重な御発表いただいて、ありがとうございました。ICT活用の次のステップというところで非常に効果的な活用の仕方を示していただいて、私も大変学ばせていただきました。
 私のほうからは最後に質問ございますけれども、私も国立教育政策研究所でICTを活用した授業の実践を研究しておりますので、それと重ね合わせて、今回の先生の発表の中で何を読み取ることができるのかというところを感想として申し上げたいと思っております。
 まず、先生方の御発表から考えられるのは、ICTは、多様な子供たちが社会の中でお互いの存在を認め合い、助け合えるようになるための、子供たちをつなぐツールだなというふうに思うことができました。先ほどの御発表では、友達と協働できるようになったというような子供の回答が最も多かったというところからは、それを示唆することができると思います。
 そして、協働的な学びと個別最適な学びというところで、ICTを使って先生方がなされていることで重要なところは、まず第1に、子供が学習活動に安心して参加することができるようになる。第2に、その中で、子供が内なる声、どんな声でもいいからまずは出してみるということができるようになる、つまり学習活動に積極的に参加することができるようになる。第3に、いろんな声を出し合うことによって、協働による思考を深めて、様々な課題に取り組む素地を作るための相互作用を子供たちができるようになる、これら三つを促進しているところだと思われます。
 まず、第1については、ICT端末によって、先ほども板書を写さなくていいってあったんですけれども、手作業で書かなくてよくなります。困難を抱える子供というのは書く作業が難しいんですけれども、それを端末ですることによって、心のハードルとか、実際のハードルなく学習に向かうことができるようになります。そうした子供が、調査からも、もういいやってなるのではなくて、ちょっと考えてみようとか参加してみようというような気持ちを持てるようになるというふうに言われていて、お守りだというふうにICTの端末をおっしゃっている子供さんもいらっしゃいました。
 その中で、先ほどの御発表にもありましたように、そうした困り事を抱える子供が授業に参加できるようになったり、また、そのためにもそうした子供を見落とさずに先生が支援することができるようになったりしています。それは先ほどのJamboardなんかでも、誰がどんな回答をしているのか一覧表示することができるようになって、先生が誰に支援をすればいいのか、そして子供同士も誰が困っているのか、誰を助けたいのかというのを見やすくなったためであると言えます。
 第2について、先ほどの付箋紙でも書いてありましたけれども、小学校の場合だと色を使って表現することもできるので、自分の中で弱い意思、まだ手を挙げて発表するまでに至らない意思というものを出すことができて、同時に、書き込むこともできるので、授業の中でどんな声でも出せる、出していいんだと思えるようになった、また、声が出しにくいから傍観していた子供が声を出せるようになった、傍観者が出にくい状況になったということが言えると思います。
 第3については、そういう状況を整えた上で、思考を高めやすくするツールということで、先ほど、やっぱり時間が短縮できるとありましたけれども、ICTを使うことによって思考する時間が、これまでより長く取ることができるようになりました。その中で、先ほどの一斉共有によって、考え方を学んだり、学び方を学ぶことができるようになりました。そして「あっ、こんなふうに考えたらいいんだ」というところで、能力のシェアといいますけれども、友達の回答、模倣ということで友達あるいは仲間をモデルにすることで、能力のシェアが生じています。、ヴィゴツキーは、子供は協働の中では常に自分で独りでやるよりも多くの困難な問題を解くことができると言いましたけれども、それが見られたのではないかと思われます。
 そして、子供たちがいっぱい矢印を作っていましたけれども、共有、そしていろいろ友達の思考をまねして拡散するというだけではなくて、矢印を使って思考を関連づけさせて、そして焦点化させて、構造化させるといったところで、子供たちが知を構成しようとしているのが見てとれました。それは、教員の設定する範囲をはるかに超えてくるというような、問題解決に至る知の創造ではないかなというふうに思われます。
 このような、ICTの非常に効果的な使用の仕方をている中でなんですけれども、質問としては、最後の中に、一斉と個別の学びというふうにしっかりと一斉も、相互作用のある一斉授業ということが恐らく必要だとして位置づけられていらっしゃると思います。今回の授業の中で、相互作用のある授業づくりをどうつくり上げていらっしゃるのかというところが1点と、あと、例えば個別の自由進度学習と協働的な学び、対立するものでは全くないですけれども、ただ、それぞれの学びには何ができて何かできないのか。例えば自由進度学習では何をそぎ落としているのか、そして協働的な学びでは子供たちは何を困っていて、何をすることが可能になるのか、それぞれの効果検証をする際の礎になるような御意見いただけたらと思います。よろしくお願いいたします。

【奈須主査】 ありがとうございます。それでは、今村委員、お願いします。

【今村委員】 すばらしい御発表、水谷先生も中谷先生もありがとうございました。
 今のお二人のお話から堀田先生が、別の部会なんですけれども、振興基本計画のときにDXの3段階というお話をされていた中の、アナログをデジタルにする、業務プロセスをデジタル化する、そして組織変革につなげていくという3段階の、2段階目から3段階目のところにトライされているんだなということを学ばせていただきました。
 是非お伺いしたいのが、こういったことを取り組んでいくに当たって、短期的には仕事が増えるということになると思うんです、こういった新しい取組をなさるということは。同時に、この仕事を増やしたことによって、ここが減ったよねとか減らしてもいいよねという部分を、組織として何か決められて実践して、削った部分はあったのか、今削ろうとしている部分があるのか、この点について教えていただけたらうれしいです。そこもセットであるとすごくスケールしやすいのじゃないかなというふうに思いました。
 私からは以上です。

【奈須主査】 ありがとうございました。
 それでは、随分たくさん質問出ましたけど、可能な範囲で、水谷先生、お願いします。

【水谷委員】 たくさんありがとうございます。できる限りメモしましたが、どれも関連があると思いますのでできるだけ関連づけてお答えしようと思います。何かゴールの姿が分かっていてこのように取り組んできたわけではなくて、いろいろなことを試して結果的に今の姿があります。今まで、どちらかというと、他の子のものを見てまねしてやってはいけないというようなものが子供たちにありましたし、私たちも、どちらかというと「まねすることは……」というようなことがあったんですが、一番最初の実践で共有をして、「お互い、参考にしていいよ」と言った瞬間に、今まで白紙で何も書けなかったような生徒もどんどん参考にして書いて、さらに終わった後もお互いに「いいこと書いてたね」などのつぶやきが発生する場面を見て、そのことをチャットで共有したのです。そうしたら、「そうなんだ、ちょっと考え変えてみようかな」ということで始まったのが原点になります。
 ですので、やはり、参照する、それから常に共有していることで、今も説明したとおり、互いのことが分かるようになってきたことが非常に大きくて、操作など困る子もいますが、自分から助けを求めに行くことも、ほかの子を見て多分こうやってやるのかと自分で解決する子もいますし、さらに、ちょっと困っていたら「これこうやってやるんだよ」というふうにアドバイスをもらって、大体の子が解決していきます。それでも解決できない子は先生がその状況が分かるので、そこへ支援に行くというようになりました。で、自分で努力、ほかが支援していく、さらに最後は教師がということで、とても支援がしやすい状況になっていると思います。
 また、操作に関しては、小学校でも指導していますし、さらに、小学校にこういうことは大事ですよねということを共有していますので、小学校高学年のところにはほとんど取り組んでいただいているので、中1の段階で操作に困ることはもうほとんどなくて、今年の1年生は、今の中3が中2ぐらいの時のレベルで最初から学習が始まっています。ですので情報活用能力をきちんと体系づけて指導していくということが大事だということは言えると思います。
 また、人間関係づくりのことですが、今の中3は、御存じのように小6の卒業式も、中1の入学式もきちんとできず、本市でいうと100日間学校が止まった状態で、非常に不安定な状況で入学してきた子たちです。ですので、1年生のちょうど今頃の時期までは生徒指導の問題がとても多くて、いろいろなトラブルが絶えませんでした。ですが、授業でこういったことを取組み、お互いの様子が見えるようになり、さらに私たちも褒めますし、「あっ、自分たちこういうことができるんだ」と少し自信を持ったというか、自己有用感が高まったというか、トラブルが減って、お互いの人間関係もその中でつくっていきました。
 今までは、こういうツールが逆向きに使われて問題が起こるものだと私たちも思ってきましたが、やはりいい使い方を何度もしながら、お互いの勉強のためになることに使って共有していくと、お互いを助けるツールになるということを、そのときに自分たちも子供たちも理解して、そのようなことら、常にお互いを見ながら、お互いに勉強して、いいことを情報交換していくがらというツールに変わってきたと思います。
 多分、いわゆる授業名人は、このようなことをアナログでやっていたのだろうと自分たちはよく話題にします。子供たち自身で見通しが持てるようになったからこそ、今、子供たちに任せることができるし、任せられるといろいろなことをさらに考えて試して、「あっ、すごいね」という一言がまた子供たちを頑張らせるようになっていてうまく説明ができないですが、お互いが常に見えるような状況になって、支援し合うという関係が非常に大事だと感じて取り組んでいるところです。
 次に、確かに一時的に業務は増えましたが、日常業務での情報共有が特に中学校では重要ですので、自分たちの業務もクラウドを使うことによって時間短縮になり、もう集まって打合せをするのは、学年は集まって毎日数分打合せをしますが、学校全体で集まって打合せをするのは週1回15分ですし、職員会議も月1回15分で終わるようになりました。ですので、自分の時間やコアになるメンバーで集まって相談する時間が増えたので、結果的にトータルの負担は今では減っています。この環境を日常の業務で使うことで見通しがよくなります。今も、私はこのように説明をしているのですが、校内の情報がいろいろ届いたり、私が質問を受けているのを見ている者もいるので、「それはこのように答えるといいのでは」などとチャットが来たりしているいるぐらいで、以前と随分変わったと思います。
 その他、支援については、市教委市内全て全部の小中学校にICT支援員を、およそ週2回各半日派遣して、いろいろな相談に乗っていただいていることが大きいと思います。それ以外は、学校間の横の私たちのつながりでおおよそ解決をしています。
 なお、Jamboardについて御質問がありましたが、まずは、三、四人で共有して始めて、ある程度情報を集めたところでコピーをして、1人1Jam、つまり1人ずつの活動に移っています。最後まで一つのJamで一緒に作業するということは最近ではほとんどなくなって、最後は自分一人でつくり上げます。ですので、付箋の数が多くて困るというようなことは、なくなったとを思っています。
 いろいろな御意見や御質問をいただいていますが、残りの時間のこともありますので、全て説明し切れてない部分もありますが、取りあえず以上です。ありがとうございました。

【奈須主査】 時間が参りましたので、今日のところはこの辺りにしたいと思います。
 最後に、次回の予定について、事務局からお願いいたします。

【前田教育制度改革室長】 先生方、ありがとうございました。次回のワーキンググループでございますけども、12月21日を予定しております。テーマにつきましては、学びにおけるオンラインの活用と、学校教育になじめないでいる子供に対する学びの保障という検討事項でございます。今村先生と黒沢先生からプレゼンをお願いしておりますので、予定をさせていただいております。
 事務局からは以上でございます。

【奈須主査】 ありがとうございました。
 それでは、本日予定した議事は全て終了しましたので、これで閉会をしたいと思います。ありがとうございました。
―― 了 ――

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