令和6年11月28日(木曜日)10時00分~12時00分
文部科学省 (※WEB会議も併用)
(東京都千代田区霞が関3-2-2)
【奈須主査】 それでは、定刻となりましたので、ただいまから中央教育審議会 初等中等教育分科会 個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実に向けた学校教育の在り方に関する特別部会 義務教育の在り方ワーキンググループの第10回を開催いたします。
皆様、御多用の中、御出席いただきましてありがとうございます。本日の議事に入ります前に、本日の会議開催方式及び資料につきまして、事務局より御説明をお願いいたします。
【渡邉教育制度改革室長】 本年10月より、初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室長を務めております渡邉でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
本会議の開催方法についてでございますけれども、対面・ウェブ会議を併用いたします。ウェブ会議から御参加されている委員の皆様方におかれましては、会議を円滑に行う観点から、大変恐れ入りますが、御発言時以外はマイクをミュートにしていただくようお願いをいたします。カメラにつきましては、御発言時以外も含め会議中はオンにしていただけますようお願いいたします。委員の皆様には御不便をおかけすることもあるかと存じますが、何とぞ御理解のほどよろしくお願い申し上げます。
次に、資料の確認をさせていただきます。本日の資料は議事次第にございますとおり、資料1-1から資料2-4まで、加えて参考資料が三つとなっております。まず、資料1は、個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実に向けた学校教育の在り方に関する特別部会と本ワーキンググループの合同で、本年10月に実施をした広島県の視察に関する資料となっております。次に、資料2-1から2-3は、昨年12月にまとめていただいた中間まとめについて、視察を踏まえて、委員の皆様からいただいたコメントなどを反映した審議まとめ(案)の本文とその概要になっております。また、資料2-4は、審議まとめ(案)に関連する資料をまとめた参考資料集となっております。
参考資料1-1から1-3は、特別部会に本ワーキンググループとともに設置されている高等学校教育の在り方ワーキンググループの中間まとめと関連資料となっております。
資料についての御説明は以上でございます。
【奈須主査】 ありがとうございました。
それでは、議題に入りたいと思います。本日の議題は、審議まとめ(案)についてということで、まず、事務局から御説明をいただき、意見交換の時間を御説明の後に設けたいと思います。
本日は報道関係者と一般の方向けに、本会議の模様をYouTubeにて配信しておりますので、御承知おきください。
それでは、まず、資料1について、事務局より御説明をお願いいたします。
【渡邉教育制度改革室長】 資料1を御覧いただければと思います。先ほど申し上げました広島県視察についての報告となってございます。
1ページでございますけれども、本ワーキンググループにおいて昨年12月に取りまとめていただきました中間まとめの内容について、関連する取組を実際に行っている事例を確認するとともに、当事者の声を直接聞くことで、さらに充実した審議を行うため視察を実施したものとなってございます。具体的には、広島県教育支援センターSCHOOL “S”、廿日市市立宮園小学校、尾道市立高西中学校を10月2日から3日にかけて、特別部会及び義務教育ワーキンググループの御都合の合いました委員の皆様に御参加をいただいて訪問させていただいたというものでございます。
2ページ目を御覧いただければと思います。まず、広島県教育支援センター、SCHOOL “S”についてでございます。本施設におきましては、来室とオンラインによる個々の実態や興味関心等に応じた学びを通じた不登校等児童生徒への支援を行っております。施設ではオンラインチャットを含めまして、個別に子供たちとの対話を実施したところでございます。
3ページ目を御覧いただければと思います。対話におきまして、子供から委員に寄せられた主な意見ということで掲載をしてございます。主なものとして、例えば、SCHOOL “S”は話を聞いてくれ、全部を受け入れてくれるところがいいといったようなお話であるとか、学校の嫌いなところは勉強させ過ぎるところや自由じゃないところといったものが聞かれたところでございます。その他、多くの率直な意見をいただいたところでございますけれども、本日の机上資料といたしまして、この際のオンラインチャットの記録をそのままのものとして御用意をさせていただいてございますので、併せて御参照いただければと思っております。
次に、少し飛びまして、5ページ目、2ポツでございますけれども、廿日市市立宮園小学校についてでございます。ここでは自由進度学習に取り組み、児童一人一人の学習進度や能力、関心度に応じて多様な学びの選択肢を提供していることがその特色となっております。ここでは、実際に自由進度学習の授業を見学するとともに、子供たちと委員との対話を実施したというところでございます。
次のページを御覧いただければと思います。児童との対話を踏まえた委員からの主なコメントといたしまして、自由進度学習の良さについては、自由度が高いこと、自分のペースで進められること、いつでも自分のタイミングで質問でき、分からないまま過ごしてしまうことがないという意見が多く聞かれたというものがございました。
次に、3ポツの尾道市立高西中学校のところまで進んでいただければと思います。ここでも自由進度学習に取り組むとともに、スペシャルサポートルームを整備して不登校支援を行っているというものでございます。ここでも授業見学の実施後、生徒と委員との対話を実施したところでございます。
次のページを御覧いただければと思います。生徒との対話を踏まえた委員からの主なコメントとして、自由進度学習の良いところは先生に聞きづらいことも生徒同士で聞き合えるという点でありますとか、自分のペースで学ぶことができる点などが挙げられていたということでございました。また、学校や進学への不安や期待についての問いに対して、人間関係や学習についての不安要素や校則などへの思いが語られていた一方で、課題に対してのポジティブな思考や行動に対する意識があまり見られなかったというコメントもいただいたところでございます。その下の学校からの主なコメントとして、最初は生徒からもう不安の声があり、最後だけでも先生がまとめてくださいと言われたが、実際にやり始めると意外に身につくことを実感しているようだということ、最初は否定的な意見があったアンケートの結果も、今は肯定的な意見に変わっているといったものが聞かれたところでございます。
以上、大変かいつまんでの御紹介で恐縮でございますけれども、その他、詳細につきましては、資料を御参照いただければと存じます。私からは以上でございます。
【奈須主査】 ありがとうございました。
それでは、今、御説明いただきました広島県の視察について既にコメントは事務局において資料にまとめられているところでありますけども、少し時間がたって今振り返ると、こんなことを気がついたとかということもおありかと思います。感想、コメント等あれば、改めて委員の皆様から御発言を頂戴できればと思います。また、残念ながら、視察に参加されなかった委員の皆さんもいらっしゃいますけど、今の御報告をお聞きになったりしてお気づきの点、あるいは、御質問等ございましたら御発言をいただければと思います。
御発言ございます方は、「手を挙げる」のボタンを押していただき、こちらから指名をいたしましたらミュートを解除の上、御発言をお願いします。また、御発言が終わりましたら「手を下げる」のボタンを押して、挙手の取下げをお願いいたします。
いかがでしょうか。では、荒瀬先生からお願いいたします。
【荒瀬委員】 ありがとうございます。広島行きは事務局の皆さんの大変な御努力で実現したと思っています。伺いました先のSCHOOL “S”を含め、宮園小学校も高西中学校も大変丁寧に御対応いただきまして、子供たちにも時間を取ってもらって本当によかったと思っております。
そこで、そういう思いを持ちながら、二つ、一応記述もしたんですけれども、改めて時間がたってということで、思っていることを申し上げたいと思います。
一つは、SCHOOL “S”の、先ほど御説明のあったオンラインチャット、これもそのままを載せているということで、これ、本人及び保護者、それから当然のことながら、教育委員会の許可を得て出しています。生徒とのやり取りの中で、彼らの中に都合のいいところだけを記載して、それでもって子供たちの意見という見方をするんじゃないかという大変厳しい指摘を受けまして、その際、そこにいらっしゃった方、皆さん、そんなことはないということをおっしゃって、私もおりまして、一応、私の方からも、そういうことは一切しないと、全てそのまま載せるんだということで、これをまた事務局の方から広島県教育委員会を通して、SCHOOL “S”の子供たち及び保護者にきちんと連絡もしていただいて、それなら良いと子供の了解も得て出していただいている資料です。
御参加になった方も振り返っていただくということはもちろんのことながら、御参加になっていらっしゃらない方、生の声ですので、その時の流れが全て見えるかどうか分からないんですけれども、ぜひ御覧いただければと思います。そういう性質のものなので、机上の参考資料という形で文科省の方で御配慮いただいているということであります。
もう一点、感想としては、行ってよかったと、本当に行ってよかったということをとても強く思っています。直接やり取りができて本当によかったと思いますし、その中で子供が言っていましたけれども、こういったことが特別な場であるのではなくて、ごくごく普通に選択できるということが大事なのかなということを改めて思いました。
もう一点、自由進度学習で、これも宮園小学校と高西中学校のとってもすばらしい取組を拝見させていただいて、子供たちとも話をさせていただきました。その中で、さっきまとめたところで御説明がありましたけれども、こういった取組をしているんだけれども、しかし、子供たちに育てたい資質能力は何なのかということを考えたときに、意見を表明するとか、あるいは、自分たちの持っている意見をまとめるために友達と話し合うといったようなことが、まだまだこれからやっていただくことなんだろうなということを思ったという次第です。特に中学校の方で私は強く思いました。
自由進度学習というのはとても有効な方法であることは、もう間違いないということを改めて確信しつつ、もう一方で、このことだけをやっているんじゃなくて、どういう学校をつくっていくのか、どういう子供を育てるのか、一人一人にどんな力をつけていくのかということを常に意識しながら、学校としての組織的な教育力を高めていくということが、大事なんだなあということを改めて思いました。すいません、長くなりましたが、以上でございます。ありがとうございました。
【奈須主査】 ありがとうございました。ほか、いかがでしょうか。少し時間がございますので、秋田委員、お願いします。
【秋田主査代理】 ありがとうございます。私も荒瀬委員と同様に参加させていただいて、本当に間近に子供とともに、それからSCHOOL “S”の様々な御担当者や教員の方々のお声を聴けてよかったと思っています。
特に自由進度学習について、私自身が感激したのは、「環境を通して」というところで、先生方がいろいろ御苦労されているということだけではなくて、子供が自由進度をしているときの学びの在り方を先生方が大変丁寧に、細やかに見ておられて、それをまた、こういうふうに学ぶといいよと、その学び方をほかの生徒たちに伝えているというような場面も中学校で見せていただきました。単に環境をつくれば、あとは放任というのではなくて、それだからこそ子供の学びを丁寧に見取ろうとする、そういう先生方の専門性や、逆に教材を環境に具体化するためにいろいろな教材研究をされている。だから、当初は学期に1回以上はなかなか大変ですと言われたり、内容を選択して危ないものは一斉でとか、そういうような様々な先生方の専門性があって自由進度学習が成り立っているということです。その辺りが大事なところかなと考えます。形だけをまねるのではなく、学校のビジョンやそれに合わせた教員同士の同僚性の中でうまく時間を配分してやっておられるというところが、私は実際に見て先生方のお声から分かったところであり、また、それを自治体が、県教委や市教委が支えておられるというところが素晴らしいなと思いましたので、一言改めて発言させていただきました。本当に準備をいただきました事務局や、この機会をつくっていただいた奈須先生や、佐野先生に御礼を申し上げたいと思います。以上です。
【奈須主査】 ありがとうございました。それでは、堀田委員、お願いします。
【堀田委員】 堀田でございます。私もその場に行ってよかったと思う1人でございます。自由進度学習について述べますが、今、秋田先生がまさにおっしゃったように、子供に任せて自由にさせればいいみたいに安易に考えてしまう実践が散見されます。自由進度学習についても、特に端末の利用を介して行おうとしている取組があるわけですけども、今回、実際にうまくいっている学校を見せていただいたわけですが、そんな簡単な話じゃないということです。当然ながら、子供たちに自分で決める力を育てながら、自分の学習を調整させながら学ぶということをさせるということが一つと、それと同時に教科の学びをしっかりと支えていくような、これは自分のペースで学ぶことによってよりよく理解できるように先生がうまく支援する、あるいはガイドするということを丁寧にやる、二つのことを丁寧にやることでこれが成立しているということを間近で見ることがということが大変よかったことかなと思います。
また、子供たちの声として、自分で決めながら自分のペースで学ぶことが、学校に対する一種の安心感になっていて、学びやすさとか自分のよさを発見し直すみたいなところがあるなと思いましたし、これは子供たちの声を聞いていてそう思うわけですけども、なので、もしかしたらですが、今までの学校の一種の息苦しさみたいなところを、こういうタイプの学習が、ある程度それをなくしてくれる部分があるのかもしれないと感じたところです。
私からは以上です。
【奈須主査】 ありがとうございます。ほか、いかがでしょうか。今村委員、お願いします。
【今村委員】 今村です。私自身は今回同席させていただくことができなかったんですけれども、ほかの都道府県の某地域で、自由進度学習を今実践されているところと少し関わりがありまして、大変良い取組だなと認識しております。そこの地域では、本当によく言われる言い方で言うと、大変荒れているエリアの学校でこそ、これを取り入れたら本当に子供たちが荒れていた原因が、もしかしたら一律の教室で座ってもらうという形だったから荒れていたのかもしれないと先生たちが思うというようなことも感想として聞かれるぐらい、自分で学ぶ、自分のペースで学ぶものを選択できるということが、これほどまでに楽しいと思える学びを取り戻していくことになるんだということを実感なさっている校長先生がいらっしゃって、そういう意味でも、うまく取り入れていくということを次期学習指導要領の中でどんなふうに示唆していけばいいのかなと感じています。
その上で、ただ、某県では、決して県教委としてそれを推奨しているわけではなくて、本当に基礎自治体の中で小さく実践をなさっているんですけれども、どうしてもそれが大きな自治体に広がらなかったり、都道府県としてそれがいいことという伝達がほかの自治体に広がらなかったり、あれはああいうものもあるよね、だけど、うちはそんなに困難を背負った子たちが多いわけじゃないから、うちはそういうのじゃなくて正規の学びでいきますみたいな雰囲気があって、これってどうしたらみんなにとっての学び方の選択肢になり得るんだということを、都道府県及び文科省さんからの発信によって伝達して広げていくのかというところが、どのようなステップを踏めばいいものかなということを感じていて、そこの道筋が、今のように小中学校は基礎自治体の判断で、また校長の判断で学び方を決めていくというやり方だとなかなか広がらないということに難しさを感じているということをコメントだけさせていただきます。以上です。
【奈須主査】 ありがとうございました。そのほか、いかがでしょうか。よろしいですか。黒沢委員、お願いします。
【黒沢委員】 黒沢です。いつもお世話になっています。本当に、こういう機会をつくっていただいてありがとうございます。
私はスペシャルサポートルームをコメントしたいなと思うんですけども、本校は学びの多様化学校であるので、スペシャルサポートする大がかり版に近いのかなあなんて思ってみたんですけど、僕は一番見てよかったなと思うのは、スペシャルサポートルームの子たちがとても明るくて元気だと。それは閉じられた空間の中で元気なのかどうなのかなというのを僕は見ていたんですけども、好きな授業は好きに行くと。嫌な授業は出ないと。高校進学は通信制と決めているから成績関係ないと言い切っていまして、そんな中で、好きなところだけ行ったことに対してクラスメートはどういう反応をするのと聞いたら、全然、全く関係ないということで、クラスメートたちからも奇異な目で見られていないというのはとてもいいなと思っています。
これから、東京都もそうですけど、全国的に別室指導の形が増えてくると思うんですけども、別室指導室を在校生から見たときに奇異な場所として映さないようにするためにはどうしたらいいのかとか、そのために教員はどういうことに取り組んでいったらいいのか、そもそもそこを利用する子たちが堂々と利用できるような環境にしていってあげないといけないと強く感じたところで、多様化学校だけではなくて、こういう別室も明るく楽しい場所にしていくといいのかなというのを感じたところです。以上です。
【奈須主査】 ありがとうございました。それでは、水谷委員、お願いします。
【水谷委員】 水谷でございます。よろしくお願いします。重なる部分もありますが、私も視察に参加させていただいて非常に大きな学びがありまして、いろいろなことの気づきがありました。特に、自由進度学習の両校については、先生方が子供たちを集団ではなく、個でとてもよく見取ってみえるということと、学びの環境をちゃんと準備して、子供たちが自己決定できるように非常に努力されているということを感じました。
ただ、以前、発言したと思いますが、人間関係づくりが基礎にあって、その上でこういう学びが成り立っているんだということもよく確認できたと思います。どうも機会をありがとうございました。以上です。
【奈須主査】 ありがとうございます。それでは、若江委員、お願いします。
【若江委員】 若江でございます。本当にいい機会をありがとうございました。私はSCHOOL “S”について、少し発言をさせていただきたいと思います。
個別の集まりのときに話した中学2年生の女の子が、ここをどうやって見つけたかと聞いたときに、おばあちゃんが新聞とかニュースでこのことを見て、SCHOOL “S”を知ったとのことでした。自分が不登校になっていたので、おばあちゃんからの情報で家族の中で話をして一緒に見に来たんだと言ってくれたんです。幾つかの発言の中にありましたように、いいことに取り組んでもなかなかその情報が知られない、そこは大きな課題だと思います。県の取り組みを県下の市町に広げるということもそうですし正しい情報をどのように伝えていくか、そういった工夫は学校関係者だけではなくて、それを支える地域の人たちですとか産業界も含めてですが、堀田先生が何かのPRの映像をみたいなことも意見として出しておられましたが、そういう広報的なこと、PRではなくてPA、パブリック・アクセプタンスですよね、そういったことがすごく重要だなということを彼女の発言から感じました。以上です。
【奈須主査】 ありがとうございました。ほか、よろしゅうございますか。
今回、視察ということで、広島県教委に本当にお世話になって、お邪魔させていただきました。先生方からあったとおり、本当に有益な知見、時間をたくさん得られたかと思いますし、そのことを審議まとめにも生かすということをさせていただいております。
今回、不登校への対応の施設と、それから自由進度学習という個別・自立のための教育方法ですけれども、一見随分違うものを見てきたなということですが、これはDE&Iですか、多様性を公正に包摂する学校の在り方という意味ではまったく共通しています。DE&Iは、この会議でのさまざまな議論を通じて、そういうことが今後の学校、義務教育において大事だろうという議論をしてまいりました。そのことを実地に確かめ、お子さんの声を聞いてくるということで、こういう企画になったんだと理解をしております。
SCHOOL “S”の方の、先ほど室長からも御説明のあったところですけれども、すごいなと思います。SCHOOL “S”は話を聞いてくれて、全部を受け入れてくれるところがいいと。学校はそうではないという、これは訴えですよね。厳しいですが。あるいは、一人で集中して取り組みたいことがあっても、家や学校ではできないと、そういう学校なんだということですよね。それから学校の授業をもっと面白くしてほしい。この辺りは私は辛辣だと思います。教師が自分で確かめていない括弧つきの正しい知識を教える授業なんかやめてくれと。いや、先生方もものすごく頑張っているし、日本の授業の質というのも世界に冠たるものですが、苦しい思いをしている子から見たら、そう見えているということを我々は真摯に受け止めて進まなければいけないんだなあということを思いました。あるいは、黒沢委員がおっしゃってくれたように、実際に子供たちに出会ってみるととっても明るい、居場所を得るとあんなに伸びやかになるんだと、不登校のお子さんということについて、なかなかその実相をつかめていない、今村先生なんかはいつもお悩みのことだと思いますが、実相をもっとしっかりつかむということが大事だなあと思いました。
一方の自由進度学習ですけども、これは昔からあるかなり古い方法で、逆に言えば安全な方法です。教育方法ですので完璧なわけではない。いろいろなものと組み合わせて適宜利用すればいい方法、全ての教育方法はそうですよね。料理の方法みたいなものですから、これが一番おいしい料理ができるというものがあるわけではなくて、あるものが特徴的にできる。逆に言えば、方法というのは適切に運用されなければいけない。今、自由進度ということで、先ほど堀田先生からもありましたけども、不十分な状況で自由進度学習と称してやられている実践もある。羊頭狗肉な実践、それでは、もちろん成果は上がらない。逆に言えば、それをもって個別ではうまくいかないとか、自由進度ではうまくいかないという声も聞かれますけど、それはちゃんと勉強してちゃんとやってくれということでしかないわけです。これに限らず、教育方法は全部そうなんですけど、どんな方法や形態あれ授業ですから、授業である限り、きちんとやらなきゃいけないものはきちんとやらなければいけない。内容をきちんと検討し、単元を構成し、教材をきちんとつくり込むというのはどんなものでも一緒で、もちろん自由進度学習でも一緒で、それをちゃんとどうもやれていないというようなことがあるなということを思いました。
今回、拝見した2校はそこがとても周到にやれていて、自由進度とか個別とかという以前に、授業としてとても質の高いものを見せてくださった。だからこそ子供が良い学びを示してくれたんだなあという実感を持ちました。今村委員からあった、なかなかでも広がらないということ、これは難しい問題だと私も思いますが、ただ、教育方法というのは現場の先生が、これがいいぞ、やってみようという自立性が一番大事だと思います。でも、その情報が伝わっていないとか、いいものに出会えていないがためにその選択肢を手にできてないということはあると思います。どんな形で、それを下ろしていけばいいかというのはなかなか難しいなと思います。行政がトップダウンで一律にやれというようなこともかつてありましたけど、絶対うまくいかない。だって授業をつくるんだから。自家薬籠中の物となっている、あるいは自分でやってみようと思う方法で授業というのはつくらなきゃいけないので。
だから、これに限りませんが、質の高い学びということを求めていますので、従来の方法とは異なるいろいろなもの、ICTもそうですが、そういうことをいろいろお願いしたり、お伝えしたりしていかなければいけないわけですが、どんなお伝えの仕方が望ましいのか、また、いろいろなお知恵を借りながら、さらに検討ができればなあなんて思っておりました。
それでは、最初の議題はここまでにさせていただきまして、続いて、資料2-1から2-4及び参考資料について、事務局より御説明をお願いいたします。
【渡邉教育制度改革室長】 それでは、審議まとめ(案)についてでございます。今回の視察に御参加をいただいた委員の皆様から、それを踏まえた御意見という形でいただきまして、事務局の方で中間まとめに肉付けをする形で案を御用意させていただいたものとなっております。
資料2-1は審議まとめ(案)の概要、そして、資料2-2がまとめ案となってございますけれども、本会議におきましては、資料2-3、中間まとめからの修正履歴付きのまとめ(案)で修正点を御確認いただきながら、審議をお願いできればと思っております。
資料2-3でございますけれども、まず、1ページ、Ⅰの「はじめに」以降でございますけれども、この間、本ワーキンググループにおいて、学校視察を行った経緯でありますとか、各会議体等におきまして、特に、本年8月の中央教育審議会による答申が出されたことなど、進捗があったことを更新いたしますとともに、その他、先般公表されました生徒指導上の諸課題に関する調査の結果など、データを更新したものとなってございます。
大きく飛ばしまして、14ページからお願いできればと思っております。Ⅱの2の(4)目指すべき義務教育・学校教育の姿及び取組の方向性のうち、①、義務教育の中核としての学校教育の役割の箇所でございます。
具体的には15ページになりますけれども、スペシャルサポートルームのような中間組織があることにも触れるべきではないかといったような御意見をいただきました。学校が引き続き義務教育の中核を担うべきとした部分でございますけれども、ここに学校以外の学びの場を含めた教育環境を整えるということについて追記をした形となってございます。
次の②、公教育としての共通性の担保と多様性の包摂の箇所の一つ目の丸についてでございますけれども、得意分野や特性だけではなく、それぞれの好きという思いもいかすべきといったような御意見をいただきまして、「全ての子供がそれぞれの得意分野や特性、意向等に応じて活躍できる機会や出番を意図的につくり出すことが重要」としておりまして、ほかの箇所も同様の趣旨で修正を施しているところがございます。
次に、四つ目の丸のところでございますけれども、地域ごとの格差や学校の立地、環境による学びや学校運営の差があるといったような御指摘でありますとか、共通性をできるだけ小さくして、設置者や学校が多様性を意思を持って展開しやすくすべきといったような御意見、また、学校に対しての心理的安全性の担保が必須といったコメントを踏まえまして、本文にございますように、学級には多様な子供たちが存在し、学習の仕方や自己実現の在り方は多様で、地域、家庭の状況によっても子供たちの学びの在り方が大きく異なるという実情がある。こうした点も踏まえ、公教育として必要な共通性を最低限担保しつつ、子供たちの個性や多様性を尊重して心理的安全性を高め、一人一人の「よさを徹底して伸ばす」ことに創造的に対応できる学校教育の実現が求められるとしております。
16ページに入りましたけれども、ICTだけでなく、その他の学びの資源を有効に活用することが重要といった御意見を踏まえまして、そのように書き加えてございますのと、以降も同様の趣旨でICTの関連の箇所に追記をした部分がございます。
次の丸の部分でございますけれども、不登校児童生徒について、なぜある学校、学級では通学や入室が無理なのかを精緻に検証することは不可欠といった御意見でありますとか、生徒指導と学習指導を一体で考えていく、問題なく学校に来られている子供と不登校の子供を連続で捉えていくことが大切といったような御意見を踏まえまして、そのような趣旨で、ここに修正をさせていただいているというものになってございます。
次の丸の部分でございますけれども、幾つかの場所、学びの形態を組み合わせることが重要といった御意見を踏まえまして、不登校児童生徒が自らのペースで学べる環境を選択できる環境を整えるといったことでありますとか、また、課題を見いだしたときに、それを支援できる体制を同時に走らせることが重要といったような御意見を踏まえまして、合わせて、関係機関等が連携して支援できる体制を整えることについて追記をしているものというようになってございます。
加えまして、最後の箇所でございますけれども、離島留学や山村留学といったことも一人一人のニーズに応じた多様な選択肢の一つになることを明確化、共有した方がよいといった御意見を踏まえまして、家庭の状況によってはそうしたことが選択肢になり得るということについて追記をしてございます。
次に、③、児童生徒と教師が集い、共に学び、生活する場としての価値の最大化の部分でございます。このうち、二つ目の丸におきまして、デジタル機器の身体的な影響への懸念についても視野に入れた検討が必要といった御意見をいただきまして、この部分にその旨、補足をさせていただいているものとなってございます。
次に、17ページを御覧いただければと思います。子供たちに学びの主導権を適切に委ねるとしていた箇所がございましたけれども、委ねるとはどのようなことか、具体的に分かるようにすべきといった御意見でありますとか、先般取りまとめられました、今後の教育課程等の在り方に関する有識者検討会の論点整理におきましても、全て子供に委ねればよいといった誤ったメッセージとして伝わることのないよう最大限の注意を払うべきといった御意見があったことを踏まえまして、文章にございますように、子供たちが主体的に学ぶ機会を積極的に設けるなど、学びの中で自己選択や自己決定、自己表現等ができるように十分留意するというように修正をしてございます。また、別の箇所でも同様の趣旨から修正をしてございます。
次に、18ページを御覧いただければと思います。一つ目の丸でございますけれども、子供が意見を表明しやすい環境づくり、子供の意見を学校運営等に具体的に反映させる取組が重要といった御意見を踏まえまして、その旨を追記しているものでございます。
次の丸についてですけれども、子供たち一人一人をよく理解し、職員間で情報共有することは大切といった御意見でありますとか、子供が多様な他者と安心して温かな関係を築ける学級経営や子供と教師の信頼関係が前提として重要といった御意見、また、児童生徒間の豊かで安心できる関係の形成に向けた教師の働きかけが重要といった御意見を踏まえまして、ここにございますように、それぞれの教師がオンラインやデジタル等の情報技術を有効に活用し、子供たち一人一人の状況を共有しながら、その専門性を発揮して子供たちが多様な他者と安心して関係を築ける学級経営を行い、子供と教師あるいは子供同士の信頼関係を構築し、それぞれの状況に応じた「魅力ある学校づくり・授業づくり」を進めることが期待されるというようにしてございます。
次のところですけれども、子供たちは特別活動、学校行事や学級活動等を通して、もっと友達との交流や触れ合いを求めているのではないかといった御意見でありますとか、理念を具体的に実現していくに当たって、総合的な学習の時間や特別活動の在り方が一つの鍵となるのではないかといった御意見、児童生徒自らが学びたいと思えること、授業に参加しやすいこと、友人と交流し、学び合えること、成長を実感できることなどが大切であるといった御意見を踏まえまして、特別活動や総合的な学習の時間等の充実を図ることで、児童生徒自らが学びたいと思い、自己決定できるような環境を整えるというようにしてございます。
次に、④、生涯学習社会を生き抜く自立した学習者の育成の部分についてでございます。自立した学習者といったものの概念について幾つかコメントをいただいたところでございます。まず、将来への展望を持つ自立した学習者といった見通しの部分もあるとよいのではないかといった御意見、また、そうした学習者になっていけるようにといった表現の方がよいのではないかといった御意見がありまして、そのようにさせていただいておりますのと、次のページになりますけれども、今の自分に必要な学びは何かを判断できるようにすることは大切といった御意見を踏まえまして、その旨を書き加えているものでございます。
また、困ったときに相談できる力、解決できる他者や方法を見つける力の涵養が必要といった御意見でありますとか、自立は人間の脆弱性と社会の相互依存関係を前提としているといったことなどの解釈が重要であるといった御意見を踏まえ、本文にございますように、自立した学習者とは単に独力で学ぶものということではなく、自らの強みや弱みを認識しつつ、他者と協働しながら価値の実現に向けて学ぶことができるようなものを想定する必要があるというように書き加えさせていただいてございます。
次に、このページの丸の二つ目でございますけれども、こうした教育活動の効果を上げるためには、試行錯誤を繰り返すことが重要であり、そのための時間的なゆとりを確保することが重要といった御意見を踏まえて修正を加えているものでございます。
次に、四つ目の丸でございますけれども、子供たちの他者との関わりという点につきまして、学校内に閉じない活動にする必要があるといった御意見を踏まえて、その旨を明記するようにしてございます。
次の20ページを御覧いただければと思います。⑤、義務教育の目的を達成するための創意工夫の発揮の部分でございます。教育現場における創意工夫といったことにつきまして、実践例や範囲の例示などにおいて想定される外縁を示すとよいのではないかといった御意見を踏まえまして、国が事例などを示す場合にも、できるだけ幅広い事例を示すように留意することが必要というようにしてございます。
三つ目の丸についてですけれども、今後のあるべき義務教育・学校教育の姿を実現していくに当たって、変化を感じて適応することのできる教員、組織、環境整備が必須といった御意見を踏まえまして、研修観の転換などといったことが必要である旨を加えておりますとともに、教育委員会が学校の創意工夫を支援する体制整備も重要であるといった御意見や、以上、申し述べたような学びを実現するに当たって、保護者の理解を得ながら進めていくことが必要といった御意見を踏まえまして、情報公開等を通じた理解を得る取組が肝要である旨の追記をしてございます。
次に、⑥、公教育を支える学習基盤に係る一体的な検討・充実の箇所でございます。子供たちの日々の変化や成長を見取り、励ますとともに、他者と関わり合いながら成長する子供たちの指導、支援を行う教師の役割はどのように社会が変化しても変わらないのではないかといった御意見を踏まえまして、そのように追記しておりますのとともに、子供たちに向き合う時間を確保することの重要性といった観点から、次のページになりますけれども、先般の答申を踏まえた働き方改革の必要性といったことを記載で加えております。
このページの丸の二つ目でございますけれども、学校段階間の円滑な接続に関連する複数の御意見をいただいたところでございます。学校段階間の円滑な接続も重要な課題であるとした上で、小学校低学年の不登校児童数の増加率が他学年と比較して高いこと等も踏まえ、幼保小の架け橋プログラムの一層の推進を図る、さらに、義務教育段階と高等学校段階の学びの接続を念頭に置きつつ、子供の主体的な学びの過程や成果を踏まえた学習評価の改善や高等学校入学者選抜の在り方について検討することが重要であるということを追記しております。
次の丸についてでございますけれども、デジタル学習基盤に関連しまして、必要に応じて紙もデジタルも利用できることこそが重要であるということを明示的に示すべきではないかといった御意見を踏まえまして、追記をしているものとなってございます。
次に、22ページでございますけれども、Ⅲ、学びにおけるオンラインの活用についての箇所でございます。この章におきましては、中間まとめにおいて既に具体的方策として示していただいていたところでございますけれども、例えば27ページ、御覧いただきますと、中間まとめで示された具体的方策に対しまして、それ以降の取組状況と今後の方向性を追記する形で構成をしております。もろもろ書き加えてございますけれども、事実関係の説明となりますので、詳細は割愛をさせていただければと思います。
特にということでございますけれども、32ページ以降に、遠隔教育特例校制度に関しまして、まさに、本ワーキンググループにおける中間まとめを受けまして、文部科学大臣による指定を不要として、学校現場の創意工夫による実施を可能とするなどの制度改正を行ったところということにつきまして、修正を加えているというものでございます。
次に、40ページまでお進みいただければと思います。Ⅳ、「おわりに」の部分でございます。この後、説明をさせていただきますけれども、高等学校教育の在り方ワーキンググループに関しまして、学校段階間の接続の観点からの御意見も複数いただいたことも踏まえまして、例えば中学校段階の子供が持つ進学への不安への対応という観点からの高等学校段階との連携、接続も見据えた検討が必要であるなどといった記載をしております。
41ページになっておりますけれども、丸の四つ目でございますけれども、本ワーキンググループにおいて子供たちからの直接意見を聴く機会を設けたという旨でありますとか、次の42ページでありますけれども、まさに視察先の学校におきまして、子供たちが一人一人の学びを実現する姿を実際に確認したという一方で、不登校の子供たちからは、学校の嫌なところは自由じゃないところなどといった率直な声も寄せられたことなどを記してございます。また、下から二つ目の丸でございますけれども、本ワーキンググループで議論してきたことや、令和の日本型学校教育の目指す姿について、社会へアピールすることが重要であるといった御意見を踏まえまして、そのように記載をしてございます。
引き続きまして、高校ワーキングの検討状況について御説明させていただければと思います。
【度會参事官(高等学校担当)付参事官補佐】 続きまして、高等学校教育の在り方ワーキンググループの議論の状況について御説明申し上げます。初中局参事官付の度會と申します。
資料は参考資料の1-1と1-3を使用して御説明いたします。
まず、1-1でございますけれども、こちらは昨年8月に取りまとめいただいた中間まとめの概要になります。ローマ数字Ⅰ、これからの高等学校の在り方に係る基本的な考え方といたしまして、高校教育の実態が地域、学校により非常に多様な状況にあるため、質の確保、向上に向けて、多様性への対応と共通性の確保を併せて進める必要があるといったことを基本的な考え方として提示させていただいております。
ローマ数字Ⅱの各論点に対する現状、課題認識と具体的方策につきまして、これまで大きな軸として、三つの軸に沿って御議論いただいてきました。まず、一つ目が、少子化が加速する地域における高校教育の在り方について、その下、小規模校の教育条件の改善に向けて、例えば遠隔授業における要件の弾力化であったり、全日制、定時制課程における通信教育の活用に向けた制度改正、また、遠隔授業を実施するに当たっての配信センターの体制や環境の整備、あとは学校間連携等の促進などについて御提言いただいたところでございまして、実際、この中間まとめを踏まえまして、今年の4月から遠隔授業や通信教育に係る制度改正を行ったところでございます。
続いて、二つ目、全日制、定時制、通信制の望ましい在り方について、生徒の多様な学習ニーズに応える柔軟で質の高い学びの実現に向けて、先ほどの御説明と少し似ている部分もありますけれども、全日制、定時制課程における不登校生徒の学習機会の確保ということで、自宅などからの同時双方向型の遠隔授業や通信教育の活用に向けた制度改正やモデル事例の創出をしていく必要があるといったことを御提言いただいております。
三つ目が社会に開かれた教育課程、探究・文理横断・実践的な学びについて、全ての生徒の学びの充実に向けてということで、普通科改革の促進であるとかコーディネーターの配置支援を通じた探究・文理横断・実践的な学びの推進、あと理数系教育のさらなる充実や産業界等と専門高校の連携、協働の強化といったことを御提言いただいております。
以上が中間まとめの概要になります。
続いて、1-3の方お願いいたします。中間まとめ以降もワーキングとして議論を重ねてまいりまして、義務ワーキングと同様に、審議まとめの取りまとめに向けた流れの中にあるわけでございますけれども、中間まとめにおいて継続的な検討が求められるとされた事項がございまして、その事項について、高校ワーキングの委員の先生方から御意見をいただいておりまして、それをまとめたものが参考資料1-3になります。
その中で義務教育に関係する御意見もありますので、御紹介いたします。少しスクロールしていただいて、ここが全日制、定時制、通信制という課程に関して、実態等も踏まえたその在り方の見直しについてというパートなんですけれども、まず、一つ目の丸で、通信制の生徒が増加している背景の一つとして、中学時代の不安があり、それを全日制で解消するためには何が必要かという視点はとても大切。生徒たちが求めているものは何か、それが今の学校にあるのか、ないとすれば、どのように形づくることができるのか、今後、そのような観点も踏まえて検討を進めたいといった御意見や、下の方にスクロールをしていただいて、1ページ目の下から二つ目の丸なんですけれども、全日制課程以外の選択肢があるということを高校進学時に初めて知るのでは遅く、小中学校時点で知る機会を設けるべきである。通信制課程についても消極的に選ぶだけでなく、自分が向いているかどうかで選ぶ、あるいは、自らが通信よりも対面の方が学びやすいという自覚があれば全日制を選ぶなど、学びの相性で選ぶような選択方法も採用できるよう、小中学校との連携も重要ではないかといった御意見もいただいております。
次のページお願いします。下から二つ目の丸なんですけれども、こちらは先ほど御説明させていただいた遠隔授業、通信教育に係る制度改正のものなんですけども、その制度改正について、昨年の冬頃に報道が出たということもあって、中学生本人であったり、保護者の方も、この制度のことについては知っていただくことができておりました。その上で、春に入学してくる子供たち、その保護者の方々は4月以降、そういう世界が待っていて、仮に登校できなくなったときに、その仕組みで学ぶことができるという気持ちで入学してきている。ただ、実際には学校現場でそれができるかどうかというのはまた別問題なので、ノウハウの構築や、国としても今実証を進めているところでございますので、そういったものの普及ということが大切であろうといった御意見をいただいたところでございます。
義務教育との関連では、今申し上げたような高校への進学の関係であったり、不登校関係の御意見が出ておりましたので御紹介させていただきましたが、義務教育ワーキングの委員の先生方におかれましても、高校教育の在り方について、もし御意見いただけるようであればお願いできればと考えているところでございます。
私からの説明は以上になります。
【奈須主査】 ありがとうございました。それでは、ただいま御説明いただきました内容、高校の在り方ワーキングのことも含めて御意見をいただければと思います。既に委員の皆様からいただいたコメントを整理して資料に反映をしておりますけれども、さらに御意見を頂戴できればと思います。
それでは、堀田委員、戸ヶ﨑委員、荒瀬委員の順番でと思います。それでは、堀田委員、お願いいたします。
【堀田委員】 堀田でございます。まず、資料2-3の見え消しの17ページですが、資料を共有していただけますか。ここにICTリテラシーという表現があります。文部科学省では、これまでICTリテラシーという用語の使い方はしてないのではないかと私は思います。恐らく情報活用能力という言葉の一部として、これが使われているのではないかと思いますので、今後の教育課程の検討等との平仄の件でもここの検討いただければと思うところでございます。
また、全体的にICTという言葉とデジタルやオンラインという言い回し、あるいは、オンラインやデジタルとかデジタル機器という言い回しなどいろいろな表現がされています。統一する必要はないと思いますが、使い方の統一感は必要と思います。ICTを活用するとはよく言いますよね。それはそれで物体的なイメージが何かあるのかなと思いますし、オンラインはオンライン教育みたいなところでは遠隔のことを指して結構使われていると思います。教室内で対面で学んでいても実際はクラウドで情報共有しているみたいな話もあると思いますので、この辺り用語の精査だけしていただければと思います。
もう一つだけすみません。高等教育の在り方ワーキングについては、これはもう感想で恐縮なんですけども、全日制、定時制、通信制という課程の違いがそれぞれ歩み寄って、例えば全日制の中に遠隔の授業で単位化を認めるとか、通信制の中で登校して対面でやるみたいな、これは今もあるんだと思いますけど、そういう相互乗り入れによって、それぞれの課程のよさを生かしながら、デジタルでうまく子供たちの学びを保障できるということがとてもいいことかなと思いました。以上でございます。
【奈須主査】 ありがとうございました。それでは、戸ヶ﨑委員、お願いします。
【戸ヶ﨑委員】 まずは、ここまでの論点を整理されてまとめられた奈須主査及び事務局の御尽力に敬意を表したいと思います。
このまとめが、学びのリ・デザインですとか、また、学校の役割を再認識する際の指針となるものということで大いに期待をしたいと思っています。そんな中で、今、改めて市井の学校現場の実態を見ると、個別最適な学びと協働的な学びの授業改善についてどのぐらいの教師が自分の言葉で語ることができて、また実践できているのか、まだまだ心配なところがあります。例えば、個別最適な学び、協働的な学びの授業は、これまでも取り組んでおり、今さらという意識が強い教師や、一方で端末を利用した個別学習や、自由進度学習に傾倒し環境や授業の方法を変えることが大事だと勘違いしている教師もいなくはないということで、厳しい言い方をしますと、スマートで軽い授業が多くなっているように感じます。
深い学びとは、インプットの学びを十分に咀嚼して、自らの言葉でアウトプットをしていく、このサイクルによって学びを反すうするということが大事であると思います。その際、聞き手の反応を見る、つまり、「対話する」ことで学びに喜びを感じて、「学びに向かう力」が育まれると思います。改めて、インプットばかりではなく、アウトプットの学びの重要性も認識していく必要があると思います。
そうした機会は、極論すると、GIGA以前は理解力の高い子や、発言する自信がある子などクラスの一部にしか与えられていなかった可能性があります。それがGIGAの推進によって、クラス内の全ての子が自分なりに考えてそれを表現して、他の子供の意見を参照して、「主体的・対話的で深い学び」に接する機会、学びの楽しさを知る機会を感得することができるようになったのかなと推察されます。そうしたGIGAで変わった環境を存分に活かした授業改善に一層努める必要があるだろうと思います。
また、合わせて、学校裁量を存分に生かした授業改善というのも必要だと思います。今後は生徒指導上の諸課題に対応しつつ、カリキュラム・メイキングの好事例を創出したり教科等横断的な学びや個別最適な学びの具体的な実践ビジョンなど、カリマネを一層強化していったりという必要もあると思います。そうした新たな教育課程の学校裁量を真に生かす学校の自走に伴走していく、適時適切な指導支援ができる教育委員会の力量形成というのも急務です。教育委員会のスキルアップなくして、学習指導要領の趣旨の定着はないと思います。
なお、学習指導要領の改訂に際しては、大臣諮問はこれからですけれども、先日の記者会見では、あべ大臣から9月にまとめられた「今後の教育課程、学習指導、及び学習評価等の在り方に関する有識者会議の論点整理」の内容も参考に、中教審に対する諮問内容を検討していきたいという旨の御発言がございました。本日の「審議まとめ」とともに、9月の論点整理の内容も教育関係者はしっかり読み込んでいく必要があると思います。
資料2-1の概要①の下にある「本審議まとめを契機に、今後の義務教育、学校教育の方向性に係る共通理解が……」という文章は非常に重要な御指摘だと思います。この実現に向けて、学校が果たす役割や義務教育の意義などの、「立体的」な理解と、それに基づく改革を進めていく必要があると思います。
そのために、まずは教室の中にある多様性に対応する学習指導要領と真の働き方改革などの一体的な実現に向けて、大変僭越な言い方ですけれども、文科省におかれましては企画課の内部はもちろん、教育課程課、児童生徒課、財務課など、初中局が総力を挙げて、全国の教育委員会や学校に対して勇気や元気、また覇気をぜひ与えられるようイニシアチブを取っていただきたいと思います。
【奈須主査】 ありがとうございました。それでは、荒瀬委員、お願いいたします。
【荒瀬委員】 ありがとうございます。二点あります。
一つは、審議まとめの持つ非常に重要な意味合いとして、渡邉室長が御説明の冒頭で、問題行動等の結果も十分踏まえながらということでありましたが、もちろんそのとおりであると思っています。先日の初等中等教育分科会で、児童生徒課長から問題行動等という言葉の中で、問題行動、それから黒丸があって、不登校というように分けて使っていることの意義について、御説明があえてなされたと思っております。これまでは、学校に対するいろいろな方々の意識の中にも、学校に行かないというのは問題行動なんじゃないかという捉え方があったと思うんですけれども、そうじゃないということを、はっきりと児童生徒課長が初等中等教育分科会の冒頭に、御発言の冒頭に説明なさったということがあって、中教審の中では当然そういうものだと思っているわけなんですけれども、具体的にそこのところを考えると、先日の広島SCHOOL “S”の視察というのも非常に意味があって、それが生かされている、そういう審議まとめであるということを思っております。それが一点目でございます。
二点目なんですけれども、先ほど度會さんの方から高校ワーキングについての説明をしていただきました。私は高校ワーキングに所属している関係で、私の問題意識としては、18歳に成年年齢が引き下げられて、18歳になったらみんな大人なんですよね。契約も結べるし、権利もいっぱい備わるんだけれども、しかし、その分義務もいっぱい出てくると、こういう状況になっていく、その高校3年生。初等中等教育の最後の段階でみんながそうなる。ほとんど子が高等学校に行く中で、高校生にどんな力をつけるのかということで、先ほど最初に発言させていただいたときも、子供たちがなかなか意見を言わないということについて申しましたけれども、私、審議まとめの18ページに書いていただいている子供の意見表明に関する記述というのは、そういう意味では非常に重要なことだと思っています。こういったことにどうつなげていくのかということの意識は、まさに主権者教育をどうしていくのかということで、これが突然、18歳になったからやりましょうというんじゃなくて、積み重ねの流れの中で力が養われていくので、何を軸として学校教育を考えるかということなんですけれども、私は18歳で成年年齢、成人に達するということをしっかりと考えた上での学びの在り方というのを、一人一人の子供たちに対して考えていかなければならないと思います。その意味では、義務教育の段階から高等学校教育にどうつなげていくかということだと思っています。
ですから、子供たちが意見表明できるようにと、ここでは「取組を進め」ということなんですけど、取組の具体は、各学校において子供たちの状況に応じてやっていただくことになる。ここのところは非常に重要な点であると思います。様々な情報がいろいろと行き交っていて、中には怪しい情報もたくさんあるそういう中で、まさしく情報活用能力もしっかりと身につけながら、どのように生きていくのかということを考えていく学びの最後が高等学校教育の段階だとしたら、そこに至る義務教育段階での学びの在り方というのを非常に重視して考えなければならないと思っています。学習指導要領もそういった点も踏まえて改訂されるべきだろうと思っています。
それに関して言うならば、そんな子供の意見表明をちゃんと受け止める学校の在り方というのが求められていきます。そうなってきますと、これは貞広先生が大変御尽力なさって、8月27日に中教審としてまとめた答申の中身を実現していくということも非常に重要です。ここはさっき戸ヶ﨑先生もおっしゃっていましたけれども、ばらばらにやるんじゃなくて、つなげてやっていくということが非常に重要だなということを思っています。
以上です。ありがとうございました。
【奈須主査】 ありがとうございました。この後ですけれど、若江委員、秋田委員、鍵本委員、中川委員、貞広委員の順番でと思います。それでは、若江委員、お願いします。
【若江委員】 ありがとうございます。私は具体的に答申、審議まとめを産業界の勉強会に使いたいと思っているので、具体的な加筆をお願いしたいと思います。今、ESG経営で企業は非常に教育に関心を持ってくださっています。ですので、そういう点からいくと、具体的な表現として入れていただきたいのは、16ページの一番上のあたり、ICT、その他の学びの資源というふうに追記をしてくださっているんですけれども、そこに、この学びが学校内にとどまらず、地域社会と連携したとかというふうに、そういう社会の言葉を少しこの辺りに加えていただけないかなというのが一点。
そして、もう一つが19ページの一番下の丸のところですが、ここにも学校内外の他者と関わりながらというような表現が加わっているんですが、ここも可能であれば、学校教育全般においてリアルな社会に触れるためにも、子供たちが学校内外の他者と関わりながらというように、そういった表現を加えていただきたいとう思います。以上です。
【奈須主査】 ありがとうございます。それでは、秋田委員、お願いします。
【秋田主査代理】 ありがとうございます。いろいろな委員の意見を反映させた形で、ここまで取りまとめをいただいたということを大変感謝申し上げたいと思います。
私の方で、21ページのところで義務教育ワーキングなんですけれども、中学生が高校について展望が持てるというところが極めて重要であると思っております。この辺りが、実際には中学校などの校内研修に入れていただくと、先生方は、要するに高校側は変わろうとしている。しかしながら、その入試のハードルというのが、義務から高校に進学するときの情報が十分に生徒に与えられていないということと同時に、教師や保護者の方が阻害している部分というのがあって、最終はテストの点数や内心の点数の1点、2点でその子の将来が決まっていくんです。だから、授業じゃなくて、最後はそこの点が取れないと子供の進路がうまく進めないんですということを、中学3年で多くの公立中学校の教師たちは悩んだり苦しんだりしているという現実があると思っています。みんな頭では今後、主体的・対話的深い学びへ進みたいと思いながら、教員の葛藤というものもございます。
それについては、結局、義務段階の中学校の終わりの在り方というものを、一層高校の変革と連携接続しながら情報を提供していくと同時に、学校長や管理職や、それから、委員会がサポートしながら、その接続ということを今後、さらに議論していくということが、必要と思います。文章としてはこのままで結構だと思っているんですが、教員の意識改革というのが、中高がより子供が展望を持って自分たちで選んでいけるためには重要なことだろうと思っています。
また、一方で、幼小接続のところは何とかフックを小学校低学年まで環境を通した教育や主体的な在り方で架け橋プログラムをつくったんですけれども、逆に1年生で終わりで、そこで切れてしまうという問題があります。授業改善と架け橋が一体でつながっていく必要というのがあると思います。小学校1年生から小学4年生の不登校が増加しているということからも一層それが重要なのではないかと考えています。また、一方で考えられることが、働き方改革ということがいろいろ言われる中で誤解がありまして、例えば、これまでであれば、子供一人一人の日記指導とかノート指導というのは教師の本分だと思うんです。しかしながら、そうしたものが軽んじられたり、授業はやるんだけれども、それをまた子供がどう見て、丁寧に一対一で日記を指導していくとかがなくなっている。毎日日記指導してほしいという話ではありませんが、子供の声を丁寧に聴く指導というのが日本は伝統的に大事にされてきた、初等教育で大事にされてきた部分というのが、働き方改革によってむしろ誤解が生まれて、教師の本分が行われなくなってきているような部分というのが散見されます。そうしたことをもう一度、考え直して、ずっと義務教育がより豊かになるための連携、接続の在り方を考えていくということが重要だろうということが一点でございます。
あと、二点目としては、ここには書かれていないんですけれども、学校は学ぶということと同時に、育つ場というのが重要だと思います。実は義務教育、並びに、夜間高校は給食が学校給食法によって、公教育として給食が提供されています。子供たちの中には、授業は受けないけれども、給食だけは生活が困難で食べに来るというような実態の子供たちもいます。そうした中で、給食指導というのは特別活動の中に、授業時数にカウントされずに入るわけなんです。けれども、ここも栄養教諭との連携とか、義務ならではというのが日本では給食指導がやはり入っているというところは重要なところなので、栄養、知徳体の体の部分で、体や心を育てていく部分の重視ということも書き加えるか、どこか注意として入れられるといいのではないかと思います。
日本の学校給食は、もともとは関東大震災の震災直後から子供たちのウェルビーイングのためになされてきた長い伝統があります。栄養教諭が設けられ、食育基本法も設定されていますので、そういう中で、義務ならではというところでの学びだけではなくて、学びと育ちという部分を特活等では入れられないかと考えたところです。
以上になります。
【奈須主査】 ありがとうございます。それでは、鍵本委員、お願いします。
【鍵本委員】 鍵本でございます。委員の皆様方の意見を、本当に丁寧にまとめていただきまして、ありがとうございます。時間の関係もありますので、私からは一点のみ申し上げさせていただきます。
不登校の児童生徒の減少に向けて、行政や学校が今後さらに力を入れて行くべきと考えておりますことについてでございます。本年10月に文部科学省から公表されました、先ほどもお話がありました問題行動、そして不登校等に関する調査によりますと、小中学校の不登校の児童生徒数は、11年連続で増加して34万人超になっております。これまでも文部科学省におかれましては、COCOLOプランに基づく様々な不登校対策の取組を推進しておられまして、学校やその設置者でも学びの多様化学校でありますとか、あるいはスペシャルサポートルームの設置など、児童生徒一人一人の状況やニーズに応じた多様な学びの場を確保するとともに、学校に来られなくても、今日も御紹介がありましたようにオンライン等で授業や支援につながることができるように、各自治体も環境の整備に努めているところであろうかと思います。しかしながら、依然としてその増加に歯止めがかかっていないというのが実態ではないかと思っています。
何らかの理由によりまして、安心して学校に通うことができない状況にある子供たちに対して、学びの機会の保障に柔軟に対応していくことはとても大切であり、今後もその視点に立って改善に努めていかなくてはならないと思っております。
そして、私がここで強く申し上げたいのは、その努力と合わせまして、義務教育の中核を担う学校が正解主義的である状況や、あるいは教師指導や予定調和の在り方から抜け出して、児童生徒の学校生活の大半を占める授業はもちろんのことでありますが、学校行事や学校生活全般におきましても、児童生徒自身に選択肢と自己決定の機会を与えて、文字どおり、子供を主語にした学校へと変わっていくことで、児童生徒が学校を楽しいと感じて、そして、自己肯定感を高めることが、不登校児童生徒の発生を抑えて減少させていく最も重要なことではないかと考えております。
しかし、依然として教師主導の授業や生徒指導が行われている学校も少なくないのが実態でございます。今後は国や、そして都道府県や市町村の教育委員会、学校が一体となって、学校の先生方の意識改革を進めるためにも、このことについて、さらに強く打ち出していく必要があるのではないかと思っております。また、このことに課題意識のある先生方もたくさんいらっしゃいますけれども、「分かってはいるけれどもそのことを変えていく余裕がないんだ」という声も学校現場から数多く聞いております。このことから、本年8月の中央教育審議会の答申にも示されましたように、働き方改革と学校の指導運営体制の充実等を着実に進めていかなくてはならないと考えております。
その中でも特に、学校の指導運営体制の充実につきましては、文部科学省の皆様には現在も多大なる御尽力をいただいているところではありますが、さらに、学校の先生方に児童生徒の個性や多様性を尊重して、一人一人の良さを徹底して伸ばしていける余裕が持てる学校となりますように、引き続き御努力をお願いしたいと思っております。
私からは以上でございます。
【奈須主査】 ありがとうございます。それでは、中川委員、お願いいたします。
【中川委員】 放送大学の中川です。おまとめありがとうございました。重要なことがとても整理されて、まとめられていると感じました。このメッセージが現場に伝わり、具現化されることを願っております。
さて、私から義務教育の在り方ワーキンググループ審議まとめで、若干加筆修正として御検討いただきたいこと二点ありますので、それを申し上げたいと思います。
一点目は、33ページの(2)オンラインを活用した学びへのアクセスを保障するための取組のところで、1、不登校児童生徒への対応、2、義務教育未修了者形式卒業者への対応と整理されています。この二つの観点はとても重要にもちろん思いますが、これらの取組は多岐にわたると思っています。どこかに日本語指導が必要な児童生徒を支援することとか、病気療養中の児童生徒を支援することも入れていただけたらと思います。まさにこれらもオンラインを活用した学びへのアクセスを保障するための取組であると思っています、実際に使われていますので。これが一点目です。
二点目ですが、「おわりに」の43ページの最後から三つ目で、私はここがすごく大事だと思うんですが、教師の新しい取組を後押しする風土をつくっていくことに言及していること、すばらしいと思います。これからも本ワーキングで議論している内容のキーは教師だと思います。ですが、全体を読んでいると、私だけかもしれませんが、教師は頑張れというメッセージを強く感じて、もちろんそのとおりなんですが、一方で、教師の意欲を支える土壌づくりをということをさらに強調してほしいと思います。そちらの言及がもう少し欲しいなと思いました。以上になります。
【奈須主査】 ありがとうございました。それでは、貞広委員、お願いいたします。
【貞広委員】 ありがとうございます。千葉大学の貞広です。少し欠席が続きましたので、久しぶりに出てみたらとてもすばらしい審議まとめができていて、本当に主査の奈須先生と事務局の方にお礼を申し上げたいと思います。とても細かいところに一点加筆を御検討いただきたいということと、なぜそんな細かいことをお願いするのかという理由についてお伝えしたいと思います。
加筆をお願いしたい点は、15ページの一つ目の丸になるのでしょうか、下から3行目のところに「学校以外の学びの場を含めた教育環境を整えつつ」という文言があります。ここの「学校以外」の前に「既存の学校以外の学びの場」という文言を付け加えていただきたいという意見です。なぜこんな細かいことを申し上げるかと申しますと、今、こちらの審議まとめもなかなか既存の学校で学びにくい子供たちが学校的、または学校の外縁の力を借りて学びの保障が行われることを検討すると同時に、本体部分の学校の在り方自体を問い直すという方向性を持っているものであると理解しています。
そして、現時点では、できることは何かということの検討を行っている段階であろうと思いますけれども、今後こうした取組が広がっていく中では、公教育と公費が支出される教育と、公立や私立学校での教育との重なりとずれに向き合って正面から議論しなければならないタイミングが早晩訪れると考えています。そうしたことを考えますと、別の言い方をしますと、学校という外側の外枠自体が問い直しをさせられるということになると思いますけれども、それを考えると今の学校があくまでも既存であるということをここでしっかりと確認をしておくということも必要なのではないかと考えておりまして、ここに本当に細かいんですけれども、現行のとか既存のというような言葉をつけていただき、今後はより根本的な議論を我々が進める方向性を持っているのだということを確認する意味でも御検討をお願いしたいということでございます。以上です。
【奈須主査】 ありがとうございます。そうですよね。学校が包摂できる範囲が広がってくれば、今、既存の学校ではしんどい思いをしているお子さんが無理なく通えることができると。学校の改革ということを進めていく、そのためにSCHOOL “S”にも我々はお邪魔したわけですし。と同時に、現状苦しい思いをしているお子さんに向けて、手を差し伸べると。この両面作戦と同時に、どういう全体としてのバランスというか構造をつくっていくかという重要な問題提起をいただいたように思います。
それでは、この先ですが、中谷委員、水谷委員、柏木委員、今村委員の順番でと思います。それでは、中谷委員、お願いします。
【中谷委員】 ありがとうございます。私は加筆をしてくださいということではありません。大変よくまとめられておりまして、しっかり読ませていただき、これを本当に伝えていかなくちゃいけないと考えているところです。
先ほどもありましたが、このまとめの位置づけ、意義を考えたときに、このまとめを通して議論、対話を丁寧にしていくことが重要だと考えます。もちろん広く発信するということも大事ですが、私は先ほど来ありますように、ボトルネックは教育委員会の指導者、校長、または今後校長になる方ではなかろうかと考えております。その人たちをコアのターゲットとして、説明、対話し、理解していただくということを丁寧にやっていく必要があると思っています。学校というのは、教育委員会なり、校長で変わるものだと思っておりますので、その辺のところをしっかりやっていただきたい。また、私も役割としてやっていこうと思っていることが一つ目でございます。
二点目は、見え消しの19ページのところに、試行錯誤を繰り返していくことが重要とありました。試行錯誤を学校現場が繰り返していくことについての許容の範囲をどんどん広げていただきたいなと思っております。今回、視察で宮園小学校に来ていただきましたけれども、自由進度学習の中では子供たちが試行錯誤を繰り返しながら学びを進めていきます。また、宮園小学校が今のような形になるまでには、先生方の試行錯誤が繰り返されてきました。
現在私別の学校に勤務しております。今の学校でも少しずつそういった学びづくりが進んできていますが、ややもすると、先生方は最初からうまくやろうとしてしまうところがあって、それに対して、いや、試行錯誤して、一つずつつくり上げていけばいいんだよと言うんですけれども、なかなかその辺の壁が壊せないと感じることがあります。そういった意味でいうと、子供たちにこれから必要な資質能力を育成するためにも、試行錯誤という営みは大切にしていきたい、大切にしていただきたいと強く考えております。それが、教師も含め自立した学習者の育成につながるのではないかと考えております。
最後はまだまだ先の話になるかもしれないのですが、私は以前から、学習指導要領が今後改訂されるとなったときに、学習指導要領そのものを子供たちと共有できないかと考えることがあります。すいません、これはお書きくださいということではなく、今後のそういうふうになっていけばいいなと思い、述べさせていただきました。
貴重な時間をいただいて発言をさせていただきました。ありがとうございました。
【奈須主査】 ありがとうございました。以前、信州大の伏木先生にフィンランドのお取組を御紹介いただいたかと思いますけれども、その中で先生が強調されたこととして、いろいろな挑戦が許容されていて、とりあえず試してみると。失敗したら、そこで戻ってくるというようなことがフィンランドでは普通にやられている。また、それができる背景として、教師とか教育委員会が社会全体において、専門家だからということで高い信頼感を得られていると。一方で、信頼が置けるようなしっかりした教員養成がなされているという話を伺ったかと思いますけど、とても学ぶことが多いと思いますし、また、そういう風土に教育界全体をしていくという、今、中谷先生の御指摘だったかなあと承っております。
それでは、水谷委員、お願いいたします。
【水谷委員】 水谷です。よろしくお願いいたします。今の中谷委員と重なる部分もありますが、本当に事務局の皆様、ありがとうございました。特に内容について何か付け足してくださいということは、ないですが、これを広めていく立場として少し、現在いろいろな学校に関わっていて感じていることも含めて、特に16ページから20ページあたりのことについて、お伝えをしたいと思います。
文科省のリーディングDXスクールの指定校は今年度256校あって、そのかなりの学校に関わらせていただいています。そういうところは、16ページから20ページにあるような自己選択、自己決定ができるような学びが確実に動き始めています。そういうところを見ていると、部分最適ではなくて、先生方、もちろん管理職も、そして地元の教育委員会を含めて大きな目標がきちんと共有されていて、トータルで動き出しているというところがとても大きいと思います。
特に自己選択、自己決定ができるようにということで、環境を整えること、これはこの前見せていただいた広島の二つの学校みたいにですが、これは分かりやすいのですが、ただ、時間は必要です。このことにプラスして重要なのは、自己選択、自己決定をどのようにするのかという学び方の部分です。情報活用能力、問題発見解決能力、言語能力などの基盤となる資質・能力があって、それをこれまではいろいろな教科で育てていたのですが、それを取り出して、きちんと学校全体、地域全体で育てるというようなことをしていくことがすごく大事であると感じています。
以前も発表させていただきましたが、本市での研究開発学校の取組で、そのようなことを繰り返し、繰り返しやっていくと、子供たちは失敗を恐れずに挑戦するようになり、また、大きな目標を地域全体で共有していますので、先ほど中谷委員からありましたように、先生たちも失敗を恐れずに挑戦するというような、そして、そういう先生たちを支える仕組みも、そういう風土があるとだんだんできてくるので、このようなことは大事だと思います。ただ、子供たちに任せればいいということで、楽になるというような良くない傾向もないわけではないですが、子供たち一人一人の状況を見ることが端末とクラウドによってできるようになって、本当に授業中先生は忙しくなって、こういったことがきちんと行われる仕組みがあることが大事だと感じています。さらに先ほども発言させていただきましたが、そうやって授業の子供たちの学びの中で、子供同士が自分で選んで、学ぶ相手を求めていくということで、人間関係など基本的なことがないとうまく進まないということがあると思います。
さらに、部分最適な部分で、先ほども秋田委員からありましたが、中学校へお邪魔をすると、どうしても高校への接続のこと、そして評価のことのことを言われます。大きな目標から考えていけば、別に現状でもちゃんとできると思うのですが、どうしてもその部分についてはうまく理解が進まない部分があって、ここは今後さらに議論が必要かと思います。ただ、子供の学びと教師の学びは相似形ということが言われていますが、先生たちもこういう学びを十分体験していないことがあるので、まずは先生たちも、ちゃんと体験してもらう、体験ができるような形を取っていくということも非常に重要で、そういう意味では、向き合う時間の確保というのが非常に重要だと思います。
ただ、リーディングDXスクールで、なぜ動き出しているかというと、まだまだそういう動いている学校が全国にそれほどあるわけではありませんので、お互い離れたところの学校をお互いに見に行って、それで一度見に行くと、そこで関係ができて、その後はオンラインでやり取りしながら情報交換ができる、そこで輪が広がっていくということもあります。最近は、それぞれ自治体で旅費の確保が難しいのですが、リーディングDXスクール事業では旅費をたくさん見ていただいたことが、いいところに今働いているなあと思っています。
ということで、雑感も含めて、現状と動き出している学校はちゃんとあるので、こういうことを、さらに広めていくことをしなければならないなと思っています。そういうことを含めてお伝えをしました。以上です。
【奈須主査】 ありがとうございます。それでは、柏木委員、お願いいたします。
【柏木委員】 御審議のまとめをいただきまして、本当にありがとうございました。私の方からは、まず、修正というのではないのですが、視察を含めて重要だと思った考え方を二点述べたいと思います。その後、可能であればの加筆の点を二点述べさせていただきます。
考え方として重要なのは、第1に、学校と学校外の連携により、多様な子供の学びを保障することと、加えて、学校内に学校外の組織が兼ね備えている空間や方法を取り入れて、学校自体が多様な子供の安心していられる場に変わることだと思っています。これは、不登校児童生徒等のニーズのある子供への対応を学校外にお願いをして、学校自体がなかなか変わらないという事態を回避して、学校自体に公教育を担う意義をしっかりと置いて、それゆえに学校が大きく変わる必要性を有していることを意味します。そのためには学習形態や内容の多様化とともに、学校の環境づくりも非常に重要であると思っていまして、1人でいられるスペースをつくったり、ペアとかグループとか、一斉の場とか、いろいろな場をつくることが必要だと思っています。したがって、ソフト、ハードの両面から学校の再構築を検討する必要があると思います。
第2の重要な考え方としては、一つの学習形態、一つの場所、一つのやり方で100%を目指す、つまりベストを目指すのではなくて、子供がまあまあいいかなという感じでいられるベターな状態を、場や形態の様々な組合せを通じて実現可能な範囲の中で追求していくことではないかなと思っています。視察の中で、SCHOOL “S”に行かせていただいたときに、不登校の方々、子供さんが、どのような授業を楽しいのかと言っていたかと申し上げますと、語り合うのが楽しいので探究の時間が面白いと言っていたんです。そして、そこで何で楽しいのとか、何でそういうことを思うのと聞きますと、みんなに思いを伝えるのは大事なので、語り合いたいし、そういう授業が大事だと言っていたんです。そして、それができるのは、ここは同じ心を持っているからそういうことができると。でも、だからといって違った仲間がいることを排除するのではなくて、いろいろな仲間がいることがすごく大事だとも言っていました。また、聴覚過敏の子供さんが、こういうSCHOOL “S”なら1人でいられる場があってすごく居心地がいいとも言っていましたけれども、でも、イヤホンをしてみんなの場にいることも全然できるし、ここならやりたいと言っていたんです。
つまり、子供は他者と離れて1人でいることを望んでいるわけではなくて、安心できる場で共にいること、語り合うことを基本的に望んでいます。しかも、それのできる完全な場を望んでいるというよりは、みんなでまあまあでいられる場でいいんじゃないかと子供自身が考えていたところによります。
以上が主な考え方なんですけれども、続きまして、具体的なところといたしまして、16ページのところに、学びの多様化学校や校内教育支援センター、教育支援センター等とのいろいろな連携によって、学びの多様化に資する環境整備を図るとあるんですけれども、ここの中に社会教育というような言葉を入れなくていいかどうかの御検討をお願いしたいと思います。最近では、図書館に居場所をつくったりだとか、いろいろな社会教育施設が学校の多様な学びを支える場としてさまざまな取組をしておりますので、そうしたところを踏まえても、社会教育といった言葉を入れることを検討していただきたいなというのが一つです。
それから、18ページ目にあります、先ほど荒瀬会長がおっしゃっていたところなんですけれども、子供が意見を表明しやすい環境づくりというのは非常に重要だと思います。ただ、子供が持っている資源によって声の出しやすさ、意見の出しやすさは全く異なってきます。貧困問題など、困難を抱える子供さんによっては、何を伝えても無駄と思っているような状況から声を出しにくかったりだとか、何に困っているのか分からないという状況もやっぱりあります。そのため、声の出しやすさ、つまり意見の表明のしやすさの点を踏まえまして、声のくみ取りというものを含めて、アドボケイトを通じた意見表明というようなものも含めた表現というものが、必要でないのであれば別に構いませんけれども、少し子供の持てる資源に配慮した書き方というのも若干工夫してもいいかなというのを思った次第です。以上になります。
【奈須主査】 ありがとうございます。それでは、今村委員、お願いします。
【今村委員】 発言させていただきます。今回、かなり早い段階から不登校の子供たちに対する対応、また、その子たちの居場所をどのように整えていくのかというところを、奈須先生はじめ、議論のメインのアジェンダに据えていただいたように記憶していまして、これまで議論して踏み込むことのなかった、例えばフリースクールのような、先ほど貞広先生がおっしゃった、まさに公教育の外縁を実態的に担って受け皿をつくっていらっしゃる方々のことなども、どのように支援して整備していくのか、そして義務教育はそもそも何を最後やるべきなのかみたいなところまで踏み込んで、この場で皆さんと議論させていただいて、本当に希望を感じる、私にとっては大変勉強になる希望を感じる時間でした。ありがとうございました。
その上でなんですけれども、二つぐらいなんですが、まず、一つ目として、今回とても大切な方針を掲げられているので、特に概要版の方については、きっと今後、行政資料とか学校の教員の方々もどうなんでしょう、こういったものを見るのか分からないんですけれども、見るのはこっちかなと思ったときに、こっちが分かりやすくなきゃいけないと感じていて、その上で、一つでも削れるものを削ってもいいんじゃないかなと思って、ここは御検討いただきたいので、無理にというわけではないんですけれども、概要版の1ページ目の左上に、あえてこの段階で、5類に移行している段階で新型コロナウイルスのことをここで、今回、このタイミングで書く必要はあったかなということ、これは、もしかしたら削れるポイントなんじゃないかなと思いました。これは瑣末なことであります。なので、文字は少しでも減らした方がいいかなという意味で申し上げました。
その上で、こちらの概要版と、そして見え消しの詳細版の方の両方なんですけれども、二つ目の意見なんですが、今回の不登校の子供たちをどう支えるかの議論において、令和元年の10月に出された支援の在り方についての通知に明記されている、受皿をつくるだけじゃなくて、どのように魅力ある学校に変えていくのかというところも同時に語られた通知が各現場におりています。その意味合いをもう少し、はじめにのあたりとかに書いた方がいいんじゃないかと。
そもそも全てつながっていることなので、広島視察のSCHOOL “S”と自由進度学習はかなり本当は一体的なものとして行われているように私も思いますし、学びの在り方を変えるんだ、学校がよいものになっていくんだということは、結果的に不登校の子が出てこないということなので、不登校になってからの事後的な対応だけをちゃんと整備していきますということは意味合いではなくて、不登校の子供たちがこれだけいるということを前提にしたときに、学校を魅力的なものにしていかなきゃいけないということと、「はじめに」の学校教育になじめないでいる子供たちに対する学びの保障ということの次ぐらいに加えて、児童生徒が不登校にならない魅力ある学校づくりを目指すということも、議論してきたことなんじゃないかと思うので、そこに明記してはどうかと思っています。
そこが適していなければ、次のページの不登校児童による、はじめとした諸課題への対応のところに、そこに児童生徒が不登校にならない魅力ある学校づくりを目指すということを、アクセスできない子供たちをゼロにするということ以上に大事というようなことを踏まえた書きぶりにした方がいいんじゃないかと思います。
ただ、これ通知のときから思っていたんですけれども、先ほど貞広先生がおっしゃっていたことなんですが、学校という言葉が、今の既存の学校を学校と呼んでいるのは現在地なので、そういう意味では魅力ある公教育をつくる、児童生徒が不登校にならない魅力ある公教育を目指すという明記の方がいいのかもしれません。学校にどうしても行かなきゃいけないんじゃなくて、公教育ということがなしている範囲、子供たちの選択肢をどう呼ぶのかということかなと思うので、その意味では、公教育の範囲をどう変えていくのかというところなんだということを踏まえると、魅力ある学校づくりを目指すというよりは、魅力ある公教育を目指すということを、「はじめに」か、二つ目の部分、2ページ目のところに書いていただくのがいいかなと思いました。以上です。
【奈須主査】 ありがとうございます。先ほどの貞広委員の意見にもありましたとおりですよね。学校という言葉を相対化して、そして、どう相対化すべきのヒントを不登校の子供たちがたくさんくれているというか、訴えてくれているということで、それを受け止めて、今おっしゃったように公教育全体を再構造化しなきゃいけないと、そういうところに今の学校、150年を経た公教育は来ているという自覚を持つ必要があるんだろうなと承りました。
それでは、小柳委員、お願いいたします。
【小柳委員】 一点だけお話しさせてください。回を重ねるごとに、この審議まとめがどんどん充実してきた中で、私は市の教育長として、学校設置者として、ここで審議されてきた内容を学校現場にどう伝えていくかということを一生懸命考えていました。そして、この内容については、学校長にもしっかりと考えてもらわないといけないし、教員にとっても、内容を読んで共感できるな、そうだなと思う部分もたくさんあると思います。そうしたことを一人でも多くの教員にどう伝えたらいいのかという方法について、私自身はずっと考えています。
国、県、市町村、それぞれの責任と役割があると思いますが、それぞれの立場で審議まとめをどう伝えていくかというところに注力することも必要なんじゃないかなと思っています。学校を見ていますと、校長の示すベクトルの方向に、教員が共感して、一緒にみんなで課題解決に向かってやろうという学校は本当にみるみるうちに学校の様子が変わっていくことが分かります。審議まとめを軸にして、全員の教員がいい方向に向かっていくには、どんな内容の伝え方があるのかなということについて私自身は考えさせられました。ありがとうございます。
【奈須主査】 ありがとうございました。それでは、野田委員、お願いいたします。
【野田委員】 すいません、時間のない中ありがとうございます。私は大きくは二つ、15ページに一番下の部分で、学級には多様な子供たちが存在して、その学習の仕方や自己実現の在り方が多様だという、この文脈を書いていただいたというのは非常にありがたいと思っています。日本の義務教育の特徴として、福祉機能をも持っているということは、もうコロナで痛いほど我々経験したわけですけども、そことの関係で言いますと、これがどの範囲まで適用されるのかというところで、一つは心理的安全性を高めると記載されています。今、いじめであるとかいろいろなことを考えますと、安全性が心理だけに限定されない、もう少し包括的な学校機能の充実というところだと考えます。これが次の、特に不登校という文脈の中で、次のページというか、下の段ですけども、生徒指導の範疇にとどまらないと言っていただいているのは非常にありがたいし、まさにそうだと思うし、それからこの間、生徒指導と教育課程の連携ということは、前回の指導要領でも言っていただいていて非常にありがたいなと思っているんですが、この文脈ですと、不登校のところだけに、「特に」以下の文節が不登校に限定されているように理解されますので、もうワンランク上というか、それから先ほども例として、ちょうど問題行動調査というのが問題行動・不登校というふうに併記されていたということとの関係でいうと、問題行動の方にも視野を広げた、もう少し包括的なことの指摘があるとありがたいなと思います。
それから、もう一つが先ほどもお話ありました、子供の意見表明権というのはすごく今日では重要視されているし、やはり子供を真ん中に置くと。その際に、「おわりに」のところでもありましたように、学校に自由がないと思っている子供がいる。一方で、何でもかんでも自由にしていいわけではなくて、意見表明権というのは、一つはそれに対しての応答責任というか、あるいは、自由がないと感じる子供に対して、自由をある程度、縛らなきゃいけない場面があるとしたら、そのことへの説明責任というか、そういった単に意見を言わせばいいというだけじゃなくて、それに対して、子供の権利条約の12条が求めているように、相応にしっかり我々も考慮しているんだという応答性が確保できるような文脈があるとありがたいかなと思います。
以上二点、少し感想めいていますけども、どうぞよろしくお願いします。以上です。
【奈須主査】 ありがとうございます。それでは、よろしいですか。
今日は御参加の委員、皆さんから御意見を頂戴できました。ちょうど時間も参りましたので、この辺にしたいと思います。
本日いただいた御意見を踏まえて、事務局において必要な修正を行っていただき、審議まとめとしていきたいと思いますが、取りまとめは改めて会議を開催するということではなくて、主査一任ということでよろしいでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
【奈須主査】 ありがとうございます。それでは、そのようにさせていただきます。
最後に、本日の議論を受けて事務局より一言、御挨拶を頂戴できればと思います。
【森学習基盤審議官】 失礼いたします。閉会に当たりまして、一言御挨拶を申し上げたいと存じます。
主査の奈須先生はじめ、委員の先生方におかれましては、一昨年の10月の会議の設置以来、これまで10回にわたって会議に御参画をいただきまして、大変精力的に御審議を賜りました。厚く御礼を申し上げたいと存じます。
このワーキングにおきましては、義務教育段階という、学校段階に言わば横串を刺すような形で御議論を賜りまして、義務教育における今後の学校の在り方についての基本的な考え方ですとか、その実現に向けた方向性について、お取りまとめをいただいたところでございます。初中教育をめぐり、これまでも質の高い教師の確保のための環境整備をはじめ、様々多くの重要な議論がございますし、また、今後も検討や取組を進めていかなければならない様々な課題があるところでございますけれども、このワーキングでの御議論では、今後の検討、また、取組のベースとなる基本的でかつ重要な事柄を整理をし、お示しをいただいたものと、このように認識をしているところでございます。また、特に学びにおけるオンラインの活用については、昨年12月に中間まとめにおいて具体的な方策をお示しいただいたところでございますけれども、この制度の見直しの実施など、具体化に今、取り組んでいるところでございます。
今日の会議では先月、委員の皆様に御参加いただきました学校現場の視察、子供たちとの意見交換を踏まえ、活発な御議論をいただきましたけれども、こうした現場の視察の機会というものは御審議を深めていただくという上でも大変意義のあるものであると考えてございまして、こうした機会を今後、様々な検討会議の運営においても、可能な範囲で確保できるよう努めてまいりたいと考えているところでございます。
本ワーキングにおいて、今回おまとめをいただきました審議まとめの内容を踏まえまして、今後、それぞれの政策課題、どう検討し、実現をしていくか、特に公教育、全体に関わるような学校の在り方、学びの在り方について、今後も引き続き検討していかなければならないと思っておりますけれども、また、審議まとめで示していただいた考え方をどう学校現場、関係の皆様方に共通理解を図っていくか、浸透させていくかといったこと、こうしたことが重要であるといったことも、今日、各委員から御指摘をいただいたところでございます。
私どもといたしましても、関係の部局全体で総力を挙げてしっかりと取り組んでまいりたいと考えてございます。審議の取りまとめに御尽力いただきました委員の皆様方に改めて感謝を申し上げますとともに、今後も引き続き御指導、御助言を賜りますようお願い申し上げまして、閉会に当たりましての御礼の御挨拶とさせていただきます。どうもありがとうございました。
【奈須主査】 ありがとうございました。森審議官から御挨拶を頂戴しました。
それでは、主査として私からも一言申し上げたいと思います。
長きにわたって、重要な御検討をいただきました。その中で、今日もありました学校、公教育、授業、いろいろな言葉の意味の問い直し、再概念化、再構造化ということの重要性が出たかと思います。こういったことは結局、今の学校教育がどのぐらいうまくいっているかという認識に依存するんだと思います。おかげさまで学力という意味では、OECDのピサ調査では世界トップクラス、あるいは全国学テにおいても、都道府県間の差が本当に縮まってきて高止まり状態なのだと思います。これは本当に、ひとえに日本の学校関係者の御尽力によるところだと思いますけれども、一方で、OECDの調査にもございましたが、また、コロナのような不測の事態が生じたときに自分で学んでいけるか、自立と、このところ呼んでいきますけど、自立した学び手になっているかということでは、OECD諸国の中で本当に低位に甘んじていたと。日本の子供は手取り足取りしてもらって学力は育っているけれども、自分で学んでいけない、自立ということ、これは令和答申の主題でもありますが、そこに大きな課題があるということだろうと思います。
自立という言葉の概念についても、今日19ページのところで少し再検討をするべきだという御議論を頂戴して、そうだと思います。生活科で出て以来、インディペンデント、ディペンドしない、依存しない、ひとり立ちするというイメージでしたが、すでに違うと言われていますよね。社会福祉の専門家に伺うと、困ったときに頼る先が多いということが、むしろ自立なのだと。とても重要なことかなあと思うんです。人の世話にならない、人に迷惑をかけないというんじゃなくて、いろいろな人にお世話になれる、いろいろな人がお互いにいい形で迷惑を掛け合いながら互恵的に育っていける、そんな人の在り方、育ちの在り方、社会の在り方、そう考えると、随分学校のイメージも変わってくるなあと思います。
これは学習の自己調整ということが最近重要だと言われていますけれども、そこでも自分を動機づけられるということ、自己動機づけ、それからメタ認知、自分の状態よく見られるということに加えて、ヘルプシーキングと言いますけど、困ったときに助けを求められる、それができることが大切だと。しかも、助けを求められるというのは、習慣であり、スキルなんです。これを育てることがすごく大事だということが欧米で言われていて、これまでの自立という概念も随分変わってきたなと。これは従来の学校全体が極めて父性的な原理できたと思うんですが、母性的といいますか、学校は子供を育て、鍛える場ですけど、鍛えるということの意味合いも随分変わってこざるを得ないのではないかと、そんなことを考えております。
私は、今、日本の学校は本当に頑張って、そこそこうまくいっていると思っています。でも、万全な体制ではない。それが一番端的に表れているのが自立の問題であり、不登校34万人ということだろうと思います。そのことと正対して、学校、教師、あるいは、公教育という言葉が今日、今村先生から出ましたが、それをもう一度再定義して、再構造化するということに歩みを進める、その備えを、この会でしてきたのかなあなどと思っております。とてもいい御議論を頂戴してありがたかったかなと思います。
それでは、本日予定していた議事は全て終了しましたので、これにて閉会をいたしたいと思います。ありがとうございました。
―― 了 ――
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