義務教育の在り方ワーキンググループ(第9回)議事録

1.日時

令和5年12月11日(月曜日)12時30分~14時30分

2.場所

文部科学省 (※WEB会議も併用)
(東京都千代田区霞が関3-2-2)

3.議題

  1. 中間まとめ(案)について
  2. その他

4.議事録

【奈須主査】  定刻となりましたので、ただいまから中央教育審議会初等中等教育分科会 個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実に向けた学校教育の在り方に関する特別部会 義務教育の在り方ワーキンググループの第9回を開催します。
 御多用の中、御出席いただきましてありがとうございます。議事に入ります前に、本日の会議開催方式及び資料につきまして、事務局より御説明をお願いいたします。

【小畑教育制度改革室長】  事務局でございます。本年9月より、初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室長を務めております小畑でございます。
 本会議の開催方法につきましてでございます。対面・ウェブ会議を併用いたします。ウェブ会議から御参加されている委員の皆様方におかれましては、会議を円滑に行う観点から、大変恐れ入りますけれども、御発言時以外はマイクをミュートにしていただくようお願いをいたします。また、カメラにつきましては、御発言時以外も含め会議中はオンにしていただけますようお願いいたします。委員の皆様には御不便をおかけすることもあるかと思いますけれども、何卒御理解のほどよろしくお願いいたします。
 次に、資料の確認をさせていただきます。本日の資料は議事次第にございますとおり、資料1-1から資料2まで、加えて参考資料が三つとなっております。まず、資料1-1、1-2は、本ワーキンググループにおけるこれまでの議論を中間まとめ(案)として整理した概要と本文となっております。また、資料1-3は、中間まとめ(案)に関連する資料をまとめた参考資料集となっております。
 続きまして、資料2でございますが、昨年度実施いたしました「義務教育に関する意識に係る調査」の結果をまとめたものでございます。この調査は、中間まとめ(案)の内容にも関連する事項となります。
 参考資料1は、前回のワーキンググループにおいて御議論いただきました際の主な御意見をまとめたものとなっております。また、参考資料2は、本年10月に公表されました「令和4年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」の結果でございます。最後、参考資料3につきましては、先週発表されました「OECD生徒の学習到達度調査PISA2022」の結果のポイントとなります。
 資料の御説明は以上でございます。

【奈須主査】  ありがとうございました。
 それでは、議題に入りたいと思います。本日の議題は、「中間まとめ(案)について」ということで、まず事務局から御説明いただき、意見交換の時間を御説明の後に設けたいと思います。
 なお、本日は報道関係者と一般の方向けに、本会議の模様をYouTubeにて配信しておりますので、御承知おきください。
 それでは、議題1「中間まとめ(案)について」、事務局よりまず御説明をお願いいたします。

【小畑教育制度改革室長】  事務局でございます。私から、「義務教育の在り方ワーキンググループ中間まとめ(案)」について御説明させていただきます。
 まず、本日の会議の開催に先立ちまして、本中間まとめ(案)に関しまして、本日御欠席されている委員の先生方も含め、全ての委員の方々から事前に事務局との意見交換のお時間をいただきまして、様々な御意見を頂戴いたしました。お忙しい中、御対応いただきまして、ありがとうございました。
 事務局といたしましては、先生方からいただいた御指摘を踏まえて、本中間まとめ(案)の内容を整理させていただいたというところでございますけれども、不十分な点などございましたら大変恐縮でございますが、御意見と併せて、また、御指摘を賜れれば幸いでございます。
 また、本日は、お時間も限られてございますので、この御説明に当たりましては、資料1-1の概要資料と資料1-2の本文を中心に御説明させていただきたいと思いますけれども、関連資料といたしまして、資料1-3の参考資料集と、資料2、義務教育に関する意識調査、概要・集計結果、こちらも御準備させていただいております。大部の資料となりまして申し訳ございませんけれども、これらの内容も含めた議題としてまとめて御説明させていただきたいと思います。
 それでは、早速でございますが、資料1-1「義務教育の在り方ワーキンググループ中間まとめ(案)概要」の資料を御覧いただければと思います。
 まず初めに、上にございますけれども、本中間まとめの位置付けといたしまして、義務教育を取り巻く今日的な課題への対応について、国や中教審において、専門的な議論・検討が進みつつあることを受け、義務教育における今後の学校の在り方についての基本的な考え方や、その実現に向けた取組の方向性について取りまとめるものであるといった旨を記載してございます。また、資料の左側に4点記載してございますとおり、義務教育を取り巻く今日的な課題を整理してございます。
 一つ目が新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響ということで、様々な学校教育活動の影響につきまして、関係者の懸命な御努力により、子供たちの学力の低下は見られなかったというところでございますが、二つ目に記載してございますとおり、不登校児童生徒数の増加といった課題が指摘されているところでございます。また、こうしたことに加えて、学校には来ているが、いづらい思いをしている子供たち、特定分野に特異な才能のある児童生徒への対応といったことも求められているところでございます。
 3点目といたしまして、質の高い教師の確保のための環境整備といたしまして、学校における働き方改革や、いわゆる「教師不足」への対応などにより、抜本的に教職の魅力を向上させるといったことが喫緊の課題となっているところでございます。
 4点目といたしまして、1人1台端末整備の前倒し、端末の日常使いの着実な進展などにより、地域や学校などによって差は見られるものの、学校における学びや校務の在り様といったものが大きく変化しつつあることに加えまして、生成AI等の更なる技術革新への対応も見据えていく必要があるといったことなどについて記載してございます。
 その下に記載してございますが、我が国における学校の意義・役割に係る歴史的経緯といったものを踏まえつつ、教育基本法などに定められる義務教育の目的や、教育振興基本計画で掲げられた教育政策のコンセプト、令和答申で示された、日本の学校教育の本質的な役割、更には、日本型学校教育の強み・弱みといったものを踏まえた上で、この資料の右側にお示ししましたように、目指すべき義務教育・学校教育の姿及び取組の方向性といったものを整理させていただきました。
 ここからは本文に基づいて御説明させていただきたいと思います。本文の12ページを御覧いただければと思います。恐れ入ります。(4)目指すべき義務教育・学校教育の姿及び取組の方向性、丸1 、義務教育の中核としての学校教育の役割といたしまして、公教育である学校教育は、義務教育を保障するものとして、学力を育むだけでなく、学校生活全般において、他者と関わり合いながら、共に学び、人間性を涵養していく重要な役割を果たすものであること。
 また、我が国において歴史的に形成されてきた、社会の分断や格差を防ぎ、他者への信頼に基づく平等で公正な社会を実現するという学校の役割は、今日、ますます重要になっており、やみくもに学校と学校以外の学びの場の「境界線」を取り除くこと、すなわち学校以外の学びの場を学校と同一のものとして取り扱うことになれば、こうした学校教育の本質的な役割を担保できなくなることが懸念されること。これから子供たちが生きる未来社会において、多様な他者を尊重し、包摂的な社会を形成する基盤としての学校こそが、引き続き義務教育の中核を担うべきであることといったことについて記載してございます。
 次に、丸2 公教育としての共通性の担保と多様性の包摂といたしまして、学校が今後もその本質的な役割を実質的に果たしていくためには、課題を抱える子供たち個人に問題があると考えるのではなく、困難の背景にある障壁を取り除いていくという視点から、全ての子供がそれぞれの得意分野や特性等に応じて活躍できる機会や出番を意図的に作り出すことが重要であること。学校を、子供たちが安心して学び、ウェルビーイングを実現できる場所とするとともに、学校において何らかの理由により安心して学校に通うことができない状態にある子供たちの学びの機会の保障にも柔軟に対応できるようにすることが必要である。時代や社会の変化に応じて日本型学校教育の良さを受け継ぎながら更に発展させ、公教育として必要な共通性を担保しつつ、一人一人の「良さを徹底して伸ばす」ことに対応できる学校教育の実現に向けて取組を進めていくことが必要であること。
 特に、現に不登校の状態にある児童生徒については、学校としてどのように受け入れていくかを検討し、なじめない状況の改善に努めることが必要である。こうした取組と合わせて、現に不登校の状態にある児童生徒の学びや育ちを支え、義務教育の機会を実質的に保障するため、個々の不登校児童生徒の状況に応じた学びの多様化に資する環境整備を図ることが重要であることについて記載してございます。
 次に、丸3 児童生徒と教師が集い、共に学び、生活する場としての価値の最大化といたしまして、特に心身の成長・発達が著しい義務教育段階にある子供たちの知・徳・体を一体で育む場である学校教育との関係において、オンラインやデジタル等での学びだけでは学校教育での学びの全てを代替することはできず、子供たちの心身の健やかな成長や発達を十分に保障することはできない。ICTリテラシーの違いが学びの格差につながらないよう、特に、様々な背景や特徴を持った子供たちが教室に在籍している義務教育段階では、一人一人の特性や状況等を理解した教師の対面による指導・支援の下、デジタルやオンラインの情報技術を有効に活用していくことが重要であること。
 15ページになりますが、子供たちの学校教育に対する思いや願いを受け止め、過度に同調圧力が高まることのないよう十分留意しつつ、児童生徒と教師が集い、共に学び、生活し、成長する場としての学校の価値を最大化していくことが重要であること。各学校において、オンラインやデジタル等の情報技術を有効に活用しながら、それぞれの状況に応じた「魅力ある学校づくり・授業づくり」を進め、児童生徒、教師が学ぶ楽しさや期待を感じながら、共に学校での学びに向かうことができるようにしていくことが求められることについて記載してございます。
 次に、丸4 生涯学習社会を生き抜く自立した学習者の育成といたしまして、特に、義務教育段階では、自立した学習者として子供たちを育むことが重要であり、自分に合った学び方こそをしっかりと身につけさせることが大切であること。
 16ページに行きまして、ICTを有効に活用し、教師が個々の子供の学びの状況を把握しつつ、学びの主導権を子供たちに委ねることにより、子供たちが、自らの学びを「自分事」として捉え、自発的に他者と関わりながら自分で学びを深めていくような学習活動を、学年や学期等の一定の学校教育活動のまとまりの中に適切に組み入れていくことが重要であること。これらの取組と合わせて、児童会、生徒会活動や学校行事も含めた学校教育全般において子供たちが自ら他者と関わりながら積極的に参画し、挑戦する場面を適切に設定していくことが重要であることについて記載してございます。
 丸5 義務教育の目的を達成するための創意工夫の発揮といたしまして、画一的な教育の在り様は、義務教育の目的・目標の実現を遠ざけるばかりか、教師の立場を機械的なものへと追いやり、児童生徒と教師等の触れ合いによる生き生きとした教育の働きが十分に発揮されないことについて、改めて共通認識を持つことが重要であること。今後のあるべき義務教育・学校教育の姿を実現していくためには、実際に教育が行われる現場において様々な創意工夫が発揮できるよう環境整備を進めていくことが必要であることについて記載してございます。
 丸6 公教育を支える学習基盤に係る一体的な検討・充実といたしまして、学校における働き方改革の更なる加速化、処遇改善、指導・運営体制の充実、育成支援の一体的な推進、授業時数も含めた教育課程の編成に関する学校裁量の在り方に関する検討をはじめ、教科書・教材、教員免許・教員研修、ICT機器、学校施設等の公教育を支える学習基盤についても、学校現場における創意工夫を引き出し、子供たちの学習意欲や創造性を育むものとして、それぞれ専門的な見地から検討を深め、充実を図っていくことが求められること。
 各分野における専門的な検討が一体的なものとして深められ、次期学習指導要領の改訂の検討と相互に連動しながら進められていくことが期待されることについて記載してございます。
 次に、18ページになりますが、学びにおけるオンラインの活用について、御説明いたします。
 まず、基本的な考え方といたしまして、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の中で、1人1台端末をはじめとして学校におけるICT環境の整備が急速に進み、学習基盤や教育環境に大きな変革をもたらしたこと。オンラインの活用はこれからの学校教育の在り方の実現に資するものであるということ。これからの学校教育においては学校での学びをより充実させるとともに、学びへのアクセスを保障するという観点から、学校や子供たちの実態に応じ、オンラインを積極的に活用していくことが求められること。その際、教師の献身的な努力のみに頼ることはあってはならず、個々の状況に応じて各学校・教育委員会が戦略的にオンラインを活用できる環境の構築を進めるといったことが重要であること。
 一方で、オンラインの活用だけを目的とすることは適切でなく、授業は、単に知識を伝達するものではなく、対話や協働、学び合いなどを通じて学習する場であり、特に、義務教育段階では、教師と児童生徒との信頼関係や児童生徒相互のより良い人間関係を構築することが質の高い教育活動を行っていく上で不可欠であること。これからの学校教育のあるべき姿としては、学校に教師と児童生徒が集い、共に学び、生活する中で、子供たちの資質能力を育んでいくという義務教育段階における学校教育の役割や価値が最大限に発揮されることが重要であり、オンラインの活用を進める上では、特にこの点に留意する必要があること。すなわち義務教育段階におけるオンラインの活用は、学校や教師に代わるようなものではなく、対面による指導の中でオンラインを適切に組み合わせることで、子供たちの興味・関心を喚起し、学習活動の幅を広げる観点から教師をサポートし、児童生徒の学習をより充実させるものとして位置付けられるべきであること。オンライン教育の活用に関しては、令和3年に内閣府特命担当大臣と文部科学大臣との間で確認された内容を十分に踏まえる必要があることについて記載しております。
 次に、必要な方策といたしまして、(1)義務教育におけるオンラインを活用した学びの充実のための取組、丸1 義務教育段階における活用方策につきまして、オンラインの活用促進には、一人1台端末の着実な更新や、安定したネットワーク環境整備など、デジタル学習基盤の整備が不可欠であること。
 また、22ページになりますが、少し飛びまして、中学校段階では、高等学校とは生徒の発達の段階が異なるとともに、教育の目的・目標、教育課程、教職員配置等の制度面に違いがあることを踏まえれば、「合同授業型」や「教師支援型」の遠隔授業を推進するといったことが重要であること。特に、社会に開かれた教育課程やカリキュラム・マネジメントの確立が求められることを踏まえ、遠隔授業を積極的に展開することにより、一つの学校で全てを完結させるという「自前主義」から脱却し、一人一人に応じた質の高い教育を実現するため、学校内外の教育資源を最大限に活用していくことが重要であること。その際、義務教育においては、必要な専門性を有する教員免許を持った教師が各学校に配置されていることを踏まえれば、特に、プログラミングや英語等の外部専門人材の有効な活用が期待される分野における発展的な学習活動のほか、各教科や総合的な学習の時間等における探究的な学習活動、STEAM教育等の教科等横断的な学習等において、その積極的な活用が求められること。ICT支援員の配置拡充等を含めた指導体制の充実等、教師の負担軽減につながる方策を講じていくことが求められることなどについて記載してございます。
 次に、23ページでございますが、小中学校の連携、接続といたしまして、進学先が同一の中学校である小学校同士の連携、中学校教員による小学校への乗り入れ指導などにおいて、遠隔授業を活用することにより、義務教育9年間を通じた教育活動の推進や取組の充実などにつながることが期待されるといったことについて記載してございます。
 次に、丸3 中山間地域や離島等に立地する小規模校における活用といたしまして、合同授業型の遠隔授業の活用は、児童生徒数が少ない中でも様々な意見や考えに触れることで自分の考えが深められ、コミュニケーション力や社会性が養われることにつながるとともに、オンラインによる学びを対面による学びの充実に発展させていくといったことも有効であること。また、教師支援型の遠隔授業の活用は、空間的・時間的制約を乗り越えながら子供たちの学びの充実につながるとともに、小規模校における研修・研鑚の機会の充実につながること。教科・科目充実型の遠隔授業は、やむなく免許外教科担任を配置せざるを得ない一部の小規模校において特に効果的であること。小規模校においてオンライン教育を推進する上で、教育委員会や教育事務所による支援や教育委員会同士の連携が必要であることについて記載してございます。
 続きまして、26ページでございますが、丸4 更なる推進のための遠隔教育特例校制度の見直しといたしまして、文部科学大臣による指定を受けることとされているため、申請の手続が負担となっている、あるいは、休職などに伴い、年度途中に急遽、短期間実施するといったことなど、柔軟に制度が活用できるようにすべきといった意見を踏まえまして、遠隔教育特例校制度について、学校現場の創意工夫が発揮され、地域の実情に応じたより効果的かつ柔軟な実施が可能となるよう、国において必要な要件や留意点について示しつつ、制度の見直しを行うことが必要であることについて記載してございます。
 また、(2)オンラインを活用した学びへのアクセスを保障するための取組、丸1 、不登校児童生徒への対応といたしまして、令和4年度現在、約4割の不登校児童生徒が学校内外の専門機関等で相談・指導を受けていない状態に在り、対面による支援が難しい状況にある不登校児童生徒に対し、オンラインを活用して、相談支援や学びの場を提供することを通じて、不登校児童生徒や保護者が孤立することなく地域社会とつながり、社会性を育むことができる居場所づくりを進めることが重要であること。
 不登校児童生徒がオンラインを活用した学習活動を行った場合に、その頑張りを適切に評価できるようにするための方策について検討することが求められること。教育支援センターや学びの多様化学校においてもオンラインを有効に活用した取組を進めていくことが考えられること。これらの対応は不登校児童生徒への選択肢を増やす観点で重要であるが、オンラインの活用ありきで支援を検討することは適当ではなく、一人一人の子供たちに応じた必要な支援を検討する中で、その選択肢の一つとして、オンラインの活用を位置付けることが重要であること。オンラインの活用は、不登校児童生徒への支援の一つのステップとして位置付け、対面指導とのバランスを取ることが重要であることについて記載してございます。
 次に、29ページになりますが、丸2 義務教育未修了者・形式卒業者への対応といたしまして、夜間中学において授業を欠席した者や、夜間中学への通学が困難な者に対して、できるだけ学ぶ機会を提供し、夜間中学での学びにつなげていくために、対面による授業を原則とした上で、オンラインを活用して、夜間中学の授業の配信を受けることができるようにすることも考えられることについて記載してございます。
 続きまして、30ページ、(3)働き方や生活スタイルの多様化への対応といたしまして、いわゆる二拠点居住や、ワーケーションを行う人々の子供の就学環境を保障するために、子供の転校などに伴う課題を解消する方策例の把握を進めるといったことが重要であること。一時的に、住民票所在地以外に居住するに当たって、住民票所在地の学校の授業をオンラインで配信してほしいといった要望への対応を検討するに当たっては、学びの継続といった観点のほか、特に義務教育段階においては、児童生徒と教師、児童生徒同士が直接触れ合うことが基本であることを踏まえた子供への教育上の影響について、個々の事例に即して十分に検討することが必要であることについて記載してございます。
 最後、「おわりに」ということで、本中間まとめ(案)の背景や趣旨などとともに、委員の先生方から御指摘のございました、本中間まとめ(案)に込められたメッセージといたしまして、33ページになりますけれども、学校は、全ての国民に公教育を提供し、子供の学ぶ権利を保障するものとして、子供たちにとって学びたいこと、やりたいことがたくさんある、わくわく感に溢れた場所であることが求められること。本中間まとめの実現に向け、国において、学校の価値を最大化するための学校現場の創意工夫を強力に後押しするとともに、学校や教育委員会においても、答えの無い課題に向き合う子供たちと同様に、前例や固定観念にとらわれず、創意工夫を凝らした新たな取組に前向きに挑戦することを期待すること。
 学校や教育委員会全体として学びのビジョンを共有し、その実現に向けて様々な取組に一体となって挑戦していく風土が今後更に広がっていくことが期待されること。
 本中間まとめを契機として、教師や学校だけで何でもやろうとする学校運営の自前主義から脱却し、学校と保護者、地域住民がそれぞれの役割を尊重した上で、信頼に基づいた対等な関係を構築し、次代を担う子供たちの育成という共通の目標の下、連携・協働した学校づくりが進むことを期待することについて記載してございます。
 以上、大変駆け足での御説明となりましたが、中間まとめ(案)の内容について御説明させていただきました。どうぞよろしくお願いいたします。

【奈須主査】  ありがとうございました。
 それでは、ただいま説明いただきました中間まとめ(案)につきまして、委員の皆様から御意見をいただきたいと思います。
 まず、本ワーキンググループで主査代理を務めておられる秋田委員について、本日、御都合により間もなく離席される必要があると伺っておりますので、はじめに秋田委員より御意見をいただいた後、他の委員の皆様からも御意見を頂戴すると進めさせていただければと思います。
 それでは、秋田委員、早速ですが、よろしくお願いいたします。

【秋田主査代理】  ありがとうございます。大学の当方の授業を高校生が見に来るという授業が13時から始まりますために、御配慮いただきまして、誠にありがとうございます。3点述べさせていただきたいと思います。
 1点目は、歴史的、国際的に、義務教育がどういう意味を持っているのかということを、日本の教育の強み、弱みを自ら我々が自省し、そして、これから自前主義だけではなくて、ネットワーク型の教育、そして、地域のリソースを豊かに使こと、そして、オンラインを活用することがこの報告書に明確に記されたことが大変大きな意義を持っているものであると考えます。
 特に、幼小中高と学校教育の中で義務の段階がどういう特徴を持っているのかを今回、改めて位置付けたところがこの報告書の大きな意味であると考えます。ただし、2点目として、もし可能であればということでございますが、本年度、こども基本法が制定されました。子供は学ぶ権利を持っていますが、子供自身が学ぶ権利の主体であるということを子供自身が教師とともに認識し、そうしたことを学ぶ機会を保障していただくことが重要であります。この報告書の中にも子供の願いや思いを受け入れるということが書かれておりますけれども、子供の意見表明というものが、そもそも子供の権利である、そして、こうして教育改革が進められているということが、教師や学校、教育委員会だけではなく、子供たちにも伝えられていくことが、共に教育をつくる、学ぶ者として重要なのではないかと考えるところです。
 実はこの間、こども家庭庁で、子供たちから4,000件のメッセージが寄せられ、私は、小中学生生徒との対話もいたしましたが、そのほとんどは副次的なことではなく、学校教育に関わる強い願いでございました。一人一人の多様性を認めると同時に、子供たちがこうして、大人が公教育の改革を行っていることがいかに伝わっていないのかということを私自身は今回認識しました。子供自身にも、特に学校に居場所がないと感じている子に伝えていくことが重要ではないかと思います。
 そして、3点目です。義務教育は基礎基本の習得の充実ということが言われていますが、そこにおける基礎基本の知識や技能とは一体何なのかということは、今回も問われないままであります。しかしながら、漢字や語彙をたくさん覚えるというような、それから、四則演算ができる時代から、基礎基本、学び方、メディアへどう対応するかが時代とともに変わってきています。改めて令和の基礎基本とは何なのかということも義務教育において今後検討すべき重要な点ではないかと思っております。
 以上、早口でございましたけれども、ありがとうございました。以上です。
 
【奈須主査】  秋田委員、ありがとうございました。原理的なお話であると同時に、教育内容、教育課程の編成原理にも関わるようなお話だったかと思っています。また、今後の議論あるいはその先の議論にいい形でつなげていければと思って伺いました。
 それでは、御発言を頂戴したいと思います。いつものことですが、御発言がございます方は、「手を挙げる」のボタンを押していただき、こちらから指名いたしましたらミュート解除して御発言をと思います。また、終わりましたら、「手を下げる」のボタンを押して、挙手を取り下げていただきますようお願いします。会場から御参加の皆さんは手を挙げていただく、あるいは名札を立てるなどの形で意思の表明をお願いできればと思います。
 早速ありがとうございます。それでは、戸ヶ﨑委員、荒瀬委員、中川委員、堀田委員の御順番でお願いします。
 まず、戸ヶ﨑委員、お願いいたします。

【戸ヶ﨑委員】  ありがとうございました。私からは大きく二つほど意見をさせていただきます。
まず、これだけ多様な意見を、ここまで整理してまとめられた事務局の御尽力に敬意を表します。この「中間のまとめ」は、将来の展望を見据えて、学びのリ・デザインや学校の役割を再認識する際の指針になっていくと大いに期待しています。
 一方で、少し厳しい言い方をさせていただくと、行政的には極めて完成度が高いと思いますが、33ページに書いていただいたように、教育の最前線を担っている現場の教師や管理職、また、教育委員会にとって、羅針盤の役割とともに、できればモチベーションが一層高まるよう学校現場にエールを送るような内容も、もっと膨らませていただいてもいいのかなと思います。
 そのような観点からすると、11ページにある「日本型学校教育の強み」を強調されていますが、こうした世界に冠たる日本型学校教育が、優れた教師の下で、全国津々浦々で行われてきたことの再評価が必要と思います。先日公表されたPISAの2022の結果では、一喜一憂する必要性はさておき、我が国において以前から世界トップクラスである科学的と数学的なリテラシーは一層向上し、これまで課題とされてきた読解力もV字回復しています。また、レジリエントな4つの国の一つとしても認められました。
 その要因として、OECDの指摘にもあるように、コロナ禍の休校期間が比較的短かったことに加えて、現行の学習指導要領を踏まえた授業改善がしっかりと進んできていることや、GIGA端末などの整備が進んで、生徒がICT機器の使用に慣れてきたことなど、このような学校等の様々な尽力が複合的に影響しているものと思います。また、日本型学校教育の強みとして、他国に比べて、SESやESCSを是正する機能を持っていることも改めて認識してよいと思います。
 これらの学校の役割の重要性を再認識していくとともに、今言われている、教師の成り手不足等も鑑みて、教師をリスペクトしていく意味でも、これらの強みを国と教育委員会と学校現場とで改めて共有していく必要があると思います。とかく、「あるもの」よりも「ないもの」に関心が向くのは、人の心理の陥穽だと思います。弱みの共有化や解決も大事ですが、日本型学校教育の「強み」に誇りを持って一層伸ばすことにも、もっと目を向けていくべきと考えます。その際、強みも弱みも注釈等で可能な限りエビデンスを示していく必要があると思います。
 また、このまとめが学校現場に令和答申やこれまで行われたCSTIの政策のパッケージなどとは別の「新しい改革」のものが出てきたと現場に受け止められることを危惧しています。そのために是非、本まとめで描いていくビジョンを、今後の令和答申などとの接続性・連続性が視覚的にも分かるようなポンチ絵のようなものを作成していただけるとありがたいと思います。
 次に、少し気になったことで、STEAM教育という用語が出てきています。今回の義務教育に関する意識調査においても、子供も保護者も教師も、学校教育に求めることで圧倒的に多いのは、「基礎的・基本的な知識・能力を身に付けること」です。先ほど秋田先生もおっしゃっていましたが、この力とは一体どういうものなのかの議論も改めて深掘りする必要がありますし、義務教育においては、特に教科の世界に没頭していく学びの大切さに目を向けていく必要があるとも思います。また、課題となっている教科等横断的な学びについては、リアルな課題解決活動とともに、「つぶあん型」の探究的な学習、つまり教科の学びがその中に生きていることを、実感を持って理解できるような学びが、特に義務教育では重要と考えます。教科の本質を、よりダイナミックで豊かにしていくような学びを十分に追求していかないと、一見、ICTがどんどん進んで、きらびやかなテクノロジーの活用の裏側で、最新機器の便利さが強調され、授業が貧弱化し、スマートで軽くなってしまうことを危惧しています。
 また、学びのSTEAM化で強調されがちな産業界のニーズに合うパッケージ化しやすい活動に目が行ってしまいますが、地域に根差した活動とつながり、地に足のついた学びを着実に行っていかなくてはいけないと思います。近年、STEAM教育を殊更前面に掲げている基礎自治体や学校が出てきています。義務教育においても、その土台や基盤づくりは当然必要です。一方で、脚下照顧、つまり足元をしっかり固めていくことを改めて認識すべきと思います。
 加えて、学校が、家庭や地域の存在なしには機能しないことを考慮すれば、教育課程の編成に当たって、ICTを活用した学校と家庭とのシームレスな学びや家庭学習の在り方などについても、家庭と地域との合意形成を図る仕組みを今後は構築していく必要があるのではないかと思います。
 以上です。

【奈須主査】  ありがとうございました。
 それでは、荒瀬委員、お願いいたします。

【荒瀬委員】  ありがとうございます。この中間まとめに関して、2か所について申し上げたいと思っていますのと、さっき、少し御説明もありましたが、後からの方がいいのかもしれませんが、PISAについて一つ申し上げたいと思っております。
 中間まとめの方ですけれども、これは奈須先生、事務局の皆さん、本当にありがとうございました。よくまとめていただいたと思います。ただ、今、戸ヶ﨑先生からもお話がありましたけれども、冒頭、秋田先生おっしゃったように、書かれていることと書かれていないことをしっかりと考えた上で、具体的にどう進めていくのかというのをそれぞれの場で読み解いて進めていくことが大事かなと思いながらお聞きしておりました。令和の基礎基本を明らかにしていくというのは、今後、教育課程部会等での議論に非常に重要な示唆を与えていただいたのではないかなということを思いました。
 まず12ページですけども、すみません。ちょっと喉が悪くて、声が聞きづらいかもしれません。(4)の丸1 の二つ目の丸の所です。ここに5行、書いてあって、その3行目からですけれども、「やみくもに学校と学校以外の学びの場の『境界線』を取り除くこと、すなわち学校以外の学びの場を学校と同一のものとして取り扱うことになれば、こうした学校教育の本質的な役割を担保できなくなることが懸念される」というのは、内容的に異議を申し上げようと思っているのでは全くなくて、そのとおりだと思いつつ、ただ、書きぶりとしてはどうなのかなということを心配いたしています。
 こういう書き方だと、学校以外の学びが、今、辛うじて学びとしてつなげている子供がいるのも実際あるわけですので、その点についてしっかり考えること、視野を広げていくということも中教審としては非常に重要とではないかと思います。令和3年答申の一人一人の子供を主語にする学校というのは、これは学校に集い、学ぶことをもちろん否定するわけではないですけれども、しかし、学ぶということの大切さが現実になかなか学校でできない子供がいるという中でどうしていくのかということの配慮は要らないだろうかということであります。可能であれば御検討いただければ。
 それから、次、33ページですけれども、これも先ほど戸ヶ﨑先生から、学校へのエールは大事だとおっしゃって、私も全く賛成ですけれども、33ページの一番下の丸のところ、2行目から3行目辺りですが、「教師や学校だけで何でもやろうとする、学校運営の自前主義から脱却し」と、この言葉もいろいろな場面で出てくるんですけれども、「教師や学校だけで何でもやろう」と本当にしているのかなと、あるいはできる状態なのかなということを思います。そういうことを考えた上での表現が望ましいのではないかなと。してしまっているところもあるかもしれないけれども、むしろ周りがもっと手を差し伸べないといけないのに、差し伸べられていないから、せざるを得ないという面もあるわけですので、その辺りは、決してこれは、こういう表現をされている意味が分からないことはないんですけど、もうちょっと配慮のある表現の方がいいのではないかなということを思いました。
 この中間まとめに関しましては以上です。PISAは後からの方がいいですよね。

【奈須主査】  いや、先生、特にまとめてということはないので、今言っていただいて。

【荒瀬委員】  そうですか。ありがとうございます。さっき小畑さんが資料1でもって御説明くださって、義務教育を取り巻く今日的な課題というのは、これは非常に重要な課題としてこれだけあるということであるにもかかわらず、なぜPISAは良かったんでしょうかという。上位の国とか地域が抜けていたというのもあるけど、何で良かったんだろうかと私も本当に不思議で仕方がなくて、うちの職場でも、関心が高いです。
 以上です。ありがとうございました。

【奈須主査】  ありがとうございます。今後、本当にデータは冷静に解析しなきゃいけないんだろうと思いますけど、タイムラグもあるだろうし、いろいろなことがあると思うんですけどね。また、外部の方からいろいろな可能性について御検討いただいて、またデータに基づいてしっかり検討していく、また、それが次の教育課程の方向性、先ほど秋田先生がおっしゃった学力をどう見なすかという話も大きくつながってくるかと思います。ありがとうございます。
 それでは、この後、中川委員、堀田委員、黒沢委員でお願いしたいと思います。中川委員、お願いいたします。

【中川委員】  放送大学の中川です。おまとめありがとうございます。とても明確に整理されていると感じました。現時点での案が事務局を中心に何度も整理されたものであると推測しておりますので、これからどこまで加筆修正が可能か難しい点もあるかと思いますが、オンラインの活用について一つだけ意見を申し上げたいと思います。オンラインの活用について、これだけのスペースを割いていることはすばらしいと思います。
 一方で、オンラインの活用や遠隔教育というと、何か手続論や何型という言葉が先行して、何か特別な状況で使うとか、フォーマルで実施しなければならないという雰囲気がまだまだにじみ出ていると感じてしまいました。本文12ページに日本型学校教育の弱みとして、子供たちの行動を統制したり、管理したりする傾向が強いと指摘しているにもかかわらずです。やっと腰を上げようとしている先生が、何か面倒くさいなとか、やめようかとか、感じることのないようにメッセージを届ける必要があると思いました。
 もちろん留意点は多々あると思いますけども、ごくごく日常の中でも、つまり、フォーマルなときだけでなく、インフォーマルな機会でも手軽にオンラインを利用できるよう後押しをしつつ、本ワーキングでも指摘のあった自分に合った学び方を身に付けること、あるいは自立した学習の育成を充実させていくべきだと考えます。このことはオンラインの活用にも連動しているということです。
 本文中でも、「オンラインを積極的に」などは書かれていますが、もっと踏み込んで、日常的に、あるいは形にとらわれ過ぎずに実施できることを奨励するような文言をもっと含められないかと思います。是非御検討ください。
 また、本文への意見とは異なりますが、先ほど御説明のあった特例校の制度の見直しは、是非スピーディーに進めていただければと思いました。
 それから細かいことですが、本文8ページ目のところの情報活用能力について、学習の基盤として位置付けられていると書かれています。学習の基盤となる資質能力として位置付けられているとした方が良いのではないかと思いました。
 以上、よろしくお願いいたします。

【奈須主査】  ありがとうございます。この後半の「先生」、「オンライン」のところは本当にデリケートな問題を多々含んでいて、事務局も法令との関係で御苦労なさっていると思うんですが。私がいろいろなところで聞くと、広域通信などが高校レベルで進んでいますよね。高校は、通信教育が以前から正規の制度ですので、それでいいわけですけれども、あれでやれるのだったら、中学ももうオンラインでいいんじゃないかということをおっしゃる方もいないではなくて、その辺も一方で見ていかなきゃいけない。多分、将来そんなこともあるかと思いますけど。ただ、現状では積極的に進めようという人たちにとって、大分緩んだけど、やはりまだ手続的に随分手間だなということがにじみ出る感じにはなっていますね。また、これは事務局でも御検討いただいて、いいところに収めればと思います。ありがとうございます。
 それでは、続いて堀田先生、お願いします。

【堀田委員】   堀田です。まず、大部のものを適切におまとめいただきましたことを感謝申し上げます。ありがとうございます。私もICTとかオンラインとかその辺のお話をさせていただきます。16ページの一つ目の丸の所に、これからの時代のことですね。誰一人取り残さないということや、あるいは自分事の学びとして進めるんだということが書かれております。これがこれからの時代の求められる人材像というか、子供に必要な資質・能力なんだと思います。そのために、ICTもオンラインも適切に使うんだと。ICTはデジタル学習基盤なので、それを使うこと自体が目的ではないというのは当然ですけれども、基盤なのだから必要に応じて積極的に使うんだということだと理解しております。
 この観点から申し上げますが、17ページの三つ目の丸のところに「ICT機器」と書いてあります。これは何となくハードウエアをそろえるということに傾斜するようなことにならないかというのが心配事です。テクノロジー、ICTの「T」はテクノロジーですので、機器に、二重の言い方みたいになっているところもありますし、これから重要なのはやはりクラウドとか、教科書や教材も紙だけではなくてデジタルでとか、あと、学習のログを基に、適切に処遇していくみたいなこととか、あるいはクラウド上での学習の状況がお互い参照できたり、先生が把握できたりすることの価値とか、そういうことがあることを考えた表現に修正できないものかというのを感じました。これが一つ目でございます。
 二つ目はオンラインという表現です。私も事前に打ち合わせいただいたときにも申し上げておりましたので、前半の方にはうまく整理してあります。例えば16ページの2番目の丸のところには、1人1台端末とクラウドを活用することでこういうことができるんだみたいなことですね。これは対面でも十分にできることですし、これが対面の学習の中で頻繁に行われることによって、オンラインでも家庭でも学ぶことができる、そういうスキルが身に付くと考えられるわけです。
 一方で、18ページの注28のところに書いてありますけども、オンラインという言い方は、対面時におけるクラウドツール等の活用は含まず、専ら遠隔によるものを言うんだと定義されています。これをちゃんとみんなが読んでくれるのかなという心配があります。つまり、基本的にはここから後ろは、中山間地での遠隔授業とか、不登校児童生徒へのオンライン対応とか、いろいろなことが書かれていて、これはこれで全部重要だと思うんですけど、何となくこの辺りに、これは先ほど奈須先生が微妙なとおっしゃったことと関係するんだと思いますが、オンラインの活用が目的ではないとか、オンラインの活用だけを目的とすることは適切ではないとか、何かこう、やや否定的に書かれていて、これは仕方がない部分も分かりつつ言うんですけど、ここだけ見て、しかも、対面時におけるクラウドツール等の活用の話ではないということを十分に読まずに、ICTやオンラインは目的じゃないから対面授業では使わないでもいいみたいに解釈する人が出ないかが心配です。これは誤読する側の問題ですけど、大体、文科省の書きぶりには、ICTは目的ではないとかそういうふうに書かれて、そこが現場で、だから使わなくていいみたいに、文科省もそう言っているみたいに言われがちなものですから、何か表現の工夫をお願いしたいと思います。荒瀬委員もおっしゃったように、オンラインの活用しか今は方法がない現実という、そういうお子さんたちもいるわけで、そこから段階的に対面とか学校への登校に持っていくみたいなことも大事なことで、これも否定的に捉えられないといいなと思いながら読みました。御苦労されていることを分かっているのに、こういう発言で大変申し訳ございませんが、以上でございます。

【奈須主査】  ありがとうございます。先般の生成AIのガイドラインもいつもこういう難しい問題があって、あれをどういうふうに現場が読んでいるかと、すごくばらついていますよね。政策文書の難しさだと思いますけれども。十分留意して、いろいろな可能性を押さえながら、一番いい表現に再度ブラッシュアップできればなと思って伺いました。
 この先、黒沢委員、鍵本委員、水谷委員、中谷委員の順でお願いいたします。
 黒沢委員、お願いいたします。

【黒沢委員】  ありがとうございます。まず、中間まとめ、御苦労さまでした。私もいろいろ意見を述べさせてもらったんですけど、うまく反映してもらっているなという感じがします。毎日、不登校の子供たちに向き合っている私ですけども、その立場から3点ほど意見を言わせていただきたいと思っています。最後の終わりの所を何かビルトインしていただくとなおいいのかなと思っているんですけど、まず1点目が、不登校の子供たちは社会とつながっていない子たちがとても多いんですね。学校を含めてですけども、そういうところにつながるということが非常に大切だと僕は思っているんですけども、そのつなぐために誰とつながるのか、誰だったらつながれるのか、どういう方法だったらつながれるのかというのが一人一人異なるので、つながる人の、担当する人の人材育成も含めて、つながり方をちゃんとこう、その子に合わせた形でやっていかないと、なかなかうまくいかないんじゃないかなというのが一つ目です。
 二つ目は、出口論なんですね。小学校、中学校が終わると、その後、高校が待っているわけですけども、そこには入試選抜、高校に入るための試験がそこにドンと横たわっているわけですけども、この仕組みも今の現状のままで本当にいいのか。不登校の子供たちとか、あるいはギフテッドと言われるような子たちもそうですけれども、入試選抜も画一的に試験でドンというやり方もありだと思うんですけども、何かそこに少し違う視点を持った方がいいんじゃないかなというのもあります。これが2点目です。
 3点目が連携というところですけども、地域と連携するとか、いろいろなところと連携する。一番必要なのは、福祉関係のところと医療とのつながりをどうつくっていくかというところと僕は思うんです。なかなか省庁をまたいだ形での連携になると思うので、是非ここは文科省さんがイニシアチブをとって、福祉とか医療といった部分も全体としてカバーできるような体制を組んでいただく、あるいは施策をつくっていく、そういうことが重要じゃないかなと思っているところです。
 以上、3点でした。

【奈須主査】  ありがとうございます。
 それでは、鍵本委員、お願いいたします。

【鍵本委員】  岡山県教委の鍵本でございます。先ほどは丁寧な御説明、ありがとうございました。私からは2点申し上げたいと思います。
 1点目は、学校教育の重要性と、不登校の状態である子供たちの学びの保障についてでありますけれども、不登校の児童生徒数が依然として増え続けております中で、全国的にその対応が求められておりますが、先般、11月17日に文科省の初中局長から通知が出されて、不登校児童生徒への支援について誤解が生じることのないように改めて基本的な考え方を御周知いただいたことは本当に有り難いと感じております。実際、本県におきましても、学校には行かなくてもいいのかということなのかという御質問をいただくこともありまして、その都度、不登校の時期が休養や自分を見つめ直す積極的な意味を持っていて、学校に登校するという結果のみを目標とした性急な取組の問題点について説明しつつ、その一方で、学校教育の持つ意義や役割は極めて大きいことも丁寧に説明してきているところでございます。
 今回の中間まとめの中におきましても、このことは丁寧に説明されておりまして、学校の役割の重要性について述べており、学校こそが義務教育の中核を担うべきものと書かれております。先ほどのような誤解を生まないためにもこの記述は重要だと思っておりますが、しかし、一方で、そうであるのならば、その義務教育の中核であるべき学校がこれほどの数の不登校を生み出している要因は何なのか。学校教育に携わる全ての者が改めて考え直して、不登校の状態にある子供たちが学校になじめない要因の解消に本気で今後も取り組んでいかなくてはいけないと思っているところであります。
 このことにつきましては、中間まとめ(案)の13ページに書かれてありますように、正解主義的、教師主導的、予定調和的な学校の在り方から抜け出して、一人一人の子供を主語にした学校教育を実現していかなくてはならないと私も考えておりますが、このことの大きな問題は、今、学校現場において不登校の要因として、このことに関する課題意識がまだ低いということであると私は思っております。
 また、課題意識のある先生においても、分かってはいるけど、それを変えていく余裕がないという学校が多いことも更に問題だと思います。既に中間まとめ(案)にもかなり書き込んでいただいておりますけれども、不登校の増加に歯止めをかけていくために、学校現場が何を変えていかなくてはならないのか、更に周知を図って意識を高めていくとともに、学校現場で創意工夫がなされる余地や、そのための余裕を生み出していくためにも教育課程編成に関する学校裁量の検討でありますとか、あるいは働き方改革の加速化を進めていかなくてはならないと考えておりまして、このことも強く打ち出していく必要があると考えております。
 2点目は、義務教育段階におけるオンライン授業の在り方についてであります。中間まとめ(案)の27ページに、遠隔教育特例校制度の見直しが必要であることが書かれております。離島や中山間地域の学校など、教員の少ない学校で、免許状を有する教員を確保できない場合に、免許状を有する専門性の高い教員の指導をオンラインで受けることを可能にするこの特例制度は、更に柔軟に活用できるようにしていくことは私も賛成でございます。
 ただ、その場合にあっても、義務教育段階における学校教育の役割や価値を鑑みれば、義務教育では、教員が教室で直接児童生徒に関わって、その特性や理解の状況を踏まえながら指導し評価できる体制を整えることが、これがまず大切であり、可能な限り、免許を有する教員の配置に努力した上で、それでも難しい場合に限って行われるものであって、高等学校においても遠隔授業について様々検討が行われておりますけれども、高等学校の場合とは義務教育は事情が異なるんだということを十分に踏まえて、この制度の見直しの検討を行う必要があることを改めて強く申し上げておきたいと思います。
 私からは以上でございます。

【奈須主査】  ありがとうございます。
 それでは、水谷先生、お願いします。

【水谷委員】  よろしくお願いいたします。水谷でございます。自分は2点お願いしたいと思います。
 まず、事務局の皆さん方、おまとめいただきまして、本当にありがとうございました。
 まず(4)の丸4 、丸5 、15ページ、16ページに関することと、オンラインのことの2点についてお話ししたいと思います。全体として目指すべきことについてよく理解できます。今年度、リーディングDXスクールの関係で、全国のいろいろな学校にお邪魔して、必ず管理職といろいろな対話をさせていただいていますが、その際に話題にしているようなことがこの中間まとめに多く含まれています。しかし、このようなことは「おおよそ理解できるけど」と、後で「けど」がつくことが多いです。現実として、自分としてはどうしたらいいのだろうかという、特に校長の悩みをいっぱい聞きました。
 その中で一番よく出てくるのが、ここにある丸5 の創意工夫が、現場でやりたいけれど、いろいろな障害があって、なかなか実現できないということを一番よく伺いました。校長自身がそう思い込んでいる部分もありますが、現実にはいろいろなことにチャレンジできる環境があるにもかかわらず、今までの例がないとか、自治体の中での準備状況などから創意工夫に一歩出ることができないということがありました。また、現実としてどうすればいいだろうとの悩みが多く、先ほど秋田委員が言われていたことですが、何が大事なのか、令和の基礎基本とは何かということの共通理解について、結構ずれているなということも思いました。
 丸4 に書かれている、自立した学習者や、自分に合った学び方ということも理解はされてはいますが、どちらかというと、今までの一斉授業からなかなか抜け出せないとか、今までの成功体験から考えたり、見たりしていることが多く、実際、ここに書かれている大きな考え、社会の動きから創意工夫ができるような状態になっていないということがとても心配です。この中間まとめは今後皆さんが読まれて、理解はされると思いますが、具体的にどのように進めていくかということが、特に創意工夫が許されるような状況がどうしたらできるのかなどを読みながら思っておりました。
 二つ目、オンラインのことに関しては、義務教育の段階での導入はなかなか難しいとは思いますが、最近は年度途中で休む先生も多く、校内で非常に授業のやりくりに困っている例もあります。限定的でもいいですので、特例校の見直しを行い、このような場に対応できるように、何か一歩、先に進んでいただけると有り難いと思います。
 ただ、どのように運用して、それがどのような効果があったかなどのチェック体制などを検討しなければならないと思います。今までのものと違った形で、特例の特例というのはおかしいかもしれませんが、一歩進めることができればと思いました。
 以上です。ありがとうございました。

【奈須主査】  ありがとうございます。
 それでは、中谷先生、お願いします。

【中谷委員】   私は校長ですので、本校の先生方にこのまとめをどのように話すかなということを考えました。キーワードを取り上げながら、学校の役割とか学びの方向性を話すのだろうなと思いつつ、一方で、本校は、今、ここまで行っているのかなということを振り返りながら読ませていただいたところです。本当にありがとうございます。
 私も15ページ、瑣末なことと言われるかもしれないのですが、丸4 のマルの二つ目、「本ワーキンググループにおいては、特に、義務教育では、自立した学習者」云々のところ、私は、ここに「こそ」をつけるべきなのかどうかということを悩んでおりまして、いわゆる資質・能力の三本柱をバランスよく育てる、先ほど基礎基本の話もありましたが、読む人によって、基礎的な知識、技能の習得というものは、「もういいの?」というふうに読む人もいるのではないかなと感じたところです。
 また、本文中は、「指摘があった」という表現ですけれども、概要には「自分に合った学び方こそ身に付けることが大切」と言い切ってありまして、「こそ」をあまり強調し過ぎると、これからは基礎基本よりも学び方だという誤ったメッセージであるとか、基礎基本か、学び方かという、かつてたどってきたような二項対立的な議論にならないかなということを危惧したところです。
 意識調査にもありましたし、先ほど来お話がありますように、これまでの学校は、基礎的・基本的な知識・技能の定着を重視してきました。先ほど先生方が、令和の基礎基本を明らかにすべきとおっしゃいました。正にそのとおりだなと拝聴させていただいたところですけれども、さりながら、それには少し時間がかかるのではないかと思っております。
 一方で、自己調整力とか、自分に合った学び方を身に付ける、育成することについて言えば、学校現場の感覚としては、軽視されてきたというよりも、しっかりその重要性を意識してこなかった、していないというのが私の捉えです。
 そうした中、そうした学び方を学ぶことも大切だと意識した、認識した学校においては、基礎的・基本的な技能の定着、思考力等に加えまして、学び方、学び手の育成を目指した取組が進められ、それは確実に広がっていると思っています。したがいまして、私としては、「こそ」ではなく、資質・能力の、基礎基本、それから、思考力等の育成に加えて、今後はもっともっと学び方の育成を、学び方を育成することの重要性をこれまで以上に発信していく。しっかりと学び方を育んでいく必要があるというメッセージにした方がいいのではないかと思ったところです。
 以上でございます。ありがとうございました。

【奈須主査】  ありがとうございます。先ほど来からの話で、結局、あれかこれかではいけないだろうという話と、あれもこれもでもまた大変だという話で、何というんでしょう。いろいろな要因、要素が増えてはきているんだと思いますけど、それをどんなふうに構造化するか、位置付けるかという話が、これは今回やり切れる課題ではないと思いますけど、大きな課題だなと思って、今、承っておりました。
 と同時に、この会議の初期で御報告いただきました中谷先生の学校や、それから、水谷先生の学校というのは、その全てを上手に融合して、結果的に実現できるという、つまり、基礎基本も身につくし、思考力もつくし、学び方や自立した学び手になる方策も、実は同じ時間の中で同時的にちゃんと実現できる。そこにICTというのはとても効果的だという御報告いただいたように思いますけど、それがどういうイメージで読み取られるかですかね。この文章でできることの限界はあるとは思いますけど、文章でできることを今回頑張ってやって、さらにまた、いろいろな手だてでそこを訴えていくということなのかなと思って、すみません。伺っておりました。
 この後、柏木委員、それから、野田委員という順番でお願いします。では、柏木委員、お願いします。

【柏木委員】  ありがとうございます。今回、全ての意見を網羅する形でおまとめいただきまして、本当に感謝しております。私の方から異論があるということではなくて、改めて今回の議論を通して考えさせていただいたということを少し述べさせていただきたいと思います。
 今回、このワーキングは、「学校の意義とは」を問うところもスタートラインにあったと思います。それを考えていくと、学校の意義は、民主的社会の形成に寄与するところにあるという、日本の教育の根幹を考えるということがとても重要だなと思っております。そして、何よりもそれを授業を通して行っているということを認識し、日本の教員の専門性というのが民主的社会を形成する担い手を育成するところにあると定位することが大切なのではないかと思っております。日々学ばれている教科の内容や概念、アカデミックな力というのも、それを生かして民主主義社会を形成するというところになると思います。
 今回、ICT活用も同時に議論されましたけれども、それもオンラインでの学びの保障に加えて、そういう民主的社会を形成するために活用するものとして位置付けられるという点を申し上げておきたいと思います。
 この民主的社会をどう捉えるのかという点は、多義的ではございますけれども、まとめにもあります公正に関連させて簡単に申し上げますと、多様な人々が互いの存在を承認しながら資源を分配しつつ、共生する社会というようになります。ここで承認というのは、人間の脆弱性と社会が相互依存関係にあるという前提の下で、対話と資源の分配を試みながら、自己や他者がお互いの願いを共に解放していく、かなえていくというものになるのではないかなと思っております。学校での授業というのは子どもがその経験を積んで、民主的価値を身に付ける場であると言えます。それは道徳教育という意味ではなくて、民主的社会を形成するための学びだとしっかりと位置付けていいのではないかなと私は今回の議論として思いました。そうでなければ、学校の意義に関して、日本の学校がこれまで担ってきた、そして、今後も担うべく公正な民主的社会に関する役割を、うっかりすると認識しないまま過ごすことになってしまうのではないかなと思っています。
 では、子供が授業でどのように公正な民主的社会の有り様について学んでいるのかを少し申し上げます。今回、一斉授業も協働もいろいろな場面を最後の資料に入れてくださっていましたけれども、例えば一斉場面でも、小学校では45分間で数百にわたる相互作用が子供間あるいは子供と教員間でなされています。その際、教師は思考を促す発言をしながら、子供自身が一斉で、みんなで学びをつくり上げるという授業をつくり上げていたりします。その中で子供は、同じことでも多様な読み取りや感じ方がある。そういう多様性を認知するとともに、自分の考えにも偏りあるいは欠如している点があることを認識して、みんなで読み取りを深めていくことによって、こういう読み取りや考えができるという新たな知が形成される経験をしていると思います。そうした活動を積み重ねると、他者の書いたものや言ったことを丁寧に捉えて思考するところが非常に出てきまして、ある事例では学力が上がったということも聞いております。今回のPISAの結果も、対話ということを日本の教育が重視し始めたという、前から重視していますけれども、改めて強調し始めたということを考えると、連動するのかなと思っています。同時に、これは異なる他者の意見に関心を持って、それを取り入れて、他者に応答しながら新たな知を創造する多様性の認知と互いの存在の承認につながります。これは一方で、多様性からイノベーションが生まれることを経験するものともなります。こうした学びがすべて公正な民主的社会の形成につながると考えております。
 その過程では、自分を振り返るメタ認知とか、いろいろな論理的根拠、他者の述べる発言の根拠に基づいて思考する批判的思考といった、あらゆる力を使って、民主的社会における共生の経験を積んでいるというものとして考えられます。共生の経験を積む中で重要なポイントというのは、多様な子供がいろいろな声を出せる経験になります。そこで効果的なのが、やはりICT活用かなと思っています。ICT機器というのは、外国ルーツの子供が翻訳機能を使って意見を出したり、書くのが苦手な子供がICTを使って文字でも意見を伝えられるようになるというツールに加えて、どんな声でも出してもいいと思える雰囲気づくりにも効果的です。
 例えばデジタル付箋紙というものを使って、グーグルで言うとジャムボードみたいなものですけれども、意見を一斉表示するような場面ですと、この意見の人はこの色で伝えていいよと言うと、いろいろな意見がいろいろな色で表示することができるようになります。また、対話を通じて、その色が変わってもいいよと言うと、その授業の一斉場面の中でいろいろな色が移り変わっていく様が視覚的に映し出されます。そうすると、意見は変わっていいとか、学校の中で明確な意見を出さなくてもいいという雰囲気になってくるんですね。そうなると、授業の中で正解に相当する明確で強い意見だけではなくて、その過程にある中途半端な思考とか弱い意思を出してもいいと思えるようになります。これは学校が安心できる場所となり、失敗をできる場所になることにつながります。人間が移り変わるものなんだなと子供たちが認識すると、多様性を個人間の差ではなくて、個人内にも認められるものであると理解して、そうすると、「今どう考えているの?」とか「その思いはどういうこと?」という聞き合いが生まれてきます。それが対話を促して、お互いに認め合い、互恵的関係の下で社会を形成する主体として子供が立ち上がる、その基本となると思っています。
 そのこと自体が、先ほど秋田先生もおっしゃった、こども家庭庁の創設を契機に強く求められている、子供の意見表明権を保障することにつながることになります。そして、それだけではなくて、民主的社会の中でどんな意見でも出していいと認めることになるというのが、本当に今、学校の授業になかなか参加できないでいる状態にあるような子供さんも、将来、社会に参加していくための基礎になるのではないかなと思っています。そうした経験を授業や活動の中で積むことがとても大事なんじゃないかなと思っています。
 したがって、授業やICT活用を通じて、個別に子供のニーズを満たしていくということは前提として必要な保障ですけれども、ただし、子供がニーズを満たされる受け身の存在だけではなくて、客体としてあるだけではなくて、子供自身が公正な民主的社会を創造する主体となることが重要となります。それは、子供が多様な他者との相互作用を通じて、安心して失敗のできる、誰もが取り残されない学校や授業づくりを子供自身がつくり上げていくことによって成し遂げられるものであり、今回の中間まとめを契機にこの点についてしっかりと認識し続けることが大事なんじゃないかなと私自身は思っています。それが教育振興基本計画にある持続可能、持続的な社会のつくり手の育成と、日本社会に根差したウェルビーイングにつながるのではないかなと、そういうふうに思っています。
 すみません。長くなりました。最後の私のまとめとして述べさせていただきました。

【奈須主査】  ありがとうございます。多様な学びの機会ができてきて、先生が教えなくても学べるようになってきた中で、何のために子供たちは学校に通うんだろう、何で一緒にいるんだろうということがしっかり問われなきゃいけないというか、当たり前だったことが問われていると思うんですけど、例えば14ページにも、「学校に児童生徒と教師が集い、共に学び、生活する中で」と書いたんだけど、今、柏木先生おっしゃってくださったことは、ここで何が起きるかですよね。集って、何を目指していくのかということですよね。ただ集っていればいいわけではなくてという、そこに民主主義、そして、民主主義というのは、一人一人の人権が保障されることの基盤だと思いますけど、またそこで公正ということも出てくるんだろうと思いますが、今回そこをすごく強くは出せていないわけです。冒頭の秋田先生の御意見と合わせて、何のために集っているんだというね。ただ触れ合いとか、仲良くなるという話でも全くないですよね。そこをやはりもう一つ越えていかないといけないだろうなと思って、今、伺っていました。ありがとうございます。
 本当に今後、では、学校は何のためにやってきたんだ。今、柏木先生おっしゃったとおりに、そんなに強烈に自覚はしていないけど、日本はそれをやってこられたということですよね。それを更にしっかり自覚して、しっかりやっていくという話かなと思って今伺いました。ありがとうございます。またこれも、この会議はまだまだ続きますので、中間ですので、そんなこともまた、最終のまとめがまたいつかあるんだろうと思いますが、深めていきたいなと思います。
 では、野田委員、お願いします。

【野田委員】  こんにちは。野田です。私の方は、どちらかといえば、いつも言いますように、生徒指導、教育相談的な視点からということになるかと思いますが、オンラインの部分あるいは学校と学校内の学びと学校外の学び等々、今回、非常にバランスの難しいところを上手におまとめいただいているなということで、もう総論大賛成という状況です。その中で、先ほどのオンラインもそうですし、あるいは不登校対応であるとかという、「個別最適」あるいは「状況に応じて」というような言葉が幾つか散りばめられているんですが、問題はそれをどういう手法で、あるいは誰がどんなふうに明らかにしていくのかという、そこのところ。これはこの報告、まして、中間まとめの段階で書くべきものかどうかということは一旦置いておいても、やはりそこの難しさというところが先ほど御指摘ありました不登校の増加であるとか、あるいはそもそもの要因は何なんだというところのつかまえ方の問題だと思うんです。
 私は、そこをひっくるめればアセスメントということになるんですけども、そのことに関わって、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーについて言及していただいている部分もあるんですが、全体のトーンがどうしても学校イコール教員がというニュアンスが強い。働き方改革等々含めて、この間、学校教育法施行規則の65条以降の職員の 部分、これが見るたびにどんどん膨れ上がって、要するに、学校に多様な職員がどんどん位置付けられている。この部分の活用の方向性というか、あるいはその部分の意識化というか、もっと言えば、チーム学校としての充実みたいな方向性というのがもうちょっとあってもいいのかなという点が1点です。
 それからもう一つ、黒沢委員もおっしゃっていただいた部分ですけども、先ほどの学校だけではなくて、ネットワークでという中で、保護者と地域は出ているんですが、是非とも関係機関、この関係機関とのつなげ方というのにまた工夫も要りますが、そういった関係機関連携のようなことも視野に入れていただけると有り難いかなと。思いはいろいろな部分でありますけども、技術的な部分でのお願いは以上、2点ということになりますが、よろしくお願いします。

【奈須主査】  ありがとうございました。委員の皆さんから意見をいただきましたが、皆さんの御協力でとても早く進行しております。言い残したとか、別な委員の御意見を聞いて、ああ、ここはこうだということが追加でございましたら、挙手願えればと思いますが。よろしいですか。あるいは先ほど荒瀬先生からありましたけど、今日はPISAなど、ほかの参考資料も出ていますが、それについてこの機会にということがもしございましたら、いかがでしょうか。よろしいですかね。
 それでは、皆さんから意見いただきましたので、ここで一度議論は終わりにしたいと思います。本日、皆様方からいただいた意見を踏まえて、事務局において必要な修正、また、それに関わって御相談なども申し上げるかもしれませんが、中間まとめとして、括弧を取った形で取りまとめをしていきたいと思いますけれど、この先の手続ですが、秋田主査代理にも御相談させていただきながら、主査である私に御一任いただければと思いますけども、よろしいでしょうか。はい。それでは、しっかり何とかやっていきたいと思います。よろしくお願いいたします。
 最後に、いろいろ意見いただいたので、事務局より一言御挨拶を頂戴したいと思います。小畑教育制度改革室長、安彦審議官の順でお願いできればと思います。

【小畑教育制度改革室長】  小畑でございます。本日も大変貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございます。事務局の方で準備させていただいた内容、先生方の思いがしっかりと伝わるように、誤解のないようにいろいろ配慮すべき点、欠けているところがあった部分も含めて、様々御指摘いただきました。先生方からいただいた御意見の内容がしっかり伝わるように事務局としても本日いただいた内容を踏まえて、修正、検討をしっかりさせていただきたいと思います。また、奈須先生、秋田先生と御相談させていただきながらまとめさせていただきたいと思っております。本日もどうもありがとうございました。

【奈須主査】  ありがとうございました。
 それでは、安彦審議官、お願いいたします。

【安彦審議官】  義務教育ワーキングの中間まとめを取りまとめられているので、一言だけ御挨拶させていただきます。昨年12月から1年ちょっと事前に御議論いただいたということですが、奈須主査、秋田主査代理をはじめまして、委員の皆様方、本当にありがとうございました。感謝いたします。
 このまとめを契機に、これから次のステージへの検討ということに回っていく、次期学習指導要領の改訂という話もありましたけれども、まずは現行の学習指導をより良く実施していくということも大事で、それと両方合わせながら、今後の検討を進めていくということになろうかと思います。また委員の皆様方にはいろいろとお世話になります。
 先ほど教師や学校だけで何でもやろうとするという学校運営の自前主義からの脱却の部分、御指摘いただいていたかと思います。正にそこの部分のところが学校の中で非常に課題になっておりまして、やはり信頼に基づいて対等な関係を構築できる状況になっているのかというのをやはり見詰め直すというのはとても大事でありまして、今、私は、初等中等教育局の審議官とともに、学校と地域を連携する担当の仕事も請け負っておりまして、特に学校運営協議会、コミュニティ・スクールと言われているものですけれども、こちらも目指す方向性、非常に、正に学校運営の自前主義から脱却するツールとしても非常に効果的ですが、まだ全体で52.3%、公立の学校ですけれども、半分ちょっとに留まっているということで、これは教育委員会が学校に導入することが努力義務として法令上、位置付けられているにもかかわらず、まだまだ浸透していないということがあります。
 黒沢委員からも御指摘ありましたように、関係省庁の関係機関との連携もこういったところを通じてやると非常にスムーズにいくわけですが、それは学校現場任せではあり、不十分だということで、近頃はコミュニティ・スクールのつながり先として、福祉団体、医療の関係団体も含めまして、ネットワークづくりというのは、関係省庁に声をかけて、いろいろな団体の皆さんを紹介していただいて進めているところでございます。
 特に児童委員さんとか、学校の外である子供たちのことを非常によく知っておりまして、そういった方が学校の中に入ると、当然コミュニティ・スクールの委員も児童委員もどちらも非常勤なので守秘義務をかけられるというところで、そういった子供の情報も共有できるという非常に強みがあります。どうしても地域と連携しているからコミュニティ・スクールをやらなくてもいいやとなりがちですけども、そういった守秘義務がかかった同士でしっかり子供を見詰めていくことを通して、やはり先生方も管理職の先生だけではなく、一人一人の先生方も非常に楽になります。
 外から子供たちを見守ると、不適切な行動が1,046件、毎年あったのが数件に減ったり、不登校が減ったり、様々な効果も期待できるところでございますので、また、子供の意見表明の場という話もありましたけども、これはコミュニティ・スクールの中で、生徒会が定期的に意見を表明するとか、そこで議論して、校則、どうなんだろう、ああなんだろうという話をすると、大人の視点も子供の視点も両方あって、そういうフラットな関係で教育を議論するという非常に面白いコミュニティ・スクールをつくっているところもありますので、コミュニティ・スクールをつくったら、何でも問題が解決するわけではありませんが、そういった取組を通じて、地域と社会と家庭がうまく教育というキーワードでつながっていくというのはとても大事だと思っておりますので、その辺、文科省としてもしっかりと支援していきたいと思っております。本当にこれまでの議論ありがとうございました。またこれからもよろしくお願いいたします。
 以上です。

【奈須主査】  ありがとうございました。安彦審議官、小畑室長の見事なバトンリレーの中で連続的に有機的にいろいろな展開ができたと思って、感謝を申し上げたいと思います。主査として私もちょっと思うところを一言お話をさせていただこうかなと思うんですが、今回、中間まとめの冒頭のところ、今日的な課題ということで、コロナの話、それから、不登校を典型とする児童生徒の指導上の問題点、一方で、質の高い教員の確保という問題で、そこを何とか切り抜けていく強力なツールとしての情報化という四つが出ていますけれども、私自身、皆さん、どうだったかな。この不登校の問題と教員不足の問題は、私は別なことのように思っていたんですけど、この間、ある方とお話ししていたら、一緒じゃないかと言われて、つまり、教員の成り手が少ないというのは大人の不登校だと言われるんですね。私も養成系の出身ですので、夢や希望を感じながら18歳で教育学部に行きましたけど、そういう若者が減っているということは、僕らが若い時に感じたような学校という場所、教職ということに対する、平板に言えば魅力ですが、もっとはっきり言うと、やりたいことがやれないと思っているんじゃないかと思うんですね。
 私は教育学部に入った時に、「何でおまえは教師になるんだ」と先輩に言われて、「おまえにしかやれない授業をやるために教師になるんだ」と、18歳の時に言われました。それは手前勝手な授業をするということじゃなくて、自分が子供たちにとっていいと思える授業を自信を持ってできる教師になる。それは、私がやりたい授業のことをしっかりと考えるということなんだと思うんですね。以前、不登校の子供が、「学校にはやらなきゃいけないこととやっちゃいけないことしかないから僕は行かない」と言ったという話を申し上げました。つまり、学校にやりたいことがない。やりたいことが存分にやれない。実は、子供はやらなきゃいけないこともやる気でいるんですね。けれど、自分にできるようにやらせてもらえないということが不登校につながっているんじゃないかという話を申し上げたことがありますけども、ひょっとしたら先生もそうかもしれないと、ここのところ思っていて、つまり、私がいいと思う教育をじっくり勉強して、先輩と一緒にやり取りをしながら鍛え上げて、そして、子供たちにそれをぶつけるということができる場所に、残念ながら、今の学校はなっていないのかなと。忙しさということもありますし、いろいろな規制もあるかもしれませんし、先生方や学校文化がそれを自己規制させているような、まさに同調圧力のようなものもあるかもしれませんが、何かその辺が変わらないと教員の成り手も増えないし、成り手が増えたところでやらなきゃいけないことをこなす教員が増えたって、多分僕らが目指す学校にはならないですよね。
 だから、子供がやりたいことを存分にやれる、今回もかなり強い言葉で、33ページ最後のところに、「子供の学ぶ権利を保障するものとして、子供たちにとって学びたいこと、やりたいことがたくさんある、わくわく感に溢れた」という表現がありますが、こういう文書ではめずらしいと思いますが、もうこういう表現をせざるを得ないというか、ここにかけていきたいという思いを事務局から感じるんですけど、教師や学校関係者、教育委員会も含めて、こうなっていくといいなとみんな思っているんじゃないか。簡単にはそうはならないと思いますけど、ただ、それをどういうふうに制度的に保障していくのか。そうなると、いろいろな意味で、少し日本はいろいろな規制も厳しいですよね。
 前、海外の様子を伺った時に、時数がこんなに事細かく決まっている先進国なんか日本だけだという話もありましたけれども、あるいは教科書をやらなきゃいけないものだと先生方は思っているとか、やはり先生方にとってもやらなきゃいけないことだらけになっていて、それを上手に自分がやりたいこと、そしてそれはこの子たちにとってもいいなと思えることですが、そんな授業を存分にやっていく。すると、子供にとって最大の教材は教師の背中ですから、教師がそういうやりたいことを存分にやって、生き生きとしている先生を見れば、子供もそういうふうになってくるし、子供同士の関係もそういうものを相互に認め合うようになってくるじゃないかなと、ちょっと牧歌的な言い方ですが、でも、案外と大事なことだとは思っていて。今日もありましたが、どうしてもこういう政策に関わるものは、規制とかガイドラインとなりがちですけれども、ここはしっかりやっていきましょうとか、ここはうまくやれていますよとか、ここは課題ですよということは丁寧に示していって、御理解をいただきながら、その中にいろいろなお立場の方が、だったら自分はここをこんなふうにやっていこうと思えるような何かきっかけといいますかね。ヒントを出せるような、やりたいことをこの中に見いだせるようなものにしていきたい。
 難しいですけれども、そんなことをまた考えて、課題を解決すると同時にやはり夢を描くと言うんですかね。それは別なものじゃないはずなので、問題を解決するというのは、単なる課題解決ではないはずなので、何かそんなことを少し。子供の方については、とても今回そこに向かっていると思うんですが、それを担う先生もそうかなと、この間、ある人と話をして、考えておりました。余計な話を申し上げました。
 とても早く終わりましたけれども、事務局案がとても良かったんだと思うので、皆さんの御意見、一応現状では出尽くしたかと思うので、これで終わろうと思います。
 事務局にお返しをしますが、お願いします。

【小畑教育制度改革室長】  ありがとうございました。先生方、最後、奈須先生も大変貴重な御意見いただきまして、ありがとうございました。先生方の思いをしっかり届けられるように、最後、奈須先生からいただいたコメントも含めて、しっかりこの中間まとめに反映させて載せていきたいと思っております。ありがとうございます。
 事務局からは特に。以上でございます。

【奈須主査】  それでは、随分早いですけども、早く終わるのはいいことなので、ブラックになってはいけないので。予定していた議事は終了しましたので、これで閉会いたします。ありがとうございました。引き続きよろしくお願いします。
 
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