義務教育の在り方ワーキンググループ(第8回)議事録

1.日時

令和5年8月24日(木曜日)9時30分~11時00分

2.場所

文部科学省 (※WEB会議も併用)
(東京都千代田区霞が関3-2-2)

3.議題

  1. 遠隔教育について
  2. 有識者からの御発表 ・2学びの多様性(3)学びにおけるオンラインの活用
  3. その他

4.議事録

【奈須主査】  では、定刻となりましたので、ただいまから中央教育審議会初等中等教育分科会 個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実に向けた学校教育の在り方に関する特別部会 義務教育の在り方ワーキンググループの第8回を開催いたします。
 皆様、御多忙の中、御出席いただきましてありがとうございます。本日の議事に入ります前に、前回の開催以降、事務局に人事異動があったとのことですので、事務局から御紹介をお願いいたします。

【前田教育制度改革室長】  おはようございます。本日、どうぞよろしくお願いいたします。
 ちょっと所用で遅れておりますけれども、事務局の人事異動につきまして、8月8日付で、大臣官房学習基盤審議官に浅野が着任しておりますので、御報告させていただきます。
 以上でございます。

【奈須主査】  ありがとうございます。
 続いて、本日の会議開催方式及び資料につきまして、事務局より説明をお願いいたします。

【前田教育制度改革室長】  本日の開催方式でございますけれども、対面、ウェブ会議の併用とさせていただいております。ウェブ会議から参加されている先生方、今日は大変多くなっておりますけれども、大変恐れ入りますが、御発言時以外はマイクをミュートにしていただきますようお願いいたします。カメラにつきましては、御発言時以外も含めて、会議中はオンにしていただきますようよろしくお願いいたします。どうぞ御理解のほどお願いいたします。
 資料の確認でございますけれども、本日の資料は、議事次第にございますとおり、資料1-1から資料3まで、加えて参考資料1から参考資料3となっております。この参考資料1は、前回の本ワーキンググループにおける主な意見をまとめたものでございまして、参考資料2と参考資料3は、前回お配りしたものと同じでございます。本年3月に取りまとめていただきました論点整理と検討のための関連資料ということになっております。
 以上でございます。

【奈須主査】  ありがとうございました。
 それでは、議題に入りたいと思います。
 本日の議題は二つございます。まず、議題1、遠隔教育について、事務局から御説明をいただいた後、議題2として、参考資料2の論点整理のうち、2.学びの多様性(3)学びにおけるオンラインの活用に関して、北海道教育委員会、幌延町教育委員会、幌延町立幌延中学校、そして、茨城県教育委員会から御発表をいただきたいと思います。
 なお、本日は、報道関係者と一般の方向けに、本会議の模様をYouTubeにて配信しておりますので、御承知おきください。
 それでは、議題1、遠隔教育について、事務局より資料の御説明をお願いいたします。

【前田教育制度改革室長】  それでは、資料1-1から説明させていただきます。画面共有をお願いします。
 論点整理の本日の議題でございます、学びにおけるオンラインの活用についての抜粋部分を改めて掲載させていただいています。
 問題意識や課題を御覧いただきますと、オンラインの意義・活用用途といたしまして、山間地域や離島の小規模校では、地理的・空間的制約を乗り越えるために、協働的に学ぶ上でオンラインが有効である。
 二つ目としまして、人々の働き方や生活スタイルが多様化していることなどを踏まえ、学校規模以外にも学びの充実という観点から、オンラインの活用用途は様々。
 三つ目といたしまして、同時双方型の授業への接続だけではなくて、子供たちが個々の関心に応じて他校の子供と接続し、学びを深めるといった活用。
 四つ目としまして、様々なオンライン活用用途についての実践事例の創出が必要というふうにさせていただいております。
 主な論点としまして、右側へまいりますと、オンラインの活用について、学びを行う者が置かれている状況や属性を考慮して、遠隔教育特例校制度も含めた制度面や運用面の課題の整理と、柔軟な活用の在り方について検討することが必要。
 二つ目としまして、実践・優良事例を全国で共有する仕組について検討することが必要としております。
 それから、問題意識や課題へまいりまして、義務教育におけるオンラインの活用ということで、オンラインが今後更に当たり前のインフラとなってくる中で、学校に登校して学ぶという原則に加えて、オンラインの学びをどのように活用すると有効か、議論が必要ではないか。
 これを受ける形の論点としまして、オンラインでの学びと、学校に登校して学ぶことの関係について、義務教育の意義を踏まえて、どういう状況下で、どういう子供を想定しているのか整理が必要というふうにしております。これらの論点整理の本日の議題における3月の時点での論点のまとめということになっております。
 それから、資料1-2でございますけれども、現状の遠隔教育についてということで、これまでの関連の資料の中でも示しておりましたけれども、改めて紹介させていただきます。
 次のページにまいりますと、遠隔教育の類型でございますけれども、便宜上、この三つの類型に分けております。合同授業型、教師支援型、教科・科目充実型がございますけれども、左からまいりますと、合同授業型としまして、多様な意見や考えに触れたり、協働して学習に取り組んだりする機会の充実、遠隔合同学習と言われているものでございます。
 それから、教師支援型ということで、ALTや専門家といった方々から、児童生徒の学習活動の質を高めるとともに、教員の資質の向上、そういった方の授業を見るということでございますけれども、資質向上を図るという形。
 一番右側にまいりますと、教科・科目充実型として、高等学校段階のみと書いてございますのは、これは全て各学校の御判断でできるということでございますが、一つ目が、多様な学習機会の充実を図るということで、同時双方向型として、教科の免許状を有する教師が送信側から受信側に対して授業を行いまして、一方、受け手の受信側の当該学校の教師については、その免許状の有無は問わないということで、こういった類型がございます。
 次のスライドでございますけれども、それぞれの遠隔教育の活用場面・効果について紹介しているものでございますが、左が、例えば海外の学校との交流学習、小規模校の課題解消に向けた合同授業でございますとか、真ん中へまいりますと、教科の学びを深める遠隔教育ということで、大学と接続する形で小学校におけるプログラミング教育、あるいは社会教育施設を見学するということで、バーチャル見学といったような形でございます。
 右にまいりますと、これは個々の児童生徒の状況に応じた遠隔教育ということで、外国人児童生徒の日本語指導でございますとか、病気療養児に対する学習指導、こういったことが活用場面・効果について考えられるところでございます。
 次のスライドにまいりますと、先ほど御紹介しました教科・科目充実型でございますけれども、高校における今の取扱いでございますが、生徒数、原則として40人以下、それから、配信側は受信側の高校の身分を有することといったようなことが決まっております。
 また、受信側につきまして、原則として教員を配置するということになっておりまして、その他としまして、遠隔授業を行う教科・科目等の特質に応じ、対面により行う授業を相当の時間数を行うこと。これについては、36単位を上限とするというふうになっております。
 現在、高校ワーキングで、この辺りについても御議論いただいているところでございますけれども、現状については、今こういう仕組みになってございます。
 次のスライドをお願いします。
 一方で、今、これに対応する義務教育での形でございますけれども、遠隔教育特例校制度というものでございまして、大きな枠組みは同じでございますけれども、右側の赤い枠の図を御覧いただきますと、「C教諭」と書いてあるところが配信側でございますけれども、中学校、例えば英語でございますと、英語の免許状を持っていて、受信側の教員の身分も有して兼務発令をする必要がございますけれども、そこから受信側の方で、「B教諭」と書いておりますけれども、このB教諭は英語の免許状を保有していなくても、教員であればいいということでございますが、一方で、教員であるということについては求められているということでございます。
 それから、指定の要件のところでございますけれども、これは指定でございますので、高校とは違いまして、文部科学大臣の指定が必要となってございます。申請書を提出していただくことになっておりますけれども、その要件として幾つかございますけれども、一つ目が文字、音声、静止画、動画等の情報を一体的に扱い、同時双方向で行えるもので、対面により行う授業に相当する教育効果を有する者であることということで、幾つかございますが、下から二つ目のポツでございますけれども、ここにおきましても、特に対面により行う授業を相当の時間数を行うことと規定をしております。ただ、高校とは違いまして、この対面により行う授業の相当の時間数というのは、幾つまでだということはお示ししてございませんで、相当の時間数ということで、要件として、今、決めておるところでございます。
 次のスライドでございますけれども、現在、遠隔教育特例校、令和元年に始まった制度でございますけれども、令和4年度では中学校12校ということで、今御覧いただいております学校において遠隔教育特例校をやっておりますけれども、下の少し色がかったグレーのところについては、指定は受けてございますけれども、遠隔教育を実施しない。例えば、長崎県五島市の久賀中学校でございますと、これはフェリーで天候が悪いときのみそういったことをやるということでございましたけれども、令和4年度はそういう場面がなかったということで、実際には遠隔教育を実施していないということでございます。
 それから、次のスライドでございますけれども、遠隔教育を実施した教科でございますけれども、外国語が一番多い教科になってございます。
 また、受信側の生徒数、1名から40名と人数にばらつきがございますけれども、右のグラフを御覧いただきますと、薄いピンクのところが受信側の生徒人数、ブルーが配信側の生徒人数というふうになっております。配信側には生徒がいない(0人)の場合が、御覧のように半数が占めておるということでございます。ばらつきが結構ございまして、生徒数が比較的多い学校から少ない学校に配信している場合がほとんどでございます。
 次のスライドにまいりまして、先ほどの病気療養児の取扱いでございますけれども、これは平成30年の時の整理でございますが、小中学校段階における病気療養児に対する同時双方向型授業を行った場合の指導要録上の出席の取扱いというものでございます。
 通知の概要のところを御覧いただきますと、小中学校において、病院や自宅で療養中の病気療養児に対して、インターネット等のメディアを利用してリアルタイムに授業を配信し、同時かつ双方向にやり取りを行った場合、校長は指導要録上「出席扱い」とすること。また、その成果を当該教科の評価に反映することができるというふうにしてございました。
 次のスライドでございますけれども、それを今般改正いたしまして、小中学校段階、高等学校段階、両方ございますけれども、赤い字の背景のところの薄い黄色のところを御覧いただきますと、病気療養中の児童生徒については、本人の病状に加え、治療の状況によって学習時間が前後することもあり、リアルタイムで授業を配信する双方向型のみでは、教育機会を十分に保障できない可能性があるということで、事前に録画した動画を視聴するオンデマンド型の授業配信を可能とする必要があるという背景を踏まえまして、改正内容として、小中学校段階におきまして、同時双方向型を原則としながらも、オンデマンド型授業配信による指導要録上の出席扱いを可能としております。
 また、高等学校段階におきましても、学校の御判断でのオンデマンド型の授業による単位認定を可能としております。
 最後のスライドでございますけれども、不登校児童生徒の出席扱いにつきましても、上から二つ目の薄い黄色のところでございますが、不登校児童生徒が自宅においてICT等を活用した学習活動を行った場合、校長は指導要録上出席扱いとすること及びその成果を評価に反映することができるとしております。出席扱いの要件は幾つかございますけれども、こういった要件の下に、不登校児童生徒の出席扱いというものが、令和元年に整理をされてございます。
 事務局からは、資料1-1、それから資料1-2について、説明は以上となります。

【奈須主査】  ありがとうございます。
 それでは、続いて、議題2、有識者からの御発表に移りたいと思います。
 冒頭でお話し申し上げたとおり、本日は、論点整理のうち、資料1-1にありますとおり、2.学びの多様性⑶学びにおけるオンラインの活用について、具体の議論を進められればと思います。
 本日の議論に資する話題を提供いただくため、北海道教育委員会、幌延町教育委員会、幌延町立幌延中学校から約20分、茨城県教育委員会から約20分、続けて御発表をいただき、その後、まとめて40分程度、質疑や議論の時間とさせていただきたいと思います。
 北海道教育委員会からは、学校教育局義務教育課課長の遠藤様、北海道幌延町教育委員会からは、教育長の青木様、総務学校グループ係長の椿様、幌延町立幌延中学校からは、校長の小野様、茨城県教育委員会からは、学校教育部義務教育課指導担当の蛯原様に御参加いただいております。どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、まず、北海道教育委員会、幌延町教育委員会、幌延町立幌延中学校より御発表をお願いいたします。

【遠藤義務教育課長】  北海道教育庁学校教育局義務教育課の遠藤と申します。
 資料2に基づき、北海道の小規模校における遠隔教育特例校制度を含めたオンラインの活用について、幌延町教育委員会の取組を中心に説明します。
 説明の流れについては、最初に私から北海道の現状や課題について、次に幌延町から遠隔教育特例校の実践について、最後にその他の市町村の実践や今後の展望について説明します。
 まず、本道の状況についてです。
 北海道は、広域分散型という地理的特性があり、人口密度は全国で最も小さくなっています。加えて、本道の児童生徒数は減少傾向にあり、それに伴い、令和4年度の学校数は、平成30年度と比較すると、小学校で65校、中学校で9校減少しております。
 また、域内に小中学校各1校の市町村は50であり、域内に中学校1校の市町村を合わせると96市町村になります。
 本道においては、少子化や過疎化が進行し、児童生徒数及び学校数の減少に伴い、小規模校、複式学級を有する学校が多くあります。
 小規模校では、きめ細やかな個別指導が行いやすいなどの利点がある一方、社会性の育成に一定の制約が生じるなどの課題があり、教育の機会均等や水準の維持向上の観点から、課題解決の方策の一つとして、ICTを活用した遠隔教育の推進が必要と考えます。
 こうした本道の現状や課題を踏まえ、ここで道内において遠隔教育を推進し、国の遠隔教育特例校の指定を受けております幌延町の実践を発表いたします。

【青木教育長】  教育長の青木といいます。よろしくお願いします。
 幌延町の紹介ですが、資料にあるとおりですので、時間がもったいないですので、私から本町の教育について簡単にお話ししたいと思います。
 幌延町の教育目標ですが、今年4月1日に改定しました。「持続可能な社会の創り手となる子ども」を育成、キーワードとしては、「自律・尊重・協働」を挙げております。
 遠隔教育特例校の指定を受け、北海道教育大学の支援を受けながら、幌延中学校、免許状所有教員の遠隔授業により、問寒別中学校において、より専門性の高い授業を実施するとともに、教育委員会としては、僻地校である問寒別中学校でも同等の教育を受ける権利、つまり、町内の子供を誰一人取り残すことなく学ぶ権利の保障をしたいなと思っております。そのため、本校は特例校制度を活用しているところです。
 今後、北海道には、本町のような僻地校を抱えている学校も多数あることから、汎用性のある研究を進め、広く周知を図っていきたいと考えております。
 この後、各担当から詳細について説明させていただきます。ありがとうございます。

【椿総務学校グループ係長】  幌延町教育委員会でICTを担当しております椿と申します。よろしくお願いいたします。
 本町では、平成7年度から当時の文部省の指定事業を受けて、テレビ会議システム等を活用した僻地学校教育の充実のため、以前より研究に取り組んでおりました。現在実施を継続しております通年での遠隔授業は、問寒別中学校の学級数、生徒数の減少に伴い、配置教員数も減少し、5教科免許所有教員が配置できない状況となったことから、問寒別中学校の生徒がより専門性の高い授業を受けられるように、平成29年度から実施をしております。
 各年度の実施教科は、表に記載しておりますとおりです。
 令和元年度は遠隔教育システム導入実証研究事業、令和2年度は新時代の学びにおける先端技術導入実証研究事業の指定を受け、SINETの活用や、遠隔システムを活用した教職員研修について実証研究を行っております。
 令和3年度からは、遠隔教育特例校制度を活用しているほか、異なる地域実態のある2校生徒の意見交換や交流を通じた考えを深める授業の展開を目的に、道徳科においても通年の遠隔合同学習を実施しております。
 各教科の遠隔授業の年間実施時数は、月数回の対面授業を除いたものになりますので、年間指導時数のほとんどを遠隔で2校接続していることになります。
 また、本町においては、この後御説明いたします遠隔教育の環境が町内全ての学校にあることから、小学校における遠隔合同学習も必要に応じて実施されておりますので、児童生徒は遠隔授業に対する慣れから、抵抗感なく、対面授業同様に取り組むことができていると考えております。
 本町における遠隔教育の実施状況に関わって、実施環境を御紹介いたします。
 上段の写真は、テレビ会議システムを活用しているものです。映像が鮮明で、教室に常設することで準備の手間がかからない等のメリットがあることから長く運用してまいりましたが、現在は、資料や教材、画面共有ができることから、下段写真のように、1人1台端末のChromebookを活用し遠隔授業を実施することが多くなってきております。
 この後は、遠隔教育の取組内容について御説明いたします。

【小野校長】  それでは、日常的な取組の授業の実際について、配信校側の校長であります小野から御説明させていただきます。
 特例校の指定を受けています幌延町立問寒別中学校は、幌延中学校から30キロメートルほど離れたところに位置します。厳密に言えば小中併置校になりますけれども、全校生徒3名、教員3名、中学校二、三年の複式学級と特別支援学級となります。
 一方、配信側となる本校は、全校生徒52名、教職員15名、通常学級3、特別支援学級2となります。免許外加配教員制度を活用しているので、本校には9教科の教員が在籍しています。
 取組の概要は、例えば、この図に示すように、A教諭が幌延中学校から本務校の3年A組で授業を行い、問寒別中学校の3年A組に対して同授業を配信、遠隔授業を行います。問寒別中学校のB教諭は、担当教員として授業に入り、直接の指導、支援を行います。このとき、先ほど紹介がありました2校間の専用遠隔システムの活用、Google Meetの活用、その併用と、教科担当の教員が授業しやすい方法で行っています。
 取組の実際になります。
 以前は、教材準備にかかるワークシートやプリント印刷業務、配信側の共有と担当教諭との事前打合せが必要でしたが、GIGAスクールの実現により、教材についてもデータ共有を図ることができ、生徒用の端末からアクセスができ、その業務も軽減され、担当教諭としての関わりに特化できるようになりました。
 遠隔授業の教科が毎年変わってくると、配信側の教員の負担にならないかと思われる方が少なからずいるかと思いますけれども、現在、高等学校、大学等におけるオンライン授業、企業等においてはテレワークが行われている実態から鑑みると、これからの教員には必要なのかもしれません。だからこそ担当になった教員は前向きに取り組んでくれています。それが教員養成段階から経験を積んできてくれることを学校にいる者としては願っているところです。
 また、円滑に推進していく上で大切なのは、教務間の連携でもあります。特に、時間割の調整や学校間で異なる日課表の調整になります。ある程度時間割を固定していても、各校によって行事等が異なり、問寒別中学校は小中併置校ということもあり、日課表の調整も必要になります。ここを教務間で連携を密に図ってもらい、かつ、配信側の日課表に近づけてもらっていることが大きいです。
 この取組について、北海道教育大学僻地・小規模校教育センターで、映像で紹介していただいておりますので、一部御覧いただければと思います。

(動画再生)

【小野校長】  取り組んでいる教職員、生徒からは、次のような形で声が上がっております。
 一つが、生徒が専門の教員による授業を受けられるというふうな部分で、ここに書かれていることについては、大体前向きな意見があります。
 それから、受信校側教員の役割についてですが、教員を必ず配置することを求めていることについては、生徒の立場から見ると、受信校側の教員が横にいるだけで心強いと思っております。学習支援、それから教員以外の者でも良いとの声については、授業を受ける生徒や配信側の教員との信頼関係が大きいように思います。
 評価評定についても、受信校の評価基準に精通しているのであれば代替は考えられますが、現行の支援体制から見ると難しいように感じます。
 受信校側の生徒からは、配信側の生徒と一緒に楽しく授業を受けられるというふうな形で、前向きな部分はあるんですけれども、遠隔で受けられるのは良いのだけれども、英語の授業は対面の方がやりやすいというような本音のような感想もあります。
 あわせて、課題については、オンライン上の問題が挙げられるということがあります。
 それから、配信側の教職員からは、受信側、配信側の生徒同士で遠隔でのコミュニケーションの方法を工夫するなど、情報活用能力の育成にもつながっているような部分がありまして、この辺についても前向きな声が上がっているところであります。
 配信側の生徒からすると、遠隔によって、実際には、問寒別中学校の生徒は対面授業と同様にグループ活動も教え合えるといった部分で、本当の意味で一緒にやっているという、その良い面が感じられるというような感想があります。
 受信校側の保護者からすると、一対一でやってほしいといったところはあるんですけれども、学校運営協議会等において、保護者からは、「専門の教員による授業が受けられるなど、子どもの教育環境及び活動が充実している」ということで、肯定的な意見が寄せられているところであります。
 対面授業については、月1回から2回、合同授業という形で実施をしております。対面授業では、英語で話すことや、理科の実験の実施など、コミュニケーションや安全機器の使用等の観点から対面が望ましいと考えられるものを中心に実施しています。
 あわせて、授業者である教員に分からないことを聞く直接の機会であったり、配信側の教員が受信側の生徒の学習状況を把握したり、また、定期的に生徒同士で顔を合わせることにより、協働的な学びの充実につながっていくことも大きな効果であり、教員同士の情報共有の機会でもあります。
 以上、取組の概要について説明させていただきました。幌延中学校は以上となります。

【遠藤義務教育課長】  ここからは、幌延町に引き続き、北海道内の市町村における実践を紹介いたします。
 まず、同じ町内における小規模校同士の取組です。
 北海道の東に位置する別海町では、町の教育施策として実施している「生きる力アッププロジェクト」事業の一環として、教育委員会が主体となって、小規模複式校同士の遠隔授業を実施しています。
 次に、近隣の村と村における小規模校同士の取組です。
 北海道の西側に隣接する神恵内村と泊村は、小規模校の小学校が1校ずつであり、両教育委員会が教育連携に関する協定を結び、対面やオンラインによる合同授業を実施しています。
 次に、同エリア内の他市間における小規模校同士の取組です。
 北海道の中央に位置する空知エリア内では、岩見沢市教育委員会が所管する教育研究所が、調査事業として他市町等の学校との遠隔学習を企画し、学校間の調整等をサポートしながら実施をしています。
 最後に、同町内における中学校と小学校の取組です。
 北海道の中央に位置する東神楽町では、町教育委員会が中心となり、義務教育9年間を通して子供たちを育てていく小中一貫教育を推進しており、継続的に中学校教員が専門性を生かし、中学校区の単式小学校と小規模小学校の遠隔合同授業を行っています。
 今後の展望についてです。
 義務教育における遠隔学習の実施に当たっては、実施日や学習進度の調整、教員間の打合せ、遠隔学習を希望する学校の情報収集に時間や労力がかかるなどの課題はありますが、本道のような広域分散型の地域では、今後、遠隔教育を一層推進していく必要があります。
 そのため、北海道教育委員会としては、道独自の英語教育推進事業において、他エリアの事業指定校の児童生徒と英語でコミュニケーションを図る遠隔授業の実施、また、遠隔交流を希望する学校を取りまとめ、マッチングを促進するコミュニティサイトの開設などに取り組むとともに、各地域の実践を収集し、簡易的に取り組める事例などをまとめ、道内の市町村教育委員会及び学校に普及啓発をしてまいります。
 また、道立高等学校の小規模校化の課題に対応するため、北海道教育委員会では、令和3年4月に遠隔授業配信センター、愛称「T-base」を開設し、道内の小規模高等学校に授業の配信等を行うなど、教育課程や教育活動の充実を図り、多様な進路を目指す全道各地の高校生のサポートに努めております。
 今後は、こうしたノウハウを義務教育においても参考にしていくことが大切な要素になると考えております。
 以上で、北海道の説明を終わります。ありがとうございました。

【奈須主査】  ありがとうございました。
 続いて、茨城県教育委員会に御発表をいただいてから、質疑応答、議論に入りたいと思います。
 それでは、茨城県教育委員会より御発表をお願いいたします。

【蛯原指導主事】 では、先ほど紹介いただきました、私、茨城県教育庁学校教育部義務教育課の蛯原と申します。本日は、発表の場をいただき、ありがとうございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 では、本日の発表内容は、5点ございます。この順に沿ってお伝えしてまいります。
 1点目は、遠隔教育特例校を提案した理由です。
 2点目は、遠隔教育特例校制度活用の成果についてです。
 3点目は、実践事例として、ピンポイント型遠隔教育の紹介をいたします。ピンポイント型の説明は、実践事例の中で説明いたします。
 4点目は、エリア型遠隔教育の取組についてです。この実践は、遠隔教育特例校での実践ではありませんが、文部科学省からの依頼で紹介をいたします。
 最後の5点目は、遠隔教育特例校制度の活用促進に向けてについてです。
 まず、1点目の遠隔教育特例校を提案した理由についてでございます。
 御覧いただいているのは、平成30年度に本県で作成した資料です。
 御存じのとおり、当時は、児童生徒がいる教室に、当該科目の免許を持つ教員がいなければ授業は成立しませんでした。そこで、本県では、遠隔地から配信する教員が当該科目の免許を持っており、別の学校の教室の子供たちに授業を行う際、その教室にいる教員が当該科目の免許を持っていなくても授業が成立するという新しい考えを提案いたしました。これが実現すれば、遠隔機器を活用し、高度な専門性を持つ人材が授業を行うことができ、どの学校においても児童生徒により質の高い授業を実施することができると考えました。
 当時、学習指導要領が改訂され、プログラミング教育に取り組むに当たり、どのように指導をしたら良いのか、指導主事の間でも不安の声が聞かれました。その解決策の一つが、この遠隔教育特例校を提案した理由の一つでもあります。
 2点目として、この遠隔教育特例校制度を活用した成果についてです。
 本県では、この制度を令和元年度から活用しております。成果の見取りについてですが、実践校の生徒や教員を対象にしたアンケート調査、加えて、授業公開後の感想などを収集しました。それらをまとめると、主な成果として挙げられることは、次の2点です。
 生徒は、遠隔地にいる英語ネイティブ教員や大学教授から指導を受けることができた。習熟度別学習を組み合わせることにより、生徒はニーズに合った指導を受けることができたということです。オンラインの技術とともに、この制度を活用することで教育の質を上げることができました。
 3点目として、具体的な実践として全体の事業内容を説明いたします。
 この遠隔教育特例校の制度を進める前提には、ICT機器を使っての遠隔教育があります。こちらは昨年度の取組内容です。
 本県では、遠隔教育をピンポイント型とエリア型の二つの形態で実施しております。遠隔教育特例校制度を活用しているピンポイント型は、配信校1校に対し、受信校が1校で実施します。つまり、一対一の組合せです。
 授業の形態ですが、配信校に児童生徒はおらず、授業者は、画面越しに受信校に授業を配信しました。
 実践教科等は三つあります。
 一つ目、中学校の英語、二つ目、中学校の技術家庭科、技術分野のプログラミングに関する題材、三つ目として、小学校の総合的な学習の時間において、プログラミングを体験しながら論理的思考力を身につけるための学習活動です。
 英語に関しては、対面指導も随時実施することから、受信校、配信校とも同一市町村に設置しました。また、特例校制度を活用するに当たり、配信校と受信校にそれぞれ1名加配教員を配置しました。中学校の受信校の加配は、この特例校制度の狙いである当該教科の免許を持たない教員を配置しております。
 英語の場合、県が専門性の高い教員採用枠を設け、英語のスペシャリスト教員を採用し、配信校に配置しております。英語スペシャリスト教員とは、ネイティブスピーカーや、英語力に特化した日本人です。今年度までに県内で18人を採用しております。この県の事業では、延べ7人の英語のスペシャリストの先生に、11校、実践を行ってきたところです。
 プログラミングに関しては、第一線級の人材を県内県外問わず探しました。その結果、静岡大学の准教授、茨城工業高等専門学校の教授、東京の民間会社に勤務する社員でプログラマーであり、小中学校プログラミング教育の教材の開発に携わっている方などを任用し、令和元年度から4年度まで、毎年、3人の専門人材に、1人1校、プログラミングの御指導をいただきました。
 こちらがピンポイント型の絵になります。
 こちらがエリア型ということで、こちらは、特例校の制度の活用ではありませんが、簡単に説明をすると、配信校は1校、受信校は2校以上という形です。エリア型においても配信校に児童生徒はおらず、また、配信校と受信校は同一市町村としました。
 教科は、国語、算数、数学で実施しました。
 配信校には、優れた指導力を持つ教員を1名加配しております。
 では、もう少し具体的な取組についてお話をいたします。
 ピンポイント型の英語についてです。
 まず、受信校の学級を習熟度別に英語の得意な生徒をアドバンスクラス、苦手な生徒をスタンダードクラスに分けます。アドバンスクラスには、配信校から英語スペシャリスト教員が授業を配信し、受信校の教室では、英語科の免許を有しない教員が授業のサポートを行います。スタンダードクラスは、受信校の英語科教員が授業を行います。基本的に、週4時間、通年での遠隔授業を想定して取り組んでおります。
 とはいえ、授業は、教師と生徒との信頼関係であったり、人間関係が土台にあったりすると考えています。いきなり画面に出てきた先生の話をすっと受け入れるには抵抗があるものです。そこで、年度当初は、配信校の英語スペシャリスト教員が受信校に赴き、対面による授業を行い、生徒との人間関係作りを行いました。加えて、遠隔教育実施期間内でも、必要に応じて対面による授業を取り入れました。
 例えば、個人で活動する場合、プレゼンテーション資料作成時ですとか、発表の練習の際、または個別のパフォーマンステストを行う際など、対面での指導が効果的と思われる場合は対面で指導に当たります。授業では、ウェブ会議システムを活用し、配信側の教員が画面を通して生徒とインタラクティブなコミュニケーション活動を行い、個別指導を行いました。
 生徒にとっては、配信側の先生の話していることをよく聞かなくてはと集中して聞いたり、自分で伝える場面で、きちんとした発音を心がけたり、ジェスチャーをつけて発表したりするなど、対面での会話より、更に伝えることへの意識を高めてコミュニケーションを取る姿が見られました。
 また、1人1台端末を活用し、配信校から課題の一斉配信や、コメント機能によるアドバイス、共有機能を活用して生徒の学習状況を把握するなど、工夫をしながら指導を行ってきました。
 一方、遠隔授業では、配信校と受信校の教員の打合せも大切です。単元計画や本時の流れ、つけたい資質能力、評価の仕方など、十分に共有して授業に臨みました。
 加えて、その単元計画や、本時の流れ、つけたい資質能力、評価の仕方などを生徒とも共有することで、生徒が、本時の学習で何ができるようになれば良いのか、それには何をすべきか、見通しを持たせて学習させることで、主体的に学ぶ意欲を育めるように努力もしました。
 上の写真は、配信校の教員が受信校の生徒全体に学習内容を指示している場面です。下の写真は、生徒同士がペアになって活動している場面です。この赤の矢印で示しているのが、英語科の免許状を有しない受信校の教員です。この教員が授業で行った支援については、活動が進んでいない生徒に声をかける、生徒と一緒に英語でコミュニケーション活動を行う、生徒の学習の進度を配信校に伝える、機材のトラブルに対応、生徒の疑問を配信校の教員に質問するように促すなどと様々な点で授業をサポートしています。
 次は、遠隔教育特例校制度を活用したピンポイント型プログラミングの実践について説明いたします。
 中学校の技術家庭科、技術分野の遠隔授業の際、受信校の学級を習熟度別に分けるのは英語と同様です。基本的にプログラミングの学習は、中2、中3、それぞれ10時間程度の授業時数となっております。初めの授業では、英語同様、大学の教授等が受信校に赴き、対面授業を行い、その後は遠隔で授業を実施するという形で行ってきました。
 専門人材からは、プログラミングの設定のみならず、プログラミングが実生活でどのように役立っているのかをお話しいただくなど、専門人材の専門性を生かし、生徒の興味・関心を広げる場面も設定いたしました。
 英語の授業を受けた生徒の声を紹介いたします。
 遠隔の授業になってから、今までよりもリアクション(相づち)をするようになったと思う。画面越しにコミュケーションを行うことで、よりジェスチャーの大切さを感じることができた。遠隔の授業を受けて、自分たちで友達と話し合ったり考え合ったりする活動が増えて、考えが深まった。習熟度別学習で、英語の専門人材からの授業を受けられたので、一人一人しっかりアドバイスをもらえた。
 こちらは生徒の声、プログラミングの授業を受けた生徒です。
 遠隔でも、普通に会話ができて分かりやすかった。プログラムの考え方の幅が広がった。先生にプログラムが使われているものの例を教えていただき、今学習しているプログラミングが意外なものにも使われていてびっくりした。専門人材の先生に教わることで、今までできなかったプログラムができるようになった。分からないところをすぐに聞くことができ、その回答が具体的に返ってきたり、細かいことをしっかり教えてくれたりするところが良かった。内容の濃い授業を受けられて良かった。
 続いては教員の声です。まず、英語です。
 スペシャリスト教員による個別の指導を進んで取り入れたことで、生徒の学習に対する興味・関心や理解度が向上した。少人数での授業の充実により、英語を使ってのコミュニケーション量の増加や質の向上も図ることができた。個に応じた指導の充実にもつながっている。アドバンスとスタンダードの両方のクラスにおいて、教材研究や指導法の研修を行い、ネイティブの感覚を生かした授業作りができた。また、遠隔における評価法の在り方についても、共通のルーブリックの活用、合同パフォーマンステストの実施等の導入により、多角的・多面的な評価とともに、評価の平等性についても実践できた。自らアドバンスクラスを選択するシステムにより、10人程度の生徒数での学習が進められ、生徒の意欲やニーズに合わせた授業ができた。
 続いて、プログラミングを実施した教員の声でございます。
 高度な専門性を有した専門人材からの指導で、プログラミングについての理解を深め、より高度なプログラムを作成したり、考えたりすることができた。授業後の振り返りから、学習に対する意欲的な回答が見られ、遠隔授業に見られがちな受け身の学習ではなく、主体的な学習に変化したことが分かった。このことは、遠隔技術と1人1台端末環境により個別のアドバイスを受けられたことから、一人一人の理解度、満足度が高く、学ぶ意欲につながったと考えられる。
 続いて、4点目として、遠隔教育特例校ではありませんが、エリア型の実践を紹介いたします。
 受信校は、少人数学級同士をつなぐことで、多様な意見に触れる機会を創出できます。また、同一中学校区の小学校同士で合同授業をすることで、中1ギャップの解消も狙えます。
 こちらの写真は、受信校2校の生徒同士でグループ活動をしている様子です。1人1台端末の普及により、他校の生徒同士で意見交換等が可能です。ハウリング対策として、ヘッドセットを使用しております。
 授業においては、児童生徒が端末に自分の考えを記入するのに時間がかかってしまうことが想定されます。45分または50分の授業をオーバーしてしまうこともありました。そこで、課題の枠線やまとめの線などはあらかじめ引いておくなどし、児童生徒の活動を減らせるものは減らす工夫をすることで、時間を生み出し、話合いなどの交流の時間を生み出すように努めました。
 教員同士の連携として、教員専用のウェブ会議を設定し、授業中、情報共有している場面です。小学校4年生の算数、L字型の面積の求め方について、長方形を縦に区切って求めている児童の名前を付箋で記入し、更に発表できそうな児童は黄色の付箋で示すなどの工夫をし、この受信校の子供たちの様子を配信側の教員と共有することで、配信側から意図的な指名が可能となりました。
 最後に、遠隔教育特例校制度の活用促進に向けて、1点提案いたします。
 それは、学校長の判断で実施できるようにするということです。教員の配置状況も関係してきますし、年度途中で活用したい場面や、短期間活用したい状況もあるかと思います。実施したいときに、学校長の判断でこの制度が中学校でも使えるようになると、更に良いのではないかと考えます。
 以上で、茨城県の発表を終えます。御清聴ありがとうございました。

【奈須主査】  ありがとうございました。
 それでは、ただいまの御発表に対する質疑応答の時間とさせていただきたいと思います。加えて、先ほどの御発表を踏まえた本日の論点についての御意見もいただければと思います。御発言がございます方は、「手を挙げる」のボタンを押していただき、こちらから指名をいたしましたら、ミュートを解除いただいて、御発言をお願いします。また、御発言が終わりましたら、「手を下げる」のボタンを押して、挙手を取り下げていただくようお願いいたします。あるいは、本日会場から御参加いただいている方は、直接手を挙げる、あるいは名札を立てていただくなどしてお知らせいただければと思います。どうでしょうか。よろしくお願いします。
 それでは、戸ヶ﨑委員、若江委員、今村委員、中川委員の順番にと思います。それから黒沢委員という順番で。
 では、まず戸ヶ﨑委員からお願いいたします。

【戸ヶ﨑委員】  御発表、大変勉強になりました。ありがとうございました。
 令和3年1月に出された「令和の日本型学校教育の中教審答申」で挙げられた地方教育行政の課題等を踏まえ、調査研究協力者会議において延べ15回の議論を重ねて、今回、7月19日にその報告書がまとめられました。その報告書の中では、教育委員会の機能強化・活性化、少子高齢化や過疎化が進展する中で、自治体の規模等による地域間格差が出ないように、小規模の自治体への対応、広域行政の推進のための方策といった事項について、全国の取組事例とともに、具体的な方策等を記載されています。特に、都道府県による小規模自治体への支援などについても記載があります。
 そんな中にあって、北海道内における多様なICTを活用した学校連携の取組は、小規模自治体、小規模校の多くは十分な体制が構築されていない中で、広域自治体としての都道府県教育委員会の果たす役割の好事例だと感じました。
 また、長崎県の教育センター内に県立の遠隔授業配信センターを設置する予定もあるということで、小中学校に対してキャリア教育や探求的な学びを推進する拠点という構想もされています。こちらもICTを活用した学びの充実に向けて、特に体制が脆弱な小規模自治体や学校への支援を都道府県教育委員会が積極的に行っている好事例であると思います。
 遠隔・オンライン教育は、やはり教授者と学習者との間で、時間や空間を超えることができて、学習の幅を広げることが可能になること、また、様々な事情で通学して教育を受けることが困難な子供や個別の学習支援が効果的な子供等にとって、学習機会の確保を図ることが大事になると思います。
 一方で、「一人の優れた教師がいれば、サテライト授業で一度に2,000人くらいは指導できる」と豪語する声をたまに聞くことがあります。この遠隔・オンライン教育は、送信側からは必ずしも子供の様子が明らかでないことがあるために、受信側の教師と連携して、子供一人一人の日々の様子や体調、理解度を確認・判断して、授業中の発問、また机間指導や他者との協働や対話など、受信側の環境にも特に義務教育段階では配慮が必要になると思います。
 参考までに、本市がトライしてきた中で、遠隔・オンライン教育が特に有効だと感じたのは、海外の日本人学校の子供と本市の子供との英語の授業や合同の教員研修です。これは、双方のニーズが一致しているという意味で、大変効果があったのだと感じています。
 そのほかにも、御説明にもありましたが、小規模校の課題解消に向けた合同授業や多様な経験を有する社会人等の講義、さらには、施設等のバーチャル見学等を通した教科の学びの深化や、さらには、外国人の子供への日本語指導、病気療養児に対する学習指導、個々の子供の状況に応じた指導、様々な利用の可能性が考えられると思います。
 最後に、遠隔の教育特例校制度について、意見を申し上げます。幌延町における取組のように、ある意味、遠隔教育特例校制度は、今後、少子化によって学校の小規模化が進む中で、いわゆる免許外に頼らないで、全国どこでも学びの機会を拡大する上で大変効果的な制度だと思います。
 また、今回御発言いただいた幌延町や茨城県のような一部の中学校だけでなく、近年、設置促進が求められている不登校特例校、また、夜間中学にも、この遠隔教育特例制度を活用することで、更なる効果が期待されるのではないかと思います。
 ただ、課題として、先ほどの説明にもございましたが、指定校数が少ないことや、指定を受けている学校においても実施事例が限られてくるという現状があります。今後の活用促進に向けては、例えば遠隔教育の特例制度については、特定せずに拡大して、先ほど最後にお話がありましたが、高校のように、学校長の判断で実施することを可能にしたり、遠隔の教育特例校制度の手引を作成したりして、好事例や制度を活用する上での留意点等をまとめるなどを行うといいのかなというふうに思っています。
 なお、遠隔教育の特例校制度においては、受信側に教師を配置することが要件として求められております。この点について、高校の方のワーキングでは、高校において一定の場合に、受信側の教師の配置を緩和することも検討されているようです。しかし、これは先ほど申し上げたように、義務教育段階においては、子供の発達段階も異なっているため、受信側においてもきめ細かな指導、評価が必要なことから、教師を配置することが引き続き必要ではないかと思います。
 ちょっと長くなってしまいました。ありがとうございます。

【奈須主査】  ありがとうございました。
 それでは、続いて、若江委員、お願いします。

【若江委員】  若江でございます。ありがとうございます。
 多様な事例の御発表、ありがとうございました。
 今日、主に聞かせていただきましたのは、義務教育における遠隔授業ということでしたので、僻地校であるとか小規模校、そして教員の専科の免許の不足みたいなところで、どちらかというと、足らずを補うということの次元での御事例を御発表いただいたのではないかなと思っております。
 実は私、高校のCOREハイスクール・ネットワークのアドバイザーなども幾つかの県でさせていただいているんですが、やはりもともとの発想がそういったところが多くて、教科学習を補う知識技能の提供にとどまっている感が強いなという危惧を持っております。
 ですので、本来、今日、冒頭に奈須先生がおっしゃったように、学びの多様性ですとか、オンラインの活用のもっと未来の展望を考えていくとするならば、総合的な学習、探求の時間等での学びのところに、どのようにもう少し発展して活用していくかという視点が、今の時点からやはり見過ごしてはならないところではないかなと思っております。
 それで、質問なんですけれども、どなたへの質問になるか分かりませんが、児童生徒間の交流学習、授業を受配信、配信・受信ではなく、そういった事例についてです。それをやろうと思えば、時間割の編成だとか、いろいろな課題があるということも承知しておりますが、そういった事例が今後どのように進んでいくのかについてお聞かせいただきたいです。それと、茨城のお話の中にもありましたように、市内ですとか、あと県内というようなところと交流でとどまっていることが多いんですが、やはり、海外の事例もありましたけれども、都道府県を超えての自由な交流、大学、海外も含めてですが、そういった事例がどのようになっているのか、何か制限があったりするのでしょうか。そして、茨城の御発表にも、戸ヶ﨑先生のお話にもありましたけれども、特例校でなければ自由にできないという制限がありそうだということを、今日、私は初めて知ったんですけれども、これがどのように緩和され、拡大・発展されていくことに大いに期待をしたいところです。
 ですので、よくICTの活用で申し上げますと、SAMRモデルというようなことが言われますが、SとかAとかの代替、拡大のレベルではなく、こちらもやはり変形して新たな再定義という、そちらに少し視点を置いた議論が、これから広がっていくべきではないかなと思っております。
 主に私どもは、いろいろな民間のノウハウを学校教育に、公教育につなぐという役割を担わせていただいておりますので、ここのいろいろな制限がなくなれば、もっともっと外の力を学校教育におつなぎできるのではないかなという、そういう期待も込めて、幾つか質問をさせていただきました。
 以上でございます。ありがとうございます。

【奈須主査】  ありがとうございました。
 それでは、今村委員、お願いします。

【今村委員】  大変興味深いお話をお聞かせいただきまして、ありがとうございました。
 私からは、意見ではなくて質問を、教えていただきたいなと思っています。
 北海道の取組の御発表の中で、小規模校の小規模のレベルが、学校に3人、普通級1人、特別支援学級、しかも2人がそれぞれの学級になっているという、少子化のレベルがこんなに進んでいるんだなと、本当に課題先進地域だなというふうに理解したんですけれども、今日はオンラインで学ぶということをどのように遠隔教育でしていくのかというところが議論ではあるんですけれども、この30キロの県内、つまり、車で30分、毎日通うということも、ちょっと負担はあるかもしれないけれども、判断としてはできるかもしれないという状況の中で、どういった経緯があって、3人の学校を維持して、オンラインでやろうということの御判断をなさったのかというところを教えていただきたいです。
 というのは、これから何を学校の機能として本当に子供たちに残していくのか、大体のことはオンラインやオンデマンド授業で良くなるかもしれないといった前提の中で、やっぱり学校という箱に求められていることの一番大切なのは、人と人との関係性の中で何かを協働したり、そこの中で傷ついたり、楽しんだりという、部活的なものとか、特別活動のようなもの、または運動会とか、そういったようなことが学校に人が集まる一番の価値なのかなというふうに思った時に、そういったオンラインでできるところはもちろん合理的にこうやって進めるのはいいんですけれども、学校の意義、目的、意義というところで見たときに、30分の移動コストを持ってあげた方が学校として良かったという判断はなかったのかということがすごく知りたくて、そこをお聞かせいただきたいなと思いました。
 以上です。

【奈須主査】  ありがとうございました。
 それでは、中川委員、お願いします。

【中川委員】  御発表を本当にありがとうございました。
 まず、本日の二つの自治体の取組は、すばらしいと思いました。特に小規模校と広域分散型である実態を踏まえた実践や、1人1台端末を使っていること、あるいは英語教育やプログラミング教育の充実など、ほかの地域で参考になる実践例がたくさんあったと思います。
 それを前提としてなんですが、御発表いただいた自治体への質問や意見ということではなく、これからの遠隔教育、オンラインの活用の在り方について、違う側面から意見を申し上げたいと思います。
 私は、義務教育の中で遠隔教育という特別な枠組みから、日常的なオンラインの活用に、もうそろそろ捉え方として移行していく必要があると思っています。遠隔教育というと、何か空間の壁を越えなくてはならない特別な理由のときのみに行うというイメージが、まだまだ全国的に強くあると思われます。しかし、GIGA端末環境が成熟する中で、もっと気軽に様々な場面で、場合によっては、児童生徒の判断で日常的に行うことなどについて保障されていくことを検討することが重要に思います。
 特に、例えば教員研修では、コロナが落ち着いた状況でも、あえてオンライン研修やハイブリッド研修を選択する学校や自治体も増えてきました。また、授業においても、無理に専門家を教室に招かず、初めからオンラインでちょっと話を聞いたり、可能な範囲で休みの子が教室にいる一部の子供たちとやり取りをしたりといった例も見受けられるようになりました。これらの経験を踏まえ、ごくごく日常の中でも、つまり、フォーマルな時だけでなく、インフォーマルな機会でも手軽に利用できる環境と、雰囲気と、トピックの創出を更に充実させていくべきだと考えています。
 対面には対面の良さがもちろんありますが、それに固執し過ぎず、せっかく1人1台端末環境が成熟してきたのですから、オンラインのメリットをうまく生かして、学校生活の中で、これは授業だけではなくて、肩肘張らずに従来の対面型と組み合わせていく方策も必要だと考えています。
 以上になります。

【奈須主査】  ありがとうございます。
 黒沢委員ですか。この後、黒沢委員の後、堀田委員、秋田委員、貞広委員、水谷委員の順番でお願いいたします。
 では、黒沢委員、お願いします。

【黒沢委員】  御発表ありがとうございました。大変参考になる発表だなと思って、ずっと聞き入っていました。
 私からは、現場を預かる校長の一人として、ふだん感じていることを少しお話ししたいと思います。
 まず一つ目が、オンラインに関しては、やはり三つのハードルがあるというふうに私自身は感じています。
 一つ目が、発信側でのハードルです。環境、それから教員一人一人のスキル、新しいことに対する受け入れ方、そんなところが一つ目のハードルです。
 二つ目が、今度は受信側のハードルになると思います。学校が受信ということであれば一つ目のハードルと同じになるんですけれども、これが家庭の中で受ける、家で授業を受けるとなると、やっぱり家庭の中のスキルですとか、子供のスキルもそうですし、家の中にそもそもオンラインをきちんとやれる環境があるのか。大体リビングの中でやるなどというと、わちゃわちゃした中でやることになるので、そういう環境も実は必要になるのではないかなということも感じていることです。
 三つ目のハードルが、コンテンツの中身、授業そのものが、従来の対面型をベースにしたものでずどんとやると、やはりそれに耐えられない子供も出てくるとか、あるいは、大人だってずっと集中して何十分もオンラインでやっていると疲れますよね。それが1日7時間ある、6時間あるとなったときに、果たして今までの義務教育のやり方でいいのかというのが、非常に僕自身も悩むところではあるんですけれども、この三つのハードルは絶対あるなと感じています。
 更に加えて、これだけオンラインでしっかりやろうとすると、ネットワークが非常に強固なものが求められるのではないかなと思っています。ネットワークが止まった瞬間に全てのものが止まりますので、授業そのものが成り立たなくなってしまう。より強固なシステムをどう導入していくかというのは、各自治体での大きなハードルになるのではないかなと思っています。これが1点目です。
 二つ目が、私自身、不登校特例校の中で子供たちを見ていますと、やはり授業中、その授業をできるだけ早く終わらないかなとスルーしている子、それから、関わるのがすごく嫌だなと、人となるべく関わらないように授業を過ごしている子はいます。こういう子がオンラインになると、強制的に呼び起こされるわけなので、やはりここに生きづらさを感じる子も出てくるのではないかなというのは感じるところです。
 また、逆に、人と関わるのがすごく嫌で、だからこそオンラインでやりたい、家で籠もって、人と関わることをしないで授業をやりたいという子もいるので、そういう子に人との関わり方をどう教えていくかというのは、やっぱりオンラインをやっていく中でいろいろ課題がより顕在化してくるのではないかなというふうに感じているところです。
 以上です。

【奈須主査】  ありがとうございました。
 それでは、堀田委員、お願いします。

【堀田委員】   堀田でございます。
 民間企業では、オンラインでの会議などはすっかり実用されているわけです。先ほど中川委員もおっしゃったように、学校現場でも研修受講等でオンラインはずいぶん増えてきたと思います。私たちのこの中教審もこうやって普通にオンラインでやっております。
 私も今日はオンラインのおかげで参加できています。対面でないと伝わらないこともあるけれども、それでも相当の議論は成立するというふうに感じています。
 学校での遠隔・オンライン教育については、今はまだ十分に行われていないので、経験が少ないわけですが、インフラ等は備わってきていて、実用性は十分に高まってきているように思います。
 遠隔・オンライン教育は、英語やプログラミングなどの専門家の指導を受けられやすいというメリットがありますが、私はむしろ小規模校とか僻地校とか、そういうところの教育の充実善のために、遠隔・オンライン教育をもっと柔軟に実施できるようにすべきだと思います。
 私は今日、ふるさとの天草におりまして、そこからオンラインでこのワーキングに出席しています。こちらの教育委員会の方々ともいろいろ話をしたんですけれども、天草には中学校が13校ありますが、技術科や家庭科の免許を持っている先生は三、四人だそうです。近い学校は複数校で対応していますし、あるいは教頭先生が授業しているという例もあるそうです。また、産休に入った方がいたら、代わりが見つからないという例もあるそうです。こういう実情は、ほかの教科でも少なからずあると思います。
 今はたまたま私のふるさとの話をしましたけれども、同様の話は、今日の地方では結構当たり前のように聞きます。先生方はもちろん一生懸命やられていますし、だからこそ、やりきれないような気持ちに私などはなります。
 ですので、義務教育段階の教育の質保障を考えると、免許を持っている教員がいる学校から時間割等を工夫して遠隔・オンライン配信をして、小規模校では時間割を合わせて受信するとか、そういう運用は十分に可能だと思うんです。人口減少社会を迎えている我が国では、この遠隔・オンライン教育をもっと日常的にして認めていくような制度の柔軟化が必要ではないかと思います。特例校の制度はすばらしいのですが、もはやこれは特例と言わずに、一般的な制度にして、手続も不要として各学校の判断で実施できるというふうに考えるのが適切かと思っております。
 私の意見は以上です。

【奈須主査】  ありがとうございました。
 それでは、秋田委員、お願いします。

【秋田主査代理】  秋田でございます。
 今日の北海道、茨城県、それぞれ大変刺激的ですばらしい御発表をありがとうございます。
 私も中川委員や堀田委員と同じように、この遠隔教育の特例校が特例でなくなることが極めて重要だというふうに考えますが、一方で、今日の二つのところの御発表について伺いたいのは、やっぱり配信校、受信校の、例えば配信校の免許を持っている教員は、自校以外に配信をするわけなので、コマ負担というものが逆に増える可能性があるだろう。それから、受信校は、受ける側の自分の専門性でないものを受けるというだけではなくて、その少ない中でも、例えばその先生の専門性を生かしていくというような方向も、今後、それぞれの教員の方向があり得るのではないかというような印象も持っております。
 そういう中で、県がこの遠隔を行っていくために、例えば、配信校に研修などをこういうふうにやっていくとうまくいくというようなノウハウを蓄積されたりしているのかどうか。例えば、先ほど茨城県では、受信校の方の生徒の見取りに付箋を使った例などを出されていましたが、私は、見取りも義務教育段階では、やっぱり教員が生徒の学びを見取るということの専門家ですので、専任の教員が配置されるべきだと思っています。
 一方で、その専任の教員が何をしたらいいのかというようなところについての、より専門性を高めるノウハウというものがないと、単に遠隔をやればいいというだけではなくて、両県とも、対面を最初にやったり、途中で月に何回か入れたりというような、対面と遠隔を、オンラインをうまくミックスすることによって相乗効果を上げているという、その事実が極めて重要なのではないかというふうに思っています。この辺りについて、どのような形でされているのかということを伺いたいというふうに思うところです。
 それからもう1点、これは今回の特例制度は中学校に限定されているわけなんですけれども、小中の話がございましたが、私は、小学校も高学年段階とかで、今後やっぱり中学校の先生とかと、そうした連携も極めて重要なところになってくるのではないかというふうに思っています。これは意見です。
 それに対して、2県に伺いたいのは、例えば特別支援が、今日も北海道のもので事例が出ていました。特別支援学校は、多分、対面においても子供の指導がかなり難しいと思うんですけれども、そうしたところで、オンラインというものがどのような形で有効に機能するのか、もし御経験が2県の中であれば、教えていただけるといいなというふうに思います。
 個別最適なオンラインの環境を作っていくということが重要だと思うんですけれども、一般の通常のものを、ただいろいろなところに拡大していくというだけでは、必ずしもうまくいかないのではないかと思いまして、先進事例の知見を是非学ばせていただきたいと思います。
 以上です。

【奈須主査】  ありがとうございました。
 それでは、貞広委員、お願いします。

【貞広委員】  二つの御報告とも、既存の制度の中でもここまでのことができるんだということを改めてお示しいただいた、大変優れた取組の御報告をいただいたと思います。ありがとうございます。その上で、幾つか意見を申し上げたいと思います。
 例えば、一口に遠隔教育といっても、学習集団が小さいことへの対策、典型的には小規模校の対策ですけれども、それと、今日出ていたような能力別の対策、更に学校で居づらい思い、なじめない思いをしている子供への学習保障を想定した遠隔教育の在りようというのは、必ずしもイコールではないと思います。
 また、今日、若江委員や中川委員から御意見が出たように、足らずを補うというのではなく、むしろ積極的に活用していくということを考えると、また別の姿が見えてくると思います。
 そのように考えたときに、やはり幾つかの遠隔教育の在りようの選択肢の中から、自治体、学校、個人が戦略的に選択できる状況をつくるということが重要なのではないかと考えます。
 その際留意することとして、まず一つ目は、これは単独の自治体や学校だけにお任せするというのは相当難しいという点です。戸ヶ﨑委員が、都道府県の教育委員会の役割が非常に重要なのだとおっしゃったんですけれども、都道府県の教育委員会だけではなく、例えば、もう少し中間組織的な、地域によって名称は違いますけれども、教育事務所であるとか、教育センターであるとか、そういうところが学校や自治体同士をつないでいったり、または、どういうコンテンツや方法が非常に優れているのかということを敷衍させていったりするする中間組織の可能性も模索するべきだと思います。更にその先には、配信センターとしての国の役割ということも視野に入ってくると思います。
 もう一つは、先ほどいろいろな遠隔教育のニーズの在りようによっては遠隔教育の在り方は違ってくるというふうに申し上げたことに関連して、例えば、学習集団が小さいことの対策については、同時双方向にこだわり続けるということもあるかと思いますけれども、特に学校になじめない子供について、これにこだわり続けるというのは少し難しいと思いますし、配信側の学校の御負担も非常に大きくて、若江委員もおっしゃっていたように、私もCOREハイスクール・ネットワークの事業に若干関わっているんですけれども、本当に配信校側の先生たちが大変でいらっしゃるんですよね。そう考えると、やはり質を保障した上でオンデマンドも拡大する余地を検討するということと、もう一つは、茨城県さんの御報告でいうと、エリア方式に相当するんでしょうか。配信校が優れた授業を展開していく。それを一つの学校にということもあると思いますし、複数の学校をつなぐということもあると思うんですけれども……、配信校は非常に負担が大きいので、むしろ都道府県の教育委員会さんなどが先導をして、配信センターで優れた遠隔教育を運営していくということも大きな選択肢として置くべきだと思います。
 最後に、その先には、学校をどうしようというだけではなくて、同一市町村内に限らず、複数の自治体同士をつないで優れた遠隔教育をしていくという選択肢も見えてくると思いますので、最初の意見に返りますけれども、幾つかの選択肢を用意されている状態にいかに確保するかということが、いろいろな意味での遠隔教育の発展に重要なのだというふうに考えました。
 以上です。

【奈須主査】  ありがとうございました。
 それでは、水谷委員、お願いします。

【水谷委員】  水谷でございます。よろしくお願いいたします。今日は、御発表、本当にありがとうございました。
 2月にICT活用教育アドバイザーとして、沖縄の与那国島のGIGA活用の支援に行きました。複式の授業を見せていただいて、少人数、複式であるために、子供たちが自分で学ぶという姿がすごくできていて、大変驚きました。今もいろいろな方からお話がありましたが、もうこの遠隔授業は特別なことではなくて、いろいろなところで逆にこういう形を取り入れることによって、教師中心の一斉の指導から解き放たれる一つのきっかけになるのではないかと思っております。端末とクラウド活用をすることによって、子供同士のいろいろなことがすごく共有できるようになりました。ですので、教室という枠にとらわれなくても、子供同士の関わりはできるようになりました。
 さらに、オンデマンドもあり、同時に双方向でやる必要はなく、ただ、大事なのは、今日も御発表の中でありましたが、学習内容とか、方法とか、そういうことの共有を子供たちとしっかりしておくことで、それもクラウドでしっかりできるようになり、どこでもこういうことを取り入れることによって、逆に学びの姿、授業の姿を変える一つのきっかけになるのではないかと思いながら聞かせていただきました。
 以上です。ありがとうございました。

【奈須主査】  ありがとうございました。
 たくさん御意見、それから御質問も頂戴しました。すみません。少し時間が延びるかもしれませんが、御承知おきください。
 それでは、今いろいろな御質問もあったかと思いますので、なかなか難しいかと思いますが、まず北海道、それから茨城からお答え、可能なところでお話しいただければと思います。
 まず、北海道、いかがでしょうか。教育委員会、それから幌延町の方でお願いいたします。

【青木教育長】  どうもありがとうございました。皆様から多くの貴重な意見をいただきまして、今後に生かしていきたいなと思います。本当にありがとうございました。
 まず、若江委員と、秋田委員から、交流学習について、オンラインと交流学習の関係について質問をいただきました。
 幌延町ですけれども、今のところ、交流学習は、月に1回、2回ぐらいしかまだできていないです。というのは、先ほど言ったとおり、直線距離で30キロ、時間にしたらもう少しかかり、後ほど説明があるかと思いますけれども、冬はもう大変なことになっています。猛吹雪で動けない状況になっていますので、そのぐらいしかできていません。
 ただ、春から秋にかけては、積極的にこれから増やしていこうかなと思っています。今、委員の皆様の意見を聞きまして、子供たち、本当に取り残すことなく、小さい学校の子供たちも大きなところで学ばせたいなと思っております。
 具体的に言うと、理科の授業は、オンラインはどちらかというと技能、知識理解の方を中心に教えていって、そして交流学習のときに、理科でしたら実験を、実際にグループで一緒に行ったりとか、英語の時間でしたら、これも同じです、どちらかというと文法的なこと、ドリル的なことをオンライン中心でやりながら、たまにALTも加わって活動もしますが、交流学習で一緒になったときには、活動、いろいろなカード学習、カードゲームなどいろいろな活動を行っています。
 それともう一つは、修学旅行も一緒に行っているものですから、これは学校行事あるいは特別活動の中で一緒にオンラインを使いながらしおりを作ったりとか、準備をしたりとか、一緒に交流して修学旅行へ行くというふうな形を取っております。
 今、課題として意見をもらいましたので、交流学習、今後も増やしていきたいなと考えております。
 後ほど、今村委員からの意見は、うちの椿から回答したいと思います。

【椿総務学校グループ係長】  たくさんの御意見等ありがとうございます。私から回答させていただくのは、問寒別中学校が、今、生徒3名という状況の中で、この地域としてどのような思いでこの学校で生徒に対して教育を行っているかというところ、学校を残しているかというところについて、簡単に説明させていただくのですが、この問寒別中学校ですが、小中学校として併置校になっておりまして、小学校の方には、実際、児童が現在、12名います。中学校生徒3名に対して、小学校児童が12名いまして、毎年、数名の児童が、入学してきているような状況にあります。
 そういう意味では、子供がいなくて学校が続けられないという状況には今はないことと、正にそういったところから、町長や地域住民の思いがありまして、学校を維持するには大変なコスト等もかかりますが、学校を維持していきたいという思いから存続させているところであります。
 あと、問寒別の地域に関しては、酪農地域ということもありまして、町としても大事な地域になっております。そういう意味では、この学校でしか教育ができない、育めない郷土愛などを、大事にしておりまして、あとは、先ほど青木教育長からもありましたけれども、片道30キロ、その移動に関しては児童生徒にかかる負担が大変大きくて、冬季に関しては、かなり暴風雪によって、そもそも町内の学校が臨時休校になる日も少なくない状況もありまして、距離が延びると、更に難しいというところもありまして、なかなか日常的な通学が難しいという部分もございます。
 そういったところを背景に、現在、問寒別という地域を、こういった地域では学校という拠点は大変大事な部分になっておりますので、本町としては、今のところ、少なくとも教科指導等で、こちらの町の部分の子供たちが受けられる教育と同等の授業を受けられるように、遠隔教育を使いながら存続させているというところになります。
 以上です。ありがとうございます。

【奈須主査】  ありがとうございました。

【遠藤義務教育課長】  北海道教育委員会から、一言、よろしいでしょうか。

【奈須主査】  はい、お願いします。

【遠藤義務教育課長】  たくさんの御意見、御質問、本当にありがとうございました。北海道教育委員会でも進めたいと思うことが幾つかあり、大変勉強させていただきました。
 御意見の中にあった発信する側の研修の機会ということでお話をいただいたので、あっと思ったところです。
 少し論点は違うんですけれども、北海道は今、小学校における教科担任制ですとか、中学校の教員の専門性を生かして小学校に乗り入れをするというようなことを行っていて、専門性を高めるための研修を始めたところです。今日いただきました御意見を踏まえると、その研修の中に、例えば、遠隔で発進する際の研修、授業の内容も含めてですけれども、指導性を高めていくということでいくと、研修の内容にそういったものも入れていくことができると感じ、次からの研修講座の内容を考える上での本当に大きな参考になりました。ありがとうございました。

【奈須主査】  ありがとうございました。
 それでは、茨城県教育委員会、蛯原指導主事、お願いします。

【蛯原指導主事】  まず、エリア型の方なんですけれども、先ほどは教員の研修ということでお話がありましたが、茨城県でも、国語、算数、数学で、配信側も受信側も中学校で同じ免許を持っているですとか、小学校でも同じ教科を担当していますといったときには、配信側の先生の授業、こんなふうにするんだということを受信側の先生が勉強になるということも声として伺っています。
 特に、新採の先生ですとか、小さな規模の中学校でありますと、担当が自分しか、中学校で国語は私しかいない、学校で誰も相談できないといったところでも、遠隔で他校の先生と相談するなどということはできております。
 今回、市内でピンポイントエリア、茨城県は取り組みましたが、今後は、そういう力のある先生が、他市町村にも、希望のある学校さん、新採の学校さん、小さい学校さんに、よければ時間割を同じにして授業を受けてくださいねという形で、ほかの市町村にも発信できるような、研修できるような、授業を届けられればいいなと思っておりまして、今のところは、設置者単位で、市町村での取組にはなっているんですが、今後は、もう少し域内に広げて遠隔授業ができたらなと考えているところです。
 続けて、特別支援については、実践事例がちょっと私の方では分からず、子供たちもなかなかICTでオンラインの授業が成立しない部分もあると聞いております。
 続いて、配信側、コマ数の負担があるのではないかということなんですが、県では配信側に教員を1人加配しており、今のところは、そのようなことはありません。自校では担任は持たず、教科担当者と組んで授業を習熟度別で行っております。加えて、対面の授業で受信校に行き来したりしながら、取組は対面とオンラインを合わせて進めているところでございます。
 以上です。

【奈須主査】  ありがとうございました。
 私も、今日聞いていて幾つか感想を持ちましたけれども、北海道、本当に過疎化が進んで分散しているという状況ですが、国際的に見ると、日本は圧倒的に人口密度が高い国ですよね。前回お話を聞いたフィンランドなどというのは、北海道が全国土になっているようなもので、そういう国は、多分、世界中にはたくさんあるんだろうと思います。また、そういう海外の状況などに学ぶと、いろいろなやり方もあるのかなと思いました。
 また、中川委員や堀田委員からもお話がありましたが、デジタルになっていくことによって、学習基盤が変わるということでやはり考える必要があるんだろうなと。デジタル学習基盤特別委員会も動いていますけれども、従来型のシステムとか、従来型の教師が教えて子供が受けるという授業に遠隔をどう入れるかということだけではなくて、広い意味でのデジタル学習基盤になったときに、時間と空間を超えていくということができる、その特質をどう生かして状況に応じていくかというような話が多分面白いんだろうなと思いました。
 そうなってくると、やはりオンデマンドの可能性もいよいよ本格的に考える必要がある。先生が教えるとなると、同期型でやりたいんだけれども、子供が意識を持って計画を立てて学習を自己調整しながら学ぶとなれば、オンデマンドが部分的にあることは多分何の問題もなくて、結局その子供が自分で学習の全体像を把握しながら学び進める、その中にいろいろなデジタルの情報やツールが入ってくるというふうに考えれば、また面白いのかななどと思ったりしていました。
 それから、今村委員から、こうなってくると本当に学校の機能は何だろうという以前からある問いかけもまた繰り返されました。学校はむしろ、勉強だけだったら、もうデジタルやオンラインでできる時代、そうなったときに、人と人が関わるとか、一緒に何かをするとか、精神的な安定とか居場所があるという話が出たわけですけれども、でも、一方で考えると、特別活動とか部活とか行事というのが、こんなに手厚いのも日本ぐらいですよね。この辺りをどう考えるかということは、この会の趣旨ですけれども、正に学校の機能をどう考えるかということになってくるのかなと思いました。
 いろいろな意味で、デジタル、遠隔というのは、これまでの学校を問い直し、これからの学校をどう考えるのかということにおいて、本当にいろいろな問いと示唆を与えてくれるというふうに今日も思いました。
 今日も活発な御議論をありがとうございました。御発言いただけなかった委員もいらっしゃるかと思いますので、事務局宛てにメールをいただければ、議事録に掲載したいと思います。
 また、次回ですけれども、前回と本日のワーキンググループの議論を踏まえ、義務教育段階におけるオンライン活用について、方向性の整理案を事務局の方で御準備をいただくということにして進めたいと思います。
 それでは、今日はここまでにしたいと思います。最後に、次回以降の予定について、事務局、お願いします。

【前田教育制度改革室長】  先生方、ありがとうございました。次回のワーキンググループでございますけれども、9月19日火曜日、10時から12時を予定しております。詳細につきましては、また追って事務局より御連絡いたします。
 以上でございます。

【奈須主査】  それでは、本日の予定は以上で終わりであります。閉会いたします。ありがとうございました。
 
―― 了 ――

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