個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実に向けた学校教育の在り方に関する特別部会(第1回)議事録

1.日時

令和4年2月7日(月曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省 ※WEB会議
(東京都千代田区霞が関3-2-2)

3.議題

  1. 部会長の選任等について ※非公開
  2. 部会運営規則の制定について ※非公開
  3. 個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実に向けた学校教育の在り方について
  4. ワーキンググループの設置について
  5. 高校の新学習指導要領スタートを契機とするこれからの高校教育について
  6. その他

4.議事要旨

  • 「個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実に向けた学校教育の在り方に関する特別部会」部会長について、荒瀬委員が適任である旨の発言があり、了承された。
  • 荒瀬部会長から、堀田委員、金丸委員が部会長代理に指名された。
  • 事務局からの説明の後、資料3のとおり部会運営規則が了承された。​

5.議事録

【荒瀬部会長】 では、これから議事を公開いたします。
 本日は報道関係者と一般の方向けに、この会議の様子をオンラインで配信しておりますので、御承知おきいただきたいと思います。
 改めまして、部会長を務めることとなりました教職員支援機構の荒瀬でございます。よろしくお願いいたします。
 今回、こういった会議がスタートするということで、昨年1月、もう1年たちましたが、「令和の日本型学校教育」の答申が中教審でまとめられたわけでありますけれども、その具体的な、かつまた着実な実施に向けて、どのような形で条件整備を含めて検討していく必要があるのかということを今後この部会、特別部会でもって議論をし、親部会である初中分科会また中教審総会等で議論をお願いするという形になっていくのだろうと思っております。
 ここでは今日の議題の中にも、ワーキンググループの設置ということもございますけれども、特別部会自体のメンバーは数が限られていますので、具体的にはワーキンググループであったりとか、あるいは専門部会であったりとかといったところで議論もしていただきながら、我々のほうである種、交通整理であったりとかあるいはまとめるといったことも含めてやっていきたいと思っております。委員の皆様の闊達な御意見、御議論をよろしくお願いしたいと思います。
 それでは、本日、特別部会第1回目でございますので、義本事務次官がお越しいただいているということを聞いております。義本次官、大変恐れ入りますが、御挨拶をよろしくお願いいたします。

【義本事務次官】 おはようございます。事務次官をしております、義本でございます。
 この特別部会の第1回の会合ということでございまして、実は、本来であれば末松文部科学大臣が出席させていただきまして、御挨拶をさせていただく予定ではありましたけれども、予算委員会の集中審議で出席できないということでございますので、私が代わりに文科省を代表して御挨拶させていただきたいと思います。
 特別部会の委員の先生方におかれましては、大変御多用の中ではございますけれども、委員に御就任いただき、さらには本日の会議に参集いただきまして、誠にありがとうございます。
 初めに、このたびのオミクロン株の猛威の中で、感染症対策を徹底しつつ、何としても子供たちの教育を守る、また継続に御尽力いただいている学校関係者の皆様に心から感謝申し上げたいと存じます。
 既に報道にもあったと思いますけれども、このオミクロンの感染症対策に対しまして、機動的に対応していくということで、これまでのガイドラインについての留意事項をまとめて出したりとか、あるいは先週金曜日に通知させていただきましたけれども、感染症対策に対応するような具体的な学校の中での取組ですとか、あるいは広がった場合での機動的な対応についての指針について、出させたところでございます。
 基本は、学びをしっかり継続させていくということで、学校全体の一斉休業をやることについては慎重に行うということで、その前にオンラインでの教育ですとか、あるいは分散登校あるいは時差登校などを機動的に組み合わせてハイブリッドで対応していくという対応について、これまで学校でそれぞれやっていただきましたけども、それをしっかり後押ししていくという観点からの対応をしているところでございます。
 こうした中において学びを止めない、誰一人取り残されない社会を実現するためにも、先ほど荒瀬部会長からお話ございましたようにGIGAスクール構想の推進は極めて重要でございます。
 大臣自らも数々の学校への視察を通じまして、現場の状況を拝見させていただき、その中でこの構想の重要性や、この構想を着実に進めていく責任ということについて再認識をいただいているところでございます。
 この点、小中学校につきましては、多くの関係者が多大な御協力、御支援を賜りまして、おおむね1人1台端末の環境が整備され、さらには臨時休業等の非常時における端末の持ち帰りにつきましても、95.2%の学校で実施されているという状況が明らかになっているところでございます。
 また、小中だけではなくて高等学校につきましても、1日でも早く1人1台端末環境が実現できるよう、先月1月11日に、牧島デジタル大臣との連名で、末松大臣よりメッセージを発信したところでございます。
 その上で、先般公表しました調査によりますと、公立高校における端末につきましては、全都道府県で新1年生の1人1台端末の環境の見込みが立っているというところになっております。
 荒瀬部会長もお話しされましたように、全国の学校現場では、昨年令和3年の1月に中央教育審議会からお示しいただきました、令和の日本型学校教育の構築を目指す答申を踏まえて、個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実に向けて、様々な取組が進められているところと存じております。
 そのような取組をさらに推進するために、GIGAスクール構想に基づきまして、ICT環境の整備と活用を進める中におきまして、まずは、教科書や教材のデジタル化の推進、具体的には、より効果的な学びを実現するための紙媒体と、デジタルの最適な組合せや、それを踏まえたデジタル教科書等の活用の在り方について、また、1人1台端末を活用した児童生徒への学習指導や生徒指導の在り方など、デジタル化という社会変化が進む次世代において学校教育がいかにあるべきか、検討を進めていくことが極めて重要と考えております。
 本特別部会におかれましては、以上申し上げた観点につきまして、この特別部会の下に設置される予定のワーキンググループ等と機動的に連携しながら、委員の皆様におきましては、大所高所からの精力的な御議論を賜りますことを心よりお願い申し上げます。
 以上、簡単でございますけれども、私から御挨拶させていただきます。本日からよろしくお願いします。ありがとうございました。

【荒瀬部会長】 義本次官、ありがとうございました。それでは、審議を続けたいと思います。
 議題の3でありますけれども、「個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実に向けた学校教育の在り方について」、事務局から御説明をいただきたいと思います。
 水田初等中等教育企画課長、お願いいたします。

【水田初等中等教育企画課長】 初等中等教育企画課長の水田でございます。
 まず、資料の1についての確認でございます。先日、1月14日の初等中等教育分科会におきまして、本特別委員会の設置が決定いたしましたけれども、その設置の目的と主な検討事項につきましては、この資料1に示されているとおりでございます。
 検討事項につきまして、参考資料の6でお配りしております、中央教育審議会において昨年1月におまとめいただきました「令和の日本型学校教育」の構築を目指しての答申を受けて、それを着実に実施していくとともに、社会変化が進む次世代の学校教育の在り方について支援等を行うべく、その下の2に示されている3つの事項について御議論をいただきたいと考えているところでございます。
 この中で(3)の学校内外の環境整備の在り方につきましては、その上の(1)(2)の議論においてもそれぞれ関わってくることになるかと思っておりますけど、まず、(1)の一人一台端末等を円滑に活用した児童生徒への学習指導・生徒指導等の在り方につきましては、本日の参考資料としております、配付しておりますデジタル庁等によって公表されました教育データ活用ロードマップ、また、昨年閣議決定されましたデジタル社会の実現に向けた重点計画、そして、内閣府において議論が進められております教育人材育成に関する政策パッケージ等も踏まえまして、多岐に当たる論点を中長期的に腰を据えて御議論いただく必要がある事項かと考えております。
 そして、(2)の教科書、教材、関連ソフトウェアの在り方についてでございますが、令和6年度のデジタル教科書の本格的な導入に向けて、教材や関連ソフトウェアも含めて紙とデジタルの最適な結びつきや活用について御議論いただきたいと考えております。
(1)と(2)の事項の議論につきましては、これは一旦分けて考える必要があるかと考えておりまして、まずは(2)の教科書、教材、関連ソフトウェアの在り方について、集中的に御議論いただきまして、夏から秋頃の間で、一定の議論の整理が必要とあるのではないかと考えております。
 これに関連いたしまして、今後の本特別部会で御議論いただくに当たりまして、参考となり得る資料を幾つか配付させておいていただいております。
1点目が資料4、最近の初等中等教育分科会で示された御意見でございますけれども、1枚目には、今後の初等中等教育の在り方、児童生徒が安心して学校生活を過ごせる環境、様々なニーズのある児童生徒への支援の在り方について、いただいた意見を整理しております。
 それから2枚目には、先日、初等中等教育分科会において発表されました、デジタル庁やCSTIにおける議論に関しまして、また、今後の特別部会等における議論についての御意見をまとめてございます。
 続きまして、資料の5を御覧ください。現在のGIGAスクール構想に関連する資料をおまとめしております。
 1ページ目、御覧いただければと思いますが、このGIGAスクール構想につきましては、1人1台端末環境を整備し、学校ネットワークの環境を整えることで、個別最適な学びと協働的な学びを一体的に充実していくことを目的とした構想でございます。
 これまで小中学校の1人1台端末、ネットワーク環境を多くの皆様に応援していただくことによりまして、ハードの整備はほとんど達成し、飛躍的に進めることができました。これにより、多くの学校でまずは端末を活用してみようという取組が進みつつあるところと考えております。
 一方、実際に利活用を開始してみると、急速な整備に追いつかなかった様々な課題が生じていることが分かってきております。令和3年度補正予算や令和4年度予算案におきまして、これらを解消していくための取組を進めているところでございます。
 それからかなりページが飛びますけれども、10ページを御覧ください。まず、GIGAスクール構想のステップ1としまして、急速に整備した端末、ネットワーク環境を実際に運用開始してみますと、端末の利用環境に関して様々なボトルネックが生じておりまして、ネットワーク回線が遅い、また、指導者用端末等が整っていないなどの問題が顕在化しております。
 昨年度までの環境整備のフェーズから、利活用を進めるフェーズに移っていく中では、このようなユーザーインターフェースの不便さのために、教師が授業で使いたいという気持ちを抑制してしまうことを避けることが重要だと考えております。
 このため、GIGAスクール運営支援センターを全国的に整備し、ネットワークの点検や端末の運用サポートなどの体制を整えるとともに、指導者用の端末等を整備するための支援を行い、より使いやすい環境を整えていくことを予定しております。
 また、利活用のフェーズにおいては、これまでのハードの環境整備から充実したコンテンツを準備して、活用につなげていくことも重要であると考えております。例えば本格的な導入に向け、デジタル教科書を提供し、学校現場で実際に使用していくに当たっての課題を洗い出していくための予算を計上しております。
 特に、主たる教材でありますデジタル教科書については、児童生徒の学びの充実を図る上では重要となっていくものと考えておりまして、デジタル教科書を取り入れた授業によって、子供にとって分かりやすい授業を展開していくことができる実感を教師の皆さんに持っていただけるよう、検討を進めていくことが重要と考えております。
 少し戻っていただきまして、5ページでございますが、予算以外のコンテンツを充実していくための取組としまして一つ御紹介いたしますと、GIGAStuDXの取組など、こういった取組を通じまして、様々なレベルで取り組めるICTを活用した教育の事例紹介等に取り組んでいるところでございます。
 資料5につきましては、委員の皆様には事前に送付させていただいておりますので、時間の関係で詳細な説明につきましては、割愛させていただきますけれども、ただいまのページの中での1から4ページでは、端末の整備状況や課題、取組の視点、それから、6から9ページにつきましては、今申し上げましたデジタル教科書の概要、検討会議の報告、それから、学習方法の例といったものを掲載させていただいているところでございます。
 それから、11ページ以降につきましては、現在国会で御議論いただいております令和4年度予算案の中の関連する事業について、掲載しております。こちらについての御質問や御意見なども含めまして、この後の時間で、御意見等頂戴できればと考えているところでございます。
非常に簡単でございますが、御説明については以上でございます。よろしくお願いします。

【荒瀬部会長】 ありがとうございました。では、ただいま御説明いただきました点につきまして、御意見、御質問がございましたらお願いしたいと思います。御発言をされます方は、必ず手を挙げるのボタンを押していただきますようにお願いをいたします。
 私、今日は文部科学省ではなくて外で出席をしておりますので、文部科学省のほうで確認をしていただいて、私のほうに御連絡をいただくということでよろしくお願いをいたします。
 では少し時間を取りまして、今の御説明につきまして、御質問、御意見頂戴したいと思います。どうぞ、いかがでしょうか。挙手をなさっていらっしゃる方、いらっしゃらないでしょうか、今の時点では。それでしたら後からまとめてということで、お願いをしようかなと思いますが、よろしいですかね。
 分かりました。では、この後の御説明もいただいた上で最後まとめてお願いをしたいと思います。
 では、次の議題の御説明をいただきたいと思います。議題の4番目ということでワーキンググループの設置についてということでございます。
 安彦修学支援・教材課長から御説明をよろしくお願いいたします。

【安彦修学支援・教材課長】 文部科学省修学支援・教材課長の安彦でございます。
 それでは、私のほうから資料6-1、6-2に基づきまして、ワーキンググループの設置について御説明させていただきます。
 まず、資料6-1でございます。こちら教科書・教材・ソフトウェアの在り方ワーキンググループについてということで、この部会において設置を認めていただくための資料となっております。
 まず、1つ目としまして、設置の目的でございます。1段落目では、本日のこの特別部会の設置について触れております。
 次の段落におきまして、「ICTは学校において個別最適な学びと協働的な学びを一体的に充実し、全ての子供たちの可能性を引き出す教育を実現するために不可欠のものであるところ、GIGAスクール構想に基づくICT環境の整備と活用を進める中で、教科書・教材のデジタル化を推進するとともに、既存の教科書・教材等との関係を整理し、個別最適な学びと協働的な学びを一体的に充実することが求められている。このため、特別部会の下に『教科書・教材・ソフトウェアの在り方ワーキンググループ』を設置する」ということを設置の目的としております。
 主な検討事項としまして、(1)令和6年度からのデジタル教科書の本格的な導入の在り方、(2)デジタル教科書やデジタル教材、関連するソフトウェアの適切な活用方法、(3)その他、としています。以上のようにワーキンググループを設置する目的と検討事項について、お示しさせていただいております。
 設置をお認めいただけるということになりましたら、資料6-2がワーキンググループの設置を特別部会が決定するための資料でございます。
 本日、特別部会の運営規則をお認めいただいたところでございますけれども、こちらの第2条のところで専門部会等ということで、この部会の下に専門部会その他の審議組織を置くことができると規定されております。
 この規定に基づき、「初等中等分科会個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実に向けた学校教育の在り方に関する特別部会に、次の審議組織を設置する。1 教科書・教材・ソフトウェアの在り方ワーキンググループ (所掌事務) 教科書・教材・ソフトウェアの在り方に関する重要事項を調査審議すること、となっています。
 こちらのほうのワーキンググループの設置につきまして、また、設置された際の設置の資料について、御審議いただければと思います。

【荒瀬部会長】 ありがとうございました。
 今御説明がありましたが、昨年1月26日の令和の日本型学校教育の答申を踏まえて、全ての子供たちの可能性を引き出す個別最適な学びと協働的な学びの実現のためにも、教科書・教材のデジタル化の推進といったことも、しっかりと検討していく必要があるということで、そのための専門的に議論を行うワーキンググループを設置するということでございます。
 この件につきまして、御質問、御意見ございましたらお願いをいたします。よろしいでしょうか。
 それでは、ただいま安彦課長から御説明いただきました内容につきまして、調査、そして審議を行うために、資料6-2のとおり、本部会の運営規則第2条に基づき、この部会の下に「教科書・教材・ソフトウェアの在り方ワーキンググループ」を設けることにいたしたいと思います。よろしいですね、御確認、うなずいてくださっていらっしゃる方もいらっしゃってありがとうございます。
 それでは、設置をするということで、この後、そこでの議論の状況はこの部会にも随時御報告をいただいて、こちらでも審議を深めてまいりたいと思います。
 なお、ワーキンググループに属する委員につきましては、本部会の運営規則第2条2項の規定に基づき、部会長が指名するということになっておりますので、私に御一任いただきたく存じます。
 本ワーキンググループの運営に関する詳細につきましては、追って御連絡をしたいと思います。この件、それでよろしくお願いをいたします。
 では、続きまして、議題の5番目に移りたいと思います。議題の5は「高校の新学習指導要領スタートを契機とするこれからの高校教育について」ということで、田中高校担当参事官から御説明をよろしくお願いいたします。

【田中高校担当参事官】 初等中等教育局参事官高校担当の田中でございます。よろしくお願いいたします。
 それでは、議題5につきまして、資料7に基づきまして御説明申し上げます。
 まず、1ページ目を御覧いただければと思います。委員の皆様は大変よく御存じのことでありますので、簡潔にいたしますけれども、令和4年度から新学習指導要領が高校でも全面実施されます。
 この令和4年度というのは、高校教育にとっては、一つの大きな節目になる年であると考えております。この新学習指導要領の実施というのもございますし、また、令和4年度から成人年齢の引下げ、民法の改正によるものですけども、これがなされまして、18歳が成人ということになります。
 また、後で申し上げますけれども、先ほどからお話に出ております、昨年1月の令和の日本型学校教育に関する答申におきまして、高校改革についてもいろいろ御提言をいただきました。その中で、普通科改革なども実行される年となります。
 まず、この指導要領でございますけれども、詳細は省かせていただきますが、委員の皆様よく御承知のとおり、新しい時代に必要となる資質・能力、これを3つの柱で整理されまして、それを学習評価の充実と併せて実行していくということでございます。
 この中では、社会に開かれた教育課程の実現、各学校におけるカリキュラム・マネジメントの実現、また、主体的・対話的で深い学びの視点からの学習過程の改善、こういったものが高校でも求められるということになります。
 また、左下の部分でございますが、教科・科目等の新設や目標・内容の見直しも行われたところでございます。
 2ページ目を御覧いただければと思います。高等学校の教科・科目構成につきましては、このように組み直されております。例えば公民科におきましては、公共という科目が必修となっております。また、情報科につきましては、情報Iが必修となりまして、また、総合的な学習の時間が総合的な探究の時間ということで、実社会・実生活から自ら見いだした課題を探究することを通じて、自分のキャリア形成と関連づけながら、探究する能力を育む、こうした在り方が明確化されたところでございます。
 続きまして、3ページ目を御覧いただければと思います。次に、高校の1人1台端末整備に向けた取組について、御説明申し上げます。
 今ほど御紹介しました新学習指導要領、これを実施するに当たりまして、また、昨年の答申、そして、この本特別部会のテーマである個別最適な学びと協働的な学びを一体的に充実するためには、やはり高校においても1人1台端末環境の整備というのは不可欠ということになってきます。
 先ほど、冒頭、事務次官の挨拶からもありましたとおり、これはこういったコロナやあるいは災害時などの事態における学びの保障という意味でも、大変重要なわけでありますし、また、GIGAスクール構想によりまして、小中学校におきましては、ほぼ全体的に1人1台環境が整ったわけでございますが、この中学3年生がこの4月からは高校1年生になるということですので、そういった観点からも1人1台、高校においても実現していくということが大変重要なわけでございます。
 このため、文部科学省におきましては、高校1人1台端末環境の整備を促進し、また、状況調査などの取組も行ってきたところでございます。
 この高校の新1年生の入学も近づいてきた中でありますが、この年末年始にかけましては、端末を準備する重要性を特に意識して促進しまして、ここにございますような局長通知による促進のみならず、末松大臣とデジタル庁の松島大臣との連名で、「高等学校における1人1台端末の環境整備について」という大臣メッセージを発信いただきました。この中では、整備に当たってのコロナ対応の臨時交付金の活用方法などの事例も示しております。
 このメッセージの発信に当たっては、特にさらなる取組をお願いしたい都道府県に対しては、都道府県の担当部局と事務的な意見交換を重ねるのみならず、大臣から知事に直接御理解をお願いする御連絡を差し上げることも含めて、省を挙げて、環境整備を促進しているところです。
 この結果、設置者負担、保護者負担のいずれかの方法で、どの都道府県でも高校新1年生には、令和4年度中に1人1台端末環境が整う見込みが立ちまして、新学習指導要領の実施を強く支えていく教育環境が整いつつある、この状況が確認できました。
 高校全体の1人1台端末環境につきましては、現時点では、令和6年度までに整備されるという方針が確認できておりまして、文部科学省としては、環境整備のフェーズから実際に利活用し、高校生の情報活用能力などを育てる新しい事業展開へつなげるための支援を図っていきたいと考えているところでございます。
 続きまして、5ページ目を御覧いただければと思います。昨年1月の答申も踏まえました、新時代に対応した高等学校改革の推進の概要でございます。
 昨年1月の答申では、各高等学校のスクールミッションや実情などに応じまして、国内外の高等教育機関、企業、経済団体、地方公共団体などの関係機関とも連携・協働することにより、学校外の教育資源を最大限活用した特色・魅力ある高校教育を行うことが必要であると提言されております。
 このように高校が社会と連携・協働しながら、未来の創り手となるために、必要な資質・能力を育む、高校生に育む、多様な各高校の特性を踏まえた高校版の社会に開かれた教育課程の実現ということが提言されたわけでありまして、これを進めるためにも、以下のような3つの事業を推進しているところでございます。
 左下の部分でありますが、国内外の産学官との連携・協働、これを進めるワールド・ワイド・ラーニングコンソーシアム構築支援事業でございます。この中では、Society 5.0をリードし、SDGsの達成を牽引する、そうしたイノベーティブなグローバル人材の育成をするために、文理横断的な学びを推進しているところでございます。
 また、真ん中でございますけれども、普通科の多様化ということで答申の提言を受けまして、令和4年度から制度改正が実施されます。これを受けまして、こういった普通科改革をはじめとする高校の特色化・魅力化を推進するための新時代に対応した高等学校改革推進事業を新たに計上したところでございます。
 また、専門高校と産業界との連携というのも非常に重要であります。企業・経済団体との連携・協働、職業教育の充実のためのマイスター・ハイスクール、これを実施しておりまして、デジタル人材育成の加速化をはじめとした、地域産業の持続的な成長を牽引する最先端の職業人材の育成を目指しているところでございます。
 最後になりますが、次のページ、御覧いただければと思います。また、昨年の答申の中では、通信制高校の在り方についても、御提言をいただいたところであります。
 この通信制高校、これを令和の日本型学校教育を通信制高校も含めてしっかり実現していく。この質保証のためには、提言いただいたことにさらに加えて、生徒の学びを保障する観点から、解決すべき課題がまだ多いと、こういったことから令和の日本型学校教育の実現に向けた調査研究協力者会議を設置したところでございます。
 この中では、荒瀬部会長、あるいは岩本委員にも御参加をいただいているところでございまして、通信制課程の教育方法や学習支援体制の在り方、設置認可基準・所轄庁の在り方などについて、各通信制高校や都道府県などからもヒアリングを行いながら、御議論、御検討をいただいているところでございます。
 この通信制高校の在り方を議論する中では、通信制高校の課題ではありますけれども、そもそも高等学校教育全体をどうしていくのかと、こういった議論についても委員の皆様からいろいろと活発な御意見をいただいているところでございます。
 以上でございます。

【荒瀬部会長】 ありがとうございました。来年度からいよいよ本格的に始まるという高等学校の新学習指導要領でありますが、もちろん既に先行実施している部分というのはあるわけですけれども、高校教育が新しくなるということで、これで新学習指導要領、みんなそろうということになります。
 文部科学省からもそれに向けて様々な留意事項等が示されるかと思いますが、委員の皆様からも、この件につきましても様々な御意見、あるいは御提言、ないしは現場に向けたメッセージをいただければと思っております。
 この件が今日の議題の最後でありますので、先ほど御意見が出ませんでした部分も含めてまとめてお話をいただきたいと思いますが、今日は初回ということもございますので、委員の皆様お一人お一人、名簿の順に御発言をいただければと思っております。どの件でも結構でございますので、よろしくお願いしたいと思います。よろしいでしょうかね。
 今、お一人お一人からお話をいただくということを突然に申し上げまして、名簿順で言いますと今村委員からになるんですけれども、ちょっと御準備いただくことも含めて、少し今田中参事官のほうから御説明をいただいた高等学校に関する話ですけれども、これは岩本委員、それから、奈須委員も一昨年にもなりますけれども、11月にまとめられました、新しい時代の高等学校教育の在り方ワーキンググループのメンバーとして、御一緒に議論をしてきたわけであります。
 その中で、全ての学校において、その学校の言わば何のためにその学校があるのかといったスクールミッションについて、設置者とともに、しっかりと捉え直そうということを基にして、それぞれの学校独自で、これは生徒も参加、参画することも含めて、スクールポリシーをしっかりとつくっていこうということです。3年ないしは4年間学ぶことを通して、どのような力を身につけることを目指すのかということが、卒業に関する基本的な考え方、グラデュエーション・ポリシーと言ってもいいのかもしれません。
 それから、それは自然にできるという部分もあるかもしれませんが、当然のことながら、教育課程によって支えられているわけですので、どのような教育課程を用意して、それによって目指すべき姿に近づけていくのかというカリキュラム・ポリシーと呼ばれるような教育課程の基本的な考え方、さらには、高等学校はそれぞれが選んで入ってくるということでありますので、中学校から高等学校に入る生徒がいわゆるミスマッチを起こさないように、また、自分のこれからのキャリア形成に向けて進路選択をしっかりとできるようにするための入学に関する基本的な方針、アドミッション・ポリシーといったものをしっかり学校がつくろうということになっています。これはつくったからおしまいというんじゃなくてつくり続けようと。それによって少しでもより良い形というのを追求していこうということを一昨年の11月のワーキンググループの審議まとめの中に、相当部分の割合で盛り込んだわけであります。
 一方で、今田中参事官からお話がありましたけれども、通信制高校のことについていろいろと考えていくと、通信制高校の在り方が、言わば高等学校教育全体に非常に深く関わっているということに気づかされることがとてもたくさんあります。
 そもそも学校に毎日行くということは一体どういう意味があるんだろうかとか、あるいはそれぞれ個別最適な学びをしていくと言うんだけれども、その学び方をどう具体に用意していくのか。あるいは、今それができているのかどうかというなかなか厳しい自問にもつながっていくわけでありますけれども、そういったようなことを考えていくということで、高等学校教育について、これまでも議論は中教審としてもしてきたわけでありますけれども、改めてこの令和の日本型学校教育の答申の具体化、着実な実施、もちろんこれは学習指導要領の着実な実施ということが大前提であるわけですけれども、そのことから考えて、この4月から始まる高等学校教育の新しい在り方というものについてもしっかりと考え、学校現場を支えていく。それがひいては生徒一人一人を支えていく、生徒を主語にする高等学校をつくっていくんだということにつながっていなければならないわけでありまして、その点を考えていこうということが非常に重要である御説明であったと思います。
 ちょっと長くなってしまいました。それでは、先ほど申しましたように、本日全ての委員から御発言を頂戴したいと思います。
 では、まず今村委員、お願いをいたします。

【今村委員】 今村です。ごめんなさい、心の準備がまだできていなくて、ちょっと数人後に回していただけると大変助かるんですけれども。

【荒瀬部会長】 分かりました。では、すいません、岩本委員、いいですか、心の準備はできていらっしゃいますか。

【岩本委員】 心の準備はできてはいないんですけど、そういうパスというのがあるんだなというのは驚きましたけども、ちょっと私もどこら辺の観点で意見していいのかというのは、まだ自分の中でもはっきりはしていないんですけど、全体説明を聞かせていただいて感じた点、3点ほどコメントを簡単にさせていただけたらと思います。
 1つ目なんですけども、この全体の個別最適と協働的な学びに向けた学校の在り方というところで、そのデジタル教科書とかここら辺の話は専門部会というか、そこでさらに掘り下げると思うんですけども、そもそもこれは何の目的、何を目標としながら、この個別最適と協働的な学びを実現していくのかという、そこのいわゆる目標とか、また進めていく中での評価ができるように、私、やっぱり目標と評価、そのための指標みたいなものも含めて、やっぱり検討していくというところは一つ大事になってくるのではないかと思っていますので、特に今回掲げられていました子供たち一人一人の多様な幸せ、ウェルビーイングというキーワードですね。ここなんかは本当に分かるようで分からない、なかなかちょっと抽象的なものですが、とても大切なものだと思っていますので、1人1台端末、そして個別最適で協働的な学びを実現する中で、目指していく子供たちのウェルビーイングとは何なのかと、どういう姿なのか。そういったところをやっぱりしっかりとこの機会に議論しながら設定をしていくと。ひいてはそれが次の教育振興基本計画だとかそういったところの教育の大きな目標とか目指す姿の中にやっぱり位置づけられていくということが大事かなと思いますというのが1点目です。
 2点目、GIGAスクール構想のところに関してです。私、これは非常に可能性を感じているところでありまして、ちょうど先週なんかも私、関わらせてもらっていた高校における取組なんですけども、北海道から沖縄までの小規模な高校の生徒、あとは都市部の高校の生徒、また一部ちょっと通信制の生徒も含めて、学校間連携の枠組みを使って、探究的な学びをいわゆる授業としてオンラインを活用して、学び合っていくということをやって、先週末なんかはそれに集中スク-リングみたいな形でオンラインでですけども、やらせていただきました。
 やっぱり小さい学校、高校とかになると、自分の探究しているテーマに関して同じレベルで議論をしたりとか、対話をしたりというような、ほかに周りに生徒がいないという中で、オンラインを通じて学校を超えてそういった共通のテーマに対して本当に深く対話をしたりだとか刺激を受け合ったりとか、生徒がすごい主体的にどんどん意見も言ったりとか、お互いにいろんな気づきを刺激し合っているという姿を見て、このGIGAスクールとか1人1台の中での協働的な学びの可能性みたいなものはすごく感じたところです。
 これはやっぱりその学校の中での協働的な学びに閉じずに、特に小規模校なんかそうなんだと思うんですけども、学校を超えた協働的な学びの機会なんかをつくっていくということが、一人一人の興味関心だとかをさらに掘り下げていく、個別最適な学びにもつながっていくような可能性を秘めているなと感じましたので、今後GIGAスクールの中でも学校間連携みたいな、学校の枠をさらに超えてつながっていくというところなんかも今後より展開が見えていくといいなと思ったところであります。
 最後3点目は高校の話があったかと思います。今、新学習指導要領、スクールポリシーの話、普通科改革、教科「情報」、そして探究だとかいろんなものが高校に一気に改革が来ているという中で、とても現場も四苦八苦しているところですが、やはりその改革の趣旨とか方向性を見ていると、共通するのは先ほど出ていました高校版「社会に開かれた教育課程の実現」というところがすごく大事になってくる。学校の中だけではなかなか難しいやつをどう外を活用しながらとか外部人材も含めてやっていくというところがキーになってくるというところだと思いますけども、現場において先ほど指摘されていましたコーディネート機能というのが必要だと。ここも赤字で書かれていますけども、なかなかまだそれが十分に高校の現場でもできていないというのがやっぱり課題として、声としてもたくさん伺っています。
 そういった人材もなかなかいないとか不足しているというところですので、このコーディネート機能の充実のための具体的な方策だとかそういったところは、より一層具体的にしていかないとまた絵に描いた餅になってしまうなというところで、一部ここに関しては危機感を感じているというところです。
 すいません、ちょっと長くなりましたが、以上3点です。

【荒瀬部会長】 ありがとうございました。では、今村委員よろしいですか。

【今村委員】 ありがとうございます。すいません、岩本さん、先にコメントいただきまして、ありがとうございました。
 今日の投げかけていただいているお題のみならず、この分科会の中で議論をしていけたらいいなと思っていることを発言させていただきます。
 まず、本日の特に高校改革の議論について、私が願っていることについてコメントさせていただきます。私も20年間、主に高校生の世代、特に普通科進路多様校に在籍している高校生、生徒たちと関わってきた立場だと思っていますが、その中で最も問題だなと思っているのは、もう学ぶということのスタート地点に立てないぐらい、学ぶ、学びの自己肯定感、学びの楽しさをとうの昔に忘れてしまったまま、授業に一応向かっている。不登校にはなっていないけど、不学習の状態の子が一応、履修している状態を学校に通っていると呼んでしまっていて、そこで子供たちが学んでいるのか何なのか分からなくても授業の時間は終わっていくという、心を殺した時間が授業の時間になってしまっている状態のシーンを多数見てきました。
 今回の高校改革は、その日本の普通科高校の授業の様子を一変させるようなものになっていくんじゃないかと、そうしていかなければやる意味がないと期待しています。
 私はこの学びの意欲を取り戻すことが、特に社会に出る直前の進路多様校の子たちを中心に、学ぶということは本当に楽しいもので、自分を高めていけるものなんだということの意欲を取り戻していくために、例えばこのデジタル教科書もそうですけれども、どのような存在として授業で取り扱われるか、どのような存在として子供たちの手に渡るかということ、本当にそれがデジタルで、デジタル教科書の配備だけでいけるのか、人材が足りないという中で、デジタルファシリテータももしかしたら必要なんじゃないかなどなど、様々意欲を取り戻していくということのために、そしてこの探究的な学習の仕方ということも、位置づけていく必要があると思っています。
 そのために、ここの部会の中でも、本当の意味で子供たちにこんな学びが、学び方が届いたよねではなくて、学びの楽しさが届いたよね、本当にという実態に触れていけるような議論ができたらと思っています。
 そして、もう一つ別の観点なんですけれども、この分科会の中でやっぱり目をそらしてはいけないのは、不登校の子供についての議論だと思っています。不登校及び長期欠席者の子供たちが29万人もいるということが現実的に起きていて、そこから目をそらしてはいけない、そこを本当にどのように学びをやめてしまっている子供たち、学びをやめてしまうしかない状況の子供たちに、真の個別最適な学びを届けていくのかということは、もしかしたら学校教育法の中で定義されている学校とは何であるかということすらも問い直しながら、学ぶということ、学習権を本当に保障していくということをここで議論していけたらと思っています。
 昨年5月の「NHKスペシャル」で、警視庁が管理していた自死をしてしまった人たちのデータを研究者の方が過去10年にわたって、亡くなった方々の理由について分析した結果が発表されていたんですが、年齢を重ねた30代以上、40代以上の人たちは大体5時から6時が自死をした時間だったそうなんですけれども、学齢期の子供たちは7時から8時の時間と、4時以降の時間が一番亡くなっている時間だったそうです。
 これは学校に行きたくないという子供たちの気持ちが、死ぬほど学校に行きたくないということなのかもしれないと受け止めてもいいんじゃないかなと思ったときに、本当の意味で、学校に行くって何だろうかということを問い直していきたいと感じています。具体的な話はできていないんですけれども、私としては、分科会の中で向き合っていきたいテーマはまずそこかなと思っております。
 私からは以上です。

【荒瀬部会長】 ありがとうございました。それでは、貞広委員、お願いをいたします。

【貞広委員】 どこを取っかかりにして議論や意見を申し上げるべきか、判然としない部分と今、今村委員の最後の御意見が大変重くて、どのように御意見を言おうか悩ましいですが、では、2つ申し上げたいと思います。
 議題の5がこの分科会の主テーマに限らず、高等学校の新学習指導要領スタートを契機とする話題ですので、少し広いお話しとして、そこに引きつけて2点申し上げます。
 1点目は通信制高校の件です。荒瀬先生が、通信制高校の在り方を見ると今の高等学校のありようというのを再考させられるような物事が多々あるとおっしゃっていました。私も本当にそう思います。
 今、特に通信制高校在籍者の3分の2、不登校経験のある16歳から18歳の未修了者にとって、普通の全日制の高等学校に通ってうまくいかなかった子どもたち、または中学校の時点で不登校になって、高等学校に通うことができなくなってしまった子供たちの、ここが最後のとりでになっているんだと思うんです。
 であるからこそ、学び続けることの難しさというのがあるということなんですけれども、その一方で、私個人としてはここだけに学びの最後のとりでを預けてしまっていいのかという気持ちもございます。これは、いい悪いではなくて先生方の御経験に根ざした御指導ということなので、それを悪いと言ってこれから言うことではないんですけれども、先だって、不登校支援に心を寄せている高等学校の先生とお話をする機会がありまして、その方は、高校3年生の不登校になってしまった子供の支援に注力しているという御意見がありました。
 何で高校3年生なんですかと伺ったところ、高校1年生の時点で不登校になってしまった子、高校2年生で不登校になってしまった子のあたりは、進路選択を早々に変更して、通信制高校等に行ったほうがその子にとって幸せなのでとおっしゃったんです。
 その御判断は、専門家としての経験値で、確かにそういう形での指導が今までのシステムだとうまくいってきたんだと思うんですけれども、私としては、普通の高等学校の中でもまだできることってあるんじゃないかと思っています。通信制高校だけに子供たちの最後のとりでを預けるというよりも、通常の高校の中でももっと多様化を進めることによって、またはこのデジタルの技術を導入したりとか遠隔の教育を組み合わせることによって、完全に全日制の高等学校から離してしまわずに、子供たちの学びを保障するやり方というのは、この個別最適な学びと協働的な学び、それをデジタル技術を使ってというところで可能性があるんじゃないかと思うんですよね。
 やはり通信制がいいという子は通信制でいいでしょうし、一方、緩やかにでも今入学した学校とつながりながら、どうにかして卒業したいという子たちの学びも守っていくという、そういう方策が考えられないだろうかと思うところです。これが1点目です。
 2点目は、高等学校の在り方でミッションとポリシーを決めるということに関してです。また、マスタースクールであるとか、先ほど田中参事官の御説明ですと大変魅力的、こちらですね、いろいろな高等学校ができるということです。
 このミッションを立てるというのは、人口減少地域で結構厳しい物事だと思うんですけれども、いずれにしても、これまでテストスコアをベースにしたランキングだった高等学校から、その多様性、幅のある、横並びの多様性に高等学校のありようが変わっていっていただければと思っています。
 ただ、特に教育社会学を専攻されている研究者の中では、やはり特に普通科の高校でミッション、ポリシー、を決めて普通科の中に多様性をもたらすということが、実はそれはトラッキングをより一層推進することになるのではないかという懸念を持っている方も多くいらっしゃいます。
 このトラッキングにならないためには、ミッションとポリシーをいかに魅力的にするかということもあるんだと思うんですけれども、結局、子供の心に刺さらないと、もう少し平たく言うと中学生がそこに進学しようと思わない限り、いかに魅力的なミッションやポリシーを持ってそこにリソースを投入していい教育をしても、高等学校として成り立たないんですよね。
 学校の先生方はとても善人でいらっしゃるので、いいものやっていったらきっと選ばれるに違いないと思っていらっしゃるんですけど、そうではないんだと思います。また、子供だけじゃなくて進路指導される中学校の先生の心にも刺さらなきゃいけないんです。中学校の先生って普通科の高校から大学を出て教師になったという御経験が御自身にあるので、例えば今出していただいているマスターハイスクールでどんなにいいことをやっていたとしても、その先のキャリアの想像力とか、もちろん専門家ですからできるんですけれども、迷ったら普通科行っていこうかという指導になりがちだと思うんですよね。
 ですから、中学生と中学校の先生の心にいかに刺さるような広報をすること、特にいいことをやっている、だけでなく、将来の明確なキャリアパスを含めて知らしめていくかということがすごく大事だと思います。
 その将来も含めてというところの知らしめは、今この一番左側にワールド・ワイド・ラーニングコンソーシアムとか、こういう比較的お勉強が好きな子たちが行くような高等学校でもしかりです。何かもう少し長いキャリアを見越した広報をして、荒瀬先生の言うところのミスマッチがないようにしていただければと思います。
 以上2点です。雑駁で申し訳ありません、突然だったもので、取りまとめられなくて申し訳ありませんでした。

【荒瀬部会長】 ありがとうございました。では、中川委員、お願いいたします。

【中川委員】 こんにちは、放送大学の中川一史と申します。
 私は子供のICT活用や環境に関する様々な研究を行ったり、北は北海道から南は沖縄までの自治体や学校に直接関わって、GIGAスクール構想の充実に関する助言等を行ったりしています。
 1つ目の議論に関することなんですけども、GIGAスクール構想でこれまで教員の定常のICTから、児童生徒の学習用のICTに変わりましたし、それからコンピュータールームに40台ぐらいの限られたコンピューターしかないときには、たまに共有で使っていたんですけども、それが1人1台端末の整備で、常時占有して使う端末へと、学習環境としてのICTも大きく変わったと思います。
 1人1台端末環境は子供自身、新たな学習方法を見いだすとか、学習が最適となるよう調整する場面とか、考えの共有、発信、あるいは共同制作場面で、距離とか空間に関係なく双方向性を有するなどが有効であることは、この1年、全国の学校での活用の様子を見ていると分かります。
 先週、ちょうど熊本市の小学校の公開授業を見てきたんですが、端末のふだん使いがもう既に定着していました。その中で個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実に向けた授業について、私が特に期待しているのが今日議論にもありましたデジタル教科書です。
 デジタル教科書は、実証研究として、外国語については全校、その他の1教科については、約8割の全国の学校に次年度提供の予定になっています。正に、今後ますます普及していくタイミングなわけですね。既に学校でのデジタル教科書の活用の様子をかなり見てきていますが、児童生徒個々の思考を深めたり、自分の考えを表現したりしている場面で、有効に活用されています。
 さらに令和2年度に実施した学習者用デジタル教科書の効果・影響等に関する実証研究事業の調査結果によれば、例えば、自分の考えたことを文字や図にして書いたり、ほかの人に話したりすることができる授業だったとか、友達とお互いの考えを比べることのできる授業だったなどの項目について、デジタル教科書のほうがそう感じると回答した児童が約4割、それから、デジタル教科書と紙の教科書も同じぐらいと回答した児童が約4割見られたなど、個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実に向けて、寄与できる可能性を含んだものと考えています。
 それから2つ目の議論で少し述べるとしたら、1人1台端末整備が先ほど御説明ありましたように高等学校でも進む中、教師が授業で一方的に教えるというスタイルから、生徒が主体的・対話的に学び取るスタイルに変わっていく絶好の機会と捉えています。その中で、情報教育の推進が重要であると考えます。特に関連のある科目が共通必履修科目である「情報I」だと思います。その中で、生徒が主体的に試行錯誤して、何を修正していけばいいのかを協働的に解決していく力をつけていくことになり、高等学校、特に情報科の担当教員のさらなる指導力向上にも期待したいと思っています。
 本部会におきましても、教育の情報化や授業におけるICT活用等の視点を中心に、今後も意見を述べさせていただきたいと思っています。ありがとうございました。

【荒瀬部会長】 ありがとうございました。それでは、奈須委員、お願いいたします。

【奈須委員】 よろしくお願いします。先ほど今村委員が言われたことですけれども、これまで学校のカリキュラムとか授業というのが固定していて、それに合わせられるかどうかということで、小学校からずっと、特に高校ではやってきたんだと思いますが、この考え方を変えていくということが大事だろうと思います。
 アメリカで、Universal Design for Learning、UDLと言いますけど、学びがうまくいかないとかそれでドロップアウトするとすれば、それは子供の側に障害があるのではなくて、カリキュラムの側に障害があるんだという基本認識で進めていこうという考え方がございますけど、そういった考え方に移行していく必要があるんだろうと思います。
 不登校のお子さん、それから特別支援を必要とするお子さん、さらに最近文科省のほうでも議論してくださっていますけど、特定分野に特異な才能を持つお子さんたち、そういった多様なお子さんたちに対して、全てのお子さんの学習権、発達権を全面的に保障するという考え方で、取り組んでいきたい。そうなったときにやはりICTというのは圧倒的な力を持つんだろうと思います。
 個別最適ということになってきますけども、中川先生がおっしゃったとおりで、教師の都合とタイミングで教えるという授業から、子供の都合とタイミングで情報にアクセスして学んでいくという授業。正にその子供が主語になるという教育をする上で、圧倒的に強力な道具立てになっていくんだろうと思います。その意味で高校にも早く全面的に導入をいただきたいなと思っています。
 個別最適ということで申し上げると、やはりその学習の効率が圧倒的に上がるということを再認識すべきかなと思います。一斉指導は効率がいいとよく言いますけど、あれは教師の側の指導効率であって、学習効率はほぼ最低と言われています。タイムオンタスク、ちょっと古い言葉ですけど、実学習時間、実際に授業時間内に子供たちが頭や手を働かせて学ぶタイムオンタスクということでいうと、個別最適化することによって上がるということが知られています。
 かつての国立教育研究所の調査によると、個別最適な学びの場合にタイムオンタスクが91%になるという報告があって、圧倒的な効率だと思います。つまり子供たちが各自の都合で動くことによって、自分たちの時間を適切に使えるということだろうと思います。いわゆる特定分野に特異な才能を持つお子さん、最近「浮きこぼれ」なんていう言い方もしますけど、やっぱり通常の授業が死ぬほど退屈だというわけですよね。もっとやっぱりその子に合ったものを使う。これはエリーティズムということではなくて、その子ならではの発達権、学習権を保障し、多様に伸ばしていく。いわゆる学習の個性化ということを進めていくということによって、そういった子たちが本当に児童生徒の時代を自分らしく輝かしい時間に使えるんじゃないかと思うんです。
 時間の効率という言い方をすると、教育関係者は眉をひそめるんですけれど、時間というリソースは子供たちから僕らが預かっている、もっと言えば奪っているものですので、それを彼らにとって一番いい形で使えるようにする、最適化するということは、子供の側からすればとても望ましいことだろうし、僕らのミッションだろうと思っています。
 そうなったときにやはりICTというのはやっぱり圧倒的な道具立てです。私も個別最適ということをずっとやってきましたけども、やっぱり紙と鉛筆でやっている限りとっても大変で、また、なかなかうまくいかない。GIGAでコンピューターが入ってからも圧倒的にやりやすくなっていますし、先生方のコストも圧倒的に下がっているということを実感しています。
 また、中川先生、堀田先生、金丸先生のような御専門の方に御指導いただきながら、いい形でこれを進めていく議論できればなと思っています。
 それからもう一つ思うことは、高等学校の改革に関わって探究ということがどんどん進んでいますし、科目の編成も随分変わってくるわけで、子供たちにとってさらなる質の高い学びが期待されるわけですけども、高校の探究、最近普通科でもいい形でお進めいただいていますが、ちょっといろんなところを拝見するにつけ、案外と深まらない。
 例えば、専門学科における課題研究の深まりに比べた場合に、やはり深まりが弱いとか粘り強さが足りない気がいたします。十分に力のあるお子さんたちがどうしてこの辺りで足踏みをしているんだろうかと思ったときに、一つ考えられるのは、教科の学びがそういった探究にしっかりと生かされていない。専門学科の場合は、専門でやっていることが正に課題研究に直結する、無理なく直結するようになっているように思います。
 それは日々のやはり教科の授業が、そういった探究とか、あるいは自分にとっての課題の実現に関わってくるという実感がなかなか得られにくいような教科の授業にまだまだとどまっているのではないかということを思うわけです。
 やはりその受験とか進学ということの感覚が、まだ古いという言い方はよくないんでしょうね。でも、従来どおりの形で終わりになると、それがやはりペーパーテスト向けのものになると、どうしても現実の問題を解決するということに資していくという感覚を持ちにくい。これは先生方も実はあまり持っていないというあたりに大きな問題があって、実は今後、探究、随分深まってきましたけど、実は教科の授業を質的に変化させて、深めていく。今回の指導要領で言うと見方・考え方のようなことですけれども、そこにつなげていくことって現実の社会課題ともつながってくるし、子供たち一人一人のキャリアの実現にも結びついてくるはずで、まだまだここのところの議論が弱いように思います。
 今回、いろんな科目編成が、その方向に向かっているわけですけれども、各教科の探究の科目であるとか、歴史総合、地理総合、公共のような科目が典型ですけれども、教科科目の質が生徒たちの心に届いて、現実の探究につながってくるようなカリキュラム全体での見直しということが、また今後に臨まれるのかなと、そんな議論もできればいいと思いますし、そこにおいてもICTやデジタル教科書のありようということが大きく関わってくるような気がいたしております。
 以上です。よろしくお願いします。

【荒瀬部会長】 ありがとうございました。では、続きまして、平川委員、お願いいたします。

【平川委員】 広島県教育委員会教育長の平川でございます。丁寧な御説明、事務局の方、ありがとうございます。
 GIGAスクールと教科書・教材、それから高校についての御説明だったかと思いますけれども、今、奈須先生からもありましたけれども、まずは探究についてちょっとお話をさせていただきたいと思っております。
 現場も見て、どうやったらこの探究のレベルを上げることができるのかなと思っていますが、はっきり言ってまだまだレベルが低いです。ハードをそろえたのはいいけれども、これからはソフト面の充実かなと思っていまして、先生方にやれやれと言っても仕方がなくて、教育委員会が伴走する、それからはしごを外さない、こういう支援体制が必要かなと思っております。
 それから教科書・教材につきましては、法制度を含めてもしかしたら教科書、無償措置法とか教科書検定とかこのあたりもちょっと検討していかなければいけないかなと思っております。紙かデジタルかという問題ではなくて、選べるというところが大事かと思っています。AIドリルも含めて、その子に合ったものあるいはその地域、学校を選べるという形にしていくということが個別最適につながると思うので、この辺りをどうこの中で議論していけるかと思っております。
 それと高校につきましては、今村委員が学ぶ意欲について言及されましたが、確かに本当にそうなんです。高校になって不登校というのは、小中学校の間に何とかしなきゃいけない問題かなと思っていまして、学ぶ意欲がない子供に幾ら水を飲めと言っても、喉が渇いていない馬に飲ませるのと同じで、すごく難しいなと思っております。ただ、やっぱりやりようによってはできるなと実感しておりますのは、広島県では、商業高校、農業高校、それから工業高校で、今アップデートをやっております。週に4時間、PBLをやるんですよ、4時間です。
 これが相当子供たちの学ぶ意欲を伸ばしておりまして、例えばある商業高校では、転退学が30人ほどいたんですけれども、今、その学校は1人です。そういう意味で学ぶ意欲をアップさせることで、小中学校のとき勉強してこなかったけれども、どうやったら私は読解力がつきますかって国語の先生に聞いたりとか、あるいは英語、理科、数学、いろんな学習にやっぱり向いてきているなと思っております。
 その手法を使って総合学科、それから普通科についても、もう既に広島県のほうでは徐々にではありますけれども、ステップバイステップで、探究の充実ということに取りかかっております。ただやっぱり先生たちが、各教科あるいは単元に向けて本質的な問いをつくれるかどうかというところが一番重要かと思っております。これについては、昨年度から、3日間のオンライン研修を行っていますが、これはもうやりながら学べということで、ICTを使ってかカリマネとか単元づくりにひもづいた本質的な問いの研修を5年間で、全ての教員が受けるという形でやっています。
 1回その研修を受けたからといってできるものではなくて、その後やっぱり何回か成功体験を積ませるしかないかなと思っていまして、この部分についても、どういうふうにしたら探究のレベルが上がるかということをこの会で議論できたらと思っております。
 それと最後に不登校については、私も非常に思うところがありまして、どうしても存在を忘れてしまうんです。学校の先生も教育委員会もかもしれません。やや昔のヤンキー時代を思い出していただきたいんですが、目の前でけんかがあると、どうにかして止めなきゃいけないといってやるんですけれども、そこにいないともう忘れちゃうんですね。それがこの不登校の恐ろしいところで、忘れては絶対いけない存在で、みんなどうにかしなきゃいけないと口では言っても、具体的に何やっているのと。どうしようどうしようと言って、口ばっかりということをどうにかしなきゃいけないと思っています。
 県教委は、主に県立の高校と特別支援学校、市町村の教育委員会は主に義務教育ということで、設置者が違うからなかなかできないということもありますけど、そんなこと言ってられない。私どもは、校内フリースクール、スペシャルサポートルームというのを義務教育のほうに設置をしたり、来年度はリアルとオンラインを掛け合わせた形でギフテッドとか不登校のお子さんに対して、県教委が直接アプローチできるような体制を取っていきたいと思っています。そこにスタッフを投入するわけですけど、県教委の定数を増やせるというわけじゃないんで、じゃあどうするかというと、やらなくていい仕事をすっぱり切って、そこにリソースを投入する、劣後の優先順位をつけて投入すると、そうすれば必ずできると思うんですよ。
 今のこの不登校対策というのは、某民間会社を使うとすると。都市部やお金のある子はいいでしょう。でも、地方でお金のないおうちの子はどうするんですかと、公立の義務教育がもっと頑張らなきゃいけないと、義務教育乗っ取られちゃいけないと思っております。今の立てつけで、今の学習指導要領で、今の形でも十分絶対できますということで、これについては、もう本当に力がどうしても入ってしまうんですけれども、どうにかして今学ぶ意欲を失ってしまいそうな小中学生に注力する。小学校もここ5年で不登校がたしか2倍ぐらいになっていますよね。このままどんどん増え続けるということを想定したときに、大人がどうにかしなければいけない問題かと思っております。
 学校のよさはやっぱり集団ということのリアルな人間関係だと思いますので、個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実をこの議論、この会で議論していければ幸いに思います。
 以上です。

【荒瀬部会長】 ありがとうございました。それでは、堀田委員、お願いいたします。

【堀田部会長代理】 先ほどの部会長代理を拝命しまして、大変恐縮でございます。よろしくお願いいたします。

【荒瀬部会長】 よろしくお願いいたします。

【堀田部会長代理】 学校教育の在り方に関する特別部会ができたということの重さみたいなことを感じております。これはちょっと大げさに言うと、現在の教育制度の中に、もし制度疲労みたいな部分があるのであれば、それを積極的に変えていかないと、今その疲労によっていろんなことが、いろんな子供たちに起こってしまっている可能性がある。制度をどう見直していくかという話だとすれば、随分やっぱり根本的なところから考える部会になるのかなと思います。
 そういう前提でちょっと2つ、今日の議題に合わせてコメントしたいと思います。まず1つ目は、デジタル教科書・教材・ソフトウェアの話です。
 中川委員と私は、教科書のデジタル化につきまして、一番最初の会議体の頃からずっと関わってまいりました。とりわけ中川委員は現場の実践、あるいは調査等についてずっとお取組いただいております。令和2年度の補正予算では全国の4割ぐらいの学校が、今後は全ての学校に近づくような形で、デジタル教科書を使ってみる体験を子供たちも先生たちもしていくというのが現在のフェーズでございます。デジタル教科書の利活用が進んでいくと、最初は戸惑いいろいろあるんですけど、こうやったら効果的だねとか、そういう意見はいろいろ出てきますし、やっぱりこの機能がいいねという、望まれるツールのようなものがはっきりしてきます。
 一方で、使い勝手がいいとか悪いとかネットワークに負荷がかかっているじゃないか、これはネットワークが細い自治体の場合ですけども、そういう課題も明確になっています。あと、画面の大きさからいってこれはちょっといろいろ難しいところがあるとか、ユーザーインターフェースが教科書会社によって違うのはいろいろ子供が混乱するとか、ID、パスワードが会社によって違うのはまた大変だとか、いろんな運用上の課題みたいなことが起きてきて、これをこれからどうしていくかというのは一つの大きな課題です。
 今、デジタル教科書について申し上げましたけども、このできるワーキンググループはデジタル教材やソフトウェア、クラウドツール、こういうのも想定しているわけですが、GIGAスクール構想を先生方が頑張っていただいているおかげで、例えばデジタル教材についてはいろんな、それこそ個別最適な学びとか在宅での学習とかに資するような、そういう利活用が進んできている部分があります。これは経済産業省のお力も大きいかと思います。
 一方で、ソフトウェアのクラウドツールについても、OSはいろいろなものが導入されたものの、クラウドツールは非常に広く一般的に使われていて、それによって、対面でありながらもクラウド上に協働的な学びの成果が残り、家に持ち帰ってからも、その続きができて、家庭学習が学校での学習とつながって非常に充実するというような、いろんな成果も出ております。
 ただ、残念ながらデジタル教科書とこのデジタル教材の関係、あるいはデジタル教科書とそういうクラウドツールの関係みたいなことがまだ十分に整理できていないというのが一つの課題で、今後はこの整理によってこれらがどのように連携していけば、より充実するかという課題や、あるいはそれによって教育データの利活用がうまく進み、教科書のどの辺でつまずいている子にどのようなデジタル教材で処遇していけばいいかみたいなことについての研究開発、あるいは実践が進んでいくことが重要かと思います。
 このたびデジタル庁からはロードマップが出ておりまして、そこに、今のようなビジョンが少し入っておりますけども、世の中ではロードマップに対して、子供たちの個人情報みたいなことをどのように扱えばいいかということが、大きな話題になっております。個人情報の取り扱いはもちろん非常に重要な観点ですので、今後文部科学省としては、子供たちの学習の状況とか学びの状態を適切に把握するという意味での個人情報の利活用を、学校の中でどこまでデジタルでも許していくかということと、そこから個人情報においてビッグデータにしてEBPMに返していくような利活用、それから先ほど話題に出たように自死の実態を研究者が分析したという話が今村委員からありましたけど、データが公開されることによってできる専門的な分析というのがあるわけで、ここにどのようなデータをどこまで出すかみたいな課題があります。公開と非公開の境目というのはやっぱり文部科学省として、初等中等教育としてどうあるべきかという観点で定めなければならないことかと思います。こういうようなことについて、今後議論が進むといいなというのが一つでございます。
 2つ目のお話は高校のことです。高等学校においては、最近の話題で言えば大学入学共通テストに教科「情報」が入ることが決まりましたが、これを受けて都道府県によって教科「情報」に関する指導に温度差があるということが世論で話題になっております。これは非常に私も懸念しているところでございます。
 これを埋める必要はもちろんあるわけですけど、高校における1人1台の端末の話が先ほど田中参事官の話からもありましたけども、これもまた都道府県によって温度差がございます。高等学校の設置者、公立高校の設置者の多くは都道府県あるいは政令指定都市であり、そして任命権者もそうだと考えると、都道府県がしっかりとこの辺の認識をお持ちいただいて、広島県教育委員会のようにしっかりと進めていただくことが今後非常に重要かと思います。
 その一方で、先ほどの通信制の話をいろいろ聞いていて思うんですけど、通信制の高校に行きたいという、例えばアスリートとかそういう方々は今たくさんいます。自宅等において自学自習に取り組むということを原則としてこの通信制高校が成り立っているものの、そこがなかなか難しいんだという話は、コロナで自宅学習しなきゃいけない子供たちの中には、実は自分だけでは学べなかったという実態が結構見られたことです。オンラインでの学習保障ができて、そして端末を持ち帰ったとしても、一人で学ぶことが苦手というか、上手にできないお子さんを私たちは学校教育で育ててきてしまったかもしれないという反省があります。
 今日はあくまで通信制高校の話としてこの話が出てきましたけど、荒瀬先生もおっしゃっていたように、これは別に通信制高校に限る話ではなくて、普通の高校生たちがみんな、自宅等においてちゃんと自学自習に取り組むような主体的な学ぶ姿勢が備わっているのかという話が、貞広委員の話とか奈須委員の話とか、全部つながってくる話なのかなと思います。
 私の専門分野で言えば、コロナで、オンラインで家庭学習の支援をするという取組が今全国でこのオミクロンの関係でいっぱい生じていますけども、それに時々立ち会わせてもらうと、本当に上手に授業している、これも授業時数としてカウントしても全然問題ないよねという取り組みもあれば、まだまだ始めたばかりで全然そこまでいっていないものもあります。
 これは、両方とも新聞とかではいわゆる「オンライン授業」という言い方で呼ばれているわけで、これを授業時数とみなすには、どういう状況になっていたらよいかという基準のようなものをちゃんと定めないといけないと思います。また、学校に来たら出席で、そうでなければ出席ではないみたいな、このあたりの今までの考え方をもう一度根本的なところからちゃんと定め直すみたいなことが非常に重要なことなのかな、それがこの特別部会の1つの重要な仕事なのかなと思います。
 今の話はいわゆるオンライン授業と言われる家庭学習支援のところの話を例にお話ししましたけども、良質な教材をしっかりと家でも使えるようにすることが重要で、そこでは質保証されたデジタル教科書というのは、私は特に義務教育段階においては重要な存在だと思いますので、このデジタル教科書の在り方、ありようみたいなことと、その普及、利活用、子供たちの個別最適な学びや協働的な学びにどのようにこれが資するかということを丁寧に見ていくことが重要かと思います。
 長くなってすいません、以上です。

【荒瀬部会長】 ありがとうございました。今御出席の委員の皆様から一通り御意見といいますか、お考えをお聞かせいただいたわけですが、今おっしゃったことについて、何か御質問とかあるいはこんなふうに考えるという御意見とかございますでしょうか。
 岩本委員、お願いいたします。

【岩本委員】 岩本です。ちょっと2点ほど皆さんの意見を聞いて感じたこと、コメントさせていただけたらと思います。
 1点目が貞広委員が言われていた高校におけるスクールポリシーをつくっても、それがちゃんと中学生だとかに届いて、中学生が主体的に本当に自分に合った学びの環境を選び取っていくというところには、やっぱりその届けるというところが大事だというところを非常に共感したところです。私たちも見ていると、届ける相手が中学生であったり中学生の保護者さん、また、中学校の教員、あとは都市部とかでいくとやっぱり塾とか割とそういったところもその進路というのにすごく関わってきていると。こういったところにどうちゃんと高校側がコミュニケーションを取っていくのか、伝えていくのかというところで、これは特に公立の高校って、あまり今までそういったことを意識してやってきていない部分もあるなと。
 スクールポリシーつくって終わりで、うちはその主体的な生徒を育ててとかって、こういう言葉で言ってもどこも同じようなことを言っていて、それが伝わらないわけです。これをやっぱりつくるだけではなくてちゃんと届けて、実質化していくというところの視点ははっきり言って今弱いと思いますので、これはちょっと何かてこ入れをしていかないといけないのかなと思います。
 伝えるときに必要になってくる一つは、データですよね。このデータは今までは進学実績みたいな、国公立難関大学に何人行きましたみたいな、こういうデータぐらいしか見るべきものが出ていないとか、例えば中退率みたいな、ちゃんとみんなが学んでいるかとか、いろんなデータってあると思うんですけども、そういったデータも自分たちで分析しながら、自分たちの強みや魅力をちゃんと分析して伝えていくとか、もしくは中学生とか選ぶ側が判断するための、そういったデータの活用みたいなのも伝える、届ける、コミュニケーションの部分ですごく重要なポイントだと思います。
 もう一つは生徒の姿です。ちゃんとそこで学んでいる生徒の姿が、高校生の姿が中学生や保護者や中学校教員とかにちゃんと見えるようにしていくとか、そういう姿のところです。こういったところのコミュニケーションの方法というのがやっぱり今まだ十分にできていないので、これからスクールポリシー、多くのところでつくっていくと思うんですけど、その先、つくってどう伝えていくのかのここはもう一段、国としてでも、各都道府県も含めて検討していくということが大事だろうというのが1点目です。
 2点目が、高校生における個別最適な学び、特に通信制の話なんかも出ていましたが、そこに関して今感じているのは、高校生自身が本当にその個別最適な学びをといったときに、今一つの壁になっているのは、全日制と通信制の壁というのがあるかと思います。
 先ほど浮きこぼれとか吹きこぼれとか落ちこぼれとかいろいろ言葉が出ていたかと思うんですけども、生徒自身が自分の学校、例えば全日制であれば、そこで学びながらもっと高いレベルもしくはちょっとその授業についていけないとか、もうちょっと基礎のところからやり直したいといったときに、例えば全日制の生徒が通信制の学びでオンラインで自分に合ったペースや学習進度の科目とかを学んでいけるとか、全日制なら全日制のそこにあるものの数少ない選択肢の中から授業を取らなきゃいけないというところから、場合によっては、通信制だとかの授業なんかも科目等履修生とかいろんな形あると思いますけど、そういったもののハイブリッドで、本当に自分に合った学びを取れるようにしていくとか、その逆もしかりかもしれないですけど、通信制と全日制とをぱっつり切るのではなくて、そこの連携というか協働というのか、そういったところをデザインしていくことが、全日制でうまくいかなかったらもう不登校になってしまうとか、どこかに変わらなきゃいけないとかというところを防いでいく、多様な生徒たちの多様な学びを実現していく令和の日本型学校教育の一つの在り方だと思いますので、そういった部分も今後議論が必要なのではないかと感じました。
 以上です。

【荒瀬部会長】 ありがとうございます。ほかの方で何かございますでしょうか。もう少し時間がございますので、よろしいですか、ありがとうございます。
 今、岩本委員おっしゃったスクールポリシーは、先ほど岩本委員御自身もおっしゃっていましたけど、何のためにスクールポリシーをつくるかということですよね。目的がよく分からないまま、とにかくつくれと言われましたからつくりましたというので、つくったけどもう忘れちゃったみたいなことになってしまっては何の意味もないわけで、そこのところを一つの取っかかりとして学校を見直していただいて、是非より良い本当に生徒が主語になるような学校をつくっていただくということが大事なのかなということを思いました。
 ありがとうございました。今日初回ということで、御欠席の方もいらっしゃるんですけれども、いろいろと皆さんから御意見をいただきました。今いただいた御意見全般につきまして、事務局から何かありますでしょうか。ございましたら御発言ください。

【白井教育制度改革室長】 特に現時点ではございません。

【荒瀬部会長】 ありがとうございます。そうしましたらこれ、今日は閉じようと思うんですけれども、今後も、今日は御欠席3人いらっしゃるわけですけれども、中教審のこういう会議として珍しく、人数が少ないということがありまして、是非いろんな形で意見のやり取りをしながら進めていければと思っております。
 それとこれは何人かの委員からの御発言の中にもそういう御趣旨があったかと思うんですけれども、やっていくべきことというのはいろいろとあるわけですけれども、それを明らかにしていくということは非常に大事で、かつまたそこに優先順位をつけていく。すぐにできることと、なかなかすぐにはできないということがあって、我々は子供たちのより良い学びに向けた取組をいかに支えていくかということを考えると、すぐにもいろんなことができなければ困るという思いは持ちつつも、しかし、現実問題、なかなかすぐにできないこともあるという中で、どういうその優先順位をつけるのかという、この辺りも是非話合いの中で見えてくるような形で議論ができればなということを思っております。
 今日は本当にありがとうございました。今後もまた是非いろいろと御意見を頂戴できればと思います。
 それでは、次回の予定につきまして、白井室長、お願いをいたします。

【白井教育制度改革室長】 次回の日程につきましては、追って事務局から御連絡申し上げます。

【荒瀬部会長】 ありがとうございました。では、少し時間を残しましたが、本日はこれで終了をしたいと思います。ありがとうございました。

【平川委員】 すいません。

【荒瀬部会長】 どうぞ。

【平川委員】 意見よろしいでしょうか。

【荒瀬部会長】 平川委員ですね。

【平川委員】 すいません、終わろうとしているときに何かしつこくてすいません。この会なんですけれども、今、オミクロン株もあるということで、なかなか私も東京に行けないんですけれども、できればちょっと1回ぐらいリアルで開催して、ちょっとみんなで集まって、ざっくばらんにオンラインも楽というか行かなくてもいいんですけれども、実際やっぱりそこもフェーストゥフェースで顔を合わせることによって、議論が活発化するというよさもあると思いますので、ハイブリッドでちょっと収束したときじゃないと無理かと思いますけれども、御検討いただけると議論が活性化していいかなと思っております。お願いいたします。

【荒瀬部会長】 ありがとうございます。大変大事な御指摘かと思います。私自身も実際にその場にいるのと、こういう形でするのでは随分違うなという、もちろんこれもまたよさがあるわけですから、そのよさは生かしつつも、おっしゃるように実際集まるというのも非常に大事ですので、そういったこともまた事務局と相談しながら進めていければと思います。ありがとうございました。

【平川委員】 ありがとうございます。

【荒瀬部会長】 では、本日はこれでよろしいでしょうか。要はこれも終わった後、今日はこうでしたよねみたいなそんな話ができる場面が、オンラインの場合は全くないので、終わって切ればもうそれっきりですので、そこもちょっと寂しいところですよね。すいません、余計なこと言いました。
 では、本日はこれでよろしいでしょうか。では、終了いたします。

【今村委員】 ごめんなさい、平川さんに続いて、最後の最後にすいません。

【荒瀬部会長】 今村さんですね。

【今村委員】 今村です。すいません、ちょっと何でも発言していいのであればということで、もしこうなったらいいなと思っていることなんですけど、私は個人的に皆さんと違って、この教育政策論には非常に弱いということと、文部科学省の方々がどんな議論をこれまでやって、今何に困っていらっしゃるのかということを想像するしかないのですが、何か委員の人たちが議論して文科省の方はそれに対してきちっと答えるみたいな関係性ではなくて、ここまでの経緯でどんな困り事があったのかみたいなことを、できればもう最前線で政策の検討されている文部科学省の方々も何か一緒に議論に入るようなオフ会みたいな感じのものがあると、もっと議論が深まるといいますか、委員だから意見が言えるみたいな感じじゃなくて、何か一緒に議論できるような機会があると、もっと発言の質が上がるのかなということも思いました。

【荒瀬部会長】 ありがとうございます。文部科学省の皆さんも是非今の今村委員の御発言を受け止めていただきたいと思います。
 もとより、この会議の場面で御発言いただくのは全く良いと思いますので、例えば認識がちょっと違うとかいったことがありましたら、それはもう是非御発言をいただければと思います。ほかの方、よろしいでしょうか。
 では、これで終わりといたします。本日はどうもありがとうございました。
―― 了 ――

 

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