個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実に向けた学校教育の在り方に関する特別部会(第2回)議事録

1.日時

令和4年10月3日(月曜日)15時30分~17時30分

2.場所

文部科学省 ※WEB会議
(東京都千代田区霞が関3-2-2)

3.議題

  1. 個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実に向けた教科書・教材・ソフトウェアの在り方について(中間報告)
  2. 義務教育に係る当面の検討事項について
  3. 高校教育に係る当面の検討事項について
  4. 義務教育の在り方ワーキンググループ及び高等学校教育の在り方ワーキンググループの設置について
  5. その他

4.議事録

【荒瀬部会長】 定刻となりましたので、ただいまから、中央教育審議会初等中等教育分科会、個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実に向けた学校教育の在り方に関する特別部会、第2回を開催いたします。
 本日は御多忙の中、御出席いただきまして、誠にありがとうございます。まだお越しでいない委員の方もいらっしゃるようですけれども、追っつけお越しになるということで、進めさせていただきます。
 本日は、傍聴の方にもよく聞こえるようにということで、発言の際にはマスクを外すという指示を受けておりまして、私、距離を取ったところでお話をさせていただきます。こちら、文科省にいらっしゃる方も、発言の際には全てマスクを外して発言をしていただくことになっておりますので、その点、どうぞ御理解といいますか、御了解というと変ですけれども、申し上げておきます。
 では、議事に入ります前に、前回第1回が開催されましてから少し間が空きましたので、まず、事務局の紹介を改めてしていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

【前田教育制度改革室長】 初等中等教育局の教育制度改革室長、前田でございます。本日はお忙しい中お集まりいただきまして、ありがとうございます。よろしくお願いいたします。
 まず初めに、事務局から紹介をさせていただければと思います。
 本日は遅れての参加でございまして、9月1日付で文部科学審議官の伯井と初等中等教育局長の藤原が着任しておりますが、現在まだ会場には到着をしていない状況でございます。
 続きまして、大臣官房学習基盤審議官の寺門でございます。
 大臣官房審議官初等中等教育局担当の安彦でございます。
 初等中等教育企画課長の堀野でございます。
 事務局からの紹介は、以上でございます。

【荒瀬部会長】 ありがとうございます。
 続いて、本日の会議開催方式及び資料につきまして、前田教育制度改革室長から御紹介をお願いいたします。

【前田教育制度改革室長】 本会議は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を防止するため、ウェブ会議方式にて開催をさせていただいております。ウェブ会議を円滑に行う観点から、大変恐縮でございますけれども、御発言時以外はマイクをミュートにしていただくようお願いいたします。カメラにつきましては、御発言時以外も含め、会議中はオンにしていただきますようお願いいたします。御理解のほどよろしくお願い申し上げます。
 それでは、配布資料の確認をさせていただきます。本日の資料でございますけれども、議事次第にございますとおり、資料1から資料4-2まで、加えまして、参考資料が1から5までとなっております。このうち参考資料2につきましては、先日取りまとめられました「特定分野に特異な才能のある児童生徒に対する学校における指導・支援の在り方等に関する有識者会議」の審議のまとめでございます。また、参考資料4と5につきましては、産業構造審議会教育イノベーション小委員会において取りまとまった中間まとめと、総合化技術・イノベーション会議「Society 5.0の実現に向けた教育・人材育成に関する政策パッケージ」となりますので、御参考までに配布をさせていただいております。
 以上でございます。

【荒瀬部会長】 ありがとうございました。
 本日は議題が4つございまして、まず、議題の1つ目でありますけれども、「個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実に向けた教科書・教材・ソフトウエアの在り方について」の中間報告でございます。議題の2といたしまして「義務教育に係る当面の検討事項について」、議題の3といたしまして「高校教育に係る当面の検討事項について」、議題の4といたしまして「義務教育の在り方ワーキンググループ及び高等学校教育の在り方ワーキンググループの設置について」、以上の4件でございます。
 なお、本日は報道関係者と一般の方向けに、本会議の模様をユーチューブにて配信しておりますので、御承知おきください。
 では、議題に入ります。議題の1「個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実に向けた教科書・教材・ソフトウエアの在り方について」の中間報告でございます。前回2月7日に本特別部会の下に設置をいたしました「教科書・教材・ソフトウエアの在り方ワーキンググループ」において議論が進められておりますので、中間報告(論点整理)について御報告をいただきたいと思います。
 まず、事務局から資料の御説明をお願いいたします。安井教科書課長、よろしくお願いいたします。

【安井教科書課長】 教科書課長の安井でございます。どうぞよろしくお願いいたします。それではまず、事務局から資料1に基づきまして御説明をさせていただきます。
 先ほどもございましたように、2月の特別部会におきまして、「教科書・教材・ソフトウエアの在り方ワーキンググループ」の設置が決定されたところでございます。本ワーキンググループにおきまして、平成6年度以降のデジタル教科書の導入の在り方、あるいはデジタル教科書やデジタル教材、関連するソフトウエアの適切な活用方法を主な検討事項にいたしまして、検討を開始することが決定されたところでございます。3月に第1回のワーキンググループの会議がございまして、これまで5回の議論を重ねていただいたところでございます。本日は、これまでのワーキンググループでの議論をまとめさせていただきまして、中間報告(論点整理)として特別部会に御報告をさせていただくものでございます。
 まず、資料1ページから5ページにかけましては、これまでの会議の中での委員の先生方からの主な御意見をまとめたものでございます。時間の都合上、5ページまでの資料の御説明は割愛させていただきまして、資料6ページをお開きいただければと思います。
 本ワーキンググループにおける議論をいただく上で、大きく2つの観点がございました。1つは、デジタル教科書・教材・ソフトウエアにつきまして、それらの導入自体を目的とするのではなくて、学習指導要領が目指している「主体的・対話的で深い学び」、あるいはそれに関連しまして中教審からもお示しいただいている「個別最適な学び・協働的な学び」、こういったものの実現にどのように活用していくのかという観点から、この問題について議論をするという観点でございました。
 さらに、資料を1枚おめくりいただきまして、7ページでございます。もう1つは、デジタル教科書・デジタル教材、そしてまた関連するソフトウエア、これらの一体的な有機的な関連の中から、先ほど申し上げたような活用の方向を考えていこうということでございます。そういったことで7ページに整理してございますのが、これまでのワーキンググループでの御議論の中で、デジタル教科書・教材・ソフトウエアの連携の在り方の一つのモデルでございます。GIGAスクール構想が進展してきている中で、学校におけるデジタル教材あるいは学習支援ソフトウエアにつきましても多種多様なものが充実されてきておりまして、そういった導入も加速している状況でございます。そういった中で、今後も教科書につきまして、質が担保された主たる教材という役割を果たしつつ、教科書がデジタル教科書ということでデジタル化することによりまして、こういったデジタル教材等との連携・接続を図ることで、学びの充実につなげていけるのではないかという大きな考え方でございます。
 デジタル教科書自体も、ルビ、拡大、書き込み、色の反転等のアクセシビリティーの機能、こういったものも充実させていきながら、表の左のほうでございます多種多様なデジタル教材、こういった多様なリソースと円滑につながるアクセス機能も発揮していける。また、右側にございます学習支援ソフトウエア、こういったものとの連携も、より効果的・効率的に進めていけるようになる中で、児童生徒の学習成果のリアルタイムな共有とか、あるいはグループでの課題の共同作成、こういったものもより容易に効果的に推進していけるようになるだろうということで、全体として個別最適あるいは協働的な学びをより充実していきたいということでございます。
 また、こういったことにつきましては、学校の中の授業の質の改善のみならず、学校外の家庭学習・地域学習、こういったところでもいろいろな効果を今後図っていけるのではないかといった議論がございましたので、そのような考え方を7ページでお示しさせていただいているところでございます。
 続きまして、8ページを御覧いただければと思います。デジタル教科書・教材等の活用を進める上で、学校現場からも、いろいろな使用上の課題も御指摘をいただいているところでございます。例えばデジタル教科書を閲覧していく上でのビューアーでございますけれども、各教科書発行者ごとにこれまで開発・発展してきた経緯がございますので、ビューアーの仕様が教科書会社によって異なっている状況もございまして、実際使用する児童生徒の使い勝手という点での課題という御指摘もございました。また、通信環境、ネットワークの問題とデジタル教科書のデータ量の関係になりますが、大勢の児童生徒が使用を図っていく上で、フリーズしたりといった課題も、なお一定、少なからず御指摘もあるところでございます。
 こういった状況・課題も踏まえますと、デジタル教科書に今後求められることといたしまして、アクセシビリティーをはじめとして、広く活用されるデジタル教科書のメリットを生かす機能の充実も図りつつも、データ容量的な部分での技術的な部分での改善も必要だろうということでございまして、下の囲みでございますが、ユーティリティーの問題としては、各ビューアーの使い勝手の向上ということでの標準化を今後図ることも考えていかなければいけないのではないか、あるいはデータ通信環境の観点で、デジタル教科書のデータの軽量化、内容自身はしっかり確保しつつも、そういったことも技術的ないろいろな方策も考えていかないといけないという御指摘もいただいていたところでございます。
 続きまして、8ページ、下半分の後段でございますけれども、そういったことで、令和6年度をデジタル教科書導入の最初の契機として考えていく上で、学校現場で混乱なく円滑・効果的に活用していくという観点から、どのような方策を考えていくべきかという御議論をいただいたところでございます。
 先ほど申し上げましたような通信面の課題とか、あるいはソフトの部分でも、指導面、デジタル教科書を活用した指導方法の開発が、まだデジタル教科書は学校現場でも使われ出して日が浅くございますので、そういった指導面での今後の充実も課題であるという御指摘もいただいていたところでございまして、デジタル教科書を混乱なく効果的に活用していくという観点からは、令和6年度から教科・学年を絞って段階的に導入をすることが必要ではないかという御指摘をいただいていたところでございます。
 その際に段階的な導入を考える場合に、ではどの教科・学年から考えていくかということでございますが、それにつきましては、小学校5年生から中学校3年生を対象にいたしまして、英語がまず指摘されていたところでございます。デジタルということで、音声という英語の学習で欠かせない機能を発揮できるというところで、活用を考えていけると。それから、英語の次の教科といたしましては、現場ニーズが高い算数・数学が妥当ではないかという御指摘をいただいていたところでございます。
 また、このようにデジタル教科書を導入するに当たりまして、紙の教科書とデジタル教科書の在り方・関係でございますけれども、こちらにつきましては、デジタル教科書への慣れ、あるいは児童生徒の学習環境を豊かにしていくという観点から考えますと、児童生徒の特性や学習内容等に応じて、デジタル教科書、あるいは紙の教科書、双方をハイブリッドに活用していくことのできる環境整備が重要ではないかという御指摘をいただいていたところでございまして、当面の間はデジタルと紙の併用という御指摘もいただいていたところでございます。
 続きまして、9ページに移ります。いろいろとワーキンググループにおきましても先進的な事例の御紹介もいただきながら議論が進められてきたところでございますが、こういった紙の教科書・教材、あるいはデジタルの媒体、そういったものをハイブリッドに組み合わせる中で、学びの手段を適切に組み合わせながら学習が進められていくという状況もございました。こういった環境整備を行いつつ、冒頭のデジタル教科書等の導入に当たって個別最適な学び・協働的な学びを充実させていくという観点を考えていきますと、こういったデジタル教科書・教材等を使うことを目的化するのではなくて、デジタル一斉授業という形で使うことを自己目的にするのではなく、授業の質の向上に、この取組をつなげていかなければいけないという大きな問題意識、御指摘もいただいていたところでございまして、そういった学びの質の向上に向けた学校・先生方に対する行政としての伴走支援が非常に大事になってくるのではないかという御指摘をいただいていたところでございます。また、教育環境に格差が生じることがないように、デジタル教材や学習支援ソフトウエア等の支援の検討も必要ではないかということでございます。
 資料、最後でございます。10ページでございます。こういった御議論・御指摘をいただきました上で、今後さらにワーキンググループとしても検討を要する論点ということで整理をされているところでございます。冒頭、デジタル教科書・教材等の効果的な活用を進めていく上で、教師からの一方通行の授業からの転換、授業の質の向上を考えていく上で、大きな学習指導・生徒指導の在り方についてどのような充実方策を考えていくべきかという、その方向の中で教科書・教材の在り方も考えていくべきであろうということでございますし、そういった個別最適な学び・協働的な学びの充実を広げていく上で、モデルづくり、あるいは研修を含む学校現場への支援を、国・都道府県含めて、市町村教育委員会、それぞれ教育行政としてどのような取組をしていかなければいけないのか、こういった課題でございます。
 また、今後の活用を進めていく上での効果面と課題等の検証とか、eポータル等も含めた教科書・教材等の連携の在り方でございます。また、環境整備の今後の在り方とか、端末の家庭への持ち帰り等も含めた家庭との連携等でございます。こういったことも、さらに今後ワーキングでも議論をしていきたいというところでございましたが、特に冒頭の大きな学習指導・生徒指導等の在り方、あるいはそれに対する学校現場への伴走支援、こういったことにつきましては、特別部会での大きな今後の教育の充実方策の在り方の議論としっかり連携を深めていく必要もあるであろうということをワーキングの中でも御議論がございまして、本日、中間報告をさせていただくところでございます。
 以上でございます。

【荒瀬部会長】 ありがとうございました。
 このワーキンググループの主査をしていただいておりますのは堀田委員でいらっしゃいます。堀田委員から補足の御説明ございましたら、お願いいたします。

【堀田部会長代理】 今、御紹介いただきました、ワーキングの主査を務めてまいりました堀田でございます。このたびは中間的な御報告を特別部会にさせていただいたことになります。
 私どもが取り組んできたワーキングの名称は、「デジタル教科書・教材・ソフトウエアの活用の在り方」でございます。それらは、GIGAスクール構想によるの1人1台の学習端末と高速のネットワーク、そしてクラウドの活用が学習の前提として整備されているという現状において、これらの教科書や教材やソフトウエアの充実が図られなければ学習指導の充実に向かわないだろうという、そういうことで議論を始めたわけでございます。
 ただ教科書については、校種ごとの検定や採択等が様々あり、4年サイクルで現状動いていますので、このことを考えたときに、まずはデジタル教科書の議論を急ぐべきだろうということで、デジタル教科書・教材・ソフトウエアのうちのデジタル教科書のところをまず整理してまいりました。
 これから検討していくことを考えていくときに、デジタル教科書と、デジタル教材やクラウドツールとをどのように連携させていくか、あるいは、ログが取れていきますので、それを学習者にどうやってフィードバックしていけば学習改善になるか教師の指導改善にどうやって生かしていくかということ等が、これから議論していかなければならないことになります。
 一つだけ、ここで特別部会の皆様にお伝えしておきたいのは、ワーキングでいろいろ議論していくと、結局、先ほども安井課長がおっしゃっていたように、これからの学習指導というのはどうあるべきなのかということに全て帰着する議論になってまいりました。例えばデジタル教科書の効果はどうかみたいな話が出るわけですけれども、何に対する効果かということですよね。1人で学びやすいことに対する効果なのか、協働がしやすいことに対する効果なのか、あるいは今までの授業と同じように一斉授業に適しているというタイプの効果なのか、そのいずれもか、みたいなことですね。つまり、そもそもこれからの授業がどのような形になるのかという議論なしに、教材との連携とかそういうようなことをここから先に議論していくのは、なかなか難しい現実があると主査としては感じているところです。
 GIGAの端末が全ての子供たちに配布されて、個別最適な学びと協働的な学びが一体的に充実することが求められて、そういう状況の中で授業がどのようにあればいいのかということを特別部会等で御議論をいただいて、それを受けて私たちは、またワーキングで今後、デジタル教科書や教材等がどのように連携していけばいいのかということについて、続けて議論をしてまいりたいと思っております。
 私からの補足は以上でございます。

【荒瀬部会長】 ありがとうございました。
 今、安井課長からも、また堀田先生からも、今後の議論に向けては、具体的にこれからの学習指導、授業の在り方がどうなっていくのかということと大変深くつながっているということでございました。
 委員の皆様から御意見を頂戴したいのですが、実はこの後の義務教育に関するもの、あるいは高等学校教育に関するもの、これらとも深く関わっておりますので、今の時点ではあまり時間を取らずに、今の時点で特に御意見のある方の御意見のみを伺いたいと思います。御発言いただきます場合は「手を挙げる」のボタンを押していただいて、御指名いたしましたらミュートを解除していただいて、御発言をお願いいたしたいと思います。いかがでしょうか。
 では、戸ヶ﨑委員と金丸委員が手を挙げてくださっています。大変申し訳ありませんが、このお2人にまずお話をいただいて、あと御意見がおありの方は、義務教育、それから高等学校教育に関する議論の中でもまたお話しいただくということでお願いをしたいと思います。
 ではまず、戸ヶ﨑委員、お願いいたします。

【戸ヶ﨑委員】 短めに、前回欠席していましたので、意見を言わせていただけたらと思います。
 今さら私から言うまでもないことですけれども、教科書や、また教材の活用という手段を通じて子供を主語とした学び方や指導観に転換することが何よりも大切なわけで、現状をいろいろ見ていくと、コロナ禍でどうしても揺り戻しみたいなものが発生して、相変わらず教科書を教える指導というものがまだまだ幅を利かせている現状があることを危惧しています。
 概して中学校では、ICTを使用しても、いまだに教師がよくしゃべって指示をする、私、教師主導型ICT授業と呼んでいるんですけれども、そういう授業が多く見られています。総合的な学習の時間におけるPBL型の学びとか探求的な学びというのは、小中高と学年が上がるに従って、教師主導の、言うならば予定調和的な授業が増えて、学びの熱量とか、また質が下がってしまう傾向があるように感じています。
 じゃあ小学校はいいかというと、小学校においても、ICTは使用しているんですけれども、グループ学習が単なる発表し合うだけの学習とか、向かい合って一部の子供だけがぼそぼそと話をしているだけの授業といったものも散見されておるところであります。
 当面は、先ほどもありましたけれども、デジタル教科書と、加えてCBT、これが機能するインフラ、これはネットワークが中心になるかなと思いますけれども、それの整備に加えて、約3年先の端末の入替え、これを見据えた授業改善とか活用推進に本格的に本腰を入れて考えていかないと、今、理念的には大変きらびやかな、定食屋からブッフェに変わる主体的で深い学びの場なんていうことがよく言われて、それを目指すのは大いに結構ですけれども、ただ極論すると、ICTが文具じゃなくて玩具化して、主体的という名の下の放置、または対話もどきの雑談、言葉は厳しいんですけれども、深い学びではなくて不快な学び、こういったものが横行してくるのではないかという危機感を非常に強く持っているところであります。
 それらの解決に向けて、是非授業改善の議論の深掘りとともに、ICTによって学びを支援する補助教材としてのデジタル教科書の有効活用、これに期待をしているところであります。また、最先端技術を活用して、学びのイノベーションを支援するデジタル補助教材の開発とか、またデジタル教科書を活用した、先ほどもありましたが、スタディー・ログの累積・蓄積・活用に向けて、学習eポータルとか学習指導要領コード等の連携方策、これらを含めて、教育関係者一丸となってスピード感を持って今後取り組んでいくべきだろうなと思います。
 以上です。

【荒瀬部会長】 ありがとうございました。今、大変印象に残る言葉も含めてお話をいただきましたが、なかなか全国で同じようなペースで進めていくというのは、これまた大変大きな課題があって、そこの辺り、本当に丁寧に進めていくと同時にスピード感を持ってやっていくという、この両面がなかなか難しいんだなということを改めて思いながらお聞きしました。ありがとうございました。
 では金丸委員、お願いいたします。

【金丸部会長代理】 ありがとうございます。一つ、気になった点を意見として述べたいと思います。
 8ページ目に、デジタル教科書に求められることというのが大きく一番上に掲げられていて、シンプルで軽いというのが赤字で書いてあって、私、これをぱっと読んだときに、このシンプルという言葉と軽いというものが、これからデジタル教科書の中の教材のコンテンツをお考えになる方々の創意工夫を逆に縛らないかという懸念を持ちました。この下の枠の中に、これを丁寧に読み替えた説明があるんですけれども、要するにこのシンプルというのは、デジタル教科書を何か操作しようと思ったときに、複雑だったり、ある一定のレベルがないと触れないということがないということなので、ここは操作の容易性、利用の容易性について述べているのではないかと思いました。そうだとすると、それは普通のことなので許容できると思います。
 それから、その次ですけれども、端末通信負荷の観点から軽いものであるというのは、これはいつもコンテンツを軽くする工夫を技術的に考えることは既に当たり前のことではあるんですけれども、これをわざわざここに書くと、逆に読み取ると、端末通信負荷というのは国の役割というか、国の責任として、世界中、今、ユーチューブでも人気があるコンテンツって、1日あるいは1度に何百万という人たちがアクセスをしたりしているわけですよね。ですから、本来は国の義務・責任として通信環境を子供たちに提供する、みんなが触ったら動かなくなるような通信環境を提供するんじゃなくて、逆に言うと、そういうかなりの負荷に耐えられる通信環境を提供すべきであって、コンテンツを作る方々の創意工夫を是非縛らないような発想でいくべきだと思います。
 そして、今後の論点に書かれている10ページのところを読むと、通信環境とか内外の環境整備は今後の議論だという論点整理がありますので、通信環境については別途また意見を述べさせていただきたいと思います。
 以上です。ありがとうございます。

【荒瀬部会長】 ありがとうございました。大変大事な指摘を頂戴いたしまして、言葉が一人歩きしていくことはよくあって、シンプル、軽いというと、今おっしゃったように、具体的にコンテンツの開発とかやっていかれる方への負荷を逆にこちらがかけてしまうんじゃないかといった御指摘であったかと思います。創意工夫は非常に重要でありますので、この点についていかがでしょうか。
 安井課長、お願いいたします。

【安井教科書課長】 御指摘、大変ありがとうございます。10ページのところで、御指摘いただきましたように、ネットワーク環境の整備をしっかりしていくこと自体が行政の責任として重要な課題であることももちろんございまして、そちらの議論も今後深めていきたいところでもございます。
 また、内容的にそういった制約をしないようにというところも、御指摘を十分踏まえながら、技術的な部分でも、いろいろな軽量化も図る努力も今後やれるのではないかというところもございますので、御指摘いただいたことも十分踏まえながら検討を進めていきたいと思います。

【荒瀬部会長】 ありがとうございました。金丸委員、よろしいでしょうか。

【金丸部会長代理】 はい、取りあえずは。前向きな御発言をいただいたので。ありがとうございました。

【荒瀬部会長】 ありがとうございます。今後またよろしくお願いいたします。
 堀田先生はよろしいですか。

【堀田部会長代理】 ありがとうございます。私は戸ヶ﨑委員が御発言されたことに少し付け足しをしたいと思います。学校現場の授業観というか、指導観というか、これが現状から変わらなければ、デジタル教科書等に求める機能も、結局現状の授業にとって最適なものになっていくことになります。今、大きな学校教育の変わり目だと考えると、先生方の意識というか、考え方というか、授業観というか、そういうものをどのように変えていただくかということと、新しいタイプの教科書や教材をどのように見せていくかということと、私どもが中教審としてどのようなこれから学びを期待すると議論していくのかということが、非常に大いに関係していると思いまして、そういう骨太の議論といいましょうか、そういう議論の下での、デジタル教科書・教材・ソフトウエアの在り方について議論していくべきだと考えております。どうもありがとうございました。

【荒瀬部会長】 ありがとうございました。
 では、この件、先ほど申しましたように、また後ほど発言がおありの方はお願いするとしまして、議題の2に移りたいと思います。
 議題の2は、「義務教育に係る当面の検討事項について」ということでございます。前田教育制度改革室長から御説明をよろしくお願いいたします。

【前田教育制度改革室長】 よろしくお願いいたします。資料2-1から御説明させていただければといいます。
 資料2-1でございますけれども、これは議題の2、それから3にも関連いたすものでございまして、これまでの特別部会や初中分科会への御意見を、まず御紹介させていただければと思います。
 便宜上、事務局でタイトルは整理させていただいておりますけれども、まず、1ポツの1つ目の丸、個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実を何のために行うのか、目標や指標など、具体的に示すことが必要ではないか。2つ目の丸としまして、現在の教育制度の中に制度疲労を起こしている部分があるのであれば、根本的なところから考える必要があるんじゃないか。3つ目の丸、不登校・長期欠席の子供たちが29万人いる現状、コロナ禍によるオンラインの学びが普及した現状、学校とは何か、学校に行くことの意義を問い直すことが必要ではないか。
 2ポツ目としまして、1つ目の丸、子供たちに学びの楽しさが伝わったかどうかということを考えるべき。2つ目の丸としまして、学びがうまくいかないのであれば、カリキュラムの側に障害があるという基本認識に移行していく必要があるという御意見。
 3つ目のポツの1つ目でございますけれども、ICTというのは圧倒的な力を持つ。2つ目の丸、1人1台端末の整備は、生徒が主体的・対話的に学び取るスタイルに変わっていく絶好の機会であるという御意見。
 4つ目でございますけれども、1つ目、1つしか丸はございませんけれども、小規模校等における学校を越えた協働的な学びなど、オンラインの活用により大きな可能性が広がる。
 5ポツとしまして、これは不登校児童支援制度でございますので、設置義務がかかっている市町村の役割だけではなくて、広域を見るという観点から、県もギフテッドや不登校の子供に対して直接アプローチできる体制が必要じゃないかという御意見。
 それから次のページでございますけれども、6ポツといたしまして、2つ目の丸でございますが、通信制高等学校だけに学びの最後の砦を任せてしまっていいのか。全日制の高等学校においても生徒の学びを保障するやり方は考えられないかという御意見。3つ目、全日制と通信制の間に壁があるが、ハイブリッドな学びは多様な生徒の多様な学びを実現し得るもの。4つ目の丸、テストスコアをベースにしたランキングの高等学校から、多様性に幅のある高等学校に変わってほしいという御意見。
 7ポツの1つ目の丸でございますけれども、スクールミッションやスクールポリシーを策定するだけでなくて、その具体化が大事。2つ目の丸、各教科・科目の学びが現実の社会課題の解決につながるようなカリキュラムの検討が必要。3つ目の丸、探求的な学びのレベルを上げるために、教育委員会の伴走や継続した支援体制が必要。最後の丸でございますけれども、社会に開かれた教育課程の実現、そのためには学校外の教育資源をうまく活用するためのコーディネート機能の充実が必要だという御意見でございました。
 初中分科会の御意見は時間の都合上割愛させていただきますけれども、これまで特別部会でこういった御意見がございまして、次の資料2-2でございますけれども、今後の議論に当たりましての指導要領とか、これまでの答申の整理、それから様々な調査、アンケート結果、自治体の取組事案の御紹介をさせていただければと思います。
 このスライドでございますけれども、育成すべき資質・能力を3つの柱として、指導要領におきましては、何を理解しているか、何ができるかという知識及び技能、それから、理解していること・できることをどう使うか、思考力、判断力、表現力、それから最後に、学びに向かう力、人間性というように、資質・能力を3つの柱で整理をしてございます。
 次のスライドでございますけれども、令和答申におきましても、子供たちに求める資質・能力の整理がされております。1つ目でございますけれども、読解力とか、自分の頭で考えて表現する力、対話や協働を通じて知識やアイデアを共有し新しい解や納得解を生み出す力。2つ目の「また、」以降でございますけれども、豊かな情操とか自己肯定感、自己有用感、コミュニケーション、それから体力の向上、健康の確保、こういったことはどのような時代であっても変わらず重要であると提言されております。
 それから国際的な動向でございますけれども、地域や地球規模の諸課題について子供一人一人が自らの課題として考え、持続可能な社会づくりにつなげていく力。最後でございますけれども、ウエルビーイングを実現していくために自ら主体的に目標を設定し、振り返りながら責任ある行動を取れる力を身につけることの重要性が指摘されていると整理されております。
 次のスライドでございますけれども、こうした資質・能力を育成する学校教育の意義といたしまして、日本の学校教育、これは全人的な発達・成長を保障する役割、居場所・セーフティーネットとして身体的、精神的な健康を保障するという福祉的な役割を担っている。それは日本型学校教育の強みであると。この強みは今後も継承されていくべきものと整理がされております。
 ただし、次でございますけれども、日本型学校教育、これは子供のためであれば頑張るという教師の献身的な努力によるものであり、学校の役割が過度に拡大していくとともに、直面する様々な課題がある。国において抜本的な対応を行うことなく日本型学校教育を維持していくのは困難だと言われております。
 最後に、今後もといたしまして、学校は全ての子供たちが安心して楽しく通える魅力ある環境であることや、これまで以上に福祉的な役割や子供たちの居場所としての機能を担うことが求められていると。子供の発達や学習を取り巻く個別の教育的ニーズを把握し、様々な課題を乗り越え、一人一人の可能性を伸ばしていくことが求められるとされております。
 次のスライドですけれども、OECDからのレポートでございますけれども、国際的にも、こうした知・徳・体を一体とした日本型学校教育の良さは評価されております。真ん中の枠囲みの右の欄でございますけれども、日本の教育制度の特徴としまして、包括的(全人的)な教育を効果的に行っているとされておりますが、同時に教員の長時間労働といったシステムを代償としてそういうものがあると指摘されておりまして、今後日本型学校教育を成功に導いていける重要要素の一つが、教員が生徒たちに対して有する広範な役割と指摘されておりますので、こうした学校教育を維持しながら、どうやって教員の負担軽減とか質の向上を実現するのかということが課題であるとされております。
 次のスライドでございますけれども、これは臨時休業中の学習指導に関する文部科学省調査でございますけれども、学校での教育の在り方そのものについても、コロナの感染症の感染拡大で様々な意見が生まれております。中ほどのICT端末の活用を御覧いただきますと、同時双方向型のウェブ会議システムの活用とか学習動画の活用、それからデジタル教科書・デジタル教材の活用といったような形で、どうにか学校関係者の皆様方で学びを成立させようという努力で広がりを見せておりますけれども、同時に、学校に通えなくても学びは成立するんじゃないかという御意見もございます。様々なオンライン教材による多様な学びが広がりつつあるという現状がございます。
 それから次のスライドでございますけれども、他方で小中学校における不登校の状況としまして、不登校児童生徒が8年連続で増加して過去最多となっている状況がございます。
 次のスライドでございますけれども、多様な背景を持つ子供が集う教室としまして、CSTIの「Society 5.0の実現に向けた教育・人材育成に関する政策パッケージ」、資料にありますように、様々な多様な背景を持った子供たちがその中には混在しておりまして、令和答申で示された個別最適な学びと協働的な学びの一体的な実現をどう図っていくか、これをどう具体化していくかということが、大変重要な課題であると認識しております。
 それから次の9ページでございますけれども、これ以下、CSTIの中間まとめに関するアンケート結果ということで、10歳から19歳の方々にアンケートを取った意見でございますけれども、子供たちの意見ということでございます。左上でございますけれども、教室、クラスの在り方やスタイルは多様化していくべきだと。オンラインもオフラインも、違う意味で得るものがありましたと。それから下に行きまして、対面の授業の場を貴重な機会として大事にしていってほしい。デジタルの力を適材適所利用しつつも、対面の機会を活用するシステムの構築をお願いしたい。右上に行きまして、一方で、自由、個性を求められたり、それを強制されるというのは苦しいと思う人もいるんじゃないか。何か実践しないといけないという社会になるのはつらいという御意見とか、最後でございますけれども、いろいろな人のいろいろな意見、個性、特徴、大変なこともあるけれども、集団としての成長や得るものの大きさは、何にも代えられないことを感じたという御意見でございます。
 それからスライドの9でございますけれども、同じ子供たちの意見でございますけれども、授業を構成するのは生徒であり、生徒が授業を進めていくという感覚を持たせることが必要。教師は時には方向性を修正するサポーターとしての役割を果たすべき。下に行きますと、個別最適な学びで試行錯誤ということについては、実際に生徒が試行錯誤を行っていくことは難しいんじゃないか、大人たちが生徒たちに試行錯誤の方法を教える機会が必要だと。それから右上に行きまして、様々なものに本気で触れてみること、そういった時間、機会が大切だと。それに関連しまして、小学校4年生の御意見でございますけれども、今の学校で皆一斉に同じことを同じようにすることを求められるのは苦痛だと。一刻も早く変わってほしい。ほんの少しでも新しい要素が入れば毎日がもっと楽しくなるという御意見がございます。
 それから、10ページはオンラインに関する保護者のアンケート結果でございますけれども、一番下のオンライン教育の利用希望を御覧いただきますと、全国で赤字がオンライン教育中心(50%以上)で対面教育を併用ということでございますけれども、2.3%でございまして、オレンジと青、これは基本的に対面と完全に対面とを合わせると、75%ほどになります。保護者も対面教育の良さを感じていることのアンケート結果でございます。
 それから11のスライド、特異な才能のある児童生徒・保護者等に対するアンケート結果でございますけれども、本人の回答としては、レベルが合わない、教材が合わない、話が合わない。保護者の回答としても、レベルが合わない、教師と合わないということの回答がございましたけれども、楽しかったクラスもあった、係で自己評価が上がったという回答もございまして、学校の良さを生かしたり、先生方の工夫によって、多様な子供を受け入れる可能性も示された結果でございます。
 それから12ページから17ページ、これは御覧いただければと思いますけれども、量的調査の側面から今の学校教育を概観したものでございますが、全体としまして、多くの質問項目に対して約7割から8割の児童生徒は肯定的に回答する一方で、2割から3割の生徒が否定的な回答となっております。ただし、「そう思う」と強く肯定的に回答する割合が3割程度の項目が多いという点がございます。
 また、ほとんどの項目において、小学校よりも中学校のほうが肯定的に捉える割合が少ないという点もございます。特別なニーズを有する生徒のみならず、通常学級における個別最適な学びと協働的な学びをどのように充実させていくかということを示唆している資料かと思います。
 それから飛びまして、17のスライド、ICTを活用した学びとございますけれども、学校の授業でICTを活用するかということで、ほぼ毎日と週3回以上という回答は、質問によって異なりますけれども、2割か4割程度でございます。特に自分の考えをまとめたり、友達と意見交換する場面の活用は、より少なくなっております。他方で一番下、子供たちのほうは、9割以上がICT機器が勉強に役立つと肯定的に回答をしておりまして、より積極的に学校現場での活用を進めていく必要があるということでございます。
 18ページ以降は、自治体の取組事例でございます。愛知県春日井市では、情報の収集から整理・分析、友達との意見交換、まとめといったもので、1人1台端末を積極的に活用して学びを深めている事例とか、次の19ページでございますけれども、山形県天童市の事例でございますけれども、単元内自由進度学習とか個人総合での取組、それから次のスライドでございますけれども、広島県教育委員会では、不登校スペシャルサポートチームルームを学校の中に設置する取組を推進している。それから最後、21でございますけれども、八王子の高尾山学園、これは不登校特例校でございますけれども、学校で生きづらい児童生徒、困難な環境の生徒、それから医療支援が必要な生徒、それぞれの抱える困難さに応じた個別の支援を行っている事例でございます。
 今後の議論では、どうすればこうした多様で柔軟な学びを全国の学校で実践をして、いずれ社会につながっていく子供たちでございますので、そうした子供たちの可能性を引き出して、一人一人が、学校がより楽しくて、より健康で、何よりもそれぞれに出番があるという状況、そういった学びを実現できるのかということについて、御議論を深めていただきたいと思っております。
 本日、その実現のために必要な方策について、検討事項ということで、次の資料2-3でございますけれども、「義務教育の在り方ワーキンググループについて」と題する資料でございます。
 1は設置の目的でございますけれども、最初の1つ目のパラグラフは、令和答申を受けて特別部会が設置されたというもので、2つ目のパラグラフは、先ほど御報告がありました「教科書・教材・ソフトウエアワーキンググループ」が設置されたということで、3つ目のパラグラフでございますけれども、設置の目的、個別最適な学び等と協働的な学びの一体的な充実に向けた学校教育運営のためには、ICTを活用した学びが重要な役割を担うことになるが、その推進に当たっては、Society 5.0時代に向けた社会変化の加速度的な進展や、それに伴う今後の新たな教育の可能性を見据え、学びの在り方の基本的な考え方を整理するとともに、1人1台端末等の活用を含めた多様で柔軟な学びの具体的な姿を明確化することなどが求められるとしております。
 2ポツが主な検討事項でございますけれども、義務教育の意義と学びの多様性、大きく2つに分けてございます。丸1番としまして、豊かな人生を切り開き、持続可能な社会の創り手となる子供たちに必要な資質・能力と学校が果たす役割についてということでございますけれども、子供同士や教員との触れ合いを通じて、先ほど御紹介しました知・徳・体、これを一体として育成する日本型学校教育の良さを継承しながら、同時に、同質性の高い学校教育を、デジタルの利点とか、民間と連携できるところはその力も活用しながら、いかに多様なものにしていくかというのが、丸1つ目の論点でございます。
 それから丸2としまして、全ての子供たちの可能性を引き出す学びの実現についてということでございますけれども、不登校や特別支援、それから特異な才能の子供たちはもちろんでございますけれども、通常学級で何とか今やれている子供たちについても、より多くの出番を作ることを目指す、そういった可能性を引き出す学びの実現について、どう考えるかということでございます。
 それから、そうした考え方を整理した上で、学びの多様性ということ、丸1番でございますけれども、個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実を通じた主体的・対話的で深い学びの具体化でございますが、1人1台端末の活用を含めた多様で柔軟な学びということで、例えば単元内自由進度学習という形で、一部の教科の一部の時間だけでも、生徒・子供の自由な進度によって学習を委ねてみると。教師はそれを委ねる、任せるという形の授業とか、学年を超えた教科学習も考えられるんじゃないかと思っております。
 それから、丸2番の多様性と包摂性に基づく学校文化の醸成でございますけれども、いろいろな子供が教室の中にはいますので、そういった子供同士が関わり合うことで、人格形成、全人的な発達をより一層目指していく学校文化の醸成としまして、教育委員会とか教師の意識の改革とか、保護者や地域の理解が必要になってくると思いますけれども、そういった論点でございます。
 それから、3つ目の学びにおけるオンラインの活用でございますけれども、いろいろなパターンがあると思いますけれども、例えば僻地の小規模校、これ以上統廃合は難しいという学校についてのオンラインとか、あるいはそういった面じゃなくて、海外とのより積極的な学習をしたいとか、より先進的な学校との授業連携をしたいということでオンラインを活用するという意味もあろうかと思いますし、不登校特例校での活用とか、あるいは学校と学校外、NPOとか企業でも様々なオンラインプログラムがございますので、そういった活用の促進についてどう考えるか。
 それから、最後に丸4番、学校教育になじめないでいる子供に対する学びの保障でございますけれども、一つは学びの場を充実させていくという論点と、学校以外の学びの場を充実した場合のそこの質の保障、それから、そういった学びの場が充実されたときに、その存在を認知しておかないとアクセスできませんので、保護者や子供たちへのそういった学びを提案・提供するような在り方、どういう方策があるかということと、それへのアクセスの方法といったものについて論点になろうかと思っております。
 以上、資料2-1から2-3の御説明でございます。事務局からは以上でございます。

【荒瀬部会長】 ありがとうございました。
 資料2-2に関して言うと、一部、ページ番号が、前田室長のおっしゃったページとずれている面があったかも分かりませんが、画面でも写っておりましたので、そのままで見ていただけたのではないかと思います。
 それと、2-3につきましては、書かれているものに加えて大変丁寧な説明もいただきました。これまでの中教審の議論の中で、楽しく出番があるといったような言葉はあまり使われなかったのではないかと思いますが、とても大事な御説明をいただいたと思いました。
 それでは、これに関して委員の皆様から御意見を頂戴したいと思います。御質問もちろん結構でございますが、ただ、あともう1件、高等学校に関する議論もございますので、大変恐縮ですが、20分ぐらいの時間に限らせていただきます。あらかじめ申し上げておきますが、御意見を十分に御発言いただけなかった委員に関しましては、後ほどまた、お手数ですけれども、メール等で事務局にお送りいただくということで御了解いただければと思います。よろしくお願いいたします。
 それでは、先ほどと一緒でございますが、御発言のおありの方、手を挙げていただきたいと思います。
 では平川委員、中川委員、そして戸ヶ﨑委員の順で、よろしくお願いいたします。
 どうぞ、平川委員。

【平川委員】 ありがとうございます。広島県教育長の平川でございます。御説明どうもありがとうございました。
 特に義務教育で一つ、学びの多様性ということで、各自治体、あるいは民間も含めて、いろいろな御努力をしていると承知しているんですけれども、1点、気をつけなければいけないのは、児童生徒を分ければ分けるほど地域から離れていってしまうなという心配がございます。特に義務教育の段階については、私は、学校、特に公教育というか、学校というところは、そこの地域の民度を、この表現が正しいかどうか分かりませんが、民度を醸成しているものと思っておりまして、地域もその学校を支える、それから子供たちも地域とともに生きていくと思っておりまして、分ければ分けるほど、もちろん、そこに行けない子を何とかするために、本来であれば一般の学校で吸収していくことがもちろん望ましいんですけれども、どうにかして、それを努力していくにしても、なるべく切り離さないというか、そこの地域に住んでいるんだけれども、学校の果たす役割ということは、その地域の民度を醸成するというようなところも考えていかないと、分ければ分けるほどもちろんチョイスがたくさんあって、選択肢がたくさんあって、いいとは思いますけれども、そこの部分は気にしていかなければいけないということと、大本は一般の、私どもも一般の学校を所管しておりますけれども、そこの、どうやったら学校文化を自由濶達なものに、先ほどアンケートを取っていただいた子供の生々しい声がございましたけれども、それをそうじゃないんだよというような学校の文化を醸成できるかというところを考えていかなければいけないなと感じました。
 以上です。

【荒瀬部会長】 ありがとうございました。お聞きしていて、子供の思いとか願いに沿うような学校文化でなければならないということだと思いました。広島県は、いろいろとやっていらっしゃることの中で、特にやっていけばやっていくほど地域から離れていくという面について、いろいろとまた工夫もなさっていらっしゃると思いますので、今後またそういった御意見も頂戴できればと、御指摘も頂戴できればと思いました。よろしくお願いいたします。
 では中川委員、お願いいたします。

【中川委員】 中川です。よろしくお願いします。御提案ありがとうございました。項目については大筋これでよろしいのではないかと思うのですが、問題は、どう具体に落としていくのかということだと思いです。個人的に気になるところは、個別最適な学びにおける、特に学習の個性化の具体イメージを共有することが重要だと思っているところです。子供が学習が最適となるように調整していく部分ですね。なかなかこの土壌をつくり切れてこなかったのが、これまでだったと思っています。一度、児童生徒が主体的・多様的に学ぶということ、ひいては脱一斉授業オンリーとか脱一律な活動オンリーを考えていく必要があると私は考えています。誤解を恐れずに言うならば、日本の教師はもっと不親切になるべきだと思っているんです。真面目な教師、一生懸命やっている教師であればあるほど、手取り足取り教えようとしてきた。子供にとっての伴走者とは、ある場面では距離を置いたり、時には突き放したりするけれども、気がついたら横にいる、そのようなイメージを持つことが大事ではないかと思います。そして1人1台端末環境は、これらのことを進めていく際の強力なツールになると考えていますが、ただし、これまでの授業スタイルを変えずに、教師が授業をコントロールし過ぎて、その中で活用していること続けると、そもそも1人1台は必要ないことになってしまうと思っています。ただ単に1人1台端末を使えば児童生徒が主体的・多様的に学ぶことになる話ではないので、1人1台端末の活用を含めた多様で柔軟な学びの具体的な姿を示していくことが重要に思います。
最後にオンライン活用についてですが、これはオンライン授業、つまり教室と家庭等との学校の外の活用とは限らないわけで、GIGAスクール、1人1台端末環境が整備されて、私が当初予想していたよりも、はるかに教室内で共同ツール、学習支援ソフトが使われています。そういう広い意味で、ここの項目を捉えていただきたいと思います。もちろん子供たちは多くの場合は対面で授業に臨んでいるわけですが、それぞれのペースに応じて友達の意見と比較することもできるわけです。ここは先ほどのデジタル教科書・教材・ソフトウエアの活用の検討に結びついていきます。ですので、これらについてもさらに検討・議論していく必要性を感じています。
 以上になります。
 
【荒瀬部会長】 ありがとうございました。大変重要な御指摘を頂戴したと思います。ついつい個別最適な学びが指導の個別化に行ってしまって、今、中川先生がおっしゃった学習の個性化がなかなか難しいわけですけれども、個別最適な学びといったときに、この2つの側面をしっかりと見ていく。とりわけ学習の個性化をどう図っていくかというときに、教師の指導の在り方も含めて、もう一度考える必要があるのではないかと思いながら伺いました。ありがとうございました。
 それでは戸ヶ﨑委員、お願いいたします。

【戸ヶ﨑委員】 戸ヶ﨑です。たくさん意見あるんですけれども、今回大きく3点に限って意見をさせていただければと思います。
 1つ目ですけれども、今年はたまたま学制150年という一つの区切りでもありますので、この際、日本型学校教育の世界に誇れる強みと今後早急に改善すべきである弱み、この再整理をそろそろする必要があるのではないかと。資料の中で、資料の4ページですかね、ページが微妙ですが、特にOECD等でも評価されている、日本の義務教育は世界的に見て大変優れている点が多いということを言われていても、もともと日本の学校現場で、その自覚とか誇りというものが弱い傾向があることに加えて、近年ICTの活用というものが非常に大きくクローズアップされてきたことで、それらのことが上書きされてしまっているのではないかという危惧がございます。加えて、今後はOECDの言うところのスチューデントエージェンシーという概念が、子供を主語にした学び、またGIGAスクール、教育DX、あらゆる教育改革の鍵を握っているんだろうなと思っています。今後、こども基本法、こども家庭庁設置法の成立等も併せて、ますますこのことが重要になってくるのではないかなと。そこで、是非個別最適な学びと協働的な学びとか、また主体的・対話的で深い学びというものが浸透していない原因を、徹底的にこの際探っていくなどしながら、正に学習者を主語にした学びのリデザインについての議論も深めていくべきではないかなと考えています。これが1点です。
 それから2点目は、17ページになるんですか、アンケート調査ですけれども、ICTを活用した調査の結果をどう考えるかということで、ほぼ毎日と回答している割合が非常に低いこの状況を見る限り、ICT端末の日常使いにはまだまだ程遠いのではないかなと思います。見方によっては、ほぼ毎日使っているという以下のものというのは、あまり使ってないとも解釈できてしまうのではないかなと思います。特に中学校の場合、週3回ということは、考えようによっては1つの教科でしか使っていない可能性もあります。月1回以上とか月1回3枚未満というのは、もはや使っていないに等しいのではないかなと考えます。活用した学びを今後調査していくのであれば、使用の回数、頻度というのもいいんですけれども、現状において、どの教科でどのような活用、例えばプレゼンとかオンラインとかCBTとか、こういうものが常態的に行われているのか、またICTの活用という手段が主体的・対話的で深い学びに結びついているのかということを、そろそろ確認していく段階に来ているのではないかなと思っています。
 最後です。18ページになるんですか、先進例とか優れた実践例が掲載されているわけですけれども、学校単位の様々な教育・療育の優れた実践は昔からたくさんあるわけで、最近多くの県教委等の方々とも、共通した悩みというか、課題というのは、このGIGAの取組をはじめとして、学校や基礎自治体の優れた実践がなかなか広がらない。それなのに、一方で学校間とか自治体間の教育格差がどんどん広がってきてしまっているという危惧があるということであります。どんな取組であったとしても、まずは先進学校とか自治体というものがあって、他校や自治体がそれをまねして少しずつ政策が広がっていくという政策波及、これを期待するわけですけれども、でも往々にして優れた実践があったとしても、あそこだからできているんだよなとか、うちじゃ無理だというような考え方で、なかなかそれが簡単には広がらないと。つまり、点での取組が今後線の取組となっていくように、横展開のための何らかの意図的な仕掛けが本当に必要になってくるんだろうと思っています。
 常にこういった取組事例を紹介するだけでは、言葉きついですけれども、単なる広報にすぎないという見方もあります。このような大事なことは、実践ができている背景とか要因とか、それでもまだ現実に立っていないことなどを分析して、ほかの自治体が実施に向けて少しでも参考になる横展開のポイントというんですか、アーキテクチャーなんて言われていますけれども、こういうものも掲載していくことも今後は不可欠だろうと思います。また逆の発想として、先進的な取組をしている自治体、これは匿名でいいと思いますけれども、これをモデルケースとしながらも、自治体間格差とか学校間格差が生じてしまう要因を、様々な要因があると思うので、それをカテゴライズして、横展開のボトルネックになるものを分析することも今後は必要になってくるのかなと思っています。
 いずれにしても、様々な政策波及の仕掛けとか先行事例から学ぶだけではなくて、事例の背景プロセスから学ぶ仕掛けが大事なのかなと。また、ICTの利活用をはじめとして、小学校に比べて、先ほどのアンケートにもありましたけれども、中学校の授業改善が進みにくい傾向、こういう原因なども、この際、深掘りをしていく必要があるのではないかなと思っています。そういう意味で、是非これを強調したいんですが、資料2-3の主な検討事項の中に、中学校における授業改善、こういうものも盛り込んでいただけたらいいのかなと思います。
 長くなりました。以上です。

【荒瀬部会長】 ありがとうございました。最後におっしゃったワーキンググループの検討事項、とりわけ中学校のというお話でありました。検討させていただきたいと思います。
 先進事例の紹介が18ページ以降に出ているわけですけれども、ある先進的にICTを使いこなしていらっしゃる地域の先生のお話を聞いていまして思いましたのは、とても長い時間をかけて、ずっとその取組を続けていらっしゃるところがたくさんあるということですね。今に始まったわけではなくて、やっていらっしゃって、それを最初の頃は多分、戸ヶ﨑先生は教育委員会にいらっしゃるので、これは誤解のないように聞いていただきたいんですけれども、教育委員会も含めて、そんなことして何になるんだと思われていたということでした。思い出話で恐縮ですが、探究というのを25年前に言ったときには、一体それは何するんですかという話があったのと多分同じではないかなと思いました。具体的に取り組んでいらっしゃるの創意工夫がすぐに結果は出なくても認めてもらえるという、先ほどの前田室長の言葉で言うと、出番があるというんでしょうか、そういったようなことが大事だということを、その話を聞きながら私は思っていたわけですけれども、今、戸ヶ﨑委員がおっしゃったこと、正にそういったようなことも含めて、先進事例の後ろにある動きはどうだったのかというのを見ていくことで、初めて点から線へ、線から面へとなっていくんだと思いました。ありがとうございました。
 では今村委員、貞広委員の順でお願いしたいと思います。取りあえずこの件、貞広委員までとさせていただきたいと思います。
 では今村委員、お願いいたします。

【今村委員】 ありがとうございます。
 特別部会の資料を拝見させていただきまして、今回の特別部会は、義務教育の在り方部会となっているんですけれども、ここは是非、在り方のビジョンや理想とする絵を検討する部会にとどまらず、在り方をいつまでも検討していても、現場に武器がない、何で実現するんだというところまでをちゃんと下ろしてあげられるような、そういう議論の場でありたいなと思います。結構ここ最近、いろいろなところでビジョン的なものは審議がされてきていると思うんですけれども、もう現場が食えないといいますか、運用できない、手がない、人もいない、お金はないという状況で、本当にリーダーシップのある教育長さんが、戸ヶ﨑さんみたいな、もう本当にファンタジスタに近い教育長さんがいらっしゃると、日本人、世界中のリソースを獲得してきて実現してくださるかもしれないけれども、これは本当に地域間格差があり、そういったリーダーシップに委ねていると難しいんですよね。格差が生まれるし、特に家庭の経済力によった予算でしか運営できない、運用できない。例えばデジタル教材のようなものも、なかなか行き届かないことにもなってしまうと思います。そういうことも含めて、どのリソースで、何を現場に幾らぐらい下ろしてあげられるんだろうというところも明らかになるような在り方部会であってほしいなということが、申し上げたいことの1点目です。
 2つ目ですけれども、とはいえ、一番のリソースである教員について、先日も一つ、取りまとめが行われましたが、教師の在り方が本当にこれからもう一回人気の仕事になっていくとはどうしても思えないなと思いながら、ずっと議論に参加させていただいています。大変恐縮ですけれども、在り方を大転換していかなきゃいけないところに来ているんだと思います。労働人口はどんどん減っていくし、教育だけじゃなくて人材の獲得競争になっているのはどこの産業でも同じな中で、特に若い人たちの数も減っていくし、若い人が地域から出ていってしまう地域でも、先生を配置していくことを今後も続けていかなきゃいけないときに、質の高い一定以上の教育を全ての地域の子供たちに届けるためのデジタル活用といったときの教師の在り方を、本当に踏み込んで考えていかなければいけないと思っています。例えばユーチューバーのほうが上手に授業ができているんだとしたら、そのとき先生の仕事って何になるんだろうということまで踏み込んでいけることが、本当の意味でDXと言える状況なんじゃないかなと思って、その辺りまで踏み込んだ議論ができたらなと思っているというのが2つ目です。
 最後ですけれども、そういったことの一つの先進的な先行議論が、経済産業省の産業構造審議会、産構審ではなされていて、そこでも取りまとめが、先日、中間報告という形で発表されています。できれば実証に関わることとか、教育予算も国の中でも限られている中で、せっかく経産省もそこに予算を取って、違う方法でアプローチをされていると思いますので、今までも中教審で、そこで実証されたことがプレゼンされることはありましたけれども、できれば同じテーブルで一緒に検討していけることにならないのかなと思ったりもしています。なので、経産省の「未来の教室」実証のチームとの連携は欠かせないのかなと思います。
 私からは以上です。

【荒瀬部会長】 ありがとうございました。ユーチューバーのほうが授業がうまいというのは思わず笑ってしまったんですけれども、確かにそういう点はありますね。最近大学のある先生と話をしていましたときに、私はユーチューブとかで結構勉強しているんですよとおっしゃって、確かにいいものはたくさんあるんですよね。学校としてもこれからの取組の工夫を考えていく必要があるんだろうなと思いました。
 それから、教師がもう一回人気のある仕事になるかどうかというところは難しいところですけれども、私は、もちろん今村委員も同じように思っていらっしゃると思うんですが、これから再び人気のある仕事になることに賭けたいという思いを強く持っています。そうなるにはどうしたらいいのかというのを是非考えていきたいと思います。ありがとうございました。
 では貞広委員、お願いいたします。

【貞広委員】 千葉大学の貞広です。今村委員とかなり重なっているので、私、申し上げることもないかと思うんですけれども、議題1と重ねて3つほど意見を申し上げたいと思います。
 議題1について、多様な議論を基に論点整理をしていただきまして、ありがとうございます。比較的軽量化されたというか、デジタル教科書と教科書をベースとして、流通している教材やソフトを教師が選び取ってきて、子供たちの学びの多様性をデザインしていくような、ティーチャーからカリキュラムデザイナーに変わっていくという姿が見えるような論点整理になっていたと思います。
 その上での意見ですけれども、まず1つ目は、そこにはリソースとロジスティックの議論が必要であろうということです。教師が学びをデザインしようと思っても、私費負担をこれ以上拡大できないことと、地財措置されている教材費の使われ方に地域差があること、更に、そもそも足りないんじゃないか問題があると、教師が学びをデザインしようと思っても、そういうことが足かせになってしまって、特定の学校や特定の地域で、適切な学びのデザインがなされない、つまり戸ヶ﨑委員がおっしゃっている、いつまでも点に留まって、政策参照しようにも参照できないという状況になってしまいます。ですから、理想は理想、もちろん大事なことですけれども、どのように実装していけるのかという部分の議論も併せて行っていただかないと、自治体間格差と私費負担の拡大していく危惧は払拭できないのではないかということです。これが1点目です。
 2点目ですけれども、そうしたときに、グッドプラクティスを出していくだけではなく、うまくいっていないところにむしろ目を向けていただきたいと思います。うまくいっていないところで、なぜうまくいっていないのかと。何となく教師がやっていないからだみたいなぼんやりした分析ではなくて、教師はやる気だけれども、これこれこういうもの、例えば重要なリソースが決定的に足りていないのでできないと。更に何でもかんでもあればというのではなく、優先順位的に必ずこれはなきゃいけない、よかったらこれもあったほうがいい、本当はこれもあったほうがいいんだぐらいの順位づけをしたりする検証をするなど、メリハリのある視点で不都合な真実にちゃんと向き合って、最低限必要なリソースを確保する議論をする必要があるというのが2点目です。
 3点目は違うことですけれども、今日、春日井市さんの正にグッドプラクティスの例が出ていたと思うんですけれども、ICTの活用等によって、特にそれの前史となる協働的な学びの保障によって、教室の風景、特に力のある先生の教室の風景って、すごく変わってきているんです。こうやって子供たち、立ち歩いているんですよ。先生の言うことを聞いて、ずっと机に座っていて、はい、じゃあこれで次は時間が終わりなので次の作業に行きましょうではなくて、学びに夢中になっている子たちは、先生がタイマーとかつけて、次の作業に行きましょうと言ってもやめられなくて、ずっと特定の学びを継続していたりとか、このように立ち歩いていたりするんですよね。その一方で、既存の学習規律のこだわりを持っている先生もいらっしゃって、例えばOECDのPISAなども、あなたの学習環境は静かですかとか、クラスのほかの子はあなたの学びを邪魔しませんかというような学習規律の項目がありまして、東アジアの国々、韓国とか日本の場合はすごくその学習規律が高くて、学力も高いという分析が、伝統的な学力では言われていたんですけれども、恐らく今私たちが求めている学びの学習規律というのは、伝統的な学力観の規律とはまた違っていると思います。そこら辺を先生方が違うものだと認識していただけるようなメッセージ性も、理念だけではなくて併せて必要なのではないかなと。
 以上3点です。ありがとうございます。

【荒瀬部会長】 ありがとうございました。3点、いずれも大変重要な御指摘で、今のお話をまとめる気はないんですけれども、ティーチャーからカリキュラムデザイナーになることができるようにするための条件整備はどうしていったらいいのか、それを単にこうしていったらどうですかというだけじゃなくて、具体にそこのところにしっかりと力を注いでいくことをしなければ、それこそさっき今村委員もおっしゃっていましたけれども、教師が誇りを持って仕事ができるという学校の在り方にはならないのではないかと思いながらお聞きしました。ありがとうございました。
 それでは、まだ御意見おありかも分かりませんが、冒頭申しましたように、御意見ありの方、またメール等でお出しいただくということで、次の議題に入りたいと思います。
 次は高等学校に関する部分でございます。議題の3つ目といたしまして、「高校教育に係る当面の検討事項について」ということで、先ほど前田室長から資料2-1を御説明いただきましたが、この部分では高等学校に関するものもございましたことを踏まえて、田中参事官から御説明をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

【田中参事官】 高等学校担当参事官の田中でございます。時間も限られますので、なるべく手短に御説明申し上げます。まず、資料3-1を御覧ください。高等学校の現状について御説明申し上げます。
 1ページ目を御覧いただければと思います。高校への進学率は、通信制高校を含めまして99%と、ほぼ全員が進学するような状況となっております。
 続きまして、3ページ目を御覧いただければと思います。全日制・定時制の高校の学校数と生徒数の推移を示しております。一番多かったのは昭和から平成に変わる頃で、第二次ベビーブーム世代でありますけれども、現在は、この赤の生徒数を見ますと、令和4年の学校基本調査速報値で、学校の生徒数が初めて300万人を割り込んで、297万2,000人という状況となっております。
 次、4ページをお願いいたします。一方で通信制高等学校ですけれども、近年、学校の数が非常に増えておりまして、特に私立の通信制の高校の数が大きく増加しております。
 5ページ目をお願いいたします。また、生徒数について見ましても、学校数同様、非常に増えておりまして、特に通信制高校の生徒数、令和3年度の21万8,000人から、令和4年度は2万人増えまして23万8,000人になっているという状況でございます。
 次のページをお願いいたします。これは小中学校における不登校の状況、先ほど説明があったとおりでございます。
 次のページをお願いいたします。一方で高校における不登校は、横ばいかやや減少しているということで、義務とは大分状況が違うということでございます。
 次のページをお願いいたします。中途退学に関しましても、数は減少傾向でございます。それを見ますと、非常に高校教育が落ち着いているのかとも見えるわけですが、実は先ほどの不登校等も含めまして、通信制高校のほうにかなり義務教育における不登校経験者の割合が高い、そういった状況があります。また、中途退学も、転校した場合は中途退学に含まれませんので、この中にはかなりの数の生徒が、中途退学という形ではなくて、全日制の高校から通信制高校、定時制高校等に移っている生徒が、また別途相当いることは留意が必要と考えております。
 次のページをお願いいたします。この9ページ目で、少し古いデータでございますが、通信制高校に在籍する生徒の状況ですが、かつては勤労青年が多かったわけですけれども、今はそれはほとんどいなくなりまして、先ほど申し上げましたような不登校経験のある生徒だったり、あるいは様々な困難な背景のある生徒が多く在籍しております。
 次のページをお願いいたします。15歳人口の推移でございます。15歳、高校に入る年代ですけれども、これは推計値といえば推計値ですけれども、現在生まれているゼロ歳のお子さんまで実際の子供の数を元にしますと、今現在、1学年約107万人いるわけですけれども、これが令和11年には100万人を割り込んで99万人になります。令和18年には81万人ということですので、11年から18年の8年間の間で20万人近く減少するという状況がございます。
 次のページをお願いします。これは全国の公立高校の配置の状況でございますが、各自治体に高校が1個しかない、あるいは一つもないところが非常に増えている状況でございます。
 次のページをお願いいたします。学校外での学習時間を見ますと、中1から中2、中3と上がるにつれて、学習をしないという赤と黄色、赤が「しない」、黄色が「1時間未満」ですけれども、中3から高校に入った途端に、学習をしない、あるいは1時間未満という層が非常に増えておりまして、これが18歳、高校3年生になるまで比較的高く推移します。一方で、高校3年生になりますと、3時間以上学習する層が増えておりまして、二極化が進んでいる状況でございます。
 次のページをお願いいたします。学校生活の満足度につきましては、高校で急に減るわけではありませんが、中1から高2にかけて少しずつ下がっている状況が見て取れます。
 次、14ページをお願いいたします。生徒の自己肯定感、社会参画に関する意識というのが、国際比較で言いますと、日本の中学生・高校生ともに低い状況が見られます。
 次のページをお願いいたします。高校の文系・理系クラス分けの状況でございます。これも少し古い状況調査でありますけれども、多くの高校で文系・理系に分けて、66%でございますけれども、なおかつ、文系コースのほうが人数が多い状況にございます。
 ここからは、令和3年1月の令和答申で、高校の議論もしていただきました。そこで打ち出された高校改革の主要なポイントについて御説明申し上げます。
 まず、高校の期待される社会的役割の再定義ということで、各高等学校のスクールミッション、これを各設置者等で再定義すべきであるということが提言されております。
 次のページをお願いいたします。このスクールミッションを踏まえた上で、3つの方針、スクールポリシー、これはディプロマポリシー、カリキュラムポリシー、アドミッションポリシーの3つでありますけれども、この3つを策定・公表すべきことを提言されまして、これは学校教育法施行規則を改正いたしまして、この4月からこれが義務として施行されております。
 次、18ページをお願いいたします。また、普通科改革も提言されました。高校生の7割が普通科に通っているわけですが、普通科はなかなか特徴を出しにくいのではないかという指摘もあるところです。そういった中で、普通科においても生徒や地域の実情に応じた特色・魅力ある教育を実現すると。また、従来の文型・理系の類型分けを普遍的なものとして位置づけるのではなくて、総合的な探究の時間を軸として、生徒が社会の持続的発展に寄与するために必要な資質・能力を育成するために、多様な分野の学びに接することができるようにする。こういった観点から、普通教育を主とする学科、今まで普通科しかなかったのを弾力化して、例えば学際領域学科、地域社会学科、その他の普通科も設置可能としたところでございます。
 19ページ御覧ください。その要件について書いてございます。ここでは細かく説明申し上げませんが、右側にございますように、新しい普通科では連携協力が大事で、その連携協力の要として、コーディネーターという役割が重要であることが提言されております。そのコーディネーターの業務の概要について、ここで追記しておりますけれども、コーディネーターを配置することによって、学校と地域の関係性が深まり、学校と地域が連携協働した教育活動の継続につながるといった成果や効果が見られております。
 次のページを御覧ください。また、高等学校段階における探究・STEAM教育の抜本強化が必要だということで、文部科学省におきまして、ここに掲げているような事業、ワールド・ワイド・ラーニング・コンソーシアム、SSH、新時代に対応した高等学校改革推進事業、専門高校に関するマイスター・ハイスクール等を推進しております。
 次のページからは、その概要がございますけれども、時間の関係で割愛をさせていただきます。
 26ページを御覧いただければと思います。これは高知県の取組を載せさせていただきましたが、少子化が進む中で、中山間地域や離島等に立地する小規模高校、その教育の充実のために、遠隔授業の実施や地元自治体・関係機関との連携協働体制を構築する、このようなCOREハイスクールネットワーク構想というものを文部科学省として予算支援しておりまして、高知県の取組について御紹介したものでございます。
 続きまして、資料3-2を御覧いただければと思います。先ほど義務教育のワーキンググループでの提案がございましたけれども、高等学校教育の在り方ワーキンググループについてでございます。1番目の設置の目的のところは、前段の部分は義務教育の在り方ワーキンググループと共通のことが書いてありまして、また、背景として、今ほど申し上げたような背景を問題意識としております。その上で、2ポツの主な検討事項を御説明申し上げます。
 まず、1番目として、高等学校教育の在り方。高等学校教育というのは義務教育と比べて非常に多様になっております。そういった高校の多様性と、それから高校教育として、ここは共通として押さえていく部分、共通性の部分、その観点から、改めて高等学校教育の在り方、その意義とは何なのかというところを御議論していただく必要があるかと考えております。
 2番目でございます。その上に立ちまして、全日制・定時制・通信制の在り方、先ほど通信制が非常に増えていること、また、デジタル化の進展によりまして、オンライン教育なども技術的には全日制でも取り入れられるようになってきております。そういった中で、全日制・定時制・通信制の在り方、また、少子化が加速する地域における高等学校教育の在り方など、仕組みの面も含めて議論していただくことが必要かと考えております。
 それから3番目ですけれども、先ほど御紹介申し上げましたスクールミッション、スクールポリシーを真に体現して、社会に開かれた教育課程、探究的な学びを実現するには、先ほどリソースの御指摘もございましたけれども、そういった体制面も含めてどうあるべきかということを御議論いただければと考えております。
 また、4番目でございますけれども、文理横断的な教育、産業界と一体となった実践的な教育の推進、これも今、進めておりますけれども、さらに進めていくためにはどうしたらいいのかということを検討が必要かと考えております。
 駆け足で恐縮ですが、以上でございます。

【荒瀬部会長】 ありがとうございました。先ほどの資料2-1は共通することとして、その中でも特に6番、7番については高等学校について書いてあったわけですけれども、そういった点、あるいはまた、今、御紹介いただいた資料の部分、そして高等学校教育の在り方ワーキンググループについてという、3つの資料に基づいて御議論いただければと思います。御発言のおありの方は、また「手を挙げる」ボタンをお願いしたいと思います。いかがでしょうか。
 堀田先生、どうぞ。

【堀田部会長代理】 堀田でございます。私はどちらかというと義務教育の学校に関わることが多いものですから、時々高等学校教育の話を聞くと、そんなに多様なのかとか、義務教育じゃないからこのようにできるのかとか、なるほどと思うことが多くあります。この点からも、これからワーキングに分かれて議論していったときに、お互いが見えるようにしておいたほうがいいんじゃないかと感じます。
 例えば義務教育ではこうだけれども高校ではこうだとか、高校で、例えばカリキュラムの柔軟化、あるいは個別最適、あるいは一人一人に応じるというのは恐らく高等学校のほうが進んでいると思いますけれども、その辺りがどこまで義務教育で取り入れられるのかを検討するためにも、高等学校でどのように進んでいるのかを義務教育側でも知っておいたほうがいいと思います。授業時数云々のことも含めて、義務教育だと難しいことはいっぱいあることは承知していますけれども、結局は学校種としてはつながっており、子供たちは進学していきますので、この辺りを可視化できるような何か整頓をしていただいて、今後の議論に役に立てていただければと思いました。
 以上でございます。

【荒瀬部会長】 ありがとうございます。非常に大事な御指摘で、本当にそのようにしていきたいと思います。そのことができるようにするためには、お互いに紹介し合うこともそうでしょうし、この特別部会の開催についても、また事務局と御相談しながら進めてまいりたいと思います。ありがとうございました。
 ほかにはいかがでしょうか。もし、それでしたら、1つ目の議題、デジタル教科書・デジタル教材等につきまして、あるいはまた、2つ目の議題、義務教育につきましても含めて御意見ございましたら、お願いをできればと思います。
 平川委員、お願いいたします。

【平川委員】 ありがとうございます。意見というか伺いたいんですが、ここに施設課の方はいらっしゃらないので、それは別のところでやってくださいと言われたら、また考えるんですが、実は建物が子供たちに与える影響ってすごく大きいなと思っておりまして、今、RCとかで75年もつという建物を造っているわけですけれども、この建物ですらも、もうちょっとアジャイルに議論していかなきゃいけないんじゃないかと思っております。
 今、例えば施設なんかを建てると、2100年までもつんですが、2100年にそこに人口がいるかどうかって分からなくないでしょうか。そうすると結局、今、プレハブという言い方が正しいかどうか分かりませんけれども、例えばスーパーマーケットのイオンさんとか、非常にアジャイルな形でどんどん造っていて、そこにお客さんが来なければ、もうすっと引くような、そういう建物の考え方でやっていらっしゃるんですが、校舎も、その時代によって浮き沈みというか、はやりすたりというのがあって、例えば廊下を、昔は狭かったけれども、今は広くするとか、特別支援学校なんかは、小学部の1年生、2年生は、昔はトイレをつけていたんですけれども、それがすごく臭いとか水回りのトラブルの原因にもなって、大変お荷物になっちゃっているとか、そういう現実があると思うんですが、今の学校教育法は人口増を前提としたたてつけになっていまして、今、御説明あったように、どんどん人口が減っていっている、それから子供の数も減っていっている中で、ここの土地に将来ずっと未来永劫人口が増え続けるんだという保証なんか、東京のある地域以外はないわけです。そうしたときに、アジャイルな学舎の在り方、つまり個別最適な学びの校舎というのはどういうものかというのを同時に、ソフトの部分をやるのはもう当たり前ですけれども、結局建物が与える影響が非常に大きいものですから、これはもう別なところでやってくださいというのか、せっかくこれは中教審という場所なので、学校教育法そのものを、人口増を前提にしたものではなくて、むしろ学校教育法をカリキュラムとかソフトにも合わせた形で議論し始める段階じゃないかなと私は思っているんですけれども、こういうような大き過ぎる話は、あまりここの場でしないほうがいいのでしょうか、どうなのでしょうか。

【荒瀬部会長】 私が判断することかどうか分からないですけれども、大いに御意見を頂戴しなければ前に進みませんので、お願いできればと思いますし、今、中教審ではありませんけれども、建物に関する議論はやっておりまして、私、そこに関わりを持っておりますが、ノーカーボンで行くにはどうしたらいいのかといったことも当然のことながら議論になっていますし、校舎の持っている教育力というのも、これは本当に小さなものではありませんので、その点についてとか、あるいは今後どういった学びが展開していくのかということを考えますと、今予想できる形でこうなるだろうからというのは多分役に立たないと思うんですよね。だから、そうなったときにどうにでもできるような、そういう極めて不確定ではありますけれども、ただしいろいろな対応ができて、しかも安全で安心できるような、そういう校舎をどうするのかといったようなことも含めて検討していく必要があると思いますので、また御意見頂戴できればと思います。中教審でこういう御意見があったことは御紹介をしたいと思いますが。
 すいません、前田室長、今の件に関して。

【前田教育制度改革室長】 前田でございます。ありがとうございます。教育長がおっしゃられたような観点について、今回、個別最適な学びと協働的な学びの具体化と言っておりまして、それはソフト面ももちろんそうでございますけれども、次世代の学習空間を、正に個別最適な学びと協働的な学びを一体化するときには、先ほどいろいろな自治体の取組事例がありましたけれども、動き回ったり、仕切りがないほうがいいんじゃないかとか、そういった学習空間の中での設計についても学びの効力は関係してくると思いますので、今の御指摘あった、私どもの部署で言う施設部に関することでございますけれども、そことも連携しながら議論を進めてさせていただければと思います。

【平川委員】 そうですね。これについては国庫補助とかも関係してくると思います。今、現状のところで言うと、75年のRCなんかは国庫補助が出ておりますけれども、そうではないものは、アジャイルな建物、具体的にはプレハブに近いようなものは国庫補助が出ないということで、なかなか難しい部分がありまして、これは個別最適な学びをしていく上で、例えば広島県なんかもSCHOOL“S”というものを造っていますけれども、現状、周りは古めかしいんだけれども、中はイケアさんの家具とかそういうものを置いて、学校らしくないスペースを造っております。学校というと必ず無機質な家具じゃないといけないんじゃないかというと、そうではないと思いますので、そこも含めて、どうやったら子供たちがカンファタブルなスペースで学習ができるのかというところから、これはお金かけなくてもできる部分はあると思いますので、中のスケルトンをどうやっていくのか、カーテンのつけ方から、それこそ家具の置き方から、黒板の取り外しなんかも含めて、できればお話合いいただければと思っております。
 私もそんなに詳しくはないんですが、イギリスのサッチャー首相が教育改革をやると言ったときに、各学校に自立と貢献と名づけて、そして多分、イギリスですから建物自体は古めかしかったんでしょう。しかし、中の教室というところを、リビングルームという、生きるための部屋と置き換えて、まず黒板を取り外して、そしてカーテンをつけ直して、ソファーを置いて、じゅうたんを敷いて、明るい部屋にして、子供たちがそこはおうちとあまり状況が変わらないなというような環境に変えていったという話を聞いたことがあります。実際私も見に行ったとき、えらく日本と環境が違うなと、その点では思いました。それが初めからそうだったかといったら、そうじゃなかったと思いますので、ソフトをやるときに、施設面とか環境づくりは非常に重要になってくると思いますので、ソフトだけの話をすると、話が煮詰まっちゃうんです。ここで話す内容はいいんですけれども、じゃあ現場はどうなのよということになってしまうので、できれば広がりを見せたような話がここでできれば大変有り難いなと思っております。
 以上です。

【荒瀬部会長】 ありがとうございました。全く御発言を制限するものではありませんので、具体的に取組を進めていこうとしたときに、どういった条件整備が必要かということについては、是非どしどし、それがすぐできるかどうかということはもちろん難しい面もあるかもしれませんが、これは言っていくべきことは言っていかなければならないと思いますので、よろしくお願いします。大変ありがとうございました。
 では、今村委員と奈須委員が手を挙げていらっしゃいますので、奈須委員までとさせていただきたいと思います。
 では今村委員、お願いいたします。

【今村委員】 今村です。発言させていただきます。
 今回、高校の意義を根本から問い直すということで、大切な場だなと思っているんですけれども、一つ、全日制と定時制と通信制というくくり自体が、何かもはや最近よく分からなくなってきていることも悩ましいというか、ポジティブな意味と悩ましさを両方感じていたりします。
 特に不登校が増えたということで、通信制の制度を活用して新しいタイプの学校がすごく増えてきていることは、本当に新しい高校教育のありようを見せてくれていると捉えられて、本当に学びも多いです。しかし一方で、企業努力のPRによって、すごくいい部分は見えてくるんですけれども、実態は例えばどれぐらいの人が中退しているのかとか、中退という概念も通信制の場合ってどう捉えればいいのかとか、そこも、特に広域の企業がなさっている広域通信制についてはよく分からないところが、かなり困難を背負った子供たちや不登校の子供たちの、特に中学生以下の義務教育の子供たちと関わっている立場からすると、すごく不安だなと感じています。高校が最終学歴になる、もしくは高校までが学校という場所との接点になる子供たちも、まだまだ多い。特に不登校を経験した子供たちにとっては、そこが人間関係や社会性を育む、企業に入る前の最後の場所になるかもしれない場所で、一体何を授けてあげる場所にして、そこは本当にどういう場所であるべきだろうと。もう勤労青年のための学校ではないという前提にした通信制の在り方を、もう一度考えていくべきかなと思っています。
 特に公立の通信制学校を変えていくべきじゃないかと思うんです。今は当時の自立した学習者を前提にした指導をなさっている公立通信制がすごく多いように感じていて、結構ドライで、ちゃんとやることを前提に入ったんだよねという関わりになっているから、困難を背負って学習ということを小学校からあまりやれていない子たちにとっては非常に厳しい場所になっているように感じるんですけれども、新しいタイプの狭域通信制が出てきていることも存じ上げているんですが、広域通信制の就学支援金の範囲で通えるサポート校の活用ができない家庭にとっては、多額のお金をサポート校に支払わなきゃいけないことも、企業のPR広告からはよく分からない、見えてこないんですよね。中にはサポート校の活用が従量課金になっているところもあって、1週間に1回でいいですと書かれていたけれども、そんなのじゃとても卒業できないからといって、2年生になったら週3にしましょうと面談で言われて、またお金がかかってなんていう話も聞くんですけれども、そういう意味で、公立の通信制の在り方で一部救っていけることもあるんじゃないか、逆に広域通信制の企業のソフトだけは連携するとか、そういった在り方もあるんじゃないかとか、そのように踏み込んで考えたくて、困難を背負った子供たちにとっての高校の在り方が、一つセーフティーネットになっているかもしれない通信制の在り方というところについては見直していきたいなと思っています。
 また、東京なんかでは、3部制の定時制の夜間に行くと、もうほとんど外国ルーツの子供たちという学校もあるんですけれども、そういった前提も、もともと定時制の設計の段階ではなかったはずで、そのときにどんな人が先生になるべきなのか、物すごくたくさんの多様な言語を話す子たちを、普通の教員としてやってきた方々にはとても対応ができなくて、こここそGIGA端末の出番で、本当に世界中の人たちがここにもしかしたら言語のサポートをする教員として参加できるかもしれないとか、そういったこともやっていかないと、とても既存の先生方にはやり切れないと思うんですよね。なので、全日制・定時制・通信制の在り方を、困難を背負った子供たちの最終学歴になるという前提になったときにどうしていくべきかということは、今回、検討の中では議論に入れていきたいところだなと思いました。
 以上です。

【荒瀬部会長】 ありがとうございます。今回でどこまで突っ込んだ話ができるかというところですけれども、正に高等学校教育が語られる際に常に言われてきた共通性と多様性という言葉が、今の時代、あるいはこれからの時代に、どうその共通性と多様性という言葉を考えていくのか、あるいはもう別の言葉でもって高等学校教育を考えるのか、この辺りについても是非議論をしていただきたいなと思っております。ありがとうございました。
 では奈須委員、お願いいたします。

【奈須委員】 遅れてすいません。
 まず、高校のことですけれども、通信制と定時制を抜本的に見直していくことがとても大事だろうと思います。そこにそれほどの子供がある意味で逃げ込んでいく現状があるということは、どうしようもなくそうせざるを得ないお子さんの現実がある。逆に言えば、全日制あるいは普通科が全く対応できてない部分がかなりあるんだということだろうと。もうそう認識せざるを得ないんだと思うんですね。それが何かということの原因をしっかり事実に基づいて、先ほど貞広先生がおっしゃったように、うまくいってないということはなぜなのかということを明らかにしていくと。そしてサポートしていくということであると思います。
 今、荒瀬先生がおっしゃった共通性と多様性ということでいうと、もうコンテンツで共通性を担保するのは諦めたほうがいいと思います。今回、資質・能力に振ったということは正にそういうことで、このことを知っているよね、国民教養として、コンテンツとしてと。もうそれは諦めましょう。それは義務教育で十分です。義務教育ですら厳しくなっているし、義務教育ですら、ある部分無駄になっている可能性があるわけですから。ただ、コンピテンシーという意味ですよね。正に学びということの意味や価値や良さということをちゃんと取り戻してあげること、そして一生涯にわたってその子が必要とする学びを自力で遂げていくことができるようにしてあげていくこと、そのための能力とか経験とか、あるいは習慣とかは何かというようなことだろうと思います。実際、通信で頑張っている先生も、私、たくさん存じ上げていますけれども、子供に対する関わり方を変えると、どんどん変わってくると。つまり子供に責任はないんですね。これはユニバーサル・デザイン・フォー・ランニングというアメリカの動きがあるように、うまく学べていない子供は、その子に問題があるんじゃなくてカリキュラムに問題があるんだという、この原理で通信制なんかを見直していくと、今後ワーキングでお願いできればなということが一つの思いです。
 それから、先ほど平川先生がおっしゃった建築のことですけれども、私自身、少し関わってきたことで言うと、もう膨大に実はノウハウはあるんですね。1980年代ぐらいに、アメリカのオープンスクールとか、先ほど平川先生が言ったのはイギリスのインフォーマル・エデュケーションですけれども、あれが日本に入ってきて、様々な展開が実はかなりなされています。その頃、多目的スペースに対する面積補助なんかもなされて、オープンスペースを持つ学校が典型ですけれども、それ以外にも多様な学校が建築の先生方の御尽力によって造られ、またそれが教育方法的にどんな意味があるかということも、学術的にも実践的にも実はかなり研究は進んでいるんですけれども、その後、もうこれは個別的な学び全体ですけれども、少しトーンダウンして20年たってしまったので、その頃のノウハウを、もうみんな忘れてしまっているとか、若い人は知らないとか、多分我々の世代ですね、堀田先生とか中川先生とか、我々の世代は若いときに見てよく知っているんですけれども、ただそれが継承されていないし、多分省内の若い皆さんは御存じないと思うんですけれども、実はいっぱいあるので、そういうのを掘り返す、そして海外にも膨大にあるので、また建築の皆さんは今でも研究していらっしゃるので、そんなに悲観的にならずに、割とちゃんとやれば短期でやれる。
 あの頃も問題になったんですよ。例えば建築にお金がつくけれども、家具を入れようとしたら一円もお金がついていないとかね。家具が入らないので、とんでもなく広いぼんやりした空間だけがあって、何も使えなかったとかね。だからそれは平川先生がおっしゃったように、正にどういう空間を造るのかというきちんとしたビジョンを持って、予算措置まで含めてきちんとやっていくと。過去にノウハウもあるし、過去にしくじったこともいっぱいあるので、そこを改めて検証し直して、今日的に考えていけばいいんじゃないかなと思います。
 すいません、以上です。

【荒瀬部会長】 ありがとうございました。正に通信制・定時制についてどうするのかも含めて議論をお願いできればと思いますし、建物についても、これこそ県によって相当差があったりもするかも分かりません。教育長の判断によって、これは教育長が判断しろという話じゃなくて、教育長の御判断でもって、こういった面も拡充していこうとか、整えようといったようなこともあるし、もっと言うと、学校の中で実は事務職員さんが、予算が少し余りそうなので、これで総合的な探究の時間の教室みたいなのを造ってはどうですかと教師に提案をなさっている、そういう学校があったりとかということもお聞きしたりします。だからいろいろな工夫をこれからやっていくことがとても大事で、そういったことの基になるような議論がワーキングでできればいいなと思っています。
 時間の関係もありまして、まとめさせていただきますけれども、皆様から今いただいた御意見を踏まえながら、先ほど前田室長と田中参事官から御説明いただいた内容につきまして調査及び審議を行うために、資料4-1及び4-2のとおり、これは改めて読みませんが、この部会の運営規則第2条第1項に基づきまして、この部会の下に、義務教育の在り方ワーキンググループと高等学校教育の在り方ワーキンググループ、この2つのワーキンググループを設置することにいたしたいと思いますが、よろしゅうございますか。

(「異議なし」の声あり)

【荒瀬部会長】 ありがとうございます。それでは、そのようにさせていただきたいと思います。
 この設置につきまして、先ほど堀田委員からもありましたように、具体的に全く分かれて議論していくんじゃなくて、お互いにどんな議論をしていくのか、初等中等教育全体でもって考えていくことも非常に大事になってきますので、その辺りも含めてお願いをしたいと思います。
 なお、ワーキンググループに所属していただく委員の皆様につきましては、この部会の運営規則第2条第2項に基づきまして、部会長が指名することになっております。私に御一任いただくということですが、これもよろしいでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【荒瀬部会長】 ありがとうございます。では、そのような形で、今後ワーキンググループを立ち上げてまいりたいと思います。
 では、時間が参りました。今日はこの辺りにしたいと思います。
 最後に、次回の予定につきまして、前田室長お願いいたします。

【前田教育制度改革室長】 長時間にわたる御議論いただきまして、ありがとうございました。次回の部会につきましては、また追って事務局から御連絡させていただきます。ありがとうございました。

【荒瀬部会長】 それでは、本日の議事、これで終了といたします。今日はお集まりいただきまして、ありがとうございました。
 ―― 了 ――

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