幼児教育と小学校教育の架け橋特別委員会(第4回)議事録

1.日時

令和3年10月7日(木曜日)10時00分~12時00分

2.場所

WEB会議形式で開催

3.議題

  1. オブザーバー団体からのヒアリング
  2. 委員による意見交換
  3. その他

4.議事録

【無藤委員長】 皆様、おはようございます。定刻となりましたので、ただいまから、第4回中央教育審議会初等中等教育分科会幼児教育と小学校教育の架け橋特別委員会を開催いたします。
本日は御多忙の中、御出席いただきまして、誠にありがとうございました。
本日の会議の開催方式及び資料につきまして、事務局より御説明をお願いいたします。
【橋田幼児教育企画官】 本会議は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を防止するため、Webexを用いたウェブ会議方式にて開催させていただきます。大変恐れ入りますが、御発言時以外はマイクをミュートにしていただくようお願いいたします。カメラにつきましては、御発言時以外も含め、会議中はオンにしていただきますようお願いいたします。
なお、本日は報道関係者と一般の方向けに本会議の模様をWebex Eventsにて配信しております。
それでは、資料の確認をさせていただきます。議事次第にございますとおり資料1-1から3まで及び参考資料1となっております。御不明な点等がございましたら、お申しつけください。
以上でございます。
【無藤委員長】 ありがとうございます。
それでは、本日の議事に入ります前に、前回の会議以降で事務局に人事異動があったということですので、紹介をお願いいたします。
【橋田幼児教育企画官】 それでは、人事異動がありましたので、紹介させていただきます。
9月21日付で、初等中等教育局長に就任いたしました伯井美徳でございます。
【伯井初等中等教育局長】 伯井です。よろしくお願いいたします。
【橋田幼児教育企画官】 なお、同じく大臣官房審議官(初等中等教育局担当)に淵上孝が就任しておりますが、本日は、所用のため遅れての出席予定となっております。
以上でございます。
【無藤委員長】 ありがとうございました。
本日でありますが、議題1として、「幼保小の接続期の教育の質的向上に関する検討チーム」について御報告させていただきます。その後に議題2といたしまして、関係団体よりヒアリングを行い、その後に、それらをめぐっての質疑応答、意見交換などを行いたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
それでは、議題1に参ります。第3回の特別委員会、前回ですが、一任いただきましたけれども、「幼保小の架け橋プログラムの」の共通事項等の整理及び幼児教育の質の保障の仕組みについて、専門的かつ詳細に検討するチームというものをつくって議論するということで了解いただきましたけれども、その御報告であります。
お手元の資料1-1というのがあると思いますけれど、そこに名簿がありますが、「幼保小の接続期の教育の質的向上に関する検討チーム」というのを編成いたしました。御覧いただくとおりでありますけれども、これらの方は本委員会の委員の中で、特に幼児教育、それから、一部、小学校教育の方もいますが、御専門とされている方にお願いさせていただいております。そのチームを編成いたしまして、9月30日に第1回の検討チームを開催いたしました。
この第1回の検討チームの主な意見の要旨につきましては、事務局から資料1-2にまとめたものがありますので、それに沿って御説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
【大杉幼児教育課長】 それでは、資料1-2、9月30日に開催していただきました検討チームの概要でございます。限られた時間ではございますけれども、議論の状況を御説明させていただきたいと思います。
今、画面に、資料1-2が投影されてございますけれども、この特別委員会でおまとめいただきました「論点整理のたたき台」の「目指す方向性」に沿って議論をまとめさせていただいております。
1つ目につきましては、もう特別委員会でかなり御議論いただいておりますので、検討チームのほうでは、(2)以降が充実した御議論という形になっておりますけれども、(1)につきましても、やはり幼児教育の質、何か特別なことをするというよりも、日々の保育の中にある質の捉え方、これを共通理解していくことが大事であるという御意見でございます。
(2)が、架け橋プログラムを含めた具体的な幼保小の接続の課題ということになりますけれども、まず来年度プログラムをモデル的に実施していくに当たりまして、接続期の範囲ということでございます。2つ目の丸にございますように、接続期を広く捉え過ぎると視点がぼやけてしまうと。ただ、一方で、5歳児の成長はそれ以前からの積み重ねによるものなので、接続期前後もある程度視野に入れる必要があるということ。接続プログラム自体は大体5歳児から1年生辺りということで御意見いただいていますけれども、1ページ目の下から2つ目の丸にございますように、ここまでがアプローチ、ここからがスタートと分かれるよりは、5歳児から1歳児までつながるものがよいのではないかということ。
2ページ目に参りまして、2つ目の丸ですけれども、小学校のほうのスタートカリキュラムの時期と接続プログラムの期間の整合性を考える必要があると。ただ、3つ目の丸にございますように、スタートカリキュラム自体が短期間の学校探検にとどまるような例もあるので、しっかりと学びをつなぐことを想定した接続期の設定が必要ではないかということでございます。
また、カリキュラムの編成・実施の在り方については、様々な事例を分析しながら御議論を進めていただきました。
1つ目の丸にございますように、次のような特徴ということで、例えば、育ってほしい子供の姿や力がしっかり地域で共有されているという特徴であるとか、スタートとアプローチの中でつながりが明確に明示されているというようなこと、様々な具体的な実践や工夫が位置づいているということ、学びや育ちのつながりが見えやすいという特徴があるのではないかというようなこと。
また、2つ目の丸にございますように、国研の研究成果も御紹介をいただいたところでございます。
3つ目の丸にございますように、遊びと学びのプロセス、先生がどう関わっているのか。つまり教育関係者はもちろんのこと、家庭や地域にも発信していくという視点も大事であろうということ。
2ページ目の一番下にございますように、やはり小学校の先生と関わってみると、環境の構成ですとか、環境を通じて行う教育というのはかなり外から見えにくいということが非常によく分かったというようなこと。
3ページ目、2つ目の丸にございますように、学びに向かう力、人間性で接続を考えると、幼小の接続は非常に、非認知能力を含めて分かりやすいのではないかということ。御意見の中では、3つ目の丸にございますような、例えば低学年の体育での遊び、国語での言葉遊び、架け橋を大事にして充実させていくと、小学校側の指導も充実するのではないかというような御意見もありました。
また、英語教育からもやはり母語の力がないと外国語の力が伸びないというような御意見もあったところでございます。
プログラムの普及という意味では、プログラムの策定と同時に、やはりどういうふうに広げていくのかという手法の検討が大事だということ。また、4つ目の丸にございますように、単一的なものではなくて、柔軟性や、子供の意外性、驚いたり、楽しいからみんなでやろうというような教育の在り方を揺さぶるようなものにしていこうというような御意見をいただいております。
(3)全ての幼児のウェルビーイングを高めるカリキュラムの実現ということでは、カリキュラムマネジメントが課題であるというようなこと。また、2つ目の丸にあるように、ゼロからのスタートではないので、既にカリキュラムを見直す視点ということをしっかり示していくということ。園の中での役割等も含めて考えていく必要があるということでございます。
4ページ目以降、(4)幼児教育推進体制の部分。例えば研修でありますとか推進体制の広がりということも併せて検討していく必要があるということ。また、質の保障の仕組みにつきましても、海外の事例、それから、5ページ目にはイギリスの事例、それから、6ページ目には国研の研究成果なども御紹介いただきましたけれども、様々な事例の共有がなされたところであります。
質の保障の仕組みにつきましては、また次々回以降、議論を深めていただくことにしております。
また、7ページ目の最後、これもまだ初回議論がそれほど及んでいない部分、これからの部分もございますけれども、やはりそれぞれの施設の持つよさを生かしながら、共通のもの、地域の特色ということをどう考えながら連携を図っていくかということで、モデル事業を推進していくことが大事だという御意見をいただいているところでございます。
以上でございます。
【無藤委員長】 ありがとうございました。この検討チームの状況につきましては、今後とも本特別委員会において適宜御報告させていただきたいと思っております。
検討チームの委員の皆様方におかれましては、引き続き御尽力のほどよろしくお願い申し上げます。
それでは、議題2であります。ヒアリングですけれども、オブザーバー団体の方々にお願いをしてございます。御発言いただく団体の皆様につきましては、名簿がお手元にあると思いますが、名簿順に指名させていただきますので、1団体当たり4分以内という短い時間で恐縮ですけれども、お願いしたいと思います。
時間が過ぎた場合には事務局からベルを鳴らしていただきます。その後にまとめて委員の皆様から御意見をいただくという形にしたいと思います。
それでは、順番に御指名させていただきます。
それでは、まず、1番目でありますけれども、全国国公立幼稚園・こども園長会から御説明をお願いいたします。
【全国国公立幼稚園・こども園長会】 全国国公立幼稚園・こども園長会、箕輪でございます。本日、発言の機会をいただきありがとうございます。
画面を共有しながら「目指す方向性について」お話をさせていただきます。
まず、目指す方向性(1)の白丸1点目、「幼児教育の意義や価値を共有する」については、国公立では各園で発行する学級や学年だよりで映像を交えて知らせる、また、園だよりに幼児期の教育に触れる内容を掲載するというような形で、保護者や地域、近隣の小中学校、保育所、こども園、地域の町会関係者、学校評価の委員、行政の方々にお知らせをしています。学級懇談会、保護者会でも保護者に伝えています。ホームページがある園は、掲載もしております。また、園内に掲示し、保護者や来園者に説明することも行っています。
そのほかに、「幼児教育とは」を分かりやすく示した冊子を園で作成、または地域の園長会で作成、中には、区市町村の教育委員会と園が合同で作成し、保護者会や他校市との連携日などに配布や口頭説明を行っているところもございます。
このように国公立の園に近い方々には、幼児教育の意義や価値を子供の姿を通してお知らせする機会が頻繁にあり、理解を得られておりますが、伝える先は園に近い方に限定されております。今後、幼児教育の意義や価値を広く社会に周知するためには、各園のICT環境の整備推進、各自治体の、特に教育委員会の後押し、メディアとの連携が必要であると考えております。
(1)の白丸2点目、小学校教育との連携接続は、教育委員会のバックアップの下、園と小学校が一緒に取り組むと成果が上がる実績があります。画面は、幼小合同で区の研究奨励を受けた際の資料で、幼小接続のカリキュラムも作成されております。
このように、歩みを進めても、研究した教員の理解は深まるが、人が入れ替わると進展しづらい、また、他校の教員に広がりにくいという現状があり、架け橋プログラムにも通じる課題ではないかと考えます。つくって終わりにならないように、今後、(1)、白丸3点目にあるように、小学校教諭の悉皆研修に幼児教育を位置づけていただくことが重要であると考えます。
(2)の架け橋プログラムの開発、実践については、既に全国で作成されております接続カリキュラム、そちらの実施状況の確認や成果、課題の分析経過を生かしていただければと思っております。また、架け橋プログラムに対する現場の願いをぜひ開発の基礎資料にしていただければと思います。
なお、教員が幼児期から児童期への発達を見通し、発達にふさわしい方法で緩やかな接続を実現していくためには、接続期を年長当初から、1年生夏休み明け頃までに設定するとよいのではと考えます。
(3)のウェルビーイングは、幼稚園教育要領等を基盤とし、幼児理解に基づいた計画、実践、振り返りを行い、よりよい教育を創造するという、当たり前のことを着実に行うこと、また、学校評価のように、園の教育内容を客観的に確認する仕組みを全ての幼児教育施設に広めていくことにより実現できるのではないでしょうか。全国の好事例を取り上げ、普及していくことをぜひしていただければと思っております。
また、(4)の質と専門性については、国公立の園は、これからも園内研究の成果を地域に伝える幼小接続の実態を公開するなど、地域の研修の拠点となる役割を果たし、また、幼児教育センターの指導主事、研修の講師役などの人材の輩出に努めてまいりたいと思っております。
最後、(5)の関係機関との連携協働については、多くの自治体で既にネットワークづくりが進んでおりますので、それらの取組の現状を今後、基礎資料として御活用いただければと思います。
以上です。ありがとうございます。
【無藤委員長】 ありがとうございました。最初に申し上げたように、質疑等はまとめて、11団体ありますが、それが終わってからということで、委員の皆様にお願いしたいと思います。
それでは、2番目ですけれども、全日本私立幼稚園連合会から御発表をお願いいたします。
【全日本私立幼稚園連合会】 ありがとうございます。資料のほう、共有させていただきます。全日本私立幼稚園連合会の安達です。本日はどうぞよろしくお願いいたします。
個人的には、小学校の教員を十数年した後に、幼児教育に携わって二十数年、その間、関わった子供たちが40代から30代、20代となってまいりまして、今日は主に幼児教育ということについてと、その質の向上について少し意見を発表させていただきます。
幼児教育は、幼児教育として私は意味があると思っております。一人一人のよさや可能性を見いだす。小田豊先生がよく言われた、一人一人違うことが平等ということ。やはり小学校や義務教育以降の準備教育ではないということは、まず確認した上で進めていければと思っております。
また、質向上においては、やはり子供理解から始まる教育の実践ということがなかなかできていないのが現状かと思っていますので、やっぱりカリキュラムマネジメントもそうですけども、やはり主体的・対話的で深い学びを目指すに当たっては、子供の主体性を支える保育者の主体性ということは欠かせませんし、対話を促進するリーダーシップも必要です。また、各園を支える団体や幼児教育センターの役割も非常に重要になっているのではないかと思っています。
家庭や地域を巻き込んで、子供を真ん中に語り合うことが必要かと思っております。これはうちの園の5歳児の後半、お店屋さんプロジェクトのおすし屋さんですけども、このときに例えば、すごくこだわってこういうタコを創った子がありました。木工用のボンドを固めて、色にもこだわって、試行錯誤して、ストローを細かく切って貼って。ただ、こういう子がどういう子だったかというと、すごくこだわりが強くて、御家庭も、3歳のときの保育者もすごく大変だったんですね。しかし、こういう子供の興味関心、何をこの子がしたいのかということに寄り添った結果だと思っています。
この間、オリンピックがありましたけども、卒園生の林大地君という子がサッカーの日本代表で出ていました。3歳のときから5歳に混じってサッカーをやっていて、海外の大きな選手と競いあっている姿を観て幼稚園の頃を思い出しましたが、多分、クラブチームで小学校以降、中学でいろんな技術や戦術を身につけたのでしょうけれども、やってみたいとか、好きになるというのは、やはり幼児期の中で培われたものだとは私は感じました。
同じくオリンピックで、ボランティアのドクターをしていた、小学校のときに担任した子ですけども、とにかく人と同じことをするのが嫌で、もう変わったことばかりしていました。一方、前のリオオリンピックの会場建設に参加した、男の子がありました。彼もやはり本当に落ち着きがなくて、しゃべってばかりしていた子でした。ただ、一見すると短所に見えるこういう子たちの個性というのは、成長した時に例えば自分の思ったことに挑戦してみるとか、人が大好きで、人との関係をつくるのがうまいというような長所になります。多分これは小学校ではなくて、やっぱり幼児期で育ったものかなと思っています。
これは保育の基本の構造ですけども、子供理解、子供の事実をたくさん集めるところから解釈して、狙いを立てていくという、ここの子ども理解のところ、これがやはりなかなか難しいのではないか。やっぱり主体的な子供の育ちを支えるに当たっては、こういう子供理解が欠かせないと思います。
その子供理解というのは、個々が1人でするわけではなくて、公開保育や園内研や、それを引き出すファシリテーションの技術や、やはりリーダーシップが必要かと思っています。こういう子供の姿を基にカリキュラムで、今、子供たちの現状を確認して、そこから保育の計画を実践していく。コロナ禍で、いろんな園が大変でしたけども、何をするかというコンテンツのベースのものじゃなくて、やはり何を育てるかというコンピテンシーをベースに変えていく必要があります。
ただ、これを我々だけでするのではなくて、こういうポートフォリオなどで保護者と共有する。それを基に、若い先生たちにも分かるようにこういう子供の姿を基にした教育課程をつくる、それをまた家庭と共有する。例えば、5歳児の7月でしたら、「だって」ということがキーワードになりますけども、やはり子供なりに「だって」の後に根拠をちゃんと話すような、子どもなりの論理性の育ちの芽生えが家庭にとって、口答えではなくて、子供の育ちとして共有する、こういう我々の教育の計画を家庭とも共有し、連携するということが必要かと思っています。
これは大阪の団体での研修の事例ですけども、コロナ禍によって、対面でなくてもいい内容の研修が、オンラインにより時間や場所を超えて、40時間ほど実施します。ただ、一方では、やっぱりリーダーやミドルリーダー研修は必須ですし、保育のファシリテーターの連続講座も対面でしております。また、新任研修は新任を集めてするのも一部ありますけども、新任を育てる人が集まってどのように育てるかというスキルを身につける必要があると思います。あと、キャリアップのマネジメントということが言われますけども、やはり幼児教育の現場ではマネジメントも大事ですけども、やっぱりリーダーシップ、様々な人がいろんな場面でリーダーシップを発揮することが必要なのではないか。そのような研修が園をサポートすることになると思います。
また、うちの連盟でのプロジェクトでは、26次の非認知能力の育ちに、北野幸子先生に入っていただいたり、29次の保育の可視化に松井剛太先生に入っていただいたり、あと、30次のカリキュラムマネジメントと、やっぱり園だけでできないところに、大学の先生方の援助を得て、結果を伝えるのではなくて、こういうプロジェクトに参加した各園の代表者が、園がどう変わっていったかというようなプロセスも共有するということが必要です。あと、評価としてはECEQのコーディネーターの養成を団体ではしておりますが、コーディネーターが園に入って、その園の子供の姿や願いを持って、こんなふうに関わっているということをみんなと共有するということで、外部から様々な専門家が入っていくということが必要ではないかなと思いました。
以上です。ありがとうございました。
【無藤委員長】 ありがとうございました。
それでは、3番目ですけれども、全国幼児教育研究協会から御発表をお願いいたします。
【全国幼児教育研究協会】 公益社団法人全国幼児教育研究協会理事長の福井です。通称全幼研と言われています。今日は発言の機会をいただきありがとうございます。口頭で述べさせていただきます。
全幼研の事業内容としては、幼児教育関係者を対象とした研修に関する事業や研究を中心として行っています。会員は、設置者が公立、私立であっても、所属が幼稚園、保育所、こども園、さらに保育者養成校であっても垣根なく幼児期の教育について学び合い、教育保育の質の向上、並びに保育者の質を高めるために活動しています。この委員会には、全幼研に関わってくださる方が何人も委員でいらっしゃるので、大変心強く思っております。
さて、未来社会に対応できる子供の育成を目指して、各園では保育を展開していますが、現場の先生方は、保育の楽しさは感じていても、日々悩みながら保育に取り組んでいます。特にコロナ禍では、直接体験の場が減り、子供たちの育ちをどう守っていくかが課題となっています。
そこで先生方は、自分の保育を振り返り、学び直す研修の場を求めています。ですが、研修の機会も激減している現状があります。仕事内容も多岐にわたって、多忙で、研修の時間が取りにくいという現状もあります。しかし、全幼研の研修に参加されている先生方は、研修なくしては教育の質は高まらないと考えて、保育の中で悩んでいることや、園の抱えている課題から、自分の興味のあるテーマを選んで、リモートの研修会でもこういった研修会でございますが、熱心に参加してくださっています。現場の提案事例を聞きながら、質疑応答やグループ協議、そして、講師の先生のお話から学びを深めています。
現場の事例、それがやっぱり重要だと思いますが、幼児期の終わりまでに育ってほしい幼児の姿や、遊びの中の学びとはどういう姿なのか、具体的に捉えながら、環境の在り方や指導のポイントを押さえて、自分の保育を振り返り、改善していく研修になっています。そういったことが保育者の質の向上につながり、さらに、各園の教育の質の向上に結びついていると私は考えております。
大会のテーマや内容は、論点整理のたたき台にあります幼児教育の質に関する項目と合致していることが多いなと思っています。ただ、研修が重要であることは分かっていますが、各園の園内研修などは、もう今は若い先生がすごく多いので、発言がなかなかしにくかったり、保育の悩みが解決しにくかったりしているような状況もありますので、テーマや進め方を考えていくことがとても重要ではないかと思っています。
全幼研では昨年から3年計画で文部科学省の委託を受けて、外国人幼児等の受入れに関する研修のプログラム開発及び研修資料の作成に取り組んでいるところです。外国人幼児の受入れに当たって、多様性を受け止めて、どのようなことを配慮し指導していったらよいのか、研修のためのテキストを、映像を含めて、具体的に分かりやすくつくっています。来年には完成する予定でおりますので、各園の園内研修で御活用いただければうれしいです。園内研の進め方の参考になっていくのではないかと考えております。
幼児期は、子供が自ら環境に働きかけ、直接体験を通して、様々な力を蓄えていくことは、言葉では分かっています。では、どんな環境をつくっていけばいいのか。どのように教材を準備したらいいのか。子供の育ちをどのように関係者に発信して、理解を図るのか。この会で議論されている基本は現場の先生方の研修意欲にかかっています。しかし、研修も今までのように集合した形で行うことができず、難しい時代にありますが、そういうときだからこそ、研修が大変重要だなと思っております。
来年の本会の東京大会は、ハイブリッド型の研修にチャレンジしていきたいと思っています。ですが、まだリモート環境が十分に整っていないことや、リモートに慣れていない状況もありますので、ぜひリモート環境の整備をしていただきたいと思っております。この特別委員会が一人一人の多様な幸せの実現に向けて、現場で必要としていることは何か、今後も議論していただきますようにお願いいたします。貴重な時間ありがとうございました。
【無藤委員長】 ありがとうございました。
それでは、4番目ですけれども、全国連合小学校長会から御発表願います。
【全国連合小学校長会】 それでは、全国連合小学校長会の大字と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
今日は、小学校の現状、特徴的な取組、課題、この3点についてお話をさせていただきたいと思います。
まず、現状ですが、スタートカリキュラムについては、もうほとんどの学校がその意義、狙い等を踏まえて、定着が図られていると思ってございます。ただし、やはり学校探検を中心としたスタートカリキュラムという学校が多く、その辺りは今後の改善課題であろうと思います。
私どもが把握している、特徴的で効果がある取組について2点ほどお話をします。
1つは、オープンスクールという取組です。これはある自治体が、保育園、幼稚園の5歳児を対象に小学校教育を1年間通して体験してもらうと、そのようなプログラムを組んで、効果を上げているものでございます。年間20回の学校の経験を、5歳児の子供たちにする。このことによって、小学校の教員も幼児の理解も深まりますし、幼稚園、保育園の先生方の小学校の理解も深まる。また、子供たちが小学校に上がる上での不安等々の解消にもなるというような成果があったと聞いております。
次は教員のほうです。幼稚園、保育園、小学校の3者が一堂に会して研修会を行うという取組が成果を上げたと聞いてございます。年3回、それぞれ会場を、保育園、幼稚園、小学校と3つの場所で、実際の研究保育、研究授業を通して、研修会を行う。やはり小学校の教員は実際に保育園でどういう保育が行われているのか。幼稚園ではどういう保育が行われているのかを見たことがない、こういう教員が多いです。このような教員に対して、実際に保育を見て、お互いに語り合って理解を深める。このような研修会が効果を上げているという報告を受けております。
3点目は課題です。一つは、新型コロナウイルス感染症状況下であり、今まで当然のように行われてきた、幼保小の連携の取組が、ここ2年間、ほとんど止まってしまったというところです。これをどのように復活させ、継続していくかというのは、小学校にとっても大きな課題になってございます。
もう一点は、これは全連小の調査委員会の調査結果からですが、教育課程の編成・実施や、学校運営において特に重視していかなければならないことは何かという問いに対して、異校種間の連携、幼保、こども園、地域との連携を挙げている校長が5.7%と、全ての項目の中で最も少なくなっています。これは平成30年度に比べて半減以上、減ってございます。いろいろ理由はあるとは思いますけれども、一つは、やはり学習指導要領の全面実施に伴って、授業時数が増加し、様々な教育課題が増え、小学校自体で行わなければいけないこと、解決しなければならないことが増えているということも挙げられるかなと思います。
例えば主体的・対話的で深い学びにおける授業改善であったり、外国語活動であったり、GIGAスクールへの対応、様々な児童への対応等があり、なかなか連携する時間が取れないという状況であります。ここを何とか改善をしていく必要があるかなと、そのように考えております。
全連小からは以上です。ありがとうございました。
【無藤委員長】 ありがとうございました。
それでは、5番目でありますけれど、日本私立小学校連合会より御発表お願いいたします。
【日本私立小学校連合会】 私は日本私立小学校連合会、児玉と申します。口頭で説明させていただきたいと思っております。
私は一昨年まで、ある私立小学校の校長であり、また、附属の幼稚園の園長もしておりました。全国には、学校数で241の私立小学校がございます。そのうちの193校が本連合会に加盟しております。学校数は、もう全小学校数の中のたった1.2%にすぎませんけれども、公立校がここ10年間で2,700校、統廃合なども含めて減少している中で、私立小学校は30校近く増えております。私立小学校に対する期待と要請が高まっているものと私は感じております。
本連合会に加盟している小学校を調べますと、幼稚園を併設している学校が約75%ございます。幼小一貫教育をうたっている学校がほとんどです。同じ教育理念に基づいて幼児教育に取り組んでいるということですね。私がいた学校では、小学校は、自ら考え、自ら学び、自ら行動する、そういう子を目指そうという自主性を尊重する学校でしたが、附属の幼稚園では、気づき、考え、報道すると、こうした目標を持って、そうした子供たちを育てていこうと。教え込んだり、やらせたりすることはしないで、自ら気づくこと、そして、みんなで考えること、協力して取り組むというようなことを大切にしておりました。
幼稚園、小学校が同一敷地内にあるところが大変多くございます。ですから、幼小の交流が盛んに行われているところもたくさんございます。中には、1年生と幼稚園の年長者が一緒に遊ぶ。運動会に来てもらう。1年生の音楽、体育の授業に参加してもらう。小学校の作品展を見学してもらって、その後に工作づくりを一緒にやる。こういった合同での取組をしているところもたくさんあります。
また、私のところでは、1・2年生の生活科の授業で、幼稚園生と一緒に取り組むこともたくさんありました。焼き芋を焼くために、幼稚園生が落ち葉を集めて、燃えやすいように乾かす。1年生が幼稚園生とペアを組んで、焼き芋の準備をする。新聞紙を水で濡らして、イモをまず新聞でくるむ。そして、アルミホイルで巻く。その工程で、1年生が幼稚園生に手取り足取り教えてあげる。
2年生の生活科では、お祭りというのをやっておりましたが、自分たちがクラスごとに考えた遊びに、1年生だけじゃなくて、幼稚園生も招待して楽しませてあげる。こうした交流をする中で幼稚園生には、小学校に入ったら、今度は、あのお兄さんやお姉さんのように、幼稚園生に優しく教えてあげたいなという憧れを持つ。子供たちの入学へのモチベーションにもつながりますし、また、小学校生活への期待も膨らみます。
こうした交流がある一方、幼児教育の質に関する議論まで深く進んでいない現状もあります。ただ、1・2年生に関する共通の認識があるとすれば、それは特別支援の児童についてですね。毎年入ってくる1年生の中に、やっぱり学級経営上、問題になる可能性がある子供がいて、そして、幼稚園での発達特性のある児の情報が必要な場合がございます。幼稚園と1年生で交流をして、情報交換をする。こういう特別支援、児童一人一人の発達に欠かせない情報交換をしていくという、そういう仕組みもしっかりつくっていくことも大切ではないかなと思っております。
時間が過ぎてしまいました。申し訳ございません。以上です。
【無藤委員長】 ありがとうございました。
それでは、6番目、日本保育協会へ御発表をお願いします。
【日本保育協会】 日本保育協会保育問題検討委員会委員長の高橋でございます。このたびは発言の機会をいただきまして、ありがとうございます。特に資料はありませんので、口頭で発言をさせていただきます。
論点整理のたたき台(案)に示されております、目指す方向性において3点ほど発言をさせていただきます。
まず第1点は、目指す方向性において、社会に開かれた幼児教育カリキュラムの実現、全ての幼児のウェルビーイング、一人一人の多様な幸せを高めるカリキュラムの実現、幼児教育の質の保障の論点が示されています。就学前の乳幼児期は、親子関係、日常生活、遊び、集団を通した発達の基礎づくりの最重要時期であり、幼児教育でも注目された集団の行動の中での困難や失敗などの経験を通して養われる非認知能力、テストなどでは測定できない個人の特性による能力の醸成からも逃してはならない時期です。
また、家庭環境に最も左右されやすいために、共働きやひとり親、また、経済的困窮家庭など、様々な家庭事情や、ネグレクト等、養育実態に応じて社会的養育が必要であると思います。そうしたことからもぜひ、社会的養護の視点をさらに組み込んでいただきたいと思っております。
2点目ですけれども、子供の発達は一人一人異なるために、押し並べた目標設定ではなく、その子にふさわしい、達成感の得られるカリキュラムとしていただきたいと思います。特に自主的な取組であるアクティブラーニング等についての強化を図っていただきたいと思います。
また、文科省の21世紀出生児縦断調査で明らかなように、多様な体験が自尊感情や外向性を育むことから、可能な限り、障害のある子供との合同学習など、インクルーシブな教育環境を整えていただきたいと思います。
さらに、方向性の中に学校種や設置主体の違いを超えて、発達の段階に応じた特性の理解を深めつつ、幼児の学びや生活について、共に考える機会を確保とあります。実践例として、小学生と園児との交流体験などはありますけれども、子供だけではなくて、学校の教員の先生方についても園での体験を深めていただくような仕組みが大切かと思います。自治体や地域によって取組の温度差はあると思いますが、現在行われている保幼小連携がより深まっていくようなガイドラインも必要ではないかと考えます。
最後に少し幅広く、大きな話になりますけれども、社会に開かれた幼児教育カリキュラムの実現や、地域における幼児教育施設の役割の認識と関係機関との連携、協働などが挙げられております。私のところは、広島県の福山市というところで、人口、約46万5,000人ですが、その中に、小学校が約74か所、中学校が34か所ございます。実は各小学校区に、まちづくり推進委員会という各種団体の集まりがあります。構成メンバーとしては、各自治会、町内会、福祉を高める会、女性会、青少年育成委員協議会、民生児童委員協議会、体育会、子供会、防犯組合など、28の団体組織で構成されていまして、その中に、保育施設連絡協議会、小学校、小学校PTA、中学校、中学校PTAも参画しており、月に1回、定例会を開いてお互いの団体の情報を共有しております。
保護者も含めて、こういった地域組織団体などにもこれから幼児教育カリキュラムの在り方について認識を共有していくことも大切ではないかと思います。
以上、3点ほど意見を述べさせていただきました。ありがとうございました。
【無藤委員長】 ありがとうございました。
それでは、7番目ですけれども、全国保育協議会から御発表をお願いいたします。
【全国保育協議会】 全国保育協議会の伊藤でございます。今日はありがとうございます。私からは実践事例を通して少しお話しさせていただくことと、今後、必要と感じていることをお話しさせていただきます。画面共有させていただきます。
まず、ここに出ているのは年長児の私の園の実際の事例ですが、年長時の園外保育、対話でつむぐ行事へということで、園外保育を見直した話をさせていただきます。今、全国の保育園、認定こども園等で子ども主体の保育にするにはどうしたらいいかを考え、一生懸命変えていっています、保育を見直していっています。その一環で、私の園も見直しました。
園外保育として決められた場所に行く。私の園は広島市にあるので、広島駅に毎年見学に行くという園外保育を実施していました。しかし、園内で話し合っていく中で、いや、そこに行きたくない子はいないのかとか、主体的・対話的にもっと深い学びにするにはどうしたらいいのかとか、保育所保育指針や幼保連携型認定こども園教育・保育要領に示された「10の姿」を意識した活動をするにはどうしたらいいのかということで、この行事を見直そうということになりました。保育者が考える行事から、子どもが主体的に考え、取り組むような行事へと変えていこうということになりました。
まず、自分たちで行き先を考え、自分たちでつくる行事へということで、子どもたちに、1日で行ける場所、みんなで楽しめる場所、1か所だけという条件で、自分たちで遠足をやってみないかということを提案しました。子どもたちが、ふだんから行っているミーティングですが、どこがいいのだろうということでミーティングを一生懸命重ねていきます。最初は、ディズニーランドとかUSJとか突拍子もないことが出てきますが、そこは1日で行けるのかどうかということを子どもたちが考えながら、行き先を狭めていきました。グループでミーティングをし、さらにはそれをみんなにプレゼンで伝え、最終的に一つの場所(動物園)へとつなげていきました。
下の写真ですが、これは当日の動きの話合いです。行き場所が決まったら、今度は自分たちで、グループで、私たちはどこを見ようとか、どの動物を見ようとか、どこに行こうとかということを一生懸命話し合っています。コロナ禍でいろんな思いが違うので、葛藤がありました。その葛藤の中で友達の意見を聞くことなどいろいろ学びながら園外保育を組み立てていきました。
これは当日の様子です。左上は、グループでの行動の様子です。もちろんそこに職員が1人つきますが、その中でもやはり自分たちが考えて行動する。さらには、グループに1台ずつスマホを持たせて、その日に感動したこと、気づいたことを写真に撮ります。右の写真はそれをドキュメンテーションで保護者に伝えていきました。この写真を絶対、お父さん、お母さんに伝えたい。これはみんなに伝えたいと思いを子どもたちが出してきました。
これらの活動で学んだこととして、やはり友達との対話を通して、場所を決めていくことで、ほかの人の話を聞くことや、友達の思いを受け取ること、それを伝えること、そうしたことを学びました。また、「10の姿」で言えば、言葉による伝え合いですとか、協同性、自立心など多くの学びがあったと思っています。
この活動のために大切だと感じていることは、まず1つ目、積み重ねです。単に5歳だから、この活動をするということではなく、やはり保育園でしたら0歳からの積み重ね、これがやはり一番大事だと思います。
それと2番目、先ほどからも話があったと思いますが、保育を見直す環境、保育を自分たちで自己評価しながら、それをブラッシュアップしていく。その環境が大事だということです。3番目として、やはり子どもを1人の人として尊重すること。子どもだからできないとかいうのではなくて、そういう思い込みをするのではなく、子どもの力を信じること。これが大事だと思っています。
最後に、今後必要だと考えることですけれども、まずプログラムを実行する環境です。単にカリキュラムがあればいいのではなく、そのカリキュラムを実行する環境が大切だと考えております。特に、これはこの委員会の話の中では無理かもしれませんけど、配置基準や、ノンコンタクトタイムなど、そういうことも必要だと思います。
それとスタートカリキュラムの充実です。スタートカリキュラムは始まっていますけれども、地方、学校によってかなり違います。単に、場所に慣れるカリキュラムから、本当に学びをつなごうというカリキュラムまで幅が広いです。
それと3つ目として、やはり学校の先生や保護者の、就学前教育の遊びを通して学ぶということに対する理解促進です。小学校の先生でも理解がまだまだ浸透しておらず、こんなことをしてくれということを言われます。保護者からも同様のことを言われます。それが保育所保育指針や、幼保連携型認定こども園教育・保育教育要領に載ってない早期教育へのプレッシャーになって、そのまま走ってしまう保育園、認定こども園、幼稚園も多いのではないかと思っています。その辺の理解を一層進めてもらいたいと思っています。
時間が過ぎてすみません。以上でございます。
【無藤委員長】 ありがとうございました。それでは、8番目ですけれども、全国私立保育連盟より御発表お願いいたします。
【全国私立保育連盟】 失礼いたします。全国私立保育連盟、山口でございます。本日はお時間ありがとうございます。今回は団体としての取組を中心にお話しさせていただきたいと思っております。
全私保連の活動の一つとして、保育運動があります。保護者や地域社会に子供の育ちを支えることの重要性を伝えていくということです。全ての子供、全ての大人で支えていく社会、この社会の実現を目指しております。この運動で、今年から新たに、新しい時代は子供から、子供の今が未来をつくるというテーマでスタートしました。子育てに関わっている方はもちろん、全く子育てに関わっていない方、なかなか関わることができない方も、ぜひ子供の育ちとはどういうものなのかを知っていただきたいと思っております。
その発信の中に7つのメッセージを込めさせていただいております。子供の思いを受け止める、子供の遊びを守る、子供自身に乗り越える力を育てる、子供の「自分でやりたい」を大切にする、子供同士の関わりが大切、みんなで食べるとおいしい、子供たちは自然が大好き、このメッセージを社会に向けて、どんどん発信していこうと考えております。そうした中で、今議論されている皆様の御意見や御協議から、遊びを通して学ぶ、この幼児教育の価値が社会に十分認識されていない現状が改めてはっきりと見えてきました。
幼児期の終わりまでに育ってほしい、この姿は決して到達目標ではなく、子供の育ちの通過点という考え方ですね。この御意見そのとおりだと考えております。
保育団体として、ゼロ歳からの育ちの中、5歳児の姿だけを縦割りにして考えるのではなく、5歳になったから急に育っていくというものでもなく、その姿を見据えた0歳からの保育、子育ての重要性を少しお知らせしたいと思っております。
子供は、誕生の瞬間から主体性を持っております。そこから始まる大人との関わりの中で、一番大切にしたいと思うことは、応答的人間関係です。子供が、「ねえねえ」とか、どうしてという問いかけに、きちんと大人が「なあに? どうしたの?」と答えられているかどうかです。この応答的人間関係がきちんとつくられていることが、子供の権利、すなわち主体性を尊重するということになり、それが自立心へと育っていくのではないでしょうかと考えております。
また、子供がその気になる、すなわち子供が自ら選択することを育む保育が、個々の自立へとつながり、この乳児期の大人との関係性が、幼児期に育ってほしい姿にも影響し、それにより、成長に伴い、格差も表れるのではないかなということも懸念しております。このような子供の権利を実現するためには、幾つかの3点の条件が必要だなとは思っておりますけれども、保育士の十分な確保です。それから、保育、保育士の質の向上、それとあと、時間的余裕を持つための手厚い職員配置、これらの早期設備対応を願っているところでございます。
保育の質に向けた研修の話ですけれども、やはり質を上げていかなければいけないということは、皆さん、考えていらっしゃることだと思います。子供たちが遊べなくなったのではなく、遊び方を知らない大人が増えているのではないでしょうか。遊べる保育士として、質の向上を図り、与えられる指示や道具、刺激などからの自動的な遊びだけではなく、自分から取り組める、能動的な遊びが楽しめる、遊ぶ力を子供たち自身にしっかりと育てていきたいなと思います。新しい気づきや発見により、大人にも必要とされる、五感を通じて感じる主体性を私たちも身につけていく研修を計画していきたいと考えております。
最後に、保育指導要録のことですけれども、小学校においての参考資料として、子供がどのように育ちをしてきたか、どのような育ちをしてきたか。また、今どのような姿であるかなどを最後、担任は一生懸命考えて記しております。小学校の先生方に伝わるように、本当に具体的な言葉で書くようにしております。
小学校の指導につながる配慮事項についても、幼児期の終わりまでに育てたい姿を踏まえて、保育士が意識してきた援助の家庭と育ちが表れた子供の姿を分かりやすく書いていると思います。ぜひ御熟読いただき、個々の子供の受入れ方、そして、接し方を考えていただきたいなと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。ありがとうございました。
【無藤委員長】 ありがとうございました。
それでは、9番目です。全国認定こども園協会より御発表お願いいたします。
【全国認定こども園協会】 全国認定こども園協会の副代表、王寺でございます。このたびは口頭での意見を述べさせていただく機会をいただき、ありがとうございます。
私のほうからは、特別委員会を傍聴させていただきまして、幾つかいろいろ疑問に感じたことなどを中心に、意見を述べさせていただきます。
1点目、この特別委員会で議論されている乳幼児教育の意義は深く理解し、意義深く受け止めています。また、小学校との連携の取組など、先進的に取り組まれているところもあり、感銘を受けています。
ただ、最初の議題の説明において、ゼロ歳児から18歳までの子供の育ちをどのように考えるのかという大きな視点と、小学校との連携とが議論の中で混在していて、分かりにくく見えていますので、ぜひ整理をして伝えていただきたいなと思います。
2点目、小学校との連携プログラム、スタートカリキュラムについて、当協会の会員に、各自治体、どのような状況なのか問合せをしたところ、なかなか各自治体の教育委員会をはじめ、小学校側もやらなければならないと感じながらも、具体的に取り組めていない現状がありました。今後、モデル事業を展開して取り組まれるということでありますが、全国、どれぐらいの規模で行い、また、認定こども園制度のときのように、モデル事業の後に、この接続の取組を全国的に運用していくのか。今後の見通しを示していただきたく思います。
3点目、この特別委員会で議論されていることは各地に設置されようとしている幼児教育センターの事業が担わなければならない点があると思います。この幼児教育センターの役割についても、ある程度、国で基準を示していただき、乳幼児教育についての社会認識を正しく広く啓発してほしいと考えます。
最後に、委員会の方々の御意見もあるように、教育保育要領をはじめ、幼稚園教育要領や保育所指針が、この国のナショナルスタンダードであるという位置づけをはっきりと示すことも必要ではないかと思います。
私のほうからは以上です。
【無藤委員長】 ありがとうございました。
それでは、10番目に、全国認定こども園連絡協議会よりこ発表お願いします。
【全国認定こども園連絡協議会】 ありがとうございます。一般社団法人全国認定こども園連絡協議会、会長の木村でございます。資料の共有、ありがとうございます。我々として、認定こども園という立場から、その特色なども考えながら発言をさせていただければと思いますし、特に、御配慮いただければというような内容を5点書かせていただきました。
まずは幼児教育の遊びということの共通認識、理解が重要かと思っています。子供たちは豊かな環境の中で、五感を最大限発揮しながら、その後の人生の基礎となるべく、探究心や気づき、思いやりといったものが培われていきます。これが小学校以降の教育である、主体的・対話的で深い学びと連動するものだと思っていますので、しっかりと幼児教育の遊びというところを理解しながら、その後の切れ目のない育ち、学びということをつくり上げていく必要があるだろうと思っています。
そのほか、幼稚園、保育所、小学校の架け橋プログラムですが、様々な多様な子供たちがいます。その多様な子供たちが自分らしさを発揮できるように、個別のプログラムというものが必要だと思いますし、その個別のプログラムが全体を包括しているというようなことも必要であろうと思っています。また、この認定こども園は、0歳から就学前の子供たち、家庭環境も様々であったり、就労していたり、また、成育歴にも様々な違いもあります。そういった意味においては、このプログラムの作成において、福祉機関ですとか、病院などの御意見もいただきながら作成していくということも必要ではないかと考えております。
また、そのプログラムを実際に運用していくためには、教職員の資質能力というところの構造も図っていかなければならないと思っております。そのためには養成校のときから、こういったカリキュラムについても学んでいくというような機会の確保、また、意識改革ということも必要だと思っております。
さらには、進めるためには推進体制ということが必要になってきます。現在もプログラムがある市町村と、ない市町村、また、ある市町村によっては積極的であるが、それ以外のところにおいてはかなり消極的であるなど、認定こども園というのは、1号認定の子供から、2号、3号と、広範囲のエリアから通ってくる子供たちもいますし、また、その子たちが卒園すると、それぞれ多様な小学校に行くというような状況の中で、温度差がかなり市町村によってはあるというようなところから、全国、どこにおいても、全ての子供たちが最善の利益を保障される、そういったプログラムでなければならないと思いますし、そのような体制づくりというものもしていかなければならないと思っています。
また、それを進めるためには、まずは学校、幼稚園、認定こども園、保育所等のそれぞれが交流して、日常的にいろんなやり取りができたり、参観ができたり、意見交換ができたりというような体制づくりが必要だと思っております。認定こども園という立場から、様々配慮しなくてはいけないことがたくさんあるかと思いますので、作成に当たっては、御配慮いただきますよう、よろしくお願いいたします。
以上です。ありがとうございました。
【無藤委員長】 ありがとうございました。
それでは、最後ですけれど、認定こども園連盟、御発表をお願いいたします。
【認定こども園連盟】 全国認定こども園連盟の小笠原です。当連盟といたしましては、この架け橋特別委員会には賛同しております。
しかし、要望として3つあります。
1つは、小学校とのギャップはそれなりに感じてはいますが、幼児教育改革の背景について御提示いただければ、保護者の方々も含めてより理解が深まるのではないかと思います。
2つ目に、第3回の委員会で、0歳から18歳までの学校の学びの連続性が記載されていましたが、これに至る背景の説明もあると助かります。
3つ目に、一般の小学校の先生が感じる壁というのを聞いたことはありません。教師はどう感じているのかも知りたいものです。
さて、私どもの連盟としての共通認識を申し上げますと、幼児教育の終わりまでに育ってほしい姿を到達目標にするべきではないことは、教育要領の作成時において私たちの間では何度も確認されたことです。それは、育ってほしい姿の語尾の部分の全てに、何々するようになるの活字から十分うかがい知ることができます。
ところが、この要領の中には、育ってほしい姿の前文に、認定こども園法第9条の教育及び保育の目標が掲げられておりますが、内容は健康、人間関係を含めた5領域です。この5領域に目標を達成するよう保育を行うものとすると記述されているのです。
したがいまして、関係者の多くは第9条の保育目標が前提にあって、それから育ってほしい姿が列記されていることで、いわゆる二重基準と申しますか、ダブルスタンダードが存在するかのような印象を抱いています。この2つの関係性をどう理解していくかが難しいわけです。
すなわち、保育目標を達成するよう保育を行うものとすると書いてありながら、育ってほしい姿では到達目標にならないようにというのは、どういう意味なのかという迷いです。私なりに保育目標を解釈いたしますと、内容は子供の資質、能力です。これを現場で評価するときに、達成できたかどうか、あるいは何をもってこれを判断するのかということは極めて難しいわけです。なぜなら、資質、能力は可視化できないわけです。
そこで可視化できるようにしたのが育ってほしい姿だと酌み取ったのです。逆に言えば、可視化できる「育ってほしい姿」に迫ることによって、保育目標が達成される。あるいは目標が生かされることになると、私はそのように捉えています。
それから、保育目標の文脈から察しますと、主語は保育教諭です。一方、育ってほしい姿の主語は子供です。ここに大きな違いがあることに気づきました。ということは、これからは保育教諭が何を教えたらよいのかという教育保育の内容に力点を置くのではなく、子供の自発的経験を主体にして、資質、能力をどう引き出していくのかという視点に変わるべきだと理解します。
育ってほしい姿の約9割は非認知能力ですから、一見して抽象的に映りますが、今後は園も小学校も教師に求める正解ではなく、遊びを通して子供の捉えた理解は多様である、このような認識への転換と寛容さが求められると感じています。
最後に、小学校では、教育委員会の下で同じ教科書を使い、テストという結果評価を重視しております。一方、全国の園や施設では子供が遊びにどう関わったのかというプロセス評価を大事にしているとはいうものの、実態は千差万別であると言えるほど内容も方法も違います。ですから、この違いが入学後の学習態度に差が出て、影響しているものと察しています。
今、小学校ではアクティブラーニングの取組によって、学校知から経験知に移行し、遊びの総合性が順次進められていると聞き及んでおります。全国の園で多様性のある理解や遊びの総合性への取組は、地域によって偏在があり、幼児期において経験から学ぶ力への転換を図るには、社会全般に敷衍して論じることが必要ではないかと考えます。以上でございます。
【無藤委員長】 ありがとうございました。以上、11団体から御発言をいただきました。
それでは、そのヒアリングを踏まえまして、50分程度がございますので、そこで質疑応答、意見の交換をお願いしたいと思いますけれども、そこでの質疑応答、意見交換は、11の団体のヒアリングそのものとともに、最初にワーキンググループのほうの議論、まだ第1回で本当に深いところに行っていませんけれども、の要点とか、あるいは全体としてこれまで議論してきたことなどなどを含めて結構ですけれども、お願いしたいと思いますが、いつものとおりですけれど、お一人2分以内という短い時間ですけれども、お願いします。
また、御発言の御希望につきましては、これもいつもどおりですが、手を挙げるボタンというのがありますので、そこを押していただきます。そして、押していただいた方、私どももメモしますけれども、ちょっと画面上一望できない場合があるので、事務局で控えていただくようにお願いしてございます。
そして、名簿の順番、挙手していただいた方の中から、名簿の順番ということを基本にして指名させていただくということで、もし質問などあったら、質問された方に御発言いただいたりもします。そして、指名されたときにミュートを解除していただいて、御発言していただく。そして、その発言が終わりましたら、手を下げるボタンがありますので、挙手を取り下げていただくということにお願いしたいと思います。
希望いただいた方全員に御発言していただけると思いますけれども、残った時間でまた按配したいというふうに思いますので、御協力のほどよろしくお願いします。
それでは、どなたからでも結構ですけれども、いかがでしょうか。挙手をお願いしたいと思います。荒瀬委員、お願いいたします。
【荒瀬委員】 ありがとうございます。教職員支援機構の荒瀬でございます。11団体の皆さん、貴重な御意見、御指摘あるいは御説明ありがとうございました。
全連小の大字会長に御質問させていただきたいと思います。オープンスクールのお話をなされまして、子供たちも、あるいは小学校の先生もお互いに理解が深まって大変よいということでありました。
ある県で年間20回の取組が行われているというので、本当すごいなと思いました。これ時間が限られた中で御説明なかなかしていただきにくいかもしれませんが、具体的にどういった形でやっておられるのか、もう少し御説明いただきたいというのと、これが広がっていく可能性、あるいは広げようとしていらっしゃるような学校が、あるいは県があるのかどうかといったようなことを御説明いただければ幸いです。以上です。
【無藤委員長】 それでは、全連小の大字先生、いかがでしょうか。お願いします。
【全国連合小学校長会】 荒瀬先生、ありがとうございます。これは長野県ではなく、ある自治体ということでお話をさせていただきましたので、よろしくお願いいたします。
これ、20回をそれぞれ、例えば学校に慣れるであるとか、授業を体験するとか、実際の学校探検をしたり、実技を受けたり、座って受ける国語や算数、そういったもの、また給食の体験をする、行事を一緒にという学校の様々な教育活動を20回に分けて、大体1回1時間程度で行う、このようなカリキュラムを自治体全体で実施をしたという、そういう報告を受けているところです。
これ、なかなかその当時、非常に取り上げられた取組ですけれども、今、小学校の教育活動、先ほどお話ししましたけれども、かなりカリキュラムがオーバーロールしてきていますので、今これが広がるかどうかというのは非常に難しいところかなと、そのようにも感じております。
以上です。
【荒瀬委員】 ありがとうございました。
【無藤委員長】 ありがとうございました。詳細がもし資料あるなら事務局にお送りいただくとありがたいと思います。
それでは、ほかの方いかがでしょうか。中井澤委員、お願いします。
【中井澤委員】 一般社団法人ひととの中井澤です。私から質疑というか、御意見をお伺いしたいと思います。
安達先生からあった「一見すると短所のようで」というところのオリンピック選手のお話があったと思いますが、これ評価という観点からいうと、アウトプット評価とアウトカム評価の話になるのかなと私は感じました。アウトプット評価とアウトカム評価、簡単に言うと、アウトプット評価というのは何をやったかということに関する評価のことで、アウトカム評価っていうのは、アウトプットの結果どのような成果があったかというところの評価のことで、例えば、アウトプットの例でいうと、授業で算数の掛け算を教えた、アウトプットがあったとして、アウトカム、児童が掛け算を習得した結果、掛け算を利用して日常の中で計算ができるようになったみたいな形になります。
この教育ということを考えるにおいて、このアウトカムの評価のほうが可視化しづらいというところが、この評価の難しさの肝かなというふうに思っていて、この育ってほしい10の姿みたいなのも、こっちのアウトカムの評価のところに分類されるのかなと感じています。
例えばですけど、育ってほしい10の姿というのは、果物の例でいうと、かんきつ類みたいな感じなのかなと思っていて、かんきつ類は育てられないけど、グレープフルーツとかオレンジが育てられるというところと同じで、現場においては、かんきつ類という、育ってほしい10の姿というところでとどまらずに、具体的に落とし込んでいく作業が必要となるのかなというふうに私は感じました。
一見すると短所のようでというところでは、これ後々何がどうつながるのかというのは結局、教育においては分からないので、遊びとか体験において、アウトプットとして点をどのように残していくかというところが重要なのかなというふうに感じています。質が高いというときに、アウトプットの質なのか、アウトカムの質なのか、どっちの「質が高い」を意味しているのかなというところで、これは行政と現場の乖離が結構見られるなということを今回の11団体の方々の話を聞いて感じたところで、アウトプットのほうは現場がイニシアチブを取る、アウトカムのほうは行政がイニシアチブを取るというふうに、ある程度役割を明確にしないと、ちょっと政策を執行するという上では、ちぐはぐさが出てくるのかというふうに今回思いました。というところで、意見とさせていただきます。
【無藤委員長】 全般的に意見はしっかり受け止めて、安達先生、言及ございましたら、いかがでしょうか。
【全日本私立幼稚園連合会】 ありがとうございます。本当に自分の反省を踏まえて、短所として見ていましたが、結局それぞれの凸凹というのは必ずどの人もあって、アウトカム、アウトプットの前に、乳幼児期においてその子がその子らしくあるということをお互い認め合うということが、結果としてアウトカムにつながるということなのかなと思います。
特別支援も含めて、その子がそこにいることに価値があると思うので、それが結局研修につながりますけども、一人一人は自分のクラスの担当の子を何とかしようと思うのですけども、この子のよさに気づくのは、園内のドウリョウセイや対話ということが必要なのかなということで、それとセットの研修がああいう仕組みが必要かなということでちょっと意見をさせていただきまして、ありがとうございました。
【無藤委員長】 ありがとうございました。それでは、次の曽木委員、お願いします。
【曽木委員】 各団体の皆様、すばらしい多面的なご意見ありがとうございました。その中でも、就学前の乳幼児期は社会的養護の視点や発達でも大きな問題を抱えているお子さんや家庭がいます。そういった子供たちへの視点や家庭を大事にしながら、誰も取り残されないよう、これからも考えていきたいなと感じましたし、また、本当の意味の幼児教育の大事さを社会や地域に発信していくことの意義、大事さを改めて感じさせていただきました。
また、大事な幼児教育について、いろいろな実践を通してお話しいただきありがとうございました。
今回、保育所ならではの環境についてお話しさせていただきますと、11時間から13時間、またそれ以上の開所をしている、長時間の中で保育環境を工夫しています。環境の中で、人的環境が一番重要になってくると思っております。ですので、特に職員育成に力を入れているところではございますが、この長時間保育の開所のため、最長8時間勤務の職員でもシフトを組んでいっている関係で、振替の時間や研修、話合いの時間や環境設定の時間を取ることに工夫が求められる現状がございます。
また、夕方の時間を含め、養護と教育を一体にというところで、生き生きと活動できる場とくつろげる場の両方必要になり、保育所ならではでございますが、いろいろと工夫が必要になってくると改めて感じております。私からは以上になります。皆様ありがとうございました。
【無藤委員長】 ありがとうございます。前に出てきた言い方を使えば、プロセスの質に対して構造の質、特におっしゃったのは時間ですけれども、すごく密接に関わるというのはオブザーバーの方も御指摘のところですね。心に大きくとめたいと思います。
ほかにはいかがですか。中山委員、お願いします。
【中山委員】 ありがとうございます。それぞれの団体の皆さんの貴重なお話、とてもよかったです。いいプログラムがきっとできると思います。
ただ、絵に描いた餅にしたくないというのは、皆さん同じようにお考えだと思います。その点で、先ほど伊藤さんでしたかね。最後で、親と、それから小学校の先生との連携についてお話しされて、親と我々施設が協働できる関係をつくるということが非常に大事かなというふうに思います。
それは、その親たちが真っ当な幼児教育を理解した上で、子供たちと一緒に小学校に上がったときに、小学校の先生たちとその親たちがいい関係をつくっていってくれて、結果的に小学校教育の改善にもつながるのではないのかなというふうに思います。時間があればすごく面白い話があるのですけど、ちょっと時間がないのでエピソードは言えませんけど、うちの卒園した親たちがいろいろ小学校の先生とやり取りした話があるんですが、今日は時間の都合でできませんけど、そういうことがあると思います。
その一方で、小学校の先生たちの言動が、おっしゃることが、幼児教育を受けさせている親たちに物すごい影響があるということも事実です。これ実際に今でもいらっしゃいますけども、遊びを中心とした保育をはっきり否定される小学校の先生もいます。本当に残念ながらいらっしゃいます。
そうすると、親たちは、遊んでいる幼稚園は、こども園は、保育園は駄目なんじゃないとかいうふうになっていきがちです。そうすると、どうしても園児募集に関わらざるを得ない民間の幼稚園等では非常に苦しい立場に置かれるわけなので、ぜひ親たちと協働的な関係をつくりながら、同時並行として小学校の先生たちとこのプログラムを共有していく。あるいは、既にできているアプローチカリキュラム、スタートカリキュラムも、定期的に中身のあるカリキュラムマネジメントしていくといいますか、そういったことを一緒にやっていかないと、幼児教育と小学校教育を一体的に質向上させるということにならないので、本当にぜひ絵に描いた餅にしたくないということでお話しさせていただきました。ありがとうございます。
【無藤委員長】 ありがとうございました。
それでは、ほかの方いかがですか。二宮委員、お願いします。
【二宮委員】 NHKの二宮です。皆さん今日は本当に貴重なお話ありがとうございました。幼児教育への理解を一歩進めることができました。ありがとうございます。
どなたでも構わないですが、一つ質問があります。今コロナ禍で、特に家庭との連絡とか、保護者の方々に見に来ていただくとかというのがなかなか困難な状況にあると思います。家庭との連携、協力が大切というお話をお伺いする中で、今、家庭に対して、園の狙いとか、遊びを通じた学びの重要性だとかをどう伝えているのか。平常であれば日々のお迎えなどの中で伝えていけるとも思いますが、今は、例えばメールやLINEなど、いわゆるICTを使った形、SNSを使った形での家庭との連携を工夫なさっている園、もしくは先生がいらっしゃれば、お伺いできればなと思います。
【無藤委員長】 ありがとうございます。幼稚園、保育園、認定こども園の現場、何人もいらっしゃいますが、いかがですか。委員の方でも、オブザーバーの方でも。多分多くはないけど、必ず皆さんどっかでなさっているとは推察はしますけど。
じゃ、安達先生、お願いします。
【全日本私立幼稚園連合会】 コロナ禍でZoomとかそういうことの活用は進んでいまして、実際、現在も個人懇談なんかで、下のちっちゃなお子さん抱えていらっしゃる方はZoomの希望の方があったり、あと、そういう配信のシステムがあるので、動画とかで、例えばクラス懇談たくさん時間を取ってしたいのですけども、最初にいつも担任がスライドを使って子供の様子を伝える部分は、先に動画を撮って配信しておいて、実際に対面でしかできない保護者同士の悩みやそういうことの共有みたいなことは進んでいるかと思います。
あと、さっき出させていただいたポートフォリオとか、そういうのも、1人が全部一から作るのはなかなか大変なので、今はグーグルドライブに入れて、ハッシュタグをつけて検索をすれば、先輩のを参考にしながら、今までは材料を買うから味つけから全部1人で作れみたいなところから、先輩のレシピを参考にしながらということで、専門性を高める時間も必要なんですけども、そういうICTで大分省力化できているようなところはあるのかなと。
あと、研修はかなり各団体ともオンライン化が進んでいるので、これは今後も進んでいくのではないかなというふうに考えています。すいません、以上です。
【無藤委員長】 ありがとうございます。
皆さん方、ぜひということがあればあれですけど、ちょっと私のほうで、すいません、時間の関係でまとめちゃうと、二宮委員の御指摘のようなICTの活用、かなり特にこの1年半進んできたと思いますが、地域差、あるいは自治体差とか、園による差、これ極めて大きいという気がいたします。
リモートなどの研修に私、関わりますけれども、本当に自在になさっているところもありますが、なかなか園としてつなぐことすら大変というところもまだあるようです。保護者とのやり取りもほぼICT化しているところもあると思いますが、まだまだそこは難しい。その辺の行政的な支援をどうするかなども多分課題だと思います。
すいません。まとめちゃいました。ありがとうございました。
それでは、次の方、いかがですか。平川委員、お願いします。
【平川委員】 ありがとうございます。広島県教育委員会教育長の平川でございます。皆様からのいろんなお話を伺わせていただいて、目指す方向性や研修が大事ということはあるのですけど、実際これをどう実現していくのかというところが疑問になってくると思っております。そのために、自治体や我々教育委員会とか、本県には乳幼児支援センターがございますけれども、こういったところの役割もしっかり考えていかなければいけないなと思いました。
質問と意見と両方あります。研修でいいますと、初任者研修などの法定研修がありますので、これを活用して、小学校の先生が幼保、それからこども園に見学に行かせていただくとかということもあったりすると思いますが、先日、福井県の教育長さんとお話をしておりまして、福井県の場合は、園にカウンセラー、児童心理学等を学んでいらっしゃる方が行って、発達に特性のあるお子さんとか、そうでない方、子供の様子を見て、そこに小学校と、園の方もいらっしゃって、専門的な立場から「こういう見方がありますよ」ということを教えていただく。私も中学校の校長をしているときは空き時間に教室にカウンセラーと一緒に行って、「これはこのように見たらいいですよ」ということを教えていただいて、非常に勉強になったというような経験があります。つまり、大人だけが集まっても結局駄目で、子供を主体にして、この子が何年か後にうちの小学校に来るという、そういう切迫感がないと、なかなか連携が絵空事というか、具体性に欠けるような話になってしまうのではないかというふうに危惧しております。
子供を主体にして、この子について、小学校と園、幼保、こども園が一緒になって考えていくというようにやる、こういう研修のスタイルがあるといいと思います。例えば、お話の中で高橋先生とか伊藤先生がちょっとそういうことを触れていらっしゃるんじゃないかと思ったのですが、それについてどのようにお感じになられたかということを御意見としていただければありがたいと思っております。以上です。
【無藤委員長】 高橋先生、伊藤先生いかがですか。じゃ、伊藤先生、お願いします。
【全国保育協議会】 本当におっしゃるとおりで、今も確かに小学校と園と交流あるんですけれども、圧倒的に時間が少ない。これ原因としたら、学校の先生が忙し過ぎるというのはもちろんある。園も忙しいんですけれども、それ以上に学校の先生が来るのがはっきり言って困難だということがあるので、その辺もしっかり仕組みとして、しっかり交流ができる、子供のことを語れるという、さっき言われたように心理の先生が入って語れる時間をつくっていただけたら本当ありがたいと思います。よろしくお願いいたします。
【無藤委員長】 高橋先生、いかがでしょうか。
【日本保育協会】 平川教育長おっしゃるとおりで、広島県の人間ばっかり発言していますが、おっしゃるとおりで、今、伊藤さんおっしゃったとおりでございますし、まさにこのコロナ禍で、今までできていたようなことも学校との接点がほとんどなくなってしまいましたので、非常に難しいということと、探険活動みたいなことの域を出ないという、皆さんおっしゃっていたとおりで、ここはもうちょっと深めていくような活動にあるべきだと思います。以上でございます。
【無藤委員長】 ありがとうございます。安達先生の大阪府の試みはまさにそういう。
【全日本私立幼稚園連合会】 そうですね。大阪府は大阪の臨床心理士協会の方々と、約100名のカウンセラーの方が行かれています。
実は今日、うち、入園の手続しているところですけども、そういう面接するときにもカウンセラーの方が来られたり、それと、小学校との連携も、抽象的な話よりも、この子のどういうふうな、取扱説明書じゃないですけど、この子がこうなったときはこうしてあげてくださいというようなことを、カウンセラーの方々ともに、1人の子供の育ちとともにつないでいくほうが、何か担当した方々、1年生の先生方なんか幼児期のことを理解進みますので、そういう方に入ってきていただくのはすごく大事なことで、これも行政からぜひそういうことのサポートをいただけるとありがたいなと思っています。以上です。
【無藤委員長】 ありがとうございました。
それでは、次の方にお願いしたいと思います。いかがでしょうか。宮下委員、お願いします。
【宮下委員】 よろしくお願いします。静岡豊田幼稚園の宮下です。今、各団体よりお話をいただきましたけれども、その根本に流れている思いは、どこの団体も同じだということをとても感じました。
その中で、研修体制、協力のことについて、各団体から幼保小の合同研修会というものが非常に有効というお話がございました。私は本当にそうだなと思っておりまして、これに加えて、私は以前から、教員が学校種を超えて、交換して実地研修をするということもぜひ進めてほしいと思っているわけですけれども、そういうことを実現していくためには、園とか学校の単位でそういうことをしていくのは非常に難しいことだと思います。
各市の教育委員会や学校長会と幼稚園、認定こども園、保育所の連合会、協会との連携協力というのが不可欠だと思っております。こういう仕組みづくりができていくと、今度は園と小学校同士で交流をどんどん進めていくことができたりとか、参観も気軽にできたりというような、接続の取組が進んでいくのではないと思っております。
それからもう一つ、主体的・対話的で深い学びの実現ということは、幼稚園も小学校も両方大事にしていることですけれども、このことについて、具体的な実践を通して、幼稚園と小学校の先生が協議をし合う機会というのはまだまだ少ないように感じています。学ぶ主体は子供ですので、これを進めていくことによって、その子供の学びの連続性ということにもつながっていって、それが更に、保育の改善とか授業の改善につながっていくと思っておりますので、こういう機会もぜひこれから必要になっていくのではないかと思います。
また、幼稚園は保育の記録ということをとても大事にしていて、それを通して子供の思いや育ちを捉えて、次の保育に生かしております。もちろん小学校でも記録は大事にされているとは思いますけれども、この記録を活用して、より深い学びにつなげていくということも、これからより進められていくといいのではと考えております。以上です。
【無藤委員長】 ありがとうございました。
それでは、次の委員、お願いいたします。神長委員、お願いします。
【神長委員】 大阪総合保育大学の神長です。よろしくお願いいたします。皆さんの御意見とちょっと重なるところもございますが、意見発表をお伺いしていて、このプログラムを、開発も含めて普及、また、それをよりよいものにしていくためには、研修や教職員の資質向上というのは欠かせないと思います。
そのときに2つの視点といいますか、1つは、園内研修を活性化していく仕組み、また、こういうプログラムを受け止めながら、園のカリキュラム改善につなげていき、定着していく仕組みをつくっていくことが大事だと思いますが、園内研修って本当にいろいろでして、100園あったら100通りだって言われるくらい、それぞれの進め方が異なります。例えば、キーパーソンというお話がありましたけれども、外から入って活性化していく場合もありますし、中にいるミドルリーダーの方が力をつけて、いつの間にか保育が変わったねという、その両方もあるわけですね。
これから普及していくとか、また、それをよりよいものにしていくということを考えると、そういったキーパーソンをいかに育てていくかという視点も大事だと思います。今、既にそういうキーパーソンがいる地域は限られているわけですので、外からのキーパーソンもそうですけれども、中からのリーダーを育てていくということが大事かなということを思います。
2つ目は、合同研修の方法の工夫改善です。幼児教育推進体制について皆さんがお話しなさってきていることと関連しますが、その体制をつくっていくということが必要です。特にこういったカリキュラムの場合には、幼保小の学校段階とか施設の壁を越えながら研修していくということが必要です。今も合同研修はたくさんされていますが、それを改善していく仕組みが必要と思っています。プログラム開発の検討チームの中に出された資料の栃木県の例ですけど、すいません、ちょっとだけ話させてください。
いわゆる研修時間が非常に少ないけれども、子供のことを語ろうという形で、幼保小の先生方1人ずつペアで、自分の小学校区の子供たちを、幼小の子供たちを1年間通して見て、育ちをまとめています。研修時間は二人の時間に合わせて不定期に取れますし、最終的にそれを県の幼児教育センターの全体研修で発表していくということもいろいろな子どもの見方に触れ面白いです。実情に合わせて合同研修の進め方を工夫していくという視点が必要かなと思いました。
【無藤委員長】 ありがとうございました。それでは、ほかの方いかがですか。
【橋田幼児教育企画官】 今の時点で6名の方が手を挙げております。岡林委員、久保山委員、鈴木委員、堀田委員、溝上委員、渡邉委員が手を挙げておられます。
【無藤委員長】 じゃ、今の順番でお願いします。岡林委員、お願いいたします。
【岡林委員】 発表していただいた団体の皆様、本当に今日はありがとうございました。大変勉強になりました。皆さんのお話を聞きながら、これまで御発言いただいたものと重なる部分もあるかもしれませんが、この取組がそこに住む子供たちの未来に向けて、生きる力につながるためには、各地域の実情に応じた取組が重要であると思いました。
幼稚園等と小学校教職員がともに、その地域の子供たちのよさや今後に向けた課題を洗い出して、同じ方向に向けて取り組んでいくこと、そのためには行政がそのパイプ役になって、幼児教育の重要性を発信し、そういった意識をさらに高めていくということが非常に重要であり、役割でもあるのではないかと思ったことでした。
そして、連携・接続の重要性を発信するためには、お互いの教育・保育の質をさらに高めていくことが重要です。幼稚園等では園内研修を実施・充実させ、小学校では、学校探検だけに終わらない生活科の授業の充実をさらに図っていくことが大切だと思います。幼児の学びに見通しをもつためにも、幼児教育に携わる先生方も生活科等の学びを知り、小学校教職員も幼児教育の遊びの意義を知っていただきたいと思います。お互いの授業や保育を見合う場が、互いを理解し合うために非常に重要だと考えます。
そのためには、研修の工夫が必要であり、私どもの県でも新型コロナウイルス感染症対策でなかなか訪問できないという状況がありますので、お互いの授業や保育を録画し、映像を通して少ない時間でも子供たちの姿を見て、語り合うといったことを行っておりますが、協議をさらに充実させていきたいと考えています。行政としての役割として、研修の在り方をさらに検討し、よりよい内容にしていきたいと思っております。以上です。
【無藤委員長】 ありがとうございました。それでは、次の委員、久保山委員、お願いします。
【久保山委員】 ありがとうございます。国立特別支援教育総合研究所、久保山でございます。11の団体の皆様方ありがとうございました。
昨日、宣言が解除されましたから、久しぶりに幼稚園で一日過ごして、園庭で一日ずっと遊んで、遊んでじゃなくて見学しながら、園内研修もしっかり学んできました。11団体の先生方のお話を聞きながら、現場をイメージしながら伺っていたところです。
モデル事業のことをイメージして3点お話ししたいと思っています。1つは、各団体のお話の中に、一人一人に応じる保育だとか、その子にふさわしい保育だとか、自分らしさが発揮できるとかというような言葉が出てきているんですけれども、ところが、特別な支援が必要な子供はその範囲からちょっと除外されている可能性があるわけですよね。
例えば、走り回る姿を自分らしさと捉えていいのか、大声を出す姿を自分らしさと捉えていいのかというようなことがあって、特別な支援が必要な子供たちがちょっとそこからはじかれている可能性がある。ですので、そういった子供たちも、ちょっと気になる行動ではあるけれども、その子に応じるという保育をすることでしっかり力を発揮できるような姿がやがて出てくるんだということを事例で示せたらいいなということを1つ思ったところです。
2つ目なんですけれども、行政の関与のことは一貫して御発言があったと思うんですが、行政ということを考えるときに、市区町村レベルで考えていく、全国市区町村で同じことができるような方針を示していくということが必要かなというふうに考えました。
幼稚園が全くない自治体もあるでしょうし、ほとんどがこども園になっている自治体もある、ほとんどが私立という自治体もあると思います。そういったことを踏まえて、それでも、全国これぐらいは同じレベルでということを示す必要があるかなと感じました。
それから3つ目ですけれども、保育所、こども園、幼稚園の合同研修の大切さということは言われています。これは前回も発言しましたけれども、なかなかうまくいかないんですね、勤務時間の問題等があって。この好事例をしっかり集めていくということと、そのアウトカム、その効果がどうであるかということを示せるようなモデル事業ができたらいいなということを感じました。
以上3点です。ありがとうございました。
【無藤委員長】 ありがとうございました。それでは、鈴木委員、お願いします。
【鈴木委員】 國學院大學の鈴木みゆきです。今日は関係団体の皆様、御発表ありがとうございました。大変共通して抱えている課題というのを改めて感じました。
そこで私、皆様方と重なることは重なりますけれど、研修についてなんですけれども、おっしゃるとおり、本当に担当した方には理解がされる、でも担当者が代わると分からなくなってしまう。あるいは市区町村で学校の温度差があるというようなことを本当に嫌というほど感じてきたので、ここはぜひ私は教職員支援機構の荒瀬先生にお願いをしたいと思っております。
教職員支援機構、実はずっと長らく評議員を務めさせていただいたので、企画立案ができるはずだということで、ぜひ小学校の先生に幼児教育を学ぶ研修をお願いしたい。その研修の在り方は、先ほど平川先生もおっしゃったようにいろんな工夫をしていただいて、研修をした上で評価をし、その在り方をさらにブラッシュアップした上で悉皆の研修に持っていけるといいのかなというふうに思っています。
まず第一歩をとにかく、架け橋を作っていく研修をぜひつくっていただけたらいいなというふうに思っております。よろしくお願いいたします。以上です。
【無藤委員長】 荒瀬委員、御指名がありましたけれども、いかがですか。
【荒瀬委員】 ありがとうございました。御指摘しっかりと受け止めて検討させていただきたいと思います。つなぐというのは大事で、幼児教育、小学校、中学校、高校、それら全てのつながりというのを本当に大事にしたいと思っています。ありがとうございました。
【無藤委員長】 期待したいと思います。それでは、次の委員、お願いします。堀田委員。
【堀田委員】 東北大学の堀田です。先生方、御発表ありがとうございました。私は学校現場の情報化の研究をずっとしてきています。学校現場でも様々な教育活動をデジタルで記録するようになり、後で整理して集約して、学校の場合は評価や評定につなげるようなことにも随分便利になっています。あるいは学校のウェブサイトや、学校だよりや学級通信等で保護者に情報を伝えるのに、細かい情報を伝えなければならない媒体ほど、例えば写真があるとか動画があるとかということがとても便利かと思っています。
で、先ほどの御発表でも、園の中でもそういうことがいろいろやられていると聞いていますし、また、研修等でもオンラインが多く使われるようになったというお話を聞きました。
先ほど二宮委員がSNS等の活用の事例をということで、また、無藤先生が、これ自治体の差とか園の差は大きいのだというふうに御指摘いただきました。
私の質問というか、意見ですけど、その差が大きいということについて、それは恐らく保護者から見ればサービスの差になっていると思うし、先生方から見れば、働きやすさの差になっている可能性があると思います。そういう意味で、園務の情報化みたいなことをうまく進めるために、一体全体何が困っているのかということの本当のところをいろいろ聞きたいと思っております。
今日、答えてくださいという意味ではありません。それはパソコンの台数とかネットワークなど整備の問題なのか、あるいは整理する時間がないというような働き方につながる運用の問題なのか、ICTの操作が苦手みたいな研修に関する問題なのか。整備なのか、運用なのか、研修なのかということを整理しないと、どう行政的な支援をすべきか、あるいは国が何をすべきかみたいなことがはっきりできないのかと思っています。
小学校との接続の観点からも、情報の共有という観点でインフラ整備は非常に重要かと思って、質問というか、意見を申し上げました。以上です。
【無藤委員長】 今の点はむしろ文科省、もちろん厚労省もですけれども、非常に大きな課題だと思うので、もし今答えられることがあれば答えていただいて、あるいは次回以降の課題として整理していただいてもいいですが、何かありますか。
【橋田幼児教育企画官】 御指摘を踏まえて、また整理していきたいと思います。ありがとうございます。お願いいたします。
【無藤委員長】 お願いいたします。では、次の委員、お願いします。溝上委員、お願いします。
【溝上委員】 桐蔭学園の理事長の溝上でございます。無藤先生、検討チームの意見要旨について1つよろしいですか。
【無藤委員長】 もちろん言ってください。
【溝上委員】 小さいことですけれども、3ページ目の大きな3番のウエルビーイングのところですけれども、学校教育で今、ウエルビーイングはいろんな形で入ってくるので、ここは適切な項目立てだとは思いますけれども、ここに書かれてあることはウエルビーイングではないので、ウエルビーイングを幼児教育、あるいは架け橋として小学校につなげていくときに一体どういう形で見ていくのかということが、今後検討されればいいのかなというふうに思います。
先ほど伊藤先生から、子供が主体的にこうしていきたい、いろいろ園のつくり方みたいなお話されていて、本当にそのとおりだと思うんですけれども、他方で、子供の育ってほしい10の姿も含めて、やはり社会化といいますか、子供たちが将来大人になっていくのに必要な力の基本的なところ、言ってみたら、やっぱり外から与えているわけですよね、視点を。そういうところに子供が、まさにウエルビーイングですから、幸せであったり、楽しさであったり、そういうところに向かっていくことをどう折り合いつけていくか、これはとても大事なことと思いますので、そのあたり、もう少し検討、深掘りをしていただければと思います。
もう1点ですけれども、安達先生の御発言、非常に興味深くて、オリンピックとか、あるいは支援された方の幼児期といいますか、非常に扱いにくい個性というのがあって、だけど、そういう方々が大人になって、いろいろ、いい形で取り組まれているみたいなお話だったと思いますけれども、こういうことは幼少の架け橋だけでは分からないと思うんです。そういうところで、論点整理で出た18歳まで見据えたアセスメントといいますか、どんな小さなことでも、何かもう少しその視野を伸ばしたところでのアセスメントをしていければ、安達先生のお話みたいなのがしっかり乗ってくるのかなと思いました。以上です。
【無藤委員長】 ありがとうございました。18歳まで、あるいは溝上委員のなさっている、その先まで含めての展望はやはり必要ですし、多少、最近文科省もエビデンスを出し始めたと思うので、参照したいと思います。
それからウエルビーイングについては、まだ正面切って議論は全くしていないので、おっしゃるように、幼児教育課あるいは小学校とのつながりでどう考えるか。一応参照すべきものとしては、OECDのウエルビーイングの考えを念頭に置いていますけれども、もう少しきちっと議論をしたいし、あるいはこの親委員会のほうでもすべきかもしれません。御指摘ありがとうございました。
それでは、次の委員、ございますか。渡邉一利委員、お願いします。
【渡邉(一)委員】 笹川スポーツ財団の渡邉と申します。11団体の皆さん、どうも勉強になりました。ありがとうございました。
1つの所感と1つの質問になります。まず、所感的なところで言いますと、日本私立小学校連合会の御発表にありましたけども、加盟193校のうち、75%が幼稚園を併設していると。そういった学校は、非常にこの委員会の趣旨というのを体現しやすいというか、導入しやすいんだろうと思うんですけども、一方で、経済格差が広がっている中で、子供の貧困率、相対的に7人に1人、シングルマザーでいうと2人に1人といったような状況がありますので、やはり公立のところ、ここがすごく重要になってくるのかなと、そんなふうに思います。
10番目の全国認定こども園連絡協議会の方のお話にありましたけども、政策を推進する体制整備であるとか、保護者、地域の教育力を引き出す方策、あるいは保育人材の確保であったり、資質能力の向上、こういったところが大きな課題だと思いますが、ここについては、福山市の例を発表いただきましたけど、各中学校区にまちづくり推進委員会があって、28の団体がその組織に加盟している。すなわち基礎自治体で考えたときには、こういったプラットフォームをうまく活用していく。それによって園内の保育者の育成であったり、あるいは保護者、地域、こういったところの教育力の引き出しというところにつながっていくのかなと、そんなふうに思いました。非常に分かりやすい説明ありがとうございます。
それともう1点は、そこのところも絡むんですけども、再三、やはり研修の重要性というのがうたわれています。保育者の研修ということなんですが、ただ一方で、保育者は新陳代謝があって、なかなか保育者のキャリアが短いということがあったと思うんです。だから、これを両立させるためにどうしたらいいのかということ、何か御意見があれば、教えていただきたいというのが質問であります。以上です。
【無藤委員長】 その質問はどなた。
【渡邉(一)委員】 どなたでも結構でございます。オブザーバーの方々など、いかがですか。木村先生。
【全国認定こども園連絡協議会】 ありがとうございます。大体平均が7年から8年ぐらいと、幼稚園や認定こども園等の先生方が言われていますが、現在、各施設においても働き方を改革したりとか、あとは出産や退職をしても、また戻ってきていただけるような短時間労働であったりとか、様々な対応をしてきています。
それと、ICTを活用しながら、オンデマンドで研修ができる機会などをつくって、資質能力を伸ばしていくというような様々な取組をしていますので、これからも、ある意味アレンジしながら、それぞれのスキルが継続的にまた発揮できるような体制をしていくということも重要だというふうに思っています。以上です。
【無藤委員長】 ありがとうございました。いろいろあると思いますが、ここまでということになりますが、ほかに委員として。
【橋田幼児教育企画官】 無藤先生、現在5名の方が手を挙げられております。時間が迫っておりますので、かなり早くから挙げられている順に申しますと、吉田委員、水野委員、オチャンテ委員、秋田委員、渡邉英則委員が手を挙げられております。
【無藤委員長】 じゃ、その順番でそれぞれ、できる限り短くお願いしたいと。それで今5名の方にはとにかく御発言いただくということにしましょう。じゃ、お願いします、吉田委員から。
【吉田委員】 埼玉県本庄市の市長でございます。全国市長会の社会文教委員長を務めております。自治体を預かる側からということで、ナショナルミニマムとしての義務教育、そこにこの幼児教育とのつながりをつけていくということを、どこまで国の責任としてやるのか、どこが自治体の責任になってくるのかということを、いろいろ考えながら今お話を聞かせていただきました。非常に私自身も勉強になりましたし、同時にまた悩みも多くなったかなと。
例えば、私どもの町では、発達に課題のあるお子さんについては、その子御自身のカルテを作るような形で、幼保小連携して、あるいは中学校・高校までそのお子さんをケアしていこうという体制はできております。
ただ、そういったお子さん以外では、幼稚園、保育園と小学校とのつながりというのでしょうか。それはほとんどない状況がございます。個別具体的な課題のあるお子さんをちゃんとケアするということも非常に大事ですし、全体として幼保小がしっかりと情報共有していくということも大事ですが、これは先ほどから先生方もたくさん御指摘いただいているように、時間であるとか、先生方の置かれている状況、また、例えば、うちの町でも、幼保については私立もたくさんありますし、それぞれ教育方針も、あるいは保育方針も違うわけでございます。
全国の自治体、非常にこれみんなモザイク状況だというふうに思っております。どこまでがナショナルミニマムとしてかかるのか、どこまではシビルミニマムというんでしょうかね、自治体ごとにかかるのか。この線引きというのはやはりしっかり考えていかなきゃいけないなということを感想として持ったところでございます。以上でございます。
【無藤委員長】 その問題は本当に大きなことで、この委員会の枠を超える部分がかなりありますので、文科省、厚労省の間でぜひ、当然考えていらっしゃると思いますが、お願いしたいと思います。それでは、次の委員、お願いします。水野委員。
【水野委員】 大東市教育委員会教育長の水野です。11名の発表者の方々の意見は本当にごもっともだと感じました。
私も市の教育行政を預かる立場として、感じたところを共有したいなと思うんですけれども、すばらしい御意見が多かったので、それをすぐ市として実現するためにはどうすればいいのかなという視点で聞いていますと、やはり課題として上がってくるのが、先ほど吉田市長もおっしゃったところなんですが、幼児教育の状況って市によってもモザイク模様でして、民間、公立、こども園、保育園、幼稚園と、多様なモザイクの状況を果たして市の教育委員会が1つの枠にはめての体制づくりができるのかなという課題がございます。
そこは市長部局との連携等々も当然想定されるので、なかなかここは工夫をしないと難しいのかなとは感じました。
また、研修のところもすごく大切だと思うんですけれども、教員の多忙というところの議論も当然ございますので、学校へどういう形で伝えていくか。あとは今の時代、ICTの活用は本市でも随分研修済んでいますので、そこをしっかりと連携していく。
何より大枠の話になるんですけれども、行政の関与の仕方ってすごく難しくて、先ほどオブザーブの発表の中でもあったように、スタートカリキュラム1つ取っても、当事者がつくることがすごく重要であるというのであれば、どのような体制づくりをし、研修体制の中に、どのようにして当事者が入っていくのかのモデルを示すことが大切。しかし、その当事者、民間をどのように巻き込んでいくのか。はたまた、保護者をどのように巻き込んでいくのか。そういうところをしっかり工夫していって、主体性を引き出していって、継続する仕組みというのが必要かなというのが感じるところでした。以上です。
【無藤委員長】 ありがとうございました。では、次の委員。オチャンテ委員。
【オチャンテ委員】 桃山学院大学のオチャンテです。発表行った皆様、貴重な話ありがとうございます。職員育成とか研修の必要性について、共通する課題があるのではないかなと話聞きながら思いました。
その中で、オブザーバーの福井様だったと思うんですけど、オンライン研修、リモートでできる研修の普及の必要性を挙げていたと思います。特に多様なバックグラウンドを持っている子供たちが持っている、今、特別な配慮の子供たち、外国につながりのある子供たちの受け入れに当たって、保護者との関係とか、その連携の取り方で悩んでいる現場の先生がたくさんおられるということですので、全国での共通課題でであると思います。地域による温度差が結構あります。
ですので、既にそういった取り組んでいる地域のモデル校とかモデル事業とか、そういった工夫がされているのであれば、もう少しこういった情報の共有できるプラットフォームみたいなものとか窓口となるようなコーディネートとかの必要性も、これから必要になってくるんじゃないかなと思いました。以上です。
【無藤委員長】 ありがとうございます。それでは、次に、秋田委員。
【秋田委員長代理】 ありがとうございます。学習院大学の秋田です。11の関係団体の皆様、納得のいく御発言ありがとうございます。私のほうからは3点でございます。
1点は、今日の御発表で幾つかの団体から0歳から18歳までを射程に入れたときの架け橋プログラムというようなお話がありました。この委員会でも子供時代を見たときに、3歳から5歳とか6歳とか7歳というのがどういう時期として捉えられ、5から6歳を特にどう考えるのかというような議論がこのプログラムの位置づけとして必要ではないかと思います。
また、ウエルビーイングということは広く今日言われているんですけれど、この時期に、多分幼児期に保育園や幼稚園、認定こども園で考えるウエルビーイングと、それから小学校に入った子供たちのウエルビーイングが果たして同じ意識でいるのか、OECDは11の指標で述べているわけですけれども、この子どものウエルビーイングを目指すとすれば、そこをきちっと議論をする必要があるだろうというのが1点目です。
それから2点目は、私は大変ショックを受けましたが、校長会の先生から、小学校の先生方にとっては、幼稚園や保育園との幼小の連携必要性の優先順位は極めて低いということがありました。そこで、前に田村委員が言っておられましたが、やはり管理職、それから学校教育課の指導主事、それから生活科の担当教諭等々に対する幼小の連携接続をすることが、メリットがあること、具体的にどういう意義があるのかということを理解していただくということがとても研修の中でも重要なのではないかというふうに感じました。
3点目は、その点とつながりますけれども、オンライン研修です。私は10月1日に緊急事態宣言解除になって大阪の小学校に行きました。そこでオンラインで、その学区の保育所や幼稚園の先生も来られて、小学校1年生等の授業を配信しておられましたが、ほとんど参加され、一緒に研修をするというようなことが、この年度に複数回繰り返されてきています。実際に校長先生に伺うと、それで困った子供とか、いろんな大変なお子さんの話題で対話ができて、小学校の先生も対応に助かっている、お互い行き来する時間はないけれども、オンラインはとても助かると話されていました。こういう体制を、全国で、今伺ったのは大阪府和泉市ですけれども、全体的に広げていくことができると良いと思います。民間の方々もオンラインなら会議に出やすいというような点もあり、小学校の先生も時間1時間とかならできるというような体制が必要かなと感じました。以上です。
【無藤委員長】 ありがとうございました。あとお一人でしたっけ。渡邉英則委員。
【渡邉(英)委員】 11団体の皆さんありがとうございました。
私は、横浜で港北幼稚園とゆうゆうのもり幼保園の園長をしているんですけど、横浜の幼保小は結構長く付き合っています。歴史もあります。夏の幼保小の中では幼保小が実践提案をしたり、それから18区の中でも幼保小の交流事業をしています。また、小学校区でもモデル事業をしているんですけど、それがうまくいくときもあればうまく行かないときがあって、幼も小も保もいろんな園で様々にあり過ぎるので、小学校も含めてなんですけども、子供をみんな一様にしていくことが連携だというような発表になっていくと、集団をどうやって集団にしていけばいいかというような話になります。幼保小の連携が制度化され、幼保小がお互いに行き来すればいいという問題だけではなく、そこで何を大事にするかというところが大事だと思います。
3月末に小学校の先生、特に次年度1年生の担任になる先生たちがスタートカリキュラムの研修をしますが、そこでは、入学式終わってから、先生たちがどうやって一人一人の子供と関係を築いていこうかとかを話し合っています。その一方で、集団を育てていく小学校の先生ではあるのですが、手遊びも知らなかったりするから、保育園の先生がそれを教えたりとかというような研修が行われています。それから幼保小の接続の話では、小学校の先生、特に校長先生や児童支援専任の先生が全ての園に行って、自分の学校に来る子供のことをちゃんと見たり、様子を聞いたりしています。カウンセラーの派遣ではないけど、そういう連携もできてきて流れとしては少しずつ変わってきています。
2番目として、小学校と幼稚園とか幼児教育の違いは、枠組みの違いはあるんですけど、一人一人を大事にしていくとか、それからちゃんと子供が心を開いて関係を築いていくとか、その子のよさを認めていくというような共通さについてです。子供たちはそういう関係がきちんとできてくると、自ら学ぼうとしたり、探求しようとしたりとか、自分なりに責任を取ろうとします。このような姿は、多分、伊藤先生の事例とかにも見られたし、いろいろあると思います。子供を1人の人間としてきちんと付き合っていくということが、子供がある意味で市民として育っていくということになっていくのだと思います。そこのことは小学校とか幼稚園とかと多分共通のことだろうと思うと、その辺のところがどう共通化されていくかというのはこの架け橋の中でもっと議論されていいかなと思っています。
最後に、幼児教育の魅力の大事さです。神長先生が教えられていた國學院大學に行って非常勤講師をしたりするときに、小学校の先生になるか、幼稚園の先生になるか、どっちになるのか、青学でも結構長く幼児教育について教えたりとかしてきましたが、小学校教育じゃなくて幼児教育って、子供とこんなに向き合えて、子供ってこんなに楽しいということを、社会に、さらには中学生・高校生にも伝えていかないと、なかなか、質を高くしようと思っても、保育者になろうとする人がいないという問題を乗り越えていけません。そこに向き合わなきゃいけないときに、やっぱり幼児教育とはもっともっとすてきな仕事なんだというのは、待遇面も含めて考えてもらえたらいいかなと思っています。
以上です。
【無藤委員長】 ありがとうございました。最後の点も本当に共感いたします。
それでは、ちょっと時間が数分過ぎてしまいましたけれども、このあたりにさせていただきたいと思います。まだ御発言とか御質問あるかなというふうには思っているんですけれど、ぜひ事務局にお寄せいただければと思います。
それでは、次回の日程につきまして、事務局からお願いいたします。
【橋田幼児教育企画官】 次回特別委員会につきましては、資料3のとおり、12月上旬を予定しております。詳細につきましては追って御連絡差し上げます。
【無藤委員長】 それでは、本日予定した議事はこれで全て終了いたしました。これで閉会とさせていただきます。ありがとうございました。

―― 了 ――
 

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