学校安全部会(第6回)議事録

1.日時

令和3年9月22日(水曜日)14時00分~16時00分

2.場所

WEB会議(Webex利用)

3.議題

  1. 家庭・地域との連携などについて(委員からのヒアリング)
  2. 事故対応指針について(委員、有識者からのヒアリング)
  3. その他

4.議事録

【渡邉(正)部会長】定刻となりましたので、ただいまから中央教育審議会初等中等教育分科会学校安全部会第6回会議を開催いたします。
本日の会議は報道関係者並びに一般傍聴者の傍聴を許可いたします。オンライン配信で傍聴いただいている方々には、傍聴登録者以外への会議の配信、URLを転送することや、他への放映は固くお断りしていますので、どうぞよろしくお願いいたします。
議事に入る前に一点お諮りいたします。本日の部会の議事に関する情報提供をいただくため、元さいたま市教育長の桐淵博様と日本安全教育学会理事長の戸田芳雄様に部会への御参加をいただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【渡邉(正)部会長】御異議がないようですので、議事の後半で情報提供をいただきたいと思います。それでは、事務局から資料の確認をお願いいたします。

【朝倉安全教育推進室長】事務局でございます。お手元に会議資料を御準備いただければと思います。会議資料は議事次第のとおりで、資料1から資料8まで。参考資料は4つございます。お手元に御用意いただきますようお願いいたします。
本日は、嵯峨委員、首藤委員、渡部佳代子委員を除く15名の御出席をいただいて、定足数を満たしております。
また、公益財団法人日本AED財団理事で元さいたま市教育委員会教育長を務められております桐淵博様と、日本安全教育学会理事長の戸田芳雄様にも、ヒアリング対象者として本日御参加いただいております。
事務局からは、総合教育政策局男女共同参画共生社会学習・安全課長、石塚哲朗、初等中等教育局健康教育・食育課長、三木忠一ほか、関係室長、課長補佐が出席しております。
なお、昨日9月21日付で、新たに総合教育政策局長に藤原が就任しましたので、別の公務から戻り次第、御紹介させていただきます。

【渡邉(正)部会長】それでは、議事1に入ります。本日の議題は「家庭・地域との連携、事故対応指針などについて」です。
まず前半の約1時間で、家庭・地域等の連携について、木下委員、渡辺弘司委員から御発表いただき、質疑・議論をしたいと思います。後半の1時間では、学校事故対応に関する指針などについて、文部科学省、藤田委員、桐淵様、戸田様から情報提供をいただいた後、質疑・議論をしたいと思います。
前半の家庭・地域との連携に関しまして、木下委員、渡辺委員からは15分程度で御発表をお願いいたします。後半の事故対応指針などにつきましては、藤田委員、桐淵様、戸田様からは、恐縮ですが10分程度での情報提供をお願いいたします。
それでは早速、前半の家庭と地域との連携について、始めたいと思います。木下委員から、まずお願いいたします。

【木下委員】よろしくお願いします。岡山教育事務所の木下と申します。最初に、自己紹介を少しだけ行います。私は特別支援学校と小学校に12年間勤務した後、教育行政で学校安全や社会教育の分野に携わってきました。県教育委員会以外にも、知事部局で防犯教育と防犯ボランティア関係の業務を3年間行っておりました。本日は、地域や家庭と連携した学校安全の取組について発表してまいります。どうぞよろしくお願いいたします。
まず初めに、皆様この黄色いコーンを御覧ください。岡山県では、子ども110番の家の玄関先にセーフティーコーンを設置する事業を実施しています。自治体や業種によって、子ども110番のステッカーは異なっておりますが、岡山県内にはどこでもこの黄色のコーンが目印となって、子供が駆け込める場所になっているというものです。県内に1万か所以上設置しておりますので、岡山にお越しの際はぜひ御覧ください。
知事部局の防犯教育について紹介いたします。このシステム自体は、前回御発表された大阪教育大学、藤田委員の教材ですが、岡山県では出前授業のほかに、ワークシートを作成しています。小学校に入学して間もない児童は、文字を書くにも個人差があるため、イラストに丸やバツ、番号に丸をつける回答方式にしたことや、短い時間で取り組めるようにして、どの児童も意欲的に取り組めるようにしています。
また、担任した経験から、低学年の保護者は、学校で取り組んだ学習プリントをよく見てくださっているので、保護者向けに解説を加えたものを家庭に持ち帰ってもらうことにしています。家庭でも子供と一緒に学習を振り返ることを通じて、保護者への防犯意識の啓発も狙っています。
そんな中、地域の見守りボランティアから、「雨の日も風の日も毎日登下校の見守りで頑張っとんのに、防犯ボランティアのベストを脱いだら子供らは挨拶もしてくれん」とおっしゃる方がいらっしゃいました。そこで、ワークシートではなく紙芝居の形で、防犯ボランティア自身に防犯教室をしていただくことで、子供たちは、どの地区のどのボランティアが見守ってくださるかが分かる、顔が見える関係をつくることができました。
防犯ボランティア自身も、毎回子供たちに「ありがとう、また来月も来てな」と言われるとうれしいから頑張れる、とおっしゃって、モチベーションのアップにもつながっていました。
さらに発展させて、入学前の時期に、通学路点検も兼ねて安全教室を行うことを提案しています。教育事務所では、小学校の入学説明会のときに、「親育ち応援学習プログラム」という事業を推奨しています。その中で、多くの保護者から、「登下校の安全に関して不安があると」いう声を聞いています。そこで、通学路の事情をよく知った防犯ボランティアに安全上の注意を聞いて、保護者が子供と一緒に通学路点検をするものです。
学校では、防犯ボランティアや子ども110番の家の方への感謝の会がありますが、保護者が防犯ボランティアに接する機会が少ないので、日頃どの地区のどの方が見守りをしているか知る機会にもなります。通学路上の安全に対する取組を知ることで、保護者自身に当事者意識が生まれ、保護者自身も地域住民の一員として地域活動に参加するきっかけにつながると感じています。しかしながら、現在コロナ禍で、入学説明会は短時間で実施しており、このような時間を学校が設けることは難しい状況です。そこで、地域にある公民館で講座として実施するといった提案です。子供の安全に関して、地域学校協働活動の一環として、地域が主体となって公民館で実施していくことを提言いたします。
学校安全を学校だけが担うものではないといった観点で申し上げると、学校運営協議会の場で話し合った2つの事例について紹介いたします。
1つ目は、浅口市立鴨方東小学校です。この学校では、コミュニティ・スクールを導入する際に、学校・地域・保護者が集まって、どんな子供を育てたいか、「目指す子供像」について熟議を行いました。その後も毎年テーマを設けて熟議を行っております。
平成30年度は岡山県内で大規模な水害があったため、テーマを「地域における子供の安全安心」とし、課題や対策について熟議が行われました。その中から、通学路を地域の方と一緒に点検して、安全マップづくりを実施しました。
2校目は寄島小学校です。この学校は、南海トラフ地震による津波浸水想定区域に立地しており、高台への避難が必要ですが、学校が予定している避難場所が工事によって使用できなくなり、その代替地を選定する必要がありました。そこで、学校運営協議会で議題として取り上げ、地域の方から御意見をいただき、避難場所を選定しました。
実際の高台への避難訓練では、消防署の方に、避難経路にあるブロック塀や用水路など注意点を指摘してもらいました。また、この学校ではこれまで一斉下校でしたが、分散下校するに当たり、下校時間についても学校運営協議会で議題として取り上げました。委員から見守り体制について協力を得るだけでなく、その際の話合いで、子ども110番の家が少なくなっていることなど、地域の課題についても共通理解することができました。
学校運営協議会を設置しているコミュニティ・スクールは、学校運営や学校の課題について、広く保護者や地域住民が参画できる仕組みです。コロナ禍により今までどおりにできなくなった教育活動や、解のない課題に学校が直面する中、学校だけで考えるのではなく、子供たちのために最適解は何であるか、保護者や地域住民も当事者として参画していくことの必要性を感じています。
学校安全に関しても、安全上の課題が複雑化・多様化する中で、学校運営協議会等の場で議論していくことを提言いたします。
公民館と学校安全について紹介します。公民館職員研修会に参加したとき、公民館で防災講座が多く実施されており、かつ防災について関心が高い職員が多いと感じました。かつて学校安全の指導主事でしたが、公民館で行われている防災活動については知りませんでした。また公民館側も、学校で行っている防災教育が、いつ、どんな内容で実施しているのか知らないという方が多い状況でした。そこで、社会や理科の教科書を見ていただき、学校でどのように防災を取り扱っているかを紹介したり、授業や避難訓練など学校での防災と連携した講座づくりを公民館職員へ提案したりしました。
これは、岡山市社会教育委員会議で作成された「公民館と学校園の連携のススメ」というリーフレットですが、この事例4で、理科の授業と公民館の防災講座を連携した取組が紹介されています。
岡山市立高島公民館の取組です。学校と地域の連携した取組として、年度初めに、教職員と公民館職員が、どの単元で連携講座を組むか話合いをします。昨年度は、6年生理科で学んだことの発展講座として、公民館で災害図上訓練(DIG)を実施しました。
本来はDIGの後に防災まち歩きを計画していたのですが、コロナ禍で実施できず、地域住民と事前に撮影した写真を解説してもらいました。岡山県は全国的に見ても用水路が多く、高島地区にも写真のような樋門が多く見られます。この樋門を管理している樋守のことや、溝の管理など日頃の管理体制についてのお話を伺いました。子供だけでなく保護者も初めて聞く話もあり、改めて自分の住んでいる地域を防災の観点で見直すきっかけとなりました。
「社会に開かれた教育課程」の実現に向けて、郷土教育などにおいては地域にある教材の活用は進んでおりますが、防災教育においても地域性が重要であり、地域の「ひと・こと・もの」が集まる公民館と連携していくことが有効ではないかと考えており、社会教育資源の活用を提言いたします。
最後に、平成30年7月豪雨についてお話をします。写真は倉敷市真備地区のものです。地区の多くが水没してしまい、対応できる指定避難所が限定され、想定以上の避難者を受け入れました。また、20キロ以上離れた地区の学校への避難者もいました。
岡山県では、学校防災マニュアルに避難所運営支援体制のことを記載するよう指導してまいりましたが、多くの学校は地域内での避難を想定しており、今回のような激甚災害においては、より広域で考える必要があると感じています。
広域という視点で言えば、災害時に、兵庫県教育委員会の震災学校支援チーム、通称「EARTH」から多くの支援をいただきました。支援を受けた側として、災害が起きたときにすぐ駆けつける支援体制がどの地域にも必要ではないかと感じています。
特に、コロナ禍において都道府県を越えた支援が難しい中、その必要性が高まっています。既に熊本県、宮城県、三重県で同様の組織が設立されていると聞いております。岡山県でも、災害時相互応援体制を構築するために、私も防災教育推進指導員養成講座を受講しているところです。
総務省には災害時の応急対策職員派遣制度がありますが、文部科学省におかれましても、教育に特化した広域的な支援チームを構築していく必要があると考え、提言いたします。発表は以上になります。御清聴ありがとうございました。

【渡邉(正)部会長】ありがとうございました。続いて渡辺弘司委員、よろしくお願いいたします。

【渡辺(弘)委員】日本学校保健会並びに日本医師会から出席させていただいております渡辺弘司であります。本日は、「学校における心臓突然死の防止」について述べさせていただきます。
今回の主題が「家庭・地域との連携について」というところに私のような話が入ってきますので誠に申し訳なかったのですが、事務局並びに渡邉正樹部会長におわびを申し上げる次第であります。
また、私の話は、偶然だとは思うのですが後の桐淵先生のプレゼンとほぼ重なりますので、私の不足分は桐淵先生がサポートしていただけるのではないかなと思っております。
次のスライドをお願いします。まず、心臓よりも突然死ということですが、この定義というのは、スライドのような定義で診断されます。つまり、発症から24時間以内に死亡した例というのが基本的な考え方で、原因は問わないということであります。次のスライドをお願いいたします。
学校の管理下の死亡例というのは減少傾向にございます。児童生徒の絶対数が減少しておりますので、相対的に減少することは予想されることですが、発生率から見てもやはり減少しているわけです。
心臓死に関しては、平成8年の学校健診において心電図が義務化されたこと。それから平成16年に自動式体外除細動器、以下「AED」でございますが、これを医療従事者以外の方々が、研修を受けたことを条件に一般市民も使うことが認められ、学校でも研修を受ければ教職員が使用できることになり、そのために配置が進んだことも突然死の減少に寄与していると考えられています。次のスライドをお願いいたします。
学校管理下の突然死は、スライドのこのグループの下から、小学校、中学校、高等学校と分類されますが、御覧のように、学年が上がるにつれて突然死の件数が増えてまいります。
一番上の焦げ茶色のところが特別支援学校の高等部でございますが、学校数や生徒数に比して死亡例が多く、発生率が高いグループと考えられます。次のスライドをお願いいたします。
学校管理下の心臓系の突然死は、独立行政法人日本スポーツ振興センターの統計で知ることができます。先ほど述べましたように、学校におけるAED配置と心肺蘇生法が進んだことから心臓系突然死は減少傾向にありましたが、近年は、一番下のグループでございますが、横ばいで推移しているわけです。次のスライドをお願いします。
心臓検診、学校心臓検診は全国で行われておりまして、一定の効果が得られているというのは皆さん御承知のとおりでございますが、心臓検診だけでは突然死が予期できないわけです。次のスライドをお願いいたします。
どのようなものがあるかということですが、赤字のところですが、心臓を養う血管を冠動脈と言いますが、これの先天性の奇形の場合、心筋梗塞を発症することがなければ、心電図にもエコーにも異常が出にくいという病気であります。次のスライドをお願いします。
やはり赤字のところの、カテコラミン誘発多形性心室頻拍。これは安静時は何ともないのですが、カテコールアミンが出る、つまり激しい運動をしたときとか緊張したときに、その時だけ不整脈が出てしまう。それが致死性の不整脈が出るというものであります。
あと、後天性心疾患である心筋炎、それからボールが胸にぶつかった際に発症する心臓震盪などがあります。心筋炎は、風邪などウイルス感染の後に急に発症することがございますし、心臓震盪は御存じのように前胸部、特に心臓部に強い打撲があった際に発症します。よって、野球やソフトボールのサードを守る選手、内野の中の一番近いところですが、「胸にボールを当てて前に落として送球しろ」という指導は危ないということになります。プロテクターをつけていても、心臓震盪が発症して亡くなられたケースもございます。次のスライドをお願いいたします。
突然死に対するAEDの効果というのは多く報告されています。早期の除細動は社会復帰に有益で、特にバイスタンダーと呼ばれる目撃者の存在と、早期の心肺蘇生、AEDの使用は有益と報告されています。次のスライドをお願いいたします。
これは御存じだと思いますが、心肺蘇生に要した時間と救命率に対する寄与度を示した図でございまして、救急車は、呼んでどんなに早くても7分以上、統計上かかります。ここに書いてあります市民というのが、学校では児童生徒や教職員に該当します。次のスライドをお願いいたします。
AEDを使用した場合の救命率と、BLSつまり心肺蘇生のみを行った場合の救命率の比が非常に大きく違うというのが御覧になれると思います。次のスライドをお願いいたします。
日本学校保健会は、2018年に全国の公立小中学校、高等学校、義務教育校、中等教育学校、特別支援学校を対象として、心肺蘇生とAEDに対する調査を行いました。回答率は、一般校で76.4%、特別支援学校で80.9%でありました。次のスライドをお願いいたします。
ちょっとスライドが見にくくて申し訳ないのですが、AEDの設置台数を示しております。中学校までは青いラインの「1台ある」というのが非常に多くございます。高等学校ぐらいから「2台以上設置されている」、赤いところが多くなっております。
回答された学校でほとんどのところに、少なくとも1台のAEDが設置されていました。高等学校や特別支援学校で複数台設置されている理由としては、管理下の突然死が多いこともあるかと思います。次のスライドをお願いいたします。
実際にAEDを使用したかどうかという質問に対しまして、小学校の0.6%、中学校の1.1%、高等学校の2.4%、特別支援学校の1.1%、僅かというのかどうか分かりませんが、実際に使用したと回答されています。この使用対象というのは、児童生徒だけでなく教職員や学校訪問者も含まれております。次のスライドをお願いいたします。
これが児童生徒に対して使用された事例数であります。小学校では先ほどの87名のうち32名、つまり36.8%のみが児童生徒に使用されているわけです。中学校では80名中51名の64.6%、高等学校では72名のうち56名の77.8%。つまり、残りは教職員や学校訪問者を対象に使用されたことになります。
意外と多く、教職員や学校訪問者に対してAEDが使用されております。小学校では、使用された対象の6割以上が、児童ではなくて教職員や学校訪問者ということになります。次のスライドをお願いいたします。
これも細かくて恐縮なのですが、AED使用状況はどのような状況であったかということの回答であります。多くが予想どおりでありますが、体育的部活動、続いて体育の時間、水泳、持久走と続いております。小学校では水泳時が意外と多いということが、留意する点だろうと思います。次のスライドをお願いいたします。
スライドはAED使用後の転帰、つまりどうなったかということですが、これを示したものでございまして、後遺症なく社会復帰できた率、この青いところでございますが、小学校が71.9%、中学校が66.7%、高等学校が65.6%。これは、こういう心肺蘇生を行った統計から考えますと高い救命率であり、なおかつ高い社会的復帰率と言えます。
その理由としては、効果的に心肺蘇生が行われ、適切にAEDが使用された結果と考えられます。御存じのように、AEDは心室細動という危険な不整脈を自動的に感知します。つまり、心停止のときは反応しません。洞性不整脈の場合もそうです。
救命活動をしている人がショックボタンを押しても、今のような必要なとき以外は有効と判断しませんので、その時は作動しないわけです。ですから、救命活動をしている方は、分からないときはとにかくボタンを押していただくと、必要なときはちゃんと作動するという形になっております。
逆に言うと、心臓疾患により倒れても、全ての事例に効果的というわけではないわけであります。このたびの調査では、残念ながら10%から15%の方が救命できなかったことが分かりました。この比率をできるだけ少なくしたいというのが、今後の課題と考えております。次のスライドをお願いいたします。
AEDを使用した事例の中で、以前から心臓疾患が指摘されていたのは、小学生で12名37%、中学生で16名29%、高校生で23名37%で、6割強が心疾患を事前に指摘されていなかったわけであります。
これは今後の学校管理下突然死の予防・減少のためには大きな問題であろうと考えます。次のスライドをお願いいたします。
授業などで児童生徒に対する心肺蘇生、AED使用の実施を伴う指導に関する状況を調べて提示しております。中学校で58.9%、高等学校で66%でありました。小学校は11.4%、特別支援学校は21%と低うございました。
心肺蘇生の技術もさることながら、人が倒れたときの対応なども日頃から訓練していないとできないことが多いです。小学生だから早いんじゃないかというようなお声があるかもしれませんが、やはり心肺蘇生の基本というのは理解できるのではないかと思います。次のスライドをお願いいたします。
教職員に対する心肺蘇生やAED対応に関する研修の状況であります。約半分の学校で、「ほとんど全ての教職員が研修を受けている」と回答されていますが、残りの多くは「一部の教職員のみが受けている」と回答されております。「分からない」と回答された学校が10%近くございました。
研修を受けた一部の先生が早期に対処できなければ、救命率は先ほどのように低下するわけです。また、研修を受けた先生も、定期的に研修を受けていなければ実際に対処できない可能性もございます。最後のスライドをお願いいたします。
このたびは心臓突然死の対応に関して述べさせていただきました。突然人が倒れた、さて、というときに必要なことは、まず意識があるか、言い方を変えると呼びかけに答えるかどうかでございます。次いで、息をしているか、脈があるか。ここまでできれば十分であります。
意識がない場合にまずするべきことは、人を呼ぶことです。医者の研修会で「医者を呼べ」と言ったという話もございます。ここまでは、児童生徒を問わずに実行可能でございます。コロナの流行いかんに関わらず、人工呼吸というのは勧められておりませんで、まず心臓マッサージ、これができていなければAEDがあっても効果は少なくなります。近くにいる教職員は誰でも、このベーシックライフサポートという基本的な行動が実行できるということが必要であります。「知っている」ということと「実行できる」ということは異なるわけでございますので、定期的な研修を全ての教職員、できれば児童生徒に対しても行われる必要があると思います。
最後に少し、学校安全に関して意見を述べて終わります。これまで多くの委員の先生方が様々なアクシデントを想定し、それにどう対処するかを解説してこられております。各々非常に重要な課題であり、それぞれの対応が必要だと思います。
しかし、大変忙しい現場の先生方は、それら全てに完璧に対処するということは困難であろうと思います。医療者が患者さんにインフォームド・コンセントをする場合、「まれではあるが重篤な副作用」と「軽い合併症だが頻度が多い」という事象は分けて説明し、検査や手術などの処置に対する理解を求めております。
学校安全に関しても、全てのアクシデントに同等に対処するということはなかなか難しいのではないかなと思いますので、優先順位というのがあるとは思いませんが、起こり得る頻度やその可能性、それによって想定されるリスク、被害を提示して、現場である程度の順位を決め、重点項目を選択させるという視点も必要ではないかなと思いました。私の発表は以上でございます。

【渡邉(正)部会長】ありがとうございました。それでは、ただいま御発表いただきました木下委員、渡辺委員の御発表内容について、御質問、御意見がございましたらお願いしたいと思います。
御意見のある方はチャットのほうで出していただければ、こちらのほうで確認して順番に御発言いただくということにしたいと思います。いかがでしょうか。お二人のどちらの発表でも構いませんので、御質問ございませんか。
それでは私のほうから、木下委員の御発表の点でちょっとお伺いしたいのですが、よろしいでしょうか。
先ほど、公民館の話があったかと思います。学校と公民館が一緒になって、公民館で指導をされてという形だと思うのですが、これはどなたが例えばリーダーシップを取って、どういう方がこれを推進されていったのかということをもう少し、御存知でしたら御説明いただければと思うのですが、いかがでしょうか。

【木下委員】今回御紹介したのが岡山市の公民館ですが、岡山市の公民館は教育委員会所属の公民館主事と社会教育主事の専門職と、市民協働局所属の地域担当職員が在籍されています。今回の高島公民館は公民館職員が中心に行った取組なのですが、地域の課題として防災を地域連携職員が主導で進めているところもあります。
岡山市の公民館は「防災ワーキング」というチームがあり、各公民館が単独で防災講座をしているのではなくて、防災をテーマに職員が集まって、どういうふうに防災を進めていくかということを公民館同士が連携して取り組んでおり、年に1回、岡山市公民館大会で研究発表をしています。
これは防災に限らず、岡山市として取り組む市の課題などを、例えば環境とかESDとかいろいろな視点があるのですが、その1つとして防災に取り組んでいるという状況です。以上です。

【渡邉(正)部会長】ありがとうございました。それでは委員の方からの御質問ですが、渡辺弘司委員からお願いします。

【渡辺(弘)委員】日本学校保健会の渡辺でございます。木下先生に御意見をお願いしたいのですが、学校安全に限らないのですが、私は校医を今長いことしておりまして、学校保健委員会というのが学校にあるのですが、地域の方、民生委員の方とか児童委員とかが学校保健会に出られる場合と出られない場合って、何が違うかというと、校長先生が代わったら、これまで来た人が来なくなったり――正直に言いますと、私の少ない経験でいうとそうなんです。
それで、先生がおっしゃられるように、地域との連携というのは学校のいろいろな活動で非常に重要なことだと思うのですが、その辺の連携を取る、取らないというところの判断が、現場の管理者の先生次第のような気がするんです。
先生のお立場が岡山県を俯瞰されておられるのか、岡山の特定の市町を対応されているのか分からないのですが、これも私の経験だけで分からないのですが、県教委のレベルでは、小中学校の活動に対してはあまり関与できないんです。市町の教育委員会の教育長に話をしても、重要ですよねという総論はおっしゃるのですが、各論は校長先生任せというような反応をされます。
先生のおっしゃることは非常に重要だと私も思っているのですが、実際に動かすときに、先生の御経験がどの程度の範囲までなさっておられるかというのは私は分からないのですが、どのようにすればその辺りが円滑に行くのか。例えば校長会に話をして、校長先生に知っていただかないといけないのかなという印象を私は持っていたのですが、その辺りの、どうすればこの地域連携がもっと進んでいくかという、先生の御経験を踏まえて御意見をお教えいただければと思うのですが。

【木下委員】ありがとうございます。教育事務所は県教委の組織の一部なのですが、よく教育事務所って何をしているところと聞かれます。岡山県内には教育事務所が2か所あり、岡山教育事務所の場合は、政令市岡山市を除く16市町を所管しています。
市町村の教育委員会への指導・助言や学校経営プランに基づく学校訪問を実施している県教委ですが、割と小中学校とは接点が多い状況です。
渡辺委員の御指摘のように、教育事務所では、地域と連携していく重要性については、いろいろな研修会や市町教育長にもこれまで話してきていて、御理解を進めているところです。一番効果があるのは、コミュニティ・スクールの校長先生が、地域と連携したことによって子供がこう変わりましたとか、学習や教育活動がこんなに深まりましたという実体験をもってお話をされるのが理解しやすいと感じています。学校園に理解いただくには、コミュニティ・スクールの仕組みとか理念をお話しするよりも、やはり同じ立場の方から意見を聞くというのが一番効果的なのかなと感じています。お答えになりましたでしょうか。

【渡邉(正)部会長】引き続きまして𠮷門委員、お願いします。

【𠮷門委員】お二人の先生、御発表ありがとうございました。木下委員に質問を大きく2点させていただきます。1つは公民館の防災と地域連携、もう1つはEARTH、教員の人材育成という観点から御質問させていただきます。
まず1点目に、本当に岡山市さんはすばらしい公民館活動での防災、それと学校がそうした地域との連携、すばらしい活動をされていらっしゃると思いますが、こういうことができるからには、伝統的にこれまでの習わしというか、公民館活動の活性化のためにいろいろ施策としてされてきたこともあると思いますが、岡山市さんは政令市でありますから、市としてそういう生涯学習に関して、公民館活動の中で防災というふうなことがいつぐらいからあったのか、されてきたのかということと、それから、何か指針や活動方針のような市全体のものがあって、今のような充実した活動がされているのか。
これからそのほかの地域でも進んでいくために、そうしたところがもしあってのことなのか、それとも地域の自発的なものなのかということを、少しお聞きしたいと思いました。関連して、岡山県全体ではどのようになさっているのかなということ、公民館活動に関してはこの2点です。
それからもう1つは、EARTHのことも岡山でも御準備されているということもお話を伺いましたが、大きな災害があった後、兵庫県のEARTHが全国に災害派遣されたところで、その教訓をもらって、それぞれの地域でEARTHの活動が始まっているというふうにこれまで認識していましたが、高知でもそういう活動ができたらいいなと思いつつ、なかなか未災地でそういうふうにえいやっというのは、なかなかこれまでできていないところですが、これから考えていこうとしている自治体に、具体的にどういう順番で――兵庫県の場合は、自発的にもともと先生方の動きがあって、そこに県教委がきちんと制度設計をされたというふうに伺ったこともあるのですが、岡山県でもし進められていることの現状をお聞かせいただけるならばいただきたいことと、それから、災害対応にEARTHは特化すると思いますが、この部会での議論として、やはり学校安全の中核となる教員、それぞれの学校・地域で牽引される教員が育ってほしいという議論がこれまでもあったと思いますが、そこと絡めて、学校安全全体と絡めて何か御意見があればお聞きできたらと思います。よろしくお願いいたします。

【木下委員】ありがとうございます。まず1点目の公民館ですが、岡山市の公民館がいつ頃から防災に取り組んでいたか、という点においてですが、結構歴史が長く、事前に岡山市にお伺いしたのですが平成30年の7月豪雨以前からも防災に取り組んでいます。公民館活動の中で防災に取り組んでいる経緯は、公民館基本方針を、岡山市が策定しそれに基づき運営しておられます。
岡山市が目指す主要7重点分野というのがあって、そのうちの1つが「防災・減災(安全で安心なまちづくりの推進)」だったと思うのですが、そういう方針があります。この方針ですが、教育委員会で、公民館の運営をこういうふうにやっていきましょうと言って決めていくものでなく、岡山市が公民館の方針を策定する際に、実際に公民館職員を入れて方針を組んでいます。ですから、より本当に取り組まなければいけない内容が盛り込まれているというふうに聞いております。これは平成31年3月に策定されております。
これは岡山市の取組、政令市ですが、岡山市は公民館活動がかなり活発なのですが、その良い取組を県内にも広げていこうということで、岡山県公民館連合会において、広域的に研修とか情報交換を行っています。そのひとつである公民館職員同士で選ぶ「公民館アワード」を通して毎年、ここの公民館は頑張っていますということで事例紹介したり、職員同士の情報交換の場を県の公民館連合会が進めています。公民館は以上でよかったでしょうか。
EARTHのことですが、災害が起きる前からEARTHの研修は岡山県内でもしていたのですが、やっぱり実際災害に遭って、まず何から対応するかというと、頭では分かってはいるのですが、実際災害対応の経験が少ないので、何をどうしていいかというのが分からないというのが現状でした。
先ほど総務省の職員の話をしたと思うのですが、実際被災した学校に行ってみると、たくさん自治体の職員が応援で入っており、後々聞くと、やっぱり派遣して支援に行ったことが積み重なって、自分たちの地域が被災したときに、応援した職員のスキルによって自分たちの地域を守るということにつながっているというのを聞きました。災害があったから岡山県でもつくろうとはなっているのですが、いつどこで起きるか分からないということを考えると、やはりEARTHのような体制は広域的に要るのかなと思っております。
中核職員のお話ですが、今年、兵庫県の研修に参加をしたらすごく希望者が多くて、開会のときに、全員がEARTH員に任命されるわけではありませんとおっしゃっていました。希望多数で、受講しても任命されないかもしれないというぐらい自発的に教職員が集まっているという現状を目の当たりにして、安全の研修は、自分が担当だから受講しますではなくて、自ら積極的に受講しようという教職員の前向きな姿勢がすごく大事なのかなと思っています。
結局、被災地に派遣されるのは一部のEARTH員ですが、EARTH員になって派遣されなくても、日頃の防災活動とか防災教育に力を入れられているので、その組織づくりというほうが大事なのかなと思っています。岡山県も災害応急のために組織するのですが、もっと兵庫県のように裾野を広げて、日頃の防災教育に前向きな職員を育成して、それが結局、子供たちの自主的主体的な防災活動につながるのではないかと感じております。以上でよろしいでしょうか。

【渡邉(正)部会長】ありがとうございました。あと村山委員、中井委員、山田委員からの御質問がありますので、前半、時間が限られていますので、この後、残り3名の委員の御質問で前半は終了させていただきたいと思います。それでは村山委員、お願いいたします。

【村山委員】渡辺弘司委員に1点だけ質問があります。突然死の件で、特別支援学校の高等部の発生率が高いというところで、自分も身近な経験がある中で、心臓病の引継ぎの部分であるとか、思春期になるとてんかん発作などが初発で起こるケースも非常に身近にあったので、そういった思春期の要因があるのかと自分の中では考えていたのですが、先生のお考えの中で、高等部の発生の要因について御意見、御知見をいただけたらと思います。以上です。

【渡辺(弘)委員】ありがとうございます。御質問に対してお答えしたいと思います。
学校心臓検診の結果を見ていただくとその辺りが分かりやすいかと思うのですが、不整脈の発生というか同定率ですね、心臓検診で見つかる同定率というのは学年ごとに上がってきます。これが思春期だからというよりも、大体年齢に沿って上がってまいります。
例えば心室性期外収縮とか心房性期外収縮も含めて、不整脈の発症率というのは小学校、中学校、高等学校というふうに年齢が進むにつれて上がってまいりますので、やっぱり何らかの、思春期というよりも、子供のときに加齢というのはおかしいのでございますけれども、まず一つは、やはり不整脈が出やすいという根本的な体質というか、傾向が一つあるのではないかなと思います。
2つ目は、特別支援学校は基礎疾患がございますので特殊だとは思うのですが、一般の学校でいうと、小学校、中学校、高等学校になるにつれて運動のレベルが違ってくるということがあると思います。
安静時の死亡というのはそう変わりませんので、やはり運動時の死亡というのが増えてまいりますので、運動の強度の問題ということも関係しているというふうに、心臓検診の中では考えております。よろしゅうございますか。

【村山委員】ありがとうございます。

【渡邉(正)部会長】続きまして中井委員、お願いいたします。

【中井委員】私は岡山の木下委員の、一番最初に岡山県の子ども110番が黄色いコーンで1万か所以上というような御紹介のときに思ったのですが、自治体によっても違うと思うのですが、子ども110番の家になるというのは、正直言うと、書類をぺらっと出したらそれでステッカーをもらえちゃったりするケースもあって、どこのどなたか分からない人も、ある意味でこのステッカーを掲げられるというところもあれば、個人的には民家よりも、もしものときは企業とか店舗とかいうところへ駆け込むほうがいいんだよというようなことで、子供さんには声かけをしたりするのですが、何か地域として、子ども110番というのが整備される、もしくは統一されたマークを使うということが、果たしていいことなのだろうかというところについて、もう少し補足していただければと思いました。

【木下委員】ありがとうございます。学区内だけで生活している子もいれば、学区を越えて、市を越えていろいろなところに出かける子供もいる中、子ども110番のマークがいろいろ違ったときに、どこに行ってもすぐ駆け込めるために、県として統一した目印を岡山県はつくっています。
岡山県内でもステッカーもあればプレートもあったり、旗もあったり、学校ごとにつくっているところもあるのですが、その中で、この110番の黄色いコーンというのは、ちょうど1年生の目の高さ、視界に入りやすいという意味で、この110番のコーンというのを県が新規のところに設置するという事業をしています。
先ほど、1万か所あるとお伝えしたのですが、平成18年から配っております。1万か所ということは、当然古くなって傷んできたりもするのですが、県に民間から寄贈していただいて、修繕の必要なところは民間のものを利用しているというような状況です。
併せて、子ども110番が多いといいですかというお尋ねですが、110番の家がたくさんあるからといって安全だとは言い切れないのですが、防犯の看板が多いところとか、その地域がきれいに管理されているところは犯罪が起きにくいという理論もあり、学校とか地域には、なるべく子ども110番、子供の安全とか地域の安全につながるので、ぜひ御協力くださいということでお願いをしています。
県は、110番の家を設置しているわけではないので、110番の家の方に黄色のコーンを設置する支援する事業を行っております。以上です。

【渡邉(正)部会長】ありがとうございました。あと山田委員と石井委員が挙手されているようですので、山田委員、石井委員の順で前半は終了したいと思います。では山田委員、お願いします。

【山田委員】木下委員に、中井委員の質問でちょっと思い出したのですが、110番の家の設置のステッカーを自分の地域では配っているのですが、そのステッカーが、もう10年か15年以上前に設置されたもので、今そこが結構空き家になっていたり、実際に住んでいないのに110番のステッカーが貼られていたり、もう朽ちて落ちてしまったり。
以前、小学校の安全部会か何のときに、ステッカーの管理はどういうふうにされているのですかというのを市の教育委員会のほうに質問したのですが、よく分からないと言われてしまって、多分、配って終わってしまった状態だったんですよね。実際にそれを管理しようと思ったときに、どうするのが一番いいのかというのを教えていただければと思います。

【木下委員】管理に関してのご質問ですが、例えば空き家になったところのステッカーを剥がすとか、そこまで管理はできていないのですが、岡山県の場合は年に1回、地区に子ども110番の家が何軒あるか調査しています。学校や保護者が、地区の子ども110番の方に今年もよろしくお願いします、とお願いしています。その中で、やめたい希望があれば学校のほうに、連絡が伝わり、数が落ちるということになっています。
先ほどの寄島小学校の学校運営協議会の説明の中で、昔は子ども110番の家だったけれども空き家になってしまったとか、少なくなっているなというのは地域の方がよく知っています。地域で安全活動を取り組んでいるという姿勢を見せるためにも、もっとお願いしようというようなことが話題にも上がっていたので、どこに子ども110番の家があって、空き家があってというのは、地域の方のほうがよく知っておられます。
完全かというとどこまで正確かはちょっと分からないのですが、結構それが県警察の指標になっていたり、今年何軒ありますということで、岡山では数は一応把握しているということになっております。

【渡邉(正)部会長】よろしいですか。それでは石井委員、お願いします。

【石井委員】インターネットの接続の不具合で入室が遅れてすみませんでした。それで、残念ながら、木下委員、それから渡辺委員の発表を少ししか聞くことができなかったのですが、事前に資料はきちんと読ませていただきました。
木下委員の家庭・地域との連携についての中で、学校運営協議会と学校安全というところ、とてもすばらしい取組がされているなと感じています。やっぱり児童生徒が安全であるということは、そこの地域住民にとっても安全であると言えると思います。特に、防災に関してはやっぱり地域の課題であり、学校でも課題であるというところで、コミュニティ・スクールの大きな柱になり得るだろうと思っています。
やっぱり現場にいて、子供の力ってすごいなと思うんです。防災教育を受けた児童生徒、それから地元に詳しい保護者、地域の方が同じテーブルで話し合う。それからコミュニティ・スクール、学校運営協議会の中に子供たちも参画させてもらうと、とてもいい話合いができるのではないかなと思っています。
この地域で児童生徒ができること、そしてまた地域がしなければならないことというふうに、地域の中にある学校ですから、全体としていいふうに高まっていくのではないかなと思っています。
そういう意味でも、やっぱり防災・安全とかいうことに関しては、コミュニティ・スクールはとても大事だろうなと思いますし、防災・安全というものを通じて実のあるコミュニティ・スクールが実現していけるのではないかなと思っています。すみません、意見です。以上です。

【渡邉(正)部会長】御意見ということでよろしいですか。

【石井委員】はい。

【渡邉(正)部会長】それでは、時間が1時間を過ぎましたので、後半のほうに移りたいと思います。続きまして、「学校事故対応に関する指針に関わる議事について」、まず文部科学省から御説明をお願いします。

【朝倉安全教育推進室長】文部科学省でございます。後半は、学校事故対応に関する指針についてということで、この後3名の先生方から御意見を頂戴することになっておりますので、私のほうからは、学校事故対応に関する指針の概要について、簡単に5分程度時間を頂戴いたしまして、御説明させていただきます。
資料4のスライド1ページの左側を御覧ください。まず、指針作成に関する経緯についてです。
平成23年、24年に、全国で学校現場における重大事故・事件が多く発生いたしました。京都市の小学校で小学校1年生がプールで溺れて亡くなる事故や、東京都調布市で小学校5年生が給食で食物アレルギーで亡くなる事故。また、宮城県石巻市では東日本大震災による津波で多くの児童が亡くなるという事故が発生するなど、情報公開や原因の調査に対する学校及び学校の設置者の対応について、国民の関心が高まりました。
学校の管理下において事件・事故が発生した場合、学校及び学校の設置者は、児童生徒等の生命と健康を最優先に、迅速かつ適切な対応を行うとともに、発生原因の究明やこれまでの安全対策の検証はもとより、児童生徒等に対する心のケアや保護者への十分な説明、再発防止の取組など、事件・事故御の学校側の対応を強化する必要があります。
文部科学省では、平成26年度から学校事故対応に関する調査研究有識者会議を設置し、これまで発生した学校の管理下での事件・事故災害における学校及び学校の設置者の対応について実態を調査するための調査を行うとともに、学校の危機管理の在り方、再発防止を含む事故を未然に防ぐ取組、第三者委員会など調査組織の必要性や在り方について、ヒアリング等により意見をいただきました。
平成28年3月に、学校事故対応の在り方について指針を取りまとめたところでございます。28年度から、同指針に基づく事故後の調査の実施等について、都道府県教育委員会等に依頼しております。
右側を御覧ください。次に、指針に基づく対応のポイントについてです。
事故発生の未然防止及び事故発生に備えた事前の取組として、教職員研修の充実や各種マニュアルの策定・見直し、安全教育の充実、安全管理の徹底、事故事例の共有や緊急時対応に対する体制整備などについて示しております。
事故発生直後の取組としまして、応急手当の実施や保護者への連絡について示すとともに、また、事故発生直後から事故後1週間程度の初期対応時の取組として、死亡事故や治療期間が30日以上を要するような重大事故については、学校の設置者等に事故報告を行うよう求めております。特に死亡事故につきましては、道府県教育委員会等を通じまして、国に報告することとなっております。
また、学校による基本調査を実施し、学校の設置者による詳細調査へ移行するかどうかの判断を行うよう求めております。
詳細調査の実施に当たっては、中立的な立場の外部専門家から成る調査委員会を設置すること。調査委員会または学校の設置者は、調査結果を保護者に説明すること。調査結果を学校の設置者などに報告するとともに、都道府県教育委員会等を通じて国に報告することを求めております。
学校の設置者は、報告書の提言を受け、速やかに具体的な措置を講ずる。講じた措置及び実施状況について、適時適切に点検評価することとなっております。また国は、提出された報告書を基に情報を蓄積、教訓とすべき点を整理した上で、全国の学校の設置者等に周知することとしております。
2ページを御覧ください。こちらは、平成28年4月から令和元年10月まで文部科学省に提出された詳細調査報告書のうち、13件について横断的に整理いたしました。こちらはその概要です。
本報告書は、令和2年3月に学校事故対応に関する指針に基づく詳細調査報告書の横断整理として取りまとめ、各都道府県教育委員会等に周知しております。本報告書を通じまして、重大事故の事例の一端をあらかじめ知っていただき、万一の場合の適切な対応について役立てていただけるよう作成したものであります。
なお、本日の会議資料の参考資料3と4に、学校事故対応に関する指針と、その指針に基づく詳細調査報告書の横断整理の報告書本体を添付しておりますので、後ほど御覧ください。
3ページを御覧ください。令和3年5月25日付で、各都道府県教育委員会等に対しまして、学校事故対応に関する指針に基づく適切な事故対応について、改めて周知いたしました。こちらはその概要でございます。
多くの学校及び設置者においては、指針に基づき適切な対応がなされているところでございますが、指針の趣旨、内容に関する認識が十分でないと思われる例も見受けられたことから、学校事故に対して適切な対応が図られるよう、改めて周知を行ったものです。
内容は大きく分けて3つです。基本調査の速やかな実施及び保護者への丁寧な説明について。詳細調査への移行判断及び実施について。都道府県教育委員会等の指導・助言及び国への報告について、改めて周知いたしました。
私からの説明は以上ですが、文部科学省といたしましても、引き続き関係省庁や関係機関と連携を図りながら事故防止に努めるとともに、適切な事故対応が図られるよう、今後とも取り組んでまいります。

【渡邉(正)部会長】では引き続きまして、情報提供をいただきたいと思います。情報提供につきましては、それぞれ10分程度でお願いいたします。それでは最初に、藤田委員よりお願いしたいと思います。藤田委員、お願いいたします。

【藤田部会長代理】大阪教育大学の藤田です。それでは私のほうから、まず、この学校事故対応に関する指針の基になりました、学校事故対応に関する調査研究を担当させていただいた経緯から、事故対応指針の背景について、先ほど文部科学省のほうから御紹介いただきましたが、追加的に御紹介をさせていただきたいと思います。
スライドをお願いします。学校事故対応に関する調査研究の中でも、いわゆる学校における事故災害の発生直後から1週間の対応状況についての回答を見ますと、調査を行いましたのが平成17年度から平成25年度の9年間に、日本の学校の管理下で発生した死亡事故及び7級以上の後遺障害が残った事案、832件についての再調査を行ったものです。回答いただきましたのが558件、全体の67.1%から回答いただいた結果を集約しました。
その中で、やはり初動対応に関して、まず当該事故・災害等のヒヤリハットについて、事前に観察されたのかということを確認しましても、ヒヤリハットがあったという回答がやはりゼロではないと。この赤字で示しているところに課題があるのだろうと思います。
また、事故・災害発生後、その直後に被害者の遺族、家族への対応が適切に行われましたかという質問でも、「思わない」という回答がやはり8%存在している。さらに、救急車の出動要請ができたかという設問では、「できなかった」という回答も30件ほどある。
また、事故対策本部を設置する等、学校として組織的に適切な対応を取ることができましたかといった設問でも、「できなかった」という回答、これもやはり26件存在している。この辺りをなくさなければならないということで、いわゆる事故対応指針がまとめられていったかというふうに思っております。次お願いいたします。
先ほど文科省のほうにも御説明いただきました事故対応に関する指針の中で書かれている、事故発生の未然防止のための取組として、項目として挙げられております。
つまり、この背景は、この事故対応に関する調査研究の中で、教職員の研修や児童生徒への安全教育が不十分であったという反省、また、児童生徒や教職員数が変わって、校舎の施設設備が変わっていったにもかかわらず、数年前に作られたマニュアルをそのまま使い続けている。マニュアルの見直し・整備が行われていなかった。
また、国内の学校で発生した事故災害に関する情報収集意識が、いわゆる学校現場において低い状況があった。
また、事故発生後に確認したところ、国内で類似した事例、前例が発生していたことがあったにもかかわらず対策が講じられていなかったという状況。
また、低学年の担任が気づいたヒヤリハットポイントなどを高学年の担任が共有しておらずに、結局そのヒヤリハットポイントで高学年の児童に事故が発生してしまった。
また、事故発生時に役割分担が教職員にできておらず、年度当初であったために円滑な対応ができずに対応に時間がかかってしまったという反省。
また、事故発生時に管理職が共に出張していて初動対応が遅れてしまったと。こういうことについては現在は改善が行われているかと思いますが、実際にそういったことがあったことへの反省がありました。
また、学校外の施設を利用しているときに事故が発生して、事前にAED等の設置状況を確認していたのだけれど、休日であったためにそのAEDが体育館の中にあって取り出すことができず、結局対応が遅れて命を救うことができなかったとか、また、休日で管理職に迅速な連絡ができなかった。これは休日で管理職が電波の届かないところへ、趣味で登山に行っておられたとか、また、管理職が電源を切っておられたということで連絡がつかなかったとか、また、日頃からの教職員研修の協力を通じて顔の見える関係ができていなかったということが挙げられております。
また、事故発生後の取組ですが、ここで重要なのは、やっぱり応急手当ができてなかった事例。それから第一報の内容、いわゆる学校事故災害が発生した際の混乱した状況、責任の所在など、考え過ぎて時間が経過してしまった。実際、調査研究の中で、最初の保護者への報告が発生後2日以上経過していた事例というのが、調査したうち36件、全体の約10%存在していました。そういった対応が、時間が経過すると、連絡が遅れるほどやはり保護者の不信感等が発生してしまう。
また、教育委員会等への報告による人的支援の要請が遅れて、学校内で混乱した状態が続いてしまって、被害者に寄り添うということができなかった。
また、道義的な責任というものを謝罪し、その上で事故対応に関わる基本調査を学校が3日以内に実施し1週間以内に報告すること、これを伝える必要があるのではないかというのが、この事故発生後の取組の背景として存在しております。実際に調査では、校長が最初に報告した割合というのは全事例のうちの3分の1以下でした。ですので、校長の対応というものが適切でなかった事案というものがあったので、まずすぐに謝罪をして、その上で3日以内に基本調査を行い、1週間以内に調査結果を報告するということが重要だということが示されております。
続きまして次のスライドですが、詳細調査につきましては、いわゆる教育委員会が実施するということで、これは事故調査を行ったうち、当時まだこの詳細調査の内容についての検討はされておりませんでしたが、前回の調査で、大体20%の事故・災害について、いわゆる第三者委員会等の委員会が立ち上げられていた。そのうち、委員会の事務局を担当しているのが、教育委員会と学校がそれぞれ半分ほどだったと。そういった中で、やはり詳細調査については学校ではなくて教育委員会、学校の設置者が担当して分担する必要があるのではないかということで、設置者が行うということが必要だと示されております。
また、その上で、いわゆる同地域となるわけですが、県立高校で発生した事故事例が同じ地区にある市立高校で共有されていないというようなことも起こっておりました。
また、被害を受けた児童生徒の保護者への対応に当たって、マスコミ等の対応を含めて、情報の混乱や誤解というものが起こっていました。先にマスコミからの情報が被害者のほうに伝わって、学校からの情報が適切に伝わっていなかった。当然、学校に対する不信感の形成につながってしまう。そういった中で、やはり窓口を一本化することの必要性ということが、この事故対応指針の中で述べられた背景となっております。次お願いいたします。
それで、私のほうから、学校事故対応の指針に関する提案という形で、まず、ここに挙げておりますように、事故や災害の教訓を共有して危機管理マニュアルを見直す。「まさかうちの学校では(ヒト事)」から、「もしかしたらうちの学校でも」という「ワガ事」への意識改革。その上で、さらに教職員だけではなくて児童生徒、PTA、家庭や地域の参加による実践が必要であると考えられます。これは「チーム学校」と呼ばれている内容かと思いますが、そういった中で、教員養成カリキュラムの中で、今回の資料に出ておりますが、いわゆる学校事故対応に関する指針や、また、参考資料の「学校事故対応に関する指針に基づく詳細調査報告書の横断整理」などの資料を活用して、教員養成の中で学校事故対応のシステムを活用した学校安全カリキュラムの検討を進めていく必要があるのではないかと思っています。
また、学校の教職員だけでなく、保護者や地域関係機関、警察、消防、スクールガードなどの関係者を交えて、学校の安全を協働、コラボレーションして取り上げていく組織活動の構築を進めるということも、検討を促すことが必要ではないかと思っています。
また2番目としては、先ほど申し上げましたが、学校側の過失による責任とは区別して、親権の代理委託を受けて預かった元気な児童生徒を、元気な状態で学校から保護者に戻すことができなかったことに関わる道義的責任ということについて理解が必要だろうと思われます。そういった中で、いわゆる管理職対象の事故対応に関する研修というものの充実が図られる必要があるのではないかと思います。
また3番目で、人的補充の支援ということですが、事件事故が発生した学校では速やかに学校の設置者に連絡して、いわゆる事業継続計画の観点から、支援スタッフの派遣を迅速に要請する。
人的補充の支援については、実は附属池田小学校事件後の大阪府警察本部による犯罪被害者支援、特に生活支援の事例に対する本学池田小学校の御遺族の評価を伺ったことがあります。
また、学校事故対応に関する調査研究のデータの解析の中でも、初動対応の状況とその後の学校の被害児童生徒の家庭との関係といったものの関連性を示唆する結果も出ておりました。
そのため、いわゆる犯罪被害者等基本法に示された被害者支援の考え方を参考にしつつ、学校事故・災害の発生後に、被害者及び被害者家族への生活継続に配慮した支援の在り方、例えば学校から学校の設置者への人的補充の要請を迅速に行うということについて、改めて危機管理マニュアルの中に位置づけを促していただく。そうすることによって、混乱した学校において人的措置が行われ、被害を受けた家庭に寄り添える体制といったものが構築されるのではないかと考えております。
今後の改めての事故対応指針の検討の中で、ぜひこういった件について、検討の中に入れていただきたいと思っております。私のほうからは以上でございます。

【渡邉(正)部会長】ありがとうございました。それでは続いて、桐淵様から御報告お願いいたします。

【桐淵博氏】お手元の最初の資料にありますように、私からは3点について意見を申し述べたいと思います。
まず1点目に、「指針」公表後の一定の成果についてです。一つは、突然死の防止などで救命事例が増えているように思います。それから「指針に基づく詳細調査報告書の横断整理」ですね、先ほど御紹介いただきました詳細報告によって、学校事故の再発防止に向けた具体的な教訓が明らかになってきたのではないかと考えています。
2点目に、現行の指針に関する具体的な改善意見を申し述べます。まず①、命に関わるものについてはもっと具体的に表現したほうがいいのではないかと思いました。詳細報告の中に、サッカーゴールの事故ですとか、あるいは柔道事故とかプール事故、熱中症などがありましたが、これらは過去にも事例のあることで、具体的な改善で防げるプリベンタルな面がすごく多いと思いますので、具体的に例を挙げて書いたほうがいいということ。
それから②、定期・継続かつ具体的な事例に基づく研修の促進が必要だと思います。特にBLS、一次救命処置については、この意義の徹底が不十分だと思います。これは渡辺先生もおっしゃっていましたが、2004年に日本ではAEDを市民が使えるようになったのですが、講習は広がっておりますが、やはり技術は教わっても、やっていいかどうかの判断ができないという現状のままになっているところが多いと思います。私が教育長をやっていたときの桐田明日香さんの死亡事故もそういう状況の中にありました。
もう1つは、大学で教わっていないこと。保健体育の免許を取る人と養護教諭の免許を取る人以外は救命処置を学んでいないため「これは専門外だ」という意識が一般の教員の間で非常に根強くあります。だから、養護教諭を呼びに行くという行動が最初に出てくるのだと思います。あとは、事故があるないで、学校や自治体によって温度差が生じているということが大きな問題かと思います。
それから③、私はいろいろ講演で全国を回っていて、「指針」などを知らないという教職員の方がすごく多いと感じました。ですので、教育課程と同じように説明会を開くなどして徹底したほうがいいと思いました。
それからもう1つ、④サッカーゴールの事故など、実際の死亡事例が出た場合には、事務連絡レベルでもいいと思うのですが、全国の学校に注意を呼びかけるような通知などを出すのも大切かなと思います。私はかつて中学校の教員をしていまして、学校では朝、職員が打合せをしますので、そこでこんな事例が紹介されると、その時点でサッカーゴールなどはチェックされると思いますので、通知などで注意喚起するという具体的な行動も必要かなと思いました。
それから大きな3番目で、「コンフリクト・マネジメント」です。これは、「意見の違いを組織の活性化につなげる」という積極的な意味合いで使われる場合が多いですが、この場合は「衝突や対立を回避するための危機管理」という意味で使っています。
預かったお子さんをそのままの姿で返すのが学校の最低限かつ最大の責任であり、そこに成長というお土産を少しでもいいから持たせて返すというのが、一般に教員が持っている理念であります。しかし残念ながら、大学できちんと学んでこなかったために、その能力がきちんと育っていない、精神性も純化されていないという現状があると思います。それが、事故防止や発生時の対応、事故後の適正な対応ができていないことの背景にあるのではないかと考えています。
そこで、教員養成課程で学校安全や事故防止を必須の単位化すること。これを専門性に格上げすることを提言したいと思います。
平成28年の教職免許法の改正で、「学校安全」が学ぶ内容には位置づけられているのですが、それは恐らく必須科目の中の1時間か2時間程度の内容なのではないかと思います。全国の大学の実態は把握しておりませんが、私の勤めていた大学で聞いても、教授たちの認識は、必須科目の中で2時間くらいで、誰が受け持つか分からないけど取り上げるかな、という程度でした。これを、「この単位を取らないと教員免許を取れない」というレベルのものに引き上げる必要があるのではないかと思います。
これは最近、教員志望者が非常に減っているということの要因の一つにもなっていることだと思います。私自身が中学校の教員になるときに、専門の数学を教えることに不安は感じませんでしたが、事故が起こったときに教員の責任が厳しく追及されることは学生でも分かりますので、それに相当する学びをきちんと積み上げないことが不安につながっているのではないかなと思います。
当然、現職教育、教職員研修にもきちんと位置づけることが必要かと思います。次お願いします。
これは先ほど申し上げました、救命事例が増えていることを示す資料です。これらは学校の中だけではありませんが、子供、小中高校生がそれぞれ関わる救命事例です。中には小学生が家庭で自分のお父さんを心臓マッサージで助けたという事例もあります。これはニュース報道も結構されておりますので広がっていると思います。
実は明日香さんの事故後、3,4年は、私は埼玉県の在住ですが、神奈川、埼玉、群馬、新潟など近県で、倒れた子供に対する救命処置を巡って訴訟になったりトラブルになったり、学校が批判されるケースのニュースがすごく多かったのですが、ここ数年はそれはほとんど見なくなりまして、今挙げているような救命のニュースが増えてきました。これは、「学校事故対応に関する指針」の中で、かなり具体的に応急手当について触れていることも、よい方向に働いているのではないかと考えています。次お願いします。
ところが、救命事例は増えていますが、まだまだ課題があると思います。この資料は文部科学省が調査したものですが、先ほど渡辺先生のお示しいただいた資料は公立学校だけでしたが、これは私立を含めた全学校種のアンケートで、教職員対象の研修をどれだけやっているかということです。平成30年度実績です。小、中、高の6、7%で、やっていない学校がまだ残っているということ。
それからもう1つ、全員対象の研修を実施している学校は、小、中、高と学校段階が上がると減っていきます。死亡事故は逆に中、高で増えますので、これはニーズとは逆行する、リスクを含んだ実態だと思います。事故発生が多い高校で全員が受けていないということです。恐らく「専門意識」、つまり、私は数学の専門、歴史の専門、事故対応は自分の専門外という意識が邪魔しているのではないかなという気がします。次のデータをお願いします。
これは、私が科研費を頂いて研究したものの一部をまとめたものです。左側は、平成28年から令和元年までの実質3年間で私の講演を聞いていただいた先生方のうち6,300名ぐらいの方々に応えていただいたものです。会場各地です。回答を役職別にまとめました。
緑に塗ってあるのが、「今、目の前で人が倒れたときに心肺蘇生やAEDで救命活動ができますか」という質問に対して「できる」と答えた先生たちです。
右側がさいたま市です。さいたま市は3,000名ぐらいの先生たちに回答いただきましたが、これは教育委員会を通じて配って回収しました。講演会に参加した先生にも講演の前に回答していただいておりますので比較可能かなと思います。私の講演を聞く前の回答ですので。
さいたま市のほうが非常に「できる」と答えている率は高いのですが、これは定期的な研修を受けていますし、明日香ちゃんの事故があったので、非常にリアリティを持って受け止められていることも背景にあると思います。受講回数も多いけれど、回数だけでなく、他人ごとでなくちゃんとリアリティを持って受け止めたかということも大きいと思います。
ただ、私が問題にしたいのは市の内外の差ではなくて、役職によって意識がかなり変わることです。管理職、養護教諭と一般の教職員、上は主任の人、主事・主任で、下は役職に就いていない一般の教員――どちらも一般の教員ですけれども、ここになるとがくんとその自信が減ってしまうのです。
通常、管理職とか養護教諭は「連絡を受けて駆けつける立場の人」です。救命処置においては、管理職や養護教諭を探しに行く何分かの時間がものすごく重要なのです。ところが、その現場にいる先生たちの意識や自信が低いという、これもニーズに逆行する現状になっているということです。この辺が課題だと思います。次お願いします。
これはお話のまとめですが、学校におけるEAP、これはAED財団でもまとめたもので、EmergencyActionPlanですね。子供が――子供だけじゃありませんけれど、人が倒れて反応がない、通常の呼吸がない、分からないときに、昔は「素人は触るな」でした。でも医学が進歩して、AEDが現れて、救命のパラダイムシフトがもたらされて、発想の転換が求められています。
「触るな」ではなくて、その反対に「すぐにやる、誰もがやる、みんなでやる」、「養護教諭を待たない、救急車を待たない」が重要です。養護教諭が駆けつけたとしても、救命活動はどのみち1人ではできません。「発想を転換すること」、これがすごく大事だと思います。
それから、救命のアルゴリズムは5年に一度、蘇生協議会が出すガイドラインが改訂されていきますので、まず小学校から体系的に学ぶこと。それから職場や地域で気軽に参加できる救命講習を広げて、AEDを身近にすること。子供に教えるのは「やらせるため」ではなくて、「みんなでやる」べきこととして教えること、などが重要なポイントになると思います。
スキルとマインドの両方を育むことで、将来、日本の社会は、人が倒れたら誰もが駆け寄って、みんなで手分けして助けるといった、そういう安心で、ある意味すてきな社会が到来するのではないかと思います。
すみません、トラブルでうまく資料が提示できなくて御迷惑をかけました。以上で私の話を終わります。

【渡邉(正)部会長】ありがとうございました。それでは引き続きまして、戸田様からお願いいたします。

【戸田芳雄氏】戸田でございます。御指名いただきましてありがとうございます。現在、日本安全教育学会の理事長を務めさせていただいておりまして、皆様にはお世話になっております。
今日は文科省から、事故減少の体験その他を語りながら、学校事故対応指針についての提言なり提案なり意見を言ってくれというようなことでございますが、不十分かもしれませんが、一応、最初は体験のところから入って、後のほうで指針に対してお話をさせていただきたいと思います。次お願いします。
参考にしたものはこの報告書でございます。次お願いします。
事例につきましては、平成29年3月27日、高校生の安全登山研修会が栃木県で行われたのですが、その中で雪崩に遭遇をして、8名が死亡し40名が負傷したという大変な事故でございました。次お願いします。
検証委員会を設置したわけですが、3月27日に発生しまして、実際にはひと月後ぐらいに第1回の委員会をやりまして、1か月間ぐらいのタイムラグがあるのですが、そこからスタートしたということで、後々この検証の作業にやっぱりかなり支障を来したというのが、このタイムラグがあります。ましてや山の事故ですので、雪があって雪崩があったという状況から1か月たつと、山は全く一変しておりまして、山に立ち入ることすらできないというふうなことで、その他の様々な公的な機関などから情報を得るのに非常に苦労したという事情がございます。
委員会は、委員は10名以内ということで、プラス協力員などもお願いをしたということです。
非常に多様な方を委員にお願いしておりまして、弁護士さん、それから教育関係は私、それから登山関係の機関である指導者、それから救急関係、あるいは気象庁の予報管理官など、この事故に非常に関わるだろうという多様な方を委員にお願いして、協力委員は山岳関係の方で、地元の山岳会の方をお願いしております。次お願いします。
委員会のところで、基本方針として、初めの第1回で確認をしたのですが、責任追及は目的としないということとか、関係者の疑問に答え、納得できる調査検証を目指す。認定に係る事実の確実性の程度に即して表現を統一するということを、苦労しながら、できるだけ皆さんの御理解をいただいて、なるほどそういうことがあったのかと。あるいは今後どんなふうにしたらいいのかという対策も含めて御理解いただけるような、そして、御遺族の方、けがをされた生徒さんもいらっしゃいますし、先生もいらっしゃいますし、その保護者の方もいらっしゃるので、多くの方々からとにかく幅広く御理解をいただいて、その後の対応について適切にお願いしたいということでやりました。
基本は、早く、教育長さんは3か月でやってくれということだったのですが、3か月で分かったのは大体概要、大まかにこういうことではないかということで、実は精査したおかげで、あと3か月で実質6か月、検証はかかりました。次です。
活動状況は、先ほど申し上げましたように6か月、実質全く6か月間でございまして、多くの方々から聞き取りをさせていただいたり、資料を収集したりというふうなことで進めさせていただきました。どうぞ。
場所はここです。ここが事故の現場で、これは事故の翌日ということのようで、防災科学技術研究所というところから御提供いただいた。すぐ翌日から調査に入りましたので、写真などはそこから頂いたものです。次、お願いします。
どこでどんなことが起こったのかということですが、真ん中の上のほうに通称天狗岩というところがあるのですが、その下のところに何か丸い矢印があるのですが、この辺が、この斜面のところから雪崩が起こって、下から登っていた子供たちが雪崩に遭って、事故に遭ったということです。次お願いします。
こんなルートで登っていったということ。特に、大きく事故があった第1班ですかね、一番緯度の高いところのグループだったのですが、このルートを通りまして、5番、6番のところ、一番上にありますが、その辺で雪崩に遭遇したということになります。どうぞ。
冒頭に申し上げましたが、先生も含めて8名が亡くなられて40名ほどが負傷されたという大事故でございまして、学校、教育が関わる事故としては日本でも非常にこれまでにない未曽有の事故であったということで、検証も大分難航しました。場所もそうですし人数も多いというようなこと。まず、誰もその場をきちんとつまびらかに見た人はいない。
それから、雪崩に遭った人たちというのは子供も先生も非常にパニックを起こしておりまして、その時の記憶などが非常に飛んでおりまして、なかなかどのルートを通ったかとか、何が起こったかということが分かりにくいというようなことで、大分苦労したことがございます。次お願いします。
いろいろなことについて議論、分析をいたしました。その間に情報を各方面からいろいろ集めさせていただきました。次。
この事故のまとめとしては、事故発生の要因というのは、一番の要因は縦になっている円でございますが、主催者である県高体連あるいは登山専門部の計画全体のマネージメント及び危機管理意識が欠如しているというのが最大の原因であろうと。
それから、両脇にありますが、さらにそれだけではなくて、その中に、左のほうは指導されていた、遠征をされた先生方の個人の資質ですね、登山の指導能力も含めてそうなのですが、そういうことがある。それから右側は、やはりそれを支えてあげるべきだった教育委員会であるとかそういうところも、長年、これは昭和30年代以降からすごく長くやられている研修会だそうで、それがほとんどノーチェックでやられていたということがございまして、ここの問題だろうと。
それから、全ての関係者に共通するのが、後ろに大きい丸が書いてありますが、背景的な要因としては、関係者全体の正常化の偏見とマンネリズムということが大きくあったのではないかということが明らかになりました。次でございます。
教訓と考えられることというのは、思い出したことわざというのは「転石、苔を生ぜず」というのがあるのですが、やっぱりリスクマネージメントというのは、常にいろいろなものを見詰め直して、改善して、PDCAサイクルで進めていかなければいけないなと。
その中で、特に問題なのは主体性を持った協働というのは、それぞれ指導者、それから周りにいらっしゃる方、県教委、いろいろいらっしゃるわけですが、その方がそれぞれ自分の役割は何かということを明らかに認識した上で、自分のやるべきことをしっかりやる。
それから、自分のことだけではなくて、3番目のところにあります情報の共有とコミュニケーションということはとても重要で、具体的に、事前でも少し登山行動を行っていたのですが、その時のコミュニケーションもほとんど行われてなかったということが問題になる。
それから、その中で危険予測と危機回避というのは、雪崩注意報が発表されていたさなか、しかも夜に新雪がおおむね15から20センチぐらい降っていたと。その下にちゃんと雪があったので雪崩が起こるだろうというような、そういう危険予測などは当然すべきであったのですが、それができていなかったということがあって、この3つの視点が非常に問題になるのではないかということが、委員会では話し合われました。次です。
7つの提言をさせていただきまして、学校でできること、指導者ができること、登山部でできること、栃木県でできること、それから全国的な、例えば国立登山研修所とかいろいろなところで、関係する部門でできることというようなことで、様々考えて、何をどうやったら複合的にこういう事故を防げたのだろうかということで、今後の7つの提言ということでお話をします。
特に7番目のところの、「生徒の学ぶ意欲を喚起し事故の教訓の風化を防ぐ」ということはとても重要で、大人が全部教えてあげて、やってあげるだけではなくて、やはり子供たち自身が学んでいって、登山のよさ、すばらしさを学ぶ・体験すると同時に、危険も同居するのだということをちゃんと学んで、その対応の仕方、危機管理の仕方なども子供たち自身が学ぶ機会というものを設けなければいけないのではないかということが、比較的新しい提言ではないかと思います。次に入ります。
検証の意義というのは、これは文章にはあまりしたくないのでしていなかったのですが、県の教育委員会の方であるとか学校の先生方とか、いろいろな関係の方々にお聞きして、事故が起こってから検証委員会を設置しますという発表をするまでは、毎日、業務以外で電話はほとんど使えませんでした。いろいろな方々からお手紙もたくさん来るし、それから、どこで調べたか個人のメールまで含めて教員の先生方などにはどんどん非難攻撃が入りまして、通常の教育活動ができなかった。非常に苦しい思いしたとおっしゃっていました。
それで、検証委員会をきちんとやります、それで明らかにして、それから対応策を取りますということを発表してから何とか収まって、通常の業務ができたということがありました。
それから、結局、意義としては、いろいろな方が様々におっしゃるけれど、とにかく分かったことは、事故を起こしたら大変なことになると。みんなが大変。みんながある意味不幸になる、被害を受ける、影響を受ける。だから事故を起こさないというのは、日頃ただ言葉だけで言っているけれど、本当に具体的に事故を起こさないということを、一つその活動の中で一人一人の先生方、保護者、関係者がきちんと認識しておくべきだということ、そういうことが言われました。
それで困ったのは、もう検証委員会が始まると同時に、全ての事柄をすぐ今、目の前で明らかにしてほしいというのが、報道の方であるとか御遺族の方とか、とにかく、あれはどうなんだこれは何だ、全て1から10まで全部、今教えてほしいという思いが強くて。それは、御遺族の方とか報道の方の思いは分かるのですが、残念ながら、これからじっくりしっかり情報を収集してやらないと本当に事実は分からないので、少し時間をくださいというお願いをしていました。でも毎回言われました。
それから、御遺族に寄り添うというのは個々別々の、非常に多数の方でしたので、要望とか思いとかがありまして、なかなか困難でございました。でも、できるだけ多くの機会を、委員会も公開を原則としてやらせていただいて理解を深めるということもやりました。
それから3番目、最後まで困ったのが、教員を罰してほしい。検証委員会の名で罰してほしいというんです。それはものすごく強かったです。これは役割上できないんだということを何度も繰り返して説明しました。
あと、情報の収集が難しいということがありました。次どうぞ。
そんな中で、提案も一部含みますが、検証を終えての感想と指針の運用等について感じるところがありました。
1番目は感想です。詳細検証には膨大な時間と労力が必要となって、教員にも負担が大きい。みんな当然、御家族の御悲嘆は当然でございますが、負担が多い。やはり、事故を起こさないということは本当に肝に銘じて、事故が起こってから「事故を起こさない」と感じるのはあまり得策ではないので、何とかしなくてはいけないなという感想を持ちました。
それで、死亡事故・重大事故の報告義務、そうはいっても教員の負担が多いわけで、なるほど全部明らかにして何とかでという要求はあるのですが、一見すると、報道関係なんかにもよく言われたのですが、指針には死亡事故は全部報告しろと書いてあるじゃないか、と言われるんです。でも、よく見るとそうではないですよね。必要でないものも当然ありますし、基本調査は必ずやるでしょうけれど、詳細調査ということはやはり必要なものとそうでないものがあるんだということとか、遺族の意向などもかなり大事にしてやっているんだというようなことは、やはり一般に分かるように、何か指針の中でも表現していただけるとありがたいなと。
それから、教員を罰してほしいという声に対しては、その指針の中でも、この役割についてもちろん書いてありますが、こういう部分についてもう少し積極的に、そういう役割でやるのではないんだよということを明確にしてほしいなとは思います。
それから、これは今でもちゃんと書いてあるのですが、ふだんの事故防止がとても大事だよと。未然の事故防止がとても大事なんだよということはしっかり書いてあるのですが、なかなか周知できていないというか、理解されていないというところがあって、例えば、これは管理職だったり保護者だったり先生方だったりするのですが、学校事故対応指針を簡単に解説するようなパンフレットのような読み物のようなもので、分かりやすいものを作って周知するなんていうことも一つ方法なのかなと。私は、中身は相当うまく、よくできていると思うので、そういう啓発の方法、あるいは研修の場でそれを活用するなんていうこともできたらどうかなと、これは提案になるのではないかと思います。
最後になりますが、やっぱり研修と啓発というのは最も重要なんだろうということで、教員・管理職をはじめ、特に管理職の研修は重要ですが、教員研修などについて、あと保護者とかいろいろな方々にも啓発をする。既に学校等でもやられていますが、やはり継続的に研修と啓発に力を入れる。そういうことについて、これまでも書いてありますが、ぜひ指針の中でもより分かりやすく、できればパンフレットのようなもので広くできればいいかなと思います。最後になります。
最後は、1行目です。私の結論として、事件・事故災害というのは未然防止が最も重要で、学校事故対応指針というのはとても役に立つ、意義のあるものだろうと思います。
この中身、当然内容的にはまた改善されるのでしょうけれど、それを含めて、やはり関係者に周知できるような方法を一つ考えていただければありがたいなと思います。以上でございます。

【渡邉(正)部会長】ありがとうございました。
御質問、御意見をいただく前に、藤原局長がご到着されましたので一言御挨拶をいただきたいと思います。お願いいたします。

【藤原総合教育政策局長】どうも失礼いたします。昨日付で総合教育政策局長を拝命いたしました藤原と申します。前職は内閣官房のオリパラ事務局長でございまして、東京大会の開催に向けて奔走しておったのでありますが、大会が終了いたしまして、文部科学省のほうに戻ってきた次第でございます。
委員の先生方におかれましては、学校安全という今、大変大きな注目を受けているこの分野について、様々な形で御審議をいただきまして誠にありがとうございます。来年度以降の第三次学校安全の推進に関する計画について、今年度中に策定をしなければならないという大事な局面を迎えていると承知をしております。
どうぞ引き続き、先生方の様々な御知見をこの部会の審議に生かしていただけるよう、御協力方よろしくお願い申し上げます。どうもありがとうございました。

【渡邉(正)部会長】ありがとうございます。それでは、御質問、御意見をお願いしたいと思います。時間が大分押しておりますので、短めに皆さん、よろしくお願いいたします。渡辺弘司委員から御質問があるようです。

【渡辺(弘)委員】学校保健会の渡辺です。藤田先生と戸田先生に1個ずつ質問しますので、簡単にお答えいただければと思います。
藤田先生のほうにお聞きしたいのは、再発防止策で共通理解を図るということで、報告書の内容に関しての情報提供ということが書いてありますが、個人情報との兼ね合いをどのようにお考えかという点をお聞かせいただければと思います。
それから戸田先生、いつもお世話になります。戸田先生にも幾つかあるのですが、1個だけ質問させていただきたいのは、医療も関係するのですが、報告書を作成するときに、それが訴訟の、つまり裁判の資料として扱われるのではないかということで、大変書きぶりを我々も苦労して報告書を作成するのですが、そのような配慮はなされなかったのかどうか。つまり、事情聴取をして報告書を書いたときの書き方によって、それが裁判の資料として扱われるということは考慮されたかどうかという点を教えていただければと思います。以上でございます。

【渡邉(正)部会長】では、藤田委員からお願いします。

【藤田部会長代理】御質問ありがとうございます。個人情報につきましては、情報共有の中でいわゆる事故の経緯、プロセス、またその特徴等についての情報を共有していくということが大切かと思いますので、当然、前回の事故調査研究におきましても、いわゆるスポーツ振興センターで出されている基本的な情報を中心に分析をしております。
ですので、当然、個人情報に対しては万全の配慮が必要であるというように思っております。

【渡邉(正)部会長】それでは戸田様、お願いします。

【戸田氏】こういう事故ではやっぱり訴訟とか、後で紛争になるというのは予想しておりますので、委員会としても一応それは予想しております。
ただし、先ほど申し上げましたように、責任追及とかそういうことについては言及しませんということの延長から、できるだけ事実であろう出来事を洗い出して拾い出して、そして明らかになったことを表現していくということで、殊さらに、こういうふうに書いたら訴訟が起こるのではないかという、そういう表現上の配慮はいたしておりません。
ただし、情報を提供いただけるほうの方、救急病院とかお医者さんとかDMATの方とかいろいろな方々から情報提供いただきましたが、そういう時点で、ここはということで、向こうの提供いただける方のほうから、ここは微妙な問題なので発言は控えますとか、ここは飛ばしてこんなふうにしてということで、むしろ提供いただける方のほうがそういうことをお考えいただいてやっているみたいで。
あと、警察は1つの情報もいただけませんで、確認もできませんでした。それは当然といえば当然ですが、日付すらも確認できないみたいな感じのところで、全く警察とは接触はできませんでした。消防とかいろいろな関係の機関は、かなり積極的に御協力いただいたと思います。先生、そんなところでよろしいでしょうか。

【渡辺(弘)委員】黙秘権というのがございます。我々も事故で報告書を書くために聞き取りをするときに、黙秘権があるかないかということを相手に提示するかどうかというところでいつも悩むところがございました。裁判と報告書の調査というのはちょっと意味が違うので、その辺りをお聞きしたかったということです。ありがとうございます。

【戸田氏】なるほど。その関係でいうと、初めから目的と、委員会のメンバーとかを全部紹介しまして、お聞きしたいことはこういう点ですと項目を全部列挙しまして、この中で特に差し支えない部分を御提供いただきたいということをやっていますので、黙秘権というのはありませんで、ただ、全くうちは情報はあげられませんということも幾つかありました。その情報は、だから入っておりません。

【渡邉(正)部会長】ありがとうございます。小川委員から御発言があるようですので、お願いします。

【小川委員】藤田先生に質問というか御意見をお伺いしたいと思っております。いつも、事故の問題を扱うときに思うのですが、企業が取り組んでいる産業事故防止の様々な手法だとか対応策を、学校安全についても導入できないのかなと思っております。
例えばヒヤリハットが活かされなかったという調査結果がありましたが、工場がある会社だとインシデントレポートシステムというのを導入しています。医療の現場でも、医療事故防止のために、ヒヤリハットや、インシデントがあったら事例を報告して全体で共有するようなシステムがあります。また、QCサークル活動というのを行って、事故のないように作業者の方々が過去の事故事例を勉強して共有する、あるいはインシデントの事例について共有しています。
要するに、同じ事例が何度もあちこちで起きているということ自体がおかしいわけで、類似の事故を防止するためにはそういったインシデントレポートシステムとか、QCサークルの活動などを活かす方法もあると思います。
また、作業に入る前には、ツールボックスミーティングといって、道具の点検と併せてワンポイントの危険予知トレーニングを実施することもあります。学校現場では一回一回の授業でそういうことはできませんが、体育の授業の前とか、プールだとか、暑い日にスポーツの練習があるときなどはワンポイントのKY(危険予知訓練)を導入するとか、そういう企業の取組を導入する方法がいろいろあるように思うのですが、先生の御意見をお伺いしたいと思いました。

【藤田部会長代理】御質問ありがとうございます。小川先生御指摘のように、企業のほうでいわゆるヒヤリハット事例、当然医療機関等においても大変進んだ取組が行われております。
そういったもので、現在、学校でもヒヤリハット事例等の取組というものが、いわゆる校内の安全チェックであったり、いろいろ展開されていますので、そういった活動をより体系的に取り組めないのかなというふうにも考えています。
そういった中で、前回ちょっと御紹介させていただいたように、いわゆるGIGAスクール構想等でのICT端末を使って、子供たちと教職員、また保護者などにもPTA活動として安全点検、ヒヤリハット等に参加してもらう。そうした中で、まさにアクティブラーニングの考え方になりますが、主体的で対話的、そしてより深い学びという形への展開というのが可能になるのではないかと考えた実証実験を、今、本学附属池田中学校でやっているのですが、そういった活動で、今まで教員が安全点検だけやっていて、その共有というのがあったのですが、それを見る目を変えて、情報をさらに子供たち、またPTAとか地域の方にも共有してもらって、その視点をもらうというのが重要でないかなというので、ぜひ今後そういった形で取り組みたいと考えております。

【小川委員】ありがとうございました。

【渡邉(正)部会長】それでは、松本委員からも御発言をお願いします。

【松本委員】手短にいきたいと思います。中京大学の松本です。戸田先生の御発表で最後のほうにおっしゃった、簡単なパンフレットで毎年のように多くの教員の先生方に勉強していただくというのは、すばらしいアイデアだと思いました。
事故にはいろいろな類型がある程度分類できると思いますので、そういったもので何種類かを作って、毎年30分でもいいので大事なところだけ、できれば全員の教員の先生方に勉強していただく、知識をブラッシュアップしていただくというのがすばらしいアイデアだと思いました。
あとはもうコメントですが、どなたかの御発表にありましたが、AEDは今は研修を受けなくても誰でも扱えると思います。この点を確認させてください。
もう1つ、これはどなたに質問していいか分からないのですが、私も大学で、人数は限られていますが救急救命の演習の授業を持っております。毎年、「心肺蘇生とAEDの使い方」という授業を担当しています。
ここで感じるのは、練習用のAEDを実際に使って触ってもらうと、参加者は少なくとも次から自分でできそうですということになります。本物のAEDは練習用には使えません。世の中にはたくさん結構普及しているとは思いますが、じゃあ練習用のAEDってどれぐらいの数が普及しているのかというようなデータを、どなたかお持ちでしたら教えていただければと思います。以上です。

【渡邉(正)部会長】最後の御質問なのですが、桐淵様、何か御存じでしょうか。

【桐淵氏】AEDの練習用の機器ですが、これは消防や日赤、あるいはさいたま市の教育委員会などは公費で購入して使っておりますが、講習のどのぐらいがそれを使っているかというのは、ちょっとデータは分かりません。ただ、模擬用の練習教材も今は廉価で販売されておりまして、財団も教材開発をしていて、本物のAEDそっくりではないですが、似たような機器で練習することも可能になっています。
それから、AEDは講習を受けなくても使えます。特に119番通報をすると通信指令員が指導してくれますので、ぜひそれも強調していきたいと思います。

【松本委員】ありがとうございます。

【渡邉(正)部会長】最後のお話なのですが、今年度から中学校の保健体育では、AEDも含めた心肺蘇生について演習を実施するということになっています。そうしますと、学校で買うというのはなかなか大変だと思いますので、教育委員会が必要数をそろえたり、あるいは消防署から借りて実施しているということのようです。
あと、来年度からは高校も同じようにAEDも含めた心肺蘇生の実習が授業の中で入ってきますので、今後AEDを含めた心肺蘇生法ができる人たちが増えてくるのではないかということを期待したいと思います。
あと、中井委員のほうから感想が書かれているのですが、何かお話しいただければと思うのですが、いかがでしょうか。

【中井委員】感想ではあったのですが、この委員会の中でどなたかが、セーフティー1とかセーフティー2というヒューマンファクターズの中のレジリエンスエンジニアリングの話を以前されていたと思うのですが、今回、藤田委員の中でもヒヤリハット事例の共有とかそういうことがあったのですが、もちろん、事故が起きたときに、その原因というのを探って、その再発防止をというのもありますが、全国に数ある学校の中で様々な安全対策というか、ふだんはうまくいっているという中で、先生方が採っておられるような指導の仕方とか、何かこつというか、多分、安全教育プログラムで、こういうのを学校を挙げてやりましたというのは文科省のポータルサイトとかで共有されているのですが、何か些細な情報交換みたいなのができる機械とかツールというのがあれば、さらにいいのかなと思ったのですが、ちょっと、どういう機会にそういうことを設けられるのかというのは思いつきませんでしたが、そのような感想を持っていました。ありがとうございました。

【渡邉(正)部会長】ありがとうございました。
事故対応指針のことについて、私のほうから一言だけ申し上げたいのですが、事故対応指針が、公立学校に関しては研修会などを通じてかなり周知が図られていると思うのですが、ちょっと気になるのが私学なんです。私が関わったことでは、すごくしっかりした備えをしている私学もありますが、全くこのことについて御存知ないというか、十分理解されていないような学校もあるようです。
この指針をつくったときも、あまり十分にその辺は議論されていなかった部分もあったかと思うのですが、いかに私学のほうにこの情報を伝えていくということが一つ、この指針の課題としてあるのかなという感想を数年間もっていました。以上です。
もう時間も10分ほど過ぎてしまいました。どうしても何かここで御質問したいということがありましたら、もうお一方ぐらい伺えますが、大丈夫でしょうか。
よろしいでしょうか。それでは、本日の議事につきましては以上としたいと思います。最後に、次回以降の予定について事務局からお願いします。

【朝倉安全教育推進室長】資料8を御覧ください。次回の第7回は10月27日、水曜日、16時からを予定しております。議題は第三次学校安全計画の策定に向けた論点整理についてでございます。これまで、委員の先生方から様々な意見を頂戴しておりますので、論点をまとめていきたいと考えております。以上でございます。

【渡邉(正)部会長】本日予定した議事は全て終了いたしました。これで閉会といたします。本日も積極的に御審議いただきありがとうございました。

――了――

(総合教育政策局男女共同参画共生社会学習・安全課)