学校安全部会(第5回)議事録

1.日時

令和3年8月26日(木曜日)10時00分~12時00分

2.場所

WEB会議(Webex利用)

3.議題

  1. 組織活動、教員養成課程・教員研修について(委員からのヒアリング)
  2. 意見交換
  3. その他

4.議事録

【渡邉(正)部会長】定刻となりましたので、ただいまから、中央教育審議会初等中等教育分科会学校安全部会第5回会議を開催いたします。本日の会議は、報道関係者並びに一般傍聴者の傍聴を許可します。
オンライン配信で傍聴いただいている方々には、傍聴登録者以外への当会議の配信URLを転送することや、他への放送、放映は固くお断りしていますので、よろしくお願いいたします。それでは、事務局から資料の確認をお願いいたします。

【朝倉安全教育推進室長】事務局より会議資料の確認をさせていただきます。会議資料は議事次第のとおりで、資料1から資料7まで、参考資料につきましては1から4までございます。お手元に御用意いただきますようお願いいたします。
なお、前回の会議で、渡辺委員から御質問のございました学校安全委員会の設置状況につきましては、参考資料4といたしまして御用意しておりますので、後ほど御覧いただければと思います。
本日は大木委員、松本委員を除く16名の委員の御出席をいただいて、定足数を満たしております。事務局からは、総合教育政策局男女共同参画共生社会学習・安全課長、石塚哲朗ほか関係室長・室長補佐等が出席しております。

【渡邉(正)部会長】ありがとうございました。それでは、議事1に入ります。まず、文部科学省から「学校安全に関する教員養成・教員研修について」御発表いただきたいと思います。
続いて、南川委員から、学校安全(学校事故)と法的責任について、木間委員、藤田委員、私より組織活動、教員養成課程・教員研修について話題提供した上で、今回、話題提起いただいた内容について議論したいと思います。
各発表に対する質疑は、全ての発表が終わった後に行いたいと思います。それでは最初に、文部科学省より御説明をお願いいたします。

【中村室長補佐】それでは、資料2に基づきまして御説明いたします。文部科学省安全教育推進室の中村と申します。
資料1ページ目を御覧ください。第3次学校安全の推進に関する計画に関する諮問文では、安全教育や安全管理に関して、教員養成段階で身につけるべきことや、教員研修の在り方について諮問されております。令和元年度から教職課程において、学校安全について必ず修得することとされている背景や、5行目になりますが、教職員自身が自然災害等の安全に関する知見等、指導すべき内容を明確に把握していくことが重要。
また、次の段落の5行目では、カリキュラム・マネジメントの中で体系的な安全教育を推進することや、児童生徒等が安全上の課題について自ら考え、主体的な行動につながるような工夫など、安全教育の効果を高めていくことも重要とされています。
次のページを御覧ください。2ページ目と3ページ目では、近年の制度改正に関する補足説明をさせていただきます。
平成27年12月の中央教育審議会答申を受けて、教育職員免許法及び施行規則の改正や、それに伴う教職課程コアカリキュラムの作成がなされました。
2018年度には、改正法令や教職課程コアカリキュラムを反映した教員養成課程となっているか、再審査が全ての大学の教員養成課程について行われ、2019年度、令和元年度から、教員養成に関する新しい教育課程が始まっているところです。
2ページ目の下段、3ポツ、施行規則上の事項の改正の枠の中に、事項の内容を追加するものとして、学校安全への対応が入っているところです。
3ページ目を御覧ください。教職課程コアカリキュラムは、全ての大学の教職課程で共通的に身につけるべき最低限の学習内容、コアとなるものとして、大学の教育課程の編成のために作成をされているものです。本ページの記載内容が、教職課程コアカリキュラムから学校安全に関する記載部分を抜粋したものとなっております。
続きまして、4ページ目から8ページ目までで、中央教育審議会の別の特別部会において現在進行形で、教員養成について議論されている動きについて補足説明をさせていただきます。
4ページ目を御覧ください。資料の下の出典のとおり、「令和の日本型学校教育」を担う教師の在り方特別部会(第3回)・教員免許更新制小委員会(第4回)合同会議では、本年3月の「令和の日本型学校教育」を担う教師の養成・採用・研修等の在り方についての諮問を受けた審議が行われております。
資料の上段ですが、この特別部会では、各学校種・教科等を横断して全ての教師に共通して求められる資質能力として、教員免許で担保すべきと考えられる「基礎的な」資質能力に関して、「教諭」を念頭に置いた資質能力の大枠を議論し、求められる資質能力の具体的内容を明らかにしてはどうか。
その次のチェックですが、その資質能力の具体的内容を踏まえた、新たな教職課程の科目・内容については、別途設ける小委員会等において、教職課程コアカリキュラムとの関係も踏まえつつ、専門的な検討を行うこととしてはどうかといった議論がなされております。
次のページを御覧ください。すいません、もう1ページ進んでいただいて、6ページを御覧ください。この特別部会の議論では、5つの大くくり化された資質能力として、左側のオレンジ、緑、青で5つ示されたものですけれども、一番上のオレンジの部分、教職に必要な素養等として、リスク・マネジメントを含む学校安全が教職に必要な素養の一部として考えられているところです。
次の7ページを御覧ください。教職に必要な素養等については、右側、(教員免許で担保すべきと考えられる)基礎的な能力の記述文の例として、ポツの5つ目、「子供達や教職員の生命・心身を脅かす事故・災害等に普段から備え、様々な場面に対応できる危機管理の知識や視点を備えている」といった内容が考えられております。
次のページを御覧ください。こちらは御参考ですが、この特別部会では、キャリアステージに応じて養成段階、現職研修段階では求められる水準が異なることをこのように記載しておりますので、御紹介させていただきます。
こうした教員養成全体の議論が現在並行して行われている中ではございますが、学校安全について専門的に審議する学校安全部会としては、より具体的な審議を行っていく必要があるものと考えております。
続いて、9ページ目から11ページまでで、文部科学省の取組について御紹介いたします。文部科学省では、「第2次学校安全の推進に関する計画」に基づき、教職員のキャリアステージ別に、学校安全に関して習得しておくべき事項を整理し、各学校・教育委員会の研修や大学の講義等で活用できるe-ラーニング教材を作成しております。
第2次計画で記載された内容は、点線の枠囲みの内部のとおりです。こちらは令和元年度に、調査研究事業を行って作られた教材についての御説明になります。
左側にございますとおり実態調査の実施、これは教育委員会における研修や教員養成大学を抽出して、学校安全の教職科目の現状を調査し、その後に学校安全について身につけておくべき資質能力を整理した上で、e-ラーニング教材として適切と考えられる範囲や資質能力を検討いたしました。
教材の作成に当たりましては、現在、学校安全教育に取り組む大学の先進事例調査や、e-ラーニング教材の試行・評価を経た上で、「学校安全ポータルサイト」にこの教材を掲載し、令和2年4月1日から公開をしているところです。
次のページをお願いします。教職員のための学校安全e-ラーニングは、全ての方にお使いいただけますけれども、左下にあるとおりコースが分かれております。基礎研修の1、2、3は、教職員を目指す学生等を対象にしたもの。その下に初任者向け研修、中堅教員向け研修、管理職向け研修という段階を分けて、それぞれ15分程度で学べる内容となっております。活用シーンとしては、右上の枠のとおりでございます。
次のページをお願いします。「学校安全ポータルサイト」の中に、こちらの教職員のための学校安全e-ラーニングというバナーを設けておりまして、画面のイメージが左側中央にある教職員のための学校安全e-ラーニングのバナーでございます。
最後のページをお願いいたします。本日は教員養成・教員研修、また、組織体制に関する議論をする中で、テーマの1、2として、教員養成段階について、こういった論点で御議論をいただく、御意見をいただければどうか。また、テーマ2としては、現職の教職員の研修の在り方として、こういったテーマで御意見をいただければどうかと考えておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。事務局からの説明は以上でございます。

【渡邉(正)部会長】ありがとうございました。続きまして、本日は南川委員、木間委員、藤田委員からそれぞれ御発表いただき、最後に私から発表させていただきたいと思います。各委員15分程度でお願いいたします。まず、南川委員からお願いいたします。

【南川委員】岡山大学の南川でございます。それでは、私からは、学校安全(学校事故)と法的責任ということで、話題提供させていただきます。
報告の内容ですが、学校安全の問題は法的にどのように評価されるのかという観点からのお話をさせていただきます。ただ、しかしながら、学校安全の主要3領域に関する裁判例、判例は非常に少ないですので、学校事故に関する裁判例は、その一方で蓄積されているという状況ですので、そこで本日は学校事故裁判例を紹介するとともに、判例や裁判例が抱えている問題点について、説明していきたいと考えております。
私の報告とこの審議会のテーマとの関係はといいますと、安全計画策定に当たり、何か具体的な提言をするといったものではございません。計画の策定の前提としての法的責任について、参考として委員の皆様に御紹介したいという位置づけになります。
それでは、次のスライドをお願いします。学校安全(学校事故)に関する法的責任ですけれども、法的には極めて多様な場面で法的責任が争われるということが言えます。ただ、その中で最も裁判例が蓄積し、言わば学校事故責任法理と言われるものが形成されているのが、国家賠償法に基づく損害賠償請求訴訟であります。そして先ほども申しましたように、主要3領域に係る裁判例は少ないのですけれども、原則的にはこの学校事故責任法理と同じような考え方で、法的責任というのを見ていけばいいのではないかと考えております。
それでは、次のスライドをお願いいたします。まず最初に、法律の条文を掲げたわけですけれども、国家賠償1条1項の条文がこのようになっております。
そして、この条文の構造なんですけれども、下の矢印のところになりますが、基本は、公務員による過失による損害を国または公共団体が言わば肩代わりして賠償するという構造になっています。ですから、この国家賠償1条1項で損害賠償責任が成立するためには、まずその前提として、担当者に過失があったということが求められることになるわけです。
それから次に、この国賠1条は教育分野だけでなく、全ての行政活動に適用される条文、法律になります。しかしながら教育活動というのは、他の行政分野に比べて非常に危険に対して特殊な状況にありますし、また、危険を回避するということも教育の一つであるということですから、他の行政分野と比べて特殊性というのは非常に高いんです。
しかしながら、他の行政分野と一くくりにした責任賠償の条文で事案が処理されているということはありますので、この2つの点から、学校教育分野においては、法的責任を判定するに当たって様々な不具合が生じているということがかねてから指摘されております。
次のスライドをお願いいたします。損害賠償の前提となる教員の過失です。分かりやすい言葉で言うとミスということですけれども、裁判所はどういう場合に、その過失がありと判断するのかということです。
過失については、民法での議論が蓄積されているわけですけれども、本来は注意義務違反、要するに担当者の主観的な注意義務違反で、何かするべきだったのにしなかったということなんですけれども、最近では過失は客観化されていますので、矢印の2番目になりますけれども、学校教育分野では、教員として社会通念上要求される能力を基に、するべきであったのにしなかったことは何かというのが判定されていくということになっています。
社会通念というのは、常識ということです。すなわち常識的に見て、教員ならそれぐらいできないといけない、教員ならこれぐらいやらないといけない、にもかかわらずやらなかった、そこにミス、過失があるんだということになります。
具体的な過失の判断枠組みは、その下にあります、1、予見可能性と、2、結果可能性からになります。最高裁もこのような考え方に基づきまして、昭和58年の判例で、「教諭を始め学校側に、生徒を指導監督し事故の発生を未然に防止すべき一般的な注意義務」があると、このように述べております。
次のスライドをお願いします。先ほど過失というのは、教員として常識的に求められる注意義務だと申しましたけれども、具体的な事件の場面において、過失のレベル、どのように判定されていくのかということですけれども、数多くの学校事故の裁判例を分析しますと大体ここにある4つの要素、この4つの要素の組合せで義務のレベルが非常に高くなったり低くなったりということが組合せで決まっているということになります。
これは主要3領域で、もし裁判になった場面でも同じように考えていくのではないかと考えております。
では、次のスライドをお願いします。課題ということですけれども、学校事故責任法理が抱えている最大の課題は、先ほど述べましたように、損害賠償の要件として担当教員のミスを求めているということから、1つ目のポツですけれども、被害者救済を重視すれば現場教師の過失を抽象的に認定され、すなわち注意義務のハードルを非常に高く設定しがちだということです。他方で、現場教師に現実性のない注意義務は課すべきでないと考えれば、生命・健康に重大な被害を受けることの多い生徒が救済されない、すなわち注意義務のハードルを低くし過ぎると、被害者が損害賠償を得られないという二律背反的なジレンマ状態に陥ってしまっています。
例えば次に挙げた判例は、落雷事故についての教員に対する極めて高い注意義務を認めた裁判例ですけども、社会通念、先ほど言いました常識からすれば、相当程度離れている現実性のない注意義務ではないかと主に教育現場からですけれども、強い批判があります。
次のスライドをお願いします。このようなジレンマを何とかしないといけないということで、裁判例の中とそれから学説では、こういうふうな解決方法というのが示されています。これがプログラム責任というものですけれども、事件の現場で具体的な注意義務を教員に求めると、それはもうなかなか現実離れした注意義務になりがちだと。そこで、事故が発生する前の段階で教員や学校側で何ができたのか、何を準備すべきだったのかと過失のタイミングを先取りするというか、前に倒していくという考え方です。
このように考えていくと、担当教員のミスというだけではなく学校側のミスや教育委員会も含めたその自治体としてのミス、もしくは教育行政のミスというふうにミスを非常に多く、言い方はちょっとあれですけれども、責任の所在をぼかしていくということができますので、それで先ほどのジレンマに対処していくことができるんじゃないかということです。
例えばで言いますと、地震なんかが起きたときに、地震が起きたときに教員が何をすべきだったかということでいいますと、大きい地震だと教員も立ってられないとか、教員も発言できないということが、この審議会でも教えていただいたところですけれども、それでは、その地震が起きる前までに適切な計画を策定して、十分な事前の避難訓練をしていたかどうか、ここに焦点を当てるというのがこのプログラム責任ということになります。
次のスライドをお願いします。このようなプログラム責任も含めて、裁判例から具体的な注意義務を今度は時系列的に整理したものです。時系列で整理しますと、活動前にこのような注意義務、活動中にこのような注意義務、事故発生後に注意義務、このような注意義務と整理することができますけれども、これも学校安全の領域でも同じようなことが言えるのではないかと思っています。
ただ、一般的に言われていることなんですけれども、このような裁判例を読むに当たって注意しないといけないことは、それぞれの裁判例というのはそれぞれの事件について、すなわち目の前にある当事者間の紛争について、最も適切な紛争解決は何かという観点からそれぞれの裁判官が示した義務の水準でありますから、ここに挙がったものが直ちにその水準が一般化されるということにはならないという点に注意が必要です。あくまでも個別の裁判の事例において、このような判断が示されたことがあったのだということをまとめた表ということになります。
続いて、次のスライドをお願いします。ここからは学校安全について、施設の面に焦点を当てまして、どのレベルの施設が法的に求められるのかという話になります。
施設については、行政全般について国家賠償法2条という条文がありまして、公の営造物の設置管理に瑕疵があった場合には損害賠償責任が発生するという規定になっています。
矢印のところなんですけれども、この2条については、学校施設特有の責任法理というのはありませんので、他の行政分野と共通する理論として、営造物の管理法理というのが妥当することになります。ですから、学校事故についてももちろん学校安全についても、この一般理論が妥当していくと考えられます。
この一般理論の特徴は、営造物が物的安全性に欠けていること、それから2番目、過失を問わないこと、3番目、財政理由は免責事由とならないというこの3原則が確立しています。
続いて次、要件の『公の営造物』はというところなんですけれども、スライド9ページの下のところですが、公の営造物というのは建物とか校舎ですけれども、国賠2条の公の営造物というのは小さいものも含むんです。だから、本棚とか学校が常備している定規とか黒板消しとか、そういうものも公の営造物ということになります。
続いて、次のスライドをお願いします。営造物の「設置管理の瑕疵」の判断枠組みですけれども、これも予見可能性と結果回避可能性という、これが非常に重要な役割を果たします。
次のスライドをお願いします。施設についての国賠2条の裁判例の問題点ということになりますが、最高裁はさきに示した3原則をそのまま適用するのではなくて、賠償責任を制限する判決を幾つか出しています。これが賠償責任制限法理と言われるものです。
次のスライドをお願いします。例えば先ほど予算不足というのは、賠償責任を否定する論拠にならないというのが原則だということで紹介したんですけれども、別の裁判例、判例では、資源配分の見地からの予算制約論は認められるという判決も示しています。すなわちこれは民営化される前の高速道路の事件ですけれども、高速道路にキツネが飛び出してきて事故になったということですけれども、原告側が国としては高速道路に小動物、キツネが飛び出さないようにネットを張らないといけないということを言っていたわけですけれども、資源配分の見地すなわち税金の使い道として、高速道路に小動物が出ないようなネットをきちっと全部張っていくということが、国民が期待できるだろうかという見地からの予算制約論ということになります。
次のスライドをお願いします。措置の普及度が考慮された判例ということで、安全な設備が求められるわけですけれども、普及度のタイムラグというのが考慮された事例があります。これは点字ブロックを、旧国鉄の駅に設置するかどうかということが求められた事案ですけれども、ここで最高裁はその普及度というのを言っています。
これで言いますと、例えば事務局からいただいた資料ではAEDという安全な装置ですけれども、AEDなどは学校現場では90%を大きく超える普及率になっています。そうしますと、それを設置していなかったということは、瑕疵として評価されかねないということになります。
次のスライドをお願いします。「おわりに」ですけれども、遺族、被害者が学校を相手に、自治体を相手に裁判を起こす動機としては、先ほど紹介しました賠償金を受け取るということもありますけれども、それ以外に真相を究明したいとか責任の所在を明らかにしたいとか同種の事故の再発防止に役立てたいとか、そういう思いがあります。
しかし、このように数多くの願いというか、役割というか、機能を裁判に背負わせることによって、裁判のほうがかなり大きな問題を抱えるようになってきています。
ですから、例えば賠償の話については保険制度を充実するとか、真相の究明については、事故調査委員会の信頼性を増す工夫をするとか、あとJSCをより機能的にするとかいったことを果たしながら、裁判への負担というのを減らしていくことが一つ大事だと思っています。
もう一つは、安全計画の意義ということですけれども、裁判というのは事故が起きてからの責任の所在追及ということになりますので、本日紹介したように様々なもの、そして本日紹介したように様々な問題があります。
ですから、やはりその安全の確保については行政主体、行政当局の主体的な取組というのが何より大事だと思っています。そういう観点からしますと、この計画策定とか研修の充実というのが非常に重要になってくると思います。報告は以上です。どうもありがとうございました。

【渡邉(正)部会長】ありがとうございました。続いて木間委員、お願いいたします。

【木間委員】スライドをお願いいたします。それでは、発表させていただきます。
私は、葛飾区立柴又小学校の校長をしております木間東平です。それでは、本校の実践を通して、安全教育と安全管理における組織活動について発表させていただきます。
それでは、次のスライドをお願いします。発表前に、まず私が所属している研究会、全国・東京都学校安全教育研究会についてお話しさせてください。本研究会は今年で発足から46年目を迎えます。昭和40年代の交通事故多発の社会問題化が研究会発足の契機となり、時代とともに交通安全だけでなく、安全教育3領域にわたる研究を年1回、公立小中学校を会場に公開授業、全国の学校の研究実践の発表、そして、そのときの安全教育の話題を取り上げた講演を柱に研究大会を開催している研究会です。今年度は、2月に本校で研究大会を開催する予定です。
では、次をお願いいたします。さて、本校、柴又小学校も私が校長として着任した当時は、学校安全という点では一般的に見られる学校と同じような活動をしていました。安全教育といえば、毎月1回に安全指導日の日に、交通安全を中心とした指導を学級で行うことや、セーフティ教室や薬物乱用防止教室などは前例踏襲で行われておりました。
安全管理も安全指導日に担当箇所ごとに同じ教員が点検し、そのほとんどは破損箇所や修繕箇所を指摘することで、安全という視点は十分ではありませんでした。
校務分掌でも生活指導部で避難訓練、安全点検を分担しているというもので、先生方もこの取組で大きな問題は起きていませんでしたので、着任当初は、私が安全教育の研究会の会長をしていて、数年後研究大会を予定していると話してもピンとこなかったようです。
次をお願いいたします。しかし、子供たちの命、安全を守るということで、着任から少しずつ見直しを図っていきました。着任1年目から、まず避難訓練の実施内容を変えました。それまでの避難訓練は事前に訓練を予告し、火災音や地震音を放送で流し、その放送で机の下に潜る。放送の指示で避難し、避難にかかった時間などを報告するというもので、こういう形式を取っている学校はまだまだ多く見られると思っております。
先生方にはその形は本当に起こったときに、先生方自身、子供たちが自ら動けるものか協議し、様々な場面を想定した訓練を実施するように変わってきています。
2年目は本校が創立80周年の年でもあったので、安全点検の方法の改善と安全教育の授業に取り組みました。安全点検の見直しでは、まず点検表を見直すとともに、点検箇所を一人任せにせず、ローテーションで複数の目で見ること、目視だけでなく実際に触って点検するなど、点検の精度を高めていきました。
3年目、本来なら大会発表の年でしたが、コロナにより大会が1年延期となったことで、その1年を学校安全の組織固めと学校環境の整備に努めました。
次をお願いいたします。そして、今年度4年目を迎えました。学校安全の本校の組織体制は、学校安全担当主任は置かず今まである組織で分担して、学校安全を組織しています。安全教育については、研究主任を中心とした研究推進部が担当。安全管理は生活指導部と専科教諭を中心として、研究推進部の副主任を安全環境主任として置きました。また、学校保健分野の安全管理については、養護教諭を中心に生活指導部と連携して取り組む体制を取っています。さらに教員研修については、教務主任が統括する形で主任教諭のOJT研修計画と関連づけて、計画を担当させています。
では、スライドを変えてください。では、具体的にどのような取組が行われているか発表します。まず、研究推進部が担当している安全教育の取組です。本年度の研究大会に向けて、安全教育の研究主題を「自他の生命を尊重し、安全のための行動ができる児童の育成-危険を予測し、自ら回避できる能力を育成するために-」と定め、3つの柱立てで研究推進部が計画を立て、全学年、さくら学級で安全教育に取り組んでいます。
一つは、日常的な安全指導として「一声指導」です。どの学校でも行っている週末に先生方が行う次週の週目標を決める中で、安全指導の一声項目も決め、月曜日の朝会で発表するとともに、学級も指導し、その行動を意識させていきます。項目は、本校の事故事案から考えていることや熱中症、大雨などの季節によって気をつけなければいけないことなども考慮に入れて考え出されています。私も月に1回は、全校朝会で安全教育に関する話をするようにしています。
2つ目は定期的な安全指導です。月1回の安全指導日に朝の会を活用して10分間、どの学級でも指導することになっています。この月ごとのテーマは、生活指導部と研究推進部が安全指導日計画として、テーマを年度末の教育計画作成時に考え、決定しています。そして、毎月の職員会議で確認の提案を、研究推進部が行っています。
次のスライドをお願いいたします。3つ目は授業です。ここ2年間は研究大会も控え、各教科の年間指導計画に安全教育の位置づけがしっかり明確化され、その計画に従って授業が進められています。教科としては社会、理科、生活科、総合的な学習の時間、特別の教科道徳、そして学級活動が主です。1学期も全学年さくら学級で授業を行いました。
授業の主目標は、主題のとおり自他の生命を尊重し、安全のための行動ができるようにすることで、そのために児童自らが様々な場面で危険を予測し、それを回避する能力を育てることにあります。低学年さくら学級では、学校生活の中で起こる事故について自らが考え、それを防ぐための行動を子供たち同士で深め合う授業を行いました。
特別支援学級のさくら学級では、上学年がさくら安全調査隊を組み、調査した危険をタブレットに収め、タブレット画面を通して視覚的に危険を訴え、防ぐ工夫を説明する授業を行いました。6年着衣泳の授業では、プールでの実地体験授業の前に、座学によって水難事故、そして水難事故を防ぐ方法をロールプレーを交えながら学習し、深めた後、プールでさらに体験することで、水難事故防止に向けた意識・態度を高めていきました。
次のスライドをお願いいたします。学校行事にカウントされる安全教育は、生活指導部が担当し、学区域内の警察署、消防署と連携しながら、体験を重視した取組を進めています。今までも行っていた行事もありますが、現在では行事を行う前には必ず事前指導を行い、この体験がどのような意味を持っているのか、子供たちと確かめ合った上で取り組むように変わってきました。取組後は必ず振り返りも行っています。
消防署との防災教室は、3年に一度は親子または地域の方も参加して実施するようにしています。保護者など大人への啓発活動として安全教育の授業、行事後は、学校、学年、学級だよりで、授業の内容や保護者にも一緒に考え、取り組んでほしいことなどを知らせていくようにしています。
次のスライドをお願いいたします。安全管理については、生活指導部と安全環境担当を中心に進めています。本校は今もなおPTA、地域の協力で登校班での登校を行っています。私の着任前から登校班の班長、副班長による各登校班担当教員への報告会を月1回行っていたのですが、そこでは児童のことだけが話されていたのを交通安全の視点から見直し、通学路の危険をも報告させるようにしました。また、報告会の翌週月曜日には必ず担当教員が児童と一緒に登校する登校班指導も行っていましたので、そこには通学路点検も盛り込み、月1回は通学路の安全点検も行われるようになりました。
また、近年の熱中症対策として、6月中旬にはWBGT計による計測を養護教諭が担当し、その結果を職員室黒板に掲示し、校庭遊びや体育の授業の判断をするようになっています。さらに子供たち自身で安全啓発を行わせたいとの教員たちの提案で、今年度から環境委員会、保健委員会が月1回の活動で安全に関する掲示物を作成し、各階の安全コーナーに掲示するようにしました。この活動は大会後も定着させていきたいと考えています。
次をお願いいたします。安全教育に関する教員の研修についてですが、本校にはもともと主任教諭が放課後計画実施するOJT研修の取組がありました。そこでその研修に学校安全の分野も入れていくように助言し、徐々に取組を始めています。その中で、体育実技研修ですが、今までも指導面での研修は行っていましたが、安全という点は乏しく感じていました。しかし、今の若手教員の体育授業を参観すると、安全に配慮しているとは考えられない授業も多々見られました。もちろんその都度指導もしていますが、指導されて初めて知るということもあり、こちらが驚くこともありました。
そこで体育実技研修では、指導技術だけでなく必ず安全の配慮事項を指導するようにしました。これにより事故が減ったなどの統計的数値は取っていませんが、必ず管理職にすぐ報告を求めている体育授業中、頭から上の事故や骨折が疑われる事故の報告はほとんどなくなったと実感しています。
今後、私や生活指導主任の検討している研修として、1人1台タブレットの支給により今は授業での活用が進んでいますが、これを安全分野に大いに活用できると考え、どのように活用できるか考えていきたいと考えています。
この夏休みもタブレットを活用して、各学年3回、夏休み前半、中盤、後半で、学校と各家庭児童とがタブレットで実際に顔を見合って、休みの様子や学習について報告する機会を持っています。こういうことの発展として、放課後の児童の安全管理に活用できると考えています。
次をお願いいたします。まとめとして、学校安全を学校教育にさらに根づかせるために、私が考えていることを話させていただきます。
学校は、学校校長の経営方針に基づいて運営される以上、学校安全が推進されるかどうかは学校長のリーダーシップに関わっています。本校も私が着任しなければ、旧態依然の安全体制だけで進められていたと思います。教員たちは、安全教育は重要であるとは認識しています。しかし、様々な課題が学校に迫る中、何を優先するかは学校長の経営次第です。
そこで、研修が最も必要なのは管理職と考えています。管理職候補者研修での安全教育研修の必修化や、現在ある学校安全教室指導講習の管理職版、学校安全e-ラーニングの活用など、研究体制を整備していくことが必要と考えています。また、学校安全主任の設置もよいと考えますが、各校の実情に応じて本校の例でお話ししたように、既存の分掌でも十分対応できると考えています。また、学校安全主任が明確化されても、この主任だけで多方面にわたる安全分野を統括するのは、一定の安全に関する知識がないと難しいと考えています。
最後に、これから教員になる若い人たちに安全に関する求めたい資質能力を一言で言うと、私は危険をイメージできる力と考えています。担任に就いたとき、教室環境を見てどういう危険があるか、この体育の授業ではどういう危険が潜んでいるか、校外学習ではどういう危険があるか、そういうことを自らイメージできなければ、未然に防ぐこともできません。そこで大学では過去の具体的事例、過去の事故事例を活用して、イメージを育てる授業を多く設定してほしいと考えています。今の若手教員は、池田小学校の事件を知りません。そういう年齢の人たちが今後学校教育の担い手になることを常々考えています。
以上で、私の発表を終わらせていただきます。ありがとうございました。

【渡邉(正)部会長】ありがとうございました。それでは、続いて藤田委員、よろしくお願いいたします。

【藤田部会長代理】大阪教育大学の藤田でございます。スライドをお願いいたします。ありがとうございます。それでは、私のほうから大阪教育大学における学校安全の取組として、教員養成・教職員研修・教材開発とセーフティプロモーションスクールの活動について御紹介したいと思います。
スライドをお願いいたします。まず、私が現在担当しております学校安全推進センターは、先ほども少しお話ありましたが、20年前の附属池田小学校事件を受けて、事件2年後、まず遺族となられた方々との間に締結された合意書の中で、設置が行われた学校危機メンタルサポートセンターが、令和2年4月に本学の学部改組等に基づきまして、組織改正が行われて、現在、学校安全推進センターと名称を改正しております。本学においてはやはりこの附属池田小学校事件が学校安全の出発点となります。
スライドをお願いします。そこで今回発表させていただく主な内容、4点挙げております。まず教員養成の取組、2番目に教職員研修の取組、3番目に教材開発の取組、4番目にセーフティプロモーションスクールの普及と挙げておりますが、この4つの観点、これらは先ほど申し上げました、平成15年に遺族の方々と締結した合意書の中で、本学がお約束した再発防止策に基づく活動となっております。再発防止策におきましては、まず、教職員の危機対応能力を向上させること、それから教員養成課程として、学校安全に関する実践的研究教育を行うこと、また、附属学校園において安全管理の改善及び事件事故の未然防止に努めること、それと学校危機メンタルサポートセンター、現在の学校安全推進センターにおいて、危機管理、学校安全に関わる調査研究を行い、情報の収集、分析、発信を行うことというお約束をいたしました。その活動、実践を本日御紹介したいと思います。
スライドをお願いいたします。まず、教員養成に関わりましては、本学では平成19年から教員免許を取得する学生全員に対して、そして、平成29年からは教員免許を取得しない学生に対しても、全員に対して学校安全を必修化しております。
この学校安全につきましては、2年生を対象として前期・後期各5コマずつ、10コマの授業を行っておりますので、令和2年度前・後期の受講学生数は953名、例年同じ程度、ほぼ1,000名弱の学生が学校安全を履修しております。
この学校安全につきましては、令和2年度においては、教科書として教師のための学校安全というテキストを利用するとともに、オンデマンド型、コロナウイルス感染拡大によるオンライン授業が行われましたので、初めに文科省のほうからも御紹介ありました教職員のための学校安全e-ラーニング「基礎研修1~3」を受講させ、そしてその後、対面授業が復活した際に、その各自履修した内容についての復習、また追加解説等を行いました。
また、大阪教育大学ではこの学校安全の講義の一部として、附属池田小学校の施設見学、事件後どのように施設が改修されていったのか、その改修された意味は何なのかということを学習するとともに、事件によって我が子の命を奪われるという経験をされた遺族の方から直接お話を伺うことをしております。
特に遺族の方のお話を伺うことによって、教員を目指す学生の子供の命を預かるということの意識に大きな変化があったということが確認されております。また、教職大学院におきましても、研究科共通科目として学校安全と危機管理を必修化しております。
次をお願いいたします。「学校安全」で扱う講義の内容としましては、附属池田小学校事件に関わる反省、教訓を基盤としつつ、教職員が実践する学校安全としてやはり訓練の実施時期、いわゆる子供たちが登校を開始する前に教職員がまず役割分担を行って、準備を整えて子供を預かることの重要性というものを教えるとともに、また、それ以外に危機発生時の初動対応、通報・救急搬送の在り方、また、さらにはその下のほうにまいりますが、IDカード着用の意味、勤務時の服装、これはやはり池田小学校事件において声かけができなかったという反省を踏まえた危機管理体制の徹底の意味は何なのかということを教えております。
それと学校安全教育とカリキュラムマネジメントの考え方や、また教職員のための学校安全e-ラーニング研修などを扱うことによって、4月1日から教員として勤務を開始するための「心構え・準備」の意義を理解し、実践する能力を育成することを目指した講義を展開しております。
この講義の成果の一部としては、やはり教育実習等で現場の学校へお伺いしたときに、現場の先生、校長先生、教頭先生から大阪教育大学出身の教職員の安全に対する意識の高さについて評価いただくことが多くあります。
次をお願いいたします。また、教員養成課程としては、附属池田小学校事件の「語り継ぎ」事業といたしまして、毎年事件のあった6月8日に、全ての大学で行われた授業について、特定のその時間帯、その日の2時間目を指定することが多いのですが、その時間帯に語学であろうとあらゆる科目の授業において、附属池田小学校事件の語り継ぎを行っております。
また、普通救命講習の充実を図っておりますが、2019年度の入学生から本学では、教員免許を取得する学生は普通救命講習の受講を必修化しております。やはり命を守る行動が取れる学生を養成するという観点での必修化になっております。
次をお願いいたします。また、教育実習中で特に附属学校園におきましては、不審者対応訓練に実習生を参加させることにより、実践能力を高めることに努めております。
次をお願いいたします。また、教員養成大学としては、非常時の危機対応能力として学生と本学の教職員合同で地震発生であったり、また、火災発生の訓練を実践するとともに、やはり安否確認の重要性ということに基づきまして、新たにANPICを活用して、令和2年9月4日に全学生・教職員に対してメール配信を行い、安全確認の徹底を確認してまいりました。
次をお願いします。また、教職員研修につきましては、大阪教育大学では教職員の対応として、全教職員と事務職員を含めての防犯訓練を実施するとともに、本学では附属池田小学校事件を反省として附属11校園、大阪教育大学には天王寺、平野、池田の3つの地区にそれぞれ小学校、中学校、高等学校、さらに平野地区には特別支援学校と幼稚園がありますが、その11校園全てに学校安全主任を配置しております。その主任を対象とした講習会を毎年行うとともに、全国からも学校安全に関心を持つ先生方の参加を促しております。
令和2年度は、全国から57名の先生方の参加をいただいて学校安全主任に認定させていただきました。平成20年からこの学校安全主任講習会を継続しておりますが、延べ現在840名、全国で安全主任の資格を認定させていただいております。内容としましては、安全教育、安全管理、また防災、危機対応の内容についての研修を行っております。そして、最後に附属池田小学校の見学を入れて締めくくるという形の研修会になっております。
次をお願いいたします。また、それ以外の教員研修といたしましては、まず、本学の教職員及び附属学校の教職員を対象とした普通救命講習を毎年各附属学校園で実践し、令和2年度は239名の教職員が受講しております。
また、本学では独自に応急手当普及員を充実させていくことを遺族の方とお約束しておりますので、教職員を含め3日間の研修を受けた応急手当普及員を今年度新たに21名認定し、学内で合計141名の普及員を確保しております。この応急手当普及員が、普通救命講習の講師となって指導に当たっております。
また、全国の学校・教育委員会等の学校安全担当者を対象に、学校安全コーディネーターの養成研修、また、e安全教育普及員、これは後ほどまた御紹介いたしますが、本学が作成した教材の活用者としての普及員の養成セミナー、それからセーフティプロモーションスクールの活動を担う推進員のセミナーを開催しております。
次をお願いいたします。さて、本学が取り組んだ安全教育教材ですが、平成19年、ちょうど私が附属池田小学校長を併任したのがこの平成19年になりますが、19年の着任時から、国立研究開発法人科学技術振興機構社会技術研究開発センター(RISTEX)の委託事業を受けまして、犯罪からの子供の安全を目指したe-ラーニングシステムの開発に取り組みました。
この事業はその後、25年からは国の補助金事業、大学間連携による教員養成の高度化支援システムの構築、HATOプロジェクトに引き継がれまして、そこでも大阪教育大学は、安全・防災教育プログラム開発プロジェクトを継続して展開させていただきましたので、その教材について御紹介させていただきます。
次をお願いします。HATOプロジェクトと言いますのは、HATO、北海道教育大学、愛知教育大学、東京学芸大学、大阪教育大学、4大学の頭文字を取ってHATOになりますが、この4大学の連携プログラムの一つになります。
次をお願いします。内容としましては、最初にRISTEXのほうから委託を受けた犯罪からの子供の安全を目指したe-ラーニングシステムが完成しておりましたので、それに加えて外傷、災害、交通事故、いわゆる学校安全の3安全、生活安全、災害安全、交通安全のデジタル教材の開発に取り組みました。
次をお願いいたします。犯罪からの安全につきましては、防犯ブザーであったりエレベーターの乗り方、また、怖い人というのは見た目で分からない、正解がないんだということ、また、公園などでの困っている人への接し方。一人で助けるのではなくてみんなで助けてあげようという考え方、こういった犯罪からの安全の教材に加えまして、次をお願いいたします。
外傷としてはAEDの使い方、また、ただ子供は使うのではなくて、AEDという機械を持ってきて、近くにいる大人の人に使ってもらって、命を助ける活動に取り組んでもらおうということを教えたり、また、校内で歯が抜けたときの対応について。
次をお願いいたします。また、いろんなけが、遊具等を含んだ事故がありますので、そのこと。
次をお願いいたします。また、地震災害等での対応の仕方。
次をお願いいたします。交通安全、横断歩道の渡り方を含めて、こういった教材です。
次をお願いいたします。これらの教材を作成し、4大学の附属学校並びに一般協力校の協力を得て実証実験を進め、その教材の実効性、有効性の確認を進めているところです。
次をお願いいたします。これらの活動の結果、子供たちの安全行動の増加であったり、また、けがの発生件数の減少、また、保護者参加型の授業としております。子供たちが学習した内容を保護者のほうで確認いただくということで、保護者参加に伴って保護者の安全への意識が改善されたということを報告いただいております。
この教材につきましては、全国で190校以上の公立小学校で活用いただいております。特に岡山県におきましては、100校以上の協力をいただいているところです。
次をお願いいたします。この教材は、基本的に無償提供するものですが、ただ、教材の構成理念について学習していただく必要があるということで、これも無償の半日の研修会、これがe安全教育普及員養成セミナーです。これを各都道府県教育委員会の協力の下に実践させていただいております。
次をお願いします。また、本学では、現在のアクティブラーニングの活動の一環として、校内ヒヤリハット登録システムを開発し、現在、その教材への展開を図っております。いわゆる事故の発生した場所をタブレット上で長押し入力することによって、その結果が全て集計され、データとして分析される。いわゆるアクティブラーニングの主体的・対話的で深い学びにつながるような安全教育・教材への展開を考えているところです。
次をお願いいたします。最後となりますが、本学が取り組んでいるセーフティプロモーションスクールの活動について御紹介させていただきます。
次をお願いします。セーフティプロモーションスクールは、まず、第1指標として校内に学校安全委員会のような組織をつくっていただいて、そして、中期計画に基づく単年度計画のPDCAプランを動かしていただくというのが基本的な考え方になります。そして最後、成果の共有に取り組む。
次をお願いいたします。学校安全委員会につきましては、各校での学校保健委員会と同様の委員会組織の中に、推進員であったりアドバイザー、また、子供たち自身の参加を求めるということを行っております。
次をお願いします。この事業につきましては、文科省のほうでも令和3年度の「学校安全総合支援事業」に位置づけていただいております。
次をお願いします。また、文部科学白書の中でも御紹介をいただいているところです。
次をお願いします。また、6月に閣議決定されました骨太の方針2021の中にも、「通学時を含む安全・安心な教育環境を整備しつつ、組織的・実証的な安全対応に取り組むセーフティプロモーションスクールの考え方を参考にした学校安全を推進する」と明記をいただき、さらにこの活動を推進したいと考えているところです。
次をお願いいたします。現在での認証校につきましては挙げておりますように、まず最初に、本学附属池田小学校、附属池田中学校、東京台東区立金竜小学校を認証し、3年度ごとの再認証を繰り返すことをお願いしております。
次をお願いします。さらに次をお願いいたします。現在日本国内で25校を認証させていただいているところです。
次をお願いいたします。また、その活動に賛同して活動の取組を始めていただいた学校、現在国内で19校になっております。
次をお願いいたします。また、我が国で始めたセーフティプロモーションスクール活動ですが、海外からも評価をいただきまして、中国、タイ、イギリス、台湾などの学校の認証、さらにまた認証申請、国内外で現在120校に膨らんでおります。
次をお願いいたします。本学が進めておりますこのセーフティプロモーションスクールの活動は、学校における「安全・安心への共感と協働」、子供たちのいわゆる脅し教育ではなくて、ソーシャルサポート認知に基づく自尊感情、自己効力感を基盤とした共感と協働に基づく活動を展開することによって、10年・20年先の地域の安全・安心を担う人材育成を目標としております。
このため先ほど申し上げましたように学校安全委員会の中に、子供たちの代表を入れるという観点からサポーターという制度を創設し、その活動の中で、子供たちの主体的な活動、上級生から下級生への指導を含めて、また、子供たちの安全点検への参加を含めた学校安全への意識の高揚を図っていきたいと考えているところです。
以上私のほうから、大阪教育大学における学校安全の取組として、御紹介させていただきました。大変早口で聞き苦しい点があったと思いますが、おわび申し上げます。よろしくお願いいたします。

【渡邉(正)部会長】ありがとうございました。それでは、続いて私のほうから発表いたします。では、始めさせていただきます。
私は、学校安全の推進に関する計画、過去2回、1次とは呼んでいませんけれども、2012年、そして第2次、2017年の作成に関わってまいりました。その中で、計画の中で取り組む内容、方針が示されていたわけなんですが、今日は組織活動をターゲットとしまして、それらの課題が解決されたのかどうか、あるいはさらなる改善が必要なのかどうかということについて、私個人の意見として述べたいと思います。ですので、もしかしたら少し、私が見落としている部分もあるかもしれませんが、その辺は御了解ください。
それでは、スライドの次をお願いします。これが2012年、順番で言うと第1次になるわけですけれど、組織活動の部分になります。この2012年の計画は、組織活動は安全教育・安全管理の次に位置づいておりました。ここにありますように、学校における安全に関する組織的取組の推進、あともう一つは地域社会、家庭との連携というのがあるんですけれども、主に前半の部分、その辺のところを取り上げたいと思います。
次のスライドをお願いします。その中で学校における人的体制の整備というところがあります。その一部をちょっと抜粋しておりますけれど、例えば一番上になりますけど、「学校の設置者によっては、安全主任といった学校安全の中核となる教職員の講習会を開催し」という記述があるんですけれど、ここに安全主任という言葉が出てきます。この後、第2次もそうなんですけれど、中核となる教員という表記の仕方、教職員という書き方はあるんですが、今日の御発表、木間先生のお話、藤田先生のお話の中にも学校安全主任のお話がちょっと出てきたと思います。現在、学校安全を誰が担当するのかということに関しては、例えば県によっては安全主任とか防災主任を設置しているところもありますが、大部分はあまりそういうのが明確になっていないのではないかと思います。
そういうこともありまして、この学校安全推進計画では、それを明記したということになるんですが、具体的にそれが校務分掌の中にどう位置づいているかということについては、実はそれほどはっきりしていない。ただ、国の調査があるんですけれど、学校安全の推進に関する計画に係る取組状況調査を見ますと、その中核となる教職員を誰がやっているかというのを見てみますと、かなりばらばらになっているんです。中核となる教員は、例えば全国の小学校では99.9%置いているということですから、かなり良好な状況だと思うんですが、どなたがやっているかということになりますと複数回答にはなるんですけど、校長先生が、小学校の場合ですけど29.3%とか、教頭、副校長が62.4%とか、管理職の方がかなり多くを占めているようなケースが出ております。もちろんそれ以外の先生が7割以上やっているというケースも出ているんですけれど、高校ではその他の先生以上に教頭、副校長の先生がやっているという状況になります。
もちろん管理職の先生は、ほかにもたくさんいろいろ仕事がありますので、安全のことばかりというわけにはなかなかいかないと思うんです。そうすると、はっきりと中核となる教員というものが、ここには例えば学校安全主任なり安全主任という言葉で示す時期ではないかと。今回で10年議論しています。すぐにそういう校務分掌上に位置づくような名称となることは難しい点もあるかもしれませんけれど、やはりここから少し進んで、本当にこの人が中核になるという役職が何かつきますと、その人が何を担当するのかということも明確になりますし、ここにありますように一定水準の知識や資質というのが何なのか、それもはっきりとしてきます。ですので、やはりこの人的体制の整備というところは、これも10年ぐらい議論してきた中で、そろそろもう一歩進めたいと考えております。
次をお願いします。これは安全点検に関するところなんですが、一番上のところ、これは例えば通学路の定期的な点検のことが記載されております。これについては今年も千葉県の八街市で非常に痛ましい事故が発生しましたけれど、通学路点検に関しては学校でやっているところはかなり多いわけです。ただ、学校がその道路を修繕なり改善するわけではありませんから、必要に応じ道路管理者、警察等に提言することが重要となっていますが、果たしてこれがどれだけ効果があるのかどうかということです。
学校で点検するようにという通知は度々出るわけですけれど、それで終わってはしないかと。ですから、その辺はどういうふうにして、通学路点検がより安全な通学路をつくっていくかということを目で見える形に進めていけるようになればよいと思うんですけど、ちょっとこれはまだ課題等に残っているのではないかと思います。
もう一つ下は、学校の施設・設備に関してのことです。施設・設備に関する事故というのも繰り返し起きているんですが、実際の学校の点検状況というのは100%ではないですけど、それに近い数値になっています。
ですが、その後なんですけど、先ほどの文科省の調査によりますと平成30年度のものですけれど、全国の小学校の61.7%で問題点が見つかっていると。措置を講じることができなかったのがそのうちの76.7%で、そのほとんどの学校が設置者のほうへ申し入れているということになっています。これは学校保健安全法の中に書かれている校長の責務のところにあるんですけど、それを正しく行っているというのがこれで分かるんですけど、問題があったのをほとんど設置者のほうに申し出ているわけですが、これを改善しないといけないということですよね。つまり問題があればそれを修繕するなりいろいろ対策をしなければいけないんですが、実はそのデータはないということになります。つまり点検はして問題点は分かったと、設置者に申し出ると、その後どうなったかというところが分からないということです。もしそのまま放置されていますと、点検した意味はないということになりますので、これがきちっと行われているかどうか、いろいろと予算の関わる問題だと思うんですが、改善していかないことには、点検した意味がない。そこのところがどうなっているかということ、それが重要ではないかと思います。
次のスライドをお願いします。これは学校安全に関する教職員の研修等ということなんですけれど、一番上のところです。研修して、「受講者が何らかの資格を取得できるなど」ということで、なかなかこれは難しいことなんですけど、何かしらのインセンティブが必要だということだと思います。そういう記述と理解しました。それについては、もっとこう議論が必要だと思いますけれど、現在解決は図られていないのではないかなと思われます。
また、次の「国は、教職員の研修等を推進するためにも、学校安全に関する研究者等の指導者を養成する」ということですが、これがなかなか難しいということがあるんだと思います。その次のことと関係するんですが、教員養成課程など、教員免許を出しているところで、現在、教職課程コアカリキュラムの中に学校安全が位置づきました。これは第2次の計画の中にもありますけれど、これはすごく大きな進展だったと思います。ですが、このコアカリキュラムの検討のところにも私もいたんですけれど、そのときちょっと質問があって、担当する人がいるのかどうかという話がちょっとあったんですが、そのときは例えば危機管理を担当した経験のある指導主事の方とか、そういう方にやっていただくということが考えられるということをお答えしたのを記憶しております。これが現在の例えば時間数でいうと、大体恐らく2時間か3時間程度ではないかなと思っています。ですが、中身はもちろん3領域全部ということを含んでいますので、それらをこなす十分な時間があるかどうかということなんです。
理想を言えば15時間、2単位分ということも考えられると思いますけど、そうすると今度はそれだけのことを指導できる人が果たしているかどうかということ。それが結局、研究者と指導者の養成というところになってくるんだと思います。ただ、そこまでいかなくても例えば7時間1単位とかそういうことになると、恐らく全領域カバーできると思いますし、それなりの内容ができるのではないかなということです。なかなか大阪教育大学のようなレベルまでいくのは難しいんですけれど、やっぱりこれは大事な問題なので、より充実する方向に進んでいただきたいとは思っております。
次をお願いします。今度は地域、学校の連携の部分ですけれど、この辺のところというのは、第2次計画のときにも課題として学校差、地域差があるという記載がありました。特に一番上の2行目ですけど、私立学校や国立学校には情報が入らないこともあるという指摘ということがあります。
先ほどの文部科学省の調査では、やはり公立と私立を見ますと、私立のほうがちょっと実施率が、数値が低いという状況があります。ただ、私立の学校は私の経験ですけど、すごく公立以上に進んで安全な取組をしている学校もあるんです。反面、あまりそれをやっていないというケースもありまして、これも私の少ない経験からですけど、ある私立学校で重大事故が起きて、調査に入ったことがあるんですが、死亡事故だったんですけど、それが起こるまでマニュアルがつくられていないという学校もありました。
そういうようなこともありますので、公立と私立も変わりなくどうやって情報提供していくかということ、それが重要になってくるかと思います。そしてさらには保護者や地域住民も参加するということですけれど、例えば東京都のセーフティー教室などは保護者の方も来てということもありますし、また、東日本大震災以降は、被災地では防災訓練を学校と地域で一緒にやっているというところも増えてきていると思います。ですが、まだそういう地域差というのがあるのではないかと思いますので、その差をどうやって埋めていくかということが、課題として残っているのではないかと思います。
次をお願いします。第2次の場合は組織が最初に来て、その後に安全教育、安全管理という内容になっていました。ここに挙がっていますように、学校安全に関する組織的取組の推進ということで、3つ挙げておりますが、次のスライドをお願いします。
2012年のものと同じなんですけど、やはりこの「学校安全の中核となる教職員が担うべき役割」ということです。これについては、例えば文科省のほうでe-ラーニングをつくったりとかして、具体的に内容が示されるようになってきました。ですので、やはりこの対策が進んできたと思いますけれど、その中核となる教職員が誰なのかというところですよね。ここのところはまだ2012年からあまり進んでないのではないかと考えております。
それと下の2番目になりますが、人材体制の充実というところなんですけど、特に外部専門家とか地域人材というところです。これもやはり地域差が大分あると思うんですけれど、文部科学省の調査で例えば学校安全計画、避難訓練を外部有識者がチェックしているかどうかというところを見ますと、全国で33.6%にとどまっているということです。やっぱり地域によって人材の確保が非常に難しいところはあるかと思いますけれど、これをどうやって解決していくかという、それが重要になってくるかと思います。
次をお願いします。学校安全計画及び危機管理マニュアルの策定・検証等の徹底ということです。3行目に「教職員のみならず保護者や地域住民と共有することが重要である」ということですが、これもやはりなかなか難しい、なかなか進まない部分と思っています。
また、「次の学校安全計画等の策定を徹底させるとともに、検証・改善を促進すること」ということになりますが、これも様々な資料とか国から出されるようになりましたので、例えば何が問題点か見つけるということなどもできるようになってきてはいますけれど、それを徹底したりあるいは評価するという体制は、また次の段階として必要ではないかと思います。
それと下の教育委員会の役割ですけれど、「地域の事故等の事例を収集・分析」ということですが、これも私の経験になってしまいますけれど、何か大きな事故が発生した、その地方公共団体ではこれをやるんですけれど、起きてない状況ではなかなかそれをやるような体制になっていないということがあるかなと思っています。
これが同じように、まだこれは起きていないんだけれど、でもそれに備えて、過去の事故を集めて、それを教訓として、どんな取組が必要かということです。それが自治体ごとに共有できれば、自分のところだけではなくて、ほかのところでどんな取組をしているか、どんな事故が起きているかということなども分かるようになるのではないかということです。
もちろん現在も、文科省の学校安全ポータルサイトには全国のいろんな資料が載っておりますけれど、さらにこれを進めていって、情報を充実させていただければと思います。
次をお願いします。これは同じつながりなんですけれど、その情報で、事故の情報を収集しているというと、やっぱりJSCのスポーツ振興センターだと思います。「事故防止のための対策に活用できるよう整備・分析」ということですが、毎年貴重な資料が出ておりまして、最近ですと例えば熱中症であるとか学校の遊具の事故防止の資料とか、いろんな手引やマニュアルなどがつくられております。
それはすごく学校にとって有益なものだと思うんですが、ただ、まだ災害共済給付のデータは、毎年負傷・疾病ですと100万件ぐらい、重大事件はもっと少ないですけれど、そういったものをもっとビッグデータとして活用できないんだろうかというのがあります。それはやはりJSCにも全部お願いするというのはなかなか難しいので、例えば外部の研究者がそれを有効に活用できるようにするため、もう少しきちんとした審査は必要かと思いますけれど、その上でできるだけ活用して、それを有効に教育現場に還元できるようにしていただきたいと思います。
一つ例を挙げますと、これは私の研究室の博士課程の学生がやっている仕事なんですが、特に柔道の事故に関して分析を行っています。柔道と言えば、中学校で武道が必修化されたということがあって、そのときに危険ではないかという意見もありました。ただ、過去のこういうデータを見て、エビデンスに基づきますと、重大事故というのは部活動で起きていて、授業ではほとんど起きていないという状況があります。
授業の事故と部活の事故の発生状況を詳しく見ていきますと、全く違う様相が出てくるわけです。重大事故ではないんですけれど、中学校の女子では圧倒的に受け身によるけがが多いんです。その背景には受け身というと安全だから、実際に投げ技をやるよりはいいんじゃないかということでやっているところが多いと思うんですが、現実にはけがが多い。ただ、これは受け身が危ないということではなくて、やはり受け身だから大丈夫だろうという意識が働いていたり、あるいは体育の先生が全ての競技、種目に通じているというわけじゃないですから、安全な指導の仕方というところに問題点があるのかもしれないだろうと。
このような細かな分析というのはやっぱり全部JSCというわけではなくて、外部の研究者の力も借りて、いろいろな事故防止につなげていければと思っております。
次をお願いします。最後になりますけれど、今お話ししたこととは別なお話をしますと、一つは学校に「ヒヤリハット」を重視する文化をということです。それをもっと育てていってほしいということです。今日は藤田先生のお話にも「校内ヒヤリハット登録システム」というお話もありましたし、文部科学省は今年、危機管理マニュアル評価・見直しガイドラインを出しましたけど、あの中にヒヤリハット報告書の例などが載っています。例えば重大な事故の調査に入ると同様のことが過去に起きているというケースがよくあります。例えばサッカーゴールが転倒して、それで死亡事故というところを調査してみると、実はサッカーゴールが倒れたのは初めてではなかったと。大きなけがにはならなかったんだけれど、その対策が放置されていたケースがありました。そういうふうに、そこで対策を講じていれば、死亡事故は起きなかったはずなんです。そういうことがやはり大事に思われてないんじゃないかというのは、私自身はずっと感じているところです。けが人が出なくてよかったねで終わってしまう。だけど次は、今度は重大な事故が起こるかもしれないというところにやっぱりつなげていってほしいなと思います。
もう一つ、次の2番目、3番目は同じような内容になるんですけれど、やはり危機的なことが起きますと、次の段階としては教育をどう継続していくかということです。去年、今年とコロナでその点少し注目されていますけれど、もちろん学校の事故、災害でも同じことが言えるわけです。
具体的な話として、2年前に『レジリエントな学校づくり』という本を出したんですけど、その中で、学校で起きた火災事故の話をちょっと取り上げました。それは火災が起きて、それも一部屋が燃えただけで、人的被害は全くなかったんです。適切な避難誘導もできて、子供たちがいる時間だったんですけど、ただ、翌日から普通に戻れるかというと戻れないんです。もちろん消防の調査が入りますし、煙が入った部屋を全部点検し、清掃してということになると、学校の中で2,3週間ぐらいは教室に入れなくなってしまう。そうすると教育に非常に支障が出るということがあります。
こういう教育継続という考え方、企業ではBCPという、事業継続計画ということを立てているんですけど、学校にはまだそういったことが進んでいないという状況があります。ですが、実際には大きな災害などが起きたときには、どうやってその教育を保障するかという部分もやっぱり危機管理とつながっているのではないかと思います。それが本当に強い学校といえるわけです。スクール・レジリエンスという話は前にちょっとお話ししましたけど、そういう学校づくりをしていく必要があるかと思います。
最後にやはりこの学校、すごくよい取組をしている学校というのはたくさんあるんですが、ただやはり学校差という問題はあります。優れた学校が増えてくるのが望ましいんですけれど、でもまずは全ての学校の底上げ、それが重要になってくるかと思います。それができるような、何かこれはなかなか無理、大変だなとか無理だなということですと進んでいきませんけれど、少しでも全国の学校が同じように学校安全の底上げができるという取組につなげていければと思っております。以上で私の発表を終わらせていただきます。

【渡邉(正)部会長】それでは、ここからまず皆さんのほうから質疑をいただきたいと思います。今日御発表いただいた内容、これは文部科学省のほうも含めて、15分程度質疑をいただいて、その後に全体的な討議を行いたいと思います。御質問のある方、できましたらちょっとチャットのほうで。それでは、最初に渡辺弘司委員から御質問があるようですので、お願いします。

【渡辺(弘)委員】質問が各々の御発表にあるんで、もし御回答に時間がかかるようだったら、ほかの委員の先生方の御質問を阻害するようではいけませんので、後日文書でも構いませんので、一応質問だけさせていただきます。
まず文部科学省の資料2に関しまして、10ページにeラーニングの受講に関して、外出自粛期間や夏休み中に多くの方が受講されますとありますけども、教師も働き方改革という時代において、研修を実務以外の時間に求めるという文章を書くことに関して、文部科学省は妥当な考え方と思っておられるのかどうか。つまり研修というのが本来であれば職務内で行うのが妥当じゃないかという気もするんですが、その文章を加えられた意図を、後で御回答いただければ思います。
それから、南川先生に関しまして、裁判を提起する動機として、訴訟する側は必ず真相究明、責任の所在、再発防止と言われますが、今般、自己権利の向上に伴って懲罰性ということが少ないけれども、要因になっている場合がございます。その場合に、民事の個人訴訟が生じた場合に、国家賠償法は免責になるのかどうかということを教えていただきたいと思います。
それから、木間先生に関しましては、新しく赴任なされて、すばらしい活動をなされたと思うんですが、逆に教員からすると、新たな業務が増えたことに対しての、その負担に対する、教員に対してのモチベーションの上げ方とか、過度な業務にならなかったような工夫というのがございましたら、その点をお教えいただければと思います。
大阪教育大学の藤田教授に関しまして、ヒヤリハットのソフトを使われている試みを始められたとおっしゃっておられたんですが、具体的なデータをもしお手元にお持ちであれば、その成果をお教えいただきたいと思います。
最後に、渡邉部会長ですけども、幾つか御提言なされた中で、組織内の責任の所在を明確にするために、役職もしくは何か責務を求めるものをつくってはどうかということでございますが、藤田先生がおっしゃられた学校安全主任という概念は、公に認められる可能性があるのかどうかが1点。
2点目は資格を取るというのはモチベーションの向上につながるけれども、それが教師のキャリア形成に反映しないと意味がないように思うんですが、その点のお考えが2点目。
3点目は、人的整備というのは誰しも考えるものでございますが、地方では小規模校が増えてきておりますので、マンパワーの少ない学校で兼務をしている教員が多い中で、さらなる役職を加えるということに関する配慮というのをどのようにお考えかという、3点を今でも後日でも結構でございますので、お教えいただければと思います。よろしくお願いいたします。

【渡邉(正)部会長】ほかに御質問ございますか。どうでしょう。なければ、渡辺弘司委員からいただいたことについて、お答えしていただくということでよろしいでしょうか。文科省からお願いします。

【森本安全教育調査官】文部科学省安全室の調査官の森本と申します。先ほど渡辺委員からの御質問のe-ラーニングについてお答えさせていただきます。
外出自粛期間中というのは昨年度、学校が休業等のときに、教職員も例えばテレワークの期間中の時間を利用したりとか、夏休みというのは休みといっても学校が夏季休業中です。職員に少し時間の余裕のある勤務時間内のところで受講をしていただいたと思っております。昨年度のアクセス数を見ましても、やっぱり7月、8月というのが多いアクセス数になっておりまして、昨年度の7月で5,000件とか、8月は8,000件という感じのアクセス数があります。
働き方改革等ありますので、教職員の勤務時間中の少し余裕のある時間帯等を活用して受講していただければと思っております。あとは学生等もありますので、夏休みと入れさせていただいたところでございます。

【渡邉(正)部会長】それでは、南川委員からお答えいただければと思うんですけど、どうでしょうか。

【南川委員】御質問ありがとうございます。先ほど紹介しました国家賠償法はあくまで自治体の賠償責任を追及する制度です。そして、教員の個人責任で言いますと、本来だったら刑事裁判とか公務員法の懲戒罰がその手段ということになるわけです。しかし、実際の裁判を見ますと、被告として自治体に加えて教員個人を被告にしている裁判例は非常に多く見受けられます。そして、その教員個人を被告にしたところで、結局、教員個人に対する損害賠償請求は認められないことになっています。公務員の個人責任は原則的に否定されます。
なぜその責任が認められないにもかかわらず、多くの事件において原告側が被告に教員個人を立てて争っているのかということなんですけれども、理由様々ですけれども、一つにはやはり先ほどおっしゃられたような、裁判に教員個人を巻き込むということ自体が一つ、教員にとっては大変大きな負担であって、それが一つの制裁というか、ペナルティーのような機能をしているという現実があります。
自治体と教員個人が共に被告になっていたとしても、弁護士は利益相反の関係がありますので、別々に立てないといけない場合があります。すなわち教員個人は被告とされますと、個人的に自分の弁護士を雇わないといけないということですので、裁判の矢面に立つだけでなく、裁判の費用なども含めて大変大きな負担ということになります。
そういう点からすると、やや本来の裁判の趣旨から違うような使い方がされているんじゃないかと見受けられる事例もあって、これも国賠判例の一つの問題点とは言えると思います。

【渡邉(正)部会長】ありがとうございました。では木間委員、いかがでしょうか。

【木間委員】ありがとうございます。教員の負担という点では本音ではあるのかもしれませんが、本校は昔から研究が盛んな学校で、そういう土壌があったというのも、今回、安全教育を私が赴任して進められる理由になっているかなとは思っております。
我々学校は年度末反省、そして新年度計画の中で何を取り上げ、中心課題において学校を進めていくかという話合いを教員全体で共有することを毎年行うわけですけれども、そういう中で私が赴任したことで、安全教育をメインにした学校経営をしていくということで教員たちも共通理解の下やっておりますので、年度前に、1年前にはこういう計画で進めようということがあるので、その年については負担感を感じないように少しでも進めています。もちろんそのために、では、今学校において課題になっていることの中で、何をうちの学校は少し減らすというかやらない、やらないというわけじゃないですけど、普通にやっていこうというところはあるというのが実情で、安全教育をメインにやって、ほかの部分については普通にやるという形で負担感を減らしているというのが実情です。

【渡邉(正)部会長】ありがとうございます。次に、藤田委員、お願いします。

【藤田部会長代理】質問、ありがとうございます。御質問いただいたヒヤリハットの登録システムですが、具体的には実証実験を来月9月から始めるというところです。今までは紙媒体で生徒会活動及び運動部のクラブ活動の担当者が安全管理、安全点検をやっていたと。それを今回全生徒及び全教職員参加型、いわゆるGIGAスクール構想で配備されましたので、それを使ってやればどれだけ視点の違いを気づけるか、また、そういった場合をどう使えるかということに展開したいということを考えてやっているところです。

【渡邉(正)部会長】ありがとうございます。最後に私のほうのいただいた御質問ですが、まず、安全主任、学校安全主任のことなんですけれど、これは今まで学校安全の中核となる教職員という名前になっていましたけど、やはりイメージとしてはいわゆる学校保健で言うところの保健主事のような形で、学校の中の学校安全をコーディネートするような形で明確になったほうが、当然、取組が非常に進むのではないかということでお話ししました。
もう一つ、資格云々という話ということなんですけど、なかなかこのインセンティブになるようなものというのは難しいなと思っていまして、実際に何でこのような記述が入ったかちょっと覚えてないんですけれど、個人的にはそういう資格というものというのはあまりイメージがなくて、もし本当に国がきちっとやるとなると、例えば内閣府がやっている防災スペシャリストみたいな、かなりきちっとした、かっちりとしたものじゃないとなかなか難しいのかなと思いますので、具体的な取組がちょっと私の中では考えはありません。
最後、人的資源のことだと思うんですけど、これは学校ではなくて外部の人の話でお話ししたんですけれど、やっぱり学校の規模によって、また学校のどこでやるかによって、人的資源はなかなか難しいところもあります。ですので、学校がやるというよりはむしろ設置者のほうで、そういう人的なデータベースみたいなものをつくっておいて、必要な形で協力してもらうというのが最適ではないかなと思っています。最近ですと、オンラインが随分と行き届いてきましたので、直接来ていただかなくてもお話を伺う等々は可能かと思いますので、そういうことの工夫もできるんではないかと思っております。
ちょっと時間が少し押していますので、一応質疑というのはこれでよろしいでしょうか。また何かあれば、この次の討議のほうに入りたいと思います。これからもあまり時間がないんですけど、20分程度、第3次計画の策定に向けて、今日は特に文部科学省の資料2に示された本日の論点について、また、それ以外の学校安全の組織活動について、皆さんのほうから御提案とかそういうのがもしありましたらお願いしたいと思います。できるだけ多くの委員の方から御意見いただきたいと思いますので、簡潔に御意見いただければと思います。いかがでしょう。何か御意見がありましたらお願いします。村山委員、お願いしてよろしいですか。

【村山委員】4点申し上げます。1つ目は、教員養成段階の基礎的な能力ということで、障害のある幼児児童生徒を含む特別な配慮や支援を要する児童生徒について、身につけさせるものは、別立てにしないで、関連する部分に記載するとよいと思います。例えば、小学校の教科書の指導書には、ある単元について学ぶときに、発達障害の児童については、こんなふうに配慮するといいという支援内容が示されていたと思うので、いろいろなところにちりばめて、特別支援教育の安全に関する部分を、学べるようにするとよいと思います。
反対に特別支援学校については、かなり違う部分があります。多様な職員がいたり、障害の違いがあったり、寄宿舎があったり、学区が広域だったりということで、全く別の項目立てがよいと思います。先日述べましたが、学校事故事例検索データベースでも突然死、窒息死が9件中8件あるという特殊性もありますので、完全に別なものとして、しかし、全員が知り、学ぶべきものとして必須であると考えます。
2つ目ですが、先ほど校長のリーダーシップという話がありましたが、例えば管理職研修の中で、都道府県ごとの事故の教訓というものがあると思います。先ほど藤田先生の御遺族のお話を聞くという機会はとても大事だと自分も思っています。例えば、附属池田小の御遺族の方が全国に行くわけにいかないので、各都道府県にいる御遺族の話を聞くということができるように、教育委員会のほうで積極的につながりをつくって、話す機会を設けるといいと思います。
次に、組織活動についてですが、附属池田小さんであれば4月当初に不審者対応でホイッスルを吹く研修を行っていた記憶がありますが、例えば、津波が予想される学校であれば屋上の避難、特別支援学校では医療的ケアの緊急対応というように、直近の課題について4月当初に研修をするというものを学校安全計画に示すとよいと思います。また、柴又小のセーフティプロモーションスクールの実践を参考に、複数年の学校安全計画というものがつくられていくとよいと思います。複数年の学校安全計画のようなものが作られると、より組織活動が充実すると思います。
分掌や委員会が、学校毎に扱いや名称が異なり防災委員会、保健委員会、安全委員会等が別々にあり、通学は生徒指導で行っている等、ばらばらに取り組んでいるものを、全体を網羅する意味で、「学校安全保健委員会」「命の委員会」のような名称で年1回でも開催することも必要だと思います。
最後に、安全点検のところになりますが、形骸化もあり、生徒や保護者の協力ももちろんいい取組だと思いますが、消防設備点検という感じで、設置者が予算をつけて専門業者に委託するような安全点検というものをやっていかないと、働き方改革という意味も含めて対応が進まないと思います。

【渡邉(正)部会長】ありがとうございました。それでは次に、石井委員からお願いいたします。

【石井委員】教職員の研修の問題について思うことがありますので、意見を述べさせていただきます。本県のことなんですけども、本県では学校安全に関して、必修として位置づいている研修は初任者研修、それから管理職の研修、防災コーディネーターの研修、特別支援学校の関係ではかなり多くありますが、それのみであります。
あと、県教委としては、学校安全・安心支援課が開講している課題別の研修もあるのですが、それはいわゆる希望研修ですので、やはりその希望研修を受けるというのは興味がある、どちらかというと意識が高い先生方しか受けてないなということです。
私としては、他力本願で申し訳ないんですが、やはり全学校にきちんと教員の研修をもっとレベルを上げていくということであるのであれば、何らかの全体的にこうしましょうというものが必要なのかなと思っています。
一つの意見としては、これができるかどうか分かりませんが、学校教育法で初任研と10年経験者研修は任命権者に対する義務として明記されていますけど、内容までは示されていません。なのでそういうところで、例えば文科省のほうから各段階に応じた学校安全に関する研修をきちんとここで位置づけてくださいという通知というんですか、そういうものがある程度いるのではないかと思っています。
先日、教員の免許更新制の廃止と、それに伴う研修の充実ということが言われましたので、学校安全の研修を位置づけるいいチャンスじゃないのかなと私自身は思っています。
もう一点です、すいません。先ほどありました資格の取得という件なんですけども、実は大分県では学校防災士養成研修というのがありまして、これは県教委がやっています。実際に日本防災士機構さんと協力をしまして、実際にこの研修を受けた教員には防災士の資格が取れるようになっています。ただ、その資格を取得するということに関しては、受益者、資格はその人のものになるので、その人がやっぱり必要な経費は払うべきじゃないかということが当然議論としてあります。ただ、これは県立学校に限っているんですが、県のほうからその分の予算の措置があって、県立の学校の校長、副校長、教頭レベルには県のほうから受講のお金が出て、防災士の資格が取れる仕組みに今大分県はなっています。以上、情報提供です。

【渡邉(正)部会長】ありがとうございました。この後、木下委員、その次、𠮷門委員でお願いしたいと思います。木下委員、お願いします。

【木下委員】よろしくお願いします。私からは教員研修と指導主事の研修について、意見を言わせていただけたらと思います。
文部科学省e-ラーニングのシステムはとてもいいなと思うのですが、興味がある人だけ受講するとか、そういった一部の人のものにならないために、履修の履歴を残すなどの取組が必要だと思います。防災教育研修をいつ誰が受けたかというのを教員のキャリアとして把握している都道府県もありますので、履修履歴が分かるような形で、できれば全員の教職員が研修するような、例えばコンプライアンス研修とかは全員必修となっておりますので、そういった形にできないかなと思っております。
e-ラーニングに関しましては、渡辺委員からもありましたように、時間の確保が必要だと思っております。このリモート研修が増えた中で、今までだったら出張だったので、きっちり時間確保ができていたと思うのですが、e-ラーニングの時間を受ける時間を勤務時間内に確保する必要があると感じております。
もう一点、一人で学ぶ形式になっていると思いますので、理論を勉強するにはいいかなと思うのですが、意見交換ができるような仕組みも必要だと思っております。
もう一点、指導主事に関しまして、教職員を研修する県の立場とか市町村の立場からすると、指導主事がやはり一人職で担当しているところもありますし、行政規模に応じては、たくさんの分掌を抱えている中の学校安全は一つで、二、三年で指導主事が異動する中で、専門性を深めていくというのがすごく難しいと感じております。また、新たな危険事象への対応とか、学校安全自体がすごく広くて深い分野なのに、たくさんの事象が生じて、対応をしていく中でその専門性を深めていくのはすごく難しいと思っております。
そこで、これだけデジタル化が進んでいる中で、オンライン研修を推進することを提案いたします。例えば私は指導主事の時代に年2回東京に行く研修と、つくばに行く研修がありましたが、全国から東京とかつくばに集まるというのはすごく時間的な制約がありますので、もっとデジタル化を進めて、オンラインで全国の先生が集まれるように、都道府県だけでなく市町村とか、希望する場合は学校からも参加ができるようなオンライン研修があれば良いと思います。

【渡邉(正)部会長】ありがとうございました。それでは、𠮷門委員、お願いします。

【𠮷門委員】ありがとうございました。今日御発表の皆様方の御発表も非常に大変勉強させていただきました。特に今、管理職の立場でありますので、木間委員の御発表は本当に参考にさせていただきたいと思っております。
今日、文部科学省から提示されました、論点案というところのテーマ1、テーマ2とありますけれども、共通する部分があります。共通してやはり一番大事なのは制度をどのようにしてつくるのか、ここは3つ目の黒丸の「安全教育や安全管理に関して、国がさらに果たすべき役割」というところにもなると思いますけれども、例えば安全教育についても東日本大震災以降、特に全国の学校でしっかりと防災を中心に教育が進められてきたというところは、第2次計画でも書かれているところでありますけれども、様々な手法も開発されてきたと思います。
今日お集まりの委員の皆様方も、全国の学校で御指導いただいている方々がたくさんいらっしゃいますけれども、防災も生活安全も交通安全も、いろんな効果的な手法というのは様々に開発されてきていますけれども、それを学校でトピックとしてつまみ食いをして安全教育をやったということではなくて、それをどう体系化するかということも重要だと思います。
そういうところでは、文科省はいろんなところを資料も作ったりしているわけでありますけれども、それを少し具体的に子供たちに対しては、私が発表させていただいたところでも少し述べさせていただきましたけれども、安全に関する資質能力を、どこまでどのような資質能力を高めていくのかという少し具体的に整理をして示していく。そろえてここまではやりましょう、それは例えば津波の速さとか足元まで来た津波でも、人はもう逃げられなくなるとか、そういう具体的なところまで落とし込むかどうかは、そういう個別の具体まではなかなかそろえてというところ、書き切れない膨大になってしまうところはあるとは思いますけれども、例えば少なくとも自分の地域に住む、地域にある課題、リスクはどのようなものがあるかということを必ず自分から知ろうとするとか、何をどこまで求めていくかというところをある程度具体化して示していくこと。
教員研修についても同じだと思います。だからここに書かれているのが、どのようなものかとありますけれども、コアカリキュラムのときに、今あるコアカリキュラムが少し漠然としていて具体的なことが書かれていないというところは、これまでの議論の中でもあったと思いますけれども、例えばですけれども、教員養成段階で教師となってすぐに求められるべき力として、例えば心肺蘇生、普通救命講習のようなものを受けて、みんな卒業すると。学校でも年に1回研修はしていますけれども、基本的なことベースを学んで、教員になって外に出るということで、それで教員になってからの研修を積み重ねていけるということもあると思いますから、具体的な個別のことを言うと、例えばそういうことを必須化するとかということはあると思います。
それから、安全に関する情報、知見というのはどんどん変わっていきますので、そういう新しいものもきちんと自らそれを能動的に取り入れてやっていこうとする、そういうことは教員にとっても必須だと思います。
一番言葉として私が共感したのは、木間委員がおっしゃったその危険に気づく、感じ取るということもおっしゃったと思うんですけど、危険に気づくということが求められる資質能力として、中心的なことになるんでないかと思います。
そういうことは、今ここで具体的な内容というのはなかなか申し上げにくいですけども、資質能力としてある程度整理した上で、そして最終的には制度をどうするかということを考えていくということだと思います。
学校保健委員会があり、学校安全委員会、そしてさらには地域も入れた地域学校安全委員会、様々にこれまでも書かれているところでありますが、学校の中で、今の学校の現状を考えたときに、文科省は今コミュニティースクールとか地域学校協働本部の仕組みの中で、その中に安全の議論を入れていきましょうということも打ち出されているところですけど、そこは非常に現実的なところだと思います。その中で、何をどういう視点で議論していくのかというゴールイメージとか、そういうことを具体化して、制度化していくということが大事だと思います。
さらには、学校安全の中核となる教員については、今までもここ10年、こういう書きぶりだけで、それぞれの地域や学校に委ねてきて今現状があるということを鑑みれば、もう一歩進めて、保健主事と同等のものを新たにつくるかどうかは別ですけれども、何かのどこかに位置づけを強くした制度化が必要だと考えています。
雑駁なお話になりましたけれども、あと最後に少しe-ラーニングについて、本校でこの夏に実施したことをお伝えして終わりたいと思います。
時間の確保ということの議論もありましたけれども、本校では夏休みの研修の課題として、夏休みが終わるまでに、実は昨日安全の研修を最後やったんですけど、そこまでに各自がそれぞれのキャリアステージのものを受講して、受講証を校長に見せるということをお願いしていました。
そういう課題を出すと夏休み前半で行った安全の研修の後にもその次の日には、ほとんどの教員が私に見せてくれたということもありますので、教員によっては自分のスマートフォンで見て受講票、自分のタブレットで見て、その受講票を写真に撮って私に見せたという教員もありました。やり方はそれぞれですけど、教員が自分が一番やりやすい方法でやるというのも、本校では効果があったことでございました。
あとはその安全というものを取り入れていくのに、これは新しいことを何か入れるんでなくて、私は学校で職員に話しているのは、今まで当然学校がやるべきこととして、しなくちゃいけないことで少し見える化が図られていないところを、見える化を図っているだけなのだと。当然こういうものを研究指定があるとか、それから研究主題に入れるとかではなくて、やるべきことを体系化してこれからやっていきましょうという言い方をしています。

【渡邉(正)部会長】ありがとうございました。時間の関係で小川委員、そして次に山田委員のお二人で終わらせていただきたいと思います。では、小川委員、お願いします。

【小川委員】よろしくお願いします。手短にコメントを述べさせていただきたいと思います。
まず、大学での教員養成でどのような内容を扱うべきかということなんですけども、内容も大事なんですが、学年、何年生に行うのか、何年生にどういう内容を教えるのかなど、大学生の成長段階を考慮する必要があるかなと思います。安全教育の教育実習というものがあれば別ですけども、どの学生もそれぞれの専門の授業をどう自分で行うかで精いっぱいなものですから、なかなか安全まで意識が及ばない。私は4年生を対象に教職実践演習の中で2時間ほど時間をいただて、現代的課題ということで、この学校安全の問題を学生に教えています。
4年生で教育実習に行った後だと自分の問題として受けとめてもらいやすい。何年生にどういう内容かということをやはり検討する必要があるかなと思いました。
それから2番目の研修なんですけども、安全教育についてはいろいろ手法が開発されてきているので、いろんな効果的な手法を先生方に身につけていけばいいと思うんですけども、一方、安全管理については専門性が問われます。一教員がどこまで設備や施設の安全を点検できるかというちょっと疑問です。例えば防護ネットがこれで大丈夫かどうかというのを先生が気づくかどうか、あるいは見てそれが危険な状態かを分かるかどうかというとかなり専門性が問われますので、専門的な方と協力する、またそのときに発生する費用なんかも含めて検討する必要があるかなと思いました。

【渡邉(正)部会長】ありがとうございました。では、最後に山田委員からお願いします。

【山田委員】すいません、木間先生のタブレット活用について10ページ目にあったんですが、放課後の緊急時の安全確認ということで、今学校と家庭のWi-Fi環境については、強化をしていくということだったんですけれども、放課後、帰るときとかの安全確認をどのようにするのか。将来的にモバイル端末にならないと多分そういうところが確保できないのではないかなと思いまして、ちょっと御意見させていただきました。

【渡邉(正)部会長】ありがとうございました。少し時間が過ぎてしまいましたけど、皆さん御意見ありがとうございました。それでは、今日の議論はこれで終了させていただきたいと思います。次回以降の予定について事務局から御説明お願いします。

【朝倉安全教育推進室長】資料7を御覧ください。第6回につきましては、9月22日水曜日14時から16時となっております。第7回以降については、御覧のとおりとなっております。
以上でございます。

【渡邉(正)部会長】それでは、次回以降もどうぞよろしくお願いいたします。本日予定しました議事はこれで終了しましたので、これで閉会といたします。本日はどうもありがとうございました。

――了――

(総合教育政策局男女共同参画共生社会学習・安全課)