学校安全部会(第4回)議事録

1.日時

令和3年8月4日(水曜日)10時00分~12時00分

2.場所

WEB会議(Webex利用)

3.議題

  1. 学校施設、安全管理について(委員からのヒアリング)
  2. 意見交換
  3. その他

4.議事録

【渡邉部会長】おはようございます。定刻になりましたので、ただいまから中央教育審議会初等中等教育分科会学校安全部会第4回会議を開催いたします。本日の会議は、報道関係者並びに一般傍聴者の傍聴を許可します。オンライン配信で傍聴いただいている方々には、傍聴登録者以外へ当会議の配信URLを転送することや他への放映は固くお断りしていますので、よろしくお願いいたします。それでは、まず事務局から資料の確認をお願いします。

【朝倉安全教育推進室長】会議資料につきましては、議事次第のとおりでございまして、資料1から資料8まで、参考資料につきましては参考1から参考2までございます。御手元に御用意いただきますようお願いいたします。
本日は、小川委員、中井委員、藤田委員を除く15名の御出席をいただきまして、定足数を満たしております。
事務局からは、総合教育政策局長義本博司、社会教育振興総括官寺門成真、総合教育政策局男女共同参画共生社会学習・安全課長石塚哲朗、大臣官房文教施設企画・防災部技術参事官笠原隆、国立教育政策研究所文教施設研究センターフェロー早田清宏ほか、関係室長、課長補佐等が出席しております。

【渡邉部会長】それでは、議事1に入ります。まず、文部科学省と国立教育政策研究所から、学校施設の整備等についてと、児童生徒の安全・安心と学校空間に関する調査について御発表いただきたいと思います。続いて、4名の委員から、安全管理について話題提供いただいた上で、今後の学校施設、安全管理について議論したいと思います。各発表に対する質疑は、全ての発表が終わった後に行いたいと思います。それでは、最初に文部科学省より御説明をお願いいたします。

【笠原技術参事官】文部科学省の文教施設企画・防災部技術参事官の笠原でございます。資料に基づき説明をさせていただきます。資料2の1ページ目を御覧いただければと思います。私のほうからは、老朽化対策・防災対策を踏まえた学校施設の整備についてということで、国土強靱化の観点、老朽化対策の観点、風水害対策の観点、耐震化対策の観点、防災機能の強化の観点、それを支える補助制度について説明させていただきます。
まず、国土強靱化の観点でございますけれども、3ページ目を御覧いただければと思いますが、これが政府全体としての取組の御紹介でございます。基本的な考え方のところを御覧いただければと思いますけれども、気候変動の影響による気象災害が激甚化・頻発化しているということと、南海トラフ地震等の大規模地震は切迫しているということの一方で、高度成長期に整備されたインフラが一斉に老朽化してしまうという状況が生じております。そういうことを踏まえまして、令和7年度までの5か年に追加的に必要となる事業規模を定めて、重点的・集中的に対策を講じるということで、令和2年12月に閣議決定されているものでございます。
次に、資料4ページ目を御覧いただければと思います。これから文部科学省関係の施策がどういう形で盛り込まれているかということを紹介させていただいております。文部科学省関係としては、防災機能強化・耐震化、それと老朽化対策について具体的な計画が盛り込まれているところでございます。
国公私立の具体的な取組については、5ページ目から9ページ目までに整理させていただいておりますので、必要があれば御覧いただければと思います。
次は老朽化対策でございますけれども、これは非常に大きな課題でございまして、子供の事故防止の観点からも非常に重要なものになってございます。その現状について、11ページ目から御説明させていただきます。
まず、公立の学校ですけれども、グラフにございますように、昭和40年代後半から50年代ぐらいに建設された施設が非常に多くなっています。築25年を経過しますと、右のグラフとか、下の写真にございますように、非常に不具合がいろいろ出てくるということでございます。
そういうことに対しては、12ページ目になりますけれども、学校施設の長寿命化計画とございますけれども、政府全体として、インフラの長寿命化計画というものを策定して、計画的に進めるということが決められております。黄色の四角囲みに書いてございますように、学校施設等についても、個別の施設ごとの計画をつくるということになっておりまして、それを令和2年度までにつくると決められております。これは、まだ整理ができておりませんけれども、ほぼ策定される見込みという状況でございます。
現状どのような事故が起きているかというのを13ページに整理させていただいています。例えば、写真にありますように、校舎の出入口のひさしが落下するとか、体育館の床面の一部の剥離の問題とか、外壁モルタルの落下、あと最後に書いてございますように、今年4月27日に痛ましい事故が発生しましたけれども、防球ネットの支柱の折れというようないろいろな事故が発生しているという状況でございます。
次のページ、14ページを御覧いただければと思いますが、ではその維持管理をやるに当たって、どういうところに問題があるのかということを少し整理してございます。一つは、技術職員が不足しているという問題があると。これは、市町村全体においてもそうですし、教育委員会はもとよりですけれども、技術職員が非常に不足しているという問題と、自治体において維持管理にどれぐらい予算がかけられているかという観点についても、地方交付税で一定の予算措置がされているわけですけれども、実際に使われている額との間ではかなりの乖離がある、必要な予算が十分かけられていないのではないかという問題もあるということでございます。一方、自治体によっては、その体制強化のために市長部局と連携しているものとか、民間のノウハウを活用しているような取組をされているということでございます。
文部科学省としては、15ページに書いてございますように、様々な通知や手引等を発出しながら進めているということと、16ページに書いてございますように、長寿命化を行うに当たっての新たな補助制度なども策定しながら進めているという状況でございます。
近年どんな災害が起きているかというのを17ページに整理させていただいていますけれども、ブルーが台風とか豪雨、いわゆる水関係の災害です。オレンジが地震・火山等の災害になっております。御覧いただきますと、最近は、豪雨とか、そのような風水害に係る災害が非常に多い、頻発化しているということが分かるかと思います。そういうことを踏まえまして、次のページになりますけれども、風水害対策について様々な対策を取っているということでございます。
19ページを御覧いただきますと、浸水想定区域とか、土砂災害を警戒するために必要な区域というものが法律に基づいて指定されるわけですけれども、そういうところに指定されている学校の状況を調べています。左の表を見ていただきますと、上のほうで浸水想定区域に立地する学校が2割、土砂災害警戒区域に立地している学校が1割という状況がございます。浸水想定区域にある学校についての対策がどれだけ取られているかというのを見ますと、右側のように、まだまだハード的な整備は進んでいないという状況がございます。これは、区域の設定が学校の立地後にされたという状況もございますし、ソフト・ハード合わせて対策を取っていくということになっておりますので、今後も進めていく必要があるという状況が見てとれるかと思います。
具体的な対策については、20ページ、21ページのようないろいろな様々な事例集などを策定しながら、自治体においての計画の推進を進めていただくということを文部科学省としてお願いしているというところでございます。
耐震化対策についてでございますけれども、23ページを御覧いただきますと、熊本地震を踏まえて大きく3つの観点で進める必要があると整理しています。建物の耐震化、体育館等のいわゆるつり天井の問題、それとつり天井以外の外壁等を含めた非構造部材の問題、この3つがあると言われています。
その現状についてですけれども、24ページを御覧いただきますと、公立学校については、耐震化は99.4%でおおむね完了しておりますし、つり天井についてもほぼ完了していますが、つり天井以外の非構造部材についての実施状況は48.2%ということで、まだまだ対策が必要だという状況であります。
それらについての補助については、25ページで書いてございますように、かなり、かさ上げ等も含めた手厚い措置をしてきているという状況でございます。
次は私立学校の状況でございますけれども、建物の耐震化については、第2次学校安全の推進に関する計画開始時期の平成29年度から見ますと、4ポイントぐらい上昇した92.3%ということになってございます。しかし、つり天井は83%、つり天井以外の実施状況は42.9%ということで、こちらもまだ進める必要があるということでございます。私立学校につきましても、耐震化の推進については、手厚い措置を設けながら進めているという状況でございます。
非構造部材についても、27ページのガイドブックとか、あと28ページ以降の様々な手引などを示しながら進めているというところでございます。
30ページは、ブロック塀の安全対策についてでございます。平成30年6月の大阪北部地震のときに発生したブロック塀の倒壊事故によって痛ましい事故が起きております。これらの対策については、臨時特例交付金なども創設しながら、91.6%ということで、かなり対策が進んでおります。残っている部分は、下の四角囲みに書いてございますように、人が近寄れない場所とか、1段から3段ぐらいの非常に低いなどのブロック塀等については残っているということでございますけれども、これらについても早期の対応をお願いしているという状況でございます。
すみません、次は32ページ目で、避難所たる学校施設の防災機能の強化というところですけれども、33ページ目にございますように、約9割の学校が避難所に指定されている。その学校の防災機能強化の状況というのが34ページに整理しておりますけれども、様々な設備について、備蓄倉庫ですと78%というように、まだまだ対応すべきものがあるという状況でございます。
36ページ目でございますけれども、避難所になった学校施設の状況の課題としては、整備されたいろいろなものが役に立ったという意見もありますけれども、避難所に指定されていない学校でも避難者を受け入れたという問題とか、様々な不具合も報告されていますので、そういうものを37ページ以降で書いてあるような報告書にまとめて、様々な取組を周知しているということでございます。
1点、そこで39ページ目を御覧いただければと思いますけれども、学校施設は当然避難所となるわけですけれども、避難所としての機能が終わった後に円滑な学校再開ということも視野に入れながら避難所としての活用を図っていく等、子供たちの観点からも非常に重要ですので、避難所としてどうやって学校をつくっていくかということの計画のつくり方などについても示しているという状況でございます。
それと、40ページに書いてございますように、防災施設の整備というものは、ある意味、防災教育、ソフト面との連携というのが非常に重要になります。ここに書いてあるような防災設備・施設というものも、防災教育における実物大の教材にもなります。そのようなことも紹介しながら、ソフト・ハードを合わせた推進というものをさせていただいているということでございます。
具体的な事例は、41ページに書いてあるようなものとか、あとは42ページには、バリアフリーというものが非常に大きな問題になりますので、その取組の事例などについても紹介させていただいています。
以降は、公立、私立、あとは総務省のこれらを推進するための予算の制度について紹介させていただいています。こんなことを活用しながら自治体において様々な取組を進めていただいているという状況でございます。長くなりましたが、以上でございます。

【渡邉部会長】ありがとうございました。続いて、国立教育政策研究所から説明をお願いいたします。

【早田フェロー】国立教育政策研究所文教施設研究センターの早田と申します。本日は貴重な機会をいただき、ありがとうございます。令和元年度から2年度にかけて実施した本調査研究の結果について、今日は御説明させていただきます。本研究には、産総研の北村光司先生にも御参画いただきました。
次をお願いします。本調査は、学校管理下の事故発生件数を減らす、また防災・防犯上の安全性を高めることを目的として、学校施設における効果的な取組は何かを把握するために実施しました。
本調査では、教職員や児童生徒といった学校利用者の安全性に対する認識、教育委員会や学校の取組を把握するとともに、日本スポーツ振興センターがまとめたデータを活用して、実際の事故発生件数との関係について考察をしております。
次をお願いします。調査概要はこちらにあるとおりです。調査対象は、全国200自治体、200の公立小中学校であり、そのうち140の自治体、87の公立小中学校から回答の協力が得られました。
次をお願いします。続いて、調査項目です。まず、学校利用者の認識については、学校内で起きる事故等に対して、危険と感じる度合いを4段階で評価をしていただくとともに、その理由について確認しております。また、教育委員会や学校の取組状況については、安全性確保のために実施している取組や、学校内の安全点検に参加する人や頻度等について確認しております。
次をお願いします。すみません、こちらは見づらくて恐縮ですが、調査結果でありまして、日常事故31項目、防犯6項目、防災11項目について、教職員及び児童生徒が危険と感じる度合いを数値化した一覧表です。赤色の4が「非常に危険だと感じる」、青色の1が「危険は感じない」でして、上段が教職員、下段が児童生徒の点数です。小中学校別とか校舎の築年数別で、その点数について比較評価を行っています。
それを見やすくしたのが、次の6枚目でございます。こちらが、日常事故の31項目についてグラフ化したものでして、オレンジ色が児童生徒、青が教職員の危険と感じる度合いです。児童生徒のほうが危険と感じる度合いが高く、またグラフの形が似ていることが分かります。
次をお願いします。全体を通じて、左上にありますように、教職員、児童生徒とも、廊下の曲がり角での衝突に対して最も危険と感じておりまして、次をお願いします。その理由として最も多かったのは、「見通しが悪く、人や物に気づきにくいから」ということでした。
次をお願いします。まとめますと、教職員と比較して、児童生徒のほうが危険と感じる度合いが高い傾向にあり、教職員が危険と感じることは児童生徒も危険と感じる傾向にあることが分かりました。
次をお願いします。続いて、事故が起きる原因についての調査です。事故が起きる理由としては、気づきの不足、問題意識共有の不足、実行の不足の3点に注目しました。
次をお願いします。これは結論のみの紹介となって恐縮ですが、約8~9割の学校が、月に1回以上、学校保健安全法に基づく定期の安全点検を実施しており、全ての管理職が、学校内の不具合を十分に、またはある程度把握できていると認識しています。また、全ての管理職が、その不具合について、教育委員会と問題意識を共有できている、またはある程度共有できていると認識していること、一方、学校で執行可能な年間の修繕額については、約6割の管理職が十分ではない、またはあまり十分ではないと認識していることが分かりました。
次をお願いします。続いて、危険を回避する術についての調査です。児童生徒の主体的な参画、けがのデータの見える化や共有など、5つの観点に着目しました。
次をお願いします。結論の一部を紹介しますと、児童生徒が日常事故に関する校内の学校安全マップを作成している学校が約2割ございまして、これらの学校では、教職員と児童生徒が危険と感じる項目や度合いが近づく傾向が見られました。
次をお願いします。続いて、JSCがまとめている災害共済給付のデータを活用して、実際に発生した事故発生件数と学校利用者が危険と感じる度合いとの関係について分析を行った結果を紹介します。上段にあります表が、調査対象の140自治体、87学校における事故種ごとの事故発生件数です。左下の散布図は、縦軸に事故の発生件数、横軸に学校利用者が危険と感じる度合いをとっています。散布図の右上にある1のグループが、危険と感じる度合いが高く、実際の事故発生件数が比較的多いグループです。散布図の左上にあるグループ2が、危険と感じる度合いは比較的低いのですが、実際の事故発生件数が比較的多いというものでございます。このグループ1や2に対して優先的に安全対策を行うことが、事故発生を抑える上で有効であると考えられます。
次をお願いします。最後に、事故発生件数が比較的多い自治体・学校と、少ない自治体・学校との間で、学校の安全・安心に関してどのような取組の差があるかについて分析を行いました。例えば事故が多い学校と少ない学校との間で差が見られた取組としては、学校管理職と教育委員会の学校の不具合に関する打合せの頻度や、例えば「この廊下は見通しが悪いので、カーブミラーを設置してほしい」など、児童生徒が主体的に学校施設の安全について意見を発する機会があるかどうかというところがございました。こういった差が見られる取組が、事故発生件数の減少に向けては有効な取組だと考えられます。
僣越ではありますが、本研究のデータが皆様の御検討の一助となれば幸いです。これで発表を終わります。ありがとうございました。

【渡邉部会長】ありがとうございました。続きまして、本日は、北村委員、松本委員、首藤委員、南川委員からそれぞれ御発表いただきたいと思います。各委員、15分程度でお願いいたします。まずは、北村委員からお願いいたします。

【北村委員】よろしくお願いいたします。画面の共有をさせていただきたいと思います。
それでは、私からは、傷害データを活用した傷害予防の取組ということで、お話をさせていただきたいと思います。
私たちのところで、もう20年近く子供の傷害予防の研究をずっとしていまして、その中で、すごく当たり前の話なんですけれども、傷害予防をするには、まずどんな課題があるのかというのをデータに基づいてちゃんと理解するのが一番初めに大事かなと思っています。傷害データに基づいて理解して、予防というのは、その中から変えられるものをちゃんと探して、実際に変えて予防して、実際に介入してみて、そこからさらに効果検証をデータでまたやっていくというような、こんなループをぐるぐる回していく必要があるなと感じています。実際のいろいろな学校現場での事故などを見ていますと、このステップになっていないというところが、なかなか事故が減らないという原因の一つかなと思っています。
我々のところで考えた、理論というほどではないのですけれども、こういう傷害予防の課題を解決するときに、よくあるのは、この左側のように、例えば事故の数とか、重傷な事故を減らしたいみたいな、Aと書いてある「変えたいもの」というものがあったときに、意外と調べているのは「変えられないもの」との関係しか調べていないことが多いなと感じることが結構あります。例えば、保育園とかであれば、月曜日は事故がすごく多いとかという話があったときに、なぜ月曜日は多いのかというところまで一段掘り下げて見ていかないと、結局何も変えられなくて、また「月曜日は気をつけましょう」みたいなことになってしまって、なかなか予防できないということが起きているなと思います。今の曜日の例などはすごく単純な例なので、そんなばかなと思うかもしれないのですけれども、結局同じようなことがほかの事故でも起きているなと思っています。ということで、変えられないものと変えたいものだけの関係を見ていてもしようがなくて、ちゃんと変えられるもの、操作が可能な、介入して何か変えられるものをちゃんと把握する必要があるなと思っています。それを変えることによって、結局その事故の数とか重傷度を下げるというところを変えていく必要があるなと思っています。
例えばなんですけれども、これは学校の事故で、野球部とかの事故で、打ったときに、これからちょっとビデオに流しますが、しっかり打って前に飛ばせずに、ファールチップとかといいますけれども、かするような感じで当たったときに、このボールが実は目とか歯とか顔面に飛んできて、目に傷害を負ったりとか、鼻を骨折したりとか、歯が折れてしまうという事故が結構起きています。
私もずっと小学校から野球部だったのですけれども、これに対してやられている対策は、具体的に言うと、「バットのスイングをちゃんとできるように素振りを練習しましょう」とか、あったとしても、私の時代などですと、「集中してボールを見ろ」とか、「気合を入れろ」みたいな話で終わってしまって、それではとても予防できないなと思うんですけれども、実際に結構こういうことが起きていると思います。
これは実際にある中学校に協力していただいて、学校に行って、野球部がバッティング練習をしているときに、ファールチップになったときにどういう速度で飛んでいるのかというのを計測しました。その一例がこれに載っているのですけれども、ピッチャーが投げた球が時速103キロで飛んできて、打って、そこから跳ね返って飛んでいくときに、大体時速42キロぐらいになっています。このとき、打った瞬間からこの目までの距離というのが、こちらにある60センチぐらいです。それで時速42キロで飛んでくると、このボールがバットに当たった瞬間から目に来るまでというのが0.05秒しかないんです。なので、あっという間にぶつかるという、まさにそのとおりで、0.05秒で飛んでくるものを「集中しろ」とか「よけろ」とかと言っても絶対無理なので、このように無理なんだけれども何かやっていることにしている予防策というのが意外とあるなというのがあって、これを変えていく必要があるなと思っています。
でも、野球のこういうものに関しては、最近ですと、アイガードというようなものとか、マウスピースの活用とか、フェースガードを使うみたいなものが、少しずつそういう製品なども出てきたりしているので、そういうものがあれば、児童たちは思い切り練習をして、ちょっと失敗してファールチップになって飛んできたとしても、がんとぶつかるけれども、アイガードとかにぶつかるので、けがを負わないというような、そういう予防ができるように今なってきているかなとは思うんですけれども、意外とこういう適切な予防策が実施できていないということがいっぱい起きていると思います。
それで、まずこの学校でどういう課題が起きているのかというのを把握するのに、先ほど早田さんのほうから御紹介があったような日本スポーツ振興センターの災害給付制度というものがあります。これは皆さん多分もう御存じだと思うので、簡単にしか紹介しないのですけれども、学校管理下で生じたけがとか病気とかに関して、そこでかかった医療費の総額が5,000円以上のものに関して一部を給付する保険の制度を行っているところです。その保険の申請をするときに、学年がどれぐらいで、何をやっていたときにどういう事故でしたという、けがはどういうけがでしたという情報を申請するので、ある種これがけがのサーベイランスになっています。
加入率などを見ていただくと、かなり高くて、小学校以上になると、もうほぼ入っていると言ってもいいぐらいになっているという状況で、トータルで見ても95%以上が加入しているというデータです。これは、海外でアメリカとかオーストラリアとかヨーロッパなども、こういう傷害のサーベイランスというのが、病院をベースにしたものというのはすごく進んでいるのですけれども、学校を対象にしたものでこんなに全体をカバーできているようなすばらしいサーベイランスの仕組みはないのです。なので、これは本当に世界に誇るべきサーベイランスなので、これをうまく活用していく必要があるなと思っています。
具体的な例で少し、こんなことができるのではないかというのを御紹介したいなと思います。例えば、小学校で体育中の事故について整理してみると、このグラフはちょっといろいろ入ってしまっているんですけれども、横軸が先ほどの給付額の、同じスポーツで起きている事故はいっぱいあるので、それの中央値という真ん中に当たる給付金額です。ある種、この給付金額が高いということは、医療費が高いので、重傷なけがをしたと言えるかなと思います。そういう意味で、横軸は右に行くほど重傷率が高いと思っていただければいいかなと思います。縦軸は事故の件数です。ここは件数のばらつきが相当あるので、対数といって、この横の線で10倍変わるようなグラフになっています。なので、ここから下は10件以下、ここから下は100件以下、ここから下は1,000件以下、ここから下が1万件以下という感じのグラフになっています。
それで見てみますと、跳び箱運動というのが飛び抜けて高いんです。ほかのものに比べて件数がここで1桁違うので、跳び箱だけが1万件以上、小学校の体育中に事故が起きていると。給付金額については、大体同じところに分布しているので、それほど大きくは変わらないのですが、とにかく跳び箱の事故というのは件数が多いという状況です。
これは、同じように各学校種でどれぐらいの割合を占めているかというのを見ても、小学校で見ると、4分の1ぐらいが跳び箱での事故になっています。さらにこれを給付金額で絞って、給付金が5万円以上、医療費でいうと12万5,000円以上のものに絞ってみると、実は中学校でも2割ぐらいは跳び箱運動で起きているということが分かってきます。小学校では当然3割近く跳び箱で起きているので、小学校に関しては、特に跳び箱というのは事故の件数も多いし、重傷な事故も一番多く起きているという運動になっています。
けがとしても、普通、ほかの事故でいうと、挫傷とか打撲傷というのが特に多いんですけれども、跳び箱は傾向がちょっと違って、小学校とか中学校では骨折が一番多いという運動になっています。
けがの部位などを見てみても、これはちょっと見づらいんですけれども、下がけがの種類として何が多いのかというのを表していて、上は一番多いけががどこで起きているかというのを体のマップで表しています。上のマップは、一番けがをしているところを1としたときにほかがどれぐらいのけがかというのを表しているので、小学校・中学校では手の骨折で、指とか手首が一番多いですよということを表しています。高校生になると、捻挫が一番多くて、足首の捻挫が一番多いということなんですけれども、とにかく小中学校に関しては、骨折が多くて、手とか指が最も多いという状況です。
ということでこのデータを分析すると、どこに課題があるかというのが分かるのですけれども、事故が起きた瞬間の文章なども書いてあるのですけれども、なかなか詳細なことまで分からないので、どうしても事故のデータを分析した時点では、マクロな視点でのリスクの把握になります。実際に予防しようと思うと、かなり詳細な分析が必要になってきます。なので、実際にある小学校に協力してもらって、跳び箱の授業の様子をビデオに撮らせてもらったり、観察して、どういうパターンでリスクが起きているのかというのを全部整理するということを行いました。その上で、跳び箱の場合は、跳び箱自体に何か改良を加えるというのはなかなか難しいので、学校の先生たちが、まず跳び箱の事故ではどんなことが起きているのかとか、どういう点に着目したらそのリスクが起きそうかというのをチェックできるようなツールを作るということを行いました。
ざっと紹介しますけれども、こういうリスクパターンとしては、こんな感じで、踏み切りが弱いので、最終的に自分の手の上にお尻がどんと乗ってしまって手首を骨折したりということが起きていたりとか、あとこれは、踏み切りの位置がかなり近いので、頑張って上にジャンプするような感じになって、前のめりになって転落してしまうというものとか、勢いをつけ過ぎてしまって、本当はここで手をついたときに体を、上半身を起こすような動きをしなければいけないんですけれども、それができずにそのまま前に突っ込んでしまうような動きが出て、そのまま倒れてしまうというパターンがありました。これらのリスク状況や着目ポイントを把握することを支援するソフトを作ろうということで、うまく跳べないパターンにはこういうパターンがありますよとか、跳び箱の事故について知らせるものとか、跳び箱を跳ぶ流れの中で、これができていますかというチェックをつけて、「練習法を見る」というところを押すと、できていないところに関してはこういう練習をするといいですよというのを動画つきで見られるようなものを作っていきました。本当はこれで実際に介入をして、予防ができたかどうかという評価までできたらよかったのですけれども、ちょうどコロナになってしまって、ちょっと今そこの評価まではできていないので、今後ここはしっかり詰めてやりたいなと思っています。
ちょっとここで話が変わるのですけれども、同じように傷害データを使って小学校での介入とか予防をしようというのが、海外ではもう既にやられていて、例えば、これはカナダの例なんですけれども、遊具から転落して腕を骨折するということを予防したいというときに、設置面として、頭の骨折を予防するのには砂とかウッドチップがいいとかと言われているのですけれども、腕の骨折に関しては何がいいかはあまりはっきりしていないのです。なので、砂とかウッドチップで、ウッドチップはこの写真のようなものなんですけれども、どっちが効果的なのかということを検証しようというので、カナダのトロントにある小学校28校を対象に約2年半かけて調査をしています。これは、設置面を砂にする群とウッドチップにする群とに分けて、条件を合わせるために遊具も交換して、そのまま学校の普通の活動をしてもらってどれだけ変わるかというので、骨折率とかを調べて、10万生徒月当たりというちょっと不思議な単位ですけれども、砂場では1.9回でした、ウッドチップの場合には9.4回でしたということで、砂のほうが腕の骨折を防ぐには効果がありますよというのを検証して、この検証結果をもって全小学校を砂にする、ということをやっています。日本の場合には、このサーベイランスが既にあるので、同じようなことが実はできるのではないかなと思っています。
最後ですけれども、今後こういう学校環境での傷害予防をやろうと思うと、傷害データを基にした課題把握をちゃんとしていく必要があって、その部分は少しずつ今できているかなと思っています。傷害メカニズムを把握するようなところというのがまだ足りていないので、そこをやるような仕組みづくりも必要かなと思っています。先ほどのように我々がお願いをして小学校を見つけて協力してもらうというやり方もできるのですけれども、こういう傷害予防に学校も積極的に参加してもらって、必要な調査に協力する学校を公募して参加してもらうとか、場合によっては何かカメラとかセンサーをつけさせてもらって常時ずっとデータを取れるような仕組みにしておくとか、そういうちゃんと学校現場でデータを取るような仕組みがないといけないなと思っています。
先ほど我々も跳び箱の調査をやりましたけれども、調査自体も我々だけがやっているとかなり少ないことしかできないので、そういう調査も「こういう課題があるからこういう調査をしてください」というのを公募するような仕組みとかも必要かなと思っています。先ほどのカナダの例のような形で、予防策の実施の可能性とか予防効果とかを評価するようなことを実際の学校現場でやるということも必要かなと思っています。そこでいい予防策が出てくれば、それを全国に広めるといった、こういう現場とも連携しながら予防策をつくって広めて効果検証を本当にしていく。最後は、それを広めた後に、傷害データで、またどれぐらい効果があったかという件数とか、そういうもので調べられると思うので、一連のこういう学校とかなり密に連携しながら予防策をつくって検証して広めるという活動が必要ではないかなと思っております。すみません、少し長くなりましたけれども、以上です。ありがとうございました。

【渡邉部会長】ありがとうございました。続いて、松本委員、よろしくお願いいたします。

【松本委員】中京大学の松本と申します。今日は、熱中症予防の現状と、これからさらに暑くなっていく日本で、夏の間学校で体育・スポーツを行うための一つの対策として「屋根付き運動スペース」の提案をさせていただきたいと思います。
今出しています3つが、日本スポーツ協会の「スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック」、日本生気象学会の「日常生活における熱中症予防」、それから環境省の「環境保健マニュアル」。この3つがおよそ日本における熱中症予防の一次資料、オリジナルの資料が入っているものです。
次をお願いします。これは、死亡統計から見た日本における熱中症による死亡です。近年増えてきていることがお分かりかと思います。それから、過去最高に暑かったのが2010年、最悪の年で、日本全国で1,745人が暑さが原因で亡くなっています。男女比はそれほど変わりはありません。特徴は、この8割以上の方が65歳以上の高齢者である。場所として、そのうちの45%が家あるいは庭で亡くなっている点です。つまり、高齢者が自宅で熱中症で亡くなっているというのが、今の日本の熱中症の現状です。それから、1994年、2007年、2010年、飛び抜けて多い年があります。これらの年は、熱波(HeatWave)という言葉がありまして、1週間以上、特別に暑い日が続くと、死者が増える。言い換えると、1日、2日では大したことは起きないとも言えるのです。これを何とかするというのがこれから必要な話です。
次をお願いします。今度は学校管理下の事故です。先ほどと同じJSCのデータです。1970年代の後半、1980年代の前半に毎年10人ぐらい亡くなるようなことが起こり、当時、日本体育協会では、熱中症予防の専門家を集めて対策を検討し始めました。1994年から「スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック」を発行しました。赤い矢印です。その後、だんだん効果が上がって減ってきていると我々は考えています。ですが、ゼロが達成できた年はこれまでに3年間しかありませんで、1例とか2例、少ない数ですが、本来あってはいけない、楽しいはずの運動で子供たちが亡くなっているという現状があり、これからも努力が必要です。
次をお願いします。今のデータを、亡くなった事例を黒い色で、死亡には至らなかった事例を青い色で、そのとき起こった場所での最寄りの気象台データからWBGTを推測しまして、まとめたグラフにすると、こうなります。WBGTで評価する注意、警戒、厳重警戒と危険度が高まっていくに従って、たくさんの事例が起こってくる。特に厳重警戒を超えると事故が多いというのがお分かりいただけると思います。実は、気温だけで見ますと、こんなにうまくマッチしません。こんなことからも、熱中症の予防にはWBGTを使うことが必要であるというのがお分かりいただけるかと思います。31度を超えた、「運動は原則中止」の領域では、事故は少ないです。これは、さすがにこの暑さの中で高強度の長時間の運動をされることが少ないからこれまで少なかったのですが、近年、真夏の学校では、昼間、運動場はこの領域で実際の授業が行われるようになってきているという状況にあり、最後の「屋根付き運動スペース」の提言というのを今日お話ししたいと思っております。
次をお願いします。日本スポーツ協会が出しております熱中症予防運動指針です。一番左にありますWBGT、これを現場で測っていただいて、例えば今日は31.5度ある。運動は原則中止だよ。特別の場合以外は運動を中止する。特に子供の場合には運動を中止すべき。思春期以前の子供たちは、実は汗をうまくかくことができません。気温が体温より高くなっている状況では、汗だけが熱を捨てる方法となってしまうため、子供たちは特に厳しい状況に置かれます。それを強調しています。
次をお願いします。いろいろな予防措置を講じて行いますが、それでも、ある割合でどうしても事故というのは起こってくると思われます。命に関わるような、意識レベルが低下しているような熱射病になったときにはどうするか。その場合にはもう水分補給では間に合いません。外から強制的に体温を下げてやる。これだけが救命の方法となります。右下の氷水の浴槽に全身をどぶんとつけてしまう。これが一番早く体温を下げられて、救命率が高いことが最近の研究から明らかになっています。でも、浴槽がない、あるいは浴槽があっても、水をためようとすると、それで10分ロスしてしまいます。その場合には、左上の、水道につないだホースで全身に水をかけ続ける。一回ぬらすのではありません。30分でもかけ続けます。強力な大きな扇風機も一緒に使う。このような方法を使います。これもない。できない。小学校を考えると、そういうことも起こり得ると思います。その場合には、日陰の涼しい場所で救急車を待つというのはあまりにも消極的です。保健室にはエアコンがあります。保健室に収容して、エアコンを節電ではありません、最大でかけてください。それで、洗面器、バケツ、何でも結構です。氷水をたくさん用意して、タオルをぬらして、全身にぬれタオルを載せて、冷やしてください。扇風機も使います。要は、氷水に全身をつけると同じ状況をぬれたタオルでつくってくださいという意味です。これで救急車を待ってください。従来は、氷やアイスパックを首、脇の下、足の付け根などの大血管の上に当てて冷やす、これが最も推奨されていましたが、近年の研究では、これは体温低下率が低くて、単独での使用は推奨できないと、全く変わってしまいました。
次をお願いします。そのようなことを受けまして、日本スポーツ協会では、ホームページに5つの動画、2分から5分程度、小学校でも使える程度にまとめておりますので、ぜひ御活用いただければと思います。
次をお願いします。ここから話を変えます。Exerciseismedicine、これはアメリカスポーツ医学会が2007年に出した標語です。文字どおり、「運動は薬」。運動することによって健康増進・疾病予防につながります。そして、医療費の抑制ができます。つまり、お金をかけずに、運動することによって疾病予防・健康増進になる。加えて、学校での子供たちに体育教育を行うということの効果は、実は小児期に運動を楽しむ習慣を身につけると、その後の人生を豊かにする。私はこれだろうと思っています。ですが、問題になってくるのは、運動する環境が暑くなり過ぎて、夏場は運動ができなくなってしまうという現状があります。過去100年間で6月から8月の夏の間の平均気温は、世界では0.7度上昇しました。ところが、東京では過去100年で3度上昇しています。つまり、高齢者の皆さんが言われる「自分らの子供の頃は平気だった」ではないんです。もう環境が数十年前とは別の世界になっているというのを皆さんに認識していただきたいと思います。
加えて、今後の予測です。IPCCが政策決定者向きにデータをまとめます。21世紀末、2100年の予想として、シナリオといいますが、緩やかな、いいほうの予想では、約2度の気温の上昇でとどまるであろう、です。ところが、悪いほうでは、4度上昇してしまいます。現状よりさらに4度という意味です。このような環境温の上昇で、熱中症のリスクは当然高くなってしまいます。近い将来、夏場は屋外での体育・スポーツができなくなってしまうことを危惧します。この対策として、「屋根付き運動スペース」の提案をします。
次をお願いします。3つの検証実験をやりました。まず、岐阜メモリアルセンターという総合運動施設のうちのテニスコートでやりました。ここにお見せしていますのは小型のWBGT計です。黒い部分が、太陽の日差しの強さを測る黒球といいます。これで1分ごとのデータをメモリに取り込みました。
次をお願いします。このような総合運動施設で、屋外のテニスコートとインドアのテニスコートが隣接してあります。コートサーフェスはどちらもハードコート、同じ仕様です。ここに、屋外に2個、インドアに2個、WBGT計を設置しました。
次をお願いします。3日間の結果です。8月17・18・19日です。赤い線が屋外のテニスコート、青い線がインドアのテニスコート、真ん中の緑の線が岐阜の気象台の環境省発表のWBGTデータです。屋外のテニスコートでは、10時ぐらいから3時、4時まで、原則運動中止の31度を超えています。ところが、インドアですと、おおむね28度以下、警戒レベルにとどまっています。2段階違うわけです。気象台の岐阜のデータは、ちょうどその真ん中の厳重警戒レベルに推移しています。
次をお願いします。屋外のWBGTから室内のWBGTを引き算しまして、屋根による日射遮蔽効果、WBGTを何度下げるかをグラフにまとめたものです。各1日を1個ずつの色で表していますが、晴天日には、9時から15時の間、およそ4度から5度WBGTを下げていることが分かります。ちなみに、雨の日、茶色の線ですが、ほとんど変わりはありません。日射がない日には効果がないというわけです。
次をお願いします。名古屋市の東山テニスセンターというところで同じような測定をやりました。
次をお願いします。ここは、先ほどと違って、砂入り人工芝テニスコートになっています。上のほうを見せてください。ある1日ですが、屋外では、原則運動中止、31度を超えている時間帯が日中続きますが、屋内は警戒レベルでとどまっています。このときは8月、9月、10月まで測定しましたが、屋内で28度以上、厳重警戒以上になった日は、9月の30日間のうちの2日のみで、8月と10月の測定日には1日もありませんでした。屋外では、8月は8分の8、9月は30分の21、10月は27分の2日、28度を超えています。次をお願いします。
3つ目です。豊田市内の中学校にお願いしまして、先ほどのWBGT計を屋外の運動場、体育館内、そしてここの写真に出しておりますような屋根のある多目的スペース──ピロティー下とここでは呼んでいますが、その3か所でWBGTを測定しました。9時から16時まで、屋外の運動場ではWBGTは31度を超えて、原則運動中止です。本来は夏休み期間中ですが、昨年コロナの影響で授業が行われていた時期です。体育館内、ピロティー下は、13時以降上がっていきますが、体育館はずっと上昇するのですが、ピロティー下は比較的低く保たれ、ここに乖離が生じます。恐らく側壁がないという通風のよさが影響していると思われます。
従来型の閉鎖型の体育館に比べて、側壁がないピロティースペースは、通風もいいため、体育館以上にWBGTを低く保つことができるというお話です。
次をお願いします。これは一番新しいテニスコートで、2018年に竣工した四日市テニスセンターです。側面をメッシュ状のもので造っていまして、通風が非常によくて、恐らく台風とかの計算がされているように思われています。このようなイメージのバレーボールコート2面を並べて、かまぼこ形の半透明の屋根をかけるようなものを運動場に2つ造れば、2学年同時に体育の授業ができるということを考えています。以上です。ありがとうございました。

【渡邉部会長】ありがとうございました。引き続き、首藤委員、よろしくお願いいたします。

【首藤委員】社会安全研究所の首藤です。では、「学校の安全管理について」ということで、私の専門のヒューマンファクターズの観点から、簡単にお話ししたいと思います。
1枚、次へ進んでください。簡単に自己紹介を書かせていただきました。私自身は、大学時代に心理学を勉強しまして、それ以来、心理学とか人間工学などの領域を背景として、事故と災害に関わる人の心理と行動とか、それをもたらすような人のエラーなどのような研究をさせていただいています。立場は、民間の一コンサルタントでございまして、防災・減災とか安全対策の特にソフト対策に特化して、いろいろとお手伝いをさせていただいております。そういうわけですので、決して学校現場そのものに深く関わるとか、そういった経験はございませんで、学校安全との関わりはこちらに書いておりますように、それ以前ももちろん少しお手伝いしたことはありましたが、大きく関わるようになったのは、東日本大震災の後に大川小学校の事故検証をお手伝いさせていただいたこと、それから一昨年度、昨年度、文部科学省さんで作られる教職員のためのe-ラーニング教材あるいは学校の「危機管理マニュアル」等の評価・見直しガイドラインの作成に関わらせていただいたという経験のみでございます。
次をお願いします。そういったわけで、学校安全にどこまで詳しいのかというのは非常に微妙なので、今回意見を述べさせていただくに当たって、第2次学校安全の推進に関する計画を拝見させていただきました。こちらに、その計画の3章に当たりますでしょうか、どういうことをやるのかということが書かれていたので、その項目をお示しさせていただきました。多分、今回は学校の安全管理に関することですので、このうちの2の教育の充実方策のところは直接関わりが薄くて、1と3と4と5の辺りが主に関わるようなところかなと思って拝見させていただいております。そちらを拝見した上で、主に1の組織的取組の推進のところが中心になりますけれども、内容を拝見したり、あるいは私が最近いろいろな方に教えていただいたり、経験させていただいたことの中で気づいたことを以下に少し述べさせていただきたいと思います。
次をお願いいたします。まず、気づき事項1点目は、「危機管理マニュアル」の在り方についてでございます。昨年度、「危機管理マニュアル」の評価・見直しガイドラインを作成させていただく中で、都道府県など、あるいは政令市などが作っている学校のマニュアルのガイドラインとかひな形のようなもの、それから、ごく一部ですけれども、実際の学校で作られている「危機管理マニュアル」について、内容を拝見させていただきました。それを拝見させていただく中で、我々の視点から見て、これが課題かなと思ったことの例をこちらのスライドに載せさせていただいております。
例えば、私ども、自治体の地域防災計画などからすると、もう当たり前のように前提になっているのですけれども、そのマニュアルの前提となっている学校の現状とか、その学校を取り巻く地域の地域特性とか想定される災害など、マニュアルに書かれている計画の大前提になるような事項の記載がないものがほとんどであるということ。それから、いろいろな危機事象があるのではないかと思われるのですけれども、想定する危機事象はこれだけかなという感じで、網羅的にしっかりと全部カバーされていないのではないかというマニュアルがありました。
それから、恐らく、新しく決めたことをどんどん後ろに追加していくという形でやったのだろうなと推測される、ちょっと言葉は悪いですけれども、継ぎはぎのようなマニュアルになっていて、全体の整理・体系化がなされていないように見受けられるもの。
それから、一緒に訓練要綱なども拝見させていただいた学校の例があるのですけれども、そうすると、訓練要綱にはしっかり細かい手順が書いてあるのに、マニュアルにはそれがしっかり書かれていなくて、これはマニュアルにないことを実際にはやれと言っているのではないかなと思われるような事例がありました。
また、想定の不足として、管理職や安全の担当者がいないことや、停電が起こっていることとか、夜間・休日に発災したという想定がないとか、あるいは事故の災害種別とか発生状況別に避難先とか避難方法・経路が違ってもおかしくないのに、そういったことがしっかり書かれていない。それから、多くのマニュアルで、事後対応、例えば学校教育の再開とか、御遺族や保護者への対応の在り方とか、そういったことが書かれていないということがございました。
これらから考えますと、今年6月に評価・見直しガイドラインというのが公表されていて、それを活用していただきたいところではありますけれども、それを使ってやってねというだけではなくて、きちんと見直しや改善の仕組みをつくっていく必要があるのではないかと考えます。
例えばということで、スライドの右下に書きました3つの例は、大川小学校事故検証委員会「提言5」で、しっかり学校の「危機管理マニュアル」を見直して改善していくようにという提言をしておりますけれども、その方法例として、例えば学校評価の評価項目に位置づけるとか、PTAの役員会との協議を義務づけるとか、学校同士のピアレビューを導入してはどうかと提言しております。このような形で見直し・改善をやってくださいと言うだけではなくて、具体的に仕組みをつくることが必要と考えております。
次をお願いします。次に私が気になりましたのが、法令で定められている学校安全計画と「危機管理マニュアル」の位置づけについてです。上の薄い黄色の箱に記載しておりますのが、法律上、学校安全計画とか危険等発生時対処要領というのはどういうものかという定義になるかと思います。これを見ながら、ただ実際のところを考えるとどうかというのが、下半分に記載していることです。実際には、各学校の学校安全計画は、多くが1年間の年間計画で、学校の子供さんたちへの教育とか、あるいは教職員の研修とか安全点検などを計画的にやるという計画になっていることが多いと伺っています。ただ、1年間の計画以上に、中長期的な計画だって本当はあるはずなんですけれども、それはどこに行ってしまっているのかなというのが気になりました。
また、危険等発生時対処要領というのは、法律上では多分、発生時に学校の先生方が取るべき対応なんですけれども、現状はそれを「危機管理マニュアル」と読み替えて、事前対策とか事後対策も含めましょうという形で作成が推奨されていると私は思います。どんなに発生時の対処の在り方・手順をしっかり定めても、しっかり事前対策をしなければ、それは実際には活用できませんし、発生の瞬間だけでなくて、事後の対応もしっかりやることは大事ですので、「危機管理マニュアル」に事前と事後の対策も含むということに私は非常に強く賛成しております。ただ、それと法律の第29条で求めるものは一致していないなということがありまして、こういったねじれみたいなものがあるので、学校現場では、法律を見ると、発生時の手順を定めていれば、「危機管理マニュアル」は十分なんだという誤解があるのではないかと懸念しております。
そういったことから、法律で定めていることと実際のものの概念とか定義をもう一回しっかりと再整理して、本当に必要なこと、法律に定めるのは最低限だと思いますので、それ以外に必要なこととして何なのかということもしっかりと学校現場の皆さんと共通の認識を持つ必要があるのではないかと考えております。
次をお願いします。その次が、教員養成における学校安全の位置づけです。この第2次計画から現在までの間に、教職課程のコアカリキュラムに学校安全が位置づけられて、令和元年度より、学校の先生になりたいと思う方々は学校安全について学ぶことが必須になったと伺いました。
実は、一昨年度、先生方のためのe-ラーニング教材を作成するプロセスの中で、大学の教職課程でどのぐらい学校安全関連の授業があるのかというもののデータを集めさせていただきました。これは、教職課程の再課程認定申請の資料に基づくもので、しかも一部の学校についてですので、決して網羅的なものではありませんが、右のグラフのとおり、授業の回数は必修で考えると、1~2回が3割ぐらい、そして3回から5回までを含めても半分程度ということが分かっております。実は学校安全とは非常に幅広くて、災害安全の防災だけではなくて、交通安全もあれば生活安全もありますし、事前対策も発生時の対応も事後の対応もあるということで、非常に多岐にわたるのですけれども、これを本当に1~2回の授業だけで教えられるのだろうかということ。そして、もっと懸念されているのは、教えることのできる先生が大学にどれだけいるのだろうかということが、私自身、ちょっと僭越ではありますけれども、心配でした。これを考えて、もう少し学校安全の教育について、大学間で情報交換をしたり、あるいは連携して授業の単位をうまく、「あちらの大学で取ってもいいですよ」みたいな仕組みをつくってもいいのではないかなと考えております。
次をお願いします。進めていただけますでしょうか。ありがとうございます。その次は、学校における人的体制です。第2次計画で、例えば先生方の役割を明確化して研修を充実するとか、全体で取り組む体制づくりとか、支援体制の整備ということが挙げられております。実際に中核となる教職員にしっかりと位置づけてやりましょうということはうたわれておりますけれども、実態は、少し研修をするということが関の山かなと、申し訳ないですけれども、感じております。
一方で求められているのは、大川小学校事故の確定判決によりますと、「地域住民の持つ平均的な知識・経験よりもはるかに高いレベルの知識・経験」が学校の先生方に求められるという言われ方もしております。これが中核となる教職員への研修で本当に養成可能なのだろうかということが懸念されます。また、専門家の支援体制というのももちろん重要だと思いますけれども、それは本当に確立しているのかとか、あるいは支援はあくまでもボランティアでいいのでしょうかということが、非常に懸念されるところです。私は、民間でこういった仕事をやっているからかもしれませんけれども、専門の知識をしっかりと使うためには、専門の方がそれをなりわいとできるようなこともとても大切だと考えております。ですので、専門職として学校安全担当職というものを位置づけて、それが中心となるお仕事となる立場の方をつくってはいかがかなと思いました。
次をお願いします。すみません、ここからは雑多なことですけれども、その他、気になることを幾つか挙げてみました。
例えば、学校の安全点検についてです。各学校で本当に実施できる環境が整っているかなということが気になります。例えば、点検の項目とか方法とか、判断基準をしっかりと標準化して、学校現場にお伝えすること。それから、施設や設備の点検と子供さんたちの行動の安全点検というのは、見るべき視点とか立場が全然違います。後者の子供さんたちの行動の点検は、学校の先生方の中心的なお仕事として、できるのではないかなと思いますけれども、施設や設備の点検というのは非常に専門的な視点がありますので、そこははっきりと区分すべきではないかと思います。そして、点検担当者の教育・訓練の在り方も検討が必要と思います。
2点目が、事故調査・検証です。「事故対応指針」というのができまして、それを基にやってくださいということは進められておりますけれども、それを実際にやるためには、事故調査マニュアルを作ったり、事故調査体制をつくっていく必要があるかと思います。事故調査の教育・訓練も必要ですが、事故調査というのは特殊な専門的な力が必要ですので、特に重篤な事故や災害が起こったときには、その専門チームを緊急派遣するという体制づくりもあってもいいのではないかと考えます。
それから3点目が、避難所開設や運営への関わりです。避難所となることが多いということは、本日の冒頭の御発表でもありましたけれども、だからといって、教職員が避難所開設・運営にどれだけ関わるかというと、私は、個人的な意見ですが、できるだけ関わりを持たないことが望ましいと考えております。それよりも、教職員は児童生徒等の安全確保とか、教育の継続・再開に専念する、その環境をつくるべきだと思っておりまして、そこで、大川小学校事故検証委員会の提言にもありますが、教職員に依存しない避難所開設・運営体制をつくっていくことも進めていただきたいと考えております。
次が最後だと思います。進めていただけますでしょうか。すみません、あとは「安全確保に関するキーワード」と題しまして、私の専門分野で比較的最近、これが大事だと言われており、学校安全の現場にも進めていただきたいということを挙げました。
まずは組織の安全文化ということです。これは、もう40年ぐらい前から、安全確保のためにとても重要なものだと言われております。これを、各学校の学校組織にも安全文化の定着ということをしていただきたいと思います。
もう一つはレジリエンスです。これは、東日本大震災以降、特に重要視されるということで、多分この第1回の会合でほかの先生方からも出ていましたけれども、セーフティIIとか、ノンテクニカルスキル、それから心理的安全性とか、柔軟な現場力、こういったものも学校現場にぜひ強化させていただきたいと思います。
以上でございます。すみません、少し時間が超過しました。私からの発表は以上です。

【渡邉部会長】ありがとうございました。では最後に、南川委員、よろしくお願いいたします。

【南川委員】それでは、資料を共有させていただきます。

【渡邉部会長】少々お待ちください。今、南川委員の通信状態があまりよくない状態なので、回復するまで、今まで御発表いただきました内容につきまして、まず御質問をいただきたいと思います。あまり時間がございませんので、10分程度で、発表の御質問に関してのみお願いしたいと思います。その後に全体的な御意見をいただく時間は設けますので、そちらのほうでまた御意見のある方に発言していただければと思いますけれども、いかがでしょう。本日のこれまでの御発表に関して、何か御質問はございますでしょうか。
渡辺弘司委員からいただきます。渡辺委員、お願いします。

【渡辺委員】質問をさせてください。まず、資料3の早田先生の質問のことなんですけれども、自治体の回収率が7割で、学校の回収率が5割に満たないという状態なので、信頼性はちょっと欠けるとは思うんですけれども、マッチングしたデータがあったと思うんです。学校と自治体の関係というデータを比較されておられましたけれども、その場合に、学校と自治体をマッチングしたデータだけで示されたのか、それとも、マッチしていない、つまり母集団が違うところで数字だけ合わされたのかというのを教えていただければと思いました。
それから、資料6の首藤先生には、おっしゃるように、教員の先生方に安全点検をするというのは、主観が入って難しいと思うんですけれども、専門職を学校に置くというのは難しいのではないかなと思います。つまり、自治体にさえ専門職を置けないように財政が厳しくされているところに、学校に専門職を置くというのは現実的ではないので、教員の先生の研修をどうするかというほうが現実的ではないかと思うんですが、もし御意見があれば教えていただきたいと思います。その2点でございます。

【渡邉部会長】それでは最初に、先ほどの国研のほうの御報告からお願いします。

【早田フェロー】国立教育政策研究所の早田と申します。御質問なんですけれども、マッチングの意図がきちんとつかめているか不安なんですが、学校利用者は教職員と児童生徒に対して質問していまして、その質問項目と、あと教育委員会の建築担当職員、あと学校安全担当職員にも質問しているのですが、その質問項目というのは異なっております。学校の方々に対しては、何に対して危険をどの程度感じるかということを主に聞いている一方で、教育委員会のほうに対しては、例えば、国から得た報告書等の情報をどのように活用しているかであったり、予算をどの程度活用して、それに対してどう思っているかといった教育委員会の取組に対して質問していまして、そこの2つについての相関関係を分析するということは今回やっておらず、JSCの事故件数のデータと、学校利用者の認識等の相関関係を分析するということをやっております。これでお答えになっておりますでしょうか。

【渡辺委員】分かりました。ありがとうございました。早田先生、すみません、名前を間違えて、申し訳ありませんでした。

【早田フェロー】いえいえ。御質問ありがとうございます。

【渡辺委員】ありがとうございます。

【渡邉部会長】それでは、首藤委員にお願いします。

【首藤委員】首藤でございます。御質問ありがとうございます。御指摘のとおり、各学校に専門職を配置するというのが非常に難しいということは私も十分承知した上で、あえて理想の姿ということで申し上げさせていただきました。ただ、一方で、私は自分個人の感覚なのかもしれませんが、本当に大事な仕事だったら、それにしっかりと人をつけるということはすごく大事なことだと思っておりまして、各学校1人ずつとはいかなくても、せめて各教育委員会に何人かいて、その方々が日々学校の現場を回って、しっかりと学校安全について様々な配慮をしていくという、そして学校の現場の先生方のお手伝いをするということは、できれば、できるようになっていただきたいと思っておりまして、理想論だと思いながらも、あえてあのような形の意見を述べさせていただいたところでございます。ありがとうございます。

【渡辺委員】私も実は首藤先生と同じ考えで、本来は置かれるべきだと思うんですけれども、現実が難しい場合は、先生も御指摘になっておられるように、教職員の研修をちゃんとしないと、後で恐らく南川先生が責任論に関してお話をされると思うんですけれども、教員の自主点検という、非常に曖昧な主観が入るような方向で点検が行われて、一斉点検をほとんどできていない現状を文科省は認識するべきではないかと思って、先生に御質問した次第です。
つまり、教員に日本公園施設業協会のマニュアルを見て、主観を持ってチェックリストをチェックしなさい、問題があればその見た者が責任を取らざるを得ないという現行の制度はやはりよくないと私も思っておりますので、先生のお考えが正しいと思います。ただ、難しい場合は、それを補完するだけのシステムをつくっていく必要があるのではないかなと思ってお聞きしました。ありがとうございました。

【渡邉部会長】それでは、ほかに何か御質問はございませんでしょうか。御質問のある方は、チャットのほうでいただきますと、すぐ分かるのですけれども、いかがでしょうか。では、首藤委員、お願いします。

【首藤委員】すみません、首藤です。資料の番号でいくと資料2なんですけれども、すごく細かいところの質問で恐縮ですが、資料2の18ページでしょうか。もしかしたらページ番号がずれているかもしれませんが、浸水想定区域・土砂災害警戒区域に立地する学校に関する調査の表があったかと思うんですけれども、そちらの学校の数です。区域内に立地して要配慮者利用施設として位置づけられた学校の数が書かれているかと思います。これは、私の認識では、今、各自治体でそういった区域に立地して避難確保計画を策定すべき要配慮者施設として指定するという取組がまだプロセスの途中で、各自治体では完了していないんですけれども、ここの数字は、実際に自治体として要配慮者利用施設として地域防災計画に位置づけた学校の数なのか、それとも実際にマップ上で見て、その場所にあるなという学校の数なのか、どちらなのかを確認したいと思います。もし前者であれば、実態はもっと数多く危ないところにある学校がある可能性がありますので、そこだけ確認させてください。お願いいたします。

【笠原技術参事官】御質問ありがとうございます。先生は御案内かもしれませんけれども、そもそもこれは、平成29年6月に水防法が改正されて、浸水想定区域内の要配慮者施設については、避難確保計画の策定とか訓練の実施が義務づけられたという状況でございます。この数字については、当然まだやっていない自治体があるのかもしれませんけれども、基本的にはもう自治体において要配慮者施設に位置づけられている学校ということになります。調査としては、令和2年10月時点でもう実際になっている学校の数ということになります。

【首藤委員】ありがとうございます。そうすると、実際にはこの数より多い可能性があるという理解で合っていますね。

【笠原技術参事官】すみません。質問が聞こえなかったのですけれども、もう一度お願いできますでしょうか。

【首藤委員】すみません。今は、自治体が要配慮者利用施設として位置づけた学校とおっしゃったかと思うので、ということは、まだ自治体のほうでその指定が進んでいないとすると、実際にはもっと数が多い可能性があるという理解で合っていますか。

【笠原技術参事官】おっしゃるとおりでございます。

【首藤委員】ありがとうございました。

【渡邉部会長】ほかには御質問はございますか。よろしいですか。渡辺弘司委員、どうぞ。

【渡辺委員】時間があるので、ちょっと1個だけ教えてほしいんですけれども、資料2の6ページのトイレの洋式化。これは、中教審の本会議のほうでも話が出たと思うんですけれども、洋式化という文章の中に、トイレの蓋をつけるかつけないかというのは文章に何か入っているのかどうか、教えてほしいんです。というのは、御存じだと思うんですけれども、今コロナの関係などもそうですけれども、排水するときは蓋を閉めるというのが感染を防ぐときに重要なものですけれども、幼稚園など、今の少なくとも私が知っている限りの洋式化の場合に、ほとんど蓋がついていないんです。つけると壊されるとか、お金がかかるというのはあるかもしれないんですけれども、つけなくてもいいという文章になっているのか、それともその記載がないのかというのをちょっと教えていただければと思ったんですけれども。

【笠原技術参事官】6ページのところで確かにトイレの話が出ておりますけれども、文部科学省として施設的に調査していますのは、あくまでも洋式トイレについて、洋便器が設置されているか、和便器が設置されているかという調査になっていますので、洋便器のときに、必ずしも蓋が設置されるかどうかということを併せて取っているものというわけではございません。そのような数字の作りになってございます。

【渡辺委員】質問の意図は、トイレの洋式化を進めるというときに、蓋をつける、つけないは全く記載がないのかというのを御質問したんですけれども、蓋をつけろとも書いていないし、つけなくていいとも書いていないと解釈していいですか。

【笠原技術参事官】国土強靱化の観点から言いますと、避難所機能の問題もありますので、お年寄りとかが使うときに洋便器のほうがいいだろうということもあって、洋式化を進めるという方向になっていますので、細かく、そのトイレの蓋をどうするかというところまではここの中では記載はされていないという状況でございます。

【渡辺委員】ありがとうございました。分かりました。

【渡邉部会長】質疑の時間は一応ここで終了したいと思います。なお、南川委員の御発表は、時間の関係で次回に御発表いただくということにいたしたいと思います。
それでは、残った時間で、学校施設や安全管理について今日次々に御発表いただいたわけですけれども、これに関する各委員の御意見をいただいて、討議をしたいと思います。第3次計画の策定に向けて、今後に向けた課題の提示、提案、御意見がございましたら、よろしくお願いいたします。
なお、時間の関係がありますので、御意見はお1人3分以内で、よろしくお願いしたいと思います。既に𠮷門委員のほうから御発言がありますので、では𠮷門委員、よろしくお願いいたします。

【𠮷門委員】高知県蓮池小学校の𠮷門でございます。今日は、それぞれ先生方の貴重な御発表をありがとうございました。大変、各分野で勉強させていただきました。そこで、これまでの先生方の御発表、御説明を踏まえまして、それから第3回までの議論も踏まえて、3点ほど御意見を申し上げたいと思います。
まず1つ目は、事故防止に関して、災害共済給付のデータとか、それから質問紙を送って調査研究されたデータは非常に有益な情報で、このように精度の高いデータが、学校安全部会の場でこうして詳細に御説明いただいたことは、これまでの中での最も詳細であり、いろいろな提言もあったと拝聴しました。
ただ、私は今、学校現場におりますけれども、こうした具体的に「事故防止の観点はこれが大事だ」と端的に現場まで下りてきているかというと、そういう状態にないということを改めて申し上げておきたいと思います。
日本スポーツ振興センターの事故のデータを事故防止に使うことは、第2次計画の中でも大きな柱の中にはありましたけれども、そのデータから導き出された事故防止の視点、予防策として何を行うかというところまで学校がいつも見たいときに見られるような環境にありません。今後その仕組みをどうしていくかということが最も重要だと思いました。せっかくのこうした御知見が学校の現場で生かされるような仕組みづくり、これが何かできるようになるといいかなと思いました。
学校のICT化も急速に進んでいますけれども、地域によってICT環境も違います。私の学校も現状できる範囲で必要な情報を取り込んで共有ボックスに入れて随時情報共有していますが、そういう少しの知識と情報を持っている者の努力によって行うだけではなく、システマティックに各学校に情報が流れていくような仕組みが重要だと思いました。ぜひ、3次計画の方針としてお考えいただけるとありがたいと思いました。それが1点目でございます。
2点目は、人材確保についてです。首藤委員の御説明に、本当に大きくうなずきながら聞かせていただきました。教員養成課程にしても、教員研修にしても、現状の仕組みの中では限りがあると思います。養成課程も、データでお示しいただいたとおりに、たった1コマしか行われていない大学もありますし、大阪教育大学ではきちんと単位として行われているとも伺ったこともございます。そういうまちまちの状況の中で、卒業し教員として採用されてきています。教員の研修も、本県は、前回御説明させていただきましたように、学校で必ず1名は参加を求める学校悉皆として実施するものから任意のものまで様々だと思います。そんな中で、教員の安全に関する知識・技能をどれだけ高めていけるかというのも、自治体の判断に委ねられているだけでは限界があると思いますので、教員の養成、学校安全の中核となる教員の育成、ここも仕組みとして何か確立されていかないといけないと思います。「学校安全の中核となる教員」は1次計画のときからずっと入ってきた言葉ではありますけれども、具体的に何をどうつくっていくのかということを一歩進める段階に来ているのではないかなと思います。
そういう意味で、首藤委員の、例えば自治体に1人はそういう知見を持った方を配置して、それはきちんと、ボランティアではなくて、例えば職として配置するとか、なかなか人材が育たなければ、それぞれの、例えば市町村立学校でいえば、教育事務所ごととか、それぞれの自治体が考え得る範囲で、まずはそういう仕組みとしてつくっていくことなど、検討する時期に来ているのでないかと思います。
その例として、スクールカウンセラーの配置が進んできていて、専門的な知見をいただいて学校運営に生かすということに随分有効に働いていると思っています。そして、スクールロイヤー制度が導入されています。このように、まずは制度として確立していって、それを育てていくということも必要だと思います。
3点目、各種施策の交通整理という視点でお願いしたいと思います。少し前に、八街の交通事故を踏まえて、また点検ということが下りてきています。すでに平成24年度の緊急合同点検の後、つくられた仕組に基づいて行われていますが、いろいろなことが何か一つ起きるたびに何か点検をしたりということがありますけれども、そういうことで現場にとっては「また同じようなことが来たのか」と真剣味を持って捉えられないような逆の効果がなりかねない。そこは、今までの施策で何に課題があってそういう今回の事故になっているのかということをもう少し見ていただいた上で焦点化していただくことを、国のそれぞれの機関において整理をしていただくことも重要かと思います。
様々なことを本当に学校の安全、子供の安全につなげていくための国レベルでの検討もされた上で3次計画に整理していただけるとありがたいなと思います。
少し長くなって大変恐縮でした。以上でございます。よろしくお願いいたします。

【渡邉部会長】ありがとうございました。3次計画につながる御意見でしたけれども、ほかに同じようにこの3次計画に関して、北村委員、御発言ということで。

【北村委員】北村です。時間もあまりないので、1点だけ。今の𠮷門委員の御発言の1点目について、私がちょうど関わりが深いなと思ったので、その分だけ少しお話をさせていただくと、まさに御指摘のとおりで、「こういう事故がありました。こういう危険性があります。気をつけてください。あとは現場で何とかしてください」というのが、比較的現場の今の現状かなとは思うんですけれども、それで全然防げてきていないのが今の課題だと思うので、私が大事だなと思ったのが、学校現場という、そもそもその仕組みがそこにあって、事故以外にも本当にいろいろな活動をされている中で事故予防をいかに組み込んでいくかということが大事なので、学校現場ともしっかり協力しながら、現場で実際に実施できる予防策をつくっていく必要があるなと思っています。そういう意味でちょっと私のところで後半お話ししたような、学校現場と連携しながら課題をしっかり整理するとか、予防策をつくっていくということをやらないと、結局、何か「学校それぞれで頑張ってね」で終わってしまうので、そこが非常に大事だなと思っています。ちゃんと学校現場を分かった上での予防策をつくると、それが検証できた上で広げていくという枠組みというか仕組みがないと、予防が全然広まらないなというのを感じているので、そこが一つ大事だなと思っています。
あと、学校の現場のことを把握できる情報というのは、あまりちゃんとデータがなくて、遊具一つとっても、学校現場にどういう遊具が全国で何基ありますとかということすら多分ほとんど分からない状態なので、そういう学校現場の情報をしっかりデータベース化するというか、そういうこともやっていく必要があるかなと思います。予防するときに、例えば遊具であれば、こういう遊具がこれぐらい全国にあって、こういう対策をすればいけそうで、それにコストがどれぐらいかかって、全国にやろうと思ったらコストがこれぐらいかかって、その予防効果で防げる、医療費はこれぐらい減らせますよとかという計算がちゃんとできるようになるはずなので、そういう整備も大事かなと思いました。以上です。

【渡邉部会長】ありがとうございました。ちょっと私のほうからなんですけれども、今、遊具の話が北村委員から出ておりましたけれども、正確な数ではないのですけれども、JSCのほうで調査したものが今年の3月に出ています。確かに学校の正確な数というのは無理なんですけれども、かなりの数について調査を行っていますので、おおよそのところはつかめるかなと思いました。それでは、ほかにはございませんか。
では、ちょっと私のほうからも発言させていただきたいと思うんです。今日は、特に安全管理・施設のことについていろいろとお話しいただいたのですけれども、これは、先ほど𠮷門委員や今の北村委員からの御発言ともちょっとかぶるというか、同じようなことなんですけれども、例えば安全点検などは、学校では学校保健安全法に基づいて環境衛生管理を行っていますけれども、これは客観的な基準があって、具体的な検査方法もちゃんと決まっているんです。それに対して安全点検は、具体的な方法、また点検箇所は、「「生きる力」をはぐくむ学校での安全教育」の中には具体例は載っていますけれども、各校によって施設・設備は違ってきますよね。ですので、点検方法もそうですし、さらにそれをどう改善していくかというところの情報というのがあまり出ていない状況なんだと思います。ですが、全くなかったわけではなくて、実はもう十数年前になりますけれども、覚えていらっしゃる方は多いと思いますけれども、小学校の天窓からの落下死亡事故がありまして、その直後に文部科学省が、天窓だけではなくて、窓とか、ひさしとか、そういったところの落下事故を防止するためのリーフレットを作って、全国に配布しているんです。非常に分かりやすくていいものが出ています。ただ、残念ながら1回の配布で終わってしまって、またそれもどの程度周知できたのかもわかりません。といいますのは、その後も天窓からの転落事故も起きていますし、そのリーフレットでは、窓の下に足がかりになるものを置いてはいけないと書いてあるけれども、実際にそれをやって事故が起きているというケースがその後も発生しています。
また、同じ時期ですけれども、学校の施設・設備が関わって発生した事故、これはスポーツ振興センターの災害共済給付の具体的な事例が上がっていて、そういったものをどう防止するかという対策を写真入りで示した「学校施設における事故防止の留意点について」という冊子が文部科学省から実は出ているんですよね。すごくいい内容で、分かりやすくて、学校の先生方が使えるようなものだったのですけれども、これも先ほど𠮷門委員からもありましたように、どれだけ周知されたのかなというところがあって、今でも使えるすごくいい内容で、私は大学の授業でも使っているのですが、そういったものが新しいものとしてまた出てくるといいのかなと思います。
ですから、伝達の方法と、もう一つは、今お話ししたような、分かりやすくて、学校でもすぐ生かせるようなものを提供していく、それも継続的に提供していくような体制というのが必要なのかなということを今日お話を伺っていて思いました。ほかには何か御発言はございますか。この第3次計画のことについては、もちろん次回以降の会議でもいろいろ御発言いただく時間は設けております。
また、第5回以降は、事務局より、これまでの皆さんの御報告、もちろん今後もまたこの先も委員の方からの御発表もまだ残っているのですけれども、これまでのいろいろな意見を受け止めて論点を整理していただいて提起していただくということは次回以降は予定しておりますので、それを見て、またそれで御意見をいただくということをお願いしたいと思います。
それと、今日はちょっと南川委員の御発表の時間が取れなかったのですけれども、次回に時間を取って御発表をいただきたいと思っております。もう大分時間も残り少なくなりましたけれども、何かありましたら。よろしいですか。渡辺弘司委員から御発言ということがあったようですが、ではお願いします。ちょっと時間があまりないので、すみません。

【渡辺委員】文部科学省の方にお聞きしたいのですけれども、学校安全委員会の設置状況と開催状況のデータはあるのでしょうか。学校保健委員会というのは、一生懸命開催するように努力して、ほとんどの学校でやっているし、私ども学校医もほとんど出席しています。学校安全委員会の設置についてもある程度決まっているように思うんですけれども、私の知る限り、学校の先生方に聞いても、あまり開催したことがないとお聞きしています。これは恐らく次回の組織活動に入るのか、それとも今日なのか、ちょっと分からないので今お聞きしたのですが、もし次回までにそういうデータをお持ちでしたら御提示いただけるとありがたいと思って、ちょっと発言させていただきました。

【朝倉安全教育推進室長】事務局でございます。今、渡辺弘司委員のほうから御質問があった件につきましては、次回の会議のときに御報告させていただきたいと思います。

【渡邉部会長】よろしいでしょうか。それでは、この件については、次回に御説明いただくということにしたいと思います。それでは、予定の時間になりましたので、本日の議事は以上といたします。最後に、次回以降の予定について事務局からお願いいたします。

【朝倉安全教育推進室長】では、事務局から次回の日程について御報告します。資料8を御覧ください。第5回の会議を8月26日木曜日10時から12時、内容につきましては、組織活動(校内)、教員養成課程・教員研修についてでございます。第6回目につきましては、9月22日水曜日14時から16時、家庭・地域との連携、事故対応指針などについてでございます。第7回以降につきましては、10月以降、数回に分けて開催する予定でございます。以上でございます。

【渡邉部会長】ありがとうございました。本日予定した議事は全て終了しました。これで閉会といたします。本日も積極的に御審議いただき、ありがとうございました。

――了――

(総合教育政策局男女共同参画共生社会学習・安全課)