学校安全部会(第2回)議事録

1.日時

令和3年6月23日(水曜日)10時00分~12時00分

2.場所

WEB会議(Webex利用)

3.議題

  1. 防災教育の充実について(内閣府、委員からのヒアリング)
  2. 意見交換
  3. その他

4.議事録

【渡邉部会長】おはようございます。部会長を務めております渡邉です。定刻となりましたので、ただいまから中央教育審議会初等中等教育分科会学校安全部会(第2回)会議を開催いたします。
本日の会議は、報道関係者並びに一般傍聴者の傍聴を許可します。オンライン配信で傍聴いただいている方々には、傍聴登録者以外への当会議の配信URLを転送することや、他への放送は固くお断りしますので、よろしくお願いいたします。まず、事務局から資料の確認などをお願いいたします。
 
【朝倉安全教育推進室長】では、お手元に資料を準備いただきたいと思います。会議資料は議事次第のとおりで、資料1から資料7まで、参考資料については1、2までございます。お手元に御用意いただきますようお願いいたします。
本日は、木間委員、中井委員を除く16名の御出席をいただいて、定足数を満たしております。また、本日は、議事1の関係で御報告をいただく内閣府政策統括官(防災担当)付参事官、中尾晃史様にもお越しいただいております。よろしくお願いいたします。
事務局からは、総合教育政策局長、義本博司、社会教育振興総括官、寺門成真、総合教育政策局男女共同参画共生社会学習・安全課長、石塚哲朗、大臣官房文教施設企画・防災部参事官(施設防災担当)野口健ほか、関係室長、課長補佐等が出席しております。
 
【渡邉部会長】ありがとうございました。議事に入ります前に、前回御欠席でした嵯峨委員が本日、御出席いただいております。前回会議では、委員の皆様からお名前、御所属を含め簡単に自己紹介いただいておりますので、ここで嵯峨委員からお一言お願いいたします。
 
【嵯峨委員】学校法人藤華学院の理事長をしております嵯峨と申します。1点、細かくて申し訳ないんですけど、名簿の実充の漢字は、これ実はなべぶたがないので、そこだけちょっと訂正願えますでしょうか。
 
【中村安全教育推進室室長補佐】かしこまりました。大変申し訳ございません。訂正させていただきます。
 
【嵯峨委員】よろしくお願いします。
 
【渡邉部会長】ありがとうございます。それでは、改めまして、今期の学校安全部会、皆様と精力的に議論していただければと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。それでは、議事1に入ります。
まず、文部科学省から防災教育に係る現状について、内閣府から5月にまとめられました防災教育に関するワーキンググループの提言内容について御発表いただきたいと思います。続いて、3名の委員から、安全教育、中でも特に防災教育について話題を御提供いただいた上で、今後の安全教育の質の向上について議論したいと思います。各発表に対する御質問は、全員の発表が終わった後に、意見交換の時間を取りたいと思いますので、よろしくお願いいたします。それでは、文部科学省、内閣府の順に御説明をお願いいたします。
 
【朝倉安全教育推進室長】文部科学省の朝倉でございます。資料2を御準備いただければと思います。文部科学省における防災教育の現状について、私のほうから5分ほど時間を頂戴いたしまして、簡単に御説明させていただきます。
スライドの2枚目を御覧ください。甚大な被害をもたらしました東日本大震災から10年を迎え、時間の経過とともに震災の記憶が風化し、取組の優先順位が低下することが危惧されております。また、今後発生が懸念されております首都直下地震や南海トラフ地震等に対しまして、子供たちの命を守るための対策が喫緊の課題となっております。さらに、近年、豪雨災害が激甚化、頻発化しており、防災教育の充実は喫緊の課題となっております。
3枚目を御覧ください。こちらは、学校における防災教育の実施状況でございます。一番上にございますが、99.7%と、おおむね全国の学校で災害安全に関する指導が行われております。
4枚目を御覧ください。こちらは防災を含む安全教育の実践例であります。カリキュラム・マネジメントにより、理科や社会科、特別活動など、教科横断的に防災教育を実施しております。
5枚目を御覧ください。学校における安全教育により育成を目指す資質・能力には、生きて働く知識・技能の習得と、未知の状況にも対応できる思考力・判断力・表現力等の育成、また学びを人生や社会に生かそうとする学びに向かう力・人間性等の涵養の3つの柱がございます。
次の6枚目から8枚目までは、その3つの柱の育成を図る各学校の実践事例を掲載しております。各学校では、この資質の能力や育成に向け、あらゆる機会を通して、地域や関係機関との連携を図りながら防災教育を実践しております。
9枚目を御覧ください。地域と連携した防災教育には、コミュニティ・スクールの推進も重要であります。コミュニティ・スクールにおいて、防災に重点を置いた取組も行われております。
10枚目を御覧ください。平時からの地域と学校の連携が有事の際の円滑な避難所運営につながるなど、地域防災にも効果を発揮しており、地域と学校をつなぐコーディネーターが重要な役割を果たしております。
11枚目を御覧ください。また文部科学省では、委託事業といたしまして、平成24年度より学校安全総合支援事業を展開しており、モデル地域による防災教育をはじめとした先進的な取組を支援しております。
12枚目を御覧ください。こちらは、その実績と成果です。左上にありますように、学校防災ボランティア事業など、主体的な行動につながる安全教育の支援や、学校防災アドバイザー派遣事業などの専門的な知見の活用など、被災地訪問や有識者との連携を図りながら、防災教育の取組を各自治体で行っております。成果につきましては、全国成果発表会や学校安全ポータルサイトで共有を行っております。
13枚目を御覧ください。文部科学省では、学校安全教育の推進事業といたしまして、安全教育に係る講習会も支援しており、防犯や防災、交通安全に関する講習会のほか、事故対応講習会など、児童生徒の命を守るためのスキルを高める講習会が全国で展開されております。
14枚目を御覧ください。文部科学省では、教職員が、いつでも、どこでも、学校安全に関して学ぶことができるよう、学校安全e-ランニングを開設しております。こちらは、教職課程を志望している学生も視野に入れたコースを用意しております。
私からの説明は以上ですが、先週6月18日に閣議決定されました経済財政運営と改革の基本方針2021、いわゆる骨太の方針にも防災教育が盛り込まれたところでございます。文部科学省といたしましては、今後とも、内閣府をはじめ関係省庁と連携を図りながら、防災教育の充実に取り組んでまいりたいと思います。
 
【渡邉部会長】ありがとうございました。では引き続きまして、内閣府より御説明をお願いいたします。
 
【中尾内閣府政策統括官(防災担当)付参事官】内閣府の担当参事官の中尾でございます。どうぞよろしくお願いいたします。資料は3-1と3-2をつけてございます。3-2が提言の本体でございますが、説明は資料3-1でやらせていただきます。
防災教育新時代の実現のための提言についてという表題でございますが、1枚おめくりいただいて、1ページ目でございます。本年は、東日本大震災から10年、さらに100年以上前になりますけれども、明治三陸沖の地震の津波、そこで2万人以上の犠牲者が出ましたけれども、その100年後の東日本大震災でも、なお2万人超の犠牲者が出ているという状況。それから本年が熊本地震から5年、東日本大震災から10年で、阪神・淡路からも四半世紀という、ある意味、節目を迎えておるというところでございます。現在、首都直下地震であるとか南海トラフ地震などの大規模巨大災害、これは切迫しておりますし、また気候変動の影響もありまして、豪雨、台風の災害など、気象災害は、これ頻発化、激甚化をしております。
こういった巨大な自然災害から失われる命を激減させていくという覚悟を持って、今般、内閣府のほうで、昨年12月ですけれども、有識者のワーキングを3つ立ち上げまして、1つは、左にありますが、事前防災・複合災害のワーキング、それから2つ目にデジタル・防災技術、そして3つ目に防災教育・周知啓発のワーキングで、有識者の先生方に御議論をいただきまして、この5月25日に提言をいただいたものでございます。その中で、右下のほうでございますが、防災教育につきましては、文部科学省にもワーキングの検討に御参画をいただきながら進めてまいりました。
本日の議論でございますけれども、来年度から第3次の学校安全推進計画がちょうどつくられるという、非常によいタイミングでの内閣府の提言ということをいただきましたので、この新たな計画とともに、防災教育の新しい時代を創っていこうという意気込みでの提言ということでございます。
1枚おめくりいただきまして、防災教育・周知啓発ワーキンググループの防災教育チーム、これ左下に先生方のお名前を記しております。
次お願いします。3枚目の概要でございますけれども、これ短時間で御理解いただくために特に強調するポイントを絞った資料でございますので、この資料と、後ほど4枚目の資料でも、もう少し詳しく御説明をいたします。
まずは、一番上にもありますけれども、この第3次の学校安全推進計画と連携をしながらということかと思っておりますが、全ての子供が災害から命を守る能力を身につけられる防災教育を全国展開していくということでございます。左側に現状・課題がございます。文科省のほうで3年に一度おやりになられておる学校安全に関する調査。先ほども少し紹介ございましたけれども、ほとんどの学校で防災教育ということはなされておるわけでございます。
一方で、地域特有の防災課題に応じた災害訓練を実施する小中学校が3割未満であるとか、あるいは国のほうでも、防災教育あるいは避難訓練等の好事例は把握しているものの、全ての学校で、どういった状況で、それの防災教育、避難訓練がなされておるか、そういったところまでは把握をできていないという状況でして、災害というのは、どこの学校、どこの地域で起きるかは分からないということでございますから、これは全国の全ての、特に義務教育というところで、子供が防災教育のしっかりとしたものを受けることが大事なんだろうということでございます。
それから左の真ん中のほうの箱ですけれども、学校ではいろいろと○○教育といったようなことで非常にお忙しいという中で、防災教育に十分な時間とか人材を充てられないというような課題もございます。あるいは、防災教育への保護者の関心が高くて、比較的柔軟な現場対応が可能な幼保段階の防災教育、こういったところというのは、実は、あまりこれまでは注目度は高くなかったのではないかということも思われます。
それから防災教育に当たっては、地域と学校の一層の連携というものが重要になってくるだろうと。そういった中で、右側の黄色い箱、一番上ですけれども、まずは、義務教育の全ての小中学校で地域の災害リスク、あるいは自分は大丈夫だとか、まだ大丈夫だとかといったような正常性バイアス、こういった必要な知識を教えるような実践的な防災教育や避難訓練、こういったことを実施する。その際には、全国の小中学校において、防災教育の実施内容を定期的に具体的に調査し、そういったものを公表していくと。それから現職の教員はもちろんですけれども、教職課程の学生の方々にも、こういった実践的な防災教育の指導法を教授していくことが大事ではないかということでございます。
それから、地域と学校の連携というようなことでは、コミュニティ・スクールや地域学校協働活動といったような、これまでの枠組みも十分に活用しながら、その地域と学校の間を取り持つような、そういった方々をコーディネーターとして育成をしていくであるとか、あるいは幼保の段階からの防災教育、そしてそれを小、中、高とシームレスな形で行っていくことが大事じゃないかということでございます。
それから、もちろん防災教育の幅広い効果というようなことで、右下の箱ですが、まずは全ての子供たちが災害時に自らの命を守ることができるようになるということが一番重要なことではございます。
一方で、左下に課題のところでございます、現状でございますけれども、子供の成長に必要なのは、学力といったような認知能力だけではなくて、いわゆる意欲であるとか、創造性であるとか、コミュニケーション能力といったような非認知能力、こういったものが防災教育で非常に養われるといったようなことの認識は十分ではないのではないか。あるいは、正常性バイアス等の防災意識というのは大人になるほど低下していくというようなこともございます。
そういった中で、右下の箱の中で、防災教育の幅広い効果として、特に黄色くしてあるところですけれども、そういった非認知能力や生きる力を育成していく。防災で言えば、内発的に避難する態度であるとか、他人を思いやる態度を育てていくようなことで発揮をされていくということと思っております。また、地域住民の防災活動や地域の自然の恵みや災いを勉強するということで、郷土愛あるいは地域を担う意識というものが育てられる。
さらに、子供と地域と地域の大人が一緒に防災を学ぶというようなことで、大人が心を動かされて、主体的に命を守る防災意識を涵養されるというような、地域に対する幅広い効果というものも期待されるのではないかということでございます。
もう少し詳しく、4ページ目でございます。今申し上げましたように、防災教育の実情・課題につきましては、防災教育の内容の定型化や形骸化や詳しいところが把握されていなかったりというようなところございます。言ってみれば、義務教育を終えたときに全ての生徒が災害から命を守る能力を身につけている、身につけられたというような保証がないというところが、いつどこで災害が起きるか分からない今の時代に心配なところでございます。
今後実現を目指す防災教育という水色の箱でございますけれども、まずは、全ての小中学校での実践的な防災教育・避難訓練。これは校外でも一人でも災害の危険から確実に逃げられるような、そういった教育をしていかないといけないのではないか。
あるいは、2つ目の丸ですけれども、命を守ることを最重視した実践的な避難訓練ということで、地震から命を、まずは瞬時に身の安全を守るといった訓練を単発で複数回行うような地震ショート訓練等々のやり方が現在もなされておるというようなことがございます。こういったものを、もっと広めていくということがあろうかと思います。
それから、想定外に対応できるようにする避難訓練ということで、ルーチンな訓練ではなくて、例えば登校中はどうだとか、停電したらどうだとか、具体的な問題意識を持った多様な訓練をする、あるいは失敗する訓練や、まさかを発見する訓練。例えば昼休みに校庭にいた児童が、訓練の地震発生の合図を受けて、教室にヘルメットを取りに戻って、ヘルメットを取った上で、また安全な校庭に戻るといったような、まずは命を守るために何が必要なのかというようなことを十分考えるような、そういった訓練が必要ではないかというようなことでございます。
それから4つ目の丸で、災害の自分事化というようなことで、今、防災小説といったような、大木先生がこれをやられておりますけれども、自らが災害に遭ったときのストーリーを想像して書いてみる、それで災害を自分事化してみる。あるいは仮称として防災ノートと言っておりますけれども、防災に関する読み物や、あるいは防災で学んだことを書き込んで、自分のものにしていくといったような、そういった教材も考えられるのではないかということです。
それから、右側行きまして、主体的、内発的に避難する態度の育成ということで、先ほどの正常性バイアスといったように、自分は大丈夫という思いが人間には生じますけれども、一方で、自分にとって大切な人、例えば子供にとって親であるとか、そういった方が、自分が避難しないと自分のことを心配してしまうと、そういったような大切な人のことを心配するというような正常性バイアスと反対の方向に作用するような心の働き、こういったことを活用して、自分が避難をしないと周りに心配かけてしまうと、そういった思いの中で、主体的、内発的な避難意識を持って避難行動を取るような態度を身につけられるような、こういったコミュニケーションの防災、心に訴えかける防災教育といいますか、というものが必要ではないか。
それから、人への思いやりの心の育成ということで、まずは自分の命を守るということが最重要でありますけれども、地域の中でのコミュニケーションを通じながら助け合って、皆で命を守っていくようにしていくというような心あるいは態度を身につけるということも重要ではないか。
それから、昨今のSNSにあるようなフェイクニュース等に混乱させられないような、きちっと防災情報を取捨選択できるような教育であるとか、あるいは災害後の災害ボランティア活動、こういったものについても、人を助けるという意識が醸成されるのではないかということでございます。
そして、3つ目の箱の今後目指す防災教育を実現するための方法と、青色の箱ですけれども、1つは先ほども少し申し上げました、全ての小中学校での防災教育・避難訓練、これをきちっと調査をして見える化をしていく。しっかりとやれていない学校が恥ずかしく思えるような、そういったことが必要ではないか。そういったことの実現に向けてのKPIも重要ではないかということです。
それから教科横断的なカリキュラム編成。これ先ほども文科省からも御説明ございましたけれども、既にクロスカリキュラムという形で行われておられる学校も多くあるかとは思いますけれども、こういったものをさらに広げていく。
それから防災教育の手引とか教材、こういった実践的な防災教育・避難訓練ということについて、より学校で教えやすいような教材というものを作っていかないといけないのではないか。
それから探究的な学びということで、この防災教育というのは、解のないような教育であったりするところもございます。まさに子供たちが意見を交換し、課題を見つけて、気づき合いながら、横の学習関係の中で、いわゆる探究的な学びということを学びやすい分野ではないかと、探究的な学びをやりやすい分野ではないかということでございます。これは教員のコーディネート力も養える、そういう分野の教育ではないかということでございます。
それから、右の上へ行きまして、防災教育を行う教員が備えるべき資質として、防災知識とか、市町村や地域とのつながり、それから子供の共感を得るようなコミュニケーション力、こういったものを養うという意味でも、教員にとっても、非常に防災教育は重要ではないかということです。
それから、地域と学校が連携した防災教育。地域と学校が連携をして、学校だけで閉じない、地域がその子供の防災教育を支えるような、そういった形というものを、よりつくっていかないといけないのではないかと。これは、これまでの学校の政策の方向とも合っているのではないかというようなことでございます。
それから、未就学児からの防災教育ということで、ここにもっと光を当てていくべきではないかということですけれども、幼保、こういった段階から防災教育をしていったら、小中に上がってからの防災教育の負担も減るのではないかというようなこともあります。こういったところでの防災教育をどうしていくかということについての検討、そしてそういう幼保の先生への手引なんかも必要ではないかということです。
それから、その幼保の段階から小、中、高とシームレスに防災教育をしていくと。これまでは各地あるいは各校で防災教育が行われてきたということかと思いますけれども、あまり幼保から小、小から中、例えばそういったような、防災教育強化ではございませんので、そういった体系化とか標準化というようなことは今まで十分ではなかったんじゃないかと。ただ、もうそろそろ、そういったことを考える時期ではないかということではございます。
それから、デジタル技術を活用した防災教育ということで、GIGAスクール構想もございますけれども、よりインパクトのある教材といったようなものであるとか、デジタル技術を活用することで臨場感、現実的なシミュレーションを経験できるようなことがあるのではないかということです。
そして一番下のところ、防災教育の幅広い効果というようなことで、こういった防災教育の幅広い効果を、先ほどちょっと御説明したものですけれども、世の中に十分認識をしていただくのではないかと。言ってみれば、命を守るということもありますので、防災教育といいますのは、教育の中でも最重要な分野ではないかというようなことでございます。
また、3-2の資料の提言は、後ほどお時間ありますときにお読みをいただければと思いますけれども、その提言の一番最後のところに、この提言について、地域、学校、さらに教育の関係者が、防災教育の価値を改めて認識し、防災教育を最も重要な教育の一つと位置づけて、積極的に取り組んでいただけることを期待して、本提言を行うというようなことを提言で言っていただいております。
ぜひ、こういう考え方の中で、この防災教育ということを、これから取り組んでいければと思っておりますし、内閣府といたしましても、文科省さんとも連携しながら、来年度の予算要求にもつなげていくであるとか、先ほど政府の骨太の方針にも防災教育ということが今回載ったという話もございますけれども、こういった提言も踏まえて、政府としても、ここを非常に強化していく分野だというようなことで、我々としても、今後も文科省さんと連携をしながら取り組んでまいりたいと思っております。
最後に、提言の3-2の資料の冒頭にございますけれども。ここにちょっと書いてあるのは、本文からの抜き出しですが、「防災教育は、10年後に地域を支える大人をつくり、20年後には地域の防災文化をつくる礎である」というようなことで書いてございます。ぜひ、そういった防災教育の重要性を、より内閣府としても広めてまいりたい、取り組んでまいりたいと考えております。私からは以上でございます。
 
【渡邉部会長】ありがとうございました。続いて、本日は大木委員、石井委員、𠮷門委員からそれぞれ御発表いただきたいと思います。各委員、15分から20分程度でお願いしております。まずは、大木委員からお願いいたします。
 
【大木委員】慶應義塾大学の大木と申します。私は、前回申し上げたとおり、固体地球物理学で、地震学で博士号を取りまして、今は災害安全教育を専門にしております。
第1次、第2次の学校安全計画、じっくり拝読してきたのですけれども、「課題」として挙げられていることが持ち越されているような印象を受けています。それは、そこに書かれている「目指すべき状態」は正しいのだけれども、それにもかかわらず、この10年間、実現できていないということかと思います。そのアプローチの在り方について、どうすれば自然と防災教育で目指すべき状態に向けて流れていくか、これに注目して研究をしてきました。本日は、既に研究として効果を検証済みであるものを幾つか御紹介させていただきたいと思います。
こちらの図は、世界地図に、過去30年間に起きたマグニチュード5以上の地震を全てプロットしたものになります。世界のほとんどの場所で地震は起きておらず、こんなに小さな日本で、世界の地震の10から20%が起きているという状況です。
ですので、日本の中だけで見比べて、どの地域で地震がたくさん起きるとか、うちはもうしばらく起きないだろうとか、これは科学的に間違えている発言です。マグニチュード7程度の地震であれば、日本のどこでも起こります。マグニチュード8や9はある程度場所を選んで起こりますけれども、マグニチュード7程度の地震であれば、日本のどこでも起こります。これはもう科学的にそういうものです。
実際、マグニチュード7の地震、つまり阪神・淡路大震災とか、熊本地震、中越地震、そういったものが起きたときにどうなるかというのを、ちょっと御覧いただきます。これは、阪神・淡路大震災が起きたときに、震度7だった地域にあったコンビニの防犯カメラの映像になります。音声はありません。ちょっと御覧ください。
(映像上映)
【大木委員】停電して映像が終わりました。地震が起こる、これが日本のどこでも、例えば学校の授業中に起こるということです。震度6を超えると、そもそも自分の意思で行動できなくなります。この映像のように、しがみついているのがやっとという状況になります。建物は耐震性があったので倒壊していませんが、この映像のコンビニ店内にある物が落ちてきたり、あるいはコピー機がずっと前に移動してきていたり、棚が前に倒れてきたり、ということが起きています。
ですので、地震というのは、いつ起きるか、どこで起こるかということは分からないのですけれども、地震が起きたら何が起こるかということは、もうこれは非常に明快に分かっていて、「物が落ちてくる・倒れてくる・移動してくる」ということが起こります。
津波も火災も、その後の話で、まず命を守るためには、落ちてこない・倒れてこない・移動してこない、この3つの視点を持つことです。
もう日本のほぼ全ての学校は耐震性がありますので、建物そのものが落ちてくるということはまずあり得ません。棚も当然固定されていると考えると、棚から転落してくるものとか、コロがついているものとか、そういったものから命を守るような指導をすればいい。
机があるときはサルのポーズです。机の下に入って、机の足の真ん中あたりを持つ。それから、机がもしないとき、例えば体育館や校庭であれば、なるべく頭を守るポーズを取る。両膝をつけるというのが安定させるポイントです。もし火災が発生したら、鼻を覆って、誘導灯ですね、「ゆうどう君」のマークのほうに集まる。この「ダンゴムシのポーズ」「サルのポーズ」「アライグマのポーズ」の3つのポーズが命を守るんだよ、というふうに指導します。
こういう視点を持った状況で、今までやっている避難訓練をもう一回思い出していただきましょう。私が小学校のときにやっていた訓練が、今も多くの学校でされているということが分かりました。サイレン音がウーウーと鳴って「地震です地震です、机の下に入りましょう」と放送される。机の下に入ってしばらくすると、「揺れが収まりました、児童の皆さんは落ち着いて整列し校庭に集合してください」と放送が入り、防災頭巾をかぶって校庭に行く、と。上履きのまま外に出て、校庭に出ると、校長先生が朝礼台の上に、御自分は防災頭巾ではなくヘルメットをかぶって、ストップウオッチを持って立ってらっしゃる。子供たちが全員出てきて、点呼して終わったときに、ストップウオッチを押して、「今日は5分45秒かかっています、前回よりも40秒長くて校長先生は残念です」という講評を聞いて、上履きをよく拭いて教室に戻りなさいと言われて戻る、とそういう訓練が延々と引き継がれているわけです。
地震学者になった今、これを検証したいと思うのですが、まず地震が起きて、先生が指示して机の下に入るのでは、もう遅いんですね。気象庁の震度階級表に書いてありますけれども、立っている先生よりも座っている子供のほうが先に揺れに気がつきます。ですので、揺れに気づくのが遅い人の指示で机の下に入るというのは、完全に遅い。
それから、そもそも震度6を超えると、しゃべることができないです。これも震度階級表に書いてありますけれども、自分の意思で行動することができないが震度6の定義ですので、指示を出すということは多分もうほぼ不可能。
それから校庭にいるときは、真ん中に集まってしゃがみましょうと多くのところがやっているのですが、さっき言ったように、震度6を超えてくると、真ん中に集まるという行為自体ができなくなってくるわけです。人が本来できないことを本番でやるように訓練で指導しているというのは、これはかえって危険です。
ですので、例えばサッカーゴール近くにいるといった場合でない限りは、その場でしゃがむので十分です。校舎の近くにいるとか、ゴールポストやポールのすぐ近くにいるとかでないのであれば、その場でしゃがむ。揺れが収まったら落ち着いて、校庭の真ん中に集まってほしい、が正しいわけです。
それから、校庭集合校内放送ですけれども、まず、訓練をしなきゃいけないような大きな地震のときは大概停電するわけですね。停電しない程度の地震なら、そのまま授業も継続できるわけで、停電していないで放送できているのはどういうことかというと、非常用電源があるということなんですね。そこで学校教職員に非常用電源があるんですかと聞くと、ほとんどの方が「存じ上げません」というふうにおっしゃいます。
非常用電源があった場合も、何分もつのか。例えば20分しかもたないのであれば、余震が起きてわちゃわちゃしている間に、あっという間に、もうその時間は過ぎてしまいます。
ですので、放送できればラッキーと思って、校内放送をしないでもできるような訓練をしておかなければいけない。
それから、なぜ校庭に集合するのか、というところなんですけれども、津波が来るのですぐに高台に行く必要があるとか、給食室があるマンモス校で、給食室で火が出てから全員避難するのでは遅いから一度校庭に集めるとか、何かそういった合理的な理由もなく、訓練のときというのは校庭に集まるものだから集めます、みたいな形で集まっているところがほとんどです。
学校というのは通常住宅の1.3倍から1.5倍の強さの耐震性で造るとなっています。つまり、学校から見て、見渡す限りの家が全て倒壊していない限り、学校は倒壊しないわけですね。しかも1人に1個、体を守れる机がある、という最強の場所をわざわざ離れて、階段を降りて、危険がいっぱいの昇降口を通って校庭に行くのは一体なぜなのかということを、多分、根本的に考えずに実施されているんじゃないかなと思います。
それから校長による時間の計測。何か数字で評価したい気持ちは分かりますけれども、さっき言ったように、校庭に集まる理由が特にないのであれば、そもそも計測する意味はない、あるいは校庭にみんなを集めて、先生もみんないる状態のほうが管理がしやすいから校庭に集めるんだという理由であるのであれば、最短時間にこだわる必要はないわけです。順繰り順繰り、ゆっくり行けばいいわけですよね。津波とかでない限り、競う必要はないわけです。
ですので、そもそも一番大事なのは、揺れから命を守る部分ではないか。短時間でやるというのは先生のオペレーションの訓練であって、子供たちが身を守る訓練には何らなっていないわけです。
このような課題があって、地震学者の観点から見て、非現実的な訓練がずっとなされているという状況になっていたと。それは地震学者としても非常に反省しているところです。
一番違和感があるのは、余震を想定して訓練を行っている学校がほとんどない点で、大地震で余震を伴わなかったものというのは、地球史上一度も、一つもないわけです。余震を伴わないで地震を発生させるということは、科学的にこれは不可能です。にもかかわらず、余震を発生させる訓練をやっていない。
本来であれば、階段で、校庭に集まる途中で余震が発生して、一番前にいる子が転倒して群衆雪崩になると、一番下の子は圧死しかねない。そういうようなことを考えない訓練になってしまっているというところに少し課題を感じています。
これを改善するために、地震ショート訓練というアクティブ・ラーニング型の訓練を開発しました。ステップ2つに分かれています。まず、いきなり訓練をせずに、自分のクラスの写真を使って、このときに地震が来たら何が危険だろう?、と3つの「ない」の視点で危険探しをする。
その後でクラスを2つに分けて、実際に訓練をやってみる。校庭に集合するところではなくて、身を守る部分のところだけをやってみる。互いに指摘し合う。対話的な授業をやる。例えば写真も、こういう写真を使えば、机に入れないときどうしようとか、給食の時間であれば、それぞれ行動が違うわけですね。大きな危険もあれば、小さな危険もある。自分の机の上の物が落ちてくるのは小さな危険。でも、この全員分のカレーライスが降ってくるのは、これ大きな危険。危険と安全があるのではなくて、大きな危険と小さな危険がある。つまり、リスクという概念を教えているわけです。こういったことで、少しでもリスクの小さいほうで身を守るということができるようになります。
また、写真を撮っていただくだけで、教員研修にもなりますが、どこに危険があるか、そういうのを収めて写真を撮って、自分たちが使っている図工室でやってみると。
このパート2のほうですけれども、これ実際の動画を御覧いただきますが、これは横浜の小学校でやったときのものですけれども、ちょっと御覧ください。
(映像上映)
【大木委員】半分の子たちが何もやっていないのは、後半チェック組です。後半にやる子たちでチェックする。実際見てみると、訓練やる側の子たちが急いで机の下に入って、この女の子たちはチェックしに行っているんですね。誰々君、頭入ってないよとか、そういうことをチェックする。これを今度交代してやると、こういうのを連続的にやる訓練を推奨しています。
先ほどの小学校、7月7日に訓練やって、もう後は夏休み明けまでやる予定なかったんですけれども、10日後くらいに本当の地震が起こりまして、しかも給食の時間中でした。みんな、この状況になるまで2秒でした、というふうに担任の先生がおっしゃっていましたけれども、机の下にちゃんと入っていると。緊急地震速報、このとき鳴っていないんですが、訓練されていたので、できました。
机があるときは机の下が望ましいんですけれども、この2人の子はダンゴムシのポーズしているんですが、この子たちは、おかわりじゃんけんの最中で、牛乳の決勝戦で2人だけ前に出てじゃんけんしているときだったので、みんなのガタッという音でダンゴムシのポーズを取った。自分の席に戻らずにダンゴムシのポーズを取るということができました。
なので、文科省がアンケートで「訓練はやっていますか?」と言えば、「やっています」という答えが来るわけで、そうではなくて、もう少し詳細に聞いて、アンケートするといいのではないかと思います。
これまで訓練で問題が起きていないのは、たまたま地震が起きていないからです。学校管理下で地震が起きていないからなだけです。訓練の在り方に問題がないからではありません。問題が起きてから改めましょうではなくて、ぜひ、この機会に改められるといいなと思います。
ちょっと時間がないので、これを飛ばしまして、次に、残りの時間で未就学児の防災教育のお話をしたいと思います。未就学児の防災教育、様々なことを、一つのモデル校でさせていただいてきたんですが、単に低年齢化するということではなくて、かなり理詰めでやってきました。5分ぐらいの動画にまとめたので御覧ください。ちょっと音量が大きかったら、すみません。
(映像上映)
【大木委員】手前が2歳ですね。一番後ろが5歳。さっきの、この3つのポーズを覚えてもらうために、ダンスをつくりまして、これは、みんなで踊っているところです。この歌は、スピードがどんどん速くなって、ポーズもどんどん速くやらなきゃいけないというゲームになっています。これは年度末に年中長に抜き打ちの訓練やったところです。
今、園長の地震ですの合図で、子供たちがぱっと。この後、誰も一言もしゃべらずに、ずっと中に入ったままなんですね。というのは、余震に対応する訓練をずっとやっているので、余震が来るということを分かっていて。これ緊急地震速報の報知音でやったり、声でやったりですけれども、このときは、たまたま声でやっていましたが。園長が近くで煙が上がっていますねと言って、火災が近づいているので10分後に避難します。子供たちに説明をして、今から外に行きますよ、ということをやっている。(すみません、ちょっと動画の音声が共有できないということで失礼しました。)
残り、あと1分半ぐらいですかね。未就学児に防災教育をやるときに、低年齢化しようとしたのではなくて、理詰めで検討して、未就学児にアプローチするのがよいと判断しました。
例えば、小中学校よりも防災教育に割ける時間、カリキュラムの自由度があるということ。これはアンケートで明らかでした。宮城県、埼玉県、愛媛県でアンケートを取り、防災教育をするに当たって障壁になっているものは何かというのを13項目ぐらい挙げて、その中で授業準備や授業の時間数が足りないという項目について、幼稚園、保育園だけが、統計的に優位に、それは障壁ではないと答えています。ですので、時間に自由度があるという点を防災教育に活かせるのではないか。
それから、子供が幼いほうが保護者の意識が高い。これはもう心理学の中で非常に明らかになっていることですけれども、これをすると、大人への防災啓発を兼ねることができます。もしかしたら、啓発された保護者がそのまま地域の担い手へと展開できるかもしれない。
それから、さっきの保育園では、机の下から出てこようとした年少さんに年長さんが「また地震は来るから机の下に入って」ということを自然に指導しています。余震が起きる訓練をずっとやっているので、そういったことが年長でも年少に指導できるような状況になっている。そのようなレベルで小学校に入学したら、小学校はかなり防災教育が楽になるのではないかなと思っています。そういったことを考えた上で、先ほどの訓練を実際実施してみて、その結果が得られたという感じです。
これで、第三次提言にむけたまとめですけれども、未就学児にアプローチして、そこである程度やってもらってから小学校に入ってくる。シームレスにつないでいくという、そういったことを少し意識した計画にしてはどうかということ。
それから、緊急地震速報システムを導入すれば、現状の形骸化した訓練のままでいることはできなくなるので、自動的にショート訓練のような実効的なものになっていきます。ですので、そういった環境を整備するといった提言をできたらいいと思っています。
以上になります。ありがとうございます。
 
【渡邉部会長】ありがとうございました。それでは、引き続きまして石井委員、お願いいたします。
 
【石井委員】それでは、御報告をさせていただきます。大分県の東庄内小学校の石井です。
現在、小学校に勤務をしておりますが、私は昨年度までの3年間、中学校に勤務をしておりましたので、中学校での防災教育について報告をさせていただきます。
私の勤務していた日田市立五馬中学校は、地図の赤丸の部分、ちょっと小さいですが、この部分です。熊本県との県境に位置していて、五馬高原と呼ばれる山間部の学校です。
校区には温泉つきの別荘地があり、四季折々の草花が咲き、高原の爽やかな風と景色を求め、ツーリングなどの観光客も訪れる風光明媚な場所です。学校の位置する場所は、ハザードマップでは周辺には何も色がついておらず、安全な場所とされておりました。
しかし、平成28年の熊本地震では、日田市内で唯一、校舎に被害がありました。また、学校の周辺には、小さな河川やかんがい用の水路がたくさんあります。そして、小学校の統合に伴い、中学生も約6割の生徒がスクールバスでの通学です。通学路には、道路の側面に、土砂の崩落防止のための工事をした箇所が無数にあります。
避難訓練の際にお招きした専門家の方から、工事箇所の多さから、これまでに、ここは過去にかなりの災害が起きているのではないか、この災害を調べることは、これからの防災に役立つよというアドバイスをいただきました。そこで、この地区で過去に起こった災害について調べることにしました。
生徒には、夏休みの課題として、この地域のことをよく知る祖父母や近所のお年寄りに話を聞いて、それをレポートにまとめる宿題を出しました。同時に、毎月1日、15日に発行し、校区内の全自治会で回覧していただいている学校だよりで、生徒が訪ねた際にはよろしくお願いしますというお願いのお便りも出しました。
1年目の平成30年度は、生徒が提出したレポートを見ると、この地域に大きな災害をもたらした災害が6つあることが分かりました。古くは昭和28年の西日本水害や平成3年の台風19号、平成24年7月の九州北部豪雨など、今も名前が残る大きな災害ですが、ニュース等で報道されていない、この地域で起こった被害の状況を調べることができました。
2年目の令和元年も、夏休みに同じ取組を行い、2年間で54のレポートが集まりました。重なりの場所を除きますと、全部で41か所の災害をファイリングすることができました。
いずれの年も、「五馬地区災害ファイル~過去の災害に学ぶ~」として冊子にまとめ、生徒の家庭をはじめ区長、自治会長、学校評議員など、関係する地域の方に配布をすると同時に、各自治会に数冊ずつ配って回覧をお願いし、回覧の後は各地区の自治会館等に置いていただいて、地域の方が自由に見ることができるようにお願いをしました。
災害ファイルを自治会で回覧する際に、独自の回覧用紙を添付して、見ましたという判こを押してもらうような取組をしてくださった自治会長さんもいました。その方の下には何人もの方から連絡があり、今までこんなのはなかったし、過去のことを知っている人も高齢になっているので、こうやって記録に残してくれたのはありがたい、中学生がこんなに頑張っているんだから、自分たちもしっかりやらないとなと、いろんな話になったそうです。そのことを、わざわざ学校まで報告に来てくれました。
2年間で2冊のファイルを作りましたが、五馬ってこんなに災害が多いんだ、怖いよねで終わっていては、本来の役目を果たせていません。そこで、3年目の昨年度ですが、確かに災害は多いけど、こうすれば安全だし、ふるさとってやっぱりいいよねという子供たちを目指し、「ふるさとを愛し、ふるさとを守れる人へ」をコンセプトに、防災フィールドワークを実施しました。
当日は、生徒の居住地区で5つの班に分かれ、地区ごとに災害ファイルに載っている場所を巡り、現在の様子を確認し、気をつけることは何か、安全な場所はどこかなどを考えながら調査を行いました。
調査には、区長、自治会長、この年から学校運営協議会がスタートしましたので、その委員さん、保護者が参加をしてくださいました。また、各班には、大分大学の防災アドバイザーをはじめとする専門家の方にも同行していただきました。写真は、そのときの様子です。
ちょうどそのとき、別件で来県をされていました森本調査官にも御参加いただきました。自治会長や学校運営協議会の委員さんなど地域の方は、現地で当時のことを詳しく説明してくださいました。それに対して専門家が専門的な立場からアドバイスをしてくださったことで、生徒たちには、とても分かりやすく、フィールドワークの意義も大きかったと思います。また地域の方も、地域をじっくりと見詰めるよい機会になったし、話をしながら生徒と一緒に歩くのも楽しかったと感想を述べられていました。
フィールドワークで発見したこと、また生徒が感じたこと、その場所を利用する方へ知らせたいことなどをまとめて、各地区の代表が文化祭で地域の方へ向けて発信しました。早めに避難しましょう、避難するときにはこんなことに気をつけよう、こんな場所も危険ですよ、防災の視点を持って地域を歩いてみませんかということを呼びかけました。
それらをまとめた災害ファイル、ボリューム3、「ふるさとを愛しふるさとを守る」を発行しました。この冊子は左側に、それまでの2冊に収録されているファイルで、現地調査に行ったものを載せ、右側に、現在の現地の写真とどのようになっているかの説明、また、この場所を利用する方への生徒からのメッセージを載せ、見開きで対比できるように、分かりやすいように編集をしました。
また併せて、ハザードマップには載っていない生徒が見つけた危険箇所を記した五馬中独自のハザードマップと、皆さんも御記憶にあろうかと思います、昨年度、本校の近隣の校区の天ヶ瀬温泉が甚大な被害を受けた令和2年7月豪雨を生徒は経験をしていますので、その証言者として、経験も収録をしました。これも、これまでの2冊と同様に、地域へも配布をしております。
フィールドワークに参加してくださった自治会長さんが、子供たちが危ないと言っているんだから、すぐに市役所に言わないといけないと動いてくださり、フィールドワークの10日後には、市役所の担当者が現地を訪れるということもありました。
また、文化祭に来てくださった方から、ふだん車でさーっと通るだけなので、危ないとは気づきませんでした、今度から、子供たちが言っていたように、ここは大丈夫ではなく、危ないかもしれないという目で見ることが大切だということが分かりましたという感想を頂きました。さらには、お手紙を頂き、生徒の取組に対し称賛を頂いたところです。
3年間の取組を経ての本年度ですが、昨年度末に計画を立てました。この表は、昨年度最後の学校運営協議会で提案した総合的な学習の時間の年間計画です。来年度、学校としては、地域の皆さんと共に、このようなことを行いたいという部分を太字で示し、委員さんにも次年度の見通しを持っていただきました。
その中でのメインは、オープンスクールの中で開催する生徒地域防災会議です。今までは、防災に関して、生徒からの発信にとどまっていましたが、それらを受けて、地域の方はどう思っているのか、これからこの地域で生徒ができること、地域がしなければならないことは何かなど、同じテーブルで話し合おうというものです。
私は残念ながら転勤しましたが、後任の校長に、このことは十分に引継ぎを行いました。これまで防災の取組を報告してまいりましたが、当然私一人で行ったものではありません。特に3年目の昨年度ですが、その中心であったのは、防災教育コーディネーターの教員です。
前回のこの会、自己紹介の際にも申し上げましたが、大分県では、校務分掌の一つとして、防災教育コーディネーターを位置づけています。この取組自体、大分県でも始まって今年で3年目です。コーディネーターの目的や役割等について、県の教育委員会が研修を行っています。日常的に防災教育の推進はもちろんですが、災害時には校長・教頭を補佐する役目を持っています。
これは一例ですが、本校では、訓練の企画はもちろんですが、訓練の後、反省を基にマニュアルの更新も行っております。赤字で書いてある分が、反省を基に新たに書き換えたところです。常に現状にマッチした最新版のマニュアルが各教員の手元にあるようにしました。これらの取組から、私の防災教育に関する意見を述べます。
1つ目は、防災はコミュニティ・スクールの大きな柱であるということです。学校運営協議会での協議の際も、学力や体力のことを言われても、地域の方にはなかなかぴんときません。当然ですが、学校主導にならざるを得ません。
しかし、防災はまさに地域のことであります。そこに参加する人全員に共通する課題であると思います。
本年度計画しているように、そこに生徒も加わることができ、学校運営協議会の活性化と発展が図られるのではないかと思っています。
2つ目は、防災教育の推進、継続のためには、中核となる教員を育成することだと思います。校内の組織もあるでしょうし、教員の意識、知識の向上もあると思います。研修していくことはもちろんですが、私が経験した中で有効だったなと思うのは、専門家の派遣です。避難訓練は、絶対に外部の方に見てもらうべきだと思います。そして専門的なアドバイスをいただく。それも一度ではなく複数回来ていただき、時には叱咤激励もいただくことで、教員の意識が変わります。意識が変われば、その後は、当然ですが、好転していきます。しかし、派遣となると金銭的な問題等が出てきますので、そこには行政の支援は欠かせないだろうと思っています。
蛇足ですが、昨年度の五馬中学校の取組は、NHK大分放送局が半年にわたって、ほぼ密着状態で取材をしてくれており、本日の報告の部分は、NHK大分のホームページにアップされております。お時間があるときに御覧いただければと思います。以上で私の報告を終わります。御清聴ありがとうございました。
 
【渡邉部会長】ありがとうございました。それでは続きまして、𠮷門委員、よろしくお願いいたします。
 
【𠮷門委員】𠮷門でございます。よろしくお願いいたします。それでは、プレゼンさせていただきます。
私は高知県における安全教育、防災教育の取組についてお話をさせていただきます。現在は、この4月から土佐市立蓮池小学校で勤務しておりますけれども、その前に足かけ14年、高知県、文部科学省、行政で学校安全を担当してきましたので、どちらかというと、その仕組みのほう、行政としての取組の視点でお話をさせていただきたいと思います。特に中心は、高知県がどのように行ってきたかということを御説明したいと思います。よろしくお願いいたします。
これは東日本大震災の後、高知県がどのように取り組んできたかということを1枚にまとめたものであります。一番大きなこととして、それまでスポーツ健康教育課というところに学校安全担当があったのですけれども、東日本大震災の次に、平成24年4月から学校安全対策課というのを高知県教育委員会の事務局内に設置しました。これは、それまで行ってきた防災教育、防災管理の安全担当と、それから施設整備を担当する施設担当部を合わせて、ハード、ソフトと一体的に南海トラフ地震対策を行うということを目的に設置されています。以来、この令和3年度も継続されております。
具体的に、この課が設置される前、それから東日本大震災以前も、ずっと高知県では、南海地震対策として、防災教育というのは非常に重要視してきておりまして、平成17年度から毎年、高知県、横に東西に広いですので、県内3か所で防災教育研修会というのを、ずっと続けてきておりました。そこでは防災教育、防災管理両方の視点から、有識者の講演でありますとか県内の好事例の共有、こうしたことを内容として1日研修で行ってきたところであります。学校安全対策課の設置と併せて、これを各学校から来たい人が来るという研修ではなくて、学校悉皆と呼んでいましたけれども、各学校から必ず1名は参加させる、そしてその参加する者の旅費は全部県教委が予算化するということで進めてきています。
目的は教職員の指導力の向上、そして学校の防災対応力の向上としておりました。
近年は、学校安全推進計画の中にも書かれています、学校安全を担当する中核となる教員ということで、高知県では学校安全担当教員ということで呼んでいますけれども、この学校安全担当教員の参加を求めまして、その担当教員が研修したことを学校で広げるということを行ってきています。
それから防災教育の観点では、後で申し上げます高知県安全教育プログラムと策定しまして、これに基づいて、しっかりと各学校で防災教育を実践していくということ、それから専門家のアドバイスを受けて学校防災マニュアルを改善していく、こうしたことを両輪としてやってまいりました。
専門家のアドバイスというのは、東日本大震災以降に文部科学省の委託事業として、ずっと継続されてきています。その中の予算化されたものを使いながら、あるいは半分は県費で一般財源を使って、高知大学を中心とした県内の有識者の方々に学校に入っていただくということを続けてきております。
また、学校に防災教育をやってくださいといっても、何を使って、どのようにすればよいのかということが、学校に委ねても、そういった資料とか、どこまで指導するのかということが学校に共有されなければ、しっかりとした実践が行えないという観点で、それで各種教材も県教委で作ってきています。
コンセプトは、南海トラフ地震で一人の犠牲者も出さないということをスローガンに掲げまして、全ての子供たちが自ら判断・行動して、自分の命を守り切る力を身につけさせる、こうしたことを目指して進めてきているところです。
それから、全ての県に教員養成指標があると思いますけれども、教職員にどのような力を持ってもらいたいかということで、学校安全に関するところ、高知県の教員育成指標の中にも、学校安全に関する基礎的な知識を身につけるというところを、新規採用の段階から、それぞれのキャリアステージに応じて、このように位置づけがされています。
ただ、それぞれの段階ごとに学校安全の研修がきちんと位置づけられているかといいますと、そこのところは、新規採用教員のところは学校安全、安全管理というのはございますけれども、あとのところは学校の中で研修をしていく、あるいは防災教育研修会や学校安全に関する研修会に、それぞれの立場で参加するということで行ってきています。
ここのところは、もう少し改善が図れることが重要だと考えていますけれども、昨年度から提供されています文部科学省のeラーニングを使うことを提唱しているところです。
さらに、これを私も校長として、こういうところは自分にきちんとできているかどうかということを日々胸に刻みながら毎日学校運営を行っていますけれども、校長は、やはりマネジメントというところで、しっかりと学校全体を俯瞰して見て、弱いところはないかということ、そして、うまく回っているところは、さらに発展させる、そうした視点を持って進めていかなければならないと感じているところです。
また、校長の一番大きなマネジメントの力として、地域にある人的・物的資源もどのように学校に取り入れていくかということが一番重要だと考えていまして、本校では地域学校協働本部の有識者の方、地域の方々に、いろんなことをお手伝いいただいているわけでありますけれども、防災面でも地域の方々と共有していくというところは、まだまだこれからという実態でございます。
それでは、高知県の施策の話に戻したいと思います。東日本大震災で明らかとなった課題を基に、高知県でも、どのように進めていくかということを考えました。
そのときに、学校の声として、あるいは学校の実態として、先ほどの内閣府の御発表の中にもありましたけれども、防災教育の時間の位置づけというのは明確ではありません。ですので、カリキュラムへの位置づけは、各学校の創意工夫に任されているという実態がありました。
結果どういうことが起こるかというと、しっかりやっている学校はあるけれども、全ての学校で必要なことが実施されているかどうかというところは非常に課題があるということでありました。
特に東日本大震災以前は、避難訓練イコール防災教育という実態が多く見られました。学校で防災教育やっていらっしゃいますかと学校に聞きますと、やっていますよ、うちの学校は年間5回避難訓練やっていますということで終わりということも多く聞かれましたので、やはり避難訓練だけが防災教育ではなくて、しっかりと子供たちが自分で判断して行動できるようにするための教育、全体のマネジメントが十分でないという課題がありました。
もう一つ深掘りしていきますと、何を教えるのかということが十分明らかになっていない、明確化されていないということ。したがって、指導内容、何を教えるのかを明確化していくということ、そして、それをどのように教えるか、何を使って教えるかという材料ですね。防災教育やりたいけれども、うまい資料はありませんか、いい資料はありませんかということをよく聞かれました。ですので、効果的な指導資料をしっかりと提供していくこと、さらには、どのように指導することが、子供たちが自ら考えて行動できるようになるか、そうした情報共有が必要ということが課題として明確化されました。
こういったことを改善して、全ての学校でしっかりと安全教育を行うようにするためにということで、高知県安全教育プログラムを策定することになりました。
防災が中心で、特にこの時期、平成24年度という時期は、高知県では直前に新しい津波の想定がされまして、非常に高知県ではショックを受けている時期でありました。ですから、安全教育ではなくて防災教育に特化してはということが事務局内でもありましたけれども、それでも防災だけではなくて、やはり日常から自分の安全をどう考えていくかという、そういう力を身につけさせるためには、防災だけではなくて、毎日毎日いろんなことが自分の周りに起きる、その中で安全を優先する行動を取ることができるようになるためには、安全全般を網羅的に指導していく、そういうことを学校に対して見える化を図っていくことが重要だということで、安全教育プログラムの中には、もちろん南海トラフ地震対策の震災ということもありますけれども、気象災害編、交通安全編、生活安全編というふうに、全てを網羅して策定しました。
そして、この中で、このプログラムに基づいて数値目標を立てまして、特に防災の授業という言い方をしていますけれども、すごく雑駁な言い方にはなりますけれども、座学をしっかりとやりましょうということを分かりやすくするために、こういう言い方をしました。小中学校では各学年、年間、全部の学年5時間以上、そして高等学校でも3時間以上はしっかりと防災授業を行いましょう。例えば学級活動やホームルーム活動の時間、さらには総合的な学習の時間に防災というのをテーマに位置づけてやりましょうということを例示しています。
さらには避難訓練、様々な訓練の仕方がありますけれども、短い時間の5分、10分の揺れから身を守るショート訓練も含んで、年間3回以上は確実に実施しましょう。こうした数値目標を掲げて、今進めてきています。
近年、これが全ての学校で目標達成はできているという状況になっていますけれども、ただ、その中身、一校一校の具体的な中身というところまでは、県教委として十分把握できているわけではありませんので、これからの課題としては、その中身、さらなる質的向上が課題だと考えています。
毎年、各学校には通知文として、ここに掲げているような内容で、全ての学校でしっかりと学校安全について取組を行ってくださいということを、お願いをしています。
まず、安全に関する資質・能力を明確化した学校安全計画。学校安全計画の前には、安全教育の全体計画をつくりましょうということです。
学校安全計画は、皆様方御存じのように、年間で安全教育と安全管理と組織活動、これは全体を俯瞰して見る計画となっていますので、特に安全教育の部分では、全体計画として大まかな方針を決めて、それを具体化していく流れをつくりたいという考え方で、全体計画というものも求めています。
さらには、学校安全担当教員が中核となって活動を実施していくということ、当然のことながら学校だけではなくて保護者や地域、関係機関と連携するということ、そして先ほど申しました防災教育については確実に実施する、さらには危機管理マニュアルの見直し。これは、しっかりと学校で訓練も通して明らかとなった課題を基に改善を図っていくということですね。こうしたことを学校の中、全ての学校で実施されるように図ってきています。
さらには教材についてですけれども、特に防災の教材をたくさん作ってまいりました。下段の左側、これは東日本大震災のすぐ後に初版を作りましたが、これはパワーポイントで授業できるようになっている。これを使えば、いつでも誰でも防災教育ができますということを売りにして作ったものでありますけれども、東日本大震災の映像でありますとか資料、そして、こうしたことも入れながら、南海トラフ地震がどのような地震が起こるのかということ、そして、それに備えるためには、どんなことをしっかりと考えていくことが必要かということを、スライドを使って子供たちに指導していく、こうした資料であります。これは気象災害編を追記しまして、平成28年3月には改訂して、この緑の表紙が改訂版というところでございます。
「学校防災マニュアルの作成の手引き」も、これも震災以前に作っていた、平成21年度に最初のものを作っておりましたけれども、東日本大震災の教訓を踏まえて26年度に改訂して、これを使って今、学校での訓練の後の改善ということをやっていただいています。
上段は、子供たちがいつでも、授業の中でも使う、そして家庭に持ち帰って保護者と話合いの材料として使う、そしていつでも眺められるようにということで、小学校は3年生以上、中学校は1年生から随時ということで、1人に1冊、児童生徒に配って、これをずっと持たせる、使って授業をするということになっております。
さらに、高等学校におきましては、高知県の危機管理部が県民に各家庭に全戸配布しています「南海トラフ地震に備えちょき」という冊子がございまして、高等学校では、もう大人が読む冊子が読めるということで、こちらを教材として扱っていますので、毎日かばんに入れて持ち運びができるようにということで、非常にコンパクトなハンドブックという形で生徒に配っております。
これも毎年、小学校3年生、中学校、高等学校は1年生に配っていますので、今、高知県内の小学校3年生以上の児童生徒は、何がしか全員これを持って学習することができる状況をつくっています。
さらには、安全教育プログラムの中で一番重視しましたのが、高知県の子供たち、全ての子供たちに身につけさせたいなということを、しっかりと整理をしました。これだけは社会に出る前に身につけて卒業してほしいということで、指導10項目と呼んでいますけれども、その中には、詳細に見ていきますと、たくさんの項目がございます。
まず、自分の住む地域にどのような災害が起こるのか、どのようなことが起こるのかということをしっかりと分かった上で、そして高知県では一番、全ての子供たちが知っておく必要がある津波というものの特徴でありますとか、自分の住む地域に何分で最初の津波が到達するのか、こうしたことなどもしっかりと地域の災害課題を知るということ、そして自らそれを取りに行く、こうしたことを大事にしていきたいと考えています。
そしてキーワードは、文部科学省の様々な資料、今出ています。「落ちてこない・倒れてこない・移動してこない」、こうした場所に避難するということで、まず揺れから身を守ることが最も最初に身につけるべきことだということで、小学校1年生から指導するというふうにしています。
さらには、こうしたショートの訓練、実践的な訓練を行っていく。これも防災教育の一環として行って、しかも、こうした写真を使いながら振り返りをしていくということを重視しています。
一番大事なこととしては、自分で判断して行動しているか、それを確かめるために訓練があるということを位置づけています。
さらには、様々な場面で地震が発生したときに、例えばこういう写真を使って、この行動が自分たちのことを客観的に見て、これは本当に地震が起きたときに、ここの場所でよかったのか、この行動でどうだろうか、もっと必要な考えるべき視点はないだろうか、こうしたことをしっかりと客観的に見て、さらに学びを深めていくということを重視しています。
そして避難訓練というのは子供たちに、なぜ訓練をする必要があるのか、何から、なぜ逃げる必要があるのか。津波が来ないところでは走って逃げる必要がないわけであります。先ほど大木委員がおっしゃったとおりだと思っております。そして何を備えるべきか。こうしたことをしっかりと子供たちが意義を分かった上で訓練しないと、訓練も形骸化したものになっていくと考えております。
そして、訓練の2つの要素として、教職員のマニュアルが本当に今の体制でいいのかどうかということを確かめるための訓練という意義もありますけれども、子供たち自身に、子供たちがそれまで学習したことをきちんと行動化できているかどうか、こうしたことを見取っていく、そのための訓練という意味合いもあると考えています。
さらには、総合的な学習の時間の中で地域のことをしっかりと調べていく、そのことはマップとして落とし込んでいくということも非常に重要なツールだと考えています。しっかりと誰かに教えてもらったことを学んでいくということでなくて、自分の目で探究的に学んでいく。そして自分で調べたことをしっかりとまとめる。それで終わりではなくて、誰かに伝えるということを通して、そのことがより自分の中で深い理解になっていくということを考えられますから、こうした防災を視点とした探究的な学びというのが一番重要だと考えています。
さらに、高等学校になりますと、自分の身を守ることだけではなくて、社会全体の防災ということにも目を開いていく。さらには、これまで学んできたことを、自分の中、自分の学校だけにとどめるのではなくて、よその学校とコミュニケーションをしながら、そしてまた自分のことに返っていく、こうした学びをさせたいということで、高校生津波サミットというのを継続しています。
それは一番最初は、平成28年度に本県黒潮町において行われました「『世界津波の日』高校生サミットin黒潮」、そこで採択された「黒潮宣言」の趣旨にのっとりまして、翌年から高知県版のサミットとして実施しているものであります。
ここでは、例えば被災地を訪問して、そして世界サミットに参加した学校の生徒が県内でその成果を普及していく、さらには生徒同士が、自分たちがこれまで学校で行ってきた実践を報告し合って、自分のところの学校にさらに生かしていくということで続けてきています。
この令和3年度は、さらに、その中で、もし防災士を目指したいという生徒がいた場合には、その受講の費用を県費で賄っていけるように、そして少しでも地域のリーダーとして将来活躍できるような、高校生世代にはそうした防災教育の観点で取組を進めていきたいということで、この県版サミットも続けてきています。
今年度の実践校は、実践校9校で実践委員20名。特に実践委員というのは、その中でもリーダーとなって、より深く学習していくというものを今年から募るようにしていますので、学びを深めるような活動がこれから始まっていくところであります。
残念ながら昨年度から、新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点から、生徒たちが集った活動というのがなかなかできにくくなっていますけれども、オンラインでありますとか、そうした新しいツールを使いながら交流を深め、それぞれの学校での取組を今続けているところです。
南海トラフ地震だけではなくて気象災害についても、本県は過去からずっと台風や大雨によって甚大な被害を受けてきているところでありますから、大人には一定の経験値がございます。
例えば、これぐらいの雨だったら大丈夫のような変な経験則から言う言動もありまして、そうしたことが新しい時代に、これだけ状況が変わってきている中で、過去の経験がマイナスに働かないように、しっかりと正しい知見に基づいて行動できるようにということで、気象災害についても指導していくということになっております。
さらには、新しい学習指導要領の3つの観点になぞって、安全計画の目標というのが文部科学省の資料の中でも提示されています。こうしたことを、それぞれの発達段階に応じて、しっかりと目標に照らして、高知県の災害課題をどういうふうに踏まえて行っていくかという、もう少し詳細な質を高めるような資料が重要だということで、この6月に示したばかりでありますけれども、安全教育プログラムに基づいて、しっかりと安全教育の質的向上を図るために、具体的な資料を共有できるようにしています。
新しい資料のポイントとしましては、先ほど来御説明しました基本的な指導事項を基に育成を目指す安全に関する資質・能力を発達段階ごとに整理しています。これを災害安全、震災編、気象災害編、交通安全、生活安全、それぞれの分野ごとに整理をしました。そして学校安全の全体計画、安全教育の全体計画と学校安全計画の高知県版を例示したこと。
それから、単元構成による指導計画のモデル。例えば総合的な学習の時間を使って、それを教科とどうリンクさせながら指導していくか、1年間の指導モデルを例示しました。
さらには、「『生きる力』を育む学校での安全教育」に示された教科に関する考え方も、ここに掲載をしています。
それから学習指導要領総則編の中にある「防災を含む安全に関する教育」の内容も併せてこの中に掲載をしまして、学校がしっかりと安全教育の質を高めることができるようにということで、今年度から進めていく予定であります。
先ほど申しましたように、身につけさせたいことを指導事項の中心に、発達段階ごとに小学校低学年から高等学校まで、特別支援学校については子供たちの一人一人の状況に合わせて大まかな学年の内容を目安にしながら実践していただくという位置づけにしています。
このように、それぞれの段階ごとの目安、目標を設定しています。
気象災害についても少し拡大をしましたけれども、このように具体的に必要な知識を身につけて、そしていざというときに行動できるようにということで、こうしたものを整理して学校に。これに基づいて、しっかりと子供たちに自分の命を守るために必要な知識や技能を身につける、そういうことができるような安全教育を行っていくということを目標として掲げています。
実はこういうことは、第3期の高知県教育振興基本計画の中にも安全教育という分野を入れていまして、その中の指標として、こうした教育をしっかりと行っているかどうかというのを指標として見取っていくということにもなっております。
これは指導モデルとして、災害安全分野で、例えば総合的な学習の時間に「命を守るための備え」というテーマで防災というテーマを位置づけて中心にしていく。その中で、例えば、これは小学校6年生の指導でありますから、社会科の中で学んでいくこと、理科の中で出てくること、それをしっかりと計画の中に取り込みながら1年間、6年生で防災分野について、このように指導していくということを俯瞰的にしたものであります。
こういうものを例示しまして、しっかりとカリキュラム・マネジメントを利かせた防災の取組を行っていくということを学校でさらに進めていきたいと考えています。
さらには、先ほど来、訓練のことを申しましたけれども、避難訓練はあくまでも子供たちが学んだことを確かめる場として位置づけて、事前の学習、そして事後の学習の振り返りをして改善していく、こうしたサイクルを回していくということも提唱していきたいと考えています。
さらには、防災管理の分野でも、しっかりと訓練を通して明らかとなった課題を、全ての教職員がしっかりと関わった上でマニュアルを改善していく、こうしたことも提唱しています。
それから、新しい情報がもたらされるようになりました避難に関する情報、そうした用語が変わったり、提供される情報の示され方が変わっているということを、しっかりと意識を持って教職員が新しい情報を取っていく、こうしたことを大事にしていきたいと考えています。
最後ですけれども、まず、これからの防災、安全教育というのは、子供たちに何ができるようになってほしいのか、そして発達段階ごとの発達段階を考慮した目標を設定して、それは何をどういう順番で指導していくのかということをしっかりと計画をつくって実践していく。
さらには、実践して終わりではなくて、最後には、子供たちの姿を通して、子供たちに何ができるようになったのか、何が身についたのかという視点で検証をする。そして、課題となったことを次の次年度の学校安全計画の改善につなげていくということを、しっかりと進めていきたいと考えています。
全ての子供たちが自ら判断・行動して自分の命を守り切る力を身につける、こうしたことを目指していきたいと考えています。
先ほど来、皆様方の御発表を聞いていて、そして文部科学省、内閣府の御説明をお聞きしていて、やはりこういうことを進めていくためにも課題となっていくのは、やはりこうした資料を配っても、各学校で具体的に落とし込んでいったり、やらねばならない状況をどれだけつくっていくかということが重要だと思います。スローガンとしてやりましょうということを提示して、そしてできていない学校が恥ずかしい思いをするような状況がもしつくられるのであるならば、全ての学校ができる、やらねばならないという状況をしっかりつくっていただいて、できる環境もつくっていくということが重要だと私は思っています。
そのためには、全ての学校で自然に防災教育が行われていくような仕組み、制度化されるということ、そして学校が行いたいというときに物的、そして財源も必要だと思いますから、人的・物的な資源がどのように担保されているかということ、そういうことが非常に重要だと思います。
学校が何をやればいいのかということが分かっていて、そして何ができるようになればできたかということがちゃんと明確化されている、そういうことまできちんと一体的に示されてこそ、全ての学校での取組の充実が図られると考えています。以上でございます。ありがとうございました。
 
【渡邉部会長】ありがとうございました。それでは、ここから議事の2、意見交換に移りたいと思います。ただいまの御発表への御質問があれば、ここでお願いいたします。
なお、委員の皆様から御意見頂きたいと思うんですが、本日の議論は、学校安全の3領域、生活安全・交通安全・災害安全の中の特に災害安全にフォーカスした議論としております。ただ、防災教育だけに限らず、防災管理であるとか、防災に関わる組織活動の面からの御意見を頂いても結構です。
また、今日御発表いただいた委員の方たちから他の委員の御発表に対しての御意見でももちろん結構ですので、よろしくお願いいたします。
なお、時間の関係、限られた時間ですので、御質問、御意見は簡潔に御発言いただくよう御協力をお願いいたします。御発言される方は、反応のところの挙手のところがあるかと思いますので、そこを押していただければと思いますが、いかがでしょう。では、渡辺弘司先生、お願いします。
 
【渡辺委員】日本医師会の渡辺でございますけど、𠮷門先生に3点お聞きしたい。
1つは、大木先生もおっしゃられたんですけれども、高知県も行っておられるようですが、就学時前からの防災教育というのは、やはり有用と思われるかどうか。大木先生の前でこんなことを聞くのも失礼なんですけど、就学時前の教育というのは、やはりあったほうがよいかどうか、効果的かどうかという経験談が1つ。
2つ目は、教材を改めて作っておられますけれども、これはやはり文科省が、がん教育のように共通のものを作っていないからということですか。文科省としては、防災教育の展開というのを平成25年に出していますけれども、具体的に使えるものではないと思うんですね。だから、やはり、ないから作ったのか。逆に言うと、文科省のほうに共通のものを作っていただきたいということで、その動機が2つ目。
3つ目は、これは内閣府の提言にありますように、まさかの対応というんですかね。レジリエンスで言うとSafety-Ⅱの考え方ですけれども。つまり、既存の災害じゃない場合に発生した場合の子供への対応というのを高知県ではどのように考えておられて、どのような具体的な対応をなされるか。
この3点を簡潔に教えてください。よろしくお願いいたします。
 
【渡邉部会長】では、𠮷門先生、よろしくお願いします。
 
【𠮷門委員】𠮷門でございます。渡辺先生、御質問ありがとうございました。
まず1点目の幼児期からの防災教育ですけど、特に高知県では、津波がというのは非常に想定されていますので、そのときに子供たちが、まず揺れから身を守るということは必須だと考えています。何かが起こって泣き叫んだりパニックにならないように事前に、幼児期であっても学んでおくというのは非常に重要だと考えてございます。そして訓練は、高知県のああいう保育所、幼稚園でも、しっかりと行っていただいているところです。
2つ目の教材につきましては、私も文部科学省で勤務していたこともございますので、文部科学省も様々な教材を作っているということは承知しています。すばらしい教材がたくさんあります。動画の教材もございます。子供たちがしっかりと判断できる、考えることができるような動画の教材も作られていますので、文部科学省の教材も非常に優れたもの、そして「『生きる力』を育む防災教育の展開」というのは、防災教育の考え方と、それから具体的な事例、実践例も書かれていますので、全国の学校では、これがしっかりと使われていると思っています。
高知県で改めて作りましたのは、高知県独自の、高知県においてしっかりと特化して考えておきたい内容ということで、南海トラフにすごくシフトした教材を作ったというところはございます。当然、考え方は文部科学省で示されている考え方を踏襲しております。
3つ目としましては、まさかの対応ですね。高知県では想定外も想定するということがずっとスローガンとしてされてきたのですけれども、これは教職員自身にはしっかりとそういうことも、そのときに、今ある教職員の中で子供たちの命を守ることができるような対応が取れるかどうかというところが非常に重要なところで、しっかりできていると申し上げたいのですけれども、まだまだこれから、そういうところを、しっかりと教員の力量を高めていかないといけないところはございます。
もう一つ、子供たち自身に自分の判断で、どんな状況にあっても、そして今まで初めて出会った状況であっても、安全な行動を選択することができる、こうしたことが高知県が目指す安全教育の一番の根幹ですので、最も大事にしていきたいと考えております。お答えになりましたでしょうか。以上でございます。
 
【渡邉部会長】ありがとうございました。まだ手を挙げてられている先生がいますので、すみませんが、先に進めさせていただきます。藤田先生、よろしくお願いします。
 
【藤田部会長代理】大阪教育大学の藤田です。私のほうから1点お伺いしたいのは、内閣府の御発表と石井委員の御発表の中にありました、いわゆる防災教育コーディネーターという名称なんですが、内閣府のほうの御発表の中では、どちらかというとコミュニティ・スクール等の中でのコーディネーターという御紹介だったと思いますが、石井委員のほうは、大分県教育委員会が防災教育コーディネーターというものを、学校の教員を対象に研修を行って設置しているというふうにお伺いしたんですが、これは、この防災教育コーディネーターというのは、まだ統一されておらずに、それぞれの内閣府のお考えと大分県のお考えは違うものなのかというのと、あと大分県、大変私、防災教育コーディネーター、関心があるんですけれども、その防災教育コーディネーターの養成について、研修であったり養成について大分県のほうでは各校どれぐらいの人数とか、教育委員会としては、どういう進め方をしておられるのかというのを、ぜひ教えていただきたいと思います。
 
【渡邉部会長】ただいまの御質問は、内閣府と石井委員に対すると考えてよろしいですね。
 
【藤田部会長代理】そうです。はい。
 
【渡邉部会長】では、まず内閣府のほうから御説明等々お願いします。
 
【中尾内閣府政策統括官(防災担当)付参事官】内閣府のほうの防災教育コーディネーター、仮称と書かせていただいておりましたけど、たまたま言葉がちょっと重なった、一緒になったというだけで、あくまでこれは地域と学校を結ぶというような、言ってみれば、例えば既存のもので言えば、地域学校協働活動の推進員のような方々のイメージでもあります。どちらかというと、忙しい教員をサポートする、あるいは地域の防災の担い手との間に立って両方をサポートするというようなイメージで使っております。以上でございます。
 
【渡邉部会長】引き続きまして、大分県の状況につきまして、石井先生、お願いしたいと思います。
 
【石井委員】スライドの12枚目、それから13枚目が、その答えになろうかと思います。大分県では平成元年度から、防災教育コーディネーターという名称で校務分掌に位置づけるようにということでやっております。
これは今年の図なんですけれども、見ていただくと分かりますように、主に、やはり学校の中での防災教育の推進がメインになろうかと思います。それ以外に、目的に3つありますように、つなぐという意味のコーディネートであろうと思っております。
研修としましては、教員が分掌で当たりますので、その年に防災教育コーディネーターになった教員に対してコーディネーター研修というものを県が行っています。それを持ち帰って各学校で、そこで研修したこと、それから学校の中で実践するというような形を取っております。以上でございます。
 
【渡邉部会長】それでは、ほかに、まだ少し時間がございますけれど、御質問、御意見ございますでしょうか。松本委員、手を挙げられています。よろしくお願いします。
 
【松本委員】中京大学の松本です。3人の委員の先生からのそれぞれの分野からの専門的な先進的な取組、大変感銘深く拝聴しました。すばらしい取組されていると感じました。文部科学省の方からの最初の御説明の中の資料を見ておりまして、ちょっと気になりました。といいますのは、確かにこれ学校安全部会というタイトルはついていますが、資料の中が、ほとんどが安全、安全、安全という言葉だけが並んでいまして、ここからあまり危機感が感じられないように思うんですよ。もっとリスクとか、危険度とか、そういった言葉を並べていいただいたほうがいいのではないかなという気がしました。まず、そのリスクがあることを認めて、そこから対策を考えることが始まっていくんじゃないかな。
もう一つです。ページ番号の4ページですけど、体育科というところ。私、今、体育系の学部におります。節度とか節制というのが体育の中に組み込まれているのかもしれませんが、防災という意味では、東日本の震災、津波で言われたように、てんでんこ、1人がその場ですぐ逃げなきゃいけないということが、身を守るために、すごく大事なことで、これと指示を待つ、指示を守るとは相反するのでないかなという気がしまして。勝手な意見ですが、以上です。
 
【渡邉部会長】ありがとうございます。今のは総則のところで、体育科じゃなくて総則だと思いますが、節度、節制は。
 
【松本委員】今出ているところですね。
 
【渡邉部会長】ええ。総則のところであって、体育科の説明として入っているのではないんですね。
 
【松本委員】そうです。今のページの話です。
 
【渡邉部会長】これについて文部科学省のほうで何かございますか。御意見として伺っておくということで。
 
【森本安全教育調査官】安全教育調査官の森本でございます。今の松本先生からの御意見についてですが、リスクの把握を前提とするというのは非常に重要なことだと思っておりますので、そこはきちっと認識して、今後の学校に示していくところはやっていきたいと思います。
あと、てんでんこについてですが、そういった安全に関するところでは、時に状況が判断に迷うという、そこはまた道徳の中でも、考える道徳ということで、正解のないところをより考えることで、より最善を尽くす判断力の育成等にも結びつけていきたいと思いますので、ただいまの御意見等を参考に考えていきたいと思っております。
 
【松本委員】よろしくお願いいたします。
 
【渡邉部会長】それでは次に、北村委員より手を挙げられていますので、北村委員、その次に木下委員に発言していただきたいと思います。まず北村委員、お願いします。
 
【北村委員】産業技術総合研究所の北村と申します。3人の委員の方々に具体的な面白い発表をしていただいて、ありがとうございました。非常にいろいろ勉強になりました。初めに少しコメントをさせていただいて、その後、少し質問をさせていただこうかなと思っています。
先ほど𠮷門先生のところで最後お話があったように、防災教育をやっていく上で、やりなさいと伝えることはもちろん大事ですが、それを支えるような仕組みづくりなども大事ですよ、というお話があったかなと思います。支援の面というのももちろんありますし、恐らく学校の先生たちも、やってはいるけど、やり方が分からないとか、現場のリソースに合ったやり方がなかなか見つけられていないということもあるのではないかと思います。ひょっとすると、ほかの学校でこんなふうにやっている、といったものが共有されると、うちだったらあのやり方ができるかもしれない、というのが見つかるかもしれないので、そういうやり方のモデルの共有も重要ではないかと思いました。
災害は頻繁に起こるわけではないので、起きてしまったときの情報をうまくみんなで共有しながら活用するというような考え方も大事ではないかと思います。石井先生からお話があったような、活動はすごく面白いですし、大事だと思いますが、同じような取り組みを全部の学校がやるというのは難しいと思います。そのため、別の地域の災害でも、同じように川があるとか、山の土砂崩れある、というように場面だけ切り取ると同じような課題を抱えている地域には有用なので、災害に関する情報を共有できると、実際に災害が発生したことはない場所であっても、災害が発生した場合にはどのような被害が起きるのかを想定することができ、役に立つ情報になるのではないかと思いました。
ここから質問ですが、まず大木先生にお聞きしたいと思います。私は子供の事故という観点で学校とも関わりがあるんですけど、先生の活動が、それとすごく近いところがあって、非常に納得感を得ながら聞くことができました。
お聞きしたかったのは、多分、小学校だったりとか、幼稚園、保育園などに教育されていたと思いますが、今は先生が行かれて、お子さんにお話ししたりとか、先生たちにお話しして、やられているかなと思いますが、大木先生の手を離れてやっていけるようになるまで、どれぐらい大変なのかが、気になりました。非常に面白い取組なので、広がるといいなと思いますが、大木先生がいないとできないとなると、なかなか広まらないので、手離れ感がどれぐらいなのかなというのが気になりました。
あと、やっぱり評価の項目ってすごく大事だなと思って、冒頭お話しされていた校庭出るまでの時間で測るみたいな実態に合わない評価してもしようがないですよというお話があったと思いますが、一方で防災の場合、やったから、それで本当に災害起きたときに子供たちは行動できるかどうか、という評価はなかなか難しいので、何かシミュレーション的に評価するとか、こういう教育しているかという、例えば、余震を想定した教育をしていますか、というチェック項目で評価するなど、やり方は幾つかあるのかなと思うんですけど、これまで先生がやられてきて、何か具体的にこんな項目で評価したらいいんじゃないかみたいな、もし案があったらお聞きしたいなと思いました。すみません、よろしくお願いいたします。
 
【渡邉部会長】それでは、大木委員お願いします。
 
【大木委員】ありがとうございます。手離れ感については全くおっしゃるとおりで、私が何万人いないとできないとかでは意味がないので、そもそも私は授業しないようになるべくしていて、する場合は、5年1組だけに、じゃあ写真を使った地震ショート訓練をやります。それ以外の先生は全部見に来ていただく、あるいは5年2組、3組の先生は見に来ていただいて、そこから先は、5年2組の先生が自分のクラスでやるのを4年の先生が御覧になったり、そういうような形でやる。もしくは、うちの研究室の学生がやるというふうに、TTという形でやって、そうすると、教育学部でもない学生ですみません、TTでやらせてくださいというふうにしてやると、先生方が絶対自分のほうがうまくできるといって、大体それがすごくうまくいくパターンで。ですので、私はなるべく授業はしない。私じゃないとできない防災教育教材は、そもそも意味がない、存在していても意味がないと思っているので、そこは最初から、もう手離れするような形で進めています。
もう一つの御質問、評価のほうですけれども、これはやっぱり災害が起きてからじゃないと評価できないのでは意味がないので、そこら辺は正統的周辺参加理論とか、そういう教育の評価を活用させていただいていて、知識を得た、それが何か答えられるというペーパーテストではなくて、自分が学ぶ側から教える側、あるいは行動を起こす側、アクターになったか、つまりアイデンティティーが変化したかということなんですけれども、家に帰って弟に教えていたとか、この前地震があったとき本当にちゃんと猿のポーズを取っていたとか、そういうようなこと。こういう学びの共同体が教室の外に出た、地域に広がったとか、御家庭に広がったとか、そういうような形で、学習は、知識の内化とアイデンティティーの変化、それから実践共同体、その学びのコミュニティーの拡大、この3つで初めて評価できるはず。本当は数学とかも全部そうなはずで、だから、特にその3つ目のほうですね。学ぶ側だけではなくてアクターに替わった、教える側に替わった、低学年に教えに行ったとか、そういったことができるようになっていれば、もう大丈夫です、大丈夫と思って進めてくださいというふうにお伝えしております。
 
【北村委員】ありがとうございました。
 
【渡邉部会長】次に、先ほど木下委員が手を挙げられていたと、ですよね。それと嵯峨委員のほうから手が挙がっております。木下委員、では、まずお願いします。その後で嵯峨委員、お願いします。時間の関係がありますので、この2人で今日は終了させていただきます。では、木下委員、お願いします。
 
【木下委員】岡山県の木下です。よろしくお願いします。避難訓練のことに関して、大木先生からこれまでの訓練のことを紹介していただきましたが、本当に従来型の訓練を行っていたと自分で反省しております。香川大学の避難訓練シミュレーションでは、南海トラフ地震を想定すると長い時間揺れ続けるので、その間ずっと子供が不安にならないよう指示を出し続けないといけない状況になります。普段の避難訓練では、予定どおりに地震が収まって逃げられるシナリオになっているので、机の下に入って安全確保する時間が短く、子供に指示を出し続ける経験がありませんでした。そのため、シミュレーションの中で子供が不安になって机の下から顔を出した際に、蛍光灯が落ちてきて子供が怪我をしてしまうというようなハプニングが起こってしまいました。訓練で失敗をすることが大事だと経験をもって感じましたが、失敗を前提にした訓練を設定するというのは難しいなと思っています。
そこで、石井委員が、外部の有識者に普段の避難訓練を見ていただいて、第三者の目から点検してもらうということが大変有効だと伺いましたので、どういった方に見ていただくのが有効か教えていただけたらと思います。
 
【渡邉部会長】では、石井委員、お願いします。
 
【石井委員】ありがとうございます。本校に来ていただいた方は、元消防士さんで、現在防災に携わっている方でした。その方は、歯にきぬ着せぬじゃないけど、悪いところは悪い、いいところはいいとはっきりおっしゃってくださる方。何か学校に気を遣って、いいよいいよと言ってくださる方は、どちらかというと、私は来ていただく必要はないなと思っていて、ここが悪いよ、こうしたらどうですかとかということをきちんと指摘していただける方がいいと思います。
当然それができる方は、御自身にそのような経験をたくさんお持ちの方であろうと思います。職種でどなたがとかいうことは言えませんが、そういう方であろうと私は思っています。お答えになっていますでしょうか。
 
【渡邉部会長】それでは最後に、嵯峨委員からお願いします。
 
【嵯峨委員】2点なんですけれども、1個は、避難の重要性は、避難訓練の重要性その他大事だと思うんですけれども、この今日頂いた資料の中でも見ていただくと、私、私立学校の立場なので、私立の中高では、まだ8%ぐらいの耐震性のない建物が残ってしまっていて、恐らくこれが、資金の問題が絡んじゃうので、なかなかこの先、やりたくてもできないという施設が多くなってしまっているので、どう考えても、いろんな大木先生の意見とかも聞いていても、多分大きな地震が来たときに逃げるというのは、まず現実的じゃないということを考えると、耐震性のないところにいるということは、もう潰れちゃうというような結果になってしまうので、またこれは文科省へのお願いとしか言いようがないんですけれども、ちょっとそこのところの解決も重要なのかなというのが1つと。
もう一個は、どなたでもいいんですけれども、私の学校は品川にあるんですけれども、道沿いに建物は耐震性があって、がっちりして建っているんですけれども、小さな校庭挟んで裏側が、もう全て住宅密集地帯で、消防車も入らないようなところで、恐らくそこで地震が来て、何らかの大火災みたいになったとき、校舎内にいるのがいいのか、それとも、どうしたらいいのかというのは、例えばどういう専門家が、そういうのって分かるものなんでしょうか。
 
【渡邉部会長】どうでしょうか。文科省か内閣府のほうにお答えいただくのがいいのかな。
 
【大木委員】もし、どなたもお答えにならないんだったら。私、火災の専門家というのがいて、消防の研究所などもあるので、その方々が御専門なんですけど、よく一緒にお仕事することがあるので。原則500メートル以内に2本の煙が立ったら、もうその場を離れたほうがいいと言われていて。もう大災害で起きる火災というのは、風上、風下の概念がなくなりますので、その際に逃げる先は、広域避難場所とか、そういう避難場所というのが指定されているんですね。それは多分、品川区のホームページとか見るとあって。
なので、御校がそれに指定されている場合は、もうそこにとどまるで大丈夫なんですけど、例えばどこどこの河川敷とか、もっと広い公園とか、そういうのが、この地区の人はここに行ってくださいというのがもう定められているので、そこに避難する。その避難するタイミングについては、500メートル以内に2本の煙が立った時点で、もう避難を始めるというふうに一般的には言われています。
 
【嵯峨委員】ありがとうございました。
 
【渡邉部会長】今、耐震化のお話があったと思いますけれど、このことも含めて、文科省の施設の方、ちょっと今日はいらっしゃらないものですから、改めて、そのことについてはお答えしていただくという形でよろしいでしょうか。
それでは、ちょっと時間がもう過ぎてしまいました。ですので、まだいろいろ御意見があるかもしれませんけれど、この第2回の会議は一応、議論をこれで終了させたいと思います。最後に、次回以降の予定について事務局から御説明をお願いします。
 
【朝倉安全教育推進室長】事務局から2点、御報告させていただきます。
1点目でございますが、本日の意見交換の場におきまして、この場で御発言できなかったものにつきましては別途、御意見ございましたら、事務局までメール等を頂ければと思っております。
2点目でございます。今後の日程でございますが、資料7を御覧ください。安全部会につきましては、第1回目を5月27日、本日、第2回目ということで、防災教育について議論いただきました。第3回につきましては、7月14日、13時から15時。こちらについては、防犯を含む生活安全と交通安全についてでございます。第4回目につきましては、8月4日、10時から12時、安全管理、学校施設についてということでございます。第5回以降につきましては、月1回程度と考えております。第5回以降につきましては、組織活動や教員研修、家庭、地域との連携、事故対応など、そういった分野につきましても検討しているところでございます。
最後になりますが、令和3年12月ぐらいには部会としてのまとめ、令和4年1月頃、中教審の答申、令和4年3月までに、パブリックコメントを経て、第3次計画の閣議決定を予定しているということでございます。以上でございます。
 
【渡邉部会長】ありがとうございました。
それでは、本日予定した議事は、これで終了ということにさせていただきます。これで閉会いたします。皆様お疲れさまでした。ありがとうございました。
 
――了――

(総合教育政策局男女共同参画共生社会学習・安全課)