新しい時代の高等学校教育の在り方ワーキンググループ(第10回) 議事録

1.日時

令和2年8月19日(水曜日)13時00分~15時00分

2.場所

新型コロナウイルス感染症の拡大防止の観点から、オンライン会議にて開催

3.議題

  1. スクール・ポリシーの具現化に向けた方策について
  2. スーパーサイエンスハイスクール及びスーパーグローバルハイスクールにおける取組について
  3. 普通教育を主とする学科の在り方について
  4. その他

4.議事録

【荒瀬主査】 大変お待たせいたしました。新しいシステムということで少し時間を取ってしまいましたが、ただいまから中央教育審議会初等中等教育分科会、新しい時代の初等中等教育の在り方特別部会、新しい時代の高等学校教育の在り方ワーキンググループの第10回会議を開催いたします。

委員の皆様におかれましては御多忙の中、御出席いただきまして誠にありがとうございます。また、冒頭お待たせしまして大変失礼いたしました。本日も新型コロナウイルス感染症の感染拡大の状況を踏まえまして、オンライン会議システムによる開催としております。また、傍聴席を設けず、YouTubeによる同時配信という形で公開して行います。よろしくお願いいたします。
それでは、本日の配付資料につきまして、酒井参事官補佐から御説明をお願いいたします。
【酒井参事官補佐】 まず、本日でございますけれども、内堀委員、橋本委員、牧田委員が御欠席、また、田村委員が途中で御退席と伺っております。
ウェブ会議システムを併用しての御議論ということでございまして、冒頭から少しうまく行かず、大変申し訳ございません。本日より、オンライン会議システムを従来のZoomから、文部科学省の方針といたしまして、Webexに変更して開催させていただいております。また、会議中何か支障ありましたら、御発言いただけますとありがたいかと思っております。なにとぞ御容赦いただければと思います。
本日の配付資料でございますが、議事次第にありますように、資料1-1から資料3、参考資料1-1から4-2まで御用意しておりまして、事前に委員の皆様にメールで送らせていただいております。また、会議中で説明する際には画面上で表示させていただきます。
御不明な点がありましたら、お申しつけくださいませ。よろしゅうございますでしょうか。
では、荒瀬先生にお返しします。
【荒瀬主査】 時間を取りまして、申し訳ありません。それでは、議事に入ります。前回、ワーキンググループまでの御議論をまとめて、論点整理として7月17日の新しい時代の初等中等教育の在り方特別部会に報告したところでありますが、今回は論点整理で示した施策の方向性について、さらなる具体化に向けた御議論をお願いしたいと思います。
最初に、議題1といたしまして、スクール・ポリシーについて御議論いただきたいと思います。スクール・ポリシーにつきましては、これまでの議論の中でも形式的なものになってはいけないとの御意見もありまして、各学校においてどのように作り込むか、また、策定されたポリシーを基に個々の授業改善等にどのように結び付けるかが非常に重要であります。このため、スクール・ポリシーの策定・運用に関しまして、今日は田村委員から御発表いただき、その後、皆さんに御議論いただきたいと思います。
次に、議題2といたしまして、SSH及びSGHにおける取組について、最後に、議題の3といたしまして、普通教育を主とする学科の在り方について御議論願いたいと思っております。
では、田村委員、お願いいたします。
【田村委員】 失礼いたします。それでは、資料が大部にわたりますので、下線部を読み上げる形で、急ぎ足の発表となりますことをお許しください。
本ワーキンググループで導入が検討されているグラデュエーション・ポリシー及びカリキュラム・ポリシーは、実現されれば、学校のビジョンの中核をなすものと考えられます。ただし、これらは、これまでも多くの高等学校において、学校経営計画やグランドデザイン、学校要覧等の中に、学校教育目標、教育課程の編成方針という形で書き込まれてきたものです。アドミッション・ポリシーはオープンスクールの資料や募集要項において入学を求める生徒像として記載されてきたものです。
ただし、表1、表2に示したアンケート結果にありますように、ビジョン、目標、戦略を策定して掲げることと、それらに基づいた実践が行われることの間にはギャップがあること、また学校の教育目標に関する認識度や活用度はそれほど高くはないという実態がございます。
そこで、スクール・ポリシーの導入が検討されるに至ったのだと考えますが、これは教育再生実行本部第十二次提言に策定の義務化と徹底の必要性が明記されております。4ページにまいります。御承知のとおり、3つのポリシーの策定と運用については、高等教育機関における実績があり、ガイドラインも公表されています。
5ページにまいります。本来であれば、3つのポリシーを先行導入した高等教育機関において、3ポリシーがどのように機能してきたのかに関するエビデンスにより、その効果と課題についての示唆を得たいところです。3ポリシーについては、卒業生の質を担保しつつ、各大学・学部のカリキュラム編成の自律性や多様性を損ねないためにはどうすればよいのかが大きな課題、過度な標準化や法令遵守のためだけの形骸化をもたらす危険性もはらんでいるという指摘や、学長を中心として本気で組織的に取り組む大学においては効果が見られるという指摘、3ポリシーは学生一人一人のためのオーダーメイドのカリキュラム作りには適応が不可能であるという指摘、高等教育の本質が3ポリシーにあるわけではないという指摘、3ポリシーをうまく利用して自大学の目指す改革を行うことが大切であるといった指摘がございます。
7ページにまいります。私はカリキュラムマネジメントの研究をしてまいりましたが、カリキュラムマネジメント論は、教育内容の配列及び修正と再編成を作業として行う教育課程編成観の克服を意図しています。教育課程基準の裁量を生かし、各学校が自校の児童生徒の教育課題解決に向けて設定した教育目標をよりよく達成するために、哲学的・理論的検討も含め、教育内容・方法とその条件整備を能動的に開発するカリキュラム開発観に立っています。個業に陥りがちな教育実践を、カリキュラムを媒介として学校の組織的営為に位置づける理論でもあります。このような立場から発言させていただきます。
さて、学習指導要領の定義及び研究上の定義から見ても、カリキュラムマネジメントの基底は学校教育目標にありますので、ここで簡単に目標論に触れておきます。タイラーは教育目標、教育経験の内容、教育経験の組織、評価の4つはカリキュラムの基本的な構成要素であるとしました。タイラーの理論は、選択され十分明快に定義された目標を設定して、そこからカリキュラムを設計する工学的アプローチの原型となりました。
しかし、工学的なアプローチは批判もされてきました。教室では、教師と生徒のダイナミックなやり取りから、教師が事前に予測しなかった創造的な学びが生じる場合もあります。教室における豊かな学習活動から新たなカリキュラムが開発される重要性に着目した羅生門的アプローチ、目標に捉われない評価といった考え方を大切にする必要があります。
9ページをお願いします。これらを踏まえまして、スクール・ポリシーの具現化に向けた方策につきまして、まず、総論から述べさせていただきます。これまでも組織的にカリキュラムマネジメントに取り組む高等学校は存在してきました。このような学校にとっては、スクール・ポリシーはその名称や形式いかんに関わらず、既に存在しているとも言えます。一方、そうではない高等学校がスクール・ポリシーの制度化により、直ちに変容を遂げるとも考えにくいです。ただ、学校改革の意思があるにも関わらず、着手点や具体的な方法を見いだせずに立ち止まっている高等学校にとっては、スクール・ポリシーは学校改革のツールとして有効に働く可能性があると考えます。
スクール・ポリシー導入による学校改革の成否の鍵を握るのは学校と教員の主体性だと考えます。仮に、あまりにも精緻な制度設計がなされれば、学校の自律性を阻害し、形式的なカリキュラムマネジメントを生み出しかねません。
ところで、スクール・ポリシーは学校単位、あるいは学科・コース単位における方針を示すものであるため、所属する生徒全体を対象としたものとなります。しかし、生徒の個性、発達、進路希望等は個々に異なるわけであり、タイトなポリシーの内容や運用は、生徒を一定の型にはめることにつながりかねません。教員の授業についても同様のことが言えます。
また、スクール・ポリシー導入は上からの改革として、高等学校現場においては外圧と受け止められる可能性があります。学校関係者の内発的動機づけへと転換していく方策が必要となります。同時に、スクール・ポリシー導入は、学校の自律性や教員の創造性を阻害するものではない、学校や教員の主体性が十分発揮されるものであるという理解と納得が得られるものとなるように設置者等は支援を行わなければならないと考えます。学校現場には、スクール・ポリシー自体は目的ではなく、組織的なカリキュラム開発や授業改善、生徒の学習と成長を促進するためのツールとしてうまく使いこなすという構えが必要となります。以下にはスクール・ポリシーを高等学校内外の関係者にとって意義あるものにするための方策について、意見を述べています。
グラデュエーション・ポリシーとカリキュラム・ポリシーは一体的なものです。これらは生徒にとって、高校生活3年間の学習と成長の目標が具体的に示されたものであり、自らの学習と成長の道筋が「見える化」されて、見通しを持つことを容易にするものです。教職員にとっての意義は、日々従事する自らの教育活動の指針となることです。
次のページをお願いいたします。グラデュエーション・ポリシーの内容策定に当たり、その土台として考慮されるべきものには、学力の三要素、学習指導要領が示す資質・能力、校訓・校是、スクール・ミッション、当該学校の生徒の実態から導き出された成長課題、進学・就職先等が求める人材像などがあり、それらとの論理的一貫性が求められます。その記述は、生徒に高校生活における希望と成長への期待を抱かせるものが望ましいと考えられます。また、分析的な記述をすることにより、評価基準やルーブリックへの転換が容易になり、生徒による振り返り・自己評価や教員による生徒の評価や励ましに使用することが可能になります。
カリキュラム・ポリシーの内容については、新学習指導要領の理念である社会に開かれた教育課程、主体的・対話的で深い学び、教科横断的な視点での教育内容の組織化等も含まれることが望まれます。生徒にとって、学ぶ意欲や関心を喚起するものであり、どのように学習に臨むことが求められているのかを生徒自らが考えて学習への構えを作ることにつながる内容記述であることが望まれます。
グラデュエーション・ポリシーとカリキュラム・ポリシーは学校のビジョンの中核をなすものになります。これらは組織体制とその運用、及び人的・物的資源の調達・活用の指針となるものであるため、グランドデザイン等の形で描き出し、内外に見える形で公表されることが基本になるでしょう。そのビジョンが実効性あるものとなるためには、学校内外の関係者によって、それが共有ビジョンとして知覚され、各々の関係者がビジョンに関わる当事者としてその実現を願い、主体的に具体的な行動を起こすことが必要であると考えます。
センゲはビジョン共有の方法として、「共創」を挙げ、個人が心から願うビジョンを考え、言葉にする時間を与え、オープンで生産的な会話の方法によって関係者が共同でビジョンを作ることを提案しています。既存のビジョンであっても、教員をはじめとした関係者が、その意味を考えたり、自分自身の言葉で語り直したりすること、生徒会の目標、学級目標、部活動の目標などを話し合う際に、グラデュエーション・ポリシーを生徒たちが自分自身の文脈で再定義するといったことにより、ビジョンへの関心や愛着、当事者意識を培いやすいと考えられます。また、グラデュエーション・ポリシーやカリキュラム・ポリシーは固定的なものではなく、随時見直しが必要なものであるということも強調しておきます。
次に、日常的な実践については、各教科・科目、総合的な探究の時間等、全体計画や年間指導計画、教科書選択の基準、個々の授業の教材や授業方法に具体的に落とし込まれたりしていることが必要です。キャリア教育との関係性を考慮して、キャリア・パスポートも活用するとか、授業研究の研究主題である授業改善や授業力向上の方針、学年経営案や学級経営案などと連動させることが可能です。あるいは、校長の式辞、校長講話、学年主任や学級担任による講話や指導においても両ポリシーと関連づけることが考えられます。
以上、かなり具体的な方策にまで踏み込んで論じましたが、これらは本来学校の主体性や戦略に基づいて学校現場で取捨選択されたり、新たに開発されたりするべきことであります。具体的なツールやその運用方法や、一旦形になると、それらが開発・提案されたときの問題意識や本来目的としていたことが顧みられなくなり、形式化しやすい傾向があることは忘れてはなりません。
そして、アドミッション・ポリシーには、高等学校から入学希望者とその関係者に向けたメッセージといった性格があります。現時点では、アドミッション・ポリシーと強く関連した入学者選抜が行われている自治体は少ないようですが、実際に明確にアドミッション・ポリシーと入学者選抜を連動させて活用している大阪府の事例を14ページから15ページにお示ししております。
最後になりますが、円滑な導入のためには、そもそもなぜスクール・ポリシーが必要なのか、その目的について議論が尽くされ、納得性のある明確な説明がなされることが必要ではないかと考えます。
以上、つたない発表でありましたけれども、皆様の御議論の糸口になれば幸いです。ありがとうございました。
【荒瀬主査】 ありがとうございました。大変丁寧にお書きいただいた中身をかいつまんで御説明いただきました。 これについて御議論いただくわけですけれども、末冨委員からも資料を頂戴しております。末冨委員のほうから、まずお話をいただきたいと思っております。大変恐縮ですが、5分程度でよろしくお願いいたします。
【末冨委員】 先生のおっしゃった内容と重なる部分も多いと思いますので、簡潔に話をさせていただきます。
それでは、進めさせていただきます。私のほうが、スライドが1回消えましたので、それが復活してからということで。始めさせていただきます。私自身も今年度こちらのワーキングに参りましてから、議論の全体像がどのようなものかということで、夏休みを利用して、昨年度からの会議の中の話を一度、全部目を通しました。改めて、高校ワーキングの検討事項の重要性を考えたときに、実践、プラクティスを重視した政策PDCAサイクルというものをいかに構築していくかということが重要であろうと考えられます。第3期教育振興基本計画にもそのように記載されております。
次のスライドです。こちらの私が大学入試の在り方に関する検討会議のほうでも申し上げたことですが、教育政策というのは、スライド2にバリューとありますけれども、達成すべき価値が肥大化する性質があるからこそ、逆に実践でもいかに実現可能かといったことを、あえて気にしながら進める必要があります。恐らくかなり意識が高い投資は出るけれども、現場でどうしたらいいんですかということが見えづらくなりがちな宿命を持っているということで、学校レベル、教員レベルでの実現可能性、フィージビリティーが十分検討されていることが政策の効果を担保する条件であろうと思います。
教育再生実行会議の提言というのは、非常に大事な提言でありまして、田村先生も御指摘のように、カリキュラムマネジメントが良好に機能して、学校の特色を発揮することは重要な指摘なんですけれども、では、カリキュラムマネジメントが実践レベルで良好に機能している学校とそうじゃない学校の違いが何なのかということについては、リサーチとエビデンスに基づいて丁寧に進めていかないと、恐らくうまくいかない学校も出てきてしまうということになります。
昨年度からの議論の流れを追ってみますと、スーパーサイエンスハイスクールもそうだと思いますが、グッドプラクティスの検証が行われているのは非常にいいことなんですけれども、なぜうまくいっていない学校があるのかということについては、十分な検討が尽くされる必要がある。望ましいのは、政策提言や諮問の前にうまくいっている学校、いかない学校の検証が十分事前にリサーチされていることが実効性ある教育政策につながるだろうと考えます。
では、次のスライドお願いいたします。特に、高等学校改革の目的の明確化というのが非常に大事でして、改革を通じて誰にどのようなアウトカムを実現したのかについては、恐らくまだ高校ワーキングでも十分に議論尽くされていないように思います。例えば、こちらのスライドで申し上げますと、私自身は地域社会や大学等の連携協働というものは、恐らくかなりいいインパクトをもたらすんだろうと考えています。それは地域や生徒レベルにおいて、明確にアウトカムが見えている、みんなが見えている状態であるということです。ただ、若干心配なのが、コーディネーターは教員限定とされていますが、恐らく教員以外の方も含めたコーディネーターの設計をしておかないとワークしない場合もあるだろうと思います。例えば、こうしたうまくいくだろうという政策というのは、実践の蓄積や検証が十分にされていて、だからこそフィージビリティーが高いと言うことができるわけですが、逆に言えば、本ワーキングの残りの主要事項のスクール・ミッション、スクール・ポリシー、それから普通科の多様化、複数高校間のネットワークもかなり挑戦的なアイデアであるがゆえに、十分な検討を尽くしたり、実現可能性の検証をする必要があると考えます。
とりわけ先ほど田村先生はスクール・ポリシー中心におっしゃられたんですが、それは私も右下のほうに書いていますが、教職員をいかに動かすか共有しながら、「共創」という言葉を田村先生は使われていますけれども、いかに高校をよくしていくかということについては心配をしております。スクール・ミッションについても、高校全体の再編にも関わることですので、知事、あるいは、市町村や地域住民、保護者といった多様なステークホルダーの利害意見調整が必要です。ただ、今までの議論を見ると、一方向型のトップダウン決定になりかねない文言になっているので、この辺りの多様なステークホルダーとの間の意思決定、あるいは、コミュニケーションといったものをどのように組み立てていくのか、特に長野県での先行事例というのは地域連携も含めてかなり丁寧に取り組まれていると理解しておりますが、こういった地域連携、あるいは、小中学校での学校運営協議会の蓄積の検証の上に立って、もう一度、利害調整の仕組み、意思決定の仕組みを検証する必要があると考えます。
特にトップダウン型の意思決定が心配なのは、日本の教育学研究の実証でも理論でも分散型リーダーシップ、教職員も校長もそれぞれのリーダーシップを担いながら、相互作用的に学校運営を進めていくといったものが、有効性があるのだと指摘されています。スクール・ミッションやスクール・ポリシーを有効なカリキュラムマネジメントや学校での実践につなげるためには、分散型リーダーシップの前提に立ちながら、どのような改善メカニズムがよりよい生徒への教育、あるいは、高校教育に結び付くのかということについて、検証や設計が十分にされなければならないと考えます。なお、中教審の2018年の働き方特別部会で分散型リーダーシップの御理解が間違っているんじゃないかということで、ここで指摘させていただきました。
複数学校のネットワークですとかスクール・ミッションのような挑戦的な課題については、文科省や教育委員会の学校に対する支援機能の向上も問われることになります。特に、複数学校間でのネットワークは、国際的に実践も理論も発展の途上にございますので、学校をいかにサポートしていくか、それは教育委員会や文科省がどのように学校を支援していくかというデザインをいかに作れるかということにありますので、だからこそエビデンスベースでの政策PDCAを回していくという意識を強く持って、一足飛びに全部の高校で何かをするのではなくて、有効な事例を開発しながら進めていくというステップを踏むことも大事にしていただきたいと思います。
こちらのほうは、日本とイギリスとで複数学校の間の組織ネットワークを良好に発揮させるメカニズムが違うんじゃないかというのが、私たちの研究で今、見えていることですけれども、省略させていただきます。
最後なんですが、特に高校ワーキングは生徒の学習意欲を喚起し、能力を最大限伸ばすことが1つの一大目標にされているんですけれども、それは高校学校改革では解消し切れません。私自身は、内閣府の子供の貧困対策の委員として、ずっとこの手のデータに付き合ってきましたが、学習意欲の低さや学習時間の短さというのは高校改革だけの問題ではないです。
例えばですけれども、家で勉強できる環境がない高校生ほど学習しないですし、そして、不本意進学、あるいは、第一志望を受けられない厳しい家庭環境にある子たちというのは、当然高校に入れば意欲も下がるでしょう。そもそも高校の前から困窮層ほど授業が分からなくなる時期が早まっているということですので、こうしたものを地域での小中高連携を通じて改善していくしかないということも分かっています。
最後のスライドをお願いいたします。だからこそ、高校教育改革と同時に、高校でのチーム学校、あるいは、困難な状況にある高校生が多い学校ほど教職員体制が配置されていかなければ、働き方改革との両立は不可能ですし、改革の実効性も担保され得ないということです。
以上です。ありがとうございました、お時間頂戴しまして。
【荒瀬主査】 ありがとうございました。
それでは、今、田村委員から発表いただき、末冨委員からも御発表を続けていただいたわけですが、皆さんから御意見を頂戴したいと思います。大変恐縮ですが、時間が今日は3つやるということでありますので、少し短い時間になってしまうかもしれませんが、よろしくお願いいたします。なお、既にメールで工藤係長から御案内いただいておりますけれども、御発言は可能な限り、2分程度で収めていただくように御協力よろしくお願いいたします。では、手を上げるのボタンをお願いします。
では、佐藤委員、お願いいたします。
【佐藤委員】 戸田翔陽高校の佐藤でございます。よろしくお願いいたします。
お二人の委員の先生方に本当に貴重な御意見を頂戴して私も大変勉強になりました。ありがとうございました。
高校を改革していくのに、校長の立場からすると、1つの高校だけでとか1人の校長がとかということではなくて、例えば、産官学の連携であるとか地域の小・中学校と高校、大学との関係であるとか、あるいは、同じ公立高校同士の連携ができると大変心強いと思います。本校では、同じ戸田市内の中で別の高校、普通高校と本校のような定時制高校と特別支援学校が、地元・戸田市と連携協定をしているわけなんですけれども、そういった連携、それから、コミュニティースクールの導入を本校は今年度いたしましたけれども、非常に心強い後ろ盾ができたと感じているところがございます。
公立高校でコミュニティースクールを導入している学校はまだまだ少ないんです。しかし、コミュニティーというのを、いわゆる学校が置かれている地域、ローカルコミュニティーとして捉えるのではなくて、もっと学校が抱えている課題にどのように対応していくかという、テーマコミュニティーという考え方で、学校の課題を解決するためにいろんな意見を持っていただいている方に委員になっていただいて、学校運営協議会を運営していく。そういうやり方も非常に効果的なんじゃないかと考えまして、本校では、そういったテーマコミュニティーとローカルコミュニティーを合わせたような学校運営協議会を進めていこうということで、今年度導入しました。そんなことで、いろいろな方の手を貸していただきながら、学校運営がされていくといいかと考えております。
以上でございます。ありがとうございます。
【荒瀬主査】 ありがとうございました。末冨委員、手が上がっていますが、先ほどの補足ということでしょうか。
【末冨委員】 私は田村先生の御報告と関連して思いましたのが、大学の3つのポリシーの検証というものも併せて必要だと本日の御報告を聞いていて考えております。松下佳代先生のお名前は田村先生の御報告の中にも挙がっておりましたが、ほかにも九州大学の深堀總子先生も3つのポリシーについては国内外の状況ですとか、大学の実効性ある改革についての御研究もございますので、ぜひ高校への導入がいかにあるべきかといったときに、大学の先行事例を参照しながら、ここにお集まりの委員の皆様に御検討いただくことも、ひとつ大事にしていただければと考えております。
以上です。
【荒瀬主査】 ありがとうございました。それでは、続きまして、香山委員、鍛治田委員、川上委員の順にお願いいたします。
【香山委員】 岡山の香山です。お二人の委員の発表をお聞きしながら、一方で、資料1-2にどう落とし込んでいくかということを考えておりました。資料1-2の2ページの上から3つ目の白丸の記述について、修正案を出したいと思います。
コロナ禍に直面して、改めて学校は何のためにあるのかということを国民の皆さんがなにがしか考えるようになったのではないかと思います。まして人口減の進む地域では、この学校は何のためにあるのかという問いが喫緊の社会的課題となりつつあると思います。そういう意味で、スクール・ミッション及び3ポリシーについて、資料1-2の2ページの3つ目の白丸にあります、「その際、学校運営協議会の設置が努力義務化されていることも踏まえ、学校運営協議会において地域社会の参画・協力を得て、協議を行うことも考えられる」と記述があるわけですが、田村先生のお話では共創ということの在り方、そして、末冨先生からは多様なステークホルダーの利害意見調整が必要だと、言葉は違いますが、お二人の先生が共通して、スクール・ミッションや3ポリシーの策定の過程において、様々な方が参画するのが非常に望ましいのではないかという御提言だったと思いますので、ぜひ白丸の3つ目の表現をもう一歩前へ、具体的には、「協議を行うことも考えられる」ではなくて、「協議を行うこと、また、まだ設置していない学校においてもできるだけ多くの関係者が策定過程に参画するよう組織化することが望ましい」といったニュアンスの改訂があれば、お二人の先生の意図が汲めるのではないかと考えます。
以上です。
【荒瀬主査】 ありがとうございました。鍛治田委員、お願いいたします。
【鍛治田委員】 YMCAの鍛治田です。
田村先生の話に共感を持って伺いました。末冨先生の話にもあったように、スクール・ミッションも非常に大事だと思っております。12月9日のワーキングで頂いた資料5の6ページに、普通高校のスクール・ミッション例が出ていました。それには「自らのキャリアをデザインする力の育成」や、「グローバルに活躍するリーダーや国内外の社会課題の発見、課題に向け対応できるリーダーとしての素養の育成」などという言葉が出ておりました。
一方、これも第1回目のワーキングで頂いた、「高等学校教育の現状について」という資料の26ページにあったんですが、米中韓の生徒に比べて、「日本は自分には人並みの能力がある」という自尊心を持っている割合が低く、実は55%しかなかったのですが、そして「自らの参加により社会現象が変えられるかもしれない」という意識は「全くそう思わない」、「あまりそう思わない」が60%という低い状況です。
スクール・ミッションやグラデュエーション・ポリシーなどを策定する中で、その価値と合わない生徒は、このような形で自尊心も低く、意識も低くなるのではないかという可能性も踏まえながら、スクール・ミッション、それから3ポリシーを作っていく必要があるのではないかと思います。
半数以上の高校生がこのように思って大人になってしまうというと、本人も地域も国もよくならないのではないかと思いますので、もう少し違う視点があったらいいかと思いました。田村先生が書かれている11ページの2の辺りで、生徒に高校生活における希望と成長に期待を抱かせるような記述が欲しいとあり、末冨先生が貧困層のお話もしていただいたような、こんなことも入れながら、策定の必要があるのではないでしょうか。うちの学校の教育方針の1つには、「あなたとあなたの周りの人を生かし、共に生きる社会を目指します」というものもございます。
以上です。
【荒瀬主査】 ありがとうございました。川上委員、手を上げていただいていたと思うんですが、お願いいたします。
【川上委員】 川上でございます。よろしくお願いします。
お二人の御発表を聞きながら、高校でのスクール・ポリシーとかスクール・ミッションを考える上で、ある程度のトップダウン的なアプローチは必要になるのかということも考えておりました。学校組織研究は、多くがより小規模の義務教育の学校を対象にしたものが多くて、そういうところでの分散型リーダーシップの効果というのに比べると、組織が大きくて活動範囲が非常に広い高校を考えたときに、同じアプローチでいけるかということについては、実は一考の余地があるかということを思いました。
ただ、だからこそというか、設置者、1自治体卒業生の行き先が本当に多様になる。公立高校で言えば、設置者と立地自治体が異なるケースというのは多いわけで、ミッション、ポリシーを考える上でもかなりのすり合わせであったりというのが、恐らく必要になってくるだろうと。ということを考えると、田村先生のお話の中にもあったんですけど、むしろスクール・ミッション、ポリシーについては、平たく言うと、多分出来上がったものに大きな意味があるというよりも作るプロセスに意味があるというか、ということかと。出来上がった瞬間に、次はじゃあどう変えていきましょうかという次のプロセスが始まるんだと。なので、作るプロセスのほうに意味を持たせていくことが大事で、出来上がったものを、いかにかっちり守らせていくかというところにエネルギーを割き始めてしまうと、あまり効果を生まなくなってくるだろうということは留意しなければいけないかという点。
それから、前回も少し御指摘申し上げたんですが、学校で特色を出していこうということを考えたときに、生徒の獲得競争だったりとか学校の生き残りだという話とセットにしてしまうと、スクール・ミッション、スクール・ポリシーは非常に悪い方向に機能するリスクのほうが高い。なので、特色というのを、関心がある学校同士できちんと共有していけるとか広げていける、要は生き残りのツールだから、これは取り合いだとならないんです。特色ある学校はきちんと特色を出しながら生き残っていける、生き残りのツールに特色を使わないというやり方が、もう1点大事になるかということを重ねて指摘申し上げたいと思いました。
以上です。
【荒瀬主査】 ありがとうございました。角田委員、お願いいたします。では、後からということですか。分かりました。それでは、小田切委員、お願いいたします。
【小田切委員】 明治大学の小田切でございます。
私の専門は地域政策論ですので、このテーマに大きな貢献はできないんですが、ただ、地域経営のアナロジーで考えてみたいと思います。これはむしろ牧野市長が御専門ですが、地方自治体には様々な基本計画、ポリシーがあります。しかし、現実にはそれが形骸化したり、あるいは、死文化したり、そしてまだ議論になっておりませんが、大変重要な局面というのは、ある種の政権交代、これは比喩的な意味ですが、担当者が代わったり、トップが代わったりすることによって、その位置づけが変わってしまうと、そういう大きな課題を持っております。
そのときに私たちは、これも比喩的な言い方なんですが、地域にいかりを下ろすという言い方をします。地域のコミュニティーの中にいかりを下ろすことによってぶれをなくしていくと、こういう考え方、そういう意味で、先ほどから田村先生をはじめとして、ボトムアップ型で、あるいは地域の様々なステークホルダーを巻き込んでと、そういった方針が、この際、絶対必要なんだろうと思っております。
そのように考えた場合、資料1-2の4ページで、それを冒頭でそれを書いていただいております。「生徒をはじめとして、保護者、地域住民等、地域や産業界、関係団体等の関係者も参画して」と、これはまさにそのとおりなんですが、問題はこの次の文章で、「その際、公立の高等学校においては、学校運営協議会の場で協議を行うことも考えられる」と、この表現はいかにも弱いのではないかと思います。せっかく運営協議会がありながら、そこで協議を行うことも考えられるというよりも、むしろ実質上、ここで考えていただくように誘導すると、そういった仕組みにしない限り、せっかくのコミュニティースクール、運営協議会の仕組みが生きないと思っております。
いずれにしても、申し上げたいことは地域の中にいかりを下ろす、そんなスクール・ポリシーであってほしいと思います。
以上でございます。
【荒瀬主査】 ありがとうございました。田村委員、お願いいたします。
【田村委員】 失礼いたします。御議論ありがとうございます。
先ほど、川上委員がおっしゃったように、創り上げていくプロセスが大事なのではないかということは、私が非常に申し上げたかったことであります。それと同時に、創り上げた後に、そのスクール・ポリシーを常に見つめ直していく、これはドラスティックに大きく変わるものではなくても、それぞれの関係者が自分の文脈に応じて、再定義をしていったり、関わっていくという、動的なものである、静的なものではなくて動的なものであるという部分をぜひ強調したかったところでした。どうもありがとうございました。
【荒瀬主査】 ありがとうございます。角田委員、いかがでしょうか。
【角田委員】 大変失礼いたしました。末冨委員からグッドプラクティス中心だけではなくて、うまく行かなかった例もというお話がありました。雑誌の編集をしておりますので、なかなか難しいところではありますが、本当に重要なことだと思っています。
ただ、グッドプラクティスはうまく行かなかった点を乗り越えたところなんです。ですので、そこに着目して事例研究をしていけばいいのかと思っています。私が1つ確信していますことは、うまく行ったところはスクール・ミッションが共有され、徹底されているところだということです。ですので、本当に全国で取り組んでいければと思っています。
以上です。
【荒瀬主査】 ありがとうございました。鍛治田委員は手を挙げていらっしゃいますでしょうか。御発言が終わりましたら、手を下ろすにしていただけるとありがたいです。佐藤委員もお願いいたします。川上委員は手を挙げていらっしゃいますでしょうか。ありがとうございます。下ろしていただきました。
ほかにはいかがでしょうか。では、鍛治田委員、お願いいたします。
【鍛治田委員】 下ろしています。失礼しました。
【荒瀬主査】 分かりました。これが少し押すとすぐ反応しますので、ありがとうございます。
そうしましたら、この件、今日は大変貴重な御発表をいただき、また、田村委員からも今、改めて川上委員のおっしゃったスクール・ミッション、スクール・ポリシーというのは、作っていくプロセスに意味があるということで、固定的なものじゃないということもありましたし、これは本当に田村先生、あるいは、末冨先生の御発言とも重なるところだと思います。この件、今後も議論を深めたいと思っておりますので、今日はこの辺りで一旦止めたいと思います。また、この件につきまして、改めて資料を読み込んでいただく中で御意見とかがございましたら、事務局にメール等でお出しいただけると大変ありがたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
それでは、2つ目の議題に入りたいと思います。スーパーサイエンスハイスクール、スーパーグローバルハイスクールについてですが、スーパーサイエンスハイスクールにつきましては平成14年度から、スーパーグローバルハイスクールにつきましては平成26年度から、先導的に特色ある高校教育を推進し、大きな成果を上げてきました。この2つの制度については、今回の高校改革の議論の中で参考にしていきたいと、先ほどグッドプラクティスということもありましたけれども、そのように思っておりますので、それぞれの現状と今後の取組につきまして、御説明をお願いしたいと思います。
まず、科学技術・学術政策局人材政策課の小田補佐から御説明をいただき、続いて、酒井補佐から御説明をいただきたいと思います。では、小田補佐、よろしくお願いいたします。
【小田人材政策課長補佐】 皆さん、こんにちは。今、御紹介にあずかりました学術技術・学術政策局人材政策課で課長補佐をしております、小田と申します。
私のほうからは、スーパーサイエンスハイスクール(SSH)支援事業についてということで御説明をさせていただきます。資料2-1の2ページを御覧くださいませ。
スーパーサイエンスハイスクール、SSHと通称しますけれども、この事業の概要について、まずは御説明させていただきます。こちらにつきましては、簡単に申し上げますと、イノベーションの創出を担う、科学技術関係人材の育成を中等教育段階から体系的に実施することを目的とした事業という形になっております。資料の左側のオレンジの枠囲みの中に事業概要というものがございますけれども、先進的な理数系教育を実施している高校等をSSHとして指定して支援するものでございます。こちらも中等教育段階から、体系的にそうした先進的な理数系教育の実践を通じて、科学技術人材の育成を図るというものになっております。
一度指定されましたら、指定期間は5年間ということで、支援額につきましては年間1校当たり600万から1,200万円と、指定期間で額は変わるんですけども、こうした金額が1校当たり支援することになっております。現在、指定校数は217校ございまして、指定校の一覧は3ページ、4ページに載せておりますので、後ほど御関心がございましたら、御覧いただければと思います。
事業スキームについては、少し細かいんですけども、このページの右側のオレンジの枠囲みに記載させていただいておりまして、文部科学省のほうから学校の指定、それから、取組の評価というものをさせていただいております。そして、経費の支援については、文部科学省がJST、国立研究開発法人の科学技術振興機構をJSTと呼びますけれども、ここに支給します運営費交付金を通じて、各SSHに支援をしているというスキームになってございます。
こちらは先ほど、SSHについては、指定期間5年間ということで申し上げましたけれども、学校の強みや特色を踏まえて、研究開発課題の計画を設定し、そして常に計画や実施したい研究・開発に基づいて評価を受けながら、5年間で取組を行うことがSSHのモデルになっているわけでありますけども、先ほどスクール・ポリシーの議論がございましたけれども、こうした取組をサイエンスの分野に先んじてやっているというものがSSHと言ってよろしいかと思います。
次に、資料4ページを御覧いただければと思います。最後のスライドになります。こちらに背景を書かせていただいておりますけれども、スーパーサイエンスハイスクール事業は平成14年から開始したものであります。ここで、既に20年近くが事業開始から経過しておりまして、既に最初のSSHの卒業性は30代前半になっておりまして、国内外の研究機関で開発するという人材の輩出があったり、最近は高校の学習指導要領が改定されまして、理数探究という科目が設定されましたけども、これはまさにスーパーサイエンスハイスクールの成果を踏まえたものという形で、様々な成果を上げているところでございます。
また一方で、多様な指定校の取組が展開しているとなっておりますが、既に20年も長く経過しておりますので、今までの成果を踏まえて、現在、荒瀬主査や末冨委員も入っておりますけども、スーパーサイエンスハイスクール有識者会議というものにおいて、今後のSSHの制度の在り方や授業改善の方策について議論しているところであります。
その議論の中で、1つ今、提案させていただいておりますのが、ここのスライドにございます、SSH認定制度の導入というものになっております。これはどういうものかと言いますと、背景の2つ目の丸に書かせていただいておりますとおり、長年の活動の成果を基に、これまでのノウハウや特色、強みを生かしまして、一定の指定期間を終了した後にも独自に取組を継続することを検討している学校が出ていることを踏まえまして、従来の予算支援の取組とは別途、さらにSSHのネットワークを広げて、事業全体の取組の質の向上を図り、人材育成をより強力に推進するというものになってございます。
具体的な制度の概要は下の図を御覧ください。まず、指定されて、1期5年といたしまして、指定されて1期目、2期目に関しては、まず、SSH指定校としての価値観の確立ということで、1期、2期の10年間においては課題研究や理数探究を中心としたコアとなるカリキュラムや教育活動の確立、それからSSH型学校経営の確立等々を行っていくということになります。
その後、3期目以降、11年目以降につきましては、事業枠というのが左側、今、提案されている認定制度というものが、右側の認定枠というオレンジの部分になりますけれども、11年目以降はこちらのどちらかを選択できるという形にしております。左側は従来の3期目以降のSSHの予算支援の制度ということで決まっております。右側がこれから創設しようとしている認定枠というものになっています。左側が事業枠ということで、我が国の次代を担う科学技術人材育成システム改革を先導するという形で、これまでと同様に、異能・異才を含めた理数系トップ人材の育成、2期目よりさらに進化した科学技術人材育成システム改革を先導するような取組を引き続き行っていただくというスキームになっております。
認定枠については、これまでの指定校の成果を基に、理数系教育の拠点としての取組を引き続き展開していただくという形で、ノウハウの特色や強みを生かして課題、研究の推進や地域の科学技術人材育成の取組を進めていただくというものになっております。
認定制度の概要なんですけれども、2つ目のポツに書いておりますとおり、1期目と2期目と同様、課題研究や理数探究を中心としたコアとなるカリキュラムや教育活動の確立、校内体制などといった特定の状況を満たす学校を認定させていただくこととしております。また、これまでのSSHと同様、教育課程の特例の申請も可能としております。対象校については、2期以上を終了した学校ということで、経過措置校や以前指定校だった学校も、2期以上の経験があれば対象としていくという形にしております。認定期間は、もともとのSSHと同じく5年間を想定しております。
また、スーパーサイエンスハイスクールには全国的なイベントとして、生徒研究発表会や先生方が集まって指導方法の意見交換をする情報交換会というのが開催されておりますけれども、こちらにも参加できる形での制度設計を検討しているところであります。こうした事業枠と認定枠というものが連携し、相互作用を行うことで、さらにSSH事業全体を活性化し、科学技術人材育成システム改革を強力に推進していくということを現在、SSHの改善の方向性として、1つ目指させていただいているということでございます。
私からは以上でございます。
【酒井参事官補佐】 失礼いたします。それでは、引き続きまして、私のほうからスーパーグローバルハイスクール事業につきまして、御説明をさせていただきたいと思います。お手元資料2-2を御用意賜れればと思います。おめくりいただきまして、2ページ目でございます。
スーパーグローバルハイスクール事業につきましては、将来、国際的に活躍できるグローバルリーダーを高等学校段階から育成することを目的といたしまして、平成26年度から開始されている事業でございます。これまで26年度からの指定で、合計123校が指定を受けてきたところでございまして、これらの学校においては、英語等によるディスカッションでありますとかプレゼンテーション、論文作成、探求型学習、成果発表会等を実施したり、国内外の大学や海外の高等学校、企業や国際機関等と連携した国内外の研修、フィールドワーク、また、英語等で使用する帰国・外国人教員等の派遣や外国人留学生による英語等によるサポートに取り組んできたところでございまして、質の高いカリキュラムを開発、実践といった取組を進めていただいたところでございます。
具体的な学校名につきましては、3ページに記載のとおりでございます。
2ページの中ほどでございますが、この事業の成果といたしまして、何点か掲載をさせていただいております。例えば、スーパーグローバルハイスクールの事業を受けた高校生の卒業時のCEFRのレベルの比率が非常に上昇しているでありますとか、卒業生が海外研修から学び、英語活用、視野拡大、大学生活で役立ったというアンケート調査に対する回答が多いということ、さらには、卒業生の保護者、国内連携機関、海外連携校等のスーパーグローバルハイスクールへの満足度が高いといったこともございます。
また、資料にはございませんが、初年度、平成26年度に指定を受けた学校に対します事後評価というものを、今年度3月に実施いたしましたけれども、その中の有識者からの評価においても、スーパーグローバルハイスクールの取組の中で取り組んだ、海外での交流であるとかフィールドワークというのは、従来の高校教育を大きく変えるインパクトがあったんだと。また、全国全ての都道府県にグローバル人材育成のための高校教育の基点ができたことは大いに評価できることだろうということを成果として上げていただいたところでございます。
スーパーグローバルハイスクール事業は、実は今年度が最終年度になっておりまして、この取組が終わってしまうことになっております。そこで、資料4ページをお願いできればと思いますが、グローバルリーダーの育成、高校段階から育成というのは、今後も大変重要なことなんだろうと考えております。こういった取組を、引き続き取り組んでいただける高等学校さんの過程を、スーパーグローバルハイスクール課程として認定して、グローバルリーダー育成に取り組む教育を奨励するような仕組みを新たにできないかと考えております。従来のスーパーグローバルハイスクールのように予算措置を伴うものではございませんけれども、こういった取組を通じて、さらなる取組の推進を図っていただくことができないかということでございまして、今、詳細の制度設計を文部科学省のほうで検討しているところでございます。
また、併せまして、本日資料には御用意しておりませんが、こういった高等学校の特色の魅力化を図る取組は、このほか今、申し上げましたスーパーサイエンスハイスクールやスーパーグローバルハイスクール以外にも様々な取組をさせていただいております。例えば、専門高校を対象に実施しておりますスーパープロフェッショナルハイスクールといったものがございます。これも平成26年度から実施させていただいておりまして、社会の第一線で活躍できる専門的職業人育成のための卓越した取組を行う専門高校において実践経験を行う、そういった取組を進めておりまして、今年度は10校指定をさせていただいているといったところでございます。
また、このほかにも、ワールド・ワイド・ラーニング、コンソーシアム構築支援事業といったもの、これは昨年度から開始させていただいております。スーパーグローバルハイスクールの成果を活用しまして、将来イノベーティブなグローバル人材を育成するための文武両方を学ぶ高校改革を推進するためのリーディングプロジェクトといったものでございまして、昨年度、今年度で合わせまして22校の学校を指定させていただいて、取組を進めていただいているところでございます。
さらには、地域との協働による高等学校教育改革推進事業といった取組も進めさせていただいております。これはワーキンググループの中でも何度も議論になっておりました、高等学校と地域がいかに連携をしていくかといったところで、高等学校が自治体でありますとか高等教育機関、産業界等と協働によってコンソーシアムを構築し、地域課題の解決等の探究的な学びを実現する取組を推進するといった取組でございます。今年度、合わせますと65校の学校を指定させていただいておりまして、その中には本ワーキングの委員であります、香山委員の前任校であります岡山県立和気閑谷高校をはじめ、様々な学校が取組を進めていただいているといった状況でございます。
簡単でございますが、御紹介とさせていただきます。説明は以上でございます。
【荒瀬主査】 ありがとうございました。
今、御説明いただきましたスーパーサイエンスハイスクール、スーパーグローバルハイスクール、そのほかWWLの御紹介などもありましたが、この件に関しまして、あまり時間が取れないんですけれども、御質問等ございましたら、お願いしたいと思います。また手を挙げるボタンをお願いいたします。跡部委員、手を挙げていらっしゃるでしょうか。お願いいたします。
【跡部委員】 すいません、下げています。先ほど挙げていましたけど、今は下げています。
【荒瀬主査】 申し訳ありません。後からまた御発言をお願いしてよろしいでしょうか。では、末冨委員、香山委員、清水委員の順でお願いいたします。末冨委員、どうぞ。
【末冨委員】 ありがとうございます。私もスーパーサイエンスハイスクールの有識者会議のほうでは関わっておりますが、今日、御紹介いただいた事例が高校改革全般にどういうインパクトを与えるのかということについては、少しいろいろな面があるので整理していったほうがいいかとは思っています。
1つは、スクール・ミッション、スクール・ポリシーを考えるときに、それが何年ごとに更新されていくのかと。一度決めればフィックスではないし、作り上げながら変化させていくんだという話は、先ほど川上委員もおっしゃいましたけれども、特に日本の学校マネジメントを考えたときに、単年度主義に陥りがちな学校運営という側面もある程度はある学校も多いわけで、そういった中で、例えば、5年1期としているスーパーサイエンスハイスクールのような取組の中で5年というスパンで考えていくのがいいのか、でも、そうした中での今年度の運営といったものを見通していくという点について示唆に富むんだろうとは思っています。
もう一つが、恐らく普通科高校の多様化といったものに対して、いろいろ先端的な取組がありますという趣旨ではあろうかと思いますが、この面につきましては、例えば、スーパーグローバルハイスクールのほうが課程認定をしていきますとおっしゃられてはいるんですけれども、専門高校の進化もそうですし、普通科高校自体の在り方もそうなんですけれども、恐らく文科省単独では済まない事項になるはずではないでしょうか。例えばですけれども、関西の例を見れば、ものづくりですとかロボティックス、データサイエンスなんかは高校の過程から専門教育を始めている国も複数ある。だとすれば、文科省単独での認定制度というものにいずれ限界が見えてくるんだろうとも考えていまして、その辺りの職業資格との共通化、あるいは、それによる課程の認定の在り方といったものについて、これも大学、専修学校さんの事例などを参照しながら、今ある課程をいかに柔軟化し、豊かなものにしていくかといったアイデアも必要になってくるんだろうと考えます。これは、ワーキングの報告の中でも、ある程度、将来の展望といった意味において示されるべきではないのだろうかということで意見を申し上げました。
以上です。
【荒瀬主査】 ありがとうございます。それでは、香山委員、お願いいたします。
【香山委員】 先ほど末冨委員が前回のところで発表なさったときに、全部を一度に、一足飛びに決めていくんじゃなくて、有効な事例を開発しながら進めていくのが望ましいんじゃないかという御発表をされたのが頭に残っているんですが、まさにSSHであるとかSGH、あるいは地域協働推進校等々の事業というのは、そういったものに当たると思うんです。今回、事業枠と認定枠といった概念が入って、ますます特徴的な取組、多様な取組が広がっていくという印象を受けているんですが、これは普通科の普通教育を主とする学科の在り方とも絡むんですけれども、例えば、SSHやSGH、あるいは、地域協働推進校の事業が終わった後、認定枠のほうに進むのか、あるいは、普通教育を主とする学科の中に新たな普通科の学科を作っていくのか、選択肢が広がると思うんです。そういう意味では、新旧対照表じゃないんですが、例えば、理数科においてSSH事業をやっていくのか、理数科において認定枠で行くのか、はたまた普通科における新学科に行くのかというそれぞれのメリット、デメリットみたいなものを一覧にしていただくと、議論がより深まっていくんじゃないかと感じております。こういったことは可能でしょうか。
【荒瀬主査】 ありがとうございました。今のお話はそれぞれの学校とか地域によって異なると思いますので、一覧にするということは多分不可能ではないかと思うんですが、いかがでしょうか。また事務局のほうでは考えていただきます。ありがとうございました。
田村委員がもうすぐに御退席になるということですが、今のこととか先ほどのことで補足をしていただくところはございますでしょうか。
【田村委員】 ありがとうございます。それでは、先ほどのことで1点、付け加えておきたいことがあるんですけれども、ビジョンを、創り上げていく過程が大切なんですけれども、そのためにはどうしてもコミュニケーションのコストが必要で、どれだけそのための時間、エネルギーを取ることができるのかということが問題となります。高校の先生方はただでさえ余裕のない中でお仕事をされていますので、そういった場や機会を確保できるだけの支援というものが必要ではないかということを1点、申し述べさせていただきたいと思います。
それから、SSH、SGHの認定枠の件につきましては、非常に単純な質問なんですが、これで手を挙げられる学校はどれぐらいの数を想定されているのか、確認されているのでしょうか、ということをお尋ねしたかったです。
以上です。
【荒瀬主査】 ありがとうございます。それはお答えになりますか。分からないんですか。今、まだ認定枠の話というのは、少なくとも全国に伝わっている話では必ずしもありませんので、これからだと思います。恐らく手を挙げられる学校は結構あるんじゃないかと私は想像いたしますけれども、また後ほど、具体に動き出したら、事務局のほうからお答えいただける機会があるかもしれません。よろしいでしょうか。ありがとうございました。今日は本当に丁寧な資料もありがとうございました。
【田村委員】 失礼いたします。
【荒瀬主査】 それでは、清水委員、お願いいたします。
【清水委員】 それでは、よろしくお願いいたします。大宮工業高校の清水と申します。
SSH、SGHの御報告ありがとうございました。はじめの議論であった、スクール・ポリシーのことも含めてですが、先ほど少し触れていただきましたけれども、専門高校においてもSPHスーパープロフェッショナルハイスクール事業に取り組んでいます。この事業では、例えば、大学や研究機関、企業等との連携の強化を図り、社会の変化や産業の動向に対応した活躍できる人材を育成するなどの取組を行っています。
この後、議論の始まる普通科高校の学科に関するところにも、地域や社会の将来を担う人材の育成というキーワードも入っておりますので、SPHを築き上げていくためのプロセスであるとか、コミュニティーの作り方であるとかそういったものが、今後の参考になるのではないかと考えておりますので、もし時間があれば、ぜひ次回でも、その次でも結構ですので、SPHの取組事例など御紹介いただけるとありがたいと思いす。
以上でございます。
【荒瀬主査】 ありがとうございます。事務局で検討していただくことにいたします。ありがとうございました。それでは、跡部委員、お願いできますでしょうか。
【跡部委員】 よろしくお願いいたします。非常に魅力的なプログラムで、うちも手を挙げるかどうしようかと常に迷いながら、でも、結局は手を挙げずに今まで来ています。
それで、そうなってしまっている1つの理由は、予算が結局何年間かは付くけれど、その後には付かなくなってしまうと、そこのところがどうしても現場としてはつらくて、そしてその結果になってしまっているんですけれども、いろいろと皆さんがなさっている取組を漏れ伺っていると、非常に魅力的な部分が多くて、もっと手を挙げたい学校は実はたくさんあるんじゃないかと思っています。そういう意味では、スーパーサイエンスにしても、これからまた新しいものが出てくると、認定の制度も含めて出てくるということは非常に面白いと思って、興味深く思って見ております。
【荒瀬主査】 ありがとうございました。
それでは、この件はこの辺りで終わりにしたいと思います。次の普通課のことにつきましても関係しますので、また、その中でも御意見をいただければと思います。
では、最後の議題となりますが、論点整理におきまして、普通科に加えて新たな学科を設置者の判断によって設置を可能とすることについて、方向性を示したところであります。本日は、新たな学科の具体的な制度設計について、御議論をお願いしたいと思っております。
では、まず事務局、酒井補佐から御説明をよろしくお願いいたします。
【酒井参事官補佐】 失礼いたします。事務局の酒井でございます。資料の3を御用意ください。今、主査からお話がありましたように、新たな普通教育を主とする学科に関します、具体的な制度設計に関します論点の資料を作成させていただいておりますので、これを基に御議論を賜れれば幸いかと考えております。
1ページ目でございます。資料の中ほどでありますが、新たな学科における教育内容、教育指導体制等を具体的に検討するに当たっては一体どういう視点が必要なのかといったところで、4点お示しさせていただいております。4点の整理に従いまして、2ページ以降、資料を御用意させていただいております。
2ページをお願いできればと思います。まず、論点の1つ目といたしまして、普通教育を主とする学科に新たな学科を設置可能とする趣旨は一体何なのかといったところでございます。1点は普通教育を主とする学科の弾力化、大綱化であろうというところで書かせていただいております。普通科においては、大学や産業界との連携の下で、様々な教育を展開したり、地域社会との課題解決に貢献する活動を実践したりと、先進的な取組を進める学校が存在しているといったことは、もう既に明らかなことかと思います。このような先進的な特色、魅力ある取組が行われていることを可視化しまして、取組を積極的に推進する観点から、普通教育を主とする学科の種類を弾力化、大綱化する措置が講じられることが求められているのはないかということで書かせていただいてございます。
2つ目の丸でございますけれども、普通教育として求められる教育内容であって、特色・魅力ある教育を実現すると認められる場合には、設置者の判断によって、当該学科の特色・魅力ある教育内容を表現する名称を学科名とすることを可能にしてはどうかというところで、御提案として書かせていただいております。
3つ目の丸でございます。新たな学科においては、どういった資質・能力なのかといったところで、設置可能とする趣旨でございますけれども、今後の高等学校の特色化・魅力化の方向性を考える際には、現在の地域社会でありますとか国家、国際社会を取り巻く環境を踏まえますと、現在的な諸課題に対応するために必要な資質・能力の育成を目指すことが高等学校教育には求められているのではないかと。そうした学びに重点的に取り組む学科の設置、このことを推進していく必要もまたあるのではないかといったところ記載させていただいております。
3ページ目をお願いいたします。2つ目の丸、「また、」というところですが、例えば、OECDのLearning Framework 2030の中でも環境でありますとか、経済社会といった各領域の急速な変化が例示されております。こういった急速に変化する世界における新たな解決策の必要性が提示されておりまして、このような諸課題の解決に向けた人材育成、これは新たな学科における学びの成果として期待されるものではないかと書かせていただいております。
3ページの一番下段、2ポツでございます。新たな学科においては、どのような資質・能力の育成が目指されるべきかといったところでございます。おめくりいただきまして、4ページ目をお願いいたします。1つ目の丸、「新たな学科については」というところでございますけども、普通教育を主とする学科の1つとして設置されることになるものでございます。このことは、特定の専門的な分野や職業分野に関する知識及び技能の習得を目的とするものではなく、すなわち、従来の専門高校、とりわけ職業系の専門高校のような職業分野に関する知識、技能の習得を目的とする、恐らくそういうものではなく、また、現在の普通科との対比を考えますと、様々多様化する現代社会の現状を踏まえますと、地域社会や我が国、世界が抱える現代的な諸課題に積極的に関わって、地域社会や我が国、国際社会の持続的発展に寄与できるよう、必要な資質・能力の育成に重点を置いた教育が行われるべきではないかというところを示させていただいております。
具体的な各学科において育成される資質・能力でございますけども、4ページの下段からです。まず、学際科学的な学びに重点的に取り組む学科につきましては、特にSDGsの実現でありますとかSociety5.0をはじめとします、複合的かつ分野横断的で、地域社会、国家、国際社会という枠組みを超えるようなボーダーレスな課題が存在することに着目しまして、こういった将来の国際社会、日本社会におけます課題の発見、解決する資する知識及び技能の習得、習得した知識及び技能の活用に係る思考力、判断力、表現力の育成、また、自己の在り方、生き方と国際社会及び日本社会のつながりを考えながら、社会の持続的な発展に関わるための学びに向かう力、人間性等の涵養を目的とすることが考えられるのはないかと記させていただいております。
次のポツですが、地域社会が抱える課題の解決に向けた学びに重点的に取り組む中においては、高校が所在します地元の自治体を中心とします地域社会が様々な諸課題を抱えていることに着目しまして、地域社会の歴史や現状に関する理解を深め、地域社会における課題の発見、解決に関する知識及び技能の習得、習得した知識及び技能の活用に関わる思考力、判断力、表現力の育成、また、自己の在り方、生き方と地域社会のつながりを考えながら、地域社会の持続的な発展に関わるための学びに向かう力、人間性の涵養を目的とする。
5ページでございますけれども、その他、特色・魅力ある教育を実現すると認められる学科においては、学際科学的な学びに重点的に取り組む学校や地域社会が抱える課題の解決に向けた学びに重点的に取り組む学科において、育成すべき資質能力を参考にしながら育成すべき資質能力を設置者において適切に御検討、そして決めていただくといったことが考えられるのはないかといったところでございます。
5ページ、一番下段の3ポツでございます。新たな学科における教育の特色としましては、どのようなものがあるのかといったところでございます。まず、基本的な考え方といたしまして、おめくりいただきまして、6ページ目でございます。2つ目の丸でございますけれども、高校教育の在り方をめぐりましては、これまでの中教審において様々な御議論があった末に、高校教育といたしましては初等中等教育最後の教育機関として、全ての高校生が共通して身に付ける共通性の確保と、一人一人の生徒の進路に応じた多様な可能性を伸ばす多様性への対応の観点を軸として審議及び提言がなされてきたといった経緯がございます。この後の学科における教育活動の特色を御検討いただくに当たっても、これまでの中教審の議論をベースにしていただくといったことが必要なのかと書かせていただいております。
その上で、次の丸でございますが、普通教育を主とする学科において特色・魅力ある教育を実現する新たな学科の教育活動の特色としましては、全ての高校生が共通して身に付けるべき資質・能力、これを土台とした上で、生徒の多様な学習ニーズに対応し、生徒の興味・関心や得意分野を踏まえた学習の機会を提供することを主眼として位置づけるといったことを考える必要があるのではないかといったところを記させていただいております。
おめくりいただきまして、7ページ目でございます。3つ目の丸でございます。その中で、学際科学的な学びに重点的に取り組む学科の教育活動の特色の基本的な考え方であります。繰り返しになりますが、SDGsやSociety5.0をはじめとしまして、こういった課題に関しましては、これまでの学問領域や分野、とりわけ細分化された特定の専門的知識だけでは対応できないような、現代社会が抱えます複合的な課題に取り組む新たな学問領域でありますとか学際的・複合的な学問分野に即しまして、最先端の学びに取り組むことを各設置者が志向する場合において、設置することが想定されるものではないかと。
そのため、教育活動につきましても、スクール・ミッション、スクール・ポリシーに基づいて着目する社会課題に関連させて、新たな学術領域における最新の学術的知見でありますとか、複数の学問分野に関します系統的な知識及び技能、そこから再構築された統合的な知見について構造的な理解に基づいて勉強していただくと。そして、そういった社会課題に関します見方、考え方を鍛えていくという最先端の学びを実現することが特色となるのではないかと記させていただいております。
次の丸、地域社会が抱える課題の解決に向けた学びに重点的に取り組む学科の教育活動の基本的な考え方でございますけれども、恐らくこういった学科におきましては、地域における人材育成の中心的機関としまして、地域社会に根差し、地域化に対応した学びに取り組むことを各設置者の志向する場合において、設置することが想定される。そのため、教育活動につきましても、地域社会が有する交流や活動のネットワークを最大限に活用して、地域社会がこれまで積み重ねてきた歴史や文化、産業、経済に関する知見でありますとか、これまでの実践を通じた取組の蓄積を基に、事例研究やフィールドワークも重視して、地域社会が抱える課題に関する実践的な学びに取り組むことで、地域社会に関します様々な課題の解決に向けた学問分野に関する見方、考え方を鍛えていく実践的な学び、こういったことが特色になるのではないかと記させていただいております。
9ページでございます。その他特色・魅力ある教育を実現する学科についてでございますが、必要となる統合的な学術的領域や学問分野に関します最先端の知見を身に付けたり、事例研究やフィールドワークも重視した実践的な学びに取り組んだりすることで、各学問分野の知識、技能を身に付け、当該学問分野に関します見方・考え方を鍛えていく学びを実現するということが特色になるのではないかといったところでございます。
最後、9ページの4ポツでございます。新たな学科において特色・魅力ある教育を行うに当たって、関係機関とどのように連携・協働すべきかというところでございます。本ワーキンググループでも何度も議論になっておりました、関係機関との連携・協働というのは大変重要な要素だと考えてございます。そのために学際科学的な学びに重点的に取り組む学科については、最先端の学びを体系的に履修・修得させるために、最新の知見を有します国内外の高等教育機関や国際機関、国の機関、研究機関、企業、NPO法人等との連携・協働を実現するネットワークの構築がとても重要ではないかといったところでございます。
10ページをお開きいただきますと、地域社会が抱える課題の解決に向けた学びに重点的に取り組む学科、これにつきましては、高等学校が所在します地元の市町村でありますとか高等教育機関、企業・経済団体、社会教育機関、NPO法人、小・中学校等との連携・協働を実現するネットワークの構築、こういったことが必要になってくるのではないかと。その他特色・魅力ある教育を実現すると認められる学科については、各学校の設置者が定めるスクール・ミッションに基づいて教育活動を展開するに当たって必要な関係機関との連携・協働が必要になってくるのではないかといったところでございます。
最後、このページの一番下の丸でございます。特に地域社会が抱える課題の解決に向けた学びに重点的に取り組む学科においては、これまでも御議論になっておりました、いわゆるコンソーシアムを構築し、一体的に合意形成を図りながら、計画的に、持続的に高等学校の運営を進める組織作りといったものが求められるのではないかと。その際には、高校と地域のコーディネート機能を担うコーディネーターの配置、こういったことも必要になってくるのではないかといったことを示させていただいております。
最後、11ページでございますが、この中でも公立学校においては、これまでも御議論になっておりましたけども、学校運営協議会や地域学校協働本部との関係については、恐らくコンソーシアムとの関係が課題となってくるかと思います。コンソーシアムは学校運営協議会や地域学校協働本部の活動をさらに発展、進化させ、高校を核とした地域作りをも担う役割として整理するといったことが必要ではないかといったことを記させていただいてございます。
駆け足で大変恐縮でございますが、事務局の説明とさせていただきます。よろしくお願いいたします。
【荒瀬主査】 ありがとうございました。
それでは、皆様から御意見を頂戴したいと思いますが、今日は委員から資料をもう一つ頂戴しておりまして、岩本委員の御用意いただいている資料があります。そちらにつきまして、岩本委員から冒頭、5分程度、お話を願えればと思います。よろしくお願いいたします。
【岩本委員】 よろしくお願いします。参考資料の3のところで、今、事務局から御説明あった論点に関して、ポイントをかいつまんで述べさせていただけたらと思います。
1つ目ですが、1ページ目、新たな学科を設置可能とする趣旨のところですが、趣旨は分かるので、今後はその価値、新しい学科を設置する価値だとか意義ということを、高校の現場の人間も分かるように明示していく必要があるだろうと。具体的には、新しい学科にすることで今までと違う何ができるようになるのか、どんなことがしやすくなるのか、あと、具体的にどのようにこの取組が奨励、推進されるのかといったところをはっきりとさせていくことが今後、大事だろうということです。
2つ目、新たな学科においての資質・能力の育成のところですが、今の記述が、どちらかというと、社会の形成者としてのところはしっかり書かれているんですけども、もう一方で、個人のウエルビーイング、生徒一人一人の豊かな人生を育む上での資質・能力という視点でも記入が必要だろうということです。また、課題の発見、解決という視点もあるんですけれども、それに加えて、例えば、地域社会であれば、そこの資源や魅力の発見、活用というところも組み合わせてやっていく方針、方向性が大事だろうということを書かせていただいております。
2ページ目、②で書いていますけども、ここは大きいポイントだと思うんですけども、地域社会と学際科学的な学びの学科が分断するのではなく、融合とか往還とか重なり合ったりと、そういったところを今後は記述だとか、制度においても検討していく必要があるだろうと。例えば、地域社会における課題の発見、解決だとかにおいても、SDGsやSociety5.0、STEAMだとか学際科学的な視点、国際的な視点というのもこれからは必要ですので、地域社会だから地域社会のことだけではないということですし、その逆もしかりですので、そこら辺は資質・能力の部分も、その後の制度のところでも重要だというところです。
3つ目、新しい学科における教育の特色に関してですが、総合的な探究の時間や学校設定教科・科目が軸になりながらも、そこだけで、その科目だけでやっていくということではなくて、普通教科・科目も含めて全体でカリキュラムマネジメントしながら、その学科の目指す資質・能力の育成、特色をしっかりとやっていくということははっきりと明確化しないと、学科としての意味をなさないと思いますので、ここは大切かと思っております。
3ページ目なんです、関係機関との連携・協働の話ですが、②で書いています高等教育機関との連携・協働についてです。ここは普通教育を主とする学科において出口になるところでもありますし、非常に重要だと思います。例えば、地域との協働に関するところであれば、特に地方の国公立大学だとか全国の地域系の学部だとか、そういったところと教育課程、カリキュラム、場合によっては入試も含めた連携・協働ということを併せて促進をしていくことが大事になってくるかと思います。その際には、この議論は国においても、初中局の中だけではなくなってきますので、高等教育局だとか、例えば、地方創生の関係部局とか大学の今、改革だとかも議論されていたりとか、いろいろな方策があると思いますけど、そういったところにも働きかけて連携・協働しながら、高大の連携方針を、併せてやっていくという国の政策連携、政策協働というところが、ここはポイントになってくるところです。
4ページ目の③、今日、再三議論がありました連携・協働体制においての学校運営協議会等の話ですけども、まさにテーマコミュニティーという考え方も先ほどはっきりと言われていましたけども、新しい学科に関しては、公立学校であれば、基本的には学校運営協議会は設置する方向で、そこで関係機関としっかりと対話をしながらスクール・ポリシーマネジメント、カリキュラムマネジメントを含めてやっていくことが基本のベースになるだろうというところと、合わせて連携・協働のときに、組織対組織の強固なつながりというのも持続性を考えた上で非常に重要ですけども、そこに合わせて個人対個人も含めた緩やかなネットワーク、いわゆる地域学校協働本部の持っているような機能、ここも両方がないと形骸化していったりとか硬直化していきますので、両方を含んだものとして連携・協働を考えていかないといけないというところが今までの経験からのポイントになってきていますので、まとめると高校と特に地域社会の協働体制、コンソーシアムにおいては、学校運営協議会と地域学校協働活動、そして本部を合わせたものとして整理して考えていくべきであろうというところです。
併せて➃で書いていますが、協働とかコミュニケーションもコストがかかりますので、協働においてコストがかかり過ぎて、逆に生徒に向かう資源が減るという本末転倒にならないように、協働のコストを減らせるように、会議が乱立したりとか、似たようなものがたくさんあるということではなく、再編や併任みたいなこともできるようにしたりとか、逆に協働によって資源がしっかりと教育や子供たちに回るような協働の仕組みというのを具体的に書かせていただいていますけども、こういったところをしっかりと併せて制度設計していく必要があるだろうというところです。
5ページ目で、新たな学科における人的環境整備のところです。これも再三意見が出ていましたけれども、多様な関係機関と協働していきながら、しかも新しい時代に対応する特色ある教育を重点的に行っていくという学科ですので、そこには教職員の基礎定数の加算だとか、こういったところはしっかりと措置をしていく必要があるだろうと。また、そうしたときに教員に限らない外部人材の活用の方策も併せて、先ほどのコーディネーターとかも含めてやっていく。その際には、人づくり、つながりづくりと学びを中心にした専門人材としての社会教育士というものも制度的にできましたので、こういった社会教育士の活用も併せて、政策横断的に活用していくのが大事だろうというところです。
6番目、新しい学科の新設が可能になる時期というところに関しては、既にスクール・ポリシーとか新しい学習指導要領に向けて議論が始まりつつあるというところですので、新学習指導要領の開始の年である令和4年度から、早いところは開設、新設できるようにというところです。
最後、その他のところですけども、先ほど言いました、学際科学的と地域社会が分断ではない制度設計を今後、うまく往還できるような制度設計を検討していくという部分と、今、新しい学科に関する部分はしっかりと進めながら、新しい学科にならない大多数の普通科の在り方というのは、本当に今のままだけでいいのだろうかということも今後も引き続き、検討が必要ではないかというところで述べさせていただいております。
長くなりましたが、以上です。
【荒瀬主査】 ありがとうございました。時間の関係で縮めていただきまして、ありがとうございます。
それでは、残りの時間、御意見を頂戴したいと思います。ちなみに、先ほどの1つ目の議題もそうでしたけれども、こちらのほうも我々の検討する非常に重要なポイントになっておりますので、引き続き、次回以降も議論をお願いしたいと思っております。ただ、いつまでも続けているということにもなりませんので、御意見は先ほども申しましたように、メール等でもお寄せいただければと思います。
では、手を挙げていただいている方に順にお願いいたします。跡部委員、山口委員、長塚委員、園田委員、牧野委員、佐藤委員、川上委員、香山委員、冒頭申しましたように、大変恐縮ですが、手短によろしくお願いをいたします。では、跡部委員、お願いいたします。
【跡部委員】 すみません、手を下ろし忘れていました。
【荒瀬主査】 分かりました。ありがとうございます。では、山口委員、お願いいたします。
【山口委員】 では、よろしくお願いいたします。
今の資料3の3ページのところの下の2番の1つ上の丸、従来の普通科等における取組との関係性、まずは、ここに注目いたしました。3ページの下から2つ目の丸でございます。新しい学科がなぜできるのかと、御説明が丁寧にあった中ですが、もう一度、そこにも記述していただいてあるように、今まであったコースとか各教育課程の類型との違いと言いますか、なぜ今回、これが必要なのかということをもう一度、学校現場の者としては、そこの共通理解が学校の中でないと、なかなか厳しいのかと感じております。
先ほどの田村委員の御発表の中の競争という部分で、スクール・ポリシーに直結するところではあると思いますが、そこの部分を職員の中で全ての教育活動がカリキュラムマネジメントとして、そこに直結しているんだという意識を持たせないと、なかなか子の形が絵に描いた餅になってしまうところを感じています。
そして、さらに同じ資料3の9ページでございます。9ページの丸の2つ目、新たな学科における体制作りに関する基本的考え方、ここにも書いていただいております。新たな学科における体制作りに関する基本的考え方、管理職や一部、担当の教員のみが担当するのではなくて、学校全体において人材や予算、時間、情報といった人的、物的な資源の確保がしっかりと担保されていかないと、今までのコース制のようなものが減少していくということにつながりかねないと思いますので、ぜひそこの制度設計について、ここをしっかり押さえていく必要があると現場の者として考えております。
以上でございます。
【荒瀬主査】 ありがとうございました。では、長塚委員、お願いいたします。
【長塚委員】 ありがとうございます。長塚です。
1番目のところと少し関係するんですが、高校の個々の多様性をスクール・ポリシーで明らかにしようということになっているわけですが、それを大学と同じように3つのポリシーでより明らかにしようと。そこで少し気になるのがアドミッション・ポリシーです。アドミッション・ポリシーに関しては、大学のほうでは大学入試改革とそれが連動した形で行われようとしていると思うんです。ところが、高校の入試というのは、どちらかというと、画一的と言うんでしょうか、高校の学びの共通性に根差しているということもあるんでしょうけれども、これからの多様なアドミッション・ポリシーに対応する入試というのが高校のほうでも必要になるのではないかというのが1点。
もう一点は、いろいろな教員、新しい学科を実際に指導する教員の必要性です。教員採用は教科の免許で縛られている、共通性の部分は各教科の免許ということで、それでいいんでしょうけれども、学際的な指導を誰がするのかというときに、指導者は教員だけではない、様々な指導者が一緒になって行わなければ、あるいは、活用しなければできないことになるのではないかと、その辺のこともあらかじめ織り込んでおく必要があるんじゃないか、この2点でございます。
以上です。
【荒瀬主査】 ありがとうございます。角田委員、お願いいたします。
【角田委員】 角田です。私だけ議論から落ちこぼれているかもしれなくて、少し後戻りの発言になってしまうかもしれないんですけれども、普通科に加えて新学科設置を検討してきたという認識は私にはなくて、普通科全体を特色化していく、弾力化していく、可能性を拡大していくという方向性や方法を議論してきたと自覚しているところです。
今回の2つの新学科を例示されているんですけれども、既に報道によって、普通科と2つの新学科に3分割されるので、うちの学校はどこに入るんでしょうかと私に質問がくるという事態も生まれてきています。例示された設置可能な新たな学科は、従来の枠を超えた先進的なモデルの提示となって、とても意味があると思っていますが、先ほどのSSHとSGHの今後の展開の方法についても、エリート的とも受け止められると思います。その方向の新学科の検討を進めていくのももちろん重要ですが、多様な生徒たちを未来社会につなげる教育に取り組む学科についてももっと議論していきたいと思っています。
押し付けられた類型や設置者に言われたからではなくて、スクール・ミッションの議論の中からそれぞれの学科名が生まれてきたらいいなと思っています。
以上です。
【荒瀬主査】 ありがとうございます。それでは、牧野委員、お願いいたします。
【牧野委員】 資料3の10ページの最後の丸と、11ページの丸のところについて、少し私の考えを述べたいんですけれども、コンソーシアムと学校運営協議会や地域学校協働本部が同じように考えられるかどうかというところだと思うのですが、コンソーシアムの一番のポイントはコーディネート機能だと思うのです。学校側と地域側が連携していく上のつなぎとして、コーディネート機能とかコーディネーターが非常に重要な役割を果たすということはこれまでも述べてきたとおりでありまして、こうしたことを学校運営協議会や地域学校協働本部がコンソーシアムのような役割で行けるのか、本当にそのようになるのかどうか。むしろコンソーシアムが作れないから学校運営協議会や地域学校協働本部で取りあえずいいのではないかということになってしまわないか懸念されます。一番大事なのは、コーディネーター機能を学校側でも地域側でも果たせるといった仕組みを作れるかどうかだと思っております。そのために、11ページの最後のところは、代替し得るかどうかということについては相当慎重に考えたほうが私はいいと思います。
以上です。
【荒瀬主査】 ありがとうございました。それでは、佐藤委員、お願いいたします。
【佐藤委員】 佐藤です。
私はこの御提案を拝見させていただいて、非常に興味深く、面白い試みがたくさんできるんじゃないかと思って、自分なりにこういう学校を開設することに携われたら、どんな教育課程にしようかとか、どんな人を配置しようかとか随分夢が広がりました。校長の立場からすると、かなり大胆に教育課程が設定できるように、今までの教科、科目の枠組みにとらわれるようなことではなくて、教科横断的な学習ということですので、今までにない発想で教育課程を組めたら面白いんじゃないかと思いました。
それから、人的環境をどのように整備するかということで、この教育をできる人が、例えば、全国に1人しかいないとか、県内に2人ぐらいしかいないとかという中で学校経営をするのは非常に苦しいです。先生方も人間ですからそれぞれのライフスタイルというのがあります。1つの学校で10年、20年、その教科、科目に携わっていけるのかというと、病気をしたり、子育てをしたり、いろいろな方がいらっしゃいますから、どのようにその教育をどんな教員が支えていくのかというのは常に考えてなければいけないことかと思いました。
その中で、教員免許というのをどのように認めていくかということも、今後、いろいろな学校で人的環境をどのように整備していくかという議論の中で、また、新しい学科をどのように構築していくのかとという議論の中で考えていければよろしいかと思っています。
最後に、どんな人材をその学校で育てていくかなんですけれども、これまでの議論の中では一握りのエリートを育てるということよりも、地域にやがて戻ってきて、その地域の活性化のために働いてくれる人材を地域の高校が育ててあげるということを議論してきた経緯があったかと思います。たとえ高校を卒業して県外の大学に進学するとか、海外の大学に進学したとしても、また地域に戻ってきてくれて、地域の活性化のために力を尽くしてくれる人材を育成するという視点があれば、地域の特性に生かした学校作りというものができるんじゃないかと思いました。
私からは以上です。ありがとうございました。
【荒瀬主査】 ありがとうございます。1つ確認をしておきたいと思うんですけれども、共通性と多様性について、先ほど酒井補佐からも御説明がありましたが、共通性の担保というのは、これは大変重要なことでありまして、学習指導要領に関わることで、共通性と必須履修科目というものをきちんとやりながら、学校設定科目、教科において、相当幅広に多様な展開ができると思いますので、その範囲の御意見であると承っておきたいと思います。
教員免許等につきましては、特別部会の議論に関わって、教員養成部会のほうで御議論いただいておりまして、またそちらも視野に入れながら、こちらでもお考えいただければと思います。ありがとうございます。
では、川上委員、お願いいたします。
【川上委員】 よろしくお願いします。勉強不足を露呈するようでお恥ずかしいんですが、今回、頂いた資料3の1ページ目の論点整理の中で、普通教育を主とする学科について、例示が挙がっているわけですが、例えば、地域や最初の将来を担う人材の育成云々というのは、これまでで言うと総合学科とかでやっていなかったかという気もするんです。これは普通科に新しい、新たな学科を作るというのが総合学科の自由度を拡大するのではできないのかということです。総合学科の自由度とか裁量を拡大していくとか、総合学科の運用幅をもっと広いもので想定していくというのではできない何かというものを普通科改革の中で想定されているのかどうかということについて、整理がうまくいかなくて、その辺がどのタイミングでもいいので教えていただけると非常に助かるという気がしました。
それともう1点です。この改革案の中で言うと、この間でも少し御発言があったと思うんですが、例えば、中学校までの学び直しをやってみたりとか、1回失っていた学びへの関心をもう一回取り戻したりとか、その中で将来に向けたのキャリア展望をもう一回開いてみたりといった、これまでしんどい子向けに指導するような普通科の改革イメージというのが例示の中には出ていなくて、そうすると、勉強でとんがっていく学校向けのプランなのかという見方もしてしまうと。むしろ自由度を上げていくとか、子供への多様性を上げていくのが制度の趣旨なんだとしたら、そういうものも少し作っていただかないと何とも言えないという感触を持ちましたというのが感想で、あとは、今日しつこいんですけど、大体、こういう新学科というと生徒募集が振るわなかった高校とかがある種の逆転狙いだったりとか、新しいもので生徒獲得だというので使ったりするケースが出てくると思うんですが、くれぐれも、これも繰り返しです、こういうものを生徒獲得だったり、高校生き残りの道具にしない運用というものを重ね重ね考えておかないと、恐らく高校間の連携とかがうまくいかなくなるリスクがあるので、その辺を今日、しつこいんですけど、御指摘申し上げられればと思いました。
以上です。
【荒瀬主査】 ありがとうございます。川上先生が御心配の向きは本当に大事なことだと思っております。ただ、どのような形になったとしても、それぞれの学校が自分の学校の生き残りを考えないということはあり得ないだろうとも思いますので、その辺りが結局、生徒を置いてきぼりにして、自分たちの論理だけで動くということのないようにと、そういう御注意であると受け止めております。
それから、総合学科の話はいずれ事務局のほうでまとめていただこうと思いますけれども、総合学科の自由度を増していくという発想も当然あると思うんですが、普通科という非常に幅の広いものの内容をもう少し突き詰めていくというアプローチはいろいろあるのではないかと思いますので、また御意見をよろしくお願いをしたいと思います。ありがとうございました。
では、香山委員、お願いいたします。
【香山委員】 2点、御質問やお願いをしたいと思います。
1点は、先ほどの私の発言につながるんですが、今の川上委員のお話をお聞きしながら、普通科であるとか、あるいは、たとえば専門学科としての理数科であるとか、あるいは、総合学科、それぞれ何ができて、何ができないのかというのは複雑で分かりづらいと思います。そういったものについての比較対照表みたいなものが、実際の学校の事例、 あるいは、想定される事例があれば、いいのではないかと思います。と言いますのが、スクール・ミッションや3ポリシーを地域のステークホルダーも交えて共創的に議論するときに、この学校ではこういう子供に育ってほしいというミッションがあって、そのミッションを実現するためには普通科の新しい学科がいいのか、従来の普通科がいいのか、既存学科の理数科や探究科がいいのか、総合学科がいいのかというところもいま一度考え直していくといったプロセスも当然出てくるだろうと思うんです。そのときに、学科の制度の特徴を詳しく知っていらっしゃらない方にも分かるようなものであればと願っております。それが1点です。
それから、2点目は、岩本委員の参考資料の中にもありましたけれども、新しい普通科で考えられている学際科学とか地域探究といった学科は間違いなくコーディネート人材が必要だと思うんです。牧野委員もおっしゃったように、これは必須だと思うんです。そういう点で普通科の新しい協働をキーワードにするような学科には特別な措置が付くとかといったことも含めて、比較対照表があれば大変ありがたいと思っております。
以上です。
【荒瀬主査】 ありがとうございました。時間が少し伸びてしまっておりますけれども、最後に小田切委員、御発言をよろしくお願いいたします。
【小田切委員】 それでは、2点簡単にお話をしてみたいと思います。
1つは、これは私の杞憂であればうれしいんですが、新学科が言ってみれば、第2普通科と言うんでしょうか、単なるランクづけにならなければいいという気持ちを持っております。地域の現場にいますと、地域の現場を調査すると、ともすれば、そのようになってしまいがちです。そういう意味で、強力なインセンティブが必要なんですが、それがまさに教育内容ということになると思いますが、一方では、カリキュラムの自由度とか人事の自由度とか、その辺りの自由度がよく見えていません。これはひょっとしたら、私が教育制度論を専門としていないからかもしれませんが、インセンティブが見える形で、いま一度整理していただければありがたいと思います。
それから、2点目は学際科学と地域社会、これは共通面が非常に大きいんだと思います。今、大学の学生と話してみると、かつては国際派と国内派、あるいは農村派に分かれました。ところが、今の学生は両方に関心があります。国際に関心がある学生こそ農村に関心がある、地域に関心があるという非常に大きな最近の特徴です。言ってみれば問題解決思考、問題解決オリエンテッドと言うんでしょうか、そのために実践と理論の学際、あるいは、文理の学際、そして国内外の学際、つまりグローカルですが、この3つの学際をそういう学生は求めております。そういう意味では、これは岩本委員がおっしゃいましたが、恐らく2つの学科は相互乗り入れするようなイメージを持つべきではないかと思っております。
以上でございます。
【荒瀬主査】 ありがとうございました。事務局のほうで示していただきましたのは、あくまでも、1つの例ということですので、いろいろなものがこれから考えられていくと思います。私たちが議論している新しい時代の高等学校教育の在り方というのは、高校改革をどうしていくかということでありますけれども、ここだけで議論にはならないという末冨委員の御指摘がありましたように、本当にこれはいろいろなものが関わっています。
ただ、学校というものは、コロナ禍の中でもとどまることなく取組を続けているわけでありまして、それを支えて励ます提言につなげていければと思っております。私は生徒が主語になる学校を作ることが大切だと思っておりますけれども、そのためにも学校が主体的に動いていくことも非常に重要でありますので、そういったことにも関わるような御意見を今後もまた頂戴できればと思っております。
では、今日は時間も過ぎておりまして、冒頭少しばたばたいたしまして失礼いたしましたが、今日の議論はここで止めたいと思います。最後に次回以降の予定につきまして、事務局からよろしくお願いいたします。
【酒井参事官補佐】 失礼いたします。事務局でございます。
本日は会議冒頭に接続等がうまくいかず、大変申し訳ございませんでした。何とか次回以降、フォローしていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
また、本日、会議の議論の中で御質問でありますとか、また御指摘等を賜っております。その点、特に御質問等を賜りました点につきましては、次回の会議の際にお答えさせていただくようにできれば御準備させていただきたいと思っております。
次回のワーキンググループでございますが、現在、9月7日の月曜日、10時から12時の開催を予定している旨、お伝えさせていただいているかと思いますが、詳細については改めて御連絡をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
【荒瀬主査】 ありがとうございました。
それでは、これで終了したいと思います。皆さん、御意見ありがとうございました。まだ暑さが続きますので、どうぞ御自愛ください。失礼いたします。

―― 了 ――
 

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