新しい時代の高等学校教育の在り方ワーキンググループ(第5回) 議事録

1.日時

令和元年12月9日(月曜日)14時00分~16時00分

2.場所

文部科学省13階1~3会議室

3.議題

  1. 新しい時代の高等学校教育の在り方について (1)専門学科の在り方について (2)生徒の学習意欲を喚起し能力を最大限伸ばすための学科の在り方等について
  2. その他

4.議事録

【荒瀬主査】 それでは、定刻となりましたので、ただいまから中央教育審議会初等中等教育分科会新しい時代の初等中等教育の在り方特別部会新しい時代の高等学校教育の在り方ワーキンググループの第5回会議を開催いたします。
本日は、御多忙の中、御出席いただきまして、ありがとうございます。
それでは、まず、本日の配付資料につきまして、事務局から御説明をよろしくお願いいたします。
【酒井参事官補佐】 失礼いたします。本日の配付資料は、議事次第にございますように、資料1-1から資料5及び参考資料1、参考資料2を御用意しております。
資料につきましては、審議会等のペーパーレス化の取組を推進するため、お手元のタブレット端末に格納させていただいてございますが、資料5につきましては、お手元にも配付をさせていただいているというところでございます。
また、本日、卓上のマイクシステムを使用させていただいております。御発言の際は、お手元にあります青いボタンを押していただいて、発言が終わりましたら、ボタンをもう一度押していただくようにお願いいたします。
以上でございます。
【荒瀬主査】 資料はよろしいでしょうか。
それでは、議題に入りたいと思うのですが、その前に、今月3日に公表されました「OECD生徒の学習到達度調査2018年調査」、いわゆるPISA2018の結果につきまして、今村主任教育企画調整官から御説明をお願いいたします。
【今村主任教育企画調整官】 OECD、PISAの公表を担当しております今村です。お手元の資料3-1に沿いまして、簡単に御説明をさせていただきます。
既に報道等をごらんいただいているかと思いますので、特に今回、前回の2015年と比較しまして、有意に平均得点順位が低下したという読解力を中心に説明させていただきます。
この調査は、2000年に始まりました国際学力調査でございまして、義務教育修了段階の15歳児を対象に行っているものでございます。日本につきましては、高校1年生を対象に実施をしてございます。この2018年調査は、2018年の高校1年生を対象に、同年の6月から8月に実施をしております。今回、読解力の得点順位が低下をしたということでございまして、例えば、資料、3ページをごらんいただきますと、その上の方です、こちらが習熟度レベル、平均得点の割合別の2000年以降の推移を示したものなのですけれども、棒グラフが日本の習熟レベル別の割合で、ドットがOECD平均でございます。平均得点が低下をしているということは、端的には習熟度レベル下位層の割合が増えているということでございまして、これは日本特有ではなくて、OECDの平均自体もそうなっているのですけれども、そういう傾向があるということです。
ちなみに、3ページのもう少し下の方、今回、読解力につきましては、2000年以降、2000年、2009年、そして今回の2018年と3回中心分野になっておりまして、詳細に調査をしております。その全体を含めた長期トレンドが、今回、OECDから発表されておりまして、長期トレンドで見ますと、日本はこの18年間で特段の上下のない平坦なグループというふうに分類されております。全体としてOECD平均よりは上位にございますので、OECD平均よりは上のところで平坦に推移しているということではございますけれども、2015年と比較しますと有意に低下をしているという状況でございます。
次に、4ページをごらんください。
今回、2018年の調査では、読解力の定義が若干変更になっております。そちらに記載しているとおり、これまで「書かれたテキスト」としていたものを、例えば「書かれた」を削除している。あるいは「評価し」というものを新たに加えられています。これは対象となるテキストが、いわゆる書面に書かれたものだけではなくて、デジタル空間にあるテキストも対象にするということを踏まえての変更と聞いております。
また、デジタル空間のテキストは、例えばSNSなどが代表的ですけれども、誰もが著者になれるということで、発信者が誰かということも含めて、書かれている事柄、内容の信ぴょう性なども判断して、その上で情報として取り扱い、自分の論を組み立てるということが問われてくるということで、「評価し」ということが付け加わっているというふうに聞いております。
それに伴いまして、PISAでは、測定する能力は3種類、マル1、マル2、マル3という3種類の能力を計るということにされておりますけれども、特にマル3のところに新たに「質と信ぴょう性を評価する」、「矛盾を見つけて対処する」ということが今回追加されております。
読解力の結果を分析しましたところ、今回の結果につきまして、これが決め手といったような要因が作用して低下につながったというよりは、様々な要因が複合的に影響している可能性があるというふうに考えております。
結果、今の3種類の能力別に見ますと、「理解する」ということは引き続きよくできているんですけれども、今回は「情報を探し出す」というところと、「評価し、熟考する」というところが低下をしております。これは、「評価し、熟考する」は、先ほど申しましたとおり、定義が付け加わっているということもございますし、それから「情報を探し出す」というところも、書面からの情報だけではなくて、デジタル空間の中でどうやって情報を探していくかというところも問われてきているかと思いますので、そのあたりも影響したということも可能性があるのではないかというふうに考えております。
また、これに関わらず、従来からのPISAの結果からも課題として見えておりますし、それから、全国学力・学習状況調査、小学生、中学生を対象にしている調査でも引き続き課題になっているんですけれども、自由記述の課題におきまして、自分の考えを根拠を示して説明する、なおかつ、他者にきちんと伝わるように記述をするということについては、従来から課題となっておりまして、この点につきましては、今回も引き続き課題となっております。
5ページには、前回の2015年からPISA調査はコンピュータ使用型調査になっておりまして、今回もコンピュータ使用になっております。
今回、公表されておりますのは、今ごらんいただいているラパヌイ島という大問1問だけなんですけれども、例えば、左側は大学教授が書いたブログ記事になっておりまして、右側は科学雑誌の記事というふうになっておりまして、こうした複数のデジタル空間のテキストを読み比べながら自分の考えを最後にまとめていくといったような設問がされているところでございます。
続きまして、6ページをごらんいただけますでしょうか。
PISA調査では、3分野の調査と併せまして、生徒に対する質問紙、学校に対する質問、生徒に対するICTの活用状況の調査をしております。
こちらでごらんいただいておりますのは、読書活動に関する調査結果でございまして、日本も含めまして各国で読書、本を読む頻度等は割合が減ってきております。特にそこにお示ししているとおり、新聞、雑誌を読む生徒の割合は急速に減ってきているという現状がございます。
それから、読書が大好きな趣味の一つかどうか。あるいは、本の内容について人と話すのが好きかどうかということについては、日本の生徒はその割合がOECD平均より高いということで、読書に対する肯定的な傾向を示す生徒の割合が高いということがございまして、これは前回2015年と比較しましても、若干割合が上昇しておりまして、維持されているというふうに考えております。
また、先ほど紹介した本も、これは漫画も含めてになるんですけれども、本を読む生徒、あるいは読書に対して肯定的な考えの生徒は、読解力の得点も高いという相関関係がございます。
それから、同じページの下の段に、国語の授業に関するアンケートの調査結果がございまして、これは高校1年生に聞いておりますので、高校の授業というふうにお読み取りいただければと思います。
まず、「国語の授業の雰囲気」は、落ち着いているということで、OECD平均よりかなり高い割合を示しております。それから、「国語の授業における教師の支援」、右側になりますけれども、そちらも若干ですがOECD平均を超えておりまして、学習を先生が助けてくれるということがございます。
しかしながら、左側になりますけれども、長所あるいは改善の余地がある部分について具体的にフィードバックがもらえるかという点については、OECD平均を下回っているという状況がございまして、ここが課題かなというふうに思っております。
なお、この調査は高校1年生の6から8月という時期ですので、もしかすると、まだ1学期の終わりの程度の時期ですので、具体のフィードバックが難しい時期なのかもしれませんけれども、いずれにしても課題ではあるというふうに思っております。
次、ちょっとページを飛ばしまして、9ページをごらんいただけますでしょうか。
併せまして、生徒にICTの活用調査を行っております。こちらは学校内外についてのデジタル機器の活用について聞いておりまして、学校外については、中学生までの生活習慣に関わるところもあろうかと思いますけれども、学校で使うものについては、所属している当該高校の様子ということでお読み取りいただければと思います。
まず、今ごらんいただいているのは、学校外で平日にどのぐらいの時間インターネットを使っていますかということで、これは使っている内容に問わず、学習であろうとなかろうと問わずです。それから、使っている媒体も特に問うておりませんのでインターネットの利用時間でございます。
赤で囲っているのは、4時間以上の長時間に該当するところを囲っておりまして、OECD平均、日本ともに年々長時間化しておりますけれども、日本については、まだOECD平均よりは長時間利用している生徒は少ないという状況がございます。
その下に折れ線グラフがございまして、このインターネット利用時間と3分野の平均得点との関係を示しているものでございます。実線が日本、点線がOECD平均ということでございまして、赤の部分、4時間を超えますと、やはり平均得点に対しまして負の効果、負の関係があるということです。日本の場合は2時間まではほぼ変わらずで、4時間で若干下がるかなというところですが、OECD平均は4時間までは増加する、要するに、平均得点と正の相関があるということでございます。
その違いについてヒントになるものとしては、次の10ページをごらんいただけますでしょうか。
上段の今ごらんいただいている棒グラフが、学校の授業で、高校の授業で1週間のうちどのぐらいデジタル機器を使いますかというアンケートでございます。OECD平均と比べますと、日本は「利用しない」という、ここでいうとオレンジっぽい色ですけれども、「利用しない」という割合が圧倒的に多くて、非常に使われていないという現状がございます。
それから、次は学校外でどのような用途でデジタル機器を使っていますかというものをお示ししておりまして、左側、例えば一番上が「コンピュータを使って宿題をする」ということですけれども、左側が主に学習に用いているもの、それから右が、例えば「ネット上でチャットをする」、「1人用ゲームで遊ぶ」など勉強以外のところで用いるというものでございます。
青い棒グラフが日本の値で、星印がOECD平均ということで、ごらんいただいたとおりなんですけれども、学習については、今、OECD平均で大体2割ぐらい使っているという回答ですが、日本は数%ということで非常に差があるという状況です。
それから、学習外ですと、ネットでチャットですとかゲームというところはOECD平均をはるかに超えているということで、やはり日本の生徒は学習以外のところでインターネットも含めデジタル機器を使っているということで、OECDの各国と比べると、そういう点で偏りといいますか、特徴があると思っておりまして、それが先ほど9ページでごらんいただいたような平均得点との相関関係の違いに表れているというふうに考えております。
こうした現状を踏まえまして、文部科学省としましては、対応策を三本柱で考えておりまして、まずは、今見ていただいているとおり、来年度から順次始まります新しい学習指導要領をきっちりやっていくということで、先ほど説明させていただきました課題につきましては、新学習指導要領に全て盛り込んでいるというふうに考えておりますので、新しい学習指導要領を着実にやっていくということがあろうかと思っております。とりもなおさず国語科における指導もございますし、教育課程全体を通じた言語能力の育成、それから、先ほど申し上げたデジタル空間でのいろいろな文書に当たっていくという現状を踏まえまして、情報活用能力をしっかり育成していくということがございます。
併せまして、ICT機器の整備を進めていきますので、そのハードの整備、それからハードをどうやって使っていくかということの指導を併せて行っていくということがございます。
最後、すみません、今日、説明を割愛させていただいたんですけれども、このOECDの調査では、いわゆる社会経済文化的背景、御家庭の経済状況あるいは社会文化的な状況と学力は強い相関があるということ、これは世界中の研究で明らかになっておりまして、日本も同様であると。ただし、日本は、その中ではこうした社会経済文化的背景の影響は非常に小さい国とOECDは評価を得ておりまして、これは学校教育の制度の成果だとは思っているんですけれども、それをいかにきちんと維持していって、こうした影響をなるべく排除できる方向で学校教育を充実させていくかということも重要な課題と考えております。
すみません、雑駁ですが以上でございます。よろしくお願いいたします。
【荒瀬主査】 ありがとうございました。
今、全般的に御説明を頂きましたが、今村調整官が御用があって退席されますので、御質問がおありでしたら、お一人程度でしたらお受けいたしますが、いかがでしょうか。
よろしいでしょうか。
このお話は、先日の教育課程部会でも御説明いただきまして、今もお話がありましたけれども、社会経済文化的背景によるところの影響はどういうものがあるのかといったようなことの分析も併せてしていただいておりますので、いずれまた必要があれば、この高校ワーキングでも御説明を頂くことになろうかと思いますが、よろしいでしょうか。
では、今村さん、どうもありがとうございました。
それでは、議事に入っていきたいと思います。
今、御説明いただきましたけれども、日本の高校生たちの課題、高校に入ったばかりだということがありますので、初等中等教育の課題と言った方がいいのかもしれませんが、そういった課題がある中で、高等学校教育をどうしていくのかということが我々の検討課題であります。
今日は、その中で、専門学科の在り方につきましての議論をお願いしたいとまずは思っております。
特色ある教育活動を専門学科として行っていらっしゃる2校にお越しいただきました。それぞれの取組や教育活動について御説明をお願いしたいと思います。
最初に、東京都教育庁より藤井教育改革推進担当部長、東京都立町田工業高等学校から山之口校長先生に御発表いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
【東京都教育庁 藤井教育改革推進担当部長】 こんにちは。教育改革推進担当部長をしております藤井と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
本日は、東京都の高校改革について、特に工業のところを中心にお話をさせていただければと思っております。
東京都教育委員会では、これまで時代や社会の変化、いわゆる多様化する教育ニーズに応える学校であることを目指して、都立高校改革を精力的にこれまで進めてまいりました。この都立高校改革推進計画は、都民の期待に応えるため、都立高校が抱える課題の解決を図り、今後の展望を明らかにする総合的な計画でございます。基本的には10年間の長期計画でございまして、その10年間の計画を都立高校改革推進計画と申しまして、その下に、その実現に向けた具体的な実施計画を策定し、社会状況の変化等を踏まえた改革を推進しております。
今、画面にございますのは、本年2月に策定いたしました新実施計画(第二次)でございます。この第二次では、現在の長期計画の下では最後の実施計画でございますが、今年度から令和3年度までの3年間を実施期間として策定しております。基本的にAIなどの情報技術の進展や学習指導要領の改訂等、都立高校を取り巻く環境の変化を踏まえ、都民の期待・信頼に応え、魅力ある都立高校であり続けることを目的として策定したものでございます。
もう少し簡単に説明させていただきます。
改革のポイントとしましては、これは全ての都立高校に通ずるものでございますが、各学校がみずからの強み、特色を踏まえた目指すべき姿を明確にして、その実現に向けて、魅力化・活性化を推進していくということでございます。
各学校がこれまで都が作った施策の下にやるのではなく、それもそうですが、各学校が、一つ一つの学校が自分たちの魅力をきちんと発していく、強みを発していく、そういったことを目的にまずやるというのがポイントになっております。
また、これらを踏まえた上で、具体的に魅力化・活性化を図るために、方策として次の3点を挙げております。
一つ目が、地の利を生かした専門的・実践的な学びの充実として、いわゆる高大連携や産学連携の推進を積極的に進め、進学やその後の社会・職業との接続の実現を一つのポイントとしております。
また二つ目は、国際都市の特性を発揮した学びの場の創出として、全ての学校が国際交流を推進するとともに、グローバルな教育環境を整備していくということでございます。
続きまして3点目が、情報技術の革新に対応した新しい学びの実現として、情報技術を理解し、使いこなす能力を育成するとともに、個々の生徒に応じて最適化された学びの実現。
以上、3点を改革のポイントとして挙げてございます。
それでは、この二次の取組の中から本日のテーマである工業高校の改善策の一部を御紹介させていただきます。
将来のIT人材の育成に向けて、情報システム系の学科を有する町田工業高校において、IT関連企業や専門学校等と連携して新たな教育プログラムを開発する取組を現在進めております。詳細をこの後、学校の方から説明をさせていただきます。
そのほか、ものづくりへの興味・関心を高め、中途退学の防止にもつながるよう、熟練技術者による高度な技術や最先端のものづくりに触れさせる機会を創出しております。
また、今回の計画では、社会状況や産業構造の変化を踏まえ、中長期的な将来の工業高校の在り方について検討を行うこととしております。
ここで東京都の工業高校の状況を簡単に説明させていただきます。
まず、都立高校全体の状況といたしまして、画面は都立高校の種類を示したものでございます。資料のとおり、現在、全日制課程が173校、定時制課程が55校という構成になっております。
こちらは都立高校の学校数と生徒数をまとめた資料でございます。全日制の工業高校は、科学技術科2校を含め18校でございます。学校数は全体の約10%、生徒数では8,736人でして、全体の約7%を占めているというような状況でございます。一方で、普通科の学校数及び生徒数は全体の約7割から8割を占めているというような状況でございます。
こちらの画面の図は場所を示しておりますが、東京都では、工業高校を広く全都に配置しておりまして、中でも23区には定時制を含め手厚い配置となってございます。
次に、これまでの工業高校改革の取組について、二つ御紹介させていただきます。
まず、画面にございますのが、都立科学技術高校でございます。将来の科学者・技術者の育成をすべく、大学進学を前提とした新しいタイプの工業高校を平成13年度に科学技術高校として江東区に設置しております。多摩地域においても、平成22年度に、多摩科学技術高校を設置しております。
多摩科学技術高校は、小金井工業高校の全日制課程を改編し、初代校長は民間から招聘しております。開校3年目にはスーパーサイエンスハイスクールの指定を受けておりまして、現在、2期目であり、先進的な理数教育を展開しております。
教育における最大の特徴は、いわゆる探求、研究活動でございまして、1学年でプレゼンスキルや課題研究の基礎的知識を学び、2学年で個々の生徒がみずからの興味・関心によりテーマを選定、調査研究し、3年で論文を完成させます。その成果については、各種コンテストで入賞や、大学進学実績等にも表れておりまして、研究活動を発展的に上級学校における学びにつなげております。
また、本年2月には、東京農工大学が隣接しておりますので、この農工大と連携協定を締結いたしまして、現在、高大連携教育プログラムを開発中でございます。
二つ目は、東京版デュアルシステムの導入でございます。
学校と企業が連携し、企業で一定期間就業訓練を行い、実践的な技術・技能を身に付けるとともに、社会人として必要なマナー、資質等を習得し、企業と生徒の合意があれば、卒業後に当該企業に就職することも可能な新たな職業教育の制度を導入しております。
平成16年度に六郷工科高校、平成30年度には葛西工業高校、多摩工業高校に導入し、現在、3校にデュアルシステム科を設置している状況でございます。
学校では、理論を学び、1年生においては5日間程度のインターンシップ、2学年及び3学年においては1か月の長期就業体験により実地で技術を身に付けるというようなシステムとしております。
次に、都立高校における入学者選抜の応募状況について簡単に御説明いたします。
専門高校では、直近の2か年において応募倍率が低下し、工業高校では平成31年度入学者選抜において1倍を割り込んでおります。また、中途退学率は普通科と比較すると高い状況というような状況が続いております。
こちらは工業高校の進路状況でございますが、進路状況につきましては、就職者数が卒業生全体の50%を超えておりますが、大学や専修学校等へ進学する生徒の割合も40%を超えておるというような状況がございます。工業高校の生徒数を小学科別に見ますと、総合系や電気・電子系、機械系の学科の生徒数が多くなっているような状況でございます。総合系というのは、幅広くジャンルを学んで、2年生、3年生になってから電気や機械を選んでいくというようなシステムのものでございます。
都教育委員会では、今年度、広く産業界や高校生、中学生、保護者、教員などから意見を聴取するとともに、産業構造や高卒人材市場の将来について調べるため、工業高校等ニーズ調査をシンクタンクに現在委託しております。今月下旬に中間報告を、今年度末に最終報告受ける予定でございます。
また、今月下旬には学識経験者や経済団体、企業関係者などから構成される高度IT社会の工業高校に関する有識者会議を立ち上げ、各界の専門家の知見を頂く予定となっております。今後、都教育委員会では、工業高校の現状と課題を明らかにし、有識者からの御意見などを踏まえつつ、新しい時代の工業高校の将来像について検討してまいります。
こちらは工業高校におけるIT人材の育成に向けた取組の紹介でございます。
この後、御説明させていただきますが、真に産業界が必要とするIT人材の育成を推進することを目的として、日本工学院八王子専門学校、日本アイ・ビー・エム株式会社と連携し、現在、事業の実施方針や方向性を検討しているところでございます。連携した事業の実施高校として、総合情報科を設置してIT人材を育成してきた実績を持つ都立町田工業高校を想定しております。これまで連携に向けた取組として、今年4月に実施に向け、三者で包括連携協定を締結したところでございます。また、7月には三者の代表による懇談を実施いたしました。8月から検討委員会を設置し、今年度中に報告書をまとめ公表の予定でございます。
さらにこうした事業の実施に向けた検討等の取組以外に、パイロット事業として位置付け、今年度から、日本アイ・ビー・エム株式会社の支援の下、メンタリングセッションなどの事業を既に実施しており、今後も事業支援を含めた事業を予定しております。
こうした学校での取組については、この後、校長から説明をさせていただきます。
【山之口町田工業高校校長】 東京都立町田工業高等学校校長の山之口と申します。
それでは、本校からの説明をさせていただきます。よろしくお願いいたします。
本校は、昭和37年に、機械科、電気科、工業化学科の計3科の工業高校として設置されました。その後、平成13年には、都立高校唯一の総合情報科に学科改編されております。
現在は、1学年で全員共通の学習に取り組み、2学年以降、情報デザイン、アプリケーション、情報システム、電気システム、機械システムの5系列、各1学級で、情報化社会に対応した技術者の育成を担っております。生徒は、みずから選択した系列に所属し、それぞれ情報技術に関連したモノづくり、コトづくりの専門性を磨きます。
なお、次年度から、アプリケーション、情報システムを統合し、情報テクノロジー系列を新設いたします。
続いて、本校の特徴的な取組を御紹介いたします。
まず、Cisco Networking Academyです。
これはコンピューターネットワークの世界的企業であるシスコシステムズが提供するe-ラーニング学習環境で、インストラクターの配置等、一定の条件を満たす学校が認定され、高等学校での認定校は本校を含め全国で6校程度です。
特に本校は、スイッチやルーター等のネットワーク機器が充実しており、多くの生徒が高度で実践的な知識・技能を習得しています。
二つ目は、町工グローバルITエンジニア育成プログラムです。
これは本校独自のプログラムで、2年生を対象に開校する選択科目の一つとして実施しています。この中では、国際理解のため、JICA(独立行政法人国際協力機構)との連携で支援を受けており、このプログラム自体もJICAによる後援を受けております。
また、IT社会やそれを支える業界の現状理解のため、日本アイ・ビー・エム様やシスコシステムズ様をはじめとする企業・団体を訪問させていただいております。
三つ目は、海外スタディーツアーです。
町工グローバルITエンジニア育成プログラムの参加者を中心に、夏季休業期間中、4泊6日の日程で、ベトナムハノイを訪れ実施しています。このツアーでもJICA、NTTデータ、NEC、富士通、カネパッケージ、SWCC SHOWAなどのベトナム事務局や事務所等、多くの法人、企業の皆様に御協力を頂いております。
また、フォンドン大学とは姉妹校提携を結び、キムリエン高校とは直接的な生徒間交流を行っております。
一例を御紹介します。これはNTTデータベトナムの社員の方とフィールドワークを行い、それに基づくプレゼンを行っている様子です。最後に全員での記念撮影でした。生徒も思い出とともに多くを学んでおります。
こちらはキムリエン高校の生徒との交流の様子です。ここでも多様な交流を通じて生徒たちはたくさんのことを学び取っております。こちらも最後に全員での記念撮影になります。
さて、本校とP-TECHの関係ですが、先ほど、部長の藤井から説明があったとおり、都立高校改革推進計画に工業高校でのIT人材育成が位置付けられ、その後の片柳学園様と日本アイ・ビー・エム様との連携協定締結に続いて、新たな教育プログラム開発のために、本年度からパイロット事業を展開しております。こちらが本年度の本校生徒への日本アイ・ビー・エム様によるパイロット事業の概要です。主に2年、情報システム系列の生徒を対象に、4月のIT講話を皮切りに、継続的なメンタリングセッション、各専門科目授業での直接的な指導等、多岐にわたる事業を実施していただいております。
以降、それぞれの具体的取組状況について御説明します。
まずは、IT講話についてです。
平成31年4月18日、2年、情報システム系列の生徒に加え、1年生全員を対象に、日本アイ・ビー・エムの若手社員の方からITの基礎について、また、CTOの方からは、アイ・ビー・エムのAI、Watsonを交えた最先端の技術と未来について講演していただきました。
講演後のアンケートへの回答も、生徒のスマートフォンからサイトにアクセスさせて行う方法を取り、生徒も興味深く回答していました。そのアンケートでは、80%以上が「楽しかった」、「内容に満足した」と回答し、特にWatsonに関しては自由記述の中でポジティブな回答が目立ち、今後の学習や将来について興味関心が高まった様子が伺えました。
次に、メンタリングセッションです。
2年、情報システム系列の生徒を三、四名の10グループに分け、そこに日本アイ・ビー・エムの有志ボランティアの社員の方が1名ずつメンターとして入ります。ここでは、勉強、進路、仕事、ITのことなどについての質問に答えるメンタリングを、年間を通して5回、継続的に行いますが、既に今年の4月17日の第1回を皮切りに、5月15日、7月17日に本校で実施されました。ぎこちなさのある第1回でしたが、写真のように第2回では、メンター社員、生徒とも、互いに打ち解けて活発なやり取りが見られました。
また、この回では、写真のようにアメリカのIBM本社から見えた副社長による講演も行われ、講演後のQ&Aセッションの際には、多くの生徒が積極的に質問を投げ掛けるなど、大きな効果が見られました。
第3回実施のワークショップ「テクノロジーで職業のお助けをしよう」では、メンター社員からのアドバイスもあって、積極的な話し合いが持たれ、各班の発表も充実していました。
毎回アンケートを実施しておりますが、「授業が楽しかったか」、「メンタリングは有意義であったか」との質問に対し、肯定的な回答が第2回以降は90%を超えており、強い肯定の割合が回を追うごとに高まっております。
11月26日に行われた第4回では、対象生徒が箱崎の日本アイ・ビー・エムの本社を訪問し、IBMの最新技術デモやソリューションセンター、セキュリティセンターの見学、ダイバーシティ・インクルージョン研修の受講に続き、ジョブシャドウイングとメンタリンクが行われました。すっかりと打ち解けた人間関係の上に実際の会社施設やメンター社員の働く姿を目の当たりにし、生徒の中の勉強や仕事に対する意識がさらに大きく突き動かされるようであったとの報告を受けております。
また、日本アイ・ビー・エム様からも、多くの社員がメンタリングに参加することで、社員自身も成長できたと感じているとの報告も受けております。
最後に、授業支援について御説明します。
2年、情報システム系列の生徒が学習する専門科目、ソフトウエア技術、ハードウエア技術、ネットワーク技術、プログラミング演習の授業において、今年度は2学期、3学期に1回ずつ、全8回の授業支援を行います。日本アイ・ビー・エム様からは、科目に応じた専門の社員の方々が来校されて、本校の施設を使って既に全ての科目で1回ずつ直接御指導を頂いております。
生徒からは、「難しかった」から「もっと高度なことをやりたかった」まで、その習熟度によって様々な声がありましたが、授業後のアンケートのある科目では、いずれも授業への満足度や授業内容の理解度に対する肯定的意見が90%を超えており、総じて意欲的、積極的に取り組めていることが推察できます。
ここまで今年度、本校で行われているパイロット事業の様子について説明させていただきましたが、こうした取組を年間を通じて継続的・計画的に実施することで、仮に単発的な出前授業等を同じ回数行っても得られない意識の変容や専門性の向上、特に学び続けようとする意欲の醸成には極めて有効なプログラムになり得ると強く感じております。
また、日本アイ・ビー・エム様からは、「ワークプレース・ラーニング」という社会人基礎力育成プログラムの提供も受けており、今後はこれらを含めて、次のステージとなる専門学校までの継続した5年間のプログラムを策定・実施していくことで、より高度な知識・技能を有し、活力にあふれたプロフェッショナルが育成できると確信しております。そしてそれはIT分野にとどまらず、広く各産業分野で応用できると考えております。
以上で、本校からの御説明を終わります。御清聴ありがとうございました。
【荒瀬主査】 どうもありがとうございました。
それでは、御質問は後から一括していただくといたしまして、引き続きまして、大阪市立大阪ビジネスフロンティア高等学校から、平校長先生に来ていただいておりますので、御説明をよろしくお願いいたします。
【平大阪ビジネスフロンティア高校校長】 本日は、お招きいただきましてありがとうございます。大阪ビジネスフロンティア高校の校長をしております平と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、本校の高大連携と探究活動に絞って説明させていただきます。よろしくお願いいたします。
商業高校で学ぶ生徒が大学進学を考えたとき、高校在学中に日商の簿記検定の2級等々を取りまして、指定校等々の制度を活用し4年制大学の、たとえば商学部に進学します。進学先では、従来よくあることなのですが、また一から簿記とは何かということ、一番最初の借方、貸方は、というところから学習が始まるわけです。それらは、高校で学んだことばかりで、「こんなんが大学なんや」というようなことがあり、「こんなんやったら」とモチベーションがすごく下がるというようなことがありえるわけです。また、周りを見渡せば普通科出身者が大勢で、商業科出身者の気持ちが十分に理解されず、孤独になるということがあったわけです。
大学に進学した専門高校生は、こんな課題に直面していたわけです。資格に裏付けられた高い専門性があるにもかかわらず、大学では一からもう一回学び直しを求められるわけです。指定校推薦での進学は、少人数であり、一人又は二人ぐらいというところです。大学の立場に立てば、少人数のための特別プログラムはなかなか設置できないということになるわけでございます。
こうした大学に進学した専門高校生にとっての課題を解決するために、本校では高大接続による解決を検討するにいたったわけです。そのため、これからの社会を見据えて、教育方針の柱として英語とICTと簿記・会計、この三つに絞ることとし、下に書いてある志願者20名というのは後から御説明させていただきます関西大学の話ですが、入学後すぐに日商の簿記検定1級を目指すプログラムに参加できるような体制づくりを連携した大学と始めていくことになりました。結果、特別入学生でゼミ編成が可能となるなど、資質・能力をより伸ばせるように学んでいけるようになりました。
高大7年間を見越したプログラムは、このようなイメージで、Step1から3までは高校で、その後は大学との連携によって、ビジネススペシャリストの育成をめざしています。
連携大学・学部とは特別入学制度を設け、入学試験は実施しません。大阪市立大学は、公立のためセンター試験は受けなければいけませんが、それ以外の大学では入学試験は実施しません。在学中の成績、英語、簿記、情報処理の3つの資格、高大接続科目を中心とした探究活動への取組。そして、高大連携プログラムへの参加という条件で特別入学制度があります。この制度によって、進学先で高校での学びを伸ばすということが可能になっています。具体的には、今、この五つの大学と連携させていただいています。括弧の人数は、特別入学制度によって入学できる人数を示しています。
つぎに、高大接続科目について説明します、高大接続科目では、大学水準の授業を実施し、3年間で9単位学習します。1年次のビジネス基礎の副読本として『ビジネス・アイ』という、こうした本を利用します。また、2年次、3年次では『ビジネス・マネジメント』という、こうした本を利用します。いずれも大学進学を想定した学びを取入れた内容になっており、大学の先生が本校のために執筆してくれています。
こうした科目を中心に、探究型の学習の実践を行っております。ビジネス基礎で『ビジネス・アイ』を副読本として使わせていただき、ビジネスとは何かというような問い掛けに始まり、ビジネスについているさまざまなビジネス○○とか、○○ビジネスについて、まずはイメージから学習を進めていく形態になっております。
そして、ビジネス・マネジメントです。経営リテラシーの育成という観点から、大学での学習内容も一部取入れ、市場のメカニズム等、高度な内容も学習しています。オリジナルテキストである『ビジネス・マネジメント』が、こうした内容を高校生にわかりやすく解説してくれています。
実践的な企業との連携講座をご紹介します。これがビジネス・マネジメント1の事例です。あずさ監査法人と連携し「よい会社、悪い会社を見抜く」ということを学習テーマとし、財務分析の基礎について学びました。1年生で学んだ簿記の知識を活用しまして、企業研究、財務諸表分析等々、何がよくて何が悪いのか財務分析の基礎の勉強を行いました。また、写真のように発表も行う内容になっています。
つぎに、原価計算等々を入れ、マーケティングの視点も入れた、同じくあずさ監査法人と連携した授業を紹介します。学習テーマは高校生にとっても身近で、商品として取り扱いやすい、お弁当です。究極のお弁当をつくるため、ターゲットの選定とか、どこの場所で、大阪で言えば、梅田あたりなのか、天王寺あたりなのか、売るにはどういうターゲットとするかとか、原価とか数々の意思決定を経ながら、生徒たちはゲーム感覚で学びを進めていきます。連携先があずさ監査法人ですので、コンサルティングの経験も豊富な方ばかりのため、ビジネス現場の実際の生きた助言を得て、生徒たちは試行錯誤しながら学びを深めていきます。最終的には生徒みんなで投票し、究極のお弁当を作れるのはどのグループになるのかを楽しみつつ、緊張感をもって取り組んでいます。
グループに分かれ学習を行っており、各グループには公認会計士にアドバイザーとして入っていただいています。具体的には企画段階から公認会計士が付き添って、生徒たちはいろいろと貴重な意見をいただきながら、経営リテラシーの向上を図るための授業を行っているわけです。
本校のカリキュラムでは、ビジネス基礎、ビジネス・マネジメントの1と2で、2年生、3年生、それから課題研究で、探究型の授業を進めています。
連携授業での公認会計士の方との交流を通して、生徒にとって公認会計士が身近な存在になってきました。この春、ちょうど7年の教育を終えた第1期生が卒業しました。現在、大学だけではありませんが、専門学校も含めて、資料に示したように公認会計士を輩出しています。合格した卒業生は、あずさとか、トーマツとか、太陽とかという大きな監査法人で就職して活躍中でございます。そのほか、ファイナンシャルプランナーになったり、ベンチャー企業を自分で立ち上げたりした卒業生もいます。ビジネススペシャリストの育成をめざした最初の7年間で、この春、卒業した生徒が、多方面で活躍しているとのことで、ほっとしているところでございます。
その中で具体的に関西大学商学部の事例を御紹介していきます。
関西大学の商学部との連携では、会計分野での連携プログラムであるALSP(会計連携プログラム)、ビジネス分野での連携プログラムであるBLSP(ビジネスリーダー特別プログラム)があります。本校の強みである英語、探究活動の2分野で連携させていただいております。
本校は、これまでの商業高校のようなあり方でなく選択と集中を行い、学校づくりを進めてきました。これまでの商業高校では、資格、たとえば全商の検定は9種目ありますが、この9種目をいかに全部取るかというように注力しておりました。資格でペーパードライバーのようなことになってきたのではないか、資格を取るためにやっているのではないか、それではいけないといのではないかということが議論になってまいりました。そこで、簿記・会計、ICT、情報処理、に絞ることにしました。従来、就職では、こうした力が卒業生にはあったので、自己肯定感とか有用感というのは高かった。しかし、進学では、特に英語が難しいと大学の方から常々御指摘がありました。逆に、生徒からは、習った簿記をまた一から学びなおすのがおもしろくないというようなことがありました。だからこそ、この課題を解決するために選択と集中を行うこととし、英語、簿記、情報処理に特化することとしたのです。もちろん、これ以外は取れないということではなく、3年生で選択できるカリキュラムとしつつ、全員が取るという、目指す資格というのは、この三つに絞ったわけです。これまで卒業生は大学で自己肯定感が高くなく、英語が弱いとも言われていた部分をカバーするため、カリキュラムの中では外国語科目の英語ではなくて、専門の英語科目を配置することとしました。最近の言葉で言うと、ほぼ英語科と同じようなシステムになっています。留学も含めてです。結果として、英語は得意、簿記・会計もそのままの力を維持し、接続によりさらに伸ばすことができ、大学においても自己有用感、肯定感を持っていけるようになってきた。実際に大学に進学した生徒からは、このような大変役に立っているという感想が寄せられております。
進学先で卒業生たちは、既に簿記もプレゼンも英語も力があるということですので、当然、先ほど言いました自己肯定感等々もあって、リーダーシップやフォロワーシップを発揮し、楽しいキャンパスライフを送っているようです。
実際に関西大学では、最初の方では成績上位5%に全生徒が入った。首席で卒業や、次は3位みたいな子も中には出ております。
選択と集中を行った、つまり三つに絞ったものですから、英語力では、今、2年生で全商英検1級100名を超えるようになってきた。さらにSTEPの2級、ここら辺を100にすることを目標に取組んでいます。簿記は、全商簿記1級も100になっていますが、日商の2級においてもさらにブラッシュアップし、とりあえず100を目指そうというような形で頑張っております。
英語、簿記・会計、情報処理に集中することによって、しっかりその部分は手厚く支援し、大学においても自己肯定感や有用感の高さを保つ。それと、当然、探究活動等々を通して、思考力、判断力、表現力、それから社会人基礎力を向上させ、今後のグローバル社会に対応できる人材を育てていくことをめざしています。また、経済社会においては、先ほど紹介しましたビジネス・アイ、つまりビジネスの目を養うということは大切です。そういう視点を持ってチャレンジする心、すなわち愛(アイ)を持ち、ビジネスに特化した3言語である、英語、会計、情報というところに絞って、グローバル社会で生き抜く力を持つ人財の育成に取組んでいるところです。
学校紹介は今回の紹介とは余り関係ないと思いましたので、最後に付け足しとなりますが、本校は「グローバルビジネススペシャリスト」の育成を目的としています。英語とビジネスを学ぶ「グローバルビジネス科」という新しい学科を作り、今、1学年7クラスの規模の学校でございます。旧天王寺商業の校地に新しい校舎を建てさせていただいております。
私からの発表は以上でございます。ありがとうございました。
【荒瀬主査】 ありがとうございました。
今、三人の方からそれぞれ御説明を頂きました。ここで余り時間は取れないんですけれども、御質問等ございましたら、委員の皆様からお受けしたいと思いますが、いつものように札を立てていただきまして、佐藤委員、では、よろしくお願いいたします。
【佐藤委員】 よろしくお願いします。
まずは、町田工業高校さんにお尋ねします。学校のキャッチフレーズ「モノづくりとコトづくりそして人づくり」は、中学生の皆さんにはどんなふうに御説明していらっしゃいますか。
それから、スマートフォンの使用についてです。アンケート回答にスマートフォンを使用してらっしゃいますが、Wi-Fiの整備は学校の中で進んでいらっしゃるのでしょうか。また、スマートフォンの持ち込みについては、生徒指導上、どんなふうに扱っていらっしゃるのかということです。
大阪ビジネスフロンティア高校さんの方にお尋ねします。検定をたくさん受けさせていますけれども、検定料その他、授業関係の費用は、かなり生徒の負担があるものなのでしょうか。御家庭の経済状況などと併せて教えていただければありがたいと思います。
以上です。
【荒瀬主査】 ありがとうございました。
御質問への御回答はまとめてお願いしたいと思います。
では、内堀委員、お願いいたします。
【内堀委員】 では、お願いします。二つあります。
一つは、町田工業の山之口校長先生に質問です。専門学校とか企業との5年間プログラムというお話をされていたと思うんですけれども、特に上級学校である専門学校との5年プログラムを考えたときに、一方で高等専門学校がありますね、それとの違いというのをどんなふうに打ち出されようとしているのかということが1点です。
もう1点は、ビジネスフロンティアの平校長先生にお聞きします。連携大学に5人から20人ぐらいの大きな入学者枠をお持ちだということなんですけれども、APのようなことなどもやっているので、普通の指定校枠みたいなものとは違うとは思うんですが、大学側が一つの高校と最大20人という枠を設けるということは、大学側がどういうふうに捉えてやられているのかなと。それは恒常的にそうなんですよね。何かあったら減らすとか、そういうことではなくて20人。先ほどほとんどの子が成績上位に入っているみたいなことがあったので、そういうことなのもしれないですけれども、ちょっと信じられないというか、初めて聞くような話なので、どういうことなのでしょうかということを単純にお聞きしたいと思います。
以上、2点です。
【荒瀬主査】 では、清水委員、お願いいたします。
【清水委員】 ありがとうございます。東京都教育委員会の方に質問させてください。
本日は、町田工業さんの御発表いただきましたが、都立の工業高校の構造的なものとして、科学技術高校が二つ、デュアルシステムをされている学校があると思いますが、それ以外に構造化、特色化されているようなことがあれば教えていただきたいと思います。
また、景気の問題や人手不足の関係もあると思いますが、特徴的な学校を作ろうとしたときに、工業科の教員をどのように確保していけばよいのかというのは、多分どこの県でもかなり大きな課題となっていると思います。そういった教員の確保について、どのような御検討がされているか、もしあれば教えていただきたいと思います。
もう1点、大変申し訳ありません。高大接続が今日の一つのキーワードになるかなと思いますが、高大接続を行うに当たっての、一番大きな課題、またそれに対してどのような対応をされているのか教えていただければありがたいと思います。よろしくお願いします。
【荒瀬主査】 最後の御質問は、両校にお尋ねするということでよろしいでしょうか。
【清水委員】 そうですね。
【荒瀬主査】 それでは、香山委員、お願いいたします。
【香山委員】 大変興味深く拝聴しました。スーパー・プロフェッショナル・ハイスクールというのがありますけれども、やはりスペシャリストをどうやって育てていくかという仕組み作りのそれぞれのモデルとして、とてもいいモデルをお作りだなというふうに拝聴しました。
そういう方向性の中で、入学時に学習意欲とか基礎学力が低かった子たちに、どういうふうな手当てをしていかれているのかということについても、少しお尋ねしたいなと思っています。
新しい学習指導要領の一つのシンボリックな科目として、総合的な学習の時間が総合的な探求究の時間に高等学校だけなっていくという中で、これまで「総合的」という言葉の解釈として、例えば普通科でも小論文をやっておけば総合的な学習の時間だよねというレベルだったのが、本当に探求究させないといけないなというふうに全国の普通科も重い腰が上がっている状況なんですけれども、工業や商業の専門高校において、そういう総合的な探求究の時間の代替として課題研究等が一般的に設置されて、それを代替していくというのが主流ではないかと思うんですけれども、果たして学習意欲や基礎学力が乏しい子たちが高校を出るときに、探究心を持ってみずからの在り方、生き方を考えるような、そういうプログラムがなされているのかどうかというあたりが、普通科とともに今後の高等学校の大きな課題ではないかと思うんですが、そのあたりの視点あるいは御姿勢について教えていただけたらと思います。これは両校です。
【荒瀬主査】 ありがとうございました。
では、角田委員、お願いいたします。
【角田委員】 ほかの委員とほとんど同じなのですが、専門学校との5年間のプログラムにつきまして具体的にもう少し教えていただきたいということと、専門高校全体では、今、香山委員がおっしゃいましたが、不適応生徒の問題が大きいかと思います。2校につきましては、その点はどのようにケアされているのか教えてください。
以上です。
【荒瀬主査】 ありがとうございました。
では、奈須委員、お願いいたします。
【奈須委員】 よろしくお願いします。専門の領域について集中と選択であるとか、外部のいろいろなものを使うということで成果を上げていらっしゃると思いますけれども、例えばカリキュラムを拝見すると、半分あるいはそれ以上の部分が伝統的な共通教科の部分で、大阪の方ですと、共通の方もしっかりやるんだということでしたけれども、こういうふうに学校のミッションをはっきりさせて、専門のところを選択と集中で特質化してくるに伴って、いわゆる国語、数学、理科、社会といったような科目の内容とかは変わってきたのでしょうか。あるいは、今度、新指導要領の実施に向けて変えていくということはあり得るのでしょうか。何かそこが連携していかないともったいない気がとてもしますし、これはここのワーキンググループ全体の議論としても、一つずつ学校が特色を出したときに、一番伝統的な教科の部分の内容、内容自身は指導要領で定められていますけれども、それを実際に運営する教材であるとか、カリキュラム・マネジメントの手立ては、いろいろやろうと思えばやれるはずですけれども、そこが何かお取組があるのか、ないとすれば、今後そんなことをお考えなのかということを両校に伺えればと思います。
以上です。
【荒瀬主査】 ありがとうございました。
では、跡部委員、お願いいたします。
【跡部委員】 システム的なところを伺いたいのですが、高大接続の単位認定で、例えば編入につなげることは可能なのでしょうか。
【荒瀬主査】 ありがとうございました。
とてもたくさん御質問が出まして、ただ、もう1件、この後、議論をしていただかなければならないことがございますので、すみませんが、お三方の方から、今お答えいただける範囲で御回答いただければと思います。順に、東京都の藤井部長、そして町田工業高校の山之口校長先生、最後に大阪ビジネスフロンティア高校の平校長先生、この順番でお答えいただければと思います。
では、藤井部長、よろしくお願いいたします。
【東京都教育庁 藤井教育改革推進担当部長】 私から、2点かと思いますので、回答させていただきます。
まず、東京都の工業高校の構造的なお話でございますが、現在、工業高校は18校ございますが、基本的に総合技術科というものを前の改革で作っております。こちらが総合技術科というのが一つの大きな柱になっておりまして、それ以外は従前の機械、電気、電子、建築、建設という形になっております。発展的に作ったのが科学技術高校というところで、今後やはりその辺の構造的なところも、私ども、今月から立ち上げる会議の方で検討を進めていければなというような状況でございます。
2点目の工業教員の点についてですが、もちろん大学の方への説明会とかを精力的に行うとともに、工業高校には実習助手がいますので、その実習助手にさらに力を付けさせて受験を促すというような取組を進めています。
それから、高校生の方には、高校生は毎日の授業で一生懸命ものづくりやいろいろな機器の分析等をやっておりますが、それが将来どんなものにつながっていくのかというところで、ものづくり立志事業と申しまして、その道のプロを呼んできまして、その方から授業を受けるシステムがございます。そういった中で学問の、工業のものづくりの奥深さを学びながら、将来先生になっていけるような、そういった人材の契機になればというようなことを現在取り組んでいるところでございます。
以上です。
【荒瀬主査】 ありがとうございました。
それでは、町田工業高校の山之口校長先生、お願いいたします。
【山之口町田工業高校校長】 まず、標語のところの御説明という話で、本校は、「モノづくりとコトづくりそして人づくり」となっているんですけれども、もともとはいわゆる工業高校で、「モノづくりは人づくり」とあったんですが、これからの社会、やはり情報系のことも含めて「コトづくり」という余り一般的ではないんですけれども、そのことも私はあえて入れました。説明の中では、Society5.0ということをやはりキーワードにして、これからはそういったコトづくりというか、そういったサイバー空間のところについても必要なのだよ、何かそういったものを身に付けて社会に出ていかなければいけないんだよということを中学生の皆さんには説明しています。
それと、Wi-Fiなんですけれども、一応、実習用のものとしては整備されているんですけれども、一般的に持ってきたものをそこのWi-Fiにつなぐということは、今のところは許可されていません。ただ、都立の中でもDYOD(Bring Your Own Device)の研究校がありまして、先日も発表会があったんですけれども、そういった形で進める形は取っております。本校もそういった形で授業の中などで使うことはなくはないです。ただ、これはWi-Fiをつなげているということではないんですけれども、その後、そういうふうになっていく可能性は十分高いだろうというふうに考えてございます。
それと、高専との違いなんですけれども、高専というのは基本的に指導要領的なもので決まったところがあるんですけれども、専門学校の方が結構柔軟に最先端のことをどんどんカリキュラム的に変えていけるという部分があるので、特にITの分野に関しては、どんどん、5年、10年ではなくて、一、二年で変わってしまうというところもあったりするので、そういったところの組み替えが非常にしやすいというところでは、特にIT分野での連携という点では優れた部分になるのかなというふうには感じてございます。
入学時の学習意欲の低い生徒に対してどういうふうに働き掛けているかという点では、工業高校はどうしてもそういった生徒が多いんですけれども、習熟度であるとか、少人数であるとか、そういった形で手厚くしている。もともと35人のところが、少ない人数でやれるというところは都として取り組んでいるところではございます。
あと、もともとP-TECHというのがアメリカで発祥したものなんですけれども、ブルックリン地区の比較的低学力というか、そういった子どもたちをサポートする形ですくい上げて就労支援もしてあげようというような、そういった発想で出てきたところもあるので、工業高校という、それにぴったりではないんですけれども、やはり学力の低い子たちをどうやってすくい上げていって、こういった業界の方につなげていけるかということにもつながるかなと思って、取組としてはそういったところで学習意欲の低い生徒への働き掛けというのは、このP-TECHなどは、ちょうどうちに合致しているのかなと思っております。
あと、探求の時間についてなんですけれども、やはり課題研究での取組をやっていて、ただ、具体的にこの探求をどういうふうにもっと広げていくかということに関して、これは我々も非常に難しい課題ではあるかなと、まさにそういうふうに思っております。
私の方からは、とりあえず以上とさせていただきます。申し訳ございません。まだここは足りないということがありましたら、もう一度お願いできればと思います。
【荒瀬主査】 ありがとうございました。
では、平先生、お願いいたします。
【平大阪ビジネスフロンティア高校校長】 まず、検定料についてですが、全国商業高等学校協会の全商では、比較的リーズナブルでございまして、1,000円から1,800円ほどです。日商の簿記検定とか実用英語検定のように、五、六千円とかということではありません。また、全商は、教科書に準拠した検定範囲ですので、しっかり教科書を理解しておれば、順次通っていくというような検定でございます。
Wi-Fi環境は、本校は一応整備されておりまして、エントランスホールから多目的ホールも含めて、普通教室、会議室等々、プレゼンをするところは全てWi-Fi環境を整えさせていただいております。
携帯電話は、教員の指示の下、使わせております。宣伝ではございませんが、Classiなどを利用し、朝の学習時間である10分の短時間を利用し、携帯で答えるというような授業などもさせていただいております。
それから、連携大学の定員20とかは、やはり関西を盛り上げるという思いと、関西大学がちょうどそのときに会計専門職大学院を作るというようなところもありまして、お互いの意見が一致しました結果です。公認会計士等々のビジネススペシャリストを関西で育てていくという思いが一致したので、20名ということになりました。先ほど御説明させていただいたように、1人、2人では何ともならなかったことが、20名ぐらいならゼミもまとまってできたりするため、20名というふうに聞いております。
それから、改善点、課題等があるのではないかということについては、先ほどお示しいたしました『ビジネス・アイ』と『ビジネス・マネジメント』についてです。これは第2版でございまして、定期的に改訂も含めて、大学と本校の課題を出す場が必要となりますので、定期的に会を持たせていただいております。
入学時、本校はおかげさまで進学をめざしたというところ、それから旧3商の合併だったこともあり、モチベーションを持った生徒が入学してくれています。先ほど、天王寺商業の跡と言わせていただいたように、本校は天王寺商業と市岡商業と東商業の統合で新たに開校したこともあり、伝統と歴史のある100年近い商業高校の継承が行われています。そのため、就職はもちろん、新たに進学が加えられ、さらには高大連携の宣伝、PRができるため、モチベーションを持った子が入ってきていただいています。大阪では、入学者選抜の問題には3種類、A問題、B問題、C問題があり、発展問題がC、標準がB、基本がAというようになっており、本校は英語はC問題、発展で、モチベーションがあり、英語に興味関心のある子が入ってきています。周りの商業高校とは、少し違う特色があり、今、頑張っておるところです。ですので、入学時は英語、ビジネスに興味を必ず持っている子が入ってきており、不適応というのはございません。
カリキュラムについては、本校は、商業の部分も減らさずに、いかに英語、それから特にうちは語学ということで国語に力を入れるかを工夫しています。カリキュラムを見ていただいたら分かるのですが、週3日7時間授業をし、商業の科目を減らさず、大学に入ったときに普通科の子にも負けないというカリキュラムにしております。
課題研究については、4月の当初、連休ぐらいまでに課題の設定を、つまり、何の課題に取り組むかということで設定し、5月、研究テーマが決まったところで、なぜそれを選んだかという1分間スピーチを全員にさせ、7月には中間レポートを提出する。夏休みを挟んで、9月にはそれのプレゼンをしてもらいます。最終的に11月に論文提出、A4の用紙で5枚から10枚程度で出させております。年明けて1月には、そのプレゼンで、クラス代表を決め、学年でクラス代表がプレゼン大会を実施します。それを1、2年生にも見せるというような取組をしております。
最後に、大学との単位認定というのはやっておりません。入学時にすでに日商の2級とかを持っているため、簿記の入門ではなく、簿記の演習、つまり基礎科目でなく発展科目から履修させていると大学の方は言っておりました。普通科からの入学生は簿記の入門の講座を、本校のような資格をしっかり取った入学生は簿記演習をということで、履修する講座が違う、次のステップに進めるようにという配慮いただいています。
【荒瀬主査】 ありがとうございました。
御質問を頂いた委員は、もう少し突っ込んでということもあろうかと思いますが、時間の関係がございますので、大変申し訳ありませんが、このあたりで一旦おしまいにしたいと思います。
御発表いただきました3人の先生方はもちろんのこと、御一緒いただきました皆様にも厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。
では、次の議事に移りたいと思います。
このワーキンググループは、7月25日に第1回会議を開催した後、これまで4回の会議を開催してまいりました。この間、いろいろとヒアリングも重ねながら議論をしてきたわけでありますけれども、本日は、検討事項の1番といたしまして、「生徒の学習意欲を喚起し能力を最大限伸ばすための学科の在り方等について」という諮問事項に関わることにつきまして、議論をお願いしたいと思います。また、それと併せて、10月16日及び11月12日に開催されました「新しい時代の初等中等教育の在り方特別部会」での審議につきましても、事務局から御説明を頂いて、議論していきたいと思います。
では、酒井参事官補佐、よろしくお願いいたします。
【酒井参事官補佐】 そうしましたら御説明させていただきますが、すみません、時間が押しておりますので、簡潔に絞って御説明させていただきたいと思います。
まず、新しい時代の初等中等教育の在り方特別部会での高校ワーキング関係の発言概要につきまして、資料4でおまとめをさせていただいております。説明すると時間が掛かってしまいますので、この資料4をもって説明に代えさせていただきたいと思います。
その上で、資料5でございます。生徒の学習意欲を喚起し能力を最大限伸ばすための学科の在り方等に関する具体的な論点についてでございます。
すみません。これも押しておりますので、委員の皆様には事前に資料を配付させていただいておりますので、本日は、一番最後のページ、具体的論点の概要をもって御説明をさせていただきたいと思います。
これまでの議論の整理でございますけれども、各高等学校に期待される役割や直面する課題、そして各高等学校に求められる教育の在り方は様々であろうと。そして、生徒の学習意欲と関心を喚起し、一人一人の能力を最大限引き出す教育の実現のためには、学校が育成を目指す資質・能力を学校教育目標として具体化し、その実現に向けた学校経営改革が必要ではないかということでございます。その際に重要となりますのが、各高等学校のPDCAサイクルの確立ではないかというものでございます。高校学校教育の入学から卒業までの方針を、一貫性・体系性あるものとして構築していくことが必須でないかといったところがこれまでの御議論をまとめさせていただいたものでございます。
それを踏まえまして、今回、事務局の方から御提案させていただきますたたき台を御説明させていただきます。
大きく論点は二つに分かれております。
一つ目は、スクール・ミッションの再定義というものでございます。
各学校におきまして、各学校が育成を目指す資質・能力を学校教育目標として明確化しまして、校長がカリキュラム・マネジメントを適切に行う、こういったことで教育活動を展開していくということが、まずこのラインを作ることが重要ではないかというふうに考えてございます。
そのため、各学校においてどういうことが必要になってくるかというと、どのような資質・能力を生徒に育むことを目指して、どういった教育課程を編成して、編成した教育課程の下でどういった授業を行っていくのか。そして、そういった授業の実現に向けて、人、予算、時間、情報、施設設備、教育内容といった学校の資源をどう配分していくか、学校のマネジメントを確立するためには、まずは学校が育成を目指す資質・能力を明確に設定することが特に重要なプロセスではないかというふうに考えております。
そのため、まず各高等学校の設置者において、各学校と適切に連携しつつ、在籍する生徒の状況でありますとか、社会や地域の実情を踏まえまして、各学校に期待される様々な社会的に期待される役割、スクール・ミッションを再定義することが必要ではないかというふうに書かせていただいております。
その上で、各高等学校は、このスクール・ミッションに基づいて学校として育成を目指す資質・能力を検討し、学校教育目標として明確化を図っていくことが必要ではないかというふうに示させていただいております。
とりわけここで課題になってまいりますのは普通科でございます。概要資料の論点1の水色の中をごらんいただければと思いますけれども、普通科においても、これまで様々な課題が指摘されてきたところでございます。普通科につきましては、現行法令上、普通教育を主とする学科、普通科であると定義をされておりまして、普通教育及び専門教育について、各学校の実態に応じてその双方を行うというふうにされてきたところでございます。そのため、普通科においても生徒の特性でありますとか、進路でありますとか、学校や地域の実態を考慮して、職業に関する学びも含めまして、特色ある教育課程の編成が求められてきているといったように考えております。
普通科高校をめぐる課題としましては、一斉的・画一的な学びがあるのではないかとか、大学受験に必要最小限な科目以外については、生徒が真剣に学ぶ動機を低下させているのではないかといった課題が指摘をされておりますけれども、普通科においても、その目指すべき教育の姿は一律のものを求められているのではなくて、各学校に期待されるスクール・ミッションを踏まえまして、目指すべき資質・能力を育成するために、各学校が特色ある教育を展開する、このことは当然に期待されているのではないかというふうに捉えております。
普通科高校においても、この水色の中のマル1からマル8を例示として挙げさせていただいておりますけれども、例えば、こういった様々な役割が期待されているのではないか。そして、この役割については、単一の役割ではなくて、複数の役割が併有することが期待されているのではないかというふうにさせていただいております。そして各高等学校に期待される社会的な役割でありますとか、それらの役割の比重の置き方、これは設置者や各学校の選択によって様々なものであろうと。その選択を通じて、各高等学校の特色化、魅力化の方向性が表れてくるのではないかというふうにまとめさせていただいております。
したがって、普通科の高等学校がスクール・ミッション再定義に当たっては、各学校にどういった役割が期待されていて、何をどのように重視するかといった観点から、役割の選択とその比重について検討を行うことが必要ではないかというふうに御提案させていただいております。
特に公立高校の設置者がこの普通科のスクール・ミッションの再定義を検討する際、いわゆる進学重点校、中堅校、進学多様校のような、これはいわゆる民間受験業者等が行います偏差知的な学力で定義する趣旨ではないといったことには理解が必要ではないかというふうにも書かせていただいております。
なお、この普通科高校のスクール・ミッションの再定義に当たっては、黒丸で下から二つ目でございますが、離島や中山間の高等学校においては、水色のマル1からマル8の全ての役割を期待されている場合もあるというふうに考えてございます。これは地域で唯一の高等学校であるといったところからのものでございますが、こういったことには留意が必要なのではないかということで、今後、もう少し具体的な検討が必要ではないかといったところでございます。
さらには、普通科の各高等学校はスクール・ミッションを踏まえた特色、魅力ある教育活動を展開するために、例えば、現在、普通教育を主とする学科の設置形態、これは普通科のみとされているところでございますが、この設置形態の大綱化などについても、更なる検討を実施してはどうかというふうにさせていただいております。
そして、このスクール・ミッションの再定義に当たっては、普通科に限らず、総合学科、専門学科全てでございますけれども、都道府県においては、域内の公立高校の配置及び規模の適正化の観点も踏まえました再定義が必要ではないかと考えております。
続きまして、論点2、スクール・ポリシーの策定でございます。
各高等学校においては、スクール・ミッションを踏まえまして、育成を目指す資質・能力を検討し、学校教育目標において明確化・具現化することが必要であろうというふうに考えております。
そのため、各学校は、学校教育目標で掲げる目指すべき資質・能力の育成に向けて、学校全体で組織的に継続的に取り組むためのスクール・ポリシーを策定し、適切なカリキュラム・マネジメントの下で実施していくことが必要ではないかというふうにさせていただいております。
そのスクール・ポリシーは、一つは卒業の認定に関する方針、もう一つは教育課程の編成・実施の方針、最後に入学者の受け入れに関する方針の三つのポリシーでございます。
なお、校長がカリキュラム・マネジメントを行う上では、学校組織の改善・組織編制の見直しを踏まえた学校経営の見直しが併せて必要ではないかというふうに考えているところでございます。
さらには、公立の高等学校においては、スクール・ポリシーに応じた教育活動に各学校が取り組み、校長の適切なリーダーシップであるとか、学校経営体制を確立するに当たっては、コミュニティ・スクールの導入が非常に有効ではないかということでまとめさせていただいているところでございます。
なお、今後、本日は検討事項1について資料をまとめさせていただいておりますが、検討事項2、3については、順次検討をお願いしたいと考えているところでございます。
説明は以上です。
【荒瀬主査】 ありがとうございました。
最後のページを使って御説明を頂きました。本文はこの手前にあるわけでありまして、これまで議論してきたことをまとめていただいているということです。今日の御発表もそうですし、これまでヒアリングをいたしました各高校のお取組も、まさにここに書かれているようなものに非常に重なるところがあるように感じております。
これにつきましては、今日残りの時間、御議論いただくわけですけれども、大変恐縮でありますが、先ほど、奈須委員から、これからの学校のミッションを考えたときに、カリキュラム上でどういった工夫が必要なのだろうかという御質問を頂いて、一部お答えを頂いたわけですけれども、そういった問題意識を少しお示しいただけると、大変今後の議論に資するのではないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。
【奈須委員】 今日、2校の御発表を伺って、専門高校ならではのまさにスクール・ミッションを明確に定義し、それへ向けての具体的な戦略が伴っていたと思うんです。専門高校ですから、当然それは基本的に専門科目の再構造化というあたりにあったと思うんですけれども、それに伴ってカリキュラム全体、今日考えたかったことは、国語、数学、理科、社会といった伝統的な教科は、多分、普通に教科書を使って各先生方が自分の専門性に応じてやっていらっしゃる。すると学校全体のスクール・ポリシーとか、スクール・ミッションとか、あるいは生徒たちが学校に行って、1日こういうふうに学びを深めたいということが、ある種、二分化するというか、層別化してしまうおそれがあるわけですね。これは結局、大学の昔の旧一般教養をどう考えるかなどという話とも同じ話で、日本の大学の教養教育がなかなかうまくいかなかったのも、専門教育とは別に、それと余り関わりを持たないものとして教養教育をやってきたということがかつてあったと思います。
似たようなことはここにもあると思っていて、例えば、今度、新しい教育課程になるときに、歴史総合などという科目は、近代から今に至る歴史の事実を、それに基づいて今の社会がどうなっていて、今後、自分たちがどう社会を作っていくかというふうな科目として歴史総合ができていますよね。そうすると、工業高校と商業高校だと、僕は変わってもいいと思っていて、例えば工業高校だと、近代における科学技術の進展と、それに伴う社会の変化、あるいは、植民地支配などということも、産業革命に基づいて進展したわけですから、それを人間がどういうふうに乗り越えようとしてきたかなどというふうに、科学技術とその利用というテーマ性を持って近代を読み解くということは工業高校で可能だろうと。商業高校であれば、例えば資本主義。そこを中心に資本の集中、あるいはそれのグローバリゼーション、あるいはそれに基づいて様々なことがどんなふうに進行したかなどという話は、ずっとこの100年の話としてやれるわけで、例えばそういうこととして歴史ということを工業や商業の子が学んでいけば、まさにそれは教養になるでしょうし、それはただ知っているのではなくて、これからそれぞれのスペシャリストとして生きていく上での生きて働く教養になるのではないか。そうなったときに、大学の入試が解けるかという話になると、またちょっと別の話がありますけれども、これは大学入試が、今後、コンピテンシーベースに変わっていけば問題がないかなと。
それとの関係があると思いますが、国語にしても、工業高校や商業高校での国語ということが、国語の基礎を培いつつも、ある種の特質化というのは可能だろうし、理科などもそうだと思うんです。化学を学ぶというときに、工業高校の化学と農業高校の化学と商業高校の化学はそれぞれにやり方があるはずで、そういったことを模索していけば、教育課程全体が、余り偏りがあってもいけないんですが、まさにこれは選択と集中というのをどういうふうに考えるかですが、ただ、生徒が自分のキャリアビジョンを描き、自分自身を形成しつつ、そこにおいて教養と専門性がどういうふうに有機的に統合していくかということが考えられていいだろうと思うんです。これは普通科もまさにそうで、普通科が新たにミッションを定義して、工業高校や商業高校ほど先鋭的で明確なものにはあるいはならないかもしれませんが、そこに描いたものに対して、国語、数学、理科、社会といった各教科がどんな位置付けやどんなスタンスで絡んでいくのかということがまさにカリキュラム・マネジメントで、そういったことをどう議論するのかということが、重要なんじゃないか。そうしないと、結局、スクール・ミッションとかスクール・ポリシーを描いても、単なるお題目に終わる可能性があって、せいぜいそれが特質化された教科科目、あるいは特質化された授業、あるいは外部との連携といった一部のものになってしまっては弱いと思うんですね。全体を構造化していく、特に時数的には圧倒的に多い教科の、それはまさに逆に言うと、国民教養としての教科の部分ですが、高校である限り、国民教養として共通に身に付けるべきだと学習指導要領上なっている内容や資質・能力があるわけですけれども、それがどのような角度というか、モチーフで学び取られるかは、学校によってかなりカラフルになってきてもいいと僕などは思いますけれども、そのあたりをどう考えるかというのは、今回非常に重要だなと思います。
以上です。
【荒瀬主査】 ありがとうございました。
今のお話を聞いていまして、高校教育では、これまでずっと議論されてくる中で、常に共通性と多様性という言葉が、これをどう両方を重ね合わせていくのか、乗り越えていくのかという議論がいっぱいあったわけですね。その共通性というのが、今、国民的な教養を身に付ける場所としての高等学校の在り方、ただし、その高等学校は、今現在、実に多様になっている。そういう中でどう学校としてのまさにミッション、そしてまたポリシー、そういうものをどう作っていくのか。それが教育課程として実現していかなければ、単なるお題目に終わってしまうのではないか。というようにお聞きしたのですが、いかがでしょうか、今の御意見は一つの方向性を示してくださっているわけですけれども、委員の皆様の中で、お考えのことをどしどし出していただきたいと思います。
では、山口委員、お願いいたします。
【山口委員】 今、奈須委員がおっしゃっていたとおりだと私は思っておりまして、私は普通高校と専門学科、総合学科の全部に勤務したことがございまして、その中で現実の生徒たちの姿を見て、その中でそれぞれの学校でどういう方向に持っていくかべきかということを突き詰めていきますと、まさに先ほどの問題の出口に当たってしまいます。標準化して日本がここまで非常にいい教育をしてきたというこの姿と、目の前にいる生徒たちの現状とのずれがあるんですね。それをより目の前の生徒たちに合わせて、もっと専門的にやっていきたいと思うと、ぶつかってしまいます。例えばコンソーシアムで外の大学であれ、企業と連携したいと思っても、実際に具体的にカリキュラムでどうするかといいますと、月曜日から金曜日の中で、1週間に午後2日間ぐらい開けられるのか、そこの高校からある大学や企業に行くまでの時間を考えて、実際にそこで勉強する時間との関係とか、現実的な問題が出てくると思います。でも、今回この問題に焦点が当てられたというのは、とてもいいことだと思っていますので、思い切ってそこのところに踏み込んでいくべきではないかというふうに、学校の現場の担当者としては思います。
以上でございます。
【荒瀬主査】 ありがとうございました。
それでは、この順でお願いしたいと思います。岩本委員、角田委員、鍛治田委員、清水委員、長塚委員、佐藤委員、牧野委員、その順でお願いいたします。
【岩本委員】 いいですか。
【荒瀬主査】 お願いします。
【岩本委員】 今回、学科の在り方というところで見たときに、今日の専門学科の事例が非常に示唆するものが多かったなというふうに感じました。それは何だったのかというと、一言で言うと、社会に開かれつながる学科。今回でいえば専門学科だったと思うんですけれども、社会に開かれつながる学科の在り方が示されたなと。
その中でも三つほどポイントが、特に多様化というところにおいてはあったなというふうに感じました。
一つ目は、何とつながっていくのかというときに、やはり専門学科であれば、その専門性の先、普通科であっても、生徒たちの学びの先にある産業界であったり、大学であったり、それは地域かもしれないですし、そういった先にあるものとの協働体制の構築というようなところがポイントとしてあったなと。やはり継続的、計画的な教育課程としての取組というところにおいては、単発ではなく、協働体制の上でカリキュラムの構築だとかを進めていくという上で、一つ目はその協働体制の話だったなと。
二つ目としては、何を協働していくのか、つながる先に何を見ていくのかというところで、一つは、言われていました目標だったと思います。それは資質・能力を握っていくというところを超えて、出口の話です。進学や就職というようなところまで踏み込んだ事例も出てきていましたし、もっと言うと、出口の先でした。大学に行ってからというところまで、高校の中でどういう資質・能力を評価するのか、これを考えるに当たっても、出口とその先までという、目標においてはこういったことが示唆されていたなと感じました。
二つ目は、内容における協働というところにおいては、教材だとか、技術だとか、機材といったところの活用、若しくは場を使うという意味においては、インターンとかでやるみたいな話。もしかしたら、今後、お金みたいなところ、企業等とも、産業界も含めて、奨学金だとか、留学だとか、そういったところも場合によってはつながっていくというようなところもあるのではないか。
三つ目は、さらに連携、つながるというところで、人の話もありました。企業からメンターとして関わる、若しくは講師として専門性だとか最先端のこれからの時代のものを学び取るというところに、人もつながっていくような在り方というところが示唆されてきたのかなと思います。
最後に、それを踏まえて、では、学校やこれからの教員の役割はどういうことが示唆されたのだろうかということを考えると、各教科の専門性を基盤にしながらも、一つはリソースコーディネーターとして、生徒たちの様々な学びの必要なものをつないでくるというような機能。
二つ目が、カリキュラム・マネジャーというような、要は、様々な教材だとか内容があっても、それをカリキュラムとして、学習のプロセスとして再構築していくというところを各教科を中心にしながらカリキュラムのマネジメントをやっていくという部分。
そして三つ目が、やはり生徒の学びに寄り添った学びのファシリテーターというような役割が、今後、学校そしてその中での、特に教員のこれからの時代の求めるものということが先ほどの話で示唆されているのではないかというふうに感じたところです。
以上です。
【荒瀬主査】 ありがとうございました。
では、角田委員、どうぞ。
【角田委員】 頭が悪いのかもしれませんが、スクール・ミッションの再定義というのは、設置者がするんですね。ということは、当初より話題に上がっていました類型化とはどういう違いがあるのか教えていただきたいと思っております。各学校が、自分のところはこういう学校になりたいという特色作りに向かうというお話を今までこちらの会議でも事例でお聞きしてきたと思っておりますので、高校側から上がるものと、ここに連携しつつという言葉がそれを表しているかもしれないんですけれども、トップダウンではない改革というものへのモチベーションや、それらへの働き掛けや、仕組みについてはどう考えていったらいいのかということが1点です。
スクール・ポリシーの策定等につきましては大賛成で、そのときに、コアカリキュラムがあるとはいえ、たとえば1日のうち半分は校外に出ていっていいんだとか、もっと柔軟なカリキュラムも含めて、これから構築できたらいいなと思います。1年のときに文理分けをするようないまの普通科教育から脱却することを目指したいと思います。
以上です。
【荒瀬主査】 ありがとうございました。
それでは、鍛治田委員、お願いいたします。
【鍛治田委員】 通信に来る生徒の中で、7割の普通科出身の子たちがほとんどです。今、新入生は増えていますけれども、本校で言うと5分の4はその7割の普通科出身の子たちが来ています。その子たちは、中学校のときは楽しく学校にいってたけれども、高校で全日制に入って合わない、既存の学校に合わない、今の教育システムに合わないということが、一番課題があるのではないかと思っています。
先ほど、共通性と多様性という話がありまして、多様性はこれからとても重要だと思いますが、どうしても明るい子がよい、できる子がいい、はきはきしている子がいいという価値観を知らない間に学校の中で押し付けていないか。あなたらしくてよいというようなところが欠けているのではないかということを心配しております。
これからスクール・ミッションを再定義する中で、ここに学校にどういった役割が期待されてというのがありますけれども、社会が求める像を子どもたちに言うのではなくて、先ほど、生徒の学びに寄り添ったファシリテーターの必要性というのがありましたように子どもたちの声に沿う、このあたりがかなり重要になってくると思います。子どもたちの現状と乖離しないような、そんなふうに進めていけたらと思います。
以上です。
【荒瀬主査】 ありがとうございました。
それでは、清水委員、お願いいたします。
【清水委員】 資料に設置者と各学校との適切な連携というキーワードがありますが、その通りだなと思いつつも、現状では学校任せになってしまっており、ばらばらな状態になっているように思います。設置者との適切な連携というのは非常に重要なキーワードですが、これは国としてどのような形で関わっていっていただけるものなのか、各県、都、道等にお任せしてしまうような形なのか、そのようなところで、ぜひリーダーシップを発揮していただけると、ありがたいと思っています。
課題の一つに、先ほども、教員の確保という話をさせていただきましが、その学校のミッションを描いて、いろいろなことを考えて実践しようと努力していますが、先端的なことをやろうとすればやるほど教える人がいない、絵は描けても人がいないと、最終的には、どうしても実現ができません。そういう意味でも、先ほどもコーディネートする力であるとか、ファシリテートする力であるとか、社会をしっかり理解できている、そういった教員の確保というものもかなり重要な役割になっていくのではないかと思います。それができれば、ミッションに合った絵がしっかり描けて、学校の経営がしっかりできていくのではないかと思います。
しかし、当然のことながら、ファシリテートやコーディネートする力だけではなくて、本人がしっかりと先端的な力を身に付けていくことも重要なことですので、そういった教員の確保がいかなる方法でできるのか、具体的な策を考えていかなければならなりません。
いろいろなことを考える中で必ず最後にそこに当たってしまって、その先になかなか進めない、大きく舵を切れないというところも大きな課題でもあるということであります。
最後に、奈須委員から、共通科目のことであるとか、専門科目のある意味融合的なお話も頂きましたけれども、できればそういう形を進めていきたいというのは願いでもあります。様々なところで社会の問題、Society5.0というキーワードもありますので、5.0に至るまでの様々な流れ、そういったものの歴史だとか、いろいろなことを踏まえながら、専門科目の学びを進めていくのは非常に重要なことであると思います。しかし、最後はどうしても大学進学というところに突き当たってしまいます。大学への進学方法についても、例えば、高校では、5年間を見据えて、2年間の専攻科を設けている学校もありますが、専攻科ではなく、高専化することはできないでしょうか。高専というのが、これまでのように単純に5年間の高専ではなくて、3年間の工業高校にプラス2年間、大学と協働しながら教育を行う新しいタイプの高専をつくるなど、制度の見直しなどにも踏み込んでいただけると進学に対する方向性も変わっていくものと思います。工業高校を高専化し、そして、高専から大学に進むなど、いろいろな道が開けていくとよいのではないかと思います。そのようなことも検討材料の一つにしていただけるとありがたいと思います。
以上です。
【荒瀬主査】 長塚委員、お願いいたします。
【長塚委員】 ありがとうございます。多様な高校を作るということでありますが、高校を中学生が選ぶとき、つまり、高校に進学する中学3年生の段階で、将来のキャリアイメージまで含めて、各高校を把握するのは非常に大変で、実はその十分な理解がないまま高校に上がろうとしている実態の方が多いのではないかと思います。だからこそ、それぞれの高校の在りようをより明確にしようということではあるのですけれども、子どもたちの発達段階からすると、実際に高校に入ってから、いろいろ基礎的なことをやっていくうちに将来が見えてくるという方が、案外自然というか、普通なんじゃないでしょうか。ですから、無理やりに高校をいろいろな形にして、さあ、選べと言われても、実は難しい面があるということも理解しておかなければいけないだろうと私は思います。
ちなみに、中高一貫校が私立だけではなくて公立にも増えてきているのは、中と高の間は、学びのつながりをスムーズにした方が良いということもあります。高校段階での学びでじっくりと考えていくというようなこともあっていいわけです。そういう子どもたちの多様な発達段階や、最近の複雑化し、高度化した進路形成の難しさを考える必要がある、それが1点目。
2点目は、奈須先生もおっしゃっていましたけれども、大学入試がコンピテンシーベースになっていかないと、そこがやはり妨げになって高校の多様な教育を展開しにくいということもあるだろうと思います。複数回、入試を行うという考えが大学入試改革の方向性としてうたわれてはおりましたけれども、そのためにはやはりコンピテンシーベースでなければできないのだと思います。その際、先ほどのご発表にあった実務系、専門系のいわゆる資格検定、これはまさにコンピテンシーの一つで、高大接続の上でも非常に有効なもの、しっかりとした到達度評価がされるものとして必要だということを感じました。
その上で3点目に、高校の基礎教育は、やはり大綱化していただかないと、コンピテンシーベースにはならない。基礎科目の探究をしているうちに専門性をどういう方向にするかというような進路選択なり、キャリアイメージが生まれてくるのではないかと、そのためには基礎の段階から細かな科目のコンテンツで縛るのではなくて、幅広く探究できるようなカリキュラム構成にしていくことがこれからは重要ではないかというふうに思います。
最後に、学校のミッションを再定義するということなのですが、今言ったような、これを進めにくくしているものは一体何なのかということをしっかりと考えないと、再定義するという現場はなかなか難しいというふうに思います。
以上です。
【荒瀬主査】 ありがとうございました。
では、佐藤委員、お願いいたします。
【佐藤委員】 お願いします。私も設置者が各学校と適切に連携しながらスクール・ミッションの再定義をするというちょっと踏み込んだ御提案をしていただけるというのは、非常に有効な形で進められるのではないかと思います。先ほど、清水委員がおっしゃったように、そのあたりは文科省の方でしっかりリーダーシップを取っていただいて、決して各教育委員会に丸投げするようなことのないようにお願いしたいなと思っております。
今日、私は、Wi-Fi環境の整備の状況や、先生方の配置のことなどいろいろお尋ねしたり、お聞かせいただいたりしました。これから生産年齢人口がどんどん減少していって、それぞれの市町村、都道府県のお金が減っていく中で、公教育をどういうふうに維持していくかということは、いろいろな方面から考えなければいけないことなのではないかと思っております。
そんな中で人材の確保もしなければいけないということで、まさに選択と集中ということが非常に重要なのではないかというふうに思っております。是非そのあたりもバランスを取りながら進めていただければというふうに思っております。
以上でございます。
【荒瀬主査】 ありがとうございました。
牧野委員、お願いいたします。
【牧野委員】 この議論は、できれば本当はもっと長くやりたいので、前半の部分をもう少し時間配分を考えていただければありがたいのですけれども。
私は、行政の首長で、そういう立場もあるんですけれども、小学校から中学校、それから高校、大学、それぞれの皆さん方に講義をずっとやっている、そういった立場もあって、更に高校卒業後あるいは大学卒業後の就職先として、市役所の最終面接を担当させていただいている立場もあって、そういう中で、この議論を地方の首長から見てみますと、普通科は、確かに先ほど奈須先生がおっしゃったように、国民としての教養を学ぶという部分はあるんですけれども、それでも自分の生まれ育ったところがどんなところかということをちゃんと学ぶということも、その中にちゃんと含めてやっていただきたいという思いはすごくあります。
結局、高校が地方から見て人材の流出機能を担ってしまっている、人材の流出機関になってしまっているこの状況、それは普通科において一番顕著に出ているというのが実際のところであります。それはどうしてかといいますと、まさに今の議論、自分たちの地域、生まれ育った地域を学ぶ機会が、まだ小学校、中学校の義務教育ではそれなりにあったものが、高校の3年間においては全くない。そういった中で高校を卒業すると、普通科の生徒たちは大半が地域を一旦離れていく。そういった地方における最大の問題があるわけです。そういった子どもたちは、自分たちの住んでいたところは何もないところだと思って出ていきますので、それでは帰ってくるわけないんです。これが東京への一極集中が続いている一つの要因になっているわけですね。
そういったことを考えると、本当に普通科というのは一体何のためにあるのだろうということを考えなければいけないと思うんです。私ははっきり申し上げますけれども、役所の最終面接で、地域のことをちゃんと学んできた皆さん方と、ただ最高学府を出てきた皆さん方と面接をしていても、例えば、あなたは飯田はどんなところだと思いますか、どんな課題があると思いますか、それに対してどんな解決策を考えますかということを聞いた時、それはもう地方のことを学んできた高卒の学生の方がいい答えを返してくるんです。そういうことから、まさに最終段階の目標は大学ではなくて、その先の自分たちがどこで生きていくのか、どういったところで生きていくのかということも含めて人生設計を考えたときに、普通科の在り方が、今のままでいいとは私にはとても思えない。是非そういった今の地方の状況をしっかりと捉えた形で普通科の改革をやっていただきたいと申し上げさせていただきます。
【荒瀬主査】 ありがとうございました。
時間は4時を回っておりますけれども、内堀委員、御発言をよろしくお願いいたします。
【内堀委員】 では、時間も来ていますので簡潔に申し上げます。
今回、事務局の方でまとめていただいたこのペーパーに関しては、大枠では賛成です。
その上でなんですけれども、二つ、一つはスクール・ミッションに関して、もう一つはスクール・ポリシーに関して、申し上げたいことがあります。まず、スクール・ミッションの方ですけれども、「設置者が各学校と適切に連携しつつ定める」ということは、理屈上は正しいと思いますが、現実的にその後、これがいろいろな教育活動に反映されていくということを考えると、もうちょっと学校が、スクール・ミッションの決定を含めて学校の運営や教育活動に主体性と当事者意識を持つことが重要なことなんだということがわかるような形の表現にしていただけるのがいいのかなと思うのが1点。
もう1点は、様々なスクール・ミッションについて例示をしていただいていて、その例示から「役割の選択と比重について検討を行う」という表現をされているんですけれども、基本的にはこういった例示を踏まえて「適切に定める」というような方向性・表現の方がいいのかなと思いました。
2点目は、スクール・ポリシーに関してですけれども、今回出していただいたつくりが、育成を目指す資質・能力を学校教育目標に落とし込むというところからスタートしています。これはちょっと、自分としては違和感があるのですが、それはなぜかというと、第2回の会議で長野県教委の3つの方針のつくりを説明させていただいたときにも申し上げたんですけれども、目指すべき資質・能力は、やはり生徒育成方針、ここでいうグラデュエーション・ポリシー、として落とし込まないと、それと関連する教育課程の編成・実施方針とのリンケージが図れないだろうと。なぜならば、卒業認定に関わることと、教育課程の編成・実施方針がリンクするのか、それとも各学校が目指す子どもたちに付けたい力そのものと教育課程の編成・実施がリンクするのかと言えば、後者だというふうに思うからです。
その上でなんですけれども、先ほど、奈須先生がおっしゃった部分だとか、岩本委員がおっしゃったようなところもそうですけれども、教育課程の編成・実施方針のこの「実施」の中身は物すごく多様になってくると思われます。地域と協働するとか、大学と連携するとか。私も上田高校にいたときに、学校改革はパッケージでやらないとだめだと言い続けました。進路だとか、学年だとか、教科だとか、学校は意外と縦割りなんですね。そうすると、どこかの部分で改革が進んでいても、どこかが全く進んでいない、しかもそのために進んでいるところがうまくいかなくなる、ということがあるので、学校改革を一つの目標に向けて進めるときには、全部をパッケージにして、多少でこぼこがあっても、そっちに向けてみんなで進んでいかないといけないので、ここの教育課程の編成・実施方針の「実施」の中身については、どういったものを盛り込むかということを考えておかないと実際の学校改革が進まないだろうと。この表の中では、今言ったようなことについてはここでしか落とし込めないので、そういう意味でそこのところはすごく重要なことかなと思いました。
以上です。
【荒瀬主査】 ありがとうございました。
御質問もありましたが、まだこれは今日でおしまいになるわけではなくて、これがいわば我々のまさしく与えられたミッションでありますので、これについて今後も検討していく。当然のことながら、検討事項1を、今日はこの形で見ていただいたわけですけれども、検討事項2とか検討事項3とも、当然のことながら関わりを持っていきますので、今日のところはこれで一旦おしまいにさせていただきたいと思いますが、出ました御質問であるとか、御指摘であるとか、こういったことも踏まえて、次回またよろしくお願いしたいと思います。
それでは、最後に、次回以降の予定につきまして、お願いいたします。
【酒井参事官補佐】 次回のワーキンググループの日程につきましては、調整の上、改めて御連絡させていただきます。
【荒瀬主査】 進行がまずくてオーバーしてしまいました。大変申し訳ありませんでした。
また、今日お越しいただきました皆さん、本当にありがとうございました。
これをもちまして、本日の議事を終了いたします。ありがとうございました。

―― 了 ――
 

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