新しい時代の高等学校教育の在り方ワーキンググループ(第4回) 議事録

1.日時

令和元年10月15日(火曜日)13時00分~15時00分

2.場所

三田共用会議所3階大会議室

3.議題

  1. 新しい時代の高等学校教育の在り方について
  2. その他

4.議事録


【荒瀬主査】 定刻となりましたので、ただいまから中央教育審議会初等中等教育分科会新しい時代の初等中等教育の在り方特別部会新しい時代の高等学校教育の在り方ワーキンググループの第4回会議を開催いたします。
本日は御多忙の中、御出席いただきまして、まことにありがとうございます。
今般の台風19号で大変な被害に遭われた皆さんにお見舞いを申し上げます。犠牲になられた方の御冥福をお祈りいたします。みなさんの御関係のところでも大変な状況があったかもしれません。一日も早い復旧を心から祈っております。
それでは、会議に入ります前に、本日の配付資料につきまして、事務局から御説明をよろしくお願いいたします。
【酒井参事官補佐】 本日の配付資料でございますが、議事次第にございますように、資料1から資料3まで及び参考資料1を御用意してございます。
資料につきましては、審議会等のペーパーレス化の取組を推進するため、お手元のタブレット端末に格納しておりますので、そちらを御参照ください。
なお、参考資料を除きます資料につきましては、紙の資料も併せて、お手元に用意してございます。
また、委員の皆様の机上に、議論の参考にしていただくために、9月4日の中央教育審議会教育課程部会の資料も、参考までに配付をさせていただいております。
過不足等ございましたら、事務局までお申し付けくださいませ。
【荒瀬主査】 資料はよろしいでしょうか。
それでは、議事に入りたいと思いますが、その前に、前回会議での質問事項につきまして、事務局から御説明をよろしくお願いいたします。
【酒井参事官補佐】 前回、佐藤委員より、定時制課程における外国人生徒の在留資格の取り扱いについて、御質問を頂いてございました。昨年度の学校基本調査によりますれば、約1万5,000人の外国人生徒が、我が国の高等学校において学んでいるというところでございますが、外国人の在留資格につきましては、出入国管理及び難民認定法において定められているところでございます。
この法律の中で、在留資格については様々なものがございまして、これら在留資格のうち留学の在留資格については、現行の法令では、定時制高等学校に入学して教育を受ける場合には、その申請の対象から除外されているというところでございます。
一方で、現に多くの定時制課程の高等学校におきましては、数多くの外国籍の生徒が在籍されているという実態もございます。これは恐らく留学以外の在留資格に基づいて、我が国に在留されて、定時制高等学校において教育を受けていらっしゃると推測をしているところでございます。
今後、私どもとしましても、関係省庁と連携をしながら、状況をより正確に把握をさせていただいて、改めて御報告させていただきたいと考えてございます。
以上でございます。
【荒瀬主査】 ありがとうございました。
この件につきまして、また佐藤委員の方で御質問とかございましたら、改めて事務局の方に、よろしくお願いいたしたいと。
【佐藤委員】 大丈夫です。ありがとうございます。
【荒瀬主査】 よろしいでしょうか。それでは、議事に入りたいと思います。
本日は、まず、新学習指導要領の趣旨の実現とSTEAM教育につきまして、御議論いただきたいと存じます。
STEAM教育については、本年4月の大臣からの諮問事項の中に盛り込まれ、主に教育課程部会において、検討が行われることとなっております。9月4日の教育課程部会におきまして、高等学校教育におけるSTEAM教育について、有識者等へのヒアリングや議論が行われました。私も出席しておりましたが、STEAM教育の考え方や手法は、新学習指導要領における総合的な探究の時間や理数探究の趣旨の実現に大いに資することが期待されるとの方向での議論がございました。
そこで、9月4日の教育課程部会のヒアリングの概要や議論の内容につきまして、資料は先ほども、9月4日の分は委員のお手元にお示ししているということでありましたが、それにつきまして、文部科学省の長尾主任視学官から御報告を頂き、続いて、教育課程部会の委員でもあり、今般の学習指導要領改訂の際には、教育課程部会の下に設けられました生活・総合的な学習の時間ワーキンググループで委員も務められました、奈須委員から御発表いただきたいと思います。
お二人の御発表の後、20分程度を目安に質疑を行いたいと思っております。よろしくお願いいたします。
それでは、まず、長尾主任視学官、よろしくお願いいたします。
【長尾主任視学官】 主任視学官の長尾と申します。
資料1をお手元に御用意ください。私からは、「新学習指導要領の趣旨の実現とSTEAM教育について」と題しまして、去る9月4日開催の教育課程部会におけるSTEAM教育の議論について、御報告申し上げます。
2枚目のスライドです。
STEAM教育については、本年4月の中央教育審議会諮問において、新時代に対応した高等学校教育の在り方の中で、その推進に向けた検討をお願いしているところです。
また、本年5月の教育再生実行会議の提言におきましては、STEAM教育を、各教科での学習を実社会での問題発見・解決に生かしていくための教科横断的な教育と定義した上で、STEAM教育を推進するため、高等学校の新学習指導要領に新たに位置付けられた、「総合的な探究の時間」や共通教科「理数」の「理数探究」などにおける問題発見・解決的な学習活動の充実を図ることを提言いただいているところです。
3枚目のスライドです。
これを受け、教育課程部会では、STEAM教育に関わる国際的な動向、「総合的な探究の時間」とSTEAM教育との関係、共通教科「理数」の「理数探究」とSTEAM教育との関係について、本日出席の松原国立教育政策研究所総括研究官、田村國學院大学教授、私の3名で、それぞれ発表した後、御意見を頂きました。
4枚目のスライドです。
本日は、当日の発表内容を整理して、新高等学校学習指導要領の趣旨について、「総合的な探究の時間」、共通教科「理数」の「理数探究」を中心に御説明した後、STEAM教育について、その国際的な動向並びに新学習指導要領との関わりについて御説明いたします。そして、教育課程部会での主な意見についてお話ししたいと思います。
なお、私からの説明は、全体を通した概略となります。本日は、松原総括研究官のほか、関係の視学官や教科調査官も出席しておりますので、具体的な質問がありましたら、後ほど、お答えしたいと思います。
5枚目のスライドです。
まず、新高等学校学習指導要領に盛り込まれた、「総合的な探究の時間」、共通教科「理数」の「理数探究」についてです。
6枚目のスライドです。
新高等学校学習指導要領の前文では、これからの学校が目指す方向として、一人一人の生徒が自分のよさや可能性を認識するとともに、あらゆる他者を価値ある存在として尊重し、多様な人々と協働しながら様々な社会的変化を乗り越え、豊かな人生を切り開き、持続可能な社会の創り手となることができるようにすることが掲げられております。
高等学校学習指導要領の総則では、こうした学校の役割を果たすため、各学校の教育目標を明確にすること、教育課程の編成についての基本的な方針を家庭や地域と共有すること、総合的な探究の時間の目標については、学校の教育目標との関連を図ることの3つを求めております。
また、言語能力や情報活用能力、問題発見・解決能力等の学習の基盤となる資質・能力や現代的な諸課題に対応して求められる資質・能力を、教科等横断的な視点で育成していくことを求めております。
7枚目のスライドです。
このような総則の規定を踏まえ、総合的な探究の時間では、各学校の教育目標を踏まえて総合的な探究の時間を設定すること、目標を実現するにふさわしい探究課題を設定すること、探究課題の解決を通じて、他教科等で身に付けた資質・能力を相互に関連することを重視しております。
8枚目のスライドです。
総合的な探究の時間では、課題の設定、情報の収集、整理・分析、まとめ・表現の4つを探究のプロセスとしてスパイラルに展開することで、学びを深めることを目指しております。特に新高等学校学習指導要領では、小・中学校までの総合的な学習の時間での学びを踏まえ、探究の質をより高度で自律的なものにすることとし、その名称も、「総合的な学習の時間」から「総合的な探究の時間」へと改めております。
9枚目のスライドです。
次に、新学習指導要領で新設した共通教科「理数」について、御説明いたします。理数に関する専門学科等で、従来から開設されている専門教科と、理数とは別に、このたび、各学科に共通する教科として、「理数」を新設しました。この共通教科「理数」は、総合的な探究の時間の履修とも代替できる教科・科目となっております。
「理数」の科目構成は、図に示すとおりですが、探究の意義や過程についての理解や事象の分析や課題の設定、探究した結果をまとめ、表現する力などを育成する、基礎を習得する段階の科目としての「理数探究基礎」と、「理数探究基礎」で学習する内容に加え、多角的、複合的に事象を捉え、課題を設定する力や探究の過程や成果などを適切に表現する力などを育成する、探究を深める段階の科目としての「理数探究」の2科目で構成しております。
10枚目のスライドです。
共通教科「理数」は、総合的な探究の時間と同様、探究の過程を重視しておりますが、その特徴としては、設定する課題は数学や理科などに関するものであること、学習過程において、数学的な見方・考え方や理科の見方・考え方などを豊かな発想で活用したり、組み合わせたりするなど、理科や数学と関わらせ、その学習が展開される点にあります。
11枚目のスライドです。
この図は、「総合的な探究の時間」と共通教科「理数」の関係について、その目的や対象・領域、学習過程、教育課程に着目して整理したものです。大まかな共通点としては、探究する課題が複数の教科等にまたがり、かつ、実社会や実生活、自然などの現実的な事象から設定される点、探究のプロセスを重視する点、解決の道筋がすぐには明らかにならない課題などに対して、納得解や最適解を見出すことや、アイデアの創発、挑戦性などの視点を重視した、従前の教科・科目の枠にとらわれない科目として設定された点などが上げられます。
12枚目のスライドです。
この図は、「理数探究」と「総合的な探究の時間」における探究の過程を整理したものですが、それぞれの特質を出しながらも、おおむね同様のサイクルが展開されることがお分かりになっていただけると思います。
次に、STEAM教育について、御説明申し上げます。
14枚目のスライドです。
こちらは、国立教育政策研究所のプロジェクト研究の結果の一つです。資質・能力の育成に向けた授業改善として重視している学習活動はどのようなものか、それぞれの国の教育を専門とされる日本の大学の先生から、情報提供いただいたものです。
例えば、イギリスの御専門の委員からは、初等学校で教科横断的トピック学習が多いとの回答を頂きました。他国についても、表にまとめているように、資質・能力の育成に向けた授業改善として重視しているのは、教科横断的な学習が多いことが分かります。
15枚目のスライドです。
こちらは、国立教育政策研究所の松原総括研究官が発表された、STEM教育とSTEAM教育についての資料です。ここでは、STEM教育については、STEM分野が複雑に関係する現代社会の問題を、各教科・領域固有の知識や考え方を統合的に働かせて解決する学習としての共通性を持ちつつ、その目的においては、科学・技術分野の経済的成長や革新・創造に特化した人材育成を志向するものと、全ての児童生徒に対する市民としてのリテラシーを育成するものがあると整理されております。
それから、STEAM教育の定義については、立場によってある程度の幅があると考えられます。初期のSTEAM教育では、統合型STEM教育にArts、つまりデザイン、感性等の要素を加えたものと解釈できます。さらに、その後の日本におけるSTEAM教育の定義に関する説明として、ここに例を挙げております。STEAM教育は、取り扱う社会的問題、課題によって、STEM教育にArtやLiberal Artsを加えたものとするもの、さらに、ROBOTICS、環境など様々な領域を含んだ派生形も存在し、文理の枠を超えた学びとして広がりを見せる現状にあると整理されております。
16枚目のスライドです。
こちらが、これまで説明してきた、「総合的な探究の時間」、共通教科「理数」、STEAM教育のそれぞれの関係について整理された表です。それぞれの特性はありますが、実生活、実社会における複雑な文脈の中に存在する事象などを対象として、教科等横断的な課題を設定する点、課題の解決に際して、各教科・領域で学んだことを統合的に働かせながら探究のプロセスを展開する点など、多くの共通点があります。
最後のスライドです。
教育課程部会の議論では、STEAM教育の考え方や手法は、高等学校の新学習指導要領における「総合的な探究の時間」や共通教科「理数」の「理数探究」の趣旨の実現に大いに資することが期待されるとの方向で議論がありました。ここに主な御意見をまとめておりますので、御紹介いたします。
STEAM教育は、課題の選択や進め方によっては強力な学ぶ動機付けになる。そのためには、STEAMのAの範囲を芸術、文化、経済、法律、生活、政治を含めた、できるだけ広い範囲として捉え、定義することが重要である。
新高等学校学習指導要領の総合的な探究の時間・理数探究とSTEAM教育とは滑らかにつながっている。これらの関係性をしっかりと学校に伝えていくことが重要である。
STEAM教育などの教科等横断的な学習を高等学校において進める上では、普通科、専門学科、総合学科など、学科の別も考慮する必要がある。
特に学習意欲に課題を抱える生徒が集まる学校において、探究的な学習をどのように進めるかは、これからの課題である。
小学校の生活科から、小・中学校の総合的な学習の時間、高等学校の総合的な探究の時間に至る学習経験や資質・能力の積み重ねを考えることも重要である。
STEAM教育などの教科等横断的な学習を進める上では、各教科の学習を学校段階で円滑に接続させることも重要である。
以上です。よろしくお願いいたします。
【荒瀬主査】 ありがとうございました。
続きまして、奈須委員、よろしくお願いいたします。
【奈須委員】 A4、2枚のとじた、資料2というものをお願いいたします。私の方からは、今の長尾先生のことを足場にして、どんな問題や論点があるかということを整理してみました。
一番最初、現状の認識と可能で望ましい議論の枠組みということですが、今、新学習指導要領が、これから本格実施に入っていく時期だということがまずあるかと思います。各学校においては、それに向けて既に着々と準備を進めているというか、これをまず共通認識にして、議論を進めていくことが大事だろう。
具体的には、STEAMについて、新学習指導要領とは異なる新たな教育内容であるといった位置付けの議論は望ましくないだろう。後述するいろいろなアプローチによって可能になってくる、新学習指導要領下における実践展開の選択肢の一つとして位置付けて、議論をするのがいいんじゃないかということです。
その上で、新学習指導要領とSTEAMの関係なんですけど、学校教育はもとより、経済・産業・政治・社会・文化に関わる世界の動向を勘案すれば、STEAM教育の視点を日本の教育課程、とりわけ高等学校段階の教育課程に導入するということ自体は、学校教育にとっても、社会にとっても望ましい。また、大きな様々な可能性があるんじゃないかと思います。
新学習指導要領はまた、理念的には、「社会に開かれた教育課程」、「資質・能力の育成」、「教科等横断的な視点に立った教育課程の編成」といったぐあいに、STEAM教育とは軌を一にする部分がたくさんございます。親和性は十分に高い。導入はそう無理がないと思います。
具体的な視点の導入に際しては、新学習指導要領等に示された各教科・科目等の「内容」との関係において実現可能性を探っていくということになるわけですけれども、そうなると、比較的自由度の高いところでやるということだろうと思います。1番目は、総合的な探究の時間で、「探究課題」の一つとして位置付ける。2つ目として、理数探究における課題の一つとして位置付ける。これは、長尾主任視学官からお話があったとおりです。さらに、高校の場合は、学校設定科目としてという可能性もないわけではないだろうと思います。
いずれの場合にも大事なのは、それらの中で孤立的に、その時間だけで実践を展開するという考え方ではなく、それらを核としつつも、さらに様々な各教科・科目等を教科等横断的な視点で有機的に関連付けて実践するということが、STEAM教育はもともとそういう発想でございますし、また、関連付けられた各教科・科目等の学びの質を高め、結果的にもたらされる知識の質を上げるという観点からも有効だと、つまり、教育課程で考えるということがとても大事だろうと、まず思います。
逆に、上記1から3のような核を一切設けず、関連する各教科・科目等を適切につないで実践を展開するということも原理的には可能です。ただ、各教科・科目等の目標・内容、また、時数との関連を考えた場合に、何らかの「のりしろ」的な領域がある方が無理がなく、結果的に質が高い実践が可能になると考えられます。これはヨーロッパ等でもそうで、例えばイギリスのPSHEというのがありますけど、この導入によって、以前よく行われていたトピック学習が復活し、活性化したということもあるので、やはり何らかの核を中心に教科等横断的につないで、カリキュラム・マネジメントをしていくというふうにやっていくことがいいかと思います。
また、このことを考えるときに、小学校における「合科的・関連的な指導」というのが総則にございますが、この規定が、実は中学校、高等学校にはございません。これはちょっと問題だなと。STEAMの導入に限らず、中長期的な課題だろうなと思います。教担制を基盤とする高校・中学においては、各教師が担当する授業時数の関係があるんだろうと思います。その意味で、小学校と比べいろいろな課題があるということは容易に推測できますけれども、STEAM教育はもとより、総則でうたわれた「教科等横断的な視点」を各学校で十全に推進するという上でも、何らかの措置を考えていくということ、これはすぐにということではないですけれども、中長期的には何らかの整備を考えるのが望ましいかと存じます。
では、次に総合的な探究の時間で考えた場合に、どんな可能性があるかということですが、総合的な探究の時間につらなるものとしては、我が国の教育課程体系において、幼稚園において幼児の経験を組織化とする方法としての「総合的な遊び」というのがまずございます。小学校低学年の「生活科」、中学年から中学に続く「総合的な学習の時間」と積み上がってきていて、その先に、「総合的な探究の時間」というのが位置付くわけですが、学校種間の連携・接続、また、子供たちの健やかで連続した発達保障を考えた場合に、運用に際しては、この教育課程の縦の系列ということを踏まえる。ですから、高等学校で、総合的な探究の時間でSTEAMを実現するということも、中学校以下で積み上げてきたものをどう接続していくかという視点が大事かと思います。
これら、日本の学校教育における一連の総合的な学びの「総合」というのは、では何かということなんですけれども、教育学的には、「生活教育」という枠組み、それから、「学際科学」という視点の2つに大別するということがよく言われてまいりました。つまり、学びが「総合」されるというのは一体どういうことか。つまり、単独の教科・科目に分けることが適切ではない理由というのは、それは「生活」だからなんだというのが1つですし、もう一つは、「学際科学」なんだということがあるんだろうと思います。
生活科の上に総合的な学習の時間が創設されたことからも分かるように、小学校については、「生活教育」を基調にしてきました。「生活教育」というのは、古くはルソー、ペスタロッチ、フレーベル、デューイという教育思想の系譜の中で確立したもので、世界中で膨大な実践を生み出し、もちろん日本の中でも、様々な実践を生み出してきましたし、教育政策を基礎付けてもいます。
歴史的に見て、幼稚園はフレーベルを祖として誕生したわけですから、小学校の総合的な学びが「生活教育」の原理に基づくということは、幼小の滑らかで効果的な連携・接続の視点からもとても重要です。
中学校も基本的には「生活教育」を基調とするんだろうと思いますが、当然、次第に「学際科学」的色彩を帯びてくるというのが、これは生徒の発達からもそうですし、同時に、学んでいく各教科等の学習内容からしても、極めて自然なことだろうと思います。また、それにより、生徒が教科的な学びを自分自身や実社会・実生活と関連付けて把握するということが促進されますので、学ぶ意義や価値の感得、あるいは、学習意欲の向上も期待することができると思います。
これに対し、高等学校は、生徒の発達や各教科等の学習内容、さらにキャリア発達の位置付けを考えた場合に、より一層、「学際科学」的色彩を強めるのが自然だろうと思います。また、この方向性は生徒の要求にも合致しますし、社会の要請にも適合していると考えられます。
さらには、学校教育全体で見た場合にも、幼児期から小・中学校を経て高等学校へと至る学びの系列の中で、生活と科学の実践的統合という言い方をよく教育学ではしてまいりましたが、学校教育が、これは本来的に目指すべきものだろうと思いますけど、それにも大きく資するのではないかと考えます。
こう考えた場合に、STEAM教育は、「学際科学」的アプローチの代表的な一つと解釈することができるだろうと思います。したがって、以上のような理解の下、総合的な探究の時間の「探究課題」の中に、STEAM教育の視点を位置付けることは十分に妥当だろう。各学校の判断においてこれを実践することは、新学習指導要領の実施に際して推奨されてよいと判断できると思います。
と同時に、幼・小・中でしっかりと培われてきた「生活教育」的な経験、あるいは資質・能力を、「学際科学」的な学びの中に、適切かつ効果的に織り交ぜていくということも重要ではないかと思います。これにより、「学際科学」的でありつつ、単なる学問探究に終始することなく、現実「生活」の問題にも生徒たちは深くコミットしているという実感を持ちながら、学びを深めることができるだろうと思います。
大切なことは、現実「生活」の問題にコミットすればするほど、より高度な学問的探究が必要となってくるということ、また、より広範囲な、あるいは、緊密な連携を必要とする「学際科学」的アプローチが要請されるということであります。つまり、「生活教育」的な視座を適切に残し、また有機的に関連付けることによって、STEAMが持ち込む「学際科学」的な視座というものも、なお一層の深まりや広がりが原理的には期待できる、このようなウイン・ウインの関係をどう目指していくかということが課題になるかと存じます。
これについて言えば、STEAM教育はそもそも現実の生活や経済、産業などと深く関わりを持っているというあたりが、他の「学際科学」と大きく変わることだろうと思います。その意味において、「学際科学」的なアプローチはいろいろあるわけですけれども、特にすぐれた特質をSTEAMは持っている、潜在させているだろうと判断します。
以上のように、「生活教育」的色彩を保持しつつ、また、適切に織り込みつつ、STEAM教育の「学際科学」的な視点を総合的な探究の時間に導入するということは、高等学校の教育課程はもとより、幼・小・中・高を見通した、総合的な学びの全体系にとっても、とても可能性があると考えます。
一方、理数探究については、これ自体がまさに理科と数学を基盤とした「学際科学」的な教科・科目として設定されております。したがって、STEAMとの親和性は極めて高いと判断できるかと思います。探究する課題としても、STEAMが有する幾つかの特質から考えて、数ある「学際科学」的な課題の中でも、特に幅広い生徒から大きな支持を受けるだろうということが推測されます。
理数探究の課題として、STEAM教育を位置付ける際の留意点としては、さきに述べたことですけれども、理数探究の時間のみで孤立的に実践するということではなく、さらに様々な各教科・科目等を教科等横断的な視点で有機的に関連付けて実践を展開するということが望まれるかと思います。
5番目として、STEAM教育が目指す学力論ということなんですけど、今お話ししてきたように、STEAM教育は多様な可能性、大きな可能性があるわけですが、若干、留意すべき点もあろうかと思います。
しばしば指摘されている、これは欧米でよく言われることですが、STEAM教育は、当然ながら、ある種、産業主義的でありますし、いわゆる社会的効率主義、ソーシャルエフィシェンシーといいますけど、これに陥りがちだということがあるかと思います。また、エリーティズムに偏りやすい傾向も内在させているかと思います。つまり、STEAM教育の大規模な導入により、公教育が様々な格差を縮小する、公教育はもともとそれを目指しているわけですけれども、その方向ではなく、より拡大する方向に機能してしまうという危険性、これが起こらないことを願いたいわけですけれども、それをもたらしかねないということを常に考えに入れながら検討を進めるという必要があるかなと思います。
その意味でも、さきに述べた「生活教育」的な視点が重要になってくると思うわけですが、では、「生活」ということ、あるいは、目指すべき方向性に関する価値的な議論ということが必要になってくるわけですけれども、STEAM教育導入の在り方について、それはどんなふうに考えられるかということでございます。
目指すべき方向性としては、先ほど、長尾主任視学官からもありましたが、今回、幼稚園から高等学校に至るまで新学習指導要領の前文において、「持続可能な社会の創り手」という言葉が出ています。これはとても大きな理念だろうと思います。これをある種、実現していくべき社会像、生活像として考えてはどうか。これは日本だけじゃなくて、国際的にもそうで、例えばOECDでも、「包摂的で持続可能な未来(inclusive and sustainable future)の創造」が、学校教育が目指すべき社会像だとして明示されております。こういった考え方を尊重する、あるいは参考にして、STEAM導入に関する議論を進めるのが穏当ではないかと考えます。
注目したいのは、4ページ目に絵がありますけれども、OECDのLearning Framework 2030というのがございますが、資質・能力、いわゆるコンピテンシーですが、つまりそれは、すぐれた問題解決の実行を現に可能とする潜在的な能力ということですよね。それ自体は、でも、教育の最終目標ではない。コンピテンシーは最終目標ではない。それを足場、道具にして、個人として、そして社会としてのWell-beingを実現していくんだと。それが教育の目的だと。むしろコンピテンシーはその手段だという位置付けがされているということも、STEAMに限らず、今後、日本の教育課程の実施に際して、留意していくべきことだろうなと思います。このような学力に関する理念や構造は、教育課程全体を考えていく上でも示唆に富むことだと思いますけど、特に産業主義やエリーティズムに陥る傾向がある、そこに注意していかなければいけないSTEAM教育のような視点の取り扱いに際しては重要だと考えます。
ここまでが、今回の新学習指導要領の実施に関わることですが、さらに、次回以降の学習指導要領改訂に関わる観点ということ、ここで議論すべきではないことかもしれませんが、予備的にということで、お話し申し上げようと思います。仮にSTEAM教育を本格的に展開していくとした場合に、関連付ける各教科・科目等の目標や内容が十分であるかということも、どうしても出てくることかと思います。これは今回、すぐどうこうすることではなくて、長期的にということです。
とりわけTとE、テクノロジーとエンジニアリングに関する部分をどう充実されるかということは大きな課題でしょう。また、そのこととの関連で、中学校の技術・家庭科ということをどう考えていくかということも、中長期的な課題かと存じます。
Aについては、先ほど長尾先生からもお話がありましたが、その範囲をどこまで広げて考えていくかということが1つ課題になってくるでしょう。その際、該当する各教科・科目等の在り方について、様々な可能性を追究することも、中長期的には考えられていいと思います。
また、サイエンスとマセマティクスについては、新学習指導要領で理数探究が創設されたこと、教科等横断的な視点やSTEAM教育の視点から見た場合、とても大きな躍進となったと思います。一方で、本体の数学、理科の現状についても、教科等横断的な視点やSTEAM教育の視点から見た場合、どんな課題や可能性がさらに考えられるかを検討するということは、STEAM教育や教科等横断の推進のみならず、数学や理科それ自体のさらなる発展・拡充という観点も含め、意義と可能性があるのではないかと思われます。
以上でございます。
【荒瀬主査】 ありがとうございました。
ただいまのお二人から御発表いただきました内容につきまして、委員の皆様から御質問や御意見を頂きたいと思います。いつものように、名札を立ててお示しいただければと思います。
では、香山委員、どうぞ。
【香山委員】 「総合的な学習の時間」が、高等学校では「総合的な探究の時間」にバージョンアップされて、今、お二人の先生からそれについて、STEAM教育とどう絡んでいくのかというお話を頂いたと思います。
特に、奈須先生の1ページの2の上から3つ目のポツにおきまして、「具体的な視点の導入に際しては」というところですけれども、私も、全ての子供たちに、総合的な探究の時間、あるいは理数探究を経て、STEAM教育の視座に誘いたいと思っていまして、その方法として、奈須先生が、マル1、総合的な探究の時間における「探究課題」の一つとして位置付ける。2番目は、理数探究における課題の一つとして位置付ける、と提言くださいました。
まず、この2つに関して言えば、理数探究は理数科とか、SSHを選んでいる学校が主に選択するのではないかなと考えますので、そのほかの学校は、総合的な探究の時間を通して、何とかSTEAM教育の視座にたどり着かせたいなと思うのですけれども、マル3はちょっと特殊だと思いますので、マル1に関して御質問したいと思います。「探究課題」の一つとして位置付けるという表現で言えば、「探究課題」の一つとして位置付けない学校も出てくるのではないかと思います。
そういう点で言えば、奈須先生は、「内容」との関係における実現可能性ということでお話しくださっているんですが、一方で、どのように学ぶかという方法という点、長尾先生の資料で言えば、11ページに、対象・領域とは別に、学習過程というところで整理してくださっているところなんですけれども、学習過程、プロセスにおいて、総合的な探究の時間においても、科学的な手法を探究のプロセスに取り入れるといったことによって、多くの学校で、多くの子供たちが、STEAM教育の視座に誘っていけるのではないかと考えているんですけれども、この点についてはいかがでしょうか。
【荒瀬主査】 ありがとうございました。
関連しまして、ほかにも御質問がございましたら。
では、角田委員、橋本委員の順でお願いいたします。
【角田委員】 御発表ありがとうございました。STEAM教育が新しいものという位置付けではなくて、今度の学習指導要領に本格的に取り組んでいけば親和性が高いのだという御報告、本当にすっきりしたという感じがしております。
ただ、この先、日本のSTEAM教育はどういう形になっていくのか、理数という新しい教科が生まれましたけれども、さらに新しい教科がもっと生まれた方がいいのかというような、その先までの議論もできたらいいのかなと思っているところです。
そして、現実的なところでは、教科横断型というだけでもアレルギーを感じるような高校現場の実態もあるんですね。そこを何とかするために、小学校における「合科的・関連的な指導」が、もしかして今、取り入れるということができるのかなと思いました。どのようなものか教えていただければと思います。
【荒瀬主査】 ありがとうございました。
では、橋本委員、お願いします。
【橋本主査代理】 御報告、ありがとうございました。お話をお聞きしていて、例えばスーパーサイエンスハイスクール、あるいは、理数系の専門学科を置いている高校を想定しながらお話を聞くと、非常にすっと中身が入ってくるなという感じはあるんですけれども、本当に高校は多様な学校があります。
長尾先生の17ページの教育課程部会の主な意見という中にも書いてありましたけれども、そもそもが学習意欲に課題を抱える子供が多い学校で、探究的な学習を進めていくこと自体がかなり厳しいところもある。そういう意味では、その下に書いてありますように、小・中学校段階から、どうきちんと探究的な学びというものを築いていくかが大事だと思うんですけど、それはそれとして、いずれにしましても、理数系の学校以外でも、探究の時間をしっかり生かして、STEAM教育等を推進していくことは大切だろうと思います。
それで、奈須先生のお話の中で、3ページに、課題の指摘という中で、STEAM教育の導入というものが、公教育が持っている様々な格差を「拡大する方向に機能してしまう危険性をもたらしかねない」とあります。私もこのことを非常に感じていたんですけど、その次に、「目指すべき方向性に関する周到な議論を含めて」と書かれていまして、たしか先生は先程価値的な議論とおっしゃったように思ったんですけど、この辺の意味をもう少し具体的に教えていただきたい。
それから、答えが簡単にあるわけじゃないと思うんですけれども、STEAM教育導入の在り方について、検討を深めることが望まれるという、その検討の深め方について、何か御示唆いただけることがあれば、教えていただきたいと思います。
以上です。
【荒瀬主査】 ありがとうございました。
ほか、よろしいでしょうか。
鍛治田委員、どうぞ。
【鍛治田委員】 ほとんど橋本委員と同じような意見なんですけれども、STEAM教育が非常にこれから必要だということは大変よく分かります。このことも進めていかないといけないとも思っております。
ただ、橋本委員もおっしゃいましたように、また、奈須先生が書かれた3ページのところ、このあたりについては大変危惧をしております。全高校課程にこのことを導入するということが、今の高校生に合っているのか実態と合っているのかという心配をしております。
実際、前にも申し上げましたように、通信制の入学者が増えているということは、学校に合わない不登校の子たちが増えている、こういった日本の状況の中で、また、小・中学校で生活教育を学んでいないという子供たちに、このことを、入れていくというのは、とても慎重にしないといけない。また格差を広げることになってしまうという点で、本当に全高校課程に導入するのがいいのだろうかということを思ったりしております。導入の仕方は非常に慎重にならなければいけないと思っております。そのあたりのこともお伺いしたいと思っております。
【荒瀬主査】 ありがとうございました。
では、長塚委員、どうぞ。
【長塚委員】 長尾視学官から御説明いただいたところに、外国の資質・能力育成という御報告があったのですが、諸外国では合科的な教育課程が組めていて、STEAM教育にもつながるようなことが実現できているのか、ともすると我が国の教育課程では、奈須先生の御指摘にもありましたように、高校の教育課程がなかなか合科的なものをしにくいという状況にある中、諸外国がうまくいっているのは、教育課程上のある種の自由度のようなものがあってできているのか、その辺が今後の大きな課題になるのではないかなと思うんですね。
ですから、諸外国の事例、うまくいっているという背景に、教育課程はどうなっているか、なかなか調べにくいところもあるかもしれませんが、その辺を分かる範囲で教えていただければありがたいなと思います。
それはまた後日でも良いのですが、気にしますのは、以前にも申しましたけど、探究、あるいはSTEAM教育をしたときに、そのような高校生たちの学びを大学が受け止めて、きちっと評価してくれるかどうか、それによって高校現場での力の入れ方のようなものも変わってしまうわけですよね。
その辺のつながりについて、先にきちっと道筋を付けながら進めないと、現実にはなかなか現場が進めにくい可能性があるなという心配をしております。
以上です。
【荒瀬主査】 ありがとうございました。
それでは、奈須委員からお願いできますでしょうか。
【奈須委員】 まず、香山先生の御指摘ですけれども、内容として位置付けなくても、方法論としてでも大丈夫じゃないかと、私もそう思います。STEAM自身は、もう少し内容的なことを求めているんだと思いますけど、そこで言われているような、方法論的ないろいろなアイデアとか、そこで身に付く資質・能力という観点でやっていくということもまず十分考えられる。そのことは別な内容についても、STEAM的な視座ということが幾らも入れられるということにもなるんだろうと思います。
それから、角田先生のところと、今の長塚先生のところもそうですけど、結局、日本の教育課程の伝統的な枠組みの問題で、教える内容、コンテンツに対して枠を作り、時数を作り、単元を作り、方法を展開するということをやってき過ぎたんだと思います。やっぱりそれは、ヨーロッパは、特にイギリスなんかもそうですけど、その内容というのは、教えて、結果的に身に付けばいい話であって、それで単元を作るという発想ばかりではないということなんでしょうね。
イギリスのテーマアプローチなんかが典型だと思いますけど、テーマを実現するのに、いろいろなコンテンツをそこにぶら下げてやっていくというアプローチを普通にやっているわけですよね。合科的・関連的指導というのは、まさにそれを平成元年度以降、小学校で自由にやろうじゃないかということで、でも、それも十分には進んでいません。
残念ながら、規定自身は平成に入ってすぐから入っていますけど、今回、カリキュラム・マネジメントということで言われて、ようやく合科的・関連的な指導に目が向かい始めて、今、年間指導計画の中で、教科の単元をつないで授業をするということが、割と小学校、中学校では広がってきましたけど、20年も前からやっていなければいけないことが、ようやく動き出したというぐらいのことで、そこは大きな問題だろうと。
その背後には、日本の教育課程が、内容や時数を細かく厳密に国が決めているということがあろうかと思います。私の知る限りでは、各教科について時数を決めているという国は、必ずしも多いことはないだろうと思います。これが実現されればよくて、どんな方法で、どんな組織化の仕方をしてもいい。それは学校の自由度、創意工夫に委ねるというのが世界のトレンドだろうと思いますけれども、日本の今の風土がまだそこまでには来ていない。
今回、カリキュラム・マネジメントとか教科等横断というので、かなり踏み込んだと思いますけれども、それが今後、どんなふうに展開していくか。これは政策とか行政もありますけど、やっぱり現場の方の腹づもりだとか、あるいは、各地方の自治体や教育委員会の御見識、御判断もあろうかと思います。
また一方で、各教科ごとの教科書というのが、日本はとてもよくできている。教科書の質の高さ、コンパクトにまとまって、この1冊をやればいい。アメリカなんかだと教科書を3冊持たせて、適当にいろんなページを使って、先生がカリキュラムをコーディネートしますよね。そこのテキストブックの位置付けは全く違うかと思います。欧米なんかだと、テキストブックはリソースブックであって、そのリソースに基づいて、各教師がやっぱりカリキュラムを作って運用しますよね。
そういったことも含めて、かなり問題はあろうかと思いますけれども、制度的にはかなり進んできたし、今回の議論でかなり進むということをまず期待されるなと思います。
それから、橋本先生とか鍛治田先生から御心配がありましたけれども、全ての高校でやっていく場合に、いろんな学校があるじゃないか、いろんな子供がいるじゃないかということだと思います。もちろんそれは、各学校の実情とか、ミッションに合った教育課程の編成というのが原則でしょうから、必ずしもSTEAMがなじまない、あるいは適切ではないということであれば、全然それは構わないんだろうと思いますけれども、一方で、STEAM的な、あるいは教科等横断的な、あるいは、総合的な探究や理数探究が今後実現していくような質の学力は、むしろ多くの人にとって必要な学力で、先ほど長尾先生の御説明にもありましたけれども、ある職業的な人材という面もありますが、一方で、市民全体にとって必要な、これは今回、小学校にプログラミング教育が入ったのもそうですけれども、市民として今後の社会を生きていく上で、それを持っている、持っていないによって、むしろ利益、不利益が明らかに出てしまうようなものなんだろうと。
だから、今、なかなか厳しい立場にいる子にこそ、むしろSTEAMとか、教科等横断的とか探究的な学びをさせてあげないといけなくて、これはアメリカなんかでもよく話題になりますが、社会経済的に厳しいお子さんは、スキルフルに、ドリルに走りがちなんですけれども、そうすればするほど、むしろ格差は拡大していくんですね。
だから、やり方はいろいろあると思います。すごく理数的に高度なSTEAMじゃなくてもいいと。つまり、STEAMという発想をどう考えるかだと思うんです。だから、エリーティズムにしなくていいと私は申し上げているわけで、サイエンスやテクノロジー、エンジニアリング、マセマティクスということを教科等横断的に見ていく。現実的に、子供たちが持っているスマートフォンはそれで動いているわけで、決して彼らから遠くはないと思うんですね。
だから、それは僕たちのカリキュラムを作る視座で、子供たちの身近にSTEAM的発想とかSTEAM的な現実は山ほどあって、むしろそれがどういうものかを読み解き、それを生かし、それにだまされない子供に育てるということが、全ての子供たち、むしろ不利な立場にある子供たちを救い、彼らが自立的に生きていくのを支える、それがむしろエリーティズム的ではないSTEAMとして大事なんじゃないかと思います。
以上です。
【荒瀬主査】 ありがとうございました。
では、長尾先生、お願いいたします。
【長尾主任視学官】 奈須先生がおっしゃるとおりで、その他に言うことはないんですけれども、1つだけ思ったのは、学習意欲に課題のある生徒の場合に、STEAM教育というのはなかなか難しいんじゃないかということでしたけれども、むしろそういう生徒にこそ必要な教育ではないかなと私は思っています。
カリキュラム・マネジメントということも今、強く打ち出していますけれども、本来的には、各教科のつながりを考えつつ、一人一人の子供が問いを持ちながら学んでいくという方向で、それぞれの授業が、特に数学とか、理科とか、そういう授業が変わっていくならば、学力的に難しい生徒の場合も、程度の差はあるんだと思いますけれども、STEAM教育というのは何らかの形で入れられるんじゃないかなと、私は強く思っています。
諸外国の事情で、分かる範囲内でということで、何かあれば。
【松原国立教育政策研究所総括研究官】 国立教育政策研究所の松原と申します。長尾先生の御発表にありました、14ページの資料につきまして、分かる範囲ということで御説明申し上げます。
各国におきまして自由度というのはかなり違いますので、なかなか全体でというわけにはいかないのですが、例えばアメリカですと、STEMにつきましては各教科の中で行うということがあります。オーストラリアにおきましても、これはシドニーに以前、現地調査に参りましたが、やはり数学や理科の中で、STEMの内容を行うということでございました。そして、その評価につきましても、理科の中でSTEMを行い、理科の内容に関する評価を行うということで、STEMの評価だけを行うということではないといったことがございました。
それから、先ほど、意欲ということがございましたが、やはりオーストラリアの事例やアメリカの事例におきましても、学習意欲が向上するということはございます。STEMにつきましては、そういった意味でも価値があるということが報告されています。特にSTEMでは、試行錯誤であったり、最適解を求める学習を行い、必ずしも答えが1つではありません。子供たちが様々な方法で自分なりの答えを見付けていく、そういったことに価値が見られると思われます。
以上です。
【荒瀬主査】 ありがとうございました。
板倉さん、どうぞ。
【板倉教育課程企画室長】 合科的指導の制度的な担保について、補足説明いたします。
小学校につきましては、奈須先生から御発表がありましたように、制度的には、学校教育法施行規則第53条におきまして、「小学校においては、必要がある場合には、一部の各教科について、これらを合わせて授業を行うことができる。」という条文があるところでございます。これは中学や高校には準用されていないということで、小学校のみであるという状況でございます。失礼しました。
【荒瀬主査】 ありがとうございました。
今、お答えいただいたんですが、よろしいでしょうか。教育課程の自由度というのは、奈須先生の御発言の中に相当入っていましたので、長塚先生、よろしいですか。
ありがとうございました。そうしましたら、ほかにもし御意見がございましたら、お願いしたいと思います。
内堀委員、どうぞ。
【内堀委員】 意見というか、感想ですけれども、まだ、探究的な活動が全ての高校で完全に定着しているという状況ではないように思います。多くの高校は、導入して、いま一生懸命何とかいい形にしようとしているような状況かなと思っていまして、そこからSTEAM型にしていくのか、似たような意味合いですがPBL型にしていくのかというようなところが、比較的進んでいる学校で議論しているところだと思うんです。こういった、これまであまりなかった様々な探究のスタイル、あるいは課題設定・解決型の学びのスタイルを、日本中の高校に積極的かつ意欲的に導入し、定着させていくためには、分かりやすさが必要かなと思っています。
学問的な裏付けとか様々なことはもちろん必要なんですけれども、実際に各学校の教員とか、それを取り巻くステークホルダーである保護者であるとか、生徒であるとか、そういった関係者の理解を促しながら改革を進めていくということを考えると、やはり分かりやすくてイメージできやすくないと進まないのかなと思いました。
先日、県立の校長会がありまして、そのときにちょっと話をさせていただく時間があったんですが、探究的な活動の導入、特にSTEAM型の導入に関して、例として出したのが、ごらんになった方もいるかもしれませんけれども、9月29日に放送された、「NHKスペシャル」という番組がありまして、そこでやっていた「AIでよみがえる美空ひばり」というものでした。
ひばりさんが大好きな人たちの、ひばりさんにもう一回会いたいとか、ひばりさんの歌をもう一回聞きたいといった願いを実現するためにプロジェクトチームを立ち上げて、AIを使って音声を創ったり、ひばりさんのファンの方がそれを実際に聞いてみてどう思うかというようなことを参考にしてさらに改善を加えたりして、最終的には、AIで、ひばりさんをよく知る人たちが納得するようなひばりさんをよみがえらせることができたんですね。音声と3D映像で、しかも新曲で、という世界初のことが実現できたんですけど、これこそ我々がこれからの高校で目指すところですよという話を校長さんたちにさせていただいたんです。学問的裏付けや分析的なことももちろん大事ですが、一方で、そういう一つの目標というか、見えやすい姿というかそういったものを提示することができると、これからの時代に必要な力が何なのか、そのためにはどうすればいいのかということをイメージできるので、これからはそういう視点もとても大事なのかなと、聞いていて思ったりしました。
あくまでも感想です。以上です。
【荒瀬主査】 ありがとうございました。本日は、もう一つ御発表をお願いしております。牧野委員、岩本委員、山口委員、香山委員、跡部委員の5人の方で、取りあえず終わりたいと思います。大変申し訳ありません。手短によろしくお願いいたします。
【牧野委員】 それでは、私から、今の分かりやすさと関連するような話なんですけど、先生方のお話は、非常にアカデミックな感覚では、私も大変興味深く聞かせていただいたんですが、本当にそれが現場において、どういうふうな形で実践されていくのかなということについては相当、それこそ格差があると思います。こう言ってはなんですけれども、エリーティズムに陥っているような感じがしないでもなかったんです。というのは、いつも思うんですけれども、新しいこういった概念というのを現場の先生方に、先ほどアレルギーの話もありましたが、伝えるときに、単に通達みたいな形で、こういうことをやってくださいねと言って、それで先生方が分かりましたという形には、とてもなるとは思えないんですよね。
そうだとすると、先生方がこういった教育を実践するためには、どういう在り方が必要なのかというところまで一緒に議論されないと、結局、言いっ放し、聞きっ放しみたいなことになりかねないんじゃないか。むしろここまで深い話として、それもWell-beingの実現というところまで、その目的がかなり上のほうに設定されてしまうと、それは、そもそも学校の先生方にとっても、学び直しをしなければやれないような話に近いんじゃないかという感覚を私は持ったんです。
そこについての見解はちょっとお聞きしておきたいなというのと、それから、産業主義とか社会的効率主義の話も出ていましたが、先ほど保護者の理解とありましたけれど、そもそも地域社会における理解というものをどこまで得られて、こういったことがなされるのかという意味においては、単なる高校の中だけで、この教育の考え方は終わるものではない。Well-beingというものを目標にした限りにおいては、当然、地域社会におけるWell-beingの実現を目指すための教育なんだという位置付けをするわけですから、その地域社会における理解をどうえるのかという話まで考えてやっていくということが必要になるんじゃないかというのが、私が思うところであります。
したがって、地域社会に対して、どうやってこういったものの御理解を頂いていくのかということも含めて、つまり現場の先生方が教えられるような環境をどうやって作るのかということと、地域社会に対してどういうふうに働き掛けをしていくのかということ、この2つを是非、明確にしていただければと思います。
【荒瀬主査】 ありがとうございました。
後ほど、何かございましたらお答えいただくということで、岩本委員、お願いいたします。
【岩本委員】 今の牧野市長とつながる部分があると思うんですけれども、STEAM教育というのを、地域社会に開いた課題発見・解決型の学習において、これをどう捉えていくのかというのを、現場の視点で考えると、地域に課題は山積している。ですので、課題発見を生徒たちがしていくというのは非常に、地域に出てやっていくというのはあるんですけれども、解決のソリューションというものが、実は、その地域の目に見えるものの中だけにはないケースがほとんどです。
そうしたときに、課題発見した後の解決のソリューションを考えていく、若しくはそれのチャレンジをしていくみたいなプロセスにおいては、STEAM、特にテクノロジーとかエンジニアリングといったものが非常に有効になる。これは、地域の公民館とかそういうところだけでなく、大学だとか、民間の企業だとかそういったところに、ソリューションの種があるんですね。STEAM教育の素材がたくさんあるというところですので、課題発見・解決型の学習の一つのプロセスの中で、十分、STEAMを位置付け、無理なく地域においてもやっていけるようなイメージというのは、私は付きました。
その際、高校がちゃんと地域社会と開いて、協働のコンソーシアム、そういった中に大学だとか、研究機関だとか、若しくは企業だとか、そうといったところともつながりやすい環境ができることが、STEAM教育を無理なく探究的なところにも導入する、一つの重要な基盤になるかなと感じました。
以上です。
【荒瀬主査】 ありがとうございます。
それでは、山口委員、お願いいたします。
【山口委員】 高校の現場からということでお伝えします。
20年ぐらい前から、高校の現場で、医学分野やバイオエシックスの問題に絡む研究分野に進むような生徒たちについては、この感覚で授業をしなければ、大分前から授業にならなくなっております。ただ単に単独の分野の話をしても、とても現代の問題に対応できていないので、当然、様々な分野が教科横断的に、複合的な形で授業は展開されております。それが高校現場での現実だと思います。
また、今、課題を抱えている生徒たちについてもそうですが、よりよい自分の未来の生活のために何が必要かという、まさに先ほどから皆さんおっしゃっていただいているように、具体的に目に見えるような形での事例を学んでいくと、かなり次の自分の新しい人生というのが見えてきて、それが就労につながっていって、今までよりも就労率が上がっていったりという変化も実はあるのです。
私は、具体的な手だてはそれぞれの現場によって違うと思いますが、教職員に、これが当たり前だという意識を持って欲しいと思います。こうやって、この後の教育というのは進めていくべきだということが普通になっていってもらいたいと思っております。
以上です。
【荒瀬主査】 ありがとうございました。
それでは、香山委員、お願いします。
【香山委員】 先ほど長尾先生の、全ての子供たちにとってSTEAM教育が必要なんじゃないかというお話をお聞きしながら、私も、例えば消費者教育の観点からいっても、だまされない子供たち、市民を育てる、とても大事だなと思います。そういう点で、STEAM教育の概念、この定義を、例えば15ページにありますように、「科学・技術分野の経済的成長や革新・創造に特化した人材育成」というイメージが強いと思うんですね。
本県でも、STEAM教育を推進する学校として工業高校が当てられるといったような感じで、狭い概念で、今は恐らく使われていると思いますので、そういう点では、マル2の広義のSTEAM教育といった概念が普及できるような手だてというのが必要なのかなと思います。
もう一つは、総合的な探究の時間、あるいは理数探究ですけれども、特に総合的な探究の時間とSTEAM教育とをクロスしていくといいますか、つなげていく具体的な単元イメージというのがあった方がいいと思うんですね。それが恐らく現場の先生にとっても、地域の人々にとっても、これはこれからのSociety5.0では大事なんだなというのが実感として伝わると思いますので、そういう意味では、総合的な学習の時間においては指導資料集というのがありましたので、総合的な探究の時間においても、指導資料集のようなものがテキストとしてあってもいいのかなと考えました。
以上です。
【荒瀬主査】 ありがとうございました。
それでは、跡部委員、お願いいたします。
【跡部委員】 いろいろと伺わせていただき、大変おもしろいと思っておりますが、まず、Liberal Artsの考え方は大変大事であると思っています。その枠組みとして、今、テクノロジーとか、そのリテラシーなどがかなりクローズアップされているのだろうと思っています。たまたま私たちの学校とお付き合いのあるアメリカの高校を、いろいろな形で見学させていただく機会があるのですが、子供たちは、まず、STEM中心で、そこにAをいかに入れるかという授業が展開されている様子を目の当たりにしました。
多分、こういう子供たちと、これからの日本の子供たちは対等にやっていかなければいけないのだろうと考えると、何らかの形で、STEAM教育を行うことは絶対必要であろうと考えています。
ただ、そのときに、Aの幅の広さを上手に担保しながら行う方が、多分、現場ではうまく行えるはずで、Aを狭めた形で入れてしまうと、今まで一生懸命やってきたものの全否定にもつながるので、そこの部分は、現場の先生方にとっては苦しくなるのではないかと。
だから、Aをいかに幅広くしながら、これからの新しい時代に合ったものを作っていくかという部分がこれからの鍵になるのではないかなと考えました。ありがとうございます。
【荒瀬主査】 今の御意見をお聞きになって何か、よろしいですか。ありがとうございました。
時間がない中、私も一言だけ申し上げたいんですけど、学習意欲の低い生徒には、STEAMとか、あるいはもっと言えば、総合的な学習の時間、次期では総合的な探究の時間は難しいんじゃないかという話は本当によく聞きますが、今、既に、お話がありましたように、実際にやってみると、全く違うということがよく見られます。
学習意欲というのは多分、本来子供たちの中にあるものであって、それが引き出されるようなきっかけをどう与えるかというときに、総合的な学習の時間とか、あるいはSTEAMの、今もおっしゃいましたけど、Aの幅を狭めないで、それぞれの学校の状況に応じて、どういう教育課程を組んでカリキュラム・マネジメントを進めていくかというところで、本当に一人一人が持っている可能性というのが広がっていくというのではないかというのを、実体験からも思っております。そういう思いを持ちながら伺いました。
長尾先生、奈須先生、大変丁寧な御説明、本当にありがとうございました。
それでは、大変お待たせいたしました。本日は、高等学校改革を実現していくということを考えますと、特に公立高校におきましては、設置者である都道府県教育委員会の役割が非常に重要であると考えられます。
そこで、高知県における高等学校改革や高等学校の魅力化に向けた取組につきまして、本日は大変御多用の中、高知県教育委員会から伊藤博明教育長と長岡辰治学校支援担当企画監にお越しいただきました。
まず、伊藤教育長から御発表いただき、その後、20分程度を目安に質疑を行いたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
【高知県教育委員会 伊藤教育長】 高知県教育長の伊藤博明と申します。きょうはお時間を頂きまして、ありがとうございました。
それでは早速、説明に入らせていただきます。よろしくお願いします。資料に基づいて、20分程度と言われておりますので、御説明を差し上げたいと思います。
表題「高知県の高等学校改革について」と書いてありますが、改革というのはちょっと大げさでありますけれども、高知県の教育行政の課題解決に向けて、高知県としては2つ、大きな点に留意しながら取組を進めています。
1つは、客観的なデータに基づいて、課題をしっかり深掘りして、本来の原因がどこにあるのかを深く突き止める。その課題に対して、真正面からぶつかるような対策をとっていこう。それをするに当たっては、原因というのは様々な分野がありますので、非常に連携が大事だ。連携も2つあって、縦と横。
縦でいいますと、高等学校の課題は高等学校だけでなく、高等学校でももちろん、今の高校生に対しての課題解決は必要ですけれども、その前の中学校段階、小学校段階、就学前、こういった就学前段階から高等学校までの縦のラインで非常に連携が大事だ。それを重要視していこう。
もう1点につきましては、横の連携ということで、もちろん数々の事業をやっているんですけれども、事業間連携はもちろんですし、それから、義務教育関係でいくと市町村教育委員会との連携、それから、もっと大きな話でいきますと、例えば産業行政、福祉行政、防災行政、そういったものと教育行政との連携をしっかりやって、そういった形の中で、高知県の教育課題に対する対応といいますか、進めておりますので、そういった中で、全体の中の一つとして高等学校改革という、ここにあります学力定着把握検査等によるPDCAの推進ということで、お話をさせていただきたいと思っております。
次のページが、高知県の高等学校の配置図ということで、併せて、先ほど言いました現状ということもございますので、高知県の教育の現状みたいなものも簡単に御説明したいと思います。
下にありますように、全日制35校で、合計で1万1,326人が公立学校の生徒数になっております。単純に割り算しますと、1学校323名ということですので、1学年が100人程度ということですから、非常に小さい学校が、これだけ見ても分かると思います。
県全体の人口69万人ぐらいで、見える海岸線が約700キロ、赤の点と緑の点を高等学校の位置としておりますけれども、一番右と一番左の高等学校の間が、道のりで230キロぐらいあります。そうした中で、中心の県庁所在地、高知市に人口の約48%程度が集中しておりまして、そういったこともあって、中山間部に小規模な学校が多くあるというような状況でございます。
赤の丸と緑の丸が2つございますが、中央部は1つ少ないんですけれども、緑の丸というのが、入学生のほとんどが大学進学を目指すという、私どもでは進学拠点校と位置付けている。赤い丸が、就職とか専門学校へ行く子供たちも多いという学校で、ここが学力の診断テストをやっているような学校になってまいります。また、こちらは後ほど御説明します。
そうした中で、現在、全国から5.4ポイントぐらい下がって、49.3%ぐらいの大学進学率になっておりまして、正確な数字は、最近のものはないんですけれども、この中で、私立の高等学校の大学進学率が、実は70%ぐらいあって、公立高校の大学進学率がおよそ40%程度じゃないかといったような、高知県は昔から大学進学に関しては、私高公低と言われるような状況にございます。
そうした状況の中で、教育改革に向けた取組が始まった、全ての始まりが平成19年度の全国学テでございます。これは高校生ではございませんけれども、平成19年度全国学テをやりまして、小学校は37位、中学校は46位ですけれども、45位を大きく外れて46位ということで、特に数学では、全国平均から5ポイント開くと大変危険だと言われている中で、10ポイント低い状況でありました。
そういった中で、高知県の中には、少しぐらい勉強ができなくても、元気でスポーツができればいいんじゃないかという話が実際にあったようですけれども、翌年発表されました体力の調査についても全国びり、それから、生徒指導上の課題についても全国びりということで、こういった状況のままで放置していいのかというようなことで、これまでの取組を徹底的に検証して、本当に危機的状況、これは教育委員会も、知事部局もともに認識をした上で、教育改革を進めてきたというところになります。
したがいまして、19年、20年に発表されました知、徳、体、それぞれのデータから高知県の教育改革がスタートした。平成20年度からは緊急プラン、平成24年度から重点プランということで、学校の経営計画であったり、家庭学習の取組の向上であったり、それから、24年度からの重点プランでは、チーム学校、組織で取り組む、そういったような取組を進めてまいりました。
そうした中で、現在の取組ですけれども、平成20年度からの重点的な取組をやりましたけれども、まだまだ十分じゃないということで、新しい教育委員会制度になって、教育大綱ということになりましたが、実は平成27年度、高知県総合教育会議を6回開催いたしまして、教育大綱を取りまとめました。
この教育大綱をきょう、持ってくるのにちょっと悩んだんですけれども、実はこれだけあります。教育大綱が100ページ、これは高知県の現状を分析して、そこから課題を洗い出して、どういう方向性で取り組むかが100ページです。それに基づいて具体的な方策を、5W1Hを明らかにして、今年度は137の事業を組み立てた教育振興基本計画が、残り200ページ、これを実は毎年、PDCAを回しながらバージョンアップしていますので、第2期教育基本計画の第3次改訂、今年度最終なんですけれども、毎年、PDCAを回しながら改訂をする取組をしております。
これを平成28年3月に策定いたしまして、この内容を、先ほど言いました、踏まえて、より具体的な5W1Hを決めながら、4年間の計画が第2期高知県教育振興基本計画、これを同時に策定しまして取組を進めてきております。
これにつきまして、理念にとどまらない実行性ある具体が必要ということで、そういったことをこの基本計画に基づいて取り組んでおりますが、高知県の特徴として、これは経済的な話ですけれども、例えば、生活保護率が全国ワースト3位、就学援助率が全国ワースト1位、ひとり親世帯率が全国ワースト5位というような状況があります。
それから、平均所得自体が全国平均の8割であって、女性の場合に、結婚して、子育てして、再就職して、M字カーブが一般的に言われますけれども、高知県の場合、女性が一回離職するという余裕がない。ずっと働きっ放しで、M字カーブがないという県でもあります。そういったことで何が起こるかというと、共働きが多くなってくる。共働きが多くなると、乳幼児を預ける割合が全国的にも非常に高い。その中でも、幼稚園ではなくて保育園に預ける率が高いということで、高知県はほぼ保育園が8割、幼稚園が2割といったような、全国平均を20ポイントぐらい上回る。
まず、そういった状況の中で、どういう対策を立てるかということで、教育大綱、教育振興基本計画に取り組んできております。
教育大綱の中で、基本目標をそれぞれ知、徳、体の中で掲げておりまして、まず、知の部分でいくと、小学校は学力は全国上位、中学校は全国平均ということで、今、平成27年度の数値を右に書いてありますけれども、平成27年、国語は9位、今年は23位でした。算数は15位、これが今年は6位。中学校も、国語は46位から、今年は39位まで上げまして、数学の方も34位まで、今年は上げておりますが、全国平均10ポイント差があったのが、マイナス1.7ポイントということで、かなり中学の方も成果を上げてきている。
そういう中で、小学校、中学校の状況を引っ張って、公立の高等学校の成績については、こちらについても非常に憂慮する状況があったということで、ここにD3層の割合と書いてあります。D3層を米印で書いてありますけれども、ここでは、学習内容が十分に定着しておらず、進学や就職の際に困難が生じる。本当はもっと厳しいことを書かれておりまして、入学試験、就職試験で筆記試験が課せられた場合に、合格する可能性はほとんどないというような形がD3層。こういうD3層と判定される子供が、高校3年の4月段階で、公立高校の30%ぐらい、ずっといた。
ただし、30%といいますのは、先ほどの絵でありました、緑の学校を除いた赤の学校ということですので、全校、全県生徒の7割ぐらいで、D3層30%という数字が、1学年で言うと大体700人から800人ぐらいとなり、その30%の700人、800人の数を、少なくとも15%以下に落としましょうというのが基本目標ということで、PDCAに基づいて取組を今、進めてきているという状況です。
これは、今年、教育大綱を改訂したときのまとめになっていますけれども、毎年、年4回の教育総合会議の中で、それぞれ毎回、130の各事業の進捗状況を報告しながら、課題を洗い出して、毎年、それぞれこういう形でのバージョンアップを行っております。
高等学校の学習に関するPDCAサイクルというのは、こういう図になっておりまして、まず、真ん中のPになりますけれども、管理職が客観的なデータに基づきまして、学校経営計画を策定した上で、教科会の方では、学力向上プランというのを策定します。
これに関しまして、右上にあります「学校支援チーム」、これはまた後で説明しますけれども、学校支援チームが指導・助言をしながら、具体的に学力向上プランに向けて、各学校で授業改善を行っていく。学校支援チームについては、授業参観とか、研修の協議であるとか、そういった授業改善に向けた支援を行っております。
そうした学力向上プランに基づいた取組、授業改善などを行いながら、Cになりますけれども、学力定着把握検査によりまして、学力・学習状況等を客観的に検証、それまでの取組を検証する。
そういう中で、検証結果を踏まえて、左下になります、学校支援チームとも協議しながら、検証結果に基づく各取組を改善する。この改善結果を学校経営計画とか学力向上プランへ反映させながらという形で、1年を通した授業改善のPDCAを回している。こういった状況で取組を進めております。
これは学校経営計画ということで、実際にこれを全ての学校長、管理職に作成させまして、私も毎年春には、各校長と各1時間、このプランについての協議を行っている。
次が、各教科会で作ります学力向上プラン、これで具体的に各科目ごと、どういう取組をするか、学年の目標とその手だて、現状・課題分析など、こういったものを作って、この取組に基づいた授業を行っていくということになっております。
それから、高知県で行っております学力定着把握検査の概要ということで、先ほど申しましたように、中学校までの基礎学力の課題が明らかになりますので、高等学校で全国と比較するものがありませんで、そういったことで、平成21年度から、まず、指定校から学力定着把握検査を実施しております。
24年度からは、全ての県立の全日制高校生で開始をいたしまして、26年からは3学年全てで、3学年は4月だけになりますけれども、この試験をやりながら学力の状況を把握して、それを、PDCAサイクルを回しながら授業改善につなげていくといった取組をやっております。
30年度からは、学校支援チームというのを県教委に置きながら、年間を通した授業改善に係る学校訪問等を実施してきているといった状況になっております。
これは、皆さん御存じのとおりですので、あれですけれども、本県が実施してきました学力定着把握検査、それと、高校生のための学びの基礎診断、これにつきましては様々な測定ツールを活用しながら生徒の学習状況を多面的に評価するということで、理念、目的は共通であるということで、高知県では今後、高校生のための学びの基礎診断を活用していくということで進んできております。
次のページは文科省さんの資料ですので、飛ばさせていただきまして、現在、高知県としましては具体的に、右の欄になりますけれども、ベネッセコーポレーションの進路マップ基礎力診断テスト、それから、1つ飛ばして、スタディーサポート、もう一つ飛ばして、ベネッセ総合学力テスト、これを利用しております。
現在まで、4月、9月、4月、9月で実施しておりますけれども、この間隔ですと、結果が出て、それで改訂プランを出して、それをPDCAで回していくと、ちょっと期間的に無理もありましたので、順次、4月から11月というテスト期間を7か月間に置いて、移行させるようにしております。
そうしたことから、しっかりと一定の期間の中で、結果を把握して、分析して、それを、学習プランを反映させながらということで回していこうということで、取組を徹底していこうということで、今年度から、学年進行で、4月、11月、6月、1月、今まで5回やっていたのが4回になりますけれども、こういう形で進めていこうとしております。
学校支援チームにつきましては、県教委の高等学校課に、企画監1名を置きまして、課長補佐1名、それから、チーフ・指導主事7名体制、加えて、学校経営アドバイザー1名と授業改善アドバイザー5名、このアドバイザーは全て、経験豊富な退職した校長さんにお願いをしておりまして、学校訪問については、アドバイザー1名と指導主事1名の2名で訪問させていただいております。
加えて、一番下になりますけれども、学校経営の向上に向けたアドバイス、校長に対してのアドバイスというのも実施をしております。
これが、学校支援チームによる指導の年間の流れですけれども、重点支援校、支援校、小規模校と3段階置きまして、重点支援校は年間各教科8回といった形で回している。下側が年間のスケジュールになっておりまして、全学年学力把握検査を終えて、学力向上プランを策定して、その結果を反映させてというようなPDCAサイクルを全県の高校で回しているという状況です。
そういう中で、D3層が、一番上のグラフになりますけれども、27年度の30.4%から、今年は24.2%、初めて25%を切るような形で改善してまいりました。その下の折れ線グラフですけれども、それぞれ平成29年、平成30年の卒業生から今年の入学生までのデータを入れておりますけれども、一番左の部分で、順番に33.8、31.0、28.7、24.9と下がってきている部分については、小学校、中学校での学力向上対策が効いてきて、毎年、最初のところ、D3層が減ってきたんじゃないかということを感じております。
もう一つ、再編振興計画ということで、先ほど申しました、非常に小規模な高校が多いということで、教育の質の維持・向上のために一定の規模の維持が大事なんですけれども、そういったことで、適正規模の維持と適切な配置に努める再編振興計画というものを取り組んでおります。
この中で、前期の取組では、左の一番下になりますけれども、高知南中学校・高等学校と高知西高校の統合、それから、左には、安芸中学校・高等学校との統合、清水高校の高台移転、これら半分ぐらいの目的が、南海トラフ地震への対応、高台移転というようなことにもなっております。
それから、先ほど言いました高知南中学・高等学校と高知西高校の統合では、国際中学ということで、国際バカロレアを導入した学校を新たに設置するということで、昨年、中学1年生が入学しまして、今の中学2年が高校に入るときに国際高校も開学するということで、これにつきましても、これまで学芸大附属の国際中学校に20名の教員を1年間派遣いたしまして、教員の人材育成も進めながら、取組を進めております。
それから、右の山田高校は、来年4月に学科改編ということで、今までの普通科、商業科を、普通科とグローバル探究科、ビジネス探究科ということで、近隣にあります高知工科大学との連携も強化しながら、探究を中心とした学科改編をしようということで、この探究科を中心とした学科改編の検討過程におきましては、荒瀬座長に委員としても助言を頂いてきたということであります。大変感謝をしております。
そして、再編ということで、中山間10校、高校がございます。多様なニーズに応えるために様々な取組をやっております。真ん中にありますように、地元中学校との連携、地元自治体との連携、国指定事業の活用、ICTの活用と。
具体的な取組事例としては、室戸高校、ここは今度、この秋に退団しましたけれども、ジャイアンツとか横浜ベイスターズにおりました駒田徳広さんが監督をされておりまして、その駒田さんと連携をして、野球部のコーチをお願いするといった取組とか、世界ジオパークを活用した探究学習、それから、嶺北高校につきましても、カヌー部、右下にいる外国人の方が、ハンガリーのカヌーの世界チャンピオンの方ですけれども、そういった方々を活用した取組を行っております。
それから、中山間ですので教員の配置数が限られて、なかなかたくさんの必要な科目を開講することは難しいということで、今年から、遠隔教育を中心とした授業の配信を行っていこうということで、教育センターに配信センターを設置しまして、現在、中山間の10校に、今年度はセンター試験対策ということでの補習授業を配信しております。
来年度から、下にありますように、単位として認定を指定できるような形で、遠隔教育を始めようということで、プロジェクトチームを立ち上げまして、教員の配置であるとか、教育課程の編成・実施に対してのこと、それから、実際に立ち会う教員の確保といった具体的な取組を検討しております。
こうした取組をやるためには、一定の定数も必要ですので、こういった機会ですので、是非、教員配置に係るところの制度についても、御配慮を今後お願いしたいと思っております。
最後、今年度、教育大綱4年目になっておりますので、現在、教育大綱の改訂に向けた取組を進めております。これまでの取組をさらに強化をしていくということに加えまして、AI、ICTを活用した個別最適化というのを実現していきたい、こういったものを柱にしていこうということで、遠隔システムによる授業配信と基礎学力の定着に課題のある児童生徒に対する個別の学習サポート、それから、一斉授業の中で、ICTを活用して児童生徒の習熟度などに応じた学びを実現したい。
これについては、いわゆる落ちこぼれ対策になりますけれども、本県、小・中学校の半数以上は複式学級ということもあります。こういったことにつきまして是非、文科省の研究事業などを受けまして、企業さんとも連携した研究、取組をしていきたいなと思っておりますし、下については、AIやデータサイエンス分野における高度な人材を育成したいということで、大学と連携した取組をしていきたいと考えております。
本県、大規模校から複式学級がある学校まで、小・中・高それぞれ様々に学校がございますし、小・中、それから、高等学校全てに、統合型の校務支援システムを今年度、公立学校には入れました。県教委としても、それから、市町村教委との連携も結構できております。そういった強みを生かしながら、研究にも取り組んでいきたいと思っております。
ちょっと時間も長くなりましたけれども、以上でございます。どうもありがとうございました。
【荒瀬主査】 ありがとうございました。
それでは、今、御発表いただきました内容につきまして、御質問、御意見をどうぞお願いいたします。
では、角田委員、お願いいたします。
【角田委員】 御報告ありがとうございます。常々、1校1校の学校が授業改善や学校改革に取り組んでいくときに、どんな支援策があるかということを考えていたわけなんですけれども、こちらでは、県が学校支援チームを作って、全校を回られて支援なさっているということで、すばらしい事例と思いました。すごく下世話な質問で申し訳ないのですが、回ってくると嫌だなとか、高校側の反応とかはどうだったのでしょうか。県の学校支援チームと実際の高校とのコミュニケーションについてお聞きしたいと思いました。
もう一つは、遠隔教育システムがすばらしいと思いました。今回の資料では大学受験のために絞られているようですが、小さな高校の生徒さんが幅広い学習をするに当たって、こういったシステムは今後、可能性があると思いました。こちらは感想です。以上です。
【荒瀬主査】 ありがとうございました。
それでは、佐藤委員、橋本委員、鍛治田委員、香山委員の順にお願いいたします。
【佐藤委員】 御発表ありがとうございました。私も、つくばの教員研修センターに行った際に、高知県からはたくさんの先生方がお見えになっていて、いつも本気の取組というのを肌で感じながら、たくさん交流をさせていただいておりました。
高等学校改革におけるPDCAサイクルの推進の中で、スライドの16番、授業改善の学校の割り振りを拝見しての質問です。重点支援校であるとか支援校というところには、教員の配置を増員したり、地歴公民というところには、指導する先生を1人、教育委員会の中で増員したということですが、このあたりは、例えば理科から、もっと理科教育もという声が上がったり、地歴公民を重点化することで、何か見えてきた成果というのがあるのかどうか、それから、カリキュラム・マネジメントが35校ということなんですけれども、このあたりも具体的に何か成果のようなものがありましたら、教えていただきたいと思います。
以上です。
【荒瀬主査】 ありがとうございました。
では、橋本委員、お願いいたします。
【橋本主査代理】 御報告ありがとうございました。大変厳しい環境の中で、具体的な取組を進めておられまして、それが成果につながっているということで、同じ教育長として、本当に見習うべきかなと思いました。
3点ほどお聞きしたいんですけれども、最初は、7ページ、PDCAサイクルのところですが、学校支援チームによる指導・助言が行われて、それを基に、学校で授業改善を行っていくというシステムをとられているわけですけど、もしよろしければ、具体的な例、例えばこんな指導・助言をして、学校では具体的にこういう改善が図られましたということを教えていただきたいなというのが1つ。
2点目は、13ページに学びの基礎診断のツール一覧がありました。実は私どもも30年来、独自のテストを実施していました。ただ、問題作成等の負担が多い。片方で、基礎診断と目標は共通しているなということで、来年度から基礎診断の方に乗り換えていこうと思っております。
ただ、その中で課題と思っておりますのが、英語のスピーキングテストの関係です。1つは、内容として、短い時間のスピーキングテストで、能力を果たしてしっかり測れるのかといったこと、あるいは、採点を業者でしてもらおうとすると、かなり高額に及ぶ。安い方は自分たちで採点等をしなければならないという仕組みであったり、あるいは、タブレットの台数制限があって、学年全体でやるにはなかなか厳しいということがあったりします。
そういう中で、高知県さんがどのようにスピーキング対応をお考えになっていらっしゃるのか。それと、たしか予算措置をされて、保護者に対する補助か何かされていると伺っているんですけど、その予算内容を教えていただけたらと思います。
最後に、遠隔教育のところで、教育センターの方から授業配信のようなことをされるということですけれども、教育センターはどれぐらいの体制でこれに当たっていらっしゃるのか、また、学校との双方向性というのは、いろいろ確保されてやっていらっしゃるのか。
たくさん言いましたが、以上です。
【荒瀬主査】 ありがとうございました。
では、鍛治田委員、お願いいたします。
【鍛治田委員】 非常に熱い御報告、ありがとうございました。最初に、ワーストをいっぱい並べられたんですけれども、高知県は、高卒の就職内定率が大変いいんですよね。求人数も、求職数も、それから、高卒内定率は98%を超えていらっしゃるし、県内が97%も超えている。これは、高校が働く意欲を持った若者を育てていらっしゃるということや、会社や地域と連携できているというふうに、その数字を見て思っております。
ですので、PDCAサイクルが学力向上だけになっているのが、とてももったいないような気がしまして、そのあたりはどんなふうに考えていらっしゃるか、教えていただけたらと思っています。
【荒瀬主査】 ありがとうございました。
では、香山委員、お願いいたします。
【香山委員】 重なるところもあるんですが、2点、お尋ねします。
1点は、小学校、中学校、そして高校という形で、全国学力・学習状況調査の状況が上がってきている、学びの基礎診断の状況も上がってきているというところなんですけれども、いわゆるA学力、B学力、C学力といいますか、基礎・基本のA学力、思考力・判断力・表現力のB学力というような観点でいった場合に、どういうところにてこ入れをして伸びているのかというあたり、もう少し教えていただけたらと思います。しかも、それがひょっとして、おしまいの方に書いてありました、AIやICTの活用による個別最適化が奏功したのかどうなのかというあたり、それが1点です。
2点目は、嶺北高校のことを、少し私も存じ上げているんですけれども、地域と高校との関係が非常にうまくいっている学校だなと嶺北高校を見ていまして、いわゆるコーディネーター、地域と高校をつなぐ人材も、「燈心嶺」の塾の講師も含めて、たくさんいらっしゃるといったことが見てとれているんですけれども、そういったものは地元の基礎自治体の支援によるところが大きいのか、あるいは県としても、単県で加配とか、あるいは何らかの財政的措置をしているとか、あるいは制度的な支援をしているといったことがあって、促進されているんでしょうか。
以上2点、お願いします。
【荒瀬主査】 ありがとうございます。
たくさん質問が出ていまして、申し訳ありませんが、もうちょっとお待ちください。
では、牧野委員、お願いいたします。
【牧野委員】 すみません、あまり高知県の教育状況をよく知らないので、どうしてそうなっているのかだけ、まず教えていただければと思うんですけれども、小学校と中学校で随分、学テの差が出ているのは、中学校に何か課題があると考えていらっしゃるんでしょうか。それを受けて、高校のこういった改革が行われているのかどうか。
つまり、中・高の連携、あるいは小・中の連携というのが、どのような状況にあるのか、そのところを教えていただきたいというのと、もう一つ、ICTの導入について、高校教育におけるICTの活用というのは今、どういった状況にあるのか。小・中と同じような遠隔教育を高校においてもやっていくということで、中山間地があるのかなとお見受けしたんですけど、そのほかの高校も含めて、ICTの活用をどのように進めようとしているのか、その2点を教えていただけるとありがたいです。
【荒瀬主査】 ありがとうございました。
ほかにはよろしいでしょうか。
跡部委員、どうぞ。
【跡部委員】 1点だけ伺えればと思っています。
6ページのところで、いろいろな教育改革、こんなことをされたという項目が載っている中で、「メンター制」という言葉が何か所か出てきています。これはどんな形で、どのぐらいの期間、どんなふうに活用されたのかを教えていただければと思っています。
【荒瀬主査】 ありがとうございました。
相当たくさんありましたが、どうしましょうか。よろしいですか。まとめて答えていただけますか。
【高知県教育委員会 伊藤教育長】 ひょっとしたら答弁が抜けるかもしれませんので、その点、再度お願いしたいと思います。
まず、学校支援チームが入って、高等学校の教員が嫌がったんじゃないかと。多分、そうだと思います。そういう県教委から来てというのがあったと思うんですけれども、当時の企画監が、教育次長も経験されて、中心的な高等学校の校長もされてきた、退職された方を再任用で、非常に人望のある方、そういった方々が丁寧に訪問していただいて、出てきた。
そういった形で、やっぱり当初は、こういった新しい体制になるとどうしても反発はあるんですけれども、今現在、そんなに気になるようなことではないですし、成果も上がってきておりますので、順調に進んでいるのかなと。
ただ、後でも出てきますけれども、地歴とかの方にも関係しますが、英数国で始めて、それぞれ授業改善は進んできたんですけれども、その他の教科に波及をしないというところは昨年度の課題で、やっぱり英数国でやって、それ以外の教科にも授業改善の取組を波及していただくというのが狙いであったんですけど、いまいち、そこは十分ではなかったということで、今年度のPDCAを回した反省点として、学校支援チームを強化して、地歴の方も回るようになった。
理科の方は、順次ということで、理科はこの次にというような、来年度以降、対応していくということにしております。
それから、遠隔教育で幾つか出ましたけれども、最初に、補習で使われているというお話がありましたけれども、実は今月末に、配置した10校一斉に接続しまして、こういった使い方ができるんだよと。来年度からも授業でやろうとしているけれども、子供たちがどういうふうに使いたいかということについても、話を聞いてみようと。
その場は私も出まして、10校に対して、子供たちに対して、こういった新しい中山間のシステムを入れて、来年度から授業もやるし、そのほかのこともいろいろ考えていきたいということで、直接子供たちと私も話をしようと思っております。
ここについて、たくさんお話が出ましたけれども、センターに今、多分、指導主事は5名の体制で、各教科1名ずつ、体制をとっております。補習でそれぞれの教科をやっていますけれども、来年度からは、指導主事は授業ができませんので、どこかの高校の分校という格好にした上で、全ての10校に兼務発令をして、現地で授業に対応できる教員も配置して、それぞれの校時の始まりの時間も設定してという形で、様々な課題を解決しようということで今、プロジェクトチームを作って、具体的な取組をしているという状況です。
それから、学びの基礎診断のところで、費用負担のことがありましたけれども、これまで全ての費用負担は県の一般財源で対応しています。今年度は、予算化しているので、4,900万円程度になりますけれども、こういったものにつきましては、客観的な基礎データを得るものだということで、県費で負担をしてやっております。
それから、メンター制の話については、今年度から、さきの6ページの資料は、今年度、改訂をした取組です。実は中学校については、お互いに学び合うということで、福井県さんがやられているような教科の「タテ持ち」ということで、教科間で教員同士が学び合う仕組みを作って、授業改善に取り組んできましたけれども、小学校の場合は、教科担任制じゃなくて、1人が全部見るということで、教科会みたいな取組はできませんでしたので、これは岡山県さんなんかが先行してやられておりますけど、いわゆる相談役、メンター、メンティーと。中堅教員、それから、ちょっとした先輩教員をメンターに、県内小学校は約200ございますけれども、全ての小学校にメンター制を導入しまして、1人、メンターを任命していただきまして、その方々が日常的に四、五人の若年教員の授業改善とか保護者対応といったものについて、週1回、それから、時間があれば簡単な講話みたいなものもしながら面倒を見る。
一般的な企業であれば大体、先輩が後輩を常に見ていくというような文化があるんですけれども、なかなか小学校、学級王国とも言われる状況もあって、そういったところはできていないので、形から入ろうということで、今年度からメンター制を全ての学校に導入しまして、そのうち複数の若年教員、新採用教員がいるところについては、退職教員なんかを再任用しまして、コーディネーターという形で、1人で8校ぐらい見られるようにしながら、メンターのサポートをする。そういった形で取組を進めておりまして、コーディネーターにつきましては、来年度もさらに増強していこうと思っております。
それから、高校の就職率の話が出ておりますけれども、課題としては、県内就職率が上がってきたとはいえ、まだ67%ぐらいで、目標70%を置いていますので、就職率99%を超えておりますけれども、県内就職を進めていきたいということです。
それから、PDCAにつきましては、133ぐらいあります全ての事業につきまして、年に4回、アウトプットからアウトカム、そして今の状況と課題の洗い出し、それを今後どうするのかということでやっておりますので、全体でもやっておりますけれども、個々の事業でもやっておりますので、PDCAについては、そういった形で取組を進めております。
それから、あと何でしたか。
【荒瀬主査】 カリキュラム・マネジメントに取り組んでいらっしゃる、その成果などが出ているでしょうかといったようなこともございました。
【高知県教育委員会 長岡企画監】 高等学校課企画監の長岡と申します。
先ほどのカリキュラム・マネジメントの成果というところですけれども、カリキュラム・マネジメントで学校の方、今年、年4回、回らせてもらっているんですけれども、そういった中では、さっき学校支援チームという、授業改善で入るチームをうまく活用しながら、学校で授業改善の取組をしっかり中に入れていこうというような校長先生方の学校経営ができてきたり、そういったものをいろんな形で、進捗管理も含めてサポートをしていく、そういったことが実際にはできてきているかなと思います。
あとは、前段の話でもありました、新しい学習指導要領に向けてのポイントになるところとかそういったところも校長先生方とお話をしながら、これから先、どういうビジョンで学校経営をしていくのかというところも、いろんな形で御相談といいますか、話をしながら進めさせていただいています、そういったところが一定、PDCAを中心にしながらやっているというのが一つの成果ではないかと思っています。
【高知県教育委員会 伊藤教育長】 それから、小・中学校で学力の差があるというような御質問がございました。冒頭にちょっとお話ししましたけれども、高知県は、私立の中学校が非常に力があるといいますか、小学校の通塾率が全国でもトップクラスです。だから、中学受験で非常に力を入れるという県でございまして、県内の小学校6年生の約3割が私立中学校の受験をしまして、25%が私立中学校へ進学をしております。
特に高知市は、4割が小学校6年生で中学受験を行いまして、3割が私立中学校へ行くということですので、高知というと、ざくっといいますと、クラスの上位3割が私立中学校へ抜けて、公立中学校は残りの方が行かれるというような状況に、はっきり言うと、なります。それから、私立高校でも、さらに定員が多くなりますので、公立中学校から私立高校へまず抜けられるという状況はございます。
ただ、高知県の教育委員会としては、私立中学校へ上位の方が抜けている状況があるので、仕方ないねということではなくて、それであっても全国平均ぐらいの学力はちゃんと子供たちに付けさせようという形で、基本目標は、全国平均を目指すというような形で設定をさせていただいています。
【荒瀬主査】 牧野委員、どうぞ。
【牧野委員】 小・中・高の連携の話はどうなのか、そういう話はまだですか。小・中と中・高の連携の話は、現状はどんな感じですかと、それを聞きたかったんですけれども。
【高知県教育委員会 伊藤教育長】 失礼しました。小学校、中学校それぞれで、中学校で言うと、校区の中で、小学校での状況について中学校へ情報提供、それは学力だけではなくて、生徒指導上の状況も含めて行われるというような形になっております。
今度、冒頭ちょっとお話ししました、校務支援システムが公立小・中学校に全部入りました。高等学校は既に入っていまして、そういったシステムを使った、小・中、又は中学・高校の連携といったものが今度から具体的に取り組めるようになってきましたので、そういったものも活用しながらやっていきたいということにしております。
基本的には、小・中の連携については、各市町村教育委員会の中でも適切に行われていると思っておりますし、高校へ入学した際には、中学校の方から必ずその入学生についてのデータを頂いて、それでクラス編成、その後の高校へ入ってからの育成について生かすという形での情報提供と収集はしておりますので、そういった形の情報、小・中・高の連携というのはできているのかなと思っています。
【荒瀬主査】 よろしいですか。
【高知県教育委員会 長岡企画監】 英語スピーキングテストといいますか、学びの基礎診断の部分ですけれども、学校対応という形ではなくて、基礎学力診断で、29校の学びの基礎診断の基礎的な方の検査を受ける学校については、業者の方に、英語スピーキングのデータをお渡しするような形での分析をしていただいて、返していただくというような流れをさせていただいています。
基礎学力診断テストを学びの基礎診断として実施をしていない学校については、GTECを高校1年生段階だけ受けていただくような形で、検査をしております。
高校2年生になった時点での学びの基礎診断の場合は、保護者の自己負担になるのか、学校の方で採点をするのかということについては、学校の方にそこは選択をしていただくというような形にしております。
【高知県教育委員会 伊藤教育長】 あと、ICTに関して幾つか御質問がありました。遠隔教育に関して、10校以外にということについては、これは10校以外の校長からも、自分の学校にも是非というようなお話も頂いておりますので、今後は、その10校に限らず全県的に展開をしていくようになるんだろうと思っていますし、タブレット等の配置にしましても同様に、今、各校、順次進めておりますので、これも進めていく必要があるかなと思っております。
それから、AIとICTの、最後の今後の取組のところで御質問がございましたが、AIに関していくと、データサイエンティストという、これから求められる人材育成に向けた、より高みを目指したような高度な教育を、1つはしていきたいと思いますし、それから、ICTの活用というのは、各産業分野でも、ICTを活用した様々なものが求められるようになりましたので、県内を幾つかのブロックに分けて、ICT人材を配置して、それなりの授業、教育課程を作っていきたい、そういう拠点校的なものには取り組んでいきたいと考えております。
それから、嶺北高校のコーディネーターのお話、地域との連携のお話もありました。嶺北高校に限らず、室戸高校であるとか窪川高校、四万十高校とか幾つかの学校で、地元の自治体が非常に協力的で、高校生のための塾をやっていただいたり、海外留学とかの支援もしていただいたり、応援する会議を立ち上げていただいて、非常に協力をしていただいております。これは中山間対策といいますか、中山間地域の活性化のためには、やっぱり高校が一つの核になってほしいというような地域の願いもありますし、地域から高校がなくなってしまうと、その地域として衰退をしていくという危機感もあります。
そういった形で、非常に市町村の方が高校を応援してくれる体制が整ってまいりました。県としましても、加配教員ももちろん、例えば主幹教諭なんかを加配で配置をする。それから、必要な予算につきましては、先ほど、例えば女子野球で、県外からの子供たちの募集をあれでしていこうという狙いはあるんですけれども、ファイティングドッグスという独立リーグと連携をして練習をしてもらうということについては、600万円ぐらい予算を付けましたけれども、そういった地域との連携に必要な、魅力化に必要な予算というのは、ある面、特別枠的なもので続けておりますし、コーディネーターにつきましても、年度途中であって、特段予算を取っていなくても、必要なコーディネーターを配置するという形で、地域と密接に連携しながら取組を進めさせていただいているような状況だと思っております。
【荒瀬主査】 ありがとうございました。たくさんの御質問が出まして、私のメモでは、大体、今のお答えでほぼ網羅していただいたかなと思いますが、委員の皆様、よろしいでしょうか。
ありがとうございます。
それでは、本当に長時間にわたりまして、お二人、御説明、どうもありがとうございました。
それでは、残すところ、時間がほとんどないんですけれども、きょうのお三方の御発表を受けて、いろいろと議論、御質問、御意見を頂いたわけですけれども、全体を通じまして、お一人か、せいぜいお二人ぐらいかと思うんですが、よろしいですか。
では、御質問ですか。
【長塚委員】 意見です。
【荒瀬主査】 では、牧田委員、長塚委員、香山委員のお三人にお話しいただきます。残る時間はあと5分でありますので、よろしくお願いいたします。
【牧田委員】 きょうのお話をお伺いしていて、ちょっと気づいたというか、意見を幾つか申し上げたいと思います。
まず1つは、STEAM教育で格差が起きるんじゃないかという話で、その格差が起きるプロセスは別にしても、我々企業経営において、上位層を伸ばすということは、全体を伸ばすということにかなり有効な手だてでありますので、上を伸ばさずに下をボトムアップしようという発想では、恐らく今のSociety5.0には対抗できないのかなと思ったのが1つ。
もう一つは、教育現場の話ですけれども、企業経営の例えで、社長がいろんなところを飛び回って、こんなものを見てきたぞ、こういうものがあるぞ、こういうものをやろうじゃないかと社員に言うわけですね。ところが社員は、もちろん知識もなければ、ちんぷんかんぷんになっているんですね。でも、上からやれと言われて、やらざるを得ない。
そんな中で、もがき苦しんで、結局はその社員が潰れていくか、成果を出さずに、そのまま会社が衰退していくかみたいな話になっていくんですが、私は、まさに今の教育現場というのはこういうことになっているのではないかなと思いまして、先ほど奈須先生がおっしゃったように、僕は、日本の教育のいいところは、教科書とかそういうカリキュラムがしっかりしているところだと思うんですけれども、これは実は初等教育までではないかと思っていまして、まさに欧米各国は、高校ぐらいになってくるとかなり自由なカリキュラムを組ませているんですね。それから、国が権限を握るのではなくて、州とか市が権限を持って、責任を持ってやっているんですね。したがって、前々から申し上げているように、単線型と複線型のミックスということをやっぱり常に念頭に置いていただきたいと思います。
また、先ほど申し上げたように、日本の教育現場は、そういう形で疲弊をしていますので、我々が、提言するのか何か分かりませんけれども、何かを出すときには、そのやり方といいますか、現場の先生たちがどう対応していったらいいのかというところまで踏み込んでいかないと、我々が何を言っても多分、変わっていかないのかなと感じました。
最後、もう一つですけれども、STEAM教育というのは重要だと思っています。もちろんSociety5.0を生き抜くために必要なんですけれども、もう一つ、忘れてならないのはAI、要するに、Society5.0というのはAIが核になっているんですね。ですから、AIに立ち向かう教育というのも実はしていかなければいけないわけで、その辺の議論は今のところ全く出ていないわけでありまして、そこのところ、簡単に言うと、AIにできないことを子供たちに教えていかなければならないんだろうと思っています。
その一つに、私は、別に宗教家でも何でもないですけれども、やっぱり物事の善悪とか、正邪とか、そういったことをベースに考えていかないと、ビッグデータを活用する上において、それが変な方向に行ってしまうと、まさにAIは味方ではなくて敵になってしまいますし、そんな中、その先に、AIを使うのか、使われるのかという問題も出てくると思います。ですから、そういった分野にも踏み込んでいく必要があるのではないかと思った次第であります。
以上です。
【荒瀬主査】 ありがとうございました。
では、長塚委員、お願いいたします。
【長塚委員】 前半のSTEAM教育に関する資料として、教育課程部会の資料も頂いて、その1枚目の一番下に、「産学連携STEAM教育コンテンツのオンライン・ライブラリーを構築する」という教育再生実行会議の提言があります。
STEAM教育を各学校がこれからやっていく、あるいは各地域でやっていくと、そのコンテンツを開発するだけでも大変なんだろうと思うんですね。
そこで、出来上がったものは是非共有をするような、国がいいものを全国に提供できる仕組みを考えていただけたら良いなと思います。ただいまの遠隔教育のコンテンツに関しても同様に、STEAMや必要な教育に資するようなものをオンラインで提供されれば、推進できることがたくさんあるんじゃないかなという感想を持ったものですから、意見をいたしました。
以上です。

【荒瀬主査】 ありがとうございました。
では、香山委員、お願いいたします。
【香山委員】 きょうは、総合的な探究の時間等の話も前段にありましたので、高知県のお話をお聞きしながら、学校支援チームという組織というのは非常に魅力だなと思いました。
例えばドリルをやって、一部分のA学力を伸ばすとかということではなくて、学校全体の課題を、それぞれの学校に応じて助言する。しかも、PDCAを回しながら、非常に小刻みに、場合によっては年8回という学校もあるようですから、回していくというのは本当にいいことだなと思いました。
先ほど牧田委員が、上を伸ばすことによって下も伸びるんだというお話をされて、やはり総合的な探究の時間等で培われる、思考力・判断力・表現力等を伸ばしていくということ、こういう教育をしていかないと下も伸びないと思います。
全国学テの中では、クロス集計で、総合的な学習の時間をしっかりやっている学校のテストの点が伸びているといったデータもありますので、そういう意味で、高知県の取組というのは非常に期待が持てますし、横展開できるんじゃないかなとも感じました。
最後に、基礎学力の高校生のための学びの基礎診断についてなんですが、今、長塚委員の方で、AIに立ち向かうと。あるいは、牧田委員もおっしゃいましたけれども、そういった議論の中で、新井紀子さんのリーディングスキルテストというのが今、随分注目されています。基礎的な読解力がないと結局、AI読みをしてしまって、教科書を読んでいるようで読んでいない、よって力が付かないといったようなこともございます。
そういう意味で、高校生のための学びの基礎診断とリーディングスキルテスト等の知見をどう今後バージョンアップさせていくのかといったことも是非、視野に入れていただけたらなと思いました。
以上です。
【荒瀬主査】 ありがとうございました。
進行がまずくて、ちょっと時間をオーバーしております。申し訳ございません。きょう、これで議論は終わりたいと思うんですが、10月25日に、委員を兼ねていらっしゃる方もいらっしゃいますが、本ワーキンググループの親部会となります、新しい時代の初等中等教育の在り方特別部会が開催される予定となっております。その中で、本ワーキンググループをはじめ関係の各部会等から、検討状況の報告が予定されております。
きょうもいろんな御意見を頂戴いたしましたが、事務局の方で、これまでの議論を常に委員の皆さんにフィードバックするべく、まとめをしていただいておりますので、そういったものを基にいたしまして、具体的に検討状況の報告につきましては、主査である私に御一任いただけますでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
【荒瀬主査】 ありがとうございます。
それでは、事務局と相談いたしまして、まとめた形で、親部会の方に報告をしたいと思います。
最後に、次回以降の予定につきまして、事務局からよろしくお願いいたします。
【酒井参事官補佐】 次回のワーキンググループの日程につきましては、調整の上、改めて御連絡させていただきます。
また、本日傍聴者の皆様に、資料2だけ紙配付とさせていただいておりましたが、一部不足が生じていたようでございます。まことに申し訳ございません。
このため、増刷した資料2を用意しておりますので、必要な方はお持ち帰りいただきますよう、お願いいたします。
以上でございます。
【荒瀬主査】 ありがとうございました。
最後の牧田委員のお話など、このワーキングでどの範囲まで議論するのかという、非常に重要な点の御指摘もあったかと思います。今後、親部会に報告をしつつ、このワーキングの主体性として、どこまで議論していくのかといったこと、それから、どういう形でそれを学校現場に伝わるようにしていくのかという、そこまでも想像力を働かせてやっていくということが大事かと思います。
Society5.0という言葉が出ましたが、よく分からないSociety5.0でありますけれども、ただし、誰一人として取り残さないということが標榜されておりますので、本当に全ての高校生にしっかりとした力を付けて、これからの社会を生きていけるようにするということを、私たちの当然の共有事項でございますけれども、それに基づいて、今後も議論を進めていきたいと思います。
本日はこれで終わります。ありがとうございました。
―― 了 ――

 

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