新しい時代の高等学校教育の在り方ワーキンググループ(第1回) 議事録

1.日時

令和元年7月25日(木曜日)15時00分~17時00分

2.場所

一橋大学一橋講堂 特別会議室101~103

3.議題

  1. 新しい時代の高等学校教育の在り方について
  2. その他

4.議事録

【酒井参事官補佐】  失礼いたします。定刻より少々早うございますが、皆様お揃いでございますので、ただいまから中央教育審議会初等中等教育分科会新しい時代の初等中等教育の在り方特別部会、第1回新しい時代の高等学校教育の在り方ワーキンググループを開催いたします。
 本日は御多忙の中、御出席を賜りましてまことにありがとうございます。本日は第1回目のワーキンググループでございますので、しばらくの間は事務局の方で進行させていただければと存じます。
 まず、お手元の配付資料を確認させていただきたいと思います。本日の配付資料は、お配りの議事次第にありますとおり、資料1-1から1-3、2-1から2-4、3、4とお配りしております。不足等ございましたら事務局の方にお申し付けいただければと思いますが、御確認いただけますでしょうか。よろしゅうございますでしょうか。
 それでは、引き続きまして、私の方で資料1-1と1-2を用いまして、まず本ワーキンググループの趣旨等につきまして御説明させていただきました上で、資料1-3を用いまして、本ワーキンググループの委員の皆様を御紹介させていただきたいと思います。
 まず、資料1-1をお願いいたします。本ワーキンググループの設置についてということでございます。
 本ワーキンググループにつきましては、本年4月17日に文部科学大臣から中央教育審議会に対して諮問をされた新しい時代の初等中等教育の在り方について検討を行うため、中央教育審議会初等中等教育分科会の下に設置をされました新しい時代の初等中等教育の在り方特別部会の下に設置されたワーキンググループでございます。所掌事務としましては、新しい時代の高等学校教育の在り方に関する重要事項を調査・審議するということとなってございます。
 次に、資料1-2をお願いできればと思います。本ワーキンググループでございますけれども、この新しい時代の初等中等教育の在り方特別部会運営規則にのっとって運営をしていくということになってございます。この運営規則第2条第3項によりまして、主査及び主査代理を置き、特別部会の部会長が指名することとなっております。この点につきましては、本ワーキンググループの主査には荒瀬特別部会長に御就任いただくことになってございます。また、主査代理には、荒瀬部会長の御指名によりまして、橋本特別部会委員に御就任いただくことになってございます。
 続きまして、本ワーキンググループにおける会議の公開について御説明させていただきます。同運営規則第3条によりまして、このワーキンググループにつきましては、公開を原則としております。
 また、会議の傍聴につきましては、同運営規則第4条により、会議を撮影・録画・録音する場合は、事務局が定める手続により申請するとともに、主査の許可を受ける必要がございます。申請がない行為は行うことはできないということはもちろんのこと、会議の進行や他の方の傍聴を妨げる行為を行った場合には、退場を命ずる等の適切な措置を取ることもございますので、傍聴の皆様におかれましてはあらかじめ御了承いただければと存じます。
 続きまして、資料1-3に沿いまして、ワーキンググループの委員の皆様を御紹介させていただきたいと思います。
 まず、荒瀬克己主査でございます。
【荒瀬主査】  荒瀬でございます。よろしくお願いいたします。
【酒井参事官補佐】  橋本幸三主査代理でございます。
【橋本主査代理】  橋本でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
【酒井参事官補佐】  跡部清委員でございます。
【跡部委員】  跡部です。よろしくお願いいたします。
【酒井参事官補佐】  岩本悠委員でございます。
【岩本委員】  どうぞよろしくお願いします。
【酒井参事官補佐】  内堀繁利委員でございます。
【内堀委員】  よろしくお願いします。
【酒井参事官補佐】  鍛治田千文委員でございます。
【鍛治田委員】  よろしくお願いします。
【酒井参事官補佐】  香山真一委員でございます。
【香山委員】  香山でございます。よろしくお願いいたします。
【酒井参事官補佐】  角田浩子委員でございます。
【角田委員】  どうぞよろしくお願いいたします。
【酒井参事官補佐】  長塚篤夫委員でございます。
【長塚委員】  よろしくお願いします。
【酒井参事官補佐】  牧田和樹委員でございます。
【牧田委員】  牧田です。よろしくお願いします。
【酒井参事官補佐】  山口正樹委員でございます。
【山口委員】  山口でございます。よろしくお願いいたします。
【酒井参事官補佐】  なお、本日は佐藤成美委員、清水雅己委員、奈須正裕委員、牧野光朗委員におかれては、本日御公務のため御欠席と伺ってございます。また、本日はオブザーバーといたしまして、特別部会委員の今村久美様にも御参加いただいております。
【今村オブザーバー】  よろしくお願いいたします。
【酒井参事官補佐】  なお、事務局の出席者につきましては、時間の都合上大変恐縮でございますが、座席表をもって代えさせていただきたいと存じます。
 それでは、ここからの議事進行につきましては、荒瀬主査にお願いしたいと思います。荒瀬主査、よろしくお願いいたします。
【荒瀬主査】  皆さん、こんにちは。改めまして、荒瀬でございます。今回、このワーキンググループの主査ということで、どうぞよろしくお願いいたします。
 御案内のとおり、新学習指導要領の前文の中で、教育課程についての記述があります。冒頭に書いてありますのが、一人一人の生徒が自分のよさや可能性を認識することができるようにするということです。私は本当にすばらしい表現であると思いますが、実態はどうかというと、一人一人の生徒が必ずしも自分のよさや可能性を認識することができていないという現状があるということでありまして、学習意欲の基になるような自己肯定感といったものも含めて、様々な課題が今あるということです。自分のよさや可能性を認識する、つまり、学べば成長するとか、今自分の見ている世界が世界の全てではなくて、自分が関わることによって世界がよくなっていくんだという認識をもって、高校生たちが自分の学びをしっかりとしたものにしていく。それをどう支えていくのかということが、大人に課せられた大変重要な責務であると思っております。
 新しい時代の初等中等教育の在り方について中教審に諮問があり、このワーキンググループでは、今後の高等学校教育の在り方について、具体の様々な課題をどうしていくのかということの議論を深めて、そして親部会であります特別部会に出していくということでまとめていきたいと思っておりますので、皆さん、どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、矢野大臣官房審議官に来ていただいておりますので、矢野審議官から御挨拶を頂きたいと思います。
【矢野大臣官房審議官】  事務局を代表いたしまして、一言御挨拶を申し上げます。
 委員の皆様方におかれましては、非常に御多忙の中、遠路全国各地からお集まりいただきまして、まことにありがとうございます。
 今、主査あるいは事務局からも御紹介がありましたとおり、本年4月に中央教育審議会におきまして、新しい時代の初等中等教育の在り方ということで、文部科学大臣より諮問をさせていただいております。これは平成15年5月に包括的な諮問を行っておりますが、それ以来16年ぶりと、初等中等教育に関しては16年ぶりの本格的な包括諮問であるということでございます。
 当時、いわゆるゆとり教育、ゆとり教育という言葉を文科省は使ったことはないんですが、それに対する御批判に対してどう答えるかということと、三位一体改革という補助金、交付税、地方債の一体改革という財政上の観点からの諮問という事情でございました。
 今回は、前回が義務教育にほぼ限られていた点と大きく違いまして、幼稚園から高等学校教育、まさに包括的に初等中等教育を縦に見ていこうということでございまして、非常に内容が多岐にわたるということから、特別部会というのがまず設けられまして、更にその下に本ワーキンググループ等が設置されることになったということでございます。
 高等学校の現状を見ますと、先ほどの主査のお話の裏付けになるのかもしれませんが、高校生の実態等に関する調査によりますれば、高校生の学校生活等への満足度が低い。学習への意欲が、中学校3年生はともかくとして、中1、中2に比べても高校生の方が学習時間が低いとか、あるいは諮問の中にも書かせていただいておりますけれども、大学受験に最低限必要な科目以外は、真剣に学ぶ動機が低下しているというような点について明らかになっておりました。こういった実態を踏まえ、高等学校におきまして、Society5.0を生き抜くために必要な力を一人一人どう身に付けさせていくか。自己肯定感というようなお話もありましたが、そういったところをどう引き出していくか。
 一説によりますと、高等学校の話題が文科省の中で出るときは、学校統合か、あるいは進学、その2点ぐらいしか話は出てこないというようなこともございます。高等学校改革は平成6年に総合学科の導入、平成11年に中等教育学校の創設など中高一貫教育制度の導入というのがございましたが、本格的に高等学校全体像を見直そうというのはもう四半世紀ぶりということで、率直なところ、文科省も高等学校まで手が回らなかった。ようやくもう少し高等学校についてもしっかり見つめていこうと。これは実は平成二十七、八年ぐらいに経済・財政一体改革推進委員会での議論が嚆矢になっておりまして、その危機感を我々としても共有しているということでございます。
 きょう、島根県や長野県からも委員の先生方にお集まりいただいていますれば、そういう中で島根県とか長野県での取組、それとまさに主査の荒瀬先生の学校での取組、そういったような先行事例もございます。そういったことを踏まえて、しっかりと各高等学校において特色ある教育を推進するための高等学校改革を進めていきたいと考えております。
 またもう一つ大きなテーマとして、通信制の高校。これは一昔前でもないんですが、数年前にウィッツ青山という大変残念な事件がございました。通信制高校のクオリティ、教育の質をどう担保していくかというのも大きな課題のうちの一つだと捉えているところでございます。
 今回、高等学校教育に関する知見を有する委員の皆様方におかれましては、今までの御見識、御経験を踏まえた議論を、しかもしっかりと実効性のあるものにしていきたいと考えておりますので、建設的で積極的な御議論を頂戴できればと考えております。
 ちょっと長くなりましたが、何とぞ忌憚のない御意見を頂戴したいと考えておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
【荒瀬主査】  矢野審議官、ありがとうございました。
 それでは、議事に入りたいと思います。議題の1でありますが、新しい時代の高等学校教育の在り方について、まず事務局から御説明をお願いいたします。
【酒井参事官補佐】  事務局から、今回のワーキンググループの設置の趣旨、詳細な諮問の概要でございますとか、現在の高等学校教育の現状について、まずおまとめをさせていただいておりますので、御説明させていただきたいと思います。お手元、資料2-1と2-2をまず御用意いただけますでしょうか。資料2-1がポンチ絵になっておりまして、資料2-2が今回の中央教育審議会の諮問の本文となってございます。主として2-1を用いて御説明させていただきたいと思います。
 今、冒頭審議官の挨拶とちょっと重複する部分もございますけれども、今回、文部科学大臣からの諮問につきましては、初等中等教育全体を包括する諮問となってございます。この背景としましては、Society5.0というような時代の到来と言われておりますけれども、急激な社会的変化が進むという中において、子供たち一人一人が予測不可能な未来社会をみずからの力で生き抜いて社会の形成に参画していくと、そういった資質・能力を確実に育成していくことが求められているということで、学校教育全体が変わっていかないといけないんじゃないかという問題意識というものがございました。
 この資料の上段には、現在の学校教育の成果の例と記載してございます。成果の例をおまとめしておりますけれども、これは様々3点、成果ということで記載をしてございます。これらは、これまで各学校でありますとか各自治体の御努力、取組によりまして、子供たちの知・徳・体を一体で育む日本型の学校教育が着実に成果を上げてきたものだと考えております。そして、四角囲みの中にありますように、これを支えてきたというものは、子供たちの教育に志を持つ教師お一人お一人の献身的な取組であったと、そのように受け止めているところでございます。
 ただしかしながら、資料の中ほどにございますように、社会の急激な変化がございます。様々な課題が顕在化してきたというところでございます。特に高校生につきましては、学校外での学習時間の減少でありますとか、学習意欲に乏しい生徒の顕在化に加えまして、大学受験に最低限必要な科目以外は真剣に学ぶ動機が低下していて、結果として高校教育に必要ないわゆる勉学というものが十分に学べていないんじゃないかというところで、課題が見られるというところでございます。
 一方で、我が国の教育を支えてきました先生方、教師に目を向けますと、長時間勤務の実態が深刻であったり、教員採用試験の競争率減少が非常に顕著になっているというようなこと、さらにはICTやAI等の先端技術を活用することによりまして、地理的制約を超えた多様な他者との学びでありますとか、一人一人の能力・適性に応じた学び、子供たちの意欲を高め、やりたいことを深められる学びの実現、こういったことが求められているのではないかと考えております。さらにはチームとしての学校の推進を図っていくということでありますとか、人口減少、少子高齢化、過疎化の進展による児童生徒数の減少に伴う教育環境の変化といったことにも対応していくことが必要だろうと考えてございます。
 今、申し上げましたようなこの社会状況の変化でありますとか、初等中等教育を取り巻く様々な現状、課題を踏まえまして、こういった初等中等教育の在り方を総合的に検討するために、今回の諮問が行われたものでございます。
 具体的には資料2-1の裏面を御参照いただければと思います。この裏面には、中央教育審議会において審議をお願いしたい事項と記載させていただいております。大きく4点でございます。1点が新時代に対応した義務教育の在り方。2点が新時代に対応した高等学校教育の在り方。3点目が増加する外国人児童生徒等への教育の在り方。4点目がこれからの時代に応じた教師の在り方や教育環境の整備等。大きくこの4点を、諮問ということで審議をお願いしたい事項として、お願いさせていただいたところでございます。
 そのうち、2ポツの高等学校教育の在り方でございますけれども、具体的には生徒の学習意欲を喚起し、能力を最大限伸ばすための普通科改革などの学科の在り方。文系・理系に類型に留まらず、学習指導要領に定められた様々な科目をバランスよく学んでいくことや、STEAM教育の推進、時代の変化、役割の変化に応じた定時制・通信制課程の在り方。地域社会や高等教育機関との協働による教育の在り方。さらには特定分野に特異な才能を持つ者や障害のある者を含む特定の配慮を要する生徒に対する指導や支援の在り方など、生徒一人一人の能力・適性等に応じた在り方について、御検討をお願いさせていただいたというところでございます。
 続きまして、資料2-3をお願いできればと思います。現在初等中等教育全体の包括的な諮問ということでございます。諮問事項が大変多岐にわたってまいるということですので、初等中等教育分科会の下に横断的に議論をするために、新しい時代の初等中等教育の在り方特別部会という特別部会を設置して検討を行っていただくということになったところでございます。そして、とりわけ高等学校改革につきましては、この特別部会の下にワーキンググループにおいて集中的に議論を行っていただくということになりまして、このワーキンググループが設置をされたというところでございます。
 次に、資料2-4をお願いできればと思います。6月27日に開催されました新しい時代の初等中等教育の在り方特別部会で提出された資料となっております。これは、本ワーキンググループの親部会に当たります特別部会の今後のスケジュールでありますとか審議事項について記載したものでございます。この特別部会の中では、義務教育の在り方でありますとか、これからの時代の教師の在り方、教育環境の整備等について御審議いただくことになっているところでございまして、高校改革につきましては、このワーキンググループで集中的に議論を行っていただくことになっているところでございます。
 以上が、中央教育審議会の諮問の概要でありますとかワーキンググループの位置付けでございますが、続きまして資料3を御用意いただければと思います。これから御審議いただくに当たりまして、まずその議論の前提といたしまして、高等学校をめぐります現状でありますとかデータ的な状況、更には近年の高校改革の動向について、御紹介を差し上げたいと思います。
 まず、高等学校の現状でございます。資料3ページをお願いできればと思います。まず学校数でございますけれども、平成30年度の高等学校は、全日制課程を置く学校が全国で4,258校、定時制課程を置く学校が167校、そして全日制課程と定時制課程を併設している学校が472校ということで、合計しますと4,897校の高等学校が我が国には今あるという状態でございます。また、通信制課程の学校でございますけれども、独立校が110校、併置校が142校となってございます。
 次、4ページを御覧いただきますと、学校数の推移というものがございます。少子化の影響で、高等学校につきましても学校数が減少しているというところでございまして、平成2年には、これは全日制と定時制課程の学校数でございますけれども、5,518校がありましたと。現在4,897校ということで、この大体30年のうちに1割学校が減少しているというような現状でございます。
 済みません。主なデータということで、先に行っていただきまして、7ページをお願いできればと思います。子細な資料はここで記載がございますので、またお時間あるときに御覧いただければと思いますが、7ページを御覧いただきますと、今度は学科数のデータでございます。普通科が今3,755校ということでございます。専門学科が2555校。これは普通科と専門学科両方あるものにつきましてはそれぞれにカウントしておりますので、申し訳ございませんがそういった見方をお願いできればと思います。総合学科が375で全体の5.6%となっております。
 次、生徒数でございますが、9ページをお願いできればと思います。今、全日制課程に在籍している生徒数が315万人いらっしゃる。定時制課程の生徒数が8万5,000人、通信制課程の生徒数が18万6,000人ということで、合計しますと342万人となってございます。
 10ページには高等学校の生徒数の推移を掲載しておりますけれども、これも平成2年には生徒数579万人が在籍しておりましたが、昨年342万人ということで、この30年ぐらいで生徒数が4割減少しているというような現状でございます。
 11ページを御覧いただきますと、生徒数の学科別在籍数も記載をしております。全体の73%に当たります236万人が普通科に在籍している。全体の22%になります70万人が専門学科に在籍している。そして5.4%に当たる17万人が総合学科で学んでいらっしゃるというような状況でございます。
 これは12ページにございますけれども、昔、昭和30年代ぐらいの普通科の生徒数が大体6割、専門学科の生徒数が約4割という状況でございますけれども、昭和60年代以降に普通科の生徒数が全体の7割を超えているというような状況でございます。
 また、15ページには進学率を記載してございますけれども、昭和49年に進学率90%を超えまして、その後も上昇を続けているということで、昨年度には全日制・定時制で約96%、通信制を含めますと98.8%の進学率となっているところでございます。
 これまでが学校数でありますとか生徒数の現状でございますが、続きまして、高校生をめぐる現状というものでございます。16ページをお願いできればと思います。高校生の現状ということで、高校生に在籍する学校を選択した理由というアンケート調査を行っております。これは文部科学省と厚生労働省が実施をしました調査の結果ということになっております。高校生は、学校選択の理由として、上位から申し上げますと、1番が「自宅から近い、通いやすい」と。2番目が「学校の雰囲気がよかった」。3番目は「合格できそうだったから」。これが上位3つの回答となっているところでございます。
 このような選択の理由でございますが、次、17ページを御覧いただきますと、在籍する学校選択の理由と、進路選択の満足度について、クロス集計をさせていただきました。学校選択を、「将来就きたい仕事と関連しているから」でありますとか「学校の雰囲気がよかったから」でありますとか「特色ある取組を行っているなど、授業内容に興味があったから」という積極的な動機付けを行った生徒につきましては、進路選択の満足度が高いという一方で、「合格できそうだったから」でありますとか「中学校の先生や塾や家庭教師の先生に勧められたから」でありますとか、「友人が選択していたから」などの他律的な動機付けで高校を選択された生徒さんについては、進路選択の満足度が低くなるという傾向が見られることが明らかになっているというところでございます。
 続きまして、18ページをお願いできればと思います。学校生活の満足度ということで調査しております。「ためになると思える授業がたくさんある」でありますとか、「楽しいと思える授業がたくさんある」、「学校の勉強は将来役に立つと思う」、「授業の内容をよく理解できている」といった学校の学び、授業の満足度・理解度に対する回答につきましては、学年が上がるごとに低下をするという現状を見て取ることができます。この一番左の方の横の斜線が「とても思う」、次が「まあそう思う」ということでございますが、学年が経るごとに少なくなっているというのがこの資料の見方となってございます。
 次、19ページは学校外での学習時間でございます。中学校1年生の時点では「全く勉強しない」という生徒さんは、平日では約9%、休日では16%というような調査結果になっております。これが高校受験を経まして高校1年生になりますと、「学校外での学習をしない」と回答した生徒さんが急増する傾向にございます。平日休日ともに約5割の生徒が「しない」、若しくは「1時間未満」と回答している状況でございます。
 そして、20ページを御覧いただきますと、勉強しない、1時間未満というような回答でございますけれども、中学校3年生時点の成績が下位の生徒ほど、高校1年生の学校外での学習時間が短くなっているという傾向を見て取ることができるところでございます。
 次に、26ページでございます。これは従前から言われ続けているでございますが、日本の高校生の自己肯定感、社会参画に関する意識というところでございますが、諸外国と比べると非常に課題が見られるような状況でございます。
 こういった状況を踏まえまして、これまで様々な高校改革を行ってきたというところでございます。33ページをお願いできればと思いますが、進学率の上昇ということで、昭和50年代以降、9割を超えたというところでございます。そういったことと相まって、昭和60年代以降、生徒の能力・適性、興味関心が極めて多様化する一方で、制度の運用でありますとか、制度そのものが画一的・硬直的ではないかという批判・御指摘があったところでございます。そしてそういったことを踏まえまして、高等学校教育自体を多様化・弾力化を図っていこうということが大きな政策課題とされてきたところでございます。
 そういったところで、主な制度改革を御紹介させていただきたいと思いますが、まず昭和63年でございます。このときに、定時制・通信制課程において、単位制高等学校が制度化をされたところでございます。この当時の趣旨としましては、生涯学習の観点に立って、誰でもいつでも必要に応じて高等学校の教育を受けられるようにしようということを目的として制度化されたというところでございます。そして、この単位制高校によって、従来学年制と単位制というものが高等学校で併用されていたものが、学年制によらずに単位制だけで高等学校教育を受けられるようにしようというふうに制度化したものでございます。
 この単位制の高等学校でございますが、やはりより生徒の選択の幅を広げる必要があるだろうということで、平成5年度には全日制課程にも対象拡大したというような変遷がございます。
 また、前後しますが、平成元年度には、定時制・通信制高校の修業年限を4年制以上とされていたものを3年以上に弾力化しまして、定時制課程でありますとか通信制課程で学んでいる生徒、勤労形態は様々変化がございまして、履修形態を弾力化していくという趣旨で、3年の卒業という道をこのときに開いたという状況でございます。
 さらに平成6年に総合学科を設置したということでございます。この総合学科の設置の趣旨でございますけれども、当時の中央教育審議会の答申の中では、これからの高等学校教育の在り方ということで、これまで量的拡大を高等学校は図ってきたものを、個々の生徒の特性に応じてきめ細かく対応するような質的向上拡大を図って行かなければならないというような問題意識でありますとか、形式的平等から多様な生徒の個性に応じて多様な選択ができる実質的平等への拡充を図っていかないといけない。更には偏差値偏重から個性尊重、人間性尊重へというような視点が示された上で、普通科と職業学科を統合する新たな学科の設置が適当ということで、総合学科が普通科、専門学科と並ぶ新たな学科として位置付けられたというところでございます。
 さらには、平成11年度には中高一貫教育制度の導入も図られたということでございます。これは従来の中学校、高等学校に加えまして、生徒・保護者が6年間の一貫した教育課程や学習環境下で学ぶ環境を選択できるようにするということで、中等教育の一層の多様化を目的として制度化をされたということでございます。中等教育学校の設置でありますとか、併設型、連携型の中学校・高等学校という3つの実施形態をこのときに設けたというものでございます。
 そのほかにも、平成5年度には他の学校における学習成果でありますとか、専修学校における学習成果、技能審査の成果などの学校外学習に関する単位認定制度が導入をされまして、その後、その対象範囲でありますとか、単位の認定の可能な単位数の拡大を図ってきたというところでございます。
 さらには、平成27年度には離島・過疎地の生徒に対する教育機会の確保でありますとか、不登校、療養中などの特別な支援が必要な生徒に対する対応というものを図るために、遠隔教育というものが正規の授業で制度化するといったことがこれまでの制度改革で行われてきたところでございます。
 様々な制度改革が実施をされてきたところでございますが、最後に昨今の高校教育に関する改革の状況も御説明させていただきたいと思います。34ページをお願いできればと思います。まず、高大接続改革についてでございます。高大接続改革につきましては、平成25年10月に教育再生実行会議の第4次提言でありますとか、平成26年の中央教育審議会答申などを経まして、平成29年7月に高大接続改革の実施方針というものを策定したところでございます。
 そこで、高等学校教育につきましては、平成30年3月に高等学校学習指導要領の改訂というものを行うとともに、43ページでございますけれども、高校生の基礎学力の確実な習得でありますとか学習意欲の喚起を図るために、民間の試験等を文部科学省が一定の要件を示して認定する「高校生のための学びの基礎診断」制度を創設したところでございます。昨年12月に測定ツールの認定を行いまして、今年度から本格的に利活用を開始しているということでございまして、これによりまして、多様な民間の試験の開発・提供でありますとか、その利活用を促進しまして、高校生の基礎学力定着に向けたPDCAサイクルの構築を進めてまいるということにしたところでございます。
 次に、45ページをお願いできればと思います。広域通信制高校の質の確保・向上方策についてでございます。通信制高校につきましては、近年不登校でありますとか中途退学の経験者、特別な支援を要する生徒が数多く在籍をすることになったということでございます。多様な学びのニーズへの受け皿としまして、様々な生徒に対して高校教育の機会を提供する教育機関として期待をされているところですが、一方で、一部の広域通信制高校において、民間教育施設との不適切な連携でありますとか、学習指導要領に基づかない教育など、様々な問題が生じてきたというところでございまして、適切な学校運営がより一層求められているというところでございます。
 そのため、文科省としましては、平成28年9月に高等学校通信教育の質の向上確保のためのガイドラインの策定・周知を行いまして、国と所轄庁との共同点検体制を構築して、点検調査を順次してきたというところでございます。この点検調査では、一部の学校で不適切な指導が行われている実態というのが明らかになりまして、昨年3月にガイドラインの改訂を行ったところでございます。このガイドラインの改訂後も実地での点検調査を実施したというところでございまして、この調査結果を踏まえまして、一層の広域通信制高校の質の確保が必要であると考えているところでございます。
 52ページをお願いできればと思います。こういった様々な取組を今進めているところでございますが、政府におきましては、教育再生実行会議におきまして、Society5.0の進展でありますとか地方創生の推進、高大接続の進捗等を踏まえまして、生徒一人一人が多様な選択肢の中で必要な学びを能動的にできる場の実現が求められているといたしまして、昨年8月から新時代に対応した高等学校改革をテーマに検討が行われてきたというところでございます。この検討を踏まえまして、教育再生実行会議の第11次提言が、本年5月に取りまとめられたというところでございます。
 この提言で大きく8点ございます。1点目が学科の在り方。2点目が高等学校の教育内容、教科書の在り方。3点目が定時制・通信制課程の在り方。4点目が教師の養成・研修・免許の在り方。5点目が地域や大学との連携の在り方。6点目が中高・高大の接続。7点目が特別な配慮が必要な生徒への対応。8点目が少子化への対応。これらについて、改革を進めていくということが必要とされたところでございます。
 そして、この提言の中でも、本ワーキンググループの検討内容と関連する点でございますが、まず第1が「学科の在り方」というところでございます。この教育再生実行会議の提言の中では、全ての高等学校におきまして、生徒受け入れに関する方針でありますとか、教育課程編成実施に関する方針、修了認定に関する方針を定めることとすること。また普通科において、生徒の意欲と関心を喚起し、能力を最大限引き出すことができるよう、校長のリーダーシップの下で一丸となって教育改革を推進するということが重要でありまして、その一つの方策として、国は普通科の各学校が、教育理念に基づき選択可能な学習の方向性に基づいた類型の枠組みを示すということをしまして、中央教育審議会等において専門的・実務的に検討するということが示されたところでございます。
 第3の「定時制・通信制課程の在り方」としましては、通信制課程における高校生学びのための基礎診断の活用促進など、通信制の質の確保、向上のための方策を講じることといったことが示されてございます。
 さらには第5の「地域や大学との連携の在り方」の中では、高等学校が市町村、産業界、高等教育機関等と協働して、地域課題の解決等を通じた学びを実現する取組を推進することといったようなことが示されたところでございます。
 また、53ページをお願いできればと思います。こちらは、本年6月に閣議決定されました「経済財政運営と改革の基本方針2019」でございます。この中でも、資料の下線部でございますが、特色ある教育を推進するための多様化・類型化などの普通科改革、高大連携、地域人材やグローバル人材の育成などの多様な高等学校教育の構築を進めることということが示されてございます。
 さらには、次の54ページですが、「まち・ひと・しごと創生基本方針2019」の中でも、地域との協働による高等学校教育改革の推進でありますとか、地域・高校魅力化コンソーシアムの設置促進などが示されたというようなところでございます。
 こういった状況を踏まえまして、本ワーキンググループにおきます検討事項の概要と今後の検討の進め方につきましておまとめをしましたのが、資料4というものでございます。ちょっと説明が長くなって申し訳ございませんが、最後に御覧いただければと思います。今後このワーキングで御検討いただく内容ということで、大きく3点、資料をおまとめさせていただきました。
 この中央教育審議会の諮問事項の中の検討事項でございますが、まず本ワーキンググルーの検討事項の第1が「生徒の学習意欲を喚起し能力を最大限伸ばすための普通科改革などの学科の在り方」でございます。これについて御検討をお願いしたいと考えてございます。資料にも記載のとおりでございますけれども、資料中ほどでございます。学校外での学習時間の短さ、学習意欲の乏しい生徒の顕在化に加えて、生徒が身に付けるべき力やそのために学習すべき内容を明確に示すことができない等、目下の高等学校教育は、これからの時代に活躍できる人材育成の観点から大きな課題があるんじゃないかというふうに示されているところでございます。
 そこで本ワーキンググループの中では、普通科改革など学科の在り方を中心に、各高等学校において特色ある教育を推進するための在り方について御検討をお願いできればと考えているところでございます。
 次は検討事項第2でございます。「地域社会や高等教育機関との協働による教育の在り方」についての御検討をお願いしたいと考えてございます。1段目でございますけれども、この高等学校というものは、少子高齢化・過疎化の進行というようなことを背景としまして、地域が抱える課題の解決を図りまして地域の将来を担う人材を育成するということがかなり期待をされていると考えてございます。また、これからの時代の高等学校教育というものは、社会で求められている資質・能力を全ての生徒に育みまして、生涯にわたって探求を深める未来の作り手として送り出していくこと、このことがこれまで以上に求められていると考えております。
 そのためには、社会と連携・協働を通じた教育をより一層実施していくということが期待されているというところでございますので、裏面に移りますけれども、本ワーキンググループにおかれては、この探究的な学びの実現を推進し、地域の将来を支える人材や社会を牽引する人材の育成を図る観点から、各高校が地域の実情や特性を生かして、地域社会でありますとか高等教育機関を連携・協働して取り組む教育の在り方について御検討をお願いしたいと考えてございます。
 検討事項の第3でございますが、「時代の変化・役割の変化に応じた定時制・通信制の在り方」について御検討をお願いしたいと考えてございます。定時制・通信制課程、これは近年では不登校、中途退学の経験を有する生徒でありますとか、帰国生徒、外国人生徒等の多様な学習歴・動機を持った生徒が数多く在籍されているということでございます。
 本ワーキンググループでは、この時代の変化・役割の変化に応じた定時制・通信制課程の在り方について御検討をお願いしたいと思ってございます。その際、先ほど資料の中で御説明申し上げましたが、一部の広域通信制高校の中では極めて不適切な学校運営でありますとか教育活動が行われているといったことも踏まえまして、高等学校通信教育の質の確保、向上方策の在り方、これも併せて御検討賜りたいと考えております。
 なお、「その他の課題」というところでございますが、高等学校教育の在り方に関します諮問事項のうち、文系・理系の類型にかかわらず、学習指導要領に定められた様々な科目をバランスよく学ぶこと、STEAM教育の推進でありますとか、特定分野に特異の才能を持つ者や、障害のある者を含む特別な配慮を要する生徒に対する指導・支援の在り方等につきましては、これは主に教育課程部会でありますとか特別部会等において検討が行われることとなっております。ただ、本ワーキンググループで扱う検討事項と相互に関連することも多数あると考えておりますので、それぞれの検討状況をこのワーキンググループでも共有するということとしてお願いできればと考えております。
 最後、検討の進め方でございますが、本ワーキンググループは月1回程度の頻度で開催をお願いしたいと考えてございます。そして、まずは10月若しくは11月に特別部会の方に検討状況の御報告ということを行いまして、また引き続き御審議をお願いできればと考えております。そして、また検討事項は多岐にわたりますので、検討事項1から順次御検討いただきまして、その後、検討事項1、2、3ということで御検討をお願いできればと考えているところでございます。
 説明は以上でございます。よろしくお願いいたします。
【荒瀬主査】  ありがとうございました。第1回目であるということで、これまでの改革の経緯でありますとか現在の高校生の現状、学校の状態を非常に丁寧に御説明いただきました。きょうは、議題は1と2となっておりますけれども、2はその他ということで、今、特別に何かあるということではございませんので、今、御説明いただきましたことにつきまして、これを中心に議論を進めてまいりたいと思います。
 今、御説明いただきましたところ、あるいは御説明を省かれたところで、何か御質問とかはございませんでしょうか。資料自体は大変大部なものでございますので。
 よろしいでしょうか。では、また途中で何か御質問があれば、それも含めて出していただきたいと思います。きょう、まず第1回であるということで、こういった状況を踏まえてフリーに御意見を頂戴できればと思っております。
 御発言いただきます際は、この名札を、私に見えるように立てていただくということで、よろしくお願いいたします。
 どなたか、いかがでしょうか。では、角田委員、よろしくお願いします。
【角田委員】  角田でございます。
 それでは、質問よろしいですか。このワーキンググループでの検討事項ですが、【その他の課題】①「いわゆる文系・理系の類型にかかわらず学習指導要領に定められた様々な科目をバランスよく学ぶことや、STEAM教育の推進」はこのワーキンググループではなく、主に教育課程部会や特別部会等で検討が行われることとなっているとありますが、これはどうしてなのかお聞きしてもいいでしょうか。普通科改革において文理選択は非常に大きいテーマで、このワーキンググループと関係があると思うんですが。もちろん「相互に関連する論点を多く含むことから、それぞれの検討事項を共有」というようにお書きになられているんですけれども、わざわざこのワーキンググループの検討事項とは分けられている理由などをお教えください。
【荒瀬主査】  今のようなことに関しまして、何かほかにも御質問ございませんでしょうか。よろしいですか。では、いいですか。では酒井さん、お願いします。
【酒井参事官補佐】  恐れ入ります。ただいまの御質問につきましてでございます。恐らくこの「文系理系の類型にかかわらず」、ここの部分でございますけれども、極めて教育課程の内容とリンクをしていく内容ではないかと考えてございまして、その中でより教育課程の専門的な審議を頂く教育課程部会の方がよりふさわしいというか、御議論いただくことができるんじゃないかと。この本部会の方も普通科改革の在り方というところで、かなり大部な御議論があると考えておりますので、そういったところの役割分担の中で、教育課程部会の方がまず御議論いただく方がいいんじゃないかというところで、そういった役割分担ということをさせていただいております。
 ただ、こちらの部会で全く議論しないというわけではございませんで、先ほど相互に関連する論点も多く含み、検討状況を共有すると申し上げましたように、教育課程部会の検討状況をこちらのワーキングの方で御報告いただいて、このワーキングの方でもそのワーキングの検討の観点から御意見を頂くというふうに考えてございます。そうったやり方でと考えてございますが、いかがでございますでしょうか。
【角田委員】  はい。
【荒瀬主査】  よろしいですか。ありがとうございました。要は教育課程部会でも議論を当然していくわけで、こちらの方でも御意見がその部分について言ってはだめですという話では全くないわけですから、どんどん出していただきまして、両部会でもっての議論が重なり合う中でどんどん深まっていくというのが大事かと思いますので、どうぞ御意見がおありでしたらお出しいただきたいと思います。
 ほかにいかがでしょうか。では、橋本主査代理、お願いします。
【橋本主査代理】  済みません。きょうは1回目でフリーにしゃべってよいということですので、お時間もありそうですから、ちょっとまとまりのない話になるかと思うんですけれども。
 先ほどのこれからの検討の進め方の中でも説明ありましたように、今回検討する前提として、学校外での学習時間の減少、学習意欲の乏しい生徒の顕在化といったようなことが背景にあるわけです。じゃあ、これをどう変えていくか、どうして高めるのかということですけれども、物すごく乱暴な言い方をしますと、それは1つは将来の進路を意識して嫌でも勉強せざるを得ない環境を作るというのが一つかなと思います。それは大学の入試を変えるとか、あるいは就職に向けても資格取得についていろいろハードルを課すとか、そういうことが一つはあるかと思います。ただ、もちろんこれはこれからの教育を考えたときに望ましい方向ではないと思います。
 そうしますと、もう一つの方法としては、やはり本人のやりたい、学びたいという意欲を高めて、どんどんそのやりたいことに向かって追求をしていく、主体的に学んでいく。この方法を追求するべきだろうと考えるわけですけれども、これは前回、特別部会でも申し上げたんですけれども、そのためには当然、小・中学校を通じて学ぶことの意義をしっかり理解をさせる。それから、様々な主体的に学ぶ機会を設け、習慣付けたり経験をさせるということが土台として大事だろうと思います。その上で、高校においてもより主体的な学びを促進するような、興味・関心を強く持って楽しく学んでいけるようにという環境をどう作るかということが大切であり、それが今回のテーマかなと思っております。
 実はここへ来る前に、教育委員会の中の指導主事さんたちとお話をしました。普段真面目なことしか考えない指導主事ですけれども、何を言ってもいいのでということでいろいろ意見をもらったんですけれども、あえて類型化とか学校ごとの特色化ということ以外に何が考えられるかということで聞いてみたんですけれども、その中で多かったのは、教育課程の関係で申しますと、必履修科目の単位数、絞っていただいていると思いますけれども、現場の感覚からするとこれでも大分多い。この半分ぐらいでいいんじゃないか。そうじゃないと、特に普通科の中で教育課程上で学校の特色を出すというのは非常に難しい。こういう意見が多く出ておりました。
 それから、多様な学びということに関しての意見が結構出たんですけれども、これは本当に様々な高校生が今いますので、ネット環境による在宅学習をやるとか、3年にこだわらない学校作りをしていくとか、そういう意見が出たほか、高校間連携あるいは学校外の学習の単位認定をしやすくするような環境整備を考えてもいいんじゃないかとか、複数の学校の生徒による合同研究活動を単位認定してはどうか。場合によってはそれを大学の単位認定につなげてやるとかいったようなこと、あるいは教育課程の中に、生徒個々が選ぶ自由な枠というのを設けて、地域活動であるとか様々な実験実習を単位認定してはどうかとか、実現性はちょっと無視して意見を求めましたので、簡単にできるとは思いませんけれども、様々なやり方というのが考えられるような気がしますので、この中でも幅広い議論ができた方がおもしろいと思います。
 これは私自身の考えですけれども、ひょっとしてもう諮問事項を越えてしまうのかなという気もするんですけれども、そもそも普通科、専門学科、総合学科という今のこの大きな区分、本当にこれを前提に考えていく必要があるんだろうか。いわゆるスペクトラムみたいに段階がもうない、学科という枠にこだわらないような、そういう形というのがないのかなと。具体的に考えているわけじゃありませんけれども、そういう方向性も、柔軟度を増していくと、ひょっとしたら一つの選択肢としてあるのかな、そんなふうに思っております。
 あと1点だけ。通信制のお話も出たんですけれども、議論をやっているときに、実はN高等学校ってなかなか魅力的やねという話が出ました。我々からしたらちょっと敵みたいなところあるんですけれども、本当に普通の学校に行きにくくてという子供たちは別にしましても、あえてこの学校に行きたいという高校生、増えてきているように感じます。その魅力というのは、やはり自由に自分たちのやりたいことをどんどんできるという環境があるからかなと思っていまして、これは敵視するんじゃなくて、しっかりこの魅力というのを我々の方でもつかんでいく必要があるのかな、そんなふうに思っているところです。
 以上です。
【荒瀬主査】  ありがとうございました。今のような御意見を是非どしどし出していただきまして。
 では、岩本委員、どうぞお願いします。
【岩本委員】  それでは私の方からは、この検討事項2の地域社会や大学等との協働による教育の在り方というところで、私は島根県で今もう9年目になりますけれども、まさにこの地域との協働による高校改革というのを県の事業として多くの高校でやってきました。3年おきに見直しをしていっているわけですけれども、その取組が本当に学校の在り方だとか、教職員の意識だとか、ひいては生徒の力にというのがつながっていくところと、つながっていかないところ、若しくは盛り上がったけれども下火なっていくところ、続いていく、進化し続けるところ、様々ある中で、この違いは何なんだろうかというのをやはり常に検証してきたわけです。
 その中で、今、9年目にしてある程度これはどうも共通している、持続可能な協働体制の中で、学校自体が主体的に進化し続けていくというところの共通性というところで3点ほどありますので、ちょっと紹介だけさせていただけたらと思います。
 1つは、その前提としてよくあるのが、「あの人だから問題」と言っていますけれども、あの校長先生がいたからあのときはできた。でも、あの校長先生が異動になったらできなくなった。若しくは学校の中であの非常に意欲・能力もある、そういったことが得意な若しくは好きな先生がいて、その人が地域でいろいろやって、地域からも信望を集めてやっていたけれども、あの人が異動したらできなくなったという、やはり個人依存の属人的なところがやはり最初スタート地点として非常に大きくある。
 それはいいと思うんですけれども、ただそれだけでは持続可能ではないという中で、それを超えていくというところで、1つ目が、属人性を超えて組織的な連携協働の体制を作っていると。これは「チーム学校」みたいなものかもしれませんが、それを学校の中だけではなく、地域社会の組織、例えば市町村だとか大学だとかNPOだとか、そういったところと組織的な協働体制を作っているという、個人の思いや好き嫌いや、たまたまどうだったということではない体制ですね。これを今の文科省さんの言葉で言うとコンソーシアムというところで、この体制が1つ目です。
 2つ目は、コーディネートをしていく人材がやはり重要であると。組織だけではやはり動かない、体制だけでは動かない。このコーディネートしていくような人材が、高校側にも、学校側にも、つまり学校を地域社会に開いていって、そこから地域に手を差し伸べて、地域とつながっていこうとする人たち、人材と、逆に地域側から高校側に働き掛けていくとか、高校側が手を伸ばしてきたときに、それをちゃんと握れるような地域側にもコーディネート人材だとかコーディネート機能というのが必要であると。この両方が必要だというような、どちらかしかないとやはり壁が高くでうまくいかないというようなことで、両側のコーディネート機能をどう育成していくのかということが非常に重要になってくるということが見えてきます。
 高校側の中にどう育っていくのかというところもそうですし、もう一つ、地域側のコーディネート人材というときには、やはり一つは社会教育ですね。もうこれはこの部会の話じゃないと思われると思いますけれども、やはりその社会教育的なところですね。それと、あとはやはりその地域づくりとか、地域の人づくりみたいなところで、やはりそういったところとどう連携して一緒に高校の改革だとか協働を考えていくのかという次元で考えていかないと、学校の中だけやるというのも大事なんですけれども、この検討事項2においては、そういったところとの連携・協働も併せて考えていかないと難しいのかなと。このコーディネート人材の話が2点目です。
 3点目は、主体的な対話のプロセスです。こういう形で一律にやりなさいとかやっても、これはうまくいかない。高校と地域や社会のセクターが、対話を通してどういう子供たちを育てていきたいのか、どういう学校をこれから作っていきたいのか、その中でどういう教育環境を作っていくのか。そしてその協働の体制も、自分たちの中で地域とともに対話をして生み出していく。こういうプロセスでやっていったところが、やはりいい形で進化し続ける。そういう意味で、共通のビジョンとか構想とかいうものを作っていくようなプロセスなんかは非常に重要でありますし、ただ1回ビジョンとか計画を作ればそれでうまくいくのかというと、常にその見直し、PDCAを回しながら対話的にやっていく、学校自体が主体的・対話的な学びを地域社会とともに歩めるのかと。
 ここら辺の3点が重要なポイントだったのかなと感じているところです。
 以上です。
【荒瀬主査】  ありがとうございました。実際にやってこられた中で、そういったことが見えてきたということですね。ありがとうございました。
 私が余りしゃべるとよくないと思うんですけれども、「あの人だから問題」というのと、その「コーディネート人材」というのは、どう関わるものですか。その「コーディネート人材」は重要なんだけれども、その「コーディネート人材」というのは、「あの人だから問題」というのをどうすればクリアできるんですか。
【岩本委員】  これは本当に非常に悩ましいところで、今、1つはチームを作ってやっていくというので、コーディネーターという人が1人いればそれでうまくいくのかというと、必ずしもそうではないと。先ほど言った体制もなければ、両側にもそういった人たちがいないとなかなか機能しないという中で、個人に全部というよりは、チームを作って体制を作ってというところになってきます。
 ただ、先ほど言った高校側のコーディネート機能を担っていく人というのが、なかなか多忙な中ですぐにいない、やる時間がない。やはり地域側との調整とか対話って非常に時間が掛かったりしますので、時間がない、その経験もない。そしてそういったスキルを学ぶ機会も今まで余りなかったという中で、たまたまそういうことができる先生がいるときはいいけれども、そうじゃないと続かないという中で、島根県の場合は、そこにコーディネーターというコーディネートを専門的にやる人を学校の中に入ってもらって、教職員と一緒にやりながら今は進めています。
 今、県の中では、それを教職員の中にそういう資質・能力をどう育んでいくのか。この多忙な中でどうやってその時間も含めて捻出するのかというところがありますので、今はそういったところを中心的にやっていくところには教員の加配を付けて、そういう人が地域連携担当教員のような形でコーディネーターさんと二人三脚でやりながら、そういう資質・能力を身に付け、中心的にカリキュラムと結んでいくようなことをやっていたり。
 あとは今後の検討で今議論しているところは、あとは普通科における実習助手さんなんかが、やはり実習ってある種、探究のプロセスの一過程だよねと。実習とか実験は、大きな探究の中の重要なパーツであるというので、この探究における地域社会とのコーディネートみたいなところを、こういう実習助手さんの役割なんかをそういったところに今後機能移転をしていくとかはできないかというようなことを、ちょっと来年度に向けて、今、中で検討していたり。
 あとは事務職員の方ですけれども、やはりコンソーシアム、協働体制を作っていくとか、外部資金だとか、組織的な調整とか、そういったところはなかなか教員が得意でないところもありますので、これはやはり行政職員が事務職員として行っていますので、そういったところがただの事務をするたけではなく、そういった連携・協働のところ、地域連携担当職員みたいな形の働きをできるようにどうしていくのかというようなところで、多忙を何とかしながら、今はちょっと人を加配しながらやっていますけれども、ちょっと時間は掛かりますけれども、やはり中で育成していくとか、そういう役割をやっていくことで、学校側全体にそのコーディネート機能を重視させるようにしていこうというところです。
 ただ、時間がない中では、今はそういうコーディネーターという人を置いて、非常にやっていただいているというところです。
【荒瀬主査】  ありがとうございました。あの手この手だということですよね。いろいろなことを考えなきゃだめだっていうことですよね。
【岩本委員】  試行錯誤でやっています。
【荒瀬主査】  そうですよね。「あの人だから問題」というのは非常に耳に残っていて、ついお尋ねしました。このメンバーの中に、現職の校長先生、あるいは、私も一応そうなんですけれども、元校長を含めると10人ぐらいが参加しているという、ちょっと珍しい会議だと思います。そういう中でいろいろなお取組、それぞれの学校がどうしているのか、どうしてきたのかというのはとても大事な話ですけれども、一方で、我々が議論していくのは、これから我が国の高校教育をどうしていくのかということなので、1つの学校を通して、やはりオールジャパンとして見ないといけないわけです。そこのところを忘れないようにして、でも、きょうは第1回でありますので、うちはこんなふうにやっているということも大いに言っていただくということで、まさに岩本委員がおっしゃったような内容を香山委員のところもいろいろとやっていらっしゃるとお聞きしていますので、是非御紹介いただければと思います。
 香山委員、どうぞ。
【香山委員】  本校は閑谷学校の歴史を継いでいまして、来年が350年を迎える日本で最も古い、庶民も学ぶことができる学校ですけれども、そうは言うものの岡山県の東南端にあって、山陽本線沿いではあるんですがもう兵庫県境に近いところにあって中山間地なんですね。そういう中で、岡山県でもやはり岡山市に人口がどんどん集中しているという実態があります。
 実はきのう、本校が所在する和気町、隣の備前市、赤磐市という2市1町の首長さん、商工会長さん、商工会議所長さん、教育長さん等を集めたコンソーシアムの第1回目をやったんですが、そこで私が用意した資料は、2033年に中学3年生になる数の資料なんですね。これから14年後にどうなるかというのを見ますと、全ての市町村の中学3年生が、70%から60%減るというデータなんです。
 これは推計ではなくてもう事実ですよというところから危機感を共有したんですけれども、そういう中で一つの手立てとして、全国募集という制度で他府県からでもやってきたくなるような学校づくり、それはすなわち、今いる子供たちにとってもわくわくする学校であると思うんですね。
 論語の中には「近き者説び、遠き者来る」という言葉があるんですが、子供たちがわくわくする、そういう学びのムーブメントが起こってくると、遠くからでもやってくるんじゃないかというふうな仮説の下に、じゃあ、そういう学校を皆さんで作っていきましょうというのがきのうの会だったんです。
 じゃあ、どんなふうに作っていくのかというときに、高等学校では総合的な探究の時間を起点にして、地域と連携して、学校外の学びも含めて生徒にやらせていく。教科の方では従来型の授業をして、大学進学の実績を狙うといったような二兎を追っていくような形というのが一般的じゃないかと思うんですが、本校でもその総合的な探究の時間に関しては、今、岩本さんがおっしゃったような事例として、2週間に1回、地域の地域おこし協力隊、うちの学校に入っている地域おこし協力隊、うちの教員、うちの事務職員、それから地域の側の役場の職員とかですね。定例会議を昨年まで設けておりました。
 本校には、昨年までは地域おこし協力隊が各学年に1人ずつ付いているといった形で、2週間に1回そういう定例会議をすることを設定していますので、どうやったら子供たちにわくわくする学びをもたらすことができるのかということを年間通して話ができる体制にあって、ここには私がいなくても持続可能な形があるという点では、さっき岩本委員がおっしゃったのは、島根県のみならず、恐らくこれから中山間地の学校が一つのモデルにしていく方式じゃないかなとは思っているんですね。
 ただ、地域おこし協力隊が、今、全国で引く手あまたになっていまして、うちの学校も去年3人いたんですが、今年は今1人。その1人も来年の1月には任期が切れるというところで、どうやってそういうコーディネーターになるふさわしい人材を獲得するかというのが、一つ国家的な仕組みとして必要になるだろうなと思っていた矢先に、「地域人口の急減に対処するための特手地域づくり事業の推進に関する法律案」でしたか、次の国会で課題になっていくといったような朗報も耳にしておりますので、そういったことにも期待したいなと思っております。
 一方で、その二兎を追うというところのいわゆる各教科の授業において、旧来型の勉強でいいのかという問題があります。橋本委員がおっしゃったように、嫌でも勉強せざるを得ないような状況の中で勉強する子というのは、これはある意味当分大丈夫だと思うんですけれども、そうでない子が普通科に相当数いるというのが、これは大きな課題で、死んだような目をして仕方なく座っているといったような実態が全国あると思うんですね。その子たちの目を輝かせるにはどうしたらいいのかというところが一つ大きな課題ではないかなと思っております。
 そういう意味で、橋本委員がおっしゃったことは、実はきょう新幹線に乗りながら、最近出た本なんですが、『教育のプロがすすめるイノベーション 学校の学びが変わる』というジョージ・クーロスさんの吉田新一郎訳の本を読んでいたら同じようなことが書いてあって、京都府の教育委員会の教育委員さんと事務局の方々、もう早速読まれているのかなと思ったぐらいびっくりした次第なんですけれども、必履修科目を半分にするということは書いてありませんけれども、そういった発想で各教科の部分に踏み込まないといけないと思いますし、普通科の類型の問題も一つの類型に押し込めるんではなくて、子供たちが選択し、そしてその選択の後、更に自分がよい方に進んでいけるような、そういう自由度のあるものになればなと思います。
 最後になりましたが、私が最近特に感激したのは、岡山県にある笠岡高校という西の端にある学校なんですが、そこの生徒が、セミが1週間で死んでいくということに対して、自分でセミを800匹捕って、更に15匹を再捕獲して、いや、アブラゼミは32日間生きたということを証明したという、ああいったわくわく感ですね。あのわくわく感を全ての子供に持たせてやりたいなというのを本当に強く感じております。
 それを実現できるような仕組みをいかに作っていくかということに関心がありますし、そうなれば中山間地の学校でも、セミはいっぱいおりますし、セミ的なものがいっぱいありますので、生きながらえていくんじゃないかなと思っております。
 以上です。
【荒瀬主査】  ありがとうございました。非常に大事なお話をしてくださっているのはもう重々分かりながら敢えて申し上げるのですが、一方で現行の学習指導要領からいよいよ次期学習指導要領に移っていくという、今、移行措置期間です。今の学習指導要領も、次の学習指導要領も、非常に悩みに悩んで考え抜いて作られたもので、だから、今の学習指導要領、あるいは次期学習指導要領でできることというのが、私はたくさんあると思うんです。
 先生がおっしゃったように総合的な学習の時間、総合的な探究の時間でもって、セミの話は多分そこでやろうと思ったらできます。それができるようなシステムになっていますよね。学校が大きな探究課題を設定するんだけれども、個々の探究課題は生徒自身が作ればいいと、解説にもありますね。
【香山委員】  はい。
【荒瀬主査】  ですから、そういったことで言うと、今、本当はできるんだけれども、その今の状況について十分な理解がない面というのも、私は残念ながらあると思うんですね。だから学習指導要領の具体的な学習というんでしょうか。学習指導要領を共有する。学習指導要領について議論をする。そしてそれぞれの学校において、どういう生徒に育てるのかを考える、どんな資質・能力を付けるのかということですね。
 これは広島県で伺ったお話ですけれども、主体性を付けるということを目標にしてきたけれども、主体性というのは何なのか、どの場面でどういうことをするのが主体性があるということなのかの議論を一切してこなかったと。主体的な生徒を育てるんだというときに、本当にこれでできるのかというようなことをお考えになって、校内で話し合って、じゃあ、どんなことをしていったらいいのかというふうに動いていったということです。だから、そういう動きもやはり一方ではしなければならないですよね。
 一方では、じゃあ、地域との関わりをどうしていくのかとか、特別な才能を持っている、あるいは支援が必要な人をどうしていくのかとかいったようなことがあると思うんです。ちょっと長くなって申し訳ないんですけれども、昨今、例えば探究ばやりですよね。何かこう探究、探究ってね。いっぱい本も出ていますし、それはそれで大事なことだと思うんですけれども、学校が、何かトピックがあるとそれによって右往左往してしまう。教育再生実行会議が「類型化」ということを提言すると、類型化というのでまた身構えたりする。
 我が国には非常に練られた学習指導要領というのがあって、それに基づいてどうしていくのかというようなことも考えなければならないなということを思いながら、香山先生にこれは釈迦に説法みたいな話なんで、十分御承知の上でおっしゃっていると分かりながら、あれこれ思いながら伺っておりました。セミの話は私も感動いたしました。やってみなければ分からないということですよね。
【香山委員】  そうね。
【荒瀬主査】  これはだから学校教育もやってみなければ分からないというはずなのに、やらないで、そんなことしたって意味がないとか、無理だとか、どうせこの子にはそんなこと言ってもできないとか、決め付けるというのはよくないですよね。
 済みません、長くなりました。牧田委員、お願いいたします。
【牧田委員】  済みません。私は恐らくこの中で唯一、教育専門家とは言えない人間だろうと思っています。保護者でもあり、経済人でもありますが、今ほどの香山先生の御発言というか、要するにできる子供もいるけれども、できない子供もいるというところの認識について、ちょっと私の考えを述べたいと思っています。
 基本的に高校に進む子供たちというのは、これは大原則、義務教育を終えて、義務教育課程はほぼマスターしているという前提で高校に進むんですけれども、先ほどの資料の進学率がありましたよね。98.8%。これって皆さんまともな数字だと思いますか。
 つまり、義務教育をちゃんとできた子供たちが高校へ進むという前提であれば、本当に98.8%の子供たちがそこまでクリアできているのかという話ですよね。でも現実は違いますよね。
済みません、私の子供たちの周りとかもいろいろな話を聞くんですけれども、何で高校行くのって聞いたら、みんなが行くからなんですよね。高校行って何やりたいとか、その先どうしたいなんてことを考えている子供はほとんどいないわけでありまして、一部の進学校は別ですよ。そういう現状があって、簡単に言うと、本当は勉強したくないわけですよ。勉強したくない子供たちに、今、こうやってどうやって勉強させようかみたいなことを考えることはナンセンスみたいな部分も私はあるのではないかと思っていて、この原因は、私はやはり単線型の教育制度に実は根本的な原因があるような気がしています。
 やはり義務教育の課程で、義務教育の勉強に付いていけないという言い方は悪いですけれども、それを完全に修めることができなかった子供たちというのは、みんなが行くから高校に行って、分からない勉強を更に押し付けられて3年間過ごすわけですよね。それで、そこから就職というようなことになったりするわけで、もし今の高校教育を改革するのであれば、単線型を複線型にすることができないのであれば、私は複線型の機能を持たせた高校というのもあっていいのだろうと思います。
 つまりぶっちゃけ言いますと、義務教育の学び直しを高校の3年間でやる高校があってもいいのではないかと思いますし、それから、実際にもっともっと専門的に技能を身に付けるような、いわゆるドイツのマイスターみたいなことで子供たちを教えていくというような。本当にできる子供たちは、もうそれは放っておいてもちゃんと学校へ行くんですよ。学校へ行くというか勉強はするんですよね。でも、やはりみんなが行くからって行ってしまった子供たちというのは、やはりどこかで救ってやらないと、もっと言えば、じゃあ、小・中でもうちょっとしっかり教えればいいじゃないかという話にもなるんだろうと思います。
 それは我々が今ここで踏み込んではいけないことかどうか分かりませんけれども、そんな課題もやはりあるということを、多分もう釈迦に説法だと思いますけれども、是非皆さん御認識を頂きたいのと、高校をどうせ改革するなら、単線型を標ぼうしながら、その実、複線型を満足しているというような方向に進んでほしいなと思っています。
 以上です。
【荒瀬主査】  ありがとうございました。保護者の御意見として、大変重要な御意見と思いました。ちなみに、ただ一つだけ、反論ではなくて申し上げておきたいと思います。
 私がおりました頃の堀川高校は、他の普通科高校と同様、橋本教育長も御存じですけれども、総合選抜制度という、公立高校普通科に行くという進路選択が残っていました。願書も出すのは願書受付校というのが決まっていまして、行きたい学校に出すんじゃなくて、受付校に出して、そこで試験を受けて、合格発表のときには合格発表と同時に入学校というのも発表して、そこで中学生はそれを見て、「あ、行きたいところに入った」とか「え、こっちか」とかという制度でした。
 普通科第Ⅰ類という類型はそうでした。だから、そういう意味ではいろいろな高校に行っている子が、大体同じような成績でした。さっき橋本教育長がおっしゃったように、やりたいことができるようにしよう、受けたいところを受けられるように、というのが制度改革の、やはり一つ大きなきっかけだと思います。
 今、牧田委員がおっしゃった単線型かもしれないけれども複線型というのは、要は、一つの学校に行っているんだけれども、生徒はそれぞれやりたいことをやっている、そういう状況をどう作るかと。
【牧田委員】  そういうことです。
【荒瀬主査】  これは現行の学習指導要領で実はできます。いろいろな学校が学習指導要領内でやっているので、だからそういうところも、さっきちょっと申し上げましたけれども、一方でやっていくというのが非常に大事かなと思います。
 済みません。鍛治田委員、どうぞ。
【鍛治田委員】  よろしいですか。
【荒瀬主査】  山口委員が先でしたか。
【鍛治田委員】  はい。
【荒瀬主査】  じゃあ、済みません、山口委員、お願いします。
【山口委員】  今、牧田委員がちょうど言っていただいたので、今、私のところが多分複線化の例だろうなと思いまして、検討事項の3番に該当する状況でございます。
 本校は3課程、全日制も定時制も通信制もございまして、今、全日制の話はちょっと置いておきまして、そこに定時制も通信制の両方の生徒も在籍しておりますので、そこで今どんなことが取組として行われているかというのの具体の一つの学校の例というよりは、多分この後、私が今非常に気にしている、とにかく今、定時制・通信制に在籍している生徒たちが、特に通信制はどんどん増えております。この生徒たちを何とか社会につなげる。それが私たちの、またこの後の人口減の日本の中においては非常に重要な面ではないかなとずっとここのところ意識して、何とかこの若者たちを社会につなげていくと。今、引きこもりの問題であるとか様々なことで取り上げられておりますけれども、なるべくそこをどうやったら社会につなげられるのか。その具体の例として、幾つかお話をいたします。
 まず、不登校経験の通信制に在籍されている方、非常に多うございます。その中で、どれだけレポートの課題であったり、又は今のネット環境で様々なものは提出したりということが、いろいろ方法はあるんですけれども、最後やはり一番重要なのは、実際にそこの学校に来て、そこの担当の先生又は周りのお友達とコミュニケーションを取り始められる子が、かなりつながりを持てるように変わっていきます。そこがだんだん変わっていくところのポイントになります。どれだけ遠隔の中でのやり取り、これも大変重要なんですけれども、でも実際に会ったところでの変化というのは非常に大きくなります。そこが通信制の中でも一つポイントになるかなと思っております。
 そして、特別支援学校等でよくあるんですけれども、卒業後の見守りといいますか、特別支援学校ですと卒業されてから3年間、生徒さんを見守る制度があるんですけれども、それを普通高校にも何とか取り入れられないかなと、今、思っております。高校を卒業したところで、そこでまたすぐ進学なり就職なりを辞めてしまってというふうな生徒さん、今、様々な形での別な、省は違いますけれども、違うところで支援をしていただいていますけれども、そういうふうな公的なものだけでなくても、学校にまた相談できるような、何かそういう仕組みはできないのかなと。それが一つ重要かなと思っております。
 また、特別な支援を必要とする生徒さんについても、就労移行施設等の対応も、今、定時制や通信制では具体的にもう始めております。商工会議所等の方と、またNPOの方とも一緒につながりながら、そこも必ず何とか特別支援の学校というイメージではなくて、もう普通高校の定時制や通信制の中でも何とか社会につなげようという方向で、今、動いております。
 そして、外国人生徒さんも非常に多うございまして、本校でも100名を超えるような生徒さんがいらっしゃいます。その中で、通訳又はいろいろなことでやり取りするんですが、やはり一番重要なのは日本語支援でございます。日本語の習得ができませんと、どうしてもその後の進学、就職、どちらもうまくいかずに、又は高校3年間、4年間を過ごせないで、途中でやはり進路変更してしまうと。そこの一番大きな原因は、ほとんどの場合、やはり日本語の習得に掛かっています。ここで日本語を使って複雑な思考等で対応できるようになりますと、自分の母語だけではなくて、その両方がちょっとずつ使えるようになっていきますと、かなり日本社会に一緒に参画できると。
 今、特別な支援を必要とする生徒さんであったり、又は外国人生徒さん、そしてまた不登校等を経験したこの若者たちを、何とか次の段階の社会につなげていくのが、今の高校教育の一つの大きな側面として必要だとは考えて、取り組んでおります。
 済みません、以上でございます。
【荒瀬主査】  ありがとうございました。
 では、鍛治田委員、お願いいたします。
【鍛治田委員】  ほとんど山口委員が言ってくださったんですけれども、私どもは広域性通信制、単位制総合学科の学校です。そして専門学校の中に高等課程を持っておりまして、そこにも発達障害、不登校の生徒たちがたくさんいます。既に既存の学校に合わないため私どもの学校に来てくれているんですが、最初から学校不信、教員不信というところで、まずゼロからスタートができない。マイナスになっていますので、勉強をやり直したいと思っている生徒も多いんですが、傷付き体験が多いために、勉強に向けないという生徒たちをスタート地点にまず持っていくのに数か月掛かるという状況です。
 先ほど牧田委員もおっしゃいましたけれども、やはり中学校からの勉強の学び直しの必要な生徒もたくさんおりますので、そのことは安心できる環境と関係性の中で行うと生徒たちが実際変わっていきます。
 今、通信制に入る生徒が増えている、大阪ではもう10人に1人ぐらいですね。マイノリティとは言えない状況です。発達障害の子供たちも増えている、このことは私たちが今から話し合うことの中で目をそむけてはいけないことだと思っています。その子たちが排除されるのではなく、いろいろな合理的配慮があったり、支援のことはたくさんあるんですけれども、ひょっとしたら能力のある子たちが、自然にこの子たちを排除していくような仕組みを作っていないかということを見直したいと思っています。
 いろいろなところで子供はSociety5.0を生き抜くとあるんですけれども、子供は生き抜かないといけないという状況は、子供って大変だなと思うんですね。私たちが子供のときは塾に行かずに公園で遊んで、学校がおもしろいと思って勉強ができたように思うんです。けれども、今の子供らは生き抜かないとあかんというのは何か追い込んでいるような気がします。どの子も幸せになることが日本の社会の幸せになっていくんじゃないかと思います。個人も大事だけれども、共同体で生きる、だんだん人口が減っていく中、共助という関係性の中で、リーダーはもちろん作らないといけないんですけれども、能力主義で上がっていった子に課題のある子たちが排除されないような形で、その格差が広がらないように一緒に生きていく、子供を産みたいなってみんなが思える世の中にするには学校の役割はとても大きいと思います。そんなことも一緒に考えたいと思います。
 以上です。
【荒瀬主査】  ありがとうございます。
 では、内堀委員、お願いします。そして、その後は長塚委員、お願いいたします。
【内堀委員】  長野県教育委員会の内堀です。
 今、長野県は第2期の高校再編を検討しておりますが、その実施方針を「高校改革~夢に挑戦する学び」という形で示しています。2期再編という言い方をあえてしていないのは、新しい学びと新しい学校づくりを一体的に推進していきたいということで、2期再編と言ってしまうとどうしてもどことどこをくっ付けてどういう学校をつくるか、以上終わりみたいな話になってしまい、学びの部分が飛んでしまうので、そういう形では言っていません。
 その学びの改革で特に重視しているのが、これからの新しい時代に求められる力、子どもたちに身に付けていってほしい力っていうのは一体どんな力なんだろうかということを長野県教委として分析をして、それを育てていくための学びはどんな学びなんだろうか、そして、その学びをよりいい形で成立させるために、どのような場や仕組みが必要なんだろうかということを考えまして、それを地域の皆さんや学校関係の皆さんに話をさせていただきながら、今、地域協議会というのを地区ごとに徐々に立ち上げて、地域でどういう学びが必要かとかそのためにどういう学校が必要かとか、そういったことを地域の皆さんに検討してもらうということをやっています。
 我々としては、今申し上げたように、新たな学びとはどういう学びで、それを成立させるための場と仕組みとしてはどんなものが必要なんだろうという検討をしていますので、そういった意味ではこの会の検討事項の概要のところで、検討事項1で学科の在り方、2で地域社会等と連携した学びの在り方を検討することになっていますが、それに加えて、そもそも今後どういう学びが高校で必要なんだろうかという本質的な議論もしていけたらいいなというか、していただきたいということを思っているところです。
 そんな中で、今長野県でやっていることの一端をお話しさせていただくと、1つは探究的な学びを全ての高校でやっていく必要があるだろうと。
 その探究的な学びというのは、先ほどもちょっと話がありましたけれども、探究活動において探究的な学びを行う一方で、それ以外は旧態然とした、例えば講義形式だけで授業を行う、とかそういうことではなくて、形態はともかく、探究活動だけでなくて、学校で行われるそのほかのあらゆる活動も含めて全てを探究的な学びに変えている必要があると思っています。授業も、それから生徒会ももちろんそうなんですが、― 今高校でも教師主導の生徒会というのが普通に存在するようなので、生徒会活動というのがそもそも本来の生徒会活動かどうか分からなくなってしまっているようなところがいっぱいあるんですが― あと、ホームルーム活動でもそうですし、もっと言うと、今、体罰問題とかいろいろ出ている部活動の在り方ですね。部活動の在り方が顧問主導で、顧問と言いながら顧問じゃないですよね。そうではなくて、顧問というのはもうちょっと引いてないといけないと思うんですけれども、顧問主導の部活動というのが蔓延している実態とか、そういうようなことを全て子どもたち起点の主体的・探究的学びに変えていく必要があるだろうと。学校に一旦来たら、帰るまでのあらゆる場面で主体的な活動、探究的な活動が展開できることが理想であると、全ての学校にそんな話をしているところです。
 2つ目としては、普通科の議論もありますけれども、普通科も専門学科も、それから総合学科も、全ての学科を特色化・魅力化していく必要があるだろうと思っています。中学生が高校を選ぶときに、今、ほとんどその尺度というのは、現実的に入れる学校を選ぶという傾向が強いと思います。首都圏とか大阪とかですとちょっと違うかもしれませんが、地方だと選択肢がそんなにバラエティに富んでいないので、結局ここに行けるというところを基本的に選ぶ。そのときには、いわゆる偏差値、ペーパーテストの点数とか調査書の評定とかで選ぶ傾向があって、それ以外の価値観に基づく選択の尺度というのが必要だろうと。それが特色化・魅力化だろうと思っていて、それを進めていく必要があるだろうと思っています。
 その際に、資料に書かれていることと若干違ってしまうんですけれども、類型化が必要だろうかという疑問を正直なところ持っています。各学校が特色化・魅力化を進めていくことは必要ですけれども、それを幾つかに類型化していくことが、逆に縛りを掛けて特色化を阻害することにならないかなという疑問は持っているところです。
 あと、長野県の公立の通信制というのが今までオーソドックスなものだったんですけれども、先ほど文科省の方とちょっとお話をしたら御存じだということだったんですけれども、望月というところに通信制のサテライト校というのをつくりまして、基本的には学習ソフトを使って個別最適の学びを授業の中でも、学校外の自学自習の中でもやっていきながら、― もちろん文部科学省が定めた時間の範囲内ですけれども、その範囲内でやりながら― 基本的に週1日登校というこれまでのシステムを変えまして、1日でももちろんいいんだけれども、最大5日まで登校できると。それはあくまで支援を受けたいという生徒個人の希望に応じてですが。それから、先ほどもちょっと通信制の先生のお話の中にありましたけれども、生徒の状況に応じてさらに社会とつながり、人とつながった学びをつくっていく。というようなサテライト校をつくりましたが、今後もそんな形で進めていけたらと思っています。
 また、多部制・単位制と通信制の親和性は非常に高いので、それを一体化していくことで、もっと自由で、かつサポート体制も充実した新しいタイプの学校ができていくんじゃないかななんてことも考えたりしているところです。機会があればもうちょっと詳しく申し上げますけれども、こういった話は、先ほど申し上げたように、どういう学びがこれからの高校に必要で、そのためにどのような場とか仕組みが大事になってくるかという議論の中でしていく必要があるのかなと考えているところです。
 時間がない中ですので、もう1点だけ、資料にない話としてちょっと疑問に思っていることを申し上げて終わりたいと思います。学校というシステムが明治時代にできてもう150年近く経つんですけれども、もともと明治につくられたときは西洋に追い付け、追い越せで、画一的で効率優先の知識注入型の学びをしていたと思うんですが、今はやはり一人一人を大事にしていくという時代に入ってきたような気がするんですね。そのときに、学校や教員が定めたペースで画一的にいろいろなものを進めていくと、それにぴったり合っている子なんていうのはほんの数%、もしかしたら1人もいないのかもしないということがあって、そこのところをどうしていくかというのが一つ大きな課題であろうと思います。そして、こういった学校というシステムそのものが、閉塞感だとか圧迫感、同調圧力を生む空間になってはいないかという疑問を強く持っているんですね。子どもたちの学びとか成長を支えるべき学校という空間が、実はかなりの強度を持って子どもたちの個性の伸長を阻害し、一律にこうあらねばならないということを求めている空間になってしまっていないかと。教師側・学校側からの圧力と、生徒同士の圧力、学校という空間自体が持つ圧迫感、それを打ち破っていかないと、本当に一人一人が尊重されて、一人一人が安心して学べる空間になっていかない、そういうことが成立しないんじゃないかなと。
 安全安心な学びの空間として、学校では間違ってもいいんだとか、疑問があったら手を挙げて質問してもいいんだとか、そういう小学校の一、二年生だと普通にやっていることが、高校でも当たり前に行われるようになるためにはどうしたらいいのかというところを議論することが、システムそのものの議論と同じくらい、若しくはそれ以上に重要なのではないかなと考えています。ですので、そういう議論がここで行われることを期待したいと思っています。
【荒瀬主査】  ありがとうございました。
 では、長塚委員、お願いします。
【長塚委員】  このワーキンググループには私立高校から、私と跡部先生の2人が参加していると思いますが、全国の公私立の割合が2対1ぐらいですから、まあ丁度いいのかなと思いつつ参加しております。そこで余り最初に意見をしなかったのは、我々私立から見ると、普通科のこのいわば類型化とか特色化というのは当たり前のように行われてきているので、今更何なのかなと意外に感じていることもあります。かつて公立高校でも類型化、コース制というのを推進されたことがあったわけですよね。その成果検証があるのかないのか、その後どうなのかちょっと分からないんですけれども、私立学校の方から言えば、その成り立ちからして、公立高校にはない教育をするとか、ニーズがあるからということで学校を作ったりするわけですね。
 また基本的に公立高校は適正配置で、税金で生徒のいる数に応じて高校を作って配置し、募集人員も決めたりするわけですけれども、私立は基本的にはそういうのは関係ないんです。こういうことをしたいとか、こういうニーズがあると思えば、各学校が自主的に作るものなんですね。もちろん私学審議会というのがありますから、適正配置を全く無視しているわけではないのですけれども、そこにニーズのないものを作ることはないわけです。
 その上で、私立高校は、頂いたデータにもあるんですが、全国的に言って専門学科だけの学校は非常に少なくなりました。もうたしか四十数校です。極めて減少して普通科がほとんどになったんです。だからといって普通科の中が従来と同じかというと、そうじゃなくて、普通科の中に専門学科的な要素のコースや類型があったりします。何で普通科が増えたかと言えば、あるいは専門学科の要素が普通科の中に入ったかと言えば、大学進学率が高まったからです。高校進学率の高まりだけでなく、大学進学の必要性があってそうなっているわけです。さらに、最近は就学支援金という国のお支えもあるので、私学にも入りやすくなっていますから、そういうニーズの高まりに応えることで私学は成り立っているということが基本的にあるだろうと思います。
 しかし、1つ申し上げたいのは、今回のこの普通科の改編のような大きなテーマを考えると、汎用的な資質・能力を目指そうとする今回の指導要領の改訂の方向は、基本的にいわゆる普通科志向なんじゃないかなと、私は思っていたわけです。そこに専門学科的な新しい特色をとなると、確かに時代の変化に合わせた専門性のある新しい知識・技能も必要なのだろうと思いますが、かつて公立高校で類型制、コース制が必ずしも広がらなかったと考えられるのは、やはり時代の変化が激し過ぎて、その環境・体制を整えるのが大変だということなんじゃないかなと思えるわけです。
 世界的に見ても、社会の変化が激しく不確実な時代となり、またグローバルな社会になったことで、汎用的な資質・能力を育むことが共通の課題になってきました。新しい学習指導要領がコンピテンシーベースの学びを目指すことになったねらいもそこにあるんだろうと思うと、我々私学からすれば、これから普通科をそういう目先の特色のあるものに変えていくということは非常にリスクがあると考える学校も少なくない。
 もう一つその関連で言うと、学習指導要領については、本当はもっと大綱化してほしいという願いがあったわけなんです。合科的なものとか教科横断的なものがやりやすくなればいいなと。大学入学共通テストもそういうものをちょっとうたっていましたので、少し期待していました。
 しかし、ふたを開けてみると、大綱化されて教科目が減ったというよりは、むしろ合科的なことで言えば理数科というのができたわけです。新しいものはできて、これは合科的ですけれども、結局増えたようなイメージしか全体観としてはないんですよね。
 そういう中で、普通科の特色化をやるやらないは各学校の自由ですけれども、ただ高校には現在でも必履修科目以外の学校設定科目の余地が相当あって、学校設定科目では自由にできるという部分があることをやはりちょっと見失っている可能性があるんです。でも、やはり大学入試が相当の基礎科目をやることを求めていますから、結局それに引っ張られるんですね。
 本来ならば、自由度の高い学校設定科目の中でいろいろな探究をした方がいいと思うんです。理数探究だけじゃなくて、専門学科的なものも、実は個別対応の探究ベースでやらないとおもしろくないです。上から教えられただけの、覚えるだけのような専門学科的なものになると生徒は本質的な学びに向かわない。
 ただ、個別対応の探究ベースでやるには、作ろうと思えばできるんだけれども、やはり大学入試が基本的に妨げになっていて、大学入試で個人の探究成果を見てくれるということまではまだいっていない。その辺がまだこれからの課題なんじゃないかなと感じているところです。
 もう一点、大きなテーマで言うと、広域通信制高校の問題です。これは私学にも関係するんですが、大きな問題としてクローズアップされたのは、株式会社立の広域通信制の学校が発端なんです。そして全国的に広域通信制への進学者が増えてきているんですが、通信制はもともと勤労学生対象だったわけです。
 いうまでもなく勤労学生というのは社会性があるんです。企業で働きながら学ぼうとしているわけですから。その後、家にこもりがちな不登校の生徒が対象だということで、いわば今度は、社会性が課題になっているわけです。これは本来の通信制が本来やろうとしていたこととは真逆であって、社会性があった上で学ぼうとする者を対象にしていたのに、今は社会性がないので、通信でやろうという方向の制度を作ってしまっているという状況があるわけです。
 そういう状況の中で、この通信制の在り方というのは、子供たちを外に出してみんなと集まる場が必要だということは分かるんです。その方向が必要だと思いますね。でも、全日制との区別がつかなくなっているわけです。いうまでもなく全日制は相当きちんとした設置基準で、学校の施設環境を整えたり、教師も整えたりしていますが、登校することにハンディのある生徒のためには、実は全日制以上のサポートというか、個別対応が必要なので、相当手厚い教育環境を整えて通信制、広域通信をやらない限り、本当の意味で子供たちのためのものになっていっていないと私は思っています。この点については、いずれ時間があると思いますので、さらに具体に話し合いをさせていただこうと思っております。
 以上です。
【荒瀬主査】  ありがとうございました。
 では、跡部委員、お願いいたします。
【跡部委員】  私の勤務校は、小・中・高・大が全部1か所に集まっている東京の私立校ですが、「個性の尊重」を学校の教育理念のひとつにしています。ですからそれぞれの子供たちの個性をどういうふうに育んでいくかということを、日々先生方は気にしながら活動をしていますが、いろいろな場面で感じるのは、今、教育が多分経済論理の中に組み込まれ始めたのかなという思いです。効率のよさを求めることが非常に多くなっているような気がします。
 それぞれの子供たちの個性を大事にすると、非常に進路が多様になっていく。それは当たり前だと思うんですが、なるべくまとまってやりやすい形にするとか、早く結果を出すとか、そういったことが求められ過ぎているような気がしていて、教育ってこんなものではなかったのでは?という思いが非常に強くあります。
 恐らく教育って種まきの部分が非常に多くて、芽が出るには時間が掛かるし、ひょっとしたらその場では花が咲かないこともあるかもしれない。咲かない部分もあるのでは?とも思うんですけれども、でもそういう中で子供たちがそれぞれいろいろなものを身に付けて学んでいきたいと思う気持ちをどう育んでいくかというところが、多分大事なんだろうと思っています。
 特に高校生には、これからの生き方を考えることがこの3年間には求められていて、だからそういう意味では価値観をどう作らせるかというところが大事な気がしています。授業やさまざまなものを通じてそのための刺激を与え、いろいろなものに触れるチャンスを多く用意し、あるいは外に行ってもっとチャレンジしてごらん、失敗してもいいよ、そういうところが大事な気がしています。
 もちろん探求型もすごく大事なんです。でも、その前には基礎力がなければやはりだめで、基礎的な力をしっかり付けることと、その探究の部分をどのようにバランスを取っていくかというところも大事な気がしています。
 子供たちを見ていると、文系とか理系とか自分で選択しなくてはいけないんですけれども、今は選択にすごく不安を持っているように見えます。文系を選んでいいのかな、理系を選んでいいのかなという思いが生徒たちの中にはあるような気がしていて、特にこの「変化」のときだからこそ、どっちにも行けるようにしておきたいという子供たちの悩みが見えるような気がしています。
 ですから、ここでいろいろなお話がきっとこの後出てくると思うんですけれども、自由度もちろん大事なんですけれども、でも基礎的な力みたいなものもしっかり付けながらいくにはどうしたらいいかというところも一緒に考えられたらいいなと思いました。
【荒瀬主査】  ありがとうございました。
 では、角田委員、お願いします。
【角田委員】  私は全国の高校に取材している編集者ですので、その立場でお話ししたいと思います。現場の先生方がどれだけ苦労なさっているか、そしてすばらしい先生がたくさんいるという前提でいろいろな改革案を出していって、先生方を応援するような議論と提言にできたらなと思っています。
 荒瀬先生、皆さんがおっしゃっていらっしゃるように、新しい学習指導要領の中の探究や特別活動に本格的に取り組めば、その学校の特色化が図られたり、生徒も先生も成長すると信じていますし、実際多くの事例を取材させていただいています。ですので、今やれることを迷わずに頑張ってやっていただきたいと思っています。一方、探究で私が心配なのは、すばらしい研究成果が上げられたときに褒められるだけでなく、うまくいかなくても、その経験が自分の力になったというところを、大学入試も含めて評価していただくような、そういった価値観になればいいなと思っています。 探究だけに限らず、トライ・アンド・エラーをを、生徒にも先生方についても許されるようになったらいいなと思います。セメスター制などでどんどん選択科目を変えるなどあってもいいんじゃないでしょうかか。それをちょこっと学んで、合わなかったらすぐ変えるのかと怒るんじゃなく、じゃあ、こっちがいいねと変えられること。企業は今そうですよね。そういった切り替えの早さのようなことも高校時代に経験できるような、自由度がある教育課程に変わっていけたらいいなと思います。
 以上です。
【荒瀬主査】  ありがとうございました。
 一通り委員の皆様の御意見を承りました。きょうはオブザーバーとして、特別部会からカタリバの今村久美さんが来てくださっています。お聞きになって、御感想も含めて、どうぞ。
【今村オブザーバー】  昨日の会議とは違って、先生方のコメントの中で時間を空けていただいた気持ちなんですけれども、オブザーバーながら意見を言わせていただく時間を頂きまして、どうもありがとうございます。ちょっと感想の前に、オブザーバーながら申し訳ないんですけれども、私も一つ言ってもよろしいでしょうか。短めに。分かりました。
 先ほど内堀先生のお話を聞きながら本当に思ったことなんですけれども、ここの諮問文ではないところかもしれないんですが、校則というものを高校においてどうしていくのか。どこもそうなんですが、このことについて、もしかしたらもう少し学校ごとの捉え方を文科省として発信していってもいいのかなということを感じています。
 最近、探究がはやって、私たちもマイプロジェクトということをいろいろとやっているんですけれども、生徒たちと一緒に話していると、何よりもの課題は、地域課題よりも前に学校課題に目を付けるということから当然スタートする子が多いんです。ただ、学校の中で学校課題やルールに問いを立てて、そこに改善案を提案するということは、基本的に教員側も許されるものではないと思っている方が多いし、生徒もそこは踏み込んではいけないという考え方を持っているように感じています。
 ただ、文科省さんのウェブを調べてみると、「内容や運用は生徒の実態、保護者の考え方、地域の実情に合わせて変えていくべき」ということが書いてあるわけで、なので、いろいろなこれから育っていく人材のルールを変えていく人材を育てていくという点を取ってみれば、この学校の校則というものも変えていっていいんだというところは、この生徒の探究活動のスタートとして置いてもいいんじゃないかなということを感じていました。
 整容指導といったものがあって、体育館に並ばされて、まだ眉毛に掛かったらピン止めという実態なので、その中で環境に対して疑問を提案できるということが高校生にもされる、そういったことも作っていけたらいいなと思った次第です。ありがとうございました。
【荒瀬主査】  本当にコンパクトに。(笑)ありがとうございました。
 ありがとうございます。まだ御意見がおありの委員は、事務局の方にメールで送っていただくということもよろしいですよね。では、よろしくお願いいたします。
 いろいろ御意見を頂きまして、ありがとうございました。最後に1つだけ御説明しておかなければならないと思いますので、よろしくお願いいたします。先ほど牧田委員のお話のときに、京都の公立高校の入試制度のお話をしました。そのときに、入学時点の学力が低い生徒もまた、というふうな話し方になったていたかもしれないと思うんですが、趣旨は、どの生徒にも学びが必要だということを申し上げたいということであります。
 高等学校にいる間に学ばなければならないものは何なのかということを考えていく必要があると思います。それが何かを明らかにするためにも、かつて中教審に高等学校教育部会というのがありましたが、あの提言とか、2016年12月の中教審答申、あるいは高等学校の学習指導要領のキャリア教育に関する部分とか解説とかですね。きょうお話しになっていらっしゃったことは、全部そういうところにつながっていくように思いますので、ご厄介ですが、事務局からそのあたりの資料もまたお出しいただければということを思います。
 教育再生実行会議の話も、改めて申し上げておきたいのは、資料3の52ページでありますが、これは教育再生実行会議の第11次提言の概要ということで8項目にまとめていただいているところです。
 その1番の「学科の在り方」というところで、最初の黒四角ですけれども、全ての高等学校において、生徒受入れに関する方針・教育課程編成、それから実施に関する方針、修了認定に関する方針をということですが、今大学改革で求められている3つのポリシーと全く同じものが高等学校にも要るんじゃないかということです。3年ないしは4年学んで、どういう資質・能力を身に付けるのかということを、高等学校は明らかにしているのか。あるいはそのためのカリキュラムを用意しているのか。これらが問われています。
 これは長塚委員もおっしゃいましたけれども、学校設定科目は使えばいっぱいできるし、総合的な学習の時間、探究の時間も、工夫すればもっと内容のよいものにできると思います。そういったことも含めてカリキュラムをどうするのか。そして、そういうことに堪え得ると考えられる生徒をどんな方法で入学させるか、ということが問われています。これを、学校単位で考えてみてはどうかという提言だと思います。みなさんのお話も、こういうところに絡めて進めていくことができるんじゃないかということも思います。今後また資料も出していただきますので、よろしくお願いしたいと思います。
 では、次回の日程につきまして、事務局の方からよろしくお願いいたします。
【酒井参事官補佐】  熱心な御審議、ありがとうございました。次回のワーキンググループの日程につきましては、また主査と御相談の上、追って御連絡させていただきたいと思います。
 事務連絡でございますが、本日の資料につきましては、机上に置いていただけましたら郵送させていただきますので、よろしくお願いいたします。
 以上でございます。
【荒瀬主査】  ありがとうございました。
 それでは、本日はこれで終了いたします。ありがとうございました。


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