新しい時代の初等中等教育の在り方特別部会 (第16回) 議事録

1.日時

令和2年10月28日(水曜日) <午前の部>10時00分~12時00分 <午後の部>14時00分~16時00分

2.場所

文部科学省 ※WEB会議
東京都千代田区霞が関3-2-2

3.議題

1.関係団体からのヒアリング
  【午前の部】
    ・全国都道府県教育委員会連合会
    ・全国市町村教育委員会連合会
    ・全国都市教育長協議会
    ・公益社団法人日本PTA全国協議会
    ・一般社団法人全国高等学校PTA連合会
   【午後の部】
    ・全国国公立幼稚園・こども園長会
    ・全日本私立幼稚園連合会
    ・日本私立小学校連合会
    ・日本私立中学高等学校連合会
    ・全国特別支援学級・通級指導教室設置学校長協会
    ・全国特別支援学校長会
  2.その他

4.議事録

【荒瀬部会長】 皆さん,おはようございます。荒瀬でございます。よろしくお願いいたします。定刻となりましたので,ただいまから中央教育審議会初等中等教育分科会,第16回新しい時代の初等中等教育の在り方特別部会の午前の部を開催いたします。
 本日は御多忙の中,御出席いただきましてありがとうございます。この会議もまた,新型コロナウイルス感染症の感染拡大を防止するため,ウェブ会議方式にて開催させていただきます。
 まず,本日の会議開催方式及び資料につきまして,田中教育制度改革室長から御説明をよろしくお願いいたします。

【田中教育制度改革室長】 田中でございます。本日もよろしくお願いいたします。本日も,これまでの会議と同様に,Webexを用いたウェブ会議方式にて開催させていただきます。ウェブ会議を円滑に行う観点から,大変恐れ入りますが,御発言のとき以外はマイクをミュートにしていただくようお願い申し上げます。委員の皆様には御不便をおかけいたしますが,どうぞよろしくお願い申し上げます。
 それでは,資料の確認をさせていただきます。本日の資料は,議事次第にございますとおり,資料1から資料12-2まで,加えて参考資料となっております。このうち,午前の部の資料は資料1から資料5-2でございます。御不明な点等がありましたらお申しつけください。

【荒瀬部会長】 ありがとうございました。よろしいでしょうか。本日は,既に何度も出ておりますが,午前の部と午後の部の二部構成となっております。関係団体からのヒアリング,第3回目でございます。午前の部は,全国都道府県教育委員会連合会,全国市町村教育委員会連合会,全国都市教育長協議会,公益社団法人日本PTA全国協議会,一般社団法人全国高等学校PTA連合会の5つの団体の代表の方から,中間まとめにつきまして御意見を伺い,質疑応答,意見交換を進めていきたいと思っております。
 なお,本日も報道関係者の皆さんと一般の方向けに,本会議の模様をWebex Eventsにて配信しておりますので,御承知おきいただきたいと思います。
 では,議事に入ります。まず前半としまして,全国都道府県教育委員会連合会から,藤田全国都道府県教育委員会連合会会長に御発表いただきたいと思います。
 藤田教育長,よろしくお願いいたします。

【藤田全国都道府県教育委員会連合会会長】 皆さん,おはようございます。ただいま御紹介いただきました,全国都道府県教育委員会連合会会長の,東京都教育長の藤田でございます。本日は発言の機会を頂戴いたしまして,誠にありがとうございます。
 新型コロナウイルス感染症の影響による全国一斉の臨時休業など,この間の前例のない状況につきましては,図らずも,学校の存在意義を改めて考える機会となったと思っております。
 そうした視点も踏まえまして,今回の中間まとめにつきまして,第Ⅱ部の各論を基に御提出させていただきました意見書,お手元の資料では資料1でございますが,これに沿いまして,幾つかのポイントに絞って意見を述べさせていただきたいと思います。
 まず,中間まとめの内容に対する意見について申し上げます。資料1の3ページになります。
 3ページの3.新時代に対応した高等学校教育の在り方についての(1)基本的な考え方のところでございます。(2)の高校生の学習意欲を喚起し,能力を最大限に伸長するための各高等学校の特色化・魅力化につきましては,普通科,専門学科,総合学科とそれぞれの学科ごとに,その特色・魅力について記述がなされているところでございますが,これらの内容につきましては,全ての学科に共通して求められる内容であるため,学科にかかわらず検討していく必要があると考えております。
 また,②の各高等学校の入口から出口までの教育活動の指針として3つのスクール・ポリシーの策定というところでございます。
 従来の学校目標よりも具体化したスクール・ポリシーを公開して,学校の特色を明確にしていくためには,各高等学校が教育課程を柔軟に編成できるようにする必要があると考えてございます。
 続きまして5ページの4.新時代の特別支援教育の在り方についての③特別支援学校における教育環境の整備のところでございます。
 特別支援学校に備えるべき施設等を定めた設置基準の策定に当たりましては,財政措置や各地方公共団体の既存の計画との整合性を図る必要があるため,地域の実情を踏まえ,設置者である各地方公共団体と協力・連携を図りながら進めていただきたいと考えております。
 次に,資料の6ページでございます。(3)特別支援教育を担う教師の専門性向上の①全ての教師に求められる特別支援教育に関する専門性のところでございます。
 学習支援だけではなく,生活指導における支援の割合も大きくなってきておりますことから,生徒指導の観点についても追記をしていただければと思います。また,特別支援学校教諭の免許状を所有していない現職教員が,免許を取得しやすくする制度を構築することも必要であると考えております。
 続きまして資料の7ページでございます。6.遠隔・オンライン教育を含むICTを活用した学びの在り方についての(1)基本的な考え方についてでございます。
 ICT機器の積極的な利活用のためには,留意点と同様に,利活用における利点につきましても具体的に想起できるように記述をしていただければと思います。また,ICT機器を活用して,児童生徒一人一人に最適な学びを実現していくためには,それぞれの学習状況等を踏まえた指導や動機づけなど,教員の役割がますます重要になるものと考えております。
 そのため,オンライン学習における教員の指導の在り方につきましては,児童生徒の置かれた場面を具体的に想定した上で,それに応じた教員の役割を明確にお示しいただいた上で,受信側における教員の指導の必要性等についても記載していただければと思っております。
 さらに,対面指導と遠隔・オンライン教育とのハイブリッドによる指導を進めるに当たっては,それぞれの特徴を最大限に生かして組み合わせていくことで一層効果が高まるものと思っております。そのため,学校における協働的な学びや体験など,学校ならではの学びの重要性についても触れておく必要があるのではないかと考えております。
 続きまして資料の8ページでございます。(2)ICTの活用や,対面指導と遠隔・オンライン教育とのハイブリッド化による指導の充実の⑤デジタル教科書・教材の普及促進についてです。
 デジタル教科書等の普及促進のためには,経済的な負担軽減が必要であると考えております。特に高等学校におきましては,紙の教科書も有償でございますので,経済的負担が大きく,地方公共団体・学校等による使用状況の格差につながりかねないとも考えられます。経済的負担の軽減についても,是非御検討いただければと思っております。
 続きまして資料の10ページでございます。8.人口動態等を踏まえた学校運営や学校施設の在り方についての(2)児童生徒の減少による学級規模の小規模化を踏まえた学校運営,③中山間地域や離島などに立地する学校における教育資源の活用・共有のところでございます。
 離島・へき地におきましては,光回線がまだ届いていない地域もあるということでございます。まずは,その地域の環境整備について,関係省庁と連携して進める必要があると考えております。また,遠隔授業を実施することにより,中山間地域や離島などに立地する学校の職員の定数減につながることがないよう御配慮いただく必要があるとも考えております。
 続きまして10ページの9.Society5.0時代における教師及び教員組織の在り方についての(5)教師の人材確保のところでございます。
 教員の仕事の魅力を認識しながらも,多忙な労働実態を敬遠し教職を志望しないという学生が一定程度存在しますことから,必要な人員確保や待遇改善を目指すことを,教職の魅力向上策に追記をしていただきたいと存じます。
 御承知のとおり,地区によっては公立小学校教員の採用選考の競争率が2倍を切っている状況でもございます。各都道府県では,今後も様々な施策により,優秀な教員の確保に努めてまいりますので,引き続き御支援を賜りますようよろしくお願い申し上げます。
 次に,内容を実現するための,こちらは意見ということでございますが,人的・財政的措置を中心とした要望を含めた意見でございます。これについて幾つか申し上げます。
 資料の11ページになります。2.9年間を見通した新時代の義務教育の在り方についての(3)義務教育9年間を見通した教科担任制の在り方に関してでございます。
 小学校高学年への教科担任制の導入,専門性を有する補助スタッフ等の導入についての記述がございます。これらは,新学習指導要領の円滑な実施と,学校における働き方改革のための指導・運営体制の構築を進めるために必要だと考えてございます。教科担任制の導入,補助スタッフの導入を進めるためには,人的及び財源の確保が課題となってまいりますため,国からの支援が是非とも必要であると考えております。
 同じく11ページ,3.新時代に対応した高等学校教育の在り方についての(1)基本的な考え方に関してでございます。
 遠隔授業,オンライン授業等について記述がございます。現在進めておりますGIGAスクール構想において,1人1台端末の整備は,国の補助対象が義務教育段階までという作りとなっております。高等学校は補助の対象となっておりません。高等学校の端末整備について,今後の整備方針を決めている県も一部ございますが,高等学校段階での1人1台端末の整備についての方向性を是非とも明記していただき,それに対する財政支援等についてもお願いができればと考えております。
 最後になりますが,資料の13ページでございます。7.新時代の学びを支える環境整備についての(3)新時代の学びを支える指導体制等の計画的な整備に関してでございます。
 少人数によるきめ細かな指導体制について記述されております。学級編制標準の引下げや,それに伴う新たな教員配置による人件費,教室の増加に見合った学校施設の大規模改修等の費用に対する地方財政の影響を緩和するため,国の財政措置が必要であると思っております。少人数によるきめ細かな指導体制の検討に当たっては,各都道府県の採用計画等に多大な影響がございますので,早期に規模やスケジュール等をお示しいただければと考えております。
 また,地域の事情を踏まえて,少人数による指導体制整備の原資として,既存の指導方法工夫改善加配等の加配定数等の削減は行わず,必要な教員定数を別途確保していただけると有り難いと思っております。
 さらに大都市圏では,児童生徒の増加が今後も一部見込まれている地域もありますので,そういった実情も考慮していただきたいと考えております。
 以上,簡単でございますが,全国都道府県教育委員会連合会からの意見について述べさせていただきました。ありがとうございました。

【荒瀬部会長】 藤田会長,ありがとうございました。
 申し遅れておりましたが,委員の皆様からの質疑応答,意見交換につきましては,前半といたしまして,次の全国市町村教育委員会連合会,そして全国都市教育長協議会の御発表が終わりましてから,まとめて行いたいと思いますので,よろしくお願いいたします。
 では続きまして,資料2に基づいて,田邊全国市町村教育委員会連合会会長から御発表をいただきます。
 田邊会長,よろしくお願いいたします。

【田邊全国市町村教育委員会連合会会長】 おはようございます。全国市町村教育委員会連合会会長の田邊と申します。金沢市の教育委員を務めております。本日はこのような発言の機会を与えていただき,ありがとうございます。
 市町村教育委員会は,全国で1,700を超える自治体で設置されておりますので,ご承知のように,市町村の状況というのが,とても人口規模が多い市もあれば,逆に少ない村もあり,これらを幅広く包括して連合会を構成しています。
 本日は,中間まとめに沿った発言には必ずしも十分ではないかもしれませんし,用意させていただきました文書に関しても,しっかりと伝えられるような内容になっているか,案じてはおりますが,このたびのコロナ禍で様々気づいたことをお伝えし,是非審議の中に生かしていただきたいという趣旨で発言させていただければと思います。
 まず,コロナ禍で様々な気づきがございました。特に,文書のほうでは2ページ目,3ページ目辺りにつづっておりますが,このコロナ禍,臨時休校のため一切の授業,そして様々な行事や特別活動が実施できないという事態に遭遇しました。そういう中でも,子供たちが企画力を発揮して各種の企画を進めていくような実例が多々見受けられまして,改めて,子供の持つ潜在力をしっかりと見据えながら教育活動に取り組む必要性を実感した次第です。そういう声をたくさん耳にしました。様々な学校での取組を通して,改めて,子供の潜在力を引き出し,成就感が得られ,教育に取り組む意義を実感する展開が多々見受けられたことは,改めて気づいたことの1点目です。
 2点目といたしましては,教員の視点の広がりというのが得られたと思っております。教育の目的は自立した学習者を育てるということですが,この大きな目的について改めて再認識しました。新しい学習指導要領でも主体的な学びの姿を目標に据えておりますので,改めて,それをどう育んでいくのか,その取り組み方について気づかされる機会になったということを,教員からの声としてたくさん聞いております。
 3点目ですが,地域からの学校を支援する力というのでしょうか,地域と連携しながら,協働しながら学校を支えていく総合力ということをしっかり培っていくということが改めて気づかされたことです。今回のコロナ禍で,学校で消毒をしっかりしなければいけないとか,検温に努めなければいけないとかいうこと,さらに学習指導のサポート,さまざまな学校に対する支援にあっては,たくさんの地域からの支援が得られました。改めて,そういう総合力をしっかりと組み立てながら取り組むことを実感させられ,その意義について気づかされました。常日頃から,子供たちの生活をめぐる土壌を耕すというか,学校をめぐる社会資本と申しますか,学校環境をしっかりと整えて,子供たちの力を育てられるような土壌を耕しておく。単に水をやるだけではなくて,しっかりと耕されて養分や栄養素を含んだ土壌の中で育まれ,花を開かせるような展開を目指していく必要があることを,改めて気づかされました。
 次いで,今回の経験を通して,今後に向けて大事にすべき観点について,幾つか注目したいところがございます。中間まとめの記述を読み通しながら,とりわけ,大事な観点として,「学びを止めない」ということ。想定外のことがあったとしても決して学びを止めず,学校からの指示が届かなかったりしても,多様な家庭環境の中であったとしても,自学たゆまなくを進めることができるような,学びを止めないという姿を目標としていくことが,大事にすべき視点であるという指摘に共感いたしました。
 さらに2点目ですが,「誰一人取り残さない」というスタンスです。個別最適とか協働性を重視するといった点がしっかり記述されておりますので,それが取り組めるような仕組みをしっかり構築していくことが,大事にすべき観点ではないかと共感しております。
 特に今回,オンライン学習という工夫が幅広く展開されました。学校の授業でオンラインによる指導が活用されることはとても大事なことだと思っておりますが,単に配信することにとどまらず,子供たちの理解度や状況に応じて,しっかりと声掛けなどのフォローをすることは,学校での教育活動を展開する上でとても大事なことです。集団の中での臨場感や空気感を感じながら学習に取り組む。友達と一緒になって,学級のクラスメートと一緒になって取り組む。緊張感を時には感じたり,張り詰めた状況の中で,時には悲喜こもごもの感触を伴いながら学習を展開する,正しく学校がそうした学びの場であるということを実感したところです。子供たちの学習活動の質を高めていく上では,対面する場でのやり取りの中での取組が重要であるということ,正しくこの点でオンライン学習とは異なることを十分に確認したところです。学校という場が,改めて,学びに向かう力とか人間性を育む場であることを再認識したところです。
 続いて,具体的な施策に関わる点について。まず,4ページ目以降のところに記述させていただきましたが,現下の危機を乗り越えていくためにも,これまでも一貫して要望させていただいてきたことですが,教員の定数改善という根本的な改善課題があります。
 その上で,GIGAスクール構想について画期的な前進が今回ありましたので,引き続き,それを効果的に活用していくための支援ネットワークの構築に目を向けていくこと。教員一人一人が工夫したり,学校で協働したりしながら取り組むことがもちろんベースになりますが,よりよく生かしていくための支援体制,ICT支援員の事業もありますが,より一層の人材面での環境を拡充していくことが必要ではないかと思っております。
 さらに,2点目ですが,小学校高学年での教科教員を配置することが提示されており,大いに評価する点です。他方で,学校の現実を見渡してみますと,中学校では自分の取得免許ではない免許外の教科を担当する,やむを得ない状況があります。
 教員採用の志望者についても先ほどのご指摘にもありましたが,そういう実態に対する手立てを考えていく必要もあると思っております。小学校での高学年教科担任制,これも一案として評価しますが,免許外担当のような学校の実情を解消していくような方策が必要です。特に小規模校を中心にこうした実態がありますので,オンラインを活用する方策や,巡回教員を特別に配置するような対応方策など,検討していく必要があるのではないかと思っております。
 それから3点目ですが,今回のコロナ禍の中で,学習の遅れを取り戻すということで,様々な手立ての事業化がありました。とりわけ学習サポーター,スクールサポーターなどの配置についてはとても有効だったとの学校からの多くの声を聞いております。こうした事業の継続が,これからの危機を乗り越えていくためにも,あるいはこれからの新しい学習,新しい学びを推進していく上でも,必要不可欠な手立てになると確信しております。こうした人材面での環境をより一層推進していくような方策を,是非ご検討いただけないかと強く念願しております。
 以上,必ずしも中間まとめに沿った話,あるいは用意した文書に沿った話にはなっていませんが,この間の状況の中で気づいたことを通して,御検討いただきたいと思うことをお話しさせていただきました。今後ともよろしく御支援を賜りますようにお願いいたします。

【荒瀬部会長】 田邊会長ありがとうございました。
 それでは,続きまして全国都市教育長協議会から,飯野会長に御発表いただきたいと思います。
 飯野会長,よろしくお願いいたします。

【飯野全国都市教育長協議会会長】 おはようございます。全国都市教育長協議会会長,また高崎市教育委員会教育長の飯野と申します。よろしくお願いいたします。
 資料を4ページほどお送りしてありますので,それに沿ってお話しさせていただきたいと思います。
 全国都市教育長協議会会員数は804,全国の市,そして東京都の区の教育長が加盟しております。コロナの影響もございまして,機関決定というわけではないのですが,会員から寄せられた意見を順次,高崎市教育委員会のほうでまとめたものを御報告させていただきたいと思います。
 資料の1ページになりますが,変化する社会の中で我が国の学校教育が直面している課題の部分で,やはり大きな課題とすると,児童生徒の自殺防止については,学校だけの問題ではなくて,日本の場合は非常に成人の自殺が多いということもありますので,社会全体で強く推進するという視点を是非入れていただきたいということでございます。
 それから(4)の新たな動きにつきましては,ちょっと長くなりますが,総論でありながら各論的なものも入っていますので,その辺も御承知おきいただけたらと思います。
 学校教育が直面している課題を解決していくためにはということで,教師の長時間勤務を解消し,負担軽減を図ること,これは非常に大事であろうということであります。
 そして,教員の勤務実態や給与の現状,社会的地位についても再考するという,瀬戸際に来ているのではないかという,危機感の強い意見も寄せられております。
 新たな教育改革が様々発表されているわけでありますが,教育計画の作成が義務づけられ,人事評価などの教育制度も大きく変わるとそれへの対応によって,学校現場はこれまで以上に疲弊している。児童生徒に向き合う時間も,当然のことながら少なくなっている。そういう影響を心配する声も寄せられています。
 教育の質を向上させるためには,教職員の確保,人材の確保が必要で,そのために今,教職員の処遇改善,改革が求められている。特に地方では教員希望者が激減している。そして代替の講師がなかなか見つからない。そういう厳しい現状がございます。
 新学習指導要領の全面実施でありますとか,GIGAスクール構想といった新たな動きを推進していくためにも,学校における働き方改革を実現させていかなければいけないのではないかという声が非常に強く出ております。
 これまでも,子供のためであれば頑張る教師の献身的な努力によって,日本型学校教育が支えられてきたという部分があるわけですが,今後,教職員に求められる新たなICTのスキルや,教師力,人間力の向上を図るための様々な研修等についても,教職員の使命感や善意に頼るのではなくて,働き方改革とのバランスを取りながら実施されていかなければいけないのではないかと考えております。
 2ページ目になります。令和の日本型学校教育の構築について,方向性には多くの会員が賛同するという意見が出ておりますが,やはりそれに伴って財政支援がなければ,なかなか実現は難しいということで,財政支援も強くお願いしたいという声が寄せられております。
 そして,高校教育の中で触れられているのですが,全体をカバーするものとして,SDGsを位置づける必要があるのではないかという意見もございました。
 それから(2)の連携・分担による学校マネジメントを実現するということについては,10年,20年,30年先の教育ビジョンを描きつつ,マネジメントの力を発揮していく必要があるのかなと思います。また,部活動の在り方にも触れていく必要がないだろうかという声もありました。
 それから(3)のこれまでの実践とICTの最適な組合せを実現することについては,やはり教師を支援するツールとしてICT環境を整備するためには,教員養成大学においてICT課程を作る,そして資格免許制度を導入する人づくりと,定数配当表に位置づけられたことなどをはじめ,ICT分掌教員に手当を別途支給するというような改訂などを行う,今までにない形の取組を,是非姿勢として示していただきたいという声もございました。
 続いて各論に入りますが,基本的な考え方については,特に意見が強かったのは,1学級当たり30人以下などの少人数による学級編制の実現を明記していただきたいということがございました。
 (3)の義務教育9年間を通した教科担任制の在り方については,おおむね小学校の教科担任制については必要なものであるという認識が強く出ております。
 それから,資料の3ページになりますが,教師の小中両免許取得については,小中学校の人事交流による教師の経験は非常に貴重であるけれど,それ以上に,大学において両免を取得するための基礎学習がとても大事であるということであります。県によっては,教員採用試験によって両免取得者についての優遇措置を講じて,質の高い教員確保を図っているという県もございます。免許取得のための教育課程の見直しが,是非必要ではないかということであります。
 それから,(4)に入りますが,義務教育を全ての児童生徒等に実質的に保障するための方策であります。コロナ禍で休業が続きましたが,不登校の生徒とネットでつながることができまして,子供との関わりを改善できたことがありました。不登校生徒とリモート授業との関係は,GIGAスクール構想の新たな可能性を示す契機となったのではないかという声がありました。
 1人1台端末の整備が実施されまして,自宅からでも授業が受けられるというオンライン授業の環境や,AIドリルの導入によって個別最適化学習の環境が整えられる自治体も,今後増えていくものと思われます。このような多様な学びの機会が確保されているという点から,不登校児童生徒への支援として,出席等に関する明確な基準が設けられるとともに,学校復帰に向けた,より強い支援体制が整えられることが求められています。
 そして,3の新時代に対応した高等学校教育の在り方についてです。市立高等学校等を要する市もあるわけでございますが,非常に心配される部分が,明確なスクール・ポリシーに基づいたスクール・ミッションを持たない,非常に乏しい学校があるのではないかという声がございました。
 ですから,各学校が掲げております教育目標や校訓が,本当に具体性に乏しいというようなものがあるという点から,具体的なスクールアイデンティティを明確にしていくということは,非常にやはり大事なことではないかと思います。
 また,個別最適化された学びの実現に,やはり現在の教室での一斉授業形式では,依然として生徒個々に対応するという,きめ細かな対応にはならない。そういう意味で,1人1台のデバイスによる授業というのは極めて有効ではないかと思われております。
 最後,4ページになりますが,高校部活動の地域委託,社会化の実現という部分になりますが,やはり学校と連携して協働する,教育支援としてのコンソーシアムの構築がやはり非常に大事ではないかと,強く主張する意見もございました。
 4の新時代の特別支援教育の在り方につきましては,障害を持つ児童生徒の割合が年々増加傾向にございます。そういう意味では,特別支援学級編制基準も,8人1学級は厳しい数字であるという指摘もございまして,その部分の見直しもお願いしたいということであります。
 最後の8(2)の児童生徒の減少による学級規模の小規模化を踏まえた学校運営につきましては,小中学校の適正規模・適正配置等に取り組む学校設置者である市町村に対しまして,都道府県教育委員会から支援を受けられるような,そういう意味の文言も欲しいという声も寄せられております。適正規模・適正配置は全国的な少子超高齢化等の進行に伴って,避けられない課題であろうと思っております。
 以上,全国都市教育長協議会事務局に寄せられました,各会員の教育長の意見を御紹介させていただきます。どうも今日はありがとうございました。

【荒瀬部会長】 飯野会長,ありがとうございました。
 ただいまお三方からそれぞれに御発表をいただきました。では,ただいまの御発表につきまして,この後30分程度で質疑応答,意見交換を行いたいと思います。
 いつものように,御発言のおありの方は挙手ボタンを押していただきますようにお願いいたします。御指名させていただきましたらマイクをオンにしていただきまして,御発言をお願いしたいと思います。終わりましたら,必ず手を下げていただくということで,これも御協力をよろしくお願いいたします。
 では,御発言のおありの委員の方,どうぞ挙手ボタンを押してください。
 では清原委員,お願いいたします。

【清原委員】 ありがとうございます。杏林大学・ルーテル学院大学客員教授で,前東京都三鷹市長の清原です。3名の会長の皆様,御発表ありがとうございます。それぞれの皆様に,簡潔に質問をさせていただきます。
 まず,全国都道府県教育委員会連合会の藤田会長さんに伺います。
 私は東京都の市長でしたので,東京都の教育委員会とは様々な連携をさせていただき,「コミュニティ・スクールを基盤とした小中一貫教育」や,学校におけるエアコン整備などを進めさせていただきました。都道府県の教育委員会と,そして市区町村の教育委員会の連携は当然のことでございますが,ここで2点質問をさせていただきます。
 1点目は,新型コロナウイルス感染症対策はもちろんのこと,特別支援教育における生活支援や就労支援,そして高等学校教育における産業界との連携なども含めまして,教育委員会と,そして首長部局の連携というのは,新しい令和型の教育を進めていく上で,さらに重要性を増すと思います。その連携についての所見を伺いたいと思います。
 2点目は,少人数学級を進めていく場合には,当然のことながら教員が必要になってまいります。しかし,教員不足というのは全国的な課題です。例えば東京都におかれては,この課題について,他県との連携も進めてこられた御経験があります。令和型日本の教育を進めていくときに,都道府県における,他の県との連携などについて,展望があればお知らせいただければと思います。
 それでは,全国市町村教育委員会連合会の田邊会長さんに,1点だけ質問させていただきます。
 本当に,子供たちの潜在力や教師の視点の拡大,そして地域の皆様の学校支援のことなど,コロナ禍の厳しい中で,改めて学校の意義や子供たちの力,教職員の力,地域の力を確認されたこと,何よりと思います。しかし,令和型の教育を進めていくときに,どうしても教員が大事になります。
 働き方改革を進めながらも,教員の皆様に力を発揮していただくときに,「小学校高学年からの教科担任制」も踏まえると,「教員が小学校と中学校の両方の免許を持つ」ということも重要になってくると思います。そのことの意義と,そのための環境整備について,国や,あるいは教職員養成校の皆様への期待とか要望があれば,お話しいただければと思います。
 それでは,全国都市教育長協議会の飯野会長さんに,1点質問させていただきます。
 財政支援がやはり令和の日本型教育を進めていく上には何より必要だけれども,もう1つ大事な体制として,「コミュニティ・スクール及び地域学校協働活動が一体的に進むことも重要です」という御指摘をいただきました。
 学校が地域と共にその機能を発揮していくための仕組みについて,改めて重要だと提言していただいたということは有意義だと思います。令和の日本型学校教育を進めていく上で,改めて,「コミュニティ・スクール」について,どのような条件整備や支援が,国や,あるいは都道府県からあれば望ましいと思っていらっしゃるか。
 もちろん主体的に地域が進めていくことではございますが,財政支援も必要ですが,その仕組み,そして推進のためのノウハウの支援も必要だと思いまして,御要望や御期待について補足をしていただければ有り難いと思います。
 以上です。よろしくお願いいたします。

【荒瀬部会長】 ありがとうございました。お三方の御回答はまとめてお願いをしたいと思います。
 続きまして浜田委員,お願いいたします。

【浜田委員】 失礼いたします。ちょっとカメラの調子が悪いようで,画像が映っていないかと思います。申し訳ございません。音声のみで質問させていただきます。
 1点,全国都道府県教育委員会連合会会長の藤田会長の御説明の中で,資料にはあるのですが御説明の中になかった部分について,1点だけ確認をさせていただきたいと思っています。
 資料1の7ページで,5番,増加する外国人児童生徒等への教育の在り方についての(5),中学生・高校生の進学キャリア支援の充実のところについてです。この中で,有識者会議の報告書と,今回の中間まとめとの整合性を図る必要があるという御指摘がありまして,これについて確認をさせていただきたいと思います。
 有識者会議の報告書の中では,日本語指導が必要な高校生の中退率等の調査結果を踏まえまして,例えば中退率が全高校生平均の7倍であるといったような現実を踏まえ,高校教育の充実のために,日本語指導が必要な高校生について,小中高の連携,特に特別な教育課程として実施されている日本語指導の学習状況や,あるいは日本語能力の現状を踏まえて,高校での教育を行っていく必要があるという趣旨の記述が含まれているかと思います。
 こういった内容が現在の中間まとめには含まれておりませんので,そういった内容を今回の中間まとめにも含めるべきという御趣旨というふうに理解をさせていただいてよろしいでしょうか。あるいは,この点に加えてほかにも何か具体的な御提案があればお願いしたいと思います。
 以上です。

【荒瀬部会長】 ありがとうございました。
 では続きまして東委員,お願いいたします。

【東委員】 札幌市にございます美晴幼稚園の東と申します。幼児教育の立場からお伺いしたいと思います。まず,この新型コロナウイルス禍の中で各団体の取りまとめをいただき,本日御発表いただきました各団体の皆さんに改めて敬意を表したいと思います。
 本日発表いただきました,全国都道府県教育委員会連合会藤田会長にお聞きしたいと思います。本日の御発表にはなかったのですが,資料の1ページ目の一番下の段に,幼児教育の質の向上について,新型コロナウイルス感染症への対策も含め,どこが主体なのか分かりにくいため,明確な記述をいただきたいという御意見をいただいております。
 この記述内容のみならず,子ども・子育て支援新制度施行以降,幼稚園とこども園の所管部署につきまして,教育委員会,首長部局,ないしは都道府県と基礎自治体の中で,なかなか難しい,困難な状況にあるというふうに承知しております。
 3団体の会長様にも共通していることかと存じますので,今後,都道府県ないし基礎自治体,教育委員会,首長部局の中での所管,あるいは役割分担の中で困難を生じていることが具体的にございましたら,お教えいただきたいと存じます。
 それから5ページの大きな4,新時代の特別支援教育の在り方について,(2)障害のある子供の学びの場の整備・連携強化の丸1,就学前における早期からの相談・支援の充実とあります。1ポツ目に,人的体制の充実について,特別支援教育支援員等の配置について記述がなされています。
 幼児教育の現場におきましては,障害のある子供,障害の疑いのある子供が増加している傾向にございます。どこの園,こども園でも非常に悩ましい。対応に当たりたいけれども十分に環境が整っていない,人的環境が整っていないという状況にあると認識しておりますが,このことについても,各団体の会長様におかれまして,何か具体に把握していることがありましたら,御報告いただければと存じます。
 私からは以上です。

【荒瀬部会長】 ありがとうございます。東委員,今おっしゃいましたのは,それぞれ2点ともに3人の会長に御質問いただいたということでよろしいでしょうか。

【東委員】 はい。まず藤田会長にお答えいただきたいのですが,ほかのお二人も把握していることがありましたら,御報告いただければ幸いに存じます。

【荒瀬部会長】 ありがとうございます。
 それでは,今,3人の委員の皆さんから出ました御質問でありますが,藤田会長,そして田邊会長,飯野会長,それぞれお答えをいただけると有り難いと思います。
 まず藤田会長,お願いできますでしょうか。

【藤田全国都道府県教育委員会連合会会長】 全国都道府県教育委員会連合会会長の藤田でございます。御質問ありがとうございます。
 まず,清原委員からの1点目の,教育委員会と首長部局の連携のことでございますが,今回特に新型コロナウイルス対策の関係では,年度末,それから新年度でも想定をしていなかった事態ということでございますので,予算の手当や,GIGAスクールの整備もそうでしたが,やはり予算の裏づけというものが,非常にスピーディな裏づけということが大事でございましたので,これは私ども都道府県レベルで言えば,私ども教育委員会と知事との連携が一番大事だと。それから議会の連携も大事だと考えております。
 もう1つは,私ども都道府県の教育委員会とから各地域の教育委員会との連携はもちろん日頃からやっておりますが,私どもから地域の区市町村長にも働きかけをいたしましたし,これは都内で言えば都知事のほうからも,この間,数回にわたりまして,各首長の協議会,あるいは個別の首長さんのほうにも直接働きかけをしていただきまして,予算の手立て,それから感染症の対応等も実施をしていただいて現在に至っております。
 本当に日頃からの,こういった連携が従来から大事だと思っておりますが,コロナ感染症対策の中で,全国的にも一層,重要性の認識と,それから取組が進んだのかなと思っております。
 それから2点目,少人数学級や教員の採用等ということで,様々な課題がある中での全国との連携ということでございますが,こちらに関しましては,私ども連合会も通常の様々な課題についての研究部会というものを,この全国組織のほうにも持っておりまして,日頃から意見交換等しているところでございますが,今,このコロナの関係で申し上げますと,あるいは少人数学級に向けた教員の確保との関係についてですと,全国と言っても,中山間地域であるとか離島であるとかを,多く抱えた地域であるとか,都市部と言ってもいろいろ,人口構造も産業構造も全く違いますので,こういったところも,やはり全国で違いを明確にしながら,それぞれの課題をお互いに認識し合って,国のほうにお願いしていくということが大事ですので,そういった意味では,全国の連携を図っていくことが重要だと考えています。
 それから,浜田委員の外国人児童生徒の教育のところでございますが,こちらのほうでは,中学・高校でのキャリア教育の充実のためには,中学校ですと小学校から,そして高校ですと中学校からのキャリア教育も含めた連携が必要だという趣旨で,そのような校種間の接続の中での協力のようなものを記載してはどうかという趣旨でございます。
 それから,最後に東委員から,まず幼児教育のところでございますが,こちらのほうは,公立幼稚園に関しては,いろいろなものが教育委員会から流れていく。一方,保育所に関しては,首長部局のほうから指示であるとか支援策等々が流れていくということで,今,幼保連携型ですとか,いろいろな形態もございますし,様々な展開をしていく中で,現場に必要な,特に幼稚園や,あるいは複合型でやっている幼保型等のところにきちんと情報が届いているのかどうかというところも,我々がそんなことを言ってはいけないのですが,そういった現場のコメント,御心配があったと,お伺いもしておりますので,その辺,我々も行政側の連携が大切でございますので,今後とも現場のほうで混乱が生じないように対応していきたいと思っております。よろしくお願いいたします。
 それから最後の,就学前についてでございますが,こちらに関しましては,私ども,就学前の相談というのが,ここでは御本人というよりも,まだ小さいですから御家族,保護者の方の御理解というか,本当に真に納得した上で,進路というか就学先を選択するというのが大事だと思うので,この辺,もう少し,1歳6か月健診,3歳児健診等々も含めて,あるいは主治医さん,かかりつけ医さんも含めて,医療と学校の連携,もちろん各幼稚園,保育園と小学校の連携ということも大事なのですが,そのあたりが切れ目なく,保護者の方が無理なく御理解,御納得いただけて,後々また,近況によっては変わることもありますよということも含めて,十分な理解を得て,就学先を選んでいくことが重要だということで,そういったところで支援をしていただける方や支援体制が重要だと考えているところでございます。
 十分ではないと思いますが,以上でございます。ありがとうございました。

【荒瀬部会長】 ありがとうございました。御質問いただいた3人の方,よろしいでしょうか。

【清原委員】 清原です。藤田会長,ありがとうございます。是非様々な課題に,知事部局,そして他県との連携をよろしくお願いします。

【荒瀬部会長】 ありがとうございました。
 では田邊会長,飯野会長にお答えをいただきたいと思います。
 田邊会長,まずお願いをいたします。清原委員からの御質問に加えて,東委員からの御質問につきましても,御意見がおありでしたらお願いをしたいと思います。よろしくお願いいたします。

【田邊全国市町村教育委員会連合会会長】 後半のほう,音声状態が十分でなかったものですから,東委員の御質問が十分把握できていませんので,前半の清原委員からの御質問に対して説明させていただきたいと思います。
 小学校・中学校それぞれの校種で教員免許が異なりますので,場合によっては1つの校種しか免許を持っていない教員もいます。昨今は,小中は義務教育段階でもありますので,両方の免許を取得するような大学での養成課程も充実しつつあると認識しておりますので,今までとは異なる状況として小中両免許を持った若い教員は増えつつあると思っております。
 他方で,たくさんの先生方がいらっしゃる中で,小中連携を深めて推進していくということは,いずれの市町村でも大事にしている取組です。仮に小学校あるいは中学校の免許しかなかったとしても,教員の間では小学校・中学校の連携を深めるということは意識して,率先して取り組まれている現状があります。
 その意義は改めて言うまでもないところですが,小学校を卒業した子供たちは中学校に通う,中学校での取組を小学校での経験を生かして進めていくということは不可欠ですし,小学校の教員にあっては,卒業した後どのように伸びていくのか,そういう関心を持ちながら小学校・中学校相互の連携を深めていくことは必要不可欠,それは十分認識されている実態があると思います。
 また,例えば小学校の教員ですと全教科担当ですので,特定の教科に特化した意識は,中学校の教員に比べれば弱いわけですが,教員研修の中で,自治体,市町村や県で実施されている研修の中で,教科単位でグループ化して,小学校の教員であっても,自分の得意な教科をベースにした教科部会での研修を組み立てるような自治体があります。小学校の教員であっても,自分の得意とする教科,中学校と連携する際に,専門とする教科を持つという意識はとても大切にされつつあり,小中連携の意義を推し進めていくような環境も整いつつあるといえます。
 なお一層,大学での教員養成の在り方,採用後の研修の中でのそういった観点での意識,それらを一体化して取り組んでいくということはますます重要になると認識しております。
 東委員の質問は十分聞き取れなかったものですから,ご容赦いただければと思います。
 以上です。

【荒瀬部会長】 すみません,時間の関係もありますので,清原委員への御回答のみとさせていただければと思います。
 では飯野会長,よろしくお願いいたします。

【飯野全国都市教育長協議会会長】 先ほど御質問がございましたが,コミュニティ・スクールについてでありますが,御案内のように,国のほうも全国の公立学校につきましてはコミュニティ・スクール化していくと,努力義務という形で推進しておりますので,またこういう状況が全国的にも広まっていくと思います。
 日本型のコミュニティ・スクールでありますが,実践事例を聞くたびに,よくやっているなという印象を持っております。それはやはり,地域の方々が関わってくれなければ学校教育は成り立たないという段階に,今,来ていまして,地域の方々の教育ノウハウを学校教育の中に取り込んでいくということは当たり前の問題になってきているのかなと思っています。
 財政的な部分もございますが,非常に財政負担が厳しいと,十分な支援が受けられなければできないということでもないのだろうと思うのですが,ただ,コミュニティの中でいっぱいいろいろなことをやりたいということについては,それなりに財政支援をしていかなければいけないと思いますが,何よりもやはり,地域と学校が一体となって教育の充実に努めていく,地域の振興にも寄与しているという姿勢が大事でありまして,それを地方の教育委員会が推進していくということは,やはりこれからも非常に大事になってくると思っております。実践事例がたくさんありますので,その実践事例を学んでいただくことによって,より良いコミュニティ・スクールが育ってきているのではないかと思います。
 もう1つ,障害のある子供の学びの場の整備・連携強化ということでございますが,高崎市においては,こども発達支援センターというのを設置しておりまして,そこで非常にたくさんの保護者の方々から相談を受けていて,その組織については教育委員会の中からも指導主事を出す,市長部局とも連携をしていくということで,高い評価をいただいていますので,そういう部分の取組も,やはり工夫すればできていくのではないかと思っております。
 後半,少し質問の言葉が聞き取れなくて,大変申し訳ないのですが以上とさせていただきます。

【荒瀬部会長】 ありがとうございました。
 それでは,時間の関係もございますので,御質問いただいた清原委員,よろしいでしょうか。

【清原委員】 ありがとうございます。田邊会長,飯野会長のお話を受けて,私たちも具体的な令和の日本型学校教育の実現のプロセスについて,これから提案できればと思います。力強い御説明をありがとうございました。

【荒瀬部会長】 ありがとうございました。
 それでは,午前の部の後半の皆様との交代をお願いしたいと思っております。
 藤田会長,田邊会長,飯野会長におかれましては,御多忙の中お時間を頂戴いたしまして御発表いただきました。本当にありがとうございました。

(ヒアリング団体入替え)

【荒瀬部会長】 それでは,続きまして,公益社団法人日本PTA全国協議会,そして,一般社団法人全国高等学校PTA連合会から御発表いただきたいと思います。
 まず,日本PTA全国協議会から御発表を資料4に基づきまして,東川顧問にお願いしたいと思います。御質問,意見交換は先ほどと同じように,もう一つの全国高等学校PTA連合会からの御発表の後でまとめてお願いいたしたいと思います。では,東川顧問,よろしくお願いいたします。

【東川公益社団法人日本PTA全国協議会顧問】 皆さん,こんにちは。公益社団法人日本PTA全国協議会の東川と申します。どうぞよろしくお願い申し上げます。
 まず,新しい時代の初等中等教育の在り方特別部会,そして,私は初等中等教育部会の委員でもございますが,今日は,公益社団法人日本PTA全国協議会の代表に代わりまして,私のほうで意見陳述を述べさせていただこうと思います。
 正に,この中間まとめ,画竜点睛のこのタイミングで,しっかりと最後の仕上げの段階に来た中で,様々な団体の意見を聞きながら,また,私どもの意見も述べさせていただく機会を頂戴いたしまして,まずもって感謝を申し上げたいと思います。
 日本PTAは綱領がございまして,その綱領に,教育を本旨とし,特定の政党や宗教に偏ることなく,小学校及び中学校におけるPTA活動を通して,我が国における社会教育及び家庭教育の充実に努めるとともに,家庭,学校,地域の連携を深め,子供たちの健全育成と福祉の増進を図り,もって社会の発展に寄与するという綱領を掲げてございます。
 会員数に関しましては,昨今の少子化もございます中で,今,約800万人の会員数でございまして,この5年ぐらいで50万人ほど減ってはいるものの,社会教育関係団体としては我が国最大の団体として,今,活動させていただいております。
 昨今のコロナの環境下,学校休業中も,今回の議題であります新しい時代の初等中等教育の在り方と同様に,新しい時代のPTA活動の在り方ということで,様々な模索をしながら,学校教育,家庭教育あるいは社会教育の下支えということをしっかりと取り組まなければいけないということで,模索中ではございますが,様々な活動をしているところでございます。
 今日は中間まとめにつきまして,資料4に基づきまして,意見を述べさせていただきたいと,このように考えております。
 まず,急激に変化する時代の中で育むべき資質・能力,Society5.0をはじめ,社会の在り方そのものが,これまでとは「非連続的」と言えるほど,劇的に変わる状況を中間まとめのほうでは示されておりまして,これにつきましても大変賛同するところでございます。急激に変化する時代の学校教育では,様々な資質・能力が必要であり,特に次代を切り拓く子供たちの資質・能力について述べられています。好感が持てますのは,読解力,表現力,納得解を生み出す力が必要としながら,豊かな情操や規範意識,自他の生命の尊重をはじめ,どのような時代でも普遍的に重要な項目も記されており,納得いたします。また,この資質・能力を育むために,新学習指導要領の着実な実施もうたわれており,今後の取組の前提とされています。
 総論の書き出し部分は大変共感いたします。中教審として,正にこの議論の経過の中に,新型コロナウイルス感染症の感染拡大に直面し,解が見えない中での議論は大変難しいものでありました。予測困難な時代を切り拓き,生き抜くには,大人も目の前の事象から解決すべき課題を見いだし,主体的に考え,多様な立場の者が協働的に議論し納得解を生み出すことなどは,正に新学習指導要領で育成を目指す資質・能力であるとの記述は,このたびのコロナ禍における大きな課題を教育に関わる全ての者の覚悟を示すものと思ってございます。
 3ページの2,日本型学校教育の成り立ちと成果,直面する課題と新たな動きについてでございますが,我が国,学校教育の現状を踏まえ,その成果と課題を示されており,変化に対応する基礎基本が日本型学校教育にあることを示されております。決して自信を失うものではないことを明らかにされています。
 5ページの丸の1つ目には,学校の存在が当たり前だったからこそ,このたびの新型コロナウイルス感染症拡大に伴う,学校休業で学校がどれだけ大きな存在であったかといったことを示しております。
 ESCSや家庭内児童虐待,子供の居場所や保護者の就労に至るまで,学校が福祉的な役割を果たしており,日本型学校教育の強みであることも,この書きぶりで表現されており,学校も家庭も真摯にそれぞれの役割を見つめ,その解を求めていくべきと感じます。
 5ページの(3)変化する社会の中で我が国の学校教育が直面している課題においては,各ページにおいて,課題を具体的に示されております。丸1の社会構造の変化と日本型学校教育では我が国の社会的背景や経済的背景も鑑み,教育活動がなされているものの,画一的・同調主義的な学校文化が顕在化していることは,本文にあるとおり否めないのではないかと。また,丸の4つ目には,「都市化や過疎化が社会関係資本の失われた要因であり,またそのことが家庭や地域の教育力が低下し」とありますが,そもそもの家庭教育力の低下要因は他の要因が大きいと感じます。この文章の完成度からしますと,若干物足りないところもございます。核家族化もあれば,生活様式の変容もその一部と考えます。本来,家庭や地域でなすべきことまでを,学校に委ねられた結果として,学校や教師が担う業務が拡大してしまっていることは,憂慮すべき問題で,社会全体で解決に向かっての取組を強化すべきと強く感じます。
 働き方改革特別部会でも議論され,答申にも示されました,上記に続く文面として6ページの丸2,今日の学校教育が直面している課題の丸の1つ目は,教師の教育に対する思いや心身問わず自身の使命に向かい合う美しい教師像と反面,疲弊していることも記載されており,9ページの「教師の長時間勤務による疲労」と併せて記載内容に賛同いたします。
 9ページの丸の1つ目では,1か月当たりの時間外労働を記されておりますけども,ここは過労死ラインを軽く超えているといったことを記載されてはどうでしょうか。
 「子供たちの多様化」の丸の1つ目,7ページでございますけども,小・中学校の通常の学級に,6.5%程度の割合で発達障害の可能性のある特別な教育的支援を必要とする児童生徒の記載がございます。これは実態としてはもう少し多いのではないかという印象でございます。また,その児童生徒に少なからず影響を受けてしまう児童生徒がいるため,学級経営とともに,教師の心身にもダメージに当たる事案を大変多く耳にします。その事実を何らかの表現ができないでしょうか。人員配置も含め早急な改善が求められると思います。
 8ページの丸2つ目は,いじめの認知件数,重大事態の発生件数,暴力行為,不登校児童生徒の数など,生徒指導上の諸課題が記されております。最も憂慮すべき児童生徒の自殺件数は増加しており,減少するに至っていない事実,これはもう衝撃的であり,この事実がいかに問題であるかといった表現に書き加えていただければと思ってございます。
 10ページでございますが,新型コロナウイルス感染症の感染拡大により浮き彫りになった課題,これについて,11ページの丸の1つ目にもございますように,感染防止を講じるには,普通学級クラスの64平米,これでは児童生徒間の十分な距離を保つことは困難であるとの記載がございます。やはり教師の人員を増やし,少人数クラスの実現に向け,動くことを避けられないはずです。様々な観点から人員増は急務とされるところだと思っております。
 (4)新たな動きでは,令和の始まりとともに,「新学習指導要領の全面実施」,「学校における働き方改革」,「GIGAスクール構想」は極めて重要な取組と記載がございます。その中で,丸1の新学習指導要領の全面実施の丸2つ目,2行目から,新しい学習指導要領では,資質・能力を3つに整理しておられます。「知識及び技能」,「思考力,判断力,表現力」,「学びに向かう力,人間性等」がそれに当たり,3行目には,「より良い学校教育を通してより良い社会を創るという理念を学校と社会が共有する」とあります。この理念を共有することの意義は大きく,学校教育のミッションを社会が認識すべく,積極的に広報,周知していく必要性を感じています。
 12ページの丸3,GIGAスクール構想でございますが,「令和のスタンダード」と表現されていまして,学校における高速大容量のネット環境の整備,令和2年度中までに義務教育段階の全学年の児童生徒1人1台端末環境整備は,これからの時代に必須のものと考え,令和元年,2年併せての補正予算が,4,610億円に上ったことも極めて前向きに受け止めています。端末の家庭への持ち帰りや,使用するに当たってのルール化,ICT機材等からの様々な健康面への影響も心配しているところであります。今後は運用しながらしっかりと好悪影響の両面をエビデンスベースで捉え,改善を図りながらも推進していくべきと考えます。
 この回答の記述については,13ページの3.2020年代を通じて実現すべき「令和の日本教育」の姿に記載がございます。特に,丸の最後,「誰一人取り残すことのない」から始まる記載は,ICT基盤はあくまでツールであり,目的でないことを肝に銘じることを望みます。
 ICT基盤は教師を支援するためのツールであるにもかかわらず,遠隔授業において受信側の教室に教師がいることを規制として捉え,教師が不要という指摘があることにつきましては,正に手段が目的化しているものと考えます。保護者としては,多様な子供たちへのきめ細かな指導や合理的配慮,安心・安全の観点からも学校や教室に教師がいないということは考えられません。
 また,災害などの非常時や,不登校,病気療養児に対する指導として遠隔・オンラインを活用することは必要なことと考えます。しかしながら,平常時において,学校外の自宅などにおける子供たちの学習を支援できる体制は家庭によって様々で,家庭学習を学校の授業に代替することは,子供たちの学びを保障し,充実することにはつながらないと考えます。
 また,保護者が自宅などにおける子供たちの学習を支援するには,現状の社会的背景からは限界があり,保護者の就労にも大きな影響を与えることを危惧してございます。
 関連して,15ページには,目指すべき学びの在り方,「全ての子供たちの可能性を引き出す,個別最適な学びと,協働的な学び実現」としており,そのために各学校段階で学びの姿の実現を目指そうとしております。
 丸2の義務教育では,「児童生徒一人一人の資質・能力を伸ばす観点から,教師を支援するツールとして先端技術を有効に活用」とあることも,手段の目的化を牽制する書きぶりと捉えております。
 また,16ページの丸3つ目,学校ならではの協働的な学び合い,多様な他者と協働して主体的に課題を解決しようとする探究的な学び,様々な体験活動,地域資源の活用のくだりでは,自発的・内発的な学びを推進する意図が伝わってまいります。新型コロナウイルス感染症拡大の中,どのようにその体験を担保していくのか今後に期待したいところでございます。
 18ページの4.「令和の日本型教育」の構築に向けた今後の方向性に,(1)学校教育の質と多様性,包摂性を高め,教育の機会均等を実現する,(2)連携・分担による学校マネジメントを実現する,(3)これまでの実践とICTとの最適な組合せを実現する,と上記,3つ,方向性を示されています。いずれも「令和の日本型学校教育」を実現するための必要な要素と感じており,18ページの丸の4つ目,その際,学校現場に対して新しい業務を次から次へと付加する姿勢を牽制している点,また,教職員定数,専門スタッフの拡充等の人的資源など国の責務を示している点,現場の安心感の醸成につながると考えます。
 20ページ目の(2)連携・分担による学校マネジメントを実現する。丸2つ目,3行目です。「教師同士の人間関係においても,校長のリーダーシップのもと」というくだりがございますけども,校長のリーダーシップで学校は決まると言っても言い過ぎではないのではないでしょうか。校長が変われば学校が変わることも多々あります。是非とも校長先生にはその役割を一段高く御認識いただき,教職員と共に児童生徒を導いていただきたいと思ってございます。
 21ページ以降,「学校と保護者」,あるいは「学校と地域」との言葉でくくられた箇所が数か所出てまいります。丸の1つ目,2行目,「地域学校協働本部の整備により,保護者や地域住民」との記載,丸の2つ目の2行目は,「保護者とPTA」と記載いただいております。
 23ページの(5)「感染症や災害発生等を乗り越えて学びを保障する」の丸3つ目,「感染症に対する差別や偏見」の記載があり,5行目では,「保護者や地域において,学校における感染症対策と教育活動の両立に対する理解や協力に加え,差別を許さない地域を作ることが期待される」とあります。
 24ページの1行目から2行目も,「特に保護者や地域で」として,保護者への期待が強調されてございます。
 これまで総論部を中心に意見を申し上げましたけども,各論部分を含め,最後に一言申し上げます。学校教育あるいは家庭教育を下支えする社会教育関係団体としてのPTAの役割は,戦後の学校教育と共にあり,学校と地域,学校と家庭のかけ橋としてのPTAの存在は,学校現場からもなくてはならないという評価を全国各地から多くいただいてございます。PTAとしての覚悟を包含する意味において,指摘箇所には遠慮なく「PTAとの連携」や「PTAとの協働」など記載をいただき,文部科学者をはじめ多くの関係の皆様と共に令和の日本型教育の構築を目指してまいりたいと意を新たにしておるところでございます。
 私からは以上でございます。ありがとうございました。

【荒瀬部会長】 ありがとうございました。いつもは部会の委員として御発言いただきましてありがとうございます。今日は日本PTA全国協議会顧問として御発表をいただきました。ありがとうございました。
 では,続いて,一般社団法人全国高等学校PTA連合会から御発表をいただきますが,資料につきまして,事務局の田中室長から御説明をいただきます。

【田中教育制度改革室長】 失礼いたします。事務局でございます。資料5-1,これから御発表いただきますけれども,まず委員の皆様には先ほどメールで送らせていただきました。まだ確認ができない方もいらっしゃると思います。誠に申し訳ありません。
 また,傍聴されている皆様におかれましては,これもホームページの掲載手続を今しておりますけれども,間に合わなかったらということもあるかと思いますので,おわび申し上げます。

【荒瀬部会長】 ということでありますので,よろしくお願いいたします。
 では,全国高等学校PTA連合会,泉会長から御発表をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

【泉一般社団法人全国高等学校PTA連合会会長】 全国高等学校PTA連合会の泉でございます。本日はこのような機会を与えていただきましてありがとうございます。連合会を代表いたしまして,心より感謝申し上げたいと思います。早速,意見ということでありますので,第1部の総論より御意見を申し上げたいと思います。
 第Ⅰ部の総論,1.急激に変化する時代の中で育むべき資質・能力。冒頭より「人工知能(AI),ビッグデータ,IoT,ロボティクス等の先端技術云々」から始まり,最後の丸では「ICTはもはや必要不可欠なものであることを前提として,学校教育の在り方を検討していくことが必要である」とくくっており,ICTが議論の根底にあり,GIGAスクールの実現への強い意志が見て取れます。
 これは,12ページの2,丸3,GIGAスクール構想において,予算的措置が具体的に述べられていることからも実現の可能性が感じられると思います。文部科学省所轄分総額4,610億円ということでありますので,若干,印象としては不足気味ではないかなという印象はありますが,是非実現をよろしくお願いしたいと思っております。
 2.の日本型学校教育の成り立ちと成果,直面する課題と新たな動きについてというところであります。6ページ,丸2,今日の学校教育が直面している課題では,子供たちの多様化,高校生の学習意欲の低下,教師の長時間勤務による疲弊,情報化の加速度的な進展に関する対応の遅れ,少子高齢化,人口減少の影響,新型コロナウイルスにより浮き彫りとなった課題を取り上げておりまして,学校施設の整備等の教育環境を除いて,今日的問題点は網羅されているのではないと思っております。
 7ページの3.2020年代を通じて実現すべき令和の日本型学校教育の姿の点でございます。日本型学校教育の良さを受け継ぎながら更に進展させ,発展させ,学校における働き方改革とGIGAスクール構想を強力に推進しながら,新学習指導要領を着実に実施することの必然性,重要性を説いておられます。
 そして,(1)子供の学びでは,1.幼児教育,2.義務教育,3.高等学校教育と段階が通じた学びの姿(これから実現すべき姿)について述べられております。
 さらに,(3)子供の学びや教職員を支える環境,2つ目の丸では,老朽化対策,バリアフリー化,トイレの乾式化・洋式化,空調設備の設置等の学校設備の設備等の言葉が並んでおりまして,安全・安心な教育環境を確保しつつ,教職員配置の在り方を含め,新しい時代の学びを支える学校教育の環境が整備されていると,将来(本来)の学習環境としてのあるべき姿か表現されているところは評価すべき点であると思います。
 18ページの4.「令和の日本型学校教育」の構築に向けた今後の方向性というところであります。3つ目の丸の部分については,教職員定数,専門スタッフの拡充等の人的資源,ICT環境や学校施設の整備等の物的資源を十分に供給・支援することが,国に求められる役割であると強く述べられており,心強い限りであります。本当にやっていただけるんだなと期待しておるところであります。
 総論では,新学習指導要領を着実に実施することが必要であると述べられておりますが,実は始まったばかりの,高等学校は来年度から,次年度から実施の学習指導要領でありますけれども,本答申案の実現のためには,実情に伴った若干の見直しが必要であると考えます。
 高等学校においては,学校設置基準も是非改訂するとともに,教職員定数の基準の見直し,総合的な学習の時間,特別活動等の授業時間への繰入,学級編制の弾力化における加配の制度化など,具体的な予算化を図るように要望したいと考えます。これはカリキュラム・マネジメントにも通用するものではないかと思いますが,この答申案の実現のために,是非,文部科学省だけではなく,他の省庁と連携した予算措置と都道府県市間における格差が広がらないように施策を進めてほしいと切望する次第であります。
 続いて,第2部の各論に移りたいと思います。3.新時代に対応した高等学校教育の在り方についてという部分でございます。
 まず,各高等学校の特色化・魅力化を実現するために,スクール・ミッション,スクール・ポリシーを切り口に,これからの学校の在り方について述べられておりまして,普通科,専門学科,総合学科を3本の柱に置いて,それぞれ学科の改革には,柔軟な学科の設置や教育課程の編成,地域社会や地域産業,高等教育機関との協働等,学校内外の教育資源を最大限利用することの必要性を取り上げておられます。
 定時制・通信制課程においては,教育の質保証に重点を置いて述べられております。いずれも具体化し,実現させていただきたいという項目であります。是非期待したいと思います。
 4.新時代の特別支援教育の在り方についてであります。先ほどの3と同様に,6,5ページに割かれておりまして,1.障害ある子供の就学前の学び,2.小中学校における障害のある子供の学び,3.特別支援学校における学び,4.高等学校における発達障害のある生徒の指導,5.特別支援学級・通級により指導,6.医療的ケアが必要な子供への対応等,それぞれの発達障害や場面における問題点を掘り下げて,今後の対応について検討がなされております。
 是非,特別支援学校の設置基準の制定と学校看護師の法令上の位置づけについて,実現させていただきたい施策であると考えます。
 小中学校,高校については,それぞれ設置基準が制定されております。しかし,学校における1学級の生徒数,教員の数,生徒数に応じた校舎・運動場の面積,必要な特別教室等の最低基準が定められております。
 しかしながら,特別支援学校には,「設置基準」がなく,養護学校のように,小・中・高等部の3部ありながら,小学校の設置基準にも満たないような狭い運動場であったり,学校によっては生徒の急増に教室確保ができず,カーテンで間仕切りして授業を行っているなどの現状があります。
 この件に関しましては,48ページの丸3,特別支援学校における教育環境の整備,2項目めの丸において,「特別支援学校の教育環境を改善するため,国として特別支援学校に備えるべき施設等を定めた設置基準を策定するとともに」等々とあります。報道でもされているように,実現するものと期待しておる次第であります。
 次に,学校看護師の法令上の位置づけについて,52ページの(4)関係機関の連携強化による切れ目ない支援の充実,5つ目の丸で,学校に置かれる看護師を法令上位置づけることの検討,その検討を行うべきであると述べられております。
 現在,痰の吸引は法的に医師,看護師もしくは保護者しか行うことができず,そのような医療的ケアを必要とする児童生徒が在籍する特別支援学校には看護師が配置されておりますが,非常勤扱いであり,勤務時間に応じて時間給が支給されている等,不安定な身分にもかかわらず奉仕的精神で献身的に務めておられます。是非法令上の位置づけを実現していただきたいと思っております。
 続きまして,7番,新時代の学びを支える環境整備についてであります。ここでは,「GIGAスクール構想の実現を前提に,1人1台の端末,また,遠隔・オンライン教育に関した教室環境や教師のためのICT環境の整備,特別教室への空調整備の設置促進,新時代の教室環境に応じた指導体制,必要な施設・設備の整備を図り,義務教育9年間を見通した教科担任制の在り方等の検討を進め」などと述べられています。
 GIGAスクール構想が実現すれば,ICT環境は現状と見違えるものと思われますが,やはりそれも大変重要な論になりますが,喫緊の課題として,高校教育としては,空調設備の設置促進を切望したいと思っております。
 参考に香川県の県立高校におきましては,PTAが空調設備を設置,リース契約しておりまして,月額のリース料は保護者負担ということであります。学校規模によって,月額リース料に違いがあって,また,専門高校では実習室などには設置されておりません。学校間すなわち生徒間に不公平が生じております。
 早急に,全額公費負担となるような改善を望みたいと思います。特別教室・実習室を含めた全教室に空調設備を設置し,全額公費負担となることを期待したいと思います。この要望については,昨年,全高P連として要望を提出していると思います。
 また,施設・設備の使用料として徴収している授業料を増額して,空調設備リース料に充てる考え方もありますけれども,現在の授業料無償化に向けて,就学支援金が支給されておりまして,国費・県費負担と考えていいと思います。文科省のリーフレットには,全国の8割の生徒に支給とあります。したがって,授業料を増額して空調設備リース料に充てるには,別の議論と予算措置が必要になっていると思います。
 高等学校は,設置者である都道府県,政令市の教育委員会が,人件費をはじめとして,経費を負担していますけれども,まだまだ私費負担も多く,なおかつ財政力や施策によって格差が生まれていることは大きな課題ではないでしょうか。
 続きまして,67ページ,9.Society5.0時代における教員及び教員組織の在り方についてであります。ICT環境整備とICTを活用した指導力の向上の重要性,多様な知識・経験を有する外部人材の活用,教師の人材確保及び教員免許制度の更新(10年ごと)の実質化について触れられていると思います。特に,(4)教員免許更新制の実質化についてでは,1)採用権者が実施する研修,10年経験者研修は,法的に受講義務があり重複などの負担感が課題として指摘されているところであります。2)教員免許更新制が現下の情勢において,子供たちの学びの保障に注力する教師や迅速な人的体制の確保に及ぼす影響の分析を行う必要があると思います。3)将来にわたり必要な教師数の確保とその資質・能力の確保が両立できるような在り方を総合的に検討していくことが必要であると述べられており,教員免許更新制の検討に入るように読み取れます。
 2009年4月の導入から既に10年を経過しており,是非早急に検討し廃止していただきたいと思います。
 我々が常に気にかけている人的配置による教員の負担軽減,教室数の確保をはじめ,空調設備等の学校施設の充実についてもはっきりと記述があり,それらが途絶えることなく,全て実現できるように,予算的支援はもとより,法的支援,人的支援等,あらゆる角度から,誰一人取り残すことのない,令和の日本型教育の構築に向けての行政の速やかな施策を期待したいと考えております。
 以上ですが,まとめとして,保護者の立場からは,我が子の進学や就職,学習成績,あるいは,学費や生活に関わる経済的な問題についてばかり考えてしまいがちであります。特に,保護者等の経済格差によって,子供たちが様々な影響を受け,教育へのアクセスが制限されることがあってはならないことであります。高校時代の何よりも大切の学びは,義務教育までに身につけたことを更に進化させて,日本人としての誇りを持って,我が国の成り立ちや歩みを知り,国や地域への愛着を持つこと,日本人としての基本的な考え方やふるまいを身につけてこそグローバルに貢献できることなど,生き方を考える時期であります。
 このことは,総論でも「豊かな情操や規範意識,自他の生命の尊重,自己肯定感・自己有用感,他者への思いやり,対面でのコミュニケーションを通じて人間関係を築く力,困難を乗り越え,物事を成し遂げる力,公共の精神の育成等を図るとともに,子どもの頃から各教育段階に応じて体力の向上,健康の確保を図ることなどは,どのような時代であっても変わらず,重要である」と述べられております。
 我々が常に気にかけている人的配置による教員の負担軽減,教室の確保をはじめ,空調設備等の学校施設の充実についてもはっきり記述があり,それらが偏ることなく全て実現できるように,予算的支援はもとより,法的支援,人的支援等あらゆる角度から,「誰一人残すことのない『令和の日本型教育』の構築」に向けての行政の速やかな施策を期待したいと思います。
 「教育は人なり」と言われるように,人と人との人格的な陶冶によって行われるものであります。情報化が進みGIGAスクール構想が実現したとしても,教育は人格ある人間が人間に対して行うという原則を忘れてしまうことのないように,教員定数の改善,教員以外の専門職員の定数化等を是非お願いしたいと思います。
 以上であります。ありがとうございました。

【荒瀬部会長】 泉会長,ありがとうございました。
 それでは,お二人の御発表につきまして,この後,質疑応答,意見交換を行いたいと思います。御発言ございます方は,先ほど同様に,挙手ボタンを押していただきたいと思います。いかがでしょうか。
 泉会長。

【泉一般社団法人全国高等学校PTA連合会会長】 よろしいです。また後で。

【荒瀬部会長】 よろしいですか。

【泉一般社団法人全国高等学校PTA連合会会長】 はい。

【荒瀬部会長】 では,清原委員,お願いいたします。

【清原委員】 ありがとうございます。杏林大学,ルーテル学院大学客員教授の清原です。東川顧問,そして,泉会長には,本当にきめ細かく取りまとめについて,御意見,御提案をいただきまして,ありがとうございます。
 私は東川顧問に1点質問させていただきます。本日御提出いただきました資料の最後に,東川顧問をはじめ,PTAの皆様のすばらしい覚悟が書かれていて大変心強く思いました。すなわち,PTAの役割というのは,「学校教育と共にある」ということ,そして,「地域と学校を結び,家庭と学校を結ぶかけ橋である」ことを改めて確認させていただきました。
 しかも,PTAの皆様は,家庭教育の責任を持つ当事者ということだけでなく,働く立場の父親も母親も多いので,教員に対する働き方改革についても大変御理解をいただいていること,とても心強く思いました。
 さて,これから取りまとめていくときに,私は,この令和の日本型学校教育の推進体制の中に,PTAの方が位置づけられるのではないかなと本当に心強く思っているんですが,現在,感染症対策でも,実際に消毒のボランティアをしていただいたり,あるいは学校行事を安全に行うための担い手になっていただいたり,さらには,全国的には,例えば子供たちをめぐる情報環境の調査をしていただいて,実態を把握していただいたり,狭い地域の活動を充実するだけではなくて,全国組織を生かした調査研究活動などもされています。そこで,東川顧問に,今後,PTAが学校教育と連携していく上で,更に具体的な取組として,このような点を強化したらどうかという,何か担い手の責任を取りやすくなるよというようなイメージがあれば御提案いただきたいと思います。
 例えば,それこそお忙しい皆様,夜間のオンライン会議だとか,あるいは情報をフェース・トゥ・フェースで共有できない保護者の皆様のためにもっとホームページを活用するとか,あるいはメーリングリストを活用するとか,Society5.0の時代に多くの保護者がPTA活動に参画し,令和の日本型学校教育を推進する担い手として活躍できるような条件整備として御提案いただくものがあると,何か具体的に肉づけができるのかなと思いまして,質問させていただきます。イメージで結構です。よろしくお願いします。

【荒瀬部会長】 ありがとうございました。御回答はまとめてお願いいたしたいと思います。
 では,二見委員,お願いいたします。

【二見委員】 私からは,日本PTAの東川顧問に1点だけ質問させていただきたいと思います。東川さんが最後に書いておられます,学校と地域,学校と家庭のかけ橋としてのPTA,私も平素からPTAの皆様の御理解と御協力に感謝しているところでございます。
 質問ですけれども,3ページの一番上に当たりますけれども,「しかしながら,平常時において,学校外の自宅などにおける子供たちの学習を支援できる体制は家庭によって異なることから,家庭学習を学校の授業に代替することは,子供たちの学びを保障し,充実することにつながらない」というところがございます。
 ここは,いわゆる通信環境が異なることや,家庭の子供への支援体制ということだろうと思うんですけども,ここをもう少しお話しいただければと思うんです。というのも,平常時においても,これからは1人1台,持ち帰って,学んでいくという点で,そこが保護者の皆さんにとって,学びを保障することにつながらないんじゃないかというところは,我々,これから準備させていただく立場としては非常に気になるところでございますので,もう少し具体的なところがあればお話しいただければと思います。
 以上でございます。よろしくお願いします。

【荒瀬部会長】 ありがとうございました。
 ほかにはございませんでしょうか。それでは,清原委員と二見委員から,東川顧問に御質問がありましたので,東川顧問,よろしくお願いいたします。

【東川公益社団法人日本PTA全国協議会顧問】 清原委員,二見委員,御質問ありがとうございました。
 まず清原委員からの御質問でございますけども,最後に書かせていただいた,PTAの覚悟と申しますか,そういったところをなぜそもそも書いたのかというところなんですけども,全国のPTAの,今日,高等学校の泉会長もいらっしゃいますけども,皆様,非常に真摯に,子供たちのためにといった部分で,家庭教育の役割,教育機能を十分に理解した方たちがほとんどであるわけなんです。ところが,各域内の首長部局や,あるいは教育委員会の皆様についても,若干遠慮がちにPTAの皆様には接しているといったところが全国的に見られるなと。
 少し支援のお言葉を出してもらうと積極的に関わりたいんだけども,どうしようかという,双方,遠慮しているというところが長年見られるなというところから,特にこの新しい時代の日本の教育といったところに関して言うと,PTAの覚悟をやはり包含していく書きぶりというのが必要ではないかなということも相まって,私ども団体のほうでもこういう意見を交わしたところ,これは是非といったところで書かせていただいたところでございます。
 御発言にもありましたとおり,コロナ禍において,特に学校における働き方改革の推進下において,こういう休業であるとか,様々な制限がかかってしまった。特にコロナの感染症拡大をいかに防止するかといったところに関しての消毒といったものも,教職員の負担に一方ではつながっていることを鑑みて,これはもうほとんど全国的に,私どもからこうやりましょうという話ではなく,自発的に各学校における単位,PTAの皆様が,子供たち,児童生徒が帰った後に,自発的に消毒液等,いろんなものを持って教室内を清掃するといったことがありました。これもひとえに,子供たち,先生方のためといったところが能動的に行われている実態だと思います。
 また,一方で,これまで平常時においてもなかなか就労等の問題で,その会に集まれないだとか,活動そのものに参加が難しいという,そういう保護者はたくさんいたわけでございまして,かえって,Society5.0時代を迎えるに当たって,そのICTを有効活用していくと。正に清原委員がおっしゃっていただいたように,既にもうズームですとか,今,この会議はWebexでございますが,こういう様々なツールを使っての活動というのはもう既に始まっているといったところでございまして,これを仕組み化していくのは難しいかと思いますけども,能動的にこういったものをやっているという発信をやっていくことによってスタンダード化させていくことが一つあっていいのではないのかなと思ってございます。
 続きまして,二見委員から御質問でございますけども,意見書にも書かせていただいたとおり,GIGAスクール構想は大変前向きに捉えてございますし,1人1台端末ということに対しては,たっての希望といったところもあったかと思います。ここの書きぶりにつきましては,やはり様々な経済的なものであったり,家庭環境がかなり違うといったところから,例えばWi-Fiの環境もそうなんですけども,家庭内において,例えばタブレットやパソコン等の使い方といいますか,ルール化といいますか,そこが,要は,家庭の教育力によって差が出てしまうのではないかなというところで,例えば学校における,要は,教師がいて,児童生徒がいてというところに担保される学びと,それから,オンラインというデバイスを使ってやるものの学び等にはやっぱり差が出てしまうんじゃないかなというところで,公平な学びといったところが担保されないのではないかという,そのような意味合いを含めて書かせていただいたところでございます。
 回答になっていなければ,大変申し訳ございません。以上でございます。

【荒瀬部会長】 ありがとうございました。
 御質問いただきましたお二人,いかがでしょうか。よろしいですか。清原委員,どうぞ。

【清原委員】 東川顧問,ありがとうございます。何よりも学校教育とPTAとの関係が今後ますます密接になっていくための御提言をいただいたと受け止めましたので,是非そういう方向で,最後の答申に向けて取りまとめができたらなと感じます。心強い御発言ありがとうございます。

【東川公益社団法人日本PTA全国協議会顧問】 ありがとうございます。

【二見委員】 二見です。東川委員,ありがとうございました。これから整備し,学校で活用するに当たって大変重要な指摘だと思っておりますので,そういうことをしっかりと受け止めていきたいと思っております。どうもありがとうございました。

【東川公益社団法人日本PTA全国協議会顧問】 こちらこそありがとうございます。

【荒瀬部会長】 ありがとうございました。
 それでは,まだ御質問がおありの方もいらっしゃるかもしれませんが,時間の関係がございますので,ここで終了したいと思います。
 東川顧問,泉会長,今日はお忙しい中,お時間を頂戴いたしまして,御発表いただきましたことに感謝申し上げます。ありがとうございました。

【東川公益社団法人日本PTA全国協議会顧問】 ありがとうございました。

【荒瀬部会長】 それでは,ここで,今申しましたように午前の部は終了したいと思います。午後の部は,午後2時に再開いたします。午後の部では,全国国公立幼稚園・こども園長会,全日本私立幼稚園連合会,日本私立小学校連合会,日本私立中学高等学校連合会,全国特別支援学級・通級指導教室設置学校長協会,全国特別支援学校長会の6つの団体の代表の方々から,中間まとめについての御意見を伺いまして,質疑応答,意見交換を午前と同じようにしていきたいと思っております。
 午後の会議につきまして,事務局から連絡があるとのことですので,お願いいたします。

【田中教育制度改革室長】 失礼いたします。午後の会議につきましても,Webex Eventsを用いて開催いたしますけれども,午前の部とURLやパスワードが異なりますので,その点,御留意いただければと思います。
 14時からの会議となりますが,委員の皆様におかれましては,13時半から13時50分の間にログインをいただきまして,接続の確認をさせていただければと思っております。長時間の会議となりますけれども,何とぞよろしくお願い申し上げます。

【荒瀬部会長】 それでは,本日,午前の部に予定いたしました議事は全て終了いたしましたので,これで閉会いたします。ありがとうございました。午後もまたよろしくお願いいたします。

( 休 憩 )

【荒瀬部会長】 皆様,こんにちは。荒瀬でございます。定刻となりましたので,ただいまから,中央教育審議会初等中等教育分科会,第16回新しい時代の初等中等教育の在り方特別部会の午後の部を開催いたします。
 午前の部に引き続き,新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のために,ウェブ会議方式で開催させていただきます。
 午前と同様でありますけれども,会議の開催方式及び資料につきまして,改めて,事務局の田中教育制度改革室長から御説明をよろしくお願いいたします。

【田中教育制度改革室長】 それでは,よろしくお願いいたします。今,部会長からございましたように,午前の部に引き続きまして,Webexを用いたウェブ会議方式にて開催させていただきます。会議を円滑に行う観点から,恐縮ではございますが,御発言のとき以外はマイクをミュートにしていただくようお願い申し上げます。委員の皆様には御不便をおかけするかと存じますが,どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは,資料の確認をさせていただきます。本日の資料は,議事次第にございますとおり,資料1から資料12-2まで,加えて参考資料となっております。資料につきましては,午後の部の資料は資料6から資料11となっております。御不明な点等ございましたらお申しつけいただければと思います。

【荒瀬部会長】 ありがとうございました。よろしいでしょうか。
 それでは,午前の部に引き続きまして,関係団体からのヒアリングの3回目を引き続き実施いたしたいと思います。
 午後の部は,全国国公立幼稚園・こども園長会,全日本私立幼稚園連合会,日本私立小学校連合会,日本私立中学高等学校連合会,全国特別支援学級・通級指導教室設置学校長協会,全国特別支援学校長会の6つの団体の代表の方から,中間まとめについての御意見を伺い,その後,質疑応答,意見交換を行いたいと思っております。先ほど,午前中もそうでありましたが,御質問,御意見等は,最後にまとめてお願いしたいと思っております。
 なお,引き続き,報道関係者の方と一般の方向けに会議の模様を配信しておりますので,御承知おきいただきたいと思います。
 では,議題に入ります。まず全国国公立幼稚園・こども園長会から御発表をお願いいたします。箕輪会長,どうぞよろしくお願いいたします。

【箕輪全国国公立幼稚園・こども園長会会長】 こんにちは。全国国公立幼稚園・こども園長会会長,箕輪恵美でございます。よろしくお願いいたします。
 本日は,新しい時代の初等中等教育の在り方について発言の機会をいただき,感謝しております。ありがとうございます。
 これまでの日本の教育の成果,課題を踏まえて,令和の日本型の学校教育の構築を目指すという中間まとめにつきまして,幼児期の教育の立場から意見を申し上げます。
 情報社会の次のステップになるSociety5.0時代に活躍できる人材を育成するという大きな目的に取り組んでいくためには,幼児期から小中高等学校まで教育を積み重ねていくことが重要であると考えております。
 そこで本日は,幼児教育の質の向上に関わって特に重要と思われます,教員の資質向上,人材確保と人材育成,必要な条件整備の3点を中心に意見を申し上げます。
 まず1点目,教員の資質向上については,そのことを進めるために必要な取組を推進していく必要があると考えます。その具体策として2つお話をさせていただきます。
 まず1点目は,教員が幼児教育について深く学び,専門性を高める機会をしっかりと保障していくということです。教育の質を支えているのは,教員一人一人の努力であり,教員の資質が教育の質に直結していると言っても過言ではないと思います。教員の研修する機会を保障し続けていくことが非常に重要であると考えます。
 本会は,国立,そして,公立の幼稚園・こども園の組織になりますが,今後も教育に関わる最新の情報がしっかりと各1園1園まで行き渡ること,また,一人一人の教員が教育にしっかりと専門性を高めていく機会を保障していく,そういう仕組みを今後もしっかりと作っていく必要があると考えております。
 もう1点が,地域で幼児教育を学ぶ拠点として,是非国公立の幼稚園・こども園を御活用いただきたいということです。国公立の幼稚園・こども園は,全国各地に,地域に根差して園の配置がありますので,今,文科省でも幼児教育の質向上のための具体策ということで,幼児教育センターの設置でありますとか,幼児教育の専門の指導主事の配置という事業は進んでおりますけれども,そのような事業ともリンクさせていただいて,全国各地の国公立の園が地域の教員の研修の拠点になるような,その役割を果たしていくと,うまく機能し,幼児教育の質の向上にも寄与できるのではないかと考えております。
 2点目の意見に移ります。人材確保と人材育成についてです。このことに関しましては,中長期的に,それから,関係機関が連携を図って計画的に進めていく必要があると考えております。人材不足については,幼稚園・こども園についても,もう実際に現場で起きている事柄です。子供たちの成長を促すという意味では,人的環境である教師がまず非常に重要な位置にありますけれども,教師一人一人が志を高く,幼児一人一人にしっかりと寄り添いながら成長を支えていく。仕事に対して誇りを持って,意欲を持って取り組んでいく,そのような教師が現場にいることはとても大切なことになります。
 しかし,近年,残念ながら,この教師という職業に対して,世の中のイメージが少々マイナスな部分が多く出回っているように感じます。また,人口減少や高齢化が進んで,働き手がこれからどんどん減少していくという中で,教育に携わる優秀な人材を確保することは非常に重要な事項になってくるかと思います。そのことをしっかり保障していくために,養成校の段階から一体的な取組を構築して実現していく必要があるのではないかと思いますし,教師という仕事の魅力をいろいろな形で積極的に世の中に広くアピールしていくことも必要ではないかと考えております。
 もう1点ですが,質の高い幼児教育をリードする人材の育成に関しても,計画的に進めていくことが必要ではないかと考えております。こちらに関しても,現在,幼稚園教諭の免許状の上進の事業が進んでおりますが,このような取組を今後も積極的に進めていただくとともに,大学院等で幼児教育をより深く学んだ専門性の高い先生方が教鞭を取られて,養成校で良い人材を育成していただく,そのようないいサイクルが生まれるようなことについても,是非今後の計画の中に盛り込んでいただければと思っております。
 最後,3点目の意見になります。必要な諸条件の条件整備に関しては,質の高い教育を提供するためにという視点から,3点お話をさせていただきます。
 まず1点目は,どのような状況でも質の高い幼児教育をしっかりと提供し続けるための環境整備ということで,こちらに関しては,今,喫緊の課題としては,オンラインの環境を整備していくということが一番あるのではないかと思っております。
 今年に入り,コロナ禍という,今まで想定し得なかったような状況の中で,幼児教育の現場では,オンライン,ICTの環境が十分整備されていなかったことが非常に大きな課題となりました。危機管理という視点から,それから,教育の質を維持向上するという視点から,その2つから,この点は,急ぎ改善を要すると考えております。
 文科省の令和3年度に向けての概算要求にもしっかりとその点,反映させていただいておることは大変有り難く思っております。オンラインがしっかり整備されることで危機管理という視点からも,正確さ,スピード感が,保障がされると考えます。
 そして,教育の質という部分では,園に来ることが難しいという状況がこれからもし起こり得るとしても,オンラインがあることで,教育を家庭,地域とつないで,教育をし続けることが今以上に可能になるのではないかと考えます。是非この機会に,オンラインの環境整備を一気に推し進めていただきたいと強く願います。
 2点目です。幼児期の学びに適した1学級の幼児数に関しても検討する時期に来ているのではないかということを申し上げます。
 コロナ禍において,全国の園の中では休園する園も多くありました。そのような地域で園をまた再開していくという過程の中で,分散登園あるいは時差をつけての登園,学級を2つに分けて密を避ける。様々な工夫がなされました。コロナのために行ったことではありますが,実際に少人数で教育を行った期間の中で,特に大規模な園においては,通常の保育活動以上に教育の効果を上げられたという,そのような手応えの声が全国から集まってきております。
 この先,幼児教育の中でも,未来に力を十分に発揮できる子供たち,その力を,素地を育むためにも,1学級の幼児数に関して,これを機会に検討して始めていくべきではないかと考えております。
 最後に,特別支援教育に関わることに関してお話をいたします。国公立の園は,特にかもしれませんが,地域に門戸を広く開いていることもあって,今現在,特別な支援を要するお子さん,あるいは外国籍のお子さんの在籍が大分高くなってきております。恐らく今後もそれは続いていくと思われます。
 子供たち一人一人がしっかりと教育を受ける,その権利を保障していくためにも,特別支援教育という点に関して,これから具体策を練っていくべきではないかと本会としては考えます。受入体制の整備について,今後検討していくべきと考えます。
 以上になります。

【荒瀬部会長】 箕輪会長,ありがとうございました。
 続きまして,全日本私立幼稚園連合会から御発表をお願いしたいと思います。加藤教育研究委員長,よろしくお願いいたします。

【加藤全日本私立幼稚園連合会教育研究委員長】 全日本私立幼稚園連合会より,中間まとめの意見を発表します。私は,当連合会の教育研究委員長であり,武蔵野東第一・第二幼稚園の園長の加藤と申します。どうぞよろしくお願いします。
 では,資料をおめくりください。まず初めに,私ども当連合会のプロフィールを申し上げます。
 私立幼稚園(こども園),全国に7,530園,138万人を網羅する組織でございます。文部科学省内に設置されている「幼児教育の実践の質向上に関する検討会」では,私立幼稚園として組織的に取り組む課題を「「チャレンジ・ビジョン」~7つのアクションプラン~」として提示してございます。
 この内容は,中間まとめ,第2部,各論1,幼稚園部分と多く重なっておりまして,以上の経緯より,当団体は令和元年度より「幼児教育の質の向上体制整備」について,組織的に,具体的に推進してございます。
 おめくりください。まず紫色のアンダーラインのところですけれども,これはコロナ禍によって,新たなステージとして取り組んでいる部分でございます。赤い丸のところは,「チャレンジ・ビジョン」として具体的に推進しているところで,ほぼ網羅した状態になっています。
 おめくりください。一方で,全体を推進している中で,この中間まとめの内容を推進していくに当たって,3月以降のコロナ禍の影響が大変大きいものでございました。先ほども紫色で示した部分ですけれど,総括しまして,今まで具体的に私たちが実施してきたことを踏まえて,当団体の意見を中間まとめでお伝えしたいと思います。
 おめくりください。まずコロナ禍におけるハイリスク家庭があって,家庭の事情で登園できない幼児がいたということです。これが一定数存在しております。私どもでは,aの部分ですけれど,リアルな保育場面と当該家庭をオンラインでつなぐような試みをすることによって,在宅で幼稚園に来られない子供も保育への参加,クラスの中に自分自身がちゃんと存在しているということを伝えたり,また,そのことを継続することによって,登園意欲を維持していくという取組も行った園がございます。
 また,bの部分では,自粛期間中は,園と園外,家庭であったり,小学校であったりを,オンラインでつなぐことによって,幼児の育ちに重要な生活リズムの安定維持を図る。定期的にズームでクラスの集いなどをすることによって,そのリズムを整えていく取組も行いました。あるいは,家庭においても子供たちは友達を求めておりますので,幼稚園を介しながら友達とつないでいくという取組もございます。
 また,家庭と双方向性でつなぐことによって情報を共有し,保護者自身の支援,養育する心を支えるとか,あるいはお母様同士も家庭の中に閉じ籠もっておりましたから,つないでいくということも考えなければなりませんでした。
 そして,dの部分,小学校,今までですと,リアルに小学校見学とか交流というものが行われていたわけですけれど,それができなくなりました。それをオンラインでつなぐことによって,幼児に小学校への憧れを育てる,ああ,小学校ってこういうところなんだ,こういうお兄さん,お姉さんがいるんだみたいなことをつなげていくことができました。
 また,3番目です。近年,特別な配慮を必要とする幼児は増加の傾向にあります。当該子供たちの,当該児にとっては,このオンラインでリズムを維持するとか,取りわけこういうネットワークの情報は聞き取りやすい部分もございますので,子供自身の支援や,あるいは保護者自身のお悩みにも対応するというような,これは非常に切実な課題でございました。一番下に紫色で書きましたが,幼稚園においてもICTは非常に有効であり,コロナ禍によってこの必要性を強く認識したところでございます。
 おめくりください。また,全日私幼連としては,都道府県レベルで,年間を通した教員の研修を組織的に実施している実績があります。これは新制度,子ども・子育て支援新制度において,当団体が,その研修が国の定める「処遇改善Ⅱ加算」に該当する対象となっているものでございまして,幼稚園教育,幼児教育の質の向上に欠かすことができませんが,コロナ禍において,3密回避のために,この研修が激減するという状態に今,陥ってございます。質の向上に直接関わる研修が今できない状態になっていて,ICTを活用したリモート研修を更に推進していく必要を感じております。
 また,一番下の黒ポツですけれど,幼稚園は規模の小さい零細企業体でございまして,新制度や無償化の膨大な行政書類,あるいはその対応の業務が幼稚園全体を逼迫しているという状況にもございます。これもICTの活用における業務改善が必要な部分であります。
 おめくりください。文部科学省幼児教育課のアンケート集計によれば,今年度と来年度で約半数の園が園務を支援するシステムを導入予定ということが明らかになっております。新規導入だけでなくて,導入後の改善,充実への意欲がありまして,ハードへの支援も非常に重要でございます。例えば,本園では,ウェブ回線は以前から持っておりましたけれども,コロナ禍で,ズーム利用をしたクラスの集まりを実施してみましたところ,2クラス入った途端にももうコマ落ちして,データが飛ばなくなってしまうという状態に陥ってしまいました。回線の増強は非常に大事なこととなりました。また,端末として,幼稚園は1人1台というレベルではないんですけれど,家庭とつなぐのに,ウェブカメラだけでなくて,iPadのような移動ができるものなどを取り入れる必要もございました。
 以上は中間まとめの今後の方向性にも一致した御提案でございます。
 次のページをおめくりください。これは中間まとめの今後の方向性のところですけれど,青丸で囲ってある部分は,今申し上げました幼稚園にも非常に関わりの深い部分でございます。
 おめくりください。まとめとして,幼稚園にもICT環境の整備は非常に重要で,これは個々の学びということのみならず,家庭とつなぐ,地域とつなぐ,あるいは学校とつなぐことによって,連携を更に推進していく,社会に開かれた教育課程を推進していくということにもつながります。また,支援の必要な幼児や家庭を支えるということも増加しておりますので,非常に大事に考えたい部分です。
 2番目のところ,質の向上に直結する研修は充実を図る必要があり,今のこれからの時代も,リアルで集まっても会場の半分しか入れないという状況ですと,研修機会を失ってしまう教員が大変多くなります。これもICT化を図り,リモート研修を充実させたいと当団体では思ってございます。
 また,園内業務も能率化の必要があり,これは働き方改革にも直結いたします。どうぞ,行政の電子化への対応も含めまして,ICTを業務支援にも使わせていただきたく思います。
 最後に赤いところのタイトルで入れてございますが,学校教育のスタートとなる幼稚園に特別に配慮が必要な幼児の増加というのは,この対応は逼迫したものがございます。どうぞ,園内の支援体制整備のために人的な業務の支援への必要性がございます。どうぞよろしく御検討いただけますようにお願い申し上げます。
 当連合会の意見は以上です。御清聴いただきましてありがとうございました。

【荒瀬部会長】 加藤教育研究委員長,ありがとうございました。
 では,続きまして,日本私立小学校連合会から御発表をお願いいたしたいと思います。重永会長,よろしくお願いいたします。

【重永日本私立小学校連合会会長】 このたびは,このようなヒアリングの機会にお招きいただき,感謝申し上げます。初等中等教育の在り方に限って,申し述べたいと存じます。既に意見書を,7枚になりましたが,提出させていただいております。そこには共感・共鳴できるところと,私どもの意見,要望に分けて述べさせていただいております。
 まず,共感・共鳴するところについてでございますが,一言で申しまして,根源的に問題を掘り下げておられて,大変共感を覚えるところが多く,深く敬意を表したいと思っております。
 1枚目の2に書きましたが,社会の在り方そのものが現在とは「非連続」と言えるほど劇的に変わり,社会の変化が加速度を増し,複雑で予測困難となりつつあるという認識の箇所がございますが,私ども日本私立小学校連合会が,このたびまとめました「2020年代の教育宣言」というのがございますけれども,588文字という大変短いものですが,それと共通の認識でございます。
 そして,3に書いたことですが,「日本型学校教育の成り立ち」から考察されている点も共鳴いたしました。
 2枚目に移ります。特に,「教師は,教育に携わる喜びを持ちつつも疲弊しており,国において抜本的な対応を行うことなく,日本型学校教育を維持していくことは困難である」という記述には,感謝さえ申し上げたいところです。
 中間まとめの3ページ,下から3行目において,「全人教育」という言葉が使われておりますが,これは実は成城学園の創立に関わり,玉川学園を創立し,私ども私学の先達である小原國芳の言葉でございます。1921年,大正10年のことでございますが,その8月に開かれました「八大教育主張講演会」というものがございました。そこで,小原國芳が初めて提唱した言葉でございますので,それが中間まとめに使われていますことに大変うれしく思いました。
 1枚目の4と5につきましてはお読みいただければと存じます。割愛いたします。
 意見・要望に移らせていただきます。大きく10項目について述べさせていただきました。
 まず1つ目は,中間まとめ13ページの下から9行目に,学校教育が「従来の社会構造の中で行われてきた『正解主義』や『同調圧力』」,――ごめんなさい,「同調」の文字が誤ってございますが(同町),申し訳ございませんでした。――とある点につきましては,私学においては決してそのようなことはなかったということを御理解いただければと存じます。先ほど申しました小原國芳の「全人教育」の考え方に立って,今もほとんどの私立小学校がやっておるところでございます。
 続きまして,2に書きましたのは,中間まとめ20ページの第1行目について意見を申し上げたところでございます。ここでは,「憲法第14条(法の下の平等)及び第26条(教育を受ける権利),教育基本法第4条(義務教育無償)の規定に基づく教育の機会均等を真の意味で実現していくことが必要」と指摘されております。
 公私格差は依然として改められていません。私学教育振興助成法で定められた私学の経常費補助の2分の1ということも実現されておりません。そういう意味では,公私間格差を改善することが,ここでの中間まとめ20ページに書かれてあることに沿うことではないかと思いますので,私学への御支援をよろしくお願いしたいと存じます。
 3枚目に移りまして,3でございますが,中間まとめ11ページ中ほどをはじめとして,GIGAスクール構想に触れられています。GIGAスクール構想は,国家的事業として展開されるということでございますが,私学へは2分の1助成にとどまると言われております。これでは,「国家的事業と言えないのではないでしょうか」と言わざるを得ません。
 私立小学校に通わせている保護者は,税金を納めた上に私立小学校の授業料も納めているわけですから,国家的事業に伴う義務教育への設備に係る予算が私立小学校には2分の1というのは,どうも納得できないということについて御理解いただけましたら幸いでございます。
 4でございますが,中間まとめ22ページ10行目に,「ICTはこれからの学校教育に必要不可欠なものであるが,あくまでツールであり,その活用自体が目的でないことに留意が必要である。」という記述がございます。研修費用や人材確保について,御支援いただく必要があるということを書かせていただいておりますので,お読みいただければと思います。
 4枚目に移りたいと思います。5でございますけれども,このたびのコロナ禍に伴う学校休校中に,オンラインでの朝の会や授業についての私学の取組について述べさせていただきました。その上で,対面授業がやっぱりかけがえのないものだと。対面授業がやはり私立小学校においては,基本中の基本であるというその重要性について述べさせていただきました。中間まとめ22ページ,12行目において述べられているとおりだと思っております。
 6でございますが,中間まとめ各論の中で,児童生徒の学力の確実な定着ということが度々うたわれています。特に,中間まとめ9ページ下から5行目では,言語能力や情報活用能力に課題があると指摘されています。誠に同感するところでございますが,基礎的な読解力は,単に国語ということを超えて,社会科や理科,算数,また,総合的な学習等によって,応用的,実際的に養われるものであるというのが私ども日本私立小学校連合会の考えでございますので,申し述べさせていただきました。
 5枚目に移ります。7でございますが,小学校における教科担任制の導入について意見させていただきました。中間まとめでは,高学年における理科,外国語,算数,これを教科担任制にしようというお考えのようですが,多感な時期を迎える5・6年生という時期は,学級担任が,――「学級」の「究」が間違えておりまして申し訳ございません。――学級担任が一人一人とじっくり向き合うことで,心の安定を保ち,学習や活動に意欲を持って取り組むことができる発達段階でございます。そのため,英語科は特例にせざるを得ないと思いますけれども,教科担任制の導入に当たっては,学校裁量ということについてお考えいただければと思っております。
 8でございます。5枚目と6枚目にわたっておりますが,中間まとめ20ページ,第3段落の2行目に触れられている「社会経済的指標の低い層を幼少期から支援することが重要である」ということについては,全く有り難く,感謝の言葉を述べさせていただきます。そういう観点から,大学生,とりわけ教員志望の学生に対する奨学金制度について「無利子・長期返済,教職就職者は,返済免除等の手厚い施策」の復活や,今,東京都が行ってくださっている一定の年収以下の私立小学校に通わせている家庭に対する教育費支援の実証事業の永続化について触れさせていただいておりますので,お読みいただければと思います。
 6枚目の9に移ります。以上,8で述べました奨学金制度についてでございますが,教職に就いた者は返済免除ということがやはり中間まとめ71ページで取り上げられています「教師の人材確保」という観点からも極めて重要なことであると考えますので,よろしくお願いいたします。
 最後の項目の10でございますが,中間まとめ64から65ページにおいて触れられている,学級の少人数編制について申し述べました。私立小学校において,少人数編制を実現するには,施設面や教員数の面,校庭敷地の面などから,高いハードルがあるということを御理解いただきたいと思います。
 以上が主な意見と要望でございますが,7枚目に触れさせていただいたことについて少し述べさせていただきまして,私の話を終えたいと存じます。
 このたびの中間まとめを実現するためには,膨大な予算が必要であると思っております。この膨大な予算を確保するには,中間まとめ総論冒頭に書かれております,これまでとは,「非連続」と言えるほどの劇的な社会変化の時代が目の前に来ているという認識に,政府全体,国会全体が立っていただきまして,今や教育は「国家百年」を超えて,「国家千年」の大計であるという認識に立つことが重要ではないかと思っております。「千年に一度の災害が起きる時代」でございますので,千年に一度の先行投資という考えで,政府,国会が動いていただければ大変有り難く存じます。
 以上でございます。御清聴,誠にありがとうございました。

【荒瀬部会長】 重永会長,ありがとうございました。
 それでは,日本私立中学高等学校連合会から御発表をお願いいたしたいと存じます。平方常任理事,よろしくお願いいたします。

【平方日本私立中学高等学校連合会常任理事】 日本私立中学高等学校連合会でございます。それでは,中間まとめにつきまして少々お時間をいただいて,お話をさせていただきたいと思います。
 まず本連合会としては,初等中等教育における私立高等学校の割合が約3割に達していることから,とりわけ高等学校教育に関連する事項を中心に意見を申し上げたいと存じます。
 まず,1.遠隔・オンライン教育を含むICTを活用した学びの在り方についてですが,中間まとめでは,「これからの学校教育を支える基盤的なツールとして,ICTは必要不可欠なものであり,1人1台の端末環境を活かし,端末を日常的に活用していく必要がある」ことや,「ICTを活用した取組の促進と併せて,学習者用デジタル教科書についても普及促進を図ることが重要」なことなどについて言及されております。
 しかし,令和2年度に普及を目指しているGIGAスクール構想は,主として,義務教育段階の小中学校生徒を対象に,1人1台端末の実現やデジタル教科書等の整備等を進めようとしているものであり,高等学校への普及が置き去りにされています。また,デジタル教科書の推進に当たっては,義務教育における紙の教科書は無償ですが,デジタル教科書は有償という壁がございます。
 さらに,コロナ禍の状況も鑑みれば,従来の日本型教育のみならず,ICTも活用したハイブリッド型教育の必要性は確実なものとなっていると思います。その際,生徒の学習を促進するためには,単に1人1台の端末が整備されるということだけでなく,個人単位でポータビリティを保障することも必要不可欠です。その点が見過ごされやすいことを指摘しておきたいと存じます。
 また,中間まとめにおける先の言及のとおり,ICTを活用した教育を実効性のあるものにするには,端末環境のハード面と,デジタル教材等のソフト面の双方について,同時に「マストアイテム」とする必要があります。その際,それらにかかる費用面に関して,とりわけ私立学校においては保護者負担が過大となる可能性があり,国として広く普及を目指すという趣旨を踏まえ,国公私立を問わず,全額を公費で賄うべきであると存じます。
 また,大学教育のように成人を対象とする高等教育と異なり,中学校,高等学校教育は発達過程にある子供の人格形成が目的であることを忘れてはならないと思います。こうした教育では,子供,教師の複層的な人間関係での直接的な協働的学びがとりわけ大事であり,さらには,心と体が成長期にあり,自分自身の心身のバランスも必ずしも把握できていない段階での子供の健康教育の点にも留意する必要があると思います。
 すなわち,ICTの進展を踏まえた同時双方向の遠隔教育を最大限活用することは大事ですが,それをもってして,受信側に子供の学び・健康を保障するための体制がないと導くことは,学校現場の社会的意義の自己否定になると思います。
 さらには,基本的に通学がなくともオンラインでの家庭学習のみをもって人格形成が図られるということも考えられず,現に,コロナ期において学校に通学したかったという子供の声がその証拠でもあると思います。
 初等中等教育におけるICTは,昭和の時代の文房具と同様であり,必要不可欠でありますが,文房具をもってして子供が自発的に学習を完結できるものではありません。教師のコーチング機能,ファシリティト機能がより一層重要となることに留意し,令和の時代のICTを活用した学びの在り方を構築しなければならないと考えております。
 続けて2.新時代に対応した高等学校教育の在り方についてです。(1)スクール・ミッションの再定義について。私立学校において,スクール・ミッションは,建学の精神に基づく学校の教育理念等として,学校の存立や存続の根幹であって,各私立学校は,それぞれ自主的に定め,それに基づいて運営してきております。
 国は,新学習指導要領が高等学校で施行される令和4年度を目途に,高等学校におけるスクール・ミッションの再定義やスクール・ポリシーの明確化を一律的に求めることとしていますが,私立高校としては,この期に及んで再定義すべきではなく,自主性や独自性を旨とする私立高校の教育の特質を損なうようなことがあってはならないと考えます。
 一方で,公立高校にスクール・ミッションやスクール・ポリシーの再定義を求めることについては,そもそも公立高校の使命や目的は,義務教育の成果を更に発展させて同水準の教育を行うことであり,各学校にスクール・ミッションを導入すれば,実質的な「私立学校化」に繋がり,公立高校の存立の趣旨と反することになると考えます。
 私立高校における教育の役割は,社会のニーズに応える面と,教育を通して社会変化をリードする面があり,その意味で,社会の変化に対応して,私立学校がその教育を刷新していくことは,不断に行われるべきものであると思います。ついては,高等学校の新学習指導要領における,新たな資質・能力を基本とした教育観を踏まえて,各私立高校における教育方針をより一層明示することが求められていると言えます。
 (2)「普通教育を主とする学科」の弾力化・大綱化(普通科改革)について。普通科の弾力化・大綱化を図るのであれば,教育課程を弾力化する必要はありますが,高等学校教育の現状は,硬直的な科目主義的傾向が強固となっており,当初新学習指導要領で打ち出した「合教科」や「教科横断的な学び」も立ち消えてしまっております。このような中で普通科改革を論じることは現実的ではないのではないかと考えます。高等学校の約7割が普通科であることから,その多様化を求める方向性が示されていますが,私立高校は既にそれぞれのスクール・ミッションに基づき,普通科の中に様々な類型やコースを設置するなどして,各校が独自に多様な普通科教育を行っております。
 また,私立高校は,高等学校全体の約3分の1を占めておりますが,その約半数は大学附属や系列の学校であることから,内部進学による高大接続や高大連携教育も進んでおります。今後は,大学教育との接続や連携などにより,より高度で学際的な教育を目指すことも考えられると思います。
 しかし,このような私立高校においても,教育課程は硬直的な科目主義に縛られていますが,このことを払拭するには,まずは,資質・能力の育成を基本とした高等学校の教育課程の大綱化や弾力化が一層求められると言えます。
 (3)高等学校通信教育の質保証について。現在,高等学校通信教育は,不登校生徒や特別な支援が必要な生徒など,学校生活への適応に問題を抱える生徒たちに学びの機会を提供するために必要な存在となっています。しかし,一方で,特に広域通信制高校では,自分自身の「やりたいこと」の実現を求める生徒や,予備校に通いながら高校卒業資格の取得を目的とした生徒の受け入れ先となり,サポート校による不適切な教育が実施されたり,近年では,本来の通信制高校の目的からかけ離れた全日型の通学コースが設置され,塾と連携し大学受験対策に特化した教育を行うなどの事例も見受けられます。ましてや,昨今,フリースクールの形で,法律上義務教育に認定されていない中学校段階での通信教育がにわかに全国展開されておりますが,このようなことによって,本来の中学校教育が損なわれるようなことがあってはならないと考えます。
 また,収容人数や施設及び設備,校舎の面積,教員の数等の基準について弾力的な運用が可能とされ,教育課程の基準も全日制課程と比べ特例的に緩和されている中で,教員免許を持たない者による学習指導も行われております。生徒の定員管理も困難となっており,スクーリングの教室数も不足しているといった杜撰な実態が少なくありません。このような現実を見れば,「教育の質の保証」が揺らぎかねないばかりでなく,公教育制度そのものが,なし崩し的に瓦解していくことさえ危惧されます。
 本来,通信制高校の趣旨を逸脱している実態を踏まえ,例えばサテライト施設も含め,明確な設置基準を策定するとともに,教育課程を全面的に見直す必要があると考えます。
 高等学校通信教育の質保証方策に関しては,これまで「新しい時代の高等学校教育の在り方ワーキンググループ」での検討を経て,「新しい時代の初等中等教育の在り方特別部会」において議論されてきたはずであります。取りまとめに際しては,これらの検討の経緯を十分に踏まえた上で,実効性のある形で提言されたいと考えております。 
 以上で,中高連の意見発表を終わりにさせていただきます。どうもありがとうございました。

【荒瀬部会長】 平方常任理事,ありがとうございました。
 では,引き続きまして,全国特別支援学級・通級指導教室設置学校長協会から御発表をお願いいたします。
 川崎会長,よろしくお願いいたします。

【川崎全国特別支援学級・通級指導教室設置学校長協会会長】 全国特別支援学級・通級指導教室設置学校長協会の川崎と申します。よろしくお願いいたします。
 本協会は,全国の小中学校にある特別支援学級・通級指導教室設置の学校長によって設立されております。平成30年度からは,高等学校にも通級による指導が始まりましたので,高等学校の先生方にも入っていただいております。
 令和元年度に小中学校に在籍している児童生徒973万人中41万2,000人が特別支援学級や通級指導教室に通っているという状況になっています。それらを踏まえて,今回の新しい時代の初等中等教育の在り方についての中間まとめについて,特別支援の立場から意見を述べさせていただければと思います。
 まず,各論について,1から9の章立てになっていますが,3つの章に絞ってお話をさせていただければと思います。
 新時代の特別支援教育の在り方についての中で,基本的な考え方で,「通常の学級,通級による指導,特別支援学級,特別支援学校」といった,連続性のある多様な学びの場の一層の充実・整備を着実に進めていく必要があると記されています。とても大事なことなんですが,特別支援学級の学級編制の標準は8人ですが,これは学年ごとではありませんので,小学校の場合,1年生から6年生,中学校の場合は,1年生から3年生まで,年齢差のある多様な児童生徒が同一学級に編制されていることになります。また,各学校ではインクルーシブ教育システムの理念を構築し,特別支援教育を推進させていくために交流及び共同学習を積極的に進めていますが,通常の学級での学びには特別支援学級の教師のサポートが欠かせないところがあります。
 これらのことを踏まえると,特別支援学級の学級編制の標準,8人からの引下げが喫緊の課題です。今後,特別支援教室構想の具体化に向けた検討を行うに当たっても,児童生徒にきめ細かい指導・支援を行うことができる教職員定数の確保は欠かせないところがあります。この後,特別支援学級の教師の定数の改善等をお願いしたいなと思っています。
 次にですが,「特別支援学級,通級による指導を担当する教師に求められる特別支援教育に関する専門性」についてのことです。現在,各小中学校の特別支援学級を担当する教師は,各校種の基礎免許があれば教えることができます。平成27年には特別支援学級等の教師の専門性を高めるため特別支援学校教諭免許状の所持率30.7%を令和2年度までに,2倍程度まで増やすこと目標に取り組んできましたが,現在,令和2年度になっていますが,平成27年度と同じ30%前後と,ほとんど変わらない状況です。いろいろな理由があって,このような状況になっているかとは思います。特別支援学級の子供たちの数が増えて,新しい先生が来ている等,いろいろありますが,やはりこのような状況の中で,特別支援学級,通級による指導を担当する教師の専門性をどう担保していくかということがとても大事になります。そのために,特別支援学級免許状を創設し,特別支援学級等の教員には,必ず特別支援学級免許状を保有するという方向で,特別支援学級,通級による指導の専門性を高め,子供たちに専門的な教育を進めていくということが大事になっていきます。
 小学校の特別支援学級は,全科ですので,どの教科を教えても大丈夫なのですが,中学校の特別支援学級の教師は,教科担任制ですので,自分が保有している教科以外を教えることもありますが,特別支援学級免許状等を保有していることで,自分の専門の教科以外を教えることも,このことによって解消されるということになります。特別支援学級の専門性を高めるために,免許状の創設等をよろしくお願いしたいと思っています。
 次に,遠隔・オンライン教育を含むICTを活用した学びの在り方についてです。これからの学校教育を支える基盤的なツールとして,ICTは必要不可欠なものになっていきます。特別支援教育においては,病弱の特別支援学級での遠隔授業等,特別支援教育においても従前より児童生徒の「個別最適な学び」を行っていくために,ICT機器の活用については,各学校ごとに実践を深めてまいりました。
 このたび,GIGA構想スクールにより,1人1台のタブレットが整備されることになったことで,更にICTの活用が推進されていくと考えています。しかし,ICTを活用することのみが目的化しないようにすることが大事になってくると思っています。ICT機器を使うのみで授業時間を単純に過ごしているだけにならないように,授業の狙い等を明確にしていかなくてはならない学びを行っていく必要があります。また,今まで空間や時間を共有して得られたものが,ICTを活用することで得られなくなるといった,ICTだけを活用すればいいというマイナス面も示した上で,ICTを活用していくことが必要です。特別支援学級や通級による指導で行っている自立活動の学習では,体験的な学習を通して身につくものが多いため,ICTを活用しつつ,教師による対面指導や児童生徒同士の学び合いをしっかり確保していくことが大事になってきます。
 オンライン教育についても,特別支援学級等の児童生徒については,1人で機器の操作が難しい場合があり,家庭での支援も難しいことがあるので,各学級等の状況を見極めて実施していくことが大事になってきます。このたびの3月から5月いっぱいまでの,コロナ禍における臨時休業中についても,特別支援学級では,ICTの環境が整っていないということだけではなく,児童生徒の状況を勘案して,学級担任が家庭訪問を行ったり,学校に児童生徒を集めて学習を行ったという状況が,特別支援学級・通級指導教室設置学校長協会の緊急調査においても示されました。オンライン教育ありきではなく,必要に応じて行うという柔軟性を持って,特別支援学級等では行っていくことが必要だと思っています。
 また,今後,児童生徒指導に合ったアプリケーションソフトの開発もそうですし,学校関係では,購入等の予算確保についても毎年しっかり考えていく必要があると考えています。これらのことも含めて御検討いただければと思っています。
 最後になりますが,Society5.0時代における教師及び教員組織の在り方についてになります。先ほどから話をしていますが,GIGAスクール構想の実現により,教師のICT活用指導力の向上は欠かせない状況になっています。教師がまずICT機器を日常的に使って環境整備していくためには,学校にICT支援員の配置等の環境整備をしていく必要があります。教師がしっかりできないと,障害がある子供たちがICT機器を柔軟に活用することはできません。その上に立って,児童生徒に,知識・技能だけではなく,思考力,判断力,表現力等や学びに向かう力,人間性等をつけていくために,切磋琢磨するような教師集団になるよう,私たち校長は学校経営をしていかなければならないと思っています。
 以上,特別支援教育を焦点に当てた意見を述べさせていただきました。ありがとうございました。

【荒瀬部会長】 川崎会長,ありがとうございました。
 では,最後に,全国特別支援学校長会から御発表をお願いしたいと思います。市川会長,よろしくお願いいたします。

【市川全国特別支援学校長会会長】 全国特別支援学校長会の市川でございます。よろしくお願いいたします。
 私どもの資料を提出してありますので,それに沿って説明していきますが,お時間も限られますので,部分的な御説明になっていきます。内容的には,総論の部分と,特別支援教育に関する各論の部分で御説明していきます。
 まず総論の部分なのですが,今回の令和の日本型学校教育の中間まとめについて,「全ての子供たちの可能性を引き出す,個別最適な学びと,協働的な学びの実現」という,このテーマは,特別支援教育の必要な幼児児童生徒にとっても極めて重要であると思っております。特段,全ての子供たちの可能性を引き出すという観点は大事にしてほしいと思っています。
 ただ,一方で,特別支援教育においては,今までも障害のある児童生徒一人一人の障害の状況や障害特性等を踏まえた一人一人の教育的ニーズに応じて,指導目標や内容や配慮事項などを示した個別の指導計画を作成し,指導に当たるとともに,インクルーシブ教育システムの構築に向けて,一人一人の教育的ニーズ,本人及び保護者の思いや願い等に応じて,必要とされる合理的配慮を提供していくということが具現化され進められております。
 このような特別支援教育において,今まで培って大切にしてきた「個に応じた指導」という考え方と,今回の「指導の個別化」,「学習の個性化」及び「個別最適な学び」との考え方はどのような関係になるのか,どのように整理・説明すれば良いのかについて,検討していただきたいと思っております。
 校長の中には新たな言葉が出てきて,今までとどう変わるのか分からないという意見もございますので,そこら辺については説明が必要であると思っています。
 次に行かせていただいて,2ページに飛びますが,教職員の姿についてですが,働き方改革はすごく重要なことで,業務改善とか勤務条件の改善は必要であると思いますが,教職の魅力というのは,業務の負担等や業務条件の側面だけではなく,やはり教師としての魅力を再認識することが必要だと思っています。教員としての使命感を有して教職を志望する人材が増えるような,教員の魅力の発信も必要ではないかと思いますので,教員になろうとする方々の動機づけについて大胆な踏み込みも必要ではないかなと思っています。
 続きまして,「学校現場に対して,新しい業務を次から次へと付加するという姿勢であってはならない」とか,「学校現場が力を十分に発揮できるように,教師がすべき業務・役割・指導の範囲・内容等を精選する」等,これについて国がしっかりやっていくということですが,「教員の疲弊」と関連いたしまして,校長会として,極めて重要な提言と考えているため,是非とも推進していただきたいと思っております。
 続きまして,各論に入らせていただきます。3ページになります。新時代の特別支援教育の在り方についてなんですが,まず障害のある子供の学びの場の整備・連携強化のところですが,就学前における早期からの相談・支援については,今,共働きの家庭や一人親家庭など,必要な支援を受けたくても十分な支援を受けられない家庭もあることを踏まえ,教育・福祉・家庭との連携を進めるために,他機関との連携を一層進め,この早期からの相談支援体制を作っていく必要があると思っています。特に,早期の相談においては,保護者の方が障害を受容するには一定の時間を要することが多いことも踏まえ,保護者の心情に寄り添う支援の視点も必要だと思っています。
 続きまして,小中学校における障害のある子供の学びの充実の中にあります,副次的な籍のことですが,地域との関係や交流及び共同学習を推進するだけでなく,インクルーシブ教育システムの中で,障害のある児童生徒を含む多様な幼児児童生徒一人一人に最適な教育的支援を提供するための重要な柱であると思っておりますので,是非とも推進していただきたいと思っています。
 このため,副次的な籍を全国的な制度にするなど,より踏み込んだ新時代の制度改革を期待しております。また,副次的な籍を充実させるためには,小学校と特別支援学校等とのコーディネートする人材や仕組みづくりが必要だと思っておりますので,検討をお願いしたいところです。
 続きまして,特別支援学校の教育環境の整備のところですが,知的障害がある幼児児童生徒に対する各教科等の在り方の検討については,今回の新学習指導要領の趣旨を促進するために,是非とも推進していただきたいと思っています。それを進めるために,知的障害特別支援学校の各教科の指導の充実をするために,各教科の専門性をより高めるために,小中高等学校の先生方と特別支援学校の先生方の人事交流などの仕組みを作っていただいて,特別支援学校の教員の教科指導の充実が図られるといいと思っています。
 また,一方,これまで知的障害教育は,幼児児童生徒が生活上の課題を自ら解決していく力を身につけるために,各教科等を合わせた指導を実践してきた伝統と蓄積があることも踏まえて,各教科等の在り方の検討をしていただきたいと考えております。
 特別支援学校の「設置基準」については,これを作っていただけることは,我々とすれば,非常に喜ばしいところでございます。ただし,教室不足の現状を容認するような基準ではなく,障害のある幼児児童生徒にとって望ましい豊かな学習環境を整備するという視点に立った策定をしていただけると有り難いなと思っています。
 また,特別支援学校が大規模化し過ぎていることとかについても,設置基準の策定で,検討してほしいと思っております。また,設置基準策定以後,それを満たされない学校が少なからず生じるはずですが,それらの学校に対して,国としてどのように支援を行い,どのように最低限必要な教育条件を整備するかについての方針を打ち出してほしいと思っております。
 医療的ケアにつきましても,非常に重要な要素なので御覧になっていただければと思っています。
 続きまして,特別支援学校にも発達障害の幼児児童生徒が多く在籍することを踏まえて,発達障害のある児童生徒の障害特性に応じた学級編制や指導体制の抜本的な検討が必要であると思います。このことは高等学校の特別支援教育のところでも触れさせていただきます。
 また,ICTを活用した在宅就労ということは,肢体不自由特別支援学校や病弱特別支援学校の卒業者にとって非常に重要な形態になります。是非進めていただくとともに,分身ロボットとか最先端の支援機器等の導入の促進が必要であると考えております。
 デジタル教科書や教材の普及促進については,これも重要な要素だと考えておりますが,各障害種別等の実態を十分把握して適切に推進していく必要があると考えております。障害には非常に幅があり,多様でございますので,例えば視覚障害のある幼児児童生徒の方の見え方は,視覚的に抱える困難とか,眼疾は多様でありまして,デジタル教科書が合っている方もいますし,デジタル教科書でなく,拡大教科書が合っている方もいると,幼児児童生徒の実態に合わせた導入をしていただけると有り難いと思っています。
 医療的ケアについても重要な要素なのですが,医療的ケアにつきましては,担任,養護教諭,関係する医師,看護師などがチームを編成して実施体制を構築していくことが非常に重要であり,医療機関が隣接していない等,医療機関との距離がある特別支援学校の場合には,学校における医療的ケアを指導助言してくれる医師の配置など,検討が必要だと思っています。
 続きまして,高等学校における学びの場の充実です。ページは5ページになりますか。先ほど発達障害の話をしましたが,通常の学級で学んでいたり,通級による指導を受けていたりする発達障害のある中学生が,特別支援学校への入学を希望するというケースもあります。先ほど特別支援学校の発達障害のある児童生徒が増えているということもお話をしましたが,中学校の自閉症・情緒障害学級に在籍する生徒のうち,知的障害を伴わない生徒の場合には,高等学校に進学するしかないわけですが,このため支援が不十分なまま高等学校で3年間を過ごし,社会人となっても,離職,ひきこもりを招くケースというのは少なくないと,特別支援学校の側からは見ています。
 こうした生徒については,通級による指導も大切なのでしょうが,それだけでうまくいくのか。中学校の自閉症・情緒障害学級の中学校卒業後の状況について,いろいろ追跡調査・分析していただいて,例えば特別支援学校への進学や高等学校の特別支援学級の設置など,発達障害のある生徒の高等学校段階における支援をどうあるべきかについては,抜本的な改革の提案が必要ではないかと思っております。
 続きまして,特別支援教育に関する専門性ですが,先ほど川崎会長からもありましたが,小中学校の特別支援学級及び通級による指導の教員の専門性の向上は,特別支援学級担任が不足しているという現状の改善も含めて重要な要素だと思っています。そのときに例えば特別支援学校の教員免許状を有することを要件とするなど,特別支援学校の免許状の活用も含めた抜本的な問題解決の議論も必要ではないかなと思っています。
 また,特別支援学校の教員免許状ですが,是非,共通したコアカリキュラムの検討をお願いします。特別支援学校教員として採用されるときに,最低限,特別支援学校の学習指導要領に基づき,障害の特性に応じた教科等の指導や自立活動の指導方法,ICTの活用の知識等を習得しておいてほしいと思っております。
 最後に,各論のその他の部分ですが,6ページ下から2行目のところだけ御説明いたします。「特異な才能を持つ幼児児童」という表記がありますが,障害のある幼児児童生徒の場合には,「障害のある幼児児童生徒」と言わせていただいております。特異な才能の場合だけ持つという言い方はどうなのかなと思っておりますので,「特異な才能のある幼児児童」とするべきではないのかと思っております。全国特別支援学校長会とすれば以上でございます。

【荒瀬部会長】 市川会長,ありがとうございました。
 それでは,今,6人のそれぞれの団体の代表の方から御発表いただきましたが,この後,質疑応答,意見交換を行いたいと思います。いつものように,御発言のおありの方は挙手のボタンをよろしくお願いいたします。いかがでしょうか。
 では,東委員,お願いいたします。

【東委員】 札幌市にございます美晴幼稚園の東と申します。幼児教育の立場で,全国国公立幼稚園・こども園長会の箕輪先生と,全日本私立幼稚園連合会,加藤先生にそれぞれ1点ずつお伺いしたいと存じます。
 まず箕輪先生にですけれども,御用意していただいた資料の一番最後になるんですが,特別支援教育を推進するための諸条件を整備するとございます。これからも,この中教審の中間取りまとめでも教育的な特別な配慮や支援することも,あるいは外部とのつながりもあると思います。あるいは議論の中でのLGBTにつながりのある子供と,多様な子供の教育の機会の保障ということが大きなテーマになっていると承知しておりますが,国公立幼稚園におかれましては,新制度以降,こども園会の意向等もあり,教職員の時間の確保,研修機会や派遣業務の確保が非常に難しいと理解しております。今後も引き続き,国公立幼稚園がこの分野の主導的役割を担うための課題について,具体的な内容がございましたらば御教示いただければと考えております。
 次に,全日本私立幼稚園連合会の加藤先生でございますけれども,今日御報告いただいた内容とは別に,取りまとめの4のところで,学校評価について,市が実施する学校評価についても報告が上げられております。貴団体で積極的に取り組まれている第三者評価につながる学校関係者評価,取りわけ公開保育を中心としたお取組について,端的に御教示いただければと思います。
 私からは以上です。

【荒瀬部会長】 ありがとうございました。御回答は後ほどまとめてお願いしたいと思います。
 では,毛利委員,お願いいたします。

【毛利委員】 毛利でございます。本日は貴重な御意見をありがとうございました。まず日本私立小学校連合会様に御質問ですけれども,御発表の中で,私学では,全ての学校がコロナ休校中,オンラインでの朝の会や授業を行っていたというお話がありまして,全国の公立学校からすると,本当に,是非教えていただきたいなということになるんだと思っています。
 そのときの環境のことを教えていただきたいのですが,私学の学校では,全学級担任が家庭と接続できる太さのネットワークが構築されているのでしょうかということと,もしそうではないけども,できたということであれば,どういうやり方を,工夫をされたのかということと,家で子供たちが使う場合,学校にあるパソコンを持ち帰り,利用したのか,あるいは,家にあるパソコンを利用したのが多かったのかということをお聞きしたいと思います。
 あと,幼稚園の代表の方にお聞きしたいのですが,今後,家庭とのネットワークが重要ということなのですが,現在,幼稚園ではどのようなネットワークの形状が多いのでしょうか。全く引かれていないというところもあるんでしょうか。それともデバイスだけが足りないということになるんでしょうか。その辺,お聞かせいただければと思います。
 以上でございます。

【荒瀬部会長】 ありがとうございました。毛利先生,今,後のほうの御質問はお二人に対する御質問ということでしょうか。

【毛利委員】 全国国公立幼稚園・こども園長会様と,全日本私立幼稚園連合会様でございます。

【荒瀬部会長】 お二人ですね。後ほどよろしくお願いいたします。
 それでは,清原委員,お願いいたします。

【清原委員】 杏林大学・ルーテル学院大学客員教授の清原です。
 まず1問目は,全日本私立幼稚園連合会の加藤先生にお願いいたします。加藤先生のお話によって,幼稚園教育にもICTが極めて必要であるということが理解できました。そこで,特に児童のためだけではなく,保護者のためでもあり,併せて,教職員の幼児教育の質の向上に役立つものであるということ,多面的な効果について御説明をいただきました。
 正にICTを初等教育,中等教育に生かすとき,GIGAスクール構想が小学校,中学校で進んでいくならば,幼稚園と小学校の連携の中でICTの位置づけが有効とも考えます。そこで,それを進めていく上で,幾つかの要件も既にお話ししていただいておりますが,教員の皆様がICT環境を生かしていくための研修ですとか,学び直しですとか,あるいは,保護者や地域の専門家の支援ですとか,より充実させていくための具体的な御提言も更にいただければと。よろしくお願いします。
 2点目は,日本私立小学校連合会の重永先生にお願いします。私立小中学校連合会において,御発言の中で,今回の中間まとめの中核的な提案であります,1点目,教科担任制について御意見をいただきました。その中では,小学校高学年というのは全人教育の中で極めて重要な学年でもあるので,教科担任制の意義も分かるけれども,やはり改めて担任の役割というのも大変重要であるということで,教科担任制については,英語,算数,理科の導入が考えられているけれども,学校の実情に応じた裁量をという御提案でございました。
 もちろん私立小学校で教科担任制を導入されているところもあり,その実績なども検証されていることと思います。したがいまして,教科担任制を導入することで,少なくとも学級担任の力量が削がれてはいけないと。いい意味で,働き方改革の中で専門化する内容が教科担任に委ねられたとしても,学級担任の役割を軽減するのではなく,むしろ学級担任がより良い働きをするために教科担任制を導入するべきであると承りましたが,いかがでしょうか。教科担任と学級担任のバランスについての問題提起をいただいたと思いまして,その辺,補足をいただければと思います。
 重永先生に2点目なのですが,学級の少人数編制についても率直な御意見をいただきました。すなわち,私立の小学校の場合には,敷地面積であるとか様々な要件があって,必ずしも小人数の学級編制が容易ではない状況をお話しいただきました。もちろん3密を避ける中で,今後,小人数学級編制が重要にはなるだろうけれども,しかし,教育の質を落とすことなく,一定の人数で実践してこられた,その実績からの問題提起でもあると思います。財政的な支援があればやれないことはないというふうにも承ったのですが,少人数学級編制をするときに,私立小学校のお立場で,やはり配慮すべき国に求める点などについて,もう一度補足していただければと思います。
 最後に,特別支援学校校長会の市川先生に伺います。大変重要な取組をしてこられて,通級のお話をしていただきました川崎会長のお話にも,正に現場の実践を踏まえた具体的な御提言をいただいて感謝しております。
 さて,そこで市川先生に伺いたかったのは,一番理念的なところで,私たちは障害のある児童生徒に対して,やはり「合理的配慮」をきちんとしていくということで,特別支援学校,学級の皆様が進めてこられたわけですが,それと個別最適な教育,協働的な学習ということをどうリンクしていくかというときに,やはり「合理的配慮」というキーワードが位置づけられたほうが良いとお考えでしょうか。この辺,やはり特別支援教育の現場の皆様の教育理念と,そして,これから提案する令和の日本型学校教育の中の特別支援教育が,やはり理念を一致させたほうが良いと思いまして,その障害のある児童生徒に対する教育環境整備の中の「合理的配慮」というキー概念の位置づけについて補足していただければと思います。
 最後に,大変重要な問題提起を市川先生にいただきました。すなわち,取りわけ発達障害のある生徒が高校に進学したときの難しさということに直面していらして,今,正に,取りわけ障害のある生徒といっても,「発達障害のある生徒で,知的障害のない場合の高校進学」,あるいは「高校での教育の在り方を丁寧に検討してはどうか」という提起をいただきました。これは今回の取りまとめの最終に間に合わないかもしれない重要な問題提起をいただいたと思いまして,特別支援学校の校長会の皆様も,高等学校の教育の在り方,通級の在り方などについて検討していらして,その中での展望について,更に補足して教えていただければ有り難いと思います。
 以上,欲張って質問してしまいましたが,皆様,どうぞよろしくお願いいたします。ありがとうございます。

【荒瀬部会長】 ありがとうございます。
 それでは,今,各委員から出ました御質問につきまして,あるいは御要望につきまして,それぞれお答えいただきたいと思います。
 まず箕輪会長,まとめてお答えいただければと思います。よろしくお願いいたします。

【箕輪全国国公立幼稚園・こども園長会会長】 御質問ありがとうございます。2点,御質問いただきました。
 まず東先生からいただきました特別支援教育に関わる点について,全国の国公立幼稚園・こども園の現状担っていくべき役割のことについてお話をさせていただきます。
 特別支援教育に関しましては,全国でも自治体によって取組の差が非常に大きいのが現状です。場所によっては通級のようなものがあるところ,特別支援学校の中に,幼稚部の設置があるところもありますが,そういうことがかなっていない地域も多く残っております。
 園によっては,特別支援教育のコーディネーターという役割を置いている園があるところ,あるいは心理の専門の先生が定期的に来園されて,該当幼児の観察を定期的に行いながら,担任の指導について助言をいただける,そのような仕組みのある自治体もあります。今現在は地域によって取り組みが様々で差が激しい状態です。全国の国立,公立の園としては,書面にも書かせていただきましたが,地域にお住まいのお子さんに広く門戸を開いていくということは今後も大事な役割の一つであり,支援が必要なお子さんに,個別に,そのお子さんに合った教育をしっかり提供していくという役割は,私どもの園がしっかりと担っていくべきと考えています。
 ただ,担任が専門性をそれぞれ身につけていくことで,学級経営の中で対処していくということはもちろんこれからも努力し続けていく必要がありますが,そこだけでは解決し切れないほどのニーズの高まりがもう既に生まれておりますし,今後,更に高まっていくと思われます。地域の実情,つまり,どのくらい支援が必要なお子さんがその地域にいらっしゃるかということをしっかり把握した上で,通級や特別支援学級あるいは特別支援学校の中の幼稚部の設置を進めていくこと,療育を行う機関と幼稚園,こども園を併用できるよう,個々に必要な療育が行える機関を増やしていく,あるいは保護者の相談窓口を増やしていくということが,今後考えていくべきことではないかなと思っております。
 以上になります。
 2点目,毛利先生から御質問いただきました,家庭とのネットワークにつきましての国立,公立の園での現状になります。こちらにつきましても,地域によって非常に差が大きい現状がございます。国立は比較的,オンラインも進んでいる園があるようですが,公立に関しては,まだまだ紙ベース,そして,対面が中心の園が多くなっております。
 紙ベースは,例えば園便りや学級便りのようなもの,また,対面は,全体保護者会や学級懇談会,あるいは,保育を参観・参加していただくような機会を作ること,または行き帰りの送り迎えのときの会話ということになります。この対面をするということに関しては,オンラインが進んでいっても,むしろ家庭とつながりを強固にしていく上では,非常に意味があることだと思いますので,対面はオンラインが進んでも大事にしていきたいことの一つです。
 一方,コロナ禍において,ホームページやメールで発信するということ自体が出来にくい現状が浮き彫りになりました。このところ,自治体によっては発信方法を改善しているところがありますが,まだ数が少のうございますので,この機会に是非発信していくツールを各園にしっかり備えていきたいという思いでございます。
 以上になります。ありがとうございました。

【荒瀬部会長】 ありがとうございました。
 では,続きまして,加藤教育研究委員長,やはりまとめてお答えいただければと思います。よろしくお願いいたします。

【加藤全日本私立幼稚園連合会教育研究委員長】 最初に,公開保育を中心とした幼児教育の質向上システムについて,簡単に御説明を申し上げます。
 私たちは,ECEQ,イーセックと呼んで,私ども私立幼稚園で開発してきたものですけれど,もともと私立幼稚園というのは地域にずっと根差して,そして,建学の精神をもって,多種多様な教育実践を行っているのが私立幼稚園でございます。もちろん,そういった意味では非常に豊かな文化というものを地域で作り上げているのが私立幼稚園です。
 一方,公的な教育として,学校評価,質の向上は欠かすことができません。そのために外側から物差しを当てて,良いか,悪いかを測ってチェックするというのではなくて,それぞれの園の良さを伸ばし,課題を克服していく。それぞれが我が事として,正に文部科学省で行っている学校評価というのはそういう哲学の下に作られておりますから,園内に外部のトレーニングされたファシリテーティブなコーディネーターが派遣されて,そのコーディネーターの下で園内研修を行い,自園の良さを自分たちで抽出する。また,課題がどこにあるかということを話し合う。それを基にテーマを決めまして,そのテーマを掲げて,公開保育を実施いたします。地域の幼稚園の先生方や関係者をお招きして,そのテーマの視点で保育を見ていただいて,その後,午後の協議で,いろいろな御意見をいただきます。
 そのことによって,自園で把握している姿以上に,外側から見たらこういう良さがあるね。あるいは,ここの課題に向かってこういうふうに工夫しているけど,更にこんな工夫ができるよとか,こんなやり方はどうだろうかという外部の多様な意見をいただくことによって,これは学校関係者評価に当たるわけですけれども,そうやって外の視点からも御意見をいただき,また,後日,コーディネーターがそれを振り返って,話合いを持って,まとめていく。すぐやれること,長期的な課題のこと,1人で頑張ること,みんなでやることなどを整理していきます。
 そうすることによって,PDCAが個人としても,あるいは園全体としても,そのPDCAを回すということはこういうことなんだという文化を園に根づかせていくというのが私どもの考えている,公開保育を中心とした幼児教育の質向上システム,ECEQという自己評価であり,関係者評価であるものです。
 次に,ICT利用のことについて申し上げます。幼稚園はもともと子供だけを預かって教育する場ではなくて,保護者と協働しながら,これは正に社会に開かれた教育課程ということと通じますけれども,保護者の方,家庭と一緒になって子育てをしようという文化を持ってございます。今回,コロナ禍において,その交流する,つながり合うというものが断絶してしまったわけです。それに代替する形としてICTが入ってくれば,これは行けるんじゃないかということで,ICTの利用が,そういった意味で普及してまいりました。もちろん全国に普及されている状態ではありません。
 近年では,最近はアプリですね。スマートフォンにアプリを入れて,家庭との連絡を取るとか,お知らせをする。紙ベースではなくて,デジタルベースでお知らせをすることはかなり普及してきているように思います。それには一つ理由があって,幼稚園というのは非常に若い保護者層の方と出会うという場所なのです。なので,絶えず新しい世代の方々が保護者としていらっしゃる場所なので,スマートフォンの普及率は大変早い。そして,そういう文化に慣れていらっしゃる方が保護者で入っていらっしゃいますから,私たちのほうがどんどん更新していかなければなりません。
 一方,ICTは,零細企業体である幼稚園に,今は無償化の事務ですね。あるいは新制度の事務が非常に,子供たちの入退室管理や在籍管理が複雑になってきていますので,そういった意味で業務の能率化も非常に切実な問題として迫ってきている。それから,先ほど申し上げました双方向にやり取りする文化をもともと持っていましたから,それを何とかせねばならないというところで,アプリを使っているところ,そして,近年では,ズームですね。ズームでの双方向性のものを取り組んでいるところです。全国に普及しているという状態ではないけれど,それはもともと持っていた文化を新しい時代に合わせていくと私たちは考えて,取り組んでございます。
 最後に,清原先生からいただきました部分ですけれども,学び直しといいますか,幼稚園は比較的まだ若い先生たちの多い職場でございます。今回のコロナ禍においてのICT導入においては,若い先生たちが上手に巧みに使いこなしていらっしゃる。もちろん大学でもそういうことは,もう今やパソコンを使った授業に切り替わっておりますので,非常にそういった意味では,私たちベテランが新人,若い先生たちから学ぶという形になってきています。私から,もし御提案できることがあるとしましたら,ICT自体が世の中に,幼児教育におけるICTというと誤解があって,学習支援のような形で,例えばiPadのこのソフトを使うと英語ができますよとか,漢字が書けますよみたいなものが幼児教育におけるICTと誤解されている方がとても多いのです。
 私たちはそういうことで使いたいわけではなくて,子供たちが調べたいときに,絵本の更に先にあるもの,折り紙の本には書いていないような折り方が調べることもできる。そういうデジタルツールでもあり,また,連携ツールでもある。そういった意味で,とりわけ連携するネットワークをどうICTを使ってうまくやるのかということの好事例をできれば収集いただいて,おまとめいただいて,紹介することによって,ああ,こういうふうにすれば今までの幼児教育が大事にしてきた文化が新しい時代にもつながっていくのだというような好事例集みたいなものが収集されるといいかなと思っております。
 もうひとつ,ICTで課題だと思っているのは,やはり開かれてしまっているネットワークであって,いろいろ工夫はするんですけれど,個人情報を保護することができるようにある閉じたネットワークの中で共有できないかという課題を持っていまして,それはそういう技術を持っていらっしゃる方々との連携によって,ある指定したネットワークの中で,これは共有できる。子供の顔は出していても,保護者も安心できるし,僕らも開示できるような。これが悪意のある人たちに流れて悪いことをされないというような,更にそういう技術を私たちに提供いただけたら大変有り難く思います。
 雑駁な回答となってしまいましたが,いろいろ御質問いただきまして,ありがとうございました。

【荒瀬部会長】 ありがとうございました。
 それでは,重永会長,お二人の委員からそれぞれ複数の御質問がございました。まとめてお願いいたします。よろしくお願いいたします。

【重永日本私立小学校連合会会長】 日本私立小学校連合会の重永でございます。御質問ありがとうございました。
 まず毛利先生の御質問でございますが,コロナ禍における私立小学校の在宅学習のオンラインの支援についてでございますが,私立小学校は公立小学校と違いまして,一学校法人が経営している私立小学校というのが普通は一つでございまして,多くても2つか3つにとどまるわけですので,そういう意味では,機動的に動くことができますので,ICTの環境整備というのは,コロナになる以前から,ほとんどの私立小学校は進めておりました。例えば電子黒板の導入につきましても,かなり多くの学校が導入しておりますし,また,Wi-Fiの環境については,これはもうほとんどの学校がずっと以前から整備していたのではないかと思います。今回のコロナ禍におけるネットワーク環境としまして,一番大事なのは,先生も御指摘のございましたように,在宅環境はどうかということでございますけれども,この点については,各学校で,1人に1台,iPadなどのタブレットを支給,あるいは買ってもらうという,どちらかでもって用意している学校というのはそう多くはございません。
 今,私立小学校は急速にGIGAスクール構想に合わせて整備しようとしてはおりますけれども,コロナ禍に入る以前はそんなに多くはございませんでした。ですから,当然,コロナ禍に入って,すぐに1人1台という環境を全ての学校が整えることができたわけではございません。1人1台,各家庭に持たせるようにしていた私立小学校では,それを使ってズームで行うですとか,Webexというのは今回のあれで,私は初めて聞いたんですけども,ズームで授業を行うですとか。ただ,1人1台持っていないところは,もう各家庭で大型のパソコンを使ってだとか,スマホを使ってだとかということでお願いする形で,限定のユーチューブ配信ですね。これを使って動画を送り届けると。この動画の作成にはいろいろと各学校で工夫したということを聞いております。あたかも子供たちが目の前にいるような感じで先生が演じながら,また,質問なども仮想の質問をしながらというようなことでやったと聞いておりますので,ズームとこのユーチューブの限定配信を様々に活用して,ほとんどの学校が対応したということでございます。
 家庭に持ち帰る,持ち帰らないにつきましては,1人に1台,支給ないし買ってもらっているところは家庭に持ち帰るということで対応したわけですけれども,そうでないところは,家にあるもの,先ほど申しましたように,様々な端末を利用してもらったということでございます。よろしゅうございましょうか。
 1点,それに付け加えておきますと,ズームで全ての授業を行うということについては,習熟している学校は別としまして,にわかに取り組んだところでは,あまり評判はよろしくございませんでした。といいますのは,特に低学年ほどですけれども,低学年は隣に家の方が付ききりで支援していかないと,児童だけではズームに集中できないというところがあったようでございますので,動画の配信のほうは自分の好きなところで止めて,また後で聞くとか,あるいはまた繰り返し聞くということができたので,おおむね好評だったということで聞いております。
 それでは,清原先生の御質問でございますけれども,教科担任制についてなんですが,このことは,今,先生の話をお聞きしながら思ったんですが,私ども私立小学校では,教科専任制のことでしたら,多くの私立小学校が,例えば実技系の教科,体育ですとか家庭科,図工科,そういう実技系の教科はもちろん教科専任でやっております。ただ,私どもが今,教科担任という容易な視点を持っていることは,――例えば英語科の1教科だけ教えている人がクラス担任を持つとか,算数の教科だけを教えている人がクラス担任を持つとか,――これについて,ちょっといかがかなというふうに言っておるところでございます。
 私の勤務校では,やっぱり理科も含めて,そういう特別な教科については非常勤講師を雇うこともございますけれども,専科の先生を当てておりますが,クラス担任というのはやっぱりできるだけ多く授業を見るということで,授業時間の多い国語,社会,算数は必ず担任が教えると。そうしますと,毎日3時間から4時間は子供たちと接することができるわけですね。それで,児童を総合的に把握しながら家庭とも連絡を取って指導できるということがございますので,そういうことで申し上げたところでございます。
 それから,清原先生の2つ目の学級の少人数編制についてでございますけれども,国に求めることは何かとおっしゃってくださいましたけれども,やはり私立小学校は敷地を増やさない限りは,少人数学級ということは経営的な観点から難しいことですので,敷地面積を増やすことなく,この設備を増やすことなく,少人数にするためには,やはりお金が伴うことでございます。ですから,当然,学級定員を減らした分,授業料収入の減収について補助金を増やしていただくことが一番,早急にできる対策でございます。それから1点お答えしておきますが,これに関連して一つ申しておきますと,私どもは人数を少なくすれば良いという考え方には立っておりません。これは私の大学の教育学の恩師は,『二十四の瞳』が1学級にふさわしそうだ。つまり,『二十四の瞳』ですから12人学級ということを私どもに教えてくださったんですけれども,今はこれは間違いだと思っております。12人では,児童会活動,学級会活動,これについてはちょっと不足がございます。ですから,最低でも30人前後の人数があったほうがクラス集団として生きた教育をすることができるということは思ってございます。
 以上,お答えになりましたでしょうか。よろしくお願いいたします。

【荒瀬部会長】 ありがとうございました。今,重永会長が御説明くださいました教科担任制の話でありますけれども,ここで我々が申しております教科担任制,中間まとめに書いてありますのは,それぞれの専門の教科を担当する者を小学校高学年に入れてはどうかという,そういう話でございますので,今,会長が後からおっしゃったことに同じでございますので,よろしくお願いいたします。
 それでは,市川会長にお答えいただきたいと思います。やはり複数の御質問ございましたので,よろしくお願いいたします。

【市川全国特別支援学校長会会長】 ありがとうございます。2つの御質問いただきまして,正直,今,非常に,どう答えて良いのか悩んだ御質問でございます。校長会として答えるというより私の個人的意見になってしまうかもしれませんが,1点目の合理的配慮については,正にこの合理的配慮も含めて,個別最適化の中に位置づけるとするということを整理するべきだと思います。
 というのは,合理的配慮というのは,御案内のとおり,障害者の権利に関する条約に基づくインクルーシブ教育システムを確保するために,障害者が,ほかの方と平等に教育を受ける権利を守るための大切な考え方でございます。ただ,この合理的配慮については,均衡を失した又は過度の負担を課さないものということで,正に合理的ということだと思います。そのことも含めて,これが個別最適化に含まれるということはしっかり整理する必要があると思います。
 もう一つ,特別な教育的な支援の必要な子供たちについては,どの学校で学ぶかという,就学相談というシステムがもう一つございまして,この就学相談では,児童生徒の教育的ニーズを踏まえて,小中学校の通常の学級,特別支援学級,通級による指導の活用,特別支援学校のどの学校に就学をするかを御相談していくわけですが,その過程においては,保護者の方の御意見を十分尊重しながら進めていくという流れになっております。そのときに,この合理的配慮をどこまで考えて,保護者の方の気持ちに寄り添うかということになっていきます。
 それも含めた個別最適化であるということをしっかりそこは整理しておくべきだと思っております。私は全ての子供が教育を受ける権利という意味で,個別最適化は,障害のあるお子さんも含めて,合理的配慮も含めて,日本の教育全体のことであるという捉え方をするべきだと思っています。その場合に,小中学校における個別最適化の範囲がどこまで広がっていくのかということについて,小中学校の先生たちからも御意見をいただかなければいけないのかなと思っている次第です。
 このことについては,是非議論していただいて,日本のあるべき姿を考えていただくのが有り難いなと思っています。
 2点目の発達障害のお子さんについてなんですが,校長会からの意見から出てきたのは,発達障害の生徒さんで,特別支援学校に入学したいと希望される方が結構いる。ただ,知的障害のない生徒については,特別支援学校の対象にならないので,高等学校のほうに進学する。そのときに高等学校のほうで,うまくいけば良いけれども,うまくいかない場合などについて,特別支援学校にもう一度入学したいという御相談が来る場合もあるということです。
 ですから,特別支援学校のほうの立場から言うと,希望なさった方は,その後どうなるのかという心配がありますので,発達障害の高等学校段階の教育の在り方ををしっかり考えたほうが良いというのが校長会としての意見でございます。
 ただ,別の会議で,私が参加しているんですが,新しい時代のの特別支援教育に関する在り方の有識者会議のほうで,発達障害という概念と知的障害という概念について,もう一度考え直したほうが良い,整理し直したほうが良いと,医療の考え方では,発達障害の一部が知的障害なわけですから,知的障害があるので特別支援学校だと,知的障害がないから高等学校だという分け方が本当に良いんだろうかと。発達障害の児童生徒の中でも非常に感覚過敏等で集団での生活が苦手な方がいらっしゃいますので,そういう方は知的障害がないけれども,少人数での指導が必要な方もいらっしゃるとということについて,議論したほうが良いという提案させていただいております。このことも非常に大きい問題だと思っていますが,是非議論していただきたいということで御提案させていただきました。
 以上でございます。

【荒瀬部会長】 ありがとうございました。御質問いただきました東委員,毛利委員,清原委員,よろしいでしょうか。

【清原委員】 はい。どうもありがとうございます。

【東委員】 ありがとうございました。

【毛利委員】 ありがとうございました。

【荒瀬部会長】 ありがとうございます。それでは,ほかに御質問のおありの方が今の時点ではいらっしゃらないようですので,時間のほうも終了に近づいてまいりました。ここで質疑応答はおしまいにしたいと思います。
 箕輪会長,加藤教育研究委員長,重永会長,平方常任理事,川崎会長,市川会長,今日はお忙しい中,お時間を頂戴いたしまして,御説明いただきましたことに感謝申し上げます。ありがとうございました。
 それでは,今日,これでこの辺りにしたいと思うんですが,次回の予定につきまして,田中教育制度改革室長から,御説明をよろしくお願いいたします。

【田中教育制度改革室長】 午前,午後にわたる御審議ありがとうございました。次回の本特別部会につきましては,連日で恐縮ではございますが,明日29日木曜日の10時から12時,それから,午後14時から16時にて,引き続き関係団体からのヒアリングを予定しております。どうぞよろしくお願い申し上げます。

【荒瀬部会長】 それでは,議事を全て終了したということで閉会いたしたいと思います。明日御参加いただきます委員の皆様,また,明日お会いしたいと思います。よろしくお願いいたします。ありがとうございました。

―― 了 ――


 

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