新しい時代の初等中等教育の在り方特別部会 (第15回) 議事録

1.日時

令和2年10月22日(木曜日)14時30分~16時05分

2.場所

文部科学省3階1特別会議室(WEB会議)
東京都千代田区霞が関3-2-2

3.議題

  1. 関係団体からのヒアリング(全国知事会、全日本教職員連盟、日本高等学校教職員組合、全国教育管理職員団体協議会)
  2. その他

4.議事録

【荒瀬部会長】 皆さん,こんにちは。荒瀬でございます。それでは,ただいまから中央教育審議会初等中等教育分科会第15回新しい時代の初等中等教育の在り方特別部会を開会いたします。本日は御多用の中,御出席いただきまして誠にありがとうございます。
 今日もまた新型コロナウイルス感染症の感染拡大を防止するため,ウェブ会議方式にて開催させていただきます。
 まず,本日の会議開催方式及び資料につきまして,田中教育制度改革室長から御説明をお願いいたします。

【田中教育制度改革室長】 教育制度改革室長の田中です。本日の会議につきましても,最近の会議と同様に,Webexを用いたウェブ会議方式にて開催させていただきます。ウェブ会議を円滑に行う観点から,大変恐れ入りますが,御発言時以外はマイクをミュートにしていただくようお願い申し上げます。委員の皆様には御不便をおかけすることもあるかと存じますが,何とぞ御理解のほどよろしくお願い申し上げます。
 それでは,資料の確認をさせていただきます。本日の資料は,議事次第にございますとおり,資料1から資料5-2まで,加えて参考資料となっております。御不明な点等ございましたら,お申しつけください。

【荒瀬部会長】 ありがとうございました。
 本日は,関係団体からのヒアリングの2回目といたしまして,全国知事会,全日本教職員連盟,日本高等学校教職員組合,全国教育管理職員団体協議会の4つの団体の代表の方から,中間まとめについての御意見を伺い,質疑応答・意見交換を行いたいと思います。
 なお,本日も報道関係者の皆さんと一般の方向けに,本会議の模様をオンラインで配信しておりますので,御承知おきください。
 それでは,本日の議題に入ります。まず,全国知事会から御発表をお願いしたいと思います。長野県知事でいらっしゃる阿部全国知事会文教環境常任委員会委員長から御発表をお願いいたしたいと思います。
 阿部知事,よろしくお願いいたします。

【阿部全国知事会文教環境常任委員会委員長】 ただいま御紹介いただきました長野県知事の阿部守一でございます。全国知事会の文教環境常任委員長を務めさせていただいているという立場で,今日は発言させていただきたいと思います。
 まず,荒瀬部会長をはじめ特別部会の皆さん方には,新しい時代の教育の在り方を御審議いただき,そして中間まとめいただいておりますこと,心から敬意と感謝を表したいと思います。
 かなり広範な分野にわたって,我々としても必要だと思われる論点が出されていると考えております。その中で,今日は時間も限られておりますので,知事という立場から,高等学校教育について,それから遠隔・オンライン教育を含むICTを活用した学びの在り方について,この2点に絞ってお話を申し上げたいと思います。
 まず,高等学校教育の在り方についてであります。私どもからお配りしているレジュメは,大変簡単過ぎるペーパーで恐縮でございますけれども,高等学校の在り方については長野県としても,そして全国知事会としても,これから大きく転換させていかなければいけないという問題意識を持っています。
 そういう観点で,これは荒瀬部会長にも御参画いただいておりますけれども,全国知事会として,「これからの高等学校教育のあり方研究会」というものを設置して,公立高等学校の設置者として,在り方の検討を始めております。また,この研究会においての方向性が出てくれば,中教審の皆さん,あるいは文科省の皆さんにも,御提案,御提言していかなければいけないと思っておりますので,まだ我々は検討途上でありますが,そうした中で何点か問題提起をさせていただきたいと思います。
 まず1番目に,高等学校の多様化ということを記載させていただいております。もとよりこれからの教育は,高校に限らず,個別最適化された学びの場としていくということが大変重要だと思っております。これは部会においても,基本的にはそうした方向で御検討いただいているわけでありますが,あえて知事の立場で申し上げれば,我々はやはり分権の在り方,国と地方の役割の在り方ということを常に意識しながら仕事をさせていただいてきております。
 そういう中でこの学校の部分,とりわけ義務教育と高等学校教育は,少し国の関わり方は現在でも違っておりますけれども,やはり高等学校教育については,できるだけ地方,あるいは学校現場の自由度を増やしていただきたいと考えております。これは後の話とも関連しますけれども,やはり責任と権限というのは表裏一体の関係だと思っておりますので,できるだけ学校現場に近いところで,責任を持って,権限を持って対応できる仕組みにしていってもらいたいと思っています。
 例えば学習指導要領で教科ごとの標準単位数について,これは標準という形ではありますけれども,定めがなされております。各学校が極力柔軟に教育課程を編成することができるようにしていただきたいと思いますし,また,例えば多様化という観点で考えたときに,選択肢を国として示して,この選択肢のどれかだよというやり方ももちろんあり得ると思いますけれども,なるべくそういう枠組みは外していただいて,地方で自由に学校の在り方を考えられるようにしていただくと,これは我々の責任も増してくる形にはなりますけれども,より現場も含めた主体的な検討が進められるのではないかと思っております。
 また2点目として,修得主義について記載をさせていただいております。この修得主義の推進について,実は知事会の研究会でも,主要なテーマとして取り上げて検討しているところでありますけれども,全日制の課程の修業年限は,今3年ということで規定されております。ただ私どもは,生徒の能力,あるいは希望によって,これを延長したり,あるいは短くしたり,そういうことを可能としていくことが必要でないかということを検討しているところでございます。
 秋入学の話も全国的に盛り上がったところがありますけれども,小中学校まで含めて一律に秋期入学を導入するというよりは,大学では今かなり秋期入学も取り入れていただいております。そうした大学との接続を考えたときには,高等学校においても卒業時期が画一的でいいのかという問題意識もありますし,また個々人の学習の速度に合わせて,修業年限が画一的でないということも考えなければいけないのではないかと考えております。
 是非こうした観点での修業年限の柔軟化ということも御検討いただきたいと思いますし,また単位の認定に関して,今,学校外の学習については36単位まで単位認定可能という制度になっています。長野県においても,例えば高等学校卒業程度認定試験,あるいは英検,数検,こうした資格を活用して単位認定をしている例もありますが,まだまだ制度の活用は限定的だと考えております。学校での履修ということだけにこだわらずに,柔軟な単位認定を行うことも,この修得主義を進めていく上では重要だというふうに考えております。是非この点についても御検討を進めていただければ有り難いと思っております。
 それから次の丸で,学校現場が地域と連携協働してリーダーシップを発揮ということで,先ほどの権限と責任の話とも関係しますけれども,多様な学びが必要だということは多くの皆様方の共通認識だと思います。その多様な学びを誰がどうやって実現するかということに関しては,先ほどから申し上げているように,できるだけ学校現場であったり,あるいは学校現場に近いそれぞれの地域だったりで考えられる仕組みにしていただくことが重要だと考えております。
 そのためには例えばマネジメント,これは今の先生方にもさらにマネジメント能力を身につけていただくことも重要だと思いますし,またそうしたマネジメントを担う人材であったり,あるいは組織であったり,そうしたことも,学校経営という観点からは充実,強化をしていくことが必要ではないかと考えております。
 また地域との協働連携というのも,例えば本県でも飯田OIDE長姫高校はかなり進んだ取組をさせていただいておりますけれども,学校外の様々な組織と連携して取り組むということ,またそれは人材としてのスキルも必要になってきますし,金銭的な費用負担も場合によっては出てくるということで,これは我々県としてもしっかり考えなければいけない部分だと思っておりますが,国においてもいい事例の収集,あるいは全国展開,こうしたことも御検討いただきたいと思っております。
 それから,大きな2点目の遠隔・オンライン教育を含むICTを活用した学びの在り方ということであります。これについては全国知事会としても,高等学校のGIGAスクールの推進を積極的に進めていかなければいけないと思っております。ただそのときに我々が考えなければいけないと思っておりますのが,一つは教育格差が生じないようにということで,例えば御家庭にICT環境がないような子供たちが,取り残されることがないようにしていかなければいけないと思っております。
 また一方で,どうしてもお金がかかるのでハードの整備に視点が向きがちでありますが,ICTの活用は単なる手段でありますので,それに合わせて学習の中身をどう変えるかということについて,しっかりとした方向感を持って取り組む必要があると思います。これは我々も考えていかなければいけないと思いますけれども,大きな方向性については,まず国において示していただきたいと考えております。
 それから,学校間連携の促進と書かせていただいておりますけれども,このICTを活用して一つの学校が閉じた形で教育を行うのでは,これまでの教育とあまり変わっていきません。そういう意味では,例えば都市と農村の学校が連携するとか,あるいは海外との連携を促進するとか,子供たちの視野や視点を広げるという観点での活用も大変重要だと考えております。我々も主体的にそうしたことを模索していきたいと思いますが,是非こうした学校間連携は,国全体で音頭を取っていただくことが必要ではないかと考えております。
 また,「オンライン教育」と「対面指導」のベストミックスということで書かせていただいておりますけれども,オンライン教育については,例えば一定の資質・能力がある子供にとっては有効な手段になり得るけれども,なかなか学びに追いついていくことが難しい子供たちにとっては,かえってオンラインで格差を生じさせるのではないかといったような議論もあります。このオンライン教育の有効性については,是非科学的なエビデンスを持った対応をしていくことが重要だと思っています。
 我々知事会としても,この効果測定ができないかということを検討しているところでありますけれども,是非国全体でも,そのオンライン教育の有用性のエビデンスについてしっかり把握をしていただいて,そして各学校,あるいは各地方の取組に反映できるようにしていっていただきたいと考えております。
 ICT教育の推進は,長野県としてはICT教育推進センターを立ち上げて,来年度以降相当力を入れて取り組んでいきたいと思っておりますので,そうした取組にも是非支援をいただければ有り難いと思っております。
 レジュメで記載した大きな2点については以上でございますが,加えてあと2点ほど,レジュメに書いていない点でありますが申し上げたいと思います。
 先ほどからマネジメントの話をさせていただいておりますけれども,我々知事の立場で高校教育のこれからを考えたときに,やはりお金と人をどうするかということが重要な論点であります。もとより義務教育ではございませんので,我々地方側が,相当程度責任を持って対応していかなければいけない分野だとは思っておりますが,しかしながら,例えば高校で申し上げれば,人口減少社会にあって,学校の統合,廃合というのは避けられない状況だと思います。
 そしてこれから求められるのは,やはり学びの空間としてふさわしい学校をどうするか。長野県において学校空間の在り方の検討も行って,より学びにふさわしい校舎の在り方というものを検討しておりますけれども,こうしたものを進めていく上で,相当程度多額な費用がかかってまいります。
 また高校も,例えば工業高校,農業高校などの専門高校,こうした高校で時代の変化に対応した教育を行うためには,それなりの機材,機械類,こうしたものも必要になっています。そうしたことを考えると,この財政負担の在り方については,これからの教育の在り方を考える上では,避けて通れない論点ではないかというふうに思っております。
 それからもう一点,人の話でありますけれども,例えば少人数学級を進めていくという場合には,もちろん教員の供給ルートを太くしていくことも必要かもしれませんが,地方の立場で申し上げれば,人口減少社会の中で,今我々は一人多役の社会というようなことを申し上げたり,あるいは人生二毛作社会というふうに申し上げてきています。
 フルタイムの学校の先生だけではなくて,社会経験があるような方たち,あるいは企業で働いて,一定のスキルや能力を身につけている方たちが学校で教育できるという環境を,もっともっと広げていくことが重要だと思っています。特別免許状の発行という手法もありますけれども,まだまだ実際の運用は限定的な状況になっておりますので,こうした人材をどう確保していくのか,そしてどう活用していくのか,こうした視点も極めて重要だと思っております。
 この中間まとめの中にもそうした視点を入れていただいておりますけれども,これは知事会を代表しての意見ということでありますので,あえてこの財源,財政の話,そして人の話について付け加えさせていただきました。
 私からの発言は以上とさせていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

【荒瀬部会長】 ありがとうございました。
 それでは,ただいまの御発表につきまして,今から15分程度で質疑応答,意見交換を行いたいというふうに思います。発言の方のおありの方は,挙手ボタンを押していただきますようによろしくお願いいたします。ではいかがでしょうか。
 清原委員,まずお願いいたします。

【清原委員】 ありがとうございます。前三鷹市長の清原慶子です。阿部知事さん,地方分権の視点から,権限と責任を持って,とりわけ高等学校教育について新たな地平を切り開いていきたいという意欲的なお話を,どうもありがとうございます。
 1点質問をさせていただきます。今,初等中等教育の中でも,とりわけ小学校,中学校で順次「GIGAスクール」ということで,ICTの活用が進もうとしています。その中で,高等学校もまた「GIGAスクール」を推進していきたいということで,小学校,中学校,高校の連携を視野に入れながら,取組を構想されているというふうに受け止めました。
 その中で,やはりもちろん施設,設備,そしてパソコンの普及,情報通信環境の整備なども重要ですけれども,中身が重要であるというふうに問題提起もいただきました。その中身を作っていくときには,どうしてもが優れた教員というのが求められていくことになります。県におかれましては,高等学校の教員に責任を持つだけではなくて,小学校,中学校の教員の養成やまた確保にも,責任を持っていらっしゃるというふうに認識しております。
 教員の養成や,あるいは優れた資質の教員の確保,さらには民間の皆様の活力も活用される中で,今,教職員の在り方について,県におかれましてどのような取組をされているか。先ほど御紹介いただきました,「これからの高等学校教育」を考えるときにも重要な柱に位置づけられているものと思いまして,教職員について,今後の在り方,あるいは課題解決のために国に求めていること,あるいは教員養成大学に求めていることなど,さらに御意見をいただければ有り難いと思います。よろしくお願いいたします。

【荒瀬部会長】 ありがとうございます。他の御質問はまとめて後から御回答いただきたいというふうに思っております。
 では,天笠委員,お願いいたします。

【天笠委員】 失礼いたします。どうもありがとうございました。
 私のほうからは,今の清原委員の御意見,御質問と少し重なる部分もあるんですけれども,御発表の高等学校の教育についても,もちろん御指摘の御意見等,大変重要な視点だと思うんですが,今回のこの中間まとめの改革というのは,義務教育から高等学校まで切れ目のない教育改革ということも,また一つの柱ではないかというふうに思っております。
 ですからそういう点からすれば,小中を含めた市町村教育委員会と県の在り方ということも,今後この中間まとめを具体的に実行していくに当たって,大きなウエートになってくるんじゃないかと思っておりますけれども,その県教育委員会と,それから市町村教育委員会,あるいは県教育委員会の教育長さん等と市町村教育委員会の教育長さん,そこに知事さんというお立場,このパートナーシップというか,関係というネットワークが,今後それぞれの都道府県の教育改革の大きなウエートを占めていくことになるんじゃないかと思っております。そこら辺のとりわけ市町村教育委員会に向けての県知事のお立場からということについて,お考えがありましたら聞かせていただければということと,それからもう一点は,今後この中間まとめを実行していく場合に,この国が抱えている大きな課題に直面せざるを得ない。すなわち何かというと,人口集中地域と,それから人口減少地域,過疎地域の二極化した状況の中で進めていかなければいけない,そういう課題性を持っているんではないかと思うんですけれども,知事さんの県,長野県では,そういう意味で言うと,人口の減少している地域等も抱えながら,その中で取り組まれているかと思うわけです。そういう人口の減少地域における教育改革と,それから人口の稠密な地域の改革,この辺りについて今回の中間のまとめと重ね合わせながら,お考えがあったら聞かせていただければというふうに思います。
 以上,どうぞよろしくお願いいたします。

【荒瀬部会長】 ありがとうございました。
 それでは,今の清原委員と天笠委員からございました御質問について,阿部知事,よろしくお願いいたします。

【阿部全国知事会文教環境常任委員会委員長】 清原さん,どうも御無沙汰しています。いつもお世話になってありがとうございます。
 後ほどの天笠先生の御指摘と基本的に同じような観点ですけれども,もちろん知事の立場では,先ほど高校の話だけ申し上げましたけれども,市町村立学校の義務教育の職員は県費負担教職員ということでありますので,教員の確保,あるいは教員の基本負担をどうするかということは,県教委,そして我々がしっかり考えなければいけない分野であります。
 そういう中でこのICTの分野については,先ほど申し上げたように,ICT教育推進センターというものを県として作ろうと思っています。これは進んでいる県内市町村の教育関係者の皆さんとお話をしたときに,やはり今コロナ禍で,どこの学校でも取りあえずの授業を行えるような環境までは,頑張って作ってもらっています。
 ただ本当にICTを生かし切った教育をする上では,やはり専門的な観点から検討していく必要があるのではないかということで,そういうセンターを作ろうと思っていますし,そこには,教育関係者はもとより,ICTの専門家も一緒に加わって検討していく形を取りたいと思っています。これは我々県としてやりますけれども,是非こうした観点は国全体でも御議論いただきたいというふうに思っています。
 天笠先生からお話があった,県知事の立場として,例えば市町村の教育委員会とどういう関係でやっているかというお話ですけれども,実は長野県は県と市町村の総合教育懇談会というのを行っています。私が県知事の立場で,そして市長会,町村会の代表の市町村長の方,それから県教委の代表として県の教育長,それから市町村の教育長の代表者。非常に珍しい形だと思いますけれども,定期的に県知事,それから市町村長の代表者,県の教育長,市町村の教育長の代表者が集まって,その教育の問題を検討しています。その中で,例えば今のICT教育についてもテーマとして扱わせていただき,同じ方向を向いて取り組んでいこうという形を作らせていただいています。
 これは若干余談にわたる部分ですけれども,私の問題意識として,この教育の分野は,先ほど責任と権限は表裏一体だという話を申し上げましたけれども,実は責任関係は相当分散化しています。例えば義務教育の学校現場は,教育内容は市町村教委が責任を持っていますし,学校の施設は市町村長がどう予算づけをするかという話になりますし,教員の数については県教委,そして予算的には私が最終的には責任を負っているという形になっています。さらに現場の校長先生方がいらっしゃいますので,そういう意味で相当責任と権限関係が複雑になっています。
 ですから,私としては先ほど申し上げたように,できるだけ現場に近いところに権限を持ってもらって,その責任と権限関係が分散しないようにしてもらうということと,そうならない過程においては,今申し上げたように,やっぱり関係者が一堂に会して,問題意識を共有して,同じ方向を向いて進めていくということが大変重要だと思っています。
 それから最後,人口集中地域と減少地域があるけれどもどうするんだという御質問であります。先ほど申し上げたように,学校現場においては学校の統廃合という形で,この人口減少の問題は,地域にとっては極めて重要な問題として顕在化しています。
 これは教育から少し離れますが,やはり知事の立場とすれば,実は中山間地域とか過疎地域の学校というのは,学校としての教育機能を果たしているだけではなくて,地域のいろんな人たちの心の拠り所でもあり,また学校施設をもっと有効に活用することによって,今,長野県全体では学びの県づくりを進めていこうとしていますけれども,実は地域の皆さんの学びの場としても使えるんじゃないかというふうに思っています。実は高等学校改革を進めるに当たっては,地域との協働連携ということと併せて,先ほど学校空間の話も申し上げましたが,地域の皆さんが利用できるスペースも高校に設けてはどうかというふうに考えています。
 そういう意味でこの人口減少社会の中にあっては,先ほど一人多役ということを申し上げましたけれども,実は施設も,1施設が一役ではなくて,特に人口減少地域は,1施設が多役であるということが必要だと思いますので,是非そうした観点での御議論をいただければ有り難いと思いますし,あとは人口集中地域と人口減少地域,長野県の場合は基本的に全部人口減少地域ですけれども,先ほど申し上げたように,例えば大都市と地方をオンラインでつないで,違う地域の課題を相互に学び合うとか,違う地域をつなげることによって,新しい学びの価値を生み出していくということも可能だと思いますので,このオンライン教育の重要性という観点からは,この地域差ということも,是非重要な観点として取り入れていただければ有り難いと思っています。
 長くなって恐縮ですが,よろしくお願いいたします。

【清原委員】 どうもありがとうございます。

【天笠委員】 どうもありがとうございました。

【荒瀬部会長】 よろしいでしょうか。

【天笠委員】 はい。

【荒瀬部会長】 ありがとうございました。
 それでは,ほかに手を挙げていらっしゃる方はいらっしゃらないようですので,阿部知事におかれましては,お忙しい中,今日は御発表いただきまして本当にありがとうございました。これで,阿部知事の全国知事会の御意見の発表を終わらせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。

【阿部全国知事会文教環境常任委員会委員長】 どうもありがとうございました。

【荒瀬部会長】 委員の皆さん,申し訳ございませんが,少し次の3つの団体との入替えの関係がありまして,しばらくお待ちいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
 ありがとうございます。では続きまして,全日本教職員連盟,日本高等学校教職員組合,全国教育管理職員団体協議会の3団体の代表の方から御発表いただきたいと思います。大変お待たせいたしました。
 では順番でありますけれども,まず全日本教職員連盟から島村委員長に,そして続きまして日本高等学校教職員組合から石川中央執行委員長に,最後に,全国教育管理職員団体協議会から吉川会長に御発表いただきたいと思います。よろしくお願いします。
 では最初に,島村委員長,よろしくお願いいたします。

【島村全日本教職員連盟委員長】 初めに,昨年4月21日に,当時の柴山文部科学大臣から中央教育審議会に対して諮問されました「新しい時代の初等中等教育の在り方について」,柴山大臣及び,それを引き継がれた萩生田大臣の下で,数多の有識者の皆様が議論を尽くして中間まとめを公表してくださったことに対し,深甚なる敬意を表します。またあわせて,私たち全日本教職員連盟やその他の教育関係団体等にヒアリングを実施していただき,学校現場の意見を直接伝える機会を与えていただいたこと,本当に厚く御礼申し上げます。
 私たち全日教連の意見,また現場の意見等,主なところに絞ってお伝えしたいというふうに思います。
 まず,中間まとめの総論でございます。
 19ページの丸の2つめ,その第2パラグラフにおいて記載のある「学校に十分な人的配置を実現し」という部分でございますが,教育再生実行会議初等中等教育ワーキンググループ,令和2年9月8日の提言においても言及されました少人数学級の実現,また概算要求で事項要求として要求報告に盛り込まれておりますので,是非とも制度設計のほうをよろしくお願いいたします。
 資料の2ページ目ということになります。20ページに(2)として,連携・分担による学校マネジメントを実現するという項目がございます。ここにおいて,標準職務が示された学校事務職員,また,新型コロナウイルス感染症による臨時休業で重要性が再認識された給食等,そこで食育を推進する栄養教諭,学校における新型コロナウイルス感染症対策や児童生徒の心の相談を担う養護教諭等,一人職と言われる方々につきましても,是非ともその職務の重要性等に言及した,そういった一文を盛り込んでいただければというふうに考えております。
 また,地方における予算の確保につきまして,同項において,地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部改正により設置が義務化されました総合教育会議の役割やその成果,今後への期待等を記載していただけますと,学校現場も非常に有り難く思います。
 続きまして,各論の部分でございます。
 幼児教育の質の向上につきまして,やはり新しい生活様式に対応した身体的距離の確保や保育の質の向上の観点から,幼児教育においても少人数指導の実現ということについて,今後検討していただければ大変有り難いなというふうに思います。
 また,処遇改善をはじめとした人材確保におきまして,幼稚園教諭や保育教諭等の給料面での改善に,是非とも触れていただければと思います。確かに平成27年度に導入されました処遇改善等加算によりまして,キャリアパスが構築され,職責に見合った給与への改善が図られておるところでございます。しかしながら,本給の部分では免許更新制があるにもかかわらず,一般行政職俸給表が適用されるというような実態もございます。是非とも教員としてのプライドそのものである,そういった本給の部分において,優秀な人材の確保にもつながることでもございます。是非とも今後検討していただければというふうに思います。
 9年間を見通した新時代の義務教育の在り方という部分でございますが,教科担任制の導入について触れられております。その中において,小中連携を促進する必要があるという記述がございますが,現場のからの声といたしましては,特に中学校の教諭から,負担が増すのではといった心配する声が寄せられております。
 中間まとめ,35ページの最下段のところに,学校規模・地理的条件に着目した環境の違いを踏まえということが書かれておりますので,そういった視点を大切にした制度設計を是非ともお願いいたします。
 新しい時代に対応した高等学校教育の在り方についてでございます。先ほどの全国知事会の御発表,また,日本高等学校教職員組合等もこの後に御発言なさると思いますが,やはり人口動態,少子化等の進行によって非常に学校等の経営が難しくなっている部分はございます。しかしながら,元来学校数が少ない職業教育を主とする教科を置く高等学校,つまり専門高校におきましては,やはり単独で検討していただき,また加えて少人数学級化の検討も進めていただければ大変有り難く思います。
 続きまして,新時代の特別支援教育の在り方についてでございます。この中間まとめ47ページに,就学前における早期からの相談・支援の充実として,きめ細かい就学相談を行うため,5歳時健診の活用という文言がございます。現在法定健診としては,母子健康法第12条に位置づけられております1歳6か月健診と3歳児健診がございます。しかしながら,5歳児健診については法律において法定化されておるものではありません。是非とも法改正も含めた,そういった議論,検討を進めていただければと思います。
 また,特別支援教育の教員配置という中において,特別支援学級につきましては,現在児童生徒8人に対して教師1人の配置ということでございます。しかしながら,学級において給食,あるいは教科活動についても,普通学級でもそういった指導ということになりますと,なかなか難しい面がございます。人的体制の整備が必要であるということを強く訴えたいと思います。
 また,特別支援教育の専門性といった意味では,平成27年12月21日の答申を受けまして,現場において教育職員免許法附則第16項の廃止も見据えて,平成32年度までに,おおむね全ての特別支援学校の教員が特別支援教育免許状を所持することを目指して取組を進めてきたところでございます。この辺りのことにつきましても,是非記載していただければ有り難いなと思っています。
 続きまして,新時代の学びを支える環境整備でございます。現在,義務教育においてはGIGAスクールが前倒しということになり,1人1台端末の整備が進んでおりますが,高等学校については,残念ながらこのGIGAスクール構想の外ということでございます。大学入試共通テストにおいても情報が新設されるというようなこともございますので,是非とも高等学校においても,1人1台端末の整備をする予算の確保を進めていただければと思います。
 また,令和2年度補正予算で確保されました校長裁量により活用できる学校再開支援経費において,現場におきましては非常に有効であるという声が届いております。地域に開かれた学校を実現するために,是非,校長,管理職の裁量権の拡大に関しましても,今後検討していただければと思います。
 Society5.0時代における教師及び教員組織の在り方。中間まとめの71ページに,教員免許更新制の実質化という言葉がございます。本中間まとめにおいて述べられた研修,あるいは資質の向上,そういったことに係る部分を講座として認めていただければ大変有り難く思います。
 また幼児教育について,処遇改善をはじめとした人材確保についての言及がございましたが,残念ながら,義務教育,あるいは高等学校教育等については,その部分に当たる記述がございません。今後,少人数学級や小学校高学年における教科担任制が導入された場合,教師として優秀な人材を確保することが非常に重要であると考えております。早急に人材確保の具体的な方策,処遇の改善も含めて,是非とも検討を進めていただければと思います。
 最後になりますが,前回の答申にも文部科学省メッセージということで,国として取り組むべきこと,また地方自治体が取り組むべきこと,保護者・地域が取り組むべきこと等が明確されたところでございます。是非とも本方針におきましても,そういったメッセージを盛り込んでいただければと思います。
 以上,長くなりましたが,全日本教職員連盟の意見,また現場の声とさせていただきます。よろしくお願いいたします。

【荒瀬部会長】 ありがとうございました。
 続きまして,日本高等学校教職員組合の石川中央執行委員長,よろしくお願いいたします。

【石川日本高等学校教職員組合中央執行委員長】 失礼いたします。私,日本高等学校教職員組合で中央執行委員長をしております石川慎一と申します。先日は,「令和の日本型学校教育」の構築を目指しての中間まとめにつきまして,特に児童生徒や教職員,それぞれの立場を幅広く勘案してまとめていただきまして,大変ありがとうございました。
 日本高等学校教職員組合は,高等学校,中等教育学校,特別支援学校に勤務する教職員で組織する教職員団体でございます。本日は,新しい時代の初等中等教育の在り方特別部会におきましてヒアリングの機会を設けていただき,ありがとうございます。
 私からは,中間まとめにつきまして,資料に沿って意見を述べさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。資料につきましては全部で4ページでございますけれども,その中で,総論また各論というところでまとめさせていただいております。
 まず総論につきましては,高い評価を受けてきているこれまでの日本型教育の強みを,これからも守っていくべきであるというふうに感じておりますし,学習指導要領に基づいて様々な学習指導を展開していく中で,資質・能力を育成し,またそれと同時に,社会で求められる力や時代に対応した大学入試制度,そちらの改革等も併せて考えていかなければならないと感じております。
 また個別最適な学びといたしまして,データの利活用につきましては,管理面が強化されないように,学習効果が上がる適切な学級規模や学習グループについて,今後も検証していく必要があるのではないかと感じております。
 児童生徒一人一人に教師が目を配ることができる規模が望ましいと思っておりますし,義務教育のほうでは少人数学級のお話も出ておりますが,高校段階におきましても,学級編制基準の見直しも含めた,各学校によって多様な教育課程の編成が可能な教職員定数の在り方等も御検討いただければ有り難いなと思っております。
 また,教職員定数や専門スタッフの確保,これは本当に欠かせない部分だと思いますので,ICT化がこれから進んでいく中で,教職員の負担増が課題だと思いますので,解決に向けて取り組んでいただきたいなと思っております。
 続いて,各論につきましては次のページです。新時代に対応した高等学校教育の在り方につきまして,スクール・ミッションやスクール・ポリシーの策定でございます。この学校の役割や理念を分かりやすく示すために,教職員にとってもこれは大事な基礎となるものでございます。それも大事なんですけれども,高校生の学習意欲を喚起し,その能力を最大限伸長していくためには,教師のスキル,また生徒が学んでいることが役に立つという有用感の醸成が肝要で,今後も学校現場では働き方改革を進めていく中で,教材研究や授業改善に取り組める時間,また研修の機会を確保していく必要があると感じております。
 普通科改革につきましては,これまでもそれぞれの学校で特色ある学校づくりが実践されてきておりまして,その取組を継承,発展していく中で,学校や地域の実態に応じた取組ができる制度が望ましいと思っております。実際に地域の課題に取り組む学科につきましては,当該校の教員が地域との連携の担当者になることが予想されますけれども,コーディネーターを活用するなど,一部の教員への負担の増にならないような取組が必要であると感じております。
 専門学科改革につきましては,特に地域産業の担い手として,専門高校に学ぶ生徒の育成は本当に重要でございまして,即戦力の人材育成につながるよう,最近の技術進化に対応した実習などが確実に行えるような,施設設備の更新を含めた環境整備が求められてくると思っております。また地元で活躍,就職する生徒が多い中,普通科の生徒と同様に,地域の課題に積極的に取り組む姿勢,態度の育成が必要であると感じております。
 総合学科における学びの推進につきましては,特に地方では少子化によりまして学校規模が小さくなっている地域もあり,開講科目数が減少し,学べる教科,科目が減少しております。自校で多様な教科の開設が望ましいところではありますが,開設できない科目の履修については,多様な学びが期待できるなと感じている一方で,授業担当者の時間割の振替がなかなか難しいのではないかというお話もございます。
 高等教育機関,地域社会との連携でございますが,先ほど申し上げましたとおり,学校内外の教育資源を最大限に活用して,開かれた教育活動を行っていくためには,教員以外にコーディネートする役割の人材が不可欠であると思います。国のほうでも,地方力創造アドバイザー,また外部専門家の派遣授業等で情報提供等御支援をいただいておりますが,必要に応じて人材を積極的に活用できる人材バンクの整備と予算措置を,これからも継続してお願いできたらと思っております。
 定時制・通信制における多様な学習ニーズへの対応と質保証ですが,多様な生徒が入学してきている定時制課程につきましては,基礎学力の定着や学び直しが課題でございます。またICTの活用につきましては,高校段階においてはBYODが進んでいる中,家庭でのWi-Fi環境,スマートフォンなどのICT機器のそろっていない家庭もございますので,そういった整備に関する支援も必要ではないかと思っております。
 新しい時代の特別支援教育の在り方につきましては,環境整備について,特に生徒一人一人の障害の特性に応じた機器の整備,特に現場から聞こえるのが,視覚・聴覚障害に対応した機器の整備を是非ともお願いしたいという声もいただいております。また教室不足の対応につきましては,予算整備補助等をいただいておりまして,少しずつ改善してきているところでございます。今後とも,児童生徒数に応じた教室環境の整備を引き続き推進していただきたいと思っております。
 特別支援学校を担う教師の専門性につきましては,幅広い,また専門的な知識を身につけるための研修体制の充実をお願いできたらと思っております。
 また,通級による指導につきましては高校でも導入されまして,高校に勤務する教職員は特別支援教育に関する知識や経験も不足しているため,対応に苦慮していることが多く,特に特別支援学校教諭を含む,高い専門性を有した人材の配置をお願いできたらと思っております。
 増加する外国人児童生徒の教育の在り方につきましては,生徒,子供たちは日本語の習得は早いと思うんですけれども,保護者に対する対応につきましては各学校で苦慮しているところがございます。担任になった教員へのサポート体制の充実とともに,意思疎通を円滑にするための通訳機器の整備などがあれば有り難いなと思っております。
 遠隔・オンライン教育を含むICTを活用した学びの在り方につきましては,特に可能性を大きく感じているところでございまして,同時に,初期設定やトラブル対応など,教員の負担を軽減するための専門人材の派遣,配置が必要であると感じております。また,学習履歴(スタディ・ログ)の活用につきましては,学習状況が可視化され,効果的な活用が期待できるというところがございます。どの程度引き継ぐか,また教員のデータ利活用のスキル向上が欠かせないと思っております。
 新時代の学びを支える環境整備につきましては,新しい規格の机の導入には大変賛成でございまして,それと同時に学校は災害時の避難所としての役割もあり,バリアフリー化,また空調設備の完備など,新しい生活様式に対応した施設設備を進めていただきたいなと感じております。
 Society5.0時代における教員組織の在り方につきましては,人材確保が第一でございます。受験年齢制限の緩和など,教員採用試験において人材確保を推進していただいておりますけれども,受験者数の大幅な増加が見られないという状況で,特に人材不足は地方ほど顕著でございます。採用試験に合格した講師の方の代わりを見つけることも難しいということで,免許更新制の在り方も含めて,人材確保の観点から御検討をお願いできたらと思っております。
 最後に,ICTを活用した指導力の向上につきましては,今後も働き方改革を進めつつ,教職員研修の機会を十分に確保していただきたいと思っておりますし,教員が生涯にわたって学び続けるための研修のオンライン化や,指導案や授業動画の蓄積など,授業データベースの構築を推進していただけると有り難いと思っております。
 以上,全てのところにお話をすることはできておりませんけれども,日高教から該当する項目に関して意見を述べさせていただけたらと思いますので,よろしくお願いいたします。
 以上でございます。

【荒瀬部会長】 ありがとうございました。
 では最後に,全国教育管理職員団体協議会から,吉川会長に御発表をお願いいたします。よろしくお願いいたします。

【吉川全国教育管理職員団体協議会会長】 全国教育管理職員団体協議会(全管協)の吉川と申します。本日この機会をいただきましたこと,全管協代表として心から厚く御礼申し上げます。ありがとうございます。
 日頃より,日本の教育予算に全霊を尽くし,あらゆる手だてを講じてくださっておられること,我が団体に対して特段の理解,御支援をいただいていること,重ねて感謝申し上げます。ありがとうございます。
 また,先ほどの全日本教職員連盟,島村委員長様,日本高等学校教職員組合,石川中央執行委員長様から深い学びをさせていただきました。我々全管協の活動方針のさらなる充実に結びつけていきたいと考えております。ありがとうございます。
 さて,義務教育国庫負担金に関する予算に関しては,長きにわたり冬の時代を余儀なくされておりました。プライマリーバランスを大前提とした財政健全化計画の名の下に,財務省の厚い壁が立ちはだかる予算攻防の状況は,厳しいという表現では到底表すことのできないものでした。文部科学省が未来投資たる教育予算にどのような施策を打とうが,エビデンスの論理は覆らず,教育関係者にとっては忸怩たる思いの数年でした。
 いつしか「35人以下」という言葉は消え,「少人数学級」の言葉も「教職員定数改善」に変わりました。この間,文部科学省とは,前合田財務課長様をはじめとする各課長様,初等中等教育局の事務方の皆様から,施策についての詳細な情報提供をいただくとともに,意見交換,情報交換を幾度も行い,意思疎通を図ってまいりました。私,会長といたしましても,各課長様や事務方の皆様とは,幾度も直接やり取りをさせていただきました。
 そういった数年の過程を通し,各年度の文部科学省概算要求は,厳しい経済状況を踏まえつつも,数の論理に決して屈しない,教育現場を熟知された,最適かつ精密なプログラムであること,文部科学省は,30人以下学級を見据えた少人数学級の旗を決して降ろしたわけではないとの理解に至りました。言葉を変えれば,文部科学省は,政治の追い風,つまり国民世論が動けば,必ずやこの施策を打ち出すであろうことを確信しました。
 我が団体は平成28年を節目として,文部科学省が目指す教育予算増額実現には,国民世論を動かすしかないとの信念を持つに至りました。それから数年,我々の主義主張はこらえ,中教審はもちろんのこと,国会各会派,財務省をはじめとする各省庁への要望など,あらゆる機会に文部科学省の施策への全面支持を表明するとともに,教育関係団体の団結を呼びかけ続けました。教育は人なり,未来投資であり,国家百年の計なりを訴え続けました。
 節目が訪れたのは平成29年の3月27日です。複数年にわたる義務教育標準法の成立は,3.27イノベーションとも言うべき予算措置となりました。その後,同年の衆議院総選挙は,全ての政党が教育の無償化を政権公約の第一に掲げる,憲政史上初めての出来事となりました。教育は票にならないという常識が覆り,まさしく世論が動き,教育予算への国民の理解が得られたと確信をする政治的イノベーションとなりました。
 全管協は今回の中央教育審議会初等中等教育分科会新しい時代の初等中等教育の在り方特別部会(中間まとめ)を,表明書のとおり全面的に支持いたします。特に,このプログラムを全国全ての学校で,全ての教室において総合的に効果的に円滑に行うためには,30人学級の施策実現が礎となることを確信します。
 表明書に,30人以下学級実現への5点の根拠を簡潔に示させていただきました。
 1点目は,「アフターコロナ」における学校教育を将来にわたって持続可能にしていくための必須施策となり得るため。2点目,今後も予想される感染症等緊急事態への対応が適切かつ円滑に行われる可能性が十分に担保された施策になり得るため。3点目,6月からの学校再開における分散登校により,15人程度の少人数教育が実質2週間程度行われ,教育的成果・効果が既に実証されているため。4点目は,「教育の無償化」に匹敵,もしくは,それを上回る国民世論の大きな賛同を得られる施策となることが既に明らかであるため。最後,5点目は,「GIGAスクール構想」の推進を確固たるものにし,将来の人材を育てる決定打たる施策となり得るためです。
 この表明書と同様の趣旨の要望書を,9月10日に自由民主党教育再生実行本部に提出いたしました。その後,9月24日に教育再生実行本部から文部科学省に対して,30人学級の推進及び高等学校のICT環境整備に関する決議文が手交されたことからも,30人学級の実現については自由民主党教育再生実行本部及び文部科学省が方向を一つにすると考えます。
 30人学級に係る義務教育標準法が通りました暁には,全ての自治体が財政面,施設・設備面において著しい均衡が失しないよう,段階的かつ計画的に進められること,人材について弾力的な配置を可能にしていただくこと,教員の質と人員の確保を図るため,処遇の改善も含めた「令和人材確保法」の成立と一体となった推進を図られることを,何とぞお願いいたします。
 本日は誠にありがとうございます。
 以上でございます。

【荒瀬部会長】 ありがとうございました。
 それでは,ただいま3人の方からの御発表をいただいたわけですが,質疑応答,意見交換を行いたいと思います。先ほどと同じで,御発言のおありの方は挙手ボタンを押していただきたいと思います。どうぞ。
 毛利委員,まずお願いいたします。

【毛利委員】 毛利です。
 本日は全日本教職員連盟様,日本高等学校教職員組合様,全国教育管理職員団体協議会様の御発表,本当にありがとうございました。大変勉強になりました。本校でも障害のある子供たちにとって,その障害を乗り越えるためにICTは非常に有効だと実感し,日々活用しているわけですけれども,それで例えばアメリカでは,大学の入学者の10%程度は何らかの障害がある生徒だと聞いたことがあります。
 先ほど日本高等学校教職員組合様から,新時代の特別支援教育の在り方で,特別支援学校におけるICT整備の推進をということでお話をいただきましたが,例えば普段の授業だけでなく,大学入試等にも必要なICTの機能や機器というのはどういうものが考えられるのか,御教示いただければと思います。よろしくお願いします。

【荒瀬部会長】 ありがとうございました。
 では,石川中央執行委員長,今の御質問聞こえましたでしょうか。

【石川日本高等学校教職員組合中央執行委員長】 ありがとうございます。

【荒瀬部会長】 よろしくお願いいたします。

【石川日本高等学校教職員組合中央執行委員長】
 先ほど御質問いただきました内容につきまして,特に特別支援学校,高等学校も含めまして,統合型校務支援システムというのが学校のほうでも導入され,運用が進んでおります。その校務支援システムと連動した障害の特性に応じた,例えば点字の翻訳とか音声の読み上げなどといったシステムと連動していなくて,使いづらいというお話も伺っていたりするので,そういう機能がどんどん追加されてくれば,また更新されてくれば,先生方も使いやすいのかなという御意見もいただいたことがございます。
 あとは大学入試に関しての活用,どういった機器がというお話でございましたけれども,障害の特性に関しましては,当然個人個人違うところがございますので,毎年必要な機器の整備は変わってくるのだろうな,毎年毎年声が上がってくるのだろうなというふうに感じております。
 そういった意味で,我々としても全ての意見を網羅している,集約しているというところはございませんので,たくさんの現場の先生方のお声を集約していきながら,意見を発出していきたいと考えております。一番は,大学入試等を受験される生徒の障害の特性に応じた支援が可能な機器の整備が望まれるんだろうと思います。
 また,同じシステムを使うにしても,一人一人にとっては,それぞれ使いやすいところもあればそうじゃないところもあるかもしれませんので,各学校で実践等も踏まえていただきながら,システムの構築をお願いできると大変有り難いと思っております。お答えになったか分かりませんけれども,よろしくお願いいたします。

【荒瀬部会長】  ありがとうございました。毛利委員,よろしいでしょうか。

【毛利委員】 はい。先ほどのお話をお伺いしていて,1人1台環境というのは,みんな同じソフトウエアとか同じ機能を使っているのではなくて,特別支援学級の子だけでなくても,やはり教室でも苦手な分野な子とか得意な子に応じて,いろんな機能を使い分けながら,1人1台で活用したらすごくいいのかなと,お話を聞いていて思いました。ありがとうございました。

【荒瀬部会長】 ありがとうございました。
 では,加治佐委員,お願いいたします。

【加治佐委員】 どうもありがとうございました。3つの団体の皆様から,大変すばらしい御報告をいただいたと思います。
 せっかくの機会ですので,私からは,教員養成部会のほうで免許更新制のことを本格的に議論し始めておりますので,今後の議論の参考にさせていただくために,ちょっとお伺いしたいと思います。もちろん教員養成部会のほうでも並行して,各団体とのヒアリングは行っておりますが,今日は教員を代表する団体の方々ですので,情報をいただければと思います。
 まず,資料2の全日本教職員連盟のほうでは,更新講習が研修によって全て賄われるようにしたほうがいいのではないかと,こういうことが述べられているように思います。実はこれはいろいろ調整が大変であると思うんですけれども,やってできないことはないわけです。是非進めるべきだと思うんですけれども,これがなかなか進まない背景にどういうことがあるかを,御教示いただければと思います。
 それから,資料3の日本高校教職員組合の石川委員長,こちらは人材確保にとって,教員免許更新制が何か弊害になっているというふうな印象を受けておるんですけれども,具体的にどうしてこれが人材確保の弊害になるのかということと,その観点から,免許更新制をどういうふうに改めていったらいいかというところで何か具体的な方策等お考えでしたら,お教えいただけませんでしょうか。どうぞよろしくお願いいたします。

【荒瀬部会長】 ありがとうございました。
 それでは,島村委員長と石川中央執行委員長にお答えをいただけばと思います。
 まず,島村委員長,よろしくお願いいたします。

【島村全日本教職員連盟委員長】 失礼いたします。質問ありがとうございます。まず,免許更新制の講座というものを,基本的には大学等が開催するということになっております。そのほかで文部科学省のほうからも通知で,本当は,県教育委員会やそういったところが主催する研修についても講座として認めることができますよといったことになっておりますが,その辺りやっぱり大学の連携等もございますので,なかなか実際現場の方々が現場ですぐ使えるような研修が講座にはなっていないということがございます。
 このたびのコロナ禍の中において,オンラインというものが,先生方自身もなかなかそういった環境が整っていないため,更新講習がうまくいかなかったというような現場の声も聞いておるところでございます。今後,そういった更新講習もオンラインで行われるというようなことになってくれば,様々教育委員会等が実際悉皆としてやっているものをどんどん認めるような形になると,学校現場の先生方も負担は減っていくのかなというふうに思っています。
 そういった教育委員会主催の研修をポイント化する等して,10年かけてポイントを貯めていくというようなことができれば,集中して2年間で取るということは,なかなか学校現場におくと,長期休業中でないと,担任等を持っていらっしゃる先生方は現場を離れることが難しい。ただ働き方改革の中で,夏期休業中はしっかり休みましょう,長期休業中はしっかり休みましょうというような形になっている中でもございますので,様々取れる手段を使って,そういった免許更新制の改革,実質化を進めていただければと思っているところです。
 以上でございます。

【荒瀬部会長】 ありがとうございました。
 では続いて,石川中央執行委員長,よろしくお願いいたします。

【石川日本高等学校教職員組合中央執行委員長】 御質問ありがとうございます。
 人材確保の観点から,非常に免許更新制が何か障害があるのかという御質問に関しましては,資料に書かせていただいているとおり,教員採用試験に合格した方が他校に赴任されることになった場合に,その講師の代わりの方が来年も必要になった場合,その代わりの方を見つけることが難しいという学校が最近増えてきたところがございます。
 この点に関しまして,実際に代わりの方を見つけようとしてお願いしようとしたときに,例えば退職された方にお願いしよう,また再任用が終わった先生にもう一度声をかけてみようとなったときに,免許更新されていない方にお声かけをした場合,断られることが多々あるというお話も聞いておりまして,そういう多くの方に学校教育に参画いただく際に,10年という更新の期間が障害になっているのではないかというところでございます。
 あと,その解決のための方策につきましては,先ほど島村委員長もおっしゃっていただきましたけれども,我々教職員は学校現場で様々な研修をしておりますし,新しい教育情勢等も日々取り入れているつもりでございます。そういった研修を有効に使っていただいて,教員免許の更新期間,例えば生涯の教員期間で1度だけでいいとか,そういった在り方も必要なのではないかなと思っております。
 学校現場では,今後ICTがどんどん普及する中で,研修のオンライン化等も進んでいくと思われますので,そういった研修の受講に関しては,いろんなところでできるのではないかと思っておりますので,今現在も教員免許更新につきましては,なるべく休みを取らなくてもいいように,学校の業務に支障がないように,夏休み期間中でありますとか,近くの開設場所を設けていただくなど,様々な工夫をしていただいているんですけれども,そういった10年の期間という部分に関しましては柔軟な対応が必要なのかなと考えております。
 以上です。

【荒瀬部会長】 ありがとうございました。加治佐委員,よろしいでしょうか。

【加治佐委員】 大変参考になりました。ありがとうございます。また今後に生かしてまいりたいと思います。

【荒瀬部会長】  ありがとうございました。
 ほかに御質問,御意見おありの方いらっしゃいませんでしょうか。ではありがとうございます。
 それでは,島村委員長,それから石川中央執行委員長,吉川会長,今日は本当にお忙しい中御参加いただきまして,丁寧な説明を頂戴いたしました。本当にありがとうございました。

【島村全日本教職員連盟委員長】 ありがとうございました。

【石川日本高等学校教職員組合中央執行委員長】 ありがとうございました。

【吉川全国教育管理職員団体協議会会長】 ありがとうございました。

【荒瀬部会長】 それでは少し時間がまだあるのですが,今日ヒアリング自体はこれで全て終わりましたので,終了したいと思います。委員の皆様,よろしいでしょうか。
 では最後に,次回の予定につきまして,田中室長からよろしくお願いいたします。

【田中教育制度改革室長】次回の本特別部会につきましては,来週10月28日,水曜日の午前中10時から12時,また14時から16時で,引き続き関係団体からのヒアリングを予定しております。長丁場になりますけれども,どうぞよろしくお願いいたします。詳細につきましては,追って事務局から御連絡申し上げます。

【荒瀬部会長】来週は2日続きでヒアリングということになります。また来週よろしくお願いいたします。
 それでは,本日はこれで終了いたします。ありがとうございました。
―― 了 ―

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