新しい時代の初等中等教育の在り方特別部会 (第12回) 議事録

1.日時

令和2年8月20日(木曜日)14時00分~17時00分

2.場所

文部科学省旧庁舎6階第2講堂(WEB会議)
東京都千代田区霞が関3-2-2

3.議題

  1. 関係部会等からの検討状況の報告
  2. 中間まとめ(骨子案)について
  3. その他

4.議事録

【荒瀬部会長】 皆さん,こんにちは。荒瀬でございます。それでは,定刻となりましたので,ただいまから中央教育審議会初等中等教育分科会第12回新しい時代の初等中等教育の在り方特別部会を開催いたします。
 御多忙の中,御出席いただきまして,誠にありがとうございます。今日もまた,新型コロナウイルス感染症の感染拡大を防止するため,ウェブ会議方式にて開催させていただきます。本日の議事に入ります前に,前回の第11回新しい時代の初等中等教育の在り方特別部会以降で事務局に人事異動があったとのことですので,田中教育制度改革室長から御紹介をお願いいたします。

【田中教育制度改革室長】 教育制度改革室長,田中でございます。
 それでは,7月17日の前回会議以降の人事異動により事務局の交代がありましたことを御紹介申し上げます。7月28日付で初等中等教育局長に就任いたしました瀧本寛です。

【瀧本初等中等教育局長】 瀧本と申します。初等中等教育局長を拝命しました。委員の皆様方におかれましては,引き続き,日本の将来を支える子供たちのために御指導賜りますよう,どうぞよろしくお願いいたします。

【田中教育制度改革室長】その他の異動につきましては,事前にお送りさせていただきました出席者一覧をもって紹介に代えさせていただきます。

【荒瀬部会長】 ありがとうございました。
 続きまして,田中教育制度改革室長から,本日の資料につきまして御説明をお願いいたします。

【田中教育制度改革室長】引き続き,よろしくお願いいたします。
 まず,本日は前回会議までと同様にウェブ会議方式でございますが,セキュリティ強化等の観点から,これまでのZoomではなく,今回Webexというシステムを用いた会議となっております。どうぞよろしくお願いいたします。委員の皆様には大変御不便をおかけすることになりますけれども,御理解のほど,よろしくお願い申し上げます。
 それでは,資料の確認をさせていただきます。本日の資料は,議事次第にございますとおり,資料1から資料3まで,加えて参考資料1及び2となっております。御不明な点等ございましたら,お申しつけください。

【荒瀬部会長】 では,進めてまいります。本日は途中に休憩を挟みまして,3時間を予定しております。長時間となりますが,よろしくお願いいたします。
 議事は2件です。まず,議題1といたしまして,前回に引き続き関係部会等からの検討状況の報告,議題2といたしまして,中間まとめ(骨子案)につきまして皆様から御意見を頂戴したいと考えております。議題1では,最初にデジタル教科書の今後の在り方等に関する検討会議から検討状況の御報告をいただきます。その後,福岡市教育委員会から,不登校児童生徒等への支援に係るオンライン授業の取組について御発表いただき,その後で,この2件につきまして意見交換の時間を設けたいと思います。
 なお,本日は報道関係者から,会議の録音,撮影を行いたい旨の申出があり,許可しておりますので御承知おきください。ただし,個人を特定するような撮影は御遠慮いただくようお願いをしております。また,一般の方向けに本会議の模様を収録し,後日,文科省You Tubeチャンネルにて公開することとしておりますので,こちらも御承知おきください。
 それでは,議事に入ります。先ほど申しましたように,まず議題1として,関係部会等からの検討状況の報告ですが,資料1を御用意いただきたいと思います。デジタル教科書の今後の在り方等に関する検討会議における検討状況について,検討会議の座長をお務めの堀田委員と神山教科書課長から御説明願いたいと思います。堀田先生,よろしくお願いいたします。

【堀田委員】 本検討会議の座長を拝命しております東北大学の堀田です。
 デジタル教科書につきましては,平成27年度より,その位置づけに関する検討会議が行われたところでして,私が当時座長を拝命し,天笠先生に座長代理としてお支えいただいたところでごした。ここで制度化されるデジタル教科書というのは,児童生徒が各自の端末で利用するものでして,現在の紙の教科書と同じ内容のものを指していることになります。当時の検討会議では平成28年12月に最終まとめが出されましたが,その段階ではまだ学校現場に情報端末が十分に普及してない段階ですので,教科書はあくまで紙が最優先であって,デジタルでもよいということを認める形の検討結果となりました。
 それから数年がたちまして,このたび,今年の7月から,今後のデジタル教科書の在り方についての検討会議が立ち上がったところでございます。今般においては,GIGAスクール構想で1人1台の情報端末が配備されることや,世の中がクラウドを前提に動いていること,各種の教材がどんどんデジタルに移行していること,学習ログの解析や教育へのAI活用等による個別最適化が期待される時代であること,そういうことを前提に,急速に進む情報化の中で,デジタル教科書を取り巻く各種の制度等をどのように改正していくべきかということについて,この7月から検討を始めたところでございます。詳細につきましては,これから教科書課長に御報告いただきます。
 座長としての御報告は以上でございます。

【神山教科書課長】 続きまして,教科書課長の神山と申します。
 お手元の資料にも配付をさせていただいておりますが,デジタル教科書の今後の在り方等に関する検討事項に基づきまして検討会議において検討を進めておるところでございます。検討会議はまだ2回開催したところでして,議論の端緒に就いたところではございますけれども,先ほど堀田座長からも御紹介がありましたように,昨今,デジタルを使うための環境が非常に進展しておりますので,今後どうデジタル教科書を使っていくのかということを議論していただいております。
 また,次の小学校の教科書の改訂が令和6年度に予定をされておりますので,令和6年度を1つのターゲットイヤーと考えておりまして,そこまでにどのようなデジタル教科書の在り方が求められるのか,また,それから先,将来的にどのような在り方が考えられるのかといったことを整理しながら議論をしていただくこととしてございます。
 具体的な検討事項といたしましては,学びの充実や,特別な配慮が必要な児童生徒のアクセシビリティの確保といった観点から,文字を拡大したり読み上げたりするなどの機能のうち,標準的に備えるべき機能がどのようなものかといった点,あるいは,デジタル教科書そのものだけではなく,ほかのデジタル教材や学習を支援する学習ログなどとの円滑な連携を図るために,デジタル教科書がどうあらねばならないのかといったことを検討していきたいと考えております。こうした点については,別の有識者会議であります教育データの利活用に関する有識者会議などでも議論が進むようでございますので,そうしたところとの連携を図りながら,デジタル教科書について議論をしていくということにしてございます。
 制度面についてはまだ十分な議論をしておりませんけれども,少なくとも現行ではデジタル教科書を使用できる時間数につきまして授業時間数の2分の1未満ということにしておりますので,その点を今後どうするか,また,デジタル教科書を法令上,どのような位置づけにしていくかといった点について議論を深めてまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。

【荒瀬部会長】ありがとうございました。
 それでは,続いて,資料2を御用意いただきたいと思います。福岡市における不登校児童生徒への支援に係るオンライン授業の取組につきまして,星子福岡市教育委員会教育長から御説明をいただきます。よろしくお願いいたします。

【星子福岡市教育長】 福岡市教育委員会教育長の星子でございます。福岡市のオンライン授業の取組を通した不登校児童生徒への支援について説明をさせていただきます。今日はどうぞよろしくお願いいたします。
 初めに,福岡市の概要について少し説明をいたします。福岡市の行政区は7区ございまして,面積は343平方キロメートル,人口は160万人を突破しまして,政令市で5番目の規模となっております。また,税収の伸び率は7年連続して過去最高を更新しておりまして,このような状況の都市でございます。
 次に,学校について説明をいたします。学校数は,小学校が144校,中学校が69校,高等学校が4校,特別支援学校が8校の合計225校でございます。児童生徒数は約12万4,000人で,令和元年度の長期欠席児童生徒は約3,800人,そのうち,4つの分類のうちの不登校児童生徒は約2,500人となっております。
 次に,ICT環境の状況について説明をいたします。1人1台の端末につきましては,GIGAスクール構想を前倒しして,今年度の12月には全児童生徒に1人1台の配備が完了する予定でございます。この場をお借りしまして,国の予算をつけていただいたことに感謝を申し上げます。また,普通教室のプロジェクター及び指導者用端末,無線LAN,スクリーンにつきましては,小学校と高等学校に昨年度,今年度は中学校,特別支援学校に整備する予定でございます。また,言い方を変えますと,小学校の教員は1年間,自分たちのタブレットに慣れ,中学校の教員は今年度に自分たち用と生徒用のタブレットが一気に入るということで,教員の研修が急務となっております。
 では,続けまして,こちらにございますように,3点について説明をさせていただきます。まず初めに,不登校児童生徒への支援の全体像について説明をいたします。福岡市では,支援を必要とする子供や家庭のために,福祉,心理,教育の面から多くの人員を配置しています。教育面では,2つの離島を除く全中学校に不登校対応の専属として,担任を持たない教員を教育相談コーディネーターとして配置をしております。また,普通教室の1つを校内適応指導教室,通称「ステップルーム」と呼んでおりますが,教室に入ることができない生徒や不登校傾向にある生徒に対して特別指導を行う場所としております。ステップルームの運営につきましては,教育相談コーディネーターが中心となって行っています。ここからは,教育相談コーディネーターやステップルームについて少し説明をしてまいります。
 まず,教育相談コーディネーターの役割でございますが,学習支援などの個に応じた支援や小中連携により不登校児童生徒の状況を確認するなど,不登校の未然防止を行うことでございます。以前は私どもも「不登校対応教員」と呼んでおりましたが,昨年11月から半年間かけて,有識者による福岡市登校対策会議をつくりまして,その中で名称を変更しております。
 次に,ステップルームの意義について説明をいたします。皆さん御存じのように,不登校の生徒にとりまして,自宅を出て登校し,教室に入ることはかなり困難なことだと考えられます。このような生徒が学校にも居場所があると感じられる場所がステップルームでございます。ここでは,学習活動のほかに,学級の友達と一緒に給食を食べたり昼休みを過ごしたりするなど,生徒が友人との関わりや所属感を持てるような取組を大切にしています。なお,ステップルームで生徒たちが安心して過ごすことができるよう,教育相談コーディネーターが工夫して教室づくりを行っています。
 続いて,ステップルームでの学習について説明いたします。ステップルームでは,教科学習以外にも,調理や植物の栽培など,あらゆる活動を行っています。生徒が目的意識や見通しを持って取り組み,少しずつ心のエネルギーが高まっていくような支援を行っています。
 次に,先ほど説明いたしました教育相談コーディネーターの役割には,個に応じた支援として学習支援がございます。次の資料をお願いいたします。現在,福岡市ではステップルームと普通教室をオンラインで結んで,ステップルームに通う生徒の学習の機会を広げていく取組を行っています。
 次に,具体的な不登校生徒へのオンライン授業の取組について説明をいたします。福岡市の東区にある青葉中学校は,生徒数357名,10学級の中規模校の学校でございます。青葉中学校のステップルームでは,教育相談コーディネーターやスクールソーシャルワーカーなどが学習の指導や支援を行っております。7月中旬現在で中学校2年生4名,3年生5名,合計9名の生徒がこのステップルームに通っております。
 青葉中学校のICTの環境につきましては,ステップルームにWi-Fiルーター1台及び端末を2台設置しています。また,全クラス分のカメラつきノートパソコンを配備しまして,Zoomを活用することで,どの教室からもステップルームのオンライン授業を行うことができるようになっています。
 次の図は,オンライン授業のイメージでございます。教室に入ることができない生徒や不登校傾向にある生徒に教室の授業を届けるため,生徒の状況に合わせ,教室とステップルームなどをつなぐ場合と,教室と自宅をつなぐ場合を準備しております。もちろん不登校生徒個々の状況を詳細に分析して,その子にとってオンライン授業が適切かどうかの判断もしっかりしております。
 次は,Zoomを活用して,教室とステップルームをオンラインでつなげている様子でございます。ステップルームの生徒は,教室で行われている授業を生中継で見ることができます。なお,現在,この青葉中学校では数学と英語においてオンライン授業を行っています。
 次の資料ですが,オンライン授業を受けている生徒や指導している教育相談コーディネーターからは,スライドにあるように前向きな感想が届いております。また,オンライン授業を配信している教員やオンライン授業を受けている生徒の保護者からも,オンライン授業の効果や生徒が意欲的に取り組んでいる姿が伝わってまいります。
 次のスライドは,青葉中学校で行われましたオンライン授業の研修会の様子でございます。福岡市内から情報教育担当者が参加して,オンライン授業の進め方や注意点などについて研修を行いました。これからは,全ての学校においてオンライン授業を行うことができるよう,このような研修会などを随時実施していく予定でございます。
 最後になりますが,オンライン授業の今後の方向性についてですが,不登校だけではなく,子供たちの長期入院からの復帰時や,現在の新型コロナウイルスのさらなる感染拡大やその他の自然災害など,様々な理由によって子供たちが学校で授業を受けることができなくなった場合に,全ての子供たちの学びを止めることなく学力を保障していくために,また,これからの新しい学校教育の姿としてICTを活用してまいりたいと思っています。今後も,子供たちの社会的な自立につながるオンライン授業の在り方について検討してまいります。
 最後になりますが,このような説明の機会を与えていただいたことに深く感謝を申し上げて,私の説明を終わらせていただきます。ありがとうございました。

【荒瀬部会長】 星子教育長,ありがとうございました。
 それでは,ただいまから40分程度で意見交換をお願いしたいと思います。いつものように,御発言をなさる方は挙手のボタンを押していただきますようにお願いいたします。いつものようにと申しましたが,今回はシステムが異なっておりますので,「挙手」というボタンがあろうかと思いますが,そちらを押してください。順にこちらから指名させていただきます。その際,ミュートを解除していただいて,御発言をお願いいたします。毎回申し上げて恐縮でありますが,できるだけ多くの皆様から御意見をいただきますために,お一人2分程度で御発言をまとめていただければと思います。よろしくお願いいたします。御発言が終わりましたら,先ほどの挙手のボタンのところにカーソルを当てていただきますと,「手を下げる」と出ますので,そちらのボタンを押していただいて,またミュートの状態にしていただきたいと思います。いろいろと御厄介をおかけいたしますが,よろしくお願いいたします。
 では,清原委員,お願いをいたします。

【清原委員】 皆様,こんにちは。清原慶子です。
 まず,福岡市のお取組について敬意を表しますとともに,1つ質問をさせていただき,資料1について意見を1つ申し上げます。
 福岡市におかれましては,政令市として児童生徒数が多い中,スクールソーシャルワーカーに加えて教育相談コーディネーターを67名も配置されるなど,不登校の児童生徒に温かく寄り添う実践をされていること,とてもすばらしいと思います。さて,その中で,オンライン授業を家庭あるいはステップルームで受講することについて,保護者も含めて子供たちの反応も良いようですが,実際に家庭でのオンライン授業の受講やステップルームでの受講も踏まえて,少しずつですが,教室に戻る児童生徒も出ているでしょうか。もちろん保護者との連携がさらに必要なところですし,無理はいけないのですが,そのような,正にステップが進んで,いいえ,進むというよりも,児童生徒の個性に寄り添った取組ができているかどうか,情報をいただければと思います。
 資料1の「デジタル教科書の今後の在り方等に関する検討会議」につきまして,1つ,今後の検討についてお願いを申し上げます。3ページの2「検討の視点」には,障害のある児童生徒,外国人の児童生徒を含む「児童生徒の視点」からの検討がまず挙げられ,加えて,「教師の視点」が提起されています。いずれも重要と考えます。併せて,実は私は,4ページ目の2つ目の丸に指摘されている「デジタル教科書の使用が増える場合の懸念される影響」,また,「それを最小限にするための留意事項等」について注目しています。
 と申しますのも,今回の一斉休業以降のオンライン授業の中で,このような課題も指摘されつつあります。すなわち,学校でもタブレット,自宅でもタブレット,デジタル教科書的な利用もありますが,自宅で,いわゆる学習塾あるいは予備校的な利用の中でも,デジタル教材として使っている児童生徒も増えています。併せて,自宅のものではゲーム等でも使うということになりますと,タブレットに接触している時間の長時間化も課題になっています。情報利活用能力,情報リテラシーの育成は,言うまでもなく,Society5.0では不可欠でございますが,併せて,そうした「利用時間の自己管理能力」の醸成も課題になっていくと思います。したがいまして,タブレットを教室でも自宅でも使う場合,保護者との連携が必要でございますので,「学校教育と家庭教育の連携」について指摘していただいている検討の視点がより重要になってくるかと思います。その点についての御検討を期待したいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
 以上です。

【荒瀬部会長】ありがとうございました。星子教育長,手を挙げていらっしゃるようですが,追加の御説明がおありでしょうか。

【星子福岡市教育長】 先ほどの清原さんの御質問にお答えしたいと思います。
 私も実際,この青葉中学に視察に参りました。このステップルームでは,子供たちが授業を生でオンラインで見ていたわけですが,現場の校長先生や先生方にお聞きしますと,やはり御家庭にいた子供さんがステップルームで教室の様子が分かる,雰囲気が分かるということなら是非来てみたい,オンラインでの授業を受けてみたいという子供さんも実際におられましたし,ステップルームでオンラインで授業を受けている子供さんの中には,授業の様子や先生の動きなどが分かって,教室への思いが心の中で非常に高ぶっているというのが見えたものでございます。
 以上です。

【清原委員】 ありがとうございました。

【荒瀬部会長】 ありがとうございました。ほかにも御質問があろうかと思います。その場合は,後からまとめて星子教育長にお答えいただきたいと思います。
 では,御発言の順ですが,毛利委員,橋本委員,若江委員,二見委員,天笠委員,この順にお願いをしたいと思います。
 では,毛利委員,よろしくお願いいたします。

【毛利委員】 つくば市みどりの学園の毛利でございます。よろしくお願いいたします。
 私は,資料1の2の「検討の視点」(2)「教科書制度の在り方」についてお話しさせていただきたいと思います。ここのところに,各教科等の授業時数の2分の1に満たないことを基準としていると書いてありますが,例えば,先ほど課長からお話がありましたように,UDのような配慮が必要なお子様に活用する場合,例えば,文字を大きくしたりとか読み上げたりとかいう場合に2分の1しか使えないと,そのほかのときには配慮ができないということもあるのかなという懸念があります。
 もう一つは,理科の実験のようなときには,ほぼ教科書を使いませんので,本校では指導者用デジタル教科書を活用させていただいていますが,毎時間授業で使ったとしても,授業の中では利用頻度としては2分の1以下になるんではないかなと思いますので,単純に授業時数というよりは,その教科の特性に応じて是非考えていただけるとありがたいと思いました。
 以上です。

【荒瀬部会長】 ありがとうございます。後ほど,また事務局からお答えいただくような時間も用意したいと思いますので,しばらくお待ちください。
 では,橋本委員,お願いいたします。

【橋本委員】 ありがとうございます。京都府の教育長の橋本です。
 資料1のデジタル教科書の関係ですが,今後,デジタル教科書,あるいはデジタル教材の活用を促進していくということは当然の流れのように思っております。これを使って実際に授業を進めるのは個々の教員ですので,まずは教員や生徒にとって具体的に効果が感じられるものでなければならないと思います。また,導入時には,研修を含め教員の一定の負担,あるいは負担感というものを恐らく伴うことになるかなと思いますので,学習機能やその効果とともに,具体的な操作方法や活用方法等を分かりやすく教員に示していくことが大切だと考えます。ハード環境が整ってくる中で導入を急がれる趣旨はよく理解できますが,一方で,現場では研修時間も十分確保しにくい,こういった状況がありますので,教員への負担をなるべくかけずに導入が可能となるような様々な配慮や検討も伍してお願いしたいと思います。
 それから,もう1点,福岡市の報告についてです。本当にすばらしいなと思うんですけれども,資料の14ページにオンライン授業について,ステップルームで行うもの,そして,自宅でも同様に授業が受けられるという2つの絵が示されているんですけれども,実態として家庭でのオンラインも進められているのか。とすれば,ステップルームで利用される生徒と家庭で利用される生徒,どんな実情になっているのか,また,それぞれを選ばれる生徒の特性といいますか,傾向,もしその辺りがお分かりでしたら教えていただきたいと思います。
 以上です。

【荒瀬部会長】 ありがとうございました。
 では,若江委員,お願いいたします。

【若江委員】 キャリアリンクの若江でございます。よろしくお願いいたします。
 デジタル教科書の件について質問をさせていただきたいと思います。児童生徒用の教科書がデジタル化されるというのは本当に心待ちにしておりましたが,それの運用の仕方というか,実際の配られ方といいますか,今の教科書ですと,1年生は1年生,2年生は2年生の時の配布なんですけれども,先取り学習ですとか,あと,振り返りができるように,1年生から6年生までのものが一度に,小学校だったら小学校段階で配布されるのかというのが1点。
 もう一つが,デジタル教科書による発展的な学びという意味では,そこにリンクが貼られていて,そこからまたいろんなところの情報に飛べるのかとかというような,そういった発展性について,今想定しておられることがおありでしたら,是非お聞かせいただきたいと思います。
 以上でございます。

【荒瀬部会長】 ありがとうございます。
 では,二見委員,お願いいたします。

【二見委員】 二見です。
 私もまず,1のデジタル教科書について,恐らく想定されてないと思いますので,意見として申し上げます。3ページの「検討の視点」の上段ですけれども,児童生徒の学びの充実に向けて具体的な検討がというのがありますが,実は前にも申し上げましたが,全国でまだ4,000を超す学級が複式で行われています。2つの学年を同時に指導していくという学級です。子供たちがデジタル教科書を使うとすれば,このページを電子黒板に提示しなければいけない。そうすると,クラスに電子黒板が2台要るということ。そして,それを操作する教師用のタブレットも2個要るということがあって,学校規模が小さくても,ほかの学校と同じだけの設備を用意しなければいけないという,小規模であって財政的にも厳しいというところがあります。そういう点で,教師用のタブレットや増設する電子黒板等についての財政的支援を考える必要があるんではないかと思いました。
 次に,福岡市の取組ですけれども,大変すばらしく,羨ましく思うところでございます。私も,14ページの図を見させていただきまして,ステップルームや家庭から授業に参加できるという点ですが,今はお聞きすると,のぞいてみるというふうになっておりましたが,今後,双方向で,しかも積極的に授業に参加できるような状況は検討されているんだろうか,ここを教えていただきたいと思います。
 以上でございます。

【荒瀬部会長】 ありがとうございました。
 では,天笠委員,お願いいたします。

【天笠部会長代理】 よろしくお願いいたします。
 私は,このデジタル教科書の検討会議につきましては,どのような知恵を絞り出していただけるかどうかということについて,期待を持って注目させていただいております。基本的に,情報の端末がそれぞれの教室,子供たちに行き届いていくことですとか,デジタル環境の整備を進めていくということについては,その方向で進めるべきだと思っております。ただ,教室における授業という観点からしたときには,デジタル一本やりでは危ういんじゃないか,こういう思いも持っております。そういう点では,紙もデジタルも共に生かしていく,あるいは紙とデジタルの融合を図っていく,こういう授業の文化,もう一度文化を耕していくというか,豊かにしていくことも,また授業を豊かにしていく方向性として十分あり得るのではないかと思っております。ですから,繰り返しますけれども,デジタル一本やりの方向性で,そこに傾注していくような進め方ではなくて,複眼的に,このお問いに対して迫っていただいて,そして,強い見解を示していただくことを御期待申し上げたいと思います。
 私からは以上です。

【荒瀬部会長】 ありがとうございました。
 では,続きまして,香山委員,お願いいたします。

【香山委員】 岡山の香山です。
 まず,星子教育長様に1点御質問したいと思のですが,19ページ,「今後の方向性」というスライドがございます。この方向性につきましては,国のガイドラインとして,学校で学びたい,でも,学べない児童生徒に対して,オンライン授業を出席扱いとするといった制度があったかと思いますけれども,これにのっとって今後の方向性を出されていると思のですけれども,特に新型コロナウイルスとか自然災害等も含め,やむにやまれず自宅にいないといけないような子供たちも出席扱いをし,そして,先ほど二見委員がおっしゃったように,聞くだけじゃなくてさらに双方向で参加もできるといったような,そういうイメージをお持ちなのかどうかというあたり,もう少しお話をお聞きできたらなと思いました。
 それから,もう一方で,資料1,検討事項につきまして,これ,お尋ねしたいんですけれども,私の理解が及んでいと思うんですけれども,基本的にデジタル教科書につきましては,全員に無償で提供するということが前提になって議論が進んでいますでしょうか。今あるデジタル教科書を買おうと思ったら,相当高いお金でしか買えないと思うんですね。特に小中の場合は,全員無償で提供されるということであれば,先ほど天笠委員もおっしゃったように,紙と併用して使っていくという方向で,2分の1というような制限よりも,併用していくというような形で,結果的に2分の1のあたりで収まればいいのかなと考えております。その辺りの前提条件につきまして教えていただけたらと思います。
 以上2点です。

【荒瀬部会長】 ありがとうございました。では,今手を挙げていらっしゃる方が,神野委員お一人です。一旦ここで,この件は止めまして,御質問も出ておりますので,そのことについてお答えをいただければと思っております。
 では,神野委員,お願いいたします。

【神野委員】 手短に1つだけです。
 デジタル教科書の検討のところで,2の「検討の視点」というところで,どのような学習機能や操作機能,学習履歴の把握のための仕組みが必要かということを書かれていらっしゃいます。教科書というのは,皆さん御存じのとおり,子供たち自体が理解するためのパートとして,インプットといいますか,様々情報が載っているところと,あと演習問題として子供たちが解くという問題が載っているパートと,今のは数学の話ですが,幾つか教科書の中においてはパートが存在しているかと思っていまして,例えば演習問題というような方向も,今回,デジタル教科書でしっかり検討していくならば,演習問題自体をそこに載せるだけではなくて,例えば解答ができるとか,さらに,解答した後,子供たちがどのような解答をしたのかということすら履歴として残せるとか,そのような形で,今まで教科書が果たしてきた役割ということを,もう一度デジタルに置き換える際に,どのようなやり方ができるのかというところまで踏み込んだ議論ということを是非お願いしたいなと思っています。
 また,そのようにためられた履歴というものは,当然学校内での共有ですとか教育委員会との共有とか,そのような形での仕組みづくりということを目指すようになってくるかと思います。そのような中において,もちろん個人情報をどう扱うのかというような議論はまた別途あるかとは思いますが,そのようなデジタルを前提とした学びの中で,今まであった教科書の仕組みをどのようにデジタル化するのかというところの議論を是非お願いしたいと思っております。
 以上になります。

【荒瀬部会長】 ありがとうございました。それでは,星子教育長,申し訳ありませんが,出ました御質問にお答えいただけますでしょうか。

【星子福岡市教育長】 星子でございます。橋本委員,二見委員,香山委員,御質問どうもありがとうございました。
 皆様方の御質問,つまるところは,双方向であったり,家庭でのオンライン授業の実情,そして,コロナ対応の出席扱い等についてという御質問,いずれも本質は一緒だと思いますので,1つにまとめて説明をさせていただきたいと思います。ちょうどスライドの19,最後のページにございましたように,私どもが今回のICTを活用したオンライン授業を進めるに当たっては,今回のコロナの対応が理由の一番だったということはそうでございます。それに加えまして,国のほうでGIGAスクール構想の前倒し,ということもございましたので,ここで一気に子供たちに1人1台のタブレットを今年末までに配布することとしました。
 ただし,これは子供たちに渡すのはWi-Fi対応でございますので,当然Wi-Fi環境,通信環境がない御家庭もございます。そこで春先に私どもが調査をいたしましたら,小中学校約12万人子供たちがおりますが,そのうちの73.8%の家庭では無制限の通信環境がございます。8.3%が従量制,課金制の対応になっています。そして残りの17.9%が,どうしても通信環境がない子供さんたちがおられます。そういった中で,私どもはやっぱり12万人の子供さんがおられますので,通信環境がない御家庭だけでも2万2,000人ほどの御家庭がございます。今回,19ページに書いていますとおり,不登校の対応であったり長期入院であったり,これらは私どもが春先からコロナの対応をしているときに,それぞれの学校で実情に応じて,自ら先生方が始められたことでもございます。そのときにやっぱりネックになりましたのが,それぞれの家庭,特に通信環境がない御家庭での活用でございました。
 現在,私どもでは,コロナが不安で学校に行きたくない,行けない。それで御家庭でオンライン授業を受けている子供が,小学校,中学校合わせて134名おられます。その中で,私どもが,通信環境の整った端末を貸し出している方が,51名おられます。また,不登校でオンライン授業を受けているのは今現在,市内で54名おりまして,その中で私どものほうから貸出している端末を利用している方が24名おられます。このような形で,春先から現在まで,ある程度の数の,Wi-Fiが整ってない御家庭へ通信環境が整った端末を,私どもが借り上げて提供するということもやっておりますが,今年の末までには,GIGAスクール構想による1人1台の端末も整備されますので,また今年度の残り,そして来年度からは福岡市教育委員会のほうで,子供たち,御家庭に通信環境を提供するようなことも,予算も含めて考えていきたいと思っております。
 実は19ページに書いてあるのは,私どもの完成形,理想のことでございまして,将来はやっぱり不登校であったり長期入院に対応した,そして,先ほども申しましたとおり,いつコロナの感染拡大がまたさらに広がって学校の休校があったり,それから感染者が出て,今現在,3日間であったり1週間であったり学校の休校というのもございます。その中においても,家庭と学校を結んだオンライン授業をやること,そして,その他にも自然災害,こういった学校に行けなかったときに学校と結ぶというような,学校の各教室側のウェブカメラなんかも今準備しておりますので,どんなときにも子供たちの学びを止めないというのは,私たちの完成形としてやっていきたいと思っております。
 以上です。

【荒瀬部会長】 ありがとうございました。御質問いただきました3名の委員の皆様,今丁寧に説明していただきましたが,その中で関連するところがあったということでよろしいでしょうか。ありがとうございます。星子教育長,ありがとうございます。
 では,神山課長から,デジタル教科書に関する御質問,あるいは御意見につきましてお話をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

【神山教科書課長】 教科書課長の神山でございます。
 たくさんの御意見,また御質問をいただきまして,ありがとうございます。順番にお答えをさせていただきたいと思います。まず清原委員から,タブレットなどを使う時間が長くなるのではなかろうかという御指摘がありました。私どももそういった懸念もあろうと考えており,そうした視点からの御意見も,ヒアリングなどを通じて頂きながら,検討会議において検討を進めてまいりたいと考えているところでございます。
 また,毛利委員から特別支援について御指摘がございました。今回の資料には現状の制度に関して2分の1未満ということだけが書かれておりましたが,特別支援に関しましては別に基準がございまして,障害の事由に応じた適切な配慮をしていただきながらではございますけれども,2分の1を超えたデジタル教科書の使用が今でもできることになっております。ただ,今後,デジタル教科書が新しいタイプのものになっていく中で,どういう機能が,特別な支援,特別な配慮が必要な方に必要であるかなどについて今後議論をしていくこととしております。また,理科などの教科特性に配慮をする必要があるという御指摘もそのとおりでございまして,その点も踏まえて,デジタル教科書の検討会議で検討をしていきたいと考えてございます。
 また,橋本委員からは,教員の負担の観点からの御指摘がございました。お話にありましたような操作性の部分に関しましては,現在,各デジタル教科書は各出版社で作っておりますので,仕様がばらばらという状況でございますけれども,例えば操作性の部分について,ある程度の統一を図ることができれば,教員の負担の面でも軽減が図れるのではないかと考えております。また,デジタル教科書の配備と使用が進めば,教材の準備などの面で教員の負担が軽減できるという側面もあろうかと思っておりまして,そうした教員の負担の観点も含めて,検討会議で検討をしていただきたいと考えてございます。
 また,若江委員から御質問のありました,実際の配られ方について,今,デジタル教科書は,オプションといいましょうか,紙の教科書が小中学校では全ての生徒に配られているのに加えて,デジタル教科書を各学校や設置者の判断で使っていただいている状況でございます。したがって,今の利用状況はばらばらかと思いますけれども,質問にもありましたように,今後,無償で提供する対象にするのかどうかというところはこれから検討会議で議論するところでございますが,仮に義務教育段階で無償給与の対象にするという話になった場合に,どの学年にどのように配布をするのかといったところは検討の課題だと思ってございます。少なくとも,デジタル教科書の振り返りといいますか,前の学年のものが見たいといったときに見られないといったような不都合は解消する必要があろうと思っております。一方で,先取り学習につきましては,紙の教科書も手元にあるものは前の学年のものを見ることができるわけですが,先取りのものは現状紙の教科書も配布されていない状態ですので,その部分についてどのような対応の方法があろうかということは今後検討していきたいと考えてございます。
 また,リンクを使って,教科書以外の教材に飛べるのかということの御質問もありました。先ほど申し上げましたように,デジタル教科書にまだ統一の仕様があるわけではございませんが,多くのデジタル教科書では,関連するデジタル教材のところにリンクし,飛べるような形にはなっておるところでございます。それを今後,さらなる普及を図るときにどういった統一を図るか,あるいは,どういった提供の方法ができるか,役割分担ができるかといった点については今後議論させていただきたいと考えてございます。
 また,二見委員からは複式学級の御指摘がございまして,非常に貴重な観点をいただいたと思っております。特に設備などに関する財政支援ということでしたけれども,必要な設備に関する支援などについては,関係課とも連携の上,配慮してまいりたいと考えております。
 また,天笠委員から,デジタル教科書,デジタル一本やりでは危うい側面もあるのではないかという御意見をいただきました。その点は私どもも同じように考えてございまして,今,開いている検討会議の中でも,教科書と教材における紙とデジタルの適切な役割分担というものがどうあるべきかという観点から議論を進めていただくこととしておりまして,そうした議論を踏まえて,教科書と教材における紙とデジタルの適切な役割分担を見定めていきたいと考えてございます。
 また,香山委員からは,全員無償で提供するということになるのかといった御質問がございましたけれども,その点については,先ほど申し上げたように,現状では紙の教科書が無償の対象で,デジタル教科書は,保護者等の負担でお買い求めいただいておるということでございます。無償給与の対象にすべきかどうか,できるのかどうかといったところは今後議論をさせていただきたいと思っております。予算の制約等があるので,どこまでできるかというのは今後の課題ではございますが,昨今のデジタル化が進んでいる状況を踏まえますと,できる限り多くの児童生徒がデジタル教科書を使えるような環境をなるべく早く実現をしていきたいとは考えておりまして,その方向での議論を進めてまいりたいと思っております。また,紙の教科書と併用して使えるようにという,天笠委員と同じような視点からの御指摘もございましたが,先ほど申し上げたように,紙とデジタルの適切な役割分担を議論して検討してまいりたいと考えてございます。
 また,神野委員からは,問題演習などのパートについては履歴を残せるようにしたりすることを検討してはどうかといった御指摘がございましたけれども,今使われているデジタル教科書に関しましては,紙の教科書と同じ内容の部分がデジタル教科書という定義になっておりまして,先ほど申し上げたように,ほかの問題集などのデジタル教材にはリンクを貼るような仕組みになっております。したがって,リンクを貼った先のデジタル教材の部分につきましては,様々な教材が提供されておりますし,学習の支援をする仕組みとセットで使うこともできるだろうとは考えておるわけですけれども,現状,そこの部分は,デジタル教科書の外側にあるデジタル教材だったり支援のソフトウエアだったりする部分ということで考えておりますので,今,デジタル教科書の検討を進めるに当たりましては,そういったデジタル教材,あるいは支援システムとの,役割分担としてどういった形がよいのか,また,役割分担が進むように,連携が進むようにするにはどうしたらいいかといった視点から検討会議で議論を進めていただきたいと考えておるところでございます。
 私からは以上でございます。

【荒瀬部会長】 ありがとうございました。御質問,御指摘いただきました皆さん,よろしいでしょうか。ありがとうございました。
 それでは,この件,ここまでとさせていただきたいと思います。星子教育長,どうもありがとうございました。星子教育長におかれましては,公務の関係で,この後,御退席になります。本当にありがとうございました。

【星子福岡市教育長】 ありがとうございました。

【荒瀬部会長】 では,次の議題に移りたいと思います。
 それでは,議題2として,中間まとめの骨子案につきまして田中教育制度改革室長から御説明をいただきます。この御説明の後,休憩を取りたいと思っておりますので,いましばらくお願いをいたします。

【田中教育制度改革室長】 教育制度改革室長,田中でございます。資料3を御覧いただくようお願いいたします。
 本骨子案は,昨年12月におまとめいただきました論点取りまとめを土台としつつ,これまでの特別部会での御審議,また,関係部会や高校ワーキンググループ,各有識者会議からの御報告を受けまして,特別部会において御審議いただいたことを集約しまして,事務局において,この案を作成させていただいたものでございます。先に今後のスケジュールの話をいたしますが,本日,これから御審議をいただきまして,その審議を踏まえまして,9月11日の特別部会で中間まとめ素案という形で御審議いただきまして,9月28日の初等中等教育分科会において中間まとめ案をお諮りすると,そのようなことを予定してございます。本骨子案につきましては60ページ近い大部になりますけれども,1ページから19ページ目までが総論となっておりまして,それ以降は9項目の各論から構成されております。本日,時間も限られますので,総論部分を中心にポイントを絞って説明を申し上げます。
 まず,1ページ目でございます。表題として,「誰一人取り残すことのない『令和の日本型学校教育』の構築を目指して」,サブタイトルとして,「~多様な子供たちの資質・能力を育成するための,個別最適な学びと,社会とつながる協働的な学びの実現~」としております。
 1ページ目でございますけれども,「急激に変化する時代の中で育むべき資質・能力」ということで,1つ目の丸でございますけれども,Society5.0時代が到来しつつある中で,社会の在り方そのものが,現在とは非連続と言えるほどに劇的に変わるとされているということを書いてございます。2つ目の丸でございますが,このように急激に変化する時代の中で,我が国の学校教育が子供たちに育むことが求められる資質・能力について基 本的なところを書いてございます。この内容は,新学習指導要領の総則の冒頭に書かれているものと同じ文章としてございます。
 続きまして,2ページを御覧ください。上から3つ目の丸となりますけれども,現在,不確実性の高い時代と言われておりますけれども,新型コロナウイルス感染症により,より一層先行き不透明となっている中,私たち一人一人,そして社会全体が答えのない問いにどう立ち向かうのかが問われている。目の前の事象から解決すべき課題を見いだし,主体的に考え,多様な立場の者が協働的に議論し,納得解を生み出すことなど,これは正に新学習指導要領で育成を目指す資質・能力が一層強く求められているということを書いてございます。その下の丸でございますけれども,新型コロナウイルス感染症の感染拡大によりまして,テレワーク,遠隔診療,また,現在のこの審議会もそうでございますけれども,世の中全体にデジタル化,オンライン化が大きく促進している。学校教育もその例外ではないという中におきまして,これからの学校教育を支える基盤的なツールとして,ICTはもはや必要不可欠なものであることを前提として学校教育の在り方を検討していくことが必要であるとしております。
 続きまして,2ページの一番下,2ポツになります。ここでは,新しい時代の学校教育の在り方を検討するに当たって,日本型学校教育と言われる我が国の学校教育の成果,そして,変化する時代の中で直面する課題等について整理してございます。3ページを御覧ください。3ページ(1)では,日本型学校教育の歴史について触れた上で,我が国の初等中等教育が諸外国から高く評価されていることなど,その成果について記述してございます。
 続きまして,4ページを御覧ください。(2)といたしまして,新型コロナの感染症拡大を通じて再確認された学校の役割というものを記述してございます。特にこのページの下から2番目の丸にございますように,今回の学校の臨時休業に伴う問題や懸念が生じたことによりまして,学校は学習機会と学力を保障するという役割のみならず,全人格的な発達・成長を保障する役割や,人と安全・安心につながることができる居場所,セーフティネットとしての身体的・精神的な健康を保障するという福祉的な役割をも担っていることが再認識されたということを書いてございます。
 続きまして,4ページの一番下からは,変化する社会の中で我が国の学校教育が直面する課題について書いてございます。次の5ページを御覧ください。マル1といたしまして,社会構造の変化と日本型学校教育について記載してございます。このページ,下から2つ目の丸でございますが,戦後の教育におきまして,個性を伸ばす必要性というのは常に認識されてきたわけでございますが,一方で,日本の学校において,みんなで同じことを同じようにといったことを過度に要求したり,同調圧力を感じているという指摘もあるということを書いてございます。
 続きまして,6ページを御覧ください。6ページから9ページにかけましては,マル2「今日の学校教育が直面している課題」として,子供たちの多様化,高校生の学習意欲の低下,教師の長時間勤務による疲弊,情報化の加速度的な進展に関する対応の遅れ,少子高齢化,人口減少の影響,新型コロナウイルス感染症により浮き彫りとなった課題等について記述してございます。
 続きまして,9ページを御覧いただければと思います。9ページから11ページにかけましては,(3)「新たな動き」として,多くの課題がある中で,いずれも中央教育審議会での議論を経て具体化された施策でございます。マル1「新学習指導要領の全面実施」,マル2「学校における働き方改革の推進」,マル3「GIGAスクール構想」という令和時代とともに始まった3つの新たな動きについて触れ,国においてはこうした動きを加速,充実しながら新しい時代の学校教育を実現することが必要としてございます。
 続きまして,11ページを御覧いただければと思います。11ページ以降では,学校が直面する様々な課題を乗り越えまして,ここにございます3ポツ「2020年代を通じて実現すべき『令和の日本型学校教育』の姿」について記載しております。これがタイトルになっております。これは,下から2つ目の丸にあるように,明治から続く我が国の学校教育の蓄積である日本型学校教育の良さをさらに受け継ぎながら発展させるという意味を込めたものでございます。
 続きまして,12ページを御覧いただければと思います。(1)「子供の学び」につきましては,個別最適な学びとはどのようなものであるかについて,これにつきましては,まだ特別部会には報告がなされておらず,教育課程部会で御議論いただいていることも踏まえまして記載させていただいております。このページ,(1)の上から4つ目の丸におきまして,「指導の個別化」と「学習の個性化」などを教師の視点から整理した概念が「個に応じた指導」であり,学習者視点から整理した概念が個別最適な学びであると考えられることとしております。
 その下の丸でございますけれども,各学校段階や発達の段階に応じて教師の関わりの中で,学習者が自らの学習の調整を図る度合いを高めていきながら,教科等の特質に応じて,指導の個別化と学習の個性化を適切に組み合わせること。一番下の丸から12ページにかけまして,個別最適な学びは孤立した学びに陥ってはならず,個別最適な学びと社会とつながる協働的な学びの往還を実現することが必要であること。この上で,12ページでございますけれども,サブタイトルにもございます,目指すべき学びの在り方を,多様な子供たちの資質・能力を育成するための個別最適な学びと,社会とつながる協働的な学びの実現と,このように記載してございます。
 このことを踏まえまして,13ページから15ページにかけまして,昨年12月の論点取りまとめにおいて示していただいた新しい時代を見据えた学校教育の姿,この内容をベースといたしまして,マル1「幼児教育」,マル2「義務教育」,マル3「高等学校教育」,(2)「教職員の姿」,(3)「子供の学びや教職員を支える環境」について記載してございます。
 続きまして,15ページを御覧いただければと思います。4ポツ「『令和の日本型学校教育』の構築に向けた今後の方向性」として,続く各論に関わる横断的な取組の方向性を記載してございます。この15ページ,4ポツの上から3つ目の丸でございますけれども,学校や教師がすべき業務等の精選・縮減・重点化と,教職員定数等の人的資源・物的資源を現場に十分に供給・支援することが国に求められる役割であること。次の丸では,一斉授業か個別学習か,デジタルかアナログかといった二項対立の陥穽に陥らず,教育の質の向上のために,どちらの良さも適切に組み合わせて生かしていくという考え方に立つべきであることを記載してございます。その上で,以下に6点の今後の方向性を記載してございます。
 まず,15ページの下ですが,(1)「学校教育の質と多様性,包摂性を高め,教育の機会均等を実現する」。続きまして,16ページでございますけれども,(2)「連携・分担による学校マネジメントを実現する」,17ページでございますが,(3)「これまでの実践とICTとの最適な組合せを実現する」,18ページでございますけれども,(4)「履修主義・修得主義等を適切に組み合わせる」,(5),19ページでございますけれども,「感染症や災害の発生等を乗り越えて学びを保障する」,また,(6)「社会構造の変化の中で,持続的で魅力ある学校教育を実現する」,以上の6点でございます。
 続きまして,20ページと21ページになります。まず,20ページでございますけれども,冒頭申し上げましたように,以下9つの各論から構成されております。それぞれ時間の制約の都合上,各論について詳細を説明は申し上げませんけれども,この各論につきましては,関係部会や,高校ワーキンググループ,有識者会議などからの報告を受けまして,既に特別部会において御審議いただいたことを中心に,それぞれの項目,(1)として基本的な考え方をまず書いた上で,具体に取り組むべき,検討すべき,留意すべき事項等について項目を整理して記述する形を取ってございます。
 まず1番目でございますけれども,5月26日の特別部会で御報告をいただきました幼児教育の実践の質向上に関する検討会の中間報告を受け,ここにございますように,幼児教育を担う人材の確保・資質及び専門性の向上,幼児教育の質の評価の促進等について記載してございます。2番目につきましては,教育課程部会,教員養成部会における審議の御報告をいただきながら,本特別部会で御審議をいただきましたことなどを基に,教育課程の在り方,義務教育9年間を見通した教科担任制の在り方等について記載してございます。
 3番目でございますけれども,7月17日の特別部会で報告いただきました新しい時代の高等学校教育の在り方ワーキンググループ報告資料を基に,各高等学校の特色化・魅力化,定時制・通信課程における多様な学習 ニーズへの対応と質保証等について記載してございます。4番目でございますけれども,同じく7月17日の特別部会で御報告いただきました新しい時代の特別支援教育の在り方に関する有識者会議のこれまでの議論の整理を基に,障害のある子供の学びの場の整備・連携強化,特別支援教育を担う教師の専門性向上等について記載してございます。5番目でございますけれども,5月26日の特別部会にて報告いただきました外国人児童生徒等の教育の充実に関する有識者会議の報告書を基に,教師等の指導力の向上,支援環境の改善,中高生の進学・キャリア支援の充実等について記載してございます。
 続きまして,21ページでございますけれども,この6番目,7番目につきましては,新型コロナウイルス感染症による学校臨時休業等の問題を受けまして,この特別部会におきまして,4月27日から7月17日にかけまして複数回御審議をいただいたことを踏まえたものでございます。6.(2)のICTの活用や,対面指導と遠隔・オンライン教育とのハイブリッド化による指導の充実,あるいは6.(3),特例的な措置や実証的な取組,7番目では,新時代の学びを支える教室環境の整備と,それに応じた指導体制等の整備について記載してございます。8番目でございますけれども,6月18日の特別部会の審議を踏まえまして,児童生徒の減少による学校規模の小規模化を踏まえた学校運営,地域の実態に応じた公的ストックの最適化の観点からの施設整備の促進等について記載してございます。
 最後,9番目でございます。やはり教職員の在り方というのが一番大事ということで最後にしてございますけれども,Society5.0時代における教師及び教員組織の在り方について,7月17日に教員養成部会から審議報告をいただいたことを踏まえまして,教師のICT活用指導力の向上方策,多様な知識・経験を有する外部人材による教員組織の構成等について記載してございます。
 雑駁でございますけれども,以上でございます。

【荒瀬部会長】 ありがとうございました。たくさんの量でありますが,まとめて御説明をいただきました。それでは,議題2に関する意見交換に入る前に,今から10分間の休憩を取りたいと思います。時間になりましたら,また画面の前にお戻りいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。暫時休憩いたします。

( 休憩 )

【荒瀬部会長】 それでは,再開をいたします。よろしくお願いいたします。
 先ほど事務局から御説明いただいた中間まとめ(骨子案)につきまして,この後の時間で意見交換を行いたいと思います。
 御発言いただく際には,「手を挙げる」,挙手のボタンを押していただきますようにお願いいたします。また,御発言につきまして,先ほど御協力いただきましたように,できるだけ2分程度でまとめてお願いしたいと思います。
 それでは,どうぞ挙手のボタンをお押しください。
 では,今,4人の方が挙手していただいているようですが,まず4人の方に御発言を順にお願いしたいと思います。
 若江委員,そして,香山委員,続いて,加治佐委員,そして,吉田信解委員です。この順によろしくお願いいたします。では,若江委員,どうぞ。

【若江委員】 若江でございます。早速でありがとうございます。
 御説明いただきました資料の52ページ,7の「新時代の学びを支える環境整備について」というところなんですけれども,ここで申し上げるべきことかどうかは分からないんですが,基本的な考え方のところで,新型コロナウイルスのことも触れられており,(2)のところでは,「新時代の学びを支える教室環境の整備」とありまして,ここでは,机や椅子だとか情報端末,教科書等のことが触れられているんですが,最近,私が伺った際に,清掃というよりも,衛生管理の必要性があり,先生方が細やかに消毒作業をされていることを知りました。,それについても文部科学省からも,ここまででいいですよというようなガイドラインをお出しいただいているかと思うんですが,1点気になるのが,学校の備品になると思うんですが,掃除道具です。日本型教育という点からみても,やはり清掃活動というのも特徴のある,よい教育活動だと思うんですが,今,学校は,ほうきとちり取りという,昭和初期のままの清掃道具を使って,子供たちと清掃活動,学習をしているのが現状です。やはりこのコロナ時代において,ほうきとちり取りというものでよいのか。家庭とは全く違う清掃道具を使っている状況ですので,これについてはどんなふうに考えられているのかをお聞かせいただきたいですし,これについては是非検討すべきことではないかなというふうに思っております。
 以上です。

【荒瀬部会長】 ありがとうございます。では,香山委員,お願いいたします。

【香山委員】 岡山の香山です。3点,お願い申し上げます。
 1点目は,13ページの学びの姿というところについてです。私は,子供たちが,まず小さなコミュニティ,あるいは地域社会で当事者として参画する体験を経て,遅くても高校生段階では,地域社会における実生活の文脈で,当事者として課題を探究する学習をする中で,探究力であるとか民主主義を学び,主権者として主体的に社会や国をよりよくする形成者になってほしいと願っています。
 社会や国家の危機を救う力をつけるには,この方法しかないと信じているんですけども,その観点から,マル1番の幼児教育,マル2番の義務教育,マル3番の高等学校教育の各段階において,子供たちが属する地域社会の魅力の発見及び課題の発見・解決の探究的な学びを体験するための記述をもう少し書き込んでいただけたらなとお願いしたいと思います。
 3番の高等学校教育の白丸の2つには,地域とのつながり,連携等について,書いてはあるんですけども,もう少し踏み込んで,私が申し上げた今の趣旨を反映させていただけたらと思います。これが1点です。
 2点目は,関連しまして,22ページですけれども,幼児教育の(1)基本的な考え方の白丸の2つ目ですけれども,「しかし」で始まる段落の3行目に,「家庭や地域では体験し難い」という表現があるのですが,私には,「家庭では体験し難い地域の社会・文化自然等に」と読んだほうがいいと思うのですが,この点については再検討していただけたらと思っております。私の読み取りが違うかもしれませんが。
 最後に,3点目,34ページをお開けください。34ページは,スクール・ミッションの再定義,3ポリシーの定義といったようなところであります。これにつきましては,昨日,高等学校のワーキンググループの会議がありましたので,まだ反映できていないと思うのですけれども,マル1番のスクール・ミッションの再定義の上から2つ目の白丸の段落,スクール・ミッションの定義の表現に,2行目,「に対して分かりやすく学校の役割や理念を示す」という表現があるのですが,昨日の協議の中では,多くのステークホルダーと一緒に意見調整をしたり,共創したりするプロセスが大事だという御意見が複数の委員からだされましたので,これについても検討していただけたらと思います。
 以上,3点です。

【荒瀬部会長】 ありがとうございました。香山先生,今,3つ目でおっしゃいました,昨日の高校ワーキングのものは反映されておりませんので,いずれまた9月11日の会議のときの資料を御覧いただければと思います。すみません。よろしくお願いいたします。
 では,加治佐委員,お願いいたします。

【加治佐部会長代理】 私が申し上げたいのは,教師の人材確保ということについてであります。
 この7ページ,8ページには,「教師の長時間勤務による疲弊」の中で,採用倍率の低下や教師不足の深刻化など,必要な教師の確保に苦慮する例が生じていることについての記載があります。
 ところが,こういう記載はあるんですけれども,つまり,問題にはしているんですが,それに対応する教師の人材確保の方策ですね。これに関する記述がないわけですね。教師の人材確保は,こういう新しい改革を実現していくためには欠かせない重要なものですので,この人材確保策について,各論部分で記述すべきではないかということであります。
 例えばその例として,私が考えるところを幾つか述べてみたいと思うんですが,一つは,教師という仕事は,創造的な仕事であると。つまり,新しいものを作り出す仕事であるということをこの中で記述していただきたいと思います。
 今は長時間労働のブラック職みたいな,非常によくないイメージがあります。骨子案では,要するに,これからの教師というのは,ICTを駆使して,子供一人一人に応じた最適な学びとか,あるいは子供が協働して学ぶような学習を作り出す仕事であると,こういうふうに言っているわけですよね。ですから,創造的な仕事であるということをはっきりとうたっていただきたいと思います。創造的な仕事じゃないと,とりわけ優秀な人材は教職に目を向けないと思います。ですから,まずそのことをお願いしたいと思います。
 それから,2つ目は,全国各地の都道府県教育委員会,採用権者は,教師の人材確保に非常に苦労していて,いろんな工夫をしているわけですね。その中には,働き方改革の取組や教職の魅力向上の取組,こういうのがいろいろあると思うんですね。マスコミ等でも報道されますけれども,こういういい事例を国として収集して発信すると,そういうことも書いていただけないかなということであります。
 それから,3番目は,外部人材を当然,教職に引き入れなければいけないわけですけれども,57ページに,「多様な知識・経験を有する外部人材による教員組織の構成等」,こういう記載があるんですが,こういう中で,全国各地では,受験年齢制限の緩和がかなり進んでおると思います。かなり進んできているんですが,改めてこういう受験年齢制限を緩和すべきであるとか,特別免許状についても触れてはおられるんですが,特別免許状も活用した特別な選考と,こういったようなことも必要だといったことも書いていただけるといいのかなと思います。
 それから,長くなって恐縮ですが,4点目ですけど,採用倍率が全国的に下がっておりますが,採用権者,教育委員会における差が当然あるわけですね。中には高いところがあります。私の地元の兵庫県は結構高いわけですね。なぜそうなのかということですね。やはりちゃんとした採用計画,今後の退職者や児童生徒数の推移をちゃんと分析,把握して,計画的な採用を進めているということが大きい要因だと言われております。
ですから,これもこれまで言われていることですけれども,改めて,やっぱりこれは一時的にパーッと増やしたり,減らしたりするんじゃなくて,計画的な採用が必要ですよといったようなこともうたっていただけるといいのかなと思いました。
 最後に,このコロナ禍で,教員志望状況がどういうふうに変わるのかということです。これまでそうであったように,不況になりますと,教師をはじめとする公務員の志望者が増えるということがありました。教員になりたい学生が増えるとか,あるいはほかの職から教職に転職するとか,そういう人が増えるんじゃないかということが当然予想されます。
 言葉は適切ではありませんけれども,ある意味,教職にとってはチャンスでもあるわけですね。チャンスだというようなことはもちろん書けませんので,こういう教職への入職を取り巻く環境の変化を見て,つまり今後の志望状況,受験倍率とかそういうことを見て,新たな方策を立てるべきだとか,そういったようなことをうたっていただけるといいのかなと思っております。
 以上であります。

【荒瀬部会長】 ありがとうございました。
 続きまして,吉田信解委員に御発言いただきますが,その後,二見委員,浜田委員,橋本委員,堀田委員,長谷川委員,貞広委員,清原委員,今野委員に,この順番にお願いしたいと思っております。
 では,吉田信解委員,お願いいたします。

【吉田(信)委員】 お世話になります。吉田でございます。私どもから,大きく3点,お話をさせていただきます。
 1点目は,11ページから始まります「令和の日本型学校教育」の姿,これを読ませていただきましてのいささか感想でもあるんですけれども,もう少し主権者教育みたいなところを織り込んでいくことはできないだろうかと。
 例えば高等学校教育について,13ページの丸の下から2つ目,この中に,「高等学校在学中に一人の自立した『大人』として振る舞える」という文言があるんですけれども,私とすると,やはり今,18歳に投票権が下げられて,現実,どうかというと,非常に投票率が低いという状況があるわけでございまして,やはり主権者として,我が国の将来に対して,一人一人が責任を持っているんだということは,これは本当に幼児のうちから,それこそ高等学校教育まで一貫してしっかりと教えていくべきことではないかなということを常々感じております。そういった視点が少し薄いかなと感じておりますので,その点はもう少し盛り込んでいただけるとよろしいのではないかということを感じております。
 2点目は,教員の数のことについてでございます。今般も,全国市長会をはじめ,地方三団体等々,世論のほうでも少人数学級のことについて,かなり声が上がっていると思います。これはもちろん,確かにこの中でも,記述の中で,例えば52ページには,「新時代の学びを支える環境整備」ということで,教室等の実態に応じて少人数編制を可能とするという文言はあるんですけれども,何かこのICT教育と,それから,いわゆるコロナ対策みたいなところに特化した中で,この少人数ということが言われていると。もう少し教育の質の向上という観点からは,少人数学級というのを捉え直していただけないかなということをお願いしたいと思います。
 それから,この教員の数については,実は具体的に少し,これはちょっと問題ではないかなと感じているところがございまして,それは45ページ,一つの例ですけど,上から最初の丸です。日本語指導教室の件ですけども,これは令和8年までに日本語指導が必要な児童生徒18人に対して教師1人という。考え方として,ここに具体的に数字が明記されているんでしょうけれども,こういう明記をされてしまいますと,例えば18人に満たない場合,教室が開けないというようなことが現場では起きてくると。認めてもらえないということが起きてくる。これはやはりどうなのか。やはり10人でも12人でも13人でも,18人に満たなくても,指導教室を開くということが私は大事だと思っておりますので,この数字を出すのはいいんですが,その数字に過度に縛られないような工夫をしていただけるとありがたいかなと思っています。
 ちなみに,特別支援学級については,今,8人となっておりますけれども,この辺は,現場からの声では,もう少し少なくできないだろうか,6人ぐらいにできないだろうかという声も出ておりますし,また,通級指導教室も今,13人となっておりますけれども,これももう少し少なくできないだろうかという声もございます。現場に応じて,もう少し柔軟に対応できるような現場での対応が可能になるような記述を考えていただけないかなということを感じております。
 最後になります。これは私の認識不足なのであれば御指摘いただきたいんですけれども,いわゆる特別支援学級についての言及はあるんですが,障害者の教育,具体的に言いますと,例えば視覚障害者の方々,あるいは聴覚障害者の方々,この学びについての今後の令和時代の教育というものがこの中には入っていないのが,これはもともと入っていなくて,別立てで作られるのか。むしろ,いわゆる聴覚障害であるとか視覚障害のお子さん方にもちゃんと目を向けるのであれば,こういう中にも位置づけていくことが必要なのではないかと。
 これは私のほうで勉強不足で,別途あるんですよと言えば,それで結構ですけれども,その点,心配になりましたので,御指摘をさせていただきます。
 以上でございます。

【荒瀬部会長】 ありがとうございました。
 では,二見委員,お願いいたします。

【二見委員】 それでは,私のほうからは3点。
 まず8ページの1つ目の丸のところですけれども,教職員不足,この問題について分析されていますけれども,原因となっているのが,「講師登録名簿の登載者数の減少等の要因が関連している」と,こう表記されていますが,前にも申し上げたんですが,免許更新制度によって,せっかくの免許から効力を発せず,眠っている状態のものが随分あると申し上げました。こういう点も要因の一つとして自覚していくべきじゃないかなと思いました。
 2つ目は,9ページの3つ目の丸でございまして,先ほどもございましたが,コロナウイルス感染者の問題から,今,20坪の教室の中に40人近い子供たちが学んでいるところもあります。しかし,これからコロナウイルスの感染が収束したとしても,これからまた起きることを考えれば,何らかの対応を行うことが必要であるという,ここの対応を考える必要がある,行うことが必要であることをやはり具体的に,学級定員の見直し,改善とか,あるいは学級編制基準の改善ということがある程度,読めることが必要なんじゃないかと思いました。
 3つ目は,17ページの(3),これまでの実践とICTとの最適な組合せの実現でございますが,そこで黒ポツの4つ目と5つ目。4つ目に,「可視化が難しかった学びの知見の共有や」云々というところでございますけれども,これについては,教職員の働き方改革も含め,これから1人1台という時代に向けて,先生方の授業の見直し,改善の必要になりますけれども,こういうところを最先端技術を活用して,先生方が自分の授業を分析したり,子供たちの学びのプロセスを分析する,そういうことを先端技術によって,もう少し簡単にできる,そういう研究をやはり積極的に,現場に依頼されて,その成果を全体に広げていただく。そういうことが必要だと思いますので,御提案申し上げます。
 以上でございます。

【荒瀬部会長】 ありがとうございました。今までも出ておりますけれども,事務局からの御対応は,皆さんの御意見が出た後でまとめてお願いしたいと思っております。
 では,浜田委員,お願いいたします。

【浜田委員】 ありがとうございます。
 今回,「誰一人取り残すことのない教育の構築」ということで,外国人の児童生徒の学ぶ権利が保障されるための非常に具体的な方策を打ち出していただいたということで,非常に大きな意義があると思っています。そういったことを踏まえまして,更にあと2点お願いをさせていただきたいと思います。
 まず1点目です。今回の答申の中では,新たな高校教育の在り方を考えるという部分についても提案をされているんですけれども,その中で,外国にルーツを持つ生徒の学びについても是非加えて書き込んでいただけたらと思っています。
 実際に外国にルーツを持つ子供たちが高校に進学を遂げた場合に,例えば学校によりましては,高校によりましては,多様な言語や文化を学ぶような科目が設置されている高校が出てきたりとか,あるいは定時制高校の中で,非常に大きな支援を得ていたりとか,そういったような事例もたくさん全国には存在しています。
 そういったことで,新たな高校教育の在り方の一つのファクターとして,外国にルーツを持つ子供たちの教育支援についても,この提言の中に書き込んでいただけたらありがたいかなと思っています。
 それから,2点目でございます。今回は,外国人児童生徒の日本語指導等を進めるために,教員免許を持っていない外部人材としての日本語教師の活用ということで提言がされています。そのこと自体はもう喫緊の日本語指導の課題の解決のための方策として,非常に有効であると考えているんですけれども,ただ,長期的な視点で見ますと,外国人の子供たちの教育というのは,日本語指導だけではなく,本提言にもありますように,キャリア支援ですとか,あるいはもう少し広く日本人を含む全ての児童生徒に対する異文化理解・多文化共生の教育を行うといったような側面も含んでいます。そういった意味で,両面ですね。外国人の子供たちの指導と,それから,日本人を含む全ての子供たちの多文化共生教育という,その両面からの教育の専門的な職域として,きちんと学校教育の制度の中に位置づけることが求められているのではないかと考えています。ですので,将来的には,新しい免許制度の創設ということも含めて検討されるべきではないかなと考えます。
 以上でございます。

【荒瀬部会長】 ありがとうございました。
 では,橋本委員,お願いいたします。

【橋本委員】 ありがとうございます。手短に3点申し上げます。
 1つ目は,高校教育の在り方です。13ページ下に,将来の高校教育の姿として,自立した大人として振る舞えるようにというのがあります。これについては,先ほど吉田委員から,主権者教育についての指摘がありまして,私も同感なんですけれども,私どもはこれに加えて,特に実社会との接続を果たすということでは,大学進学者も含めてですが,高校段階での広い意味でのキャリア教育,また,小中学校と連動したキャリア教育を進めていくときに大変重要じゃないかと思っております。今,33ページ以下の高校教育の在り方のところでは,キャリア教育という文字が見当たらないように思いますので,何かで触れていただければどうかと思います。
 それから,2点目は,特別支援教育の在り方についてであります。41ページに,特別支援学校の教育環境の整備として,施設の設置基準を策定することが求められるとされており,現在,多くの支援学校が生徒数の増加によって,厳しい施設環境に置かれている。こうした状況を踏まえますと,基準は設けられるべきだろうと思います。しかし,基準内容によりましては,既存施設の多くがそれを満たしていないということになる可能性もあり,設置者には,施設の増改築等の整備対応が強く求められるようになるかなと考えます。
 15ページには,学校施設の整備等,物的資源の支援が国に求められる役割だと書かれておりますが,従来から学校施設の補助等につきましては,補助単価の設定が低いといった課題があるなど,必ずしも十分な内容ではなかったと思いますので,是非支援の充実を図っていただきたいと思っております。
 それから3点目は,Sosiety5.0時代における教師の在り方のところです。56ページには,Sosiety5.0時代の到来や,学校現場におけるICT環境の整備が進んだとしても,教師としての基本的な役割が変わるものではないとされています。
 確かに基本的役割自体は変わらないかもしれませんが,例えば12ページの子供の学びでは,その子供ならではの学習テーマや探究方法等を最適化することを教師が促すこと。また,49ページでは,ICTも活用しながら,生徒の対話的,協働的な学びを実現し,多様な他者とともに問題解決等に挑む資質・能力を育成することが求められるとあり,教師が自ら子供に直接教えるといったこと以外の対話が学びのコーディネーターといった役割がこれから重みを増してくるように思います。こうした役割の変化といったことについても何か記載をしておく必要があるのではないかと考えます。
 私からは以上です。

【荒瀬部会長】 ありがとうございました。
 続きまして,堀田委員,お願いいたします。

【堀田委員】 堀田でございます。2点申し上げます。
 1つ目は,12ページの下から3つ目と2つ目の丸のところです。「指導の個別化」と「学習の個性化」について整理してあります。このことを考えたいんですが,まず自分の理解度に合わせて学ぶという場合は,学習者としては,主体的に自分の理解度を把握し,次にやるべきことを考えて,そこに向かって自ら取り組むと。そういう理解把握とか,次にやることのリコメンドをAI等が考えてくれて,手伝ってくれているけれども,主体はあくまで自分,学習者自身なのだということ,大事かなと思っています。
 次に,自分の興味・関心について学ぶような場合は,自分がこだわっていることについて,サークルみたいなものに参加して対面で学ぶという方法もあるけれども,ネットで動画を見たり,情報がまとめられているウェブサイトを見たりするように,そのオンラインで学べることというのはたくさんあるわけです。ですから,自分の学習を自分で調整していく能力というのがこれから一層重要になるし,そのための道具としてICTは不可欠であって,コンテンツにアクセスして自己調整しながら学ぶということの経験を学校教育の中でしっかりと身につけさせる。情報活用能力をしっかりと身につけさせるということをもう少し強めにうたってもいいのではないかと思います。
 これは蛇足ですけど,コロナ禍から対面授業に戻ったから,もうオンラインはやらなくていいみたいな誤解がありますが,むしろ対面で学べるうちにオンラインも併用して学ぶという経験がこれからは一層重要であると思います。
 2つ目です。52ページ目の辺りに,7番ですね。環境整備のことが書いてあります。これはどちらかというと,子供の学習環境として書いてございますが,教師の職場環境としての学校についても考えるべきではないかと思います。これは働き方改革との関係もあろうかと思いますが,現在では職員室の自分の席のコンピューターからインターネットにアクセスできないという学校もあります。ユーチューブに上げられている文部科学省のチャンネルも見ることができない学校もあります。,仕事をする上で,非常に不便なものになっています。職員室の自分の席のコンピューターからプリンターにつながっておらず,別のコンピューターにUSBでデータを持っていって印刷するという例もあります。あるいは家庭のスマート体重計みたいなものに比べると,保健室の身長計や体重計というのはとても古典的ですね。もう今の時代ですから,測ったそばから記録がデータ化されて,カルテに入っていくような,そういうような保健室であれば,養護教諭はもっと子供の心に寄り添うな,成長に寄り添うような仕事に専念できると思います。
 そういう意味で,学校にある様々な道具をもっとデジタルの道具にしてほしいというふうに私は思っております。,この環境整備の辺り,あるいは働き方改革の辺りに,そのような教師から見た職場環境としての環境整備が書かれるといいなと思っております。
 以上です。

【荒瀬部会長】 ありがとうございました。
 では,この後,長谷川委員に御発言いただきますが,先ほど申しましたように,長谷川委員,貞広委員,清原委員,今野委員,神野委員,森山委員,東委員ということで,よろしくお願いしたいと思います。
 では,長谷川委員,お願いいたします。

【長谷川委員】 ありがとうございます。LITALICOの長谷川です。よろしくお願いします。
 まず,不登校のお子さんの支援について,51ページに関連して,ICTの活用。マル2のところで,「学校で学びたくても学べない児童生徒への遠隔・オンライン教育の活用」というところがありまして,オンライン授業を活用した学習について,出席扱いとする制度の活用促進というところがありますが,現状,不登校の小中学生16万人のうち,ICT活用で出席扱いとなっているのが僅か286名,0.2%というところになっておりまして,この状況で,この制度が使えるよということを,使ってもいいよということを幾らか促進しても大して伝わらない。その数も変わらないだろうと思っておりまして,主立った原因は,この仕組みを活用するかどうか。校長の判断になってしまっていることが問題で。もう一つが,出席扱いにするだけじゃなくて,成績も適切に評価するということも本質的には同時に必要なんだよと思いまして,提案としては…(以下通信が安定せず,音声が不明瞭)。

【荒瀬部会長】 長谷川委員,申し訳ありません。今,ちょっと音声が切れました。
 では,つながらなくなっているようですので,後ほどまた御発言をいただきたいと思います。出席扱いのみならず,成績をつけるということもというところ辺りで切れてしまいましたので,あと,また御発言をいただきたいと 思います。
 では,先に貞広委員,よろしくお願いいたします。

【貞広委員】 ありがとうございます。千葉大学の貞広です。
 まず,多岐にわたった議論を丁寧におまとめいただきまして,ありがとうございます。
 その上で,1点,意見ですけれども,表題に,「誰一人取り残すことのない」とありながら,格差是正に関わる記述が不十分であるという印象を持っております。総論の一部には明示されながら,十分とは言えず,各論には明確な書込みがありません。新型コロナウイルス感染拡大を予防する学校の休校措置の取組というのは,それまでも存在していた重要な問題を顕在化させたり,可視化させたり,複雑化させたりしています。複雑化した問題というのが,その一つが社会的,経済的条件の不利によって,十分な教育や学習の継続がなされない子供たちの存在と格差の問題であろうと思います。子供の学びの格差というのは,単に物理的にオンライン学習の環境があるか否かというだけではなくて,家族のサポートがあったかどうかであるとか,本人が学習へのエンゲージメントを持続できたかどうかというような複数の要素が重層的に関わり,特にそれが社会的,経済的条件と連動して引き起こされたものです。
 これは我が国の問題というよりも,世界的課題であり,例えばユネスコや各シンクタンクが報告書を出して,今,何らかの策を講じなければ,こうした学びの格差や学びの損失が,その子たちの生涯にわたって持続する可能性を指摘しています。
 また,せんだって,日本教育学会が各国の研究者とオンラインの座談会を行いましたけれども,米国,イギリス,EU各国,アジア各国など,これは各国の研究者の間でもアフターコロナ,ウィズコロナの重要な課題として共有されています。Sosiety5.0時代の教育政策においては,こうした格差を是正する姿勢をより明確に持つ必要があると思います。そして,教師にのみ,その役割を期待し,より一層の努力をお願いするのではなく,それを可能とする資源配分の量や配分方式を含めた制度やシステム,またはケアの視点からのサポートも含めて,格差是正に取り組む方向性を是非明示していただきたいと思います。
 以上です。

【荒瀬部会長】 ありがとうございました。教師のみだけに頼るのではなく,社会全体でしっかりと考えていくべきだという御趣旨であるというふうに,最後お聞きしましたが,それでよろしかったでしょうか。

【貞広委員】 社会全体で考えるというだけではなくて,教育の政策やシステムとして,しっかりとそれを支えていくということが必要であるということであろうかと思います。

【荒瀬部会長】 ありがとうございます。
 では,清原委員,よろしくお願いいたします。

【清原委員】 ありがとうございます。清原です。
 まず,荒瀬部会長をはじめ,事務局の皆様,私たちの本当に多様な意見を骨子案として収録していただき,感謝申し上げます。
 今後の取りまとめに少しでも貢献したいと思いまして,総論と各論の整合性などについて,幾つか意見を申し上げます。
 1点目,私たちは,今期の後半に顕在化した新型コロナウイルス感染症対策として実施された,例えば一斉休業の中で,オンライン授業についての実態を検討し,そこから見えてくる課題や今後の展望について記述を深めることができました。特に総論の2ページのところで,正に今,「不確実性の高い時代」であることから,この間,取りまとめてきた私たちの取組であります新学習指導要領で目指す資質・能力が一層強く求められてくること。その中で,「特に社会全体のデジタルトランスフォーメーション加速の必要性の中で,学校教育を支える基盤として,ICTが必要不可欠である」という認識も示すことができました。
 実はコロナ禍の前に,GIGAスクール構想は示されていましたけれども,やはりコロナ禍の中での実践の意義は大きかったと思います。そこで,今回,示されている,サブタイトルですが,「多様な子供たちの資質・能力を育成するための」で始まっていますが,例えば「デジタル化時代の」とか,あるいは,「ICTも生かした個別最適な学びとする」など,メッセージとして,「ICT」,「デジタル」,「オンライン」などが入ったほうがいいのかなと思ったのが1点です。
 2点目です。「日本型学校教育の成り立ちと成果」を書かれる中に,4ページ以降,これも「新型コロナウイルス感染症の拡大防止を通じて,学校の役割が再確認された」という記述は大変有意義だと思っています。特に,「学習機会と学力を保障するだけではなくて,全人的な発達や,あるいは人と安全安心につながる居場所・セーフティーネット機能を持つ」ということが明確にされたということ,これは大変有意義で,全国で一斉休業があったからこそ,いい面として再確認されたと思います。
 しかしながら,残念なことに,「公立学校の教員採用選考試験における採用倍率の低下傾向」や,「一時的な教員の欠員」という教師不足も指摘せざるを得なかったわけです。そこで,私は,皆様と御一緒に,「学校における働き方改革」も議論し,いわゆる給特法の改正までしてきたわけですが,やはりこの間,加治佐先生が言われましたように,教師の魅力が再確認され,創造性が再確認されたということを私もアピールして,この答申の後に志願者が増えるような,そうした具体的な提案もしていきたいと,このように考えました。
 3点目です。何よりも今回,「学校教育における対面指導と,オンライン・遠隔授業のハイブリッド化」ということについても具体的に提起することができました。この点については,例えば49ページ以降,きちんとそれらについて書かれているんですが,それについては,ひょっとしたら指摘があまり詳細ではないかもしれません。
 そこで,例えば17ページ以降の「令和の日本型教育の構築に向けた今後の方向性」という中に,「これまでの実践とICTを最適に生かしていく」という記述の中に,ハイブリッド型というキーワードも入れながら,総論においても「対面指導とオンライン遠隔授業の最適な組合わせ」を記述してはいかがかなと思いました。
 急ぎ,4点目を申し上げます。私は,三鷹市長として市長経験者でございます。こうした学校教育の条件整備というものの予算も実は提案者は市長になります。そこで,教育委員会の御理解をいただくだけでなくて,吉田市長さんもいらっしゃいますが,市長会と連携しながら進めていくときに,重要な提案が今回の答申には幾つも込められています。その一つが9ページ以降にあるんですが,「学校の教員が,電子メール,ホームページ,電話,郵便等のあらゆる手段を活用して,子供たちの学習機会や心のケアに取り組んだという実践を今年は見ることができました」ということは,見事な「メディアミックス」だったと思います。
 そのことを踏まえて,51ページ以降には,各論として,「新時代の学びを支える環境整備」と書かれています。この間,GIGAスクール構想を実現していくための,いわゆるハードの設備ももちろん重要として,共通認識なされましたけれども,「社会的距離を保つ学校保健」や「学校の衛生管理マニュアルの実践」なども大きな収穫だったと思います。したがって,広い意味での環境整備の7章は,市長にも訴えるべくアピールをしていくことで,教育委員会と連携ができればなと思います。
 最後に,急ぎ申し上げます。実は「小学校高学年からの教科担任制の導入」についても,私たちは積極的に議論をしてきました。これについては(総論に加えて),52ページ以降の「8.人口動態等を踏まえた学校運営や学校施設の在り方」についても,「義務教育学校制度の活用等による小中一貫教育の推進」として明記される中に,「教科担任制」についても書かれています。ここをもう少し,いわゆる小学校高学年からの教科担任制の導入というところをゴシックで強調するなどして,実際の(9年間を通した義務)教育の質の向上に役立てる方向性を各現場でさらにお考えいただくように強調してはどうかなと,このように思いました。
 以上です。どうぞよろしくお願いいたします。

【荒瀬部会長】 ありがとうございました。
 では,今野委員,お願いいたします。

【今野委員】 どうぞよろしくお願いいたします。
 27ページの「9年間を見通した新時代の義務教育の在り方について」の3つ目の丸のところでございます。「指導の個別化」や「学習の個性化」ということで,「誰一人として取り残さない」ということが打ち出されておりますけれども,社会性とか協調性といったものについてどのような表現になるか分かりませんけれども,このようなことをここに表してはどうかなと思います。
 29ページには,「あらゆる他者を価値のある存在として尊重する環境を築く」といったようなことも明記されておりますけれども,この社会性や協調性,規範意識を高めながらといったようなこともにじみ出るように書いていただくと,多様性を認め合うというところにつながると感じました。
 以上でございます。

【荒瀬部会長】 ありがとうございます。
 では,神野委員,お願いいたします。

【神野委員】 よろしくお願いいたします。
 まず28ページ目にあるところをお話しさせていただきたく思います。「授業時数の在り方」というところの話なんですけれども,こちらの授業時数だとか,例えば個別最適な学習というところに関しても,子供たち自体が分からないところに戻るとか,学び直しができるところに対する記述は幾つか見受けられるのですが,例えば学年を超えたような学びをやりたいという生徒もたくさんいるかと思っています。
 もちろんこれは飛び級を示唆するものではなく,あくまでも,学年以上の学びということをある教科においてしたいという子供たちも,多様性と向き合う中では一定数いるかと思っていまして,そのような子供たちに対して,学年を越えた学びということの可能性も閉ざさぬよう,この辺りで明記しておく必要があるのではないかと思いました。
 また,次に37ページなんですけれども,こちらのほうは高等教育機関における学びに関して発言させていただきたいのですが,今回,コロナ禍において,GIGAスクールの1人1台という環境が前倒しされて,先ほどの教科書もそうですし,多くの自治体で,今年の12月ぐらいに1人1台という環境がだんだん整備されていくと。そうなりますと,令和3年度からの中学校3年生というのは,当然この1人1台環境で皆勉強を進めていくことになるかと思っています。
 その中で,高校がいまだBYODという中で,この1人1台を実現するとなっておりますが,もちろんBYODということがゆくゆくそうなっていくことはいいと思いますけれども,そのようなBYODということをちゃんと保護者の方々にも納得していただくには,やはりデジタルを前提とした教育ということの必要性と,あとはPCやタブレットが文房具と一緒だということを社会的に納得していただけるというような時間が必要になると思っていて,それに関しては,明らかにもう間に合わない。つまり,令和2年度には,もう1人1台の環境で,勉強した子供たちが高校に来るという中において,やはり明らかにBYODという施策自体がもう間に合わなくなってきている地点なんじゃないかなと思っています。このような子供たち自体の学びの保障という観点からも,また,新たな学びという観点からも,国が全力で高校生たちに対して,よりもう一段深めて,1人1台に対する議論をしていかないと間に合わないのではないかと考えております。
 また,次が49ページ目なんですけれども,(2)のところで,「ICTの活用や,対面指導と遠隔・オンライン教育とのハイブリッド化による指導の充実」という中のマル1番ですね。学習履歴(スタディ・ログ)を活用した個別最適な学びの充実という中で,マルポツの中で,個々の状況に応じたきめ細かい指導の充実や学習の改善をスタディ・ログを活用して図ることが必要であると書かれておりますが,もう一つそちらに付け加えていただきたいのが,このスタディ・ログを活用した教材を選定するということもすごく重要だということを明記していただきたいなと思っております。
 こちらに書かれているスタディ・ログを見ながら,先生がどのようにその作業を指導に生かしていくのか,学習の改善に生かしていくのかということなんですけれども,そのように先生がスタディ・ログを生かすこともあるんですが,先ほど堀田先生もおっしゃられていたスタディ・ログをAIが解析することによって,子供たちに届けるような教育の在り方ということも,またこの中に一つ盛り込んでいただくことによって,本当の意味でスタディ・ログを活用した学びというものはどういうものであるのかということを届けることができるかなと思っています。
 最後になりますが,50ページ,51ページ目辺りに書かれていますICT人材の確保というところになります。このコロナ禍において,やはり進んだ自治体,進んでいない自治体という中において,すごく大きい役割を果たしているのが,やはり教育行政や,もしくは学校の中で,このICTに関することに対して正しい理解をしていて,かつ,教育行政と学校をちゃんとつなげられるような,そのようなことでバランスをできるような役割を持った自治体というのがどんどん進んだかなと思う一方,知識はあるんですが,ある地方において共通の目標や共通の未来ということを描き切れない中で走っていったところというのは,例えば,ただ1人1台をそろえればいいんでしょうだとか,ただ高速インターネットを引けばいいんでしょうというような形で議論になって,ただやられ仕事みたいな,降ってきた仕事をただやっているかのようにやっているところもありますし,また,そもそも1人1台というところに関して,配備をしないという自治体すらあるような状況かと思っています。
 ですので,この中において,そのような伴走をしつつ,ちゃんと教育CIOみたいな肩書をちゃんと作ることによって,学校側や教育委員会に対しても,そのような単純にICTの専門家として話すだけでなく,ちゃんと新たな学校,GIGAスクールとは何なのかということを発言できる,そのような肩書を作っていくこともまた重要なのかなと思っております。
 また最後になりますが,今度,全体を通して,どこに書いていいのか分からなかったので,発言させていただきたいのですが,この1人1台という,タブレット及びPCというものに関しては,持ち帰りが前提であるということもまたどこかに記載していく必要があるんじゃないかなと思っております。
 以上です。

【荒瀬部会長】 ありがとうございました。
 長谷川委員と回線がつながったようですので,長谷川委員,大変御苦労をおかけいたしました。先ほどの続きをお願いできますでしょうか。出席扱いのみならず,成績評価についてもといったような御発言の途中から聞こえにくくなりましたので,その辺りからお願いいたします。

【長谷川委員】 分かりました。ありがとうございます。
 このオンライン教育がしっかり現場で活用がなされるよう,校長先生の御判断で活用する,しないを決めるのではなく,児童生徒の希望に応じて,オンライン教育をしっかりと提供し,出席扱いと成績評価を同時に行うための制度の変更ということを,51ページのマル2に具体的に修正いただきたいと思っています。この辺りも,やってもいいよということで,学校任せになっていたら,そのまま,結局,今,出席扱いが0.2%の児童生徒しかいないという状況は大して変わらないと思いますので,やってもいいよではなく,やるんだという制度に変更したい,すべきだというのがこちらについてです。
 続けて,特別支援教育についてですけれども,40ページの2の部分で,小中学校における障害のある子供の学びの充実というところがあります。前段のところに,就学前,早期からの相談・支援の拡充というのがありますが,小中学校においても,この障害や特性の早期発見・早期支援が極めて重要であると思っておりまして,具体的にマル2の4つ目の丸として,小学校低学年の段階で,全ての児童に対し,読み書きの特性や感覚の特性を含む特性に関する検査を行い,その結果に応じて支援を行うという文言を追加いただきたいと思っております。
 これは特に幼稚園の段階から発達検査が義務づけられていないのもひとつ問題ですが,学齢期になったときに,就学後,実際にディスレクシアのお子さん,読み書きに困難があるお子さんたちを早期発見して,早期支援につなげるために,より具体的な文言を入れたいという点が1点です。
 2点目としては,昨年の10月の会議で申し上げたんですけれども,42ページのところですね。特別支援学級,通級による指導を担当する教員に求められる専門性の向上というところが42ページの一番下のところにあります。こちらに関して,以前からずっとこういう専門性の向上というのは言われているんですが,なかなか進歩していっていない。先日,とある中学校の先生ともお話ししていたんですけれども,外部から実際のクラスの授業に先生としてパートの方が入られるときに,一切,研修を受けることなくて,事前の知識の習得もなく,現場に入っているのがまだまだ散見されていて,教員としてのプロ意識というのが全体として問題を感じるということもおっしゃっていましたが,具体的には,「特別支援学級,通級による指導の質の向上のために,児童生徒が身につけるとよいスキル及び教師に求められる指導スキルを明確に体系化し,教員研修等で普及を図る」,こちらを42ページの1つ目の丸の終わりに続けて明確に記載いただきたいと思っています。
 もう1点が,43ページの関係機関の連携強化による切れ目ない支援の充実というところがあります。こちら,福祉と教育との連携と。こちらは文部科学省さんにリードいただいて,以前に比べれば随分進んできていると思っておりまして,おかげさまで,当社としても学校への訪問支援を充実させておりまして,厚労省の事業として学校訪問を行っているんですが,福祉と教育で一貫して指導方針を持って,お互いに補完しながら協働するというところを,今,様々な地域で実現することができていますが,一部の学校や教育委員会ではまだまだ理解が少ないところもありまして,43ページの(4)の1つ目の丸の終わりの「必要がある。」に続けて,具体的に,例えば,福祉施設が行う保育所等訪問支援事業について,学校関係者に周知を図るとともに,保護者向けハンドブック,こちらは文部科学省で作成済みだと思いますが,保護者向けハンドブックを自治体ごとに多少カスタマイズして,児童生徒,保護者全員に配布する,実施する必要があるということも具体的に追記いただきたいと思います。
 最後ですけれども,LGBTについてです。これだけ全体として様々な課題が挙げられていて,一方で,社会の大きな課題にもなっているLGBTに全く言及がない。再三発言しているにも関わらず,全く言及がないということは非常に不自然であると思いますし,障害のある児童や外国人児童生徒と変わらないぐらい,今もLGBTの子供たちが,ある意味,障害児以上に過酷で厳しい状況に追い込まれていると思っています。
 答申にどういう形でLGBTを盛り込むのかという観点で,これは事務局にお願いですが,次回の会議において,来年度から使用される中学校の教科書にLGBTがどう記載されているのか,こちらの資料の提出をお願いしたいと思っています。保健体育や家庭科,公民の教科書には記述があると思っていますが,今,具体的にどう記述されているのか。その内容を基にして,具体的に小中学校の取組をどう評価すべきなのかを考える上で,こちらの情報提供をお願いできればと。私は,美しい,すばらしい方針がたくさん答申に書かれていると思っていますし,それ自体は非常に大事だと思っていますが,具体的に,子供たちの力になるような内容にしない限りは,美しい答申をつくっても意味がないと思っていますので,LGBTの子供たちの力にもなれるような具体的な記述を盛り込めればと思っています。
 ありがとうございました。

【荒瀬部会長】 ありがとうございました。
 それでは,お待たせしてしまいました。この後,森山委員,東委員,田村委員,香山委員,山中委員の順でお願いしたいと思います。
 森山委員,お願いいたします。

【森山委員】 森山です,よろしくお願いいたします。
 まずは,これまでの多くの議論を踏まえて,全体的に明確にまとめられていると思います。ありがとうございます。
 私から,1点述べたいと思います。それは教員の資質向上について述べられたところです。それぞれ各所で多く示されています。例えば,9年間を見通した新時代の義務教育の在り方のところでも示されておりますし,24ページの幼児教育の質向上でも,教職員の専門性の向上とか研修の充実等による資質の向上,あるいは先ほど加治佐委員からもお話がありましたけれども,8ページの教員の不足のところでも教員についての問題,それから,14ページでも教職員の姿という形での多様なスタッフの充実,ほかにも随所で見られます。教員の資質,能力の向上につきましては,できましたら,全体に係る課題にもなろうかと思いますので,教員の養成,そして,免許制度,採用,研修などについて一体的に検討されることをできる限り具体的に強調して示すのが必要ではないかと思います。教員の資質,能力の向上については,先ほど申し上げましたように,全体に係る課題ですので,総論の中で強調いただいたほうがよろしいのではないかと思います。大きな学校教育等の変化であり,この答申の課題ですので,是非,このことを示していただければと思います。
 以上です。

【荒瀬部会長】 ありがとうございました。
 東委員,お願いいたします。

【東委員】 札幌市美晴幼稚園の東でございます。よろしくお願いいたします。端的に3点,意見を述べさせていただきます。
 まず1点目ですけれども,香山委員,長谷川委員の御発言にもありましたが,12ページの(1)子供の学びの3つ目の丸でありますが,一貫して,幼児教育段階からの発達と学びの連続性が議論の中心に位置づけられているということであります。昨日,最終段階の取りまとめ案が送られてきたところでありますけれども,丸3の1行目の後半から,「幼児期からの様々な場を通じての体験活動から得た子供たちの興味・関心等に応じ」というような文言が付け加えられております。香山委員の御指摘もありましたけれども,高等学校からも,幼児教育段階からの学びの連続性を意識されていらっしゃるということが非常に象徴的だと考えているところであります。今後,最終取りまとめに向けて,幼児教育段階からの議論を深めていただき,文言に反映させていただくことを切望するところであります。
 2点目ですけれども,24ページから25ページにかけてであります。森山委員の御指摘,御意見にもありましたが,教職員の専門性の向上のところで,前の会議でもお話をさせていただいたわけですが,幼稚園教諭の場合は,二種免許取得者が多いという現状はあります。小学校教諭免許状あるいは保育士資格の併有を促進することが重要であるという御指摘と併せて,上位の,いわゆる一種免許の取得,上進の課題があります。昨年から文部科学省幼児教育課の政策的な予算の中で,都道府県教育委員会と養成大学が認定講習を開設していただき,今年度は通信制の認定講習も開設が実現しているところであります。全ての二種免許の教員の上進ということは現実的に不可能でありますけれども,カリキュラムマネジメントや園務の中心を担うような人材の二種免許取得者の一種免許への上進は大きな課題でありますので,今後も継続して取り組んでいきたい課題でありますし,この中で明確に表記していただいていることに感謝申し上げたいと思います。
 3点目であります。新型コロナウイルスに関連しまして,26ページから27ページにかけておまとめいただいています。文部科学省でも調査を進めていただき,各こども園,幼稚園での事情に対応する施策や支援を行っていただいているところではありますけれども,この件に関しましては,まだ現在進行形でありますし,とりわけ,幼稚園,こども園の場合は,小規模施設であることと,他の校種でもそうだとは思いますけれども,発達段階が未分化な幼児の場合は,心と体の距離を分けて対応するというのは非常に難しい実態があります。密接な環境,あるいは密集した集団での取組,保育と教育活動も重要な機会として位置づいていきますので,これからも継続して,様々な問題に対応する行政と連携した支援策を講じていく必要があると考えておりますので,この会議においても内容については,更新しながら,最終段階の取りまとめに向けていただければと願っているところであります。
 私からは以上です。

【荒瀬部会長】 ありがとうございました。
 では,田村委員,お願いいたします。

【田村委員】 田村でございます。
 特別支援教育の学校現場からは,児童生徒数の増加で,職場環境が非常に過密になる中でやっています。しかしそうした課は特別支援の場だけではありません。小・中学校等も含めて働き方改革の視点からも考えていく必要があります。先ほどもありましたけれども,52ページにある新時代の学びを支える環境整備についてですが,学びを支える教室環境,教室というのは子供が学ぶスペースのことです。そして,教室環境に応じた指導体制と記されていますが,指導体制は教員の指導時の配置の事です。しかし,大本でいえば教員の執務環境,教員が戦略を立てて教材をつくるというスペースでいえば,今は指導計画・記録・教材もサーバ管理ですので,結局は職員室で下校後や指導の合間に業務を行うのです。こうした中では,学びを支える環境というのでは,教職員の執務環境に触れないで,教室環境だけの記述でいいのかを考えるべきです。
 私は校長として12年勤めてきました。その学校でも真っ先にやることは予算をやりくりして複合機を入れます。カラー印刷を教員の必要に応じて自由に使えるようにし,そして,ホチキス留め等を解放してきました。すると,教員は皆,他の学校に異動したくないと言ってきます。皆さんは,信じられないかもしれませんが,まだ,紙を集めて折って,数えて,束ねて,手作業でホチキス留めてしている学校が日本中にたくさんあります。カラー印刷は年間1人何枚までと決めている学校もあります。学校の執務環境,教職員環境も含めたプランとして,新設校だけではなくて,10年ぐらいで全学校の施設・設備とシステムをリニューアルしていくような中期計画を策定・実施して,順に魅力ある職場にしていかないと教員志望者が激減しないかと心配です。個室など恵まれた環境で育ってきた方たちは,教育実習等で学校の職員室に来て,「働きやすい・働きたい魅力的な職場だとは全く思わない」との声も聞かれます。教員採用選考の応募倍率も低下が続いているようです。コロナ禍の影響で一時的には変動するかもしれませんが,長期的には教員の職場環境が魅力的に見えていないという問題点も内在しているのではないでしょうか。やりがいのある仕事ですけれども,今の時代に合わせて,もっと職場環境の中身について,設置基準なり整備基準なりをつくって,そこに向けて何年かで達成することを推進していく必要があります。,都道府県,区市町村が教育委員会を通じて,その計画に基づいて各学校を財政面からも応援する仕組みをつくらないと,学校の中だけでは解決できません。予算的にもありません。教職員が業務に一層専念できることで,よい結果が出せるように,校内予算の2割を職場環境の改善にかけるなどという,目標設定も裁量できる予算もない現状です。
 こうしたことについて働き方改革の視点から盛り込んでいくべきと考えます。さらに5月の臨時休校下の間に,数年間かかると思われるオンライン学習体制などが一気に動いて,メディアミックスした教育方法ができあがりつつあるわけです。こうした変革期を捉えて,教員としての働くベースを,例えば,机の境界に間仕切りのパネルもなくて,裏側の冊子が積み上げてあるところをお互い見ながらやっている環境で何十年も変わらなかったものをバージョンアップする方向を打ち出しましょう。民間を回っていると,きちんとデスクにパネルがあって,個人がプランニングしたり,オンライン打ち合わせをその場でしたりするためのスペースがあるところが増えてきています。こうした執務環境も見ていく必要があると考えます。
 以上です。

【荒瀬部会長】 ありがとうございました。
 では,香山委員,お願いいたします。

【香山委員】 岡山の香山です。先ほどの私の発言に加えて,2点お話ししたいと思います。
 1点は14ページですが,子供の学ぶ姿ではなく,教職員の姿の記述の部分です。先ほど,の話に付け加えて発言したいと思います。子供が学ぶ姿だけではなくて,それを指導する教職員の姿としても,地域社会との連携,協働を自らコーディネートする,あるいは別途配置されたコーディネート人材と連携して推進するといったような姿の記述がないと,先ほどの子供の姿だけだったらバランスが悪いと考えております。これは橋本委員や吉田信解委員が主権者教育をもっと書いたほうがいいということとも連携しているかと思いますので,是非,よろしくお願いします。
 2点目は,貞広委員が格差是正ということについてお話しされて,その話をお聞きしながら,18ページを御覧いただきたいんですけれども,履修主義と修得主義の記述があろうかと思います。18ページの(4)の白丸4つ目ですかね,「義務教育段階においては,進級や卒業の要件としては年齢主義を基本に置きつつも,教育課程を履修したと判断するための基準については,履修主義と修得主義を適切に組み合わせ」というところがあろうかと思います。では,これを具体的にどうするのかということについてのイメージが,このままだと立ち上がりにくいと思うんですね。
 もちろん,その次の白丸には「ICTも活用しつつ」といったような新たな学びについての記述がありますので,ここを見ながら,48ページ以降のICTの活用へ飛んでいくとなるのかもしれませんが,18ページにおいて,もう少し踏み込んだ表現があってもいいのではないかなと思います。
 これと関連しまして,今日の会議の一番最初にデジタル教科書の話がありました。私はあのとき,全員に無償で提供されるかという質問を申し上げたと思いますが,今日の議論をお聞きしながら,格差是正を進めていくために,対面授業,そして,オンライン授業に加えて,やはり,デジタル教科書を,特に小中学生,義務教育段階では無償で配布して,神野委員もおっしゃったように,教科書の課題を解いて,そこで学び直しが必要な子にはAIがそこへいざなっていくといったような形で,スタディ・ログをもっと活用できるような仕組みをこしらえると,格差是正に少し貢献できるのではないかなと思います。将来的には,CBTによる教科書の到達度チェックも入れて,履修主義と修得主義をうまくかみ合わせていけば,今より少しはよくなるのではないかと考えて発言いたしました。
 以上,2点です。

【荒瀬部会長】 ありがとうございました。
 では,山中委員,お願いします。

【山中委員】 山中です。私から,3点お願いします。
 1点は特別支援教育のところですけれども,41ページの上から2行目に「特別支援教室構想の具体化に向けた検討を」ということが書いてあるんですけれども,私,有識者会議にも出ていますので,一応,特別支援教室構想の意味は分かっているんですけれども,一般的には,皆さん,特別支援教室構想というのがまだお分かりでないと思うので,この特別支援教室についての注意書きというか,注釈というんですかね,ここに特別支援教室構想というのがどういうものなのか,簡単に説明のようなものがあるといいなと思いました。
 2点目は,43ページの2つ目の丸,「特別支援学級や通級による指導を担当する教師の人数は少なく」というところです。研修の重要性とか専門性というのをここに明確に書いていただいて大変ありがたいですし,なかなか難しい状況があるというのも私も分かってはいるんですけれども,やっぱり,特別支援学級や通級による指導を担当する教員を担保するものとして,免許ですね。特別支援学級や通級による指導の免許というのは難しいというのは重々分かっているんですけれども,何か担保するようなものでないと,専門性というのは向上させていくのがなかなか難しいのではないかなと思いますので,この案のどこかに,「免許については引き続き検討していく」というような文言を入れていただきたいなというのが2点目です。
 3点目は,この案の前半にも新型コロナウイルスの影響についていろいろ書かれているんですけれども,障害のある子供について,今,特別支援学校でも特別支援学級でも調査を進めているところですけれども,通常の学級にいる子供以上に,いろいろな影響はありました。学校でずっと積み重ねてきた日常生活のいろいろなスキルというものが崩れてしまうとか,不安傾向が増大しているとか,お子さんがずっと家にいても,いろいろなことができなくて保護者も相当ストレスを抱えているというような,障害のあるお子さんならではの課題というのも大きかったと思うので,その辺も少し織り込んでいただけたら,通常の子供もいろいろなことがあったら大変なんですけれども,障害のある子供というのはそれ以上に痛手を受けるというようなことも触れていただけるとありがたいかなと思います。
 以上,3点です。

【荒瀬部会長】 ありがとうございました。
 では,天笠委員,お願いいたします。

【天笠部会長代理】 発言の意思を伝えるのに,なかなか難しいシステムだなと思いながら,ここまで御一緒させていただきました。申し上げたいことは2つあります。
 1つは,16ページに関わった発言をさせていただこうかと思っておりますけれども,この部分というのは,「令和の日本型学校教育」の構築に向けた今後の方向性というようなことが6つの柱で出ていて,そのうちの1つとして発言申し上げたいところですけれども,6つの方向性をこういう形で柱を立てたということについては,基本的に大変大切な,また,ポイントを突いた柱立てだと受け止めさせていただきました。
 その上で,16ページの(2)連携・分担による学校マネジメントを実現するという柱と,16ページから17ページにかけて,それぞれの丸印はとても大切なことを記述していると思うわけですけれども,申し上げたいことは,「重要である」,「求められる」,「必要である」,「その方向性の認識を示した」ということを記しましたら,ならば,その実現のための方策とか手だてということについての言及が必要になってくるのではないかと思うんです。それは組立て方になるかと思いますので,この後の各論のところにそれがあるというような位置づけ方とか整理の仕方もあるかと思うんですけれども,この6つの柱について,方向性とともに,実現のため,具体化のための手だてとか方策ということを対にするような整理の仕方とか示し方ということも今後検討すべきではないかと思いますし,私どもの議論をそのところに集約していくというか,つなげていくというのが1つではないかと思っております。
 2点目は,高校の普通科教育,普通科改革ということについて若干申し上げさせていただきたいと思うんですけれども,基本的に,普通科改革の方向性について提示されたということについては意を同じくするところはたくさんあるんですけれども,ついては,今度,新しいレポートではそれが出てくるのかもしれませんけれども,普通科改革と義務教育との関連,接続,在り方というんでしょうか,普通科の高等学校における改革というのが義務教育の在り方ということと直結する大きな影響力を持っているものだとして,改めて普通科改革の方向性が義務教育のこれからの在り方と連動していくというふうな,その視点でさらに御提言いただければということをお願いできればと思います。
 以上です。

【荒瀬部会長】 ありがとうございます。
 天笠先生,今おっしゃった2つ目のお話でありますけれども,昨日の高校ワーキンググループグループでもそういった議論も出ておりまして,今後,さらに検討を進めてまいりたいと思っております。

【天笠部会長代理】 よろしくお願いいたします。

【荒瀬部会長】 ありがとうございます。
 では,最後に,今村委員,お願いいたします。

【今村委員】 今村です。おまとめいただきまして,ありがとうございました。私からは,3点申し上げさせていただきます。
 全ての前提に,新学習指導要領の答申で示されたことを前提に着実な履行を行っていくということを,まず一番初めのところに示されていることは,すばらしいと思っています。
 その上で,2020年は高校で公共とか総合探究とかが始まるタイミングで,それを目指した姿として,日本の高校生たちは,学びのオーナーシップを持って,やらされ感を手放して,自立して探求している状態を目指して,そういった新しい教科も設定していったということを記憶しているんですけれども,それを踏まえたときに,13ページの理想とする学校の姿,高等学校の教育のところですけれども,もう少し,自立していく生徒たち,学びのオーナーシップを生徒側に戻していくというような書きぶりにならないかなということを感じました。18歳選挙権ということもあって,自立した大人になるタイミングでということを踏まえるならば,オーナーシップを子供たちに戻していく。管理されて,言われたとおりにするのではなくて,校則に従うだけではなくて,同調圧力に苦しんでいるということだけではなくて,自分で選択していく,自分で切り開いていくということ,たくさんの選択を自分ですることができる状況にして,例えば,学ぶ場所や学ぶ内容,学ぶ方法とか,オンラインを組み合わせれば実際にできることが増えているわけですので,学びのオーナーシップを戻していく,それによって自立した学習者になっていき,卒業後も1人の大人として生きていくことを始められる状態を目指していくということを,もうちょっと具体的に書きたいなと感じたのが1つ目です。
 同じく14ページ目の教職員の姿ですけれども,先ほど貞広委員に御発言いただいたコロナで明らかになった経済的格差の問題も含めてですけれども,先ほどの高校生の姿,オーナーシップを戻していく,オーナーシップを持った学び手になっていくということも踏まえたときに,教職員は,指導する,教える立場から,いろいろなニーズに応えていく,「伴走者になっていく」という言葉も,やはり,どこかに書きたいです。ここに書いてある生徒の可能性を「最大限に引き出す教師としての役割」という文言を,「最大限に引き出す伴走者としての教師の役割」と修正してはどうかなと感じています。
 3つ目ですけれども,14ページ,子供の学びや教職員を支える環境,ここに「1人1台端末環境の実現」と明記されているんですけれども,義務教育段階では1人1台は予算的には実現しているので,ここで書いた「1人1台」というのが,この項目は教職員も含めてということになるのか,誰にとっての1人1台なのかが分からないので,具体的に,例えば,先ほど神野委員がおっしゃっていたように,高校生も1人1台を実現するということもできるのか,できないのか。また,それを支える義務教育にしても,高校にしても,先生方も1人1台持っている,まず,先生が持っていないという学校がとても多いという現状も,先生方の1人1台端末を準備するということも含めて,支える環境というところに,誰にとってのというところの志を明記したほうがいいのかなと感じました。
 私からは以上です。

【荒瀬部会長】 ありがとうございました。
 具体的なものも含めて,たくさんの御指摘をいただきました。あるいは御質問もありました。これにつきまして,もう時間がほとんどないんですけれども,今日,特にということはございますでしょうか。
 それでは,今いただきましたもの,関係部署の皆さんがいらっしゃいますので,今後,お答えいただくようにお願いしておきたいと思います。
 新しいシステムということで,最初から,お顔が見えない中,私の姿も隠れたままで進行させていただきました。また,途中いろいろと不具合があったりして御迷惑をおかけいたしましたが,それでは,今日はこの辺りで閉じたいと思います。
 最後に,次回の予定につきましてお願いいたします。

【田中教育制度改革室長】 今,荒瀬部会長からございましたように,いろいろ不具合がございましたこと,事務局としておわび申し上げます。
 次回の新しい時代の初等中等教育の在り方特別部会の日程につきましては,9月11日金曜日,10時から12時にて開催を予定しております。今回同様にウェブ会議方式での開催を予定しておりますが,詳細につきましては,追って事務局から御連絡申し上げます。

【荒瀬部会長】 長時間にわたりまして,大変貴重な御指摘をいただきましてありがとうございました。
 それでは,本日予定した議事はこれで全て終了といたします。
 引き続き,感染症も大変気がかりですが,熱中症のほうも心配な状況です。皆さん,どうぞ御自愛いただきますように。ありがとうございました。
―― 了 ――
 

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