新しい時代の初等中等教育の在り方特別部会 (第11回) 議事録

1.日時

令和2年7月17日(金曜日)14時30分~17時30分

2.場所

文部科学省15階特別会議室 (WEB会議)
東京都千代田区霞が関3-2-2

3.議題

  1. 関係部会等からの検討状況の報告
  2. 新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた今後の学校教育の在り方等について
  3. その他

4.議事録

【荒瀬部会長】 定刻となりましたので,ただいまから中央教育審議会初等中等教育分科会第11回新しい時代の初等中等教育の在り方特別部会を開催いたします。本日は,御多忙の中,御出席いただきまして,ありがとうございます。
 皆さん御承知のように,この間の豪雨によりまして多大な被害が生じております。加えて被災地では,今後の新型コロナウイルス感染症の状況も含め,引き続き十分な警戒が必要であるとされているところであります。お亡くなりになられた方々の御冥福をお祈りしますとともに,被害に遭われた皆さんにお見舞い申し上げたいと思います。被災地の1日も早い復帰を心からお祈りしております。
 さて,本日の会議は,新型コロナウイルス感染症の感染拡大を防止するため,引き続き,ウェブ会議方式にて開催させていただきます。
 議事に入ります前に,前回6月18日以降で委員の交代があったということでありますので,事務局から御紹介をお願いいたします。

【田中教育制度改革室長】 事務局,教育制度改革室長の田中でございます。
 委員の交代につきまして御紹介申し上げます。佐藤秀行委員が御退任されました。今回より,東川勝哉委員に特別部会委員として御参画いただくことになりました。どうぞよろしくお願いいたします。

【東川委員】 よろしくお願いいたします。

【荒瀬部会長】 東川委員,よろしくお願いいたします。
 それでは,本日の資料につきまして,御説明をよろしくお願いいたします。

【田中教育制度改革室長】 それでは,事務局より引き続きよろしくお願いいたします。
 本日の資料は,議事次第にございますとおり,資料1から資料5-4まで,加えて,参考資料1から5となっております。御不明な点等ございましたら,お申し付けください。

【荒瀬部会長】 本日は3時間の会議を予定しております。議題は大きく2件あります。議題1といたしまして,関係部会からのこの間の御検討いただいた状況の報告,議題2といたしまして,新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた今後の学校教育の在り方等について委員の皆様から御意見を頂戴したいと考えております。
 議題の1つ目では,まず前半といたしまして,教育課程部会,教員養成部会から検討状況の御報告を頂き,意見交換の時間を設けたいと思います。その後,休憩を挟みまして,後半として,新しい時代の高等学校教育の在り方ワーキンググループ,新しい時代の特別支援教育の在り方に関する有識者会議から検討状況の御報告を頂き,意見交換の時間を設けたいと思っております。引き続き,答申の取りまとめに向けて実りのある議論を重ねてまいりたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
 なお,本日は,報道関係者の皆さんと一般の方向けに本会議の模様をYouTubeでライブ配信しておりますので,御承知おきください。
 それでは,本日の議題に入ります。議題1といたしまして,関係部会等からの検討状況の報告でありますが,まず教育課程部会における検討状況について,天笠教育課程部会長,滝波教育課程課長から御説明をお願いいたします。

【天笠教育課程部会長】 それでは,失礼いたします。私の方からまず教育課程部会に関わりましてということで申し上げさせていただきます。
 教育課程部会では,これまで8回の対面・オンラインの会議及び1回の書面審議において検討を行っており,昨年11月の特別部会で第4回までの審議状況を報告しました。本日は,その後の審議の状況も含めて議論の詳細について事務局から説明いただきますけれども,まずは私の方から概略を簡単に御説明させていただきます。
 御承知のとおり,諮問事項ですけれども,これからの時代に対応した義務教育及び高等学校教育の在り方についてということで,具体的には,学力の確実な定着に向けた方策,年間授業時数や標準的な授業時間等の在り方,あるいは児童生徒の一人一人の能力・適性に応じた指導,そして,STEAM教育の推進などを検討すべき課題として位置付けられています。それに基づきまして,以下,それぞれについて審議の経過等を5点ほど申し上げさせていただきます。
 まず1つ目の学力の確実な定着に向けた方策については,新学習指導要領が育成を目指す資質・能力の育成方策について提案がなされております。また,ICTの活用や発達の段階に応じた指導の工夫,学力調査結果の効果的な活用などについても意見が出されております。
 次に2点目でありますけれども,習熟度別指導など個別最適化された学びに関しては,児童生徒一人一人に応じた適切な指導の重要性が指摘されるとともに,学校ならではの協働的な学び合いの重要性についても多くの指摘がありまして,これらを適切に組み合わせていくための方策についての議論を重ねております。
 続きまして,3点目です。特定分野に特異な才能を持つ児童生徒に対する指導に関しましては,近年のアメリカ等における研究も踏まえまして,才能を伸ばしていくための取り組みなどを発表いただき,学校における多様な児童生徒の重要性や,我が国の学校の状況の分析,取り組みの強化について意見の交換が行われております。
 続きまして,4つ目としまして,年間授業時数や標準的な授業時間等の在り方についてということにつきましては,履修主義と修得主義などについての整理を行った上で,標準授業時数が教育の機会均等や水準の確保に大きな役割を果たしているということが指摘される一方,各学校のカリキュラム・マネジメントの充実・強化を図る観点から,より柔軟な判断ができる仕組みを設けていくことの必要性について議論が重ねられております。
 そして,5点目につきまして,STEAM教育等の教科横断的な学習の推進につきましては,新高等学校学習指導要領における総合的な探究の時間や理数探究の目指すものと重なりが大きく,これからの学習の充実を図ることや,教科等横断的な学習等各教育等の学習と循環させていくことの重要性が指摘されております。
 以上でございますけれども,今後は基盤的な学力の確実な定着,習熟度別指導などの個別最適化された学び,STEAM教育などについて引き続き審議を進めていく予定であります。
 私の方からは以上であります。

【滝波教育課程課長】 続きまして,事務局,教育課程課長の滝波の方から,資料1に基づきまして,教育課程部会におけるこれまでの審議の経過の詳細について御説明を申し上げます。
 項目は7項目ございます。まず資料1の1ページ目,1ポツ,学力の確実な定着に向けた方策についてでございます。こちらについては,昨年12月に初等中等教育分科会から論点取りまとめが出されておりますけれども,そこから大きな方向は変わっておりません。新学習指導要領で育成を目指す3つの資質・能力の柱をバランス良く育成するということ,また,発達の段階に応じた学習指導,児童生徒の実態を適切に捉えて可能性を伸ばすことができる環境の重要性等について指摘がございましたので,その辺りの記載を追加してございます。
 次に,資料でいうと3ページ目に,2ポツ,個別最適化された学びと協働的な学びについてでございます。新学習指導要領の趣旨を実現しまして児童生徒の資質・能力を育成する観点から,多様な子供たちを誰一人取り残すことのないよう,学校においては個別最適化された学びとともに協働的な学びにより社会とつながる探究的な学びを実現していくということが必要であり,その重要性について関係者の理解を広げていくということが大切だとされております。
 4ページ目に行きますけれども,2つ目の丸辺りですけれども,その中で教師が授業改善に努めるとともに,学校の授業以外の場での学習も視野に入れて指導計画を立案していくということが重要だと指摘をされております。それから,次の下の丸ですけれども,また,個別最適化された学びを進める際に,知識及び技能の一部の習得を過度に重視し,思考力・判断力・表現力等や学びに向かう力,人間性等の育成を十分に行わないということにならないようにすること,また,個別学習だけでなく協働的な学びが取り入れられるように工夫をすること,それから,次の丸辺りですが,一元的な尺度に基づいて評価が行われ,教育活動が画一化しないようにすることなどに注意する必要性が指摘されているところでございます。なお,個別最適化という概念の学校教育における位置付けにつきましては,今後の教育課程部会において引き続き検討を深めていく予定でございます。
 続きまして,このページの下の方,3ポツ,特定分野に特異な才能を持つ児童生徒に対する指導についてでございます。世界的な動向として,近年は領域依存的な才能や特異な才能と学習困難とを併せ持つ児童生徒に対する教育等について考えることが主流となってきております。また,5ページの一番上辺りですけれども,個人を過度に強調するのではなくて,多様な才能が組み合わさって画期的な成果が生み出されるというふうな点についても注目が集まっております。それから,その下の丸辺りですが,まずは学校内外においてこのような児童生徒を含めてあらゆる他者を価値ある存在として尊重する環境を築くということが重要となります。
 それから,次の丸ですけれども,我が国の学校におけるこのような児童生徒の学習支援につきましては,まだ実践が十分ではなく,学校において特異な才能をどのように定義をし,見いだすのか,また,その能力をどのように伸ばすのかにつきましては,今後更に検討・分析を深める必要があるというところでございます。
 また,次の丸ですが,そのような現状を踏まえた上で発表いただいた取り組みによりますと,学校においては,特異な才能を持つ児童生徒を含めて個々の資質・能力を育成するとともに,児童生徒同士が互いの違いを認め合い,学び合いながら相乗効果を生み出す教育を行うことが重要と考えられます。具体的には,発展的な学習やSTEAM教育など教科等横断で実社会と関わる学びが有効に機能すると考えられます。それから,次の丸辺りですが,このような児童生徒の能力を伸ばしていくには,大学や民間団体等が担う役割が大きいことから,学校外での学びへ児童生徒をつないでいくことなどについて研究をしていく必要があるのではないかと考えられます。
 続きまして,4ポツ,履修主義と修得主義,年齢主義と課程主義についてでございます。「個別最適化された学び」との関係で修得主義の重要性が指摘されることが増えておりますので,まずこの概念の整理を部会として行っていただきました。日本の学校教育制度は,履修主義と修得主義,あるいは年齢主義と課程主義の考え方がそれぞれ取り入れられた制度となっております。
 6ページの一番上辺りでございますけれども,修得主義や課程主義につきましてですが,個に応じた指導,ICTの活用との親和性の高さが指摘される一方で,個別での学習が強調された場合に,他者との協働的な学び合いの場面が少なくなり,また,次の丸辺りですが,学びを深める機会が失われる恐れがあるということ,教育成果の把握がテストスコアのみによって行われた場合には序列化や過度な競争,教育格差の拡大につながる可能性があることが指摘されております。それから,次の丸辺りですが,一方,履修主義や年齢主義は,個々人の成長に必要な時間の掛かり方を多様に許容すること,社会性の涵養等の側面から評価する声がある一方で,過度な同調性や画一性についての指摘がございました。
 それから,一番下の丸辺りですが,これらの特徴を踏まえ,我が国の義務教育制度においては,進級・卒業要件としては年齢主義を基本に置きつつも,教育課程を履修したと判断する基準については,履修主義と修得主義を適切に組み合わせてそれぞれの長所を取り入れる教育課程の在り方を目指すべきではないかと考えられます。その際,これまで以上に多様性を尊重し,個別最適化された学びと協働的な学びを実現していくことが必要と考えられまして,このような教育課程の編成・実施のため,文部科学省・教育委員会・校長・教師の役割分担を整理するということなどが必要だということが指摘をされております。
 続きまして,7ページの5ポツ,授業時数の在り方についてでございます。最初の丸ですが,授業時数については,学校教育法施行規則において標準授業時数として示され,年度当初の計画段階から標準を下回って教育課程を編成することは通常考えられないとされております。次の丸辺りですが,この標準授業時数は,学習指導要領が求める教育の質を量的に支えるものとして重要な意義を持っておりますけれども,児童生徒や教師の負担に関する指摘や多様な児童生徒に応じた検討,ICTを活用した学習指導を踏まえた検討が必要などの指摘がありました。
 4つ目の丸辺りですけれども,このため,新学習指導要領の趣旨の実現に向けたカリキュラム・マネジメントの充実・強化を図る観点から,標準授業時数の意義を踏まえつつ,各学校が持つ教育課程の編成・実施に関する裁量を改めて認識をして,実態に応じて柔軟に判断できるようにすること,また,教育委員会においてそれを可能とするよう適切な指導及び環境整備に関わる包括的な支援を行うことが求められるとされております。それから,8ページの一番上辺りですが,また,学年ごとの年間の標準授業時数の総授業時数は引き続き確保しながら,カリキュラム・マネジメントに係る学校裁量の幅の拡大の一環として,教科等の特質を踏まえつつ,教育科等ごとの授業時数の配分について,一定の弾力化を認める仕組みを設けることも考えられるのではないかとされております。
 次に,6ポツ,STEAM教育等の教科等横断的な学習の推進についてでございます。こちらについては,昨年12月に初等中等教育分科会に報告されました論点取りまとめから大きく方向性は変わっておりませんけれども,各教科等の学習と教科等横断的な学習の循環も重要だと指摘があり,その追記をしております。
 それから,9ページでございますけれども,7ポツ,ICTの活用についてでございます。2つ目の丸ですが,従来なかなか伸ばせなかった資質・能力の育成を図ることや,特に知識の習得に関して今までの教育では適応的でなかった児童生徒の一部に効果を発揮する可能性があり,ICTの活用は重要だということでございます。ただし,人によるサポートやコミュニケーションは必須でありまして,ICTの活用方法については,教師と児童生徒との具体的関係の中で見極める必要があるということが指摘されております。
 それから,10ページの1つ目の丸ですけれども,また,ICTの活用は,知識の習得のみならず,協働的な学習や学びの振り返りのための有効な手段にもなります。ICTを使うことが目的化しないようにするとともに,旧来型のドリル学習等に偏った活用に陥らないように,教育効果も考えながら活用方法を検討する必要が指摘をされているところでございます。
 資料1についての事務局からの説明は以上となります。

【荒瀬部会長】 ありがとうございました。それでは,引き続きまして,教員養成部会における検討状況につきまして,加治佐教員養成部会長と柳澤教育人材政策課長から御説明を頂きたいと思います。よろしくお願いいたします。

【加治佐教員養成部会長】 よろしくお願いいたします。
 それでは,資料2を御覧いただきたいと思います。教員養成部会では,昨年4月17日の諮問を受けまして,これまでこの特別部会での中間報告を挟みまして10回の審議を行ってきております。諮問事項はその四角囲みに入っているものです。1番目が義務教育9年間を見通した教員免許制度の在り方,2番目が免許状更新講習と研修等の位置付けの在り方,それから,多様な背景を持つ人材を学校の教職員組織の中に入れるための方策,4つ目が教師を支援し教育の質を高めるICT環境や先端技術の活用を含む条件整備の在り方と,この4点でありました。
 これから具体的なことは柳澤課長に報告いただきますが,2番目の免許状更新講習と研修等の位置付けについては,最後の方にありますけれども,やはり免許状更新講習を根本的に捉え直すというふうな検討をやりたいということも述べております。
 私からは,2ページの方に具体的な目次があるんですが,私は1点のみ申し上げたいと思います。この目次でいいますと,1の(2)に関わることです。これまで特別部会の中で,9年間を見通した指導を円滑に行っていくために教員免許についても一元化を図るべきだとか,そういう御意見が少なからずあったと思っております。それで,それに対してどういう答え方をしているかといいますと,従来ある小学校免許と中学校免許,これの併有をかなり促進するという方向で答えているということです。法制度上のいろいろな課題があってなかなか一元化は難しいということでありました。
 具体的には,現在は同一学部同一学科内でしか複数免許を取るための共通科目開設が認められておりませんけれども,それを他学部他学科にも広げていくということ,これが1点です。それから,もう一つが,これがより大きな改革だと思いますが,義務教育特例という仮称ですけれども,こういう用語を設けまして,小免と中免を取る際の共通に開設できる科目の範囲をかなり拡大するということであります。これによって,事実上,小中両方の免許を一つの教職課程で取得するような形を作るということであります。私からはこの1点のみを強調しておきたいと思います。
 それでは,柳澤課長,よろしくお願いいたします。

【柳澤教育人材政策課長】 では,よろしくお願いいたします。資料2に基づきまして御説明させていただきます。教育人材政策課長の柳澤です。
 審議のポイントのみ簡潔に御説明をさせていただきます。教員養成部会では,大きく3点について検討してまいりました。資料の3ページ目からでございます。まず1つ目が,義務教育9年間を見通した教師の養成等の在り方についてで,3ページ目からでございますけれども,これまでも中学校教諭免許状を有する教師は,小学校において専門とする特定の教科の指導はもとより,学級担任としての指導,すなわち,道徳,特別活動,総合的な学習の時間を指導できるということにはなっております。それによりまして,中学校教諭の免許状というのは,中学校と小学校の学校種を超えて義務教育9年間をカバーする,いわば教科別の義務教育学校教諭の免許状という性格を有しておるというのが現状です。そのような前提の上で,更に講じ得る措置につきまして以下のように検討してきました。方向性が出た部分についてのみ御説明をさせていただきます。
 その次が4ページ目からでございますが,まず小学校教諭免許状と中学校教諭免許状の両方の免許状を取得する場合の単位数につきまして。これまでも一定の共通開設を認めるということによりまして,学生の負担を軽減する仕組みはございました。しかし,そのような共通開設が従来,先ほど加治佐部会長からもお話がありましたように,同一学部同一学科における場合に限られていましたので,教員養成部会の下に設置いたしましたワーキンググループの報告を踏まえまして,これを他学部他学科にまで広げ,より学生の負担を軽減すべきであるというふうにされました。
 また,6ページでございますけれども,これに加えまして,特に義務教育9年間を見通した教員養成カリキュラムを編成する場合には,6ページの下の図のところにありますけれども,教科及び教科の指導法に関する科目や教育実習も共通開設をすることが考えられるというふうにされたところでございます。先ほど加治佐先生が義務教育特例とおっしゃったのはここの部分についてでございます。
 それから,7ページです。中学校教諭免許状を取得する場合に,各教科の指導法を学ぶに当たりまして,小学校段階を意識した教科の指導法も学修できるように教員養成カリキュラムの工夫を行うべきとされたところでございます。併せまして,教師となった後につきましても,中学校教諭免許状の取得者がより小学校教諭の免許状を取得しやすい制度にすべきであるとされたところでございます。
 それから,2点目でございます。10ページからでございますけれども,Society5.0時代における教師及び教員組織の在り方についてに関してでございます。教師のICT活用指導力の向上が不可欠となっている中で,教員養成段階においては,法令改正によりまして,各教科の指導法という中に,情報機器及び機材の活用が新たに追加されております。昨年度からそのような内容が盛り込まれた新たな教職課程が始まっているところでございます。
 したがいまして,このような法令上の整備は進んできているところでございますが,教職課程の学生がICT活用指導力を確実に身に付けることができるようにするためには,更なる取り組みが必要であるという御議論をいただきました。そのような観点から,例えば3つ目の丸からにありますように,例えば国がICTを活用した学習場面や各教科等の指導におけるICT活用に係る動画コンテンツを作成して,大学の授業において活用できるようにするということや,大学の授業の取組状況のフォローアップを通じて大学が実践的な内容の授業を確実に実施できる仕組みを構築することが求められるといったことを御提言頂いております。
 さらに,現職教師につきましても,教師のキャリアステージごとに資質・能力の育成指標が各教育委員会によって定められておりますけれども,その育成指標にICT活用指導力を明確化するということを通じまして,研修がより体系的・効果的に実施できるようにすべきであるとしているところでございます。
 12ページでございます。また,ICTをはじめとしまして,学校が多種多様な変化にさらされている中で,多様性と柔軟性を備えた教員組織になるためには外部人材の活用が重要であるという観点から,13ページから14ページにかけてでございますが,例えば普通免許状を有しない者の活用方策として,既存の仕組みとして特別免許状や特別非常勤講師制度などがございますけれども,力量ある社会人の登用のためにそれが十分な役割を果たしていない面もあることから,これらの活用の一層の促進が必要であるとされたところでございます。
 最後,3点目でございますが,15ページからの教員免許更新制の実質化についてでございます。教員免許更新制につきましては,15ページの冒頭の方にございますけれども,教師として必要な資質・能力が保持されるように,定期的に最新の知識・技能を身に付けることで,教師が自信と誇りを持って教壇に立ち,社会の尊敬と信頼を得るということを目的としてございます。
 このような教員免許更新制のための更新講習を巡りましては,研修との重複による負担感への対応としまして,免許状更新講習の科目と,主に10年目前後に行われております中堅教諭等資質向上研修の科目の整理・合理化や相互認定など,いわゆる実質化と呼んで議論してまいりましたが,そのような実質化を進める教育委員会が増えるなど,大学と教育委員会との連携した工夫などが進んできている状況にはございます。
 一方で,今般の新型コロナウイルス感染症等の影響によりまして,通常時とは異なる業務の発生も考慮した人的体制を確保する必要が高まっているという指摘があります。そのような中で,16ページからでございますが,本年6月に教員免許状の有効期間の延長を行うということが可能である旨を国から教育委員会に示しておりますけれども,今後も同様の事態が生じ得るということも考慮しまして,教員養成部会としては,教員免許更新制が現在の情勢において子供たちの学びの保障に注力する教師や迅速な人的体制の確保に与える影響の分析に着手をするということを述べていただきました。
 また,昨今の教師の勤務の長時間化とか教員不足の深刻化などの課題との関係も視野に入れつつ,教員免許更新制そのものの成果や教師のキャリアステージごとに教師の資質・能力の指標を定めて,さらにそれに基づいて研修計画を策定する仕組みが教育委員会の方にございますが,そのような仕組みの定着状況など更新制や研修を巡る包括的な検証を進めるべきこととされたところでございます。このようなテーマにつきましては,冒頭の1ページのところにございますように,引き続き,教員養成部会において検討を行うというふうにされたところでございます。
 事務局からは以上でございます。

【荒瀬部会長】 ありがとうございました。
 では,よろしくお願いいたします。御意見頂戴したいと思いますが,今から3時55分をめどにいたしまして,それまでの間御意見を頂きたいと思います。御発言がおありの方は必ず手を挙げるのボタンを押していただきますようにお願いいたします。
 できるだけ多くの皆様から御意見を頂きたいと思いますので,大変恐縮ですが,時間は短くまとめてお話しいただくようにお願いいたします。ちなみに,私が持っております原稿ではお一人2分となっておりますが,これはちょっと厳しいかもしれませんが,少しでもまとめていただくように,大変申し訳ありませんが,よろしくお願いします。
 さらに,御発言の際には,必要に応じまして,資料番号とページ数,それから,位置などをお示しいただいておっしゃっていただきたいと思います。お願いばかりで恐縮です。よろしくお願いいたします。
 では,御発言がおありの方は手を挙げるのボタンをお押しください。
 では,まずお二人の方が手を挙げておられますので,お願いいたします。小林委員と清原委員にお願いいたします。小林委員,どうぞよろしくお願いいたします。

【小林委員】 小林です。私は質問です。
 ただいま御説明いただきました中の教員養成のところで,資質・能力の指標を持って教員免許更新制あるいは研修計画を作るということですが,資質・能力の指標を作り,それを活用するとなりますと,やはり一人一人の教員の 評価が重要になるかと思いますが,それについては特に記載がありません。教員の評価ということについてはどういうふうな議論がなされたかお聞かせいただきたいと思います。

【荒瀬部会長】 ありがとうございます。御質問は後からまとめてお答えをいただきたいと思います。
 では,清原委員,お願いいたします。

【清原委員】 ありがとうございます。清原です。それでは,天笠部会長,加治佐部会長はじめ,各部会が御検討していただきました点について,3点に絞って意見を申し上げます。
 1点目は,教員養成部会の資料2の4ページでございますが,「義務教育9年間を見通した取り組みとして,小学校と中学校の教員免許について適切な同時取得に向けての制度を整える」ということが明示されています。私は十数年前から三鷹市長現職時代に,「コミュニティ・スクールを基盤とした小中一貫教育」を教育委員会に進めていただきました。そのときに,小学校の教員と中学校の教員の連携が不可欠でございました。したがいまして,その経験から,今回御提起いただきました「教員養成課程における小学校教員免許と中学校教員免許の同時取得に関する対応」というのは現実的であり,また,実際に9年間を見通した教育の質の向上のために有用と考えますので,是非今後の具体化についてよろしくお願いします。
 2点目は,課程部会の方の9ページから10ページにかけて「ICTの活用」について記載をしていただいたことと,教員養成部会における同じく9ページ以降にあります「ICT活用指導力」についての連関性でございます。教育課程においても,ICTを正しく使える教員が要請されております。これに対応して,教員養成部会でも「ICTの活用指導力」を高めるための具体的な提案がなされていることは有用だと思います。特に10ページの下から2つ目にございますが,「各県教育委員会等が定めている育成指標においてICT活用指導力を明確化すること」,そして,「都道府県教育委員会等の研修がより体系的かつ効果的に実施される」ということは,今回の「新型コロナウイルス感染症対策におけるオンライン遠隔教育に対応せざるを得なかった教員の実体験に基づいた具体的な研修内容の編成」が有用と考えます。
 最後に,ICTを活用するためには,NPO法人や民間企業等の人材の活躍が不可欠でございます。そのことを受けて,「教員免許制の実質化」と関連して,教員養成部会では「特別免許状」に関する問題提起がございました。
 通信等の不調でお聞き苦しくて申し訳ありません。特別免許状についてお話しします。今後は「より短期の有効期間で柔軟に活用することが可能な教諭の免許状を授与できるようにすることが考えられる」というような御指摘があります。しかも「教員免許更新制そのものの成果や,教師のキャリアステージごとに教師の資質・能力の指標を定め,それに基づいて研修計画を策定する仕組みの定着状況などについて,包括的な検証を進める」と言われています。是非このことは教員養成部会で進めていただければ,このコロナ禍で御苦労されている現場の「教員不足」とか,あるいは教師の皆様の「資質向上」に寄与する現実的な提案が生まれるものと思います。この提案について賛同し,その具体化を期待しております。
 以上3点申し上げました。

【荒瀬部会長】 ありがとうございました。それでは,あと,香山委員,堀田委員に御発言を頂きたいと思います。香山委員,どうぞ。

【香山委員】 私からは2点御質問したいと思います。
 資料は2の教員養成部会の6ページにあります,教職課程の認定基準の一覧表を基にお話しさせていただこうと思います。資料1の教育課程部会の方で例えばSTEAM教育の重要性について触れられていたと思います。それが総合的な学習の時間あるいは高等学校の総合的な探究の時間での教育活動・学習活動によってSTEAM教育が深まっていくといったようなお話が教育課程部会の資料の中にあったかと思いますが,それを受けて,養成部会の教職課程認定基準のところを見ますと,単位数として挙がっている単位数が,総合的な学習の時間も含めて10単位というふうになっているわけです。これは現行だとそうだと思うんですけれども,総合的な学習の時間については,STEAM教育のみならず,社会に開かれた教育課程の実現ということで,地域社会に開いていくためのコーディネーターとしての教員の資質・能力を高めるといったことも必要になってきます。そうなってきますと,果たしてこの単位数でやっていけるのかということについて些か私は不安に思うんですけれども,この辺りのところについて,展望といいますか,ここに書かれていないところで今後検討されるのかもしれませんが,見通しを教えていただけたらというのが1点目の質問です。
 2点目の質問は,同じくこの表におきまして,教科に関する専門的な事項の中にICT活用についても含むというふうになっているわけですけれども,資料1の教育課程部会の中で,オンラインにおいても協働的な学びができると言及されています。単なる知識の習得ではなくて,思考力・判断力・表現力の育成とか,そういった対話的・協働的な学びができるといった認識を持つべきだというふうな表現があったと思うんですけれども,果たして教員養成課程において,そういったことまで含めて今後大学の先生が対応し切れるのかどうかということです。その辺りについても,大学任せになるのではなくて何かガイドラインのようなものが必要なのではないかと思うんですけれども,これについても御質問させていただけたらと思います。
 以上2点です。

【荒瀬部会長】 ありがとうございました。御質問は後からまとめてお答えを頂こうと思います。
 では,堀田委員,お願いいたします。

【堀田委員】 堀田でございます。教員養成部会の資料2について,意見を申し上げたいと思います。
 まず義務教育段階では,GIGAスクール構想で1人1台の情報端末が今整備されつつあります。高等学校でも,いわゆるBYODが進んできているというところです。これはいつでもすぐそばに子供たちが情報端末を持っていることによって,必要なときに用語を検索したり,写真などで記録したり,保存していた情報の再利用をしたり,今までの学習成果とつなげたり,あるいは友達にプレゼンをしたり,そういうことがいつでもできるような学習のツールとしてICTをすぐそばに置くという,ことです。そういうことがいつでもできるような情報活用能力を子供たちに身に付けさせる,その情報活用能力が学習の基盤として各教科等の学習に寄与していくと,そういうふうに学習指導要領には既に書いてございます。さらには,デジタル教科書の制度改正やオンライン教育がこれからも推奨されるなどの動きもあります。
 こういうことを考えますと,教員になる者は,子供たちが経験するようなことを先んじて十分に経験しておく必要があるのではないかと。つまり,教員養成段階ではICT活用指導力の育成が重要,ですが,そもそもその前に,自分が学修の道具としていつでもICTを使うような,そういう経験値が高まっておく必要があるのではないかと私は思います。先般の教育職員免許法の改正等で各教科教育法等にICT活用が入っているわけですけれども,これは,先生がICTを使う,とか,児童生徒が道具としてICTを活用するということは教えることにはなっていますけれども,その前にそもそも教員養成大学あるいは教員養成課程ではもうBYODは義務化するとか,あらゆる科目の各講義でいつでも積極的にICTを用いて学ぶことを前提にするとか,そういうようなことを推奨していくような方策はできないのかと私は意見を持っております。
 以上でございます。

【荒瀬部会長】 ありがとうございました。続きまして,東委員,二見委員,加治佐委員の順にお願いをしたいと思います。東委員,お願いいたします。

【東委員】 失礼いたします。美晴幼稚園の東でございます。両部会の報告について,少しだけ意見を述べさせていただきたいと存じます。
 まず教育課程部会におけるこれまでの審議過程の2ページ目でありますけれども,上から2つ目の丸のところで,「児童生徒の資質・能力の育成に当たっては,幼児教育において行われている自ら問いを持って探究し,協働することによって理解を深める学習を」云々とあります。これを小学校段階にもつなげていくと。今回の学習指導要領の改訂等においては,それぞれの校種の終わりまで育つべき資質・能力を明確化することによって,学校種間の接続・連携を充実させることが目的となっているというふうに承知しております。
 その2つ下の丸ポツのところに,2ページの下から3行目のところにありますけれども,「教育委員会等が中心となって,幼稚園,小・中学校等の連携を促進することが考えられる」。既に市町の大小に関わらず,教育委員会等が中心となって協議会等が立ち上げられて,校種間の連携は推進されている実態にあるというふうに承知しておりますが,それぞれ学びの段階の接続について,あるいは接続期のカリキュラム等についての検討が十分になされている実態にあるとまでは至っていないというのが私の認識であります。そのようなことからも,できるだけ幼児教育,とりわけ幼児教育の学びの特性がございますので,教育委員会を中心としての校種間の接続,連携にとどまらない接続についてこれまで以上に推進していただきたいと考えているところが1点です。
 もう一つは,「教員養成部会の審議のまとめについて」においては,ほとんど幼稚園教諭の免許についての記述,ほとんどというより全く記述がございません。もちろんこの会議が小中学校,義務教育課程と高等学校の議論が中心になることは理解しているのですけれども,小学校・中学校の教員免許の連携・接続の議論が中心であっても,幼児教育,幼稚園免許と小学校免許,とりわけ教育大学における幼稚園教員免許の養成課程が非常に危機的な状況にあるというふうに伺う機会が多くあります。私立大学においては少しずつ幼稚園免許と小学校免許の両方が取得できる課程が,学部学科が増えてきてはいますけれども,このままだと相互の教育段階の特性の理解については,十分な進展が望めないのではないかと危惧しているところであります。
 以上です。

【荒瀬部会長】 ありがとうございました。では,二見委員,お願いいたします。

【二見委員】 二見です。2点お願いします。
 まず1点目は,教員免許更新制の実質化のところですけれども,15ページです。現場の教員が免許更新をするにしても大変負担感があるということで,都道府県教育委員会によっては,日頃の研修あるいは講習をほぼ兼ね備えるというふうな取り組みがあるというふうにありますけれども,ここらについて国としてガイドラインを示していらっしゃるのか。これは1つ質問です。もしガイドライン等そういう国としての目安を出していないとすれば,出していただくことが必要なのではないかなと思っております。
 2つ目の意見ですけれども,少しずれますが,小学校教員資格認定試験というのがありますけれども,これは民間の人が小学校の教員を目指す,あるいは短大生が途中から小学校の教員免許を取りたいというふうなとき大変有効でありますし,現場の中学校教諭などが小学校免許を取るのにも非常に有効な手段だと思っています。しかし,内容的には,マークシートにより国語,社会,算数等多くの教科をします受験。その中で教科によっては非常に難易度が高い。例えば算数は高校の数学レベルです。中学校の理科も高校理科レベルです。それで,そのほかには,ある程度中学校レベルの教科書内容ぐらいで取得できるような内容だと思っていますけれども,これらの小学校資格認定試験について,一度改善のメスを入れていただくというようなことが必要なんじゃないかなと思います。
 以上です。

【荒瀬部会長】 ありがとうございました。では,加治佐委員,お願いします。

【加治佐部会長代理】 資料1の方の教育課程部会の方の審議のまとめについて1つ質問させてください。
 6ページから7ページにかけてなんですが,6ページの一番下のところで,「このため」云々から始まりまして2行目から,「進級や卒業の要件としては年齢主義を基本に置きつつも,教育課程を履修とした判断するための基準については,履修主義と修得主義を適切に組み合わせ,それぞれの長所を取り入れる教育課程の在り方を目指すべきではないか」と,こういうふうに言われているわけです。この意味を,これから具体的な検討をされるんだと思うんですが,今とどう変わるのかということも含めて,今お分かりの段階で教えていただければと思います。
 個人的に意味を取ったのは,7ページの一番上の丸のところに,「このような教育課程を編成・実施するためには,文部科学省・教育委員会・校長・教師の役割分担を整理するとともに」という表現がありますので,これは次の授業時数のところでも同じかなと思いますが,履修主義を弱めるのか,修得主義を強めるのかとか,あるいは年齢主義をそんなに厳格に適用しなくなるとか,いずれにしてもそういった判断というものが,より教育委員会とか学校校長とかそちらの方に裁量が任されていくという方向,つまり,履修主義を取るのか,修得主義を取るとか,年齢主義を取るとか,そういうことの何か柔軟化というか,弾力化が進むというふうなイメージで捉えるべきなのかどうかということを今お分かりの段階で教えていただけたらということであります。
 以上です。

【荒瀬部会長】 ありがとうございました。そうしましたら,一旦ここで,お出しいただきました御質問につきましてお答えを頂ければと思うんですが,よろしいでしょうか。では,柳澤課長からでいいですか。お願いいたします。

【柳澤教育人材政策課長】 よろしくお願いします。
 御質問頂きました件で,まず小林委員から御質問頂きました指標あるいは計画,それの活用に関する評価についての議論があったかという点につきましては,直接的にはここについての議論はほぼなかったというか,ここにまだ至っていなかったというところかと思っております。教員育成の指標を作って,計画を更にブレークダウンして,新任の先生から何年目の先生,中堅,管理職などで,経験別にどういう能力を目指すのかというところの整備はかなりされてきており,また,県によってはそれによってそれをどこまで達成できているかというところをしっかり見ているというところはかなり増えてきているというふうには承知しておりますが,少なくとも今回の教員養成部会においては,そこについての議論までは今日に至るまでは踏み込んでいなかったというのが現状でございます。
 それから,香山委員から御質問頂きました,この単位数でやっていけるのかというところの御質問につきましてですが,これはいろいろ大きな課題がどんどん出てくる中でこれで十分なのかという課題は実はいろいろな点についてあるものと思っております。特に御指摘いただいたのでいきますと,地域に広くコーディネーター的な能力を有する教師を養成してはどうかということでございますけれども,これらもやはり今の時代には1つ求められる力だと思っておりますけれども,それ以外にもいろいろな課題への対応力が非常に求められる。その中で,一方で学べる単位数にはどうしても限界があるという中で,これをどうしていくかということについては非常に大きな課題であると思っております。大きな話でいえば,これの中から本当に必要なものとそうじゃないものをしっかり精査していくということが必要だと考えておりますけれども,今,将来的な大きな長い意味での展望としてはそういうこともやっていかなければいけないとは思っております。
 当面の動きとしては,例えば御指摘のような地域との関係ということでいきますと,免許状更新講習とか,あるいはまだ十分できておりませんが,新しく社会教育士という称号が出来ました。そういうものも大学における講習を経ることになっていますけれども,そういうものを教師の方に多く取っていただいて,従来,社会教育主事になるためだけの講習という位置付けでしたけれども,この講習を経ることによりまして,社会教育士として教師も称することができるようになります。称しながらも,かつ教師をやりながら,地域との連携というのも,社会教育士という肩書を持ちながら進めていくということもできるような仕組みも,それは今年度からもうスタートしております。こういったことの講習と兼ね合わせていくということによって,先生方にそのような力を付けていただくということも今進め始めたところでございます。
 あとは,教員養成部会の中のワーキンググループでも議論してまいりましたが,教員養成のフラッグシップ大学を作っていくべきではないかという御提言も頂いております。全国の教員養成をリードしていくような大学としての役割を果たしていただくところということで,そういった大学にこのような先進的な動きを求め,また,提言を頂くような,提案いただくようなことも考えられると思っております。
 それから,その関連で,あと,ICTですね。ICTの関係でのガイドラインのようなものが必要ではないかということ,御指摘を頂いております。ICTに関しては,先ほど堀田先生からも御指摘いただきましたが,省令の改正等によりまして,各教科の中にしっかりICTの指導法を学ぶ,教科別の指導法も含めて学ぶということになりましたので,法令的には対応しなければいけない時間数も増えてきており,大学における取り組みも充実はしてきているところでございます。しかし,まだそれでも不十分だという声もあります。
 一方,今まで教職課程に関しましては,教職課程コアカリキュラムというものを作ってきております。ここで大学において最低限こういうことは押さえていただきたいということを求めるものとして作ってまいりましたが,こういうものも今までは作っており,情報関係もここには含まれているところでございます。ただ,それに加えて,今回の教員養成部会の御提言では,どうしてもコアカリキュラムでの対応には時間が掛かるとか,なかなか大学によっていろいろな対応になるというところもあるので,動画の言及がありましたけれども,国としてもある程度のコンテンツを作って,具体にどんな力を付けていただきたいのかもう少し分かりやすくするようなものを作り,お示しして,それを活用いただくような動きも必要じゃないかという御提言がありましたので,それは先ほどの審議まとめに記載をさせていただいております。
 もう一つ,二見委員から御指摘いただきました免許更新制と研修との兼ね合わせにつきましての国としてのガイドラインがあるかどうかということですけれども,現状,これ自体のガイドラインは国では作っておりません。しかしながら,このような重ね合わせを是非進めていっていただきたいということのお願いはいろいろなところでさせていただいており,各県と大学との間あるいは県内で更新講習と研修との兼ね合わせ,重ね合わせというのはかなり増えています。毎年調査をしておりますけれども,その中でも増えてきており,そのやり方をどのようにしているのかということの共有を私たちの方で全県にお返しをするという形で好事例をお示しするという形でガイドラインに近い対応をさせていただいているところでございます。
 最後に,小学校教員資格認定試験の件で御指摘を頂きました。これは御意見ということだったのかもしれませんけれども,一度改善のメスを入れてほしいということにつきましては,正にそのとおりだと思っております。たまたま昨年度は台風の影響もありました。それも1つのきっかけですけれども,小学校教員資格認定試験につきましては,実は今年度大きく改革をさせていただきました。社会人の方が受けやすい仕組みへの切替えをしてございます。それから,内容面につきましても,拘束時間をなるべく短くしつつ,今の時代に求められるような教師に必要な力を測れるようなものに改善をしたということで,今年度その新しいものが,9月からスタートしていくということになってございますので,当面の対応はさせていただいたところですが,やはり外部の方をどのように入れていくかというのは非常に大事な課題ですので,これについては継続的に検証しながら改善していきたいと思っております。
 以上です。

【荒瀬部会長】 ありがとうございました。では,滝波課長,よろしくお願いいたします。

【滝波教育課程課長】 教育課程部会の関係につきましては,お二方からコメントがあったかと思います。
 まず東委員から,幼稚園と小中学校との連携について,学校種ということのみならず,内容面も含めてというふうな御意見だったと思います。大事な点だというふうに考えておりますので,記載についてはまた考えていきたいと思っております。
 それから,加治佐委員からは,履修主義と修得主義の関係について御質問があったかと思います。この点につきましては,御紹介をしたときにも申し上げましたとおり,いろいろな御議論の中で個別最適化された学びとの関係で修得主義の重要性が指摘をされるというような場面が最近増えているということがございましたので,この点についての御審議を一度いただいているという状況でございます。まだ現時点で大きな方向性が出ているということではないと思っておりますので,また残された時間の中で審議を深めていくことで方向性を出していければと考えているところでございます。
 以上でございます。

【荒瀬部会長】 ありがとうございました。今の件に関わりまして,天笠先生,加治佐先生,よろしいでしょうか。

【天笠教育課程部会長】 滝波課長の前に私が申し上げて,そして,今の話になればよいかと思っておりましたけれども,ちょっとタイミングを逸しまして申し訳ありませんけれども,一言付け加えさせていただくというふうな形で申し上げさせていただきたいと思います。
 加治佐委員からの御質問というか,あるいは御意見というのはまた大変大切なところだと思っております。先ほども御指摘ありましたように,年齢主義とか履修主義とか修得主義とか,御承知のようにそれぞれあるわけですけれども,これ,どれか取り出して,一律にこれによって生徒をすぐにコンクリートするという,そういう時代状況ではないと思いますし,また,この先もこの1つの単一のもので律して制度設計するという,そういう状況ではないんじゃないかなと認識しております。
 これらが複合的に取り扱われるというんでしょうか,あるいは複合され,融合されて,そして,というのが基本的な1つの考え方があるんじゃないかと。それは今も御説明がありましたように,個別最適化ということと非常にやっぱり関わりがあるということで,基本的には個別最適化というのをいかに実現させるかというふうなことがあり,そうした場合に,これらの正に諸条件を整備していくということに関わって,それぞれの機関とか立場がこれを複合的に捉えながら,そして,運用していくということが1つの在り方として,これからの1つの義務教育の方向性・在り方としてあるのではないかという,こういうことで,この辺のところをまたそれぞれの委員の方々からのそれぞれのお立場・意見等を重ねながら,更に次のところに進めていきたいと思っておりますので,また今後とも意見を重ねていきたいと考えております。どうもありがとうございました。

【荒瀬部会長】 ありがとうございました。
 加治佐先生,どうでしょう。

【加治佐教員養成部会長】 私から簡単に2点申し上げたいと思います。たくさんの御指摘頂きまして,ありがとうございました。
 1つは,香山先生だったと思いますが,総合的な学習の時間を含めて10単位では,少ないと。これから小中の教育課程でもSTEAM教育が強く言われているのに,教員養成課程ではこれでは足りないんじゃないかという御指摘がありましたけれども,私もそうだと思います。だから,このSTEAMの部分をどうやって増やしていくのかということですね。総合的な学習だけでいいのか,それとも,様々な教科,それとの絡みをどう付けるのか,そういうことが1つ問題になってくるんじゃないかと思います。ただ,柳澤課長もおっしゃいましたように,今のところ,教員養成部会の審議事項に挙がっていませんけれども,そういうことの必要性も個人的には感じております。
 それから,2点目は,堀田先生から,養成課程ではBYODを義務化すべきだと,こういう御意見がありました。恐らく,本学もそうなんですけれども,最近急激にだと思いますけれども,教員養成課程の学生もかなり持つようになってきているんじゃないでしょうかね。特にコロナによる大学教育のオンライン化もあって,その面はかなり進んできているのではないかと思います。だから,おのずと,義務付けなくても多分そうなるんじゃないかというふうには思っております。
 以上です。

【荒瀬部会長】 ありがとうございました。御質問頂きました委員の皆様,よろしいでしょうか。ありがとうございます。
 それでは,森山委員,お願いいたします。

【森山委員】 それでは,私の方から2点お話をさせていただきたいと思います。
 1点は,教員免許更新制のところでございます。研修は当然,言うまでもなく,職能の向上が目的であり,更新制は免許の要件として定められているということですので,やはり両者を関連付けながらも更新性の基本的な意義が具体化するような制度設計が必要ということについて,そこが非常に重要だと思います。一方,御承知のとおり,教員養成・採用・研修の一体的改革の中で,養成段階の大学が更新制の実施に相当な協力をし,そして,成果を上げてきたということも事実であろうかと思います。その辺りのところの正確な評価がやはり必要なのではないかと思います。それが1点です。
 それから,2点目は,先ほど以来いろいろな先生方からお話がございましたけれども,日本のICT教育を巡る現状についてでございます。堀田先生のお話にも非常に賛同するところがございますし,教育課程部会の報告でも要点が示されております。課題についてもそこに示されています。
 一方,TALISでも示されておりますけれども,日本の教員のICT活用の取り組みが十分でないということは言うまでも及びませんが,やはり児童生徒の情報活用能力を伸ばすには,教師がその能力を鍛えないと正にそれは実現しないと思います。それはパソコンとかタブレット端末などの操作とかそういうものでなくて,紙媒体とは異なるデジタル媒体とか,あるいは対面式だけではなくて,通信式の授業ならではの利活用等,教師のICTの活用力を鍛える必要があるだろうと思います。
 そうしますと,これは教員の養成段階だけではなくて,採用された後の研修においても重要だと思います。正に養成・研修の一体的な取り組みの中でICT活用能力が向上していくだろうと考えるわけです。ただ,そのときに,ICT活用能力と抽象的に言いましても,学習指導の向上に結び付くという観点も必要なのではないかとも思っています。そういう意味では,学習指導の改善,いわゆる主体的・対話的深い学び,とても重要なその中でのICT活用の能力は最も重要な位置付けを示すということを,具体的に養成段階でも,あるいは研修段階でも示すことが必要なのではないかと思います。
 以上です。

【荒瀬部会長】 ありがとうございました。
 ほかにはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 そうしましたら,また後から,時間の関係になりますけれども,全体を通じまして御意見を頂く機会が取れればと思いますので,事務局の方,両課長,よろしいでしょうか。
 ありがとうございました。それでは,予定よりもちょっと早くここで休憩に入りたいと思います。今,3時47分ですので,10分間ということで,3時58分からスタートしたいと思います。よろしくお願いいたします。暫時休憩いたします。

( 休憩 )

【荒瀬部会長】 それでは,再開をいたします。よろしくお願いいたします。
 引き続き,関係部会等からの検討状況の報告を続けたいと思います。新しい時代の高等学校教育の在り方ワーキンググループにおける検討状況について,まず主査であります荒瀬から御説明をさせていただきます。
 新しい時代の高等学校教育の在り方ワーキンググループにおきましては,諮問事項のうち,生徒の学習意欲を喚起し,能力を最大限伸ばすための普通科など学科の在り方,地域社会や高等教育機関との協働による教育の在り方,時代の変化・役割の変化に応じた定時制・通信制課程の在り方について,9回にわたり検討を進めてまいりました。その現時点でのまとめを論点整理として資料3-2のようにまとめております。
 全般的に私の方から申し上げますと,高等学校には,多様な入学動機や進路希望,学習歴,背景を持つ生徒が在籍しており,一人一人の学習ニーズに応じた学びを実現することが極めて重要であります。社会・経済の変化が激しい現代にあっては,学校創設時に求められていた役割が現代においてもそのまま妥当するとは限らず,改めて何のためにこの学校があるのかということを問い直す必要もあるのではないかということを考えて議論してまいりました。
 その中で,高校の入り口から出口までを3つのスクール・ポリシーに沿って体系的なものに再構成し,各学校が適切にカリキュラム・マネジメントを行い,教育活動を展開することが必要であると考えるようになっております。そうしたスクール・ポリシー,あるいは設置者である,公立であれば教育委員会がその学校の役割を再定義するという意味のスクール・ミッション,そういったことに基づきまして,学校単体では実現できない学びにつきましても,複数学校間の連携や地方公共団体や大学,企業等との協働を通じて推進していくことが必要ではないかというふうに考えております。
 また,普通科におきましても,普通とは何かということを問い直し,再定義されたミッションを踏まえて,特色ある教育活動を展開するために必要な場合には,新たな学科に移行することも可能とするということにしてはどうかということも考えてまいりました。
 さらに,多様な生徒の受皿となっている定時制・通信制課程におけるきめ細かな支援の充実や質保証についても,喫緊の課題として取り組むべきものとして本ワーキンググループにおいて議論してまいりました。
 約めて申しますと,生徒が主語となるような学校を作りたいと。そのために,学校が主語となるような改革が必要ではないかということで,スクール・ミッション,スクール・ポリシーといったようなことを検討している次第です。
 概略は以上であります。詳細につきましては,担当の塩川参事官にお願いいたします。

【塩川参事官(高等学校担当)】 担当参事官の塩川でございます。よろしくお願いいたします。
 今,荒瀬主査から御紹介いただいたところでございますけれども,資料3-2が審議経過の本文になります。資料3-1がその主なポイントになります。お時間限られてございますので,3-1を基に御説明させていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
 今ほど荒瀬主査からお話がございましたように,諮問に係る論点の検討として,まず1にございますように,高等学校を取り巻く現状と課題認識について議論したところでございます。事実上ほぼ全員が高校入学している状況の中,例えば21世紀出生児縦断調査等におきましても,学習意欲が中学から高校へ進む中で低下している。そういったことも踏まえて,学習意欲の向上をどう図っていくのか。主査のお言葉にもありましたが,主人公の生徒の学びを第1にした高等学校の教育の在り方の検討が必要であるということが共通認識とされたところでございます。
 さらに,2にございますように,高等学校の在り方については,正にこの特別部会の議論と一致しているところでございますが,今般の新型コロナウイルス感染症の感染拡大の中で改めて確認されました高等学校の役割・在り方を踏まえる必要があるということ,具体的にはこの3つを掲げさせていただいております。安全・安心に学べることや,その中で社会性・人間性を育む役割の大切さ,それから,ICTも活用して,言わばベストミックスによる,全ての生徒にとって個別最適化された学びと,社会とつながる協働的・探究的な学びの実現が必要であるということを確認した上で,方策について取り組んでいくことが望ましいということで審議の方が進んでいるところでございます。
 具体的に,3でございますが,こちらの方は,須らくどの高等学校においても取り組むことが必要というものです。まず最初の四角でございますが,高校生が社会に出て,正に人生を主体的に航海していく20年後・30年度の社会像・地域像を見据えた高等学校教育を,検討していくことが望ましいということでございます。そして,そうした中,学校が学校外の機関等と,連携した教育を進める観点から,従来型の学校を一校完結から社会に開かれた高等学校教育を実現する連携構築が必要であるということ。とりわけ中山間地域,離島等におきましては,ICTも活用して複数の高校が協働して強みを有する科目を選択的に履修できるといった学びの質を高めていく工夫が必要であること。3つ目でございますが,公立高校の設置者である都道府県におきましては,高等学校が持続的な地方創生の核,そういった機能も有するということも踏まえて,関係機関とも連携して高校教育の在り方を検討,政策を推進するということが望まれるというものでございます。
 そこで,2つ目の四角でございますが,学校の設置者におきましては,学校の教育目標を将来像から改めて分析し,期待される役割,目指す学校像などをスクール・ミッションとして再定義,発信していくこと。その検討に当たりましては,コミュニティ・スクール等も活用したり,あるいは私立学校については,建学の精神に基づく個性豊かな教育を行っているわけでございますが,そうしたことも踏まえて,生徒の実態を踏まえて行っていくことが議論されたところでございます。
 また2つ目でございますが,各学校においては,そのスクール・ミッションに基づきまして,3つのスクール・ポリシー,卒業の認定に関する方針,教育課程の編成及び実施に関する方針,入学者の受入れに関する方針,これらを策定・公表し,カリキュラム・マネジメント,これについて入学から卒業まで一貫的・体系的なものとして進めていくよう再構成するということ。
 さらに,3つ目の四角でございますが,こうしたミッションやポリシーを言わば絵に描いた餅としないためにも,学校の特性を踏まえ,関係機関との連携を図り,社会に開かれた教育課程を実現し,社会とつながる主体的な人材育成を行うことが必要ということでございます。
 おめくりいただきまして,次のページでございます。以上,高校共通の取り組みとともに,各学科等の特性に応じた取り組みが4番でございます。最初の四角でございます,学科の特質に応じた教育実践の充実強化ということで,まず普通科改革。普通科でございますが,普通教育を主とする学科につきましては,普通科しか設けられない状況から,スクール・ミッションに基づいて生徒の実態等に合った学びを提供するという観点,そういった観点を大事にし,そうした教育を促進するという観点からも,設置者の判断で特色ある学科を設けることができるようにするというということで,言わば大綱化・弾力化を図っていくものとして,普通科に加えまして,3つ書いてございます,SDGsの実現やSociety5.0における現代的な諸課題への対応を図るために,学際科学的な学びに重点的に取り組む学科,それから,地域や社会の将来を担う人材育成を図るために,地域社会の抱える課題の解決に向けた学びに重点的に取り組む学科を設けること,また,その際には,そういった取り組みを推進するに当たっては関係機関との連携体制がそれぞれ必要ですので,そういったことを要件とするということで考えられるのではないか,またさらには,これらに限ることなく,特色・魅力ある教育を実現するための学科についても設置者の判断で設置できるようにするべく制度的な措置を検討することが望ましいとされておるところでございます。
 専門学科でございますが,加速度的な変化の言わば最前線が地域の産業界でございます。そうした地域産業界で学んでいく,社会に開かれた専門学科の教育課程の実現を,地域の産業界,それから,地元の基礎的自治体と一緒になって主体的・一体的に取り組む教育課程の実践が必要であり,そのためにも不可欠なハード整備を計画的に行うこと,それから,そうしたハードについても企業と連携して最先端の環境での学習を進めることが必要ということでございます。
 また,総合学科についても,単位制,多様な選択という総合学科の特色を生かした教育の一層の推進に向けて,ICTの活用や外部人材の活用などの推進が期待されるというものでございます。
 次の四角でございます。定時制・通信制課程での多様な学習ニーズに応じた取り組みの推進方策でございますが,勤労青少年の高校教育の提供という制度創設時の目的から,現在,自分のペースで学べるといった観点からも多様な生徒の多様な学びのニーズに対応するという機能を大きく担う形になっているわけでございます。こうした教育をきめ細かく進めるためにも,スクールカウンセラーあるいはスクールソーシャルワーカーなどの専門スタッフの充実や関係機関の連携を図っていくとともに,ICTの効果的利活用について進めていく必要な措置を講じる必要があるというところでございます。
 最後の四角でございます。通信教育の質保証の方策でございます。残念ながらいまだに不適切な学校運営や教育活動等を行っている事例があるといったことも踏まえまして,その質保証の徹底が望まれるということです。最初のポツでございますが,教育課程の編成・実施の適正化として,添削指導・面接指導・試験といった年間指導計画等の策定・明示などを行っていくこと。2つ目のポツでございますが,サテライト施設の教育水準の確保として,実施校の責任下でそうした施設の把握・管理,情報開示の徹底や,実施校と同等の教育環境をしっかり確保していくこと。3つ目のポツでございますが,多様な生徒にきめ細かく対応するための体制の充実ということで,養護教諭,それから,スクールカウンセラー・ソーシャルワーカーの専門スタッフの充実,それから,関係機関との連携,さらには,生徒数に応じた教員数の明確化など。最後のポツでございます,主体的な学校運営改善の徹底ということで,法令に基づく学校評価の実施及び公表。通信制の高校についてはその割合が低うございますが,こうしたものについての徹底。それから,学校の基本情報についても公表を徹底していくこと。並びに,デジタル化時代のICTを基盤とした先端技術の効果的な活用で新時代の通信教育の在り方について実証研究を進めていくということも適当ということでございます。
 以上が審議の経過報告でございますが,引き続きまた議論を重ねていく中で,具体的な政策・方策の在り方についても御意見を頂戴していく予定としているところでございます。
 以上でございます。

【荒瀬部会長】 では,続きまして,新しい時代の特別支援教育の在り方に関する有識者会議における検討状況を,八田特別支援教育課長から御説明をお願いしたいと思います。

【八田特別支援教育課長】 特別支援教育課長の八田でございます。私から,新しい時代の特別支援教育の在り方に関する有識者会議の「これまでの議論の整理」につきまして御説明させていただきます。
 本有識者会議につきましては,昨年9月から8回開催いたしまして,これまでの議論の整理をまとめたものでございます。資料4-1,これが概要でございます。資料4-2が本文でございますけれども,時間の関係がございますので,資料4-1の概要ペーパーに基づきまして御説明させていただきたいと存じます。
 まず,ローマ数字1 .特別支援教育を巡る状況と基本的な考え方についてでございます。まず特別支援教育を巡る状況といたしましては,インクルーシブ教育システムの構築に向けた取り組みが進展するとともに,また,特別支援教育を受ける子供の数も増加している状況にあるところでございます。このような中,これからの特別支援教育の方向性として,マル1 障害のある子供と障害のない子供が可能な限り共に教育を受けられる条件整備と,マル2 ,障害のある子供の自立と社会参加を見据え,一人一人の教育的ニーズに最も的確に応える指導を提供できるよう,連続性のある多様な学びの場の一層の充実・整備を着実に進めていくこととしております。
 このため,それぞれの学びの場におけます各教科等の学習の充実を図るとともに,障害のある子供と障害のない子供が年間を通じて計画的・継続的に共に学ぶ活動の更なる充実,並びに障害のある子供の教育的ニーズの変化に応じまして学びの場を変えられるよう,多様な学びの場の間で教育課程が円滑に接続することによる学びの連続性の実現を図るとしているところでございます。
 この考え方に基づきまして,まず,ローマ数字2 .障害のある子供の学びの場の整備・連携強化でございます。まず,1.就学前におけます早期からの相談・支援の充実といたしまして,早期からの支援やきめ細かい就学相談を行うため,福祉部局や幼稚園等と連携して,障害のある子供の状況を把握することが重要であります。このため,乳幼児健診に加えまして,5歳児健診等の活用を行うとしているところでございます。また,就学相談においては,本人や保護者が正確な情報を得て理解した上で意向を表明できるよう,情報の提供の充実を図るとしているところでございます。
 次に,2つ目,小中学校における障害のある子供の学びの充実についてでございます。まず特別支援学級と通常の学級の子供が共に学ぶ活動の充実といたしまして,通常の学級に特別支援学級の児童生徒の副次的な籍を導入し,ホームルームなどの学級活動や給食などにつきましては原則共に行うこととすること。さらに,教科学習についても,児童生徒の障害の程度等を踏まえまして,共同で実施することが可能なものについては,年間指導計画等に位置付けて年間を通じて計画的に実施することなどが必要であるとしているところでございます。また,通級による指導につきましては,通級担当教師が小学校等を巡回して行う指導や,ICTを活用して自校にいながら専門的な指導を遠隔により受けられるような取り組みを進めることにより,自校で専門性の高い通級による指導を受けるための環境整備を行うべきとしております。また,通級による指導等の在り方につきましても,知的障害に対する通級による指導も含めまして,引き続き検討が必要であるとしているところでございます。
 次に,3.特別支援学校における教育環境の整備についてでございます。まずICTを活用した在宅就労など特別支援学校卒業者の就労先が広がる中,従来の事務所に通勤・通所する形態のみならず,在宅での労働などの形態についても視野に入れ,例えばICTを活用した職業教育に関する指導計画,指導法の開発を行う必要があるとしているところでございます。さらに,特別支援学校に在籍する子供は,居住する地域から離れた特別支援学校に通学することにより居住する地域とのつながりを持ちにくい場合があることから,特別支援学校に在籍する子供が居住する地域の学校に副次的な籍を置き,交流及び共同学習を継続的に推進する取り組みを充実するべきとしているところでございます。また,特別支援学校の教育環境を改善するため,特別支援学校に備えるべき施設等を定めた設置基準を策定するとともに,特別支援学校のセンター的機能を強化していく必要があるとしているところでございます。
 次に,4.高等学校における学びの場の充実についてでございます。高等学校におきましては,特に発達障害を含む障害のある生徒が一定数入学していることを前提に,通級による指導の充実など学校全体で特別支援教育の充実に取り組むとともに,義務教育段階におけます支援の内容が個別の教育支援計画を活用して進学先の高等学校に丁寧に引き継がれることが重要であるとしております。また,発達障害のある生徒の中には,進学や就職をしたものの,環境になじむことが難しかったりする場合もあることから,高等学校段階で自己理解を促し,対処法を学びながら自信を高めるような指導や支援の充実を図るとともに,特別支援学校と連携して就労支援の充実を図ることが必要であるとしているところでございます。
 次に,ローマ数字3 .特別支援教育を担う教師の専門性の向上についてでございます。ここにおきましては,全ての教師に関わるもの,特別支援学級,通級による指導を担当する教師に関わるもの,それから,特別支援学校の教師に関わるもの,3つに分けて整理しているところでございます。
 まず全ての教師についてでございますけれども,特別な支援を必要とする子供が通常の学級に在籍していることから,全ての教師が発達障害等の特性等を踏まえた学級経営・授業づくりを研鑽するとともに,管理職や通級による指導担当教諭など校内人材を活用したOJTによる支援体制の充実を図ることが重要であるとしております。
 次に,特別支援学級,通級による指導を担当する教師についてですが,これらの教師には,実際に指導に当たる上での必要な実践力が求められます。このため,人事配置に当たっては,特別支援学校での勤務経験など教師としての一定の経験を積んだ者が担当することが望ましいとしております。また,OJTやオンライン等の参加しやすい研修の充実を図ることが必要であるとしているところでございます。なお,発達障害や特別支援学級に係る免許状を創設するということにつきましては,会議の中でも肯定的な意見と慎重な意見の双方があり,今後引き続き検討を深める必要があるとしているところでございます。
 次に,特別支援学校の教師の養成に関してでございます。特別支援学校の教師に求められる専門性は多岐にわたる一方で,養成段階で現状以上の単位の修得を求めることは学生の過度な負担となり,特別支援学校の教師を目指す者の減少につながる懸念もあるということが指摘されました。このため,養成段階では,現在の総単位数の中で重複障害等に関する教育課程の取扱いなど特別支援学校の教師として押さえておくべき内容を精選するとともに,発達障害など全ての学校種で課題となっている内容についても学べるよう,内容を再検討することが必要であるとしているところでございます。併せて,教職課程の質を担保・向上させるため,共通的に修得すべき資質・能力を示したコアカリキュラムを策定することが必要であるとしているところでございます。
 また,特別支援学校の教師は,現在,小学校等の教師の免許状に加え,特別支援学校教諭の免許状を所持することとされているところでございますが,教育職員免許法附則第15項の規定により,当分の間,特別支援学校教諭の免許状を所持しなくてもよいこととされております。この免許法附則15項を削除し特別支援学校教諭の免許状所持を義務付けることにつきましては,会議の中でも肯定的な意見と慎重な意見の双方があり,今後引き続き検討を深めることが必要であるとしているところでございます。
 次に,ローマ数字4 .ICT利活用等による特別支援教育の質の向上についてでございます。特別支援教育におけるICTの利活用は,指導内容の充実等を図る上で重要なものでございます。このため,ICT活用による指導の充実と教師の情報活用能力の育成を進めていくことが必要であります。例えば今回の新型コロナウイルス対応による臨時休業では,各教科等の家庭学習やオンラインでの授業は工夫されている姿が見られましたが,自立活動の指導については課題が見られたところであります。このため,今後オンラインを活用した自立活動の指導の実施方法やその留意事項について実践的に研究を進めることが必要であるとしているところでございます。また,デジタル教科書・教材の活用を進めることとしており,特に特別支援教育における文部科学省著作教科書のデジタル教科書化を進める必要があるとしております。そのほか,学校におけるICTの利活用体制の整備や,特別支援教育に配慮した校務系システム形成,ICTを活用した関係機関間の情報連携を進めることが必要であるとしております。
 最後に,ローマ数字5 .関係機関の連携強化による切れ目ない支援の充実についてでございます。就学前から学齢期,卒業後まで,学校が保健,福祉,医療,雇用等の連携機関と連携して切れ目ない支援を行っていくことが必要でございます。このため,就学前,在学中,卒業後の各段階で,例えばキャリア教育や個別支援計画を活用した一体的な情報共有など連携した取り組みを進めることが必要であるとしております。また,医療的ケアが必要な子供への対応については,医療的ケアを担う看護師の人的確保や配置等による環境整備を進めるとともに,例えば中学校区に医療的ケアの実施拠点校を設けるなどして,地域の小中学校で医療的ケア児を受け入れ,支える体制の在り方について検討する必要があるとしております。最後に,障害のある外国人児童生徒に対しましても,外国人児童生徒の教育の充実に関する有識者会議の報告に基づきまして,関係機関で連携し適切な取り組みを進めることが必要であるとしているところでございます。
 本日御説明いたしました「これまでの議論の整理」につきましては,これまでの8回の議論をまとめたものでございます。本有識者会議におきましては,引き続き議論を深めていくとしているところでございます。
 私の説明は以上でございます。

【荒瀬部会長】 ありがとうございました。
 今2つの報告を頂きました。このことに関しまして御意見を皆様から頂戴したいと思います。時間の目安といたしましては,5時5分頃までとさせていただきたいと思います。御発言をなさいます方は,また先ほどと同様に手を挙げるのボタンを押していただきますようにお願いいたします。重ねて恐縮でありますけれども,多くの方からの御意見を頂戴しますために,お一人の御発言はできる限り手短によろしくお願いしたいと思います。では,どうぞ御発言のおありの方は手を挙げるのボタンを押してください。
 ではまず,橋本委員,貞広委員の順にお願いいたします。橋本委員,よろしくお願いいたします。

【橋本委員】 ありがとうございます。橋本です。それでは,高校教育の在り方に関して2点だけ申し上げたいと思います。
 資料3-2の大体13ページ辺りかと思いますが,今回スクール・ミッションの再定義とともに,スクール・ポリシーの策定について記載されております。特に各学校がカリキュラム・ポリシー上で特色等を打ち出しやすくするため,また,高校生が非常に多様化している現状にしっかり対応して選択肢を与えるために,カリキュラム・マネジメントの強化に加えまして,今後に向けてということになるかと思いますが,学習指導要領の一層の弾力化や大綱化といった方向についても考えていく必要があるのではないかということが1点です。
 それからもう一点は,19ページに書かれておりますが,普通科以外の新たな学科の設置に関してでございます。普通科では確かに理系・文系といったコース分けを行っている高校が多いわけですけれども,例えば就職希望者が比較的多いような学校ではキャリアデザインコースを設けている,あるいは国際交流が盛んな学校ではグローバルシチズンといったコースを設けているというように,特色あるコースを設けている例が見られます。今後,制度設計を進める際には,こうした既存のコースと新しい学科との関係をどう整理していくかを検討する必要があるということ,それから,例示された新設学科に関しまして,コンソーシアム構築あるいはコーディネーター配置といった要件を課すことが示されておりますが,その要件を余り厳格化してしまいますと新設が難しくなる可能性もあるかなと思っておりまして,これをどの程度のものにするか,どの程度まで求めるかといった点にも留意が必要だと考えております。
 以上です。

【荒瀬部会長】 ありがとうございました。それでは続きまして,貞広委員,よろしくお願いいたします。

【貞広委員】 よろしくお願いいたします。千葉大学の貞広でございます。
 今御指摘のありました新設学科の創成など,又はスクール・ミッション,スクール・ポリシーの導入など,20年後の子供たちの自己実現を保障するためにかなり踏み込んだ御提言を頂いたものであると拝見いたしました。
 その上で,私から1点御検討いただきたい御提案でございます。資料3-1で申し上げますと,1ページ目の3の20年後・30年後の社会像云々のところの2番目に,中山間地域や離島などの地域に立地する高等学校は,自宅から通学可能な唯一の高等学校として多様な生徒のニーズに応えるための役割が求められることから,それぞれの強みを複数校で共有してというようなお話を頂いています。
 これ,今後の人口動態とか,高等学校が地域創生の核であるということを考えると,こうした状況というのは,中山間地域や離島などの地域に限定されるというよりも,かなり全国的にこういう状況が広がっていくことが予想されると思います。また,この後取り上げられる資料5-1についても,こうしたことも見越してということもあるのだと思いますけれども,地域圏の複数の高等学校をネットワークでつないで,双方向で協働的に学習をするというようなことも書かれています。
 そこで,今,スクール・ミッションやスクール・ポリシー,3つのポリシーですけれども,各学校で1つのものを作るというような御提案を頂いているようですけれども,場合によっては複数校を例えばネットワークでつながった学校園のようなものと考えて,そこの地域圏で1つのスクール・ミッション,スクール・ポリシーを作っていくというようなことも十分考えられるのではないかということです。
 その際さらに,そういう地域特性から考えると,ほぼほとんどのその地域の小中学校の子供たちがそこの高校に進学をするということが想定されますので,他地域よりもより地域の小中学校との系統的な学びということに配慮して,どのように子供たちが学んできているのかということを十分認識してスクール・ミッションやポリシーの作成をしていただきたい。また,その地域の小中学校についても,子供たちが今後どのような学びをするのかというようなことを見越して,今これ,高等学校の話ですけれども,高等学校での学びをしっかりと見越して小中学校の学びの充実をするという方向性も重要であろうと思われます。
 以上でございます。

【荒瀬部会長】 ありがとうございました。
 では続きまして,8名の委員の皆様から御発言を御希望いただいています。順番に申します。今村委員,松尾委員,香山委員,清原委員,吉田(晋)委員,東委員,神野委員,今野委員,この順番でよろしくお願いいたします。
 ほかにも御発言御希望の方いらっしゃいますでしょうか。よろしいでしょうか。では,一旦今野委員までとさせていただきます。
 それでは,今村委員,よろしくお願いいたします。

【今村委員】 発言させていただきます。
 高等学校教育の在り方についての資料について,質問なんですが,高校の約8割が在籍する普通科高校を変えていくという方向だと思うんですが,何割ぐらいの学校が新しい学科に移行していくということを今想定されて議論されているのかということの,過程を教えていただけたらうれしいなという質問です。
 それで,質問は続くんですけれども,今,普通科は,私たちの認識では,地域によっては,成績がいい子たちが大学に行くためのブランドイメージがある普通科を一旦選ぶという印象がありまして,そこに中学卒業段階で,地域という場を探究の場に選ぶという生徒は余りいないという印象があります。それを高校段階に今の普通科のカリキュラムの中で地域とつないだカリキュラムを実行されているような学校の学びの面白さの中で地域の面白さに気付いていくということで,そういった生徒層が生まれてきているとは思っているんですけれども,今普通科の中でできてしまっていることが,この新しい区分けの学校になったときにどういうインセンティブで,更に何ができるようになるのか,ここが語られないと,今の地域における普通科が変わっていこうと思うインセンティブになっていかないのかな,結局少なくなってしまうのかなということをちょっと危惧しております。
 ごめんなさい,2つ目なんですけれども,スクール・ポリシーと現状の学校経営計画や学校経営目標みたいなものとの違いについても,今どんなふうに議論されているのかということについても教えていただきたいと思います。
 以上となります。

【荒瀬部会長】 ありがとうございました。では,松尾委員,お願いいたします。

【松尾委員】 松尾でございます。よろしくお願いいたします。
 私の方からは,特別支援教育の在り方に関する方で,少しお聞きしていて意見を述べさせていただきます。特別支援教育,とりわけインクルーシブ教育というのは,やはり現場におりまして学校経営の根幹をなすものだということを大いに認識しております。その中で,現場におりまして感じておりますことを幾つか述べさせていただきたいと思います。
 1つ目は就学前,そして,小学校,中学校,高等学校,大学,就労と教育の連続性の中で,やはり引継ぎの重要性,先ほどのお話にもありましたが,子供たちの引継ぎ,情報の引継ぎの重要性ということを1つ目,とても感じております。
 そして,2つ目は,福祉と学校と家庭とのトライアングルの関係,そこを例えば放課後デイサービスとか,福祉の関係の方が現場に入り込んでこられての特別支援教育を支えていくというふうな,その3つの関係性の重要性も感じております。
 それから,3つ目は,やはり就学前の段階で保護者がいかに問題意識を持つかということ,そして,その保護者への,どのようなシステムでこれから特別支援教育が進んでいくのか,連携支援がどう行くのかという情報提供というか,やはり保護者の方にとって情報不足が一番心配なところで,どのような高校へ進学できるのか,その先,どのような就労に結び付くのかというふうな情報提供を早い段階で行っていくということもとても大事なことだと思っています。
 それから,先ほどもありましたが,通級指導の拡大というところです。今,高等学校にももちろん通級指導は取り入れられていますけれども,小学校の中で多様な学びの場の中の1つとして通級指導はあるんですけれども,そのほかにも,例えば,通常学級に通いながら取り出し授業ができないかとか,通級指導をもっと支援の方を多くしていただくとか,そういう支援策の拡大もお願いしたいところです。
 それと最後に,エリアコーディネーターという方が特別支援教育にはおられると思うんですけれども,その方がいかにそれぞれの現場を支援していただけるかという役割の明確化も課題意識として感じております。
 私からは以上です。ありがとうございました。

【荒瀬部会長】 ありがとうございました。では続きまして,香山委員,お願いいたします。

【香山委員】 香山です。3点御発言させていただこうと思います。
 1点目は,特別支援教育の概説のところのページの中に,「ICTを活用した在宅就労」という表現が真ん中辺りにあったかと思います。ローマ数字2 .の3ポツ,特別支援学校における教育環境の整備の1ポツ目です。「ICTを活用した在宅就労」という表現ですけれども,前回の会議で小林いずみ委員の方からリモートワークが確かに進んでいるという経済界の動きについてお話を頂きました。それと,このICTを活用した在宅就労というのがしっかりと結び付くイメージが具体的に今後各企業から提案され,そのニーズに対してきちんと対応していけるというふうなことになりますと,これまで就労できなかった方,例えばベッドに横たわっていらっしゃるといったような方がひょっとして今後ICTを活用して在宅就労が可能になっていくんじゃないかという期待感を持ちますので,この辺りのところを経済界と一緒に開発していっていただけたらなと感じております。これがまず1点目です。
 それから,2点目,3点目につきましては,高等学校についてのお話をさせていただこうと思います。まず1つ目なんですけれども,先ほど貞広委員がおっしゃったこととかなり重なるんですけれども,今回資料3の後に資料5が出てきていますが,不易流行という観点でいえば,資料5はWITHコロナといったような,流行に対する対応といったことで切り分けている部分もあろうかと思いますけれども,例えば資料3-2の10ページ目をお示しいただきたいと思います。
 この上の方に適正規模という表現があろうかと思います。今回これまで昭和36年でしたか,制定された適正規模の考え方に基づいて,今後人口動態によってなくなる学校も増えてくるといったようなことが想定されるわけですけれども,リモートワークならぬリモートスタディが当たり前のようになっていって,今こうして我々もリモートで会議をしているわけですけれども,こういった状態が当たり前になってきた場合,むしろ安全なのは都会から離れた田舎だったりするかもしれないわけですね。そういうことを考えますと,3密を避けて生活ができる田舎の小規模校の存在ということが,地方創生の意義と相まってますます重要な意味を持ってくると思うわけです。
 そういう意味におきまして,昭和36年に制定された適正規模の考え方をそのまま引きずっていくんではなくて,正にポストコロナにおいても変わっていくといったことにつきまして,踏み込んで一層議論していきたいなと思っております。今回の文書はそういうふうな方向性が暗に感じ取れるように私には思いますので,非常にうれしく思っております。
 3点目につきまして,14ページの一番下側の学習評価のところにつきまして,カリキュラム・ポリシーのところで学習評価の在り方が非常に重要だとあるわけですけれども,各学校がカリキュラム・ポリシーを示すときに,教科レベルの習得・活用・探究がどんなふうになされていくのか,それをどう評価するのか,あるいは総合的な探究の時間でどういうふうに評価していくのか,そして,特別活動をどう評価していくのかという形で,各学校ばきちんと明示していくといったことも是非今後書き込んでいっていただけたらなと思っております。
 長くなりまして失礼いたしました。以上です。

【荒瀬部会長】 ありがとうございました。清原委員,お願いいたします。

【清原委員】 ありがとうございます。清原です。
 資料4-1,「新しい時代における特別支援教育」について重要と思われる点につきまして申し上げ,1点だけ質問をさせていただきます。
 4番にあります「ICT利活用等による特別支援教育の質の向上」については,大変重要な論点と受け止めています。インクルーシブ教育として一人ひとりの児童生徒を尊重した個別最適な教育を学びの連続性を持って進めていく上で,ICTは有力であると認識しています。委員を務めていらっしゃる竹中ナミさんはもう20世紀から,「障害者(チャレンジド)を納税者に」ということで,(ICT利活用についての)学びの上で就労支援をされてこられました。このことからも,ICTを利活用できることが障害のある方の自立支援につながり,そのための学びの支援にもICTは健常者と同様に生かされるべきと思います。
 その上で,松尾委員も問題提起されましたが,一人ひとりに寄り添った(関係機関との)連携を保つためには,就学前からの関係機関との連携にもICTが生かされなければならないと考えます。それが4の4項目めに,「関係機関の連携と情報の共有」と書かれており,5番目には,就学前からの連携はじめ,医療的ケアが必要な子供への対応まで病院を含めた関係機関との連携にICTの活用が示唆されています。
 さて,そこで質問です。これらは大変有用と思いますし,「御本人と保護者の了解が必要」ですが,「個人情報を保護」し,「情報セキュリティマネジメント」を保ちながら,正しい個人のファイルが守秘義務の下で共有されるというICTの活用も必要と考えられますけれども,そのための仕組み作りには時間が掛かっているようでございます。今後有識者会議で提案されるに当たりまして,このような「関係機関の連携とICTの活用」について,時間的にいつ頃までの実用化を目指した提案をされていかれるのか,どのような御協議がされているか,時間的な目安に関して情報を頂ければと思います。
 どうも御検討ありがとうございます。以上です。

【荒瀬部会長】 ありがとうございました。では,吉田晋委員,お願いいたします。

【吉田(晋)委員】 ありがとうございます。
 今日の資料の中で,10ページにもありますけれども,私,今回,我々教員も子供たちも,コロナによって3,4,5月と3か月間,本当に未曾有の経験をしたものと思っています。そういう中で今回,早速この中では取り上げていただいておりますけれども,ICT教育の重要性が改めて私ども分かった気がします。その一方で,高等学校が各教科等の知識や技能を教授するだけの機関ではなくて,生徒の心身や安心・安全を確保するという側面,そして,社会性・人間性を育むという側面を併せ持つ機関であるということが再度確認された気がしております。
 そういう中で,6ページの下にありますように,教室における対面指導が効果的なもの,そして,地域社会での学びが効果的なもの,ICTを活用した学習が効果的なもの等を見極め,その最適な組合せによって多様な生徒を取り残すことなくというようなことが書いてありますけれども,正に我々,今回いい意味でのハイブリッドな教育というか,この分野にこういうことが必要だとかそういうことを本当に無理やり経験させられた気がしているんです。
 そういう中で今,普通科の改編というお話が出てきているわけですけれども,先ほど橋本委員のお話にもありましたけれども,18ページにありますように,実際に普通科という中で,今いろいろなコースというようなものが出来てきているのが事実じゃないでしょうか。その根底にあるのは私は,今回もまだ教育課程変わっておりませんけれども,教育課程改編に際してあれだけ細かく全てが決められている中で大丈夫なんだろうかと。それよりも,真ん中でしっかりとした太い高等学校教育としての教育課程を築いた上で,周りに自由な部分をたくさん作ることによって,こういった多様化したいろいろなコースが作られるのではないか。今回言われているようなWWLやグローカルみたいなものを使ったものも,やはり特例校ということではなくそういうものが中に組み込まれる,かといって,ほかにもそれ以外のことをやる子がいるということも意識した改定が必要になってくるんじゃないかと思っております。
 時間ないところでもう一つ申し訳ございませんけれども,通信教育の件でお願いがございます。これは通信教育の場合,24ページに多様な生徒の学習形態,進路希望に対応した教育活動が行われていると何か非常にいいように書かれているところでございますが,26ページに行きますと,質保証の問題で全く違うことが書かれております。実際問題として,今,通信制高校でどういう実態があるかということについては,今日この後ろの方に教育課程の編成等4つの問題が書かれているわけですけれども,今回の現状を見ても,やはり対面の必要性,そして,通信教育が本来の目的は何だったのか,そして,全日型とか通学型といった通信制があり,かつそういったところでスポーツだけやっていれば大会に出られるようなことも認められているような,そういった何か方向性が違ってきている部分があると思うので,是非その辺の御検討も改めてやっていただきたいと願っております。
 長くなりまして申し訳ございません。ありがとうございました。

【荒瀬部会長】 ありがとうございました。それでは,東委員,お願いいたします。

【東委員】 美晴幼稚園の東です。2度目の発言の機会を与えていただきまして,ありがとうございます。新しい時代の特別支援教育の在り方について意見を述べさせていただきます。
 ローマ数字2 .障害のある子供の学びの場の整備・連携強化,本文でいいますと4ページから5ページに係る部分であります。本文の方よろしいでしょうか。本文の4ページから5ページにかけて,就学前の現状認識に立って非常に的確におまとめいただいておりますし,今後の方向性についても非常に共感を持って受け止めさせていただいているところであります。
 ただ,残念なことに,日本において幼児教育・保育段階では,障害のある子供あるいは障害の疑いのある子供,合理的配慮や教育的な支援を必要としている子供の受入れが十分なされていません。違う言い方をすると,幼児教育・保育の機会保障が十分なされていないのが残念ながら実態であります。そのことを改善するためにも,やはり文部科学省を中心として,幼稚園,こども園,保育所においてのこれらの子供の受入れ,あるいは家族・家庭支援の充実を図っていくという方向性が非常に重要という認識に立っているということをまず述べさせていただきます。
 その上で,ちょうど4ページの中頃にありますけれども,早期からの相談・支援というところがありまして,法定健診とか就学時健康診断,あるいは市町村によっては行われている5歳児健診の機会を有効に活用し,あるいは情報共有をしてということがあるのですけれども,乳幼児の保護者の場合,障害の受容・理解について非常に難しい,デリケートな時期にあります。また,受入れが十分進んでいない中で,健診とか専門医の診断を受ける等によって障害のある,あるいは障害の疑いのあるということが分かった段階で,幼稚園やこども園の受入れがなされない,就園の機会に恵まれないということに至る場合がありますし,就学に際しては,ここにありますように,卒業後も含めたライフステージに応じた保護者への十分で丁寧な情報提供がなされた上での学校選択が行われることは非常に重要だと認識しているんですが,やはり保護者・家庭の受容の態勢が整わない中での前のめりの支援もまた二次的な障害や保護者や家庭の難しい状況を生むことにつながりかねないので,この辺りについては進めながらも慎重さも兼ね合わせて進めていただくことが重要かなと考えている次第です。
 以上です。

【荒瀬部会長】 ありがとうございました。では続きまして,神野委員,お願いいたします。

【神野委員】 よろしくお願いします。神野です。
 このような高校改革,ものすごい力でやっていくんだなと思ってすごく感服しながら見ていたのですが,資料3-1の下の方,4ポツ目に書いています普通科改革という中において,SDGsが頭文字に来ている学際科学的な学びとか,あとは地域社会の将来を担う人材というようなところで取り組むような地域社会とつながるような学科を創設するということなんですけれども,こちら2点とも,書いている本質的に子供たちに与えたい能力というのは,例えば探究型であったり,STEAMだったり,あとは問題発見・解決能力だっ たりというのは,今まで言われてきた非認知能力なのかなと考えています。
 そのようなものというのが,実はこの前の議論の義務教育の改革課程においても,小中のところで例えばSTEAM教育とか探究型教育を導入していこうというところとすごくつながる話かなと思っています。そのときに大事なのは,小学校・中学校の中で育まれた力をちゃんとアセスメントし,何だったら,高校入試という中でもってもちゃんと生かすことで,このような普通科改革によって生まれた学科にちゃんと子供たちが進級・進学できるというようなことを設計することなのかなと考えています。
 また,このような新たな学びを,小学校・中学校もそうですけれども,高校にちゃんと根付かせていくためには,ある程度の人材配置のための予算も考えていかないとなかなか今の中で進めていくことは難しいのかなとも考えております。また,このような形で普通科改革を行ったならば,次にはやはりこれまでの大学入試とは違う,つまり,小学校,中学校,高校と子供たちに新たにこのような非認知能力を学校現場がちゃんと教育してきたわけですので,そのアセスメントを用いた大学入試制度改革も同時に考えていくべきなのではないかなと考えております。
 その中で,個人的にはですが,SDGsや学際科学的な学びに重点,取り組む学科と,地域社会に開いた,取り組む学科というところは,ある種求めている能力は,私は結構同じだと思っています。ただ,その後活躍する現場が違うというような話なのかなと思ったときに,これを高校入学時に子供たちに選ばせるのが適切なのか,若しくは高校2年生段階で,例えば今の理系・文系を選ぶようなタイミングで,私は地域から出ていって活躍がしたいだとか,若しくは私は地域でこの能力を使って活躍したいというふうに選べるのか,そのような設計の方が子供たちには親切なんじゃないかなとも考えました。
 以上です。ありがとうございます。

【荒瀬部会長】 ありがとうございました。では,今野委員,お願いいたします。

【今野委員】 気仙沼中学校の今野享子です。どうぞよろしくお願いいたします。
 新しい時代の特別支援教育の在り方に関することの資料4-1の2のところでお話しさせていただきたいと思います。インクルーシブ教育の下に共に学ぶ取り組みがなされているわけですけれども,先ほど東委員もおっしゃいましたけれども,障害のあるお子さんの保護者への丁寧な説明と同時に,共に学ぶ教育を行うに当たっては,障害のない子供の保護者への理解も大事だと思っております。
 最近の保護者の方々は,特別支援教育についてとても熱心に勉強なされておりますけれども,障害のない子供の保護者の方の理解を得られるような働き掛けを,先ほど就学時前には福祉部との連携でというようなお話もありましたので,そのような取り組みが必要かと思います。そういうこともあって,障害のない子供たちが障害のある子供たちに対して,一人一人の特性を認めて共に学んでいくという素地が出来るのではないかなというふうに,家庭教育の面からも感じました。
 それから,2の2つ目のポツですけれども,小中学校における障害のある子供の学びの充実というところで,取り出して授業をした方がいいなと思う場合もございますけれども,なかなか本人の意向,そして,保護者の意向,そして,学校の態勢が整わないと現実にできないというところがありますので,柔軟な体制で柔軟なふうに取り出せて子供たちが学べるような取り組みをお願いしたいと思っております。
 以上でございます。

【荒瀬部会長】 ありがとうございました。それでは,今頂きました中で御質問を頂戴しておりますので,事務局の方でまずお答えいただければと思います。塩川参事官,よろしいでしょうか。

【塩川参事官(高等学校担当)】 恐れ入ります。今村委員の方から御質問頂いた点について,今,現段階でできる回答をさせていただきたいと思います。
 説明として,新しい普通科改革の方向性として,ボリューム等どういうふうな議論あるいは考えがあるかということでございました。基本的には,こちら,資料3-1の4番の最初の方にもありますが,高等学校,正に普通科によっては,全てではありませんが,非常に一斉的・画一的なカリキュラムをやっているようなところもございます。そうした中で,生徒に合った形で特色的な魅力的な,学校がそういった教育課程を作ろうとするときに,新しいスキームを作れる,そういったものを制度化することで,各設置者等においても新しい学校を作るツール・選択肢を増やせればよいのではないかというような議論をしているところでございます。現状なかなか必ずしも,地域との協働等についてもできている普通科高校,そうでないところもありますので,そういったところについて,正に生徒の学び第一の取り組みを進めるための政策となればというような議論をしているところでございます。
 それから,2つ目でございます。ポリシーの件がございました。議論の中では,例えば校訓といったようなものもあるのではないかとか,あるいは既に,校訓に限らずですけれども,高校の方でもいろいろな教育目標なんかがあるんじゃないかというような議論もありました。ただそうした一方で,目標等について必ずしも具体的ではなく,むしろ抽象的だったり,必ずしも今,生徒の学びを実現するためには特徴が見えにくくなっている,あるいは教職員の中でも十分意識されていないといったようなものもあったりするわけでございます。そうした中,このポリシーについては,正に学校教育について,高校について,入り口から出口まで一体的・体系的な教育課程を実現する,それを教職員も一体となってするといったものを具現化するものがポリシーではないかといったような議論がされていると承っておるところでございます。

【荒瀬部会長】 今村委員,よろしいでしょうか。

【今村委員】
 今おっしゃっていただいたことはほとんど賛同しているんですけれども,ただ,スクール・ポリシーといいますか,まず学科の再編というところも,ただ看板の掛け替えにするのではなくて,飽くまで個別最適化された学びを実現するためにどういう看板にするのかということ,そして,それをどういうスクール・ポリシーの下で実現していくのかということについて,例えばスタッフとなる先生方が本当にそのプロセスに対話的に参画できるとか,そういった方法論とともに看板の掛け替えやスクール・ポリシーの設定などをしていかないと,今誰かが作って中身も覚えていない目標が掲げられているみたいな状況と同じことになってしまうんじゃないかと思いますので,その方法論とともに下ろしていくということが重要かなと思いました。失礼しました。

【荒瀬部会長】 ありがとうございました。
 私が主査をやっておりますけれども,私の考えでまとめているわけではもちろんないわけですが,今まで委員の皆様のお話を承って,今日先ほどから御発言の中では,橋本委員もそうですし,香山委員もそうですけれども,そういった委員の皆様の御意見を承って我々がまとめていこうと思っていますのは,先ほど申しましたように,生徒が主語になるような学校とはどういう学校なのかと。それは今,今村委員がおっしゃいましたような形骸化した学校ではもちろんないわけでありまして,普通科が駄目だから何割は変えるんだとかといった,そういうことを考えているわけではなくて,地域により,学校の状況により,生徒の状況により様々な学校があっていいと。ただ,実質化していないのは駄目だ。校訓も,要は,教育課程にどう落とし込まれているかというのが大事でありますから,教育課程,これは先ほどどなたかも御意見でおっしゃっていましたけれども,カリキュラム・ポリシーをしっかりとしていくというのが一番であろうと考えております。今後もまだこの検討は続けますので,また御意見ございましたら,どうぞおっしゃっていただければと思います。ありがとうございました。
 では,八田課長,今頂きました特別支援教育につきまして,よろしくお願いいたします。

【八田特別支援教育課長】 特別支援教育課の八田でございます。
 本日多くの委員の先生から貴重な御意見を賜りました。本日の御意見も踏まえまして議論を深めてまいりたいと考えております。
 1点,清原委員から御質問を頂きました。関係機関の連携と情報の共有に当たってのICTの活用についてでございます。この問題につきましては,委員から正に御指摘があったように,本人や保護者の了解,個人情報,それから,セキュリティの問題など様々なクリアすべき課題があると考えているところでございます。現時点でこの有識者会議の中で,いつまでに実現するというようなことを前提とした議論を進めているわけではございませんけれども,地域によって様々な課題があって,それを一つ一つクリアしていかなければならないものが多いと認識しておりますので,どういうことができるのかということを引き続き議論を深めていまいりたいと考えているところでございます。
 以上でございます。

【荒瀬部会長】 ありがとうございました。
 御質問頂いた方,御意見頂いた方,よろしいでしょうか。今後もまた頂きました御意見を大いに参考にさせていただいて,それぞれでまた御議論を頂きたいと思います。教育課程部会も教員養成部会もまたよろしくお願いいたします。
 では,2つ目の議題に移りたいと思います。新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた今後の学校教育の在り方等について,浅野初等中等教育企画課長から御説明をよろしくお願いいたします。

【浅野初等中等教育企画課長】 私の方からは,これまで御審議いただきました内容について,修文の点について御説明をさせていただきたいと思います。
 資料5-1は溶け込み版になってございますので,資料5-2に基づいて御説明させていただきます。主な修正点について御説明させていただきます。
 1点目は,クレジットのところで,当初,初等中等教育局の名前で出させていただきましたが,委員の方々の御意見を踏まえて修正を重ねておりますので,クレジットをこの中教審の部会にすべく落としてございます。
 2点目でございます。おめくりいただきまして,3ページ目でございます。前回のこの部会におきまして神野委員等から御指摘を頂きました,教育委員会や学校の取り組みの集約・発信,そして,課題などの充実を図っていくということと,それから分けて,ICT環境のハードの方の整備をメインとして,ICTの活用サポート,それから,ICT支援員の配置の促進やGIGAスクールサポーターの配置の支援,そして,御指摘のあったCIO,教育委員会において外部人材の活用も含めてICTに関する専門性を有した人材の意思決定を伴う立場への配置を促進するとともに,ICT環境整備に関する計画策定,指導方法等について助言・支援を行うICT活用教育アドバイザーの活用を推進すると修正をさせていただいております。
 次の点でございますが,5ページ目でございます。5ページ目では,長谷川委員から御指摘を頂きました,個々の児童生徒の知識・技能等に関する学習計画,これを学習履歴と共にICTを活用することによってPDCAサイクルの改善を図っていくという文言を入れております。
 それから,最後でございますが,8ページ目でございます。資料5-4と併せて御参照いただければと思います。これら,WITHコロナ,そして,その後のポストコロナの時代の新しい教育,新しい時代の学びを支えていくための環境整備として,1つは,新しい時代の学びを支える教室環境の整備についてです。端末やノートやいろいろなものを机の上に置くということになれば,今までの小さな机ではなかなか物が置けなくなってきているということや,教室に充電保管庫等の整備,そして,遠隔教育を進めていく必要な機材等を置くスペース,そういったことも含めて遠隔・オンライン教育に適合した教室環境の整備を図るということ。併せて,普通教室は既に9割以上の学校にエアコンが設置されてございますが,特別教室はまだ50%ぐらいでございますので,音楽室や理科室といった普通教室以外の教室の空調設備の設置促進など新しい生活様式を踏まえた健やかに学習できる衛生環境の整備を図るということでございます。
 そして,2つ目の丸でございますが,こういった1人1台端末による新しい生活様式を踏まえた学習環境が整う中で,やはりコロナ等の感染症も踏まえると,身体的距離の確保も非常に大事でございます。教室等の実態に応じて少人数編成を可能とするような新しい時代の教室環境に応じた指導体制や必要な施設・設備の整備を図る。併せて,義務教育9年間を見通した教科担任制の在り方等の検討を進め,個別最適化された学び,社会とつながる協働的・探究的な学びの実現を図るという文言を最後に入れさせていただいてございます。
 資料5-4は,そういった環境整備のことについて記載をしてございます。
 資料5-3につきましては,これまで御議論いただきました資料5-1,5-2について,分かりやすく,どういったことがポストコロナの時代でICTが入ることによって実現していくかということを表現した資料となってございます。
 私からの説明は以上でございます。

【荒瀬部会長】 ありがとうございます。
 それでは,最後の時間までとなりますが,この件につきまして,御意見を頂戴したいと思います。では最初に,吉田信解委員,お願いいたします。参考資料5をお届けいただいておりますので,皆さん御覧いただければと思います。吉田委員,よろしくお願いします。

【吉田(信)委員】 吉田でございます。埼玉県本庄市の市長でございますが,全国市長会の社会文教委員を務めております。
 参考資料5ということで今表示していただいておりますけれども,先般7月2日全国知事会会長,全国市長会会長,全国町村会会長名で「新しい時代の学びの環境整備に向けた緊急提言」,こちらを文科大臣,そしてまた,自民党,公明党,政府与党に提出をさせていただいたところでございます。これにつきましては,先ほど浅野課長さんから,こちらの資料の最後の(3)の新しい時代の学びを支える環境整備の中の取組事項のマル2で少人数編成という文言が盛り込まれておりますけれども,正にこれに我々としての要望を出させていただいた結果,骨太の方針2020にもこのような記述が載ったということで本当に私どもも喜んでいるところでございます。
 いずれにいたしましても,この緊急提言に書いてあるとおり,WITHコロナの中で,教室の平均面積が64平米で,現在の40人学級では感染症予防のために児童生徒間の十分な距離を確保することは困難だと。これは私どもの地元の学校でも同じようなことが起きているところでございます。もちろん今,学校の児童生徒さんの数が少なくなって,現状,20人とか,あるいは30人とか,そういう教室ももちろんあるわけでございますけれども,一応40人というのが定員になっておりますので,40人を超えないとクラスが2つに分かれないという状況がございますので,40人学級があるということで現実は密になってしまっている教室があるということでございます。
 それともう一点,やはりGIGAスクール構想をしっかり進めていく。緊急時においても,将来,オンライン学習がしっかりできる環境を整える等考えますと,最適な学びを実現するためには,少人数によるきめ細かな指導体制が必要だということを考えますと,やはり少人数編成を可能とする教員の確保を是非やっていただきたい。併せて,GIGAスクールサポーター等のICT教育人材の配置充実,これにつきましても今回のこちらの資料の方で新たに項目立てをしていただいたということで,良かったかなと思っております。
 なお,3番目といたしまして,更新費用,ランニングコスト等も含めたICT環境整備に必要な財政措置,これは是非お願いしたいということで3団体から出させていただきました。
 私も文科大臣に会長の代理として伺わせていただきましたけれども,大臣の方からも,少人数学級,少人数編成ということについては,力強いお言葉を頂いたところでございますので,併せてこちらで御報告させていただきます。
 以上でございます。

【荒瀬部会長】 ありがとうございました。この件に関しまして今,8人の方から御発言の御要望があります。ただし,実際的に無理ですので,大変申し訳ありませんが,複数回目の御発言の方は後に回させていただきます。毛利委員,東川委員の順でまず御発言をよろしくお願いします。毛利委員,どうぞ。

【毛利委員】 つくば市みどりの学園の毛利です。
 5ページをお願いします。5ページの一番上に,学習履歴(スタディ・ログ)を活用した個別最適化された学びについてという項目です。非常に分かりやすく直していただいて良かったなと思うんですが,ただ,これを読むと,ああ,これはオンライン学習のときはこうすればいいんだなというふうに思われるのではないかなとちょっと危惧しているところです。
 学校の授業でも,例えば紙のテストのときは解答用紙が戻ってくるまでテスト結果や点数が分からないですけれども,週に一,二回しかない授業・教科では,テストを受けても返ってきた頃には内容を忘れてしまうということがあります。本校でオンライン学習をして,フィードバックのために確認テストをしたんですけれども,それは子供たちがマルかバツか解きながら分かってしまう,教師にもスタディ・ログが行くというような状態だと,これ,やってみて,ふだんの授業もこれを使えばいいんじゃないかなというのが非常に実感として湧きましたので,この1番は,オンラインだけでなく,やはり教室での学習のときのまとめ学習やテストなんかにもすぐフィードバックできるようなこういう学習履歴が取れるまとめテストみたいなものが有効なんですよというのが分かるといいんじゃないかなと思いました。
 以上です。

【荒瀬部会長】 ありがとうございました。それでは,東川委員,お願いいたします。

【東川委員】 失礼します。今日も東京都は相当な感染者が出たということのようでして,特に学びを止めないといったところについては本当に待ったなしというふうに感じております。これからの議論は,新型コロナウイルス感染症を踏まえたという冠が付くような議論が常なのかなというふうに感じています。
 そこで,今様々議論されておりますICTについては,本当に早急に進めて,整備が必要だなと感じております。私どもの全国のPTAの中で,これはほかの分科会でも少しお話しさせていただきましたが,青森県の事例です。青森県青森市で小中学校が60校ぐらいあるそうなんですけれども,PTAの働き掛けで,ある中学校の校長先生と,休業中にオンライン授業をやってみないかという提案をし,60校全てでやったと。
 その中で思わぬ副産物があったというのが,要は,不登校の児童がオンラインですと7割ぐらいの子が参加したと。かつ,学校再開後も,7割の参加していた不登校の子が,実は9割以上の子が学校へ来るようになったというようなところもあり,非常に産物としては良かったかなと。
 ただ,ICTの環境でいいますと,先ほど堀田先生からありましたBYODではないんですけれども,どれぐらいあるかといったところでいうと,家庭の環境としては9割ぐらい環境が整っているということからこれを実施するに至ったということですけれども,ただ,これ,BYODということですので,学校の環境が早急に整備されることを望んでいるというふうな個人的な意見を述べさせていただきます。
 以上でございます。

【荒瀬部会長】 ありがとうございました。私が数え間違いまして,あと7人の方がいらっしゃいます。大変申し訳ありませんが,順にお名前を申し上げますので,その順に御発言ください。堀田委員,お願いいたします。

【堀田委員】 堀田でございます。
 1点だけですが,最後の最後の方にあります「遠隔・オンライン教育」という用語の再検討をしてはどうかと思います。これは今回の文書には間に合わないかもしれませんが,検討の余地があると思います。
 そもそも遠隔教育というのは,通信教育とか,あるいは離島や中山間地あるいは人口減少による遠隔合同授業等を念頭に概念化された用語だと思います。今まではそれしかオンラインを想定していなかったんだと思います。
 一方で昨今よく見られるオンライン教育というのは,インターネットにつながった情報端末を学校での学習でもいつでも身の回りに置いて,友達同士とか先生とオンラインでつながって協働で学ぶような学習であり,こういう状況はこれからさらに多くなると思います。学校で探究的な学習等を取り組んでいる途中で,続きを自宅でやるとか,あるいは夏休みの少し長期の課題を定期的に先生がオンラインで確認するとか,そういうこともできます,。いわゆる同時双方向型のオンライン指導だけがオンライン教育ではないので,オンラインを使った学習活動というのは多様に考えられると思います。
 以上,今後の議論を考えると,オンライン教育の概念化と用語の再整理が必要であるという意見を申し上げておきます。以上です。

【荒瀬部会長】 ありがとうございました。それでは,吉田晋委員,お願いいたします。

【吉田(晋)委員】 時間がないところありがとうございます。
 私,前回出席できなかったものですから今回この資料を見てちょっとびっくりしているんですが,初中局発信だったからかもしれませんけれども,これ,私立学校は一体このどこがはまるんでしょうか。特にGIGAスクールのことが書いてありますけれども,高等学校に関しては,5ページで突然遠隔授業の活用についてのみ出てきますけれども,ICT環境の整備という意味で,公立の高等学校も含めてどうなのか。そして,GIGAスクールにおいて,こういった指導員その他は全く私学には準備されておりません。そういう意味でも,日本全国の国公私立ということを考えた場合のこれからの学びの在り方に変えていただきたいと思って発言させていただきます。

【荒瀬部会長】 ありがとうございます。あと,では,大変申し訳ありませんが,3人の方だけで終了させていただきたいと思います。橋本委員,天笠委員,香山委員,お願いいたします。

【橋本委員】 ありがとうございます。
 8ページの学びを支える環境整備に関してだけ申し上げたいと思います。これを見たときに,「新しい時代」という表題の言葉がいつを指しているか明確じゃないなと思ったんですけれども,先ほどの課長の説明で,WITHコロナ,ポストコロナ,両方を指しているということは分かりました。ただ,下の取組事項に関して,WITHコロナとポストコロナでちょっと中身が違うんじゃないかなと感じております。
 例えばマル1の新しい生活様式も踏まえた衛生環境の整備とありますけれども,新しい生活様式はそもそも感染拡大を防ぎながら生活をするということを目的にしていますし,WITHコロナになじむ中身だと感じます。ポストコロナが感染終息後を指すとすれば,私はその時点での教育現場というのは,人と人のつながりを大切にして,ソーシャルディスタンスを取らない方向に戻していくべきだと思っておりまして,揚げ足を取るようで申し訳ないんですけれども,新しい生活様式は少なくとも新しい時代の学びの方向性とは完全に一致するものではないなと感じています。
 また,マル2に書かれています「教室等の実態に応じて少人数編成を可能にする」という記述につきましても,正に現在のWITHコロナの時代には大変重要なことだと思っております。ただ,ポストコロナにおいては,むしろ新学習指導要領の趣旨に沿って,個別最適化された学び等を進めていくために,教科担任制の導入や少人数編成というよりは,少人数学級など学級の小規模化を計画的に図っていく,こちらの方が適しているのかなと,そんなふうに感じておりまして,もう少し何か記載内容をポストコロナ,WITHコロナの別を意識して書いてもらえないのかなと感じました。
 以上です。

【荒瀬部会長】 ありがとうございました。天笠委員,お願いいたします。

【天笠部会長代理】
 それぞれの学校において個別最適化を実現するということにおいて,ICT化というのはツールとして欠かせないことだということはもう共通の合意になっているかと思っております。そのための環境整備というのが大きなテーマ・課題であって,ここのところにおいて,教育委員会の在り方,条件整備ということにおいてやっぱり注目・着目せざるを得ないんじゃないかと思うんですけれども,今日の先ほどからのそれぞれの提言等というのは,教育委員会の在り方というのが常に絡んであるはずなんですけれども,どういう形でこれらの各部会の提言と絡みながら教育委員会の在り方を提言していくのかという,こういうこともやっぱり大切な提言すべき課題ではないかと思っております。
 先ほど,戻るかもしれませんけれども,義務教育は市町村教育委員会で,高等学校は都道府県教育委員会だという,このこと自体も本来ならば検討すべき事項の1つであるかと思うんですけれども,先ほどのあれにはそこら辺のところは余り触れていなかったように思います。そういうことを含めまして,一連のこれに当たって,教育委員会の在り方についても我々は何がしかの目を向けていく必要があるのではないか,あるいはそれぞれの提言と絡めながらという形で提言の必要があるんじゃないかということを申し上げたいと思います。
 以上です。

【荒瀬部会長】 ありがとうございました。香山委員,お願いいたします。

【香山委員】
 私から1点です。今村委員が,普通科の中に学際型であるとか地域探究型であるとかといった新しい学科を作っても,中学生の目から見て,学びの質についてなかなか理解してもらえないんじゃないかといったニュアンスの発言をされたように記憶しているんですけれども,私は非常に重要なことだと思っています。
 やはり質の保証というのは,小林委員も前回,リモートワークが進んでいって,大企業の社員が田舎に行く。そのときに果たして本当に質の保証がなされるのかということをおっしゃいました。それは重要なことだと思うんですが,そこをGIGAスクール構想をきちんとやってICTによる学びの質の保証をしっかりうたっていくということを1つの条件として新たな科を作っていくということが大事かなと思っております。
 それともう一つは,学際型にしましても,地域探究型にしましても,やはり社会に開かれた教育課程を実現しようと思えば,コーディネート人材がどうしても必要になってくると思います。ICTを支える人材,コーディネート人材,そういったものも要件の中に必要かなと思っております。
 以上,気が付いたことを申し上げました。

【荒瀬部会長】 ありがとうございました。今のは,高校ワーキングの報告に対する御意見ということでよろしいんでしょうか。

【香山委員】 そうですね。

【荒瀬部会長】 分かりました。じゃ,ちょっと時間をオーバーいたしますけれども,今村委員,そして,森山委員,御発言をよろしくお願いいたします。順番に,今村委員からどうぞ。

【今村委員】 お時間頂戴しましてありがとうございます。
 私からは,WITHコロナ期でありながら,ここから自然災害が続いていくということが予想される中で,ここで描かれているICT支援員の方々が,学校の授業や学校の先生方の支援のみならず,例えばパソコンを持ち帰った生徒たちが学びを止めないための直接的な生徒に対する支援,スクールソーシャルワーカーというか,デジタルソーシャルワーカーという形なのかもしれないんですけれども,そういった支援にも業務の内容を拡大して捉えられるような策が必要かなと思っています。今,熊本の高校生たちも,学校が再開しても通学困難になっている地域もありますし,そういった子たちが学びを止めなくてもいいように,すぐに文部科学省が舵を切ってそこにサポートをオンラインでできる,そういう仕組みが必要なのかと思いますので,発言させていただきました。
 以上です。 

【荒瀬部会長】 ありがとうございました。森山委員,お願いいたします。

【森山委員】 すみません,時間がないところで失礼します。
 ICTと新型コロナの感染症との関係とは少し異なったところですが,御承知のとおり,新型コロナウイルス感染症への対応として,文部科学省におきましても文書等を発行していただいたり,Q&A等で御対応いただいているところでございます。
 ただ,今年度の教育実習,介護等体験の実施につきましては,今年度当初からやはり大学,教育実習校,それから,教育委員会等と詳細な連絡を取りながら,多くの場合,秋以降の実習等に先送りということも実際に行われております。東京都でも今日も新たに293人,過去最高ということで,このような状況の中で,やはり教員養成を担う大学においては,今後教職課程で必修単位として位置付けられている,全免許での必修の教育実習,それから,義務教育免許状に必修である介護等体験の実施が困難な状況にあるとも思われます。そういう意味では,養成大学,それから,幼稚園から高等学校まであらゆる実習校,それから,教育委員会ともに今,難しい選択となっているのも現状かと思います。この点につきまして,是非文科省のレベルでの判断がいただけないのか,御検討をいただければありがたいと思います。
 以上です。

【荒瀬部会長】 すみません,浅野課長に御発言を頂ければいいんですけれども,今頂きました御意見を踏まえて検討させていただくということをおっしゃっていますので,それでよろしくお願いいたします。皆さんの御意見です。
 大変失礼いたしました。私の進行がまずくて時間が延びてしまいました。今後は会議の時間の設定をもう少し長くということも含めて検討させていただきたいと思います。
 全体を通じての御発言を頂くこともできませんで,本当に申し訳ありませんでした。御意見のある方は事務局の方にメール等でお寄せいただければと思います。
 では,今日はここで終わらせていただきたいと思います。最後に,次回の予定につきまして,事務局からお願いいたします。

【田中教育制度改革室長】 御審議ありがとうございました。次回の本特別部会につきましては,8月20日木曜日14時から17時にて開催いたします。今回同様にウェブ会議方式での開催を予定しておりますけれども,1点,文部科学省の方針によりまして,次回以降は,このZoomではなくてWebexというシステムを使わせていただきたいと考えております。詳細につきましては,追って事務局より御連絡申し上げますけれども,どうぞよろしくお願いいたします。

【荒瀬部会長】 ありがとうございました。我々も新しい時代に向けて新たな対応が迫られるということで,皆さんまたどうぞよろしくお願いいたします。
 それでは,本日はこれで終了させていただきます。ありがとうございました。

―― 了 ――

(会議終了後,書面で提出のあった意見は以下の通り)

【山中委員】
先日の部会において,意見を述べる時間がありませんでしたので,書面にて提出させていただきます。

〇新しい時代の特別支援教育の在り方に関する有識者会議の委員でもあるので,特別支援教育については,その会議でも意見を述べさせていただいておりますが,こちらの部会でも特別な配慮を必要とする児童生徒に関することで意見を申し上げます。

(1)共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システムの構築
 これまでも,インクルーシブ教育システム構築に向けて発信されてきたところですが,未だに理解が十分でない状況があります。様々な取り組みは進んでいるところですが,特別支援教育の側からだけではなく,全ての校種において,多様性を尊重する社会づくりを目指すために,さらにインクルーシブ教育システムの構築が必要だということを強調していただきたいと思います。各学校でも特別支援教育が課題の一つであり,教員・保護者・地域社会に対しても,一層の意識向上が望まれます。障害のある児童生徒と障害のない児童生徒が可能な限り同じ場で共に学ぶことや,そのための多様で柔軟な就学先決定の仕組みを整備していくこと等,今後進めていかなければならないことが難しくなります。

(2) 特別支援教育体制の一層の充実
 各学校で特別支援教育の対象となる児童生徒は増加しており,次のような課題があります。多様な状態を示す児童生徒への対応を充実させていくために各学校から寄せられている要望の一部です。現状として伝えさせていただきます。
マル1 特別支援教育コーディネーター等の配置
 学校には,特別支援教育コーディネーターという役割を担う教員がおります。その役割については実践が進み,だいぶ明確になってきました。しかし,学校によって誰が担うかは異なり,さらに通常の業務に加えられた役割でもあるので,担当した教員の負担はとても大きいものがあります。学校内で特別支援教育コーディネーターがどのように機能するかで,児童生徒への支援は大きく変わります。特別支援教育の体制については,地域差や学校差が課題となっており,一定水準の体制を築くためにも,特別支援教育に特化した役割を学校に位置付ける時期だと思われます。学校にはスクールカウンセラーも配置されていますが,週に1,2回の配置だけではなく,常勤として専任の特別支援教育コーディネーターを配置することが,インクルーシブ教育システム構築にもつながっていくと思われます。

マル2 特別支援学級の教職員定数について
 特別支援学級に在籍する児童生徒が増加していることは周知のとおりです。特別支援学級の学級編成は,1学級あたり児童生徒8人となっています。しかし,児童生徒数は少なくとも在籍している児童生徒の学年が異なることや,障害の状態が多様であること,一人一人にあった教育内容を展開していくこと等から,教員一人で8人までの児童生徒の指導をしていくことが困難な状況があります。特別支援学校の学級編成は1学級あたり児童生徒数が6人ですが,学校全体では,多くの教員があり,互いに学び合ったり,支援し合ったりすることができます。特別支援学級の担任の専門性については,研修する場が少ないことや,少数派であることから校内のOJTは困難であることなどがあり,担当教員が専門性を身に付けていくことが難しい現状があります。障害のある児童生徒の自立と社会参加を考えると学齢期に十分な教育を受けることが必須です。特別支援学級や通級による指導の場の整備が進んでいますが,教員一人あたりが担当する児童生徒数についても検討していくことも必要ではないかと思われます。

(3) 障害のある児童生徒に対する遠隔・オンライン教育
 新型コロナウイルス感染拡大防止のための長期にわたる臨時休業を受け,遠隔・オンライン教育への対応が進みつつあります。文部科学省におかれましては,GIGAスクール構想の前倒しなどにご尽力いただき,各地域で急速にICT環境が整いつつあります。ICT機器の活用に関しましては,これまでも障害のある児童生徒にとっては,個別最適化するためのツールとして様々な実践が紹介されているところです。また,遠隔・オンライン教育につきましても,病弱や不登校の児童生徒にとっての有効性が報告されているところです。
 私が所属しています全国特別支援学級・通級指導教室設置学校長協会で,現在,臨時休業の対応や影響についての調査を行っているところですが,知的障害や自閉症の児童生徒につきましては,自分で機器を操作することや集中し続けることが難しく,遠隔・オンライン教育が困難であった例も報告されています。また,その困難さから,通常の学級ではオンライン授業が始まっても,特別支援学級では同じように行えなかった例もあります。通常の学級では,オンライン教育といっても軸になる教科書があるので,比較的対応しやすい面がありますが,特別支援学級に在籍する児童生徒にとっては,長時間のオンラインによる指導はその内容と教材の選定が課題であり,早急に検討しなければならないと思います。
 遠隔・オンライン教育が今後,進展していくことが予想されますが,特に知的障害や自閉症,発達障害の児童生徒に対する遠隔・オンライン教育の指導内容や方法も,通常の学級に遅れることなく取り組まれることをお願いしたいと思います。

お問合せ先

初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室

(初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室)