教員養成部会 教員養成のフラッグシップ大学検討ワーキンググループ(第7回) 議事録

1.日時

2019年12月19日 10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省東館3階3F2特別会議室

3.議題

  1. Society5.0時代に対応した教員養成を先導する「指定教員養成大学(フラッグシップ大学)」の在り方について(最終報告案)
  2. その他

4.出席者

委員

三島良直主査、加治佐哲也主査代理、安藤雅之,戸ヶ﨑勤,堀田龍也,牧野光朗,松田恵示,水落芳明,三村由香里,両角亜希子,山口宏樹,若江眞紀

文部科学省

浅田総合教育政策局長,平野大臣官房審議官,柳澤教育人材政策課長,髙田教員養成企画室長,長谷教員免許企画室長 他

5.議事録

【三島主査】 それでは,中央教育審議会初等中等教育分科会教員養成部会教員養成のフラッグシップ大学検討ワーキンググループを開催させていただきます。前回が定足に満たなくて懇談会という形になりましたので,都合8回ということになりますけれども,本日が7回目のワーキンググループでございます。まずは,本日は御多忙の折,朝も冷えましたけれども,皆様,御出席いただきまして,ありがとうございます。何とか最終回を無事に済ませたいと思うところでございます。
それでは初めに,本日の配付資料の確認を事務局からお願いいたします。
【髙田教育人材政策課教員養成企画室長】 それでは,資料の確認をさせていただきます。端末のデスクトップに本日の会議資料を格納したフォルダがございますので,フォルダをお開きいただきますと,本日の会議資料であります座席表,議事次第,また資料1から資料4までを用意しております。
また,参考資料1,2として,本年10月にお取りまとめいただきました中間まとめと,参考資料3として,委員名簿を付けております。
このほかに,平成29年有識者会議報告書と前回までの会議資料などをファイリングしたものを机上に用意しております。
また,本日はいろいろ参照する機会が多いと思いましたので,資料2の最終報告案の見え消し版と,資料3の見え消しがないものを机上に配付しております。
不明な点がございましたら,お近くの事務局員までお申し付けください。
【三島主査】 それでは,今最後に御説明がございました最終報告の案について御議論いただければと思います。本日は,先ほど申しましたように,皆様方の御意見を頂き,このワーキンググループとしての最終報告について,一定の結論を得たいと思いますので,どうぞ御協力のほどよろしくお願い申し上げます。
それでは早速,Society5.0時代に対応した教員養成を先導する「指定教員養成大学(フラッグシップ大学)」の在り方について,長い題ですが,最終報告の案の議論に入りたいと思います。
まず,事務局から関係資料について御説明いただければと思います。よろしくお願いいたします。
【髙田教育人材政策課教員養成企画室長】 それでは,まず資料1を御覧ください。前回は定足数に1名足りませんでしたので懇談会ということでございますが,そこで出た主な意見をまとめたものでございます。前回は,中間まとめに対するパブリックコメントに対する意見も御紹介しておりまして,その中では,より国際的な内容ももう少し入った方がいいのではないか,あるいは教員就職率とか,現職教員の受入れなども重要ではないかといった意見もございました。前回の懇談会ではそれを踏まえてさらに御議論いただきました。
上から順に御説明いたしますと,技術的なものではなくて,Society5.0時代の教師の在り方や指導力の育成といった資質・能力の育成といったことが重要ではないかということ。
また,これも国際的な観点ですけれども,SDGs的な観点が重要ではないか。
あるいは,三つ目と四つ目は多分同じような意見だと思いますが,教員になる前に社会のことをきちんと知るということが必要ではないか。まさにその社会ということについては,Society5.0ということであれば,大きなパラダイムシフトみたいなことが起こっている。そういった社会の変化やその意味というものを教員が理解して,子供たちに伝えることが必要ではないかという御意見も頂きました。
また,こういった研究開発的なフラッグシップ大学のような大学ができたときに,学ぶ側(がわ)の学生が,そのような先端的な大学で学びたいと思えるような仕組みが必要ではないか。この議論では,そのほかに,そういった大学に学生あるいは現職教員の優秀な人たちが積極的に入学してくるのだろうかといった議論もございました。
そして,Society5.0に合ったカリキュラムや講義形態の授業を行うようなことが重要ではないかといったこと。
そして,日本の教員養成モデルとしての位置付けを明確にしてもよいのではないかとか,今言ったようなフラッグシップ大学だけではなくて,国,大学,教育委員会という三者が互いを引っ張り合って高めていくような姿が確保されることが必要ではないかという意見がございました。
また,アクティブラーニングや個別最適化ということが重要になってくるわけでございますけれども,そういったことが非常に進んでいるような諸外国の事例を学ぶことも必要ではないかという御意見を頂きました。
そのほか,期待する大学像や拠点としての意味合いを明確にしてはどうか,あるいは義務教育段階の指導みたいなものが重要ではないか,また教員養成における取組のユニークさという意見も頂きました。
そして,この応募要件の部分ですけれども,応募要件を厳しくするのか,それとも,期待する成果選ぶべきなのかということで,最終的にはバランスの問題ということでしたけれども,評価をしっかりしていこう,あるいは要件にそれなりのしっかりしたものを出していく,そして大学としての覚悟を問うようなことが重要ではないかという意見を頂きました。
そういった意見を踏まえまして,中間まとめから修正いたしましたのが,資料2の見え消し版と資料3の溶け込み版でございます。
資料2でございますが,めくっていただきまして,まず目次の部分で,項目が一つ増えたのが,このフラッグシップ大学という呼称について,正式にはこの後に御説明いたします指定教員養成大学(仮称)ということで,一つ項目として増えております。そのほか,小見出しについて,修正されている部分については,また本文の方で御説明いたします。
まず1ページでございますが,1ページの「最終報告」の性格という部分でございますが,1ページについては,今後,最終報告書としてまとめるということで,字句修正や,正式性,正確な表現という観点から少し修正をしております。
2ページでございますが,ここについて,かなり変更されているように見えますけれども,2ページの前半の部分については,前回ここの部分の「中間まとめ」の記述が,「中間まとめ」をまとめたということになっておりましたので,それを「最終報告」をまとめたという形で修正したものでございます。
「中間まとめ」をまとめる際に,教育再生実行会議の提言を受けて文部科学省が公表した「新時代の学びを支える先端技術活用推進方策(最終まとめ)」を踏まえることが重要だという御意見を頂きましたので,それを踏まえた上で,パブリックコメント,さらにその後の議論を重ねて,今回のものを取りまとめたということを記述しております。
そして,この最終報告に基づきまして,今後,文部科学省において施策が実行に移され,選定された大学が教員養成の在り方を変革していく牽引(けんいん)役となることを期待するということでまとめております。
2ページの中ほどでございますが,今回の「フラッグシップ大学」の呼称ということでございます。今後も「フラッグシップ大学」という言い方をしていくということはございますが,正式には,今後,この大学については文部科学大臣が指定するということになるので,「指定教員養成大学」という呼称が当該大学の教育内容をより正確に表すものとして考えられるのではないかとしております。また,この後の記述で触れておりますが,ここでいう「指定教員養成大学」については,いわゆる大学の学生だけを養成するという観点ではなくて,教職大学院なども含めて,現職教員を対象とした研修にも力を入れていく大学であるということをこの二つ目で最後に明示しております。
続いて,2ページの後半部分で,教員育成の変革を先導する「指定教員養成大学」の目的・必要性でございます。ここで「育成」としたのは,先ほど申し上げました,学生だけではなくて,現職教員も含めた全体を先導していくという趣旨でございます。
初めに,ここは前回の中間まとめでは,社会の変化に伴って教員の役割や能力も変わっていくというさらりとした書き方をしておりましたが,今回のSociety5.0に対応したという意味であれば,社会そのものが大きく,「非連続的」と言えるほど劇的に変わるということ,そしてそれに伴って学校教育も変わっていくということ,その上で教師の役割が変わってゆくということを丁寧に書いた方がいいという御意見も頂きましたので,そういった書きぶりにしております。
あと,3ページのところで,これも前回の意見を反映した部分でもございますが,教師に求められる役割・能力の中で,まずはそういった社会の大きな変化あるいはそれに伴う規範とか価値観の転換といったものを踏まえた上で子供を指導していくといった能力が必要ではないかという御意見がございましたので,それを一番初めに持ってきております。
そして,ICT活用指導力ということはもちろん重要なのですが,そのようなことを前提に,それを活用して,問題発見・解決型の学習活動を展開,支援する力ということが重要だということで,それを前の方に持ってきております。
そのほか,例示が多くなっておりましたので,少しそれをまとめるような修正をしているところでございます。
それがここの部分で,順番を入れ替えたりということもございますが,その後,3ページ,4ページにかけては,これも字句修正ということで,フラッグシップ大学の役割とか必要性では,現在,教員養成大学・学部の現状としては,様々な努力や優れた取組も生まれているが,現在の制度や人的・物的条件,予算等の制約の中での取組であって,教員養成の在り方自体を変革するようなものにはなっていない。また,大学の体制としても,学校現場の現状,ニーズに即した先端技術の活用等について指導できる教師の確保とか,企業等との連携,あるいは教育現場が期待する新たな教育課題やニーズに的確に対応した教員養成・研修,それを超えた先導的な試行等が十分には至っていないということを書いて,そのような現状を踏まえて,この「指定教員養成大学」の構想は,このような現状から踏み出し,Society5.0時代にふさわしい教員育成の在り方自体を変革していくための牽引(けんいん)役となる大学を創出する必要があるといった危機感から提言されたものであるとまとめております。
4ページは「指定教員養成大学」の役割ということでございますが,ここについては,「引き上げる」という言葉よりも「変革する」という言葉が小見出しとしてはより良いのではないかということで,修正をしております。
5ページでございますが,これも,文章の入替えでございまして,内容的には修正はございません。
3番目の部分でございますが,中間まとめでは「我が国の教育政策上の課題解決と政策提言」ということでございましたけれども,「教育政策上」という表現が余りにも広過ぎるのではないかということで,本来,教員養成大学・学部というのは,学校教育の課題解決のための教員養成なり教員の学び直しをしていくところだということで,「学校教育の課題解決」というものに修正しております。そして,文言に少し丁寧な表現という形で,修正した部分がございます。「新学習要領の実施,特別支援教育,日本語指導を必要とする児童生徒への教育,Society5.0時代に対応したICTの効果的な利活用等,我が国の教育が直面する様々な課題を解決するための理論と実践に裏付けられた対応策の提示・支援,さらには教育や教員養成の近未来像の描出,研究成果に基づく政策提言等を行うこと」と書いております。
そして最後に,こういった「指定教員養成大学」は,真(しん)にこのような役割・機能を果たすことが見込まれるごく少数の拠点大学に限定して選定を行うべきであるということでございます。
中間まとめで「三つ程度」ということが書かれておりましたが,今回「三つ程度」という文言は削除しております。これは,中間まとめを出して以来,「三つ」というのが独り歩きしたようなところもございましたので,そこは,この後に説明もございますが,水準に達したところを指定するということで,数ありきではないという考え方を示したつもりでございます。
次に,「指定教員養成大学」の選定の部分でございます。これにつきましては,非常に大きく修正が入っているようなものでございますが,内容的な変更はございません。より通りがいいようにという形で文章を入れ替えております。少し説明いたしますと,「指定教員養成大学」が期待される役割・機能を果たすためには,何より大学自身の主体的な取組への意欲,使命感,高度な教育研究力,実績,大学全体として責任をもって組織的・継続的に取り組める体制,それらに裏付けられた実現可能性の高い計画の策定等が不可欠の前提となる。したがって,文部科学省において必要な要件を明示した上で希望する大学を募り,そういったことについて,専門家(例えば教員養成部会の下に設置する専門家で構成される委員会)による厳正な評価を行い,真(しん)に成果の見込まれるごく少数の拠点大学に絞って選定を行うことが考えられる。
選定の有効期間といたしましては,ここが少し,前回は「5~7年」としておりましたところを「5~6年」としております。これは,「7年」では少し長過ぎるという意味もありまして,「5~6年」ということにしております。ただしその場合でも,取組の進捗状況等により,選定の解除や計画期間の変更,計画内容の大幅な見直し等もあり得るものとすべきであるとしております。
最後に,スケジュール感的でございますが,当面,令和3年度からの取組の開始を想定し,令和2年度中に初回の公募・選定を行うことが望ましい,としたうえで,必要な条件を満たす大学等がない場合には無理に選定を行うべきでなく,その後追加で公募を行うような余地を残しておくべきであると記述しております。
二つ目,要件でございますが,「指定教員養成大学」に必要な要件としては,例えば以下のような点が考えられる。文部科学省において事業化を行う際には,これらの視点を踏まえ応募要件の設定等を行うことを期待する,とあります。
前回も,あるいはこれまでも,委員の皆様から様々な御意見を頂きましたが,十分にこの最終報告に盛り込めていない部分については,応募要件の中で,また適切に反映していきたいと思っております。
要件でございますが,これについては6ページ,7ページで全学体制として,教員養成から学校現場での実践(研究開発から実装)までを通じた一体的な取組,検証を行うためということで,教職大学院や附属学校などを備えていることとしております。 また,今後新たにどんどんすばらしいスタッフを取り込んでいくという大学があれば,確実に確保できる見込みが立っていることを要件として追記しております。
教員養成の実績,体制の部分でございますけれども,ここも一般的な用語として,「他に比して高い」を「特に優れた」と変えております。次の8ページの多様な関係機関との連携・協働の部分も少し修正されておりますが,そこの趣旨を申し上げますと,これまで,中間まとめの段階では,海外的な要素というものは,もちろん重要ではあったわけなんですけれども,そこを入れると,少し広がり過ぎるのではないかという懸念があり,そういった表現を抑えておりました。しかし,中間まとめに対するパブリックコメントあるいは前回の御意見の中で,そういったグローバルな視点というものが非常に重要であるという御意見も頂きました。そのため,教員養成の実績,体制の部分について,例えば海外留学や研修の取組であるとか,8ページの多様な関係機関との連携・協働の,他大学との連携・協働といった記述を「国内外の大学」として,海外も含めた連携というニュアンスを出しているところでございます。
教育研究力につきましては,特に大きな変更はございませんが,本文の方で,ICT活用指導力の育成ということは当たり前過ぎるということで落とした部分がございますが,これも非常に重要な概念でございますので入れております。
また,この教育研究力の前段の部分と後段の部分で,特にSociety5.0時代を踏まえて重要な概念になります遠隔・オンライン教育とか,STEAM教育とか,教育ビッグデータの活用やEBPMといった要素を要件に入れ込んで,そういった大学を選定していくというニュアンスを入れております。
8ページの多様な関係機関との連携・協働については,変わっておりませんが,企業等との連携・協働による取組の実績などを求めております。
8ページの真ん中の教育環境と財政基盤についても,未来の教室を先取りしたような学習環境の整備,財政基盤の確立が重要であるという記述を載せております。
大学教員の育成とか現職研修について,これも字句修正でございます。
9ページでございますが,附属学校の部分について,附属学校を巻き込んだ実績や今後の計画が重要だということで,その例示の中に,先ほど教育研究力の方で例示したような内容を附属学校という現場で実証していくこと,カリキュラムや授業の改革,あるいは経験知や暗黙知の可視化,校務支援システムの先端的な活用といったことも附属学校の方で是非やっていただきたいということで例示しております。
あと,成果等の普遍化,発信につきましては,そういった政策提言を行うことのできる分析力,発信力ということを求めております。
他大学と連携した取組の条件につきましては,大学間連携をする場合には,こういうことを対象とすることもあり得るということを明記しているところでございます。
3番目,評価の部分について,ここは前半の公募・選定の部分でかなり詳しく書き込みましたので,少し表現はあっさりしておりますが,引き続きそういった「指定教員養成大学」の取組を開始した後においても,継続的に取組の進捗状況を点検・評価して,その成果や状況等により,必要に応じ計画の見直し等を行うことが必要である。その際には,(1)に掲げた専門家,例えば教員養成部会の下に設置する専門の委員会等でそれを継続的にやっていくということを確認的に明記しております。
10ページの6,国として行うべき条件整備,支援等でございますが,ここも字句修正で,内容的には大きく変わっておりません。このような「指定教員養成大学」の役割・機能を存分に発揮できるようにするためには,既存の仕組みに縛られることなく先導的・革新的な取組に挑むことができるよう,特例的な扱いを可能とする必要があり,国はそのための制度の整備(教職課程の認定に関する規制の緩和や運用の弾力化等)を行うべきであると。「指定教員養成大学」の特に大きな役割として,そういった規制にとらわれない弾力的活動をすることによって新しいものを提言していくといった趣旨の記述にしております。
また,予算面につきましては,継続的な支援も必要であるということを明記しております。
二つ目,ここに「教育委員会」というのが入りまして,他大学,教育委員会,学校現場を含む環境の整備ということで,前半は,中間まとめと同様に,情報通信環境の整備が必要であるということを明記しております。後半は,前回の御意見を踏まえまして,「指定教員養成大学」における先導的・革新的な取組を効果的に行う上で,教育委員会や公私立学校の積極的な協力も期待されるところであり,国から各教育委員会等への協力要請等も考慮されたいと,是非,「指定教員養成大学」が学校現場,教育委員会と一体となって引っ張っていくような,そういった環境の醸成に国としても積極的に関わっていきたいといった趣旨の記述をしているところでございます。
以上が最終報告の内容でございます。
【三島主査】 御説明,ありがとうございました。
それでは,早速でございますが,資料2や資料3を見ながら,お気づきの点がございましたら御意見を伺いたいと思います。
見え消しがない方がさっと読みやすいと思いますけれども,どこが変わったかというのが分かるためには見え消しも必要だということで,両方を用意してございます。ゆっくり御覧になりながらでも結構ですので,御質問や御意見いただければと思います。よろしくお願いいたします。
どうぞ,戸ヶ﨑委員。
【戸ヶ﨑委員】
見え消しの方でお話しいたします。まず,「指定教員養成大学」という言葉です。様々な事情があることは理解できますが,一般の国民等の理解について考えたときに,客観的な根拠は何もありませんが,「フラッグシップ大学」という呼称の方が個人的には,インパクトがある気がしました。
それから,見え消し版の3ページに関わる部分でお話し申し上げますと,一つは,「ICT活用指導力」という言葉がありますが,教育再生実行会議の提言の中にもかなりの数,この言葉が出てきています。この3ページの上の方に書かれている「先端技術を効果的に取り入れたICT活用指導力」という文言が消され,これに代わって,その下で統合されており,意味は分かります。ただ,「ICT活用指導力」自体だけでもかなりそれなりのスキルが要求されるものであるにもかかわらず,その後の「問題発見・解決型の学習活動を展開,支援する」となると,ハードルが二つある感じがします。ですから,統合してひとまとめの文章にしてしまうと,すごく高いスキルが要求されるようなイメージになってきます。まずは,ICT活用指導力の基礎的なスキルを身に付けるということで,前の文言を,そのまま残しておいた方がいいではないかと感じました。
あわせて,「問題発見・解決型の学習活動」という文言がありますが,これは考えてみると,問題解決だけではなく,問題設定や問題作り等いろいろな学習がありますので,この言葉を使うのでしたら,「など」,「等」といった言葉を入れておくということと,教育再生実行会議の提言の中では「問題発見・解決的な学習活動等」という言葉になっていたものをあえて変えた理由は何なのか,もし明確なお答えがあるのであれば,教えていただければと思います。
さらに,これに関わることで,第3期の教育振興基本計画の中に,「問題解決型学習(PBL)」と書いてありますが、この提言の中には「PBL」という言葉がありません。意図的に使わないようにしたのかは分からないのですが,併せて教育再生実行会議の中によく出てきた「EdTech」という言葉もありません。振興基本計画の中には1か所だけ「EdTech」という言葉が出てきていますので,使わない理由があるのでしたら,併せてお聞かせ願えるとありがたいと思います。
また,その下のところで,「それらの技術を活用し,子供たち一人一人に合った個別最適化された」云々(うんぬん)と書いてありますが,ここはあえて「それらの技術」ということを言わなくても,この個別最適化された学びの在り方はある意味,先端技術はもうマストアイテムとして使っていかないと不可能なのではないかと思います。ですから,あえて「それらの技術を活用し」という言葉は使わなくてもいいのではないかと感じました。
あと一つは,全体的なこととして,大学の目的や必要性,その役割ということの前半の部分と比べて,選定の部分の記載がすごく多く,どちらかというと内容的には役割の中で記載した方が良いのかなと思う内容がかなり選定の方に盛り込まれている気がします。これを読んだ方々は,選定というより,最初に目的・役割というところに目が行きますが,そこよりも後ろの方を読まないとよく分からないという構成はどうなのだろうかと思います。書かれている内容の変更ではないのですが,位置付けといいますか,書き方の順番という意味では,目的や役割に選定で書かれている内容を記載された方がいいと思います。
少し長くなりましたが,以上です。
 
【三島主査】 ありがとうございます。
それでは,牧野委員,どうぞ。
【牧野委員】 今回は最終報告の案ということなので,率直な話を少しさせていただきたいのですけれども,これまで国立教員養成大学の在り方については様々な議論がなされてきて,その議論をベースにして今回のこのSociety5.0時代に対応した教員養成を先導するフラッグシップ大学の在り方ということが議論されてきたというように捉えております。そうしますと,この最初の「最終報告」の性格の前に,本来は,これまでの取組の記述がなされていて,Society5.0という時代に対応した教員養成が求められるようになったという,そこまでの経緯というものがないと,いきなりこういう時代に対応した教員養成大学・学部の在り方が必要なんだよというのは,これまでの議論との断絶を感じてしまいます。平成29年の有識者会議報告書(教員需要の減少期における教員養成・研修機能の強化に向けて―国立教員養成大学・学部、附属学校の改革に関する有識者会議報告書―平成29年8月29日 以下、有識者会議報告書)には,そういったことはきちんと押さえていて,これまでの取組がしっかり書かれていて,そしてこういう課題があるので,今回はこういった在り方を議論して報告書にまとめたということになっているのです。そこは私は,連続的でなければいけないと思います。ですから,これまでの取組のことはこの前にきちんと記述して,そして今Society5.0という新たな課題に対応していくために,こうした「指定教員養成大学」なのか「フラッグシップ大学」かは議論があると思いますけれども,その在り方を明確にする必要があったという,連続しているのですよという形をとった方がいいと思うのですが,そのような点についてのご意見をお伺いできればと思います。
【三島主査】 ありがとうございます。
それでは,若江委員,どうぞ。
【若江委員】 ありがとうございます。私は,この最終報告案の見え消しのない方のページを使って意見を述べさせていただきたいと思います。2ページのところの2の「Society5.0に対応した」というところ,先ほど戸ヶ﨑委員もおっしゃったように,「指定」ではなく「フラッグシップ」を私も明確に文字として残す方がいいなと思いました。
それと,その下の3の「教員養成の変革を先導する」とあるところですが,「教師に求められる役割や力も変わってゆく。例えば」ということで丸が幾つか並んでいるのですけれども,ここは割とシンプルに訴求した方がいいと思います。例えば一つ目の丸は,このままで,「価値の転換を理解・認識する力」でいいと思います。3ページの頭のところの「ICTや先端技術を効果的に活用し」について,先ほどこれは戸ヶ﨑委員が,二つに分けた方がいいのではないかとおっしゃったのも,まさにそうだなと思いますので,例えば「ICTや先端技術の効果的な活用及びその普及を支援する力」と,使えるだけではなくて,ほかの人たちにも展開する力とし,問題発見のところからは少しパラグラフを分けて,「問題発見・解決型の学習活動などを」,これも「展開」ではなくて,「計画・実践する力」として,何々する力という感じで,言葉をそろえていく方が分かりやすいのではないかなと思っています。
そうすると,「構想する力」はそのままでいいでしょうし,その次の「プレゼンテーション力」で終わっているところを,例えば文章を「コーディネーションやプレゼンテーション力などを発揮し,多様な意見や学びを引き出すコミュニケーション力」とかというような表現の方が,そろっていていいかと思います。その次が,「「チーム学校」の考え方を踏まえ,他者と連携し,組織的・計画的に教育の質の向上を図るためのマネジメント力」ですね。その次のところが,「それらを教育現場での実践に生かし,その成果や課題を踏まえつつ」,最後の「新たな改善につなげていく力」を「新たな価値を創造する力」とかという感じに文言をそろえると,ここを見るだけでこれからの教員に必要な力が明確になると思います。そういう改訂を加えていただいたらどうかなと思いました。
現時点では以上です。
【三島主査】 ありがとうございます。
それでは,堀田委員,どうぞ。
【堀田委員】
最終報告案を丁寧にまとめていただきまして,ありがとうございます。私は,このタイトルの「Society5.0時代に対応した教員養成を先導する」と書いてある,ここを毎度発言しているわけですけれども,この「Society5.0時代に対応した教員」というのはどうやって養成すればいいのかという話のときに,何かICTとか先端技術を使える人みたいにしてしまうのは,矮小(わいしょう)化し過ぎではないかと思うのです。そのことは何度もこの会議でも出てきていますし,そういう時代の非連続な変化に対応してというようなことが議論になっていますので,この本文の中でもそういう書き方になっているのだとは思うのですけれども,どうしてもICTを使うとか先端技術を使うということが何となく前に出てしまっているような気がします。
我が国は,ほかの国と比べて著しく早く人口減少社会を迎えていて,そういう中でのテクノロジーとの共存みたいなことがSociety5.0という言葉になっているわけで,そしてそれは,今まで人手でやってきたことがいつまでも人手ではできない時代を迎えるので,例えばロボットとかAIとか,あるいはもっとデータを駆使した支援みたいなことをやらなくてはいけないし,それをやればやるほど,それらがどういう技術でどういう仕組みでどのように社会に影響していて,そしてそれが,人の役割は何なのかということを改めて考え直すような,そういう時代の教育,教員の養成ということだと思うのです。なので,ICTを積極的に使うということはもちろんそうなのですが,それだけではなくて,今申し上げたような,Society5.0時代の人の在り方,教育の在り方みたいなことをきちんと教員養成のカリキュラムに明確に位置付けるようなことを要求してもいいのではないかと思います。
今のようなことをどこに書くのかなと考えたときに,今回の章立ては,目的や必要性と役割と選定になっていて,書けるとしたら,選定の要件になるのかもしれないのですけれども,もしかしたら役割のところにも書けるかもしれませんが,今から三つ,意見を申し上げます。
一つ目は,今申し上げたようなSociety5.0時代の学校,あるいはSociety5.0時代の人の役割と学校教育といったような科目を必修科目にするようなことを要件等に書けないか。これは,先端技術を使うということを直接的に意味しているわけではなく,そういうものが出てくることによって,データがこのように利用されて,リコメンドされたりしていますよといった,毎日の生活で使っているのだけれども,案外気付いていないような部分をきちんと明示的に学生に教えていく,そういう科目をきちんと行うべしと書いてもいいのではないかと思います。
二つ目ですけれども,昨今,補正予算で2,318億円が付いて,1人1台のコンピューターが学校現場に入ろうとしています。それはSociety5.0そのものではないわけですけれども,それぐらい急激な国家の意思としてそういう形で動いている状況の中で,今回, 3ページの一番上に,先ほど2人の委員が触れていらっしゃいましたが,「ICTや先端技術を効果的に活用し,問題発見・解決型の学習活動を展開」と書いてあります。このような学習活動がこれからさらに期待されていくわけですけれども,これは,機械を入れたらそれができるわけではなく,そういうものをうまく使いこなせる子供にしておかなければいけないわけで,子供たちが情報機器の操作にとどまらず,情報活用能力をきちんと身に付けてこそ初めてこういう学習が成立するわけです。
新しい学習指導要領では先回りしてこのことを,情報活用能力というのが学習の基盤となる資質・能力であると書かれていますが,今回のこの文書の中には「情報活用能力」という言葉は一つも入っていなくて,そういう意味ではこれは少々錯誤なのではないかと思われるところがあります。ですので,そういう情報活用能力の育成ですね。ふんだんにこの整備が進んでいくときに,子供たちの能力として情報活用能力をちゃんと育成していく,そういう手法みたいなことを教員養成の現場でしっかり身に付けさせるのだ,というようなことを要件等に書けないかと思います。
最後ですけれども,最近,データサイエンス学部みたいなものが出てきたり,あるいは私どもの大学でも1年生から,文系,理系にかかわらず,データサイエンス,AIとかを必修化していきます。教養教育としてのAIとかデータサイエンスというものがあるわけで,そういうものを学部として持っている,あるいは学科として持っている,あるいは全学教育として持っているような大学というのは今すごく増えてきていることを考えると,そのようなことも義務付ける,あるいはそのような専門性がデータサイエンス側にあるような学部や大学と連携するということを積極的に書いてもいいのではないでしょうか。それすら全部教員養成大学にかぶせるのは,しんどいことだと思うので,教員養成大学は教員養成が専門性だとして,だからこそデータサイエンスとか,そういうものについては,外側の力とうまく連携するということを明示的に書いてもいいのではないかと思います。
以上です。
【三島主査】 ありがとうございます。今の3つ目のところは,むしろ選定の問題のところですか。
【堀田委員】 そうですね。
【三島主査】 それでは,今まで頂いた御意見の中で,今のICTを使える教員を育てるというよりは,そういったものを逆に子供たちが使えるようになるというようなところで,意見が二つ,三つあったかと思います。それからもう一つ大きな括りでは,牧野委員からのこれまでの経緯といったところについてご意見がありました。事務局からこれらの点について一言頂ければと思います。
【髙田教育人材政策課教員養成企画室長】 まず経緯の部分でございますが,見え消しでない方の3ページの真ん中の「しかしながら」というところで,「教員養成大学・学部等の現状としては」という形で,経緯的なことが1パラグラフ書いてございます。ただ,牧野委員がおっしゃった部分というのは,こちらの黄色の冊子の有識者会議報告書においては,そこはかなり詳細に書いているところがございました。今回の最終報告の方については,教育再生実行会議の第十一次提言というのを踏まえておりますので,そこの経緯を少し詳しめに書いていて,こちらの黄色い冊子の「国立の教員養成系大学・学部の在り方」の部分については,簡単に触れた程度ということになっているのが現状ではございます。そこの部分について,牧野委員の御意見は,報告書が出てから2年間が経過していますので,そこの部分の在り方などについてもう少し書いた方がいいのではないかという御意見ということで承ったと思っております。
【三島主査】 ありがとうございます。
あと3ページの上のところで,「ICTや先端技術を効果的に活用し」というようなところの意味をもう少し,教育する側(がわ)の力としてではなくて,教わる子供たちがICT活用能力を身に付けるというようなニュアンスが出るように,頂いた御意見を反映できるところはしたいと思います。
【髙田教育人材政策課教員養成企画室長】 すみません,そこの部分で若干補足でございます。戸ヶ﨑委員あたりから,ICT活用指導力についても非常に重要だという御意見がございました。以前,そのあたりのところで,特に教育再生実行会議の提言では「ICT活用指導力」がかなりたくさん使われていた部分もあって,余りこちらに書き過ぎると,提言と余り変わらなく見えるといった御意見もありましたので,そこの重要性は意識しつつ,内容的には盛り込むような形にしておりますが,少し目立たないようになってしまったところです。しかし,今回そういった,やはり重要であるという御意見も頂きましたので,少しまた,この後の御意見も踏まえながら,書きぶりについては検討が必要かと思っております。
【三島主査】 それからもう一つ大きな話に,「指定教員養成大学」ではなくて「フラッグシップ大学」の方がいいという御意見があります。そこのところについてほかの委員の皆様,御意見はございますか。
【松田委員】 名称に関しては,確かに「フラッグシップ」と言った方が,インパクトというものは感じるのです。一方で,大学サイドから考えると,戦後の教員養成あるいは教育大学の改革というのは,師範学校から教育大学へという変遷という中で,「教員養成」という言葉は,そのプロセスを考えるとこれは非常に重要なことだと思うのと,「教育大学」という現状の言い方ないしは旧制大学系の教育学部などを考えたときに,言葉としては「指定教員養成大学」が一番いいなとは思うのです。けれども,そういう議論があるということだけは何か残しておいた方が,変な反発とかがないかなというのは感じました。
加えて思うところがあり,一つは,先ほどのICTの話なんですけれども,基本的に情報化社会というところからICTが注目されて, AIとかIoTとかという本当に非連続的な技術の出現から,高度情報化ということで,段階やフィールドが変わっているという認識があって,そこの部分に対してSociety5.0ということを対応させていくという考え方が一般的ではないかと理解しています。
そうだとすると,確かにICTが使えるということは,ある種昔から言われていることであって,こういう教員養成で問題になるのは,むしろ高度情報化社会において一体何が必要になって,何を教えないといけないのかということです。それを研究開発しつつ,教員がそれを教える力を持つということが重要な面もあるのではないかと思うのです。そういう意味では,具体的に言うと,5ページの(3)のところで3行目に「ICTの効果的な利活用」という文章があるのですけれども,これはせっかく「Society5.0時代に対応した」と入っているので,「対応した」の後に例えば「教育内容の検討等」というような言葉を一つ入れるだけでも随分ニュアンスは違ってくるのかなと思います。
【三島主査】 見え消しの方の5ページの(3)ですね。
【松田委員】 すみません。見え消しの方です。つまり,情報機器の利活用ということだけではなく,情報化時代において,何を目標にして何を内容とするのか,というあたりも併せて検討していくのだというニュアンスが加わるかなと思いました。
それと,こういう大きな動きなので,何か教員養成とか,そのあたりに心を入れていただけると,現場の我々としても元気が出るなと思うところがあります。どういうことかといいますと,見え消しの3ページの下の方のところで,「こうした力は,教員の養成・研修を通じ」,「望まれる」という文章があるのですけれども,例えばこの文中などに,教職の持つ本質的な魅力のようなものを再確認,再構築していくといいますか,実は先生というのはすばらしい職業なんだということが,こういうSociety5.0に対応していくということの中で再確認されるような面があるのではないかと思うのです。非常に日常的に多忙な業務の中で疲弊する教員にとって,それでも新しい時代とか,子供たちとともに新しい価値を作っていくのだという,そこへの思いというのが教員とか教員養成を裏で支えていると感じていまして,そういう文言が一行でも入っていると,現場の教員は元気が出るなと思います。
最後に,これはなかなか考えたところなのですけれども,6ページの下から10行目ぐらいのところで,「なお,必要な条件を満たす大学等がない場合には無理に選定を行うべきではなく」という文章がありまして,確かにそうだなと思います。これまでの議論を考えますと,こういう非常に高いハードルを越えていくような大学でこそこういう先導性を持てるのだと思うのですけれども,一方で,この文章が独り歩きしてしまいますと,大学側がもう頑張れということだけに終わってしまうような危惧も持っています。是非文部科学省側から,あるいは国側からも,もちろん大学も努力しますので,積極的に関わりながら選定を行っていくというようなスタンスが感じられたらいいかと思います。
【三島主査】 ありがとうございます。
牧野委員,どうぞ。
【牧野委員】 考え方として,はっきりさせておいた方がいいなと思うのは,ここに「教員の養成・研修」という言葉が出てくるのですけれども,養成というのは,当然,これから教師になろうとしている皆さん方の養成の在り方ということと,研修というのは,今もう教師になっていらっしゃる方が学び直してSociety5.0の時代に対応できるような教え方を身に付けていく,そういったことだとすれば,教師の養成の在り方と教師の研修の在り方について,このような在り方なんだと明確にした方がいいのではないかと思います。
1人1台端末の予算がもう付いて,4年間でそれを実現するのだという方向は出ているわけですが,実際に,情報端末を使った授業の在り方というのはどんなものなのか,私もそういったものを見たり,あるいは実際に実践してきたうちの教育長にも聞いているのですけれども,かなり今までの授業とは違ってくるものなので,現場の空(あ)いた時間で検証するようなものではないのではないかと思います。もっと本格的に学び直して,こういうICTを使った教育の在り方というものをしっかりと追求していく必要があるのではないか。そういうことを考えると,養成と研修を一緒くたにして,このような書き方にするのがいいのかどうか。そこはきちんと,養成は養成としてこのようにやりますが,研修はこういった形で現場の先生方にどのようにこの学び直しの機会を提供していくのか,ということはしっかりと押さえていますよというメッセージを出した方が,松田委員のおっしゃる,先生方にとっては「ああ,しっかりと考えてくれているんだな」という理解につながるのではないかなと,そのように私は思います。いかがでしょうか。
【三島主査】 ありがとうございます。
ほか,いかがでしょうか。水落委員,どうぞ。
【水落委員】 今の松田委員と牧野委員の意見は,私も全面的に賛成です。小学校や中学校にいた現場経験のある人間という立場でお話をすると,いろいろな市町村に教育研究協議会みたいなものがあって,国語部とか算数部とかと分かれている中に情報教育部というのがあるのですね。そうすると,情報教育部の人は,そういう情報の人が専門だと。最近は,学び合いとかアクティブラーニングなどがあると,今度はその専門の人が出てくる。ここに少し書かれている,こういった技術を使いながらそういうアクティブラーニングをやっていくような新しい授業を生み出していく人,つまりは両方できる人ですよね。そこがいないのです。情報の人は情報の人,アクティブラーニングの人はアクティブラーニングの人となってしまうので,そのように融合していくようなことというのは教職大学院で学び直すようなことが必要なので,そういう分野が必要だということは明確に書いた方が,現場に対してもインパクトが出てくるのではないかなと感じました。
以上です。
【三島主査】 ありがとうございます。では,安藤委員から。
【安藤委員】 よろしくお願いいたします。私も今までの議論を伺いながらこれまでのことをずっと思い出していたのですけれども,Society5.0に対応した教員養成ということが今回前面に出ているときに,先ほどお話があったように,超スマートな社会になったときに,大事なのは人間中心だというところですよね。そうすると,ここで教員養成ということを考えると,学生たちのいわゆる人間性とか人間力というものをきちんと育てるような大学が改めて求められているのではないかなということをずっと考えておりました。そのときに,この記載の中に,例えば最終報告案の3ページに,今までずっと議論があった,これから求められる力ということが列記されているわけですが,ここに人間力あるいはその資質・能力に関係するところが弱いような気がしてなりません。もっと言うと,これから求められる力というのは,いろいろな知を組み合わせたり,あるいは再構築したり,あるいは新たな知を作り出していくという,そういう創造的な知を大学できちんと養成していかないと,これからの時代に合った教員にならないのではないかということです。ひいてはそれが子供たちにつながっていくわけですので,そういう意味では,そうした人間性的なものと,知の構築的な部分がもう少し出てくるといいかなということが前提で,是非とも申し上げたいことがあります。
最終報告案の4ページに役割が三つ書かれているわけですが,非常に整理されていて,分かりやすくなったなと思うのですが,ここで人間力とか教員の資質・能力ということを考えたときに,この新しい大学に求めるのは,(1)にある新しいプログラムをきちんと大学で開発していくということが非常に大事になってくるということです。それはひいては(3)の教員養成の近未来像の描出というところにつながってくる。だから,新しい教員養成の姿を新しいプログラムできちんと提言できるような大学にならないと,今回のSociety5.0に対応した教員養成の大学にならないと読めると思うんです。そうなると,この応募の要件が実績中心で随分書かれていまして,萌芽(ほうが)的とか挑戦的な取組をやろうというところがきっとあるかと思うのですが,どうしても過去の実績に大分縛られてしまって,思い切った新しい近未来像の教員養成ができないのではないかなという感じがします。
今回,求めているところは,もちろん実績のベースで考えていると思うのですが,もし要件に何か,1節でもいいですので,新しい近未来像を描いたプログラムを評価できるような,そういう落としどころのようなものがあれば。何か計画性とか,あるいは挑戦性とか萌芽(ほうが)性とか,そうしたところの内容を記載してあって,それが,今まで実績はないけれども,こういうことができそうだからとか,あるいはこういう関係性で今までやってきたので,これからはこんな方向でやっていきたいのだという大学の勢いというか。今回はかなり大学の主体性ということが求められるのではないかなと思っておりますので,そういう意味では,余り絞り込まないで,そうした余地を残していただけると,特に私たちのような地方にある大学などにおいては,いろいろな形で考えられるし,また今後,指定されなくても,いろいろ考える余地が出てきて,新しい教員養成というものを考えるきっかけになるのではないかとを思います。
以上でございます。
【三島主査】 ありがとうございました。この選定のところの実績をどうするかというのは,もう大分議論もあったところかと思いますけれども,よく分かりました。
戸ヶ﨑委員,どうぞ。
【戸ヶ﨑委員】 Society5.0に向けた教育の在り方につきまして,多分,100人の方がいれば100人がいろいろな御意見を言われるかと思いますが、教育は,今までの歴史を振り返ってみますと,二項対立が起きたり,振り子現象が起きたりを繰り返してきた気がします。多分このSociety5.0の教育に対する在り方に対しても,慎重派と急進派に分けられるのかどうかは分かりませんが,例えば,既に新学習指導要領はSociety5.0を踏まえてできているのだから,学習指導要領の後にSociety5.0という話が来るのはおかしいだろうという考え方をされる方がおられます。また一方では,情報社会と言われているけれども,今までの情報社会とはもう違うのだと,もう超が付くぐらいの社会なのだから,これまでの学力や能力すら抜本的に見直していくべきだというお考えの方もいらっしゃいます。様々,議論は尽きないのだろうと思いますが,学校を常に身近に見ていて感じることは,一言で言えばバランスだろうと思います。要は,大きな変化の時代がこれから来ることは間違いないのですが,教師自身が,また学校が,そういう大きな変化に向けて,バランスのとれた導き手になっていくことが期待されているのだろうと思います。例えば,過去と未来といったものを結び付けたり,今議論されているデジタルとアナログの教育を結び付けたり,また日本の教育の様々な蓄積,150年間の歴史の良さがあるわけで,それを一層伸ばすべきというのと,逆に改善するべきだろうとか,又は人のよさとAIのよさなど,安易なトレードオフに陥ることなく,orの発想からandの発想を目指し,それぞれにバランスの取れた導き手になることがこれからの教師や学校に求められていると思います。可能であれば,役割の中にこの「バランス」というキーワードを入れていただけると良いと感じました。
また,項目の中で,見え消し版の11ページ,最後のページに「教育委員会」という言葉も入れていただき,非常にありがたいです。けれども、前にも意見を申し上げましたが,Society5.0の時代に向けた教育行政の在り方,教師を指導する立場又は指導主事のスキルアップといった文言ももう少し入れていただけると助かります。学校の教職員だけではなく,そういう立場の人間にも学び直しがこれからは必要になってくることを示唆できると感じました。
あわせて,教育行政,指導主事に加えて,恐らく今後のニーズという意味では,社会人や外国人もその対象として重要になってくるかと思います。教師の学び直しだけではなく,社会人にも,また外国人にもそういう場を与えることも必要になってくるのではないかと感じました。以上です。
 
【三島主査】 ありがとうございます。
ほか,いかがでしょうか。それでは,両角委員。
【両角委員】 お取りまとめいただいたものを読んで,よくここまでまとめられたなと感心して読んでいました。ただ,幾つか気になるところがありまして,一つは,皆様もおっしゃっていますけれども,Society5.0時代といったときに,技術だけではなく,ICT活用のところに少々行き過ぎておられるかなと思います。先ほど松田委員もおっしゃったように,例えばそこでどういう教育内容が必要なのかということと,技術の話とのバランスがもう少し見えやすくなるといいかなと思って読みました。
もう一つ思ったことは,今回は「フラッグシップ」というのか「指定教員養成」というのか分かりませんけれども,そういう拠点となるような中核となる牽引(けんいん)役をどう選ぶかということなので,そういう書き方になっているのかなと思うのですが,Society5.0という大きな社会の変化に伴って教員養成の在り方が変わらなければいけないのは,別にその大学だけではなく,全部の大学が変わらなければいけないんですけれども,そこに対するメッセージのようなものが弱いような気がしています。ここは拠点としていろいろなところとネットワークを組んでいくにしても,どこにとっても大事なことだが,新しいチャレンジングなことなので,資源も必要だし,全て構想したものがうまくいくわけではなく,試行錯誤も必要だし,そういう中で拠点をやるんですよと。だけれども,みんながそっちに行く方向なんですよというところのメッセージがないと,選ばれたところが頑張ってという感じにも読めてしまって,そこだけの努力というよりも,みんなで向かっていく中でそれを引っ張ってくれるところだというのがあると,選ばれた大学もやりやすくなるのではないかと思います。
また,全部の大学にやりなさいという話ではなく,なぜフラッグシップ指定をするのかということについて,この資料3の方でいいますと,3ページ目の真ん中辺に書いてあるかと思うのですが,今までもいろいろな取組とか優れた取組もあるし,努力されてきているのだけれども,今の制度とか人的・物的条件,予算の制約の中で,なかなか大きな改革を促すのは難しい,だから指定するのだというところからすると,指定されることでそこの制約がどこまで取り除かれたと皆さんは読めるのかなというところで若干引っ掛かりまして,選定条件のところはたくさんあるのですけれども,国がやる支援の内容が薄いというか,そこが手を挙げる大学は知りたいのではないかと思います。「5~6年」と少し短くなっているし,既存の仕組みにとらわれることのないような特例的な扱いというのがどの程度のものになりそうで,そこはある程度国との交渉の余地があるのか,ないのか,いつ示されるのか,ということとかもよく分かりません。
そういう意味で,評価についても,計画の進捗を見ながら評価して,その見直しを行う仕組み自体は,それ自体を否定するわけではないのですけれども,チャレンジングなことをやってくださいと言っているので,ある程度成果が出るのに時間も掛かるのではないかと思います。それが2年,3年の時点で何かそれこそ定量的なありがちな評価で,これをやったからということをしてしまうと,肝心なチャレンジングなものができなくなるのではないかなと思います。少し失敗するかもしれないけれども,それも含めてやらせてみるとか,評価をどこまで細かにやるのかということについても,チャレンジングなことをさせるというのと評価の在り方というのはリンクしているので,そこももう少し踏み込んだ記載があってもいいのかなと思います。今,大学の評価の在り方が余りにひどいと思うので,同じやり方でこれをやってしまうと,創造的な取組が全部潰されるかなというような危機感を覚えているところです。
あと,条件のところも,要件がどんどん多くなってきているんですけれども,本当に全部を満たしていることが必要なのか,その中でどこが売りだからというところでめり張りを付けたやり方が可能なのかということが,この資料だけを読むと分かりにくくなっているので,めり張りを付けてやっていいのであれば,それはもう少し書き込んだ方がいろいろな面白い取組が出てくるかなという気がします。
何か,既存の枠組みを超えたものをやってくれというところがあるので,先ほど安藤委員もおっしゃったように,構想のようなものが突き出せる感じがこの要件からすると何か見えにくく,えらいハードルは高いなと。あれもこれもやっていなければいけないのかと感じます。大学側は,特に教員養成系のところは,人件費比率も高く,いろいろなことをやろうにも,ほとんどが人件費みたいなところで,かなり経営的にも厳しく,それで予算が削られている中でいろいろなことが厳しくなっているという中で,かなりチャレンジングなことを言っているなという気がするので,そういったところへの配慮が必要かなと思います。
中間評価でばさっと見直しをしてしまうと,それこそ契約として,みんなを取りまとめたり,ネットワークを作ったり,いろいろな活動も先導してやれと言っているのに,優秀な人をまともに雇うこともできなくなります。短い期間で来てくれる人だけでそういう拠点が本当に作れるのかとか,そのあたりも含めて,なかなか現実的に難しい面もあるとは思うんですが,もう少しその辺が考慮されるといいかなという印象を抱きました。
【三島主査】 ありがとうございます。
事務局から何かございますか。
【髙田教育人材政策課教員養成企画室長】 予算の部分については,現状のいろいろな大学に対する予算の考え方がありますし,それとの調整というところがあるのですが,後半の評価の部分につきましては,まさにこれまでの議論でも,Society5.0時代の新しいプログラムが一体どうやって開発されて,それをどう広めていくのかということが一番のポイントだと思っておりまして,そういったところをきちんと評価して見ていく。もちろん,内容次第ではあるかと思いますけれども,継続的に見ていくということで,3年目になって突然ということではなくて,我々としてはこのフラッグシップ大学については,この要件の中で,文部科学省とか,国の関係機関とも積極的に協力し合っていくということで,常に対話や,意見交換をしながらやっていきたいと思っております。そういった中で今言われたような御懸念等が払拭されるような形で実施していきたいと思っております。
【三島主査】 ありがとうございました。
浅田局長,どうぞ。
【浅田総合教育政策局長】 いろいろ御意見を頂いていて,そうだなと思いながら聞かせていただいています。取りまとめに近い段階に来ていると思うので,本日いろいろと頂いている御意見についても,例えばこのワーキンググループの中で,皆さんに賛同いただけているものはできるだけ主査の下で反映させていただきたいと思っています。一方で,例えば名称であるとか,もしかすると意見がまだ完全にはまとまっていないのかなと思うところで今回皆さんの御意見を頂いて,このワーキンググループとしての意見をどう集約するかと,そういうところをいろいろご意見頂ければなと思っています。今までお聞かせいただいたところは,ほとんどの部分は大きくご意見が分かれているものは少ないのかなと思っていますので,できるだけ反映させていただきたいと思っております。
【三島主査】 分かりました。
それでは,三村委員と山口委員に御意見を頂いた後,今の御指摘のような名称であるとか,そういうことについてもう一度,詰めなければいけないことをやりたいと思います。
【三村委員】 最終報告案をおまとめいただきまして,大変ありがとうございます。読ませていただいて,また本日,委員の皆様のお話を聞かせていただきながら,いろいろ考えさせていただいたところです。大きく3点述べさせていただきます。今まで言われた委員の先生とは違うことになるかもしれませんが。まず研修についてです。この養成の中に研修が入ったということは,大変いいなと感じております。以前,この教職課程の規制緩和についてお尋ねした際に,在校生というよりは,新しいカリキュラム,プログラムで,というようなことでした。その学生が現場に出るまでということになると,最低でも4年は掛かることになりますので,そういう意味では,4年間を待つまでもなく,研修によって現職の先生方にそういう知見が広がっていくことは有効であるとは感じています。先ほど来,現職の先生にどのように広めていくかというときに,大学院,教職大学院等の体系的な学びという話がありましたけれども,その整備ができるということは大変すばらしいことです。一方で,そうなると,限られた人にしか広まらない可能性もあって,恐らくこの期間の5~6年ということでいうと,以前もここで発言させていただいたのですけれども,5~6年たつと,様々な状況が変化し,今想定していることと教育現場が全然違う可能性もあるということが考えられます。そういう意味では,できるだけ早く広めることが必要なのではないかと思いますので,教職大学院等の学びを体系的にする必要がある一方で,もう少し早く普及できるような方法についても,選定された大学が考えていく余地があってもいいのかなと思いました。
もう一つは,ICTの活用指導力についてです。この最終報告の資料というのは,フラッグシップ大学,指定教員養成大学を目指す大学にとっては当然のことではありますけれども,目指さない大学にとっても,これからの教員養成の指針になるのではないかと思います。そういうことを考えると,できるだけ分かりやすい表現であることが望ましいと考えます。今回はとても分かりやすい表現にしていただいているとは思うのですけれども,例えばICTを活用した指導力ということに関して,多分ここにおられる先生方は,かなり高いレベルで捉えられていると思うのですが,一方で,今年の免許法の改正から入った指導法の中にICTの活用を含むというようなものに関しても,そのICTを使って学びの質を上げるように工夫されている大学の教員もいれば,とりあえず何かICT的なものを使ったらいいのだろうという,それを使うことが目的になっている授業もあるのではないかと思います。そういう意味では,このICTを活用して,何が目的なのか,ICTを使うことではなく,何が目的で,どのようなことができるようになることが必要なのか,ということが分かりやすい方がいいということで,今回,見え消しの3ページにあるような書き方は個人的にはとてもいいなと思いました。
それから,最後に評価に関してですが,先ほども言いましたように,例えば5年の選定期間で,どんどん時代が変わっていくということを考えると,外部からの評価というのはもちろん必要だと思います。一方で,実施大学が自己評価,分析,改善できることが重要であり,選定された大学の中で評価して改善していける力があるということも,その選定条件に入れてもいいのかなと思いました。
以上です。
【三島主査】 ありがとうございました。
それでは,山口委員,どうぞ。
【山口委員】 2点,お話しさせていただきます。
まず1点目が,先ほど来あります要件の話で,見え消しではない5ページの冒頭の文章の中の,2行目からです。「何より大学自身の主体的な取組への意欲,使命感」,こういったことが書いてあります。その後に「体制」とか「実績」とか,いろいろ書いてあるのですが,この主体的な取組自体が,それは応募する大学の意図で書いていいはずですけれども,少なくともその意欲なり使命感あるいは計画性的な話は,要件としても明確に示しておいた方がいいのではないか。そして,もしかすると最初に来る話かもしれないと思ったりもしました。それが1点目です。
それから2点目は,Society5.0時代の教員養成の話ですが,これは前にも御紹介しましたけれども,日本経済団体連合会がやっている産業界と大学の協議会があって,Society5.0時代の人材育成というのが話題になっています。そのSociety5.0時代の人材というのは,Society5.0時代の教師を包括するものだと思っていまして,その部分での議論は,例えば教育の内容で言うと,リベラルアーツが重要だということが全面的に出てきているのとともに,リテラシーや専門ということが出てきます。ここの議論はあくまで専門の部分と捉えれば,私自身は,この書き方で十分ではないかという印象は持っています。ただ,先ほど来あったSociety5.0時代,例えばAIと共存する人間としてどうあるべきかという話は,どこかに一言あってもいいかもしれませんが,列挙する項目,能力のところにはなくていいかなという印象です。
以上です。
【三島主査】 ありがとうございました。
それでは,加治佐主査代理,どうぞ。
【加治佐主査代理】 私も大体同じようなことになるかもしれませんが,今,山口委員がおっしゃった見え消しでない方の5ページの上から2行目にあります使命感というところ,ここを強く訴えているのだと思うのですよね。ハードルがかなり上がって,簡単には認めないという姿勢が明確になっているわけです。おっしゃるように,それに対する見返りはほとんど書いてありませんので,なかなか難しいところで,要するに使命感なんですよ。それは当然のことで,教員養成を担当している我々大学人が,そこをどう考えるかということが一番なんだと思いますね。ただ,それにしてもいろいろ厳しいなという感じはします。
ポイントになるのは,時間も当然限られていて,急がなければいけないというか,指定が何度かにわたって指定されるという書き方をされていますけれども,悠長にはできないわけですよね。すぐやらなければいけないということですので,堀田委員がおっしゃったようなデータサイエンス学部との連携とか,外部との連携が一つ大きなポイントになってくると思っております。ただ,例えば教員養成単科大学であれば,恐らくどこもこれだけの資源は持ち得ないわけです。だけれども,指定国立大学ということを考えたときには,かなり高い能力・実績を求めたわけですので,その流れからいくと指定のハードルは高くなるんだとは思うのです。ですから,そういう意味では連携ということが一番重要になるのだろうなと思います。そういう連携を本当に急いで作るということが必要だと感じているところです。
私も2点だけ要望を申し上げると,Society5.0時代の教員の役割のところに,教職が魅力化するのだということも一言入れるべきだと思いますね。これは,初等中等教育分科会の新しい時代の初等中等教育の在り方特別部会の方で同じような,Society5.0時代の教員の在り方というのを検討していますけれども,そこでも教職の魅力化が焦点になっているのです。そちらでも扱うとは思いますが,ここの中でも一つは触れるべきではないかと思いますね。
それともう一つは,支援のところです。ハードルが上がった分バランスをかなり欠いたような気がしますので,御指摘があったとおりなのですけれども,何かもう少し国としての支援等を書き込めないですかね。なかなか使命感だけでは難しいかなというところもあるかなという気がしますね。使命感が基本であることはもう重々分かっておりますし,これまでいろいろな改革を我々は試みてきて,それが必ずしも達成されてきていないということが背景にあるような気もします。ですから,高いハードルが課されているのだということもよく分かります。ですから,改めて使命感を新たにしなければいけないと同時に,何らかの国としての支援等をもう少し書き込んでいただければということです。
以上です。
【三島主査】 ありがとうございました。
それでは,先ほど御指摘がございましたが,大きなところで一つ,やはり方向性を出したいのは,大学の名前ですね。「指定教員養成大学(フラッグシップ大学)」とするのか,先ほど御意見を頂いた方以外で何かあれば。どうぞ。
【若江委員】 いろいろ先生方のお話をお聞きしていて,本当にそうだなと思いましたが,6番のところの国として行うべき条件整備のところで,国としての意欲と使命感をもう少しきちんと明確に出していただくべきだなと思いました。要するに,ここには「べきである」,「必要である」という他人(ひと)事の書き方ではなく,当事者として「行う」とか「も必要とする」とかというような表現がすごく大事だと思います。
それと,今回の「フラッグシップ大学」のことを世の中にアピールするということは,皆さん方からお話が出ているように,今少し弱気になっている教員養成大学そのものを元気付けるということがありますし,新たに教員になろうという意欲を学生に明確に持っていただく。それと,支援の先を民間にも。工学系の大学ですと,民間支援のものがいろいろありますよね。教員養成も,もっと民間のお金も引っ張り出すという意味でインパクトのあるものにしなければいけないと思うのです。例えば,「指定教員養成大学」を全部取ってしまって「フラッグシップ大学」にしようというのではなくて,「指定」の部分に当たるところに「フラッグシップ」を入れていただき「フラッグシップ教員養成大学」でいいと思うのです。その方が,今回は教員養成大学にフォーカスが当たっていますということが分かりやすいと思うのですね。そうすると,タイトルにあるところの「Society5.0時代に対応した教員養成を先導する」のではなくて,「日本の教育改革を先導する」とか,そのための教員養成だとすると,この「指定」を変えて「フラッグシップ教員養成大学」というのを一つのパラダイムにすると,どこにも分かりやすい表現になるのではないかなと思いますので,民間へのアピールのためにも,「フラッグシップ」という名称は是非私としては残していただきたいところです。
以上です。
【三島主査】 ほかに御意見はございますか。水落委員,どうぞ。
【水落委員】 私も「フラッグシップ」という言葉は残した方がいいという意見です。というのは,先ほど加治佐主査代理がおっしゃった,恐らくこれは単独でこの要件をクリアすることが難しいだろうと。そうなったときに,それでもスピーディーに動くとなれば,大学間連携だということになると思います。そうすると,艦隊とか旗艦があるのだという意味合いが強く残った「フラッグシップ」という言葉の方がしっくりくるなと思います。
以上です。
【三島主査】 ありがとうございます。ほかに御発言はございますか。堀田委員,どうぞ。
【堀田委員】 私も「フラッグシップ」という言葉が残った方がいい派ですけれども,もう一つ,「教員養成大学」といったときに,どこからどこまでを指すのかという文部科学省の概念規定が多分あると思うのですけれども,それが普通の人に分かりやすいのかどうかというのがいつも思うのです。例えば,「教員養成大学」といって,その後に大体出てくる本文には「教員養成大学・学部」とか,「・課程」とか,何かそのようにいつも出てくるように思うのです。どこからどこまでを「教員養成大学」というのかという定義を,再掲なのかもしれませんけれども,書いていいのかなと思うのです。もし「教員養成大学」という言葉を使うのであれば,それには例えば教職大学院は入っているのか入っていないのかとか,あるいは教員養成課程を持つ総合大学は視野に入っているのか入っていないのかみたいなことをきちんと分かるようにする。この言葉を使うことに反対ではありませんけれども,説明した方がいいかなと思いました。
以上です。
【三島主査】 「フラッグシップ」を使うのは構わないということですね。
【堀田委員】 それは賛成です。
【三島主査】 牧野委員,どうぞ。
【牧野委員】 私も「フラッグシップ」でいいと思います。「指定教員養成大学」というのは,今回初めて見たのですけれども,何を指定しているのかよく分かりません。逆に,話が何かぼやけた感じが私にはしたのです。「フラッグシップ」というのは,まさに,先ほどから出ているように,教員養成大学はみんな頑張っていこうとしている,その中でまさに先頭でリードしていくよという意味合いがあると思うんです。「指定教員養成大学」というのは,単に指定しただけで,「あなたのところは頑張りなさい」という,そんな感じが印象としてしますので,「フラッグシップ」という方が私はいいと思います。
【三島主査】 ありがとうございます。安藤委員,どうぞ。
【安藤委員】 私も同じ考えでございますけれども,今の堀田委員のお話を受けると,「教員養成」というのを頭に持っていって,「教員養成フラッグシップ大学」にした方が,包括的に,また全体的に像を描きやすいし,何かもっと胸を張って取り組んでいけそうな感じの勢いがあるのではないかなと思います。「教員養成」は前面に出さなくてはいけないと思いますけれども,それの先導役なのだと,あるいは旗艦なのだというところをうまく表現できればいいなということで,このような提案をさせてもらいたいと思います。
【三島主査】 「フラッグシップ」を入れるのはもうほとんど皆さんの御意見のようですが,若江委員,どうぞ。
【若江委員】 すみません。今の安藤委員のお話をお聞きして,ああそうだなとも思ったのですが,私がなぜ「フラッグシップ」を前にと思ったかというのは,「フラッグシップの教員」とはこういうことだという定義もできるし,「フラッグシップの教員養成」とはこういうことだということ,「フラッグシップの大学」ということ,全てに掛けられると思ったので,前がいいと思ったんですが,安藤委員のおっしゃる御意見ももっともだなと,悩み始めました。
【三島主査】 ほかに名称についての御意見がございますでしょうか。
では,これで後は主査にお任せいただくということでよろしいでしょうか。
御意見を頂いたものもよく伺っていくと,何点かに絞られているところがあると思います。私と事務局と,それから主査代理にもお手伝いいただきながら,その辺のところを詰めさせていただければと思うところでございます。
それ以外のところで何かあれば。
【牧野委員】 是非,「フラッグシップ」をどうして「フラッグシップ」と言ったかはきちんと説明を書いておいてください。それはやはり必要だと思います。
【三島主査】 それでは,幾つかのポイント,その辺はできるだけ取り入れて最終版にしたいと思いますが,今までに出てこなかったことでもし何かございましたら。
戸ヶ﨑委員,どうぞ。
【戸ヶ崎委員】 大変細かいことなのですが,見え消し版の7ページの真ん中辺の「通常学級における学習障害等のある児童生徒への配慮等を含む特別支援教育」,私はこの言葉自体を取るべきではないかと思います。この「通常学級における」云々(うんぬん)という言葉は,もう当たり前といいますか,これを含まない特別支援教育というのはあり得ないだろうと考えています。逆に,あることによって何か誤解を招くということもありますので,取るほうが良いのではないでしょうか。
また,先ほど来,言葉のことでこだわって恐縮ですが,ここに「STEAM教育」が出てきて,さらにその下の「教育研究力」の中にも「STEAM教育」が出てきています。何かSTEAM教育はすごく大事で,先ほど来言っているPBL型の学習というのはそうでもないともとれますので,「STEAM教育」は1個あればいいと思います。また、教育再生実行会議や新時代の学びにおける先端技術導入実証研究事業の中でも盛んに出てきている「スタディ・ログ」などの言葉は,「分析する力」が非常に重要だと思いますので,「スタディ・ログの分析」や「活用」といった形で,新たに含めることを検討していただきたいと思いました。
以上です。
 
以上です。
【三島主査】 ありがとうございます。松田委員,どうぞ。
【松田委員】 最後の最後に恐縮しますけれども,ここで言う「教員養成」の「教員」というのは,例えば特別免許とか,あるいは大学だとクロアポとやっていますけれども,そういう意味での今後あり得る教員ということとか,あるいは教育職員というような概念ですね。例えばソーシャルワーカーとかカウンセラーといったある種幅広の教員というイメージでよろしいですよね。
【三島主査】 山口委員,どうぞ。
【山口委員】 これも非常に細かい話で恐縮なんですが,最終版を一通り読んでいてやっぱり気になったのが「養成」という言葉と「育成」という言葉。先ほど御説明もあったのですが,やはりよく分からなくて,どう使い分けているのか。余計な誤解を招くかなという印象を持ったのですが,「養成」だけで通しても済むのがほとんどのようにも思ったところです。
【三島主査】 ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。三村委員,どうぞ。
【三村委員】 これも大変細かいことなのですけれども,見え消し版の6ページのところに,期間として「5~6年間程度」とあるのですけれども,「程度」を付けるのであれば,「5年間程度」とか「6年間程度」で良いと思います。この期間をどういう位置付けと考えるから「5年程度」なのか,「6年程度」なのかですが,例えば,1年準備して,一回りで4年間の卒業生を出す年であれば5年だし,2回ぐらいは出した方がいいということであれば6年かなと思います。
【三島主査】 ありがとうございます。安藤委員,どうぞ。
【安藤委員】 見え消し版で少し確認させてもらいたいのですが,8ページの多様な関係機関との連携・協働というところで,これまでの議論を反映させていただいて,海外の大学との連携ということも強調してくださったわけですけれども,ここは「国内外の大学」という表現になるわけですね。そうすると,最後の国として行うべき条件整備,支援等の(2)のところには「他大学」と書いてあるのですが,この「他大学」は,国内に限定しているような感じになっているのです。こうした海外との連携をどんどん促進するというところでの支援も頂けるという解釈でよろしいのでしょうか。
【髙田教育人材政策課教員養成企画室長】 一番最後の部分は,環境整備のことを中心に書いているので,大学とか学校について,まさに今,端末が1人1台という形で環境整備が進んでおりますけれども,そういった視点で書いておりますので,ここは「国内外」とはなっていないということでございます。
【安藤委員】 要望ですけれども,こうした海外との連携とかを強化するときに,どうしても経済的な支援というものが必要かなと考えていたので,もしできれば,もう少し広げた取り組みにしていただければと思います。
【三島主査】 事務局,よろしいですか。
【髙田教育人材政策課教員養成企画室長】 改めて全体を見て,齟齬(そご)がないようにしたいと思います。
【三島主査】 本日は最終回でございますので,これだけはお話ししたいということがあれば,お手を挙げていただければと思いますが,いかがでしょうか。よろしいですか。
ありがとうございました。
【三島主査】 それでは,私から一言申し上げたいと思います。5月以来,懇談会も含めると,計8回と冒頭にも申しましたけれども,大変出席率のいいワーキンググループだったと思います。いろいろな御意見をいろいろな方面から頂いて,私にとっても大変勉強になりましたし,そういう意味でまずお礼を申し上げたいと思います。
私は,これも割と早い時期のワーキンググループで申し上げたかもしれませんが,私がおりました東京工業大学で大学改革をしたときに非常に痛感したのが,高校を終えて受験を突破して入ってくる子供たちが,自分の意見を持っていないということです。何をすればいいかを言ってくれればやりますといったような雰囲気が強くあって,その中で教育改革を通じて学生にいい教育を提供したいと思って一生懸命やりました。もうその改革が始まって4年が経ち,完成年度に近くなっているので,どんな成果が出るか,彼らがどのように変わるかと思って見ていますけれども,やはり初等中等教育段階が非常に大事で,しっかりと小さいときから,順番に人と話をしたり,人の話を聞いたり,自分がそれに対して意見を言えるとかということの訓練をしていくことが,日本の教育体系が大きく世界に通用するようなものになっていくためには必要かなということを非常に感じました。良い教職員を育てて,そして子供たちがそれを受けて,自分の夢や,あるいは志といったものをしっかり形成しながら大学に入ってきてほしいなという皆様方の非常に強い思いを感じましたものですから,このワーキンググループでは本当に力強く思いました。その点でも御礼を申し上げたいと思います。
加治佐主査代理,は何か一言ございますか。
【加治佐主査代理】 本当に私もいい勉強になったと思います。日本の教員養成大学・学部がこれを契機に,これからのSociety5.0という新しい時代に対応できる大学になると同時に,ある意味,これまでは必ずしも評価が高くなかった教員養成大学・学部が,これによって日本における,あるいは世界における存在意義が高くなるということを切に願っております。
【三島主査】 ありがとうございました。
それでは,事務局代表としまして、浅田総合教育政策局長から一言お願いいたします。
【浅田総合教育政策局長】 お礼を一言申し上げます。
本当に長い期間,非常に皆さんお忙しいのに,出席率も毎回高くて,貴重な時間を頂きながらここまで良い議論をしていただいたと思っています。私自身は7月に着任でしたので,実は途中から参加なのですけれども,最初にこういう議論が進んでいるということを知ったときには,もともと教員養成にはいろいろな立場で関わってきてはいますけれども,現状はこういうことになっているのかと思ったのが率直な印象です。
教員養成は,もちろんこれまでの日本の教育を支えてきていただいているし,大きな成果を上げている一方で,私自身の印象としては,一生懸命やっていただいてはいるのだけれども,大学の中には目が向いている一方で,外の世界の動きの激しさとかに十分気付いていただいていないのではないかなと感じることがありました。しかし,もう御存じのとおり,教育界だけではないですけれども,そういうことを言っていられる時代ではなく,日本の学校の先生は本当によく頑張っていただいていますが,昨日も実はある,いわゆる改革派と言われている元校長の方とお話ししたのですけれども,「日本の先生方は非常に真面目なのだけれども,何かやろうとするときに,こういう規定があるとか,こういう仕組みがあるから,なかなかできないというような発想をする人が結構多くて,それを自ら突破していこうという方向になかなか行きにくいね」という話を聞きました。それは,まさに今子供たちに対して我々がやっていこうとしている「主体的・対話的で深い学び」みたいなものであり,それは子供だけではなくて教員にも必要なのです。そのような主体性とか,自ら動いて世の中を変えていくのだ,教育を変えていくのだというような,それこそ意欲や使命感を持った先生方にこれからどんどん活躍してほしいと思っています。
大学での教員養成については,随分様々な期待を背負って一生懸命やっていただいてはいますが,さらにその次のステージに踏み込んでいかなければいけないと思っています。そのためにはもちろん,本日もお話がありましたが,「フラッグシップ大学」だけがやったらいいのではなくて,本来は全ての教員養成を行う大学でやっていただく必要があるのだけれども,それを特に先導する,あるいは新しいことに挑戦する,そして世界に広げていくということも必要な段階なのだろうと思っています。したがって,様々頂いたこの御提言を,我々の役目としては,これからどういう支援ができるかとか,様々な我々なりのハードルもあるのですけれども,できる限りそれをきちんと形にしていき,それを成果につなげていくということに責任を持って挑戦していきたいと思っているところです。
とりあえずこれでまずは主査の下でおまとめいただくということでありますが,やっていくのはこれからですから,今後もいろいろまた御支援を頂きながら,皆さんの期待に応えられる形に努力していきたいと思っていますので,今後ともどうぞよろしくお願いいたします。ありがとうございました。
【三島主査】 ありがとうございました。
最後に,事務局から今後のご連絡をお願いします。
【髙田教育人材政策課教員養成企画室長】 本日御議論いただいた内容については,主査,主査代理と相談した上で,年明け1月に予定されている教員養成部会に向けて,最終的に発表ができるような形で調整したいと思っております。よろしくお願いいたします。
【三島主査】 それでは改めまして,どうもありがとうございました。
 
── 了 ──

お問合せ先

総合教育政策局 教育人材政策課 教員養成企画室

(総合教育政策局 教育人材政策課 教員養成企画室 )