教員養成部会 教員養成のフラッグシップ大学検討ワーキンググループ(第1回) 議事録

1.日時

令和元年5月23日(木曜日)15時00分~17時00分

2.場所

文部科学省東館3階3F2特別会議室

3.議題

  1. 主査等の選任
  2. 教員養成のフラッグシップ大学の目的と役割について
  3. その他

4.出席者

委員

三島良直主査,加治佐哲也主査代理,安藤雅之委員,松田恵示委員,水落芳明委員,三村由香里委員,両角亜希子委員,若江眞紀委員

文部科学省

清水総合教育政策局長,平野大臣官房審議官,柳澤教育人材政策課長,髙田教員養成企画室長,長谷教員免許企画室長 他

5.議事録

(1)委員の互選により三島委員が主査に選任された。
主査代理については,三島主査から加治佐委員が指名された。



(2)ワーキンググループの開催にあたり,三島主査から以下のとおり挨拶があった。
【三島主査】  それでは,教員養成のフラッグシップ大学検討ワーキンググループ,この立ち上げに必要な手続が全て終了いたしましたので,これから議事を公開とさせていただきます。
 それでは,改めまして,主査を務めることになりました三島でございます。このワーキンググループの発足に当たり,一言御挨拶を申し上げたいと思います。
 私,昨年の3月まで,東京工業大学の学長をしておりましたけれども,大学に入ってくる学生諸君が余り自分に自信を持っている様子がなくて,これは中学生・高校生の若者に自分が有意義な人間だと思うかという質問をしたときの答えが,アメリカ合衆国とか大韓民国とかアジアの国とに比べると,非常に低い。自分が役に立つ人間だというのを思っていないというのが特徴でございますし,今,大学に入ってくる若者も,自分の目標みたいなものをしっかりと,大学に入ってきたてで持てるかどうかは別としましても,大学にいる間に,自分がこれからどういうことをやっていくんだろう,どうやってよりよい社会を作るために貢献できるんだろうというようなことを言う学生が余りいないというようなことでございます。ここでの,教員養成のフラッグシップ大学検討ワーキンググループでの議論というのは非常に私は重要だと思っておりまして,初等教育,中等教育を経て高等教育が待っているわけでございます。大学の方は一所懸命若者に元気を出させようという,いろいろな講義のスタイルであるとか,いろいろな教育のシステムを変えようとしているところでございますので,その前段階からやはり連続して変化していかないと,急に大学から変えようというわけにもいかないわけでございます。その辺のところを委員の皆様からいろいろな意見を出していただいて,よりよい結論を出していきたいと思いますので,何とぞどうぞよろしくお願い申し上げます。



(3)引き続き,加治佐主査代理から以下のとおり挨拶があった。
【三島主査】  それでは,加治佐主査代理からも一言よろしくお願いいたします。
【加治佐主査代理】  失礼いたします。本日机上に用意してもらっています黄色の冊子,教員需要の減少期における教員養成・研修機能の強化に向けてという,有識者会議の報告書を平成29年8月29日に出したわけですね。これは我々教員養成学部,大学にいる者にとっては,特に大きな影響力があるということで,いろいろと話題を呼んだわけです。
 私,この主査でしたので,これはこれで一所懸命やったつもりであります。ただ,世の中の変化が非常に激しいといいますか,これを改めて見ていただければ分かると思うんですが, Society5.0という言葉はないわけですね。まだ2年も経っていないんですけれども,そういうことが最大の政策課題の一つになってきているということですよね。つまり,Society5.0に対応するような教員養成や現職教員教育をどう作るかということが,もう今や最大の政策課題であるということです。
 その一環として,教育再生実行会議で,教員養成分野におけるフラッグシップ大学ということが提言されているわけです。この具体的な姿なり要件なりをこの教員養成のフラッグシップ大学検討ワーキンググループで検討するということにはなると思いますが,この黄色の報告書と,変化はありますけれども,流れとしては一緒であるというふうに考えております。
 そして,さらに,フラッグシップ大学は,教育再生実行会議の報告を見ますと,教員養成分野の指定大学というふうな表現も使われておりますので,私としては何となく,先細りというのもおかしいですけれども,少子化の中で教員需要が減っていくということで,消極的な将来像が見えなくもなかったんですが,今回はまさしく新しい課題に対応して,我々教員養成大学・学部が更に発展する一つの大きな契機になり得ると思っているところです。また是非そういうものにしなければいけないと思っております。
 そういうことで是非議論を進めていただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
【三島主査】  加治佐主査代理,どうもありがとうございました。



(4)引き続き,清水総合教育政策局長から以下のとおり挨拶があった。
【三島主査】  それでは,次に,文部科学省清水総合教育政策局長から御挨拶を頂きたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
【清水総合教育政策局長】  御紹介いただきました,総合教育政策局長の清水でございます。一言御挨拶を申し上げます。
 委員の先生方におかれましては,この度は,この教員養成のフラッグシップ大学検討ワーキンググループの委員に御就任いただきまして,誠にありがとうございます。また,日頃からそれぞれのお立場の中で,我が国の教育の振興,また,教師の養成に御尽力いただいております。重ねて御礼申し上げます。
 既に主査代理の加治佐主査代理から御紹介がありましたように,教師の養成の在り方,教師の在り方,様々なところで議論されているところでございますけれども,教育再生実行会議での今回の提言の中で,国は,Society5.0に対応した,産業界とも連携し,教員養成を先導するフラッグシップ大学,例えば,教員養成の指定大学制度等を創設するという提言がなされたところでございます。
 そういった一つ提言を受けまして,フラッグシップ大学の在り方について,より具体的かつ専門的見地から御審議いただ頂きたいということで,教員養成部会の下にこの教員養成のフラッグシップ大学検討ワーキンググループを設けさせていただいたところでございます。
 議論といたしましては,教員養成のフラッグシップ大学,これがどうあるべきかということ,また,それに加えまして,フラッグシップ大学を創設するということになりましたら,それに連動して教員養成に関わる大学全体のシステムの在り方もまた影響を受けてくるかと思いますので,そういったところまで含めて御検討いただければと考えているところでございます。
 そして,少し先のことになってしまいますけれども,教員養成のフラッグシップ大学の大きな方向性につきまして,年内を目途に取りまとめをお願いしたいと考えているところでございます。委員の皆様におかれましては,教師の在り方,教師の養成の在り方という大きな方向性を踏まえまして,闊達な御議論を頂戴できますようお願い申し上げまして,御挨拶とさせていただきます。どうかよろしくお願いいたします。
【三島主査】  総合教育政策局長,どうもありがとうございました。



(5)事務局から,教員養成のフラッグシップ大学の目的と役割について,資料に基づき説明があり,その後,意見交換が行われた。
【三島主査】  それでは,議事次第の2番目でございます。教員養成のフラッグシップ大学,今,指定大学と言い換えるところもございましたけれども,そういったものの目的と役割について,関連資料を使いまして事務局からまず御説明いただいて,その後,本日1回目でございますので,自由討論をしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは,事務局,どうぞよろしくお願いいたします。
【髙田教育人材政策課教員養成企画室長】  それでは,本日,議論の御参考にということで御用意した資料について,簡単に御説明いたします。
 まず,資料1でございますが,本年3月20日に中央教育審議会の初等中等教育分科会教員養成部会の中で決定された,教員養成のフラッグシップ大学検討ワーキンググループの設置についてのペーパーでございます。設置の目的として,教育再生実行会議の第十一次提言中間報告で創設について触れられた部分がございまして,検討事項として,教員養成フラッグシップ大学の在り方や,それに連動する教員養成大学の全体の在り方について審議するというものでございます。
 資料2が,今回の教員養成のフラッグシップ大学検討ワーキンググループの委員の名簿でございます。
 次に,資料3でございますが,この教員養成のフラッグシップ大学検討ワーキンググループを作ったときには,提言の確定版は出ていなかったんですけれども,先週,教育再生実行会議の第十一次提言というのが正式にまとめられましたので,その概要資料と本文を資料として付けさせていただいております。
 ポイントだけ御説明いたしますが,前段に,AIやIoTなどの技術の急速な発展に伴うSociety5.0が到来し,これらの変化に対応し活躍できる人材育成が急務であるということで,それについて技術の進展に応じた教育の革新というテーマと,もう一つ,新時代に対応した高等学校改革という,二つのテーマで昨年の8月から審議が進められていたというものでございます。
 フラッグシップ大学の提言につきましては,技術の進展に応じた教育の革新というテーマで触れられておりまして,ここにおいて,初めの背景の部分で,教育においても,一人一人の能力に応じて個別に最適化された学びや,場所や時間に制約されずに主体的に学び続けることができる環境を実現するような,そういった技術革新が進んでいると。それが教育内容だとか,教員養成など,全般的な対応が急務になっているということで,主な提言事項の括弧2番のところに,特に教師の在り方や外部人材の活用というところでまとめられております。
 少し御紹介いたしますと,社会の変化や技術の急速な進展を踏まえた養成・採用・研修の全体を通じた教師の資質・能力の向上ということですとか,あと,赤字に示しております教員養成を先導するフラッグシップ大学の創設などが提言されております。
 ここの部分についてもう少し掘り下げて御説明いたしますが,少し飛びまして,資料3の本文の7ページに,教師の在り方や外部人材の活用ということについてまとめられております。ここで,Society5.0の到来などの様々な社会の変化や技術革新に対応した力を持つ教師の育成というのが喫緊の課題であるということが触れられておりまして,この前段の最後の部分で,教員の養成・採用・研修の強化及び外部人材の活用の推進が求められるということが書かれております。
 8ページに移りまして,前段に,例えば,国は,技術の進展に対応した教員の養成に資するよう,ICT活用指導力の向上に資するよう教職課程に係る法令や教職課程コアカリキュラムの継続的な改善を行うというようなことが書いてありますが,その次に,そういった任命権者,教育委員会は,そういったことを踏まえた研修プログラムや教材の開発を推進するというようなことなどが書かれております。
 その下の二つ目の丸のところで,ここが具体的に書いているところでございますけれども,国は,今後の社会変革に伴う教育革新の大きな流れを見据え,教師のICT活用指導力の向上,アクティブ・ラーニング,個別最適化をはじめとするSociety5.0に対応した,産業界とも連携し教員養成を先導するフラッグシップ大学(例えば教員養成の指定大学制度等)を創設すると。このフラッグシップ大学は,既存の制度の特例や弾力化も視野に,スタッフやカリキュラムなどの指導体制を検討し,構築するということが書かれております。
 次に,教員養成を先導するフラッグシップ大学をはじめとした教員養成機関において,AIやIoTなどの技術革新に伴って変化するこれからの社会で活躍することのできる人材を育てるために,STEAM教育や,児童生徒がICTを道具として活用することを前提とした問題発見・解決的な学習活動等についての高い指導力を有する教員の養成を促進する。
 さらに,国は,前述の資質の向上に関する指標や教員養成を先導するフラッグシップ大学におけるICT活用指導力に関する取組等を通じて,教職課程を持つ大学においてICT活用指導力の向上を実現する充実した教育が行われるよう支援するといったようなことが提言されております。
 そのほか,幾つか教員養成に関する提言もございますが,それについては割愛させていただきます。
 以上が資料3でございますが,次に,関連するものとして,資料4を御覧ください。資料3の中でも,文部科学省が出したSociety5.0に関する提言について触れられている部分がございますが,それをまとめたものが資料4でございます。
 まず,昨年の6月に「Society5.0に向けた人材育成~社会が変わる,学びが変わる~」という,Society 5.0に向けた人材育成に係る大臣懇談会の提言の概要を資料として付けております。
 この資料の3枚目に当たるわけなんですけれども,Society5.0の社会像・求められる人材像,学びの在り方というところでございますが,このちょうど真ん中のあたりに,AIなどの先端技術が教育にもたらすものということで,学びの在り方の変革へというところがございます。学校が変わる,学びが変わるということで,Society5.0における学校というものが,例えば,一斉一律授業などのものが,個別に最適化された個人の進度や能力,関心に応じた学びの場に変革するのではないかと。同一学年集団の学習というものが,異年齢・異学年集団での協働学習というものに拡大していくのではないか。また,学校の教室での学習というものが,教室を飛び越えて,大学だとか研究機関だとか企業だとか,そのような,文化スポーツ施設も含めたようなところに拡大して,多様な学習プログラムというものが提供されるようになるのではないかといったようなことが提言されております。
 この提言の概要の最後のページになりますけれども,Society5.0に向けたリーディングプロジェクト丸3,文理分断からの脱却というところで,例えば,先ほどの教育再生実行会議の提言でございましたSTEAM教育といったようなことについても,ここの報告書の方で言及がございますし,地域人材の育成というようなことも触れられております。
 以上,昨年6月に出されたSociety 5.0に向けた人材育成に係る大臣懇談会の提言でございますけれども,その後,文部科学省としては,昨年の11月に,柴山文部科学大臣に代わった後に,「新時代の学びを支える先端技術のフル活用に向けて~柴山・学びの革新プラン~」というものを出しております。ここでは,教師を支援するツールとして先端技術をフルに活用していこうというような,それを全ての児童生徒に基盤的な学力や他者と協働しつつ自ら考え抜く力を育むとともに,新たな社会を牽(けん)引する人材を育成する質の高い教育を実現するといったような目的でこのプランが作成されております。
 この「新時代の学びを支える先端技術のフル活用に向けて~柴山・学びの革新プラン~」の2ページ目の部分でございますが,ここで特に大きく取り上げているものとして,遠隔教育の推進,そういったことによって,先進的な教育を実現していこうということでございますとか,先端技術の導入による教師の授業支援というようなことも推進していこうということがここで提言されております。
 その後,今年の3月末に,新時代の学びを支える先端技術活用推進方策の中間まとめというものを文部科学省で,この「新時代の学びを支える先端技術のフル活用に向けて~柴山・学びの革新プラン~」に基づきましてまとめております。
 こちらの方でも,文部科学省が目指す次世代の学校・教育現場(具体的イメージ)という資料がございますが,先ほど「新時代の学びを支える先端技術のフル活用に向けて~柴山・学びの革新プラン~」の方で推進すると言われていた遠隔教育といったものの在り方がイメージとして示されております。例えば,遠隔技術を活用した大学と高等学校の連携授業といったものだとか,個々の教師・子供に最適な教材・指導案(教育コンテンツ)を提供するだとか,その左の下の方では,知識・技能の定着を助ける個別最適化,AIを活用したドリルですとか,その右で,病院と教室をつないだ学び,また,その横で,遠隔技術を活用した他地域の子供たちとの学び合い,そういったようなものが示されておりますし,また,この資料の右上の方で,遠隔技術を活用した教員研修ですとか,校務支援システムを活用した校務の効率化,そういったようなことも提言されております。
 次に,資料5に移りたいと思います。資料5については,先ほど主査代理から言及いただきました,教員需要の減少期における教員養成・研修機能の強化に向けてという有識者会議の報告書の抜粋と,中央教育審議会答申の大学関係に関する,「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン(答申)」について抜粋しております。
 例えば,初めの1ページの部分では,エビデンスに基づく対応だとか,PDCAサイクルを回していくというような,質の保証や評価の部分についての言及がございます。また,早急に対応すべきこととして,いわゆるIR機能,教員養成カリキュラムの実態を把握・分析・可視化して,それに基づいて質の確保・向上に努めるといったようなことが重要だということが提言されております。
 その次のページでございますが,教育再生実行会議でも特に触れられている,企業や経済団体等との多様な機関と連携・協働した実社会とのつながりを踏まえた教育や研究にも取り組むというようなことがここでも触れられております。
 また,組織・体制についての対応策として,教員養成機能の強化と効率化ということで,先ほど主査代理からも言及がございました,現状のままでは機能強化と効率性の両方を追求することは困難ではないかと。県内あるいは県を越えて,国公私立大学との間で連携・集約することにより,機能強化などを図っていくことが必要ではないかということが述べられておりますし,それについては,その次のページで,附属学校などについても同様のことが述べられております。
 以上が教員養成に関する有識者会議の報告ですが,その次の4ページから,2040年に向けた高等教育のグランドデザインの抜粋がございます。ここでは,教育研究体制について多様性と柔軟性を確保していこうということで,多様で柔軟な教育プログラムだとか,多様性を受け止める柔軟なガバナンスの在り方というようなことが提言されておりまして,そういったことについて,国公私立大学の枠を越えて連携していくことだとか,複数の大学等の人的・物的リソースを効果的に共有することで,一つの大学ではなし得ないような多様な教育プログラムを提供することが重要ではないかということが提言されております。
 5ページ目のところでは,さらに,内部質保証の推進というようなことも述べられておりまして,その中で,教学マネジメントの確立ということで,体系的で組織的な大学教育を展開していくことが重要であるというようなことが提言されております。
 以上が,最近の各種提言について,今回の審議事項と関連するものをまとめたものでございます。
 次に,資料6でございますが,教員養成のフラッグシップ大学の検討に当たって,指定大学法人制度等という例示が出されておりますが,参考として,指定国立大学法人制度について資料を付けております。詳細は省略いたしますが,例えば,指定国立大学法人では,世界最高水準の教育研究活動の展開が見込まれるような国立大学を指定国立大学法人として指定しようということで,研究力,社会との連携,国際協働の三つの領域において審査していくと。そして,指定された国立大学は,様々な規制緩和だとか,特例の恩恵を受けるといったようなことがこの資料で述べられております。以上が資料6でございます。
 資料7でございますが,こちらは,今後,教員養成のフラッグシップ大学の議論に当たっての論点例ということで,今後の議論の参考にしていくためにまとめたものでございます。本日は教員養成フラッグシップ大学の目的と役割について特に議論していただければと思いますが,論点例は飽くまでも例でございますので,例えば,こういったことも議論してはどうかというようなことだとか,様々な意見,コメントなども頂ければと思っております。
 この論点例の次のページに,補足資料といたしまして,現状認識の確認と,教員養成フラッグシップ大学の必要性についてということで,先ほど教育再生実行会議の提言で述べたような,Society5.0対応であるとか,教師には新しい資質や役割が求められるといったようなことを現状認識としてまとめております。
 また,教員養成のフラッグシップ大学の必要性についてということで,特に教育再生実行会議で提言されたような内容について,各大学が単体で対応していくことが困難ではないか,あるいは,特に既存の制度の特例や弾力化も視野に,スタッフやカリキュラムなどの指導体制も含めて,一体的かつ試行的に検討することが必要ではないかというようなことをまとめております。
 また,ここでの教員養成フラッグシップ大学をネットワークの拠点として位置付けて,その成果を全国に展開するというような方法が合理的ではないかというようなことを書いております。
 また,最後に,先ほどの教員養成の有識者会議ですとか,中央教育審議会の答申を踏まえて,やはり関係機関との連携・協働・統合などが必要ではないかというようなことに留意することが必要ではないかということをまとめております。
 以上が資料7でございます。資料8については,今後のスケジュールをまとめております。先ほど年内に取りまとめをということでございますが,今のところ,今後のスケジュールを第6回まで示しておりますけれども,このあたりで中間的なまとめができたらなというようなことを考えております。
 最後に,参考資料についてでございますが,詳細は特に説明いたしませんが,参考資料1で,教員養成に関する基礎資料ということで,教員養成大学ですとか,あるいは教員免許制度の在り方についてまとめた資料を参考資料として付けております。
 そして,参考資料の2で,教員養成大学・学部の沿革ということで,これまでの国の教育政策として,どういった形で教員養成大学・学部を整備してきたのかということをまとめたものがございます。
 簡単に御説明いたしますと,戦後すぐに全国的に教員養成大学というものを整備していって,特に小学校教員養成の量的な管理というようなことをやってきたわけでございますけれども,その後,昭和46年に,現職教員の研修というようなことを目的とした新しい大学を作ろうということで,上越教育大学,兵庫教育大学,鳴門教育大学などが,現職教員の研修向けの大学として整備されたということがございます。
 その後,全ての教員養成大学に修士課程が整備されることになったわけでございますが,その後,平成19年に,今の教員養成大学の大学院の制度については実践的な教員養成が十分ではないのではないかということで,教職大学院という制度ができ,平成20年から教職大学院が整備されてきております。その後,これについてもほぼ全国の都道府県に整備するというような政策をこれまでとってきたということでございます。
 参考資料3でございますが,4月に中央教育審議会で諮問が行われました。これについても,今回の議論と関係するようなこともございますので,ここに資料として添付させていただいております。
 最後に,これも参考でございますが,教員のICT活用指導力ということを参考資料4として付けております。教員のICT活用指導力の推移という資料がございます。これを見ると,これは自己診断でございますけれども,自分がICTを使えるという教員が非常に増えてきたわけでございますけれども,先ほど説明した教育再生実行会議では,具体的な教育の中身だとか,実際の活用のレベルについてかなり高いものが今後求められていくようなことになっているのではないかということで,参考としてこれも付けております。
 以上が本日の資料の御説明でございます。よろしくお願いいたします。
【三島主査】  御説明ありがとうございました。資料3ぐらいから,随分いろいろな資料があって,本日は1回目でございますので,この後,自由に御意見を頂くことにしますけれども,まずは教員養成フラッグシップ大学の目的と役割についてというようなことを論点の1番目として,もちろんその中身についてはまたいろいろワイドだと思いますけれども,皆様方から御意見を自由に言っていただくという形にしたいと思います。よろしいでしょうか。  
 これから教育のシステムをどうやっていくかというような話は,ほとんど大学改革なんかで出てくることと基本的に同じでございまして,やはり子供たちに,自分の頭で考えて自分の思うことを言えるようなことを教えていかなければいけない。一方的な知識を与えるのではいけないというようなのも,大学改革の中でもいの一番に言われたことでございますので,そのときに題材として,たとえ科学技術系の大学であっても,リベラルアーツ系,社会科学といったことが非常に重要になるので,そういうことを1年生のときから専門の教育と並行して,いろいろな分野の違う人の意見を聞いて,それを少人数のアクティブ・ラーニングでディスカッションをして,それぞれがどう思うかなんていうことを話をさせて,そして発表させるようなことが多分いろいろな大学で取り組まれていると思うんですけれども,初等中等教育を含めてどういう教育にしていくかという意味では,そういうところから行くのかなと,大学から見るとそう思いますけれども,いかがでしょうか。
 それでは,主査代理から,冒頭スタートをお願いします。
【加治佐主査代理】  そうですね,今御説明があったような,文部科学省だけじゃなく経済産業省等々もそうだと思いますが,Society5.0という社会になると,社会の変化はこれまでと連続しない,新たな全く違う社会になるんだと言われておるわけですね。そうなりますと,学校教育も根本的に変わる,これまでの延長線上にはないのではないかというふうに言うことができると思うんですね。
 ところが,延長線上にないだけに,どういうものになるかがまだ具体的に示されない。今も御説明があったように,個別最適化された指導が行われるとか,あるいは,場所を選ばずに,いろいろな場所で行えるとか,これまで学校教育の基本形であった学年とか学級が必ずしも中心でないというか,それに依拠しなくてもいいということが言われます。そうすると,先生の役割も根本的に変わると言われます。授業力がこれまで先生の一番の能力,あるいは能力を測る際の一番見るべきところだったわけですけれども,果たしてそうなのかと。人間性とか,人をまとめる力とか,感動させる力とか,いろいろ言われるわけですけれども,そういうことが言われても,まだ具体的なものがないし,それをいかに育成するかとなると,もっとないわけですね。
 そういう全く我々が経験したことのないところに行きますので,ある意味,非常にチャレンジングな気持ちでいろいろな意見を言っていただいて,それができるような大学を創設するということになるわけですよね。ただ一方で,現実的に考えなければいけませんので,現実の我々が持っている国公私立の教員養成大学・学部の資源というものもよく考えながら,もしかすると,三島主査のところのような異分野の最先端の大学との連携とか,これまでにない発想を我々もしていくべきなのかなというふうに思うところです。
【三島主査】  ありがとうございます。松田委員,どうぞ。
【松田委員】  私も教育再生実行会議のワーキングに委員として出席していましたので,まず感想になりますが,お話しさせていただきます。確かに技術革新に応じた教育現場の工夫,改善というのはいろいろなことが既に取り組まれていて,例えば,今,アダプティブ・ラーニングという話題が出ますけれども,学習教材が個別に誤答に応じて,その人の学習履歴に応じた次の学習を指示するといった状況が一般的になってくると,クラス単位での30人とか40人で学習するということの意味はどういうことになるんだろうだとか,あるいは,VRみたいな教材を使って,遺跡の学習だとか,いじめ防止等の特別活動や道徳等にわたる教育臨床が対応しているような課題の学習ということに関しても,ある仮想体験を通じて学習するという時代がすぐそこまで来ていることを日々,考えさせられています。あるいは,例えば,MusioとかMEEBOというようなロボットは公立現場でも既によく使用されていて,これらは,対面型のロボットの学習支援といいましょうか,英語学習ロボットとか,園児の見守りロボットというようなものなんですけど,既に実装され始めています。さらに,学校環境ということでも,AIによる出席の自動管理というのが実際に具体化されていたり,あるいは,児童生徒の理解に対しても,eポートフォリオによる取組の動きなんかも進んでいます。また,チャットボットというような,チャットの自動化の仕組みが教育用に展開されていたり,実用英語技能検定とかでも,AIによる採点というものが始められようとしています。このような教育領域における技術革新が広がりを見せていることを考えると,確かに教育の現状は相当変わっているというのは感じるところなんです。
 一方で,その外側にある社会も,教育再生実行会議では特に産業界の方の御意見も多かったのですが,非常に変化が激しくて,そういう中で具体的に,そういう社会において生きていく,あるいは活躍していくというのはどういう資質・能力に基づくものなのかとか,あるいはそういう技術革新が教育をどう変えるのかとか,あるいはそういう社会や教育を変革していくリーダーというのはどういうふうに育てるのかというような議論が相当あって,現状で,そういう社会変化ということに見合う教育制度の改革の動きがあるのだろうかということで,私も,仕事柄,教員養成の大学にいますので,少し居心地が悪いといいますか,そういうような状況はございました。
 そういう意味では,今,三島主査、加治佐主査代理からもお話がありましたけど,やはり今回のフラッグシップ大学というのが,教員養成全体をこれからの社会の変化も見据えた高いレベルで支えるために機能するような大学であって,一方,それを行うがために,ある種,特区のような,いわゆる現状の教員養成の制度に縛られない形で,思い切った取組をしていけるというような枠組みがあればいいなと感じたりはします。
 これは個人的な思いなんですが,教育ってどうしても保守の側面と革新の側面があって,あるいは社会をメンテナンスしていくという機能と,新しい社会を生み出していくという機能が今までもあったと思うんですけれども,とりわけ革新とか新しい社会を生み出していくという機能に対しての,教育への関心や期待というものが実は相当,高まっているのではないかと考えています。それに対して学校現場では,逆に社会をメンテナンスしていくという部分に焦点が当たらざるを得ず,そのギャップが大きくなっているということを,教育現場や教員養成に携わっていて感じています。
 ですから,そのあたりの矛盾を特に意識して,フラッグシップの議論がなされればいいなと思っております。
【三島主査】  ありがとうございます。今おっしゃった,社会のメンテナンスをしていく側面というのは,もう少し具体的におっしゃると,どんなことになるのでしょうか。攻めていく方ではなくて,保守的な方ですね。
【松田委員】  日本の公教育の制度というのは,家庭や地域とかコミュニティーとの関係が強くて,子供の生活を丸抱えしているようなところがあると思っています。少し例をとってお話ししますと,例えば,現在,小学校では,学力を育てるだけでなく,人格形成,言い換えると,社会で生きていくためには基本として身につけなければならないようなことを,家庭や地域ではなく,極端に言えば全て学校で育てるが如く期待され,日々,先生方が子供に向き合わせているように感じています。子供を育てることに関わって現れてくる,地域や家庭や社会全体の課題を,学校教育,社会教育,家庭教育という枠を越えて,学校がある種拠点化して全て担っているという状況です。ある種,学問だとか勉強だとかというのは,生活とむしろ距離があり,それらを対称化できるからこそ成り立つと思うのですが,ネガティブな面だけ見て言いますと,そのあたりが,学校ではむしろ難しくなっているというようなことかなと思います。
【三島主査】  ありがとうございます。安藤委員,お願いいたします。
【安藤委員】  今回,Society5.0に対応した教員養成ということで,非常に実は私心配していることがございまして,近年,授業をしている中で,学生がますますマニュアル化していて,方法知ばかりを求めている実態があるのです。いわゆる教育観をきちんと創り上げながら,学生が教員に向かっての資質・能力を育成していくことが非常に大事かなと思うんですが,教育実践演習,あるいは教科教育法の授業をやっていても,方法一辺倒の技術ばかり求めて,私たちの指導の問題かとも思いますけれども,本来教師がどうあるべきかということをきちんと押さえながら本当はそういうところへ行かなくてはいけないのですが,どうも方法論が先行していくような傾向があるのです。大学の授業もそういう形になってきているのではないかなと思います。
 そういう意味で,今回の技術革新という問題,あるいは先端技術の導入ということを考えたときに,資料にもありましたけれども,飽くまでも子供の力を最大限引き出すための支援とか,教科のためにそういうものを使うべきであって,そこの部分を忘れていってしまったような大学づくりだと,結局,非常に大きな問題が出てくるのではないかなと思います。
 ですから,改めてフラッグシップ大学を作っていくとなったときには,やはり改めて教員養成の在り方ということを根本的に考えて,そこで教員に求められる資質・能力って一体何かということにきちんと向き合っていかないといけない。これは私が日頃思っていることでして,どうも学生を見ていると,そういう安易なというか,たくさんの本もあるし,情報も手に入りますので,すぐ情報を持ってきて,それをすぐ活用するんですね。それが本当に子供に合っているかどうか,あるいは本当に求められているものなのかということを見極める十分な術が育ってきていないんだろうなと思います。
 そういう意味では,学生に対して,これからはいろいろな知識を,ただ寄せ集めさせるのではなくて,自分で作り変えていくような,そういう教育システムを大学の方にも導入しなくてはいけないなということを,まず,危惧として出させてもらいたいと思います。
【三島主査】  ありがとうございます。
 大学の教員を見ていても,やはりマインドセットが非常に重要で,私がおりました東京工業大学のような大学は,先生方は研究をやりたいので,もっと学生にテーラーメードの公教育の仕方を,といっても,「いや,そんなに時間をかけられない」,「研究の時間が減るから」というような考え方もあるために,かなり一方的な,余りシラバスとしても何年も変わらないような,同じような教え方みたいなものになっていくということがあります。そこで学生のためというのを第一にした教育の仕方というものをやらないと,学生は言われたことをただやればいいんだと,単位を取ればいいんだというやり方になってしまうので,そこを変えるのは非常に難しいということを,特に大学では思いました。どうぞ,水落委員。
【水落委員】  私は,小学校教員を14年間,中学校教員を6年間経験した,教職大学院の実務家教員です。妻は小学校の教員ですし,年々大変になっている,ブラックと言われる学校現場の様子を肌で感じる人間として発言できればと考えています。
 また,現在教職大学院の教員になって12年目ですが,その中で痛感しているのは,学校現場というのは様々な取組をするのですが,その効果をきちんと検証することが苦手だなということです。だから,「こんなことを頑張りました」ということを成果としてまとめてしまっている。結果として,世界一忙しいと言われるような,ブラックと言われる業界となって,例えば,教員採用試験の低倍率を招いてしまっている。様々な取組をやるのだけど,その効果をきちんと検証して,エビデンスベースで検討できるような教員を養成し,それを評価するシステムを作っていけば,この取組は続けるべき取組なのか,それともやめるべきものなのかということをきちんと精査できるようになっていくのではないか。Society5.0に向けては,この教員養成のフラッグシップ大学検討ワーキンググループがそれを可能とするような大学づくりに貢献できればいいなと考えています。
 その中で,エビデンスベースということがよく言われますが,例えば,先ほど髙田教育人材政策課教員養成企画室長から,外部人材との連携が学校現場で求められていると説明がありました。では,そのエビデンスをどうやってとっていくのかというところで,「外部人材との連携を行いましたか」という設問のアンケートが来る。そうすると,学校現場は,何かやらなければいけないのだなとなって,では,あそこの家のおじさんを連れてきて連携したという事実を作ろうということになるわけですよね。何のために外部人材と連携したのかということを横に置いておいて,とにかく外部人材との連携をやりましたということになってしまう。ですから,エビデンスのとり方もきちんと考えてやっていかなければいけません。何のためにそれを必要としたのか。Society5.0に向けてどんなことが必要なのか,そのためにこういう目標を達成することができたかとか,何をやったかではなくて,何ができるようになったかという教育の改革,そういう柱があると思いますけれども,そういう視点でのエビデンスのとり方ということが大事になってくるのではないでしょうか。
 今議論になっていることも,今までとは全く違ったことが必要になってくるということまで分かっているのですが,具体的にそれがどんなものなのかというところがまだはっきりとしないので,ずっと同じ話をしていても仕方ないと思います。例えばということで,今私がやっている拙い研究を具体例として紹介すると,私たちは公立の学校現場に入って,教育実践,授業実践をやって,その効果を検証しています。今主に取り組んでいるのは,子供たち一人一人にネットワークで結ばれたタブレット端末を持たせて,お互いのタブレットの画面を見に行けるようなシステムです。そのログを基にAIが適切な交流相手を探したり,子供たちの目標達成の推定値を教師にフィードバックしたりする実践研究です。  
 そういう実践をやった教師がことごとく言うのは,今までの教室にはなかったいろいろなデータを見ながら,探りながら授業をしなければいけないので,今までの授業とは全然違う能力が必要だということです。では,それがどんな能力が必要なのかというのを今突き詰めているところですけれども,例えば,そういう研究成果といったものが,他にもどんなものがあるのかというのを集めていくような作業をしてみるのもどうだろうかというふうに思いました。
【三島主査】  そういう取組があるのですね。ほかに何か実例でも構いません。では,若江委員,どうぞ。
【若江委員】  キャリアリンク株式会社の若江と申します。大学の先生方ばかりいらっしゃる中で,私は産業界や企業で教育コーディネーターの仕事をしております。きのうまでちょうど10日間ほどアメリカのカリフォルニアの大学ですとか学校をずっと回ってきたんですけれども,本日の会議の論点が,教員養成のフラッグシップ大学はどうあるべきかということをこの年末までにまとめるということですので,おぼろげながらこんなことはどうかというのを少しお話をしたいと思うのです。
 先ほどからお話に出ていますように,Society5.0社会を作れる人材を作る人材,つまり,教員を養成していくということですよね。そうなったときに,今までの日本の教員についても一度是非調べてみていただきたいなと思うんですが,欧米で教員をしておられる方々にお聞きしますと,大体60%から80%ぐらいは教員以外の職業を経験して,幼稚園の先生,小中学校,高等学校の先生なりに就いておられるという方が圧倒的に多い。でも,日本の場合には,比較的教員養成大学を出て,そのまま社会を知らないで教員になっていきます。今回の教員養成フラッグシップ大学も,正にその純粋培養の場になるわけですよね。そうすると,社会に役立つ人材をと言いながら,Society5.0の社会のイメージも全くなく,例えば,教科教育法ですとか,教育のことについての専門性を学んでいくわけですよね。
 ですから,一つ考えられるのは,これからのフラッグシップ大学というのは,リベラルアーツのように,まず入ってくれば,社会のことを徹底的に経験をするとか,最初から教育とは何かを学ぶのではなく,まず社会とは何かみたいなことを幅広く経験をし,もっと根源的な,教育とは何かみたいなことから入ってくような,そんな逆のアプローチみたいなことが必要ではないかなというふうに感じます。もう一方,社会人の方もいろいろなキャリアパスがありまして,一昔前ですと,社会でいろいろ経験をした人はMBA,つまり,ビジネスの修士を取るということが大はやりだったのですね。でも,産業界では,それも有効ではなくなってきていまして,逆に言うと,Ph.D.というものに対しての付加価値がすごく高まってくると思います。
 ですので,これからの教員養成大学というのは,きっとそこで指導する教員,教えていらっしゃる先生方のマインドセットというのが,先ほど三島主査のお話にもありましたように,すごく重要で,そうなると,この新しいフラッグシップ大学というのは,正に教員が産業界の人であり,そのことによって学生は社会のことを知っていくというような,カリキュラムをどう変えるかという小手先のことではなく,抜本的に今までとは違うアプローチを是非いろいろ議論をさせていただければなと思って,本日は参加させていただきました。
【三島主査】  ありがとうございます。両角委員,どうぞ。
【両角委員】  私は大学の経営のことが専門で,本日の御説明の中だと,2040年に向けた高等教育のグランドデザイン(答申)などの方の議論に関わってきたということで参加していると思っています。
 教員養成の話ではありますけれど,Society5.0がどのような社会になるのか,いろいろ書かれていますけど,本当はどうなるかは誰にも分からないので,何を本当に教育していいかということに明確な答えはないのではないかと思います。それは教員にもないし,では,産業界にあるかといっても,産業界にあるという確信も私はありません。そうなると,やはりより汎用的な能力であったり,様々な変化に対応していけるような能力とか,そういったものを身に付けていくというところが大事になる。教員養成に限らずほかの分野でも同じようなことが言えるかと思うのですが,基本的に教員養成でも同じようなことが言えるのではないかということを一つ思いながら聞いていました。
 いろいろな資料を拝見していますと,技術が変わるのでそれに対応していくというのは,ある程度テクニカルに対応できそうな部分ではあるんですけど,恐らく本質はそこだけではなく,どういう社会になるか分からないときに,本当に何を教えたらいいのかというところが誰にも分からないことがこの議論をする際の難しさであるということを本日ずっと感じておりました。そういう意味では,今後議論していくときに,どちらかというと事務局に対するお願いになるのかもしれないのですが,新しい社会に向けてということで,それこそいろいろな教育実践が既に現場で試行錯誤されていて,そこでどういう教育だとか,あるいは先生の能力とかが有効になっているのかというようなことをできるだけ御紹介いただくとか,あるいは,今,海外の事例をちょっと御紹介いただいたんですけど,Society5.0など,社会が変化しているのは当然のことながら日本だけではないので,諸外国ではどういうふうに教員養成の在り方を変えつつあるのかということなども少し議論で示していただくと,一つ参考になるかなというふうに思いながら聞いていました。
 あともう一つ,やはり教員養成ということを考えていくと,私は,大学の経営という観点からつい見てしまうのですが,教員養成大学は一番経営が厳しいタイプの領域だなという印象がとても強いです。いろいろな教科をそろえなきゃいけないので,その分野の数だけ先生たちが必要になるので,高コストの構造をしています。必要な分野をすべてそろえられるに越したことはないのですが,本当にコアで重要なものは何なのかとか,あるいはこういうフラッグシップ大学といったものが中核となってうまくネットワークを組むことで,もう少しどの大学も同じように全部を抱えなくてもいいような仕組みといったものを考えていけたらすごくいいのではないでしょうか。大学連携はやった方がいい,やった方がいいって言われていますが,そこまでの切実感がないせいか,余り進んでいない印象ですが,一方で,教員養成の部分は,私が見ていると,かなり切実な要求というか,ニードがあるのではないかと思っています。そのあたりも具体的なところを私も勉強しながら参加したいと思いますが,是非議論できればと思っております。
【三島主査】  ありがとうございます。  
 最初に若江委員がおっしゃったのは,むしろ教員の質みたいなものでしょうか。教員の知識の幅広さとか。両角委員のお考えの方は,どういうふうに子供たちの能力を育てていくかをまず考えていかないと,というようなことかと思うのですけれども,若江委員のおっしゃったところは,海外との比較からいくと,教員が社会を経験している人が多いけれども,日本では余りそういう人がいないというところの差なので,もしアメリカのやり方がいいとすると,やはり我々が生きている人間社会というのは,どういう仕組みがあって,その中でICTやAIが入ってくるような社会にだんだんなっていく中で,どういうふうな社会を作っていけばいいかというような御意見だと思ってよろしいですかね。
【若江委員】  そうですね。教員自身が社会のいろいろなことを経験している。だからこそ,その中で自分がつまずいたことだったり,よかったことだったりとかを子供たちに還元できる,そういう学びの提供がこれからの教員には必要ではないかなと思っています。
【三島主査】  両角委員は,むしろSociety5.0が何であるかということはよく分からないにしても,少なくともネットとかICTの分野と,人間の生きていく社会のフィジカルといったものとが常に綿密に動いていく。だから,どういう社会になっていくかは見えないのだけれども,これからの時代子供たちにどういうことを教えていかないといけないかということが漠然としているようなところがあるので,そこから少し議論をしたらいいのではないかという御提案でしょうか。
【両角委員】  そうですね。どこかで一度は議論できたらいいかなと思いました。
【三島主査】  分かりました。では,三村委員。
【三村委員】  皆様のお話を,本当になるほどそうだなと思いながら聞かせていただきました。最初に加治佐主査代理の方から,教員需要減少期における機能の強化というこの報告書が出たときのお話がありましたけれども,これが出たときに,教員養成大学として,今何をすべきかということがはっきり分かるようなものということで,恐らく多くの大学でこれに沿って教員養成を機能強化しているところだと思います。
 ただ,一方で,Society5.0というのが出てきたときに,一体何をしたらいいのか。学生たちには,こういう時代に自分が生きていけるように,さらには,生きていける子供を育てるようにというふうには話しながら,では,何をどうしたらいいかというのは具体的には分からず,取りあえずどんな状況にも対応できる力をみたいなことを言っているんですけれども,実際,そういう分からない時代の教員養成ということを考えたときに,本当にそういう時代に子供たちが自己実現ができるかというのは,それこそ本当に個別に,様々な多様性がある中で,一人一人の子供たちに本当に適した教育をやっていくというのは大変難しいことだなと感じているところです。
 さらに,科学技術が発展してきているということは,一方では生活がとても便利になって,本来そこに費やしていた時間を費やさなくてもよくなるという,どちらかというと明るい未来というイメージもある一方で,そこで人間に何が求められるのかということに立ち返ったときに,大丈夫なのかという暗い側面もあるというようなことだと思うのですけれども,そういった時代に生きていくということと同時に,現在,例えば,小学校教員のなり手が特に少なくて,教員採用の倍率が減っているであるとか,さらには,私の地元などでは,小学校教員の8割以上が文系出身で,理数系の魅力を伝えていけるのかというようなことが話題になっています。
 もちろん教科担任制という話もあるかと思うのですけれども,科学技術が発展した時代にどう対応していくかと同時に,科学技術の発展水準を今後も日本として維持できていくのかということは,やはり小学校段階の教育であるとか,早い時期のことも重要であると思いますので,そういった視点も持ちながら,いろいろなことを考えていくきっかけに,私自身,勉強させていただければと思っております。
 恐らくフラッグシップ大学というのは,どの大学も同じ方向を向いてということではなく,場合によってそれぞれの大学が持つとても尖ったところをというふうな形になっていく可能性もあるかと思いますが,そういう教員養成の先端の部分が明確になることで,今後教員を目指す学生の教員という職務や,未来ということの魅力につながるようなきっかけにもなる教員養成改革ができればなと考えております。どうぞよろしくお願いいたします。
【三島主査】  ありがとうございます。大変よくまとまった御意見だと思います。
 一通り御発言いただいたと思いますけれども,皆様の意見を聞きながら,あれもある,これもあるということがあると思いますので,是非おっしゃっていただければと思います。それでは,加治佐主査代理,どうぞ。
【加治佐主査代理】  今お話を伺っていて改めて感じるのですけれども,我々が持っている教員養成大学・学部の人材なり,教育課程なり,既存の資源があるわけですけれども,その中で特に大きいのは人材だと思います。若江委員の御意見を伺っていて思うのは,はっきり言って今は同質的な人々が多いわけです。社会を知らないとは思いませんけれども,多様な社会を経験した人が少ないのも事実ですよね。しかし,そういう人々で構成される大学で今からはっきりしないものを作っていかなければいけないわけです。しかもどんどん変化しますよね。そうしたときに,今までの人材といったような資源だけで作ることができるのかなという疑問は確かにあります。ただ,そうは言っても,外部の人を入れるのは大変結構だと思いますが,そうそう急激にはこれ,できませんので,現実的な可能性みたいなものが一つ要件になってくるのかなと思います。
 結局,抽象的にはこういう人材を養成する大学だということは書けると思うのです。ただ,結局はそういうものを実現する,開発する大学でなければいけないわけですよね。そうすると,そこでまた具体化し,かつそれが変化していくと思うのですけど,その力を持った者を育てるということになると,やはり単に集約するだけじゃなくて,根本的に改めるという視点も要りますが,ただ,そのときに現在持っている資源を無視するわけにいかない,それを取り替えるということはそう簡単にはいきませんので,何となく背筋が凍る思いもしますけれども,そういうことも少し感じさせます。
 これからのSociety5.0という社会における教員養成や大学の在り方を見据えつつ,今の資源をどう活用する,あるいは変化させる,そういうことを考えていきながらということでしょうか。
【三島主査】  Society5.0の中で言われている一番はいわゆるICTの問題ですので,そういうものに小さいときから慣れていて,そういったものを自由に使えるような人材が今は求められているという,これは物すごく確かなことなので,小学校からそういうインターネットを含めたいろいろな技術を身に付けて育っていってもらわないと困るということがあって,そこだけはある意味明確なところがあります。しかし,世の中というものは,どう変わっていくかが予測がつかない。しかも変わり方がすごく速いので,臨機応変に対応して,そういう状況の中でよりよい人間の社会を作っていくんだということをマインドとして持っているような若者を育てていきたいというのは,どんな状況になっても,それに対応できるということですよね。そういう能力を付けるためにはどういうシステムが必要で,どういう人材が必要で,ということになっていくと思います。今までとは全く違う教え方,大学でいえば,今まで全部大教室で,階段教室みたいなところに学生が集まってきて,そこで先生が教えて,学生はノートをとってというのがいまだに大半を占めているわけですけれども,そうではなく,教室の中ではテーブルごとに数人ずつ集まっていろいろなディスカッションをしてなんていう講義室がどんどん今増えているわけですよね。そういう意味での今までの教え方や教育システムと違うものを取り込まなければいけないことも確かだろうと思いますよね。
 そのような,どんなやり方があるかというのを少しずつ皆さんから御意見を出していただいて,Society5.0というのをある程度意識するんだけど,やはり長い目で見ると,それもそのうち言われなくなって,もっと別なものが人間社会に必要になってくるということになるでしょうから,余りそこだけにこだわらなくもいいと思うのですね。やはり子供たちがどういうふうに初等中等教育を経て高等教育の中で,これからの社会で自分がどのように役に立つかということを考えることができるような教育がベースに必要なのではないでしょうか。言われたことをこなして無難に生きていくんだというのではなくて,子供たちが何か新しい社会を作ることに自分も参画したいなというような気になるように育てていくというのは私の頭の中ではあるんですけれども,そういうものはどうやったらできるのかは,また次の問題です。若江委員、どうぞ。
【若江委員】  今,いろいろお話をお聞きしていて,少し思ったのですけれど,教員養成大学と言っていますよね。教員養成大学って,英語で言うと,どうなるんですか。educatorですか。
【加治佐主査代理】  「University of Teacher Education.」です。
【若江委員】  Teacher Educationですよね。ですので,「教員」でくくることが少し狭いのかもしれなくて,educatorという,「教育者」というぐらい幅を広げてはどうでしょうか。前に少し調べたことがあるのですが,educationの語源はeduceで,「引き出す」という意味です。正にこれから子供たちの中にあるものを引き出していく。だから,「教員」となると,今までのように,教え育てるみたいなイメージがどうしてもついてしまうので,educatorというふうな考え方をしていき,これからのeducatorは,teachingではなくてeduceだ,教え伝えるというのではなくて,引き出す方だというような概念が大切ではないでしょうか。さらに,これからのeducatorには,マネジメントの視点というのも絶対に必要で,人・物・金・情報・時間,そういう中でいろいろなことをやりくりをしながら,学校マネジメントだったり,クラスルームマネジメントだったりをしていくことになると思うので,もう少し教員ということから広げて考えてみることも一つかなと感じました。
【三島主査】  水落委員,どうぞ。
【水落委員】  聞いていて,本当にそのとおりだなと,大変興味深くお聞きしました。委員の皆様の意見を聞いていて,そのとおりだなと思うのですが,少し気を付けないと怖いなと思うのは,とにかくこれからの教員にはこれが必要だ,あれが必要だ,これも必要だってなっていくと,結局,あれもこれもすごくみんな必要なことばっかりで, では,新しい科目を作って,新たに2単位乗せておこうとかという話になる。そうなると,教員免許を取るために今でも物すごい数の単位数を取るわけです。私,先ほども話しましたけど,今の学校の先生が,やったことにすることにたけてしまったのは,あの膨大な単位数取得から始まっているのかもしれないということすら思っています。
 例えば,私,文学部出身で,中学校では国語の先生をしていましたが,小学校に移って,兵庫教育大学では,理科教育で博士の学位を頂いたんですね。文学部出身の教員が理科の授業をする。では,子供たちの理科の満足度はどうだったかというと,これ,自慢話のようで恐縮ですが,結構高かったのです。学力テストもいい成績を頂いていたんですね。それがもちろん全てではありません。しかし,自分の学生時代,子供の頃を思い出してみると,社会科専門の先生の社会科の授業が本当に面白かったか。もちろん面白かった部分もあると思うんですけど,理科が得意な先生が自分には分からないところで,面白いだろ,えへへって笑っていて,何が面白いのかよく分からない,ということもあったように思うんですよね。
 だから,あれが必要だというのは,これが必要だ,本当にごもっともに聞こえてくるんですが,その結果,科目数が増えて,単位数が膨大に膨れ上がっていくということが既に今まで積み重ねられてきてしまったので,本当に必要なものは何なのか。例えばですけれども,もうそういう単位主義はやめて,例えば,教員採用試験の共通一次試験や国家試験みたいな形で,試験問題を作っていったら,操作的にこの教員に必要な能力というのはこれだということが定義されてくるだろうし,そういう手続で今後の教員養成を考えていくということも,もしかしたらありなのかもしれないなと感じました。
【三島主査】  なるほど。どうぞ,安藤委員。
【安藤委員】  私,教職大学院に12年,籍を置いていますけれども,実際に進学してくる学生の姿を見ていますと,教員採用試験に合格したのちに,いわゆる猶予制度を使ってきている学生が何人かいるんですね。というのは,教員になる資格は持っている,一応合格しているんですけれども,更に勉強したいと。その学生らの声を聞くと,9割ぐらいが,教員の採用試験に受かったことについてはよかったけれども,現場に出ることがすごく不安だと。だからもっと勉強したいんだと話す学生が私の大学では9割いました。
 何が言いたいかというと,いわゆる4年間の学びというものがどうも教員養成を完結させていくケースとして教員採用試験に受かるための勉強で終わっていて,私たちの指導も面接対策とか知識詰め込み型のテクニック的なものにたくさん手を打って,それで合格率を上げていく形で取り組んできている。でも,学生の中では,結局,そこにすごく自分への不安とか,あるいは不満とか,あるいは現場に出るときの恐怖みたいなものもたくさん抱えて,実はそういうところで悩みながら進学してくる学生がたくさんいるわけです。
 そういうことを考えたときに,今,水落委員もおっしゃったんですが,あれもこれもということをどうも私たちは要求し過ぎている。では,大学院へ進学してきた学生が何をやっているかというと,自ら学会に行ったり,もっと言うと,地域の学校に入ったり,地域の活動に参加したり,すごく自分の可能性にチャレンジして取り組んでいる学生がいるのです。先ほどの社会経験を積むという話も一緒なんですけれども,むしろそういうことをやる中で自分の在り方というものを見いだしていく学生が非常に多いなということを感じています。
 つまり,単位ということを考えたときに,大学院に行くと多少余裕があって,自分で学ぶ時間があるんだけれども,学部の段階だと隙間なく教職課程が入っているので,なかなか融通が利かなくて,自分の学びを深める機会がない。ただ,4年生ぐらいになると,ほとんど卒論だけで終わってしまいますので,そうすると学生が焦るわけですね。そういう意味では,前からずっと議論がありますが,これから教員養成の期間ということも,本当に4年でいいのかどうかということも含めて,あと,学部との連動とか連携とか,あるいはもっと言うと,大学院の先生が学部に行って話をしたり,あるいは学部の先生が大学院に来たりという往還的な動きも実は非常に機能していますので,教員の配置の問題ももっとラフにして,もう少し教員養成の期間とかその辺を,学生の活動も保障するような,そういう学びの保障みたいなところを担保できるような,そういう大学の学びということが実現できると,学生たちも随分成長していくのではないかなということを,特に教職大学院の院生を見ていて感じます。そういう学生にとっては非常に大学院がよかったのではないかなということを今見ていますので,経験上,そんなことを思いました。
【三島主査】  水落委員,加治佐主査代理もおっしゃっていたように,今までの何単位取らないと駄目だとかいうような教育システム自体についても少し考えてみないといけないかなという感じがしますね。
 日本の大学って,今,124単位を取って卒業なんですが,実はアメリカの大学のトップ大学みたいなところというのは,90分授業を15週取ると2単位とかいうところは日本と同じなんですけれども,それ以外に彼らは,学生が自宅で勉強する時間,それを物すごく取ってこその2単位なんですね。要するに,教わったもの,言われたことをして,テストをして良かったらもうそれで終わりなのではなくて,物すごくいろいろな宿題が出る,無謀な宿題みたいなのがたくさん出て,それについて自分で調べて確かめて,それで週に何時間自分が勉強したかというのをきちんと定義してあって,それで単位を出しているというようなところがあるんですね。
 その話を今の委員のお話を伺っていたら思い付いて,言われたことだけやるのではなくて,自分が頭を使って考えて何か書いてというような時間が日本の大学には非常に少ないと言われるので,教員も何かそういうようなやり方で自己啓発をしていくということが大事かもしれませんね。松田委員,どうぞ。
【松田委員】  今までのお話を伺いながら,机上にも報告書が置かれておりますが,教員養成の在り方についての有識者会議での議論ということを思い出しておりました。このときは教員養成の対応すべき喫緊の課題が本当に多くて,ある種,そもそも論というのでしょうか,教員養成とはいかにあるべきかというような,あるいは社会変化と教員養成の在り方みたいなことというのは,なかなか議論が広がらなかったところがあるのですけれど,そういうような意味で今,そういう議論がなされていて,なるほどなと思って伺っていました。
 あわせて,あえて観点を広げるとしますと,教員養成の大きなシステムがあるわけですけれども,その中でフラッグシップ大学というのが,そうしたシステムの中でどういう役割や機能を持っていくのかということ,あるいは持つべきなのかということも議論の一つとしてあるのだろうと思っていました。例えば,そういう意味では,そもそも教育政策は,行政が関わり政策立案のプロセスを踏んで立てられ実現させることを探られるわけですけれども,そういうところにアカデミアが関わっていくというんでしょうか。そういう教育政策の立案だとか実行ということに関して,このフラッグシップ大学が何かしらの役割を積極的に担っていける,そういうような位置付けというものが一つ必要ではないかと思っていました。
 もう一つは,そのこととも関わりますし,今までのお話とも関わるのですが,そもそも教員養成学部とか大学,にある種の研究開発能力,それも既存の分野での研究開発というのではなくて,正に教員養成という実情を捉え,次の社会に向けての在り方を考えていくことができる,創造的な研究開発能力というものが,やはりフラッグシップ大学には相当に持ってもらう必要があると思いますし,その意味では,逆に言いますと,現在の教員養成学部とか大学は,その面が細っている,あるいは弱くなっているというような裏返しがあるのかなと思ったりもします。
 最後に,そのこととも関係あるんですけど,先ほどから,人材の動きの問題も出ていましたけれども,確かに教員養成は,産業界との連携というのは非常に弱い分野になっていまして,私のいる大学なんかは割と頑張っている方なのですけれども,とはいえ,近くの大学とかと比べますと,ボリュームが10分の1ぐらいの規模にしかならないといった実情があります。そういう中で,やはり産業界との連携みたいなことがフラッグシップ大学において,そしてその大学だけというのではなくて,そこが拠点となって教員養成全般に広がっていくというような役割も必要なのかなと思った次第です。
【三島主査】  ありがとうございます。加治佐主査代理,どうぞ。
【加治佐主査代理】  今,研究開発ということが出ましたが,私もやはりこの大学は研究開発だと思うのですね。本当に未知の分野を新たに開拓していく,そういう大学だと思います。おっしゃるように,そういう機能がだんだん弱くなってきているのだと思います。だから産業界とのつながりであるとか,あるいは外部資金が取れないとか,もっと言うと,民間の教育産業の方がもっと有用なものが作れているとか,そういうこともあるのだと思います。ですから,今回,本当にそういう意味で,Society5.0時代に向けた新しいものを作ることができる。新しい指導方法とか,新しい教育の仕組みとか,子供への配慮の仕方とか,そういうものができるようなものを開発していくということが欠かせない一番重要なものだと思うのですね。
 一方で,なぜ今のような状況になってきたかといいますと,この間ずっと教師の質保証ということが求められてきたわけです。それは新人教員だけではなくて,現職教員の再教育も必要だということで,大学院,特に教職大学院では,そういうものを作ってきたわけですよね。
 それは,私もそういうことを言ってきた一人かもしれないのですが,質保証ということを最重要視しますので,基準・規制が厳しいのですね。教員免許は一番の質を保証する仕組みですから,どうしても厳しくなってくる。設置審査も,課程認定も厳しいし,あるいはその後のアフターケア(設置計画履行状況等調査)も厳しいということになります。これもよく分かります。教職大学院も,結構厳しいですよね。単位も多いし,カリキュラム要件も厳しいわけです。だから,どうしてもそういう厳しい基準をクリアするための仕組みなり,あるいは人材をそろえなければいけないということになります。そうすると,どうしてもそちらの方に力が向いていって,開発というところがおろそかになってきたということはあるのだと思います。
 この新しい大学は,そういう意味での転換をするのかなと思っています。もちろん新しく開発したことの実践という機能は当然持つとは思いますが,やはり開発ということが大きなウエートを占めることは間違いないのだと思いますね。そうすると,大学の姿が少し変わるのかなという気がしますね。
 それと,実践する際も,特例校ってなるんですか。ちょっと分かりませんが,それだったら,ちょっと基準も緩めていただかないとできないのかなと思うと同時に,基準を緩めると,何となく暴走する感じもしますので,そこらをよく考えながらということになるのでしょうか。これまでとは大分姿が違うものになるということだと思います。
【三島主査】  そうすると,結構,大学設置・学校法人審議会がやはり関わってきますね。
【加治佐主査代理】  そうですね。大学設置・学校法人審議会も,一応,緩和の方向には向かってはいるんですよね。三島主査に,一つお伺いしたいと思います。これ,教員養成版の指定大学制度ですよね。三島主査,以前学長をされていた大学は指定国立大学法人として指定されたわけですけれども,やはり要件や基準,そういうものは結構厳しいのですか。あるいは,そのメリットというのはかなりあるんですか。
【三島主査】  まず,指定国立大学法人は,文部科学省からそれに申請できる国立大学はこういう条件を持っていなければいけないというのが何項目もあって,大ざっぱに言うと,研究力,どのぐらい論文が出せるかとか,その論文の質がどうだとか,そういったようなものが国内で10位以内に入っているかどうかというようなものが幾つかあって,それを満たした大学しか申請できないということになっていたので,申請できた国立大学が七つしか初めからありませんでした。その中から今は六つ指定された,ということなんですね。
 要件としては,やはり大学をこれからどう変えていくかという,大学改革が一番大きなハードルだったと思うんですけれども,相当思い切った変化をするので,大学設置・学校法人審議会でも,少し思い切った取組については好意的に審査してもらったというところはあると思います。
 ただ,大学設置・学校法人審議会というのも長年の歴史があるので,例えば,改革において教員の数とか学生の定員を変更するとなると,物すごく面倒なことになるので,ほとんどの大学が恐らくそういうところは変えずに,教育のシステムや研究のシステムというところを変えていったのでないかと思っています。
 それから,何か特区みたいにいろいろなことをやるのを許してくれるかというと,これは少し厳しかったですね。指定国立大学法人になって何ができるようになったのですかと言われても,例えば大学がベンチャーのようなものに投資ができるような仕組みですね。そういうようなことを本当に一つか二つできるぐらいしか,指定国立大学法人になったために規制緩和を頂いたことは,まだ余りないですね。
 ですから,飽くまで指定国立大学法人の場合は,ブランドですね。日本で幾つしかない大学だということが大きくて,それをベースに世界と戦える大学みたいなことで指定というようなことですから,フラッグシップ大学とは少し違って,やはりこれは教員の養成というものに対するいろいろなチャレンジですから,要件が最初に申請できるのに付けられるかどうか,その辺あたりも議論をしなければいけないかと思います。
【加治佐主査代理】  多分,ブランドだけだったら,変わらないと思うのですね。変えられないと言った方がいいと思いますね。先生の大学は,もともと外部との関係も含めて規模が大きいですが,我々はそうではない。だから,何らかのそれなりの仕組み,例えば,支援と規制緩和などがないと難しいかなと思います。
【三島主査】  ほかにいかがでしょうか。
 今までの意見が出ていますが,髙田教員養成企画室長,何かコメントなどがございましたらどうぞ。
【髙田教育人材政策課教員養成企画室長】  ありがとうございます。資料7に改めて戻っていただきまして,本日かなりこれに関連する御意見を頂いたのですけれども,やはり今後の議論を深めていく上で,教員養成のフラッグシップ大学の目的や果たすべき役割といったようなところで,先ほどの御議論であったように,研究開発機能が非常に強い,または,規制を外すところと,場合によっては逆により強めていくような部分もあるかもしれませんけれども,そういったような議論を今後更に深められたらなと思っています。また,研究開発も,では,どういう研究開発なのかというような議論も,また今後進めていければなというふうに思っております。
【三島主査】  それでは,ほかに何か御意見ございましょうか。水落委員,どうぞ。
【水落委員】  資料7の3番に,教員養成フラッグシップ大学における大学教員の養成・採用・研修についてとあります。その下に,優れた大学教員を再生産する博士課程等の在り方というのが出てきました。先ほど主査や主査代理がおっしゃったこととリンクすると思うのですが,フラッグシップ大学に選ばれたらこんないいことがあるよというものの中の一つに,例えば,Ed.D.が出せるというようなことも検討してみる価値はあるのかなと思いました。
 では,そのためにどんな基準を満たしたらいいのか。その基準を作っていくとなると,また教員養成大学に必要なものが見えてくるのだろうと思います。
【三島主査】  それは規制緩和を含めてということですよね。
【水落委員】  はい。規制緩和を含めてですね。先ほど私が言ったことと関連して言うのであれば,例えば,フラッグシップ大学になった場合に,単位数が柔軟になってくるとか,その分,別のハードルをクリアするんだというような形になってくる。そこで研究した成果がまたマスターやドクターや,例えば,Ph.D.だけではなくてEd.D.につながるんだというような大学を構想していくということもありなのかなというふうに感じました。
【三島主査】  安藤委員,どうぞ。
【安藤委員】  二つお話しさせてもらいたいのですけれども,大胆な話をさせていただければということで。
【三島主査】  大胆に行きましょう。
【安藤委員】  課程認定の問題と関わってくるんですけれども,今回,コアカリキュラムができて,そのコアカリキュラムにかなり教員が縛られて,教育の幅が,ある意味では狭められてしまった。現実ではそういうことがあって,確かに教育の質を担保するということにおいてはコアカリキュラムも非常に大事だと思いますけれども,もしフラッグシップ大学を推進するのであれば,新たな自分たちの創造的なカリキュラムというものも是非見据えていただけると,少し変化が出てきて,地域の強みを生かした大学づくりや,教員養成ができるのではないかなということを思います。
 というのは,どうしてもコアカリキュラムの中にやらなくてはいけない,教えなくてはいけない内容が決まっていますので,どうしてもやりたいことを外してそこに持ってくる,ということが非常に多かったのではないかなと思います。ですから,再課程認定のところで皆さん大分苦しんだと思いますけれども,そういうコアカリキュラムの見直しということが自由にできるということがもしできればということが一つ目です。それから二つ目は,教職大学院で私たちも最近よく,三村委員とも話をしているのですが,大学間連携というか,協働プログラム実施という,それぞれの大学の持っている強みをうまく生かして,協働実習プログラムみたいなものができないか,という話をしております。
 これは,私たちの大学がある岡山県と静岡県で話を今後進めていこう考えているのですが,例えば,そういう協働実施プログラムみたいなものもカリキュラムの一つに入れていただいて,それが自由に地域を越えてどんどん実施できるということを,学びの場面として認めていただけるような,そういう自由度のあるものです。そうすると,やはり大学で教えなくてはいけない科目とか,その見直しも含めて大胆にさせていただくことも,今回のフラッグシップ大学の大きな魅力だと思うし,それから,あえて言えば,地域の課題に向かう,そういう内容も推進できるのではないかなということを思いますので,そういう意味では,協働実施プログラムみたいなものがうまく機能して,お互いの大学が啓発されながら高まっていくといいなということを思って,そんなことを少し期待しています。
【三島主査】  今おっしゃったことは,多分,できるのではないかと思いますね。今の大学改革,あるいは指定国立大学法人の話の中でも,今おっしゃったような,もちろん外形的なことですけれども,例えばそういう新しい,他大学と一緒に協働で作る科目やシステムを作るというようなことだったらできるのではないかと思います。
【安藤委員】  課程認定の問題がかなり厳しいので是非。
【三島主査】  そうですね。ほかにございますでしょうか。
 ないようでしたら,本日は第1回ということで,いろいろな御意見を頂きましたので,第2回までに加治佐,主査代理と,それから事務局と相談をして,どういう流れで議論するかを考えた上で第2回に臨められればと思いますので,よろしくお願いします。
 それでは,平野大臣官房審議官がお見えになっているので,一言御挨拶いただければと思います。
【平野大臣官房審議官】  どうも大臣官房審議官をしております平野でございます。本日はお忙しい中お集まりいただきまして,様々な角度からの非常に深い議論をしていただきまして,本当にありがとうございました。
 この教員養成のフラッグシップ大学検討ワーキンググループの議論で,非常に難しいのは,これまでにないものを作らなければいけませんので,将来時点を想像して,バックキャストして作るということです。なかなかほかの中央教育審議会などではやってきていないやり方なんですけれども,さらに,将来の姿が見えないというところで,二重に難しいところがあるのかなと思っております。
 ただ,本日,スタートとしましては,大変良いスタートが切れたというふうに内心思っておりまして,先生方の忌憚のない御議論で私どもを導いていただければというふうに期待しております。どうかよろしくお願いいたします。
【三島主査】  どうもありがとうございました。
 それでは,少なくとも大きく変わるチャンスであることは間違いないので,それを,千載一遇の状況ですから,是非委員の皆様方と一緒にいろいろな意見を出し合って,年内にまとめるということですから大変だとは思いますけれども,よろしくお願いいたします。
 では,本日はどうもありがとうございました。

── 了 ──

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