教育課程部会 児童生徒の学習評価に関するワーキンググループ(第5回) 議事録

1.日時

平成30年6月19日(火曜日) 10時00分~12時00分

2.場所

東海大学校友会館「望星の間」

3.議題

  1. 児童生徒の学習評価の在り方について
  2. その他

4.議事録

【市川主査】  定刻となりましたので,ただいまより教育課程部会児童生徒の学習評価に関するワーキンググループの第5回を開催させていただきます。
 初めに,本ワーキンググループの審議等については,初等中等教育分科会教育課程部会運営規則第3条に基づいて,原則公開により議事を進めさせていただきます。それとともに,第6条に基づきまして議事録を作成して,原則これも公開するものとして取り扱うこととさせていただきます。よろしくお願いいたします。
 なお,本日は,報道関係者より会議の撮影及び録音の申出がございます。これを許可しておりますので,御承知おきください。
 それでは,事務局より配付資料の確認をお願いいたします。
【白井教育課程企画室長】  お手元の議事次第にございますとおり,本日資料1から資料5までをお配りしております。不足等ございましたら,お申し付けください。
【市川主査】  資料についてはよろしいでしょうか。
 それでは,議事に入ります。本日,特別支援教育における学習評価の現状等について,川間委員からお話を頂きます。特別支援教育における指導要録の在り方,それから障害のある児童生徒の学習評価等につきましては,別の機会に御議論いただくことを予定しておりますが,本日は,まず特別支援教育において,どのような評価が実施されているのかという御説明を頂ければと思います。
 その後,若江委員及び河野委員に,民間のお立場から学習評価について御意見を頂きます。
 続いて,学校における働き方改革特別部会の委員でいらっしゃいます妹尾先生から,学校の働き方改革の視点から見た学習評価の在り方について御発表いただきます。
 それでは初めに,特別支援教育における学習評価の現状等について,川間委員から御発表をお願いいたします。
【川間委員】  おはようございます。特別支援教育の教育課程と学習評価というところでお話をさせていただきます。
 まず特別支援教育についてですけれども,障害のある子供たちの障害の状態に応じて,その可能性を最大限に伸ばしていくというところで取り組まれているものになります。このスライドの下の方に,仕組みとしての学びの場として,特別支援学校,特別支援学級,それから通級による指導という学びの場があります。このほかに通常の学級の中で特別な支援を受けている子供たちも多くいるということになります。
 こちらは,現在どのぐらいの人数の子供たちが特別支援教育を受けているかということを示したものになります。
 まず一番上に特別支援学校があります。障害種別としては,視覚障害から肢体不自由まで5障害種別ありますけれども,約7万2,000人の児童生徒が受けています。ここにありますのは義務教育段階の子供たちだけの数になりますが,これが平成19年度比で1.2倍に増えています。
 その下に,小・中学校では特別支援学級を設置することができます。そこでは23万6,000人の児童生徒が受けていて,これも平成19年度比で2.1倍に伸びています。
 それから,その下に通級の学級,通級による指導というのがございます。こちらは通常は通常の学級に在籍していて学習を行っているんですけれども,週に何時間か障害に対応した指導を受けるというシステムになっています。こちらも現在10万9,000人ということで,学齢児の1.1%,平成19年度比で2.4倍に増えています。この通級による指導が,恐らく今後の特別支援教育の中では更に拡大していくものと思われます。現在,通級による指導はいろいろな取組がされておりますので,47都道府県それぞれで,その進め方は一律ではなく,様々な工夫で取り組まれているところになります。
 さらに,一番下に書いてありますけれども,発達障害の可能性のある児童生徒6.5%と書かれていますが,これは通常の学級に在籍している児童生徒のうち,発達障害があるだろうと推測されている数が6.5%になります。この6.5%の中には,上に書いてある通級による指導を受けている子供たちも多くありますが,受けていない子供たちも5%以上ということになります。恐らく特別支援教育の対象となる児童生徒は,おおよそ推測ですが9%強というところになるかと思いますが,この数値は,アメリカやヨーロッパのいわゆる先進国と言われている国々の数値と大体同じぐらいかなと思っています。
 この特別支援学校の教育課程なんですけれども,一人一人の障害の特性や発達の状態に対応するために,通常の幼稚園,小学校,中学校の教育課程に加えて,様々な個に応じる仕組みがあるということになります。
 まず特別支援学校の教育課程ですが,視覚障害,聴覚障害,肢体不自由,病弱の障害種別の学校の小学部,中学部,高等部では,それぞれ小学校,中学校,高等学校の各教科等と,それに加えて自立活動という障害に対応した領域で編成をされています。基本は小・中・高と同じと考えていただければと思います。
 その下に書いてある特別支援学校(知的障害)小学部,中学部,高等部ですが,知的障害のある児童生徒の教育課程,特に各教科の目標,内容に関しては,そのまま小学校,中学校,高等学校と同じというわけにいきませんので,知的障害のある子供たちについては各教科の目標,内容を小・中・高等学校とは別に作成しているところになります。特に高等部等になると,主として専門学科において開設する各教科等も独自に設定されていますので,複雑な状態になってきます。
 続いて,こちらは重複障害等に関する教育課程の取扱いとはなっておりますけれども,一人一人の障害の状態や発達の状態に対応するための工夫がされているところになります。
 まず一番左の方です。一番左の方は,知的障害である児童生徒というところですが,知的障害のある児童生徒の場合には,知的障害,特別支援学校の教科を学ぶのですけれども,その内容をおおむね習得している場合には,通常の小学校あるいは中学校の教科の内容を学ぶというようなことが今回新たに設けられているところになります。
 それから,左から2つ目のところですけれども,これは通常の教育課程ですが,特別支援学校における通常の教育課程の編成は,各教科,道徳科,外国語活動,総合的な学習の時間,特別活動,自立活動ということで,先ほど言いましたように,小・中の教育課程に自立活動が加わっている形になります。
 そして,この真ん中の長いところですけれども,ここが個に応じる仕組みであるところなんですが。道徳科とか外国語活動の取扱い等も,それぞれ定めて書いてあるんですけれども,分かりやすく書いてあるところとしては,まず一番ここの真ん中の左のところですが,各教科及び外国語活動の目標及び内容に関する事項の一部を取り扱わないことができるということが書かれています。これは,例えば肢体不自由が重度である場合に,小学校,中学校の体育の内容をそのまま取り扱うことが非常に難しい等々のことがあったり,それから全盲の子供たちが図工や美術の鑑賞であるとかいうところを目で見て味わうとかいったところは,そのまま取り扱えませんので,別に代替する等の工夫が行われていることになります。
 そして,ここのところが重要なところかなと思いますけれども,ここの欄のところです。各教科,各学年の目標及び内容の一部又は全部を,当該学年の前各学年の目標及び内容の一部又は全部によって替えることができるということがあります。例えば,小学校4年生の児童がいて,国語は4年生の国語をやっているんですが,算数の場合に,なかなか繰り上がりあたりがクリアできていないので,1年生の内容を取り扱っていくとか。一つの,例えば算数の中でも,式と計算等は大丈夫なんだけれども,知覚障害の関係で,図形とか数量関係の取扱いはちょっと学年相当には扱えないので,前の学年の内容でしっかり固めていくとかというふうに,教科ごとに,その子の学びの状態に合わせて,前の学年の内容を取り扱うことができるということが書かれていることになります。
 それから,こちらの右から2つ目の固まりのところなんですが,知的障害を併せ有する児童生徒の場合ということが書いてあります。ここは,各教科の目標及び内容に関する事項の一部又は全部を,知的障害を有する児童生徒のための各教科の目標及び内容の一部又は全部によって替えることができるということになります。特別支援学校の場合は小・中・高等学校の教科が原則になりますが,知的障害を伴っている場合には,その知的障害を有する児童生徒の教育を行う特別支援学校の教科の内容に替えるということがあります。
 さらに一番右の方ですが,重複障害があって教科の指導が非常に難しい子供たちの場合には,各教科や道徳,外国語活動若しくは特別活動の目標及び内容に関する事項の一部又は各教科,外国語活動若しくは総合的な学習の時間に替えて,自立活動を主として指導を行うことができる。これは非常に障害が重度で,例えば自分で座ったり立ち上がったりすることができず,かつ音声言語によるコミュニケーションが非常に難しいといった児童生徒の場合には,教科の学習等々に替えて自立活動の内容を中心として扱っていくことができるという工夫になっていきます。
 このように子供たち一人一人で学んでいく内容を決めていくわけですけれども,それについては個別の指導計画というのが,特別支援学校には作成が義務付けられています。一人一人の実態に応じて決めていきますが,一番上に書いてあるのは,学習指導要領のところにも書いてあるところですけれども,各教科等の指導に当たっては,個々の児童又は生徒の実態を的確に把握し,次の事項に配慮しながら個別の指導計画を作成することということで,教科等の指導に当たっても個別の指導計画で,どういった内容を取り扱っていくのかということを定めて指導することになります。
 その下2つ,2段書いてあるところは自立活動の指導についてですが,障害に対応した指導を行うわけですけれども,これについても当然,一人一人,障害の状態等異なることから,個別の指導計画に基づいて指導を行うことになっています。
 こちらが自立活動というものの内容になります。これは昭和46年の学習指導要領の改訂で,それぞれの盲学校,聾学校,当時の養護学校等で取り組んでいた障害に対応した内容をまとめて養護訓練というものとし,さらに,その内容を通常学級に在籍している障害のある子供たち等のことも念頭に入れながら,何回かの改訂を繰り返して整理されているものになります。目標は,個々の児童又は生徒が自立を目指し,障害による学習上又は生活上の困難を主体的に改善・克服するために必要な知識,技能,態度及び習慣を養い,もって心身の調和的発達の基盤を培うというところで,内容が1から6,6部27項目に整理されています。
 この自立活動の指導は,その児童生徒一人一人について,その実態に応じて,ここに書かれている内容の中から,特に指導する必要があるものを選択して,相互に関連付けて具体的な指導目標や内容を設定していくことになっていきます。ここに書いてあるもの全て指導しなさいというのではなくて,その一人一人に応じた内容を取り上げていくことになっていきます。
 続きのところですが,ここは知的障害者である児童に対する教育を行う特別支援学校の各教科というところで,いわゆる知的障害特別支援学校の各教科の目標,内容は,小学校,中学校あるいは高等学校の各教科の目標と内容と異なるということになります。例えば,まだ音声言語を持っていないとかいう子供たちに通常の小学校1年生の内容を授業で行いましょうというのは非常に不適切な状態になりますので,そうした子供たちのことも念頭に置いて内容が整理されているものになります。
 これも,今回の学習指導要領の改訂までは,知的障害の教科の内容は,僕から見ると小学校や中学校の各教科の目標や内容との整合性,余り考えずに作成されてきたかなということがあるんですが,インクルーシブ教育システムを進めていく中で,特別支援学校の知的障害の教科についても,幼稚園,小学校,中学校との関連というか,つながりを意識して作成,検討し直したというのが今回のものになります。
 どういったものになっているのかというところですけれども,例えば国語の方を一部リンクしてお示しします。これは国語の一部抜粋のところになりますけれども,今回の整理は小学校,中学校と同じように知識及び技能,思考力・判断力・表現力等と学びに向かう力・人間性等という3つの観点から教科の内容を,知的障害の教科も整理をしています。
 内容のところを見てみますと,例えば小学部の方では内容を1段階,2段階,3段階ということに示しています。知的障害の特別支援学校の1年生に入ってくる子供たちで,平仮名を習得するということが可能に考えられるケースは多分ほとんどありませんので,それよりも前の段階というところで,ざっと内容を見ますと,おおよそ1歳から五,六歳ぐらいまでの内容を3つの段階に分けて,それぞれ目標と内容を見ているというものになります。
 それも内容の整理の仕方なんですけれども,例えば1段階のところも,その内容は知識・技能と,それから飛んでしまいますが,思考力・判断力・表現力というところで,基本的に小学校の方の示し方に準じた形で内容を示しています。ここで扱っていくところですけれども,1段階のところの,例えば内容,知識・技能のところですけれども,ここに書かれているアのところですが,言葉の特徴や使い方に関する次の事項を身に付けることができるよう指導するということで,その(ア)は,身近な人の話し掛けに慣れ,言葉が事物の内容を表していることを感じることとか,イ,言葉の持つ音やリズムに触れたり,言葉が表す事物やイメージに触れたりすることというようなことが書かれております。おおよそ発達的に見ると,1歳台ぐらいの内容かなと思いますけれども,こうしたものをずっと積み上げていって,3段階ぐらいになりますと,小学校の1年生にかなり近づいてくるような内容も取り扱われていくことになっていきます。3段階の今のところの内容ですと,身近な人との会話や読み聞かせを通して,言葉には物事の内容を表す働きがあることに気付く,それから姿勢や口形に気を付けて話す等が書かれています。というようなことで国語が示されていることになります。
 ほかの教科も,算数等も同じになってきます。
 実は現行の学習指導要領で書いてある知的障害の教科の内容というのは,一人一人に応じる必要があることから,かなり大綱的な示し方をしていたので,書かれている分量は余り多くないんですけれども,今回は幼稚園,小学校,中学校と連続性,関連性,内容の共通性を保たせる観点から,幼・小・中の内容もかなりリンクをさせて作っている関係で,文字数を考えた人から見ると,30倍記述が増えているというふうに,かなり中身を充実させて作ったものになります。
 あと,この特別支援学校の教科の指導のときに特徴的な取扱いとして,学校教育法施行規則の第130条というものに基づいた取扱いがあります。130条の1は,各教科を全部又は一部について合わせて授業を行うことができるという合科ということと,2番目が,特に知的障害者である児童若しくは生徒又は複数の障害を併せ有する児童若しくは生徒を教育する場合において特に必要がある場合は,各教科,道徳,外国語活動,特別活動及び自立活動の全部又は一部について,合わせて授業を行うことができるということがあります。いわゆる国語とか,算数とか,教科別の授業ではなくて,その教科や領域を合わせた授業ができるということで,各学校が適切に定めるということで,例えば数,言葉という授業を設定してみたり,そういったことがあります。さらに知的障害教育では,昔から生活単元学習であるとか作業学習等が行われてきておりますけれども,こうしたものも教科等を合わせた指導ということになります。
 こうした子供たちの学習評価を考えていくときに,こちらは小学校段階にある子供たちの例ですが,これは平成22年に小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校における児童生徒の学習評価及び指導要録の改善についてという通知の中で,特別支援学校のことについて触れられているところになります。障害のない児童生徒に対する学習評価の考え方と基本的に変わるものではないが,児童生徒の障害の状態を十分理解し,一人一人の学習状況を一層丁寧に把握することが必要であって,そのために特別支援学校では個別の指導計画の作成が義務付けられたことから,当該計画に基づいて行われた学習の状況や学習の結果の評価を行うことが必要ということが書かれています。
 特に下に書いてあるところですけれども,児童の障害の状態に即して,学校教育法施行規則130条の規定に基づき各教科の全部若しくは一部について合わせて授業を行った場合又は各教科,道徳,外国語活動,特別活動及び自立活動の全部若しくは一部について合わせて授業を行った場合並びに特別支援学校小学部・中学部学習指導要領第1章第2節5の規定,これは先ほど説明した重複障害等に関する教育課程の取扱いですが,これを適用した場合にあっては,その教育課程や実際の学習状況を考慮し,各教科等を合わせて記録できるようにするなど,必要に応じて様式を工夫して,状況を適切に記入する。各教科等を合わせて授業を行うことができることから,指導要録の場合も教科別に記載しないことができるということが書かれているものになります。これは後で,また説明をします。特に知的障害がある場合です。
 知的障害がない場合には,通常の小学校,中学校と同様の観点別評価を行い,それに自立活動という評価が別に加わっていることになります。
 こちらが知的障害のある児童生徒に対する教育を行う特別支援学校の指導要録の教科のところの形式になります。この表を見て分かるように,横の罫線がなくて,教科ごとに示すことになっていませんし,さらに,これも先ほど通知で,観点ごとに評価することはせず,学習評価における観点を示していないというのが知的障害の教科の特徴ではありました。
 では実際どのように記入していくのかというと,例えば一番左の1年生のところだと,教科が左には書いてあるんですけれども,日常生活の指導というところで,その後が記述になります。教師の援助を受けながら上着を着ることができるようになったとか,具体的な子供ができるようになったことを記載していくという形で,ずっと行われていきます。日常生活の指導のほかに生活単元学習であるとか,遊びの指導であるとか,もちろん音楽とか,体育とか,教科別に行っているものもありますが,全て記述ということになっていきます。
 これが現行なんですけれども,今回の知的障害の教科のところを定めたことによって,この2016年の12月に,知的障害者である児童生徒に対する教育課程からどのように評価していくのかということについて,児童生徒一人一人の学習状態を多角的に評価するため,各教科の目標に準拠した評価の観点による学習評価を導入し,学習評価を基に授業評価や指導評価を行い,教育課程の改善・充実に生かすことができるPDCAサイクルを確立することが必要であると。すなわち知的障害の教科においても観点別評価を行うということが書かれています。
 これはいろいろな理由があると思うんですけれども,先ほどあったように,各教科等を合わせた指導が行われてきたわけですが,どの教科の内容を,どういうふうに合わせて指導してきたのかが非常に,実際としてはかなり曖昧な状態になっていますので,これを子供たちが学ぶべき内容を明らかにして,根拠に基づいて指導し評価をするということから,例えばここに書いてあるような生活とか国語,教科ごとに観点を設定していって評価をするということが考えられます。
 ただし,小学校や中学校のような評価とはいかず,観点別に記述評価にならざるを得ないというのは,一人一人の子供たちの状態が異なることから,観点別評価を行いますけれども,その観点に基づいた記述の評価を行うのが妥当ではないかと,現状で僕の方では考えているところになります。ここが新しいところになっていきます。
 それから,今回の学習指導要領の改訂では,小学校や中学校の学習指導要領に特別支援教育のことがしっかりと記載されてきました。第1章総則第4児童の発達の支援の中に,特別な配慮を必要とする児童への指導ということがあります。そこの(1)障害のある児童などへの指導では,障害のある児童などについては,特別支援学校等の助言又は援助を活用しつつ,個々の児童の障害の状態に応じた指導内容や指導方法の工夫を組織的かつ計画的に行うものとするということがあり,さらに具体的なことが定められています。
 小・中学校においては特別支援学級がありますが,ここの一番上にありますように,ア,障害による学習上又は生活上の困難を克服し自立を図るために,特別支援学校小学部・中学部学習指導要領第7章に示す自立活動を取り入れること。今までは,これが余りはっきりと記載されていませんでした。
 それからイの方。児童の障害の程度や学級の実態等を考慮の上,各教科の目標や内容を下の学年の教科の目標や内容に替えたり,各教科を,知的障害者である児童に対する教育を行う特別支援学校の各教科に替えたりするなどして,実態に応じた教育課程を編成する。ここの特別支援学級の教育課程の編成に当たっても,下の学年の教科の目標や内容を取り扱ったり,先ほど紹介した知的障害者を教育する特別支援学校の教科の目標,内容に替えることを適切にやりましょうということが書かれています。
 それからウは通級による指導の場合ですけれども,この通級による指導の教育課程の場合は,特別支援学校の自立活動の内容を参考として具体的な指導の目標や内容を定めるということがあります。
 こうしたことを受けて,障害のある児童生徒の学習評価,小学校段階の場合ですが,特別支援学級に在籍する児童の場合は,特別支援学校小学部の指導要録に準じて作成するということがありますので,基本は小学校の指導要録ということになりますけれども,子供によって下の学年の教科の目標,内容を取り扱っている場合などについては,今でも特別支援学校はそうしているんですが,指導要録に付表を付けて,具体的にどこの学年の内容を取り扱ったのか。4年生であっても,3年生のこの内容,2年生のこの内容を具体的に取り扱いましたよというような付表を付けて,記述的に評価をしているというのが,現状では,そうやって対応しています。
 それから,知的障害の特別支援学校の内容を取り扱った場合には,現状では知的障害の特別支援学級では,知的障害の特別支援学校のように教科の横の罫線がなくて,教科ごとではなく,また観点別ではなく,評価を記述でしているというのが現状かなと思います。現状では,ここのところをどういうふうにしていくのかというのは課題としてあります。
 2番目の通級による指導や,それから通級による指導の対象となっていない教育上特別な支援を必要とする児童生徒の場合は,現状では総合所見や指導上参考となる諸事項の欄に記述することになっていますが,これについては学習指導要領が今回改訂されても,同じようにこの欄に記入するということで対応できるのではないかと考えています。
 ちょっと長くなりましたが,以上で発表を終わらせていただきます。ありがとうございました。
【市川主査】  どうもありがとうございました。冒頭に申し上げましたとおりに,別途,特別支援教育における学習評価の在り方については議論する機会を設ける予定です。特別支援教育における評価の現状についてお話を頂いたわけですが,少し時間も押しておりますし,また是非,今の内容に対して御意見,御質問ということがあれば,最後のところでまとめて時間を設けますので,そこで出していただければと思います。
 それでは次に,民間の立場から見た学習評価について,若江委員から御発表をお願いいたします。
【若江委員】  ありがとうございます。よろしくお願いいたします。キャリアリンクの若江でございます。
 私どもの事業はちょっと分かりにくいので,最初に立場的なところを御説明をしたいと思うんですが,今,いろいろな企業さんがCSRで学校教育を支援をしてくださっています。その橋渡しをしているような会社でございます。主に公教育に特化をして活動しているんですが,具体的に事例を申しますと,今,川間先生からお話がありましたような特別支援教育の実態,実は企業も障害者雇用が義務付けられておりますので,こういった情報をいち早く企業の人事に伝え,インターンシップの受入れであるとか,それとか学校訪問であるとか,企業訪問であるとか,そういったことの連携をできるだけ社会とつなげていこうと,そういう活動をしている立場でございます。
 本日私がお話をさせていただきたいと思っておりますのは,これまでいろいろと丁寧に教育現場における評価の在り方や方向性,取組についてお聞かせをいただいてまいりました。実は産業界も同じでございまして,評価は今までは管理者による評価だったのが,やっぱり,これから管理のための評価だったのが人材育成のための評価に変わっていかなきゃいけないということで,全く同じ視点でございますので,どちらかというと,今,産業界ではどのような取組で実際,新しい評価を導入しているかということを少し情報提供させていただきたいと思います。
 例えば学習指導要領に当たる部分が,企業にとりましては,この企業理念であるとか経営目標に当たります。それを各個人がどのように理解をして,その中で貢献をしながら自己成長していくかということが今,企業で一番求められているところになりますので,そこについて少しお話をしていきたいと思います。
 今までのところ,新しい学習評価の在り方ですとか,そのためにはこれが重要で,観点別評価について,とても重要なんだけれども現状,今,学校現場ではなかなかそれが理解されていない。だからこそ規準や基準がなかなか設計できず,先生方,現場にとっては評価への負担感だとか不安が増大しているというような,そんな現状の中で,だとしたら,産業界の考え方としては,できそうなところからやってみて,トライアル・アンド・エラーをしていくべきだと思っております。
 ビジネス界の人材評価の目的としては,まずは,要するに改善の糸口を見付け出すということが一番の狙いになっておりますので,大切なことは,個人,実はそれぞれの人たち,マネジャーもそうですし,本人もそうですし,その人たちがきちんと,評価とはどういうことなのかということをしっかり理解することがまず大切で,この個人の理解自体に基づく自己成長。つまり,やるべきことと目標であるとか,そのプロセスやステップそのものを知ることがとても重要で,そのプロセスやステップの,今自分はどの位置にあって,どんな状態にあって,どうならなきゃいけないのかということを常に認識をしていくことによって,自己成長につながっていくということでございます。
 ですので,具体的に私どもで取り組んでいることというのは,実は教育界で使っておられるルーブリックだとかいろいろなことを産業界の中に取り込ませていただきました。
 まず,俗に言う評価の目標ですね。事業の目標達成に向けて個々がどんなことをしなきゃいけないのか。そのために評価の規準を明確に,要件を具体的に提示するということですね。これが,まさにルーブリックなんかで言う規準に当たるところだと思います。
 そして,その指標について,自己評価とのギャップを,管理者が丁寧に説明をすることによって相互理解を促していきながら,その共有から,究極的には個々人が自分の目標を設定できるようになっていくということを繰り返しております。
 そのため,どんなステップを踏んできたかといいますと,実は4年ぐらいは掛かっているんですね。一足飛びに評価がうまく機能するかというと,決してそうではないので,私どもが,これを学校にというふうに置き換えていただくか,教育委員会でというふうに読み替えていただくかですけれども,1年目は,まず評価とはこういうことなんだということを徹底的に議論をし,理解をし,そして,これがベストかどうかは分からないけれども,仮の評価指標を策定してみるということに1年目を費やしまして,2年目は,それを実施をしてみて,本人とマネジャーの結果を比較をしながら,その評価規準の改訂を2年目にやりました。そして,ようやく3年目に,これだったらいけるのではないかというような評価指標をうまく作りながら,そこには数値的な目標も加えていき,きちんと,より良い内容に明文化するということを3年目にようやくできるようになってきています。そして4年目は,更に上を目指すために,個人が自分の目標についてきちんと考えられるようになる。つまり,評価の意味はどういうことかということが腑に落ちることによって,自身で自身の目標を設定するというような,そんな展開に至っております。ですので,評価をきちっと運用しようとすると,やはり3年以上は掛かるということでございました。
 評価の要件としては,受ける者にとっては当然,行動の目標を具体的に与えることになりますし,評価者がたくさんいますので,評価の狙いを共有できなきゃいけないということですね。そして,相互にとって評価の視点がクリアでなければ,いい評価はできないと考えております。
 ビジネス界では360度評価ということが一般的になっておりまして,自己を中心に上位職者だけが評価をするのではなく,同僚ですとか,部下ですとか,管理者であるとか,時には外資の企業によっては,協力先だとか,外部の人たちにも,コンプライアンスの関係もあって,評価を求めるというようなこともあります。そのためにも,やはり評価の透明性,客観性,一貫性が非常に重要になってくるというところでございます。
 ここでよく言われるのが,それだけのことをしていくとなると,人的な負担がすごく掛かるんじゃないかということで,これまでの議論の中でも,評価をすることによって教員の負担が増えていくというようなこともありましたが,そこはやはり,うまくテクノロジーを活用して,民間で提供されている,私どもの場合はTeamUpというソフトを使いまして,そこで負荷なく,うまく合理的に評価を一元化するというような,こんなツールの活用も不可欠になっております。
 360度評価をする場合の一番の狙いは何かというと,やはり評価する側とされる側の両方のことを経験するということが非常に重要でございまして,常に上位職者は評価をする立場であると,いつの間にか欠けている部分ができてくるんですね。ですので,この自己評価と他者評価をうまく組み合わせることによって,ただ本人自身は自己の改善の視点を得るとともに,他者の成長への貢献ができていると,そういう連携も深まってくると思っております。
 ですので,いろいろな意味で,これがもし,児童生徒がこのような評価を何度も何度も小学校段階から繰り返していくことによって,自身の学びが,将来的には仕事ですね,能動的なアプローチに変わっていくという,それを実現していくことができるのではないかなと思っております。
 よくあるのが,評価が,教職員の評価の場合にもよく御説明をするんですけれども,最初に年度の初めに何かを決めて,そして中間点で一度決めて,そして最後に年度末に一度みたいな,回数がやはり少ないと,まさにその評価というのは,改善の糸口を見付け出すという機会ですので,できるだけ何度も何度も繰り返して,気付きの機会を多くするということが,人材評価ではものすごく重要視しておりまして,そのために評価者も評価される側も,やはり十分に観察をするということです。人のことに意識を払い注意を向けて,それを繰り返していくことによってコミュニケーションも深まっていくと,そういうメリット。評価というと,ややもすれば,ちょっと冷たい感じになりがちなんですけれども,考え方一つによっては,評価を通してコミュニケーションを深めるというようなことにもつなげられていると思います。
 ですので,産業界の場合には,このようにキャリアパスという目標を設定されていて,それが学習指導要領になるかもしれません。そこに個人の目標として,いろいろな育成指標が与えられていて,ここでもルーブリックなんかを活用させていただいておりますし,手法としても,自己評価,マネジャー評価,役員評価,いろいろな,要するに360度できるだけ多くからの評価をするということを繰り返し行っております。
 ここら辺はルーブリックを使っている事例ですので,余り詳しくは御説明をしませんが,一番上のところのキャリアパスと書かれている,私どもで言うところの役職ごとにルーブリックがいろいろと設定をされているんですが,これは学校で置き換えると,プロジェクトごとだったり,発達段階ごとだったりというようなことかもしれません。
 この辺は業務のスキルを評価するための行動チェックリストになりますので,これは割と数字的にきちっと出てくるので,評定。テストでやった結果が数値で出てくるというような使い方をしているんですが,具体的にどういうふうにしているかというと,私どもで5項目25ジャンルの行動チェックリストを細かに出しておりまして,それを個人がマル,バツ,三角で自己評価を毎月ごとにしていきます。それを単純に,バツであればマイナス1で,三角であればゼロ,マルであればプラス1というような評価をしていきますと,下の表にありますように数値化ができます。単純な数値化ができます。それを個人の評価と,それと上位職者,若しくは関連する同僚の評価とを比較し,ああいうスパイダーチャートなんかで,一番下のところにあるように,この差を見ていくんですね。それによって,この差は何によって生じているのかということを題材に,また話し合いをしたりですとか,自分で考えたりだとかする機会につなげております。
 ですので,学校の指導要録のところなんかでも,もっと個人できちっと自分のことを評価できるようなパートがあれば,それをうまく生かしていけるのではないかなと思います。指導要録というのは今は記録ですけれども,子供たちがもっと使えるような,成長を促していく評価ツールにも転換していけるのではないかなと思っております。
 そして私どもが今,評価を通してキャリア形成を支える仕組みと考えておりますので,このように1年間で何をしていくかみたいなことを最初に提示をして,そのためにどんな学びの機会があるのか,ここでどんな目標を設定して,ここでどんな見返しをするのかということを年度の初めに,このような計画を全てに提示をして,自分でその取組ができるような準備をしてもらうようにしています。
 それを学校現場に置き換えていくと,児童生徒自身が評価者となるためには,いろいろなプロジェクトに応じて,どの段階で,どのような評価をしていくのかというようなことを考える機会,若しくは実践する,経験を積んでいくことが非常に重要なのではないかと思っております。
 ですので,例えば総合的な学習の時間なんかでいくと,プロジェクト全体を見渡して,どのタイミングに,どのような振り返りですとか,どのような評価をすれば,自分自身の成長若しくはプロジェクトの遂行のために役立つのかというようなことを,小さな経験を積み重ねていくということも非常に重要ではないかなと思っております。
 ですので,まさに産業界も本当に評価というものがどんどん変わってきています。ですので,新しい評価を,これから観点別評価でもっと個を重視した評価が大切だということは,もう火を見るより明らかですので,どのように評価を作っていくかということと同時に,運用しながら,教師もそうですし,子供たちも,そのノウハウを身に付けていくという,このことがとても重要ではないのかと思っております。
 評価自体はどんどん,どんどん,今変わっていっているので,先生と子供だけではなくて,学校教育を取り巻くステークホルダー全体ですね。保護者であるとか,地域の方であるとか,まず全ての人たちが,評価とはどういうことなのかという,そのマインドセットを,つまりシフトしないと,前の回のお話にもありましたように,先生方は保護者への説明のために,指導要録のところの細かい記載に時間を費やしておられるとかというようなお話も聞いております。ですので,これからは評定ではない評価へ変わっていくでしょうし,相対評価ではない絶対評価に,そしてもっともっと個に還元できるような評価に変わっていくんだと思います。
 ですので,私どもは,そういう意味では,公教育に関わるコンサルタントとして,まずは評価がどのように変わっていこうとしているのかということを,できるだけニュートラルに,教育委員会を通じてですとか,研修を通じてですとか,PTAの集まりですとか,いろいろなところを通じて,まずそのことをきちっとお伝えをし,その周りの理解を,土壌を整えていくことで学校現場,先生方が取り組んでいかれる新しい評価の実現のお手伝いに少しでも寄与できたらと思っております。
 雑駁になりましたが,私からの報告は以上でございます。ありがとうございます。
【市川主査】  どうもありがとうございました。
 続いて,若江委員と同様に民間企業のお立場から,河野委員から御意見を頂ければと思います。よろしくお願いいたします。
【河野委員】  用意をしていただいている間に少し話をさせていただいていいですか。すみません。
 御紹介いただきました河野と申します。本日は機会を頂きまして,ありがとうございます。
 私,民間の立場といいまして,ちょうど今,若江先生が御紹介いただいた民間企業向けに経営戦略の中で人事,人材をどうしていくのかというところのコンサルタントをしておりまして,当初メーカーの子会社としてスタートしましてから35年ほど,この仕事をさせていただいております。
 本日はその説明ということではなくて,今まで,今回,学習評価という非常に重要なことを研究される立場,実践の立場から,たくさん御教授いただきましたので,それに対して民間の立場として少し感じるところを,所感として話をさせていただこうと思います。ありがとうございます。
 それでは早速なんですけれども,本日は時間も10分以内ということになっていますので,まず大切と思う社会背景,そして2番のところで今回の論点として提示されていること,そして最後にまとめとして,今後に向けて検討しておくべきことということのお話をさせていただければと考えております。
 早速なんですけれども,少し私,切り口が違うかもしれないんですが,今回こちらで学習評価のお話を聞いている中で,ずっと考えていたことが,やはり,どんどん,どんどん,評価ということになると,当然なんですけれども,狭く細かくなります。大前提として,今,社会がどう変わってきていて,そのすごい変化の中の危機感というのを常に,私たちは当たり前なんですが,最終的には諸先生方にもちゃんと伝えることを常にセットで出していくことがものすごく重要だなと感じています。これから先が読めない時代に入る中での教育,そしてその評価ということになると,もっと過去の積み重ねにとらわれなくて良いのではないか,そしてラジカルな視点を持つことが重要ではないかなと考えながら話を伺ったりしていました。
 これは関与させていただいていた高大接続システム改革の最終報告の一部なんですけれども,この色の変わってあるブルーのところ,前書きのように見えると思うんですが,私はこれもものすごく重要だと思っていまして,この上で,これからどうなるのかというところ,これ,いつも諸先生方にも伝える上で評価があるといいなと考えております。
 その次に,もう一つ前提として大切だと思うことをお話しします。現状の認識ということです。これは今,本当に社会が多様化,そして複雑化しているので,子供たちもそうなっているのは当然なんですが,そこで個別対応を求められれば当然,工数が掛かります,時間が掛かります。それと逆に,今の先生たちだけじゃなくて働く人たちは,やはり子育てと,そして中堅,そして幹部になっても,親の介護の負担がありまして,その中で時間という切り口は非常に重要です。それで本日,先生来てくださっているんだと思うんですが,働き方改革と同時に,私は評価についても,プロセスのイノベーションという考え方を用いて,これから考えていく必要があるのではないかなと思っておりました。
 その上で,それらを念頭に置かせていただいて,少し時間がないのでポイントだけになるんですけれども,今回の論点について考えを述べさせていただきます。
 まず最初に観点別のところです。主体的に学習に取り組む態度,これは本当に大切だともちろん思っておりますが,個人的には,これはメッセージ性の強いものであってほしく,児童生徒たちのモチベーションにつながるものになるといいなと考えます。そのためには数値化するのが適切かですとか,評定につながることはなじまないのではないかなと,そんなことを考えながら聞いておりました。
 そして次,また続いて観点別のところで,思考力・判断力・表現力についてですが,これはペーパーテストの開発というのも可能だとは思います。民間でも非常にケーススタディ等を使ってやることがあるんですけれども,ただそれだけでは,今,社会に求めている思考力・判断力・表現力には,ちょっと収まるものではないと思いますので,他の方法も必要だと思いますので,後ほどお話しします。
 もう一つ,私は全教科を通してということが大変重要だと思っていまして,そのために学んだことを生かすおもしろさというのが何か分かるような工夫も必要かなと思います。
 次のポイントで,多面的・多角的な学習についてです。これペーパーテストの結果にとどまらない多面的・多角的な評価ということで,すみません,全部読めないので書かせていただいているとおりですが,特に外部の試験とか検定とか資格なども活用できるんじゃないか。そして高校になって非常に多くの活動ができるようになります。ボランティアもそうですし,NPO活動も参加する人がいます。そういう諸活動こそが,これから大変重要な資質・能力が培われる部分を担っていくのではないかと思うので,そういう多面的な評価ができないかということを考えておりました。
 そして,その続きとして,それらは本当に一人一人,個々に見ていく必要があるんですけれども,個々の評価になりますが,将来の人生設計につながるという観点から大変重要だと考えております。
 そして次に,ちょっとはしょって恐縮なんですが,教職員にとっての効率的・効果的なというところになりますけれども,まず評価というのをシステムとして捉えることが重要ではないか。経営も経営システムという考え方があるんですが,そのプロセスを見える化して共有化するということ,そこにITの活用はもちろんなんですけれども,一人でだけ評価するという発想を抱え込むという発想も,意識の面で消していくというか,必要があるんじゃないかなと思います。
 そして,その他なんですけれども,その他として,教科横断的な視点でというところのポイントを論点として挙げていただいていました。これは非常に重要だと,先ほどとかぶりますが,思っておりまして,例えば1学年に一人一つのテーマを決めて,レポートを書いてプレゼンをする。それを,例えば,各教科の先生が見て,生徒も見て,保護者も見て,地域の人たちも見て,そこでコメントですとか,投票ですとか,いろいろな評価の仕方があると思うんですが,それをオープンなところでそういうことがありますと,そういうものを用いて評価するということもできるんじゃないか。
 そのときに,せっかく各学校で教育目標とか教育理念,上げているじゃないですか。それを生かして,それに沿って照らし合わせるというのも一つではないかなと思います。
 それから,もう最後になってきて,残された時間が2分半ぐらいなんですけれども,最後に検討しておきたいことというか,今後に向けて大切なこととして,これは国民的な議論として大々的な広報をしていく必要があると思います。そして先が読めないので,昔と違って難しいし大変なんです。ですので,その分,評価だって難しいんだよということを,もっとオープンにして語りかけて,社会全体で共有していくことが必要なのかなと思います。それでないと先生方の負担というか,負荷というか,そういうものも多くってくるのかなと思います。
 そして,それ以外のところは見ていただくとおり,キャリアパスポート,そして民間人材の更なる活用。
 一つ,よく地域,民間と言うんですけれども,実は,そこに働いている人たちは相当の教育を受けていて,その中でマネジメント,人材育成をばっちり勉強している人はいっぱいいますので,本気で使っていただけるといいなと思います。
 検討しておきたいこと。次のページになりますが,例えば通知表,これは,日本ではとても重いです。その重い中に数値が刻まれて,一生とっておく。この重さというのを,どう考えますか。過渡期であるのに,その数値を一生持っている。この辺の通知表のよしあしですけれども,重みというのも考える必要があるのかなと思います。
 そして,評価者のアンコンシャスバイアスがあることを前提にして,それを誤差を最小限にする取組として,訓練というのも必要かなと思います。
 もう最後になってきてしまいましたけれども,私は,この評価というのは大変期待をしています。この評価が変わることで,また教育全体が変わってくるので,是非,一人一人の成長を促すというところ。先ほど若江先生もおっしゃっていたなと思って,うれしく思いましたが,是非お願いしたいということと,三方良しの精神というのが私たちにはありまして,児童生徒,そして教員も,そして社会全体が,これが変わることによって良くなるんだということを,また国民全体の議論の中で醸し出していけたらなと思います。
 ちょうど10分になりましたので,ここまでにさせていただきます。どうもありがとうございました。
【市川主査】  どうもありがとうございました。
 それでは続きまして,学校における働き方改革特別部会の委員を務めていらっしゃる妹尾委員から,学校における働き方改革の観点を踏まえて,学習評価ということについて御発表をお願いいたします。
【妹尾先生】  皆さん,おはようございます。妹尾と申します。どうぞよろしくお願いします。
 私は一民間人ではありますけれども,校長先生だとか教職員向けの研修会なんかをよくやっておりまして,学習評価は専門外ではありますが,学校の先生方のいろいろな声を集めておるつもりですので,本日はその一端をお話しできればと思います。どうぞよろしくお願いします。
 小・中学校を中心にお話ししますが,高校も同じような問題があると思いますけれども,学校の実態を踏まえた指導要録や学習評価の在り方について幾つか問題提起を本日はさせていただこうと思います。
 学校が忙しいというのは,もう随分有名になりましたけれども,恐らく皆様が思われている以上にひどい状態であります。こちらのデータは,本当は横並び比較は厳密にはできないんだけれども,総務省の労働力調査で,幾つかの業界についての過労死ラインと呼ばれている週60時間以上働いている人の比率を表したものです。教員勤務実態調査という調査で,小学校,中学校の実態も分かりますけれども,自宅残業も含めているので,少しかさ上げしたデータにはなりますが,学校ほど,これだけ過労死ラインの方が多い業界はないということであります。もちろん学習評価,すごく大事だと思いますが,先生方にどれだけのゆとり,余裕があるかということがクエスチョンであります。
 次のデータは,個別のデータですので,非常にえぐいといえばえぐい話だと思いますが,これは名古屋市の中学校の新採の先生の全ての時間外勤務記録です。月当たり。労働時間ではございません。時間外勤務時間の記録です。
 こちら見ていただきますと,分かりやすいように,なるべく,黄色の部分が過労死ラインと言われている月80時間以上残業の方,あるいはもっとひどい月,130時間以上の方,赤色にしていますが,ご覧いただければお分かりのとおり,結構連続している方とか,1年目から非常に過酷な方々がいるということです。もちろん新採ですので,初任研もあるし,授業とか,校務とか,学級経営に慣れないということで,いろいろな困難があるとは思いますけれども,非常にたくさん働いているという状態であることは御認識いただければと思います。また必要であれば,後で御質問いただければと思います。
 次の4ページ目のデータは,じゃあ,どれぐらいの授業のコマ数を持っているのかという話なんですが,これもよく知られているとおりなんですが,小学校の先生,非常にコマ数多いです。26コマ以上という方が約半数いらっしゃるということで,中学校でも約2割ぐらいが,そういう方です。あるいは,そうじゃなくても21から25コマということで,はっきり申し上げて空き時間がない,空きコマがないということです。小学校の先生,よく膀胱炎が職業病と言われているというのは御存じでしょうか。トイレに行く暇もないという意味でありますね。そういう状態でありますので,どこまで評価も丁寧なことができるか,できないかということが言われています。
 あるいは最近,教師の世界も人材不足であります。残念ながらブラックな職場に人は来ませんということで,産休とか病休などの方がいらっしゃると,非常に講師の方が見つからないということで,更に今いる人がてんやわんやになるという,非常にそういう状態にもなっています。
 次のペーパーは,横浜市のペーパーから出していますが,これ分かりやすいので,お示ししております。時間割のイメージなんですが,学習指導要領が変わるたびに増えていきまして,先ほど申し上げたように26コマ以上,場合によっては27とか28コマ持っていますので,この6時間授業がある中で,ほとんど小学校の先生,空き時間がないという状態であります。しかも9教科,10教科やっているという状態でありますので,プラス行事,学級活動もあるということですね。これは皆さん,御案内のとおりです。
 いろいろな教育大学さんが調べたところ,授業を準備する時間が足りないと言っている先生,高校の先生でさえ約8割,小中学校の先生に至っては,もうほとんどの先生がそうおっしゃっていますし,仕事に追われて生活のゆとりがないと言っている先生も七,八割もいらっしゃるということで,こんな状態で学習指導要領,どんどん,どんどんハードル,レベルは上がっていくけれども,大丈夫かという時代であります。
 実際,これは時間ではなくて負担感という主観的な話にはなりますけれども,文部科学省さんが調べたところによりますと,成績一覧表を出したり,通知表を作成したり,指導要録を作成したりというのは,ほとんど6割ぐらいの先生が負担感が強いと言っております。
 この間も,ある副校長研修で,指導要録について,やっぱり負担感,結構高いですかねと聞いて,手を挙げてくださいと言ったら,もうほとんど,8割方の先生が手を挙げられたという状態であります。皆さんも試しに聞いていただければと思います。
 中教審の働き方改革,こちらにも委員の方も何人かいらっしゃいますけれども,指導要録につきましても参考様式の大幅な簡素化も含めて,過度な負担を掛けることのないようにということを述べているのは,そういった背景があるからなんですね。もちろん忙しいからといって何でも時短,何でも効率化ではいけないわけですけれども,ただ,メリハリをつけなければ,既にオーバーフローしているというのが,多くの小学校,中学校の実態であります。
 学習評価,これは皆さんの方がはるかに専門家なわけですが,そもそも何のためにあるんだということから立ち返らないと,在り方が議論できないと思います。
 これは御案内のとおりですけれども,指導の改善を図るとか,子供たち自身が振り返って次の学びに生かすということでして,要するに授業改善とかカリキュラム・マネジメントとか,子供たちへの学習動機付けにつながるということだと思いますので,これも多くの方が既に指摘されていますが,成績表を付けたり,指導要録書いたりとか,そういったことだけが学習評価ではありません。しかし,先ほどのように忙しい先生方は,そっちの方が学習評価だというような感じになってしまっているということでありますので,もっと日常的なものに学習評価を変えていかないといけないということだと思います。
 後で必要であれば,民間人の方もたくさんいらっしゃるので,補足いただけると思いますが,先ほど若江さんもおっしゃっていましたが,企業でも回数たくさんフィードバックはしましょう,というようなことが言われているということで,リアルタイムフィードバックということも言われています。つまり,なるべく忘れないうちに,半年に1回の30分よりも1週間に1回の5分の方が価値があると言われている時代ですので,そういったことも考えますと,通知表とか指導要録に過度に時間を掛けるよりは,個々の授業中だとか,あるいは授業終わった後少し,ちょっとしたところで子供たちを見取ってコメントをしてあげるだとか,必要な改善をしていく方が,むしろ価値があるということかと思いますので,そっちの方に教師の時間を振り向けないといけないんじゃないかなというのが私の私見です。
 現場の先生方の声,ほんの一端しか,まだまだ,もちろん御紹介はできないわけですが,例えば指導要録については,こういうことをおっしゃっています。情報公開請求を受けますので,無難なこと,差し障りのないことしか書けませんということです。そういうこともありますので,副校長,教頭,あるいは校長のチェックが何度も入りまして,非常に疲れるということですね。疲れるんだけれども,時間掛けている割には何に活用されているか,よく分からへんと。あるいは,いまだに手書きですという学校も実はまだあるという,昭和ですかみたいな話ですけれども,本当にそういう話です。
 接続先の学校で指導要録,ほとんど見ませんということで,偏見なく自分で子供を見たいからですという先生もいらっしゃって,結局,一生懸命書くものの,何のために使われているのか,活用されているのかは全く分からないということになりますので,何のための指導要録なのかが非常に今問われているということかなと思います。
 あるいは指導要録に限らずに,観点別評価を含めた詳細な評価なんですが,これも皆さんにとっては非常にたくさんの御意見があるし,専門的な知見もあるとは思うんですが,いろいろな意義があるとは思います。しかし,現場の声なんかも聞いていますと,結局,各観点。これも20年前以上から言われていることですよね。相互に関連しているので,結局うまく分けられない,あるいはどうなんだという。
 例えばの話をしていますが,新聞記事を基に国会と行政について発表しましたと。これは思考・判断なのか,技能・表現なのか,知識・理解なのか,全部なのかというのは,これはどれもですということになるかもしれませんし,ちょっとまたコメントは頂ければと思いますけれども。
 要するに,うまく分けられないものを無理くり分けている要素もあるわけでして。もちろん,こういった視点出しは大事だと思いますが,これを例えばABCと作業することにどれだけ意味があるのかということも含めて,もう一度考えるきっかけに,本日はしていただければなと思います。
 評価のための評価作業になっていないかということだとか,細かく評価することがイコール授業改善等に本当に役に立っているのだろうかということを,皆さん一緒に考えていただければと思います。
 評価規準等について国立教育政策研究所さんなんかでも詳細な資料がありまして,非常に有効だと思うんですが,残念ながら授業を準備する時間も足りないと言っている先生方にとって,そこまでゆっくり見たりとか,あるいは御自身できちっとそういうのを参照した評価規準等を作ったりとかいうことが,なかなかないんじゃないかなということもありますので,良かれと思って作っているんだけれども分厚くなって,なかなか活用されないということがありますので,こういうことも考えないといけないと思います。
 教師とか,皆さんも含めてですが,細やかな考慮をしていただいて,観点別評価を含めて,いろいろな評価に労力を割くということをされているとは思うんですけれども。ただ,子供たちの視点とか,あるいは僕も中学生と小学生の保護者でPTAの役員もしておりますが,保護者の目線からすると,もちろん通知表は大事ではありますが,どうでしょう。5分以上見ていますでしょうか。すぐ見て,ああ,二重丸多かったねとか,4だったねとかいう感じで,ああ,そうだったのみたいな感じで終わっている家庭も多いんじゃないかなと思いますので,掛けている時間の割には効果,効力,成果がどこまであるんだろうか。それよりも面談の方がよほど有益じゃないかなと思います。そういうことも含めて,やっぱりバランスとかメリハリを考えていかないといけないんじゃないでしょうか。
 それから,意地悪を言うようですけれども,観点別評価が真に有効であるならば,高校においても,もっと広がっているはずじゃないでしょうかね。これもよく考えないといけなくて,現実に広がっていないのは,まだまだ課題があるということの現れでもあるんじゃないかなと私は思っていますが,この辺も,いやいや,おまえは誤解しているということであれば,またおっしゃっていただければと思います。
 残り少しなので,少し提案をして終わりたいと思います。指導要録の学籍に関する情報はもちろん必要だと思いますけれども,指導に関する情報,思い切ってなしにするということも含めて考えていただきたいと思います。ありきで議論をしてはいけないんじゃないかなと思います。何のための指導要録なのかということがよく分からない。しかも5年で廃棄されるということで,更によく分からないということになっております。
 しかもマル2,観点別評価については,その視点とか理念はよろしいかと思いますけれども,それは授業づくりですとか,指導計画ですとか,あるいは個別の児童生徒へのフィードバック,つまり面談だとか,そういうところで観点別評価の視点は生かせば良いのであって,要録とか通知表とか調査書で細かく書くことがメインではないんじゃないかという,ここも,そこの部分も含めて緩和するなり軽くしてもいいんじゃないかと思っております。
 何かそんなこと言うけれども,そんないきなり全国展開しては怖いでしょうとおっしゃる方は,是非,研究校とかモデル授業,つまり国立の研究学校ですとかモデル授業で,さっさとやっていただきたい。指導要録とか通知表を楽にしても児童生徒の命,安全にはほとんど影響しませんので,試行,検証,一番しやすい領域じゃないかなと思いますので,是非そういうことを考えていただきたいと思います。
 これはほとんど予算がかかりません。校務支援システムの改良とかは予算がかかりますけれども,それ以外はかからない話ですので,是非,国が教師の負担軽減に本気だということを表すときのきっかけにもなるんじゃないかなと,これは副次的な話ですけれども,考えていただければと思います。
 幾つかQ&Aを予想して書いております。妹尾の言っていることは,丁寧な学習評価がなおざりになるんじゃないか,けしからんとおっしゃる方もいらっしゃると思いますけれども,ただ学校側は説明責任はありますし,既に多くの学校は面談等を通じて,しっかり学習評価の経過,フィードバックしているわけですから,何もないところで指導要録やめるとか,通知表やめるとなると大問題ですが,既にたくさんのフィードバックの機会がありますので,もう少し学校側を信頼していただいてもよろしいのではないかなと思います。そういうことも含めて考えていただきたい。
 あるいは指導要録だけではなくて,調査書も含めて,企業のエントリーシートみたいに,ポチっと何かリクナビみたいに出せるとか,もうちょっとやり方も含めて抜本的に,ここでどこまで言えるかは分かりませんが,そういうことも含めて考えたらどうかということもメッセージに出していただければありがたいなと思います。そのあたりも含めて,もろもろ反論もおありだと思いますけれども,是非お聞かせいただければと思っております。
 最後,1,2分だけ,ちょっといらないことを言うかもしれませんが,学びに向かう力,あるいは主体的な態度等についても,もちろん評価を厳密にしていただくとか,頑張っていただくというのは大事ですが,このひとつのデータだけ見て,どうこう言うのはちょっと乱暴ではありますが,このデータ見たとき,私はショックでした。大学生のほとんどは本を読んでおりません。53%。ちなみにスマホに掛けている時間は177分だったかな。平均ですけれども,3時間近く掛けております。そういう状態で,本当に学びに向かう力とか主体性は,高校生の段階までで育っていると言えるのかどうかということが大きなクエスチョンです。もちろん評価を厳密にするのも大事ですが,もっと授業改善。評価とも一体的な話ですけれども,授業改善をやっていかないと,やばい状態だと思います。あるいは日米の大学生の勉強時間も比較したデータ,幾つかありますけれども,こういう状態ですということなので。
 もちろん評価の厳密性,大事ですけれども,それ以上に先生たちがしっかり自信を持って授業ができる状態をつくっていくことが,我々の重要な課題じゃないかなということを申し添えたいと思います。
 以上です。本日は,どうぞよろしくお願いします。
【市川主査】  どうもありがとうございました。
 本日の御発表は,いずれもふだんとは少し違う視点から,かなりずばりといろいろ言っていただいたという面があります。参考になる面がたくさんあると思いますので,是非,御発表に対して皆様の御質問,御意見等を出していただきたいと思います。いつものように名札を立てていただければと思います。
 髙木先生,どうぞ。
【髙木委員】  4人の先生方,御発表ありがとうございました。御発表から感じた意見を申し上げたいと思います。
 若江委員と河野委員からの意見,私も同じような感想を持ちながら伺っていました。特に今回の観点別評価も含めて,主体的な資質・能力の育成をどうするかというのは,かなり大きな問題になってくると思います。まさにそれは,ただ,ほっぽっておいて主体的な資質・能力が付くわけではなくて,学校教育ですから当然,指導というものが入って,その成果として,それらが育成する。まさに指導と評価の一体化ということが考えられなきゃいけないんですが,それを育成するためには,今日の学校教育の内容自体に,もう数値がなじまなくなっているのではないか。主体性を数値で評価するのはもう無理だということが,お二人の意見からも出てきていると思います。
 しかし評価は大切だということ。評価しなければ子供たちは,ある意味では伸びません。これは評定の意味で評価ではありません。エバリエーションとしてじゃなくてアセスメント。子供たちを支援して,より良くしていくという意味での評価です。その一人一人の子供の評価を評価によって伸ばしていくということが大変重要です。だからこそ,再度申し上げますが,数値によらない評価をこれからどうしていくか。
 特に昭和23年から続いてきた相対評価による5,4,3,2,1の数値の評価というのが,もう限界に来ているのではないかと思っています。特にそのことについては,今,最終的には妹尾委員も少しおっしゃっていましたが,社会全体,それから保護者,そういったところ,国民的な議論はある程度していかないと,いまだに保護者たちは,高校入試や大学入試の数値ということで評価ということを考えていますので,本当に子供たちを伸ばすという意味で,特に主体性を伸ばすという意味では,これからの評価の在り方,数値による評価は,もう行わないような方向で考えていく時代になったのではないかと意見を申し上げます。
【市川主査】  ほかの委員の方,いかがでしょうか。渡瀬委員,どうぞ。
【渡瀬委員】  4人の先生方,発表ありがとうございました。
 河野委員,若江委員から自己評価ということが随分出てまいりましたけれども,私も,やっぱりこれから児童生徒たちの自己評価の在り方というのがとても大事だと思います。
 主体的・対話的な学びができるかどうかということと自己評価ができるかということは,非常に関係が深いと思います。また,俯瞰的に,メタ認知的に自分を見ることができるというのは,結局,深い学びにもつながると思います。ですから,主体的・対話的で深い学びができたかどうかを検証するのは,子供が自己評価をできるようになったかどうかということでもあると思います。
 それから,その子供の自己評価と,教員の評価,保護者の評価や社会からの評価との差異や,どれだけ似ているかということを見ながら振り返りをすることも非常に大事だなと思いました。ありがとうございました。
 1点,これはどうなのかなと思うんですけれども。河野委員から多面的評価ということで,外部試験の活用等のことも出てまいりました。それで,外部試験をどんどん活用できるといいなと思うんですけれども,今どうしても企業が,特に英語でいうと,入社のためのアドミッション・ポリシーの中にTOEICの点数を位置付けています。そうすると,大学の英語の教育がそのことに影響を受けると思います。その結果,高校の段階でも,今,民間試験がいろいろある中で,その大学のこと,それから社会に出てからのことを考えると,TOEICでやっておいた方がいいかなと考えやすいのではないかと思います。この先,社会の方は,英語の力の測り方が変わっていくこともあるんでしょうか。そういう流れは何かあるのかなというのをちょっと思ったりしましたので,もしお聞かせいただけたらと思います。
【市川主査】  それでは御回答は,また後の方でまとめてお願いいたします。
 では善本委員,どうぞ。
【善本委員】  4人の先生方,本当に大変意義深いお話を頂きましてありがとうございました。皆様のお話を踏まえて,私は中・高の現場にいる者として,現場の実態と今後に向けてどのようにということを,感想めいてまいりますが,お話をさせていただこうと思います。
 今,高等学校の方の現場の教職員の評価関連での関心の大きな部分は,eポートフォリオの導入ということがあって,これはある意味,子供たちの自己評価ということでもあって,それをより良く子供たちが作成していくために,教師側がどのような支援をしたらいいかということについては,すごく大きな関心を持っています。同時に,これらを踏まえて,これまでA3,1枚に限定されていた大学等への調査書の分量制限が撤廃されて,基本的には,そのポートフォリオを踏まえて,大量に調査書を文章で教師が評価しなくてはいけなくなってくるであろうと。それをどのようにやっていけば,その文章化が公平,公正であって,なおかつ教員の個々のスキルの差によらず,適正な形でそれが作れるかということに対して,かなり関心はそこに集中しています。
 一方で,特に志願者の多い大学,大きな大学におかれては,そのようにして出されたポートフォリオ等をAIで読むことを検討していると聞いています。生徒個人が文章で書いたものを,とてもじゃないけれども量的に読み切れないので,AIで読み取って評価するということも検討されている。という意味で,非常に大きな変化が起きようとしているところだと思いますので。
 この変化に対して教職員の意識は,負担増に対する不安感があるのは確かですけれども,時間が掛かってもやっていかなければいけないところなんだろうという思いでいます。それは子供たちのより良い学びのためにということなので,そのような意識を持って,先ほど髙木先生のお話にもありましたけれども,数値ではない評価の部分をどうやってやっていくかということを,かなり現場の教職員は今,意識しているところです。
 それと同時に,前回の会で私は保護者の理解を得ることが非常に重要だというお話をさせていただいたんですが,これはちょっと妹尾先生がおっしゃっていたことにも近い話になるんですが,評価される側である生徒,保護者の納得性が非常に重要だということから言うと,私どもは中高一貫校ですので,中学では観点別評価をやっていて,高校ではやっていないんですね。本当に観点別評価が生徒,保護者にとって非常に価値があるものであれば,当然,高等学校でも観点別評価をやってほしいという声が多く生徒や保護者から上がるはずだと思うんですが,残念ながら,そのような声は全くありません。それは両方見ている立場。教員も両方を教えていますから,中学生を教えるときには観点別評価。同じ一人の教員が両方を教えていますから,中学生を教えるときには観点別評価をしていて,高校生に対しては現状ではやっていない。少なくとも,やっていないという言い方は語弊がありますが,形で見えるようにしては出していない。こちらのやり方の方が,高校もそうするべきじゃないかという声は,高校,その教員からも聞かれない。
 とすると,そのような状況の中で,私は河野委員がおっしゃったように前例にとらわれずに新しいことというのはとても大事だと思うので,今の小・中のような観点別評価をそのまま高等学校にも導入していくことが本当に現場の,あるいは生徒,保護者の理解,納得を得られるものであるかということについては,是非考えていかなくてはいけないのかなと思います。全く新しい形になっていくべきだというところの議論は非常に大事なことで,十分理解しているわけですけれども。であるならば,本来どのような評価があるべきかということ。今,小・中学校でやっている観点別評価を高校ではできていないのはよろしくないから高校でもやるべきだという議論は,前例を踏まえずに新たなということ,あるいは本当にそれをAIが読み取っていくというような時代には,ちょっと足踏みしている感があるのかなと思います。
 以上です。
【市川主査】  ありがとうございます。では天笠先生,どうぞ。
【天笠教育課程部会長】  4人の先生,どうもありがとうございました。全体を通しての一つのこととして出てきたのが,組織的な対応という視点はどうお考えになるのかなということです。どちらかというと,個々の教職員が評価技術,あるいはこの事態にどう対応するのかと。現状は大変厳しい状況にあって,そこのところをどう改善するのかと。その改善の視点の中には,私は一つは組織的対応ということが常々あるんだと思うんですが,どうもなかなか功を奏していないと,ある意味でじくじたる思いも個人的には非常に持っているところです。この問題については,組織的対応というのは,そういう点からすると,必ずしも,この状況を大きく動かしていくということについては,余り手だてはそう出てこないんじゃないかとそれとも,それはそれなりにもう少し検討すべき視点とか点はあるんじゃないか。
 例えば妹尾委員の資料の中には,名古屋市の新卒の先生の大変興味深いデータ一覧表がありますが,私が,別のところですけれども,少なくとも,もう若い先生は部活にタッチさせないで,まさに本業というか,主たる業務に専念して,それからということを申し上げたんですが,なかなかそういうところが大きな広がりとか意見ということにもなっていないのが現状のような認識を持っています。しかも,これを見ると大変,運動系の部活動に対応させているというあたりのところ等々が,より一層若手を厳しい状況に置いているということもかいま見えるところです。そういう点からすると,また,もし後ほど御意見があったらということですけれども,評価に当たっての学習評価等々に当たっての組織的対応と,こういう視点で,この状況,事態を改善していくような,そういう方向性とか視点というのが,もしお考え等々があったら,後ほど,もし御発言いただけることがありましたら,お願いできればと思っております。
 それで,若江委員と河野委員には,ちょっとその際に補足していただければと思いますが,企業のお立場で大変興味深い御発表頂いたんですが,企業と学校という対比的な構図でということですけれども,私の認識ですと,企業もまた企業として様々な企業が存在しているように思うわけですけれども,そうした場合に企業一色で事柄というんでしょうか,そういう示し方とか論じ方というあたりのところもある意味で言うと,もう少し丁寧に見ていかなければいけないところがあるんじゃないかと思うんですが,そこら辺については,お考えはどうでしょうか。
 それは,ある意味で言うと,学校にとって参考になる企業というのもあれば,また企業は企業として,それぞれの存在感を持って動いているわけです。とすると,もう少しそこら辺のところを丁寧に,示唆に富む話になったときには,今申し上げたようなところが必要になってくるんじゃないかなと思いました。
 それから,もう一つです。特別支援関係ですと,個別指導を作成することと,ここにありましたが,特別の教育課程を作成することと,実態に応じた教育課程を編成することという,幾つかのそういう言葉が出てきます。基本的には,子供の状況からするならば,個別指導との関わりの中でのそれかと思うんですけれども,それを学校としての教育課程ということなのか。そこら辺のところの,非常に個別的な教育課程を編成すると,そういうあたりのところを少し交通整理をされるのも,また一つではないかと。要するに,組織的対応ということと個別的な,個々との対応というあたりのところを整理して捉えて,そして組織としての在り方ですとか個別的な指導の在り方の評価の在り方を整理するということは,先を見ていくときの一つの方向性になるんじゃないかと思うんですけれども,その点について,もしお考え等々がありましたら,お願いできればと思います。
 以上です。
【市川主査】  ありがとうございます。
 それでは鈴木委員,秋田委員の順でお願いします。
【鈴木委員】  主体的に学習する態度が非常に今後重要だということは私も賛成です。ただ,この会合を3回やっている中で,ちょっと経過をお話ししますと,平成元年の改訂で関心・意欲・態度が第1観点に挙がり,これをどう評価するかが,平成元年から10年頃まで大きな話題になりました。学校現場は,この観点をどう客観的に評価するかの議論と実施に精力をほとんど使い尽くしてしまったというのが実態です。
 結果,実は,常にここで何回も申しておりますが,この観点,非常に評価を客観的に評価することは難しいのに,それに力を注いでしまったと。その逆に,関心・意欲・態度の代わりにではなくて,思考・判断・表現に関するこの観点の研究成果は,外国を見る限り,非常にあるのに,これに力を注ぐことがなくなってしまった。これが非常に大きなマイナスになったのではないか。
 ですから,今回,主体的に学習する態度,重要だということはもちろん私も認めますが,この議論にだけ集中して,これも非常に客観的に評価するのは難しい観点という点では一緒ですので,これにばかり余り議論が注がれて,かつてのような関心・意欲・態度に過剰な努力,労力を注いだという轍は踏みたくないと思っております。その代わりに思考・判断・表現は十分にいろいろな研究事例と成果もありますから,今回の指導要録の改訂は,この部分に一番力を入れるべきではないかと。もちろん主体的がどうでもいいと言っているわけじゃないので,その点はお断りしておきます。
 それから高校で観点別評価,なぜやらないのかというのは,今回を含めて3回とも,高校で観点別評価はやめてくれと言った張本人の一人でありますから,これを説明させていただきたいと思います。
 まず中学校から入ってきた高校生に聞きますと,中学校での関心・意欲・態度は行動の制約に使われていたと。要するに,関心・意欲・態度の評価が下がると評定も下がるので,そのように見せないといけないので無理していた。高校はそういうことがないので,もっと自由だと,はっきりと高校生は言っておりました。私は非常にショックでした。
 それから,現行の観点別評価の4観点は,非常に観点ごとの境界が曖昧で,中学や小学校の先生方が非常にその区別に苦労している。これを高校に持ち込んでほしくないと。ですから,観点の改訂がない限り,観点別評価はやりたくないというのが私の反対した理由でした。ただ,今回は観点が整理されて,境界が多少分かりよくなったので,今までのような反対する理由は少なくなったと思っています。
 それから,eポートフォリオに期待する声が非常に大きいんですが,私,1990年代後半から2000年代初めにかけて,イギリスで盛んに,このeポートフォリオではありませんが,それに相当するレコード・オブ・アチーブメント,それからそれを国形式にしたナショナルレコード・オブ・アチーブメントを研究いたしましたが,最初の期待とは裏腹に,だんだん消えていきました。それはなぜかというと,そのレコード・オブ・アチーブメント及びナショナルレコード・オブ・アチーブメントに余りにも多くのことを注ぎ込み過ぎて,向こうのイギリスの生徒に言わせると時間の無駄と,はっきりみんな言っておりました。結果的にだんだん消えていきました。
 要するに,eポートフォリオ,私も賛成ですが,内容を非常に絞り込まないと,イギリスの失敗をまた我が国でもやってしまうということは気を付けなければいけないと思います。
【市川主査】  ありがとうございます。では,秋田委員,嶋田委員の順でお願いします。
【秋田委員】  興味深い御発表ありがとうございます。仕事の都合で第2,若江委員からの御報告から聞かせていただいたので,残りの3名の先生方の御発表を聞いての個人的な意見になります。
 今回,若江委員,それから河野委員から出されている,生徒自身が評価者とか,自分の将来設計のために役に立つ評価の在り方,そういう評価ができるような人材を育成していくという視点が非常に重要であると思います。観点別評価が,本当に生徒が使える評価の観点になっているのかということを,議論すべきであろうと思います。
 個人的に言えば,教育評価のシステムとプロセスを考えるときに,観点別観点は非常に重要であるけれども,それを要録に記載するという教師の労力が有効かどうかと思います。観点なく評価をする,評定的にやるということは,教師の力量の改善からも,指導の改善から見ても,やはり観点はあった方がいいと思います。しかしながら,妹尾委員からもありましたけれども,それを細かく要録に記載するよりも,ほかの委員の方からもありましたが,面談等対話型でうまく生かせていく面談型に生かしていくようなことが一つ重要であろうと思います。
 そして若江委員が出されていたように,生徒側にも,評価を,使えるようにすることが大事です。これはeポートフォリオもそうですけれども,今かなりいいものが実際には開発されてきていると思います。それを,生徒自身がうまく使えるようになるということを今後,一緒に考えていくことが必要だろうと思います。
 私自身,今回伺ってみたいと思ったのは,若江委員も,河野委員も言われていて,保護者の理解とか,それから生徒も地域もみんな評価のことを国民的に理解していくことが重要だということは,理念としては分かるんです。けれども,具体的に何をどのようにしていくことが,社会において評価観を広く変えていくことにつながっていくのかというようなところが明確にされるべきと思っています。毎回この評価の議論が出ると,全体に変えるべきだという意見は出るんですけれども,では具体的にどのようなストラテジーによってやっていくのかを我々は議論しなければいけないのではないかと思っております。
 それからもう1点,これは河野委員にもう少し詳しく伺ってみたいなと思ったのが,先ほども議論がありました外部の試験,検定,資格なども活用できるのではないかという部分です。私は福井県の教育に関わらせていただいていますので,例えば英語検定,英検が中学から高校の進学のときに,評価の一つ,全てではありませんが,一つに組み入れられています。実際にそれが効果を上げているというのは事実であります。ただし,一方では,特定の会社の検定を使うことがどうなのかというような議論もあります。このあたりについて,今回,河野委員から外部の試験,検定,資格も活用できるのではないかという御意見が出ているので,もう少し詳しく,このあたりをどのように考えておられるのかというのを伺えるといいなと思っております。
 以上でございます。
【市川主査】  嶋田委員,お願いします。
【嶋田委員】  小学校の現場から感じたことをお伝えさせていただければと思っております。
 今,指導と評価の一体化が大事だということ,これは小学校では非常に,もうやっている先生方も多くいると私は捉えています。主体的・対話的で深い学びにいくために自己評価や振り返りのことをノートの最後に書かせたり,ワークシートに書かせたものを,常にそれを評価をしながら次の指導に生かしていくということは,今どこの学校でも,どんどん伝わってきて,実施されている姿ではないかなと思っているところです。
 ただ,またペーパーテストによる評価が主だという論調があるかなと,この協議会で思うんですけれども,どうしても観点別評価になったときに,若い先生方は,これは一体どこの観点に値する部分なのか。これは例えば教材会社が作ったペーパーテストは,ここの部分は思考・判断に値するとか,ここは表現に値するということが分かった形で,ちゃんとテストが構造されていますので,そこをちゃんと入れていくことによってできるという部分も一方ではあるというところがあるかなと思っているところです。
 妹尾先生の発表を聞かせていただいて,やはり今,中学校の例として出していただいたわけですけれども,小学校は毎時間毎時間違うわけですね。中学校は4クラスあれば,1つのある単元の2時間目のところをやるのであれば,中学校は4回できるわけですけれども,小学校は毎回毎回違う。その教材研究をしなくてはいけないという部分を,やっぱりこれは小学校の特性だと感じているところでありますし,今回,特に通知表につきましても,道徳と外国語の部分も入ってくることを考えたときに,それを今度,要録にという部分とのつながり。
 つまり,何のための評価なのかということや,これが現実性や実効性のあるものに,要録についても伝えていかないと,実際に学校で,評価だけについてじっくりと何かやっていくとする。それは校内研究とかで時間をしっかり設定していかないとできないことでありまして,どこの学校も校内研究を評価というふうにはなってはいかないわけですので,そういうような時間設定のことも含めながら検討していっていただければなというのが,現場の校長としての意見です。
 以上です。
【市川主査】  ありがとうございます。清水委員,お願いします。
【清水委員】  ありがとうございました。妹尾委員のお話を伺いまして,現場の教員,管理職も含めての代弁をしていただいたように思います。かなりはっきりといろいろ御提案いただきまして,御提示いただきまして,ありがとうございました。
 この中でグラフがあって,いろいろ見させていただきましたけれども,2014年に出された表のようですが,これを見たときに思ったのは,もう少し,この赤線で囲まれている先生に関するところは,もっと負担感高いのかなと思ったら,逆に私は意外に低かったなというイメージもあるんですね。
 それと,下の方にまた成績関係については,ほかの観点でも負担感がありますので,合わせると,やはり,かなり負担感が高まっているのは事実かなというところで,余計な話ですが,57番の国や県からの調査アンケートの対応に非常に負担感が高いというのが,余りにも高いとあるんですけれども,これは現場の校長としても,非常にここは負担感高いところではあります。
 それは置いておきまして,先ほど個別の面談等についてのところで,いろいろと情報提供だとか説明もできるのではないかということもあるんですけれども,この面談等を使っての説明のところについては,保護者への面談というのは,学校では多くて2回,大体の学校は1回程度しか多分,保護者との面談等については年間,なかなか行えないのが現状かなと思います。それも多分,大体この時期,6月頃に行われているのが多くの学校の実態で,面談等だけでは,逆に今度は十分な保護者への伝達は難しいのかな,そういうのが現実問題かなと思っております。
 様々な場面を使いながら,子供たちの今の学びの様子だとか状況を本人,保護者等に伝える手段については研究も,やはり今後も必要なのかなと思いました。
 4人の発表の先生方,大変お疲れさまでした。ありがとうございました。
【市川主査】  どうもありがとうございます。
 それでは,今の御質問とかを受けまして,本日御発表あった4人の先生方,全ては無理かもしれませんけれども,それぞれ簡単に重要な点をお話しいただければと思います。
【川間委員】  個別の指導計画を全ての子供に作成するということで,最近では通常の学級に在籍している支援の必要な児童生徒にも作るという流れになってきていますが,特別支援学校の個別の指導計画は,かなり詳細なものを作っていって,その上で各教科や自立活動の評価も記述を,個別の指導計画の中で行っていくことが普通行われていて,学校によっては,それが通知表に,形式を変えてプリントアウトされると。さらに,その内容を指導要録に記載していくというふうにして,それぞれ趣旨が違うんですけれども,手間が掛からないような工夫をしているところもあります。
 それから,組織的な対応ということですが,障害にある子供たちですから,一人一人状態が違う子供たちに,常にマンツーマンで個別の学習しているわけではなくて,集団の学習も行うんですが,当然,教員の方が少ないというところから,一人一人の状態が違うけれども,みんなで取り組む活動や授業,目標が同じということは結構多くあって,そこをどう考えるかというのは学校によってうんと差があって,同一単元,違目標,違設定,それから教科の内容の設定としても,同一単元だけど教科の目標,内容は個々に違うという設定をするものもあれば,実態はかなり違うけれども,結局同じ目標,内容で評価するんですが,いわゆる形成的評価で,前はこうだったのに,重ねていくとこうなりましたという変容を記載していくような形で対応しているところや,それでも最近はやっぱり観点別を設けて何とか取り組もうというところの学校等,それぞれの学校で,そこのところは創意工夫が相当あって,何がいいかどうかというのは一概には言えないところですが,何となく簡便に済ませているところは,もうちょっとちゃんとやったらいいなと思いますし,相当頑張っていると,結構無駄な努力に見えて,時間ばかり掛かってしまうということも相当あります。
 あと指導要録ですけれども,先ほど言いましたように,知的障害がある子供たちは数値の評価ではなくて記述評価をしておりますので,手書きだったりすると,老眼の方は,まず見えないぐらいの字の大きさで,びっちり,ぱっと見ると真っ黒かなというぐらい書くんですね。僕も校長やっているとき,いや,こんなに書かなくてもと言っても,先生方は,書くならちゃんと書く,詳しく書くというベクトルがあって,実は特別支援学校の知的障害のある子供たちの,そうした指導要録や,それから通知表の評価を記述で書くときに,どういう観点で,どう書けばいいのかというマニュアルも何もないので,それぞれの学校で工夫しながらというのが現状かと思います。
 以上でございます。
【市川主査】  ありがとうございます。
【若江委員】  天笠先生からお話がありました企業とその教育の対比というようなところですが,たまたま違う視点からの提示ということで,ちょっと極端にお話をしましたが,組織的な対応ということについては,まさに私がお話ししたことは,企業というのは,やると決めれば,それを全社的に徹底してやり通すということなんですね。ですので,そのスキルの差があったとするならば,今回,評価なんかを,まさにコミュニケーション,成長のツールとして,いい機会で,ある学年で4人いたとして,うちで言うとマネジャーですね。それぞれが,ある人の評価をしたときに,評価がずれがあったとするならば,それ自体を埋めていく活動そのものが社員教育にもなっていくと思っていますので。要するに全社的に取り組むということと,それと働き方改革のところもありますので,何をするために何をやめるって,やっぱり物事の優先順位をきちっと立てていくという。一遍に何かをやって中途半端になるよりも,今年は評価のことを徹底的にやるので,この部分,業務改革のところのこれは1年ずらすとかと,そういう明確な意思決定が必要だと思っています。
 それと観点についてですが,観点は,ある意味,視点であるので,考えるプロセスとして重要で,先生方がおっしゃっていましたように,それぞれの項目で評価をするというよりも,統合しての評価というのが,やはり非常に大切だと思いますし,もう一つ,鈴木先生もおっしゃっていましたように,観点は時代によって変わっていくと思うんですね。ですので,ある意味,観点評価のことを知るということは,時代に応じた評価の視点をきちっと設定できるようなノウハウを身に付けるという点でも非常に重要ではないかなと思っています。
 もう1点,評価の周知をということで秋田先生の方からお話がありましたが,ベストなアイデアは思い付きませんで,でも,とにかく知らなさ過ぎるということですね。過去にとらわれて,新しく何が変わっているか。時代の変化だとかに対して,特に日本人は教育の分野に対しての関心が低いので,そこは,やはり,ただただ知らせていくということかもしれません。でも,最終的に証明をしてくれるのは,成長した子供たちが社会に出たりだとか,家庭での会話とか,そういったものによって多分,行動や言動が変わってくる,そこが証明になるのではないかなと思っております。
 以上です。
【市川主査】  ありがとうございます。河野委員,お願いします。
【河野委員】  ありがとうございます。たくさんありましたが,二,三点だけ絞らせていただいて,まず,バトンタッチの今のところの企業との話なんですが。
 企業というのは,私が言う場合,主に株式会社を言っていますが,それ以外にも公益財団ですとか,いろいろな組織があります。ただ,株式会社であると,やはり目標が定めやすいというところもあるので,例としてお話をするときに使いやすいというのがあります。
 ただ,その企業の中にも,株式会社の中にも,おっしゃっていただいたとおり地方性,それから規模,300人以上か,以下か,そしてそれ以外に業態というのがありますので,それこそ今,私もいいお話を頂いたなと思ったんですが,学校も多様ですよね。それぞれ,またもしかするとベンチマークできるところがあるのかななんて思いながら伺いました。すみません,これはここまでにします。
 それから複数頂きました外部のというところですね。本日私,先ほどいろいろな民間のお名前を出していただいているんですが,どこがというのは,ちょっと申し訳ない,ここでは控えさせていただいた方がいいのかなと考えているんですけれども,本日出ている名前のものは,よく使われて,効果があるような気もいたします。
 ただ,最近,ちょっとこれ事象として聞いてください。例えば民間企業で,大手ですが,課長職になるのに最低七百うん十持っていなきゃいけないよ,何々をとか,そういうようなところもありますし,あと大学院などでも,何々が何点あれば英語はいいとか,ありますね。そういうことがあるからこそというのが,はびこってしまっているのかもしれません。
 ただ,私がここで言いたかったのは英語のことだけではなくて,普通高校だけじゃないですよね。多様な高校がある中で,いろいろな民間の資格があるので,そういうことで自分を磨いてきた,資格を取ったというのも一つの評価になったら,もっと広くできるのではないかなと思いましたし,それから学校の中だけではないところでの活動というのも,もっと見ていく。ですので,もちろん学校の中でのというのに加えたところはどうするのかというのは,きっと難しいんだろうと思うんですけれども,それが,これから求められるものになるのかなと感じました。
 それから最後に1つ,これからということなんですが,私は先ほどのところを,高大接続システムのを読んでいただくと,これから混沌としているというのは,みんな分かっていることで,その中で教育も大変だというのは,みんな分かっているので,この評価を,みんなに考えさせるというぐらいの。もちろん専門家の皆さんで最後は作り込んでいくというのは当然なんですが,ただ,みんなに投げ掛けるということをずっとしていくことが,逆に言うと,先生たちの評価が多少ぶれたと見えたときにも救いになるのではないか。これこそ解は一つではないんじゃないかなと考えます。
 以上です。
【市川主査】  妹尾委員,お願いします。
【妹尾先生】  ありがとうございます。うまく整理できないかもしれませんが,幾つか申し上げます。
 1つは,天笠先生から組織的な対応のお話がありました。組織的な対応というの,いろいろな観点であるとは思いますが,1つはカリキュラム・マネジメントとの関係で考えないといけないということだと思います。
 例えば高校等の進学校であれば,模試等のデータを基に,もっとこんな授業をしていこうだとか,個別に,この子はこういうところが弱いねという会話は結構やっていらっしゃるところが多いんじゃないかなと思いますが,そこも学習評価という観点で言うならば,限られたデータで言っているんじゃないかだとか,やっぱりペーパーテスト重視じゃないかだとか,そのあたりも考えないといけないですし,進学校以外の中堅校等につきましては,そういった,そもそも教科を超えて,あるいは同じ教科でさえ教師同士が十分会話をしたり,改善等を話をしたりする機会もなかなかないということも聞いていますので,そういった部分も含めて,どうしていくかということは,やっぱり組織的に考えていかないといけないということだと思います。
 あともう一つは,そういった同僚性だけではなくて,特に管理職が,若手だけではなくてベテランも含めてですけれども,授業改善等,あるいは学級経営等につきまして,しっかり指導だとか支援をしていくということも大事だと思います。
 先日,働き方改革の部会で全国教頭会の方がプレゼンされていましたが,正直,教頭先生たち,忙し過ぎて,人材育成に掛ける時間がないと。授業で勝負できる人材が育成できていません,というプレゼンをされていました。私は,そのことはすごく印象に残っています。つまり,これだけ若手が増えているのに,教頭職,副校長職としては十分そういった方へのケアができていないということです。そういった時間も,どう生み出していくかということを考えた学習評価の在り方を考えないと,良かれと思って精緻に詳しくやるものの,結局は運用できないということになってもいけませんので,そこは申し上げておきたいと思います。
 それから,そういったことにも関係するんですが,善本先生からも高校の調査書の話がありまして,ここはちょっと僕は詳しくはないんですけれども,そういったことも含めまして,この学習評価のことに限らないんですが,今,小学校,中学校,高校とも,非常に先生たち忙しい中で,どういうものに優先順位を置いていくのかということが非常に今問われている時代です。
 先ほどの調査書もそうなんですが,あるいは指導要録に負担感が強いということも結構表裏の関係なんですが,例えば子供たちの進路実現のために役に立つということになれば,先生方,一生懸命やられます。しかも分量制限がないとなると,いっぱい書いたりとか,いっぱい用意されたりします。結構,部活動なんかもそうですけれども,子供たちのためになるということであれば,負担感を余り感じずにやっちゃうわけです。ただ,今の指導要録の多くは,何のために活用されているのか分からない,子供のためになっているかどうかもよく分からないので負担感を感じると,こういう構造になっているわけです。
 なので,1つは,その負担感に感じているところの軽減を図ることが1つ。もう一つは,子供のためになるからといってやると,一生懸命やり過ぎちゃうという問題もあるんですね,残念ながら。これ,部活動なんかは典型例ですけれども。さっきの調査書なんかも,多分そういった傾向が今後出てくるかもしれませんので,そのあたりの懸念も申し上げておきたいと思います。
 つまり,子供のためになることがいっぱいある中で,どこまで限られた時間でやっていくかということが問われている話ですので,ぶっちゃけ申し上げると,調査書をたくさん書くという暇があれば,魅力的な授業をするための準備をしていただきたい,あるいは学校の外に出ていただいて,いろいろな方の刺激を受けて,教師の引き出しを増やしていただきたいと僕なんかは思うわけですが,そういったことが,教師の学びが,どんどん今,狭くなっています。ゆとりがなくなっていますので。そういうことも考えて,なるべく,そういった教師の学びを増やすような学習評価の在り方を是非検討していただきたいなと思っております。
 以上です。
【市川主査】  ありがとうございます。
 私も本日最後にちょっとまとめさせていただくと,すごくいい視点が出たと思っています。主に2つなんですけれども。
 1つは,評価というのが,どれだけ実効性があるのかという視点から,もっと見直す必要があるんじゃないかと。余り伝統とか形式にとらわれずに,本当にその評価をすることが子供の学習改善とかに役に立っているのかという評価そのものを評価しないといけないという話が,かなり厳しく出たと思います。すると,要録とか通知表の改善というだけではなくて,あるいは簡素化と,そういう話だけではなくて,もっと評価の方法,仕方そのものを改善していく必要があるんだろうと。その中で記述的にとか,あるいは自己評価も大切にしながら,それと対話をする形で。対話型の評価なんていう言い方を私もちょっとしたことあるんですけれども,自己評価を巡って,先生と対話をしながら,どう学習改善を考えていったらいいか。これが企業の方からも,かなりそういう成長を促すための対話的な評価という視点が出たと思いますし,そういうことが大切かなと思いました。
 あと日常的なフィードバックですね。これをやっていくことの方が,よほど学習改善に役に立つのではないか。これも割とインフォーマルな形でなされますけれども,評価であることには変わりがないわけで,そういうことを促す,実効性のあるものにするという視点。
 もう一つは,妹尾委員からも出た優先順位という視点ですね。評価を精緻なものにしていって効果的なものにするということはもちろん分かるけれどもということで,実際には授業の改善とか,教師の方から見ても,よりそちらの方が大事ではないかとおっしゃるという声もたくさんあると。時間が限られている中で何を優先するかという視点。どうしても評価の部会,評価の研究ということになってしまいますと,評価をどういいものにしていくかという視点はもちろん重要になるですが,評価以外にも学校の先生がたくさんの仕事をしている中で,子供のために時間を割くとすれば,どういう優先順位でやっていくかという視点から見直さないといけないと。それが,この働き方改革の部会の方から特に出てきたということは大事かなと思いました。
 どうもありがとうございました。それでは,時間も参りましたので,本日このあたりにしたいと思います。
 それでは,事務局から御報告お願いします。
【白井教育課程企画室長】  本日も御議論ありがとうございました。資料5を基に,少し今後の見通しについてだけ,お話しさせていただきたいと思います。
 7月9日の月曜日,午後に第6回。時間,場所等について,詳細はまだ未定でございます。それから8月7日10時から12時ということで,第7回のワーキンググループを予定しております。
 このワーキンググループ,これまで委員の皆様を中心に小学校,中学校,高等学校,そして本日特別支援,また評価に関する研究者の先生の視点,それから本日,企業の視点,また働き方改革の視点ということで,たくさんの御議論を頂いてまいりました。eポートフォリオについても1回ヒアリングをさせていただきました。
 今後,足りないところとして,現在,書面ヒアリングを行っておりますので,そちらの成果等も,関係も見たいと思いますけれども,特に高等学校の指導要録で調査書との関係から,大学の先生方からの御意見を伺う必要があるかなというところ。また民間の教育産業,塾,予備校などの関係者の視点もお伺いしたいというところ。それから本日,鈴木先生からも一言お触れいただきましたけれども,例えば思考力であるとか,あるいは態度,情意といった部分について,外国の事情がどうなっているのかということについて少し御意見を頂きたいということ。それからまた,実際にこの評価を受ける立場にある学生であるとか生徒の声,こういったものも,この場で,できればお聞きをしたいなと思っております。
 8月7日まで日程決まっておりますけれども,特に9月以降,年内を目途に取りまとめということでございますので,そこまで御議論を,いろいろな方から意見をできるだけ吸収をして,その後,取りまとめの作業に入っていきたいと思いますので,引き続き御協力をお願いいたします。
【市川主査】  ありがとうございました。以上で閉会とさせていただきます。

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