学校における働き方改革特別部会(第7回) 議事録

1.日時

平成29年11月6日(月曜日)15時30分~18時00分

2.場所

全国町村会館2階ホール

3.議題

  1. 業務の役割分担・適正化に関する具体的な論点について
  2. 勤務時間及びその管理の在り方について
  3. その他

4.議事録

中央教育審議会初等中等教育分科会学校における働き方改革特別部会(第7回)   平成29年11月6日

【小川部会長】  
   15時30分から開始なのですが,委員がもう全員そろわれたようですので,せっかくですので,早めですけれども,会議を開催させていただきたいと思います。それでは,第7回の学校における働き方改革特別部会を開催したいと思います。
 最初に,本日の配付資料について,事務局から説明をお願いいたします。
【鈴木初等中等教育企画課課長補佐】  
   本日の配付資料でございますけれども,お配りしております議事次第にありますとおり,机上には資料1-1から資料5-2と,参考資料の1から5をお配りしております。また,資料番号は付けておりませんが,「平成29年10月31日 財政制度等審議会財政制度分科会配布資料(抜粋)」という資料を机上で配付しております。
 また,御参考までに,前回までの配付資料と,教員の働き方改革に関する関係団体・有識者ヒアリングにおいて関係団体・有識者の皆様から頂いた資料を併せて机上に置かせていただいております。
 過不足等ございましたら,事務局までお申し付けいただければと思います。
【小川部会長】  
   資料の確認,よろしいでしょうか。
 それでは,議事に早速入っていきたいと思います。最初の議題は,前回に引き続いて,業務の役割分担・適正化に関する具体的な論点について議論していきたいと思います。この内容については,2つの点で委員の方から御意見を伺いたいと思います。1つ目は,これも前回議論したことですけれども,前回に引き続いて,学校に設置される組織や担当者について,これは資料1から資料4に基づいて議論したいと思います。その後に,2つ目の点として,これも前回議論していただいたものですけれども,役割分担や業務の適性化について,着実に実施していくための方策について,これは資料2に基づいて意見交換していきたいと思います。
 それでは,最初に資料1について,初中局の佐藤企画官から説明をお願いいたします。
【佐藤初等中等教育局企画官】  
   よろしくお願いいたします。資料1-1を御覧いただければと思います。「学校に置かれる委員会等の組織・担当者について」でございます。
 1枚目でございますけれども,検討の視点につきましては,前回と同じですので,省略させていただきます。
 1枚おめくりいただきまして,2枚目でございます。これまでの主な意見ということで,前回の部会で頂いた御意見について列記させていただいております。
 一番上からいきますと,一番上ですけれども,組織や校務分掌が細か過ぎると,責任の所在や役割について混乱が生じることが懸念される。このため,問題を共有化して組織的に対応できる体制を作ることが重要という御意見。
 校務分掌の負担をどのように分けるのかといったようなタスクマネジメントが必要という御意見。
 ある程度業務を類型化して包括的なグループに分け,責任者として主幹教諭等を置き,それぞれの責任の下で校務を整理し,業務を分担していくということが有効ではないか,そのために教職員のグループ化という考え方もあるのではないかという御意見。
 そして,教育委員会が学校経営案等の例示を示す中で,委員会や校務分掌等の例示を出していくことも必要ではないかという御意見。
 管理運営部門の校務分掌については,教員をサポートする体制の整備という観点からも検討することが必要ではないかという御意見。
 コミュニティ・スクールなどで外部の視点を入れることで,業務の包括化やグループ化が進み,教員の役割,責任が明確化することも考えられるのではないかという御意見。
 分掌が変わらないのであれば,小規模校の方が校務分掌の負担が大きくなるという御意見。
 各学校で重点化を図るような分掌の作り方というものも考えなければならないのではないかという御意見を頂いております。
 これらを踏まえまして,3枚目でございますけれども,事務局の方で考えられる対応策というものを4つ挙げさせていただいております。
 1つ目でございますけれども,類似の内容を扱う委員会等については,委員会等の合同設置や構成員の統一など,業務の適性化に向けた運用を進めるべきではないか。
 2つ目,業務を個人単位で割り振るのではなく,包括的なグループに分けることを進めるべきではないか。また,責任者となる主幹教諭等の配置を促進すべきではないか。
 3つ目,管理運営に関する校務分掌の担い手として,事務職員の活用等,体制の整備を促進すべきではないか。
 そして4つ目ですけれども,校務分掌について,教育委員会が参考とできるような優良事例を収集し,周知すべきではないか。その上で,現場の運用では改善が難しい部分については,教育委員会の方で更に検討を進めることが必要ではないかとまとめさせていただいております。事務局からの説明は以上です。
 すみません,資料の1-2から1-4ですけれども,これらにつきましては,前回お配りしたものから微修正を加えておりますけれども,基本的に同じですので,参考としていただければと思います。事務局からは以上です。
【小川部会長】  
   ありがとうございました。
 それでは,前回,委員の方から頂いた意見を踏まえながら,今,事務局から説明があったようなまとめ方をさせていただきました。今日の議論は,資料1-1の主に3枚目の考えられる対応策を中心として,皆さんの方からより具体的な御意見を頂ければと思います。どなたからでも構いません。発言の際には名札を立てていただければと思います。よろしくお願いします。いかがでしょうか。妹尾委員,どうぞ。
【妹尾委員】  
   時間がもったいないので,取り急ぎ申し上げます。組織につきましては,2点ほど申し上げたいと思います。
 1つは,前から出ていますように,いわばインテグレートとアップデートの両方が必要だということだと思います。近いものはくっつけるということと,あとは現実に起きた課題に応じてアップデートするという,いわばパソコンに例えると,OSが昭和のままではフリーズしてしまうということでして,21世紀型スキルをはじめ,新学習指導要領ではどんどん新しいことが期待されているわけですが,組織とかOSの部分が古いままではいけないという話に例えられるかなと思います。
 それと関連して2点目なんですが,組織の話と役割分担とか分業の話はどうしてもリンクする話だと思いますけれども,企業とか行政と比べまして,学校では,補佐というか,スタッフ機能が弱く,日本では非常に少ないというところが一つの大きな特徴で,それが個々の教員の負担増にもなっているかと思います。
 具体的に申し上げますと,今日のペーパーで,これまでの主な意見がありますけれども,それの下から4つ目,「教員をサポートする体制の整備という観点からも検討することが必要ではないか」というところ,ここをいま一度強調して,考えられる対応策のところにも反映したいなと思っております。企業でいいますと,経理担当あるいは営業担当,人材育成担当,これら全て,若干事務職員との分担はありますけれども,多くの場合は教員が結構担っているというところは非常に大きな特徴なので,これをいかに教育委員会もサポートできるところはするのかというところです。ただし,教育委員会も,ブラックといいますか,非常に忙しいという問題もありますので,お互いで業務を減らしながら必要なところに資源を持っていくという発想をしないと仕方がないかなと思っております。予算の掛かる話ではありますが,こういったサポートの方とか事務職員さんの加配あるいはアシスタントさんの拡充なども求めたいというところであります。以上です。
【小川部会長】  
  ありがとうございます。冨士道委員,どうぞ。
【冨士道委員】  
   失礼します。今出されております対応策が4つあるのですが,2つについて少しお話をさせてください。上から3つ目ですが,事務職員等の活用等という指摘,御意見が出ています。これは,国もいわゆる学校事務の共同実施を今進めているように聞いています。実際,東京都でも幾つかの地区ではもう既に開始しているわけですが,各学校にいる事務職員を1か所に集中させながら,できることをしていく。そういう形で業務改善ができないか。今後,共同実施をより推進していくべきだろうと思っています。
 もう1点は,最後のところですが,優良事例を収集して周知すべきといったお話があります。ただ,これはペーパー等の周知だけでは,大体それでもう終わってしまうのです。できれば,これをきちんとした形で,本気で変革するぞという姿勢を見せるためには,各都道府県単位での説明会であったり,そして管理職向けの説明会等を開催しながら,具体的なものを示していかないと,通知を「見ました」で終わってしまう。これだけは避けていきたいなと考えております。以上です。
【小川部会長】  
   ありがとうございました。他にいかがでしょうか。風岡委員,どうぞ。
【風岡委員】  
   失礼します。2点あります。考えられる対応策の2つ目の黒丸に,包括的なグループに分けることを進めるべきではないかということがありますが,実際,校務分掌で割り振りをするときに,ある程度のグループというものに分けて考えられている例はこれまでも多いかと思います。そのことを考えたときに,誰を責任者にするのかというところが,現在の学校の中では,教員は横並びということがあり,責任者になる方に責任がどこまで付いているのかといった課題があると認識しています。そうしたことを踏まえると,主幹教諭の配置ということを促進すべきではないかとあるわけですが,これは進めていく必要があると考えます。
 また,現在,この分掌の表にもありますが,学年といった単位のグループでの活動というのが,非常に日々の業務に近いところでの活動になりますし,日常的な業務などについての進捗も確認しながらできるグループではないかと考えられます。そうしたときに,これは様々な議論がありますが,主任の在り方について,改めて主任の役割について,どのように位置付けるかということは考えていく必要があるのではないかと思っています。この主任というものが機能している都道府県と,主任というものを単なる分掌の一つとして位置付けているところとではどのような違いがあるかということも比べてみる必要があるのではないかと思われます。
 それから3つ目の黒丸ですが,事務職員の活用等ということで,先ほど冨士道委員からも共同実施といった言葉がありましたが,この共同学校事務室といった共同実施の仕組みについては,全国様々な取組の例があり,例えば東京都のように,1か所に集中して事務職員を集めて,事務職員が空いたところには非常勤の職員を配置するというところもありますし,愛知県もそうですが,各学校に確実に事務職員を配置しつつ,共同で処理するといったグループ制を採っているような県もございます。この4月の地教行法の法改正の趣旨からしますと,各学校に必ず学校の事務職員として1名配置した上で,この共同学校事務室の中で何ができるのかということを検討していく必要があるということ。それと同時に,この共同学校事務室という事務職員の体制の整備と,教育委員会との連携の在り方や,教育委員会との業務分担ということについても,先進事例等を参考にしながら検討していく必要があるのではないかなと思っております。以上です。
【小川部会長】  
  ありがとうございます。この後,佐古委員,そして時久委員,そういう順でお願いいたします。
【佐古委員】  
   よろしいですか。
【小川部会長】  
  はい,佐古委員,どうぞ。
【佐古委員】  
   この校務の分掌については,基本的に学校においては,どちらかというと周辺的あるいは雑務的なものとして捉える傾向があると思うのですが,学校の仕事の中で校務というのは一定の比重と必要性があるということからすると,この仕事をいかに効率化を図るか,効率的に行うかということがポイントだと思います。効率化ということと,それからもう一つは,前回から出ておりますように,余りにも細分化されていて,学校の先生方が共同的に取り組むのではなくて,個々の分担に終わってしまっているということがありますので,一つは,今出ておりますように,仕事をグループ化して大くくりにするということと,その大くくりにした仕事の管理を,きちんとした職制を置いて遂行していく。つまり,管理体制の整備を両面で進めていく必要があると思います。
 要するに,グループ化して,ライン化するという話ですけれども,そのときの担い手は,先ほど風岡委員がおっしゃったように,恐らく主幹を明確にそういう役割として位置付けながら,学校にこれまで以上に多く配置するということを通して校務の効率化を推進するということで,先生方の働き方を一方では変えるという方向がいいのではないかと思っています。
 それで,これは冨士道委員がおっしゃったように,とはいいましても,こんなものを幾ら議論していても学校はほとんど変わらないと思います。ですので,教育委員会が主幹の位置付け・役割というものを明確にしながら,それをいかに使うかということについてのモデルであるとか,かなり強い指導をしないと,学校は変わらない。これも併せて考えていかなければならないのではないかと思っております。以上です。
【小川部会長】  
   ありがとうございました。天笠委員,どうぞ。
【天笠委員】  
   失礼します。ここに4つ,現在の段階で考えられる対応策として出されているわけですけれども,これは,私は現場のお立場の方からの御意見により耳を傾けさせていただきたいなと今の段階では受け止めております。それはどういうことかといいますと,ここに示されたことは,現場の立場からすれば,ある意味で,何も今更,こういうことについては,それなりにやってきていますよという,今更これらのことについて言われるという,目からうろこのようなアイデアではなくて,現場の立場からすれば,もうこういうことについてはいろいろやってきているんですよといったことなのか。それとも,まさに目からうろことして,現場へのメッセージとして,これがそういう意味での有効性を持ち得るのかどうなのかというと,私は,現在,この段階だと,有効性という観点からすれば,ちょっとまだまだもっと我々として汗を流さなくてはいけないのではないかなと思っております。
 片や,こういう言い方もまたできるかと思っているのですけれども,言われることは分かって,もう努力していますと。ただ,今の現場の状態がそういうことについて,ある種の思考停止に近いような状態になっていて,そしてこのことについて一つ一つ具体的な対応にオーケーがなかなか出てこないような状態になっているということも一つまた考えられるのではないかということで,ならば,現場の自主的な自立的な考え方とか,自らの職場を自ら改善を図っていこうという姿勢とか考え方が再度復活するような,そういう働き掛け,そういう環境整備を考えるとするならば,どういう手だてが考えられるのか。それが支援という言葉の中に現在の段階ではまだ含まれているのかなと私は受け止めているわけですけれども,どういう支援の在り方があるのかなということを更に詰めていく必要があるのではないかと。その上で,それとまつわるような形で対応策を考え出していくことが必要なのではないかと思っております。
 それからもう一つは,現在の現場の状況についての認識ということが重要なのかなと私は思っております。例えば,方向性として,包括的なグループで対応するとか,こういうことは大変必要なのですけれども,私の捉え方というのは,膨大なもろもろの事務を,結果的に先生方は学校によってはお一人お一人がお一人お一人でそれぞれ対応するような状況になっていて,なかなかグループ化するとか相互に連携するとかということがとかく弱くなってしまっていないかどうかということで,そういう点からすると,学校は歴代,学年経営というところが,比較的規模が一定の規模以上のところは,それを維持して動かしてきて学校をやってきたわけですけれども,現状として学校の規模が小さくなって,学年経営が基本的に成り立たなくなっているというところはそれにどう対応されているのか。あるいは,学年会がいろいろな事情等々で,これまでは週1回開催されていたものが月に2度とか,場合によっては,それを開いても,従来のような形よりも機能が非常に低下するような状態になっていないかどうか。あるいは,主任制以来いろいろな歴史的経過があるのですけれども,学校を中核的に担ういわゆるミドルという人が存在しているのか,それとも,存在はするけれども機能していないのかどうなのか。ここら辺を丁寧に見ていく必要があって,私は,そういう意味でいうと,学年会を機能化させることとか,あるいはミドルがしっかりした機能を果たすという,ある意味で大変当たり前の話なんですけれども,それをもう一度学校に復活させるということも,一つの対応策として現在の段階ではあるかなと考えております。以上です。
【小川部会長】  
   ありがとうございました。この後,時久委員,青木委員,そして最後に妹尾委員という順でお願いいたします。
【時久委員】  
   前回欠席だったものですから,申し訳ございませんでした。記録等を読ませていただいて,思っていることをお話しさせていただきます。
 考えられる対応策の主に2つ目に関するところですけれども,学校の方で何が忙しいと思っているかというと,新しいことが次々とあって,それにどのように対応していくかというところで気持ち的に忙しいということがあります。教育委員会の方からもいろいろ話をしていますと,先生方にとっては,することが全部,1足す1足す1足すと,このように加えられていくわけです。例えば国語をしなくてはならない。社会科をしなくてはならない。キャリア教育も必要。英語もある。新しい学習指導要領への対応もしないといけない。こう並列になるのです。一つ言われるたびに大きな負担感となって,委員会とか,対応するような部会を作っていくということに結局なってしまって,部会がばらばらに行われると,大変忙しくなる。しかも効果が薄くなる。なぜかというと,全体的に学校として何を大事にして,子供たちをどういう方向に育てていくかというところが一番大事なところで,そのことに対してそれぞれすることが全部ピラミッドのように組み立てられていないといけないのですけれども,焦れば焦るほど一つずつ一つずつとなる。ここが忙しくなるのと,効果が出ないというところになると思います。包括的なグループというものにしていかないと,ばらばらの対策になって,そのばらばらの委員会から,これをしましょう,これをしましょうと出てくると,大変なことになるという実態があります。
 ここに主幹教諭等の配置とありますけれども,管理職以外で統括する人がいて,学校はこういう方向に作っていくのですよ,私たちの学校としては,課題がここにあるので,こういう方向で組み立てていきましょうねと,いつも全体を見て言える人が統括していないといけないと思います。一番いいのが主幹教諭で,この人が学校の方向性をしっかり押さえながら,管理職との間をつなぎながら,部会をばらばらにせずに,課題が似たようなものは一緒にまとめながら,方向性を一つに絞っていくということができれば,成果も上がるし,負担感も非常に減ると思っています。
 以上です。
【小川部会長】  
   ありがとうございました。青木委員,どうぞ。
【青木委員】  
   まず,資料1-2を見ますと,学校の組織の在り方に非常に差があるということがうかがえます。これは,管理職の能力に差があるとも見えますし,一方で課題がそれぞれの学校でいろいろ違うということも反映している可能性もあります。いずれにしても,マネジメントのありように差があるということです。そこから考えると,いい意味で差があるといいますか,優良事例も必ずあるはずですので,それを掘り起こして周知することが重要です。これは冨士道委員の意見に関連してのアイデアですが,周知の仕方というのは,もう少し,単なる周知ではないことがあっていいと思います。これは後ほど触れます。
 もう1点なんですが,学校が現在の少子高齢化の中で規模が小さくなっているというイメージはありますが,一方で統廃合が進んで,そんなにごく小規模校があちこちにあるわけではないということです。むしろ一つの自治体で1小1中のような,1つしか小学校がない,1つしか中学校がないような自治体が増えていますので,そういった自治体というのは,あらゆる地域の要請や課題がその学校に集中するということで,非常に忙しいことが想定されます。いずれにしても,規模の差に応じた学校の組織の在り方についても考えていくべき時期ではないかなと思います。
 先ほど申し上げました実効性ある取組ということで,これは次の議題にも関わるので軽く触れますが,学校管理規則のレベルで,規模の違いに応じた学校の組織の在り方に関するモデル案というのは,出した方がいいのではないかと思います。その意見の背景には,校長のマネジメント能力にこれだけ差があり,タイムマネジメント上の能力があふれる校長がたくさんいれば,こういう状態になっていない可能性が高いわけですので,やはりモデル案を示すということが大事であろうなと思います。以上です。
【小川部会長】  
   ありがとうございます。では,最後にしたいと思います。妹尾委員,どうぞ。
【妹尾委員】  
   先ほどスタッフ機能の拡充の話をしましたが,気になる話が今日机上配付されました財政制度等審議会の資料の中にございますので,御覧いただければと思います。ちょっと私は詳しくは分からないのですけれども,21ページをお開きいただければと思うのですが,先ほど来,事務職員さんがもっと活躍をという話が出ていますが,この21ページの資料によりますと,地方交付税措置はされているにもかかわらず,市町村費の事務職員は非常に少ないと,算定上のものよりも9分の1ぐらいの人しか配置されていないと見えます。それの真偽がどうなのかというのは,それはまた次回以降でもいいのですけれども,何が言いたいかというと,恐らくこの財政制度等審議会とすれば,もっと国費を出してくれと言う前に,もう既に国としては手当をしているのだから,市町村はもっと自分たちで動きなさいと,多分言わんとしているのだろうなと推測しております。これが事実なのかどうかは確認が必要ですが,いずれにしましても,市町村の教育委員会の判断で,もう少しこの事務職員さんなり,あるいはスタッフ機能をもっと交付税などの財源を使いながらどうやっていくかというのを考えないといけないということは言えるのだろうなと思います。
 その際に言えるのは,共同実施の話も出ていましたけれども,例えば浜松市さんですと,旧来県費の事務とされてきた給与とか旅費とか手当の事務の一部はもう一部の学校に集中処理させているように,政令市への移管に伴って,この4月からしているということを聞いております。そこの効果とか課題なども検証しながらですが,給与とか旅費とか手当のように,基本的には誰がやっても同じような処理でないといけないものは,やはり集中的に処理をするという発想をしないと,幾ら事務職員さんに「もっといろいろ経営参画してね」とか「教頭の補佐をしてね」とだけ言ったところで「忙しい」と言われますので,効率化できるところは効率化する,それでプラスアルファするところはプラスアルファしていくというメリハリは付けていくという発想を各市町村で考えていくというところが非常に大事だなと思います。以上です。
【小川部会長】  
   ありがとうございました。時間もありませんので,学校における組織の在り方に関わる議論については,ここで一旦終わらせていただきたいと思います。
 今までの委員の発言からも分かるとおり,まだまだこの学校における組織の在り方については,今後更に引き続いて議論が必要かと思いますので,今日まで頂いた内容を中間報告としてどのような形でまとめるかについては,また事務局の方で一工夫していただいて,引き続きこの部会で議論していきたいと思います。
 次に,これも前回から継続した議論ですけれども,役割分担や業務の適正化の実効性を高めていくためにどのような方策が必要か,そういう点についての御意見も頂きたいと思います。これは,資料2に基づいて,これも佐藤企画官から説明をお願いいたします。
【佐藤初等中等教育局企画官】  
   それでは,資料2を御覧いただければと思います。「これまでに議論した役割分担・適正化を着実に実施していくための方策について」ということで,前回の部会におきまして,大きく2つの観点から報告について議論を行っていただいたところでございます。それに基づいて,今回配らせていただいている資料では,前回意見のありました事項について追記させていただいておりますので,その部分について簡単に御説明をさせていただきます。
 まず,1つ目の方の観点でございます。これまでに出された主な意見ということで,白丸の上から5つについて,新たに今回追記させていただいております。
 一番上から申し上げますと,学校自らが,教職員の働き方の在り方をしっかりと考え,よりよい働き方を追求していくきっかけやメッセージをしっかりと打ち出していくことが必要という御意見。
 教員の意識改革に加えて,データ保存や業務の引継ぎの在り方をはじめとした学校現場に業務改善するためのノウハウの蓄積が必要である。教育委員会において意識改革や業務改善に関する教職員ヘの研修の実施や,業務実施に当たる方針や様式の統一化の実施が必要という御意見。
 そして,学校の重点目標や経営方針を明確化することが必要。その目標・方針の下で,ミッションや役割ごとに校務分掌をグループ化する学校組織の構築。また,学校内の教職員間で業務の在り方,見直しについて話し合い,確認する機会を設けることが必要という御意見。
 そして,校長ヘのマネジメント研修や人事評価との連関の実施が必要という御意見。
 教育委員会において,学校の取組の検証・チェックの仕組みが必要という御意見を追記しております。
 その下からの白丸については,基本的に前回記載させていただいている事項と同じでございますけれども,1枚おめくりいただきまして,2枚目の上から2つ目の白丸でございます。前回配らせていただいている資料では,調査・依頼事項を含めた業務量の削減について数値目標を決めて総量規制を行うということを書いておりましたけれども,前回の部会において,労働時間の長さについても同様に数値目標を決めて総量規制を行うべきという御意見を頂きましたので,その部分について追記させていただいております。
 そして,2枚目の一番下,2つ目の観点に関してでございますけれども,これにつきましては,前回の部会におきまして,そこに記載のあります,国や教育委員会において,学校の業務に追加的な義務付けを行う前に,既存の業務との調整や義務付けの必要性の検証等を行う組織を設置することが必要であるという御意見を頂いておりますので,その部分について追記させていただいたところでございます。事務局からの説明は以上です。
【小川部会長】  
   ありがとうございました。これについても,前回頂いた意見を少し加筆させていただいた資料2に基づいて,また少し時間をとって意見交換をしていきたいと思います。これは,勤務時間管理の在り方にも関係するような内容を含んでいますけれども,特にこれまで議論してきた,役割分担や適正化を着実に実施していくために必要な具体的な方策について,更に御意見を頂ければと思います。
 では,橋本委員,そして冨士道委員で,よろしくお願いします。
【橋本委員】  
   では,失礼します。特に役割分担を行う際のポイントというのは,資料にも書かれておりますけれども,地域・保護者の理解というのが何よりも大切かなと思っております。ただ,これまで学校がやってきた業務に関して,この業務は本来保護者の役割であるので,学校ではもうやりませんということを学校自体から言い出すというのは,現実的には非常に難しいことだなと思っております。したがって,学校現場の方からは,教育委員会が学校の後ろ盾となって,保護者に明確に役割を見直す基準とか内容とか考え方とかを丁寧に説明していってほしいといった声を頂いておりますし,また一部の市町村教育委員会からは,扱いが余りばらばらになるのは困るということで,府県でまとめてほしいといった声も頂いておりまして,私どもはそれに応えていきたいなと今考えております。
 その上で,我々は我々の方で,国のガイドラインなどが示されると,またそれを根拠にして,より改善を進めやすいということもありますので,恐らく部活動などもガイドラインが示されると思いますけれども,可能なものにつきましては,そういう考え方,基準的なものを国の方でも示していただけると有り難いなと思っております。
 なお,参考ですけれども,京都府におきましては,PTAの横断組織のPTA協議会と話し合いまして,学校・地域・家庭の3者が相互に連携・協力して子供を支え育んでいくこと,それから教育委員会と緊密に連携し,教職員の働き方改革を応援するということなどの内容の緊急アピールというものをPTAの研究大会で会長から宣言していただきました。こういうことを進めていく上では,十分にPTA等との下地作りを丁寧にしていくことが重要ではないかなと思っておりますし,また今月も意見交換をしたいと思っております。以上です。
【小川部会長】  
   ありがとうございました。冨士道委員,どうぞ。
【冨士道委員】  
   失礼します。今日お示しいただいた資料のまず1番の方,視点の2つ目の白丸にも出ていますが,特に教職員への研修の実施ということが出ています。これまで,例えば初任者研修とか10年経験者研修の中でも,こういう,例えば役割分担を含めて,いかに働き方について考えるかということの研修というのはなかったと思います。ですから,初任者研修の中から,きちんと意識改革に訴えるような研修の中身,項目を構築しいくべきだろうなと思います。当然,これは管理職の研修にも,同様のことが言えると思います。
 更にその下のところですが,学校の例えば経営方針の中にも,学力向上とか,豊かな心を云々(うんぬん)ということプラス,本校としてはこういう働き方を改革して改善していきますというものを明確に校長は示していく。それは地域にも保護者にも伝わるわけですから,これまでの学校経営方針の中にそういうものを入れていくことが重要であると考えます。
 2枚目の最後の白丸のところに特に実効性の担保というのが出ていますけれども,その後どうなったかという検証はなかなかなされていないことが多いと思います。こういうことを通知しました。出しました。しかし,その後どう変わったのか,変わっていないのか。変わらないとすれば,どのような形であれ,更に次の施策を打っていくのか。そこまでやっていかないと,先ほども申し上げましたが,「ペーパーを出しました。通知を出しました。以上で終わりです」で,解決には一切ならない。そのように考えております。以上です。
【小川部会長】  
   ありがとうございました。妹尾委員,どうぞ。
【妹尾委員】  
   これまで出された主な意見の上から4つ目とか5つ目にありますけれども,実効性を高めるためには,校長の力とか,それを支援する教育委員会の役割が重要だというのは,再三いろいろな方が申し上げているし,私も申し上げているところです。それで,より具体的な話もしていかないといけないのかなと思うんですけれども,一つ,校長の役割というか,こういうマネジメント能力をどうやって向上させるかといいますと,人材マネジメントは4つぐらいの視点に分けて考える必要があるのだろうなと思います。1つ目は登用,2つ目が育成,3つ目が評価,4つ目が出口です。
 つまり,登用の部分でそういった業務改善とか働き方改革とか労務管理とかをきちんとできる人を本当に登用しているかどうかというところがまずは問われないといけないというところが,1つ目です。
 2つ目,育成というと,校長になってから育成するのか,それでは遅いという意見もあるでしょうが,とはいえ,校長の育成をどうするか。研修等にも関わる話でございます。
 3つ目,評価,あるいはこの出口ということにも関わるのですが,校長先生も60歳で定年退職されて,その後の出口というのは,例えば再就職先をどうするのかということにも関わる話ではあります。つまり,何が言いたいかというと,例えば教育委員会に対して非常に無難な態度をしている人が得をするといった評価とか出口ではなくて,思い切った学校改善をする人を評価するべきでしょう。部活動の改革なども含めて,多少ハレーションは生むかもしれませんけれども。今はいわば波風を立てない人が得をするみたいなことに実態はなっていないかどうかというのは,各教育委員会で考えていただきたいところです。そういった,ある程度熱心な方をしっかり愛(め)でて,出口もある程度のところにしていくといったことも含めて考えないといけないということを申し上げたいと思います。
 そことも関係しますが,教育委員会の役割は非常に重要で,企業で言うと,エリアマネジャーといいまして,コンビニでも飲食店でもそうですが,各店舗がそれなりのレベルで底上げされているのは,そういった本社の人が来て,この棚はこういうところをもっとやったら売上げが上がるとか,このようにもっときれいにしないといけないとアドバイスする人がいるからなんです。今は指導主事はおりますけれども,学習指導については,あるいは生徒指導については指導してくれますが,いわゆる校長のこういうマネジメントとか人材育成については,恐らくよほどの大きな市でない限りなかなか難しいということだと思います。そこを,そういった人材もどのようにしていくのか,あるいはそれを教育委員会内部ではなくて外部の人を使うことなども一つの選択肢ですが,そういった場合には,いわゆる学校評価で第三者評価をやったときの反省と成果をどう踏まえるのかです。つまり,恐らくそこまでいい専門家がそんなに多いわけではございませんので,あるいは予算に限りがありますので,そういったことも含めて,教育委員会の機能拡充なり在り方をどう考えるかを是非議論したいなと思っております。以上です。
【小川部会長】  
   ありがとうございます。この後の発言ですけれども,時間もありませんので,今,名札が上がっている4人で終わらせていただきたいと思います。青木さんまでですね。では順番にそちらから,田野口委員,佐古委員という順でお願いいたします。
【田野口委員】  
   ありがとうございます。2点お話をさせてください。
 この2枚目の4つ目の白丸の部分にございます,責任の所在について整理ということで,小学校においては,様々な子供の安全を守るために,教職員が関わって子供たちを見守っております。ここでも議論にございました,休み時間をどうするか,給食の時間をどうするか,清掃の時間をどうするか,そして見守り活動であったり,放課後の活動であったりというところで,学校が関わって,教員が関わって子供たちの安全を見守っているということもございます。安全配慮義務というのがどこまでの範囲なのかということがございますので,そこの責任の所在を明らかにして,「大丈夫だよ,先生方」と言ってあげられるような責任の在り方も明らかにしていただければと有り難いなと思います。
 それから,2点目としましては,校長も頑張らなければいけないという御意見は,まさにそのとおりだと思います。働く職員を守るために,校長が経営方針を明らかにして,地域やPTAにきちんと筋の通った話をしておかなければいけないということも分かっております。ただもう一つ,ここに後ほど資料で出てくると思いますが,資料4のところにもございますが,教育委員会における所管する学校に対する業務改善方針の策定ということで,都道府県で7(14.9%)というところがございますが,市区町村で策定していないところが92.4%ございます。教育委員会も,各地区になってしまいますと,なかなか業務改善方針というものの策定には動いていかれないというのが,今お話にも出てきているように,学校を直接支援してくださいますのは,やはり市区町村の教育委員会でございます。そこが後押しをしてくれてこそ,校長は自信を持って学校運営に当たれるのだと思っておりますので,是非是非ここの部分も,市区町村においてもきちんと方針が策定できるような形で進めていただくのが有り難いのかなと考えております。どうぞよろしくお願いいたします。
【小川部会長】  
  佐古委員,どうぞ。
【佐古委員】  
  この業務の改善あるいは働き方の改革ということを実効性あるものにするためには,長年にわたって学校で培われた慣習を変えるということですので,これは非常に難しいと思っています。ある種,学校の文化を変えていかないと,この問題は解決しないのではないか。ですので,私も最終的には,学校自らがこうしようとか,この仕事は地域に任せようとかといったことが出てくれば,可能性はあると思うのですが,とはいっても,他面では,学校任せではこの問題は決して済まないということも事実だと思います。とすると,学校が考えざるを得ないような状況をいかに作るかということが,一つのポイントだと思います。これは,今までの議論で言うと,一つは,明確に先生の働く時間のガイドラインというものを示して,これ以上は駄目ですよということをはっきり示しながら学校に考えてもらうということが必要であると思います。その点では,今出ておりますように,そういうことを明確に地域,地域の事情に合わせて設定する教育委員会の役割は大事だろうと思います。
 2つ目は,学校が業務の改善に踏み切ろうとしても,リソースはないということだとこれはできませんので,この前出ていましたように,スペシャリスト,例えば特別支援教育とか,カウンセラーとか,そういうことの支援の必要な領域でのスペシャリストの人員を確保する。あるいはティーチングアシスタントのような人員が教育のレベルできちんと配慮されているといった条件を整えた上で,使えますという環境を作らないと,学校はなかなか踏み出せない。だから,量的なガイドラインと,それから人的なリソースをはっきりと学校に示すということが大事だと思います。
 その上で,先生方の意識改革ということに踏み出そうとすると,もちろん校長さんの研修,マネジメントの改善と。これは,これまで校長さんのマネジメントの主力はどちらかというと教育指導面の管理ということに力点が置かれておりましたけれども,この委員会が立ち上げられて分かるように,むしろそれとともに先生方のタスクの管理ということです。時間管理を含めて,その面も含めて,校長さんのマネジメントは広がってきているのだということを認識していただいて,優良事例等もよく理解していただくような研修が必要だろうと。それを学校に持って帰ってもらって,校内研修できちんと広げてもらうということがないと,学校は変わらない。つまり,研修にしても,都道府県レベルでの職員に求める研修とともに,校内研修をきちんと連動させて,それを教育委員会がチェックするという体制を含めて,環境作りと意識改革を進めていくことが必要だと思っています。
 以上です。
【小川部会長】  
  ありがとうございました。風岡委員,どうぞ。
【風岡委員】  
  今,校長先生の責任とか役割の在り方については,様々な委員の方からお話を頂きましたので,校長先生については1点だけ。校長先生の評価の部分に,労務管理の視点というのを入れて,校長先生がしっかりそういう部分を管理しているのかといった評価の仕方もあると感じているところであります。
 もう1点,学校評価というものを改めてどう考えるのかということを業務改善の方針の一つの指針としたらいいのではないかなということであります。佐古委員も,それから天笠委員も言われましたが,学校が自ら考え活動していく自主的・自立的な学校の在り方から考えると,学校の自己評価の中で業務改善あるいは労務管理といった視点を入れていくことで,校内での取組状況について,評価・改善といったことにつなげていけるのではないかなと考えています。
 また,この学校評価の仕組みとしては,自己評価を受けての関係者評価ということになりますので,この時点でコミュニティ・スクール等を活用して,地域の方々と学校の課題を共有する。その中で,地域の方々がどのように学校に協力できるのかといったことも,関係者評価の在り方として考えていけるのではないかなと感じています。
 また,先ほど妹尾委員の方から話がありましたが,そうはいっても,専門性という観点から,第三者評価というものの在り方についても,課題も多くありましたが,第三者評価の在り方について改めて考えていくといったことも国の方に求められるのではないかと感じています。以上です。
【小川部会長】  
  ありがとうございます。では,天笠委員,どうぞ。
【天笠委員】  
  失礼します。1点,研修についてということについて申し上げさせていただきます。
 御承知のとおり,現在,校内研修があり,それから学校の外では主として都道府県教育委員会等々の研修センター等々での研修がありということで,昨今は更新講習という形で研修とか,更にそれを言うならば,教職大学院におけるそれというのもその中の一つに捉えていいのかなと思うのですけれども,ちょっと教職大学院はともかくとしまして,実態としては,私はその一つ一つに全部意味があると思っているんです。ただ,いかんせん,何が起こっているかというと,もう既に様々に指摘されているように,非常に限られた時間を縫うような形で何とか時間を確保しながらそれぞれやっているということで,実効性とか,どれほど機能が得られているかどうかあたりは十分検証しなくてはいけないようなところがある。要するに,時間が非常に分散したような状態の中でこれが運用されているということによって,せっかくそういうことについての意図,狙いは了なのですけれども,時間をそういう形で運用せざるを得ないところにこの課題があるのではないか。ですから,そういう意味で言うと,これらの分散している時間をまとめるというのでしょうか,一定の時間を確保するという視点で,学校内外のそれぞれの研修というのを時間的な集約という,一定の時間を確保するという観点から,もう一度研修システムそのものの在り方ということを見つめ直してみるということも一つではないかと思うんです。
 話はちょっと飛躍するかもしれませんけれども,その中で教職大学院の位置付けというのが,現在の場合,非常に限られた人たちを対象にしたものなんですけれども,こういう校内研修の改善の観点からしたときに,教職大学院を別枠に置くのではなくて,その一環として,その運用の在り方とか,ある意味で言うと,現在のところ人数的にはせいぜい2桁の対応なんですけれども,それをもう少し抜本的に考え直すとかということで,研修時間の確保ということを少し観点を変えながらということも一つのアイデアとして検討していいのではないかなと思います。以上です。
【小川部会長】  
  ありがとうございました。それでは,最後,青木委員,どうぞ。
【青木委員】  
  この発言の名宛て人は本来は教育委員会であるべきなのですけれども,教育委員会はなかなか動かない可能性がある内容なので,結局は文部科学省に名宛て人になっていただくかもしれないのですが,既存の政策手段がいっぱいありますので,それを活用するというスタンスでお話しします。
 学校評価については,風岡委員がおっしゃっていただいたので,1個だけ言いますと,第三者評価をまた国でやったらどうですかということです。教育活動に特化した第三者評価だったような気がするんです。かつて行われて,私も関わりましたけれども,ですので,業務改善に特化する第三者評価というのはあっていいのかなと思います。
 それから,指導主事が訪問して学校を指導して回るわけですけれども,そういったところでこういう業務改善の観点というのは実はないのだと思います。ということは,これをどう規律付けていくかというと,教育委員会には今,事務の点検・評価というのがありますので,そういったところに項目で特出しで盛り込むというのがいいのではないかなと思います。
 あとは,研修に関しては,それこそ緊急の対策が求められているテーマだとすれば,これは採用10年以内の世代が今非常に多くなっていますから,そういう世代を中心として,もう2~3年の間に集中的に研修をするとか,そのようなこともいいのかなと思います。
 最後です。人事委員会というのがそれぞれの自治体にあって,そこで教員の,あるいは学校における教職員の過重な労働の実態についてコメントしている人事委員会も出てきていますので,そういったところに期待することもあると思います。ただし,これは独立性のある行政委員会で,教育委員会もまたそうですので,そういった行政委員会同士がどう連携をとればいいのかというのは,私には今アイデアはありませんので,このあたりは文部科学省の担当課の皆さんで少し研究していただければと思います。つまり,人事委員会が教職員の働き方改革にどのように役割を果たし得るのか,教育委員会からそれにどうアプローチできるかということは,研究の余地があるかなと思います。以上です。
【小川部会長】  
  ありがとうございました。
 最後の人事委員会の件については,恐らく次の勤務時間管理の在り方等にも関わる重要なテーマかと思います。
 時間もありませんので,ここで一旦,1の議題については終わらせていただきたいと思います。それでは,今日の議論も踏まえまして,中間報告にまとめる形で,また引き続き,役割分担・適正化を着実に実施していくための方策については,更にこの部会で議論していきたいと思います。ありがとうございます。
 それでは,次の議題に入っていきたいと思います。勤務時間及びその管理の在り方についてです。
 まず,議論に入る前に,実は平成28年度に実施した教員勤務実態調査の中で,教員のストレス状況について,今まで報告がありませんでしたが,今回一定の分析結果がまとまったということですので,これは資料3に基づいて,研究チームのメンバーである筑波大学の笹原信一朗准教授に御報告をお願いしております。,笹原准教授から,この資料3に基づいて,勤務実態調査の中の特に教員のストレス状況に関する分析について御報告いただければと思います。よろしくお願いいたします。
【笹原筑波大学准教授】  
  よろしくお願いします。筑波大学から来ました笹原です。お手元の資料3を御覧ください。先ほど小川部会長より御紹介いただきました昨年度実施の教員勤務実態調査の中で,ストレスに関する部分について,解析を実施しましたので,御報告いたします。
 1枚目をめくっていただきまして,今日御説明申し上げますのは,1つはストレス状況に関する評価項目,そして職種別のデータについてです。後で理由を御説明しますが,教諭のみに絞ったさらなる解析を年齢別・性別,勤務時間,部活動に関して行いましたので,これについて御報告いたします。
 最初に評価項目ですが,次のページ,3ページを御覧いただきまして,4つございます。K6というのは,抑鬱・不安を評価する指標でございまして,5点以上で高ストレス状態を示唆いたします。BSJSは,仕事の負荷を評価する指標で,20項目から成る質問票になります。SOCは,人生に対する首尾一貫した感覚を評価する指標でして,これが,簡単に言うと,ストレスの対処力,耐性のようなものを表します。そして,AISというのは,不眠を評価する指標で,6点以上で不眠を示唆いたします。
 めくっていただきまして,まず職種別に分析いたしました。まず小学校教員の中には,校長,副校長・教頭,教諭,講師,養護教諭,栄養教諭とそれぞれいらっしゃいまして,これを一覧でお示しいたします。全体的に,職位が高いほどK6の得点が低い。量的負荷,質的負荷,対人関係の困難という,ストレスを強める要因については,現場の教諭が高い傾向がある。そして,ストレス緩和要因である裁量度,達成感,同僚・上司の支援に関しては,職位が高い校長先生などが裁量度,達成感ともに高いという傾向がございます。そして,SOC,ストレスの対処力に関しましては,これも職位が高い方がストレスの対処力が高い。更に下位の項目においても同じ傾向が認められます。そして,不眠の尺度については,教諭において少し高い傾向があるということになります。
 ここで,職位ごとに見てきましたが,ほかの比較データとしまして,我々筑波大学があります筑波研究学園都市を対照に,同じK6,BSJS,SOC,AISという4項目を調査しておりましたので,これと比較いたしました。そうしましたところ,教育・研究職という筑波に勤める教育・研究の勤務者と比較しますと,量的な負荷がどの職位においても高い。そして,ストレス緩和要因の部分になりますが,裁量度が低い。特に教諭に関しましては2.76,講師に関しては2.65ということで,その辺の差が明らかになっておりました。
 次に,小学校教員ですけれども,続きまして6ページを御覧ください。失礼いたしました。今の小学校教員の特徴をハイライト化したものが6ページでございます。
 次に,中学校教員も一覧にしてみますと,先ほどの職位で,4つの評価項目,そして教育・研究系との比較をお示しいたしました。これは,続いて8ページをまた御覧いただきまして,分かりやすくハイライトしたところを見ていただきますと,中学校教員においても,教諭において,教育・研究職と比べてK6というストレスが非常に高い,そしてストレスの増強要因である量的負荷が高い,裁量度が低いという結果が得られております。
 以上の教員全体で小括しますと,9ページになりますが,特に教諭と教育・研究系の勤務者を比較したときに,教諭は,量的負荷が高く,裁量度が低く,これはつまるところ,メンタルヘルスの状態が不良であるということを意味します。これはいずれも小学校,中学校ともに教諭が心配な状況でありました。
 したがいまして,以下,実際に数も最も多い分布を持ちます教諭について,メンタルヘルスの状態が悪いということが明らかになりましたので,これに絞って,更に詳しい状況を分析いたしました。それが11ページ以降の2,メンタルヘルスの状態についてになります。
 めくっていただいて,12ページを御覧いただきますと,今度は年代別にメンタルヘルスの状態を比較いたしました。小学校,中学校ともに,下の13ページのグラフを見ていただくと一目で分かると思いますが,若い世代,特に20代においてK6の得点が高いということが明らかになっております。
 続きまして,まためくっていただきますと,今度は年代に性別も更に加えてK6の得点を確認いたしました。そうしましたところ,男性と女性をそれぞれの年代で見ていただきますと,女性の方が男性に比べてK6の得点が高い。グラフで言うと,赤が女性になりますが,男性の青い棒グラフに比べて,どの年代においても高いことが分かるかと思います。
 以上,年代別・性別に比較しますと,16ページですが,年齢が若いほどメンタルヘルスの状態が不良であり,男性と比べまして女性のメンタルヘルスの状態が不良でありました。いずれも小学校,中学校ともに,教諭に限ってのことですが,その傾向が認められました。
 次に,3番目として,週当たりの勤務時間について,ストレスの状況を比較いたしました。18ページを御覧いただきまして,週勤務時間別のストレス状況評価の一覧でございます。棒グラフのグラデーションが,左,濃い色が労働時間が週40時間未満,40時間というのが週8時間の5日間で法定労働時間内と,これを超えるのを5時間ごとにとりまして,最大で80時間以上,週に2倍働いている群まで比較いたしました。そうしましたところ,労働時間が長くなるにつれてK6の得点は特に顕著に増えてくるという傾向が,下の一覧表からも明らかになっております。
 続きまして,中学校についても,週勤務時間別にメンタルヘルスの状態を把握いたしました。これも小学校と同様に,勤務時間が長くなればなるほどK6の得点が高く,メンタルヘルスの状態が悪いという傾向を認めております。
 男性と女性についてそれぞれまた週の勤務時間別に見ますと,男性,女性ともに,勤務時間が長いほどK6得点が高いというのが,21ページ並びに22ページのグラフから見ていただけると思います。
 次に,単純に労働時間が長いということは,メンタルヘルスの状態を悪化させるという要因の一つと考えられるのですが,先ほどの22ページの中学校の男性のグラフをちょっと見ていただきたいのですが,これに関して言いますと,小学校に比べて右肩上がりの変化というよりは,波を打っているのが御覧いただけと思います。
 これは,次の23ページを見ていただくと,その要因が明らかになってきますが,人のストレス対処力というものを先ほどのSOCという得点で表しておりまして,SOCの得点が60点以下,日本人の平均よりも低いという部分と,それよりも高いという部分,SOCの60点以上という部分で比較いたしますと,60時間未満の労働時間について,より効いてくるのが,SOCが低い群において労働時間がより顕著にメンタルヘルスの状態と関連するというのが明らかになります。
 もう少し分かりやすく説明しますと,右側を見ていただきますと,SOCの得点が60点以上で高い,ストレス対処力が高い場合は,60時間未満並びに60時間以上の差がほとんどなくなってくる。つまるところ,ストレス耐性が高い人たちは,労働時間が長くなっても,その影響よりも別の要因が効いてくるのではないかということが考えられました。
 以上,ここまでを小括させていただきますと,まず週の勤務時間に関しましては,週勤務時間が長くなるほど量的負荷,質的負荷が高くなり,また勤務時間依存的にメンタルヘルスは不良となる傾向が分かりました。
 次に,長時間勤務時間の有無で,長時間勤務がある人,ない人で分けますと,SOCの得点によって,ストレス耐性が低い群では,長時間勤務の影響をより受け,悪化しますが,ストレス耐性が高い群では,長時間勤務の影響を受けにくいという結果が得られました。
 そして,最後,4番目に部活動の影響を解析いたしました。これは,部活動がありますのが中学校の教諭のみになりますので,中学校のみを対象としております。
 26ページをめくっていただきまして,部活動の顧問をしているか,していないかということで,まず単純に比較いたしました。そうしましたところ,顧問のあり,なしというのは,K6の総得点には大きな影響は与えておりませんでした。また,SOC,ストレス耐性の指標とも関連は見られておりません。
 次に,担当する部活動の実施日数によるストレス状況の評価です。部活動を担当していない場合は0日になりますが,週7日,土日も含めて部活動の実施があるというところまで,0~7日まで8段階で評価いたしました。そうしましたところ,K6,SOCの総得点ともに,明らかな関連は見られておりません。
 続いて28ページです。しかしながら,一方で部活動に必要な技能を備えているかという点に関してストレス状況とその関連を見てみますと,教諭の先生が,例えば自分も野球をずっとやられてきて,野球部の指導は非常に得意といった場合に,「十分備えている」という赤い棒グラフになります。ところが,自分は今まで野球をやってきたのだけれども,今回,例えば美術部の担当になったなどという場合には,その技能を「全く備えていない」という状況になりまして,これが青い棒グラフになります。その間,「ある程度備えている」,「どちらともいえない」,「あまり備えていない」という5段階で評価しましたところ,K6の得点に,技能の少なさがメンタルヘルスの状態を悪化させているのではないかといった関連が見られました。また,SOCの総得点を見ますと,K6の総得点と逆の関係がある。つまり,対処力の高い先生たちは部活動の技能を十分備える傾向が見えてまいりました。
 更にこれを年代別・性別,男性と女性で分けまして,20代から60代まで10歳刻みで分析しましたところ,御覧いただくと分かりますように,例えば男性の20代,30代,40代,50代,60代と,男性におきましては,技能の有無がメンタルヘルスの状況と大体右肩上がりの変化で関連が見られるということが読み取れます。しかしながら,女性に関しては,年代別に見たときに,30代においては「どちらともいえない」というところが一番良好で,十分備えていても不良な人たちが見えてきまして,男性と女性で部活動の技能に関する傾向が分かれてまいりました。
 これは統計的にどこまで本当に意味があるのかということを解析しましたところ,共分散分析というものを用いまして,部活動の指導知識,この5段階が男性においては有意に効いている。ところが,女性においては,部活動の指導知識ではなく,年齢の方がむしろ女性の場合は関係していたという結果が得られました。女性は若いほどメンタルヘルスの状況が悪いという年齢の影響が大きいということが分かりました。
 以上から部活動の結果を小括させていただきますと,31ページで,担当する部活動の実施日数とメンタルヘルスとの相関関係は見受けられませんでしたが,必要な技能を備えていない場合にメンタルヘルス不良となる傾向が認められました。
 以上,1から4までのそれぞれのパートを最後にまとめておきますと,32ページを御覧ください。最初に,教諭全体で教育・研究系の勤務者と比較いたしましたら,一般的な教育・研究職に比べて,量的負荷が高く,裁量度が低い,つまりメンタルヘルスの状態が不良だということが分かってまいりました。
 そして,年代別・性別に比較いたしますと,年齢が若いほどメンタルヘルスの状態が不良で,男性と比べ,女性のメンタルヘルスの状態は不良でした。
 そして,勤務時間との関連に関しましては,勤務時間が長くなるほど量的負荷,質的負荷が高く,また勤務時間依存的にメンタルヘルスは不良となる傾向が認められました。
 そして,長時間勤務の有無で,長時間勤務時間を2分割しますと,ストレス耐性が低いSOC60点未満の群では,長時間勤務により悪化しまして,ストレス耐性の高いSOC60点以上の群では,長時間勤務の影響を受けにくい傾向がありました。
 最後に,部活動では,担当する部活動の実施日数とメンタルヘルスとの相関関係は見受けられませんでしたが,必要な技能を備えていない場合,メンタルヘルス不良となる傾向が認められました。
 以上のことを受けまして,我々のチームで,一つの参考としてですが,提言を持ってまいりました。教員のメンタルヘルス状態が,他職種と比較し不良であることが明らかとなっておりますので,何らかの対策が必要なのではないかと。これに関しましては,勤務時間が一つ関係しているというデータから,勤務時間の削減の対応が何らかの形で必要ではないか。また,部活動という活動に着目しますと,専門性が重要ではないか。専門性を発揮できる場面ではストレスを感じにくいのですが,専門性を発揮できない場面で強いストレスを受ける傾向が考えられましたので,部活動の指導員など,専門性を補う制度を活用することによりこれが改善できる可能性が示唆されました。以上でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
【小川部会長】  
  ありがとうございました。
 教員のストレス調査については,初めて目にする方も多いと思いますけれども,何か御質問があれば,少し時間をとりたいと思いますので,委員の方から何か確認したこと,御質問したいことがあれば。妹尾委員,どうぞ。
【妹尾委員】  
  大変貴重なデータ,ありがとうございます。ちょっとしたコメントなんですが,講師の方なども結構ストレスを感じているなとか,養護教諭も,小学校では特にストレスを感じているなとか,そのあたりも心配するデータだなとは感じました。それから,多くの方がやはり不眠を訴えているというところも,授業準備などをよりよくする,あるいは授業をよりよくするという観点からも,不眠の部分は心配だなと感じました。
 それで,ちょっと質問なんですけれども,このK6の得点というのは,例えばこれを超えると黄色信号ですよとか,赤信号ですよとか,そんな目安みたいなものはあるのでしょうか。
【笹原筑波大学准教授】  
  御質問,ありがとうございます。最初の3ページ,K6は5点以上を高ストレス状態と判定しますので,例えば今回の全体の得点で見ていただいて,平均点で5点を超えるようなグループというのは,半数以上が何らかの高ストレス状態に陥っているという集団的な見方ができますので,かなりの高ストレスと考えてよろしいかと思います。
【小川部会長】  
  妹尾委員,よろしいですか。
【妹尾委員】  
  ついでに,ちょっとだけ。それで,高い方は7点を超えたりしているんですけれども,それはよっぽどひどいと解釈するのか,その辺は,すみません,ちょっとなかなかうまく表現できないんですが,解説していただいていいですか。
【笹原筑波大学准教授】  
  はい。ありがとうございます。これの1点違うと,ではどのぐらい具体的に臨床的に違うのかということに関しては,残念ながら,5点以上というくくりで一つ高ストレスではあるのですけれども,どこからが,例えば病院へ行かなければいけないとか,もう危ないとかというところまではちょっと出ていないデータでございまして,ただ単純に考えて,点数が高ければ高いほどもちろん悪いと考えられます。
【妹尾委員】  
  ありがとうございます。
【小川部会長】  
  他にいかがでしょうか。では,善積委員,そして佐古委員でお願いします。
【善積委員】  
  お話ありがとうございました。K6と,それから裁量度について,調査票ではどういった表現のものがそれに該当する項目になっているのか,教えていただけますでしょうか。
【笹原筑波大学准教授】  
  はい。ありがとうございます。これは,お手元のファイルの中に調査票そのものが多分あったと……。すみません。ありがとうございます。皆さんのお手元にないようで,大変失礼いたしました。こちらが原本,教員調査票でございますが,読み上げます。
 まずK6ですが,6問の質問票になっておりまして,過去30日の状況を質問するのですが,「神経過敏に感じましたか」,これを5段階,「全くない」,「少しだけ」,「時々」,「大抵」,「いつも」と。以下,同じ5段階で,「絶望的だと感じましたか」,「そわそわ,落ち着かなく感じましたか」,「気分が沈みこんで,何が起こっても気が晴れないように感じましたか」,「何をするのも骨折りだと感じましたか」,「自分は価値のない人間だと感じましたか」という6項目がK6というものになります。
 次に,裁量権のところですけれども,これは御自分の仕事について,現在の状況に最も当てはまると感じる状況について答えてもらうのですが,4段階で,「そうである」,「まあそうである」,「少しそうである」,「全くそうでない」の4段階で,「自分の仕事について,自分の意見を反映することができる」,「仕事の進め方を自分で決めることができる」,「仕事のペースを自分で決めることができる」という3項目から評価いたしております。
【小川部会長】  
  善積委員,それでよろしいですか。
【善積委員】  
  はい。ありがとうございました。
【小川部会長】  
  では,佐古委員,どうぞ。
【佐古委員】  
  貴重なデータ,ありがとうございました。1点,先生の解釈をお聞きしたいのですが,13ページにグラフがありまして,20代の教員にメンタルヘルスの悪い状態が顕著であると,これは,私などは非常に考えさせられるのですけれども,これは例えば,20代というのは業務になれていないので,また教職に適応し切れていないからこういう状態になっているので,年代的に上がれば,30代,40代,これも高いんですけれども,低下していくようなものとお考えなのか。それとも,年代的といいますか,この世代のグループがこういう特徴を持っていて,これはずっと継続する傾向があると考えられるのか。その点の解釈はどうでしょうか。
【笹原筑波大学准教授】  
  ありがとうございます。今回の調査自体は,横断と言いまして1時点なので,この人たちが,例えば今の20代が次に30代になったときにどう変化するかというのは推測でしかないんですけれども,一般的にK6と先ほどのSOCというものは,逆の関係になっておりまして,先ほどおっしゃっていたように,経験を積んで,いろいろなことになれてくると,ストレスの耐性というのも付いてまいりますので,年齢が高いほどストレス耐性が一般的に高い傾向がございます。それに伴って,同じような勤務時間とか,状況が似たようなときでも,年代が高い方が実際のメンタルヘルスの状態がよいという傾向がございますので,恐らく予測では,今のこの20代の人は,10年後に測ったときに,今の30代と同じぐらいにはなるのではないかとは予測します。
【佐古委員】  
  ありがとうございました。
【小川部会長】  
  よろしいですか。
【佐古委員】  
  はい。
【小川部会長】  
  次の審議に入っていきたいので,そろそろよろしいですか。笹原先生,ありがとうございました。
 それでは続いて,勤務時間及びその管理の在り方について,議論に入っていきたいと思います。最初に事務局から,これは資料4及び資料5に基づいて,佐藤企画官から説明をお願いいたします。
【佐藤初等中等教育局企画官】  
  よろしくお願いします。お手元に資料4と資料5-1,資料5-2を御用意いただければと思います。
 まず,資料4,勤務時間管理の現状と在り方について,横書きの資料でございます。勤務時間管理の現状と在り方について,簡単に御説明させていただきます。
 めくっていただきまして1ページでございますけれども,これにつきましては,本年の1月に厚労省の方から示されました「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」というものでございます。1ページ目の真ん中の主な内容の上から2つ目のところを見ていただければと思います。ガイドラインの中で求められていることといたしまして,まず,使用者は,労働者の労働日ごとの始業・終業時刻を確認し,これを記録するということ。そして2点目でございますけれども,始業・終業時刻を確認し,記録する方法としては,原則として次のいずれかの方法によるということで,1つ目が,自ら現認することにより確認する方法,若しくはタイムカード,ICカード,パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を基礎として確認するという方法のいずれかで行うということが求められているところでございます。
 下の方に行っていただきまして,2ページでございます。実際の出退勤時刻の管理の現状でございますけれども,報告や点呼,目視などで管理職が確認する方法が多いと。そして,タイムカードや校務支援システムを活用する事例については,増えているものの,全体としては4分の1程度にとどまっているような現状でございます。
 1枚めくっていただきまして,3ページでございます。3ページは,今年の6月に文部科学省から各教育委員会に,業務改善のための取組状況調査の結果と併せて通知しているものでございます。この通知の中でも,2でございますけれども,勤務時間の適正把握ということについて重ねてお願いをしているところでございます。
 下のページに行っていただきまして,本部会においても,8月末に緊急提言ということで,勤務時間管理につきましては,資料の真ん中より下でございますけれども,「適切な手段により管理職も含めた全ての教職員の勤務時間を把握すること」,そして,一番下でございますけれども,「服務監督権者である教育委員会は,自己申告方式ではなく,ICTやタイムカードなど勤務時間を客観的に把握し,集計するシステムが直ちに構築されるよう努めること」という提言を頂いているところでございます。
 1枚めくっていただきまして,5ページです。実際の勤務時間管理に係る取組事例ということで,そこでは北九州市教育委員会の取組を記載させていただいております。北九州市では,平成25年1月から校務支援システムによる勤務時間管理ということを制度的に導入されております。右側でございますけれども,そういったことを活用しまして出退勤時間の確認・把握ということを行っていらっしゃる,またそういうデータを活用して健康被害の防止対策ということにも取り組んでおられるという事例でございます。
 その下,6ページでございます。勤務時間の把握に関する調査・分析ということで,こちらは過労死白書の方にも掲載されているデータでございますけれども,労働時間を正確に把握することが,残業時間の減少,年休取得日数の増加,メンタルヘルスの状態の良好化に資するということがデータから示されております。
 その下のグラフの中で水色のところが,勤務時間・労働時間について正確に把握されているというものでございまして,残業時間については少ない,年休の取得日数は多い,メンタルヘルス状況については良好であるという結果が示されているということで,参考でございます。
 続けて,資料5-1の方に移っていただきまして,資料5-1は,公立学校の教育公務員の勤務時間等について,制度的な概要をまとめさせていただいております。
 まず1ページの一番上の四角囲みでございますけれども,公立学校の教育公務員の勤務時間その他の勤務条件は,一部の規定を除いて労基法が適用される。労基法の制約の範囲内で,当該地方公共団体の条例で定められる。県費負担教職員については,都道府県の条例で定められるということになっております。
 こういった前提で,下の1番の勤務時間でございますけれども,勤務時間とは,職員が上司の指揮監督を受けて,原則としてその職務のみに従事しなければならない時間ということにされております。
 また,勤務時間については,その下の労働基準法第32条におきまして,「使用者は,労働者に,休憩時間を除き1週間について40時間を超えて,労働させてはならない。使用者は,1週間の各日については,労働者に,休憩時間を除き1日について8時間を超えて,労働させてはならない」と規定されております。
 また,その下の※の2番目でございますけれども,同じく労基法におきまして,同期間内の特定の週において40時間以上,特定の日において8時間以上の労働をさせることができる変形労働時間制が認められておりまして,1か月間の変形労働時間制や1年間の変形労働時間制に関する規定がございます。この点,教育公務員を含めて地方公務員においては,1か月間の変形労働時間制は適用されるが,1年間の変形労働時間制は適用除外となっているところでございます。
 次のページに行っていただきまして,2ページでございます。2番の休憩時間でございますけれども,労基法に基づいて,勤務時間が6時間を超えて8時間以下である場合には少なくとも45分,8時間を超える場合には少なくとも1時間の休憩時間を与えなければならないとなっております。
 3番の時間外勤務命令でございますけれども,公立学校の教育公務員については,原則として時間外勤務は命じないものとする。時間外勤務を命ずる場合は,いわゆる超勤4項目に従事する場合であって,臨時又は緊急のやむを得ない必要があるときに限られるとされております。
 また,時間外勤務手当及び休日給を支給せずに,勤務時間の内外を問わず包括的に評価して教職調整額が支給されるという仕組みになっております。
 次の3ページに行っていただきまして,4番の週休日等の勤務時間の割り振り及び代替措置についてでございます。公立学校の教育公務員につきましては,勤務時間条例・規則で土曜日及び日曜日については週休日とされております。そして,特別の必要がある場合については,週休日に勤務を要する日として勤務を命じ,土曜日及び日曜日以外の勤務日を週休日に振替を行うことができるように規定されているところでございます。
 なお,振替可能な期間につきましては,各自治体で異なっているということでございます。
 その下,休日における勤務でございますけれども,休日における勤務については,時間外勤務を命じることのできる場合に限定されているところでございます。
 また,あらかじめ指定された代休日に当該職員の職務専念義務を免除させる休日代休制度を設けている場合がほとんどであるという状況でございます。
 その下,5番,勤務時間等の適正の確保のための調査・監督についてでございます。公立学校の教職員の勤務時間,休暇,休日,安全衛生管理体制等については,適正になされているかなどを調査・監督するいわゆる労働基準監督機関としての役割については,人事委員会又はその委任を受けた人事委員会の委員が担っているということになってございます。
 次の4ページから11ページまでにつきましては,今申し上げたことに関する参照条文となっておりますので,12ページまで飛んでいただければと思います。
 12ページからは,公立学校の教育公務員の勤務時間等をめぐるこれまでの議論ということで,参考に付けさせていただいております。
 12ページは,中央教育審議会の答申ということで,平成19年3月のものでございます。この中で,教職調整額の見直し,そして勤務時間の弾力化につきましては,13ページの方に下線を引いているところでございますけれども,両方とも,教員勤務実態調査の最終報告の結果も見ながら,今後更に専門的・技術的な検討を行っていくことが必要であるとされているところでございます。
 これを受けまして,次の14ページでございますけれども,学校の組織運営の在り方を踏まえた教職調整額の見直し等に関する検討会議という会議が設けられまして,この中で検討がなされたところでございます。「審議のまとめ」(平成20年9月8日)の抜粋を付けておりますけれども,この中で,教職調整額の見直しにつきましては14ページ,そして1年単位の変形労働時間制につきましては17ページにそれぞれございますけれども,両方とも,学校の在り方などの検討を踏まえ,今後更に検討すべきと考えるということで,この段階では結論に至らず,継続検討となっているところでございます。
 そして,最後に資料5-2を御覧いただければと思います。資料5-2でございますけれども,働き方改革一般の動きということで紹介させていただければと思います。こちらは,今年の3月の働き方改革実現会議で決定されました働き方改革実行計画の中から,罰則付き時間外労働の上限規制の導入に関わる部分について抜粋させていただいたものでございます。
 まず,上の法改正の方向性についてでございますけれども,2段落目のところですが,「今回の法改正は,まさに,現行の限度基準告示を法律に格上げし,罰則による強制力を持たせるとともに,従来,上限なく時間外労働が可能となっていた臨時的な特別の事情がある場合として労使が合意した場合であっても,上回ることのできない上限を設定するものである」といった位置付けになっております。
 そして,その少し下でございますけれども,労基法の改正の方向性については,「日本労働組合総連合会,日本経済団体連合会の両団体が時間外労働の上限規制等に関して別添2のとおり労使合意したことを踏まえて,以下のとおりとする」と。別添2につきましては,同じく資料5-2の3ページ・4ページがここでいう別添2に当たるところでございます。
 これを踏まえまして,1ページのその下の部分,時間外労働の具体的な上限規制でございますけれども,「時間外労働の限度を,原則として,月45時間,かつ,年360時間とし,違反には以下の特例の場合を除いて罰則を課す」としております。特例としては,「労使が合意して労使協定を結ぶ場合においても,上回ることができない時間外労働時間を年720時間(=月平均60時間)とする。かつ,年720時間以内において,一時的に事務量が増加する場合について,最低限,上回ることのできない上限を設ける」ということになっております。
 この上限につきましては,1,2か月ないし6か月の平均で,いずれにおいても,休日労働を含んで80時間以内,2,単月では,休日労働を含んで100時間未満,3,時間外労働の限度の原則は月45時間であることに鑑みて,これを上回る特例の適用は,年半分を上回らないよう,年6回を上限とするということになっております。
 さらに,その下でございますけれども,「可能な限り労働時間の延長を短くするため,新たに労働基準法に指針を定める規定を設けることとし,行政官庁は,当該指針に関し,使用者及び労働組合等に対し,必要な助言・指導を行えるようにする」ということが書かれておりまして,これを踏まえまして,今,政府の方で働き方改革の関連法案について検討しているというところでございます。
 なお,2ページの方に,「現行の適用除外等の取扱い」ということで,自動車の運転業務,そして建設事業,医師,新技術,新商品等の研究開発の業務について掲げられておりまして,いずれも,猶予期間を設けたり,適用を除外する方向で検討がなされておりますけれども,国立,私立の教員についてはこの適用除外に該当しておりませんので,先ほど1ページ目の方で説明しました一般的な上限規制というものが適用されるということになっております。
 事務局からの勤務時間関係の説明は以上でございます。
【小川部会長】  
  ありがとうございました。
 それでは,今の事務局からの説明を踏まえまして,勤務時間及びその管理の在り方について,意見交換をしていきたいと思います。
 最初に,恐縮ですけれども,この件について,労働法の専門家でありますし,また平成19年の中教審の今後の教員給与の在り方,また平成20年の教職調整額の見直しに関する検討会議に参加されて,その間の議論の経緯をよく御存じである川田委員に御発言いただいて,その後自由に意見交換をしていきたいと思います。最初,恐縮ですけれども,川田委員,よろしくお願いします。
【川田委員】  
  ありがとうございます。では,かなりこの件に関して労働法の観点から問題になることは多岐にわたると思うのですが,ここではできるだけ手短に,議論の冒頭ということで,3点に分けてお話ししたいと思います。
 1点目は,先ほどの話の中に出てきた,これまでの議論との関係です。先ほど報告の中にもありましたとおり,平成19年と20年に,今回の資料の5-1の12ページ以下,それから14ページ以下に取りまとめられているような検討が行われたわけですが,この際には,議論の主題がどちらかというと教員の給与の在り方という観点からアプローチして,関連する問題として働き方あるいは学校の組織運営の在り方といったことに話が及ぶという形で検討がなされました。そのときにも,私も意見として,実は働き方の部分がかなり根本的な問題としてあるのだといったことは言っておりましたが,今回はまさに働き方という方向からアプローチする議論がなされることになったということで,先ほどの報告の中にありましたように,必ずしも一つ一つの問題について十分に確たる結論を出すには至らなかったものですので,今回の勤務実態の調査とか,これまで行われてきた教員の職務あるいは学校の組織運営の在り方に関する分析状況などを踏まえて,更に議論ができればと思っています。
 その一方で,ここで行われた議論というのは,私の目から見ると,ある程度,検討すべき論点としては基本的なものが示されているのではないかと思います。特に14ページの方の,後から平成19年のものを受ける形で行われた平成20年の方の議論のまとめのところでは,最初に抜粋されている14ページの3の(1)のところで,現行の給特法の在り方を見直すときに,割増賃金か時間外勤務手当を支給するということを選択肢に入れた上で検討するといった考え方が示された上で,根本的な問題として,ちょっと行ったり来たりしますが,16ページのところで残業時間の縮減というのが,どういう制度を採るにしても,根本的な問題として重要なんだという点を指摘するとか,あるいは教員の勤務について考えていくときに,14ページから15ページのところに書いてある教員の自発性・創造性といったものをどのように考えるかが重要になる。あるいは,個別の問題として,管理職の負担とか,部活の指導,持ち帰り業務といったものが挙げられたり,先ほど触れたような根本的な問題よりももう少し細かい具体的な問題として,17ページのところで,1年単位の変形労働時間制とか,週休日の振り替えといった方策についてが論点として挙げられているということで,このあたりのことは今回の議論においても基本的な論点としては参考になるものと思っています。これが1点目です。
 それから2点目として,私の意見になりますが,現行法の問題として2つほど大きな点があるのではないかと思っています。一つは,まず現行の給特法が,教員の長時間労働に対する歯止めとか,そのための勤務時間管理をおろそかにすることにつながってしまっている面というのは,どうも否定できないのではないかということで,特に,今の話の中にも出てきましたが,教員の職務の自発性・創造性という点が一方では強調されて,ややもすると過度に強調されているということと,それから他方で,教員の時間外勤務について,明確な時間外勤務命令のある,なしというところに過度に重きを置いたような制度になってしまっているということが結び付いた問題であるのではないかと思っています。
 第3回のときに労基法上の労働時間の考え方を簡単に述べたことがあって,そこで述べたことからすると,職務性の高い活動については,明確な勤務命令がないから,労働時間ではないとは必ずしも言えないわけですが,恐らく給特法が制定された当時は,その点がやや,もうちょっと大ざっぱに,勤務命令がなければ労働時間ではないという考え方があったのではないかと考えられていて,それと自発性・創造性という考え方が結び付くことで,明白な時間外勤務命令がないものは労働時間として考えなくていいという考え方につながっていってしまっている問題があるのではないかと思いますが,この点は勤務命令の有無とは別に,実態として教員に対する拘束になっているような面があれば,その点を捉えるような対応が必要なのだろうと思います。
 それからもう一つは,報告の中で出てきた,資料では5-1の8ページのところに出てきた地公法の58条の5項で,労働時間に関する監督機関が一般の労働基準監督署ではなく,人事委員会又は公平委員会を置くところでは首長さんということになっているという点で,この点に関しては恐らく,労働時間管理等の実効性を確保するということを誰がどのようにやるのかという問題を提起するとともに,現行の制度を前提とするのであれば,人事委員会の活動に対して,一般の労基署等の労働基準監督行政の知見とか経験を生かすような方法を検討するといったことが課題になるのではないかと思います。
 長くなりましたが,最後に1点,具体的な制度の方向性については,先ほど言ったように,大きなところでは現在の給特法のような枠組みとか,あるいは時間外勤務手当を支給するといった選択肢があるのだと思います。これはそれぞれ長所・短所があると思いますが,ちょっと詳しいことは後に機会を見てお話しすることにしたいと思います。
 ただ,いずれにしても,先ほどの繰り返しになりますが,この問題は労働法における労働時間規制の考え方のうち,長さを規制するということと,その一定の長さを超えたものに対して割増賃金等の形でどういう賃金の払い方をするのかという,労働法では労働時間規制をという,その2つの側面を持つものと考えるわけですが,そのうちどちらかというと後者に関わる問題であって,そこがどうであれ,前者の長さの規制を適切に掛けるというところがうまく機能しないと,制度はどんな制度であっても全体として機能しなくなるので,その点がまず重要だと思います。
 その一方で,これが最後の点ですが,教員に関しては,これまでの議論あるいは本日の笹原先生の議論の中でも出てきたと思いますが,働き方の中に専門性・裁量性のある部分があるという点が重要であって,これは一般的な労働法の議論の中だとちょっと出てきにくい部分かもしれませんが,そのような専門性・裁量性のある働き方をする時間をどのように確保するのかという点も,教員特有の労働時間制度の在り方として重要なのではないかと考えております。長くなってしまいましたが,以上です。
【小川部会長】  
  ありがとうございます。
 議論は多岐にわたるかと思いますけれども,今日1回で決着を付けるような問題ではありませんので,今日は時間の許す限りいろいろな方の御意見を伺って,この勤務時間の在り方,管理の在り方についての論点整理,問題整理をしていければと思います。どなたからでも構いませんので,御自由に。発言の際には名札をよろしくお願いいたします。
 では最初,妹尾委員,どうぞ。
【妹尾委員】  
  失礼します。コメント,ありがとうございました。私の方でもちょっと似た観点で,参考資料5というものが最後の方にあるかと思いますが,これを御用意しておりますので,少しぱっぱっと,時間もないので,御覧いただきながら進めたいと思っております。
 めくっていただいて1ページ目なんですけれども,改めて現状認識ということなんですが,休日を取れていない教員は相当数に上るということが推測されます。これはベネッセさんの調査を使わせていただいておりますけれども,とりわけ部活動の顧問では月5日以上土日勤務をしているという方が6割ぐらいということになっておりまして,労基法でも4週4休となっていると思いますけれども,「そんなことはどこ吹く風ぞ」といった感じになっているということは,非常に大きな問題であろうと思っております。
 2ページ目は,これは一例として横浜市さんのデータがあるので紹介したのですが,これは横浜市だけが悪いということを言いたいわけでは全くなくて,どこでもよく似たようなことが行われていると思います。これは平成25年度の実際のアンケートの調査の結果ですけれども,小学校の約5割,中学校の約7割の教職員が,休憩時間が全く取れていないと回答しています。あるいは,小学校の先生の約1割,中学校の先生の約5割が,月5日以上休日出勤をしているということで,つまり4休は取れていないということです。中学校の教員に至っては,約2割が月8日以上ということで,全然休みを取れていないという実態がある。ここからまた4年ぐらいたっておりますので,若干変わっている可能性はございますが,非常に深刻な状況であるということだと思います。
 3ページ目に少し厳しめに書いておりますが,私としては非常に危機感を持っておりまして,平成19年度とか20年度も中教審等々で検討されたということではありますけれども,「そこから後,今まで何をしていたのだ!?」と言いたくなるような,文科省と教育委員会に対して,正直,若干腹が立っておりますというところであります。
 3点にまとめておりますけれども,1点目は,日本中の学校で労基法違反は半ば当たり前となっているということは,我々としてはしっかり認識しないといけないと思います。労働時間の未把握,勤務時間の休憩のなさ,4週4休違反という3点アウトと。1点でもこれはアウトだと思いますけれども,3点でアウトだということをしっかりやっていただきたい。教育者が法令遵守しない状態でいいわけがありませんので,繰り返しませんが,ここは非常に危機感を持っております。
 また,歯止めを掛けるようなところが本当にどうなっているのかというのは,これは今後の議論かと思います。川田先生もおっしゃったところです。
 3点目です。そもそも法令遵守の意識の低さも問題なのですが,インセンティブもないのも問題です。残業代も出ないですし,あるいは労務管理が教育委員会とか校長等の評価にも影響しないという学校が恐らく多いでしょうし,労基署は公立学校には入ってこないという段階ですので,こういった部分を含めて,問題をよく考えていかないといけないと思っております。
 4ページ目は,質問を4点にまとめております。これはもう読み上げませんが,次回以降で構いませんので,分かる範囲でまた教えていただきたいなと思います。特に2番目,3番目のところは,先ほども青木先生から,人事委員会で機能している例もあるというお話もあったので,そういったグッドニュースもある一方で,ほかのところでは本当に機能しているのかどうか。今日も,わざわざ現職の先生が記者会見までして,現教審ということで,そのうちの提案の一つが,「違法な労働実態を取り締まる専門機関を設置してください」という話があったんです。この現状認識については,いいか悪いかというのはそれぞれアイデアはあってもいいと思うんですが,わざわざ記者会見までして訴えないといけないということは,つまり校長とか教育委員会に訴えたところで事態は変わらなかったということの裏返しでもあるわけです。これはあくまでも一部の例かもしれませんが,非常に多くの学校でこういったことで苦しんでいる先生もいますし,声もなかなか上げられないという方が大多数でございますので,こういった教員が安心して通報できるような仕組みとか,しっかり歯止めを掛けるような制度的な枠組みも考えないといけないと思います。
 もう1点だけ,ちょっと蛇足かもしれませんが,僕が最近読んでいる本で,熊谷徹さんという方が書いた本で,「5時に帰るドイツ人,5時から頑張る日本人」という面白いタイトルの本があるのですけれども,ここで書いているのは,ドイツでは,10時間以上の労働は法律違反ですということで,最高で1万5,000ユーロ,つまり約180万円の罰金を管理職がポケットマネーで出さないといけない場合もあるということまで書いてある。それで非常に労働時間が守られているという話があります。今は罰則もない,あるいは調査をするようなスタッフを持っている機関もいないといった非常に大きな問題がありますので,この学校の労務管理はしっかり考えていきたいなと思っております。以上です。
【小川部会長】  
  ありがとうございます。相原委員,どうぞ。
【相原委員】  
  部会長,ありがとうございます。2つほど申し上げます。1つは,給特法の制定は1971年であったということです。小学校1年生はもう既に50歳を超えるということになっています。歴史のある給特法ですので,学校現場に定着し,働き方の前提となっているということだと思います。ただ,幾つかの改正のポイントがありながら本日まで来ているというのは,先ほど事務局からも御説明のあったとおりです。
 2点目が,先ほどの笹原先生の中身は大変インパクトのある中身だったと承知します。これは,学校関係者,教職員の皆さんも含めて,学校現場の持続可能性は極めて低いということを冷厳な事実として認めざるを得ないのではないかと思います。皆さんの努力があることは前提といたしますが,相当な見直しを掛けていくという覚悟をこの部会で共有認識とするというのは必要だろうと思います。だからこそこの部会が活発になされているという証左かと思います。
 過去の経過について御説明がありましたが,過去にはなくて,今回の部会にあるのは,2つだと思います。一つは,時間外勤務若しくは業務量というボリュームに対して制約をいかに掛けていくのかということです。給特法の議論だけ見ても,調整額云々(うんぬん)のみならず,ボリュームに対して強い問題意識を持っているというのは,今回の部会なり今日的な課題認識だと思います。もう一つは,政府全体として,働き方改革が教職員のみならず,日本の今後を考える上でも大変重要な点になっているという,大きな潮流の中にこの部会が置かれているということです。第6回のときに部会長が頭出しをしてくださいましたが,労働時間については,上限規制ということを頭に置いて議論していくことが大変重要だということをもう一度申し上げておきたいと思います。
 なお,今後の給特法を考えるに当たり,先回も矢野課長から,テーブルに上っているテーマだとおっしゃっていただいたのと,こういう資料も提供していただいていますから,事務局としての,前に進めようというやる気を受け止めたいと考えています。
 最後に1点です。学びの質を考えたときに,給特法は納得感の低さというのが,エンゲージメントを考える上でも,一人一人のディーセントワークを考える上でも,大変な障害になっていると受け止めざるを得ません。パーセントを調整して,見合いのあるものにするという表面的なものではなく,学校現場の努力が報われる形にしないと,納得感の低さはやる気にもディーセントワークにもつながらない。最終的には学びの質に影響してくるということを,大変な危機感を持って御提言しておきたいと思います。労働法や様々なところに関係しますから,今後,給特法を仮に考えていくことになると,専門家などの知恵も必要なのではないかと,一言付け加えておきたいと思っております。以上です。
【小川部会長】  
  ありがとうございました。では,この後,田野口委員,そして橋本委員の順でお願いします。
【田野口委員】  
  それでは,小学校現場で今一番苦労していることをお話しさせてください。
 10月31日~11月1日に修学旅行に行ってきました。小学校は1泊2日になります。1日目は11時間45分勤務の割り振りになっております。2日目は9時間45分の割り振りになっております。そうしますと,3時間45分と5時間45分の割り振りで4週間の枠の中で取らないといけないという勤務時間の割り振りになっておりますが,今回の割り振りが普通の4週間の割り振りの中でありましたので,それを取るのがとても難しいです。学級担任を持っていますと,6時間目まで授業がございます。級外の先生に午後の授業に入っていただいたとしても,3時間45分勤務を取るのはとても難しい状況にございます。校長としても,この勤務時間の割り振りをどのようにするかということで,表を前に,修学旅行の付添いの担当と頭をやりくりして,どうにか取れるようにしようということで管理職としても努力しているところですが,現行の中ではとても厳しい状況にあります。今ここで勤務時間について,これから次回も話が深まっていくと思いますが,是非,現場としては,割り振りは現行の状況ではとてもとても厳しい状況にあるということだけ今回は伝えさせていただきたいと思っております。以上でございます。
【小川部会長】  
  ありがとうございました。橋本委員,どうぞ。
【橋本委員】  
  先ほど来お話がございましたように,時間外勤務手当にするのか,給特法と申しますか,教職調整額の制度とするのか,これは確かに一長一短があるのだなと思います。ただ,私はもともと申し上げようと思っていたのは,教員の業務,例えば授業の準備をするに当たっても,授業研究とか,かなり自発的な研究的要素もあって,時間外はいかがかなと言おうと思ったのですけれども,先ほど川田委員の方から考え方として,教員の拘束性で捉えるべきだといったお話もございました。そういう考え方になりますと,必ずしも命令がどうだということとはまた違う議論になるのかなと思います。ただし,その際に教員の拘束性を具体的にどう捉えるかということが次の議論として出てくるのかなと,単純に残っている時間イコールではないということになるのかなと思いますので,その辺が明確にならないと,現実問題としては,直ちにそれを時間外に切り換えて管理職が運用していくというのは,かなり難しい面があるのではないかなと感じました。
 それと,恐らくこれまでの議論で出ていない論点だと思うんですけれども,時間外勤務手当を導入して,教員の勤務時間意識を向上させるという効果もあると思うんですけれども,仮に時間外勤務手当という制度を導入したときに,小中学校の教員の服務監督というのは市町村教育委員会,実際にはその権限がおろされて,校長先生ということになると思いますけれども,その一方で給与については,都道府県教育委員会が負担するということで,2本立ての制度になっているわけであります。したがって,市町村の側(そば)にしてみたら,自分のところの財布は痛まないということですので,ひょっとすると,実績があれば,当然不払は許されませんから,府県の方の負担が増える一方になるという可能性もあります。したがって,こういう方式を採ったときに,どれだけその手当に係る財政支出面での抑制意識というのが学校現場で働くのかなと,ちょっとそこは疑問があるかなと思っています。
 いずれにしましても,教職調整額の制度を前提とするにしても,これまで議論のある勤務時間管理をまずしっかり行う。先ほどの資料で,大分効果が出ているようですけれども,その上で管理職が適切にマネジメントを行うということで,一定,抑制意識は高まりますし,役割分担の見直しを含む業務改善とか,また職員体制をしっかりと充実させていく。こういうことで,ボリューム論といいますか,今の長時間勤務の状況をまずは大幅に改善すると。今は非常に教職調整額の割合と実態との乖離(かいり)が大きい。これは本当になかなかほったらかしにできない問題であると思いますので,ボリュームを抑えた上で,その乖離(かいり)をどう埋めていくかという方向から検討するという道もあるのではないかなと,そのように感じております。
【小川部会長】  
  ありがとうございました。他にいかがでしょうか。よろしいですか。橋本委員どうぞ。
【橋本委員】  
  先ほど人事委員会のお話が出たのですけれども,これは京都府の例で申し上げますと,大分前からですけれども,人事院勧告の際に,勧告とは別に報告というのがありまして,拘束性は強くありませんけれども,そこで教員勤務の実態に関して,いつもいろいろ指摘を受けておりまして,特に勤務時間の把握について指摘を受けることが多かったと思います。そうしたことをずっと受けてきて,教育委員会としても,何とかしなければという思いから,今月からようやくハードのシステムを入れた出退勤管理というのをやっていくのですけれども,そういうことをちょうど考えていた矢先に,人事委員会の方から,厳しい状況にあるので,一度教育委員会と意見交換をやりましょうということで,この夏に1回会を持ちました。そこで,今こちらの考えていることを申し上げながら,一定,改善の方向を目指しているのだということを人事委員会にも認識していただきまして,結果的には,お互いの考えも初めて率直にやりとりができたということで,少し実効性が出たのではないかと思っております。
【小川部会長】  
  ありがとうございました。
 他にいかがでしょうか。短時間でしたけれども,かなり検討すべき論点,検討課題がいろいろ見えてきている部分もありますけれども,他によろしいでしょうか。
 では,なければ,今出てきた点に関わって,委員の方からちょっと触れられていない点も幾つかありますので,私の方から補足ということでもないんですけれども,一言発言させていただければと存じます。給特法の見直しをどのようにするかといった点とともに,給特法の柱の一つである教職調整額を廃止するか,教職調整額を見直すかといったことも恐らく1月以降に検討することになっていくと思いますけれども,仮に教職調整額という形を残すような選択を考えた場合においても,今の教職調整額をそのまま継続するということは,いろいろな点で問題があるのではないかというのは私の基本的な立場です。
 教職調整額の性格をどう評価するかというのは,いろいろな論者の間でも議論のあるところです。この教職調整額は,ある意味では研究手当的な意味合いも含め,なおかつ時間外勤務手当的な意味合いも含め,複合的な性格をはらんだものだと一般的には見られているのですけれども,そういう研究手当的な性格と時間外勤務手当的な性格が複合的に一つの教職調整額という中に入っていることで,時間外勤務手当,すなわち割増賃金の本来的な目的というのが非常に薄められているというのは,今の教職調整額の一番大きな問題点だと思います。割増賃金の本来的な趣旨は何かというと,基本的には時間外勤務を抑制する,時間外勤務にブレーキを掛けるというのが割増賃金,つまり時間外勤務手当の基本的な性格だと思うんですが,それが教員の自主的・自発的なとか,創造的なといった,自主的な専門性を尊重して,内外を包括して一括して調整手当をするというロジックが入ることで,本来,時間外勤務手当,つまり割増賃金の意図に込められていた罰則というか,時間外勤務をやるのであれば,通常の賃金よりも割増しの支払をもとめるということで,時間外勤務にブレーキを掛けるという趣旨が教職調整額の性格によって極めて薄められていることが今の教職調整額の一つの大きな問題点だと私自身は理解しています。そのため,仮に教職調整額という形で残すような議論があった場合には,現行の教職調整額をそのまま踏襲するということではなくて,時間外勤務手当を,時間外の勤務を抑制する,ブレーキを掛けるという性格も少し教職調整額の中に含み込んだ見直しという作業も必要になっていくのではないのかなと思っています。
 委員の方からのいろいろな御発言の中に今言ったような点の発言がありませんでしたので,私の方から少し補足をさせていただきました。
 他になければ,では今日は一応,勤務時間及びその管理の在り方については,ひとまずここで終わらせていただいて,これを中間まとめにどのような形でまとめるかというのは,また事務局と相談しながら,1月以降の議論につながっていくような形にしていければと思っています。よろしくお願いいたします。
 それでは,この件は終わらせていただいて,最後に,今日の議事次第には明記していなかったのですけれども,実は10月31日に財務省の審議会であります財政制度等審議会が開かれまして,そこで本特別部会の審議事項に関わるような内容を含んだ議論が行われたと伺っております。これからの特別部会の審議を考えていく際,この財政制度等審議会での審議状況というのは無視できない内容だと思いますので,私の方で急遽(きゅうきょ)事務局にお願いして,今日の特別部会にその財政制度等審議会の資料を提供して頂き,どのようなテーマでどのような議論がされているかということをちょっと報告していただきたいということでお願いしておきました。財政制度等審議会の報告を事務局の方からお願いしたいと思います。これは初中局財務課の伊藤課長から御説明をお願いいたします。
【伊藤財務課長】  
  失礼いたします。それでは,小川部会長の方からお話を頂きましたので,お手元にもお配りしてございますが,私の方から,10月31日に開催されました財政制度等審議会財政制度分科会に関する資料の説明をさせていただきたいと思っております。しかしながら,実は財政審の方は,中教審と異なりまして,審議が広く公開では行われていない状況でございまして,私どもはその詳細,中でどういう議論が行われたのかとか,どのようなことが審議されているのかということについては把握できていないところでございます。お手元にお配りしています資料は,財務省のホームページの方で配付資料は公表しているということでございまして,そのホームページの方から該当部分を抜き取ったものをお配りさせていただいてございます。
 なお,この10月31日の2時間の会議の中で,文教・科学技術というテーマと,地方財政というテーマ,更に防衛というテーマ,計3つのテーマを御審議されたと伺ってございます。その中での文教・科学技術ということでお手元にお配りしている資料でございますが,1枚おめくりいただいたところで,目次ということで,全体像が出てございます。今回は,今日御紹介させていただきます義務教育の教職員定数以外に,全体の公財政の教育支出や幼児教育,更に学校統廃合,学校の規模に関すること,更に高等教育に関する各般のテーマに関すること,科学技術,文化など,全体で86ページの資料が提供され,審議がなされたようでございますので,この教職員定数のみを狙い打ちして議論がなされたということではないということは私どもは承知してございますが,その幾つかのテーマのうちの一つに教職員定数も掲げられているということでございます。
 中身は,その下,15ページからということで,次のページから抜粋で資料を全て掲載させていただいてございます。16ページは,私ども文部科学省がこの夏,概算要求をさせていただいた来年度予算,更に来年度以降の見通しに基づく数値データというものを,財務省の方で10年先までどういう定数の状態になるのかということを示されたものでございまして,最終的に10年先まで見ますと,現行の水準よりも人数は減るけれども,自然減で減った分と比べると2.3万人ほど増える,こういう要求が文科省の要求であるということを示してございます。
 次の17ページでございますが,この17ページは,私どもが今回予算要求,この中教審特別部会の御議論も頂きながら,平成32年度以降の新学習指導要領の実施で,小学校3年生から6年生,外国語活動や外国語の教科化に伴い1コマ増える,その部分を専科指導の充実ということで,教員定数の増を要求させていただいているところでございますが,この資料は,そうした1コマ増える分以上に,現在の学校は指導要領で最低限定められているコマ数以上の授業を実施しているので,その分,そこの部分を新しい教科でコマ数が増えた部分に回せば対応できるのではないかと,このようなことを恐らく示そうとした資料ではないかと思ってございます。
 なお,実態調査ということで,例えば981コマと書いてございますが,これは実態調査という表現は実は適切ではないと思ってございまして,出典のところも御覧いただきますと分かりますように,これは毎年度,私どもが,公立小・中学校における教育課程の編成・実施状況調査ということで取りまとめている数字でございますが,この981コマというのは,いわゆる編成段階,計画値の値でございます。恐らく各学校は,台風等によって学校が休校になったり,またインフルエンザ等による学級閉鎖などもございますので,余裕を持って計画を立てているということ。さらには,現実の子供たちの状況を見ながら,確実に学力の定着を図る上では,指導要領が定めた,国が定めた最低のコマ数だけではなくて,より充実した授業を展開しようということで,少し多めに実施しているところもあろうかということを私どもは承知してございますので,そうした点からすると,必ずしも御指摘の点と私どもの考え方は違うと思ってございます。
 また,次の18ページは,これはよく毎年使われているデータでございますけれども,日本のPT比というものは,OECD諸国,特にG5の平均と比べると,決して遜色ないのだといったデータを示したものでございます。
 また,19ページの方は,特に小学校の英語科等への対応の中を意識されたのだと思いますけれども,様々な形で特別免許状等を出して対応している部分が非常に少ないのではないか,外部人材をもっと活用する余地があるのではないか,このようなことを意図した資料ではないかと思ってございます。
 次に,20ページでございます。20ページに関しては,基本的に私どもとの認識の差は特にないわけでございますけれども,先生方がどんな業務に負担を感じているかとか,若しくは学校に対する調査・報告の依頼などがまだまだ多数あるのではないか,こうしたものを示したデータでございます。
 次の21ページは,先ほど妹尾委員の方からも御指摘がございました市町村費負担の事務職員,これは交付税で積算されているにもかかわらず,実際の学校基本調査の方だと,交付税で積算されている人数よりはるかに少ないというのが実態ではないのか,このようなことを御指摘いただいたデータでございます。なお,このデータ自体はもちろん誤りはないわけでございますけれども,学校基本調査の方で私どもがとれている部分は,いわゆる常勤のフルタイムの職員を雇用している場合だけこの基本調査に上がってくるということでございまして,私どもは各市町村の実情をお伺いしますと,これはいわゆる常勤ではなくて,時間を短くして非常勤で雇用しているとか,若しくは現業的な業務であるので,外部委託をしていて,委託費として支出しているような面もかなりあるのだといったことは伺ってございます。ただし,ここの部分は調査にはなかなか数字としては出にくい部分でございますが,実態として,常勤職員については御指摘の点は間違っているわけではございませんけれども,それ以外で各市町村はかなり御努力されているというところがここには反映されていないという点はあるのかと思ってございます。
 22ページは,今日も私どもが出している資料のとおりでございまして,この点については全く異論はないところでございます。
 また,23ページの部活の実態のところについても,これまで資料を御提供させていただいているところを踏まえて御議論がなされたかと思ってございます。
 そして,結論として,検討の方向性ということで,24ページに書いてございます。1つ目の白丸は,従前から財政審で必ず御指摘を頂いている点でございますが,もっと定量的かつ客観的なエビデンスやPDCAサイクルの確立というのは,教職員を増やすのであれば,その前提であるといった指摘が1つ目。
 そして2つ目として,教員の働き方改革に関し,まずは,事務・調査の厳選・合理化,総量規制を含めた部活の在り方の見直し,また市町村費負担事務職員の適切な活用,こうしたことをしっかり進めて,教員がより多くの時間を授業に充てられるよう業務の適正化を行っていくべきではないかと,このような御指摘が事務局の案では見受けられるところでございます。
 そして3点目としまして,その上で,今般の学習指導要領改訂に伴う英語の授業時数の増加に関しては,先ほどのデータも踏まえながら,総授業時数で見れば,現在既に新指導要領改訂後の必要授業時数を上回る授業を学校が行っていることに鑑みて,その分を英語に振り替えればいいではないか,若しくは,小学校が増えるのであれば,中学校教員も含めた教員配置の見直しを図るべきではないか,さらには外部人材の活用やそのための免許制度の見直しなどを通じて対応していくべきではないかということで,恐らく,当然私どもが要求した内容について,賛成しかねるといったことの御議論がなされたのではないかと受け止めているところでございます。
 当然,私どもも,今申しましたようなこのデータの問題点も含めて,今まさに財政当局と折衝を続けているところでございますので,私どもとしての主張については,この中教審における議論もしっかり踏まえさせていただいた上で,主張すべきところは主張しながら,予算獲得に向け,取り組んでまいりたいと思ってございます。以上でございます。
【小川部会長】  
  ありがとうございました。
 皆様の方から何かこの内容について御質問,御意見があれば。では,田野口委員,どうぞ。
【田野口委員】  
  今のお話につきまして,全連小会長から全連小としての意見を頂いてきておりますので,全連小を代表して,私の方からその意見を述べさせていただきたいと思います。会長から頂いている文書を読み上げます。
 「文部科学省の平成27年度の実態調査によれば,既に小学校において新学習指導要領の964コマを上回る981コマの授業が行われている」との指摘がされているが,これはあくまで年度当初の計画ベースの総授業時数である。つまり,インフルエンザによる学級閉鎖や,台風,大雨,地震等による休校などを見越して設定しているものである。
 学習指導要領解説においても,「授業時数を踏まえて教育課程を編成したものの,流行性疾患による学級閉鎖及び災害による学校閉鎖等の不測の事態により当該授業時数を下回った場合,その確保に努力することは当然」と記載されており,各学校においても余裕を持って総授業時数を計画しているところである。学習指導要領改訂後では,3学年以上は授業時数が年間で35コマ増加する。例えば,平成27年度の教育課程編成実施状況調査の授業時数で計算すると,卒業式や修学旅行などがある小学校6年生では,約6割の学校が標準授業時数以下になる。
 財務省が示している「今般の学習指導要領改訂に伴う英語の授業時数の増加に関しては,総授業時数で見れば,既に学習指導要領改訂後の必要授業時数を上回る授業を行っている実態に鑑み,必要な授業時数を上回って実施している授業の英語への振り替え,中学校教員も含めた教員配置の見直し,外部人材の活用やそのための免許制度の見直しといったことを通じて,対応していくべきではないか」といった方向性については,現状をよく理解していない机上の空論であると思われる。
 現在の日本の教育を維持できているのは,教員等による,授業の時間のみならず,授業に臨む教材研究及び教材準備,授業時間にはカウントされていない指導の時間,そして各学校等による研究会・研修会等の成果だと考えている。今後,人的支援等なしに外国語教育等が実施されるようになると,外国語教育に対して十分な成果を出せるかということと,ほかの教科の学力水準を担保できるかという大きな課題があることを知ってほしい。
 以上でございます。
【小川部会長】  
  ありがとうございました。では,順番で,天笠委員,どうぞ。
【天笠委員】  
  今の御発言に私も関わってくるのですけれども,小学校における外国語対応ということについて,この3つ目の丸のところがそれについての今の財務省側の一つの見解かと受け止めさせていただきましたけれども,先ほど来の諸データの中に教員のストレスというデータもあったかと思うんですけれども,新しい学習指導要領に対応するということは,物理的な量的なそれについての対応とともに,質的なそういう面への対応ということも十分配慮すべき点だと思います。
 ストレスへの対応が高い方と低い方がそれぞれいらっしゃるということもあったのですけれども,明らかに今回のこの外国語対応について,今,小学校の先生がかなりストレスを感じている。そういうところがこの3つ目のことについては受け止められていないというのがこの3つ目ではないかと思うのです。そのストレス対応とか個の対応については,私は個人的には,一つは,小学校の外国語対応には,専科制というのでしょうか,専科担任という方向性が有力な対応策だと私は考えているわけです。是非そういう方向の実現に向けて対応していただきたいと思うわけですけれども,明らかにこれは現有勢力でやれるのではないかということですけれども,それはますます,そういう意味でいって,小学校の先生方のある種の体力を弱めてくる可能性,危険性を含んでいる。そういう視点も是非広く社会の多くの方々にも受け止めていただくようなプレゼンテーションがまた今後必要になってくるのではないかと思いますので,是非よろしくお願いいたします。
【小川部会長】  
  ありがとうございました。妹尾委員,どうぞ。
【妹尾委員】  
  3点に整理してお話しさせていただこうと思います。1点目は,この財政審の資料の最後のメッセージとして,2番目に働き方改革等に関してはというところがありますけれども,要するに,国の税金をもっとくれという前に,業務改善とか業務の適正化をせよというメッセージだと思います。これは半分当たっている部分もあるのではないかなと思っております。同時並行で,もっと教育費を掛けていただきたいですけれども,同時に学校とか教育委員会も口を開けるだけではなくて,当然今も努力されている方がほとんどですけれども,ただやっぱり,この審議会でもありましたように,部活動とか,学校行事とか,学校の裁量でどんどん改善できるところとか,教育委員会の働き掛けで随分変わるところがありますので,そういったところは同時並行でやっていくというふうにとらざるを得ないということはもう一度強調したいと思います。
 2点目なんですが,定数改善につきましては,多分大きく分けて2種類あるのだろうと思います。1つは,教育の質をより向上させると新学習指導要領にあるような理念を具体化するために,定数ももっとよくしていくという観点もあろうかと思います。ですが,2番目としては,労務改善といいますか,労務管理,要するに今のまま放っておくと,もう倒れてしまう人がどんどん出ますし,休憩時間もろくにとれないような職場にはなかなか優秀な人は来ないということも考えますと,やはり最低限の労務管理のためにも,もっと,コマ数が特に小学校ではきつきつだということは再三出ておりますけれども,そういったデータなども出しながら,あるいは授業以外の時間も諸外国と比べて非常に多いといったことで,文部科学省さんには反論資料なども是非また出していただきたいなと思っております。場合によっては,こういった労務管理の観点から,厚生労働省さんなどとタッグも組みながら,本当に最低限,働きやすい職場にしていかないといけないということだと思います。
 3点目は,それにも関わりますが,今日のストレス調査の御報告にありましたように,ストレス耐性の高い方は,長時間労働でも結構大丈夫な場合があるといった報告がありました。これはこれでいいことなんですが,とはいえ,ストレス耐性が高くても,過労死する人は過労死しますし,あるいはその人にとっても,学校以外の人生は子育てとかいろいろありますし,あるいはストレス耐性の高い人だけが教員になるといった御時世では当然ございませんので,ストレス耐性が高いからいいではないかという話ではなくて,「いろいろな方がいろいろな事情も抱えながら,あるいはいろいろな幸福感を持ちながらも,働きやすい職場にしていく」というメッセージを僕らとしても出していくべきではないかと改めて感じます。以上です。
【小川部会長】  
  ありがとうございました。最後に,冨士道委員,どうぞ。
【冨士道委員】  
  全日本中学校長会としても,これを見せていただきまして,中学校での実態を全く無視した暴論であると言わざるを得ないと考えています。中学校現場は御承知のとおり,今,いじめ・不登校の対応であるとか,また発達障害の生徒の増加に関わりまして,特別支援教育が必要だと言われる該当生徒への指導の工夫,また保護者への対応等,多くの時間・労力がつぎ込まれているという実態がございます。
 一方,英語科につきましても,都道府県によっては,学力向上のためということで,少人数指導とか,習熟度別指導が導入されてきております。そのため,指導に関わる打合せの時間の確保,また教材の作成など,多忙化がますます加速している現実がございます。
 さらに,小学校における英語科の教科化によりまして,中学校での英語の授業内容がより濃くなってきております。これまで中学校で初めて接してきた英語を既に小学校で履修してきていることによりまして,英語への興味・関心に大きな差が生じたまま中学校に入学してきている実態もございます。このような状況に適切に対応しなければならないこともあることを申し述べさせていただきます。以上でございます。
【小川部会長】  
  ありがとうございました。時間もありませんので,ではこの辺で……。ごめんなさい,東川委員。では,最後にさせてください。すみませんでした。

【東川委員】  
  すみません。短めにお話しします。今日の全体の感想みたいになってしまうのですけれども,前半にありました,学校・教職員における本来的な業務を明確にするに当たってというところで,他の主体との役割分担・適正化について実効性を持たせるためにどうしたらいいかとか,あるいは時間のこともありましたけれども,いま一度改めて思いましたのは,先生方は,今,全連小,全連中それぞれ御意見もありましたし,いろいろなデータの裏付けもあったのですけれども,今日橋本委員からもありましたように,京都府でもPTAとの連携の中から働き方についての共通の課題を持って取り組まれているといったところで言いますと,私ども日本PTAとしても,直接的あるいは間接的に,保護者がどのように動いていくのかというのを議論できる唯一と言ってもいいぐらいの最大の団体でもありますので,ここに関しては,京都府だけではなくて,恐らく全国のいろいろな自治体で取組を多分なさっていらっしゃると思いますが,多分に濃淡があるような気もしますので,それにつきましては私どもが活性化していただくような方策をちょっと打ち出して,文科省がやる方策とは別の,保護者の目線からのメッセージというのを発信していけるのではないのかなと思いました。
 特に,各学校における学校の重点目標や経営方針を明確化することが必要と書かれてあるのですが,保護者の皆さんはなかなか御存じないのが実態といったところだと思います。そういうことについても,そのような会を通じて,あるいは単位PTAや学校において学校長から話をしていただく機会を作っていただくとか,教育委員会の方から逆に投げ掛けていただくとか,それぞれのPTAの連合会や協議会から更にそういう議論を持ち掛けていただくというところから機運の醸成を図っていくようなことを実際に私どもは考えていきたいなと,このように感じました。以上です。
【小川部会長】  
  ありがとうございました。それでは,今日準備した議題はこれで全て終了しましたので,この辺にしたいと思います。
 それでは,次回の開催のお知らせ,よろしくお願いいたします。
【鈴木初等中等教育企画課課長補佐】  
  本日も長時間にわたり御議論いただきまして,ありがとうございました。
 次回の学校における働き方改革特別部会の日程につきましては,11月28日火曜日13時半から16時,場所は全国都道府県会館を予定しております。頻繁に開催することになり,まことに恐縮でございますけれども,御協力のほどよろしくお願いいたします。
 なお,本日の資料につきましては,机上に置いていただければ,郵送させていただきます。
【小川部会長】  
  ありがとうございました。
 次回は,11月28日1時半から4時まで,全国都道府県会館ということです。改めて通知が行くかと思いますので,よろしくお願いいたします。
 それでは,今日の会議はこれで閉会いたします。ありがとうございました。

―― 了 ――

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