資料5 学校安全部会(第4回)における委員からの主な御意見

○ 学んだことが生きて働く知恵や実践力-主体的な行動-につながっていくことを目指して、防災教育を行うことが重要。そうした力を確かめるために、従来型の避難訓練ではなく、教員や子供に予告をしない危機発生時対応訓練などを行うことが有効と考えられる。
○ 子供たちの実践的な力を評価するうえでは、デジタルコンテンツを活用した状況設定問題を開発していくことも有効と考えられる。
○ 地域の安全課題について学習する際、どのようにすれば自分たちの町がすばらしく安全なものになるのかという、まちづくりの観点も取り入れて学習することが有効と考えられる。
○ 子供たちが、災害やその他の危険に遭遇したとき、主体的に考えて行動できるための力を身につけるという観点からも、次期の学習指導要領の方向性が、何を学ぶかだけではなく、どのような資質・能力を身につけるかということを全面に置き、学び方まで言及していることは画期的なことと言えるのではないか。
○ 全ての学校において、カリキュラム・マネジメントの実現による教科等横断的な防災教育が実践されるよう、これまでの研究開発学校の成果などを全国に広めていく必要がある。
○ 震災を経験した当時の中学生から、震災前に受けた防災教育の内容で、いまでも印象に残っているものを調査したところ、
1.自分自身の安全との関係を具体的に想像するなど、課題意識を強く持って学習した内容
2.自分たちで積極的に考えたり、過去の学習経験とのつながりが意識できたりして、主体性を持って学習できた内容
3.地域社会へ学習成果を展開・発信した経験があるもの
などが、主なものとして挙げられている。
また、震災前に受けた防災教育の内容で大切だと感じたものを調査したところ、避難訓練が大切との声が多かった。単なる避難訓練ではなく、被害のことをイメージしたり、けが人がいる場合や荷物がある場合など様々な状況を体験しながら学んだりしたことが実際の避難行動に役立ったという声が多かった。
○ 東日本大震災前後の経験から分かることは、防災教育の内容が実践的なものであることと、学習の主体性があることが大切で、更に地域・家庭との連携があればより効果的な学習となるということ。
○ 教える側が大切だと考えて伝えたことであっても、学習の主体性がなかったものは、子供たちの印象に残っていない傾向にある。教員が良かれと思ってやったことでも、必ずしも子供たちがその通りに受け入れるわけではなく、子供たちが受け入れる枠組みを踏まえた教育が必要。指導者中心から学習者中心に教育を展開する必要がある。
○ 子供たちに課題意識を持たせることは重要であるが、その入り口は様々である。「みんなで助かりたい」という気持ちから熱心に学ぶ子もいれば、数字を用いて津波の高さや速さを想像することにより具体的な興味を持つ子もいる。
○ 防災教育の効果は、実際に災害に直面したときに発揮されるものであるので、日常的にこれを測定するのは、非常に難しい。
例えば、健康の領域で生活習慣や食生活から将来の成人病の発症率を予測するように、防災や安全についても、主体性や課題意識を持てたかどうかや、地域と関わることができたかどうかなどの学習のプロセスを評価することにより、将来生き抜く力が発揮できるのかどうかを予測するという方法が考えられるのではないか。
○ 防災教育のカリキュラム・マネジメントを実現するには、これまでの学習経験とのつながりや、主体性、課題意識を強く持てるようなプロセスを組み込んでいき、それを評価するといった方法が求められるのではないか。
○ 子供たちにとっては、どの教科のどの単元で防災や安全の問題を学んだかは覚えていないと思うが、いろいろな教科に当たり前のように地震や津波などの話が入っていることによって、子供たちの中に自然にこれらの問題が浸透していくと思われる。カリキュラム・マネジメントの視点で、色々な教科にどのように安全に関する要素が入っていて、どのように成果が出たのかということが見えてくると良い。
○ 教科書に書いてある一般的な内容も、子供たち自身の身近な課題を持ってくることにより、知識が子供たちの中に入りやすくなるのではないか。自分の住んでいる地域を題材として盛り込み、カリキュラム・マネジメントを実践することが重要。
○ 子供たちが受けた教育の内容を振り返ると、なぜこれが重要だったのか分からないというものも出てくる。仮に教員が一生懸命教えたものであったとしても、子供たちの心に残っていないというのは、子供たちの組み立てるストーリーに結びつけていく働きかけが弱かったからではないかと考えられる。子供たちの心に結びつくかどうかは、必ずしも安全教育に費やした時間数の大小の問題ではないのではないか。
○ 学校において安全教育を定着させるためには、安全教育を各教科の中で行うことによって、各教科の学習能力自体も上がっていくというような関係性を示すことができれば良いのではないか。
○ 自分さえ生き抜けば良いのではなく、集団の中でともに生きることが大切であり、自分で学んだことをどう行動に移し、自分の生き方としてどうあるべきかということを常に考えることが大事で、これを基本にして教育を行うことが重要。その意味では、防災教育もキャリア教育もその他の教育活動も基礎的な部分では共通しており、このことを教員側がしっかりと考えていかなければならない。
○ 学校においてカリキュラム・マネジメントを確立していくためには、学校単独や教員一人が行うのではなく、必要な人的資源や物的資源を、地域住民や専門機関など外部の資源を含めて活用していくことが重要であり、コミュニティスクールの推進にも関係する課題。このため、どのような資源があるのかということをブラッシュアップして示していくことが必要。
○ 保護者と子供が共に学習することが、防災意識を浸透させていくために重要であるが、子供がいない家庭まで浸透させようと思うと、自治会などの地域の取り組みが加速しないことには難しい。学校教育の成果が子供たちから発信されて、地域の中でどんどん広がっていく流れを作るためには、地域の側もそれを広げていくための機会を持つ必要がある。
○ 子供たちにとっては、防災教育と避難訓練が相まって学んだ内容の現実味が増してくる。子供たちの中に印象を残すためには、教員が子供たちに何を学ばせるか、この学びが何につながっていくのかということを抑え、学んだことの意味を実感できる機会を持つことが重要で、避難訓練などがその貴重な機会になってくる。
○ 既に優れた安全教育の実践が存在するが、実は、同じ指導者が行っていて、一部の力量のある教員の力によるものになっているという側面もある。どこの学校でも安全教育が推進されなければならないが、現状では、教員養成や研修の場で十分な取組がなされているわけではない。
教員養成や研修における取組の充実も当然必要であるが、チーム学校の考え方と連動して、外部人材を積極的に入れて進めていくことが必要。防災だけでなく防犯も地域の資源を活用していくべき。
○ 地域資源の活用の観点では、例えば、企業などもCSRとして積極的に安全教育に取り組んでいるところがある。そのような情報を広めることで、教育を充実させていけるのではないか。また、地域資源を活用することは、子供たちが地域を知る一つのきっかけにもなり、キャリア教育にもつながるのではないか。
○ これまで有効な実践事例や指導資料が蓄積されてきているが、実際に、安全教育に関するカリキュラム・マネジメントを確立するためには、教員の指導意欲が非常に重要になる。意欲の低い地域・学校・教員への手立てを丁寧に考えていく必要があるが、そのためにも、安全教育に関する指導意欲の地域差などを実態把握していくべきではないか。
○  教員養成課程で学校安全について学んでも、安全に関する意識の低い地域・学校に赴任すれば、学生時代に学んだ知識も失われてしまう。そのため、例えば、月1回、防災だけでなく、防犯など様々な安全課題の訓練をするという方法もある。防災といっても、様々な災害種があり、題材を変えながら、いろいろなバリエーションが可能。このようにして、学校における安全対策が常に重要だということを教員に植え付けていくことが、生徒への安全教育の指導意欲を高めることにつながるのではないか。児童生徒も含めて、避難訓練、安全訓練を強力に推奨するようなスタンスを持つべきではないか。
○ 教科等横断的な安全教育を進める際、評価についてしっかり手だてができていると、実践も推進されるのではないか。教科等横断的に安全教育をやった場合の全体的な評価の仕組み、手立ても考える必要があるのではないか。
○ 高等学校は教科指導が主になるので、教員への意識付けをしっかりとした上で、教科間の連携が必要。そのためにも、校務分掌や組織の中に安全教育の取りまとめ役を位置づけることが必要。
○ 例えば、気象警報発令時の休校について、学校から丁寧に連絡をするのではなく、子供たちが、自ら情報をとるように促していく取り組みが必要。そのようにして、安全に関する情報を子供たちが主体的に収集し、適切に判断して行動できるようにすることが必要。
○ 防災は、これからの日本に住む以上、絶対に学ばなければいけないもの。そのためには、しっかりと学ぶ時間を設定しないといけない。次期の学習指導要領では独立した教科はないが、安全に関してどういう資質・能力を培うかということを考えて、教科を結び付けていく努力が必要。そのためには、地域の専門人材や過去の災害など、地域の資源を活用して地域から学んでいくことが必要。
○ 避難訓練や安全指導は、回数を重ねただけではマンネリ化するため、教員の指導力を底上げしていくことが必要。
○ 幼稚園教育要領では、主に「健康」の領域で安全について教えることになっているが、「人間関係」や「言葉」などのいろいろな領域に安全に関係することが入っているので、幼稚園においても教科横断的という考え方は関係する。また、このように、いろいろな領域の中に安全に関係することが入っていることを幼児教育に携わる人に伝えることで、安全教育への意識や指導力の向上につながる。


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初等中等教育局健康教育・食育課防災教育係

(初等中等教育局健康教育・食育課)