中学校部会における、これまでの議論を踏まえ「とりまとめ」に盛り込むことが考えられるポイント(案)

1.「社会に開かれた教育課程」の実現と総則を軸とした教育課程の総体的構造の可視化

○ 学校教育が目指す子供たちの姿と、社会が求める人材像の関係については、長年議論が続けられてきた。現在、社会や産業の構造が変化し成熟社会へ移行していく中で、私たち人間に求められるのは、定められた手続きを効率的にこなしていくことにとどまらず、自分なりに試行錯誤しながら新たな価値を生み出していくことであるということ、そして、そのためには生きて働く知識を含む、これからの時代に求められる資質・能力を学校教育で育成していくことが重要であるということを、学校と社会とが共通の認識として持つことができる好機にある。このような資質・能力は長い間、学校教育がその育成を志向してきたものであるが、社会や産業の構造変化の中で、すべての子どもたちが次代を切り拓くために真に求められるようになっていると言えよう。
  そうした資質・能力を、教育課程を通じて可視化して共有し、学校と社会が連携・協働しながら育成していこうというのが、次期学習指導要領の改訂が目指す「社会に開かれた教育課程」の実現である。

○ 昨年8月の論点整理を踏まえ、各教科等を学ぶ意義など、その本質的な在り方について、根本に立ち返った議論が各教科等WGにおいて重ねられ、その成果がまとめられつつあることを受け止めつつ、教育課程の総体的構造を明らかにすることが求められるのではないか。

2.学校教育の改善・充実の好循環を生み出す「カリキュラム・マネジメント」の実現

  中学校教育の改善・充実の好循環を生み出すためには、各学校が教育課程を軸として学校教育の改善・充実を図る「カリキュラム・マネジメント」を行えるようにすることが重要ではないか。

○ 特に総則については、「カリキュラム・マネジメント」の視点を踏まえて、その全体構造を見直す必要があるのではないか。

○ 「カリキュラム・マネジメント」については、校長のリーダーシップの下、教職員が全員参加で行うものであるという位置づけを明確にしていくべきではないか。

6.何が身に付いたか(学習評価の充実)

○ 「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」のバランスのとれた学習評価を行っていくためには、指導と評価の一体化を図る中で、ペーパーテストの結果にとどまらず、論述やレポートの作成、発表、グループでの話し合い、作品の制作等といった、多面的な評価を行っていく必要があるのではないか。

○ そのためには、教員が学習評価の質を高めることができる環境づくりが必要ではないか。

○ 知識の理解の質を高めるという学習指導要領改訂の趣旨を踏まえ、高等学校入学者選抜の質的改善が図られるようにする必要があるのではないか。

7.個々の子供の発達をどのように支援するか

  個々の生徒の将来を見据えつつ、直面する諸課題の解決を図るなど、その発達をきめ細かに支援するため、以下の改善を図ることとしてはどうか。

(キャリア教育)
○ 特別活動において、キャリアレポート(仮称)の活用や、特別活動の学級活動に「一人一人のキャリア形成と実現(仮称)」を位置づけるなど、発達段階に応じた自己の生き方・キャリア形成の仕組みを導入することを検討する必要があるのではないか。※特別活動WGにて検討中

○ また、日常の教科等の指導においても、自己のキャリア形成の方向性と関連付けながら見通しを持って学ぶ「主体的・対話的で深い学び」を実現するなど教育課程全体を通じてキャリア教育を推進する必要があるのではないか。

(生徒指導)
○ 教師と生徒の信頼関係や、生徒が自ら判断、行動し積極的に自己を生かしていくことができるようにする観点から、特別活動における学級活動をはじめ学校の教育活動全体を通じて生徒指導の機能が発揮されるようにする必要があるのではないか。

(個に応じた指導)
○ 義務教育段階での学びを確実なものとするため、補充的な指導、習熟度別指導など個に応じた指導を一層重視する必要があるのではないか。その際、各教科等ならではの「見方・考え方」を働かせた学びが、学びの動機付けにもつながることを教師と子供とが共有しながら学習指導の充実を図る必要があるのではないか。

(特別支援教育)
○ 特別支援教育については、①通常の学級に在籍する障害のある生徒の学習上の困難に対する指導の工夫例を示す、②通級による指導、特別支援学級に在籍する生徒について、個別の指導計画、個別の教育支援計画の作成を義務づける、③交流及び共同学習の一層の充実などの改善を図ることとしてはどうか。※特別支援教育部会にて検討中

8.実施するために何が必要か

  「社会に開かれた教育課程」の理念を実現するためには以下の改善を図る必要があるのではないか。

○ 「チーム学校」の視点から「授業研究」を核とした校内の研修体制の一層の充実を図る必要があるのではないか。

○ このような授業研究において、教科を超えて指導計画を比較することにより、教科横断で教育内容を関連付けることができるなど、授業研究についても、「何のために」「どのような改善をしようとしているのか」をデザインし、共有することが大事ではないか。

9.中学校における諸課題への対応

【1】教育課程外の学校教育活動や地域主体の教育活動と、教育課程との関係

○ 教育課程外の学校教育活動や地域主体の教育活動と、教育課程との関係については、「社会に開かれた教育課程」を実現する観点から、以下の考え方により有機的な関連を図り、生徒の資質・能力の育成を目指すこととしてしてはどうか。

(1) 「社会に開かれた教育課程」の視点から、授業での学びと教育課程外の多様な教育活動とを関連付けることにより、生徒が、多様な分野の学びや社会とのつながり、キャリア形成の可能性に触れながら、自分の興味・関心を深く追究する機会を実現し、人生を切り拓いていくために必要な資質・能力を育成する。

(2) 「社会に開かれた教育課程」の理念の下、生徒にどのような資質・能力を育成することを目指すのかという教育目標を共有しながら、学校と地域がそれぞれの役割を認識した上で、共有した目標に向かって、共に活動する協働関係を築き、教育活動を充実する。

(3) 教育課程内外の活動が相乗効果を持って生徒の資質・能力の育成に資するものとなるよう、教育課程外の活動についても、生徒の「主体的・対話的で深い学び」の実現を共に目指すものとする。生徒の学びと生涯にわたるキャリア形成の関係を意識した教育活動が展開されることが重要であり、短期的な学習成果のみを求めたり、特定の活動に偏ったりするものとならないよう、その実施形態や活動時間の適切な設定など、生徒のバランスのとれた生活や成長に配慮する。

【2】部活動の取扱いについて

○ 現行学習指導要領では「生徒の自主的・自発的な参加により行われる部活動については、スポーツや文化及び科学等に親しませ、学習意欲の向上や責任感、連帯感の涵養等に資するものであり、学校教育の一環として、教育課程との関連が図られるよう留意すること。その際、地域や学校の実態に応じ、地域の人々の協力、社会教育施設や社会教育関係団体等の各種団体との連携などの運営上の工夫を行う」こととされている。

○ また、部活動は、異年齢との交流の中で、生徒同士や教員と生徒等の人間関係の構築を図ったり、生徒自身が活動を通して自己肯定感を高めたりする等、教育的意義が高いことも指摘されているが、そうした教育が、部活動の充実の中だけで図られるのではなく、教育課程内外の関連を図り、学校の教育活動全体の中で達成されることが重要である。

○ このことを踏まえ、部活動については教育課程との関連を図った適切な運営を推進する観点から以下の点から改善を図ることとしてどうか。

(1) 部活動も学校教育活動の一環であることから、生徒の「主体的・対話的で深い学び」を実現する視点が求められることを明確にする。これにより、部活動と教育課程との関連がより一層明確になると考えられる。
特に「深い学び」を実現する観点からは、例えば、保健体育科(運動領域)の「見方・考え方」は「運動やスポーツについて、その意義や特性に着目して、楽しさや喜びを見出すとともに体力の向上に果たす役割を捉え、公正、協力、責任、参画、共生、健康・安全といった視点を踏まえながら、自己の適性等に応じて「する・みる・支える・知る」等の多様な関わり方について考えること(運動領域)」とする方向で検討が進められている。運動部活動においても、こうした見方・考え方を共有し、生かしながら、競技を「すること」のみならず、協力や責任などの大切さについて実感をもって学んだり、自己の適性等に応じて、生涯にわたるスポーツとの豊かなかかわり方を学ぶような指導が求められる。

(2) このように部活動が教育課程内の教育活動と相乗効果を持って展開されるためには、部活動の時間のみならず、子供の生活や生涯全体を見渡しながら、生徒の学びと生涯にわたるキャリア形成の関係を意識した教育活動が展開されることが重要であり、短期的な学習成果のみを求めたり、特定の活動に偏ったりするものとならないよう、休養日や活動時間を適切に設定するなど、生徒のバランスのとれた生活や成長に配慮することが求められる。

(3) また、部活動の展開にあたっては、教員の負担軽減の観点も考慮しつつ、地域や学校の実態に応じ、地域の人々の協力、社会教育施設や社会教育関係団体等との各種団体との連携など、生徒にとっても多様な経験の場となるよう、運営上の工夫を行うことが求められる。

【3】学校段階間の接続

  義務教育9年間を通じて、子供たちに必要な資質・能力を育むため、以下の観点から、学校段階間の接続・連携を図ることとしてはどうか。

○ 学校間の接続・連携に関し、近隣の小・中学校による合同連絡会や研修会、保護者会の開催などを通じて、児童生徒の実態や指導の在り方、保護者としての学校へのかかわり等について相互に理解を深めることが必要ではないか。

お問合せ先

初等中等教育局初等中等教育企画課