高等学校部会におけるこれまでの議論を踏まえ、「とりまとめ」に盛り込むことが考えられるポイント(案)

■.「社会に開かれた教育課程」の実現と総則を軸とした教育課程の総体的構造の可視化

○ 今の子供たちは次にどう変わるか分からない社会、自分で考えて、その決断に沿って行動して、結果責任は自分で取るという、大変厳しい社会に出ていかざるを得ない。そうした認識に立ち、日本の子供たちの未来をつくる教育課程を創造していくことは、大人であり社会全体の責任である。

○ 高等学校は、中学校卒業後の約98%の者が進学し、また、高等学校等就学支援金制度等により、生徒の学びは社会全体で支えられている。社会で生きていくために必要となる力を共通して身に付ける、初等中等教育最後の機関として、その教育を通じて、一人一人の生徒の進路に応じた多様な可能性を伸ばし、その後の高等教育機関等や社会での活動へと接続させていくことが求められる。その際、社会で生きていくために必要となる力を共通して身に付ける「共通性の確保」の観点と、一人一人の生徒の進路に応じた多様な可能性を伸ばす「多様性への対応」の観点から、高等学校教育において育成すべき資質・能力を明らかにし、社会全体で共有していくことが必要である。

○ また、社会全体で人材を育てていく観点から、学校における学びのみならず、社会で学んだことを実践として取り入れていくことも、社会に開かれた教育課程の観点からは、重要である。

■.学校教育の改善・充実の好循環を生み出す「カリキュラム・マネジメント」の実現

○ 高等学校では、生徒はその後に多様な進路を選択していくことから、地域課題や現代的、将来的な課題に合わせて育成する人材像を明確にしていくことが求められる。

○ 例えば、校是や校訓などの抽象的な名称のまま教育活動を進めるのではなく、より具体的に育成する資質・能力を設定するという文化を高等学校の中に作っていくことが、カリキュラム・マネジメントにおいては必要となる。
その際、各教員がそのプロセスに参加していくことが重要である。特定の教科の視点からだけではなく、一人一人の生徒がどのような将来像を描き、それに対して、それぞれの教科からどういった視点を提供できるかがカリキュラム・マネジメントの視点となる。

○ また、各学校で具体的なカリキュラム・マネジメントが円滑にできるよう、学習指導要領の構造化を進める中で、教科等を横断的に育成すべき資質・能力に関して、そのマッピングを例示することが求められる。

■.「何ができるようになるか」(教育目標と育成すべき資質・能力の明確化)

(グローバルマインドの涵養)
○ 共通性の確保として、グローバルマインドの涵養が重要。これから日本国内がグローバル化していく中で、市民レベルでどのように世界の人たちと関わっていくか、世界に出ていく人だけではない発想が今回の改訂では必要となる。

(学ぶことの意義)
○ 高校生の中にはこれを最終学歴にする子も多くいる。その中で、子供たちに最低限に保証すべきことは、学ぶことは楽しいということ、学ぶことの意義を見出すこと。

(ICTの活用等に関する資質・能力)
○ 今の時代はICTを道具として使って思考・判断・表現を行う。ICTの基礎的な技能も含めた知識・理解が必要。

○ 情報社会で、情報が非常に多く不確かになり、即時に判断しなければならない一方で、正確に判断することが難しい状況の中に子供たちはこれから生きていくことになる。情報モラルのような、情報に関する知識・理解、そうしたことを踏まえた判断をできるような資質・能力が重要。

(協働する力)
○専門分化された社会の中で生きていくためには、協働する力を育成することが必要。

■.何を学ぶか(教科横断的な視点での教育課程の編成)

○基礎的な科目を履修した上でなければ探究的な学習ができないということはない。重要なのは、科目の順番ではなく、そこで何が行われるか。

○国際化に対応するため、語学にとどまらず、総合的なコミュニケーション能力、自己主張をしっかりできるようにする必要。

○協働的な学びを実現させるためには、論理的に議論できる力が必要。国語や外国語など、言葉を扱う教科の中で、その力を養うことが望ましい。

■.どのように学ぶか(指導案等の作成と実施、学習指導の改善・充実)

○ 教科等の特質に応じ知識・技能の習得を中心とした学習が「深い学び」の前提だとしてしまうと、基本的な知識・技能が習得されていないうちは「深い学び」にならないとなってしまう。知識・技能の習得に関しても主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニングの視点)の実現ということは必要。

○ また、主体的・対話的で深い学びの実現は、内容に関する知識・技能だけではなく、学び方に関する知識などの方法知の獲得にもつながるものである。

○ 合意形成のための議論は単なる学習活動ではなく、そのものが社会形成の問題になる。

○ アクティブ・ラーニングという言葉が最近非常によく使われているので、ある種の型、作法のようなものができ、深めることができないのではないかと懸念がある。先生方が自分のクラスで、全員の生徒が分かるようにするという授業改善を行うことが重要。

■.何が身に付いたか(学習評価の充実)

(6月15日の議論を踏まえて整理)

■.個々の子供の発達をどのように支援するか(個々の児童生徒の発達の支援(生徒指導、キャリア教育)、特別な配慮を必要とする児童生徒への指導等(特別支援、日本語指導)

(生徒指導・キャリア教育)
○ キャリア教育は、職業選択という狭い意味のキャリア観ではなく、自分はいかに生きて、自己実現を図り、社会の役に立つかというキャリア観を育てることが主体的な学び、主体的に生きるということにつながるもの。それが、進路を考え選択していくということに限定され、狭い進路指導、進路選択の教育とならないようにする必要がある。

○ キャリア教育においては自己省察が重要。小・中・高を通じてキャリア教育の視点をもち、基礎的・汎用的能力を特別な教科道徳、総合的な学習な時間、特別活動のみならず、各教科を通して育成していくことを明示すべき。あわせて、高等学校学習指導要領の総則においては、キャリア教育と進路指導が並び示されていることについて整理が必要。

○ 具体的な教育活動の一つとして、これまでインターンシップが中堅校と称されることの多い学校や専門学科での実習を中心として行われてきた。今後は、例えば研究者の道や高度な資格を必要とする職業も含めた、中学校の職場体験とはまた違う、自らのキャリア形成を視野に収めた、それぞれの学校でふさわしいインターンシップの在り方が模索されるべき。

(特別な配慮を要する児童生徒への指導等)
○ 教育課程上は通常学級の教科で履修できるとしても、対人関係上の問題やコミュニケーションに問題があるなど通常学級の中でだけはカバーできない部分がある。通級という特別な指導の仕組みを設け、自立活動の指導を中心として、そこでの学びが通常学級の中で生かされていく制度は必要。

○ 高等学校における通級による指導を制度化していく上では、時間と人材、教材を育てていかなければならない。また、保護者の理解やその他の生徒たちに対する指導も重要となる。

○ 専門高校では産業機械を使うなど、けがをする危険性のある科目もあるので、安全面にも配慮する必要がある。

■.実施するために何が必要か(家庭・地域との連携・協働、チーム学校等)

(必要な体制整備)
新しい学習指導要領が、高等学校の授業の中で実効性のあるものとしていくためには、必要経費の確保を含めて、条件の整備が重要である。

○ 課題研究やアクティブ・ラーニングの視点をいかした授業を実施し、しっかりとした学習評価をしていくためには、授業準備の充実が必要。そのため、業務や授業準備の効率化に資する体制整備が求められる。

○ また、教科書を含めて教材についても、学習指導要領の各教科・科目の目標を実現しやすいものになることが望まれる。
例えば、理数探究(仮称)などは、学校現場ではこれまであまり経験のない考え方で構成される科目となっており、具体的ないい教材、指導方法が、学校現場にしっかりと提供・共有される必要がある。

○ 条件整備の一つとして、ICTの環境整備を進める必要がある。その際、教育効果が高いだけでなく、教員にとって使いやすい具体的かつ丁寧なものを学校現場に提供していく必要がある。

○ 教員養成においても、資質・能力を育成していくという新しい学習指導要領の考え方を十分に踏まえることが必要。特に、教員養成大学においては、そのためのカリキュラム開発など役割・使命は大きい。

(国民、学校現場等の理解)
今回の学習指導要領の趣旨が、国民、学校現場等に十分理解されることが極めて重要であり、特に学校現場への周知については、そのプロセスそのものが重要になる。

○ 校長にどう伝えるかが重要。まず校長がしっかり理解しないと学校は変わらない。

○ 今回の学習指導要領改訂の趣旨を、メディアを通して国民全体で理解し、広く全体的な議論にしていく必要がある。

(家庭・地域等との連携)
○ 今回の改訂では、企業の協力、産業界との関わりが重要。社会全体として企業にどういう働きかけをしていくか、今回の学習指導要領の改正に併せて具体的に何かアクションプランを作っていく必要がある。

■.教科・科目等の構成及び単位数

(卒業までに必要な単位数)
○ 多くの定時制課程や通信制課程において、卒業までに修得させる単位数を74単位としている現状を踏まえ、国として定める単位数は、引き続き74単位以上とする。

○ 各高等学校には、その中で特色を出すということが期待されるが、単位認定が適切に行われることが担保されなければならない。

(必履修教科・科目の在り方)
○ 学習指導要領に定める必履修教科・科目は「高等学校とは何か」ということを学習内容の面から国が示したものであり、引き続き必履修教科・科目を定め、各必履修教科における必履修科目の単位数は、現行の単位数(選択必履修となっている場合は、最少の単位数)を維持する。

○ 選択科目については、(1)各教科の必履修科目との関係や履修順序、(2)生徒の進路に応じた選択を可能にするとともに過大にならないようにすること、(3)現行の各教科における科目の履修状況等を考慮して単位数等を定めることとする。

(科目間の関係について)
○ 「理数探究(仮称)」は、各教科等の特質に応じて育まれる見方・考え方を総合的に活用するとともに、大学における学問分野につながっていくことを前提に、自己の在り方生き方に照らし、自己のキャリア形成の方向性と関連づけながら見方・考え方を組み合わせて統合させ、活用しながら、自ら問いを見出し探究することのできる力を育成するものであることから、「理数探究基礎(仮称)」及び「理数探究(仮称)」の履修により、総合的な学習の時間の一部又は全部に替えることができることとする。

○ 総合的な学習の時間について、高等学校においては、小・中学校と比較すると、その趣旨が十分に生かされたものとなっていない現状がある。より探究的な学習を重視し、名称を「総合的な探究の時間(仮称)」にするとともに、各学校において共通に活用できる教材を作成する。

(専門学科、総合学科の科目等について)
○ 専門学科において、一人一人の生徒の進路に応じた多様な可能性を伸ばすために、学校の実態に応じて様々な履修が考えられるため、引き続き、以下の取扱いとする。
・すべての生徒に履修させる専門教科・科目の単位数は、25単位を下らない
・必履修教科・科目の履修と同様の成果が期待できる場合に、その専門教科・科目の履修をもって、必履修教科・科目の履修の一部又は全部に替えることができる
・職業教育を主とする専門学科においては、「課題研究」、「看護臨地実習」又は「介護総合演習」と総合的な学習の時間について、同様の成果が期待できる場合には、相互に一部又は全部に替えることができる

○ 総合学科における学校設定科目「産業社会と人間」は「社会に開かれた教育課程」へつなぐ上で、大変意義が大きく、職業や、これから学びたいことまで含めてキャリア形成を捉え、それぞれの学校の目標に応じて様々な取組が行われることが期待される。

■.高等学校におけるカリキュラム・マネジメントの具体的な方向性

(高等学校におけるカリキュラム・マネジメントの在り方)
○ 高等学校においてカリキュラム・マネジメントを実現するためには、教科等の専門を超えて共通に議論するための観点が必要であり、その一つが資質・能力の三つの柱になるのではないか。

○ 各学校・学科において、育成する人材像を教育目標として明確化し、どういった生徒を育成して社会に送り出すのかはっきりさせた上で、総合的な学習の時間などにおける探究的な活動が設計されるもの。

○ 高等学校においては、地域への貢献を目指した活動も行われているが、そうした活動についても、地域課題を発見し、各教科の学びを基盤とした貢献活動になるようなカリキュラム・マネジメントの在り方が今後求められていく。

(義務教育段階での学習内容の確実な定着)
○ 高等学校の実態として、基礎的な学力に非常にばらつきがある状況。義務教育段階の学び直しを、それぞれの学校で実情に合わせて行っており、こうした考え方は必要である。

○ 実際に行っていくためには、人手も時間も掛かる難しい問題ではあるが、教員養成系の大学の学生たちをはじめとする様々なリソースを活用することが考えられる。

■.学校段階間の接続や卒業後の進路

(中学校と高等学校の接続)

(高大接続)
○ 人材しか資源のない我が国において、主体的に学び、探究を続けていくという資質は、これからの日本人にとって不可欠。大学入試をはじめとする様々な仕組みにおいて、意識的に資質・能力を育成していくという考え方を組み込み、しっかりと定着させていくべき。

○ 学習指導要領の理念に対応する大学の入学者選抜となってきていなかったために、高等学校教育が入試対策になってしまっている現状がある。高等学校教育、大学教育、大学入学者選抜の一体的な改革が進められており、高等学校教育の観点からも、その考え方は不可欠である。

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