高等学校における学習評価について(検討事項)

1.現状と課題

  現行学習指導要領における学習評価については、
(1)学習指導要領に示す目標に照らしてその実現状況を評価する、目標に準拠した評価を着実に実施すること
(2)学習指導要領の趣旨や改善事項等を学習評価において適切に反映すること
(3)学校や設置者の創意工夫を一層生かすこと
とし、高等学校における学習評価については、観点別学習状況の評価を実施し、きめの細かい学習指導と生徒一人一人の学習の確実な定着を図っていく必要があることなどを通知で示している。(「小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校等における児童生徒の学習評価及び指導要録の改善等について(通知)」(平成22年5月 初等中等教育局長)
  各高等学校における観点別評価の実施状況としては、「実施できている」と回答している学校(学科数)は約7~8割、観点別の学習状況について、指導要録に記載している高校(普通科・全日制)は1.3%、通信簿(通知表)に記載している学校は5.8%となっている。

  高等学校における「目標に準拠した評価」の実施にあたっての課題として、「評価技術の問題」、「教員の意識や学校の体制の問題」、「授業計画・評価計画・評価規準等の作成と活用」等を上げている教員が多いという調査結果がある。

  また、生徒の在学する高等学校以外の場における体験的な活動等の成果をより幅広く評価できるようにすることにより、高等学校教育の一層の充実を図ることを目的として、各学校長の判断によって、高等学校の単位として認定することを可能としている。

<単位認定の実績(平成26年度)>
・学校間連携における単位認定    172校
・大学等における学修の単位認定  364校
・ボランティア活動等の単位認定    503校
・技能審査の成果の単位認定    1,447校

2.これまでの検討状況

「論点整理」においては、
・観点別学習状況の評価について、小・中学校と高等学校とでは取組に差があり、高等学校では、知識量のみを問うペーパーテストの結果や、特定の活動の結果などのみに偏重した評価が行われているのではないかと懸念が示されていること
・義務教育までにバランスよく培われた資質・能力を、高等学校教育を通じて更に発展・向上させることができるよう、高等学校教育においても、指導要録の様式の改善などを通じて評価の観点を明確にし、観点別学習状況の評価をさらに普及させていく必要があること
・指導と評価の一体化を図る中で、ペーパーテストの結果に留まらない、多面的な評価を行っていくことが必要であること
・総括的な評価のみならず、一人一人の学びの多様性に応じて、学習の過程における形成的な評価を行うこと
などが示されている。
  これを踏まえ、総則・評価特別部会においては、観点別評価に関して、「目標に準拠した評価」の実質化や、教科・校種を超えた共通理解に基づく組織的な取組を促す観点から、評価の観点について、育成すべき資質の能力の三つの柱に基づき「知識・技能」、「思考力・判断力・表現力等」、「主体的に学習に取り組む態度」を踏まえて定めることと整理された。(これを踏まえた各教科等の検討状況は別紙のとおり。)

  また、高大接続システム会議「最終報告」(平成28年3月)においては、「論点整理」を踏まえ、高等学校における多面的評価の充実のための取組として、
・教科・科目ごとの観点設定の考え方や評価の方法等について参考となる資料の作成
・観点別の記載欄を設けた指導要録の様式例を提示すること
・育成される資質・能力を的確に評価していくための方法や総合的な学習の時間など学校内外の多様な学習活動に対応した評価の在り方等の研究、開発
・各種の検定試験の活用促進
・「高等学校基礎学力テスト(仮称)」を用いて、一人一人の生徒の目標や進路等に応じて、学びの成果を評価して指導の改善に生かしていく
・ポートフォリオ評価の観点やキャリア教育の観点を取り入れた「キャリア・ノート」を参考にした取組
などが提言されている。

3.高等学校における学習評価の改善の方向性

  以上の検討状況を踏まえて、高等学校における学習評価の改善の方向性について、次の事項についてどのように考えるか。

(1)各教科等の学習評価

○ 各学校において観点別評価を一層推進するため、
・観点設定の考え方や評価の方法等について参考となる資料の作成
・指導要録の様式の改善
を行うに当たり、どのようなことに留意する必要があるか。

<これまでの意見>
・主体的に学習に取り組む態度をどのように評価していくかが重要。特に大学との接続との関係でそれを議論していくということが求められる。
・高等学校では、観点別評価の重要性が指摘されながら、指導要録が観点別評価に対応していないことから、十分に行われてこなかった。観点別に評価した内容が反映されるように保証されていることが必要。
・主体的に学びに向かう態度を評価するためには、多面的な評価が重要。

○ これら以外に、各学校における学習評価を充実させる観点から、国としてどのような取組が必要か。

<これまでの意見>
・高等学校ではポートフォリオ型の評価が一般的ではないが、多様化する中で学びを評価していくためにも、検討していかなければならない。
・教科に横串を通してポートフォリオをつけていき、ほかの教科の先生方と共有することが必要。
・ポートフォリオ評価を高等学校で行っていくことで大学入試も変わっていく契機となる。ノウハウが子供たちにも先生にもない中で、それをどう育成するかが重要。

○ 総合的な探究の時間(仮称)や理数探究(仮称)など、探究の過程を重視した学習について、その学習過程の在り方と合わせて、その学習過程を経ることが単位認定においても踏まえられるよう、評価の在り方を研究、開発していくことの必要性についてどのように考えるか。

<これまでの意見>
・探究のプロセスを重視する学習については、単位認定においてもそのことが踏まえられている必要がある。そのため、探究のプロセスに関わる目標準拠型評価の視点やルーブリックは示すことができるのではないか。それによって、探究の内容までは規定できないが、探究のプロセスを行うことを担保することができる。
・現状の目標準拠評価がすでにある意味で3段階のルーブリックであることを生かしていくことが重要。

(2)多様な学習活動の評価

○ 「高等学校基礎学力テスト(仮称)」を活用して、より効果的な指導の工夫・充実につなげていくためには、学校においては、結果をどのように活用していくことが必要か。

○ 特別活動ワーキング・グループでは、小学校から高等学校までの特別活動をはじめとしたキャリア教育に関わる活動について、学びのプロセスを記述し振り返ることのできるポートフォリオ的な教材(「キャリア・パスポート」(仮称))の作成が提言されている。実際に開発・運用していくに当たり、どのようなことに留意する必要があるか。

<これまでの意見>
・一人一人のキャリア形成の実現の観点から、カルテやポートフォリオなど教える側だけでなく生徒が自己省察して記録をし、教科やボランティア活動など、多面的・総合的に評価していくことが求められる。

○ 生徒の多様な学習活動を評価していく方策として、学校外の活動について単位認定する制度を設けているが、学校において、これらが積極的に活用されるようにするためには、どのような改善が考えらえるか。

お問合せ先

初等中等教育局教育課程課教育課程企画室