高等学校部会における検討事項(案)

「論点整理」を踏まえ、一人一人の生徒が、義務教育を基盤として、(1)十分な知識・技能と、(2)それらを基盤にして答えのない問題に自ら答えを見いだしていく思考力・判断力・表現力等と、(3)これらの基になる主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度とを身に付けていくことができるよう、教育課程の在り方等について、「共通性の確保」と「多様化への対応」の観点を軸として検討する。

1.高等学校教育を通じて育成すべき資質・能力について

(1)高等学校教育を通じて育成すべき資質・能力について
(2)教科・科目等の構成及び単位数について

2.カリキュラム・マネジメントについて

3.アクティブ・ラーニングの視点をいかした学習・指導の改善について

4.学習評価の在り方について




【第1回の検討事項】

1.高等学校教育を通じて育成すべき資質・能力について

(1)高等学校教育を通じて育成すべき資質・能力について
<現状>
現行学習指導要領の策定にあたっては、学校教育法に定められた高等学校の目的・目標規定を踏まえ、「各教科・科目において、基礎的・基本的な知識・技能の習得とともに、知識・技能を活用する学習を重視すること」、「各教科・科目において、義務教育と高等学校との間の系統性を重視した円滑な接続を図ること」、「豊かな心や健やかな体の育成のため、道徳教育の充実や健やかな心身の育成についての指導の充実を図ること」が重視された。
その中で、学習指導要領に定める高等学校の必履修教科・科目は「高等学校とは何か」ということを学習内容の面から国が示したものと整理された。この考え方は、中央教育審議会初等中等教育分科会高等学校部会の「審議まとめ」(平成26年6月)においても、高等学校において全ての生徒が身に付けるべき「コア」の内容を、教科・科目等の形で示しているものとして捉えられている。
選挙権年齢が18歳以上に引き下げられ、生徒にとって政治や社会がより一層身近なものとなっていることを踏まえ、高等学校を卒業する段階で身に付けておくべき力は何かを明確に示すことが求められている。また、初等中等教育最後の教育機関として、一人一人の社会的・職業的自立に向けて必要な基盤となる能力や態度を育み、キャリア発達を促す「キャリア教育」の視点も重要である。
さらに、平成26年12月には中央教育審議会答申「新しい時代にふさわしい高大接続の実現に向けた高等学校教育、大学教育、大学入学者選抜の一体的改革について」が示され、高等学校教育、大学教育を通じて育むべき資質・能力の明確化が図られている。
これらを踏まえて、高等学校の教育課程全体において、育成すべき資質・能力を「共通性の確保」と「多様化への対応」の視点で検討する必要がある。

<検討事項>

共通性の確保:高等学校教育を通じて、共通に育成すべき資質・能力の視点

・各教科等において育成すべき資質・能力の検討状況を踏まえて、高等学校教育を通じて共通に育成すべき資質・能力を明確化することについて

○学校教育法
第五十条 高等学校は、中学校における教育の基礎の上に、心身の発達及び進路に応じて、高度な普通教育及び専門教育を施すことを目的とする。
第五十一条 高等学校における教育は、前条に規定する目的を実現するため、次に掲げる目標を達成するよう行われるものとする。
一 義務教育として行われる普通教育の成果を更に発展拡充させて、豊かな人間性、創造性及び健やかな身体を養い、国家及び社会の形成者として必要な資質を養うこと。
二 社会において果たさなければならない使命の自覚に基づき、個性に応じて将来の進路を決定させ、一般的な教養を高め、専門的な知識、技術及び技能を習得させること。
三 個性の確立に努めるとともに、社会について、広く深い理解と健全な批判力を養い、社会の発展に寄与する態度を養うこと。

多様化への対応:一人一人の生徒の幅広いニーズに応じた多様な可能性を伸ばす高等学校教育の視点

・各学校・学科において、育てようとする人材像に応じて、育成すべき資質・能力を明確化し示すことについて
・大学入学時点で求められる資質・能力との関係について

○中央教育審議会答申「新しい時代にふさわしい高大接続の実現に向けた高等学校教育、大学教育、大学入学者選抜の一体的改革について」(平成26年12月)
1.我が国の未来を見据えた高大接続改革
(2) 高等学校教育、大学教育を通じて育むべき「生きる力」「確かな学力」の明確化
(略)高等学校教育、大学教育を通じて育むべき「生きる力」を、それを構成する「豊かな人間性」「健康・体力」「確かな学力」それぞれについて捉え直すと、以下のように考えることができる。
【1】 豊かな人間性
高等学校教育を通じて、国家及び社会の責任ある形成者として必要な教養と行動規範を身に付けること。大学においては、それを更に発展・向上させるとともに、国、地域社会、国際社会等においてそれぞれの立場で主体的に活動する力を鍛錬すること。
【2】 健康・体力
高等学校教育を通じて、社会で自立して活動するために必要な健康・体力を養うとともに、自己管理等の方法を身に付けること。大学においては、それを更に発展・向上させるとともに、社会的役割を果たすために必要な肉体的、精神的能力を鍛錬すること。
【3】 確かな学力
学力の三要素を、社会で自立して活動していくために必要な力という観点から捉え直し、高等学校教育を通じて(i)これからの時代に社会で生きていくために必要な、「主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度(主体性・多様性・協働性)」を養うこと、(ii)その基盤となる「知識・技能を活用して、自ら課題を発見しその解決に向けて探究し、成果等を表現するために必要な思考力・判断力・表現力等の能力」を育むこと、(iii)さらにその基礎となる「知識・技能」を習得させること。大学においては、それを更に発展・向上させるとともに、これらを総合した学力を鍛錬すること。

(2)教科・科目の構成及び単位数について
<現状>
現行の学習指導要領等においては、各学校における教育課程の状況等を踏まえ、卒業に必要な単位は74単位としつつ、「高度な普通教育」及び「専門教育」を施す高等学校においては、普通教育として、すべての生徒に対し、日常生活を営む上で共通に必要とされる知識・技能を習得させ、それを活用する能力を伸ばし、調和のとれた人間の育成を目指すとの観点から、必履修教科・科目を設定しており、全学科共通で必履修及び選択必履修の教科・科目等の単位数は最低で38単位となっている(減単位をしない場合)。
また、農業、工業、商業、水産、家庭、看護、情報、福祉の専門学科においては、我が国の産業経済の発展を担う人材を育成するため、一定の専門性を確保する観点から、専門教科・科目を25単位以上履修させることとしている。
総合学科は、幅広い選択科目の中から生徒が自ら科目を選択し学ぶことを特色としており、将来の職業選択など自己の進路への自覚を深める学習が重視されており、「産業社会と人間」を履修することとしている。
また、多様化が進む生徒の興味・関心、能力・適性、進路等に対応するため、自校以外での学習成果を単位認定する制度が段階的に整備されるとともに、各学校においては、地域、学校及び生徒の実態、学科の特色等に応じて、特色ある教育課程の編成ができるようにされており(学校設定教科・科目)、これらがより効果的に実施される方策についても検討が求められる。

<検討事項>

共通性の確保:共通に育成すべき資質・能力を踏まえた教科・科目及び単位数の在り方についての視点

・新たな必履修科目の構成とその単位数について

多様化への対応:多様なニーズに応える学習を展開するために、共通に育成すべき資質・能力とのバランスを踏まえた教科・科目及び単位数、履修の在り方についての視点

・国語科、地理歴史科、公民科、情報科など、必履修科目の構成や単位数を変更する教科における選択科目の構成及び単位数について
・数理探究(仮称)と総合的な学習の時間や課題研究の関係について
・専門教科・科目による必履修教科・科目の代替について
・学校設定教科・科目の在り方について(「産業社会と人間」を含む)
・学校外における学修等に関する単位認定について(大学等における学修、ボランティア活動等)

○学校教育法施行規則
第九十八条 校長は、教育上有益と認めるときは、当該校長の定めるところにより、生徒が行う次に掲げる学修を当該生徒の在学する高等学校における科目の履修とみなし、当該科目の単位を与えることができる。
一  大学、高等専門学校又は専修学校の高等課程若しくは専門課程における学修その他の教育施設等における学修で文部科学大臣が別に定めるもの
二 知識及び技能に関する審査で文部科学大臣が別に定めるものに係る学修
三 ボランティア活動その他の継続的に行われる活動(当該生徒の在学する高等学校の教育活動として行われるものを除く。)に係る学修で文部科学大臣が別に定めるもの

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