教育課程部会 高等学校部会(第2回) 議事録

1.日時

平成28年5月9日(月曜日) 10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省 東館13階 13F1~3会議室
東京都千代田区霞が関3-2-2

3.議題

  1. 高等学校の教育課程の改善・充実について
  2. その他

4.議事録

【荒瀬主査】    おはようございます。定刻になりましたので、ただいまより中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会高等学校部会を開催いたします。本日は、お忙しい中御参集いただきまして、誠にありがとうございます。
  会議に先立ちまして、4月14日より続く熊本県を中心としました九州地方での一連の地震によって尊い命を落とされた方々の御冥福を心からお祈り申し上げますとともに、被災地の皆様にお見舞いを申し上げたいと思います。現在、被災地において昼夜を分かたず救援活動が行われておりまして、関係機関の方々をはじめとして、国を挙げて多くの人々が、それぞれの持ち場で支援に当たっておられます。被災の一刻も早い復興を心からお祈り申し上げます。
  それでは最初に、事務局から前回欠席された委員の御紹介及び配布資料について、御確認をよろしくお願いいたします。
【西川教育課程企画室専門官】    それでは、前回御欠席されまして、今回御出席いただいている先生を御紹介します。清水雅己委員でございます。
【清水委員】    埼玉県川越工業高校校長の清水でございます。どうぞよろしくお願いします。
【西川教育課程企画室専門官】    土井真一委員でございます。
【土井委員】    土井でございます。よろしくお願いいたします。
【西川教育課程企画室専門官】    堀田龍也委員でございます。
【堀田委員】    東北大の堀田です。よろしくお願いいたします。
【西川教育課程企画室専門官】    次に、配布資料の確認をさせていただきます。本日は、議事次第に記載しておりますとおり、資料1から8まででございます。その他、机上に参考資料を配布させていただいておりまして、不足等がございましたら事務局にお申し付けください。
  なお、机上にタブレット端末を置いておりますが、その中には、本部会の審議に当たり参考となる、関係する審議会の答申ですとか関連データを入れております。詳細は議事次第の裏面にございますので、御確認いただければと思います。
  また、文科省では、5月1日からクールビズで対応させていただいています。事務局の職員、ノーネクタイ等で出席させていただいておりますが、御理解いただければと思います。先生方におかれましても、適宜、ネクタイ、上着等を取っていただければと思います。
  以上でございます。よろしくお願いします。
【荒瀬主査】    それでは、本日は前回に引き続きまして、高等学校における教育課程の改善・充実について御議論を頂きたいと考えております。
  なお、本日は報道関係者より会議の撮影及び録音の申出があり、これを許可しておりますので、御承知おきいただきたいと思います。
  前回に引き続きまして、まず高等学校教育を通じて育成すべき資質・能力、教科・科目等の構成及び単位数について御議論いただくことに加えまして、高等学校におけるカリキュラム・マネジメントの在り方について、アクティブ・ラーニングの視点を生かした学習・指導の改善と高等学校学習指導要領総則の改善イメージについて、これも併せて御議論いただきたいと考えております。
  まず、議論に資するために、事務局より配布資料の説明をお願いいたします。
【大杉教育課程企画室長】    失礼いたします。それでは、配布資料の方を順次御紹介をさせていただきたいと思いますけれども、まずは参考資料の1を御覧いただければと思います。
  後ろの方に分厚い束があるのの手前でございますけれども、参考資料の1が、前回高等学校部会におきまして頂きました主な意見でございます。全て御紹介することはできませんけれども、大きな項目で申し上げますと、高等学校教育を通じて育成すべき資質・能力についてどのように考えるべきか、キャリア教育に関する視点も含めて御議論を頂いております。
  それから5ページ目ですけれども、今回、理数探究など、高等学校の教科・科目構成が大幅に見直されることも含めまして、教科・科目の構成及び単位数について、少し御意見を頂いたところでございます。
  そうしたことも含めたカリキュラム・マネジメントについてということが7ページ目、それから8ページ目、アクティブ・ラーニング、学習評価、それから最後にその他ということで、前回は高等学校教育全体を見渡した御議論を頂いたところでございます。こうした御議論も踏まえまして、今回、資料を用意させていただいております。
  まず資料の1に戻っていただきまして、資料の1が検討事項のペーパーでございます。前回は、1ポツの資質・能力のところを中心に、ほかのところとも関連付けながら御議論を頂きましたけれども、今日、先ほど主査に御紹介いただきました三つの点、資質・能力及び教科・科目構成、単位数、それからカリキュラム・マネジメント、アクティブ・ラーニング、総則の改善イメージにつきまして、お時間の許す限りで御議論を賜ればと存じます。
  資料の1を1枚おめくりいただきますと、それぞれの事項について、少し現状と検討事項を整理させていただいております。
  まず資質・能力についてでございますけれども、現行学習指導要領の整理、それから26年6月にまとめられました、高等学校部会における全ての生徒が身に付けるべき「コア」の内容、あるいは選挙権年齢の18歳以上への引き下げということを踏まえた対応、あるいはキャリア教育の視点、それから高大接続の中で、高等学校教育についても資質・能力の明確化ということが答申されているということ。
  こうしたことを踏まえながら、共通性の確保と多様化への対応の視点で検討する必要があるのではないかということでございまして、検討事項といたしましては、2ページ目、下にございますように、共通性の確保という観点から、高等学校教育を通じて共通に育成すべき資質・能力の明確化ということ、それから3ページ目でございますけれども、多様化への対応ということで、各学校・学科において育てようとする人材像ということを明確化しながら、育成すべき資質・能力をしっかりと示していくということが重要ではないかということ、あるいは高等教育機関への入学時点で求められる資質・能力との接続ということ、あるいは職業人として求められる資質・能力との接続ということ、こうしたことを考えていくべきではないかということでございます。関係する法令あるいは答申の抜粋を付けさせていただいているところでございます。
  それから4ページ目は、そうした資質・能力も踏まえながらということでございますけれども、今回変更がある科目の構成なども含めて、教科・科目の構成及び単位数についてということでございます。
  検討事項のところを見ていただきますと、下の方ですが、共通性の確保、新たな必履修科目が誕生いたしますので、そうした構成あるいは単位数について。そして多様化への対応ということで、国語、地歴、公民、情報科など、必履修科目の構成や単位数を変更する教科における選択科目の構成あるいは単位数。それから、数理探究(仮称)と総合的な学習の時間や課題研究との関係について。専門教科・科目による必履修科目の代替について。学校設定教科・科目の在り方について。これは「産業社会と人間」の位置付けについても含みますけれども、それから次のページでございますけれども、学校外における学修等に関する単位認定について。大学等における学修、ボランティア活動等は、現在も単位認定が行われておりますけれども、こうしたことを更に活性化していく必要があるかどうかということでございます。
  それから、次のページでございますけれども、6ページ目、カリキュラム・マネジメントについてでございます。論点整理、8月におきまして、カリキュラム・マネジメント、三つの側面ということで整理をされているところでございます。
  こうしたカリキュラム・マネジメントを高等学校において確立していくための在り方、あるいは、中ほどでございますけれども、義務教育段階の学習内容の確実な定着を図るための指導を行うということが、現行学習指導要領においても位置付けられているわけではありますけれども、これをしっかりと活用していくための在り方。あるいは、総合的な学習の時間を、高等学校教育の中で、カリキュラム・マネジメントの中核、あるいは学びの意義や価値の理解ということをしっかりと理解するということの中で、重視していく方向性ということでございます。
  具体的な検討事項といたしましては、共通性の観点からは、各学校・学科において育てようとする人材像、先ほどカリキュラム・マネジメントのところでもございましたけれども、そうしたものに応じて育成すべき資質・能力を明確化し、示すこと。こうしたことと、総合的な学習の時間、これは各学校において目標を設定することになってございますけれども、こうした目標との関係性。あるいは、学び直しをより充実させるための指導要領の示し方。
  7ページ目は多様化への対応でございますけれども、先ほどもございましたけれども、大学における学修成果など、学校外の学修を在籍校の単位として、より積極的に認めていくための在り方などでございます。
  8ページ目、アクティブ・ラーニングの視点でございますけれども、アクティブ・ラーニングの視点、論点整理におきまして、「深い学び」「対話的な学び」「主体的な学び」ということで整理を頂いております。
  前回も少し御紹介申し上げましたが、「深い学び」の視点につきましては、特に各教科の特質に応じ育まれる見方や考え方との関わりが重要であるという整理が、再度、総則・評価部会においてなされているところでございます。そうした見方や考え方を働かせながら資質・能力を身に付けていくという「深い学び」、こうしたことの重要性ということも改めて認識するということでございます。
  そうしたことも踏まえながら、具体的な検討事項でございますけれども、9ページ目、生徒が多様な進路を選択することを踏まえながら、キャリア教育の観点を踏まえた学習・指導改善の推進をしていく必要があるのではないか。これは前回も御指摘いただいたところでございます。また、歴史系科目、生物など、用語が膨大になっている科目については、各教科の見方や考え方につながる重要な概念ということを中心に、重点化や構造化を図っていく必要があるのではないか。これは既に高大接続システム改革会議の御提言においても盛り込んでいただいておりますけれども、こうした点でございます。それから、各学校におけるアクティブ・ラーニングの視点を生かした指導の改善を促進するための在り方、あるいは、ICTを含めたインフラ関係の整備等についてということでございます。
  その後、10ページ目以降は、10ページ目が高等学校教育部会の審議まとめ、「コア」についてお示しを頂いたものでございまして、12ページ目に「コア」を構成する資質・能力のイメージ図が付けられております。
  それから13ページ目は、高大接続システム改革会議の最終報告でございまして、カリキュラム・マネジメントの確立等について御提言を頂いているところでございます。
  本日は、このペーパーに基づき御議論いただければと思いますけれども、御議論のベースとなる資料について、順次御説明をさせていただきます。
  資料の2でございます。資料の2は、主に今回3点目の学習指導要領総則の改善イメージについてというところに関わるものでございますけれども、全体の議論にも関わってまいりますので、今後、総則の改善イメージとしてどのようなものが考えられるかということで、たたき台として、まずはお示しをさせていただきます。
  総則・評価部会におきまして、「社会に開かれた教育課程」、あるいはカリキュラム・マネジメント、学習・指導方法の改善等の観点から、総則については、より分かりやすい構造、全ての先生方のカリキュラム・マネジメントですとか指導改善の指針となるような、分かりやすい構造を目指していくべきではないかという御提案を頂いているところでございます。
  既に小学校部会におきましても、総則の改善のイメージの御議論を頂いておりますけれども、そうしたことも踏まえながら、事務局といたしまして、高等学校総則の改善のイメージを少したたき台として作らせていただいたものが、資料の2の2枚目でございます。
  現在、教育課程編成の一般方針というところから始まっておりますけれども、これを少し前文という形で、「社会に開かれた教育課程」の考え方に基づいて、教育課程の意義について示すということとしましたり、第1款、高等学校の教育課程の基本ということを新設することにより、高等学校教育を通じて育成すべき資質・能力と関係法令、「生きる力」との関係性を分かりやすく示していくということ。
  そして、そうしたことに基づく教育課程編成の共通事項と特例ということを、第2款の部分に少しまとめてお示しをするということ。
  そして、こうしたものの根底となるカリキュラム・マネジメントや各学校種との接続、あるいは教科横断的な視点、選択履修の趣旨を生かした教育課程編成などを、第3款にまとめてみてはどうかということ。
  それから第4款には、教育課程の実施と学習の評価ということで、アクティブ・ラーニングの視点や学習評価の重要性についてお示ししてはどうかということ。
  第5款としては、障害のある生徒などへの配慮や海外から帰国した生徒などの配慮ということで、特別な配慮を必要とする生徒への指導ということをおまとめしてはどうかということ。
  そして第6款に、キャリア教育や進路指導、生徒指導など、あるいは家庭・地域との連携も含めて、学習活動の充実のための基盤ということをお示ししてはどうかということでございます。
  また、先ほど、「深い学び」、アクティブ・ラーニングのところでお示しいただいております、各教科の特質に応じ育まれる見方や考え方につきましては、全ての教科の先生に共通的に理解を頂くために、別紙として総則に付けてはどうかというたたき台でございます。
  こうした総則の全体像も踏まえながら、資料3以降の資料を少し見ていただければと存じます。
  まず、資料3でございます。高等学校段階で共通して育成すべき資質・能力についてということでございます。1ページ目は論点整理でございますけれども、高大接続答申なども踏まえながら、資質・能力の三つの柱を踏まえつつ、特に高校生に共通に育成すべき資質・能力ということを明確化していくという方向性でございます。
  2ページ目以降は、現在、各教科において検討されております、資質・能力三つの柱に沿った教育目標のイメージでございます。少し薄くて見にくくて恐縮でございますけれども、それぞれ国語科、地歴科、公民科、御覧のような教育目標ということを掲げられておりまして、こうしたことを少し統合するような、高等学校として育成すべき資質・能力の三つの柱ということを考えてみてはどうかということでございます。
  本日御議論いただきまして、事務局としても少したたき台を次回以降考えてみたいと思っておりますけれども、済みません、ページ数がなくて恐縮ですけれども、資料3の5枚目までが、三つの柱で整理したイメージでございまして、6枚目以降が、各教科ごとに現在検討いただいている教育目標のイメージでございます。
  全ての教科におきまして、三つの柱に沿った教育目標のイメージということを、幼・小・中・高の見通しの中で御議論を頂いているところでございます。こうしたことも踏まえながら、高等学校教育として育成すべき資質・能力の御議論を頂ければと思います。
  それから資料の4でございます。各教科における見方や考え方、子供たちが社会の出来事、事象等をどのように捉えて、どのような思考の枠組みで考えていくかということ、それを教科の特質に応じてどのように育むかということでございますけれども、幼児教育、国語、外国語等々、各教科の特質に応じて、例えば国語でございますけれども、言語の働きの三つの側面ということを踏まえながら、国語で表現し理解することを通して自分の思いや考えを形成し深めることなど、各教科の特質に応じて、どのように物事を捉えて考察していくかという枠組みについて、整理を頂いているところでございます。
  詳細な資料は、2枚目以降が、教科ごとに整理を頂いているところでございます。先ほど、総則の一番後ろに各教科等の見方や考え方の一覧を別紙でお付けしてはどうかということでございましたけれども、この資料の4の1枚目のようなものが、この別紙に育っていくというイメージでございます。
  それから、関係する教科・科目の見直しに付随してでございますけれども、前回も理数探究と総合的な学習の時間の関係について、少し御議論を頂いたところでございます。
  資料の5でございます。資料の5は、生活・総合ワーキングにおいて一度御議論を頂いているペーパーでございますけれども、探究という物事の本質を探って見極めようとする一連の知的営みということで、現在、解説をされておりますけれども、その意義というものを発達の段階あるいは教科等の特質に応じて整理してみると、このようなことではないかということでございます。
  まずは小・中学校の総合的な学習の時間でございますけれども、各教科の特質に応じて育まれた見方や考え方を総合的に活用しながら自ら問いを見いだし探究することができる力、教科ごとに育まれた見方や考え方を総動員しながら自ら問いを見いだし探究していく力ということを育成していく。そしてそれが自分の生き方にも関わるものであるということに気付いていくということが、小・中学校の総合的な学習の時間の意義ではないかということ。
  そしてそれが、更に高等学校におきましては、総合的ということのみならず、自己のキャリア形成の方向性と関連付けながら、自己の生き方や在り方に照らして見方や考え方を組み合わせて統合させて活用していくことが、より重視されるべきではないかということでございます。総合的に活用するということに留まらず、生き方や在り方に照らした自分なりの探究の仕方ということがしっかりを身に付いていく。それが自分の人生や社会への関わりにつながっていることが重要ではないかということでございます。
  そして2枚目が、前回ワーキングにおいて頂いた御議論でございます。教科・科目の代替の関係でございますけれども、現在、職業学科の課題研究というものが、総合的な学習の時間との代替が可能になっているということ。同じように考えれば、理数探究ということも、しっかりとした位置付けをした上で、総合的な学習の時間との代替を可能とするということも考えられるのではないかということ。
  ただ、一方で、理数探究というものが、単に進学校での受験勉強に陥ってしまうということは避けなければいけないということ。それから、理数探究という科目ができることを契機として、総合的な学習の時間、知的好奇心と言語能力をベースとしながら学際的なテーマとしていくということ。その中で、総合ということを越えて、探究的な学習の時間として高等学校では位置付けるということも考えられるのではないかというような御意見を、現在、頂いているところでございます。こうしたことも踏まえながら、教科・科目構成の全体像ということも御議論いただければと存じます。
  それから資料の6は、カリキュラム・マネジメントの関係でございます。前回、各高校において、しっかりと、各高校が育成すべき資質・能力の具体化と、それと三つの柱の関係性ということを明確にしていくべきではないかということでございましたけれども、これも生活・総合のワーキングにおいて御紹介いただいた、ふたば未来学園のルーブリックのイメージでございます。
  おめくりいただいて3ページ目に、人材育成要件・ルーブリックということがございますけれども、ふたば未来学園では、左側に知識、技能、人格、メタ認知とございます。三つの柱に照らして言えば、一番上が一つ目の柱、技能というところが二つ目の柱、人格とメタ認知の部分が三つ目の柱に対応するものでございますけれども、こうしたことについて、ふたば未来学園として育成したい資質・能力ということをAからJまで明確にして、そのルーブリックを作成し、教科を越えた理解を図りながら、また、総合的な学習の時間を中核に様々な資質・能力にアプローチしながら、高校生として育成すべき資質・能力の育成ということを図っているということでございます。
  続きまして資料の7、これは学び直しについてでございます。学び直しの多様な要請にしっかりと応えていくことが重要ではないかということでございますけれども、1枚目が論点整理における主な指摘、あるいはこれまで頂いた主な意見ということ、2ページ目が現行学習指導要領における位置付けでございます。御覧のとおり、学び直しについてはしっかりと位置付いているわけでございますけれども、なかなか実効性が上がっているのかどうかということについては、しっかりと考えていく必要があるということ。
  それから3ページ目が実施状況でございますけれども、義務教育段階での学習内容の確実な定着につきましては、単位数の増加、教科・科目の設定、補習、御覧のとおりのような割合で実施をされているところでございます。
  4ページ目は、更に標準単位数を超えて配当している教科・科目の具体的な有無ということ。それから5ページ目も続きまして、義務教育段階での学習内容の確実な定着を図ることを目標とした、学校設定教科・科目の設置の有無についての割合でございます。具体的な教科については、それぞれ下のところのグラフで書かせていただいているところでございます。
  それから続きまして、その次のページ、ページ数ございませんけれども、6枚目でございますけれども、基礎学力テストの設計でございます。基礎学力テスト、高校生に求められる基礎学力の確実な習得ということで、現在、御覧のような設計が考えられているところでございます。
  実施回数につきましては、その次のページの二つ目の塊になりますけれども、学年や時期、科目に関し、適切に判断できるようにするということ。受験しやすさ、あるいは実施場所について、御覧のような状況で検討がされているところでございますけれども、これを活用しながら、更に高等学校の学び直し科目において、しっかりと評価、成果を振り返りながら次につなげていくという、基礎学力の定着に向けたサイクルを、こうした基礎学力テストの設置と併せて、学び直し、教科・科目の在り方ということを考えていく必要があるのではないかということでございます。
  長くなりまして恐縮ですが、続きまして資料の8でございます。アクティブ・ラーニングの視点についてでございます。資料の8の上の半分にございますようなアクティブ・ラーニングの視点ということで、論点整理で整理を頂いておりますけれども、これまで特に「深い学び」につきましては、総則・評価部会におきまして、改めて見方や考え方をの関連性を御指摘いただいているところでございますので、下のピンクの枠囲みにございますような「深い学び」の定義を、改めてし直しているところでございます。そして「対話的な学び」ということ、他者との協働や外界との相互作用ということが具体的にどのようなことかということを、少し補足をさせていただいております。そして「主体的な学び」のところでございますけれども、前回、キャリア教育につきましてもかなり御意見を頂きましたことを踏まえ、この主体的な学びということが、自己のキャリア形成の方向性と関連付けながらということの重要性が分かるように、その一言を補足させていただいているところでございます。論点整理のこの三つの整理を、改めてこのような形で整理し直してはどうかということでございます。
  次のページが少しイメージでございまして、まだまだ分かりにくい状況でございますのでブラッシュアップしていく必要がございますけれども、知識・技能、思考力・判断力・表現力、学びに向かう力・人間性、この三つの柱が「深い学び」「対話的な学び」「主体的な学び」の中で絡まり合いながら育っていくということ。そして最終的に、右側にございますような、生きて働く知識・技能、未知の状況にも対応できる実社会で生かせるような思考力・判断力・表現力、人生や社会の在り方に生きる学びに向かう力・人間性、こうしたものに育てていくことが重要であるということで、資質・能力の育成とアクティブ・ラーニングの関係性を、少し示してみてはどうかということでございます。
  それから参考資料は、先ほど資料の1については御紹介申し上げました。資料の2-1は、現在、ワーキングにおいておまとめを頂いているイメージでございます。各教科において、御覧のような事項について、現在、おまとめを頂いている最中でございます。学校段階別の進捗状況、2-2、教科別の進捗状況、2-3と、少し別冊で、続いて付いております。
  そして一番最後に、教科等別ワーキングの新科目関係を抜粋してございます。前回も御紹介させていただいておりますけれども、2-4をおめくりいただきまして、2ページ目に、これからの教科・科目構成についてということで、新たな教科・科目構成を付けさせていただいておりますので、適宜、御覧を頂ければと存じます。
  事務局からの資料説明は、以上となります。
【荒瀬主査】    ありがとうございました。そういたしましたら、ただいま御説明いただいた内容を踏まえて、皆様から御意見を頂きたいと思います。
  冒頭申し上げましたように、本日は三つの議論のテーマがございます。高等学校教育を通じて育成すべき資質・能力、教科・科目等の構成及び単位数について。これは主に資料の3と資料の5に関係するものであります。それから二つ目のテーマといたしましては、高等学校におけるカリキュラム・マネジメントの在り方、こちらの方は、資料の6と7に関することかと思います。それから最後、三つ目が、高等学校におけるアクティブ・ラーニングの視点を生かした学習・指導の改善と高等学校学習指導要領総則の改善のイメージについて。これは資料の2と8に関係するかと思います。大体そういった大ざっぱな分け方で、御議論を頂ければと思います。
  まず、高等学校教育を通じて育成すべき資質・能力、教科・科目等の構成及び単位数について御議論いただくわけでありますが、前回と同様、御発言されますときには名札を立てていただきますと、順次御指名いたしますので、よろしくお願いいたしたいと思います。それでは、御意見のある方、どうぞよろしくお願いいたします。
  はい、どうぞ。
【松本委員】    今日は途中で失礼させていただきますので、1番と3番に関わることで発言させていただきたいと思います。
  高等学校教育を通じて育成すべき資質・能力については、資料の3の2ページ目の真ん中の枠組み、思考力・判断力・表現力等というところで、国語科で創造的・論理的思考という言及があり、地理歴史科・公民科においては、議論する力というのが出されております。私としては、生徒同士の学びという協働的な学びを考えたときにも、あるいはアクティブ・ラーニングを成功させるためにも、生徒同士が感情的にならず論理的に議論ができる力というのが絶対的に必要なのではないかと思います。
  その上で、小・中・高と、特に高校段階においてこういうことができるようになるために、どの教科で核として議論する力を養っていくのかというのがある程度ないと、社会科でも議論する力、議論する方法について教えたり、国語科でもやったり、理科でもやったりということになるかと思いますので、私は国語科の中で、もう少し踏み込んだ形で、議論する力を養うというのを入れていただいた方がいいのではないかと。言葉を扱う教科の中で、その力を養うということを入れていただいて、できれば英語科の方にも、そういう科目構成を展開していくことがよろしいのではないかと思います。それが1点です。
  それから2点目は、アクティブ・ラーニングのことで申し訳ないですけれども、資料の8です。資料の8の2ページ目の一番下の※のところに、教科等の特質に応じ知識・技能の習得を中心とした学習を「深い学び」の前提として行う必要があるという点です。
  これはある意味当然のことではありますが、これを読むと、うちの学校では基本的な知識・技能が習得されていないので「深い学び」までは行きませんといった御発言が出てくるような気がしてなりません。ですから、知識・技能の習得に関してもアクティブ・ラーニングは必要だというニュアンスが伝わるような文言にしていただいた方がいいのではないか。逆に学習に対する取組のモチベーションが低い子供たちの方が、集団での学習が効果的だというケースもあるかと思いますので、その辺、誤解のないように、記述を改めた方がよいのではないかという考えです。
  以上です。
【荒瀬主査】    ありがとうございました。当然のことながら、各教科のワーキング・グループ、あるいは取組のワーキング・グループで、いろいろ議論がなされているわけですけれども、この高等学校部会としましては、それに横串を刺すといいますか、全体的にそれをどのようにして高校生の資質・能力を向上させるために考えるかということでありますので、今のようなお話、どしどしお出しいただければと思います。いかがでしょうか。
  藤田先生、お願いします。
【藤田委員】    失礼いたします。高等学校を通じて育成すべき資質・能力、資料3と5を中心にという御指摘でございましたので、特に資料5につきまして、探究のイメージが明確に示されたということは、非常に大きく高等学校教育を変える可能性を持っているなということを感じました。
  特に、PISAの結果を待つまでもなく、子供たちのインストルメンタル・モチベーションと言われているような、自らの学びと将来とを結び付ける力の弱さということは、かねてより指摘されておりまして、そういった中で、自らのキャリア形成との方向性を統合させながら関係を考えていこうという枠組みは、非常にこれから期待できるなと思いました。
  そういった中で、総合的な学習の時間というものを、探究的な学習の時間に名称を変えて、より明確に学校にイメージを伝えていくということが、求められる方策として強く賛同の意を表したいと思います。これが第1点でございます。
  次に、今日、ふたば未来学園の資料を御提供いただきましたけれども、この育成すべき力を考えるときに、恐らく今日の議題、1と2と3に分かれておりますが、全てに共通することとして、このふたば未来のルーブリックのような、例えば英語で言いますとCAN-DOリスト、あるいはCEFRの言い方にも相当するかもしれませんが、何々することができるという明確な目標設定を、いかに高等学校現場の先生方に慣れていただくのか。
  つまり校是であるとか校訓であるとか、ああいった抽象的な名称のまま教育活動を進めるのではなく、そこをより具体的にするという文化を高等学校の中に作っていく。これは高等学校だけではなく、小・中学校にも相当することかと思いますけれども、こういったことが、これからカリキュラム・マネジメントを考える上でも、アクティブ・ラーニングを考える上でも、重要になってくるのではないか。
  ですから、そういった意味での、今回の高等学校を通じて育成すべき資質・能力の表現の仕方、あるいは設定の仕方、そういったところに対する高等学校への強いメッセージとしても、どう発信していくのかということが、今後、議論として必要になるのかと、そういうことを思いました。
  以上でございます。
【荒瀬主査】    ありがとうございました。前回もそうでしたけれども、一応、三つのテーマですが、それぞればらばらにあるわけではありませんので、関連するところは当然出てこようかと思いますが、御意見は、ですから幅広くやっていただく。主には一つ目のテーマでお願いしたいと思いますけれども、よろしくお願いいたします。
  どうぞ、松本先生。
【松本委員】    今の藤田委員の御発言に大変賛同する点がございました。CAN-DOリストのような形で学校現場の先生方に、どういう力を育成するのかということについて、はっきりとした考えを持っていただきたいという点。英語では常にそれについて議論してまいりましたので、他の教科においても、できれば学習指導要領の中にそういうものを明示していただけると、有り難いなと思います。
【荒瀬主査】    ありがとうございます。何か事務局の方で、今のようなことにつきまして御意見ありましたら。
【大杉教育課程企画室長】    ありがとうございます。教科の特質にはよるとは思うんですけれども、何といいますか、ルーブリックのきめ細かさというのがですね。ただ、先ほど御覧いただきましたように、教育目標自体が三つの柱で、そして学年あるいは学校種ごとに積み上がっていくというのが、正に全体としてはルーブリック的なものになっていくということ。そしてそれと、ふたばのような各学校で作るルーブリックということが、しっかりと連動していくこと。これは今回の指導要領で是非実現していきたいと思っているところでございます。
【荒瀬主査】    ありがとうございました。本当におっしゃるように、校訓とか校是とかがありましても、全然具体化しなくて、浮き上がったスローガンのようになっているというのが現実ですので、それをどのような形で日々の教育活動に落とし込んでいくかということは、本当に重要なことかと思いますので、そういうアピールになるような学習指導要領になればいいなということを思います。ほかには御意見いかがでしょうか。
  はい、どうぞ。
【橋本委員】    ありがとうございます。飛ぶ話をしますけれども、総合学科で「産業社会と人間」が学校設定科目としてあるわけですが、指導は大変ですけれども、大変意義があるというお話も様々聞いているところであります。そういうことから考えると、「社会に開かれた教育課程」へつないでいくというところでは、総合的な学習の時間を探究的な学習の時間として、様々な教科等の学習を生かした、そういう統合的な探究的な学習が位置付けられるということは、大変意義が大きいのではないかと思います。
  その際、総合学科ではそのようなものがあると、入口ですが、書いているわけですけれども、普通科は様々な多様な進路があるわけですけれども、例えばということで、キャリア教育、キャリア形成に絡んでも、職業ということもありましょうし、これから学びたいことを、例えば医学の道はどうだろうとか、そういうようなところまで含めてキャリア形成を捉えていくと、探究というのも、それぞれの学校の目標に応じた様々な取組というのが考えられるということですので、そういうことで少し具体のイメージというのが出てくると、これは各学校で様々取り組んでいけるのではないかと感じております。
【荒瀬主査】    ありがとうございます。私が余りしゃべるのは良くないかと思うんですが、今のお話も全くもっともなことでありまして、ふたばの例は、正に各学校でどのような力を付けるのかというのを具体化していこうという、本当に、学習指導要領が現行でも当然あるわけですけれども、その学習指導要領をどう読み込んで、具体的にどう教育活動に展開していくのか、落とし込んでいくのかというのが、一番大事だと思うんですね。
  そこのところの、さっきも言いましたようにアピールになればいいと思うんですが、探究も当然のことながら様々な種類があってしかるべきで、学習指導要領として出す定義と各学校の定義が全く違うというのは困りますけれども、それぞれの学校の必要に応じてそれぞれがカスタマイズなさるというのは、非常に良いことかと思います。
  それに関しまして一つ、表記の問題で、資料1の4ページですね。先ほど御説明を頂いた4ページの下から3行目のところに、「数理探究(仮称)」という言葉が出ていまして、こちらの資料5の方は「理数探究(仮称)」となっていますので、仮称なのでよろしいかとは思うのですが、今は「理数探究」に傾きつつあるということでしょうか。全体的な。
【平野教育改革調整官】    失礼いたします。前回の数理探究に関する特別チームの議論で、事務局としては、これまでの用語の整理を踏まえまして、「理数探究」の方がより適切ではないかという御提案をさせていただいて、その場では特に御意見がなかったんですけれども、この件については決定は次回まで持ち越しになっている状況でございまして、用語が全体的に整理、まだ追い付いていないところは、大変失礼いたしました。
【荒瀬主査】    言わばこれから作っていくという、大変夢のあるお話かと思います。失礼いたしました。
  佐野委員、どうぞ。
【佐野委員】    ありがとうございます。今、ふたば未来学園のルーブリックの話になっているんですけれども、保護者にとっても、これは非常に分かりやすいですね。大学において三つのポリシーを公表するようにということを考えたときに、高校においても、育てたい力、人材育成要件というものを示していただくことが、高校を選択する中学生たちにとっても、あるいは保護者にとっても、非常にこれは分かりやすい資料になるだろうなと思うところです。
  ちょうど隣に小林委員いらっしゃいますけれども、私たち全国の高校PTA連合会では、2年に一度、リクルートさんの御協力を頂いて、高校生と保護者の進路に対する意識調査というのをやっているんですけれども、最近非常に目立ってきているのが、保護者が子供の進路決定に対して深く関わっていきたい、あるいは実際に関わっていっているという、そういうデータが非常に高くなってきているんですね。そのときに判断材料として誤った選択をしないためにも、大変こういうものが示されることは重要なことだろうと思うところです。
  ただ、一方で、先ほど校訓うんぬんというのが非常に抽象的だと。そのとおりですけれども、例えば創立百何十年というところは、学校ができたときのところですね。ところがふたば未来学園さんは、あの地域の地域課題といいますか、それに基づいて学校の設立と現代的な課題というのがほぼイコールなので、非常にやりやすいというところなんでしょうけれども、そういう意味では、校訓ですとか、学校創立の理念みたいなものは、それはそれで置いておいて、ただ、現状に合わせて、あるいは現代的、あるいは将来的な課題に合わせて、どのように我が校はという、こういう人材を育てていくんだというところをもう一つ明確に示すところが、大事なポイントだろうと思います。
  その中で私、思うのは、ふたば未来学園さんにも去年の秋訪問して、いろいろお話伺ってきましたけれども、はっきり言いますと、震災、特に原子力事故ということで、これは地域の課題でもありますし、原子力の問題は世界的な課題でもあるので、それを明確に課題として捉えて、それにチャレンジしていき、課題を解決していける人材をという、そういうお考えがベースにあるんですね。それでこういうものが出てきているということなので、私は、これ、キャリア教育、キャリア・マネジメントにも関係するかもしれませんけれども、地域課題って何なんだということを、小学校・中学校ではふるさと教育になるかもしれませんけれども、小学校・中学校ではふるさとの良さを知るというところなんでしょうけれども、高校になってくると、社会に関わってくる入口になってくるわけですから、今度は地域の課題を考えて、それを解決するためにどうするかというところに発展をしていくというのが、非常に重要なポイントではないかなと思います。
  これは地域というのは、さっきのふたば未来の例もそうで、地域の課題は実は世界共通の課題でもあるということにもつながっていくと思いますので、そういう意味では、松本先生は当然御存じだと思いますけれども、結局アイデンティティーみたいなものにもつながっていくんだと思うんです。グローバル社会の中で、アイデンティティー持った人間じゃないとグローバルの中では通用しないわけなので、地域の課題イコール、どこか世界につながっているということで、地域課題というものを高校のところではもっともっと取り上げて突っ込んで議論をしていくことが、あるいは考えていくことが必要なのではないかと思います。
  まとまりませんが、以上です。
【荒瀬主査】    ありがとうございました。
  では、堀田委員、今村委員の順でお願いいたします。
【堀田委員】    堀田でございます。前回欠席いたしまして、大変申し訳ございませんでした。私は情報ワーキングの主査をやっておりまして、その関係から少しお話をさせていただきたいと思います。
  高等学校教育を通じて育成すべき資質・能力について、情報に関する資質・能力の観点から申し上げますと、大きく論点が二つあるかと思っております。
  まず一つは、今の時代ですので、どのようなことをやるにも、ICTを活用するというのは、ある意味当たり前のことになっているかと思うんですね。だから、ICTを道具として使って思考・判断・表現をやっていくと。そのための、ICTの基礎的な技能も含めた知識・理解が必要だと。これはキャリア形成にももちろんつながっていくことですし、これからの時代の学びにおいては、ICTを用いることで試行錯誤がうまくできて深い学びにつながるとか、協働的な学びが行いやすいとか、そういう部分がございます。
  もう一つの論点は、そもそも情報社会で、情報が非常に多くなって不確かになって、しかもそれらの組合せによって、判断が非常に難しい、即時に判断しなきゃいけない一方で、正確に判断することが難しい、そういう状況の中に子供たちはこれから生きていくことになるわけで、そうすると、例えば情報モラルなんかもそうですけれども、いろいろな事案が起こっていますけれども、相手のことを本当に誹謗中傷しようとしてやっている例もありますが、多くの場合、ネットのことをよく知らないでやっちゃうみたいな、そういう情報に関する基本的な知識・理解が不足していて、そのためうっかりやってしまうみたいなところがあるかなと。そういう意味では、情報に関する知識・理解、そういうのを踏まえた判断をできるような資質・能力というのが重要だろうと考えるわけです。
  今の二つの論点から申し上げますと、理数探究や総合というのは、いろいろな探求的な活動をやっていきますので、そこでのICTの活用をどうするか、そういうところで身に付いた、探究におけるICTの利用の仕方、情報活用能力というわけですけれども、そういうものがどうやって育つかということを、高等学校にある教科、情報との関係を、しっかりと付けていかなきゃいけないと思うところということですね。
  もう一つ、さっき後半で言った情報モラルうんぬんの話で言うと、例えば家庭科の消費者教育みたいな辺りとか、あと、新しくできる公共の辺りで、情報社会はどうあるべきかみたいな話、そういうようなこととの関係をどう付けていくかということを、教科をまたがってしっかりと議論しておかないと、カリキュラム・マネジメントするときに困るのではないかと思っているところでございます。
  もう一つ重要な論点としては、高等学校には情報科という教科があるんですけれども、小・中学校にはありません。したがいまして、高等学校の情報科をうまく機能させるためにも、それが高等学校教育を通じて育成すべき資質・能力については重要だと思うわけですけれども、そのためにも、小学校・中学校で、どの教科のどの場面でどのように情報に関わる資質・能力を育てていくのかということを明確にしておくことが重要とされていますし、最後に申し上げますが、とはいってもICTが学校に余りないんだよとか、そういう実情というのがあると思うんですね。これは諸外国と比較すると、中学や高校でICTを最も使っていない国が我が国でございまして、それで学力はキープされているんですけれども、ICTを用いて問題を解決しながら協働的にやっていくみたいな、これから求められる能力が本当に育っているのかといったら疑問が出ているわけで、そういう意味で、ICTをはじめとした、そういう新しい学習指導要領を満足するような条件整備を進めていくような形で、これは国というよりも、公立の場合は地方自治体の力になるわけですけれども、強い推進をしていく必要があるかと思います。
  長くなりましたが、以上でございます。
【荒瀬主査】    ありがとうございました。
  では、今村委員、よろしくお願いします。
【今村委員】    少し前の議論に戻ってしまいますが、特別部会のときから、この学習指導要領を実効性のあるものとするためには、先生方や学校現場にいかに下ろしていくのか、そのプロセスそのものが大切であるということが繰り返し議論されてきました。
今回のふたば未来学園さんの資料の3ページ目冒頭に、「全教員でルーブリックを設定」と記されています。続いて、「学校をあげて取り組むために、自分たちの視点・言葉を定義することを重視した欠かせない出発点」とあります。この一文が、私たちが繰り返し行ってきた議論に対して、多くの学びを与えてくれていることと思います。資料に書いてあることについては、(そのまま取り入れるのではなく)それぞれの学校ごとに、設定のし直しをしなくてはならないと思いますが、全教員が参加して設定に関わるという過程はとても参考になると考えております。学習指導要領を約4900校あると言われている高校に、どのように取り入れていくかについて、先生方の時間の捻出方法も含めて、ふたば学園さんの事例を参考としながら、そのプロセスを指導要領の中で明記することで、再現性を高いものにするのではないかということを考えておりました。
  他国の事例になりますが、ブータンという国に個人的にとても関心があります。そこでは、GNH(国民総幸福量)というコンセプトが国の哲学として掲げられているにも関わらず、学校教育面ではインド式の詰め込み教育が行われてきていました。そのことが問題視され始め、ここ数年、Educating for GNHという概念のもと、学校教育にGNHのコンセプトを接続し、教育内容を変えていこうとする改革がなされています。
国の大きさが島根県と同等という、小さい国だからこそできることとは思いますが、改革のスタートとして、首相が全国の校長先生を集めて、1週間のワークショップを行いました。ワークショップでは、GNHを学校教育の現場にどう取り入れていくか、校長先生たちが指導要領的なものを使いながら、腹落ちさせました。それから、それを学校に持ち帰って、職員室で校長先生などがファシリテーターとなり、ワークショップを行い、全教員で、自分の教室でどうGNHを再現していくのかワークショップを行ったそうです。
  とはいっても、なかなか改革は進まないそうですけれども、今回の哲学として示す、新しく設定する高校の教育内容を示す指導要領をどう下ろすのかというところを、何とかして表現していけないかなということを思い、発言させていただきました。
【荒瀬主査】    ありがとうございました。
  中井委員、どうぞ。
【中井委員】    東京都の教育長の中井でございます。先ほど堀田先生からお話がありましたICTの活用と情報活用能力でございますが、私も、学校教育において、ICTの活用、そして児童・生徒に情報活用能力をしっかりと身に付けさせるということは、今日の状況を見ますと、非常に重要なこれからの教育課題だと思うわけでございます。
  情報活用能力については、重要ではあるんですが、学校現場の教員、都教委でアンケート調査をしたところでは、要は日進月歩の情報技術、そしてそのノウハウというものに、なかなかついていけないと。児童・生徒の方がむしろ先行して、それに追いつくことすらなかなか難しいというのが、アンケートの大多数の先生から出された答えでございまして、そういった現状を考えますと、教材とか指導方法、そういったものについて、かなり具体的に丁寧なものを提供していく必要があるんだろうと。学校においてこういうことについて取り組みなさいということだけでは、なかなか進まないというところがあろうかと思います。
  それからICT活用についても、これもある面は同様なところがあって、なかなか教員のスキルが上がってこない、教員の個人差が大きいというところがあるわけでございます。もう一つあるのが、要はICTを活用した効果的な授業をやるのに、試行錯誤という面もあるわけですけれども、かなり準備に時間が掛かるというのがあって、この辺も、簡易な利用方法をしっかりと斟酌した、そういった使いやすいソフトというものが開発されていく必要があるんだろうと。教育効果という面だけではなくて、教員の方から見ても非常に使い勝手がいい、容易に使えるものを用意していく必要があるんだろうと思います。
  それから理数探究についてですが、これも非常に重要なテーマだと思うわけでございますし、私も推進すべきと思っておりますが、学校の教員からすると、数学の先生にしても理科の先生にしても、要は幾つかの教科にまたがったテーマ、指導方法というのが、なかなか難しいと。これまで経験がないということから、その取組についての方向性については賛同するけれども、いざ、じゃあどのようにやれば効果的な授業ができるのかというところについては、かなり戸惑いもあるようでありますので、これについても、具体的ないい教材、そして具体的な指導方法というものが、学校現場にしっかりと提供される必要があるんだろうと思います。
  以上でございます。
【荒瀬主査】    ありがとうございました。
  では、土井委員、黒上委員、そして藤田委員、古川委員で、後のテーマもありますので、一旦このテーマは、そこで切らせていただきたいと思います。
  土井委員、どうぞよろしくお願いします。
【土井委員】    ほかのテーマとも関係すると思いますので、まとめて話させていただきます。2点ほどあります。
  一つは、教育というのは一人一人の人間を育てていくものですので、一人一人の個人の能力を伸ばしていくということを目的にするのは、それは本来的に大切なことです。それゆえに、今回示されている資質・能力も、個人の資質・能力という観点から整理をしていただいていると思うんです。
  ただ、高校レベルになってくる、その後、大学、大学院と進んでいくんですけれども、要求される知識も能力も全て高度化していく、その中で何が起こるかというと、徐々に専門分化が起こっていくわけですね。理系・文系、それが学部になり、更に研究室に分かれていくことになります。
  それはなぜそういうことが起きるかというと、一人の人間でできることに限りがある、でも、それをできるだけチームというか、みんなで協働することによって、より大きな力にしていくという、そういう方策を取っているんだと思うんです。それが個人のベースからいくと、自らの得意分野、個性を生かして、どのように社会にそれを役立てていくかということですし、社会自体の見方からすると、正にシステム分化が起こっていて、そのシステムが全体として動くというシステムを作っていかないといけないということになるんだと思うんです。
  それを考えますと、高校ぐらいになってくると、総合とか統合というのを個人のレベルでやらせることだけを考えると、限界が出てくると思うんですね。そうではなくて、複数のそれぞれにそれなりに得意分野が出始めている子たちが集まって、協力して考えることによって、一人では考え付かない何かが出来上がっていくということを体験させないと、どうして社会の中で協働していくのか、その協働の中で自分の立ち位置、それは個性であり、得意分野等々を見極めながら、自分がどう貢献していくのかということが学習できないということになると思うんです。それは総合的学習の時間とか探究ということも、結局そういうものをどのようにして組み込んでいただけるかということだと思うんです。
  先ほど中井委員おっしゃられたように、「チーム学校」といいますけれども、学校でもなかなかチームが組めないんですね。理科の先生と数学の先生がどうチーム組んで、どのようにして教えていくのがいいのかということを先生方ができないと、子供たちができようはずがないので、それは逆に子供たちと一緒にやっていただいてもいいと思うんです。そういう場を作り上げていくことが大事だろうと。それが総合とか統合とかという場合の、個人だけではなくて、チームというか、全体社会の中でそれを実現していく方策というのを身に付けさせる必要がある。それがないと、自分の分野だけを磨いていっても、それだけでは生きていけないわけで、いかにしてほかの人たちとつながって、それを生かしていくかという、そこの基礎の部分をどう学ばせるかというのが大事だと思います。
  それとの関係で、議論だとか対話だとかということも大変重要で、今後、資質・能力として高めていっていただく必要があるんですが、これには2種類のものがあるんです。私は社会科とか公民科でやっているので何ですが、学習活動として、単独の人間の思考で事足りるものを複数でやるという場合があるんですね。例えば数学の問題を解くというのは、恐らく単独の思惟の中で解けるはずです。それをみんなでやることによって、教え合ったり何だりしながら、学習活動としてみんなで対話するというやり方だと思うんです。
  しかしもう一つ、公共の科目あるいは公民科でも言っているんですけれども、合意形成というのは、基本的には単独の思惟じゃないんです。もともと多元的に複数の主体があって、それぞれが利害関係を持っていて、それを調整しながら一つの合意を形成していくという対話のやり方というのは、単なる学習活動のやり方の問題ではなくて、それそのものが社会形成の問題になるわけです。
  だから議論させるとか対話させるとかいうときに、何を目指すのかというのは多分各教科で異なってくるはずで、それは国語には国語の議論のさせ方、あるいは理数なんかで対話を用いられるなら、そのやり方があるのに対して、社会科とか地歴とか公民科なんかでやるとすると、今申し上げたところが主軸になってくると思うので、その辺り、思考力・判断力といっても一義的ではないので、トータルとしてどういう力を身に付けてもらうかというのを考えていただければなと思います。
  以上です。
【荒瀬主査】    ありがとうございました。
  それでは黒上委員、よろしくお願いします。
【黒上委員】    僕も、どれと決めずに、あちこちしゃべることになると思いますけれども、まず情報活用能力の話です。
  情報活用能力についての調査というのを最近やっていましたけれども、その問題をよく見ていただくと、例えば2か所にあるパンフレット、ウエブ上のですけれども、のようなものから関連する情報を取り出してきて、自分の考えをまとめたり、述べるというタイプの問題ですね。これでどういうことを要求しているかというと、もちろんそれはコンピューターを使ってテストしていますから、コンピューターでそのページを見るという操作はあるんだけれども、そこでやっていることは、違うところにある情報を関連付けるという認知的な操作ですよね。
  そういうことを要求するのが実は情報活用能力なのだと、ごく一例ですけれども、ということを考えると、本当は先生方が、それは子供の方がうまいということになるはずがないわけです。それは要するに、情報活用能力についての理解が実は全然浸透していないということなのかなと思うんですね。そういうことがより広く伝わるようなことが、うまく次の指導要領では起こるといいなと一つ思っています。
  もう一つは、カリキュラム・マネジメントですけれども、これが指導要領の中にがっちり入ってくるのは非常にいいことだけれども、これも形骸化させないためにはどうするかと、先ほどの今村先生の話と一緒ですけれども、実際にこれを学校の中でやってもらおうと思うと、しかも高等学校はそれぞれの先生方、教科で専門持っていますから、その人たちが共通に議論してもらわなあかんということですよね。
  そのためには、いろいろな学校で、特に中学校・高校で先生方が共通に話ができることは何かというと、例えば子供たちがどのように情報を処理しているかという、そういう、僕らはそれを思考スキルと呼んでいますけれども、例えば二つの情報を比較するとか関連付けるとか、それがどれぐらい例えば数学の中でうまくいっているかとか、英語の中でうまくいっているかとか、そういうことだったら、専門が違っても内容を越えて子供たちを見ることもできて、議論もできると。そういう視点を、このカリキュラム・マネジメントの中でうまく示してほしいなというのがあるんですね。
  資質・能力の明確化をすると書いてあるけれども、そのときによすがになるのは、多分三つの柱ですね。だから三つの柱がある、これを前提にして、各学校でうちの学校ではどんな資質・能力を育てるのかという議論をして、それがまた三つの柱だよねと戻ってしまうと実は意味がなくて、教科に固有な知識・技能というのは、それはもう厳然としてあるんだけれども、思考・判断・表現と三つ目の柱のところ、学びに向かう力、ここは教科を越えて、どの教科でも共通する、より具体化されたイメージというのがあるんだということがうまく伝わると、それを基に、教科の違う先生方が子供の様子を観察して議論ができると。
  だから一応、カリキュラム・マネジメントで出来上がってくる、年計を並べたような、恐らくそういう大きなカリキュラムの枠組みがあって、それが実際に授業に落ちたときに子供がどう動くかということは、そこで見るという形のイメージをうまく伝えられたらいいなということがあります。
  そのときに、三つ目がルーブリックの話ですけれども、ふたばさんのルーブリックを見ると、あるいは今、いろいろな大学で行われているルーブリックを見ると、非常に抽象的に書かれているんですね。そのまま、このルーブリックを子供たちが見て、授業の中で例えば明治維新のことを学習しているときに、このルーブリックが目標になるかというと、ならないんですよ。
  ルーブリックって、粒の大きさが多層的にありまして、僕、この十五、六年、ずっとルーブリックのことを現場の先生方とやっていますけれども、こういう抽象的なルーブリックは、実際の授業に当てはめて使うためには、それがある学習内容を想定したときにはどういうことを具体的に意味するかという、もう少し細かい粒のルーブリックを作っていく作業が実は必要で、更にそれを子供たちが見て目標にするためには、それを子供の分かる言葉に書き直さなあかんという、3段階ぐらいのルーブリック設定が必要だという感じがするんですね。
  そういうイメージがどこまで指導要領で書かれるか、あるいは指導要領の解説に書かれるべきなのか、よく分からないですけれども、そういうイメージが少しちらっとでも見えるといいと思います。
【荒瀬主査】    ありがとうございました。今のお話はあれですよね、本当は各学校がそういうことをやることをしない限りは、どうにもならないですよね。
【黒上委員】    そう、そういうこと。だからそれをやるための方法と、やらなあかんよというのが見えなあかん。
【荒瀬主査】    そういうアピールができないと、絵に描いた餅になっちゃいますね。
【黒上委員】    ええ。
【荒瀬主査】    では、藤田委員、よろしくお願いします。
【藤田委員】    たびたび恐れ入ります。先ほど来の委員の皆様方の御意見を受けて2点、それから新たな考えを1点、申し上げたいと思います。
  佐野委員が先ほど、地域課題を知る重要性ということを御指摘になりました。正にそのとおりだと思います。私、キャリア教育の観点からしかものが言えないんですけれども、地域課題については、小学校中学年、3年生、4年生の課題として社会科で市区町村あるいは都道府県について学んだ以降、途絶えてしまうという現状がございます。中学校の職場体験等も実はその機会であるものの、遅刻してはいけない、あるいは返事は大きな声でということに焦点化されてしまい、地域課題を学ぶ機会としては十分機能していない。ましてや高等学校ではそういうことを学ぶ機会がないままに、社会を支える人材になっていくという、非常に危うい状況があるかと思います。
  ですから、今回お配りいただきました参考資料の2-4、16ページにございますように、公民科目の新設として考えられている、(仮称)ですが、公共の中において、地域創造への主体的参画、あるいは持続可能な社会づくりの主体となるために、こういった領域の中で、ローカライズされた教材の開発ですとか、あるいは、そういった芽出しというのか、そのような枠組みが学習指導要領の中にきちんと位置付けられる必要があるのではないか。
  そのときに、現行の、例えば総合学科における産業社会と人間との関係性の整理、あるいは特別活動におけるホームルーム活動における、例えば先ほど土井委員からも合意形成の話がございましたけれども、ホームルームの課題、あるいは学校の課題、地域課題を解決するという特別活動のもともとの狙いとの関係性の整合性、あるいはその整理・統合、そういったことも、今後議論していく必要があると思いました。
  2点目が、今村委員がふたば未来さんのルーブリックのことについて、プロセスが大切だというお話をなさったことについては、非常に強く賛同したいと思います。実はキャリア教育の分野では非常に手痛い経験がございまして、かつて、御記憶の先生方いらっしゃるかもしれませんが、4領域・8能力と呼ばれる資料を作ったことがございます。今式に言うとルーブリックに似たようなものですが、あれのコピー、ペーストというのが全国の学校に出回りまして、どこに行っても、キャリア教育といえば何々できる、どんな山奥に行っても、どんな都会に行っても同じですね。それが一度使われてしまうと、学校文化の中ではコピー、ペーストをすることが非常に多くて、年度だけ変えて使っていかれる学校が非常に多いので、数十年間変わらず、今でも使われているという状況がございます。国としては、4領域・8能力から基礎的・汎用的能力に、平成23年以降変わっているわけですが、かれこれもう随分時間がたっているにもかかわらず、そういったものが残っている。
  つまり何を申したいかと申しますと、今村委員が御指摘のように、ルーブリックそのものの大切さを伝える、つまり作っていくプロセスの大切さを伝える、そういったときに、黒上委員が御指摘になられたような層の問題であるとか粒の問題、そういったこともきちんと伝えておかないと、出来上がりの例が独り歩きすることほど危険なことはないだろうと。特に高等学校の場合ですと、全日制だけを見てもそのとおりですが、定時制、通信制など様々な学校がありますので、そういった中での完成イメージのコピー、ペーストだけは避けていかなくてはいけないということが2点目でございます。
  3点目ですけれども、高等学校で育成すべき資質・能力の中で、特に資料3の一番最後のページにございます「コア」のイメージを考えていくときに、特にこの中では、社会・職業への円滑な移行に必要な力ということが指摘されております。特に今回は、探究の中でもキャリア形成との関係が重要視されている中で、この社会・職業への円滑な移行に必要な力とは一体何かということの議論というのが、これから、先ほど申しましたような基礎的・汎用的能力、つまりキャリア教育で言われている能力論とどのように整合し得るのか、あるいは変更が必要なのか、そういったことの議論を具体的に進めておかないと、恐らく小・中・高の体系性、連動性という問題にも支障が生じてくるかと思います。ですので、次回以降、是非、基礎的・汎用的能力との関係性の整理ということについても、議論を進めていただきたいなと、これは要望でございます。
  以上です。
【荒瀬主査】    ありがとうございました。
  それでは古川委員、よろしくお願いします。
【古川委員】    失礼いたします。1点、総合的な学習の時間についてですけれども、ちょうど平成10年の学習指導要領の改訂のときに、新たに総合的な学習の時間が入ってきて、それから今、現状のような形になっているんですけれども、現場サイドで、実業系の職業学科のあるところは、かなり総合的な課題研究等で充実してきているというのが現実だと思うんですね。ただ、普通科の中で、なかなか総合的な学習の時間というのが、位置付けが非常に難しいというか。
  というのは、一つあるのは、多分、総合的な学習の時間が、教科を越えて、じゃあ誰がするのと。担当者が教科で、高等学校、教科色が非常に強いので、そういう意味での誰がどんなことをやるのという話になってきて、現実、なかなかそこでうまく展開できていないということが、現場サイドではあるんじゃないかなと思います。
  私、教育センターの方に勤めておりまして、その中で、講座というか、先生方の研修の場として持ってくる中身の中に、なかなか総合ということでの取組というのは、ほとんどできていないのが現状でありました。それはというと、現場のニーズが非常にない。だから極端な話をすれば、勉強にすり替えてみたりとか、そういうことが現実的には結構あるんじゃないかなと思っています。
  ただ、今回、こういう形で探究というところで示されて、非常にその教科の特性を踏まえて、その上で位置付けとして総合的な学習の時間を明確に出していただければいいと思うんですけれども、そのときにどのように学校でそれをやっていくのかというのは、なかなか、誰が担当するのかと。
  例えば課題研究で言えば、課題研究というのは職業科の科目の中にあるわけですね。そうすると、どうしても科目の枠の範疇なので、自分の専門の分野でやっていける話です。だから探究といっても、その科目のところの探究だけに終わってしまわないかという気もするんですけれども、理数も同じだと思うんですけれども、そういうことで、誰がやるのかというのは非常に難しい。
  だとすれば、手順を、これはカリキュラム・マネジメントになってくると思うんですけれども、学校で、どんな資質・能力を高めていこうと、うちの学校はどんな学校を作っていこうとするのかということをきちっと議論して、そしてその中で、総合的な学習の時間と位置付けというのはどのようにしているんだと。
  教科ではこういう力を求めているというのは、ここに示されているとおりだと思うんですけれども、それを踏まえて、それぞれの先生方が総合的な学習の時間の位置付けについてきちっと明確にしていかないと、なかなかまた同じような繰り返しになっていかないかなというのは非常に懸念するところです。
  だからそういう訴え方を、この学習指導要領ではそこまで細かいことは書けないんでしょうけれども、例えば今回、ふたば学園の例が出ていますけれども、こういったことを学習指導要領改訂後に提示していきながら、探求していく力を付けるために、じゃあ学校全体としてどのような取組をしていけばいいのかということを先生方一人ずつが考えていかないと、教科で求める力と総合で求める力というのがうまくリンクしていかないんじゃないかなという気がしますので、そこら辺をうまく示していければなということを感じたところでございます。
【荒瀬主査】    ありがとうございました。
  吉田委員が少し早くお出になるということですので、どうぞよろしくお願いいたします。
【吉田委員】    ありがとうございます。私は前回からもお話ししていると思うのですけれども、今回の教育課程の改訂というのは、本当に先を見越さなくてはいけなのではないかと。そういう中で、先日、STEM教育のお話をさせていただいたのですけれども、今現在、今日、堀田先生がいらっしゃって、私、力強い、情報におけるハードの問題というか、費用の問題という部分がでたのですけれども、今、日本の国の中で、女子の算数嫌いというか、理数系嫌いというものが、小学校の4年生ぐらいから始まっていると。うちは女子高ですけれども、高校に入ってくるときに、何でうちの学校に来たかといったら、理数系嫌いだから来ているみたいな子もいるわけですよね。それに無理やり、今、STEMだどうのといったって、どうしようもないかもしれません。
  ただ、この子たちが将来大人になったときに、今、どういう能力が必要性があるかといったら、現実にアメリカなどでは、STEM技能を身に付けている人たちの年収が違うわけですよ。女性がそこにも必要だということになっているわけであって、そのためには私は、ICTを活用した教育というものに一つ大きな利点があるなと思っています。ICT活用ということは、要は学校教育において電子機器や通信機器を使うことによって情報知識の交流をするというのが、目的なわけですよね。ということは、今、いろいろお話が出ている合教科の問題とか教科横断型うんぬんの問題とか、そういうことで言うと、IT機器というものを中心にして、いろいろなものが非常に簡単に合教科的な教育ができるようになってくる。それを小学校時代からしっかりとやっていただいて、数学だって算数だって、逆にそれで面白くなってくれれば中学・高校でもっともっと伸びてくるだろうし、中学・高校になったらもう本当にキーボードをしっかりと付けて、プログラミングもしながらやっていくような子たちも出てくるぐらいにならないと、日本がアメリカに更に後れていく状況になっていくのではないかなと。
  今回の資料の例えば4なんかで、各教科の見方というのが出ていますけれども、これ、本当に各教科ごとの理想ではあると思うのですけれども、これが本当にどこで、アクティブ・ラーニングの図とかみたいに、いろいろなものがぐるぐるかみ合うのかというのが見えてこない。私は特に英語などでは、ここに書いてあることというのは高校でいいのだろうと思うんですけれども、高校基礎学力テストの問題というのはここの学習指導要領ではうたわれているんですけれども、大学進学のテストのことを考えたときに、大学進学のテストと、この教科というものを、どう結びつけて考えていくのか。テストと教科というのは、子供たちには大きな影響があると思うのです。
  当初、高大接続の中でも、B1レベルだとかB2レベルだとかいう話もありましたけれども、高校卒業時にそういうレベルを取らせようというのだったら、外国語がそこまでのことを今要求しているのかどうか、そういうようなことをもう少し具体的というか、曖昧というと言い方悪いのですけれども、もう少し教科間の検討、そしてそのツールとしての、ICT機器なら機器の整備で、もう大変失礼ですけれども、早く本当にお金を付けて、そういう機器を置いていただけない限り、先に進まないのではないかなという思いも含めてお願いをしたいと思います。
【荒瀬主査】    ありがとうございました。大変重要な御指摘が、たくさん出たかと思います。具体的にお話の内容は、次のカリキュラム・マネジメントについても相当入り込んだ内容をおっしゃっていただきましたので、あと残された時間の関係もございまして、テーマの二つ目がカリキュラム・マネジメントについて、三つ目がアクティブ・ラーニングの視点を生かした学習・指導の改善と指導要領の総則のイメージということだったわけですけれども、これを併せて、次も御議論いただければと思います。
  一つ、私、伺っていまして思いましたことは、例えば中井委員がおっしゃったこともそうですし、今村委員がおっしゃったこと、あるいは黒上委員がおっしゃったこととも関わりがあろうかと思いますけれども、どうも高等学校の教員の意識というのが、自分がちが何を教えるかということを中心に考えるから、したがって結果的には、先ほど古川委員がおっしゃったように、教科の壁の中でいるから、なかなか解決策が見いだせない。まさにカリキュラム・マネジメントの話をしようと思うと、そこのところを乗り越えないと、どうにもならないわけですよね。
  だから例えば、一人の生徒が、まさに理数探究なんかがそうかと思うんですけれども、理数探究するから理科と数学の教員がやればいいんだではなくて、もっとほかの教科の教員も含めて、あるいは管理職も含めて、一人の生徒が何をしたいのかというときに、それぞれの教科からどういった視点を提供できるかということを、これをやるとすると忙しくてできないという話にまたなるわけですけれども、そこのところをどうクリアするかということが、まさしく今村委員がおっしゃったような、プロセスを大切にして具体化していくということにつながるのかなということを思って、お聞きしておりました。
  余計なことを申しましたけれども、次の二つ目と三つ目を併せた形で、あるいは今の話も含めて、続けて御議論いただきたいと思います。
  では、橋本委員、よろしくお願いいたします。
【橋本委員】    ありがとうございます。吉田委員からSTEM教育のお話が出ましたけれども、私、小・中・高と見まして、小学校は様々な教科をやっていますので、こういうことについては大分改善して、学校を挙げて取り組むということができてきて、それが中学校に入った途端に、何か高校のような感じの縦割り的なイメージがございます。
  それで、今現在、私、技術・家庭のワーキングに所属しておりまして、堀田委員がおっしゃった情報の部分は、領域というか、一部技術分野の中で行われておりまして、その論議の中で、今までは何かものづくり的な技術というところを中心に考えていたのが、社会に開かれたという中では、科学とか、様々な倫理性のこととか、様々なことも含めて技術というものを扱っていかなければならないのではないかという論議も出ておりまして、中学校の各教科の進め方ということも、この高等学校に大きく関わってくるのではないかという認識を持っております。
【荒瀬主査】    ありがとうございました。私、順番をしっかりと確認ができていないんですが、清水委員は今、STEMのこととは関わりません?
  小林委員、どうぞ。小林委員、宮本委員、見上委員、清水委員の順でお願いいたします。
【小林委員】    先ほど荒瀬主査がおっしゃったことに非常に賛同しておりまして、今起こっている改革というのは、ある意味、履修主義から修得主義だったりとか、ティーチングからラーニングに変わっていく過程だと思っています。その中で、資料5のところの探究、それから資料8のところのアクティブ・ラーニングの視点からの授業改善というところにも、両方に、「在り方・生き方とか、自己のキャリア形成の方向性と関連付けながら」という言葉が入ってきていて、これは非常に私はいいことだと思っています。今までは何を学ぶかが重要だったのが、どんな力を身に付けるのか、それを社会で自立していく活動をしていくためにどのように関連付けていくかということが、今、求められていると思っています。
  ただ、この資料8を見ても、自己のキャリア形成の方向性と関連付けながらと書いてあるんですが、どう関連付けていくか全然分からないんですね。今までの高校生とか話をしていますと、受験対策、大学生は就職対策になっていて、その先を余り考えられていない部分もあるんじゃないかなと思っております。ですので、これを自己省察というか、内省的に考えられる機会みたいなものを、この教育の中に組み込んでいくことができればなと思っています。
  多分、こんなことを申し上げると、いや、先生方は忙しいから大変だとおっしゃられると思うんですが、キャリアノートとかポートフォリオ的なものをつけていって、自分がそれを振り返る。山登り型で目標を持っている子だけじゃなくて、そのときそのときに気付いてキャリアを考えていく子も、多分たくさんいると思います。それをそういった形で気付く機会、あるいはそういったツールが必要なんじゃないかと思います。
  あとは、教科だけじゃなくて、教科を横串を通してポートフォリオをつけていくことで、ほかの教科の先生方が、この子はこの教科でこんな力を発揮しているんだとか、この教科ではこんな発言しているのに、こっちでは発言していないなとかというところに気付けるんじゃないかと。これをICTの力とうまく融合させながら作っていけたら、本当に個人が、2030年を目指して改革していくときに、学べるような環境ができるんじゃないかと考えております。
【荒瀬主査】    ありがとうございました。今のことで少しまた申し上げておきますと、実は高校生に対する多面的な評価をどうしていくのかは、高大接続システム改革会議のワーキングでもって議論が行われていたわけですけれども、高校生に対する評価ということのみならず、高校生自身が自分の取組を振り返って評価する、そして未来をどのように見ていくかという、そういうキャリアプランを高校生が日常的にできる。これは高校だけでできるかどうか、中学校までの間はどうするかというのは非常に重要なことだと思うんですが、そういったことについても考えていかなければならないのではないかということが議論の中で出ておりましたので、御紹介しておきたいと思います。
  それでは宮本委員、どうぞ。
【宮本委員】    ありがとうございます。今回の改訂というのは、これまでの高等学校の学びを本当に大きく変える画期的な改訂になるだろうと思います。先ほどからもいろいろな先生方からお話がありますように、これをきっかけに全ての高等学校が、これまでの指導の在り方というのをしっかりと見直して改善をしていかなければ、この改訂の目的は達成できないだろうと思います。
  そこで一番大事なのは、もう何人かの先生もおっしゃっていますけれども、この改訂の意図とか狙い、どうすればいいかということを、具体的にどう学校に伝えていくのかという、ここが大きなポイントだと思います。各学校でこのことを基に、うちの学校でどうしようかということをしっかり考えることができなければ、そこから先に行かないわけで、その伝え方が大切です。
  例えば事務局の方からの説明の中で、この見方や考え方について、総則の後で付けたらどうかということを考えているというお話がありました。私はとてもいいことだと思います。抽象的な中身だけを伝えられても分からないので、具体的にこういう見方や考え方が例としてありますよという、そういうものを、今までは恐らくそういうのはなかったと思うのですけれども、分かりやすく伝えるという、そういう工夫を是非お願いをしたいというのが一つです。
  あとは、私も校長ですけれども、まずは校長にどう伝えるかということです。まず校長がそのことをしっかり理解しないと、恐らく学校は変わりませんので、校長にどう理解させるかという仕組みと、それから教員にどう伝えるかという仕組みと、これは同じやり方でいい場合もあれば、違うやり方でなければならない場合もあるので、つまりそういう改革を後押ししていくための具体的な仕組み、これをしっかり作っていただかないと、単にいろいろな資料が出ました、説明会をやりましたというだけで終わってしまうと、結局はそこから先に今度は進まない。理解ができている学校はどんどん進むでしょうけれども、そうではない学校はあまり変わっていないなとなってしまうと困ると思うので、是非そこはお願いしたいと思います。
  もう1点は、これは高大接続改革のところと絡んでくるわけですけれども、このような改訂を通して子供たちに付けた力を、きちんと評価をしてもらえるような大学入試に是非していただきたい。入試が変わらなければ高校は変わらないのかというと、そういうわけではないのですけれども、大学入試が持つ意味というのは非常に大きいと思います。そこが大きく変わりますよということが前面に出てくれば、より高校の教育は変わっていくと思います。大学入試改革は今、検討中の話ですけれども、是非その辺もセットで、こういう新しい力をどう評価するか、その先がどうなるのかということが見えてくると、学習指導要領改訂の主旨を踏まえた各学校での指導方法の改善がかなり進んでいくのではないかと思います。
  以上です。
【荒瀬主査】    ありがとうございました。是非文科省の方でも、御奮闘をよろしくお願いいたします。
  見上委員、どうぞ。
【見上委員】    ありがとうございます。私の方は、資質・能力、あるいはアクティブ・ラーニングに関わって、発言させていただきたいと思います。
  まずアクティブ・ラーニングですが、特に最近非常によく使われているので、小・中では心配しているのは、アクティブ・ラーニングってどのようにやったらアクティブ・ラーニングになるんだろうねとか、そうすると、ある種の型、作法みたいなものができて、深めることができないんじゃないかという、すごい恐れを持っています。
  その中で高等学校の場合は、それぞれの生徒が随分年も取って、いろいろな問題、年に応じて抱えていると思いますので、まず高等学校で成功させていただきたいなと思っているんですが、こういった総合的な学習の時間と広げて考えても、ICTの方ですが、機器環境の有効性というのは私も非常に感じております。
  実際に附属の方に電子黒板とか全部入れましてやりましたら、思わぬ方向に、非常にいい方向に行っています。チョークと黒板が基本だよと言いながら、非常にいい効果が出ていますので、是非進めてほしいと思うんですが、今、堀田委員からも御意見出ましたとおり、何しろ公立の場合は、自治体によって随分、設備・環境の面で温度差がある。これを是非整備しないと、前に進まないのではないかと感じております。ただ、一方で情報過多の時代でもありますので、この辺りを配慮しながら進めなきゃいけないのかなと。
  特に申し上げたい点は、ICTは非常に有効だと思います。是非進めていただきたいんですが、その一方で、是非力を付けておかなきゃいけないのは、リアリティーの世界での力というか、考え方、体験、自分の経験、これが物すごく大事だろうと。今日頂いた資料の中の1の5ページのところに、一番上のところに、学校外における学修等に関する単位認定についてということで1行触れられているんですが、こういった体験を単位化するというのは一つの方法だろうと思います。
  ただ、従来は、一クラスで動いたり1学年で動いたりという、同じ体験をするような形が非常に多かった。でも、これからの総合的学習の時間のようなところでの活用は、先ほど土井委員から御発言ありましたように、個別では非常に大変だから、ある程度生徒さんの問題点を絞り込んだグループでの対応であれば、ある程度可能なのではないか、そのように思います。
  特に地域の問題を採り上げて、それを深める。高校の置かれた環境にもよると思うんですが、例えば持続可能な社会の形成というグローバルな世界レベルでのテーマにしても、それを地域に下ろすことも可能だろうと思いますし、グローバル人材を育成する上からも、地域あるいは体験を基にした自己の確立というんですか、そういうものが大事だろうと。
  それで、最後に一言。総合的な学習の時間ですが、古川委員おっしゃったように、私も全くそのように最初は思っておりました。ただ、考えていくうちに、全部教えるわけにいかないんだから、教えるのではなくて、相談相手になってあげる。ファシリテーターに徹していただければいいのではないかと、最近、思うようになりました。
  以上、感想も含めて、散漫な発言になりました。以上でございます。
【荒瀬主査】    ありがとうございました。
  では、清水委員、よろしくお願いします。
【清水委員】    ありがとうございます。先ほどの総合的な学習の時間等につきまして、私どもは工業科の学校でありますので、課題研究等が非常に成果のある取組となっています。ある意味、全ての科目の集大成として、主に3学年で扱う科目ということで、いい影響が出ているのが現状であります。
  ただ、気を付けなきゃならないのは、先ほど荒瀬主査の方からもありましたとおり、先生方が自分たちが何をどう教えるかということを考え過ぎてしまって、親方と弟子の関係じゃないんですけれども、どうしてもそこでも教え込みがなりがちになってくる。
  そこで、いかに子供たちの発想だとかやりたいことを持ち上げていってあげて、子供たちの自由な発想の中で、自分たちが学んできた内容を活用しながら研究製作等ができないかというのが、これは専門学科等、どこでも大きな課題として、今、考えているところであります。
  その中で、やりやすいのは、各専門学科では核となる教科があるんですね。工業であるならば、電気科ならば電気のことについてだとか、機械のことについてだとかという、大きなカテゴリー的なものがありますので、そこを核にしながら、時には普通科の先生に質問に行ったりだとか、いろいろな活動ができる。その中で、普通高校というのはなかなかそれがやりにくいのではないかというのは、はたから見ていて感じるところでもあります。
  そのため、例えば今回出てきておりますけれども、学校の教育目標であるとか、埼玉県の場合には、目指す学校像というものを定めて、その中で、どこに何を力入れていくのかということをやっておりますので、例えばそういったものをしっかりと位置付けていかないと、なかなかこの総合的な学習の時間であるとか探究的な学習の時間というのは、打ったとしても難しいことが出てくるのではないかなと思います。
  そうなってくると、必要なのはカリキュラム・マネジメントということで、そこがいかに学校像と連動していけるか、そういったものを核としながら、様々なものを用意していく必要が出てくるのであろうと考えます。
  その中で、この課題研究等もそうですけれども、非常にアクティブ・ラーニングと間違いなく言えると思うんですけれども、どうしても時間が掛かります。一つのものを何かやらせていくには、どうしても時間が掛かってくる。その時間をいかに取ってあげられるかというのが、大きな一つの課題かなと考えます。
  そうなってくると、普段の学校の説明の時間を、いかに分かりやすくコンパクトに抑えていけるか。そうすると、例えば普通教室の全ての教室にプロジェクターが付いていたりすると、これはこうやってということを板書しながら教えるのではなくて、映像を見せながら理解を図っていくというようになってくると、時間が取れるようになり、アクティブ・ラーニングに持ち込みやすくなってくる。全てが連動しているのではないかなと思いますので、私、個人的には、一人一人のパソコンというよりも、教室にそういったプロジェクターだとか提示装置だとか、そういったものをいち早く導入していただければなということも含めて、お願いをしたいなと思います。
  以上です。
【荒瀬主査】    ありがとうございます。さっき時間の話が出ましたけれども、確かに現場の先生方、忙しいのは間違いないわけですけれども、生徒が自分でやるようになれば先生も余裕ができるわけですから、いかにして生徒がやってくれるかということを目指してやっていくというのは、非常に大事かと思います。
  では続きまして、堀田委員、中井委員の順で、よろしくお願いいたします。
【堀田委員】    今、清水委員がおっしゃった先生が教えるというシーンは、なくなることはないので、それがうまく効率的にできるようなICT環境を教室に整えるというのは、非常に重要なことかと思います。一方で子供が使うという方で考えますと、例えば高校生だと、複雑な今日的な課題を扱ったりすると思うんですね。
  例えばTPPのことをどうするかみたいな議論というのは一筋縄にはいかないわけで、そうするといろいろなことを調べなきゃいけないし、いろいろな主張を知らなきゃいけないと。そういうTPPに関してのことを知るという、そういう内容知と同時に、それをネットでどうやって探すかとか、いろいろな人の意見をどうやってすり合わせていくかみたいな、何というか、方法知みたいなことを一緒に学んでいくんだと思うんです。それから学び取られていることは、内容に関する知識だけじゃなくて、どうやってそういうことを進めていけばいいのかという、学び方に関する知識もあると思うんですね。それがアクティブ・ラーニングの強みだと思うわけです。
  こういうようなことが、いろいろな教科のいろいろな場面で行われていくんだとすると、カリキュラム・マネジメントというのは結構相当複雑かなと思います。カリキュラム・マネジメントはさっきから話題に出ていますけれども、地域や学校、特に高等学校の場合は実情がいろいろ違いますので、各学校が責任を持ってカリキュラム・マネジメントを行うというのは非常に重要なことである一方で、各学校がそれをやりやすくするための仕掛けというのは、これはまた、国が教育課程の基準を出す以上は、その基準の中にうまく埋め込まれておく必要があるだろうと。
  つまり、学習指導要領の構造化が今、進んでいますけれども、構造化は何よりも重要で、その上で、どことどこがどのように関係しているのかということを明確にする。それは教科の中ではもちろんですけれども、横断的な教育課題の場合、例えば福祉とか環境とかESDとか、情報もそうですけれども、横断的な課題の場合は、小学校のこの教科のここで学んでいることが、このように学ばせておくと、方法知として、ここでこのようにいきますよと。それは中学になったら、こういうところでこういう学習でうまくつながっていきますよみたいなことのマッピングみたいなことをしっかりと例示するということも、そこまでは国がやらないとまずいかなと。そうじゃないと、現場の先生にただお任せというのは、少し無謀な印象があります。
  以上です。
【荒瀬主査】    ありがとうございました。
  では、中井委員、お願いします。
【中井委員】    今回の教育課程の改善については、私は全体として高く評価するところであるんですが、要は、学力上位校はそれほど問題はないと思うんですが、問題は学力低位校。先ほどの事務局からの説明がありましたとおり、学力低位校では、義務教育段階の学び直しというのを、それぞれの学校で実情に合わせてやっている。学習指導要領でも、そういったことに十分配慮された規定も設けられているということではあるんですが、現実、それでも、義務教育段階の学力を身に付けて全ての子が高校の履修に移れるかというと、なかなかそういう現実ではないというところがあります。されど、際限なく学び直しの授業をやっているわけにもいかない、必履修科目もたくさんあるという中で、なかなかそこら辺の現実のジレンマというものがある中で、このことを今の現状のままないがしろにして幾ら教育課程の改善をしても、取り残されている子供にとっては何ら改善にならないというところで、ここの部分、私もまだ答えは持ち得ていないわけですけれども、学び直しを十分やっていかなければいけない子供たちについて、どうやっていくのか。人手も時間も掛かるという非常に現実に難しい問題ではあるんですが、ここの部分というのを抜きにして、今回の改訂というのは終わってはいけないんだろうと思います。
  以上です。
【荒瀬主査】    ありがとうございました。今の点は、アクティブ・ラーニングはそうですし、カリキュラム・マネジメントもそうですし、高校生として付けるべき資質・能力という、全てに関わるお話かと思います。ありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。
  では、藤田委員、どうぞ。
【藤田委員】    それでは、2点ほど申し上げたいと思います。
  先ほど小林委員からポートフォリオの必要性についての御指摘があったと思うんですけれども、特にアクティブ・ラーニングを考える場合、例えば先ほどリアリティーの問題も御指摘がございましたけれども、例えばインターンシップを活性化させるという方策を取った場合などにおいても、このポートフォリオ等は必ず必要になってくるだろうと思います。
  ただ、この場合、インターンシップを例にいたしますと、どうしてもこれまでのインターンシップの例を見ますと、中堅校と称されることの多い学校を中心として行われる、あるいは専門学科での実習を中心としたインターンシップが行われるという傾向がございました。ですから今後は、例えば研究者の道であるとか、あるいは高度な資格を必要とする職業も含めた、中学校の職場体験とはまた違う、自らのキャリア形成を視野に収めた、それぞれの学校でふさわしいインターンシップの在り方ということが模索されるべきだろうということを感じました。
  例えば一例を申し上げますと、仙台市にございます仙台向山、県立高校でございますけれども、では、各県内の大学との連携を取りながら、協定を結びながら、アカデミック・インターンシップを推進しているとお伺いしております。そういった事例を参考にしながら、その学校でふさわしいインターンシップの在り方を模索できるような、先ほど来から御指摘ありますような支援の枠組み、仕組み作り、そういったものが盛り込まれるといいと感じたのが1点でございます。
  もう1点は、今回ここで発言させていただくことが適切かどうかは分からないんですが、資料の2の2枚目を拝見しておりまして、第6款のところ、学習活動の充実のための基盤というところで、キャリア教育の推進、進路指導等の充実ということが示されております。キャリア教育につきましては、今日の冒頭から御説明ございましたし、私も発言させていただきました。ほかの委員の皆様方も御指摘のとおり、賛同するところでございますけれども、この2ページ目のキャリア教育と進路指導の用語が、今、並列的に使用されているんですが、これを将来的にどう整理していくのかという課題が残ってくるのではないかなと思います。
  と申しますのは、現在では法令用語としては、進路指導という言葉しかございません。現在のキャリア教育というのは、教育振興基本計画あるいは中教審答申等において使用され、高等学校の学習指導要領にも示されておりますけれども、法的根拠がいまだにないようでございます。ただし、現在ではキャリア教育ということが大きく注目されていることは、これまでの議論をとっても御理解いただけることかと思うんですが、であるならば、従来の用語である進路指導との関係をどう捉えていくのか、どう整理していくのか、ひいては、長い間の懸案事項であった生徒指導と進路指導も相互に深い関係がある、密接な関係があると説明されておりますが、その関係についても、もし今回整理できるのであれば明確な整理をして、学校現場の混乱や不安がない状況を作りながら前に進んでいくことが必要かなと。これは2点目については感想でございますが、そのようなことを感じました。
  以上でございます。
【荒瀬主査】    ありがとうございます。教科で分かれるということとともに、今、藤田委員がおっしゃいましたように、例えば高等学校より中学校の方がその点は激しいといいますか、甚だしいかもしれませんが、生徒指導というのと進路指導というのは全く別のものとして認識されているという、そういう面がなくはないように思いますので、大変重要な御指摘を頂いたと思います。
  では、佐野委員。時間の関係で、佐野委員で最後とさせていただき……。あ、済みません、岡本委員、失礼しました。
【佐野委員】    今、中井委員から御指摘があった学び直しの件は、非常に重要なポイントだと高校生の保護者としても思います。私は必要なのは、学び直しが必要になった原因は何かということを、きちんと一度調べてみる必要があると思うんですね。小学校・中学校における教え方が悪かったのか、あるいは何かほかの要因があるのかというところを、きちんと踏まえておく必要があるんだろうと思います。
  たまたま、いつだったか、2週間ほど前だったと思いますが、これは内閣府の方で取り組んでいる、子供の未来応援国民運動というんでしょうか、経済的困窮家庭の子供たちの未来を応援しようという、その大会に協力団体ということで参加をしたわけですけれども、そこで例として出てきたのが、例えば教員養成系の大学だとか、そういう学部で学んでいる学生たちが、経済的に困難な家庭の子供たちを教えるといいますか、補習というか、無料の塾的なものを取り組むという事例もありましたので、そういう意味では、学校の先生たちが忙しいのであれば、それこそ社会に開かれた学校ということで、様々なそういうリソースといいますか、そういうことをやりたいですという方たちの力を活用していくというのも一つあるんだろうと思ってお聞きしていたところです。
  ただ、それにつけても、なぜ学び直しが必要な状態に陥ったのかという原因が、どれぐらいの割合で、どういう形でいらっしゃるのかというところがきちんと分からないと、そういう手も打ちづらいとは思いますけれども、こういう事例もありましたので、御紹介申し上げたいと思います。
【荒瀬主査】    ありがとうございました。
  では、失礼しました、岡本委員、どうぞ。
【岡本委員】    岡本でございます。実は今、佐野委員がおっしゃったことと関連することを申し上げようと思ったんですけれども、現実問題として、基礎的な学力のところというのは、非常にばらつきがあるというよりも、はっきり言って二極分化しているのが現状だと思います。そのときに原因は何かというのは、なかなかこれは難しいので、ここで議論してもしようがないとは思うんです。
【佐野委員】    というか、理由ですね。
【岡本委員】    理由ですよね。だけど、いずれにせよ目的は、何とかそこを埋めて、全体を上に持っていかなきゃいけないということですよね。いろいろな調査によれば、とにかく中学校の教科書が読めないという、そういう子供たちが少なからずいるというのは、これは事実なわけですから、そうすると、これは教科書も変えなきゃいけないのかもしれないだろうと思います。
  それからもう1点は、これは言おうか言うまいか悩んでいたんですけれども、ポートフォリオ的な評価というのは、恐らく私、探究の方の主査とやっていますが、そういうものをどのように評価していくかというときに、絶対これは必要になってくるだろうと思います。そうすると、ラーニング・ポートフォリオを子供たちが記録していくというようなことは、高等学校では余り広がってはいないだろうけれども、前に申し上げたとおり、高専なんかではかなり行われていることなので、職業高校なんかも行われていることですけれども、そういうことで、恐らくそういうことができていけば、大学入試なんかもどんどん変わっていく契機にはなるんじゃないかなと思うんですが、ただ、何分にも、ノウハウが子供たちにも先生にもないわけで、そうすると、そのときにどうするかというのは、かなり重要な視点になってくるんじゃないかなとは思います。
  それでもう一つだけ、そういう現状ですので、高等学校になりますと、中学校は義務教育だからいろいろな子供たちがいるというのはそうですけれども、高等学校になると、ある程度、入試とかいって、かなりのばらつきが出てきているので、そうすると、特に校長先生の指導力というか、学校ごとの自由度というのをどこまで許容するのかと。つまり子供が全然違うときに、一律な目標を掲げてというわけにいかない、学校ごとの目標を掲げなきゃいけないんだけれども、そうかといって、てんでんばらばらになっちゃうわけにはいかないというので、そこのバランスの取り方がかなり問題になってくるんじゃないかなと、我々が考えなきゃいけない課題じゃないかなと思っております。
  以上です。
【荒瀬主査】    ありがとうございました。十分に時間をお取りできませんでして、まだ御意見のある方もいらっしゃるかと思いますが、もしよろしければ、御意見とかお気付きの点を、ファックスとかメールで事務局の方にお届けいただけましたらと思います。
  では、髙木主査代理から御意見を。
【髙木主査代理】    ありがとうございました。本日の先生方の御議論を伺っていまして、本当に現代的な課題とか現実的な課題が出てきたなと思っています。
  今回の改訂は、ある意味で、社会構造の変化の中で出てきた学力観の転換が大きく関わっているなと。だけど今回急に変わるわけじゃなくて、例えば今日の資料3の最後のページの「コア」の内容は、1996年に出された「生きる力」をきちんと踏まえられていますので、今回の改訂では、これまできちんと踏まえたことを基にしながら、育成すべき資質・能力というテーマの下に、次の時代に有用な学力観を示してきていると思っています。
  そこで、学習指導要領で求める学力が、これまでの学力観、それから教育観の枠組みを超えた学力というか、資質・能力であるということを、実はどこかで国民全体の理解が求められてくるのではないかなと。今日、傍聴の方もいらっしゃっていますが、熱心な方々で、こういうことを皆さんが是非理解していただきたいと、今、感じています。今日の議論のようなことを。
  特に教育というのは、ともすると自分の受けた教育や自分の知っている教育を基に教育を語ることが多いので、私はこれを教育の原体験論主義と言っているんですけれども、その枠を越えない教育論を幾らやっても、時代の求める学力にはなっていかないと思っています。
  だからこそ一つは、とてもお願いしたい、期待しているのは、メディアの関係の方々に、今回の大きく変わる学習指導要領改訂に対して是非御理解を頂いて、そういった内容を、正確にという言い方は非常に難しいんだけれども、これまでの学力観の考え方とは違ってきているんだということを御理解した上で、報道していただきたいと思っています。
  こういった会議の場のみで語るのではなくて、国民的な議論を併せて行っていく必要もありますし、さらに、こういった会議で行われている内容を含めて、是非皆さんと一緒に考えていくことをやらないと、昔よくありましたが、事件は会議室で起きていないと。教育は会議室で起きていないので、それは子供の学力、資質・能力、未来につながることを、今日のお話、とても私もいろいろ腑に落ちていたので、これを広く全体的な議論にしていただくような方向を、是非取れるといいなと思っています。
  以上です。
【荒瀬主査】    ありがとうございました。今、髙木先生もおっしゃいましたけれども、現場という言い方を嫌う方もいらっしゃるとは伺ったことがありますが、教育の現場でどんなことをしていくかというときには、先ほど岡本委員がおっしゃった校長の自由裁量というのを、何でもかんでも好きにやっていいということではもちろんないとしましても、考えなければならないと思います。
  とりわけアクティブ・ラーニングというと、何かグループで机の向きを変えなければアクティブ・ラーニングになっていないみたいな誤解が、これだけ短時間の間にあっという間に広がるぐらいの影響力を持っているわけですから、むしろ本当に現場で実際に生徒の力をどのように伸ばしていくのかということを考えるような改訂にならなければならないと思いました。
  済みません、時間がまいりました。本日予定されていた議題につきましては、ここまでといたします。先ほど申し上げましたけれども、御意見は是非またお寄せいただければと思います。
  では、次回以降の日程などにつきまして、事務局より御説明をお願いします。
【西川教育課程企画室専門官】    本日はありがとうございました。次回は6月1日水曜日の10時から12時の開催を予定しております。詳細については追って御連絡をさせていただきます。
  また、主査からもありましたように、御意見についても引き続き御連絡いただければと思っています。
  本日の資料につきましては、御郵送を御希望される場合は、机上に残しておいていただければ、後日お送りをさせていただきます。
  どうもありがとうございました。
【荒瀬主査】    それでは、本日の高等学校部会、終了させていただきます。ありがとうございました。

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