小学校部会におけるこれまでの議論のとりまとめ(案)

(小学校部会における議論の現状等)

○ 小学校教育を含む各学校段階の教育課程については、平成26年11月に中央教育審議会に対して行われた諮問において、育成すべき資質・能力の在り方を明確にすること、それを踏まえた各教科等の役割や相互の関係等について整理することなどが求められたところである。

○ これを受けて、中央教育審議会に設置された教育課程企画特別部会においては、教科等の枠を越えた視点から、教育課程の総体的な構造の在り方など、改訂の基本的な考え方について議論が重ねられ、昨年8月に「論点整理」が取りまとめられた。

○ この「論点整理」においては、小学校教育について、「幼児教育までの学びを生かしながら、小学校段階において育むべき資質・能力を、三つの柱に沿って、教育課程全体及び教科等ごとに明確化し、中学校以後の学びに円滑に接続させていくことが求められる」「現行学習指導要領の各教科等の授業時数や指導内容を前提としつつ、特にこれからの時代に求められる資質・能力を踏まえ、関連する各教科等の改善を図るとともに、教科等における具体的な指導内容によって育まれる資質・能力の関係性を可視化していくことが必要である」などとされたところである。

○ 小学校部会においては、この「論点整理」を受けて、各教科等WGや総則・評価特別部会等の議論の状況を踏まえながら、小学校教育を通じて育成すべき資質・能力の明確化等に向けた議論を重ねているところである。

(この「とりまとめ」の位置付け)

○ 平成26年11月の諮問においては、グローバル化する社会の中で、言語や文化が異なる人々と主体的に協働していくために必要な力をどのように育むかを検討すること、中でも外国語教育については、「英語教育の在り方に関する有識者会議」報告書(平成26年9月)の提言も踏まえつつ、小学校から高等学校までを通じて達成を目指すべき教育目標を示すことや、小学校高学年から系統的な教科として実施すること、中学年から外国語活動として実施することなどについて、考え方を整理するよう求められたところである。

○ 「論点整理」の中では、「国語や外国語を使って理解したり表現したりするための言語に関する能力を高めていくためには、国語教育と外国語教育のそれぞれを充実させ」ていくことが必要であること、国語教育については、古典も含む我が国の言語文化に親しみつつ、言語活動を通じてこれからの時代に求められる資質・能力を育むこと、外国語教育については、高学年において教科として系統的な指導を行うこと、中学年において外国語活動を行うことが求められるとされ、その実施方法については、「ICT等も活用しながら10~15分程度の短い時間を単位として繰り返し教科指導を行う効果的な短時間学習(以下「短時間学習」という。)として実施する可能性も含めた専門的な検討が必要」とされたところである。

○ そして、外国語教育については、短時間学習に関する専門的な検討を行った上で、小学校の教育課程全体を見通した観点から検討を行い、全体の取りまとめに先立ち、一定の結論を得ることとされたところである。

○ こうした整理を受けて、小学校部会においては、小学校教育全体に関する議論に先立ち、小学校教育の充実に関する大きな方向性を整理するとともに、言語能力の向上に関する特別チーム、国語WG及び外国語WGを中心とした検討状況を踏まえつつ、小学校教育における言語能力育成の重要性、国語教育及び外国語教育の改善・充実の方向性、各学校における時間割の編成を含めたカリキュラム・マネジメントの在り方を中心に下記の通り取りまとめを行うこととした。

○ この取りまとめを基に、各教科等WGにおける議論が更に深められることを期待している。また、小学校教育全体に関しては、全体の取りまとめに向けた論点が残されており、今後引き続き議論を重ねていきたい。

1.「社会に開かれた教育課程」の実現に向けた小学校の教育課程の改善・充実

(1)「社会に開かれた教育課程」の実現に向けた小学校教育の在り方

○ 小学校においては、「各個人の有する能力を伸ばしつつ社会において自立的に生きる基礎」を培うこと及び「国家社会の形成者として必要とされる基本的な資質」を養うことを目的とする義務教育のうち、基礎的なものを施すことが目的となる。

○ 今回の学習指導要領改訂を通じた小学校の教育課程の改善・充実は、現行学習指導要領の成果や課題を踏まえつつ、上記の小学校教育の目的や目標の更なる達成を目指して行われるものである。そして同時に、「論点整理」において、学校種や教科等を越えた共通の理念として示された「社会に開かれた教育課程」を実現する観点から行われるものである。

○ 「社会に開かれた教育課程」の在り方を、小学校教育に照らして考えれば、以下のような点が重要になると考えられる。
1  義務教育のうち基礎的なものを担う小学校教育を、社会や世界の状況を幅広く視野に入れながら改善・充実させていくことが、子供たちのよりよい人生とともに、よりよい社会づくりにつながるということを、教育課程を介して社会と共有していくこと。
2  これからの社会を創り出していく子供たちに必要な資質・能力を見直しながら、小学校教育を通じて育む資質・能力を教育課程において明確にし、幼児教育の基礎の上に、子供たちの資質・能力を伸ばし、中学校以上の学びにつなげていくこと。
3  教育課程が目指すところを社会と共有し、実施に当たっては、地域の人的・物的資源を活用したり、社会教育との連携を図ったりするなど、地域や社会と連携・協働していくこと。

○ こうした教育課程の実現に向け、小学校教育における現状の課題について考えると、小学校の6年間という期間は子供たちにとって大きな幅のある期間であり、低学年、中学年、高学年の発達の段階に応じて、それぞれ異なる課題が見受けられるとの指摘があるところである。

○ 低学年においては、その2年間の中で表れた学力差が、その後の学力差の拡大に大きく影響しているとの課題が指摘されている。学習の質に大きく関わる語彙量を増やすことなど基礎的な知識・技能の定着や、感性を豊かに働かせ、身近な出来事から気付きを得て考えることなど、中学年以降の学習の素地(そじ)を形成していくとともに、一人一人のつまずきを早期に見いだし、指導上の配慮を行っていくことが重要となる。

○ また、低学年は、学びがゼロからスタートするわけではなく、幼児教育で身に付けたことを生かしながら教科等の学びにつなぎ、子供たちの資質・能力を伸ばしていく時期である。現在、幼児教育部会においては、幼児期の終わりまでに育ってほしい姿の明確化について議論されているところである。小学校教育においては、生活科を中心としたスタート・カリキュラムを学習指導要領に明確に位置付け、その中で、合科的・関連的な指導や短時間での学習などを含む授業時間や指導の工夫、環境構成等の工夫(※1)も行いながら、幼児期に総合的に育まれた「見方や考え方」や資質・能力を、各教科等の特性に応じた学びにつなげていくことが求められる。

○ 中学年は、生活科の学習が終わり、理科や社会科の学習が始まるなど、具体的な活動や体験を通じて低学年で身に付けたことを、より各教科の特性に応じた学びにつなげていく時期である。例えば国語科における言葉の働きについても、低学年における「事物の内容を表す働き」等に加えて、「考えたことや思ったことを表す働き」があることに気付くなど、指導事項も次第に抽象的な内容に近づいていく段階であり、そうした内容を扱う学習に円滑に移行できるような指導上の配慮が課題となる。

○ 高学年においては、子供たちの抽象的な思考力が高まる時期であり、教科等の学習内容の理解をより深め、育成すべき資質・能力の育成に確実につなげるためには、指導の専門性の強化が課題となっている。定期的に文部科学省が実施している「教育課程の編成・実施状況調査」の結果を見ても、理科や音楽などを中心に、特に高学年において、専科指導を行う学校の割合は年々増加しているところである。こうした専科指導の充実は、子供たちの個性に応じた得意分野を伸ばしていくためにも重要である。

○ また、様々な生徒指導上の課題が早期化し、中学校からではなく、小学校高学年からの対応が必要となっているとの指摘もあるところである。こうした課題に対応するためには、学級担任だけではなく、複数の教員が関わり育てていくことが重要になっており、専科指導による教科担任の充実は、結果的にこうした多面的な子供たちとの関わりを創り出すことにもつながっている。学級担任制のよさと、教科担任のよさを兼ね備えた指導体制の確立が課題となっているところである。

(2)育成すべき資質・能力と「カリキュラム・マネジメント」の意義

○ 小学校教育として育成すべき資質・能力の明確化に当たっては、上記のような低・中・高学年それぞれの課題を踏まえつつ、幼児教育や中学校教育との接続を考えながら、高等学校卒業までに育成すべき資質・能力や、義務教育を通じて育成すべき資質・能力の在り方などを見通して整理していく必要がある。その具体像については、今後、各教科等別WGの検討状況を踏まえながら取りまとめていく予定である。

○ 教育課程を通じて、小学校教育として育成すべき資質・能力を育んでいくためには、各教科等を学ぶ意義を大切にしつつ相互の関連を図りながら、教科等単独では生み出し得ない教育効果を高めていくことが必要となる。そのための鍵となるのが、「カリキュラム・マネジメント」である。

○ この「カリキュラム・マネジメント」については、「論点整理」において、以下の三つの側面から捉えることとされている。
【1】各教科等の教育内容を相互の関係で捉え、学校の教育目標を踏まえた教科横断的な視点で、その目標の達成に必要な教育の内容を組織的に配列していくこと。
【2】教育内容の質の向上に向けて、子供たちの姿や地域の現状等に関する調査や各種データ等に基づき、教育課程を編成し、実施し、評価して改善を図る一連のPDCAサイクルを確立すること。
【3】教育内容と、教育活動に必要な人的・物的資源等を、地域等の外部の資源も含めて活用しながら効果的に組み合わせること。

○ 各学校が行う時間割の編成なども、学校における子供の生活時間を、教育課程の指導内容や授業時数との関係でどのようにデザインするかという観点から行われる「カリキュラム・マネジメント」の一部であると言える。現行学習指導要領では、児童の発達の段階及び各教科等や学習活動の特質を考慮して、授業の1単位時間を何分にするかについて決定したり、創意工夫を生かして時間割を弾力的に編成したりすることができることとされているところである。

○ 各学校では、学習指導要領に基づき育成すべき資質・能力を設定し、「カリキュラム・マネジメント」に基づいて、時間割の編成を含めて指導内容を体系化したり、地域や社会との連携・協働の中で、どのように人的・物的資源を活用していくかを計画したりしていくことが求められる。

2.言語能力の育成と国語教育、外国語教育の改善・充実

(1)言語の役割及び言語能力について

○ 育成すべき資質・能力の中でも、言語に関する資質・能力は、子供たちの学習や生涯にわたる生活の中で極めて重要な役割を果たすものである。

○ 子供は、乳幼児期から身近な人との関わりや生活の中で言葉を獲得していき、発達段階に応じた適切な環境の中で、言語を通じて新たな情報を得たり、思考・判断・表現したり、他者と関わったりする力を獲得していく。教科書や教員の説明等から新たな知識を得たり、事象を観察して必要な情報を取り出しながら自分の思考をまとめたり、友達の思いを受け止めながら自分の思いを伝えたり、クラスで目的を共有して協働したりすることができるのも、言語の役割に負うところが大きい。

○ このように、言語は、学校という場において子供が行う学習活動を支える、重要な役割を果たすものであり、全ての教科等における資質・能力の育成や学習の基盤となるものである。したがって、言語に関する能力の向上は、学校における学びの質や、教育課程全体における資質・能力の育成の在り方に関わる重要な課題として受け止められる必要があり、義務教育の初期段階を担う小学校教育において、重要な課題として取り組んでいく必要がある。

○ 学校教育においては、地域や家庭とも連携しながら、下記の三つの側面(※2)に関わる言語(※3)に関する資質・能力(以下「言語能力」という。)を養っていくことが求められる。
【1】創造的思考(とそれを支える論理的思考)の側面
【2】感性・情緒の側面
【3】他者とのコミュニケーションの側面
○ 学校における言語能力の育成については、母語と外国語の役割なども踏まえながら、国語教育や外国語教育、その他各教科等の学習の在り方を考えていく必要がある。なお、言語能力の更なる具体的な内容については、「言語能力の向上に関する特別チーム」において引き続き議論が深められる予定である。

(2)資質・能力の育成と言語能力との関係

○ 言語能力は、国語科や外国語科のみならず、全ての教科等における学習の基盤となるものである。例えば、「論点整理」が提示した資質・能力の三つの柱に照らせば、以下のように考えることができる。
1)個別の知識・技能
学習内容は多くが言語によって表現されており、新たな知識の獲得は基本的に言語を通じてなされている。また、言語を使って、知識と知識の間のつながりを捉えて構造化することが、生涯にわたって活用できる概念の理解につながる。
具体的な体験が必要となる技能についても、その習熟・熟達のために必要な要点等は、言語を通じて伝えられ理解されることも多い。
2)思考力・判断力・表現力等
教科等の特性に応じて育まれる見方や考え方を働かせながら、思考・判断・表現するプロセスにおいては、情報を読み取って吟味したり、既存の知識と関連付けながら自分の考えを構築したり、目的に応じて表現したりすることになるが、いずれにおいても言語の役割が極めて重要である。
3)学びに向かう力、人間性等(情意、態度等に関わるもの)
子供自身が、自分の心理を意識し統制していく力や、自らの思考のプロセスを客観的に捉える力(いわゆる「メタ認知」)の獲得は、心理や思考のプロセスの言語かを通じて行われる。また、言語を通じて他者とコミュニケーションをとり、互いの存在について理解を深めていくことにより、思いやりや協調性などを育むことができる。

○ また、言語能力は、資質・能力の育成の基盤となる重要な役割を果たすものであることから、様々な資質・能力と密接に関連している。以下、特にコミュニケーション能力や非言語能力等との関係性について触れておく。

○ コミュニケーション能力については様々な考え方があるが、文部科学省の有識者会議(※4)においては「いろいろな価値観や背景をもつ人々による集団において、相互関係を深め、共感しながら、人間関係やチームワークを形成し、正解のない課題や経験したことのない問題について、対話をして情報を共有し、自ら深く考え、相互に考えを伝え、深め合いつつ、合意形成・課題解決する能力」と定義しており、教育課程企画特別部会における議論においても当該定義が援用されていたところである。

○ この定義を言語の働きに照らして整理すれば、コミュニケーション能力については、言語の働きのうち、【3】他者とのコミュニケーションの側面を軸としつつ、他の側面(【1】創造的思考(とそれを支える論理的思考)の側面、【2】感性・情緒の側面)にもしっかりと支えられた能力として育成される必要があることが分かる。教育課程全体の議論においてコミュニケーション能力を議論する際には、上記のような視点から育成すべき資質・能力が明確となるよう整理することが求められる。

○ また、人間のコミュニケーションや創造的思考などの諸活動は、言語によってのみ支えられているものではなく、言語以外にも、形や色などのイメージや、身体の動き、音の強弱やリズムなどの多様な手段が関係しているものである。こうした非言語的な手段に関する資質・能力を、言語能力と相互に関連させながら高めていくことは、感性や情緒等を豊かなものにしていくことにもつながる。このため、学校教育を通じて、芸術教育や体育等の充実を図ることも不可欠である。

○ また、言語能力の育成のためには、各教科等を通じて、言語を用いて行う言語活動を充実させるとともに、体験活動を通じて、実社会の中で様々な事象に触れたり、多様な他者との交流の機会を持ったりすることも重要であり、アクティブ・ラーニングの視点からの学びの中でそれらの充実を図っていく必要がある。

(3)小・中・高を通じた国語教育の充実

○ グローバル化する中で世界と向き合うことが求められている我が国においては、日本人としての美徳やよさを備えつつ、グローバルな視野で活躍するために必要な資質・能力の育成が求められており、多様な情報や考えを理解して、文章や発話により表現したり、個人や集団の考えを形成して深化させたりしていくために必要となる、言語能力や情報活用能力の向上が重要な課題となっている。

○ 国語教育を通じて、言語や文化に対する理解を深め、国語で理解したり表現したり、考えを形成していく力を身に付けることは、言語能力の向上や、あらゆる学習の基盤の形成に不可欠なものである。また、言語能力を向上させるとともに、古典の学習を通じて、日本人として大切にしてきた言語文化を積極的に享受していくことにより、我が国の文化を理解して語り継承したり、異文化を理解し多様な人々と協働したりできるようになることが重要である。

○ 現行学習指導要領の国語科においては、実生活で生きて働き、各教科等の学習の基本ともなる国語の能力を身に付けること、我が国の言語文化を享受し継承・発展させる態度を育てること等に重点を置いて、その充実が図られた。

○ しかしながら、伝えたい内容を明確にして表現したり、文章の内容や形式等を正確に理解したりすること、必要な情報を収集し的確に整理・解釈したり、自分の考えをまとめたりすること、古典を学習する楽しさや学習する意義の実感等については、学習上の課題が指摘されているところである。

○ これからの時代を生きる子供たちには、言葉が持つ力を信頼し、言葉によって困難を克服し、社会や文化を創造していくことや、言葉を通じて自分の見方や考え方を深めるとともに、考えを伝え合うことで集団の考えを発展していくことが求められる。

○ また、様々な体験を通じて感じたことを言葉にして交流させることを通じて、心を豊かにしたり、自分の感情をコントロールしたりすること、言葉を通じて積極的に人や社会と関わり、自己を表現し、他者と共感して、自他の理解を深め尊重すること、我が国の言語文化に関心を持ち、生活や社会の中で活用しながら継承・発展させていくことも求められる。

○ 国語科を学ぶ本質的な意義は、そうしたことに向けて必要な資質・能力を身に付けていくことにある。次期学習指導要領に向けては、言語能力の三つの側面(創造的思考(とそれを支える論理的思考)の側面、感性・情緒の側面、他者とのコミュニケーションの側面)を踏まえつつ、幼児期に育まれた言葉による伝え合い等の基礎の上に、小・中・高等学校教育を通じて育成すべき資質・能力を、三つの柱に沿って明確化し、それに基づき目標を構造化することが必要である。

○ 指導内容については、言語を用いたテキスト(情報)の理解の過程や、文章や発話による表現の過程の中で、どのような資質・能力の要素が働いているかを整理し、それらの要素を踏まえて、「話すこと・聞くこと」「書くこと」「読むこと」それぞれの領域における指導事項を再整理することが必要である。こうした見直しは、国語科の特性に応じた情報活用能力の育成という観点からも極めて重要である。

○ また、言葉の働き、役割に関する理解や、言葉の特徴やきまりに関する理解と使い分け、言葉の使い方に関する理解と使い分け、書写に関する知識・技能、伝統的な言語文化に関する理解、文章の種類に関する理解、情報活用に関する知識・技能についても、小・中・高等学校を見通して、指導内容を体系的に整理していくことが求められる。

○ なお、高等学校については、教材の読み取りが指導の中心になりがちで、国語による主体的な表現等が重視されていないこと、話合いや論述など、「読むこと」にとどまらず、それを基に「話すこと・聞くこと」「書くこと」に展開する学習が十分に行われていないこと、古典の学習について、日本人として大切にしてきた言語文化を積極的に享受し、社会や自分との関わりの中でそれらを生かしていくという観点が弱く、興味が高まらないことなどが指摘されているところである。

○ こうした、高等学校の国語教育について長年にわたり指摘されている課題の解決を図るため、科目構成の見直しを検討することが求められている。具体的には、必履修科目については、【1】実社会・実生活に生きて働く国語の能力を育成する「現代の国語(仮称)」、【2】上代(万葉集の歌が詠まれた時代)から近現代につながる我が国の言語文化への理解・関心を深める「言語文化(仮称)」、選択科目については、【1】多様な文章等を、多角的な視点から理解し、創造的に思考して自分の考えを形成し、論理的に表現する能力を育成する「論理国語(仮称)」、【2】小説、随筆、詩歌、脚本等に描かれた人物の心情や情景等を読み味わい、表現の仕方等を評価するとともに、それらの創作に関わる能力を育成する「文学国語(仮称)」、【3】表現の特徴や効果を理解した上で、自分の思いや考えをまとめ、適切かつ効果的に表現して他者と伝え合う能力を育成する「国語表現(仮称)」、【4】古文・漢文を主体的に読み深めることを通して、我が国の伝統的な言語文化への理解・関心を深める「古典探究(仮称)」といった科目構成が現在検討されているところである。

○ 小学校の国語科については、こうした高等学校における改善・充実も見通しながら、資質・能力の在り方や目標・指導内容の構造化を図っていくことが求められる。

○ また、自ら進んで読書をし、本の世界を想像したり味わったりするとともに、読書を通して、知らないことを知ったり、経験のないことを経験したり、新しい考えに触れたりするなどして人生を豊かにしようとすることも重要である。特に、小学校低学年において、語彙量を増やしていくことがその後の学習に大きな影響を与えると指摘されていることも踏まえながら、読書活動の充実を図っていく必要がある。

(4)小・中・高を通じた外国語教育の充実

【1】小・中・高等学校を通じて一貫して育成すべき外国語教育における資質・能力
○ グローバル化が急速に進展する中で、子供たちの将来の職業的・社会的な環境を考えると、外国語、特に英語によるコミュニケーション能力は、これまでのように一部の業種や職種だけでなく、生涯にわたる様々な場面で必要とされることが想定され、グローバル人材育成において今まで以上にその能力の向上が課題となっている。

○ このような背景の中で、外国語活動及び外国語科においては、小・中・高等学校を通じて、発達段階に応じて、言語や文化に対する理解を深め、積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度や、情報や考えなどを理解したり伝えたりする力の育成を図るとともに、「聞くこと」「話すこと」「読むこと」「書くこと」の四技能(以下「四技能」という。)などを総合的に育成することをねらいとして、現行の学習指導要領に改訂され、様々な取組を通じて充実が図られてきた。

○ 一方で、各学校段階での指導改善による成果が認められるものの、児童生徒の学習意欲に関する課題があるとともに、学校種間の接続が十分とは言えず、進学後に、それまでの学習内容を発展的に生かすことができていない状況が見られる。また、中・高等学校において、特に「話すこと」及び「書くこと」などの言語活動が十分に行われていないことや、伝える相手、目的・状況に応じて表現することなどに課題があると考えられる。

○ このため、次期学習指導要領においては、小・中・高等学校を通じて育成すべき資質・能力を、前述の三つの側面を踏まえつつ、【1】各学校段階の学びを接続させること、【2】「英語を使って何ができるようになるか」という観点から一貫した教育目標(四技能に係る具体的な指標の形式の目標を含む)を学習指導要領に設定する。それに基づき、外国語を「どのように使うか」、例えば、国際共通語としての英語を通して「どのように社会・世界と関わり、よりよい人生を送るか」という観点から、卒業後、どのような職業等に就くとしても生かすことができるような資質・能力を、児童生徒が将来の進路や職業などと結び付け主体的に学習に取り組む態度等を含めて育まれるようにする必要がある。このため、学習・指導方法、評価方法の改善・充実を一体的に図っていく必要がある。

○ また、これまでの外国語教育の成果と課題を踏まえ、各学校が適切に学習到達目標を設定し、育成すべき資質・能力についての達成状況を明確化できるようにする。そのため、国際的な基準(※5)などを参考に、外国語教育の目標に沿って、高等学校卒業時において共通に求められる資質・能力を発達段階に応じた形で明確にした上で、小学校中学年段階から「聞くこと」「読むこと」「話すこと(やりとり、発表)」「書くこと」の領域ごとに示すとともに、複数の技能を組み合わせて効果的に活用する「技能統合型」の言語活動をより重視した指標の形式の目標を段階的に設定する。これらを踏まえ、外国語教育において育成すべき資質・能力を育む学びのプロセス(学習過程)の改善・充実を図ることとする(※6)。

○ その際、高等学校卒業時の生徒の英語力として、国の教育振興基本計画に掲げられている目標(中学校卒業段階で英検3級(CEFRA1レベル程度)程度以上、高等学校卒業段階で英検準2級程度~2級(CEFRA2~B1レベル程度)程度以上を達成した中高生の割合を50%)(※7)の実現に向けた目標・内容等の検討が必要である。

○ あわせて、言語能力向上の観点から、外国語教育においては、他者とのコミュニケーション(対話や議論等)の基盤を形成する側面を、資質・能力全体を貫く軸として重視しつつ、他の側面(創造的思考、感性・情緒等)からも育成すべき資質・能力が明確となるよう整理することを通じて、外国語教育を更に改善・充実することが必要である。

○ このため、外国語教育においては、小・中・高等学校を通じて、外国語で他者とコミュニケーションを図る基盤を形成するため、四技能のバランスの取れた育成を踏まえつつ、言語や文化に対する理解を深め、他者を尊重し、聞き手・読み手・話し手・書き手に配慮しながら、外国語でコミュニケーションを図ろうとする態度の育成を図る。あわせて、身近な話題から幅広い話題について理解したり、情報や考えなどを伝え合ったりすることができるコミュニケーション能力を養うため、目標、指導内容、学習・指導方法、学習過程、学習評価等の在り方について一体的に検討する。

【2】小学校の外国語教育における改善・充実
○ 小学校段階においては、高学年の「外国語活動」の充実により、児童の高い学習意欲、中学生の変容などの成果が認められる一方で、【1】音声中心で学んだことが、中学校の段階で音声から文字への学習に円滑に接続されていない、【2】国語と英語の音声の違いや英語の発音と綴(つづ)りの関係、文構造の学習において課題がある、【3】高学年は、児童の抽象的な思考力が高まる段階であり体系的な学習が求められることなどが課題(※8)として指摘されている。

○ これらの成果と課題を踏まえて、中学年から「聞く」「話す」を中心とした外国語活動を通じて外国語に慣れ親しみ外国語学習への動機付けを高めた上で、高学年から発達段階に応じて段階的に文字を「読むこと」及び「書くこと」を加えた、四技能を総合的・系統的に扱う教科学習を行うことが求められる。その際、これまでの課題に対応した教科化に向けて、新たに【1】アルファベットの文字や単語などの認識、【2】国語と英語の音声の違いやそれぞれの特徴への気付き、【3】語順の違いなど文構造への気付きなど、言語能力向上の観点から「言葉の仕組みの理解」などを促す指導を行うために必要な時間を確保することが必要である(※9)。

○ 小学校高学年においては、
・教科としての外国語教育のうち基礎的なものとして、中学年からの高学年及び中学校への学びの連続性を持たせながら、これまでの体験的な「聞くこと」「話すこと」に加え、「読むこと」「書くこと」の四技能を扱う言語活動を通じて、より系統性を持たせた指導(教科型)を行う。その際、外国語の基本的な表現に関わって聞くことや話すことなどのコミュニケーション能力の基礎を養う体系的な指導を行う教科として位置付ける。
・教科として位置付ける際、単に中学校で学ぶ内容を小学校高学年に前倒しするのではなく、身近なことに関する基本的な表現による四技能の豊かな言語活動を行うため、発達段階に応じた「読むこと」、「書くこと」に慣れ親しみ、積極的に英語を読もうとしたり書こうとしたりする態度の育成を含めた初歩的な運用能力を養うことが考えられる。
(例)馴染(なじ)みのある定型表現を使って、自分の好きなものや家族、一日の生活などについて、友達に質問したり、質問に答えたりすることができる。

○ あわせて、小学校で学んだ語彙、表現などは中学校において、小学校とは異なる場面で使ったり別の意味で活用したりするなど、言語活動において繰り返し活用し定着を図る。さらに、中学校で学習した語彙・表現・文法事項等は高等学校においても意味のある文脈の中で コミュニケーションを通して繰り返し触れることが重要である。その際、ICT等を活用した効果的な言語活動を行うよう工夫が求められるとともに、児童生徒が自らの学習活動を振り返って次につながる主体的な学びができるようにすることが必要である。

○ このような方向性を目指し、小学校高学年において「聞くこと」「話すこと」の活動に加え、「読むこと」「書くこと」を含めた四技能を扱う言語活動を展開し定着を図り、教科として系統的な指導を行うためには、年間70単位時間程度の時数が必要である(※10)。また、中学年における外国語活動については、従来の外国語活動と同様に年間35単位時間程度の時数が必要である。

【3】短時間学習等の活用など、柔軟なカリキュラム設定に関する考え方
○ これまでの成果・課題を踏まえつつ、教育課程全体の枠組みの状況(※11)を考慮すると、小学校高学年において年間35単位時間増となる時数を確保するためには、ICT等も活用しながら10~15分程度の短い時間を単位として繰り返し教科指導を行う短時間学習(帯学習、モジュール学習。以下「短時間学習」という。)(※12)を含めた柔軟なカリキュラム設定の在り方と必要な「カリキュラム・マネジメント」を、教育課程全体を見通しながら実現していく必要がある。

○ 弾力的な授業時間の設定に関する研究開発学校等の先行的な取組状況や「教育課程の編成・実施状況調査」の結果などを踏まえた、これまでの成果・課題等を踏まえ、短時間学習では、今後、外国語の特性を踏まえた指導内容のまとまりや教育効果を高める観点から、短時間学習を行う場合には、学習指導要領上の標準授業時数内で、その時間を年間授業時数に含め、その目標を明確にし、まとまりのある授業時間との関連性を確保した上で実施することが必要である。

〇 前述の調査結果や小学校現場の取組の現状を踏まえると、短時間学習については、授業時数内外で様々な教科も含めた取組が行われており、全ての小学校において、外国語に特化した短時間学習を一律に行うこととすることは困難な状況にある。このため、年間70単位時間における一定の短時間学習の在り方を横並びで求めるのでなく、ある場合には45分授業を60分授業の扱いにして、その中の15分を短時間学習として位置付けることや、また別の場合には外国語の短時間学習を2週間に3回程度実施する、さらに別の場合には夏季、冬季の長期休業期間において言語活動を行うなど、地域や各学校の実情に応じた幅のある柔軟なカリキュラムの設定が必要であると考えられる。

○ 中学年においては、年間35単位時間、週あたり1コマ相当の外国語活動を、短時間学習で実施することは困難であり、小学校の教育課程全体を見通した「カリキュラム・マネジメント」が必要であると考えられる。

○ 以上を踏まえた検討とともに、担当する教員が、その指導内容の決定や指導の成果の把握と活用等を責任を持って行う体制整備が必要であるといった観点から、教員養成、教員研修及び教材開発に関する条件整備が不可欠である。

(5)国語教育と外国語教育の効果的な連携の意義

○ 言語能力の向上の観点からは、国語教育と外国語教育をそれぞれ改善・充実しつつ、相互の連携を図ることで、国語で学んだことが外国語の表現活動に生かされたり、国語と外国語の特徴や違いに気付き、国語を学ぶことに対する関心が高まったりするなど、子供の学習に相乗的な効果が見られるとの例(※13)が報告されているところである。

○ このような取組を踏まえ、言語能力の向上につながる効果的な連携につなげるためには、国語科と外国語科の指導内容について、そのつながりが可視化されることが必要であり、各学校において、言語能力の向上に向けた「カリキュラム・マネジメント」が実施されやすくなるよう、例えば、言葉の働きと仕組みの理解や言語活動を通じて育成される資質・能力といった観点から、指導の順序性や、言語活動で扱う内容や方法などの具体的な連携の在り方についてわかりやすく整理していくことが求められる。

3.各学校における「カリキュラム・マネジメント」

(1)小学校における弾力的な時間割編成の現状

○ 1.(2)の通り、現行学習指導要領では、児童の発達の段階及び各教科等や学習活動の特質を考慮して、授業の1単位時間を何分にするかについて決定したり、創意工夫を生かして時間割を弾力的に編成したりすることができることとされているところである。

○ これを踏まえて、各学校においては、時間割を編成するに当たって、子供たちの姿や地域の実情を踏まえつつ、休憩の取り方や休業期間を工夫したり、朝学習や昼学習などの短時間学習の時間を設定したり、授業時間を弾力化したり、学校教育法施行規則の改正に伴った土曜日の活用を行ったりするなど、様々な創意工夫が行われているところである。

○ 「教育課程の編成・実施状況調査」によると、例えば6年生において、週28コマとしている小学校は63%、29コマとしている小学校は32%である。

○ また、75%の小学校が現在短時間学習を実施しており、その主な目的としては、「繰り返し学習」による基礎的な知識・技能の定着や生活リズムの形成が挙げられている。指導の成果については、9割以上の学校が、効果が見られたと回答しているところである。

○ 短時間学習の実施内容については、読書活動が最も多く(91%。うち7%が授業時数内で実施)、次いで計算練習(84%。うち16%が授業時数内)、漢字練習(78%。うち19%が授業時数内)となっている。外国語活動や英語の学習については、実施している割合は低いが、実施する場合は授業時数に含めて実施している割合が相対的に高くなっている。

○ 加えて、学校教育法施行規則の改正等を受けて、現在25%の小学校で土曜授業が実施されている。時間割編成の在り方を考えるに当たっては、こうした多様な編成の現状を踏まえる必要がある。

(2)次期改訂に向けた授業時数の考え方と「カリキュラム・マネジメント」

○ 「論点整理」においては、「社会に開かれた教育課程」の理念のもと、これからの時代に求められる資質・能力を育成していくためには、学びの量と質の双方が重要であるとされ、また、教科学習と、教科横断的な学習の双方を充実させていくことが必要であるとされたところである。

○ こうした改訂の方向性のもとでは、各教科等の指導内容は維持しつつ、資質・能力の育成の観点から構造化を図ったり、学びの質的な向上を図ったりすることが前提となり、指導内容や授業時数を削減するという選択肢をとることは困難である。

○ 現行学習指導要領における各教科等の授業時数を前提に考えれば、外国語教育の充実を図ることにより、時数としては中学年・高学年において年間35時間増となる。週あたりで考えれば1コマ分であるが、教育課程全体の枠組みの状況(※14)や、小学校における多様な時間割編成の現状を考慮すると、全小学校において一律の取扱いとすることは困難であり、この時数の確保をどのように行っていくかについては、各学校の実状に応じた「カリキュラム・マネジメント」の視点から検討していくことが必要となる。

○ 高学年において年間35単位時間増となる時数を確保するためには、外国語科を中心に、教科目標を踏まえつつ、まとまりのある授業時間との関連性を確保した上で、効果的な繰り返し学習を行う短時間学習を実施することが考えられるが、他にも、45分に15分を加えた60分授業の設定、夏季、冬季の長期休業期間における学習活動、土曜日の活用や週あたりコマ数の増なども考えられるところであり、場合によってこれらを組み合わせながら、地域や各学校の実情に応じた柔軟な時間割編成を可能としていくことが求められる。

○ また、中学年については、外国語活動を短時間学習で行うことや、60分授業の設定は難しいと考えられるが、その他については同様の考え方に基づき、地域や各学校の実情に応じた柔軟な時間割編成を可能としていくことが求められる。

4.小学校の教育課程の改善・充実を支える方策について

○ 「カリキュラム・マネジメント」を通じて上記のような工夫を行うことが考えられるとしても、中学年・高学年において、指導内容や授業時数として年間35時間分が増えることに変わりはなく、上限であるとされた前回改訂の授業時数を更に上回る改訂は、教育現場にとっては大きな負担の増となる。

○ こうした中で、次期改訂の方向性に向けて、小学校の教育課程の改善・充実を図るには、「カリキュラム・マネジメント」の実践に関する知見の共有とともに、外国語教育に関する教員養成、教員研修及び教材開発に関する条件整備、小学校の低・中・高学年それぞれの課題に応じた指導体制の整備が不可欠である。

○ 「カリキュラム・マネジメント」を通じた弾力的な時間割の編成の在り方については、短時間学習の位置付けを含め、学習指導要領の総則やその解説において分かりやすく示すこととする。また、こうした時間割の編成に当たっては、外国語教育や特定の学年にとどまらず、全ての教科等と学年全体を見通す視点が必要になることから、効果的な創意工夫の在り方について、国や教育委員会と小学校現場、関係団体が連携して調査研究を行い、その成果を普及させていくことが求められる。

○ 外国語教育については、効果的な教材開発と、指導者の確保が課題となる。教材については、教科書が、今回改訂の教科化や「カリキュラム・マネジメント」の考え方に対応したものとなることが重要であり、そうした教科書の在り方につなぐためにも、先行して教科化に対応した教材を平成30年に配布できるよう、28年度中に検証、29年度中に開発を行うことが求められる。あわせて、活用しやすいICT教材の開発が求められる。

○ 指導者の確保については、中学校区を基盤として、中学校が複数の小学校と連携して研修や専科指導などを含めた授業などを行う連携体制を構築するとともに、「英語教育推進リーダー」を中心とした域内研修を行うことなどにより、外国語教育における域内の連携体制を充実させていくなど、各地方自治体における体制づくりが求められるが、そのような体制を確保しながら、養成・研修・採用を通じた充実を図っていくことが重要である。教職課程の見直しとともに、現職教員が外国語の指導に関する専門性を高めることができるよう、認定講習の開設支援等を行う。あわせて、専科指導を行う教員の養成・確保や、外部人材の活用支援等により、専門性を一層重視した指導体制を構築する。

○ 英語のみならず、小学校全体の指導体制に関しては、特に高学年に関して、専科指導を充実させることにより、学級担任制のよさと、教科担任のよさを兼ね備えた指導体制を確立していくことが求められる。こうした観点から、学年段階の柔軟な区切りを可能とする義務教育学校制度の更なる活用の促進も検討されるべきである。


(※1)「幼児期の教育と小学校教育の円滑な接続の在り方について(報告)」(平成22年11月)より
(※2)国語力答申、言語力報告といった各種会議等の議論を踏まえて整理。
(※3)本稿において「言語」とは、国語及び外国語のことを指す。広い意味での言語に含まれ得るような、数字、音符など言語記号以外の記号、グラフ、式、表などを指し示すときは、その都度それらを明記することとする。
(※4)文部科学省が平成23年5月に設置した「コミュニケーション教育推進会議」報告より
(※5)CEFR(Common European Framework of Reference for Languages: Learning, teaching, assessment外国語の学習・教授・評価のためのヨーロッパ共通参照枠)は,語学シラバスやカリキュラムの手引きの作成、学習指導教材の編集、外国語運用能力の評価のために、透明性が高く、分かりやすい、包括的な基盤を提供するものとして、20年以上にわたる研究を経て、2001年に欧州評議会が発表した。国により,CEFRの「共通参照レベル」が,初等教育,中等教育を通じた目標として適用されたり,欧州域内の言語能力に関する調査を実施するに当たって用いられたりするなどしている。
(※6)補足資料参照
(※7)国の第2期教育振興基本計画(25年度~29年度)(閣議決定)においては、成果指標として、中学校卒業段階で英検、中学校卒業段階で英検3級程度以上、高等学校卒業段階で英検準2級程度~2級程度以上を達成した中高生の割合を50%とすることとされている。また、文科省「英語教育の在り方に関する有識者会議」報告(平成26年9月)においては、これまで設定されている英語力の目標から、高校生の特性・進路等に応じて、高等学校卒業段階で、例えば英検2級から準1級、TOEFLiBT60点前後以上等(CEFRB1~B2レベル程度)を設定し、生徒の多様な英語力の把握・分析・改善を行うことが必要であると指摘されている。さらに、27年度の国の行政事業レビューでは、第2期期末時のレビューを経た上で、将来的な目標設定を行うことを提示している(補足資料)。
(※8)補足資料参照
(※9)英語教育の改善・充実については、文部科学省に設置された「英語教育の在り方に関する有識者会議」等において議論が重ねられ、報告等もまとめられているところ。諮問においても、同報告の提言を踏まえつつ検討を行うことが求められており、こうした状況を踏まえ、小学校外国語を中心とした課題、方向性について、別資料において補足する。
(※10)中央教育審議会 教育課程企画特別部会「論点整理」(平成27年8月)においては、「さらに、仮に105時間(週3コマ程度)実施することについては、指導体制などの条件整備や小学生の生活への負担等を考えると、教育課程の特例としてではなく全国一律に実施することは極めて困難。また、現段階で教科ごとの指導の専門性が中学校以降ほど確立されていない小学校段階でこれを強いることは、英語嫌いを生み出すことにつながりかねない。今後、児童への指導に当たっては、教科化に対応できる指導力を備えるとともに、児童理解、学級経営を基盤とした授業の実施等に対応できる指導者が求められる。」との指摘がなされた。
(※11) 「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善について(答申)」(平成20年1月中央教育審議会)6(1)小・中学校の教育課程の枠組みにおいては、「学習指導要領上の標準授業時数を増加する場合、週28コマが限度と考えられる」と指摘された。
(※12)小学校学習指導要領においては、短時間学習を含む単位時間の設定の工夫について、総則の解説に記載されている。なお、中学校学習指導要領においては、総則本文に「10分間程度の短い時間を単位として特定の教科の指導を行う場合において、当該教科を担当する教師がその指導内容の決定や指導の成果の把握と活用等を責任をもって行う体制が整備されているときは、その時間を当該教科の年間授業時数に含めることができる」との規定がある。
(※13)英語教育強化地域拠点事業の中では、(1)アルファベットの文字や単語などの認識、(2)国語と英語の音声の違いやそれぞれの特徴への気付き、(3)語順の違いなど文構造への気付きなどの取組が行われているところである。また、教育課程特例校における実践についても報告されているところである。
(※14)「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善について(答申)」(平成20年1月中央教育審議会)6(1)小・中学校の教育課程の枠組み」においては、「学校では、一週間の中で、各教科等の授業以外にも、特別活動として児童会活動やクラブ活動が行われているほか、個別の児童に対する補充指導や生徒指導といった取組もなされている、9.にあるとおり学校が組織力を高め、教育課題に組織的に対応するに当たっては、校長や副校長、教頭、主幹教諭、教師との間の情報交換や意思疎通のための時間の確保なども必要である、ことなどから、学習指導要領上の標準授業時数を増加する場合、週28コマが限度と考えられる」と指摘された。

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