必要な支援・条件整備等に関する算数・数学ワーキンググループ(第1回~第5回)における主な意見

(アクティブ・ラーニングの三つの視点を踏まえた、資質・能力の育成のために重視すべき算数・数学科の指導等の改善充実の在り方について)

○ 三つの視点というのは、算数・数学にとっては正に的確な視点だと思う。問題発見や解決をするということに当たり、構想を立てていくということ、そしてそれを評価・改善する機会というのが、今の中学校の教員では4割ほどしか実施されていないという現実もある。また、学んだ内容を振り返って新しいことを見出したりする、前に学習したこととの関わりを見出すという、そういう振り返るということについても6割程度の実現状況にとどまっている。

○ アクティブ・ラーニングなども含めた授業改革については、高校は小・中学校に比べて、なかなか進んでいないが、「やっぱり変わらなければいけない」という意識は出ていると感じている。今まで知識伝授型の授業が多くの高校で実施されているが、やらなければいけないことが多いため、大学入試は時間との戦いであり、早く進まないといけないという気持ちと同時に、興味や意欲を持つように、いい授業をしてあげたいというジレンマを抱えている。アクティブ・ラーニングを行うことで「入試に間に合わなくなるのではないか」という不安が進まない背景にはあったのではないか。大学入試と評価を改善しようという動きがある中で、今度こそ真剣にやらなければいけない、逆にそれがありがたい、やるチャンスだと思っている教員も少なくないと考えている。

○ 小学校は問題解決型の授業というのがかなり定着している。これは四つの段階があり、初めに問題の把握、そして自分で解決をするという個人解決。比較検討といって、これは集団で解決する。最後に振り返り、あるいは発展という、四つの段階の授業がある。非常に大事だと思うのは、それぞれの解決の良さを味わうことが行われている比較検討という集団思考の場、意見交換をする場というのがとても重要だと思う。

○ アクティブ・ラーニングの中にある、いわば他者との協働や相互作用というのがあるが、算数・数学の授業の中では問題解決型の授業の中で、小学校や中学校でもある程度実施されているのではないか。しかし、高校では問題解決型の授業は見たことがなく、先生が解決を示して、説明し、生徒に演習させて、結果や効果的な解法の解説が主になっており、そこに他者の存在がない。そういう意味で、授業をどう改善していくかということは、小・中と高校とのギャップ、中学校でも1年生と3年生のギャップを踏まえて考えていかなければ、資質・能力を育てと言っても、指導法がそれについていかないということが起こり得る。

○ 問題解決型授業というのは、社会人大学院で行っているケースメソッドと似ている。一つ違うのは、答えが一つではなく、いろいろな形があるところ。数学も現実にはそうなのかもしれないが、社会人大学院の学生を見ていると、ケースでさえも、たった一つの正しい答えがあると思って、それを見付けようという探し方をする学生は、年齢が上になればなるほどそういう傾向がある。ビジネスケースでは答えは一つではなく、現実にあったことが答えでもないとは常に言っているが、それでも何か正しい答えがあるはずだというような形になる人がいる。数学でも統計でも答えは一つではないというケースがあるということが伝わるようにすべき。

○ 小学校段階では算数で数の概念を拡張していくとか、その学び自身が常にアクティブ・ラーニング的に実現可能な題材になっていると思う。ところが、中学校、高校に行くと、相当に高いレベルの凝縮された知識になる。それをいかに、限られた時間の中でどのように教えていくかというところが常に問題になると思う。知識としてきちんと教えなければいけないところは教えるための時間は取る。そのほかにアクティブ・ラーニング的にやった方が効率的であるというところはそのようにするという、めりはりをつけるというところも大事だと思う。

○ 小学校ではPBLが多く、研究授業はほぼ100%それに近いと思うが、それは算数・数学を専門にしている教員がしているからであって、ほかの教科を専門にしている教員の授業研究でPBLの算数の授業をしているのを余り見たことがない。

○ 主体的に、協働的に、自立的に行う問題解決ができるようになるためには何を教えるべきかという議論をしなくてはならないが、一般に、教育内容とか指導内容と言ってしまうと、どうしても狭い意味の知識・技能になってしまいがちになる。例えば、問題を見付けやすい場面とはどんなところにあるのか、どのように見たら見付けられるのか、といったこともやはり内容として教えるべきことではないか。指導内容、教育内容をどう整理するのか、少なくとも狭い意味の知識・技能に絞るのでは良くない。

○ 数学自体は分析思考というものが非常に重要だが、アクティブ・ラーニングみたいなものが出てきたら、個人の力量以上に、コミュニケーション能力が重要になる。ただし、コミュニケーションに関しては数学以外の科目で養成される可能性があることから、達成志向(attainability)のようなものを個人のレベルで育成するという意味では、数学教育は重要ではないか。

○ 個人が徹底的に問題を解くことが面白く思って、伸びていく一方、いろいろな集団活動の中で、ほかの人が徹底的に考え抜いたもので、なるほどと思うところを共有していく活動もある。そういう活動の中で、集団としても、達成志向が育める。いろいろなツールを使って何かの目的を達成していくという能力が伸びるようなことを、アクティブ・ラーニングと総称されているような活動の中でうまく設計していけるような、提言としたい。

(教材について)

○ いろいろな統計によると、教材プリントとかそういうのは、市販のものの使用率が高まっている。自分で教材を作り込めないなど、一言では解決されない問題がたくさんあると思うが、全ての教科をほぼ一人で教えられる小学校の教員がうまく指導できるような体制を考えていくべき。

○ 算数・数学教育のイメージを現場の伝えるためには、伝え方に工夫が必要だと思う。教員は教科書を活用して授業をしていることから、教科書で大学入学希望者学力評価テストのイメージ例のような日常生活に関連する内容を多く扱ったりするなど、教科書の在り方を併せて検討するなどの工夫も大事だと感じている。また、子供たちが粘り強く考えていく気持ちをアシストするために、「思考の道具」のようなものを教科書の裏表紙に載せることも検討してみたらどうか。

(情報教育・ICTの活用について)

○ 情報教育の中ではICTを活用した問題解決は相当大きく出てくると思う。その意味では、数学・算数が与える方法論的な教育以外に、データ分析の中で、高校では扱い切れないような分析技術が世の中ではかなり使われており、そういうものを問題解決の一つのツールとして情報科の中で行い、連携することは意味があると思う。

○ 情報科の「社会と情報」の現行のカリキュラムでは、問題解決のプロセスのような内容が情報科の中でも扱われているという印象があるが、適切なグラフィックなどをうまく入れて、数学の教育を更に発展させることや、小学校や中学校で、グラフィックや可視化のようなものをどんどん発展させていくということは、あり得るのではないか。

(入試に関することについて)

○ 世の中は数学であふれているが、生徒たちがそれを感じられない状況になっていることが一番課題である。特に、入試で高得点を取らせるのが目的みたいになっている状況では、受験で数学が要らなければ一生要らないというような思いで数学の教育が終わってしまう子がいるというのは、とても残念なことだ。社会との関連をつなげながら、卒業後も数学が必要になったら使えるし、数学って面白かったなという印象を持っていてほしい、そういう思いが伝わる文言にしたい。

(その他)

○ 社会に開かれた教育課程が重要なポイントだという説明があった。算数・数学は学校で教わるもので、多くの人たちは学校にお任せだが、学校も民間も、地域社会の算数・数学に関心を持っている方も含めて、子供たちと算数・数学との関わりをつなぐ、そういう概念をどんどん広げていく、つまり、学校だけに閉じこもらないで開いていくことが、今回の改訂のコンセプトから見て重要なポイントになる。世の中の人たちからは一番遠いところに存在している教科を、もっと近いところに引き寄せるための作戦を打ち出すべき。

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初等中等教育局教育課程課教育課程第二係