算数・数学ワーキンググループ(第3回)における主な意見

1.算数・数学を通じて育成すべき資質・能力について

(1)算数・数学を学ぶ本質的な意義や他教科との関連性について

○ 協働的という言葉が資質・能力、思考・判断・表現というところに入るか入らないかということは、数学というものをどう考えるか、知識というものをどう考えるかということによるのではないか。数学はある意味で社会的な側面も含んでいて、知識も社会的な側面を含んでいると考えると、個人が問題解決をするのみを教育の主眼に置くというのも一つの考え方かもしれないが、数学的な社会性というものも個人に入れていいのではないか。

○ 算数・数学の授業を通して身に付いていく方法的な思考・判断・表現力といったものがクローズアップされているが、教科の内容、概念といったようなものが見えてこない。現在の示し方では、これからの算数・数学の授業は、この三つのプロセス、方法をこなしていけば、算数・数学の本質に根ざした見方、考え方ができていくというようにとらえられてしまい、それは非常に危険なのではないかと感じる。協働的に学ぶことによって、どのような算数・数学ならではの本質に根ざした見方・考え方を育てていくかということを考えていく必要があるのではないか。

○ 三つの柱では、算数・数学を学んでいくプロセスに軸足を置いた表現が多いが、これまでは、個別の知識・技能を用いながら数学らしく考えていくことが重視されてきた経緯がある。統合的に考えたり発展的に考えたりする裏側に、算数・数学ならではの内容や概念に依存した考え方が張り付いているという見せ方ができればいいが、教科の本質に根ざした見方、考え方というのがこの示し方でいいのかと疑問に感じている。

○ 数学的な概念であったり、内容を発展させたり統合させたりというような点は、算数・数学の教科として大切にしておかなければならない部分だと感じている。

○ 資料3、4、5を整理する際には、これまでの経緯やアクティブ・ラーニングの趣旨などから見て、三つの柱に沿って明確化された育成すべき資質・能力を総合して、算数・数学を学ぶ本質的な意義を、先の「数学的に考える力」をいかして簡潔に記述することができないか検討したい。

(2)三つの柱に沿った育成すべき資質・能力の明確化について

○ 協働的に問題解決する力として思考力・判断力・表現力等に分類されているが、これはアクティブ・ラーニングを意識した言葉だと考えられ、学びに向かう力とか人間性等という協働的に問題を解決する態度とも受け取れるのではないか。

○ 協働的に問題解決する力とは、表現力やコミュニケーション能力が想定されていると思うが、リーダーシップなどの学びに向かう力、人間性という面もあるのではないか。

○ 資料4の学習過程の欄では疑問や問いの発生から始まることになっているが、数や演算の概念を最初から疑問に思うことはない。したがって、全てを問題設定という形で捉えることには疑問がある。

○ 協働的という表現だけが強調されることによって、個人の主体的な問題解決活動を行わずにグループでの解決を行うという、個人の主体的な問題解決活動が軽視されてしまうおそれがあるため、他者との協働や外界との相互作用を通じて自分の考えを広げ、深めるためには、個人が主体的に問題に取り組んだ後にそれぞれの解決をグループで検討し、よりよいものに高めるようなイメージを文言として盛り込むことを検討すべき。算数・数学は個人としての力を育成するということが中心であり、「協働的に」というのは方法論だとも考えられる。

○ 資料4の学習過程に欄では、自主的な問題発見・解決と協働的な問題発見・解決の二本柱で説明されているが、後者は算数の一部では反映されているものの、全体的に見ると反映されていない。一方、思考力・判断力・表現力等では協働的に問題解決する力が全面に出ている。本来はこれら二つが絡まっているはずが、別個のところに出ているように見えてしまっているため、それぞれの関係に配慮した表現を考える必要がある。

○ 資料4の学習過程の欄には子供が自立的に学ぶときのスタイルが記載されているのだと思うが、学習指導の視点からは、教員が意図的に何かを教えなければならないという前提がある。子供が問題解決に向けた探究活動をする過程で、教員が教える場面と子供が自立的に問題解決する場面の両方を、教員は意図的に設定することが求められる。これが前提としてあれば、資料4は要素の分析として理解することができる。

○ 資料4の小学校の学習過程の欄にある、問題解決の自力解決後に協働的な検討をさせるのは、中学校や高等学校でも大切にすべきもの。形式的なグループの議論や発表会で終わらせることなく、数学らしく理解できるような工夫をかもしだすための考え方もあるのではないか。

○ 多面的・多角的というのは社会科で使う言葉だと思うが、いろいろな方面から検討するという必要なことではあるが、「多面的に」という方法論で書くよりも、「よりよく」と目的論的に書いた方がいいのではないか。

○ 資料3では、「協働的な」という言葉が「協働的に問題解決をする力」ではなく、問題解決ができるようにするという一つの方法になっているため、違和感はない。学習過程の中に協働的検討、あるいは協働的問題解決というような文言を入れるのも一つの案ではないか。

○ 数学的に表現されたことを改善して本質を見抜こうという態度につなげるためには目的が必要である。小学校の記載には、問題解決し、振り返って表現されたことについて改善するという部分が抜け落ちているため、何のためにするのかということが分かりにくくなっている。一般の教員がイメージできるように、一旦表現したことについて、目的を持って洗練したり、見直したり、改善したりするということが伝わるようにすべきである。

○ 小学校では協働的なアクティブ・ラーニングが十分行われてきており、また何かしなければならないのかというような思いを教員が抱かれるのではないか。アクティブ・ラーニングでは、最近は「深い」という形容詞が使われており、「多面的に」という部分は「より深く考えようとする」とするのがよいのではないか。

○ 資料3の中学校の記載について、小学校のように、等式や数式のような具体的な事象との関連がある言葉を入れて、算数・数学教育のイメージが見えるようにすべきではないか。

○ 小学校は6年間あり、初等前期学校と初等後期学校があるぐらい授業が違っている。中学校や高等学校のように、小学校1年生、2年生、3年生の授業で抽象的な理屈っぽい授業に過度に走ることが懸念されるため、現行の学習指導要領で使われている「感覚を豊かにする」や「豊かな感覚」という文言を入れるべきではないか。

○ 中学校や高等学校に記載されている粘り強く考えていくということが非常に大事だと思うが、粘り強く考えてどうしていくことがその目的なのかというが重要だと考えている。小学校ではこのような記載は無いが、子供が考えたり、思考や行為といったようなものを改めたりしていこうとする態度、よりよいものを目指す、正しいものを求めるために常に思考や行為というものを改め、よりよいものにしていこうとする態度などが加わることによって小・中・高がつながっていくのではないか。批判的に検討することは非常に重要なことで、なぜ大切なのかということ、つまり目的を位置付けるということで、ここに示していることの主張がよりはっきり出てくるのではないか。

○ 資料4の小学校の「学びに向かう力」の記載は、統合的に考えたり発展的に考えたりする際の動機に関わること考える。そのため、なぜ発展するのか、なぜ統合するのかということに応える視点が必要なため、「多面的」、「よりよく」、「より考察を深める」というレベルの表現を入れるといいのではないか。

○ 資料4の学習過程の欄、小学校に「解決したことの協働的検討」が入っているが、学習過程の例としては、問題発見・解決の典型としてワンセットとし、それを自立的に行うケースと、協働的に力を合わせて行うケースに分けて、それらに主体的に取り組むとすればよいのではないか。例えば、協働的検討を小学校で外したとすると、例とされている学習過程というのは幾つかの要素をセットで示されて、これらの学習過程は自立的に問題を発見・解決する場合でも協働的に問題を発見・解決する場合でも大事な要素であり、それらに主体的に対応できるよう導くことが大切だというニュアンスで説明を加えることが考えられる。

(3)幼稚園・小学校・中学校・高等学校を通じた算数・数学において育成すべき資質・能力の系統性について

○ 社会的な意思決定や数理的な意思決定を行う場合には、相手の持っている目的関数と自分が持っている目的関数を理解するため、客観的に集団を眺めるという操作が必要になる。自然事象の場合には目的関数がユニークに決まるが、社会事象又は集団での数理的な意思決定の際の協働性には、単純に話し合って何かを決めるという以上の意味を持つのではないか。したがって、小・中・高と学習の進行に応じて自分自身を客観的に見ることができるような形にすべきではないか。

○ 具体と抽象の間を行ったり来たりすることや、特殊と一般の間を行ったり来たりすることは、理解や認識を深める際に大変重要であり、また、課題を見付けるときの動機としても重要である。こういったことは、小・中・高全体でどこかに考えるときの基本として、例えば問題解決に必要な数学的なプロセスについての知識や技能の文脈辺りで、特殊・一般、抽象・具体との関係を整理できるのではないか。

(4)算数科・数学科において育成すべき資質・能力と指導内容との関係について

○ 特になし。

(5)統計的な内容等の充実について

○ 特になし。

2.アクティブ・ラーニングの三つの視点を踏まえた、資質・能力の育成のために重視すべき算数・数学科の指導等の改善充実の在り方について

○ 協働的に問題解決する力というと、全てのことをアクティブ・ラーニング的にやらなければならないという感じにも見えてしまう。アクティブ・ラーニング的な授業は学校種が上がっていくにつれて難易度が上がっていくため、現在の表現でよいかどうか疑問である。

○ 資料4の学習過程の欄には子供が自立的に学ぶときのスタイルが記載されているのだと思うが、学習指導の視点からは、教員が意図的に何かを教えなければならないという前提がある。子供が問題解決に向けた探究活動をする過程で、教員が教える場面と子供が自立的に問題解決する場面の両方を、教員は意図的に設定することが求められる。

○ 日常生活と社会生活における事象の数学化にすごく重きを置いているイメージがある。小・中・高と校種によって扱いは違うことから、表現の工夫が必要なのではないか。

○ 「数学的な課題」には課題を数学的に解決することと、課題を数学的に定式化することの二つの解釈がある。また、課題には実生活や自然現象における課題と、それを数学的に表現した課題、それを解くための数学の課題という三種類がある。ここでは「日常生活や様々な現象における問題を数学的に表現した課題」という認識となるだろう。

○ 授業場面で考えると、先生が出した問題と子供たちが自分事として解きたい思いを持って解く問題と違う。自分事としての子供たちが何とかこれを解決したいと思うニュアンスが出る言葉で表現すべきではないか。

○ 「算数・数学の世界」の部分で、「数学の事象について統合的・発展的に考え、数学の概念を形成することができる」と概念を形成するところで終わっている。数学は数学の特質として、日常的なものだけでなく、数学自身で数学の問題を更に発展的に解決していくということがあることから、問題を解決するところまで含めるべきではないか。

○ このような問題解決のプロセスは小学校では一般的だが、一方で、課題を把握して、一人一人が自力で解決をして、協働で議論して、それをまとめていくという、このプロセスさえやれば問題解決の力は付いたと思い込んでしまっている。そのような傾向がある中で、問題発見・解決のプロセスを通してどのような力を身に付けることができるかをしっかりと明示していくことが、これからの学習指導を進める上で、特に資質・能力の育成という視点からは非常に重要だと思う。ただし、一つの問題を解決するときにこれを全てやると誤解されると現場は止まってしまうため、この学習のプロセスの出し方については考慮する必要がある。

○ 全国学力・学習状況調査の中学校の問題解決の枠組が資料5の問題発見のプロセスと密接な関係がある。問題発見・解決を展開するときの主要な要素と資料4の留意すべき学習過程の要素を結びつけながら、資料4と5で表現されている資質・能力の関係を整理すべきである。

○ 数理化とか数学化といったときに、例えば日常の事象からスタートしての数理化あるいは数学化していく文脈と、数学の世界からスタートしてより抽象性、一般性の高いところに持っていくために数学化していく文脈などがあり、同じ言葉が使われていてもスタートラインによって、数学化の水準が一次、二次、三次とアップグレードしていくことになる。スタートラインが違うのであれば、事象を数理的に捉え、数学的に処理し、問題解決するというのがメーンにあり、その事象を特徴付けるときに、それが日常生活や実社会からスタートするものだったり、数学の世界からスタートするものであったりすると表現すれば、もっとシンプルになるのではないか。

○ 「算数・数学の学習のプロセス(案)」は、学力調査のプロセスで提起されているものを並べる中で、プロセスの中で位置付けられて大変分かりよく数学を進めていくイメージがつかみやすい。また、問題解決の中で、数学的な見方、考え方が問題解決のプロセスとセットになることが大切ではないかと思う。数学の新しい考え方が分かった、あるいはそれを理解できたからこそ、それまでできなかったような見え方、理解の仕方、的確な伝え方ができると考えられるので、私たちが大切にしてきた数学的な見方、考え方というものをこのようなプロセスの中でいかに見えるようにしていくかということが重要だと思う。

○ 資料5の記載は、現行の学習指導要領にある数学的活動と関連があると思う。新しい学習指導要領の改訂に当たり、数学的活動の中身を資料5のように力として細かく示して位置付けることを試みることは、次の学習指導要領に一歩、歩みを進めるという意味で賛成できる。これによって、教員に問題解決のプロセスを意識して数学の内容を指導してもらいたい。

○ 資料5の「E 得られた結果を意味づけたり、活用したりすることについて」も振り返る活動だと考えられる。また、数学的に表現したものを改善するのは、次の問題解決の場面でよりよく解決できるようにするために振り返ってまとめておき、使えるようにしておくためであることから、Eに問題解決した後にこの問題の本質は何かと見抜く力を入れるのがよいのではないか。

○ この問題解決のプロセスというのは、非常に重要なもので、特に、高校の数学で授業改善をするという上では非常に貴重なものだと思う。この資料で、資料4の意味や協働的な活動との関連も理解することができる。

○ 資料4での問題の設定は、普通の現象だと評価とか改善のサイクルから出てくると考えられる。資料5での「現実の世界」から「課題を見いだす」ことと、「現実の世界」を評価するという行為はかなり類似しており、事象の数量などに着目するなど、数学的に「課題を見いだす」と考えられ、評価して課題を見いだすことだと思う。その前提として、事象を数学的に表現する能力が問題を設定するために要求されるという、実は問題を設定すること、評価すること、得られた数学的な知識を評価することは極めて類似な行為ではないかと思う。その意味で、資料5の「C 焦点化された問題を解決することについて」の「過程や結果を吟味し、評価・改善する力」は、現在の事象を観察し、評価する、何とか改善するという話と極めて類似した能力であり、他の項目の解決する力とは異なることから、独立させるべきではないか。

○ 数学的な表現は先生が与えるものではなく、子供たちが作り出していくものになっていくべきである。そこで、資料5の「A 実社会や実生活などの問題を数理的に捉えることについて」に、子供たちが思考を可視化しようとするニュアンスを入れることにより、より洗練したものに作り上げていく過程を盛り込んでいけばいいのではないか。

3.資質・能力の育成のために重視すべき算数・数学の評価の在り方について

○ 特になし。

4.必要な支援(特別支援教育の観点から必要な支援等を含む)、条件整備等について

○ 特になし。

5.その他の論点

○ 特になし。

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初等中等教育局教育課程課教育課程第二係

-- 登録:平成28年05月 --